(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電池モジュールおよびこれを含む電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/30 20210101AFI20231108BHJP
H01M 50/211 20210101ALI20231108BHJP
H01M 50/35 20210101ALI20231108BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20231108BHJP
【FI】
H01M50/30
H01M50/211
H01M50/35 201
H01M50/342 201
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526648
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 KR2022005389
(87)【国際公開番号】W WO2022220605
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0048791
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】クワンモ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュンヨブ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘミ・ジュン
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
5H012AA03
5H012BB08
5H012CC10
5H012EE01
5H012EE05
5H040AA33
5H040AA37
5H040AS05
5H040AS07
5H040AT04
5H040AY04
5H040AY10
5H040LL04
5H040LL06
(57)【要約】
本発明の一実施形態による電池モジュールは複数の電池セルが一方向に積層された電池セル積層体、前記電池セル積層体を収容し、内部面および外部面を有するモジュールフレーム、および前記モジュールフレームと結合し、前記電池セル積層体の前面または後面を覆うエンドプレートを含み、前記モジュールフレームには前記内部面に形成された流入口および前記外部面に形成された排出口を定義するホール形態のベンティング部が少なくとも一つ形成され、前記ベンティング部のホールはバリア層によって覆われている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが一方向に積層された電池セル積層体、
前記電池セル積層体を収容し、内部面および外部面を有するモジュールフレーム、および
前記モジュールフレームと結合し、前記電池セル積層体の前面または後面を覆うエンドプレートを含み、
前記モジュールフレームには、前記内部面に形成された流入口および前記外部面に形成された排出口を定義するホール形態のベンティング部が少なくとも一つ形成され、
前記ベンティング部のホールはバリア層によって覆われている、電池モジュール。
【請求項2】
前記バリア層は、溶融点が約200℃以下である物質を含む、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記バリア層は、耐熱プラスチック、CFRP(炭素繊維強化プラスチック:Carbon Fiber Reinforced Plastic)、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック:Glass Fiber Reinforced Plastics)、マイカ(Mica)系素材、セラミック(Ceramic)系素材、またはシリコンを含む、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記バリア層は、無機炭酸塩、無機リン酸塩、および無機硫酸塩からなる群より選択される一つ以上の消火薬剤を含む、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記バリア層は、前記ベンティング部が形成された前記モジュールフレームの一面と前記電池セル積層体の間に位置する、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記バリア層は、前記ベンティング部のホールの内部空間を満たす、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記バリア層は、前記ベンティング部のホールの内部空間を満たす第1バリア層、および前記ベンティング部が形成された前記モジュールフレームの一面と前記電池セル積層体の間に位置する第2バリア層を含む、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記複数の電池セルが積層される方向を積層方向と定義する時、
前記ベンティング部は、前記積層方向に沿って延長される前記モジュールフレームの一面上に形成される、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記ベンティング部は、前記モジュールフレームの上面に形成される、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項10】
前記ベンティング部の排出方向は前記ベンティング部が形成された前記モジュールフレームの一面と鋭角をなし、
前記ベンティング部の排出方向は前記流入口から前記排出口に向かう方向である、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項11】
前記複数の電池セルは第1電池セルおよび第2電池セルを含み、
前記第1電池セルと対応する位置に形成された第1ベンティング部と対応する前記バリア層の第1部分が開放される時、
前記第2電池セルと対応する位置に形成された第2ベンティング部と対応する前記バリア層の第2部分は開放されない、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項12】
請求項1または2に記載の少なくとも一つの電池モジュールを含む電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2021年4月14日付韓国特許出願第10-2021-0048791号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は電池モジュールおよびこれを含む電池パックに関するものであって、より具体的には、安全性が強化された電池モジュールおよびこれを含む電池パックに関するものである。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれてエネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。これにより、多様な要求に応えられる二次電池に対する研究が多く行われている。
【0004】
二次電池は、携帯電話機、デジタルカメラ、ノートパソコンなどのモバイル機器だけでなく、電気自転車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの動力装置に対するエネルギー源としても多くの関心を集めている。
【0005】
最近、二次電池のエネルギー貯蔵源としての活用をはじめとして大容量二次電池構造に対する必要性が高まるにつれて、複数の二次電池が直列/並列に連結された電池モジュールを集合させた中大型モジュール構造の電池パックに対する需要が増加している。
【0006】
一方、複数の電池セルを直列/並列に連結して電池パックを構成する場合、少なくとも一つの電池セルからなる電池モジュールを構成し、少なくとも一つの電池モジュールを用いてその他の構成要素を追加して電池パックを構成する方法が一般的である。
【0007】
このような中大型電池モジュールを構成する電池セルは充放電の可能な二次電池から構成されているので、このような高出力大容量二次電池は充放電過程で多量の熱を発生させる。
【0008】
電池モジュールは、複数の電池セルが積層されている電池セル積層体、前記電池セル積層体を収容するフレーム、前記電池セル積層体の前後面をカバーするエンドプレートを含む。
【0009】
図1は、従来の電池パックに装着された電池モジュールの発火時の様子を示した図である。
図2は、
図1のA-A部分であって、従来の電池パックに装着された電池モジュールの発火時に隣接した電池モジュールに影響を与える火炎の様子を示した図である。
【0010】
図1および
図2を参照すれば、従来の電池モジュール10は、複数の電池セル11が積層形成された電池セル積層体12、電池セル積層体12を収容するフレーム20、電池セル積層体12の前後面に形成されたエンドプレート40、エンドプレート外部に突出形成されたターミナルバスバー50などを含む。
【0011】
電池セル積層体は、フレーム20およびエンドプレート40の結合によって密閉された構造内に配置することができる。これによって過充電などの理由で電池セル11の内部圧力が増加する場合に、電池セル11の外部に高温の熱、ガスまたは火炎が放出されることがあり、この時、一つの電池セル11から放出された熱、ガスまたは火炎などは狭い間隔をおいて隣接した他の電池セル11に伝達されて連続的な発火現象が誘導されることがある。また、各電池セル11から放出された熱、ガスまたは火炎などはエンドプレート40に形成された開口部に向かって排出され、この過程でエンドプレート40と電池セル11の間に位置したバスバー50などが損傷する問題が発生することがある。
【0012】
さらに、電池パック内で複数の電池モジュール10は少なくとも二つのエンドプレート40が互いに対向するように配置されるので、電池モジュール10内で発生した熱、ガスまたは火炎などが電池モジュール10外部に排出される場合には隣接した他の電池モジュール10内の複数の電池セル11の性能および安定性に影響を与えることもある。
【0013】
したがって、電池モジュール10の内部発火時に熱伝播速度を効果的に遅延させ、発生した熱、ガスまたは火炎が電池モジュール10の外部に急速に排出されるようにすることによって、耐久性および安全性が向上した電池モジュール10を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、電池モジュール内発火現象発生時、排出される高温の熱と火炎を抑制して安全性が強化された電池モジュールおよびこれを含む電池パックを提供することである。
【0015】
しかし、本発明の実施形態が解決しようとする課題は上述の課題に限定されず、本発明に含まれている技術的な思想の範囲で多様に拡張できる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施形態による電池モジュールは複数の電池セルが一方向に積層された電池セル積層体、前記電池セル積層体を収容し、内部面および外部面を有するモジュールフレーム、および前記モジュールフレームと結合し、前記電池セル積層体の前面または後面を覆うエンドプレートを含み、前記モジュールフレームには前記内部面に形成された流入口および前記外部面に形成された排出口を定義するホール形態のベンティング部が少なくとも一つ形成され、前記ベンティング部のホールはバリア層によって覆われている。
【0017】
前記バリア層は、溶融点が約200℃以下である物質を含むことができる。
【0018】
前記バリア層は、耐熱プラスチック、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)、Mica系素材、Ceramic系素材、またはシリコンを含むことができる。
【0019】
前記バリア層は、無機炭酸塩、無機リン酸塩、および無機硫酸塩からなる群より選択される一つ以上の消火薬剤を含むことができる。
【0020】
前記バリア層は、前記ベンティング部が形成された前記モジュールフレームの一面と前記電池セル積層体の間に配置できる。
【0021】
前記バリア層は、前記ベンティング部のホールの内部空間を満たすことができる。
【0022】
前記バリア層は、前記ベンティング部のホールの内部空間を満たす第1バリア層、および前記ベンティング部が形成された前記モジュールフレームの一面と前記電池セル積層体の間に位置する第2バリア層を含むことができる。
【0023】
前記複数の電池セルが積層される方向を積層方向と定義する時、前記ベンティング部は、前記積層方向に沿って延長される前記モジュールフレームの一面上に形成できる。
【0024】
前記ベンティング部は、前記モジュールフレームの上面に形成できる。
【0025】
前記ベンティング部の排出方向は前記ベンティング部が形成された前記モジュールフレームの一面と鋭角をなし、前記ベンティング部の排出方向は前記流入口から前記排出口に向かう方向であってもよい。
【0026】
前記複数の電池セルは第1電池セルおよび第2電池セルを含み、前記第1電池セルと対応する位置に形成された第1ベンティング部と対応する前記バリア層の第1部分が開放される時、前記第2電池セルと対応する位置に形成された第2ベンティング部と対応する前記バリア層の第2部分は開放されなくてもよい。
【0027】
本発明の他の一実施形態による電池パックは、前述の電池モジュールを含む。
【発明の効果】
【0028】
実施形態によれば、ホールが形成されたモジュールフレームおよびホールを覆うためのカバーを電池モジュールに実現することによって、火炎発生以前にはホールを閉鎖することによって外部から電池モジュール内部に汚染物が投入されることを防止し、火炎発生時にはホールを開放することによって酸素遮断およびガス排出を通じて高温の熱とガスおよび火炎を抑制することができる。
【0029】
本発明の効果は以上で言及した効果に制限されず、言及されていないまた他の効果は特許請求の範囲の記載から当業者に明確に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】従来の電池パックに装着された電池モジュールの発火時の様子を示した図である。
【
図2】
図1のA-Aに沿って切断した部分であって、従来の電池パックに装着された電池モジュールの発火時に隣接した電池モジュールに影響を与える火炎の様子を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による電池モジュールの一例を示す斜視図である。
【
図4】
図3の電池モジュールに対する分解斜視図である。
【
図5】
図4の電池モジュールに含まれている電池セルに対する斜視図である。
【
図6】
図3の切断線B-Bに沿って切断した断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態による電池モジュールにおいて火炎発生時熱分解反応以後の様子を示す断面図である。
【
図8】本発明の他の一実施形態による電池モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付した図面を参照して本発明の様々な実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。本発明は以下で説明したこと以外に様々の異なる形態に実現でき、本発明の範囲はここで説明する実施形態によって限定されない。
【0032】
本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一な参照符号を付けるようにする。
【0033】
また、図面に示された各構成の大きさおよび厚さは説明の便宜のために任意に拡大するか縮小して示したものであるので、本発明の内容が図示されたところに限定されないのは自明である。以下の図面においては様々な層および領域を明確に表現するために各層の厚さを拡大して示した。そして以下の図面においては、説明の便宜のために、一部層および領域の厚さを誇張して示した。
【0034】
また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分“の上に”または“上に”あると説明する時、これは該当する層、膜、領域、板などの部分が他の部分“の直上に”ある場合だけでなく、その間にまた他の部分がある場合も含むと解釈されなければならない。これと反対に、該当する層、膜、領域、板などの部分が他の部分“の直上に”あると説明する時にはその間に他の部分がないことを意味する。また、基準となる部分“の上に”または“上に”あるというのは基準となる部分の上または下に位置することであり、必ずしも重力反対方向に向かって“の上に”または“上に”位置することを意味するのではない。一方、他の部分“の上に”または“上に”あると説明することと同様に、他の部分“の下に”または“下に”あると説明することも前述の内容を参照して理解されるはずである。
【0035】
また、明細書全体で、ある部分がある構成要素を“含む”という時、これは特に反対になる記載がない限り他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0036】
また、明細書全体で、“平面上”という時、これは該当部分を上から見た時を意味し、“断面上”という時、これは該当部分を垂直に切断した断面を横から見た時を意味する。
【0037】
以下、本発明の一実施形態による電池モジュールについて説明する。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態による電池モジュールを示す斜視図である。
図4は、
図3の電池モジュールに対する分解斜視図である。
図5は、
図4の電池モジュールに含まれている電池セルに対する斜視図である。
【0039】
図3および
図4を参照すれば、本発明の一実施形態による電池モジュール100は、複数の電池セル110が一方向に沿って積層された電池セル積層体120、電池セル積層体120を収容するモジュールフレーム200、電池セル積層体120の前面および/または後面上に位置するバスバーフレーム300、電池セル積層体120の前面および/または後面を覆う(covering)エンドプレート400、およびバスバーフレーム300上に装着されるバスバー510、520を含むことができる。
【0040】
電池セル110は、単位面積当り積層される数が最大化できるパウチ型で提供できる。パウチ型で提供される電池セル110は、正極、負極および分離膜を含む電極組立体をラミネートシートのセルケース114に収納した後、セルケース114のシーリング部を熱融着することによって製造できる。しかし、電池セル110が必ずしもパウチ型で提供されなければならないのではなく、以後に装着されるデバイスが要求する貯蔵容量が達成される水準下で角型、円筒型またはその他の多様な形態で提供することもできるのは自明である。
【0041】
図5を参照すれば、電池セル110は、二つの電極リード111、112を含むことができる。電極リード111、112は、セル本体113の一端からそれぞれ突出している構造を有することができる。具体的には、各電極リード111、112の一端は電池セル110の内部に位置することによって電極組立体の正極または負極と電気的に連結され、各電極リード111、112の他端は電池セル110の外部に導出されることによって別途の部材、例えば、バスバー510、520と電気的に連結される。
【0042】
セルケース114内の電極組立体は、シーリング部114sa、114sb、114scによって密封できる。セルケース114のシーリング部114sa、114sb、114scは、両端部114a、114bとこれらを連結する一側部114c上に配置できる。
【0043】
セルケース114は、一般に樹脂層/金属薄膜層/樹脂層のラミネート構造からなる。例えば、セルケース表面がO(oriented)-ナイロン層からなる場合には、中大型電池モジュール100を形成するために複数の電池セル110を積層する時、外部衝撃によって容易に滑る傾向がある。したがって、これを防止し電池セル110の安定した積層構造を維持するために、セルケース114の表面に両面テープなどの粘着式接着剤または接着時化学反応によって結合される化学接着剤などの接着部材を付着して電池セル積層体120を形成することができる。
【0044】
連結部115は、前述のシーリング部114sa、114sb、114scが位置していないセルケース114の一端において長さ方向に沿って延長される領域を称するものであり得る。連結部115の端部には、バットイヤー(bat-ear)と呼ばれる電池セル110の突出部110pが形成できる。また、テラス(Terrace)部116は、セルケース114の縁を基準にして、セルケース114の外部にその一部が突出した電極リード111、112とセルケース114の内部に位置するセル本体113の間の領域を称するものであり得る。
【0045】
一方、パウチ型で提供される電池セル110は長さ、幅および厚さを有することができ、電池セル110の長さ方向、幅方向および厚さ方向は相互垂直な方向であってもよい。
【0046】
ここで、電池セル110の長さ方向は、電極リード111、112がセルケース114から突出した方向によって定義できる。電池セル110の長さ方向は、x軸方向または-x軸方向と定義できる。
【0047】
またここで、電池セル110の幅方向は、
図4で示されているように、電池セル110の一側部114cから連結部115または連結部115から一側部114cに向かうz軸方向または-z軸方向であってもよい。またここで、電池セル110の厚さ方向は、幅方向および長さ方向と垂直なy軸方向または-y軸方向と定義できる。
【0048】
電池セル積層体120は、電気的に連結された複数の電池セル110が一方向に沿って積層されたものであってもよい。複数の電池セル110が積層された方向(以下、‘積層方向’と称される)は、
図3および
図4で示されているように、y軸方向(または-y軸方向であってもよく、以下、‘軸方向’という表現が+/-方向を全て含むと解釈できる)であってもよい。
【0049】
ここで、電池セル積層体120の前面から後面に向かう方向、またはその反対方向は電池セル積層体120の長さ方向と定義でき、x軸方向であってもよい。また、電池セル積層体120の上面から下面に向かう方向、またはその反対方向は電池セル積層体120の幅方向と定義でき、z軸方向であってもよい。
【0050】
電池セル積層体120の長さ方向は、電池セル110の長さ方向と実質的に同一であってもよい。この時、電池セル積層体120の前面および後面には電池セル110の電極リード111、112が配置できる。この時、電池モジュール100のバスバー510、520は、電極リード111、112との電気的連結を容易に形成するように電池セル積層体120の前面および後面と近く配置できる。
【0051】
モジュールフレーム200は、電池セル積層体120およびこれと連結された電装品を外部の物理的衝撃から保護するためのものであり得る。モジュールフレーム200は、電池セル積層体120およびこれと連結された電装品をモジュールフレーム200の内部空間に収容することができる。ここで、モジュールフレーム200は内部面200a(
図6参照)および外部面200b(
図6参照)を含み、モジュールフレーム200の内部空間は内部面200aによって定義できる。
【0052】
モジュールフレーム200の構造は多様である。一例として、モジュールフレーム200の構造はモノフレームの構造であってもよい。ここで、モノフレームは、上面、下面および両側面が一体化した金属板材の形態であってもよい。モノフレームは、押出成形で製造できる。他の例として、モジュールフレーム200の構造は、U字型フレームと上部プレート(上面)が結合された構造であってもよい。U字型フレームと上部プレートが結合された構造の場合、モジュールフレーム200の構造は下面および両側面が結合されたまたは一体化した金属板材のU字型フレームの上側に上部プレートを結合して形成でき、各フレームまたはプレートは、プレス成形で製造できる。また、モジュールフレーム200の構造はモノフレームまたはU字型フレーム以外にL型フレームの構造で提供することもでき、前述の例で説明していない多様な構造で提供することもできる。
【0053】
モジュールフレーム200の構造は、電池セル積層体120の長さ方向に沿って開放された形態で提供できる。電池セル積層体120の前面および後面は、モジュールフレーム200によって覆われなくてもよい。電池セル110の電極リード111、112は、モジュールフレーム200によって覆われなくてもよい。電池セル積層体120の前面および後面は後述のバスバーフレーム300、エンドプレート400またはバスバー510、520などによって覆われてもよく、これによって電池セル積層体120の前面および後面は外部の物理的衝撃などから保護されるはずである。
【0054】
一方、電池セル積層体120とモジュールフレーム200の内部面中の一側面の間には、圧縮パッド150が配置できる。この時、圧縮パッド150は電池セル積層体120のy軸上に配置することができ、電池セル積層体120の両端にある二つの電池セル110のうちの少なくとも一つと面対向可能である。
【0055】
また、図示されていないが、電池セル積層体120とモジュールフレーム200の内部面の間には熱伝導性樹脂が注液でき、注液された熱伝導性樹脂によって電池セル積層体120とモジュールフレーム200の内部面中の一側面の間に熱伝導性樹脂層(図示せず)が形成できる。この時、熱伝導性樹脂層は電池セル積層体120のz軸上に配置でき、前記熱伝導性樹脂層は電池セル積層体120とモジュールフレーム200の-z軸上に位置した底面(または底部と称される)の間に形成できる。
【0056】
バスバーフレーム300は、電池セル積層体120の一面上に位置して、電池セル積層体120の一面をカバーすると同時に電池セル積層体120と外部機器との連結を案内するためのものであり得る。バスバーフレーム300は電池セル積層体120の前面または後面上に配置できる。バスバーフレーム300には、バスバー510、520およびモジュールコネクタのうちの少なくとも一つが装着できる。具体的な例を挙げれば、
図3および
図4を参照すれば、バスバーフレーム300の一面は電池セル積層体120の前面または後面と連結され、バスバーフレーム300の他面はバスバー510、520と連結される。
【0057】
バスバーフレーム300は、電気的に絶縁である素材を含むことができる。バスバーフレーム300は、バスバー510、520が電極リード111、112と接合された部分以外に電池セル110の他の部分と接触するのを制限することができ、電気的短絡が発生するのを防止することができる。
【0058】
図示されていないが、バスバーフレーム300は二つであってもよく、電池セル積層体120の前面上に位置する第1バスバーフレーム(図面番号300で示される)および電池セル積層体120の後面上に位置する第2バスバーフレーム(図示せず)を含むことができる。
【0059】
エンドプレート400は、モジュールフレーム200の開放された面を密閉することによって、電池セル積層体120およびこれと連結された電装品を外部の物理的衝撃から保護するためのものであり得る。このために、エンドプレート400は所定の強度を有する物質から製造できる。例えば、エンドプレート400はアルミニウムのような金属を含むことができる。
【0060】
エンドプレート400は、電池セル積層体120の一面上に位置するバスバーフレーム300またはバスバー510、520を覆いながらモジュールフレーム200と結合(接合、密封または密閉)できる。エンドプレート400の各角はモジュールフレーム200の対応する角と溶接などの方法で結合できる。また、エンドプレート400とバスバーフレーム300の間には電気的絶縁のための絶縁カバー800が配置できる。絶縁カバー800はエンドプレート400の内部面に配置でき、エンドプレート400の内部面に密着できるが、必ずしもそうであるのではない。
【0061】
エンドプレート400は二つであってもよく、電池セル積層体120の前面上に位置する第1エンドプレートおよび電池セル積層体120の後面上に位置する第2エンドプレートを含むことができる。
【0062】
第1エンドプレートは電池セル積層体120の前面上で第1バスバーフレームを覆いながらモジュールフレーム200と結合でき、第2エンドプレートは第2バスバーフレームを覆いながらモジュールフレーム200と結合できる。言い換えれば、第1エンドプレートと電池セル積層体120の前面の間に第1バスバーフレームが配置でき、第2エンドプレートと電池セル積層体120の後面の間に第2バスバーフレームが配置できる。
【0063】
バスバー510、520はバスバーフレーム300の一面上に取り付けられ、電池セル積層体120または電池セル110と外部機器回路を電気的に連結するためのものであり得る。バスバー510、520は電池セル積層体120またはバスバーフレーム300とエンドプレート400の間に位置することによって外部の衝撃などから保護され、外部の水分などによる耐久性低下が最少化される。
【0064】
バスバー510、520は、電池セル110の電極リード111、112を通じて電池セル積層体120と電気的に連結できる。具体的には、電池セル110の電極リード111、112は、バスバーフレーム300に形成されたスリットを通過した後、曲げられてバスバー510、520と連結できる。バスバー510、520によって電池セル積層体120を構成する電池セル110が直列または並列に連結される。
【0065】
バスバー510、520は一つの電池モジュール100と他の電池モジュール100を電気的に連結するためのターミナルバスバー520を含むことができる。外部の他の電池モジュール100と連結されるためにターミナルバスバー520の少なくとも一部はエンドプレート400の外部に露出され、エンドプレート400にはそのためのターミナルバスバー開口部400Hが備えられてもよい。
【0066】
ターミナルバスバー520は他のバスバー510とは異なり、上向きに突出した突出部をさらに含むことができ、突出部はターミナルバスバー開口部400Hを通じて電池モジュール100の外部に露出される。ターミナルバスバー520はターミナルバスバー開口部400Hを通じて露出された突出部を通じて他の電池モジュール100やBDU(Battery Disconnect Unit)と連結され、これらとHV(High voltage)連結を形成することができる。
【0067】
図示されていないが、電池モジュール100は、電池セル110の過電圧、過電流、過発熱などの現象を検出し、制御するセンシング部材を含むことができる。センシング部材は、電池モジュール内部の温度を感知する温度センサー、バスバー510、520の電圧値をセンシングするセンシング端子、収集されたデータを外部の制御装置に伝達し、外部の制御装置から信号を受信するモジュールコネクタおよび/またはこれを連結するための連結部材を含むことができる。
【0068】
ここで、連結部材は、電池セル積層体120の上面で長さ方向に沿って延長される形態に配置できる。連結部材は、軟性印刷回路基板(FPCB:Flexible Printed Circuit Board)または軟性平板ケーブル(FFC:Flexible Flat Cable)であってもよい。
【0069】
またここで、モジュールコネクタは温度センサーおよび/またはセンシング端子から獲得されたデータをBMS(Battery Management System)に伝送することができ、BMSは収集された電圧データに基づいて電池セル110の充電と放電を制御することができる。モジュールコネクタは、前述のバスバーフレーム300に装着できる。モジュールコネクタの少なくとも一部はエンドプレート400の外部に露出され、エンドプレート400にはそのためのモジュールコネクタ開口部(図示せず)が備えられてもよい。このように、エンドプレート400にはターミナルバスバー開口部400Hおよびモジュールコネクタ開口部などが形成でき、これらは‘開口部’と総称できる。
【0070】
一方、前述のように電池セル110が高い密度で積層された電池モジュール100の内部では発火現象が発生することがある。一つの電池モジュール100で発火現象が発生すると、電池モジュール100の熱、ガスまたは火炎などがそれと隣接した電池モジュール100に伝達されるので、電池モジュール100の間に連続的な発火現象が発生することもあり、これにより電池モジュール100またはこれを含む電池パックの耐久性および安定性が低下する問題があった。
【0071】
したがって、以下では、前記のような発火現象を解消することによって電池モジュール100の耐久性および安定性を向上させることができるベンティング部(venting part)900およびバリア層(Barrier layer)920に関して説明する。
【0072】
図6は、
図3の切断線B-Bに沿って切断した断面図である。
図7は、本発明の一実施形態による電池モジュールで火炎発生時、熱分解反応以後の様子を示す断面図である。
【0073】
図6および
図7を参照すれば、本発明の一実施形態によるモジュールフレーム200は、モジュールフレーム200の内部面200aと外部面200bを貫通するベンティング部900を含むことができる。
【0074】
ベンティング部900は、モジュールフレーム200およびエンドプレート400などによって密閉された電池モジュール100の内部と電池モジュール100の外部を連通させるためのものであり得る。ベンティング部900は、電池モジュール100の内部発火時、発生する熱、ガスまたは火炎などを電池モジュール100の外部に排出するためのものであり得る。
【0075】
ベンティング部900は、モジュールフレーム200の内部面200aに形成された流入口(inlet)900aおよび外部面200bに形成された排出口(outlet)900bを連通するホール(hole)形態を有することができる。
【0076】
ベンティング部900は、モジュールフレーム200の少なくとも一面に形成できる。ここで、モジュールフレーム200は、電池セル積層体120の長さ方向であるx軸上で互いに対向するように配置される二面が開放された状態であってもよい。モジュールフレーム200は、y軸上で互いに対向するように配置される二面(以下、‘y軸上の面’と称される)およびz軸上で互いに対向するように配置される二面(以下、‘z軸上の面’と称される)を有することができる。モジュールフレーム200の開放されたx軸上で互いに対向する二面は、主にエンドプレート400などによって覆われてもよい。
【0077】
電池パック内の電池モジュール100は主にHV連結のためにターミナルバスバー520同士が対向するように配置され、一つの電池モジュール100で発生した火炎などはエンドプレート400に形成された開口部、一例としてターミナルバスバー開口部400Hを通じて隣接した他の電池モジュール100に伝達される。このように電池モジュール100内部の熱がエンドプレート400方向に伝達されると、互いに隣接する電池モジュール100を電気的に連結する(HV連結)外部バスバーが溶けて内部ショートによる追加発火が発生することがあり、隣接する電池モジュールに熱暴走現象が転移されることがある。
【0078】
しかし、モジュールフレーム200にベンティング部900が形成されると、電池セル110に起因した高温の熱、ガスおよび火炎などがターミナルバスバー開口部400Hを通じて排出されるのを最少化することができ、隣接した電池モジュール100および電池モジュール100のHV連結構造に加えられる損傷を最少化することができる。
【0079】
ここで、モジュールフレーム200のy軸上の一面は、電池セル積層体120の幅方向または長さ方向に沿って延長される面であり得る。モジュールフレーム200のy軸上の一面は一つの電池セル110の一面と対向してもよい。説明の便宜のために、モジュールフレーム200のy軸上の一面はモジュールフレーム200の側面と称することができる。
【0080】
またここで、モジュールフレーム200のz軸上の一面は、電池セル積層体120の積層方向または長さ方向に沿って延長される面であり得る。モジュールフレーム200のz軸上の一面は、一方向に沿って並んで配置された多数の電池セル積層体120のそれぞれの一面と対向してもよい。説明の便宜のために、モジュールフレーム200のz軸上の一面は上面または下面(底面または底部)と称することもできる。
【0081】
図6および
図7に示されているように、ベンティング部900はモジュールフレーム200のz軸上の一面に形成されるのが好ましい。これは、ベンティング部900がモジュールフレーム200のz軸上の一面に位置すれば、y軸上の一面に位置する場合より、ベンティング部900の流入口900aが電池セル積層体120の多数の電池セル110と近く配置されるので、多数の電池セル110から放出される熱、ガスまたは火炎が外部に急速に排出可能なためである。このように、モジュールフレーム200上のベンティング部900の位置は、多数の電池セル110の一面が並んで位置した、電池セル積層体120の一面の位置によって決定できる。
【0082】
モジュールフレーム200上のベンティング部900の位置は、電池パック内の電池モジュール100の配置によっても決定できる。例えば、多数の電池モジュール100は電池パック内で電池モジュール100が第1方向(y軸またはx軸)に沿って配置され、第2方向(z軸方向)には配置されなくてもよい。この時、
図6および
図7に示されているように、ベンティング部900がモジュールフレーム200のz軸(第2方向)上の一面に形成されると、ベンティング部900の流入口900aから排出口900bに延長される排出経路上に他の隣接した電池モジュール100が位置しなくなるので、排出された熱、ガスまたは火炎が他の電池モジュール100に与える影響を最少化することができる。一方、z軸上の二面のうちの-z軸上の面が電池パックと連結される装着面である場合には、ベンティング部900は+z軸上に形成できるはずである。
【0083】
ベンティング部900は前述の図面のようにモジュールフレーム200の一面上に全体的に形成されてもよいが、必ずしもそうであるのではなく、モジュールフレーム200の一面中の一部に形成されてもよい。また、図示されていないが、ベンティング部900はモジュールフレーム200の多数の面上に形成されてもよい。
【0084】
ベンティング部900の個数は一つ以上であってもよく、ベンティング部900が複数である場合、ベンティング部900は行/列を成して配置される。
【0085】
ベンティング部900の流入口900aおよび排出口900bの形状は前述の図面のように曲率を有するラウンド形状であってもよいが、必ずしもそうであるのではなく、円形、楕円形または頂点を有する多角形で提供することもできる。また、ベンティング部900を通じて排出される熱、ガスまたは火炎は電池モジュール100の外部により速く拡散するのが好ましいので、排出口900bの大きさは流入口900aの大きさよりさらに大きく提供できる。
【0086】
一方、ベンティング部900の流入口900aから排出口900bに向かう方向は、電池モジュール100内部のガスが外部に排出される排出方向であり得る。前述の図面ではベンティング部900の流入口900aから排出口900bに向かう方向がベンティング部900が形成されたモジュールフレーム200の一面と垂直することと示されたが、必ずしもそうであるのではなく、ベンティング部900の流入口900aおよび排出口900bの位置を変更することによって排出方向が前記モジュールフレーム200の一面と鋭角を成すようにホール構造が形成できる。このようにベンティング部900のホールが傾いた構造を有することによって、電池モジュール100内部の露出が最少化され、空気中に漂う異物が重力によって電池モジュール100内部に入る現象が防止できる。
【0087】
ベンティング部900の流入口900aおよび排出口900bの位置を変更することによって排出方向が角(鋭角)をなすようになれば、ベンティング部900から排出される熱、ガスまたは火炎の方向が転換(調節)できる。これによって排出経路の長さが増加でき、ベンティング部900の排出口900bを通じて排出されるガスなどがより低い温度を有することができる。また、ベンティング部900の排出方向が隣接した電池モジュール100が位置しない方向に形成された場合には、隣接した電池モジュール100の間に熱が伝播する現象が最少化できる。
【0088】
ベンティング部900が複数である場合、複数のベンティング部900の排出方向は互いに同一であってもよく、互いに異なってもよい。複数のベンティング部900の排出方向が互いに異なるように形成されると、ベンティング部900から排出されるガスなどが多様な方向に向かって電池モジュール100外部のさらに広い空間に拡散できる。これにより、電池モジュール100からガス排出が速かに行われ、電池モジュール100の発熱防止のような効果が達成できる。
【0089】
一方、本実施形態のようにモジュールフレーム200に内部と外部を連通させるためのベンティング部900が備えられる場合、モジュールフレーム200外部の埃、不純物などがベンティング部900のホール構造を通じてモジュールフレーム200内部に入ることがある。また、モジュールフレーム200内部発火時、ベンティング部900に沿って外部の酸素が供給されることによって内部発火が促進される現象が発生することがある。したがって、ベンティング部900にはホールを閉鎖(closing)するための別途の部材が提供されることが好ましい。
【0090】
再び
図6および
図7を参照すれば、本発明の一実施形態による電池モジュール100は、ベンティング部900のホール構造の開口を覆う(covering)バリア層920を含むことができる。
【0091】
ここで‘バリア層’という表現はベンティング部900のホールを覆うための膜の形態を表現するためのものであるので、カバー(cover)、栓、フード(hood)、蓋(lid)、キャップ(cap)またはこれと類似の他の単語に変更して表現できるのを予め明らかにしておく。
【0092】
バリア層920は、ベンティング部900のホールを覆うための板状形態で提供できる。バリア層920は、ベンティング部900のホールを覆うためのパッド形態で提供できる。バリア層920は流入口900aまたは排出口900bを覆うように配置されることによってベンティング部900のホールをカバーすることができる。
【0093】
バリア層920は、ベンティング部900が形成されたモジュールフレーム200の一面の下に配置することができる。一例として、
図6でバリア層920は電池セル積層体120の上面とモジュールフレーム200の上面の間に位置することと示されたが、必ずしもそうであるのではなく、ベンティング部900がモジュールフレーム200の側面に形成される場合には電池セル積層体120の側面とモジュールフレーム200の側面の間に配置されてもよい。ここで、組み立ての便宜のために、バリア層920はモジュールフレーム200の内部面200aに付着することもできるが、必ずしもそうであるのではない。
【0094】
一方、バリア層920は一般にはベンティング部900のホールを閉鎖することによって外部の酸素、埃または不純物などが電池モジュール100の内部に入ることを防止するが、電池モジュール100の内部発火時にはベンティング部900のホールを開放することができる。
【0095】
バリア層920は、高温高圧環境で一定時間耐えられる物質から製造できる。例えば、バリア層920は、耐熱プラスチック、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)、Mica系素材、またはCeramic系素材から製造できる。バリア層920は、高温高圧環境で一定時間耐えられる射出物であってもよい。他の例を挙げれば、バリア層920は、シリコンから製造されたシリコンパッドであってもよい。
【0096】
バリア層920は、モジュールフレーム200の内部温度によって溶融する素材を含むことができる。バリア層920は、電池セル110から放出される熱、高温のガスまたはスパークによって溶融する素材を含むことができる。バリア層920は、溶融点が所定の範囲以下である物質から製造できる。例えば、バリア層920は、溶融点が約200℃以下である熱可塑性高分子樹脂を含むことができる。より具体的には、バリア層920は、ポリエチレン、ポリプロピレンなど溶融点が約100℃以上200℃以下である物質から製造できる。
【0097】
バリア層920は、電池モジュール100の内部発火時、発火現象を緩和するための物質を含むこともできる。例えば、バリア層920は、消火(fire extinguishing)薬剤を含むことができる。バリア層920が消火薬剤を含むと、電池モジュール100は自己消炎機能を有することができる。ここで、消火薬剤は粉末形態の消火薬剤物質であってもよい。消火薬剤は電池モジュール100の内部発火時、熱分解反応を通じて二酸化炭素および水蒸気を発生させることができ、発生した二酸化炭素および水蒸気は外部の酸素が電池モジュール100の内部に流入するのを防止することによって火炎を抑制することができる。消火薬剤は吸熱反応である熱分解反応を行うことによって電池モジュール内で発生した熱を吸収することができ、二酸化炭素および水蒸気を発生させることによって外部の酸素供給も遮断することができる。これにより、電池モジュール100内部の火炎および熱伝播速度は効果的に遅延でき電池モジュールの安全性は向上できる。
【0098】
バリア層920は、無機炭酸塩、無機リン酸塩、および無機硫酸塩からなる群より選択される一つ以上の消火薬剤を含むことができる。消火薬剤物質のより具体的な例としては、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)、リン酸アンモニウム(NH4H2PO3)、および“炭酸水素カリウム(KHCO3)と尿素((NH2)2CO)”の混合物などであってもよい。バリア層920が炭酸水素カリウム(KHCO3)を含む場合、炭酸水素カリウムの熱分解反応を通じて炭酸カリウム(K2CO3)、水蒸気(H2O)、および二酸化炭素(CO2)が生成できる。生成された水蒸気は電池モジュール100内部の火炎を相殺させ、生成された二酸化炭素は火炎が酸素などと接触するのを遮断することができる。但し、本実施形態の消火薬剤物質はこれに限定されず、消火機能を果たす物質であれば制限なく使用可能である。
【0099】
このように、バリア層920は前述の物性を有する物質から製造されて提供できるが、複数の物性を含む物質または各物性を含む物質の複合体で提供することもできる。例えば、バリア層920は高圧環境で一定時間耐えられ溶融点が約200℃以下である物質を含むように提供できる。他の例を挙げれば、バリア層920は消火薬剤を含むシリコンパッドで提供できる。また他の例を挙げれば、バリア層920は消火薬剤を含む熱可塑性高分子樹脂で提供できる。
【0100】
電池モジュール100の内部、具体的には一部電池セル110で火炎、ガスまたはスパークが発生すると、発火現象周辺のバリア層920は熱または圧力によって物理的破れるかまたは化学的に溶融して開けられる(penetrating)ことがあり、これによりベンティング部900のホールが開放される。電池モジュール100内部の熱、ガスまたはスパークは開放されたベンティング部900を通じて排出され、電池モジュール100の発火現象は緩和される。ここで、バリア層920が開けられる、即ち、開放される過程は吸熱反応を伴うことができ、バリア層920が内部の熱を吸収することによって電池モジュール100内部の温度が多少低まることになる。バリア層920の吸熱反応を通じてベンティング部900の外部に放出される熱、ガスなどは隣接した電池モジュール100に影響を与えることができない程度にエネルギーを失うことになり、スパークはエネルギーを失ってパーティクルに変化し隣接した電池モジュール100の熱暴走現象を促進することができなくなる。一方、以上ではバリア層920の効果についてバリア層920が化学的反応を通じて開放されることを中心にして説明したが、バリア層920が圧力などによって物理的に開放される場合にもバリア層920に内部のガスまたはスパークの運動エネルギーは減少するようになるので、ベンティング部900外部に放出される熱、ガスなどは隣接した電池モジュール100に影響を与えることができない程度にエネルギーを失うことになり、スパークはエネルギーを失ってパーティクルに変化し隣接した電池モジュール100の熱暴走現象を促進することができなくなる。
【0101】
バリア層920は所定の範囲以上の熱または圧力が加えられる時のみ開放されるので、発火現象が発生した周辺に位置したベンティング部900のみが個別的に開放される。開放されたベンティング部900ではガスの排出が行われ、閉鎖された他のベンティング部900では追加的な酸素の流入が遮断されるので、電池モジュール100内部の火災鎮圧はより速く達成できる。
【0102】
具体的には、
図7(a)のように、バリア層920が提供されていない場合、ベンティング部900を通じて外部の酸素などが電池モジュール100内部に容易に流入することがある。電池モジュール100内部に発火現象が発生すると、ベンティング部900を通じて流入した外部の酸素によって内部の火炎が増幅されて連続的な発火が促進される。
【0103】
反面、
図7(b)のように、バリア層920が提供される場合、発火現象が発生した第1電池セル110の上部に位置したバリア層920の第1部分が開けられ、ベンティング部900中の第1部分と対応する第1ベンティング部900のみが開放される。即ち、発火現象が発生していない第2電池セル110の上部に位置したバリア層920の第2部分は開放されず、ベンティング部900中の第2部分と対応する第2ベンティング部900は閉鎖された状態であり得る。このように、ベンティング部900のうちの一部ベンティング部900以外に他のベンティング部900はバリア層920によって閉鎖された状態であるので、外部酸素が電池モジュール100内部に流入することが遮断でき、これにより
図7(a)とは異なり、電池モジュール100内部で発生した火炎などが流入した酸素によって増幅されることが抑制できる。
【0104】
図8は、本発明の他の実施形態による電池モジュールを示す断面図である。
【0105】
図8を参照すれば、本実施形態のバリア層920は、ベンティング部900のホールを埋めるように提供することもできる。
【0106】
具体的には、バリア層920は
図8(a)のようにベンティング部900のホールの内部空間を満たす栓のような形態で提供できる。また、バリア層920は、
図8(b)のようにベンティング部900のホールを満たす栓形態と
図6および
図7のような層の形態が複合された形態で提供することもできる。
図8(b)のようにバリア層920が提供されると、バリア層920が電池モジュール100内部で占める空間は同一であるが、電池モジュール100のベンティング部900を開放するために二つの層のバリア層920が開放されなければならないので、バリア層920による火災鎮圧効果がさらに大きくなるはずである。ここで、ベンティング部900のホールを満たす栓形態のバリア層920は第1バリア層、ベンティング部900の下側に形成された層形態のバリア層920は第2バリア層と称することができる。この時、第1バリア層は複数のベンティング部900の内部を満たす複数のバリア層から構成できる。またここで、前述の栓形態と層の形態は結合された状態で一体に構成されてもよいが、必ずしもそうであるのではなく、分離された状態で個別的に提供されてもよい。
【0107】
一方、前述の電池モジュール100は電池パックに含まれてもよい。電池パックは、本実施形態による電池モジュールを一つ以上含み、電池の温度や電圧などを管理する電池管理システム(Battery Management System;BMS)および冷却装置などを追加してパッキングした構造であってもよい。
【0108】
電池モジュールおよびこれを含む電池パックは多様なデバイスに適用できる。このようなデバイスには、電気自転車、電気自動車、ハイブリッド自動車などの運送手段に適用できるが、本発明はこれに制限されず、電池モジュールおよびこれを含む電池パックを使用することができる多様なデバイスに適用可能であり、これも本発明の権利範囲に属する。
【0109】
以上で本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、次の請求範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々の変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するのである。
【符号の説明】
【0110】
100:電池モジュール
110:電池セル
111、112:電極リード
120:電池セル積層体
200:モジュールフレーム
300:バスバーフレーム
400:エンドプレート
400H:ターミナルバスバー開口部
510:バスバー
520:ターミナルバスバー
800:絶縁カバー
900:ベンティング部
920:バリア層
【国際調査報告】