IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイションの特許一覧

特表2023-548156肝疾患の評価のためのキット、試薬、及び方法
<>
  • 特表-肝疾患の評価のためのキット、試薬、及び方法 図1
  • 特表-肝疾患の評価のためのキット、試薬、及び方法 図2
  • 特表-肝疾患の評価のためのキット、試薬、及び方法 図3
  • 特表-肝疾患の評価のためのキット、試薬、及び方法 図4
  • 特表-肝疾患の評価のためのキット、試薬、及び方法 図5
  • 特表-肝疾患の評価のためのキット、試薬、及び方法 図6
  • 特表-肝疾患の評価のためのキット、試薬、及び方法 図7
  • 特表-肝疾患の評価のためのキット、試薬、及び方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】肝疾患の評価のためのキット、試薬、及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20231108BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526414
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 US2021056568
(87)【国際公開番号】W WO2022093757
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/107,730
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ケー・グリンスプーン
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045CA26
2G045DA36
(57)【要約】
本願発明は、患者における非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の重症度を経時的に評価するための、及び対象がNAFLDに罹患している可能性を評価するための方法、試薬、並びにキットに関するものである。本方法、試薬、及びキットは、対象からの血漿サンプル等の生体試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のレベルの判定に基づくものである。本方法、試薬、及びキットは、例えば、患者におけるNAFLDの進行及び/又は治療に対する患者の応答を評価するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の重症度を経時的に評価する方法であって、前記方法は、
前記患者からの生体試料中の血管内皮増殖因子A(VEGFA)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFB1)、及び/又はコロニー刺激因子1(CSF1)の第1のタンパク質レベルを第1の時点で測定する工程と、
前記患者からの対応する生体試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の第2のタンパク質レベルを第2以降の時点で測定する工程と、を含み、
ここで、第1の時点と第2の時点との間のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の第1のタンパク質レベルに対する第2のタンパク質レベルの減少は、NAFLDの重症度が前記患者において経時的に後退していることを示し、
第1の時点と第2の時点との間のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の第1のタンパク質レベルに対する第2のタンパク質レベルの増加は、NAFLDの重症度が患者において経時的に進行していることを示し、及び
第1の時点と第2の時点との間のVEGFA、TGFB1、及びCSF1の第1のタンパク質レベルに対する第の2タンパク質レベルに変化がないことは、NAFLDの重症度が前記患者において経時的に安定していることを示す、方法。
【請求項2】
前記方法が、VEGFAのタンパク質レベルを測定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、TGFB1のタンパク質レベルを測定する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、CSF1のタンパク質レベルを測定する工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記NAFLDの重症度が、線維化スコア及び/又はNAFLD活動スコア(NAS)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記NAFLDの重症度が、線維化スコアを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記NAFLDの重症度が、NASを含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、第1の時点と第2の時点との間にNAFLDに対する治療を受けた、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記治療が、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)分子又はそのアナログの投与を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記治療が、トランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NH又はその薬学的に許容される塩の投与を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生体試料が、血液由来試料である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記血液由来試料が、血漿である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
VEGFAのタンパク質量を測定する工程が、VEGFAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと前記生体試料を接触させる工程と、VEGFAと前記抗体又はその抗原結合フラグメントとの複合体の量を測定する工程と、を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
TGFB1のタンパク質量を測定する工程が、TGFB1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと前記生体試料を接触させる工程と、TGFB1と前記抗体又はその抗原結合フラグメントとの複合体の量を測定する工程と、を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
CSF1のタンパク質量を測定する工程が、CSF1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと前記生体試料を接触させる工程と、CSF1と前記抗体又はその抗原結合フラグメントとの複合体の量を測定する工程と、を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、検出可能な部位にコンジュゲートされる、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に罹患している、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
対象が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に罹患している可能性を評価する方法であって、前記方法が、前記対象からの生体試料中の血管内皮増殖因子A(VEGFA)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFB1)、及び/又はコロニー刺激因子1(CSF1)のタンパク質レベルを測定する工程を含み、ここで、対応する対照レベルと比較して、前記試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の高いレベルは、前記対象がNAFLDに罹患している可能性が高いことを示す、方法。
【請求項19】
前記方法が、VEGFAのタンパク質レベルを測定する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、TGFB1のタンパク質レベルを測定する工程を含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、CSF1のタンパク質レベルを測定する工程を含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記NAFLDが、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記NAFLDが、肝線維症を含む、請求項18~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記生体試料が、血液由来試料である、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記血液由来試料が、血漿である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
VEGFAのタンパク質量を測定する工程が、VEGFAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと前記生体試料を接触させる工程と、VEGFAと前記抗体又はその抗原結合フラグメントとの複合体の量を測定する工程と、を含む、請求項18~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
TGFB1のタンパク質量を測定する工程が、TGFB1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと前記生体試料を接触させる工程と、TGFB1と前記抗体又はその抗原結合フラグメントとの複合体の量を測定する工程と、を含む、請求項18~26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
CSF1のタンパク質量を測定する工程が、CSF1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと前記生体試料を接触させる工程と、CSF1と前記抗体又はその抗原結合フラグメントとの複合体の量を測定する工程と、を含む、請求項18~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、検出可能な部位にコンジュゲートされる、請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、NAFLDに罹患している疑いのある対象からの生体試料に対して実施される、請求項18~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及び/又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルの上昇を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に罹患している、請求項18~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を治療するための方法であって、請求項18~32のいずれか1項に記載の方法を用いて、NAFLDに罹患している増加した可能性を有する対象を識別する工程と、及び前記対象にNAFLDに対する治療を施す工程と、を含む、方法。
【請求項34】
前記治療が、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)又はそのアナログの投与を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記治療が、トランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NH又はその薬学的に許容される塩の投与を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
a)患者における非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の重症度を経時的に評価するため、及び/又は(b)対象がNAFLDに罹患している可能性を評価するために使用のキットであって、前記キットが、生体試料中の血管内皮増殖因子A(VEGFA)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFB1)、及び/又はコロニー刺激因子1(CSF1)のタンパク質レベルを測定するための試薬と、及び、VEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベル、及び/又は前記NAFLDの重症度及び/又はNAFLDに罹患している可能性を相関させるための指示と、を備える、キット。
【請求項37】
前記キットが、
(i)VEGFAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、(ii)TGFB1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、(iii)CSF1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ、を備える、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、検出可能な部位にコンジュゲートされる、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
a)生体試料中の血管内皮増殖因子A(VEGFA)と、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFB1)と、及び/又はコロニー刺激因子1(CSF1)のタンパク質レベルとを測定するための試薬と、並びに(b)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に罹患しているか、罹患している疑いがある対象からの生体試料と、を備える、アッセイ混合物。
【請求項40】
前記アッセイ混合物が、(i)VEGFAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、(ii)TGFB1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、(iii)CSF1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ、を備える、請求項39に記載のアッセイ混合物。
【請求項41】
前記アッセイ混合物は、(i)~(iii)の任意の組み合わせを含む、請求項40に記載のアッセイ混合物。
【請求項42】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、検出可能な部分にコンジュゲートされる、請求項40又は41に記載のアッセイ混合物。
【請求項43】
前記生体試料が、血液由来試料である、請求項39~42のいずれか1項に記載のアッセイ混合物。
【請求項44】
前記血液由来試料が、血漿である、請求項43に記載のアッセイ混合物。
【請求項45】
前記生体試料が、NAFLDに罹患している対象からである、請求項39~44のいずれか1項に記載のアッセイ混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2020年10月30日に出願された米国仮出願番号63/107,730の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願は、2021年10月1日に作成され、約25kBのサイズを有する「11718_419_SeqList.txt」と題するコンピュータ可読形式の配列表を含む。コンピュータ可読形式は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、一般に、肝疾患の分野に関するものであり、より特定的には、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び肝繊維症の状態及び進行の評価に関するものである。
【背景技術】
【0004】
NAFLは、肝細胞(ステアトーシス)へのトリグリセリドの過剰の蓄積によって定義され、その結果、炎症、細胞のバルーン化及び損傷、及び線維化によって特徴付けられる。この点が大きく変化すると、NASHにつながる。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、線維化、最終的には肝硬変へと進行する可能性があり、一般集団における末期肝疾患の原因としてますます重要となっており、HIV感染者においても研究が行われている(1-6)。NAFL/NASHは、HIV患者において有病率が高く、一般集団に比べて進行が早い傾向がある。HIVに関連する多くの併存疾患がHIV疾患の重症度の上昇に伴って悪化するのとは対照的に、NAFLDは体重増加したHIV患者においてより一般的に発生する可能性があり、中心脂肪率と関連している。HIV感染者(PLWH)では、体重増加、腹部脂肪の蓄積、及び内臓脂肪の増加が一般的で、新しい抗レトロウイルス薬を使用してでさえ見られる。
【0005】
現在、患者のNAFLD/NASHの発症と進行をモニターするためのシンプルで信頼性の高いアッセイはない。NASHの存在は、肝線維化の発症と進行の主な予測因子であり、肝線維化の進行は、肝臓関連の有害な臨床転帰の主な判定因子である。したがって、NAFLD/NASH及び進行した線維症の識別とモニタリングは、予後及び疾患管理上重要性を有する。
【0006】
NAFLD/NASHは、肝酵素であるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルが上昇した対象に疑われることがあるが、これらのマーカーは他の肝臓疾患でも上昇することがわかっている。肝臓の脂肪を検出するために、超音波、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像(MRI)、超音波エラストグラフィ(USE)、定量的超音波ベースの技術、磁気共鳴エラストグラフィ(MRE)、及び磁気共鳴ベースの脂肪定量技術などの画像技術も使用されるが、通常、肝臓の炎症及び/又は線維化を検出できないことがある。また、これらの技術は専用の撮影装置と放射線科医による画像の解析を必要とする。肝生検は、主に信頼できる非侵襲的な方法がないため、NASHの診断と病期分類のためのゴールドスタンダードであり続けている。しかし、肝生検は高価であり、主観的であり、及び患者にとってリスクを伴うものである。
【0007】
そのため、患者さんのNAFLD/NASHや肝線維症の状態や進行を評価するための、シンプルで信頼性の高い非侵襲的アッセイの開発が求められている。
【0008】
本記載には、いくつかの文献を参照し、それらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国仮出願番号63/107,730
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、一般に、肝疾患の分野に関するものであり、より特定的には、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び肝繊維症の状態及び進行の評価に関するものである。
【0011】
様々な態様及び実施形態において、本開示は、以下の項目を提供する:
1.患者における非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の重症度を経時的に評価する方法であって、前記方法は、
前記患者からの生体試料中の血管内皮増殖因子A(VEGFA)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFB1)、及び/又はコロニー刺激因子1(CSF1)の第1のタンパク質レベルを第1の時点で測定する工程と、
前記患者からの対応する生体試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の第2のタンパク質レベルを第2以降の時点で測定する工程と、を含み、
ここで、前記第1の時点と第2の時点との間のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の第1のタンパク質レベルに対する第2のタンパク質レベルの減少は、NAFLDの重症度が前記患者において経時的に後退していることを示し、
前記第1の時点と第2の時点との間のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の第1のタンパク質レベルに対する第2のタンパク質レベルの増加は、NAFLDの重症度が患者において経時的に進行していることを示し、及び
前記第1の時点と第2の時点との間のVEGFA、TGFB1、及びCSF1の第1のタンパク質レベルに対する第2のタンパク質レベルに変化がないことは、NAFLDの重症度が前記患者において経時的に安定していることを示す、方法。
2.前記方法が、VEGFAのタンパク質レベルを測定する工程を含む、項目1に記載の方法。
3.前記方法が、TGFB1のタンパク質レベルを測定する工程を含む、項目1又は2に記載の方法。
4.前記方法が、CSF1のタンパク質レベルを測定する工程を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
5.前記NAFLDの重症度が、線維化スコア及び/又はNAFLD活動スコア(NAS)を含む、項目1~4のいずれか1項に記載の方法。
6.前記NAFLDの重症度が、前記線維化スコアを含む、項目5に記載の方法。
7.前記NAFLDの重症度が、NASを含む、項目5又は6に記載の方法。
8.前記患者が、前記第1の時点と前記第2の時点との間にNAFLDに対する治療を受けた、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
9.前記治療が、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)分子又はそのアナログの投与を含む、項目8に記載の方法。
10.前記治療が、トランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NH又はその薬学的に許容される塩の投与を含む、項目9に記載の方法。
11.前記生体試料が、血液由来試料である、項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
12.前記血液由来試料が、血漿である、項目11に記載の方法。
13.VEGFAのタンパク質レベルを測定する工程が、VEGFAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと前記生体試料を接触させる工程と、VEGFAと前記抗体又はその抗原結合フラグメントとの複合体の量を測定する工程と、を含む、項目1~12のいずれか1項に記載の方法。
14.TGFB1のタンパク質レベルを測定する工程が、TGFB1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと前記生体試料を接触させる工程と、TGFB1と前記抗体又はその抗原結合フラグメントとの複合体の量を測定する工程と、を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
15.CSF1のタンパク質レベルを測定する工程が、CSF1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと前記生体試料を接触させる工程と、CSF1と前記抗体又はその抗原結合フラグメントとの複合体の量を測定する工程と、を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
16.前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、検出可能な部位にコンジュゲートされる、項目13~15のいずれか1項に記載の方法。
17.前記患者が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に罹患している、項目1~16のいずれか1項に記載の方法。
18.対象が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に罹患している可能性を評価する方法であって、前記方法が、前記対象からの生体試料中の血管内皮増殖因子A(VEGFA)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFB1)、及び/又はコロニー刺激因子1(CSF1)のタンパク質レベルを測定する工程を含み、ここで、対応する対照レベルと比較して、前記試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の高いレベルは、前記対象がNAFLDに罹患している可能性が高いことを示す、方法。
19.前記方法が、VEGFAのタンパク質レベルを測定する工程を含む、請求項18に記載の方法。
20.前記方法が、TGFB1のタンパク質レベルを測定する工程を含む、項目18又は19に記載の方法。
21.前記方法が、CSF1のタンパク質レベルを測定する工程を含む、項目18~20のいずれか1項に記載の方法。
22.前記NAFLDが、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、項目18~21のいずれか1項に記載の方法。
23.前記NAFLDが、肝線維症を含む、項目18~22のいずれか1項に記載の方法。
24.前記生体試料が、血液由来試料である、項目18~23のいずれか1項に記載の方法。
25.前記血液由来試料が、血漿である、項目23に記載の方法。
26.VEGFAのタンパク質レベルを測定する工程が、VEGFAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと前記生体試料を接触させる工程と、VEGFAと前記抗体又はその抗原結合フラグメントとの複合体の量を測定する工程と、を含む、請求項18~25のいずれか1項に記載の方法。
27.TGFB1のタンパク質レベルを測定する工程が、TGFB1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと前記生体試料を接触させる工程と、TGFB1と前記抗体又はその抗原結合フラグメントとの複合体の量を測定する工程と、を含む、項目18~26までのいずれか1項に記載の方法。
28.CSF1のタンパク質レベルを測定する工程が、CSF1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと前記生体試料を接触させる工程と、CSF1と前記抗体又はその抗原結合フラグメントとの複合体の量を測定する工程と、を含む、請求項18~27のいずれか1項に記載の方法。
29.前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、検出可能な部位にコンジュゲートされる、項目26~28のいずれか1項に記載の方法。
30.前記方法が、NAFLDに罹患している疑いのある対象からの生体試料に対して実施される、項目18~29のいずれか1項に記載の方法。
31.前記対象が、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及び/又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルの上昇を有する、項目30に記載の方法。
32.前記対象が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に罹患している、項目18~31のいずれか1項に記載の方法。
33.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を治療するための方法であって、項目18~32のいずれか1項に記載の方法を用いて、NAFLDに罹患している増加した可能性を有する対象を識別する工程と、及び前記対象にNAFLDに対する治療を施す工程と、を含む、方法。
34.前記治療が、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)又はそのアナログの投与を含む、項目33に記載の方法。
35.前記治療が、トランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NH又はその薬学的に許容される塩の投与を含む、項目34に記載の方法。
36.(a)患者における非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の重症度を経時的に評価するため、及び/又は(b)対象がNAFLDに罹患している可能性を評価するために使用のキットであって、前記キットが、生体試料中の血管内皮増殖因子A(VEGFA)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFB1)、及び/又はコロニー刺激因子1(CSF1)のタンパク質レベルを測定するための試薬と、及び、VEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベル、及び/又は前記NAFLDの重症度及び/又はNAFLDに罹患している可能性を相関させるための指示と、を備える、キット。
37.前記キットが、(i)VEGFAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、(ii)TGFB1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、(iii)CSF1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ、を備える、項目36に記載のキット。
38.前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、検出可能な部位にコンジュゲートされる、項目37に記載のキット。
39.(a)生体試料中の血管内皮増殖因子A(VEGFA)と、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFB1)と、及び/又はコロニー刺激因子1(CSF1)のタンパク質レベルとを測定するための試薬と、並びに(b)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に罹患しているか、罹患している疑いがある対象からの生体試料と、を備える、アッセイ混合物。
40.前記アッセイ混合物が、(i)VEGFAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、(ii)TGFB1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、(iii)CSF1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ、を備える、項目39に記載のアッセイ混合物。
41.前記アッセイ混合物は、(i)~(iii)の任意の組み合わせを含む、項目40に記載のアッセイ混合物。
42.前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、検出可能な部分にコンジュゲートされる、項目40又は41に記載のアッセイ混合物。
43.前記生体試料が、血液由来試料である、項目39~42のいずれか1項に記載のアッセイ混合物。
44.前記血液由来試料が、血漿である、項目43に記載のアッセイ混合物。
45.前記生体試料が、NAFLDに罹患している対象からである、項目39~44のいずれか1項に記載のアッセイ混合物。
【0012】
本開示の他の目的、利点、及び特徴は、添付の図面を参照して実施例としてのみ与えられる、その特定の実施形態の以下の非制限的な説明を読めばより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】添付図面において、図1は、本明細書に記載された研究で行われた分析の概略図である。その結果、総13種類の血漿タンパク質が検査され、差次的に変調された肝遺伝子パスウェイ内に含まれる最先端遺伝子に対応することがわかった。分析は、治療効果の方向性が肝遺伝子発現の変化の方向性と一致した9つのタンパク質のサブセットに焦点を当てた。略語:CASP8、caspase8(カスパーゼ8)、CCL20、C-C motif chemokine ligand20(C-Cモチーフ ケモカイン リガンド20)、CRTAM、cytotoxic and regulatory T-cell molecule(細胞傷害性及び調節性T細胞分子)、CSF1、macrophage colony stimulating factor1(マクロファージコロニー刺激因子1)、CXCL12、C-X-C motif chemokine ligand12(C-X-Cモチーフ ケモカイン リガンド12)、NCR1、natural cytotoxicity triggering receptor 1(ナチュラルサイトトキシックトリガー受容体1)、TGFB1、transforming growth factor beta 1(トランスフォーミング増殖因子β1);TNFRSF21、tumor necrosis factor receptor superfamily member21(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー21);VEGFA、vascular endothelial growth factor A(血管内皮増殖因子A)。
図2図2A~Cは、血漿中のVEGFA(図2A)、TGFB1(図2B)、及びCSF1(図2C)の治療状態による異なる変化を示すグラフである。テサモレリンは、血漿中のVEGFA(log-倍率変化、平均±標準偏差,-0.20±0.35対.0.05±0.34、P=0.02)、TGFB1(log-倍率変化-0.35±0.56対.-0.05±0.43、P=0.05)及びCSF1(log-倍率変化-0.17±0.21対.0.02±0.20、P=0.004)がプラシーボと比較して著しく減少することがわかった。棒グラフは平均値、エラーバーは平均値の標準誤差をそれぞれ示す。略語:CSF1、macrophage colony stimulating factor 1(マクロファージコロニー刺激因子1)、TGFB1、transforming growth factor beta 1(トランスフォーミング増殖因子β1);VEGFA、vascular endothelial growth factor A(血管内皮増殖因子A)。
図3図3A及びBは、テサモレリン治療参加者における血漿VEGFA(図3A)及びCSF1(図3B)の変化とNASスコアの変化との関係を示すグラフである。テサモレリン投与群では、血漿中のVEGFA(r=0.62、P=0.006)及びCSF1(r=0.50、P=0.04)の減少がNASスコアの低下と関連した。95%信頼区間を含む直線回帰線を示す。略語:CSF1、macrophage colony stimulating factor1(マクロファージコロニー刺激因子1)、NAS、NAFLD活動スコア;VEGFA、vascular endothelial growth factor A(血管内皮増殖因子A)。
図4図4A及び4Bは、血漿TGFB1及びCSF1の変化と、遺伝子レベルの線維化スコアの変化との関係を示すグラフである。テサモレリン治療参加者のうち、血漿TGFB1(図4A)(r=0.61、P=0.009)及びCSF1(図4B)(r=0.64、P=0.006)の低下は、遺伝子レベルの線維化スコアの改善と関連した。95%信頼区間を含む直線回帰線を示す。略語:CSF1、macrophage colony stimulating factor 1(マクロファージコロニー刺激因子1)、TGFB1、transforming growth factor beta1(トランスフォーミング増殖因子β1)。
図5図5は、ヒトVEGFAのアミノ酸配列(配列ID番号:5)を示す。アミノ酸1~26(配列ID番号:6)はシグナルペプチドを定義し、アミノ酸27~232(配列ID番号:7)は成熟ポリペプチドを定義する。
図6図6は、ヒトTGFB1のアミノ酸配列(配列ID番号:8)を示す。アミノ酸1~29(配列ID番号:9)はシグナルペプチドを定義し、アミノ酸30~278(配列ID番号:10)は潜伏期関連ペプチドを定義し、アミノ酸279~390(配列ID番号:11)は成熟ポリペプチドを定義する。
図7図7は、ヒトCSF1(配列ID番号:12)のアミノ酸配列である。アミノ酸1~32(配列ID番号:13)はシグナルペプチドを定義し、残基33~450は処理された成熟型(配列ID番号:14)を定義する。
図8図8は、テサモレリン(トランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NH、配列ID番号:1)の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
技術を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「a」及び「an」及び「the」という用語、並びに同様の指示対象の使用は、本明細書において別段示されないか、又は文脈に明らか矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するように解釈されるものである。
【0015】
「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有する」という用語は、別段注釈が付かない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)として解釈されるものである。
【0016】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。
【0017】
本明細書に提供される任意の及びすべての実施例、又は例示的な言語(「例えば」、「など」)の使用は、単に特許請求される技術の実施形態をより良好に例示することを意図しており、別段特許請求されない限り、範囲の限定を提起するものではない。
【0018】
本明細書におけるいかなる言語も、任意の特許請求されていない要素を特許請求される技術の実施形態の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0019】
本明細書では、「約」という用語は、その通常の意味を有する。「約」という用語は、値が、値を判定するために用いられるデバイス若しくは方法の誤差についての固有の変動を含むか、又は列挙された値に近い値、例えば、列挙された値(又は値の範囲)の10%以内の値を包含することを示すために使用される。
【0020】
本明細書における値の範囲の言及は、本明細書中に別段の指示がない限り、単に、範囲に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略方法として機能することを意図しており、各個別の値は本明細書に個別に言及されているかのように、本明細書に組み入れられる。範囲内の値のすべてのサブセットもまた、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0021】
開示の特徴又は態様が、マーカッシュ群又は代替物の一覧の観点から説明される場合、当業者は、開示がまた、それによってマーカッシュ群又は代替物の一覧の任意の個々の構成要素又は構成要素の部分群の観点からも説明されることを認識するだろう。
【0022】
別段具体的に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味(例えば、幹細胞生物学、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学における)と同じ意味を有すると解釈されるべきである。
【0023】
別段示されない限り、本開示において利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技法は、当業者に周知の標準的な手順である。そのような技術は、次のようなソースの文献で、記載され、説明される:J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984),J.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989),T.A.Brown(editor),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991),D.M.Glover and B.D.Hames(editors),DNA Cloning:A Practical Approach, Volumes 1-4,IRL Press(1995 and 1996),and F.M.Ausubel et al.editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience (1988,including all updates until present),Ed Harlow and David Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988),and J.E.Coligan et al.(editors)Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons(現在までのすべてのアップデートを含む)。
【0024】
本明細書に記載の研究において、本発明者らは、テサモレリンを投与したNAFLDに罹患している患者の血漿中に、血管内皮増殖因子A(VEGFA)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFB1)、及びコロニー刺激因子1(CSF1)のレベルの低下が検出されることを示してきた。VEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1レベルの減少は、NAFLDの病理学的特徴の改善、例えば患者のNAFLD活動スコア(NAS)及び/又は遺伝子レベルの線維化スコアの減少と相関があることが示された。
【0025】
NASクリニカルリサーチネットワーク(NAS CRN)のスコアリングシステムに従って算出されたNAFLD活動スコア(NAS)は、脂肪症(0~3程度)、肝細胞バルーン(0~2程度)、及び小葉の炎症(0~3程度)の程度の合計を含む(Kleiner DE,et al.Hepatology 2005;41:1313-21)。
【0026】
一態様において、本開示は、対象がNAFLDに罹患している可能性を評価する方法を提供し、前記方法は、前記対象の生体試料中の血管内皮増殖因子A(VEGFA)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGFB1)、及び/又はコロニー刺激因子1(CSF1)のタンパク質レベルの測定する工程を含み、ここで、対応する対照レベルと比較して、前記試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の高いレベルは、前記対象がNAFLDに罹患している可能性が高いことを示す、前記測定する工程、を含む。
【0027】
「対照レベル」又は「参照レベル」又は「標準レベル」は、本明細書において互換的に使用され、広義には、疾患(例えば、NAFLD)に罹患していない対象からであってもよい、1つ以上の同等の「対照」試料で測定された別のベースラインレベルを広く言及する。対応する対照レベルは、複数の参照対象又は対照対象で測定されたレベルに基づいて算出された標準/平均値又は中央値に対応するレベル(例えば、あらかじめ判定又は確立された標準レベル)であってよい。対照レベルは、当該技術分野で認知されているあらかじめ判定された「カットオフ」値であってもよいし、1人又は1群の対照対象からの試料で測定されたレベルに基づいて確立されてもよい。例えば、「閾値参照レベル」は、NAFLDに罹患している可能性又はそのリスクが高い患者を、NAFLDに罹患していない可能性又はそのリスクが高くない患者と統計的に有意に区別することができるVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の最小レベル(カットオフ)に相当するレベルでもよく、例えば、NAFLD患者からの試料及び健康な対象(すなわち、NAFLDに罹患していない)からの試料を用いて判定できる場合がある。対応する基準/対照レベルは、年齢、性別、人種、又は他のパラメータに対して調整又は正規化してもよい。したがって、「対照レベル」は、すべての患者に等しく適用される単一の数値/値とすることができ、又は、対照レベルは、患者の特定の部分集団に応じて変化させることができる。したがって、例えば、年配の男性は若い男性とは異なる対照レベルを有する可能性があり、女性は男性とは異なる対照レベルを持つ可能性がある。所定の標準レベルは、例えば、被検集団を低リスク群、中リスク群、及び高リスク群などの群に等分(又は不等)するか、四分位又は五分位に分け、最低の四分位又は五分位はリスクが最も低い(すなわち、VEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のレベルが最も低い)個人であり、最も高い四分位又は五分位はリスクが最も高い(すなわち、VEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1レベルが最も高い)個人であるように配置できる。また、本開示による対照レベルは、所定のレベル又は標準に加えて、実験試料と並行して試験された他の試料(例えば、健康な/正常な対象から)で測定されたレベルでもよいことも理解されるだろう。参照レベル又は対照レベルは、正規化されたレベル、すなわち、ハウスキーピング遺伝子の発現に基づく正規化の対象となる参照値又は対照値に対応しても良い。
【0028】
実施形態において、対照レベルは、NAFLDに罹患していないことが知られている対象の生体試料において判定されたVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の対応するレベル、又はVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の確立した参照若しくは標準レベルである。
【0029】
本開示はまた、患者における非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の重症度を経時的に評価するための方法を提供し、前記方法は:
第1の時点で、前記患者からの生体試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベルを測定する工程と、
前記患者からの対応する生体試料中のVEGFA、TGFB1及び/又はCSF1のタンパク質レベルを第2以降の時点において測定する工程と、を含み、
ここで、前記第1の時点と第2の時点との間のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベルの減少は、NAFLDの重症度が前記患者において経時的に後退していることを示し、
前記第1の時点と第2の時点との間のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベルの増加は、NAFLDの重症度が前記患者において経時的に進行していることを示し、及び
前記第1の時点と第2の時点との間でVEGFA、TGFB1及びCSF1のタンパク質レベルに変化がないことは、NAFLDの重症度が患者において経時的に安定していることを示す、方法。
【0030】
VEGFA(UniProtKBアクセッション番号P15692)は、シグナルペプチドを定義するアミノ酸1-26及び成熟ポリペプチドを定義するアミノ酸27-232を有する232アミノ酸のタンパク質(前駆体、アイソフォーム1)である。VEGFA(アイソフォーム1)のアミノ酸配列は、図5に示される。
【0031】
TGFB1(UniProtKBアクセッション番号P01137)は、シグナルペプチドを定義するアミノ酸1-29を有する390アミノ酸(前駆体)のタンパク質であり、タンパク質分解処理されて112アミノ酸(残基279-390)の成熟ペプチドを生成する。TGFB1のアミノ酸配列は、図6に示される。
【0032】
CSF1(UniProtKBアクセッション番号P09603)は、最初は膜に結合した前駆体として生成されるが、刺激により処理され分泌される。前駆体は、シグナルペプチドを定義するアミノ酸1-32及び処理された成熟型を定義する残基33-450を有する554アミノ酸(アイソフォーム1)を含む。CSF1のアミノ酸配列(アイソフォーム1)は、図7に示される。
【0033】
NAFLDの重症度を経時的に評価する上記の方法は、複数の時点で実施することができる。すなわち、患者からの対応する生体試料(複数可)におけるVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベルは、第3、第4、第5などの時点で実施されてもよい。2つの時点の間の間隔は、例えば、1日、2日、3日、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年などであり、すべての時点について同じであってもよいし、変化してもよい(例えば、第1の時点と第2の時点の間は1週間、第2の時点と第3の時点の間は1ヶ月など)。
【0034】
この方法によって、患者の状態が経時的に改善、悪化、又は安定しているかどうかを判定することができる。一実施形態において、TGFB1のタンパク質レベルは、第1の時点と第2の時点との間で減少し、その減少は、患者におけるNASスコア及び/又は肝線維化の減少を示すものである。一実施形態において、TGFB1のタンパク質レベルは、第1の時点と第2の時点との間で増加し、その増加は、患者におけるNASスコア及び/又は肝線維化の増加を示すものである。一実施形態において、CSF1のタンパク質レベルは、第1の時点と第2の時点との間で減少し、その減少は、患者におけるNASスコア及び/又は肝線維化の減少を示すものである。一実施形態において、CSF1のタンパク質レベルは、第1の時点と第2の時点との間で増加し、その増加は、患者におけるNASスコア及び/又は肝線維化の増加を示すものである。一実施形態において、VEGFAのタンパク質レベルは、第1の時点と第2の時点との間で減少し、その減少は、NASスコアの減少を示すものである。一実施形態において、VEGFAのタンパク質レベルは、第1の時点と第2の時点との間で増加し、その増加は、NASスコアの増加を示すものである。一実施形態において、VEGFA及びCSF1のタンパク質レベルは、第1の時点と第2の時点との間で減少し、その減少は、患者におけるNASスコアの減少を示すものである。一実施形態において、VEGFA及びCSF1のタンパク質レベルは、第1の時点と第2の時点との間で増加し、その増加は、患者におけるNASスコアの増加を示すものである。一実施形態において、TGFB1及びCSF1のタンパク質レベルは、第1の時点と第2の時点との間で減少し、その減少は、患者における肝線維化の減少を示すものである。一実施形態において、TGFB1及びCSF1のタンパク質レベルは、第1の時点と第2の時点との間で増加し、その増加は、患者における肝線維化の増加を示すものである。
【0035】
NAFLDの重症度を経時的に評価する上記の方法は、NAFLD罹患している患者がNAFLDに対する治療/療法に応答するか否かを判定するため、すなわち、治療/療法が有効で患者の状態を改善するか否かを判定するために有用であり得る。したがって、別の実施形態では、患者は、第1の時点と第2の時点の間で治療/療法を施されている。別の実施形態では、患者は、第1の時点と第2の時点の間で、減量プログラム、すなわち、健康的な(低カロリーの)食事及び/又は身体運動を受ける。
【0036】
したがって、別の態様において、本開示は、治療がNAFLD罹患している患者の状態を改善するかどうかを評価するための方法に関し、前記方法は、
第1の時点で、前記患者からの生体試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベルを測定する工程と、
NAFLDに対する治療薬を前記患者に一定期間投与する工程と、及び前記期間経過後の第2の時点において、前記患者からの対応する生体試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベルを測定する工程と、を含み、
ここで、前記第1の時点と第2の時点との間のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベルの減少は、前記治療が前記患者の状態を改善したことを示し、
前記第1の時点と第2の時点との間で、VEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベルに変化無し又は増加は、前記治療が前記患者の状態を改善しなかったことを示す。
【0037】
一実施形態において、患者の状態の改善は、NASスコアの減少を含む。さらなる実施形態において、患者の状態の改善は、NASスコアの減少を含み、前記方法は、VEGFA及び/又はCSF1のレベルを測定する工程を含む。
【0038】
一実施形態において、患者の状態の改善は、肝線維症の軽減を含む。さらなる実施形態において、患者の状態の改善は、肝線維症の軽減を含み、前記方法は、TGFB1及び/又はCSF1のレベルを測定する工程を含む。
【0039】
一実施形態において、患者の状態の改善は、NASスコアの減少及び肝線維症の軽減を含む。さらなる実施形態において、患者の状態の改善は、NASスコアの減少及び肝線維症の軽減を含み、前記方法は、CSF1のレベルを測定する工程を含む。
【0040】
別の態様において、本開示は、候補療法がNAFLDの治療に有用であり得るかどうかを判定するための方法に関し、前記方法は、
NAFLD罹患している対象の生体試料において、VEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の第1のタンパク質レベルを測定する工程と、
前記期間後、前記対象からの生体試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の第2のタンパク質レベルを測定する工程と、を含み、
ここで、第1のタンパク質レベルに対する第2のタンパク質の低いレベルは、前記候補療法がNAFLDの前記治療に有用である可能性を示す。
【0041】
一実施形態では、そのような研究は、通常、NAFLDに罹患している第2の対象にプラセボを追加投与することを伴う臨床試験の面において実施される。そのような場合、一実施形態において、候補療法がNAFLDの治療に有用であり得るかどうかを判定するための方法は、
NAFLDに罹患している第1及び第2の対象からの生体試料において、VEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の第1のタンパク質レベルを測定する工程と、
候補療法を第1の対象に、プラセボを第2の対象に、一定期間投与する工程と、及び
前記期間後、第1の対象及び第2の対象からの生体試料において、VEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の第2のタンパク質レベルを測定する工程と、を含む。
【0042】
同様に、そのような実施形態では、第1の対象からの生体試料におけるVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の第1のタンパク質レベルに対する第2のタンパク質レベルの減少は、候補療法がNAFLDの治療に有用であり得ることを示す。第2の対象における第1及び第2のタンパク質レベルの判定は、そのような試験の面における追加の制御を提供する。
【0043】
一実施形態において、上記方法は、VEGFAのタンパク質レベルを測定する工程を含む。一実施形態において、上記方法は、TGFB1のタンパク質レベルを測定する工程を含む。一実施形態において、上記方法は、CSF1のタンパク質レベルを測定する工程を含む。一実施形態において、上記方法は、VEGFA及びTGFB1のタンパク質レベルを測定する工程を含む。一実施形態において、上記方法は、VEGFA及びCSF1のタンパク質レベルを測定する工程を含む。一実施形態において、上記方法は、TGFB1及びCSF1のタンパク質レベルを測定する工程を含む。一実施形態において、上記方法は、VEGFA、TGFB1、及びCSF1のタンパク質レベルを測定する工程を含む。
【0044】
別の態様において、本開示は、非アルコール性NAFLDを治療するための方法に関し、前記方法は、本明細書に記載の方法を用いて識別されるNAFLDに罹患している可能性が増加した対象にNAFLDに対する治療法を投与する工程を含む。
【0045】
別の態様において、本開示は、非アルコール性NAFLDを治療するための方法に関し、前記方法は、本明細書に記載の方法を用いてNAFLDに罹患している可能性が増加した対象を識別する工程と、前記対象にNAFLDに対する治療法を投与する工程と、を含む。
【0046】
別の態様において、本開示は、対象におけるNAFLDに対する治療の使用に関し、前記対象は、本明細書に記載のNAFLDに罹患している可能性が増加した対象を識別する方法によって識別される。
【0047】
別の態様において、本開示は、対象におけるNAFLDに対する治療に使用するための治療/療法に関し、ここで、前記対象は、本明細書に記載のNAFLDに罹患している可能性が増加した対象を識別する方法によって識別される。
【0048】
本明細書に記載された方法で患者に投与される、又は患者に実施される治療/療法は、実験的又は候補の治療/療法、例えば、臨床研究で試験された治療/療法、又はNAFLDに対して承認又は確立された治療/療法であってもよい。
【0049】
一実施形態において、治療/療法は、コレステロール低下薬、例えば、スタチン(例えば、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン)、胆汁酸隔離薬(例えば、コレスチラミン、コレセベラム、コレスチポール)、コレステロール吸収ブロッカー(例えば、エゼチミブ)、PCSK9阻害剤(例えば、アリロクマブやエボロクマブなどの抗PCSK9抗体)、ナイアシン、フィブラート(例えば、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル)、アデノシン三リン酸-クエン酸リアーゼ(ACL)阻害剤(例えば、ベンペド酸)、又はオメガ3製品(例えば、イコサペントエチル、オメガ3-酸エチルエステル)の投与又は使用を含む。別の実施形態では、治療/療法は、ライフスタイルの変化、例えば、減量プログラム、すなわち、健康的な(低カロリーの)食事や身体運動を含む。
【0050】
一実施形態では、治療/療法は、GHRH分子の投与又は使用を含む。本開示の文脈で使用される用語「GHRH分子」は、限定されないが、ヒトネイティブGHRH(1-44)及びそのフラグメント(例えば、GHRH(1-40)、GHRH(1-29)、1-29と1-44配列の間の範囲のフラグメント)、及び任意の他のフラグメント;他の種由来のGHRH及びそのフラグメント;アミノ酸(複数可)の置換(複数可)、付加(複数可)、及び/又は欠失(複数可)を含むGHRHの変異体;例えば、N末端、C末端、又は側鎖にGHRHアミノ酸配列に結合した有機基や部位を有するGHRHの誘導体又はアナログ、又はフラグメント若しくは変異体;及びGHRH(ヒト又は他の種由来)の薬学的に許容される塩、及びネイティブGHRH又はそのフラグメント、変異体、アナログ、及び誘導体の薬学的に許容される塩;を含む。本開示のGHRH分子はまた、当技術分野で現在知られているGHRH分子を包含し、限定されないが、アルブミン結合GHRH(米国特許第7,268,113号);ペグ化GHRHペプチド(米国特許第7,256,258号及び第6,528,485号);豚GHRH(1-40)(米国特許第6,551,996号);イヌGHRH(米国特許出願第2005/0064554号);アミノ酸長1~29~1~44のGHRH変異体(米国特許第5,846,936号,第5,696,089号,第5,756,458号、及び第5,416,073、及び米国特許出願公開第2006/0128615号及び第2004/0192593号);及びPro-GHRHペプチド及びその変異体(米国特許第5,137,872号)を含む。
【0051】
GHRHアナログとしては、米国特許第5,681,379号及び第5,939,386号に記載のものを含み、それらの合成方法もまた記載される。より詳細には、これらのGHRHアナログは、以下の式Aで定義される:
X-GHRHペプチド(A)
ここで、GHRHペプチドは、下記式B(配列ID番号:2)のペプチドである:
A1-A2-Asp-Ala-Ile-Phe-Thr-A8-Ser-Tyr-Arg-Lys-A13-Leu-A15-Gln-Leu-A18-Ala-Arg-Lys-Leu-Leu-A24-A25-Ile-A27-A28-Arg-A30-A31-A32-A33-A34-A35-A36-A37-A38-A39-A40-A41-A42-A43-A44-R0(B)
式中、
A1はTyr又はHisである;
A2はVal又はAlaである;
A8はAsn又はSerである;
A13はVal又はIleである;
A15はAla又はGlyである;
A18はSer又はTyrである;
A24はGln又はHisである;
A25はAsp又はGluである;
A27はMet、Ile、又はNleである;
A28はSer又はAsnである;
A30は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはGlnである;
A31は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはGlnである;
A32は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはGlyである;
A33は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはGluである;
A34は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはSerである;
A35は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはAsnである;
A36は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはGlnである;
A37は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはGluである;
A38は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはArgである;
A39は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはGlyである;
A40は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはAlaである;
A41は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはArgである;
A42は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはAla;である;
A43は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはArgである;
A44は存在しないか、又は任意のアミノ酸であり、好ましくはLeuである;及び
R0はNH又はNH-(CH)n-CONHであり、nは1から12である。
【0052】
グループXは、ペプチドのN末端にアミド結合を介して固定された疎水性テールであり、疎水性テールは、5~7個の原子のバックボーンを規定する。バックボーンは、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、又はC6-12アリールによって置換され得、バックボーンは、バックボーンの少なくとも2つの原子に接続された少なくとも1つの剛性化部位を含む。剛直化部位は、二重結合、三重結合、飽和、又は不飽和のC3-9シクロアルキル、又はC6-12アリールである。
【0053】
一実施形態において、グループXは、以下の通りである:
【化1】
【0054】
実施形態において、式Bにおいて、A30~A44は:(a)不在、(b)ネイティブGHRHペプチド(配列ID番号:3)の30~44位に対応するアミノ酸配列、又は(c)そのC末端から1~14アミノ酸の欠失を有する(b)のアミノ酸配列、である。
【0055】
一実施形態において、GHRHペプチドは、配列ID番号:4のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0056】
実施形態において、GHRH分子は、(ヘキセノイルトランス-3)hGHRH(1-44)NH(配列ID番号:1)又はその薬学的に許容される塩である。トランス-3-ヘキセノイル]hGHRH(1-44)アミド(テサモレリン、(ヘキセノイルトランス-3)hGHRH(1-44)NHとも呼ばれる)は、hGHRHの44アミノ酸配列にC側鎖であるヘキセノイル部分がアミノ末端チロシン残基に固定されている合成ヒトGHRH(hGHRH)アナログである。[トランス-3-ヘキセノイル]hGHRH(1-44)アミドの構造は、図8に示す通りである。
【0057】
「薬学的に許容される塩」とは、投与される対象に対して薬学的に許容され、実質的に無毒であるGHRH分子(例えば、トランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NH)の塩のことを指す。より具体的には、これらの塩はGHRH分子(例えば、トランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NH)の生物学的有効性と特性を保持し、適切な非毒性の有機又は無機の酸又は塩基から形成される。
【0058】
例えば、これらの塩には、GHRH分子(例えば、トランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NH)の酸付加塩が含まれ、このような塩を形成するのに十分な塩基性を有する。このような酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩又はエタンスルホン酸塩などの低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩などのアリールスルホン酸塩、 若しくはトルエンスルホン酸塩(トシル酸塩ともいう)、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンホレート、カンファースルホン酸塩、シンナメート、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコネート、ドデシルサルフェート、エタンスルホレート、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミスルフェート、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸水素塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イタコネート、乳酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバレート、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、チオシアネート、ウンデカノプレート、及び類似物を含む。
【0059】
さらに、塩基性医薬化合物から医薬的に有用な塩を形成するのに一般的に適していると考えられる酸については、例えば、P.Stahl et al.,Camille G.(eds.)Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties,Selection,and Use.(2002)Zurich:Wiley-VCH;S.Berge et al,Journal of Pharmaceutical Sciences(1977)66(1)1-19;PGould,International J.of Pharmaceutics(1986)33 201-217;Anderson et al,The Practice of Medicinal Chemistry(1996),Academic Press,New York;and in The Orange Book(Food & Drug Administration,Washington,D.C.on their website)によって議論されている。
【0060】
このような塩は、当業者であれば標準的な技術を使って極めて容易に形成することができる。実際、医薬化合物(すなわち、薬物)を塩に化学修飾することは、医薬化学者によく知られた技術である(例えば、H.Ansel et.al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(6th Ed.1995)at pp.196 and 1456-1457を参照)。トランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NHの塩は、例えば、トランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NHを等量などの酸又は塩基と、塩が沈殿するような媒体中又は水性媒体中で反応させてから凍結乾燥することによって形成することができる。
【0061】
一実施形態において、GHRH分子の薬学的に許容される塩、好ましくはトランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NHは、酢酸塩である。
【0062】
一実施形態において、GHRH分子、好ましくはトランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NH、又はその薬学的に許容される塩は、約1mg/ml~約10mg/mlの用量で医薬組成物中に存在する。さらなる実施形態において、GHRH分子、好ましくはトランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NH、又はその薬学的に許容される塩は、約1mg/ml~約10mg/ml、好ましくは、約1mg/ml~約8mg/ml又は約4mg/ml~約8mg/ml、例えば、約1mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約4mg/ml、約5mg/ml、約6mg/ml、約7mg/ml、又は約8mg/mlの用量で医薬組成物中に存在する。
【0063】
一実施形態において、GHRH分子、好ましくはトランス-3-ヘキセノイル-GHRH(1-44)-NH、又はその薬学的に許容される塩が、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に存在する。
【0064】
本明細書で使用する「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、当該技術分野における通常の意味を有し、有効成分(薬物)自体ではない任意の成分である。賦形剤には、例えば結合剤、潤滑剤、希釈剤、増量剤(充填剤)、増粘剤、崩壊剤、可塑剤、コーティング剤、バリア層製剤、潤滑剤、安定化剤、放出遅延剤、及びその他の成分を含む。本明細書で使用する「薬学的に許容される賦形剤」とは、有効成分の生物学的活性の有効性を妨げず、対象に対して毒性がない賦形剤、すなわち、賦形剤の一種であり、及び/又は対象に対して毒性がない量で使用するための任意の賦形剤を指す。賦形剤は当技術分野でよく知られており、本組成物はこれらの点で限定されるものではない。特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば、限定されないが、1つ以上のバインダー(結合剤)、増粘剤、界面活性剤、希釈剤、放出遅延剤、着色剤、香味剤、充填剤、崩壊剤/溶解促進剤、潤滑剤、可塑剤、シリカ流動調整剤、滑剤、ケーキング防止剤、付着防止剤、安定化剤、帯電防止剤、膨潤剤及びこれらの任意の組み合わせを含む、1つ以上の賦形剤を含む。当業者であれば認識するように、単一の賦形剤は一度に2つ以上の機能を果たすことができ、例えば、結合剤と増粘剤の両方として作用することができる。また、当業者であれば認識するように、これらの用語は必ずしも相互に排他的ではない。治療用製剤は、所望の純度を有する有効成分を、1つ以上の任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、及び/又は安定化剤と混合することにより、当該技術分野で知られる標準的な方法を用いて調製される。賦形剤(複数可)は、例えば、静脈内、非経口、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼科的、脳室内、嚢内、脊髄内、髄腔内、硬膜外、嚢胞内、腹膜内、鼻内、又は肺(例えば、エアゾール)投与に適していてもよい(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,by Loyd V Allen,Jr,2012,22nd edition,Pharmaceutical Press;Handbook of Pharmaceutical Excipients,by Rowe et al.,2012,7th edition,Pharmaceutical Presを参照)。一実施形態において、医薬組成物は、注射用組成物である。一実施形態において、医薬組成物は、皮下投与/注射のための1つ以上の賦形剤を含む。
【0065】
生体試料中のタンパク質の量/レベルを測定する方法は、当技術分野でよく知られている。タンパク質レベルは、抗体やそのフラグメントのような、タンパク質(成熟タンパク質)に特異的に結合するリガンドを用いて直接検出することができる。実施形態において、そのような結合分子又は試薬(例えば、抗体)は、複合体の検出及び定量化(直接検出)を促進するために、例えば、放射性標識、発色団標識、蛍光体標識、又は酵素標識で標識/コンジュゲートされる。代替的に、結合分子又は試薬を用いてタンパク質レベルを間接的に検出し、その後、結合分子又は試薬を特異的に認識する第2のリガンド(又は第2の結合分子)を用いて[タンパク質/結合分子又は試薬]複合体を検出する(間接検出)こともできる。そのような第2のリガンドは、複合体の検出や定量を促進するために、放射性標識、発色団標識、蛍光団標識、又は酵素標識されてもよい。イムノアッセイ用の抗体の標識に使用される酵素は当技術分野で知られており、最も広く使用されているのはホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とアルカリホスファターゼ(AP)である。結合分子又は試薬の実施例として、抗体(モノクローナル又はポリクローナル)、天然又は合成リガンド、及び類似物を含む。
【0066】
試料中のタンパク質の量/レベルを測定する方法の実施例として、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:ウェスタンブロット、イムノブロット、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、「サンドイッチ」免疫測定法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、プロキシミティエクステンションアッセイ(Proximity Extension Assay)(PEA)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴(SPR)、ケミルミネセンス、蛍光偏光法、リン光法、免疫組織化学(IHC)分析、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI-TOF)質量分析法、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、抗体アレイ、顕微鏡法(例えば、電子顕微鏡)、フローサイトメトリー、プロテオミクスベースのアッセイ、及びリガンド結合や他のタンパク質パートナーとの相互作用、酵素活性、蛍光など、タンパク質の特性又は活性に基づくアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、標的タンパク質が所定の標的をリン酸化することが知られているキナーゼである場合、試験化合物の存在下で標的のリン酸化レベルを測定することによって、標的タンパク質のレベル又は活性を判定されても良い。標的タンパク質が、1つ以上の標的遺伝子(複数可)の発現を誘導することが知られている転写因子である場合、標的タンパク質のレベル又は活性は、標的遺伝子(複数可)の発現レベルを測定することによって判定されても良い。一実施形態において、試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の量/レベルは、プロキシミティエクステンションアッセイ(PEA)により測定される。PEAは、あらかじめ決められたタンパク質セットの存在量を評価するアフィニティーベースのアッセイである。各タンパク質は、ユニークなオリゴヌクレオチド標識抗体のペアで標的にされる。オリゴヌクレオチドが近接すると、近接依存的なDNA重合現象が起こり、PCR標的配列が形成される。得られたDNA配列は、標準的なリアルタイムPCRを用いて検出及び定量される。PEAは、Normalized Protein eXpression(NPX)というタンパク質存在量のレベルをlog-スケールで表示する。
【0067】
一実施形態において、上記のVEGFA、TGFB1、又はCSF1のタンパク質レベルの測定は、タンパク質(複数可)に特異的に結合するリガンド、例えば、VEGFA、TGFB1、又はCSF1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと生体試料を接触させることと、VEGFA、TGFB1、又はCSF1とリガンド(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメント)の複合体の量を測定することを含む。本明細書で使用する用語「抗体又はその抗原結合フラグメント」は、所望の抗原特異性/結合活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト化抗体、CDR-グラフト抗体、キメラ抗体、及び抗体フラグメントを含むあらゆるタイプの抗体/抗体フラグメントを指す。抗体フラグメントは、全長抗体の一部、一般的には抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体フラグメントの実施例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFvフラグメント、ダイアボディ、直鎖抗体、単鎖抗体分子、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ類由来)、鮫NAR単一ドメイン抗体、及び抗体フラグメントから形成される多特異抗体などがある。抗体フラグメントは、V領域(V、V-V)、アンチカリン、ペプボディ、抗体-T細胞エピトープ融合体(トロイボディ)、又はペプチボディなど、CDRや抗原結合ドメインを含む結合部位を指す場合もあるが、これらに限定されない。
【0068】
一実施形態において、抗体又はその抗原結合フラグメントは標識される。抗体又はその抗原結合フラグメントは、ビオチン標識、蛍光標識、酵素標識、補酵素標識、化学発光標識、又は放射性同位体標識などの1つ以上の標識で標識されてもよい。一実施形態において、抗体又はその抗原結合フラグメントは、検出可能な標識/部位、例えば蛍光部位(蛍光体)で標識される。検出可能なラベルとしては、蛍光化合物(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、アレクサフロール(登録商標)色素、及び類似物)、放射性標識、酵素(例えば、ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、その他タンパク質検出アッセイによく使われるもの)、ストレプトアビジン/ビオチン、及びコロイド状金などの比色ラベル、着色ガラス又はプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)のような比色標識を含む。また、化学発光化合物が使用されてもよい。別の実施形態において、抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、上記のようにプロキシミティエクステンションアッセイを行うために、オリゴヌクレオチドにコンジュゲートされる。
【0069】
一実施形態において、タンパク質(複数可)に特異的に結合するリガンド(例えば、VEGFA、TGFB1、又はCSF1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント)は、固体支持体上に付着又は固定化される。固体支持体は、リガンドの結合(例えば、固定化)を可能にし、所望の用途に使用することができる任意の固体支持体であってもよい。例えば、ガラスやプラスチック板/スライドを含む。一実施形態において、上記固体支持体は、プラスチック板/スライドである。実施形態において、上記の板/スライドは、リガンドの固定化の前に修飾(例えば、コーティング、化学的修飾、誘導体化)されてもよい。一実施形態において、固体支持体は、当該技術分野で知られている任意の方法を用いて、リガンドの共有結合又は非共有結合の固定化を許容又は促進するように修飾される。固体支持体は、そのC末端又はN末端を介したリガンドの固定化が望ましいかどうかに応じて、アミノ又はカルボキシ官能基のいずれかを有されてもよい。例えば、NTA-「His-Tag」システム、ビオチン-アビジン/ストレプトアビジンシステム、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)-グルタチオンシステム、マルトース結合タンパク質(MBP)-アミロースシステム、及び抗原-抗体システムなどの一般的なアフィニティータグベースのシステムを使用して、固体支持体はリガンドにコンジュゲートされる対応する部位(アフィニティータグ)に結合することができる任意の従来の部位を使って修飾/被覆されてもよい。
【0070】
一実施形態において、上記方法は、異なる試料間の比較を促進するために、タンパク質レベルを正規化する工程、すなわち、安定的に発現した対照タンパク質(又はハウスキーピングタンパク質)に対して上記タンパク質の測定レベルを正規化する工程を含む。本明細書で使用する「正規化する」又は「正規化」とは、タンパク質の品質、精製効率などのような「外来」パラメータの違いを考慮するために、異なる試料間の生のタンパク質レベルの値/データを試料バリエーションごとに補正すること、すなわち、試料中のタンパク質の実際の「内在」変動に起因しない違いを指す。そのような正規化は、異なる実験条件下で生体試料中のレベルが一定であることが知られている(すなわち、比較的低い変動を示す)1つ以上の「ハウスキーピング」又は「対照」タンパク質について測定したタンパク質レベルの値/データに基づいて、試験タンパク質(又は対象のタンパク質、すなわち、VEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1)の生のタンパク質レベルの値/データを補正することにより行われる。したがって、一実施形態において、上記方法は、生体試料中のハウスキーピングタンパク質の発現レベルを測定する工程をさらに含む。
【0071】
試料で測定されたVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の生のレベルは、分析の前に、対数変換などの数学的変換に供されてもよい。一実施形態において、本明細書に記載の方法は、分析前に、試料において測定されたVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の生レベルのLog2変換を行う工程を含む。
【0072】
本開示によれば、生体試料(例えば、医療/臨床試料)は、本明細書に記載の1つ以上の標的タンパク質(VEGFA、TGFB1、及びCSF1)を含む疑いのある対象/患者から得られた任意の試料(粗製又は処理)を包含する。このような物質は、様々な源から発生してもよい。一実施形態において、1つ以上の標的タンパク質を含むと疑われる試料は、任意の組織/臓器から、及び/又は体内の排泄物又は体液から得られてもよい。試料は、必要に応じて、限定されないが、機械的溶解、洗剤抽出、超音波処理、エレクトロポレーション、変性剤などを含む当業者に周知の技術を用いて調製されてもよく、また必要に応じて精製されてもよい。さらなる実施形態において、試料は、比較的粗いものから比較的純粋なタンパク質調製物に至るまで、タンパク質に富むその抽出物を得るために処理されてもよい。
【0073】
一実施形態において、上記生体試料は、生体液、例えば、尿、唾液、リンパ液、又は血液由来の試料である。本明細書で使用する「血液由来試料」という用語は、血液(例えば、新鮮な血液、保存血液)又は血清、血漿、及び類似物のようなその分画を指す。また、血液(例えば、静脈穿刺により得られる)を出発材料として、1つ以上の精製、濃縮、及び/又は処理工程を経て得られるあらゆる試料も指す。一実施形態において、生体試料は血液由来の試料であり、さらなる実施形態では血漿である。
【0074】
試料は、NAFLDに罹患している疑いがある対象、例えば、脂肪肝及び/又は肝線維症の1つ以上の症状を有する対象から得てもよい。対象は、肝酵素であるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及び/又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇等の臨床検査、画像技術によって検出された肝脂肪の証拠、及び/又は肝生検等の結果に基づいて、NAFLDに罹患していると疑われるか、又はNAFLDと診断される場合がある。NAFLDとは、アルコール使用、ステアトジェニック薬、及び遺伝性疾患など、肝脂肪蓄積の二次的な原因の不在で、肝脂肪症(肝臓の断面積の5%未満が脂肪空胞で占められている)が病的に存在すると定義される慢性肝疾患を指す。NAFLDは、2つのカテゴリーに単純化される疾患のスペクトルを含む:(1)単純性脂肪症(SS)又は非アルコール性脂肪肝(NAFL)、症例の70~75%、炎症や細胞傷害を伴わない過剰な肝脂肪により定義され、(2)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、症例の25~30%、炎症と細胞傷を伴う過剰肝脂肪の存在により、類洞周囲線維化の有無を問わず定義される。一実施形態において、生体試料は、NAFLに罹患している又は罹患している疑いのある対象からである。別の実施形態では、生体試料は、NASHに罹患している又は罹患している疑いのある対象からである。別の実施形態では、対象は、HIV感染者であり、すなわち、対象は、HIV関連NAFLDに罹患している。
【0075】
一実施形態において、本明細書に記載の方法は、対象におけるNAFLD/NASHを評価/診断するために、1つ以上の追加のアッセイを実施する工程をさらに含む。そのようなアッセイは、例えば、対象の生体試料中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及び/又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のような肝酵素のレベルを判定すること、超音波、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、超音波エラストグラフィ(USE)、定量的超音波法、磁気共鳴エラストグラフィ(MRE)、及び磁気共鳴ベースの脂肪定量法、又は肝臓試料の組織学的分析(例えば、肝生検)のような画像技術を使用して肝臓のイメージングを実行することを含む。そのような追加のアッセイ(複数可)は、本明細書に記載されているように、生体試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の(基準レベルに対する)高い/増加したレベルに基づき、NAFLDに罹患していると疑われる患者に対して実施されてもよい。
【0076】
別の態様において、本開示は、(a)患者におけるNAFLDの重症度を経時的に評価するための、及び/又は(b)対象がNAFLDに罹患している可能性を評価するためのアッセイ混合物であって、前記アッセイ混合物は、(i)NAFLDに罹患しているか又は罹患している疑いのある対象からの生体試料と、及び(ii)前記試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の前記タンパク質レベルを判定/測定する1つ以上の試薬と、を備える、前記アッセイ混合物を提供する。一実施形態において、生体試料は血液由来の試料であり、さらなる実施形態では血漿である。一実施形態において、生体試料は、NAFLDに罹患している対象からである。別の実施形態において、生体試料は、HIVに感染した対象からである。
【0077】
別の態様において、本開示は、(a)患者におけるNAFLDの重症度を経時的に評価するための、及び/又は(b)対象がNAFLDに罹患している可能性を評価するためのシステムであって、前記システムは、(i)NAFLDに罹患しているか又は罹患している疑いのある対象からの生体試料と、及び(ii)前記試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1の前記タンパク質レベルを判定/測定する1つ以上のアッセイと、を備える、前記システムを提供する。一実施形態において、生体試料は血液由来の試料であり、さらなる実施形態では血漿である。一実施形態において、生体試料は、NAFLDに罹患している対象からである。別の実施形態において、生体試料は、HIVに感染した対象からである。
【0078】
別の態様において、本開示は、(a)患者におけるNAFLDの重症度を経時的に評価するための、及び/又は(b)対象がNAFLDに罹患している可能性を評価するシステムであって、前記システムは、前記対象の生体試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベルに対応する信号を生成するように構成される試料分析器と、及び前記1つ以上のタンパク質レベルに基づいて、前記信号が基準値よりも高いか低いかについて計算するようにプログラミングされたコンピュータサブシステムと、を備える、前記システムを提供する。様々な実施形態において、システムは、生体試料をさらに含む。一実施形態において、生体試料は血液由来の試料であり、さらなる実施形態では血漿である。一実施形態において、生体試料は、NAFLDに罹患している対象からである。別の実施形態において、生体試料は、HIVに感染した対象からである。
【0079】
別の態様において、本開示は、(a)患者におけるNAFLDの重症度を経時的に評価するために、及び/又は(b)対象がNAFLDに罹患している可能性を評価するために使用のキットであって、前記キットは、生体試料中のVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベルの測定するための試薬と、及びVEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のタンパク質レベルと、及びNAFLDの重症度及び/又はNAFLDに罹患している可能性とを相関させる指示と、を備える、前記キットに関する。
【0080】
一実施形態において、アッセイ混合物、システム、及び/又はキットの試薬は、例えば、VEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のリガンド(例えば、抗体(複数可)又はそのフラグメント)、溶液(複数可)、緩衝液(複数可)、核酸増幅試薬(複数可)(例えば、DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ捕因子、dNTP)、核酸ハイブリダイゼーション/検出試薬(複数可)、及び/又は抗原抗体複合体検出試薬などを含む。一実施形態において、試薬は、VEGFA、TGFB1、及び/又はCSF1のうちの少なくとも2つに対するリガンド(例えば、抗体(複数可)又はそのフラグメント)を含む。一実施形態において、試薬は、(i)VEGFA及びTGFB1、(ii)VEGFA及びCSF1、(iii)TGFB1及びCSF1、又は(iv)VEGFA、TGFB1、及びCSF1のリガンド(例えば、抗体(複数可)又はそのフラグメント)を含む。一実施形態において、アッセイ混合物、システム、及び/又はキットは、(i)VEGFA及びTGFB1、(ii)VEGFA及びCSF1、(iii)TGFB1及びCSF1、又は(iv)VEGFA、TGFB1、及びCSF1のリガンド(例えば、抗体(複数可)又はそのフラグメント)を含むアレイを備える。
【0081】
一実施形態において、本開示によるキットは、上記で説明したそれぞれの試薬成分を含む別々のパッケージ又はコンパートメントに分割されてもよい。
【0082】
さらに、そのようなキットは、以下のうちの1つ以上を任意に含んでもよい:(1)本明細書に記載された方法を実施するための試薬を使用するための、及び/又は得られた結果の解釈のための指示と、(2)1つ以上の容器と、及び/又は(3)適切な対照/標準。そのようなキットは、患者から生体試料を採取するための試薬と、生体試料を処理するための試薬と、が含み得る。
【0083】
キットに含まれる情報資料は、本明細書に記載の方法及び/又は本明細書に記載の方法のための試薬の使用に関連する、説明、指導、マーケティング又は他の資料とすることができる。例えば、キットの情報提供資料には、キットの使用者が本明細書に記載の方法の実行及び結果の解釈に関する実質的な情報を得ることができる連絡先情報(例えば、物理的な住所、電子メールアドレス、ウェブサイト、又は電話番号)を含み得る。
【0084】
また、本明細書で紹介するキットは、タンパク質レベルのデータから、患者のNAFLDの重症度及び/又は対象がNAFLDに罹患している可能性を推測するのに必要なソフトウェアを提供することができる。
別の態様において、(a)患者におけるNAFLDの重症度を経時的に評価するための、及び/又は(b)対象がNAFLDに罹患している可能性を評価するための、本明細書に記載のキット又はアッセイ混合物の使用が提供される。
【0085】
本開示は、以下の非限定的な例によってさらに詳細に例示される。
【実施例1】
【0086】
実施例1:材料及び方法
研究設計
HIV関連のNAFLDを患っている個人が、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)アナログのテサモレリンを1日につき2mg、又は同一のプラセボを12ヶ月服用するように割り当てられた、二重盲検無作為化試験である。(7)本試験での血漿検体を活用し、本研究では、先行する純粋なトランスクリプトーム解析(8)を大幅に発展させ、特定のタンパク質を検査する。治療群間での、テサモレリンに反応するパスウェイの最先端遺伝子に対応するタンパク質の循環レベルの変化を調査し、これらタンパク質と、組織学的、放射線、及びトランスクリプトームに関する指標との関係を評価して、NAFLD/NASHの血漿マーカーを特定し、テサモレリン反応に関する潜在的メカニズムを明らかにした。
【0087】
HIV感染及び、プロトン核磁気共鳴スペクトロスコピー(H-MRS)において肝臓内脂肪率5%以上と定義される肝脂肪症が証明された、18~70歳の男女61名が登録された。参加者は、3ヶ月以上の間、CD4T細胞数が100個/mmより多く、及びHIVウイルス量が400コピー/mL未満の状態で、安定した抗レトロウイルス療法(ART)を受けていることが必要とされた。除外基準には、過度のアルコール摂取(女性は1日20g超過、又は男性は1日30g超過)、活動性B型又はC型肝炎、その他の既知の肝疾患、肝硬変、及び不適切に管理された糖尿病(HbA1cが7%以上)が含まれた。参加者は、2015年8月20日から2019年1月16日の間、マサチューセッツ総合病院(MGH、ボストン、マサチューセッツ州)及び米国国立衛生研究所(NIH、ベセスダ、メリーランド州)で登録された。各参加者より、書面でのインフォームド・コンセントを取得した。すべての方法は、ガイドラインと規則に従って実施された。
【0088】
研究手順
その母体となる治験の研究手順は、他で詳細に記載されている。(7、9)すべての研究手順は、絶食状態で実施された。簡潔に説明すると、肝臓内脂肪率の測定のため、ベースライン時と12ヶ月目にH-MRSを実施した。また、各時点で、2つのコアを得る超音波ガイド下の経皮的肝生検を実施した。1つ目のコアはホルマリンで固定され、その後、治療に対して盲検化された1人の専門病理学者によって病理組織学的評価が下された。(D.E.K.、米国国立衛生研究所)NAFLD活動スコア(NAS)と線維化ステージを含む、組織学的スコアリングは、非アルコール性脂肪性肝炎クリニカルリサーチネットワークのスコアリングシステムに従って実施された。(10)2つ目のコアは、遺伝子発現解析のため、RNA安定化試薬(RNAlater(登録商標)、キアゲン)に入れて、-80℃にて保管された。採血検体はベースライン時及び12ヶ月の時点で採取され、-80℃で保管された。標準的な技術を用いて、血清IGF-1を測定した。(Quest Laboratories)
【0089】
肝臓トランスクリプトーム評価
すでに記載されている方法を用いて、肝組織に対してRNA抽出、cDNAライブラリーの構築、及びイルミナシーケンシングを実施した。(9)テサモレリン及びプラセボ治療参加者の間で、治療前から治療後の時点にかけて差次的に変調されたパスウェイを特定するために、ブロード研究所(www.broadinstitute.org/gsea/)からのデスクトップモジュールを用いてGSEAが実施された。使用された遺伝子セットには、Molecular Signatures Database(MsigDB)ホールマーク遺伝子セットのコレクション(11)及びHCC予後に関するカスタム遺伝子セット(9)が含まれた。GSEA最先端遺伝子は、濃縮シグナルを占める著しく濃縮された遺伝子セット内の遺伝子のサブセットであり、その後のパスウェイ遺伝子発現の定量化に使用された。偽発見率(FDR)が0.05未満の遺伝子セットは濃縮と見なされた。
【0090】
この手法を利用して、プラセボと対比してテサモレリンによって差次的に制御される14のホールマーク遺伝子パスウェイを前もって発見した。この点で、酸化的リン酸化に関する遺伝子セットが治療によって増加した。さらに、テサモレリン治療者の間では、炎症、組織修復、及び細胞分裂に関わる13の遺伝子セットが減少した(図1)。RNAシーケンスデータは、国立バイオテクノロジー情報センターの遺伝子発現オムニバスのリポジトリに提出された(アクセッション番号GSE150026)。
【0091】
血漿プロテオーム評価
この分析では、Olink(登録商標)のマルチプレックスプロキシミティエクステンションアッセイ(PEA)のプラットフォームを用いて、対象となるタンパク質の変化を12ヶ月以上にわたって評価した。前記PEAは、あらかじめ決められたタンパク質セットの存在量を評価するアフィニティーベースのアッセイである。各タンパク質は、ユニークなオリゴヌクレオチド標識抗体のペアで標的にされる。オリゴヌクレオチドが近接すると、近接依存的なDNA重合現象が起こり、PCR標的配列が形成される。結果として生じるDNAシーケンスは、フリューダイムバイオマーク(Fluidigm BioMark)(商標)HDリアルタイムPCRプラットフォーム上で、標準のリアルタイムPCRを用いて検出し、定量化する。前記PEAは、log2-スケールで、Normalized Protein eXpression(NPX)のタンパク質存在量のレベルを表示する。検出限界やアッセイ性能の測定を含むアッセイの特性は、製造元(Olink、ウプサラ、スウェーデン)から入手可能である。前記方法の精度により特異性が高く、経時的な変化の評価が可能となった。利用された高マルチプレックスパネル(下記)内のすべてのタンパク質において、平均アッセイ内変動及びアッセイ間変動は、それぞれ8.3%及び11.5%を記録した。
【0092】
対象となるプロテオーム解析
現行の研究の目的は、NAFLDにおけるテサモレリン効果の潜在的な反応パスウェイを叙述し、NAFLD患者の間でのテサモレリンへの治療反応の検出に使用され得るタンパク質の特徴を判断することであった。そのために、テサモレリン応答性遺伝子セットの最先端遺伝子と重複することが判明した、およそ100のタンパク質(Olink Immuno-Oncology、タンパク質の全リストについては、www.olink.comを参照)からなる高マルチプレックスパネル内のすべての血漿タンパク質にフラグがつけられた。(8)標的となるこのタンパク質のセットにおいて、治療状況による血漿レベルの変化を比較した。プラセボと比較してテサモレリンによって差次的に変調されることが判明したタンパク質は、その後、ベースライン時及び長期の両方において、NAFLD重症度の、放射線、組織学、及びトランスクリプトームにおける指標に関連して検査された。繊維化ステージの代用として、繊維化(11)との関連が見られた18の遺伝子の肝発現に由来する遺伝子レベルの繊維化スコアを利用し、すでに記載されたように、前記の現行の試料で組織学的変化に対して検証した。(8)これらのタンパク質のレベルの変化はまた、これらに対応する肝臓転写レベル及び血清IGF-1の変化と関連していた。
【0093】
連続変数は平均±標準偏差で表し、反してカテゴリー変数は頻度(%)で示した。群間での違いは、連続変数においては両側独立標本t検定、またカテゴリー変数においてはカイ二乗検定を用いて比較した。相関関係は、ピアソン相関係数で評価した。0.05以下のPの値を統計的有意性の閾値としてあらかじめ定義した。JMP Pro 14(SAS Institute Inc.、ケーリー、ノースカロライナ州、米国)を用いて統計分析を実施した。
【表1】
略語:CASP8、caspase8(カスパーゼ8)、CCL20、C-C motif chemokine ligand20(C-Cモチーフ ケモカイン リガンド20)、CRTAM、cytotoxic and regulatory T-cell molecule(細胞傷害性及び調節性T細胞分子)、CSF1、macrophage colony stimulating factor1(マクロファージコロニー刺激因子1)、CXCL12、C-X-C motif chemokine ligand12(C-X-Cモチーフ ケモカイン リガンド12)、NCR1、natural cytotoxicity triggering receptor 1(ナチュラルサイトトキシックトリガー受容体1)、TGFB1、transforming growth factor beta 1(トランスフォーミング増殖因子β1);TNFRSF21、tumor necrosis factor receptor superfamily member 21(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー21);VEGFA、vascular endothelial growth factor A(血管内皮増殖因子A)。
【実施例2】
【0094】
実施例2:研究参加者の特徴
前記無作為化比較試験でのHIV関連のNAFLDを患っている参加者61名のうち、58の個人がベースライン時に血漿タンパク質パネルを得ており、分析に利用可能であった。さらに、これら44の個人(テサモレリンに割り当てられた20名、プラセボに割り当てられた24名)には、12ヶ月目に血漿タンパク質パネルが繰り返された。前記の全体的試料の各治療群の特徴は表2に要約されており、すでに記載されている。(7)テサモレリン及びプラセボ群は、主要な臨床変数に関して非常にバランスの取れたものであった。簡単に説明すると、参加者(53±7歳、79%男性)は17±9年間、HIV感染をうまく制御していた。すべての対象者は、インテグラーゼ阻害剤ベースのレジメンが64%と、安定したARTを受けていた。ベースラインの肝臓内脂肪含有量は、H-MRSによる測定では14±8%であった。初回の肝生検にて、NASH及び繊維化で組織学的証拠を得たのは、それぞれ合計33%及び43%であった。
【表2-1】
【表2-2】
ベースライン時では、上記に示された変数のいずれにおいても、群間で統計的に有意差はなかった。
連続変数は平均値±標準偏差として示される。
略語:NASH、nonalcoholic steatohepatitis(非アルコール性脂肪性肝炎)、NNRTI、non-nucleoside reverse transcriptase inhibitor(非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤)、NRTI、nucleoside reverse transcriptase inhibitor(ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤)、PI、protease inhibitor(プロテアーゼ阻害剤)。
【実施例3】
【0095】
実施例3:テサモレリンによって差次的に制御される血漿タンパク質
9つの血漿タンパク質が、テサモレリンによって変調される最先端遺伝子に対応して識別された(図1)。これらの最先端遺伝子は、炎症、組織修復、及び細胞分裂(表1)に関する遺伝子セットに含まれており、プラセボと対比してテサモレリン治療によって減少した。これらのタンパク質のうち、テサモレリン治療は、プラセボと比較して、血漿VEGFA(log倍率変化-0.20±0.35対0.05±0.34、P=0.02)、TGFB1(log倍率変化-0.35±0.56対-0.05±0.43、P=0.05)、及びCSF1(log倍率変化-0.17±0.21対0.02±0.20、P=0.004)の減少につながった(図2A~2C)。さらに、血漿CCL20は、群間の差は統計的有意性には至らなかったものの(log倍率変化-0.28±0.88対0.20±0.79、P=0.06)、テサモレリンによって減少する傾向にあった。9つすべての血漿タンパク質における、プラセボと対比した治療の効果は表3に要約されている。
【表3】
【0096】
太字はPが0.05未満であることを示す。データは平均値(95%信頼区間)又は平均値±標準偏差として示される。
略語:CASP8、caspase8(カスパーゼ8)、CCL20、C-C motif chemokine ligand20(C-Cモチーフ ケモカイン リガンド20)、CRTAM、cytotoxic and regulatory T-cell molecule(細胞傷害性及び調節性T細胞分子)、CSF1、macrophage colony stimulating factor1(マクロファージコロニー刺激因子1)、CXCL12、C-X-C motif chemokine ligand12(C-X-Cモチーフ ケモカイン リガンド12)、NCR1、natural cytotoxicity triggering receptor1(ナチュラルサイトトキシックトリガー受容体1)、TGFB1、transforming growth factor beta 1(トランスフォーミング増殖因子β1);TNFRSF21、tumor necrosis factor receptor superfamily member21(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー21);VEGFA、vascular endothelial growth factor A(血管内皮増殖因子A)。
【実施例4】
【0097】
実施例4:主要な血漿タンパク質とNAFLD表現型の関連性
テサモレリンによるこれらの差異のある制御を考慮して、次に、VEGFA、TGFB1、及びCSF1のNAFLD表現型との関係性(表4)を研究した。ベースライン時では、前記の全体的試料のうち、血漿CSF1レベルがNASスコア(r=0.38、P=0.004)、及び遺伝子レベルの繊維化スコア(r=0.37、P=0.03)と直接的に相関していた。反対に、VEGFA及びTGFB1では、これらのパラメータのいずれとも関連性が見られなかった。さらに、ベースラインにおいて、VEGFA、TGFB1、又はCSF1と肝臓内脂肪率との関係はなかった。
【表4】
【0098】
テサモレリン投与群では、血漿中のVEGFA(r=0.62、P=0.006)及びCSF1(r=0.50、P=0.04)の減少がNASスコアの低下と大きく相関していた(図3A、3B、及び表4)。さらに、テサモレリン治療参加者のうち、TGFB1(r=0.61、P=0.009)及びCSF1(r=0.64、P=0.006)の減少は、遺伝子レベルの線維化スコアの低下と関連した(図4A、4B)。これら3つの血漿タンパク質の変化は、プラセボ治療参加者の間では、NASスコア又は遺伝子レベルの繊維化スコアとの相関は見られず、またいずれの治療群でも肝臓内脂肪率の変化との相関は見られなかった。
【実施例5】
【0099】
実施例5:主要な血漿タンパク質の変化と、肝臓転写レベル及び血清IGF-1の変化の関連性
血漿中のVEGFA、TGFB1、及びCSF1の制御を明らかにするために、次に、全体的試料のうち、それらに対応する肝臓転写レベル及び血清IGF-1レベルとの関係性を調査した。CSF1は血漿タンパク質の変化と肝臓転写レベルの変化の間に相関を示した(r=0.50、P=0.002)。さらに、血清IGF-1の増加はCSF1の直線的な低下に関連していた(r=-0.38、P=0.01)。
【0100】
本発明は、本明細書に上記の特定の実施形態によって説明されてきたが、添付の特許請求の範囲で定義される主題発明の趣旨及び性質から逸脱することなく、変更され得る。特許請求の範囲では、「含む」という単語は、「限定されないが、含む」という語句と実質的に等価である、オープンエンド用語として使用される。「a」、「an」、及び「the」という単数形は、別段文脈が明らかに指示しない限り、対応する複数の対象物を含む。
【0101】
参考文献
1.Maurice JB,Patel A,Scott AJ,Patel K,Thursz M,Lemoine M. Prevalence and risk factors of nonalcoholic fatty liver disease in HIV-monoinfection.AIDS 2017;31:1621-1632.
2.Koethe JR,Jenkins CA,Lau B,Shepherd BE,Justice AC,Tate JP,Buchacz K, et al.Rising Obesity Prevalence and Weight Gain Among Adults Starting Antiretroviral Therapy in the United States and Canada.AIDS Res Hum Retroviruses 2016;32:50-58.
3.Grant PM,Kitch D,McComsey GA,Collier AC,Bartali B,Koletar SL,Erlandson KM,et al.Long-term body composition changes in antiretroviral-treated HIV-infected individuals.AIDS 2016;30:2805-2813.
4.Vodkin I,Valasek M,Bettencourt R,Cachay E,Loomba R.Clinical,biochemical and histological differences between HIV-associated NAFLD and primary NAFLD:a case-control study.Alimentary pharmacology & therapeutics 2015;41:368-378.
5.Fourman LT,Stanley TL,Zheng I,Pan CS,Feldpausch MN,Purdy J,Aepfelbacher J,et al.Clinical Predictors of Liver Fibrosis Presence and Progression in HIV-Associated NAFLD.Clin Infect Dis 2020.
6.Wong VW,Singal AK.Emerging medical therapies for non-alcoholic fatty liver disease and for alcoholic hepatitis.Transl Gastroenterol Hepatol 2019;4:53.
7.Stanley TL,Fourman LT,Feldpausch MN,Purdy J,Zheng I,Pan CS,Aepfelbacher J,et al.Effects of tesamorelin on non-alcoholic fatty liver disease in HIV:a randomised,double-blind,multicentre trial.Lancet HIV 2019;6:e821-e830.
8.Fourman LT,Billingsley JM,Agyapong G,Ho Sui SJ,Feldpausch MN,Purdy J,Zheng I,et al.Effects of tesamorelin on hepatic transcriptomic signatures in HIV-associated NAFLD.JCI Insight 2020;5.
9.Kleiner DE,Brunt EM,Van Natta M,Behling C,Contos MJ,Cummings OW,Ferrell LD,et al.Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease.Hepatology 2005;41:1313-1321.
10.Liberzon A,Birger C,Thorvaldsdottir H,Ghandi M,Mesirov JP,Tamayo P.The Molecular Signatures Database (MSigDB)hallmark gene set collection.Cell Syst 2015;1:417-425.
11.Hoang SA,Oseini A,Feaver RE,Cole BK,Asgharpour A,Vincent R,Siddiqui M,et al.Gene Expression Predicts Histological Severity and Reveals Distinct Molecular Profiles of Nonalcoholic Fatty Liver Disease.Sci Rep 2019;9:12541.12541.
12.Kitade M,Yoshiji H,Kojima H,Ikenaka Y,Noguchi R,Kaji K,Yoshii J,et al.Neovascularization and oxidative stress in the progression of non-alcoholic steatohepatitis.Mol Med Rep 2008;1:543-548.
13.Coulon S,Francque S,Colle I,Verrijken A,Blomme B,Heindryckx F,De Munter S,et al.Evaluation of inflammatory and angiogenic factors in patients with non-alcoholic fatty liver disease.Cytokine 2012;59:442-449.
14.Cayon A,Crespo J,Guerra AR,Pons-Romero F.[Gene expression in obese patients with non-alcoholic steatohepatitis].Rev Esp Enferm Dig 2008;100:212-218.
15.Coulon S,Legry V,Heindryckx F,Van Steenkiste C,Casteleyn C,Olievier K,Libbrecht L,et al.Role of vascular endothelial growth factor in the pathophysiology of nonalcoholic steatohepatitis in two rodent models.Hepatology 2013;57:1793-1805.
16.Fabregat I,Moreno-Caceres J,Sanchez A,Dooley S,Dewidar B,Giannelli G,Ten Dijke P.TGF-β signalling and liver disease.FEBS J 2016;283:2219-2232.
17.Yang L,Roh YS,Song J,Zhang B,Liu C,Loomba R, Seki E. Transforming growth factor beta signaling in hepatocytes participates in steatohepatitis through regulation of cell death and lipid metabolism in mice.Hepatology 2014;59:483-495.
18.Cayon A,Crespo J,Mayorga M,Guerra A,Pons-Romero F.Increased expression of Ob-Rb and its relationship with the overexpression of TGF-beta1 and the stage of fibrosis in patients with nonalcoholic steatohepatitis.Liver Int 2006;26:1065-1071.
19.Hamilton,J.A.,Cook,A.D.& Tak,P.P.Anti-colony-stimulating factor therapies for inflammatory and autoimmune diseases.Nat.Rev.Drug Discov.16,53-70
20.Stutchfield BM,Antoine DJ,Mackinnon AC,Gow DJ,Bain CC,Hawley CA,Hughes MJ,et al.CSF1 Restores Innate Immunity After Liver Injury in Mice and Serum Levels Indicate Outcomes of Patients With Acute Liver Failure.Gastroenterology 2015;149:1896-1909 e1814.
21.Naito M,Hayashi S,Yoshida H,Nishikawa S,Shultz LD,Takahashi K.Abnormal differentiation of tissue macrophage populations in ‘osteopetrosis’(op)mice defective in the production of macrophage colony-stimulating factor.Am J Pathol 1991;139:657-667.
22.Radi ZA,Koza-Taylor PH,Bell RR,Obert LA,Runnels HA,Beebe JS,Lawton MP,et al.Increased serum enzyme levels associated with kupffer cell reduction with no signs of hepatic or skeletal muscle injury.Am J Pathol 2011;179:240-247.
23.Tosello-Trampont AC,Landes SG,Nguyen V,Novobrantseva TI,Hahn YS.Kuppfer cells trigger nonalcoholic steatohepatitis development in diet-induced mouse model through tumor necrosis factor-α production.J Biol Chem 2012;287:40161-40172.
24.Li H,Zhou Y,Wang H,Zhang M,Qiu P,Zhang M,Zhang R,et al.Crosstalk Between Liver Macrophages and Surrounding Cells in Nonalcoholic Steatohepatitis.Front Immunol 2020;11:1169.
25.Rosenfeld ME,Yla-Herttuala S,Lipton BA, Ord VA,Witztum JL,Steinberg D.Macrophage colony-stimulating factor mRNA and protein in atherosclerotic lesions of rabbits and humans.Am J Pathol 1992;140:291-300.
26.Sjaarda J,Gerstein H,Chong M,Yusuf S,Meyre D,Anand SS,Hess S,et al.Blood CSF1 and CXCL12 as Causal Mediators of Coronary Artery Disease.J Am Coll Cardiol 2018;72:300-310.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2023548156000001.app
【国際調査報告】