(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル系モノマーを含有する流体のポンプによる搬送
(51)【国際特許分類】
F04B 15/02 20060101AFI20231108BHJP
C07C 51/50 20060101ALI20231108BHJP
C07C 57/075 20060101ALI20231108BHJP
F04D 29/02 20060101ALI20231108BHJP
F04D 7/04 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
F04B15/02 Z
C07C51/50
C07C57/075
F04D29/02
F04D7/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527105
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2021080297
(87)【国際公開番号】W WO2022096422
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ティレ・ギースホフ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・シュレーダー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・ハモン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ライン
【テーマコード(参考)】
3H075
3H130
4H006
【Fターム(参考)】
3H075AA01
3H075BB08
3H075CC40
3H075DA30
3H075DB03
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC01
3H130BA68E
3H130DA02Z
3H130DB03X
3H130DD01Z
3H130EC01E
3H130EC12E
4H006AA02
4H006AA05
4H006AD41
4H006BS10
(57)【要約】
本発明は、ポンプPによって液体Fを輸送する方法に関し、液体Fは、少なくとも10%重量の(メタ)アクリル系モノマーを含み、ポンプPはポンプ空間(3)を有し、ポンプ空間(3)は、液体Fを輸送するための少なくとも1つの輸送要素(4)を含み、輸送要素(4)は、駆動シャフト(6)が輸送要素(4)にトルクを伝達することができるように駆動シャフト(6)に接続され、前記駆動シャフト(6)の取り付けは、ポンプ空間(3)内の少なくとも2つのすべり軸受(5)によって行われ、すべり軸受(5)は炭化タングステンで構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプPによって液体Fを輸送する方法であって、前記液体Fが、少なくとも10%重量の(メタ)アクリル系モノマーを含み、前記ポンプPがポンプ空間(3)を有し、前記ポンプ空間(3)が、前記液体Fを輸送するための少なくとも1つの輸送要素(4)を含み、前記液体Fは、入口エネルギーで前記ポンプ空間(3)に供給され、前記液体Fは、前記入口エネルギーよりも大きい出口エネルギーで前記ポンプ空間(3)を出て、前記輸送要素(4)は、駆動シャフト(6)が前記輸送要素(4)にトルクを伝達することができるように前記駆動シャフト(6)に接続され、前記駆動シャフト(6)の取り付けは、前記ポンプ空間(3)内の少なくとも2つのすべり軸受(5)によって行われ、前記すべり軸受(5)が炭化タングステンで構成される、方法。
【請求項2】
前記液体Fが、少なくとも60%重量の(メタ)アクリル系モノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体Fが、少なくとも90%重量の(メタ)アクリル系モノマーを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系モノマーが、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートまたはシクロヘキシルアクリレートである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記液体Fの温度が、10から120℃である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体Fの温度が、50から90℃である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記液体Fが重合禁止剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記重合禁止剤がヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、ヒドロキノンまたはN,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記液体Fが、0.001から1%重量の重合禁止剤を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記液体Fが、0.01から0.1%重量の重合禁止剤を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記駆動シャフト(6)への力の伝達が、磁気結合またはキャンドモータによって行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
液体Fを有するポンプPであって、前記液体Fが、少なくとも10%重量の(メタ)アクリル系モノマーを含み、前記ポンプPがポンプ空間(3)を有し、前記ポンプ空間(3)が、前記液体Fを輸送するための少なくとも1つの輸送要素(4)を含み、前記液体Fは、入口エネルギーで前記ポンプ空間(3)に供給され、前記液体Fは、前記入口エネルギーよりも大きい出口エネルギーで前記ポンプ空間(3)を出て、前記輸送要素(4)は、駆動シャフト(6)が前記輸送要素(4)にトルクを伝達することができるように前記駆動シャフト(6)に接続され、前記駆動シャフト(6)の取り付けは、前記ポンプ空間(3)内の少なくとも2つのすべり軸受(5)によって行われ、前記すべり軸受(5)が炭化タングステンで構成される、ポンプP。
【請求項13】
前記駆動シャフト(6)への力の伝達が、磁気結合またはキャンドモータによって行われる、請求項12に記載のポンプP。
【請求項14】
液体Fを輸送するためのポンプPの使用であって、前記液体Fが、少なくとも10%重量の(メタ)アクリル系モノマーを含み、前記ポンプPがポンプ空間(3)を有し、前記ポンプ空間(3)が、前記液体Fを輸送するための少なくとも1つの輸送要素(4)を含み、前記液体Fは、入口エネルギーで前記ポンプ空間(3)に供給され、前記液体Fは、前記入口エネルギーよりも大きい出口エネルギーで前記ポンプ空間(3)を出て、前記輸送要素(4)は、駆動シャフト(6)が前記輸送要素(4)にトルクを伝達することができるように前記駆動シャフト(6)に接続され、前記駆動シャフト(6)の取り付けは、前記ポンプ空間(3)内の少なくとも2つのすべり軸受(5)によって行われ、前記すべり軸受(5)が炭化タングステンで構成される、使用。
【請求項15】
前記駆動シャフト(6)への力の伝達が、磁気結合またはキャンドモータによって行われる、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプPによって液体Fを輸送する方法に関し、液体Fは、少なくとも10%重量の(メタ)アクリル系モノマーを含み、ポンプPはポンプ空間(3)を有し、ポンプ空間(3)は、液体Fを輸送するための少なくとも1つの輸送要素(4)を含み、輸送要素(4)は、駆動シャフト(6)が輸送要素(4)にトルクを伝達することができるように駆動シャフト(6)に接続され、駆動シャフトの取り付けは、ポンプ空間(3)内の少なくとも2つのすべり軸受(5)によって行われ、すべり軸受(5)は炭化タングステンで構成される。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、(メタ)アクリル系モノマーという表現は、「アクリル系モノマーおよび/またはメタクリル系モノマー」の略語として使用される。
アクリルモノマーという表現は、本明細書では、アクリル酸、アクリル酸のエステルおよび/またはアクリロニトリルの略語として使用される。
メタクリルモノマーという表現は、本明細書では、メタクリル酸、メタクリル酸のエステルおよび/またはメタクリロニトリルの略語として使用される。
【0003】
特に、本文で述べられる(メタ)アクリル系モノマーは、以下の(メタ)アクリル酸エステル:ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートおよびN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートを包含することが意図される。
【0004】
(メタ)アクリル系モノマーは、例えば接着剤として使用されるポリマーの製造のための重要な出発化合物である。
【0005】
(メタ)アクリル酸は、工業的には主に、適切なC3/C4前駆体化合物、特にアクリル酸の場合はプロペンおよびプロパン、メタクリル酸の場合はイソブテンおよびイソブタンの接触気相酸化によって製造される。プロペン、プロパン、イソブテンおよびイソブタンだけでなく、3または4個の炭素原子を含む他の化合物、例えばイソブタノール、n-プロパノール、またはイソブタノールのメチルエーテルも出発材料として適している。
【0006】
生成物ガス混合物が通常得られ、生成物ガス混合物から、吸収法、精留法、抽出法および/または結晶化法によって(メタ)アクリル酸を分離しなければならない(例えば独国特許出願公開第10224341号明細書を参照されたい)。同様に、(メタ)アクリロニトリルは、上記のC3/C4前駆体化合物の触媒アンモ酸化、およびその後の生成ガス混合物からの分離によって得ることができる。
【0007】
(メタ)アクリル酸のエステルは、例えば、(メタ)アクリル酸と対応するアルコールとの直接反応によって得ることができる。しかしながら、この場合、(メタ)アクリル酸エステルを、例えば精留および/または抽出によってそこから分離しなければならない生成物混合物が、最初に得られる。
【0008】
とりわけ上述した分離に関連して、(メタ)アクリル系モノマーを多かれ少なかれ純粋な形態で、または溶液(本明細書では、一般に(メタ)アクリル系モノマーを含む液体Fと呼ばれる)で搬送/輸送することが、時々必要である。
【0009】
ここでの溶媒は、水性溶媒または有機溶媒のいずれかであり得る。特定の種類の溶媒は、本発明の文脈において本質的に重要ではない。輸送される溶液中の(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、20%重量以上、または40%重量以上、または60%重量以上、または80%重量以上、または90%重量以上、または95%重量以上、または99%重量以上であり得る。
【0010】
この輸送の過程で、高低差および/または流れ抵抗を克服しなければならない。これは、輸送される液体にエネルギーを導入することによってのみ達成することができる。これは、通常、ポンプとも呼ばれる流れ機械によって達成される。
【0011】
Ullmanns Encyklopadie der technischen Chemie,4th edition,volume 3,pages 155 to 184,Verlag Chemie 1973には、液体を輸送するために使用することができるいくつかのポンプが記載されている。しかしながら、全てのポンプが(メタ)アクリル系モノマー(例えば、多かれ少なかれ純粋な形態または溶液中のそのような(メタ)アクリル系モノマー)を含む液体Fの輸送に適しているわけではない。これは、(メタ)アクリル系モノマーが、第一に毒物学的に全く問題がないわけではなく、第二に熱によって容易にフリーラジカル重合を受け得ることに起因する。
【0012】
したがって、使用されるポンプは、意図しない出口位置、すなわち、少なくとも1つの(メタ)アクリル系モノマーを含み、かつ意図された入口および出口以外へと輸送される液体Fの漏れ点を有してはならない。しかしながら、同時に、機械的にストレスを受けた構成要素(例えば、駆動シャフトの軸受)上への(メタ)アクリル系モノマーの望ましくないフリーラジカル重合が防止されるべきである。
【0013】
したがって、独国特許出願公開第10228859号明細書は、その中の
図1において、少なくとも1つの(メタ)アクリル系モノマーを含む液体Fを輸送するために、ポンプ空間(3)と、駆動空間(5)と、ポンプ空間と駆動空間とを互いに分離する分離空間(4)とを備える輸送ポンプの使用を推奨し、分離空間(4)はバリア媒体で満たされ、駆動シャフトはポンプ空間(3)内に軸受(8)を有さず、分離空間(4)内のバリア媒体の圧力はポンプ空間(3)内の圧力および駆動空間(5)内の圧力よりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第10228859号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Ullmanns Encyklopadie der technischen Chemie,4th edition,volume 3,pages 155 to 184,Verlag Chemie 1973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、少なくとも1つの(メタ)アクリル系モノマーを含む液体Fを輸送ポンプによって輸送するための新規な方法であって、機械的ストレスを受けた構成要素(例えば、駆動シャフトの軸受)上への(メタ)アクリル系モノマーの望ましくないフリーラジカル重合が防止される方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明者らは、ポンプPによって液体Fを輸送する方法を見出した。この方法では、液体Fは、少なくとも10%重量の(メタ)アクリル系モノマーを含み、ポンプPはポンプ空間(3)を有し、ポンプ空間(3)は、液体Fを輸送するための少なくとも1つの輸送要素(4)を含み、液体Fは、入口エネルギーでポンプ空間(3)に供給され、液体Fは、入口エネルギーよりも大きい出口エネルギーでポンプ空間(3)を出て、輸送要素(4)は、駆動シャフト(6)が輸送要素(4)にトルクを伝達することができるように駆動シャフト(6)に接続され、駆動シャフト(6)の取り付けは、ポンプ空間(3)内の少なくとも2つのすべり軸受(5)によって行われ、すべり軸受(5)は炭化タングステンで構成される。
【0018】
括弧内の参照番号は、本発明に従って使用されるポンプPの概略図を示す、本文の
図1に関連する。符号(1)および(2)は、それぞれ、ポンプPへの液体Fの入口点および出口点を示す。
【0019】
液体Fは、好ましくは少なくとも60%重量、特に好ましくは少なくとも80%重量、非常に特に好ましくは少なくとも90%重量の(メタ)アクリル系モノマーを含む。
【0020】
好ましい(メタ)アクリル系モノマーは、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートおよびシクロヘキシルアクリレートである。
【0021】
液体の温度は、好ましくは10から120℃、特に好ましくは40から100℃、非常に特に好ましくは50から90℃である。
【0022】
液体Fは、有利には、重合禁止剤、例えば、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、ヒドロキノンおよびN,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミンを含む。液体F中の重合禁止剤の量は、好ましくは0.001から1%重量、特に好ましくは0.003から0.3%重量、非常に特に好ましくは0.01から0.1%重量である。
【0023】
本発明の目的のために好ましいポンプPは、遠心ポンプおよび側方流路ポンプである。
【0024】
変位原理に従って動作する往復ピストンポンプおよび回転ピストンポンプとは異なり、遠心ポンプおよび側方流路ポンプは動的原理に従って動作する。運動エネルギーの形態の仕事は、回転インペラ(駆動シャフトに接続された輸送要素)から輸送される液体Fに伝達される。インペラの後、運動エネルギーは、ステータおよび/または螺旋ハウジング内で主に静圧(圧力エネルギー、エネルギー保存則)に変換される。インペラは、原則として、ブレードが取り付けられる単純なディスクである。
【0025】
ブレードはブレード流路を形成し、その断面は通常、円周が増加するために内側から外側に非常に大きくなる。インペラの中央に流れ込むことができるのと同じ量の搬送される液体Fを、これらのブレード流路を通して噴出させることができる。したがって、ピストンポンプとは対照的に、搬送される液体Fは、動作中に遠心ポンプおよび側方流路ポンプ内を恒久的に流れる。
【0026】
オープンインペラとは対照的に、閉じたインペラも使用することができる。ブレード流路は、ここでは、中央に開口部を有する第2のディスクによって単に覆われている。
【0027】
ブレードの曲率は、水滴がディスクの中央に落下することができるときに共回転観察者によって見られるような回転する丸い滑らかなディスク上の水滴の自然な経路のようである。このブレード形状は、「逆湾曲」ブレードと呼ばれる。しかしながら、原理的には、わずかに前方に湾曲したブレード、およびねじ状ブレード、すなわち本質的にねじられた後方に湾曲したブレードを使用することも可能であり、その前縁はインペラ入口に突出し、船のプロペラのように液体Fを捕捉する。
【0028】
遠心ポンプ(遠心ポンプ空間)は、ポンプハウジングと、ポンプハウジング内で回転し、ブレードが設けられたインペラとを備える。液体Fは、吸入口から軸方向に進入する。これは、遠心力によって半径方向外側に方向転換され、このようにしてインペラによって高速に加速される。ポンプハウジングは、全てのブレード流路から液体Fを収集して、その全体を圧力出口をさらに通って搬送することができるようにする役割を有する。しかしながら、同時にポンプハウジングは、液体Fの運動エネルギーを圧力に変換する役割を有する。これは、一般に、断面の拡大が液体Fの速度を低下させ、したがって圧力の上昇をもたらすという事実を利用することによって達成される。断面積を大きくするために、ポンプハウジングの2つの構造設計が慣習的である。最終段の後ろの単段ポンプまたは多段遠心ポンプの場合、螺旋ハウジングが頻繁に使用される。これは、螺旋形態のインペラを包含する。断面は、圧力出口の方向に広がる。これにより、流れる液体Fが減速され、これは同時の圧力上昇を意味する。
【0029】
螺旋の代わりに、特に多段ポンプの場合、固定ステータも使用される。ステータは、ポンプハウジング内に設置され、環状空間を構成する。それはインペラを囲む。ガイドベーンは、外側に向かって連続的に広がる流路を形成するようにステータ内に配置される。この実施形態では、液体Fはポンプハウジング内に直接流されず、代わりに最初にステータのブレード流路を通って流れる。流れ方向の広がりにより、流速は再び遅くなり、それによって圧力が上昇する。ステータ流路の方向は、通常、インペラ流路の方向とは反対であり、ステータの内周上では、インペラからの輸送液体の出口速度の方向に対応する。ステータのさらなる役割は、2段遠心ポンプの場合、液体Fを収集し、それを第2段の入口に案内することである。
【0030】
もちろん、ステータと螺旋ハウジングとの組み合わせを採用することもできる。これは、液体Fが螺旋ハウジングに入ることができる前にステータに最初に収集されることを意味する。
【0031】
インペラの形状、したがって液体Fの出口方向に応じて、半径方向、半軸方向(対角またはスクリューホイールとも呼ばれる)、および軸流ポンプ(プロペラポンプ)が区別される。
【0032】
しかしながら、本発明の方法のポンプ空間は、Pumpen in der Feuerwehr,Part 1,Einfuhrung in die Hydromechanik,Wirkungsweise der Kreiselpumpen,4th edition 1998,Verlag W.Kohlhammer,Berlin.に記載されているように、多段遠心ポンプとして構成することもできる。本発明の目的のためには、単段遠心ポンプが好ましい。
【0033】
側方流路ポンプ空間の場合、開いたブレードを有する狭いインペラがハウジング内で回転し、ブレードだけでなく、側方流路も周囲の大部分の周りを通る。搬送される液体は、軸線ではなく、端面からスリットを通ってブレード室に入り、室内に既に存在する液体は、遠心力によって同時に外側に駆動される。ブレード端部の領域では、流れはハウジング壁で側方流路に迂回され、そこでねじ状経路を辿り、ある程度の距離を置いてインペラに再び入る。この処理は、吸入口から圧力口に向かう途中の液滴に対して、処理量に応じて、例えば10回から50回繰り返される。ブレード室では、液体は、径方向だけでなく、ホイールの周速度にも加速される。この周速度およびそれに重ね合わされた循環速度で、液体粒子はインペラから側方流路内に移動する。さらなるねじ状経路に沿って、循環部品は、壁に対する摩擦によってほんの少しだけ減速されるが、周方向部品は、本質的に圧力上昇の結果としてのみ大きく減速される。結果として生じる流れの運動エネルギーの損失は、インペラ内で時々補償される。
【0034】
側方流路ポンプは、遠心ポンプよりも効率が低いが、より大きな輸送圧力を生成する。
【0035】
駆動シャフト(6)は、磁気カップリングまたはキャンドモータによって駆動することができる。
【0036】
磁気結合は、2つのカップリング半体内の永久磁石間の引力および反発力を利用して、トルクの非接触かつスリップフリーの伝達を提供する。2つの磁石を備えたカップリング半体の間には、製品空間を周囲から分離するギャップチューブが存在する。
【0037】
キャンドモータは、ステータとロータとがギャップチューブで分離された電動機である。ギャップチューブは、モータのステータとロータとの間のギャップ内に配置される。
【0038】
本発明で使用されるポンプPでは、駆動シャフト(6)は、ポンプ空間(3)内に完全に配置される。したがって、駆動シャフト(6)とポンプ空間(3)との間のシールは不要である。しかしながら、駆動シャフト(6)は、すべり軸受(5)を使用してポンプ空間(3)に取り付けられなければならない。
【0039】
本明細書では、すべり軸受という用語は、極めて一般的に、互いに対して移動する機械部品を支持または案内し、発生する力を吸収してハウジング、部品または基礎に伝達するための機械要素を指す。
【0040】
すべり軸受では、互いに対して移動する2つの部分は、すべり摩擦による抵抗に抗して互いに対して摺動する。圧送に使用するために、すべり軸受にはセラミック材料が頻繁に使用されている。
【0041】
本発明は、すべり軸受の材料として頻繁に使用される炭化ケイ素が、(メタ)アクリル系モノマーの望ましくない重合を促進するという認識に基づいている。一方、この目的のために炭化タングステンを使用する場合、この効果は生じない。
【0042】
炭化タングステンは、元素から直接製造することができる。ここで、炭素原子は、タングステンの格子サイト間に取り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明に従って使用されるポンプPの概略図を示す、
【発明を実施するための形態】
【0044】
実施例
実施例1(本発明によらない)
分子状酸素によるプロピレンの2段階の接触気相酸化によって、以下の組成を有する気体生成物ガス混合物を生成した。
9.84%重量のアクリル酸、
0.4%重量の酢酸、
4.4%重量の水、
0.11%重量のアクロレイン、
0.21%重量のホルムアルデヒド、
0.07%重量の無水マレイン酸、および
100%重量までの残りとしてプロピオン酸、フルフラール、プロパン、プロペン、窒素、酸素および酸化炭素。
【0045】
この気体生成物ガス混合物を、粗アクリル酸(4000 l/h)(粗アクリル酸の温度は95℃であり、直接冷却に使用される粗アクリル酸は、初期濃度として、1.1%重量の水および重合禁止剤として0.1%重量のフェノチアジンを含んでいた)中に噴霧することによって噴霧冷却器(直接冷却、急冷)内で冷却した。急冷に使用した粗アクリル酸を、循環ポンプによって熱交換器を介して循環させ、時々95℃に戻した。
【0046】
急冷用の循環ポンプとして、遠心ポンプMKP 32-160型(CP-Pumpen AG、Zofingen、スイス)を用いた。ポンプ空間と駆動空間は金属壁によって分離されている。ポンプ空間内の駆動は、磁気結合を介して行われた。駆動シャフトは、炭化ケイ素で構成されるすべり軸受を用いてポンプ空間に水平に取り付けた。
【0047】
分離されるべきアクリル酸を含む冷却されたガス混合物は、噴霧冷却器を出て、27個のバブルキャップトレイおよび塔頂部に噴霧凝縮器を備えた精留塔に入る最下トレイの下に供給した。塔頂部の温度は20℃であり、精留塔底部の温度は90℃であった。
【0048】
噴霧凝縮器で得られた水を主成分とする凝縮物を排出し、0.03%重量のヒドロキノンを添加し、熱交換器で冷却した後、温度17℃の噴霧液として、噴霧凝縮器を介して最上部の塔トレイにランバックとして戻した。還流比は4であった。
【0049】
精留塔の底部で得られた粗アクリル酸に、部分的に(430 g/h)排出し、部分的に(250 g/h)重合禁止の目的で0.1%重量のフェノチアジンを添加した後精留塔の13番目(下から数えて)のトレイに再循環させ、部分的に(約15 l/h)最初に熱交換器を通って搬送し、次いで温度100℃で塔のz番目(下から数えて)のトレイに再循環させて塔温度を整えた。
【0050】
塔底部で得られた粗アクリル酸のさらなる部分は、急冷槽内の液体均質化の目的で、急冷の前に熱交換器を介して温度102℃及び濃度制御下で急冷槽に供給した。
【0051】
排出された粗アクリル酸は、97.2%重量のアクリル酸、1.6%重量の酢酸、0.024%重量のプロピオン酸、0.4%重量のマレイン酸、0.005%重量のアクロレイン、0.02%重量のフルフラールおよび1.2%重量の水、さらに0.05%重量のフェノチアジンおよび0.03%重量のヒドロキノンを含んでいた。
【0052】
遠心ポンプは、10時間未満の運転時間内にポリマー形成によって閉塞された。
【0053】
実施例2(本発明による)
実施例1の手順を繰り返す。炭化ケイ素で構成されるすべり軸受は、炭化タングステンで構成されるすべり軸受に置き換えられている。工程は中断することなく操作することができる。
【0054】
実施例3
1%重量の炭化ケイ素(SiC)または1%重量の炭化タングステン(WC)を市販のアクリル酸に懸濁し、200 ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)で安定化し、いずれの場合も80℃で4時間保存した。ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)の濃度は、前後に測定した。
【0055】
【0056】
炭化ケイ素の存在下では、重合禁止剤は非常に迅速に消費された。
【0057】
実施例4
1%重量の炭化ケイ素(SiC)または1%重量の炭化タングステン(WC)を、200 ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)で安定化した市販のアクリル酸に懸濁した。それぞれの混合物0.5 mlを1.8 mlアンプルに入れ、対流乾燥オーブン中120℃で保存した。
【0058】
各試験シリーズにおいて、3つのアンプルを充填し、各混合物について試験し、重合完了までの平均時間を視覚的に評価した。
【0059】
【0060】
炭化ケイ素は、炭化タングステンよりも著しく強く不安定化する。
【符号の説明】
【0061】
3 ポンプ空間
4 輸送要素、分離空間
5 すべり軸受、駆動空間
6 駆動シャフト
8 軸受
【国際調査報告】