(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】電動工具、方法、配置構造、コンピュータプログラム製品及びコンピュータ読取可能な媒体
(51)【国際特許分類】
H02P 6/10 20060101AFI20231108BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20231108BHJP
B23D 47/12 20060101ALI20231108BHJP
B23D 45/16 20060101ALI20231108BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20231108BHJP
B24B 23/02 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
H02P6/10
B25F5/00 C
B23D47/12
B23D45/16
B24B49/10
B24B23/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527368
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2021079916
(87)【国際公開番号】W WO2022101019
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】102020214109.6
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518407205
【氏名又は名称】フェストール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】テューリンガー・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】フュルスト・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】シュネレ・パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン・トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ツァルタ・ミハル
【テーマコード(参考)】
3C034
3C040
3C064
3C158
5H560
【Fターム(参考)】
3C034BB92
3C034CA17
3C034CA26
3C034CA30
3C034CB20
3C034DD20
3C040AA01
3C040FF05
3C040LL05
3C064AA06
3C064AA08
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3C064AC01
3C064BA12
3C064BB08
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3C064CA06
3C064CA08
3C064CA72
3C064CA78
3C064CA83
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3C064CB71
3C064DA02
3C064DA22
3C064DA25
3C064DA60
3C064DA73
3C064DA78
3C064DA83
3C158AA03
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3C158BA06
3C158BA07
3C158BB02
3C158BB06
3C158BB08
3C158BB09
3C158BC02
3C158CB03
5H560AA10
5H560BB04
5H560BB12
5H560DA13
5H560DB13
5H560DC12
5H560DC13
5H560EC05
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5H560SS07
5H560TT15
5H560XA02
5H560XA04
5H560XA12
5H560XA13
(57)【要約】
【課題】オーム損失電力が小さい場合に良好な力率を達成する電動工具を提供する。
【解決手段】工具と、工具を駆動するための電気モータと、電気モータを制御するための制御ユニットとを有する、電動工具において、電動工具が、電源電圧に接続するように形成されているとともに、電源電圧に基づき中間回路電圧を提供するための中間回路を有する整流装置を含んでおり、中間回路電圧が、互いに連続する複数の電圧半波を備えており、制御ユニットが、各電圧半波について、曲線形状が電圧半波の曲線形状に比べて平坦化された、電気モータの制御のための各トルク半波36を提供するように形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具(2)と、工具(2)を駆動するための電気モータ(3)と、電気モータ(3)を制御するための制御ユニット(4)とを有する、電動工具(1)、特に手持ち式の電動工具(1)、例えば研磨機器(1A)、研削機器及び/又はノコ機器(1B)であって、電動工具(1)が、電源電圧(V1)に接続するように形成されているとともに、電源電圧(V1)に基づき中間回路電圧(V2)を提供するための中間回路(15)を有する整流装置(12)を含んでおり、中間回路電圧(V2)が、互いに連続する複数の電圧半波(16)を備えており、制御ユニット(4)が、各電圧半波(16)について、曲線形状が電圧半波(16)の曲線形状に比べて平坦化された、電気モータ(3)の制御のための各トルク半波(36)を提供するように形成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
制御ユニット(4)が、正弦半波(37)と同一の面積において正弦半波(37)よりも小さな最大値を有する曲線形状を有するトルク半波(36)を提供するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具(1)。
【請求項3】
平坦化された曲線形状が、同一の平均トルクにおいて、電気モータ(3)の通電時により小さなオーム損失電力をもたらすことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具(1)。
【請求項4】
制御ユニット(4)が、台形曲線形状又は長方形曲線形状を有するトルク半波(36)を提供するように形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電動工具(1)。
【請求項5】
制御ユニット(4)が、曲線形状プロフィル(29)を用いてトルク半波(36)を算出するように形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電動工具(1)。
【請求項6】
制御ユニット(4)が、トルク目標値(26)に基づきトルク半波(36)を算出するように形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電動工具(1)。
【請求項7】
制御ユニット(4)が、トルク目標値(26)に従い曲線形状プロフィル(29)のスケーリングによってトルク半波(36)を算出するように形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電動工具(1)。
【請求項8】
制御ユニット(4)が、電源電圧(V1)及び/又は中間回路電圧(V2)の位相角(30)を検出し、位相角(V2)に従いトルク半波を提供するように形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の電動工具(1)。
【請求項9】
制御ユニット(4)がトルク目標値(26)を提供するための回転数制御器(25)を備えており、制御ユニット(4)が、トルク目標値に基づき、各トルク半波(36)を提供することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の電動工具(1)。
【請求項10】
制御ユニット(4)が、トルク半波(36)に従い電気モータ(3)に通電させるように形成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の電動工具(1)。
【請求項11】
制御ユニット(4)が、電気モータ(3)の制御のためにd電流(Id)及びq電流(Iq)を算出し、d電流(Id)を中間回路電圧(V2)に従い調整するように形成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の電動工具(1)。
【請求項12】
制御ユニット(4)が、d電流(Id)を、中間回路電圧(V2)がより大きい場合には量的に低減するように、及び中間回路電圧(V2)がより小さい場合には量的に増加させるように形成されていることを特徴とする請求項11に記載の電動工具(1)。
【請求項13】
制御ユニット(4)が、電気モータ(3)において誘導される逆電圧(34)を検出し、逆電圧(34)が中間回路電圧(V2)よりも大きいことに応答して、トルク半波(36)の現在のトルク値を低減し、特にゼロに設定するように形成されていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の電動工具(1)。
【請求項14】
工具(2)と、工具(2)を駆動するための電気モータ(3)と、電気モータ(3)を制御するための制御ユニット(4)とを有する、電動工具(1)、特に手持ち式の電動工具(1)、例えば研磨機器(1A)、研削機器及び/又はノコ機器(1B)を動作させるための方法であって、以下のステップ:
-中間回路(15)を有する整流装置(12)を用いて、電動工具(1)が接続された電源電圧(V1)に基づき中間回路電圧(V2)を提供するステップであって、空間回路電圧(V2)が互いに連続する複数の電圧半波(16)を有している、前記ステップと、
-各電圧半波(16)について、曲線形状が電圧半波(16)の曲線形状に比べて平坦化された、電気モータ(3)の制御のための各トルク半波(36)を提供するステップと
を含む方法。
【請求項15】
正弦半波(37)と同一の面積において正弦半波(37)よりも小さな最大値を有する曲線形状を有するトルク半波(36)が提供されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
平坦化された曲線形状が、同一の平均トルクにおいて、電気モータ(3)の通電時により小さなオーム損失電力をもたらすことを特徴とする請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
台形曲線形状又は長方形曲線形状を有するトルク半波(36)が提供されることを特徴とする請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
曲線形状プロフィル(29)を用いてトルク半波(36)が算出されることを特徴とする請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
トルク目標値(26)に基づきトルク半波(36)が算出されることを特徴とする請求項14~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
トルク目標値(26)に従い曲線形状プロフィル(29)のスケーリングによってトルク半波(36)が算出されることを特徴とする請求項14~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
電源電圧(V1)及び/又は中間回路電圧(V2)の位相角(30)が検出され、位相角(V2)に従いトルク半波が提供されることを特徴とする請求項14~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
各トルク半波(36)を提供する基礎となるトルク目標値(26)が回転数制御器(25)によって提供されることを特徴とする請求項14~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
トルク半波(36)に従い電気モータ(3)が通電されることを特徴とする請求項14~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
電気モータ(3)の制御のためにd電流(Id)及びq電流(Iq)が算出され、d電流(Id)が中間回路電圧(V2)に従い調整されることを特徴とする請求項14~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
d電流(Id)が、中間回路電圧(V2)がより大きい場合には量的に低減され、及び中間回路電圧(V2)がより小さい場合には量的に増加されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
電気モータ(3)において誘導される逆電圧(34)が検出され、逆電圧(34)が中間回路電圧(V2)よりも大きいことに応答して、トルク半波(36)の現在のトルク値が低減され、特にゼロに設定されることを特徴とする請求項14~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
工具を駆動するための電気モータと、電気モータを制御するための制御ユニットとを含む配置構造であって、制御ユニットが、中間回路電圧(V2)の各電圧半波について、曲線形状が電圧半波(16)の曲線形状に比べて平坦化されている、電気モータ(3)を制御するための各トルク半波(36)を提供するように形成されていることを特徴とする配置構造。
【請求項28】
請求項1に記載の電動工具(1)に請求項14~26のいずれか1項に記載の方法ステップを実行させるコマンドを含むコンピュータプログラム製品。
【請求項29】
請求項28に記載のコンピュータプログラム製品が記憶されている、コンピュータ読取可能な媒体。
【請求項30】
請求項29に記載のコンピュータプログラム製品を電動工具(1)にインストールするステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具と、工具を駆動するための電気モータと、電気モータを制御するための制御ユニットとを有する電動工具、特に手持ち式の電動工具、例えば研磨機器、研削機器及び/又はノコ機器に関するものである。電動工具は、電源電圧に接続するように形成されているとともに、電源電圧に基づき中間回路電圧を提供するための中間回路を有する整流装置を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
中間回路は、例えば、特に整流された電源電圧を平滑化するために用いられるコンデンサである。中間回路の寸法設定については様々なアプローチが存在する。第1のアプローチは、中間回路電圧がほぼ一定であるように中間回路を寸法設定することである。これにより、特に、電気モータの通電のためのほぼ一定の相電流と、これにより得られる電気モータのほぼ一定のトルク推移とが可能となる。ただし、大きな中間回路は、良好でない力率(Powerfactor)と、吸収電流における高い調和割合とにつながる。第2のアプローチは、中間回路電圧が電源電圧、特に整流された電源電圧に追従するように、中間回路を小さく寸法設定することである。しかし、通常は、このように小さな中間回路では、モータ巻線におけるオーム損失電力がより大きいため、電気モータをより大きく設計する必要がある。また、このように小さな中間回路により、電気モータの従来の制御においては、電気モータの誘導される逆電流が中間回路電圧以上となり、モータに電流が流れることができない範囲に至ることがあることとなり得る。当該態様により、二倍の電源電圧を有するトルクリップルに至ることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、改善された電動工具、特にオーム損失電力が小さい場合に良好な力率を達成する電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当該課題は、請求項1による電動工具によって解決される。
【0005】
電動工具では、中間回路電圧は互いに連続する複数の電圧半波を有している。特に、中間回路、例えばコンデンサは、中間回路電圧が整流された電源電圧に追従し、これにより電圧半波が形成されるように小さく寸法設定されている。整流された電源電圧は、特に一連の正の正弦半波を含んでいる。例示的に、中間回路電圧は、整流された電源電圧の振幅の少なくとも50%にわたって整流された電源電圧に追従する。例えば、中間回路電圧は、140~320Vの範囲で整流された電源電圧に追従する。小さな中間回路により、合目的には良好な力率、例えば少なくとも0.70又は少なくとも0.75の力率が達成される。
【0006】
また、電動工具において、制御ユニットは、各電圧半波について、電気モータを制御するためのそれぞれのトルク半波を提供、特に算出するように形成されている。各電圧半波には、合目的には各トルク半波が割り当てられており、当該トルク半波は、特に電圧半波と同一の周期及び/又は同一の位相角を有している。各トルク半波の曲線形状は、(それぞれ割り当てられた)電圧半波の曲線形状に比して平坦化されている。これは、トルク半波が合目的には電圧半波よりも均等に推移することを意味している。例えば、トルク半波の最大値と平均値の比率は、電圧半波の最大値と平均値の比率よりも小さい。好ましくは各トルク半波の標準偏差は、それぞれ割り当てられた電圧半波の標準偏差よりも小さい。
【0007】
トルク半波の平坦化された曲線形状によって、トルクとオーム損失電力の比率を改善することが可能である。電気モータへの通電は、所定のトルク、すなわちトルク半波に比例している。オーム損失電力は、通電の二乗の関数である。したがって、より大きな通電は、(達成されるトルクに関して)オーム損失電力の不釣り合いな上昇につながる。トルク半波の平坦化された曲線形状によって、オーム損失電力のこのような不釣り合いな上昇を回避することが可能である。特に、平坦化された曲線形状によって、電気モータの通電時によりわずかなオーム損失電力が生じ得る。平坦化された曲線形状によって、特に(例えば平坦化されていない曲線形状、例えば正弦曲線形状の場合のように)同一の平均的なトルクにおいて、電気モータの通電時によりわずかなオーム損失電力が得られる。「平均的なトルク」(mittlerem Drehmoment)は、「平均トルク」(Durchschnitts-Drehmemont)を意味する。
【0008】
好ましい発展形成は、従属請求項の対象である。
【0009】
また、本発明は、工具と、工具を駆動するための電気モータと、電気モータを制御するための制御ユニットとを有する、電動工具、特に手持ち式の電動工具、例えば研磨機器、研削機器及び/又はノコ機器を動作させるための方法であって、以下のステップ:中間回路を有する整流装置を用いて、電動工具が接続された電源電圧に基づき中間回路電圧を提供するステップであって、空間回路電圧が互いに連続する複数の電圧半波を有している、前記ステップと、各電圧半波について、曲線形状が電圧半波の曲線形状に比べて平坦化された、電気モータの制御のための各トルク半波を提供するステップとを含む方法に関するものである。
【0010】
また、本発明は、工具を駆動するための電気モータと、電気モータを制御するための制御ユニットとを含む配置構造に関するものである。制御ユニットは、中間回路電圧の各電圧半波に対して、曲線形状が電圧半波の曲線形状に比べて平坦化されている、電気モータを制御するための各トルク半波を提供するように形成されている。
【0011】
また、本発明は、電動工具に上述の方法ステップを実行させるコマンドを含むコンピュータプログラム製品に関するものである。
【0012】
また、本発明は、コンピュータプログラム製品が記憶されている、コンピュータ読取可能な媒体に関するものである。
【0013】
また、本発明は、コンピュータプログラム製品を電動工具にインストールするステップを含む方法に関するものである。
【0014】
以下に、更なる例示的な詳細及び例示的な実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】研磨機器として構成された電動工具を概略的に示す図である。
【
図2】ノコ機器として構成された電動工具を概略的に示す図である。
【
図3】電動工具の整流装置、制御ユニット及び電気モータを概略的に示す図である。
【
図4】中間回路電圧の時間的な推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び
図2には電動工具1の例示的な構成が示されている。電動工具1は、例示的に、手持ち式の電動工具として構成されている。電動工具1は、ユーザによって手で把持され、持ち運ばれ、及び/又は扱われることが可能である。電動工具1は、特に研磨機器1A(
図1参照)として、又はノコ機器(ノコ盤)1B(
図2参照)として構成されることができる。研磨機器1Aは、例えば研磨機、特に回転研磨装置である。ノコ機器1Bは、例えばプランジ丸ノコである。これに代えて、電動工具1は、他の電動工具、例えば研削機器(研削盤)として、特にリノベーショングラインダとして構成されることも可能である。
【0017】
電動工具1は工具2を含んでいる。工具2は、例示的に研磨ディスク2Aとして、又はノコブレード2Bとして構成されている。これに代えて、工具2は、他の工具、例えば研削ディスクとして構成されることも可能である。特に、工具2は、特に工具2が電気モータ3によって作業運動、特に回転運動される状態においてワークピースを加工するために用いられる。
【0018】
電動工具1は、工具2を駆動するための電気モータ3を含んでいる。電気モータ3は特に駆動回転運動を提供することができ、これに基づき工具2が駆動される。電気モータ3は、例えばECモータ、すなわち電子整流モータとして形成されている。電気モータ3は、特にブラシレスモータ、好ましくはブラシレス直流モータ、すなわちBLDCモータである。
【0019】
電動工具1は、電気モータ3を制御するための制御ユニット4を更に含んでいる。制御ユニット4は、例えばマイクロコントローラ及び/又はパワーエレクトロニクス機器を含んでいる。特に、制御ユニット4は、電気モータ3が駆動回転運動を行うことを合目的に生じさせるように、電気モータ3を制御するために特に互いに位相ずれした複数のモータ電流I1,I2,I3を電気モータ3へ供給するように形成されている。モータ電流I1,I2,I3は、相電流とも呼ばれ得る。制御ユニット4は、合目的には、モータ電流I1,I2,I3を提供するためのインバータを備えている。
【0020】
電動工具1は例示的に把持部5を更に含んでおり、当該把持部をもって、ユーザは電動工具1を手で把持し、持ち運び、及び/又は扱うことが可能である。電動工具1は操作装置6、例えばボタン及び/又はスイッチを更に含んでおり、ユーザは、当該操作装置を介して工具2の駆動を制御し、特にスタート及び/又はストップさせることが可能である。操作装置6は、例示的に把持部5に配置されている。
【0021】
電動工具1は合目的にはシャフト7を含んでおり、工具2は、電気モータ3によって駆動されることができるように、当該シャフトを介して電気モータ3に結合されている。電動工具1は、オプションで伝動装置、特にアングル歯車装置8を含むことができ、当該伝動装置を介して工具2が電気モータ3に結合されている。
図1では、電動工具1は例示的に連結シャフト9を含んでおり、当該連結シャフトを介して電気モータ3がアングル歯車装置8に結合されている。アングル歯車装置8は、例示的にシャフト7を介して工具2に結合されている。これに代えて、電気モータ3は、例えばシャフト7を介して直接工具2に結合されることが可能である。
【0022】
電動工具1は例示的に外側ハウジング10を含んでおり、当該外側ハウジングには、合目的には、電気モータ3、制御ユニット4及び/又は整流装置12が配置されている。把持部5は、例示的に外側ハウジング10に配置されている。これに代えて、把持部5は、外側ハウジング10の一部であってよい。
【0023】
電動工具1は、電源電圧V1に接続するように形成されている(
図2参照)。電源電圧V1は交流電圧である。電源電圧V1は、特に正弦状であるとともに、例示的に230Vの実効値及び/又は50Hzの電源周波数を有している。また、電源電圧V1は、120Vの実効値及び/又は60Hzの電源周波数を有することが可能である。電動工具1は、接続部11、例えば電源プラグ及び/又は電源プラグ接続部を含んでおり、電動工具1は、当該接続部を介して電源電圧、例えば差込接続器に接続されることが可能である。
【0024】
電動工具1は、例示的に外側ハウジング10に配置された整流装置12を備えている。整流装置12は、例えば
図3に示されている。整流装置12は、電源電圧V1に基づき中間回路電圧V2を提供するように形成されている。整流装置12は、例示的にブリッジ整流器として構成された整流器14を含んでいる。整流器14は、合目的には、例示的にブリッジとして接続された4つのダイオードを含んでいる。電源電圧V1は整流器14に供給され、当該整流器は、電源電圧V1に基づき、整流された電源電圧を提供する。整流装置12は、例示的にコンデンサとして構成された中間回路15を更に含んでいる。中間回路15は、整流器14の出口に接続されている。中間回路15は、整流された電源電圧を平滑化するために用いられる。平滑化され整流された電源電圧は、中間回路電圧V2とも呼ぶこととする。中間回路電圧V2は、中間回路15を越えて、特にコンデンサを越えて降下する。
【0025】
中間回路15、特にコンデンサは、例えば100μFより小さいか、50μFよりも小さいか、30μFより小さいか、20μFより小さいか、又は10μFよりも小さい。
【0026】
中間回路電圧V2の例示的な時間的な推移が
図4に示されている。中間回路電圧V2は、互いに連続する複数の電圧半波16を含んでいる。電圧半波16は、例示的に、正弦半波の一部の曲線形状を有するそれぞれ1つの正弦部分17を含んでいる。正弦部分17、特に一部分は、合目的には正弦半波の最大値20を含んでいる。例示的に、中間回路電圧V2は、正弦部分17における整流された電源電圧に追従する。例示的に、電圧半波16は、正弦部分17の前後に配置されたそれぞれ2つの移行部分18を更に含んでいる。移行部分18は、中間回路電圧V2の最小値19を含んでいる。電圧半波16は、移行部分18では例示的に正弦半波の形状を有していない。特に、中間回路電圧は、移行部分18においてゼロには降下しない。例示的に、中間回路電圧V2は、移行部分18における整流された電源電圧に追従しない。
【0027】
各電圧半波16の最小値19は、合目的には最大値20の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%である。例えば、各電圧半波16の最小値19は、少なくとも90V、少なくとも100Vである。また、各電圧半波16の最小値19は、合目的には、最大値20の最大で70%であるか、特に最大で50%であるか、好ましくは最大で40%であるか、又は最大で35%である。例えば、最小値19は最大で120V又は110Vである。
【0028】
好ましくは、制御ユニット4及び/又は電気モータ3は、中間回路15から給電される。制御ユニット4は、中間回路15により提供される電気エネルギーに基づき、特に中間回路電圧V2に基づきモータ電流I1,I2,I3を生成し、電気モータ3へ供給するように形成されている。例示的に、制御ユニット4は、3つのモータ電流I1,I2,I3を提供する。例えば、モータ電流I1,I2,I3は、中間回路15から流れる。
【0029】
電気モータ3は、例示的にステータ43及びロータ21を含んでいる。ロータ21は工具2に結合されている。モータ電流I1,I2,I3での電気モータ3の通電により、ロータ21がステータ43に対して駆動回転運動を受ける。
【0030】
電気モータ3はオプションで位置センサ装置22を備えており、当該位置センサ装置は、ロータ21の位置及び/又は運動、特に現在の角度を検出するために用いられる。位置センサ装置22は、例えば磁気センサ、特にホールセンサを含んでいる。合目的には、制御ユニット4は、ロータ21の現在の角度を位置センサ装置22を用いて検出するように形成されている。また、制御ユニット4は、位置センサ装置22を用いて電気モータ3の現在の回転数を検出するように形成されることが可能である。
【0031】
これに代えて、又はこれに加えて、制御ユニット4は、ロータ21の現在の角度及び/又は電気モータ3の現在の回転数を検出するように形成されることが可能である。この場合、合目的には、位置センサ装置22は存在しない。特に、制御ユニット4は、電気モータにおいて誘導される逆電圧を検出し、逆電圧に基づきロータ21の現在の角度及び/又は電気モータ3の現在の回転数を算出するように形成されている。特に、制御ユニット4は、ロータ21の現在の角度及び/又は電気モータ3の現在の回転数を逆起電力原理(Back-EMF-Prinzip)を用いて算出するように形成されており、「EMF」は「Electromotive Force」を表すものである。
【0032】
図6には、電気モータ3の制御のために制御ユニット4によって行われる信号処理の例示的なブロック図が示されている。
【0033】
合目的には、制御ユニット4は、電気モータ3の回転数(閉ループ)制御を実行するように形成されている。特に、制御ユニット4は、目標回転数23及び実際回転数24に基づいてモータ電流I1,I2,I3を提供するように形成されている。目標回転数23は、例えば操作装置6によって操作されたユーザ入力に従って制御ユニット4によって設定される。これに代えて、目標回転数23は、制御ユニット4においてあらかじめメモリされ、及び/又は制御ユニット4によって算出されることが可能である。実際回転数24は、電気モータ3の現在の回転数であるとともに、合目的には上述のように得られ、特に位置センサ装置22を用いて、及び/又はセンサレスの原理に基づき、特に誘導された逆電圧に基づき得られる。実際回転数24は、ロータ21がスタータ43に対して相対的にどのくらい速く回転しているかを表している。
【0034】
制御ユニット4は回転数制御器25を含んでおり、当該回転数制御器には目標回転数23及び実際回転数24が供給される。目標回転数23及び実際回転数24に基づき、特に目標回転数23と実際回転数24の比較に基づき、回転数制御器25はトルク目標値26を算出する。トルク目標値26は、回転数目標値へ向けた回転数実際値の変化を達成するために、電気モータ3の通電によりロータ21に影響を与えるべきトルクを設定する。
【0035】
制御ユニット4はトルク推移算出ユニット27を更に含んでおり、当該トルク推移算出ユニットは、トルク目標値26に基づき時間的なトルク推移28を算出するように形成されている。トルク推移28をトルク信号と呼ぶこともできる。例示的なトルク推移28が
図5に示されている。例示的に、トルク推移28は台形状の曲線形状を有している。
【0036】
制御ユニット4はモータ電流提供ユニット31を更に含んでおり、当該モータ電流提供ユニットは、トルク推移28に基づきモータ電流I1,I2,I3を算出するように形成されている。例示的に、モータ電流提供ユニット31は目標電流設定ユニット32を含んでおり、当該目標電流設定ユニットは、特にトルク推移28に基づきq(軸)電流及びd(軸)電流を算出するように形成されている。d電流及びq電流は、ロータ21の回転に従い回転する、ロータに関するd/q(座標)系における電流である。d電流は流れを形成する成分を形成し、q電流はトルクを形成する成分を形成する。d電流はd成分又は弱め界磁電流と呼ばれることができ、q電流はq成分又はトルク形成電流と呼ばれることができる。目標電流設定ユニット32は、電気モータ3の通電時にq電流及びd電流に従いトルク推移28を達成するように、q電流及びd電流を算出する。例示的に、算出されたq電流の時間的な推移は、トルク推移28に対応している。特に、q電流はトルク推移28と同一の曲線形状を有している。
【0037】
モータ電流提供ユニット31は合目的には電流制御器33を更に含んでおり、当該電流制御器は、モータ電流I1,I2,I3を提供するように形成されている。特に、電流制御器33は、モータ電流I1,I2,I3の電流(閉ループ)制御を行うように形成されている。モータ電流I1,I2,I3は、好ましくはパルス幅変調されている。電流制御器33は、特に二軸座標系から三軸座標系への変換を実行することで、q電流及びd電流に基づきモータ電流I1,I2,I3を提供する。電流制御器33は、算出されたq電流及び算出されたd電流が達成されるようにモータ電流I1,I2,I3を提供する。電気モータ3、特にステータ43のモータ巻線は、モータ電流I1,I2,I3で通電される。ロータ21は、例示的に永久磁石を有しているとともに、モータ巻線の通電により生じる磁場との相互作用により駆動回転運動を受ける。
【0038】
以下に、トルク推移28について詳細に説明することとする。
図5には、例示的なトルク推移28が(実線として)示されている。トルク推移28は、互いに連続する複数のトルク半波36を有している。例示的に、トルク半波36は、それぞれ台形状の曲線形状を有している。これに代えて、トルク半波は、他の曲線形状、例えば長方形状の曲線形状を有することが可能である。
【0039】
制御ユニット4は、各電圧半波16について、電気モータ3を制御するためのそれぞれのトルク半波36を提供、特に算出するように形成されている。各トルク半波の曲線形状は、電圧半波16の曲線形状に比して平坦化されている。平坦化された曲線形状により、電気モータ3の通電時に、合目的には同一の平均トルクにおいて、より小さなオーム損失電力が生じる。
【0040】
制御ユニット4は、合目的には、トルク半波に比例して電気モータ3に通電させる。トルク半波36がより大きな値をとれば、制御ユニット4は電気モータ3への通電を高める。オーム損失電力は電気モータ3への通電の二乗の関数であるため、より大きな電流により不釣り合いなオーム損失電力がもたらされる。トルク半波36の平坦化された曲線形状により、特により小さいか、又はよりわずかなトルクの低減においてオーム損失電力が低減され得るように、(二乗に依存することによる)オーム損失電力にとって重要な電流最大値が低減される。平坦化された曲線形状を均等化された曲線形状と呼ぶこともできる。特に、各トルク半波36は、同一の周期及び/又は同一の面積の各電圧半波16及び/又は各(架空の)正弦半波37よりも均等な曲線形状を有している。好ましくは、各トルク半波36の標準偏差は、同一の周期及び/又は同一の面積の各電圧半波16及び/又は各(架空の)正弦半波37の標準偏差よりも小さい。
【0041】
特に、平坦化された曲線形状は、同一の面積において、曲線形状の下で、特に(架空の)正弦半波37と比較して、より小さな最大値を有する。
図5には、整流された正弦曲線の曲線形状を有し互いに連続した正弦半波37を含む参照曲線38が(破線として)示されている。正弦半波37は、それぞれトルク半波36と同一の周期を有している。各正弦半波37の下の面積、すなわち正弦半波37の周期についての積分は、合目的には、各トルク半波36の下の面積、すなわちトルク半波36の周期についての積分と同一である。各トルク半波36の最大値は、合目的には、各正弦半波37の最大値よりも特に少なくとも10%小さいか、又は少なくとも20%小さい。正弦半波37は、ここでは、トルク半波の平坦化された曲線形状の数学的な定義に用いられ、電動工具1によって提供される必要はない。各トルク半波36の平坦化された曲線形状は、好ましくは、(特に架空の)正弦半波37と同一の周期及び同一の面積において正弦半波37よりも小さな最大値を有するように数学的に定義されている。
【0042】
例えば、平坦化された曲線形状においては、曲線形状の最大値と曲線形状の平均値の間の比率が低減されている。合目的には、トルク半波36の最大値とトルク半波36の平均値の間の比率は、電圧半波16の最大値20と電圧半波16の平均値の間の比率よりも小さい。
【0043】
好ましくは、制御ユニット4は、台形曲線形状又は長方形曲線形状を有するトルク半波36を提供するように形成されている。
【0044】
1つのトルク半波36の説明は、好ましくは各トルク半波36について当てはまる。トルク半波36は、トルク半波36の最大値を含むか、又は表す平坦域部分39を有している。平坦域部分39は、好ましくは0の勾配を有するとともに、特にトルク半波36の周期の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%又は少なくとも80%にわたって延在している。例示的には、正弦半波37の最大値42は平坦域部分39よりも大きい。トルク半波36は、平坦域部分39を包囲する2つの側面部分40を更に有している。側面部分40は、(量的には)平坦域部分39よりも大きな勾配、特に正弦半波37及び/又は電圧半波16よりも大きな勾配を有している。可能な一形態によれば、側面部分40は、直角であってよく、すなわち、特に(量的には)無限の勾配を有することが可能である。トルク半波37は、合目的には2つのトルク最小値41を更に有し、当該トルク最小値は、トルク半波36の始部及び終部を表している。例示的に、トルクは、トルク最小値41ではゼロに等しい。したがって、トルク半波36は、上記順序において時間的に連続する、特に直接連続する以下の部分を含む:第1のトルク最小値41(好ましくはゼロに等しい)、第1の側面部分40(好ましくは正の勾配)、平坦域部分39(好ましくはゼロの勾配)、第2の側面部分40(好ましくは負の勾配)及び第2のトルク最小値(好ましくはゼロに等しい)。トルク最小値41は、時間的にトルク半波36の周期の特に少なくとも10%、少なくとも20%又は少なくとも30%にわたって共に延在している。
【0045】
合目的には、制御ユニット4は、各電圧半波16の周期と同一の周期を有するトルク半波36を提供するように形成されている。好ましくは、トルク推移28の周波数は、電源電圧V1の周波数の二倍である。特に、トルク推移28の周波数は、100Hz又は120Hzである。
【0046】
例えば、制御ユニット4は、電圧半波16の周期及び/又は電源電圧V1の隣り合うゼロ交差間の時間的な間隔を検出するとともに、検出された周期及び/又は時間的な間隔をトルク半波36についての周期として用いる。合目的には、制御ユニット4は、トルク半波36を電源電圧V1及び/又は電圧半波16と同期させる。例えば、トルク推移28の最小値が電源電圧V2のゼロ交差と同時に行われるように、制御ユニット4は、トルク推移28の最小値を電源電圧V1のゼロ交差と同期させる。また、トルク推移28の最小値が中間回路電圧V2の最小値と同時に行われるように、制御ユニット4は、トルク推移28の最小値を中間回路電圧V2の最小値19と同期させることができる。例えば、制御ユニット4は、電源電圧V1及び/又は中間回路電圧V2の位相角30を検出し、特にトルク半波36が電圧半波16及び/又は電源電圧V1と同期するように位相角30に従いトルク半波36を提供するように形成されている。トルク推移28は、合目的には中間回路電圧V2と同一の位相角を有している。
【0047】
制御ユニット4、特にトルク推移算出ユニット27は、好ましくは、曲線形状プロフィル29に基づいてトルク推移28を算出するように形成されている。曲線形状プロフィルは、合目的には、制御ユニット4にあらかじめメモリされており、及び/又は制御ユニット4によって提供される。曲線形状プロフィル29は、トルク半波36の平坦化された曲線形状を規定する。例えば、曲線形状プロフィル29は、台形曲線形状又は長方形曲線形状を規定する。
【0048】
例示的に、制御ユニット4は、位相角30を考慮してトルク推移28を算出するように形成されている。特に、制御ユニット4は、位相角30に基づき、各トルク半波36についての周期を算出するとともに、曲線形状プロフィル29の周期が算出された周期と同一となるよう、算出された周期に従い曲線形状プロフィル29を時間的に延長するか、又は圧縮するように形成されている。
【0049】
合目的には、制御ユニット4は、更に、トルク目標値26に基づき各トルク半波36を算出するように形成されている。特に、制御ユニット4は、トルク半波36の平均値がトルク目標値26と同一であるように各トルク半波36を算出するように形成されている。特に、制御ユニット4は、トルク目標値26に従い曲線形状プロフィル29をスケーリングすることによって各トルク半波36を算出するように形成されている。例示的に、制御ユニット4は、トルク目標値26によって、又はトルク目標値26に依存するスケーリングファクタによって曲線形状プロフィル29をスケーリングするように形成されている。
【0050】
上述のように、制御ユニット4は、トルク目標値26を提供するための回転数制御器25を備えており、制御ユニット4は、これに基づき、各トルク半波36を提供する。特に、制御ユニット4は、トルク半波に従い電気モータ3に通電させるように形成されている。
【0051】
トルク半波36の提供を、トルクフォーミングと呼ぶこともできる。特に台形又は長方形の形状でのトルクフォーミングと、これに伴う電流フォーミングとによって、オーム損失電力、すなわち銅損を低減することができるため、電気モータ3をより小さく構成することが可能である。
【0052】
既に上述したように、合目的には、中間回路電圧V2が主に(整流された)電源電圧に相当するように小さな中間回路15が用いられる。合目的には、小さな中間回路によって、構造空間及びコストを削減することが可能である。電気モータ3における銅損、すなわちオーム損失電力を低減するために、合目的には、電気モータ3のトルク及びこれに伴い通電、特にq電流が、好ましくは二倍の電源周波数を有する台形又は長方形へ(閉ループ)制御される。
【0053】
銅損がI2*Rにより算出されるため、台形状のトルク半波36の平坦域部分39は、できる限り小さなトルク値を有するべきである。このことは、好ましくは、電気モータ3において電流が流れ得る半波ごとの時間をできる限り大きく選択することで、すなわち平坦域部分39の時間的な延長を大きく選択することで達成される。合目的には、電気モータ3は、電源電圧V1よりも小さな電圧に設定されている。また、合目的には、弱め界磁電流の変化による電気モータ3の誘導される逆電圧は、中間回路電圧V2に依存して変化する。
【0054】
好ましくは、制御ユニット4は、電気モータ3において誘導される逆電圧34を検出し、逆電圧34が中間回路電圧V2よりも大きいことに応答して、例示的にはトルク推移算出ユニット27を用いてトルク半波36の現在のトルク値を低減し、特にゼロに設定するように形成されている。例示的に、制御ユニット4は、誘導される逆電圧34をロータ21の回転数に基づいて検出するように形成されている。特に、制御ユニット4は、逆電圧34が中間回路電圧V2よりも大きいことに応答して、q電流及び好ましくはd電流を低減し、特にゼロにセットし、好ましくはゼロへ(閉ループ)制御するように形成されている。このようにして、誘導される逆電圧34が中間回路電圧V2よりも大きい場合に生じ得る不都合な制動モーメントを回避又は低減することができる。
【0055】
特に、制御ユニット4は、電気モータ3の誘導される逆電圧34が中間回路電圧V2以上である場合に、トルクを生成する電流をゼロへ(閉ループ)制御するように形成されている。トルクを生成する電流の(閉ループ)制御は、アクティブのままであるとともに、電気モータ3の誘導される逆電圧34が中間回路電圧V2以上である場合には停止されない。
【0056】
好ましくは、制御ユニット4、特に目標電流設定ユニット32は、中間回路電圧V2を考慮してd電流を算出するように形成されている。特に、制御ユニット4は、中間回路電圧V2に従いd電流Idを設定するように形成されている。例えば、制御ユニット4は、d電流Idを、中間回路電圧V2がより大きい場合には量的に低減するように、そして中間回路電圧V2がより小さい場合には量的に増加させるように形成されている。特に、制御ユニット4は、中間回路電圧V2に基づき、誘導される逆電圧が特に中間回路電圧V2未満に低減されるようにd電流Idを設定するように形成されている。d電流Idの設定は、例えば、中間回路電圧V2に対して反比例して行われる。中間回路電圧V2が上昇する場合には、d電流Idは量的に低減され、中間回路電圧V2が低下する場合には、d電流Idは量的に増大される。
【0057】
特に、制御ユニット4は、制動モーメントが回避され、特に力率が負荷に動的に適合されるように、d電流及び/又はq電流に従い電気モータに常に通電させるように形成されている。
【0058】
特に、制御ユニット4は、できる限りわずかな電流を必要とするようにモータを常に最適に作動させるために、d電流及びq電流の変化を中間回路電圧V2及び/又は電源電圧V1に依存して行うように形成されている。
【0059】
電動工具1は、特に以下に説明する方法に従って動作されることが可能である。当該方法は、中間回路15を有する整流装置12を用いて、電動工具1が接続された電源電圧V1に基づき中間回路電圧V2を提供する第1のステップを含む。中間回路電圧V2は、互いに連続する複数の電圧半波16を有している。方法は、各電圧半波16について、電気モータ3を制御するための各トルク半波36が提供される第2のステップを含む。各トルク半波の曲線形状は、電圧半波の曲線形状に比して平坦化されている。
【0060】
合目的には、方法は、ロータ21が駆動回転運動を受け、これにより工具2が作業運動を受けるように、トルク半波36に従い電気モータ3に通電させる更に1つのステップを含む。
【0061】
合目的には、方法は、工具2によってワークピースを加工する、特に研磨し、研削し、ノコで切断する更に1つのステップを含む。
【国際調査報告】