(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(54)【発明の名称】紫外線安定化ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20231109BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20231109BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231109BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C08L23/04
C08K5/17
C08K3/22
H01B7/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512247
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(85)【翻訳文提出日】2023-04-11
(86)【国際出願番号】 CN2020113770
(87)【国際公開番号】W WO2022047786
(87)【国際公開日】2022-03-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ、ウェンケ
(72)【発明者】
【氏名】ホー、チャオ
(72)【発明者】
【氏名】シュー、シャンミン
(72)【発明者】
【氏名】ライ、ユーミン
(72)【発明者】
【氏名】ユー、ジン
(72)【発明者】
【氏名】エセギエ、モハメド
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ、シャオション
【テーマコード(参考)】
4J002
5G309
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB051
4J002BB151
4J002DE077
4J002DE107
4J002EU086
4J002EU186
4J002FD010
4J002FD046
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD170
4J002FD207
4J002GF00
4J002GQ01
5G309RA07
5G309RA12
(57)【要約】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて90重量%~99重量%のエチレン系ポリマーと、ポリマー組成物の総重量に基づいて0.1重量%~1重量%のヒンダードアミン光安定剤と、ポリマー組成物の総重量に基づいて0.1重量%~5.0重量%の、MgO、Mg(OH)2、ZnO、及びZn(OH)2のうちの少なくとも1つと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて90重量%~99重量%のエチレン系ポリマーと、
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて0.1重量%~1重量%のヒンダードアミン光安定剤と、
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて0.1重量%~5.0重量%の、MgO、Mg(OH)
2、ZnO、及びZn(OH)
2のうちの少なくとも1つと、
を含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
カーボンブラックを含まない、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
着色剤を更に含む、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記エチレン系ポリマーが、ASTM D792に従って測定したときに0.917g/cc~0.926g/ccの密度を有する低密度ポリエチレンと、ASTM D792に従って測定したときに0.940g/cc~0.970g/ccの密度を有する高密度ポリエチレンとを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて80重量%~95重量%の高密度ポリエチレンを含む、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて5重量%~20重量%の低密度ポリエチレンを含む、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
0.1重量%~3重量%の、ZnO及びZn(OH)
2のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、1.0重量%~2重量%の、MgO及びMg(OH)
2のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、前記ポリマー組成物の1.4重量%~1.8重量%がMgO及びMg(OH)
2である、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
被覆導体であって、
導体と、
前記導体の周りに少なくとも部分的に配置された請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物と、
を含む、被覆導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ポリマー組成物に関し、より具体的には、紫外線安定化ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
ポリマー外被材料は、様々な電力及び通信ケーブルのための保護の最外層として使用される。外被は、設置及び/又は使用中にケーブルが耐え得る物理的損傷から保護するのに役立つ。外被は、あるケーブルを別のケーブルと視覚的に区別するのに役立つように着色されてもよい。屋外で使用されるケーブルに取り付けられた外被は、紫外線及び他の環境要因の結果として風化を受ける。
【0003】
紫外線(「ultraviolet light、UV」)及び環境条件への曝露中にポリマー外被内でフリーラジカル及び酸が生成される。フリーラジカルは外被のポリマーを酸化し、UV曝露の増加と共に外被の機械的特性を低下させる。ポリマーの酸化により、外被内で酸が形成される。特定の加速UV試験期間後にケーブルが所定の量のその引張強度及び破断点引張伸びを保持することを必要とする様々なUV耐候基準が、ケーブルには存在する。
【0004】
屋外又は高UV光曝露環境におけるフリーラジカルの影響を軽減するための従来のアプローチは、カーボンブラック及びヒンダードアミン光安定剤(「hindered amine light stabilizers、HALS」)の両方を含めることである。カーボンブラックは、紫外線を吸収し、フリーラジカルの生成を防止するのに有効であるが、外被に所望の色を付与する能力に強い影響を及ぼす。カーボンブラックに加えて、生成されたフリーラジカルを中和するために、HALSがポリマー外被において利用される。HALSはフリーラジカルを中和するのに有効であるが、ポリマー外被の環境中に存在する酸によって不活性化される。このように、外被の劣化を防止するためにHALSのみを使用して着色可能なケーブルを作製しようと試みると、より多くのフリーラジカルが生成され、酸によりHALSが不活性化されるため、機械的特性の劣化が加速する。
【0005】
UV耐性である着色可能な外被を作製する試みが、試みられてきた。例えば、世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization)公開第2014/177153(A1)号には、環境酸によるHALSの不活性化を防ぐために、ケーブルの外被内に炭酸カルシウム含有材料を使用することが開示されている。炭酸カルシウムは環境酸を中和するが、ポリマー外被の機械的特性が経時的に低下すると予測される。
【0006】
上記を考慮すると、着色可能であり、かつUV耐候基準に合格するケーブルを作製するために使用することができる、外被として有用なポリマー組成物を見出すことは予想外であろう。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、着色可能であり、かつUV耐候基準に合格するケーブルを作製するために使用することができる、外被として有用なポリマー組成物を提供する。驚くべきことに、本発明の実施形態は、着色可能であり、かつUV耐候基準の要件を上回るケーブルを作製するために使用することができる、外被として有用なポリマー組成物を提供する。
【0008】
本発明は、金属炭酸塩はケーブルの環境からの強酸を中和するのに有効であるが、金属酸化物はポリマーの酸化によりポリマー外被内で生成される酸を中和するのにより有効であることを見出した結果である。金属酸化物は、水の存在下で、金属水酸化物化合物を形成する。金属水酸化物化合物は、金属炭酸塩よりも大きなプロトン親和性を示す。その結果、金属水酸化物は、ポリマーの酸化から生成された酸の中和において、金属炭酸塩よりも大きな効力を示す。したがって、金属酸化物を使用すると金属炭酸塩よりも長くHALSの活性が維持され、ケーブルのポリマー外被は、加速UV曝露後に機械的特性がより大きく保持される。金属酸化物及び水酸化物のより大きな効力によって、ポリマー組成物にカーボンブラックを含めなくてもよくなり、したがって着色可能にすることができる。
【0009】
本開示のポリマー組成物は、ワイヤ及びケーブル用途において有用である。
【0010】
本開示の第1の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて90重量%~99重量%のエチレン系ポリマーと、ポリマー組成物の総重量に基づいて0.1重量%~1重量%のヒンダードアミン光安定剤と、ポリマー組成物の総重量に基づいて0.1重量%~5.0重量%のMgO、Mg(OH)2、ZnO、及びZn(OH)2のうちの少なくとも1つと、を含む。
【0011】
本開示の第2の特徴によれば、ポリマー組成物は、カーボンブラックを含まない。
【0012】
本開示の第3の特徴によれば、ポリマー組成物は、着色剤を更に含む。
【0013】
本開示の第4の特徴によれば、エチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定したときに0.917g/cc~0.926g/ccの密度を有する低密度ポリエチレンと、ASTM D792に従って測定したときに0.940g/cc~0.970g/ccの密度を有する高密度ポリエチレンとを含む。
【0014】
本開示の第5の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて80重量%~95重量%の高密度ポリエチレンを含む。
【0015】
本開示の第6の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて5重量%~20重量%の低密度ポリエチレンを含む。
【0016】
本開示の第7の特徴によれば、ポリマー組成物は、0.1重量%~3重量%の、ZnO及びZn(OH)2のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
本開示の第8の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて1.0重量%~2重量%の、MgO及びMg(OH)2のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
本開示の第9の特徴によれば、ポリマー組成物の総重量に基づいて、ポリマー組成物の1.4重量%~1.8重量%はMgO及びMg(OH)2である。
【0019】
本開示の第10の特徴によれば、被覆導体は、導体と、少なくとも部分的に当該導体の周囲に配置されたポリマー組成物と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物はAを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0021】
別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。
【0022】
試験方法は、試験方法番号でハイフン付きの2桁の数字で日付が示されていない限り、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。試験方法組織は、以下の略語のうちの1つによって参照される。ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)(旧称、米国材料試験協会、American Society for Testing and Materials)を指し、IECは、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分がポリマー組成物の総重量に占める重量のパーセンテージを示す。
【0024】
本明細書におけるメルトインデックス(I2)値は、2.16キログラム(Kg)の質量を用いて摂氏190度(℃)でASTM法D1238に従って求められる値を指し、10分間当たりに溶出されるグラム(「g/10分」)の単位で提供される。
【0025】
本明細書における密度値は、23℃でASTM D792に従って求められる値を指し、1立方センチメートル当たりのグラム(「g/cc」)の単位で提供される。
【0026】
本明細書で使用される場合、Chemical Abstract Services登録番号(「CAS#」)は、本文書の優先日の時点でChemical Abstract Serviceによって化合物に最も最近割り当てられた固有の数字識別子を指す。
【0027】
ポリマー組成物
本発明のポリマー組成物は、エチレン系ポリマー、ヒンダードアミン光安定剤、並びにMgO、Mg(OH)2、ZnO、及びZn(OH)2のうちの少なくとも1つを含む。ポリマー組成物は、カーボンブラックを含んでいなくてもよく、したがって、着色剤を任意選択で添加することによって着色可能にすることができる。
【0028】
エチレン系ポリマー
上記のように、ポリマー組成物の1つの成分は、エチレン系ポリマーである。本明細書で使用される場合、「エチレン系」ポリマーは、モノマーの50重量%超がエチレンであるポリマーであるが、他のコモノマーを用いることもできる。「ポリマー」は、一緒に結合された同じ又は異なるタイプの複数のモノマーを含む高分子化合物を意味し、ホモポリマー及びインターポリマーを含む。「インターポリマー」は、一緒に結合された少なくとも2つの異なるモノマー型を含むポリマーを意味する。インターポリマーには、コポリマー(通常、2つの異なるモノマー型から調製されるポリマーを指すために用いられる)、及び3つ以上の異なるモノマー型から調製されるポリマー(例えば、ターポリマー(3つの異なるモノマー型)及びクォーターポリマー(4つの異なるモノマー型))が含まれる。エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーであってよい。本明細書で使用するとき、「ホモポリマー」は、単一のモノマータイプに由来する繰り返し単位を含むポリマーを意味するが、触媒、開始剤、溶媒、及び連鎖移動剤などの、ホモポリマーを調製する際に使用される他の成分の残渣量を除外しない。
【0029】
エチレン系ポリマーは、単峰性又は多峰性の分子量分布を有し得、単独で又は1つ以上の他の種類のエチレン系ポリマーとの組み合わせ(例えば、モノマーの組成及び含有量、触媒調製法、分子量、分子量分布、密度等が互いに異なる2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンド)で使用され得る。エチレン系ポリマーのブレンドを使用する場合、ポリマーは、任意の反応器内プロセス又は反応器後プロセスによってブレンドされ得る。
【0030】
ポリマー組成物は、90重量%以上、又は91重量%以上、又は92重量%以上、又は93重量%以上、又は94重量%以上、又は95重量%以上、又は96重量%以上、又は97重量%以上、又は98重量%以上、一方で同時に、99重量%以下、又は98重量%以下、又は97重量%以下、又は96重量%以下、又は95重量%以下、又は94重量%以下、又は93重量%以下、又は92重量%以下、又は91重量%以下のエチレン系ポリマーを含み得る。
【0031】
エチレン系ポリマーは、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)又はフーリエ変換赤外(Fourier-Transform Infrared、FTIR)分光法を使用して測定したときに、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、又は91モル%以上、又は92モル%以上、又は93モル%以上、又は94モル%以上、又は95モル%以上、又は96モル%以上、又は97モル%以上、又は97.5モル%以上、又は98モル%以上、又は99モル%以上、一方で同時に、100モル%以下、又は99.5モル%以下、又は99モル%以下、又は98モル%以下、又は97モル%以下、又は96モル%以下、又は95モル%以下、又は94モル%以下、又は93モル%以下、又は92モル%以下、又は91モル%以下、又は90モル%以下、又は85モル%以下、又は80モル%以下、又は70モル%以下、又は60モル%以下のエチレンを含み得る。エチレン系ポリマーの他の単位としては、C3、又はC4、又はC6、又はC8、又はC10、又はC12、又はC16、又はC18、又はC20α-オレフィン、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンを挙げることができる。
【0032】
エチレン系ポリマーは、高密度ポリエチレン(「high-density polyethylene、HDPE」)を含み得る。HDPEは、少なくとも0.940g/cc、又は少なくとも0.94g/cc~0.97g/ccの密度を有するエチレン系ポリマーである。HDPEは、0.1g/10分~25g/10分のメルトインデックスを有する。HDPEは、エチレン及び1つ以上のC3~C20α-オレフィンコモノマーを含み得る。コモノマーは、直鎖状又は分岐状であり得る。好適なコモノマーの非限定的な例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンが挙げられる。HDPEは、スラリー反応器、気相反応器、又は溶液反応器内でチーグラー・ナッタ触媒、クロム系触媒、拘束幾何触媒、又はメタロセン触媒のいずれかを用いて調製することができる。エチレン/C3~C20α-オレフィンコモノマーは、エチレン系ポリマーの重量に基づいて、少なくとも50重量%の重合エチレン、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%の重合形態のエチレンを含む。実施形態では、HDPEは、0.9450g/ccの密度及び0.80g/10分のメルトインデックスを有するエチレン/α-オレフィンコポリマーである。
【0033】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、80重量%以上、又は81重量%以上、又は82重量%以上、又は83重量%以上、又は84重量%以上、又は85重量%以上、又は86重量%以上、又は87重量%以上、又は88重量%以上、又は89重量%以上、又は90重量%以上、又は91重量%以上、又は92重量%以上、又は93重量%以上、又は94重量%以上、一方で同時に、95重量%以下、又は94重量%以下、又は93重量%以下、又は92重量%以下、又は91重量%以下、又は90重量%以下、又は89重量%以下、又は88重量%以下、又は87重量%以下、86重量%以下、又は85重量%以下、又は84重量%以下、又は83重量%以下、又は82重量%以下、又は81重量%以下のHDPEを含み得る。
【0034】
エチレン系ポリマーは、低密度ポリエチレン(「low-density polyethylene、LDPE」)を含み得る。LDPE樹脂は、市販されており、溶液、気相、又はスラリー相チーグラー・ナッタ、メタロセン、又は拘束幾何触媒(CGC)等を含むがこれらに限定されない多種多様なプロセスのうちのいずれか1つによって作製され得る。LDPE樹脂は、0.910g/cc~0.926g/ccの範囲の密度を有する。LDPEは、20g/10分未満、又は0.1g/10分~10g/10分、又は2g/10分~8g/10分、又は4g/10分~8g/10分の範囲のメルトインデックスを有し得る。
【0035】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、5重量%以上、又は6重量%以上、又は7重量%以上、又は8重量%以上、又は9重量%以上、又は10重量%以上、又は11重量%以上、又は12重量%以上、又は13重量%以上、又は14重量%以上、又は15重量%以上、又は16重量%以上、又は17重量%以上、又は18重量%以上、又は19重量%以上、一方で同時に、20重量%以下、又は19重量%以下、又は18重量%以下、又は17重量%以下、又は16重量%以下、又は15重量%以下、又は14重量%以下、又は13重量%以下、又は12重量%以下、11重量%以下、又は10重量%以下、又は9重量%以下、又は8重量%以下、又は7重量%以下、又は6重量%以下のLDPEを含み得る。
【0036】
HALS
ポリマー組成物は、1種以上のヒンダードアミン光安定剤を含む。HALSは、プラスチック及びポリマーにおいて安定剤として使用されるアミン官能基を含有する化学化合物である。これらの化合物は、テトラメチルピペリジンの誘導体であってよく、UV光への曝露によるフリーラジカル酸化の影響からポリマーを保護するために主に使用される。
【0037】
HALSは、以下のうちの1つ以上を含み得る:ポリ(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール-alt-1,4-ブタン二酸)(CAS#65447-77-0);ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(CAS# 52829-07-9); ジ-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート(CAS#63843-89-0); ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(CAS#129757-67-1); ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ](CAS#71878-19-8);1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N’’’-1,2-エタンジイルビス[N-[3-[[4,6-ビス[ブチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]プロピル]-N’,N’’-ジブチル-N’,N’’-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-(CAS#106990-43-6);1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンを有するポリマー、N-ブチル-1-ブタンアミン及びN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンの反応生成物(CAS#192268-64-7)。HALSの例は、BASF(Ludwigshafen,Germany)から商品名TINUVIN(商標)622及びCHIMASSORB(商標)944で市販されている。
【0038】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~1.0重量%のHALSを含み得る。例えば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.1重量%以上、又は0.2重量%以上、又は0.3重量%以上、又は0.4重量%以上、又は0.5重量%以上、又は0.6重量%以上、又は0.7重量%以上、又は0.8重量%以上、又は0.9重量%以上、一方で同時に、1.0重量%以下、又は0.9重量%以下、又は0.8重量%以下、又は0.7重量%以下、又は0.6重量%以下、又は0.5重量%以下、又は0.4重量%以下、又は0.3重量%以下、又は0.2重量%以下のHALSを含み得る。
【0039】
金属酸化物及び水酸化物
ポリマー組成物は、MgO、Mg(OH)2、ZnO、及びZn(OH)2のうちの少なくとも1つを含む。上記で説明したように、驚くべきことに、特定の金属酸化物及び水酸化物を組み込むと、そうしなければHALSを中和するであろうポリマー組成物中に存在する酸を有効に中和できることが見出された。MgO、Mg(OH)2、ZnO、及びZn(OH)2のうちの少なくとも1つを含めることによって、被覆導体は、HALSを不活性化から保護することによって、紫外線への曝露後により大きな引張強度及び破断点伸びの残率を達成することができる。
【0040】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて0.1重量%~5.0重量%の、MgO、Mg(OH)2、ZnO、及びZn(OH)2のうちの少なくとも1つを含む。例えば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.1重量%以上、又は0.2重量%以上、又は0.4重量%以上、又は0.6重量%以上、又は0.8重量%以上、又は1.0重量%以上、又は1.2重量%以上、又は1.4重量%以上、又は1.6重量%以上、又は1.8重量%以上、又は2.0重量%以上、又は2.2重量%以上、又は2.4重量%以上、又は2.6重量%以上、又は2.8重量%以上、又は3.0重量%以上、又は3.2重量%以上、又は3.4重量%以上、又は3.6重量%以上、又は3.8重量%以上、又は4.0重量%以上、又は4.2重量%以上、又は4.4重量%以上、又は4.6重量%以上、又は4.8重量%以上、一方で同時に、5.0重量%以下、又は4.8重量%以下、又は4.6重量%以下、又は4.4重量%以下、又は4.2重量%以下、又は4.0重量%以下、又は3.8重量%以下、又は3.6重量%以下、又は3.4重量%以下、又は3.2重量%以下、又は3.0重量%以下、又は2.8重量%以下、又は2.6重量%以下、又は2.4重量%以下、又は2.2重量%以下、又は2.0重量%以下、又は1.8重量%以下、又は1.6重量%以下、又は1.4重量%以下、又は1.2重量%以下、又は1.0重量%以下、又は0.8重量%以下、又は0.6重量%以下、又は0.4重量%以下、又は0.2重量%以下の、MgO、Mg(OH)2、ZnO、及びZn(OH)2のうちの少なくとも1つを含み得る。ポリマー組成物は、0.1重量%~3重量%の、ZnO及びZn(OH)2のうちの少なくとも1つを含み得る。ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.5重量%~2重量%の、MgO及びMg(OH)2のうちの少なくとも1つを含み得る。ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、1.4重量%~1.8重量%の、MgO及びMg(OH)2のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0041】
添加剤
ポリマー組成物は、酸化防止剤、架橋助剤、硬化促進剤及びスコーチ防止剤、加工助剤、カップリング剤、紫外線安定剤(ヒドロキシフェニルトリアジン等のUV吸収剤を含む)、帯電防止剤、追加の成核剤、スリップ剤、潤滑剤、粘度制御剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エクステンダ油、酸捕捉剤、難燃剤、及び金属不活性化剤の形態の追加の添加剤を含み得る。ポリマー組成物は、0.01重量%~10重量%の、追加の添加剤のうちの1つ以上を含み得る。
【0042】
ポリマー組成物は、カーボンブラックを含んでいなくてもよい。本明細書で使用される場合、「含まない」という用語は、製剤が、ポリマー組成物の総重量に基づいて0.5重量%未満のカーボンブラックを含むことを意味すると定義される。上記で強調したように、カーボンブラックは、紫外線を吸収し、フリーラジカルの生成を防止するのに有効であるが、ポリマー組成物に所望の色を付与する能力に強い影響を及ぼす。MgO、Mg(OH)2、ZnO、及びZn(OH)2のうちの少なくとも1つを含めることにより、カーボンブラックを必要とせず、したがって、ポリマー組成物から排除してもよいように、HALSの有効寿命が延長される。
【0043】
ポリマー組成物は、着色剤を含んでいてもよい。上で説明したように、カーボンブラックが存在しないことにより、ポリマー組成物を着色剤で着色することが可能になる。着色剤は、アゾ染料、アントラキノン染料、及びフタロシアニンのうちの1つ以上を含み得る。ポリマー組成物は、1つ以上のCOLOUR INDEX(商標)一般名着色剤、例えば、ピグメントバイオレット32(CAS#12225-08-0)、ピグメントオレンジ34(CAS#15793-73-4)、ピグメントレッド38(CAS#6358-87-8)、ピグメントレッド208(CAS#31778-10-6)、ピグメントレッド48:2(CAS#7023-61-2)、ピグメントレッド57:1(CAS#5281-04-9)、ピグメントイエロー155(CAS#68516-73-4/77465-46-4)、ピグメントイエロー151(CAS#31837-42-0)、ピグメントグリーン7(CAS#1328-53-6)、ピグメントレッド122(CAS#980-26-7/16043-40-6)、ピグメントレッド214(CAS#40618-31-3)、ピグメントバイオレット23(CAS#6358-30-1)、及び/又はピグメントイエロー191(CAS#129423-54-7)を含み得る。
【0044】
ポリマー組成物は、ガラス繊維又はナノ複合材を含む様々な鉱物系充填剤等の1つ以上の粒子状充填剤を含み得る。充填剤、特により高いアスペクト比(長さ/厚さ)を提供する細長い粒子又は小板状の粒子を含む充填剤は、弾性率及び押出後の収縮特性を改善し得る。充填剤は、20μm未満、10μm未満、又は5μm未満のメジアンサイズ又はd50を有し得る。充填剤は、ポリマー組成物中での湿潤又は分散を促進するために表面処理されてもよい。好適な充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、シリカ、石英、溶融石英、タルク、雲母、粘土、カオリン、ウォラストナイト、長石、水酸化アルミニウム、及びグラファイトが挙げられるが、これらに限定されない。充填剤は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、2~30重量%又は5~30重量%の範囲の量でポリマー組成物に含まれ得る。
【0045】
加工助剤は、ポリテトラフルオロエチレン又はフッ素化エチレンプロピレン等のフッ素樹脂の金属塩;ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウム等のカルボン酸;ステアリン酸、オレイン酸、又はエルカ酸などの脂肪酸;ステアラミド、オレアミド、エルカミド、又はN,N’-エチレンビス-ステアラミドなどの脂肪アミド;ポリエチレンワックス;酸化ポリエチレンワックス;エチレンオキシドのポリマー;エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー;植物ワックス;石油ワックス;非イオン性界面活性剤;シリコーン流体及びポリシロキサンを含み得る。
【0046】
酸化防止剤は、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シンナメート)]メタンなどのヒンダードフェノール;ビス[(ベータ-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メチルカルボキシエチル)]-スルフィド、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、及びチオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)-ヒドロシンナメート;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト及びジ-tert-ブチルフェニル-ホスホナイトなどのホスファイト及びホスホナイト;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、及びジステアリルチオジプロピオネートなどのチオ化合物;様々なシロキサン;重合2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、n,n’-ビス(1,4-ジメチルペンチル-p-フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(アルファ、アルファ-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、混合ジ-アリール-p-フェニレンジアミン、及び他のヒンダードアミン劣化防止剤又は安定剤を含み得る。
【0047】
調合
ポリマー組成物の成分は、溶融ブレンドのためにバッチ又は連続ミキサーに添加することができる。成分は、他の成分とブレンドするために、任意の順序で、又は最初に1つ以上のマスターバッチを調製して添加することができる。溶融ブレンドは、最高溶融ポリマーを超える温度で行われ得る。次いで、溶融ブレンドされた組成物を、押出機若しくは射出成形機に送達してもよく、又は所望の物品に成形するためにダイに通してもよく、あるいは保管のために又は次の成形若しくは加工工程に供給するための材料を調製するために、ペレット、テープ、ストリップ、若しくはフィルム、又は何らかの他の形態に変換してもよい。任意選択的に、ペレット又は何らかの類似の構成に成形される場合、ペレットなどを粘着防止剤でコーティングして、保管中の取り扱いを容易にすることができる。
【0048】
使用できる調合装置の例には、内部バッチミキサー、連続一軸若しくは二軸ミキサー、又は混練連続押出機が含まれる。利用するミキサーの種類、及びミキサーの動作条件は、粘度、体積抵抗率、及び押出表面平滑性などの組成物の特性に影響を及ぼす。
【0049】
機械的特性
ポリマー組成物は、ASTM D638に従って測定したとき、20.0メガパスカル(MPa)~35.0MPaの非UVエージング又はUVエージング最大引張強度を示し得る。例えば、ポリマー組成物は、20.0MPa以上、又は20.5MPa以上、又は21.0MPa以上、又は21.5MPa以上、又は22.0MPa以上、又は22.5MPa以上、又は23.0MPa以上、又は23.5MPa以上、又は24.0MPa以上、又は24.5MPa以上、又は25.0MPa以上、又は25.5MPa以上、又は26.0MPa以上、又は26.5MPa以上、又は27.0MPa以上、又は27.5MPa以上、又は28.0MPa以上、又は28.5MPa以上、又は29.0MPa以上、又は29.5MPa以上、又は30.0MPa以上、又は30.5MPa以上、又は31.0MPa以上、又は31.5MPa以上、又は32.0MPa以上、又は32.5MPa以上、又は33.0MPa以上、又は33.5MPa以上、又は34.0MPa以上、又は34.5MPa以上、一方で同時に、35.0MPa以下、又は34.5MPa以下、又は34.0MPa以下、又は33.5MPa以下、又は33.0MPa以下、又は32.5MPa以下、又は32.0MPa以下、又は31.5MPa以下、又は31.0MPa以下、又は30.5MPa以下、又は30.0MPa以下、又は29.5MPa以下、又は29.0MPa以下、又は28.5MPa以下、又は28.0MPa以下、又は27.5MPa以下、又は27.0MPa以下、又は26.5MPa以下、又は26.0MPa以下、又は25.5MPa以下、又は25.0MPa以下、又は24.5MPa以下、又は24.0MPa以下、又は23.5MPa以下、又は23.0MPa以下、又は22.5MPa以下、又は22.0MPa以下、又は21.5MPa以下、又は21.0MPa以下、又は20.5MPa以下の最大引張強度を示し得る。
【0050】
ポリマー組成物は、ASTM D638に従って測定したとき、550%~1000%の非UVエージング又はUVエージング破断点伸びを示し得る。例えば、ポリマー組成物は、550%以上、又は560%以上、又は570%以上、又は580%以上、又は590%以上、又は600%以上、又は610%以上、又は620%以上、又は630%以上、又は640%以上、又は650%以上、又は660%以上、又は670%以上、又は680%以上、又は690%以上、又は700%以上、又は710%以上、又は720%以上、又は730%以上、又は740%以上、又は750%以上、又は760%以上、又は770%以上、又は780%以上、又は790%以上、又は800%以上、又は810%以上、又は820%以上、又は830%以上、又は840%以上、又は850%以上、又は860%以上、又は870%以上、又は880%以上、又は890%以上、又は900%以上、又は910%以上、又は920%以上、又は930%以上、又は940%以上、又は950%以上、又は960%以上、又は970%以上、又は980%以上、又は990%以上、一方で同時に、1000%以下、又は990%以下、又は980%以下、又は970%以下、又は960%以下、又は950%以下、又は940%以下、又は930%以下、又は920%以下、又は910%以下、又は900%以下、又は890%以下、又は880%以下、又は870%以下、又は860%以下、又は850%以下、又は840%以下、又は830%以下、又は820%以下、又は810%以下、又は800%以下、又は790%以下、又は780%以下、又は770%以下、又は760%以下、又は750%以下、又は740%以下、又は730%以下、又は720%以下、又は710%以下、又は700%以下、又は690%以下、又は680%以下、又は670%以下、又は660%以下、又は650%以下、又は640%以下、又は630%以下、又は620%以下、又は610%以下、又は600%以下、又は590%以下、又は580%以下、又は570%以下、又は560%以下の破断点伸びを示し得る。
【0051】
ポリマー組成物は、65%以上、又は70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、一方で同時に、100%以下、又は95%以下、又は90%以下、又は85%以下、又は80%以下、又は75%以下、又は70%以下の最大引張強度残率及び/又は破断点伸び残率(いずれも、UVエージング値を非UVエージング値で除することによって測定される)を有し得る。
【0052】
被覆導体
本開示はまた、被覆導体を提供する。被覆導体は、導体と、導体上の被覆とを含み、被覆は、本ポリマー組成物を含む。本ポリマー組成物は、導体の周囲に少なくとも部分的に配置されて、被覆導体を製造する。導体は、導電性金属又は光学的に透明な構造を含み得る。
【0053】
被覆導体を製造するためのプロセスは、ポリマー組成物を混合することと、押出機中で少なくともポリマー成分の溶融温度まで加熱してポリマー溶融ブレンドを形成することと、次いで、ポリマー溶融ブレンドを導体上に被覆することとを含む。「上に」という用語は、ポリマー溶融ブレンドと導体との間の直接接触又は間接接触を含む。ポリマー溶融ブレンドは、押出可能な状態にある。
【0054】
本ポリマー組成物は、導体の上及び/又は周りに配置されて、被覆を形成する。被覆は、絶縁層などの1つ以上の内層であり得る。被覆は、導体を全体的に若しくは部分的に覆うか、ないしは別の方法で取り囲むか、又は包み込むことができる。被覆は、導体を取り囲む唯一の構成要素であり得る。代替的に、被覆は、導体を包み込む多層ジャケット又はシースのうちの1層であってもよい。被覆は、導体と直接接触し得る。被覆は、導体を取り囲む絶縁層に直接接触し得る。
【実施例】
【0055】
材料
以下の材料を、以下の実施例で用いる。
【0056】
HDPEは、エチレン/オクテンコポリマーで構成され、0.9450g/ccの密度及び0.80g/10分のメルトインデックスを有する、The Dow Chemical Company(Midland,MI,USA)から入手可能な高密度ポリエチレン(HDPE)である。
【0057】
LLDPEは、0.920g/ccの密度、0.55~0.75g/10分のメルトフローインデックスを有する直鎖状低密度ポリエチレンであり、The Dow Chemical Company(Midland,MI,USA)から入手可能である。
【0058】
AOは、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)という化学名を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤であり、BASF(Ludwigshafen、Germany)からIRGANOX(商標)1010として市販されている。
【0059】
UVAは、ヒドロキシフェニルトリアジンの化学組成を有する紫外線吸収剤であり、BASF(Ludwigshafen,Germany)からTINUVIN(商標)1577として市販されている。
【0060】
HALS1は、化学名ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]])を有するヒンダードアミン光安定剤(CAS#70624-18-9)であり、BASF(Ludwigshafen,Germany)からCHIMASSORB(商標)944として市販されている。
【0061】
HALS2は、ポリ(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール-alt-1,4-ブタン二酸)(CAS#65447-77-0)の化学組成を有するオリゴマーヒンダードアミン光安定剤であり、BASF(Ludwigshafen,Germany)からTINUVIN(商標)622として市販されている。
【0062】
MgOは、Lanxess corporation(Pittsburgh,Pennsylvania,USA)から市販されている酸化マグネシウムである。
【0063】
ZnOは、Sinopharm Chemical Reagent Co.Ltd.(China)から市販されている酸化亜鉛である。
【0064】
試料調製
150℃のBRABENDER(商標)ミキサーにおいてHDPE及びLDPEを調合することによって試料を調製した。ミキサーのローター速度は30回転/分(「revolutions per minute、RPM」)に設定した。HDPE及びLDPE以外の成分をミキサーに供給した。ローター速度を80RPMまで増加させ、試料を更に5分間混合した。次いで、試料を冷却し、小片に切断した。
【0065】
40グラムの小片を2枚の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(すなわち、Mylar)シートの間に挟み、100ミリメートル(「mm」)×200mm×2mmのサイズの型に入れた。型をShanghai Great Instrument Co.Ltd製のKT-201-Aホットプレス機に入れ、170℃で10分間予熱した。型を8回排気した。次いで、型をホットプレス機で測定したときに170℃及び10メガパスカル(「MPa」)で更に5分間保持した。次に、10MPaで5分以内に内部水冷を用いて型を室温まで冷却して、プラークを形成した。
【0066】
プラークをISO 527-2に従って5Aドッグボーンに切断した。5Aドッグボーンを、EYE Applied Optix製のSUV-W161超紫外線(「UV」)太陽光シミュレーション耐候試験チャンバ内に入れて、超紫外線(「SUV」)エージングを行った。曝露サイクルは、前面に水を連続的に噴霧しながら、1時間の明サイクルと、それに続く2時間の暗期間とからなっていた。明サイクルでは、295nm~400nmのスペクトル放射照度の積分である広帯域放射照度を1500W/m2に制御した。非絶縁ブラックパネル温度(「black panel temperature、BPT」)は、ライトオン状態では70±3℃であり、ライトオフ状態では55±3℃であった。相対湿度は、明サイクル中は70±10%であり、暗サイクル中は95%超であった。空気温度は、操作全体にわたって制御しなかった。それぞれ少なくとも4つの複製を有する試料を、4週間(合計1200MJ/m2)又は8週間(合計2400MJ/m2)エージングさせた。1200MJ/m2の広帯域UV線量は、ASTM D1248に記載されている5700時間キセノンアークエージング/10,000時間蛍光エージング、又はIEC 60794に記載されている7600時間キセノンアークエージングに相当する。
【0067】
試験方法
Instron Calibration Lab製の5565引張試験機で、ASTM D638に従って、試料の最大引張強度及び破断点引張伸びを実施した。
【0068】
表1は、試料を比較する、UV試験のための関連標準を提供する。
【0069】
【0070】
結果
表2は、異なる期間の加速UVエージングにわたる本発明の実施例(「IE」)1~12についての組成(「Comp.」)、並びに最大引張強度(「TSMax」)、破断点引張伸び(「TE」)、最大引張強度残率(「TS残率」)、及び破断点引張伸び残率(「TE残率」)等の機械的特性を提供する。
【0071】
【0072】
表2中の4週間のエージングに関しては、IE1~IE12は、4週間(1200MJ/m2)のSUVエージングで50%を超えるTS残率及びTE残率を示し、このことは、ZnO、MgO、Zn(OH)2、及びMg(OH)2(水酸化物は、水分によりポリマー組成物中で形成されたと考えられる)は、カーボンブラックを含まないにもかかわらず、ポリマー組成物をASTM D1248エージングに合格させるのに有効であることを示す。IE1~IE12が曝露されたUVエネルギーの総量(1200MJ/m2)は、ASTM D1248の要件(853MJ/m2)を十分に上回ることに留意されたい。IE1、IE3、IE5、及びIE8は全て、IEC 60794によって規定されるUV曝露(633MJ/m2)のほぼ2倍を受けたにもかかわらず、IEC 60794の80%TE残率要件に合格することができる。この結果を考慮すると、IE1~IE12は全てASTM D1248及びIEC 60794に合格すると考えられる。
【0073】
表2中の8週間のエージングに関しては、驚くべきことに、IE5及びIE7~IE12は全て、ASTM D1248によって規定されるUVエネルギーのほぼ3倍を受けたにもかかわらず、ASTM D1248の50%以上TE残率要件に合格することができることが見出された。更に驚くべきことに、IE8は、IEC 60794によって規定されるUVエネルギーのほぼ4倍を受けたにもかかわらず、IEC 60794の80%以上TE残率要件を満たすことができた。これらの結果は、MgO及びMg(OH)2が、1.00重量%~2.00重量%、より具体的には1.4重量%~1.8重量%で驚くべき結果をもたらし、ポリマー組成物が、カーボンブラックを含まないにもかかわらず、2400MJ/m2のUV曝露後に80%超の引張伸びを保持することができることを示す。
【国際調査報告】