(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(54)【発明の名称】グラフェンの導電性複合材料、その製造方法、その使用およびリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
C08G 83/00 20060101AFI20231109BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20231109BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20231109BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231109BHJP
H01B 1/04 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C08G83/00
C08K3/04
C08L65/00
H01M4/62 Z
H01B1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519461
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 CN2021120911
(87)【国際公開番号】W WO2022063292
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】202011042741.8
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110438129.0
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】孫賽
(72)【発明者】
【氏名】張絲雨
(72)【発明者】
【氏名】董文▲クァン▼
(72)【発明者】
【氏名】高煥新
【テーマコード(参考)】
4J002
4J031
5G301
5H050
【Fターム(参考)】
4J002CE001
4J002DA026
4J002FD116
4J002GF00
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4J031BA01
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4J031BC15
4J031BC17
4J031BD23
4J031BD25
4J031CC09
5G301BA01
5H050AA07
5H050BA16
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5H050CB11
5H050DA03
5H050DA10
5H050EA08
5H050FA12
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5H050GA10
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
(57)【要約】
グラフェンの導電性複合材料、その製造方法、その使用およびリチウムイオン電池が開示される。グラフェンの導電性複合材料は、グラフェンナノシートおよび共役共重合体を含み、前記共役共重合体は、アルキニル基を含み、直線構造であり、かつ前記グラフェンナノシートにグラフトされている。グラフェンの導電性複合材料の製造方法は、以下の工程を含む:グラフェンナノシートを4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートで前処理する工程、および前記前処理されたグラフェンナノシートの存在下、共役共重合体を形成する工程。本発明のグラフェンの導電性複合材料は電極スラリーにおいて均一に分散し得、電極の内部抵抗が低減され、かつ、電極の導電率が改善される;さらに、グラフェンナノシートに由来する柔軟な構造により、充放電の際の、ケイ素含有負極材料の体積膨張を緩和することができ、それ故、ケイ素含有負極の構造安定性が改善され、リチウムイオン電池へ適用された際に、リチウム電池の速度能力およびサイクル安定性を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンナノシートおよび共役共重合体を含む、グラフェンの導電性複合材料であり、
前記共役共重合体が、アルキニル基を含み、直線構造であり、かつ前記グラフェンナノシートにグラフトされている、グラフェンの導電性複合材料。
【請求項2】
前記グラフェンの導電性複合材料が、50~300m
2/g、好ましくは、100~250m
2/gの比表面積を有するか、または
前記グラフェンの導電性複合材料がそのラマンスペクトルにおいて、I
DおよびI
Gのピーク高さをそれぞれ有するDピークおよびGピークを含み、I
D/I
Gが0.50未満であることを特徴とする、請求項1に記載のグラフェンの導電性複合材料。
【請求項3】
前記グラフェンの導電性複合材料の全量に基づいて、前記グラフェンナノシートが、85~99質量%の量で存在し、前記共役共重合体が、1~15質量%の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載のグラフェンの導電性複合材料。
【請求項4】
前記グラフェンナノシートが低層グラフェン、好ましくは、3~5層のグラフェンを含む低層グラフェンであり、
好ましくは、前記グラフェンナノシートの平面寸法が、0.05~5.0μmであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のグラフェンの導電性複合材料。
【請求項5】
前記グラフェンナノシートがそのラマンスペクトルにおいて、I
DおよびI
Gのピーク高さをそれぞれ有するDピークおよびGピークを含み、I
D/I
Gが0.50未満であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のグラフェンの導電性複合材料。
【請求項6】
前記共役共重合体が、アリールアルキンの共重合体、フルオレンの共重合体、p-フェニレンビニレンの共重合体、p-フェニレンエチニレンの共重合体、チオフェンの共重合体、チオフェン誘導体の共重合体、ピロールの共重合体、およびピロール誘導体の共重合体の少なくとも一つであり、
好ましくは、アリールアルキンの共重合体、フルオレンの共重合体、チオフェンの共重合体、およびチオフェン誘導体の共重合体の少なくとも一つであり、
より好ましくは、ポリ(1,4-ジアルキニルベンゼン-コ-トリフェニルアミン)、ポリ(1,4-ジアルキニルベンゼン-コ-9-ヘキシルフルオレン)、ポリ(1,4-ジアルキニルベンゼン-コ-3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(1,4-ジアルキニルベンゼン-コ-チオフェン)、およびポリ(1,4-ジアルキニルベンゼン-コ-3,4-エチレンジオキシチオフェン)の少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のグラフェンの導電性複合材料。
【請求項7】
前記グラフェンナノシートを4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートで前処理する工程、および
前記前処理されたグラフェンナノシートの存在下、前記共役共重合体を形成する工程
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のグラフェンの導電性複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記前処理が、撹拌しながら、4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートの水溶液を前記グラフェンナノシートの水性分散液に滴下し、-5~40℃の温度で30~180分間処理し、次いで、生成物を乾燥し、前記前処理されたグラフェンナノシートを得る工程を含むことを特徴とし、
好ましくは、前記4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートの水溶液が、40~70質量%の濃度を有し、前記グラフェンナノシートが、前記グラフェンナノシートの前記水性分散液中に5~50質量%の濃度で存在し、
好ましくは、4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートおよび前記グラフェンナノシートが、質量比で3~6:1であり、
好ましくは、前記乾燥が、60~80℃の温度で2~10時間真空乾燥することである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記前処理されたグラフェンナノシートの存在下、前記共役共重合体を形成する工程は、触媒、溶媒、および前記前処理されたグラフェンナノシートの存在下、前記共役共重合体を形成するために単量体を重合し、前記グラフェンの導電性複合材料を得る工程を含むことを特徴とし、
好ましくは、前記共役共重合体を形成するための前記単量体が、少なくとも2つの単量体を含み、ここで、第1の単量体がハロゲンを含み、かつ第2の単量体がアルキニル基を含む化合物であり、
好ましくは、前記触媒が、パラジウム触媒およびニッケル触媒からなる群より選択される少なくとも一つであり、
好ましくは、前記重合が、不活化雰囲気下、80~150℃の温度で12~36時間の条件で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
リチウムイオン電池における、請求項1~6のいずれか一項に記載のグラフェンの導電性複合材料、または請求項7~9のいずれか一項に記載の方法により製造されたグラフェンの導電性複合材料の使用。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載のグラフェンの導電性複合材料、または請求項7~9のいずれか一項に記載の方法により製造されたグラフェンの導電性複合材料を含む、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本開示はリチウムイオン電池に関し、特に、グラフェンの導電性複合材料、その製造方法および適用、ならびにリチウムイオン電池に関する。
【0002】
〔背景〕
グラフェンは、新しいタイプの導電剤として使用される。グラフェンは、二次元シート構造を有する。二次元シート構造により、より低い導電率閾値が与えられ、導電性閾値が低いことにより、内部抵抗を著しく低減させ、電池の様々な電流速度における性能を改善することができる。二次元シート構造はまた、高い柔軟性を与え、それにより、充放電サイクルに関連する体積膨張を効果的に緩和することができ、電池のサイクル性能を改善することができる。したがって、グラフェンは、リチウム電池の導電剤として広く用いられている。例えば、CN109824041Aには、リチウム電池に使用されるグラフェン導電剤およびその製造方法が開示されている。所定量のグラファイト、分散剤および溶媒を、ボールグラインディングと、篩を介した振動分離と、に供して、グラフェン導電剤を得る。陰極の添加剤として使用される場合、グラフェン導電剤は、コバルト酸リチウムの陰極材料の総合性能を著しく改善することができる。CN108975322Aには、グラフェンスラリーを製造するための方法が開示されており、当該方法では、膨張グラファイトが分散媒体中に入れられ、浸漬、撹拌、および超音波ストリッピングに供されることにより、グラフェンスラリーを得る。グラファイトおよび溶媒を、ボールミル、高圧または超音波ホモジナイザーにおける処理に供することによって製造されたグラフェンの導電性スラリーは、凝集し易いことが見出された。同時に、前記スラリーは安定性が不十分であり、前記グラフェンは、厚いシートの形態である。したがって、低品質であるとみなされる。上述の問題を解決するために、CN111509226Aでは、表面にカーボンナノチューブが形成されたグラフェンを開示している。カーボンナノチューブのグラフトは、二次元構造のグラフェンを三次元構造の材料へと転換し、それにより、グラフェンの積層に関連する問題を抑制し得る。しかしながら、この方法はグラフェンに対する厳しい要件を有し、かつ複雑であることから、工業規模における適用には困難をもたらす。
【0003】
したがって、優れた分散特性を有し、製造が容易であり、低コストで、かつ高品質である、グラフェンの導電性複合材料の開発が依然として求められている。
【0004】
〔発明の概要〕
本発明の主題は、従来技術におけるグラフェンの複合材料の1つ以上の問題、例えば、溶媒中の不均一な分散、凝集し易いこと、大きなシート厚などを解決することである。したがって、本開示では、グラフェンの新規な導電性複合材料、その製造方法および適用、ならびに前記グラフェンの導電性複合材料を含むリチウムイオン電池が提供される。本開示によるグラフェンの導電性複合材料は、有機溶媒中に良好に分散可能であり、容易に凝集せず、導電性が著しく改善されている。
【0005】
本開示の第1の態様は、グラフェンナノシートおよび共役共重合体を含む、グラフェンの導電性複合材料であり、前記共役共重合体が、アルキニル基を含み、直線構造であり、かつ前記グラフェンナノシートにグラフトされている、グラフェンの導電性複合材料に関する。
【0006】
本開示の第2の態様は、グラフェンナノシートおよび共役共重合体を含む、グラフェンの導電性複合材料を製造する方法に関し、前記共役共重合体は、アルキニル基を含み、直線構造であり、かつ前記グラフェンナノシートにグラフトされており、前記方法は、前記グラフェンナノシートを4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートで前処理する工程、および前記前処理されたグラフェンナノシートの存在下、前記共役共重合体を形成する工程を含む。
【0007】
本開示の第3の態様は、前記方法により製造されたグラフェンの導電性複合材料に関する。
【0008】
本開示の第4の態様は、リチウムイオン電池における、上述したグラフェンの導電性複合材料の使用に関する。
【0009】
本開示の第5の態様は、本開示によるグラフェンの導電性複合材料およびケイ素含有負極材料(negative material)を含む負極と、リチウム含有正極材料を含む正極と、セパレータと、電解質と、を含むリチウムイオン電池に関する。
【0010】
本発明は、以下の技術的効果を奏する:
1.本開示によるグラフェンの導電性複合材料は、グラフェンナノシートにグラフトされた共役共重合体を含む。前記グラフト共役共重合体は、グラフェンナノシートの凝集および蓄積を阻害し、それによって、溶媒における得られる材料の分散を改善する「バリア層」として作用する。同時に、共役共重合体中の共役部分(部位)はアルキニル基を介して結合される。アルキニル基は電子を移動させるためのチャネルを開き、それにより、共役共重合体内のみならず、グラフェンナノシートと共役共重合体との間で、電子を移動させるために有利である。さらに、グラフト共役共重合体は「導電性ブラシ」としても作用する。グラフト共役共重合体は、グラフェンナノシートの導電性閾値を低下させるだけでなく、二次元導電性平面を三次元空間へと延ばすことによってグラフェンナノシートの導電性構造をもまた延ばす。電極に用いる場合、上述の全てが、電極の導電性を高め、かつその内部抵抗を低減することができる。同時に、グラフェンナノシートに関連する柔軟構造は、充放電サイクル中のケイ素含有負極材料の体積膨張を緩和することができる。したがって、グラフェンナノシートに関連する柔軟構造は、負極の構造安定性を向上させ、かつ負極の総合的な性能を向上させることができる。したがって、上記材料をリチウムイオン電池に適用すると、様々な電流速度での性能およびリチウム電池のサイクル安定性が向上する。
【0011】
2.本開示によるグラフェンの導電性複合材料の製造方法において、グラフェンナノシートは、4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートで前処理される。したがって、グラフェンナノシート上にハロゲン官能基(臭化物、ヨウ化物等)が導入される。次いで、共役共重合体が、ハロゲンと共役共重合体との間のカップリング反応を介してグラフトされる。このようにして、グラフト共役共重合体は、グラフェンナノシートの表面上に、均一に分布する。さらに、共役共重合体は単量体を選択することによって直鎖構造となる。
【0012】
3.本開示による前記方法は、グラフェンナノシート供給原料の種類に限定されない。さらに、当該方法は単純な方法であることから、工業的生産により適している。
【0013】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、実施例1で得られたグラフェンの導電性複合材料の構造を示す概略図であり、Aがグラフェンであり、Bが共役共重合体である;
図2は、実施例1で得られたA-1、A-2、およびA-3の赤外スペクトルを示す;
図3は、実施例1で得られたグラフェンの導電性複合材料のSEM画像を示す;
図4は、実施例1に含まれたグラフェンナノシート供給原料のSEM画像を示す;
図5は、実施例1で得られたA-3のSEM画像を示す;
図6は、適用例1における本開示による負極のSEM画像(平面図)を示す;
図7は、適用例2における制御負極のSEM画像(平面図)を示す;
図8は、適用例1および適用例2で得られたセルの様々な電流速度でのサイクル性能を示す。
【0014】
〔詳細な説明〕
本明細書に開示される範囲における端点および任意の値は、正確な範囲または値に限定されないが、それらの範囲または値に近い値を包含することを理解されたい。値の範囲について、各範囲の端点間、各範囲の端点と個々の点との間、および個々の点間を組み合わせて、値のこれらの範囲が本明細書に具体的に開示されているかのように、値の1つ以上の新しい範囲を与えることが可能である。
【0015】
実施例以外では、本明細書におけるパラメータの全ての数値が、数値の前に「約」が実際に出現するか否かにかかわらず、全ての場合において、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「グラフェン」は、ハニカム構造に蓄積されたsp2混成炭素原子の単一層から構成される二次元材料を指す。グラフェンは、通常、機械的ストリッピング、酸化還元、SiCエピタキシャル成長などによって製造される。したがって、用語「グラフェン」は、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェンなども含む。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「グラフェンナノシート」は、グラフェンの層状集合体を指し、グラフェンの層を1~10層含むことができる。したがって、グラフェンナノシートは、3~10層のグラフェンを含む低層グラフェンのみならず、単層グラフェン(単にグラフェンと呼ぶことができる)、二層グラフェンをもまた含む。層の数が10以下である場合、グラフェンの層状集合体はグラフェン(単層グラフェン)と同様の特性を有すると一般に考えられている。したがって、それはグラフェンナノシートと呼ばれる。層の数が10を超える場合、グラフェンの層状集合体の特性はグラファイトの特性と同様である。グラフェンナノシートの厚さはナノメートルスケールであり、他の2つの寸法は通常、ナノメートルスケールよりも大きい。一変形形態では、グラフェンナノシートの平面寸法は、0.05~5.0μmである。
【0018】
本明細書で使用される場合、平面寸法は、X-Y平面上の材料の最大半径寸法を指す。本開示において、特に指摘のない限り、グラフェンナノシートの平面寸法は、走査型電子顕微鏡または原子間力顕微鏡によって特徴付けられてもよい。
【0019】
本開示の一態様では、グラフェンナノシートおよび共役共重合体を含む、グラフェンの導電性複合材料であり、前記共役共重合体が、アルキニル基を含み、直線構造であり、かつ前記グラフェンナノシートにグラフトされている、グラフェンの導電性複合材料を提供する。
【0020】
グラフェンの導電性複合材料は、50~300m2/g、好ましくは100~250m2/gの比表面積を有する。グラフェンの導電性複合材料は、200~800S/cmの導電率を有する。
【0021】
一変形形態では、グラフェンの導電性複合材料がそのラマンスペクトルにおいて、IDおよびIGのピーク高さをそれぞれ有するDピークおよびGピークを含み、ID/IGが0.50未満である。一変形形態ではID/IGが、0.01~0.50、好ましくは0.03~0.30、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50などであり得るが、これらに限定されない。
【0022】
ラマン分光法は、炭素材料の分析に広く使用されている。グラフェン材料のラマンスペクトルは、主にG,D,およびG’のいくつかのピークから構成され得る。Gピークは、グラフェンの主な特徴的なピークであり、Gピークはsp2混成炭素原子の面内振動に起因する。それは、グラフェン試料中のグラフェン層の数を効果的に反映し得る。Dピークは、通常、グラフェンの無秩序な振動ピークとみなされ、グラフェン試料中の構造欠陥を特徴付けるために使用される。G’ピークは、2Dピークとしても知られ、2フォノン共鳴二次ラマンピークであり、グラフェン試料中の炭素原子の中間層積層型を特徴付けるために使用され得る。グラフェンの導電性複合材料のラマンスペクトルには、IDのピーク高さを有し、1250~1450cm-1の波長領域におけるDピークと、IGのピーク高さを有し、1500~1700cm-1の波長領域におけるGピークと、I2Dのピーク高さを有し、2600~2800cm-1の波長領域における2Dピークと、がある。ラマン分光法は、グラフェン材料の欠陥を特徴付けることにおいて利点を有する。欠陥密度はID/IGに比例すると一般的に考えられている。グラフェンの導電性複合材料は、ID/IGがより低く、グラフェンの導電性複合材料中に欠陥がより少ないことを示している。
【0023】
前記グラフェンの導電性複合材料の全量に基づいて、前記グラフェンナノシートは、75~99質量%の量で存在し、好ましくは85~99質量%の量で存在し、前記共役共重合体は、1~25質量%の量で存在し、好ましくは1~15質量%の量で存在する。
【0024】
グラフェンナノシートは、低層グラフェン、好ましくは3~5層のグラフェンを含む低層グラフェンである。
【0025】
グラフェンナノシートは、そのラマンスペクトルにおいて、IDおよびIGのピーク高さをそれぞれ有するDピークおよびGピークを含むことができ、ID/IGは0.50未満である。一変形形態では、ID/IGは、0.01~0.50、好ましくは0.03~0.30、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50などであり得るが、これらに限定されない。
【0026】
グラフェンナノシートのラマンスペクトルには、IDのピーク高さを有し、1250~1450cm-1の波長領域におけるDピークと、IGのピーク高さを有し、1500~1700cm-1の波長領域におけるGピークと、I2Dのピーク高さを有し、2600~2800cm-1の波長領域における2Dピークと、がある。グラフェンナノシートは、ID/IGがより低く、グラフェンナノシートにおいて欠陥がより少ないことを示す。
【0027】
グラフェンナノシートは、市販されているか、または当技術分野で公知の方法に従って製造することができる。
【0028】
1つの変形形態において、グラフェンナノシートは、以下の工程によって製造されてもよい:
工程(1)膨張性グラファイトを800~950℃で10~60秒間加熱して、膨張処理を行い、予備膨張グラファイトを得る工程;
工程(2)工程(1)で得られた予備膨張グラファイトと、脂肪族アミンポリオキシエチレンエーテルと、水と、を混合した後、第一の高圧均一化処理および第二の高圧均一化処理に順番に供し、グラフェンナノシートの積層体を含むスラリーを得る工程であって、
前記第一の高圧均一化処理は、30~40MPaの圧力で20~60分間操作し、前記第二の高圧均一化処理は、40~50MPaの圧力で10~30分間操作し、前記第二の高圧均一化処理の圧力は、前記第一の高圧均一化処理の圧力よりも10~20MPa高い工程;
工程(3)工程(2)で得られたスラリーを乾燥させて、グラフェンナノシートの積層体を得る工程。
【0029】
一変形形態では、膨張性グラファイトと比較して、工程(1)で得られた予備膨張グラファイトは、200~300倍の膨張速度を有する。
【0030】
共役共重合体において、アルキニル基は、フェニル環、多環式芳香族炭化水素、芳香族複素環などから独立して選択されるものなどの、共役基を含む共役部位に結合する。
【0031】
好ましくは、共役共重合体は、アリールアルキンの共重合体、フルオレンの共重合体、p-フェニレンビニレンの共重合体、p-フェニレンエチニレンの共重合体、チオフェンの共重合体、チオフェン誘導体の共重合体、ピロールの共重合体、およびピロール誘導体の共重合体の一つ以上であり;さらに好ましくは、アリールアルキンの共重合体、フルオレンの共重合体、チオフェンの共重合体、およびチオフェン誘導体の共重合体の少なくとも一つである。例えば、アリールアルキンの共重合体は、ポリ(1,4-ジアルキニルベンゼン-コ-トリフェニルアミン)であり得る。フルオレンの共重合体は、ポリ(1,4-ジアルキニルベンゼン-コ-9-ヘキシルフルオレン)であり得る。チオフェンの共重合体は、ポリ(1,4-ジアルキニルベンゼン-コ-3-ヘキシルチオフェン)およびポリ(1,4-ジアルキニルベンゼン-コ-チオフェン)の少なくとも一つであり得る。チオフェン誘導体の共重合体は、ポリ(1,4-ジアルキニルベンゼン-コ-3,4-エチレンジオキシチオフェン)であり得る。
【0032】
本開示の別の態様では、グラフェンナノシートおよび共役共重合体を含む、グラフェンの導電性複合材料を製造する方法を提供し、前記共役共重合体は、アルキニル基を含み、直線構造であり、かつ前記グラフェンナノシートにグラフトされており、前記方法は、前記グラフェンナノシートを4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートで前処理する工程、および前記前処理されたグラフェンナノシートの存在下、前記共役共重合体を形成する工程を含む。
【0033】
一実施形態では、前処理は、激しく撹拌しながら、4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートの水溶液をグラフェンナノシートの水性分散液に滴下し、-5℃~40℃の温度で30~180分間処理し、次いで、固液分離に供し、得られた固体を洗浄および乾燥して、前処理されたグラフェンナノシートを得ることにより、操作される。一変形形態では、4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートの水溶液は、40質量%~70質量%の濃度を有する。グラフェンナノシートの水性分散液は、グラフェンナノシートを5質量%~50質量%の濃度で含む。グラフェンナノシートの水性分散液は、グラフェンナノシートを水に添加し、分散させることにより得られる。分散は、撹拌、超音波治療等により操作され得る。前処理において、4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートおよびグラフェンナノシートは、3~6:1の質量比である。固液分離は、ろ過によって操作することができる。分離を容易にするために、分離前にアセトンなどの有機溶媒を添加してもよい。洗浄は、有機溶媒(アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)など)および脱イオン水を用いて操作することができる。洗浄は、1回以上操作されてもよい。乾燥は、真空乾燥であってよく、好ましくは60~80℃で2~10hであってもよい。
【0034】
前処理されたグラフェンナノシートの存在下、前記共役共重合体を形成する工程は、
触媒、溶媒、および前記前処理されたグラフェンナノシートの存在下、前記共役共重合体を形成するために単量体を重合し、前記グラフェンの導電性複合材料を得る工程を含んでもよい。
【0035】
前記触媒は、パラジウム触媒(パラジウムはPd[0]、Pd[I]またはPd[II]である)およびニッケル触媒(ニッケルはNi[0]またはNi[II]である)からなる群より選択される少なくとも一つであってもよい。前記触媒は、単量体の分子量の0.5%~3.0%の量で存在する。
【0036】
共役共重合体を形成するための前記単量体は、少なくとも2つの単量体を含んでもよく、第1の単量体はハロゲンを含み、好ましくは、臭素およびヨウ素のいずれか1つであり、かつ第2の単量体は、アルキニル基を含む化合物である。前記第1の単量体および前記第2の単量体は、1:1~1.1のモル比であってもよい。特定の単量体は、共役共重合体を形成するために一般に使用される単量体であってもよい。例えば、前記第1の単量体は、4,4’-ジブロモトリフェニルアミン、1,4-ジブロモベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、2,7-ジブロモフルオレン、2,7-ジブロモ-9-ヘキシルフルオレン、2,5-ジブロモチオフェン、2,5-ジブロモ-3-ヘキシルチオフェンなどのうちの一つ以上であってもよい。例えば、前記第2の単量体は、1,4-ジエチニルベンゼン、1,3-ジエチニルベンゼン、4,4’-ジエチニルビフェニルなどのうちの少なくとも一つであってもよい。
【0037】
前記溶媒は、N,N’-ジメチルホルムアミドおよびN-メチルピロリドンの少なくとも一つであってもよい。前記溶媒は、前記単量体の1質量%~10質量%の量で添加してもよい。
【0038】
一変形形態では、前記重合は、不活化雰囲気下、80~150℃の温度で12~36時間の条件で行われる。前記不活化雰囲気は、窒素雰囲気であってもよい。
【0039】
任意に、前記重合の製品は、固液分離、洗浄、乾燥などの従来の後処理工程によって処理することができる。前記固液分離は、濾過であってもよい。分離を容易にするために、メタノールなどの有機溶媒を分離前に添加してもよい。前記洗浄には、洗浄液として、有機溶媒(メタノールなど)および脱イオン水を用いることができる。前記洗浄は、一回以上操作されてもよい。前記乾燥は、真空下で、好ましくは60~80℃で2~10時間操作することができる。
【0040】
本開示によるグラフェンの導電性複合材料は、溶媒分散性および導電性に優れるため、リチウムイオン電池における利用に特に好適である。
【0041】
本開示のさらなる態様では、本開示によるグラフェンの導電性複合材料およびケイ素含有負極材料を含む負極と、リチウム含有正極材料を含む正極と、セパレータと、電解質と、を含むリチウムイオン電池が提供される。
【0042】
本開示によるリチウムイオン電池は、当業者に周知の構造を有し得る。一般的に、前記セパレータは、正極と負極との間に配置される。正極は正極材料(positive material)を含み、負極はケイ素含有負極材料とグラフェンの導電性複合材料と、を含む。正極材料の化学組成は特に限定されない。正極材料は、当技術分野で一般的に使用されるリチウム含有正極材料であってもよい。
【0043】
前記セパレータは当業者に既知であり、リチウムイオン電池に一般的に使用される様々なセパレータ、例えば、ポリプロピレン微小孔性フィルム、ポリエチレンマット、ガラス繊維マットまたは超微細ガラス繊維紙から選択されてもよい。
【0044】
前記電解質は、非水溶性電解質などの、様々な従来の電解質であってもよい。非水溶性電解質は、非水溶性溶媒における電解質リチウム塩によって形成される溶液である。当業者に既知の任意の従来の非水溶性電解質を使用することができる。例えば、前記電解質は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)およびヘキサフルオロケイ酸リチウム(LiSiF6)からなる群から選択された少なくとも一つであってもよい。非水溶性溶媒は、線形エステルおよび環状エステルならびにそれらの混合物からなる群から選択され得る。前記線形エステルは、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)およびジプロピルカーボネート(DPC)からなる群より選択された少なくとも一つであってもよい。前記環状エステルは、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)およびビニレンカーボネート(VC)からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0045】
〔実施例〕
以下の実施例を通して、本発明を以下に詳細に説明する。
【0046】
以下の実施例および比較例において、走査型電子顕微鏡を用いて材料の形態を特徴付けた。具体的には、使用した走査型電子顕微鏡は、米国FEI社製のTECNALG2F20(200kv)であった。試験は、導電性テープを含む試料台上に直接試料を押し付け、次いで観察のために電子顕微鏡に挿入することによって行った。観察には8,000倍の倍率を用いた。
【0047】
以下の実施例および比較例では、組み立て後に得られたリチウムイオン電池の電気化学的特性を、武漢ブルー電池試験システム(Wuhan blue battery test system、CT2001B)を用いて試験した。試験条件は、0.005V~3Vの電圧範囲および0.05A~2Aの電流範囲を含んだ。各試料を10個のコインセルへと組み立てた。それらの電池性能を、同一の電圧および電流の下で試験した。その平均値を測定結果として使用した。
【0048】
赤外スペクトルは、Spectrum 100(Perkin Elmerから入手)フーリエ変換赤外分光計を用いて、臭化カリウム錠剤法に従って測定した。試験条件は、500cm-1から4000cm-1までの走査範囲を含んでいた。走査信号を各試料について32回収集した。
【0049】
比表面積は、米国のMicromeritics製のASAP2010比表面積および細孔粒度分布試験機で測定した。試験条件は、77Kの温度および窒素雰囲気を含んだ。
【0050】
ラマンスペクトルは、励起源として785nmの波長を有するレーザを使用することによって試験した。Invia/Reflrx Laser Micro-Raman分析計を使用した。この際、材料試料はスライド上に配置した。
【0051】
以下の実施例および比較例において、室温は25℃を指す。
【0052】
以下の実施例および比較例において、4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、テトラ(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh3)4]、トリエチルアミン、ヨウ化第一銅(CuI)、1,4-ジエチニルベンゼン、4,4’-ジブロモトリフェニルアミン、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)は、Shanghai Aladdin Biochemical Technology Co., Ltd.から市販されたものである。グラフェンナノシート供給原料は、Sixth Element Changzhou Materials Technology Co., Ltd.から市販されたものであり、平面寸法が2.0~5.0μmの低層グラフェンである。
【0053】
実施例1
(1)4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート25gを水25mLに溶解させ、溶液Aを得た。激しく撹拌しながら、溶液Aをグラフェンナノシートの水性分散液15g(5gのグラフェンナノシートを有する)に滴下した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いでアセトンに注ぎ、濾過して固体を得、これをアセトン、DMFおよび脱イオン水でそれぞれ一回洗浄し、真空下(60℃の温度で4時間)で乾燥させて、前処理されたグラフェンナノシートを得、A-1として記録した。
【0054】
(2)1gのA-1を、100mLのN,N’-ジメチルホルムアミドにおいて、超音波分散させた。窒素雰囲気下、326mgの4,4’-ジブロモトリフェニルアミン、138.6mgの1,4-ジエチニルベンゼン、35mgのテトラ(トリフェニルホスフィン)パラジウム、7mgのヨウ化第一銅および4mLのトリエチルアミンを分散液に添加した。反応混合物を窒素雰囲気下で80℃に加熱し、72時間撹拌した。
【0055】
(3)反応後、反応液をメタノールに注いだ。混合物を真空中で濾過して、黒色固体生成物を得た。続いて、得られた生成物をメタノールおよび脱イオン水で数回洗浄し、未反応の単量体および触媒を除去し、真空オーブン(60℃の温度で12時間)で乾燥し、グラフェンの導電性複合材料A-2を得た。グラフェンの導電性複合材料A-2は、アリールアルキン共重合体でグラフトしたグラフェンナノシートであり、前記グラフェンナノシートの質量含有量は98.2%であった。
【0056】
比較のために、共役共重合体A-3を以下のように製造した。326mgの4,4’-ジブロモトリフェニルアミン、138.6mgの1,4-ジエチニルベンゼンを、100mLのN,N’-ジメチルホルムアミドに加えた。材料を撹拌して溶解させた後、35mgのテトラ(トリフェニルホスフィン)パラジウム、7mgのヨウ化第一銅、および4mLのトリエチルアミンを加えた。反応混合物を窒素雰囲気下で80℃に加熱し、72時間撹拌した。反応後、反応液をメタノールに注いだ。混合物を真空中で濾過して、褐色の固体生成物を得た。得られた生成物をメタノールと脱イオン水とで数回洗浄し、未反応の単量体および触媒を除去し、真空オーブン中で乾燥した(60℃の温度で12時間)。生成物は共役共重合体A-3であった。
【0057】
A-1、A-2およびA-3の比表面積は、上述のようにBET法に従って検出した。結果は、前処理されたグラフェンナノシートA-1の比表面積が420m2/gであり、グラフェンA-2の導電性複合材料の比表面積は185m2/gであり、比較の共役重合体A-3の比表面積は5.5m2/gであることを示した。上記の結果は、グラフェンナノシートの表面形態が、重合体をグラフトした後に変化することを示した。すなわち、グラフェンナノシートの表面に重合体をコーティングすることにより、グラフェンナノシート自体の比表面積は低減した。
【0058】
A-1、A-2およびA-3の赤外スペクトルは、上述のような試験方法によって得られた。結果は、
図2に示した。図からわかるように、A-2およびA-3は、それぞれ、2170cm
-1および2150cm
-1に存在する-C≡C-の吸収ピークを有した。このことから、A-2およびA-3において、アルキニル構造の存在が示された。さらに、A-2の吸収ピークは、A-3の吸収ピークと比較して、20cm
-1に赤方偏移した。その理由は、A-2におけるグラフェンナノシートが、-C
6H
6-C≡C-の構造を介して、共役重合体A-3と結合し、それにより、グラフェンナノシートと重合体との間に電子雲の流れが生じたためであるかもしれない。これにより、共役共重合体がグラフェンナノシートに首尾よくグラフトされ、グラフェンの導電性複合材料を形成することが示された。
【0059】
図3は、実施例1で得られたグラフェンA-2の導電性複合材料のSEM画像を示した。
図4は、実施例1に関連するグラフェンナノシート供給原料のSEM画像を示した。
図5は、A-3のSEM画像を示した。
図3を
図4と比較することにより、グラフトされたグラフェンナノシートの表面はより滑らかであり、層の積層は存在しないことが見出された。対照的に、積層は、グラフェンナノシート供給原料においてより明らかであった。
図5から、前処理されたグラフェンナノシートの非存在下で共役共重合体を製造した場合、得られた共役共重合体は小さなボールの形態のみであったことが示された。
【0060】
実施例1で得られたグラフェンA-2の導電性複合材料のラマンスペクトルは、上述のような試験方法により得られたものである。結果は、1354cm-1にDピーク、および1574cm-1にGピークを示し、それらのピーク高さの比率(ID/IG)が0.09であることを示していた。
【0061】
実施例2
(1)25gの4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートを、35mLの水に溶解させ、溶液Aを得た。激しく撹拌しながら、前記溶液Aを、グラフェンナノシートの水性分散液15g(5gのグラフェンナノシートを有する)に滴下した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いでアセトンに注ぎ、濾過して固体を得、これをアセトン、DMFおよび脱イオン水でそれぞれ1回洗浄し、真空中(60℃の温度で4時間)で乾燥させて、前処理されたグラフェンナノシートを得、A-4として記録した。
【0062】
(2)1gのA-4を、100mLのN,N’-ジメチルホルムアミド中に超音波分散させた。窒素雰囲気下、326mgの4,4’-ジブロモトリフェニルアミン、138.6mgの1,4-ジエチニルベンゼン、35mgのテトラ(トリフェニルホスフィン)パラジウム、7mgのヨウ化第一銅および4mLのトリエチルアミンを前記分散液に添加した。反応混合物を窒素雰囲気下で80℃に加熱し、72時間撹拌した。
【0063】
(3)反応後、反応液をメタノールに注いだ。混合物を真空中で濾過して、黒色の固体生成物を得た。続いて、得られた生成物をメタノールおよび脱イオン水で数回洗浄し、未反応の単量体および触媒を除去し、真空オーブンで乾燥(60℃の温度で12時間)し、グラフェンの導電性複合材料A-5を得た。グラフェンの導電性複合材料A-5は、アリールアルキンの共重合体でグラフトされたグラフェンナノシートであり、前記グラフェンナノシートの質量含有量は、86.5%であった。
【0064】
A-5の比表面積は、上述のようにBET法に従って検出した。結果は、グラフェンの導電性複合材料A-5の比表面積が120m2/gであることを示した。実施例1と比較して、実施例2では、より多くの量の共役重合体がグラフトされ、これにより、グラフェンの導電性複合材料の比表面積はさらに減少した。
【0065】
実施例2で得られたグラフェンの導電性複合材料A-5のラマンスペクトルは、上述のような試験方法により得られた。結果は、1354cm-1にDピーク、および1580cm-1にGピークを示し、それらのピーク高さの比率(ID/IG)は0.07であった。
【0066】
実施例3
(1)25gの4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートを、12mLの水に溶解させ、溶液Aを得た。激しく撹拌しながら、前記溶液Aを、グラフェンナノシートの水性分散液15g(5gのグラフェンナノシートを有する)に滴下した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いでアセトン中に注ぎ、濾過して固体を得、これをアセトン、DMFおよび脱イオン水でそれぞれ1回洗浄し、真空中(60℃の温度で4時間)で乾燥させて、前処理されたグラフェンナノシートを得、A-6として記録した。
【0067】
(2)1gのA-6を、100mLのN,N’-ジメチルホルムアミド中に超音波分散させた。窒素雰囲気下、326mgの4,4’-ジブロモトリフェニルアミン、138.6mgの1,4-ジエチニルベンゼン、35mgのテトラ(トリフェニルホスフィン)パラジウム、7mgのヨウ化第一銅および4mLのトリエチルアミンを分散液に添加した。反応混合物を窒素雰囲気下で80℃に加熱し、72時間撹拌した。
【0068】
(3)反応後、反応液をメタノールに注いだ。混合物を真空中で濾過して、黒色の固体生成物を得た。続いて、得られた生成物をメタノールおよび脱イオン水で数回洗浄し、未反応の単量体および触媒を除去し、真空オーブン中で乾燥(60℃の温度で12時間)し、グラフェンの導電性複合材料A-7を得た。グラフェンの導電性複合材料A-7は、アリールアルキンの共重合体でグラフトされたグラフェンナノシートであり、前記グラフェンナノシートの質量含有量は、90.5%であった。
【0069】
A-7の比表面積は、上述のようにBET法に従って検出した。結果は、グラフェンの導電性複合材料A-7の比表面積が144m2/gであることを示した。
【0070】
実施例3で得られたグラフェンの導電性複合材料A-7のラマンスペクトルは、上述のような試験方法により得られたものである。結果は、1354cm-1にDピーク、および1580cm-1にGピークを示し、それらのピーク高さの比率(ID/IG)は0.07であった。
【0071】
実施例4
(1)25gの4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートを、25mLの水に溶解させ、溶液Aを得た。激しく撹拌しながら、前記溶液Aを、グラフェンナノシートの水性分散液10g(5gのグラフェンナノシートを有する)に滴下した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いでアセトンに注ぎ、濾過して固体を得、これをアセトン、DMFおよび脱イオン水でそれぞれ1回洗浄し、真空中で乾燥(60℃の温度で4時間)し、前処理されたグラフェンナノシートを得、A-8として記録した。
【0072】
(2)1gのA-8を、100mLのN,N’-ジメチルホルムアミド中に超音波分散させた。窒素雰囲気下、326mgの4,4’-ジブロモトリフェニルアミン、138.6mgの1,4-ジエチニルベンゼン、35mgのテトラ(トリフェニルホスフィン)パラジウム、7mgのヨウ化第一銅および4mLのトリエチルアミンを分散液に添加した。反応混合物を窒素雰囲気下で80℃に加熱し、72時間撹拌した。
【0073】
(3)反応後、反応液をメタノールに注いだ。混合物を真空中で濾過し、黒色の固体生成物を得た。続いて、得られた生成物を、メタノールおよび脱イオン水で数回洗浄し、未反応の単量体および触媒を除去し、真空オーブン中で乾燥(60℃の温度で12時間)し、グラフェンの導電性複合材料A-9を得た。グラフェンの導電性複合材料A-9は、アリールアルキンの共重合体でグラフトされたグラフェンナノシートであり、前記グラフェンナノシートの質量含有量は92.4%であった。
【0074】
A-9の比表面積は、上述のようなBET法に従って検出した。結果は、グラフェンの導電性複合材料A-9の比表面積が152m2/gであることを示した。
【0075】
上述のような試験方法により、実施例4で得られたグラフェンの導電性複合材料A-9のラマンスペクトルを得た。結果は、1354cm-1にDピーク、および1580cm-1にGピークを示し、それらのピーク高さの比率(ID/IG)は0.07であった。
【0076】
実施例5
(1)25gの4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートを、25mLの水に溶解させ、溶液Aを得た。激しく撹拌しながら、前記溶液Aを、グラフェンナノシートの水性分散液15g(7.5gのグラフェンナノシートを有する)に滴下した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いでアセトン中に注ぎ、濾過して固体を得、これをアセトン、DMFおよび脱イオン水でそれぞれ1回洗浄し、真空中で乾燥し(60℃の温度で4時間)、前処理されたグラフェンナノシートを得、A-10として記録した。
【0077】
(2)1gのA-10を、100mLのN,N’-ジメチルホルムアミド中に超音波分散させた。窒素雰囲気下、326mgの4,4’-ジブロモトリフェニルアミン、138.6mgの1,4-ジエチニルベンゼン、35mgのテトラ(トリフェニルホスフィン)パラジウム、7mgのヨウ化第一銅および4mLのトリエチルアミンを分散液に添加した。反応混合物を窒素雰囲気下で80℃に加熱し、72時間撹拌した。
【0078】
(3)反応後、反応液をメタノールに注いだ。混合物を真空中で濾過して、黒色の固体生成物を得た。続いて、得られた生成物をメタノールおよび脱イオン水で数回洗浄し、未反応の単量体および触媒を除去し、真空オーブン中で乾燥し(60℃の温度で12時間)、グラフェンの導電性複合材料A-11を得た。グラフェンの導電性複合材料A-11は、アリールアルキンの共重合体でグラフトされたグラフェンナノシートであり、前記グラフェンナノシートの質量含有量は94.6%であった。
【0079】
A-11の比表面積は、上述のようなBET法に従って検出した。結果は、グラフェンの導電性複合材料A-11の比表面積が、155m2/gであることを示した。
【0080】
実施例5で得られたグラフェンの導電性複合材料A-11のラマンスペクトルは、上述のような試験方法により得られた。結果は、1354cm-1にDピーク、および1580cm-1にGピークを示し、それらのピーク高さの比率(ID/IG)は0.08であった。
【0081】
実施例6
(1)25gの4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートを、25mLの水に溶解させ、溶液Aを得た。激しく撹拌しながら、前記溶液Aを、グラフェンナノシートの水性分散液15g(5gのグラフェンナノシートを有する)に滴下した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いでアセトンに注ぎ、濾過して固体を得、これをアセトン、DMFおよび脱イオン水でそれぞれ1回洗浄し、真空中で乾燥し(60℃の温度で4時間)、前処理されたグラフェンナノシートを得、A-1として記録した。
【0082】
(2)1gのA-1を、100mLのN,N’-ジメチルホルムアミドに超音波分散させた。窒素雰囲気下、324mgの2,7-ジジブロモフルオレン、138.6mgの1,4-ジエチニルベンゼン、35mgのテトラ(トリフェニルホスフィン)パラジウム、7mgのヨウ化第一銅および4mLのトリエチルアミンを、分散液に添加した。反応混合物を窒素雰囲気下で100℃に加熱し、72時間撹拌した。
【0083】
(3)反応後、反応液をメタノールに注いだ。混合物を真空中で濾過して、暗緑色の固体生成物を得た。続いて、得られた生成物をメタノールおよび脱イオン水で数回洗浄し、未反応の単量体および触媒を除去し、真空オーブンで乾燥して(60℃の温度で12時間)、グラフェンの導電性複合材料A-12を得た。グラフェンの導電性複合材料A-12は、フルオレンの共重合体でグラフトしたグラフェンナノシートであり、前記グラフェンナノシートの質量含有量は92.1%であった。
【0084】
A-12の比表面積は、上述のようにBET法に従って検出した。結果は、グラフェンの導電性複合材料A-12の比表面積が160m2/gであることを示した。
【0085】
上述のような試験方法により、実施例6で得られたグラフェンの導電性複合材料A-12のラマンスペクトルを得た。結果は、1354cm-1にDピーク、および1570cm-1にGピークを示し、それらのピーク高さの比率(ID/IG)は0.15であった。
【0086】
実施例7
(1)25gの4-ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートを、25mLの水に溶解させ、溶液Aを得た。激しく撹拌しながら、前記溶液Aを、グラフェンナノシートの水性分散液15g(5gのグラフェンナノシートを有する)に滴下した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いでアセトンに注ぎ、濾過して固体を得、これをアセトン、DMFおよび脱イオン水でそれぞれ1回洗浄し、真空中で乾燥して(60℃の温度で4時間)、前処理されたグラフェンナノシートを得、A-1として記録した。
【0087】
(2)1gのA-1を、100mLのN,N’-ジメチルホルムアミドに超音波分散させた。窒素雰囲気下、241.9mgの2,5’-ジブロモチオフェン、138.6mgの1,4-ジエチニルベンゼン、35mgのテトラ(トリフェニルホスフィン)パラジウム、7mgのヨウ化第一銅および4mLのトリエチルアミンを分散液に添加した。反応混合物を窒素雰囲気下で80℃に加熱し、72時間撹拌した。
【0088】
(3)反応後、反応液をメタノールに注いだ。混合物を真空中で濾過し、濃い赤紫色の固体生成物を得た。続いて、得られた生成物をメタノールおよび脱イオン水で数回洗浄し、未反応の単量体および触媒を除去し、真空オーブン中で乾燥し(60℃の温度で12時間)、グラフェンの導電性複合材料A-13を得た。グラフェンの導電性複合材料A-13は、チオフェンの共重合体でグラフトしたグラフェンナノシートであり、前記グラフェンナノシートの質量含有量は90.5%であった。
【0089】
A-13の比表面積は、上述したようにBET法に従って検出した。結果は、グラフェンの導電性複合材料A-13の比表面積が150m2/gであることを示した。
【0090】
上述したような試験方法により、実施例7で得られたグラフェンの導電性複合材料A-13のラマンスペクトルを得た。結果は、1354cm-1にDピーク、および1580cm-1にGピークを示し、それらのピーク高さの比率(ID/IG)は0.07であった。
【0091】
実施例8
(1)100gの膨張性グラファイト(75メッシュ)を900℃で20秒間の膨張処理に供し、予備膨張グラファイトを得た。膨張性グラファイトと比較して、予備膨張グラファイトは220倍の膨張率を有していた。
【0092】
(2)工程(1)で得られた10gの予備膨張グラファイト、0.25gのSurfonic T-10(Huntsman Chemical Trading(Shanghai)Co.,Ltd.から入手可能、12.4のHLB値を有する脂肪族アミンポリオキシエチレンエーテル)、および239.75gの脱イオン水を、一緒に高圧ホモジナイザーに加えた。それらは、30MPaで30分間均一化され、次いで、圧力を上げることにより45MPaで30分間均一化され、グラフェンナノシートの積層体を含むスラリーを得た。
【0093】
(3)スラリーを噴霧乾燥装置で乾燥に供し、注入口の流れを350℃の温度で制御し、排出口の流れを100℃の温度で制御し、噴霧乾燥装置の遠心ディスクを20000rpmの回転速度で制御した。排出口で収集された粉末は、グラフェンナノシートの積層体であった。
【0094】
グラフェンナノシートの上記積層体0.1gを、エタノール溶媒中に10分間超音波分散させ、グラフェンナノシートの積層体を、対応するグラフェンナノシートに分離した。続いて、上記分散液をスライド上に滴下し、室温で乾燥させ、上述のような試験方法で検出して、得られたグラフェンナノシートのラマンスペクトルを得た。結果は、1350cm-1にDピーク、および1575cm-1にGピークを示し、それらのピーク高さの比率(ID/IG)は0.05であった。
【0095】
ナノシート供給原料を、得られたグラフェンナノシートに代えたこと以外は、実施例1を繰り返して、グラフェンの導電性複合材料A-14を製造した。
【0096】
A-14の比表面積は、上述のようにBET法に従って検出した。結果は、グラフェンの導電性複合材料A-14の比表面積が175m2/gであることを示した。得られたグラフェンの導電性複合材料A-14のラマンスペクトルを得た。結果は、1355cm-1にDピーク、および1580cm-1にGピークを示し、それらのピーク高さの比率(ID/IG)は0.05であった。
【0097】
比較例1
(1)1gのグラフェンナノシート原料を、100mLのN,N’-ジメチルホルムアミド中に超音波分散させた。窒素雰囲気下、326mgの4,4’-ジブロモトリフェニルアミン、138.6mgの1,4-ジエチニルベンゼン、35mgのテトラ(トリフェニルホスフィン)パラジウム、7mgのヨウ化第一銅および4mLのトリエチルアミンを分散液に添加した。反応混合物を窒素雰囲気下で80℃に加熱し、72時間撹拌した。
【0098】
(2)反応後、反応液をメタノールに注いだ。混合物を真空中で濾過して、黒色固体を得た。続いて、得られた混合物をメタノールおよび脱イオン水で数回洗浄して、未反応の単量体および触媒を除去し、真空オーブン中で乾燥した(60℃の温度で12時間)。得られた混合物を80℃でトルエン中に添加し、その後、溶液が褐色に変色し、溶液中に黒色の綿状沈殿物が存在することを発見した。
【0099】
比較例1の生成物の比表面積は、上述のようにBET法に従って検出した。結果は、比較例1の生成物は、400m2/gの比表面積を有することを示し、当該比表面積はグラフェンナノシート供給原料の比表面積と実質的に一致した。このことから、重合体はグラフェンナノシートの表面にグラフトされていないことが示された。
【0100】
上記の結果は、綿状沈殿物が未反応のグラフェンナノシート供給原料である一方で、4,4’-ジブロモトリフェニルアミンと1,4-ジエチニルベンゼンとの重合から得られた共役共重合体は溶媒に溶解したことを示した。
【0101】
適用例1
負極を、実施例1で得られたグラフェンの導電性複合材料A-2を導電剤とし、ケイ素-炭素材料を活物質として用いて、製造した。詳細には、8gのケイ素-炭素材料、導電剤として1gのA-2、および1gの接着剤(ポリメチルアクリル酸)を50mlのビーカーに添加し、800rpmで30分間撹拌して、負極スラリーを得た。上記負極スラリーを、銅箔(100μmの厚さを有する)上で塗布機を用いて均一に塗布し、真空乾燥ボックス内で80℃で一晩中乾燥し、本開示に係る負極を得た。走査型電子顕微鏡を用いて負極のSEM像を得、得られたSEM画像を
図6に示した。
【0102】
次に、上記負極、正極としての金属リチウムシート、電解質としての1mol/LのLiPF
6溶液(溶媒として、炭酸ビニルと炭酸ジエチルとの体積比3:7の混合物を用いた)、およびセパレータとしてのポリプロピレン微小孔性フィルムを用いることにより、CR2016コインセルを組み立てた。製造したコインセルは上述のような試験方法に供され、様々な電流速度でのサイクル性能を特徴付けた。結果を
図8に示した。
【0103】
適用例2
導電剤として市販のSuperPを用いることにより、適用例1を繰り返し、制御負極を製造した。走査型電子顕微鏡を用いて、制御負極のSEM画像を得、得られたSEM画像を
図7に示した。
【0104】
次に、上記の制御負極、正極としての金属リチウムシート、電解質としての1mol/LのLiPF
6溶液(溶媒として、炭酸ビニルと炭酸ジエチルとの体積比3:7での混合物を用いた)、およびセパレータとしてのポリプロピレン微小孔性フィルムを用いることにより、CR2016コインセルを組み立てた。製造したコインセルは、上述のような試験方法に供され、様々な電流速度でのサイクル性能を特徴付けた。結果を
図8に示した。
【0105】
図6および
図7を参照すると、それらは、それぞれ適用例1および適用例2で得られた、本開示による負極および制御負極のSEM画像であった。
図6の図面から分かるように、グラフェンの導電性複合材料は、ケイ素-炭素負極材料の粒子の表面にコーティングされていた。いかなる理論にも拘束されるものではないが、そのような構造は電子の表面伝導を形成するためだけでなく、充放電サイクル中のケイ素-炭素材料の体積膨張を緩和するためにも有利であり、したがって、セルのサイクル性能を改善すると考えられる。
図7において、Super Pは、ケイ素-炭素負極材料の粒子の間に分散していた。したがって、電子の伝導モードは線形である。加えて、ケイ素-炭素材料の体積膨張を軽減する寄与はなかった。
【0106】
図8を参照すると、適用例1および適用例2で得られたセルについて、様々な電流速度でのサイクル性能が示された。図面から分かるように、本開示による負極を使用するセルは、同じサイクル数で、より高い容量保持を達成した。本開示に係る負極は、導電剤としてグラフェンの導電性複合材料A-2を用いた。このことから、A-2は電極の導電性を改善し、電池の分極の発生を抑制し、かつ電池の安定性を改善することができることが示された。
【0107】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。様々な技術的特徴の任意の他の適切な方法での組み合わせを含む、様々な単純な変更が、本発明の技術的範囲内で、本発明の技術的範囲内で、本発明の実施形態に対して行われてもよい。これらの単純な変更および組合せもまた、本明細書に開示された内容とみなされ、本開示の保護範囲内にあるものとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図1】実施例1で得られたグラフェンの導電性複合材料の構造を示す概略図であり、Aがグラフェンであり、Bが共役共重合体である。
【
図2】実施例1で得られたA-1、A-2、およびA-3の赤外スペクトルを示す。
【
図3】実施例1で得られたグラフェンの導電性複合材料のSEM画像を示す。
【
図4】実施例1に含まれたグラフェンナノシート供給原料のSEM画像を示す。
【
図5】実施例1で得られたA-3のSEM画像を示す。
【
図6】適用例1における本開示による負極のSEM画像(平面図)を示す。
【
図7】適用例2における制御負極のSEM画像(平面図)を示す。
【
図8】適用例1および適用例2で得られたセルの様々な電流速度でのサイクル性能を示す。
【国際調査報告】