(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】治療剤のin vivo送達のために、遺伝子改変B細胞を投与する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20231108BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231108BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231108BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20231108BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20231108BHJP
A61K 38/47 20060101ALN20231108BHJP
A61K 38/00 20060101ALN20231108BHJP
A61K 38/43 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K48/00
A61P25/00
A61P43/00 105
A61K35/76
A61K35/761
A61K38/47
A61K38/00
A61K38/43
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526012
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 US2021057363
(87)【国際公開番号】W WO2022094284
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512176646
【氏名又は名称】イミュソフト コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハンペ, クリスチャン エス.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA02
4C084BA03
4C084DC01
4C084DC22
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZB21
(57)【要約】
治療剤をin vivoで産生するために、操作されたB細胞を投与するための方法が、本明細書で提供される。種々の実施形態では、操作されたB細胞は、中枢神経系(CNS)に直接投与される。本明細書で開示される組成物および方法は、酵素補充療法、例えば、イズロニダーゼ(IDUA)の産生を介したリソソーム蓄積機能不全に関連する疾患または障害の処置のために使用され得る。本発明は、例えば、治療剤のin vivo産生のために遺伝子改変B細胞を対象に投与する方法であって、1つまたは複数の用量の遺伝子改変B細胞を対象の中枢神経系(CNS)に投与するステップを含む、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療剤のin vivo産生のために遺伝子改変B細胞を対象に投与する方法であって、
1つまたは複数の用量の遺伝子改変B細胞を対象の中枢神経系(CNS)に投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記投与するステップが、前記対象の脳脊髄液(CSF)中への注入を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与するステップが、大槽内注射を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記投与するステップが、くも膜下腔内注射を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記投与するステップが、脳室内注射(ICV)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記脳室内注射(ICV)が、1つまたは複数の脳腔において行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の脳腔が、側脳室である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数の脳腔が、第三脳室である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数の脳腔が、中脳水道である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の脳腔が、第四脳室である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子改変B細胞によって産生される前記治療剤が、イズロニダーゼ(IDUA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
用量が、前記遺伝子改変B細胞を最適以下の単回用量濃度で含み、最適以下の単回用量濃度が、
(i)前記改変B細胞の複数の単回用量を検査するステップ;
(ii)前記改変B細胞の最適な単回用量濃度を決定するステップであって、
改変B細胞の単回用量濃度で存在する改変B細胞の投与量の増加が、前記治療剤の前記産生をもたらす、ステップ;
(iii)前記改変B細胞の複数の最適以下の単回用量濃度を試験するステップ;および
(iv)前記改変B細胞の最適以下の単回用量を決定するステップであって、
得られた投与量が、より低い投与量にわたって線形を超える増加をもたらし、
前記最適以下の単回用量濃度が、前記最適な単回用量濃度の用量の約2分の1または約3分の1未満であるまたは約2分の1または約3分の1と等しい、ステップ
によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記投与するステップが、1つまたは複数の逐次用量の前記遺伝子改変B細胞を必要に応じて含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記遺伝子改変B細胞が、前記対象に対して自家である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記遺伝子改変B細胞が、前記対象に対して同種異系である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記治療剤がタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記タンパク質が酵素である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記遺伝子改変B細胞が、CD20-、CD38+およびCD138+である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記遺伝子改変B細胞が、CD20-、CD38+およびCD138-である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記遺伝子改変B細胞を、前記B細胞において前記治療剤を発現するようにスリーピングビューティートランスポゾンを使用して調製した、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記遺伝子改変B細胞を、前記B細胞において前記治療剤を発現するように組換えウイルスベクターを使用して調製した、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記組換えウイルスベクターが、組換えレトロウイルス、組換えレンチウイルス、組換えアデノウイルスまたは組換えアデノ随伴ウイルスをコードする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記遺伝子改変B細胞を、前記B細胞のゲノムの遺伝子編集によって、または前記B細胞の前記ゲノムへの、前記治療剤をコードするポリヌクレオチド配列の標的化組込みによって調製した、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記標的化組込みが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介遺伝子組込み、CRISPR媒介遺伝子組込みもしくは遺伝子編集、TALE-ヌクレアーゼ媒介遺伝子組込み、またはメガヌクレアーゼ媒介遺伝子組込みを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ポリヌクレオチドの前記標的化組込みが、相同組換えにより行った、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記標的化組込みが、標的部位においてDNA切断を誘導することができるヌクレアーゼのウイルスベクター媒介送達を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Casヌクレアーゼ、TALE-ヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記遺伝子改変B細胞が、配列番号1と同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記遺伝子改変B細胞が、配列番号1と少なくとも約85%同一である、または配列番号1と少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは99%超同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記遺伝子改変B細胞を、培養の開始後2日目または3日目に操作する、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記遺伝子改変B細胞を、電気穿孔を含む方法を使用して操作する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記遺伝子改変B細胞を、操作後の培養における4日目、5日目、6日目または7日目に、対象への投与のために収集する、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記遺伝子改変B細胞を、操作後の培養における8日目またはそれよりも後に、対象への投与のために収集する、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記遺伝子改変B細胞を、操作後の培養における10日目またはそれよりも前に、対象への投与のために収集する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記収集された遺伝子改変B細胞が、有意なレベルの炎症性サイトカインを産生しない、請求項1から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記遺伝子改変B細胞を、培養中の、それらが有意なレベルの炎症性サイトカインを産生しないことが決定された時点において収集する、請求項1から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記遺伝子改変B細胞を、操作前および操作後の全培養期間を通じて、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15、IL-21、および多量体化されたCD40リガンドの各々を含む培養系において成長させる、請求項1から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記多量体化されたCD40リガンドが、抗his抗体を使用して多量体化されたHISタグ化CD40リガンドである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記対象への前記投与するステップの前に、前記遺伝子改変B細胞を拡大増殖させるステップをさらに含む、請求項1から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
拡大増殖された遺伝子改変B細胞の最終集団が、高度な多クローン性を示す、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
拡大増殖された遺伝子改変B細胞の前記最終集団中の任意の特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の0.2%未満を構成する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
拡大増殖された遺伝子改変B細胞の前記最終集団中の任意の特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の0.05%未満を構成する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記遺伝子改変B細胞が、メトトレキセートに対して耐性が増強したヒトDHFR遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
メトトレキセートに対して耐性が増強した前記ヒトDHFR遺伝子が、アミノ酸22におけるロイシンからチロシンへの置換およびアミノ酸31におけるフェニルアラニンからセリンへの置換を含有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
投与のために収集する前に、前記遺伝子改変B細胞をメトトレキセートで処置するステップを含む、請求項1から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記メトトレキセート処置が、100nM~300nMの間である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記メトトレキセート処置が、200nMである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記遺伝子改変B細胞が、前記対象への投与の際に、前記中枢神経系(CNS)内の組織の至る所を移動する、請求項1から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記対象への前記遺伝子改変B細胞の前記投与が、前記対象の多様な組織においてグリコサミノグリカン(GAG)の低減をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記対象への前記遺伝子改変B細胞の前記投与が、前記中枢神経系(CNS)内の組織においてGAGの低減をもたらす、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記遺伝子改変B細胞が、投与後少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間または6週間にわたって、前記中枢神経系(CNS)中で持続する、請求項1から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記遺伝子改変B細胞が、投与後少なくとも約1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間または6か月間にわたって、前記中枢神経系(CNS)中で持続する、請求項1から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記遺伝子改変B細胞が、投与後最大で約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間または6週間にわたって、前記中枢神経系(CNS)中で持続する、請求項1から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記遺伝子改変B細胞が、投与後最大で約1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間または6か月間にわたって、前記中枢神経系(CNS)中で持続する、請求項1から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記対象が、リソソーム蓄積機能不全に関連する疾患または障害を有する、請求項1から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
リソソーム蓄積機能不全に関連する前記疾患または障害が、酵素アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)欠損によって引き起こされる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記対象が、ムコ多糖症I型(MPS I)を有する、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記遺伝子改変B細胞の前記投与が、前記対象の、リソソーム蓄積機能不全に関連する疾患または障害を処置する、請求項57から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記遺伝子改変B細胞の前記投与が、前記対象のMPS Iを処置する、請求項59に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表に関する陳述
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年10月30日出願の米国仮特許出願第63/107,992号に対して、35U.S.C.§119(e)の下で利益を主張する。
【0002】
配列表に関する陳述
本出願に関連する配列表は、ペーパーコピーの代わりにテキストフォーマットで提供され、これにより参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、IMCO_009_01WO_ST25.txtである。テキストファイルは、約10KBであり、2021年10月28日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
技術分野
本開示は、治療剤、例えば、治療用タンパク質を産生するために、操作された細胞を対象に投与するための方法に、概して関する。操作されたB細胞を中枢神経系に投与するための方法が、具体的には開示される。
【背景技術】
【0004】
背景
CNS(例えば、脳)における細胞治療は、CNSに免疫学的に特権があるために、独自の課題を提示する。この理由のために、B細胞の局所投与における以前の試みは、CNS(例えば、脳)への投与に広く拡張されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本開示は、中枢神経系(CNS)に影響する慢性疾患および障害を処置するために、遺伝子改変された(操作された)B細胞を、対象のかかる組織に直接投与するための方法を提供する。
【0006】
ある態様では、本開示は、治療剤のin vivo産生のために遺伝子改変B細胞を対象に投与する方法であって、1つまたは複数の用量の遺伝子改変B細胞を対象の中枢神経系(CNS)に投与するステップを含む方法を提供する。
【0007】
一部の実施形態では、投与するステップは、対象の脳脊髄液(CSF)中への注入を含む。
【0008】
一部の実施形態では、投与するステップは、大槽内注射を含む。
【0009】
一部の実施形態では、投与するステップは、くも膜下腔内注射を含む。
【0010】
一部の実施形態では、投与するステップは、脳室内注射(ICV)を含む。
【0011】
一部の実施形態では、脳室内注射(ICV)は、1つまたは複数の脳腔において行われる。
【0012】
一部の実施形態では、1つまたは複数の脳腔は、側脳室である。
【0013】
一部の実施形態では、1つまたは複数の脳腔は、第三脳室である。
【0014】
一部の実施形態では、1つまたは複数の脳腔は、中脳水道である。
【0015】
一部の実施形態では、1つまたは複数の脳腔は、第四脳室である。
【0016】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞によって産生される治療剤は、イズロニダーゼ(IDUA)である。
【0017】
一部の実施形態では、用量は、遺伝子改変B細胞を最適以下の単回用量濃度で含み、最適以下の単回用量濃度は、(i)改変B細胞の複数の単回用量を検査するステップ;(ii)改変B細胞の最適な単回用量濃度を決定するステップであって、改変B細胞の単回用量濃度中に存在する改変B細胞の投与量の増加が、治療剤の産生をもたらす、ステップ;(iii)改変B細胞の複数の最適以下の単回用量濃度を試験するステップ;および(iv)改変B細胞の最適以下の単回用量を決定するステップであって、得られた投与量が、より低い投与量にわたって線形を超える増加をもたらし、最適以下の単回用量濃度が、最適な単回用量濃度の用量の約2分の1または約3分の1未満であるまたは約2分の1または約3分の1と等しい、ステップによって決定される。
【0018】
一部の実施形態では、投与するステップは、1つまたは複数の逐次用量の遺伝子改変B細胞を必要に応じて含む。
【0019】
一部の実施形態では、対象は、哺乳動物である。
【0020】
一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0021】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、対象に対して自家である。
【0022】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、対象に対して同種異系である。
【0023】
一部の実施形態では、治療剤は、タンパク質である。
【0024】
一部の実施形態では、タンパク質は、酵素である。
【0025】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、CD20-、CD38+およびCD138+である。
【0026】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、CD20-、CD38+およびCD138-である。
【0027】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、B細胞において治療剤を発現するようにスリーピングビューティー(Sleeping Beauty)トランスポゾンを使用して調製した。
【0028】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、B細胞において治療剤を発現するように組換えウイルスベクターを使用して調製した。
【0029】
一部の実施形態では、組換えウイルスベクターは、組換えレトロウイルス、組換えレンチウイルス、組換えアデノウイルスまたは組換えアデノ随伴ウイルスをコードする。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、B細胞のゲノムの遺伝子編集によって、またはB細胞のゲノムへの、治療剤をコードするポリヌクレオチド配列の標的化組込みによって調製した。
【0030】
一部の実施形態では、標的化組込みは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介遺伝子組込み、CRISPR媒介遺伝子組込みもしくは遺伝子編集、TALE-ヌクレアーゼ媒介遺伝子組込み、またはメガヌクレアーゼ媒介遺伝子組込みを含む。
【0031】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドの標的化組込みは、相同組換えにより行った。
【0032】
一部の実施形態では、標的化組込みは、標的部位においてDNA切断を誘導することができるヌクレアーゼのウイルスベクター媒介送達を含む。
【0033】
一部の実施形態では、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Casヌクレアーゼ、TALE-ヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼである。
【0034】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、配列番号1と同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む。
【0035】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、配列番号1と少なくとも約85%同一である、または配列番号1と少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは99%超同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む。
【0036】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、培養の開始後2日目または3日目に操作する。
【0037】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、電気穿孔を含む方法を使用して操作する。
【0038】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、操作後の培養における4日目、5日目、6日目または7日目に、対象への投与のために収集する。
【0039】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、操作後の培養における8日目またはそれよりも後に、対象への投与のために収集する。
【0040】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、操作後の培養における10日目またはそれよりも前に、対象への投与のために収集する。
【0041】
一部の実施形態では、収集された遺伝子改変B細胞は、有意なレベルの炎症性サイトカインを産生しない。
【0042】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、培養中の、それらが有意なレベルの炎症性サイトカインを産生しないことが決定された時点において収集する。
【0043】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、操作前および操作後の全培養期間を通じて、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15、IL-21、および多量体化されたCD40リガンドの各々を含む培養系において成長させる。
【0044】
一部の実施形態では、多量体化されたCD40リガンドは、抗his抗体を使用して多量体化されたHISタグ化CD40リガンドである。
【0045】
一部の実施形態では、方法は、対象に投与するステップの前に、遺伝子改変B細胞を拡大増殖させるステップを含む。
【0046】
一部の実施形態では、拡大増殖された遺伝子改変B細胞の最終集団は、高い程度の多クローン性を実証する。
【0047】
一部の実施形態では、拡大増殖された遺伝子改変B細胞の最終集団中の任意の特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の0.2%未満を構成する。
【0048】
一部の実施形態では、拡大増殖された遺伝子改変B細胞の最終集団中の任意の特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の0.05%未満を構成する。
【0049】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、メトトレキセートに対して耐性が増強したヒトDHFR遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0050】
一部の実施形態では、メトトレキセートに対して耐性が増強したヒトDHFR遺伝子は、アミノ酸22におけるロイシンからチロシンへの置換およびアミノ酸31におけるフェニルアラニンからセリンへの置換を含有する。
【0051】
一部の実施形態では、方法は、投与のために収集する前に、遺伝子改変B細胞をメトトレキセートで処置するステップを含む。
【0052】
一部の実施形態では、メトトレキセート処置は、100nM~300nMの間である。
【0053】
一部の実施形態では、メトトレキセート処置は、200nMである。
【0054】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、対象への投与の際に、中枢神経系(CNS)内の組織の至る所を移動する。
【0055】
一部の実施形態では、対象への遺伝子改変B細胞の投与は、対象の多様な組織においてグリコサミノグリカン(GAG)の低減をもたらす。
【0056】
一部の実施形態では、対象への遺伝子改変B細胞の投与は、中枢神経系(CNS)内の組織においてGAGの低減をもたらす。
【0057】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間または6週間にわたって、中枢神経系(CNS)中で持続する。
【0058】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、少なくとも約1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間または6か月間にわたって、中枢神経系(CNS)中で持続する。
【0059】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、最大で約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間または6週間にわたって、中枢神経系(CNS)中で持続する。
【0060】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、最大で約1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間または6か月間にわたって、中枢神経系(CNS)中で持続する。
【0061】
一部の実施形態では、対象は、リソソーム蓄積機能不全に関連する疾患または障害を有する。
【0062】
一部の実施形態では、リソソーム蓄積機能不全に関連する疾患または障害は、酵素アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)欠損によって引き起こされる。
【0063】
一部の実施形態では、対象は、ムコ多糖症I型(MPS I)を有する。
【0064】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞の投与は、対象の、リソソーム蓄積機能不全に関連する疾患または障害を処置する。
【0065】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞の投与は、対象のMPS Iを処置する。
【0066】
本発明の他の態様および利点は、以下の発明の詳細な説明から容易に明らかになる。
【0067】
本開示を例示することを目的として、本開示のある特定の実施形態が、図面に描かれる。しかし、本開示は、図面に描かれた実施形態の正確な配置および手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】
図1は、操作されたB細胞を中枢神経系に直接投与したマウスの脳組織全体からのIDUA活性の解析を示す。
【0069】
【
図2】
図2は、操作されたB細胞を中枢神経系に直接投与したマウスの脳組織からのGAGの解析を示す。
【0070】
【
図3】
図3は、LUC転位させたヒトB細胞をICV注射したNSGマウスの生物発光イメージングを示す。マウスを隔週イメージングした(IVIS)。発光強度はスケール上に示される。
【0071】
【
図4】
図4は、
図3からの生物発光イメージング結果の折れ線グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
詳細な説明
酵素欠損は、慢性疾患および障害を生じ得る。酵素補充療法は、酵素欠損に対抗するための外因性酵素(治療剤)の直接的注入によってかかる疾患および障害を処置するための現行の方法である。しかし、この処置方法は、欠点を有する。注射された組換え治療用タンパク質の有効性は、タンパク質の有限の半減期によって制限され、治療剤による、最適以下の組織浸透を提供し得る。本開示は、酵素欠損に関連する特定の疾患および障害をより効果的に処置するために、酵素補充療法の制限の一部に取り組む。
【0073】
導入遺伝子の長期in vivo発現のための分化したB細胞組成物の使用は、酵素欠損が含まれる種々の疾患および障害の処置のための有望な戦略として特定されている。しかし、治療剤の送達のために改変B細胞を投与するための方法は、薬剤の治療有効レベルをin vivoで達成するためにはいまだ記載されていない。本開示は、操作されたB細胞を中枢神経系(CNS)に直接投与することによって、慢性疾患および障害、特に、リソソーム蓄積機能不全に関連する疾患および障害を処置するための、in vivoでのイズロニダーゼ(IDUA)の産生のための、改変されたヒトDHFRをコードする導入遺伝子の発現を含む、遺伝子改変された(操作された)B細胞を投与する方法を提供する。
【0074】
本明細書に記載される実施形態は、CNS中への直接的注射による、分化したB細胞組成物の投与が、CNSにおける長期にわたるB細胞生存および導入遺伝子の発現をもたらすという、本発明者らの驚くべき発見に一部関する。さらに、発現された導入遺伝子は、脳において薬理学的効果をもたらした。
定義
【0075】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および略語は、本明細書で使用される場合、以下のように定義される:
【0076】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数形の態様を含む。例えば、「1つの(a)ベクター」に対する言及は、単一のベクター、ならびに2つまたはそれよりも多くのベクターを含む;「1つの(a)細胞」に対する言及は、1つの細胞、ならびに2つまたはそれよりも多くの細胞を含む;などである。
【0077】
用語「および/または」は、2つまたはそれよりも多くの一連の項目において使用される場合、列挙された項目のうちいずれか1つが、それ自体で、または列挙された項目のうちいずれか1つもしくは複数と組み合わせて用いられ得ることを意味する。例えば、表現「Aおよび/またはB」は、AおよびBのいずれかまたは両方、即ち、A単独、B単独、またはAおよびBの組み合わせを意味することが意図される。表現「A、Bおよび/またはC」は、A単独、B単独、C単独、AおよびBの組み合わせ、AおよびCの組み合わせ、BおよびCの組み合わせ、またはA、BおよびCの組み合わせを意味することが意図される。
【0078】
本明細書を通じて、文脈が他を要求しない限り、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などのバリエーションは、述べられた要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の包含を暗示するが、任意の他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の排除は暗示しないと理解される。
【0079】
「~からなる」は、「~からなる」という語句に続く全てのものを含みそれらに限定されることを意味する。したがって、語句「~からなる」は、列挙された要素が必要または必須であること、および他の要素が存在してはいけないことを示す。「~から本質的になる」は、この語句の後ろに列挙された任意の要素を含み、列挙された要素について本開示で特定された活性または作用を妨害することもそれに寄与することもない他の要素に限定されることを意味する。したがって、語句「~から本質的になる」は、列挙された要素が必要または必須であるが、他の要素が必要に応じたものであり、列挙された要素の活性または作用にそれらが影響するか否かに依存して存在してもしなくてもよいことを示す。
【0080】
用語「例えば」に対する言及は、「例えば、であるが~に限定されない」を意味することが意図され、したがって、~は何であれ、特定の実施形態の一例にすぎないことを理解すべきであるが、限定的な例であるとして決して解釈すべきでない。他に示さない限り、「例えば」の使用は、他の実施形態が本発明によって企図され包含されることを明白に示すことが意図される。
【0081】
「実施形態」または「一実施形態」または「ある実施形態」または「一部の実施形態」または「ある特定の実施形態」に対する本明細書を通じた言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特色、構造または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じた種々の場所での、語句「一実施形態では」または「ある実施形態では」または「ある特定の実施形態では」または「一部の実施形態では」の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特色、構造または特徴は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適切な様式で組み合わされ得る。
【0082】
「増加した」または「増強された」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、本明細書に記載される量またはレベルの1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40もしくは50倍またはそれよりも大きい(例えば、100、500、1000倍)(全ての整数、ならびにそれらの間の、および1よりも大きい小数点、例えば、2.1、2.2、2.3、2.4などが含まれる)である増加を含み得る。同様に、「減少した」または「低減された」または「より少ない」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、本明細書に記載される量またはレベルの約1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6 1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40もしくは50倍またはそれよりも大きい(例えば、100、500、1000倍)(全ての整数、ならびにそれらの間の、および1よりも大きい小数点、例えば、1.5、1.6、1.7. 1.8などが含まれる)である減少を含み得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、「必要に応じた」または「必要に応じて」は、引き続いて記載される事象または状況が、生じても生じなくてもよいこと、ならびに記載が、前記事象または状況が生じる場合およびそれが生じない場合を含むことを意味する。
【0084】
本明細書で使用される場合、「実質的に」または「本質的に」は、豊富なまたはかなりの量、分量、サイズ;ほぼすっかりまたは完全に;例えば、一部の所与の分量の95%またはそれよりも多くを意味する。
【0085】
本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、限定を意図しない。他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される材料および方法と類似または等価な任意の材料および方法が、本発明を実施するために使用され得る。本発明の実施は、当該技術分野の範囲内である、分子生物学(組換え技法が含まれる)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技法を用い得る。かかる技法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition (Sambrook et al, 1989) Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis (MJ. Gait, ed., 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press;Cell Biology: A Laboratory Notebook (J .E. Cellis, ed., 1998) Academic Press;Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed., 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J.P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993- 1998) J. Wiley and Sons;Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.);Handbook of Experimental Immunology (D .M. Weir and CC. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987);Current Protocols in Molecular Biology (F .M. Ausubel et al, eds., 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al, eds., 1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al, eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (CA. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: a practical approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti and J.D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995);およびCancer: Principles and Practice of Oncology (V. T. DeVita et al, eds., J.B. Lippincott Company, 1993)などの文献中で完全に説明されている。
【0086】
用語「in vitro」、「ex vivo」および「in vivo」は、それらの通常の科学的意味を有することが本明細書で意図される。したがって、例えば、「in vitro」は、単離された細胞の構成要素によって行う実験または反応、例えば、適切な基質、酵素、ドナー、および必要に応じてバッファー/補因子を使用して試験管中で実施される酵素反応などを指すことを意味する。「ex vivo」は、生物から取り出されたまたは生物とは独立して繁殖させた機能的臓器または細胞を使用して実施される実験または反応を指すことを意味する。「in vivo」は、その正常なインタクトな状態で生きている生物内で行う実験または反応を指すことを意味する。
【0087】
本明細書で使用される場合、「哺乳動物」には、ヒトならびに家庭動物、例えば、実験動物および家庭用愛玩動物(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマおよびウサギ)と、非家庭動物、例えば、野生動物などの両方が含まれる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「対象」には、本発明の薬剤で処置され得る疾患もしくは症状を示す、または疾患もしくは症状を示すリスクがある、任意の動物が含まれる。適切な対象には、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギまたはモルモット)、農場動物、および家庭動物または愛玩動物(例えば、ネコまたはイヌ)が含まれる。非ヒト霊長類、好ましくは、ヒト患者が含まれる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「増殖」または「拡大増殖(expansion)」は、細胞または細胞の集団が数を増やす能力を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「分化する/分化させる(differentiate)」または「分化した(differentiated)」は、未熟な(特殊化していない)細胞が、成熟した(特殊化した)細胞になる特徴を獲得し、それにより、特定の形態および機能を獲得する、プロセスおよび条件を指すために使用される。幹細胞(特殊化していない)は、前記幹細胞の、指定系統拘束(specified lineage commitment)、または分化を誘導するための様々な条件(例えば、成長因子および形態形成因子)に曝露される場合が多い。例えば、形質細胞に移行するメモリーB細胞は、分化している。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「CD20-、CD38+およびCD138+」は、CD38およびCD138の両方の表面マーカーを発現し、CD20表面マーカーを発現しない細胞を指すために使用され、ここで、「+」は存在を示し、「-」は非存在を示す。したがって、あるいは、用語「CD20-、CD38+およびCD138-である」は、CD38表面マーカーを発現するが、CD38およびCD138の両方の表面マーカーを発現しない細胞を指すために使用される。
【0092】
B細胞は、抗原提示細胞(APC)として作用し、抗原を内在化する、特異的免疫細胞である。抗原は、受容体媒介エンドサイトーシスを介してB細胞によって取り込まれ、プロセシングされる。抗原は、抗原性ペプチドへとプロセシングされ、MHC II分子上にロードされ、CD4+Tヘルパー細胞に対して、B細胞細胞外表面上に提示される。これらのT細胞は、MHC II/抗原分子に結合し、B細胞の活性化を引き起こす。T細胞による刺激の際に、活性化B細胞は、より特殊化した細胞へと分化し始める。胚中心B細胞は、長寿命のメモリーB細胞または形質細胞へと分化し得る。さらに、二次免疫刺激が、追加の形質細胞を生じるメモリーB細胞をもたらし得る。メモリーB細胞または非メモリーB細胞のいずれかからの形質細胞の形成には、大量の抗体を産生する形質細胞へと最終的に分化する前駆体形質芽細胞の形成が先行する(例えば、Trends Immunol. 2009 June; 30(6): 277-285;Nature Reviews, 2005, 5:231 - 242を参照されたい)。形質芽細胞は、B細胞よりも多いが、形質細胞よりも少ない抗体を分泌する。これらは、急速に分裂し、抗原を内在化し続け、抗原をT細胞に提示する。形質芽細胞は、ケモカイン産生の部位(例えば、骨髄中)に遊走する能力を有し、それにより、長寿命の形質細胞へと分化し得る。最後に、形質芽細胞は、数日間にわたって形質芽細胞のままでありその後死ぬか、または成熟した、完全に分化した形質細胞へと最終的に分化するかのいずれかであり得る。具体的には、形質細胞生存ニッチを含有する組織(例えば、骨髄中)にホーミングすることができる形質芽細胞は、高レベルのタンパク質を数年にわたって分泌し続け得る長寿命の形質細胞になるために、常在性の形質細胞に取って代わることができる。最終分化した形質細胞は、典型的には、共通の汎B細胞マーカー、例えば、CD19およびCD20を発現せず、比較的少数の表面抗原を発現する。形質細胞は、CD38、CD78、CD138およびインターロイキン-6受容体(IL-6R)を発現し、CD45の発現を欠如し、これらのマーカーは、形質細胞を同定するために、例えば、フローサイトメトリーによって使用され得る。ナイーブB細胞はCD27-であり、メモリーB細胞はCD27+であり、形質細胞はCD27++であるので、CD27もまた、形質細胞のための良好なマーカーである。メモリーB細胞サブセットは、表面IgG、IgMおよびIgDもまた発現し得るが、形質細胞は、細胞表面上にこれらのマーカーを発現しない。CD38およびCD138は、形質細胞上で高レベルで発現される(Wikipedia, The Free Encyclopedia., "Plasma cell" Page Version ID: 404969441;Date of last revision: 30 December 2010 09:54 UTC, retrieved January 4, 2011を参照されたい;以下もまた参照されたい: Jourdan et al. Blood. 2009 Dec 10;114(25):5173-81;Trends Immunol. 2009 June; 30(6): 277-285;Nature Reviews, 2005, 5:231 - 242;Nature Med. 2010, 16: 123-129;Neuberger, M. S.; Honjo, T.; Alt, Frederick W. (2004). Molecular biology of B cells. Amsterdam: Elsevier, pp. 189-191;Bertil Glader; Greer, John G; John Foerster; Rodgers, George G.; Paraskevas, Frixos (2008). Wintrobe's Clinical Hematology, 2-Vol. Set. Hagerstwon, MD: Lippincott Williams & Wilkins. pp. 347;Walport, Mark; Murphy, Kenneth; Janeway, Charles; Travers, Paul J. (2008). Janeway's immunobiology. New York: Garland Science, pp. 387-388;Rawstron AC (May 2006). "Immunophenotyping of plasma cells". Curr Protoc Cytom)。
【0093】
本明細書に記載される方法において使用されるB細胞には、汎B細胞、メモリーB細胞、形質芽細胞および/または形質細胞が含まれる。一実施形態では、改変B細胞は、メモリーB細胞である。一実施形態では、改変B細胞は、形質芽細胞である。一実施形態では、改変B細胞は、形質細胞である。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、天然の環境から取り出された分子または細胞を指すために使用される。本明細書で使用される場合、用語「天然に存在しない」は、天然に見出される対応物とは著しく異なる構造を保有する単離された分子または細胞を指すために使用される。
【0095】
本明細書で使用される場合、「精製された細胞集団」または「精製された細胞組成物」を含有する組成物は、組成物中の細胞のうち少なくとも30%、50%、60%、典型的には少なくとも70%、より好ましくは80%、90%、95%、98%、99%またはそれよりも多くが、同定された型のものであることを意味する。
【0096】
本記載では、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、他に示さない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、適宜、その分数(例えば、整数の10分の1および100分の1)を含むと理解されたい。用語「約」は、数字または数詞の直前にある場合、数字または数詞が、プラスまたはマイナス10%の範囲であることを意味する。
【0097】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、mRNA、RNA、cRNA、cDNAまたはDNAであり得るヌクレオチドのポリマーを指すために、本明細書で相互交換可能に使用される。用語は、典型的には、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれか、またはいずれかの型のヌクレオチドの改変形態の、少なくとも10塩基長のヌクレオチドのポリマー形態を指す。用語は、一本鎖および二本鎖形態のDNAを含む。
【0098】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」または「タンパク質」は、アルファ-アミノ基と隣接残基のカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに接続された、線状の一連のアミノ酸残基を示すために、本明細書で相互交換可能に使用される。アミノ酸残基は通常、天然の「L」異性体型である。しかし、所望の機能的特性がポリペプチドによって保持される限り、「D」異性体型の残基が、任意のL-アミノ酸残基に置き換わり得る。
【0099】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、標的抗原に特異的に結合するまたは標的抗原と特異的に相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む任意の抗原結合分子または分子複合体を意味すると理解される。用語「抗体」には、ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む全長免疫グロブリン分子、ならびにそれらのマルチマー(例えば、IgM)が含まれる。各重鎖は、重鎖可変領域(これは、HCVR、VHまたはVHと略記され得る)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン - CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(これは、LCVR、VL、VK、VKまたはVLと略記され得る)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)とも呼ばれるより保存された領域が散在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域へとさらに下位分割され得る。
【0100】
用語「宿主」、「宿主細胞」、「宿主細胞系」および「宿主細胞培養物」は、相互交換可能に使用され、かかる細胞の子孫を含む、外因性核酸が導入された細胞を指す。宿主細胞には、形質転換された初代細胞、および継代数にかかわらず、それに由来する子孫が含まれる、「形質転換体」または「形質転換された細胞」または「操作された細胞」が含まれる。子孫は、核酸含有量において親細胞と完全に同一でなくてもよく、変異を含有し得る。元々形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫が、本明細書に含まれる。宿主細胞は、本発明の抗原結合分子を生成するために使用され得る任意の型の細胞系である。宿主細胞には、例えば、B細胞であるがこれに限定されない、哺乳動物培養細胞などの培養細胞が含まれる。
【0101】
本明細書で使用される場合、相互交換可能に使用される用語「ベクター」および「構築物」は、例えば、核酸配列がその中に挿入またはクローニングされ得るプラスミド、バクテリオファージまたはウイルスに由来する核酸分子、好ましくはDNA分子であり得る。ベクターは、1つまたは複数の独自の制限部位を含有し得、標的細胞もしくは組織または前駆細胞もしくはその組織が含まれる規定された宿主細胞において、自律複製が可能であり得、あるいはクローニングされた配列が再現可能であるように、規定された宿主のゲノムと統合可能であり得る。したがって、ベクターは、自律的に複製するベクター、即ち、その複製が染色体複製と無関係である染色体外実体として存在するベクター、例えば、線状もしくは閉鎖環状プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体であり得る。ベクターは、自己複製を確実にするための任意の手段を含有し得る。あるいは、ベクターは、宿主細胞中に導入されると、ゲノム中に組み込まれ、それが中に組み込まれた染色体(複数可)と一緒に複製されるベクターであり得る。ベクター系は、単一のベクターまたはプラスミド、宿主細胞のゲノム中に導入される総DNA、またはトランスポゾンを一緒になって含有する、2つまたはそれよりも多くのベクターまたはプラスミドを含み得る。ベクターの選択は、ベクターと、そのベクターが導入される宿主細胞との適合性に、典型的には依存する。ベクターは、適切な形質転換体の選択のために使用され得る選択マーカー、例えば、抗生物質耐性遺伝子もまた含み得る。かかる耐性遺伝子の例は、当業者に周知である。一部の実施形態では、ベクターは、本発明の操作されたNK細胞または操作されたマクロファージ細胞を生成するために使用される。
【0102】
本明細書で使用される場合、「発現構築物」は、治療用タンパク質のためのコード配列、プロモーターを含み、それらのための他の調節配列を含み得る核酸分子を指し、そのカセットは、遺伝エレメント中に操作され得るおよび/またはウイルスベクターのカプシド中にパッケージングされ得る(例えば、ウイルス粒子)。典型的には、ウイルスベクターを生成するためのかかる発現カセットは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルおよび本明細書に記載されるものなどの他の発現制御配列に挟まれた、本明細書に記載される構築物配列を含有する。発現制御配列のいずれもが、例えば、コドン最適化が含まれる、当該分野で公知の技法を使用して、特定の種のために最適化され得る。
【0103】
「制御エレメント」、「制御配列」、「調節配列」などは、本明細書で使用される場合、特定の宿主細胞における作動可能に連結したコード配列の発現に必要な核酸配列(例えば、DNA)を意味する。原核生物細胞のために適切な制御配列には、例えば、プロモーター、ならびに必要に応じて、シス作用性配列、例えば、オペレーター配列およびリボソーム結合部位が含まれる。真核生物細胞のために適切な制御配列には、転写制御配列、例えば、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、転写エンハンサー、翻訳制御配列、例えば、翻訳エンハンサーおよび内部リボソーム結合部位(IRES)、mRNA安定性をモジュレートする核酸配列、ならびに転写されたポリヌクレオチドによってコードされる産物を細胞内の細胞内区画に、または細胞外環境に標的化する標的化配列が含まれる。
【0104】
本明細書で使用される場合、「生物学的活性」または「生物活性」は、本明細書で企図される任意の化合物、薬剤、ポリペプチド、コンジュゲート、医薬組成物を投与した結果として、in vitroアッセイにおいて、または細胞、組織、臓器もしくは生物(例えば、動物または哺乳動物またはヒト)において誘導される、任意の応答を指す。生物学的活性は、アゴニスト作用またはアンタゴニスト作用を指し得る。生物学的活性は、有益な効果であり得る;または生物学的活性は、有益でない、即ち、毒性であり得る。一部の実施形態では、生物学的活性は、生きている対象、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトに対して薬物または医薬組成物が有する、正または負の効果を指す。したがって、用語「生物学的に活性な」は、本明細書に記載される生物学的活性を保有する任意の化合物を記載する意味である。生物学的活性は、当業者に現在公知の任意の適切な手段によって評価され得る。かかるアッセイは、定性的または定量的であり得る。当業者は、異なるポリペプチドの活性を評価するために異なるアッセイを用いる必要性を容易に理解する;これは、平均的な研究者にとって慣用的なタスクである。かかるアッセイは、ほとんど最適化要件なしで、実験室環境で容易に実行される場合が多く、大抵の場合、ほとんどの実験室にとって一般的な種々のテクノロジーを使用して、広範なポリペプチドについての生物学的活性の単純な、信頼性のある、および再現性のある読み出しを提供する市販のキットが、利用可能である。かかるキットが利用可能でない場合、当業者は、過度の実験なしに標的ポリペプチドのための自製生物活性アッセイを容易に設計し最適化することができる;これは、科学プロセスの慣用的な態様であるからである。
【0105】
「治療剤」は、治療有効量で対象(例えば、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト)に投与された場合に、以下で定義される疾患または状態の処置をもたらすことが可能な、任意の化合物を指す。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「処置する(treat)」または「処置する(treating)」または「処置」は、患者における、疾患または状態に関連する症状の少なくとも寛解を包含し、ここで、寛解は、パラメーター、例えば、処置されている状態に関連する症状の大きさにおける少なくとも低減を指すために、広い意味で使用される。このように、「処置」は、本明細書で使用される場合、目的の疾患または状態を有する対象、好ましくはヒトにおける、目的の疾患または状態の処置をカバーし、これには以下が含まれる:(i)特に、そのような対象が、その状態になりやすい素因を有するが、その状態を有するとまだ診断されていない場合に、対象において疾患または状態が発生することを予防または阻害すること;(ii)疾患または状態を阻害すること、即ち、その発達を停止させること;(iii)疾患または状態を軽減すること、即ち、疾患または状態の退縮を引き起こすこと;あるいは(iv)疾患または状態から生じる症状を軽減すること。本明細書で使用される場合、用語「疾患」、「障害」および「状態」は、相互交換可能に使用され得るか、または特定の疾病、傷害もしくは状態が、既知の原因因子を有さない場合があり(したがって、病因がまだ解明されていない)、したがって、傷害としても疾患としてもまだ認識されていないが、望ましくない状態もしくは症候群としてのみ認識されているという点で異なり得、このとき、多かれ少なかれ特定の一連の症状が、臨床医によって同定されている。
【0107】
本明細書で使用される場合、「治療有効」は、疾患または障害、例えば、酵素欠損、タンパク質欠損、ホルモン欠損、炎症、がん、自己免疫または感染に関連する症状を、処置するもしくは寛解させる、または一部の様式では、低減させるのに十分な、操作されたB細胞または治療剤の量を指す。方法に言及して使用される場合、方法は、疾患または状態に関連する症状を、処置するもしくは寛解させる、または一部の様式では、低減させるのに十分に有効である。例えば、疾患に言及した有効量は、その発症を遮断もしくは予防するのに十分な量である;あるいは疾患病態が始まった場合、疾患を緩和する、寛解させる、安定化する、逆転させるもしくはその進行を減速させるのに、または疾患の病理学的結果を他の方法で低減させるのに十分な量である。いずれの場合にも、有効量は、単回用量または分割された用量で与えられ得る。
【0108】
用語「組合せ」は、1つの投与単位形態での固定の組合せ、または組合せ投与のためのキット・オブ・パーツのいずれかを指し、このとき、操作されたB細胞および治療剤と組合せパートナー(例えば、「治療剤」または「併用剤(co-agent)」とも呼ばれる、以下に説明される別の薬物)とは、同じ時間に独立して、または時間間隔内で別々に投与され得る。一部の状況では、組合せパートナーは、協同効果、例えば、相乗効果を示す。本明細書で利用される場合、用語「共投与」または「組合せ投与」などは、選択された組合せパートナーの投与を必要とする単一の対象(例えば、患者)への、選択された組合せパートナーの投与を包含することを意味し、薬剤が同じ投与経路によってまたは同じ時間に必ずしも投与されない処置レジメンを含むことが意図される。用語「医薬品の組合せ」は、本明細書で使用される場合、1種よりも多くの有効成分の混合または組み合わせから生じる産物を意味し、これには、有効成分の固定の組合せおよび非固定の組合せの両方が含まれる。用語「固定の組合せ」は、有効成分、例えば、化合物および組合せパートナーが共に、単一の実体または投与量の形態で、患者に同時に投与されることを意味する。用語「非固定の組合せ」は、有効成分、例えば、化合物および組合せパートナーが共に、具体的な時間制限なしに、同時に、併せてまたは逐次のいずれかで、別々の実体として患者に投与されることを意味し、このとき、かかる投与は、患者の身体において、2種の化合物の治療有効レベルを提供する。後者は、カクテル療法、例えば、3種またはそれよりも多くの有効成分の投与にも当てはまる。
遺伝子改変B細胞を投与すること
【0109】
本開示は、治療剤を産生するように核酸の導入を介して変更されたB細胞、および改変B細胞を投与する方法に概して関する。一部の実施形態では、用語「操作されたB細胞」、「遺伝子操作されたB細胞」、「改変B細胞」および「遺伝子改変B細胞」は、治療剤を産生するための1つまたは複数の核酸(例えば、導入遺伝子)(例えば、ポリペプチド、例えば、治療用ポリペプチドの発現を可能にする導入遺伝子)を含むかかる変更されたB細胞を指すために、本明細書で相互交換可能に使用される。
【0110】
したがって、本明細書に記載される改変B細胞を投与するための方法は、CNSへのB細胞の長期in vivo送達およびCNSにおける治療剤の発現のために有用である。本開示は、治療剤を産生する細胞の十分な富化および数を達成するための方法、ならびに産物の安全性を確実にしつつCNSにおいて治療剤の十分なレベルを達成するための方法を提供する。
【0111】
本明細書で使用される場合、語句「長期in vivo生存」および「長期生存」は、対象における、投与後10日間またはそれよりも長い日数にわたる、本明細書に記載される改変B細胞の生存を指す。長期生存は、日、週、またはさらには年単位で測定され得る。一部の実施形態では、改変B細胞の大部分は、投与後、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50日間またはそれよりも長い日数にわたって、in vivoで生存する。一部の実施形態では、改変B細胞の大部分は、投与後、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52週間またはそれよりも長い週数にわたって、in vivoで生存する。一部の実施形態では、改変B細胞は、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30年間またはそれよりも長い年数にわたって、in vivoで生存する。さらに、本明細書に記載される改変B細胞は、10日間またはそれよりも長い日数にわたってin vivoで生存し得るが、改変B細胞の大部分は、投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9日間またはそれよりも長い日数にわたって、in vivoで生存することが理解される。したがって、本明細書に記載される改変B細胞が、短期処置(例えば、7日間)および長期処置(例えば、30日間またはそれよりも長い日数)の方法のために有用であることが企図される。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間または6週間にわたって、中枢神経系(CNS)中で持続する。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、少なくとも約1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間または6か月間にわたって、中枢神経系(CNS)中で持続する。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、最大で約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間または6週間にわたって、中枢神経系(CNS)中で持続する。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、最大で約1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間または6か月間にわたって、中枢神経系(CNS)中で持続する。
【0112】
ある態様では、本開示は、治療剤のin vivo産生のために遺伝子改変B細胞を対象に投与する方法であって、1つまたは複数の用量の遺伝子改変B細胞を対象の中枢神経系(CNS)に投与するステップを含む方法を提供する。
【0113】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞によって産生される治療剤は、イズロニダーゼ(IDUA)である。
【0114】
一部の実施形態では、投与するステップは、対象の脳脊髄液(CSF)中への注入を含む。一部の実施形態では、投与するステップは、大槽内注射を含む。一部の実施形態では、投与するステップは、くも膜下腔内注射を含む。一部の実施形態では、投与するステップは、脳室内注射(ICV)を含む。一部の実施形態では、脳室内注射(ICV)は、1つまたは複数の脳腔において行われる。一部の実施形態では、1つまたは複数の脳腔は、側脳室である。一部の実施形態では、1つまたは複数の脳腔は、第三脳室である。一部の実施形態では、1つまたは複数の脳腔は、中脳水道である。一部の実施形態では、1つまたは複数の脳腔は、第四脳室である。
【0115】
改変B細胞は、単回投与量または複数回投与量として投与され得る。一部の実施形態では、用量は、遺伝子改変B細胞を最適以下の単回用量濃度で含み、最適以下の単回用量濃度は、(i)改変B細胞の複数の単回用量を検査するステップ;(ii)改変B細胞の最適な単回用量濃度を決定するステップであって、改変B細胞の単回用量濃度中に存在する改変B細胞の投与量の増加が、治療剤の産生をもたらす、ステップ;(iii)改変B細胞の複数の最適以下の単回用量濃度を試験するステップ;および(iv)改変B細胞の最適以下の単回用量を決定するステップであって、得られた投与量が、より低い投与量にわたって線形を超える増加をもたらし、最適以下の単回用量濃度が、最適な単回用量濃度の用量の約2分の1または約3分の1未満であるまたは約2分の1または約3分の1と等しい、ステップによって決定される。一部の実施形態では、投与するステップは、1つまたは複数の逐次用量の遺伝子改変B細胞を必要に応じて含む。
【0116】
特定の対象のための最適な投与量および処置レジームは、疾患の徴候について患者をモニタリングし、処置をしかるべく調整することによって、医学の分野の当業者によって決定され得る。処置はまた、処置有効性を評価するためにも使用され得る、生物学的試料(例えば、体液または組織試料)中の治療剤(例えば、目的の遺伝子またはタンパク質)のレベルを測定した後に調整され得、処置は、増加または減少に応じて調整され得る。
【0117】
本開示の一部の態様では、複数回投与用レジームのための、改変B細胞の最適な投与量は、対象についてB細胞の最適な単回用量濃度を最初に決定し、改変B細胞の最適以下の単回用量濃度を提供するために、最適な単回用量濃度中に存在するB細胞の数を減少させ、改変B細胞の最適以下の単回用量濃度の2つまたはそれよりも多くの投与量を対象に投与することによって、決定され得る。一部の態様では、改変B細胞の最適以下の単回用量濃度の2つ、3つまたはそれよりも多くの投与量が、対象に投与される。一部の態様では、対象への、改変B細胞の最適以下の単回用量濃度の2つ、3つまたはそれよりも多くの投与量の投与は、改変B細胞が発現するように操作された治療用ポリペプチドの相乗的なin vivo産生を生じる。一部の態様では、最適以下の単回用量濃度は、最適な単回用量濃度の2もしくは3、4、5、6、7、8、9、10分の1、または最適な単回用量濃度未満を含む。一部の態様では、治療用ポリペプチドは、IDUAである。
【0118】
一実施形態では、改変B細胞の単回用量が、対象に投与される。一実施形態では、改変B細胞の2つまたはそれよりも多くの用量が、対象に逐次投与される。一実施形態では、改変B細胞の3つの用量が、対象に逐次投与される。一実施形態では、改変B細胞の用量は、毎週、隔週、毎月、隔月、3カ月毎、半年毎、毎年または隔年、対象に投与される。一実施形態では、改変B細胞によって産生された治療剤の量が減少する場合、改変B細胞の第2のまたは後続の用量が、対象に投与される。
【0119】
一部の実施形態では、106/キログラムの範囲内の、より少ない数のB細胞が投与され得る。一部の実施形態では、B細胞は、1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108、5×109、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011または1×1012細胞で、対象に投与される。
【0120】
一部の実施形態では、改変B細胞の用量は、所望の量(例えば、有効量)の治療剤が対象において検出されるまで、ある特定の頻度で(例えば、毎週、隔週、毎月、隔月または3カ月毎)、対象に投与される。一部の実施形態では、治療剤の量は、対象においてモニタリングされる。一実施形態では、改変B細胞によって産生された治療剤の量が所望の量を下回って減少する場合、改変B細胞の後続の用量が、対象に投与される。一部の実施形態では、所望の量は、所望の効果を生じる範囲である。例えば、MPS Iを有する個体においてグリコサミノグリカン(GAG)の量を低減させるための方法では、IDUAの所望の量は、IDUAの非存在下でのGAGのレベルと比較して、ある特定の組織におけるGAGのレベルを減少させる量である。
【0121】
本開示のB細胞は、いくつものマトリックスを使用して投与することもできる。マトリックスは、組織工学の状況の中で長年にわたって利用されてきた(例えば、Principles of Tissue Engineering (Lanza, Langer, and Chick (eds.), 1997を参照されたい)。本開示は、かかるマトリックスを、B細胞を支持し維持するための人工リンパ系臓器として機能するという新規の状況の中で利用する。したがって、本開示は、組織操作における有用性が実証されたマトリックス組成物および製剤を利用することができる。したがって、本開示の組成物、デバイスおよび方法において使用され得るマトリックスの型は、事実上無制限であり、これには、生物学的マトリックスおよび合成マトリックスの両方が含まれ得る。特定の一例では、米国特許第5,980,889号;同第5,913,998号;同第5,902,745号;同第5,843,069号;同第5,787,900号;または同第5,626,561号によって示される組成物およびデバイスが利用される。マトリックスは、哺乳動物宿主に投与した場合に生体適合性であることに一般に関連する特色を含む。マトリックスは、天然のおよび/または合成の材料から形成され得る。マトリックスは、動物の身体中に永続的な構造もしくは除去可能な構造、例えば、インプラントを残すことが望ましい場合に、非生分解性であってもよく;または生分解性であってもよい。マトリックスは、スポンジ、インプラント、管、telfaパッド、ファイバー、ホローファイバー、凍結乾燥成分、ゲル、粉末、多孔性組成物またはナノ粒子の形態を取り得る。さらに、マトリックスは、播種された細胞または産生されたサイトカインまたは他の活性薬剤の徐放を可能にするように設計され得る。ある特定の実施形態では、本開示のマトリックスは、可撓性かつ弾性であり、無機塩、水性流体、および酸素を含む溶存気体剤などの物質に対して透過性の半固体足場として記載され得る。
【0122】
マトリックスは、生体適合性物質の例として本明細書で使用される。しかし、本開示は、マトリックスに限定されず、したがって、マトリックス(単数または複数)という用語が出現する場合はいつでも、これらの用語は、細胞保持または細胞横断を可能にし、生体適合性であり、物質自体が半透過性メンブレンであるような物質、または特定の半透過性物質と併せて使用されるような物質のいずれかによって直接、高分子の横断を可能にすることができる、デバイスおよび他の物質を含むと解釈すべきである。
【0123】
一部の実施形態では、対象は、哺乳動物である。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0124】
一部の実施形態では、対象は、リソソーム蓄積機能不全に関連する疾患または障害を有する。一部の実施形態では、リソソーム蓄積機能不全に関連する疾患または障害は、酵素アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)欠損によって引き起こされる。一部の実施形態では、対象は、ムコ多糖症I型(MPS I)を有する。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞の投与は、対象の、リソソーム蓄積機能不全に関連する疾患または障害を処置する。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞の投与は、対象のMPS Iを処置する。
【0125】
一部の実施形態では、IDUAを発現するように遺伝子改変されたB細胞(IDUA+B細胞)を投与することは、MPS Iを有するまたは有すると疑われる対象を処置するために使用される。一部の実施形態では、IDUA+B細胞の単回の最適な用量が、対象に投与される。一部の実施形態では、IDUA+B細胞の2つまたはそれよりも多くの用量が、対象に投与される。一部の実施形態では、対象に投与されるIDUA+B細胞の2つまたはそれよりも多くの用量は、IDUA+B細胞の単回の最適な用量よりも少ないIDUA+B細胞を含む。一部の実施形態では、IDUA+B細胞の2つまたはそれよりも多くの用量が、IDUA+B細胞の最大限に有効な単回用量を下回るIDUA+B細胞の投与量で、対象に投与される場合。一部の実施形態では、IDUA+B細胞を対象に投与することは、健康な対照対象において見られる、IDUAの正常レベルを生じる。一部の実施形態では、IDUA+B細胞を対象に投与することは、対象において、IDUAの正常よりも高いレベルを生じる。一部の実施形態では、IDUA+B細胞を対象に投与することは、対象におけるGAGのレベルを正常レベルに低減させる。一部の実施形態では、IDUA+B細胞を対象に投与することは、対象におけるGAGの正常レベルよりも下まで、対象におけるGAGのレベルを低減させる。
治療剤
【0126】
本明細書で使用される場合、「目的の遺伝子」または「遺伝子」または「目的の核酸」は、トランスフェクトされた標的細胞において発現される導入遺伝子を指す。用語「遺伝子」が使用され得るが、これは、これがゲノムDNA中で見出される遺伝子であること、および用語「核酸」と相互交換可能に使用されることを暗示するわけではない。一般に、目的の核酸は、治療剤をコードするために適切な核酸を提供し、cDNAまたはDNAを含み得、イントロンを含んでも含まなくてもよいが、一般には、イントロンを含まない。他の場所で述べられているように、目的の核酸は、標的細胞において目的のタンパク質を効果的に発現させるために、発現制御配列に作動可能に連結される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるベクターは、1つまたは複数の目的の遺伝子を含み得、2、3、4もしくは5つ、またはそれよりも多くの目的の遺伝子を含み得る。
【0127】
本明細書に記載される遺伝子改変B細胞によって送達される治療剤は、タンパク質であり得る。本明細書に記載される使用のための目的のタンパク質は、所望の活性を提供する任意のタンパク質を含む。これに関して、目的のタンパク質には、酵素が含まれるがこれに限定されない。
【0128】
一部の実施形態では、目的の核酸は、タンパク質をコードする。一部の実施形態では、目的の核酸は、酵素をコードする。一部の実施形態では、目的の核酸は、リソソーム蓄積障害を処置するための酵素をコードする。一部の実施形態では、目的の核酸は、イズロニダーゼ(IDUA)をコードする。
【0129】
一部の実施形態では、改変B細胞によって産生される治療剤は、タンパク質である。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞によって産生される治療剤は、酵素である。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞によって産生される治療剤は、イズロニダーゼ(IDUA)である。
【0130】
したがって、本開示は、B細胞を遺伝子改変するための、本開示の治療剤(例えば、目的のタンパク質)をコードするポリヌクレオチド(単離されたまたは精製されたまたは純粋なポリヌクレオチド)、かかるポリヌクレオチドを含むベクター(クローニングベクターおよび発現ベクターが含まれる)、および本開示に従うポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換またはトランスフェクトされた細胞(例えば、宿主細胞)を提供する。ある特定の実施形態では、本開示の目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)が企図される。目的のタンパク質をコードする発現カセットもまた、本明細書で企図される。
【0131】
本開示は、本開示のポリヌクレオチドを含むベクター、特に、組換え発現構築物にも関する。一実施形態では、本開示は、そのようなタンパク質コード配列の転写、翻訳およびプロセシングを引き起こすまたは容易にする他のポリヌクレオチド配列と共に、本開示のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを企図する。原核生物宿主および真核生物宿主との使用に適切なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, NY, (1989)に記載されている。例示的なクローニング/発現ベクターには、プラスミド、ファージミド、ファスミド(phasmid)、コスミド、ウイルス、人工染色体、またはその中に含有されるポリヌクレオチドの増幅、移入および/もしくは発現のために適切な当該分野で公知の任意の核酸ビヒクルに基づき得る、クローニングベクター、シャトルベクターおよび発現構築物が含まれる。
細胞および組成物
【0132】
一部の実施形態では、本明細書に記載される改変B細胞は、in vitroで活性化/分化されており、本明細書に記載される治療剤を発現するようにトランスフェクトされている。一部の実施形態では、本明細書に記載される改変B細胞は、in vitroで活性化/分化されており、本明細書に記載される治療剤を発現するように操作されている(例えば、標的化導入遺伝子組込みアプローチ、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、メガヌクレアーゼまたはCRISPR媒介導入遺伝子組込みを使用して)。一部の実施形態では、組成物は、形質B細胞へと分化しており、トランスフェクトまたは他の方法で操作されており、1種または複数の目的のタンパク質を発現する、B細胞を含む。標的細胞集団、例えば、トランスフェクトまたは他の方法で操作され、活性化された、本開示のB細胞集団は、単独で、あるいは希釈剤および/または他の構成要素、例えば、サイトカインもしくは細胞集団と組み合わせた医薬組成物として、投与され得る。
【0133】
一実施形態では、1種または複数の目的のタンパク質を発現するように操作された改変B細胞を、in vitroでの活性化/分化後に、改変B細胞が特定の化学誘引物質に対する最適な遊走能を有する時点で、培養物から収集する。一部の実施形態では、最適な遊走能は、B細胞培養の7日目、8日目または9日目であり得る。一部の実施形態では、最適な遊走能は、トランスフェクションまたは操作後、B細胞培養の5日目、6日目または7日目であり得る。一部の実施形態では、最適な遊走能は、トランスフェクションまたは操作後、B細胞培養の8日目、あるいはトランスフェクションまたは操作後の培養における8日目よりも後(例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日目、または20日目よりも後)であり得る。一部の実施形態では、最適な遊走能は、B細胞培養の10日目よりも前であり得る。一部の実施形態では、最適な遊走能は、トランスフェクションまたは操作後、B細胞培養の8日目よりも前であり得る。一部の実施形態では、最適な遊走能は、B細胞培養の6日目または7日目であり得る。一部の実施形態では、最適な遊走能は、トランスフェクションまたは操作後、B細胞培養の4日目または5日目であり得る。一部の実施形態では、最適な遊走能は、B細胞培養の9日目よりも前であり得る。一部の実施形態では、最適な遊走能は、トランスフェクションまたは操作後、B細胞培養の7日目よりも前であり得る。一部の実施形態では、最適な遊走能は、CXCL12への改変B細胞のホーミングに最適である。一部の実施形態では、最適な遊走能は、改変B細胞の1つまたは複数の投与を受けている対象の骨髄への改変B細胞のホーミングに最適である。一部の実施形態では、B細胞を、培養における約7日目~約9日目に、CXCL12および/または対象の骨髄への最適な遊走能で、対象への投与のために収集する。一部の実施形態では、B細胞を、トランスフェクションまたは操作後の培養における約5日目~約7日目に、CXCL12および/または対象の骨髄への最適な遊走能で、対象への投与のために収集する。一部の実施形態では、B細胞を、培養における約10日目よりも前に、CXCL12および/または対象の骨髄への最適な遊走能で、対象への投与のために収集する。一部の実施形態では、B細胞を、トランスフェクションまたは操作後の培養における約8日目よりも前に、CXCL12および/または対象の骨髄への最適な遊走能で、対象への投与のために収集する。一部の実施形態では、最適な遊走能は、CXCL13への改変B細胞のホーミングに最適である。一部の実施形態では、最適な遊走能は、改変B細胞の1つまたは複数の投与を受けている対象における炎症の部位への改変B細胞のホーミングに最適である。一部の実施形態では、B細胞を、培養における約6日目または約7日目に、CXCL13および/または対象における炎症の部位への最適な遊走能で、対象への投与のために収集する。一部の実施形態では、B細胞を、トランスフェクションまたは操作後の培養における約4日目または約5日目に、CXCL13および/または対象における炎症の部位への最適な遊走能で、対象への投与のために収集する。一部の実施形態では、B細胞を、培養における約10日目よりも前に、CXCL13および/または炎症の部位への最適な遊走能で、対象への投与のために収集する。一部の実施形態では、B細胞を、トランスフェクションまたは操作後の培養における約8日目よりも前に、CXCL13および/または炎症の部位への最適な遊走能で、対象への投与のために収集する。
【0134】
一部の実施形態では、最適な遊走能は、CXCL12およびCXCL13の両方への改変B細胞のホーミングに最適である。一部の実施形態では、B細胞を、B細胞培養の7日目に、CXCL12およびCXCL13の両方へのホーミングに最適な遊走能で収集する。一部の実施形態では、B細胞を、トランスフェクションまたは操作後、B細胞培養の5日目に、CXCL12およびCXCL13の両方へのホーミングに最適な遊走能で収集する。
【0135】
一部の実施形態では、操作されたB細胞を、特定の化学誘引物質に対する走化性アッセイにおいてB細胞の少なくとも約20%が遊走すると、収集する。例えば、例によって限定されないが、操作されたB細胞(例えば、IDUAを産生する)は、CXCL12に対する走化性アッセイにおいてB細胞の少なくとも約20%が遊走すると、収集され得る。あるいは、別の非限定的な例では、操作されたB細胞(例えば、IDUAを産生する)は、CXCL13に対する走化性アッセイにおいてB細胞の少なくとも約20%が遊走すると、収集され得る。さらに、操作されたB細胞(例えば、IDUAを産生する)は、特定の化学誘引物質(例えば、CXCL12もしくはCXCL13)に対する走化性アッセイにおいてB細胞の少なくとも約30%が遊走すると、または特定の化学誘引物質(例えば、CXCL12もしくはCXCL13)に対する走化性アッセイにおいてB細胞の少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、もしくは少なくとも約70%が遊走すると、収集され得る。さらに、操作されたB細胞(例えば、IDUAを産生する)は、走化性アッセイにおいてB細胞の70%よりも多くが遊走すると、収集され得る。かかる走化性アッセイは、当該分野で公知であり、本明細書に記載されている(例えば、本明細書の実施例6を参照されたい)。
【0136】
簡潔に述べると、本開示の細胞組成物は、1種または複数の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、トランスフェクトされており、本明細書に記載される治療剤を発現している、分化および活性化B細胞集団を含み得る。かかる組成物は、緩衝液、例えば、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水、乳酸リンゲル溶液など;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えば、グリシン;抗酸化剤;キレート剤、例えば、EDTAまたはグルタチオン;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);ならびに保存剤を含み得る。本開示の組成物は、好ましくは、中枢神経系中への直接的注射のために製剤化される。
【0137】
一部の実施形態では、改変B細胞は、医薬組成物を構成し得る。
【0138】
本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」は、薬学的な許容される組成物を指し、組成物は、操作されたB細胞を含み、一部の実施形態では、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0139】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、動物における、より特には、ヒトおよび/または非ヒト哺乳動物における使用にとって安全な他の製剤に加えて、連邦もしくは州政府の規制機関によって承認されたこと、または米国薬局方、他の一般に認識された薬局方において列挙されたことを意味する。
【0140】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」または「薬学的に有効な賦形剤」は、操作されたB細胞がそれと共に投与される賦形剤、希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/またはビヒクルを指す。かかる担体は、無菌液体、例えば、水、ならびに石油、動物、植物もしくは合成起源のものが含まれる油、例えば、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油など、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒であり得る。抗細菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;および張度の調整のための剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースもまた、担体であり得る。担体と組み合わせて組成物を産生するための方法は、当業者に公知である。一部の実施形態では、言語「薬学的に許容される担体」は、医薬品投与と適合性の、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などを含むことが意図される。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および剤の使用は、当該分野で周知である。例えば、Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., (Lippincott, Williams & Wilkins 2003)を参照されたい。任意の従来の媒体または剤が活性化合物と不適合でない限り、組成物におけるかかる使用が企図される。
【0141】
投与に適切な医薬組成物の製剤は、典型的には、一般に、薬学的に許容される担体、例えば、無菌水または無菌等張食塩水と組み合わせて、有効成分を含む。かかる製剤は、ボーラス投与のためまたは継続投与のために適切な形態で、調製、包装または販売され得る。注射可能な製剤は、単位剤形で、例えば、アンプル中で、または保存剤を含有する複数回投与用容器中で、調製、包装または販売され得る。投与のための製剤には、懸濁剤、液剤、油性または水性ビヒクル中の乳剤、ペースト剤などが含まれるがこれらに限定されない。かかる製剤は、懸濁化剤、安定化剤または分散剤が含まれるがこれらに限定されない1種または複数の追加の成分をさらに含み得る。製剤には、賦形剤、例えば、塩、炭水化物および緩衝剤、または無菌の発熱物質フリーの水を含有し得る、水性液剤もまた含まれ得る。例示的な剤形には、無菌水溶液、例えば、水性プロピレングリコールまたはデキストロース溶液中の液剤または懸濁剤が含まれ得る。かかる剤形は、所望により、適切に緩衝化され得る。
【0142】
本発明の組成物は、医薬組成物中で従来見出された他の補助成分をさらに含有し得る。したがって、例えば、組成物は、追加の適合性の薬学的に活性な材料、例えば、鎮痒薬、収斂薬、局所麻酔薬もしくは抗炎症剤などを含有し得る、または本発明の組成物の種々の剤形を物理的に製剤化する際に有用な追加の材料、例えば、色素、保存剤、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤および安定剤を含有し得る。しかし、かかる材料は、添加される場合、本開示の組成物の成分の生物学的活性を過度に妨害すべきではない。製剤は、無菌化され得、所望により、製剤と有害に相互作用しない補助剤、例えば、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、バッファー、着色料および/または芳香物質などと混合され得る。
【0143】
一部の実施形態では、1種または複数の薬学的に活性な成分が、操作されたB細胞と組み合わせて使用され得る。
【0144】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法、または当該分野で公知の他の方法を使用してトランスフェクトおよび活性化B細胞は、薬剤、例えば、抗ウイルス剤、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、ブスルファン(bisulfin)、ボルテゾミブ、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノレートおよびFK506、抗体、または他の免疫除去剤、例えば、CAMPATH、抗CD3抗体もしくは他の抗体療法、サイトキシン(cytoxin)、フルダラビン(fiudaribine)、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、ならびに照射による処置が含まれるがこれらに限定されないいくつもの適切な処置モダリティと併せて(例えば、その前に、それと同時に、またはその後に)、患者に投与される。これらの薬物は、カルシウム依存的ホスファターゼであるカルシニューリンを阻害する(シクロスポリンおよびFK506)、プロテアソームを阻害する(ボルテゾミブ)、または成長因子誘導性シグナル伝達にとって重要なp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)のいずれかである(Liu et al, Cell 66:807-815, 1991;Henderson et al, Immun. 73:316-321, 1991;Bierer et al, Curr. Opin. Immun. 5:763-773, 1993;Isoniemi (上記))。
【0145】
患者に投与される上記組成物の投与量は、処置されている状態および処置のレシピエントの正確な性質によって変動する。ヒト投与のための投与量の拡大縮小は、当該分野で一般に認められた実務に従って実施され得る。
【0146】
一部の実施形態では、細胞組成物は、投与前に純度について評価される。一部の実施形態では、細胞組成物は、治療剤産生のロバスト性について試験される。一部の実施形態では、細胞組成物は、無菌性について試験される。一部の実施形態では、細胞組成物は、それがレシピエント対象とマッチしていることを確認するためにスクリーニングされる。
【0147】
一部の実施形態では、細胞組成物は、4℃で貯蔵および/または出荷される。別の実施形態では、細胞組成物は、貯蔵および/または出荷のために凍結される。細胞組成物は、例えば、-20℃または-80℃で凍結され得る。一部の実施形態では、細胞組成物を凍結させるステップは、液体窒素を含む。一実施形態では、細胞組成物は、速度制御フリーザーを使用して凍結される。したがって、本明細書に記載される方法は、解凍するステップをさらに含み得る。
操作されたB細胞
【0148】
本明細書に記載される方法のある特定の実施形態では、B細胞は、当業者に公知のいくつもの技法、例えば、FICOLL(商標)(高密度溶液を調製するために使用され得る、スクロースとエピクロロヒドリンとのコポリマー)分離を使用して、対象から収集された血液の単位から得られ得る。B細胞は、末梢血単核球(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、感染の部位からの組織、脾臓組織、および腫瘍が含まれるいくつかの供給源から得られ得る。一部の実施形態では、個体の循環血液からの細胞は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒細胞、B細胞、他の有核白血球が含まれるリンパ球、赤血球および血小板を含有する。一部の実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞は、血漿画分を除去するため、および引き続くプロセシングするステップのために細胞を適切な緩衝液または培地中に入れるために、洗浄され得る。本明細書に記載される方法の一実施形態では、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。代替的実施形態では、洗浄溶液は、カルシウムを欠如し、マグネシウムを欠如し得る、または全てではないにしても多くの二価カチオンを欠如し得る。当業者であれば容易に理解するように、洗浄するステップは、当業者に公知の方法によって、例えば、半自動化「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991細胞プロセッサー)を製造業者の指示に従って使用することによって達成され得る。洗浄後、細胞は、種々の生体適合性の緩衝液、例えば、PBSなどに再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分が除去され、細胞が、培養培地中に直接再懸濁され得る。
【0149】
B細胞は、当該分野で公知の技法を使用して、末梢血または白血球アフェレーシスから単離され得る。例えば、PBMCは、FICOLL(商標)(Sigma-Aldrich、St Louis、MO)を使用して単離され、CD19+B細胞は、当該分野で公知の種々の抗体のいずれかを使用する陰性または陽性選択、例えば、Rosette tetrameric complex system(StemCell Technologies、Vancouver、Canada)またはMACS(商標)MicroBead Technology(Miltenyi Biotec、San Diego、CA)によって精製され得る。一部の実施形態では、メモリーB細胞は、Jourdan et al, (Blood. 2009 Dec 10; 114(25):5173-81)に記載されるように単離される。例えば、抗CD2磁気ビーズを使用したCD2+細胞の除去の後、CD19+CD27+メモリーB細胞は、FACSによって選別され得る。骨髄形質細胞(BMPC)は、抗CD138磁気マイクロビーズ選別または他の類似の方法および試薬を使用して精製され得る。ヒトB細胞は、例えば、CD19 MicroBeads,human(Miltenyi Biotec、San Diego、CA)を使用して単離され得る。ヒトメモリーB細胞は、例えば、Memory B Cell Isolation Kit,human(Miltenyi Biotec、San Diego、CA)を使用して単離され得る。
【0150】
R&D SystemsのMagCellect Human B Cell Isolation Kit(Minneapolis、MN)などの他の単離キットが市販されている。一部の実施形態では、休止B細胞は、(Defranco et al, (1982) J. Exp. Med. 155: 1523)に記載されるように、非連続Percoll勾配での沈降によって調製され得る。
【0151】
一部の実施形態では、末梢血単核球(PBMC)は、勾配ベースの精製(例えば、FICOLL(商標))を使用して、血液試料から得られる。一部の実施形態では、PBMCは、アフェレーシスベースの収集から得られる。一実施形態では、B細胞は、汎B細胞を単離することによって、PBMCから単離される。単離するステップは、陽性および/または陰性選択を利用し得る。一部の実施形態では、陰性選択は、抗CD3コンジュゲートマイクロビーズを使用してT細胞を枯渇させ、それにより、T細胞枯渇画分を提供することを含む。一部の実施形態では、メモリーB細胞は、CD27についての陽性選択によって、汎B細胞またはT細胞枯渇画分から単離される。特定の一実施形態では、メモリーB細胞は、望まれない細胞の枯渇と、CD27 MicroBeadsを用いた引き続く陽性選択とによって、単離される。望まれない細胞、例えば、T細胞、NK細胞、単球、樹状細胞、顆粒細胞、血小板および赤血球細胞は、CD2、CD14、CD16、CD36、CD43およびCD235a(グリコホリンA)に対するビオチン化抗体のカクテル、ならびにAnti-Biotin MicroBeadsを使用して、枯渇され得る。
【0152】
一部の実施形態では、スイッチメモリーB細胞が得られる。「スイッチメモリーB細胞」または「スイッチB細胞」は、本明細書で使用される場合、アイソタイプクラススイッチングを受けたB細胞を指す。一部の実施形態では、スイッチメモリーB細胞は、IgGについて陽性選択される。一部の実施形態では、スイッチメモリーB細胞は、IgDおよびIgM発現細胞を枯渇させることによって得られる。スイッチメモリーB細胞は、例えば、Switched Memory B Cell Kit,human(Miltenyi Biotec、San Diego、CA)を使用して単離され得る。
【0153】
例えば、一部の実施形態では、非標的細胞は、ビオチン化CD2、CD14、CD16、CD36、CD43、CD235a(グリコホリンA)、抗IgMおよび抗IgD抗体のカクテルを用いて標識され得る。これらの細胞は、Anti-Biotin MicroBeadsを用いて引き続いて磁気的に標識され得る。高度に純粋なスイッチメモリーB細胞は、磁気的に標識された細胞の枯渇によって得られ得る。
【0154】
一部の実施形態では、メモリーB細胞に独自の遺伝子、例えば、CD27遺伝子(またはメモリーB細胞に特異的であり、ナイーブB細胞では発現されない他の遺伝子)など由来のプロモーター配列が、選択可能なマーカー、例えば、メトトレキセートの存在下でのメモリーB細胞の陽性選択を可能にする変異したジヒドロ葉酸レダクターゼなどの発現を駆動するために使用される。別の実施形態では、汎B細胞遺伝子、例えば、CD19遺伝子など由来のプロモーター配列が、選択可能なマーカー、例えば、メトトレキセートの存在下でのメモリーB細胞の陽性選択を可能にする変異したジヒドロ葉酸レダクターゼなどの発現を駆動するために使用される。別の実施形態では、T細胞は、CD3を使用して、またはシクロスポリンの添加によって、枯渇される。一部の実施形態では、CD138+細胞は、陽性選択によって汎B細胞から単離される。一部の実施形態では、CD138+細胞は、陽性選択によってPBMCから単離される。一部の実施形態では、CD38+細胞は、陽性選択によって汎B細胞から単離される。一部の実施形態では、CD38+細胞は、陽性選択によってPBMCから単離される。一部の実施形態では、CD27+細胞は、陽性選択によってPBMCから単離される。一部の実施形態では、メモリーB細胞および/または形質細胞は、当該分野で利用可能なin vitro培養法を使用して、PBMCから選択的に拡大増殖される。
【0155】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、対象に対して自家である。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、対象に対して同種異系である。
【0156】
B細胞、例えば、メモリーB細胞は、B細胞を活性化し、形質細胞もしくは形質芽細胞またはそれら両方へと分化させるin vitro方法を使用して培養され得る。当業者によって認識されるように、形質細胞は、標準的なフローサイトメトリー法を使用して、細胞表面タンパク質発現パターンによって同定され得る。例えば、最終分化した形質細胞は、比較的少数の表面抗原を発現し、共通の汎B細胞マーカー、例えば、CD19およびCD20を発現しない。その代わり、形質細胞は、CD38、CD78、CD138およびIL-6Rの発現、ならびにCD45の発現の欠如によって、同定され得る。ナイーブB細胞はCD27-であり、メモリーB細胞はCD27+であり、形質細胞はCD27++であるので、CD27もまた、形質細胞を同定するために使用され得る。形質細胞は、高レベルのCD38およびCD138を発現する。
【0157】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、CD20-、CD38+およびCD138+である。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、CD20-、CD38+およびCD138-である。
【0158】
本明細書で使用される場合、ウイルスベクターに関して別段記載されない限り、「ベクター」は、それが連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を意味する。例示的なベクターには、プラスミド、ミニサークル、トランスポゾン(例えば、スリーピングビューティートランスポゾン)、酵母人工染色体、自己複製性RNAおよびウイルスゲノムが含まれる。ある特定のベクターは、宿主細胞において自律的に複製することができるが、他のベクターは、宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある特定のベクターは、「組換え発現ベクター」(または単に、「発現ベクター」)と本明細書で呼ばれ、これは、発現制御配列に動作可能に連結された核酸配列を含有し、したがって、それらの配列の発現を指示することが可能である。ある特定の実施形態では、発現構築物は、プラスミドベクターに由来する。事例的な構築物には、アンピシリン耐性遺伝子、ポリアデニル化シグナルおよびT7プロモーター部位をコードする核酸配列を有する、改変されたpNASSベクター(Clontech、Palo Alto、CA);CHEF1プロモーターを有するpDEF38およびpNEF38(CMC ICOS Biologies,Inc.);ならびにCMVプロモーターを有するpD18(Lonza)が含まれる。他の適切な哺乳動物発現ベクターが周知である(例えば、Ausubel et al, 1995;Sambrook et al,上記を参照されたい;例えば、Invitrogen、San Diego、CA;Novagen、Madison、Wl;Pharmacia、Piscataway、NJのカタログもまた参照されたい)。
【0159】
融合タンパク質の増強された産生レベルを促進するために、適切な調節制御下にジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)コード配列を含む、有用な構築物が調製され得、このレベルは、適切な選択剤(例えば、メトトレキセート)の適用後の遺伝子増幅から生じる。一実施形態では、首尾よく転位されたB細胞を富化するための、メトトレキセート(MTX)中でのインキュベーションと組み合わせた、薬物耐性DHFRと共に治療的遺伝子(例えば、IDUA)をコードする二機能性トランスポゾンの使用は、より強力な産物を生成する。
【0160】
一般に、組換え発現ベクターは、上記のように、複製起点、および宿主細胞の形質転換を可能にする選択可能なマーカー、ならびに下流の構造配列の転写を指示する、高度に発現される遺伝子に由来するプロモーターを含む。本開示に従うポリヌクレオチドと作動可能に連結したベクターは、クローニングまたは発現構築物を生じる。例示的なクローニング/発現構築物は、本開示のポリヌクレオチドに作動可能に連結された少なくとも1つの発現制御エレメント、例えば、プロモーターを含有する。追加の発現制御エレメント、例えば、エンハンサー、因子特異的結合部位、ターミネーターおよびリボソーム結合部位もまた、本開示に従うベクターおよびクローニング/発現構築物において企図される。本開示に従うポリヌクレオチドの異種構造配列は、翻訳開始および終結配列と、適切な相でアセンブルされる。したがって、例えば、本明細書で提供されるコード核酸は、宿主細胞においてかかるタンパク質を発現させるための組換え発現構築物としての種々の発現ベクター構築物(例えば、ミニサークル)のいずれか1つ中に含まれ得る。
【0161】
適切なDNA配列(複数可)は、例えば、種々の手順によって、ベクター中に挿入され得る。一般に、DNA配列は、当該分野で公知の手順によって、適切な制限エンドヌクレアーゼ切断部位(複数可)中に挿入される。DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどが関与する酵素反応のための、クローニング、DNA単離、増幅および精製のための標準的な技法、ならびに種々の分離技法が企図される。いくつかの標準的な技法は、例えば、Ausubel et al. (Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc. Inc. & John Wiley & Sons, Inc., Boston, MA, 1993);Sambrook et al. (Molecular Cloning, Second Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Plainview, NY, 1989);Maniatis et al. (Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory, Plainview, NY, 1982);Glover (Ed.) (DNA Cloning Vol. I and II, IRL Press, Oxford, UK, 1985);Hames and Higgins (Eds.) (Nucleic Acid Hybridization, IRL Press, Oxford, UK, 1985);および他の場所に記載されている。
【0162】
発現ベクター中のDNA配列は、mRNA合成を指示するための少なくとも1つの適切な発現制御配列(例えば、構成的プロモーターまたは調節型プロモーター)に動作可能に連結される。かかる発現制御配列の代表的な例には、上記のように、真核生物細胞またはそれらのウイルスのプロモーターが含まれる。プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクター、カナマイシンベクター、または選択可能なマーカーを有する他のベクターを使用して、任意の所望の遺伝子から選択され得る。真核生物プロモーターには、CMV最初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、EEK、EF1アルファ、ならびにマウスメタロチオネイン-1が含まれる。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に当業者のレベルの範囲内であり、本開示に従うタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターまたは調節型プロモーターを含むある特定の特に好ましい組換え発現構築物の調製は、本明細書に記載される。
【0163】
一部の実施形態では、プラスミドは、配列番号1の配列を含み得る。一部の実施形態では、プラスミドは、配列番号1の配列からなり得る。一部の実施形態では、プラスミドは、配列番号1と少なくとも約60%同一である配列を含むかまたはそれからなり得る。一部の実施形態では、プラスミドは、配列番号1と少なくとも約85%同一である、または配列番号1と少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは99%超同一である配列を含むかまたはそれからなり得る。
【0164】
本開示のポリヌクレオチドのバリアントもまた企図される。バリアントポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるように、規定された配列のポリヌクレオチドのうち1つと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは、95%、96%、97%、98%、99%もしくは99.9%同一である、または約65~68℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムの、もしくは約42℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび50%ホルムアミドの、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、規定された配列のポリヌクレオチドのうち1つにハイブリダイズする。ポリヌクレオチドバリアントは、本明細書に記載される機能性を有する結合ドメインまたはその融合タンパク質をコードする能力を保持する。
【0165】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、導入遺伝子でトランスフェクトされる。B細胞をトランスフェクトするための例示的な方法は、WO2014/152832およびWO2016/100932に提供されており、これらは共に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。B細胞のトランスフェクションは、DNAまたはRNAをB細胞中に導入するための当該分野で利用可能な種々の方法のいずれかを使用して、達成され得る。適切な技法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、電気穿孔、圧力媒介トランスフェクションまたは「細胞スクイージング」(例えば、CellSqueezeマイクロ流体システム、SQZ Biotechnologies)、ナノ粒子媒介またはリポソーム媒介トランスフェクション、およびレトロウイルスまたは他のウイルス、例えば、ワクシニアを使用する形質導入が含まれ得る。例えば、Graham et al., 1973, Virology 52:456;Sambrook et al, 2001, Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories;Davis et al, 1986, Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier;Chu et al, 1981, Gene 13: 197;US5,124,259;US5,297,983;US5,283,185;US5,661,018;US6,878,548;US7,799,555;US8,551,780;およびUS8,633,029を参照されたい。B細胞に適切な市販の電気穿孔技法の一例は、Nucleofector(商標)トランスフェクションテクノロジーである。トランスフェクションは、上記1つまたは複数の活性化および/または分化因子の存在下での単離されたB細胞のin vitro培養の前またはその間に行われ得る。例えば、細胞は、in vitro培養の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38または39日目にトランスフェクトされる。一部の実施形態では、細胞は、in vitro培養の1、2または3日目にトランスフェクトされる。一部の実施形態では、細胞は、2日目にトランスフェクトされる。例えば、細胞は、例えば、プラスミド、トランスポゾン、ミニサークルまたは自己複製性RNAの送達のために、in vitro培養の2日目に電気穿孔される。別の実施形態では、細胞は、in vitro培養の4、5、6または7日目にトランスフェクトされる。一部の実施形態では、細胞は、in vitro培養の6日目にトランスフェクトされる。別の実施形態では、細胞は、in vitro培養の5日目にトランスフェクトされる。
【0166】
一部の実施形態では、細胞を、活性化の前に、トランスフェクトまたは他の方法で操作する(例えば、導入遺伝子の標的化組込みを介して)。一部の実施形態では、細胞を、活性化の間に、トランスフェクトまたは他の方法で操作する(例えば、導入遺伝子の標的化組込みを介して)。一部の実施形態では、細胞を、活性化の後に、トランスフェクトまたは他の方法で操作する(例えば、導入遺伝子の標的化組込みを介して)。一部の実施形態では、細胞を、分化の前に、トランスフェクトまたは他の方法で操作する(例えば、導入遺伝子の標的化組込みを介して)。一部の実施形態では、細胞を、分化の間に、トランスフェクトまたは他の方法で操作する(例えば、導入遺伝子の標的化組込みを介して)。一部の実施形態では、細胞を、分化の後に、トランスフェクトまたは他の方法で操作する(例えば、導入遺伝子の標的化組込みを介して)。
【0167】
一部の実施形態では、非ウイルスベクターが、DNAまたはRNAをメモリーB細胞および/または形質細胞に送達するために使用される。例えば、ウイルス組込み系を必要とせずにメモリーB細胞および/または形質細胞のトランスフェクションを容易にし得る系には、限定せずに、トランスポゾン(例えば、スリーピングビューティートランスポゾン系)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)、メガヌクレアーゼ、ミニサークル、レプリコン、人工染色体(例えば、細菌人工染色体、哺乳動物人工染色体および酵母人工染色体)、プラスミド、コスミドおよびバクテリオファージが含まれる。
【0168】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、B細胞において治療剤を発現するようにスリーピングビューティートランスポゾンを使用して調製したものである。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、B細胞において治療剤を発現するように組換えウイルスベクターを使用して調製したものである。一部の実施形態では、組換えウイルスベクターは、組換えレトロウイルス、組換えレンチウイルス、組換えアデノウイルスまたは組換えアデノ随伴ウイルスをコードする。
【0169】
一部の実施形態では、かかる非ウイルス依存的ベクター系は、当該分野で公知のまたは以下に記載されるウイルスベクターを介しても送達され得る。例えば、一部の実施形態では、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス)が、1種もしくは複数の非ウイルスベクター(例えば、上述のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)、メガヌクレアーゼのうち1種もしくは複数など)、または標的化組込みを容易にすることが可能な任意の他の酵素/相補的ベクター、ポリヌクレオチドおよび/もしくはポリペプチドを送達するために利用される。したがって、一部の実施形態では、細胞(例えば、B細胞、例えば、メモリーB細胞および/または形質細胞)は、標的化組込み法を介して、外因性配列(例えば、治療用ポリペプチド、例えば、IDUAをコードする配列)を発現するように操作され得る。かかる方法は、当該分野で公知であり、1つまたは複数のヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas、メガヌクレアーゼ)を使用して細胞中の内因性遺伝子座を切断するステップ、および内因性遺伝子座中に組み込まれ、細胞において発現されるように、導入遺伝子を細胞に投与するステップを含み得る。導入遺伝子は、ヌクレアーゼによる切断点またはその近傍において宿主細胞のDNA中に組み込まれるドナー配列中に含まれ得る。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、B細胞のゲノムの遺伝子編集によって、またはB細胞のゲノムへの、治療剤をコードするポリヌクレオチド配列の標的化組込みによって調製した。
【0170】
一部の実施形態では、標的化組込みは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介遺伝子組込み、CRISPR媒介遺伝子組込みもしくは遺伝子編集、TALE-ヌクレアーゼ媒介遺伝子組込み、またはメガヌクレアーゼ媒介遺伝子組込みを含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドの標的化組込みは、相同組換えにより行った。一部の実施形態では、標的化組込みは、標的部位においてDNA切断を誘導することができるヌクレアーゼのウイルスベクター媒介送達を含む。一部の実施形態では、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Casヌクレアーゼ、TALE-ヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼである。
【0171】
外因性配列(例えば、治療用ポリペプチド、例えば、IDUAをコードする配列)の組込みは、組換えを介して起こり得る。当業者に明らかなように、「組換え」は、非相同末端結合(NHEJ)および相同組換えによるドナー捕捉が含まれるがこれらに限定されない、2つのポリヌクレオチド間での遺伝情報の交換のプロセスを指す。組換えは、相同組換えであり得る。本開示の目的のために、「相同組換え(HR)」は、例えば、相同性指向修復機構を介した、細胞における二本鎖切断の修復の間に起こる、かかる交換の特殊化した形態を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列相同性を利用し、それにより、「ドナー」分子(例えば、ドナーポリヌクレオチド配列、またはかかる配列を含むドナーベクター)は、「標的」分子(即ち、二本鎖切断を経験した分子)の修復のための鋳型として、細胞のDNA修復機械によって、およびドナーから標的への遺伝情報の移入を引き起こすこれらの手段によって、利用される。HR指向組込みの一部の実施形態では、ドナー分子は、ゲノムに対して相同性の少なくとも2つの領域(「相同性アーム」)を含有し得る。一部の実施形態では、相同性アームは、例えば、少なくとも(of least)50~100塩基対長であり得る。相同性アームは、標的化組込みが起こる切断部位に隣接するゲノムDNAの領域に対する実質的なDNA相同性を有し得る。ドナー分子の相同性アームは、標的ゲノムまたは標的DNA遺伝子座中に組み込まれるDNAに隣接し得る。染色体の切断と、その後の、プラスミドDNAの相同な領域を鋳型として使用する修復とは、相同性アームに挟まれた介在する導入遺伝子の、ゲノム中への移入をもたらし得る。例えば、Roller et al. (1989) Proc. Natl. Acad Sci. USA. 86(22): 8927-8931;Thomas et al. (1986) Cell 44(3):419-428を参照されたい。この型の相同性指向標的化組込みの頻度は、標的領域の近傍での二本鎖切断の意図的な作出によって、最大で105倍増加され得る(Hockemeyer et al. (2009) Nature Biotech. 27(9):851-857;Lombardo et al. (2007) Nature Biotech. 25(11): 1298-1306;Moehle et al. (2007) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104(9):3055-3060: Rouet et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 (13):6064-6068)。
【0172】
導入遺伝子が(例えば、HRなどの組換えによって)標的細胞のゲノム中に組み込まれ得るようにゲノム遺伝子座の標的化切断を媒介することが可能な任意のヌクレアーゼが、本開示に従う細胞(例えば、メモリーB細胞または形質芽細胞)を操作する際に利用され得る。
【0173】
二本鎖切断(DSB)またはニックは、特異的切断をガイドするために、部位特異的ヌクレアーゼ、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクタードメインヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼによって、またはCRISPR媒介の系を、操作されたcrRNA/tract RNA(シングルガイドRNA)と共に使用することによって、作り出され得る。例えば、Burgess (2013) Nature Reviews Genetics 14:80-81, Umov et al. (2010) Nature 435(7042):646-51;米国特許出願公開第2003/0232410号;同第2005/0208489号;同第2005/0026157号、同第2005/0064474号;同第2006/0188987号、同第2009/0263900号;同第2009/0117617号;同第2010/0047805号;同第2011/0207221号;同第2011/0301073号および国際特許出願公開第WO2007/014275号を参照されたく、これらの開示は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0174】
一部の実施形態では、細胞(例えば、メモリーB細胞または形質芽細胞)を、ドナー構築物のジンクフィンガーヌクレアーゼ媒介標的化組込みを介して操作する。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、1つまたは複数のジンクフィンガーを介して配列特異的様式でDNAを結合する「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(ZFP)(または結合ドメイン)と、ヌクレアーゼ酵素とのカップリングに起因して、特異性を有する標的ヌクレオチド配列を認識および切断することができる酵素である。ZFNは、標的DNA配列の部位特異的切断を容易にし得る操作されたZFNを形成するために、ZFP DNA結合ドメインに動作可能に連結された任意の適切な切断ドメイン(例えば、ヌクレアーゼ酵素)を含み得る(例えば、Kim et al. (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93(3): 1156-1160を参照されたい)。例えば、ZFNは、FORI酵素またはFOK1酵素の一部分に連結された標的特異的ZFPを含み得る。一部の実施形態では、ZFN媒介標的化組込みアプローチにおいて使用されるZFNは、2つの別々の分子を利用し、これらは各々、各々がZFPに結合したFOK1酵素のサブユニットを含み、各ZFPは、標的切断部位に隣接するDNA配列に対する特異性を有し、2つのZFPがそのそれぞれの標的DNA部位に結合すると、FOK1酵素サブユニットは、互いに近位になり、一緒に結合して、標的切断部位を切断するヌクレアーゼ活性を活性化する。ZFNは、種々の生物におけるゲノム改変のために使用されてきた(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060188987号;同第20060063231号;および国際公開WO07/014,275)。カスタムZFPおよびZFNは、例えば、Sigma Aldrich(St.Louis、MO)から市販されており、DNAの任意の位置が、かかるカスタムZFNを利用して慣用的に標的化および切断され得る。
【0175】
一部の実施形態では、細胞(例えば、メモリーB細胞または形質芽細胞)を、ドナー構築物のCRISPR媒介(例えば、CRISPR/Cas)ヌクレアーゼ媒介組込みを介して操作する。CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)/Cas(CRISPR関連)ヌクレアーゼ系は、ゲノム操作のために使用され得る、細菌系に基づく操作されたヌクレアーゼ系である。これは、多くの細菌および古細菌の適応免疫応答の一部に基づく。ウイルスまたはプラスミドが細菌に侵入すると、侵入者のDNAのセグメントは、「免疫」応答によってCRISPR RNA(crRNA)に変換される。このcrRNAは次いで、部分的相補性の領域を介して、tracrRNAと呼ばれる別の型のRNAと会合して、「プロトスペーサー」と呼ばれる、標的DNA中のcrRNAと相同な領域へと、Cas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼをガイドする。Casは、DNAを切断して、crRNA転写物内に含有される20ヌクレオチドのガイド配列によって特定される部位において、DSBにおいて平滑末端を生成する。Casは、部位特異的DNAの認識および切断のために、crRNAおよびtracrRNAの両方を必要とする。crRNAおよびtracrRNAが、1つの分子(「シングルガイドRNA」)へと組み合わされ得、シングルガイドRNAのcrRNA相当部分が、任意の所望の配列を標的化するようにCasヌクレアーゼをガイドするように操作され得るように、この系は現在操作されている(Jinek et al (2012) Science 337, p. 816-821、Jinek et al, (2013), eLife 2:e00471およびDavid Segal, (2013) eLife 2:e00563を参照されたい)。したがって、CRISPR/Cas系は、ゲノム中の所望の標的においてDSBを作り出すように操作され得、DSBの修復は、修復阻害剤の使用によって影響を受けて、エラープローン修復における増加を引き起こし得る。一部の実施形態では、CRISPR/Casヌクレアーゼ媒介組込みは、II型CRISPRを利用する。II型CRISPRは、最も十分に特徴付けられた系の1つであり、4つの逐次ステップで、標的化DNA二本鎖切断を実行する。第1に、2つの非コードRNAであるpre-crRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAが、pre-crRNAのリピート領域にハイブリダイズし、pre-crRNAの、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体は、crRNA上のスペーサーと、標的認識のための追加の要件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣にある標的DNA上のプロトスペーサーとの間でのワトソン・クリック塩基対合を介して、Casを標的DNAに向ける。第4に、Casが、標的DNAの切断を媒介して、プロトスペーサー内に二本鎖切断を作り出す。
【0176】
Cas関連のCRISPR/Cas系は、2つのRNA非コード成分:tracrRNA、および同一なダイレクトリピート(DR)によって間隔を空けられたヌクレアーゼガイド配列(スペーサー)を含有するpre-crRNAアレイを含む。ゲノム操作を達成するためにCRISPR/Cas系を使用するためには、これらのRNAの両方の機能が存在しなければならない(Cong et al, (2013) Sciencexpress 1/10.1126/science 1231143を参照されたい)。一部の実施形態では、tracrRNAおよびpre-crRNAは、別々の発現構築物を介して、または別々のRNAとして供給される。他の実施形態では、操作された成熟crRNA(標的特異性を付与する)がtracrRNA(Casとの相互作用を供給する)に融合されたキメラRNAが構築されて、キメラcr-RNA-tracrRNAハイブリッド(シングルガイドRNAとも呼ばれる)が作り出される。(Jinek同書およびCong同書を参照されたい)。
【0177】
一部の実施形態では、crRNAおよびtracrRNAの両方を含有するシングルガイドRNAは、任意の所望の配列を標的化するようにCasヌクレアーゼをガイドするように操作され得る(例えば、Jinek et al (2012) Science 337, p. 816-821、Jinek et al, (2013), eLife 2:e00471、David Segal, (2013) eLife 2:e00563)。したがって、CRISPR/Cas系は、ゲノム中の所望の標的においてDSBを作り出すように操作され得る。
【0178】
カスタムCRISPR/Cas系は、例えば、Dharmacon(Lafayette、CO)から市販されており、DNAのいずれの位置も、かかるカスタムシングルガイドRNA配列を使用して慣用的に標的化および切断され得る。組換えのための一本鎖DNA鋳型は、(例えば、当該分野で公知のおよび市販のオリゴヌクレオチド合成法を介して)合成されるか、またはベクター、例えば、ウイルスベクター、例えば、AAV中で提供され得る。一部の実施形態では、細胞(例えば、メモリーB細胞または形質芽細胞)を、ドナー構築物のTALE-ヌクレアーゼ(TALEN)媒介標的化組込みを介して操作する。「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1つまたは複数のTALEリピートドメイン/ユニットを含むポリペプチドである。リピートドメインは、その同族標的DNA配列へのTALEの結合に関与する。単一の「リピートユニット」(「リピート」とも呼ばれる)は、典型的には、33~35アミノ酸長であり、天然に存在するTALEタンパク質内の他のTALEリピート配列と、少なくともいくらかの配列相同性を示す。TAL-エフェクターは、核局在化配列、酸性転写活性化ドメイン、およびタンデムリピートの集中したドメインを含有し得、各リピートは、これらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要なおよそ34アミノ酸を含有する(例えば、Schornack S, et al (2006) J Plant Physiol 163(3): 256-272)。TALエフェクターは、およそ102bpを含む、タンデムリピートで見出される配列に依存し、リピートは、典型的には、互いに91~100%相同である(例えば、Bonas et al (1989) Mol Gen Genet 218: 127-136)。新たな配列と相互作用し、非内因性レポーター遺伝子の発現を活性化することができる人工転写因子を作製するために、これらのDNA結合リピートが、新たな組合せおよびリピート数を有するタンパク質へと操作され得る(例えば、Bonas et al (1989) Mol Gen Genet 218: 127-136)。操作されたTALタンパク質は、標的特異的DNA配列を切断するTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)を得るために、Fokl切断ハーフドメインに連結され得る(例えば、Christian et al (2010) Genetics epub 10.1534/genetics. l l0.120717)。
【0179】
カスタムTALENは、例えば、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)から市販されており、DNAのいずれの位置も、慣用的に標的化および切断され得る。
【0180】
一部の実施形態では、細胞(例えば、メモリーB細胞または形質芽細胞)を、ドナー構築物のメガヌクレアーゼ媒介標的化組込みを介して操作する。メガヌクレアーゼ(または「ホーミングエンドヌクレアーゼ」)は、12塩基対よりも大きい認識配列において二本鎖DNAを結合し切断するエンドヌクレアーゼである。天然に存在するメガヌクレアーゼは、モノマー性(monomelic)(例えば、I-Scel)またはダイマー性(例えば、I-Crel)であり得る。天然に存在するメガヌクレアーゼは、15~40塩基対の切断部位を認識し、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CystボックスファミリーおよびHNHファミリーへと一般にグループ分けされる。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼには、I-Scel、I-Ceul、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-Csml、I-Panl、I-Scell、I-Ppol、I-SceIII、I-Crel、I-Tevl、I-TevIIおよびI-TevIIIが含まれる。それらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388;Dujon et al. (1989) Gene 82: 115-118;Perler et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125-1127;Jasin (1996) Trends Genet. 12:224-228;Gimble et al. (1996) J. Mol. Biol. 263: 163-180;Argast et al. (1998) J. Mol. Biol. 280:345-353およびNew England Biolabsカタログもまた参照されたい。用語「メガヌクレアーゼ」には、モノマー性メガヌクレアーゼ、ダイマー性メガヌクレアーゼ、およびダイマー性メガヌクレアーゼを形成するように会合するモノマーが含まれる。
【0181】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物は、操作された(天然に存在しない)ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を含むヌクレアーゼを使用する。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼ、例えば、I-Scel、I-Ceul、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-Csml、I-Panl、I-SceII、I-Ppol、I-SceIII、I-Crel、I-Tevl、I-TevIIおよびI-TevIIIの認識配列は、公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379- 3388;Dujon et al. (1989) Gene 82: 115-118;Perler et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125-1127;Jasin (1996) Trends Genet. 12:224-228;Gimble et al. (1996) J. Mol. Biol. 263: 163-180;Argast et al. (1998) J. Mol. Biol. 280:345-353およびNew England Biolabsカタログもまた参照されたい。さらに、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然の標的部位を結合するように操作され得る。例えば、Chevalier et al. (2002) Molec. Cell 10:895-905;Epinat et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31 :2952-2962;Ashworth et al. (2006) Nature 441:656-659;Paques et al. (2007) Current Gene Therapy 7:49-66;米国特許出願公開第20070117128号を参照されたい。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、ヌクレアーゼという観点から全体として(即ち、ヌクレアーゼが同族切断ドメインを含むように)変更され得るか、または異種切断ドメインに融合され得る。カスタムメガヌクレアーゼは、例えば、New England Biolabs(Ipswich、MA)から市販されており、DNAのいずれの位置も、慣用的に標的化および切断され得る。
【0182】
B細胞の操作は、コードされたヌクレアーゼを含むベクターがB細胞によって取り込まれるように、例えば、ヌクレアーゼをコードする1つまたは複数のベクターを介して、1種または複数のヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas、メガヌクレアーゼ)をB細胞に投与することを含み得る。ベクターは、ウイルスベクターであり得る。
【0183】
一部の実施形態では、ヌクレアーゼが、細胞(例えば、メモリーB細胞または形質細胞)中の特異的内因性遺伝子座(例えば、セーフハーバー遺伝子または目的の遺伝子座)を切断し、1つまたは複数の外因性(ドナー)配列(例えば、導入遺伝子)(例えば、これらの外因性配列を含む1つまたは複数のベクター)が投与される。ヌクレアーゼは、標的DNA中に二本鎖切断(DSB)または一本鎖切断(ニック)を誘導し得る。一部の実施形態では、ドナー導入遺伝子の標的化挿入は、相同性指向修復(HDR)、非相同性修復機構(例えば、NHEJ媒介末端捕捉)、または細胞のゲノム中への導入遺伝子の組込みの部位におけるヌクレオチド(例えば、内因性配列)の挿入および/もしくは欠失を介して実施され得る。
【0184】
一部の実施形態では、B細胞をトランスフェクトする方法は、B細胞をベクターと接触させる前に、B細胞を電気穿孔することを含む。一部の実施形態では、細胞は、in vitro培養の1、2、3、4、5、6、7、8または9日目に電気穿孔される。一部の実施形態では、細胞は、プラスミドの送達のために、in vitro培養の2日目に電気穿孔される。一部の実施形態では、細胞は、in vitro培養の1、2、3、4、5、6、7、8または9日目に、トランスポゾンを使用してトランスフェクトされる。一部の実施形態では、細胞は、in vitro培養の1、2、3、4、5、6、7、8または9日目に、ミニサークルを使用してトランスフェクトされる。一部の実施形態では、スリーピングビューティートランスポゾンの電気穿孔が、in vitro培養の2日目に行われる。
【0185】
一部の実施形態では、B細胞は、B細胞の少なくとも一部分をトランスフェクトするのに十分な条件下で、プロモーターに作動可能に連結された目的の核酸を含むベクターと接触させられる。一部の実施形態では、B細胞は、B細胞の少なくとも5%をトランスフェクトするのに十分な条件下で、プロモーターに作動可能に連結された目的の核酸を含むベクターと接触させられる。一部の実施形態では、B細胞は、B細胞の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらには100%をトランスフェクトするのに十分な条件下で、ベクターと接触させられる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるようにin vitroで培養されたB細胞がトランスフェクトされ、この場合、培養されたB細胞は、B細胞の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらには100%をトランスフェクトするのに十分な条件下で、本明細書に記載されるベクターと接触させられる。
【0186】
ウイルスベクターは、メモリーB細胞および/または形質細胞を形質導入するために用いられ得る。ウイルスベクターの例には、限定せずに、アデノウイルスベースのベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクター、レトロウイルスベクター、レトロウイルス-アデノウイルスベクター、ならびにアンプリコンベクター、複製欠損HSVおよび弱毒化HSVが含まれる、単純ヘルペスウイルス(HSV)に由来するベクターが含まれる(例えば、その各々の全体が参照により組み込まれる、Krisky, Gene Ther. 5: 1517-30, 1998;Pfeifer, Annu. Rev. Genomics Hum. Genet. 2: 177-211, 2001を参照されたい)。一部の実施形態では、細胞は、in vitro培養の1、2、3、4、5、6、7、8または9日目に、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)で形質導入される。一部の実施形態では、細胞は、in vitro培養の5日目に、ウイルスベクターで形質導入される。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスである。一部の実施形態では、細胞は、in vitro培養の1日目に、麻疹ウイルスシュードタイプ化レンチウイルスで形質導入される。
【0187】
一部の実施形態では、B細胞は、当該分野における種々の公知の技法のいずれかを使用して、レトロウイルスベクターで形質導入される(例えば、Science 12 April 1996 272: 263- 267;Blood 2007, 99:2342- 2350;Blood 2009, 1 13: 1422-1431;Blood 2009 Oct 8; 1 14(15):3173-80;Blood. 2003;101 (6):2167-2174;Current Protocols in Molecular Biology or Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York, N.Y.(2009)を参照されたい)。B細胞のウイルス形質導入の追加の記載は、WO2011/085247およびWO2014/152832中で見出され得、これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0188】
例えば、ドナー由来のPBMC、Bリンパ球またはTリンパ球、および他のB細胞がん細胞、例えば、B-CLLが単離され、無血清の、あるいは血清(例えば、5~10%FCS、ヒトAB血清、および血清代用品)、ならびにペニシリン/ストレプトマイシンならびに/または他の適切なサプリメント、例えば、トランスフェリンおよび/もしくはインスリンを補充した、本明細書に記載されるIMDM培地またはRPMI 1640(GibcoBRL Invitrogen、Auckland、New Zealand)あるいは他の適切な培地中で培養され得る。一部の実施形態では、細胞は、48ウェルプレート中に1×105細胞で播種され、慣用的な方法論を使用して、当業者によって慣用的に最適化され得る種々の用量で、濃縮ベクターが添加される。一実施形態では、B細胞は、10%AB血清、5%FCS、50ng/ml rhSCF、10ng/ml rhlL-15および5ng/ml rhlL-2を補充したRPMI中でMS5細胞単層に移され、必要に応じて培地が定期的にリフレッシュされる。当業者に認識されるように、他の適切な培地およびサプリメントが、所望により使用され得る。
【0189】
一部の実施形態は、レトロウイルスベクター、またはレトロウイルスに由来するベクターの使用に関する。「レトロウイルス」は、動物細胞に感染することが可能であり、それらのRNAゲノムから、次いで宿主ゲノム中に典型的には組み込まれるDNAコピーを生成するために感染の初期段階において酵素逆転写酵素を利用する、エンベロープRNAウイルスである。レトロウイルスベクターの例、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)由来ベクター、標的細胞、例えば、造血先駆細胞およびそれらの分化した子孫において長期の安定な発現を提供する、マウス幹細胞ウイルスに基づくレトロウイルスベクター(例えば、Hawley et al., PNAS USA 93: 10297-10302, 1996;Keller et al., Blood 92:877-887, 1998を参照されたい)、ハイブリッドベクター(例えば、Choi, et al, Stem Cells 19:236-246, 2001を参照されたい)、ならびに複雑レトロウイルス由来ベクター、例えば、レンチウイルスベクター。
【0190】
一部の実施形態では、B細胞は、B細胞の少なくとも一部分を形質導入するのに十分な条件下で、プロモーターに作動可能に連結された目的の核酸を含むレトロウイルスベクターと接触させられる。一実施形態では、B細胞は、B細胞の少なくとも2%を形質導入するのに十分な条件下で、プロモーターに作動可能に連結された目的の核酸を含むレトロウイルスベクターと接触させられる。一部の実施形態では、B細胞は、休止B細胞の少なくとも2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらには100%を形質導入するのに十分な条件下で、ベクターと接触させられる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるようにin vitroで培養された、分化および活性化B細胞が形質導入され、この場合、培養された分化/活性化B細胞は、分化および活性化B細胞の少なくとも2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらには100%を形質導入するのに十分な条件下で、本明細書に記載されるベクターと接触させられる。
【0191】
一部の実施形態では、形質導入の前に、細胞は、当業者に公知であり、慣用的に最適化される適切な濃度で、Staphylococcus Aureus Cowan(SAC;Calbiochem、San Diego、CA)および/またはIL-2で前刺激される。当業者に公知であり、本明細書に記載される、他のB細胞活性化因子(例えば、PMA)が使用され得る。
【0192】
上記のように、一部の実施形態は、レンチウイルスベクターを用いる。用語「レンチウイルス」は、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染することが可能な複雑レトロウイルスの属を指す。レンチウイルスの例には、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV 1型およびHIV 2型が含まれる)、ビスナ・マエディ、ヤギ関節炎脳炎ウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。レンチウイルスベクターは、これらのレンチウイルスのうちいずれか1つまたは複数に由来し得る(例えば、その各々の全体が参照により組み込まれる、Evans et al, Hum Gene Ther. 10: 1479-1489, 1999;Case et al, PNAS USA 96:2988-2993, 1999;Uchida et al, PNAS USA 95: 1 1939-1 1944, 1998;Miyoshi et al, Science 283:682-686, 1999;Sutton et al, J Virol 72:5781 -5788, 1998;およびFrecha et al, Blood. 1 12:4843-52, 2008を参照されたい)。
【0193】
休止TおよびB細胞は、HIVアクセサリータンパク質(vif、vpr、vpuおよびnef)のほとんどを保有するVSVGコーティングされたLVによって形質導入され得ることが実証されている(例えば、Frecha et al, 2010 Mol. Therapy 18: 1748を参照されたい)。ある特定の実施形態では、レトロウイルスベクターは、レンチウイルスゲノム、例えば、HIVゲノムまたはSIVゲノム由来のある特定の最小配列を含む。レンチウイルスのゲノムは、典型的には、5’長鎖末端反復配列(LTR)領域、gag遺伝子、pol遺伝子、env遺伝子、アクセサリー遺伝子(例えば、nef、vif、vpr、vpu、tat、rev)および3’LTR領域で構成される。ウイルスLTRは、U3、R(リピート)およびU5と呼ばれる3つの領域へと分割される。U3領域は、エンハンサーおよびプロモーターエレメントを含有し、U5領域は、ポリアデニル化シグナルを含有し、R領域が、U3領域とU5領域とを分離している。R領域の転写された配列は、ウイルスRNAの5’末端および3’末端の両方に出現する(例えば、その各々の全体が参照により組み込まれる、"RNA Viruses: A Practical Approach" (Alan J. Cann, Ed., Oxford University Press, 2000);O Narayan, J. Gen. Virology. 70: 1617-1639, 1989;Fields et al, Fundamental Virology Raven Press., 1990;Miyoshi et al, J Virol. 72:8150-7,1998;および米国特許第6,013,516号を参照されたい)。レンチウイルスベクターは、所望により、ベクターの活性を調節するために、レンチウイルスゲノムのこれらのエレメントのうちいずれか1つもしくは複数を含み得、または例えば、レンチウイルス複製の病理学的効果を低減させるため、もしくはレンチウイルスベクターを単一ラウンドの感染に制限するために、これらのエレメントのうち1つもしくは複数中に、欠失、挿入、置換もしくは変異を含有し得る。
【0194】
典型的には、最小レトロウイルスベクターは、ある特定の5’LTRおよび3’LTR配列、1つまたは複数の目的の遺伝子(標的細胞において発現される)、1つまたは複数のプロモーター、ならびにRNAのパッケージングのためのシス作用性配列を含む。本明細書に記載され、当該分野で公知の、他の調節配列が含まれ得る。ウイルスベクターは、典型的には、パッケージング細胞系、例えば、真核生物細胞(例えば、293-HEK)中にトランスフェクトされ得、また、細菌におけるプラスミドの複製に有用な配列を典型的には含む、プラスミド中にクローニングされる。
【0195】
ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルス、例えば、レンチウイルスの5’および/または3’LTR由来の配列を含む。LTR配列は、任意の種由来の任意のレンチウイルス由来のLTR配列であり得る。例えば、LTR配列は、HIV、SIV、FIVまたはBIV由来のLTR配列であり得る。好ましくは、LTR配列は、HIV LTR配列である。ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスの5’LTR由来のRおよびU5配列、ならびにレンチウイルス由来の不活性化されたまたは「自己不活性化」3’LTRを含む。「自己不活性化3’LTR」は、LTR配列が下流の遺伝子の発現を駆動しないように防止する変異、置換または欠失を含有する、3’長鎖末端反復配列(LTR)である。3’LTR由来の1コピーのU3領域は、組み込まれたプロウイルスにおける両方のLTRの生成のための鋳型として作用する。したがって、不活性化性の欠失または変異を有する3’LTRがプロウイルスの5’LTRとして組み込まれる場合、5’LTRからの転写は不可能である。これは、ウイルスエンハンサー/プロモーターと任意の内部エンハンサー/プロモーターとの間での競合を排除する。自己不活性化3’LTRは、例えば、Zufferey et al, J Virol. 72:9873-9880, 1998;Miyoshi et al, J Virol. 72:8150-8157, 1998;およびIwakuma et al., J Virol. 261: 120-132, 1999に記載されており、その各々は、その全体が参照により組み込まれる。自己不活性化3’LTRは、当該分野で公知の任意の方法によって生成され得る。ある特定の実施形態では、3’LTRのU3エレメントは、そのエンハンサー配列、好ましくは、TATAボックス、Splおよび/またはNF-カッパB部位の欠失を含有する。自己不活性化3’LTRの結果として、宿主細胞ゲノム中に組み込まれたプロウイルスは、不活化5’LTRを含む。
【0196】
本明細書で提供されるベクターは、典型的には、1つまたは複数の標的細胞において望ましく発現されるタンパク質(または他の分子、例えば、siRNA)をコードする遺伝子を含む。ウイルスベクターでは、目的の遺伝子は、好ましくは、5’LTR配列と3’LTR配列との間に位置する。さらに、目的の遺伝子は、好ましくは、遺伝子が標的細胞中に取り込まれたときに、目的の遺伝子の発現を特定の様式で調節するために、他の遺伝エレメント、例えば、転写調節配列、例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサーと機能的関連性がある。ある特定の実施形態では、有用な転写調節配列は、時間的および空間的の両方で活性に関して高度に調節される転写調節配列である。
【0197】
一部の実施形態では、1つまたは複数の追加の遺伝子が、不均一集団内、例えば、ヒト対象内でのトランスフェクトされた標的細胞の選択的殺滅を主に可能にするために、安全性の尺度として取り込まれ得る。一部の実施形態では、選択された遺伝子は、チミジンキナーゼ遺伝子(TK)であり、その発現は、標的細胞を、薬物ガンシクロビルの作用に対して感受性にする。一部の実施形態では、自殺遺伝子は、ダイマー化薬物によって活性化されるカスパーゼ9自殺遺伝子である(例えば、Tey et al, Biology of Blood and Marrow Transplantation 13:913-924, 2007を参照されたい)。ある特定の実施形態では、マーカータンパク質をコードする遺伝子は、所望のタンパク質を発現している細胞の同定および/または選択を可能にするために、ウイルスまたは非ウイルスベクター中で、主要遺伝子の前または後に配置される。ある特定の実施形態は、目的の主要遺伝子と共に、蛍光マーカータンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)または赤色蛍光タンパク質(RFP)を取り込む。1種または複数の追加のレポーター遺伝子が含まれる場合、目的の主要遺伝子をレポーター遺伝子および/または任意の他の目的の遺伝子から分離する、IRES配列または2Aエレメントもまた含まれ得る。
【0198】
ある特定の実施形態は、1種または複数の選択可能なマーカーをコードする遺伝子を用い得る。例には、真核生物細胞または原核生物細胞において有効な選択可能なマーカー、例えば、選択的培養培地中で成長させた形質転換された宿主細胞の生存または成長に必要な因子をコードする、薬物耐性の遺伝子が含まれる。例示的な選択遺伝子は、抗生物質もしくは他の毒素、例えば、G418、ハイグロマイシンB、ピューロマイシン、ゼオシン、ウアバイン、ブラストサイジン、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートもしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質をコードし、栄養要求性欠損の補完、または補給は、別々のプラスミド上に存在し得、ウイルスベクターとの共トランスフェクションによって導入され得る。一実施形態では、遺伝子は、メトトレキセート耐性を付与する変異体ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする。ある特定の他の実施形態は、トランスフェクトされた細胞のタグ化および検出もしくは精製のために使用され得る1種もしくは複数の細胞表面受容体(one or cell surface receptors)(例えば、低親和性神経成長因子受容体(LNGFR))または形質導入タグ系として有用な他のかかる受容体をコードする遺伝子を用い得る。例えば、Lauer et al., Cancer Gene Ther. 2000 Mar;7(3):430-7を参照されたい。
【0199】
ある特定のウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクターは、1つまたは複数の異種プロモーター、エンハンサーまたはそれら両方を用いる。一部の実施形態では、レトロウイルスまたはレンチウイルスの5’LTR由来のU3配列は、ウイルス構築物中でプロモーターまたはエンハンサー配列で置き換えられ得る。ある特定の実施形態は、ウイルスベクターの5’LTR配列と3’LTR配列との間に位置し、目的の遺伝子に作動可能に連結した、「内部」プロモーター/エンハンサーを用いる。
【0200】
「機能的関連性」および「作動可能に連結した」は、限定せずに、プロモーターおよび/またはエンハンサーが適切な調節分子と接触したときに遺伝子の発現が影響を受けるように、遺伝子が、プロモーターおよび/またはエンハンサーに関して正確な位置および配向にあることを意味する。パッケージング細胞系におけるウイルスRNAゲノムの発現を調節(例えば、増加、減少)させる、感染した標的細胞における選択された目的の遺伝子の発現を調節する、またはその両方である、任意のエンハンサー/プロモーター組合せが使用され得る。
【0201】
プロモーターは、ポリメラーゼ結合および転写が生じるのを可能にするDNA配列によって形成された発現制御エレメントである。プロモーターは、選択された目的の遺伝子の開始コドンの上流(5’側)(典型的には、約100~1000bp内)に位置し、それらが作動可能に連結されたコードポリヌクレオチド配列の転写および翻訳を制御する、非翻訳配列である。プロモーターは、誘導性または構成的であり得る。誘導性プロモーターは、培養条件におけるいくらかの変化、例えば、温度における変化に応答して、それらの制御下にあるDNAから、増加したレベルの転写を開始させる。プロモーターは、一方向性または二方向性であり得る。二方向性プロモーターは、2つの遺伝子、例えば、目的の遺伝子および選択マーカーを共発現させるために使用され得る。あるいは、各々が異なる遺伝子の発現を制御する2つのプロモーターを、同じベクター中に反対の配向で含む二方向性プロモーター構成が利用され得る。
【0202】
種々のプロモーターが、プロモーターをポリヌクレオチドコード配列に作動可能に連結させるための方法と同様、当該分野で公知である。天然のプロモーター配列および多くの異種プロモーターの両方が、選択された目的の遺伝子の発現を指示するために使用され得る。ある特定の実施形態は、異種プロモーターを用いるが、それは、これらが一般に、天然のプロモーターと比較して、所望のタンパク質のより多い転写およびより高い収量を可能にするからである。
【0203】
ある特定の実施形態は、異種ウイルスプロモーターを用い得る。かかるプロモーターの例には、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られたものが含まれる。ある特定の実施形態は、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、ヒートショックプロモーター、または目的の遺伝子の天然の配列に関連するプロモーターを用い得る。典型的には、プロモーターは、標的細胞、例えば、活性化Bリンパ球、形質B細胞、メモリーB細胞または他のリンパ球標的細胞と適合性である。
【0204】
ある特定の実施形態は、RNAポリメラーゼIIおよびIIIプロモーターのうち1つまたは複数を用い得る。RNAポリメラーゼIIIプロモーターの適切な選択は、例えば、その全体が参照により組み込まれる、Paule and White. Nucleic Acids Research., Vol. 28, pp 1283-1298, 2000において見出され得る。RNAポリメラーゼIIおよびIIIプロモーターには、その下流のRNAコード配列を転写するようにそれぞれRNAポリメラーゼIIまたはIIIに指示し得る、任意の合成のまたは操作されたDNA断片もまた含まれる。さらに、ウイルスベクターの一部として使用されるRNAポリメラーゼIIまたはIII(Pol IIまたはIII)プロモーター(単数または複数)は、誘導性であり得る。任意の適切な誘導性Pol IIまたはIIIプロモーターが、本明細書に記載される方法と共に使用され得る。例示的なPol IIまたはIIIプロモーターには、Ohkawa and Taira, Human Gene Therapy, Vol. 11, pp 577-585, 2000;およびMeissner et al, Nucleic Acids Research, Vol. 29, pp 1672-1682, 2001に提供されるテトラサイクリン応答性プロモーターが含まれ、これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【0205】
使用され得る構成的プロモーターの非限定的な例には、ユビキチンのプロモーター、CMVプロモーター(例えば、Karasuyama et al, J. Exp. Med. 169: 13, 1989を参照されたい)、β-アクチン(例えば、Gunning et al., PNAS USA 84:4831 -4835, 1987を参照されたい)、伸長因子-1アルファ(EF-1アルファ)プロモーター、CAGプロモーター、およびpgkプロモーター(例えば、その各々が参照により組み込まれる、Adra et al, Gene 60:65-74, 1987;Singer-Sam et al, Gene 32:409- 417, 1984;および Dobson et al, Nucleic Acids Res. 10:2635-2637, 1982を参照されたい)が含まれる。組織特異的プロモーターの非限定的な例には、lckプロモーター(例えば、Garvin et al, Mol. Cell Biol. 8:3058-3064, 1988;およびTakadera et al, Mol. Cell Biol. 9:2173-2180, 1989を参照されたい)、ミオゲニンプロモーター(Yee et al, Genes and Development 7: 1277-1289. 1993)、およびthylプロモーター(例えば、Gundersen et al., Gene 1 13:207-214, 1992を参照されたい)が含まれる。
【0206】
プロモーターの追加の例には、Bリンパ球において機能的な、ユビキチン-Cプロモーター、ヒトμ重鎖プロモーターまたはIg重鎖プロモーター(例えば、MH)、およびヒトK軽鎖プロモーターまたはIg軽鎖プロモーター(例えば、EEK)が含まれる。MHプロモーターは、マトリックス会合領域に挟まれたιΕμエンハンサーが先行するヒトμ重鎖プロモーターを含有し、EEKプロモーターは、イントロン性エンハンサー(ιΕκ)、マトリックス会合領域、および3’エンハンサー(3Εκ)が先行するκ軽鎖プロモーターを含有する(例えば、Luo et al, Blood. 1 13: 1422-1431, 2009および米国特許出願公開第2010/0203630号を参照されたい)。したがって、ある特定の実施形態は、これらのプロモーターまたはエンハンサーエレメントのうち1つまたは複数を用い得る。
【0207】
一部の実施形態では、1つのプロモーターが、選択可能なマーカーの発現を駆動し、第2のプロモーターが、目的の遺伝子の発現を駆動する。例えば、一実施形態では、EF-1アルファプロモーターは、選択マーカー(例えば、DHFR)の産生を駆動し、ミニチュアCAGプロモーター(例えば、Fan et al. Human Gene Therapy 10:2273-2285, 1999を参照されたい)は、目的の遺伝子(例えば、IDUA)の発現を駆動する。上記のように、ある特定の実施形態は、目的の遺伝子の発現を増加させるために、エンハンサーエレメント、例えば、内部エンハンサーを用いる。エンハンサーは、その転写を増加させるようにプロモーターに対して作用する、通常は約10~300bp長の、DNAのシス作用性エレメントである。エンハンサー配列、例えば、エンハンサー、イントロン性エンハンサーおよび3’エンハンサーは、哺乳動物遺伝子(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、a-フェトプロテイン、インスリン)に由来し得る。複製起点の後ろ側(100~270bp)にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後ろ側にあるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが含まれる、真核生物ウイルス由来のエンハンサーもまた含まれる。エンハンサーは、抗原特異的ポリヌクレオチド配列に対して5’側または3’側の位置においてベクター中にスプライスされ得るが、好ましくは、プロモーターから5’側の部位に位置する。当業者は、所望の発現パターン(expression partem)に基づいて、適切なエンハンサーを選択する。
【0208】
一部の実施形態では、プロモーターは、遺伝子の誘導性発現を可能にするために選択される。テトラサイクリン応答性の系およびlacオペレーター-リプレッサー系が含まれる、誘導性発現のためのいくつかの系が、当該分野で公知である。プロモーターの組合せが、目的の遺伝子の所望の発現を得るために使用され得ることもまた企図される。当業者は、目的の生物および/または標的細胞における遺伝子の所望の発現パターンに基づいてプロモーターを選択することができる。
【0209】
ある特定のウイルスベクターは、ウイルス粒子中へのゲノムウイルスRNAの取り込みを促進するためのシス作用性パッケージング配列を含有する。例には、プサイ配列が含まれる。かかるシス作用性配列は、当該分野で公知である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるウイルスベクターは、2つまたはそれよりも多くの遺伝子を発現させ得、これは、例えば、第1の遺伝子を越えて各別々の遺伝子に作動可能に連結された内部プロモーターを取り込むことによって、共発現を容易にするエレメント、例えば、内部リボソーム進入配列(IRES)エレメント(参照により組み込まれる米国特許第4,937,190号)もしくは2Aエレメントを取り込むことによって、またはそれら両方によって、達成され得る。単なる例示として、単一のベクターが、所望の特異性を有する免疫グロブリン分子の各鎖をコードする配列を含む場合、IRESまたは2Aエレメントが使用され得る。例えば、第1のコード領域(重鎖または軽鎖のいずれかをコードする)は、プロモーターの直ぐ下流に位置し得、第2のコード領域(他方の鎖をコードする)は、第1のコード領域の下流に位置し得、IRESまたは2Aエレメントは、第1のコード領域と第2のコード領域との間に位置し、好ましくは、第2のコード領域に直接先行する。一部の実施形態では、IRESまたは2Aエレメントは、無関係の遺伝子、例えば、レポーター遺伝子、選択可能なマーカー、または免疫機能を増強する遺伝子を共発現させるために使用される。使用され得るIRES配列の例には、限定せずに、脳脊髄炎ウイルス(EMCV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)、ヒトライノウイルス(HRV)、コクサッキーウイルス(CSV)、ポリオウイルス(POLIO)、A型肝炎ウイルス(HAV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、およびペスチウイルス(例えば、ブタコレラウイルス(HOCV)およびウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV))のIRESエレメントが含まれる(例えば、その各々の全体が参照により組み込まれる、Le et al, Virus Genes 12: 135-147, 1996;およびLe et al, Nuc. Acids Res. 25:362-369, 1997を参照されたい)。2Aエレメントの一例には、口蹄疫ウイルス由来のF2A配列が含まれる。
【0210】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるベクターは、所望の結果を達成するための追加の遺伝エレメントもまた含有する。例えば、ある特定のウイルスベクターは、標的細胞におけるウイルスゲノムの核進入を容易にするシグナル、例えば、HIV-1フラップシグナルを含み得る。さらなる例として、ある特定のウイルスベクターは、標的細胞におけるプロウイルス組込み部位の特徴付けを容易にするエレメント、例えば、tRNAアンバーサプレッサー配列を含み得る。ある特定のウイルスベクターは、目的の遺伝子の発現を増強するように設計された1つまたは複数の遺伝エレメントを含有し得る。例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス応答性エレメント(WRE)が、構築物中に配置され得る(例えば、その各々の全体が参照により組み込まれる、Zufferey et al, J. Virol. 74:3668-3681, 1999;およびDeglon et al, Hum. Gene Ther. 11 : 179-190, 2000を参照されたい)。別の例として、ニワトリβ-グロビンインスレーターもまた、構築物中に含まれ得る。このエレメントは、メチル化およびヘテロクロマチン化の効果に起因する、標的細胞における組み込まれたDNAのサイレンシングの機会を低減させることが示されている。さらに、インスレーターは、内部エンハンサー、プロモーターおよび外因性遺伝子を、染色体上の組込み部位における周囲のDNAからの正または負の位置効果から遮蔽し得る。ある特定の実施形態は、これらの遺伝エレメントの各々を用いる。別の実施形態では、本明細書で提供されるウイルスベクターは、発現を増加させるために、ユビキタスクロマチンオープニングエレメント(UCOE)もまた含有し得る(例えば、Zhang F, et al, Molecular Therapy: The journal of the American Society of Gene Therapy 2010 Sep; 18(9): 1640- 9.を参照されたい)。
【0211】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス)は、主に、選択された細胞型を標的化するために、1つまたは複数の選択されたウイルス糖タンパク質またはエンベロープタンパク質で「シュードタイプ化される」。シュードタイプ化は、1種または複数の異種ウイルス糖タンパク質の、細胞表面ウイルス粒子上への取り込みを一般に指し、ウイルス粒子がその通常の標的細胞とは異なる選択された細胞に感染するのを可能にする場合が多い。「異種」エレメントは、ウイルスベクターのRNAゲノムが由来するウイルス以外のウイルスに由来する。典型的には、ウイルスベクターの糖タンパク質コード領域は、それ自体の糖タンパク質の発現を防止するために、欠失などによって遺伝的に変更されている。単なる例示として、HIV由来レンチウイルスベクター由来のエンベロープ糖タンパク質gp41および/またはgpl20は、典型的には、異種ウイルス糖タンパク質によるシュードタイプ化の前に除去される。
【0212】
一部の実施形態では、ウイルスベクターは、Bリンパ球を標的化する異種ウイルス糖タンパク質でシュードタイプ化される。一部の実施形態では、ウイルス糖タンパク質は、休止または静止状態Bリンパ球の選択的感染または形質導入を可能にする。一部の実施形態では、ウイルス糖タンパク質は、Bリンパ球である形質細胞、形質芽細胞、および活性化B細胞の選択的感染を可能にする。一部の実施形態では、ウイルス糖タンパク質は、静止状態Bリンパ球、形質芽細胞、形質細胞および活性化B細胞の感染または形質導入を可能にする。一部の実施形態では、ウイルス糖タンパク質は、B細胞慢性リンパ球白血病(B cell chronic lymphocyte leukemia)細胞の感染を可能にする。一実施形態では、ウイルスベクターは、VSV-Gでシュードタイプ化される。一部の実施形態では、異種ウイルス糖タンパク質は、麻疹ウイルス、例えば、エドモントン麻疹ウイルスの糖タンパク質に由来する。一部の実施形態では、麻疹ウイルス糖タンパク質ヘマグルチニン(H)、融合タンパク質(F)、またはそれら両方をシュードタイプ化する(例えば、その各々の全体が参照により組み込まれる、Frecha et al, Blood. 1 12:4843-52, 2008;およびFrecha et al, Blood. 1 14:3173-80, 2009を参照されたい)。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、テナガザル白血病ウイルス(GALV)でシュードタイプ化される。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、ネコ内因性レトロウイルス(RD114)でシュードタイプ化される。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、ヒヒ内因性レトロウイルス(BaEV)でシュードタイプ化される。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(MLV)でシュードタイプ化される。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、ベクターを特定の細胞型に標的化するように機能する包埋された抗体結合ドメイン、例えば、1つまたは複数の可変領域(例えば、重鎖および軽鎖可変領域)を含む。
【0213】
ウイルスベクターの生成は、限定せずに、例えば、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y. (1989))、Coffin et al. (Retroviruses. Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y. (1997))および"RNA Viruses: A Practical Approach" (Alan J. Cann, Ed., Oxford University Press, (2000))に記載されるように、制限エンドヌクレアーゼ消化、ライゲーション、形質転換、プラスミド精製、PCR増幅およびDNA配列決定の標準的な技法が含まれる、当該分野で公知の任意の適切な遺伝子操作技法を使用して達成され得る。
【0214】
当該分野で公知の任意の種々の方法が、そのゲノムがウイルスベクターのRNAコピーを含む適切なレトロウイルス粒子を産生するために使用され得る。1つの方法として、ウイルスベクターは、ウイルスベクターに基づくウイルスゲノムRNAを所望の標的細胞特異性を有するウイルス粒子へとパッケージングするパッケージング細胞系中に導入され得る。パッケージング細胞系は、典型的には、構造タンパク質gag、酵素タンパク質polおよびエンベロープ糖タンパク質が含まれる、ウイルスゲノムRNAをウイルス粒子へとパッケージングし、標的細胞に感染するために要求されるウイルスタンパク質を、トランスで提供する。
【0215】
一部の実施形態では、パッケージング細胞系は、ある特定の必要なまたは所望のウイルスタンパク質(例えば、gag、pol)を、安定に発現する(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,218,181号を参照されたい)。一部の実施形態では、パッケージング細胞系は、本明細書に記載される麻疹ウイルス糖タンパク質配列が含まれるある特定の必要なまたは所望のウイルスタンパク質(例えば、gag、pol、糖タンパク質)をコードするプラスミドで一過的にトランスフェクトされる。一部の実施形態では、パッケージング細胞系は、gagおよびpol配列を安定に発現し、次いで、細胞系は、ウイルスベクターをコードするプラスミドおよび糖タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクトされる。所望のプラスミドの導入の後、ウイルス粒子は、例えば、ウイルス粒子の濃縮ストックを得るための超遠心分離によって、しかるべく収集およびプロセシングされる。例示的なパッケージング細胞系には、293(ATCC CCL X)、HeLa(ATCC CCL 2)、D17(ATCC CCL 183)、MDCK(ATCC CCL 34)、BHK(ATCC CCL-10)およびCf2Th(ATCC CRL 1430)細胞系が含まれる。
【0216】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、配列番号1と同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、配列番号1と少なくとも約85%同一である配列、または配列番号1と少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは99%超同一である配列を有するポリヌクレオチドを含む。
【0217】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、培養の開始後2日目または3日目に操作する。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、電気穿孔を含む方法を使用して操作する。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、操作後の培養における4日目、5日目、6日目または7日目に、対象への投与のために収集する。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、操作後の培養における8日目またはそれよりも後に、対象への投与のために収集する。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、操作後の培養における10日目またはそれよりも前に、対象への投与のために収集する。
【0218】
一部の実施形態では、収集された遺伝子改変B細胞は、有意なレベルの炎症性サイトカインを産生しない。一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、培養中の、それらが有意なレベルの炎症性サイトカインを産生しないことが決定された時点において収集する。
【0219】
一部の実施形態では、B細胞は、1種または複数のB細胞活性化因子、例えば、B細胞を活性化および/または分化させることが公知の種々のサイトカイン、成長因子または細胞系のいずれかと接触させられる(例えば、Fluckiger, et al. Blood 1998 92: 4509- 4520;Luo, et al, Blood 2009 1 13: 1422-1431を参照されたい)。かかる因子は、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34およびIL-35、IFN-γ、IFN-a、IFN-β、IFN-δ、C型ケモカインXCL1およびXCL2、C-C型ケモカイン(これまでのところ、CCL1~CCL28が含まれる)およびCXC型ケモカイン(これまでのところ、CXCL1~CXCL17が含まれる)、ならびにTNFスーパーファミリーのメンバー(例えば、TNF-a、4-1 BBリガンド、B細胞活性化因子(BLyS)、FASリガンド、sCD40L(マルチマーバージョンのsCD40L;例えば、複数のsCD40L分子を一緒にグループ化するために抗ポリヒスチジンmAbと組み合わされたヒスチジンタグ化可溶性組換えCD40Lが含まれる)、リンホトキシン、OX40L、RANKL、TRAIL)、CpG、ならびに他のtoll様受容体アゴニストからなるがこれらに限定されない群から選択され得る。
【0220】
B細胞活性化因子は、所望の成果(例えば、拡大増殖または分化)を達成するために、種々の濃度でin vitro細胞培養物に添加され得る。一部の実施形態では、B細胞活性化因子は、培養物中のB細胞を拡大増殖させる際に利用される。一部の実施形態では、B細胞活性化因子は、培養物中のB細胞を分化させる際に利用される。一部の実施形態では、B細胞活性化因子は、培養物中のB細胞を拡大増殖させる際および分化させる際の両方に利用される。一部の実施形態では、B細胞活性化因子は、拡大増殖および分化のために同じ濃度で提供される。一部の実施形態では、B細胞活性化因子は、拡大増殖のために第1の濃度で、および分化のために第2の濃度で提供される。B細胞活性化因子は、1)B細胞を拡大増殖させる際には利用され得るが、B細胞を分化させる際には利用されない場合がある、2)B細胞を分化させる際には利用され得るが、B細胞を拡大増殖させる際には利用されない場合がある、または3)B細胞を拡大増殖および分化させる際に利用され得ることが企図される。
【0221】
例えば、B細胞は、B細胞の拡大増殖のために、CD40L、IL-2、IL-4およびIL-10から選択される1種または複数のB細胞活性化因子と共に培養される。一部の実施形態では、B細胞は、0.25~5.0μg/mlのCD40Lと共に培養される。一部の実施形態では、CD40Lの濃度は、0.5μg/mlである。一実施形態では、架橋剤(例えば、HISタグ化CD40Lと組み合わせた抗HIS抗体)が、CD40Lのマルチマーを作り出すために使用される。一部の実施形態では、CD40Lの分子は、共有結合的に連結される、またはタンパク質多量体化ドメイン(例えば、IgGのFc領域、またはロイシンジッパードメイン)を使用して一緒に保持される。一部の実施形態では、CD40Lは、ビーズにコンジュゲートされる。一実施形態では、CD40Lは、フィーダー細胞から発現される。一部の実施形態では、B細胞は、1~10ng/mlのIL-2と共に培養される。一部の実施形態では、IL-2の濃度は、5ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、1~10ng/mlのIL-4と共に培養される。一部の実施形態では、IL-4の濃度は、2ng/mlである。一部の実施形態では、B細胞は、10~100ng/mlのIL-10と共に培養される。一部の実施形態では、IL-10の濃度は、40ng/mlである。
【0222】
一部の実施形態では、B細胞は、B細胞の拡大増殖のために、CD40L、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15およびIL-21から選択される1種または複数のB細胞活性化因子と共に培養される。一部の実施形態では、B細胞は、0.25~5.0μg/mlのCD40Lと共に培養される。一部の実施形態では、CD40Lの濃度は、0.5μg/mlである。一部の実施形態では、架橋剤(例えば、HISタグ化CD40Lと組み合わせた抗HIS抗体)が、CD40Lのマルチマーを作り出すために使用される。一部の実施形態では、CD40Lの分子は、共有結合的に連結される、またはタンパク質多量体化ドメイン(例えば、IgGのFc領域、またはロイシンジッパードメイン)を使用して一緒に保持される。一部の実施形態では、CD40Lは、ビーズにコンジュゲートされる。一実施形態では、D40Lは、フィーダー細胞から発現される。一実施形態では、B細胞は、1~10ng/mlのIL-2と共に培養される。一部の実施形態では、IL-2の濃度は、5ng/mlである。一部の実施形態では、B細胞は、1~10ng/mlのIL-4と共に培養される。一部の実施形態では、IL-4の濃度は、2ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、10~100ng/mlのIL-10と共に培養される。一部の実施形態では、IL-10の濃度は、40ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、50~150ng/mlのIL-15と共に培養される。一部の実施形態では、IL-15の濃度は、100ng/mlである。一部の実施形態では、B細胞は、50~150ng/mlのIL-21と共に培養される。一部の実施形態では、IL-21の濃度は、100ng/mlである。一部の実施形態では、B細胞は、B細胞の拡大増殖のために、CD40L、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15およびIL-21と共に培養される。
【0223】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞を、操作前および操作後の全培養期間を通じて、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15、IL-31、および多量体化されたCD40リガンドの各々を含む培養系において成長させる。一部の実施形態では、多量体化されたCD40リガンドは、抗his抗体を使用して多量体化されたHISタグ化CD40リガンドである。
【0224】
例えば、一実施形態では、B細胞は、B細胞の拡大増殖のために、B細胞活性化因子CD40L、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15およびIL-21と共に培養され、CD40Lは、CD40Lのマルチマーを作り出すために、架橋剤を用いて架橋される。かかる培養系は、全培養期間(例えば、7日間の培養期間)を通じて維持され得、このとき、B細胞を、目的の導入遺伝子(例えば、外因性ポリペプチド、例えば、IDUAなど)を発現するように、トランスフェクトまたは他の方法で操作する。
【0225】
別の例では、B細胞は、B細胞の分化のために、CD40L、IFN-a、IL-2、IL-6、IL-10、IL-15、IL-21、およびP-クラスCpGオリゴデオキシヌクレオチド(p-ODN)から選択される1種または複数のB細胞活性化因子と共に培養される。一部の実施形態では、B細胞は、25~75ng/mlのCD40Lと共に培養される。一部の実施形態では、CD40Lの濃度は、50ng/mlである。一部の実施形態では、B細胞は、250~750U/mlのIFN-aと共に培養される。一部の実施形態では、IFN-aの濃度は、500U/mlである。一部の実施形態では、B細胞は、5~50U/mlのIL-2と共に培養される。一部の実施形態では、IL-2の濃度は、20U/mlである。一部の実施形態では、B細胞は、25~75ng/mlのIL-6と共に培養される。一部の実施形態では、IL-6の濃度は、50ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、10~100ng/mlのIL-10と共に培養される。一部の実施形態では、IL-10の濃度は、50ng/mlである。一部の実施形態では、B細胞は、1~20ng/mlのIL-15と共に培養される。一実施形態では、IL-15の濃度は、10ng/mlである。一部の実施形態では、B細胞は、10~100ng/mlのIL-21と共に培養される。一部の実施形態では、IL-21の濃度は、50ng/mlである。一実施形態では、B細胞は、1~50μg/mlのp-ODNと共に培養される。一部の実施形態では、p-ODNの濃度は、10μg/mlである。
【0226】
一部の実施形態では、B細胞は、フィーダー細胞上で接触または培養される。一部の実施形態では、フィーダー細胞は、間質細胞系、例えば、マウス間質細胞系S17またはMS5である。一部の実施形態では、単離されたCD19+細胞は、CD40リガンド(CD40L、CD154)を発現する線維芽細胞の存在下で、1種または複数のB細胞活性化因子サイトカイン、例えば、IL-10およびIL-4と共に培養される。一部の実施形態では、CD40Lは、表面、例えば、組織培養プレートまたはビーズに結合されて提供される。一部の実施形態では、精製されたB細胞は、CD40L、ならびにIL-10、IL-4、IL-7、p-ODN、CpG DNA、IL-2、IL-15、IL6、IL-21およびIFN-aから選択される1種または複数のサイトカインまたは因子と共に、フィーダー細胞の存在下または非存在下で培養される。
【0227】
一部の実施形態では、B細胞活性化因子は、B細胞または他のフィーダー細胞中へのトランスフェクションによって提供される。これに関連して、抗体分泌細胞へのB細胞の分化を促進する1種もしくは複数の因子および/または抗体産生細胞の長命を促進する1種もしくは複数の因子が使用され得る。かかる因子には、例えば、Blimp-1、TRF4、抗アポトーシス因子、例えば、Bcl-xlもしくはBcl5、またはCD40受容体の構成的に活性な変異体が含まれる。さらに、下流のシグナル伝達分子の発現を促進する因子、例えば、TNF受容体関連因子(TRAF)もまた、B細胞の活性化/分化において使用され得る。これに関して、TNF受容体スーパーファミリーの細胞活性化、細胞生存および抗アポトーシス機能は、大抵はTRAF1~6によって媒介される(例えば、R.H. Arch, et al, Genes Dev. 12 (1998), pp. 2821-2830を参照されたい)。TRAFシグナル伝達の下流のエフェクターには、細胞機能および免疫機能の種々の態様に関与する遺伝子をオンにし得る、NF-KBおよびAP-1ファミリー中の転写因子が含まれる。さらに、NF-κΒおよびAP-1の活性化は、抗アポトーシス遺伝子の転写を介して、アポトーシスからの細胞保護を提供することが示されている。
【0228】
一部の実施形態では、エプスタイン・バーウイルス(EBV)由来タンパク質が、B細胞の活性化および/もしくは分化のため、または抗体産生細胞の長命を促進するために、使用される。EBV由来タンパク質には、EBNA-1、EBNA-2、EBNA-3、LMP-1、LMP-2、EBER、miRNA、EBV-EA、EBV-MA、EBV-VCAおよびEBV-ANが含まれるがこれらに限定されない。
【0229】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法を使用して、B細胞をB細胞活性化因子と接触させることは、とりわけ、細胞増殖(即ち、拡大増殖)、lgM+細胞表面表現型を、活性化成熟B細胞と一致する表現型にするモジュレーション、Igの分泌、およびアイソタイプスイッチングをもたらす。CD19+B細胞は、公知のおよび市販の細胞分離キット、例えば、MiniMACS(商標)細胞分離システム(Miltenyi Biotech、Bergisch Gladbach、Germany)を使用して単離され得る。ある特定の実施形態では、CD40L線維芽細胞は、本明細書に記載される方法における使用の前に、照射される。一実施形態では、B細胞は、IL-3、IL-7、Flt3リガンド、トロンボポエチン、SCF、IL-2、IL-10、G-CSFおよびCpGのうち1種または複数の存在下で培養される。一部の実施形態では、方法は、低レベルの固定CD40Lを提供する形質転換された間質細胞(例えば、MS5)および/またはプレートもしくはビーズに結合したCD40Lと併せて、上述の因子のうち1種または複数の存在下で、B細胞を培養することを含む。
【0230】
上で議論したように、B細胞活性化因子は、B細胞の拡大増殖、増殖または分化を誘導する。したがって、B細胞は、拡大増殖された細胞集団を得るために、上に列挙された1種または複数のB細胞活性化因子と接触させられる。細胞集団は、トランスフェクションの前に拡大増殖され得る。あるいは、またはさらに、細胞集団は、トランスフェクションの後に拡大増殖され得る。一実施形態では、B細胞集団を拡大増殖させることは、細胞を、IL-2、IL-4、IL-10およびCD40Lと共に培養することを含む(例えば、Neron et al. PLoS ONE, 2012 7(12):e51946を参照されたい)。一実施形態では、B細胞集団を拡大増殖させることは、細胞を、IL-2、IL-10、CpGおよびCD40Lと共に培養することを含む。一実施形態では、B細胞集団を拡大増殖させることは、細胞を、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15、IL-21およびCD40Lと共に培養することを含む。一実施形態では、B細胞集団を拡大増殖させることは、細胞を、IL-2、IL-4、IL-10、IL-15、IL-21、および多量体化されたCD40Lと共に培養することを含む。
【0231】
一部の実施形態では、B細胞集団の拡大増殖は、細胞培養物に添加された小分子化合物によって誘導および/または増強される。例えば、CD40に結合しそれをダイマー化する化合物が、CD40シグナル伝達経路を誘発するために使用され得る。
【0232】
種々の培養培地のいずれもが、当業者に公知のように、本発明の方法において使用され得る(例えば、Current Protocols in Cell Culture, 2000- 2009 by John Wiley & Sons, Inc.を参照されたい)。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法における使用のための培地には、イスコフ改変ダルベッコ培地(ウシ胎仔血清または他の適切な血清ありまたはなし)が含まれるがこれに限定されない。事例的な培地には、IMDM、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 15およびX-Vivo 20もまた含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、培地は、界面活性剤、抗体、プラスマネートまたは還元剤(例えば、N-アセチル-システイン、2-メルカプトエタノール)、1種もしくは複数の抗生物質、ならびに/または添加物、例えば、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウムおよびシクロスポリンを含み得る。一部の実施形態では、IL-6、可溶性CD40L、および架橋エンハンサーもまた使用され得る。
【0233】
B細胞は、所望の分化および/または活性化を達成するような条件下で、およびそのために十分な期間にわたって、培養される。一部の実施形態では、B細胞は、B細胞の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはさらには100%が、所望により、分化および/または活性化されるような条件下で、およびそのために十分な期間にわたって、培養される。一部の実施形態では、B細胞は、形質芽細胞および形質細胞の混合集団へと活性化および分化される。当業者に認識されるように、形質芽細胞および形質細胞は、本明細書の他の箇所に記載される標準的なフローサイトメトリー法、例えば、CD38、CD78、IL-6R、CD27highおよびCD138のうち1つもしくは複数の発現、ならびに/あるいはCD19、CD20およびCD45のうち1つもしくは複数の発現の欠如、または発現の低減を使用して、細胞表面タンパク質発現パターンによって同定され得る。当業者に理解されるように、メモリーB細胞は一般に、CD20+CD19+CD27+CD38-であるが、初期形質芽細胞は、CD20-CD19+CD27++CD38++である。一実施形態では、本明細書に記載される方法を使用して培養された細胞は、CD20-、CD38+、CD138-である。別の実施形態では、細胞は、CD20-、CD38+、CD138+の表現型を有する。ある特定の実施形態では、細胞は、1~7日間にわたって培養される。さらなる実施形態では、細胞は、7、14、21日間またはそれよりも長い日数にわたって培養される。したがって、細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29日間またはそれよりも長い日数にわたって、適切な条件下で培養され得る。細胞は、再プレーティングされ、培地およびサプリメントが、当該分野で公知の技法を使用して、必要に応じて添加または交換され得る。
【0234】
一部の実施形態では、B細胞は、細胞の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が、Igを産生するようにおよび/または導入遺伝子を発現するように分化および活性化されるような条件下で、およびそのために十分な期間にわたって、培養される。
【0235】
B細胞活性化の誘導は、RNA中へのH-ウリジン取り込み(B細胞が分化するにつれ、RNA合成は増加する)などの技法によって、または細胞増殖に関連するDNA合成を測定するH-チミジン取り込みによって、測定され得る。一部の実施形態では、インターロイキン-4(IL-4)が、B細胞増殖の増強のために、適切な濃度(例えば、約10ng/ml)で培養培地に添加され得る。
【0236】
あるいは、B細胞活性化は、免疫グロブリン分泌の関数として測定される。例えば、CD40Lは、IL-4(例えば、10ng/ml)およびIL-5(例えば、5ng/ml)、またはB細胞を活性化する他のサイトカインと一緒に、休止B細胞に添加される。フローサイトメトリーもまた、活性化B細胞に典型的な細胞表面マーカーを測定するために使用され得る。例えば、Civin CI, Loken MR, Int'l J. Cell Cloning 987; 5: 1 -16;Loken, MR, et al, Flow Cytometry Characterization of Erythroid, Lymphoid and Monomyeloid Lineages in Normal Human Bone Marrow, in Flow Cytometry in Hematology, Laerum OD, Bjerksnes R. eds., Academic Press, New York 1992; pp. 31 -42;およびLeBein TW, et ai, Leukemia 1990; 4:354-358を参照されたい。
【0237】
適切な期間、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9日間またはそれよりも長い日数、一般にはおおよそ3日間にわたる培養の後、培養培地のさらなる量が添加され得る。個々の培養物由来の上清は、培養の間の種々の時点において収集され、Noelle et al, (1991) J. Immunol. 146: 1118-1124に記載されるように、IgMおよびIgGlについて定量され得る。一部の実施形態では、培養物は、収集され、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ELISPOTまたは当該分野で公知の他のアッセイを使用して、目的の導入遺伝子の発現について測定される。一部の実施形態では、ELISAは、抗体アイソタイプ産生、例えば、IgM、または目的の導入遺伝子の産物を測定するために使用される。一部の実施形態では、IgG決定は、捕捉抗体としての市販の抗体、例えば、ヤギ抗ヒトIgGと、その後の、種々の適切な検出試薬、例えば、ビオチン化ヤギ抗ヒトIg、ストレプトアビジンアルカリホスファターゼおよび基質のいずれかを使用する検出とを使用して、行われる。
【0238】
ある特定の実施形態では、B細胞は、細胞の数が、培養の開始時のB細胞の数よりも1、10、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000倍またはそれよりも多くなるような条件下で、およびそのために十分な期間にわたって、培養される。一部の実施形態では、細胞の数は、培養の開始時のB細胞の数よりも、その中の連続する整数を含め、10~1000倍多い。例えば、拡大増殖されたB細胞集団は、初期の単離されたB細胞集団よりも少なくとも10倍多い。別の実施形態では、拡大増殖されたB細胞集団は、初期の単離されたB細胞集団よりも少なくとも100倍多い。一部の実施形態では、拡大増殖されたB細胞集団は、初期の単離されたB細胞集団よりも少なくとも500倍多い。
【0239】
一部の実施形態では、方法は、対象に投与するステップの前に、遺伝子改変B細胞を拡大増殖させるステップを含む。
【0240】
一部の実施形態では、操作されたB細胞集団は、対象への投与の前に、多クローン性について評価される。最終細胞産物の多クローン性を確実にすることは、重要な安全性パラメーターである。具体的には、支配的なクローンの出現は、in vivo腫瘍形成または自己免疫性疾患に潜在的に寄与するとみなされる。多クローン性は、当該分野で公知のまたは本明細書に記載される任意の手段によって評価され得る。例えば、一部の実施形態では、多クローン性は、操作されたB細胞集団において発現されたB細胞受容体を配列決定することによって(例えば、ディープシーケンシングすることによって)評価される。B細胞受容体は、B細胞発生の間に、B細胞の間でそれを独自のものにする変化を受けるので、この方法は、どれほど多くの細胞が同じB細胞受容体配列を共有するか(それらがクローン性であることを意味する)を定量することを可能にする。したがって、一部の実施形態では、操作されたB細胞集団中の、同じB細胞受容体配列を発現するB細胞が多いほど、集団はクローン性が高くなり、したがって、集団は、対象への投与にとって安全性が低くなる。逆に、一部の実施形態では、操作されたB細胞集団中の、同じB細胞受容体配列を発現するB細胞が少ないほど、集団はクローン性が低くなり(即ち、多クローン性がより高くなる)、したがって、集団は、対象への投与にとってより安全になる。
【0241】
一部の実施形態では、操作されたB細胞集団は、対象への投与の前に、多クローン性について評価される。最終細胞産物の多クローン性を確実にすることは、重要な安全性パラメーターである。具体的には、支配的なクローンの出現は、in vivo腫瘍形成または自己免疫性疾患に潜在的に寄与するとみなされる。多クローン性は、当該分野で公知のまたは本明細書に記載される任意の手段によって評価され得る。例えば、一部の実施形態では、多クローン性は、操作されたB細胞集団において発現されたB細胞受容体を配列決定することによって(例えば、ディープシーケンシングすることによって)評価される。B細胞受容体は、B細胞発生の間に、B細胞の間でそれを独自のものにする変化を受けるので、この方法は、どれほど多くの細胞が同じB細胞受容体配列を共有するか(それらがクローン性であることを意味する)を定量することを可能にする。したがって、一部の実施形態では、操作されたB細胞集団中の、同じB細胞受容体配列を発現するB細胞が多いほど、集団はクローン性が高くなり、したがって、集団は、対象への投与にとって安全性が低くなる。逆に、一部の実施形態では、操作されたB細胞集団中の、同じB細胞受容体配列を発現するB細胞が少ないほど、集団はクローン性が低くなり(即ち、多クローン性がより高くなる)、したがって、集団は、対象への投与にとってより安全になる。
【0242】
一部の実施形態では、操作されたB細胞は、それらが十分に多クローン性であることが決定された後に、対象に投与される。例えば、操作されたB細胞は、最終集団中の特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の約0.2%よりも多くを含まないことが決定された後に、対象に投与され得る。操作されたB細胞は、最終集団中の特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の約0.1%よりも多く、または総B細胞集団の約0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%もしくは約0.04%よりも多くを含まないことが決定された後に、対象に投与され得る。特定の実施形態では、操作されたB細胞(例えば、IDUAを産生する)は、最終集団中の特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の約0.03%よりも多くを含まないことが決定された後に、対象に投与される。
【0243】
一部の実施形態では、拡大増殖された遺伝子改変B細胞の最終集団は、高い程度の多クローン性を実証する。一部の実施形態では、拡大増殖された遺伝子改変B細胞の最終集団中の任意の特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の0.2%未満を含む。一部の実施形態では、拡大増殖された遺伝子改変B細胞の最終集団中の任意の特定のB細胞クローンが、総B細胞集団の0.05%未満を含む。
【0244】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、メトトレキセートに対して耐性が増強したヒトDHFR遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、メトトレキセートに対して耐性が増強したヒトDHFR遺伝子は、アミノ酸22におけるロイシンからチロシンへの置換およびアミノ酸31におけるフェニルアラニンからセリンへの置換を含有する。一部の実施形態では、方法は、投与のために収集する前に、遺伝子改変B細胞をメトトレキセートで処置するステップを含む。一部の実施形態では、メトトレキセート処置は、100nM~300nMの間である。一部の実施形態では、メトトレキセート処置は、200nMである。
【0245】
一部の実施形態では、遺伝子改変B細胞は、対象への投与の際に、中枢神経系(CNS)内の組織の至る所を移動する。一部の実施形態では、対象への遺伝子改変B細胞の投与は、対象の多様な組織においてグリコサミノグリカン(GAG)の低減をもたらす。一部の実施形態では、対象への遺伝子改変B細胞の投与は、中枢神経系(CNS)内の組織においてGAGの低減をもたらす。
【0246】
本明細書で言及される全ての刊行物および特許は、あたかも各個々の刊行物または特許が、具体的かつ個々に参照により本明細書に組み込まれると示されるかのように、その全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、本明細書の任意の定義を含む本出願が支配する。しかし、本明細書で引用された任意の参考文献、論文、刊行物、特許、特許公開および特許出願の言及は、それらが、有効な先行技術を構成すること、もしくは世界の任意の国における共通の一般知識の一部を形成することの承認でも、いずれの形態の示唆でもなく、かつそのような承認としても、いずれの形態の示唆としても解釈すべきではない。
【0247】
本明細書で使用されるセクション見出しは、体系化のみを目的としており、記載される主題を限定すると解釈すべきではない。
【0248】
事例的な実施形態が例示され記載されてきたが、種々の変化が、本発明の精神および範囲から逸脱することなしにそこになされ得ることが理解される。
【実施例】
【0249】
本開示は、以下の実施例を参照してここで記載される。これらの実施例は、例示のみを目的として提供されており、本開示は、これらの実施例に限定されると決して解釈すべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになる任意のおよび全てのバリエーションを包含すると解釈すべきである。
【0250】
さらなる記載がなくても、当業者は、前述の記載および以下の事例的な実施例を使用して、本開示の方法を構成および利用し、特許請求された方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の作業実施例は、本開示の実施形態に具体的に注目しているのであって、本開示の残部を決して限定すると解釈すべきではない。
【0251】
これらの実験において用いられる材料および方法がここで記載される。
(実施例1)
脳脊髄液中への直接注射を介した、中枢神経系への操作されたB細胞の投与
背景
【0252】
ムコ多糖症I型(MPSI)は、酵素アルファ-L-イズロニダーゼ(IDUA)における欠損によって引き起こされるリソソーム蓄積症である。IDUAは、身体中のグリコサミノグリカン(GAG)であるヘパラン硫酸およびデルマタン硫酸の分解を触媒する。IDUAの欠如は、脳が含まれる全ての組織において、GAGの蓄積をもたらす。
【0253】
現行の治療には、造血幹細胞移植および酵素補充が含まれる。これらは共に、全身IDUA活性を回復させ、末梢中の蓄積したGAGのレベルを低減させる。これらの処置は、平均余命を有意に延長させ、生活の質を改善するが、疾患の有意な負荷は残存する。特に、認知障害は、処置に対して耐性であることが証明されており、CNSを直接標的化する治療の開発が必要とされている。
【0254】
NSG-MPSIマウスは、免疫不全であり、IDUA発現を欠如する。マウスは、IDUA活性の欠如および高いGAGレベルが含まれる、ヒトMPSIの所見の多くを再現する。
【0255】
CNSにおけるIDUAの欠如に具体的に取り組むために、IDUAを発現するように遺伝子操作したヒトB細胞を、動物の側脳室中に導入した。
方法
【0256】
NSG-MPS Iマウス(4月齢、n=6)に、2e5 ISP-001 B細胞をICV(1つの側脳室)注射した。マウスを、注射後1日目(n=1)、7日目(n=1)、28日目(n=2)および42日目(n=4)に安楽死させた。非処置NSG-MPS Iマウス(n=2)は、陰性対照として機能した。脳組織を、IDUA活性およびGAGレベルについて解析した。IDUA酵素アッセイのために、脳組織を溶解させ、基質として4-メチルウンベリフェリル-アルファ-L-イズロニド(Glycosynth、England)を使用する蛍光測定アッセイにおいて、IDUA活性についてアッセイした。組織溶解物のタンパク質濃度を、Pierceアッセイシステムを使用して決定した。IDUA活性を、nmol/h/mgタンパク質として記録した。GAGアッセイのために、脳溶解物を、Blyscan(商標)Sulfated Glycosaminoglycan Assayキット(Biocolor Life Science Assays;Accurate Chemical)を使用してアッセイした。組織GAG含量を、タンパク質1ミリグラム当たりのGAGのマイクログラム数で報告した。
結果
【0257】
脳全体の抽出物を、蛍光測定方法論を使用して、IDUA活性についてアッセイした(
図1)。本発明者らは、対照動物と比較して、処置動物において有意なIDUA活性を観察した。酵素活性は、ICV注射の7日後に最も高かったが、28日目および42日目にもまだ検出可能であった。
【0258】
脳全体の抽出物を、GAGレベルについてアッセイした(
図2)。脳組織中のGAGレベルは、対照動物と比較して、全ての処置動物においてより低かった。レベルは、注射の1日後に最も低かったが、研究の持続時間にわたって、対照動物において観察されたレベルよりも低いままであった。
考察
【0259】
この研究は、この場合にはICV注射による、脳脊髄液(CSF)中への注入によって、CNSに治療的B細胞を送達することを実証している。IDUAの分泌は、注射の1週間後にピークを迎えたが、IDUAレベルは、研究の持続時間(6週間)にわたって検出可能なままであった。IDUAの存在は、脳におけるGAGレベルの有意な低減にも反映された。
(実施例2)
脳室内注射によるマウス中への改変されたヒトB細胞の異種養子(Xeno-adoptive)移入
方法
【0260】
ヒトB細胞を、標準的なプロトコールに従って、LUCで転位させた。NSGマウス(n=4、雌性)に、同じドナーから単離された3×106個のCD4+T細胞をI.P.注射した。T細胞でのプレコンディショニングの1週間後、マウスに、LUC転位させたヒトB細胞(4×105個/脳室)を、両方の側脳室中に注射した。B細胞の生着を、生物発光イメージング(IVIS)によって、隔週モニタリングした。研究は16日目(B細胞注射後)に終了した。
結果
【0261】
マウスを、B細胞注射の2日後(2/26/2021)に開始して、その後隔週、イメージングした。有害効果は認められなかった。
【0262】
結果は、
図3および4に示される。発光シグナルは、全ての動物において検出されたが、異なる時点で、異なる強度でであった。マウス1は、概して最も低いシグナルを示し、最も高いシグナルは、注射の13日後であった。マウス2は、最初のイメージングを除いて、全ての動物において最も高いシグナルを示した。シグナルは、13日目に最も高いレベルまで増加し、その後いくらか減少した。動物3は、研究を通じて、発光の着実な増加を示し、マウス4は、6日目に最初に低下した後、発光の着実な増加を示した。全ての動物における発光シグナルは、脳室に局在化し続けたようであったが、マウス2は、13日目に、脾臓エリアにおいていくらかのシグナルを示した。
考察
【0263】
発光シグナルは、研究を通じて、脳室(vesicle)のエリアにおいて検出され、これは、B細胞の首尾よい生着を示している。シグナルは、動物間で変動を示したが、経時的に増加するようであり、これは、B細胞の拡大増殖を示唆している。この実験は、ヒトB細胞が、CNSへの脳室内(ICV)投与後に、側脳室において首尾よく生着することができることを証明している。
【配列表】
【国際調査報告】