IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーアス・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-構造シェル 図1
  • 特表-構造シェル 図2
  • 特表-構造シェル 図3
  • 特表-構造シェル 図4
  • 特表-構造シェル 図5
  • 特表-構造シェル 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(54)【発明の名称】構造シェル
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/68 20060101AFI20231108BHJP
   B32B 5/00 20060101ALI20231108BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20231108BHJP
   B29C 70/44 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B29C70/68
B32B5/00 A
B29C43/12
B29C70/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550353
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2021079705
(87)【国際公開番号】W WO2022101003
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】2017801.8
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523173140
【氏名又は名称】コーアス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Coeus Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ワッツ,ヘンドリク ヨハネス
【テーマコード(参考)】
4F100
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F100AC10A
4F100AK01A
4F100AK25A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK42B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA22A
4F100CA02A
4F100CA13C
4F100CC00C
4F100DG01A
4F100DH02A
4F100EH46C
4F100GB31
4F100GB51
4F100GB72
4F100GB87
4F100JA04B
4F100JB16A
4F100JK04
4F100YY00A
4F204AA21
4F204AC05
4F204AD16
4F204AD18
4F204AG03
4F204AH04
4F204AM28
4F204FA01
4F204FA13
4F204FB01
4F204FB11
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ37
4F205AA21
4F205AC05
4F205AD16
4F205AD18
4F205AG03
4F205AH04
4F205AM28
4F205HA09
4F205HA14
4F205HA23
4F205HA34
4F205HA37
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC15
4F205HT29
(57)【要約】
本発明は、玄武岩繊維強化材料を含む構造シェルを提供し、前記玄武岩繊維強化材料は、ポリマー材料を含み、前記ポリマー材料は、200~600℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解し得る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄武岩繊維強化材料を含む構造シェルであって、前記玄武岩繊維強化材料は、ポリマー材料を含み、前記ポリマー材料は、200~600℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解し得る、構造シェル。
【請求項2】
前記ポリマー材料が、熱可塑性材料である、請求項1に記載の構造シェル。
【請求項3】
前記ポリマー材料が、ポリメタクリレートを含む、請求項1または2に記載の構造シェル。
【請求項4】
前記ポリマー材料が、ポリメチルメタクリレートを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項5】
前記ポリマー材料が、150~300℃、好ましくは200~250℃の温度で少なくとも部分的に溶融し得、および/または前記ポリマー材料が、少なくとも部分的に熱的に分解し得る温度よりも低い温度で少なくとも部分的に溶融し得る、請求項1~4のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項6】
前記ポリマー材料が、300~500℃、好ましくは350~400℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解し得る、請求項1~5のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項7】
前記少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料は、20℃で液体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項8】
前記玄武岩繊維と前記ポリマー材料との重量比が、80:20~40:60、好ましくは75:25~50:50、より好ましくは70:30~55:45、最も好ましくは約60:40である、請求項1~7のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項9】
玄武岩繊維が、規則的な配置で前記ポリマー材料に分散しており、好ましくは、前記玄武岩繊維強化材料が、実質的に平行な玄武岩繊維の複数の層を含み、前記実質的に平行な玄武岩繊維の平均方向が、隣接する層で異なっている、請求項1~8のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項10】
各層における前記実質的に平行な玄武岩繊維の前記平均方向が、隣接する層における前記実質的に平行な玄武岩繊維の前記平均方向に対して、約45°または約90°である、請求項9に記載の構造シェル。
【請求項11】
前記実質的に平行な玄武岩繊維の層が、4軸方向に、好ましくは-45°、90°、0-90°および0°の前記玄武岩繊維の相対方向で、3軸方向に、好ましくは-45°、90°および45°の前記玄武岩繊維の相対方向で、2軸方向に、好ましくは0°および90°の前記玄武岩繊維の相対方向で、または単方向に配置されている、請求項9または10に記載の構造シェル。
【請求項12】
前記玄武岩繊維強化材料が、0.5~3.0mm、好ましくは1.0~2.0mmの厚さを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項13】
ポリマーコアをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項14】
前記ポリマーコアがポリエステルを含む、請求項13に記載の構造シェル。
【請求項15】
前記ポリエステルがPETを含み、好ましくは前記PETがPETフォームを含む、請求項14に記載の構造シェル。
【請求項16】
前記ポリマーコアが、200~300℃、好ましくは230~270℃の溶融温度を有する、請求項13~15のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項17】
ゲルコートをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項18】
前記ゲルコートが、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステルを含む、請求項17に記載の構造シェル。
【請求項19】
前記ゲルコートが、顔料を含む、請求項17または18に記載の構造シェル。
【請求項20】
前記構造シェルが、エージング前に600~800MPaの曲げ強度を示す、請求項1~19のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の構造シェルを含む、海洋船舶用の船体。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか一項に記載の構造シェルを含む、海洋船舶用の構造グリッド。
【請求項23】
請求項1~20のいずれか一項に記載の構造シェル、好ましくは請求項13~16のいずれか一項に記載の構造シェルを含む、海洋船舶用のデッキ。
【請求項24】
請求項21および/または請求項22および/または請求項23に記載の少なくとも1つの船体および/または少なくとも1つの構造グリッドおよび/または少なくとも1つのデッキを含む海洋船舶。
【請求項25】
請求項1~20のいずれか一項に記載の構造シェルを含む、風力タービンブレード。
【請求項26】
請求項1~20のいずれか一項に記載の構造シェルを含む、スキーまたはスキーポール。
【請求項27】
請求項1~20のいずれか一項に記載の構造シェルを含む、耐弾パネル。
【請求項28】
前記玄武岩繊維に対するポリマー材料の重量比が、0.35~0.45、好ましくは0.39~0.44である、請求項27に記載の耐弾パネル。
【請求項29】
請求項1~20のいずれか一項に記載の構造シェル、請求項21に記載の船体、請求項22に記載のデッキ、請求項23に記載の構造グリッド、請求項24に記載の海洋船舶、請求項25に記載の風力タービンブレード、請求項26に記載のスキーもしくはスキーポール、または請求項27もしくは請求項28に記載の耐弾パネルの製造方法であって、前記製造方法は、
型を提供すること、
玄武岩繊維を前記型に導入すること、
前記玄武岩繊維と、樹脂および硬化剤を含む混合物とを-0.65バール以下の相対圧力で接触させて、構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーおよび/もしくはスキーポール、または耐弾パネルを形成すること、ならびに
前記構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーおよび/もしくはスキーポール、または耐弾パネルを前記型から回収することを含む、製造方法。
【請求項30】
前記樹脂が、メタクリレートモノマー、好ましくはメチルメタクリレートモノマー、より好ましくは50~85重量%のメチルメタクリレートモノマーおよび/または10~50重量%のアクリルポリマーを含む、請求項29に記載の製造方法。
【請求項31】
前記硬化剤が、有機過酸化物、好ましくは過酸化ベンゾイルを含む、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記混合物が、0.5~30phr、好ましくは1~15phr、より好ましくは1.5~4phr、さらにより好ましくは2.5~4phrの量の前記硬化剤を含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記玄武岩繊維と前記混合物とを、-0.7~-1.15バール、好ましくは-0.9~-1.1バール、より好ましくは-0.95~-1.05バールの相対圧力で接触させる、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記玄武岩繊維と前記混合物とを、10~40℃、好ましくは14~30℃の温度で接触させる、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記玄武岩繊維と前記混合物とを、30~70%、好ましくは40~50%の湿度で接触させる、請求項29~34のいずれか一項に記載された方法。
【請求項36】
前記玄武岩繊維と混合物とを、5分~12時間、好ましくは1時間~6時間、より好ましくは90分~3時間、前記圧力下で接触させる、請求項29~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記玄武岩繊維を前記型に導入する前に、前記型にゲルコートを形成することをさらに含む、請求項29~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記玄武岩繊維と前記混合物とを接触させる前に、ポリマーコアを前記型に導入することをさらに含む、請求項29~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリマーコアを、2つ以上の玄武岩繊維との間に、前記型へと導入し、好ましくは、前記ポリマーコアを、玄武岩繊維の2つ以上の層を分離する層を形成するために前記型に導入する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1~20のいずれか一項に記載の構造シェル、請求項21に記載の船体、請求項22に記載のデッキ、請求項23に記載の構造グリッド、請求項24に記載の海洋船舶、請求項25に記載の風力タービンブレード、請求項26に記載のスキーまたはスキーポール、または請求項27もしくは請求項28に記載の耐弾パネルを分解する方法であって、前記方法は、
前記構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーもしくはスキーポール、または耐弾パネルを提供すること、
前記構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーもしくはスキーポール、または耐弾パネルを200~600℃の温度に加熱して、ポリマー材料を少なくとも部分的に熱的に分解すること
少なくとも部分的に熱的に分解された前記ポリマー材料を前記玄武岩繊維から分離すること、および
玄武岩繊維および/または少なくとも部分的に熱分解されたポリマー材料を回収すること、を含む方法。
【請求項41】
前記加熱を不活性雰囲気中、好ましくは酸素の実質的な非存在下で実施する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記加熱が、250~500℃、好ましくは300~500℃、より好ましくは350~400℃の温度で実施される、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記加熱が、少なくとも10バールの圧力で実施される、請求項40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記構造シェルがポリマーコアを含み、前記方法がさらに前記ポリマーコアを回収することを含む、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
200~600℃の温度に加熱する前に、
前記構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーもしくはスキーポール、または耐弾パネルを150~300℃の温度に加熱して、前記ポリマー材料を少なくとも部分的に溶融すること、
前記少なくとも部分的に溶融したポリマー材料から前記ポリマーコアを分離すること、および
前記ポリマーコアを回収すること、をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記構造シェルがゲルコートを含み、前記方法は、前記ゲルコートの燃焼による加熱および/または除去の前に、前記ゲルコートを少なくとも部分的に機械的に除去することをさらに含む、請求項40~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
請求項1~20のいずれか一項に記載の構造シェル、請求項21に記載の船体、請求項22に記載のデッキ、請求項23に記載の構造グリッド、請求項24に記載の海洋船舶、請求項25に記載の風力タービンブレード、請求項26に記載のスキーまたはスキーポール、または請求項27または請求項28に記載の耐弾パネルを分解する方法であって、前記方法は、
前記構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーまたはスキーポール、または耐弾パネルを提供すること、
前記構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーまたはスキーポール、または耐弾パネルと溶剤とを接触させて、ポリマー材料を少なくとも部分的に溶解すること、および
玄武岩繊維および/またはポリマー材料を回収すること、を含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋船舶(または船舶;marine vessel)の船体、構造グリッド(structural grid)および/またはデッキまたは風力タービンブレード等用のリサイクル可能な構造シェル(または構造物シェル;structural shell)、構造シェルの製造方法および構造シェルの分解方法に関するものである。
【0002】
ヨットの船体は、通常、繊維強化樹脂、典型的にはグラスファイバーおよび/またはカーボンファイバーで形成されている。このような繊維強化樹脂は、強度が高く、軽量で、例えばデッキ、船体、バルクヘッド等の形状に成形することが容易である。ヨットのグリーンなイメージとは裏腹に、ヨット業界の大半は持続可能性に対して現状維持の状態である。最大の脅威は次の2つである:(i)有毒な樹脂とグラスファイバーの使用、(ii)ボートシェルの寿命が尽きても本当の解決策がないことである。
【0003】
持続可能な材料による環境に優しいソリューションは正しい方向を向いているが、寿命を迎えた際には、最終製品が必然的に埋立地に行き着くようなダウンサイクルを可能にするだけである。その理由の一つは、望ましい物理的・機械的特性を持つガラス繊維や炭素繊維が使用され、多孔質で樹脂の一部をガラス繊維や炭素繊維に吸収させることによって、樹脂との強い結合を形成することができるためである。このため、船体等に使用できる強靭で軽量なコンポジット(または複合材料;composite)が得られるが、現状ではガラス繊維および/または炭素繊維は基本的に「シングルユース」であり、寿命が来た際にリサイクルすることができないことを意味する。さらに、このような用途では、ガラス繊維および/または炭素繊維を熱硬化性プラスチックの補強に使用することが一般的である。したがって、船体等の寿命が尽きたとき、特に含浸されたガラス繊維および/または炭素繊維については、埋立以外の処分の選択肢がほとんどない。一部の材料のダウンサイクルを可能にし得る。
【0004】
例えば、亜麻(ヘンプ)を使った新しい「グリーン」なコンポジットが開発されている。しかしながら、これらの繊維はコンポジットに使用される樹脂を吸収する傾向があるため、寿命を迎えた後(または使用終了時;end of life)の材料分離は不可能であり、材料はダウンサイクルにしかならない。
【0005】
玄武岩繊維は、ヨット等の用途に使用される代替の「グリーン」繊維として研究されてきたが、通常はビニルエステル、ポリエステル、または(グリーン)エポキシ樹脂を使用するのみであった。これらの樹脂はすべて熱硬化性プラスチックであるため、製造過程で液体から硬質へと変化するが、再び液体に戻ることはできない。そのため、玄武岩繊維を回収して再利用するおよび/またはリサイクルすることは容易ではない。そのため、コンポジットの多くは「シングルユース」となり、埋立処分される可能性がある。
【0006】
KR20090079109Aは、玄武岩繊維を含むボート用コンポジットの製造方法、およびそれを用いて製造されたボートを開示している。しかしながら、このコンポジットは、ポリエステルを含む樹脂と、メチルケトンパーオキサイドを含む硬化剤とを用いることにより、強度の高い熱硬化性樹脂を提供するものである。したがって、上記のように、玄武岩繊維は容易に回収することができず、コンポジットは一般に、せいぜい寿命が尽きた際にダウンサイクルすることしかできない。なお、コンポジットのリサイクルについては、記載されていない。
【0007】
CN109370186Aは、耐低温性で環境に優しいガラス繊維強化プラスチック製浄化槽の製造方法に関する。CN111098528Aは、完全含浸熱可塑性プリプレグを製造するためのシステムに関する。US2019/330432Aは、短繊維強化半製品の製造のための、ポリウレタンとポリメタクリレートからなる2成分ハイブリッドマトリックスシステムに関する。US2020/047427Aは、熱可塑性ポリマーコンポジット部品の製造プロセス、および当該プロセスによって得られる物体に関する。WO2020/088173A1は、マイクロ波電界で電気アークを発生させることができる多孔質コンポジット材料、その調製方法、およびその使用に関する。JPH11335929Aは、高導電性炭素繊維とその製造に関するものである。特開2003012857Aは、繊維強化プラスチック廃材の処理方法および処理装置に関する。
【0008】
従って、特に海洋船舶で使用される場合だけでなく、海洋分野以外でも、その寿命が尽きた際に実質的にリサイクルすることができる構造シェルを提供する必要性が存在する。特に、繊維強化樹脂を含む構造シェルを提供する必要性があり、ここで、繊維および樹脂の両方は、それらの物理的および機械的特性の著しい劣化なしに、好ましくはそれらの物理的および/または機械的特性の実質的に劣化なしに回収およびリサイクルまたはダウンサイクリングすることができる。
【0009】
本開示のさらなる目的は、このような実質的にリサイクル可能な構造シェルを提供することであり、構造シェルは、単位面積当たりの高い曲げ強度を有する。
【0010】
本発明は、先行技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組むか、または少なくともその商業的に許容される代替的な解決策を提供することを目指すものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、本明細書に添付された請求項に従って、構造シェル、海洋船舶用の船体、海洋船舶用の構造グリッド、海洋船舶用のデッキ、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーおよび/またはスキーポール、構造シェルの製造方法、および構造シェルの分解方法を提供する。
【0012】
具体的には、一態様において、本発明は、玄武岩繊維強化材料を含む構造シェルを提供し、玄武岩繊維強化材料は、ポリマー材料を含み、ポリマー材料は、200~600℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解(thermally clacking)することが可能である。
【0013】
本明細書で定義される各態様または実施形態は、反対のことが明確に示されない限り、任意の他の態様(複数可)または実施形態(複数可)と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された特徴は、好ましいまたは有利であると示された他の特徴と組み合わせることができる。
【0014】
本明細書で使用される「構造シェル」という用語は、主要な表面積よりも著しく小さい厚さを有する材料の層状シートまたは層を含み得る。したがって、構造シェルは、薄肉体であってもよい。構造シェルは、材料の主要な表面積に加えられる、流体圧力、空気力学的負荷および/または衝撃等の外部負荷に耐えるためのものであってもよい。特に、構造シェルは、海洋船舶の船体および/またはデッキ、風力タービンのブレード、スキーおよび/またはスキーポール、航空機の胴体、陸上車両のボディ等であってもよい。構造シェルは、フレームによって支持されてもよい。
【0015】
本明細書で使用される用語「玄武岩繊維」は、斜長石、輝石、およびカンラン石という鉱物から構成される玄武岩の極めて細い繊維から作られる材料を包含し得る。玄武岩繊維は、例えば、バルク玄武岩を溶融し、玄武岩を均質化し、溶融玄武岩を押出すことによって繊維を抽出することを含む方法によって製造され得る。好ましくは、高酸性(シリカ含有量46%以上)および低鉄分の玄武岩が、玄武岩繊維の製造のために使用される。典型的には、バルクの玄武岩は、溶融前に破砕および洗浄される。玄武岩繊維は、典型的には、10~20μmの間のフィラメント直径を有する。
【0016】
本明細書で使用される「繊維強化材料」という用語は、繊維で強化されたコンポジット材料を包含し得る。玄武岩繊維強化材料は、ポリマー材料を含む。典型的には、したがって、コンポジット材料は、玄武岩繊維で強化されたポリマーマトリックスを含む。
【0017】
ポリマー材料は、200~600℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解し得る。本明細書で使用される「熱的に分解する」という用語は、例えば、ポリマー材料の解重合および/または架橋の除去によるポリマー材料の熱分解(pyrolysis)を包含し得る。理論に束縛されることを望むことなく、熱分解(thermally cracking)中のポリマーのポリマー骨格における炭素-炭素結合のホモリティックフィッティングにより、ポリマー材料中のポリマーは少なくとも部分的に解重合することが理解される。言い換えれば、いくつかの実施形態では、例えば、ポリマー材料は、200~600℃の温度で少なくとも部分的に解重合および/または架橋解除し得る。
【0018】
好ましくは、ポリマー材料は、熱可塑性材料である。熱可塑性材料は、熱可塑性プラスチック、または熱可塑性プラスチックの特性を示す材料であってよい。本明細書で使用される「熱可塑性樹脂」という用語は、当該技術分野で定義されるように、加熱されると柔らかくなり、冷却されると硬くなる材料を包含し得る。
【0019】
好ましくは、本発明のポリマー材料は、ポリメタクリレートを含み、より好ましくはポリ(メチルメタクリレート)を含む。本発明での使用に特に適している市販のポリメタクリレートは、アルケマ(Arkema)社のエリウム(Elium)(登録商標)である。ポリマー材料は、他の(熱可塑性)ポリマー、例えば、他のポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステルおよびポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー、ポリスルホンおよびポリフェニレンスルフィドを含んでもよいが、ポリマー材料が200~600℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解し得ることが条件で、このようなポリマーを使用できる。
【0020】
本発明者は、驚くべきことに、ポリマー材料を含む材料を強化するために玄武岩繊維を使用することで、ポリマー材料が200~600℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解し得て、海洋船舶等の船体に使用するための単位面積当たりの高い曲げ強度を有する構造シェルを製造することができ、玄武岩繊維が寿命末期に回収可能で、玄武岩繊維の物理特性および/または機械特性が実質的に、好ましくは全く劣化しないことを発見した。ポリマー材料および/またはポリマー材料の製造に使用される樹脂も、加熱により回収可能である。理論に拘束されることを望まないが、これは、玄武岩繊維が約1500℃以上の溶融温度を有するためであると考えられている。したがって、得られた少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料および/または玄武岩繊維は、加熱された構造シェルから独立して回収し得る。理論に拘束されることを望まないが、これは、玄武岩繊維が実質的に樹脂を吸収しない、好ましくは樹脂を吸収しないためであるとも考えられている。したがって、玄武岩繊維強化材料を加熱して、ポリマー材料を少なくとも部分的に熱的に分解し、それによって玄武岩繊維を回収することができる液体を形成することができる。さらに、ポリマー材料と玄武岩繊維の間に形成された結合は、ポリマー材料が少なくとも部分的に熱的に分解された際に破壊され、それによって玄武岩繊維は、玄武岩繊維にポリマー材料の残留物が実質的にない状態で少なくとも部分的に熱的に分解したポリマー材料から分離することができると考えられている。したがって、回収された玄武岩繊維は、物理的および/または機械的特性を実質的に、または好ましくは全く劣化させることなく回収され得る。これにより、玄武岩繊維は、例えば、さらなる構造シェル等での使用のために完全にリサイクルされることが可能となり得る。好ましくは、少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料は、20℃、すなわち室温で液体である。この特性は、玄武岩繊維と少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料とをより容易に分離することを可能にし得る。例えば、この性質により、加熱工程が完了し、少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料が冷却されると、玄武岩繊維と少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料がより容易に分離されることが可能になることがある。これは、ポリマー材料がポリメタクリレートを含む場合に特に容易に達成され、ポリマー材料がアルケマからのエリウム(登録商標)を含む場合にさらに特に達成される。
【0021】
その結果、寿命が尽きた際に、樹脂および玄武岩繊維の出発材料がそれぞれ、例えば別の構造シェル等に再び使用し得る状態で回収され得る、構造シェルを製造することができる。つまり、本発明の構造シェルは、商用利用可能な十分な強度を有し得て、一方でリサイクル可能であり得ることは驚くべきことである。繊維がリサイクルできるように樹脂を実質的に吸収しないコンポジット材料を製造することが可能であり、そのコンポジット材料が、海洋船舶用のボート船体等の構造シェルに使用するために十分な、好ましくは望ましい曲げ強度を有するとは予想できないであろう。しかしながら、本明細書に記載の構造シェルは、海洋分野以外の任意の好適な用途も有することができることが理解されよう。例えば、本明細書に記載の構造シェルは、以下の非限定的な用途の一覧のいずれかに使用され得る:風力、手動、電気および燃焼推進船(例えば、ディンギー、カヤック、パワーボート、帆船、パワーボート等);スキー;スキーポール;建設ポール(例えば、足場);スピネーカーポールおよび/またはバウスプリット(例えば、鉄道、路面電車、地下鉄の構成要素(ノーズ、サイドパネル等)、風力タービンブレード、家具(椅子、テーブル、クローゼット等)、自動車の構造およびボディ部品、レーダー/アンテナカバー、住宅建築材料(壁、屋根、床等)、旗竿、窓枠、ドア、スーツケース、フライトシミュレーター等である。
【0022】
好ましくは、玄武岩繊維は、ポリマー材料によって完全にカプセル化(または封入;encapsulate)される。しかしながら、典型的には、玄武岩繊維強化材料の表面に繊維のプリントスルーを見ることが可能である。このような構造シェルは、単位面積当たりの高い曲げ強度を有し、海洋船舶の船体および/またはデッキ、風力タービンのブレード、スキー、スキーポール、航空機の胴体、陸上車両のボディ等での使用に適し得る。
【0023】
好ましくは、玄武岩繊維強化材料は、実質的にボイドを含まない。特に好ましくは、玄武岩繊維強化材料は、1体積%未満のボイド(または空洞、または空隙;void)、より好ましくは0.5体積%未満のボイド、最も好ましくは実質的にボイドを含まない。このような材料は、高い曲げ強度を示し、屈曲または曲げ時に剥離しにくくなり得る。
【0024】
構造シェルの玄武岩繊維とポリマー材料との重量比は、好ましくは80:20~40:60、より好ましくは75:25~50:50、さらに好ましくは70:30~55:45である。このような比率は、必要な樹脂量の減少により、構造シェルの単位面積当たりのコスト、重量および強度の最適なバランスを提供する。
【0025】
好ましくは、玄武岩繊維が、規則的な配置でポリマー材料に分散され、好ましくは、繊維強化材料が、実質的に平行な玄武岩繊維の複数の層を含み、実質的に平行な玄武岩繊維の平均方向が、隣接する層で異なっている。より好ましくは、各層の実質的に平行な玄武岩繊維の平均方向は、隣接する層の実質的に平行な玄武岩繊維の平均方向に対して、約45°または約90°である。最も好ましくは、実質的に平行な玄武岩繊維の層は、玄武岩繊維の相対方向が、4軸方向に、好ましくは-45°、90°、0-90°および0°の玄武岩繊維の相対方向で、3軸方向に、好ましくは-45°、90°および45°の玄武岩繊維の相対方向で、2軸方向に、好ましくは0°および90°の玄武岩繊維の相対方向で、または単方向に配置されている。ポリマー材料内の玄武岩繊維のこのような配置は、すべての平面方向において実質的に等しい機械的特性を示す準等方性コンポジット材料を提供し得る。ポリマー材料内の玄武岩繊維のそのような配置は、単位面積当たりの望ましい高い曲げ強度と耐摩耗性を有する構造シェルも提供し得る。特に、本発明の玄武岩繊維強化材料の製造中に、発明者は、重量比および繊維方向に基づいて、玄武岩繊維のいくつかの織り方(または織物;weave)の選択を行った。すなわち、(i)UNI(単方向または1方向の繊維の糸)、(ii)BI(2軸または90°の2方向の繊維の糸)、(iii)TRI(3軸または45~90°の3方向の繊維)の3種類の繊維方向が作られた。いくつかの実施形態では、玄武岩繊維のこれらの織り方は、準等方性特性、すなわち、すべての平面方向において実質的に等しい機械的特性を示し得る層状構造を形成するために、互いの上に積層され得る。各織りの互いに対する負荷は、要求される特性および/または得られるコンポジット材料の目的に応じて、変化させることも可能である。しかしながら、本発明は、特定のタイプの玄武岩繊維の織り方に限定されず、当該技術分野で使用される任意の従来の織り方が、本明細書に記載の玄武岩繊維強化材料に使用され得ることが理解されよう。織り方における典型的な玄武岩繊維の負荷は、100~1200g/m、好ましくは、船体等に使用するために200~700g/mであってよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、構造シェルは、コア、好ましくはポリマーコアをさらに含む。ポリマーコアは、典型的にはポリエステルを含み、ポリエステルは、好ましくはポリ(エチレンテレフタレート)(PET)を含み、PETは、好ましくはPETフォームを含む。本明細書で使用される「PETフォーム」という用語は、PETを含む材料を包含し得て、PETは、複数のガス充填ボイドを含む。しかしながら、本明細書に記載の構造シェルでは、ボイドは、ポリマー材料で実質的に充填されてもよく、好ましくはポリマー材料で完全に充填されてもよい。ポリマーコアは、構造シェル内に層を形成してもよい。典型的には、そのような層は、構造シェルの中心にある場合がある。例えば、ポリマーコアは、玄武岩繊維強化材料の2つ以上の層の間に挟まれた層を形成してもよく、玄武岩繊維強化材料に完全に包囲された層を形成してもよい。有利なことに、構造シェルがポリマーコアをさらに含む場合、構造シェルがポリマーコアを含まない場合ほど構造シェルの単位面積当たりの重量を増加させずに、構造シェルの厚さを増加させ得る。ポリマーコアを含むことによって、単位面積当たりの引張強度が低下する可能性があることが理解されよう。しかしながら、このような構造シェルは、例えば、海洋船舶のデッキに使用される場合に特に好ましく、このような引張強度の損失は、曲げ強度の増加によって補償され得る。いくつかの実施形態では、PETコアの代わりに他の材料をポリマーコアに使用してもよく、例えば、PVCまたはバルサがある。しかしながら、PVCコアは、リサイクルできないので、本発明ではあまり好ましくない。ポリマーコアは、構造シェルにおける特定の用途に応じて、任意の厚さであってよい。しかしながら、典型的には、ポリマーコアは、1mm~300mm、好ましくは1mm~100mm、より好ましくは5~50mm、さらに好ましくは10~30mmの厚さを有してよい。
【0027】
PETコアの代替として、ポリマーコアは、玄武岩-繊維強化材料と同じポリマー材料を含み得る。換言すれば、コアは、玄武岩繊維を含まないポリマー材料で形成されてもよい。このようなコアは、玄武岩繊維強化材料のポリマー材料と同時に回収してもよい。
【0028】
ポリマーコアの代替として、構造シェルは、例えば、アルミニウム(融点:約650℃)、ロックウールまたはバルサウッドを含むコアを含んでいてもよい。
【0029】
好ましくは、ポリマー材料は、150~300℃、好ましくは200~250℃の温度で少なくとも部分的に溶融し得て、および/または少なくとも部分的に熱的に分解することができる温度よりも低い温度で少なくとも部分的に溶融し得る。これは、構造シェルがポリマーコアからなる場合に特に好ましい。さらに、ポリマー材料は、好ましくは300~500℃、より好ましくは350~400℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解できる。上述の利点に加えて、これは、構造シェルがポリマーコアを含む場合にも特に好ましい。上記のような特性を有すると、例えば、構造シェルを分解(disassembling)する際に、ポリマーコアをより容易に回収することが可能となり得る。特に、ポリマーコアの溶融温度が、例えば、200~300℃である場合に、より容易である。これは、加熱時に、ポリマー材料がポリマーコアよりも低い温度で溶融し得るため、ポリマーコアを加熱された構造シェルからより容易に分離して回収することができる。特に、固体ポリマーコアは、液体ポリマー材料からより容易に除去し得る。これはまた、より高い温度に加熱されたときに、ポリマーコアと少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料との相互汚染の可能性を低減し、少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料をリサイクルすることができるようにし得る。これは、ポリマー材料が少なくとも部分的に熱的に分解するように構造シェルが加熱される前に、ポリマーコアを加熱された構造シェルから除去することができるからであり得る(それにより、ポリマーコアの溶融、および溶融したポリマーコアの溶融および/または少なくとも部分的に熱的に分解したポリマー材料への混合は回避される)。この場合、ポリマーコア、少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料および玄武岩繊維は、それぞれ別々に回収することができる。
【0030】
ポリマー材料は、上記温度で少なくとも部分的に溶融および/または少なくとも部分的に熱的に分解し得ると説明されている。典型的には、ポリマー材料は、上記温度で実質的に溶融または熱的に分解でき、より典型的には、上記温度で完全に溶融または熱的に分解し得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、構造シェルは、典型的には外面上に、ゲルコートをさらに含み得る。典型的には、ゲルコートは、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステルを含む。好ましくは、ゲルコートは顔料を含む。ゲルコートの使用は、有利には、玄武岩繊維強化材料の目に見える表面に高品質の仕上げを提供し得る。典型的には、ゲルコートは、例えばボートの船体の表面等の構造シェルの美的外観を向上させる、着色された光沢のある表面を提供する。ゲルコートの使用は、例えば、海洋船舶用の船体に使用するための最終的な構造シェルを製造するための労働時間の数を実質的に減少させ得る。これは、ゲルコートの使用により、玄武岩繊維強化材料を塗装および/または研磨する必要性がなくなる可能性があるからである。ゲルコートは、典型的には、1mm~3mmの厚さを有する。
【0032】
好ましくは、構造シェルは、経年変化前に600~800MPaの曲げ強度を示す。これは、通常、3点曲げセットアップを使用して測定される。構造シェルのエージングは、例えば、海水エージングを含み得る。
【0033】
好ましい実施形態では、玄武岩繊維強化材料を含む構造シェルが提供され、玄武岩繊維強化材料は、玄武岩繊維、ポリマー材料、および任意に硬化剤からなり、ポリマー材料は、200~600℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解し得て、ポリマー材料はポリメタクリレートを含む。
【0034】
さらなる態様において、本発明は、玄武岩繊維強化ポリマー材料を含む構造シェルを提供し、ポリマー材料は、200~600℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解し得る。
【0035】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも等しく適用される。
【0036】
さらなる態様において、本発明は、玄武岩繊維強化熱可塑性材料を含む構造シェルを提供する。
【0037】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも等しく適用される。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、玄武岩繊維強化材料を提供し、玄武岩繊維強化材料は、ポリマー材料を含み、ポリマー材料は、200~600℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解し得る。玄武岩繊維強化材料は、構造シェル用であってもよい。
【0039】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様に等しく適用される。
【0040】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の構造シェルを含む海洋船舶用の船体を提供する。
【0041】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも等しく適用される。
【0042】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の構造シェルを含む海洋船舶用の構造グリッドを提供する。
【0043】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも等しく適用される。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の構造シェルを含む海洋船舶用のデッキを提供する。
【0045】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも等しく適用される。
【0046】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの船体および/または少なくとも1つの構造グリッドおよび/または少なくとも1つのデッキを含む海洋船舶を提供し、少なくとも1つの船体および/または少なくとも1つの構造グリッドおよび/または少なくとも1つのデッキは上記の通りである。
【0047】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも同様に適用される。
【0048】
少なくとも1つのデッキは、船体に取り付けられ、および/または船体によって少なくとも部分的に形成されてもよい。海洋船舶は、動力船(例えば、機械的または電気的に動力のあるエンジンによって動かされる)、帆船(例えば、ヨットまたはディンギー)、手漕ぎボート等を含んでいてもよい。
【0049】
少なくとも1つの船体は、少なくとも部分的に構造シェルを含んでもよい。船体は、海洋船舶が浮遊しているときに水圧荷重を受けるためのものであってよく、海洋船舶の底部および側面の少なくとも一部を形成してもよい。コンポジット材料は、船体の面積の少なくとも90%または全てにわたって及んでいてもよい。
【0050】
少なくとも1つの船体は、モノリシック構造における構造シェルを含んでもよい。その結果、適切な厚さを選択することにより、少なくとも1つの船体は、単位面積当たり比較的高い強度および耐衝撃性を有し得る。このような配置は、海洋船舶がパワーボートを含み、したがって、高速で走行する際に船体が波から高い力の衝撃を繰り返し受ける場合に特に好適である。
【0051】
あるいは、少なくとも1つの船体は、サンドイッチ構造(例えば、PET層を有する)の構造シェルを含んでもよく、これは、モノリシック構造よりも単位面積当たりの重量が低く、単位面積当たりの強度が低いことがある。このような配置は、海洋船舶が帆船または手漕ぎボートを含み、したがって船体に衝撃を与える力が比較的小さい状態で比較的低速で走行する場合に適している場合がある。
【0052】
少なくとも1つのデッキは、サンドイッチ構造における構造シェルを含んでもよい。その結果、少なくとも1つのデッキは、少なくとも1つの船体よりも単位面積当たりの強度が低くなる場合がある。しかしながら、少なくとも1つのデッキは、海洋船舶の全体重量を低減するために、少なくとも1つの船体よりも単位面積当たりの重量が低くてもよい。
【0053】
少なくとも1つの構造グリッドは、海洋船舶内、例えば船体内等の海洋船舶の内部構造内に、一般的な支持および構造を提供するためのものであってもよい。
【0054】
特定の実施形態では、海洋船舶は、剛性船体と、剛性船体の上縁の少なくとも一部の周りのチューブとを含む剛性膨張式ボートであってよい。剛性船体は、好ましくはモノリシック構造で、構造シェルを含んでもよい。チューブは、例えば円形、半円形、正方形、三角形等の任意の断面を有してもよい。チューブは、中空であってもよいし、例えば発泡体および/またはゴムおよび/またはプラスチック等で充填されていてもよい。例えば、チューブは、Dカラーであってもよい。
【0055】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の構造シェルを含む風力タービンブレードを提供する。
【0056】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも等しく適用される。
【0057】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の構造シェルを含んでなるスキーまたはスキーポールを提供する。
【0058】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも等しく適用される。
【0059】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載された構造シェルを含む耐弾パネルを提供する。有利には、耐弾パネルは、耐弾試験NIJ-STD-0108.01レベルIIIおよびNIJ-STD-0108.01レベルIIIAに合格し得る。
【0060】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも等しく適用される。
【0061】
好ましくは、耐弾パネルは、0.35~0.45、好ましくは0.39~0.44の玄武岩繊維に対するポリマー材料の重量比を有する。約0.41~約0.43の玄武岩繊維に対するポリマー材料の重量比が特に有効であることが判明している。このような比率は、パネルの耐弾性能を向上し得る。
【0062】
耐弾パネルは、例えば、ボディアーマー(例えば、ヘルメットまたは防弾チョッキ)、車両、航空機または構造物(例えば、建物)に使用してもよい。
【0063】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の耐弾パネルを含む、ボディアーマー、ヘルメット、防弾チョッキ、車両、航空機、構造物または建物を提供する。
【0064】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも等しく適用される。
【0065】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーまたはスキーポール、または耐弾パネルを製造する方法を提供し、当該方法は、
型を提供すること
玄武岩繊維を型に導入すること;
玄武岩繊維と、樹脂および硬化剤を含む混合物とを-0.65バール(bar)以下の相対圧力で接触させて、構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーまたはスキーポール、または耐弾パネルを形成すること;ならびに
構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーまたはスキーポール、または耐弾パネルを、型から回収すること、を含む。
【0066】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも等しく適用される。
【0067】
典型的には、構造シェル等を製造するこのような方法の一般的な用語は、「真空注入」と理解され得る。真空注入法は、当該技術分野において既知である。
【0068】
本明細書で使用する「型」という用語は、玄武岩繊維強化材料に硬化する際の樹脂に形状を与えるために使用される中空容器またはシェルを包含し得る。型は、例えば、海洋船舶の船体および/またはデッキ、風力タービンのブレード、航空機の胴体、陸上車両のボディ等の形状に樹脂を成形するのに適している場合がある。
【0069】
玄武岩繊維は、規則的な配置で型に導入されてもよく、好ましくは、得られる繊維強化材料が実質的に平行な玄武岩繊維の複数の層を含むように、玄武岩繊維が型に導入され、ここで実質的に平行な玄武岩繊維の平均方向は、隣接する層で異なっている。より好ましくは、玄武岩繊維は、各層の実質的に平行な玄武岩繊維の平均方向が、隣接する層の実質的に平行な玄武岩繊維の平均方向に対して約45°または約90°となるように、型に導入される。最も好ましくは、玄武岩繊維は、実質的に平行な玄武岩繊維の層が、4軸方向に、好ましくは玄武岩繊維の相対方向が-45°、90°、0-90°および0°で、3軸方向に、好ましくは玄武岩繊維の相対方向が-45°、90°および45°で、2軸方向に、好ましくは玄武岩繊維の相対方向が0°および90°で、または単方向に配置されているように型に導入される。ポリマー材料内の玄武岩繊維のこのような配置は、すべての平面方向において実質的に等しい機械的特性を示す準等方性コンポジット材料を提供し得る。ポリマー材料内の玄武岩繊維のそのような配置は、単位面積当たりの望ましい高い曲げ強度と耐摩耗性を有する構造シェルをも提供し得る。
【0070】
理論に束縛されることを望まないが、接触ステップ中に適用される負の相対圧力は、樹脂が玄武岩繊維を完全にカプセル化し得て、同時に玄武岩繊維強化材料から実質的に全てのガスボイドを排除することを可能にし得ると考えられている。したがって、玄武岩繊維強化材料がガスボイドを実質的に含まない構造シェルが提供され得る。このような構造シェルは、単位面積当たりの望ましい高い曲げ強度および/または耐衝撃性および/または曲げ(flexing)または曲げ(bending)に伴う剥離の可能性の低減を示し得る。
【0071】
本方法は、有利には、以下のうちの1つ以上を含み得る:
注入中の樹脂の流れを改善するために、接触ステップの間に超音波を適用すること;
コンポジット要素のハンドレイアップ;
引抜成形;
プリプレグプロセス;
樹脂トランスファー成形、および
真空アシスト樹脂トランスファー成形。
【0072】
本明細書で使用される「樹脂」という用語は、硬化剤と混合されると、重合および/または架橋して固体ポリマー材料を提供し得るモノマーおよび/またはポリマーを含む流体を包含し得る。本明細書で使用される用語「硬化剤」は、例えば重合および/または架橋によって、またはその他の方法で、樹脂を硬化させる物質を包含し得る。
【0073】
好ましくは、樹脂は、メタクリレートモノマー、より好ましくはメチルメタクリレート(またはメタクリル酸メチル;methyl methacrylate)モノマー、さらに好ましくは50~85重量%のメチルメタクリレートモノマーおよび/または10~50重量%のアクリルポリマーを含む。
【0074】
好ましくは、硬化剤は、有機過酸化物、好ましくは過酸化ベンゾイルを含む。本発明での使用に特に適した市販の有機過酸化物は、ヌーリオン(Nouryon)社のパーカドックス(Perkadox)(登録商標)GB-50Xである。他の有機過酸化物および/またはパーカドックス(登録商標)硬化剤も使用してもよい。例えば、ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジ(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンおよび/またはジクミルパーオキサイド、または過酸化ベンゾイルを含むか含まないこれらの混合物が挙げられる。本発明での使用に特に適した他の市販の有機過酸化物は、アルケマ社のエリウム(登録商標)191XO/SA(重合時間が約3時間とより長い)およびエリウム(登録商標)158XO/SA(重合時間が約1時間とより短い)である。これらは、2つの樹脂と硬化剤(mekp型ブタノックス M50)を含む3成分全液体システムである。
【0075】
好ましくは、混合物は、0.5~30phr、より好ましくは1~15phr、さらに好ましくは1.5~4phr、さらにより好ましくは2.5~4phrの量の硬化剤を含む(ここで「phr」は、本明細書において100重量部あたりを意味する)。これは、典型的には、本明細書に記載の玄武岩繊維強化材料を得るために、樹脂の満足な硬化を提供するのに必要な量である。
【0076】
典型的には、玄武岩繊維と混合物とを、-0.65~-1.15バールの相対圧力で接触させる。好ましくは、玄武岩繊維と混合物とを、-0.7~-1.15バール、より好ましくは-0.85~-1.15バール、さらに好ましくは-0.9~-1.1バール、なおさらに好ましくは-0.95~-1.05バールの相対圧力で接触させる。0.65バールを超える相対圧力、またはいくつかの材料については-0.85バールは、典型的には、玄武岩繊維強化材料から実質的にすべてのガスボイドを排除せず、および/またはポリマー材料と玄武岩繊維との間に強い結合を形成することを可能にしない。一般的に、相対圧力が低いほど、得られる玄武岩繊維強化材料は密になり、玄武岩繊維とポリマー材料との間に形成される結合は強くなる。この低い圧力は、構造シェルがポリマーコアを含む場合に特に重要である。理論に縛られることを望まないが、これは、実質的に樹脂がポリマーコアの発泡体のボイドのすべてを通して、好ましくは発泡体のボイドのすべてを通して吸引され得るようにするためである。しかしながら、-1.15バール未満の相対圧力は、型および/または玄武岩繊維強化材料を変形させる可能性がある。さらに、このような低い相対圧力は、真空バッグを損傷する可能性がある。一部の構造シェル設計では、-1.05バール未満の相対圧力は、型および/または玄武岩繊維強化材を変形させる可能性がある。
【0077】
典型的には、玄武岩繊維と混合物とを、10~40℃、好ましくは14~30℃の温度で接触させる。このような温度範囲では、少なくとも、より複雑な装置が必要でないため、製造工程における大幅なコスト削減が可能となる。
【0078】
典型的には、玄武岩繊維と混合物とを、30~70%、好ましくは40~50%の湿度で接触させる。
【0079】
好ましくは、玄武岩繊維と混合物とを、5分~12時間、好ましくは1時間~6時間、より好ましくは90分~3時間、加圧下で接触させる。玄武岩繊維は、固体構造シェルを提供するのに適した時間、加圧下で混合物と接触される。これは、型から取り外す前に構造シェルを完全に固めることを可能にし得る。接触温度が高い場合は、接触時間を短くする必要がある。構造シェルが型から取り出されると、50~150℃の温度で、通常1~10時間の間、接触させることができる。これは、「ポスト硬化」工程となる場合がある。
【0080】
玄武岩繊維と、樹脂および硬化剤を含む混合物とを接触させることは、典型的には、樹脂と硬化剤を型を含むバッグに導入することを含む。典型的には、樹脂と硬化剤を大気圧に晒して、樹脂と硬化剤を(減圧された)バッグの中に入れるようにする。あるいは、樹脂と硬化剤をバッグに入れるために、樹脂と硬化剤を+0.1~+15バール、好ましくは+0.2~+0.6バールの陽圧にさらす。
【0081】
さらなる実施形態では、本方法は、玄武岩繊維を型に導入する前に、型にゲルコートを形成することをさらに含む。
【0082】
さらなる実施形態では、本方法は、玄武岩繊維と混合物とを接触させる前に、ポリマーコアを型に導入することをさらに含む。典型的には、ポリマーコアは、2つ以上の玄武岩繊維との間に、型に導入され、好ましくは、ポリマーコアは、玄武岩繊維の2つ以上の層を分離する層を形成するように型に導入される。ポリマーコアは、型に導入され、玄武岩繊維によって包囲されてもよい。あるいは、ポリマーコアは、玄武岩繊維の層の間に挟まれることがある。
【0083】
いくつかの実施形態では、混合物は、レオロジー調整剤および/または離型剤をさらに含む。レオロジー調整剤は、型への樹脂の流れを改善し、離型剤は、型からの構造シェル等の除去を容易にするのに役立ち得る。このような添加剤の例としては、シレックス(Cirex)(登録商標)388、ケムトレンド(Chemtrend)(登録商標)R&Bが挙げられる。
【0084】
さらに、本明細書に記載の構造シェル等の製造方法は、先行技術のものよりも安全であり得る。これは、本明細書で使用される樹脂および硬化剤の反応が、特に使用される樹脂および硬化剤が上記のようなものである場合、海洋船舶用の船体等を製造するための先行技術のものよりも発熱が少ないためであると考えられる。したがって、製造される構造シェル等がより低い温度に加熱され得るため、本方法は、真空注入プロセス中に火災の危険性をより低くすることができる。
【0085】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載の構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド海洋船舶、風力タービンブレード、スキーまたはスキーポール、または耐弾パネル(または他の物体)を分解する方法を提供し、この方法は、以下を含む:
構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーまたはスキーポール、耐弾パネル(または本明細書に記載の他の物体)を提供すること;
構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーもしくはスキーポール、または耐弾パネル(または本明細書に記載の他の物体)を200~600℃の温度に加熱して、ポリマー材料を少なくとも部分的に熱的に分解すること;
少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料を玄武岩繊維から分離すること;および
玄武岩繊維および/または少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料を回収すること。
【0086】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも等しく適用される。
【0087】
好ましくは、加熱は、不活性雰囲気中、好ましくは酸素の実質的な非存在下で実施される。理論に拘束されることを望むものではないが、このような条件は、構造シェルを分解する方法の間に、ポリマー材料および/またはポリマーコアが燃焼する可能性および/または何らかの方法で損傷する可能性を低減し得ると考えられている。好ましくは、加熱は、250~500℃、より好ましくは300~500℃、より一層好ましくは350~400℃の温度で実施される。
【0088】
好ましくは、加熱は、少なくとも10バールの圧力で実施される。このような高い圧力は、材料が熱分解および触媒分解プロセスによって燃料、モノマー、または他の価値ある材料にリサイクルされ得るような熱分解を促進し得る。
【0089】
回収された玄武岩繊維は、好ましくは、再利用および/またはリサイクルされるのに適している。例えば、回収された玄武岩繊維は、本発明による構造シェルにおいて再利用されるため、または他の用途のために好適である。理論に縛られることを望まないが、これは、玄武岩繊維が、製造中に、もしあったとしても、実質的な量の樹脂を吸収しない場合があり、したがって、玄武岩繊維は、構造シェルに使用される前と実質的に同じ状態で回収することができるためである。例えば、回収された玄武岩繊維は、その物理的および/または機械的特性において実質的に劣化を示さない場合がある。この理由の詳細については、上述したとおりである。
【0090】
回収された少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料は、再利用および/またはリサイクルまたはダウンサイクルされるのにも適している場合がある。例えば、回収された少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料は、本発明による構造シェルにおいて再利用されるため、または他の用途に使用されるためにも好適であり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、回収された少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料は、硬化剤と再混合し、新しい製品を形成するために再成形するのに適した形態で回収され得るからである。例えば、回収された少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料は、構造シェル等を製造するために使用された樹脂と比較して、その物理的および/または機械的特性において実質的に劣化を示さない場合がある。
【0091】
いくつかの実施形態では、構造シェルは、ポリマーコアを含み、本方法は、ポリマーコアを回収することをさらに含む。好ましくは、ポリマーコアは、200~600℃の温度に加熱する前に回収され、本方法は、
構造シェル、船体、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレードまたはスキーおよび/またはスキーポール(または本明細書に記載の他の物体)を150~300℃の温度に加熱してポリマー材料を少なくとも部分的に溶融すること;
少なくとも部分的に溶融したポリマー材料からポリマーコアを分離すること;および
ポリマーコアを回収することを含む
【0092】
回収されたポリマーコアは、再使用および/またはリサイクルまたはダウンサイクルされるのに適している場合もある。例えば、回収されたポリマーコアは、本発明による構造シェルに再利用されるため、または他の用途に使用されるためにも適している場合がある。理論に束縛されることを望むものではないが、これは、回収されたポリマーコアが、その物理的および/または機械的特性において実質的に劣化を示さない場合があるからである。これは、この低温で、好ましくは、ポリマーコアは固体のままだからである。この利点は、上記で説明した通りである。
【0093】
いくつかの実施形態では、構造シェルはゲルコートを含み、本方法は、加熱前にゲルコートを少なくとも部分的に機械的に除去すること、および/またはゲルコートの燃焼によりゲルコートを除去することをさらに含む。例えば、ゲルコートは、サンディングによって少なくとも部分的に機械的に除去することができる。ゲルコートを少なくとも部分的に除去することにより、残存する可能性のあるゲルコートによって回収製品が汚染される可能性を低減し得る。
【0094】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載の構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド海洋船舶、風力タービンブレード、スキーまたはスキーポール、または耐弾パネル(または他の物体)を分解する方法を提供し、本方法は、以下を含む:
構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーもしくはスキーポール、または耐弾パネル(または本明細書に記載の他の物体)を提供すること;
構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーもしくはスキーポール(または本明細書に記載の他の物体)を溶媒と接触させて、ポリマー材料を少なくとも部分的に溶融すること;および
玄武岩繊維および/またはポリマー材料および/または溶媒を回収すること。
【0095】
第1の態様の利点および好ましい特徴は、この態様にも等しく適用される。
【0096】
玄武岩繊維は、玄武岩繊維の物理的および/または機械的特性を実質的に、典型的には全く劣化させることなく回収し得る。溶媒は、ポリマー材料を少なくとも部分的に溶解し得るものでなければならない。適切な溶媒は、当該技術分野で知られている。特に好適な溶媒は、アセトンを含む溶媒である。典型的には、ポリマー材料の実質的に全てが溶媒に溶解される。ポリマー材料は、例えば、溶媒を蒸発させることによって回収してもよい。溶媒は、例えば、蒸発した溶媒を凝縮させることによって回収してもい。
【0097】
また、本発明の構造シェルは、他のポリマーとの複合化および/またはホットプレスによるシート化等、機械的な方法を用いてリサイクルしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
次に、本発明を、以下の非限定的な図面に関連して、説明する:
【0099】
図1図1は、本発明による構造シェルを含む海洋船舶の概略図である。
図2図2は、図1の断面X-Yの模式図である。
図3図3は、本発明による構造シェルの製造方法のフローチャートである。
図4図4は、本発明による構造シェルを分解する方法のフローチャートである。
図5図5は、本発明による構造シェルを分解する方法のフローチャートである。
図6図6は、本発明による構造シェルの玄武岩繊維層構造の分解図の概略図である。
【0100】
図1を参照すると、船体2とデッキ3とを有する本発明による海洋船舶の概略図(一般に1で示される)が示されている。図2は、図1の線X-Yに沿った断面図である。玄武岩繊維7で強化されたポリマー材料6で方位されたポリマーコア5を含む構造シェル(一般に4で示される)が示されている。玄武岩繊維で強化された材料6は、ゲルコート8で被覆されている。
【0101】
図3を参照すると、本発明による構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレードまたはスキーおよび/またはスキーポールを製造する方法のフローチャートが示されている(概して9で示される)。本方法は、10型を提供すること、11玄武岩繊維を型に導入すること、12玄武岩繊維を、-0.65バール以下の相対圧力で樹脂および硬化剤を含む混合物と接触させて構造シェル、船体、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレードまたはスキーおよび/またはスキーポールを形成すること、13型から構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレードまたはスキーおよび/またはスキーポールを回収すること、を含む。任意選択で、本方法は、15玄武岩繊維を型に導入する前に、型にゲルコートを形成することをさらに含む。任意選択で、本方法は、16玄武岩繊維を混合物と接触させる前に、ポリマーコアを型に導入することをさらに含む。
【0102】
図4を参照すると、本発明による構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレードまたはスキーおよび/またはスキーポールを分解する方法のフローチャートが示されている(概して17で示されている)。本方法は、18構造シェル、構造グリッド、船体、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレードまたはスキーおよび/またはスキーポールを提供することと、19構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレードまたはスキーおよび/またはスキーポールを200~600℃の温度に加熱してポリマー材料を少なくとも部分的に熱的に分解すること、20少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料を玄武岩繊維から分離することと、21玄武岩繊維および/または少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料を回収すること、を含む。任意選択で、構造シェルはポリマーコアを含み、方法はさらに、22ポリマーコアを回収することを含む。任意選択で、構造シェルはゲルコートを含み、本方法はさらに、23加熱前にゲルコートを少なくとも部分的に機械的に除去すること、および/またはゲルコートの燃焼によってゲルコートを除去することを含む。
【0103】
図5を参照すると、本発明による構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレードまたはスキーおよび/またはスキーポールを分解する方法のフローチャートが示されている(概して30で示されている)。本方法は、31構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーおよび/またはスキーポール(または本明細書に記載の他の物体)を提供すること、32構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーまたはスキーポール(または本明細書に記載の他の物体)を溶剤と接触させてポリマー材料を少なくとも部分的に溶解すること、33玄武岩繊維および/またはポリマー材料を回収すること、を含む。
【0104】
図6を参照すると、本発明による構造シェルの玄武岩繊維層構造(概して24で示される)を分解概略図が示されている。実質的に平行な玄武岩繊維7の複数の層が示されており、各層における実質的に平行な玄武岩繊維7の平均方向は、隣接する層における実質的に平行な玄武岩繊維7の平均方向に対して約45°または約90°である。
【0105】
次に、本発明を以下の非限定的な実施例との関連で説明する。
【0106】
実施例1
本明細書に記載の玄武岩繊維強化材料が、本明細書に記載の方法に従って製造された。材料は、モノリシック構造を有していた。すなわち、材料は、玄武岩繊維強化材料の単一片からなる。製造された材料は、1m×1mのパネルであった。
【0107】
ステップ1.
玄武岩繊維の織物(層)は、以下の3つの層で積層された(lay-up):
層1:600TRI(600g/mの3軸織物)
層2:550UNI(550g/mの単方向織物)
層3:600TRI(600g/mの3軸織物)
【0108】
ステップ2:
木製のテーブルを封筒(envelope)のように包んで、周囲を完全に真空に確保した。ステップ1の層構造を封筒の中に導入した。樹脂ラップは、袋を完全に密閉するためにタックテープでシールされた。ステップ1の層構造は、この「封筒」の中に入っており、注入される準備ができている。層の上にピールプライを追加し(真空バッグをコンポジットから容易に離し、最終的な仕上がりを良くするため)、その上に樹脂がより緩やかに流れるようにメッシュを追加した。真空テーブルの一端(封筒の各パーツの端)には、スパイラルチューブがあり、樹脂がパネルの幅をより緩やかに流れるのを補助していた。
【0109】
真空ポンプは、真空容器(樹脂のオーバーフローを捕捉するため)に取り付けられた。相対圧-1.0バールをかけ、袋の気密性を確認した。相対圧-1.0バールに達した時点でバルブを閉じ、真空ポンプを停止して、いわゆる(空気漏れを測定する)ドロップテストを行った。
【0110】
上記のステップを終えた後、アルケマのエリウム(登録商標)3000gと過酸化ベンゾイル硬化剤(ヌーリオン社のパーカドックス(登録商標)GB-50X)85gをバケツで混合した。混合後、エリウム(登録商標)/パーカドックス(登録商標) GB-50X樹脂を入れたバケツを真空バッグに接続し、真空ポンプを再びスタートさせた。これにより、パネル全体が負の相対圧になるため、樹脂の流れが発生した。
【0111】
このステップは、室温で実施した。
【0112】
ステップ3.
樹脂を減圧下で約90分間保持した。その後、コンポジットを真空バッグの中で一晩放置し、翌朝真空バッグを取り出して玄武岩繊維強化材を回収した。
【0113】
モノリシックな玄武岩繊維強化材料は、本明細書に記載の方法によりリサイクルすることが可能であった。
【0114】
実施例2
モノリシックな玄武岩繊維強化材料を、実施例1に記載したように製造した。しかしながら、ステップ1の層構造は異なっていた。この実施例では、玄武岩繊維の織物(層)は、以下の4つの層で積層された:
【0115】
層1:550UNI(550g/mの単方向織物)
層2:300BI(300g/mの2軸織物)
層3:300BI(300g/mの2軸織物)
層4:550UNI(550g/mの単方向織物、層1から90°に配向している)
【0116】
モノリシックな玄武岩繊維強化材料は、本明細書に記載の方法によりリサイクルすることが可能であった。
【0117】
実施例3
サンドイッチ構造の玄武岩繊維強化材料を、実施例1に記載したように製造した。しかしながら、ステップ1の層構造は異なっていた。この実施例では、玄武岩繊維の織物(層)は、以下の4つの層で積層され、中央にはPETフォームコアがあった:
【0118】
層1:550UNI(550g/mの単方向織物)
層2:300BI(300g/mの2軸織物)
層3:PETフォームコア(厚み:20mm)
層4:300BI(300g/mの2軸織物)
層5:550UNI(550g/mの単方向織物)
【0119】
サンドイッチ構造材料は、1m×0.10mのパネルであった。サンドイッチ構造の玄武岩繊維強化材料は、本明細書に記載の方法でリサイクルすることが可能であった。
【0120】
PETコアが存在する場合、樹脂がPETコアの注入孔を通って流れ、サンドイッチの両端に強い結合を作ることが重要である。
【0121】
実施例4
本明細書に記載の玄武岩繊維強化材料を含むパネルを、以下の方法ステップに従って調製した:
【0122】
1.作業に先立ち:室温18~24℃のラミネートルームを用意する。最大湿度45%;
2.ラミネーションテーブルを脱脂し、洗浄する;
3.ラミネーションテーブルに離型ワックスを塗る;
4.ピールプライの第一層を貼り、両端をエアゾール接着剤で接着する;
5.マスキングテープでレイヤーのセットアップをマークする;
6.表1に従って、繊維の織物を積層する;
7.積層体をピールプライで覆い、エアゾール接着剤で端部を接着する;
8.ラミネートテーブルの平らな面にタッキーテープをセットする;
9.メッシュフローメディアを追加し、マスキングテープで表面を平らに保つ;
10.10mmスパイラル3本を取り付け、マスキングテープで位置決めする。布の上に1つの吸引ポイント、積層の途中に1つの吸引ポイント、最後にメッシュフローメディアの上に1つの吸引ポイントを設置する;
11.スパイラルの中心にバキュームポイントを設置する;
12.タッキーテープにバキュームパックをセットアップする。テーブルに空隙がある場合は、ラミネートテーブルを包む;
13.バキュームポイントに10mmの輸液ホースを取り付け、タッキーテープで接続部をシールする;
14.輸液の前に真空テストを行う。圧力-0.80/-1.00バール。落下許容量0.5バール/20分;
15.エリウムにパーカドックス GB50を2.7%混ぜる(10kgエリウム=270gパーカドックス GB50);
16.エリウム/パーカドックス混合物を7~10分間脱ガスする;
17.脱ガスした混合樹脂のバケツを、ラミネーションテーブルの下に置いて、水平にする;
18.輸液ホースをバケツの樹脂に入れる(最終的にはホースの位置を保つために固い棒にテープで固定する);
19.バルブ#2をゆっくりと開き、すべての樹脂をチューブ内に入れ、空気を入れないようにする。樹脂が繊維に入る前にバルブを閉じる;
20.バルブ#1を開いて輸液を開始する;
21.真空ポイント#2の3cm後方に樹脂が流れたら、バルブポイント#2を25%~50%開き、樹脂がパネル上に見えるようになったら全開にする;
22.触媒が作用し始め、パネルの温度が35℃になったら真空ポイント#1を閉じる。
23.樹脂が完全に硬化するまで真空状態を維持する;
24.パネル温度が室温に下がるまで待つ;
25.脱型する。
【0123】
【表1】
【0124】
したがって、織物およびパネルの総面積は32mであった。
【0125】
表1の32層構造を持つ3枚のパネルを製造するために、それぞれ-0.80、-0.85、および-0.90バールという3種類の圧力を使用した。各パネルの各成分の総重量を表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
このことから、負圧をかけるほど、パネル内の樹脂:繊維の比率が低くなることがわかる。
【0128】
また、同じ方法で、面積がほぼ半分のパネルを作成した。層構成は表3に示す通りである。
【0129】
【表3】
【0130】
したがって、織物およびパネルの総面積は17.28mであった。
【0131】
表3の32層構造を持つ3枚のパネルを製造するために、同じ3種類の圧力、すなわち-0.80、-0.85、および-0.90バールを使用した。各パネルの各成分の総重量を表4に示す。
【0132】
【表4】
【0133】
パネルを装甲保護弾道抵抗試験(NIJ-STD-0108.01レベルIIIおよびIIIA)に付し、合格した。
【0134】
実施例5
本明細書に記載の玄武岩繊維強化材料を含むパネルを、以下の方法ステップに従って調製した:
【0135】
1.作業に先立ち:18~24℃の室温でラミネートルームを準備する。最大湿度45%;
2.ラミネーションテーブルを脱脂し、洗浄する;
3.ラミネーションテーブルに離型ワックスを塗る;
4.ピールプライの第一層を貼り、両端をエアゾール接着剤で接着する;
5.マスキングテープでレイヤーのセットアップをマークする;
6.表5に従って、繊維の織物を積層する;
7.積層体をピールプライで覆い、エアゾール接着剤で端部を接着する;
8.ラミネートテーブルの平らな面にタッキーテープをセットする;
9.メッシュフローメディアを追加し、マスキングテープで表面を平らに保つ;
10.10mmスパイラル3本を取り付け、マスキングテープで位置決めする。布に1つの吸引ポイント、積層の途中に1つの吸引ポイント、最後にメッシュフローメディアに1つの吸引ポイントを設置する;
11.スパイラルの中心にバキュームポイントを設置する;
12.圧力計を設置する;
13.タッキーテープにバキュームパックをセットアップする。テーブルに空隙がある場合は、ラミネートテーブルを包む;
14.バキュームポイントに10mmの輸液ホースを取り付け、タッキーテープで接続部をシールする;
15.注入の前に真空テストを行う。圧力-1.00バール。落下許容量0.5バール/20分;
16.エリウムにパーカドックス GB50を2.7%混ぜる(10kgエリウム=270gパーカドックス GB50);
17.エリウム/パーカドックス混合物を7~10分間脱ガスする;
18.脱ガスした混合樹脂のバケツを、ラミネーションテーブルの下に置いて、水平にする;
19.輸液ホースをバケツの樹脂に入れる(最終的にはホースを所定の位置に保つために固い棒にテープで固定する);
20.バルブ#1を開き、注入を開始する;
21.真空ポイント#2の3cm後方で樹脂が流れたら、バルブポイント#2を開く;
22.完全に注入されたら、バキュームポイント#2を閉じます;
23.触媒が働き始め、パネルの温度が35℃に上昇したら、バキュームポイント#1を閉じる。
24.樹脂が完全に硬化するまで真空を維持する;
25.パネル温度が室温に下がるまで待つ;
26.脱型する。
【0136】
【表5】
【0137】
したがって、織物およびパネルの総面積は32mであった。パネルの総重量は24.83kgで、その内訳は繊維17.60kg、樹脂7.04kg、パーカドックス0.19kgであった。
【0138】
準等方性積層を有するパネルも、表6に従った層構造を有する上記の手順に従って製造した。
【0139】
【表6】
【0140】
パネル面積は43mで、UNIが22m、BIが21mであった。パネルの総重量は25.96kgで、18.40kgの繊維(12.10kgのUNIと6.30kgのBI)、7.36kgの樹脂、0.20kgのパーカドックスから構成されている。
【0141】
同じ層構造を有する小型のパネルも上記の手順で製造し、層構造は表7および表8に定義されている。
【0142】
【表7】
【0143】
したがって、織物およびパネルの総面積は25.92mであった。パネルの総重量は18.90kgで、14.26kgの繊維と4.64kgの樹脂から構成されている。したがって、繊維に対する樹脂の比率は32.54%であり、パネルの厚さは12.12mmであった。
【0144】
【表8】
【0145】
したがって、織物とパネルの総面積は34.83mで、UNIが17.82m、BIが17.01mであった。パネルの総重量は20.70kgで、その内訳は繊維が14.90kg、樹脂が5.80kgである。繊維に対する樹脂の比率は38.93%で、パネルの厚さは13.20mmであった。
【0146】
上記パネルを装甲保護弾道抵抗試験(NIJ-STD-0108.01レベルIIIおよびIIIA)に付し、合格した。
【0147】
前述の詳細な説明は、説明および例示のために提供されたものであり、添付の請求項の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に例示した現在好ましい実施形態における多くの変形は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に留まるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄武岩繊維強化材料を含む構造シェルであって、前記玄武岩繊維強化材料は、ポリマー材料を含み、前記ポリマー材料は、200~600℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解し得る、構造シェル。
【請求項2】
前記ポリマー材料が、熱可塑性材料である、請求項1に記載の構造シェル。
【請求項3】
前記ポリマー材料が、ポリメタクリレートを含好ましくは前記ポリマー材料が、ポリメチルメタクリレートを含む、請求項1または2に記載の構造シェル。
【請求項4】
前記ポリマー材料が、150~300℃、好ましくは200~250℃の温度で少なくとも部分的に溶融し得、および/または前記ポリマー材料が、少なくとも部分的に熱的に分解し得る温度よりも低い温度で少なくとも部分的に溶融し得る、および/または
前記ポリマー材料が、300~500℃、好ましくは350~400℃の温度で少なくとも部分的に熱的に分解し得る、および/または
前記少なくとも部分的に熱的に分解されたポリマー材料は、20℃で液体である、請求項1~のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項5】
前記玄武岩繊維と前記ポリマー材料との重量比が、80:20~40:60、好ましくは75:25~50:50、より好ましくは70:30~55:45、最も好ましくは約60:40である、および/または
玄武岩繊維が、規則的な配置で前記ポリマー材料に分散しており、好ましくは、前記玄武岩繊維強化材料が、実質的に平行な玄武岩繊維の複数の層を含み、前記実質的に平行な玄武岩繊維の平均方向が、隣接する層で異なっており
より好ましくは各層における前記実質的に平行な玄武岩繊維の前記平均方向が、隣接する層における前記実質的に平行な玄武岩繊維の前記平均方向に対して、約45°または約90°であり
さらにより好ましくは前記実質的に平行な玄武岩繊維の層が、4軸方向に、好ましくは-45°、90°、0-90°および0°の前記玄武岩繊維の相対方向で、3軸方向に、好ましくは-45°、90°および45°の前記玄武岩繊維の相対方向で、2軸方向に、好ましくは0°および90°の前記玄武岩繊維の相対方向で、または単方向に配置されている、および/または
前記玄武岩繊維強化材料が、0.5~3.0mm、好ましくは1.0~2.0mmの厚さを有する、請求項1~のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項6】
ポリマーコアをさらに含
好ましくは前記ポリマーコアがポリエステルを含み
より好ましくは前記ポリエステルがPETを含み、さらにより好ましくは前記PETがPETフォームを含みおよび
好ましくは前記ポリマーコアが、200~300℃、好ましくは230~270℃の溶融温度を有する、請求項のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項7】
ゲルコートをさらに含
好ましくは前記ゲルコートが、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステルを含みおよび
好ましくは前記ゲルコートが、顔料を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項8】
前記構造シェルが、エージング前に600~800MPaの曲げ強度を示す、請求項1~のいずれか一項に記載の構造シェル。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の構造シェルを含む、海洋船舶用の船体、海洋船舶用の構造グリッド、海洋船舶用のデッキ、風力タービンブレード、スキーもしくはスキーポール、または耐弾パネルであって、前記デッキは、請求項6に記載の構造シェルを好ましくは含み、および/または前記耐弾パネルにおいて前記玄武岩繊維に対するポリマー材料の重量比が、好ましくは0.35~0.45、より好ましくは0.39~0.44である
【請求項10】
請求項に記載の少なくとも1つの船体および/または少なくとも1つの構造グリッドおよび/または少なくとも1つのデッキを含む海洋船舶。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の構造シェル、請求項に記載の船体、請求項に記載のデッキ、請求項に記載の構造グリッド、請求項10に記載の海洋船舶、請求項に記載の風力タービンブレード、請求項に記載のスキーもしくはスキーポール、または請求項に記載の耐弾パネルの製造方法であって、前記製造方法は、
型を提供すること、
玄武岩繊維を前記型に導入すること、
前記玄武岩繊維と、樹脂および硬化剤を含む混合物とを-0.65バール以下の相対圧力で接触させて、構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーおよび/もしくはスキーポール、または耐弾パネルを形成すること、ならびに
前記構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーおよび/もしくはスキーポール、または耐弾パネルを前記型から回収することを含む、製造方法。
【請求項12】
前記樹脂が、メタクリレートモノマー、好ましくはメチルメタクリレートモノマー、より好ましくは50~85重量%のメチルメタクリレートモノマーおよび/または10~50重量%のアクリルポリマーを含および/または
前記硬化剤が、有機過酸化物、好ましくは過酸化ベンゾイルを含みおよび/または
前記混合物が、0.5~30phr、好ましくは1~15phr、より好ましくは1.5~4phr、さらにより好ましくは2.5~4phrの量の前記硬化剤を含みおよび/または
前記玄武岩繊維と前記混合物とを、-0.7~-1.15バール、好ましくは-0.9~-1.1バール、より好ましくは-0.95~-1.05バールの相対圧力で接触させる、および/または
前記玄武岩繊維と前記混合物とを、10~40℃、好ましくは14~30℃の温度で接触させる、および/または
前記玄武岩繊維と前記混合物とを、30~70%、好ましくは40~50%の湿度で接触させる、および/または
前記玄武岩繊維と混合物とを、5分~12時間、好ましくは1時間~6時間、より好ましくは90分~3時間、前記圧力下で接触させる、および/または
前記玄武岩繊維を前記型に導入する前に、前記型にゲルコートを形成することをさらに含む、および/または
前記玄武岩繊維と前記混合物とを接触させる前に、ポリマーコアを前記型に導入することをさらに含み
好ましくは前記ポリマーコアを、2つ以上の玄武岩繊維との間に、前記型へと導入し、好ましくは、前記ポリマーコアを、玄武岩繊維の2つ以上の層を分離する層を形成するために前記型に導入する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載の構造シェル、請求項に記載の船体、請求項に記載のデッキ、請求項に記載の構造グリッド、請求項10に記載の海洋船舶、請求項に記載の風力タービンブレード、請求項に記載のスキーまたはスキーポール、または請求項に記載の耐弾パネルを分解する方法であって、前記方法は、
前記構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーもしくはスキーポール、または耐弾パネルを提供すること、
前記構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーもしくはスキーポール、または耐弾パネルを200~600℃の温度に加熱して、ポリマー材料を少なくとも部分的に熱的に分解すること
少なくとも部分的に熱的に分解された前記ポリマー材料を前記玄武岩繊維から分離すること、および
玄武岩繊維および/または少なくとも部分的に熱分解されたポリマー材料を回収すること、を含む方法。
【請求項14】
前記加熱を不活性雰囲気中、好ましくは酸素の実質的な非存在下で実施する、および/または
前記加熱が、250~500℃、好ましくは300~500℃、より好ましくは350~400℃の温度で実施される、および/または
前記加熱が、少なくとも10バールの圧力で実施される、および/または
前記構造シェルがポリマーコアを含み、前記方法がさらに前記ポリマーコアを回収することを含み
好ましくは200~600℃の温度に加熱する前に、
前記構造シェル、船体、構造グリッド、デッキ、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーもしくはスキーポール、または耐弾パネルを150~300℃の温度に加熱して、前記ポリマー材料を少なくとも部分的に溶融すること、
前記少なくとも部分的に溶融したポリマー材料から前記ポリマーコアを分離すること、および
前記ポリマーコアを回収すること、をさらに含む、および/または
前記構造シェルがゲルコートを含み、前記方法は、前記ゲルコートの燃焼による加熱および/または除去の前に、前記ゲルコートを少なくとも部分的に機械的に除去することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~のいずれか一項に記載の構造シェル、請求項に記載の船体、請求項に記載のデッキ、請求項に記載の構造グリッド、請求項10に記載の海洋船舶、請求項に記載の風力タービンブレード、請求項に記載のスキーまたはスキーポール、または請求項に記載の耐弾パネルを分解する方法であって、前記方法は、
前記構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーまたはスキーポール、または耐弾パネルを提供すること、
前記構造シェル、船体、デッキ、構造グリッド、海洋船舶、風力タービンブレード、スキーまたはスキーポール、または耐弾パネルと溶剤とを接触させて、ポリマー材料を少なくとも部分的に溶解すること、および
玄武岩繊維および/またはポリマー材料を回収すること、を含む前記方法。
【国際調査報告】