(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】高温耐性ポリアミドを製造するための方法、高温耐性ポリアミド及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08G 69/28 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
C08G69/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527388
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2021143692
(87)【国際公開番号】W WO2022089674
(87)【国際公開日】2022-05-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517216486
【氏名又は名称】キャセイ バイオテック インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519322820
【氏名又は名称】シーアイビーティー アメリカ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523163118
【氏名又は名称】シャンシー シンセティック バイオロジー インスティテュート カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ユエンボー
(72)【発明者】
【氏名】チン ビンビン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ シュウサイ
【テーマコード(参考)】
4J001
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB01
4J001DB02
4J001EB04
4J001EB05
4J001EB06
4J001EB07
4J001EB08
4J001EB09
4J001EB10
4J001EB35
4J001EB36
4J001EB37
4J001EC04
4J001EC07
4J001EC08
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4J001EC10
4J001EC14
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4J001EC45
4J001EC46
4J001EE16D
4J001FA01
4J001FB03
4J001FB05
4J001FB06
4J001FC03
4J001FC05
4J001GA12
4J001GB02
4J001GB03
4J001GB05
4J001JA01
4J001JB02
4J001JB18
4J001JB21
4J001JB22
4J001JB23
(57)【要約】
本発明は、高温耐性ポリアミドを製造するための方法、高温耐性ポリアミド及びその使用を提供する。本方法は、任意選択的にポリアミド塩溶液を濃縮し、その後に以下の操作:加熱してP1の圧力まで加圧し、その圧力を維持するステップであって、圧力維持の最後に系の温度がT1であるステップ;P2の圧力まで減圧するステップであって、減圧の最後に系の温度がT2であるステップ;及び排気するステップであって、それによりポリアミド溶融物が得られるステップを実行することを含み、ここで、P1は0.8~4MPaであり、T1は250~290℃であり、T1<T2であり、且つ(T2-T1)/(P1-P2)=5~75である。本発明に従う高温耐性ポリアミドの製造方法は操作が簡単であり、エネルギー消費が低減される。得られた高温耐性ポリアミドは、機械、自動車、家庭用電化製品、玩具、繊維製品、スポーツ用品、携帯電話、コンピュータ、ラップトップ、GPS装置、又は光学装置のための高温耐性アタッチメントなどの射出成形部品、成形物品、又は繊維の原材料として使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温耐性ポリアミドを製造するための方法であって、
任意選択的にポリアミド塩溶液を濃縮し、その後に以下の操作:
(1)加熱してP1の圧力まで加圧し、前記圧力を維持するステップであって、前記圧力維持の最後に系の温度がT1であるステップ;
(2)P2の圧力まで減圧するステップであって、前記減圧の最後に系の温度がT2であるステップ;及び
(3)排気するステップであって、それによりポリアミド溶融物が得られるステップ
を実行することを含み、
P1が0.8~4MPaであり、T1が250~290℃であり、T1<T2であり、且つ(T2-T1)/(P1-P2)=5~75であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポリアミド塩溶液の質量濃度が20wt%以上、好ましくは20~90wt%であり;及び/又は
前記ステップ(1)の前に、前記ポリアミド塩溶液の濃度が10wt%であれば、pH値が6.5~9.0である
ことを特徴とする、請求項1に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミド塩が、成分(A)ジアミンと、成分(B)二酸との反応によって生成される塩を含み;及び/又は
前記ポリアミド塩溶液が、少なくとも、成分(A)ジアミンのイオン及び成分(B)二酸のイオンを含み;及び/又は
前記ポリアミド塩溶液が、
(1)成分(A)ジアミン、成分(B)二酸、及び溶媒を混合することによって得られる溶液、(2)成分(C)ポリアミド塩、及び溶媒を混合することによって得られる溶液、並びに(3)成分(C)ポリアミド塩、成分(A)ジアミン及び/又は成分(B)二酸、及び溶媒を混合することによって得られる溶液のうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含む
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項4】
前記成分(A)ジアミンが、
(a1)4~16個の炭素原子を有する脂肪族直鎖若しくは分枝鎖ジアミン、(a2)芳香族ジアミン若しくは脂環式ジアミンのうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含み;及び/又は
前記成分(B)二酸が、
(b1)2~18個の炭素原子を有する脂肪族二酸、(b2)8個以上の炭素原子を有するベンゼン環含有二酸のうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含む
ことを特徴とする、請求項3に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項5】
前記成分(a1)が、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、及びヘキサデカンジアミンのうちの1つ又は複数を含み;及び/又は
前記成分(a2)が、シクロペンタンジアミン、メチルシクロペンタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、及びm-フェニレンジアミンのうちの1つ又は複数を含み;及び/又は
前記成分(b1)が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、及びオクタデカン二酸のうちの1つ又は複数を含み;及び/又は
前記成分(b2)が、テレフタル酸、イソフタル酸、及びフタル酸のうちの1つ又は複数を含む
ことを特徴とする、請求項4に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項6】
前記成分(A)対前記成分(B)のモル比が(0.5~5):1であり;及び/又は
前記成分(a1)対前記成分(b1)のモル比が(0.5~12):1であり;及び/又は
前記成分(a1)対前記成分(b2)のモル比が(0.1~6):1である
ことを特徴とする、請求項4に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項7】
P2の圧力まで減圧する前記ステップ(2)の間、圧力P及び温度Tが、以下の条件:PがP1の0.4~0.65倍である場合にT=(1.01~1.18)xT1であることを満たし;及び/又は
P2の圧力まで減圧する前記ステップ(2)の間、圧力P及び温度Tが、以下の条件:PがP1の0.1~0.3倍である場合にT=(1.132~1.26)xT1であることを満たし、
P2<P<P1、且つT1<T<T2であることを特徴とする、請求項1に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(1)において、水蒸気が外部に排出され、前記排出された水蒸気(モル)の前記ポリアミド塩溶液中の含水量(モル)に対する比率が、(60.6~93.9):100である
ことを特徴とする、請求項1に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項9】
前記ステップ(2)において、水蒸気が外部に排出され、前記排出された水蒸気(モル)の前記ポリアミド塩溶液中の含水量(モル)に対する比率が、(93.9~118.2):100である
ことを特徴とする、請求項1に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(1)の前に、前記ポリアミド塩溶液が、50~85wt%の濃度まで濃縮され;及び/又は
前記ステップ(1)~ステップ(3)のいずれかの段階で、成分(D)添加剤を添加し;及び/又は
T2が295~340℃であり、且つT1<T2であり;及び/又は
P2が0~0.05MPaであり、且つP1>P2であり;及び/又は
前記ステップ(3)において、-0.09~-0.005MPaの圧力まで排気し;及び/又は
前記ステップ(3)において、前記排気の最後に前記系の温度が310~340℃であり;及び/又は
前記方法がさらに、前記ポリアミド溶融物を排出及びペレット化し、それによりポリアミド樹脂が得られるステップ(4)を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項11】
前記ポリアミド塩溶液が、成分(D)添加剤をさらに含み;
前記成分(D)が、酸化防止剤、消泡剤、UV安定剤、熱安定剤、結晶化促進剤、フリーラジカルスカベンジャー、潤滑剤、可塑剤、衝撃改質剤、無機充填剤、光沢剤、染料、難燃剤、及びミネラルのうちの1つ又は複数を含み;及び/又は
前記成分(D)のモル量が、前記成分(A)及び/又は前記成分(C)のモル量の0.001%~1%、好ましくは0.01%~0.8%である
ことを特徴とする、請求項3に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項12】
高温耐性ポリアミドであって、前記高温耐性ポリアミドが、少なくとも、原材料としての成分(A)ジアミン及び成分(B)二酸から生成されるポリアミドを含み、
前記成分(A)対前記成分(B)のモル比が、(0.5~5):1、好ましくは(1.01~1.3):1であり;及び/又は
前記成分(A)ジアミンが、
(a1)4~16個の炭素原子を有する脂肪族直鎖若しくは分枝鎖ジアミン、(a2)芳香族ジアミン若しくは脂環式ジアミンのうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含み;及び/又は
前記成分(B)二酸が、
(b1)2~18個の炭素原子を有する脂肪族二酸、(b2)8個以上の炭素原子を有するベンゼン環含有二酸のうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含む
ことを特徴とする、高温耐性ポリアミド。
【請求項13】
高温耐性ポリアミドであって、前記高温耐性ポリアミドが、少なくとも、原材料としての成分(C)ポリアミド塩の溶液から生成されるポリアミドを含むことを特徴とする、高温耐性ポリアミド。
【請求項14】
高温耐性ポリアミドであって、前記高温耐性ポリアミドの構造単位が以下の式:
【化1】
(式中、n=4~16、且つm=2~18である)
を含むことを特徴とする、高温耐性ポリアミド。
【請求項15】
前記高温耐性ポリアミドが、280~328℃、好ましくは286~328℃の融点を有し;及び/又は
前記高温耐性ポリアミドが、1.80~2.70の相対粘度を有し;及び/又は
前記高温耐性ポリアミドが、5~12KJ/cm
2、好ましくは6.5~10KJ/cm
2のノッチ付き衝撃強度を有し;及び/又は
前記高温耐性ポリアミドが、95~140MPa、好ましくは105~134MPaの引張強度を有し;及び/又は
前記高温耐性ポリアミドが、135~190MPa、好ましくは155~183MPaの曲げ強度を有し;及び/又は
前記高温耐性ポリアミドが、3,500~4,400MPaの曲げ弾性率を有し;及び/又は
前記高温耐性ポリアミドが、240~320℃、好ましくは260~300℃の熱撓み温度を有する
ことを特徴とする、請求項12、13、又は14のいずれか一項に記載の高温耐性ポリアミド。
【請求項16】
前記高温耐性ポリアミドが、射出成形部品、成形物品、又は繊維の原材料として使用されること;及び好ましくは、前記高温耐性ポリアミドが、機械、自動車、家庭用電化製品、玩具、繊維製品、スポーツ用品、携帯電話、コンピュータ、ラップトップ、GPS装置、又は光学装置のための高温耐性アタッチメントなどの射出成形部品、成形物品、又は繊維の原材料として使用されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって製造される高温耐性ポリアミド、又は請求項12~15のいずれか一項に記載の高温耐性ポリアミドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温耐性ポリアミドを製造するための方法、高温耐性ポリアミド及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高温耐性ポリアミドは、一般に、150℃以上で長期間使用することができるポリアミドエンジニアリングプラスチックを指す。高温耐性ポリアミドは、良好な耐摩耗性、耐熱性、耐油性及び耐薬品性を有する。また原材料の水分吸収及び収縮を大幅に低減すると共に、優れた寸法安定性及び優れた機械的強度を有する。脂肪族ポリアミドと比較して、半芳香族ポリアミドは、一般に、優れた耐熱性を有する。高温耐性ポリアミドは、自動車、建設、軍事、航空宇宙産業などの、高い耐熱性が所望される分野での使用が増えている。工業的に製造されている高温耐性ポリアミドの種類としては、主に、PA46、PA6T、PA9Tなどがある。同時に、PA10T、PA4T、及びPA12Tなどの新規の高温耐性材料も出現し始めた。
【0003】
現在、半芳香族ポリアミドの工業的製造は、慣習的に、溶液重縮合プロセスによって行われており、このプロセスは一般に、2つのステップ:第一に、オートクレーブ内で重合させて半芳香族ポリアミドプレポリマーを得るステップと、次に、溶融重縮合又は固相重合を実行して分子量を増大させ、それによりポリアミドポリマーが得られるステップとを含む。したがって、このようなプロセスは一般に、2段階プロセスと呼ばれる。例えば、中国特許出願公開第102372920A号明細書には、部分芳香族ポリアミド成形組成物及びその使用が開示される。第一に、20Lのオートクレーブに、触媒、レギュレータ及び水と一緒にポリアミドの配合成分を入れた。反応混合物を50~80分間にわたって260℃の温度に加熱し、32バールの圧力で1時間維持した。続いて、ノズルを通して予備縮合物を排出した。予備縮合物を減圧下で乾燥させ、ダブルスクリュー押出機内で後縮合させた。次に、生成物をノズルから押出し、ペレット化した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存のプロセスは溶媒として水を使用し、したがって費用効率がよく、環境に優しい。しかしながら、生成されるプレポリマーは分子量が比較的低く、それを直接使用することが困難である。分子量を増大させるためにさらなる溶融重縮合又は固相重合が必要とされ、製造サイクルも長くなり、コストが増大される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従う一実施形態では、高温耐性ポリアミドを製造するための方法が提供されており、本方法は、任意選択的にポリアミド塩溶液を濃縮し、その後に以下の操作:
(1)加熱してP1の圧力まで加圧し、その圧力を維持するステップであって、圧力維持の最後に系の温度がT1であるステップ;
(2)P2の圧力まで減圧するステップであって、減圧の最後に系の温度がT2であるステップ;及び
(3)排気するステップであって、それによりポリアミド溶融物が得られるステップ
を実行することを含み、ここで、P1は0.8~4MPaであり、T1は250~290℃であり、T1<T2であり、且つ(T2-T1)/(P1-P2)=5~75である。
【0006】
本発明に従う一実施形態では、高温耐性ポリアミドが提供されており、高温耐性ポリアミドは、少なくとも、原材料としての成分(A)ジアミン及び成分(B)二酸から生成されるポリアミドを含み、成分(A)対成分(B)のモル比は、(0.5~5):1である。
【0007】
成分(A)ジアミンは、
(a1)4~16個の炭素原子を有する脂肪族直鎖若しくは分枝鎖ジアミン、(a2)芳香族ジアミン若しくは脂環式ジアミンのうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含み;及び/又は
成分(B)二酸は、
(b1)2~18個の炭素原子を有する脂肪族二酸、(b2)8個以上の炭素原子を有するベンゼン環含有二酸のうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含む。
【0008】
本発明に従う一実施形態では、高温耐性ポリアミドが、少なくとも、原材料としての成分(C)ポリアミド塩の溶液から生成されるポリアミドを含むことを特徴とする、高温耐性ポリアミドが提供される。
【0009】
本発明に従う一実施形態では、高温耐性ポリアミドが提供されており、高温耐性ポリアミドの構造単位は、以下の式:
【化1】
(式中、n=4~16、且つm=2~18である)
を含む。
【0010】
一実施形態では、nは、好ましくは4~7である。
【0011】
一実施形態では、mは、好ましくは4~16である。
【0012】
高温耐性ポリアミドは、280~328℃、好ましくは286~328℃の融点を有する。
【0013】
高温耐性ポリアミドは、1.80~2.70の相対粘度を有する。
【0014】
高温耐性ポリアミドは、5~12KJ/cm2、好ましくは6.5~10KJ/cm2のノッチ付き衝撃強度を有する。
【0015】
高温耐性ポリアミドは、95~140MPa、好ましくは105~134MPaの引張強度を有する。
【0016】
高温耐性ポリアミドは、135~190MPa、好ましくは155~183MPaの曲げ強度を有する。
【0017】
高温耐性ポリアミドは、3,500~4,400MPaの曲げ弾性率を有する。
【0018】
高温耐性ポリアミドは、240~320℃、好ましくは260~300℃の熱撓み温度を有する。
【0019】
本発明に従う一実施形態では、高温耐性ポリアミドの使用が提供されており、高温耐性ポリアミドは、射出成形部品、成形物品、又は繊維の原材料である。
【0020】
高温耐性ポリアミドを製造するための方法は、既存の重合プロセスと比較して、プロセスが簡単であり、エネルギー消費が低減されるという利点を有する。圧力と温度の相関関係を利用して、オートクレーブ内のサンプル残留物が多いという問題を解決し、連続マルチバッチ製造における困難を克服する。本方法は、良好な製品品質を有する高温耐性ポリアミドの製造に適している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の特徴及び利点を具体化する典型的な実施形態は、以下の説明において詳細に記載される。本発明が、本発明の範囲から逸脱することなく、異なる実施形態において種々の変形を有し得ることは、理解されるべきである。本明細書に記載される説明は、実質的に例示の目的で使用されるものであり、本発明を限定するために使用されるべきではない。
【0022】
本発明に従う一実施形態では、高温耐性ポリアミドを製造するための方法が提供されており、本方法は、任意選択的にポリアミド塩溶液を濃縮し、その後に以下の操作:
(1)加熱してP1の圧力まで加圧し、その圧力を維持するステップであって、圧力維持の最後に系の温度がT1であるステップ;
(2)P2の圧力まで減圧するステップであって、減圧の最後に系の温度がT2であるステップ;及び
(3)排気するステップであって、それによりポリアミド溶融物が得られるステップ
を実行することを含む。
【0023】
好ましくは、本方法は、以下のステップ:
任意選択的に20~90wt%の質量濃度を有するポリアミド塩溶液を濃縮するステップと、その後に以下の操作:
(1)加熱してP1の圧力まで加圧し、その圧力を維持するステップであって、圧力維持の最後に系の温度がT1であるステップ;
(2)P2の圧力まで減圧するステップであって、減圧の最後に系の温度がT2であるステップ;及び
(3)排気するステップであって、それによりポリアミド溶融物が得られるステップ
を実行するステップとを含む。
【0024】
一実施形態では、本方法は、以下のステップ:成分(A)ジアミン、成分(B)二酸及び水を混合して、20~90wt%の質量濃度を有するポリアミド塩溶液を生成するステップと、任意選択的にポリアミド塩溶液を濃縮するステップと、その後に以下の操作:
(1)加熱してP1の圧力まで加圧し、その圧力を維持するステップであって、圧力維持の最後に系の温度がT1であるステップ;
(2)P2の圧力まで減圧するステップであって、減圧の最後に系の温度がT2であるステップ;及び
(3)排気するステップであって、それによりポリアミド溶融物が得られるステップ
を実行するステップとを含む。
【0025】
一実施形態では、ポリアミド塩溶液が10wt%の質量濃度を有する場合、pH値は、6.5~9.0、好ましくは7.6~8.4、例えば、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.1、8.2、8.3、8.5、又は8.7である。本明細書中、「ポリアミド塩溶液が10wt%の質量濃度を有する」における濃度は、未濃縮のポリアミド塩溶液そのものの質量濃度、又は濃縮若しくは未濃縮のポリアミド塩溶液をサンプリングして希釈した後に得られる質量濃度を指すことができる。一実施形態では、ポリアミド塩溶液は、20wt%以上、好ましくは20~90wt%、例えば、25wt%、30wt%、35wt%、40wt%、45wt%、48wt%、55wt%、57wt%、60wt%、62wt%、65wt%、68wt%、70wt%、72wt%、75wt%、77wt%、80wt%、又は85wt%の質量濃度を有する。本明細書中、ポリアミド塩溶液の質量濃度は、未濃縮のポリアミド塩溶液そのものの質量濃度、又は濃縮ポリアミド塩溶液の質量濃度であり得る。
【0026】
一実施形態では、ポリアミド塩は、成分(A)ジアミンと、成分(B)二酸との反応によって生成される塩を含む。成分(A)対成分(B)のモル比は、(0.5~5):1、好ましくは(0.6~3):1、より好ましくは(0.6~1.6):1、さらにより好ましくは(0.9~1.3):1、またさらにより好ましくは(1.01~1.3):1である。ポリアミド塩溶液のpH値は、ジアミン対二酸のモル比を制御することによって調整され得る。例えば、ジアミンを二酸に対して化学量論的に過剰にすることにより、ポリアミド塩のpHはアルカリ性にされる。
【0027】
ポリアミド塩溶液は、少なくとも、成分(A)ジアミンのイオン及び成分(B)二酸のイオンを含む。
【0028】
一実施形態では、ポリアミド塩溶液は、
(1)成分(A)ジアミン、成分(B)二酸、及び溶媒を混合することによって得られる溶液、(2)成分(C)ポリアミド塩、及び溶媒を混合することによって得られる溶液、並びに(3)成分(C)ポリアミド塩、成分(A)ジアミン及び/又は成分(B)二酸、及び溶媒を混合することによって得られる溶液のうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含む。
【0029】
溶媒は水を含むが、これに限定されない。
【0030】
ジアミン及び二酸の反応によって生成される塩はポリアミド塩であり、これは、「ナイロン塩」とも呼ばれる。ポリアミドは、ポリアミド塩の重縮合によって得られる。ステップ(1)~ステップ(3)における重縮合の間、ポリアミド塩間のカルボキシル基及びアミノ基が結合され、水が脱離する。
【0031】
一実施形態では、ジアミン又は二酸は、発酵プロセス、又は酵素的変換プロセスによって生成され得る。
【0032】
一実施形態では、P1は0.8~4MPaであり、T1は250~290℃である。
【0033】
一実施形態では、P1は3~4MPaである。
【0034】
一実施形態では、T1は275~290℃である。
【0035】
いくつかの実施形態では、P1は、例えば、1MPa、1.2MPa、1.5MPa、1.8MPa、2MPa、2.1MPa、2.2MPa、2.5MPa、3MPa、3.5MPa、又は3.8MPaである。
【0036】
いくつかの実施形態では、T1は、例えば、255℃、260℃、262℃、265℃、268℃、270℃、272℃、275℃、277℃、280℃、283℃、又は286℃である。
【0037】
一実施形態では、T1<T2であり、(T2-T1)/(P1-P2)=5~75である。
【0038】
一実施形態では、T1<T2であり、(T2-T1)/(P1-P2)=5~55である。
【0039】
一実施形態では、T1<T2であり、(T2-T1)/(P1-P2)=10~45である。
【0040】
一実施形態では、T1<T2であり、(T2-T1)/(P1-P2)=10~23である。
【0041】
一実施形態では、T1<T2であり、(T2-T1)/(P1-P2)=10~16である。
【0042】
一実施形態では、(T2-T1)/(P1-P2)は、例えば、10、12、14、15、18、20、22、25、28、30、35、40、42、46、50、55、57、63、66、又は68であり得る。
【0043】
(T2-T1)は、T2(℃)とT1(℃)との間の差値であり、(P1-P2)は、P1(MPa)とP2(MPa)との間の差値である。
【0044】
一実施形態では、成分(A)ジアミンは、(a1)4~16個の炭素原子を有する脂肪族直鎖若しくは分枝鎖ジアミン、(a2)芳香族ジアミン若しくは脂環式ジアミンのうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含む。
【0045】
一実施形態では、成分(B)二酸は、(b1)2~18個の炭素原子を有する脂肪族二酸、(b2)8個以上の炭素原子を有するベンゼン環含有二酸のうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、成分(a1)は、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個の炭素原子を有する脂肪族直鎖又は分枝鎖ジアミンである。
【0047】
いくつかの実施形態では、成分(a2)の炭素原子の数は、5~10個、好ましくは5~6個、例えば、5、6、7、8、9、又は10個である。
【0048】
いくつかの実施形態では、成分(b1)の炭素原子の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18個であり得る。
【0049】
一実施形態では、成分(b2)の炭素原子の数は、8~12個、好ましくは8~10個であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、成分(b2)の炭素原子の数は、例えば、8、9、10、11、又は12個であり得る。
【0051】
一実施形態では、成分(a1)は、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、及びヘキサデカンジアミンのうちの1つ又は複数を含む。
【0052】
一実施形態では、成分(a2)は、シクロペンタンジアミン、メチルシクロペンタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、及びm-フェニレンジアミンのうちの1つ又は複数を含む。
【0053】
一実施形態では、成分(b1)は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、及びオクタデカン二酸のうちの1つ又は複数を含む。
【0054】
一実施形態では、成分(b2)は、テレフタル酸、イソフタル酸、及びフタル酸のうちの1つ又は複数を含む。
【0055】
一実施形態では、ポリアミド塩溶液は、少なくとも、成分(A)ジアミン、成分(B)二酸、及び溶媒を混合することによって得られる溶液である。
【0056】
一実施形態では、成分(A)ジアミンは、(a1)4~16個の炭素原子を有する脂肪族直鎖又は分枝鎖ジアミンを含み、成分(B)二酸は、(b1)2~18個の炭素原子を有する脂肪族二酸と、(b2)テレフタル酸、イソフタル酸、及びフタル酸のうちの1つ又は複数とを含む。
【0057】
一実施形態では、成分(A)対成分(B)のモル比は、(0.5~5):1、好ましくは(0.6~3):1、より好ましくは(0.6~1.6):1、さらに好ましくは(0.9~1.3):1、さらにより好ましくは(1.01~1.3):1であり、例えば、1:1、1.1:1、1.15:1、1.2:1、1.3:1、1.5:1、1.8:1、2:1、2.3:1、2.5:1、3:1、3.5:1、又は4:1である。
【0058】
一実施形態では、成分(a1)対成分(b1)のモル比は、(0.5~12):1、好ましくは(1~10):1、より好ましくは(1~8):1、さらに好ましくは(2~5):1、さらにより好ましくは(2.3~3.3):1であり、例えば、0.8:1、1.2:1、1.4:1、1.5:1、1.8:1、2:1、2.2:1、2.5:1、2.7:1、3:1、3.2:1、3.5:1、4.5:1、5:1、6:1、8:1、又は9:1である。
【0059】
一実施形態では、成分(a1)対成分(b2)のモル比は、(0.1~6):1、好ましくは(0.5~5):1、より好ましくは(0.5~4):1、さらに好ましくは(1~4):1、より好ましくは(1~2):1、さらに好ましくは(1~1.7):1、さらにより好ましくは(1.4~1.7):1であり、例えば、0.2:1、0.3:1、0.7:1、1.0:1、1.3:1、1.5:1、1.6:1、1.8:1、2:1、2.3:1、2.5:1、2.6:1、2.8:1、3:1、3.5:1、3.8:1、4:1、又は4.6:1である。
【0060】
一実施形態では、ポリアミド生成物の引張強度、曲げ強度、及び/又は曲げ弾性率などのパラメータは、ジアミン成分と二酸成分との関係、特に、種類、含有量、及び/又は相対比を制御することによって改善され得る。
【0061】
一実施形態では、成分(b2)の含有量は上記の合理的な範囲内にあり、ポリアミド生成物の引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率などのパラメータが改善される。
【0062】
一実施形態では、ポリアミド生成物の柔軟性は、長鎖二酸/ジアミンを導入することによって改善される。
【0063】
一実施形態では、ステップ(1)において、圧力維持時間は、1~4時間、好ましくは1.5~3時間である。
【0064】
一実施形態では、ステップ(1)において、圧力維持の方法は、圧力を維持するために脱気することである。
【0065】
一実施形態では、P2の圧力まで減圧するステップ(2)の間、圧力P及び温度Tは、以下の条件:PがP1の0.4~0.65倍である場合、例えば、PがP1の0.4~0.6倍である場合、又はPがP1の0.4~0.55倍である場合に、T=(1.01~1.18)xT1である、例えば、1.095T1、1.097T1、1.101T1、1.102T1、1.11T1、1.115T1、1.12T1、1.13T1、1.14T1、1.145T1、1.15T1、1.16T1、又は1.17T1であることを満たし、ここで、P2<P<P1、且つT1<T<T2である。
【0066】
一実施形態では、P2の圧力まで減圧するステップ(2)の間、圧力P及び温度Tは、以下の条件:PがP1の0.4~0.65倍である場合、例えば、PがP1の0.4~0.6倍である場合、又はPがP1の0.4~0.55倍である場合に、Tは、(1.03~1.18)xT1、さらに好ましくは(1.04~1.18)xT1、より好ましくは(1.04~1.16)xT1、さらに好ましくは(1.04~1.15)xT1、より好ましくは(1.06~1.15)xT1、さらにより好ましくは(1.095~1.14)xT1、またさらにより好ましくは(1.095~1.13)xT1であることを満たし、ここで、P2<P<P1、且つT1<T<T2である。
【0067】
一実施形態では、P2の圧力まで減圧するステップ(2)の間、圧力P及び温度Tは、以下の条件:PがP1の0.1~0.3倍である場合、例えば、PがP1の0.12~0.3倍である場合、又はPがP1の0.14~0.3倍である場合に、Tは、(1.132~1.26)xT1、例えば、1.15T1、1.17T1、1.22T1、1.23T1、1.24T1、1.25T1、又は1.27T1を満たし、ここで、P2<P<P1、且つT1<T<T2である。
【0068】
一実施形態では、P2の圧力まで減圧するステップ(2)の間、圧力P及び温度Tは、以下の条件:PがP1の0.1~0.3倍である場合、例えば、PがP1の0.12~0.3倍である場合、又はPがP1の0.14~0.3倍である場合に、Tは、(1.132~1.20)xT1、さらに好ましくは(1.132~1.17)xT1、より好ましくは(1.132~1.16)xT1、好ましくは(1.132~1.155))xT1を満たし、ここで、P2<P<P1、且つT1<T<T2である。
【0069】
一実施形態では、プロセスの歩留まりは、減圧するコースステップ(2)を制御することによって改善される。
【0070】
一実施形態では、得られるポリアミド生成物の相対粘度は、減圧するステップ(2)の経過を制御することによって比較的高くなる。
【0071】
一実施形態では、ステップ(2)での減圧の間、系の温度は上昇し続ける。
【0072】
一実施形態では、ステップ(2)での減圧の期間は0.5~3時間、好ましくは0.8~1.5時間である。
【0073】
一実施形態では、T2は、295~340℃、好ましくは305~335℃、より好ましくは325~335℃である。例えば、T2は、300℃、310℃、315℃、320℃、又は330℃である。
【0074】
一実施形態では、P2は、0~0.05MPa、好ましくは0~0.02MPaである。例えば、P2は、0.01MPa、0.02MPa、0.03MPa、0.035MPa、又は0.04MPaである。
【0075】
一実施形態では、P1>P2である。
【0076】
一実施形態では、重縮合の間、ポリアミド塩溶液中に元々含有されていた水に加えて、系に存在する水には、重縮合中に生成される水も含まれる。
【0077】
一実施形態では、重縮合の間に水蒸気が排出され、これにより、反応プロセスが調整され、特に系の圧力が低下される。
【0078】
一実施形態では、ステップ(1)及びステップ(2)の間に、系の圧力を低下させるように水蒸気が排出される。
【0079】
一実施形態では、ステップ(1)の間に水蒸気が外部に排出され、排出された水蒸気(モル)の、ポリアミド塩溶液中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、(60.6~93.9):100、好ましくは(75.4~90.9):100、より好ましくは(80~90.9):100、さらにより好ましくは(87~90.9):100であり、例えば、65:100、70:100、72:100、75:100、78:100、82:100、84:100、85:100、86:100、88:100、90:100、又は91:100である。
【0080】
一実施形態では、ステップ(1)の間に水蒸気が外部に排出され、排出された水蒸気(モル)のポリアミド塩溶液中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、(60.6~93.9):100、好ましくは(75.4~93.9):100、より好ましくは(80~93.9):100、さらにより好ましくは(87~93.9):100である。
【0081】
一実施形態では、ステップ(2)の間に水蒸気が排出され、排出された水蒸気(モル)のポリアミド塩溶液中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、(93.9~118.2):100、好ましくは(93.9~114):100、好ましくは(98.7~113.9):100であり、例えば、94:100、95:100、96:100、97:100、98:100、99:100、100:100、102:100、103:100、105:100、107:100、110:100、又は112:100である。
【0082】
一実施形態では、ステップ(2)の間に水蒸気が排出され、排出された水蒸気(モル)のポリアミド塩溶液中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、(93.9~118.2):100、さらに好ましくは(104~117):100、より好ましくは(110~117):100、さらにより好ましくは(110~114):100である。
【0083】
一実施形態では、ステップ(1)での反応の前に、ポリアミド塩溶液は濃縮され、ステップ(1)及びステップ(2)における脱水率は、濃縮ポリアミド塩溶液に基づく。
【0084】
一実施形態では、ステップ(1)での反応の前に、ポリアミド塩溶液は、50%~85wt%、より好ましくは55~70wt%、さらにより好ましくは60~70wt%、例えば、52wt%、55wt%、57wt%、60wt%、62wt%、65wt%、68wt%、70wt%、72wt%、75wt%、77wt%、80wt%及び85wt%の濃度まで濃縮される。
【0085】
一実施形態では、ステップ(3)において、排気は、-0.09~-0.005MPa、さらに好ましくは-0.09~-0.01MPa、より好ましくは-0.09~-0.02MPa、さらにより好ましくは-0.065~-0.04MPaの圧力まで実行される。
【0086】
一実施形態では、排気のステップ(3)の最後に、系の温度は、310~340℃、好ましくは315~335℃であり、例えば、312℃、318℃、320℃、325℃、328℃、330℃、又は333℃である。
【0087】
一実施形態では、ステップ(3)での排気時間は、1~40分、好ましくは4~20分である。
【0088】
一実施形態では、本方法はさらに、ポリアミド溶融物を排出及びペレット化し、それによりポリアミド樹脂が得られるステップ(4)を含む。
【0089】
一実施形態では、ペレット化は水冷ペレット化であってもよく、冷却水の温度は10~30℃である。
【0090】
一実施形態では、ポリアミド塩溶液は、さらに成分(D)添加剤を含む。
【0091】
一実施形態では、成分(D)添加剤は、ステップ(1)~ステップ(3)のいずれかの段階で添加される。
【0092】
一実施形態では、成分(D)は、酸化防止剤、消泡剤、UV安定剤、熱安定剤、結晶化促進剤、フリーラジカルスカベンジャー、潤滑剤、可塑剤、衝撃改質剤、無機充填剤、光沢剤、染料、難燃剤、及びミネラルのうちの1つ又は複数を含む。
【0093】
一実施形態では、成分(D)のモル量は、成分(A)及び/又は成分(C)のモル量の(0.001~1)%、好ましくは(0.01~0.8)%、好ましくは(0.02~0.4)%であり、例えば、0.03%、0.05%、0.07%、0.1%、0.12%、0.15%、0.2%、0.24%、0.27%、0.30%、0.33%、0.38%、0.45%、0.5%、又は0.6%である。
【0094】
一実施形態では、熱安定剤はさらに、リン酸、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリフェニル、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸亜鉛、及び次亜リン酸カリウムのうちの1つ又は複数を含む。
【0095】
一実施形態では、結晶化促進剤はさらに、長炭素鎖カルボン酸の金属塩を含む。長炭素鎖カルボン酸の炭素原子の数は、好ましくは10~30個であり、金属は、好ましくは、カルシウム、マグネシウム、及び亜鉛のうちの1つ又は複数を含む。
【0096】
一実施形態では、無機充填剤はさらに、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維、カーボンブラック、及びグラファイトのうちの1つ又は複数を含む。
【0097】
一実施形態では、ミネラルはさらに、二酸化チタン、炭酸カルシウム、及び硫酸バリウムのうちの1つ又は複数を含む。
【0098】
一実施形態では、成分(D)添加剤は、少なくとも酸化防止剤を含む。
【0099】
一実施形態では、成分(D)添加剤は、少なくとも消泡剤を含む。
【0100】
一実施形態では、成分(D)添加剤は、少なくとも熱安定剤を含む。
【0101】
一実施形態では、成分(D)添加剤は、少なくとも、酸化防止剤、消泡剤、及び熱安定剤を含む。
【0102】
一実施形態では、高温耐性ポリアミドを製造するための方法全体は、不活性ガス雰囲気下で実施される。
【0103】
一実施形態では、ステップ(1)及び/又はステップ(2)及び/又はステップ(3)及び/又はステップ(4)は、不活性ガス雰囲気下で実施される。
【0104】
不活性ガスは、窒素、アルゴン、又はヘリウムを含む。
【0105】
本発明の一実施形態は、原材料としての成分(A)ジアミン及び成分(B)二酸から生成されるポリアミドを含む高温耐性ポリアミドを提供し、成分(A)対成分(B)のモル比は、(0.5~5):1である。
【0106】
一実施形態では、成分(A)ジアミンは、
(a1)4~16個の炭素原子を有する脂肪族直鎖若しくは分枝鎖ジアミン、(a2)芳香族ジアミン若しくは脂環式ジアミンのうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含む。
【0107】
一実施形態では、成分(B)二酸は、
(b1)2~18個の炭素原子を有する脂肪族二酸、(b2)8個以上の炭素原子を有するベンゼン環含有二酸のうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含む。
【0108】
一実施形態では、高温耐性ポリアミドは、少なくとも、原材料としての成分(C)ポリアミド塩の溶液から生成されるポリアミドを含む。
【0109】
一実施形態では、高温耐性ポリアミドの構造単位は、以下の式:
【化2】
(式中、n=4~16、好ましくは4~10、好ましくは4~8であり、例えば、nは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16であり;
m=2~18、好ましくは4~16であり、例えば、mは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16である)
を含む。
【0110】
一実施形態では、高温耐性ポリアミドが提供される。高温耐性ポリアミドは、280~328℃、好ましくは286~328℃、好ましくは293~320℃、例えば、290、294、298、301、304、307、309、312、315、317、321、又は325℃の融点を有する。
【0111】
高温耐性ポリアミドは、1.80~2.70、好ましくは2.0~2.5、例えば、1.85、1.9、1.95、2.1、2.2、2.3、2.4、2.55、2.6、2.67、又は2.7の相対粘度を有する。
【0112】
高温耐性ポリアミドは、5~12KJ/cm2、好ましくは7.0~10KJ/cm2、より好ましくは6.5~10KJ/cm2、例えば、5.5、6.5、7.5、8.0、8.2、8.5、8.7、9.3、9.6、9.8、10.2、又は10.5KJ/cm2のノッチ付き衝撃強度を有する。
【0113】
高温耐性ポリアミドは、95~140MPa、好ましくは105~134MPa、より好ましくは105~131MPa、例えば、100、110、112、116、119、121、125、132、135、又は138MPaの引張強度を有する。
【0114】
高温耐性ポリアミドは、135~190MPa、好ましくは155~183MPa、より好ましくは155~173MPa、例えば、140、145、150、154、157、161、164、169、172、175、178、183、又は185MPaの曲げ強度を有する。
【0115】
高温耐性ポリアミドは、3500~4400MPa、好ましくは3700~4200MPa、例えば、3600、3650、3750、3800、3850、3890、3920、3950、3995、4050、4130、4200、又は4300MPaの曲げ弾性率を有する。
【0116】
高温耐性ポリアミドは、240~320℃、好ましくは270~310℃、より好ましくは260~300℃、例えば、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、又は277℃の熱撓み温度を有する。
【0117】
一実施形態では、高温耐性ポリアミドの使用が提供されており、高温耐性ポリアミドは、射出成形部品、成形物品、又は繊維の原材料である。
【0118】
一実施形態では、高温耐性ポリアミドは、機械、自動車、家庭用電化製品、玩具、繊維製品、スポーツ用品、携帯電話、コンピュータ、ラップトップ、GPS装置、又は光学装置のための高温耐性アタッチメントなどの射出成形部品、成形物品、又は繊維の原材料として使用される。
【0119】
本発明の一実施形態に従う高温耐性ポリアミド及びその調製方法は、特定の実施例と共に、以下にさらに説明される。関与される関連の試験は、以下の通りである:
【0120】
1)曲げ強度及び曲げ弾性率試験:試験は、標準ISO178-2010に従い、2mm/分の条件下で実行される。サンプルバーのサイズは、10mm*4mm*80mmである。
【0121】
2)引張強度試験:試験は、標準ISO572-2-2012に従い、50mm/分の条件下で実行される。
【0122】
3)ノッチ付き衝撃強度試験:ノッチ付き衝撃強度試験は、23℃の試験条件下、測定標準ISO180/1Aに従うカンチレバービームノッチ付き衝撃試験である。
【0123】
4)相対粘度:相対粘度は、以下の方法で濃硫酸及びウベローデ粘度計を使用することによって試験される:0.25±0.0002gの乾燥ポリアミド樹脂チップを正確に秤量し、50mLの濃硫酸(96wt%)を添加してポリアミド樹脂チップを溶解させ、それにより、ポリアミドサンプル溶液が得られ;そして、25℃の一定温度の水浴中で、濃硫酸の流下時間t0及びポリアミドサンプル溶液の流下時間を測定及び記録する。
相対粘度は、以下の式に従って計算される:
相対粘度=t/t0
tは、ポリアミドサンプル溶液の流下時間を表し;t0は、濃硫酸の溶媒の流下時間を表す。
【0124】
5)熱撓み温度(HDT):実施例において生成されるポリアミドと、30wt%のガラス繊維とをブレンドして、ガラス繊維強化ポリアミドを得る。次に、国家標準GB/T1634.2-2004に従って熱撓み温度が試験される。ここで、サンプルのサイズは、120mm*10mm*4mm(長さ*幅*厚さ)であり、適用される曲げ応力は1.8MPaである。
【0125】
6)融点試験:試験は、示差走査熱量計において実施される。
【0126】
他に規定されない限り、本発明における温度は全て℃で表され、圧力は全てゲージ圧であり、圧力はMPaで表される。他に規定されない限り、実施例で使用される酸化防止剤H10は、BRUGGOLEN H10酸化防止剤であり、実施例で使用される消泡剤は、Dow Corning Defoamer 3168である。
【実施例】
【0127】
実施例1
高温耐性ポリアミドを製造するための方法には、以下のステップが含まれた:
3838.73モルの1,5-ペンタンジアミン、1411.03モルのアジピン酸、2423.04モルのテレフタル酸及び水を窒素雰囲気下で均一に混合して、50wt%のポリアミド塩溶液を生成した。ポリアミド塩溶液からサンプルを採取した。サンプルを10wt%の濃度まで希釈すると、pH値は8.10であった。次亜リン酸ナトリウム(120ppm)、酸化防止剤H10(2000ppm)及びDow Corning Defoamer 3168(50ppm)をポリアミド塩溶液に添加し、均一に混合した。
【0128】
65wt%の濃度まで濃縮されるようにポリアミド塩溶液を138℃に加熱し、次に以下のステップを受けさせた:
【0129】
ステップ(1):ポリアミド塩溶液を加熱し続け、加圧した。反応系内の圧力を3.5MPa(P1)まで上昇させ、脱気により圧力を維持する。圧力維持の最後に反応系の温度(T1)は、279℃であった。
【0130】
ステップ(2):温度の上昇を続けながら、反応系内の圧力が0MPa(P2、ゲージ圧)になるまで圧力の低下を開始した。この時点で、反応系の温度(T2)は330℃であった。減圧の間、圧力(P)が1.8MPaのときに、系の温度(T)は303℃であった。圧力(P)が0.7MPaのときに、系の温度(T)は319℃であった。
【0131】
ステップ(3):排気により圧力を-0.06MPaに維持した。排気時間は15分であった。排気の最後に系の温度は335℃であり、ポリアミド溶融物が得られた。
【0132】
ステップ(4):溶融物を排出し、水冷によりペレット化して、ポリアミド樹脂を得た。
【0133】
ここで、ステップ(1)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(65wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、90.2:100であった。ステップ(2)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(65wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、113.1:100であった。
【0134】
実施例2
高温耐性ポリアミドを製造するための方法には、以下のステップが含まれた:
3875モルの1,5-ペンタンジアミン、1894.80モルのアジピン酸、1975.02モルのテレフタル酸及び水を窒素雰囲気下で均一に混合して、50wt%のポリアミド塩溶液を生成した。ポリアミド塩溶液からサンプルを採取した。サンプルを10wt%の濃度まで希釈すると、pH値は8.20であった。次亜リン酸ナトリウム(120ppm)、酸化防止剤H10(2000ppm)及びDow Corning Defoamer 3168(50ppm)をポリアミド塩溶液に添加し、均一に混合した。
【0135】
68wt%の濃度まで濃縮されるようにポリアミド塩溶液を130℃に加熱し、次に以下のステップを受けさせた:
【0136】
ステップ(1):ポリアミド塩溶液を加熱し続け、加圧した。反応系内の圧力を2.5MPa(P1)まで上昇させ、脱気により圧力を維持した。圧力維持の最後に反応系の温度(T1)は、267℃であった。
【0137】
ステップ(2):温度の上昇を続けながら、反応系内の圧力が0MPa(P2、ゲージ圧)になるまで圧力の低下を開始した。この時点で、反応系の温度(T2)は315℃であった。減圧の間、圧力(P)が1.2MPaのときに、系の温度(T)は295℃であった。圧力(P)が0.4MPaのときに、系の温度(T)は308℃であった。
【0138】
ステップ(3):排気により圧力を-0.04MPaに維持した。排気時間は10分であった。排気の最後に系の温度は321℃であり、ポリアミド溶融物が得られた。
【0139】
ステップ(4):溶融物を排出し、水冷によりペレット化して、ポリアミド樹脂を得た。
【0140】
ここで、ステップ(1)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(68wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、83.3:100であった。ステップ(2)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(68wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、106.9:100であった。
【0141】
実施例3
高温耐性ポリアミドを製造するための方法には、以下のステップが含まれた:
3913.92モルの1,5-ペンタンジアミン、2418.56モルのアジピン酸、1490.82モルのテレフタル酸及び水を窒素雰囲気下で均一に混合して、50wt%のポリアミド塩溶液を生成した。ポリアミド塩溶液からサンプルを採取した。サンプルを10wt%の濃度まで希釈すると、pH値は8.20であった。次亜リン酸ナトリウム(120ppm)、酸化防止剤H10(2000ppm)及びDow Corning Defoamer 3168(50ppm)をポリアミド塩溶液に添加し、均一に混合した。
【0142】
62wt%の濃度まで濃縮されるようにポリアミド塩溶液を122℃に加熱し、次に以下のステップを受けさせた:
【0143】
ステップ(1):ポリアミド塩溶液を加熱し続け、加圧した。反応系内の圧力を1.4MPa(P1)まで上昇させ、脱気により圧力を維持した。圧力維持の最後に反応系の温度(T1)は、255℃であった。
【0144】
ステップ(2):温度の上昇を続けながら、反応系内の圧力が0MPa(P2、ゲージ圧)になるまで圧力の低下を開始した。この時点で、反応系の温度(T2)は299℃であった。減圧の間、圧力(P)が0.7MPaのときに、系の温度(T)は287℃であった。圧力(P)が0.2MPaのときに、系の温度(T)は298℃であった。
【0145】
ステップ(3):排気により圧力を-0.02MPaに維持した。排気時間は5分であった。排気の最後に系の温度は313℃であり、ポリアミド溶融物が得られた。
【0146】
ステップ(4):溶融物を排出し、水冷によりペレット化して、ポリアミド樹脂を得た。
【0147】
ここで、ステップ(1)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(62wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、77.6:100であった。ステップ(2)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(62wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、99.8:100であった。
【0148】
実施例4
高温耐性ポリアミドを製造するための方法には、以下のステップが含まれた:
2977.99モルのデカンジアミン、625モルのアジピン酸、2351.05モルのテレフタル酸及び水を窒素雰囲気下で均一に混合して、50wt%のポリアミド塩溶液を生成した。ポリアミド塩溶液からサンプルを採取した。サンプルを10wt%の濃度まで希釈すると、pH値は8.20であった。次亜リン酸ナトリウム(120ppm)、酸化防止剤H10(2000ppm)及びDow Corning Defoamer 3168(50ppm)をポリアミド塩溶液に添加し、均一に混合した。
【0149】
65wt%の濃度まで濃縮されるようにポリアミド塩溶液を130℃に加熱し、次に以下のステップを受けさせた:
【0150】
ステップ(1):ポリアミド塩溶液を加熱し続け、加圧した。反応系内の圧力を2.5MPa(P1)まで上昇させ、脱気により圧力を維持した。圧力維持の最後に反応系の温度(T1)は、270℃であった。
【0151】
ステップ(2):温度の上昇を続けながら、反応系内の圧力が0MPa(P2、ゲージ圧)になるまで圧力の低下を開始した。この時点で、反応系の温度(T2)は320℃であった。減圧の間、圧力(P)が1.1MPaのときに、系の温度(T)は305℃であった。圧力(P)が0.8MPaのときに、系の温度(T)は318℃であった。
【0152】
ステップ(3):排気により圧力を-0.04MPaに維持した。排気時間は10分であった。排気の最後に系の温度は320℃であり、ポリアミド溶融物が得られた。
【0153】
ステップ(4):溶融物を排出し、水冷によりペレット化して、ポリアミド樹脂を得た。
【0154】
ここで、ステップ(1)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(65wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、83.1:100であった。ステップ(2)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(65wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、106.9:100であった。
【0155】
実施例5
高温耐性ポリアミドを製造するための方法には、以下のステップが含まれた:
3587.55モルの1,5-ペンタンジアミン、602.39モルのドデカン二酸、2982.72モルのテレフタル酸及び水を窒素雰囲気下で均一に混合して、50wt%のポリアミド塩溶液を生成した。ポリアミド塩溶液からサンプルを採取した。サンプルを10wt%の濃度まで希釈すると、pH値は8.20であった。次亜リン酸ナトリウム(120ppm)、酸化防止剤H10(2000ppm)、及びDow Corning Defoamer 3168(50ppm)をポリアミド塩溶液に添加し、均一に混合した。
【0156】
65wt%の濃度まで濃縮されるようにポリアミド塩溶液を130℃に加熱し、次に以下のステップを受けさせた:
【0157】
ステップ(1):ポリアミド塩溶液を加熱し続け、加圧した。反応系内の圧力を2.5MPa(P1)まで上昇させ、脱気により圧力を維持した。圧力維持の最後に反応系の温度(T1)は、275℃であった。
【0158】
ステップ(2):温度の上昇を続けながら、反応系内の圧力が0MPa(P2、ゲージ圧)になるまで圧力の低下を開始した。この時点で、反応系の温度(T2)は315℃であった。減圧の間、圧力(P)が1.3MPaのときに、系の温度(T)は300℃であった。圧力(P)が0.7MPaのときに、系の温度(T)は314℃であった。
【0159】
ステップ(3):排気により圧力を-0.04MPaに維持した。排気時間は10分であった。排気の最後に系の温度は318℃であり、ポリアミド溶融物が得られた。
【0160】
ステップ(4):溶融物を排出し、水冷によりペレット化して、ポリアミド樹脂を得た。
【0161】
ここで、ステップ(1)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(65wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、81.0:100であった。ステップ(2)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(65wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、110.5:100であった。
【0162】
実施例6
高温耐性ポリアミドを調製するためのステップ及び条件は、ステップ(2)において、温度の上昇を続けながら、反応系内の圧力が0MPa(P2、ゲージ圧)になるまで圧力の低下を開始した;この時点で、反応系の温度(T2)が330℃であった;減圧の間、圧力(P)が1.5MPaのときに、系の温度(T)が283℃であり、そして圧力(P)が0.7MPaのときに、系の温度(T)が319℃であったことを除いて、実施例1の場合と同じであった。
【0163】
実施例7
高温耐性ポリアミドを調製するためのステップ及び条件は、ステップ(2)において、温度の上昇を続けながら、反応系内の圧力が0MPa(P2、ゲージ圧)になるまで圧力の低下を開始した;この時点で、反応系の温度(T2)が330℃であった;減圧の間、圧力(P)が1.8MPaのときに、系の温度(T)が303℃であった;そして圧力(P)が0.6MPaのときに、系の温度(T)が330℃であったことを除いて、実施例1の場合と同じであった。
【0164】
実施例8
高温耐性ポリアミドを調製するためのステップ及び条件は、ステップ(2)において、温度の上昇を続けながら、反応系内の圧力が0MPa(P2、ゲージ圧)になるまで圧力の低下を開始した;この時点で、反応系の温度(T2)が330℃であった;減圧の間、圧力(P)が1.5MPaのときに、系の温度(T)が283℃であった;そして圧力(P)が0.6MPaのときに、系の温度(T)が330℃であったことを除いて、実施例1の場合と同じであった。
【0165】
実施例9
高温耐性ポリアミドを調製するためのステップ及び条件は、ステップ(1)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(65wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)が69.5:100であった;そしてステップ(2)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(65wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)が113.1:100であったことを除いて、実施例1の場合と同じであった。
【0166】
実施例10
高温耐性ポリアミドを調製するためのステップ及び条件は、ステップ(1)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(65wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)が70.2:100であった;そしてステップ(2)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(65wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)が116.7:100であったことを除いて、実施例1の場合と同じであった。
【0167】
実施例11
高温耐性ポリアミドを調製するためのステップ及び条件は、ステップ(2)において、温度の上昇を続けながら、反応系内の圧力が0MPa(P2、ゲージ圧)になるまで圧力の低下を開始した;この時点で、反応系の温度(T2)が330℃であった;減圧の間、圧力(P)が1.5MPaのときに、系の温度(T)が275℃であった;そして圧力(P)が0.7MPaのときに、系の温度(T)が319℃であったことを除いて、実施例4の場合と同じであった。
ステップ(1)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(65wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、71.4:100であった;そしてステップ(2)で排出される水蒸気(モル)の、濃縮ポリアミド塩溶液(65wt%)中の含水量(モル)に対する比率(脱水率と略される)は、113.1:100であった。
【0168】
上記の実施例で得られたポリアミド樹脂についての試験結果を表1に示した。
【0169】
【0170】
特に限定されない限り、本発明で使用される用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0171】
本発明に記載される実施形態は例示のみを目的とするものであり、本発明の保護範囲を限定することは意図されない。当業者は、本発明の範囲内で種々の置換、修正及び改善を行うことができる。したがって、本発明は上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温耐性ポリアミドを製造するための方法であって、
任意選択的にポリアミド塩溶液を濃縮し、その後に以下の操作:
(1)加熱してP1の圧力まで加圧し、前記圧力を維持するステップであって、前記圧力維持の最後に系の温度がT1であるステップ;
(2)P2の圧力まで減圧するステップであって、前記減圧の最後に系の温度がT2であるステップ;及び
(3)排気するステップであって、それによりポリアミド溶融物が得られるステップ
を実行することを含み、
P1が0.8~4MPaであり、T1が250~290℃であり、T1<T2であり、且つ(T2-T1)/(P1-P2)=5~75であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポリアミド塩溶液の質量濃度が20wt%以上、好ましくは20~90wt%であり;及び/又は
前記ステップ(1)の前に、前記ポリアミド塩溶液の濃度が10wt%であれば、pH値が6.5~9.0である
ことを特徴とする、請求項1に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミド塩が、成分(A)ジアミンと、成分(B)二酸との反応によって生成される塩を含み;及び/又は
前記ポリアミド塩溶液が、少なくとも、成分(A)ジアミンのイオン及び成分(B)二酸のイオンを含み;及び/又は
前記ポリアミド塩溶液が、
(1)成分(A)ジアミン、成分(B)二酸、及び溶媒を混合することによって得られる溶液、(2)成分(C)ポリアミド塩、及び溶媒を混合することによって得られる溶液、並びに(3)成分(C)ポリアミド塩、成分(A)ジアミン及び/又は成分(B)二酸、及び溶媒を混合することによって得られる溶液のうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含む
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項4】
前記成分(A)ジアミンが、
(a1)4~16個の炭素原子を有する脂肪族直鎖若しくは分枝鎖ジアミン、(a2)芳香族ジアミン若しくは脂環式ジアミンのうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含み;及び/又は
前記成分(B)二酸が、
(b1)2~18個の炭素原子を有する脂肪族二酸、(b2)8個以上の炭素原子を有するベンゼン環含有二酸のうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含む
、
但し、前記成分(a1)が、
好ましくはブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、及びヘキサデカンジアミンのうちの1つ又は複数を含み;及び/又は
前記成分(a2)が、
好ましくはシクロペンタンジアミン、メチルシクロペンタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、及びm-フェニレンジアミンのうちの1つ又は複数を含み;及び/又は
前記成分(b1)が、
好ましくはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、及びオクタデカン二酸のうちの1つ又は複数を含み;及び/又は
前記成分(b2)が、
好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、及びフタル酸のうちの1つ又は複数を含む
ことを特徴とする、請求項
3に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項5】
前記成分(A)対前記成分(B)のモル比が(0.5~5):1であり;及び/又は
前記成分(a1)対前記成分(b1)のモル比が(0.5~12):1であり;及び/又は
前記成分(a1)対前記成分(b2)のモル比が(0.1~6):1である
ことを特徴とする、請求項4に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項6】
P2の圧力まで減圧する前記ステップ(2)の間、圧力P及び温度Tが、以下の条件:PがP1の0.4~0.65倍である場合にT=(1.01~1.18)xT1であることを満たし;及び/又は
P2の圧力まで減圧する前記ステップ(2)の間、圧力P及び温度Tが、以下の条件:PがP1の0.1~0.3倍である場合にT=(1.132~1.26)xT1であることを満たし、
P2<P<P1、且つT1<T<T2であることを特徴とする、請求項1に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項7】
前記ステップ(1)において、水蒸気が外部に排出され、前記排出された水蒸気(モル)の前記ポリアミド塩溶液中の含水量(モル)に対する比率が、(60.6~93.9):100である
ことを特徴とする、請求項1に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(2)において、水蒸気が外部に排出され、前記排出された水蒸気(モル)の前記ポリアミド塩溶液中の含水量(モル)に対する比率が、(93.9~118.2):100である
ことを特徴とする、請求項1に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項9】
前記ステップ(1)の前に、前記ポリアミド塩溶液が、50~85wt%の濃度まで濃縮され;及び/又は
前記ステップ(1)~ステップ(3)のいずれかの段階で、成分(D)添加剤を添加し;及び/又は
T2が295~340℃であり、且つT1<T2であり;及び/又は
P2が0~0.05MPaであり、且つP1>P2であり;及び/又は
前記ステップ(3)において、-0.09~-0.005MPaの圧力まで排気し;及び/又は
前記ステップ(3)において、前記排気の最後に前記系の温度が310~340℃であり;及び/又は
前記方法がさらに、前記ポリアミド溶融物を排出及びペレット化し、それによりポリアミド樹脂が得られるステップ(4)を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項10】
前記ポリアミド塩溶液が、成分(D)添加剤をさらに含み;
前記成分(D)が、酸化防止剤、消泡剤、UV安定剤、熱安定剤、結晶化促進剤、フリーラジカルスカベンジャー、潤滑剤、可塑剤、衝撃改質剤、無機充填剤、光沢剤、染料、難燃剤、及びミネラルのうちの1つ又は複数を含み;及び/又は
前記成分(D)のモル量が、前記成分(A)及び/又は前記成分(C)のモル量の0.001%~1%、好ましくは0.01%~0.8%である
ことを特徴とする、請求項3に記載の高温耐性ポリアミドの製造方法。
【請求項11】
高温耐性ポリアミドであって、前記高温耐性ポリアミドが、少なくとも、原材料としての成分(A)ジアミン及び成分(B)二酸から生成されるポリアミドを含み、
前記成分(A)対前記成分(B)のモル比が、(0.5~5):1、好ましくは(1.01~1.3):1であり;及び/又は
前記成分(A)ジアミンが、
(a1)4~16個の炭素原子を有する脂肪族直鎖若しくは分枝鎖ジアミン、(a2)芳香族ジアミン若しくは脂環式ジアミンのうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含み;及び/又は
前記成分(B)二酸が、
(b1)2~18個の炭素原子を有する脂肪族二酸、(b2)8個以上の炭素原子を有するベンゼン環含有二酸のうちのいずれか1つ、又はこれらのうちの2つ以上の任意の組合せを含む
ことを特徴とする、高温耐性ポリアミド。
【請求項12】
高温耐性ポリアミドであって、前記高温耐性ポリアミドが、少なくとも、原材料としての成分(C)ポリアミド塩の溶液から生成されるポリアミドを含むことを特徴とする、高温耐性ポリアミド。
【請求項13】
高温耐性ポリアミドであって、前記高温耐性ポリアミドの構造単位が以下の式:
【化1】
(式中、n=4~16、且つm=2~18である)
を含むことを特徴とする、高温耐性ポリアミド。
【請求項14】
前記高温耐性ポリアミドが、280~328℃、好ましくは286~328℃の融点を有し;及び/又は
前記高温耐性ポリアミドが、1.80~2.70の相対粘度を有し;及び/又は
前記高温耐性ポリアミドが、5~12KJ/cm
2、好ましくは6.5~10KJ/cm
2のノッチ付き衝撃強度を有し;及び/又は
前記高温耐性ポリアミドが、95~140MPa、好ましくは105~134MPaの引張強度を有し;及び/又は
前記高温耐性ポリアミドが、135~190MPa、好ましくは155~183MPaの曲げ強度を有し;及び/又は
前記高温耐性ポリアミドが、
2,800~4,400MPa、好ましくは2,800~4,050MPa、より好ましくは3,500~4,400MPa
、さらにより好ましくは3,500~4,050MPaの曲げ弾性率を有し;及び/又は
前記高温耐性ポリアミドが、240~320℃、好ましくは
250~300℃、より好ましくは250~290℃又は260~300℃の熱撓み温度を有する
ことを特徴とする、請求項
11、12、
又は1
3のいずれか一項に記載の高温耐性ポリアミド。
【請求項15】
前記高温耐性ポリアミドが、射出成形部品、成形物品、又は繊維の原材料として使用されること;及び好ましくは、前記高温耐性ポリアミドが、機械、自動車、家庭用電化製品、玩具、繊維製品、スポーツ用品、携帯電話、コンピュータ、ラップトップ、GPS装置、又は光学装置のための高温耐性アタッチメントなどの射出成形部品、成形物品、又は繊維の原材料として使用されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法によって製造される高温耐性ポリアミド、又は請求項
11~13のいずれか一項に記載の高温耐性ポリアミドの使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
高温耐性ポリアミドは、2,800~4,400MPa、好ましくは2,800~4,050MPa、より好ましくは3,500~4,400MPa、さらにより好ましくは3,500~4,050MPaの曲げ弾性率を有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
高温耐性ポリアミドは、240~320℃、好ましくは250~300℃、より好ましくは250~290℃又は260~300℃の熱撓み温度を有する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0115
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0115】
高温耐性ポリアミドは、2,800~4,400MPa、好ましくは2,800~4,050MPa、より好ましくは3500~4400MPa、さらにより好ましくは3,500~4,050MPa又は3700~4200MPa、例えば、3600、3650、3750、3800、3850、3890、3920、3950、3995、4050、4130、4200、又は4300MPaの曲げ弾性率を有する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0116
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0116】
高温耐性ポリアミドは、240~320℃、好ましくは270~310℃、より好ましくは250~300℃、260~300℃、又は250~290℃、例えば、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、又は277℃の熱撓み温度を有する。
【国際調査報告】