(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】負極より面積が広い正極を含む全固体電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20231108BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20231108BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20231108BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20231108BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231108BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M50/105
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526650
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 KR2021015684
(87)【国際公開番号】W WO2022098049
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0145876
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・リ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ウン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ジュ・チョ
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011AA03
5H011AA09
5H011AA13
5H011KK01
5H029AJ03
5H029AJ11
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5H029AK01
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5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
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5H029AM16
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029CJ03
5H029CJ12
5H029CJ28
5H029DJ02
5H029HJ00
5H029HJ04
5H029HJ07
5H029HJ12
(57)【要約】
本発明は、正極、負極、及び前記正極と負極の間に配置された固体電解質層を含む電極組立体と、前記電極組立体を収納する電池ケースとを含み、前記正極は前記負極より厚く、前記電極組立体を加圧するとき、加圧部に直接対面する電極の面積が、前記加圧部に直接対面しない電極の面積より狭い全固体電池及びその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に配置された固体電解質層を含む電極組立体;及び
前記電極組立体を収納する電池ケース;を含み、
前記正極は前記負極より厚く、
前記電極組立体を加圧するとき、加圧部に直接対面する電極の面積が前記加圧部に直接対面しない電極の面積より狭い全固体電池。
【請求項2】
前記加圧は、前記電極組立体の一面に加圧プレートを配置し、これを加圧する方法を用いて行う、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記加圧部に直接対面する前記電極は前記負極で、前記加圧部に直接対面しない前記電極は前記正極である、請求項1または2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記正極は、前記負極より強い強度を有する、請求項3に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記固体電解質層の面積は、最も面積が広い電極の面積と同一又はそれよりさらに広い、請求項1から4のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記固体電解質層の厚さは、前記加圧部に直接対面しない前記電極の厚さより薄い、請求項1から5のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記正極の厚さは、前記負極の厚さより2倍乃至5倍厚い、請求項1から6のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記電池ケースはパウチ型二次電池ケースである、請求項1から7のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項9】
前記全固体電池は、リチウムプレーティング/ストリッピング全固体電池である、請求項1から8のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項による全固体電池を製造する方法であって、
S1)正極、固体電解質層、及び負極を積層することによって電極組立体を形成する段階;及び
S2)前記正極及び前記負極のうち電極の面積が狭い方向から電極の面積が広い電極に向かって加圧する段階;
を含む全固体電池を製造する方法。
【請求項11】
前記固体電解質層内のポアは、前記段階S2)で除去されたり、前記段階S1)前に除去される、請求項10に記載の全固体電池を製造する方法。
【請求項12】
前記S2)段階は、前記電極組立体を電池ケースに収納した後で行われる、請求項10または11に記載の全固体電池を製造する方法。
【請求項13】
前記S2)段階は、前記電極組立体を前記電池ケースに収納し、真空シーリングした後で行われる、請求項12に記載の全固体電池を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月4日付けの韓国特許出願第2020-0145876号に基づいた優先権の利益を主張し、該当の韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、負極より面積が広い正極を含む全固体電池及びその製造方法に関し、具体的には、正極が負極より厚く、前記正極、前記負極、及び前記正極と前記負極との間に配置される固体電解質層を含む電極組立体を加圧するとき、加圧部に直接対面する電極の面積が、その対向面にある電極の面積より狭い全固体電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、エネルギー密度が高く、自己放電率が低く、寿命が長いので、多様な高容量電池に使用される。リチウム二次電池においては、充放電時に生成されるリチウムデンドライトによって正極と負極との間で存在する分離膜が損傷したり、電池の体積が増加するという問題が発生する。
【0004】
液体電解質の漏液や過熱による安全性問題を解決するために、全固体電池がその代案として提示されている。全固体電池は、リチウム二次電池と異なり、固体電解質を含む固体電解質層を有しており、前記固体電解質層は、正極と負極との間に配置され、分離膜としての役割をする。
【0005】
全固体電池は、従来の電池に使用されていた液状の電解液の代わりに、固体電解質を使用するので、温度変化による電解液の蒸発又は外部衝撃による漏液がなく、爆発及び火災から安全である。固体電解質は、固体の特性によって正極又は負極が接触する部位が限定されており、正極と固体電解質層との間及び負極と固体電解質層との間に界面が容易に形成されないという短所を有する。
【0006】
正極と固体電解質層との間及び負極と固体電解質層との間の接触面が少ない場合、電気抵抗が高く、出力が減少し、固体電解質を含む単位セルを加圧する方式で界面抵抗を減少させている。
【0007】
図1は、従来技術に係る全固体電池1の加圧前の側面図で、
図2は、従来技術に係る全固体電池1の加圧後の側面図である。
【0008】
図1及び
図2に示すように、従来技術に係る全固体電池1は、正極活物質層11及び正極集電体12を含む正極10と、固体電解質層20と、負極活物質層31及び負極集電体32を含む負極30とを積層した電極組立体を加圧して形成される。
【0009】
前記電極組立体の正極10、固体電解質層20及び負極30がねじれることを防止するために、加圧プレートPを一面に配置して加圧する方式で前記電極組立体を加圧する。
【0010】
前記加圧プレートPは、電極組立体の一面に配置され、前記加圧プレートPから前記電極組立体の方向に加圧力Fを加え、前記正極10、固体電解質層20及び負極30の間の界面抵抗を減少させる。
【0011】
このとき、上記のような加圧プレートPによる加圧は、前記電極組立体を電池ケース内に収納及び密封した後で行われ得る。前記電極組立体は、電池ケースに収納されていない状態でも加圧され得るが、前記電極組立体を収納するとき、前記電極組立体が揺れるおそれがあり、前記固体電解質層20が硫化物系固体電解質を使用した場合、これを水分と接触させないために密封後に加圧することが好ましい。
【0012】
既存には、前記全固体電池1の電極活物質のローディング量が大きくないので、前記全固体電池1を電池ケース内に収納した後で加圧する場合、電池ケースの損傷又は前記電極組立体の損傷が大きくなかったが、最近、高容量高密度の全固体電池を開発するために前記電極活物質のローディング量を増加させることによって正極10及び/又は負極30の厚さが漸次厚くなっており、前記正極10、前記固体電解質層20及び前記負極30の間の段差が漸次大きくなっている。前記段差が大きくなるほど、前記固体電解質層20が
図2のように損傷した損傷部Cが生じるようになる。
【0013】
前記損傷部Cが形成された固体電解質層20は、前記正極10と前記負極30との間で前記正極10と前記負極30の短絡を防止するために必要な部分までも損傷し得る。前記損傷部Cによって前記全固体電池1が短絡され、充放電が不可能であったり、深刻な場合は、駆動時に発火や爆発などの問題が発生し得る。
【0014】
さらに、最近の全固体電池は、電池の密度及び性能を向上させるために固体電解質層の厚さを漸次減少させており、前記固体電解質層が損傷する可能性がさらに大きくなっている。
【0015】
特許文献1は、加圧時に電極層の外周部の崩壊を防止したり、電極層が固体電解質層を裂くことを防止するために電極の広さを異ならせたが、電極層の利用率を高めるために、電極層の外周部が中央部より厚い形状を有している均一な形状を有さない電極を加圧するためのものであって、高容量高密度の全固体電池を均一に加圧し、電極のねじれを防止するための考慮はしていない。
【0016】
このように、全固体電池の性能及び密度を向上させがら安全性を向上させるための改善が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであって、電極組立体を均一に加圧しながら前記全固体電池の正極と負極の短絡を防止することを目的とする。
【0019】
また、前記全固体電池に加えられる圧力を特定の電極でのみ吸収するようにし、加圧による電極のねじれや、電極及び固体電解質層の損傷を防止することを目的とする。
【0020】
さらに、厚い電極を使用した全固体電池の損傷を防止し、高容量高密度の全固体電池を安全に使用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記のような目的を達成するために、本発明に係る全固体電池は、正極、負極、及び前記正極と負極との間に配置された固体電解質層を含む電極組立体と、前記電極組立体を収納する電池ケースとを含み、前記正極は前記負極より厚く、前記電極組立体を加圧するとき、加圧部に直接対面する電極の面積が、前記加圧部に直接対面しない電極の面積より狭いことを特徴とする。
【0022】
このとき、前記加圧は、前記電極組立体の一面に加圧プレートを配置し、これを加圧する方法を用いて行うことができる。
【0023】
前記加圧部に直接対面する電極は負極で、前記加圧部に直接対面しない電極は正極であり得る。
【0024】
前記正極は、前記負極より強い強度(strength)を有することができる。
【0025】
前記強度は、物体にかかった単位面積当たりの荷重に対して永久変形或いは破壊されない力の限界を意味する。
【0026】
前記固体電解質層の面積は、最も面積が広い電極の面積と同一又はそれよりさらに広くてもよい。
【0027】
前記固体電解質層の厚さは、加圧部に直接対面しない電極の厚さより薄くてもよい。
【0028】
このとき、前記正極の厚さは、前記負極の厚さより2倍乃至5倍厚くてもよい。
【0029】
前記電池ケースは、パウチ型二次電池ケースであり得る。
【0030】
また、前記全固体電池は、リチウムプレーティング/ストリッピング全固体電池であり得る。
【0031】
本発明は、前記記載した全固体電池のうちいずれか一つに該当する全固体電池を製造する方法であって、S1)正極、固体電解質層、及び負極を積層することによって電極組立体を形成する段階、及びS2)前記正極及び前記負極のうち電極の面積が狭い方向から電極の面積が広い電極に向かって加圧する段階を含むことができる。
【0032】
前記固体電解質層内のポアは、前記段階S2)で除去されたり、前記段階S1)前に除去され得る。
【0033】
前記S2)段階は、前記電極組立体を電池ケースに収納した後で行われ得る。
【0034】
前記S2)段階は、前記電極組立体を電池ケースに収納し、真空シーリングした後で行われ得る。
【0035】
本発明は、前記言及した全固体電池を含むバッテリーモジュール又はバッテリーパックであってもよく、前記全固体電池が装着されたデバイスであってもよい。
【0036】
本発明は、上記のような各構成のうち相反しない構成を一つ又は二つ以上選んで組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0037】
以上で説明したように、本発明に係る全固体電池は、電極組立体を形成するとき、電極組立体を均一に加圧しながら正極と負極との間の短絡を減少させる形態を有しており、全固体電池の初期生産収率を高め、駆動時の安全性が向上する。
【0038】
また、厚い正極活物質層を有しており、電池の容量を向上させるだけでなく、前記正極の強度も強いので、電極組立体がねじれたり損傷する現象が予防される。
【0039】
また、相対的に薄い固体電解質層を使用したときにも、加圧時に前記固体電解質層の損傷部を通じて全固体電池が短絡されないので、安全性及び性能を向上させた全固体電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】従来技術に係る全固体電池の加圧前の側面図である。
【
図2】従来技術に係る全固体電池の加圧後の側面図である。
【
図3】本発明の第1類型に係る全固体電池の加圧前の側面図である。
【
図4】本発明の第1類型に係る全固体電池の加圧後の側面図である。
【
図5】本発明の第2類型に係る全固体電池の加圧前の側面図である。
【
図6】本発明の第2類型に係る全固体電池の加圧後の側面図である。
【
図8】比較例3のCIP加圧後の電極組立体の写真である。
【
図9】比較例3のCIP加圧後の損傷した固体電解質層の外郭部の写真である。
【
図10】比較例3のCIP加圧後の正極面の写真である。
【
図11】比較例3のCIP加圧後、損傷した後で残った固体電解質層面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付の図面を参照して、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できる実施例を詳細に説明する。ただし、本発明の好ましい実施例に対する動作原理を詳細に説明するにおいて、関連する公知の機能又は構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を必要以上に不明瞭にし得ると判断される場合は、それについての詳細な説明を省略する。
【0042】
また、図面全体にわたって類似する機能及び作用をする部分に対しては、同一の図面符号を使用する。明細書全体において、一つの部分が他の部分と連結されているとしたとき、これは、直接連結されている場合のみならず、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、一つの構成要素を含むことは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0043】
また、構成要素を限定したり付加して具体化する説明は、特別な制限がない限り、全ての発明に適用可能であり、特定の発明に限定しない。
【0044】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示されたものは、別途に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0045】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって、「又は」は、別途に言及しない限り、「及び」を含むものである。そのため、「A又はBを含む」は、Aを含むか、Bを含むか、A及びBを含む前記3つの場合を全て意味する。
【0046】
また、全ての数値範囲は、明確に除外するという記載がない限り、両端の値及びその間の全ての中間値を含む。
【0047】
本発明に係る全固体電池は、正極、負極、及び前記正極と負極との間に配置された固体電解質層を含む電極組立体と、前記電極組立体を収納する電池ケースとを含み、前記正極は前記負極より厚く、前記電極組立体を加圧するとき、加圧部に直接対面する電極の面積が、前記加圧部に直接対面しない電極の面積より狭いことを特徴とする。
【0048】
本発明に係る全固体電池について、
図3乃至
図6を通じて説明する。
【0049】
図3は、本発明の第1類型に係る全固体電池100の加圧前の側面図で、
図4は、本発明の第1類型に係る全固体電池100の加圧後の側面図である。
【0050】
図3及び
図4では、説明の便宜のために、一つの正極110、固体電解質層120、及び負極130のみを示したが、本発明の電極組立体は、正極110、固体電解質層120、及び負極130を多数含むことができ、前記電極組立体は電池ケースに収納されていてもよい。これは、
図5及び
図6の場合にも同一である。
【0051】
本発明の第1類型に係る全固体電池100は、正極活物質層111及び正極集電体112を含む正極110と、固体電解質層120と、負極活物質層131及び負極集電体132を含む負極130とを含む電極組立体、及び前記電極組立体を収納する電池ケースを含む。
【0052】
前記正極110は、例えば、正極集電体112に、各正極活物質粒子で構成された正極活物質、導電材及びバインダーが混合された正極合剤を塗布することによって正極活物質層111を形成する方法で製造することができ、必要によっては、前記正極合剤に充填剤をさらに添加することができる。
【0053】
前記正極集電体112は、一般に3μm乃至500μmの厚さで製造され、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、高い導電性を有するものであれば特に限定されなく、例えば、前記正極集電体112としては、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、及びアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン又は銀で表面処理したものから選ばれる一つを使用することができ、詳細には、アルミニウムを使用することができる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成することによって正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0054】
前記正極活物質層111内に含まれる正極活物質は、例えば、前記正極活物質粒子の他に、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や1又はそれ以上の遷移金属に置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは、0乃至0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B又はGaで、x=0.01乃至0.3である)で表現されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn又はTaで、x=0.01乃至0.1である)又はLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、Cu又はZnである)で表現されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンに置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などで構成可能であり、これらのみに限定されることはない。
【0055】
ただし、本発明で使用される正極活物質は、負極130の一面にリチウムを堆積させるためにリチウムを含む金属酸化物を使用したり、これを含むことが好ましい。
【0056】
前記正極活物質層111は、前記正極集電体112より厚くてもよい。一例として、前記正極活物質層111は、10μm乃至700μmの厚さで形成され得る。
【0057】
前記導電材は、通常、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして0.1重量%乃至30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、導電性を有するものであれば特に限定されなく、例えば、前記導電材としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。
【0058】
前記正極110に含まれるバインダーは、活物質と導電材などとの結合及び集電体に対する結合を促進する成分であって、通常、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして0.1重量%乃至30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。
【0059】
前記固体電解質層120としては、有機固体電解質や無機固体電解質などが使用され得るが、これらのみに限定されるのではない。
【0060】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用され得る。
【0061】
前記無機固体電解質としては、硫化物系固体電解質及び酸化物系固体電解質を一例として挙げることができる。
【0062】
酸化物系固体電解質としては、例えば、Li6.25La3Zr2Al0.25O12、Li3PO4、Li3+xPO4-xNx(LiPON)、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOHなどのLiの窒化物、ハロゲン化物などが使用され得る。
【0063】
前記硫化物系粒子としては、本発明で特に限定しなく、リチウム電池分野で使用する公知の全ての硫化物系材質が使用可能である。前記硫化物系材質としては、市販のものを購入して使用したり、非晶質硫化物系材質の結晶化工程を経て製造されたものを使用することができる。例えば、前記硫化物系固体電解質としては、結晶系硫化物系固体電解質、非晶質系硫化物系固体電解質、及びこれらのうちいずれか一つ又はこれらの混合物を使用することができる。使用可能な複合化合物の例としては、硫黄-ハロゲン化合物、硫黄-ゲルマニウム化合物、硫黄-シリコン硫化物がある。具体的には、SiS2、GeS2、B2S3などの硫化物が含まれてもよく、Li3PO4、ハロゲン、ハロゲン化合物などが添加されていてもよい。好ましくは、10-4S/cm以上のリチウムイオン伝導度を具現できる硫化物系電解質を使用することができる。
【0064】
代表的には、Li6PS5Cl(LPSCl)、Thio-LISICON(Li3.25Ge0.25P0.75S4)、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5、Li3PS4、Li7P3S11、LiI-Li2S-B2S3、Li3PO4-Li2S-Si2S、Li3PO4-Li2S-SiS2、LiPO4-Li2S-SiS、Li10GeP2S12、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3、Li7P3S11などを含む。
【0065】
前記固体電解質層120の前記負極130の対面には、リチウムデンドライトの形成を誘導するためのコーティング層があり得る。
【0066】
前記コーティング層は、電気伝導性及びイオン伝導性を向上させるために金属を含むことができる。前記金属は、負極130の性能を向上させながら、リチウムデンドライトが前記コーティング層と前記負極130との間に形成できるようにする金属であれば、その種類に限定がない。このとき、前記金属は、リチウム親和性を有しており、リチウムデンドライトが前記コーティング層と前記負極130との間に形成できるように誘導することができる。
【0067】
このとき、リチウムデンドライトが前記固体電解質層120の方向に成長することを防止するために、前記リチウム親和性の金属は、前記コーティング層のうち前記負極130の対面に配置され得る。
【0068】
前記コーティング層にリチウム親和性の金属が位置する場合、前記リチウム親和性の金属上でリチウムプレーティングが起こり、リチウム核が形成され、前記リチウム核で成長したリチウムデンドライトは、前記コーティング層でのみ成長するようになる。
【0069】
前記リチウム親和性の金属としては、金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれか一つ以上が選ばれ得る。例えば、前記金属は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)及びマグネシウム(Mg)などに該当し、前記金属酸化物は、非金属として、銅酸化物、亜鉛酸化物、コバルト酸化物などに該当し得る。
【0070】
前記コーティング層を形成する方法は、特に限定されなく、例えば、液浸(Immersing)、スピンコーティング(Spin Coating)、ディップコーティング(Dip Coating)、スプレーコーティング(Spray Coating)、ドクターブレード(Doctor Blade)、溶液キャスティング(Solution Casting)、ドロップコーティング(Drop Coating)、PVD(Physical Vapor Deposition)又はCVD(Chemical Vapor Deposition)によって行われ得る。
【0071】
本発明の第1類型に係る負極130は、負極活物質層131及び負極集電体132を含むことができる。
【0072】
前記負極活物質層131は、前記負極集電体132の少なくとも一面に負極活物質層を塗布及び乾燥して形成され得る。
【0073】
前記負極活物質層131に使用される負極活物質としては、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe'yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me':Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料などを使用することができる。
【0074】
前記負極集電体132は、一般に3μm乃至500μmの厚さで製作され得る。このような負極集電体132は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、導電性を有するものであれば特に限定されなく、例えば、前記負極集電体132としては、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、前記負極集電体132は、正極集電体112と同様に、表面に微細な凹凸を形成することによって負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で使用され得る。
【0075】
前記電池ケースは、パウチ型電池ケースであり得る。前記パウチ型電池ケースは、アルミニウムラミネートシートの厚さを調節し、高容量及び高密度の全固体電池を得ることができ、多様な形状の全固体電池を形成できるようにする。このとき、前記ラミネートシートは、外部樹脂層と、アルミニウム層を含む金属層と、内部シーラント層とを含むことができる。
【0076】
上記のように電池ケースがラミネートシートからなっているので、前記電極組立体を前記電池ケース内に収納した後にも前記電極組立体を加圧することができ、前記電極組立体の正極110、固体電解質層120及び負極130が外部物質と反応する可能性を減少させることができる。
【0077】
特に、前記負極130としてリチウム金属を使用する場合、前記リチウム金属が水分と反応するおそれがあるので、リチウム金属を負極130として使用する場合、前記電極組立体は、電池ケース内に収納及び密封した後で加圧することが好ましい。
【0078】
前記正極の厚さaは、前記負極の厚さbより厚く、前記電極組立体を加圧するとき、加圧する部分である加圧部に直接対面する電極の面積が、前記加圧部に対面しない電極の面積より狭くてもよい。
【0079】
このとき、前記加圧部に直接対面する電極は負極130で、前記加圧部に直接対面しない電極は正極110であり得る。すなわち、前記正極110は、前記負極130よりさらに厚く、面積がさらに広い形態であり得る。
【0080】
上記のように正極の厚さaが厚い場合、前記加圧部に直接対面しない正極110の変形率が、薄い厚さを有する正極110に比べて減少する。その一方で、直接対面する負極130の場合、前記加圧部に直接対面しているので、前記加圧部によって変形し得るが、前記加圧部として平らな加圧プレートPが前記負極130に対面しているので、前記負極130は、前記加圧プレートPによって一定の形態を維持することができる。
【0081】
このとき、前記正極の厚さaは、前記負極の厚さbより2倍乃至5倍厚くてもよい。前記正極の厚さaが過度に薄い場合は、所望の性能の全固体電池が得られないだけでなく、前記電極組立体の正極110が変形する可能性が大きくなり、前記正極の厚さaが過度に厚い場合は、前記正極110が効率的に作動できないという問題が発生し得る。
【0082】
前記電極組立体の加圧は、前記電極組立体の負極130の一面に加圧プレートPを配置し、前記加圧プレートPを前記負極130の方向に加圧することであり得る。
【0083】
このとき、前記全固体電池に加えられる加圧力Fは、前記正極110、前記固体電解質層120及び前記負極130の種類によって変わり得るが、50MPa超過1000MPa未満で1分以上加圧するものであり得る。
【0084】
前記加圧は、熱間等方圧プレス(WIP、Warm Isostatic Press)又は冷間等方圧プレス(CIP、Cold Isostatic Press)を通じて行われ得る。熱間等方圧プレスは、高温で等方圧的な圧力を前記積層体に同時に加えて処理する過程であって、通常、アルゴンなどのガスを圧力媒体とする場合が多い。冷間等方圧プレスは、前記積層体をゴム袋などの形態抵抗が少ない成形モールド内に密封した後、液圧を加え、前記積層体の表面に方向性のない均一な圧力を加える方法である。本発明に係る全固体電池は、等方圧を提供する全ての加圧方法を使用できるが、媒体の反応性が最も低い冷間等方圧プレスを全て使用することが好ましい。
【0085】
上記のように一方向に前記電極組立体を加圧し、前記電極組立体がねじれることを防止することができる。
【0086】
追加的に、前記正極110は、前記負極130より強い強度を有する素材からなっていてもよい。前記正極110が前記負極130より強い強度を有する素材からなっている場合、前記負極130に比べて変形する可能性が減少し、電極組立体の全般的な部分を占める正極110の形態が維持されることによって、前記電極組立体が変形する可能性が減少するようになる。したがって、前記負極130としては、グラファイト以外の物質を使用することが好ましい。
【0087】
このとき、前記正極110の面積が前記負極130の面積より広い場合、前記加圧方向に、前記加圧力Fが負極130から固体電解質層120を経て正極110に加えられるので、前記相対的に面積が大きい正極110の一面に触れる固体電解質層120は前記加圧力Fによって損傷しない。
【0088】
前記固体電解質層120が損傷したとしても、損傷部Cは、前記負極130と前記正極110が接触しない部分で生じるようになる。したがって、上記のような加圧によって前記正極110及び負極130が短絡される可能性が減少するようになる。
【0089】
前記加圧は、前記言及したように、主に前記電極組立体の界面抵抗を減少させるために行われるが、前記全固体電池の使用による前記全固体電池の膨張によっても発生し得る。このとき、前記全固体電池内部の電極組立体と前記電池ケースが触れたり、外部衝撃によって前記固体電解質層120が損傷し得る。このときにも、前記正極110の面積が前記負極130の面積より広いので、上記のように固体電解質層120が損傷したとしても、前記電極組立体が短絡される可能性が減少するようになる。
【0090】
このとき、前記固体電解質層120の面積は、前記正極110の面積と同一であったり、前記正極110の面積より大きくなり得る。前記固体電解質層120の面積が前記正極110の面積と同一である場合は、外部衝撃によって前記固体電解質層120が損傷する可能性が減少し、前記全固体電池の製造費用を減少させることができる。また、前記固体電解質層120の面積が前記正極110の面積より大きい場合は、前記固体電解質層120が前記正極110の一面を保護する役割をすることができる。また、リチウムプレーティング/ストリッピングによってリチウム層が形成される場合、前記リチウム層の形成部位と前記正極110が接触することを防止する役割をすることができる。
【0091】
前記固体電解質層120は前記正極110より薄くてもよい。前記固体電解質層120は、前記正極110に対面しているので、一部が損傷したとしても前記電極組立体の短絡を防止することができ、両端が損傷しても構わない。したがって、前記固体電解質層120は、前記正極110と前記負極130が直接対面する部位で前記正極110と負極130を電気的に絶縁できる最小限の厚さのみを有することもできる。一例として、前記固体電解質層120の厚さは最小3μm以上であってもよい。ただし、前記固体電解質層120が過度に厚い場合、イオン伝導度が良くなく、電池の性能が低下するので、その厚さが薄いことが好ましい。
【0092】
図5は、本発明の第2類型に係る全固体電池200の加圧前の側面図で、
図6は、本発明の第2類型に係る全固体電池200の加圧後の側面図である。
【0093】
下記では、前記第1類型との相違点のみを言及しようとする。
【0094】
本発明の第2類型に係る全固体電池200は、
図3及び
図4と異なり、別途の負極活物質層がなく、負極集電体232を単独で使用したり、或いはリチウム金属を負極230として使用することができる。前記第2類型に係る全固体電池200は、リチウムプレーティング/ストリッピングメカニズムを通じて、充放電時に正極活物質層211のリチウムイオンが前記負極230に堆積することによってリチウム層240を形成するようになる。このために、前記正極活物質層211は、リチウムを含む金属酸化物を正極活物質として使用することができる。
【0095】
前記固体電解質層220は、コーティング層にリチウム親和性を有している金属及び/又は金属酸化物を含んでおり、前記リチウム層240が固体電解質層220の方向に成長することを防止することができる。
【0096】
前記コーティング層は、厚さが5nm乃至20μmであり得る。これは、前記コーティング層が過度に厚い場合は、前記負極のイオン伝導性を低下させるおそれがあり、前記コーティング層が過度に薄い場合は、前記コーティング層がリチウムデンドライトによる固体電解質層220の損傷を防止する役割をしにくいためである。前記コーティング層の厚さは、コーティング層内部の金属含量及び/又はイオン伝導性を有する高分子重合体の付加有無によって変わり得る。一般に、コーティング層は、イオン伝導度がないか低いので、薄膜の厚さであることが好ましい。
【0097】
前記リチウム層240は、前記負極集電体232上に堆積するようになる。前記リチウム層240は、定電流/定電圧(CC/CV)の条件で充電され、その厚さは、電池内に形成されるリチウムの量、充放電速度及び時間などによって変わり得る。
【0098】
このとき、前記負極230の面積は、正極210の面積に比べて50%乃至99%であることが好ましい。前記負極230の面積が正極210の面積に比べて50%未満である場合は、固体電解質層220のコーナー部分が損傷したとしても初期ショートの発生比率は減少するが、充電時に負極集電体232のコーナー部分に相対的に多い量のリチウムが不均一に堆積し、電池が正常に作動しないことがある。一方、前記負極230の面積が正極210の面積に比べて99%を超える場合は、固体電解質層220の損傷部位が負極集電体232と当接し、初期ショートが発生し得る。前記言及した面積比率は一例であり、前記負極230と正極210の面積比率は、前記負極230と正極210の面積によって変わり得る。このとき、前記負極230と前記正極210の面積は、最小公差が横と縦でそれぞれ1mm以上でなければならない。
【0099】
前記リチウム層240は、前記負極230の面積より広く形成され得るが、前記正極210の面積が前記負極230の面積より大きいので、前記正極210の面積又は前記固体電解質層220の面積より小さくてもよい。
【0100】
上記のようにリチウムプレーティング/ストリッピングを通じて負極230の厚さを薄く形成できるので、本発明の第2類型に係る全固体電池200は、高密度及び高性能を有することができる。このとき、前記負極230は、薄膜と同じ厚さを有することができ、前記固体電解質層220も、前記正極210と負極230の厚さ差によって最小限の絶縁のための厚さのみで形成することができ、電極の容量と関連した正極活物質層211が厚いと共に、全体の全固体電池200が厚くない高密度の全固体電池を得ることができる。
【0101】
また、上記のようにリチウムプレーティング/ストリッピングを通じてリチウム層240を形成するので、所望でない部分でリチウムデンドライトが形成されることが減少し、前記固体電解質層220を薄く形成することができ、前記電極組立体の短絡可能性が減少するようになる。
【0102】
本発明に係る全固体電池を製造する方法は、前記記載した全固体電池を製造するために、S1)正極、固体電解質層、及び負極を積層することによって電極組立体を形成する段階、及びS2)前記正極及び前記負極のうち電極の面積が狭い方向から電極の面積が広い電極に向かって加圧する段階を含む。
【0103】
前記第1類型及び第2類型で言及したように、前記正極の厚さ及び広さが前記負極より厚く且つ広くてもよい。このとき、前記負極から正極方向に前記電極組立体を加圧し、前記電極組立体の界面抵抗を減少させることができる。
【0104】
前記固体電解質層のポアは、前記段階S2)の加圧時に除去されたり、前記段階S1)前に除去され得るが、これは、前記全固体電池の作動及びリチウム層の形成によって前記電極組立体がねじれたり形態が変わることを防止するためのものである。
【0105】
前記S2)段階は、前記電極組立体を電池ケースに収納した後で行われ得る。これは、前記電極組立体で使用される負極としてリチウムを使用したり、固体電解質層として硫化物系固体電解質を使用する場合のように、外部物質に敏感に反応する素材を前記電極組立体に使用したり、前記電極組立体の損傷及び形態の変形を防止するためのものである。
【0106】
特に、外部物質に敏感に反応する素材を前記電極組立体に使用する場合、前記電極組立体は、前記電池ケースに収納され、真空でシーリングされた後で加圧することが好ましい。
【実施例】
【0107】
以下では、本発明に係る実施例と従来技術に係る比較例とを比較した実験例を通じて本発明を説明する。
【0108】
<実施例1>
下記のような正極、固体電解質層及び負極を含む全固体電池を使用して実験を行った。
【0109】
正極活物質であるNCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)、固体電解質であるアルジロダイト(Li6PS5Cl)、導電材であるカーボン、及びPTFEバインダーを77.5:19.5:1.5:1.5の重量比でアニソールに分散及び撹拌することによって正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを14μmの厚さのアルミニウム集電体にドクターブレードを用いて塗布した後、100℃で12時間真空乾燥することによって6mAh/cm2の容量を有する約150μmの厚さの正極を製造した。
【0110】
固体電解質であるアルジロダイト(Li6PS5Cl)とPTFEバインダーを95:5の重量比でアニソールに分散及び撹拌することによって固体電解質層スラリーを製造し、これをPET離型フィルムにコーティングした後、100℃で12時間真空乾燥することによって固体電解質層を形成した。
【0111】
負極として、50μmの厚さのリチウム集電体を使用した。
【0112】
このとき、正極と固体電解質層は2cm×2cmの面積に打ち抜き、負極の場合、1.8cm×1.8cmの面積に打ち抜いた。前記正極、固体電解質層及び下記の負極を順次積層することによって電池を製作した。製作された電池に対して、負極面の下側にSUSプレートを位置させた状態で500MPaの圧力で10分間CIPを行うことによって電池を製作した。
【0113】
前記電池を用いて組み立てた後、OCVを測定し、ショートの発生率を確認した。また、60℃で電圧範囲4.25V乃至3.0Vで0.05C充電/0.05C放電実験を行い、これを下記の表1に示した。
【0114】
<実施例2>
負極として、銀が30nm蒸着したニッケル集電体(10μm)を使用したことを除いては、実施例1と同一に製作及び評価した。
【0115】
<比較例1>
正極の容量が4mAh/cm2で、厚さが約100μmであるものを使用し、電池を製作するために正極を1.8cm×1.8cmの面積に、負極と固体電解質をそれぞれ2cm×2cmの面積に打ち抜いて組み立てたことを除いては、実施例1と同一に製作及び評価した。
【0116】
<比較例2>
電池を製作するために比較例1のように正極、固体電解質層、及び負極を準備し、CIPの進行時にSUSプレートを正極面に当てたことを除いては、比較例1と同一に製作及び評価した。
【0117】
<比較例3>
正極の容量が6mAh/cm2であることを除いては、比較例1と同一に製作及び評価した。
【0118】
<比較例4>
負極として、銀が30nm蒸着したニッケル集電体(10μm)を使用したことを除いては、比較例3と同一に製作及び評価した。
【0119】
<比較例5>
電池を製作するために正極と固体電解質層を2cm×2cmの面積に、負極を1cm×1cmの面積にそれぞれ打ち抜いて組み立てたことを除いては、比較例4と同一に製作及び評価した。
【0120】
<比較例6>
電池を製作するために正極と固体電解質層を2cm×2cmの面積に、負極を1.9cm×1.9cmの面積にそれぞれ打ち抜いて組み立てたことを除いては、比較例4と同一に製作及び評価した。
【0121】
【0122】
前記表1に示すように、比較例1のように低い正極容量を有する電池の場合は、組み立て後にショートがよく発生しない。しかし、CIPの適用時、面積が小さい正極にSUSプレートを位置させる比較例2の場合は、強度が弱く、面積の大きい負極と固体電解質層が面積の小さい正極を覆う形態で変形が起こり、全てショートが発生することが分かる。すなわち、SUSプレートは、大きい面積を有する電極或いは強度の高い電極面に対面すると良いことが分かる。
【0123】
しかし、SUSプレートは、大きい面積を有する電極或いは強度の高い電極面に対面する構造を有するにもかかわらず、正極が6mAh/cm2の容量で製作される場合、全固体電池内部の接触を改善するためにCIP加圧を行わなければならない。
【0124】
図7は、比較例3のCIP加圧前の写真で、
図8は、比較例3のCIP加圧後の電極組立体の写真で、
図9は、比較例3のCIP加圧後の損傷した固体電解質層の外郭部の写真で、
図10は、比較例3のCIP加圧後の正極面の写真で、
図11は、比較例3のCIP加圧後、損傷した後で残った固体電解質層面の写真である。
【0125】
図7乃至
図11に示すように、CIP加圧を行う場合、CIP前には損傷がなかった固体電解質層が正極の面積に沿って壊れることが分かる。また、比較例3のOCVを確認した結果、製作した3個の電池は、いずれも正常なOCVである2.9Vより小さい2.3V未満と測定された。
【0126】
また、本発明は、前記全固体電池を含む電池モジュール、電池パック、及び前記電池パックを含むデバイスを提供するが、上記のような電池モジュール、電池パック及びデバイスは当業界に公知となっているので、本明細書では、それについての具体的な説明を省略する。
【0127】
前記デバイスは、例えば、ノート型パソコン、ネットブック、タブレットPC、携帯電話、MP3、ウェアラブル電子機器、パワーツール(power tool)、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)、電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)、電気ゴルフカート(electric golf cart)、又は電力貯蔵用システムであり得るが、これらのみに限定されないことは当然である。
【0128】
本発明の属した分野で通常の知識を有する者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形が可能であろう。
【符号の説明】
【0129】
1、100、200 全固体電池
10、110、210 正極
11、111、211 正極活物質層
12、112、212 正極集電体
20、120、220 固体電解質層
30、130、230 負極
31、131 負極活物質層
32、132、232 負極集電体
40、240 リチウム層
a 正極の厚さ
b 負極の厚さ
P 加圧プレート
F 加圧力
C 損傷部
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、正極、負極、及び前記正極と負極との間に配置された固体電解質層を含む電極組立体と、前記電極組立体を収納する電池ケースとを含み、前記正極は前記負極より厚く、前記電極組立体を加圧するとき、加圧部に直接対面する電極の面積が、前記加圧部に直接対面しない電極の面積より狭い全固体電池及びその製造方法に関するものであるので、産業上に利用可能である。
【国際調査報告】