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特表2023-548310FAP活性化血清半減期延長型治療用コンジュゲート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(54)【発明の名称】FAP活性化血清半減期延長型治療用コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20231109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20231109BHJP
   A61K 31/4015 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 31/145 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 38/31 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20231109BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 38/40 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231109BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231109BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20231109BHJP
   C07K 14/78 20060101ALI20231109BHJP
   C07K 14/765 20060101ALI20231109BHJP
   C07K 14/79 20060101ALI20231109BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20231109BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231109BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20231109BHJP
   C07K 14/655 20060101ALI20231109BHJP
   C07K 14/605 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
A61K47/64
A61P35/00
A61K45/00
A61K31/69
A61K31/337
A61K31/282
A61K33/24
A61K31/4015
A61K31/145
A61K31/353
A61K31/407
A61K38/07
A61K31/19
A61K38/31
A61K38/22
A61K31/519
A61K47/65
A61K38/39
A61K38/40
A61K38/38
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K47/60
C07K14/78 ZNA
C07K14/765
C07K14/79
C07K16/00
C07K19/00
C07K14/575
C07K14/655
C07K14/605
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526266
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 US2021057330
(87)【国際公開番号】W WO2022094262
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/108,020
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/197,926
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520395695
【氏名又は名称】アバクタ・ライフ・サイエンシーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Avacta Life Sciences Limited
(71)【出願人】
【識別番号】319009901
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ タフツ カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】バスラン,アムリック
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント,マシュー ピー
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンス,エマ
(72)【発明者】
【氏名】アダム,エステル
(72)【発明者】
【氏名】バホフチン,ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB11
4C076CC27
4C076EE59
4C076FF31
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA10
4C084BA16
4C084BA23
4C084BA32
4C084CA18
4C084DA37
4C084DB11
4C084DB13
4C084DB42
4C084DB43
4C084DB59
4C084DC50
4C084MA66
4C084NA12
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB43
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA02
4C086BA06
4C086BA08
4C086CB09
4C086CB22
4C086DA43
4C086HA12
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA12
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA07
4C206JA72
4C206JB14
4C206JB16
4C206JB17
4C206MA86
4C206NA12
4C206ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA30
4H045DA35
4H045DA45
4H045DA70
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
本明細書において、循環血清半減期が延長された、治療用コンジュゲートが開示される。治療用コンジュゲートは、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPα)切断型リンカーを介して、半減期延長部分へと連結された治療用部分を含む。治療用コンジュゲートを使用する方法もまた、提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPα)切断型リンカーを介して、半減期延長部分へと連結された治療用部分を含み、インビボにおける、治療用コンジュゲートの循環血清半減期が、少なくとも48時間であり、コンジュゲートが、細胞の細胞表面タンパク質に、1×10-6Mまたはこれ未満のKで結合する細胞結合性部分を含まない、治療用コンジュゲート。
【請求項2】
線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPα)切断型リンカーを介して、半減期延長部分へと連結された治療用部分を含み、インビボにおける、治療用コンジュゲートの循環血清半減期が、遊離治療用部分の循環血清半減期と比べて、2倍を超えて延長され、コンジュゲートが、細胞の細胞表面タンパク質に、1×10-6Mまたはこれ未満のKで結合する細胞結合性部分を含まない、治療用コンジュゲート。
【請求項3】
半減期延長部分が、血清タンパク質を含む、請求項1または2に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項4】
血清タンパク質が、フィブロネクチン、トランスフェリン、およびヒト血清アルブミン(HSA)から選択される、請求項3に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項5】
半減期延長部分が、フィブロネクチン、トランスフェリンおよびHSAから選択されてもよい血清タンパク質に結合する分子を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項6】
血清タンパク質に結合する分子が、Fab、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)、F(ab’)、Fd、Fv、ジスルフィド連結型Fv、dAb、またはsdAb[またはNANOBODY(登録商標)]、CDR、scFv、(scFv)、di-scFv、bi-scFv、tascFv(タンデムscFv)、AVIBODY(登録商標)(例えば、ダイアボディー、トリアボディー、およびテトラボディー)、T細胞エンゲージャー[BiTE(登録商標)]、Fc、scFv-Fc、Fcab、mAb、SMIP(small modular immunopharmaceutical)、Genmab/ユニボディーまたはデュオボディー、V-NARドメイン、IgNAR、ミニボディー、IgGACH2、DVD-Ig、プロボディー、イントラボディー、および多特異性抗体からなる群から選択されてもよい抗体である、請求項5に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項7】
血清タンパク質に結合する分子が、アフィボディー、AFFIMER(登録商標)ポリペプチド、アフィリン、アンチカリン、アトリマー、アビマー、DARPin、FN3土台(例えば、Adnectins、Centyrins)、フィノマー、Kunitzドメイン、ナノフィチン、プロネクチン、トリボディー、バイサイクリックペプチド、およびCysノットからなる群から選択されてもよい非抗体分子である、請求項5に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項8】
半減期延長部分が、ステフィンポリペプチド[すなわち、AFFIMER(登録商標)ポリペプチド]の、HSA結合性組換え操作変異体を含む、請求項7に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項9】
ステフィンポリペプチド[AFFIMER(登録商標)ポリペプチド]の、組換え操作変異体が、配列番号110~132のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項10】
半減期延長部分が、IgA、IgD、IgE、IgG、もしくはIgM、またはこれらのサブクラスに由来してもよい、抗体のFcドメインを含む、請求項1または2に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項11】
半減期延長部分が、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン、XTEN(商標)ポリマー、およびプロリン-アラニン-セリンポリマーからなる群から選択されてもよい生体適合性ポリマーを含む、請求項1または2に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項12】
式:
X-L-SRS-L-TM
[式中、
Xは、半減期延長部分であり、
は、スペーサーまたは結合であり、
SRSは、FAPαにより切断可能な基質認識配列であり、
は、自壊性リンカーまたは結合であり、
TMは、治療用部分である]
のうちの1つにより表される、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項13】
式:
X-(L-SRS-L-TM)
X-L-(SRS-L-TM)
(X)m-(L-SRS-L-TM);または
(X)m-L-(SRS-L-TM)
[式中、
Xは、半減期延長部分であり、
は、スペーサーまたは結合であり、
SRSは、FAPαにより切断可能な基質認識配列であり、
は、自壊性リンカーまたは結合であり、
TMは、治療用部分であり、
mは、1~6の整数であり、
nは、1~500であるが、1~100、1~10、または1~5でもよい整数である]
のうちの1つにより表される、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項14】
【化1】
を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項15】
FAPα切断型リンカーが、オリゴペプチドである、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項16】
オリゴペプチドが、治療用部分へと共有結合的に連結された(結合または自壊性リンカーを介してであってもよい))C末端プロリン、および/またはN末端保護基を含む、請求項15に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項17】
結合が、FAPαのタンパク質分解活性により切断される場合があり、この場合、結合が、アミド結合であってもよい、請求項16に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項18】
自壊性リンカーが、His-Ala、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)、または2,4-ビス(ヒドロキシメチル)アニリンでもよい複素環性自壊性部分を含む、請求項12から17のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項19】
FAPα切断型リンカーが、配列であるD-Ala-Pro、または配列であるD-Serであってもよい、D-Ala-Pro、PPGP(配列番号136)、(D/E)-(R/K)-G-(E/D)-(T/S)-G-P(配列番号137)、DRGETGP(配列番号138)、およびGPAX(配列番号139)から選択される配列を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項20】
FAPα切断型リンカーの基質認識配列(SRS)が、
【化2】
【化3】
[式中、
は、水素または(C~C)アルキルであり、
は、水素、または分枝鎖状低級アルキルもしくは直鎖状低級アルキルであり;
は、分枝鎖状低級アルコキシまたは直鎖状低級アルコキシであり;
は、OもしくはSであり;かつ/または
は、OもしくはSである]
により表される、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項21】
FAPα切断型リンカーの基質認識配列が、(d)-Alaに対して、N末端側にあってもよい、第3のアミノ位置を含み、第3のアミノ酸位置におけるアミノ酸は、セリンまたはトレオニンであってもよい、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項22】
治療用部分が、細胞傷害剤である、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項23】
治療用部分が、細胞増殖抑制剤である、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項24】
治療用部分が、エピジェネティック剤である、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項25】
治療用部分が、化学療法薬部分である、請求項1から21のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項26】
化学療法薬部分が、タキサン、白金ベースの薬剤、およびプロテアソーム阻害剤からなる群から選択される、請求項25に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項27】
タキサンが、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルからなる群から選択される、請求項26に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項28】
白金ベースの薬剤が、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、ピコプラチン、フェナントリプラチン、トリプラチン、スピロプラチン、サトラプラチン、イプロプラチン、およびサトラプラチンからなる群から選択される、請求項26に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項29】
プロテアソーム阻害剤が、ボルテゾミブ、ラクタシスチン、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガレート、マリゾミブ(サリノスポラミドA)、オプロゾミブ(ONX-0912)、デランゾミブ(CEP-18770)、エポキソミシン、およびベータ-ヒドロキシベータ-メチルブチレートからなる群から選択される、請求項26に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項30】
治療用部分が、インビボにおける、自然免疫応答を誘導する、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項31】
治療用部分が、急性毒性である、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項32】
治療用部分が、TLRアゴニスト、RIG-Iアゴニスト、iDASH阻害剤、およびSTINGアゴニストから選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項33】
治療用部分が、Val-boroPro(タラボスタット)である、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項34】
治療用部分が、受容体リガンドを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項35】
受容体リガンドが、ソマトスタチン、コレシストキニン-2(CCK2)、葉酸、ボムベシン、ガストリン放出ペプチド、ニューロテンシン、P物質、グルカゴン様ペプチド1、神経ペプチドY、およびこれらの類似体から選択される、請求項34に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項36】
治療用部分が、
【化4】
[式中、RBMは、受容体結合性部分であり、Zは、細胞毒性部分、細胞増殖抑制性部分、もしくはエピジェネティック部分、または放射性同位元素含有部分であり、pは、0(Zは、存在しない)、または1~8の整数である]
により表される、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項37】
pが、1である、請求項36に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項38】
治療用部分が、
【化5】
[式中、RBMは、受容体結合性部分であり、Zは、細胞毒性部分、細胞増殖抑制性部分、もしくはエピジェネティック部分、または放射性同位元素含有部分であり、Lは、結合、または切断型リンカーもしくは非切断型リンカーである]
により表される、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項39】
が、酸不安定性または酵素感受性であるリンカーを含む、請求項38に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項40】
が、カテプシン切断部位を含む、請求項39に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項41】
治療用部分が、遊離治療用部分の循環血清半減期の、少なくとも5、10、25、50、100、なおまたは1000倍である循環血清半減期を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項42】
治療用部分が、少なくとも10、25、50、100、200、または300時間である循環血清半減期を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項43】
少なくとも10、24、48、72、96、または120時間にわたり、同じ期間にわたる、全身循環中の遊離治療用部分の、少なくとも2、5、10、20、50、75、または100倍の濃度である、FAPαを発現する標的組織内の遊離治療用部分濃度をもたらす、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項44】
FAPα+腫瘍を有する対象へと投与される場合に、少なくとも10、24、48、72、96、または120時間の期間にわたり、遊離治療用部分の抗腫瘍活性についてのEC50であるか、またはこれを上回る、遊離治療用部分の腫瘍内濃度をもたらす、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項45】
FAPα+腫瘍を有する対象へと投与される場合に、抗腫瘍活性について、少なくとも2、5、10、25、50、100、または500の治療指数を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項46】
FAPα+腫瘍を有する対象へと投与される場合に、抗腫瘍活性について、遊離治療用部分の治療指数の、少なくとも2、10、50、100、250、500、1000、5000、または10,000倍である治療指数を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項47】
遊離治療用部分に比べて、等用量ベースにおいて比較された場合に、より大きな百分率の遊離治療用部分が、FAPαを発現する標的組織内に局在し、遊離治療用部分に比べて、等用量の治療用コンジュゲートで、他の組織(血液、肝臓、または心臓など)と比べた、標的組織内に局在する遊離治療用部分の比が、少なくとも2、5、10、100、または1000倍であってもよい、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項48】
治療用コンジュゲートの最大耐量が、遊離治療用部分の最大耐量の、少なくとも2、5、10、100、または1000倍である、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項49】
治療用コンジュゲートの細胞透過率が、遊離治療用部分の細胞透過率より、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、または99.9%小さい、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項50】
治療用コンジュゲートの循環半減期が、遊離治療用部分の循環半減期より、少なくとも25%、50%、75%、100%、150%、200%、500%、750%、または1000%長い、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項51】
治療用コンジュゲートが、腫瘍細胞に対して、遊離治療用部分と比べて、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%、または99.99%未満の、細胞傷害活性または細胞溶解活性を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲート。
【請求項52】
前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物。
【請求項53】
対象へと、前記請求項のいずれか一項に記載の、治療用コンジュゲートまたは組成物を投与することを含み、対象が、罹患組織を有し、がんを有してもよい方法。
【請求項54】
治療用コンジュゲートまたは組成物が、対象の腫瘍微小環境内における、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出を、対照の非処置対象と比べて、少なくとも0.5倍、または少なくとも1倍増大させるのに有効な量において投与される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
腫瘍であってもよい罹患組織の容量が、治療用コンジュゲートまたは組成物の投与の約2~3週間後に、少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも70%低減される、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
がんであってもよい罹患組織を処置するための方法における使用のための、前記請求項のいずれか一項に記載の、治療用コンジュゲートまたは組成物。
【請求項57】
がんであってもよい罹患組織を処置するための医薬の製造における、前記請求項のいずれか一項に記載の治療用コンジュゲートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35 U.S.C.§119(e)の下において、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、2020年10月30日に出願された、US63/108,020、および2021年6月7日に出願された、US63/197,926の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
多様な治療用薬物、例えば、自然免疫応答を誘導する薬物は、免疫関連毒性および他の用量制限因子のために、実際上の有効性を欠くが、これらの薬物は、全身使用のためには、毒性が強すぎることが多い。これは、全身における自然免疫の活性化が、投与されうる用量を大幅に制限するためである。したがって、多くの対象において、最大耐量は、治療レベルに到達しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
治療剤またはイメージング剤の、血清半減期延長型薬物コンジュゲートであって、切断部位において、治療用部分を放出するように、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPα)により、選択的に切断されうるFAPα基質を含むリンカーを有する薬物コンジュゲートが開示される。FAPαにより、FAPα基質が切断されると、薬物コンジュゲートは、その活性形態にあるか、またはその活性形態へとたやすく代謝される(または他の形で転換される)形態にある治療用部分を放出する。薬物コンジュゲートを含む医薬組成物のほか、FAPαの上方調節により特徴づけられる障害を処置するための薬物コンジュゲートを使用する方法もまた、開示される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一部の態様において、対象において、急性毒性を誘導せずに、対象の腫瘍微小環境内において、治療有効量の薬物(または他の治療用部分)を放出する治療用コンジュゲートがデザインされる。驚くべきことに、本開示のコンジュゲートは、細胞結合性(例えば、ターゲティング)部分の非存在下においてもなお、治療有効量の薬物の局所性デリバリーが可能である。本開示のコンジュゲートは、ターゲティング部分または他の細胞特異性ホーミング機構ではなく、半減期延長部分と、腫瘍微小環境内特異的な、薬物(または他の治療用部分)の局所的蓄積および放出を可能とする切断型リンカーとを含む。半減期延長部分は、薬物の局所的蓄積を可能とする一方、腫瘍微小環境内に、高レベルにおいて存在するFAPα酵素により、特異的に切断される切断型リンカーを使用して、特異性も達成される。したがって、FAPαによる、リンカーの特異的切断は、薬物の全身デリバリーと典型的に関連する毒性副作用を伴わずに、腫瘍微小環境内における、治療有効量の薬物の局所的放出を結果としてもたらす。
【0005】
本開示の一部の態様は、FAPα切断型リンカーを介して、半減期延長部分へと連結された治療用部分を含み、インビボ(in vivo)における、治療用コンジュゲートの循環血清半減期が、少なくとも48時間であり、コンジュゲートは、細胞の細胞表面タンパク質に、1×10-6Mまたはこれ未満のKで結合する細胞結合性部分を含まない、治療用コンジュゲートを提示する。
【0006】
本開示の他の態様は、FAPα切断型リンカーを介して、半減期延長部分へと連結された治療用部分を含み、インビボにおける、治療用コンジュゲートの循環血清半減期が、少なくとも48時間であり、コンジュゲートは、腫瘍微小環境内の、細胞の細胞表面タンパク質に結合する細胞結合性部分を含まない、治療用コンジュゲートを提示する。
【0007】
本開示のさらに他の態様は、FAPα切断型リンカーを介して、半減期延長部分へと連結された治療用部分を含み、インビボにおける、治療用コンジュゲートの循環血清半減期が、半減期延長部分へと連結されていない治療用部分の循環血清半減期と比べて、少なくとも2倍延長され、コンジュゲートは、細胞の細胞表面タンパク質に、1×10-6Mまたはこれ未満のKで結合する細胞結合性部分を含まない、治療用コンジュゲートを提示する。
【0008】
本開示のなおも他の態様は、FAPα切断型リンカーを介して、半減期延長部分へと連結された治療用部分を含み、インビボにおける、治療用コンジュゲートの循環血清半減期が、半減期延長部分へと連結されていない治療用部分の循環血清半減期と比べて、少なくとも2倍延長され、コンジュゲートは、腫瘍微小環境内の、細胞の細胞表面タンパク質に結合する細胞結合性部分を含まない、治療用コンジュゲートを提示する。
【0009】
本明細書において、半減期延長部分へと連結されていない治療用部分は、「遊離」治療用部分(すなわち、FAPαによる、コンジュゲートの切断から結果として得られる、治療用部分の親分子)と称される。
【0010】
一部の実施形態において、半減期延長部分は、血清タンパク質を含む。例えば、血清タンパク質は、フィブロネクチン、トランスフェリン、およびヒト血清アルブミン(HSA)から選択されうる。
【0011】
一部の実施形態において、半減期延長部分は、血清タンパク質に結合する分子を含む。例えば、血清タンパク質に結合する分子は、フィブロネクチン、トランスフェリン、またはHSAでありうる。
【0012】
一部の実施形態において、血清タンパク質に結合する分子は、抗体である。抗体は、例えば、Fab、F(ab)2、F(ab’)、F(ab’)2、F(ab’)3、Fd、Fv、ジスルフィド連結型Fv、dAb、またはsdAb[またはNANOBODY(登録商標)]、CDR、scFv、(scFv)2、di-scFv、bi-scFv、tascFv(タンデムscFv)、AVIBODY(登録商標)(例えば、ダイアボディー、トリアボディー、およびテトラボディー)、T細胞エンゲージャー[BiTE(登録商標)]、Fc、scFv-Fc、Fcab、mAb2、SMIP(small modular immunopharmaceutical)、Genmab/ユニボディーまたはデュオボディー、V-NARドメイン、IgNAR、ミニボディー、IgGACH2、DVD-Ig、プロボディー、イントラボディー、または多特異性抗体でありうる。
【0013】
一部の実施形態において、血清タンパク質に結合する分子は、非抗体分子である。非抗体分子は、例えば、アフィボディー、AFFIMER(登録商標)ポリペプチド、アフィリン、アンチカリン、アトリマー、アビマー、DARPin、FN3土台(例えば、Adnectins、Centyrins)、フィノマー、Kunitzドメイン、ナノフィチン、プロネクチン、トリボディー、バイサイクリックペプチド、またはCysノットでありうる。血清タンパク質に結合する、他の非抗体分子も、本開示に包含される。
【0014】
一部の実施形態において、半減期延長部分は、ステフィンポリペプチド[すなわち、AFFIMER(登録商標)ポリペプチド]の、HSA結合性組換え操作変異体を含む。
【0015】
一部の実施形態において、ステフィンポリペプチド[すなわち、AFFIMER(登録商標)ポリペプチド]の組換え操作変異体は、配列番号110~132のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0016】
一部の実施形態において、半減期延長部分は、IgA、IgD、IgE、IgG、もしくはIgM、またはこれらのサブクラスに由来してもよい、抗体のFcドメインを含む。
【0017】
一部の実施形態において、半減期延長部分は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン、XTEN(商標)ポリマー、およびプロリン-アラニン-セリンポリマーからなる群から選択されてもよい生体適合性ポリマーを含む。
【0018】
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、式:X-L-SRS-L-TM[式中、Xは、半減期延長部分であり、Lは、スペーサーまたは結合であり、SRSは、FAPαにより切断可能な基質認識配列であり、Lは、自壊性リンカー(self-immolative linker)(例えば、遊離治療用部分を放出するように、FAPαによる切断の後に、代謝されるか、さもなければ消失させられる)または結合であり、TMは、治療用部分である]のうちの1つにより表される。
【0019】
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、式:X-(L-SRS-L-TM)n;X-L-(SRS-L-TM)n;(X)m-(L-SRS-L-TM)n;または(X)m-L-(SRS-L-TM)n[式中、Xは、半減期延長部分であり、Lは、スペーサーまたは結合であり、SRSは、FAPαにより切断可能な基質認識配列であり、Lは、自壊性リンカーまたは結合であり、TMは、治療用部分であり、mは、1~6の整数であり、nは、1~500であるが、1~100、1~10、または1~5でもよい整数]のうちの1つにより表される。
【0020】
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、インビボの、患者の循環血清中のアルブミンまたは他のタンパク質に、化学的コンジュゲートすることが可能な部分を含む。一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、式: Y-L-SRS-L-TM;Y-(L-SRS-L-TM)n;またはY-L-(SRS-L-TM)n[式中、L、SRS、L、およびTMは、上記において規定された通りであり、Yは、インビボにおける、タンパク質への化学的架橋が可能な反応性基である]のうちの1つにより表される。
【0021】
一部の実施形態において、Yは、タンパク質内に存在する、遊離アミン(リシンの側鎖など)への化学的架橋が可能な反応性基である。非限定例は、図6Aに示されるリンカーなど、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)を含むリンカーを含む。
【0022】
一部の実施形態において、Yは、タンパク質内に存在する、遊離チオール基(システインの側鎖など)への化学的架橋が可能な反応性基である。非限定例は、図6Bに示されるリンカーなど、マレイミドを含むリンカーを含む。
【0023】
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、
【化1】
である。
【0024】
一部の実施形態において、FAPα切断型リンカーは、オリゴペプチドである。一部の実施形態において、オリゴペプチドは、治療用部分へと共有結合的に連結された(結合または自壊性リンカーを介してであってもよい)C末端プロリン、および/またはN末端保護基を含む。一部の実施形態において、結合は、FAPのタンパク質分解活性により切断されうる結合、例えば、アミド結合である。一部の実施形態において、FAPα切断型リンカーは、FAPのP1’特異性に寄与する(FAPにより、P1’残基として認識される)。
【0025】
一部の実施形態において、結合は、FAPαのタンパク質分解活性により切断される場合があり、この場合、結合は、アミド結合であってもよい。
【0026】
一部の実施形態において、自壊性リンカーは、His-Ala、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)、または2,4-ビス(ヒドロキシメチル)アニリンでもよい複素環性自壊性部分を含む。
【0027】
一部の実施形態において、FAPα切断型リンカーは、配列であるD-Ala-Pro、または配列であるD-Serであってもよい、D-Ala-Pro、PPGP(配列番号136)、(D/E)-(R/K)-G-(E/D)-(T/S)-G-P(配列番号137)、DRGETGP(配列番号138)、およびGPAX(配列番号139)から選択される配列を含む。
【0028】
一部の実施形態において、FAPα切断型リンカーの基質認識配列(SRS)は、
【化2】
【化3】
{式中、Rは、水素または(C~C)アルキルまたは水素であり、Rは、水素、または分枝鎖状低級アルキルもしくは直鎖状低級アルキル、例えば、メチルなどの低級アルキル[(d)が、アミノ酸側鎖である場合、Rは、水素ではない]であり、Rは、ヒドロキシメチル(例えば、セリンについて)など、分枝鎖状低級アルコキシまたは直鎖状低級アルコキシ、または1-ヒドロキシエチル(例えば、トレオニンについて)(一実施形態において、Rは、ヒドロキシメチルである)であり、Xは、OもしくはSであり、かつ/またはXは、OまたはSである}
により表される。
【0029】
一部の実施形態において、FAPα切断型リンカーの基質認識配列は、(d)-Alaに対して、N末端側にあってもよい、第3のアミノ位置(またはこの位置における、他の(d)-アミノ酸であり、R3により形成される)を含み、この場合、第3のアミノ酸位置におけるアミノ酸は、セリンまたはトレオニンであってもよい。
【0030】
一部の実施形態において、FAPα切断型リンカーは、FAPαによる切断についてのkcat/Kmが、プロリルエンドペプチダーゼによる切断についてのkcat/Kmの、少なくとも10倍、少なくとも100倍、1000倍、5000倍、または10,000倍である(EC3.4.21.26;PREP)。
【0031】
一部の実施形態において、治療用部分は、細胞傷害剤、すなわち、治療用コンジュゲートから放出されると、治療用コンジュゲートが投与される濃度において、標的細胞の細胞死を引き起こす細胞傷害剤である。
【0032】
一部の実施形態において、治療用部分は、細胞増殖抑制剤、すなわち、治療用コンジュゲートから放出されると、治療用コンジュゲートが投与される濃度において、標的細胞の有糸分裂の停止または休止を引き起こす細胞増殖抑制剤である。
【0033】
一部の実施形態において、治療用部分は、エピジェネティック剤、すなわち、治療用コンジュゲートから放出されると、治療用コンジュゲートが投与される濃度において、標的細胞のエピジェネティック変化を引き起こし、例えば、細胞の、別の細胞表現型への分化(または脱分化)を結果としてもたらしうる、エピジェネティック剤である。
【0034】
一部の実施形態において、治療用部分は、化学療法薬部分である。例えば、化学療法薬部分は、タキサン、白金ベースの薬剤、またはプロテアソーム阻害剤でありうる。他の化学療法薬部分も、本開示に包含される。
【0035】
一部の実施形態において、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルからなる群から選択される。一部の実施形態において、タキサンは、パクリタキセルである。他のタキサンも、本開示に包含される。
【0036】
一部の実施形態において、白金ベースの薬剤は、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、ピコプラチン、フェナントリプラチン、トリプラチン、スピロプラチン、サトラプラチン、イプロプラチン、およびサトラプラチンからなる群から選択される。一部の実施形態において、白金ベースの薬剤は、オキサリプラチンである。他の白金ベースの薬剤も、本開示に包含される。
【0037】
一部の実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、ラクタシスチン、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガレート、マリゾミブ(サリノスポラミドA)、オプロゾミブ(ONX-0912)、デランゾミブ(CEP-18770)、エポキソミシン、およびベータ-ヒドロキシベータ-メチルブチレートからなる群から選択される。他のプロテアソーム阻害剤も、本開示に包含される。
【0038】
一部の実施形態において、治療用部分は、インビボにおいて、自然免疫応答(獲得免疫応答と対比される)を誘導する。一部の実施形態において、治療用部分は、急性毒性である。急性毒性は、例えば、短時間(例えば、24時間未満)内の、単回曝露または複数回曝露から生じる、薬物の有害作用について記載する。急性毒性の有害作用は、典型的に、薬物の投与後、14日間以内に生じる。一部の実施形態において、治療用部分は、TLRアゴニスト、RIG-Iアゴニスト、iDASH阻害剤、およびSTINGアゴニストから選択される。一部の実施形態において、治療用部分は、Val-boroPro(タラボスタット)である。
【0039】
一部の実施形態において、治療用部分は、治療用コンジュゲートから放出されると、細胞表面受容体の細胞外リガンド結合性ドメインに結合することが可能なリガンドなどの、受容体に対するリガンドを含む。例示的な受容体リガンドは、ソマトスタチン、コレシストキニン2(CCK2)、葉酸、ボムベシン、ガストリン放出ペプチド、ニューロテンシン、P物質、グルカゴン様ペプチド1、神経ペプチドY、およびこれらのリガンドの類似体を含む。受容体リガンドは、それ自体、薬理学的活性を有するか、または、コンジュゲートされた薬物部分、毒素、または放射性同位元素をデリバリーするのに使用されうる。
【0040】
一部の実施形態において、治療用部分は、一般式:
【化4】
[式中、RBMは、受容体結合性部分であり、Zは、細胞毒性部分、細胞増殖抑制性部分、もしくはエピジェネティック部分、または放射性同位元素含有部分であり、pは、0(Zは、存在しない)、または1~8の整数である]により表される。一部の実施形態において、pは、1である。
【0041】
一部の実施形態において、治療用部分は、一般式:
【化5】
[式中、RBMは、受容体結合性部分であり、Zは、細胞毒性部分、細胞増殖抑制性部分、もしくはエピジェネティック部分、または放射性同位元素含有部分であり、Lは、結合、または切断型リンカーもしくは非切断型リンカーである]により表される。例えば、Lは、Zが、受容体結合性部分であるRBMに依存する、細胞への結合を介する、-RBM-L-Z部分の内部化時に、細胞内に放出されるように、酸不安定性または酵素感受性(カテプシン切断部位を含むなど)であるリンカーでありうる。
【0042】
一部の実施形態において、治療用部分は、遊離治療用部分の循環血清半減期の、少なくとも5、10、25、50、100、なおまたは1000倍である循環血清半減期を有する。治療用部分の、循環血清半減期は、治療用部分の、血清中濃度が、50%低減されるために要する時間として規定される、薬物動態パラメータである。
【0043】
一部の実施形態において、治療用部分は、少なくとも10、25、50、100、200、または300時間である循環血清半減期を有する。
【0044】
一部の実施形態において、少なくとも10、24、48、72、96、または120時間にわたり、治療用コンジュゲートは、同じ期間にわたる、全身循環中の遊離治療用部分の、少なくとも2、5、10、20、50、75、または100倍の濃度である、標的FAPα発現組織内の遊離治療用部分濃度をもたらす。例えば、遊離治療用部分濃度の、このような差違は、対象の、FAPα発現腫瘍と、血清との間において生じうる。
【0045】
一部の実施形態において、FAPα+腫瘍を有する対象へと投与される場合に、治療用コンジュゲートは、少なくとも10、24、48、72、96、または120時間の期間にわたり、遊離治療用部分の抗腫瘍活性についてのEC50であるか、またはこれを上回る、遊離治療用部分の腫瘍内濃度をもたらす。
【0046】
一部の実施形態において、FAPα+腫瘍を有する対象へと投与される場合に、治療用コンジュゲートは、抗腫瘍活性について、少なくとも2、5、10、25、50、100、または500の治療指数を有する。治療指数(TI)は、薬物の相対的安全性についての、定量的尺度である。TIとは、治療効果を引き起こす治療剤の量の、毒性を引き起こす量(TIはまた、治療比とも称される)との比較である。
【0047】
一部の実施形態において、FAPα+腫瘍を有する対象へと投与される場合に、治療用コンジュゲートは、抗腫瘍活性について、遊離治療用部分の治療指数の、少なくとも2、10、50、100、250、500、1000、5000、または10,000倍である治療指数を有する。
【0048】
一部の実施形態において、遊離治療用部分に比べて、等用量ベースにおいて比較された場合に、より大きな百分率の遊離治療用部分が、FAPαを発現する標的組織内に局在し、遊離治療用部分に比べて、等用量の治療用コンジュゲートで、他の組織(血液、肝臓、または心臓など)と比べた、標的組織内に局在する遊離治療用部分の比は、少なくとも2、5、10、100、または1000倍であってもよい。
【0049】
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートの最大耐量は、遊離治療用部分の最大耐量の、少なくとも2、5、10、100、または1000倍である。最大耐量は、具体的な期間において、許容不可能な副作用または過剰な毒性を引き起こさない、治療用部分(例えば、薬物)の最高用量である。最大耐量は、臨床試験において、許容可能な副作用が見出される最高用量まで、異なる被験者群に対する用量を増大させて調べることにより決定されうる。
【0050】
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートの細胞透過率は、遊離治療用部分の細胞透過率より、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、または99.9%小さい。
【0051】
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートの循環半減期は、遊離治療用部分の循環半減期より、少なくとも25%、50%、75%、100%、150%、200%、500%、750%、または1000%長い。
【0052】
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、腫瘍細胞に対して、遊離治療用部分と比べて、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%、または99.99%未満の、細胞傷害活性または細胞溶解活性を有する。
【0053】
本明細書の一部の態様において、前出の段落のうちのいずれか1つによる治療用コンジュゲートと、薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物もまた提示される。
【0054】
本明細書の一部の態様において、対象へと、前出の段落のうちのいずれか1つによる治療用コンジュゲートまたは組成物を投与することを含み、対象が、罹患組織を有し、がんを有してもよい方法もさらに提示される。
【0055】
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートまたは組成物は、対象の腫瘍微小環境内における、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出を、対照の非処置対象と比べて、少なくとも0.5倍、または少なくとも1倍増大させるのに有効な量において投与される。一部の実施形態において、治療用コンジュゲートまたは組成物は、対象の腫瘍微小環境内における、LDHの放出を、約0.5倍、約0.6倍、約0.7倍、約0.8倍、約0.9倍、約1倍、約1.5倍、または約2倍増大させるのに有効な量において投与される。一部の実施形態において、治療用コンジュゲートまたは組成物は、対象の腫瘍微小環境内における、LDHの放出を、約0.5倍~約1.5倍、約0.5倍~約2倍、または約1倍~約2倍増大させるのに有効な量において投与される。
【0056】
一部の実施形態において、腫瘍であってもよい罹患組織の容量は、治療用コンジュゲートまたは組成物の投与の約2~3週間後において、少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも70%低減される。一部の実施形態において、腫瘍であってもよい罹患組織の容量は、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、または約80%低減される。一部の実施形態において、腫瘍であってもよい罹患組織の容量は、約50%~約60%、または約50%~約70%、または約50%~約80%低減される。
【0057】
一部の態様は、がんであってもよい罹患組織を処置するための方法における使用のための、前出の段落のうちのいずれか1つによる治療用コンジュゲートまたは組成物を提供する。
【0058】
他の態様は、がんであってもよい罹患組織を処置するための医薬の製造における、前出の段落のうちのいずれか1つによる治療用コンジュゲートの使用を提供する。
【0059】
本開示の一部の態様は、FAPα切断型リンカーを介して、半減期延長部分へと連結された、化学療法剤である治療用部分を含む、治療用コンジュゲートを提示するが、この場合、化学療法剤部分は、インビボにおける、自然免疫応答を誘導し、かつ/または急性毒性であり、インビボにおける、治療用コンジュゲートの循環血清半減期は、少なくとも48時間であり、治療用コンジュゲートは、細胞の細胞表面タンパク質に、1×10-8Mまたはこれ未満のKで結合する細胞結合性部分を含まない。一部の実施形態において、化学療法剤部分は、TLRアゴニスト、RIG-Iアゴニスト、iDASH阻害剤、およびSTINGアゴニストから選択される。一部の実施形態において、化学療法剤部分は、Val-boroPro(タラボスタット)である。一部の実施形態において、半減期延長部分は、抗体Fcドメインである。一部の実施形態において、半減期延長部分は、HSAである。一部の実施形態において、半減期延長部分は、ステフィンポリペプチド[すなわち、AFFIMER(登録商標)ポリペプチド]の、HSA結合性組換え操作変異体であり、配列番号110~132のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、本明細書において記載される、半減期延長型治療用コンジュゲートについての実施形態を例示する概略図である。略図において、「X」は、血清半減期(half-like)延長部分、この場合、システイン残基のチオール側鎖を伴う、マレイミドコンジュゲートを介して、FAPαの基質配列、FAPによるリンカーの切断時に放出される薬物部分(表示のI-DASH阻害剤である、バリンボロプロリン)を含むリンカーへと連結されたタンパク質を表す。
図2図2は、結腸癌についてのマウスモデルにおける腫瘍容量により指し示される、本明細書において記載される治療用コンジュゲートの例の抗腫瘍活性を示すグラフである。「SQT-Gly V.2-6325」群は、細胞ターゲティング部分を伴わない、治療用コンジュゲートである。「AVA04-182」群は、細胞ターゲティング部分を含む。
図3図3は、表示の投与量レベルにおける、治療用コンジュゲートの投与の後の、腫瘍内および血清中における、遊離Val-boroPro(タラボスタット)の量を示すグラフである。
図4図4A~4Bは、マウスおよびラットにおいて、単独で投与されたタラボスタット(図4A)、および本明細書において記載される治療用コンジュゲートと共に投与されたタラボスタット(図4B)のEC50を示すグラフである。
図5図5A~5Dは、ビヒクル(図5A)、細胞結合性部分を含むコンジュゲート(図5B)、および本明細書において記載される治療用コンジュゲート(細胞結合性部分を伴わない、図5Bのコンジュゲート)(図5C)を投与された後の、マウスにおける、腫瘍容量および体重の変化パーセントを描示するグラフである。図5Cにおけるマウスについての、体重の変化パーセントもまた、測定した(図5D)。
図6図6Aは、タンパク質のリシン残基へのコンジュゲーションのためのNHS基を含む、例示的FAP活性化I-DASH阻害剤である、「6325」についての構造である。図6Bは、タンパク質のリシン残基へのコンジュゲーションのためのマレイミド基を含む、例示的FAP活性化I-DASH阻害剤である、「6323」についての構造である。図6Cは、タンパク質のリシン残基へのコンジュゲーションのためのマレイミド基を含む、例示的四分枝状FAP活性化I-DASH阻害剤である、「6501」についての構造である。
図7図7は、ビヒクル(対照)、MSA-6325(6325とコンジュゲートされた、マウス血清アルブミン)、およびPEG-6325(20KDaの4アーム型機能的PEGである、SUNBRIGHT PTE-200 PAと反応させた6325)のいずれかを投与された、CT26-mFAP+マウスにおける、時間経過にわたる腫瘍容量の変化を示すグラフである。
図8図8A~8Bは、6325とコンジュゲートされたヒトFc断片(図8A)、または6325とコンジュゲートされた、完全ヒトIgG抗体(図8B)を投与された、CT26-mFAP+マウスにおける、時間経過にわたる個々の動物の腫瘍容量の増殖曲線を示すグラフである。
図9図9は、FAP活性化ソマトスタチン類似体(オクトレオチド)ベースのコンジュゲート[式中、Xは、半減期延長部分であり、L1は、スペーサーまたは結合であり、X1およびX2は、独立に、OまたはSであり、R2は、水素または(C1~C6)アルキルまたは水素であり、R3は、水素、または分枝鎖状低級アルキルもしくは直鎖状低級アルキル、例えば、メチルなどの低級アルキルであり、R4は、ヒドロキシメチル(例えば、セリンについて)など、分枝鎖状低級アルコキシまたは直鎖状低級アルコキシ、または1-ヒドロキシエチル(例えば、トレオニンについて)(一実施形態において、R4は、ヒドロキシメチルである)であり、L3は、結合、または切断型リンカーもしくは非切断型リンカーであり、Zは、細胞毒性部分、細胞増殖抑制性部分、もしくはエピジェネティック部分、または放射性同位元素含有部分である]についての、例示的一般構造を例示する。
図10図10は、FAP活性化葉酸ベースのコンジュゲート[式中、Xは、半減期延長部分であり、L1は、スペーサーまたは結合であり、X1およびX2は、独立に、OまたはSであり、R2は、水素または(C1~C6)アルキルまたは水素であり、R3は、水素、または分枝鎖状低級アルキルもしくは直鎖状低級アルキル、例えば、メチルなどの低級アルキルであり、R4は、ヒドロキシメチル(例えば、セリンについて)など、分枝鎖状低級アルコキシまたは直鎖状低級アルコキシ、または1-ヒドロキシエチル(例えば、トレオニンについて)(一実施形態において、R4は、ヒドロキシメチルである)であり、X3は、OまたはN(H)であり、L3は、結合、または切断型リンカーもしくは非切断型リンカーであり、Zは、細胞毒性部分、細胞増殖抑制性部分、もしくはエピジェネティック部分、または放射性同位元素含有部分である]についての、例示的一般構造を例示する。
図11図11は、FAP基質認識配列(タンパク質コンジュゲーションのためのリンカーを示す)、葉酸ターゲティングリガンド、ペプチドスペーサー、自壊性ジスルフィドリンカー、および細胞毒性薬物である、デスアセチルビンブラスチンモノヒドラジン(DAVLBH)から構成される、FAP活性化葉酸ベースのSMDCビンタフォリドについての例示である。
図12図12は、FAP基質認識配列(タンパク質コンジュゲーションのためのリンカーを示す)、葉酸ターゲティング部分、自壊性ジスルフィドリンカー、および親水性PEG化ジペプチドスペーサー(可溶化スペーサー)、および化学療法薬物Taxolの誘導体である、タキソイドSB-T-1214(Seitz et al. Bioorg. Med. Chem., 2015, 23, 2187-2194を参照されたい)を組み込む、FAP活性化葉酸-タキソイドコンジュゲートについての例示である。
図13図13A~13Bは、HDAC阻害剤である、FAP活性化葉酸-ドキソルビシン(図13A)およびチオレート(thioloate)(図13B)の構造を例示する。
図14図14は、FAP基質認識配列(タンパク質コンジュゲーションのためのリンカーを示す)、葉酸ターゲティング部分、自壊性ジスルフィドリンカー、および抗チューブリン細胞毒性マイタンシノイド薬物部分であるDM4を組み込む、FAP活性化葉酸-細胞毒性(cytotix)マイタンシノイドコンジュゲートを示す。
図15図15は、FAP活性化葉酸-MMAEの構造を例示する。
図16図16は、カンプトテシンの構造を例示する。
図17図17は、rhFAPαの存在下(白色バー)または非存在下(グレーの塗りつぶしバー)において、FAP活性化I-DASH阻害剤である、6325の多様なバージョン(Hu IgG1 Fc-6325、Hu IgG1-6325、MSA-6325、SQT-Gly V.2-6325、SQT-Gly CF-6325、またはSQT-Gly CG-6325)のうちの1つと共に、24時間にわたり培養されたJ774A.1マウスマクロファージ系細胞から、培養物上清へと放出された、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH;ピロトーシスのマーカー)の増大倍数を示すグラフを含む。実験の各セットについて、非処置対照を使用し、Val-boroPro(VbP)による対照実験もまた実施した(データは示さない)。全ての値は、平均値±SEMを表す。「FAPαあり」と対比した「FAPαなし」についての統計学的解析は、GraphPad Prismにおいて、多重T検定を介して実施した(P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。
図18図18A~18Bは、Fc上における遊離SHの、マレイミドリンカーによる複合プロドラッグである、6323(図18A)および6501(図18B)に対する比の測定により決定される、チオール(SH)基のコンジュゲーションを示すグラフである。
図19図19A~19Bは、FAPα特異性阻害剤である、5057の存在下または非存在下の、CT26-mFAP腫瘍保有マウスの血清試料中(図19A)および腫瘍試料中(図19B)において、Hu IgG1 Fc-6325から放出されたVbPの薬物動態を示すグラフである。各時点は、群1つ当たりのマウス3匹を含む。
図20図20A~20Bは、同系マウス結腸がんモデル(CT26-mFAPマウス)における、時間経過にわたる腫瘍容量として測定された、SQT-Glyコンジュゲート(図20A)、およびHu IgG1 Fcコンジュゲート(図20B)の有効性を示すグラフである。
図21図21は、マウス結腸がんモデル(CT26-mFAPマウス)の、マウス血清中および腫瘍内において、異なるFAP活性化プロドラッグから放出されたVbPの薬物動態および組織分布を示すグラフを含む。測定は、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)を使用して行った。各投与群は、1、4、および24時間後だけからなった、24μgの3892を例外として、1、4、6、24、および48時間後の回収時点(群1つ当たりのn=3)を表す、5群ずつのサブセットからなった。
図22図22A~22Bは、マウス結腸がんモデル(CT26-mFAPマウス)の、マウス血清中および腫瘍内において、SQT-Gly V.2コンジュゲート(図22A)、およびIgG Fcコンジュゲート(図22B)から放出されたVbPの薬物動態および組織分布を示すグラフを含む。測定は、LC-MSを使用して行った。各投与群は、1、4、6、24、および48時間後の回収時点(群1つ当たりのn=3)を表す、5群ずつのサブセットからなった。
図23図23は、非腫瘍保有BALB/cマウスにおける、FAP活性化プロドラッグに対する、血清サイトカインであるG-CSFの応答レベルを描示するグラフである。ビヒクル(PBS)、42CQ-6501、および42CQ-6501+MSAの、マウス1匹当たり200ugにおける投与後の、マウス血清中における、G-CSFのレベルを示す。
図24図24A~24Bは、マレイミドリンカーによる複合プロドラッグ(6323)の、ステフィンポリペプチドの組換え操作変異体(AFFIMER(登録商標))-Fcタンパク質の、ヒンジ領域のシステイン残基へのコンジュゲーションを示すグラフである。コンジュゲーションは、還元SH 1モル当たりの6323 0、10、20、および40モルの反応物比(SQTGlyCF 1個当たりのSH 4個)により実施した。遊離SH基対反応物比の変化を、図24Aに示す。時限コンジュゲーション反応は、SH基 1個当たりの6323 40個の反応物比により行い、6323を添加した、0、5、10、15および20分後に、反応を停止させた。SH 1個当たりの6323 40個の反応物比による、6323の、SQTGlyCFへのコンジュゲーションの反応速度を、図24Bに示す。
図25図25A~25Bは、CT26-mFAP腫瘍保有マウスにおいて、42CQ-6501の投与後に放出されたVbPの薬物動態を示すグラフである。各投与群は、1、4、6、24、および48時間後の回収時点を表す、5群ずつのサブセット(群1つ当たりのn=3)からなった。VbPは、血清試料中(図25A)および腫瘍試料中(図25B)において、LC-MSにより測定した。
図26図26A~26Bは、同系マウス結腸がんモデル(CT26-mFAPマウス)における、時間経過にわたる腫瘍容量として測定された、42CQ-6323コンジュゲート(図26A)、および42CQ-6501コンジュゲート(図26B)±MSAの有効性を示すグラフである。
図27図27A~27Bは、野生型マウスおよびFAPαノックアウトマウス(群1つ当たりのn=3)において、42CQ-6323コンジュゲート(図27A)、および42CQ-6501コンジュゲート(図27B)の投与後に放出されたVbPの薬物動態を示すグラフである。
図28図28は、VbPの例示的プロドラッグである、「3892」についての構造である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本明細書において提示されるデータは、予測外に、本開示の治療用コンジュゲートが、細胞結合性(例えば、細胞ターゲティング)部分を伴わずに全身デリバリーされうるが、それでもなお、直接(例えば、同じ投与経路により)デリバリーされる治療用部分の治療指数を上回る治療指数を維持しつつ、治療有効量の治療用部分(例えば、薬物)を標的罹患組織へとデリバリーすることが可能であることを裏付ける。本明細書において記載される治療用コンジュゲートは、細胞結合性部分ではなく、組み合わされると、腫瘍微小環境(またはFAPαを発現する、他の標的組織)内における、局所性蓄積および治療用部分の放出を可能とする一方、FAPαを、標的組織より低度のレベルにおいて発現する非標的組織の曝露を低減する半減期延長部分と、FAPα切断型リンカーとを含む。したがって、本明細書において提示される治療用コンジュゲートは、(1)FAPαによるプロドラッグの局在化切断、および循環血清半減期の延長に起因する、標的組織内において放出された治療用部分の、高百分率の最大有効濃度に到達する、優れた有効性および/または能力、ならびに(2)親治療用部分と比べて、低度の全身Cmax濃度、および/または低減された全身毒性において投与される可能性に起因する、治療指数(TI)の改善のうちの1つまたは複数を裏付ける。
【0062】
本明細書において、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPα)切断型リンカーを介して、半減期延長部分へと連結された治療用部分を含む、治療用コンジュゲートが記載される。これらのコンジュゲートの、各構成要素については、下記において、詳細に記載される。
【0063】
半減期延長部分
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、半減期延長部分を含む。半減期延長部分は、インビボにおける、治療用部分の、循環血清半減期を延長する。循環血清半減期とは、治療用部分の、血清中の濃度または量が、半量(50%)に低減されるのに要する時間の長さである。半減期は、対象血清中の、治療用部分濃度を、時間経過にわたり測定することにより、実験的に決定されうる。半減期は、式:0.693×(Vd/CL)[式中、Vdは、分布容量を表し、CLは、クリアランスを表す]を使用して計算されうる。分布容量とは、血漿中において観察される、同じ濃度の治療用部分総量を含有するのに必要とされる、理論容量(例えば、体内の治療用部分量の、血中、血漿中、および間質液中の遊離形態において測定される、治療用部分濃度に対する比)である。クリアランスとは、単位時間当たりにおいて、治療用部分が、完全に除去される、血漿の容量である。半減期はまた、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、蛍光アッセイ、ラジオアッセイ、ラジオイムノアッセイ、および基礎的質量分析アッセイを使用しても決定されうる。
【0064】
半減期延長部分は、循環血清分子の半減期を、半減期延長部分へと連結されていない、循環血清分子の半減期と比べて、少なくとも2倍延長しうる。一部の実施形態において、半減期延長部分は、循環血清分子の半減期を、半減期延長部分へと連結されていない、循環血清分子の半減期と比べて、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、または少なくとも30倍延長する。一部の実施形態において、半減期延長部分は、循環血清分子の半減期を、半減期延長部分へと連結されていない、循環血清分子の半減期と比べて、2倍~5倍、2倍~10倍、3倍~5倍、3倍~10倍、15倍~5倍、4倍~10倍、または5倍~10倍延長する。
【0065】
一部の実施形態において、半減期延長部分は、例えば、インビボ投与の少なくとも1週間後において、治療用部分の循環血清半減期を、半減期延長部分へと連結されていない治療用部分の循環血清半減期と比べて、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも15時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、または少なくとも96時間延長する。
【0066】
一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも10時間の、循環血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも24時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも48時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも72時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも96時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも120時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも144時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも168時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも192時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも216時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも240時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも264時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも288時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも312時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも336時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、少なくとも360時間の、血清半減期を有する。一部の実施形態において、治療用部分は、ヒト対象において、24~360時間、48~360時間、72~360時間、96~360時間、または120~360時間の、血清半減期を有する。
【0067】
血清タンパク質および抗体Fcドメインは、本明細書において提示される通り、半減期延長部分として使用されうる、2つの主要なタンパク質の非限定例である。Fcコンジュゲートおよび血清タンパク質コンジュゲートのいずれも、治療用部分のサイズの増大により、半減期の延長を達成するだけではなく、いずれも、体内の天然の再循環機構:新生児Fc受容体である、FcRnもまた利用する。これらのタンパク質の、FcRnへのpH依存性結合は、エンドソーム内における、治療用コンジュゲートの分解を阻止する。これらのタンパク質を使用するコンジュゲートは、3~16日間の範囲内の半減期を有しうる。抗体Fcドメインまたは血清タンパク質を含むコンジュゲートは、治療用部分の可溶性および安定性を改善しうる。
【0068】
血清タンパク質
一部の実施形態において、半減期延長部分は、血清タンパク質[例えば、ヒトの血液(例えば、血清)中の、タンパク質の天然に存在するバージョンまたは改変バージョン]を含む。血清タンパク質は、例えば、フィブロネクチン、トランスフェリン、またはアルブミンでありうる。
【0069】
一部の実施形態において、血清タンパク質は、フィブロネクチンである。フィブロネクチンは、インテグリンと呼ばれる膜貫通型受容体タンパク質に結合する、細胞外マトリックスの、高分子量(約440kDa)糖タンパク質である。フィブロネクチンは、C末端のジスルフィド結合対により連結された、2つのほぼ同一なポリペプチド鎖を含むタンパク質二量体として存在する。各フィブロネクチンサブユニットは、230~250kDaの分子量を有し、3種類のモジュール:I、II、およびIII型を含有する。3つのモジュールは、全て、2つのアンチパラレルβシートから構成される結果として、ベータサンドイッチをもたらすが、I型およびII型が、鎖内ジスルフィド結合により安定化させられるのに対し、III型モジュールは、ジスルフィド結合を含有しない。III型モジュールにおける、ジスルフィド結合の非存在は、加えられる力の存在下において、それらを、部分的にフォールディングさせずにおく。フィブロネクチンはまた、コラーゲン、フィブリン、およびヘパラン硫酸プロテオグリカン(例えば、シンデカン)など、他の細胞外マトリックスタンパク質にも結合する。フィブロネクチンは、ジスルフィド結合対により連結された、2つのほぼ同一な単量体からなるタンパク質二量体として存在する。フィブロネクチンタンパク質は、単一の遺伝子から産生されるが、そのプレ-mRNAの、代替的スプライシングは、いくつかのアイソフォームの創出をもたらす。
【0070】
一部の実施形態において、血清タンパク質は、トランスフェリンである。トランスフェリンは、脊椎動物において見出され、鉄(Fe)に結合する結果として、血漿を介する鉄の輸送を媒介する糖タンパク質である。トランスフェリンは、肝臓内において産生され、2つのFe3+原子に対する結合性部位を含有する。ヒトトランスフェリンは、TF遺伝子によりコードされ、76kDaの糖タンパク質として産生される。糖タンパク質であるトランスフェリンは、鉄に、緊密に結合するが、可逆的である。トランスフェリンに結合した鉄は、全体内鉄のうちの、0.1%(4mg)未満であるが、これは、代謝回転速度が最高度(24時間当たり25mg)である、死活的に最重要の鉄プールを形成する。トランスフェリンは、約80kDaの分子量を有し、2つの、特異的な、高アフィニティーの、Fe(III)結合性部位を含有する。トランスフェリンの、Fe(III)に対するアフィニティーは、極めて高度(pH7.4における会合定数は、1020M-1である)であるが、pHが中性を下回ると、徐々に低下する。トランスフェリンは、鉄への結合だけに限定されず、異なる金属イオンにもまた結合する。
【0071】
一部の実施形態において、血清タンパク質は、ヒト血清アルブミン(HSA)である。HSAは、ALB遺伝子によりコードされるタンパク質である。HSAは、約20日間の血清半減期を有する、585アミノ酸のポリペプチド(約67kDa)であり、血液の膠質浸透圧、血液pH、ならびに多数の内因性リガンドおよび外因性リガンドの、輸送および分布の維持の主因となる。HSAは、3つの構造的に相同なドメイン(ドメインI、II、およびIII)を有し、ほぼ完全に、アルファ-ヘリックスのコンフォメーションにあり、17のジスルフィド架橋により、高度に安定化させられている。代表的なHSA配列は、UniProtKB Primary受託番号P02768により提供されており、その他のヒトアイソフォームを含みうる。
【0072】
血清タンパク質結合性分子
一部の実施形態において、半減期延長部分は、ペプチド結合性ドメインまたはタンパク質結合性ドメインを介して、抗体(その抗原結合性部分を含む)などの血清タンパク質に、非共有結合的に結合するタンパク質など、血清タンパク質に結合する分子を含む。抗体の例は、Fab、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)、F(ab’)、Fd、Fv、ジスルフィド連結型Fv、dAb、またはsdAb(またはNANOBODY(登録商標))、CDR、scFv、(scFv)、di-scFv、bi-scFv、tascFv(タンデムscFv)、AVIBODY(例えば、ダイアボディー、トリアボディー、およびテトラボディー)、T細胞エンゲージャー(BiTE)、Fc、scFv-Fc、Fcab、mAb2、SMIP(small modular immunopharmaceutical)、Genmab/ユニボディーまたはデュオボディー、V-NARドメイン、IgNAR、ミニボディー、IgGACH2、DVD-Ig、プロボディー、イントラボディー、および多特異性抗体を含むがこれらに限定されない。他の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、US2005/0287153において提示されている。
【0073】
一部の実施形態において、血清タンパク質結合性分子は、アシル化ペプチド[例えば、Zorzi et al., Nature Communications vol 8:16092(2017)におけるアシル化ヘプタペプチド;リラグルチドのアシル基]など、血清アルブミンと会合する疎水性部分である。
【0074】
一部の実施形態において、血清タンパク質に結合する分子は、非抗体分子であり、その非限定例は、アフィボディー、AFFIMER(登録商標)ポリペプチド、アフィリン、アンチカリン、アトリマー、アビマー、DARPin、FN3土台(例えば、Adnectins、Centyrins)、フィノマー、Kunitzドメイン、ナノフィチン、プロネクチン、トリボディー、バイサイクリックペプチド、およびCysノットを含む。
【0075】
一部の実施形態において、HSAなどの血清タンパク質に結合する分子は、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドを含む。AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、ステフィンポリペプチドの組換え操作変異体である、高度に安定的な小型ポリペプチド(例えば、タンパク質)である。したがって、本明細書において、「AFFIMER(登録商標)ポリペプチド」という用語は、「ステフィンポリペプチドの組換え操作変異体」という用語と、互換的に使用されうる。ステフィンポリペプチドは、シスタチンスーパーファミリー(複数のシスタチン様配列を含有するタンパク質を包含するファミリー)内の、タンパク質の亜集団である。シスタチンファミリーの、ステフィン亜集団は、比較的小型(約100アミノ酸)の、単一ドメインタンパク質である。ステフィン亜集団は、公知の翻訳後修飾を受けず、ジスルフィド結合を欠くことから、これらが、広範囲にわたる細胞外環境および細胞内環境において、同一のフォールディングが可能であることを示唆する。ステフィンAは、98アミノ酸の、単量体、単鎖の、単一ドメインタンパク質である。ステフィンAの構造は、解明されており、ステフィンAの、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドへの、合理的突然変異を容易とする。シスタチンについて公知である、唯一の生体活性は、カテプシン活性の阻害であり、操作タンパク質の、生体活性の残存についての、悉皆的試験を可能としている。
【0076】
AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、全てが、モノクローナル抗体と同様に、高度のアフィニティーおよび特異性により、所望の標的タンパク質に結合するようにランダム化されうる、2つのペプチドループおよびN末端配列を提示する。ステフィンAタンパク質土台による、2つのペプチドの安定化は、ペプチドが取りうる、可能なコンフォメーションを制約することから、遊離ペプチドライブラリーと比較して、結合アフィニティーおよび特異性を増大させる。これらの、操作、非抗体結合性タンパク質は、異なる適用における、モノクローナル抗体の分子的認識特徴を模倣するようにデザインされる。ステフィンAポリペプチド配列の、他の部分に対する変異を実行される場合があり、このような変異は、例えば、安定性を増大する、ある温度範囲およびpH範囲にわたって、それらをロバストにするなど、これらのアフィニティー試薬の特性を改善する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、ヒトステフィンAなど、ステフィンAの野生型配列との、実質的な同一性を共有する、ステフィンAに由来する配列を含む。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、ヒトステフィンAに対応する配列に対する、少なくとも25%、35%、45%、55%、または60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する。例えば、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%の同一性を共有し、例えば、配列の変異が、所望の標的に結合する土台の能力に、有害な影響を及ぼさず、例えば、野生型ステフィンAにより保有されるが、本明細書において記載される、突然変異性変化において失われる生体機能などの生体機能を、回復させたり、発生させたりしないアミノ酸配列を有しうる。
【0077】
抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、溶媒にアクセス可能なループのうちの少なくとも1つが、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドが、HSAに選択的に結合し、一部の実施形態において、10-6Mまたはこれ未満のKにより結合することを可能とするアミノ酸配列を有する、野生型ステフィンAタンパク質に由来する、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドを含む。
【0078】
一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4~7.6において、1×10-9M~1×10-6MのKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4~7.6において、1×10-6Mまたはこれ未満のKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4~7.6において、1×10-7Mまたはこれ未満のKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4~7.6において、1×10-8Mまたはこれ未満のKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4~7.6において、1×10-9Mまたはこれ未満のKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4~7.6において、1×10-10Mまたはこれ未満のKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4~7.6において、1×10-11Mまたはこれ未満のKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4において、1×10-9M~1×10-6MのKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4において、1×10-6Mまたはこれ未満のKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4において、1×10-7Mまたはこれ未満のKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4において、1×10-8Mまたはこれ未満のKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4において、1×10-9Mまたはこれ未満のKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4において、1×10-10Mまたはこれ未満のKにより、HSAに結合する。一部の実施形態において、AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、pH7.4において、1×10-11Mまたはこれ未満のKにより、HSAに結合する。
【0079】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、骨格配列を有する野生型ヒトステフィンAタンパク質に由来し、この場合、ループ2[(Xaa)と名指される]およびループ4[(Xaa)と名指される]の一方または両方は、一般式(I):
FR1-(Xaa)n-FR2-(Xaa)m-FR3 (I)
[式中、FR1は、MIPGGLSEAK PATPEIQEIV DKVKPQLEEK TNETYGKLEA VQYKTQVLA(配列番号1)に対する、少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列であり;FR2は、GTNYYIKVRA GDNKYMHLKV FKSL(配列番号2)に対する、少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列であり;FR3は、EDLVLTGYQV DKNKDDELTG F(配列番号3)に対する、少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列であり;Xaaは、出現ごとに、個別に、アミノ酸であり;nは、3~20の整数であり、mは、3~20の整数である]を有するように、代替的ループ配列である、(Xaa)および(Xaa)により置きかえられる。
【0080】
一部の実施形態において、FR1は、配列番号1との、80%~98%、82%~98%、84%~98%、86%~98%、88%~98%、90%~98%、92%~98%、94%~98%、または96%~98%の相同性を有するポリペプチド配列である。一部の実施形態において、FR1は、配列番号1との、80%、82%、84%、86%、88%、90%、92%、94%、96%、または95%の相同性を有するポリペプチド配列である。一部の実施形態において、FR1は、配列番号1のポリペプチド配列である。一部の実施形態において、FR2は、配列番号2との、少なくとも80%~96%、84%~96%、88%~96%、または92%~96%の相同性を有するポリペプチド配列である。一部の実施形態において、FR2は、配列番号2との、少なくとも80%、84%、88%、92%、または96%の相同性を有するポリペプチド配列である。一部の実施形態において、FR2は、配列番号2との、少なくとも80%、85%、90%、95%、なおまたは98%の同一性を有するポリペプチド配列である。一部の実施形態において、FR2は、配列番号2のポリペプチド配列である。一部の実施形態において、FR3は、配列番号3との、少なくとも80%~95%、85%~95%、または90%~95%の相同性を有するポリペプチド配列である。一部の実施形態において、FR3は、配列番号3との、少なくとも80%、85%、90%、または95%の相同性を有するポリペプチド配列である。一部の実施形態において、FR3は、配列番号3のポリペプチド配列である。
【0081】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、一般式(II):
MIP-Xaa1-GLSEAKPATPEIQEIVDKVKPQLEEKTNETYGKLEAVQYKTQVLA-(Xaa)n-Xaa2-TNYYIKVRAGDNKYMHLKVF-Xaa3-Xaa4-Xaa5-(Xaa)m-Xaa6-D-Xaa7-VLTGYQVDKNKDDELTGF(配列番号4)(II)、
[式中、Xaaは、出現ごとに、個別に、アミノ酸であり;nは、3~20の整数であり、mは、3~20の整数であり;Xaa1は、Gly、Ala、Val、Arg、Lys、Asp、またはGluであり;Xaa2は、Gly、Ala、Val、Ser、またはThrであり;Xaa3は、Arg、Lys、Asn、Gln、Ser、Thrであり;Xaa4は、Gly、Ala、Val、Ser、またはThrであり;Xaa5は、Ala、Val、Ile、Leu、Gly、またはProであり;Xaa6は、Gly、Ala、Val、Asp、またはGluであり;Xaa7は、Ala、Val、Ile、Leu、Arg、またはLysである]で表されるアミノ酸配列を含む。
【0082】
一部の実施形態において、Xaa1は、Gly、Ala、Arg、またはLysである。一部の実施形態において、Xaa1は、GlyまたはArgである。一部の実施形態において、Xaa2は、Gly、Ala、Val、Ser、またはThrである。一部の実施形態において、Xaa2は、GlyまたはSerである。一部の実施形態において、Xaa3は、Arg、Lys、Asn、Gln、Ser、Thrである。一部の実施形態において、Xaa3は、Arg、Lys、Asn、またはGlnである。一部の実施形態において、Xaa3は、LysまたはAsnである。一部の実施形態において、Xaa4は、Gly、Ala、Val、Ser、またはThrである。一部の実施形態において、Xaa4は、GlyまたはSerである。一部の実施形態において、Xaa5は、Ala、Val、Ile、Leu、Gly、またはProである。一部の実施形態において、Xaa5は、Ile、Leu、またはProである。一部の実施形態において、Xaa5は、LeuまたはProである。一部の実施形態において、Xaa6は、Gly、Ala、Val、Asp、またはGluである。一部の実施形態において、Xaa6は、Ala、Val、Asp、またはGluである。一部の実施形態において、Xaa6は、AlaまたはGluである。一部の実施形態において、Xaa7は、Ala、Val、Ile、Leu、Arg、またはLysである。一部の実施形態において、Xaa7は、Ile、Leu、またはArgである。一部の実施形態において、Xaa7は、LeuまたはArgである。
【0083】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)は、一般式(III):
MIPRGLSEAKPATPEIQEIVDKVKPQLEEKTNETYGKLEAVQYKT
QVLA-(Xaa)n-STNYYIKVRAGDNKYMHLKVFNGP-(Xaa)m-ADR VLTGYQVDKNKDDELTGF(配列番号5)(III)、
[式中、Xaaは、出現ごとに、個別に、アミノ酸であり;nは、3~20の整数であり、mは、3~20の整数である]で表されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、nは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である。一部の実施形態において、nは、8~10、7~11、6~12、5~13、4~14、または3~15である。一部の実施形態において、mは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である。一部の実施形態において、mは、8~10、7~11、6~12、5~13、4~14、または3~15である。
【0084】
一部の実施形態において、(Xaa)は、式(IV):
aa1-aa2-aa3-aa4-aa5-aa6-aa7-aa8-aa9 (IV)
[式中、aa1は、中性の極性親水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa2は、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa3は、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa4は、中性の極性親水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa5は、正に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa6は、正に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa7は、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa8は、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa9は、中性の非極性親水性側鎖を伴うアミノ酸である]
により表される。
【0085】
一部の実施形態において、(Xaa)は、式(V):
aa1-aa2-aa3-aa4-aa5-aa6-aa7-aa8-aa9 (V)
[式中、aa1は、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa2は、正に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa3は、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa4は、正に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa5は、中性の極性親水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa6は、中性の極性親水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa7は、負に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa8は、正に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸であり;aa9は、中性の非極性親水性側鎖を伴うアミノ酸である]
により表される。
【0086】
中性の非極性親水性側鎖を伴うアミノ酸の例は、システイン(Cys)およびグリシン(Gly)を含む。一部の実施形態において、中性の非極性親水性側鎖を伴うアミノ酸は、Cysである。一部の実施形態において、中性の非極性親水性側鎖を伴うアミノ酸は、Glyである。
【0087】
中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸の例は、アラニン(Ala)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、トリプトファン(Trp)、およびバリン(Val)を含む。一部の実施形態において、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸は、Alaである。一部の実施形態において、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸は、Ileである。一部の実施形態において、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸は、Leuである。一部の実施形態において、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸は、Metである。一部の実施形態において、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸は、Pheである。一部の実施形態において、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸は、Proである。一部の実施形態において、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸は、Trpである。一部の実施形態において、中性の非極性疎水性側鎖を伴うアミノ酸は、Valである。
【0088】
中性の極性親水性側鎖を伴うアミノ酸の例は、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、およびチロシン(Tyr)を含む。一部の実施形態において、中性の極性親水性側鎖を伴うアミノ酸は、Asnである。一部の実施形態において、中性の極性親水性側鎖を伴うアミノ酸は、Glnである。一部の実施形態において、中性の極性親水性側鎖を伴うアミノ酸は、Serである。一部の実施形態において、中性の極性親水性側鎖を伴うアミノ酸は、Thrである。一部の実施形態において、中性の極性親水性側鎖を伴うアミノ酸は、Tyrである。
【0089】
正に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸の例は、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、およびリシン(Lys)を含む。一部の実施形態において、正に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸は、Argである。一部の実施形態において、正に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸は、Hisである。一部の実施形態において、正に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸は、Lysである。
【0090】
負に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸の例は、アスパラギン酸(Asp)、およびグルタミン酸(Glu)を含む。一部の実施形態において、負に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸は、Aspである。一部の実施形態において、負に帯電した極性親水性側鎖を伴うアミノ酸は、Gluである。
【0091】
一部の実施形態において、(Xaa)は、式(IV):
aa1-aa2-aa3-aa4-aa5-aa6-aa7-aa8-aa9 (IV)
[式中、aa1は、Asp、Gly、Asn、およびValから選択されるアミノ酸であり;aa2は、Trp、Tyr、His、およびPheから選択されるアミノ酸であり;aa3は、Trp、Tyr、Gly、Trp、およびPheから選択されるアミノ酸であり;aa4は、Gln、Ala、およびProから選択されるアミノ酸であり;aa5は、Ala、Gln、Glu、Arg、およびSerから選択されるアミノ酸であり;aa6は、Lys、Arg、およびTyrから選択されるアミノ酸であり;aa7は、TrpおよびGlnから選択されるアミノ酸であり;aa8は、ProおよびHisから選択されるアミノ酸であり;かつ/またはaa9は、His、Gly、およびGlnから選択されるアミノ酸である]により表される。一部の実施形態において、aa1は、Aspである。一部の実施形態において、aa1は、Glyである。一部の実施形態において、aa1は、Asnである。一部の実施形態において、aa2は、Trpである。一部の実施形態において、aa2は、Tyrである。一部の実施形態において、aa2は、Hisである。一部の実施形態において、aa2は、Pheである。一部の実施形態において、aa3は、Trpである。一部の実施形態において、aa3は、Tyrである。一部の実施形態において、aa3は、Glyである。一部の実施形態において、aa3は、Trpである。一部の実施形態において、aa3は、Pheである。一部の実施形態において、aa4は、Glnである。一部の実施形態において、aa4は、Alaである。一部の実施形態において、aa4は、Proである。一部の実施形態において、aa5は、Alaである。一部の実施形態において、aa5は、Glnである。一部の実施形態において、aa5は、Gluである。一部の実施形態において、aa5は、Argである。一部の実施形態において、aa5は、Serである。一部の実施形態において、aa6は、Lysである。一部の実施形態において、aa6は、Argである。一部の実施形態において、aa6は、Tyrである。一部の実施形態において、aa7は、Trpである。一部の実施形態において、aa7は、Glnである。一部の実施形態において、aa8は、Proである。一部の実施形態において、aa8は、Hisである。一部の実施形態において、aa9は、Hisである。一部の実施形態において、aa9は、Glyである。一部の実施形態において、aa9は、Glnである。
【0092】
一部の実施形態において、(Xaa)は、式(IV):
aa1-aa2-aa3-aa4-aa5-aa6-aa7-aa8-aa9 (IV)
[式中、aa1は、Tyr、Phe、Trp、およびAsnから選択されるアミノ酸であり;aa2は、Lys、Pro、His、Ala、およびThrから選択されるアミノ酸であり;aa3は、Val、Asn、Gly、Gln、Ala、およびPheから選択されるアミノ酸であり;aa4は、His、Thr、Lys、Trp、Lys、Val、およびArgから選択されるアミノ酸であり;aa5は、Gln、Ser、Gly、Pro、およびAsnから選択されるアミノ酸であり;aa6は、Ser、Tyr、Glu、Leu、Lys、およびThrから選択されるアミノ酸であり;aa7は、Ser、Asp、Val、およびLysから選択されるアミノ酸であり;aa8は、Gly、Leu、Ser、Pro、His、Asp、およびArgから選択されるアミノ酸であり;かつ/またはaa9は、Gly、Gln、Glu、およびAlaから選択されるアミノ酸である]により表される。一部の実施形態において、aa1は、Tyrである。一部の実施形態において、aa1は、Pheである。一部の実施形態において、aa1は、Trpである。一部の実施形態において、aa1は、Asnである。一部の実施形態において、aa2は、Lysである。一部の実施形態において、aa2は、Proである。一部の実施形態において、aa2は、Hisである。一部の実施形態において、aa2は、Alaである。一部の実施形態において、aa2は、Thrである。一部の実施形態において、aa3は、Valである。一部の実施形態において、aa3は、Asnである。一部の実施形態において、aa3は、Glyである。一部の実施形態において、aa3は、Glnである。一部の実施形態において、aa3は、Alaである。一部の実施形態において、aa3は、Pheである。一部の実施形態において、aa4は、Hisである。一部の実施形態において、aa4は、Thrである。一部の実施形態において、aa4は、Lysである。一部の実施形態において、aa4は、Trpである。一部の実施形態において、aa4は、Lysである。一部の実施形態において、aa4は、Valである。一部の実施形態において、aa4は、Argである。一部の実施形態において、aa5は、Glnである。一部の実施形態において、aa5は、Serである。一部の実施形態において、aa5は、Glyである。一部の実施形態において、aa5は、Proである。一部の実施形態において、aa5は、Asnである。一部の実施形態において、aa6は、Serである。一部の実施形態において、aa6は、Tyrである。一部の実施形態において、aa6は、Gluである。一部の実施形態において、aa6は、Leuである。一部の実施形態において、aa6は、Lysである。一部の実施形態において、aa6は、Thrである。一部の実施形態において、aa7は、Serである。一部の実施形態において、aa7は、Aspである。一部の実施形態において、aa7は、Valである。一部の実施形態において、aa7は、Lysである。一部の実施形態において、aa8は、Glyである。一部の実施形態において、aa8は、Leuである。一部の実施形態において、aa8は、Serである。一部の実施形態において、aa8は、Proである。一部の実施形態において、aa8は、Hisである。一部の実施形態において、aa8は、Aspである。一部の実施形態において、aa8は、Argである。一部の実施形態において、aa9は、Glyである。一部の実施形態において、aa9は、Glnである。一部の実施形態において、aa9は、Gluである。一部の実施形態において、aa9は、Alaである。
【0093】
一部の実施形態において、(Xaa)は、式(V):
Asn-aa1-aa2-Gln-Gln-Arg-Arg-Trp-Pro-Gly (V)(配列番号140)
[式中、aa1は、TrpおよびPheから選択されるアミノ酸であり;aa2は、TyrおよびPheから選択されるアミノ酸である]により表される。一部の実施形態において、aa1は、Trpである。一部の実施形態において、aa1は、Pheである。一部の実施形態において、aa2は、Tyrである。一部の実施形態において、aa2は、Pheである。
【0094】
一部の実施形態において、(Xaa)は、式(VI):
aa1-aa2-Trp-aa3-aa4-Lys-Trp-Pro-aa5 (VI)(配列番号141)
[式中、aa1は、AspおよびGlyから選択されるアミノ酸であり;aa2は、Trp、Tyr、およびPheから選択されるアミノ酸であり;aa3は、GlnおよびAlaから選択されるアミノ酸であり;aa4は、AlaおよびSerから選択されるアミノ酸であり;aa5は、HisおよびGlyから選択されるアミノ酸である]により表される。一部の実施形態において、aa1は、Aspである。一部の実施形態において、aa1は、Glyである。一部の実施形態において、aa2は、Trpである。一部の実施形態において、aa2は、Tyrである。一部の実施形態において、aa2は、Pheである。一部の実施形態において、aa3は、Glnである。一部の実施形態において、aa3は、Alaである。一部の実施形態において、aa4は、Alaである。一部の実施形態において、aa4は、Serである。一部の実施形態において、aa5は、Hisである。一部の実施形態において、aa5は、Glyである。
【0095】
一部の実施形態において、(Xaa)は、式(VII):
aa1-aa2-aa3-aa4-aa5-aa6-Trp-Pro-Gly (VII)
[式中、aa1は、GlyおよびAsnから選択されるアミノ酸であり;aa2は、Tyr、Phe、Trp、およびHisから選択されるアミノ酸であり;aa3は、Trp、Tyr、およびPheから選択されるアミノ酸であり;aa4は、AlaおよびGlnから選択されるアミノ酸であり;aa5は、Ala、Ser、Gln、およびArgから選択されるアミノ酸であり;aa6は、Lys、Arg、およびTyrから選択されるアミノ酸である]により表される。一部の実施形態において、aa1は、Glyである。一部の実施形態において、aa1は、Asnである。一部の実施形態において、aa2は、Tyrである。一部の実施形態において、aa2は、Pheである。一部の実施形態において、aa2は、Trpである。一部の実施形態において、aa2は、Hisである。一部の実施形態において、aa3は、Trpである。一部の実施形態において、aa3は、Tyrである。一部の実施形態において、aa3は、Pheである。一部の実施形態において、aa4は、Alaである。一部の実施形態において、aa4は、Glnである。一部の実施形態において、aa5は、Alaである。一部の実施形態において、aa5は、Serである。一部の実施形態において、aa5は、Glnである。一部の実施形態において、aa5は、Argである。一部の実施形態において、aa6は、Lysである。一部の実施形態において、aa6は、Argである。一部の実施形態において、aa6は、Tyrである。
【0096】
一部の実施形態において、(Xaa)は、式(IX):
Gly-aa1-aa2-Ala-aa3-aa4-Trp-Pro-Gly (IX)(配列番号142)
[式中、aa1は、Tyr、Phe、およびHisから選択されるアミノ酸であり;aa2は、TrpおよびTyrから選択されるアミノ酸であり;aa3は、Ala、Ser、およびArgから選択されるアミノ酸であり;aa4は、LysおよびTyrから選択されるアミノ酸である]により表される。一部の実施形態において、aa1は、Tyrである。一部の実施形態において、aa1は、Phe Hisである。一部の実施形態において、aa1は、Hisである。一部の実施形態において、aa2は、Trpである。一部の実施形態において、aa2は、Tyrである。一部の実施形態において、aa3は、Alaである。一部の実施形態において、aa3は、Serである。一部の実施形態において、aa3は、Argである。一部の実施形態において、aa4は、Lysである。一部の実施形態において、aa4は、Tyrである。
【0097】
一部の実施形態において、(Xaa)は、式(X):
aa1-aa2-aa3-Gln-aa4-aa5-Trp-Pro-aa6 (X)
[式中、aa1は、AspおよびAsnから選択されるアミノ酸であり;aa2は、TrpおよびPheから選択されるアミノ酸であり;aa3は、Trp、Tyr、およびPheから選択されるアミノ酸であり;aa4は、Ala、Gln、およびArgから選択されるアミノ酸であり;aa5は、LysおよびArgから選択されるアミノ酸であり;aa6は、HisおよびGlyから選択されるアミノ酸である]により表される。一部の実施形態において、aa1は、Aspである。一部の実施形態において、aa1は、Asnである。一部の実施形態において、aa2は、Trpである。一部の実施形態において、aa2は、Pheである。一部の実施形態において、aa3は、Trpである。一部の実施形態において、aa3は、Tyrである。一部の実施形態において、aa3は、Pheである。一部の実施形態において、aa4は、Alaである。一部の実施形態において、aa4は、Glnである。一部の実施形態において、aa4は、Argである。一部の実施形態において、aa5は、Lysである。一部の実施形態において、aa5は、Argである。一部の実施形態において、aa6は、Hisである。一部の実施形態において、aa6は、Glyである。
【0098】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号6~56、134~135(表1)のうちのいずれか1つから選択される、ループ2のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号57~109(表1)のうちのいずれか1つから選択される、ループ4のアミノ酸配列を含む。
【0099】
【表1】
【0100】
一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号6~55、134~135のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、少なくとも80%、または少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号6~55、134~135のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号6~55、134~135のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0101】
一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号22、24、26、35、40、41、および45のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、少なくとも80%、または少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号22のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号24のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号26のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号35のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号40のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号41のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号45のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号22のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号24のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号26のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号35のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号40のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号41のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号45のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0102】
一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号22、24、26、35、40、41、および45のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号22のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号24のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号26のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号35のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号40のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号41のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号45のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0103】
一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号22、24、26、35、40、41、および45のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号24のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号26のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号35のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号40のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号41のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号45のアミノ酸配列を含む。
【0104】
一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号57~108のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、少なくとも80%、または少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号57~108のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号57~108のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0105】
一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号75、77、79、88、93、94、および98のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、少なくとも80%、または少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号75のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号77のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号79のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号88のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号93のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号94のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号98のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号75のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号77のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号79のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号88のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号93のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号94のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号98のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0106】
一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号75、77、79、88、93、94、および98のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号75、77、79、88、93、94、および98のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号75のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号77のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号79のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号88のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号93のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号94のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、(Xaa)は、配列番号98のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0107】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号110~116および133(表2)のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0108】
【表2】
【0109】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号110~116、および133のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、少なくとも80%、または少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号110のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号111のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号112のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号113のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号114のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号115のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号116のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号133のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0110】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号110のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号111のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号112のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号113のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号114のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号115のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号116のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号133のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0111】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号110~116および133のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号110~116および133のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号110のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号111のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号112のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号113のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号114のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号115のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号116のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号133のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0112】
一部の実施形態において、本明細書において提示される、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、別の分子へと連結され、この分子(例えば、治療用ポリペプチド)の半減期を延長する。本明細書において、ある範囲、例えば、マウスおよびカニクイザル(cyno)など、他の種と交差反応する範囲の結合アフィニティーを伴う、ある範囲の抗HSA AFFIMERS(登録商標)が提示される。一部の実施形態において、これらの抗HSA AFFIMERS(登録商標)は、AFFIMER XT(商標)プラットフォームと称されるプラットフォームを構成する。これらの抗HSA AFFIMERS(登録商標)は、インビボ薬物動態(PK)研究において、それが、例えば、E.コリー(E.Coli)内において作製されうる、単一の遺伝子融合体内においてコンジュゲートされた、他の任意のAFFIMER(登録商標)ポリペプチド治療剤の血清半減期を、制御された形で延長することが示されている。AFFIMER XT(商標)はまた、他のペプチド治療剤またはタンパク質治療剤の半減期を延長するのにも使用されうる。
【0113】
「半減期」という用語は、治療用AFFIMER(登録商標)ポリペプチドなどの物質が、その薬理学的活性もしくは薬理学的濃度、または生理学的活性もしくは生理学的濃度のうちの半量を喪失するのに要する時間の長さを指す。生体半減期は、体内の、ある特定の臓器または組織における、物質の消失、排出、分解(例えば、酵素的分解)、または吸収、および濃縮の影響を受ける場合がある。生体半減期は、例えば、物質の血漿濃度が、その定常状態レベルの半量に到達するのに要する時間(「血漿半減期」)を決定することにより評価されうる。
【0114】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、インビボにおける、分子(例えば、治療用ポリペプチド)の血清半減期を延長する。例えば、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、分子の半減期を、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドへと連結されていない分子の半減期と比べて、少なくとも2倍延長しうる。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、分子の半減期を、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドへと連結されていない分子の半減期と比べて、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、または少なくとも30倍延長する。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、分子の半減期を、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドへと連結されていない分子の半減期と比べて、2倍~5倍、2倍~10倍、3倍~5倍、3倍~10倍、15倍~5倍、4倍~10倍、または5倍~10倍延長する。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、例えば、インビボ投与の少なくとも1週間後において、分子の半減期を、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドへと連結されていない分子の半減期と比べて、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間延長する。
【0115】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、血清半減期が延長されており、配列番号117~127(表3)のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0116】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0117】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号117~127のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、少なくとも80%、または少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号117のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号118のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号119のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号120のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号121のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号122のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号123のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号124のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号125のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号126のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号127のアミノ酸配列に対する、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0118】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号117のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号118のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号119のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号120のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号121のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号122のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号123のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号124のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号125のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号126のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号127のアミノ酸配列に対する、少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0119】
一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号117~127のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号117~127のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号117のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号118のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号119のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号120のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号121のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号122のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号123のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号124のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号125のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号126のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗HSA AFFIMER(登録商標)ポリペプチドは、配列番号127のアミノ酸配列に対する、80%~90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0120】
Fcドメイン
一部の実施形態において、半減期延長部分は、抗体Fcドメインを含む。「Fcドメイン」という用語は、抗体Fcドメインの機能的断片を含む。治療用コンジュゲートは、例えば、FAP切断型リンカーを介して、治療用部分へと連結された、抗体のFc領域(エフェクター機能および薬物動態を容易とする)(本明細書において、「Fc融合体」ともまた称される)を含みうる。一部の実施形態において、Fc融合体は、Fc融合体ホモ二量体を形成するように二量体化される場合もあり、非同一なFcドメインを使用して、Fc融合体ヘテロ二量体を形成するように二量体化される場合もある。
【0121】
本開示の治療用コンジュゲートの作出における使用のために、ヒト抗体のFcドメインを選ぶことには、いくつかの理由が存在する。根拠となる原理は、抗体の薬物動態プロファイルと比較して、同様の薬物動態プロファイルを裏付け、Fcドメインにより付与される特性を利用するのに十分な程度に大型である安定的タンパク質を作製することであり;これは、エンドサイトーシス後における、Fc融合体の、細胞表面への、FcRn媒介性再循環を伴い、リソソームによる分解を回避し、血流への還流的放出を結果としてもたらし、これにより、血清半減期の延長に寄与する、新生児FcRn受容体サルベージ経路を含む。別の明白な利点は、治療用コンジュゲートの作製時における、下流の加工を簡略化し、高純度の治療用コンジュゲート調製物の作出を許容しうる、Fcドメインの、プロテインAへの結合である。
【0122】
一部の実施形態において、Fcドメインは、免疫グロブリンの第1の定常領域ドメインを除く、抗体の定常領域を含む。したがって、Fcドメインとは、IgAの、最後の2つの免疫グロブリンの定常領域ドメイン、IgD、およびIgG、ならびにIgEおよびIgMの、最後の3つの免疫グロブリンの定常領域ドメイン、ならびにこれらのドメインに対して、N末端側である、可撓性ヒンジを指す。IgAおよびIgMについて、Fcは、J鎖を含みうる。IgGについて、Fcは、免疫グロブリンドメインである、Oy2およびCy3、ならびにOy1(Oyl)と、Oy2との間のヒンジを含む。Fcドメインの境界は、変動しうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通例、残基である、C226またはP230~そのカルボキシル末端を含むように規定され、この場合、番号づけは、Kabat[Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, NIH, Bethesda, Md. (1991)]において明示されている、EUインデックスに従う。Fcは、単離された、この領域を指す場合もあり、全抗体、抗体断片、またはFc融合体タンパク質の文脈における、この領域を指す場合もある。多数の異なるFc位置において、多型が観察されており、本明細書において使用されるFcドメインとしてもまた含まれる。
【0123】
Fcドメインは、抗体Fcドメインの機能的断片を含む。機能的Fc断片は、FcRnに結合する能力を保持する。機能的Fc断片は、FcRnに結合するが、エフェクター機能を保有しない。Fc領域またはその断片が、FcRnに結合する能力は、当技術分野において公知である、標準的結合アッセイにより決定されうる。例示的エフェクター機能は、C1qへの結合;補体依存性細胞傷害作用(CDC);Fc受容体への結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC);食作用;および細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方調節を含む。このようなエフェクター機能は、このような抗体エフェクター機能について査定するための、当技術分野において公知である、多様なアッセイを使用して評価されうる。
【0124】
例示的実施形態において、Fcドメインは、IgG1サブクラスに由来するが、他のサブクラス(例えば、IgG2、IgG3、およびIgG4)もまた、使用されうる。一部の実施形態において、Fcドメインは、IgG1サブクラスに由来し、LALA突然変異をさらに含む。
【0125】
Fcドメイン、機能的Fc断片、および特定の配列についての他の非限定例は、参照により本明細書に組み込まれる、WO2019/236567において提示されている。
【0126】
生体適合性ポリマー
多種多様な生体適合性高分子ポリマーおよび他の分子が、半減期延長部分として使用されうる。ポリマーの分子量は、約100Da~約100,000Daの間、またはこれを超える分子量を含むがこれらに限定されない、広範囲の分子量でありうる。ポリマーの分子量は、100,000Da、95,000Da、90,000Da、85,000Da、80,000Da、75,000Da、70,000Da、65,000Da、60,000Da、55,000Da、50,000Da、45,000Da、40,000Da、35,000Da、30,000Da、25,000Da、20,000Da、15,000Da、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、1,000Da、900Da、800Da、700Da、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da、および100Daを含むがこれらに限定されない、約100Da~約100,000Daの間でありうる。一部の実施形態において、ポリマーの分子量は、約100Da~約50,000Daの間である。一部の実施形態において、ポリマーの分子量は、約100Da~約40,000Daの間である。一部の実施形態において、ポリマーの分子量は、約1,000Da~約40,000Daの間である。一部の実施形態において、ポリマーの分子量は、約5,000Da~約40,000Daの間である。一部の実施形態において、ポリマーの分子量は、約10,000Da~約40,000Daの間である。
【0127】
半減期を延長する目的のために、PEG化、ポリシアル化、HES化、グリコシル化、または可撓性かつ親水性のアミノ酸鎖(500~600アミノ酸)へと融合させた、組換えPEG類似体を含む、多様な方法が開発されている(Chapman, (2002) Adv Drug Deliv Rev. 54. 531-545; Schlapschy et al., (2007) Prot Eng Des Sel. 20, 273-283; Contermann (2011) Curr Op Biotechnol. 22, 868-876; Jevsevar et al., (2012) Methods Mol Biol. 901, 233- 246を参照されたい)。
【0128】
半減期延長部分として使用されうる、生体適合性ポリマーの例は、ポリアルキルエーテルおよびそのアルコキシキャップ類似体(例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレン/プロピレングリコール、およびそのメトキシキャップ類似体またはエトキシキャップ類似体、とりわけ、ポリオキシエチレングリコールであり、後者はまた、ポリエチレングリコールまたはPEGとしても公知である);dPEG(discrete PEG);ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルキルエーテル;ポリオキサゾリン、ポリアルキルオキサゾリン、およびポリヒドロキシアルキルオキサゾリン;ポリアクリルアミド、ポリアルキルアクリルアミド、およびポリヒドロキシアルキルアクリルアミド(例えば、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドおよびその誘導体);ポリヒドロキシアルキルアクリレート;ポリシアル酸およびその類似体;親水性ペプチド配列;デキストラン、およびデキストラン誘導体、例えば、カルボキシメチルデキストラン、デキストランスルフェート、アミノデキストランを含む、多糖およびそれらの誘導体;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース;キチンおよびその誘導体、例えば、キトサン、スクシニルキトサン、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルキトサン;ヒアルロン酸およびその誘導体;デンプン;アルギネート;硫酸コンドロイチン;アルブミン;プルランおよびカルボキシメチルプルラン;ポリアミノ酸およびその誘導体、例えば、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリアスパラギン酸、ポリアスパルタミド;スチレン無水マレイン酸コポリマー、ジビニルエチルエーテル無水マレイン酸コポリマーなどの無水マレイン酸コポリマー;ポリビニルアルコール;これらのコポリマー;これらのターポリマー;これらの混合物;ならびに前出の誘導体を含むがこれらに限定されない。
【0129】
選択されるポリマーは、それが構成要素である治療用コンジュゲートが、生理学的環境などの水性環境内に沈殿しないように、水溶性でありうる。水溶性ポリマーは、直鎖状、二分枝状、または多分枝状を含むがこれらに限定されない、任意の構造形態でありうる。一部の実施形態において、水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)などのポリ(アルキレングリコール)であるが、他の水溶性ポリマーもまた、使用されうる。例を目的として述べると、本開示についての、一部の実施形態では選択される、特定のPEGの特性が、本開示に従う治療用コンジュゲートの循環血清半減期を延長することを条件として、PEGが使用される。
【0130】
一部の実施形態において、生体適合性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)、ヒドロキシエチルデンプン、XTEN、およびプロリン-アラニン-セリンポリマーからなる群から選択される。
【0131】
ポリマーについての、他の非限定例は、参照により本明細書に組み込まれる、WO2019/236567において提示されている。
【0132】
線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPα)切断型リンカー
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、半減期延長部分を、治療用部分へと連結する線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPα)切断型リンカーを含む。II型膜貫通セリンプロテアーゼであるFAPαは、間質線維芽細胞内において発現される腫瘍関連抗原である(Chai et al., Acta Pharmacologica Sinica, 2018, 39: 415-424)。FAPαは、正常成体組織内において、ほぼ検出不能であるので、FAPαの発現は、ほぼもっぱら、腫瘍塊に限定される。線維芽細胞は、腫瘍微小環境内において、腫瘍悪性度に関わらない、FAPの発現の、実質的な増大により特徴づけられる形態変換を経る(Henry et al., Clin Cancer Res, 2007, 13(6): 1736)。
【0133】
FAPは、プロリン残基の後において、ペプチド基質を選択的に切断する、DASHファミリーのプロリン後切断酵素である。理論に束縛されることは望まないが、治療用コンジュゲート内の、FAPα切断型リンカーの組入れは、治療用コンジュゲートが、FAPαに近接し、この時点において、FAPαが、リンカーを切断し、治療用部分を活性化させるまで、治療用部分が、なおも非活性であることを可能とすると考えられる。FAPαは、腫瘍組織内に存在し、健常組織内に存在しないので、治療用部分は、主に、腫瘍組織の近傍/腫瘍組織内において活性化させられるであろう。
【0134】
一部の実施形態において、リンカーは、FAPαにより切断可能な基質認識配列(SRS)を含む。例えば、一部の実施形態において、SRSは、FAPαにより切断され、
【化6】
[式中、Rは、Hまたは(C~C)アルキルを表し、例えば、Hであり;Rは、Hまたは(C~C)アルキルを表し、例えば、メチル、エチル、プロピル、またはイソプロピルであり;Rは、非存在であるか、または(C~C)アルキル、-OH、-NH、もしくはハロゲンを表し;Xは、OまたはSを表し;NHは、Lが、自壊性リンカーである場合に、Lの一部であるアミンを表すか、またはLが、結合である場合に、治療用部分の一部を表す]
により表される。
【0135】
一部の実施形態において、FAPα切断型リンカーまたはSRSは、
【化7】
[式中、
は、水素または(C~C)アルキルである]により表される。一部の実施形態において、Rは、水素である。
【0136】
は、水素、または分枝鎖状低級アルキルもしくは直鎖状低級アルキル、例えば、メチルなどの低級アルキルである。(d)が、アミノ酸側鎖である場合、Rは、水素ではない。
【0137】
は、ヒドロキシメチル(例えば、セリンについて)など、分枝鎖状低級アルコキシまたは直鎖状低級アルコキシ、または1-ヒドロキシエチル(例えば、トレオニンについて)である。一実施形態において、Rは、ヒドロキシメチルである。
【0138】
は、OまたはSである。
【0139】
は、OまたはSである。
【0140】
一部の実施形態において、FAPα切断型リンカーまたはSRSは、第3のアミノ酸位置[例えば、(d)-Alaに対して、N末端側]を含む。一部の実施形態において、切断部位からP3である、この位置は、セリンである。一部の実施形態において、この位置は、トレオニンである。
【0141】
一部の実施形態において、リンカーは、D-Ala-Proなど、FAPαにより切断可能な基質認識配列(SRS)を含む。一部の実施形態において、FAPαにより切断可能なSRS配列は、PPGP(配列番号136)、(D/E)-(R/K)-G-(E/D)-(T/S)-G-P(配列番号137)、DRGETGP(配列番号138)、GPAX(配列番号139)[配列中、Xは、任意のアミノ酸である](Aggarwal et al., Biochemistry. 2008; 47(3): 1076-1086; Ji et al., Angew Chem Int Ed Engl. 2016; 55(3):1050-1055)である。
【0142】
スペーサー
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、FAPαにより切断可能な、半減期延長部分と、基質認識配列(SRS)との間の、スペーサーまたは結合(L)を含む。
【0143】
スペーサーは、任意の分子、例えば、1つまたは複数のヌクレオチド、アミノ酸、化学的官能基でありうる。一部の実施形態において、スペーサーは、ペプチドリンカー(例えば、2つまたはこれを超えるアミノ酸)である。スペーサーは、ポリペプチドの発現、分泌、または生体活性に、有害な影響を及ぼさないものとする。一部の実施形態において、スペーサーは、抗原性ではなく、免疫応答を誘発しない。免疫応答は、自然免疫系および/または獲得免疫系に由来する応答を含む。したがって、免疫応答は、細胞媒介応答の場合もあり、かつ/または体液性免疫応答の場合もある。免疫応答は、例えば、T細胞応答、B細胞応答、ナチュラルキラー(NK)細胞応答、単球応答、および/またはマクロファージ応答でありうる。本明細書において、他の細胞応答も想定される。一部の実施形態において、リンカーは、タンパク質非コードリンカーである。
【0144】
一部の実施形態において、Lは、6-マレイミドカプロイル、マレイミドプロパノイルシクロヘキサン-1-カルボキシレート、およびマレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート(maleimidom ethyl cyclohexane- l-carboxylate)などの炭水化物(直鎖状または環状)であるか、またはLは、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート、N-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノベンゾエートである。
【0145】
一部の実施形態において、Lは、ポリ(エチレングリコール)または他の親水性リンカーなどのポリエーテルである。例えば、CBMが、チオール(システイン残基など)を含む場合、Lは、マレイミド部分を介して、チオール基へとカップリングされた、ポリエチレングリコールでありうる。本開示に従う使用のためのリンカーの非限定例については、参照により本明細書に組み込まれる、2019年12月12日に公開された、国際公開第WO2019/236567号において記載されている。
【0146】
自壊性リンカー
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、FAPαのための基質認識配列(SRS)と、治療用部分との間に、式
【化8】
[式中、pは、1~100、好ましくは、6~50、より好ましくは、6~12の整数を表す]で表される自壊性リンカーなどの自壊性リンカー(L)を含む。
【0147】
CBMが、チオールを含み、Lが、マレイミド部分を介して、チオール基へとカップリングされた炭水化物部分である、他の実施形態においてLは、式:
【化9】
[式中、pは、1~20、好ましくは、1~4の整数を表す]
で表されうる。
【0148】
自壊性部分は、間隔を置かれた、2つの化学的部分を、通常の安定分子へと、共有結合的に、一体に連結することから、間隔を置かれた化学的部分のうちの一方を、酵素的切断により、分子から放出し;酵素的切断の後、二官能性化学基の残りの部分から、自発的に切断されて、前記間隔を置かれた化学的部分のうちの他方を放出することが可能である、二官能性化学基として規定されうる。したがって、一部の実施形態において、自壊性部分は、その末端のうちの一方において、アミド結合により、リガンドへと、直接的に、または、スペーサーユニットを介して、間接的に、共有結合的に連結され、その他方の末端において、治療用部分から吊下がる、化学的反応性部位(官能基)へと、共有結合的に連結される。自壊性部分を伴う治療用部分の誘導は、薬物が切断されるまで、薬物を、薬理学的に低活性(例えば、低毒性)とする場合もあり、完全に不活性とする場合もある。
【0149】
治療用コンジュゲートは、一般に、循環中において安定であるか、または、少なくとも、基質認識配列(FAPα切断型リンカー)と、自壊性部分との間のアミド結合を切断することが可能な酵素の非存在下において、これが成り立つはずである。治療用コンジュゲートが、適切な酵素へ(FAPα)と曝露されると、アミド結合が切断され、自発的自壊反応を誘発する結果として、自壊性部分を、治療用部分へと共有結合的に連結する結合の切断をもたらして、これにより、その非誘導形態または薬理学的活性形態において、遊離治療用部分の放出をもたらす。コンジュゲート内の自壊性部分は、1つまたは複数のヘテロ原子を組み込み、これにより、可溶性の改善をもたらすか、切断速度を改善し、コンジュゲートの凝集への傾向を低下させる。
【0150】
一部の実施形態において、Lは、ベンジルオキシカルボニル基である。他の実施形態において、自壊性リンカーLは、-NH-(CH-C(=O)-、または-NH-(CH-C(=O)-である。なおも他の実施形態において、自壊性リンカーLは、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)である。さらに他の実施形態において、自壊性リンカーLは、2,4-ビス(ヒドロキシメチル(hydroxymeihyl))アニリンである。
【0151】
本開示の治療用コンジュゲートは、治療用部分および切断可能な基質認識配列へと、共有結合的に連結された、複素環性自壊性部分を利用しうる。自壊性部分は、間隔を置かれた、2つの化学的部分を、通常の安定分子へと、共有結合的に、一体に連結し、前記間隔を置かれた化学的部分のうちの一方を、酵素的切断により、分子から放出し;前記酵素的切断の後、二官能性化学基の残りの部分から、自発的に切断されて、前記間隔を置かれた化学的部分のうちの他方を放出することが可能である二官能性化学基として規定されうる。本開示に従い、自壊性部分は、その末端のうちの一方において、アミド結合により、リガンドへと、直接的に、または、スペーサーユニットを介して、間接的に、共有結合的に連結され、その他方の末端において、薬物から吊下がる、化学的反応性部位(官能基)へと、共有結合的に連結されうる。自壊性部分を伴う治療用部分の誘導は、薬物が切断されるまで、薬物を、薬理学的に低活性(例えば、低毒性)とする場合もあり、完全に不活性とする場合もある。
【0152】
治療用コンジュゲートは、一般に、循環中において安定であるか、または、少なくとも、基質認識配列と、自壊性部分との間のアミド結合を切断することが可能な酵素の非存在下において、これが成り立つはずである。しかし、治療用コンジュゲートが、適切な酵素へと曝露されると、アミド結合が切断され、自発的自壊反応を誘発する結果として、自壊性部分を、薬物へと共有結合的に連結する結合の切断をもたらして、これにより、その非誘導形態または薬理学的活性形態において遊離治療用部分の放出をもたらす。
【0153】
一部の実施形態において、本開示のコンジュゲート内の自壊性部分は、1つまたは複数のヘテロ原子を組み込み、これにより、可溶性の改善をもたらすか、切断速度を改善し、コンジュゲートの凝集への傾向を低下させる。本開示の複素環性自壊性リンカーコンストラクトによる、非複素環性PAB型リンカーに対する、これらの改善は、有効性の増大、毒性の低下、およびより所望される薬物動態などの驚くべき予想外の生物学的特性を結果としてもたらしうる。
【0154】
一部の実施形態において、Lは、ベンジルオキシカルボニル基である。
【0155】
一部の実施形態において、Lは、
【化10】
[式中、Rは、水素、非置換C~Cアルキルもしくは置換C~Cアルキル、または非置換ヘテロシクリルもしくは置換ヘテロシクリルである]である。一部の実施形態において、Rは、水素である。場合によって、Rは、メチルである。
【0156】
一部の実施形態において、Lは、
【化11】
から選択される。
【0157】
一部の実施形態において、自壊性部分である、Lは、
【化12】
[式中、
Uは、O、S、またはNRであり;
Qは、CRまたはNであり;
、V、およびVは、式IIおよびIIIについて、Q、V、およびVのうちの少なくとも1つが、Nであることを条件として、独立に、CRまたはNであり;
Tは、前記治療用部分から吊下がる、NH、NR、O、またはSであり;
、R、R、およびRは、独立に、H、F、Cl、Br、I、OH、-N(R、-N(R 、C~Cハロゲン化アルキル、カルボキシレート、スルフェート、スルファメート、スルホネート、-SO、-S(=O)R、-SR、-SON(R、-C(=O)R、-CO、-C(=O)N(R、-CN、-N、-NO、C~Cアルコキシ、C~Cハロ置換アルキル、ポリエチレンオキシ、ホスホネート、ホスフェート、C~Cアルキル、C~C置換アルキル、C~Cアルケニル、C~C置換アルケニル、C~Cアルキニル、C~C置換アルキニル、C~C20アリール、C~C20置換アリール、C~C20複素環、およびC~C20置換複素環から選択されるか;または、一体に考えられた場合、Rと、Rとは、カルボニル(=O)、もしくは炭素原子3~7個によるスピロ炭素環を形成し;
およびRは、独立に、H、C~Cアルキル、C~C置換アルキル、C~Cアルケニル、C~C置換アルケニル、C~Cアルキニル、C~C置換アルキニル、C~C20アリール、C~C20置換アリール、C~C20複素環、およびC~C20置換複素環から選択されるが;
この場合、C~C置換アルキル、C~C置換アルケニル、C~C置換アルキニル、C~C20置換アリール、およびC~C20置換複素環は、独立に、F、Cl、Br、I、OH、-N(R、-N(R 、C~Cハロゲン化アルキル、カルボキシレート、スルフェート、スルファメート、スルホネート、C~Cアルキルスルホネート、C~Cアルキルアミノ、4-ジアルキルアミノピリジニウム、C~Cアルキルヒドロキシル、C~Cアルキルチオール、-SO、-S(=O)R、-SR、-SON(R、-C(=O)R、-CO、-C(=O)N(R、-CN、-N、-NO、C~Cアルコキシ、C~Cトリフルオロアルキル、C~Cアルキル、C~C12炭素環、C~C20アリール、C~C20複素環、ポリエチレンオキシ、ホスホネート、およびホスフェートから選択される、1つまたは複数の置換基により置換される]
から選択される。
【0158】
Tは、NHである場合、治療用部分(自壊性部分へとカップリングする前における)から吊下がる、一級アミン(-NH2)に由来し、TがNである場合、治療用部分(自壊性部分へとカップリングする前における)に由来する、二級アミン(-NH-)に由来することが理解されるであろう。同様に、Tは、OまたはSである場合、自壊性部分へとカップリングする前に、治療用部分から吊下がる、それぞれ、ヒドロキシル(-OH)基またはスルフヒドリル(-SH)基に由来する。
【0159】
一部の実施形態において、自壊性リンカーLは、-NH-(CH-C(=O)-、または-NH-(CH-C(=O)-である。
【0160】
一部の実施形態において、自壊性リンカーLは、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)である。
【0161】
一部の実施形態において、自壊性リンカーLは、2,4-ビス(ヒドロキシメチル)アニリンである。
【0162】
本明細書において記載される治療用コンジュゲートにおける使用のために、たやすく適合させられる、自壊性リンカーの他の例については、例えば、米国特許第7,754,681号;WO2012/074693A1;US9,089,614;EP1,732,607;WO2015/038426A1(それらの全てが、参照により本明細書に組み込まれる);それらの各々の教示が、参照により本明細書に組み込まれる、Walther et al. “Prodrugs in medicinal chemistry and enzyme prodrug therapies” Adv Drug Deliv Rev. 2017 Sep 1; 118:65-77; and Tranoy-Opalinski et al. “Design of self- immolative linkers for tumour-activated prodrug therapy”, Anticancer Agents Med Chem. 2008 Aug;8(6):6l8-37において教示されている。
【0163】
本開示に従う使用のための、さらに他の自壊性リンカーの非限定例については、参照により本明細書に組み込まれる、2019年12月12日に公開された、国際公開第WO2019/236567号において記載されている。
【0164】
治療用部分
一部の実施形態において、治療用部分(-TM)は、自然免疫応答および/または獲得免疫応答の活性化を結果としてもたらす炎症を誘導する薬剤などの免疫誘導剤である。
【0165】
一部の実施形態において、治療用部分(-TM)は、細胞傷害剤、すなわち、治療用コンジュゲートから放出されると、治療用コンジュゲートが投与される濃度において、標的細胞の細胞死を引き起こす細胞傷害剤である。
【0166】
一部の実施形態において、治療用部分(-TM)は、細胞増殖抑制剤、すなわち、治療用コンジュゲートから放出されると、治療用コンジュゲートが投与される濃度において、標的細胞の有糸分裂の停止または休止を引き起こす細胞増殖抑制剤である。
【0167】
一部の実施形態において、治療用部分(-TM)は、エピジェネティック剤、すなわち、治療用コンジュゲートから放出されると、治療用コンジュゲートが投与される濃度において、標的細胞のエピジェネティック変化を引き起こし、例えば、細胞の、別の細胞表現型への分化(または脱分化)を結果としてもたらしうる、エピジェネティック剤である。
【0168】
一部の実施形態において、治療用部分は、一般式:
【化13】
[式中、RBMは、受容体結合性部分であり、Zは、細胞毒性部分、細胞増殖抑制性部分、もしくはエピジェネティック部分、または放射性同位元素含有部分であり、pは、0(Zは、存在しない)、または1~8の整数である]により表される。一部の実施形態において、pは、1である。
【0169】
一部の実施形態において、治療用部分は、一般式:
【化14】
[式中、RBMは、受容体結合性部分であり、Zは、細胞毒性部分、細胞増殖抑制性部分、もしくはエピジェネティック部分、または放射性同位元素含有部分であり、Lは、結合、または切断型リンカーもしくは非切断型リンカーである]により表される。例えば、Lは、Zが、受容体結合性部分であるRBMに依存する、細胞への結合を介する、-RBM-L-Z部分の内部化時に、細胞内に放出されるように、酸不安定性または酵素感受性(カテプシン切断部位を含むなど)であるリンカーでありうる。
【0170】
さらに例示すると、受容体結合性部分(RBM)は、治療用コンジュゲートから放出されると、細胞表面受容体の細胞外リガンド結合性ドメインに結合することが可能なリガンドなどの、受容体に対するリガンドでありうる。例示的な受容体リガンドは、ソマトスタチン、コレシストキニン2(CCK2)、葉酸[folate(folic acid)]、ボムベシン、ガストリン放出ペプチド、カルシトニン、オキシトシン、EGF、α-メラノサイト刺激ホルモン、ミニガストリン、ニューロテンシン、P物質、グルカゴン様ペプチド1、神経ペプチドY、およびこれらのリガンドの類似体を含む。受容体リガンドは、それ自体、それ自体における薬理学的活性、およびそれ自体の薬理学的活性を有するか、または、コンジュゲートされた治療用部分(例えば、薬物部分)、毒素、または放射性同位元素を、受容体を発現する細胞へと(かつ、好ましくは、細胞内へと)デリバリーするのに使用されうる。
【0171】
さらなる例は、受容体結合性部分が、葉酸誘導体(葉酸受容体に結合し、卵巣がんおよび他の悪性腫瘍において過剰発現されるタンパク質)(Low, PS et al 2008, acc. chem. res.41, 120-9);グルタミン酸尿素誘導体(前立腺特異性膜抗原、前立腺がん細胞についての表面マーカーに結合する)(Hillier, SM et al, 2009, Cancer res.69, 6932-40);ソマトスタチン(また、成長ホルモン阻害ホルモン(GHIH)、または成長ホルモン放出阻害因子(SRIF)、または成長ホルモン放出阻害ホルモンとしても公知である)、ならびにオクトレオチド(Sandostatin)およびランレオチド(Somatuline)(特に、神経内分泌腫瘍、GH産生型下垂体腺腫、傍神経節腫、非機能的下垂体腺腫、褐色細胞腫)など、その相同体(Ginj, M., et al, 2006, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103,16436-41)、以下の腫瘍:GH分泌型下垂体腺腫(Reubi JC, L and olt, AM1984J. Clin. Endocrinol Metab 59: 1148-51; Re JC, L and olt AM 1987 Clin. Endocrinol Metab 65: 65. C.73; Moyse E, et al, J Clin Endocrinol Metab 61: 98-103)、胃腸膵管腫瘍(Reubi JC, et al, 1987J Clin Endocrinol Metab 65: 1127-34; Reubi, J.C, et al, 1990Cancer Res 50: 5969-77)、褐色細胞腫(Epel-baum J, et al, 1995J Clin Endocrinol Metab80: 1837-44; Reubi J C, et al, 1992J Clin Endocrinol Metab 74: 1082-9)、神経芽細胞腫(Prevost G,1996 neoendocrinolology 63: 188) 197; Mortel, Mill.L, et al, 1994 Amob J P102: 752-752)、甲状腺髄様癌(Reubi, J.C, et al, 1991Lab 64: 7J, 1987J, 1987, et al, 1987J, 1987J)における、ソマトスタチン受容体亜型(sst1、sst2、sst3、sst4、およびsst5);結腸がんについてのマウス結腸受容体;ボムベシン(Pyr-Gln-Arg-Leu-Gly-Asn-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Leu-Met-NH2)(配列番号143)、またはガストリン放出ペプチド(GRP)およびその受容体サブクラス(BB1、GRP受容体サブクラス(BB2)、BB3、およびBB4)(Ohlsson, b., et al, 1999, Sc and j.gastroenterology 34(12) 1224-9; weber, HC,2009, cur. opin. endocri. dib. obesity16(1): 66-71, Gonzalez N, et al, 2008, cur. opin. endocri. dib. obesity 15(1), 58-64);ニューロテンシン受容体およびそれらの受容体亜型(NTR1、NTR2、NTR3);P物質受容体およびそれらの受容体亜型(例えば、神経膠腫についてのNK1受容体;Hennig I M, et al 1995int. J. cancer 61, 786-cake 792);神経ペプチドY(npy)受容体およびその受容体亜型(Y1-Y6);細胞表面発現についての、RGD(Arg-Gly-Asp)、NGR(Asn-Gly-Arg)、二量体環状RGDペプチドおよび多量体環状RGDペプチド(例えば、cRGDfV)(Laakkonen P, Vuorine K.2010, Integr Biol (Camb). sub.2 (7-8): 326-337; ChenK, Chen X.2011, Theranostics.1: 189-200; Garanger E, et al, Anti-Cancer Agents Med. 7(5): 552-558; Kerr, JS et al, Antincerner Research,19(2A), 959-968; Thumshirn, G, et al, 2003Chem. Eur.J.9, 7-2725)、およびTAASGVRSMH(配列番号144)、またはLTLRWVGLMS(配列番号145)(コンドロイチン硫酸プロテオグリカンNG2受容体)およびF3(ヌクレオリン受容体結合性ペプチド)(RG受容体)(アミノ酸受容体31、BTE-Gly-26;proc.nat.acad.sci.usa 99(11), 7444-9)を含むホーミングペプチド;細胞膜透過性ペプチド(CPP)(Nakase I, et al, 2012, J.Control Release.159(2), 181-188);ブセレリン(Pyr-His-Trp-Ser-Tyr-D-Ser(OtBu)-Leu-Arg-Pro-NHEt)(配列番号146)、ゴナドレリン(Pyr-His-Trp-Ser-Tyr-Gly-Leu-Arg-Pro-Gly-NH2)(配列番号147)、ゴセレリン(Pyr-His-Trp-Ser-Tyr-D-Ser(OtBu)-Leu-Arg-Pro-AzGly-NH2)(配列番号148)、ヒマラレリン(Himalarelin)(Pyr-His-Trp-Ser-Tyr-D-His(N-Bn)-Leu-Arg-Pro-NHEt)(配列番号149)、レウプロリド(Pyr-His-Trp-Ser-Tyr-D-Leu-Leu-Arg-Pro-NHEt)(配列番号150)、ナファレリン(Pyr-His-Trp-Ser-Tyr-2Nal-Leu-Arg-Pro-Gly-NH2)(配列番号151)、トリプトレリン(Pyr-His-Trp-Ser-Tyr-D-Trp-Leu-Arg-Pro-Gly-NH2)(配列番号152)、ナファレリン、デスロライン、アベレリン(Ac-D-2Nal-D-4-クロロPhe-D-3-(3-ピリドール)Ala-Ser-(N-Me)Tyr-D-Asn-Leu-イソプロピル(isopyL)Lys-Pro-DAla-NH2)(配列番号153)、セトロレリクス(Ac-D-2Nal-D-4-クロロ-Phe-D-3-(3-ピリドール)Ala-Ser-Tyr-D-Cit-Leu-Arg-Pro-D-Ala-NH2)(配列番号154)、デガレリクス(Ac-D-2Nal-D-4-クロロPhe-D-3-(3-ピリドール)Ala-Ser-4-アミノPhe(L-ヒドロキシル)-D-4-アミノPhe(カルバモイル)-Leu-イソプロピル(isoproyl)Lys-Pro-D-Ala-NH2)(配列番号155)、およびガランガル(Ac-D-2Nal-D-4-クロロPhe-D-3-(3-ピリドール)Ala-Ser-Tyr-D-(N9、N10-ジエチル)-ホモArg-Leu-(N9、N10-ジエチル)-ホモArg-Pro-D-Ala-NH2)(配列番号156)など、濾胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)のほか、テストステロンの産生をターゲティングすることにより作用する、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)のアゴニストおよびアンタゴニスト、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストなどのペプチドホルモン(Thundimadathil, J., J.Aminoacids in Urology3(3): 127-140; Debruyne, F.,2006, Future Oncology,2 (6); 677 696; Schally A.V; Nagy, A.1999Eur J Endocrinol 141: 1-14; Koppan M, et al 1999 Protate 38: 151-158);Toll様受容体(TLR)、C型レクチン、およびNOD(nucleotide-binding oligomerization)様受容体(NLR)などのパターン認識受容体(PRR)(Fukata, M.et al, 2009, Semin. 21, Immunol 242-253)からなる群から選択されるリガンド、または受容体アゴニストである実施形態を含む。短鎖ペプチドである、GRGDSPK(配列番号157)、およびシクロ(RGDfV)(配列番号160)(L1)およびその誘導体{[シクロ(-N(Me)R-GDfV](配列番号158)、シクロ(R-Sar-DfV)(配列番号159)、シクロ-[RG-N(Me)D-fV](配列番号176)、シクロ[RGD-N(Me)fV](配列番号177)、シクロ[RGDf-N(Me)V-](シレンジタイド)(配列番号178)}などの環状RGDペンタペプチドは、インテグリン受容体に対する、高アフィニティーを有する(Dechantsreiter, MA et al, 1999J.Med.chem.42,3033-40, Goodman, SL, et al, 2002J.Med.chem.45, 1045-51)。
【0172】
一部の実施形態において、受容体結合性部分は、インテグリンαvβ3、ガストリン放出ペプチド受容体(GRPR)、ソマトスタチン受容体(ソマトスタチン受容体亜型2など)、メラノコルチン受容体、コレシストキニン2受容体、神経ペプチドY受容体、またはニューロテンシン受容体に結合する。
【0173】
一部の実施形態において、受容体結合性部分は、葉酸受容体αに結合し、葉酸または葉酸類似体(エタルフォラチド、ビンタフォリド、ロイコボリン、およびメトトレキサートなど)などの葉酸受容体リガンドでありうる。
【0174】
一部の実施形態において、受容体結合性部分は、ソマトスタチン受容体に結合し、ソマトスタチン、またはオクトレオテート、オクトレオチド、もしくはペンテトレオチドなどのソマトスタチン類似体、でありうる。
【0175】
一部の実施形態において、受容体結合性部分は、αIIbβ3に結合し、シクロ(-Arg-Gly-Asp-D-Phe Val-)[「c(RGDfV)」](配列番号160)、c(RGDfK)(配列番号161)、c(RGDfC)(配列番号162)、c(RADfC)(配列番号163)、c(RADfK)(配列番号164)、c(RGDfE)(配列番号165)、c(RADfE)(配列番号166)、RGDSK(配列番号167)、RADSK(配列番号168)、RGDS(配列番号169)、c(RGDyC)(配列番号170)、c(RADyC)(配列番号171)、c(RGDyE)(配列番号172)、c(RGDyK)(配列番号173)、c(RADyK)(配列番号174)およびH-E[c(RGDyK)]2(配列番号175)、EMD 12194、DMP728、DMP757およびSK&F107260など、例示的な環状RGDペプチドを含む、RGDまたはRGD類似体(すなわち、二量体類似体または多量体類似体)などのαIIbβ3標的リガンドでありうる。
【0176】
一部の実施形態において、治療用部分は、インビボにおける、自然免疫応答を誘導するそれらの能力に基づき選択される。自然免疫応答は、サイトカインの発現および放出の増大ならびに細胞死を結果としてもたらす、典型的に、ウイルス由来または細菌由来の外因性核酸または外因性タンパク質に対する細胞応答を含む。したがって、自然免疫応答は、サイトカイン(例えば、1型インターフェロン)の発現レベルまたは活性レベルにより測定される場合もあり、インターフェロン調節性遺伝子(例えば、toll様受容体)の発現レベルにより測定される場合もある。一部の実施形態において、自然免疫応答は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の発現レベルまたは活性レベルにより測定される。応答はまた、細胞死のレベルによっても測定されうる。
【0177】
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、治療用部分単独と比較して、低度の自然免疫応答を誘導する。例えば、一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、治療用部分が単独で投与される場合に誘導される自然免疫応答より、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%低度の自然免疫応答を誘導する。
【0178】
一部の実施形態において、治療用部分は、急性毒性である。本明細書において使用される、「急性毒性」である部分とは、対象への投与から14日以内に、有害作用を及ぼす部分を指す。急性毒性は、時間経過にわたる、治療用部分の蓄積が、治療用部分の毒性を結果としてもたらす、慢性毒性または累積毒性と対比される。
【0179】
毒性は、任意の方法を使用して測定されうる。一部の実施形態において、毒性は、肝活動により測定される。一部の実施形態において、毒性は、腎活動により測定される。一部の実施形態において、毒性は、膵活動により測定される。
【0180】
一部の実施形態において、毒性は、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)および/またはアラニントランスアミナーゼ(ALT)などの循環肝酵素について評価することにより測定される。治療用部分の投与後の時点におけるASTレベルおよび/またはALTレベルは、投与の前に得られるベースライン値、例えば、治療用部分を施されなかった対照動物の値、または過去の実験(歴史対照)、もしくは文献に由来する、正常動物と関連することが公知の値と比較されうる。
【0181】
一部の実施形態において、毒性は、アルカリホスファターゼ(ALP)レベルについて評価することにより測定される。治療用部分の投与後の時点におけるALPレベルは、投与の前に得られるベースライン値、例えば、治療用部分を施されなかった対照動物の値、または過去の実験(歴史対照)、もしくは文献に由来する、正常動物と関連することが公知の値と比較されうる。
【0182】
一部の実施形態において、毒性は、総ビリルビン(TBIL)レベルについて評価することにより測定される。治療用部分の投与後の時点におけるTBILレベルは、投与の前に得られるベースライン値、例えば、治療用部分を施されなかった対照動物の値、または過去の実験(歴史対照)、もしくは文献に由来する、正常動物と関連することが公知の値と比較されうる。
【0183】
一部の実施形態において、毒性は、アルブミンレベルについて評価することにより測定される。治療用部分の投与後の時点におけるアルブミンレベルは、投与の前に得られるベースライン値、例えば、治療用部分を施されなかった対照動物の値、または過去の実験(歴史対照)、もしくは文献に由来する、正常動物と関連することが公知の値と比較されうる。
【0184】
一部の実施形態において、毒性は、血清グルコースレベルについて評価することにより測定される。治療用部分の投与後の時点における血清グルコースレベルは、投与の前に得られるベースライン値、例えば、治療用部分を施されなかった対照動物の値、または過去の実験(歴史対照)、もしくは文献に由来する、正常動物と関連することが公知の値と比較されうる。
【0185】
一部の実施形態において、毒性は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルについて評価することにより測定される。治療用部分の投与後の時点における乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルは、投与の前に得られるベースライン値、例えば、治療用部分を施されなかった対照動物の値、または過去の実験(歴史対照)、もしくは文献に由来する、正常動物と関連することが公知の値と比較されうる。
【0186】
理論に束縛されることは望まないが、治療用コンジュゲートは、FAPαが、リンカーを切断するまで、治療用部分が、活性とならないようにすると考えられる。このように、治療用コンジュゲートは、急性毒性ではなく、遊離治療用部分より高度な治療指数(TI)を有する。TIとは、治療効果を引き起こす治療用部分(またはコンジュゲート)の量を、毒性を引き起こす治療用部分(またはコンジュゲート)の量と比較することにより計算される、治療用部分の相対的安全性についての定量的尺度である。一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、全身デリバリーされた場合に、遊離治療用部分の全身デリバリーの、少なくとも2倍、例えば、遊離治療用部分の全身デリバリーの、少なくとも5、10、20、30、40、50、100、250、500、なおまたは1000倍である治療指数(TI)を有する。一部の実施形態において、治療用コンジュゲートの治療指数(TI)は、全身に施された場合に、遊離治療用部分についての治療指数の、少なくとも5倍、例えば、少なくとも10、20、30、40、50、75、なおまたは100倍である。
【0187】
このように、用量制限毒性のためにかつて無効だった治療用部分(薬物)(例えば、タラボスタット)は、本明細書において記載される治療用量(例えば、75nM、80nM、85nM、90nM、95nM、100nM、125nM、150nM、175nM、200nM、またはこれを超える腫瘍内濃度)において投与されうる。
【0188】
本明細書において提示される治療用部分は、それらのプロドラッグ形態において、不活性(例えば、全身毒性の危険性が低減され、細胞透過率が低減された)であるが、FAPα切断型リンカーの切断により活性化させられる薬物(例えば、10kDまたはこれ未満の分子量を有する低分子)である、プロドラッグでありうる。切断されると、治療用部分は、罹患組織(例えば、腫瘍)の細胞外腔へと放出され、そこで、局所的炎症応答を引き起こし、免疫細胞の浸潤を促進し、一部の実施形態において、自然免疫応答を誘導しうる。罹患組織が、腫瘍である場合、活性化治療用部分はまた、腫瘍間質を分解する場合もあり、かつ/または腫瘍細胞を死滅させる場合もある。
【0189】
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、細胞内標的と相互作用し、治療用部分の薬理学的効果が、細胞透過性である遊離治療用部分、すなわち、その細胞内標的と相互作用することが可能である遊離治療用部分に依存するのに対し、結合剤-薬物コンジュゲートの一部である場合、治療用部分は、実質的に細胞不透過性である。例えば、結合剤-薬物コンジュゲートの、細胞内における蓄積速度は、遊離治療用部分についての速度の50%未満、例えば、遊離治療用部分についての速度の25%、10%、5%、1%未満、なおまたは0.1%未満である。例えば、遊離治療用部分の薬理学的効果についてのEC50は、結合剤-薬物コンジュゲートの2分の1以下(の効力)、例えば、結合剤-薬物コンジュゲートの、5、10、20、30、40、50、100、250、500、なおまたは1000分の1以下である。
【0190】
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、細胞外標的と相互作用し、Lへと、共有結合的に連結されると、治療用部分の薬理学的効果は、実質的に弱められる。例えば、遊離治療用部分の薬理学的効果についてのEC50は、結合剤-薬物コンジュゲートの2分の1以下(の効力)、例えば、結合剤-薬物コンジュゲートの、5、10、20、30、40、50、100、250、500、なおまたは1000分の1以下である。
【0191】
一部の実施形態において、結合剤-薬物コンジュゲートは、全身デリバリーされた場合に、遊離治療用部分の全身デリバリーの、少なくとも2倍、例えば、遊離治療用部分の全身デリバリーの、少なくとも5、10、20、30、40、50、100、250、500、なおまたは1000倍である治療指数を有する。
【0192】
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、免疫モジュレーター(免疫活性化剤および/または自然免疫経路応答の誘導剤として作用する薬物部分を含む)である。一部の実施形態において、遊離治療用部分は、IFN-αの産生を誘導する。一部の実施形態において、遊離治療用部分は、炎症促進性サイトカインの産生を誘導する。一部の実施形態において、遊離治療用部分は、IL-1βの産生を誘導する。一部の実施形態において、遊離治療用部分は、IL-18の産生を誘導する。
【0193】
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、NK細胞、γδT細胞、およびCD8+ T細胞を含むエフェクター細胞の拡大および生存を促進する。
【0194】
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、損傷関連分子パターンの分子である。一部の実施形態において、遊離治療用部分は、病原体関連分子パターンの分子である。
【0195】
本明細書における使用のための治療用部分は、例えば、公式米国薬局方、公式HPUS(Homeopathic Pharmacopeia of the United States)、公式NF(National Formulary)、またはこれらの任意の補遺において認知された治療用部分を含み、低分子化学物質/薬物、ポリヌクレオチド(例えば、miRNA、siRNA、shRNA、およびアンチセンスRNAなどのRNA干渉分子)、およびポリペプチド(例えば、抗体)を含むがこれらに限定されない。本明細書において提示される通りに使用されうる、治療用分子のクラスは、組換えタンパク質、抗体、細胞傷害剤、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生剤、増殖因子[例えば、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ケラチノサイト増殖因子)]、サイトカイン、ケモカイン、インターフェロン(例えば、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ)、血液因子[例えば、第VIII因子、第VIIa(Vila)因子、第IX因子、トロンビン、アンチトロンビン]、有糸分裂阻害剤、毒素、アポトーシス剤、(例えば、DNAアルキル化剤)、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘導剤、白金化合物、代謝拮抗剤、ビンカアルカロイド(vincalkaloids)、タキサン、エポチオロン、酵素阻害剤、受容体アンタゴニスト、チロシンキナーゼ阻害剤、放射線増感剤、化学療法組合せ療法、受容体トラップ、受容体リガンド、血管新生薬剤、抗血管新生薬剤、抗凝固剤および血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子、ヒルジン、プロテインC)、神経伝達物質、赤血球産生刺激剤、インスリン、成長ホルモン[例えば、ヒト成長ホルモン(hGH)、濾胞刺激ホルモン]、代謝ホルモン(例えば、インクレチン)、組換えIL-1受容体アンタゴニスト、および二特異性T細胞エンゲージング分子[BITE(登録商標)]を含むがこれらに限定されない。
【0196】
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、環状ジヌクレオチドである。一部の実施形態において、遊離薬物部分は、ADU-S100である。一部の実施形態において、遊離薬物部分は、がん関連線維芽細胞(CAF)に対して、細胞毒性である。
【0197】
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、腫瘍関連マクロファージ集団を、M1マクロファージへと分極させ、かつ/またはM2マクロファージの免疫抑制活性を阻害する。
【0198】
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、T細胞プライミングおよび/または樹状細胞トラフィッキングを加速化させる。
【0199】
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、免疫抑制機能またはリンパ節および/もしくは腫瘍微小環境への遊走を遮断することなどにより、Treg細胞を阻害するか、またはこれを枯渇させる。
【0200】
一部の実施形態において、治療用部分は、化学療法薬部分である。化学療法薬部分の例は、白金ベースの薬物(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、スピロプラチン、イプロプラチン、サトラプラチンなど)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、クロランブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、およびニトロソウレア)、代謝拮抗剤[例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、アザチオプリン、メトトレキサート、ロイコボリン、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、およびラルチトレキセド]、植物アルカロイド[例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセル(タキソール)、およびドセタキセル]、トポイソメラーゼ阻害剤{例えば、イリノテカン[CPT-II(CPT-l l);Camptosar]、トポテカン、アムサクリン、エトポシド(VP16)、エトポシドリン酸、およびテニポシド}、抗腫瘍抗生剤(例えば、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、およびプリカマイシン)、チロシンキナーゼ阻害剤[例えば、ゲフィチニブ(gefltinib)[IRESSA(登録商標)]、スニチニブ[SUTENT(登録商標);SU11248]、エルロチニブ[TARCEVA(登録商標);OSI-1774]、ラパチニブ(GW572016;GW2016)、カネルチニブ(CI1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY43-9006)、イマチニブ[GLEEVEC(登録商標);STI571]、ダサチニブ(BMS-354825)、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ[ZACTIMA(商標);ZD6474]、薬学的に許容されるこれらの塩、これらの立体異性体、これらの誘導体、これらの類似体、およびこれらの組合せを含むがこれらに限定されない。
【0201】
治療用部分の、他の非限定例については、参照により本明細書に組み込まれる、WO2019/236567において提示されている。
【0202】
タキサン/タキソイド
一部の実施形態において、治療用部分は、タキサンである。タキサンは、ジテルペンのクラスである。タキサンクラスの薬物の、主要な作用機構は、微小管機能の破壊である。微小管は、細胞分裂に不可欠であり、タキサンは、微小管内のGDP結合型チューブリンを安定化させ、これにより、脱重合が阻止されるので、細胞分裂過程を阻害する。したがって、本質的に、タキサンは、有糸分裂阻害剤である。タキサンと対照的に、ビンカアルカロイドは、チューブリン重合の阻害を介して、有糸分裂紡錘体の形成を阻止する。したがって、タキサンおよびビンカアルカロイドのいずれも、紡錘体毒または有糸分裂毒と名付けられるが、異なる方式において作用する。タキサンはまた、放射線増感性であるとも考えられる。タキサンの非限定例は、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む。
【0203】
白金ベースの薬剤
一部の実施形態において、治療用部分は、白金ベースの薬剤である。白金ベースの抗新生物薬(非公式に、プラチンと呼ばれる)は、典型的に、がんを処置するのに使用される化学療法剤である。白金ベースの抗新生物剤は、単一付加体としてのDNAの架橋、鎖間架橋、鎖内架橋、またはDNA-タンパク質間架橋を引き起こす。大半において、白金ベースの抗新生物剤は、隣接する、グアニンのN7位に作用し、1,2鎖内架橋を形成する。結果として得られる架橋は、がん細胞内のDNAの修復および/またはDNAの合成を阻害する。白金ベースの抗新生物剤は、場合によって、アルキル基を有さないが、アルキル化抗新生物剤と同様の効果のために、「アルキル化様」抗新生物剤として記載される。白金ベースの薬剤の非限定例は、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、ピコプラチン、フェナントリプラチン、トリプラチン、スピロプラチン、サトラプラチン、イプロプラチン、およびサトラプラチンを含む。
【0204】
プロテアソーム阻害剤
一部の実施形態において、治療用部分は、プロテアソーム阻害剤である。プロテアソーム阻害剤は、タンパク質を分解する細胞内複合体である、プロテアソームの作用を遮断する薬物である。複数の機構が関与する可能性があるが、プロテアソームの阻害は、アポトーシス促進経路の抑制に依存する、新生物性細胞内におけるプログラム細胞死の活性化を可能とする、p53タンパク質などのアポトーシス促進因子の分解を防止しうる。例えば、ボルテゾミブは、細胞内ペプチドレベルの、急速かつ劇的な変化を引き起こす。プロテアソーム阻害剤の非限定例は、ボルテゾミブ、ラクタシスチン、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガレート、マリゾミブ(サリノスポラミドA)、オプロゾミブ(ONX-0912)、デランゾミブ(CEP-18770)、エポキソミシン、およびベータ-ヒドロキシベータ-メチルブチレートを含む。
【0205】
例示的なプロテアソーム阻害剤は、
【化15】

【化16】
を含む。
【0206】
toll様受容体アゴニスト
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、TLR1/2アゴニスト、TLR2アゴニスト、TLR3アゴニスト、TLR4アゴニスト、TLR5アゴニスト、TLR6/2アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR7/8アゴニスト、TLR7/9アゴニスト、TLR8アゴニスト、TLR9アゴニスト、およびTLR11アゴニストからなる群から選択されるTLRアゴニストなどのtoll様受容体(TLR)アゴニストであり、例えば、TLR3アゴニスト、TLR7アゴニスト、TLR7/8アゴニスト、およびTLR9アゴニストからなる群から選択されるTLRアゴニストである。toll様受容体(TLR)アゴニストは、自然免疫応答および獲得免疫応答のいずれの活性化にも関与する。大半のTLRアゴニストは、樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)を活性化させ、T細胞と相互作用する。TLRは、自然免疫にとって中心的であり、TLRアゴニストは、TLR活性を増強し、これと関連して、自然免疫応答を活性化させるのに使用されている。TLRアゴニストは、典型的に、CpGジヌクレオチドモチーフを含む、短い合成一本鎖DNAの連なりである。
【0207】
toll様受容体(TLR)アゴニストの例は、TLR1/2アゴニスト、TLR2アゴニスト、TLR3アゴニスト(例えば、PolyTC)、TLR4アゴニスト(例えば、S型リポ多糖、パクリタキセル、リピドA、およびモノホスホリルリピドA)、TLR5アゴニスト(例えば、フラジェリン)、TLR6/2アゴニスト(例えば、MALP-2)、TLR7アゴニスト、TLR7/8アゴニスト(例えば、ガルジキモド、イミキモド、ロキソリビン、およびレシキモド(R848))、TLR7/9アゴニスト(例えば、ヒドロキシクロロキンスルフェート)、TLR8アゴニスト(例えば、モトリモド(VTX-2337))、TLR9アゴニスト(例えば、CpG-ODN)、およびTLR11アゴニスト(例えば、プロフィリン)を含むがこれらに限定されない。
【0208】
コンジュゲート内の治療用部分として使用されうる、TLRアゴニストの例は、S-27609、CL307、UC-IV150、イミキモド、ガルジキモド、レシキモド、モトリモド、VTS-1463GS-9620、GSK2245035、TMX-101、TMX-201、TMX-202、イサトリビン、AZD8848、MEDI9197、3M-051、3M-852、3M-052、3M-854A、S-34240、KU34B、またはCL663、または、適宜、連結の方向付けおよび基質認識配列からの放出に適切な官能基を伴うか、もしくは自壊性リンカーへの連結を介する、その類似体を含む。
【0209】
TLRのアゴニスト、特に、TLR7アゴニスト、TLR8アゴニスト、およびTLR7/8アゴニストの例は、イサトリビン、ロキソリビン、ブロピリミン、イミキモド、レシキモド、ガルジキモド、CL097、3M-002、R848、SM360320、CL264、3M-003、IMDQ、PF-04878691、モトリモド(VTX-2337)、およびGSK2245035を含む。前出のTLRアゴニストの化学構造について、例えば、2019年12月12日に公開された、国際公開第WO2019/236567号を参照されたい。
【0210】
一部の実施形態において、治療用部分は、一般式:
【化17】
[式中、
Xは、CH、O、S、またはN、例えば、CH、O、またはNであり;
nは、0(Nから、Oへの、直接的結合)、または1~5、例えば、1もしくは2の整数であり;zは、1~5の整数であり;
mは、1~20、例えば、1~16の整数であり;
pは、0(環から、Xへの、直接的結合)、または1~5、例えば、1もしくは2の整数であり;qは、1~5、例えば、1または2の整数である]で表される、TRL7/8アゴニストである。例えば、TRLアゴニストは、
【化18】
のうちの1つなどのTRL7/8アゴニストである。
【0211】
国際公開第WO2008/135791号および同第WO2016/141092号はまた、TLR7を介して作用する、免疫モジュレーティング特性を有する、イミダゾキノリン化合物のクラスについても記載している。
【0212】
コンジュゲートの治療用部分としての使用のためにたやすく適合させられる、TRLアゴニストの他の例については、例えば、Yoo et al. “Structure-activity relationships in Toll-like receptor 7 agonistic lH-imidazo[4,5- cjpyridines” Org. Biomol. Chem., 2013, 11, 6526-6545;Fletcher et al. “Masked oral prodrugs of Toll-like receptor 7 agonists: a new approach for the treatment of infectious disease”, 2006 Current opinion in investigational drugs (London, England). 7. 702-708;およびPryde et al. “The discovery of a novel prototype small molecule TLR7 agonist for the treatment of hepatitis C virus infection” Med. Chem. Commun., 2011, 2, 185-189において開示されている。
【0213】
本開示に従う使用のための、他のTLRアゴニストの非限定例については、参照により本明細書に組み込まれる、2019年12月12日に公開された、国際公開第WO2019/236567号において記載されている。
【0214】
当業者により、特に、自壊性リンカーの使用に関して、TRLアゴニストが、例えば、遊離ヒドロキシル基を介するなど、上記において示された、アミン以外の官能基を介して、リンカーへとカップリングされうることもまた理解されるであろう。
【0215】
RIG-I(retinoic acid-inducible gene I)アゴニスト
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、RIG-1アゴニストである。RIG-I(retinoic acid-inducible gene I)アゴニストは、自然免疫応答を誘導するのに使用される。RIG-Iは、1型インターフェロン(IFN1)応答の一因となる。活性化すると、RIG-Iは、ピロトーシス、プログラム細胞死の免疫原性機構のほか、炎症促進性サイトカインの誘導をもたらす、そのRIG-Iインフラマソームを活性化させる(Elion et al., Oncotarget. 2018; 9(48): 29007-29017)。ピロトーシスは、低張性の細胞膨張、およびDAMP(damage associated molecular pattern)を含む、細胞内内容物の漏出をもたらす、細胞膜内の小孔の形成を結果としてもたらす。DAMPおよびサイトカインは、局所的な急性炎症性免疫応答をもたらす。
【0216】
RIG-Iアゴニストの例は、KIN700、KIN1148、KIN600、KIN500、KIN100、KIN101、KIN400、KIN2000、RGT100、およびSD-9200を含む。
【0217】
本開示に従う使用のための、他のRIG-Iアゴニストの非限定例については、参照により本明細書に組み込まれる、2019年12月12日に公開された、国際公開第WO2019/236567号において記載されている。
【0218】
iDASH阻害剤
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、インビトロ(in vitro)および/またはインビボにおいて、DPP8およびDPP9の酵素活性を阻害し、マクロファージのピロトーシスを誘導する、免疫DASH阻害剤である。iDASH阻害剤は、プロリン後切断型酵素である、DPP4、DPP8、およびDPP9の阻害剤であり、DASH酵素を伴う、免疫チェックポイントに対する、チェックポイント阻害剤として作用する。細胞内標的および細胞外標的の両方を含む、これらの標的酵素の阻害は、T細胞の細胞傷害作用(がん細胞の死を結果としてもたらす、がん細胞抗原の放出)の増大、樹状細胞のトラフィッキング(がん抗原の提示)の増大、免疫刺激性サイトカイン(APCおよびT細胞のプライミングおよび活性化)の増大、腫瘍内CXCL10の半減期(T細胞の、腫瘍へのトラフィッキング)の増大、T細胞の、腫瘍への浸潤、T細胞による、がん細胞の認識、および骨髄由来抑制細胞(MDSC)による、MDSC免疫抑制活性の枯渇化および不全化を結果としてもたらす。iDASH阻害剤の非限定例については、その全内容が、参照により本明細書に組み込まれる、WO2019/236567において記載されている。
【0219】
一部の実施形態において、iDASH阻害剤は、DASH酵素であるDPP8およびDPP9(かつまた、一部の実施形態において、DPP-4および/またはFAPであってもよい)のボロン酸阻害剤である。
【0220】
一部の実施形態において、iDASH阻害剤は、DASH酵素であるDPP8およびDPP9(かつまた、一部の実施形態において、DPP-4および/またはFAPであってもよい)のジペプチドボロン酸阻害剤である。一部の実施形態において、ジペプチドボロン酸である、iDASH阻害剤は、P1位において、プロリンまたはプロリン類似体を有する。対象のiDASH阻害剤は、免疫媒介機構による腫瘍退縮を媒介しうる。対象のiDASH阻害剤は、マクロファージのピロトーシスを誘導し、直接的に、または間接的に、免疫原性モジュレーションなどの活性をもたらし、抗原特異性CTLによる殺滅へと、腫瘍細胞を感作し、免疫細胞のサブセットおよび機能を変更し、樹状細胞のトラフィッキングのモジュレーションを介して、T細胞プライミングを加速化させ、全般的なT細胞媒介抗腫瘍活性を惹起する。
【0221】
iDASH阻害剤の例は、サキサグリプチン、シタグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン、Valine-boroProline(PT100)、ビルダグリプチン、ゲミグリプチン、アナグリプチン、テネリグリプチン、トレラグリプチン、オマリグリプチン、エボグリプチン、ゴソグリプチン、デュトグリプチンを含む。
【0222】
一部の実施形態において、本開示の方法における使用のための、免疫DASH阻害剤は、一般式:
【化19】
[式中、
Aは、NおよびCα炭素を含む、4~8員複素環を表し;
Zは、CまたはNを表し;
Wは、-CN、-CH=NR5、
【化20】
を表し;
R’1は、そのアミン末端が、L1と共有結合を形成するか、または、L1が、結合である場合、基質認識配列と共有結合を形成する、C末端連結アミノ酸残基もしくはC末端連結アミノ酸類似体、またはC末端連結ペプチドもしくはC末端連結ペプチド類似体を表し;
R’2は、非存在であるか、または環であるAに対する、1つまたは複数の置換であって、その各々が、独立に、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル(カルボキシル、エステル、ホルメート、またはケトンなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、-(CH-R7、-(CH-OH、-(CH-O-低級アルキル、-(CH-O-低級アルケニル、-(CH2)-O-(CH-R7、-(CH-SH、-(CH-S-低級アルキル、-(CH-S-低級アルケニル、-(CH2)-S-(CH-R7でありうる置換を表し;
Xが、Nである場合、R’3は、水素を表し、Xが、Cである場合、R’3は、水素またはハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル(カルボキシル、エステル、ホルメート、またはケトンなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、-(CH-R7、-(CH-OH、-(CH-O-低級アルキル、-(CH-O-低級アルケニル、-(CH2)-O-(CH-R7、-(CH-SH、-(CH-S-低級アルキル、-(CH-S-低級アルケニル、-(CH2)-S-(CH-R7を表し;
R5は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、-C(X1)(X2)X3、-(CH-R7、-(CH-OH、-(CH-O-アルキル、-(CH-O-アルケニル、-(CH-O-アルキニル、-(CH-O-(CH-R7、-(CH-SH、-(CH-S-アルキル、-(CH-S-アルケニル、-(CH-S-アルキニル、-(CH-S-(CH-R7、-C(O)C(O)H2、-C(O)C(O)OR’7を表し;
R6は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、-(CH-R7、-(CH-OH、-(CH-O-低級アルキル、-(CH-O-低級アルケニル、-(CH2)-O-(CH-R7、-(CH-SH、-(CH-S-低級アルキル、-(CH-S-低級アルケニル、-(CH2)-S-(CH-R7を表し;
R7は、出現ごとに、置換アリールもしくは非置換アリール、置換アラルキルもしくは非置換アラルキル、置換シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換シクロアルケニルもしくは非置換シクロアルケニル、または置換複素環もしくは非置換複素環を表し;
R’7は、出現ごとに、水素、あるいは置換アルキルもしくは非置換アルキル、置換アルケニルもしくは非置換アルケニル、置換アリールもしくは非置換アリール、置換アラルキルもしくは非置換アラルキル、置換シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換シクロアルケニルもしくは非置換シクロアルケニル、または置換複素環もしくは非置換複素環を表し;
Y1およびY2は、独立に、または一体に、OH、またはヒドロキシル基へと加水分解されることが可能な基であって、Y1と、Y2とが、環構造(ピナコールなど)内に、5~8個の原子を有する環を介して接続される環状誘導体を含む基であることが可能であり;
R50は、OまたはSを表し;
R51は、N、SH、NH、NO、またはO-R’7を表し;
R52は、水素、低級アルキル、アミン、OR’7、もしくは薬学的に許容される塩を表すか、またはそれらが接合されたリン原子と一体とされた、R51およびR52は、環構造内に、5~8個の原子を有する複素環を補完し;
X1は、ハロゲンを表し;
X2およびX3は、各々、水素またはハロゲンを表し;
mは、ゼロ、または1~8の範囲内の整数であり;
nは、1~8の範囲内の整数である]
により表される。
【0223】
好ましい実施形態において、環であるAは、例えば、式:
【化21】
により表される、5、6、または7員環であり、より好ましくは、5または6員環(例えば、nは、また、3または4でもありうるが、1または2である)である。環は、さらに置換されてもよい。
【0224】
好ましい実施形態において、Wは、
【化22】
を表す。
【0225】
好ましい実施形態において、R’1は、
【化23】
[式中、R36は、小型の疎水性基、例えば、低級アルキルまたはハロゲンであり、R38は、水素であるか、R36と、R37とは、一体に、上記のAについて規定された通り、NおよびCα炭素を含む、4~7員複素環を形成する]
である。
【0226】
好ましい実施形態において、R’2は、非存在であるか、または低級アルキルまたはハロゲンなどの小型の疎水性基を表す。
【0227】
好ましい実施形態において、R’3は、水素、または低級アルキルまたはハロゲンなどの小型の疎水性基である。
【0228】
好ましい実施形態において、R’5は、水素、またはハロゲン化低級アルキルである。
【0229】
好ましい実施形態において、X1は、フッ素であり、X2およびX3は、ハロゲンである場合、フッ素である。
【0230】
前述の化合物のうちのいずれかへと、加水分解的に転換されうる、任意の化合物であって、ボロン酸エステルおよびハロゲン化物、ならびにアセタール、ヘミアセタール、ケタール、およびヘミケタール、ならびに環状ジペプチド類似体を含む、カルボニル同等物を含む化合物もまた、同等物と見なされる。
【0231】
一部の好ましい実施形態において、対象の方法は、免疫DASH阻害剤として、アミノ酸のボロン酸類似体を活用する。例えば、本開示は、対象の方法における、ボロプロリル誘導体の使用を想定する。本開示の、例示的なボロン酸誘導阻害剤は、一般式:
【化24】
[式中、
R’1は、そのアミン末端が、L1と共有結合を形成するか、または、L1が、結合である場合、基質認識配列と共有結合を形成する、C末端連結アミノ酸残基もしくはC末端連結アミノ酸類似体、またはC末端連結ペプチドもしくはC末端連結ペプチド類似体を表し;
R11およびR12は、各々、独立に、水素、アルキル、もしくは薬学的に許容される塩を表すか、またはそれらが接合されたO-B-O原子と一体とされた、R11およびR12は、環構造内に、5~8個の原子を有する複素環を補完する]
により表される。
【0232】
一部の実施形態において、免疫DASH阻害剤は、特異性位置であるP1における、プロリル基またはその類似体と、特異性位置であるP2における、非極性(であり、かつ、好ましくは、疎水性である)アミノ酸、例えば、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、もしくはメチオニン、またはこれらの類似体などの非極性アミノ酸とを含むペプチドまたはペプチド模倣体である。他の実施形態において、P2位は、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸などの帯電側鎖を伴うアミノ酸が占める。例えば、免疫DASH阻害剤は、ジペプチド配列である、Ala-ProもしくはVal-Pro、またはこれらの同等物を含むことが可能であり、一般式:
【化25】
で表されうる。
【0233】
好ましい実施形態において、環であるAは、例えば、式:
【化26】
により表される、5、6、または7員環である。
【0234】
一部の好ましい実施形態において、R32は、小型の疎水性基、例えば、低級アルキルまたはハロゲンである。
【0235】
一部の好ましい実施形態において、R32は、-(CH-NH-C(=N)(NH)、-(CH-NH2、または-(CH-COOH[式中、mは、1~6、好ましくは、1~3である]などの、-低級アルキルグアニジン、-低級アルキルアミン、低級アルキル-C(O)OHである。
【0236】
好ましい実施形態において、R’2は、非存在であるか、または低級アルキルまたはハロゲンなどの小型の疎水性基を表す。
【0237】
好ましい実施形態において、R’3は、水素、または低級アルキルまたはハロゲンなどの小型の疎水性基である。
【0238】
本開示の別の態様は、式III:
【化27】
[式中、
環であるZは、NおよびCα炭素を含む、4~10員複素環を表し;
Wは、-CN、-CH=NR4、標的の活性部位残基と反応する官能基、または
【化28】
を表し;
Xは、OまたはSであり;
X2は、H、ハロゲン、または低級アルキルであり;
Y1およびY2は、独立に、OHであるか、もしくはそれらが接合されたホウ素原子と一体に、ボロン酸へと加水分解可能な基を表すか、またはそれらが接合されたホウ素原子と一体に、ボロン酸へと加水分解可能な5~8員環を形成し;
R1は、独立に、出現ごとに、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル、チオカルボニル、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、-CF、-(CH-R3、-(CHOH、-(CH-O-低級アルキル、-(CH-O-低級アルケニル、-(CH-O-(CH-R3、-(CH-SH、-(CH-S-低級アルキル、-(CH-S-低級アルケニル、または-(CH-S-(CH-R3を表し;
R2は、出現ごとに、水素、低級アルキル、低級アルキニル、-(CH-R3、-C(=O)-アルキル、-C(=O)-アルケニル、-C(=O)-アルキニル、または-C(=O)-(CH-R3を表し;
R3は、出現ごとに、水素、あるいは置換低級アルキルもしくは非置換低級アルキル、置換低級アルケニルもしくは非置換アルケニル、置換アリールもしくは非置換アリール、置換アラルキルもしくは非置換アラルキル、置換シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換シクロアルケニルもしくは非置換シクロアルケニル、または置換複素環もしくは非置換複素環を表し;
R4は、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、-(CH-R3、-(CH-OH、-(CH-O-低級アルキル、-(CH-O-アルケニル、-(CH-O-アルキニル、-(CH-O-(CH-R7、-(CH-SH、-(CH-S-低級アルキル、-(CH-S-低級アルケニル、-(CH-S-低級アルキニル、-(CH-S-(CH-R3、-C(O)C(O)NH、または-C(O)C(O)OR8を表し;
R5は、OまたはSを表し;
R6は、N3、SH、NH2、NO2、またはOR8を表し;
R7は、水素、低級アルキル、アミン、OR8、もしくは薬学的に許容される塩を表すか、またはそれらが接合されたリン原子と一体とされた、R5およびR6は、環構造内に、5~8個の原子を有する複素環を補完し;
R8は、水素、置換アルキルもしくは非置換アルキル、置換アルケニルもしくは非置換アルケニル、置換アリールもしくは非置換アリール、置換アラルキルもしくは非置換アラルキル、置換シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換シクロアルケニルもしくは非置換シクロアルケニル、または置換ヘテロシクリルもしくは非置換ヘテロシクリルを表し;
R10は、非存在であるか、またはそれらが付加される環であるZに対する、1つ~3つの置換であって、それらの各々が、独立に、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル(カルボキシル、エステル、ホルメート、またはケトンなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、イソシアノ、チオシアナト、イソチオシアナト、シアナト、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、低級アルキル-C(O)OH、-O-低級アルキル-C(O)OH、-グアニジニル;-(CH-R7、-(CH-OH、-(CH-O-低級アルキル、-(CH-O-低級アルケニル、-(CH-O-(CH-R3、-(CH-SH、-(CH-S-低級アルキル、-(CH-S-低級アルケニル、-(CH-S-(CH-R3でありうる置換を表し;
nは、0、1、2、または3であり;
mは、0、1、2、または3である]
により表される、免疫DASH阻害剤、またはその薬学的塩に関する。
【0239】
本開示の別の態様は、式IV:
【化29】
[式中、
環であるAは、Nを含む、3~10員環構造を表し;
環であるZは、NおよびCα炭素を含む、4~10員複素環を表し;
Wは、-CN、-CH=NR4、標的の活性部位残基と反応する官能基、または
【化30】
を表し;
Xは、OまたはSであり;
X1は、ハロゲンを表し;
Y1およびY2は、独立に、OHであるか、もしくはそれらが接合されたホウ素原子と一体に、ボロン酸へと加水分解可能な基を表すか、またはそれらが接合されたホウ素原子と一体に、ボロン酸へと加水分解可能な5~8員環を形成し;
R1は、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル、チオカルボニル、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、-CF3、-(CH2)m-R3、-(CH2)mOH、-(CH2)m-O-低級アルキル、-(CH2)m-O-低級アルケニル、-(CH2)n-O-(CH2)m-R3、-(CH2)m-SH、-(CH2)m-S-低級アルキル、-(CH2)m-S-低級アルケニル、または-(CH2)n-S-(CH2)m-R3を表し;
R2は、出現ごとに、水素、低級アルキル、低級アルキニル、-(CH2)-R3、-C(=O)-アルキル、-C(=O)-アルケニル、-C(=O)-アルキニル、または-C(=O)-(CH2)-R3を表し;
R3は、出現ごとに、水素、あるいは置換低級アルキルもしくは非置換低級アルキル、置換低級アルケニルもしくは非置換アルケニル、置換アリールもしくは非置換アリール、置換アラルキルもしくは非置換アラルキル、置換シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換シクロアルケニルもしくは非置換シクロアルケニル、または置換複素環もしくは非置換複素環を表し;
R4は、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、-(CH2)-R3、-(CH2)-OH、-(CH2)-O-低級アルキル、-(CH2)-O-アルケニル、-(CH2)-O-アルキニル、-(CH2)-O-(CH2)-R7、-(CH2)-SH、-(CH2)-S-低級アルキル、-(CH2)-S-低級アルケニル、-(CH2)-S-低級アルキニル、-(CH2)-S-(CH2)-R3、-C(O)C(O)NH2、または-C(O)C(O)OR8を表し;
R5は、OまたはSを表し;
R6は、N3、SH、NH2、NO2、またはOR8を表し;
R7は、水素、低級アルキル、アミン、OR8、もしくは薬学的に許容される塩を表すか、またはそれらが接合されたリン原子と一体とされた、R5およびR6は、環構造内に、5~8個の原子を有する複素環を補完し;
R8は、水素、置換アルキルもしくは非置換アルキル、置換アルケニルもしくは非置換アルケニル、置換アリールもしくは非置換アリール、置換アラルキルもしくは非置換アラルキル、置換シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換シクロアルケニルもしくは非置換シクロアルケニル、または置換ヘテロシクリルもしくは非置換ヘテロシクリルを表し;
R9およびR10は、各々、独立に、非存在であるか、またはそれらが付加される環であるAまたは環であるZに対する、1つ~3つの置換であって、それらの各々が、独立に、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル(カルボキシル、エステル、ホルメート、またはケトンなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、イソシアノ、チオシアナト、イソチオシアナト、シアナト、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、-(CH2)m-R7、-(CH2)m-OH、-(CH2)m-O-低級アルキル、-(CH2)m-O-低級アルケニル、-(CH2)n-O-(CH2)m-R3、-(CH2)m-SH、-(CH2)m-S-低級アルキル、-(CH2)m-S-低級アルケニル、-(CH2)n-S-(CH2)m-R3でありうる置換を表し;
nは、0、1、2、または3であり;
mは、0、1、2、または3である]
により表される、免疫DASH阻害剤、またはその薬学的塩に関する。
【0240】
一部の好ましい実施形態において、免疫DASH阻害剤は、DASH酵素であるDPP8およびDPP9(かつまた、DPP-4および/またはFAPであってもよい)のボロン酸阻害剤である。
【0241】
一部の好ましい実施形態において、免疫DASH阻害剤は、DASH酵素であるDPP8およびDPP9(かつまた、DPP-4および/またはFAPであってもよい)のジペプチドボロン酸阻害剤である。一部の好ましい実施形態において、ジペプチドボロン酸である、免疫DASH阻害剤は、P1位において、プロリンまたはプロリン類似体を有する。対象の免疫DASH阻害剤は、免疫媒介機構による腫瘍退縮を媒介しうる。対象の免疫DASH阻害剤は、マクロファージのピロトーシスを誘導し、直接的に、または間接的に、免疫原性モジュレーションなどの活性をもたらし、抗原特異性CTLによる殺滅へと、腫瘍細胞を感作し、免疫細胞のサブセットおよび機能を変更し、樹状細胞のトラフィッキングのモジュレーションを介して、T細胞プライミングを加速化させ、全般的なT細胞媒介抗腫瘍活性を惹起する。
【0242】
一部の実施形態において、対象の、免疫DASH阻害剤と、PD-1阻害剤との組合せは、1つまたは複数の他の化学療法剤、免疫腫瘍治療剤、または放射線を伴う治療の一部として投与されうる。組合せはまた、腫瘍ワクチン、養子細胞療法、遺伝子治療、腫瘍溶解性ウイルス療法などを含む治療の一部としても使用されうる。
【0243】
一部の実施形態において、本方法の免疫DASH阻害剤は、式I:
【化31】
[式中、
環であるAは、3~10員環構造を表し;
環であるZは、NおよびCα炭素を含む、4~10員複素環を表し;
Wは、-CN、-CH=NR4、標的の活性部位残基と反応する官能基、または
【化32】
を表し;
Xは、OまたはSであり;
X1は、ハロゲンを表し;
Y1およびY2は、独立に、OHであるか、もしくはそれらが接合されたホウ素原子と一体に、ボロン酸へと加水分解可能な基を表すか、またはそれらが接合されたホウ素原子と一体に、ボロン酸へと加水分解可能な5~8員環を形成し;
R1は、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル、チオカルボニル、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、-CF3、-(CH2)m-R3、-(CH2)mOH、-(CH2)m-O-低級アルキル、-(CH2)m-O-低級アルケニル、-(CH2)n-O-(CH2)m-R3、-(CH2)m-SH、-(CH2)m-S-低級アルキル、-(CH2)m-S-低級アルケニル、または-(CH2)n-S-(CH2)m-R3を表し;
R2は、出現ごとに、水素、低級アルキル、低級アルキニル、-(CH2)-R3、-C(=O)-アルキル、-C(=O)-アルケニル、-C(=O)-アルキニル、または-C(=O)-(CH2)-R3を表し;
R3は、出現ごとに、水素、あるいは置換低級アルキルもしくは非置換低級アルキル、置換低級アルケニルもしくは非置換アルケニル、置換アリールもしくは非置換アリール、置換アラルキルもしくは非置換アラルキル、置換シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換シクロアルケニルもしくは非置換シクロアルケニル、または置換複素環もしくは非置換複素環を表し;
R4は、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、-(CH2)-R3、-(CH2)-OH、-(CH2)-O-低級アルキル、-(CH2)-O-アルケニル、-(CH2)-O-アルキニル、-(CH2)-O-(CH2)-R7、-(CH2)-SH、-(CH2)-S-低級アルキル、-(CH2)-S-低級アルケニル、-(CH2)-S-低級アルキニル、-(CH2)-S-(CH2)-R3、-C(O)C(O)NH2、または-C(O)C(O)OR8を表し;
R5は、OまたはSを表し;
R6は、N3、SH、NH2、NO2、またはOR8を表し;
R7は、水素、低級アルキル、アミン、OR8、もしくは薬学的に許容される塩を表すか、またはそれらが接合されたリン原子と一体とされた、R5およびR6は、環構造内に、5~8個の原子を有する複素環を補完し;
R8は、水素、置換アルキルもしくは非置換アルキル、置換アルケニルもしくは非置換アルケニル、置換アリールもしくは非置換アリール、置換アラルキルもしくは非置換アラルキル、置換シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換シクロアルケニルもしくは非置換シクロアルケニル、または置換ヘテロシクリルもしくは非置換ヘテロシクリルを表し;
R9およびR10は、各々、独立に、非存在であるか、またはそれらが付加される環であるAまたは環であるZに対する、1つ、2つ、もしくは3つの置換であって、それらの各々が、独立に、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル(カルボキシル、エステル、ホルメート、またはケトンなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、イソシアノ、チオシアナト、イソチオシアナト、シアナト、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、低級アルキル-C(O)OH、-O-低級アルキル-C(O)OH、-グアニジニル;-(CH2)-R7、-(CH2)-OH、-(CH2)-O-低級アルキル、-(CH2)-O-低級アルケニル、-(CH2)-O-(CH2)-R3、-(CH2)-SH、-(CH2)-S-低級アルキル、-(CH2)-S-低級アルケニル、-(CH2)-S-(CH2)-R3でありうる置換を表し;
nは、0、1、2、または3であり;
mは、0、1、2、または3である]
で表されるか、またはその薬学的塩である。
【0244】
一部の実施形態において、式Iの免疫DASH阻害剤は、式Ia:
【化33】
[式中、X、W、Z、R1、R2、R9、およびR10は、式Iについて、上記において規定された通りであり、pは、1、2、または3である]
で表されるか、またはその薬学的塩である。
【0245】
式Iaについての、一部の好ましい実施形態において、R1は、低級アルキルであり;R9は、非存在であるか、または、独立に、出現ごとに、低級アルキル、-OH、-NH2、-N3、-低級アルキル-C(O)OH、-O-低級アルキル、-O-低級アルキル-C(O)OH、-グアニジニルであり;Xは、Oであり;各R2は、水素であり;R10は、非存在であるか、または-OH、-NH2、-CN、または-N3の単一置換を表し;Wは、-B(OH)2または-CN(かつ、より好ましくは、-B(OH)2)である。
【0246】
一部の実施形態において、式Iの免疫DASH阻害剤は、式Ib:
【化34】
[式中、X、W、R1、R2、R9、およびR10は、式Iについて、上記において規定された通りであり、pは、1、2、または3である]
で表されるか、またはその薬学的塩である。
【0247】
式Ibについての、一部の好ましい実施形態において、R1は、低級アルキルであり;R9は、非存在であるか、または、独立に、出現ごとに、低級アルキル、-OH、-NH2、-N3、-低級アルキル-C(O)OH、-O-低級アルキル、-O-低級アルキル-C(O)OH、-グアニジニルであり;Xは、Oであり;各R2は、水素であり;R10は、非存在であるか、または-OH、-NH2、-CN、または-N3の単一置換を表し;Wは、-B(OH)2または-CN(かつ、より好ましくは、-B(OH)2)である。
【0248】
一部の実施形態において、式Iの免疫DASH阻害剤は、式Ic:
【化35】
[式中、X、W、R1、R2、R9、およびR10は、式Iについて、上記において規定された通りであり、pは、1、2、または3である]
で表されるか、またはその薬学的塩である。
【0249】
式Icについての、一部の好ましい実施形態において、R1は、低級アルキルであり;R9は、非存在であるか、または、独立に、出現ごとに、低級アルキル、-OH、-NH2、-N3、-低級アルキル-C(O)OH、-O-低級アルキル、-O-低級アルキル-C(O)OH、-グアニジニルであり;Xは、Oであり;各R2は、水素であり;R10は、非存在であるか、または-OH、-NH2、-CN、または-N3の単一置換を表し;Wは、-B(OH)2または-CN(かつ、より好ましくは、-B(OH)2)である。
【0250】
一部の実施形態において、免疫DASH阻害剤は、
【化36】
により表される。
【0251】
本開示の別の態様は、式II:
【化37】
[式中、
環であるAは、R1aの各生起と共に、7~12員多環式環構造を表し;
環であるZは、NおよびCα炭素を含む、4~10員複素環を表し;
Wは、-CN、-CH=NR4、標的の活性部位残基と反応する官能基、または
【化38】
を表し;
Xは、OまたはSであり;
X1は、ハロゲンを表し;
Yは、CまたはNであり;
Y1およびY2は、独立に、OHであるか、もしくはそれらが接合されたホウ素原子と一体に、ボロン酸へと加水分解可能な基を表すか、またはそれらが接合されたホウ素原子と一体に、ボロン酸へと加水分解可能な5~8員環を形成し;
R1aは、低級アルキル、-(CH2)m-、-(CH2)m-O-(CH2)m-;-(CH2)m-N-(CH2)m-;または-(CH2)m-S-(CH2)m-を表し;
R2は、出現ごとに、水素、低級アルキル、低級アルキニル、-(CH2)-R3、-C(=O)-アルキル、-C(=O)-アルケニル、-C(=O)-アルキニル、または-C(=O)-(CH2)-R3を表し;
R3は、出現ごとに、水素、あるいは置換低級アルキルもしくは非置換低級アルキル、置換低級アルケニルもしくは非置換アルケニル、置換アリールもしくは非置換アリール、置換アラルキルもしくは非置換アラルキル、置換シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換シクロアルケニルもしくは非置換シクロアルケニル、または置換複素環もしくは非置換複素環を表し;
R4は、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、-(CH2)-R3、-(CH2)-OH、-(CH2)-O-低級アルキル、-(CH2)-O-アルケニル、-(CH2)-O-アルキニル、-(CH2)-O-(CH2)-R7、-(CH2)-SH、-(CH2)-S-低級アルキル、-(CH2)-S-低級アルケニル、-(CH2)-S-低級アルキニル、-(CH2)-S-(CH2)-R3、-C(O)C(O)NH2、または-C(O)C(O)OR8を表し;
R5は、OまたはSを表し;
R6は、N3、SH、NH2、NO2、またはOR8を表し;
R7は、水素、低級アルキル、アミン、OR8、もしくは薬学的に許容される塩を表すか、またはそれらが接合されたリン原子と一体とされた、R5およびR6は、環構造内に、5~8個の原子を有する複素環を補完し;
R8は、水素、置換アルキルもしくは非置換アルキル、置換アルケニルもしくは非置換アルケニル、置換アリールもしくは非置換アリール、置換アラルキルもしくは非置換アラルキル、置換シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換シクロアルケニルもしくは非置換シクロアルケニル、または置換ヘテロシクリルもしくは非置換ヘテロシクリルを表し;
R9およびR10は、各々、独立に、非存在であるか、またはそれらが付加される環であるAまたは環であるZに対する、1つ、2つ、もしくは3つの置換であって、それらの各々が、独立に、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、カルボニル(カルボキシル、エステル、ホルメート、またはケトンなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アミノ、アシルアミノ、アミド、シアノ、イソシアノ、チオシアナト、イソチオシアナト、シアナト、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、低級アルキル-C(O)OH、-O-低級アルキル-C(O)OH、-グアニジニル;-(CH2)-R7、-(CH2)-OH、-(CH2)-O-低級アルキル、-(CH2)-O-低級アルケニル、-(CH2)-O-(CH2)-R3、-(CH2)-SH、-(CH2)-S-低級アルキル、-(CH2)-S-低級アルケニル、-(CH2)-S-(CH2)-R3でありうる置換を表し;
nは、0、1、2、または3であり;
mは、0、1、2、または3であり;
pは、1、2、または3である]
により表される、免疫DASH阻害剤、またはその薬学的塩に関する。
【0252】
一部の実施形態において、式IIの免疫DASH阻害剤は、式IIa:
【化39】
[式中、X、W、Z、R2、R9、およびR10は、式IIについて、上記において規定された通りである]
で表されるか、またはその薬学的塩である。
【0253】
式IIaについての、一部の好ましい実施形態において、R9は、独立に、出現ごとに、低級アルキル、-OH、-NH2、-N3、-低級アルキル-C(O)OH、-O-低級アルキル、-O-低級アルキル-C(O)OH、-グアニジニルであり;Xは、Oであり;各R2は、水素であり;R10は、非存在であるか、または-OH、-NH2、-CN、または-N3の単一置換を表し;Wは、-B(OH)2または-CN(かつ、より好ましくは、-B(OH)2)である。
【0254】
一部の実施形態において、式IIの免疫DASH阻害剤は、式IIb:
【化40】
[式中、X、W、R2、R9、およびR10は、式IIについて、上記において規定された通りである]
で表されるか、またはその薬学的塩である。
【0255】
式IIbについての、一部の好ましい実施形態において、R9は、独立に、出現ごとに、低級アルキル、-OH、-NH2、-N3、-低級アルキル-C(O)OH、-O-低級アルキル、-O-低級アルキル-C(O)OH、-グアニジニルであり;Xは、Oであり;各R2は、水素であり;R10は、非存在であるか、または-OH、-NH2、-CN、または-N3の単一置換を表し;Wは、-B(OH)2または-CN(かつ、より好ましくは、-B(OH)2)である。
【0256】
一部の実施形態において、式IIの免疫DASH阻害剤は、式IIc:
【化41】
[式中、X、W、R2、R9、およびR10は、式IIについて、上記において規定された通りである]
で表されるか、またはその薬学的塩である。
【0257】
式IIcについての、一部の好ましい実施形態において、R9は、独立に、出現ごとに、低級アルキル、-OH、-NH2、-N3、-低級アルキル-C(O)OH、-O-低級アルキル、-O-低級アルキル-C(O)OH、-グアニジニルであり;Xは、Oであり;各R2は、水素であり;R10は、非存在であるか、または-OH、-NH2、-CN、または-N3の単一置換を表し;Wは、-B(OH)2または-CN(かつ、より好ましくは、-B(OH)2)である。
【0258】
一部の実施形態において、式IIの免疫DASH阻害剤は、式IId:
【化42】
[式中、X、W、R2、R9、およびR10は、式IIについて、上記において規定された通りである]
で表されるか、またはその薬学的塩である。
【0259】
式IIdについての、一部の好ましい実施形態において、R9は、独立に、出現ごとに、低級アルキル、-OH、-NH2、-N3、-低級アルキル-C(O)OH、-O-低級アルキル、-O-低級アルキル-C(O)OH、-グアニジニルであり;Xは、Oであり;各R2は、水素であり;R10は、非存在であるか、または-OH、-NH2、-CN、または-N3の単一置換を表し;Wは、-B(OH)2または-CN(かつ、より好ましくは、-B(OH)2)である。
【0260】
一部の実施形態において、式IIの免疫DASH阻害剤は、式IIe:
【化43】
[式中、X、W、Z、R2、R9、およびR10は、式IIについて、上記において規定された通りである]
で表されるか、またはその薬学的塩である。
【0261】
式IIeについての、一部の好ましい実施形態において、R9は、独立に、出現ごとに、低級アルキル、-OH、-NH2、-N3、-低級アルキル-C(O)OH、-O-低級アルキル、-O-低級アルキル-C(O)OH、-グアニジニルであり;Xは、Oであり;各R2は、水素であり;R10は、非存在であるか、または-OH、-NH2、-CN、または-N3の単一置換を表し;Zは、ピロリジン環またはピペリジン環(かつ、より好ましくは、ピロリジン環)であり;Wは、-B(OH)2または-CN(かつ、より好ましくは、-B(OH)2)である。
【0262】
一部の実施形態において、免疫DASH阻害剤は、以下:
【化44】
のうちの1つである。
【0263】
本開示に従う使用のための、他のiDASH阻害剤の非限定例については、参照により本明細書に組み込まれる、2019年12月12日に公開された、国際公開第WO2019/236567号において記載されている。
【0264】
STING(stimulator of interferon genes protein)アゴニスト
一部の実施形態において、遊離治療用部分は、STINGアゴニストである。STING(stimulator of interferon genes protein)アゴニストは、STINGに結合し、IκK関連キナーゼである、TANK結合性キナーゼ1(TBK1)によるシグナル伝達を促進する、STING経路を活性化させる。TBK1シグナル伝達は、腫瘍微小環境内の免疫細胞内の、核因子カッパB(NF-kB)およびインターフェロン調節的因子3(IRF3)を活性化させる。これらの活性化は、インターフェロン(IFN)を含む、炎症促進性サイトカインの産生をもたらす。IFN-ベータの発現は、CD8α+樹状細胞およびCD103+樹状細胞による、腫瘍関連抗原の、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)への交差提示を促進する。これは、腫瘍細胞に対するCTL媒介免疫応答を結果としてもたらし、腫瘍細胞溶解を引き起こす。
【0265】
STINGアゴニストは、例えば、修飾ヌクレオ塩基、修飾リボース、または修飾リン酸連結を含む、修飾環状ジヌクレオチドなどの環状ジヌクレオチドおよびその誘導体を含む。一部の実施形態において、修飾環状ジヌクレオチドは、修飾リン酸連結、例えば、チオリン酸を含む。一部の実施形態において、STINGアゴニストは、2’,5’リン酸連結または3’,5’リン酸連結を有する、環状ジヌクレオチド(例えば、修飾環状ジヌクレオチド)を含む。一部の実施形態において、STINGアゴニストは、リン酸結合の近傍に、Rp立体化学またはSp立体化学を有する、環状ジヌクレオチドを含む。
【0266】
一部の実施形態において、STINGアゴニストは、Rp、Rpジチオ2’、3’c-ジ-AMP{例えば、Rp、Rp-ジチオc-[A(2’,5’)pA(3’,5’)p]}、またはこれらの環状ジヌクレオチド類似体である。一部の実施形態において、STINGアゴニストは、米国特許公開第US2015/0056224号において記載されている化合物である。一部の実施形態において、STINGアゴニストは、c-[G(2’,5’)pG(3’,5’)p]、そのジチオリボースO置換誘導体である。一部の実施形態において、STINGアゴニストは、c-[A(2’,5’)pA(3’,5’)p]またはそのジチオリボースO置換誘導体である。一部の実施形態において、STINGアゴニストは、c-[G(2’,5’)pA(3’,5’)p]またはそのジチオリボースO置換誘導体である。一部の実施形態において、STINGアゴニストは、2’-O-プロパルギルサイクリック-[A(2’,5’)pA(3’,5’)p](2’-O-プロパルギル-ML-CDA)である。
【0267】
STINGアゴニストはまた、フラボン酢酸(FAA)、キサンテン酢酸(XAA)、ジメチルキサンテノン-4-酢酸(DMXAA)、およびこれらの誘導体を含む、キサンテノンおよびその誘導体も含む。STINGアゴニストの例は、ADU-S100(ML-RR-S2-CDAまたはMIW815)、MK-1454、バジメザン(5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸(DMXAA))、2’3’-cGAMP、c-ジ-GMP、3’3’-cGAMP、およびML-RR-CDAを含む。
【0268】
STINGアゴニストの非限定例は、一般式:
【化45】
[式中、
およびXは、独立に、OまたはSであり、好ましくは、同じ(O、OまたはS、S)であり;
およびXは、独立に、グアニンもしくはグアニン類似体などのプリン、またはピリミジン(pymridine)であり、この場合、波線は、L1への共有結合的接合部位を指し示すか、またはL1は、基質認識配列への結合であり;
およびRは、独立に、H、ヒドロキシル、ハロゲン(好ましくは、FまたはCl)であるか、または炭素1~18個およびヘテロ原子0~3個による、置換直鎖状アルキルでもよく、炭素1~9個による、置換アルケニルでもよく、炭素1~9個による、置換アルキニルでもよく、置換アリールでもよく、この場合、置換(複数可)は、存在する場合、独立に、直鎖状C~Cアルキルまたは分枝鎖状C~Cアルキル、ベンジル、ハロゲン、トリハロメチル、C~Cアルコキシ、-NO、-NH、-OH、=O、-COOR’、または-OR’からなる群から選択されうるが、この場合、RおよびRは、いずれも、Hではなく;
R’は、H、または低級アルキル、-CHOH、もしくは-CONHである]
のうちの1つで表されるアゴニストを含む。
【0269】
一部の実施形態において、STINGアゴニストは、以下の式:
【化46】
のうちの1つで表される。
【0270】
上記のSTINGアゴニスト構造において、XおよびXは、X3またはX4のうちの一方が、Lが自壊性リンカーである場合に、Lが結合を共有する官能基、またはLが(この)結合である場合に、DMが結合を共有する官能基を含むことを条件として、各々、独立に、例えば、9-プリン、9-アデニン、9-グアニン、9-ヒポキサンチン、9-キサンチン、9-尿酸、または9-イソグアニンでありうる。
【0271】
およびXは、同一の場合もあり、異なる場合もある。
【0272】
一部の実施形態において、STINGアゴニストは、主に、Rp,Rp立体異性体またはRp,Sp立体異性体の形態において提供されうる。一部の実施形態において、STINGアゴニストは、主に、Rp,Rp立体異性体の形態において提供されうる。
【0273】
例示的なSTINGアゴニストは、
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
を含む。
【0274】
一部の実施形態において、STINGアゴニストは、以下の構造:
【化51】
のうちの1つで表される。
【0275】
本結合剤コンジュゲート内において、薬物部分として使用されうる、さらに別のSTINGアゴニストは、
【化52】
である。
【0276】
当業者により、特に、自壊性リンカーの使用に関して、STINGアゴニストが、例えば、遊離ヒドロキシル基を介するなど、上記において示された、アミン以外の官能基を介して、リンカーへとカップリングされうることもまた理解されるであろう。
【0277】
本開示に従う使用のためのSTINGアゴニストの非限定例については、参照により本明細書に組み込まれる、2019年12月12日に公開された、国際公開第WO2019/236567号において記載されている。STINGアゴニストの、さらなる例については、国際公開第WO2017/123669号および同第WO2015/077354号のほか、米国特許公開第US2015/0056224号において記載され、それらの各々が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0278】
当業者により、特に、自壊性リンカーの使用に関して、STINGアゴニストが、例えば、遊離ヒドロキシル基を介するなど、上記において示された、アミン以外の官能基を介して、リンカーへとカップリングされうることもまた理解されるであろう。
【0279】
アントラサイクリン
一部の実施形態において、薬物部分は、アントラサイクリンまたはその誘導体、好ましくは、ドキソルビシン、または腫瘍細胞の、免疫原性細胞死を誘導することが可能である、他の類似体である。
【0280】
アントラサイクリンおよびその類似体は、限定せずに述べると、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、バルルビシン、アクラルビシン、ミトキサントロン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、およびマイトマイシンを具体的に含む。例えば、アントラサイクリン部分は、式:
【化53】
[式中、
は、(C~C)アルキル、(C~C)ヒドロキシアルキル、または(C~C)アルカノイルオキシ(C~C)アルキル、特に、メチル、ヒドロキシメチル、ジエトキシアセトキシメチル、またはブチリロキシメチルを表し;
は、水素、ヒドロキシル、または(C~C)アルコキシ、特に、メトキシを表し;
およびRのうちの一方は、水素原子を表し;他方は、水素原子、またはヒドロキシ基もしくはテトラヒドロピラン(tetrahydropyrany)-2-イルオキシ(OTHP)基を表す]
により表されうる。
【0281】
放射性薬剤
一部の実施形態において、治療用部分は、放射性薬剤である。例えば、治療用部分は、放射線療法またはイメージング手順に有用な放射性核種のためのキレート剤を含みうる。本開示中において有用な放射性核種は、ガンマ放射体、陽電子放射体、オージェ電子放射体、X線放射体、および蛍光放射体を含み、ベータ放射体またはアルファ放射体は、治療的使用のための放射性核種である。放射線療法における毒素として有用な放射性核種の例は、43K、47Sc、51Cr、57Co、58Co、59Fe、64Cu、67Ga、67Cu、68Ga、71Ge、75Br、76Br、77Br、77As、81Rb、90Y、97Ru、99mTc、100Pd、101Rh、103Pb、105Rh、109Pd、111Ag、111In、113In、119Sb 121Sn、123I、125I、127Cs、128Ba、129Cs、131I、131Cs、143Pr、153Sm、161Tb、166Ho、169Eu、177Lu、186Re、188Re、189Re、191Os、193Pt、194Ir、197Hg、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Biおよび213Biを含む。キレート剤が、金属を配位させる条件については、例えば、Gansowら、米国特許第4,831,175号、同第4,454,106号、および同第4,472,509号により記載されている。キレート剤の例は、1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N’,N’’-三酢酸(NOTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(TETA)を含む。
【0282】
治療用コンジュゲート組成物および使用法
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、組成物を形成するように、薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化される。一部の実施形態において、FAPα切断型リンカーまたはSRSは、組成物を形成するように、薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化される。分子または他の物質/薬剤は、ヒトを含む動物における使用について、米国連邦政府もしくは州政府の規制機関により承認されるか、もしくは承認可能であるか、または米国薬局方もしくは他の一般に認知された薬局方に収載されている場合、「薬学的に許容される」と考えられる。賦形剤は、治療用コンジュゲートと組み合わせて投与される、任意の不活性(非活性)の非毒性薬剤でありうる。薬学的に許容される賦形剤は、糖類(グルコース、ラクトースなど)、抗微生物剤などの保存剤、復元補助剤、着色剤、生理食塩液(リン酸緩衝生理食塩液など)、および緩衝剤を含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知である、様々な材料を含む。
【0283】
一部の実施形態において、治療用コンジュゲートまたは組成物は、対象へと投与される。対象は、ヒト、非ヒト霊長動物、イヌ科動物、ネコ科動物、および齧歯動物を含むがこれらに限定されない、任意の動物(例えば、哺乳動物)でありうる。「対象」とは、ヒト対象を指す。一部の実施形態において、対象は、がんなどの罹患組織を有する。
【0284】
したがって、治療用コンジュゲートまたは組成物は、がんなどの罹患組織を処置するように、対象へと投与されうる。一部の実施形態において、治療用コンジュゲートは、罹患組織(例えば、がん)を処置するための医薬を製造するのに使用される。がんの非限定例は、皮膚がん(例えば、黒色腫、または基底細胞がんもしくは扁平上皮がんなどの非黒色腫)、肺がん、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、腎[kidney(renal)]がん、膀胱がん、非ホジキンリンパ腫、甲状腺がん、子宮内膜がん、外分泌がん、および膵がんを含む。本明細書において、他のがんも想定される。当技術分野において公知の、「~を処置する」という用語は、疾患(例えば、がん)と関連する、少なくとも1つの症状を緩和する過程を指す。症状は、疾患の、身体的顕在化、精神的顕在化、または病理学的顕在化でありうる。多様な疾患と関連する症状が公知である。特定の状態を処置または防止するために、本明細書において提示される治療用コンジュゲートは、状態を処置または防止するのに使用される、任意の量でありうる、有効量において投与されるものとする。したがって、一部の実施形態において、有効量とは、処置される、特定の疾患と関連する症状を緩和するのに使用される量である。例えば、多様な治療用分子の有効量を決定するための方法が公知である。
【0285】
投与経路は、静脈内経路、筋内経路、腫瘍内経路、腹腔内経路、鼻腔内経路、および皮下経路を含む。他の投与経路も、本開示に包含される。
【0286】
したがって、本開示の治療用コンジュゲートは、静脈内投与、筋内投与、腫瘍内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、または皮下投与のために製剤化されうる。
【実施例
【0287】
実施例1 - 療用コンジュゲートの抗腫瘍活性
FAPα切断型リンカーを介して、タラボスタット(Val-boroPro)とコンジュゲートされたFcを含む治療用コンジュゲートを作出し、マウス結腸がんのために使用され、FAPα遺伝子をノックインされた同系モデルである、CT26-mFAP+マウスへと注射した。マウスにおける腫瘍容量は、20日間にわたり、9回測定した。図2において見られうる通り、治療用コンジュゲートを注射されたマウス(「SQT-Gly」群)は、腫瘍容量が、細胞結合性部分を含む治療用コンジュゲートを注射された、それらの対応マウスの一部(「AVA04-182」群)、および対照より小さかった。理論に束縛されることは望まないが、AVA04-182群は、SQT-Gly群と同様に、抗薬物抗体により除去されたため、働かなかったと考えられる。
【0288】
薬物動態研究もまた企図した。治療用コンジュゲートはまた、異なる用量においても注射し、遊離タラボスタットの量を、50時間にわたり測定した。図3において見られうる通り、治療用コンジュゲートは、FAPにより放出されたiDASH阻害剤への、優先的な腫瘍内曝露を示す。
【0289】
実施例2 - EC50研究
タラボスタット単独を投与されたマウスおよびラット(図4A)と、タラボスタットを含む治療用コンジュゲートを投与されたマウスおよびラット(図4B)との差違について検討するために、50%有効濃度(EC50)研究を企図した。タラボスタットが、単独において投与される場合、タラボスタットの最大耐量(MTD)は、マウス腫瘍モデルにおいて、約3mg/mであり、ラットにおいて、0.18mg/mである。すなわち、タラボスタットのMTDは、腫瘍モデルのEC50の1/17である(図4A)。これに対し、タラボスタットが、治療用コンジュゲートの一部として投与される場合、MTDは、マウスモデルにおいて、160mg/mであり、ラットについてのEC50は、500mg/mを超える(図4B)。治療用コンジュゲートの一部としてのタラボスタットは、ラットおよびマウスへと、治療有効用量において投与されうる。
【0290】
実施例3 - インビボ腫瘍研究
CT26-mFAP+マウスに、ビヒクル(図5A)、細胞結合性部分を含む治療用コンジュゲート(図5B)、またはFAPα切断型リンカーを介して、タラボスタット(Val-boroPro)とコンジュゲートされたFc(図5C)を注射し、腫瘍容量は、22日間にわたり測定した。ビヒクル群において、腫瘍容量の低減を示したマウスは、10匹中0匹であり、全てのマウスを、研究終了前(約20日目)に屠殺した。細胞結合性部分を含む治療用コンジュゲートを施された群において、マウス10匹中3匹が、腫瘍容量を減少させ、ベースラインへと戻した。これに対し、本明細書において記載される治療用コンジュゲート(細胞結合性部分を伴わない)は、研究期間中に、マウス10匹中6匹が、腫瘍容量を減少させ、ベースラインへと戻す結果をもたらした。さらに、研究期間中に、マウスの体重も測定し、体重の変化パーセントを計算した(図5D)。測定されたマウスのうちのいずれも、体重の変化パーセントが、15%を超えなかった。
【0291】
別の実験セットにおいて、CT26-mFAP+マウスに、ビヒクル(対照)、200μgまたは400μgのMSA-6325(6325とコンジュゲートされたマウス血清アルブミン)、または740μgのPEG-6325(20KDaの4アーム型機能的PEGである、SUNBRIGHT PTE-200 PAと反応させた6325)を注射し、腫瘍容量の変化は、時間経過にわたり測定した(図7)。「6325」(図6A)は、タンパク質のリシン残基へのコンジュゲーションのためのNHS基を含む、例示的FAP活性化I-DASH阻害剤である。
【0292】
さらに別の実験セットにおいて、CT26-mFAP+マウスに、6325とコンジュゲートされたヒトFc断片(図8A)、または6325とコンジュゲートされた完全ヒトIgG抗体(図8B)を注射し、腫瘍容量の変化は、時間経過にわたり測定した。
【0293】
実施例4 - インビトロ研究
さらなるインビトロ研究において、いくつかのコンジュゲートを、FAPαの非存在下および存在下にあるJ774細胞内において、ピロトーシスを誘導する、それらの能力について調べた。略述すると、J774A.1マウスマクロファージ系細胞を、rhFAPαの存在下または非存在下、VbP(データは示さない)、またはFAP活性化I-DASH阻害剤(Hu IgG1 Fc-6325、Hu IgG1-6325、MSA-6325、SQT-Gly V.2-6325、SQT-Gly CF-6325、またはSQT-Gly CG-6325)のうちの1つの10倍の系列希釈液を伴う三連ウェル内、25nMの最終濃度において、24時間にわたり培養した。各実験は、非処置対照を組み入れた。インキュベーションの後、培養物上清へと放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH;ピロトーシスのマーカー)のレベルは、製造元の指示書に従い、CytoTox 96 Non-radioactive Cytotoxicity Assayを使用して測定した。結果を、LDH放出の増大倍数として、図17に示す。全ての被験コンジュゲートは、FAPαを伴うか、またはこれを伴わないかにより、統計学的に有意な、明確な差別化を呈した。これが、VbP単独(データは示さない)に当てはまらなかったことは、応答の変動が、FAPαによる、プロドラッグの活性化のためであることを指し示した。
【0294】
さらなる研究において、2つのプロドラッグ[6323および6501(図6C)]の、huIgG1 Fcの、ヒンジ領域のシステイン残基へのコンジュゲーションについて検討した。略述すると、マレイミドリンカーによる複合プロドラッグ(6323および6501)を、DMSO中に、100mMの濃度において溶解させた。6323または6501を、還元Fcへと添加し、試料を、室温においてインキュベートした。反応しなかった6323または6501は、Zebaスピンカラムにより除去した。遊離チオール(SH)基を測定する前に、試料を、再度還元し、試料を、Zebaスピン脱塩カラム上に、再度流過させることにより、ジチオトレイトール(DTT)を除去した。エルマン試薬を使用して、遊離SH基を測定することにより、チオール基のコンジュゲーションを決定した。還元Fc試料の濃度は、66500M-1cm-1の減衰定数を使用して、280nmの吸光度により決定した。コンジュゲーションは、還元SH 1モル当たりの6323または6501 0、10、20、および40モルの反応物比(Fc 1個当たりのSH 4個)により行った。6323(図18A)または6501(図18B)へのコンジュゲーションによる、Fc上の遊離SH基数の減少を、遊離SH基対反応物比の変化として表す。
【0295】
6323の、AFFIMER(登録商標)-Fcタンパク質へのコンジュゲーションに関する研究を企図した。マレイミドリンカーによる複合プロドラッグ(6323)を、DMSO中に、100mMの濃度において溶解させた。還元SQTGlyCF試料の濃度は、280nmの吸光度により決定した。6323を、還元SQTGlyCFへと添加し、試料を、室温においてインキュベートした。反応しなかった6323は、Zebaスピンカラムにより除去した。遊離SH基を測定する前に、上記において記載された通りに、試料を、再度還元して、反応しなかったシステインが還元されていることを確認した。エルマン試薬を使用して、遊離SH基を測定することにより、チオール基のコンジュゲーションを決定した。チオールの濃度は、14,150M-1cm-1の減衰定数を使用して、412nmの吸光度により決定した。
【0296】
SQTGlyCF 1個当たりのチオール数は、チオール濃度の、タンパク質濃度に対する比([SH]/[SQTGlyCF])として計算した。コンジュゲーションは、還元SH 1モル当たりの6323 0、10、20、および40モルの反応物比(SQTGlyCF 1個当たりのSH 4個)により行った。遊離SH基対反応物比の変化を、図24Aに示す。時限コンジュゲーション反応は、SH 1個当たりの6323 40個の反応物比により行い、6323を添加した、0、5、10、15および20分後に、反応を停止させた。SH基 1個当たりの6323 40個の反応物比による、6323の、SQTGlyCFへのコンジュゲーションの反応速度を、図24Bに示す。
【0297】
実施例5 - 薬物動態研究(腫瘍マウスモデル)
異なる化合物の薬物動態を、がんについてのマウスモデルにおいて検討した。マウス(BALB/c)の右脇腹に、CT26-mFAP細胞5×10個を皮下接種した。腫瘍を確立させ、その後、動物を、5057(FAPα阻害剤)を伴うか、またはこれを伴わずに、24時間にわたり処置した。次いで、動物を、hu IgG1 Fc-6325(Fc-6325;動物1匹当たり200μg)により、1、4、6、24および48時間にわたり処置した。表示の時点において、LC-MS上において、Val-boroPro(VbP)を測定するように、血液試料および腫瘍試料を回収した。Fc-6325による処置は、全ての時点において、腫瘍内における、血清中より高濃度のVbPを結果としてもたらした。FAPα阻害剤は、VbPレベルを、著明に低減したが、24および48時間後における、腫瘍内のVbP値は、1~6時間後より大きかった。これは、FAPの阻害が、6~24時間後の間に減衰したためであったと考えられる。血清試料(図19A)または腫瘍試料(図19B)についての、時間経過にわたる(時間)、VbP(nM)の濃度を示す。各時点は、群1つ当たりのマウス3匹を含む。
【0298】
次に、異なる化合物についてのコンジュゲートについて調べた。マウス(群1つ当たりのn=10;BALB/c)の右脇腹に、CT26-mFAP細胞5×10個を皮下接種した。腫瘍容量の平均が、約50~100mmに達したら、コンジュゲートを、腹腔内注射した。処置は、毎週2回ずつ、3週間にわたり投与した。ビヒクル(対照)、またはSQT-Glyコンジュゲート(図20A)、またはHu IgG1 Fcコンジュゲート(図20B)を投与された、CT26-mFAPマウスにおける、腫瘍容量の、時間経過にわたる変化を示す。図20A~20Bにおいて、点線は、毎週2回(BIW)の投与を表す。被験SQT-Glyコンジュゲートは、以下の通り:6325(NHS)または6323(MAL)とコンジュゲートされた、SQT-Gly V.2(IgG1 Fc)、および6325または6323とコンジュゲートされたSQT-Gly CF(IgG1 LALA Fc)であった。被験hu IgG1 Fcコンジュゲートは、以下の通り:6325または6323または6501とコンジュゲートされた、Hu IgG1 Fc断片(四量体プロドラッグ;図6C)であった。20日目において、コンジュゲートにより処置された、全てのマウスは、腫瘍サイズを、ビヒクル対照と比較して低減した。NHS(6325)コンジュゲートまたはMAL(6323または6501)コンジュゲートの有効性は、SQT-Glyおよびhu IgG1 Fcによる半減期延長バージョンの間において同等であった。
【0299】
加えて、異なるFAP活性化プロドラッグから放出されたVbPの薬物動態および組織分布についても検討した。マウス(BALB/c)の右脇腹に、CT26-mFAP細胞5×10個を皮下接種した。腫瘍を確立させ、その後、動物に、200uLの腹腔内注射を介して、24μgの3892(3892の構造を、図28に示す)、1138μgの3892、52μgの6323、56μgの6325、または1113μgの6435(N-Ac-Lys-6325)を投与した。各投与群は、1、4、および24時間後だけからなった、24ugの3892を例外として、1、4、6、24、および48時間後の回収時点(群1つ当たりのn=3)を表す、5群ずつのサブセットからなった。回収時点の、LC-MS上において、VbPレベルを測定するように、血液試料および腫瘍試料を回収した。プロドラッグ投与後の、血清中および腫瘍内における、VbP濃度対時間を、図21に表す。3892の用量1138ugおよび6435(N-Ac-Lys-6325)の用量1113ugは、それぞれ、放出されたVbPの、20ugのVbP単独と比較した、25倍当量および10倍当量を表した。いずれも、VbP単独と同様の、血清中分布プロファイルおよび腫瘍内分布プロファイルを呈し、ピーク濃度が、投与の1時間後において生じるのに続き、時間経過にわたり、定常的に減衰した。コンジュゲートと関連して含有されるVbP濃度の近似値を表すように、3892 24μg、6325 52μg、および6325 56μgの低プロドラッグ用量を選択した。6323および6325のいずれも、早期時点において、定常を維持するのに続き、24~48時間において、400nMへと増大する、約200nMの腫瘍内VbP濃度を結果としてもたらした。
【0300】
次に、SQT-Gly V.2コンジュゲートおよびIgG Fcコンジュゲートから放出されたVbPの薬物動態および組織分布について検討した。マウス(BALB/c)の右脇腹に、CT26-mFAP細胞5×10個を皮下接種した。腫瘍を確立させ、その後、動物に、腹腔内注射(200μg/200uL)を介して、SQT-Gly V.2-6323、SQT-Gly V.2-6325、マウスIgG2a Fc-6325、またはHu IgG1 Fc-6325を投与した。各投与群は、1、4、6、24、および48時間後の回収時点(群1つ当たりのn=3)を表す、5群ずつのサブセットからなった。回収時点において、LC-MSを使用して、放出されたVbPレベルを測定するように、血液試料および腫瘍試料を回収した。SQT-Gly V.2コンジュゲート(図22A)またはIgG Fcコンジュゲート(図22B)の投与の後の、血清中および腫瘍内におけるVbP濃度対時間を示す。
【0301】
SQT-Gly V.2-6323についての、血清中PK/TDプロファイルおよび腫瘍内PK/TDプロファイルを、SQT-Gly V.2-6325との比較のために評価した。SQT-Gly V.2-6325についての血清中VbPレベルが、全ての被験時点において、低レベル(<10nM)を維持したのに対し、SQT-Gly V.2-6323が、1時間後において、SQT-Gly V.2-6325の>10倍のスパイクを結果としてもたらした(37対3nM)ことは、MALコンジュゲーション部位が、血清中FAPによるプロドラッグの切断に対するアクセス可能性を増大させることを、潜在的に指し示す。腫瘍VbPレベルはまた、SQT-Gly V.2-6323についても高度であったが、これは、MALコンジュゲートによる、プロドラッグ活性化の増大をさらに裏書きしうる。
【0302】
Mu IgG2a Fc-6325を、Hu IgG1 Fc-6325との比較のために評価した。後者の有効性は、半減期延長型プロドラッグとしてのそのデザインだけに起因するのではなく、また、外来抗原(Hu IgG1 Fc)の存在により誘発された二次免疫応答の結果としての有効性でもある可能性がある。Mu IgG2a Fcは、マウス由来であるので、この問題を回避するためにデザインされた。2つのプロドラッグのPK/TDプロファイルは、極めて同様であった。24~48時間後の間において、Mu IgG2a Fc-6325について、Hu IgG1 Fc-6325について観察されなかった、腫瘍内のVbPレベルの低減が観察されたが、これは、マウスコンジュゲートの半減期が、ヒトコンジュゲートより短いことを指し示しうる。
【0303】
実施例6 - 42CQベースのコンジュゲート
非腫瘍保有BALB/cマウスにおける、FAP活性化プロドラッグに対する、血清サイトカインであるG-CSFの応答について検討した。処置1つ当たりのマウス5匹ずつの群内の、11~12週齢の雌BALB/cマウスに、マウス1匹当たり200μgにおいて、ビヒクル(PBS)、42CQ-6501、または42CQ-6501+MSAを腹腔内注射した。
【0304】
VbP単独は、大きな血清G-CSF応答を誘発することが公知である。サイトカインの動員は、腫瘍免疫において、重要な役割を果たすと考えられるが、血清中のその存在は、全身応答を表し、これは、望ましくない有害作用をもたらしうる。42CQベースのコンジュゲートのパネルをスクリーニングして、それらが、血清G-CSF応答の、VbPと比較した減少を結果としてもたらすのかどうかについて評価した。42CQは、血清アルブミンに結合するようにデザインされたAFFIMER(登録商標)ポリペプチド(配列番号133)である。こうして、MSAへのあらかじめの結合を伴うか、またはこれを伴わずに、42CQベースのコンジュゲート(6501との)を調製して、2つの製剤の間に、明らかな差違が存在するのかどうかを決定した。
【0305】
投与の6時間後、マウスG-CSF Quantikine ELISAキットを使用して、血清中のG-CSFを測定するように、血液を回収した。被験用量において、42CQ-6501は、G-CSFの血清濃度の、ビヒクル処置マウスと比較した、著明な増大を誘導したが、42CQ-6501をMSAとあらかじめ結合させることは、G-CSFの血清濃度の、42CQ-6501と比較した、著明な減少を結果としてもたらした(図23)。
【0306】
次に、42CQ-6501コンジュゲートの、CT26-mFAP腫瘍保有マウスにおける薬物動態について検討した。略述すると、BALB/cマウスの右脇腹に、CT26-mFAP細胞5×10個を皮下接種した。腫瘍を確立させ、その後、動物に、腹腔内注射を介して、動物1匹当たり100または200μgの42CQ-6501を投与した。各投与群は、1、4、6、24、および48時間後の回収時点(群1つ当たりのn=3)を表す、5群ずつのサブセットからなった。回収時点において、LC-MS上において、VbPレベルを測定するように、血液試料および腫瘍試料を回収した。動物1匹当たり100または200μgの42CQ-6501の投与後の血清中(図25A)および腫瘍内(図25B)における、VbP濃度対時間を示す。全ての時点において、VbPの平均値血清レベルは、42CQ-6501のいずれの用量についても、腫瘍レベルの、4~15分の1の間であった。
【0307】
さらなる実験において、同系マウス結腸がん(CT26)モデルにおける、42CQベースのコンジュゲート±MSAの、腫瘍増殖に対する効果について検討した。マウス(群1つ当たりのn=10;BALB/c)の右脇腹に、CT26-mFAP細胞5×10個を皮下接種した。MSAへのあらかじめの結合は、VbPへの全身への放出を減少させうるので、コンジュゲートである、42CQ-6323および42CQ-6501の両方の有効性を、MSAへのあらかじめの結合を伴う場合、およびこれを伴わない場合において調べた。腫瘍容量の平均が、約50~100mmに達したら、42CQベースのコンジュゲート±MSAを、腹腔内注射した。42CQ-6323±MSAおよび42CQ-6501±MSAについての腫瘍増殖の阻害を、それぞれ、図26Aおよび26Bに示す。点線は、毎週2回の投与を表す。MSAを伴わない42CQ-6501を除く、42CQベースのコンジュゲートにより処置された、全てのマウスは、腫瘍サイズを、対照と比較して低減した。
【0308】
さらなる実験において、野生型(WT)マウスおよびFAPαノックアウト(KO)マウスにおいて、FAPα活性化AFFIMER(登録商標)プロドラッグ(42CQ-6323および42CQ-6501)から放出されるVbPの薬物動態について検討した。腫瘍を保有しない、WTマウスまたはFAPα KOマウス(群1つ当たりのn=3)に、腹腔内注射を介して、動物1匹当たり200μgの、42CQ-6323、42CQ-6323-MSA、42CQ-6501、または42CQ-6501-MSAを投与した。LC-MS上において血漿中のVbP濃度を測定するように、投与の0(投与前)、15、30、60、120、および240分間後、ならびに24時間後において、血液を回収した。動物1匹当たり200μgの42CQ-6323±MSAまたは42CQ-6501±MSAの投与の後における、血漿中のVbP濃度対時間を、それぞれ、図27Aおよび27Bに表す。
【0309】
いずれの時点においても、FAPαノックアウトマウスにおいて、VbPは検出されなかった。血漿中VbPレベルが、コンジュゲートである、6501について、コンジュゲートである、6323より高レベルであったことは、コンジュゲートである、6501についての、有効薬物-AFFIMER(登録商標)タンパク質比(DAR)が、大きいことと符合する。注射の前における、アルブミンへのあらかじめの結合は、血中のVbPの最初のスパイクを制限すると考えられる(MSA群を、非MSA群と比較されたい)。
【0310】
本明細書で開示される、全ての参考文献、特許、および特許出願は、それについてそれらの各々が引用される対象物に関して、参照により組み込まれ、場合によって、文献の全体を包含しうる。
【0311】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞である、「ある(a)」および「ある(an)」は、逆のことが明確に指し示されない限りにおいて、「少なくとも1つの」を意味するように理解されるものとする。
【0312】
逆のことが明確に指し示されない限り、本明細書において特許請求される任意の方法であって、1つを超える工程または行為を含む方法において、方法の工程または行為の順序は、必ずしも、方法の工程または行為が列挙される順序に限定されないこともまた理解されたい。
【0313】
特許請求の範囲、ならびに上記の明細書において、「~を含むこと(comprising)」、「~を含むこと(including)」、「~を保有すること」、「~を有すること」、「~を含有すること」、「~を伴うこと」、「~を保持すること」、「~から構成されること」など、全ての移行句は、オープンエンドである、すなわち、「~を含むがこれらに限定されないこと」を意味するように理解されるものとする。United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures, Section 2111.03において明示されている通り、「~からなること」および「~から本質的になること」という移行句だけが、それぞれ、クローズドまたはセミクローズドの移行句であるものとする。
【0314】
数値に前置される、「約」または「実質的に」という用語は、列挙された数値から±10%を意味する。
【0315】
本明細書において、値の範囲が提示される場合、範囲の上端と、下端との間の各値が具体的に想定され、記載される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21
図22A
図22B
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【配列表】
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【国際調査報告】