(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】組織分離
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20231108BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20231108BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20231108BHJP
C12N 1/04 20060101ALN20231108BHJP
C12N 1/02 20060101ALN20231108BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20231108BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/26
C12M1/02 B
C12N1/04
C12N1/02
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525604
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2021079070
(87)【国際公開番号】W WO2022090021
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517322156
【氏名又は名称】アシンプトート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ASYMPTOTE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】クラス・マルテルール
(72)【発明者】
【氏名】デヴィナ・ディヴェカー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB11
4B029HA02
4B065AA90X
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065BD09
4B065BD12
4B065BD14
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、サンプル処理バッグ10の中での組織分離のための、組織分離装置200で使用するための、サンプル処理バッグ10に関する。
クランプ機構72とベースサポート70を有するクランプアセンブリ60は、サンプル処理バッグ10の内部で任意の組織を分離するために、サンプル処理バッグ10に対して組織分離装置200の作用が実行されるように、組織分離操作中にベースサポート70に隣接するサンプル処理バッグ10が保定されるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル処理バッグ(10)内の組織を分離するための押しつぶしデバイス装置(200)であって、
サンプル処理バッグ(10)を押しつぶすための、少なくとも一つの脚部アセンブリ(234,236)と、当該押しつぶしデバイス装置(200)に対して着脱可能に組み合わせられるクランプアセンブリ(60)であって、
ベースサポート(70)と、組織分離操作中に前記ベースサポート(70)に隣接する前記サンプル処理バッグ(10)を保定するように構成されたクランプ機構(72)とを備え、少なくとも一つの前記脚部アセンブリ(234,236)が任意の組織を前記サンプル処理バッグ(10)内で分離するための前記サンプル処理バッグ(10)に対して分離する、クランプアセンブリ(60)と、を含んでなる、押しつぶしデバイス装置(200)において、
前記サンプル処理バッグ(10)は、その中に複数の分離されたチャンバー(12)を有しており、各々の前記チャンバー(12)が各々対応する開口部(14)および/またはアクセスポート(16)を介してアクセス可能である、
押しつぶしデバイス装置(200)。
【請求項2】
支持プレートに隣接する前記クランプアセンブリ(60)のベースサポート(70)を支えるための支持プレートを有している、シャシー底部に設けられた受入領域を備えている、請求項1に記載の押しつぶしデバイス装置(200)。
【請求項3】
支持プレートが電熱プレートを備えている、請求項2に記載の押しつぶしデバイス装置(200)。
【請求項4】
前記クランプアセンブリ(60)を加熱および/または冷却するための伝熱プレートの温度を制御することが可能である、請求項3に記載の押しつぶしデバイス装置(200)。
【請求項5】
バッグチャンバー(12)が分離可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の押しつぶしデバイス装置(200)。
【請求項6】
各々の前記バッグチャンバー(12)が、それらの間に設けられたミシン目および/またはプレカットが入ったポリマー材料によって離間されている、請求項5に記載の押しつぶしデバイス装置(200)。
【請求項7】
サンプル処理バッグ(10)が3つのバッグチャンバー(12)を備えている、請求項1~6のいずれか一項に記載の押しつぶしデバイス装置(200)。
【請求項8】
サンプル収容部の内部で組織を分離させる、押しつぶしデバイス装置(200)用のクランプアセンブリ(60)であって、ベースサポート(70)と、前記ベースサポート(70)に隣接するサンプル処理バッグ(10)を保定するように構成された、クランプ機構(72)とを備えている、クランプアセンブリ(60)。
【請求項9】
前記ベースサポート(70)が、前記サンプル処理バッグ(10)の少なくとも一つのアクセスポート(16)を支持するための隆起端部(74)を含む、請求項8に記載のクランプアセンブリ(60)。
【請求項10】
前記隆起端部(74)が、その内部に少なくとも一つの窪み部(76)を備えている、請求項9に記載のクランプアセンブリ(60)。
【請求項11】
前記クランプ機構(72)が、前記ベースサポート(70)の遠位端(78)に設けられている、請求項8~10のいずれか一項に記載のクランプアセンブリ(60)。
【請求項12】
組織分離装置(200)の使用のための前記サンプル処理バッグ(10)であって、その内部に複数の分離されたチャンバー(12)を有し、それぞれの開口部(14)それに接続されたアクセスポート(16)とを介してアクセス可能である、サンプル処理バッグ(10)。
【請求項13】
前記開口部(14)がヒートシール可能である、請求項12に記載のサンプル処理バッグ(10)。
【請求項14】
前記バッグチャンバー(12)が分離可能であり、任意選択で、前記バッグチャンバー(12)の間の空間を占めるポリマー材料に設けられたミシン目および/またはプレカットに沿って、前記バッグチャンバー(12)を分離することにより、前記バッグチャンバー(12)が分離可能である、請求項12または請求項13に記載のサンプル処理バッグ(10)。
【請求項15】
前記サンプル処理バッグ(10)が3つのバッグチャンバー(12)を備えている、請求項12または請求項14に記載のサンプル処理バッグ(10)
【請求項16】
前記サンプル処理バッグ(10)が無菌状態である、請求項12~15のいずれか一項に記載のサンプル処理バッグ(10)。
【請求項17】
前記サンプル処理バッグ(10)のチャンバー(12)の周囲の各点においてシールされた2つのポリマー材料層を備えている、請求項12~16のいずれか一項に記載のサンプル処理バッグ(10)。
【請求項18】
ポリマー材料がエチレン酢酸ビニル(EVA)を含む、請求項17に記載のサンプル処理バッグ(10)
【請求項19】
分離された組織の冷凍保存に使用されるように構成された、請求項12~18のいずれか一項に記載のサンプル処理バッグ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉空間での細胞サンプルの分離のための改良型の構成及び方法の利用全般に関する。
【背景技術】
【0002】
医学および生物学の様々な領域において、組織サンプルの採取、およびさらなる加工のために細胞サンプルを細胞集塊と単細胞に分離することが必要である。
細胞サンプルの取得および分離のための応用の数は膨大であり、細胞の抽出を含んでもよく、例えば:a)“プライマリー細胞”は肝臓などの組織から抽出することができ、そして“プライマリー細胞”は単細胞サイトメトリーやシングルセル連続流れサイトメトリーなどの下流の応用やハイスループットスクリーニングと一般的に呼ばれる測定法に用いることができる。b)腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は腫瘍組織から抽出してもよく、自己由来の細胞療法に基づいて用いてもよい。c)臍帯組織は間葉系幹細胞の抽出に用いてもよい。d)腫瘍は切除することができ、腫瘍細胞はネオアンチゲンのために分析することができる。e)組織は転移でき、細胞は観察できる。そうすることによって、オーダーメイド治療を含む多くの目的のため、いわゆる細胞のマルチオミクス(例えば、プロテオミクス、ゲノミクス、エピジェネティクス)を調査することができる。
【0003】
多くの応用において、可能な限り多くの健康な細胞を維持することや、清潔で無菌の状態を維持しておくことが望ましい。
【0004】
この応用では、密閉、無菌、ないし滅菌、のような用語は、生体物質は周囲の環境から分離されているが、必ずしもバイオバーデンやその他のコンタミネーションが完全にないわけではなく、単にバイオバーデンやその他のコンタミネーションがそれほどないということであり、もしあっても分離される物質の有用性や生存率には重大な影響がない、という状況を意味することを意図している。
【0005】
国際公開2018/130845から、細胞の組織分離のためのある技術が知られている。同様に米国特許第6439759が細胞の組織分離のための1つの技術として知られており、米国特許第6439759で検討された構成に、温度制御なしで、密閉された物質のバッグを混ぜることを支援するための内部のバッフルを含む混錬装置が示されている。
【0006】
前述の先行技術の欠点に対処するため、国際公開2020/177920は、以前に考慮したパラメータよりも多くのパラメータを考慮して、細胞を分離すること、および分離、冷凍、解凍工程の性能を向上させることもまた、目的として開発された。
【0007】
誤解を避けるため、以前に言及された書類である国際公開2018/130845、 米国特許第6439759および国際公開2020/177920の全ての内容は、許容される最大限度の範囲で、本明細書においてその全体がこの参照によってまた組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2018/130845
【特許文献2】米国特許第6439759
【特許文献3】国際公開2020/177920
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特に、さらなる分析のために比較できるサンプルを提供するために、実質的に同一の処理状況下で、複数の組織サンプルを連続的に処理する必要性に関して、先行技術には様々な欠点が未だに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
それゆえ、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義され、提供される。
【0011】
したがって本発明は、とりわけ、サンプル処理バッグ内での組織の分離や押しつぶしデバイス装置の使用のための、サンプル処理バッグを設けており、押しつぶしデバイス装置に対して着脱可能に組み合わせられるクランプアセンブリと、サンプル処理バッグを押しつぶすための少なくとも1つの脚部と、を有する。クランプアセンブリは、サンプル処理バッグで任意の組織を分離するために少なくとも一つの脚部アセンブリがサンプル処理バッグに対して作用するように、組織分離操作中にベースサポート部に隣接したサンプル処理バッグを保定するように構成されたクランプ機構と、クランプ機構と併せて構成されたベースサポート部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
前述したようなクランプアセンブリやサンプル処理バッグを設けることで、本発明の様々な実施形態が、例えば、複数の分離したサンプルや、実質的に同一の状況下で分離後に起こる複数の分離したサンプルの分離と処理の、より優れた取り扱いを促進にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
これより、本発明が添付された図面に関してより詳細に示される。
【
図1】
図1は、サンプル収容部内部における、細胞を細胞集塊または独立した細胞内に分離するための、押しつぶしデバイス装置の正面図を示しており、押しつぶしデバイス装置は本発明の様々な実施形態において用いられる可能性がある。
【
図3】
図3は、
図1の押しつぶしデバイス装置および/または
図2Aから
図2Cのサンプル収容部と併せて使用するためのサンプル収容部クランプアセンブリの実施形態を示している。
【
図4】
図4Aと
図4Bは、本発明の様々な実施形態に従って、クランプアセンブリによって保定されているサンプル処理バッグを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、サンプル収容部内部において細胞を細胞集塊または独立した細胞内へと分離させるための、押しつぶしデバイス装置200の正面図を示している。押しつぶしデバイス装置200は、本発明の様々な実施形態に用いることが可能である。
【0015】
本実施形態では、サンプル収容部は、少なくとも初めは全般的に無菌状態である、平坦面および比較的薄いサンプル処理バッグ10を備える。押しつぶしデバイス装置200は、冷凍、解凍または加熱のような制御された温度変化の速度などの温度制御デバイス、例えばLife ScienceのCytiva(登録商標)から商業的に利用可能である、Via Freeze(登録商標)として知られている商業的に利用可能であるデバイスに対して、取り外し可能なように挿入されてもよい部品の、アセンブリから形成される筐体210を含む。
【0016】
実際には、筐体210はカバーを含んでおり、
図1には示されていない。使用時には押しつぶしデバイス装置200とサンプル処理バッグ10は、システム内での細胞の分離(動物または人間の細胞や、針生検など)のための、密閉システムを設ける。結果として起こる細胞の懸濁は、分離されたサンプルをサンプル処理バッグ10の外に移動させることを必要とせず、その後の分析のために、細胞が懸濁している際に冷凍保存され得る。
【0017】
押しつぶしデバイス装置200は押しつぶし機構220を備える。2つの押しつぶし脚部234、236は、押しつぶし動作の速度を監視および制御するためのコントローラに対して、フィードバックを提供するロータリーエンコーダを有している24ボルトの直流電動モータ214によって、周期的に交互に押しつぶす動作の動力源となる。直流電動モータ214は歯付ベルト222を通じてカムシャフト224を駆動させる。カムシャフト224は、オフセット角が180度である一組のカム230、232を含み、この場合、各々のカムがカムフォロアの単振動を提供するためにサイクロイド形状を描く。各カム230、232は、弾性を有しており、カムの外形に重なるように、連動して動く従輪225、227と、スプラングフォロワー226、228と、スプラングフォロワー226、228に動力を伝達する関係にある従輪の軸221、223と、を含む、カムフォロアのアセンブリを動かすことができる。
【0018】
各キャリッジ226,228はリニアガイド229の上を滑り、各脚部234、236がキャリッジと接続されている。各カムフォロアのアセンブリは、各々のカムがリターンスプリング231の駆動力に逆らうモータによって回転するときに、脚部とともに押しつぶしの条件からは離れて、カムの輪郭に乗りながら、各々の従輪のうちの一つによって順に押し上げられる。カムがさらに回転し、カムの輪郭が後退するときに、各フォロワアセンブリと一体化したスプリング231は、押しつぶし力を加えるために、脚部とアセンブリに下向きの力を加える。その結果、押しつぶし力は関連したフォロワアセンブリとスプリング231のばね定数に制限され、駆動モータの力には制限されない。
【0019】
バッグに施される力は、押しつぶし機構が脚部234,236を上向きに動かし、スプリングが脚部234,236を下向きに押し返すため、使用時には、スプリング231に制限される。これは以下を満たす:a. モータは(腫瘍のサイズや組織に関係なく)動くことができない。b. サンプルは過度な力によって圧縮されず、バッグは分裂しない。c. バッグに適用される最大圧力は、バッグ製造時に試験された圧力よりも低く、d. ヒンジで連結されたバッグの受取り領域は、脚部234,236を事前の位置決めをすることなく、サンプルバッグと使用された任意のクランプを受け取ることができる。言い換えると、脚部234,236は、ヒンジで連結されたサンプル領域は脚部234、236に対して閉じているため、バッグ10を受け取るとき、脚部234,236は任意の位置を取ることができ、また脚部234,236に対してヒンジで連結された領域が閉じたとき、必要に応じて、任意のサンプルを脚部234,236によって圧縮することができる。
【0020】
押しつぶしデバイス装置200は、さらにデバイス収容部210から2つの脚部234,236の上部まで伸長する柔軟な密封膜を含んでもよく、また柔軟な密封膜は流体抵抗と、脚部234,236の底部と押しつぶし機構220の残りの部分の間に、ダストシールを設ける。そのような構造はコンタミネーションの過程を抑制するため、圧縮されたバッグ10は使用中に分離されていなければならない。膜の使用が好まれる一方で、脚部はバッグの領域と機構220を分ける仕切りに貼られた、リップシールなどのシールの上をスライドするおそれがあり、それによって、コンタミネーションの過程を抑制する類似した必要とされるべき機構を獲得しなければならない。
【0021】
押しつぶしデバイス装置200はさらに伝熱プレートを含む。この伝熱プレートはヒンジで収容部210のある一つの側面と連結されているため、押しつぶされるバッグ10の挿入及び除去がより容易になる。伝熱プレートは、コントローラー、例えばクオリティコントローラなどのバッグおよびプレートの受け取り領域の温度を、監視および記録することができる温度センサーを含むことができる。
【0022】
各脚部234,236は、押しつぶし装置200の電熱プレートに対して高さを調整することが可能であり、また動作の指示もコントローラによって監視可能である。したがって、ロータリーエンコーダは、たとえモータが回転していることを示したとしても、歯付ベルト222の故障などの機械的な故障は、コントローラによってなお検知することができ、また警告を発するなどの適切な行動を実行することができる。
【0023】
押しつぶしデバイス装置200は、収容部210が、所定の位置にあるフリーザーのふたをもつコントロールレートフリーザー(示されていない)の中に滑り込ませることができるように、さらに形成されている。
【0024】
図2Aおよび2Cは、
図1の押しつぶしデバイス装置200と併せて使用のためのサンプル収容部の実施形態を示している。より具体的には、サンプル収容部はサンプル処理バッグ10を備えていてもよい。サンプル処理バッグ10は、サンプル処理バッグ10中に複数の分離されたチャンバー12を備えている。処理バッグ10は、ポリマー材料からできていることが好ましい。様々な実施形態において、サンプル処理バッグ10は、その中に内容物を有して、様々な位置でヒートシールされることができると有利である。
【0025】
図2Aはサンプル処理バッグ10の平面図を示している。
図2Bは、
図2A中でAとして示された方向に沿ってサンプル処理バッグ10を見た時の、サンプル処理バッグ10の図を示している。
図2Cは、
図2A中でBとして示された方向に沿ってサンプル処理バッグ10を見た時の、サンプル処理バッグ10の図を示している。
【0026】
各チャンバー12は各バッグの開口部14を通じてアクセス可能であり、またアクセスポート16にも接続されている。開口部14は十分に大きいほうがよく、例えば、サンプルが小さな破片に分断されてしまい、シリンジによってチャンバー12に挿入されてしまったサンプルを、必要であれば受け入れるために、開口部14の直径は約10mmかそれ以上であると好ましい。開口部14は、いったんサンプルが各チャンバー12に導入されてしまえば、ヒートシールで遮断されてもよい。使用時、様々な材料(例えば、分離酵素や分離サンプルなどのサンプルや試薬など。)が、アクセスポート16を介してチャンバー12から挿入および/または抽出されてもよく、またアクセスポート16が使用中でないときは、アクセスポート16はさらにシールを設けてもよい。
【0027】
サンプル処理バッグ10は一般的に平らな構造を有しており、また様々な実施形態において、組織サンプルがサンプル処理バッグ10内で適合することを可能にするために、いくつかの追加の措置が設けられるので、サンプル処理バッグ10は、12mmまでの厚さを有してもよい。一つのサンプル処理バッグ10のための構造は、チャンバー12の周囲の各点においてシールされている、2層のポリマー材料(例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA))を使用してもよい。
【0028】
この実施形態において、3つの独立したチャンバー12は、各チャンバー12の間で見られるポリマー材料の中に設けられ、ミシン目あるいはプレカットに沿ってチャンバー12を分離することにより、さらに各々が互いに独立して分離可能である。例えば、プレカット18は一本の細長い切り込みとして、あるいはチャンバー12間で設けられ、そのチャンバー12間で設けられたミシン目があっていてもいなくても、実質的に同一直線状にある複数のプレカットとして、設けられてもよい。
【0029】
各チャンバー12は、(以前のデザインは組織サンプルの質量が16グラム以下であるのに対し)1グラム以下の質量を有する組織サンプルを処理するために、適合していてもよい。したがって、(様々な周知のシステムでは最小体積が5mlであるのに対し)各チャンバーに要求される最低限の数のチャンバーの最低限の体積はわずか2mlであってもよい。したがって、従来のシステムと比較して、より少ない試薬等を必要とする、より小さなサンプルを処理することができ、より小さなサンプルは、より少ない初期の生体検査または同様のものを必要とし、消耗品へのより少ない要求を有する。
【0030】
独立に分離可能なチャンバー12を提供することのさらなるもう一つの利点は、使用者はチャンバー12内の中身をチャンバー12で処理するときに、一つ以上の、任意の箇所で使用するチャンバー12のどちらを選択してもよいということであるそれゆえに、柔軟な処理を提供することができる。さらに、各チャンバー12内の中身は実質的に同一の条件下(温度、冷凍、あるいは押しつぶし時間など)で処理されることができ、そしてチャンバー12は処理後に分離可能である。その後、必要に応じて、使用者はその後の処理の結果が実質的に同一の押しつぶされた初期サンプルに基づいているということを信頼できるように、一つ以上の分離可能なチャンバー12は処理され、今後の参考のために保存などされてもよい。
【0031】
図3は、
図1の押しつぶしデバイス装置200および/または
図2Aから
図2Cのサンプル処理バッグ10とともに使用するための、サンプル収容部クランプアセンブリ60の実施形態を示している。
【0032】
サンプル処理バッグ10は、例えば、ヒートシーリングの前または後のどちらでも、クランプアセンブリ60に固定することができ、いったんクランプアセンブリ60にサンプル処理バッグ10が保定されると、サンプル処理バッグ10内で任意の組織を分離させるために、サンプル処理バッグ10は押しつぶしデバイス装置200の中に設置されることができる。例えば、押しつぶしデバイス装置200の脚部アセンブリ234、236は、サンプル処理バッグ10の中で任意の組織を分離させるために、サンプル処理バッグ10に作用してもよい。
【0033】
クランプアセンブリ60は、ベースサポート70と、組織分離操作中に、ベースサポート70に隣接したサンプル処理バッグ10を保定するために併せて用いられるクランプ機構72と、を備えている。クランプアセンブリ60は、一組のスクリュー66によって併せて固定することができる、上部バー62と、下部バー64を備えている。下部バー64はベースサポート70の遠位端78に設けられており、任意選択的に遠位端78とともに一体形成されてもよい。スクリュー66がきつく締められたとき、上部バー62と下部バー64は接触するように制限される。サンプル処理バッグ10の一部は上部バー62と下部バー64の間で、上部バー62と下部バー64によって保定されてもよい。
【0034】
さらに、ベースサポート70は、ベースサポート70の上でサンプル処理バッグ10の、少なくとも一つのアクセスポート74を支持するための隆起端部74を有している。この実施形態では、3つの窪み部76が隆起端部74に設けられている。
【0035】
ベースサポート70、クランプ機構72および/またはスクリュー66のいずれかまたは全ては、ポリマー材料から形成されていてもよい。例えば、ポリアミドが使用されてもよい。そのようなポリマー材料のいずれかまたは全ては、例えば選択的レーザー焼結(SLS):成型、キャスト、加工などのアディティブ・マニュファクチャリング技術を用いるような、幅広い技術を用いて形成されてもよい。
【0036】
上部バー62は(示されていない)先細るくぼみを有しており、上部バー62と下部バー64が締められたとき、上部バー62は補足的にくさびが形成された形状61に位置する。くぼみとくさびは、くさびが形成された構成61の頂点に対して型締力を集中させ、平らな取り付け面によって得ることができる型締め力よりも、高い型締め力を与える。より大きな型締力のため、くさびが形成された構成61は、くさびが形成された構成61の頂点に小さなチャネル67をさらに有しており、上部バー62において、(示されていない)補足的な隆起構成の使用によって小さなチャネル67が上部バー62と接触する。追加の安全のためにヒートシールが設けられてもよいが、型締め力は、サンプル処理バッグ10でのヒートシールの必要性を打ち消すために十分であり得る。型締め力は、容易に折り曲がらない上部バー62と下部バー64の厚さと剛性によって、さらに高められており、そのためスクリュー66によってはたらく型締力は持続する。
【0037】
サンプル処理バッグ10は2つの脚部234,236の下に位置しているように、使用中、サンプル処理バッグ10はクランプアセンブリ60に配置されることができ、そしてそのように配置された際、押しつぶしデバイス装置200の受入領域に滑り込むことができる。シールされたサンプル処理バッグ10には、水溶液中に浮遊している組織が供給されてもよく、開口部14を経由してサンプル処理バッグ10に以前に導入された組織の分解を促進するコラゲナーゼやプロテアーゼなどの消化酵素を、組織はそれ自体に含み得る。
【0038】
サンプル処理バッグ10は、電熱プレートに近接して配置されてもよいし、例えば、組織の分解速度を加速するために約35℃までの外部熱源から加熱されてもよい。さらに、単体のサンプル処理バッグ10が用いられてもよいし、また必要であれば、分離中または分離より前にサンプル処理バッグ10の、一つまたはそれ以上のアクセスポート16を通じて消化酵素を導入することができる。
【0039】
伝熱プレートは、酵素作用のため、サンプル処理バッグ10中で望ましい温度を供給するために、伝熱プレートの下側を加熱することにより、サンプル処理バッグ10内に熱エネルギーを伝えるために用いられてもよい。電気的に温められた加熱プレート、または伝熱プレート上または伝熱プレート内の電気的な発熱体によって、サンプル処理バッグ10に伝わる熱は、都合よくもたらされることができる。
【0040】
分離作用の量は、例えば初期の組織サンプルのサイズ、密度、弾性といった莫大な数のパラメータに依存し、そのため分離時間と押しつぶし速度が著しく変化する。長すぎるあるいは過度に激しい押しつぶしは、細胞の生存力を減少させることにつながるおそれがある。したがって、モーターユニット速度と分離周期は制御することができる。
【0041】
一つの選択肢は、類似したサンプルを分離するために必要な出力速度と時間を含む、ルックアップテーブルに従ってプロセスの時間を定めることである。もう一つの選択肢は、分離プロセスを実行するために必要な時間にわたって電力量および瞬時電力を測定すること、あるいは伝熱プレートもしくはクランプ機構の別の部分にかかる力または圧力を測定すること、あるいはあらかじめ決められた閾値に達した後に分離プロセスを止めること、があり、その結果、サンプルは十分に分離されたということを示す可能性がある。仕事率/力/圧力/が減少するにつれて、分離が完了することにさらに近づく。
【0042】
さらに別の選択肢は、サンプル処理バッグ10を通過する光吸収を測定することである:吸収がより多いほど、サンプルは分離を完了することにさらに近づいている。いったん分離が完了すると、サンプル処理バッグ10の中身は移動することができ、また細胞もしくは他の関心のある構成要素を分離、あるいは押しつぶしデバイス装置200内で凍らせた状態で、新鮮なサンプル処理バッグ10の中に留めておくことができる。あるいは、全ての分離された物質を、サンプル処理バッグ10(または一つ以上の独立したチャンバー12)に入れたままにしておき、その後凍らせることができる。したがって、凍らせる対象となるチャンバー12に対し、アクセスポート16を通じて凍結防止剤を導入してもよい。
【0043】
サンプル処理バッグ10が冷やされる一方で、氷の形成を制御し、サンプルの過冷却を避けるため、サンプル処理バッグ10は、氷核生成を制御し、その制御によって解凍後の細胞の生存率を高めるために、分離よりも遅い速度ではあるものの、上記に示された方法で、脚部234、236によって揉まれることができる。
【0044】
使用の際に必要であれば、サンプル処理バッグ10内の分離された凍ったサンプルは、伝熱プレートのさらなる外部熱によって、および/または37℃に維持された温められた水浴中に押しつぶしデバイス装置200を部分的に浸すことによって、速やかに解凍されることができ、そしてその後、凍結防止剤が取り除かれる。いずれの場合でも、サンプル処理バッグ10が解凍されている間は、脚部234、236によってサンプル処理バッグ10は揉まれることができる。もし酵素が依然として存在する場合、凍結防止剤の除去と同様に、必要があれば、例えば濾過によって、取り除かれることができる。一般的に、酵素の作用は低温で停止するため、低温保存中、酵素は細胞に対しほとんどもしくはまったく影響を及ぼさない。
【0045】
全ての処理操作である、加熱、分離、冷却、冷凍、およびその後の解凍は、同様に密閉された、サンプル処理バッグ10内で起こり、また単一デバイス内で実行されてもよい。処理操作が単一デバイス内で実行されることは、効率的な時間および空間だけではなく、単一レコードがプロセスの最中にサンプルに起こる全てのこと、例えば温度、周期、分離速度、冷凍プロトコルなど、を補足することを可能にし、サンプルが処理装置間の制御不可能な環境で過度な時間を費やすこと、などのエラーの機会を減らす。
【0046】
さらに、サンプル処理バッグ10はクランプアセンブリ60に取り付けられているため、サンプル処理バッグ10は押しつぶしデバイス装置200から容易に取り外し可能であり、その結果押しつぶしデバイス装置200の使用後のサンプルの取り扱い及び掃除がより簡単になっている。
【0047】
図4Aと
図4Bは、本発明の様々な実施形態の通り、クランプアセンブリ60によって保定されている、サンプル処理バッグ10を示している。
【0048】
サンプル処理バッグ10は、各々のサンプルがアクセスポート14を介して各々のチャンバー12に追加された後、端部20でヒートシールされる。この場合、サンプル処理バッグ10は、チャンバー12の全長にわたって大部分が沿っており、チャンバー12の間に延在する各々のプレカット18によって分離された、3つのチャンバー12を備える。
【0049】
いったんサンプル処理バッグ10がヒートシールされると、サンプル処理バッグ10は、ベースサポート70の遠位端78において、端部20と、サンプル処理バッグ10は近接して固定される。サンプル処理バッグ10は、クランプアセンブリ60のベースサポート70に形成された空洞に保定され、そしてクランプ機構72は、遠位端78に対して、サンプル処理バッグ10を固定するために使用される。その後、サンプル処理バッグ10の各々のアクセスポート16が、ベースサポート70の隆起端部74に設けられる各々の窪み部76の中に設置される。
【0050】
したがって、密封されたサンプル処理バッグ10は、クランプアセンブリ60に保定されてもよいし、また両者を共に容易に移動、保存および/または押しつぶしデバイス装置200に挿入することができる。さらに、個々のチャンバー12はお互いに容易に分離されてもよく、そして個々のチャンバー12は、以前は併せて、実質的に同一の処理状況にあった。
【0051】
かくして、本発明の様々な態様と実施形態が示された。しかしながら、本発明は上記で示された実施形態によって限定されたものとはみなされず、当業者にとって一見してすぐに分かるだろう、添付した特許請求の範囲内で変化し得る。
【0052】
例えば、本明細書で示される実施形態は、サンプル処理バッグの少なくとも一つのアクセスポートを支える、隆起端部を含むベースサポートを図解しているものの、当業者は代替する変形形態も可能であることを理解するだろう。例えば、実質的に平面のベースサポートの構造は、対応するアクセスポートと噛み合わせるために、各々の平面のベースサポートの構造の上に支持された一つ以上のクリップを有するように設けられてもよい。他の多くの可能性のある変更が、当業者にとってまた明白である。
【符号の説明】
【0053】
10 ・・・サンプル処理バッグ
12 ・・・チャンバー
14 ・・・開口部
16 ・・・アクセスポート
60 ・・・クランプアセンブリ
70 ・・・ベースサポート
72 ・・・クランプ機構
74 ・・・隆起端部
76 ・・・窪み部
78 ・・・遠位端
200 ・・・押しつぶしデバイス装置
234,236 ・・・脚部アセンブリ
【国際調査報告】