IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カーギル インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-ベーカリー製品のための脂質組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ベーカリー製品のための脂質組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20231109BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20231109BHJP
   A21D 2/14 20060101ALI20231109BHJP
   A21D 13/16 20170101ALI20231109BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20231109BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A21D2/16
A21D2/14
A21D13/16
A21D13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525454
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 US2021058203
(87)【国際公開番号】W WO2022098968
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】202011238465.2
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】チャン、コイファン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ピン
(72)【発明者】
【氏名】ティン、サイイェン
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG03
4B026DG05
4B026DH01
4B026DH02
4B026DK00
4B026DL03
4B026DL10
4B026DX05
4B032DB02
4B032DB13
4B032DB15
4B032DB16
4B032DB17
4B032DK12
4B032DK18
4B032DL05
4B032DP24
(57)【要約】
脂質組成物は、脂質組成物の重量で、30重量%~70重量%の第1の脂質成分と、10重量%~40重量%の甘味物質と、5重量%~20重量%の水と、0.1重量%~1.2重量%の乳化剤と、1.5重量%~11重量%の第2の脂質成分と、を含む。乳化剤は、90重量%未満のSFA含量を有する。第2の脂質成分は、少なくとも90重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸は、C22:0を含み、かつ重量で第2の脂質成分のSFA含量の少なくとも33.3重量%を占める。脂質組成物は、少なくとも40重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸は、重量で脂質組成物のSFA含量の少なくとも12.5重量%を占める。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質組成物であって、
(a)前記脂質組成物の重量で、30重量%~70重量%の第1の脂質成分と、
(b)前記脂質組成物の重量で、10重量%~40重量%の甘味物質と、
(c)前記脂質組成物の重量で、5重量%~20重量%の水と、
(d)前記脂質組成物の重量で、0.1重量%~1.2重量%の乳化剤であって、90重量%未満のSFA含量を有する、乳化剤と、
(e)前記脂質組成物の重量で、1.5重量%~11重量%の第2の脂質成分であって、前記第2の脂質成分が、少なくとも90重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸が、C22:0を含み、かつ重量で前記第2の脂質成分の前記SFA含量の少なくとも33.3重量%を占める、第2の脂質成分と、を含み、
前記脂質組成物が、少なくとも40重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸が、重量で前記脂質組成物の前記SFAの少なくとも12.5重量%を占めており、
前記脂質組成物が、0.35重量%~12重量%のC12:0含量を有し、
前記脂質組成物が、5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で前記脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定されるテクスチャー分析により、5℃~15℃で、500g~2000gの硬度を有し、
前記脂質組成物が、2重量%未満のTFAを含み、
前記脂質組成物が、0.1重量%~1.5重量%のC22:0含量を有する、脂質組成物。
【請求項2】
前記脂質組成物が、
(A)40重量%~60重量%のSFA含量、若しくは43重量%~57重量%のSFA含量、若しくは45重量%~55重量%のSFA含量、及び/又は
(B)0.37重量%~7重量%のC12:0含量、若しくは0.4重量%~6.5重量%のC12:0含量、若しくは0.5重量%~6重量%のC12:0含量、及び/又は
(C)4.7重量%~9重量%のC18:0含量、若しくは4.7重量%~8.5重量%のC18:0含量、若しくは5重量%~7.5重量%のC18:0含量、及び/又は
(D)0.3重量%~1.3重量%のC22:0含量、若しくは0.4重量%~1.1重量%のC22:0含量を有する、請求項1に記載の脂質組成物。
【請求項3】
前記脂質組成物が、
(A)5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で前記脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定されるテクスチャー分析により、5℃で、600g~1900g、若しくは700g~1800g、若しくは800g~1700gの硬度、及び/又は
(B)5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で前記脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定されるテクスチャー分析により、15℃で、550g~1500g、若しくは570~1300g、若しくは600g~1100gの硬度を有する、請求項1又は2に記載の脂質組成物。
【請求項4】
前記脂質組成物が、
(G)部分的に水素化された脂質を含まず、かつ/又は
(H)抗酸化剤、栄養強化剤、香味物質、防腐剤、色素及びそれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【請求項5】
前記第1の脂質成分が、
(A)700g/mol~900g/mol、755g/mol~820g/mol、若しくは760g/mol~815g/mol、若しくは790g/mol~815g/molの平均分子量を有し、かつ/又は
(B)大豆油、パーム油、パーム核油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される油であり、任意選択で、前記油が、分別、エステル交換、ブレンド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される技術によって加工され、及び/又は好ましくは、前記油が、前記第1の脂質成分の重量で、0.3重量%~15重量%のパーム核油、若しくは0.4重量%~14.5重量%のパーム核油、若しくは0.5重量%~14重量%のパーム核油を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【請求項6】
前記第2の脂質成分が、
(A)30重量%~50重量%のC18:0含量、若しくは35重量%~45重量%のC18:0含量を有し、かつ/又は
(B)前記脂質組成物の重量で、1.5重量%~10重量%、若しくは1.5重量%~7重量%の重量パーセントを有し、かつ/又は
(C)前記第1の脂質成分、前記乳化剤及び前記第2の脂質成分の総モル量の2.6mol%~15mol%、若しくは前記第1の脂質成分、前記乳化剤及び前記第2の脂質成分の総モル量の3mol%~14.5mol%、若しくは前記第1の脂質成分、前記乳化剤及び前記第2の脂質成分の総モル量の3.2mol%~14.4mol%、若しくは前記第1の脂質成分、前記乳化剤及び前記第2の脂質成分の総モル量の3.3mol%~14mol%、若しくは前記第1の脂質成分、前記乳化剤及び前記第2の脂質成分の総モル量の3.4mol%~13.5mol%を占めるモル量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の脂肪組成物を含む、食品。
【請求項8】
前記食品が、積層生地から作られたベーカリー製品であり、かつ/又は、食パン、クロワッサン、パフペストリー、デニッシュペストリー及びガレットからなる群から選択されるベーカリー製品である、請求項7に記載の食品。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の食品の製造プロセスであって、前記脂質組成物が、5℃~15℃で連続シートとして押出される、プロセス。
【請求項10】
脂質組成物の製造プロセスであって、
(A)前記脂質組成物の重量で、
(i)30重量%~70重量%の第1の脂質成分と、
(ii)1.5重量%~11重量%の第2の脂質成分であって、前記第2の脂質成分が、少なくとも90重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸が、C22:0を含み、かつ重量で前記第2の脂質成分の前記SFA含量の少なくとも33.3重量%を占める、第2の脂質成分と、
(iii)0.1重量%~1.2重量%の乳化剤であって、90重量%未満のSFA含量を有する、乳化剤と、を混合して、
脂質相を生成するステップと、
(B)前記脂質組成物の重量で、
(i)5重量%~20重量%の水と、
(ii)10重量%~40重量%の甘味物質と、を混合して、
水相を生成するステップと、
(C)前記脂質相と前記水相とを混合して、油中水型エマルジョンを生成するステップと、
(D)前記油中水型エマルジョンを冷却装置で冷却して、結晶化されたエマルジョンを生成するステップと、を含み、
前記脂質組成物が、少なくとも40重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸が、重量で前記脂質組成物の前記SFA含量の少なくとも12.5重量%を占めており、
前記脂質組成物が、0.35重量%~12重量%のC12:0含量を有し、
前記脂質組成物が、5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で前記脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定されるテクスチャー分析により、5℃~15℃で、500g~2000gの硬度を有し、
前記脂質組成物が、2重量%未満のTFAを含み、
前記脂質組成物が、0.1重量%~1.5重量%のC22:0含量を有する、プロセス。
【請求項11】
前記水相と混合する前に、前記脂質相に親油性添加剤及び/又は水溶性添加剤を添加することを更に含み、好ましくは、前記添加剤が、抗酸化剤、栄養強化剤、香味物質、防腐剤、色素及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記結晶化されたエマルジョンを、以下のステップ:
(A)静置、
(B)押出、及び
(C)テンパリングのうちの1つ以上に供することを更に含む、請求項10又は11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記脂質組成物を食品に添加することを含む方法によって、前記食品の特性を改善するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂質組成物の使用。
【請求項14】
(A)前記特性が、栄養プロファイル、テクスチャー、色、味、芳香、外観、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、かつ/又は
(B)前記食品が、食パン、クロワッサン、パフペストリー、デニッシュペストリー及びガレットからなる群から選択され、かつ/又は
(C)前記脂質組成物が、積層脂肪として添加される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
連続脂質組成物シートの製造方法であって、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂質組成物を押出に供することを含み、任意選択で、前記押出された脂質組成物が、折り畳み、シート化、圧延及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスに更に供される、方法。
【請求項16】
前記押出及び/又は後続のプロセスが、5℃~15℃、又は5℃~10℃で行われる、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年11月09日に出願された中国特許出願第202011238465.2号の利益を主張するものであり、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、ベーカリー製品用のバター代替物の技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの人気のあるベーカリー製品は、積層生地から製造される。積層生地は、バターによって分離された多数の薄い層を有する生地である。例えば、ガレットは約27層を有し得、クロワッサンは約81層を有し得る。「積層」という用語は、生地がバターと生地の交互の層を有するように、バターを生地に複数回平らにして折り畳むプロセスを指す。生地層間のバターは、加熱下で生地層中に溶融し、それによってベークド物品内にバター状でフレーク状の薄いシートを生成する。
【0004】
食品業界の科学者は、バターを用いて製造されたものに匹敵する味及び外観を有する積層生地ベークド物品を製造することができるバター代替物について広範な研究を行ってきた。ペストリーマーガリンは、食品産業で広く使用されている人気のあるバター代替物の1つである。従来のペストリーマーガリンは、82重量%の脂肪を含有し、糖を含有しないが、ベーカリー製品の甘味は、消費者の好みのために一般に必要とされる。したがって、ペストリーマーガリンに糖を導入して、その中の脂質含量を減少させる努力がなされてきた。脂質含量の減少は、今度はペストリーマーガリンのテクスチャー特性を著しく損なうことになる。
【0005】
しかしながら、ペストリーマーガリンのテクスチャー特性は、ベークド物品の品質にとって重要である。バターは、ベークド物品に湿ったフレーク状のテクスチャーを与える。理想的なバター代替物は、フレーク状のテクスチャーが積層生地ベークド物品に関して特に重要な特徴であるので、同じテクスチャーを再現することができるべきである。また、理想的なバター代替物は、広い範囲の動作温度に耐え、温度変動にもかかわらず、その堅さ(硬度)及び可塑性を一貫して維持すべきである。このような一貫した堅さ及び可塑性は、ベーカリー製品の改善された生産効率に寄与し得る。
【0006】
部分水素添加油脂(Partially hydrogenated oil、PHO)は、そのテクスチャー特性を改善する目的でスイートペストリーマーガリンに添加されていた。PHOは、トランス脂肪酸(trans fatty acid、TFA)を含有する。実際に、世界保健機関によって提供された「POLICIES TO ELIMINATE INDUSTRIALLY-PRODUCED TRANS FAT CONSUMPTION」と題する情報シート(WHOのウェブサイト:https://www.who.int/docs/default-source/documents/replace-transfats/replace-act-information-sheet.pdf?ua=1を介してアクセス可能)は、部分水素添加油脂を、工業的に生産されるトランス脂肪酸の主な供給源として特定する。
【0007】
トランス脂肪酸は、低密度リポタンパク質(「悪玉コレステロール」として知られる)レベルを上昇させ、高密度リポタンパク質(「善玉コレステロール」として知られる)レベルを低下させ、したがって、心臓発作、心臓疾患などのより高いリスクに寄与することが知られている。多くの国々、例えばデンマークは、食品中のトランス脂肪酸の使用に制限を設ける法律及び規制を制定している。いくつかの他の国々、例えば、米国及びカナダは、更に進んでおり、食品における部分水素添加油脂の使用を禁止している。
【0008】
PHOに置き換わるための飽和脂肪酸(saturated fatty acid、SFA)を用いて研究が行われている。しかしながら、高含量のSFAは、スイートペストリーマーガリンの融点を上昇させ、結果としてワックス状の口当たりをもたらす。一方、SFAの含量が低すぎると、所望のテクスチャー品質を有するスイートペストリーマーガリンを提供することができない。
【0009】
また、食品業界では、生産効率を向上させる目的で、連続生産によりベーカリー製品を製造する試みがなされている。積層生地から製造されるベーカリー製品については、生地の連続的かつ自動化された調製が課題を提示する。連続生産ラインでは、マーガリンは、連続シートに押出され、次いで、シート化及び折り畳みなどの後続の加工のために、生地の連続シート上に配置される。連続マーガリンシートの押出しは、マーガリンシートが剥がれたり、壊れたり、及び/又は砕けたりしないように、マーガリンが十分な可塑性及び適切な堅さを有することを必要とする。また、食品産業では、マーガリンは一般に0℃~5℃の温度で保管され、低温は一般にマーガリンを脆くする。したがって、食品産業では、マーガリンを押出機に供給する前に、マーガリンを(例えば、室温まで)温めることが一般的に行われており、これは、生産コストを増加させ、生産効率を低下させる。
【0010】
中国特許出願第103209595(A)号(以下、’595出願)は、乾燥物質に基づいて35~70%の脂質及び0.05~5%の接着性タンパク質を有する、生地に折り畳むための油中水型エマルジョン脂質組成物を開示している。’595出願の脂質組成物は、油漏れを低減し、ベークド物品のフレーク状層が剥がれるのを防止すると言われている。しかしながら、’595出願は、低温での脂質組成物の可塑性及び堅さの改善については言及していない。
【0011】
中国特許出願第101756105(A)号(以下、’105出願)は、低TFA含量を有する30~70%の脂質、1~40%の乳製品及び10~50%の糖を含む、生地に折り畳むための健康な甘味及び乳状エマルジョン組成物を開示している。’105出願は、ベークド物品の風味及び味の改善に焦点を当てており、低温でのエマルジョン組成物の可塑性及び堅さの改善については論じていない。
【0012】
中国特許出願第108566991(A)号(以下、’991出願)は、40~70%のベース脂質、0~2%の乳化剤及び30~60%の水相を含む、デニッシュペストリーのための低TFA含量及び良好な可塑性を有する脂質組成物を開示している。ベース脂質は、0~20%のパームオレイン、0~30%のエステル交換(interesterified、IE)脂質1、0~30%のIE脂質2、及び10~40%のIE脂質3を含有する。IE脂質1、2及び3の基油は、パームオレイン、パームステアリン、ココナッツ油及び大豆油を含む。’991出願の脂質組成物は、5~20℃の動作範囲を有する。しかしながら、’991出願は、ベーカリー製品の連続生産に使用するための、低温での脂質組成物の可塑性及び堅さを改善する方法を教示していない。
【0013】
上記に鑑みて、ベーカリー製品の連続生産における使用のための、バターのテクスチャー特性を再現することができるだけでなく、5℃~15℃(又は更には5℃~10℃)などの低温での押出しに十分な可塑性及び適切な堅さを示すスイートペストリーマーガリンが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
本発明のある態様は、脂質組成物に関する。脂質組成物は、脂質組成物の重量で、30重量%~70重量%の第1の脂質成分、10重量%~40重量%の甘味物質、5重量%~20重量%の水、0.1重量%~1.2重量%の乳化剤、及び1.5重量%~11重量%の第2の脂質成分を含む。乳化剤は、90重量%未満のSFA含量を有する。第2の脂質成分は、少なくとも90重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸は、C22:0を含み、かつ重量で第2の脂質成分のSFA含量の少なくとも33.3重量%を占める。脂質組成物は、少なくとも40重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸は、重量で脂質組成物のSFA含量の少なくとも12.5重量%を占める。脂質組成物は、0.35重量%~12重量%のC12:0含量を有する。脂質組成物は、5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定されるテクスチャー分析により、5℃~15℃で500g~2000gの硬度を提供する。脂質組成物は、2重量%未満のTFAを含有する。脂質組成物は、0.1重量%~1.5重量%のC22:0含量を有する。
【0015】
本発明の別の態様は、本発明による脂質組成物を含有する食品に関する。本発明の更なる態様は、本発明による脂質組成物が5℃~15℃で連続シートとして押出される、食品を製造するプロセスに関する。食品は、積層生地から作られたベーカリー製品であり得る。具体的には、ベーカリー製品は、食パン、クロワッサン、パフペストリー、デニッシュペストリー及びガレットからなる群から選択することができる。
【0016】
本発明の更に別の態様は、本発明による脂質組成物を製造するプロセスに関する。本プロセスは、脂質組成物の重量で、30重量%~70重量%の第1の脂質成分と、1.5重量%~11重量%の第2の脂質成分と、0.1重量%~1.2重量%の乳化剤とを混合して、脂質相を生成するステップと、脂質組成物の重量で、5重量%~20重量%の水と、10重量%~40重量%の甘味物質とを混合して、水相を生成するステップと、脂質相と水相とを混合して、油中水型エマルジョンを生成するステップと、冷却装置を用いて油中水型エマルジョンを冷却して、結晶化されたエマルジョンを生成するステップと、を含む。乳化剤は、90重量%未満のSFA含量を有する。第2の脂質成分は、少なくとも90重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸は、C22:0を含み、かつ重量で第2の脂質成分のSFA含量の少なくとも33.3重量%を占める。脂質組成物は、少なくとも40重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸は、重量で脂質組成物のSFAの少なくとも12.5重量%を占める。脂質組成物は、0.35重量%~12重量%のC12:0含量、及び5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定されるテクスチャー分析により、5℃~15℃で500g~2000gの硬度を提供する。脂質組成物は、2重量%未満のTFAを含有する。脂質組成物は、0.1重量%~1.5重量%のC22:0含量を有する。
【0017】
本発明の更なる態様は、食品に脂質組成物を添加することを含む方法によって、食品の特性を改善するための、本発明による脂質組成物の使用に関する。
【0018】
本発明の更に別の態様は、本発明による脂質組成物を押出成形に供することを含む、連続脂質組成物シートを製造する方法に関する。
【0019】
理論によって限定されることを意図するものではないが、本発明の脂質組成物は、よりバターに似たテクスチャーから選択される少なくとも1つ以上の利益を有するペストリー用のスイートバター代替物を提供し、低温(例えば、5℃~15℃、又は5℃~10℃)で好適な堅さを提供し、低温(例えば、5℃~15℃)で一貫して十分な可塑性を提供し、低温(例えば、5℃~15℃、又は5℃~10℃)で十分な延性、改善された口当たり食感などを提供する。したがって、本発明の脂質組成物は、ベーカリー製品、例えば、食パン、パフペストリー、クロワッサン、デニッシュペストリー、及び/又はガレットの工業的連続生産に特に好適であり、これは、脂質組成物が、5℃~15℃、又は5℃~10℃などの低温でのその後の加工のために連続シートに押出されることを必要とし得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の可能な構成を示す添付の図面に関して、本発明を更に説明することが好都合である。本発明の他の構成が可能であり、したがって、添付の図面の特殊性は、限定するものではなく、本発明の前述の説明の一般性に取って代わるものとして理解されるべきではない。
図1】本発明の脂質組成物が特に好適であり得るベーカリー製品の例示的な連続生産プロセスの概略図である。
【0021】
本明細書の図は、参照目的のみのためであり、必ずしも縮尺通りではない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
特に明記しない限り、全ての測定値、重量、長さなどはメートル単位であり、全ての温度は摂氏度である。特に明記しない限り、本明細書に記載される材料、化合物、化学物質などは、典型的には、世界中の様々な供給業者及び供給源から入手可能な商品品目及び/又は業界標準品目であることが理解される。
【0023】
本明細書で使用される場合、表現「Cx:D」は脂肪酸の脂質数を指し、「x」は脂肪酸鎖の長さを示し、「D」は二重結合の数を示す。例えば、C18:0は、18個の炭素の脂肪酸鎖を有する完全に飽和した脂肪酸(例えば、ステアリン酸)を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、化学反応によって前駆体化合物から誘導される化合物を指す。例えば、脂肪酸の誘導体としては、脂肪酸のエステル、塩、アミド、ニトリル、ハロゲン化物、無水物が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用する場合、「脂質」という用語は、植物、動物及び微生物を含む様々な供給源に由来する油又は脂肪を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「脂質成分」という用語は、脂質又はその誘導体を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「融点」という用語は、スリップ融点を指し、これは、脂肪が軟化し、開放毛細管内でスリップするのに十分に流体になる温度の指標である。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「栄養強化剤」は、タンパク質、ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂肪(飽和及び不飽和)、食物繊維などの、追加の栄養価を有する脂質組成物を提供する任意の物質を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「油」という用語は、個々の油又は2つ以上の異なる油のブレンドを指す。同様に、「脂肪」という用語は、個々の脂肪又は2つ以上の脂肪のブレンドを指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「interestification」(又は「エステル交換(interesterification)」)という用語は、脂肪酸部分がトリグリセリド中のグリセロール部分にわたって再分布するプロセスを指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「飽和脂肪酸(SFA)含量」という用語は、脂質中の全脂肪酸部分の重量に対する完全に飽和した脂肪酸部分の重量の比を指す。同様に、「C12:0」、「C18:0含量」及び「C22:0含量」という用語は、脂質中の全ての脂肪酸部分の重量に対するC12:0/C18:0/C22:0部分の重量の比を指す。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「固体脂肪含量(solid fat content、SFC)」は、所与の温度における全脂肪に対する結晶相中の脂肪の比を指す。脂質組成物のSFCは、その可塑性を大きく決定する。
【0033】
本発明のある態様は、脂質組成物に関する。脂質組成物は、脂質組成物の重量で、30重量%~70重量%の第1の脂質成分、10重量%~40重量%の甘味物質、5重量%~20重量%の水、0.1重量%~1.2重量%の乳化剤、及び1.5重量%~11重量%の第2の脂質成分を含む。乳化剤は、90重量%未満のSFA含量を有する。第2の脂質成分は、少なくとも90重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸は、C22:0を含み、かつ重量で第2の脂質成分のSFA含量の少なくとも33.3重量%を占める。脂質組成物は、少なくとも40重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸は、重量で脂質組成物のSFAの少なくとも12.5重量%を占める。脂質組成物は、0.35重量%~12重量%のC12:0含量を有する。脂質組成物は、5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定されるテクスチャー分析により、5℃~15℃で500g~2000gの硬度を提供する。脂質組成物は、2重量%未満のTFAを含有する。脂質組成物は、0.1重量%~1.5重量%のC22:0含量を有する。
【0034】
理論に束縛されることを意図するものではないが、本発明の組成物は、5℃~15℃などの低温で適切な堅さ及び十分な可塑性及び延性を提供しながら、湿ったフレーク状のテクスチャーをベークド物品に付与し得ることが見出された。したがって、本発明の脂質組成物は、ベーカリー製品、特にテクスチャーのためにバター又はマーガリンに大きく依存するもの(例えば、クロワッサン及びデニッシュペストリー)の工業的連続生産に特に適している。本発明の技術的効果は、第2の脂質成分の特定のSFA含量(特に、16個を超える炭素の炭素鎖を有する脂肪酸の含量)に基づくと考えられる。本発明の技術的効果は、脂質組成物中の特定のラウリン酸脂肪酸含量によっても達成される。
【0035】
本発明の一態様において、脂質組成物は、部分的に水素化された脂質を含有しない。上述したように、部分的に水素化された油は、工業的に生産されるトランス脂肪酸の主な供給源として同定されている。したがって、組成物中の部分的に水素化された脂質の使用を排除することによって、TFAの含量を効果的に制御することができる。
【0036】
本発明において使用され得る可能な乳化剤としては、スクロース脂肪酸エステル(又はスクロースエステル)、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド(例えば、酢酸モノグリセリド、酒石酸モノグリセリド、モノグリセリドの混合酢酸及び酒石酸エステル、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、スクシニル化モノグリセリド及びリンゴ酸モノグリセリド)、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、レシチンなどが挙げられるが、これらに限定されない。乳化剤は、90重量%未満のSFA含量、70重量%未満のSFA含量、又は40重量%未満のSFA含量を有するべきである。
【0037】
理論に束縛されることを意図するものではないが、乳化剤のSFA含量は、低温であっても、脂質組成物の望ましいテクスチャー特性に寄与するのに役立つと考えられる。
【0038】
本発明の一態様では、本発明の脂質組成物は、40重量%~60重量%のSFA含量、又は43重量%~57重量%のSFA含量、又は45重量%~55重量%のSFA含量を有する。
【0039】
理論に束縛されることを意図するものではないが、本発明の特定の脂質組成物は、バターに似た味及び口当たりを提供することと、脂質組成物に望ましいテクスチャー特性を付与することとの間のバランスをとると考えられる。本発明の脂質組成物はまた、脂質組成物が押出中及び押出後に剥離、破壊及び/又は崩壊しにくいように、5℃~15℃などの低温での十分な可塑性、十分な延性及び適切な硬度の間のバランスをとる。
【0040】
本発明の別の態様では、本発明の脂質組成物は、0.37重量%~7重量%のC12:0含量、又は0.4重量%~6.5重量%のC12:0含量、又は0.5重量%~6重量%のC12:0含量を有する。
【0041】
理論に束縛されることを意図するものではないが、脂質組成物中の特定のラウリン酸脂肪酸含量は、低温(例えば、5℃~15℃)で好適な硬度を有する組成物を提供し、その結果、押出前に脂質組成物を加温するステップを排除又は短縮することができると考えられる。また、特定のラウリン脂肪酸含量は、組成物が押出プロセスに耐えるのに十分な延性を有するリピド組成物を提供する。更に、脂質組成物中の特定のラウリン酸脂肪酸含量は、脂質組成物の可塑性に有害な影響を及ぼさない。
【0042】
本発明の更なる態様では、第1の脂質成分は、0.3重量%~15重量%のC12:0含量、又は0.4重量%~14重量%のC12:0含量、又は0.45重量%~13.5重量%のC12:0含量を有する。
【0043】
本発明の別の態様では、本発明の脂質組成物は、4.5重量%~9重量%のC18:0含量、又は4.7重量%~8.5重量%のC18:0含量、又は5重量%~7.5重量%のC18:0含量を有する。
【0044】
本発明の更なる態様では、本発明の脂質組成物は、0.1重量%~1.5重量%のC22:0含量、又は0.3重量%~1.3重量%のC22:0含量、又は0.4重量%~1.1重量%のC22:0含量を有する。
【0045】
理論に束縛されることを意図するものではないが、SFA含量(特に、C18:0含量又はより長い炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸の含量)は、組成物の堅さ及び可塑性に関して、本発明の脂質組成物の温度耐性に寄与すると考えられる。一方、脂肪組成物中のC12:0含量の存在は、その可塑性を損なうことなく、低温での押出に適した堅さ及び延性を組成物に付与する。本発明の特定の例において、第1の脂質成分は、脂質組成物が低温で適切な硬度及び延性を有し得るように、十分なC12:0を有する脂質組成物を提供するために使用される。
【0046】
本発明の一態様では、甘味物質は、糖、糖代替物、高甘味度甘味料、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。それは、アセスルファムカリウム、アリテーム、アスパルテーム、シクラメート、サッカリン、スクラロース、タウマチン、ネオテーム、ステビア、ステビア誘導体、グルコース、スクロース、フルクトース、イソマルト、ラクチトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、マルトデキストリン、ポリデキストロース、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。当業者は、甘味物質の添加及びその具体的な選択が実際の必要性に基づいて決定され得ることを理解するであろう。例えば、健康志向の消費者を対象とするベーカリー製品の場合、当業者は、いかなる高カロリー甘味料も全く添加しないこと、又は特定の天然源のみに由来する甘味料を添加することを決定し得る。
【0047】
本発明の一態様では、脂質組成物は、第2の脂質成分に由来する16個の炭素より長い炭素鎖を有する少なくとも1重量%の完全飽和脂肪酸、又は第2の脂質成分に由来する16個の炭素より長い炭素鎖を有する少なくとも1.5重量%の完全飽和脂肪酸、又は第2の脂質成分に由来する16個の炭素より長い炭素鎖を有する少なくとも2重量%の完全飽和脂肪酸を含む。
【0048】
本発明の一態様では、第1の脂質成分の含量は、脂質組成物の重量で、40重量%~60重量%、又は45重量%~60重量%である。本発明の別の態様では、本発明の脂質組成物中の第2の脂質成分の含量は、脂質組成物の重量で、1.5重量%~10重量%、又は1.5重量%~7重量%である。
【0049】
理論に束縛されることを意図するものではないが、第1及び第2の脂質成分の特定のSFA含量は、低温であっても、広い温度範囲にわたってその一貫して良好な堅さ及び可塑性に寄与するのに役立つと考えられる。
【0050】
本発明の一態様では、本発明の脂質組成物は、5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定したテクスチャー分析により15℃で550g~1500g、又は570~1300g、又は600g~1100gの硬度を有する。本発明の別の態様では、本発明の脂質組成物は、5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定したテクスチャー分析により5℃で600g~1900g、又は700g~1800g、又は800g~1700gの硬度を有する。理論に束縛されることを意図するものではないが、本発明の脂質組成物の望ましい硬度/堅さは、組成物中の第2の脂質成分のSFA含量に直接関連すると考えられる。したがって、5℃~15℃の温度範囲において、適切な硬度と十分な可塑性及び延性との間でバランスがとられる。言い換えれば、本発明の脂質組成物は、5℃~15℃でのベーカリー製品、特に積層生地から作られるベーカリー製品の工業的連続生産に特に好適である。これは、脂質組成物が、押出プロセスに対して堅すぎも軟すぎもしない硬度を有するためである。一方、組成物は、その後の加工(例えば、積層生地の自動調製)のために連続シートに押出することができるような十分な可塑性及び延性を依然として示す。
【0051】
本発明の一態様では、第1の脂質成分は、植物源由来の油、植物源由来の脂肪、動物源由来の油、動物源由来の脂肪、及び微生物源由来の油、微生物源由来の脂肪、並びにこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0052】
本発明の一態様では、植物源由来の油及び/又は脂肪は、ココナッツ油、トウモロコシ油、キャノーラ油、綿実油、オリーブオイル、ヤシ油、ピーナッツ油、ナタネ油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、アーモンド油、ビーチナッツ油、ブラジルナッツ油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカダミア油、モンゴノナッツ油、ペカン油、パイン油、ピスタチオ油、クルミ油、カボチャの種油、グレープフルーツ種子油、レモン油、オレンジ油、ニガウリ油、ユウガオ油、バッファローカボチャ油、バターナッツスカッシュ油、エグシ(egusi)種子油、スイカ種子油、アサイー油、ブラックシードオイル、カシスオイル(blackcurrant seed oil)、ボラージ種子油、月見草オイル、亜麻仁油、アマランス油、アプリコット油、アップルシードオイル、アルガン油、アボカド油、ババス油、ベン油、ボルネオ獣脂ナッツ油、ケープチェストナッツオイル、イナゴマメ実油、コックレバー油、コフネヤシ油、コリアンダー種子油、ナツメヤシ油、ディーカ油、アマナズナ油、グレープシードオイル、カポック油、ケナフ種子油、ラッレマンチアオイル、マフラ(mafura)オイル、マルラ(marula)オイル、メドウフォーム油、カラシ油、ニガー種子油、ナツメグバター、オクラ種子油、パパイヤシードオイル、エゴマ(perilla seed)油、柿の種(persimmon seed)油、ペキフルーツpequi油、ピリナッツ(pili nut)オイル、ザクロ種子油、ポピーシードオイル、プラカシー(pracaxi)オイル、バージンプラカシーオイル、杏仁油、キヌアquinoa油、ラムティル(ramtil)オイル、米糠油、ロイル(royle)オイル、サチャインチ(sacha inchi)オイル、サポテ(sapote)オイル、sejeオイル、シアバター、タラミアtaramiraオイル、椿油、シスル(thistle)オイル、タイガーナッツ(tigernut)オイル、タバコ種油、トマトシードオイル、小麦胚芽油、及びそれらの2つ以上の組み合わせから選択され得る。
【0053】
本発明の一態様では、動物源由来の油及び/又は脂肪は、ブタ、ニワトリ、ウシ、アヒル、ガチョウ、チーズ、バター、ミルク、及びそれらの2つ以上の組み合わせに由来する油又は脂肪からなる群から選択され得る。当業者は、動物源由来の油及び/又は脂肪の添加又は省略が、例えば、本発明の脂質組成物を使用するベーカリー製品の対象消費者層に基づいて決定され得ることを理解するであろう。完全菜食主義者用に開発されたベーカリー製品の場合、そのような油及び/又は脂肪は避けるべきである。
【0054】
本発明の一態様では、微生物源由来の油脂は、細菌、酵母、真菌、藻類、及びこれらの2つ以上の組み合わせにより産生される油脂から選択されてもよい。例えば、モルチエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)、クリプテコジニウム・コーニー(Crypthecodinium cohnii)及びシゾキトリウム属(Schizochytrium spp)によって産生される油を使用することができる。
【0055】
本発明の一態様では、第1の脂質成分は、大豆油、パーム油、パーム核油、パームオレイン、パームステアリン、ヒマワリ油、キャノーラ油、ココナッツ油、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される油である。本発明の特定な態様では、第1の脂質成分は、大豆油、パーム油、パーム核油ココナッツ油、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される油である。油は、任意選択で、分別、エステル交換、ブレンド及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される技術によって処理されてもよい。特定の例において、第1の脂質成分は、大豆油、パーム油及びパーム核油の組み合わせである。その中のパーム核油は、第1の脂質成分の重量で、0.3重量%~15重量%、又は0.4重量%~14.5重量%、又は0.5重量%~14重量%であり得る。当業者は、パーム油及び/又はパーム核油を、パーム油から誘導される1つ以上の他の油、例えば、パームオレイン及びパームステアリンで置き換えてもよいことを理解すべきである。
【0056】
本発明のある態様では、第1の脂質成分は、35重量%~60重量%、又は40重量%~55重量%のSFA含量を有する。本発明の別の態様では、第1の脂質成分は、3重量%~5重量%、又は3.3重量%~4.7重量%、又は4重量%~4.6重量%のC18:0含量を有する。本発明の更なる態様では、第1の脂質成分の平均分子量は、700g/mol~900g/mol、755g/mol~820g/mol、又は760g/mol~815g/mol、又は790g/mol~815g/molである。
【0057】
理論に束縛されることを意図するものではないが、本出願の発明者らは、本発明によって必要とされる第1の脂質成分の特定のSFA含量及び平均分子量が満たされる限りにおいて、油又は油の組み合わせが本発明における第1の脂質成分として使用され得ることを発見した。したがって、当業者であれば、本出願は植物源由来の油のいくつかの特定の組み合わせのみに言及しているが、本出願に記載されている特定のSFA含量及び平均分子量を満たす様々な源に由来する油の他の組み合わせも本発明の範囲内に入ることを理解するはずである。
【0058】
本発明のある態様では、脂質組成物は、添加剤を更に含むことができる。添加剤は、炭酸カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、乳酸、二酸化炭素、リンゴ酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール濃縮物(tocopherol-rich extract)、アルファ-トコフェロール、ガンマ-トコフェロール、デルタ-トコフェロール、レシチン、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸カルシウム、酒石酸カルシウム、クエン酸トリアンモニウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、寒天、カルギナン、加工紅藻抽出物(processed euchema seaweed)、ローカストビーンガム、グアガム、トラガカント、アラビアガム、キサンタンガム、タラガム、ゲランガム、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、コンニャク、ペクチン、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びセルロースガム、酵素的に加水分解されたカルボキシメチルセルロース及びセルロースガム、脂肪酸のナトリウム/カリウム/カルシウム塩、脂肪酸のマグネシウム塩、脂肪酸のモノ-及びジグリセリドの酢酸エステル、脂肪酸のモノ-及びジグリセリドのクエン酸エステル、脂肪酸のモノ-及びジグリセリドの酒石酸エステル、脂肪酸のモノ-及びジグリセリドのモノ及びジアセチル酒石酸エステル、脂肪酸のモノ-及びジグリセリドの混合酢酸及び酒石酸エステル、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、単酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、塩酸、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、脂肪酸、グルタミン酸、グルコン酸、グルコノ-デルタ-ラクトン、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸カルシウム、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸一ナトリウム、グルタミン酸一カリウム、マグネシウムジグルタメート(magnesium diglutamate)、グアニル酸、グアニル酸二ナトリウム、グアニル酸二カリウム、グアニル酸カルシウム、イノシン酸、イノシン酸二ナトリウム、イノシン酸二カリウム、イノシン酸カルシウム、カルシウム5’-リボヌクレオチド、二ナトリウム5’-リボヌクレオチド、グリシン及びそのナトリウム塩、L-システイン、アルゴン、ヘリウム、窒素、亜酸化窒素、酸素、水素、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、エリスリトール、インベルターゼ、ポリデキストロース、酸化デンプン、リン酸化デンプン(monostarch phosphate)、リン酸架橋デンプン(distarch phosphate)、ホスフェートリン酸架橋デンプン(phosphate distarch phosphate)、アセチル化リン酸架橋デンプン(acetylated distarch phosphate)、アセチル化デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン(acetylated distarch adipate)、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン(hydroxyl propyl distarch phosphate)、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、アセチル化酸化デンプン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、二リン酸塩、三リン酸塩、ポリリン酸塩、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸カリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(ポリソルベート40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)、脂肪酸のスクロースエステル、スクログリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、脂肪酸のプロパン-1.2-ジオールエステル、ナトリウムステアロイル-2-ラクチレート、カルシウムステアロイル-2-ラクチレート、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタ、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、計算マグネシウム及びタルク、リボフラビン、クロロフィル、クロロフィリン、クロロフィルの銅錯体、クロロフィリンの銅錯体、プレーンカラメル、亜硫酸ソーダカラメル(caustic sulphite caramel)、アンモニアカラメル、亜硫酸アンモニアカラメル、植物炭素色素、カロチン、パプリカ抽出物、カプサイシン、カプソルビン、赤ビーツ、ベタニン、アントシアニン、二酸化チタン、酸化鉄、水酸化物並びにこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0059】
本発明の更なる態様では、添加剤は、抗酸化剤、栄養強化剤、香味物質、防腐剤、色素及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0060】
本発明の一態様では、栄養強化剤は、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、脂肪(飽和及び不飽和)、並びにこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される追加の栄養価を有する脂質組成物を提供する。
【0061】
本発明の態様では、防腐剤は天然防腐剤である。例えば、天然防腐剤は、植物性抽出物(例えば、ローズマリー抽出物、オレガノ抽出物、ホップ抽出物、レンギョウ(forthysia)抽出物、シソ葉抽出物)、茶ポリフェノール、塩、糖、酢、アルコール、クエン酸、珪藻土、アリシン、プロタミン、プロポリス又はその抽出物、キトサン、丁子油、ヒマシ油、及びそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。本発明の別の態様では、防腐剤は人工防腐剤である。例えば、人工防腐剤は、安息香酸炎、亜硝酸塩、硫酸塩、フェノール誘導体、グリセロール誘導体、及びこれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。当業者であれば、防腐剤の具体的な選択は、コスト、最終製品の対象消費者、健康上の利益、溶解度、風味などの要因に基づき得ることを理解するであろう。
【0062】
本発明のある態様では、香味物質は、バニラ抽出物、バニリン、バナナ香味油、バナナ香味抽出物、アーモンド香味油、アーモンド香味抽出物、ココナッツ香味油、ココナッツ香味抽出物、コーヒー香味油、コーヒー香味抽出物、ヘーゼルナッツ香味油、ヘーゼルナッツ香味抽出物、シナモン香味抽出物、シナモン香味抽出物、ティー香味油、ティー香味抽出物、ペカン香味油、ペカン香味抽出物、カラメル香味油、カラメル香味抽出物、ターメリック香味油、ターメリック香味抽出物、ダイズ香味油、ダイズ香味抽出物、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。本発明の別の態様では、香味物質は、脂質組成物にバターに似た味を付与し、粉乳、クリーム又は他の乳製品を含んでもよい。当業者は、特定の状況において、例えば、乳糖不耐症を有する消費者にとって、酪農製品の排除が好ましい場合があることを理解すべきである。
【0063】
本発明のある態様では、色素は、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カロテノイド及びその誘導体、レチノール及びその誘導体、並びにリボフラビン及びその誘導体からなる群から選択される。当業者は、特定の種類の食品色素が、望ましい色を有する脂質組成物を提供すること以外に、追加の健康上の利益をもたらし得ることを理解するであろう。例えば、カロテノイドは、免疫系を潜在的に強化し、炎症特性を有することが知られている。また、当業者は、本明細書に列挙される色素が網羅的なリストではないことを理解すべきである。特定の色素の使用は、所望の色、その健康上の利益及び特定の管轄区域の食品規制などの1つ以上の要因に基づいて当業者によって決定され得る。
【0064】
本発明の更なる特定の態様では、色素はベータ-カロチンである。
【0065】
本発明のある態様では、抗酸化剤は、上述のカロテノイドであってもよい。適切な抗酸化剤はまた、レチノール(例えば、ビタミンA)及び/又はリボフラビス(riboflavis)(例えば、ビタミンB)を含んでもよい。他の可能な抗酸化剤は、ターシャリーブチルヒドロキノン、茶ポリフェノール、ベルベリン、シリマリン、フラボノイド、フラボノイド誘導体、アスコルビン酸(例えば、ビタミンC)、アスコルビン酸誘導体、レチノール(例えば、ビタミンA)、レチノール誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、グアヤク樹脂、クエン酸イソプロピル、塩化第一スズ、チオジプロピオネート(例えば、ジラウリルチオジプロピオネート)、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。抗酸化剤はまた、免疫系を強化するなどの有益な健康効果を有し得る。
【0066】
本発明のある態様では、第2の脂質成分のモル量が、第1の脂質成分、乳化剤及び第2の脂質成分の総モル量の2.6mol%~15mol%、又は第1の脂質成分、乳化剤及び第2の脂質成分の総モル量の3mol%~14.5mol%、又は3.2mol%~14.4mol%、又は3.3mol%~14mol%、又は3.4mol%~13.5mol%である。本発明の更なる態様では、第2の脂質成分の平均分子量は、400g/mol~1650g/mol、又は500g/mol~1400g/mol、又は550g/mol~1300g/mol、又は600g/mol~1250g/molである。本発明の更なる態様では、第1の脂質成分、乳化剤及び第2の脂質成分の平均分子量は、700g/mol~900g/mol、又は750g/mol~850g/mol、又は770g/mol~840g/molである。理論に束縛されることを意図するものではないが、第2の脂質成分のモル量が第1の脂質成分、第2の脂質成分及び乳化剤の総モル量の2.6mol%~15mol%を占めるように、第2の脂質成分の平均分子量と組成物中のその含量との間でバランスがとられると考えられる。そのようなバランスは、低温での脂質組成物の望ましい硬度及び十分な可塑性に寄与するのに役立つ。
【0067】
上述したように、第1の脂質成分の平均分子量は、700g/mol~900g/mol、755g/mol~820g/mol、又は760g/mol~815g/mol、又は790g/mol~815g/molであってもよい。本発明のある態様では、乳化剤の平均分子量は、600g/mol~1300g/mol、又は700g/mol~1200g/mol、又は800g/mol~1100g/molであってもよい。理論に束縛されることを意図するものではないが、第1の脂質成分及び/又は乳化剤の平均分子量並びに脂質組成物中のそれらの含量も、低温での脂質組成物の望ましい硬度に寄与するのに役立つと考えられる。
【0068】
本発明のある態様では、乳化剤は脂質組成物の重量で、0.2重量%~1重量%、又は0.4重量%~0.6重量%であってもよい。理論に束縛されることを意図するものではないが、脂質組成物中で使用される乳化剤の具体的な量は、乳化剤の平均分子量に少なくとも部分的に関連すると考えられる。
【0069】
本発明の別の態様は、本発明による脂質組成物を含有する食品に関する。より具体的には、本発明は、本発明の脂質組成物と、脂質又は脂質組成物ではない少なくとも1つの他の栄養素と、を含む、食品に関する。少なくとも1つの他の栄養素は、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル及び水からなる群から選択される。食品組成物中の少なくとも1つの他の栄養素の具体的な量は、食品組成物の種類に基づいて調整される。食品は、ベーカリー製品であってもよい。好ましくは、ベーカリー製品は積層構造を有する。典型的には、ベーカリー製品は積層生地から作られてもよい。具体的には、ベーカリー製品は、食パン、クロワッサン、パフペストリー、デニッシュペストリー及びガレットからなる群から選択することができる。食パンは、例えば、手で切った食パン、トーストした食パン又は栄養強化食パンであってもよい。
【0070】
理論に束縛されることを意図するものではないが、本発明の脂質組成物を使用したベーカリー製品は、バターを使用することなく、所望の湿ったフレーク状のテクスチャーを有する。また、本発明の油脂組成物は、適度な堅さを有し、低温で十分な可塑性及び延性を有するので、ベーカリー製品の工業的連続生産に特に適している。
【0071】
本発明の別の態様は、食品の製造プロセスに関する。このプロセスにおいて、本発明の脂質組成物は、5℃~15℃で連続シートとして押出される。
【0072】
本発明の更なる態様は、本発明による脂質組成物を製造するプロセスに関する。本プロセスは、脂質組成物の重量で、30重量%~70重量%の第1の脂質成分と、1.5重量%~11重量%の第2の脂質成分と、0.1重量%~1.2重量%の乳化剤とを混合して、脂質相を生成するステップと、脂質組成物の重量で、5重量%~20重量%の水と、10重量%~40重量%の甘味物質とを混合して、水相を生成するステップと、脂質相と水相とを混合して、油中水型エマルジョンを生成するステップと、冷却装置を用いて油中水型エマルジョンを冷却して、結晶化されたエマルジョンを生成するステップと、を含む。乳化剤は、90重量%未満のSFA含量を有する。第2の脂質成分は、少なくとも90重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸は、C22:0を含み、かつ重量で第2の脂質成分のSFA含量の少なくとも33.3重量%を占める。脂質組成物は、少なくとも40重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸は、重量で脂質組成物のSFAの少なくとも12.5重量%を占める。脂質組成物は、0.35重量%~12重量%のC12:0含量、及び5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定されるテクスチャー分析により、5℃~15℃で500g~2000gの硬度を提供する。脂質組成物は、2重量%未満のTFAを含有する。脂質組成物は、0.1重量%~1.5重量%のC22:0含量を有する。
【0073】
本発明のある態様では、プロセスは、水相と混合する前に脂質相に親油性添加剤を添加することを更に含む。親油性添加剤は、親油性抗酸化剤、親油性栄養強化剤、親油性香味物質、親油性防腐剤、親油性色素及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。特定の例では、親油性添加剤は親油性抗酸化剤である。本発明の別の態様では、本プロセスは、脂質相と混合する前に水相に水溶性添加剤を添加することを更に含む。水溶性添加剤は、水溶性抗酸化剤、水溶性栄養強化剤、水溶性香味物質、水溶性防腐剤、水溶性色素、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0074】
抗酸化剤の添加は、脂質組成物の酸化を防止し、それによってその貯蔵寿命を延長する。更に、上記のように、いくつかの抗酸化剤は、更なる健康上の利益をもたらし、したがって、その添加は、本発明の脂質組成物又はそれを使用する食品の健康意識のある消費者へのアピールを増大させ得る。栄養強化剤は、健康を意識する消費者の要望に訴えるために、脂質組成物に追加の栄養価を提供することができる。香味物質及び/又は色素は、その外観を改善する目的で脂質組成物に添加されてもよい。
【0075】
本発明の更なる態様において、本プロセスは、結晶化されたエマルジョンを、静置、押出、及びテンパリングのうちの1つ以上に供するステップを更に含む。理論に束縛されることを意図するものではないが、静置は、任意のその後の処理の前に脂肪の結晶ネットワークが十分に発達することを可能にする。押出によって、本発明の脂質組成物は、組成物が適用される特定のベーカリー製品に応じて、様々な形状に作製され得る。例えば、積層生地から製造されるベーカリー製品の場合、シート状の脂質組成物が特に好適であり得、本発明の脂質組成物は、組成物が連続シートに押出される連続生産プロセスに特に好適である。理論に束縛されることを意図するものではないが、テンパリングプロセスは、脂肪の結晶形態に影響を及ぼし、次にそのテクスチャー特性(例えば、硬度)に影響を及ぼすと考えられている。したがって、適切なテンパリングプロセスは、本発明の脂質組成物のテクスチャー特性を改善し得る。
【0076】
本発明の更なる態様は、食品に脂質組成物を添加することを含む方法によって、食品の特性を改善するための、本発明による本発明の脂質組成物の使用に関する。上記で考察したように、脂質組成物は、バターに似た味及び口当たりを提供しながら、望ましいテクスチャー特性を送達することができる。更に、上述したように、脂質組成物は、更なる栄養価及び/又は健康利益を提供する1つ以上の添加剤を含有してもよい。特定の例において、本発明の脂質組成物は、それが添加される食品の以下の特性:栄養プロファイル、テクスチャー、色、味、芳香及び外観のうちの1つ以上を改善し得る。
【0077】
本発明のある態様では、本発明の脂質組成物によって特性が改善される食品は、食パン、クロワッサン、パフペストリー、デニッシュペストリー及びガレットからなる群から選択される。本発明の別の態様では、本発明の脂質組成物は、積層脂肪として食品に添加される。例えば、脂質組成物を巻いて、生地層に折り畳み、積層生地を作製してもよい。
【0078】
本発明の更に別の態様は、連続脂質組成物シートの製造方法に関する。この方法は、本発明による脂質組成物を押出に供することを含む。上述したように、本発明の脂質組成物は、5℃~15℃(又は5℃~10℃)の温度範囲で好適な堅さ及び十分な可塑性並びに延性を示し、したがって、ベーカリー製品の工業的連続生産プロセスにおける押出成形に特に好適である。本発明のある態様では、押出された脂質組成物が、折り畳み、シート化、圧延及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されるプロセスに供される。本発明の別の態様では、押出及び/又はその後の加工は、5℃~15℃、又は5℃~10℃の温度で行われる。
【0079】
図1は、ベーカリー製品の例示的な連続生産プロセスを示す。ステップ1では、生地を形成して、連続シートにする。ステップ3では、マーガリンをブロックで押出機に供給し、連続シートを押出し、続いて生地シート上に置く。ステップ5では、生地シート及びマーガリンシートは、厚さ調整のために生地シートを通過する。ステップ7では、マーガリンを有するシート状生地は、冷凍及び緩和を経る。ステップ9では、生地を成形する。
【0080】
ステップ3では、マーガリンは、一般的に、押出機に供給される前にウォームアップステップを経なければならない。これは、食品産業においてマーガリンがしばしば0℃~5℃の温度で貯蔵されるからであり、このような温度での従来のマーガリンは、押出プロセスには堅すぎて脆くなる。したがって、本発明の脂質組成物は、5℃~15℃(又は5℃~15℃)温度範囲で適切な堅さ及び十分な可塑性並びに延性を示すので、そのような製造プロセスに特に好適であり得る。従って、従来のマーガリンに一般的に必要とされるウォームアップステップは、短縮され得るか、又は排除され得、それによって、生産コストを低減し、生産効率を改善する。
【0081】
例示的な実施例
以下の実施例は、本発明の脂質組成物中の様々な成分及びその含量の技術的効果を調査するために行われる。
【0082】
全ての実施例において、第1の脂質成分1~10は、以下の油のブレンドであり、続いて化学的エステル交換が行われる。
【0083】
【表1】
【0084】
第1の脂質成分、乳化剤及び第2の脂質成分は、以下のSFA含量及び平均分子量を有する。
【0085】
【表2】
【0086】
脂肪酸組成は、それらのメチルエステルから、ISO 15304(ISO,2002)に従ってガス液体クロマトグラフィー-質量分析によって決定される。SFCは、40℃でAOCS Cd16/81(Firestone,1989)に従って、NMR結果に基づいて決定される。融点は、AOCS Cc 3-25に従って決定される。脂質成分及び乳化剤の平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0087】
脂質組成物の硬度は、Texture Analyzerを使用して、それぞれ5℃及び25℃で「浸透の働き」及び「接着性」(浸透試験)を測定することによって決定される。5mmシリンダープローブを使用して、試料脂質組成物を2mm/秒でそれらの元の高さの75%まで貫通させる。
【0088】
以下の実施例において試験される脂質組成物は、油中水型エマルジョンを生成するために一般的に使用されるプロセスによって作製される。具体的には、第1の脂質成分(複数可)、第2の脂質成分(複数可)、乳化剤(複数可)及び任意選択的に抗酸化剤(複数可)を脂質相タンクに添加する。脂質相成分が融解するように加熱する。脂質相成分を激しく撹拌して混合し、脂質相を形成する。次いで、脂質相をエマルジョンタンクにポンプで注入し、50~70℃の温度で連続的に撹拌する。水、甘味物質、並びに任意選択で粉乳及び香味用の塩を水相タンクに添加し、固体成分が溶解するまで50~60℃の温度で加熱及び撹拌し、水相を形成する。その後、水相をエマルジョンタンクにポンプで注入し、50~60℃の温度で撹拌しながら脂質相と混合し、油中水型エマルジョンを得る。この実施例では、塩も天然防腐剤として使用される。任意選択で、追加の香味物質、抗酸化剤、栄養強化剤、防腐剤及び/又は色素をエマルジョン又は個々の脂質/水相に添加してもよい。
【0089】
エマルジョンを、65~85℃の温度で10~40分間、滅菌のためにプレート熱交換器に供し、次いで50~60℃に冷却する。次いで、このエマルジョンを、結晶化のために、Kombinator(登録商標)、Votator(登録商標)又はPrefector(登録商標)によるスクレープドサーフェイス熱交換器(scraped surface heat exchanger)などの冷却装置にポンプ輸送する。結晶化されたエマルジョンを静置チューブに供し、続いて10~30℃でシート又はストリップとして押出す。押出されたシート又はストリップを包装し、1~5日間調質し、0~10℃の温度で貯蔵する。
【0090】
本出願は1つの製造プロセスのみを記載しているが、当業者は、油中水型エマルジョンを製造するのに適した任意の製造プロセスを使用して、本発明の脂質組成物を製造することができることを理解すべきである。
【0091】
全ての実施例において、各脂質組成物の押出性能は以下のように評価される。
【0092】
【表3】
【0093】
実施例1
本実施例では、脂質組成物の融点に対するSFA含量の影響を試験する。実験結果を以下にまとめる。
【0094】
【表4】
【0095】
上記から、第2の脂質成分(複数可)の含量が11重量%より高い場合、脂質相の融点は48℃より高いことが分かる。また、そのような実施例の脂質相の40℃でのSFCは12重量%よりも高く、これは、脂質相がデニッシュペストリーなどのベークド物品に使用される場合に良好な口当たりをもたらすのに有益ではない。これは、上述したように、SFCが脂質の可塑性に関係するためである。そのため、SFCが高すぎると、脂質組成物は堅すぎて作業できないことが予想される。また、脂質組成物はワックス状の口当たりを有することが予想される。
【0096】
実施例2
この実施例では、組成物の脂質相の融点に対する第2の脂質成分の含量の影響を試験する。
【0097】
【表5】
【0098】
上記から、第2の脂質成分の含量が11重量%より高い場合、脂質相の融点は46℃より高いことが分かる。この場合も、40℃でのこのような実施例における脂質相のSFCは12重量%よりも高く、これはベークド物品に良好な口当たりを提供するのに有益ではない。上述したように、高いSFCは、脂質組成物の操作性を損なうことも予想される。
【0099】
実施例3
この実施例では、脂質組成物の硬度及びその押出性能に対するC12:0含量の影響を調査する。
【0100】
【表6】
【0101】
【表7】
【0102】
上記から、脂質組成物中のC12:0含量が組成物の硬度に関連することが分かる。具体的には、C18:0含量及びC22:0含量が与えられる場合、組成物の硬度は、C12:0含量が増加するにつれて増加する。同様に、C12:0含量が減少すると、組成物の硬度も減少する。
【0103】
また、脂質組成物中のC12:0含量は、組成物の押出性能に関連する。上記は、C12:0含量が高すぎる(12重量%を超える)と、脂質組成物が硬すぎて押出成形できなくなることを示す。他方、低すぎるC12:0含量は、押出後の脂質組成物を粘性にし、延性を欠く可能性があり、これは、その後の加工にとって良好ではない。
【0104】
実施例4
この実施例では、様々なパラメータ(例えば、C12;0、C18:0及びC22:0含量)と脂質組成物のテクスチャー特性及び押出性能との間の関係を更に調査する。
【0105】
【表8】
【0106】
【表9】
【0107】
【表10】
【0108】
上記から、第2の脂質成分の含量が1.5重量%~11重量%であり、C12:0含量が0.35重量%~12重量%である場合、脂質組成物のテクスチャー品質を有意に改善することができることが分かる。実施例4のデータは、実施例3のデータと比較した場合、C22:0の存在が良好な押出性能に必要であることも示している。第2の脂質成分のモル量と脂質相(すなわち、第1及び第2の脂質成分並びに乳化剤(複数可))の総モル量との間の比もまた、望ましい押出性能に寄与する助けとなり得る。具体的には、第2の脂質成分のモル量が脂質相の総モル量の少なくとも2.6mol%を占める場合、脂質組成物は良好な押出性能を示す。
【0109】
得られた油脂組成物は、5℃~15℃で好適な堅さ及び十分な可塑性並びに延性を有するため、油脂組成物の押出を伴うベーカリー製品の工業的連続生産に特に好適である。
【0110】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明の態様が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術及び本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されていない限り、理想化された意味又は過度に形式的な意味で解釈されないことが更に理解されよう。
【0111】
例示的な態様を参照して本開示を説明してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素を均等物で置き換えることができることが当業者には理解されよう。加えて、本開示の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本開示の教示に適合させるために、多くの修正が行われてもよい。したがって、本開示は、本開示を実施するために企図される最良の形態として開示される特定の態様に限定されず、本開示は、添付の特許請求の範囲内に入る全ての態様を含むことが意図される。
【0112】
本明細書で具体的に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、そのような参考文献の引用又は組み込みは、必ずしも、本発明に対する/に対する先行技術としてのその妥当性、引用可能性、及び/又は利用可能性に関して承認するものではない。
【0113】
条項
条項1.脂質組成物であって、
(a)脂質組成物の重量で、30重量%~70重量%の第1の脂質成分と、
(b)脂質組成物の重量で、10重量%~40重量%の甘味物質と、
(c)脂質組成物の重量で、5重量%~20重量%の水と、
(d)脂質組成物の重量で、0.1重量%~1.2重量%の乳化剤であって、90重量%未満のSFA含量を有する、乳化剤と、
(e)脂質組成物の重量で、1.5重量%~11重量%の第2の脂質成分であって、第2の脂質成分が、少なくとも90重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸が、C22:0を含み、かつ重量で第2の脂質成分のSFA含量の少なくとも33.3重量%を占める、第2の脂質成分と、を含み、
脂質組成物が、少なくとも40重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸が、重量で脂質組成物のSFAの少なくとも12.5重量%を占めており、
脂質組成物が、0.35重量%~12重量%のC12:0含量を有し、
脂質組成物が、5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定されるテクスチャー分析により、5℃~15℃で、500g~2000gの硬度を有し、
脂質組成物が、2重量%未満のTFAを含み、
脂質組成物が、0.1重量%~1.5重量%のC22:0含量を有する、脂質組成物。
【0114】
条項2.脂質組成物が、40重量%~60重量%のSFA含量、又は43重量%~57重量%のSFA含量、又は45重量%~55重量%のSFA含量を有する、条項1に記載の脂質組成物。
【0115】
条項3.脂質組成物が、0.37重量%~7重量%のC12:0含量、又は0.4重量%~6.5重量%のC12:0含量、又は0.5重量%~6重量%のC12:0含量を有する、条項1又は2に記載の脂質組成物。
【0116】
条項4.脂質組成物が、4.5重量%~9重量%のC18:0含量、又は4.7重量%~8.5重量%のC18:0含量、又は5重量%~7.5重量%のC18:0含量を有する、条項1~3のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【0117】
条項5.脂質組成物が、0.3重量%~1.3重量%のC22:0含量、又は0.4重量%~1.1重量%のC22:0含量を有する、条項1~4のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【0118】
条項6.第1の脂質成分の平均分子量が、700g/mol~900g/mol、755g/mol~820g/mol、又は760g/mol~815g/mol、又は790g/mol~815g/molである、条項1~5のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【0119】
条項7.第2の脂質成分が、30重量%~50重量%のC18:0含量、又は35重量%~45重量%のC18:0含量を有する、条項1~6のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【0120】
条項8.第2の脂質成分が、脂質組成物の重量で、1.5重量%~10重量%、又は1.5重量%~7重量%である、条項1~7のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【0121】
条項9.脂質組成物が、5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定したテクスチャー分析により、5℃で、600g~1900g、又は700g~1800g、又は800g~1700gの硬度を有する、条項1~8のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【0122】
条項10.脂質組成物が、5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定したテクスチャー分析により、15℃で、550g~1500g、又は570~1300g、又は600g~1100gの硬度を有する、条項1~9のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【0123】
条項11.第1の脂質成分が、大豆油、パーム油、パーム核油及びそれらの組み合わせからなる群から選択される油である、条項1~10のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【0124】
条項12.油が、分別、エステル交換、ブレンド及びそれらの組み合わせからなる群から選択される技術によって処理される、条項11に記載の脂質組成物。
【0125】
条項13.パーム核油が、第1の脂質成分の重量で、0.3重量%~15重量%、又は0.4重量%~14.5重量%、又は0.5重量%~14重量%である、条項11又は12に記載の脂質組成物。
【0126】
条項14.脂質組成物が、抗酸化剤、栄養強化剤、香味物質、防腐剤、色素及びそれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を更に含む、条項1~13のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【0127】
条項15.第2の脂質成分のモル量が、第1の脂質成分、乳化剤及び第2の脂質成分の総モル量の2.6mol%~15mol%、又は第1の脂質成分、乳化剤及び第2の脂質成分の総モル量の3mol%~14.5mol%、又は第1の脂質成分、乳化剤及び第2の脂質成分の総モル量の3.2mol%~14.4mol%、又は第1の脂質成分、乳化剤及び第2の脂質成分の総モル量の3.3mol%~14mol%、又は第1の脂質成分、乳化剤及び第2の脂質成分の総モル量の3.4mol%~13.5mol%を占める、条項1~14のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【0128】
条項16.脂質組成物が、部分的に水素化された脂質を含まない、条項1~15のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【0129】
条項17.条項1~16のいずれか一項に記載の脂質組成物を含む、食品。
【0130】
条項18.本発明の脂質組成物と、脂質又は脂質組成物ではない少なくとも1つの他の栄養素と、を含む、食品。
【0131】
条項19.食品が、積層生地から作られたベーカリー製品である、条項17又は18に記載の食品。
【0132】
条項20.ベーカリー製品が、食パン、クロワッサン、パフペストリー、デニッシュペストリー及びガレットからなる群から選択される、条項19に記載の食品。
【0133】
条項21.条項17~20のいずれか一項に記載の食品の製造プロセスであって、脂質組成物が、5℃~15℃で連続シートとして押出される、プロセス。
【0134】
条項22.条項1~条項16のいずれか一項に記載の脂質組成物の製造プロセスであって、
(A)脂質組成物の重量で、
(i)30重量%~70重量%の第1の脂質成分と、
(ii)1.5重量%~11重量%の第2の脂質成分であって、第2の脂質成分が、少なくとも90重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸が、C22:0を含み、かつ重量で第2の脂質成分のSFA含量の少なくとも33.3重量%を占める、第2の脂質成分と、
(iii)0.1重量%~1.2重量%の乳化剤であって、90重量%未満のSFA含量を有する、乳化剤と、を混合して、
脂質相を生成するステップと、
(B)脂質組成物の重量で、
(i)5重量%~20重量%の水と、
(ii)10重量%~40重量%の甘味物質と、を混合して、
水相を生成するステップと、
(C)脂質相と水相とを混合して、油中水型エマルジョンを生成するステップと、
(D)油中水型エマルジョンを冷却装置で冷却して、結晶化されたエマルジョンを生成するステップと、を含み、
脂質組成物が、少なくとも40重量%のSFA含量を有し、16個を超える炭素の炭素鎖を有する完全飽和脂肪酸が、重量で脂質組成物のSFA含量の少なくとも12.5重量%を占めており、
脂質組成物が、0.35重量%~12重量%のC12:0含量を有し、
脂質組成物が、5mmシリンダープローブを使用して、2mm/秒で脂質組成物の元の高さの75%に浸透するように測定されるテクスチャー分析により、5℃~15℃で、500g~2000gの硬度を有し、
脂質組成物が、2重量%未満のTFAを含み、
脂質組成物が、0.1重量%~1.5重量%のC22:0含量を有する、プロセス。
【0135】
条項23.水相と混合する前に、脂質相に親油性添加剤を添加することを更に含む、条項22に記載のプロセス。
【0136】
条項24.水相と混合する前に、水相に親油性添加剤を添加することを更に含む、条項22又は23に記載のプロセス。
【0137】
条項25.添加剤が、抗酸化剤、栄養強化剤、香味物質、防腐剤、色素及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項23又は24に記載のプロセス。
【0138】
条項26.結晶化されたエマルジョンを、以下のステップ:
(A)静置、
(B)押出、及び
(C)テンパリングのうちの1つ以上に供することを更に含む、条項22~条項25のいずれか一項に記載のプロセス。
【0139】
条項27.脂質組成物を食品に添加することを含む方法によって、食品の特性を改善するための、条項1~条項6に記載の脂質組成物の使用。
【0140】
条項28.特性が、栄養プロファイル、テクスチャー、色、味、芳香、外観、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項27に記載の使用。
【0141】
条項29.食品が、食パン、クロワッサン、パフペストリー、デニッシュペストリー及びガレットからなる群から選択される、条項27又は28に記載の使用。
【0142】
条項30.脂質組成物が、積層脂肪として添加される、条項27又は28に記載の使用。
【0143】
条項31.連続脂質組成物シートの製造方法であって、条項1~条項16のいずれか一項に記載の脂質組成物を押出に供することを含む、方法。
【0144】
条項32.押出された脂質組成物が、折り畳み、シート化、圧延及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスに供される、条項31に記載の方法。
【0145】
条項33.押出及び/又は後続のプロセスが、5℃~15℃、又は5℃~10℃の温度で行われる、条項31又は32に記載の方法。
図1
【国際調査報告】