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特表2023-548105ナトリウムイオン電池の負極極片、電気化学装置及び電子デバイス
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  • 特表-ナトリウムイオン電池の負極極片、電気化学装置及び電子デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ナトリウムイオン電池の負極極片、電気化学装置及び電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20231108BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20231108BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20231108BHJP
   H01M 4/74 20060101ALI20231108BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20231108BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20231108BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20231108BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20231108BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20231108BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20231108BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20231108BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/13
H01M4/64 A
H01M4/74 C
H01M4/80 C
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M10/0566
H01M10/054
H01M4/485
H01M4/58
H01M4/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525613
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2022079319
(87)【国際公開番号】W WO2022267538
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】202110742798.7
(32)【優先日】2021-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】曽 毓群
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017CC01
5H017CC25
5H017CC28
5H017DD05
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE06
5H017EE07
5H017HH01
5H017HH03
5H029AJ04
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK15
5H029AL13
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029DJ07
5H029EJ04
5H029HJ01
5H029HJ04
5H050AA07
5H050AA09
5H050AA15
5H050BA15
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA19
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA04
5H050DA06
5H050DA07
5H050EA08
5H050HA01
5H050HA04
(57)【要約】
本願は、ナトリウムイオン電池の負極極片、電気化学装置及び電子デバイスを提供する。
【解決手段】 前記負極極片は、負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一部の表面に形成された炭素材料コーティングを含み、前記炭素材料コーティングの厚さは10μm以下であり、前記炭素材料コーティングは、炭素材料及びポリマー接着剤を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムイオン電池の負極極片であって、
負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一部の表面に形成された炭素材料コーティングを含み、前記炭素材料コーティングの厚さは10μm以下であり、前記炭素材料コーティングは、炭素材料及びポリマー接着剤を含む、
負極極片。
【請求項2】
(1)前記炭素材料は、メソカーボンマイクロビーズ、黒鉛、天然黒鉛、膨張黒鉛、人造黒鉛、ガラス状炭素、炭素-炭素複合材料、炭素繊維、ハードカーボン、多孔質炭素、高配向性黒鉛、三次元黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びグラフェンのうちの少なくとも1種を含み、
(2)前記炭素材料コーティングにおける前記炭素材料の質量比は90%~99%であり、
(3)前記炭素材料コーティングにおける前記炭素材料の質量比は94%~97%であり、
(4)前記炭素材料コーティングの厚さは0.3μm~10μmであり、
(5)前記炭素材料コーティングの厚さは1μm~7μmである、
といった条件の少なくとも1つを満たす、
請求項1に記載の負極極片。
【請求項3】
(6)前記負極集電体は、金属箔材、金属発泡集電体、金属網状集電体、カーボンフェルト集電体、カーボンクロス集電体、カーボンペーパー集電体及び複合集電体のうちの少なくとも1種を含み、
(7)前記負極集電体は、多孔質構造を有し、前記負極集電体は、多孔質アルミ箔、多孔質銅箔及び多孔質ステンレス鋼箔のうちの少なくとも1種を含む、
といった条件の少なくとも1つを満たす、
請求項1に記載の負極極片。
【請求項4】
前記負極極片は、前記炭素材料コーティングの前記負極集電体から離れる少なくとも一部の表面に形成されたナトリウム金属層をさらに含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の負極極片。
【請求項5】
前記負極極片における前記ナトリウム金属層の質量含有量は0.1~1%である、
請求項4に記載の負極極片。
【請求項6】
(8)前記炭素材料は、カルボキシ基、ヒドロキシ基及びエーテル基から選ばれる少なくとも1種である含酸素基を含み、
(9)前記炭素材料は、含酸素基を含み、前記炭素材料における酸素原子の質量含有量≧0.1%である、
といった条件の少なくとも1つを満たす、
請求項1に記載の負極極片。
【請求項7】
前記ポリマー接着剤は、セルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルセルロースカリウム、ジアセチルセルロース、ポリアクリル酸、アルギン酸ナトリウム、スチレンブタジエンゴム、アクリルブタジエンゴム、ポリピロール、ポリアニリン、エポキシ樹脂及びグアルドガムのうちの少なくとも1種を含む、
請求項1に記載の負極極片。
【請求項8】
正極極片と、請求項1~7のいずれか1項に記載の負極極片と、電解液とを含む、
電気化学装置。
【請求項9】
前記正極極片は、正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一部の表面に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、ナトリウム遷移金属酸化物、ポリアニオン化合物及びプルシアンブルー化合物のうちの少なくとも1種を含む正極活物質を含む、
請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項10】
請求項8~9のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、
電子デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年6月26日に提出された、名称が「ナトリウムイオン電池の負極極片、電気化学装置及び電子デバイス」である、中国特許出願202110742798.7の優先権を主張し、当該出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、エネルギー貯蔵技術分野に関し、具体的には、ナトリウムイオン電池の負極極片、電気化学装置及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギーと環境問題がますます顕著になるにつれて、新しいエネルギー産業がますます注目を集めている。リチウムイオン電池は近年、その高いエネルギー密度、優れたサイクル性能などの特徴により、重要な新しいエネルギー貯蔵装置として広く適用されている。しかし、リチウムイオン電池に関連する活物質資源の不足により、電池のコストが常に高く、同時に関連する資源の枯渇などの深刻な問題があるため、その他の低コストの金属イオン二次電池システムを開発する必要がある。
【0004】
ナトリウムイオン電池は、その低いコスト、豊富な資源、及びリチウムイオン電池と類似している製造プロセスなどの利点により、近年注目されている研究方向になっている。しかし、現在のナトリウムイオン電池の正負極材料の低グラム容量と電圧プラットフォームに制限されるため、ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池とのエネルギー密度の間には常に大きい差別があり、真に商業化を実現することができない。正極材料のエネルギー密度がなかなか突破できない背景の下で、ナトリウム金属(理論比容量1166mAh/g)を負極として直接使用することは、電池のエネルギー密度を大幅に向上させる効果的な方法となっている。しかし、空気中のナトリウム金属の化学的安定性が低く、融点が低く(98℃)、そしてナトリウム金属が電気化学サイクル中に樹状突起を生成しやすいという特徴により、ナトリウムイオン電池の商業化は困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらを鑑み、本願は、ナトリウム金属の電気化学サイクル中に樹状突起を生成することを効果的に抑制でき、電池のサイクル性能を向上させるナトリウムイオン電池の負極極片、電気化学装置及び電子デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様によれば、本願は、ナトリウムイオン電池の負極極片を提供し、前記負極極片は、負極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一部の表面に形成された炭素材料コーティングを含み、前記炭素材料コーティングの厚さは10μm以下であり、前記炭素材料コーティングは、炭素材料及びポリマー接着剤を含む。
【0007】
幾つかの選択可能な実施形態において、前記負極極片は、以下の条件の少なくとも1つを満たす。
【0008】
(1)前記炭素材料は、メソカーボンマイクロビーズ、黒鉛、天然黒鉛、膨張黒鉛、人造黒鉛、ガラス状炭素、炭素-炭素複合材料、炭素繊維、ハードカーボン、多孔質炭素、高配向性黒鉛、三次元黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びグラフェンのうちの少なくとも1種を含む。
【0009】
(2)前記炭素材料コーティングにおける前記炭素材料の質量比は90%~99%である。
【0010】
(3)前記炭素材料コーティングにおける前記炭素材料の質量比は94%~97%である。
【0011】
(4)前記炭素材料コーティングの厚さは0.3μm~10μmである。
【0012】
(5)前記炭素材料コーティングの厚さは1μm~7μmである。
【0013】
幾つかの選択可能な実施形態において、前記負極極片は、以下の条件の少なくとも1つを満たす。
【0014】
(6)前記負極集電体は、金属箔材、金属発泡集電体、金属網状集電体、カーボンフェルト集電体、カーボンクロス集電体、カーボンペーパー集電体及び複合集電体のうちの少なくとも1種を含む。
【0015】
(7)前記負極集電体は、多孔質構造を有し、前記負極集電体は、多孔質アルミ箔、多孔質銅箔及び多孔質ステンレス鋼箔のうちの少なくとも1種を含む。
【0016】
幾つかの選択可能な実施形態において、前記負極極片は、前記炭素材料コーティングの前記負極集電体から離れる少なくとも一部の表面に形成されたナトリウム金属層をさらに含む。
【0017】
幾つかの選択可能な実施形態において、前記負極極片における前記ナトリウム金属層の質量含有量は0.1~1%である。
【0018】
幾つかの選択可能な実施形態において、前記負極極片は、以下の条件の少なくとも1つを満たす。
【0019】
(8)前記炭素材料は、カルボキシ基、ヒドロキシ基及びエーテル基から選ばれる少なくとも1種である含酸素基を含む。
【0020】
(9)前記炭素材料は、含酸素基を含み、前記炭素材料における酸素原子の質量含有量≧0.1%である。
【0021】
幾つかの選択可能な実施形態において、前記ポリマー接着剤は、セルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルセルロースカリウム、ジアセチルセルロース、ポリアクリル酸、アルギン酸ナトリウム、スチレンブタジエンゴム、アクリルブタジエンゴム、ポリピロール、ポリアニリン、エポキシ樹脂及びグアルドガムのうちの少なくとも1種を含む。
【0022】
第2態様によれば、本願は、正極極片と、上記の第1態様に記載の負極極片と、電解液とを含む電気化学装置を提供する。
【0023】
幾つかの選択可能な実施形態において、前記正極極片は、正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一部の表面に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、ナトリウム遷移金属酸化物、ポリアニオン化合物及びプルシアンブルー化合物のうちの少なくとも1種を含む正極活物質を含む。
【0024】
第3態様によれば、本願は、上記の第2態様に記載の電気化学装置を含む電子デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0025】
従来技術と比べて、本願は、少なくとも以下の有益な効果がある。
【0026】
本願により提供されるナトリウムイオン電池の負極極片、電気化学装置及び電子デバイスは、負極極片の負極集電体の表面に負極活性材料がなく、初回充電時に負極集電体の表面に金属ナトリウムを堆積することで、堆積して形成された金属ナトリウムが負極集電体の表面の炭素材料コーティングに付着することができ、炭素材料コーティングがナトリウム金属の堆積による過電位を効果的に降下し、ナトリウム樹状突起の形成を抑制することができ、電池のサイクル性能の向上に役立つ。放電プロセス中に、金属ナトリウムは、ナトリウムイオンに変換されて正極に戻り、サイクル充放電を実現することができる。また、炭素材料コーティングは、ナトリウムイオン電池中のナトリウム金属核形成の動力学的性能を向上させることができる。金属ナトリウムは、後続のサイクルプロセスで生成され、ナトリウムイオン電池は初回充電する前に電圧がないため、ナトリウムイオン電池は、自己放電をせずに長期間保存することができ、電池が短絡しても電流が生成せず、安全性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本願の実施例にかかる技術的解決手段をより明らかに説明するために、以下に本願の実施例で使用する必要がある図面を簡単に説明し、明らかに、以下に説明される図面は、本願の幾つかの実施形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、図面に応じて他の図面を得ることもできる。
【0028】
図1】本願の実施例により提供されるナトリウムイオン電池の負極極片の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の記述は、本発明の実施例にかかる好ましい実施形態である。指摘すべきことは、当業者にとって、本発明の実施例の原理から逸脱することなく、幾つかの改善や修正を行うことができ、これらの改善や修正も本発明の実施例の保護範囲と見なされる。
【0030】
簡潔にするために、本明細書は、幾つかの数値範囲のみを明示的に開示している。しかし、任意の下限を任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、及び任意の下限を他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に任意の上限を任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲のエンドポイント間の全てのポイント又は単一の値が当該範囲内に含まれている。従って、全てのポイント又は単一の値は、それ自体の下限又は上限として任意の他のポイント又は単一の値と組み合わせるか、或いは他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0031】
本明細書の記述において、説明すべきことは、別段の説明がない限り、「以上」、「以下」は、その数自体を含み、「1種又は複数種」のうちの「複数種」は、2以上を意味する。
【0032】
本明細書の記述において、別段の説明がない限り、「又は」という用語は包括的である。例えば、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれか1つの条件はいずれも、「A又はB」という条件を満たす:Aが真(又は存在する)且つBが偽(又は存在しない)、Aが偽(又は存在しない)且つBが真(存在する)、或いは、A及びBが全て真(又は存在する)である。
【0033】
理解すべきことは、「第1」、「第2」などの関係用語は、あるエンティティ又は操作を別のエンティティ又は操作と区別するためにのみ使用され、これらのエンティティ又は操作の間に任意の実際の関係や順序があることを必ずしも要求又は暗示するものではない。
【0034】
本願の上記の発明内容は、本願における各開示の実施形態又は各実現形態を説明することを意図しない。以下の説明では、例をとって例示的な実施形態をより具体的に説明する。出願全体の様々な箇所で、一連の実施例を通じてガイダンスが提供され、これらの実施例は、様々な組み合わせにより使用することができる。各例において、列挙は代表的なグループに過ぎず、網羅的であると解釈されるべきではない。
【0035】
第1態様
【0036】
本願は、ナトリウムイオン電池の負極極片を提供する。図1に示すように、前記負極極片1は、負極集電体11及び前記負極集電体11の少なくとも一部の表面に形成された炭素材料コーティング12を含み、前記炭素材料コーティング12の厚さは10μm以下であり、前記炭素材料コーティング12は、炭素材料及びポリマー接着剤を含む。
【0037】
上記の方案において、負極集電体の表面の炭素材料コーティングの厚さが小さく、負極活性材料の作用を奏することができず、本願の負極極片は、負極活性材料がない負極極片である。初回充電時に負極集電体の表面に金属ナトリウムを堆積することで、堆積して形成された金属ナトリウムが負極集電体の表面の炭素材料コーティングに付着することができ、炭素材料コーティングがナトリウム金属の堆積による過電位を効果的に降下し、ナトリウム樹状突起の形成を抑制することができ、電池のサイクル性能の向上に役立つ。放電プロセス中に、金属ナトリウムは、ナトリウムイオンに変換されて正極に戻り、サイクル充放電を実現することができる。
【0038】
炭素材料コーティングは、ナトリウムイオン電池中のナトリウム金属核形成の動力学的性能を向上させることができる。金属ナトリウムは、後続のサイクルプロセスで生成され、ナトリウムイオン電池は、初回充電する前に電圧がないため、ナトリウムイオン電池は、自己放電をせずに長期間保存することができ、電池が短絡しても電流が生成せず、安全性が極めて高い。負極集電体の表面に負極活性材料がなく、負極集電体のみ使用されるため、当該電池は、金属ナトリウムの負極よりも高いエネルギー密度を得ることができる。
【0039】
本願の選択可能な技術的解決手段として、前記負極集電体11は、金属箔材、金属発泡集電体、金属網状集電体、カーボンフェルト集電体、カーボンクロス集電体、カーボンペーパー集電体及び複合集電体のうちの少なくとも1種を含む。選択可能に、金属箔材は、銅箔、アルミ箔、ステンレス鋼箔、鉄箔、亜鉛箔、チタン箔などであってもよく、金属発泡集電体は、銅発泡、アルミニウム発泡、亜鉛発泡などであってもよく、金属網状集電体は、銅網、アルミニウム網などであってもよい。負極集電体11は、金属箔材と金属発泡が複合して形成された複合集電体、又は金属箔材と金属網が複合して形成された複合集電体、又は金属箔材と高分子基膜が複合して形成された複合集電体であってもよいが、ここで限定されない。
【0040】
ナトリウムイオンは、アルミニウムと合金が形成されないため、コストの削減と重量の低減から考慮すると、アルミ箔、アルミニウム合金箔及びアルミニウムベースの複合集電体のうちのいずれか1つを含むアルミニウムベースの集電体の使用が優先され、前記アルミニウムベースの複合集電体は、高分子基膜及び前記高分子基膜の両側に形成されたアルミ箔及び/又はアルミニウム合金箔を含み、選択可能に、アルミニウムベースの複合集電体は「サンドイッチ」構造であり、高分子基膜は、中央に位置し、その両側にアルミ箔が設けられ、又はその両側にアルミニウム合金箔が設けられ、或いは、高分子基膜の一側にアルミ箔が設けられ、他側にアルミニウム合金箔が設けられてもよく、前記高分子基膜は、ポリアミド、ポリテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリパラフェニレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、シリコーンゴム、ポリカーボネートのうちのいずれか1種である。選択可能に、本発明は、ナトリウム堆積/剥離プロセス中に電極の完全性を維持するのに有益な、より良好な延性を有するアルミニウムベースの複合集電体を選択する。
【0041】
選択可能に、負極集電体11の厚さは3μm~15μmであり、具体的には3μm、4μm、5μm、6μm、8μm、10μm、12μm又は15μmなどであってもよいが、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定されない。負極集電体が厚すぎると、電池のエネルギー密度が降下することを引き起こし、負極集電体が薄すぎると、電池の加工性能が低下することを引き起こす。
【0042】
本願の選択可能な技術的解決手段として、前記負極集電体11は、多孔質構造を有し、前記負極集電体は、多孔質アルミ箔、多孔質銅箔及び多孔質ステンレス鋼箔のうちの少なくとも1種を含む。負極集電体は、多孔質構造を有することで、負極集電体の比表面積を増加させることができ、増加は、負極極片の体積の変化を緩和し、樹状突起の生成を抑制することができる。
【0043】
本願の選択可能な技術的解決手段として、前記炭素材料コーティング12の厚さは0.3μm~10μmであり、具体的には、0.3μm、0.5μm、1.0μm、1.4μm、1.8μm、2.2μm、3.5μm、4.0μm、4.5μm、4.9μm、5.5μm、6.0μm、7.0μm、8.0μm、9.2μm又は10μmなどであってもよいが、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定されない。負極集電体11の表面の炭素材料コーティングが厚すぎると、電池のエネルギー密度が降下し、負極がない効果を奏することができず、負極集電体11の表面の炭素材料コーティングが薄すぎると、ナトリウム金属核形成部位が少なくなりすぎ、ナトリウムインターカレーション過電位を効果的に改善することができず、ナトリウム樹状突起がセパレータに向かって成長しやすくなり、電池サイクル性能が低下してしまう。選択可能に、前記炭素材料コーティングの厚さは1μm~7μmであり、さらに選択可能に、炭素材料コーティングの厚さは3μm~5μmである。
【0044】
本願の選択可能な技術的解決手段として、炭素材料コーティング12は、炭素材料及びポリマー接着剤を含む。ここで、前記炭素材料は、メソカーボンマイクロビーズ、黒鉛、天然黒鉛、膨張黒鉛、人造黒鉛、ガラス状炭素、炭素-炭素複合材料、炭素繊維、ハードカーボン、多孔質炭素、高配向性黒鉛、三次元黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びグラフェンのうちの少なくとも1種を含む。負極集電体の表面に炭素材料コーティングを形成することで、ナトリウムイオンが拡散する導電率を向上させ、ナトリウムインターカレーション過電位を降下し、ナトリウム樹状突起の形成と成長を抑制することができることが理解されたい。
【0045】
選択可能に、前記炭素材料は、メソカーボンマイクロビーズ、黒鉛、天然黒鉛、膨張黒鉛、人造黒鉛、ガラス状炭素、炭素-炭素複合材料、炭素繊維、ハードカーボン、多孔質炭素、高配向性黒鉛、三次元黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びグラフェンのうちの少なくとも2種を含む。一実施形態において、炭素材料は、質量比が1:1:1であるカーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブの混合物を使用することができる。理解できるように、単一の炭素材料の使用と比べて、2種類以上の炭素材料を混合して使用すると、炭素材料の導電性次元を拡張し、炭素材料の導電性を向上させることができる。
【0046】
本願の選択可能な技術的解決手段として、前記炭素材料コーティング12における前記炭素材料の質量比は90~99%であり、具体的には、90%、90.5%、91%、91.3%、92.8%、94%、94.8%、95%、95.6%、96.2%、96.5%、97%、98%又は99%などであってもよいが、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定されない。コーティングにおける炭素材料の質量比が多すぎると、即ちポリマー接着剤の質量比が少なすぎると、炭素材料コーティングの接着性が低下し、加工プロセス中にコーティングの剥離、破裂などの問題が発生しやすい。炭素材料コーティングにおける炭素材料の質量比が少なすぎると、炭素材料コーティングの導電性が低下し、ナトリウムインターカレーション過電位を効果的に改善することができず、ナトリウム樹状突起を形成しやすく、電池のサイクル性能が低下する。選択可能に、前記炭素材料コーティング12における前記炭素材料の質量比は94~97%である。
【0047】
本願の選択可能な技術的解決手段として、前記炭素材料は、カルボキシ基、ヒドロキシ基及びエーテル基から選ばれる少なくとも1種である含酸素基を含む。ナトリウムイオン電池が初回充電した後、ナトリウム金属は、炭素材料コーティングの負極集電体から離れる一側の表面に堆積し、炭素材料は、良好なナトリウム親和性を有する含酸素基を含み、ナトリウムイオンと優先的に結合して均一なナトリウム金属核を形成しやすいため、後続のナトリウムインターカレーション反応の過電位を降下し、ナトリウム金属堆積の均一性を向上させ、ナトリウム樹状突起の形成と成長を抑制し、ナトリウム金属負極のサイクル性能を向上させる。
【0048】
本願の選択可能な技術的解決手段として、前記炭素材料における酸素原子の質量含有量≧0.1%であり、酸素原子の質量含有量は具体的には、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%又は1%などであってもよいが、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定されない。炭素材料における酸素原子の含有量が少なすぎると、ナトリウムイオンによる均一なナトリウム金属核の形成に役立たず、ナトリウム金属堆積の均一性の向上に役立たない。
【0049】
さらに、図1に示すように、前記負極極片1は、前記炭素材料コーティング12の前記負極集電体11から離れる少なくとも一部の表面に形成されたナトリウム金属層13をさらに含む。ナトリウム金属バリアが低いため、炭素材料コーティング12のナトリウムインターカレーション過電位を降下し、負極極片全体の過電位を降下することができる。ナトリウム金属層13は、炭素材料コーティング12の表面を完全に被覆することができ、炭素材料コーティング12の表面を部分的に被覆することもできる。
【0050】
本願の選択可能な技術的解決手段として、前記負極極片1における前記ナトリウム金属層13の質量含有量は0.1~1%であり、具体的には、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%又は1%などであってもよいが、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定されない。負極極片におけるナトリウム金属層の質量含有量が高すぎると、過剰なナトリウム金属は、空気、水と反応しやすくなり、加工が困難になり、樹状突起が成長することを引き起こし、負極極片におけるナトリウム金属層の質量含有量が低すぎると、炭素材料と結合するナトリウム金属が少なくなり、ナトリウム金属を効果的に使用してナトリウムインターカレーション過電位を降下し、負極極片全体の過電位を降下することができない。
【0051】
本願の選択可能な技術的解決手段として、炭素材料コーティング12におけるポリマー接着剤は、セルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルセルロースカリウム、ジアセチルセルロース、ポリアクリル酸、アルギン酸ナトリウム、スチレンブタジエンゴム、アクリルブタジエンゴム、ポリピロール、ポリアニリン、エポキシ樹脂及びグアルドガムのうちの少なくとも1種を含む。ポリマー接着剤は、高い粘度と機械的強度を有することで、炭素材料コーティングと負極集電体との接触面の完全性を保証し、樹状突起の成長を抑制し、サイクル性能を向上させることができる。
【0052】
本願の選択可能な技術的解決手段として、上記負極極片の製造方法は、以下のステップを含む。
【0053】
炭素材料を、体積比が3:1の濃硫酸と濃硝酸の混合溶液に入れ、1h~6h撹拌し、反応時間を制御することで、酸素含有量を制御する。
【0054】
反応後の炭素材料を、脱イオン水で洗浄し、濾過後に乾燥箱に入れ、80℃の条件下で乾燥する。
【0055】
乾燥後の炭素材料とポリマー接着剤を溶媒に加えて均一なペーストになるまで撹拌し、ペーストを負極集電体(具体的には、銅・アルミ箔であってもよい)に塗布し、乾燥して極片を得る。そのうち、溶媒は、水、アセトン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、エタノールから選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0056】
極片を物理蒸着機器に入れ、イオンスパッタリングにより極片の表面に均一なナトリウム金属層を完了させ、負極極片を得る。
【0057】
第2態様
【0058】
本願は、正極極片と、上記の第1態様の負極極片と、電解液とを含む電気化学装置を提供する。例えば、本願による電気化学装置は、ナトリウムイオン電池である。
【0059】
正極極片は、正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一部の表面に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、ナトリウム遷移金属酸化物、ポリアニオン化合物及びプルシアンブルー化合物のうちの少なくとも1種を含んでもよい正極活物質を含む。しかし、本願は、これらの材料に限定されず、また、ナトリウムイオン電池の正極活性材料として利用可能な他の従来から公知の材料を使用してもよい。
【0060】
本願の選択可能な技術的解決手段として、ナトリウム遷移金属酸化物において、遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも1種であってもよい。ナトリウム遷移金属酸化物は、例えばNaMOであり、ここでMは、Ti、V、Mn、Co、Ni、Fe、Cr及びCuのうちの1種又は複数種であり、0<x≦1である。
【0061】
本願の選択可能な技術的解決手段として、ポリアニオン化合物は、ナトリウムイオン、遷移金属イオン及び四面体形(YOn-アニオン単位を有する化合物であってもよい。遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも1種であってもよく、Yは、P、S及びSiのうちの少なくとも1種であってもよく、nは、(YOn-の価数を表す。
【0062】
ポリアニオン化合物はまた、ナトリウムイオン、遷移金属イオン、四面体形(YOn-アニオン単位及びハロゲンアニオンのような化合物であってもよい。遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも1種であってもよく、Yは、P、S及びSiのうちの少なくとも1種であってもよく、nは(YOn-の価数を表し、ハロゲンは、F、Cl及びBrのうちの少なくとも1種であってもよい。
【0063】
ポリアニオン化合物はまた、ナトリウムイオン、四面体形(YOn-アニオン単位、多面体単位(ZOm+及び選択可能なハロゲンアニオンを有する化合物であってもよい。Yは、P、S及びSiのうちの少なくとも1種であってもよく、nは、(YOn-の価数を表し、Zは、遷移金属を表し、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも1種であってもよく、mは、(ZOm+の価数を表し、ハロゲンは、F、Cl及びBrのうちの少なくとも1種であってもよい。
【0064】
ポリアニオン化合物は、例えば、NaFePO、Na(PO、NaM’POF(M’はV、Fe、Mn及びNiのうちの1種又は複数種である)及びNa(VO(PO3-2y(0≦y≦1)のうちの少なくとも1種である。
【0065】
プルシアンブルー化合物は、ナトリウムイオン、遷移金属イオン及びシアン化物イオン(CN-)を有する化合物であってもよい。遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも1種であってもよい。プルシアンブルー化合物は、例えば、NaMeMe’(CN)であってもよく、ここでMe及びMe’は、それぞれ独立してNi、Cu、Fe、Mn、Co及びZnのうちの少なくとも1種であり、0<a≦2、0<b<1、0<c<1である。
【0066】
本願の選択可能な技術的解決手段として、正極活物質層は、正極の導電性能を改善するように、導電剤をさらに含んでもよい。本願は、導電剤の種類を具体的に制限せず、実際の必要に応じて選択することができる。例として、導電剤は、超電導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、黒鉛、グラフェン及びカーボンナノ繊維のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0067】
本願の選択可能な技術的解決手段として、正極活物質層は、正極活物質及び選択可能な導電剤を正極集電体に確実に接着するように、接着剤をさらに含んでもよい。本願は、接着剤の種類を具体的に制限せず、実際の必要に応じて選択することができる。例として、接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも1種であってもよい。
【0068】
本願の選択可能な技術的解決手段として、正極集電体は、導電性カーボンシート、金属箔材、カーボンがコーティングされた金属箔材、多孔質金属板又は複合集電体を使用してもよく、そのうち、導電性カーボンシートの導電性カーボン材料は、超電導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、黒鉛、グラフェン及びカーボンナノ繊維のうちの1種又は複数種であってもよく、金属箔材、カーボンがコーティングされた金属箔材及び多孔質金属板の金属材料は、それぞれ独立して銅、アルミニウム、ニッケル及びステンレス鋼から選ばれる少なくとも1種であってもよい。複合集電体は、金属箔材と高分子基膜が複合して形成された複合集電体であってもよい。
【0069】
正極集電体は、例えば銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、ステンレス鋼網及びカーボンがコーティングされたアルミ箔のうちの1種又は複数種であり、アルミ箔の使用が好ましい。
【0070】
当該分野の従来の方法に従って上記の正極極片を製造することができる。一般的には、正極活物質及び選択可能な導電剤と接着剤を溶媒(例えばN-メチルピロリドン、NMPと略称)に分散し、均一な正極ペーストを形成し、正極ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥、冷却圧延の後に正極極片を得る。
【0071】
本願のナトリウムイオン電池におけるセパレータは、当該分野における電気化学エネルギー貯蔵装置に適用される様々なセパレータの材料であってもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、アラミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル及び天然繊維のうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0072】
上記の電解液は、有機溶媒と電解質ナトリウム塩を含むものであってもよい。例として、有機溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸プロピレン、酢酸メチル、プロピオン酸エチル、フルオロエチレンカーボネート、エーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテルのうちの1種又は複数種であってもよく、電解質ナトリウム塩は、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ビスフルオロスルホンイミドナトリウム、ビストリフルオロメタンスルホンイミドナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、ジフルオロリン酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、塩化ナトリウムのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0073】
上記の正極極片、セパレータ、負極極片を順に積層し、セパレータを正極極片と負極極片との間に配置して隔離の役割を果たすようにし、電池コアを得て、巻き取った後に電池コアを得てもよく、電池コアを包装シェル(ソフトパッケージ、正方形アルミニウムシェル、正方形スチールシェル、円筒形アルミニウムシェル及び円筒形スチールシェルであってもよい)に入れ、電解液を注入して密封し、ナトリウムイオン電池を得る。
【0074】
第3態様
【0075】
本願は、上記の第2態様に記載の電気化学装置を含む電子デバイスをさらに提供する。電気化学装置は、電子デバイスの電源として、電子デバイスに電力を提供することに用いることができる。電子デバイスの例は、車両、携帯電話、ポータブルデバイス、ノートパソコン、船、宇宙船、電動おもちゃ及び電動工具などを含むが、これらに限定されない。
【0076】
実施例
【0077】
以下の実施例は、本願が開示する内容をより具体的に説明するものであり、これらの実施例は、本願が開示する内容の範囲内の様々な修正や変更が当業者に明らかであるため、例示的な説明のためにのみ使用されるものである。別段の記載がない限り、以下の実施例で報告される全ての部、百分率及び比率は、いずれも重量基準であり、そして実施例で使用される全ての試薬はいずれも、市販されているか、又は従来の方法に従って合成され、さらに処理することなく直接使用することができ、及び実施例で使用される機器は、いずれも市販されている。
【0078】
1)正極極片の製造
【0079】
10wt%のポリフッ化ビニリデン接着剤をN-メチルピロリドンに十分に溶解し、10wt%のカーボンブラック導電剤及び80wt%のNaFe(PO(P)正極活性材料を加えて均一に分散された正極ペーストを製造した。正極ペーストをアルミ箔の表面に均一に塗布し、次に真空乾燥箱に移して十分に乾燥した。得られた極片をロール圧延し、次に打ち抜き、目的のウェーハを得た。
【0080】
2)負極極片の製造
【0081】
炭素材料及びアルギン酸ナトリウムを水に加え、均一なペーストになるまで撹拌し、ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥し、裁断して負極構造がない負極極片を得た。
【0082】
負極極片を物理蒸着機器に入れ、イオンスパッタリングにより負極極片の表面にナトリウム金属層を形成し、負極極片を得た。
【0083】
3)セパレータには、ポリエチレン(PE)多孔質ポリマー薄膜が使用された。
【0084】
4)電解液の製造
【0085】
エチレングリコールジメチルエーテル(DME)を有機溶媒とし、続いて十分に乾燥したナトリウム塩NaPFを混合後の有機溶媒に溶解し、濃度が1mol/Lの電解液を調製した。
【0086】
5)ボタン電池の製造
【0087】
上記の正極極片、セパレータ、負極極片を順に積層し、セパレータを正、負極極片の間に配置して隔離の役割を果たすようにし、上記の電解液を加えてボタン電池を組み立てた。
【0088】
上記の製造方法に従って負極極片を製造する実施例1~24、及び比較例1~10は、その具体的なパラメータは表1に示される通りである。
【表1】
【0089】
性能テスト:
【0090】
負極極片の性能パラメータテスト
【0091】
1)炭素材料コーティングの厚さ:
【0092】
液体窒素で急冷・切断した極片の断面をSEMで撮影し、二次電子画像で炭素材料コーティングの厚さを測定した。
【0093】
2)電池の性能テスト
【0094】
25℃下で、実施例で製造して得られた電池を0.1Cの倍率で50μAに充電し、プロセス中に得られた最も負の電位を過電位として記録した。
【0095】
25℃下で、実施例と比較例で製造して得られた電池を0.1Cの倍率で4Vに充電し、0.1Cの倍率で1Vに放電し、ナトリウムイオン電池の容量が初期容量の80%未満になるまで満充電と満放電のサイクルテストを実施し、初回サイクルの放電比容量、サイクル回数を記録し、その具体的なデータは表2に示される通りである。
【表2】
【0096】
実施例1~6及び比較例1及び2のテスト結果から分かるように、負極集電体の表面の炭素材料コーティングの厚さが0.3μm~10μmの範囲内である場合、電池の初回サイクルの放電比容量が高く、電池は、高いエネルギー密度を有し、炭素材料コーティングは、ナトリウムインターカレーション過電位を改善し、ナトリウム樹状突起の形成を抑制し、電池のサイクル性能を向上させることができる。比較例1のテスト結果から分かるように、炭素材料コーティングの厚さが厚すぎると、電池のエネルギー密度が降下し、負極構造のないナトリウムイオン電池が電池のエネルギー密度を向上させる効果を達成することができない。比較例2のテスト結果から分かるように、炭素材料コーティングの厚さが薄すぎると、ナトリウム金属核形成部位が少なくなりすぎ、ナトリウムインターカレーション過電位の改善が困難になり、ナトリウム樹状突起がセパレータに向かって成長しやすくなり、電池サイクル性能が低下してしまう。好ましくは、炭素材料コーティングの厚さは1μm~7μmである。
【0097】
実施例7~11及び比較例3及び4のテスト結果から分かるように、炭素材料コーティングにおける炭素材料の質量比が90%~99%である場合、ナトリウムインターカレーション過電位を効果的に改善し、ナトリウム樹状突起の成長を抑制することができ、電池サイクル性能は、使用上のニーズを満たすことができる。比較例3のテスト結果から分かるように、炭素材料コーティングにおける炭素材料の質量比が少なすぎると、炭素材料コーティングの導電性が低下し、それにより電池の初回サイクルの放電比容量が降下し、ナトリウムインターカレーション過電位の改善が明らかではなく、電池サイクル性能が低下する。比較例4のテスト結果から分かるように、炭素材料コーティングにおける炭素材料の質量比が多すぎると、炭素材料コーティングの接着性が低下し、加工プロセス中にコーティングの剥離、破裂などの問題が発生しやすく、電池サイクル性能が低下する。好ましくは、炭素材料コーティングにおける炭素材料の質量比は94%~97%である。
【0098】
実施例3及び実施例12~14のテスト結果から分かるように、単一の炭素材料の使用と比べて、2種類以上の炭素材料を混合して使用すると、炭素材料の導電性次元を拡張し、炭素材料の導電性を向上させ、電池の初回サイクルの放電比容量を向上させることができる。
【0099】
実施例3及び実施例15~17、比較例5及び6のテスト結果から分かるように、炭素材料に良好なナトリウム親和性を有する含酸素基が含まれる場合、ナトリウムイオンと優先的に結合して均一なナトリウム金属核を形成しやすいため、後続のナトリウムインターカレーション反応の過電位を降下し、ナトリウム金属堆積の均一性を向上させ、ナトリウム樹状突起の形成と成長を抑制し、ナトリウム金属負極のサイクル性能を向上させる。比較例6における炭素材料の酸素含有量が低すぎ、ナトリウム金属核形成に対する改善作用が小さく、そのナトリウムインターカレーション反応過電位は、比較例5(炭素材料は酸素を含まない)と比べて低下したが、実施例3及び実施例15~17の過電位ほど明らかに低下しなかった。
【0100】
実施例3及18のテスト結果から分かるように、実施例18の負極集電体は、多孔質構造を有し、負極集電体の比表面積を増加させることができ、増加は、負極極片の体積の変化を緩和し、樹状突起の生成を抑制し、電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0101】
実施例19~24及び比較例7及び9のテスト結果から分かるように、負極極片におけるナトリウム金属層の質量含有量が0.1~1%の範囲内である場合、ナトリウムインターカレーション過電位を効果的に降下することができる。比較例7では、炭素材料コーティングの表面にナトリウム金属層が形成されておらず、炭素材料コーティングの過電位は相対的に向上し、電池の電気化学性能の向上に役立たない。比較例8では、負極極片におけるナトリウム金属層の質量含有量が低すぎるため、炭素材料と結合するナトリウム金属が少なすぎることを引き起こし、ナトリウム金属を効果的に使用してナトリウムインターカレーション過電位を降下し、負極極片全体の過電位を降下することができない。比較例9では、負極極片におけるナトリウム金属層の質量含有量が高すぎるため、過剰なナトリウム金属は、空気、水と反応しやすくなり、加工が困難になり、樹状突起が成長することを引き起こし、電池のサイクル性能が低下する。
【0102】
実施例1~24及び比較例10のテスト結果から分かるように、比較例10は、負極集電体のみを負極とし、ナトリウムインターカレーションの過電位を低下する炭素材料コーティングが形成されておらず、電池の過電位が最も高く、サイクル性能が最も低い。以上から分かるように、負極集電体の表面に炭素材料コーティングを形成することで、電池の過電位を効果的に降下し、電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0103】
本願は、好ましい実施例により上記に開示されているが、特許請求の範囲を限定するものではなく、当業者であれば、本願の思想から逸脱することなく、幾つかの可能な変更及び修正を行うことができるため、本願の保護範囲は、本願の特許請求の範囲によって定義される範囲に従うものとする。
図1
【国際調査報告】