(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】ポリオレフィン微多孔質フィルム及びその生産システム、電池セパレータ、電気化学装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/417 20210101AFI20231108BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20231108BHJP
H01M 50/491 20210101ALI20231108BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20231108BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20231108BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20231108BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20231108BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20231108BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/489
H01M50/491
H01M50/449
H01M50/434
H01M50/426
H01M50/423
H01M50/403 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528044
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2021118236
(87)【国際公開番号】W WO2022127224
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】202011478177.4
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518289715
【氏名又は名称】上海恩捷新材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ENERGY NEW MATERIALS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.155,Nanlu Road,Pudong New District,Shanghai 201399,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】程 躍
(72)【発明者】
【氏名】宮 暁明
(72)【発明者】
【氏名】彭 ▲コン▼
(72)【発明者】
【氏名】虞 少波
(72)【発明者】
【氏名】庄 志
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB19
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE07
5H021EE10
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH02
5H021HH03
5H021HH07
(57)【要約】
【課題】超薄型、高強度の要求を満たす電池セパレータを提供する。
【解決手段】本発明の電池セパレータは、フィルムの厚さが2~30μmであり、穿刺強度が1000~2000gfであり、MD方向においての引張強度が3200~5000kgf/cm
2であり、TD方向においての引張強度が2800~4800kgf/cm
2であり、空隙率が40%~57%であり、最大孔径が33~48nmであり、ガス透過速度が10~400秒/100mlであり、インピーダンスが0.3~0.9Ω/cm
2であるポリオレフィン微多孔質フィルム及びその生産システム、該ベースフィルムが用いられる塗装セパレータ及び電気化学装置を開示している。本発明に係るポリオレフィン微多孔質フィルムは、いずれも優れた性能を有し、それらの厚さ、引張強度、穿刺強度、通気性、空隙率及び熱収縮率が、いずれも微多孔質フィルムの厚さ及び機械的強度に対して高く要求される応用を満たせ、動力リチウムイオン電池のセパレータ分野に非常に適される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン微多孔質フィルムであって、
フィルムの厚さが2~30μmであり、穿刺強度が1000~2000gfである、
ことを特徴とするポリオレフィン微多孔質フィルム。
【請求項2】
MD方向における引張強度が3200~5000kgf/cm
2であり、TD方向における引張強度が2800~4800kgf/cm
2である、
ことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン微多孔質フィルム。
【請求項3】
MD方向の延伸率が47~98%であり、TD方向の延伸率が63~110%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン微多孔質フィルム。
【請求項4】
空隙率が40%~57%であり、最大孔径が33~48nmであり、ガス透過速度が10~400秒/100mlである、
ことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン微多孔質フィルム。
【請求項5】
インピーダンスが0.3~0.9Ω/cm
2である、
ことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン微多孔質フィルム。
【請求項6】
前記ポリオレフィン微多孔質フィルムは、重量平均分子量が4.0×10
6~8.0×10
6であるポリエチレンからなる、
ことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン微多孔質フィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔質フィルムを生産するシステムであって、
生産ラインの方向に沿って順に配置される、二軸押出機、流延機、孔形成剤除去ユニット、第一引張装置、第二引張装置、熱処理機、及び巻取機を備える、
ことを特徴とするポリオレフィン微多孔質フィルムの生産システム。
【請求項8】
前記孔形成剤除去ユニットは、溝体、駆動熱ローラ、従動熱ローラ、及び孔形成剤除去液を備え、
前記溝体は密封溝体であり、
流延機に連通するポリオレフィン微多孔質シートの通過経路は、開放するように設計される、
ことを特徴とする請求項7に記載のポリオレフィン微多孔質フィルムの生産システム。
【請求項9】
前記孔形成剤除去液は、前記密封溝体内に充填され、
前記駆動熱ローラは、前記孔形成剤除去液の液面よりも高い位置に配置され、
前記従動熱ローラは、前記孔形成剤除去液中に浸漬される、
ことを特徴とする請求項8に記載のポリオレフィン微多孔質フィルムの生産システム。
【請求項10】
前記第二引張装置と前記熱処理機とは、一体に集積される、
ことを特徴とする請求項7に記載のポリオレフィン微多孔質フィルムの生産システム。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔質フィルムを含む、
ことを特徴とする電池セパレータ。
【請求項12】
前記セパレータは、セラミック塗装セパレータ、PVDF塗装セパレータ、及びアラミド塗装セパレータのうちの一種である、
ことを特徴とする請求項11に記載の電池セパレータ。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔質フィルム、又は、請求項11又は12に記載の電池セパレータを正負両極分離用の素子として含む、
ことを特徴とする電気化学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セパレータの分野に関し、具体的に、ポリオレフィン微多孔質フィルム及びその生産システム、電池セパレータ、電気化学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン微多孔質フィルムは、通常、電池用セパレータ、電解コンデンサ用セパレータ、超濾過フィルム、微濾過フィルム及び医療用フィルム等の各種用途に用いられる。デジタル類のリチウムイオン電池としても動力類のリチウムイオン電池としても、セパレータ性能を保証するとともに薄型化させる傾向がある。ポリオレフィン微多孔質フィルムの薄膜化によっては、電極層の積層数を向上させることができ、リチウム電池のエネルギー密度及び容量の向上に役立ち、その結果、高出力化の達成が可能になる。しかし、従来の超薄ポリオレフィン微多孔質フィルムの欠点は、強度が低く、それがスペーサフィルムとして電極と共に高張力で巻回されると、従来の超薄ポリオレフィン微多孔質フィルムが破断しやすいことである。したがって、従来技術には、依然として、厚さの均一で品質の安定的な超薄型高強度セパレータを生産することができない。
【0003】
中国特許出願番号CN102136557Aには、超高分子ポリエチレンを主材料とし、厚さが20μmに達する強度の高いセパレータを作製する、リチウムイオン電池セパレータの作製方法が開示されている。
【0004】
日本特許JPH0873643Aには、粘度平均分子量が10万以上であるポリエチレンを用い、特定の厚さ、通気性、空隙率及び引張伸び率を有し、厚さが20~40μmであるセパレータを作製する、リチウムイオン電池セパレータの作製方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許及び特許出願に開示された配合方法及び方法は、従来技術におけるフィルム強度の問題を解決するが、セパレータの厚さの厚すぎ、超薄型、高強度の要求を満たさないという欠陥が依然に存在する。超薄型高強度ポリオレフィン微多孔質フィルムの技術的困難点は、超薄型セパレータの厚さ、強度及び空隙率等の性能が両立できず、かつセパレータの厚さの均一性が低いことにある。
【0006】
したがって、本発明は、上記従来技術に存在の欠陥を克服するために、空隙率が高く、超薄型で、高強度でかつ厚さの均一性がよく、電池性能を向上させ電池コストを低減させることができる、ポリオレフィン微多孔質フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る技術案は以下のように実現される。
【0008】
本発明は、ポリオレフィン微多孔質フィルムであって、フィルムの厚さが2~30μmであり、穿刺強度が1000~2000gfである、ポリオレフィン微多孔質フィルムを提供することをその一つの目的とする。
【0009】
さらに、MD方向においての引張強度が3200~5000kgf/cm2であり、TD方向においての引張強度が2800~4800kgf/cm2である。
さらに、MD方向の延伸率が47~98%であり、TD方向の延伸率が63~110%である。
さらに、空隙率が40%~57%であり、最大孔径が33~48nmであり、ガス透過速度が10~400秒/100mlである。
さらに、インピーダンスが0.3~0.9Ω/cm2である。
さらに、前記ポリオレフィン微多孔質フィルムは、重量平均分子量が4.0~8.0×106であるポリエチレンからなる。
【0010】
本発明は、上記いずれか一種のポリオレフィン微多孔質フィルムを生産するシステムであって、生産ラインの方向に沿い、二軸押出機、流延機、孔形成剤除去ユニット、第一引張装置、第二引張装置、熱処理機、及び巻取機を順に備える、ポリオレフィン微多孔質フィルムの生産システムを提供することをその他の目的とする。
【0011】
さらに、前記孔形成剤除去ユニットは、溝体、駆動熱ローラ、従動熱ローラ、及び孔形成剤除去液を備え、前記溝体は密封溝体であり、流延機からのポリオレフィン微多孔質シートの通過経路は、開放部のように設計される。
【0012】
さらには、前記孔形成剤除去液は、前記密封溝体内に位置し、前記駆動熱ローラの位置は、前記孔形成剤除去液の液面よりも高く、前記従動熱ローラは、前記孔形成剤除去液に浸漬される。
さらに、前記第二引張装置と前記熱処理機とは、一体に集積される。
本発明は、電池セパレータであって、上記いずれか一種のポリオレフィン微多孔質フィルムを含む電池セパレータを提供することをその他の目的とする。
さらに、前記セパレータは、セラミック塗装セパレータ、PVDF塗装セパレータ、及びアラミド塗装セパレータのうちの一種である。
【0013】
本発明は、電気化学装置であって、上記いずれか一種のポリオレフィン微多孔質フィルム、又は、いずれか一種の電池セパレータを正負両極分離用の素子として含む電気化学装置を提供することをさらなる目的とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、従来技術に対して以下のような有益効果を有する。本発明に係る方法で作製されたポリオレフィン微多孔質フィルムは、従来の微多孔質フィルムと比べて、厚さの均一性、超薄型及び高強度に対して高く要求される応用をより一層満たすことができ、特に動力リチウムイオン電池セパレータの分野に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る孔形成剤除去ユニットの概略図である。
【
図2】
図2は、従来技術に係るポリオレフィン微多孔質フィルムの作製工程のフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るポリオレフィン微多孔質フィルムの作製工程のフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態に係るポリオレフィン微多孔質フィルムの作製工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係る具体的な実施形態について詳細に説明する。ここで説明された具体的な実施形態が本発明を説明・解釈するために用いられ、本発明を限定するものではないことは、理解すべきである。
【0017】
本発明に係る具体的な実施形態は、フィルムの厚さが2~30μmであり、穿刺強度が1000~2000gfであるポリオレフィン微多孔質フィルムを提供する。
さらに、MD方向においての引張強度が3200~5000kgf/cm2であり、TD方向においての引張強度が2800~4800kgf/cm2である。
さらに、MD方向の延伸率が47~98%であり、TD方向の延伸率が63~110%である。
【0018】
さらに、空隙率が40%~57%であり、最大孔径が33~48nmであり、ガス透過速度が10~400秒/100mlである。
【0019】
さらに、インピーダンスが0.3~0.9Ω/cm2である。
さらに、前記ポリオレフィン微多孔質フィルムは、重量平均分子量が4.0~8.0×106であるポリエチレンからなる。
【0020】
本発明に係る具体的な実施形態は、上記いずれか一種のポリオレフィン微多孔質フィルムを生産するシステムであって、生産ラインの方向に沿い、二軸押出機、流延機、孔形成剤除去ユニット、第一引張装置、第二引張装置、熱処理機、及び巻取機を順に備える、ポリオレフィン微多孔質フィルムの生産システムをさらに提供する。
【0021】
さらに、前記孔形成剤除去ユニットは、溝体、駆動熱ローラ、従動熱ローラ、及び孔形成剤除去液を備え、前記溝体は密封溝体であり、流延機からのポリオレフィン微多孔質シートの通過経路は、開放部のように設計される。
【0022】
さらには、前記孔形成剤除去液は、前記密封溝体内に位置し、前記駆動熱ローラの位置は、前記孔形成剤除去液の液面よりも高く、前記従動熱ローラは、前記孔形成剤除去液に浸漬される。
さらに、前記第二引張装置と前記熱処理機とは、一体に集積される。
本発明は、電池セパレータであって、上記いずれか一種のポリオレフィン微多孔質フィルムを含む電池セパレータをさらに提供する。
さらに、前記セパレータは、セラミック塗装セパレータ、PVDF塗装セパレータ、及びアラミド塗装セパレータのうちの一種である。
【0023】
本発明は、電気化学装置であって、上記いずれか一種のポリオレフィン微多孔質フィルム、又は、いずれか一種の電池セパレータを正負両極分離用の素子として含む電気化学装置をさらに提供する。
本発明に係る具体的な実施形態は、本発明の保護請求するポリオレフィン微多孔質フィルムを作製する作製方法をさらに提供し、前記方法は、
(1)ポリオレフィン樹脂及び孔形成剤を混合して溶融状の混練溶液のように加熱するステップと、
(2)前記混練溶液をダイヘッドから押出して冷却することにより孔形成剤含有の流延シートを形成するステップと、
【0024】
(3)前記流延シートを煮沸式孔形成剤除去ユニットに通過させることにより孔形成剤を除去するステップと、
(4)孔形成剤が除去された流延シートを少なくとも一軸方向に引張することによりベースフィルムを得るステップと、
【0025】
(5)前記ベースフィルムを再び少なくとも一軸方向に引張して固定することにより前記ポリオレフィン微多孔質フィルムを得るステップと、
を順に備え、
【0026】
ただし、前記煮沸式孔形成剤除去ユニットは、溝体、駆動熱ローラ1、従動熱ローラ2、孔形成剤除去液3を備え、前記駆動熱ローラ1及び従動熱ローラ2の加熱可能な温度は、50℃~140℃であり、前記ポリオレフィン微多孔質フィルムの孔形成剤の残留率は、0.05%未満であり、好ましくは0.02%未満であり、より好ましくは0.01%未満であり、最も好ましくは、孔形成剤の残留量は、0である。
さらに、前記孔形成剤は、その質量がポリオレフィン樹脂及び孔形成剤の総質量の40~50%であり、60℃での動粘度が5~200mm2/sである。
【0027】
本願に係る孔形成剤は特に限定されず、それがポリオレフィンを十分に溶解できればよく、前記孔形成剤は、例えば、液体パラフィン、鉱物油、大豆油のうちの一種又は複数種であってもよいがそれらに限定されない。最も好ましくは、孔形成剤が液体パラフィンである。
【0028】
液体パラフィンは、孔形成剤として、ポリエチレン樹脂などのポリオレフィン樹脂と共に溶融混練され、抽出された後に、多孔性基材の内部に多層配向の気孔構造が形成可能になり、ゲル状フィルムシートの毎回引張倍率が大幅に増大される。引張倍率及び結晶化度が高いほど、多孔性基材の機械的強度が高い。したがって、液体パラフィンは、孔形成剤として、多孔性フィルムの引張強度及び穿刺強度を向上させ、多孔質フィルムの薄膜化をさらに達成させることができる。
【0029】
さらに、前記ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は4.0~8.0×106であり、前記ポリオレフィン樹脂の質量は、ポリオレフィン樹脂及び孔形成剤の総質量の50~60%である。
【0030】
本願において、用語「ポリオレフィン」とは、一種又は複数種のオレフィンの重合又は共重合により作製されたポリマーを意味しており、前記ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプロピレン又はポリブテンから選択された一種又は複数種を含むがそれらに限定されない。さらに好ましくは、前記ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレンである。
さらに、前記駆動熱ローラ1及び従動熱ローラ2は、ローラ内を流れる熱油により加熱される。
【0031】
さらに、前記孔形成剤除去液3は、孔形成剤と相互に溶解する有機溶剤である。好ましくは、前記孔形成剤除去液は塩化メチレンである。
さらに、前記溝体は密封溝体であり、流延機からのポリオレフィン微多孔質シートの通過経路は、開放部のように設計される。
【0032】
図1に示すように、さらに、前記孔形成剤除去液3は、前記密封溝体内に位置し、前記駆動熱ローラ1の位置は、前記孔形成剤除去液3の液面よりも高く、前記従動熱ローラ2は、前記孔形成剤除去液3に浸漬される。
【0033】
熱伝導油を導入することにより、駆動熱ローラ1及び従動熱ローラ2を50℃~140℃に加熱し、ここで、駆動熱ローラ1及び従動熱ローラ2を加熱する具体的な方法は従来のMD、TD引張6、7の場合でのローラ加熱方法に一致し、当業者にとっての慣用技術手段に属し、ここで詳細に説明する必要がない。この時、駆動熱ローラ1により加熱されたポリオレフィン微多孔質シートと前記孔形成剤除去液3に浸漬された従動熱ローラ2とは、常態で0~10℃の塩化メチレンを30℃~39.8℃に加熱する。
【0034】
孔形成剤除去液3においての液体分子は、加熱中に、熱伝達により大きな運動エネルギーを得て、非常に活発になり、これらの運動エネルギーから発生されたエネルギーが液体分子間の作用力から十分に抜け出すため、その粘度が低下し、また、温度の上昇により分子運動や振動が加速することにより、分子間の斥力が上昇し、再び平衡に達するために、分子間の距離が増大して引力及び斥力がいずれも減少することにより、引力及び斥力が再び平衡に達し、その結果、液体の表面張力が低下する。したがって、微多孔への孔形成剤除去液3の進入をより容易にさせ、交換率を向上させ、孔形成剤除去効率を増加させ、孔形成剤の残留率を0.05%未満とする。さらに、孔形成剤の比率が異なる原料配合成分、異なる駆動熱ローラ1及び従動熱ローラ2の加熱温度を調整することにより、孔形成剤除去の効率を向上させ、その結果、孔形成剤の残留率は、0.02%未満、0.01%未満になり、ひいては、孔形成剤の残留量は、0になる。
さらに、ステップ(4)における前記引張は、非同期二方向引張(MD+TD)又は同期二方向引張(SBS)である。
【0035】
図3に示すように、ステップ(4)における前記引張が非同期二方向引張である場合には、本発明に係る孔形成剤除去ユニットにより孔形成剤を除去した後、ポリオレフィンシートの粗さが増加し、その結果、MDローラ面引張6の時、ローラ面とポリオレフィンシートの摩擦力が増加し、滑りにくい。これにより、本発明では、分子量がより高く(4.0~8.0×10
6)、粉末材料比がより高く(50%~60%)配合された流延シートを、まずMD方向に沿って10~35倍引張した後、TD方向に沿って10~20倍引張することが達成される。さらに好ましくは、引張倍率は、まずMD方向に沿って引張した15~25倍、そして、TD方向に沿って引張した10~15倍である。
【0036】
図4に示すように、ステップ(4)における前記引張が同期二方向引張である場合には、本発明に係る孔形成剤除去ユニットにより孔形成剤を除去した後、ポリオレフィンシートの粗さが増加し、その結果、SBS治具引張10の時、治具とポリオレフィンシートとの摩擦力が増加し、治具から脱出しにくい。これにより、本発明では、分子量がより高く(4.0~8.0×10
6)、粉末材料比がより高く(50%~60%)配合された流延シートを、10~20倍引張することが達成される。さらに好ましくは、引張倍率は10~15倍である。
さらに、ステップ(5)において、前記ベースフィルムを再び少なくとも一軸方向に引張する引張倍率は2~4倍である。
【0037】
上記異なる方法の大倍率の引張により、最終製品としてのセパレータは、配向性が増加することにより、その機械的強度(引張強度及び針刺し強度)が大幅に強化され、かつ滑りによるシートで発生された微多孔の孔閉鎖/孔位置ずれ現象が回避され、また、貫通孔が多いため、より多くの貫通率の高いリチウムイオンチャネルが創造され、セパレータのインピーダンスが低下される。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。
以下の実施例及び比較例において、フィルムの性能試験は、いずれも以下の方法に従って実行される。
フィルムの厚さ:マルバーン厚さ試験機により縦方向に沿って10cmの間隔で製品幅の範囲内で測定することにより、フィルムの厚さの平均値を取得し、
通気値:室温で、王研式通気機により100ccのガスのセパレータ通過時間を設置して、5秒後の安定数値を安定して測定し、
【0038】
空隙率:100mm×100mmの試料シートを切り取って電子天秤で秤量し、かつポリエチレン密度に従って、(1-重量/試料シートの面積)/重量×0.957×100%という式に基づいて換算し、
最大孔径:細孔径試験機により窒素ガスを用いてバブルポイント法で測定し、
引張強度&破断伸び率:電子万能材料試験機XJ830により、15mm×20cmの試料切り取り仕様、200mm/minの走行速度で測定し、
【0039】
針刺し強度:電子万能材料試験機XJ830により、試験しようとする試験試料を挟み、先端直径が1mm(0.5mmR)の針を用いて50mm/minの走行速度で測定し、
【0040】
熱収縮率:高温試験箱Espec SEG-021Hにより100mm×100mmの微多孔質フィルムを110℃で1h置き、画像測定機XTY-5040により長さ測定を行い、熱乾燥前後のTD及びMD方向の長さを統計し、(熱処理前-熱処理後)/熱処理前×100%という式で換算し、
動粘度:動粘度測定機DSY-004により、測定温度を60℃に設定し、1h安定した後に動粘度測定を行い、
【0041】
残油率:10mm×10mmのセパレータ試料を切り取って電子天秤で秤量し、Ultrasonic Cleaner 1740Tに純水を置き、500mlのビーカーに置かれた300mlの純粋的な塩化メチレンに試料シートを投入し、超音波時間を60sに設定した後に、105℃のオーブンに置いて5min乾燥し、電子天秤で洗浄前後の重量を秤量し、(処理前重量-処理後重量)/処理前重量×100%という式で残油率を換算し、
【0042】
インピーダンス:電池室試料添加器を用いて試料を添加し、電解液を電池室の2/3目盛りまで注入し、アジレントデータ収集機KEYSIGHT 34972Aにより抵抗試験チャネルを選択し、クリックして実行し、設備のデータ自動分析を待つ。
実施例1
【0043】
まず、質量百分率が50%であるポリエチレン(Mwが8.0×106である。)及び質量百分率が50%であるホワイトオイルを500kg/hの流量で押出機に投入して押出し、220℃、100rpmの条件で、T型ダイヘッドにより押出し、温度が35℃である冷ローラに接触して冷却した後、流延シートを形成する。そして、孔形成剤除去ユニットに入り、熱伝導油により駆動熱ローラ1及び従動熱ローラ2を140℃までに加熱し、それで、溝体における塩化メチレンを39.8℃に昇温し、孔形成剤除去工程を行う。孔形成剤除去後の流延シートを引張機により120℃で機械方向(MD)6に沿って10倍引張し、次に、100℃で幅方向(TD)7に沿って10倍引張した後、120℃で2倍の二回TD引張9を行って固定し、巻取りローラで巻取り、厚さが30μmであるポリオレフィン微多孔質フィルムを得る。
実施例2
【0044】
まず、質量百分率が55%であるポリエチレン(Mwが6.0×106である。)及び質量百分率が45%であるホワイトオイルを650kg/hの流量で押出機に投入して押出し、220℃、100rpmの条件で、T型ダイヘッドにより押出し、温度が35℃である冷ローラに接触して冷却した後、流延シートを形成する。そして、孔形成剤除去ユニットに入り、熱伝導油により駆動熱ローラ1及び従動熱ローラ2を100℃までに加熱し、それで、溝体における塩化メチレンを35℃に昇温し、孔形成剤除去工程を行う。孔形成剤除去後の流延シートを引張機により120℃で機械方向(MD)6に沿って20倍引張し、次に、100℃で幅方向(TD)7に沿って15倍引張した後、120℃で2倍の二回TD引張9を行って固定し、巻取りローラで巻取り、厚さが14μmであるポリオレフィン微多孔質フィルムを得る。
実施例3
【0045】
まず、質量百分率が55%であるポリエチレン(Mwが6.0×106である。)及び質量百分率が45%であるホワイトオイルを400kg/hの流量で押出機に投入して押出し、220℃、100rpmの条件で、T型ダイヘッドにより押出し、温度が35℃である冷ローラに接触して冷却した後、流延シートを形成する。そして、孔形成剤除去ユニットに入り、熱伝導油により駆動熱ローラ1及び従動熱ローラ2を100℃までに加熱し、それで、溝体における塩化メチレンを35℃に昇温し、孔形成剤除去工程を行う。孔形成剤除去後の流延シートを引張機により120℃で機械方向(MD)6に沿って20倍引張し、次に、100℃で幅方向(TD)7に沿って15倍引張した後、120℃で2倍の二回TD引張9を行って固定し、巻取りローラで巻取り、厚さが9μmであるポリオレフィン微多孔質フィルムを得る。
実施例4
【0046】
まず、質量百分率が55%であるポリエチレン(Mwが6.0×106である。)及び質量百分率が45%であるホワイトオイルを300kg/hの流量で押出機に投入して押出し、220℃、100rpmの条件で、T型ダイヘッドにより押出し、温度が35℃である冷ローラに接触して冷却した後、流延シートを形成する。そして、孔形成剤除去ユニットに入り、熱伝導油により駆動熱ローラ1及び従動熱ローラ2を100℃までに加熱し、それで、溝体における塩化メチレンを35℃に昇温し、孔形成剤除去工程を行う。孔形成剤除去後の流延シートを引張機により120℃で機械方向(MD)6に沿って20倍引張し、次に、100℃で幅方向(TD)7に沿って15倍引張した後、120℃で2倍の二回TD引張9を行って固定し、巻取りローラで巻取り、厚さが7μmであるポリオレフィン微多孔質フィルムを得る。
実施例5
【0047】
まず、質量百分率が60%であるポリエチレン(Mwが4.0×106である。)及び質量百分率が40%であるホワイトオイルを500kg/hの流量で押出機に投入して押出し、220℃、100rpmの条件で、T型ダイヘッドにより押出し、温度が35℃である冷ローラに接触して冷却した後、流延シートを形成する。そして、孔形成剤除去ユニットに入り、熱伝導油により駆動熱ローラ1及び従動熱ローラ2を50℃までに加熱し、それで、溝体における塩化メチレンを30℃に昇温し、孔形成剤除去工程を行う。孔形成剤除去後の流延シートを引張機により120℃で機械方向(MD)6に沿って35倍引張し、次に、100℃で幅方向(TD)7に沿って20倍引張した後、120℃で2倍の二回TD引張9を行って固定し、巻取りローラで巻取り、厚さが2μmであるポリオレフィン微多孔質フィルムを得る。
比較例1
【0048】
従来の工程方法を用い、まず、質量百分率が20%であるポリエチレン(Mwが3.5×106である。)及び質量百分率が80%であるホワイトオイルを90kg/hの流量で押出機に投入して押出し、180℃、80rpmの条件で、T型ダイヘッドにより押出し、温度が35℃である冷ローラに接触して冷却した後、流延シートを形成する。流延シートを引張機により110℃で機械方向(MD)6に沿って9倍引張し、次に、110℃で幅方向(TD)7に沿って8倍引張した後、さらに15℃の塩化メチレン溝体を通過させて抽出を行うことにより孔形成剤を除去し、そして、120℃で2倍の二回TD引張9を行って固定し、巻取りローラで巻取り、厚さが2μmであるポリオレフィン微多孔質フィルムを得る。
比較例2
【0049】
従来の工程方法を用い、まず、質量百分率が20%であるポリエチレン(Mwが3.5×106である。)及び質量百分率が80%であるホワイトオイルを300kg/hの流量で押出機に投入して押出し、180℃、80rpmの条件で、T型ダイヘッドにより押出し、温度が35℃である冷ローラに接触して冷却した後、流延シートを形成する。流延シートを引張機により110℃で機械方向(MD)6に沿って9倍引張し、次に、110℃で幅方向(TD)7に沿って8倍引張した後、さらに15℃の塩化メチレン溝体を通過させて抽出を行うことにより孔形成剤を除去し、そして、120℃で2倍の二回TD引張9を行って固定し、巻取りローラで巻取り、厚さが7μmであるポリオレフィン微多孔質フィルムを得る。
比較例3
【0050】
従来の工程方法を用い、まず、質量百分率が20%であるポリエチレン(Mwが3.5×106である。)及び質量百分率が80%であるホワイトオイルを380kg/hの流量で押出機に投入して押出し、180℃、80rpmの条件で、T型ダイヘッドにより押出し、温度が35℃である冷ローラに接触して冷却した後、流延シートを形成する。流延シートを引張機により110℃で機械方向(MD)6に沿って9倍引張し、次に、110℃で幅方向(TD)7に沿って8倍引張した後、さらに15℃の塩化メチレン溝体を通過させて抽出を行うことにより孔形成剤を除去し、そして、120℃で2倍の二回TD引張9を行って固定し、巻取りローラで巻取り、厚さが9μmであるポリオレフィン微多孔質フィルムを得る。
比較例4
【0051】
従来の工程方法を用い、まず、質量百分率が20%であるポリエチレン(Mwが3.5×106である。)及び質量百分率が80%であるホワイトオイルを600kg/hの流量で押出機に投入して押出し、180℃、80rpmの条件で、T型ダイヘッドにより押出し、温度が35℃である冷ローラに接触して冷却した後、流延シートを形成する。流延シートを引張機により110℃で機械方向(MD)6に沿って9倍引張し、次に、110℃で幅方向(TD)7に沿って8倍引張した後、さらに15℃の塩化メチレン溝体を通過させて抽出を行うことにより孔形成剤を除去し、そして、120℃で2倍の二回TD引張9を行って固定し、巻取りローラで巻取り、厚さが14μmであるポリオレフィン微多孔質フィルムを得る。
比較例5
【0052】
従来の工程方法を用い、まず、質量百分率が20%であるポリエチレン(Mwが3.5×106である。)及び質量百分率が80%であるホワイトオイルを800kg/hの流量で押出機に投入して押出し、180℃、80rpmの条件で、T型ダイヘッドにより押出し、温度が35℃である冷ローラに接触して冷却した後、流延シートを形成する。流延シートを引張機により110℃で機械方向(MD)6に沿って6倍引張し、次に、110℃で幅方向(TD)7に沿って8倍引張した後、さらに15℃の塩化メチレン溝体を通過させて抽出を行うことにより孔形成剤を除去し、そして、120℃で2倍の二回TD引張9を行って固定し、巻取りローラで巻取り、厚さが30μmであるポリオレフィン微多孔質フィルムを得る。
実施例1~5及び比較例1~5のセパレータの性能試験結果は、表1に示される。
【0053】
【0054】
実施例1~5と比較例1~5とを比べて分かるように、本発明に係るポリオレフィン微多孔質フィルムの通気性の差別が大きくないが、空隙率、熱収縮率が優れ、穿刺強度、引張強度の性能が明らかに大幅に向上され、インピーダンスが大幅に低下される。
【0055】
本発明に係るポリオレフィン微多孔質フィルムは、いずれも優れた性能を有し、それらの厚さ、引張強度、穿刺強度、通気性、空隙率及び熱収縮率が、いずれも微多孔質フィルムの厚さ及び機械的強度に対して高く要求される応用を満たせ、動力リチウムイオン電池のセパレータ分野に非常に適される。
【0056】
本発明の方法で作製されたポリオレフィン微多孔質フィルムは、加湿フィルム、水浄化フィルム、人工透析フィルム、ナノ濾過フィルム、超濾過フィルム、及び逆浸透フィルム等の濾過フィルムと、細胞増殖基材と、などの様々な分野にさらに適用されることができる。
【0057】
上記に記載の公知常識に関連する内容について詳細に説明しないが(例えば、材料投入量によりセパレータ製品の厚さを調整することは本分野の通常操作である。)、当業者にとって理解できる。
【0058】
上記に記載の実施例は、本発明の原理及びその効果を例示的に説明し過ぎず、本発明を限定するものではない。当業者にとっては、いずれも本発明の精神及び範囲から逸脱することなく上記実施例を修飾・変更することができる。したがって、当業者が本発明に開示の精神及び技術思想から逸脱せずに達成したあらゆる同等修正・変更は、依然として本発明の請求項に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0059】
1 駆動熱ローラ
2 従動熱ローラ
3 孔形成剤除去液
4 押出
5 冷却成形シート
6 MD引張
7 TD引張
8 孔形成剤の除去
9 TD二回引張
10 SBS引張
【国際調査報告】