(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】骨髄性白血病の治療のためのFLT3阻害剤を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20231108BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231108BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231108BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P35/02
A61P43/00 105
A61K45/00
A61K9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527016
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 KR2021015794
(87)【国際公開番号】W WO2022098083
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0147156
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ベ,イン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジェ ユル
(72)【発明者】
【氏名】アン,ヨン ギル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC27
4C076FF04
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA34
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA17
4C086MA34
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、FMS様チロシンキナーゼ-3(FLT3)阻害剤および薬学的に許容可能な賦形剤を含む、白血病の治療のための医薬組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FMS様チロシンキナーゼ-3(FLT3)阻害剤および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物として、
上記のFLT3阻害剤が、下記の化学式1
[化学式1]
【化1】
の化合物、その立体異性体、その互変異性体、それらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも一つの化合物である、または
前記選択された少なくとも一つの化合物の薬学的に許容可能な塩、または前記選択された少なくとも一つの化合物の溶媒和物であり、かつ
前記医薬組成物が、白血病を治療するための医薬組成物であり、前記白血病がん細胞が、FLT3遺伝子内で遺伝子内縦列重複(ITD)変化を有し、かつ
F691L、D835Y、D835F、D835I、D835H、D835V、D835Aの中から選択される少なくとも一つのFLT3変異をさらに含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記白血病が急性骨髄性白血病(AML)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物がSYK阻害剤と同時に、または逐次的に併用される、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FMS様チロシンキナーゼ-3(FLT3)阻害剤および薬学的に許容可能な賦形剤を含む、白血病の治療のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
キナーゼは、高エネルギー分子、特にATPのリン酸基を基質に移動させる反応の媒体として機能する。キナーゼは、無水リン酸結合を安定化することと、基質およびリン酸基を特定の位置に定置することとによって、反応を速める役割を果たす。負に荷電したリン酸基との相互作用から生じる移行状態は大半の場合、正に荷電した周囲のアミノ酸を通して静電的に安定化され、また一部のキナーゼも、金属補因子を使用してリン酸基に協調的に結合する。
【0003】
キナーゼは、タンパク質キナーゼ、脂質キナーゼ、炭水化物キナーゼなどの様々な群へと分割されることができる。リン酸化の状態に応じて、タンパク質、脂質、または炭水化物は、それらの活性と、反応性と、他の分子に結合する能力とを変えることができる。キナーゼは、細胞内シグナル伝達に広範な効果を有し、また細胞内の複雑な生物学的機構を制御する。リン酸化を通して、一部の分子の活性は強化されるかまたは阻害されるかのいずれかであり、それらの分子が他の分子と相互作用する能力は調節されることができる。環境的条件またはシグナルに応じて多数のキナーゼが反応するので、細胞は状況に応じてキナーゼを通して細胞内の分子を制御することができる。従って、キナーゼは、細胞および他の多数の細胞反応経路の成長、分化、増殖、生存、代謝、シグナル伝達、細胞輸送、分泌において非常に重要な役割を果たす。
【0004】
キナーゼは、細菌やカビ、昆虫、哺乳類に至る様々な種で見いだされていて、ヒトにおいてはこれまでに500種以上のキナーゼが見いだされている。
【0005】
タンパク質キナーゼは、タンパク質の活性を増加させるか、または減少させるかのいずれかであり、それを安定化するか、または分解のためのマーカーとなり、タンパク質を特定の細胞区画内に置くか、または他のタンパク質とのその相互作用を開始もしくは妨害する。タンパク質キナーゼは、すべてのキナーゼの大半を占めることが知られていて、主要な研究の対象となっている。タンパク質キナーゼは、タンパク質および酵素を制御することだけでなく、ホスファターゼとともに細胞シグナル伝達を行うことにおいても役割を果たし、また細胞タンパク質は多数の共有結合の対象であるが、リン酸化のような多くの可逆的共有結合はないため、タンパク質のリン酸化は調節機能を有すると記述されることができる。タンパク質キナーゼはしばしば、数多くの基質を有し、また時として特定のタンパク質は、一つ以上のキナーゼにおいて基質として働くことができる。この理由から、タンパク質キナーゼは、その独自の活性を制御する因子を使用して命名される。例えば、カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼは、カルモジュリンによって制御される。時として、キナーゼはまた、サブグループに分けられる。例えば、タイプ1およびタイプ2の環状AMP依存性タンパク質キナーゼは、同じ酵素サブユニットから構成されるが、それらは他の対照サブユニットが環状AMPに結合されている時に制御される。
【0006】
タンパク質のチロシン、セリン、トレオニン残基に位置するヒドロキシ基のリン酸化を触媒する酵素であるタンパク質キナーゼは、細胞の成長、分化、増殖を誘発する成長因子シグナルの伝達において重要な役割を果たし(Melnikova,I.et al.,Nature Reviews Drug Discovery,3(2004),993)、また特定のキナーゼの異常な発現または変異が、がん細胞で頻繁に起こることが報告されている。
【0007】
一般に、細胞が外部刺激を認識する方法のうちの一つは、細胞膜上の受容体であるチロシンキナーゼを通している。受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、細胞の外に露出した細胞外部と、細胞内の細胞質に露出した細胞内部と、真ん中に位置する原形質膜を通過する膜通過部とから成る。受容体の細胞外部は、特定のリガンドと組み合わせられる部分であり、また細胞内部は、リガンドによって活性化された受容体の活性化シグナルを細胞へと伝達する機能を果たす。受容体チロシンキナーゼは、細胞内に露出したC末端領域でのチロシンキナーゼ活性を有するドメインを有するため、細胞外部への特定のリガンドの付着は、受容体タンパク質の細胞質部に露出したC末端のチロシンキナーゼドメインのキナーゼ酵素を活性化し、これは二量体において互いのC末端でチロシンをリン酸化する。チロシンリン酸化のこのプロセスは、細胞外刺激に関するシグナルが細胞の中に送達される最も重要なプロセスになる。こうした機序を用いて細胞外刺激を細胞の中に送達するチロシンキナーゼ活性を有することが知られている数多くの受容体がある。典型的な例としては、FLT3、VEGFR、SYKが挙げられる。
【0008】
それらの中でも、受容体チロシンキナーゼであるFMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)は通常、造血芽球によって造血前駆細胞において発現され、また典型的な幹細胞の発現および免疫系において重要な役割を果たす。FLT3の異常な過剰発現および変異は、白血病患者においてしばしば観察される。特に、急性骨髄性白血病(AML)において、FLT3のD835V、D835Y、ITD(遺伝子内縦列重複)などの様々な変異が観察される。急性骨髄性白血病は、骨髄および末梢血中の芽球の異常な成長および分化を特徴とする単純造血幹細胞疾患である。FLT3は最近、AML治療の観点から最も重要な標的のうちの一つと考えられている。
【0009】
成人のAMLにおいて、RASおよびp53遺伝子の変異は、成人のAMLの約20%および5%で報告される一方で、FLT3遺伝子の変異は、成人のAMLの約30%で見られる。AMLにおける最も典型的な問題は、不良な予後を引き起こすFLT3の変異が活性化されることである。FLT3変異は、大きく二つのタイプに分けられる。一つは、膜近傍領域内の遺伝子内縦列重複(ITD)であり、もう一つは、チロシンキナーゼドメイン(TKD)内の点変異である。最も頻繁に見られる変異であるFLT3-ITDは、早期AML患者のうちの約23%で活性化される。ITD変異を有する患者は、不良な予後と高い再発率を示す。もう一つの主なFLT3変異は、FLT3 TKD変異であり、これは早期AMLの事例の約7%を占める。様々なアミノ酸によって置換されたアスパラギン酸塩835(D835)の残基において、点変異はITD変異よりも少ない頻度で生じるが、それらは最も一般的な変異のうちの一つである。加えて、AMLにおけるFLT3の別の主な活性化方法は、野生型FLT3タンパク質の過剰発現である。
【0010】
上述の通り、FLT3におけるITD(遺伝子内縦列重複)変異の活性化は、急性骨髄性白血病患者の約20%で検出され、これは不良な予後に関連する。FLT3-ITDは、悪性疾患の発症を引き起こす役割を果たしているドライバー病変であること、およびこれをヒトAMLにおける有効な治療標的とすることができることが研究によって分かっている(非特許文献1)。FLT3遺伝子の突然変異は、AMLにおいてしばしば生じる現象であり、またこれは通常、膜近傍のドメインコード領域またはチロシンキナーゼドメイン(TKD)の点変異においてITD(遺伝子内縦列重複)を伴う。
【0011】
FLT3-ITD変異とFLT3-TKD変異の両方は、すべての構成成分の二量体化およびFLT3受容体の活性化に起因して、リガンド非依存性の成長を引き起こす。FLT3-ITDの野生型対立遺伝子と比較してより高い突然変異率は、成人と小児の両方における不良な予後に関連する(非特許文献2)。慢性骨髄単球性白血病(CMML)などの他のタイプの白血病も、FLT3の活性化変異を有する可能性がある。従って、活性化変異を有するFLT3は、様々なタイプのがんに対する重要な標的である(非特許文献3および非特許文献4)。
【0012】
特に、様々なTKDバリアントが、難治性または再発性の急性骨髄性白血病を有する患者に対して、既に開発された、または開発中のFLT3阻害剤の分析において、様々な獲得耐性として報告されている。典型的な例として、受容体ドメイン(RD)のK429Aバリアント、JMドメインのY572C、TK1ドメインのA627P、N676K/D/I/S、F691L、ならびにTK2ドメインのD835Y/F/I/H/V/AおよびY842C/H/Nが挙げられる(非特許文献5)。FLT3阻害剤についての臨床研究における耐性患者の分析において、最も重要な獲得耐性はF691Lを含み、またF691Lの場合において、薬剤の活性を阻害することができるゲートキーパーバリアントである。従って、F691L単独またはITD-F691Lの二重変異体を標的とすることができる薬剤の開発は、満たされていない医療ニーズであると考えられている(非特許文献6)。
【0013】
主に血液細胞内で発現する脾臓チロシンキナーゼ(SYK)は、B細胞受容体および肥満細胞などの他の免疫受容体のシグナル伝達経路として重要な役割を果たす。脾臓チロシンキナーゼはまた、神経細胞および血管内皮細胞などの非造血細胞内でも発現する。脾臓チロシンキナーゼは、IL-1、TNF-α、ITGB1を含む様々な細胞刺激の酸化に重要な役割を果たすことが最近の研究で証明されている。SYKは、様々な血液悪性腫瘍、自己免疫疾患、他の炎症反応において、潜在的に良好な標的として知られている(非特許文献7および非特許文献8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Catherine et al.,Nature,2012,485,260-263
【非特許文献2】A S Moore et al.,Leukemia,2012,26,1462-1470
【非特許文献3】Cancer Cell,(2007),12:367-380
【非特許文献4】Current Pharmaceutical Design(2005),11,3449-3457
【非特許文献5】H Kiyoi et al.,Cancer Science(2020),111,312
【非特許文献6】Christine et al.,Cancer Discovery,9,(2019),1050
【非特許文献7】Liu et al.,Journal of Hematology & Oncology(2017),10,145
【非特許文献8】Yamada T et al.,J.Immunol.,(2001)167,283-288
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の一つの態様は、FMS様チロシンキナーゼ-3(FLT3)阻害剤および薬学的に許容可能な賦形剤を含む、白血病の治療のための医薬組成物を提供することである。
【0016】
本発明の別の態様は、上記の一つの態様に従って、F691L後天性変異を有するがんを治療するための医学的用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一つの態様は、FMS様チロシンキナーゼ-3(FLT3)阻害剤および薬学的に許容可能な賦形剤を含む、白血病の治療のための医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明の別の態様は、上記の一つの態様に従って、F691L後天性変異を有するがんを治療するための医学的用途を提供する。
【0019】
一つの実施形態は、FMS様チロシンキナーゼ-3(FLT3)阻害剤および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物を提供し、
上記FLT3阻害剤は、下記の化学式1の化合物、その立体異性体、その互変異性体、それらの組み合わせを含む群から選択される少なくとも一つの化合物であり、または
この選択された少なくとも一つの化合物の薬学的に許容可能な塩、またはこの選択された少なくとも一つの化合物の溶媒和物であり、かつ
当該医薬組成物は、白血病を治療するための医薬組成物であり、当該白血病がん細胞は、FLT3遺伝子内で遺伝子内縦列重複(ITD)変化を有し、かつ
医薬組成物は、F691L、D835Y、D835F、D835I、D835H, D835V、D835Aの中から選択される少なくとも一つのFLT3変異をさらに含む。
[化学式1]
【化1】
【0020】
一つの実施形態において、当該白血病は急性骨髄性白血病(AML)である。
【0021】
一つの実施形態において、当該医薬組成物は、SYK阻害剤と同時に、または逐次的に共投与されることができる。
【0022】
本明細書において、「同時に」という用語は、二つ以上の構成成分を事実上同時に、または同時に同じ経路を通して投与することを指し、また事実上同時に投与される場合、投与経路は同じであるかまたは異なるかのいずれでもありうる。本明細書において、「逐次的に」という用語は、異なる時点での二つ以上の構成成分の投与を指し、また投与経路は同じであるかまたは異なるかのいずれでもありうる。
【0023】
FLT3阻害剤を含有する医薬組成物の他の実施形態は、以下の通りである。
(1)活性成分として、下記の化学式Aの化合物、その立体異性体、互変異性体、溶媒和物、薬学的に許容可能な塩の中から選択される化合物を含有する、がんの治療のための医薬組成物とすることができる。
[化学式A]
【化2】
上記の化学式Aにおいて、
R
1は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-4アルコキシ、または-NR
aR
bであり、
式中、R
aおよびR
bはそれぞれ独立して、水素またはC
1-4アルキルであり、
R
2は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキサミド、ホルミル、ハロC
1-4アルキル、またはC
1-4アルキルであり、
R
3は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ハロC
1-4アルキル、C
1-4アルキル、C
2-4アルケニル、またはC
2-4アルキニルであり、
各R
4は相互に独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、-S(=O)
l-R
c-、ハロC
1-4アルキル、C
1-4アルコキシ、ヒドロキシC
1-4アルキル、C
1-4アルキル、C
2-4アルケニル、C
2-4アルキニル、-NR
dR
e、-CO
2R
e、または-CO-NR
dR
eであり、
式中、R
cはC
1-4アルキル、または-NR
dR
eであり、
R
dおよびR
eは相互に独立して、水素、またはC
1-4アルキルであり、
lは、0~2の整数であり、
kは、0~4の整数であり、
R
5およびR
6は相互に独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、C
1-4アルコキシ、またはC
1-4アルキルであり、
R
7は、ヒドロキシC
1-4アルキル、C
1-4アルキル、C
2-4アルケニル、C
2-4アルキニル、C
3-7シクロアルキル、またはC
3-9ヘテロシクロアルキルであり、
式中、C
3-7シクロアルキルまたはC
3-9ヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C
1-4アルキル、またはハロC
1-4アルキルと置換される、または非置換であることができ、
Xは、HまたはOHであり、
XがOHである場合、化学式Aの化合物は、以下の化学式Bに示す通りの互変異性体構造を含んでもよい。
[化学式B]
【化3】
化学式Bにおいて、R
3、R
4、kの定義は、化学式Aにおけるものと同じであり、
Yは、-(CH
2)
m-、-(CH
2)
m-O-(CH
2)
n-、-(CH
2)
m-CO-(CH
2)
n-、-(CH
2)
m-NR
8-(CH
2)
n-、または-(CH
2)
m-SO
2-(CH
2)
n-であり、
式中、R
8は、水素またはC
1-4アルキルであり、
mおよびnの各々は互いから独立して、0~2の整数であり、
Zは、以下の化学式Cの構造にあり、
[化学式C]
【化4】
上記の化学式Cにおいて、
【化5】
は、C
3-10シクロアルキルまたはC
2-11ヘテロシクロアルキルであり、
R
9は、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、チオール、ホルミル、ハロC
1-4アルキル、C
1-4アルコキシ、直鎖または分岐ヒドロキシC
1-4アルキル、直鎖または分岐C
1-4アルキル、C
2-4アルケニル、C
2-4アルキニル、C
3-10シクロアルキル、C
2-9ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシC
2-9ヘテロシクロアルキル、直鎖または分岐ヒドロキシC
1-4アルキルカルボニル、-NR
10R
11、-COR
12、-COOR
12、または-SO
2R
13であり、
qは、0~5の整数であり、
しかしながら、
【化5】
がピペラジニルまたはピペリジニルである場合、qは0ではなく、
式中、2つ以上のR
9は、互いに接続されることができ、または
【化5】
と融合されることができ、7~12の円のビシクロアルキル、ヘテロビシクロアルキル、スピロシクロアルキル、またはスピロヘテロシクロアルキル)を形成してもよく、
R
10およびR
11の各々は互いから独立して、水素、ヒドロキシC
1-4アルキル、ハロC
1-4アルキル、C
1-4アルキル、C
2-4アルケニル、またはC
2-4アルキニルであり、
R
12は、水素、ヒドロキシ、ヒドロキシC
1-4アルキル、ハロC
1-4アルキル、C
1-4アルキル、C
2-4アルケニル、C
2-4アルキニル、C
3-10シクロアルキル、またはC
2-9ヘテロシクロアルキルであり、
R
13は、ヒドロキシ、ハロC
1-4アルキル、C
1-4アルキル、C
2-4アルケニル、C
2-4アルキニル、C
3-10シクロアルキル、C
2-9ヘテロシクロアルキル、アリール、または-NR
fR
gであり、
R
fおよびR
gの各々は互いから独立して、水素またはC
1-4アルキルである。
【0024】
(2)上記のセクション(1)において、活性成分として、下記の化学式Dの化合物、その立体異性体、互変異性体、溶媒和物、薬学的に許容可能な塩の中から選択される化合物を含有することができる。
[化学式D]
【化6】
上記の化学式Dにおいて、
E
aは、水素、ヒドロキシ、またはC
1-4アルコキシであり、
E
bは、水素、ハロゲン、C
1-4アルキル、またはC
1-4フルオロアルキルであり、
E
cおよびE
dは互いから独立して、水素またはヒドロキシであり、
X’は、水素またはヒドロキシであり、
kは、0~4の整数であり、
各Qは互いから独立して、ヒドロキシ、ハロゲン、C
1-4アルキル、ヒドロキシC
1-4アルキル、またはC
1-4アルコキシであり、
Z’は、化学式Eで示される一価官能基であり、
[化学式E]
【化7】
この時、上記の化学式Eにおいて、nは1~8の整数であり、
各置換基Aは互いから独立して、ヒドロキシ、C
1-4アルキル、ヒドロキシC
1-4アルキルの中から選択される官能基であり、式中、nが2以上である場合、Z’は、それらのnのうちの二つのAが互いに接続されてアルキレン架橋を形成するので、7~12環の架橋ヘテロビシクロアルキル環を形成することができるか、または二つのAがスピロ結合されるので、7~12環のスピロヘテロシクロアルキル環を形成することができ、
Lは、水素、C
1-4アルキル、ヒドロキシ、またはヒドロキシC
1-4アルキルである。
【0025】
(3)上記のセクション(2)において、Ebがハロゲンであり、nが2であり、Aがメチリン化合物を含む医薬組成物。
【0026】
(4)上記のセクション(2)において、Z’が3,5-ジメチルピペラジン-1-イル化合物を含む医薬組成物。
【0027】
(5)上記のセクション(2)において、Ebが塩素またはフッ素化合物を含む医薬組成物。
【0028】
(6)上記のセクション(1)または(2)において、上記の化学式Aの化合物が、以下の化合物からなる群から選択される化合物を含む医薬組成物。
1)5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
2)5-クロロ-4-(6-クロロ-1H-インドール-3-イル)-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)ピリミジン-2-アミン
3)2-((2R,6S)-4-(3-((5-クロロ-4-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-5-シクロプロピルベンジル)-2,6-ジメチルピペラジン-1-イル)エタン-1-オール
4)2-((2R,6S)-4-(3-((5-クロロ-4-(1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-5-シクロプロピルベンジル)-2,6-ジメチルピペラジン-1-イル)エタン-1-オール
5)2-((2R,6S)-4-(3-((5-クロロ-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-5-シクロプロピルベンジル)-2,6-ジメチルピペラジン-1-イル)エタン-1-オール
6)(R)-5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-((3-メチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
7)(R)-5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-((3-メチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
8)5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
9)5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3S,5R)-3-エチル-5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
10)5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-((3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
11)N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
12)N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-5-フルオロ-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
13)N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(1H-インドール-3-イル)-5-メチルピリミジン-2-アミン
14)N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-5-メチル-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
15)N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-アミン
16)(3-(5-クロロ-2-((3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-インドール-6-イル)メタノール
17)5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(5-メトキシ-6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
18)3-(5-クロロ-2-((3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-6-メチル-1H-インドール-5-オール
19)3-(5-クロロ-2-((3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-6-メチルインドリン-2-オン
20)5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-メトキシ-6-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
21)5-クロロ-2-((3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)アミノ)-6-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-4-オール
22)3-(5-クロロ-2-((3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-6-メチル-1H-インドール-7-オール
23)2-((5-クロロ-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-4-シクロプロピル-6-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェノール
24)4-((5-クロロ-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-シクロプロピル-6-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェノール
25)(R)-5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-((3,3,5-トリメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
26)((2R,6R)-4-(3-((5-クロロ-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-5-シクロプロピルベンジル)-6-メチルピペラジン-2-イル)メタノール
27)(R)-5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-((5-メチル-4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-7-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
28)5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
29)5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3S,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
30)5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,4,5-トリメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン
31)(2R,6S)-4-(3-((5-クロロ-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-5-シクロプロピルベンジル)-2,6-ジメチルピペラジン-1-オール
32)(2R、6S)-4-(3-シクロプロピル-5-((4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)ベンジル)-2,6-ジメチルピペラジン-1-オール
【0029】
(7)上記のセクション(1)において、薬学的に許容可能な添加物をさらに含有する医薬組成物。
【0030】
(8)上記のセクション(1)または(2)において、上記のがんが白血病である医薬組成物。
【0031】
(9)上記のセクション(8)において、当該白血病が急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、または慢性骨髄性白血病である医薬組成物。
【0032】
(10)上記のセクション(1)または(2)において、FLT3キナーゼの活性を阻害することによる、がんの治療のための医薬組成物。
【0033】
(11)上記のセクション(1)または(2)において、FLT3アミノ酸配列のチロシンキナーゼドメイン(TKD)(FLT3-TKD)に変異を有するがんの治療のための医薬組成物。
【0034】
(12)上記のセクション(11)において、当該FLT3-TKD変異が、遺伝子内の遺伝子内縦列重複(ITD)を追加的に含む、がんの治療のための医薬組成物。
【0035】
(13)上記のセクション(1)または(2)において、F691L変異を有するがんの治療のための医薬組成物。
【0036】
(14)上記のセクション(1)または(2)において、F691L単一変異またはITD-F691L二重変異を有するがんの治療のための医薬組成物。
【0037】
(15)上記のセクション(14)において、当該がんが、F691L単一変異またはITD-F691L二重変異を有する急性骨髄性白血病である医薬組成物。
【0038】
本明細書において、FLT3は、造血幹細胞の表面上に通常発現される、クラスIII受容体チロシンキナーゼ(TK)ファミリーのメンバーである。FLT3およびそのリガンドは、多能性幹細胞の成長、生存、分化において重要な役割を果たす。FLT3は、数多くのAML症例で発現される。加えて、チロシンキナーゼドメイン(TKD)変異は、活性化FLT3と、膜近傍のドメインおよびその周りに遺伝子内縦列重複(ITD)を有する活性化ループとにおいてD835の近くでそれぞれ28%~34%、およびAML症例の11%~14%において存在する。FLT3において、これらの活性化変異は発がん性であり、細胞において変形活性を呈する。FLT3-ITD変異を有する患者は、臨床研究において不良な予後を示していて、またより高い再発率を示していて、初期治療からの緩和の持続時間がより短く(FLT3-ITD変異を有しない患者の11.5か月と比較して6か月)、その一方で無病生存率およびOSは低減した。造血幹細胞移植(HSCT)後の再発率も、FLT3-ITDを有する患者と比較して、より高い。第一の治療の予後と同様に、再発した難治性のFLT3変異陽性AMLを有する患者は、FLT3変異陰性患者と比較して、サルベージ抗がん療法による軽減率がより低く、第二の再発までの軽減期間がより短く、OSが低減した。
【0039】
本明細書において、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性前骨髄球性白血病(APL)、有毛細胞白血病、慢性好中球性白血病(CNL)などの白血病を含む。
【0040】
一つの実施形態において、当該がんは白血病とすることができる。
【0041】
一つの実施形態において、当該白血病は、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、または慢性骨髄性白血病を含むことができる。
【0042】
本明細書において、急性骨髄性白血病(AML)は、FLT3変異を有する急性骨髄性白血病を含む。一つの実施形態において、急性骨髄性白血病は、変異型FLT3ポリヌクレオチド陽性急性骨髄性白血病、FLT3遺伝子内縦列重複(ITD)陽性急性骨髄性白血病、またはFLT3点変異を有する急性骨髄性白血病を含む。
【0043】
当該FLT3点変異は、FLT3アミノ酸配列(FLT3-TKD)のチロシンキナーゼドメイン(TKD)における変異とすることができる。
【0044】
本明細書において、「薬学的に許容可能な」とは、組成物の非毒性、不活性、および/または生理学的に適合性のある組成物または組成物の構成成分を一般に指す。「医薬品賦形剤」または「賦形剤」としては、アジュバント、担体、pH修飾剤および緩衝剤、等張性修飾剤、湿潤剤、防腐剤などの材料が挙げられる。「医薬品賦形剤」は、薬学的に許容可能な賦形剤である。当該医薬組成物は、薬学的に許容可能な典型的な賦形剤または添加物を含むことができる。本発明の医薬組成物は、典型的な方法を使用して製剤化されることができ、また錠剤、丸薬、粉末、カプセル、シロップ、乳剤、マイクロエマルションなどの様々な経口投与形態で、または筋肉内、静脈内、もしくは皮下投与などの非経口投与形態で製造されることができる。
【0045】
当該医薬組成物が経口製剤の形態で製造される場合、使用される担体または添加物および賦形剤の例として、希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、懸濁液、または乳化剤が挙げられる。本発明の医薬組成物が注射の形態で製造される場合、当該担体または添加物および賦形剤の例として、水、生理食塩水、水性グルコース溶液、水性疑似糖溶液、アルコール、グリコール、エーテル(例えば、ポリエチレングリコール400)、油、脂肪酸、脂肪酸エステル、グリセリド、界面活性剤、懸濁液または乳化剤が挙げられる。この製剤化方法は、関連する生薬薬学分野の当業者に幅広く知られている。
【0046】
当該医薬組成物に含まれる活性成分としての、化学式Aの化合物または化学式1は、個体または患者の治療または予防に有効な用量で、その目的に従って経口投与にまたは非経口投与されることができ、経口投与される時に活性成分は、例えば体重1kg当たり0.01~1000mg、0.01~500mg、0.1~300mg、または0.1~100mgの1日用量で投与されることを確実にするように含まれることができ、また非経口投与される時に活性成分は、例えば体重1kg当たり0.01~100mgまたは0.1~50mgの1日用量で投与されることを確実にするように含まれることができ、当該組成物は単回用量で、または複数回のより小さい用量で投与されることができる。特定の個体または患者に対する用量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食事、投与時間、投与方法、疾患の重症度などの様々な関連因子を考慮して決定されなければならず、また当然のことながら、専門家によって適切に増加または減少される場合があり、また上記の用量は、いかなる点においても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0047】
本発明の別の態様は、当該医薬組成物を使用してがんを予防または治療する方法を提供する。
【0048】
一つの実施形態において、当該治療方法で使用される化合物の用量、投与回数、または投与方法は、治療される対象、疾患または症状の重症度、投与速度、処方医師の判断に応じて変化させることができる。通常、体重70kgの人に対する用量は、1日当たり0.1~2,000mgであり、例えば1~1,000mgまたは10~2,000mgの用量で投与されることができる。投与回数は1回または複数回であり、例えば1回もしくは最大4回、またはオン/オフスケジュールで投与されることができ、また投与方法については、経口経路または非経口経路を通して投与されることができる。一部の場合において、上述の範囲よりも小さい用量が適切な場合があり、またより高い用量をいかなる有害な副作用も引き起こすことなく使用することができ、その一方でより高い用量を1日を通して複数回のより小さい用量に分割することができる。関連技術分野の専門医師は、必要に応じて使用される化合物の用量を簡単に決定し、処方することができる。例えば、医師は、意図される治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低い医薬組成物で使用される本発明の化合物の用量から開始し、意図される効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることができる。
【0049】
一つの実施形態において、当該治療方法は、本発明の一つの態様による化合物を、活性成分としてのみ、またはがん、腫瘍、もしくは白血病の治療用として知られている一つ以上の他の薬剤もしくは医薬品担体と組み合わせて、使用することができる。一つの実施形態に従って、化学式Aまたは化学式1の化合物の中から選択される化合物、その立体異性体、互変異性体、溶媒和物、薬学的に許容可能な塩は、FLT3の活性を減少させることができ、または他のFLT3キナーゼ活性阻害薬、もしくはFLT3キナーゼ活性阻害の有効性を高める、または増加作用を呈する様々な機序の他の薬剤と同時投与される時、FLT3媒介性疾患の治療効果を強化することができる。
【0050】
本明細書において、「治療」という用語は、治療、改善、軽快、または管理のすべてを網羅する概念として使用される。本明細書において、「治療する」または「治療」という用語は、疾患を阻害すること、例えば疾患、症状、または機能的障害の病理もしくは兆候を経験または呈している個体における疾患、症状、または機能的障害を阻害すること、病理および/または兆候の追加的な発生を予防すること、疾患を改善すること、または病理および/または兆候を食い止めること、例えば疾患の重症度を減少させることを指す。
【0051】
本明細書において、「予防する」または「予防」という用語は、疾患を予防することを指し、例えば疾患、症状、または機能的障害の特性を有する場合があるが、疾患の病理または兆候を経験していないか、または呈していない個体において疾患、症状、または機能的障害を予防することを指す。
【0052】
本明細書において、「個体」または「患者」という用語は、マウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、子羊、ウマ、または霊長類、ヒトなどの哺乳類を含むある特定の動物を指す。
【0053】
本明細書において、「有する」、「有してもよい」、「含む」、または「含んでもよい」などの表現は、関連する特徴(例えば、値または成分などの構成成分)の存在を示し、また追加的な特徴の存在を除外しない。
【発明の効果】
【0054】
本発明の一つの態様による医薬組成物は、優れたFLT3阻害活性を有し、そのため、白血病などのがんの異常なFLT3活性によって引き起こされる細胞増殖性疾患の予防または治療のために効果的に使用されることができる。加えて、当該医薬組成物は、F691L後天性変異を有する白血病を含むがんの治療のために使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は、MOLM-14 FLT3-ITD/F691L細胞株を異種移植したヌードマウスに比較対照、化合物A、ギルテリチニブを投与した時の抗腫瘍効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は以下に詳細に記述される。
【0057】
本発明で使用されるすべての技術用語は、本発明に関連する当業者によって一般的に理解される意味で使用される。加えて、本明細書において望ましい方法または試料が記述されているが、それらと類似または同等のものも本発明の範囲内に含まれる。加えて、本明細書で提供される数字は、それが指定されていない場合でさえも、「約」の意味を有すると見なされる。本明細書において、参照文献として提供されるすべての刊行物の内容は、全体的に参照として組み込まれる。
【0058】
本発明は、以下の実施形態および実験例を使用してより具体的に以下に記述される。しかしながら、これらの実施形態および実験例は単に、本発明についての理解を容易にするためのものにすぎず、本発明の範囲は、いかなる意味においてもそれらによって限定されない。
【0059】
[実施形態1]キナーゼ阻害試験方法
FLT3阻害剤である5-クロロ-N-(3-シクロプロピル-5-(((3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニル)-4-(6-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-アミン(以下、化合物Aと呼ばれる)を、野生型または変異型のFLT3およびSYKに対する阻害活性について測定した。
【0060】
活性測定は、Thermo Fisher Scientificによって開発されたLanthaScreen試験方法(野生型および変異型FLT3)またはZ’-LYTE試験方法(SYK)を使用して行われた。LanthaScreen試験方法は、キナーゼへのAlexa Fluor 647標識のATP競合キナーゼ阻害剤(キナーゼトレーサー-236)の結合に基づいて、ユーロピウム抱合抗体の存在下で蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)シグナルを測定することによってタンパク質活性を測定する方法である。Z’-LYTE試験方法は、脱リン酸化基質を切断することができる酵素を使用する方法であり、この方法は、ペプチド基質の各末端に付着した二つの蛍光FRETシグナルを測定することによって、キナーゼタンパク質の活性を測定する。二つの実験はすべて、50mM HEPES pH 7.5、0.01% BRIJ-35、10mM MgCl2、1mM EGTA、1% DMSOの条件下で、384ウェルプレート内で行われた。バックグラウンドシグナルを各キナーゼを有しない状態で測定し、非阻害シグナルとして溶媒(1%のDMSO)のみを追加することによって測定を行った後、評価するべき化合物Aを、指定された濃度(例えば、50~0.05nM、1/10希釈)に連続的に希釈し、野生型FLT3、FLT3-ITD、FLT3 D835Y、SYKについて、化合物Aの50%の活性阻害値(IC
50)をGraphPad Prismソフトウェアを用いて計算した。その結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0061】
[実施形態2]野生型または変異型FLT3の結合能力を測定する試験方法
野生型または変異型FLT3に対する化合物Aの結合能力を、DiscoverXのKINOMEscanスクリーニングプラットフォームを使用して測定した。KINOMEscan試験方法は、DNAが結合しているキナーゼ酵素の活性部位に対する競合結合アッセイを使用することによって定量PCRを使用して、試験される材料とキナーゼの間の結合を測定する方法である。試験はDiscoverXに委託され、各野生型または変異型FLT3に対する阻害剤の結合能力はKd値として計算された。その結果を下記の表2に示す。
【表2】
【0062】
[実施形態3]
MOLM-14 FLT3-ITD/F691L細胞株を皮下移植したマウスモデル
MOLM-14 FLT3-ITD/F691L細胞株を皮下移植したマウスモデルにおいて、FLT3阻害剤、化合物A、別のFLT3阻害剤、6-エチル-3-[3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]アニリノ]-5-(オキサン-4-イルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミド(以下、ギルテリチニブと呼ばれる)を用いて、有効性比較試験を行った。
【0063】
MOLM-14 FLT3-ITD/F691L細胞株を、ヌードマウスに3×10^6細胞/0.15mL/マウスで皮下注射し、マウスは増殖するように放置した。
【0064】
対照群は、DMSO/PEG400/DW(比=0.5/2/7.5、v/v)混合溶液を1日1回経口投与され、化合物A群は、30mg/kg/日の用量で1日1回経口投与され、ギルテリチニブ群は、30mg/kg/日の用量で1日1回経口投与された。対照群は13日間投与され、薬剤投与群は各関連薬剤とともに18日間投与された。
【0065】
試験の結果を
図1に示す。
図1は、MOLM-14 FLT3-ITD/F691L細胞株を異種移植したヌードマウスに比較対照、化合物A、ギルテリチニブを投与した時の抗腫瘍効果を示す。各群における生存マウスの腫瘍体積(mm
3)をy軸上にプロットし、その一方で薬剤治療の日数をx軸上にプロットした。薬剤の投与の効果を評価するために、腫瘍が完全に消失した完全寛解(CR)の結果をチェックした。
図1に示す通り、薬剤の投与に基づいて腫瘍体積を測定およびチェックした結果として、化合物Aの完全寛解が投与の12日目に示された。加えて、
図1に示す通り、上記の結果は、腫瘍の体積が化合物A投与群において、ギルテリチニブ投与群よりも著しく低減したことを示した。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001 Sidk試験が、二元配置分散分析の後に行われた)
【0066】
ここまで、本発明を、主としてその実施形態の観点から検討してきた。本発明が属する分野の当業者は、本発明の本質的な特徴から逸脱することなく本発明が、修正された形態で具現化されることができることを理解しうる。従って、上記に開示された実施形態は、制限的な観点からでなく、説明的な観点から考慮されるべきである。本発明の範囲は、上述の説明に示されていないが、特許請求の範囲に示されていて、また同等の範囲内のすべての差異は、本発明に含まれると解釈されるべきである。
【国際調査報告】