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特表2023-548141電動ハンドルを有する外科用ステープラ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電動ハンドルを有する外科用ステープラ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
A61B17/072
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526213
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 US2021057365
(87)【国際公開番号】W WO2022094285
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/107,336
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ファム アンディ
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ ジョナサン アール
(72)【発明者】
【氏名】ギュジ ザカリー ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】バウティスタ トラヴィス
(72)【発明者】
【氏名】フォン シュタイン ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】キラズ アタ
(72)【発明者】
【氏名】ワイス エリック ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC09
4C160CC23
4C160CC40
4C160NN11
(57)【要約】
外科用ステープラの電動ハンドルが、電気モータを含む駆動システムを有する。電動ハンドルはシャフト認識機構を含み、従って制御システムは、外科用ステープラと共に使用されるリロードシャフトが取り付けられた時に、認識されたシャフトと共に駆動システムを作動させることができる。電動ハンドルは、ハンドルの状態を表示する光制御スキームによって駆動されるLED光リングをさらに含む。制御システムは、使用前にハードウェア及び制御システムの性能を評価する起動モジュールも含む。起動モジュールは、ハンドルが新しいものであるか、以前に使用されたものであるか、それとも以前にリセットされたものであるかに応じて異なる基準を評価する。電動ハンドルの制御システムは、ロックアウトがいつ発生したかを識別するように構成されたロックアウトモジュールをさらに含む。ロックアウトモジュールは、モータが最大速度状態で動作しているか、それとも最大速度状態未満で動作しているかに応じて異なる基準を適用する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ステープリングシステムであって、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを含む、ハンドル本体と、
前記ハンドル本体内に配置された電気モータと、
前記ハンドル本体内で長手方向軸に沿って摺動可能な作動シャフトと、
リロードシャフトアセンブリに取り外し可能に結合するように構成されたカプラと、
前記カプラにリロードシャフトが挿入されると検出位置に長手方向に移動可能であり、前記リロードシャフトアセンブリが前記カプラに結合されると所定の認識位置に長手方向に移動可能であるロックアウトスリーブを含むシャフト認識機構と、
を備えることを特徴とする外科用ステープリングシステム。
【請求項2】
前記シャフト認識機構は、近位端及び遠位端を有するロックアウトスリーブを含み、該ロックアウトスリーブは、前記遠位端から遠位方向に突出する少なくとも1つの歯を含む、
請求項1に記載の外科用ステープリングシステム。
【請求項3】
前記シャフト認識機構は、前記ロックアウトスリーブの前記近位端に結合された少なくとも1つのロックアウトリンクをさらに含む、
請求項2に記載の外科用ステープリングシステム。
【請求項4】
前記シャフト認識機構は、前記ハンドルアセンブリ内に配置されて前記ロックアウトリンクに係合するシャフト認識センサをさらに含む、
請求項3に記載の外科用ステープリングシステム。
【請求項5】
前記ロックアウトリンクは、該ロックアウトリンク上に配置されたラックを含み、前記シャフト認識センサは、前記ロックアウトリンクの前記ラックに係合するピニオンを含む、
請求項4に記載の外科用ステープリングシステム。
【請求項6】
前記ロックアウトリンクは、前記ラックを前記ピニオンと噛合係合させて位置付けるための曲げセグメントを含む、
請求項5に記載の外科用ステープリングシステム。
【請求項7】
前記カプラはバイオネット接続を含み、前記ロックアウトスリーブは、前記リロードシャフトが挿入されると前記検出位置に近位方向に変位し、前記ロックアウトスリーブは、前記リロードシャフトが結合位置に回転すると前記検出位置から前記認識位置に遠位方向に変位する、
請求項6に記載の外科用ステープリングシステム。
【請求項8】
外科用ステープラのためのハンドルアセンブリであって、該ハンドルアセンブリは、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを含む、ハンドル本体と、
前記ハンドル本体内に配置された、出力シャフトを含む電気モータと、
前記ハンドル本体内で長手方向軸に沿って摺動可能な作動シャフトであって、該作動シャフト上に形成されたラックを含む作動シャフトと、
前記モータの前記出力シャフトに結合されたモータギアと、
前記モータギアと駆動係合し、前記ラックと動作可能に係合する補助ギアと、
前記電気モータを制御するように動作可能な制御システムと、
を備え、前記制御システムは、該制御システムへの電力の付与時に動作可能な起動モジュールを含み、該起動モジュールは、新たなハンドルサブモジュール、使用済みハンドルサブモジュール、及びリセット検出済みサブモジュールを含み、前記起動モジュールは、開始時に前記制御システムの状態を判定して、前記新たなハンドルサブモジュール、前記使用済みハンドルサブモジュール及び前記リセット検出済みサブモジュールのうちの1つを実行する、
ことを特徴とするハンドルアセンブリ。
【請求項9】
前記リセット検出済みサブモジュールは、前記作動シャフトを近位位置に戻すように構成される、
請求項8に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項10】
前記制御システムは、前記リセット検出済みサブモジュールを選択的に無効にするリセット検出済みサブモジュールスイッチをさらに含む、
請求項8に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項11】
前記使用済みハンドルサブモジュールは、前記作動シャフトの長手方向位置及び前記トリガーの枢動位置をモニタし、前記作動シャフトの前記長手方向位置及び前記トリガーの前記枢動位置のいずれかが対応する動作範囲外にある場合に前記ハンドルアセンブリの動作を無効にするように構成される、
請求項8に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項12】
ロックアウト機構を有する取り外し可能に結合された器具シャフトを有する外科用ステープラのためのハンドルアセンブリであって、該ハンドルアセンブリは、
ハンドル本体であって、固定ハンドルと、前記ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを含む、ハンドル本体と、
前記ハンドル本体内に位置することができるモータ及び電源を含む、前記ハンドル本体内の電力システムと、
前記電力システムに動作可能に結合され、前記ハンドル本体内で長手方向に摺動可能な作動シャフトと、
前記作動シャフトの前記長手方向位置を特定するように構成された位置センサと、
前記電力システム、前記トリガー及び前記位置センサに電気的に結合された制御システムと、
を備え、前記制御システムは、前記モータの電流引き込み及び前記作動シャフトの前記長手方向位置をモニタし、前記モータの電流引き込みプロファイルの傾斜を計算し、前記モニタされた傾斜を使用して前記ロックアウト機構の係合を検出するように構成されたロックアウトモジュールを含み、前記ロックアウトモジュールは、前記モータが最大パルス幅変調状態で動作している場合には、前記ロックアウトの係合を検出するために第1の評価規準を適用し、前記モータが最大パルス幅変調状態では動作していない場合には、前記ロックアウトの係合を検出するために第2の評価規準を適用する、
ことを特徴とするハンドルアセンブリ。
【請求項13】
前記ロックアウトモジュールは、前記作動シャフトの位置が把持動作に対応している最中に動作可能である、
請求項12に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項14】
前記ハンドルアセンブリは光リングディスプレイをさらに備え、前記制御システムは、前記光リングディスプレイ上に表示される指標を制御するように動作可能な光制御スキームをさらに含む、
請求項12に記載のハンドルアセンブリ。
【請求項15】
前記光制御スキームは、前記ロックアウトモジュールによってロックアウトが検出された時にロックアウト指標を表示するように構成される、
請求項14に記載のハンドルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2020年10月29日に出願された「電動ハンドルを有する外科用ステープラ(Surgical Stapler Having a Powered Handle)」という名称の米国仮特許出願番号第63/107,336号に対する優先権及びその利益を主張するものであり、この文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、一般に外科用閉塞器具(surgical occlusion instruments)に関し、具体的には外科用電動ステープラに関する。
【背景技術】
【0003】
外科用ステープラは、組織を近づけ又はクランプして、クランプされた組織を共にステープリングするために使用される。従って、外科用ステープラは、組織をクランプして組織にステープルを通すための機構を有する。この結果、例えばクランプされた組織を正しくステープリングするための複雑な機構に関連して複数のトリガー及びハンドルが生産されてきた。これらの複雑な機構により、外科用ステープラは、高い製造間接費と、装置の故障及びユーザの混乱を招く潜在的な根源とを有することができる。従って、複雑な機構を伴わずに、クランプされた組織を確実にステープリングできることが望ましい。
【0004】
電動モータを有する外科用ステープラは、上述した機械的複雑性を抑えることができる。電動式外科用ステープラは、ステープラの信頼できる動作及びユーザへのステープリング状態の伝達を容易にする制御システムを組み込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第16/287,748号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第15/486,227号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第15/486,008号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書のいくつかの実施形態では、外科用ステープリングシステムを提供する。外科用ステープリングシステムは、ハンドル本体、電気モータ、作動シャフト、カプラ、及びシャフト認識機構を含む。ハンドル本体は、固定ハンドルと、ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを含む。電気モータは、ハンドル本体内に配置される。作動シャフトは、ハンドル本体内で長手方向軸に沿って摺動可能である。カプラは、リロードシャフトアセンブリに取り外し可能に結合するように構成される。シャフト認識機構は、リロードシャフトのカプラへの挿入時に検出位置に長手方向に移動可能であって、リロードシャフトアセンブリがカプラに結合された時に所定の認識位置に長手方向に移動可能であるロックアウトスリーブを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、外科用ステープラのためのハンドルアセンブリを提供する。ハンドルアセンブリは、ハンドル本体、電気モータ、作動シャフト、モータギア、補助ギア、及び制御システムを含む。ハンドル本体は、固定ハンドルと、ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを含む。電気モータは、ハンドル本体内に配置される。電気モータは、出力シャフトを含む。作動シャフトは、ハンドル本体内で長手方向軸に沿って摺動可能である。作動シャフトは、その上に形成されたラックを含む。モータギアは、モータの出力シャフトに結合される。補助ギアは、モータギアと駆動係合し、ラックと動作可能に係合する。制御システムは、電気モータを制御するように動作可能である。制御システムは、制御システムへの電力の付与時に動作可能な起動(startup)モジュールを含む。起動モジュールは、新たなハンドルサブモジュール(new handle submodule)と、使用済みハンドルサブモジュール(used handle submodule)と、リセット検出済みサブモジュール(reset detected submodule)とを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、ロックアウト機構を有する取り外し可能に結合された器具シャフトを有する外科用ステープラのためのハンドルアセンブリを提供する。ハンドルアセンブリは、ハンドル本体、電力システム、作動シャフト、位置センサ、及び制御システムを含む。ハンドル本体は、固定ハンドルと、ハンドル本体に枢動可能に結合されたトリガーとを含む。電力システムは、ハンドル本体内に存在する。電力システムは、ハンドル本体内に配置できるモータ及び電源を含む。作動シャフトは、電力システムに動作可能に結合される。作動シャフトは、ハンドル本体内で長手方向に摺動可能である。位置センサは、作動シャフトの長手方向位置を決定するように構成される。制御システムは、電力システム、トリガー及び位置センサに電気的に結合される。制御システムは、モータの電流引き込みと作動シャフトの長手方向位置とをモニタし、モータの電流引き込みプロファイルの傾斜を計算し、モニタされた傾斜を使用してロックアウト機構の係合を検出するように構成されたロックアウトモジュールを含む。ロックアウトモジュールは、モータが最大パルス幅変調状態で動作している場合にはロックアウトの係合を検出するために第1の評価基準を適用し、モータが最大パルス幅変調状態で動作していない場合にはロックアウトの係合を検出するために第2の評価基準を適用する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電動ハンドルの実施形態を有する外科用ステープリングシステムの実施形態の斜視図である。
図2図1の外科用ステープリングシステムの電動ハンドルの側面図である。
図3】駆動システムを示すようにコンポーネントを除去した図2の電動ハンドルの部分的切欠斜視図である。
図4図2の電動ハンドルの駆動システムの実施形態の斜視図である。
図5図4の駆動システムの斜視図である。
図6図4の駆動システムの分解斜視図である。
図7図4の駆動システムの斜視図である。
図8図2の電動ハンドルの電源の実施形態の斜視図である。
図9図8の電源の実施形態の断面斜視図である。
図10図2の電動ハンドルの切欠上面図である。
図11図2の電動ハンドルの関節運動機構の実施形態の切欠上面図である。
図12】関節運動位置にある図10の関節運動機構の切欠上面図である。
図13】別の関節運動位置にある図10の関節運動機構の切欠上面図である。
図14】中心位置にあって解除ボタンが作動した図10の関節運動機構の切欠上面図である。
図15】中心位置にあって解除ボタンが作動した図10の関節運動機構の切欠上面図である。
図16】関節運動機構がロックアウト構成にある図2の電動ハンドルの切欠上面図である。
図17】関節運動機構がロック解除構成にある図2の電動ハンドルの切欠上面図である。
図18図2の電動ハンドルの駆動システム及び関節運動機構の斜視図である。
図19A図2の電動ハンドルの関節運動機構の関節運動リンク及びロックアウトリンクの斜視図である。
図19B-C】図19Bは、図1の外科用ステープリングシステムのリロードシャフトの実施形態の側面図である。図19Cは、図19Bのリロードシャフトの近位端の斜視端面図である。
図19D図19Bのリロードシャフトのロックアウトキー溝のいくつかの実施形態の側面図である。
図19E図2の電動ハンドルのロックアウトスリーブの斜視図である。
図19F】リロードシャフトのロックアウトキー溝の実施形態と電動ハンドルのロックアウトスリーブとの結合動作を示す概略図である。
図19G】結合動作においてリロードシャフトが近位方向に前進した電動ハンドル及びリロードシャフトの切欠斜視図である。
図19H】リロードシャフトが電動ハンドルに結合された電動ハンドル及びリロードシャフトの切欠斜視図である。
図19I図2の電動ハンドルの関節運動機構及びシャフト認識機構のロックアウトリンクの切欠斜視図である。
図19J図2の電動ハンドルのシャフト認識機構のためのシャフト認識センサを含む回路基板の実施形態の側面図である。
図19K図19Jのシャフト認識センサのシャフト認識ゾーンの例示的な分布である。
図20】オーバーライド復帰機構が解放構成にある図2の電動ハンドルの斜視図である。
図21】オーバーライド復帰機構が復帰構成に移動するようにロック解除された図2の電動ハンドルの斜視図である。
図22】オーバーライド復帰機構が復帰構成に移動するようにロック解除された図2の電動ハンドルの部分的切欠斜視図である。
図23】オーバーライド復帰機構が解放構成にある図2の電動ハンドルの部分的切欠側面図である。
図24】オーバーライド復帰機構が復帰構成に移動するようにロック解除された図2の電動ハンドルの部分的切欠側面図である。
図25】オーバーライド復帰機構が復帰構成にある図2の電動ハンドルの斜視図である。
図26】オーバーライド復帰機構が復帰構成にある図2の電動ハンドルの部分的切欠斜視図である。
図27】オーバーライド復帰機構が復帰構成にあって手動復帰サイクルが開始された図2の電動ハンドルの部分的切欠斜視図である。
図27A図2の電動ハンドルのオーバーライド復帰機構の復帰爪の斜視図である。
図27B図2の電動ハンドルのオーバーライド復帰機構の側面図である。
図27C図2の電動ハンドルのオーバーライド復帰機構の側面図である。
図28】外科用ステープラのオーバーライド復帰機構の別の実施形態の側面図である。
図29図28のオーバーライド復帰機構の斜視図である。
図30図28のオーバーライド復帰機構の斜視図である。
図31図28のオーバーライド復帰機構の側面図である。
図32】外科用ステープリング装置のいくつかの実施形態で使用されるリロードカートリッジの斜視図である。
図33】外科用ステープリング装置の細長いシャフトアセンブリのいくつかの実施形態で使用される発射梁及び発射部材の斜視図である。
図34】外科用ステープリング装置の細長いシャフトアセンブリのいくつかの実施形態のジョーアセンブリの近位端の部分的分解斜視図である。
図35】外科用ステープリング装置の細長いシャフトアセンブリのいくつかの実施形態のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図36】未発射のリロードが部分的に挿入された図35のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図37】未発射のリロードが部分的に挿入された図35のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図38】未発射のリロードが部分的に挿入された図35のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図39】未発射のリロードが挿入された図35のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図40】少なくとも部分的に発射済みのリロードが挿入された図35のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図41】リロードが挿入されていない図35のジョーアセンブリの近位端の切欠側面図である。
図42】電気的に結合された光リングユーザディスプレイを有する図2の電動ハンドルの部分的切欠側面図である。
図43図2の電動ハンドルの光リングユーザディスプレイの側面図である。
図44図2の電動ハンドルの光リングユーザディスプレイの斜視図である。
図45A図2の電動ハンドルの制御システムの実施形態の情報及び電力フローのブロック図である。
図45B図2の電動ハンドルの制御システムの起動モジュールの実施形態の開始部分のプロセスフローのブロック図である。
図45C図2の電動ハンドルの制御システムの起動モジュールの実施形態の新たなハンドルサブモジュールの第1の部分のプロセスフローのブロック図である。
図45D図2の電動ハンドルの制御システムの起動モジュールの実施形態の新たなハンドルサブモジュールの第2の部分のプロセスフローのブロック図である。
図45E図2の電動ハンドルの制御システムの起動モジュールの実施形態のリセット検出済みサブモジュールのプロセスフローのブロック図である。
図45F図2の電動ハンドルの制御システムの起動モジュールの実施形態の使用済みハンドルサブモジュールのプロセスフローのブロック図である。
図46A図2の電動ハンドルの例示的な動作シーケンスの動作シーケンスフローチャートである。
図46B図2の電動ハンドルの例示的な動作シーケンスの動作シーケンスフローチャートである。
図47図2の電動ハンドルなどの電動ハンドルの把持動作における1つの例示的なジョーアセンブリのモータ負荷対経過時間のプロットである。
図48図2の電動ハンドルなどの電動ハンドルの把持動作における1つの例示的なジョーアセンブリのモータ負荷対経過時間のプロットである。
図49図2の電動ハンドルなどの電動ハンドルの複数のトリガー作動を伴う把持動作における1つの例示的なジョーアセンブリのモータ負荷対経過時間のプロットである。
図50図2の電動ハンドルなどの電動ハンドルでロックアウト機構が遭遇する把持動作における1つの例示的なジョーアセンブリのモータ負荷対経過時間のプロットである。
図51図2の電動ハンドルなどの電動ハンドルでロックアウト機構が遭遇する把持動作における1つの例示的なジョーアセンブリのモータ負荷対経過時間のプロットである。
図52図2の電動ハンドルなどの電動ハンドルでロックアウト機構が遭遇する複数のトリガー作動を伴う把持動作における1つの例示的なジョーアセンブリのモータ負荷対経過時間のプロットである。
図53】電動ハンドルアセンブリの実施形態の例示的なロックアウト機構制御ロジックプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図2に、外科用ステープリングシステムの実施形態を示す。図示の外科用ステープラ10の実施形態は、細長いシャフト20と、ジョーアセンブリ30と、ハンドルアセンブリ40とを含む。図1には、ジョーアセンブリ30が開放構成にある外科用ステープラ10と、電動ステープル発射(powered staple firing)及び手動ジョーアセンブリ関節運動(manual jaw assembly articulation)を有する電動ハンドルの実施形態とを示す。図2には、細長いシャフトを除去した外科用ステープラシステム10の電動ハンドル40を示す。図2の電動ハンドル40は、電動ステープル発射及び手動ジョーアセンブリ関節運動を有する。図示の実施形態では、ハンドル40上の回転ノブの回転によって、シャフト20によって定められる長手方向軸を中心にシャフト20及びジョーアセンブリ30を自由に回転させることができる。他の実施形態では、ステープリングシステムを、長手方向軸を中心とした所定の範囲内でのジョーアセンブリの回転、又は回転可能に固定されたジョーアセンブリを可能にするように構成することができる。
【0011】
引き続き図1を参照すると、図示の外科用ステープラ10の実施形態は、腹腔鏡外科手術で使用されるようなサイズ及び構成を有することができる。例えば、細長いシャフト20及びジョーアセンブリ30は、アクセスポート又はトロカールカニューレを通じて手術野内に導入されるようなサイズ及び構成を有することができる。いくつかの実施形態では、細長いシャフト20及びジョーアセンブリ30が、例えば8mm未満などの比較的小さなワーキングチャネル直径を有するトロカールカニューレを通じて挿入されるようなサイズ及び構成を有することができる。他の実施形態では、細長いシャフト20及びジョーアセンブリ30が、例えば10mm、11mm、12mm又は15mmなどのさらに大きなワーキングチャネル直径を有するトロカールカニューレを通じて挿入されるようなサイズ及び構成を有することができる。他の実施形態では、本明細書で説明する外科用ステープラのいくつかの態様を、開腹手術法で使用される外科用ステープリング装置に組み込むこともできると想定される。
【0012】
引き続き図1を参照すると、図示のように、細長いシャフト20は概ね管状の部材を含む。細長いシャフト20は、近位端から遠位端に延びる。細長いシャフト20は、近位端22と遠位端24との間に延びる外科用ステープラ10の中心長手方向軸Lを定める。
【0013】
引き続き図1を参照すると、図示の実施形態では、細長いシャフト20の遠位端において細長いシャフト20にジョーアセンブリ30が結合される。ジョーアセンブリ30は、第1のジョー32と、第1のジョー32に枢動可能に結合された第2のジョー34とを含む。図示の実施形態では、第1のジョー32が、中心長手方向軸Lに沿って遠位方向に延び、ハンドル40の関節運動機構に応答して細長いシャフト20に対して関節運動できるように、細長いシャフト20の遠位端24に固定される。初期構成では、第1のジョー32が、リロード50内に配置された複数のステープル36を含む。他の実施形態では、リロード50をジョーアセンブリ30と一体化して、シャフトアセンブリ20全体とステープルが装填されたジョーアセンブリ30とが単一のリロードアセンブリを定めるようにすることができる。いくつかの実施形態では、ステープルを最初に第2のジョー34内に配置することもできる。
【0014】
引き続き図1を参照すると、図示の実施形態では、細長いシャフト内で長手方向に摺動可能な駆動部材又は梁(beam)によって、ジョーアセンブリ30をステープリング構成に対して開放構成(図1)から閉鎖構成に作動させることができる。初期位置では、梁が細長いシャフト20の遠位端24に位置することができる。梁が初期位置にある状態では、第2のジョー34が第1のジョー32から離れて枢動することによって、ジョーアセンブリ30が開放構成になる。作動部材又は梁が長手方向軸Lに沿って遠位方向に並進すると、作動梁は第2のジョー34に係合する。作動梁が初期位置から遠位方向に第1の距離だけ並進すると、ジョーアセンブリが開放構成から閉鎖構成に作動することができる。ジョーアセンブリ30が閉鎖構成にある状態では、作動梁を近位方向に第1の距離だけ戻すと、ジョーアセンブリ30が開放構成に戻ることができる。作動梁の遠位端は、第1のジョー32からステープルを展開するように構成されたステープルスライダを前進させることができ、これによって作動梁が第1の距離を過ぎて遠位方向にさらに並進すると、第1のジョー32のリロード50から複数のステープル36が展開されるようになる。
【0015】
引き続き図1を参照すると、図示の実施形態では、ハンドルアセンブリが細長いシャフト20の近位端において細長いシャフト20に結合されるように構成される。図示のように、ハンドルアセンブリ40は、固定ハンドル42と、固定ハンドル42に枢動可能に結合された可動ハンドル44又はトリガーとを定めるハウジングを含むピストルグリップ構成を有する。他の実施形態では、本明細書で説明する態様を含む外科用ステープラ装置が、例えばシザースグリップ構成又はインライン構成などの他の構成のハンドルアセンブリを有することもできると想定される。以下でさらに詳細に説明するように、ハンドルアセンブリ40は、可動ハンドル44の動きに応答して作動シャフトを選択的に前進させるように構成された電動作動機構(powered actuation mechanism)を収容する。
【0016】
図示の実施形態では、外科用ステープラ10が、使い捨てカートリッジリロード50内に位置する複数のステープル36を含むことができる一方で、ジョーアセンブリ30は、1回の手術において複数のステープルカートリッジリロード50と共に再利用されるように構成される。いくつかの実施形態では、細長いシャフト20及びジョーアセンブリ30が、ハンドルアセンブリ40に取り外し可能に結合できる使い捨てリロードシャフトを定める。従って、図示の実施形態では、ハンドルアセンブリ40がその遠位端にカプラ46を含む。カプラ46は、外科用ステープラ10の細長いシャフト20に係合するように適合される。カプラ46は、ハンドルアセンブリ42を細長いシャフト20に取り外し可能に結合できる外側コネクタと、ハンドルアセンブリ42の作動シャフトを細長いシャフト20の駆動部材に取り外し可能に結合できる第1の内側コネクタと、ハンドルアセンブリ42の関節運動カプラを細長いシャフト20の関節運動リンクに取り外し可能に結合できる第2の内側コネクタとを有するバイオネット接続を有することができる。これらの3つの取り外し可能な結合は、細長いシャフト20がハンドルアセンブリ42に結合された時に同時に行われる。従って、外科用ステープラ10は、外科手術中にハンドルアセンブリ40を複数のリロードシャフト20と共に再利用できるように構成することができる。他の実施形態では、ハンドルアセンブリ及び細長いシャフトのいくつかの部分を再利用できる一方で、ジョーアセンブリ内の細長いシャフトの残り部分が使い捨てカートリッジを定めるものと想定される。他のいくつか実施形態では、ハンドルアセンブリ及び細長いシャフトを再利用できる一方で、ジョーアセンブリが使い捨てカートリッジを定める。さらに他の実施形態では、複数のステープルを収容するジョーインサートが使い捨てカートリッジを定めることができる一方で、外科用ステープラの残り部分が再利用可能である。
【0017】
図2に、外科用ステープリングシステムの電動ハンドルの実施形態を示す。電動ハンドルは、シャフト構成、ジョーアセンブリ構成及びステープル構成を特定の手術に合わせて選択できるように、様々なシャフトリロード及びカートリッジと共に使用することができる。図示のハンドルの実施形態では、ジョーのクランピング及び開放、並びにステープルラインの発射が電動(モータ駆動)で行われる。ジョーアセンブリの関節運動は、オペレータが回転させる関節運動ノブによって手動で制御することができる。モータは、異なる使用段階中におけるハンドルの機能を決定する埋め込み制御システムによって制御される。
【0018】
引き続き図2を参照すると、電動ハンドル40は、固定ハンドル42と、固定ハンドル42に枢動可能に結合された可動ハンドル44又はトリガーとを有するピストルグリップ構成を含む。固定ハンドルの下面には、電源130又はバッテリが位置することができる。電動ハンドル40は、ユーザがステープリングシーケンスを選択的に制御できるようにする発射又は発射/反転ボタン150などのユーザコントロールをさらに含むことができる。電動ハンドル40は、電動システムの故障、制御システムの故障、電源の故障、「ロックジョー(lockjaw)」又はその他の機械的拘束(mechanical binding)の際にユーザがステープリングシステムを手動で開放構成に戻せるようにする、冗長な手動オーバーライド復帰システム170をさらに含むことができる。電動ハンドルは、回転可能な関節運動ノブ190を含む手動関節運動機構をさらに含むことができる。図示の実施形態では、関節運動ノブ190が電動ハンドルの近位端に位置して、ステープリングシステムの長手方向軸に概ね対応する軸の周囲で回転することができる。いくつかの実施形態では、電動ハンドルが、ユーザに所望のステータス指標(status indicia)を表示する環状光リング(annular light ring)などの照明付きユーザディスプレイ(illuminated user display)をさらに含むことができる。
【0019】
電動ハンドルアセンブリ及び関連する作動機構の様々な実施形態は、2019年2月27日に出願された「電動ハンドルを有する外科用ステープラ(Surgical Stapler Having a Powered Handle)」という名称の米国特許出願公開第16/287,748号、2017年4月12日に出願された「外科用ステープラのためのリロードシャフトアセンブリ(Reload Shaft Assembly for Surgical Stapler)」という名称の米国特許出願公開番号第15/486,227号、及び2017年4月12日に出願された「電動ハンドルを有する外科用ステープラ(Surgical Stapler Having a Powered Handle)」という名称の米国特許出願公開番号第15/486,008号に開示されており、これらの各文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0020】
電動駆動システム
図3に、電動ハンドルの部分的切欠図を示す。図示の切欠図では、電動ハンドルの駆動システムを明確に示すように、電動ハンドルの複数のコンポーネントを除去している。図示の実施形態では、駆動システムが、固定ハンドル42内に位置するモータ112と、モータ112の出力シャフト上に位置するモータギア114と、モータギア114と駆動係合する補助ギア116とを含む。いくつかの実施形態では、モータ112がブラシ付きDCギアモータである。補助ギア116を通じた伝達力は、モータ112が固定ハンドル内で横方向中心に位置してハンドルのバランス及びユーザの人間工学の強化を可能にすることができるという利点を有する。さらに、 いくつかの実施形態では、モータギア114及び補助ギア116を、ラック122に所望の作動トルクをもたらすように構成することができる。いくつかの実施形態では、モータ112が、モータ112と補助ギア116に結合されたモータギア114との間に動作結合されて所望の作動トルクをもたらすマルチギアトランスミッションを含むことができる。モータ112は、制御システムを介して電源130に電気的に結合することができる。ハンドル内の制御システムは、駆動システムと連動して、作動シャフト120の位置、従ってジョーアセンブリの作動を測定する。
【0021】
駆動システムは、ハンドル内のマイクロコントローラを含む制御システムに情報を提供するハードウェアに取り付けられる。この埋め込みシステムは、モータの速度及びトルクを制御することができる。この埋め込みシステムは、ユーザ入力(トリガーの動き及び発射/反転ボタンの押圧)及び駆動システムの位置に基づいて装置の機能を制御することもできる。制御システムは、モータからのフィードバックを測定して、ステープルの発射を継続するのに負荷が高すぎないかどうか、又はリロードカートリッジのロックアウトが作動したかどうかを判定することもできる。制御システムは、バッテリ寿命を測定して装置の発射回数を制限することもできる。駆動システムは、主に電動動作のために構成されるが、いくつかの実施形態では、本明細書でさらに説明するような、電動動作に優先する手動復帰機構を提供することが望ましい場合もある。
【0022】
図4図6に、電動ハンドルの駆動システムの詳細図を示す。図示の実施形態では、駆動システムが、支持プレート121によって終点間を支持された分岐補助ギア(bifurcated auxiliary gear)116を含む。この補助ギア116の支持構成には、重い負荷条件においてモータギア114が補助ギア116から分離する傾向を大幅に低減できる強固な機構を提供するという利点がある。
【0023】
図5図6を参照すると、分岐補助ギア116は、第2のギアセグメント115に回転可能に結合された第1のギアセグメント113を含む。第1のギアセグメント113は第1の係合面を含むことができ、第2のギアセグメント115は第2の係合面を含むことができ、これによって第1の係合面と第2の係合面とが結合して、第1のギアセグメント113が第2のギアセグメント115に回転可能に結合されるようになる。図示の実施形態では、第1のギアセグメント113が、軸方向に延びて第1の係合面を定めるボスを含み、第2のギアセグメント115が、軸方向に延びて第2の係合面を定めるボスを含む。第1のギアセグメント及び第2のギアセグメントの軸方向に延びるボスは、それぞれ第1のギアセグメント113と第2のギアセグメント115との回転結合を可能にする四角い歯型の(square toothed)又は「城郭(castle)」型の断面形状を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2のギアセグメント113、115が回転可能に結合すると、軸方向に延びるボス同士が係合して、第1のギアセグメント113及び第2のギアセグメント115のいずれかの外径よりも小さな外径を有する中心領域を形成する。
【0024】
図6には、分岐補助ギア116を有する駆動システムの分解図を示す。図示のように、駆動システムは、補助ギア116の第1の端部と第2の端部との間に配置された支持プレート121をさらに含む。支持プレート121は、補助ギアボア123及びモータギアボア125が形成された剛直なプレートとすることができる。いくつかの実施形態では、支持プレート121が金属材料を含むことができる。駆動システムは、補助ギアボア123内に位置する補助ギアブッシング117と、モータギアボア125内に位置するモータギアブッシング119とをさらに含むことができる。ブッシング117、119は、DELRIN(登録商標)材料などの比較的摩擦係数の低い材料を含むことができる。作動シャフトブラケット又はガイド部材127は、作動シャフト120のラック122と補助ギア116の第2のギアセグメント115との係合を容易にすることができる。
【0025】
図5図6を参照して分かるように、補助ギア116の第1のギアセグメント113及び補助ギアの第2のギアセグメント115は、補助ギア116の中心領域が補助ギアボア123及び補助ギアブッシング117を貫通して補助ギア116の第1の端部と第2の端部との間が支持されるように、支持プレート121を中心にして組み立てることができる。図示の実施形態では、補助ギア116の第1のギアセグメント113がモータギア114とギア係合(geared engagement)する。補助ギア116の第2のギアセグメント115は、作動シャフト120のラック面122とギア係合する。支持プレート121は、ハンドルアセンブリハウジングの壁部及びそこに形成されたボスによって封入されて駆動システムを支持することができる。
【0026】
図7を参照して分かるように、電動動作中、補助ギア116は、ハンドル本体内を長手方向に延びる作動シャフト120上のラック122と噛合係合(meshed engagement)する。図示の実施形態では、補助ギアがガイド部材内に支持され、ガイド部材を貫いて作動シャフト120が摺動する。ガイド部材127は、補助ギア116とラック122との間の噛合接触(meshed contact)の維持を支援する。作動シャフト120の遠位端は、電動ハンドルの遠位端のカプラ46(図1)内に長手方向に延びる作動アダプタ124に自由回転可能に結合される。
【0027】
作動アダプタ124は、シャフト20が電動ハンドル40のカプラ46に結合されることによって、バイオネット接続を介してシャフト20内の駆動部材に接続する。従って、シャフト20がハンドル40に取り付けられると、モータ112及びラック122が、器具シャフト20内を延びてジョーアセンブリに結合された駆動部材を駆動するようになる。従って、ハンドル内の駆動システムは、「ラックアンドピニオン」設計を含む。ユーザの入力に応答したモータ112の動作は、作動シャフト120を長手方向前方及び後方に駆動して、ステープラを閉鎖動作、発射動作又は開放動作で選択的に作動させる。
【0028】
図8及び図9に、電動ハンドル40の電源130の実施形態を示す。電源130は、電動ハンドルモータ及び制御システムに直流を供給するように構成することができる。図示の実施形態では、ステープラが12Vで動作することができる。図示の電源は、直列に接続されて12V電源を形成する4つの3Vリチウムイオンバッテリ132を含むことができる。図示のように、バッテリ132は、プラスチックハウジング134内に4×1の構成で積み重なってバッテリパックを形成する。他の実施形態では、その他の数及び構成の個々のバッテリセルを使用してバッテリパックを形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、AA、AAA、或いは別の標準的な又は専用の使い捨て又は充電式化学バッテリでバッテリパックを構成することができる。図示の電動ハンドル40の実施形態では、バッテリパックが固定ハンドルの底部に位置する。この位置付けは、ハンドル40を平面上に設定する安定表面をもたらすことが望ましい。他の実施形態では、ハンドルの近位端などのハンドル内の他の場所に電源を配置することもできると想定される。電源130は、主電源スイッチと、発光ダイオードなどの表示灯とを含むことができる。表示灯は、点灯色、点滅シーケンス又は単色照明(solid illumination)の使用を通じて、電源のパワーオン/オフ状態、低電力状態、又は再充電状態などのその他の電源状態情報を表示するように構成することができる。
【0029】
引き続き図8及び図9を参照すると、いくつかの実施形態では、電源130をハンドル40と共にパッケージングすることができるが、電源130は使用前には組み込まれない。ユーザは、使用時にハンドル40の底部に電源130を係合させることによってバッテリパックを組み込むことができる。バッテリパックを組み込まずに出荷することには、使用前の意図しないバッテリ放電の発生を抑えることができるという利点がある。さらに、取り外し可能なバッテリパックであれば、新たなバッテリが利用可能になった時に、ステープラシステムを新たなバッテリで容易にアップグレードすることができる。他の実施形態では、取り外し可能なストリップがバッテリパックの電気的接続を遮った状態でハンドル内に電源をパッケージングして組み込むこともできる。さらに他の実施形態では、壁コンセント、USBコネクタ又は別の標準的な電気的接続部などのAC又はDC電源に差し込まれるように構成された電源ケーブルをハンドルに同梱することもできる。
【0030】
いくつかの実施形態では、電源が、ステープラの使用のデジタル記録を記憶することができる不揮発性メモリなどのメモリモジュールをさらに含む。例えば、メモリモジュールは、発射中のバッテリ電圧及びモータ電流の定期的サンプリング、ソフトウェア状態機械の一連の状態、起こり得るあらゆる予期せぬ事象、使用したシャフトのタイプ、発射の回数、発射間の間隔、並びにステープラハンドルのモデル及びシリアル番号を含むステープラの各発射の詳細を記録するように構成することができる。メモリモジュールは、使い捨て用のハンドルアセンブリが外科手術において使用された後に再使用されるのを防ぐために、ハンドルアセンブリの使用を記録するように構成することができる。メモリモジュールは、ユーザがバッテリパックを再利用できないようにバッテリパック自体が使用済みであるかどうかを記録することもできる。他の実施形態では、メモリモジュールが電源と一体化されないように、メモリモジュールをハンドルアセンブリ内で電源から隔てて配置し、例えば回路基板144(図4)上に配置又は回路基板144に電気的に結合し、或いはハンドルアセンブリ上の電気ポートから容易に取り外せるように配置することなどができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、電動ハンドル40及び関連する電源130を、1回の手術で使用して手術後に廃棄されるように構成することができる。電源130は、再使用の機会を減らす電力排出(power drain)を含むことができる。ユーザは、外科手術での使用後にハンドル40からバッテリパックを取り外すことができる。ハンドル40からバッテリパックを取り外すと、バッテリの排出を開始することができる。例えば、一度バッテリパックを使用した後には、低抵抗器(low value resistor)又は電気的特徴に端子を接続することによってバッテリを短絡させることができる機械的特徴が、回路についても同じタスクを達成することができる。また、外科手術の終了後にハンドル40内にバッテリパックが残っている場合、いくつかの実施形態では、ハンドルの制御システムが、最大制限時間後に機能を無効にしてバッテリパックを排出するようにプログラムされる。例えば、メモリモジュールを含む電源の実施形態では、マイクロコントローラが、所定数の発射ストローク後にメモリモジュール上の発射回数記憶位置などの記憶位置を修正できる発射管理モジュールを含むことができる。マイクロコントローラは、起動動作シーケンスにおいて発射回数記憶位置を評価するように構成することができる。この記憶位置によってバッテリが使用済みであることが示された場合、いくつかの実施形態では、マイクロコントローラを、ステープラを無効にして電源内の放電回路を作動させるように構成することができる。マイクロコントローラは、1つの実施形態では12時間よりも長い期間などの所定の期間にわたってハンドルアセンブリがオンになっていた場合、1つの実施形態では12回などの所定の回数よりも多く発射が行われた場合、手動オーバーライド復帰機構が展開された場合、又は回復不能な故障が生じた場合などの他の所定の動作条件においても放電回路を作動させるように構成することができる。
【0032】
図4及び図10には、電動ハンドル内で使用される位置センサ機構の実施形態を示す。動作時には、モータギア114が回転すると、これに対応してハンドル40内に取り付けられたクラウンギア142が回転する。クラウンギア142は、ポテンショメータに結合されることにより、ポテンショメータにおける抵抗の測定変化に基づいてモータギア114の位置、従って作動ラックの実際の位置を特定することができる。いくつかの実施形態では、制御システムを配置できる回路基板144にポテンショメータを取り付けることができる。図示の実施形態は、ポテンショメータに基づく位置センサ機構を含むが、他の実施形態では、例えばホール効果センサを含む磁気エンコーダの使用、作動シャフトが所定の距離だけ移動した時に作動するリミットスイッチの使用、作動シャフトに沿ったパターンの移動を測定するフォトダイオード、モータのシャフト上に位置する光学エンコーダ、又はその他の位置検知システムなどの光学系の使用を含む他の位置検知機構を使用することもできると想定される。
【0033】
関節運動機構
図11図17に、電動ハンドル40の関節運動機構の実施形態を示す。図示の実施形態では、ハンドルが、シャフトの遠位端におけるジョーアセンブリを、完全な関節運動位置において長手方向中心位置に対するいずれかの方向に最大45°関節運動させることができる。いくつかの実施形態では、電動ハンドルが、ハンドルの近位端において手動で作動される関節運動ノブ190に結合された一連のコンポーネントを含む手動関節運動機構を使用する。他の実施形態では、手動で作動される関節運動ノブ及び関節運動機構のいくつかの関連する要素を、ハンドルの遠位端に隣接する位置などのハンドル上の他の位置に配置することもできる。
【0034】
図11及び図12を参照して分かるように、リロードシャフトがハンドルに結合されると、関節運動機構は、リロードシャフト内を長手方向に延びる関節運動部材に結合される。関節運動機構が長手方向に作動すると、関節運動部材がシャフトに対して近位方向又は遠位方向に並進して、シャフトの遠位端におけるジョーアセンブリを関節運動させる。
【0035】
図11を参照すると、関節運動機構は、1又は2以上のボールベアリング194が乗ることができる少なくとも1つの螺旋溝又はねじ山195を有するボールねじ192を含む。図示の実施形態では、関節運動機構が、2つのねじ山195内に係合できる2つのボールベアリング194を含む。ボールベアリング194は、ボールねじ192の半径方向外側に位置するボールスリーブ191のボールベアリングアパーチャ189内に配置される。ボールベアリング194は、ボールベアリング194の半径方向外側に位置する解除スリーブ196によってねじ山195内に維持される。接続ピン193などによってボールスリーブ191に結合された関節運動ノブ190が回転すると、ボールスリーブ191が回転軸の周囲で回転してボールベアリング194がねじ山195内を移動し、これに対応してボールねじ192が長手方向に並進する。ジョーアセンブリの関節運動は、関節運動ノブ190を回転させることに対応してボールスリーブ191及びボールベアリング194が回転軸の周囲で回転する一方で、これらの長手方向位置が回転軸に沿って一定であることによって達成される。この時、ボールねじ192のねじ山195内に係合したボールベアリング194は、ボールねじ192を回転軸に沿って前方及び後方に並進させる。図示の実施形態では、ボールスリーブ191が概ね管状であって内部にキャビティが形成され、ボールねじ192の一部がキャビティ内に位置してキャビティ内を長手方向に並進する。図示の関節運動機構の実施形態は、ボールねじのねじ山に係合できる2つのボールベアリングを含むが、他の実施形態では、関節運動機構が、例えば単一の螺旋ねじ内に位置する単一のボールベアリング、又は対応する数の螺旋ねじ山内の3又は4以上のボールベアリングなどの2つよりも少ない又は多くのボールベアリングを有することもできると想定される。
【0036】
図11及び図12を参照すると、ボールねじ192は、一対の関節運動リンク202に結合された遠位端200に延びる。関節運動リンク202は、互いに間隔を空けることによって、ハンドル内の駆動システム及び作動シャフトの半径方向外側に位置できることが望ましい。関節運動リンク202の遠位端は、ハンドルの遠位端の作動アダプタの半径方向外側に同軸的に位置することができる関節運動アダプタ204に回転可能に結合することができる。この回転結合は、比較的低い摩擦特性を有する関節運動ベアリング205を含むことができる。この関節運動ベアリング205は、関節運動機構の動作中に、結合されたリロードシャフトのハンドルアセンブリに対する回転、及び関節運動アダプタ204の長手方向の動きを容易にすることができる。図示の関節運動機構の実施形態は、ハンドル内の作動機構から横方向にオフセットされた2つの関節運動リンクを含むが、他の実施形態では、関節運動機構が、例えば1つの関節運動リンク、或いは3又は4以上の関節運動リンクなどの2つよりも少ない又は多くの関節運動リンクを有することもできると想定される。
【0037】
引き続き図11図13を参照すると、関節運動アダプタ204は、シャフトがハンドルに結合された時に、バイオネット接続によってシャフト内の関節運動部材に接続することができる。ねじ山195は、ボールねじを近位方向に動かすと、ハンドルから見た時にジョーアセンブリが長手方向中心位置に対して左側に関節運動し、ボールねじ192を遠位方向に動かすと、ハンドルから見た時にジョーアセンブリが長手方向中心位置に対して右側に関節運動するように構成することができる。図12及び図13には、動作範囲の終端を定める完全に関節運動した構成にある関節運動機構を示す。
【0038】
ボールねじ192の螺旋ねじ山195は連続しているので、関節運動機構は、ジョーアセンブリが所望の動作範囲間で実質的に無限の角度位置まで関節運動することを可能にできるという利点を有する。いくつかの実施形態では、関節運動機構を、シャフトの長手方向軸によって定められる長手方向中心位置に対して-45°~+45°のジョーアセンブリの関節運動動作範囲をもたらすように構成することができる。他の実施形態では、関節運動機構を、+/-45°を上回る関節運動をもたらす範囲、又は+/-45°を下回る関節運動をもたらす範囲を含む他の関節運動動作範囲をもたらすように構成することもできる。いくつかの実施形態では、関節運動機構を、長手方向中心位置に対して単一方向に関節運動をもたらすように構成することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、ボールねじ192上のねじ山195のピッチが可変である。例えば、ねじ山195は、ジョーアセンブリが関節運動するのに大きな力を必要とし得る場合にはより高い機械的倍率(mechanical advantage)を有利にもたらすように、ねじ山の端部に向かって相対的に狭くなるピッチを含むことができる。ねじ山195は、ジョーアセンブリが関節運動するのに小さな力を必要とし得る場合には比較的低い機械的倍率での素早い動きを可能にするように、ねじ山の中心に向かって相対的に広くなるピッチを含むことができる。他の実施形態では、関節運動ノブを回転させることによるステープラのジョーアセンブリの関節運動の量が、関節運動機構の関節運動範囲にわたって変化しない比例的なものになるように、ねじ山195が一定のピッチを含む。このような一定ピッチのねじ山が付いたボールねじは、作動機構の動作中に容易に予測可能な応答をもたらすことが望ましい。
【0040】
図14図15を参照すると、関節運動機構は、関節運動機構をあらゆる関節運動位置から長手方向中心位置に有利にリセットできる解除機構を含むことができる。解除機構は、ユーザが解除ボタン198を押すことによって動作する。図示の実施形態では、解除ボタン198が、関節運動ノブ190内に半径方向に入れ子状に配置される。
【0041】
図14を参照して分かるように、解除ボタン198を操作すると、解除スリーブ196が遠位方向に前進する。解除スリーブ196の半径方向内面には、相対的に小さな内径を有する係合面186と、相対的に大きな内径を有する解除面188とを含むように段差が付いており、係合面と解除面との間は滑らかに傾斜する。動作時には、解除スリーブの係合面が、ボールねじ192のねじ山195内にボールベアリング194を維持する。解除ボタン198が押されると、係合面が遠位方向に前進することによってボールベアリング194がねじ山195から解放され、ボールスリーブ内のボールベアリングアパーチャ189を通じて半径方向外向きに前進して解除面に接触することができる。
【0042】
引き続き図14を参照すると、ボールベアリング194がねじ山195から解放された状態では、関節運動機構を中心位置に付勢することができる。いくつかの実施形態では、ボールねじ192が、2つのばねなどの付勢部材とシャフトからのばね力とによって中心位置に付勢される。ねじ山195に沿って中心位置に位置するボールベアリング194は、ジョーアセンブリの長手方向中心位置に対応する。
【0043】
図15を参照して分かるように、解除ボタン198が元の構成(undisturbed configuration)に復帰できるようになると、解除スリーブ196がばねによって近位方向に後退する。解除スリーブ196が近位方向に動くと、ボールベアリング194がボールねじのねじ山195と係合するように強いられる。この結果、関節運動機構を使用してジョーアセンブリを長手方向中心位置から関節運動させることができ、或いはジョーアセンブリが長手方向中心位置に存在する状態でステープラを使用することができる。
【0044】
図16図17には、関節運動機構のいくつかの実施形態のシャフト認識及び関節運動ロックアウト機構(shaft recognition and articulation lockout mechanism)300を示す。関節運動機構は、ハンドルアセンブリに器具シャフトが結合されていない場合に関節運動機構を中心位置に維持する関節運動ロックアウト機構を含むことができる。従って、関節運動アダプタ204の中心位置が維持されて、上述した器具シャフトとハンドルアセンブリとのバイオネット結合が容易になる。器具シャフトがハンドルアセンブリに結合されていない時にも関節運動機構が係合構成で維持されていると、器具シャフトをハンドルアセンブリに結合しようとして器具シャフト内の関節運動部材を関節運動アダプタ204と位置合わせすることが困難になる恐れがある。図示のハンドルアセンブリの実施形態では、関節運動ロックアウト機構をシャフト認識機構に結合することができる。
【0045】
引き続き図16図17を参照すると、シャフト認識及び関節運動ロックアウト機構は、ハンドルアセンブリの遠位端におけるロックアウトスリーブ302と、ロックアウトスリーブに結合された少なくとも1つのロックアウトアーム304とを含む。図示の実施形態では、ロックアウトスリーブ302が関節運動アダプタ204の半径方向外側に位置することができる。図示のように、関節運動ロックアウト機構は、解除スリーブ196に結合された近位端からロックアウトスリーブ302に結合された遠位端までハンドルアセンブリ内を長手方向に延びる2つのロックアウトアーム304を含む。ロックアウトアームは、関節運動リンク202及び作動シャフト120、並びにその他の駆動機構コンポーネントの横方向外側に位置することができる。他の実施形態では、1つ又は2つよりも多くのロックアウトアーム304がロックアウトスリーブ302を解除スリーブ196に結合することも、ロックアウトアーム304を図示の実施形態とは異なる横方向位置に配置することもできる。
【0046】
動作時には、ハンドルアセンブリに器具シャフトが結合されると、ロックアウトスリーブ302が、器具シャフトの近位端におけるボス、タブ、カラー又はその他の要素に接触する。バイオネット結合が行われているので、この接触によってロックアウトスリーブが近位方向に所定量だけ並進する。器具シャフトがハンドルアセンブリに結合されていない場合 (図16)、関節運動ロックアウト機構及び解除スリーブ196は、ボールベアリングが解除スリーブ196の解除面に接した状態で解除スリーブ196が配置されるように構成される。従って、関節運動機構はロックアウト構成にある。従って、器具シャフトがハンドルアセンブリに結合されていない場合には、ボールベアリングがボールねじのねじ山から解放されているので、関節運動機構を作動させることなく関節運動ノブを回転させることができる。
【0047】
図17を参照して分かるように、器具シャフトがハンドルアセンブリに結合されると、関節運動ロックアウト機構は係合構成に移行する。器具シャフトがロックアウトスリーブに係合すると、ロックアウトスリーブ302と、これに結合されたロックアウトアーム304とが近位方向に並進する。ロックアウトアーム304の近位端は、関節運動機構の解除スリーブ196に結合され、これによってロックアウトアーム304が近位方向に移動すると解除スリーブ196も近位方向に前進して、ボールベアリングをボールねじのねじ山に係合させるようになる。従って、器具シャフトが取り付けられた場合、関節運動ノブを回転させると関節運動アダプタが並進して、器具シャフトに結合されたエンドエフェクタを関節運動させる。
【0048】
図18及び図19を参照すると、関節運動機構及びシャフト認識/関節運動ロックアウト機構の各々は、それぞれの機構の位置を識別するセンサ306、308を含むことができる。図示の実施形態では、関節運動機構のセンサが、1つの関節運動リンク202上に形成された歯付きラック(toothed rack)とギア係合するポテンショメータを含み、シャフト認識/関節運動ロックアウト機構のセンサが、1つのロックアウトアーム304とギア係合するポテンショメータを含むことができる。いくつかの実施形態では、関節運動機構及びシャフト認識/関節運動ラッチ機構の各センサを、制御システムを配置できる回路基板144に取り付けることができる。従って、制御システムは、電動ハンドルの開放/閉鎖、発射及び復帰動作中に関節運動位置データ及びシャフト認識位置データの一方又は両方を取り込んでモータ駆動プロファイル(motor drive profile)を修正することができる。例えば、制御システムは、関節運動位置を取り込んで、測定されたアクチュエータラック及びアクチュエータ位置に補正値を適用することにより、所定の測定された関節運動を考慮して補正されたアクチュエータの位置に基づいてモータの特定の動作状態を制御できるようになる。図示の実施形態は、ポテンショメータに基づく位置センサ機構を含んでいるが、他の実施形態では、他の位置検知機構を使用することもできると想定される。
【0049】
シャフト認識機構
いくつかの実施形態では、電動ハンドルを、それぞれが異なるジョー長さを有する3つのリロードシャフトと共に使用されるように構成することができる。例えば、電動ハンドルは、約30mm、45mm及び60mmのジョー長さを有するリロードシャフトと共に使用されるように構成することができる。電動ハンドルは、所定のジョー長さを有するいずれかのリロードシャフトと共に動作するように構成することができ、リロードシャフトは、装置の目標寿命全体を通じて使用し、交換することができる。電動ハンドルの作動シャフトは、異なるジョー長さを有するリロードシャフトの把持動作及び発射動作中に異なる長手方向位置を通過できるので、これらのジョー長さの各々は、図45図46を参照しながらさらに説明するように、電動ハンドルの制御システムにおいて対応する動作プロファイルを有することができる。従って、電動ハンドルは、電動ハンドルに接続されているリロードシャフトが所定のジョー長さを有しているかどうか、認識されないシャフトが接続されているかどうか、又はシャフトが接続されていないかどうかを検出するシャフト認識機構を含むことが望ましい。制御システムは、特定のジョー長さを有するリロードシャフトが認識されると、対応する動作プロファイルを使用して電動ハンドルを動作させることができる。上述したように、いくつかの実施形態では、シャフト認識機構を、30mm、45mm及び60mmのジョー長さを有するリロードシャフトを区別するように構成することができるが、他の実施形態では、シャフト認識機構を、3つのジョー長さよりも多くの又は少ないジョー長さを区別するとともに、他の様々なジョー長さを有するリロードシャフトを区別するように構成することもできると想定される。さらに、他の実施形態では、シャフト認識機構を、ジョー形状(例えば、線形、曲線又は円形の腹腔鏡)などの他のシャフト属性、(例えば、異なるバージョンのリロードシャフトの開発中にシャフト機構、ハードウェアコンポーネント、材料及び/又は形状が改訂された場合には)リロードシャフトの様々なバージョン、又は対応する動作プロファイルを提供することが望ましいと考えられる他のシャフト属性を区別するように構成することもできると想定される。
【0050】
いくつかの実施形態では、電動ハンドルが、カプラ46(図1図2)内の機械部品を介してリロードシャフトに接続される。図45図46を参照しながらさらに説明する電動ハンドル内の制御システムは、内部シャフト認識センサ306(図19)からの位置読み取りを通じてこの接続プロセスを解釈する。いくつかの実施形態では、シャフト認識センサ306がポテンショメータを含む。いくつかの実施形態では、制御システムが、装置がオンになる度にシャフト認識状態に入ってリロードシャフトが挿入されているかどうかを判定するように構成される。シャフトは、装置に電力が供給される前に挿入することができるが、シャフトが存在しない位置に最初に達した時点で初めて認識済みとして認証されたものとみなすことができる。制御システムは、リロードシャフトが「認識済み」として認証されるまで電動ハンドルの動作を無効にするように構成することができる。システムは、シャフトを正しく認証できない場合には「未認識シャフト(unrecognized shaft)」状態に入るものとする。
【0051】
電動ハンドルが制御システムによって使用可能状態であるとみなされ、挿入されたリロードシャフトがシャフト認識機構によって「認識済み」として認証されると、制御システムは、把持、組織離断及びステープル形成のためにジョーアセンブリを作動させる作動シャフトの完全移動(full travel)のための位置値を決定して割り当てることができる。ユーザはシャフトを交換することができ、手術中にこのシステムが損傷する可能性もあるため、シャフト認識機構及び制御システムの関連する側面は、装置の寿命全体を通じて継続的チェックを実行する。
【0052】
このシャフト認識機構及び制御システムの関連する側面は、様々なジョー形状を有するリロードシャフトの信頼できるステープル発射を容易にすることが有利である。シャフトジョーアセンブリの長さを誤って解釈すると、ステープルが形成されず又は変形し、或いはジョーアセンブリが損傷を受けてしまう場合があるので、誤認識されたシャフト接続を解釈すると装置が損傷する恐れがある。
【0053】
図19B及び図19Cに、シャフト認識機構と共に使用されるリロードシャフトの実施形態を示す。図19Bは、ハンドルアセンブリのカプラ46に結合するように構成された近位端22(図1図2)を有するリロードシャフト20の側面図である。図19Cは、内部にロックアウトキー溝310を有するリロードシャフト20の近位端22の詳細な斜視図である。ロックアウトキー溝310内には、シャフト認識機構によるシャフトジョーアセンブリの認識を容易にする少なくとも1つの識別ノッチ312が形成される。
【0054】
図19Dには、3つのロックアウトキー溝310、314、316の例示的な実施形態を示す。図示のロックアウトキー溝310、314、316は、近位縁までの全高Hはそれぞれ同じであるが、識別ノッチ312、318、320の深さはそれぞれ固有である。各ロックアウトキー溝は、近位縁と識別ノッチ312、318、320の少なくとも一方の側面との間に延びる傾斜した縁部を含む。各ロックアウトキー溝は、リロードシャフトがハンドルアセンブリに結合された時にリロードシャフトに対するロックアウトキー溝の回転を制限するリブ322などのキーをさらに含む。
【0055】
図19Eには、電動ハンドルのシャフト認識機構の例示的なロックアウトスリーブ302を示す。図示の実施形態では、ロックアウトスリーブ302が、近位端におけるフランジ332などの係合特徴と、フランジ332の外面から突出して作動シャフトの長手方向軸に対するロックアウトスリーブ302の配向を維持する少なくとも1つのリブ334又はその他のキー要素とを含む。図示のように、ロックアウトスリーブ302は、ロックアウトスリーブ302の遠位端から遠位方向に延びて接続先のリロードシャフトのロックアウトキー溝の対応するノッチに係合するように配置された歯336などの少なくとも1つの嵌合突出部(mating protrusion)をさらに含む。少なくとも1つの歯336は、傾斜した縁部を有するロックアウトキー溝の識別ノッチと嵌合係合(matingly engage)できるように同様に傾斜した縁部338を有することができる。図示の実施形態では、ロックアウトスリーブ302が、対応する2つの識別ノッチに係合するようにロックアウトスリーブ302の遠位端の正反対の位置に配置された2つの歯336を含む。他の実施形態では、シャフト認識機構のロックアウトキー溝及びロックアウトスリーブに含まれる嵌合特徴の数及び位置を変更することもできると想定される。
【0056】
図19Fには、電動ハンドルにシャフトを取り付ける際のロックアウトスリーブ302とロックアウトキー溝310との間の例示的な一連の相互作用を示す。図示のように、シャフト取り付けシーケンスは左から右へ進む。左側のパネルでは、ハンドルアセンブリのカプラ46(図1)内にシャフトが配置されると、ロックアウトスリーブ302が、歯336が識別ノッチ312と位置ずれするように配向される。カプラ46及びシャフトは、シャフトがハンドルに対して長手方向近位に前進した後に長手方向軸に対して回転するバイオネット接続で係合する。中央のパネルには、シャフトの回転運動によって歯336が識別ノッチ312との整列に近づくにつれてロックアウトスリーブ302がハンドルに対して近位方向に変位する近位長手方向移動を示す。右側のパネルには、ハンドルアセンブリに対するシャフトの回転が完了してバイオネット結合が固定された様子を示す。図示のように、シャフトがハンドルアセンブリに結合すると、ロックアウトスリーブ302の歯336がロックアウトキー溝310の識別ノッチ312に係合してその内部に配置される。従って、結合動作中、ロックアウトスリーブ302は、歯が識別ノッチと位置ずれしたシャフトの取り付けによって最初に近位方向に変位し、その後に歯336が識別ノッチに係合すると遠位方向に戻る。
【0057】
図19G図19Hには、シャフト20を電動ハンドルに取り付ける際のロックアウトスリーブ302とロックアウトキー溝310との間の例示的な一連の相互作用を示す。図19Gでは、シャフトの近位端22がハンドルのカプラ46内に着座して、ロックアウトスリーブ302上の歯336がロックアウトキー溝310の識別ノッチ312と位置ずれするように近位方向に前進する。図19Hでは、バイオネット結合が行われるにつれ、シャフト20及びロックアウトキー溝310がシャフトの長手方向軸を中心に回転して、ロックアウトスリーブ302の歯336がロックアウトキー溝310の識別ノッチ312内に入れ子状になる。図示の実施形態では、ロックアウトスリーブ302がばね340によって遠位方向に付勢されて、この歯336と識別ノッチ312との係合を維持する。ロックアウトスリーブ302は、ロックアウトスリーブのフランジ332において少なくとも1つのロックアウトリンク304に結合される。ロックアウトリンク304の1つに配置されたラックは、シャフト認識センサ306のピニオンに係合する。いくつかの実施形態では、シャフト認識センサがポテンショメータを含む。従って、シャフトがハンドルアセンブリに結合すると、ポテンショメータは、ロックアウトリンクの初期近位方向移動に対応する第1の位置に配置され、その後にシャフトがバイオネット結合で回転すると、ポテンショメータは、ロックアウトスリーブの歯336とロックアウトキー溝310の識別ノッチ312との嵌合係合に対応する第2の位置に配置される。従って、識別ノッチの深さがポテンショメータの第2の位置を決定する。
【0058】
図19Iを参照すると、いくつかの実施形態では、シャフト認識センサ306に係合するラックを含むロックアウトリンク304が内部に屈曲部(bend)342を含むことができる。屈曲部342は、ギアラッシュを低減することによって、ロックアウトリンク304のラックとシャフト認識センサ306の対応するピニオンとの噛合係合を強化できることが望ましい。
【0059】
図19J及び図19Kを参照すると、いくつかの実施形態では、電動ハンドルシステムを、対応する異なる把持特性及び/又は発射特性を有する異なるリロードシャフトアセンブリと共に使用されるように構成することができる。例えば、電動ハンドルシステムは、それぞれが異なるジョーアセンブリ長さを有する3つのリロードシャフトアセンブリと共に使用されるように構成することができる。これらの実施形態では、シャフト認識機構を、シャフト認識センサ306を3つの異なる位置範囲に配置して、リロードシャフトが存在すること、及びそのシャフトが電動ハンドルアセンブリの制御システムによって認識可能なシャフトであることを認識するように構成することができる。図19Jには、いくつかの認識ゾーンの角度位置範囲を識別した、電動ステープラハンドルのプリント基板144上のシャフト認識センサ306を概略的に示す。
【0060】
引き続き図19J及び図19Kを参照すると、いくつかの実施形態では、シャフト認識センサ306が、電圧を入力部材の角度変位に相関させることができる可変抵抗器を含むポテンショメータを含む。いくつかの実施形態では、ポテンショメータが、約330度の角度動作ウィンドウ及び30度の死角を有することができる。いくつかの実施形態では、電動ハンドルの制御システムが、ポテンショメータの動作ウィンドウ内の、それぞれがシャフト認識機構によるポテンショメータの位置付けを表す複数の細分化範囲に状態基準を割り当てるシャフト認識モジュールを含むことができる。いくつかの実施形態では、シャフト認識モジュールを、少なくともシャフト検出ゾーンと、それぞれが認識可能なリロードシャフトとハンドルアセンブリとの結合に対応する複数の認識ゾーンとにおけるポテンショメータの位置付けを区別するように構成することができる。他の実施形態では、シャフト認識モジュールを、シャフトタイプ、シャフトバージョン、又は対応する動作プロファイルを有することが望ましい別のシャフト属性を区別するように構成することができる。シャフト認識モジュールは、認識可能なリロードシャフトの認識精度を高めてリロードシャフトの結合における位置ずれを識別するために、電動ハンドルに結合したリロードシャフトが存在しないことを示すシャフトなしゾーン(no shaft zone)、及びシャフト認識ゾーン間の複数のギャップゾーンを区別するようにさらに構成することができる。
【0061】
使用時には、制御システム内のシャフト認識モジュールを、検出ゾーンにおけるシャフト認識ポテンショメータの検出時に、ポテンショメータが第1の所定の時間内に(リロードシャフトが電動ハンドルから分離していることを示す)シャフトなしゾーン又は(認識可能なリロードシャフトとの結合を示す)認識ゾーンのうちの1つの一方に位置することをモニタするように構成することができる。シャフト認識機構がポテンショメータを認識ゾーンに配置すると、シャフト認識モジュールは、ステープリングシステムの使用中におけるさらなる動作許容範囲を可能にするために、第1の所定の時間よりも長い第2の所定の時間にわたってポテンショメータの位置が認識ゾーンから離れていることをモニタすることができる。シャフト認識モジュールは、認識ゾーン間の又は認識ゾーンと検出ゾーンとの間の所定のギャップに対応する位置にポテンショメータが存在することを検出して、ポテンショメータの位置が第3の所定の時間内にギャップから移動しない場合、制御システムをシャフト未認識状態に構成することによってハンドルを無効化し、図42図44を参照しながら説明する光リングユーザ指標に関してさらに説明するようなユーザアラーム又はアラートをトリガーすることができる。
【0062】
シャフト認識機構は、シャフト認識機構によって認識可能なリロードシャフトが電動ハンドルに結合されると、ポテンショメータを3つの離散的認識ゾーン350、352、354のうちの1つに配置するように構成することができる。図19G及び図19Hを参照しながら上述したように、認識可能なリロードシャフトが取り付けられると、シャフト認識機構は、ポテンショメータが認識ゾーン350、352、354に配置される前に、ロックアウトスリーブ302の初期近位方向移動に対応するシャフト検出ゾーン356にポテンショメータを配置するようにさらに構成される。認識ゾーン間のギャップ360は、シャフト認識機構及びシャフト認識モジュールの動作を強化することができる。
【0063】
図19Kには、制御システムのシャフト認識モジュールによって認識可能な様々なゾーンの配置の実施形態の概略図を示す。図示の概略図では、シャフト認識モジュールがシャフトなしゾーン362をさらに含む。シャフトがハンドルアセンブリに接続されていない時には、ポテンショメータを有するシャフト認識機構をシャフトなしゾーンに配置するようにロックアウトスリーブを付勢することができる。いくつかの実施形態では、シャフト認識モジュールが、ハンドルアセンブリが最初にオンになった時にポテンショメータがシャフトなしゾーン362に存在していなければ、シャフト未認識状態を報告することができる。さらに、リロードシャフトがハンドルアセンブリから分離され除去されると、シャフト認識モジュールは、ポテンショメータがシャフト検出ゾーン356に入った後に所定の時間にわたってシャフトなしゾーン362に入ったことを検証する。また、シャフト認識モジュールにおけるゾーンの配置は、シャフト検出ゾーンを超える最大延長ゾーンをさらに含むことができる。ポテンショメータが最大延長ゾーンに前進した場合には、シャフト認識機構のハードウェア障害、又は認識できないリロードシャフトの結合が試みられたことを示している可能性があるので、シャフト認識モジュールは制御システムにアラート又はエラー状態を報告することができる。
【0064】
図19Kを参照すると、図示の認識ゾーンの配置では、シャフト認識モジュールが長さの長いシャフトを短いシャフトとして誤解しにくいように、シャフト認識設計内のシャフト検出ゾーン及び認識ゾーンの位置が最も短いジョーアセンブリ長さからシャフト検出ゾーンに隣接する最も長いジョーアセンブリ長さへと順序付けられることが望ましい。従って、図示のように、シャフト認識機構及びシャフト認識モジュールは、比較的長いジョーアセンブリを有するリロードシャフトの不完全な発射動作のリスクを低減するように構成される。
【0065】
手動オーバーライド復帰システム
図20図27に、電動ハンドルの手動復帰機構の実施形態を示す。手動復帰機構は、電源の故障、他の動力部品の故障、或いは機械的故障又は拘束の場合に冗長復帰機構を有利に提供することができる。
【0066】
図20図25を参照すると、手動復帰機構は、ジョーアセンブリの開放構成に対応するハンドル内の最近位位置に作動シャフト120を戻すために順に操作される3つの個別の独立して動作可能なサブアセンブリを含む。図示のように、手動復帰機構170は、復帰ロック機構、シャフト回転機構、及びシャフト後退機構を含む。図20には、復帰ロック機構がロック構成にある電動動作モード中の電動ハンドルを示す。動作中、ステープラを手動で開放構成に戻すことが望ましい場合には、最初に復帰ロック機構を作動させて手動復帰機構をロック解除する。
【0067】
図21図22に示すように、復帰ロック機構を作動させるには、最初にハンドルアセンブリのハウジングに対して復帰ロック171を近位方向に摺動させる。この復帰ロック171の動きにより、シャフト回転機構及びシャフト後退機構がロック解除される。図示の実施形態では、復帰ロック171が、シャフト回転機構の動きを妨げていた位置から移動して、シャフト回転機構を使用できるように露出させる。同時に、復帰ロック171は、シャフト後退機構上のロック突出部173又はタブから解放されて、シャフト後退機構がハンドルアセンブリから離れて枢動することを可能にする。復帰ロックが近位方向に摺動すると、シャフト後退機構のレバーがハンドルアセンブリから離れるように付勢され、ハンドルアセンブリから離れて枢動できるようになる。
【0068】
図23及び図24を参照して分かるように、復帰ロック171は、近位方向に摺動して復帰機構をロック解除すると、ハンドルアセンブリの制御装置に電気的に結合してハンドルアセンブリを停止させることができる。従って、ひとたび復帰ロック機構が操作されると、たとえユーザが手動復帰機構及び駆動システムを繰り返し使用するために手動で再配置しようと試みた場合でも、ハンドルをそれ以上使用できなくすることができる。図示の実施形態では、ハンドルアセンブリが電動動作するように構成されている場合(図23)、制御装置を有する回路基板144から復帰ロックが電気的に解放される。復帰ロックは、近位方向に摺動して復帰機構をロック解除すると、回路基板144上の回路に電気的に係合する型打ちばね部品(stamped spring component)175を近位方向に動かしてハンドルアセンブリを停止させる。ばね部品175は、近位方向のみに動き、たとえ復帰ロックがその初期位置に向かって遠位方向に戻った場合でも遠位方向に戻らないように構成される。従って、復帰ロック171を摺動させることによって復帰機構をロック解除すると、ハンドルアセンブリの電動機能は恒久的に作動不能になる。
【0069】
図25及び図26を参照して分かるように、ユーザは、手動復帰機構170のシャフト回転機構を操作するために、この時点では復帰ロックの動きによって阻まれていない、ハンドルの外面上に延びる回転レバー172を回転させる。回転レバー172は、作動シャフトに回転可能に結合されたシャフト回転カラーに結合される。図示の実施形態では、作動シャフト120が、シャフト回転カラー176を貫通して摺動可能である。従って、シャフト回転カラー176を回転させると、作動シャフト120がその長手方向軸の周囲で約90度回転する。この回転は、作動シャフトのラック122を駆動システムの補助ギア116との係合から解除された位置に配置する。作動シャフト120は作動アダプタ(図5)に回転可能に結合されているので、この回転は、作動アダプタに影響することなく行うことができる。
【0070】
図示の実施形態は、ユーザによって回転される回転レバー172を有するシャフト回転機構を含むが、他の実施形態では、シャフト回転機構を、復帰ロックが近位方向に動いた時に自己展開するように構成することもできる。例えば、自己展開するシャフト回転機構は、ねじれ付勢(torsional bias)を有するシャフト回転カラーを含むことができる。いくつかの実施形態では、シャフト回転カラーがねじりばねによってハンドルアセンブリに結合される。復帰ロックが近位方向に摺動すると、シャフト回転のねじれ付勢によって作動ラックが回転し、補助ギアから解放されてシャフト後退機構と係合しやすくなる。
【0071】
図26及び図27を参照して分かるように、シャフト回転機構が操作されると、シャフト後退機構が動作して作動シャフトをハンドル内で近位方向に戻すことができる。復帰ロックをハンドルアセンブリ内で近位方向に摺動させると、電動ハンドル上の復帰レバー180がロック解除される。復帰レバー180は、枢動継手(pivot joint)184において復帰爪(return pawl)182に枢動可能に結合される。作動シャフト120のラック122は、回転して駆動システムとの係合から解放された時に、回転してシャフト後退機構と係合している。復帰レバー180は、1回又は一連の復帰サイクル(図26図27)を通じて回転して復帰爪182を作動シャフト120上のラック122に係合させ、作動シャフト120をラチェット式動作でハンドル内の近位方向に後退させることができる。
【0072】
図27A図27Cを参照して分かるように、復帰爪182は、作動シャフトの後退を容易にするように構成することができる。図示の実施形態では、復帰爪182が、復帰サイクルの一部の最中にモータマウントのガイド部材127と相互作用するように配置された突出ボス(protruding boss)又は第2の爪歯(pawl tooth)183を含む。ハンドルアセンブリの電動動作中には、第2の爪歯183がガイド部材127に接触して、復帰爪182が作動シャフト120のラック122に係合することが制限される(図27B)。手動復帰機構の動作中、第2の爪歯183は、そうでなければユーザが比較的低い機械的倍率を有するようになる復帰サイクルの一部の最中に、復帰爪182とラック122との係合を制限するように配置できることが望ましい。図示のように、第2の爪歯183は、復帰レバー180が作動シャフト120の長手方向軸に対して所定の角度で配置されて所望の機械的倍率をもたらす(図27C)まで、復帰爪182がラック122に係合するのを防ぐ。
【0073】
図28図31に、電動ハンドルの手動復帰機構の別の実施形態を示す。手動復帰機構170’のコンポーネント及び動作は、図20図27の手動復帰機構170に関して上述したものと同様である。しかしながら、手動復帰機構170’の使用時には、復帰ロック及びシャフト回転機構の機能をワームギア駆動式のシャフト回転カラー176’によってもたらすことができる。従って、ユーザは、例えば六角棒スパナ(hexagonal key)などを用いてワームギアドライブを回転させることによって、最初に作動シャフト120を電動駆動システムから離して回転させることができる。シャフト回転機構は、ワームギアの回転を通じてシャフト後退機構を解除し、作動ラックを電動ドライブから切り離し、作動ラックをシャフト後退機構と係合するように位置付ける(図31)。手動復帰機構170’のシャフト後退機構は、復帰レバー180’が復帰爪182’に枢動可能に結合された、手動復帰機構170に関して上述したものと同様のラチェット式動作を含む。
【0074】
二位置ロックアウト機構
図32に、独立した空のジョーアセンブリと発射済みのリロードロックアウト機構とを有する外科用ステープラ装置の細長いシャフトと共に使用されるリロードカートリッジ250を示す。以下でさらに説明するように、ジョーアセンブリ内にリロードカートリッジ250が存在せずに、ユーザが開閉ストローク(open-close stroke)でジョーアセンブリを把持しようと試みた場合、二位置ロックアウトレバーが第1のロック位置に移動する。図示のように、リロードカートリッジは、リロードがジョーアセンブリのリロード支持体(reload support)内に位置する時に空のジョーアセンブリロックアウト機構を無効化(defeat)する第2の位置に二位置ロックアウトレバーを配置するようなサイズ及び位置付けの第1のロックアウトアクチュエータを含む。第1のロックアウトアクチュエータは、カートリッジの本体の側壁から横方向内向きに延びる傾斜ボス(ramped boss)252を含むことができる。
【0075】
引き続き図32を参照すると、図示の実施形態では、リロードカートリッジ250が、ジョーアセンブリ内に未発射のリロードが位置する時に発射済みのリロードロックアウト機構を無効化するロック解除位置に二位置ロックアウトレバーを配置するようなサイズ及び構成の第2のロックアウトアクチュエータを含む。従って、二位置ロックアウトレバーは、2つのロックアウト位置に加えてロック解除位置にも枢動することができる。いくつかの実施形態では、第2のロックアウトアクチュエータが、リロードカートリッジ250のスライダ255から近位方向に延びる尾部(tail)254を含む。リロードカートリッジ250が未発射状態の場合、スライダ255は、スライダ尾部254が近位方向に延びてロックアウトレバーに係合するように近位位置に存在する。発射部材は、発射ストロークにおいて遠位方向に進むと、リロードカートリッジ内のスライダに当接してスライダを遠位方向に前進させる。従って、リロードカートリッジ250が部分的に発射した(又は完全に発射した)状態になると、近位方向に延びるスライダ尾部254は、発射済みのリロードロックアウト機構を無効化する位置に存在しなくなる。
【0076】
図33に、独立した空のジョーアセンブリと発射済みのリロードロックアウト機構とを有する外科用ステープラ装置の細長いシャフトアセンブリと共に使用される発射梁(firing beam)226を示す。発射梁226は、近位端から遠位端230に延びる。発射梁226の遠位端230には、概ねI形の梁構成を有する発射部材240が配置される。I形梁発射部材240の上側及び下側水平フランジ242、244がジョーアセンブリの第1及び第2のジョーのチャネルに乗ってジョーを接近させ、その後のステープル発射中にジョーの間隔を維持する。I形梁プロファイルの垂直部分には、ステープルの行間で組織を切断する切刃(cutting blade)245が配置される。I形梁発射部材240は、連動嵌め(interlock fit)、溶接、別の接合法、又はこれらの何らかの組み合わせによって発射梁226の遠位端に取り付けることができる。I形梁発射部材240の近位縁は、発射梁226が開いたジョーアセンブリに対応する完全に後退した位置にある状態でロックアウトレバーの近位部分に載ることができる、近位方向に延びる突出部又は尾部247を有することができる。
【0077】
引き続き図33を参照すると、発射梁は、空のジョーアセンブリロックアウト機構と共に使用される第1のロックアウトノッチ222と、発射済みのリロードロックアウト機構と共に使用される第2のロックアウトノッチ224とを含むことができる。図示の実施形態では、第1のロックアウトノッチ222が、発射梁226の隣接する下縁220から第1の高さだけ延びる。以下でさらに説明するように、第1の高さは、リロードカートリッジが存在しない状態でジョーアセンブリを接近させようとする試みによって空のジョーアセンブリロックアウトが作動した時に、ロックアウトレバーの近位端の高さに対応するように選択される。
【0078】
引き続き図33を参照すると、図示の実施形態では、第2のロックアウトノッチ224が、第1のロックアウトノッチ222の近位の発射梁上に位置する。第2のロックアウトノッチ224は、発射梁226の隣接する下縁220から第2の高さだけ延びる。以下でさらに説明するように、第2の高さは、以前に発射済みの又は部分的に発射済みのリロードを発射しようとする試みによって発射済みのリロードロックアウト機構が作動した時に、ロックアウトレバーの近位端の高さに対応するように選択される。
【0079】
図示の発射梁226の実施形態は、実質的に連続する第1のロックアウトノッチ222及び第2のロックアウトノッチ224を有することにより、発射梁の隣接する下縁220が第1のロックアウトノッチ222及び第2のロックアウトノッチ224に対応する長手方向距離にわたって軽減される。他の実施形態では、発射梁の下縁の軽減されていないセグメントによって、第1のロックアウトノッチ及び第2のロックアウトノッチを互いに離間することもできると想定される。以下でさらに説明するように、第1のロックアウトノッチ及び第2のロックアウトノッチの高さ及び長手方向位置は、ステープラハンドルアセンブリの所望の動作特性を達成するように構成することができる。
【0080】
図34及び図35に、空のジョーアセンブリロックアウト機構及び発射済みのリロードロックアウト機構を示す目的で様々なコンポーネントを隠したジョーアセンブリ270の一部を部分的分解図(図34)及び切欠側面図(図35)で示す。いくつかの実施形態では、ロックアウト機構が、二位置ロックアウトレバー280、付勢ばね290、第1のロックアウトノッチ222、及び第2のロックアウトノッチ224を含む。三位置ロックアウトレバー280は、リロードカートリッジ上の第1のロックアウトアクチュエータ及び第2のロックアウトアクチュエータに係合するように構成された遠位端282と、遠位端に隣接する枢動軸284と、第1のロックアウトノッチ又は第2のロックアウトノッチのいずれかに係合するように、或いはいずれにも係合しないように構成された近位端286とを有する。付勢ばね290は、枢動軸284の遠位側のロックアウトレバー280の端部を第2のジョー274のリロード支持体に向けて下向き方向に付勢する少なくとも1つの下側ばねアーム292を有する。図示の実施形態では、付勢ばねが2つの下側ばねアーム292を有し、これらの間には発射部材240及び発射梁226が通過できる間隙が存在する。付勢ばね290は、第1のジョー272を開放構成に向けて付勢する少なくとも1つの上側ばねアーム294を有することができる。付勢ばね290は、発射梁226にまたがるように構成できるとともに、少なくとも1つの下側ばねアーム292と少なくとも1つの上側ばねアーム294とが延び出る中央サドル部材を有することができる。
【0081】
図36図41に、2つのロックアウト機構の動作を示す。これらのジョーアセンブリのいくつかの実施形態の近位端の部分的切欠側面図には、ロックアウト機構の動作の視認性を高めるために、ジョーアセンブリの(付勢ばねなどの)いくつかの要素を示しておらず、(発射部材240などの)いくつかのコンポーネントを透明要素として示している。図36図39には、第2のジョー274のリロード支持体内に完全な未発射のステープルリロード250カートリッジが位置する時のロックアウト機構の機能を示す。図40には、発射済みのリロードロックアウト機構の動作を示す。図41には、空のジョーアセンブリロックアウト機構の動作を示す。
【0082】
図36には、ジョーアセンブリの近位端の切欠図を示す。ジョーアセンブリは、第1のジョー272が第2のジョー274に対して開放位置に付勢されるような開放構成にある。発射部材240及び発射梁226は、ロックアウトレバー280の近位面が発射部材240の近位方向に延びる尾部247に乗るような完全に近位方向に後退した位置にある。従って、ロックアウトレバー280の遠位端282がリロード支持体からわずかに離れて上昇することにより、リロード支持体とロックアウトレバー280との間にロックアウトアクチュエータが位置できるようになる。
【0083】
引き続き図36を参照すると、ロックアウトレバー280の遠位端282がわずかに上昇することで、リロードカートリッジ本体上に形成された第1のロックアウトアクチュエータの傾斜した近位面又は傾斜ボス252を受け入れることができる。ロックアウトレバー280の遠位端282は、リロード支持体へのジョーアセンブリの挿入時にリロードカートリッジ250が近位方向に摺動した時に第1のロックアウトアクチュエータに係合するように配置された横方向延長部(lateral extension)283(図34)と、第2のロックアウトアクチュエータに係合するように配置された内側面281(図34)とを有する。
【0084】
図37には、リロード250カートリッジが部分的に挿入されたジョーアセンブリの近位端の切欠図を示す。図示のように、ロックアウトレバー280の遠位端282の横方向延長部283は、傾斜ボス252の傾斜した近位面283に係合している。リロード250カートリッジが近位方向にさらに摺動すると、横方向延長部283は、リロード支持体に対する第1の高さまで傾斜面を上昇し、ロックアウトレバー280を第2の位置に枢動させて空のジョーアセンブリロックアウト機構を無効化する。空のジョーアセンブリロックアウト機構の動作については、以下で図41を参照しながらさらに説明する。図示の実施形態では、ロックアウトレバー280の遠位端282が第1のロックアウトアクチュエータによってリロード支持体から第1の高さに上昇すると、未発射のリロード250カートリッジの第2のロックアウトアクチュエータ又はスライダ尾部254が、第1のロックアウトアクチュエータのすぐ遠位の、ロックアウトレバー280の遠位端282の内側面281に係合するように配置される高さに位置付けられる。従って、図37に示すような切欠側面図で見た場合、第1のロックアウトアクチュエータ及び第2のロックアウトアクチュエータは、リロード250カートリッジがリロード支持体に挿入された時にロックアウトレバー280の遠位端282を2つの所定の位置に上昇させるように構成された漸進的傾斜プロファイル(progressive ramped profile)を定める。
【0085】
図38には、リロード250カートリッジがほぼ完全に挿入されたジョーアセンブリの近位端の切欠図を示す。図示のように、ロックアウトレバー280の遠位端282の内側面281は、第2のロックアウトアクチュエータ又はスライダ尾部254の傾斜した近位面に係合している。図示の実施形態では、リロード250のスライダの近位方向に延びる尾部254が、リロードカートリッジが未発射状態の時にロックアウトレバー280の遠位端282に係合する引き込み傾斜面(lead-in ramped surface)を有する。いくつかの実施形態では、ロックアウトレバー280及びスライダ尾部254を、滑らかで比較的低摩擦なリロードの挿入を実現して、カートリッジの挿入中にスライダが拘束される可能性又は意図せず前進する可能性を低減するように構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、リロード250カートリッジとリロード支持体との間のわずかな角度ずれの可能性にもかかわらずロックアウトレバー280がスライダ尾部との相互作用によって枢動するように、ロックアウトレバー280の遠位端282の内側面281が丸みを帯びた(radiused)遠位端を有することができる。さらに、いくつかの実施形態では、スライダ尾部254の傾斜した近位面が、リロード支持体に対する第1のロックアウトアクチュエータの高さよりも低い近位端においてリロード支持体に対する第1の高さから延びることができる。従って、リロード支持体内に未発射のリロード250カートリッジが位置する時には、ロックアウトレバー280の遠位端282が、リロードカートリッジとリロード支持体との間の幅広い角度アラインメントで第1のロックアウトアクチュエータから第2のロックアウトアクチュエータにスムーズに移行することができる。
【0086】
図39には、リロード250カートリッジが完全に挿入されたジョーアセンブリの近位端の切欠図を示す。図示のように、ロックアウトレバー280の遠位端282の内側面281は、第2のロックアウトアクチュエータの傾斜した近位面に沿って第2のロックアウトアクチュエータ又はスライダ尾部254上に前進している。このスライダ尾部254の傾斜面に沿った前進によってロックアウトレバー280が枢動軸284の周囲で枢動し、ロックアウトレバー280の遠位端282がリロード支持体に対して第2の高さに来るようになる。ロックアウトレバー280の遠位端が第2の高さにある場合、ロックアウトレバーは、空のジョーアセンブリロックアウト機構のロック解除状態及び発射済みのリロードロックアウト機構のロック解除状態に対応するロック解除位置に存在する。
【0087】
引き続き図39を参照すると、ロックアウトレバー280がロック解除位置にある場合、ロックアウトレバー280の近位端286は、発射梁の下縁よりも低い高さに位置する。従って、発射部材240及び発射梁226は、動作可能に結合された機械的又は電動ハンドルアセンブリ(図1図5)からのユーザ入力に応答して、開閉ストローク及び発射ストロークを通じて遠位方向に前進することができる。従って、ジョーアセンブリのリロード支持体に未発射のリロードカートリッジが挿入されると、空のジョーアセンブリロックアウト機構及び発射済みのリロードロックアウト機構の両方が無効化されて、ユーザがステープラハンドルアセンブリを操作してジョーアセンブリで組織を把持し、発射梁及び発射部材をジョーアセンブリ内で遠位側に並進させることによってジョーアセンブリからステープルを発射することが可能になる。
【0088】
図40を参照して分かるように、リロード250カートリッジが少なくとも部分的に発射されると、リロード250内のスライダが近位側の未発射位置から遠位方向に前進する。発射ストロークが完了すると、スライダがリロードカートリッジ内の遠位位置に残った状態で、復帰又は後退ストロークでのハンドルアセンブリの操作に応答して、発射梁226及び発射部材240を近位方向に後退させることができる。従って、リロード250カートリッジが部分的に又は完全に発射されると、第2のロックアウトアクチュエータ又はスライダ尾部は、ロックアウトレバー280の遠位端282に係合する位置に存在しなくなる。しかしながら、いくつかの実施形態では、第1のロックアウトアクチュエータ又は傾斜ボス252がカートリッジの本体に対して固定される。従って、部分的に又は完全に発射済みのリロード250がリロード支持体内に位置する場合、第1のロックアウトアクチュエータがロックアウトレバー280の遠位端282に係合して、ロックアウトレバー280の遠位端282をリロード支持体に対して第1の高さに位置付ける。ロックアウトレバー280の遠位端282がロックアウトレバーの第2の位置に対応する第1の高さに来ると、空のジョーアセンブリロックアウト機構は無効化されるが、発射済みのリロードロックアウト機構はロックされる。
【0089】
引き続き図40を参照すると、ロックアウトレバー280が第2の位置にある場合、ロックアウトレバー280の近位端286は、発射梁226上の第2のロックアウトノッチ224に対応する高さに存在する。さらに、いくつかの実施形態では、付勢ばね290(図34)がロックアウトレバー280の遠位端282の上面に力を及ぼして、ロックアウトレバー280の近位端286を発射梁226上の第2のロックアウトノッチ224に対応する高さに維持しやすくする。従って、発射済みのリロードカートリッジがジョーアセンブリ内に存在する状態でユーザがジョーアセンブリを作動させようと試みた場合、ロックアウトレバー280の近位端286が発射梁226の第2のロックアウトノッチ224内に収容されるまで発射梁226が遠位方向に前進して、発射済みのリロードロックアウト機構の係合を示すとともに、発射梁及び発射部材のさらなる遠位方向の動きを防ぐことができる。
【0090】
引き続き図40を参照すると、いくつかの実施形態では、発射済みのリロードロックアウト機構を、開閉ストロークの少なくとも一部においてステープリング装置のジョーアセンブリの動作を可能にするように構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、第2のロックアウトノッチ224の位置及びロックアウトレバー280の長さを、ジョーアセンブリの完全に閉じた構成又はほぼ完全に閉じた構成に対応する位置における発射済みのリロード機構の係合時に発射梁226が停止する(arrested)ようなサイズ及び構成にすることができる。このような構成のジョーアセンブリでは、発射部材240が、第1のジョー及び第2のジョーを近づける遠位位置に前進してしまっても、刃先245を実質的に引っ込んだ位置に維持する。開閉ストロークを可能にするように構成された発射済みのリロードロックアウトには、リロードカートリッジからステープルを発射した後に、ユーザが1又は2以上の開閉ストロークでジョーアセンブリを操作して、潜在的な第2のリロードを適用する様々な位置における組織の厚み及び一貫性を評価できるという利点がある。同様に、トロカールなどの外科的アクセスポートを通じたステープリング装置の挿入では、一般にジョーアセンブリが閉鎖構成であることを必要とし得るので、ユーザは1又は2以上の外科的アクセスポートを通じてジョーアセンブリを引っ込めて再挿入し、手術部位の様々な位置における組織の厚み及び一貫性を評価することもできる。
【0091】
引き続き図40を参照すると、いくつかの実施形態では、発射済みのリロードロックアウト機構を、発射ストロークにおけるステープリング装置の動作を防ぐようにさらに構成することができる。通常、図1図5に関して説明したものなどの本明細書で説明した細長いシャフト及びジョーアセンブリと共に使用されるように構成された機械的電動ステープラハンドルアセンブリは、ジョーアセンブリが閉鎖構成になった時にのみユーザがジョーアセンブリの発射ストロークの動作を積極的に選択できるようにする発射モードセレクタ機構又は発射安全スイッチを含む。従って、いくつかの実施形態では、第2のロックアウトノッチ224の位置及びロックアウトレバー280の長さを、ジョーアセンブリの完全に閉じた構成の近位にある位置に対応する位置における発射済みのリロードロックアウト機構の係合時に発射梁226が停止するようなサイズ及び構成にすることができる。従って、これらの実施形態では、発射済みのリロードロックアウト機構が係合すると、ユーザは、ハンドルアセンブリ上で発射ストロークの動作を選択することができなくなる。ハンドルアセンブリ上での発射ストロークの選択を防ぐ発射済みのリロードロックアウト機構の動作は、ロックアウトが係合したことをユーザに示す役割を果たすことが有利である。
【0092】
図41には、リロードカートリッジが挿入されておらず発射部材及び発射梁が長手方向にわずかに前進したジョーアセンブリの近位端の切欠図を示す。リロードが存在しない場合、発射部材240の尾部247がロックアウトレバー280の近位端286から前進すると、付勢ばね290(図34)がロックアウトレバー280の遠位端282の上面にリロード支持体に向けて力を及ぼす。従って、ユーザがジョーアセンブリを開閉ストロークで前進させるようにハンドルアセンブリを作動させたことに応答して発射梁226が最初に前進すると、空のジョーアセンブリロックアウト機構のロック構成に対応する第1の位置にロックアウトレバー280が枢動する。発射梁226が遠位方向に前進すると、ロックアウトレバー280の近位端286が発射梁226上の第1のロックアウトノッチ222に収容されて空のジョーアセンブリロックアウト機構に係合し、発射梁226及び発射部材240のさらなる遠位方向の並進を防ぐ。
【0093】
引き続き図41を参照すると、いくつかの実施形態では、空のジョーアセンブリロックアウト機構を、ジョーアセンブリの実質的に開いた構成に対応する位置において発射梁の動きを停止させるように構成することができる。例えば、発射梁226上の第1のロックアウトノッチ222の位置、ロックアウトレバー280の長さ、及び発射部材240の尾部247の長さは、空のリロードロックアウト機構がジョーアセンブリの開閉ストロークの初期に固定されるようなサイズ及び構成にすることができる。空のジョーアセンブリロックアウト機構が開閉ストロークの初期部分の最中にロックするように構成されている場合には、ジョーアセンブリ内にリロードカートリッジが存在しない場合にユーザがハンドルアセンブリを作動させて外科的アクセスポートを通じて挿入できるほど十分にジョーアセンブリを閉じることができないという利点がある。従って、空のジョーアセンブリロックアウト機構がこのように構成されている場合、ユーザは、うっかり空のジョーアセンブリを手術部位に導入する前に、リロードカートリッジがジョーアセンブリ内に存在しない旨の触覚指示を得られる。さらに、このような空のジョーアセンブリロックアウトは、ジョーアセンブリ内にリロードが存在しないジョーアセンブリに対して、発射部材240の刃先245を実質的に後退した遮蔽位置に維持することが望ましい。
【0094】
光リングユーザディスプレイ
いくつかの実施形態では、ハンドルアセンブリが、発射の困難性に関する情報、試験時間に関する情報及び装置の状態を含む動作データを処理して場合によってはメモリモジュールに記憶又は保存する制御装置を含むことができる。従って、ステープラは、外科医がまさに実行しようとしている発射に関する知的判断を行うことができるように、外科医に特定の動作情報を伝えるユーザディスプレイを含むことが望ましいと考えられる。例えば、いくつかの事例では、クランプ時間、及びクランプされた組織の厚みがステープラのエンドエフェクタにおいてステープルリロードカートリッジの動作パラメータ内でステープリングするのに適したものであるかどうかに関するいくつかの情報をユーザに提供することが望ましいと考えられる。
【0095】
図42を参照すると、いくつかの実施形態では、ハンドルアセンブリが、環状照明「光リング」ユーザディスプレイ402サブアセンブリなどの多機能照明ディスプレイをユーザディスプレイとして含むことができる。外科手術中には、ハンドルアセンブリが様々な角度方向に位置変更されて操作されるので、光リングサブアセンブリの環状構成は、あらゆる装置配向からオペレータに視認性の高いユーザディスプレイを提供することが有利である。
【0096】
図43図44を参照すると、図示の実施形態では、光リングユーザディスプレイ402が、環状光反射体404と、環状光リング406と、複数の光源408とを含む。環状光反射体404は、半径方向内向きに光を放つ光源408からの照明が環状光反射体から反射されて環状光リングを通じて伝播するように、環状光リング406の半径方向内側に配置される。光リング406の材料は、高度な光透過率を可能にしながらユーザに外部輝点(external bright spots)が見えないように光分散を制御するように選択することができる。図示のように、ユーザディスプレイ402は、光リングユーザディスプレイ402の周囲でほぼ等間隔を空けた4つの光源408を含む。いくつかの実施形態では、これらの各光源が、様々な色及び輝度で照明を行うことができるRGB発光ダイオードを含むことができる。光リングユーザディスプレイ402は、リジッドフレックス(Rigid Flex)プリント基板などのフレキシブルプリント基板上の回路基板などのハンドルアセンブリの制御装置に電気的に結合することができる。図示のように、フレキシブルプリント基板410は、環状構成に形成して環状光リング406と環状光反射体404との間に配置することができる。光源408は、環状光反射体404に向けて半径方向内向きに光を放出するようにフレキシブル電気ケーブル410の内面に取り付けることができる。フレキシブルプリント基板及びハウジング反射体の形状は、反射光を最大化して輝点を最小化するいずれかの角度に光源が保持されることを容易に可能にできることが望ましい。
【0097】
上記では光リングユーザディスプレイ402の1つの実施形態を図示し説明したが、光リングユーザディスプレイの他の実施形態は他の態様を含むこともできると想定される。例えば、いくつかの実施形態では、光リングユーザディスプレイ内で4つよりも多くの又は少ない光源408を使用することができ、異なる又はさらなる照明技術を使用することもできる。いくつかの実施形態では、光リングユーザディスプレイに環状光反射体を含めることなく環状光リング406を通じて直接発光するように、フレキシブル電気ケーブル410の外面上に光源を配置することができる。他の実施形態では、ハンドルアセンブリのハウジングの一方又は両方の半分に形成された表面を使用して、独立した環状光リングを使用することなく光源から光を発することができる。
【0098】
図42を参照して分かるように、光リングユーザディスプレイ402は、制御装置に電気的に結合して様々な状態メッセージをユーザに表示するように構成することができると想定される。ユーザに所望の情報を伝えるように、例えば色、輝度、点滅シーケンス、又は常時オン/オフ照明(steady on/off illumination)を制御することができる。また、いくつかの実施形態では、特定の色遷移又は輝度遷移の発生及び/又は速度を使用してユーザに情報を伝えることもできる。いくつかのディスプレイ制御プロファイルでは、第1の色を使用して、ハンドルが発射作動の可能性がない開放-クランプ機能(open-to-clamp functionality)にあることを示し、第2の色を使用して、ステープラがステープルを発射するように構成された発射モードにあることを示すことができる。さらなる色又は他の指標を使用して、発射の完了、発射機構の反転及び発射エラーの発生などのステープラの他の事象又は動作状態を表すこともできる。
【0099】
いくつかの実施形態では、電動ハンドルのユーザディスプレイが、(1)ステータスインジケータ、及び(2)LEDリングという2つのRGB LEDグループを含む。ステータスインジケータは、マイクロコントローラへの十分な電力が正しく供給されていることをユーザに示す「常時点灯」ライトである。従って、ステータスインジケータは、電動ハンドルが「オフ」であるか、それとも「オン」であるかを素早くユーザに示すことができる。
【0100】
独立したステータスインジケータ及びLEDリングを有する実施形態では、ステータスインジケータを、Sun LED社の部品番号XZFBBM2ACRDG92W-3として現在市販されているRGB LEDアセンブリとすることができ、LEDリングがこれらのRGB LEDアセンブリをさらに4つ含むことができる。ステータスインジケータ及びLEDリングを駆動する例示的な回路では、各RGB LEDアセンブリが、1つが各色に対応する3つの分流抵抗器(shunt resistors)を含む。分流抵抗器は、各RGB LEDアセンブリ上の各色につき同じ値を有する。分流抵抗器は、電流を増減することによって輝度を変更できるように最大1/4ワットが利用可能な0603パッケージに入れられる。RGBのLEDアセンブリへの電流は、それぞれが1.00kΩベースを有するMMBT2222Aトランジスタを通じて制御され、同じ色の全てのLEDは単一のトランジスタによって制御され、従ってステータスインジケータは、その赤色、緑色及び青色LEDに対応する3つのトランジスタを含み、LEDリングは、その赤色、緑色及び青色LEDの全てにそれぞれが電気的に結合された3つのトランジスタを含むことができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、LEDリングが、ハンドルアセンブリの制御システム内の光制御スキームによって決定されるハンドル動作状態を示す、システムの主要ユーザインターフェイスである。特定の装置状態は、指示色(白色/青色/緑色/黄色/赤色/オフ)、輝度及び負荷サイクルに相関する。オペレータ及びアシスタントは、装置の設定、使用及びトラブルシューティングに、LEDを通じて供給される指示を使用するように命令される。ハンドルアセンブリの近位端に配置されてハンドルの周囲で半径方向に広がるLEDリングは、ハンドルが手術部位に対していずれかの配向にある状態でオペレータ及び外科スタッフの他のメンバーに電動ハンドルの状態を明確に示すことが有利である。この分野における以前のステープラは、1つの位置に過剰な通知が配置されているため特定の配向において見えづらく、従ってユーザ及びその他の医療関係者が解釈しづらいことが知られている。対照的に、光制御スキーム(状態機械/アラームテーブル)と相まったLED指示システムは、全ての必要な装置動作状態を明確かつ単純に指示する。
【0102】
光制御スキームは、手術での使用前に、無効な製造又は校正データ、装置の損傷及び/又は誤った設定についてユーザに警告するように構成することができる。光制御スキーム及びLED光リングは、装置の状態を解釈することによる迅速な装置のトラブルシューティング及び使用をユーザに対して可能にできることが望ましい。制御マイクロコントローラに実装された光制御スキームは、各色のオン/オフ及び各色のパルス幅変調を行って様々な輝度を達成できることが有利である。
【0103】
いくつかの実施形態では、光制御スキームが、電動ハンドルシステムでのユーザアラーム状態を示すために第1の指標を適用することができる。例えば、第1の指標は、LEDリングの赤色点滅を含むことができる。いくつかの実施形態では、ユーザアラーム状態が、ハンドルが所定の発射回数を超えた旨の指示、ハンドルに所定の時間を超えて電力が供給された旨の指示、又はハンドルのバッテリのバッテリ寿命が比較的短い旨の指示を含むことができる。さらに、ユーザアラーム状態は、所定の時間閾値を超えてトリガーが動いていないように見える旨、所定の時間閾値を超えて発射ボタンが動いていないように見える旨、作動シャフト位置が範囲外であり又は変化していないように見える旨、又はモータ電流が所定の最大限度を超えている旨の指示を含むこともできる。さらに、ユーザアラーム状態は、手動復帰機構が作動した旨、又はハードウェア又は制御システムの故障が発生した旨の指示を含むこともできる。制御システムは、光制御スキームを通じてユーザに警告することに加え、ユーザアラーム状態の発生時には全てのハンドル機能を無効にすることもできる。
【0104】
いくつかの実施形態では、光制御スキームが、動作中の電動ハンドルシステムにおけるハンドルの寿命切れ状態(end of life state)を示すために第2の指標を表示することができる。第2の指標は、LEDリングの単色赤色照明(solid red illumination)を含むことができる。動作中に、最大発射回数の完了、最大給電時間の経過又はバッテリの消耗に対応し得る寿命切れ状態がハンドルアセンブリに発生した場合、制御システムは、光制御スキームが第2の指標を表示することでユーザにハンドルの寿命切れ状態を警告するとともに、ハンドルアセンブリがその後のパワーサイクルまで把持モードで動作することを可能にし、この時点でハンドルアセンブリを無効にすることができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、光制御スキームが、ステープリング動作継続のためにユーザの注意が望ましいことを示すために第3の指標を表示することができる。第3の指標は、LEDリングの黄色照明の点滅を含むことができる。電動ステープラの動作中の特定のインスタンスは、さらなるユーザ入力と共に前進させることができる。例えば、特定の動作シーケンス中に、ボタン又はトリガーのスタックを示す所定の閾値を下回る時間長にわたって発射ボタン又はトリガーが押されている場合、第3の指標は、ボタン又はトリガーを解除してシーケンスの進行を可能にすべきである旨をユーザに示すことができる。例えば、最初にリロードシャフトアセンブリが装填された時、ステープル発射前にジョーが完全に閉じた時、又はステープラが完全に発射された時に、トリガーのスタックを示す閾値よりも短い時間にわたってトリガーが押圧された場合、光制御スキームは、トリガーを解除すべき旨をユーザに示すためにLEDリングの黄色の点滅照明を示すことができる。ジョーアセンブリが開放状態にある時、又は装置の発射準備が整っている時に、発射ボタンのスタックを示す閾値よりも短い時間にわたって発射ボタンが押圧された場合、光制御スキームは、発射ボタンを解除すべきである旨を示すLEDリングの黄色の点滅照明を示すことができる。
【0106】
光制御スキームは、ステープリング動作の継続にさらなるユーザの介入が望ましい旨を示すために、LEDリングの単色黄色照明を含む第4の指標をさらに含むことができる。例えば、制御システムによって認識されないリロードシャフトアセンブリが取り付けられた場合、又はジョー閉鎖中に(把持された標本内に過度に厚い又は高密度の組織、又はクリップなどの他のアイテムが存在することを示す)所定の高閾値を上回るモータ電流が発生した場合、或いはリロードシャフトロックアウトが関与した場合、光制御スキームは、単色の黄色でLEDリングを照明することができる。
【0107】
光制御スキームは、ハンドルアセンブリが正常に動作していることを示す特定の事例を示すさらなる指標をさらに含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、光制御スキームが、組織が把持されており、発射動作に備えてジョーアセンブリが係止された旨を示すために、LEDリングを単色の青色で照明することができる。その後にジョーアセンブリが解除された場合、光制御スキームは、LEDリングを青色点滅で照明することができる。発射動作がキャンセルされた場合、光制御スキームは、LEDリングを緑色点滅で照明することができる。
【0108】
制御装置
図示のハンドルアセンブリのいくつかの特徴に関して上述したように、ハンドルアセンブリは制御装置をさらに含むことができる。図示のように、制御装置は、様々な追加のセンサ、電源及びユーザディスプレイコンポーネントが電気的に結合された回路基板に電気的に結合されたマイクロコントローラを含むことができる。制御装置は、モータを駆動して、開放-クランプ機能を提供した後にステープラジョーアセンブリにおいてステープル発射機能を提供するように構成することができる。制御装置は、モータ負荷センサ、作動ラック位置センサ、シャフト認識センサ及び関節運動位置センサのうちの1つ又は2つ以上からのセンサデータに基づいてモータの動作パラメータを修正するようにさらに構成することができる。
【0109】
図45Aに、電動ハンドルの例示的な制御システムのデータ及び電力の流れを示す概略的フロー図を示す。図示のフロー図では、制御システムが図示のマイクロコントローラ502を含む。様々な実施形態では、マイクロコントローラが、特定用途向けファームウェア及び/又はソフトウェアを実行する特定用途向け集積回路又は汎用マイクロコントローラを含むことができる。図示のように、マイクロコントローラは、電源内のバッテリ504から電力とバッテリ状態に関するデータとを受け取る。マイクロコントローラは、モータドライバ506、電流モニタ508、作動ラック位置検知機構510、並びにシャフト接続及びタイプモニタ512などのステープラの様々な機械的ハードウェアからさらにデータを受け取る。関節運動機構に関して上述したように、マイクロコントローラ502は、関節運動位置検知機構514から関節運動位置情報をさらに受け取ることができる。マイクロコントローラは、トリガー位置センサ516及び押しボタンスイッチを介してユーザからのデータをさらに受け取ることができる。制御システムは、モータドライバ506を通じて電動ハンドルの駆動システムを作動させる制御信号を出力することができる。制御システムは、いくつかの実施形態では取り外し可能モジュールを含むことができるメモリモジュール520にいくつかの動作パラメータ情報を出力できるとともに、本明細書で説明した光リングユーザディスプレイなどのハンドル上のLED照明522を通じてユーザに見えるいくつかのデータを出力することもできる。いくつかの実施形態では、制御システムを、独立した触覚モジュールの作動、又はモータの回転に1又は2以上のわずかな順方向及び逆方向変位を指示できる触覚生成モータ駆動プロファイル(haptic generation motor drive profile)の作動などによって、ユーザはフィードバック感覚を感じるけれども作動ラックの位置は著しく影響を受けないような触覚フィードバックをユーザに提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラを、例えばBluetooth、WiFi又は別の無線プロトコルなどを介して無線で情報を送受信するように構成することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、制御システムが、電動ハンドルの動作パラメータをさらに定めるようにも構成される。例えば、制御システムは、電源又は制御システム自体上のメモリモジュールに問い合わせることによって、電動ハンドルが1回よりも多くの手術に使用されたかどうかを検出することができる。いくつかの実施形態では、ステープリングシステムが1回の手術で使用されるように設計され、再滅菌されるように設計されていない。また、制御システムは、電源又は制御システム上のメモリモジュールに問い合わせを行ってステープルの発射回数を検出して、さらなる発射を完了するのに十分なバッテリ電力が残っているかどうかを評価することもできる。
【0111】
いくつかの実施形態では、制御システムが、電動ハンドルの動作の特定の側面を対象とする1又は2以上のモジュールを含むことができる。例えば、制御システムは、図19B図19Kを参照しながら説明したような、特定のリロードシャフト特性を認識して対応する制御信号をモータに適用するように構成されたシャフト認識モジュールを含むことができる。いくつかの実施形態では、制御システムが、図47図53を参照しながら説明するような、ジョーアセンブリロックアウトがいつ作動したかを検出するように構成できるロックアウト制御モジュールを含むことができる。さらに、制御システムは、図42図44を参照しながら説明したような、特定の動作状態が発生した時にユーザに視覚的指標を提供するように構成された光リングディスプレイのための光制御スキームを含むことができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、制御システムが、ステープル形成を促す特性を有する組織を検出するように構成される。いくつかの実施形態では、制御システムが、ステープルの発射を防ぐ可能性がある組織特性を検出するように構成される。いくつかの実施形態では、制御システムが、駆動システムのモータの位置、速度及び供給トルクをモニタすることができる。制御システムは、ジョーアセンブリを閉じるのに過剰な時間が必要な場合、又はジョーが低速で閉じられている場合に、ジョーアセンブリを閉じるのに過剰トルクが必要であるかどうかを検出することができる。これらの状態は、ジョーアセンブリ内の組織の厚み又は密度が大きすぎてステープラが効果を発揮できないことを示すことができる。いくつかの実施形態では、制御システムが、作動シャフトの位置を時間に対してモニタし、このモニタされた位置及び時間をベースライン「ゼロ負荷」時間基準位置及び時間に対して評価して、厚み及び密度などの組織特性を査定することができる。駆動システムが所定の動作パラメータを超過する場合、制御システムは、エラー状態を示して発射動作を停止することができる。
【0113】
図45B図45Fを参照すると、いくつかの実施形態では、制御システムが、初期化モジュール又は起動モジュールを含むことができる。起動モジュールは、制御システムがハンドルアセンブリの把持及び発射動作での動作を可能にする前に、ハンドルアセンブリハードウェア、マイクロコントローラ及びメモリの特定の動作パラメータが所定値又は所定の範囲内であることを検証することができる。図45Bには、制御システムの起動モジュールの開始部分の一例のプロセスフローシーケンスを示す。開始部分は、ハンドルアセンブリの電源投入時に制御システムが最初に実行することができる。使用中、電源投入動作は、新たなハンドルアセンブリが初めて電源オンになった時、以前に使用されていたハンドルが電源オンになった時、又は動作シーケンス中にハンドルアセンブリが電源の喪失を受けた時に発生することができる。図示のプロセスフローシーケンスの例では、起動モジュールの初期部分が、特定の初期パラメータの評価時に、新たなハンドルサブモジュール、使用済みハンドルサブモジュール、又はリセット検出済みサブモジュールのうちの1つに入る。
【0114】
図45Bを参照すると、起動モジュールの開始部分は、電源オン時にマイクロコントローラによって実行される。開始部分は、ハンドルアセンブリの動作パラメータを問い合わせる(550a~550f)。様々な実施形態では、動作パラメータを、マイクロコントローラのメモリレジスタ又はプリント基板上のメモリモジュールに記憶することができる。図示の例では、動作パラメータ550a~550fが、ハンドルアセンブリの動作を妨げ得るハードウェア又は制御システム障害にハンドルが以前に遭遇したことを示すことができる。例えば、図示のプロセスフローでは、動作パラメータが、データ中止フラグ550a、ウォッチドッグ故障フラグ550b、手動復帰フラグ550c、デッドハンドルフラグ550d、所定の範囲内のバッテリ電圧550e、動作範囲内のマイクロコントローラ温度550fといった、特定の規定の動作条件のための記憶値を含む。問い合わせた動作パラメータ550a~550fのうちのいずれかが動作値又は動作範囲内の値を戻さない場合、起動モジュールの開始部分は、制御システムを重大な起動エラー状態(critical startup error state)に構成する。バッテリ電圧550e及びマイクロコントローラ温度550fの動作パラメータは、その後のパワーサイクルにおいてリセットすることができるが、他の動作パラメータ550a~550dにおけるハードウェア又は制御システム障害を表す様々なフラグは、その後のパワーサイクル中に記憶される。
【0115】
図45Bを参照して分かるように、問い合わせた動作パラメータ550a~550fが全て動作可能な値を戻した場合、開始部分はハンドルの状態を評価して、実行すべき起動モジュールの対応するサブモジュールを選択する。制御システムは、リセット検出モジュールを使用して電源リセットの発生を検出し、リセットが検出された場合にメモリ位置に真値を記憶するように構成される。PCBは、制御システムに電気的に結合されたリセット検出線を含むことができる。図示のプロセスフローでは、制御システムがこのリセット検出モジュールを無効にすることができる。従って、起動モジュールの開始部分は、リセット検出モジュールが有効であるかどうかを評価する。リセット検出モジュールが有効である場合、開始部分は、リセット検出フラグ値を問い合わせて、マイクロコントローラへの短い電力遮断又は周囲電磁干渉によって発生し得る過渡的電力状態の後にハンドルアセンブリの電源がオンになったかどうかを評価する。記憶されたリセット検出フラグの値がリセットの発生を示す場合、リセット検出済みサブモジュール552が実行のために選択される。リセット検出モジュールが無効である場合、又はリセット検出モジュールの問い合わせフラグがリセットの未発生を示す場合、開始部分は、以前にハンドルが使用されたことがあるかどうかを表す記憶値を問い合わせる。ハンドルが以前に使用されたことが記憶値によって示される場合、起動モジュールの使用済みハンドルサブモジュール554が選択される。ハンドルが以前に使用されていないことが記憶値によって示される場合、新たなハンドルサブモジュール556が選択される。
【0116】
図45Cには、新たなハンドルサブモジュール556の第1の部分のプロセスフローの一例を概略的に示す。第1の部分では、新たなハンドルサブモジュールが様々な動作パラメータを問い合わせて、ハンドルハードウェア及び制御システムが動作状態にあるかどうかを評価する。図示の例では、新たなハンドルサブモジュールが外部メモリモジュール560aの存在を識別し、存在しない場合には値を記録することができる。新たなハンドルサブモジュールは、有効な装置シリアル番号560b、プリント基板アセンブリ(PCBA)ロット番号560c及びハンドルロット番号560dを含む、ハンドル装置を認証するための動作パラメータ値を問い合わせることができる。これらの動作パラメータのいずれかが有効でない場合、新たなハンドルサブモジュールは、制御システムに重大な起動エラー状態を設定し、(起動モジュールの初期部分中における問い合わせ時に真値を有するデッドハンドルフラグの指示は起動動作を停止するので)ハンドルのパワーサイクリング及び再起動ができないようにデッドハンドルフラグ値を真に設定することができる。次に、新たなハンドルモジュールは、装置が正しく校正されていること560e、560f、560g、モータが動作可能であること560h、560i、及び作動シャフト位置のセンサが起動範囲内にあること560jを検証することを含め、特定のハードウェア及び制御システム動作パラメータを検証することができる。これらの動作パラメータのいずれかが有効でない場合、新たなハンドルサブモジュールは、制御システムに重大な起動エラー状態を設定し、ハンドルのパワーサイクリング及び再使用ができないようにデッドハンドルフラグ値を真に設定することができる。問い合わせた動作パラメータ560a~560jが全て動作可能値又は動作可能範囲内である場合、新たなハンドルサブモジュールは、制御システムにパワーオン動作状態を設定して新たなハンドルサブモジュールの第2の部分562を開始する。
【0117】
図45Dには、新たなハンドルサブモジュールの第2の部分562のプロセスフローの例を示す。図示の例では、第2の部分562において、新たなハンドルサブモジュールが、作動シャフト565a、シャフト認識モジュール565b、関節運動センサ565c、トリガー565d及び発射ボタン565eの位置、並びにモータ動作特性565fを問い合わせて、ハンドルが動作状態にあることを検証する。新たなハンドルサブモジュールの第2の部分が位置クエリを実行した際に特定の位置値又は位置値の組み合わせが戻された場合、新たなハンドルサブモジュールは、トリガー及び作動シャフト位置障害、又はモータストール障害などの特定のハードウェア障害を識別し、認識されないリロードシャフトがハンドルに取り付けられているかどうかを判定することができる。
【0118】
図45Eには、リセット検出済みサブモジュール552のプロセスフローの例を示す。図示の例では、以前にリセットが検出されていた場合、リセット検出済みサブモジュールが、以前にハンドルが最初の発射を完了したかどうか、従って使用済みハンドル動作パラメータを有しているかどうかを最初に問い合わせる。以前にハンドルが発射されたことがある場合、リセット検出済みサブモジュールは、作動シャフトの位置を問い合わせて作動シャフトラックの位置を特定し(564)、ジョーが完全に閉じた位置にあるか、開いた位置にあるか、それとも部分的に閉じた位置にあるか、或いは完全に閉じた位置を超えて前進した位置にあるかを評価する。次に、リセット検出済みサブモジュールは、ジョーの開放に対応する位置に作動シャフトを戻す(566)。次に、リセット検出済みサブモジュールは、シャフト認識モジュールに問い合わせて、認識されたリロードシャフトがハンドルアセンブリに結合されているかどうかを評価する(568)。以前にハンドルが発射されたことがない場合、リセット検出済みサブモジュール552は、同様のプロセスフローを実行して作動シャフトの位置を特定し、ジョーの開放に対応する位置に作動シャフトを戻した後に、認識されたリロードシャフトがハンドルアセンブリに結合されているかどうかを問い合わせる。いくつかの条件では、リセット検出済みサブモジュール552が、外部メモリが存在するかどうかをさらに問い合わせ(570)、イベントを記録することができる(572)。
【0119】
図45Fには、使用済みハンドルサブモジュール554のプロセスフローの例を示す。使用済みハンドルが検出された場合、図示の例では、使用済みハンドルサブモジュールが、作動シャフト574、シャフト認識モジュール576及びトリガー578の位置を問い合わせてハンドルが動作状態にあることを検証する。使用済みハンドルサブモジュールが位置クエリを実行した際に特定の位置値又は位置値の組み合わせが戻された場合、使用済みハンドルサブモジュール554は、ハンドルアセンブリの動作を制限してデッドハンドルフラグを真として設定することができる。
【0120】
図46A及び図46Bに、制御システムの例示的な発射シーケンスの動作フローチャートのブロック図を示す。図示のように、制御システムは、トリガー及び発射ボタンからのユーザ入力と、様々なセンサ及びモニタからのハードウェア入力とを統合して、ジョーアセンブリを完全に開いた状態530から発射シーケンス534への完全に閉じた状態532に前進させ、その後に完全に開いた状態530に戻る。図46Aには、初期電源オン状態からジョーが完全に閉じる状態までの動作フローチャートを示す。図46Bには、ジョーが完全に閉じた状態から発射シーケンスまでの動作フローチャートを示す。1つの例示的な動作シーケンスでは、ジョーが完全に閉じた状態532にある場合、制御システムは、トリガーが完全に解除されたかどうか(531)を検出することができる。別の例示的な動作シーケンスでは、ジョーが完全に閉じた状態にある場合、制御システムは、発射ボタンが押されたかどうか(533)を検出することができる。発射シーケンスが完了すると、制御システムはハンドルアセンブリ535を把持構成に戻すことができる。
【0121】
発射動作中、制御装置は、提供すべき作動シャフトの位置をモニタして、所望のモータ駆動プロファイルを提供することができる。いくつかの実施形態では、マイクロコントローラが、作動ラック位置の様々な動作ゾーンを識別するモータ駆動ロジックプロファイルを用いて動作し、例えばこれらの各ゾーン及びこれらのゾーン内の様々な作動ラック位置のモータ速度及びモータ負荷モニタリングなどの所定のモータ駆動パラメータを適用することができる。いくつかの実施形態では、モータ駆動ロジックプロファイルを、制御装置内のコンピュータ可読媒体又は制御装置に電気的に結合されたコンピュータ可読媒体などのメモリモジュールに記憶されたソフトウェア又はファームウェアベースの計算プログラムとすることができる。いくつかの実施形態では、モータ駆動ロジックプロファイルが、把持器具ゾーン、ロックアウトゾーン、発射ゾーン、完全発射ゾーン、復帰ゾーン及び開放ゾーンのうちの1つ又は2つ以上の動作パラメータ、及びこれらを通じた動作シーケンスを定めることができる。いくつかの実施形態では、モータ駆動ロジックプロファイルを、関節運動位置センサ、シャフト認識センサ、モータ負荷モニタ、又はその他のセンサ入力のうちの1つ又は2つ以上から受け取られたセンサ入力に応答して、関連するゾーン及びいくつかの位置を調整するように構成することができる。
【0122】
把持器具ゾーンは、器具シャフトに取り付けられたエンドエフェクタのジョー開放位置とジョークランプ位置との間の作動ラックの動きゾーンに対応する。この領域では、マイクロコントローラを、ユーザによって入力されトリガーポテンショメータなどのトリガー位置センサによってマイクロコントローラに送信されるトリガーの動き度合いに比例してジョーアセンブリを駆動するように構成することができる。トリガーが完全に押圧された場合、装置は、エンドエフェクタのジョーが完全に閉じた位置になる位置に作動シャフトを前進させる。トリガーが完全に解除された場合、装置はジョーの開放に戻る。完全にトリガーを引くと同時に発射ボタンを押すと、作動シャフトはロックアウトゾーンに前進する。他の実施形態では、把持器具ゾーンにおいて、マイクロコントローラを、ジョーの閉鎖量がトリガーの動きによって定められるのではなく、把持器具ゾーンにおけるジョーの閉鎖速度がトリガーの動きによって定められるように、トリガーの変位角度に比例した割合でモータを駆動するように構成することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、特定のゾーンにおいてパルス幅変調を通じてモータ速度を所望の移動速度に変更することができる。いくつかの実施形態では、把持器具ゾーンにおいて100%未満の負荷サイクルでモータをパルス幅変調することができる。いくつかの実施形態では、把持器具ゾーンにおいて約50%~90%の負荷サイクルでモータを駆動することが望ましい場合もある。いくつかの実施形態では、モータ駆動ロジックプロファイルを、把持器具ゾーンにおいてモータが70%の負荷サイクルでパルス幅変調されるように構成することができる。
【0124】
制御システムのいくつかの実施形態では、ユーザがハンドル上の発射ボタンを押圧した場合、制御装置は、把持器具ゾーンにおけるジョー閉鎖位置からモータ駆動ロジックプロファイルのロックアウトゾーンに進む。ロックアウトゾーンは、発射済みのステープラリロードカートリッジが存在する場合又はステープラリロードカートリッジが存在しない場合にステープラの発射作動を防ぐ発射ロックアウトを含む、器具シャフト及びジョーアセンブリのモータ制御プロファイルを提供するように構成することができる。この種のロックアウトが動作すると、器具シャフト又はジョーアセンブリにおける発射機構の一部がアクチュエータの所定の作動位置においてさらに前進することが防がれるので、モータの負荷が大幅に増加する可能性がある。従って、制御装置は、ロックアウトゾーンの最中に、予想されるモータ負荷のスパイクについてアクチュエータラック位置センサ及びモータ負荷センサからのセンサ情報をモニタすることができる。
【0125】
制御システムのいくつかの実施形態では、別のロックアウトゾーンを組み込むのではなく、ハンドルアセンブリが把持器具ゾーンにある時に制御システムがロックアウトの存在をモニタすることができる。従って、いくつかの実施形態では、制御システムが専用の把持器具ゾーンを含まず、把持器具ゾーン中にロックアウトが存在するかどうかを継続的にモニタする。このような制御システムの実施形態は、図33図41を参照しながら説明したような明らかにリロード機構が欠落した又は使用されたロックアウトの存在の指示を容易にすることができる。
【0126】
ロックアウト制御モジュール
上述したように、いくつかの実施形態では、制御システムを、アクチュエータ位置の規定の「ロックアウトゾーン」内の電流をモニタするように構成することができる。これらの実施形態では、制御システムが、電流閾値のみに依拠してロックアウト機構の係合の存在を判定することができる。いくつかの実施形態では、電流閾値が、ロックアウトゾーンの開始時のサンプルに、リロードロックアウトが無効化されておらずアクチュエータの移動が停止したことを示す一定の300mAを加えたものに基づいて決定されたものである。しかしながら、この制御システムの一要素ロックアウト検知モジュール(one factor lockout sensing module)は、アクチュエータがジョーアセンブリの発射ストロークに差し掛かっている時に把持領域の外側で最も効果的である。制御システムは、把持領域の外側ではモータの一定のPWM動作を指示する。さらに、アクチュエータが把持領域を越えて遠位方向に前進した時には既に組織のクランピングが行われており、従って組織の厚み及び一貫性の変動に起因するあらゆる潜在的な電流変動が最小化される。しかしながら、図32図41を参照しながら上述した二位置ロックアウト機構は、把持器具ゾーン内で係合可能な場合にいくつかの動作的利点をもたらすので、制御システムのロックアウト検出モジュールのさらなる改善を必要とし得る。
【0127】
図32図41に関して上述したように、二位置ロックアウト機構は、空のジョーアセンブリと少なくとも部分的に発射済みのリロードとに対応する2つの異なるアクチュエータ位置において係合できることが望ましい。いくつかの実施形態では、発射梁に形成されたロックアウトノッチが実質的に連続することができるので、これらのロックアウトアクチュエータ位置が互いに比較的近接する。さらに、いくつかの実施形態では、これらのアクチュエータ位置の各々が、制御システム動作の把持ゾーン又は領域内に存在することができる。把持領域では、制御システムを、発射状態に入る前にジョーアセンブリのジョーの開閉の完全なユーザ制御を提供するように構成することができる。ユーザは、部分的なジョーの閉鎖、再開放及び再閉鎖を制限なく行うことができる。いくつかの実施形態では、把持領域において、トリガーが比例的なジョーの閉鎖に対応づけられ、すなわちトリガーを25%引くとジョーが25%閉じる。しかしながら、ユーザがジョーの中断、開放又は閉鎖を行う度にモータは停止して再始動する。モータが慣性に打ち勝って全速までランプアップし、大きな瞬間的電流スパイクをもたらすにはさらなる電力を要する。さらに、通常、ジョーアセンブリは、把持領域におけるジョーの閉鎖中に組織を圧迫するので、ジョー間に位置する組織の厚み又は密度の増加に応答してモータに加わる負荷が上昇する。従って、いくつかの事例では、電流検出のみに基づく制御システムのロックアウトモジュールが、過渡的なユーザ入力及び組織の圧迫状態に起因して1又は2以上のロックアウト機構が把持器具領域内のアクチュエータ位置において係合し得る偽陽性指標をもたらす恐れがある。
【0128】
図47図52に、電動ステープラの様々な動作状態の例示的な電流プロファイル600、601、603、605、607、609、611のプロットを示す。このプロットは、(数十ミリ秒単位で測定した)動作時間にわたって追跡した(ミリアンペア単位で測定した)モータ負荷又は電流引き込みを示す。図47には、(例えば、把持動作中における実質的に空のジョーアセンブリを表す)無負荷のステープラの把持器具領域の例示的な電流プロファイルのプロット600を示す。このプロットは、最初にトリガーが引かれてモータが加速する際の初期電流スパイク602と、その後にモータが比較的一定の速度で動作する際の比較的電流が一定した領域604とを含む。図48には、(例えば、ジョーアセンブリが把持動作中に比較的厚みのある組織標本を把持していることを表す)比較的高い負荷を有するステープラの把持器具領域の例示的な電流プロファイルのプロット601を示す。このプロットは、最初にトリガーが引かれてモータが加速する際の初期電流スパイク606と、その後にモータが比較的一定の速度で動作してジョーアセンブリによって把持された組織を圧縮する際の電流が増加する領域608とを含む。
【0129】
図49には、(例えば、把持動作中における複数回のトリガーの適用によってジョーアセンブリが作動したことを表す)トリガーが繰り返し押圧されたステープラの把持器具領域の例示的な電流プロファイルのプロット603を示す。このプロットは、トリガーが繰り返し引かれてモータが加速する際の複数の電流スパイク610と、その後にモータが比較的一定の速度で動作してジョーアセンブリによって把持された組織を圧縮する際に各スパイク610に関して比較的電流が一定である対応するその後の領域612とを含む。
【0130】
図50には、リロードカートリッジが存在しない場合605及び部分的に発射されたリロードカートリッジが存在する場合607のステープラの把持器具領域の例示的な電流プロファイルのプロットを示す。このプロットは、最初にトリガーが引かれてモータが加速する際の初期電流スパイク614、その後にモータが比較的一定の速度で動作してジョーアセンブリによって把持された組織を圧縮する際の比較的電流が一定であるその後の領域616、及びリロードロックアウトの欠落が発生した際の電流が増加する領域618、並びにリロードロックアウトの部分的発射が発生した際の別のプロットでの電流が増加する領域620をそれぞれ含む。なお、この増加する領域は、初期スパイクの傾斜とは異なる、異なる範囲に含まれる傾斜を有し、従って制御システムのロックアウトモジュールは、モータの電流をモニタして、この異なる範囲内の傾斜を示すモータ電流の存在を検出することができる。
【0131】
図51には、(例えば、ジョーアセンブリが比較的厚みのある組織標本を把持しており、ジョーアセンブリ内に取り付けられたリロードカートリッジが部分的に発射され又は使用済みであることを表す)部分的に発射されたリロードが存在して比較的負荷が高いステープラの把持器具領域の例示的な電流プロファイルのプロット609を示す。プロット609は、トリガーが引かれてモータが加速する際の初期電流スパイク622と、組織がジョーアセンブリによって把持され圧縮される際の徐々に電流が増加するその後の領域624とを含む。最後に、このプロットは、部分的に発射されたリロードロックアウトが発生した際の増加する領域626を含む。なお、増加する領域626の傾斜は、初期スパイク622及び徐々に電流が増加する領域624のいずれとも異なる。
【0132】
図52には、(例えば、把持動作中における複数回のトリガーの適用によってジョーアセンブリが作動し、ジョーアセンブリが比較的厚みのある組織標本を把持しており、ジョーアセンブリ内に部分的に発射された又は使用済みのリロードが存在することを表す)トリガーが繰り返し押圧され、負荷が比較的高く、部分的に発射されたリロードが存在するステープラの把持器具領域の例示的な電流プロファイルのプロット611を示す。プロット611は、トリガーが繰り返し引かれてモータが加速する際の複数の電流スパイク628と、モータが動作してジョーアセンブリによって把持された組織を圧縮する際の、スパイク628後の徐々に電流が増加する対応するその後の領域630とを含む。最後に、このプロットは、部分的に発射されたリロードロックアウトが発生した際の増加する領域632を含む。ここでも、増加する領域632の傾斜は、初期スパイク628及び徐々に増加する電流の領域630と比べて異なる。
【0133】
なお、受ける負荷及び検出される位置は、モータ、バッテリ及びギアリングの仕様に加え、細長いシャフト、ジョーアセンブリ及びロックアウト機構のサイズ及び構成に基づいて変動し得る。従って、図47図52のプロットは、電動ステープラのいくつかの実施形態の性能を示すものにすぎない。異なるロックアウト位置及び公称電流引き込みにもかかわらず、ロックアウト状態が発生した時の電流プロファイルの傾斜は全ての試験間で一貫しているように見える。
【0134】
制御システムがモニタできるロックアウト状態については、時間及び位置の信頼度が低いことがあり、その変化率は、アクチュエータ移動の把持ゾーンで発生し得る異なる負荷間で一貫していない。通常の把持器具使用において発生する電流引き込み状態によって電流閾値が単独で誤誘発されることがあり、電圧もバッテリの枯渇と共に変化する。しかしながら、1つの一貫したロックアウト状態は、ロックアウト状態の存在時に異なる許容範囲に収まる、図50に示すようなアクチュエータ位置に対する電流プロファイルの傾斜である。公称電流引き込みは低い傾斜を示すのに対し、把持器具の使用ははるかに急な傾斜を有する。稀な場合を除き、ロックアウト係合は、他の事例間に位置する固有の電流対時間プロットを有する。特定の構成の細長いシャフトのロックアウト傾斜許容範囲は、大型サンプルサイズからのロックアウト傾斜を調べることによって計算することができる。いくつかの実施形態では、制御システムが、作動シャフト位置に対する電流引き込みの傾斜をモニタして、ロックアウト機構が係合したことを示すロックアウト許容範囲に電流プロファイル傾斜が収まるかどうかを検出するロックアウトモジュールを含むことができる。制御システムのロックアウトモジュールは、ロックアウト機構の係合が示された時にモータを解放して、図50図52のモータ駆動プロファイルに関して説明したさらなる措置を取るように制御システムを構成するよう構成することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、制御システムのロックアウトモジュールを、たとえロックアウト機構の係合に対応する傾斜を示すはずのモータ引き込み対位置のモニタリングにおける過渡的不一致(transient inconsistencies)の場合でも、より一貫したロックアウト係合検出を行うようにさらに改善することができる。いくつかの事例では、組織密度の変化、駆動系部品の摩耗又はデータ収集の遅延に起因して、電流プロファイルが瞬間的不一致を示しやすくなることがある。電流は、ギアのうちの1つに傷又はバリがある場合、或いは異常に厚い組織のポケット(pocket of tissue)が圧縮された場合に、予想される傾斜から一時的に逸脱することがある。これらの変動に対抗するために、制御システムにおけるロックアウトモジュールのいくつかの実施形態では、安定した信頼性の高い傾向を表示するように、電流(傾斜)の変化を複数のデータエントリにわたって平均化することができる。いくつかの実施形態では、電流プロファイルの傾斜を5つのデータエントリにわたって平均化することができる。この平均化によってロックアウト係合の検出がわずかに遅れることもあるが、この遅延期間中にコンポーネントが耐え抜くことができるわずかな追加力よりも誤検出率に対する恩恵の方が上回ることができる。
【0136】
上述したように、傾斜が偶発的に許容ウィンドウ(acceptance window)内に収まり得ることが稀に発生する。1つのこのような事例は、トリガーの作動にまつわる過渡的負荷条件(transient load conditions)に起因する。トリガーが動いた後には、電流プロファイルが対応する電流スパイクを示す。このスパイクのピーク時には、電流が一瞬落ち着いてから再び公称へと低下する。これらのわずかな鎮静カウント(few counts of settling)中に、たまに電流の変化がロックアウト許容範囲内に収まることがある。
【0137】
電流傾斜又はプロファイルのみに基づいてロックアウト係合を検出するロックアウトモジュールの実施形態では、これらのデータ点が、誤ってロックアウト機構の係合を示すようになる。従って、いくつかの実施形態では、ロックアウトモジュールを、電流傾斜の複数の連続平均のうちの最低値が所定の許容範囲内に収まる時にのみロックアウト機構の係合を検出するように構成することができる。例えば、ロックアウトモジュールは、電流傾斜の3つの連続平均が許容範囲内に収まる時にのみロックアウト機構の係合を検出するように構成することができる。(以前の複数の電流傾斜プロファイルの)平均がロックアウト許容範囲内に収まる場合、制御システムはこの平均を記憶し、ロックアウトモジュールは、(いくつかの実施形態では10ms後の)制御システムによる次のデータ収集時に新たなデータ点を使用して(最初の複数の電流プロファイルからの最も古い電流プロファイル値はもはや計算に入れずに)再び以前の複数の電流プロファイルの平均を計算し、この新たな平均をロックアウト許容範囲と比較する。3つの連続する値がロックアウト許容範囲内に収まる場合、ロックアウトモジュールは、ロックアウト機構が係合したことを示すことができる。第2又は第3の平均が許容ウィンドウ内に収まらない場合、制御システムは、記憶されたあらゆる平均を消去して、所定のロックアウト範囲内の3つの連続する電流プロファイル平均をモニタし続けることができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、ロックアウトモジュールを、誤ったロックアウト係合の指示をもたらすことがある過渡的状態を排除するようにさらに改善することができる。把持領域におけるいくつかのモータ負荷プロファイルには、ロックアウト係合領域内にあることが経験的に判定される電流プロファイルの傾斜に対応する所定の許容範囲内の複数の連続する電流プロファイル平均を生成できる電流スパイクが存在する。いくつかの実施形態では、許容範囲を、電流引き込みをmA単位で測定した電流プロファイルと、ポテンショメータベースの位置検知機構においてカウント単位で測定したアクチュエータ位置とから計算された22.1~200とすることができる。他の実施形態では、許容範囲を、電流引き込みをmA単位で測定した電流プロファイルと、ポテンショメータベースの位置検知機構においてカウント単位で測定したアクチュエータ位置とから計算された21.1~200とすることができる。他の実施形態では、許容範囲が、異なる計算ユニット、或いは異なるハンドルアセンブリ、シャフトアセンブリ又はロックアウト機構構成に基づいて異なる範囲を有することができる。基本事項として、制御システムは、ロックアウトモジュールの動作をトリガーするために特定の適格性チェック基準をモニタすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、制御システムが、ロックアウトモジュールによって計算される平均の計算にとって十分なサンプルが存在するまで、モータ電流サンプル及び関連する作動シャフトラック位置データを定期的に収集することができる。いくつかの実施形態では、制御システムを10ms毎にサンプルを収集するように構成することができ、ロックアウトモジュールの平均化計算を実行するには6つの連続サンプルを採取することが必要となり得る。十分なサンプルが収集されると、制御システムは、ロックアウトが存在し得ることを示す位置に作動シャフトが存在するかどうかを問い合わせることができる。いくつかの実施形態では、制御システムが作動シャフトの位置を問い合わせることができる。他の実施形態では、制御システムが、ハンドルアセンブリが把持状態にあることを検証することができる。いくつかの実施形態では、作動シャフトが前進している時に電流が増加していることを検証するためにさらなる適格性チェックが実行される。制御システムは、最後に収集されたサンプルのモータ電流が以前の2つのサンプル以上であるかどうか、及び最後のサンプルの作動シャフトラック位置が以前のサンプル以上であるかどうかをさらに問い合わせることができる。これらの適格性チェック条件が全て満たされた場合、ロックアウトモジュールは、収集されたサンプルがロックアウトの作動を示すかどうかを評価し始める。
【0139】
上述した把持領域におけるロックアウト機構の係合を検出するいくつか態様の説明に照らせば、いくつかの実施形態では、制御システムが、ロックアウト機構の係合を把持領域におけるモータに対する他の過渡的負荷状態と一貫して区別するように構成されたロックアウトモジュールを含むことができる。いくつかの実施形態では、制御システムが、モータ電流、アクチュエータ位置及び経過時間を定期的にモニタすることができ、ロックアウトモジュールが、電流傾斜プロファイルがロックアウト機構の係合を示すかどうかを計算するための、ソフトウェア又はファームウェアで具体化された一連のコンピュータプロセッサ実行可能命令を含むことができる。1つの実施形態では、ロックアウトモジュールを、一般に以下の基準に基づいてロックアウトが係合したことを示すように構成することができる。
・システムがロックアウト領域内に存在する場合
・試験サンプルのモータ電流が以前の2つのサンプル以上である場合
・作動シャフトの位置が以前のサンプル以上である場合
・yn=モータ電流
・Δyn=傾斜=電流の変化=(yn-yn-1)
・xn=以前の5つのΔyの平均=[(Δyn+Δyn-1+Δyn-2+Δyn-3+Δyn-4)/5]
・21.1~200=許容範囲=21.1≦Xn<200
・3つの連続値が必要=21.1≦Xn,Xn-1,Xn-2<200
【0140】
3つの連続する平均化されたサンプルが許容範囲内に収まるとの判定が行われると、ロックアウトモジュールは、モータが(トリガーが完全に押圧されていることを示す)最大pwmで動作しているか、それとも最大pwmよりも低いpwmで動作しているかに応じて異なる計算を有する分岐評価(bifurcated assessment)を使用することによって、ロックアウトの存在が示されるかどうかをさらに評価することができる。
【0141】
把持係合中にトリガーが押圧又は解除された場合、モータは静止状態から全速力に移行しなければならない。モータが一瞬にして全速力で回転するように命令された場合には、速度の急上昇に起因して、結果として生じる電流スパイクが大きくなる。代わりに、ランプアップサイクルを通じてモータの速度を制御することによって電流スパイクを最小化することもできる。この制御は、pwm、すなわちパルス幅変調を利用する。pwmは、モータが受け取る電力の割合を決定する。pwm=100の場合、モータは全速力で動作する。pwm=50の場合、モータはその最大速度の50%で動作する。トリガーが動いた後の設定間隔においてpwmをランプアップさせることにより、モータはさらにゆっくりと全速力に移行し、結果として生じるあらゆる電流スパイクは依然として存在するものの大幅に低下する。いくつかの実施形態では、把持領域におけるpwmランプアップのランプアッププロファイルが完了するのに100ms未満しかかからず、従ってモータは、(いくつかの実施形態では約1.5秒で遷移することができる)ロックアウト領域の大部分にわたって最大pwmで動作するようになる。
【0142】
ロックアウトモジュールは、許容範囲内の連続する3つの平均値を識別すると、可能性は低いものの起こり得るいくつかの使用シナリオを考慮するために、モータが最大pwmで動作しているか否かに応じて異なる評価基準を適用するように分岐することができる。例えば、ユーザが、ロックアウト機構のわずかな位置カウント内でアクチュエータを動かすのにちょうど足りるだけトリガーを引き、その後に停止させる場合。トリガーを再係合させると、ユーザは、pwmにシャフトをランプアップさせ、ジョーアセンブリは、同時に物理的にロックアウト機構に係合する。この不安定な領域中に上述したロックアウトモジュールに依拠すると、ロックアウト機構の検出が遅れてしまう。代わりに、いくつかの実施形態では、ロックアウトモジュールが、上記の使用シナリオにおいてロックアウト機構の係合をさらに素早く検出するために、モータが最大pwmで動作している時にロックアウトの存在を識別するための第1の基準と、モータが最大pwmで動作していない時にロックアウトの存在を識別するための第2の基準とをさらに含むことができる。
【0143】
ロックアウトモジュールは、3つの連続する平均値が許容範囲内に収まることを示した後に、pwmが最大であるかどうかを判定し、これは位置インデックスカウントを横切るモニタされた電流によって識別することができる。そうである場合、ロックアウトモジュールは第1のロックアウト評価基準を適用する。pwmが最大でないと判定された場合、ロックアウトモジュールは第2のロックアウト評価基準を適用する。この分岐制御スキームは、動作状態でのモータの予想負荷に基づく補正係数を使用して、モータ電流をベースラインに照らして評価することができる。pwmが最大である場合には把持器具機能が利用されておらず、従ってモータ電流は低くなると予想される。pwmが最大でない場合にはハンドルのモータがランプアップしており、従ってモータ電流は高くなると予想される。
【0144】
最終状態の評価基準は、いずれもシステムの公称電流を考慮したベースライン電流測定に依拠する。制御システムのロックアウトモジュールは、ハンドル、シャフト、リロード及び組織密度の配列に適合することが望ましいので、システムは、ロックアウトモジュールの各用途についてベースライン電流を定め、電流が公称から大きく逸脱しているかどうかを評価することができる。このベースライン電流測定は、システムが最大速度又は最大pwmで動いた最初の時点に行われる。この測定は組織圧縮の前に行われるので、最大速度時には電流が負荷に影響されない信頼できる値に安定する。
【0145】
各評価基準では、この電流ベースラインに位置依存電流補正値(position-dependent current correction value)が加わって電流閾値が確立される。この電流補正値は、その後に把持領域内で行われるクランピング及び組織の圧迫に起因する、位置に伴う公称電流の増加を考慮する。位置に基づく電流補正値は、理想的なロックアウト位置における最大公称電流値をプロットし、これらを接続する線形方程式を計算することにより、所定の細長いシャフト及びロックアウト機構アセンブリについて経験的に決定することができる。その後、これらの所定の電流補正値は、ロックアウトモジュールがロックアウト機構の係合の存在を評価する際に使用できるように記憶することができる。
【0146】
ロックアウトモジュールの動作では、最大pwm評価基準及びランプアップ評価基準の各々について電流閾値が計算される。モニタされた電流は、モータが最大pwmで動作しているか、それともランプアップしているとみなされるかに応じて、対応する計算された電流閾値と比較される。モニタされた電流が対応する計算された電流閾値を上回る場合、ロックアウトモジュールは、ロックアウト機構が係合していることを示す。いくつかの実施形態では、分岐評価基準が、以下の論理構造に従って動作するソフトウェア又はファームウェアプログラムで具現化される。
・yb=電流ベースライン=最大pwmの最初のインスタンスにおけるy
・yths_m=最大速度閾値=yb+[(5*position)-200]
・yths_r=ランプアップ閾値=yb+[(5*position)+50]
・電流は電流閾値を上回らなければならない=yn>yths_m:又はyn>yths_r
・上記が真(TRUE)の場合=ロックアウト係合(LOCKOUT ENGAGED)
【0147】
図53に、ロックアウトモジュールの例示的なフローチャートを示す。図示の実施形態では、制御システムが(いくつかの実施形態では10ms毎に)電流及び位置のモニタリングをリフレッシュすると、ハンドルは、ロックアウトモジュールの平均化を実行するのに十分な数が収集されるまでサンプルを収集する。次に、制御システムは、アクチュエータがロックアウト領域に存在してモータ電流及び作動位置がいずれも増加しているかどうかを判定することを含む様々な初期条件652を評価する。初期条件が満たされた場合、ロックアウトモジュール654が開始される。ロックアウトモジュールは、3つの連続する電流変化平均値が所定の許容ウィンドウ内に収まることを検証した後に、モータが最大pwmで動作しているか、それとも最大pwm未満で動作しているかに応じて分岐評価基準656を適用する。
【0148】
ロックアウトアルゴリズムのさらなる要素は、ハンドルの光リングとの通信である。光リングは、LEDアセンブリによって照明されて、ユーザにハンドルの状態を伝える360°の光を提供する(図42)。光リングは、ハンドルアセンブリの特定の状態への変化に基づいて色を変化させるように構成することができる。ロックアウトモジュールは、ロックアウト状態が検出された時に制御システムに固有の状態をトリガーすることができ、これが光制御スキームによって光リングに中継されることによってユーザに伝えられる。
【0149】
本出願では、いくつかの好ましい実施形態及び実施例を開示したが、当業者であれば、本発明は、具体的に開示した実施形態を超えて他の代替実施形態及び/又は発明の使用及び自明な修正及びその同等物にまで拡大すると理解するであろう。さらに、これら発明の様々な特徴は、単独で使用することも、又は上記で明確に説明した以外のこれらの発明の他の特徴と組み合わせて使用することもできる。従って、本明細書に開示した本発明の範囲は、上述した特定の開示した実施形態によって限定されるべきものではなく、以下の特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきものである。
【符号の説明】
【0150】
10 外科用ステープラ
20 細長いシャフト
22 近位端
24 遠位端
30 ジョーアセンブリ
32 第1のジョー
34 第2のジョー
36 ステープル
40 ハンドルアセンブリ
42 固定ハンドル
44 トリガー
46 カプラ
50 リロード
L 中心長手方向軸
図1
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図19B-C】
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図19H
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図40
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図45B
図45C
図45D
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図45F
図46A
図46B
図47
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図49
図50
図51
図52
図53
【国際調査報告】