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特表2023-548167二次電池用正極活物質、その製造方法、それを含むフリースタンディングフィルム、乾式正極および乾式正極を含む二次電池
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  • 特表-二次電池用正極活物質、その製造方法、それを含むフリースタンディングフィルム、乾式正極および乾式正極を含む二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】二次電池用正極活物質、その製造方法、それを含むフリースタンディングフィルム、乾式正極および乾式正極を含む二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/36 20060101AFI20231108BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20231108BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H01M4/36 C
H01M4/131
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526442
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 KR2021017663
(87)【国際公開番号】W WO2022114860
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0164640
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0163398
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョンギル・キム
(72)【発明者】
【氏名】テゴン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミョンス・キム
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA09
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA24
5H050FA18
5H050GA22
5H050HA00
5H050HA01
(57)【要約】
本発明の一実施形態によれば、二次電池用正極活物質であって、リチウム遷移金属酸化物粒子;前記リチウム遷移金属酸化物の粒子表面上に被膜の形態で形成されている非晶質カーボン系コート層;および前記非晶質カーボン系コート層上に形成されているカーボンナノチューブコート層を含む正極活物質、その製造方法、それを含むフリースタンディングフィルム、乾式正極および前記乾式正極を含む二次電池を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用の正極活物質であって、
リチウム遷移金属酸化物粒子、
前記リチウム遷移金属酸化物粒子の表面上に被膜の形態で形成されている非晶質カーボン系コート層、および
前記非晶質カーボン系コート層上に形成されているカーボンナノチューブコート層を含む正極活物質。
【請求項2】
前記非晶質カーボン系コート層は被膜の形態で前記リチウム遷移金属酸化物粒子と物理的に結着されている、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記非晶質カーボン系コート層はカーボンブラックを含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブコート層は前記非晶質カーボン系コート層とπ‐π相互作用を有する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記非晶質カーボン系コート層の非晶質カーボン系物質および前記カーボンナノチューブコート層のカーボンナノチューブはそれぞれ活物質全体の重量の0.01~5重量%で含まれる、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記正極活物質の包絡度(convexity)は0.6~0.9である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
請求項1に記載の正極活物質を製造する方法であって、
(a)リチウム遷移金属酸化物の粒子表面に非晶質カーボン系物質を被膜形態で1次コートする段階、および
(b)1次コートされた粒子表面にカーボンナノチューブを2次コートして正極活物質を製造する段階を含む、正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記(a)の段階で前記非晶質カーボン系物質は中空構造であり、コート時に構造が崩壊することによりリチウム遷移金属酸化物の表面に被膜形態で物理的に結着される、請求項7に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記(a)の段階の1次コートおよび前記(b)の段階の2次コートはメカノフュージョン法により行われる、請求項7に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記(b)の段階で前記カーボンナノチューブが前記非晶質カーボン系物質とπ‐π相互作用を形成する、請求項7に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記(a)の段階の前記非晶質カーボン系物質および前記(b)の段階の前記カーボンナノチューブはそれぞれ活物質全体の重量の0.01~5重量%で含まれるようにコートされる、請求項7に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の正極活物質、およびバインダを含み、
前記バインダはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、フリースタンディングフィルム。
【請求項13】
前記ポリテトラフルオロエチレンは繊維形態で活物質を取り巻いている形態である、請求項12に記載のフリースタンディングフィルム。
【請求項14】
前記フリースタンディングフィルムは導電材をさらに含む、請求項12に記載のフリースタンディングフィルム。
【請求項15】
前記フリースタンディングフィルムの常温引張強度は0.17~1kgf/mmである、請求項12に記載のフリースタンディングフィルム。
【請求項16】
請求項12に記載のフリースタンディングフィルムが正極集電体上に形成されている、乾式正極。
【請求項17】
請求項16に記載の乾式正極を含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2020年11月30日付韓国特許出願第10-2020-0164640号および2021年11月24日付韓国特許出願第10-2021-0163398号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は二次電池用正極活物質、その製造方法、それを含むフリースタンディングフィルム、乾式正極および乾式正極を含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
化石燃料使用の急激な増加によって代替エネルギ、クリーンエネルギの使用への要求が増加しており、その一環として最も活発に研究されている分野が電気化学を利用した発電、蓄電分野である。
【0004】
現在、このような電気化学的エネルギを用いる電気化学素子の代表的な例として二次電池が挙げられ、その使用領域はますます拡大している傾向である。
【0005】
このような二次電池のうち代表的なリチウム二次電池はモバイル機器のエネルギ源だけでなく、最近では、大気汚染の主な原因の一つであるガソリン車両、ディーゼル車両など化石燃料を使用する車両の代わりとなる電気自動車、ハイブリッド電気自動車の動力源としての使用が実現化されており、グリッド(Grid)化による電力補助電源などの用途としても使用領域が拡大している。
【0006】
このようなリチウム二次電池の製造工程は、大きく電極工程、組み立て工程、化成工程の3段階に区分される。前記電極工程はまた活物質混合工程、電極コート工程、乾燥工程、圧延工程、スリッティング工程、巻き取り工程などに区分される。
【0007】
この中、活物質混合工程は、電極で実際電気化学反応が起こる電極活性層の形成のためのコート物質を配合する工程であって、詳細には電極の必須要素である電極活物質とその他添加剤である導電材と充填材、粒子間の結着と集電体に対する接着のためのバインダ、および粘度付与と粒子分散のための溶媒などを混合して流動性を有するスラリーの形態で製造することである。
【0008】
このように電極活性層を形成のために混合された組成物を広い意味で電極合剤(electrode mixture)ともいう。
【0009】
その後、電極合剤を電気伝導性の集電体上に塗布する電極コート工程と、電極合剤に含有されていた溶媒を除去するための乾燥工程が行われ、追加的に電極が圧延されて所定の厚さに製造される。
【0010】
一方、前記乾燥工程で電極合剤に含有されていた溶媒が蒸発することにより既に形成された電極活性層にピンホールやクラックのような欠陥が誘発され得る。また、活性層の内・外部が均一に乾燥されるのではないので、溶媒の蒸発速度差による粒子浮遊現象、すなわち、先に乾燥される部位の粒子が浮び上がって相対的に後に乾燥される部位と間隙を形成して電極品質が低下し得る。そのため、厚膜電極の製造が難しいという致命的な短所がある。
【0011】
そこで、以上の問題を解決するために、活性層の内部と外部が均一に乾燥されるようにしながらも、溶媒の蒸発速度を調節できる乾燥装置などが考慮されているが、このような乾燥装置は非常に高価でかつ運用においても相当なコストと時間が必要とされるため、製造工程性の側面から不利である。
【0012】
したがって、最近では溶媒を使用しない乾式電極を製造する研究が活発に行われている。
【0013】
前記乾式電極は、一般に集電体上に、活物質、バインダ、導電材などを含み、フィルム形態で製造されたフリースタンディングフィルムをラミネーションすることによって製造される。
【0014】
したがって、厚膜電極の製造が可能であり、人体に有害な有機溶媒の使用は不要であり、長時間の乾燥による高い工程コストなどを同時に解決できる革新的な技術として脚光を浴びている。
【0015】
なお、このような乾燥電極を製造する際には、バインダとして主にポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene,PTFE)粉末を使用するが、このようなPTFEは粒子内部に長繊維がきっちり積み重ねられており、特定条件で剪断力を受けると、長く繊維として抜け出て、このような繊維が活物質と活物質、活物質と導電材を連結して電極形態を維持させる役割をする。
【0016】
しかし、滑らかな正極材の表面ではPTFEがうまく摩擦されず、剪断力を受けにくいため、繊維化が生じにくい。また、PTFE繊維化が生じなければ電極形態を維持しにくいだけでなく、延いては電極生産性およびセル耐久性にも悪影響を及ぼすので、PTFE繊維化は非常に重要である。
【0017】
したがって、かかる問題を解決できる乾式電極技術の開発が切実な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記した問題を解決するためのものであり、PTFEバインダ繊維化を容易に生じさせるだけでなく、活物質間の導電パス(path)が改善されて電池抵抗を減少させ得る正極活物質およびその製造方法の提供を目的とする。
【0019】
また、本発明は、このような正極活物質を含む乾式電極を提供し、結果的に、このような乾式電極を含んで、寿命および出力特性を向上させ得る二次電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一実施形態による二次電池用正極活物質であって、
リチウム遷移金属酸化物粒子;
前記リチウム遷移金属酸化物の粒子表面上に被膜の形態で形成されている非晶質カーボン系コート層;および
前記非晶質カーボン系コート層上に形成されているカーボンナノチューブコート層を含む正極活物質が提供される。
【0021】
一つの具体的な例で、前記非晶質カーボン系コート層は被膜の形態でリチウム遷移金属酸化物粒子と物理的に結着されていてもよい。
【0022】
また、前記非晶質カーボン系コート層はカーボンブラックを含み得る。
【0023】
一つの具体的な例で、前記カーボンナノチューブコート層は前記非晶質カーボン系コート層とπ‐π相互作用(pi‐pi interaction)を有し得る。
【0024】
一つの具体的な例で、前記非晶質カーボン系コート層の非晶質カーボン系物質およびカーボンナノチューブコート層のカーボンナノチューブはそれぞれ活物質全体の重量の0.01~5重量%で含まれ得る。
【0025】
このような前記正極活物質の包絡度(convexity)は0.6~0.9であり得る。
【0026】
一方、本発明のまた他の一実施形態による前記二次電池用正極活物質を製造する方法は、
(a)リチウム遷移金属酸化物の粒子表面に非晶質カーボン系物質を被膜形態で1次コートする段階;および
(b)前記1次コートされた粒子表面にカーボンナノチューブを2次コートして正極活物質を製造する段階を含むことを特徴とする。
【0027】
この時、一つの具体的な例で、前記(a)の段階で前記非晶質カーボン系物質はホロー(Hollow,中空)構造であり、コート時にその構造が崩壊することによりリチウム遷移金属酸化物の表面に被膜形態で物理的に結着され得る。
【0028】
また、前記(a)の段階および(b)の段階のコートはメカノフュージョン法により行われ得る。
【0029】
また、一つの具体的な例で、前記(b)の段階でカーボンナノチューブのカーボンが非晶質カーボン系物質のカーボンとπ‐π相互作用を形成し得る。
【0030】
この時、一つの具体的な例で、前記(a)の段階および(b)の段階で非晶質カーボン系物質およびカーボンナノチューブはそれぞれ活物質全体の重量の0.01~5重量%で含まれるようにコートされ得る。
【0031】
一方、本発明のまた他の一実施形態によれば、前記正極活物質、およびバインダを含み、前記バインダはポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene,PTFE)を含むフリースタンディングフィルムが提供される。
【0032】
一つの具体的な例で、前記ポリテトラフルオロエチレンは繊維形態で活物質を取り巻いている形態であり得る。
【0033】
また、一つの具体的な例で、前記フリースタンディングフィルムは導電材をさらに含み得る。
【0034】
また、一つの具体的な例で、前記乾式正極の常温引張強度は0.15~1kgf/mmであり得る。
【0035】
また、本発明は、前記フリースタンディングフィルムが正極集電体上に形成されている乾式正極およびそれを含む二次電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】製造例1による非晶質カーボン系コート層が被膜形態に形成されたことを示すSEM写真である。
図2】比較製造例1による非晶質カーボン系コート層が粒子状に形成されたことを示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明への理解を深めるために本発明をより詳細に説明する。
【0038】
本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的または辞典的な意味に限定して解釈すべきではなく、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという原則に則して本発明の技術的思想に適う意味と概念で解釈すべきである。
【0039】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。
【0040】
また、明細書全体で、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、二次電池用正極活物質であって、
リチウム遷移金属酸化物粒子;
前記リチウム遷移金属酸化物の粒子表面上に被膜の形態で形成されている非晶質カーボン系コート層;および
前記非晶質カーボン系コート層上に形成されているカーボンナノチューブコート層を含む正極活物質が提供される。
【0042】
ここで、前記正極活物質のリチウム遷移金属酸化物粒子は、リチウムと、遷移金属、酸素を含む従来より知られているリチウム遷移金属酸化物をすべて含み、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-x(ここで、xは0~0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;および化学式のLi一部がアルカリ土金属イオンで置換されたLiMnだけでなく、リン酸化物形態であるリチウム金属リン酸化物LiMPO(ここで、MはM=Fe、CO、Ni、またはMnである)などをすべて含む概念である。
【0043】
しかし、このように前記活物質として一般に使用されるリチウム遷移金属酸化物粒子は、普通その表面が滑らかで乾式正極の製造のためにバインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用する場合、前記リチウム遷移金属酸化物粒子とPTFEがうまく摩擦されず、剪断力を受けにくく、そのため、前記高剪断ミキシングによっても繊維化が生じにくい問題がある。
【0044】
そこで、本出願の発明者らは、深い研究を繰り返し行った結果、前記リチウム遷移金属酸化物粒子に炭素系物質をコートすれば、導電パス(path)が改善されながらも、粒子表面の凹凸程度が格段に向上して高剪断ミキシングによるPTFEの繊維化が生じる二重効果を得ることができることを確認した。
【0045】
ただし、前記炭素系物質のうち非晶質カーボン系物質は、リチウム遷移金属酸化物の導電性向上および表面凹凸の増加によりPTFEの繊維化は一部改善されるが、粒子状であるため活物質間の導電パスが不足し、カーボンナノチューブはリチウム遷移金属酸化物の表面に直接コートする場合、前記カーボンナノチューブがチューブ(Tube)形態であるので、コートがうまく行われず、1次粒子境界面に固まりが発生して、投入量に対して活用度が劣る問題があった。
【0046】
また、これを解決するために前記物質を共に投入すれば、カーボンどうしの親和性が良くてリチウム遷移金属酸化物にコートされず、非晶質カーボン系物質とカーボンナノチューブが互いに固まる確率が高かった。
【0047】
そこで、本出願の発明者らは、粒子状でコートが円滑な非晶質カーボン系物質をリチウム遷移金属酸化物の表面に先にコートして、その後、カーボンナノチューブをコートする場合、このような問題を解決し、非晶質カーボン系物質のカーボンとカーボンナノチューブのカーボンが互いにπ‐π相互作用(pi‐pi interaction)を有することにより、カーボンナノチューブもあまり脱落せず、円滑にコートされ、活物質間の導電パスを改善させて電池抵抗を低下させて、寿命特性および出力特性を向上させるだけでなく、活物質粒子表面の凹凸程度が格段に向上して高剪断ミキシング時にPTFEが摩擦によって繊維化が生じる二重効果を得ることができることを確認して、本発明を完成するに至った。
【0048】
したがって、前記コートの順序は非常に重要であり、共に混合、または逆にコート層を形成する場合には、本願が意図した効果を得ることはできない。
【0049】
具体的には、前記非晶質カーボン系コート層は、非晶質カーボンであれば限定されず、多様な物質が含まれ得、具体的には、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェースピッチ炭化物、または焼成されたコークスなどを含むことができ、これらの中でもカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどを含み得、詳細にはカーボンブラックを含み得、より詳細には、前記非晶質カーボン系コート層はカーボンブラックコート層であり得る。
【0050】
この時、前記非晶質カーボン系コート層は、粒子状形態でコートされるのではなく、被膜の形態で前記リチウム遷移金属酸化物粒子と物理的に結着されている。
【0051】
具体的には、前記粒子状形態へのコートでは後にカーボンナノチューブとπ‐π相互作用が堅固に生じず、リチウム遷移金属酸化物の表面から共に脱離する確率が高いので、被膜形態でリチウム遷移金属酸化物の表面に堅固に物理的に結着されることによって、後に高剪断ミキシングなどによって活物質から脱離することを効果的に防止することができる。
【0052】
したがって、前記非晶質カーボン系コート層の形成は、前記のような被膜形態で形成できる構成であれば限定されないが、例えば、製造工程の容易性および非晶質コート層の物理的結着力を高めるために高剪断力のメカノフュージョン法で行われる。
【0053】
そうではなく、もし正極活物質と非晶質カーボン前駆体を混合して熱処理する場合、化学的反応が起こって正極表面の酸化数が変更される恐れがあり、正極活物質と非晶質カーボンを単純混合する場合、被膜の形態に適切に形成できず、活物質の1次粒子の境界面に非晶質カーボン粒子が固まって存在することになるので、管(vessel)とインペラの間の狭い隙間で数千rpmの高剪断力を受けるようにする物理的なコートであるメカノフュージョン法で行われるとき、薄くて均一な表面コートをなすことができるため最も好ましい。
【0054】
前記カーボンナノチューブコート層は、前記非晶質カーボン系コート層が形成された後に、前記非晶質カーボン系コート層の表面上に形成されることができる。
【0055】
この時、前記カーボンナノチューブコーティングは限定されないが、同様にメカノフュージョン法でコートされることが好ましい。
【0056】
一方、前記非晶質カーボン系コート層およびカーボンナノチューブコート層で、非晶質カーボン系物質およびカーボンナノチューブは、それぞれ活物質全体の重量の0.01~5重量%、詳細には、0.05~3重量%で含まれ得る。
【0057】
すなわち、前記非晶質カーボン系物質も活物質全体の重量の0.01~5重量%、詳細には、0.05~3重量%、カーボンナノチューブも活物質全体の重量の0.01~5重量%、詳細には、0.05~3重量%で含まれ得る。
【0058】
前記範囲を外れて、それぞれの物質の含有量が過度に小さい場合、コート層がきちんと形成されないので、コート層の形成を意図した導電パスの改善およびPTFE繊維化の発生の効果を得ることができないため好ましくなく、過度に多い含有量で形成される場合、前記コート層の含有量が相対的に増えるので、電池のエネルギ密度の側面から好ましくない。
【0059】
前記の範囲で含まれる場合、前記それぞれのコート層は、詳細には100nm~2μm、より詳細には、300nm~1.5μmの厚さで形成されることができる。
【0060】
一方、このように二重のコート層が形成された正極活物質の包絡度(convexity)は、0.6~0.9、詳細には0.65~0.85、より詳細には、0.7~0.85、最も詳細には0.75~0.8であり得る。
【0061】
前記包絡度は、表面の滑らかさの程度を意味し、例えば、Marven社のMorphologi4設備で測定されることができ、包絡度が1の場合、完全な球形を意味し、凹凸が激しいほど0に近い値を有する。
【0062】
前記正極活物質の包絡度が前記範囲を外れて、過度に高い場合は完全な球に近く滑らかであることを意味し、ミキシング時にPTFEがうまく摩擦されず、剪断効果を得にくく、過度に低い場合は、表面凹凸が激し過ぎてPTFE粒子が深い境界にトラップされてしまう問題があるため、好ましくない。
【0063】
また、本発明の他の一実施形態によれば、二次電池用正極活物質を製造する方法であって、
(a)リチウム遷移金属酸化物の粒子表面に非晶質カーボン系物質を乾式、高剪断力で1次コートする段階;および
(b)前記1次コートされた粒子表面にカーボンナノチューブを2次コートして正極活物質を製造する段階を含む正極活物質の製造方法が提供される。
【0064】
前述の通り、前記非晶質カーボン系物質は、リチウム遷移金属酸化物の粒子表面で粒子状でない被膜の形態でコートされることが好ましい。
【0065】
したがって、前記非晶質カーボン系物質は、具体的には、乾式のメカノフュージョン法で簡単に被膜形態のコート層を形成できるようにするホロー(Hollow,中空)構造であり、コート時にその構造が崩壊することによりリチウム遷移金属酸化物の表面に被膜形態で物理的に結着されることができる。
【0066】
一方、前記(b)の段階のコートによってカーボンナノチューブのカーボンが非晶質カーボン系物質のカーボンとπ‐π相互作用を形成して、カーボンナノチューブが堅固に結着されて脱離しないようにコートされる。
【0067】
この時、前記(a)の段階および(b)の段階のコートは、前記で説明した通り、メカノフュージョン法により行われる。
【0068】
また、前記で説明した通り、前記(a)の段階および(b)の段階で非晶質カーボン系物質およびカーボンナノチューブは、それぞれ活物質全体の重量の0.01~5重量%、詳細には0.05~3重量%で含まれるようにコートされ得る。
【0069】
一方、本発明のまた他の一実施形態によれば、前記正極活物質、およびバインダを含むフリースタンディングフィルムであって、前記バインダはポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene,PTFE)を含む、フリースタンディングフィルムが提供される。
【0070】
前記フリースタンディングフィルムは、一般に活物質およびバインダを含む混合物を製造する点で同一であるが、このような混合が溶媒下で行われず、粉末形態で行われる。
【0071】
具体的には、先に、前記フリースタンディングフィルムは、前記正極活物質とバインダを含む混合物を高剪断ミキシングによりバインダのうち前記PTFEを繊維化させることによって繊維形態で活物質を取り巻いて結着されるようにした後、正極合剤に対応するフリースタンディングフィルムを形成するために圧延される。
【0072】
このような圧延をカレンダリングと命名する。このようなカレンダリングにより前記混合物は例えば、1μm~300μmの平均厚さを有するフィルム形態になる。
【0073】
この時、前記圧延は、例えば、対面して存在するロールによって行われ、この時、ロール温度は30℃~100℃であり得、ロールの回転速度は1rpm~40rpmで行われ得る。
【0074】
このように製造されるフリースタンディングフィルムは、溶媒を含まないため、取り扱いが容易で所望する形態に加工して多様な形態の正極製造に用いることができる。のみならず、溶媒除去のための乾燥工程を省略できるので、正極の製造工程性改善および工程コストを大幅に節減することができる。
【0075】
一方、前記フリースタンディングフィルムは、導電材をさらに含み得、この場合、前記PTFEバインダは活物質だけでなく導電材も繊維形態で導電材を取り巻いている形態となる。
【0076】
したがって、前記バインダはPTFEを必須として含まなければならない。この時、前記PTFEは、具体的には、バインダ全体の重量を基準として50重量%以上で含まれ得、この時、前記バインダにはPEO(polyethylene oxide,ポリエチレンオキシド)、PVDF(polyvinylidene fluoride,ポリフッ化ビニリデン)およびPVDF‐HFP(polyvinylidene fluoride‐co‐hexafluoropropylene,ポリフッ化ビニリデン‐コ‐ヘキサフルオロプロピレン)などが追加で含まれ得るのはもちろんである。ただし、詳細には、バインダはPTFEのみを含んでもよい。
【0077】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用できるが、詳細には、導電材の均一な混合と伝導性の向上のために、活性カーボン、黒鉛、カーボンブラック、およびカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種以上を含み得、より詳細には、活性カーボンを含むことができる。
【0078】
これは正極活物質の表面に物理的にコートされる形態であり、本発明による正極活物質を使用する場合、少量の導電材だけでも十分な導電性を有して、電池のエネルギ密度の側面からより好ましい。
【0079】
前記活物質、バインダ、および導電材の混合比は、活物質:バインダ:導電材が重量比で85~99重量%:0.5~10重量%:0~5重量%で含まれ得、詳細には、90~99重量%:0.5~5重量%:0.5~5重量%で含まれ得る。
【0080】
前記範囲を外れて、バインダの含有量が多すぎる場合はバインダが後に高剪断ミキシング工程で過度に繊維化されることにより、工程性が低下し得、少なすぎる場合は十分な繊維化がなされず、電極の物理的な強度が弱くなる問題がある。
【0081】
また、前記範囲を外れて、導電材の含有量が多すぎる場合、相対的に活物質の含有量が減少して電池のエネルギ密度が減少する問題がある。
【0082】
一方、場合によっては、前記フリースタンディングフィルムに電極の膨張を抑制する成分である充填剤が追加で投入されてもよく、前記充填剤は当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ繊維状材料であれば、特に制限されなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0083】
前記説明した通り、本発明による正極活物質を含む場合、PTFEの繊維化がうまく行われるので、活物質間の結着力が増加し、フリースタンディングフィルム形成がうまく行われる。したがって、前記フリースタンディングフィルムの常温引張強度は向上することができる。
【0084】
具体的には、前記フリースタンディングフィルムの常温引張強度は、0.17~1kgf/mmであり得、詳細には、0.17~0.95kgf/mm、より詳細には0.2~0.3kgf/mm、最も詳細には0.2~0.25kgf/mmであり得る。
【0085】
前記常温引張強度は、銅箔業界で機械的特性評価の規格として借用しているJIS C 6511方法によって、万能試験装置であるUTM(製造会社;ドイツZwick、モデル名;Z2.5 TN)を用いてフリースタンディングフィルムをMD方向に常温でクロスヘッド速度(cross head speed)を50mm/minで引っ張った後、試験片の破断時点の荷重を測定する。この時、引張強度は次の通り計算した:
引張強度(kgf/mm)=ロード(load)値(kgf)/厚さ(mm)×幅(mm)
【0086】
前記範囲を外れて、常温引張強度が過度に小さいのは、工程中の破損および不良になる危険性があり、電池耐久性が弱化させるので好ましくない。
【0087】
このような前記フリースタンディングフィルムは、その後、正極集電体上に圧着されて乾式正極として製造される。
【0088】
したがって、本発明はまた、前記フリースタンディングフィルムが正極集電体上に形成されている乾式正極が提供される。
【0089】
前記乾式正極を製造するための圧着、すなわち、ラミネーションもラミネーションロールにより行われ得、この時、ラミネーションロールは30℃~200℃の温度を維持することができる。
【0090】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、かつ高い導電性を有するものであれば、特に制限されなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用できる。集電体はまた、それの表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0091】
一方、本発明のまた他の一実施形態によれば、前記乾式正極を含む二次電池が提供される。具体的には、前記乾式正極、分離膜、負極を含む電極組立体が電解液と共に電池ケースに内蔵された構造からなる。前記二次電池のその他の構成は従来より良く知られているので、これに関する説明を省略する。
【0092】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に理解するために本発明による実施例、比較例、および実験例に基づいて詳細に説明する。
【0093】
<製造例1>
LiMnO活物質に中空構造のカーボンブラックを活物質に対して1.5重量%でホソカワミクロン社のNOB‐130設備を用いて、メカノフュージョン法によって混合してLiMnO粒子状に被膜形態のカーボンブラックをコートする。
【0094】
<比較製造例1>
LiMnO活物質に中空構造のカーボンブラックを活物質に対して1.5重量%でWaring社のBlenderを用いて単純混合してLiMnO粒子状に粒子形態のカーボンブラックをコートした。
【0095】
<実験例1>
前記製造例1および比較製造例1で製造された物質に対するSEM写真を下記図1および図2に示した。
【0096】
図1および図2を参照すると、製造例1のように中空構造のカーボンブラックを使用してメカノフュージョン法で混合した場合、表面全体に薄くて均一に被膜形態でカーボンブラックがコートされたことを確認できることに対して、比較製造例1の場合、単純混合により、カーボンブラックが1次粒子の間の境界面で粒子状に固まっていることを確認することができる。
【0097】
<実施例1>
前記製造例1で製造されたLiMnO粒子とカーボンナノチューブ1.5重量%を、ホソカワミクロン社のNOB‐130設備を用いてメカノフュージョン法によって混合してカーボンナノチューブがカーボンブラックコート層上にコートされた構造の正極活物質を得た。
【0098】
<実施例2>
LiMnO活物質に中空構造のカーボンブラックを活物質に対して0.5重量%でホソカワミクロン社のNOB‐130設備を用いて、メカノフュージョン法によって混合してLiMnO粒子状に被膜形態のカーボンブラックをコートする。
【0099】
前記カーボンブラックがコートされたLiMnO粒子とカーボンナノチューブ0.5重量%をホソカワミクロン社のNOB‐130設備を用いてメカノフュージョン法によって混合してカーボンナノチューブがカーボンブラックコート層上にコートされた構造の正極活物質を得た。
【0100】
<比較例1>
前記実施例1で正極活物質としていかなるコート層もないLiMnO粉末を使用したことを除いては実施例1と同一に正極活物質を得た。
【0101】
<比較例2>
LiMnO活物質に中空構造のカーボンブラックを活物質に対して3重量%でホソカワミクロン社のNOB‐130設備を用いて、メカノフュージョン法によって混合してLiMnO粒子状に被膜形態でカーボンブラックがコートされた正極活物質を得た。
【0102】
<比較例3>
LiMnO活物質にカーボンナノチューブを活物質に対して3重量%でホソカワミクロン社のNOB‐130設備を用いて、メカノフュージョン法によって混合してLiMnO粒子状にCNTがコートされた正極活物質を得た。
【0103】
<比較例4>CNTコート後のカーボンブラックコート
LiMnO活物質にカーボンナノチューブを活物質に対して1.5重量%でホソカワミクロン社のNOB‐130設備を用いて、メカノフュージョン法によって混合してLiMnO粒子状に被膜形態の カーボンナノチューブをコートする。
【0104】
前記 カーボンナノチューブがコートされたLiMnO粒子と中空構造のカーボンブラック1.5重量%をホソカワミクロン社のNOB‐130設備を用いてメカノフュージョン法によって混合してカーボンナノチューブコート層上にカーボンブラックがコートされた構造の正極活物質を得た。
【0105】
<比較例5>メカノフュージョン方式でない単純混合の適用
前記比較製造例1で製造されたLiMnO粒子とカーボンナノチューブ1.5重量%を追加して単純混合して正極活物質を得た。
【0106】
<実験例2>
前記実施例1~2、および比較例1~5の正極活物質の包絡度をMalvern社のMorphologi4設備で測定して得て、その結果、実施例1の正極活物質は0.76の包絡度を、実施例2の正極活物質は0.80の包絡度を、比較例1の正極活物質は0.95の包絡度を、比較例2の正極活物質は0.98の包絡度を、比較例3の正極活物質は0.91の包絡度を、比較例4の正極活物質は0.92の包絡度を、比較例5の正極活物質は0.96の包絡度を得た。
【0107】
前記結果から、実施例1および2のようにコート層を形成する場合、包絡度が0.9以下に減少することが分かる。反面、比較例の場合、包絡度は依然として0.9以上であることを確認することができる。
【0108】
<実験例3>
前記実施例1~2、比較例1~5で製造された前記正極活物質と、バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が混合物全体を基準として3重量%になるようにThermo ScientificのRheomix 300TM押出機に投入して、常温で、最大トルク180NNと50rpm下に、約5分間混合を行った。
【0109】
前記混合物をラップカレンダー(ロール直径:100mm、ロール温度:85℃,10rpm)に投入して厚さ250μm、空隙率35~40%のフリースタンディングフィルムを製造した。
【0110】
フリースタンディングフィルムの常温引張強度を下記のように測定して、その結果を下記表1に示した。
【0111】
前記引張強度は銅箔業界で機械的特性評価の規格として借用しているJIS C 6511方法によって、万能試験装置であるUTM(製造会社;ドイツZwick、モデル名;Z2.5 TN)を用いてフリースタンディングフィルムのMD方向にクロスヘッド速度(cross head speed)を50mm/minで引っ張った後、試験片の破断時点の荷重を測定した。引張強度は次の通り計算した:
引張強度(kgf/mm)=ロード(load)値(kgf)/厚さ(mm)×幅(mm)
【0112】
【表1】
【0113】
前記表1を参照すると、本発明による場合、常温引張強度が向上したことを確認することができる。これはPTFEの繊維化がよりうまく行われたことを意味する。比較例5の場合、同じ含有量、同じ順序でコートしたが、メカノフュージョン法でない単純混合で行われる場合、被膜の形態で非晶質カーボン系コート層が形成されないので、本発明による効果を発揮できないことを確認することができる。
【0114】
<実験例4>
前記フリースタンディングフィルムをローディング量が4.8mAh/cmになるように集電体であるアルミニウム箔(20μm)の一面に位置させて100℃を維持するラミネーションロールによりラミネーションして電極を製造した。
【0115】
この時、目標厚さは200μm、目標空隙率は28~30%として前記範囲内に入るようにラミネーションロールのギャップを調節した。
【0116】
前記電極と、厚さ200μmのリチウム金属を対極として、EC(エチレンカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート)=2:8である溶媒に1MのLiPFが含まれた電解液を使用してコイン型半電池を製造した。
【0117】
前記で製造したコイン型半電池を3.0~4.30Vの電圧範囲で0.1Cレートの電流条件で充放電を200回実施した後、1回放電容量に対して100回の放電容量維持率を計算してその結果を下記表2に示した。
【0118】
また、前記コイン型半電池を2Cレートの電流条件で放電を1回実施した後、0.1C放電容量に対する容量比を計算してその結果を下記表2に示した。
【0119】
【表2】
【0120】
前記表2を参照すると、本発明による方法で製造すれば、寿命特性および出力特性が改善される効果を得ることができる。比較例1の場合、導電材未使用により、比較例2の場合、コートされた活物質の表面が滑らかでPTFE繊維化が良好に行われず、比較例3および4の場合、活物質コート性の不足による表面の固まり、比較例5の場合、同じ含有量、同じ順序でコートしたが、メカノフュージョン法でない単純混合で行われる場合、被膜の形態で非晶質カーボン系コート層が形成されないので、本発明による効果を発揮できないことを確認することができる。
【0121】
本発明によれば、リチウム遷移金属酸化物の粒子表面上に被膜形態の非晶質カーボン系コート層が形成されており、前記非晶質カーボン系コート層上にカーボンナノチューブコート層が形成されている正極活物質は、これらのコート層によって導電性が向上しながらも表面凹凸が増加するので、乾式正極に使用する場合、PTFEバインダ繊維化を容易に生じさせて電極生産性を高めて電池耐久性を向上させるだけでなく、活物質間の導電パス(path)が改善されて電池抵抗が低下し、結果的にそれを含む二次電池の寿命および出力特性を向上させることができる効果がある。
図1
図2
【国際調査報告】