(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G02B27/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526134
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021079829
(87)【国際公開番号】W WO2022090313
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】アヨウブ, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ルカ, ネリオ
(72)【発明者】
【氏名】オウ, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ノウレット, ジャン-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】エル アブドゥニ, スフィアン
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA20
2H199DA22
2H199DA23
2H199DA24
2H199DA30
2H199DA42
(57)【要約】
本発明は、偏光をガラス嵌め体(10)の方へ投影する光源(14)と、第1の面(P1)及び第2の面(P2)を有する外ガラス板(11)と第1の面(P3)及び第2の面(P4)を有する内ガラス板(12)とを含むガラス嵌め体(10)を含むヘッドアップディスプレイ(HUD)システムであり、ガラス嵌め体(10)は、外ガラス板(11)及び/又は内ガラス板(12)の面(P1、P2、P3、P4)のうち少なくとも1つの少なくとも一部の上に、第1の強化p偏光反射塗膜(13)を含む。本発明によれば、偏光を投影する光源(14)は、外ガラス板(11)の外面(P1)でP偏光を有するためにガラス位相差を補償する波長板(18)を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.偏光をガラス嵌め体(10)の方へ投影する光源(14)と、
b.第1の面(P1)及び第2の面(P2)を有する外ガラス板(11)と第1の面(P3)及び第2の面(P4)を有する内ガラス板(12)とを含む前記ガラス嵌め体(10)を含むヘッドアップディスプレイ(HUD)システムであって、
前記ガラス嵌め体(10)は、前記外ガラス板(11)及び/又は前記内ガラス板(12)の前記面(P1、P2、P3、P4)のうち少なくとも1つの少なくとも一部の上に、第1の強化p偏光反射塗膜(13)を含み、前記外ガラス板(11)と内ガラス板(12)はともに、少なくとも1つの中間層材料板によって接合され、
偏光を投影する前記光源(14)は、前記外ガラス板(11)の前記外面(P1)でP偏光を有するためにガラス位相差を補償する波長板(18)を含むことを特徴とする、ヘッドアップディスプレイ(HUD)システム。
【請求項2】
前記第1の強化p偏光反射塗膜(13)は、前記内ガラス板の内面の少なくともHUDゾーンに設けられており、好ましくは、前記HUDゾーンは、前記光源に対する像が投影されるゾーンであり、好ましくは、前記強化p偏光反射塗膜(13)は、前記内ガラス板(12)の前記内面の全ての前記面(P4)の上に設けられる、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ(HUD)システム(1)。
【請求項3】
前記ガラス嵌め体(10)は、フロントガラスである、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ(HUD)システム(1)。
【請求項4】
前記HUDシステムの前記光源(14)は、主にP偏光を前記ガラス嵌め体(10)の方へ投影する、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ(HUD)システム(1)。
【請求項5】
一次像強度、主にP偏光と、S偏光及びP偏光で構成されることがあり得るゴースト像強度との強度比は、15よりも高く、より好ましくは20よりも高く、より好ましくは50よりも高い、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ(HUD)システム(1)。
【請求項6】
光場は、入射面(p偏光)に平行な電場を有する、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ(HUD)システム(1)。
【請求項7】
前記光場は、略ブルースター角で前記フロントガラスに入射する、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ(HUD)システム(1)。
【請求項8】
前記波長板(18)は、前記ガラス嵌め体(10)と前記HUD光源(14)の非球面鏡(15)との間に設けられている、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ(HUD)システム(1)。
【請求項9】
前記波長板(18)は、前記光源(14)の出口に設置されている、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ(HUD)システム(1)。
【請求項10】
複屈折は、HUD像の均一な遅延を引き起こす前記HUDゾーンで均一である、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ(HUD)システム(1)。
【請求項11】
外ガラス板の外面でP偏光を有するためにガラス位相差を補償する方法であって、
a.少なくとも1つの中間層材料板と第2のガラス板(12)とに対して第1のガラス板(11)を組み付けることによって、ガラス嵌め体(10)を設けるステップと、ただし、前記ガラス嵌め体(10)は、第1のガラス板(11)及び/第2のガラス板(12)の面(P1、P2、P3、P4)の少なくとも一部の上に第1の強化p偏光反射塗膜(13)を含む、
b.p偏光を投影することができる光源(14)を設けるステップと、
c.前記p偏光を42度から72度の入射角で前記ガラス嵌め体(10)の方へ投影するように前記光源(14)を配置するステップと、
d.前記外ガラス板の前記外面でP偏光を有するためにガラス位相差を補償する波長板(18)を設けるステップであって、前記波長板を前記光源(14)と前記ガラス嵌め体(10)との間に設けるステップと
を含む方法。
【請求項12】
前記波長板(18)を、前記外ガラス板(11)の前記外面(P1)からの反射p偏光を最小化するように方向付ける、請求項11の方法。
【請求項13】
光場は、入射面(p偏光)に平行な電場を有する、請求項11の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイシステム、及びこのヘッドアップディスプレイシステムを提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイシステム又はHUDシステムは、運搬デバイスの観察者又は運転者の観察領域(HUDゾーンとも呼ばれる)で車両ガラス嵌め体に情報を与えるために、運搬デバイスで広く使用されている。
【0003】
様々なHUDシステムが知られている。通常、投影システムを、ユーザによって見える投影像を形成する最終光学部品として、部分鏡(部分反射器及び部分窓)と組み合わせる。同時に、ユーザは、部分鏡を介して他の景色を見ることができる。部分鏡は、ディスプレイの有用性及び知覚品質に影響を与える重要な部品である。一般的に、部分鏡の反射率は、投影器からの光を反射するのに十分である必要があるけれども、部分鏡は、部分鏡を介して適切な観察を行うのに十分透明である必要もある。幾つかの実施形態において、光源の偏光を優先的に反射している反射層と一緒に、直線偏光源を使用する。
【0004】
従来のHUDシステムに関する1つの問題は、運転しながら、道路及び他の源からの眩しさを減少するために、多くの運転手が偏光サングラスを着用するという事実に起因する。一般的な偏光サングラスは、s偏光を遮断することによって機能する。p偏光は、偏光サングラスを通過することができる。しかし、従来のHUDシステムにおいて、s偏光は、主に、フロントガラスから反射してHUDの像を形成するものであり、非常に少量のp偏光は、フロントガラス面から反射される。これは、空気対ガラスの界面に対してブルースター角に近い角度でフロントガラスを位置決めすることが一般的であることを考えると、特に当てはまる。従って、従来の偏光サングラスを着用する運転者は、主にs偏光によって形成されるHUDの像を見ることができない可能性がある。
【0005】
HUDシステムの例は、中国特許出願公開第104267498A号明細書に提供されており、中国特許出願公開第104267498A号明細書は、投影光源、積層ガラス及び透明ナノメートル膜を含むヘッドアップディスプレイシステムであり、透明ナノメートル膜は、内ガラス板の面から外方に堆積する高反射指数層/低反射指数層の少なくとも1つの積層構造体を含み、投影光源は、p偏光を生成するために使用され、p偏光は、透明ナノメートル膜に入り、透明ナノメートル膜からのp偏光の反射率は、5%以上であり、p偏光の入射角は、42度から72度の範囲にある。
【0006】
HUDの更なる例は、欧州特許出願公開第3187917A2号明細書に提供されており、欧州特許出願公開第3187917A2号明細書は、投影光源及び積層ガラス嵌め体を含むHUDシステムであり、積層ガラス嵌め体は、内ガラスパネル、外ガラスパネル、及び内ガラスパネルと外ガラスパネルとの間に挟まれた中間膜を含み、ヘッドアップディスプレイシステムは、少なくとも2つの誘電体層及び少なくとも1つの金属層を含む透明ナノ膜を更に含み、各金属層は、2つの誘電体層の間に設置され、中間膜の屈折率と内ガラスパネル及び外ガラスパネルの屈折率との間の差は、0.1以下であり、投影光源は、中間膜から離れて内ガラスパネルの面に入射するp偏光を生成するために使用され、透明ナノ膜が入射p偏光の一部を反射することができるように、光は、42度から72度の入射角を有する。
【0007】
国際公開第2019/046157A1号パンフレットは、第1の面及び第2の面を有する第1のプライであって、第1の面は積層体の外面である第1のプライと、第2の面に面する第3の面及び第3の面と反対側の第4の面を有する第2のプライであって、第4の面は積層体の内面である第2のプライと、プライの間の中間層と、プライの面の少なくとも一部の上に位置決めされた強化p偏光反射塗膜とを含む積層体を開示する。積層体を、積層体の法線に対して60度の角度でp偏光を有する放射線と接触した場合、積層体は、少なくとも70%のLTA及び少なくとも10%のp偏光の反射率を示す。更に、ヘッドアップディスプレイに像を投影するディスプレイシステム及び方法を開示する。
【0008】
偏光サングラスを着用する問題に加えて、HUDシステムに関する典型的な問題は、ゴースト像又は複像の出現である。
【0009】
特に、ゴースト像の出現は、フロントガラスの製造工程に関連することがある。
【0010】
より詳細には、P偏光を、HUD用途のためにフロントガラスに投影する場合、ガラス応力は、寄生S偏光成分の生成を引き起こす光偏光に影響を与えることがある。この寄生S成分は、悪い質の像性能を引き起こすゴースト効果として見られることがある。ガラス応力は、例えば、曲げ処理、又はフロントガラスでよく使用されるエナメルの硬化中に、ガラスの熱処理(例えば、加熱及び急速冷却)中に一般的に生成される。
【0011】
従って、ガラスは、光、特に、P偏光を投影するHUDシステムから投影される光に対して、遅延(位相差又は複屈折とも呼ばれる)を取り入れる。
【0012】
従って、熱処理に耐えることができ、HUDシステムにおけるガラス嵌め体に明瞭及び鮮明な像表示を反射するのに有用なままであるガラス嵌め体(特にフロントガラス)に投影されるp偏光のガラス位相差を補償するHUDシステムが必要である。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、虚像として運転者によって見られるべき車両のフロントガラスから光を反射するヘッドアップディスプレイ(HUD)システムを提供する。
【0014】
より詳細には、本発明は、
a.偏光をガラス嵌め体の方へ投影する光源と、
b.第1の面及び第2の面を有する外ガラス板と第1の面及び第2の面を有する内ガラス板とを含むガラス嵌め体を含むヘッドアップディスプレイ(HUD)システムであって、
ガラス嵌め体は、外ガラス板及び/又は内ガラス板の面のうち少なくとも1つの少なくとも一部の上に、第1の強化p偏光反射塗膜を含み、これらの外ガラス板と内ガラス板はともに、少なくとも1つの中間層材料板によって接合されているHUDシステムを提供する。
【0015】
本発明によれば、偏光を投影する光源は、外ガラス板の外面でP偏光を有するためにガラス位相差を補償する波長板を含む。
【0016】
好ましい実施形態によれば、HUDシステムの光源は、主にP偏光をガラス嵌め体の方へ投影する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、一次像強度、主にP偏光と、S偏光及びP偏光で構成されることがあり得るゴースト像強度との強度比は、15よりも高く、より好ましくは20よりも高く、より好ましくは50よりも高い。像は、運転者によって見られる像であるものとする。
【0018】
システムは、許容ゴースト像の有無にかかわらず、運転者がHUDから虚像を容易に見ることができるように構成されている。
【0019】
本発明は、HUDシステムからのP偏光をガラス嵌め体の方へ投影する場合、ゴースト像又は複像を回避するためにHUDゾーンとも呼ばれる反射ゾーンの均一なHUD位相差を得る解決策を提案する。
【0020】
現在、フロントガラスは、著しい湾曲を含む形状の点で、益々複雑である。フロントガラスの必要な形状に達するために、ガラス板を曲げる。次に、ガラス板は、ガラス板に応力を全体的に引き起こす熱処理及び急速冷却処理を受ける。応力は、ガラス板を通って異方性である。HUD投影器からの光源を投影するHUD領域の応力の存在は、HUD領域の不均一な位相差を引き起こし、HUDP偏光投影器を使用する場合でも、HUD像における不均一なゴーストの出現となる。
【0021】
曲げられたガラス板は、フロントガラス、特にHUDゾーンへの制御できない複屈折を引き起こす。
【0022】
1つの第1のステップは、HUDゾーンの均一な応力を有することによって等方性複屈折又は遅延を生成することである。これは、処理の冷却段階中に、特に、ガラス転移域(約580℃から約520℃)を越えて行く場合、温度が領域でできるだけ均一であることを保証することによって得られる。
【0023】
本発明によれば、外部に面するガラス嵌め体の面を意味する位置1におけるガラス-空気界面でできるだけ純粋なP偏光を得るために偏光される光源を使用することによって、ゴースト像又は複像を低減する、又は更に除去することができる。その場合、光ビームは、その界面で非常に低い反射率を有し、観察者によって見られる光の大部分は、優れた質の像をもたらすP4位置から来ている。本発明の目的は、ガラス嵌め体のガラス-空気界面で、より詳細には、ブルースター角に近い外ガラス板の外面(P1)で、最大P偏光を得ることにある。
【0024】
本発明を、S偏光及びP偏光の混合物を放出するHUDシステム、及びP偏光だけを放出するHUDシステムに適用してもよい。
【0025】
「p偏光」は、光が入射面に沿って電場を有することを意味する。「入射角」は、入射点において面に入射する放射線と面に垂直な線との間の角度として定義される。投影器は、光が少なくとも1つの点でフロントガラス(積層体)と接触するように、フロントガラス(積層体)に向けられた光を放出する。「s偏光」は、光が入射面に垂直な電場を有することを意味する。
【0026】
更に、ガラスの組成、好ましい実施形態で、P偏光に構成された偏光子、塗膜を含む楔形ガラス嵌め体又は楔形中間層、フロントガラスの使用が何でも、本発明を使用してもよい。
【0027】
更に、このようなHUDシステムを提供する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
添付図面と併せて下記の説明を参照すると、本発明のより良い理解を与えるであろう。
【0029】
【
図1】本発明の自動車ヘッドアップディスプレイ装置の一実施形態の略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、虚像として運転者によって見られるべき車両のフロントガラスから光を反射するヘッドアップディスプレイ(HUD)システムを提供する。
【0031】
より詳細には、本発明は、
a.偏光をガラス嵌め体の方へ投影する光源と、
b.第1の面及び第2の面を有する外ガラス板と第1の面及び第2の面を有する内ガラス板とを含むガラス嵌め体を含むヘッドアップディスプレイ(HUD)システムであって、
ガラス嵌め体は、外ガラス板及び/又は内ガラス板の面のうち少なくとも1つの少なくとも一部の上に、第1の強化p偏光反射塗膜を含み、これらの外ガラス板と内ガラス板はともに、少なくとも1つの中間層材料板によって接合されているHUDシステムを提供する。
【0032】
本発明によれば、偏光を投影する光源は、外ガラス板の外面でP偏光を有するためにガラス位相差を補償する波長板を含む。外ガラス板の外面は、面1又はP1として一般に知られており、外ガラス板の内面は、面2(又はP2)として知られており、内ガラス板の外面は、面3又はP3として知られており、内ガラス板の内面(車のコンパートメントに向けられた面)は、面4又はP4として知られている。
【0033】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、第1の強化p偏光反射塗膜は、内ガラス板の内面(面4又はP4とも呼ばれる)の少なくとも一部に設けられている。より詳細には、偏光を投影する光源からの像を投影するフロントガラス上のゾーンを意味するHUDゾーンに第1の強化p偏光反射塗膜が設けられている。従って、反射強度は、より優れており、従って、より効率的である。
【0034】
好ましい実施形態によれば、HUDシステムの光源は、主にP偏光をガラス嵌め体の方へ投影する。
【0035】
本発明は、楔形フロントガラスの使用を必要とすることなく、許容像を提示するHUDシステムを提供する。楔形フロントガラスは、運転者によって見られるべきフロントガラスの前後面から反射される像を重ね合わせるように設計されている。本発明を用いて、投影光は、虚像として運転者によって見られるべきフロントガラスから反射し、フロントガラスの内面又は外面から殆ど反射する。その結果、楔形フロントガラスの必要はあまりない。楔形でないフロントガラスを使用することができる。光がフロントガラスの外面から反射する実施形態において、虚像からの光を、従来の偏光サングラスを着用する運転者に完全に伝えるように、光を偏光する。
【0036】
一実施形態において、本発明は、フロントガラスと非球面鏡との間に設けられたガラス位相差を補償する波長板を含むモーター車両用のヘッドアップシステムを含み、非球面鏡は、HUDシステムの周知の部品である。
【0037】
本発明の範囲において、光源は、好ましくは、p偏光を与える。このような光は、運転者/車乗客の方への投影情報の有利な反射を可能にする。
【0038】
一般的に、投影光は、42度から72度の角度でガラス嵌め体に入射する。p偏光源で構成されている本HUDシステムの利点は、p偏光をp偏光HUD投影器によって放出する場合にゴースト像の出現の減少に専用の塗膜の場合の有効p偏光反射率の結果として、光の入射角がブルースター角(一般的に、56度)に近い場合、外ガラス面(P1)によって、複像を生成しない、又は無視できる複像を生成することである。
【0039】
ガラス嵌め体は、第1の面(P1)及び第2の面(P2)を有する外ガラス板と第1の面(P3)及び第2の面(P4)を有する内ガラス板とを含む。このようなガラス嵌め体は一般的に、積層される。ガラス嵌め体の外ガラス板は、車両又は建物の外部と接触しているその板である。内ガラス板は、車両の内部空間と接触しているその板である。2つのガラス板は、2つのガラス板の間の接着及び接触に役立つ積層板又は中間層と接触して保持されている。中間層は、内ガラス板の第1の面(P3)と外ガラス板の第2の面(P2)との間の接触を与える。
【0040】
ガラスは、ソーダ石灰シリカ、アルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩型などのガラスであってもよい。一般的に、ガラス板は、0.5mmから12mmの厚さを有するフロートガラスである。運搬用途において、ガラスは、1mmから8mmの厚さを有してもよい一方、建設用途において、ガラスは、より薄くても又はより厚くてもよく、例えば、0.5mmから1mmの極薄ガラス、又は1mmから8mmの厚さに加えて、8mmから12mmのより厚いガラスであってもよい。
【0041】
ガラス嵌め体の組成は、このガラス板が運搬用途又はアーキテクチャ用途に適しているという条件で、本発明の目的に重要でない。ガラスは、所望の効果に応じて適切な量で1つ又は複数の成分/着色剤を含む、透明ガラス、超透明ガラス又は着色ガラスであってもよい。着色ガラスは、灰色、緑色又は青色フロートガラスを含む。幾つかの状況において、着色ガラスは、最終ガラス嵌め体の適切な所望の色を提供するのに有利である。
【0042】
ガラス板は、用途に必要な形状として、平面であってもよく、又はガラス支持の特定の設計に正確に適合するように全体的又は部分的に湾曲してもよい。
【0043】
中間層は一般的に、0.3mmから1.5mmの一般的な全厚を有する、熱可塑性材料(例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート)、又はこれらの熱可塑性材料の多層を含む。中間層は、着色剤を含んでもよく、従って、着色中間層であってもよい。
【0044】
中間層は一般的に、2つのガラス板の間の中間層の面全体にわたって均一な厚さを有する。従って、中間層は一般的に、「楔形」中間層と考えられない。楔形中間層は、反射像でアーチファクトを与えることがあり、従って、本発明の範囲において重要でない。更に、このような楔形中間層は一般的に、設計及び製造の追加コストを伴う。
【0045】
本発明の範囲において、中間層は一般的に、光吸収体又は任意の光妨害重合体が無い。本発明の範囲において、中間層は一般的に、多層塗膜を支持していない。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、内ガラス板の第2の面(P4)は、第1の強化p偏光反射塗膜を含む。第1の塗膜は、高屈折率材料の少なくとも1つの層、及び低屈折率材料の少なくとも1つの層を含む。本発明の範囲において、このような配列は、「高/低」配列と呼ばれる。
【0047】
幾つかの実施形態において、第1の塗膜は、高屈折率及び低屈折率の交互層を含んでもよく、即ち、第1の塗膜は、高屈折率材料の1つよりも多い層、及び/又は低屈折率材料の1つよりも多い層を含んでもよい。このような場合、「高/低」配列は、1回よりも多く行われてもよく、即ち、配列を、少なくとも2回繰り返してもよい。最大3回又は4回以上の繰り返し配列を設けてもよい。場合によっては、繰り返し配列は、3回以下である。
【0048】
本発明の範囲において、第1の塗膜に設けられた少なくとも内板は、熱焼き戻し処理に耐えるのに適している。従って、このような内板は、熱焼き戻し処理を受けてもよい。
【0049】
本発明の範囲において、高屈折率は典型的に、550nmの波長で、≧1.8、代わりに≧1.9、代わりに≧2.0、代わりに≧2.1である。
【0050】
本発明の範囲において、低屈折率は典型的に、550nmの波長で、<1.8、代わりに≦1.7、代わりに≦1.6である。
【0051】
図1は、偏光HUD投影器光源14を含む、本発明の自動車ヘッドアップディスプレイシステム1の一実施形態を例示する。フロントガラス10は、外ガラス板11、内プラスチック(例えば、ポリビニルブチラール(PVB))層(図示せず)、及び内ガラス板12を含む。第1の強化p偏光反射塗膜13を、内ガラス板12の全内面P4の上に設ける。本発明の実施形態によれば、第1の塗膜は、高屈折率材料の少なくとも1つの層、及び低屈折率材料の少なくとも1つの層を含む。本発明の範囲において、このような配列は、「高/低」配列と呼ばれる。この実施形態によるヘッドアップディスプレイシステム1は、光源14から非球面鏡15に投影される光を反射する平面鏡17を含む。フロントガラス10の方へ投影されるP偏光を主に有するために、P偏光子16を、非球面鏡15からの光の出口に設ける。本発明によれば、波長板18は、フロントガラスと非球面鏡15との間に設けられ、外ガラス板の外面(P1)上のp偏光の割合を最大化するように方向付けられる。波長板18は、外ガラス板の外面でP偏光を有するために、ガラス位相差を補償するように設けられる。
【0052】
一実施形態において、HUD投影器からの光は、p偏光され、ブルースター角で入射するので、フロントガラス10の外面からの反射がない。上述のように方向付けられた波長板18は、外ガラス板の外面上のp偏光のレベルを最大化することができる。
【0053】
本発明によれば、一次像強度、主にP偏光と、S偏光及びP偏光で構成されることがあり得るゴースト像強度との強度比は、15よりも高く、より好ましくは20よりも高く、より好ましくは50よりも高い。像は、運転者によって見られる像であるものとする。従って、ゴースト像は、回避され、反射像の質は、必要とされる通りである。フロントガラス10の外面に入射する光源14からの光は、投影器がP偏光を放出する場合でも、s偏光成分を含む。本発明は、ガラス板が、応力を含み、HUDゾーンで異方性である場合でも、P1上のP偏光の量を最大化することができる。従って、運転者19は、ゴースト発生の1つの像を見る。
【0054】
上述の説明は、「モーター車両」、「自動車」、「自動車用」、又は同様な用語を意味してもよい。これらの用語は、任意の特定のタイプの運搬車両に本発明を限定するように意図されていないものとする。むしろ、空路、水路、又は陸路(例えば、航空機、船など)で移動しようと、本発明を、任意のタイプの運搬車両に適用してもよい。
【0055】
理解を明瞭にするために、上述の詳細な説明を主に与え、この開示を読めば当業者によって行うことができ、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる修正に対して不必要な限定がないものとする。
【0056】
本発明の利点は、ゴースト像の問題を回避するためにHUDゾーンで複屈折の変動の問題を解決することである。
【0057】
本発明の別の利点は、楔形フロントガラス又は任意の特定の投影器又は特定の中間層無しでフロントガラスHUDを実施することができることである。
【0058】
更に、本発明は、外ガラス板の外面でP偏光を有するためにガラス位相差を補償する方法であって、
a.少なくとも1つの中間層材料板と第2のガラス板とに対して第1のガラス板を組み付けることによって、第1の強化p偏光反射塗膜を含むガラス嵌め体を設けるステップと、
b.p偏光を投影することができる光源を設けるステップと、
c.このp偏光を42度から72度の入射角でこのガラス嵌め体の方へ投影するようにこの光源を配置するステップと、
d.外ガラス板の外面でP偏光を有するためにガラス位相差を補償する波長板を設けるステップであって、この波長板を光源とフロントガラスとの間に設けるステップと
を含む方法を提案する。
【0059】
本発明の範囲において、熱処理にかけられることができる塗膜を内ガラス板に設けてもよく、この第1の塗膜は、このような熱処理に耐えることができると考えられる。場合によっては、第1の塗膜が設けられた内ガラス板を、熱処理にかける。
【0060】
2つのガラス板及び少なくとも1つの中間層を組み付けるステップは、平面ガラス用の積層ステップであってもよく、又は湾曲積層ガラス用の曲げステップであってもよく、曲げステップは、まず、ガラス板を曲げ、次に、これらの曲げガラス板を積層するステップを含む。
【0061】
場合によっては、機械的拘束に対する耐性を改善するために、外ガラス板を熱処理によって機械的に強化するのは有用である。更に、特定の用途のために高温で車両ガラス嵌め体を曲げる必要があってもよい。
【0062】
熱処理は、熱処理タイプ及びガラス嵌め体の厚さに従って、約3、4、6、8、10、12又は更に15分の間に、空気中で少なくとも560℃(例えば、560℃~700℃、特に約640℃~670℃)の温度にガラス嵌め体を加熱することを含む。処理は、衝撃の場合、いわゆる強化ガラス板が小片に安全に壊れるように、ガラスの表面と中核との間の応力差を導入するために、加熱ステップの後に急速冷却ステップを含んでもよい。冷却ステップがあまり強くない場合、ガラスは、単に熱強化され、とにかく、より優れた機械的耐性を示す。
【0063】
本ガラス嵌め体は、運搬用途又はアーキテクチャ用途に有用であり、偏光光源(S又はP、又はS及びPの混合物)からの像又は光の投影を使用してもよい。アーキテクチャ用途は、ディスプレイ、ウィンドウ、ドア、仕切り、シャワーパネルなどを含む。このようなアーキテクチャ用途において、鮮明な像の投影は、例えば、部屋を表示する、又は情報を構築するのに有用である。
【0064】
運搬用途は、路上、空中、水中及び水上での運搬用の車両、特に車、バス、列車、船、航空機、宇宙船、宇宙ステーション及び他のモーター車両を含む。
【0065】
従って、本ガラス嵌め体は、車に有用なフロントガラス、リヤウィンドウ、サイドウィンドウ、サンルーフ、パノラマ式ルーフ又は任意の他のウィンドウ、又は、鮮明な像の投影が有用である任意の他の運搬デバイス用の任意のガラス嵌め体であってもよい。投影及び反射情報は、任意の交通情報(例えば、方向又は交通量)、又は任意の車両状態情報(例えば、速度、温度など)を含んでもよい。
【0066】
場合によっては、車両ガラス嵌め体は、加熱可能車両ガラス嵌め体としての機能を果たしてもよい。このような加熱可能車両ガラス嵌め体は、加熱可能フロントガラスを含む。
【0067】
幾つかの実施形態において、第2の光源は、HUDシステムに存在し、二次像又は情報を与えてもよい。第2の光源は、偏光されなくてもよく、又は、p偏光又はs偏光されてもよいけれども、第1の光源と同じ又は異なる像を与える。場合によっては、像又は情報は、第1及び第2の光源の間で異なる。場合によっては、拡張現実情報を、光源のうち少なくとも1つによって投影してもよい。
【0068】
第2の光源が存在する場合、中間層は、楔形中間層であってもよい。
【0069】
本発明の範囲において、車両ガラス嵌め体上の第1の塗膜の存在は、p偏光の最適光反射を可能にする。投影及び反射像は一般的に、鮮明及び明瞭であり、鮮明な輪郭及び面によって規定される。この面は一般的に、ガラス嵌め体のp偏光反射の悪い質のために不鮮明な像の場合、増加する。ガラス嵌め体の反射特性が最適である場合、鮮明及び不鮮明な像輪郭の間の差は最小である。
【0070】
このようなガラス嵌め体の処理は一般的に、600℃~700℃の一般的な温度で塗膜ガラスを曲げる及び/又は強化することを必要とするので、第1の塗膜用の材料の選択は、光学的特性を耐熱性及び耐摩耗性と組み合わせるために重要である。更に、最終利用状態は、様々な種類の洗浄剤、湿度、汚染及び機械的摩耗への暴露を意味する、車両又は建物の内部に暴露されるガラス嵌め体の外面上に塗膜があることを必要とする。
【0071】
更に、本発明は、ガラス嵌め体への42度~72度の入射角で光を投影するp偏光源を含むHUDシステムにおけるガラス板の使用を提供し、外ガラス板の外面でP偏光を有するためにガラス位相差を補償する。このようなガラス嵌め体は、42度~72度の入射角で投影される場合、p偏光を最適に反射する利点を与える。
【国際調査報告】