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特表2023-548209ILD、PF-ILDおよびIPF治療用ウイルスベクターおよび核酸
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ILD、PF-ILDおよびIPF治療用ウイルスベクターおよび核酸
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/86 20060101AFI20231108BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20231108BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231108BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20231108BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231108BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/63 Z
C12N15/11 Z
A61K31/7105
A61K48/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P11/00
A61P19/02
A61P9/12
A61P17/00
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527121
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2021080697
(87)【国際公開番号】W WO2022096612
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/081019
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】クロイツ ゼバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クライン ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】シュトローベル ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】クレー シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ラムラ トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】ケスレ マーク
(72)【発明者】
【氏名】イッケンシュタイン ルドガー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA41
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA59
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB11
4C084ZB15
4C084ZB26
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA41
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB26
(57)【要約】
カプシドおよびパッケージ化された核酸を含み、前記核酸がブレオマイシン誘導性肺線維症モデルまたはAAV-TGFβ1誘導性肺線維症モデルでダウンレギュレートされるmiRNAの増加、または前記核酸がブレオマイシン誘導性肺線維症モデルまたはAAV-TGFβ1誘導性肺線維症モデルでアップレギュレートされるmiRNAの阻害のいずれかをするウイルスベクター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプシドと、パッケージ化された核酸とを含むウイルスベクターであって、前記パッケージ化された核酸が1つ以上のmiRNAをコードし、前記1つ以上のmiRNAが配列番号99の配列を有するmiRNA断片を含む、ウイルスベクター。
【請求項2】
カプシドと、パッケージ化された核酸とを含むウイルスベクターであって、前記パッケージ化された核酸が2つ以上のmiRNAをコードし、
(i)前記2つ以上のmiRNAが、配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片とを含む、または
(ii)前記2つ以上のmiRNAが、配列番号99の配列を有する前記miRNA断片と、配列番号19のmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片とを含む、
ウイルスベクター。
【請求項3】
前記パッケージ化された核酸が3つ以上のmiRNAをコードし、前記miRNAが、(i)配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、(ii)配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、(iii)配列番号19または配列番号101の配列を有するその断片とを含む、請求項1または2に記載のウイルスベクター。
【請求項4】
前記パッケージ化された核酸が、配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、配列番号17の配列を有するmiRNAと、配列番号19の配列を有するmiRNAとをコードする、請求項3に記載のウイルスベクター。
【請求項5】
カプシドと、以下をコードするトランスジーンを含む1つ以上のトランスジーン発現カセットを含むパッケージ化された核酸とを含む、請求項1~4のいずれかに記載のウイルスベクター。
-配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、配列番号19または配列番号101の配列を有するその断片、および配列番号17または配列番号100の配列を有するその断片からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAと、および
-配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、34、35および36のmiRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNA。
【請求項6】
カプシドと、トランスジーンを含むトランスジーン発現カセットを2つ以上含むパッケージ化された核酸とを含むウイルスベクターであって、
-第1発現カセットが、配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、配列番号19または配列番号101の配列を有するその断片、および配列番号17または配列番号100の配列を有するその断片からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAとをコードする第1トランスジーンを含み、および
-第2発現カセットが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、34、35および36のmiRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNAをコードする第2トランスジーンを含む、
請求項1~5のいずれかに記載のウイルスベクター。
【請求項7】
前記RNA阻害がRNAiプロセシングまたはRNAi成熟を受けない、請求項5~6のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項8】
前記核酸が偶数個のトランスジーン発現カセットを有する、請求項5~7のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項9】
前記トランスジーン発現カセットが、プロモーター、トランスジーンおよびポリアデニル化シグナルを含み、プロモーターまたはポリアデニル化シグナルが互いに対向して位置する、請求項5~8のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項10】
前記ベクターが、組換えAAVベクターである、請求項1~9のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項11】
前記ベクターが、AAV-2血清型を有する組換えAAVベクターである、請求項1~10のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項12】
前記カプシドが、配列番号29または30の配列を有する第1タンパク質を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項13】
前記カプシドが、配列番号82の配列を有する第2タンパク質と80%同一である第1タンパク質を含むが、前記第1タンパク質と前記第2タンパク質の間のアラインメントに1つ以上のギャップが許容される、請求項1~12のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項14】
前記カプシドが、配列番号82の第2タンパク質と95%同一である第1タンパク質を含むが、前記第1タンパク質と前記第2タンパク質の間のアラインメントのギャップがミスマッチとしてみなされる、請求項1~13のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項15】
前記ベクターがAAV5またはAAV6.2血清型を有する組換えAAVベクターであり、組換えAAV6.2ベクターのカプシドが、好ましくは配列番号82の配列を有するカプシドタンパク質を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項16】
パッケージ化された核酸が2本鎖である、請求項1~15のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項17】
パッケージ化された核酸が1本鎖である、請求項1~15のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項18】
ILD、PF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、サルコイドーシス、および線維肉腫からなる群から選択される疾患の予防または治療に使用される、請求項1~17のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項19】
ILD、PF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、サルコイドーシス、および線維肉腫からなる群から選択される疾患の治療方法であって、前記方法が、それを必要とする患者に請求項1~17のいずれか一項に記載のウイルスベクターの治療的有効量を投与することを含む、治療方法。
【請求項20】
医薬品として使用される、請求項1~17のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項21】
2つ以上のmiRNAをコードするベクターゲノムを含むAAVベクターであって、前記2つ以上のmiRNAが配列番号99の配列を有するmiRNA断片を含む、AAVベクター。
【請求項22】
2つ以上のmiRNAをコードするベクターゲノムを含むAAVベクターであって、前記2つ以上のmiRNAが、配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片とを含む、AAVベクター。
【請求項23】
前記ベクターゲノムが、(i)配列番号99の配列を含むmiRNAと、(ii)配列番号17の配列を含むmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、(iii)配列番号19の配列を含むmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片とをコードする、請求項21または22に記載のAAVベクター。
【請求項24】
前記ベクターゲノムが、(i)配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、(ii)配列番号17の配列を有するmiRNAと、(iii)配列番号19の配列を有するmiRNAとをコードする、請求項23に記載のAAVベクター。
【請求項25】
前記ベクターゲノムが、さらに配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、34、35および36のmiRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNAをコードする、請求項21~24のいずれかに記載のAAVベクター。
【請求項26】
請求項21~25のいずれかのAAVベクターを含む、2本鎖プラスミドベクター。
【請求項27】
線維増殖性疾患の予防および/または治療方法に使用されるmiRNA模倣物の組合せであって、前記組合せが、(i)配列番号99の配列を有するmiRNA断片の模倣物と、(ii)配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物および/または配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物とを含む、miRNA模倣物の組合せ。
【請求項28】
線維増殖性疾患の予防および/または治療方法に使用されるmiRNA-212-5pのmiRNA模倣物であって、前記miRNA模倣物が、配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有し、
前記予防および/または治療が、配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物および/または配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物の投与をさらに含む、miRNA模倣物。
【請求項29】
前記予防および/または治療が、配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物の投与を含む、請求項28に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【請求項30】
線維増殖性疾患の予防および/または治療方法に使用されるmiRNA-212-5pのmiRNA模倣物であって、前記miRNA模倣物は、配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有し、
前記予防および/または治療は、配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物の投与をさらに含む、miRNA模倣物。
【請求項31】
配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物が、配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、請求項29または30に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【請求項32】
前記予防および/または治療が、配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物の投与をさらに含む、請求項28に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【請求項33】
配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物が、配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、請求項32に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【請求項34】
前記予防および/または治療が、配列番号18の配列を有するmiRNAの模倣物の投与をさらに含む、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【請求項35】
配列番号18の配列を有するmiRNAの模倣物が、配列番号18の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号18の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは配列番号18の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは配列番号18の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、請求項34に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【請求項36】
線維増殖性疾患がIPFまたはPF-ILDである、請求項28~35のいずれかに記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【請求項37】
IPFまたはPF-ILDまたはILDのような線維増殖性疾患の治療薬の製造のための、(i)配列番号99の配列を有するmiRNA断片のmiRNA模倣物と、(ii)配列番号17の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物および/または配列番号19の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物との使用。
【請求項38】
配列番号99の配列を有するmiRNA断片のmiRNA模倣物と、配列番号17の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項39】
配列番号99の配列を有するmiRNA断片のmiRNA模倣物と、配列番号19の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項40】
配列番号99の配列を有するmiRNA断片のmiRNA模倣物と、配列番号17の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、配列番号19の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項41】
前記組成物中のmiRNA模倣物が脂質ナノ粒子(LNP)に封入される、請求項38、39または40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記組成物がイオン化脂質を25から65mol%含む、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記LNPの平均粒子径が30~200nmである、請求項38~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項44】
(a)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物;
(b)miRNA181a-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物;および
(c)薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤
を含む、医薬組成物。
【請求項45】
(a)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物;
(b)miRNA181b-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマー含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物;および
(c)薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤
を含む、医薬組成物。
【請求項46】
(a)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物;
(b)miRNA181a-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物;
(c)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物;および
(d)薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤
を含む、医薬組成物。
【請求項47】
miRNA212-5pのmiRNA模倣物が2本鎖miRNA模倣物である、請求項38~46のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項48】
miRNA-181a-5pのmiRNA模倣物が2本鎖miRNA模倣物である、請求項38、40、41、42、44、または46に記載の医薬組成物。
【請求項49】
miRNA181b-5pのmiRNA模倣物が2本鎖miRNA模倣物である、請求項39、40、41、42、45、または46に記載の医薬組成物。
【請求項50】
ILD、PF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、サルコイドーシス、および線維肉腫からなる群から選択される疾患の治療方法であって、前記方法は、それを必要とする患者に請求項38~49のいずれかに記載の医薬組成物の治療的有効量を投与することを含む、治療方法。
【請求項51】
ILD、PF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、サルコイドーシス、および線維肉腫からなる群から選択される疾患の治療薬の製造のための、請求項38~50のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項52】
カプシドと、パッケージ化された核酸とを含むウイルスベクターであって、前記パッケージ化された核酸が1つ以上のmiRNAをコードしており、前記1つ以上のmiRNAが配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片を含む、ウイルスベクター。
【請求項53】
カプシドと、パッケージ化された核酸とを含み、前記パッケージ化された核酸が2つ以上のmiRNAをコードしており、
(i)前記2つ以上のmiRNAが、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、配列番号19のmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片とを含む、または
(ii)前記2つ以上のmiRNAが、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、配列番号18のmiRNAとを含む、
請求項52に記載のウイルスベクター。
【請求項54】
カプシドと、パッケージ化された核酸とを含むウイルスベクターであって、前記パッケージ化された核酸が1つ以上のmiRNAをコードしており、前記1つ以上のmiRNAが配列番号19のmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片を含む、ウイルスベクター。
【請求項55】
カプシドと、パッケージ化された核酸とを含み、前記パッケージ化された核酸は2つ以上のmiRNAをコードしており、前記2つ以上のmiRNAは、配列番号19のmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片と、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片とを含む、請求項54に記載のウイルスベクター。
【請求項56】
線維増殖性疾患の予防および/または治療方法に使用されるmiRNA模倣物の組合せであって、前記組合せが、(i)配列番号99の配列を有するmiRNA断片の模倣物、および/または(ii)配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物、および/または(iii)配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物を含む、miRNA模倣物の組合せ。
【請求項57】
(a)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;または
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物、
または
(b)miRNA181a-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマー含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;または
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている;
を有する、miRNA模倣物、
または
(c)miRNA181b-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-前記オリゴマーは、配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-前記オリゴマーは、配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;または
-前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている;
を有する、miRNA模倣物、
および
(e)薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤
を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
間質性肺炎(ILD)という用語は、大きく不均一な200以上の肺疾患のグループを含み、そのほとんどは稀な疾患として分類される。ILDにおける主な異常は、遠位肺実質の破壊であり、結果としてガス交換障害および拘束性換気障害となる。一般的に、肺胞上皮細胞の幾つかの損傷形態が修復機構と対になった炎症性反応を始動すると考えられている。創傷治癒過程は炎症、線維症または両方の組合せとして病理学的に反映される。根底にある病態生理と関係なく、結果として生じる間質腔の変質は呼吸困難および咳のような臨床症状をもたらし、そして肺機能検査において制限的換気障害およびガス交換障害という結果になる(Schwartz MIら、2011)。一般的に認められていたILDの単一の分類はない。それらは通常、その病因(関連性または原因が既知である突発性疾患またはILD)、臨床経過(急性、亜急性、または慢性ILD)、および主な病理学的特徴(炎症性または線維化性ILD)に基づいて分類されうる。線維化性ILDは、それらの縦断的な疾患活動性に基づいて3つのグループに分けられる(Wells AU、2004)。
● 本質的に非進行性、例えば薬剤除去後の薬剤誘導性肺疾患または誘因除去後の過敏性肺炎(HP)の幾つかの症例;
● 進行性だが免疫調節により安定、例えば結合組織病(CTD)-ILDの幾つかの症例(Tashkin DPら、2006、Fischer Aら、2013、Morisset Jら、2017、Adegunsoye Aら、2017);
● 個々のILDで適当と考えられた治療にも関わらず進行性、例えば特発性肺線維症(IPF)。
【0002】
IPFは最も知られている進行性線維化を伴うILD(PF-ILD)の基本型である一方、IPF以外の異なるILD臨床診断を有し、その疾患経過中に進行性繊維化表現型を生じる患者グループがある。これらの患者は、疾患がイメージングでの肺線維症の程度の増加によって定義されること、肺機能の低下、それぞれのILDで適当とされる管理にも関わらず呼吸症状や生活の質の悪化、そして最終的には早期死亡といったIPFを有する患者との多数の類似性を示す(Flaherty KRら、2017;Wells AUら、2018;Cottin Vら、2019;Kolb Mら、2019)。IPFと同様、これらの他の線維化を伴うILDを有する患者において、FVCの低下は患者の死亡率を予想する(Jegal Yら、2005;Solomon JJら、2016;Gimenez Aら、2017;Goh NSら、2017;Volkmann ERら、2019)。IPFの患者を除き、進行性線維化を伴うILDの患者に対しては承認された疾患緩和薬物療法がなく、満たされていない医療ニーズが多くある。それらの臨床的類似性に従って、進行性線維化を伴うILDは組織損傷に対して共通の線維化反応を示す病態生理学的メカニズムを共有する(図3参)(Thannickal VJら、2014;Bagnato G ate al.、2015;Wollin Lら、2019;Luckhardt TRら、2015)。これらのメカニズムは多因子性で複雑である。ILD患者の肺における繊維化促進性および増殖促進性の環境は平滑筋細胞および内皮細胞の増加および増殖をもたらす。結果として生じた遠位肺小動脈の筋性化および増加した毛細血管の成長は血管抵抗の増加に寄与している可能性が高い。
【0003】
科学文献によると、進行性線維症を合併し得るILDは、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)(Kim MYら、2012)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)(Guler SAら、2018)、過敏性肺炎(HP)(Sadeleer LJら、2019)、関節リウマチ関連ILD(RA-ILD)(Doyle TJ&Dellaripa PF 2017)およびSSc-ILD Guler SAら、2018)のような自己免疫性ILD、サルコイドーシス(Walsh SLら、2014)、職業関連肺疾患(Khalil Nら、2007)を含むが、それに限定されるものではない。IPFのような進行性線維化を伴うILDの病因はまだ不明である。しかし、喫煙を含む様々な刺激物、職業上の危険、ウイルスおよび細菌感染ならびに放射線療法および化学療法剤(ブレオマイシンなど)がIPFの進展の潜在的な危険因子として記述されている。過去数年間にわたるIPF診断基準の変化により、IPFの有病率は文献においてかなり異なる。最近のデータによると、IPFの有病率は100,000当たり14.0から63.0例で変動し、一方、その発生は100,000当たり年間の新規症例数が6.8と17.4例の間にある(Ley Bら、2013)。IPFは通常高齢者で診断され、疾患発症の平均年齢は66歳である(Hopkins RBら、2016)。初期診断後、IPFは3から5年以内に約60%の死亡率で急速に進行する。IPFと対照的に、CTD(関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群および全身性強皮症(SSc)などを含む)またはサルコイドーシス患者の可変部分は進行性線維化表現型を示し、RA患者の約10~20%、シェーグレン症候群の9~24%、SScの>70%(Mathai SCおよびDanoff SK、2016)およびサルコイドーシス患者の20~25%(Spagnolo Pら、2018)で肺線維症を発症する。
【0004】
2つの主な病理組織学的特徴がPF-ILDで観察され、すなわち非特異性間質性肺炎(NSIP)および通常間質性肺炎(UIP)である。IPFの病理組織学的特徴は、UIPおよび過度の細胞外マトリックス沈着によって引き起こされる進行性間質性線維症である。UIPは、胸膜下および胸膜傍の線維化領域と、影響の少ないまたは正常な肺実質組織領域が交互に現れる不均質な外観によって特徴づけられる。活動的な線維化領域、いわゆる線維芽細胞巣は、線維芽細胞集積および過剰なコラーゲン沈着によって特徴づけられる。線維芽細胞巣は血管内皮および肺胞上皮の間に位置することが多く、それによって肺の構造が破壊され、特徴的な「蜂巣状構造」が形成される、IPFの臨床症状は、劇的な酸素拡散障害、進行性肺機能低下、咳および深刻な生活の質の障害である。
【0005】
UIPはまた、RA-ILDおよび後期サルコイドーシスの主要な病理組織学的特徴の1つである。しかし、SScまたはシェーグレンのような他のCTDは主に非特異性間質性肺炎(NSIP)で特徴づけられる。
【0006】
NSIPは少ない空間不均一性によって特徴づけられ、すなわち病理学的異常は肺にわたってやや均一な広がりを持つ。細胞NSIPサブタイプ場合、病理組織は炎症細胞で特徴づけられるが、より一般的な線維化サブタイプの場合、著しい線維化の領域の追加が明らかである。しかし、病理学的症状は多種多様であるため、それによって正確な診断およびUIP/IPFのような他の線維症タイプとの区別が複雑になる。
【0007】
IPFの病因が不明であるため、細胞および分子レベルの病理学的メカニズムに関する知識はまだ限られている。しかし、機能的研究のための疾患実験モデル(インビトロおよびインビボ)ならびにゲノミクス/プロテオミクス分析のためのIPF患者からの組織サンプルを使用したトランスレーショナルリサーチの最近の進歩は重要な疾患メカニズムへの貴重な知見を可能にした。現時点での理解によると、IPFは反復的な肺胞上皮細胞(AEC)の微小損傷で始まり、最終的には制御不能で持続的な創傷治癒反応をもたらす。さらに詳細には、AEC損傷が隣接する上皮細胞の異常な活性化を誘導し、それによって損傷部位への免疫細胞および幹細胞または前駆細胞の動員につながる。様々なサイトカイン、ケモカインおよび成長因子を分泌することにより、浸潤細胞は炎症促進性環境を生み出し、最終的には線維芽細胞の拡大および活性化をもたらす。生理的状態の下では、これらのいわゆる筋線維芽細胞は胞外マトリックス(ECM)構成成分を産生し、損傷組織を安定化させ、修復する。さらに、創傷治癒過程の後期において、筋線維芽細胞はそれら固有の収縮性機能を通して組織収縮および創傷閉鎖に寄与する。生理的創傷治癒と対照的に、IPFにおいて炎症およびECM産生は自己制限されない。その結果、これはECMの継続的な沈着につながり、最終的には進行性肺硬化および肺構造の破壊をもたらす。実際、ECMバイオマーカーはPF-ILDの治療開始の決定に使用できる。WO2017/207643参照。分子レベルでは、IPFの病因は多数の線維化促進メディエーターおよびシグナリング経路により編成されている。強力な繊維化効果によりIPFで中心的役割を果たすTGFβの他に、チロシンキナーゼシグナリングおよび例えば血小板由来増殖因子(PDGF)および線維芽細胞増殖因子(FGF)のような様々な対応成長因子の上昇がIPFの発病に寄与する。
【0008】
近年、いくつかの薬剤がIPF治療のために臨床試験された。しかし、今までのところピルフェニドン(Esbriet(登録商標)、ロシュ社/ジェネンテック社)およびニンテダニブ(Ofev(登録商標)、ベーリンガーインゲルハイム社)の2剤だけが、肺機能低下率の低下の実証により疾患進行度の減速という納得できる治療効果を示した。これらの有望な結果にもかかわらず、IPFにおける医療ニーズはまだ高く、有効性が向上し、理想的には疾患修正の可能性を有する更なる治療法が緊急に求められている。ニンテダニブはまた、全身性強皮症関連のILDの治療ならび進行性表現型を有する慢性線維化性間質性肺炎に対して承認されている。一般的に、現在のILD管理は副腎皮質ステロイドまたは免疫調節療法による炎症抑制が主である。後者は、事例報告およびアザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブおよびタクロリムスを使用した小規模な症例シリーズにおける制御されていない治療反応に基づいている。幾つかのILD、例えばCTD-ILDの幾つかの症例は免疫調節により安定化でき(Tashkin DPら、2006;Fischer Aら、2013;Morisset Jら、2017;Adegunsoye Aら、2017)、その他はそれぞれのILDで適当と考えられる(薬理学的および/または非薬理学的)治療にも関わらず進行性であり(Wells AU 2004)、革新的な治療アプローチに対する残存する高い要求をさらに論証している。
【0009】
肺高血圧症(PH)は、最も頻繁なILD合併症の1つであり、早期死亡率の独立した駆動因子でありうる(Galie Nら、2015)。PHは右室収縮期圧(RVSP)の上昇、右室圧過負荷、ならびに右心房および心室拡張を有する疾患として定義される(Smithら(2013)、Am J Med Sci、346(3):221-225)。
【0010】
慢性線維化珪肺症はILDの系統に属する。結晶性シリカの慢性的で反復的な吸入により引き起こされ、肺胞空間における上皮細胞を損傷し、マクロファージを活性化させて炎症反応を起こさせる。両因子は、常在線維芽細胞の活性化およびこれらの肺領域における関連する細胞外マトリックスの大量沈着をもたらす。
【技術分野】
【0011】
IPFおよび他の線維化ILDの発病に関わるおびただしい数の経路によって、様々な疾患メカニズムを同時に調節することを目的としたマルチターゲット治療が最も効果的である可能性が高い。しかし、低分子化合物(NCE)または、例えばモノクローナル抗体のような生物物質(NBE)を使用した古典的な薬理学的戦略では、それぞれのアプローチで実施するのが難しい。なぜなら両様式とも通常単一の薬物標的または密接に関わる分子の小さなセットを特異的に阻害または活性化するよう設計されるからである。PF-ILDに対するマルチターゲット治療を可能にするため、マイクロRNA(miRNA)は、生理的および病態生理学的条件の下、特定の標的遺伝子セットのmRNA発現レベルを制御することにより、シグナリング経路全体または細胞メカニズムを制御および微調節する能力に基づく新規かつ非常に魅力的な標的クラスの代表例である。miRNAは小さな非コーディングRNAであり、前駆体分子(pri-miRNA)として転写される。核内で、pri-miRNAは第1成熟過程を受け、小ヘアピン構造によって特徴づけられる、いわゆるpre-miRNAが生成する。核外搬出に続いて、pre-miRNAはDicer酵素を介した第2プロセッシング工程を受け、それによって約22ヌクレオチドの長さの2本鎖の完全な成熟miRNAが生成される。その遺伝子制御機能を発揮するため、成熟miRNAはRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に統合され、標的mRNAの3’-UTRに位置するmiRNA結合部位に結合することを可能にする。結合すると、miRNAは標的mRNAの不安定化および切断を誘導、および/または各mRNAのタンパク質翻訳の阻害によって遺伝子発現を調節する。現在まで、ヒトでは2000以上のmiRNAが見出され、トランスクリプトームの30%までを制御する可能性がある(Hammond SM、2015)。
【0012】
本発明は、線維化肺疾患の発病に関わるmiRNAの同定、およびウイルスベクター、特にアデノ随伴ウイルス(AAV)を使用したILD患者、好ましくはPF-ILD患者、特にIPF患者における、各miRNAの機能調節によるPF-ILDのような肺疾患の治療法を開示する。本発明は、ヒトの治療に焦点を当てるが、いずれかの哺乳動物、特にウマ、イヌ、ネコのような伴生種哺乳動物も発明の領域内である。
【発明の概要】
【0013】
中程度(チャイルドピューB)または重度(チャイルドピューC)の肝障害を有する患者でのオフェブ(Ofev)の治療は推奨されていない(EPAR参照)。エスブリエット(Esbriet)は、既にフルボキサミンを服用している患者(鬱および強迫性障害の治療に使用される薬剤)または重度の肝または腎異常を有する患者に使用してはいけない(EPAR参照)。従って、PF-ILD患者に対して、特に重度肝および腎異常を有するIPF患者に対してまだ高い医療ニーズがある。本発明の目的は、代替治療を提供することである。本発明の別の目的は、既存の治療から恩恵を受けることができない患者グループであっても適格な代替治療を提供することである。
【0014】
エスブリエットおよびオフェブは確実な有効性を示す一方、両剤の併用療法に対するオプションを制限する可能性がある副作用も伴う(両方のEPAR参照)。従って、少ない副作用、または少なくともオフェブまたはエスブリエットとは異なる副作用がある、PF-ILDおよび特にIPF治療のようなILD治療にはまだ高い医療ニーズがあるため、オフェブまたはエスブリエットのいずれかとの併用療法が全体的な治療効果を増加させるための選択肢となりうる。本発明の別の目的は、確立された治療オプションと比べて異なるリスク/ベネフィットプロファイルを持つ、例えば確立された治療選択肢と比較してより少ない副作用または異なる副作用を持つ、別の治療選択肢を提供することである。オフェブおよびエスブリエットは、経口すなわち全身的な使用が意図されているが、局所投与または局所および全身経路の両方によって投与可能な治療選択肢がまだ求められている。本発明の別の目的は、局所投与または局所および全身経路の両方によって投与可能な治療選択肢を提供することである。本発明の別の目的は、各マイクロRNAを効率的に発現するウイルスベクターを提供することである。本発明のさらに別の目的は、ウイルスベクターがその対応物よりさらに効率的に各マイクロRNAを発現することであり、例えば各マイクロRNAが5pである場合、5pマイクロRNAは、その3p対応物より効率的に発現されることである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、
-有効成分の単回または回数限定の投与のILD、PF-ILDまたはIPFに対する治療選択肢、および/または
-ILDおよび/またはIPFの表現型の複数の態様に対処するILD、PF-ILDまたはIPFに対する治療選択肢、および/または
-ILDおよび/またはIPFの表現型の複数の態様でも対処するILD、PF-ILDまたはIPFに対する治療選択肢、および/または
-ILD、PF-ILDおよび/またはIPFと重大な併存疾患を起こす疾患に有益作用をもたらす可能性のあるILD、PF-ILDまたはIPFに対する治療選択肢、および/または
-ILD、PF-ILDまたはIPFの動物モデルおよび細胞モデルにおいて、ILD、PF-ILDまたはIPFの表現型の1つあるいはそれ以上の態様を低減するツール化合物の組成物
を提供することである。
【0016】
本発明は、一態様において、一般にILDの治療、および特にPF-ILDおよびIPFの治療のための治療薬、すなわちウイルスベクターまたはmiRNA模倣物に関する。
【0017】
本発明によるウイルスベクターは、ILD、好ましくはPF-ILD、さらに好ましくはIPFで見られるECM沈着のような組織変容の1つまたはそれ以上の態様をmiRNA機能調節により阻止または遅らせるため、これらの疾患で見られる肺活量低下を阻止または遅らせる(WO2017/207643および参考文献参照)。本発明に記載のウイルスベクターは局所(鼻腔内、気管内、吸入)または全身(静脈内)経路で患者に投与できる。特にAAVベクターは、極めて効率的に肺を標的とすることができ、低い抗原性をするため、特に全身投与にも適している。
【0018】
治療の観点から、miRNA模倣物を送達することにより線維化状態でダウンレギュレートされる内因性miRNA効果を増大させることで、またはmiRNAをブロックする分子あるいはいわゆるアンチmiRまたはmiRNAスポンジを送達することにより、その利用可能率を減少させて、病的状態下でアップレギュレートされる内因性miRNAの機能性を阻害することで、miRNA機能は調節可能である。
【0019】
さらに、アップレギュレートされる本発明で記載のmiRNAもまた天然の抗線維化反応の一部として保護機能を発揮することもある。しかし、この効果はそれ自体で病状を解消するには十分ではないことは明らかである。従って、特定のケースにおいては、線維化状態で既に上昇している配列のmiRNA模倣物の送達は、その抗線維化効力をさらに高める可能性があり、それによって治療介入に追加モデルを提供する。
【0020】
miRNAが複数の標的遺伝子の同時制御を指揮するという事実に基づき、ウイルスベクターを介するmiRNA機能の調節は、異なる疾患経路に影響することでマルチターゲット治療を可能にする魅力的な戦略を示す。本発明に記載した肺線維症関連miRNAは、異なる標的遺伝子セットを調節することにより、以前同定されたmiRNAと区別され、それによって向上した治療有効性の可能性を提供する。
【0021】
本発明では、2つの疾患関連動物モデル、特に斑状の急性炎症誘発線維化表現型によって特徴づけられるブレオマイシン誘導型肺損傷、およびより均質なNSIPパターンを連想させるAAV-TGFβ1誘発線維症の詳細な特性解析および計算解析により、肺線維症関連のmiRNAセットが同定された。疾患関連miRNAの同定を可能にするため、miRNAおよびmRNAの縦断的な転写プロファイルならびに機能データが作成された。さらに、配列と発現の反相関に基づいて高い信頼度のmiRNA-mRNA調節関係が構築され、それらの標的セットに基づいて疾患モデルのコンテクストにおいてmiRNAを特徴づけることができた。これらの知見をさらに具体化するために、選択されたmiRNA候補(mir-29a-3p、mir-10a-5p、mir-181a-5p、mir-181b-5p、mir-212-5p)の合成RNAオリゴヌクレオチド模倣物を作製し、ヒト初代肺線維芽細胞、ヒト初代気管支気道上皮細胞およびA549細胞の細胞線維症モデルにおいて一過性のトランスフェクション実験に使用した。一過性にトランスフェクトされたmiRNAの効果をTGFβ誘導性線維化リモデリング(炎症、増殖、線維芽細胞から筋線維芽細胞への移行(FMT)、上皮から間葉への移行(EMT))の主な側面において調査することにより、選択されたmiRNAの予測される抗線維化効果が確認された。最終的に、これらの知見を臨床応用に移すため、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに基づく遺伝子送達を使用することによりPF-ILD関連miRNAの調節を可能にする線維化肺疾患に対する新規治療方法について記述する。
【0022】
本発明によるmiRNA模倣物は、PF-ILDおよびIPFのようなILDSで見られるECM沈着のような組織変容の1つあるいはそれ以上の態様をmiRNA機能調節により阻止または遅らせるため、これらの疾患で見られる努力性肺活量の低下を停止または遅らせる(WO2017/207643および参考文献参照)。本発明によるウイルスベクターと比較して、それらは潜在的に低い抗原性などの異なる副作用プロファイル持ち、それによって免疫抑制剤併用治療を用いず複数の治療を潜在的に可能にする。
【0023】
2つの疾患関連動物モデル、すなわちマウスでのブレオマイシンおよびAAV-TGFβ1誘発肺線維症モデルにおいて縦断的に詳細分析を行うことで、28の新規miRNAセットが同定された。最も関連性のあるmiRNAを選択するために、遺伝子発現プロファイルデータおよび基本的な機能的疾患パラメータ間の体系的な相関分析に基づいて、本発明者らはヒット選択戦略を開発した。本発明者らは、PF-ILDの慢性的性質に配慮して、ウイルスベクター、特にアデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくベクターによるmiRNA、アンチmiRまたはmiRNAスポンジの発現を、線維症関連miRNAの機能調節のための治療用核酸の長期持続発現を可能にする新規治療コンセプトとして記述する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】研究デザインを図示する。合計130匹のC57Bl/6マウスは、気管内投与で、NaCl、1mg/kgブレオマイシンまたはAAV6.2-スタッファーコントロールまたはAAV6.2-CMV-TGFβ1ベクターのいずれかの2.5x1011ベクターゲノム(vg)が投与された。スキームに示した各読出しおよびサンプリング(RS)時間で、肺機能測定が行われ、湿肺重量を測定した。次に、左肺は線維化進展の組織学的評価に使用され、右肺は全肺RNAの単離のため溶解した。RNAは、疾患の出現と相関する遺伝子発現変化をプロファイルするため次世代シーケンスに用いた。
図2】肺病理の機能的特性解析に関するデータを示す。マウスは図1に記載したように処理し、線維化の進展を測定した。(A)マッソントリクローム染色した組織学的肺切片は、投与後21日から肺胞中隔肥厚、細胞外マトリックス沈着の増加および免疫細胞の存在から明らかな線維化出現を示した。下のパネル画像は、上のパネルの顕微鏡写真を10x拡大した詳細を示す。(B)AAV-TGFβ1およびブレオマイシン処理動物での湿肺重量の増加は、ECM沈着の増加を示し、(C)線維化動物での肺機能の強い障害に至った。平均+/-SD、**p<0.01、***p<0.001、各コントロール処理と比較。
図3】遺伝子発現解析の結果の概要を示す。mRNAおよびmiRNAの並行シーケンシングを行うことによって、両モデルにおける分析された全時点でアップレギュレートおよびダウンレギュレートされたmRNA(A)およびmiRNA(B)が同定された。差次的発現遺伝子を同定するためのカットオフ基準、P adj.(FDR)≦0.05、abs(log2FC)≧0.5(FC≧1.414)。(C)1つのモデルでのみ差次的発現を示すmRNAを、両モデル(共通にDE)で差次的に発現したmRNAから各時点で分離し、KEGG経路エンリッチメント分析を行った。データでは、ブレオマイシンモデルにおいて初期時点での急性炎症(「サイトカイン-サイトカイン相互作用」)に対するエンリッチメントが見られたがAAVモデルでは見られなかった。一方、線維化進展(ECM受容体相互作用)に対するエンリッチメントが両モデルにおいて時間依存的な様式で観察された。
図4】線維症関連miRNAの同定に適用したフィルタ処理の全体像を提供する。第1段階では、2つのモデルのうち少なくとも1つにおいて肺機能および/または肺重量と相関するmiRNA(C)または反相関するmiRNA(AC)が同定された。続いて、相関および反相関のmiRNAをフィルタにかけ、差次的遺伝子発現を示す候補を探した。定義上、少なくとも1つの動物モデルにおいて1時点あるいはそれ以上で発現レベルが変化(P adj.(FDR)≦0.05、abs(log2FC)≧0.5;上方または下方制御)した場合、miRNAは差次的に発現したとみなした。最終段階では、フィルタしたmiRNAを種の保存に関して評価した。シード領域において配列同一性を示し、マウスとヒトの間で成熟miRNA配列に対するアラインメント・スコアが少なくとも20のmiRNAはホモログとみなし、一方残りのmiRNAはマウス特異的、従って非保存として分類した。最後に、結果として得られたヒットリストは、異なるまたは強い変動発現プロファイルを有する候補、特許取得済みのmiRNAおよびアップレギュレートされる非保存miRNAはヒトにおいて標的にはならないので除外することでマニュアルキュレーションした。
図5A図4に記載の通りフィルタ処理の適用により同定された線維症関連miRNAを示す。ヒトホモログが同定されなかったmmu-miR-30fおよびmmu-miR-7656-3pを除いて、表示したmiRNAは全て種保存されている(非常に類似または一致)。ヒトホモログに対するミスマッチは太字および下線で示す。表示した配列はプロセス化され完全成熟したmiRNAを表す。
図5B】マウス配列の最も近いヒトホモログで非常に類似した(しかし一致していない)ものを図5Bに示す。 表示した配列はまた配列表にまとめられている。配列表および図5Aおよび図5Bの間で矛盾した場合、図5が真正の配列を表す。
図6】標的予測のワークフローを模式的に示す。図5に載せたmiRNA候補について、DIANA、MiRanda、PicTar、TargetScanおよびmiRDBデータベースで照合することによりmRNA標的を予測した。5つのデータベースのうち少なくとも2つで予測されたmRNAを検討し、動物モデルでのmiRNAおよびmRNA測定値の間の発現の反相関によってさらにフィルタにかけた。その縦断的な発現が対応するmiRNA発現と反相関(rho≦-0.6)した予測mRNAを推定標的と呼んだ。それに続き、標的リストは、miRNA標的スペクトルの機能的特徴のための経路エンリッチメント分析に供した。
図7】予測された標的セットのエンリッチメントに基づいてmiRNA機能の特徴を示す。各miRNAに対する予測標的セットには、異なるソースからの参照遺伝子セットに対してエンリッチメントテストを行った。表は、肺線維症のコンテクストにおいて関連のある選ばれた遺伝子セットの小さなサブセットに対する、選ばれたmiRNAセットのサブセットの-log(p adj)を示す。より高い値はより強いエンリッチメントを示す。
図8】miRNAまたはmiRNA標的コンストラクトの発現を可能にするためのベクターデザインを記載する。(A)線維化状態下でダウンレギュレートされる単独のmiRNAまたはmiRNA組合せはポリメラーゼII(Pol-II)またはポリメラーゼIII(Pol-III)プロモーターを使ってベクターから発現できる。miRNA配列は各miRNAの天然バックボーンを使ってまたは外来miRNAバックボーンに埋め込むことで発現でき、それによって人工的miRNAを産生する。両方の場合で、miRNAは前駆体miRNA(プリmiRNA)として発現し、細胞内で成熟miRNAへとプロセシングされる。機構的に、プロセシングされたmiRNAは標的遺伝子の3’-UTRに位置するmiRNA結合部位に選択的に結合し、それによってmRNA分解および/またはタンパク質翻訳阻害を通して線維症関連遺伝子の発現レベルの減少をもたらす。(B)線維化状態下でアップレギュレートされる内因性miRNAの阻害は、アンチセンス様分子いわゆるアンチmiRの発現により達成できる。各配列はshRNAバックボーンまたは人工的miRNAバックボーンからPol-IIまたはPol-IIIプロモーターを使用して発現させることができる。細胞内プロセシングの後、アンチmiRが線維化促進性標的miRNAに結合し、それによってそれらの機能性を阻害する。(C)線維化促進性miRNAを阻害する別のアプローチは、miRNA特異的標的配列、いわゆるスポンジの発現である。Pol-IIプロモーターを使用した発現によって、miRNAスポンジは線維化促進性miRNAの封鎖をもたらし、それによってそれらの病理学的機能を阻害する。
図9】miRNA発現またはmiRNA標的コンストラクトの肺送達のためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの生成を図示する。5’末端および3’末端でのAAV逆方向末端反復(ITR)による発現コンストラクトのフランキングは、AAVベクターへのパッケージングを可能にする。様々な天然血清型(AAV5、AAV6)または修飾カプシド変異(AAV2-L1、AAV6.2)は、局所(鼻腔内、気管内、吸入)または全身(静脈内)投与経路の両方で肺への効率的な遺伝子送達を可能にする非常に強力なベクターとして過去に記述されている。
図10】異なるAAV血清型またはカプシド変異体による肺へのAAV仲介遺伝子送達の例を提供する。(A)最近記載された全身投与で肺特異的遺伝子送達を可能にするペプチド挿入モチーフを内部に持つAAV2変異である、AAV2-L1-GFP(3x1011vg/マウス)の静脈注射の2週間後のC57BL/6Jマウス肺切片での緑色蛍光タンパク質(GFP)発現の免疫組織学的染色(Kоrbelin Jら、2016)。PBSコントロール群ではバックグラウンド染色をこ得る特異的なシグナルは観察されなかった。1群当たり動物n=6のうちマウス2匹(ms1、ms2)からの代表画像。(B)FVB/NマウスにおけるインビボイメージングによるAAV2-L1体内分布評価(発表データ、Kоrbelin Jら、2016)。ホタルルシフェラーゼ(fLuc)の肺特異的発現は、投与量5x1010vg/マウスでfLuc発現AAV2-L1ベクターの静脈注射後2週間で観察された。(C)fLuc発現AAV5ベクター(2.9x1010vg/マウス)または陰性コントロールとしてPBSの気管内点滴2週間後のC57BL/6Jマウスから調製したマウス肺のエクスビボイメージング。定量的な肺形質導入は、AAV5-fLuc処理動物においてfLuc陽性細胞から生じる発光を発光(Lum)チャネルで検出することにより観察した。準備した肺の明視野(BF)像を上パネルに示す。グループ当たり動物n=4のうちマウス2匹(ms1、ms2)の代表画像を示す。(D)投与量3x1011vg/マウスでGFP発現AAV6.2ベクターの気管内投与3週間後のBalb/cマウスにおけるAAV6.2介在肺送達の分析。組織学的肺切片の顕微鏡写真は直接GFP蛍光(右)およびGFP発現の免疫組織学的分析(左)を示す。PBSコントロール群ではバックグラウンド染色を超える特異的なシグナルは観察されなかった。1群当たり動物n=5の代表画像を示す。
図11】異なるmiRNA発現カセットの例を提供する。A)CMV-mir181a-scAAV(cDNA(eGFP)とmiRNAの同時発現用2本鎖AAVベクターゲノム)およびCMV-mir181a-mir181b-mir10a-scAAV(3つのmiRNAの同時発現用2本鎖AAVベクターゲノム)のベクターマップ。B)例としてmir-181b-5pを使用したmiR-Eバックボーンでの異なるmiRNAデザインの図解。最初の2つの例では、完全に一致する相補鎖を使用してmiR-Eバックボーンでパッセンジャーまたはガイド位置で完全成熟miRNA(23nt)として組み込まれたmir-181b-5pを示す。2番目の例では天然型pre-miRNAとしてmiR-Eバックボーンにmir-181b-5pを組み込んだコンストラクトデザインを示す。mirBase由来の予測されるmir-181b-5pの2D構造(http://mirbase.org/)。
図12】3’UTRに対応する標的配列を有するGFP発現コンストラクト上のmir-EバックボーンにおけるmiR181a-5pおよびmiR212-5pのノックダウン効率を示す。HEK-293細胞に1つのmiRNAをコードしたプラスミドと共にGFP発現コンストラクトを一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後にGFP蛍光を測定した。陽性コントロールは最適なmir-Eコンストラクトであり、一方陰性コントロールは3’UTRに標的配列の無いGFPコンストラクトである。mir181a-5pの実験は配列番号49および47によるガイド位置、miR-Eバックボーンを基にしたコンストラクトで行った。miR212-5pについての実験はそれぞれ配列番号61および59によるコンストラクト(miR-Eバックボーン、ガイド位置)に基づいた。図25も参照。miR29a-3pについての実験では配列番号86によるコンストラクトを使用し、コントロールについても同様に配列番号83によるコンストラクトを使用した。特に、配列番号49および配列番号61はそれぞれ配列番号15および配列番号17による各参照配列miRNA212-5pおよびmiRNA181a-5pより3’末端で1nt短いmiRNAを保有する。
図13】n=6の複製でsmall RNA配列決定を使用して測定した、ヒト正常肺線維芽細胞(NHLF)におけるマウスmiRNA候補のヒトオルソログの基礎的miRNA発現を示す。発現レベルは100万当たりのカウント(cpm)で示す。矢印はさらに機能的特性解析に選択された、特に興味のあるmiRNA候補を示す。
図14】無刺激またはTGFβ1で刺激したA549細胞で炎症性IL6発現に対するmiRNAの効果を示す。IL-6は、様々な線維性疾患、例えばIPFまたは全身性強皮症において1つの主要な炎症性サイトカインである。上記サイトカインは、なかでもとりわけ、活性化した上皮細胞によって産生され、線維芽細胞および免疫細胞を刺激することができ、線維化反応/変容を刺激する。従って、TGFβ処理A549肺上皮細胞はIPFにおける炎症の病態生理学的側面を模倣する良い代替モデルである。(A)IL6の発現は、miRNAコントロールコンストラクト(Ctrl)または表示するmiRNA候補の模倣物を濃度2nMで細胞にトランスフェクションして評価した。トランスフェクションの24時間後に、細胞を5ng/mLのTGFβ1でさらに24時間刺激した。抽出したRNAはその後cDNAへ逆転写し、IL6遺伝子発現をqPCRで測定した。(B)細胞をトランスフェクトし、(A)に記載の通り刺激して、細胞上清の分泌されたIL6タンパク質をELISA測定で検出した。発現レベルは無刺激miRNAコントロールコンストラクト(Ctrl)に対する相対値で表す。トリプル=miR-10a-5p、miR-181a-5pおよびmiR-181b-5pの同時トランスフェクション。実験n=3、平均±SD、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(miRNA候補対Ctrl)。
図15A】ヒト正常気管支上皮細胞(NHBEC)の上皮-間葉移行(EMT)における単独のmiRNAおよびそれらの組合せの効果を示す。EMTは線維肺リモデリングの発生において1つの重要な開始因子としてみなされる。再発性上皮細胞損傷(recurrent epithelial cell damage)により、成長因子TGFβの慢性的分泌があり、上皮細胞の間葉(様)細胞への変化が誘導される。これらの細胞はその上皮細胞機能/完全性(integrity)を失い、バリア機能、空気交換能力の低下をもたらし、細胞外マトリックス沈着の増加がはじまる。3つの側面全てがIPF疾患の特徴である。機能的および完全体上皮細胞に対するマーカーは細胞マーカーE-カドヘリンである。E-カドヘリンの消失はEMTのマーカーとしてみなされる。E-カドヘリンの増加は上皮特性の維持を示しており、従って抗線維化と考えられる。EMTは、図示するように、miRNAコントロールコンストラクト(Ctrl)、表示するmiRNA候補の模倣物濃度2nM、またはそれらの組合せ4nMまたは12nMで細胞にトランスフェクションし、その後5ng/mL TGFβ1で刺激して評価した。E-カドヘリン(上皮細胞のマーカー)は72時間後に免疫染色し、ハイコンテント細胞イメージングにより定量し、検出された細胞数により正規化し、ここにmiRNA候補とコントロール間の倍変化をここに示した。繰り返しn=4、平均±SD、*p<0.05、**p<0.01(miRNA候補対Ctrl)。SSMD:厳密標準化平均差;#:|SSMD|>2、##:|SSMD|>3、###:|SSMD|>5。
図15B】ヒト正常気管支上皮細胞(NHBEC)の上皮-間葉移行(EMT)における単独のmiRNA(それぞれmiR181a-5p、miR-181b-5p、miR-10a-5pおよびmiR-212-3pおよびmiR-212-5p)およびそれらの組合せの用量/応答実験を提供する。EMTは、miRNAコントロールコンストラクト(Ctrl)、表示するmiRNA候補の模倣物の増加濃度(0.25nM、0.5nM、1nM、2nM、4nM、8nM、16nM)のどちらかで細胞をトランスフェクションして評価した。表示した濃度は合計濃度である。2つまたは3つのmiRNA組合せについては、関与する単独のmiRNA模倣物の濃度にするために、合計濃度をそれぞれ2または3で割る必要がある。細胞は5ng/mL TGFβ1で刺激した。E-カドヘリン(上皮細胞のマーカー)は72時間後に免疫染色し、ハイコンテント細胞イメージングにより定量し、検出された細胞数により正規化し、ここにmiRNA候補とコントロール間の倍変化を示した。E-カドヘリンの増加は上皮特性の維持を示しており、従って抗線維化と考えられる。繰り返しn=4、平均±SD、*p<0.05、**p<0.01(miRNA候補対Ctrl)。
図16】無刺激またはTGFβ1で刺激したヒト正常肺線維芽細胞(NHLF)における炎症性IL6発現に対するmiRNAの効果を示す。IL-6は、様々な線維性疾患、例えばIPFまたは全身性強皮症において1つの主要な炎症性サイトカインである。上記サイトカインは、なかでもとりわけ、活性化した上皮細胞によって産生され、線維芽細胞および免疫細胞を刺激することができ、線維化反応/形質転換を引き起こす。しかし、活性化した線維化促進性の線維芽細胞も、特に老化表現型を有するものが、多くの炎症性サイトカインを産生し、一方IL-6は最も顕著な因子の一つである。従って、TGFβ処理ヒト初代肺線維芽細胞(NHLF)はIPFにおける炎症の病態生理学的側面を模倣する良い代替モデルである。IL6の発現は、miRNAコントロールコンストラクト(Ctrl)または表示するmiRNA候補の模倣物濃度2nMで細胞をトランスフェクションして評価した。トランスフェクションの24時間後に、細胞を5ng/mLのTGFβ1でさらに24時間刺激した。抽出したRNAはその後cDNAへ逆転写し、IL6遺伝子発現をqPCRで測定した。繰り返しn=3、平均±SD、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(miRNA候補対Ctrl)。
図17】無刺激またはTGFβ1で刺激したヒト正常肺線維芽細胞(NHLF)の増殖に対するmiRNAの効果を示す。制御された線維芽細胞の増殖はあらゆる損傷治癒過程において重要な側面である。肺線維症を含む線維性疾患は、異常で制御されていない線維芽細胞増殖を有する異常な損傷治癒過程である。これも部分的には成長因子TGFβによって駆動される。従って、TGFβ活性化肺線維芽細胞の増殖の測定は、この病態生理学的な側面を模倣するのに重要な分析である。線維芽細胞増殖の減少は抗線維化効果としてみなされる。増殖は、miRNAコントロールコンストラクト(Ctrl)または表示するmiRNA候補の模倣物濃度2nMで細胞をトランスフェクション入し、その後5ng/mL TGFβ1で刺激して評価した。増殖は、細胞数との直接相関として細胞代謝活性(ミトコンドリア脱水素酵素)を測定する分光光度酵素的WST-1増殖分析を使用して測定した。繰り返しn=3、平均±SD、*p<0.05、**p<0.01(miRNA候補対Ctrl)。
図18】ヒト正常肺線維芽細胞(NHLF)の線維芽細胞から筋線維芽細胞への移行(FMT)に対する単独のmiRNAおよびそれらの組合せの効果を示す。FMTは線維肺リモデリングの発生において別の重要な開始因子としてみなされる。再発性上皮細胞損傷により、成長因子TGFβの慢性的分泌があり、正常な常在肺線維芽細胞の筋線維芽細胞への活性化を誘導する。α-平滑筋アクチンの発現により、筋線維芽細胞は非常に収縮しやすくなり、コラーゲンを含む多くの細胞外マトリックス構成成分の大量沈着の増加が始まる。筋線維芽細胞は線維性疾患において瘢痕過程の主な駆動因子としてみなされる。筋線維芽細胞の2つのマーカーはα-平滑筋アクチンとサブユニットCol1a1を通して検出される沈着コラーゲンの細胞レベルの増加である。E-カドヘリンの増加は上皮特性の維持を示しており、従って抗線維化と考えられる。コラーゲンの減少は筋線維芽細胞特性の消失を示しており、従って抗線維化と考えられる。FMTは、図示するように、miRNAコントロールコンストラクト(Ctrl)、表示するmiRNA候補の模倣物濃度2nM、またはそれらの組合せ4nMまたは12nMで細胞をトランスフェクションし、その後5ng/mL TGFβ1で刺激して評価した。コラーゲンタイプ1 α1(筋線維芽細胞のマーカー)は72時間後に免疫染色し、ハイコンテント細胞イメージングにより定量し、検出された細胞数で正規化し、miRNA候補とコントロール間の倍率変化をここに示した。ドナーn=2(繰り返し各4回)、平均±SD、*p<0.05、**p<0.01(miRNA候補対Ctrl)。SSMD:厳密標準化平均差;#:|SSMD|>2。
図19】正常およびIPF肺線維芽細胞のコラーゲン1沈着に対する単独のmiRNA-181a-5pおよびmiR-212-5pの効果を示す。コラーゲン1の沈着は、miRNAコントロールコンストラクト(Ctrl)、表示するmiRNA候補の模倣物の増加濃度(0.25nM、0.5nM、1nM、2nM、4nM、8nM、16nM)のどちらかで細胞をトランスフェクションして評価した。細胞は5ng/ml TGFβ1で刺激した。コラーゲンタイプ1 α1は72時間後に免疫染色し、ハイコンテント細胞イメージングにより定量し、検出された細胞数で正規化し、miRNA候補とコントロール間の倍率変化をここに示した。コラーゲンの減少は筋線維芽細胞特性の消失を示しており、従って抗線維化と考えられる。ドナーn=7、平均±SD。2元配置分散分析、ダネットの多重比較。
図20】肺線維芽細胞における異なるコラーゲンサブタイプの発現に対するmiRNA-181a-5pおよびmiR212-5pの効果を示す。FMTは線維性肺リモデリングの発生において別の重要な開始因子としてみなされる。再発性上皮細胞損傷により、成長因子TGFβの慢性的分泌があり、正常な常在肺線維芽細胞の筋線維芽細胞への活性化を誘導する。筋線維芽細胞は、多くの細胞外マトリックス構成成分たとえば異なるタイプのコラーゲンを産生するため、線維性疾患において瘢痕過程の主な駆動因子としてみなされる。特にコラーゲン1、3および5は線維性瘢痕マトリックスの構成成分としてみなされる。TGFβ活性化後の線維芽細胞でのコラーゲンサブユニット(Col1a1、3a1および5a1)の検出は、線維性疾患におけるこの病態生理学的側面の良好な代理としてみなされる。コラーゲンサブユニットの減少は、抗線維化として考慮される。A)Col1a1およびB)Col5a1タンパク質の発現ならびにC)Col3a1 mRNAの発現を、miRNAコントロールコンストラクト(Ctrl)、表示するmiRNA候補の模倣物2nM(1本鎖miRNA)またはmiRNAの組合せ2+2nMで細胞をトランスフェクションして評価した。細胞は5ng/ml TGFβ1で刺激した。72時間後、コラーゲンタイプ1α1および5α1はウエスタンブロット技術で免疫染色し、デンシトメトリーで定量した。コラーゲンの発現はGAPDH発現に対して正規化した。Col3a1は24時間後にRT-qPCRで定量した。Col3a1 mRNAの発現はデルタ/デルタcT法でHPRT mRNAに対して正規化した。コラーゲンの減少は線維化の減少を示している。A(n=5)およびB(n=3)についてはmiRNA候補とコントロール+TGFβ1間の倍率変化、C(n=4)についてはmiRNA候補とmiRNAコントロール+TGFβ1間の倍率変化を示す。平均±SD、*p<0.05、**p<0.01、一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定。
図21】A549上皮-線維芽共培養における肺線維芽細胞上でのCol1a1のmRNA発現に対するmiRNA-181a-5pおよびmiR212-5pの効果を示す。Col1a1 mRNAの発現は、miRNAコントロールコンストラクト(Ctrl)、表示するmiRNA候補の模倣物2nMのどちらかで細胞をトランスフェクションして評価した。継代培養した肺線維芽細胞と共に、A549細胞を透過性誘導細胞フィルタ上に100%コンフルエントになるように播種した。A549細胞および線維芽細胞はフィルタにより分離されているが、A549分泌因子が線維芽細胞に流れ込むことは可能である。A549細胞のみを5ng/ml TGFβ1で刺激し、一方サブシードした肺線維芽細胞は外来TGFβ1で刺激しなかった。24時間後、肺線維芽細胞中のコラーゲンタイプ1a1 mRNAをRT-qPCRで定量した。Col1a1 mRNAの発現はデルタ/デルタcT法でHPRT mRNAで正規化した。コラーゲンの減少は線維化の減少を示している。miRNA候補とmiRNAコントロール+TGFβ1(n=3)間の倍率変化を示す。平均±SD、*p<0.05、**p<0.01、一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定。
図22】正常およびIPF肺線維芽細胞のコラーゲン1沈着に対する単独のmiRNA-29a-3p、miRNA-181a-5pおよびmiR-212-5p、ならびにこれらのmiRNAの組合せの効果も示す。FMTは線維肺リモデリングの発生において別の重要な開始因子としてみなされる。再発性上皮細胞損傷により、成長因子TGFβの慢性的分泌があり、正常な常在肺線維芽細胞の筋線維芽細胞への活性化を誘導する。α-平滑筋アクチンの発現により、筋線維芽細胞は非常に収縮しやすくなり、コラーゲンを含む多くの細胞外マトリックス構成成分の大量沈着の増加が始まる。筋線維芽細胞は線維性疾患において瘢痕過程の主な駆動因子としてみなされる。筋線維芽細胞の2つのマーカーはα-平滑筋アクチンとサブユニットCol1a1を通して検出される沈着コラーゲンの細胞レベルの増加である。コラーゲンの減少は筋線維芽細胞特性の消失を示しており、従って抗線維化と考えられる。コラーゲン1の沈着は、miRNAコントロールコンストラクト(Ctrl)、表示するmiRNA候補の模倣物の増加濃度(単独のmiRNA:1nM、2nM、4nM、2つの組み合わせ:各0.5nM、1nM、2nM、3つの組み合わせ:各0.33、0.66nM、1.33nM)のどちらかで細胞をトランスフェクションして評価した。細胞は5ng/ml TGFβ1で刺激した。コラーゲンタイプ1 α1は72時間後に免疫染色し、ハイコンテント細胞イメージングにより定量し、検出された細胞数で正規化し、miRNA候補とコントロール間の倍率変化をここに示した。コラーゲンの減少は筋線維芽細胞特性の消失を示しており、従って抗線維化と考えられる。単独のmiRNA実験についてはドナーn=7、miRNA組合せ実験についてはn=4、平均±SD。2元配置分散分析、ダネットの多重比較。
図23】肺線維芽細胞(健常者およびIPF)での異なるコラーゲンの発現に対する単独のmiRNA-29a-3p、miRNA181a-5pおよびmiR212-5p、ならびにこれらのmiRNAの組合せの効果も示す。FMTは線維性肺リモデリングの発生において別の重要な開始因子としてみなされる。再発性上皮細胞損傷により、成長因子TGFβの慢性的分泌があり、正常な常在肺線維芽細胞の筋線維芽細胞への活性化を誘導する。筋線維芽細胞は、多くの細胞外マトリックス構成成分たとえば異なるタイプのコラーゲンを産生するため、線維性疾患において瘢痕過程の主な駆動因子としてみなされる。特にコラーゲン1、3および5は線維化瘢痕マトリックスの構成成分としてみなされる。TGFβ活性化後の線維芽細胞でのコラーゲンサブユニット(Col1a1、3a1および5a1)の検出は線維性疾患におけるこの病態生理学的側面の良好な代理としてみなされる。コラーゲンサブユニットの減少は、抗線維化として考慮される。A)Col1a1およびB)Col5a1タンパク質の発現、ならびにC)Col3a1 mRNAの発現は、miRNAコントロールコンストラクト(Ctrl)、表示するmiRNA候補の模倣物2nM(単独のmiRNA)またはmiRNAの組合せ2nM+2nM、およびmiRNA1.3nMごとの3つの組合せのいずれかで細胞をトランスフェクションして評価した。細胞は5ng/ml TGFβ1で刺激した。72時間後、コラーゲンタイプ1α1および5α1をウエスタンブロット技術で免疫染色し、デンシトメトリーで定量した。コラーゲンの発現はGAPDH発現で正規化した。Col3a1は24時間後にRT-qPCRで定量した。Col3a1 mRNAの発現はデルタ/デルタcT法でHPRT mRNAで正規化した。コラーゲンの減少は線維化の減少を示している。A(n=5)およびB(n=3)についてはmiRNA候補とコントロール+TGFβ1間の倍率変化、またはC(n=4)についてはmiRNA候補とmiRNAコントロール+TGFβ1間の倍率変化を示す。平均±SD、*p<0.05、**p<0.01、一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定。
図24図23で示した結果の一部を示す。
図25】22ntカセットのAAV-miR-212-5pの発現後のmiR-212-5pの22ntの肺発現を示す。スタッファー陰性コントロールAAVまたは3つの増加投与量(9x109vg、10x1010vgおよび1x1011vg)のmiR-212-5p-AAV(22nt)をマウスに気管内点滴した。マウスはAAV投与後7、14、28日後に安楽死させた。肺は液体窒素で瞬間凍結し、総RNA単離のため凍結肺粉末処理した。異なるAAV投与量間のmiR-212-5p(22nt)の倍率変化を、各時間点それぞれのスタッファーコントロールと比較して示す。表示されているのは平均±SDである。スタッファー群n=6~7、miR-212-5p AAV群n=7、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、一元配置分散分析、異なる時点でダネットの多重比較検定。実験は、配列番号99によるmiR-212-5p、22ntを発現するための配列番号61によるコンストラクトに基づいた。対応プラスミドについては、配列番号91を参照。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明はカプシドおよびパッケージ化された核酸を含むウイルスベクターに関するものであって、パッケージ化された核酸は2つ以上のmiRNAをコードし、2つ以上のmiRNAは、配列番号92のmiRNAと、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその後者の断片とを含む。本発明はまたカプシドおよびパッケージ化された核酸を含むウイルスベクターに関するものであって、パッケージ化された核酸は2つ以上のmiRNAをコードし、2つ以上のmiRNAは、配列番号92のmiRNAと、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその後者の断片とを含む。特に好ましい実施態様では、本発明はカプシドおよびパッケージ化された核酸を含むウイルスベクターに関するものであって、パッケージ化された核酸は2つ以上のmiRNAをコードし、miRNAは配列番号92のmiRNAと、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片と、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片を含む。従って、本発明は互いに組合せて使用される場合に効果が確認された選択されたmiRNAの使用を意味する。miRNAには、mir-29a-3pのmiRNA(配列番号92)と、mir-212-5p(配列番号15)のmiRNAまたはmir-181a-5p(配列番号17)のmiRNAのいずれかとの組合せを含む。また、ここにmir-29a-3pのmiRNAもまた分子の3’末端の末端ヌクレオチドを欠くmir-212-5pおよびmir-181a-5pのmiRNAの断片と組み合わせることができることが分かった。これらmir-212-5pおよびmir-181a-5pのmiRNAの断片は、それぞれ配列番号99および配列番号100としてここに示す。配列番号99および配列番号100のRNA分子は、本発明のコンテクストにおいて自己完結型miRNA(self-contained miRNAs)とみなされる。配列番号15および17の真正のmRNAとそれぞれ比較して配列番号99および配列番号100の3’末端での欠失は、miRNAのシード領域および13~16のヌクレオチド領域から離れているため、配列番号99および配列番号100によるmiRNAの特異性は許容される(Grimsonら、2007)。Chen,T.らによって、マウスモデルの肺高血圧症におけるmiR-212-5pの増加は、RVSPおよび肺血管壁リモデリングを低下しうることが示された(Chen,T.ら、2018,Chen,T.ら、2019)。珪肺症のコンテクストについては、Jiang,R.ら、2019およびYang,X.ら、2018参照。
【0026】
従って、本発明は、カプシドおよびパッケージ化された核酸を含むウイルスベクターに関するものであって、該核酸は、(i)配列番号92のmiRNA、あるいは(ii)ブレオマイシン誘導性肺線維症モデルまたはAAV-TGFβ1誘導性肺線維症モデルでダウンレギュレートされるmiRNAであって、配列番号15のmiRNAもしくは配列番号99の配列を有するその断片、または配列番号17のmiRNAもしくは配列番号100の配列を有するその断片を含むmiRNA、あるいは(iii)(i)と(ii)の双方、を増加させる。1つの実施態様では、ブレオマイシン誘導性肺線維症モデルまたはAAV-TGFβ1誘導性肺線維症モデルにおいてダウンレギュレートされ、パッケージ化された核酸によって増加するmiRNA(複数可)は、配列番号19のmiRNAをさらに含む。別の実施態様において、パッケージ化された核酸により増加される1つ以上のmiRNAは、配列番号92のmiRNAと、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片と、配列番号19のmiRNAを含む。別の実施態様において、パッケージ化された核酸により増加した1つ以上のmiRNAは、配列番号92のmiRNAと、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、配列番号19のmiRNAとを含む。
【0027】
このコンテクストでの増加は、標的細胞、好ましくは肺細胞のトランスダクションの結果として、トランスダクションされた細胞における各miRNAのレベルが増加することを意味する。
【0028】
本発明はさらに、カプシドおよびパッケージ化された核酸を含むウイルスベクターに関するものであって、核酸は、(i)配列番号92のmiRNA、あるいは(ii)ブレオマイシン誘導性肺線維症モデルまたはAAV-TGFβ1誘導性肺線維症モデルでダウンレギュレートされるmiRNAであって、配列番号15のmiRNAもしくは配列番号99の配列を有するその断片、または配列番号17のmiRNAもしくは配列番号100の配列を有するその断片を含むmiRNA、あるいは(iii)(i)と(ii)両方、を増加させ、かつ核酸は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、および16のmiRNA、または部分的な配列が保存されているmiRNAの場合にはそれぞれの配列の最も近いヒトホモログからなる群から選択されるmiRNAをさらに阻害する。
【0029】
このコンテクストでの阻害は、標的細胞のトランスダクションの結果として、相補的結合によりトランスダクションされた細胞で各miRNAの機能が低下または消失することを意味する。
【0030】
1つの実施態様では、本発明は、ウイルスベクターに関するものであって、カプシドと、ブレオマイシン誘導性肺線維症モデルまたはAAV-TGFβ1誘導性肺線維症モデルにおいてダウンレギュレートされる1つ以上のmiRNAをコードするパッケージ化された核酸を含み:
a)1つの好ましい実施態様では、パッケージ化された核酸によってコードされる1つ以上のmiRNAが、配列番号92のmiRNAを含む。別の実施態様では、パッケージ化された核酸によってコードされる1つ以上のmiRNAが、以下を含む。
(i)配列番号92のmiRNAと、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片、または
(ii)配列番号92のmiRNAと、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片、または
(iii)配列番号92のmiRNAと、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片と、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片、または
(iv)配列番号92のmiRNAと、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片と、配列番号19のmiRNA、または
(v)配列番号92のmiRNAと、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、配列番号19のmiRNA。
【0031】
b)1つの実施態様では、パッケージ化された核酸によってコードされる1つ以上のmiRNAが、以下を含む。
(i)配列番号92のmiRNAと、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片と、配列番号18のmiRNA、または
(ii)配列番号92のmiRNAと、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、配列番号18のmiRNA。
【0032】
核酸は通常はコーディングおよび非コーディング領域を含み、ブレオマイシン誘導性肺線維症モデルまたはAAV-TGFβ1誘導性肺線維症モデルにおいてアップレギュレートまたはダウンレギュレートされるコード化miRNAは、ウイルスベクターによってトランスダクションされた標的細胞における転写およびそれに続く成熟過程の結果であると理解される。
【0033】
核酸は通常はコーディングおよび非コーディング領域を含み、ブレオマイシン誘導性肺線維症モデルまたはAAV-TGFβ1誘導性肺線維症モデルにおいてアップレギュレートされた1つ以上のmiRNAの機能を阻害するコード化RNAは、ウイルスベクターによってトランスダクションされた標的細胞における転写、および潜在的に、しかし必ずとは限らない、それに続く成熟過程の結果であると理解される。
【0034】
本発明によるウイルスベクターは、肺細胞をトランスダクションする可能性を有するように選択される。肺細胞をトランスダクションするウイルスベクターの非限定的例はレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)、およびパラミクソウイルスベクターを含むが、それに限定されるものではない。これらのうち、AAVベクターは特に好ましく、とりわけAAV-2、AAV-5またはAAV-6.2血清型を有するものが好ましい。配列番号29、30または31を含む組み換えカプシドタンパク質を有するAAVベクターが特に好ましい(WO2015/018860参照)。1つの実施態様において、AAVベクターはAAV-6.2血清型であり、配列番号82の配列のカプシドタンパク質を含む。
【0035】
miRNAをコードしそれによってその機能を増加させる配列と、1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNAをコードする配列は、同じトランスジーンの中にあってもなくてもよい。
【0036】
1つの実施態様では、本発明はウイルスベクターに関するものであって、カプシドと、以下を含む1つ以上のトランスジーン発現カセットを含むパッケージ化された核酸を含む:
-2つ以上のmiRNAをコードするトランスジーンであって、2つ以上のmiRNAが、配列番号92のmiRNAと、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片を含むか、あるいは配列番号92のmiRNAと、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片を含むトランスジーン、
-および、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、34、35および36のmiRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNAをコードするトランスジーン。
【0037】
従って、miRNAをコードし、そのレベルを増加させるトランスジーンと、1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNAをコードするトランスジーンは異なる発現カセットに含まれる。
【0038】
1つの実施態様では、本発明はウイルスベクターに関するものであって、カプシドと、トランスジーンを含む1つ以上のトランスジーン発現カセットを含むパッケージ化された核酸を含み、該トランスジーンが
-2つ以上のmiRNAであって、配列番号92のmiRNAと、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片を含むか、あるいは配列番号92のmiRNAと、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片を含む、2つ以上のmiRNAをコードし、さらに
-配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、34、35および36のmiRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNAをコードする。
【0039】
従って、1つのトランスジーンは、その機能を増加させるmiRNAと、1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNAの両方をコードする。
【0040】
本発明の別の実施態様において、ウイルスベクターは、miRNAが配列番号15、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、92、99および100のmiRNA、または部分的な配列が保存されているmiRNAの場合にはそれぞれの配列の最も近いヒトホモログからなる群から選択される。この群では、保存されたmiRNAすなわち15、17、18、19、20、21、22、24、25、26、92、99、100またはそれらの最も近いヒトホモログが最も好ましい。それぞれの配列の最も近いヒトホモログを、図5Bに示す。
【0041】
本発明のさらなる実施態様において、核酸が偶数個のトランスジーン発現カセット、および、任意にプロモーター、トランスジーンおよびポリアデニル化シグナルを含む(またはからなる)トランスジーン発現カセットを有しており、プロモーターまたはポリアデニル化シグナルが互いに対向して位置する、ウイルスベクターが提供される。
【0042】
ウイルスベクターは、1つの実施態様において組換えAAVベクターであり、本発明の他の実施態様においてAAV-2血清型、AAV-5血清型またはAAV-6.2血清型のいずれかを有する。
【0043】
本発明の異なる実施態様では、ウイルスベクターが提供され、該ウイルスベクターでは、カプシドが配列番号29または30の配列を含む第1タンパク質(WO2015/018860参照)を含む。
i)本発明のさらなる実施態様では、ウイルスベクターが提供され、該ウイルスベクターでは、カプシドが配列番号82の配列を有する第2タンパク質と80%同一、より好ましくは90%、最も好ましくは95%である第1タンパク質を含み、第1タンパク質と第2との間のアラインメントに1つあるいはそれ以上のギャップが許容される。
ii)本発明の異なる実施態様では、ウイルスベクターが提供され、該ウイルスベクターでは、カプシドが配列番号82の第2タンパク質に対して80%同一、より好ましくは90%、最も好ましくは95%同一である第1タンパク質を含み、第1タンパク質と第2タンパク質の間のアラインメントのギャップがミスマッチとしてカウントされる。
iii)本発明の異なる実施態様では、ウイルスベクターが提供され、該ウイルスベクターでは、カプシドが配列番号82の第2タンパク質に対して80%同一、より好ましくは90%、最も好ましくは95%同一である第1タンパク質を含み、第1タンパク質と第2タンパク質の間のアラインメントにギャップがないことが許容される。
【0044】
実施態様(i)から(iii)の全てに関し、第1タンパク質および比較タンパク質間の同一性の決定については、2つのタンパク質間のアラインメントにおいて一致する対応部分を有しない如何なるアミノ酸もミスマッチとしてみなす(対応部分を有しないオーバーハングを含む)。同一性の決定については、最も高い同一性スコアを与えるアラインメントを使用する。
【0045】
パッケージ化された核酸は1本または2本鎖でもよい。特にAAVベクターの代替は、ベクターゲノムが2本鎖核酸としてパッケージ化されている自己相補的な設計を使用することである。発現開始はより迅速であるが、ベクターのパッケージング能力は約2.3kbに低下する。Nasoら、2017、文献参照。
【0046】
本発明のもう1つの態様は、肺疾患、好ましくはILDの治療における使用のための、1つの記載されたウイルスベクターである。本発明により治療され得る疾患は、好ましくはPF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP;chronic fibrosing hypersensitivity pneumonitis)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、およびサルコイドーシスおよび線維肉腫からなる群から選択される。
【0047】
組換えAAV治療薬の送達戦略は、例えば、Nasoら、2017でも参照されている。
【0048】
AAVベクターゲノムを含む2本鎖プラスミドベクターは発明のさらなる実施態様である。
【0049】
本発明のさらなる実施態様は、医薬品として使用するためのこのmiRNA阻害剤に関する。
【0050】
本発明は、また、肺疾患、好ましくはILDの予防および/または治療のためのmiRNA模倣物の使用を企図する。本発明のmiRNA模倣物で治療しうる肺疾患は、上記に提示され、ILD、PF-ILDおよびIPFのような線維増殖性疾患を含む。本発明のmiRNA模倣物は、典型的にはおよび好ましくは、長さが21、22または23の連続ヌクレオチドの連続したヌクレオチド配列からなる。miRNA模倣物の長さ(すなわち1本鎖模倣物の場合は「ヌクレオチドのオリゴマー」の長さ、または前記オリゴマーと前記オリゴマーに結合した他のオリゴヌクレオチドを含む2本鎖模倣物の場合「ヌクレオチドのオリゴマー」(すなわちセンス鎖)の長さ)は、一般的におよび好ましくは、それらが模倣する各miRNAの長さに一致する。miR-181a-5pまたはmiRNA-212-5pのような23ntを有するmiRNAのmiRNA模倣物の場合には、miRNA模倣物の長さ(すなわち1本鎖模倣物の場合はオリゴマー、または2本鎖模倣物の場合はセンス鎖)は、23nt(好ましい)または3’末端で1つのヌクレオチドが欠失している条件で22ntのどちらかである。真正のmRNA(例えば、配列番号99および100参照)と比較して3’末端での欠失は、miRNAのシード領域および13~16のヌクレオチド領域から離れているため、対応するmiRNA模倣物の特異性は許容される(Grimsonら、2007)。
【0051】
従って、本発明のさらなる実施態様は、ILD、PF-ILDおよびIPFのような線維増殖性疾患の予防および/または治療法に使用されるmiRNA模倣物の組合せであって、組合せが(i)配列番号92の配列を有するmiRNA模倣物と、(ii)配列番号15の配列を有するmiRNA模倣物および/または配列番号17の配列を有するmiRNA模倣物とを含む。miRNA模倣物の組合せは、配列番号18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、37、38および39からなる群から選択される配列、好ましくは配列番号18および19からなる群から選択される配列を有するmiRNAの1つあるいはそれ以上の模倣物をさらに含んでもよい。1つの実施態様では、miRNA模倣物がILD、PF-ILDおよびIPFのような線維増殖性疾患の予防および/または治療の方法における使用のために提供され、ここで、miRNAは配列番号92の配列を有し、該方法は配列番号15の配列を有するmiRNA模倣物の投与をさらに含む。別の実施態様では、miRNA模倣物は、ILD、PF-ILDおよびIPFのような線維増殖性疾患の予防および/または治療の方法における使用のために提供され、ここで、miRNAは配列番号92の配列を有し、該方法は配列番号17の配列を有するmiRNA模倣物の投与をさらに含む。予防および/または治療は、好ましくは配列番号18の配列を有するmiRNA模倣物または配列番号19の配列を有するmiRNA模倣物の投与をさらに含む。
【0052】
同様に、さらに実施態様では、ILD、PF-ILDまたはIPFのような線維増殖性疾患の予防および/または治療法における使用のためのmiRNA模倣物が提供され、ここで、miRNAは配列番号92を有する。該予防および/または治療は、配列番号15の配列を有するmiRNA模倣物または配列番号17の配列を有するmiRNA模倣物の投与をさらに含む。さらにより好ましくは、
-該予防および/または治療は、配列番号92の配列を有するmiRNAの模倣物、配列番号15の配列を有するmiRNAの模倣物、および配列番号18の配列を有するmiRNA模倣物の投与を含む、または
-該予防および/または治療は、配列番号92の配列を有するmiRNAの模倣物、配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物、および配列番号18の配列を有するmiRNAの模倣物の投与を含む、または
-該予防および/または治療は、配列番号92の配列を有するmiRNAの模倣物、配列番号15の配列を有するmiRNAの模倣物、および配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物の投与を含む。
【0053】
本発明のさらなる実施態様は、ILD、PF-ILDまたはIPFのような線維増殖性疾患治療のための、(i)配列番号92の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、(ii)配列番号15の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物または配列番号17の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物、ならびにこれらのmiRNA模倣物、および薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物である。
【0054】
本発明のさらなる実施態様は、配列番号92の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、配列番号15の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物である。本発明の他の実施態様は、配列番号92の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、配列番号17の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物である。好ましくは、組成物中のmiRNA模倣物は、脂質ナノ粒子(LNP)中に封入される。LNPはLNP平均粒子径が30および200nmの間であることが好ましい。医薬組成物はさらに25~65mol%のイオン化脂質を含んでもよい。
【0055】
上記実施態様のいずれかにおいて、配列番号92の配列を有するmiRNA模倣物は、好ましくは配列番号92の配列を有するオリゴマーである(1本鎖-1本鎖模倣物の場合)か、または該オリゴマーを含む(2本鎖模倣物の場合)。同様に、配列番号15の配列を有するmiRNA模倣物は、好ましくは、配列番号15の配列を有するオリゴマーまたは配列番号99の配列を有するオリゴマーであるか、または該オリゴマーを含む。配列番号17の配列を有するmiRNA模倣物は、好ましくは、配列番号17の配列を有するオリゴマーまたは配列番号100の配列を有するオリゴマーであるか、または該オリゴマーを含む。
【0056】
本発明はまた、ILD、PF-ILDまたはIPFのような線維増殖性疾患の治療に使用されるmiRNA m29a-3pのmiRNA模倣物を提供し、ここで、miRNA模倣物は配列番号92の群からなる選択された配列からなるヌクレオチドのオリゴマーである(やや好ましい)または該オリゴマーを含み(好ましい)、以下の条件を有する:
-オリゴマーは、それぞれのmiRNAの配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-オリゴマーはそれぞれのmiRNAの配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質にコンジュゲートされている、
ここで、前記予防および/または治療は、配列番号15の配列を有するmiRNA模倣物および/または配列番号17の配列を有するmiRNA模倣物の投与をさらに含む。
【0057】
1つの実施態様では、予防および/または治療は、さらに配列番号15の配列を有するmiRNA模倣物の投与を含む。好ましくは、配列番号15の配列を有するmiRNA模倣物が、配列番号15(好ましい)または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマー(やや好ましい)であるか、または該オリゴマーを含み、以下の条件を有する:
-オリゴマーは、それぞれのmiRNAの配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む、
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている。
【0058】
他の実施態様では、予防および/または治療は、さらに配列番号17の配列を有するmiRNA模倣物の投与を含む。好ましくは、配列番号17の配列を有するmiRNA模倣物は、配列番号17(好ましい)または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマー(やや好ましい)である(やや好ましい)か、または該オリゴマーを含み(好ましい)、以下の条件を有する:
-オリゴマーは、それぞれのmiRNAの配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている。
【0059】
miRNA模倣物が脂質ベースナノ粒子(LNP)に封入されて送達されない場合には、薬物送達を促進するために、前記条件に記載したオリゴマーが脂質とコンジュゲートしていることが望ましい。
【0060】
またさらに他の実施態様では、予防および/または治療は、配列番号19の配列を有するmiRNA模倣物の投与をさらに含む。好ましくは、配列番号19の配列を有するmiRNA模倣物は、配列番号19の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーである(やや好ましい)か、または該オリゴマーを含み(好ましい)、以下の条件を有する:
-オリゴマーは、それぞれのmiRNAの配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む、
-オリゴマーは、それぞれのmiRNAの配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む。
【0061】
さらに本発明の実施態様は、ILD、PF-ILDまたはIPFのような線維増殖性疾患の治療に使用される、miRNA 29a-3pのmiRNA模倣物(配列番号92)と、miRNA 212-5p(配列番号15)またはmiRNA 181a-5p(配列番号17)の模倣物との組合せであり、ここで、miRNA模倣物は、それぞれ、配列番号92、配列番号15または99、および配列番号17または100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであり、それぞれ以下の条件を有する:
-オリゴマーはそれぞれのmiRNAの配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む、
【0062】
本発明のさらなる実施態様は、ILD、PF-ILDまたはIPFのような線維増殖性疾患治療に使用される、miRNA 29a-3p(配列番号92)とmiRNA 212-5p(配列番号15または99)またはmiRNA 181a-5p(配列番号17または100)のとの組合せのmiRNA模倣物であり、ここで、miRNA模倣物は、配列番号92、配列番号15または99、および配列番号17または100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または該オリゴマーを含む。
【0063】
これらの実施態様はmiRNA模倣物が脂質ベースナノ粒子(LNP)に封入されて送達される場合が望ましい。LNP粒子が送達に使用される場合、投与量は、治療対象の1kg当たりのmiRNA模倣物の質量が0.01~5mg/kgり、好ましくは0.03~3mg/kg、より好ましくは0.1~0.4mg/kg、最も好ましくは0.3mg/kgであり得る。LNP粒子の投与は好ましくは全身、より好ましくは静脈内である。
【0064】
2本鎖miRNA模倣物の場合には、miRNA模倣物はmiRNA模倣物のセンス鎖に完全または部分的に相補的な1つあるいはそれ以上のオリゴヌクレオチドに結合したヌクレオチドオリゴマー(センス鎖)を含み、前記miRNA模倣物のセンス鎖は、これらの1つ以上のオリゴヌクレオチドと共に1本鎖領域を有するオーバーハング(複数可)を形成してもよい、または形成しなくてもよい。
【0065】
2本鎖miRNA模倣物が好ましい。
【0066】
本発明のさらなる実施態様は、上述に定義する医薬組成物に関し、ここで該組成物は吸入組成物である。
【0067】
本発明のさらなる実施態様は、上述に定義する医薬組成物に関し、ここで該組成物は全身投与、好ましくは静脈内投与のためのものである。
【0068】
本発明のさらなる実施態様は、ILD、PF-ILDまたはIPFのような線維増殖性疾患の治療または予防方法であって、それを必要とする対象に上記に定義する医薬組成物を投与することを含む方法である。
【0069】
例えば、miRNA阻害剤またはmiRNA模倣物の使用は、エアロゾル経路によって肺線維症を患う対象の病的呼吸上皮における線維化を阻害し、従って完全な機能性を回復するように病的組織の完全性を回復するのに有効でありうる。
【0070】
さらに本発明の実施態様を、以下の1~55に記載する。
【0071】
1.カプシドと、パッケージ化された核酸とを含むウイルスベクターであって、パッケージ化された核酸が1つ以上のmiRNAをコードし、前記1つ以上のmiRNAが配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片を含む、ウイルスベクター。
【0072】
2.カプシドと、パッケージ化された核酸とを含むウイルスベクターであって、前記パッケージ化された核酸が2つ以上のmiRNAをコードし、
(i)2つ以上のmiRNAが、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片と、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有すその断片とを含むか、または
(ii)2つ以上のmiRNAが、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片と、配列番号19のmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片を含む、
ウイルスベクター。
【0073】
3.前記パッケージ化された核酸が3つ以上のmiRNAをコードし、前記miRNAが、(i)配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片と、(ii)配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、(iii)配列番号19または配列番号101の配列を有するその断片を含む、実施態様1または2に記載のウイルスベクター。
【0074】
4.前記パッケージ化された核酸が、配列番号15の配列を有するmiRNAと、配列番号17の配列を有するmiRNAと、配列番号19の配列を有するmiRNAとをコードしている、実施態様3に記載のウイルスベクター。
【0075】
5. カプシドと、以下をコードするトランスジーンを含む1つ以上のトランスジーン発現カセットを含むパッケージ化された核酸とを含む、実施態様1~4のいずれかに記載のウイルスベクター。
-配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片と、配列番号19または配列番号101の配列を有するその断片および配列番号17または配列番号100の配列を有するその断片からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNA、および
-配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、34、35および36のmiRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNA。
【0076】
6.カプシドと、トランスジーンを含むトランスジーン発現カセットを2つ以上含むパッケージ化された核酸とを含むウイルスベクターであって、
-第1発現カセットが、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片と、配列番号19または配列番号101の配列を有するその断片および配列番号17または配列番号100の配列を有するその断片からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAと、をコードする第1トランスジーンを含む、および
-第2発現カセットが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、34、35および36のmiRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNAをコードする第2トランスジーンを含む、
実施態様1~5のいずれかに記載のウイルスベクター。
【0077】
7.前記RNA阻害がRNAiプロセシングまたはRNAi成熟を受けない、実施態様5~6の1つに記載のウイルスベクター。
【0078】
8.核酸が偶数個のトランスジーン発現カセットを有する、実施態様5~7の1つに記載のウイルスベクター。
【0079】
9.トランスジーン発現カセットが、プロモーター、トランスジーンおよびポリアデニル化シグナルを含み、プロモーターまたはポリアデニル化シグナルが互いに対向して位置する、実施態様5~8のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0080】
10.ベクターが組換えAAVベクターである、実施態様1~9のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0081】
11.ベクターがAAV-2血清型を有する組換えAAVベクターである、実施態様1~10のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0082】
12.カプシドが配列番号29または30の配列を有する第1タンパク質を含む、実施態様1~11のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0083】
13.カプシドが配列番号82の配列を有する第2タンパク質と80%同一である第1タンパク質を含むが、第1タンパク質と第2タンパク質の間のアラインメントに1つ以上のギャップが許容される、実施態様1~12のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0084】
14.カプシドが配列番号82の第2タンパク質と95%同一である第1タンパク質を含むが、第1タンパク質と第2タンパク質の間のアラインメントのギャップがミスマッチとしてみなされる、実施態様1~13のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0085】
15.ベクターがAAV5またはAAV6.2血清型を有する組換えAAVベクターであり、組換えAAV6.2ベクターのカプシドが、好ましくは配列番号82の配列を有するカプシドタンパク質を含む、実施態様1~14のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0086】
16.パッケージ化された核酸が2本鎖である、実施態様1~15のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0087】
17.パッケージ化された核酸が1本鎖である、実施態様1~15のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0088】
18.ILD、PF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、サルコイドーシスおよび線維肉腫からなる群から選択される疾患の予防または治療に使用される、実施態様1~17のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0089】
19.ILD、PF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、サルコイドーシスおよび線維肉腫からなる群から選択される疾患の治療法であって、前記方法が、それを必要とする患者に実施態様1~17のいずれか1つに記載のウイルスベクターの治療的有効量を投与することを含む、治療法。
【0090】
20.医薬品として使用される、実施態様1~17のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0091】
21.2つ以上のmiRNAをコードするベクターゲノムを含むAAVベクターであって、2つ以上のmiRNAが、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片を含む、AAVベクター。
【0092】
22.2つ以上のmiRNAをコードするベクターゲノムを含むAAVベクターであって、2つ以上のmiRNAが、配列番号15のmiRNAまたは配列番号99の配列を有するspの断片と、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片とを含む、AAVベクター。
【0093】
23.前記ベクターゲノムが、(i)配列番号15の配列を含むmiRNAまたは配列番号99の配列を有するその断片と、(ii)配列番号17の配列を含むmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、(iii)配列番号19の配列を含むmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片とをコードしている、実施態様21または22に記載のAAVベクター。
【0094】
24.前記ベクターゲノムが、(i)配列番号15の配列を有するmiRNAと、(ii)配列番号17の配列を有するmiRNAと、(iii)配列番号19の配列を有するmiRNAとをコードしている、実施態様23に記載のAAVベクター。
【0095】
25.前記ベクターゲノムが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、34、35および36のmiRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNAをさらにコードしている、実施態様21~24のいずれかに記載のAAVベクター。
【0096】
26.実施態様21~25のいずれかのAAVベクターを含む、2本鎖プラスミドベクター。
【0097】
27.線維増殖性疾患の予防および/または治療方法に使用されるmiRNA模倣物の組合せであって、前記組合せが、(i)配列番号15の配列を有するmiRNAの模倣物と、(ii)配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物および/または配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物を含む、miRNA模倣物の組合せ。
【0098】
28.線維増殖性疾患の予防および/または治療方法に使用されるmiRNA-212-5pのmiRNA模倣物であって、前記miRNA模倣物は、配列番号15または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、あるいは配列番号15または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-オリゴマーは、配列番号15の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-オリゴマーは配列番号15の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有し、
前記予防および/または治療が、さらに配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物および/または配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物の投与を含む、miRNA模倣物。
【0099】
29.前記予防および/または治療が配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物の投与をさらに含む、実施態様28に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0100】
30.配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物が、配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-オリゴマーは、配列番号17の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-オリゴマーは、配列番号17の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、
実施態様29に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0101】
31.前記予防および/または治療が、配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物の投与をさらに含む、実施態様28に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0102】
32.配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物が、配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-オリゴマーは、配列番号19の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-オリゴマーは任意に配列番号19の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを含む;
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、
実施態様31に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0103】
33.前記予防および/または治療が、配列番号18の配列を有するmiRNAの模倣物の投与をさらに含む、実施態様28~32のいずれか1つに記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0104】
34.配列番号18の配列を有するmiRNAの模倣物が、配列番号18の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号18の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-オリゴマーは、配列番号18の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-オリゴマーは配列番号18の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、
実施態様33に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0105】
35.線維増殖性疾患がIPFまたはPF-ILDである、実施態様28から34のいずれかに記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0106】
36.IPFまたはPF-ILDまたはILDのような線維増殖性疾患の治療薬の製造のための、(i)配列番号15の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、(ii)配列番号17の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物および/または配列番号19の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物の使用。
【0107】
37.配列番号15の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、配列番号17の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤とを含む、医薬組成物。
【0108】
38.配列番号15の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、配列番号19の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤とを含む、医薬組成物。
【0109】
39.配列番号15の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、配列番号17の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、配列番号19の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤とを含む、医薬組成物。
【0110】
40.前記組成物のmiRNA模倣物が、脂質ナノ粒子(LNP)に封入されている、実施態様37、38または39に記載の医薬組成物。
【0111】
41.前記組成物がイオン化脂質を25~65mol%含む、実施態様40に記載の医薬組成物。
【0112】
42.前記LNPの平均粒子径が30~200nmの間である、実施態様37から41のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0113】
43. (a)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号15又は配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号15又は配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-オリゴマー、は配列番号15の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-オリゴマーは、配列番号15の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている;
を有する、miRNA模倣物と、
(b)miRNA181a-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-オリゴマーは、配列番号17の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-オリゴマーは、配列番号17の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている;
を有する、miRNA模倣物と、
(c)薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤と、
を含む医薬組成物。
【0114】
44. (a)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号15又は配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号15又は配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-オリゴマーは、配列番号15の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-オリゴマーは、配列番号15の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物と、
(b)miRNA181b-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-オリゴマーは、配列番号19または101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-オリゴマーは、配列番号19または101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有するmiRNA模倣物と、
(c)薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤と、
を含む医薬組成物。
【0115】
45. (a)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号15又は配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号15又は配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-オリゴマーは、配列番号15の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-オリゴマーは、配列番号15の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;および
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物と、
(b)miRNA181a-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-オリゴマーは、配列番号17の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-オリゴマーは、配列番号17の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有するmiRNA模倣物と、
(c)miRNA181b-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
-オリゴマーは、配列番号19の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
-オリゴマーは、配列番号19の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
-オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有するmiRNA模倣物と、
(d)薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤と、
を含む医薬組成物。
【0116】
46.miRNA 212-5pのmiRNA模倣物が2本鎖miRNA模倣物である、実施態様37から44のいずれかに記載の医薬組成物。
【0117】
47.miRNA 181a-5pのmiRNA模倣物が2本鎖miRNA模倣物である、実施態様37、39、40、41、45、または47に記載の医薬組成物。
【0118】
48.miRNA 181b-5pのmiRNA模倣物が2本鎖miRNA模倣物である、実施態様37、39、40、41、45、46、または47に記載の医薬組成物。
【0119】
49.ILD、PF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、サルコイドーシスおよび線維肉腫からなる群から選択される疾患の治療法であって、前記方法は、それを必要とする患者に、実施態様37から49のいずれかに記載の医薬組成物の治療的有効量を投与することを含む、治療法。
【0120】
50.ILD、PF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、サルコイドーシスおよび線維肉腫からなる群から選択される疾患の治療薬の製造のための、実施態様37から49のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【0121】
51.カプシドと、パッケージ化された核酸とを含むウイルスベクターであって、前記パッケージ化された核酸が1つ以上のmiRNAをコードし、前記1つ以上のmiRNAが、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片を含む、ウイルスベクター。
【0122】
52.カプシドと、パッケージ化された核酸とを含み、前記パッケージ化された核酸が2つ以上のmiRNAをコードしており、
(i)2つ以上のmiRNAが、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、配列番号19のmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片とを含むか、または
(ii)2つ以上のmiRNAが、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、配列番号18のmiRNAを含む、
実施態様51に記載のウイルスベクター。
【0123】
53.カプシドと、パッケージ化された核酸とを含むウイルスベクターであって、前記パッケージ化された核酸が1つ以上のmiRNAをコードし、前記1つ以上のmiRNAが配列番号19のmiRNAまたは配列番号101の配列を有するそのmiRNAを含む、ウイルスベクター。
【0124】
54.カプシドと、パッケージ化された核酸とを含み、前記パッケージ化された核酸は2つ以上のmiRNAをコードし、前記2つ以上のmiRNAは、配列番号19のmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片と、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片とを含む、実施態様53に記載のウイルスベクター。
【0125】
55.線維増殖性疾患の予防および/または治療方法に使用されるmiRNA模倣物の組合せであって、前記組合せが、(i)配列番号15の配列を有するmiRNAの模倣物、および/または(ii)配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物および/または(iii)配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物を含む、miRNA模倣物の組合せ。
【0126】
以下、本発明のさらに特に好ましい実施態様を、実施態様A1~A57として記載する。
【0127】
A1.カプシドと、パッケージ化された核酸とを含むウイルスベクターであって、パッケージ化された核酸が1つ以上のmiRNAをコードし、1つ以上のmiRNAが配列番号99の配列を有するmiRNA断片を含む、ウイルスベクター。
【0128】
A2.カプシドと、パッケージ化された核酸とを含むウイルスベクターであって、前記パッケージ化された核酸が2つ以上のmiRNAをコードし、
(i)2つ以上のmiRNAが、配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片とを含むか、または
(ii)2つ以上のmiRNAが、配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、配列番号19のmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片とを含む、
ウイルスベクター。
【0129】
A3.パッケージ化された核酸が3つ以上のmiRNAをコードし、miRNAが、(i)配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、(ii)配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、(iii)配列番号19または配列番号101の配列を有するその断片を含む、実施態様A1またはA2の1つに記載のウイルスベクター。
【0130】
A4.パッケージ化された核酸が、配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、配列番号17の配列を有するmiRNAと、配列番号19の配列を有するmiRNAをコードしている、実施態様A3に記載のウイルスベクター。
【0131】
A5.カプシドと、以下をコードするトランスジーンを含むトランスジーン発現カセットを2つ以上含むパッケージ化された核酸とを含む、実施態様1~5のいずれかによるウイルスベクター。
● 配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、配列番号19または配列番号101の配列を有するその断片、および配列番号17または配列番号100の配列を有するその断片からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNA、及び
● 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、34、35および36のmiRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNA。
【0132】
A6.カプシドと、トランスジーンを含むトランスジーン発現カセットを2つ以上含むパッケージ化された核酸とを含み、
● 第1発現カセットが、配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、配列番号19または配列番号101の配列を有するその断片、および配列番号17または配列番号100の配列を有するその断片からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAとをコードする第1トランスジーンを含み、および
● 第2発現カセットが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、34、35および36のmiRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNAをコードする第2トランスジーンを含む、
実施態様1~5のいずれかによるウイルスベクター。
【0133】
A7.RNA阻害がRNAiプロセシングまたはRNAi成熟を受けない、実施態様A5からA6のいずれかの1つに記載のウイルスベクター。
【0134】
A8.核酸が偶数個のトランスジーン発現カセットを有する、実施態様A5~A7のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0135】
A9.トランスジーン発現カセットが、プロモーター、トランスジーンおよびポリアデニル化シグナルを含み、プロモーターまたはポリアデニル化シグナルが互いに対向して位置する、実施態様A5~A8のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0136】
A10.ベクターが組換えAAVベクターである、実施態様A1~A9のいずれか1つによるウイルスベクター。
【0137】
A11.ベクターがAAV-2血清型を有する組換えAAVベクターである、実施態様A1~A10のいずれか1つによるウイルスベクター。
【0138】
A12.カプシドが配列番号29または30の配列を有する第1タンパク質を含む、実施態様A1~A11のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0139】
A13.カプシドが配列番号82の配列を有する第2タンパク質と80%同一である第1タンパク質を含むが、第1タンパク質と第2タンパク質の間のアラインメントに1つ以上のギャップが許容される、実施態様A1~A12のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0140】
A14.カプシドが配列番号82の配列を有する第2タンパク質と95%同一である第1タンパク質を含み、第1タンパク質と第2タンパク質の間のアラインメントのギャップがミスマッチとしてみなされる、実施態様A1~A13のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0141】
A15.ベクターがAAV5またはAAV6.2血清型を有する組換えAAVベクターであり、組換えAAV6.2ベクターのカプシドが、好ましくは配列番号82の配列を有するカプシドタンパク質を含む、実施態様A1~A14のいずれか1つによるウイルスベクター。
【0142】
A16.パッケージ化された核酸が2本鎖である、実施態様A1~A15のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0143】
A17.パッケージ化された核酸が1本鎖である、実施態様A1~A15のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0144】
A18.ILD、PF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、サルコイドーシスおよび線維肉腫からなる群から選択される疾患の予防または治療に使用される、実施態様A1~A17のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0145】
A19.ILD、PF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、サルコイドーシス、および線維肉腫からなる群から選択される疾患の治療方法であって、前記方法は、それを必要とする患者に実施態様A1~A17のいずれか1つに記載のウイルスベクターの治療的有効量を投与することを含む、方法。
【0146】
A20.医薬品として使用される、実施態様A1~A17のいずれか1つに記載のウイルスベクター。
【0147】
A21.2つ以上のmiRNAをコードするベクターゲノムを含むAAVベクターであって、2つ以上のmiRNAが配列番号99の配列を有するmiRNA断片を含む、AAVベクター。
【0148】
A22.2つ以上のmiRNAをコードするベクターゲノムを含むAAVベクターであって、2つ以上のmiRNAが、配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片とを含む、AAVベクター。
【0149】
A23.ベクターゲノムが、(i)配列番号99の配列を含むmiRNAと、(ii)配列番号17の配列または配列番号100の配列を有するその断片と、(iii)配列番号19の配列を含むmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片とをコードしている、実施態様A21またはA22に記載のAAVベクター。
【0150】
A24.前記ベクターゲノムが、(i)配列番号99の配列を有するmiRNA断片と、(ii)配列番号17の配列を有するmiRNAと、(iii)配列番号19の配列を有するmiRNAをコードしている、実施態様A23に記載のAAVベクター。
【0151】
A25.ベクターゲノムが、さらに配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、34、35および36のmiRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNAをコードしている、実施態様A21~A24に記載のAAVベクター。
【0152】
A26.実施態様A21~A25のいずれかのAAVベクターを含む、2本鎖プラスミドベクター。
【0153】
A27.線維増殖性疾患の予防および/または治療方法に使用されるmiRNA模倣物の組合せであって、前記組合せが、(i)配列番号99の配列を有するmiRNA断片の模倣物と、(ii)配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物および/または配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物とを含む、miRNA模倣物の組合せ。
【0154】
A28.線維増殖性疾患の予防および/または治療方法に使用されるmiRNA-212-5pのmiRNA模倣物であって、miRNA模倣物は、配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
● オリゴマーは、配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
● オリゴマーは配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
● オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有し、
前記予防および/または治療が、さらに配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物および/または配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物の投与を含む、miRNA-212-5pのmiRNA模倣物。
【0155】
A29.予防および/または治療が、配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物の投与を含む、実施態様A28に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0156】
A30.線維増殖性疾患の予防および/または治療方法に使用されるmiRNA-212-5pのmiRNA模倣物であって、miRNA模倣物は、配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
● オリゴマーは、配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
● オリゴマーは配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
● オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有し、
前記予防および/または治療が、さらに配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物の投与を含む、miRNA-212-5pのmiRNA模倣物。
【0157】
A31.配列番号17の配列を有するmiRNAの模倣物が、配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
● オリゴマーは、配列番号17または100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
● オリゴマーは、配列番号17または100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
● オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、実施態様A29またはA30に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0158】
A32.前記予防および/または治療が、さらに配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物の投与を含む、実施態様A28に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0159】
A33.配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物が、配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
● オリゴマーは、配列番号19または101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
● オリゴマーは、配列番号19または101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
● オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、実施態様A32に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0160】
A34.前記予防および/または治療が、配列番号18の配列を有するmiRNAの模倣物の投与をさらに含む、実施態様A28~A33のいずれか1つに記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0161】
A35.配列番号18の配列を有するmiRNAの模倣物が、配列番号18の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号18の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
● オリゴマーは、配列番号18の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
● オリゴマーは、配列番号18の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;、
● オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、実施態様A34に記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0162】
A36.線維増殖性疾患がIPFまたはPF-ILDである、実施態様A28からA35のいずれかに記載の方法に使用されるmiRNA模倣物。
【0163】
A37.IPFまたはPF-ILDまたはILDのような線維増殖性疾患の治療薬の製造のための、(i)配列番号99の配列を有するmiRNA断片のmiRNA模倣物と、(ii)配列番号17の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物および/または配列番号19の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物との使用。
【0164】
A38.配列番号99の配列を有するmiRNA断片のmiRNA模倣物と、配列番号17の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤とを含む、医薬組成物。
【0165】
A39.配列番号99の配列を有するmiRNA断片のmiRNA模倣物と、配列番号19の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤とを含む、医薬組成物。
【0166】
A40.配列番号99の配列を有するmiRNA断片のmiRNA模倣物と、配列番号17の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、配列番号19の配列を有するmiRNAのmiRNA模倣物と、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤とを含む、医薬組成物。
【0167】
A41.前記組成物のmiRNA模倣物が脂質ナノ粒子(LNP)に封入されている、実施態様A38、A39またはA40に記載の医薬組成物。
【0168】
A42.前記組成物がイオン化脂質を25~65mol%含む、実施態様A41に記載の医薬組成物。
【0169】
A43.前記LNPの平均粒子径が30~200nmである、実施態様A38からA42のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0170】
A44. (a)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
●前記オリゴマーは配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
●前記オリゴマーは配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
●前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物と、
(b)miRNA181a-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
●前記オリゴマーは配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
●前記オリゴマーは配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
●前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物と、
(c)薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤と、
を含む医薬組成物。
【0171】
A45. (a)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
●前記オリゴマーは配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
●前記オリゴマーは配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
●前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物と、
(b)miRNA181b-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマー含み、以下の条件:
●前記オリゴマーは配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
●前記オリゴマーは配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
●前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物と、
(b)miRNA181a-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
●前記オリゴマーは配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
●前記オリゴマーは配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
●前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物と、
(c)薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤と、
を含む医薬組成物。
【0172】
A46. (a)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
●前記オリゴマーは配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
●前記オリゴマーは配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
●前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物と、
(b)miRNA181a-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
●前記オリゴマーは配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
●前記オリゴマーは配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
●前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物と、
(C)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
●前記オリゴマーは配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
●前記オリゴマーは配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
●前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物と、
(c)薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤と、
を含む医薬組成物。
【0173】
A47.miRNA 212-5pのmiRNA模倣物が2本鎖miRNA模倣物である、実施態様A38からA46のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0174】
A48.miRNA 181a-5pのmiRNA模倣物が2本鎖miRNA模倣物である、実施態様A38、A40、A41、A42、A44、またはA46のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0175】
A49.miRNA 181b-5pのmiRNA模倣物が2本鎖miRNA模倣物である、実施態様A39、A40、A41、A42、A45、またはA46のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0176】
A50.ILD、PF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、サルコイドーシス、および線維肉腫からなる群から選択される疾患の治療方法であって、前記方法は、それを必要とする患者に実施態様A38からA49またはA57のいずれかに記載の医薬組成物の治療的有効量を投与することを含む、方法。
【0177】
A51.ILD、PF-ILD、IPF、結合組織病(CTD)関連ILD、関節リウマチILD、慢性線維化を伴う過敏性肺炎(HP)、特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(IIP)、環境性/職業性肺疾患、肺高血圧症(PH)、線維化珪肺症、全身性強皮症ILD、サルコイドーシス、および線維肉腫からなる群から選択される疾患の治療薬の製造のための、実施態様A38からA50のいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【0178】
A52.カプシドと、パッケージ化された核酸とを含み、パッケージ化された核酸が1つ以上のmiRNAをコードし、前記1つ以上のmiRNAが、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片を含むウイルスベクター。
【0179】
A53.カプシドと、パッケージ化された核酸とを含み、パッケージ化された核酸が2つ以上のmiRNAをコードしており、
(i)2つ以上のmiRNAが、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、配列番号19のmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片とを含むか、または
(ii)2つ以上のmiRNAが、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片と、配列番号18のmiRNAとを含む、
実施態様A52に記載のウイルスベクター。
【0180】
A54.カプシドと、パッケージ化された核酸とを含み、パッケージ化された核酸が1つ以上のmiRNAをコードしており、前記1つ以上のmiRNAが配列番号19のmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片を含む、ウイルスベクター。
【0181】
A55.カプシドと、パッケージ化された核酸を含み、パッケージ化された核酸は2つ以上のmiRNAをコードしており、2つ以上のmiRNAは、配列番号19のmiRNAまたは配列番号101の配列を有するその断片と、配列番号17のmiRNAまたは配列番号100の配列を有するその断片とを含む、実施態様A54に記載のウイルスベクター。
【0182】
A56.線維増殖性疾患の予防および/または治療方法に使用されるmiRNA模倣物の組合せであって、該組合せは、(i)配列番号99の配列を有するmiRNA断片の模倣物、および/または(ii)配列番号17の配列を有すmiRNAの模倣物および/または(iii)配列番号19の配列を有するmiRNAの模倣物を含む、組合せ。
【0183】
A57. (a)miRNA212-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号99の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
●前記オリゴマーは配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
●前記オリゴマーは配列番号99の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;または
●前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物、
または
(b)miRNA181a-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号17または配列番号100の配列からなるヌクレオチドのオリゴマー含み、以下の条件:
●前記オリゴマーは配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
●前記オリゴマーは配列番号17または配列番号100の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
●前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物、
または
(c)miRNA181b-5pのmiRNA模倣物であって、該miRNA模倣物が、配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーであるか、または配列番号19または配列番号101の配列からなるヌクレオチドのオリゴマーを含み、以下の条件:
●前記オリゴマーは配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
●前記オリゴマーは配列番号19または配列番号101の配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログを任意に含む;
●前記オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている、
を有する、miRNA模倣物、
および
(d)薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤
を含む、医薬組成物。
【0184】
前記ウイルスベクターは、好ましくは1.0x1010~1.0x1014vg/kg(体重1kg当たりのウイルスゲノム)の範囲のウイルス用量に相当する量として投与されるのが、1.0x1011~1.0x1012vg/kgの範囲がより好ましく、5.0x1011~5.0x1012vg/kgの範囲はさらに好ましく、および1.0x1012~5.0x1011の範囲がよりさらに好ましい。約2.5x1012vg/kgのウイルス用量が最も好ましい。投与されるウイルスベクター、例えば本発明によるAAVベクターの量は、例えば、1つ以上のトランスジーンの発現の強さにより調節することができる。
【0185】
本発明のさらなる態様は、ニンテダニブまたはピルフェニドンとの併用療法のための、本発明によるウイルスベクター、miRNA阻害剤およびmiRNA模倣物の使用である。
【0186】
使用される用語および定義
【0187】
発現カセットは、トランスジーンと、通常はプロモーターと、ポリアデニル化シグナルとを含む。プロモーターはトランスジーンに動作可能に連結されている。適するプロモーターは、肺胞上皮細胞のような肺細胞で選択的にまたは恒常的に活性化され得る。適当なプロモーターの非限定的な具体例には、サイトメガロウイルス最初期遺伝子プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復プロモーター、ヒト伸長因子laプロモーターおよびヒトユビキチンcプロモーターのような恒常的活性化プロモーターが含まれる。肺特異的プロモーターの非限定的な具体例には、サーファクタントタンパク質C遺伝子プロモーター、サーファクタントタンパク質Bプロモーター、およびクララ細胞10kD(「CC10」)プロモーターが含まれる。
【0188】
トランスジーンは、本発明の実施態様によっては、(i)1つ以上のmiRNA、例えば配列番号92の配列を有するmiRNA、またはブレオマイシン誘導性肺線維症モデルまたはAAV-TGFβ1誘導性肺線維症モデルでダウンレギュレートされる1つ以上のmiRNA、または(ii)ブレオマイシン誘導性肺線維症モデルまたはAAV-TGFβ1誘導性肺線維症モデルでアップレギュレートされるmiRNAの1つ以上の機能を阻害するRNA、または(i)および(ii)の選択肢をコードする。トランスジーンは、トランスダクションレポートのための(eGFPなど、図11参照)または治療目的のためのタンパク質をコードするオープン・リーディング・フレームを含んでもよい。
【0189】
1つ以上のmiRNAの機能を阻害するRNAは、相補的結合によりその標的miRNAの機能を低下または消失させる。図8Bおよび図8Cに記載されているように、2つの異なるベクターデザイン戦略が適用されうる。
1)線維化促進性miRNAに対して特異的に結合し、それによってそれらの機能を阻害するように設計されたアンチセンス様分子の発現(図8B)。アンチ-miRと呼ばれる各分子は、ショートヘアピンRNA(shRNA)または人工miRNAとして発現ベクターに組み込むことができる。miRNA補充アプローチと同様に、いくつかのmiRNA標的配列を単一ベクターに組み込んで、それによって様々な標的miRNAの阻害を可能にする。
2)線維化促進性miRNAを選択的に隔離し、それによってそれらの機能を阻害することを目的とした、miRNA結合部位、いわゆるスポンジのいくつかのコピーを含むmRNAの発現(図8C)。この選択肢については、RNA阻害はRNAiプロセシングまたはRNAi成熟を受けない。
【0190】
本発明によるmiRNA阻害剤という用語は、7から少なくとも22ヌクレオチド長の連続した配列からなるオリゴマーを指す。
【0191】
ここで使用されるヌクレオチドという用語は、糖部分(通常リボースまたはデオキシリボース)、塩基部分、およびホスフェートまたはホスホロチオエートのヌクレオチド間結合基のような共有結合基(結合基)を含むグリコシドを意味する。天然ヌクレオチドと、ここではヌクレオチドアナログとして呼ばれる修飾された糖および/または塩基部分を含む非天然ヌクレオチドの両方を含む。非天然ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、または2’修飾ヌクレオチド、または2’置換ヌクレオチドなどの2’修飾ヌクレオチドのような糖部分を有するヌクレオチドが含まれる。
【0192】
非天然ヌクレオチドにつながる化学修飾を有するヌクレオチドは次の修飾を含む
(i)非天然糖部分を有するヌクレオチド
例には、二環式ヌクレオチド、または2’修飾ヌクレオチド、または2’置換ヌクレオチドのような2’修飾ヌクレオチドがある。
【0193】
(ii)ホスホロチオエート(PS)およびホスホジチオアート(PS2)修飾を有するヌクレオチド
miRNAのヌクレアーゼ耐性の向上ならびに血清安定性の改善および血中濃度を増加のために、miRNA阻害剤または模倣物の1つ以上のヌクレオチドにおいて、ホスホロチオエート(PS)として定義される、硫黄をヌクレオチドホスフェート基の酸素と交換できる。いくつかの配列については、これはホスホロジチオアートPS2として定義される、既存PSへの硫黄基の第2の導入によって、組み合わせたり相補することができる。ヌクレオチド19+20または3+12(5’末端から数えて)でのようなセンス鎖の異なる位置でのPS2修飾は、さらに血清安定性を増加させ、従ってmiRNA阻害剤/miRNA模倣物の薬物動態学的特性を向上させうる(ACS Chem.Biol.2012、7、1214-1220)。
【0194】
(iii)ボラノホスフェート修飾を有するヌクレオチド
いくつかのmiRNAオリゴヌクレオチドでは、リボースリン酸基の1つの酸素のBH3基への交換は有益でありうる。miRNAオリゴヌクレオチドのシード領域が他の化学修飾によって修飾されない場合、1つ以上のヌクレオチドにおけるボラノホスフェート修飾は血清安定性を向上させうる。ボラノホスフェート修飾はmiRNAオリゴヌクレオチドの血清安定性も増加させ得る(Nucleic Acids Research、Vol.32 No.20、5991-6000)。
【0195】
(iv)2’O-メチル修飾を有するヌクレオチド
リン酸修飾以外またはリン酸修飾に加えて、リボース環の炭素C2に結合している酸素のメチル化は、オリゴヌクレオチド修飾のさらなる選択肢になりうる。センス鎖の2’O-メチルリボース修飾は熱安定性および酵素消化耐性を向上させうる。
【0196】
(v)2’OHでのフッ素修飾を有するヌクレオチド
オリゴヌクレオチドの血清安定性の増強およびmiRNAオリゴヌクレオチドのその標的に対する結合親和性を向上させるために、miRNAオリゴヌクレオチドを2’OHフッ素修飾することも有益でありうる。2’OHフッ素修飾は、リボース環の炭素C2の水酸基をフッ素原子に交換する。フッ素修飾はセンスおよびアンチセンスの両鎖に適用できる。
【0197】
ヌクレオチドアナログ」は、糖および/または塩基部分での修飾による天然オリゴヌクレオチドの変異体である。好ましくは、この説明に制限されないが、アナログはオリゴマーがその標的に結合するように働く方法に機能的効果を有する;例えば、標的に対する結合親和性の増強、および/またはヌクレアーゼに対する耐性の増強、および/または細胞への輸送の簡易性の強化による。ヌクレオシドアナログの具体的な例は、FreierおよびAltman(Nucl.Acid Res,25:4429-4443,1997)およびUhlmann(Curr.Opinion in Drug Development,3:293-213,2000)によって記載されている。
【0198】
ロック核酸(LNA(登録商標))を含む、オリゴマーにおける親和性増強アナログの取込みは、特異的に結合するオリゴマーのサイズの低下を可能にし、非特異的または異常な結合が生じる前のオリゴマーのサイズの上限も低下できる。「LNA(登録商標)」という用語は、「ロック核酸」として知られる二環式ヌクレオシドアナログを指す(Rajwanshiら、Angew Chem.Int.Ed.Engl.、39(9)1656-1659,2000)。これは、LNA(登録商標)モノマー、または「LNA(登録商標)オリゴヌクレオチド」の文脈において使用される場合は1つ以上のそのような二環性アナログを含むオリゴヌクレオチドを指すことがある。
【0199】
好ましくは、本発明のmiRNA阻害剤は、特定のアップレギュレートされたmiRNA(配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、34、35および36のmiRNAからなる群から選択されるmiRNA)に対して相補的な配列を持つアンチセンスオリゴヌクレオチドを指す。これらのオリゴマーは、最大70%アナログ(LNA(登録商標))で合計7から少なくとも22の連続ヌクレオチド長の連続ヌクレオチド配列を含むか、またはそれから構成され得る。最も短いオリゴマー(7ヌクレオチド)は、特定のアップレギュレートされたmiRNAの成熟体(mature to Certain up regulated miRNA)の5’末端に位置する最初の7ヌクレオチド(miRNA標的特異性に関わる5’末端から2~8の位置の7ヌクレオチド配列(「シード」配列と呼ばれる)を含む)と完全な配列相補性を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドに相当するであろう(Lewisら、Cell.2005年1月14日;120(1):15-20)。
【0200】
特定のアップレギュレートされたmiRNA標的部位ブロッカーは、特定のmRNAに位置する特定のアップレギュレートされたmiRNA結合部位に対して相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを指す。これらのオリゴマーは、US20090137504の教示に従って設計されてもよい。これらのオリゴマーは、合計8~23の連続ヌクレオチド長の連続したヌクレオチド配列を含むか、またはそれから構成され得る。これらの配列は、特定のアップレギュレートされたmiRNA「シード」配列の逆相補体に対応する配列から5’または3’方向に20ヌクレオチドにわたりうる。
【0201】
発明のmiRNA模倣物という用語は、特定のmiRNAの活性を特異的に増加できる1本鎖または2本鎖のヌクレオチドのオリゴマーであって、特定のmiRNAという語は、配列番号15、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、37、38、39および92からなる群から選択される配列、好ましくは92、15、17、19、18および20、最も好ましくは15、17および19、またさらに好ましくは配列番号15を有するmiRNAを意味する。miRNA模倣物という用語は、薬学的に許容される塩を含む。miRNAのmiRNA模倣物は、細胞の前記miRNAの機能的同等物の濃度を高め、それによって前記miRNAの全体的な活性を増加させる。
【0202】
本発明のこれらのmiRNA模倣物は、典型的および好ましくは、21、22または23の連続ヌクレオチド長の連続したヌクレオチド配列からなる。miRNA模倣物(すなわち1本鎖模倣物の場合はオリゴヌクレオチド、または2本鎖模倣物の場合はセンス鎖)の長さは、典型的にはそれらが模倣する各miRNAの長さに一致する(好ましい)。
【0203】
miR-181a-5pまたはmiRNA-212-5pのような23ntを有するmiRNAのmiRNA模倣物の場合、miRNA模倣物の長さ(すなわち1本鎖模倣物の場合はオリゴマーまたは2本鎖模倣物の場合はセンス鎖)は、23nt(好ましい)、または3’末端で1つのヌクレオチドが欠失している条件で22ntのどちらかである。真正のmRNA(たとえば配列番号100、99参照)に比較して3’末端での欠失は、miRNAのシード領域および13~16のヌクレオチド領域から離れているため、対応するmiRNA模倣物の特異性は許容される(Grimsonら、2007)。
【0204】
miRNA 29a-3p、212-5p、miRNA 181a-5p、miRNA 181b-5pおよびmiRNA 10a-5pのmiRNA模倣物は、それぞれ、ILD、PF-ILDまたはIPFのような線維増殖性疾患の治療での使用を目的としており、ここで、miRNA模倣物は、配列番号92、配列番号15または99、配列番号17または100、配列番号18、および配列番号19の配列からなるヌクレオチドオリゴマーであるか、または該ヌクレオチドオリゴマーを含み、それぞれ条件(a)、(b)および(c)、(a)および(b)、(a)および(c)、または(b)および(c)を有する。
(a)オリゴマーは、それぞれのmiRNAの配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示す非天然型ヌクレオチドとなる化学修飾、好ましくは上記の(i)から(v)に示すような化学修飾を有するヌクレオチドを任意に含む;
(b)オリゴマーは、それぞれのmiRNAの配列で決定される対応位置(AUおよびGC)で塩基対形成挙動を示すヌクレオチドアナログ、好ましくはFreierおよびAltman(Nucl.Acid Res.、25:4429-4443、1997)およびUhlmann(Curr.Opinion in Drug Development、3:293-213、2000)によって記載されたヌクレオチドアナログまたは上記に記載された二環式アナログを任意に含む;
(c)オリゴマーは、薬物送達を促進するために任意に脂質とコンジュゲートされている。
【0205】
脂質コンジュゲートオリゴマーは当該分野でよく知られており、Osborneら、NUCLEIC ACID THERAPEUTICS Volume 28,Number 3,2018参照。
【0206】
配列番号xの配列からなるオリゴマーは、オリゴマーが配列番号xの配列を含み、配列番号xに示されるのと同数の共有結合したヌクレオチド構成単位(任意に化学修飾を持つ)またはヌクレオチドアナログを有することを意味する。
【0207】
miRNA模倣物は1本鎖模倣物または2本鎖模倣物でもよい。1本鎖模倣物は、それに結合する他のオリゴヌクレオチド分子を持たず、完全または部分的な塩基対形成を有するオリゴヌクレオチドである。2本鎖miRNA模倣物は、miRNA模倣物と完全または部分的に相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドと結合しているものと定義され、1本鎖領域を持つオリゴヌクレオチドオーバーハングを形成していてもまたはしていなくてもよい。項目1.11に言及される3つのRNA鎖デザインは、2本鎖miRNA模倣物の例である。さらに例はVinnikovら、(2014)、p.10661、最終段落、第1行に開示されている。
【0208】
miRNA模倣物は、項目1.11に記載の通り1つ以上の実験で決定された同量の天然miRNAの少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは95%以上の生物学的効果を有することが好ましい。
【0209】
miRNA模倣物またはmiRNA阻害剤は、脂質ナノ粒子(LNP)に封入され、天然または非天然のヌクレオチドとして送達することもできる。カーゴ分子としてのRNAについては、最も効果的なLNPはpKa値が一般的にpH7未満のイオン化脂質含み、最大4つの構成成分、すなわちイオン化脂質、構造脂質、コレステロール、およびポリエチレングリコール(PEG)脂質から構成される。
【0210】
イオン化脂質には、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレオイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタン酸(DLinMC3-DMA)(Naseri N,Valizadeh H,Zakeri-Milani P.Solid lipid nanoparticles and nanostructured lipid carriers:structure,preparation,andapplication.Adv Pharm Bull.2015;5(3):305-313)、ATX-脂質(Ramaswamy S,Tonnu N,Tachikawa K,ら、Systemic delivery of factor IX messenger RNA for protein replacement therapy.Proc Natl Acad Sci USA.2017;114(10):E1941-50.)、またはYSK12-C4-脂質(Sato Y,Hashiba K,Sasaki K,ら、Understanding structure-activity relationships of pH-sensitive cationic lipids facilitates the rational identification of promising lipid nanoparticles for delivering siRNAs in vivo.J Control Release.2019;295:140-152.)が含まれるが、これらに限定されない。
【0211】
構造脂質には、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(POPC)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)などが含まれるが、これらに限定されない。コレステロールには、コレステロール、および3-(N-(N0,N0-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール、ステロール、ステロイドなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0212】
PEG-脂質には、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000(DSPE-mPEG2000)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000(DMPE-mPEG2000)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000(DPPE-mPEG2000)、および1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000(DOPE-mPEG2000)、ならびにそれらのPEG長さが変化した、たとえばPEG500、PEG1000、PEG5000などのPEG-脂質が含まれるが、これらに限定されない。
【0213】
LNP製剤には、単一LNP成分の異なる割合、異なる粒子サイズ、および正帯電ポリマーアミン(N=窒素)基と負帯電核酸ホスフェート(P)基の異なる比率(N/P比)を含むことができる。好ましい製剤は、25~65mol%のイオン化脂質、好ましくは40mol%、5~30mol%の構造脂質、好ましくは15mol%、15~50mol%のコレステロール、好ましくは40mol%および1~5mol%のPEG-脂質、好ましくは2mol%で構成または含まれる。LNP平均粒子径は30~200nm、N/P比は2~4の間で変更可能であるが、最も好ましいナノ粒子径は100nm、N/P比は3である。
【0214】
最も好ましいLNP製剤は次の組成を有する:DLinMC3-DMAまたはATX脂質、またはYSK12-C4-脂質からなるイオン化脂質40mol%、DSPC15mol%、コレステロール40mol%、粒子径が100nmでN/P比が3のDSPE-mPEG2000 2mol%。
【0215】
miRNA模倣物のLNP送達に最も好ましいmiRNA様式は、アンチセンス鎖に相補的なパッセンジャーセンス鎖を含む。パッセンジャー鎖は、アンチセンス鎖をエンドヌクレアーゼから保護する。Vinnikovらにより記述されているように、両鎖はLNA修飾を持つ2つのヌクレオチドからなるLNA修飾オーバーハングを3’側に有する(Vinnikov et al,2014)。LNAはロック核酸を意味し、リボフラノース環の2-酸素と4-炭素の間にメチレン架橋を含む2つの糖部分、3’側における2つのヌクレオチドのLNA修飾オーバーハングによって定義される。また、センス鎖の5’側の最初のヌクレオチドも、LNA修飾されており、RISC複合体における鎖識別を容易にしている。LNA部分は、ヌクレアーゼに対する並外れた耐性および非常に低い細胞毒性を持ちながらモノマーの柔軟性を制限し、それを硬い二環式N型コンフォメーションの中にロックする。さらに、これらの最小限の修飾は、インビトロおよびインビボの両適用おいて、安定性と機能性の間の妥協点を提供する(Elme’n et al.,2005;Vinikov et alの引用のようにMook et al.,2007)。LNA修飾は、相補的配列とのハイブリダイゼーションにおける融解温度(Tm値)を高くする。各LNA修飾ヌクレオチドは、形成されたヌクレオチドペアのTmを最大8℃まで上昇させることができる(DOI:10.1007/3-540-27262-3_21)。センスおよびアンチセンス鎖の長さは、通常20~22、20~23、20~24または20~25ヌクレオチドからなる。
【0216】
別の選択肢は、項目1.11(細胞分析におけるmiRNAの機能的特性解析)で記載した3つのRNA鎖デザインで、マイクロRNA模倣物をデザインすることである。
【0217】
LNP粒子を送達に使用する場合、投与量は、治療対象の1kg当たりのmiRNA模倣物量が、0.01~5mg/kg、好ましくは0.03~3mg/kg、より好ましくは0.1~0.4mg/kg、最も好ましくは0.3mg/kgであり得る。LNP粒子の投与は好ましくは全身、より好ましくは静脈内である。
【実施例
【0218】
1.方法および材料
1.1 AAV産生、精製および定量
HEK-293h細胞を、10%ウシ胎児血清を加えたDMEM+GlutaMAX培地で培養した。トランスフェクションの3日前に、細胞を15cmの組織培養プレートに播種し、トランスフェクションの日に70~80%のコンフルエントに達するようにした。トランスフェクションのために、培養面積1cm2当たり合計0.5μgの全DNAを、培養液の1/10の容量の300mM CaCl2およびAAV産生に必要な全プラスミドと等モル比で混合した。プラスミドコンストラクトは次の通りであった:AAV6.2 cap遺伝子をコードする1つのプラスミド(Strobel B et al.,2015)、コドン使用頻度を最適化したマウスTgfb1遺伝子およびhGhポリAシグナルを発現させるCMVプロモーターを含むAAV2 ITR隣接発現カセットを内部に持つプラスミドであってTgfb1配列は活性タンパク質の断片を増加させるC223SおよびC225S変異を含む(Brunner AMら、1989);pHelperプラスミド(AAV Helper-free system、Agilent)。GFPおよびスタッファーコントロールベクターの作製のために、Tgfb1プラスミドを、AAV2 ITR隣接CMV-eGFP-SV40pAカセットを内部に持つeGFPプラスミド、およびE6-APユビキチンタンパク質リガーゼUBE3Aの3’-UTRに由来するAAV2 ITR隣接非コーディング領域の後にSV40ポリAシグナルを含むAAV-スタッファーコントロールプラスミドにそれぞれ交換した。
【0219】
次に、プラスミドCaCl2ミックスを、等容量の2xHBS緩衝液(50mM HEPES、280mM NaCl、1.5mM Na2HPO4)に滴下し、室温で2分間インキュベートして、細胞に添加した。5~6時間のインキュベーション後、培養液を新しい培地と交換した。トランスフェクションされた細胞は37℃で合計72時間増殖させた。細胞は最終濃度6.25mMのEDTAを加えて剥離し、室温で1000xg、10分間の遠心分離でペレット化した。細胞はその後、「溶解バッファー」(50mM Tris、150mM NaCl、2mM MgCl2、pH8.5)に再懸濁した。AAVベクターは基本的に以前記載したように精製した(Strobel B et al.2015):イオジキサノール勾配に基づく精製では、最大40プレートから採取した細胞を溶解バッファー8mLに溶解した。その後、液体窒素および37℃の水浴を使った3回の凍結/溶解サイクルにより細胞を溶解した。最初にトランスフェクションした各プレートに対して、100単位ベンゾナーゼヌクレアーゼ(Merck)を混合液に加え、37℃で1時間インキュベートした。細胞の残骸を2500xg、15分間で沈殿させた後、上清を39mL Beckman Coulter Quick Sealチューブに移し、PBS-MK(1xPBS、1mM MgCl2、2.5mM KCl)で希釈した5%ヨウジキサノール溶液8mL、25%ヨウジキサノール溶液6mL、40%ヨウジキサノール溶液8mL、58%ヨウジキサノール溶液5mLを細胞溶解液の下に層化することによって、イオジキサノール(OptiPrep、Sigma Aldrich)段階勾配を調製した。NaClは前もって最終濃度1Mで15%相に加えておいた。
勾配内の相の境界を区別しやすくするために、15%および25 %イオジキサノール溶液に0.5%フェノールレッドを1mL当たりに1.5μL加え、58%相には0.5μL加えた。70Tiローターで18℃、63000rpm、2時間遠心分離の後、チューブの底に穴を開けた。最初の5ミリリットル(58 %相に対応)を捨て、AAVベクター粒子が含まれる次の3.5mLを回収した。AAV画分に全量15mLになるようPBSを加え、MWCOが100kDaのMerck Millipore Amicon Ultra-15遠心式フィルタユニットを使用して限外濾過/濃縮を行った。約1mLに濃縮した後、保持液を15mLまで満たし、再び濃縮した。この過程を合計3回繰り返した。グリセロールを最終濃度10%で調製物に加えた。Merck Millipore Ultrafree-CL filter tubesを使用した濾過滅菌の後、AAV産物を分注し、-80℃で保存した。
【0220】
1.2 マウスモデルおよび機能的読出し
レポーター遺伝子研究のために、Charles River Laboratoriesから購入した9~12週齢の雌C57Bl/6またはBalb/cマウスに2.9x1010ベクターゲノム(vg)のAAV5-CMV-fLucまたは3x1011vgのAAV6.2-CMV-GFPのいずれかをそれぞれ浅麻酔(3~4%イソフルラン)下で気管内投与した。あるいは、C57Bl/6マウスに3x1011vgのAAV2-L1-CMV-GFPを静脈内(i.v.)投与した。AAV投与後2~3週間に(図の説明参照)、レポーターの読出しを行った。ルシフェラーゼ・イメージングのために、画像取得前に基質としてルシフェリン30mg/kgをマウスの腹腔内に投与した。GFPレポーターの場合、組織学的な新鮮凍結切片を準備しGFP蛍光を蛍光顕微鏡で直接分析するか、またはGFP IHC分析のためにホルマリン固定パラフィン包埋切片を準備した(さらに以下の詳細な記載参照)。
【0221】
線維症モデルについては、Charles River Laboratoriesから購入した9~12週齢の雄C57Bl/6マウスに、2.5x1011(vg)のAAV-TGFβ1またはAAV-スタッファー、ブレオマイシン1mg/kgまたは生理食塩水50μLのどちらかを浅麻酔の下で気管内投与した。AAV/ブレオマイシン投与後3、7、14、21および28日に線維症を評価した。簡単に説明すると、肺機能を評価するために、ペントバルビタール/キシラジン塩酸塩の腹腔内(i.p.)投与でマウスを麻酔し、気管内にカニューレ処置をして、パンクロニウムブロマイドの静脈内(i.v.)投与で処置した。その後、肺機能測定(すなわち肺コンプライアンス、努力性肺活量(FVC))をScireq flexiVent FX systemを使って行った。その後、マウスをペントバルビタールの過剰投与で安楽死させ、肺を解剖し、重さを測定した後に、700μL PBSで2回洗浄し、BAL免疫細胞およびタンパク質の層別解析用のBAL液を得た(データ未発表)。各マウスの左肺は組織病理学者による組織学的評価のために処置され、一方、右肺は以下に述べるように総RNA抽出に使用した。
【0222】
miR-212-5p AAV薬物動態研究については、Janvier Labsの10~12週齢の雄C57BL/6JRjを利用した。イソフルランの短時間暴露での浅麻酔の下、マウスにスタッファー陰性コントロールAAV(1x1011vg)またはmiR-212-5p-AAVの3つの増加投与量(9x109vg、10x1010vgおよび1x1011vg)を気管内(i.t.)注入した。マウスはAAV投与後7、14、28日後に安楽死させた。肺は液体窒素で瞬間凍結し、総RNA単離のために凍結肺粉末に処理された(QiagenのmiRNAeasyキットを利用)。
【0223】
1.3 組織学
組織学的肺サンプルの準備のために、左肺葉を4%パラホルムアルデヒド(PFA)で満たした分液漏斗に固定し、水深20cmの水圧で20分間膨張させた。満たされた肺はその後、気管結紮により塞ぎ、少なくとも24時間4%PFAに浸した。それに続いて、PFA固定した肺はパラフィンに包埋した。ミクロトームを使用して、3μmの肺切片を作製し、乾燥させ、キシレンを用いて脱パラフィンし、エタノール低下系列(100~70%)で再水和した。マッソントリクローム染色は、確立されたプロトコルに従って、Gemini ES Automated Slide Stainerを用いて行った。GFP-IHCについては、酵素的抗原回収を行い、抗体は示した比率でBond primary antibody diluent(Leica Biosystems)に希釈した。スライドは1:1000希釈のAbcamウサギ抗GFPポリクローナル抗体ab290および適当なアイソタイプコントロール抗体でそれぞれ染色した。抗原回収のみが行われたスライドは追加の陰性コントロールとして使用した。最後に、切片はMerck Millipore Aquatex mediumでマウントした。
【0224】
1.4 RNA調製
全肺RNAの調製のために、右肺を解剖後直ちに液体窒素で瞬間凍結した。凍結肺は、Peqlab Precellys 24デュアルホモジナイザーおよび7 mL-セラミック・ビーズ・チューブを使用して、予冷Qiagen RLTバッファー+1%β-メルカプトエタノール2mL中でホモジナイズした。ホモジネート150μLを、その後、550μLのQIAzol Lysis Reagent(Qiagen)と混合した。140μLのクロロホルムを加えた後、混合液を15秒間激しく振とうし、4℃、12,000xgで5分間遠心した。350μLの上層のRNA含有水相を、その後、さらにQiagen miRNeasy 96 Kitを使用してメーカーの説明に従い精製した。精製後、RNA濃度はSynergy HTマルチモードマイクロプレートリーダーおよびTake3モジュール(BioTek Instruments)を使用して測定した。RNAの品質はAgilent 2100 Bioanalyzerを使って評価した。
【0225】
1.5 RNAシーケンス
cDNAライブラリは、Illumina TruSeq RNA Sample Preparation Kitを使用して調製した。簡単に説明すると、200ngの総RNAをオリゴdT結合磁性ビーズを使用したポリA濃縮に供した。ポリAを含むmRNAを約150~160bpの断片に断片化した。ランダムプライマーでの逆転写の後、第2のcDNA鎖をDNAポリメラーゼIで合成した。末端修復プロセスとアデニン1塩基付加の後、各cDNAにホスホ-チミジン-結合インデックスアダプタを結合して、シーケンスフローセルへのサンプルの結合を容易にし、さらにマルチプレックスシーケンシング後のサンプル同定を可能にした。
精製およびcDNAのPCRエンリッチメントの後、ライブラリを2nMに希釈し、Illumina TruSeq SR Cluster Kit v3-cBot-HSおよびcBot instrumentを使用して9.6pMでフローセルにクラスター化した。52bpシングルリード7塩基インデックスリードのシーケンスは、Illumina TruSeq SBS Kit v3-HSを使用して、Illumina HiSeq 2000で実施した。サンプル当たり約2千万ロードをシーケンスした。
【0226】
miRNAについては、cDNAライブラリの調製にIllumina TruSeq Small RNA Library Preparation Kitを使用した:DicerによるmiRNAプロセスの結果として、miRNAは、遊離の5’-リン酸基および3’-ヒドロキシル基を含み、これらは、第1および第2の鎖cDNA合成の前に特異的アダプタを連結するために使用した。PCRにより、その後cDNAは増幅され、インデックスを付けた。Agencourt AMPure XP磁性ビーズ精製(Beckman Coulter)を使用して、低分子RNAを濃縮した。サンプルは最終的に9.6pMでクラスター化され、mRNAシーケンスサンプルにスパイクされながらシーケンスされた。
【0227】
1.6 計算プロセスおよびデータ分析(mRNA-SeqおよびmiRNA-Seqデータプロセス)
mRNA-Seqリードは、STAR aligner v.2.5.2a(Dobin et al.,2013)を使用して、マウス参照ゲノムGRCm38.p6およびEnsembl mouse gene annotation version 86(http://oct2016.archive.ensembl.org)にマップした。生の配列リードの質はFastQC v0.11.2使って評価し、アラインメント質メトリックスはRNASeQC v1.18(De Luca D.S.et al.,2012)を使用して確認した。その後、bamUtil v1.0.11を使用して、RNA-Seqサンプル中の重複リードをマークし、続けて重複率をdupRadar Bioconductor package v1.4(Sayols-Puig,S.et al.,2016)を使用して評価した。リードカウントベクトルはfeature counts package(Liao Y.et al.,2014)を使用して生成した。カウント行列への集計後、データはTrimmed mean of M values(TMM)を使用して正規化し、log(counts per million)(CPM)にするためvoom変換した(Ritchie M.E.,2015)。PCAおよび階層クラスタリングのような記述分析を行って、外れ値の可能性を特定した。それぞれの時点における処理および各コントロール間の発現差は、p adj≦0.05およびabs(log2FC)≧0.5の有意な閾値でlimmaを使用して行った。合計124中2サンプルがQC基準に合格しなかったため除外された。
【0228】
miRNA-Seqリードは、Kraken package v.12-274(Davis M.P.A.et al.,2013)を使ってトリミングし、続けてSTAR aligner v.2.5.2aを使用してマウス参照ゲノムGRCm38.p6およびmiRbase v.21 mouse miRNA(http://mirbase.org)にマップした。生の配列リードの質は、FastQC v0.11.2(http://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc/)を使用して評価し、トリミングサイズおよび生物型分布はインハウススクリプトを使用して評価した。カウント行列への集計後、データはTrimmed mean of M values(TMM)を使用して正規化し、log(counts per million)(CPM)にするためvoom変換した。PCAおよび階層クラスタリングのような記述分析を行って、外れ値の可能性を特定した。それぞれの時点における処理および各コントロール間の発現差は、p adj≦0.05およびabs(log2FC)≧0.5の有意な閾値でlimmaを使用して行った。
【0229】
1.7 統合データ分析(機能的パラメータと発現の相関)
肺機能および肺重量の測定値と、両モデルおよび全時点の全サンプルにわたる各miRNAおよびmRNAのvoom変換log(CPM)との間のスピアマンのrho。
【0230】
1.8 推定miRNA-mRNA標的ペアの決定
miRNAのmRNA標的を決定するために、段階的アプローチを実施した。まず、低発現のmiRNAおよびmRNAを発現マトリックスから取り除いた。続いて、WGCNA v.1.60のcorAndPvalue関数(Langfelder&Horvath,2008)を使用して、両モデルおよび全時点の全サンプルにおいて、各miRNA対各mRNAのvoom変換log(CPM)間でスピアマンのrhoを計算した。推定miRNA-mRNAペアに基づく相関セットは、相関≦-0.6である全ての組合せとして定義される。推定miRNA-mRNAペアの配列ベースの予測を追加するために、バイオコンダクター パッケージmiRNAtap v.1.10.0/miRNAtap.db v.0.99.10(Pajak&Simpson,2016)で利用可能で最も引用される5つのmiRNA予測アルゴリズム(DIANA、Miranda、PicTar、TargetScan、miRDB)のうち少なくとも2つで予測された全組合せを配列ベースのペアとした。最終的なmiRNA-mRNAペアのセットは、反相関ベースの相互作用ペアと配列ベースの相互作用ペアの交差部分であり、予測数を顕著に減らし、信頼性の高いサブセットとした。
【0231】
1.9 マウスーヒトのmiRNA配列の保存性
miRBase 21から全てのマウスおよびヒトmiRNAについて、シード領域(2から7位)を抽出した。マウスおよびヒトmiRNAの全組合せについては、シード領域と成熟間のグローバルアラインメントをBioconductor Biostrings package(v2.46.0)のペアワイズ・アラインメント関数を使用して計算した。マッチ・スコア1、ミスマッチ・スコア0としたRNA置換マトリックスを使用して、Needleman-Wunschアルゴリズムを適用した。miRNA候補に2つのカテゴリを割り当て、同じ名前を持つmiRNAマウスーヒト・ペアのシード領域でアラインメント・スコアが6のmiRNAは「保存」、同じ名前を持つmiRNAマウスーヒト・ペアのシード領域でアラインメント・スコアが6未満のmiRNAは「非保存」とした。また、各成熟配列のアラインメントのアラインメント・スコアが20を超えるmiRNAはカテゴリ「成熟高い類似度(mature high similarity)」に割り当てた。
【0232】
1.10 標的遺伝子セットの遺伝子セットエンリッチメントに基づくmiRNAの特性解析
miRNAの機能解析は、MetabaseR package v.4.2.3および遺伝子セット分類「pathway maps」、「pathway map folders」、「process networks」、「metabolic networks」、「toxicity networks」、「disease genes」、「toxic pathologies」、「GO processes」、「GO molecular functions」、「GO localizations」から予測されたmRNA標的にエンリッチメント機能を使用して行った。エンリッチメント機能は、クエリー遺伝子セットとメタベースからの参照セットの重複部分について超幾何学的試験を行う。miRNA標的セットの特徴づけに関するデータ検索は、2018年3月12日にメタベース上で行われた。
【0233】
1.11 細胞分析におけるmiRNAの機能解析
miRNAは、細胞の炎症促進性サイトカインIL-6の産生および線維化促進性過程の線維芽細胞増殖、線維芽細胞から筋線維芽細胞への移行(FMT)、コラーゲン発現、および上皮から間葉への移行(EMT)に対する影響により特徴づけた。図または図の説明で異なる記載がない限り、A549、NHBEC(ヒト正常気管支上皮細胞)またはNHLF(ヒト正常肺線維芽細胞)細胞には、miRNA単独の場合は2nM、またはmiRNAの組合せの場合は2+2nMの濃度でmiRNA模倣物を一過性にトランスフェクションした。
【0234】
図に示した実験で使用した全てのmiRNA模倣物は、Qiagenから3本鎖miRCURY LNA miRNA Mimicフォーマットで購入した。miRCURY LNA miRNA Mimicの設計には、従来のmiRNAミミックを特徴づける2本のRNA鎖ではなく、3本のRNA鎖が含まれている。miRNA(ガイド)鎖は、miRBaseのアノテーションに対して正確に対応する配列を有する、修飾されていないRNA鎖である。しかし、パッセンジャー鎖は2本のLNA強化RNA鎖に分けられている(https://www.qiagen.com/de/products/discovery-and-translational-research/functional-and-cell-analysis/mirna-functional-analysis/mircury-lna-mirna-mimics/mircury-lna-mirna-mimics/#orderinginformation)。正しく設計されれば、これらの3つのRNA鎖模倣物は従来の2本鎖RNA模倣物と同じくらい強力である。大きな利点は、パッセンジャー鎖のセグメント化された性質により、miRNA鎖のみがRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)にロードされ、2本の相補的パッセンジャー鎖からのmiRNA活性を生じないことである。miRCURY LNA miRNAミミックで観察される表現型変化は、従ってミミックによってシミュレートされたmiRNAに起因すると考えて差し支えない(ビオチン化ミミックでのmiRNA標的同定の図参照)。
【0235】
独特の3本のRNA鎖デザインは、高親和性LNAヌクレオチドを2つのパッセンジャー鎖に組み込むことにより可能になる。2本のパッセンジャー鎖の配列、長さ、およびLNAスパイクパターンは、精巧な経験由来の設計アルゴリズムを使用して最適化される。Bramsen,J.B.raet al.(2007) Improved silencing properties using small internally segmented interfering RNAs. Nucleic Acids Research 35:5886-5897.PMID:17726057。Griffiths-Jones,S.(2004)The miRNA Registry.Nucleic Acids Research Database Issue 32:D109-111.3.miRBase:www.mirbase.org.Kahn,A.A.,et al.(2009)Transfection of small RNAs globally perturbs gene regulation by endogenous miRNAs.Nature Biotechnology 27(6):549-555.doi:10.1038/nbt.1543.
【0236】
図22、23および24では、miR-29a-3p、miR-181a-5p、およびmiR-212-5pのmiRNA模倣物、ならびに対応するコントロールを使用した:
- hsa-miR-29a-3p:MIMAT0000086: 5'UAGCACCAUCUGAAAUCGGUUA
- hsa-miR-181a-5p:MIMAT0000256: 5'AACAUUCAACGCUGUCGGUGAGU
- hsa-miR-212-5p:MIMAT0022695: 5'ACCUUGGCUCUAGACUGCUUACU
- 陰性コントロール4:GAUGGCAUUCGAUCAGUUCUA
【0237】
他の図に使用された他の全てのmiRNA模倣物も同様にデザインした。従って、miR-181b-5pには配列番号19の配列が使用され、miR-10a-5pには配列番号18による配列が使用された。
【0238】
後者の条件では、4nM miRNAコントロールを使用した。24時間後、細胞にTGFβ1を5ng/mLの濃度で加え、細胞を24時間(IL-6、増殖分析およびコラーゲンmRNA発現)または72時間(コラーゲンタンパク質発現、FMTおよびEMT分析)インキュベートした。遺伝子発現の測定は、Qiagen RNeasy Plus 96キットを使用して細胞から総RNAを抽出し、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Thermo Fisher Scientific)を使用してcDNAに逆転写した。IL-6遺伝子発現は、Taqman qPCRアッセイ(Hs00174131_m1)で検出した。IL-6タンパク質は、MSD V-PLEX Proinflammatory Panel 1 Human kitを使用して細胞上清で定量した。細胞増殖を評価するために、細胞をTGFβ1の存在下で24時間増殖させ、WST-1 proliferation assay kit(Sigma/Roche)を使用して分析した。FMTは、上記のようにNHLF細胞を増殖させ、その後、固定およびコラーゲン1a1の蛍光免疫染色を行うことで評価した。画像は、IN Cell Analyzer 2000 high-content cellular imaging systemを使用して取得し、コラーゲンを定量し、細胞数(DAPI染色細胞核により同定)で正規化した。EMT評価は、NHBEC細胞およびE-カドヘリン免疫染色を使用して、同じ原理で行った。
【0239】
免疫ブロットは、ノベックス・ゲルを使用し、ThermoFisherのバッファー、BioRadの電気泳動装置により標準的な方法に従って行った。全ての一次抗体はCell Signaling Technologyから購入した。
【0240】
細胞分析はヒト患者材料由来の肺上皮細胞または初代肺線維芽細胞のいずれかで行った。従って、例えば遺伝的特徴、環境、疾患/手術の原因、細胞単離など、それぞれの患者ドナーの不均一性により、由来細胞もまた一定の不均一性が内在する。そのため、分析間でわずかなばらつきは起こりうることであり、これが、一定の標準偏差および同じ分析フォーマット間での異なる分析ウインドウを説明する。それでも、初代細胞を使用したのは、それが直接患者材料であり、従ってよりヒト疾患に関連があるからである。
【0241】
2.結果
マウスにおけるAAV-TGFβ1およびブレオマイシン投与は肺線維化病理を誘導する。AAV-TGFβ1、ブレオマイシン、または適当なコントロール(NaCl、AAV-スタッファー)の投与後、図1に示すように縦断的な線維症進展を4週間に渡って測定した。マッソントリクローム染色した21日目肺組織切片の組織学的分析から明らかなように、肺胞中隔の肥厚、細胞外マトリックス沈着の増加、および免疫細胞の存在により特徴づけられる肺線維症表現型がAAV-TGFβ1およびブレオマイシン処理動物で明らかであったが、NaClおよびAAV-スタッファーコントトールマウスにはなかった(図2)。疾患動物での肺重量の大きな増加は、異常ECM沈着および組織リモデリングをはっきりと確証した。さらに、機能的な結果として、TGFβ1過剰発現およびブレオマイシン処理の後に肺機能は著しく障害し、それによって線維化ILD患者の臨床観察を反映していた。特に、機能的読出しでのブレオマイシン誘導変化はAAV-TGFβ1モデルの変化の1週間前に生じたが、非常に類似した表現型が21日目から明らかであった。
【0242】
慢性疾患出現の転写特性解析。肺線維症の2つのモデルにおける疾患進展および進行の根底にある分子経路および遺伝子発現の全体的変化を分析するために、それぞれの動物の肺ホモジネートからRNAを調製し、次世代シーケンス(NGS)分析に供した。差次的に発現されたmRNAおよびmiRNAの数を図3に示す。パスウェイ解析(図3C)では、ブロマイシンモデルで早い時点で損傷および急性炎症関連プロセスのエンリッチメントが予想されが、AAVモデルにおいて炎症は初期には無く、線維症進展段階でのみ生じた(14日目以降)。これに対して、リモデリング/ECM関連プロセスのエンリッチメントは両方の疾患モデルで似たような様式で約14日目以降に生じた。
【0243】
臨床的に関連する疾患表現型と関係するmiRNAの同定。疾患発症と直接関連しそうなmiRNA候補を同定するために、複数のフィルタ基準を用いた段階的な選択戦略を設定した(図4)。中心となる-線維症関連性-は、その縦断的発現プロファイルが観察された肺機能の低下または肺重量の増加それぞれと強く相関または反相関のいずれかが認められたmiRNAのみを選択することにより組み込まれた。さらに、miRNA候補は一つのモデルの少なくとも一時点で差次的発現が必要であった。次に、miRNAは、シード配列および完全配列類似性に基づいて、種の保存性(ヒトに保存対マウスにだけ存在)に従って分類された。得られたmiRNA候補リストは最終的に手作業でキュレーションを行い、2つの疾患モデルで異なる発現を持つ候補および/または発現プロファイルに変動がある候補、ならびにアップレギュレートされるがヒトで標的にならない非保存miRNAを除いた。文献テキストマインイングの結果から、肺線維症のコンテクストで過去に特許が取得されたmiRNAをさらに除外した。最終的なヒットリストを図5に示す。
【0244】
miRNA標的予測(図6)。miRNAの機能的役割を特徴づける最初のアプローチとして、Bioconductor package miRNAtapを介して、DIANA、MiRanda、PicTar、TargetScan、およびmiRDBデータベースを検索し、推定mRNA標的をコンピュータ的に予測した(詳細は材料と方法の項を参照)。5つのデータベースのうち少なくとも2つで予測された標的をさらに検討した。その後、各miRNA標的遺伝子セットは、特定疾患関連プロセスのエンリッチメントに関して分析し、図7に特定のmiRNAによって標的化された遺伝子の推定的機能を例示している。
【0245】
mir-EバックボーンにおけるmiRNAの機能性(図12)。mir-EバックボーンのmiRNA配列の機能性を実証するために、3’UTRにmiRNAの標的配列を有するGFP発現コンストラクトを使用した。HEK-293細胞に、1つのmiRNAをコードしたプラスミドとGFP発現コンストラクトを組み合わせて一過性にトランスフェクションした。トランスフェクションから72時間後にGFP蛍光を測定した。陰性コントロール、すなわちGFPの3’UTRに標的配列を持たないmiRNAの蛍光シグナルを100%に設定し、他の全てのコンストラクトの蛍光シグナルの倍数変化を陰性コントロールと関連付けた。陽性コントロールは、最適なmir-Eコンストラクトであり、予想通り最も顕著なGFPノックダウンをもたらした。他の全てのコンストラクトも明らかなGFPノックダウンをもたらし、適切に発現しているだけでなく、正確にプロセッシングされていることを示している。mir-Eバックボーンにおけるガイド鎖の最適な長さは22ヌクレオチド(nt))であり、これが、23ntのmiR212-5pは22ntだけのmiR212-5pほど有効ではない理由を説明し得る。従って、22ntのmiR212-5pは本発明の一つの好ましい実施態様である。
【0246】
ヒト初代肺線維芽細胞におけるmiRNA発現(図13)。ヒトのコンテクストでmiRNA候補の発現を分析するために、初代ヒト肺線維芽細胞で低分子RNAのシーケンシングを行った。図13に示されるように、候補リストの全miRNAに多様なレベルではあるが強い発現が観察され、それはマウス肺線維症モデルにおける知見をヒトに種変換するという概念を支持している。
【0247】
細胞分析におけるmiRNAの機能解析(図14-21)。miRNA候補の抗線維化機能を実証するために、完全に成熟したmiRNA配列を含む合成miRNA模倣物を作製し、線維化リモデリングの重要なメカニズムを反映する細胞分析において一過性のトランスフェクション実験を行った。最初の実験セットでは、5つの選択したmiRNA(mir-10a-5p、mir-181a-5p、mir-181b-5p、mir-212-3p、mir-212-5p)の効果を、A549細胞および初代気管支気道上皮細胞において線維化促進TGFβ刺激の有無で分析した。図14(A)に示したように、5つのmiRNA模倣物のうちの4つの一過性のトランスフェクションは、よく知られている炎症遺伝子マーカーであるIL6のTGFβ誘導mRNA発現を顕著に減少させた。唯一の例外はmir-212-3pであり、この設定において有意な抗炎症効果は見られなかった。面白いことに、同じ結果が無刺激のA549細胞でも得られた。さらにタンパク質レベルでのこれらの知見を明確に示すために、細胞培養上清中のIL6発現をELISAで測定した。これらの実験では、mir-10a-5p、mir-181a-5p、mir-181b-5p、およびこれらmiRNA3つの組合せを調べた。図14(B)に示すように、各miRNAならびに3つの組合せの全てで、無刺激およびTGFβ刺激A549細胞においてIL6発現の有意な減少を示し、それによってこれらmiRNAの抗炎症効果が確認された。TGFβは、その炎症促進機能の他に、肺線維症における線維化リモデリングの特徴である上皮から間葉への移行(EMT)の誘導因子として中心的役割を果たしている。TGFβ誘導性EMTの間、上皮から線維芽細胞様(間葉)細胞表現型への転換のため、気道上皮マーカー遺伝子であるE-カドヘリンの発現は減少する。TGFβ誘導性EMTに対する選択されたmiRNA候補の潜在的な保護的役割を評価するために、E-カドヘリン発現の定量のために、ヒト初代気管上皮細胞を使用した細胞分析とハイコンテント細胞イメージング分析を組み合わせた細胞分析を適用した。図15に示すように、コントロール群と比較してmiRNA処理グループではE-カドヘリン発現レベルが有意に高いことから実証されるように、この設定で試験した全てのmiRNAはTGFβ介在EMT誘導に対して顕著な阻害効果を示した。
【0248】
miR-10a+miR-181a-5p+miR-181b-5pの他にmiRNA組合せも評価したかったため、以前のEMT分析を繰り返し、図15Bに示す。単独のmiR-181a-5p、miR-181b-5pおよびmiR-212-5pは、肺上皮細胞のTGFβ処理後のE-カドヘリンタンパク質発現を再び回復させることができた。miR-181a-5p+miR-212-5p+miR10a-5pの組合せ、およびmiR-181a-5p+miR-212-5pの組合せも、EMT分析でE-カドヘリン発現の有意な改善を示した。一貫して、最も優れた効果はmiR-181a-5p+miR-181b-5p+miR10a-5pの3つの組合せで観察され、miR-181a-5p、miR-181b-5pまたはmiR-10a-5p単独と同様の効果を達成するためのmiRNA投与量の減少を可能にする(図15B)。図15Aおよび図15Bの間の分析ウインドウのばらつきは、わずかな分析間のばらつきと、異なるドナーからのヒト初代肺上皮細胞の異なる挙動との組合せにより説明できる。それでも、miRNA効果の方向およびその有意性は変わらない。
【0249】
気道上皮細胞に加えて、線維芽細胞は、線維化過程に対して関連性の高い細胞型と考えられている。コラーゲンおよび他の細胞外マトリックス構成成分の過剰産生の主要源として作用することにより、線維芽細胞は、肺機能障害および肺の構造的完全性の最終的な消失に関わる肺硬化に直接寄与する。線維芽細胞活性化中のmiRNA候補の機能をさらに調べるために、ヒト初代肺線維芽細胞の無刺激およびTGFβ刺激(線維化促進)条件の下で一過性トランスフェクション実験を行った。機能的指標として、IL6発現、コラーゲン発現、および線維芽細胞増殖を、miRNAの有無で評価した。図16に示すように、qRT-PCRで測定したところ、分析した全てのmiRNAはTGFβ存在下及び非存在下でIL6発現の有意な減少を示した。さらに、図17に示すように、mir-212-3p、mir-181a-5p、およびmir-181b-5pは、基礎条件およびTGFβ誘導条件の両方で線維芽細胞増殖に対する阻害効果を示した。図18に示すように、mir-10a-5p、mir-181a-5pおよびmir-181b-5pの3つの組合せのみが、コントロール群と比較して、TGFβ誘導FMTに対して有意で用量依存的な効果を示した。一方、個々にトランスフェクションした場合、試験したmiRNAはどれも有意な効果を示さなかった。それでも、miR-212-5pは、この線維芽細胞ドナーを用いたこの分析で(図18)、コラーゲンの傾向的な減少を示した。観察されたmiR212-5pによるコラーゲン沈着の傾向的な減少が有意な減少をもたらすのかどうか、また初代細胞を扱うことにより分析変動性が生じるからなのかを明らかにするために、7つの異なる線維芽細胞ドナーとより広いmiRNA用量範囲でFMT分析を繰り返した(図19)。
【0250】
図19は、FMT分析におけるTGFβ刺激時のmiRNA181a-5pおよびmiR-212-5p単独のコラーゲン1沈着に対する効果を示す。miR-181a-5pは傾向的に高濃度でコラーゲン1沈着を低下させた。miR-212-5pは、を各miRNAコントロール模倣物と比較して、0.25nMから、正常およびIPF-肺線維芽細胞のコラーゲン1沈着著しく減少させた(図19)。コラーゲン1沈着に加えて、miR-181a-5pおよびmiR-212-5pは、ヒト肺線維芽細胞においてコラーゲン1以外の新たなコラーゲン発現に変化をもたらした(図20および21)。TGFβで刺激すると、miR-181a-5pおよびmiR-212-5pは細胞内コラーゲン1a1およびコラーゲン5a1を減少させた(図20A/B)。miRNA陰性コントロールと比較して、miR-181a-5pとmiR-212-5pの組合せは、コラーゲン1a1タンパク質発現のさらなる有意な減少を示した(図20A)。Col1a1およびCol5a1の減少に従い、Col3a1mRNA発現も、miR-212-5p、およびmiR-181a-5pとmiR-212-5pの組合せによって有意に減少した(図20C)。ヒト肺線維芽細胞におけるmiR-181a-5pおよびmiR-212-5pの観察された抗線維化効果がTGFβシグナリングの調節を通して(だけ)ではないことを最終的に実証するために、miRNA模倣物を、細胞線維化ニッチを模倣した上皮-線維芽細胞の共培養においても試験した(図21)。上皮細胞からの線維化促進メディエーターが共培養したヒト肺線維芽細胞を活性化する当該共培養系において、miR-212-5pは、上皮細胞のTGFβでの前刺激とは関係なく、ヒト肺線維芽細胞でCol1a1発現を有意に減少させた(図21)。
【0251】
図22は、FMT分析におけるTGFβ刺激時のコラーゲン1沈着に対する、単独のmiRNA-29a-3p、miRNA-181a-5p、およびmiR-212-5p、ならびにその組合せの効果を示す。miR-29a-3pはコラーゲン沈着を50%まで有意に減少させ、miR-212-5pはコラーゲン沈着を78%まで有意に減少させた。miR-181a-5pは、miR-29aとの組合せで改善しうるコラーゲンの傾向的な減少を示し、より高い濃度では50%減少にもつながった。miR-29a-3pとmiR-212-5pの組み合わせは、コラーゲンを80%まで有意に減少させた。これは、miRNA-29a-3pまたはmiR-212-5pの単独miRNAの用量と比較して、組合せのそれぞれ特定のmiRNAのmiRNA用量の半分で達成しうることは注目に値する。3つの組合せにおける各miRNA、miR-29a-3p、miR-212-5pおよびmiR-181a-5pのたった1.33nMの使用でさえ、miRNAコントロールと比較して、約70%のコラーゲン減少を有意に達成した(図22)。
【0252】
初代肺線維芽細胞におけるコラーゲン1沈着に従って、miR-181a-5pおよびmiR-212-5pは細胞内コラーゲン1合成を、特に組み合わせて投与した場合に、大いに阻害する(図23A、24)。このCol1a1タンパク質合成の約50%の減少は、miR-181a-5p/miR-212-3pの2つの組合せにmiR-29a-3pを加えることで有意に改善され、結果としてCol1a1合成の完全な阻害をもたらした。Col5a1(図23B、24)タンパク質合成およびCol3a1RNAデノボ合成(図23C、24)については、miR-29a-3p、miR-181a-5pおよびmiR-212-5pの3つの組合せで同じ傾向が観察され、TGFβ刺激後のこれらコラーゲンサブタイプのより強い阻害を示した。
【0253】
ウイルスコンストラクトの性能を特徴づけるために、miR-212-5p発現カセットを含むAAV 6.2コンストラクト(配列番号91によるプラスミド由来の配列番号61参照、図26参照)の用量を増やしてナイーブマウスをトランスダクションし、これらのマウスをAAV気管内肺注入後7、14、28日後にサクリファイスした。図25に示すように、miR-212-5p AAVの用量の増加は、miR-212-5p肺発現の用量依存的増加をもたらした(図25)。7日目に、1x1011vgのmiR-212-5p AAVは、miR-212-5pの300倍のアップレグレートをもたらし、それは後の14日および28日の時点では350倍に増加した。
【0254】
要約すると、ヒト気道上皮細胞およびヒト肺線維芽細胞における機能解析は、選択されたmiRNA候補について、抗炎症、抗増殖および抗線維化効果を証明している。全ての分析フォーマットで最も顕著な効果は、miR-181a-5p、mir-181b-5pおよびmir-212-5pで観察され、一方mir-10a-5pおよびmir-212-3pは、前述のmiRNAに比べて有効性が低いものの、同様のプロファイルを示した。FMT分析では、miR-10a-5p、miR-181a-5p、miR-181b-5pおよびmiR-212-5pによりポジティブな効果が観察され、一方mir-10a-5p、mir-181a-5pおよびmir-181b-5pの3つの組合せはFMT分析において改善された阻害効果を示し、この組合せの付加的または相乗的効果を示している。全体として、肺上皮細胞に対するmiR-181a-5pの非常に強い抗線維化効果、および線維芽細胞に対するmiR-212-5pの非常に強い抗線維化効果が観察され、このことは、これら2つのmiRNAの組み合わせは、肺線維症において最も重要な2つの細胞タイプに影響する非常に強力な抗線維化組合せであることを示唆している。従って、miRNA候補の組合せ、および特にmiR-181a-5pおよびmiR-212-5pの模倣物、またはそのそれぞれの模倣物は、単独のmiRNAに比べて優れた効率プロファイルを持つ治療アプローチの開発の好ましい選択肢を提供する。さらに、線維化状態下で単独のmiR-29a-3pの公表されているコラーゲン阻害効果を検証できた。miR-29a-3pとmiR-212-5pとの2つの組合せ、またはmiR-29a-3pとmiR-212-5pおよびmiR-181a-5pとの3つの組み合わせの特定の組合せによって、単独のmiRNAまたはmiR-212-5pとmiR-181a-5pとの2つの組合せに比べて、さらに顕著な抗線維効果をもたらすことを示すことができた。単独での使用に比較して、組合せで伴うmiRNAを低用量で使用することにより、抗線維化作用を維持することができ、かつトランスダクションされた細胞における望ましくない/非特異的な効果の減少につながり得る。さらに、mirR-29a-3pと、miR-212-5pまたはmiR-212-5pおよびmiR-181a-5pの両方との特定の組合せは、すでに肺高血圧症(PH)を合併しているか、そうでなければそれを発症するであろうILD、PF-ILDまたはIPFの患者におけるPHに対処する可能性を与える。Chen,T.らによって、miR-212-5pの増加が肺高血圧症マウスモデルにおいてRVSPおよび肺血管壁リモデリングを減少させることが示された。(超)相加的または相乗的な利点に加えて、3つの組合せは、肺線維症の病因における2つの重要な細胞タイプ、上皮細胞および線維芽細胞での抗線維化効果も兼ねて備えている。肺上皮細胞の形質転換で大変著しい抗線維化効果を有するmiR-181a-5pと、線維芽細胞活性化およびECM沈着の阻害で大きな抗線維化効果を有するmiR-212-5pおよびmiR29a-3pを組み合わせることにより、これら3つのmiRNAのトリプルコンビネーションは単独のmiRNAに対して生物学的治療スペクトルを増加させる。
【0255】
miRNAの治療適用。 新規肺線維症関連miRNAの発見を治療用途に移すために、ベクターを介する発現に基づくアプローチは、miRNAまたはmiRNA標的配列の長期にわたる発現を可能にすることにより、肺線維症のような慢性疾患に魅力的な機会を提供する。図8に示すように、miRNA機能を調節するために、様々なベクターデザイン戦略が利用できる。線維化状態下でダウンレギュレートされるmiRNAの補充のために、ポリメラーゼIIプロモーター(例えばCMV、CBA)またはポリメラーゼIIIプロモーター(例えばU6,H1)を使用したベクターを、単独のmiRNA配列または幾つかのmiRNAの組合せの発現に対して適用できる(図8A)。両プロモータークラスも一般にmiRNA発現に対して適用できるが、ポリメラーゼIIプロモーターに基づくコンストラクトは細胞型特異的プロモーターの使用を可能にすることによって更なる利点を提供し、それによってより特異的および潜在的に安全なベクターコンストラクトのデザインを可能にする。内因性miRNAは、いわゆるpri-miRNAとよばれる前駆体分子として発現し、細胞RNAi機構を通して最初にpri-miRNAに、そして第2段階では成熟した生物学的に活性な形態にプロセシングされる。ベクター由来miRNAを効率的に成熟させるため、対象配列は内因性前駆体miRNAとしてまたは成熟miRNA配列を外来miRNAバックボーン例えばmiR30 scaffoldまたはその最適化された形のmiR-Eバックボーン(Fellmann C et al.,2013)に組み込んだ人工的miRNAとしてのどちらかで発現することが可能である。miR-Eバックボーンに基づくコンストラクトの例は、下記の例の部分および配列リストの中で提供される。「ガイド位置」と注記があるコンストラクトが好ましい(表1)。配列番号40~81では、miR-Eバックボーンを使用したmiRNA発現カセットのデザイン例を提供する。配列番号40~69では、各miRNAに対する成熟miRNAまたは天然pre-miRNAを含む発現カセットの例が、個々のmiRNAについて記載されているが、配列番号70~81はモノシストロン性発現カセットにおける3つの異なるmiRNAの組合せが記載されている。与えられた全ての発現カセットは、AAVベクターバックボーンに埋め込まれ、AAV2由来の逆方向末端反復、CMVプロモーター、SV40ポリアデニル化シグナル、および場合によってはmiRNA配列単数または複数)の上流の高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)から構成される。図8Bおよび図8Cに示すように、線維化状態下でアップレギュレートされるmiRNAの機能性を調節するために、2つの異なるベクターデザイン戦略が適用可能である:1)線維化促進性miRNAに対して特異的に結合し、それによってそれらの機能を阻害するようにデザインされたアンチセンス様分子の発現(図8B)。各分子は、いわゆるアンチ-miRであり、ショートヘアピンRNA(shRNA)または人工miRNAとして発現ベクターに組み込むことができる。miRNA補充法と同様に、いくつかのmiRNA標的配列は単一ベクターに組み込むことができ、それによって様々な標的miRNAの阻害を可能にする。2)miRNA結合部位のいくつかのコピーを含むmRNA、いわゆるスポンジの発現は、線維化促進性miRNAを選択的に封鎖し、それによってそれらの機能を阻害することを目標としている(図8C)。要約すると、様々なベクターデザイン戦略が、肺線維症関連miRNAの機能的調節(補充または阻害)に利用できる。
【0256】
前記発現コンストラクトの肺送達のために、非ウイルス性およびウイルス性の遺伝子治療ベクターが適用可能である。しかし、現在利用可能な非ウイルス性送達系、例えばリポソームのようなものと比較して、過去数年間にわたる様々な論文で実証されているように、ウイルスベクターは有効性および組織/細胞型選択性に関して優れた特性が実証済みである。さらに、ウイルスベクターは効力、選択性および安全特性をさらに向上するための工学的方法に大きな可能性をもたらす。アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくウイルスベクターは、その優れた前臨床および臨床安全性プロファイルと、様々な標的臓器および完全分化細胞や非分裂細胞を含む細胞タイプへの非常に効率的かつ安定的な遺伝子送達に基づいて、インビボ遺伝子治療に最も良好なベクター系の1つとして出現した。1965年にAAVの原型である血清型AAV2の発見以来(Atchisonら)、ヒト、非ヒト霊長類、およびブタ、トリおよびその他の系統発生学的に異なる種から様々なさらなる血清型が同定されてきた。今まで、100以上の天然AAV分離株が報告されており、興味深いことに、これらの分離株は組織向性に関して異なっている。カプシド工学的アプローチを適用することによって、近年、遺伝子治療アプローチに利用可能なAAVベクターのレパートリーがさらに拡大している。Limberisら(2009)による画期的な論文では、肺トランスダクションに関する27のAAVカプシド変異体および天然血清型の体系的比較が記載されており、Limberisら(2009)による画期的な論文に基づき、AAV5、AAV6およびAAV6.2が局所投与経路(例えば、鼻腔内または気管内投与)後の肺送達に非常に適したカプシドとして同定された。さらに、AAV2に基づいて設計されたAAVカプシド変異体(AAV2-L1)は、ベクターの全身投与後に肺への特異的遺伝子送達を可能にする新規ベクターとして最近記載された(Kоrbelinら、2016)。図9に記載の通り、miRNAまたはmiRNAの標的配列を含む発現ベクターは、5’および3’末端でAAV逆方向末端反復(ITR)が隣接でき、それによってAAV2-L1、AAV5、AAV6およびAAV6.2で例示されるような各コンストラクトの肺送達に適したAAVカプシドへのパッケージが可能になる。前述のカプシド変異体を使用したAAVを介する肺送達の有効性は、マウス研究でレポーター遺伝子を発現するコンストラクト(GFP、fLuc)を使用して、免疫組織化学(図10A、D)またはインビボイメージング(図10B、C)によるトランスジーン発現の評価により確認された。組織学的レベルでは、気管支気道上皮細胞、肺胞上皮細胞および実質性細胞はレポーター遺伝子発現で陽性染色され、これらの細胞タイプへの遺伝子送達の成功を示している。さらに、全身送達されたAAV2-L1の場合には、定量的なトランスジーン発現は肺内皮細胞でも検出された。トランスジーン発現が最初のベクター投与後6か月まで発現レベルが低下することなく安定していたことは注目に値する(データは示さず)。要約すると、AAVベクターは、治療用miRNAまたはmiRNA標的配列を、肺の疾患関連細胞ライプで安定発現させるための非常に魅力的な送達システムを表し、それによってまだ満たされていない医療ニーズのあるIPFおよび他の線維化間質性肺炎に対する新規かつ非常に革新的なマルチターゲット治療方法を提供する。
【0257】
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【0258】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【国際調査報告】