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特表2023-548270金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定する方法
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  • 特表-金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定する方法 図1
  • 特表-金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(54)【発明の名称】金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20231109BHJP
   G01N 23/2209 20180101ALN20231109BHJP
【FI】
G01N23/223
G01N23/2209
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512789
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 RU2021050264
(87)【国際公開番号】W WO2022164340
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】2021102186
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523061032
【氏名又は名称】アクチョネルノエ オブシェストヴォ “チェペツキー メカニチェスキー ザヴォート”
(71)【出願人】
【識別番号】523061043
【氏名又は名称】チャスネーン ウクレスデニエ ポ オビスピーチニュ ナウチノガ ラスビーチャ アトミイ オートルスリイ “ナウカ アイ イノバツイ”
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】カラバエワ, オルガ アレクセーヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルケンティン, ニコライ ヤコブレビッチ
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001CA01
2G001EA01
2G001FA17
2G001KA01
2G001NA15
2G001SA02
(57)【要約】
【課題】波長分散型蛍光X線分光計を用いた蛍光X線法によって、金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定するために、ジルコニウム線ZrKβ2_IIの2次反射とハフニウム線HfLβ1とを分離する。
【解決手段】本発明は、ハフニウム含有量が既知であるサンプルにおける、ハフニウム濃度に対するハフニウム線の蛍光強度の依存関係を表す検量線をプロットし、サンプルをテンプレートに調製し、テンプレートは分光計のサンプル容器に対応する寸法を有し、14~17度の角度発散を有する微細コリメーターで蛍光放射をコリメートし、LiF220分析結晶を用いてハフニウム線のスペクトル範囲を分離することによって、高エネルギーのジルコニウム量子によって生成される高電圧のインパルスを切り離すのに十分なぐらい狭い範囲で振幅判別器の閾値を設定することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定する方法であって、
ハフニウム含有量が既知であるサンプルにおけるハフニウム濃度に対するハフニウム線HfLβ1の蛍光強度の依存関係を表す検量線をプロットし、
分析されるサンプルをテンプレートに圧入し、該テンプレートは分光計のサンプル容器に対応する寸法を有し、
14~17°の角度発散を持つ微細コリメーターを用いて蛍光放射をコリメートし、
LiF220分析結晶を用いてハフニウム線HfLβ1のスペクトル区間を分離することを含み、
高エネルギーのジルコニウム量子によって生成される高電圧パルスを遮断するのに十分な狭い区間に、振幅判別器の閾値を設定する
ことを特徴とする金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定する方法。
【請求項2】
ハフニウム濃度に対するハフニウム線HfLβ1の蛍光強度の依存関係を表す検量線を、ハフニウム含有量が既知である金属ジルコニウムを使用して、プロットする
ことを特徴とする請求項1に記載の金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウムの含有量を決定する方法。
【請求項3】
ハフニウム濃度に対するハフニウム線HfLβ1の蛍光強度の依存関係を表す検量線を、
ハフニウム含有量が既知であるジルコニウムおよびハフニウムの酸化物の混合物を使用し、
較正物質とサンプル物質の吸収度の違いを考慮した換算係数を考慮して、プロットする
ことを特徴とする請求項1に記載の金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析化学および物理的分析方法に関し、金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウムの含有量を決定するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
発電用原子炉の燃料集合体はジルコニウム成分で構成されているため、ジルコニウム合金は原子力産業にとって必要不可欠な構造材料である。ジルコニウムとハフニウムとは物理的特性および化学的特性が非常に類似しているため、ジルコニウムには常にハフニウムの同形不純物が伴い、このハフニウムは中性子捕獲断面積が大きいため望ましくない元素である。この事実から、金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウムの含有量を決定する問題の切実さは決定的である。
【0003】
原子力グレードのジルコニウム(ASTM B 349-01に準拠する原子力グレードのジルコニウム)、およびそれをベースにした外国の合金並びにロシアの合金におけるハフニウムの含有量は、それぞれ0.01%および0.05%以下を超えてはならない。
【0004】
分析化学において実用化されている物理的分析方法の1つに、蛍光X線法がある。この蛍光X線法は、X線管の陽極で生成したX線をサンプルに照射し、2次X線をスペクトルに分解し、所定のスペクトル範囲を選択し、分析物の特性放射の強度を測定した後、濃度に対する蛍光強度の依存関係を表した検量線を用いてその含有量を計算する、というものである。
【0005】
波長分散型蛍光X線分光計を使用する場合、ジルコニウムのマトリックス元素を含む材料におけるハフニウムの含有量を決定するために蛍光X線法を用いることの難しさは、強度の低いハフニウム線HfLβ1に、強度の高いジルコニウム線ZrKβ2_IIの2次反射が重なり合わさることに関連している。なお、材料中のハフニウムに対するジルコニウムの質量分率の比が高いほど、線の重なりが強くなることに注意する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hasany S.M., Rashid F., Rashid A. & Rehman H., "Determination of traces of hafnium in zirconium oxide by wavelength dispersive X-ray fluorescence spectrometry", Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, vol.142, No.2, pp.505-514(1990).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最も近い技術的解決策は、酸化ジルコニウム中のハフニウムの含有量を蛍光X線法で測定する方法である(非特許文献1)。
【0008】
この測定法は、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うもので、LiF220分析結晶を用いてハフニウム線HfLβ1を抽出し、微細コリメーターを用いて蛍光放射をコリメートし、シンチレーション検出器を用いて蛍光強度を検出し、外部標準法を用いてハフニウム含有量を測定し、ジルコニウムと酸化ハフニウムの人工混合物中におけるハフニウム線HfLβ1の蛍光強度の濃度依存性の検量線をプロットする、というものである。
【0009】
この公知方法は、ジルコニウムのマトリックス元素の化学量論含有量が56.2%以下である場合に、二酸化ジルコニウムに関して実施される。強度の高いジルコニウム線ZrKβ2_IIの2次反射と、強度の低いハフニウム線HfLβ1との重ね合わせに含まれているハフニウムの分析信号を抑制することを考慮して、ジルコニウムのマトリックス元素の含有量を増加させると、ジルコニウムとハフニウムとでスペクトル線を分離することができなくなるので、正確でない結果がもたらされる(図1)。
【0010】
したがって、この公知方法は、金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定する目的には適用できない。なぜなら、それらにおけるジルコニウムのマトリックス元素の含有量は90~100%だからである。
【0011】
本発明は、波長分散型蛍光X線分光計を用いた蛍光X線法によって、金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定するために、ジルコニウム線ZrKβ2_IIの2次反射とハフニウム線HfLβ1とが重なり合った線を分離することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
技術的成果を達成するために、提案された方法は、ハフニウム含有量が既知であるサンプルについて、ハフニウム濃度に対するハフニウム線HfLβ1の蛍光強度の依存関係を表す検量線をプロットし、分光計のサンプル容器に対応した寸法のテンプレートにサンプルを準備し、角度発散が14~17°の微細コリメーターを用いて蛍光放射をコリメートし、LiF220分析結晶を用いてハフニウム線HfLβ1のスペクトル区間を分離し、ジルコニウムの高エネルギー量子によって生成される高電圧パルスを遮断するのに十分なぐらい狭い区間に振幅判別器の閾値を設定することを含む。
【0013】
最も近い技術的解決策とは対照的に、提案された方法は、金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定し、パルス判別器の閾値を、ジルコニウム線ZrKβ2_IIの2次反射との重複を最も完全に除去して、ハフニウム線HfLβ1だけを分離することができるように設定する(図2)。
【0014】
ハフニウム含有量が既知である金属ジルコニウムのサンプルを用いて、ハフニウム濃度に対するハフニウム線HfLβ1の蛍光強度の依存関係を表す検量線をプロットした。
【0015】
ジルコニウムおよびハフニウムの酸化物の混合物であって、ハフニウム含有量が既知のものを使用し、較正物質とサンプル物質との吸収度の差を考慮した換算係数を考慮して、ハフニウム濃度に対するハフニウム線HfLβ1の蛍光強度の依存関係を表す検量線をプロットしてもよい。
【0016】
テンプレートでのサンプルの調製は、チップ、粉末、または不規則な形状の小片を押圧することによって行われる。
【発明の効果】
【0017】
提案された方法は、X線蛍光法を用いて金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金におけるハフニウム含有量を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ジルコニウムのマトリックス元素の含有量を増加させた場合のスペクトルを例示するグラフである。
図2】提案された方法を用いて得られたスペクトルを例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウムを測定するための提案された測定方法は、以下の実施例を通して実施される。
実施例1.
金属ジルコニウムチップは、プレスを用いてテンプレートへ圧入される。検量線をプロットし、更に測定を行うための、波長分散型蛍光X線分析装置のセッティングとして、ハフニウム線HfLβ1、LIF220分析結晶、および狭いコリメーターを選択した。振幅判別器の閾値間隔400~900mVは、電圧が900mVを超えるジルコニウムパルスを遮断するように設定したものである(例えば、Thermo Techno社の分光計ARL Advant’X(登録商標)を使用する)。
【0020】
ハフニウム含有量が既知である金属ジルコニウムを用いて、ハフニウム含有量が0.001~0.5%の範囲内で、ハフニウム濃度に対するハフニウム線HfLβ1の蛍光強度の依存関係を表す検量線をプロットした。サンプルのハフニウム線HfLplの蛍光強度を10~100秒間測定した。上記の検量線を使用して、金属ジルコニウムの試料中のハフニウム含有量を決定した。並行して行った測定の結果を、精度管理基準を用いて確認し、平均値を算出した。
実施例2.
実施例1との違いは、既知のハフニウム含有量が0.001~0.5%の範囲内で、ハフニウム濃度に対するハフニウム線HfLβ1の蛍光強度の依存関係を表す検量線をプロットする際に、サンプルとして、ジルコニウムおよびハフニウムの酸化物の混合物を用いたことである。その後、ジルコニウムおよびハフニウムの酸化物の混合物と、ジルコニウム合金との間の蛍光吸収度の差を考慮した換算係数を考慮の上、上述の検量線を用いて、ジルコニウム合金のサンプルにおけるハフニウム含有量を決定する。
【0021】
測定精度を確認するために、ハフニウム含有量を特定済みのジルコニウム合金の参照用サンプルにおけるハフニウム含有量を、提案された方法によって決定し、その結果を表1に示した。
【0022】
【表1】
【0023】
この表は、提案された方法が、X線蛍光法を用いて金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金におけるハフニウム含有量を決定することができるという技術的成果を達成したことを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本開示に係る金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定する方法は、波長分散型蛍光X線分光計を用いた蛍光X線法によって、金属ジルコニウムおよびそれに基づく合金中のハフニウム含有量を決定する方法として有用である。
図1
図2
【国際調査報告】