(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】偏波ビームの時間的/空間的分離とチャネル非・可逆性補正のための方法及びこれを用いた多重ビームアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0413 20170101AFI20231108BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20231108BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H04B7/0413 310
H04B7/06 980
H04B7/08 980
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526492
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 KR2021015886
(87)【国際公開番号】W WO2022098117
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0145879
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0150406
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨン チャン ムン
(72)【発明者】
【氏名】ミン ソン ユン
(72)【発明者】
【氏名】テ ヨル オー
(72)【発明者】
【氏名】キョン ホーン クォン
(57)【要約】
【課題】互いに異なる2種の直交偏波を利用し、偏波ビームを時間的かつ空間的に分離する一方、時間的な偏波分離によって発生するチャネル非・可逆性を補正することのできる多重ビームアンテナ装置を提供する。
【解決手段】本発明は、偏波ビームの時間的/空間的分離とチャネル非・可逆性補正方法及びこれを利用した多重ビームアンテナ装置に関する。本発明の一側面によれば、多重ビームアンテナ装置は、複数の送信ビームを形成するために用いられる送信アンテナエレメントと、複数の受信ビームを形成するために用いられる受信アンテナエレメントとを含むアレイアンテナを備える。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種の直交偏波を利用する多重ビームアンテナ装置によって実行される方法であって、
前記多重ビームアンテナ装置は、複数の送信ビームを形成するために用いられる送信アンテナエレメントと、複数の受信ビームを形成するために用いられる受信アンテナエレメントとを含むアレイアンテナを備え、
前記方法は、
前記複数の送信ビームの各々に関連する一対の送信チャネルに対応する送信信号から複数の送信偏波成分を生成するステップと、
空間的に隣接する前記送信ビームが互いに異なる直交偏波を有するように、各送信ビームに関連する一対の送信チャネルに対し、前記複数の送信偏波成分のうちの第1の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分又は第2の直交偏波に対応する、一対の送信偏波成分を出力するステップと、
各受信ビームに関連する一対の受信チャネルに対応される受信信号から複数の受信偏波成分を生成するステップと、
各受信ビームに関連する一対の受信チャネルに対し、前記複数の受信偏波成分のうち、空間的に同じ方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波に対応する一対の受信偏波成分を出力するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分は、前記第1の直交偏波を有する前記送信アンテナエレメントから放射される場合に、前記第1の直交偏波を有する送信ビームを形成し、
前記第2の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分は、前記第1の直交偏波を有する前記送信アンテナエレメントから放射される場合に、偏波合成による前記第2の直交偏波を有する送信ビームを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各送信ビームに関連する一対の送信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正するために、前記一対の送信偏波成分のサイズ及び位相を調整するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
与えられた送信ビームの直交偏波が関連する送信アンテナエレメントの直交偏波特性と異なる場合に、前記与えられた送信ビームに関連する一対の送信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正するために、一対の送信偏波成分に対してサイズ及び位相を調整するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
各受信ビームに関連する一対の受信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正するために、前記一対の受信偏波成分のサイズ及び位相を調整するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
与えられた受信ビームに関連する受信アンテナエレメントの直交偏波特性が、空間的に同じ方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波とは異なる場合に、前記与えられた受信ビームに関連する一対の受信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正するために、一対の受信信号に対してサイズ及び位相を調整するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記送信アンテナエレメントおよび前記受信アンテナエレメントは、互いに異なる直交偏波特性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記送信アンテナエレメントおよび前記受信アンテナエレメントは、同一の直交偏波特性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
2種の直交偏波を利用する多重ビームアンテナ装置であって、
複数の送信ビームを形成するために用いられる送信アンテナエレメントと、複数の受信ビームを形成するために用いられる受信アンテナエレメントとを含むアレイアンテナと、
各送信ビームに関連する一対の送信チャネルに対応する送信信号から複数の送信偏波成分を生成する送信偏波合成部と、
空間的に隣接する送信ビームが互いに異なる直交偏波を有するように、各送信ビームに関連する一対の送信チャネルに対し、前記複数の送信偏波成分のうち第1の直交偏波または第2の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分を出力する送信偏波割り当て部と、
各受信ビームに関連する一対の受信チャネルに対応する受信信号から複数の受信偏波成分を生成する受信偏波合成部と、
各受信ビームに関連する一対の受信チャネルに対し、前記複数の受信偏波成分のうち、空間的に同じ方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波に対応する一対の受信偏波成分を出力する受信偏波割り当て部と、
を含む、多重ビームアンテナ装置。
【請求項10】
前記第1の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分は、前記第1の直交偏波を有する前記送信アンテナエレメントから放射される場合に、前記第1の直交偏波を有する送信ビームを形成し、
前記第2の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分は、前記第1の直交偏波を有する前記送信アンテナエレメントから放射される場合に、偏波合成による前記第2の直交偏波を有する送信ビームを形成する、請求項9に記載の多重ビームアンテナ装置。
【請求項11】
複数の送信チャネルに対応する複数の送信経路を形成する複数の送信RFチェーンと、
複数の受信チャネルに対応する複数の受信経路を形成する複数の受信RFチェーンと、
各送信ビームに関連する一対の送信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正するために前記一対の送信偏波成分のサイズ及び位相を調整し、各受信ビームに関連する一対の受信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正するために一対の受信信号に対してサイズ及び位相を調整する、サイズ・位相補正部とをさらに含む、請求項9に記載の多重ビームアンテナ装置。
【請求項12】
前記サイズ・位相補正部は、
与えられた送信ビームの直交偏波が関連する送信アンテナエレメントの直交偏波特性と異なる場合に、前記与えられた送信ビームに関連する一対の送信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正するために、一対の送信偏波成分に対してサイズ及び位相を調整するように構成される、請求項11に記載の多重ビームアンテナ装置。
【請求項13】
前記サイズ・位相補正部は、
与えられた受信ビームに関連する受信アンテナエレメントの直交偏波特性が空間的に同じ方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波とは異なる場合に、前記与えられた受信ビームに関連する一対の受信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正するために一対の受信信号に対してサイズ及び位相を調整するように構成される、請求項11に記載の多重ビームアンテナ装置。
【請求項14】
前記送信アンテナエレメントおよび前記受信アンテナエレメントは、互いに異なる直交偏波特性を有する、請求項9に記載の多重ビームアンテナ装置。
【請求項15】
前記送信アンテナエレメントおよび前記受信アンテナエレメントは、同一の直交偏波特性を有する、請求項9に記載の多重ビームアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にセルラー通信システムで用いられるアンテナ装置に関し、さらに具体的に、偏波ビーム(polarized beams)を時間的に、そして空間的に分離(separation)し、偏波分離によって発生するチャネル非・可逆性を補正(correction)する方法及びこれを用いたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この部分に記載された内容は単に本発明の背景情報を提供するだけで従来技術を構成するものではない。
【0003】
4G(4世代)通信システムの商用化以来、増加傾向にある無線データトラフィック需要を満たすために、改善された5G(5世代)通信システム又はプレ5G通信システムを開発するための努力がなされている。
【0004】
このため、5G通信システム又はプレ5G通信システムは、4Gネットワーク以降(Beyond 4G Network)通信システム又はLTE(Long Term Evolution)システム以降(Post LTE)システムと呼ばれている。
【0005】
高いデータ伝送率を達成するために、5G通信システムは、超高周波(mmWave)帯域(例えば、60ギガ(60GHz)帯域)での具現が考慮されている。超高周波帯域での電波の経路損失を緩和し、電波の伝送距離を増加させるために、5G通信システムでは、ビームフォーミング(beamforming)、マシブ多重入出力(massive MIMO)、全次元多重入出力(Full Dimensional MIMO、FD-MIMO)、アレイアンテナ(array antenna)、及び大規模アンテナ(large scale antenna)技術が議論されている。
【0006】
さらに、システムのネットワーク改善のために、5G通信システムでは、進化された小型セル、改善された小型セル(advanced small cell)、クラウド無線アクセスネットワーク(cloud radio access network、cloud RAN)、超高密度ネットワーク(ultra-dense network)、機器間通信(Device to Device communication、D2D)、無線バックホール(wireless backhaul)、モバイルネットワーク(moving network)、協力通信(cooperative communication)、CoMP(Coordinated Multi-Points)、及び受信干渉除去(interference cancellation)などの技術開発が行われている。
【0007】
この他にも、5Gシステムでは、進歩されたコーディング変調(Advanced Coding Modulation、ACM)方式であるFQAM(Hybrid Frequency Shift Keying and Quadrature Amplitude Modulation)及びSWSC(Sliding Window Superposition Coding)と、進歩された接続技術であるFBMC(Filter Bank Multi Carrier)、NOMA(Non Orthogonal Multiple Access)、及びSCMA(Sparse Code Multiple Access)などが開発されている。
【0008】
5G通信システムは、超高周波帯域(例えば、mmWave)の特性による経路損失の問題を克服するために、ビームフォーミング技法を用いて信号利得を高めるように運用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一側面は、2種の異なる直交偏波を用い、偏波ビームを時間的かつ空間的に分離する一方、偏波分離によって発生するチャネル非・可逆性を補正する方法及びこれを用いた多重ビームアンテナ装置を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によると、2種の直交偏波を利用する多重ビームアンテナ装置によって実行される方法を提供する。前記多重ビームアンテナ装置は、複数の送信ビームを形成するために用いられる送信アンテナエレメントと、複数の受信ビームを形成するために用いられる受信アンテナエレメントとを含むアレイアンテナを備える。
【0011】
前記方法は、各送信ビームに関連された一対の送信チャネルに対応される送信信号から複数の送信偏波成分を生成するステップと、空間的に隣接する送信ビームが互いに異なる直交偏波を有するように、各送信ビームに関連された一対の送信チャネルに対し、前記複数の送信偏波成分のうち、第1の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分又は第2の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分を出力するステップを含む。
【0012】
一実施例で、前記方法は、チャネル非・可逆性を補正するために、各受信ビームに関連された一対の受信チャネルに対応される受信信号から複数の受信偏波成分を生成するステップと、各受信ビームに関連された一対の受信チャネルに対し、前記複数の受信偏波成分のうち、空間的に同じ方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波に対応する、一対の受信偏波成分を出力するステップをさらに含む。代替的に、前記方法は、チャネル非・可逆性を補正するために、各受信ビームに関連された一対の受信チャネルに対応する受信信号から、各受信ビームと空間的に同じ方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波に相応する偏波変換された信号を生成するステップをさらに含む。
【0013】
本発明の他側面によると、2種の直交偏波を利用する多重ビームアンテナ装置を提供する。前記アンテナ装置は、複数の送信ビームを形成するために用いられる送信アンテナエレメントと、複数の受信ビームを形成するために用いられる受信アンテナエレメントとを含むアレイアンテナと、各送信ビームに関連された一対の送信チャネルに対応される送信信号から複数の送信偏波成分を生成する送信偏波合成部と、空間的に隣接する送信ビームが互いに異なる直交偏波を有するように、各送信ビームに関連された一対の送信チャネルに対し、前記複数の送信偏波成分のうち、第1の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分又は第2の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分を出力する送信偏波割り当て部を含む。
【0014】
一実施例で、前記アンテナ装置は、チャネル非・可逆性を補正するために、各受信ビームに関連された一対の受信チャネルに対応される受信信号から複数の受信偏波成分を生成する受信偏波合成部と、各受信ビームに関連された一対の受信チャネルに対し、前記複数の受信偏波成分のうち、空間的に同じ方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波に対応する、一対の受信偏波成分を出力する受信偏波割り当て部をさらに含む。代替的に、前記アンテナ装置は、各受信ビームに関連された一対の受信チャネルに対応する受信信号から、各受信ビームと空間的に同じ方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波に相応する偏波変換された信号を生成する偏波変換部をさらに含む。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、送信アンテナエレメントと受信アンテナエレメントを含むアレイアンテナを採用することにより、本発明に係るアンテナ装置は、TDD(Time Division Duplexing)を具現するにあたって信号損失及びNF(noise figure、ノイズ指数)を悪化させ得るスイッチング動作を必要としない。
【0016】
さらに、本発明に係るアンテナ装置は、多重ビームを空間上で多様な方向に分離することができることから、セルカバレッジを拡張させることができ、多重ビームの偏波分離(すなわち、空間的な偏波分離)を通じてビーム間の相関関係を減少させることができるため、通信品質をさらに向上させることができる。
【0017】
さらに、本発明に係るアンテナ装置は、受信アンテナエレメントから入力される受信信号に対して偏波変換(conversion)を行う、もしくは偏波合成(composition)及び偏波割り当てを実行することで、空間的かつ時間的な偏波分離によって発生するアップリンクチャネルとダウンリンクチャネルとの間のチャネルの非・可逆性を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、従来のアンテナ装置で発生するNF劣化問題を説明するための概念図である。
【
図2a】
図2aは、本開示の技術を具現することができるアンテナ装置の例示的な構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2b】
図2bは、本開示の技術を具現することができるアンテナ装置の例示的な構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2c】
図2cは、本開示の技術を具現することができるアンテナ装置の例示的な構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2d】
図2dは、本開示の技術を具現することができるアンテナ装置の例示的な構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3a】
図3aは、本発明のアンテナシステムで採用されるアンテナモジュールについての多様な例を説明するための図である。
【
図3b】
図3bは、本発明のアンテナシステムで採用されるアンテナモジュールについての多様な例を説明するための図である。
【
図3c】
図3cは、本発明のアンテナシステムで採用されるアンテナモジュールについての多様な例を説明するための図である。
【
図3d】
図3dは、本発明のアンテナシステムで採用されるアンテナモジュールについての多様な例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る1つの送信アンテナエレメントに関連して実行される偏波合成及び偏波割り当てを説明するための概念図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る1つの受信アンテナエレメントに関連して実行される偏波合成及び偏波割り当てを説明するための概念図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係るアンテナ装置にて送信信号に対する偏波合成及び偏波割り当てを実行するための例示的な構造を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例に係るアンテナ装置が提供する水平方向と垂直方向での空間的な偏波分離を説明するための概念図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例に係るアンテナ装置が提供する時間的な偏波分離を説明するための概念図である。
【
図9】
図9は、信号の送信と信号の受信との間で異なる二重偏波を使用する場合に発生し得るチャネル非・可逆性(channel non-reciprocity)問題を説明するための概念図である。
【
図10a】
図10aは、本発明の一実施例に係る偏波変換を用いてチャネル非・可逆性を補正する方法を説明するための概念図である。
【
図10b】
図10bは、本発明の一実施例に係る偏波変換を用いてチャネル非・可逆性を補正する方法を説明するための概念図である。
【
図11a】
図11aは、本発明の一実施例に係る偏波合成及び偏波割り当てを用いてチャネル非・可逆性を補正する方法を説明するための概念図である。
【
図11b】
図11bは、本発明の一実施例に係る偏波合成及び偏波割り当てを用いてチャネル非・可逆性を補正する方法を説明するための概念図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施例に係るアンテナ装置にて送信偏波合成キャリブレーションを実行するための例示的な構造を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施例に係る4重偏波を利用する多重ビームアンテナ装置によって実行される方法を図示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一部の実施例を例示的な図面を通して詳しく説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたり、同一の構成要素に対しては、たとえ他の図面に表示されても可能な限り同一の符号を有するようにしていることに留意されたい。なお、本発明を説明するにあたり、関連する公知の構成又は機能に関する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、その詳しい説明は省く。
【0020】
また、本発明の構成要素を説明するにあたり、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を用いる場合がある。この用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものであり、その用語によって該当構成要素の性質、順番、又は順序などが限定されない。本明細書全体にて、ある部分がある構成要素を「含む」、「備える」と言うとき、これは、特に逆の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。さらに、本明細書に記載の「…部」、「モジュール」などの用語は、少なくとも1つの機能又は動作を処理する単位を意味し、これはハードウェアやソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせで具現される。
図1は、従来のアンテナ装置で発生するNF劣化問題を説明するための概念図である。
【0021】
図1に示すTDD方式で動作する従来のアンテナ装置は、アンテナ(ANT)、フィルタ(Filter)、スイッチ(S/W)、PA、LNA、ADコンバータ(図示せず)及び、(FPGAで具現される)デジタル 信号処理器(図示せず)などを含むように構成される。
【0022】
アンテナANTは、複数個のアンテナモジュールがアレイ(array)された形態を有し、各アンテナモジュールは、互いに垂直な幾何学的方向(orientation)を有する(すなわち、互いに直交する偏波特性を有する)2つの放射素子(radiators)で構成されたデュアル偏波アンテナ(dual polarized antenna)モジュールである。アンテナモジュールは、スイッチ(S/W)が送信ライン(Txライン)につながると信号の送信機能を実行するようになり、スイッチ(S/W)が受信ライン(Rxライン)につながると信号の受信機能を実行するようになる。したがって、
図1のアンテナ装置は、スイッチ(S/W)の選択的なスイッチング動作によってTDD機能を具現する。
【0023】
このようなスイッチング動作により、送信信号又は受信信号で信号損失が発生する可能性があり、受信信号がケーブルを介して装置内の後段に伝達される過程でも信号損失が発生する可能性がある。このような信号損失は、ノイズ指数(Noise Figure、NF)を悪化させ、無線通信システムのアップリンクカバレッジ(coverage)拡張を制限する問題を引き起こす可能性がある。
【0024】
本発明に係る多重ビームアンテナ装置は、一対の二重偏波アンテナエレメントを有するアンテナモジュールからなるアレイアンテナを採用し、一方の二重偏波アンテナエレメントを、無線信号を送信するために使用し、他方の二重偏波アンテナエレメントを、無線信号を受信するために使用する。したがって、本発明に係る多重ビームアンテナ装置は、TDDを実施する際に信号損失及びノイズ指数を悪化させ得るスイッチング動作を必要としない。
【0025】
さらに、本発明に係る多重ビームアンテナ装置は、空間的に隣接する送信ビームが互いに異なる直交偏波を有するように、2種(two kinds)の直交偏波を送信チャネルに割り当てることによって、2種の直交偏波を空間的に分離することができる。
【0026】
図2aないし
図2dは、本開示の技術を具現することができる多重ビームアンテナ装置の例示的な構成を概略的に示すブロック図である。
【0027】
多重ビームアンテナ装置10は、M×N多重入出力(MIMO)アンテナであってよい。したがって、アンテナ装置10は、M個の送信チャネルとM個の受信チャネルを有する。アンテナ装置10は、デジタル処理部110、RF処理部120、及びアレイアンテナ(array antenna)130を含む。
【0028】
図2a及び
図2bに例示するように、デジタル処理部110は、フロントホールインターフェース1110、多重ビーム形成部1120、偏波合成部1130、偏波割り当て部1140、サイズ・位相補正部1150、及び偏波変換部1160を含むように構成される。代案として、
図2c及び
図2dに例示されるように、デジタル処理部110は、偏波変換部1160の代わりに偏波合成部1170及び偏波割り当て部1180を含むように構成されてもよい。
【0029】
RF処理部120は、複数の送信RFチェーン(radio frequency chain)1210、1210-1~1210-M)及び複数の受信RFチェーン1220、1220-1~1220-Mを含むように構成される。
【0030】
図2aないし
図2dのアンテナ装置10の構成は、明確にするためにのみ描かれた例示的な構成であることを理解されたい。他の実施例で、アンテナ装置10の他の任意の適切なコンポーネントをさらに用いてもよい。そのようなアンテナ装置10のそれぞれのコンポーネントは、一般的に専用のハードウェアを用い、例えば1つ以上のオンデマンド集積回路(ASIC)、無線周波数集積回路(RFIC)、及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を用いて具現される。あるいは、一部のコンポーネントは、プログラマブルハードウェアで実行されるソフトウェアを用いて、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いて具現される。
【0031】
アレイアンテナ130は、複数の行と複数の列に配列された(arranged)複数のアレイエレメント(array elements)あるいはアンテナエレメントを含んでもよい。一部の実施例で、各アレイエレメントは、二重偏波(dual polarization)特性を有する二重偏波(dual polarized)アンテナエレメントであってよい。複数のアレイエレメントのそれぞれは、送信アンテナエレメントと受信アンテナエレメントに区分される。送信アンテナエレメントは信号の送信に用いられ、受信アンテナエレメントは信号の受信に用いられる。送信アンテナエレメントの直交偏波特性と受信アンテナエレメントの直交偏波特性は互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。他の一部の実施例で、各アレイエレメントは、四重偏波(quadruple polarization)特性を有する四重偏波(quadruple polarized)アンテナエレメントであってもよい。アレイエレメントの偏波特性と構造については、
図3aないし
図3dを参照して後述する。
【0032】
アンテナ装置10は、アレイアンテナ130が提供する直交偏波特性を利用して偏波ダイバーシティ(polarization diversity)を具現することができる。アンテナ装置10は、各送信ビームに関連する2つの送信チャネル(あるいは送信信号)に二重直交偏波を割り当てることができる。送信チャネルに割り当てられた直交偏波は、アレイアンテナ130に含まれた送信アンテナエレメントの二重直交偏波特性と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
アンテナ装置10は、偏波合成を通じて送信アンテナエレメントの直交偏波特性とは異なる直交偏波を有する送信ビームを生成することができ、受信信号に対する偏波合成を通じて受信アンテナエレメントの直交偏波特性とは異なる直交偏波に対応する受信ビームを形成することができる(すなわち、受信アンテナエレメントの直交偏波特性とは異なる直交偏波に対応する信号成分を生成することができる)。
【0034】
アンテナ装置10は、空間的に隣接するビームが互いに異なる直交偏波を有するように、2種の直交偏波を送信チャネルに割り当てることによって、2種の直交偏波を空間的に分離することができる。
【0035】
以下の説明は、2種の直交偏波が±45度直線偏波からなる直交偏波と水平/垂直(vertical/horizontal:V/H)直線偏波からなる直交偏波である場合を前提としているが、本開示の 技術は、このような直交直線偏波と、左円/右円偏波からなる直交円形偏波の組み合わせにも適用可能である。
【0036】
以下の説明では、送信経路に位置する偏波合成部1130と偏波割り当て部1140は、それぞれ送信偏波合成部1130と送信偏波割り当て部1140とも呼ばれ、受信経路に位置する偏波合成部1170と偏波割り当て部1180は、それぞれ受信偏波合成部1170と受信偏波割り当て部1180とも呼ばれる。
【0037】
送信信号処理
M個の送信チャネルの送信信号は、多重ビーム形成部1120、偏波合成部1130、偏波割り当て部1140、サイズ・位相補正部1150及び送信RFチェーン1210-1~1210-M)からなる送信経路を経てアレイアンテナ130を介してビームの形態で放射される。送信チャネルの各々は対応する送信経路を有する。ここで、送信信号はダウンリンク(downlink)信号と呼ばれることもある。送信経路は、送信信号がアンテナ装置10内で進行する経路を指す。したがって、送信経路は、「送信信号が進行する経路」又は「送信信号が処理される経路」と呼ばれることもある。
【0038】
まず、フロントホールインターフェース1110を介して入力された送信信号は偏波合成部1130に入力されて偏波合成プロセスを経る。偏波合成部1130は、後述する送信アンテナエレメントを介して放射される一対の送信信号毎に4つの偏波成分を合成し、これらを偏波割り当て部1140に出力することができる。偏波合成部1130から出力される偏波成分を「偏波信号」と呼ばれることもある。注目すべきは、偏波合成部1130で合成された偏波成分が後続のコンポーネントを経てアレイアンテナ130に供給(feeding)されて自由空間上に放射されることによって実質的な偏波合成がなされることである。
【0039】
偏波割り当て部1140は、空間的に隣接する送信ビームが互いに異なる直交偏波を有するように、各送信ビームと関連された2つの送信チャネル(又は2つの送信信号)に対して割り当てる直交偏波を決定することができる。偏波割り当て部1140は、決定された直交偏波に対応し、偏波合成部1130で合成された4つの偏波成分の一部を2つの送信経路に出力することができる。各送信経路に出力される偏波成分は、「送信信号の偏波成分(偏波信号)」あるいは「送信チャネルの偏波成分(偏波信号)」あるいは「送信偏波成分(送信偏波信号)」と称されることもある。送信ビームの直交偏波は、偏波割り当て部1140から出力された偏波成分と送信アンテナエレメントの直交偏波特性に応じて決定される。偏波合成及び偏波割り当てによる送信アンテナエレメントで発生する偏波合成については、
図4を参照して後述する。
【0040】
送信RFチェーン1210-1~1210-M間のサイズ(amplitude)及び位相(phase)特性の偏差を補償するために、各送信信号の偏波成分は送信RFチェーン1210-1~1210-Mに到達される前にサイズ・位相補正部1150に入力される。RF送信経路のサイズ及び位相特性は、RF信号が、送信RFチェーンが提供するRF送信経路を移動することによって受けることになるサイズの変化と位相の変化に関する。
【0041】
サイズ・位相補正部1150は、送信RFチェーン1210-1~1210-M間のサイズ(amplitude)と位相特性の偏差を補償する機能を行う。サイズ特性の偏差はビームフォーミングに与える影響が小さいため、一般に、すべての経路に対して位相のみを同様に補正(calibration)することが一般的である。しかしながら、本発明に係るアンテナアレイ130で発生する偏波合成の精度は、合成される無線信号のサイズと位相に大きく依存するので、このようなサイズ及び位相の補正は偏波合成の精度を高める。
【0042】
サイズ・位相補正プロセスを経た送信信号の偏波成分は、送信RFチェーン1210でアナログ信号に変換されRF信号処理されてもよい。送信RFチェーン1210は、DAC(digital to analog converter)、フィルタ、周波数上向変換のためのミキサ(mixer)、電力増幅器(power amplifier、PA)などを含むように構成される。
【0043】
送信RFチェーン1210でRF信号処理されアナログに変換された送信信号は、アレイアンテナ130を介してビームの形態で放射される。
【0044】
多重ビーム形成部1120は、アレイアンテナ130に多重ビームが形成されるように送信信号をプリコーディング(precoding)することができる。多重ビーム形成部1120は、重みベクトル(又はプリコーディング行列)がベースバンドで用いられるのか、それともRF帯域で用いられるのかによって、アンテナ装置10の送信経路上の位置が変わってくる。
【0045】
まず、
図2aあるいは
図2cの例のように、多重ビーム形成部1122は、信号の送信経路にて送信偏波合成部1130に先行して位置することができる。多重ビーム形成部1122はデジタルビームフォーミングを行う。この場合、(ベースバンド)デジタル送信信号は、多重ビーム形成部1122で重みベクトル(weight vector)又はプリコーディング行列が適用されて複数のプリコーディングされた信号に変換される。
【0046】
デジタル送信信号は、適用された重みベクトルに応じて位相(phase)及び振幅(amplitude)が互いに異なる複数の信号に分岐される。さらに、分岐された信号は、アレイアンテナ130を介して特定の角度又は方向(通信リソースを集中しようとする方向)で補強干渉することによってビームの形態で放射される。したがって、デジタル送信信号に適用される重みベクトルの値に応じてビームの方向と形状が決定される。
【0047】
次に、
図2bあるいは
図2dの例のように、多重ビーム形成部1124は、信号の送信過程で送信RFチェーン1210の以降に配置する。したがって、多重ビーム形成部1124はアナログビームフォーミングを行うことができる。この場合、多重ビーム形成部1124は、各送信RFチェーン1210から受信されるアナログ信号を複数の経路に分岐し、分岐された信号のそれぞれの位相及び振幅を調節することができる。ビーム形成部1124は、分岐された信号のそれぞれの位相を調節する多数の位相シフタ(phase shifter)及び、分岐された信号のそれぞれの振幅を調節する多数の電力増幅器を含むように構成される。つまり、アナログドメインで重みベクトルを位相シフタと電力増幅器が処理するようになる。位相及び振幅が調節されたアナログ信号は、アレイアンテナ130を介して特定の角度又は方向に補強干渉することによってビームの形態で放射される。ここで、送信RFチェーン1210は、その機能が実質的にアナログコンポーネントからなる多重ビーム形成部1224によっても遂行され、アンテナ装置10から除去されてもよい。
【0048】
受信信号処理
M個の受信チャネルに対応する受信信号(又はアップリンク信号)は、アレイアンテナ130を介して受信された後に、受信RFチェーン1220、サイズ・位相補正部1150、偏波変換部1160(代替的に、受信偏波合成部1170、受信偏波割り当て部1180)及び多重ビーム形成部1120からなる受信経路を介して処理される。受信チャネルの各々は対応する受信経路を有する。ここで、受信信号はアップリンク(uplink)信号とも呼ばれる。受信経路は、受信信号がアンテナ装置10内で進行する経路を指す。したがって、受信経路は、「受信信号が進行する経路」又は「受信信号が処理される経路」と称されることもある。
【0049】
アレイアンテナ130を介して受信されたアナログ受信信号は、対応する受信RFチェーン1220-1~1220-MでRF信号処理される。各受信RFチェーン1220は、ADC(analog to digital converter)、フィルタ、周波数下向変換のためのミキサ、低ノイズ増幅器(low noise amplifier、LNA)などを含むように構成される。
【0050】
受信RFチェーン1220を介してデジタル信号に変換された受信信号は、サイズ・位相補正部1150で受信RFチェーン1220-1~1220-M間のサイズ及び位相特性の偏差を補正する過程を経る。
【0051】
同じ空間方向に向かって形成される送信ビームと受信ビームに対し、(送信偏波割り当て部1140の直交偏波割り当てによって変更される)送信ビームの直交偏波は(受信アンテナエレメントの直交偏波特性によって定義される)受信信号の直交偏波と同じでもよく、異なっていてもよい。後述するように、送信ビームの直交偏波が受信信号の直交偏波と異なる場合、アップリンクとダウンリンクとの間で無線チャネル特性が異なるようになり、それによってダウンリンク/アップリンクチャネル可逆性が成立されなくなる。
【0052】
図2a及び
図2bに例示されたように、アンテナ装置10は、偏波変換を利用してチャネルの不・可逆性を補正する偏波変換部1160を含む。偏波変換部1160は、サイズ・位相補正部1150から出力された受信信号に対して偏波変換を行い、送信ビームの直交偏波と同じ直交偏波を有する偏波変換された信号を出力する。
【0053】
例えば、送信ビームが±45度の直交偏波を有し、受信アンテナエレメントがV/H直交偏波特性を有する場合に、偏波変換部1160は、V/H偏波の受信信号に偏波変換を行って送信ビームの直交偏波と同じ直交偏波(±45度)を有する偏波変換された信号を出力することができる。他の例として、送信ビームがV/H直交偏波を有し、受信アンテナエレメントがV/H直交偏波特性を有する場合に、送信ビームの直交偏波と受信信号の直交偏波が同一であることから、偏波変換部1160は、 受信信号に対して偏波変換を行わないことがある。
【0054】
代替的に、
図2c及び
図2dに例示されたように、アンテナ装置10は、偏波合成及び偏波割り当てを利用してチャネル非・可逆性を補正する偏波合成部1170と偏波割り当て部1180を含む。
【0055】
偏波合成部1170は、各受信アンテナエレメントを介して受信された一対の受信信号毎に4つの偏波成分を合成し、これらを偏波割り当て部1180に出力することができる。偏波合成部1170から出力される偏波成分は「偏波信号」と称されることもある。
【0056】
偏波割り当て部1180は、各受信アンテナエレメントと関連された2つの受信チャネル(又は2つの受信信号)に対して割り当てる直交偏波を決定する。偏波割り当て部1180は、2つの対応する送信チャネルに設定された直交偏波(あるいは送信ビームの直交偏波)と同じ直交偏波を2つの受信チャネルに割り当てる。
【0057】
偏波割り当て部1180は、決定された直交偏波に対応し、偏波合成部1170で合成された4つの偏波成分のうち、フロントホールインターフェース1110を介してDU(digital unit)に伝送される2つの偏波成分を出力できる。各受信チャネルに対して割り当てられた偏波成分は、「受信チャネルの偏波成分(偏波信号)」あるいは「受信信号の偏波成分(偏波信号)」あるいは「受信偏波成分(受信偏波信号)」と称される。
【0058】
例えば、2つの送信チャネルに±45度直交偏波が設定され(したがって、送信ビームが±45度直交偏波を有し)、受信アンテナエレメントがV/H直交偏波特性を有する場合に、偏波割り当て部1180は、偏波合成部1170で合成された4つの偏波成分のうち、±45直交偏波に対応する2つの偏波成分を出力する。別の例として、2つの送信チャネルにV/H直交偏波が設定され(したがって、送信ビームがV/H直交偏波を有し)、受信アンテナエレメントがV/H直交偏波特性を有する場合、偏波割り当て部1180は、偏波合成部1170で合成された4つの偏波成分のうち、V/H直交偏波に対応する2つの偏波成分を出力する。
【0059】
チャンネルの非・可逆性とこれを補正するための偏波変換部1160の動作と、偏波合成部1170及び偏波割り当て部1180の動作に関する詳しい説明は、
図9、
図10a、
図10b、
図11a及び
図11bを参照して後述する。
【0060】
受信信号は、関連された受信アンテナエレメントに対応される、位相及び振幅が異なる複数の信号を含み得る。多重ビーム形成部1120は、複数の信号の位相及び振幅を調整した後、調整された信号を加算して受信信号を生成又は復元することができる。この過程は、多重ビーム形成部1120が送信信号から位相と振幅が互いに異なる複数個の信号を形成する過程と逆の過程であると理解することができる。このために、
図2a及び
図2cに示すように、多重ビーム形成部1122は、受信経路にて偏波合成部1160及び受信偏波割り当て部1180以降に位置してデジタルビームフォーミングを行うのか、あるいは
図2b 及び
図2dに示すように、多重ビーム形成部1122が、受信経路にてアレイアンテナ130と受信RFチェーン1220との間に位置してアナログビームフォーミングを行うのかである。
図2bで、受信RFチェーン1220は、その機能が実質的にアナログコンポーネントで構成された多重ビーム形成部1224によっても実行され、アンテナ装置10から除去されてもよい。
【0061】
DU及びRU
一方、いわゆる「スタンドアロン基地局」は、デジタルユニット(digital unit、DU)及びラジオユニット(radio unit、RU)のそれぞれに対応する信号処理機能が1つの物理的システム内に含まれ、1つの物理システムがサービス対象地域に設置される。これに対し、クラウド無線接続網(Cloud Radio Access Network、C‐RAN)アーキテクチャによれば、DUとRUが物理的に分離され、RUのみがサービス対象地域に設置され、中央集中化された(centralized)DUであるBBUプールがそれぞれの独立したセルを形成する複数のRUに対する制御管理機能を有する。
【0062】
DUは、デジタル信号処理及びリソース管理制御機能を担う部分であり、バックホール(backhaul)を介してコアネットワークにつながる。RUは無線信号処理機能を担う部分であり、DUから受信したデジタル信号を周波数帯域に応じて無線周波数信号に変換して増幅し、アンテナで受信されたRF信号をデジタル信号に変換してDUに伝送する。
【0063】
アンテナ装置10は、DU及びRUが1つの物理的システムに含まれたスタンドアロン基地局に設置されてもよく、DU及びRUが物理的に分離されたC RAN構造でのRUに設置されてもよい。以下では、アンテナ装置10がC-RAN構造でのRUに設置される例を中心として説明する。
【0064】
ベースバンド信号は、スクランブリングプロセス、変調プロセス、レイヤマッピングプロセスのようなベースバンド処理を経た信号である。スクランブリングプロセスは、基地局又は端末を区別するために、スクランブル信号を用いてベースバンド信号を暗号化するプロセスに該当する。変調プロセスは、スクランブリングされた信号を複数個のモジュレーション(変調)シンボルに変調するプロセスに該当する。スクランブリングされた信号は変調マッパー(図示せず)に入力され、信号の種類及び/又はチャネル状態に応じてBPSK(binary phase shift keying)、QPSK(quadrature phase shift keying)、又は16QAM/64QAM(quadrature amplitude modulation)方式を介して変調される。レイヤマッピングプロセスは、信号をアンテナごとに分離するために、変調シンボルを1つ以上の伝送レイヤにマッピングするプロセスに該当する。変調プロセスを介して得られた変調シンボルに対し、この変調シンボルをリソースエレメントにマッピングするプロセスがさらに実行される。
【0065】
アンテナ装置10がC-RAN構造のRUに設置される場合には、上記プロセスは中央集中化されたDUで実行される。一方、アンテナ装置10がスタンドアロン基地局に設置される場合には、上記のプロセスが基地局内DUで行われる。
【0066】
DUとRUとの間の信号又はデータの交換は、フロントホール(fronthaul)又はフロントホールリンク(fronthaul link)を介して行われる。フロントホールリンクは、セルラー無線接続網にてDUとRUとの間をつなぐリンクである。アンテナ装置10のフロントホールインターフェース1110は、CPRI(Common Public Radio Interface)、eCPRI(enhanced CPRI)、ORI(Open Radio Equipment Interface)、OBSAI(Open Base Station Architecture Initiative)などの標準に適合するように具現される。
【0067】
本発明のアンテナ装置10がRUで具現される場合、アンテナ装置10は、デジタル処理部110、RF処理部120及びアレイアンテナ130に区分される。
【0068】
RF処理部120は、送信信号と受信信号に対するアナログ信号処理を担当する。RF処理部120は、
図2aに示すようにRFチェーン1210、1220を含むように構成されるか、
図2bに示すようにRFチェーン1210、1220及び多重ビーム形成部1124を含むように構成されるかである。
【0069】
デジタル処理部110は、送信信号と受信信号に対するデジタル信号処理を担当する。デジタル処理部110は、デジタルフロントエンド(digital front end、DFE)で具現される。DFEは、既存のアナログ機能ブロックをデジタル信号処理(digital signal processing 、DSP)ブロックに置き換えたことを意味する。デジタル処理部110がDFEで具現される場合には、設計消費時間、電力消費及び面積を減少させることができるだけでなく、多重モード、多重バンドをサポートできる流動性を確保できるようになる。
【0070】
デジタル処理部110は、偏波変換された信号に対してIFFT(inverse fast fourier transform)演算とFFT演算をさらに実行することができる。また、デジタル処理部110は、シンボル間干渉(inter-symbol interference、ISI)を防止するために保護区間(guard interval)を挿入することができる。このために、デジタル処理部110は、IFFT部(図示せず)/FFT部(図示せず)とCP(cyclic prefix、図示せず)をさらに含むように構成される。
【0071】
アレイアンテナのアンテナエレメント
図3aないし
図3dは、本発明のアンテナシステムのアレイアンテナ130に採用され得るアンテナモジュール1310の多様な構造と直交偏波特性を説明するための図である。
【0072】
図3aないし
図3dに示すように、アンテナモジュール1310は、送信用アンテナに該当する送信アンテナエレメント1312及び、受信用アンテナに該当する受信アンテナエレメント1314のペアで構成される。送信アンテナエレメント1312は送信ラインTx1、Tx2につながって信号の送信に用いられ、受信アンテナエレメント1314は受信ラインRx1、Rx2につながって信号の受信に用いられる。
【0073】
送信アンテナエレメント1312は、互いに直交する偏波特性を有する2つの放射素子を含む二重偏波アンテナエレメントであり、受信アンテナエレメント1314も互いに直交する偏波特性を有する2つの放射素子を含む二重偏波アンテナエレメントである。
【0074】
送信アンテナエレメント1312の直交偏波特性と受信アンテナエレメント1314の直交偏波特性は異なってもよい(例えば、
図3aの(b)及び(c)参照)。例えば、送信アンテナエレメント1312に含まれた放射素子はそれぞれ+45度及び-45度の偏波特性を有し、受信アンテナエレメント1314に含まれた放射素子はそれぞれV及びHの偏波特性を有する。別の例として、送信アンテナエレメント1312に含まれた放射素子はそれぞれV及びHの偏波特性を有し、受信アンテナエレメント1314に含まれた放射素子はそれぞれ+45度及び-45度の偏波特性を有する。すなわち、アンテナモジュール1310は、送信アンテナエレメント1312の二重直交偏波(dual orthogonal polarizations)と、受信アンテナエレメント1314の二重直交偏波を含む、2種(two kinds)の二重直交偏波特性を提供できる。
【0075】
送信アンテナエレメント1312の直交偏波特性と受信アンテナエレメント1314の直交偏波特性は互いに同一であってもよい(
図3a(a)及び(d)参照)。このようなアンテナモジュール1310が採用された実施例で、
図4を参照して後述するように、送信ラインTx1、Tx2を介して伝達される送信信号の偏波成分に依存し、送信アンテナエレメント1312 から放射されるビームは、送信アンテナエレメント1312の二重偏波特性とは異なる二重直交偏波方向を有する。したがって、
図3aの(a)及び(d)に例示されたアンテナモジュール1310を利用する場合でも、アンテナ装置10は、送信ビームと受信ビームとの間で異なる二重直交偏波を使用することができる。
【0076】
図3aに示すアンテナモジュール1310で、送信アンテナエレメント1312を構成する2つの放射素子は第1の交差点で互いに交差するように配置され、受信アンテナエレメント1314を構成する放射素子は第2の交差点で 互いに交差するように配置される。第1の交差点と第2の交差点との間の距離が小さくなるほど、アンテナモジュール1310が占める面積の効率性が高くなる。
【0077】
図3bを参照すると、受信アンテナエレメント1314を構成する一対の放射素子が、(1)送信アンテナエレメント1312の左側及び上側に隣接して配置されるか(
図3b(a)参照)、(2)受信アンテナエレメント1312の左側及び下側に隣接して配置されるか(
図3bの(b)参照)、(3)送信アンテナエレメント1312の右側及び上側に隣接して配置されるか(
図3bの(c)参照)、(4)送信アンテナエレメント1312の右側及び下側に隣接して配置(
図3bの(d)参照)されるかである。
【0078】
図3cを参照すると、送信アンテナエレメント1312を構成する一対の放射素子が、(1)受信アンテナエレメント1314の左上側及び左下側に隣接して配置されるか(
図3cの(a)参照)、(2)送信アンテナエレメント1314の左下側及び右下側に隣接して配置されるか(
図3cの(b)参照)、(3)受信アンテナエレメント1314の左上側及び右上側に隣接して配置するか(
図3cの(c)参照)、(4)受信アンテナエレメント1314の右上側及び右下側に隣接して配置(
図3cの(d)参照)されるかである。
【0079】
このように、
図3b及び
図3cに示すアンテナモジュール1310は、いずれか一方のアンテナエレメント(1312又は1314)がいずれか他方のアンテナエレメント(1314又は1312)に側面に隣接して配置されているので、
図3aに示すアンテナ モジュール1310に比べて改善された面積効率性をアレイアンテナ130に提供することができる。また、面積効率性の向上は、製作、設置、メンテナンスなどの利便性につながる。
【0080】
図3dに示すアンテナモジュール1310で、送信アンテナエレメント1312を構成する2つの放射素子と、受信アンテナエレメント1314を構成する放射素子とが1つの交差点1316で互いに交差し、従って
図3dの配置は、
図3aないし
図3cの配置に比べて面積効率性が極大化される。
【0081】
さらに、
図3aないし
図3dを参照して記述された上記の説明で、送信アンテナエレメント1312の位置と受信アンテナエレメント1314の位置は互いに変わり得ることを理解しなければならない。
【0082】
偏波合成及び偏波割り当て
図4は、本発明の一実施例による1つの送信アンテナエレメントに関連して行われる偏波合成及び偏波割り当てを説明するための概念図であり、
図5は、本発明の一実施例による1つの受信アンテナエレメントと関連して行われる偏波合成及び偏波割り当てを説明するための概念図である。
【0083】
上述したように、送信偏波合成部1130は、1つの送信アンテナエレメント1312を介して送信される2つの送信信号から4つの互いに異なる偏波成分を合成して出力することができる。
【0084】
図4を参照すると、送信偏波合成部1130は、送信信号S1、S2から互いに異なる偏波成分(「S1」、「S2」、「S1+S2」、及び「S1+S2e
jπ」)を合成して出力することができる。ここで、「S1」及び「S2」は、送信アンテナエレメント1312の偏波特性と同じ偏波方向を有するビームを生成するのに用いられ、「S1+S2」と「S1+S2e
jπ」は送信アンテナエレメント1312の偏波特性とは異なる偏波方向を有するビームを生成するのに用いられる。
【0085】
送信偏波合成部1130で行われる偏波成分の合成(composition)は、下記数1の行列演算によって具現される。
【0086】
【0087】
上記の数1のうち、数2で表される行列はPVCD(polarization vector composition-decomposition)行列である。ここで、3つ目及び4つ目の偏波成分(「S1+S2」及び「S1+S2e
jπ」)のパワーが増加するのを防ぐために、PD行列の3つ目の行の元素と4つ目の行の元素にスケール係数が適用される。スケール係数は数3で表される係数である。
【数2】
【数3】
【0088】
送信偏波割り当て部1140は、送信偏波合成部1130から出力された送信信号S1、S2の4つの偏波成分のうち、送信アンテナエレメント1312の2つの放射素子を介して放射される2つの偏波成分を2つの送信経路に出力することができる。
【0089】
例えば、送信偏波割り当て部1140は、4つの偏波成分(「S1」、「S2」、「S1+S2」、「S1+S2e
jπ」)のうち、(1)「S1」及び「S2」 を出力するか(
図4の(a)参照)、(2)「S1+S2」及び「S1+S2e
jπ」を出力するか(
図4(b)参照)である。
【0090】
送信偏波割り当て部1140から出力された偏波成分に応じ、±45度直交偏波特性を有する送信アンテナエレメント1312から放射されるビームは、±45度直交偏波あるいはV/H直交偏波を有する。
【0091】
図4の(a)のように、偏波成分「S1」及び「S2」が送信チャネルに割り当てられると、+45°偏波特性を有する放射素子を介して放射される偏波成分「S1」は+45°偏波を有するビームパターンを形成し、-45°偏波特性を有する放射素子を介して放射される偏波成分「S1」は、-45°偏波を有するビームパターンを形成する。すなわち、±45゜直交偏波特性を有する送信アンテナエレメント1312は、±45゜直交偏波を有するビームパターンを形成する。
【0092】
図4の(b)のように、偏波成分「S1+S2」及び「S1+S2e
jπ」が送信チャネルに割り当てられると、+45°偏波特性を有する放射素子を介して放射される偏波成分「S1+ S2」が形成するビームと、-45°偏波特性を有する放射素子を介して放射される偏波成分「S1+S2e
jπ」が形成するビームとの間に偏波合成が発生する。
【0093】
具体的には、偏波成分「S1」の場合に、+45°偏波特性を有する放射素子を介して放射される第1のビームが+45°偏波方向(polarization orientation)を有し、-45°偏波特性を有する放射素子を介して放射される第2のビームが-45°偏波方向を有し、したがって第1のビームと第2のビームが合成されてV偏波方向を有する合成ビームが現れる。偏波成分「S2」の場合、+45°偏波特性を有する放射素子を介して放射される第3のビームが、+45°偏波方向を有し、-45°偏波特性を有する放射素子を介して放射される第4のビームが「-45°+π」偏波方向を有し、したがって第3のビームと第4のビームが合成されてV偏波方向を有する合成ビームが現れる。
【0094】
一方、受信アンテナエレメント1314が自由空間上の無線信号S1、S2を受信するときの受信信号a、bの直交偏波方向は、受信アンテナエレメント1314の直交偏波特性によって決定される。例えば、受信アンテナエレメント1314の二重偏波特性がV/H直交偏波である場合、受信信号はV/H直交偏波を有する。
【0095】
図5を参照すると、無線信号S1、S2に対し、受信アンテナエレメント1314のV偏波を有する放射素子によってキャプチャーされた受信信号aは、V偏波のS1信号成分S1(V)と、V偏波のS2信号成分S2(V)を含み、H偏波を有する放射素子によってキャプチャーされた受信信号(b)は、H偏波のS1信号成分S1(H)とH偏波のS2信号成分S2(H)を含む。
【0096】
上で説明されたように、受信偏波合成部1170は、1つの受信アンテナエレメント1314が受信した2つの受信信号a、bから互いに異なる4つの偏波成分を合成して出力することができる。受信偏波合成部1170で行われる偏波成分合成は、数1の行列演算によって具現される。
【0097】
図5に示すように、受信偏波合成部1170は、RF信号S1、S2に対する受信信号a、bから互いに異なる偏波成分(「a」、「b」、「a+b」及び「a+be
jπ」)を合成して出力することができる。ここで、「a」及び「b」は、受信アンテナエレメント1314の偏波特性と同じ偏波方向を有する偏波成分であり、「a+b」及び「a+be
jπ」は、受信アンテナエレメント1314の偏波特性とは異なる偏波方向を有する偏波成分である。
【0098】
具体的には、偏波成分「a」は、V偏波のS1信号成分S1(V)とV偏波のS2信号成分S2(V)を有し、偏波成分「b」は、H偏波のS1信号成分S1(H)と、H偏波のS2信号成分S2(H)を有する。
【0099】
また、偏波成分「a+b」は、(1)V偏波のS1信号成分S1(V)とH偏波のS1信号成分S1(H)が合成された+45°偏波のS1信号成分S1(+45°)と、(2)V偏波のS2信号成分S2(V)とH偏波のS2信号成分S2(H)が合成された+45°偏波のS2信号成分S2(+45°)を有する。
【0100】
また、偏波成分「a+bejπ」は、(1)V偏波のS1信号成分S1(V)とH+π偏波のS1信号成分S1(H+π)が合成された-45°偏波のS1信号成分S1 (-45°)と、(2)V偏波のS2信号成分S2(V)とH+π偏波のS2信号成分S2(H+π)が合成された-45°偏波のS2信号成分S2(-45°)を有する。
【0101】
受信偏波割り当て部1180は、受信偏波合成部1170から出力された受信信号a、bの偏波成分のうち、2つの偏波成分を2つの受信経路に出力することができる。例えば、受信偏波割り当て部1180は、4つの偏波成分(「a」、「b」、「a+b」、及び「a+be
jπ」)のうち、(1)「a」及び「b」を出力するか(
図5の(a)参照)、(2)「a+b」及び「a+be
jπ」を出力するか(
図5の(b)参照)である。
【0102】
図5の(a)のように、偏波成分「a」及び「b」が受信チャネルに割り当てられると、RF信号S1、S1に対し、受信アンテナエレメント1314の直交偏波特性と同じである直交偏波の信号成分「S1(V)、S2(V)」と「S1(H)、S2(H)」が受信チャネルに出力される。
【0103】
図5(b)のように、偏波成分「a+b」及び「a+be
jπ」が受信チャネルに割り当てられると、RF信号S1、S1に対し、受信アンテナエレメント1314の直交 偏波特性とは異なる合成された直交偏波の信号成分「S1(+45°)、S2(+45°)」と「S1(-45°)、S2(-45°)」が受信チャンネルに出力される。
【0104】
図2aないし
図2dは、アンテナ装置10が、全ての送信信号あるいは送信チャネルに対して偏波合成及び偏波割り当てを統合的に行う、1つの送信偏波合成部1130と1つの送信偏波割り当て部1140を含むものとして例示している。
【0105】
しかし、他の実施例で、アンテナ装置10は、それぞれの送信ビームに関連された送信信号あるいは送信チャネルに対して偏波合成及び偏波割り当てを実行する複数の送信偏波合成部と、複数の送信偏波割り当て部を含むように構成されてもよい。同様に、アンテナ装置10は、複数の受信偏波合成部と複数の受信偏波割り当て部を含むように構成されてもよい。そのような構成の一例が
図6に図示されている。
【0106】
図6は、本発明の一実施例に係るアンテナ装置にて送信信号に対する偏波合成及び偏波割り当てを実行するための例示的な構造を示すブロック図である。
【0107】
図6を参照すると、アンテナ装置は、複数の偏波合成部1130-1~1130-M、複数の偏波割り当て部1140-1~1140-M、及び偏波割り当て制御部1142を含むように構成される。偏波割り当て制御部1142は、複数の送信偏波合成部1130-1~1130-Mによって実行される送信信号の偏波割り当てを統合的に管理する。
【0108】
偏波割り当て制御部1142は、ビームの個数と基準ビームの直交偏波に基づき、送信チャネルのそれぞれに対する直交偏波を決定することができる。ここで、ビームの個数は、アレイアンテナ130を用いて生成されるビームの個数を意味し、基準ビームは、多重ビームの中で予め定義されたいずれか1つのビーム(例えば、M個の送信チャネルのうちの第1の送信チャネルと第2の送信チャネルに関連された送信ビーム)である。多重の送信ビームのうち、互いに隣接する送信ビームが互いに異なる直交偏波を有するように、偏波割り当て制御部1142は、送信チャネルの各々に対する直交偏波を決定することができる。
【0109】
偏波割り当て制御部1142は、送信チャネルに対する直交偏波の割り当てを制御するための割り当て制御信号を生成することができる。偏波割り当て制御部1142は、割り当て制御信号を偏波割り当て部1140-1~1140-Mに送信することができる。各偏波割り当て部1140-1~1140-Mは、対応する偏波合成部1130-1~1130-Mで生成された4つの偏波成分のうち、割り当て制御信号によって指示される直交偏波に対応する偏波成分を出力することができる。
【0110】
各偏波割り当て部1140-1~1140-Mによって出力された偏波成分は、後続のコンポーネントを介して対応する送信アンテナエレメント1312に供給される。直交偏波が割り当てられた送信信号は、送信アンテナエレメント1312を介して自由空間上で互い異なる方向のビームに放射される。このような空間的な偏波分離は、水平方向(direction)と垂直方向のうちの1つ以上の方向からなる。
【0111】
図7は本発明の一実施例に係るアンテナ装置が提供する水平方向と垂直方向での空間的な偏波分離を説明するための概念図である。
【0112】
図7に示すように、アンテナ装置10は、アレイアンテナ130を利用し、c個のセクタ(sectors)に対応して水平方向に分離されたc個のビームを形成することができ、c個のセクタのそれぞれに対して垂直方向に分離されたd個のビームを形成することができる。すなわち、アンテナ装置10は、3Dビームフォーミングを提供することができる。各セクタ毎に垂直方向に空間的に分離されたビームの数は同じでも異なっていてもよい。したがって、アンテナ装置10のカバレージ領域(coverage area)は、最大c×d個のサブセクタに分ける。
【0113】
水平方向に分離されたビームは、隣接するビーム間で互いに異なる直交偏波を有し(すなわち、水平方向の空間的偏波分離)、したがって水平に隣接するビーム間の相関関係は十分に小さい。さらに、各セクタにて、垂直方向に分離されたビームは、隣接するビーム間で互いに異なる直交偏波を有し(すなわち、垂直方向の空間的偏波分離)、垂直に隣接するビーム間の相関関係は十分に小さい。さらに、隣接するセクタ間に同一の直交偏波を有するビーム(例えば、1番目のセクタの1番目のビームと2番目のセクタの2番目のビーム)は、水平方向及び垂直方向に十分に離間されており、2つのビーム間の相関関係も十分に小さい。
【0114】
以前までは、±45°の直交偏波とH/Vの直交偏波との間の高い相関関係のために、これら2種の直交偏波を一緒に使用するアンテナ装置が試みられていないことに留意されたい。本発明に係るアンテナ装置10は、空間的に互いに隣接するビーム間に異なる直交偏波を割り当てることによって直交偏波間の相関関係を改善し、2種の直交偏波(すなわち、4つの異なる偏波)が提供する偏波ダイバーシティの効率を完全に使用できる偏波再利用(polarization reuse)を具現することができる。「偏波再使用」という用語は、周波数再使用(frequency reuse)から着目したものである。
【0115】
図8は、本発明の一実施例に係るアンテナ装置が提供する時間的な偏波分離を説明するための概念図である。
【0116】
本発明に係るアンテナ装置10は、同じ方向に向かって形成される送信ビームと受信ビームが互いに異なる直交偏波を有するように、2種の直交偏波を送信チャネルと受信チャネルに割り当てることによって、2種の直交偏波を時間的に分離することができる。
【0117】
図8にて、斜線で示された領域Txは送信アンテナエレメント1312を介して信号が送信される時間区間を示し、斜線で示されていない領域Rxは受信アンテナエレメント1314を介して信号を受信される時間区間を示す。
【0118】
図8の例示で、送信時間区間の間に±45度の直交偏波が用いられ、受信時間区間の間に垂直/水平の直交偏波が用いられ、異なる直交偏波が時間的に分離されて用いられる。例示されたものとは反対に、受信時間区間の間に±45度の直交偏波が用いられ、送信時間区間の間に垂直/水平の直交偏波が用いられ得ることを理解しなければならない。
【0119】
特に、本発明に係るアンテナ装置10は、TDD動作のために使用する送信アンテナエレメントと受信アンテナエレメントとの間の直交偏波特性が互いに異なっていてもよく、したがって信号の送信と信号の受信に用いる直交偏波が 互いに異なっていてもよい。
【0120】
チャネル非・可逆性補正(correction)
チャネル可逆性とは、同じ周波数帯域でダウンリンクチャネルとアップリンクチャネルのチャネル特性が同一であるという前提である。すなわち、チャネル可逆性は、ダウンリンクチャネルとアップリンクチャネルが互いに類似した特性を有する性質を意味する。
【0121】
チャネル可逆性を利用すると、基地局がアップリンクチャネル応答を利用してダウンリンクチャネル応答を得る、あるいは端末がダウンリンクチャネル応答を利用してアップリンクチャネル応答を得ることが可能である。したがって、チャネル可逆性は、FDD(Frequency Division Duplexing)方式に比べてTDD(Time Division Duplexing)方式が有する最大の利点と言える。
【0122】
図9は、アンテナ装置が信号の送信と信号の受信との間で異なる二重偏波を使用する場合に発生し得るチャネル非・可逆性(channel non-reciprocity)問題を説明するための概念図である。
【0123】
上述したように、本発明に係るアンテナ装置は、空間的偏波分離と時間的偏波分離を使用する。したがって、ある空間方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波は、その空間方向から無線信号を受信するために用いられる受信アンテナエレメントの直交偏波特性とは異なってもよい。例えば、ある空間方向に対し、送信ビームは±45°の直交偏波を有し、受信アンテナエレメントがH/Vの直交偏波特性を有することができる。別の例として、送信ビームがH/Vの直交偏波を有し、受信アンテナエレメントは±45°の直交偏波特性を有することができる。このように、ダウンリンクとアップリンクに互いに異なる直交偏波が用いられると、アップリンクとダウンリンクとの間で無線チャネル特性が異なるようになり、それによってダウンリンク/アップリンク間のチャネル可逆性が成立しなくなる。すなわち、チャネル非・可逆性が発生する。
【0124】
このようなチャネル可逆性の不成立(すなわち、チャネル非・可逆性の発生)は、ビームフォーミングを行っていない場合、あるいは5G NRで基地局gNBが端末UEに伝送するCSI-RS(channel state information-reference signal) に基づくビームフォーミングを行う場合には問題にならない。しかしながら、SRS(Sounding Reference Signal)に基づくビームフォーミングを行う場合には、チャネル可逆性の不成立がアンテナ装置の性能を低下させる可能性がある。
【0125】
SRSは、アップリンクチャネルの状態を推定するために端末UEが基地局gNBに伝送するアップリンク基準信号であり、端末UEは、周期的又は非周期的にSRSを基地局gNBに伝送してアップリンク チャンネルの状態情報を知らせることができる。基地局gNBは、受信されたSRSを介してアップリンクチャネルのチャネル状態情報CSIを取得し、取得されたCSIを用いてダウンリンクビームフォーミングのための重みベクトルを決定することができる。
【0126】
したがって、チャネル可逆性が成立しない場合には、SRSを用いて求めた重みベクトルをダウンリンクビームフォーミングに用いるとアンテナ装置の性能が低下され得る。
【0127】
この問題を解決するために、本発明の実施例に係るアンテナ装置10は、受信信号の信号処理を介して受信信号の直交偏波を送信チャネル(あるいは送信ビーム)の直交偏波に一致させることによってチャネル非・可逆性を補正する(すなわち、チャネル可逆性を確保する)。
【0128】
上述したように、チャネル非・可逆性補正は、偏波変換部1160の偏波変換によって、代替的に偏波合成部1170及び偏波割り当て部1180の偏波合成及び偏波割り当てによって達成される。以下、
図10a、
図10b、
図11a、及び
図11bを参照し、チャネル非・可逆性を補正するための例示的な構造とその動作を説明する。
【0129】
図10の例示的な構造は、チャネルの非・可逆性を補正する機能を実行する偏波変換部1160を含む。
【0130】
図10aの例では、受信アンテナエレメント1314の直交偏波特性(V/H)がダウンリンクチャネルの電波(あるいは送信ビーム)の直交偏波(±45°)と異なるため、チャネル非/可逆性補正が必要である。
【0131】
図10aを参照すると、±45゜直交偏波が割り当てられた2つのデジタル送信信号が送信RFチェーン1210のRF信号処理を経て送信アンテナエレメント1312に供給(feed)される。送信RFチェーンに±45°直交偏波に対応する偏波成分が入力されると、送信アンテナエレメント1312は±45°直交偏波特性を有し、ダウンリンクチャネルの電波は±45°直交偏波を有する。受信アンテナエレメント1314は、アップリンクチャネルの電波を受信してアナログ受信信号を出力する。受信アンテナエレメント1314はV/H直交偏波特性を有し、アナログ受信信号は電波のV/H直交偏波成分に対応する。アナログ受信信号は、受信RFチェーン1220のRF信号処理を経てデジタル受信信号に変換される。
【0132】
偏波変換部1160は、デジタル受信信号に対して偏波変換を行い、ダウンリンクチャネルの直交偏波と同じ直交偏波を有する偏波変換された信号を出力する。偏波変換部1160で行われる偏波変換は、下記数4の行列演算を通じて具現される。
【0133】
【0134】
上記数4にて、a及びbは偏波変換部1160に入力されるデジタル受信信号であり、a+bとa+be
jπは、偏波変換部1160から出力される偏波変換された受信信号である。さらに、数4中の数5に表される行列は、直交偏波の変換のためのPD(polarization decomposition)行列を表す。ただし、偏波変換された受信信号のパワーが増加するのを避けるために、PD行列内のすべての元素にスケール係数が適用される。スケール係数は数6で表される。
【数5】
【数6】
【0135】
図10bの例では、受信アンテナエレメント1314の直交偏波特性(V/H)がダウンリンクチャネルの電波(あるいは送信ビーム)の直交偏波(V/H)と一致するので、チャネル非/可逆性補正が必要でない。したがって、偏波変換部1160は、偏波変換なしに入力されたデジタル受信信号をそのまま出力する。
【0136】
図11a及び
図11bの例示的な構成で、チャネル非・可逆性を補正する機能は、偏波割り当て制御部1142、受信偏波合成部1170、及び受信偏波割り当て部1180によって具現される。
【0137】
図11aの例では、受信アンテナエレメント1314の直交偏波特性(V/H)がダウンリンクチャネルの電波(あるいは送信ビーム)の直交偏波(±45°)と異なるため、チャネル非/可逆性補正が必要である。したがって、受信偏波合成部1170に入力される信号と受信偏波割り当て部1180から出力される信号との間で直交偏波が異なる。
【0138】
図11aを参照すると、受信偏波合成部1170は、一対の送信信号に対して4つの偏波成分を生成し、偏波割り当て制御部1142の制御信号に応答し、受信偏波割り当て部1140は、 ±45°直交偏波に対応する2つの偏波成分を出力する。2つの偏波成分は、送信RFチェーン1210を経て送信アンテナエレメント1312に供給(feed)される。送信アンテナエレメント1312は±45°直交偏波特性を有し、ダウンリンクチャネルの電波(あるいは送信ビーム)は±45°直交偏波を有する。
【0139】
受信アンテナエレメント1314は、アップリンクチャネルの電波を受信して2つのアナログ受信信号を出力する。受信アンテナエレメント1314はV/H直交偏波特性を有し、2つのアナログ受信信号は電波のV/H直交偏波成分に対応する。2つのアナログ受信信号は、受信RFチェーン1220のRF信号処理を経て2つのデジタル受信信号に変換される。受信偏波合成部1170は、2つのデジタル受信信号から4つの直交偏波成分を合成することができる。
【0140】
チャネル非・可逆性を補正するために、偏波割り当て制御部1142は、送信偏波割り当て部1140に対して選択された直交偏波と同じ直交偏波(すなわち、±45°直交偏波)を選択し、選択された直交偏波を指示する割り当て制御信号を受信偏波割り当て部1180に伝送する。受信偏波割り当て部1180は、4つの直交偏波成分のうち、割り当て制御信号によって指示される直交偏波(すなわち、±45°直交偏波)に対応する2つの偏波成分を出力する。
【0141】
図11bの例では、受信アンテナエレメント1314の直交偏波特性(V/H)がダウンリンクチャネルの電波(あるいは送信ビーム)の直交偏波(V/H)と一致するので、チャネル非/可逆性補正が必要でない。したがって、受信偏波合成部1170に入力される信号と受信偏波割り当て部1314から出力される信号との間に直交偏波が変わらない。
【0142】
図11bを参照すると、偏波割り当て制御部1142の制御信号に応答し、受信偏波割り当て部1140は、V/H直交偏波に対応する2つの偏波成分を出力する。2つの偏波成分は、送信RFチェーン1210を経て送信アンテナエレメント1312に供給(feed)される。送信アンテナエレメント1312は±45°直交偏波特性を有し、偏波合成によりダウンリンクチャネルの電波(あるいは送信ビーム)はV/H直交偏波を有する。
【0143】
受信アンテナエレメント1314は、アップリンクチャネルの電波を受信して2つのアナログ受信信号を出力する。受信アンテナエレメント1314はV/H直交偏波特性を有し、2つのアナログ受信信号は電波のV/H直交偏波成分に対応する。2つのアナログ受信信号は、受信RFチェーン1220のRF信号処理を経て2つのデジタル受信信号に変換される。受信偏波合成部1170は、2つのデジタル受信信号から4つの直交偏波成分を合成することができる。
【0144】
偏波割り当て制御部1142は、送信偏波割り当て部1140に対して選択された直交偏波と同じ直交偏波(すなわち、V/H直交偏波)を選択し、選択された直交偏波を指示する割り当て制御信号を受信偏波割り当て部1180に伝送する。受信偏波割り当て部1180は、4つの直交偏波成分のうち、割り当て制御信号によって指示される直交偏波(すなわち、V/H直交偏波)に対応する2つの偏波成分を出力する。
【0145】
このように、本発明に係るアンテナ装置10は、受信アンテナエレメント1314から入力される受信信号に対して偏波変換を行うか、偏波合成及び偏波割り当てを行うかで、ダウンリンクチャネルの(あるいは送信ビームの、あるいは送信チャネルの)直交偏波と同じ直交偏波に対応する信号成分を出力することができる。これにより、アップリンクチャネルとダウンリンクチャネルとの間のチャネル非・可逆性が補正され、それによってアップリンクチャネルで受信されたSRSから推定されたアップリンクチャネルの状態情報CSIに基づいて行われる送信ビームフォーミングの性能の低下が防止される。なお、RUで具現されるアンテナ装置10にて受信信号に対する信号処理を通じてチャネル非・可逆性を補正(correction)するので、DUではチャネル可逆性が確保される。
【0146】
サイズ・位相補正(calibration)
前述のように、
図2a及び
図2bで、サイズ・位相補正部1150は、RF信号がRF経路を移動する過程で発生する偏波のサイズの変化と位相変化の偏差を補正することができる。
【0147】
サイズ・位相補正部1150は、複数の送信/受信信号、あるいは送信/受信チャネルに対してサイズ及び位相補正を統合的に実行する1つのコンポーネントとして具現され、代替的に、複数の送信/受信信号、あるいは送信/受信チャネルのそれぞれに対してサイズ及び位相補正を個別的に実行する複数のモジュールから構成されてもよい。
【0148】
本発明に係るアンテナアレイ130で発生する偏波合成の精度は、合成される無線信号のサイズと位相に大きく依存するので、このようなサイズ及び位相の補正は偏波合成の精度を高める。したがって、サイズ及び位相補正はすべてのRF経路に対して適用されてもよいが、複数のRF送信経路のうち、偏波合成が必要な送信経路と、複数のRF受信経路のうち、チャネル非・可逆性補正が必要な受信経路に対してのみ選択的に適用されてもよい。
【0149】
図12は、本発明の一実施例に係るアンテナ装置にて送信偏波合成キャリブレーションを実行するための例示的な構造を示すブロック図である。
【0150】
図12に例示されたように、サイズ・位相補正部1150は、補正制御部1152及び、複数の補正実行部1154を含むように構成される。
【0151】
補正制御部1152は、複数の送信チャネルに対して行われるサイズ及び位相補正を統合的に管理する。補正制御部1152は、「送信偏波割り当て部1140から出力される偏波成分」と「送信RFチェーン1210から出力される偏波成分」を比較し、補正実行部1154によって実行されるサイズ及び位相の補正を制御するための補正制御信号を生成することができる。補正制御信号は、補償されるべきサイズ値及び位相値を含む。
【0152】
補正制御部1152は、各補正実行部1154に補正制御信号を送信する。各補正実行部1154は、補正制御信号に基づいてサイズ及び位相の補正を行う。
【0153】
上述したように、複数の送信経路のうち、送信経路に割り当てられた直交偏波と送信アンテナエレメントの直交偏波特性が異なる(したがって、送信アンテナエレメントで偏波合成が発生する)送信経路に対してのみ選択的にサイズ及び位相補正が適用されてもよい。
【0154】
したがって、送信アンテナエレメントで偏波合成が発生しない場合、補正制御部1152は、関連される補正実行部1154に補正制御信号を伝送しない、もしくは、補償されるサイズ値及び位相値がそれぞれ0(zero)に設定された補正制御信号を関連された補正実行部1154に伝送する。
【0155】
図12を参照すると、偏波割り当て部1140-1は、2つの送信チャネルにそれぞれ偏波成分「a」及び「b」を出力するので、関連される送信アンテナエレメント1312から放射される送信ビームは偏波合成を伴わない。したがって、補正制御部1152は、補正実行部1154-1に補正制御信号を伝送しない、もしくは、補償されるサイズ値及び位相値がそれぞれ0(zero)に設定された補正制御信号を補正実行部1154-1に送信する。一方、偏波割り当て部1140-Eは、2つの送信チャネルにそれぞれ偏波成分「i+j」及び「i+je
jπ」を出力するので、関連される送信アンテナエレメント1312から放射される送信ビームは偏波合成を伴う。したがって、補正制御部1152は、「送信偏波割り当て部1140-Eから出力される偏波成分と送信RFチェーン1210E-1、1210E-2から出力される偏波成分とを比較し、送信RFチェーン1210E-1、1210E-2間の偏差を計算し、補正実行部1154-Eによって実行されるサイズ及び位相の補正を制御するための補正制御信号を生成することができる。補正実行部1154-Eは、補正制御信号に基づいて送信偏波割り当て部1140-Eから出力される偏波成分のサイズ及び位相を調整し、送信RFチェーン1210E-1と送信RFチェーン1210E-2との間のRF経路のサイズ及び位相特性の偏差を補償することができる。
【0156】
図12に例示された構造及びその動作方法が、受信RFチェーン1210-1~1210-M間のRF経路のサイズ及び位相特性の偏差を補償するのにも同様に適用される。
【0157】
このようなサイズ・位相補正機能を通じ、アンテナアレイ130で発生する偏波合成とチャネル非・可逆性補正がより正確に具現されるようになる。また、サイズ・位相補正機能を、偏波合成を伴う送信経路とチャネル非・可逆性補正を伴う受信経路に対してのみ選択的に適用することにより、補正制御部1152の補正制御信号生成による演算負担を減らし、迅速なサイズ・位相補正を可能にする。
【0158】
図13は、本発明の一実施例に係る4重偏波を利用する多重ビームアンテナ装置によって実行される方法を図示したフローチャートである。多重ビームアンテナ装置は、複数の送信ビームを形成するために用いられる送信アンテナエレメントと、複数の受信ビームを形成するために用いられる受信アンテナエレメントとを含むアレイアンテナを備える。
【0159】
多重ビームアンテナ装置は、各送信ビームに関連された一対の送信チャネルに対応される送信信号から複数の送信偏波成分を生成することができる(S1310)。
【0160】
多重ビームアンテナ装置は、空間的に隣接する送信ビームが互いに異なる直交偏波を有するように、各送信ビームに関連された一対の送信チャネルに対し、前記複数の送信偏波成分のうちの第1の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分、又は第2の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分を出力することができる(S1320)。
【0161】
第1の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分は、第1の直交偏波を有する送信アンテナエレメントに放射される場合に、第1の直交偏波を有する送信ビームを形成することができる(すなわち、偏波合成が発生しない)。第2の直交偏波に対応する一対の送信偏波成分は、第1の直交偏波を有する送信アンテナエレメントに放射される場合、偏波合成によって第2の直交偏波を有する送信ビームを形成することができる。
【0162】
多重ビームアンテナ装置は、各送信ビームに関連された一対の送信チャネルに対応する一対の送信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正するために、前記一対の送信偏波成分のサイズ及び位相を調整することができる(S1330)。
【0163】
送信経路間のサイズ及び位相特性の偏差の補正は、偏波合成により、送信ビームが送信アンテナエレメントの直交偏波特性とは異なる直交偏波を有する場合にのみ実行される。すなわち、与えられた送信ビームの直交偏波が関連された送信アンテナエレメントの直交偏波特性と異なる場合に、多重ビームアンテナ装置は、前記与えられた送信ビームに関連された一対の送信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正するために、一対の送信偏波成分に対してサイズ及び位相を調整することができる。さらに、与えられた送信ビームの直交偏波が関連された送信アンテナエレメントの直交偏波特性と同一の場合に、多重ビームアンテナ装置は、前記与えられた送信ビームに関連された一対の送信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正しなくてもよい。
【0164】
多重ビームアンテナ装置は、各受信ビームに関連された一対の受信チャネルに対応する一対の受信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正するために、一対の受信経路から出力される一対の受信信号のサイズ及び位相を調整することができる(S1340)。
【0165】
受信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正することは、対応する送信ビームの直交偏波とは異なる直交偏波特性を有する受信アンテナエレメントから入力される(したがってチャネル非・可逆性補正が必要である)一対の受信信号に対してのみ実行される。したがって、与えられた受信ビームに関連された受信アンテナエレメントの直交偏波特性が空間的に同じ方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波とは異なる場合に、多重ビームアンテナ装置は、前記与えられた受信ビームに関連された一対の受信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正するために、一対の受信信号に対してサイズ及び位相を調整することができる。更に、与えられた受信ビームに関連された受信アンテナエレメントの直交偏波特性が空間的に同じ方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波と同じである場合に、多重ビームアンテナ装置は、前記与えられた受信ビームに関連された一対の受信経路間のサイズ及び位相特性の偏差を補正しない。
【0166】
多重ビームアンテナ装置は、各受信ビームに関連された一対の受信チャネルに対応される受信信号に対してチャネル非・可逆性補正を実行することができる(S1350)。
【0167】
一部の実施例で、チャネル非・可逆性補正を実行すること(S1350)の一部として、多重ビームアンテナ装置は、各受信ビームに関連された一対の受信チャネルに対応する受信信号から、各受信ビームと空間的に同じ方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波に相応する偏波変換された信号を生成することができる。具体的には、多重ビームアンテナ装置は、対応する送信ビームの直交偏波とは異なる直交偏波特性を有する受信アンテナエレメントから入力される(それによってチャネル非・可逆性補正が必要な)一対の受信信号に対して偏波変換を実行し、空間的に同じ方向に向かって形成された送信ビームの直交偏波に相応する一対の受信偏波成分を出力することができる。
【0168】
他の一部の実施例で、チャネル非・可逆性補正を実行すること(S1350)の一部として、多重ビームアンテナ装置は、各受信ビームに関連された一対の受信チャネルに対応される受信信号から複数の受信偏波成分を生成できる。さらに、多重ビームアンテナ装置は、各受信ビームに関連された一対の受信チャネルに対し、前記複数の受信偏波成分のうち、空間的に同じ方向に向かって形成される送信ビームの直交偏波に相応する一対の受信偏波成分を出力することができる。
【0169】
以上の説明は、本実施例の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本実施例が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本実施例の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能であろう。したがって、本実施例は、本実施例の技術思想を限定するものではなく説明するためのものであり、このような実施例によって本実施例の技術思想の範囲が限定されるものではない。本実施例の保護範囲は、特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は、本実施例の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0170】
[CROSS-REFERENCE TO RELATED APPLICATION]
本特許出願は、本明細書にその全体が参考として含まれる、2020年11月4日付にて出願した韓国特許出願番号第10-2020-0145879号及び2021年11月4日付にて出願した韓国特許出願番号第10-2021-0150406号に対して優先権を主張する。
【符号の説明】
【0171】
10 多重ビームアンテナ装置
110 デジタル処理部 120 RF処理部
130 アレイアンテナ 1310 アンテナモジュール
1312 送信アンテナエレメント
1314 受信アンテナエレメント
【国際調査報告】