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特表2023-548318アミノ酸混合固形物の製造方法及びアミノ酸混合固形物の製造装置
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  • 特表-アミノ酸混合固形物の製造方法及びアミノ酸混合固形物の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(54)【発明の名称】アミノ酸混合固形物の製造方法及びアミノ酸混合固形物の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/00 20060101AFI20231109BHJP
   C12P 13/04 20060101ALI20231109BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20231109BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20231109BHJP
   B01J 2/16 20060101ALI20231109BHJP
   F26B 11/02 20060101ALI20231109BHJP
   F26B 17/02 20060101ALI20231109BHJP
   C12N 1/00 20060101ALN20231109BHJP
【FI】
B01J2/00 A
C12P13/04
C12P1/04 Z
C12M1/00 D
B01J2/16
F26B11/02
F26B17/02 A
C12N1/00 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526358
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 KR2021015388
(87)【国際公開番号】W WO2022092879
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0142144
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514199250
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】チョン、デヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、イン ソン
(72)【発明者】
【氏名】クァク、ウォン シク
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ミン ギョン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ジン テ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ジ-フン
【テーマコード(参考)】
3L113
4B029
4B064
4B065
4G004
【Fターム(参考)】
3L113AA02
3L113AA07
3L113AB05
3L113AC05
3L113AC58
3L113AC59
3L113AC64
3L113BA36
3L113CB29
3L113DA02
4B029AA02
4B029BB02
4B029CC01
4B029HA09
4B064AE05
4B064AE06
4B064AE07
4B064AE10
4B064AE34
4B064CA02
4B064CE16
4B065AA22X
4B065AA24X
4B065AA26X
4B065AA41X
4B065AA48X
4B065AA50X
4B065BC01
4B065CA17
4G004AA02
4G004KA01
(57)【要約】
本出願は、アミノ酸を含むアミノ酸混合溶液を準備する第1ステップと、前記アミノ酸混合溶液を攪拌して薄膜を形成し、形成した前記薄膜を乾燥及び粉砕して湿潤顆粒を作製する第2ステップと、前記湿潤顆粒を乾燥させて顆粒剤形のアミノ酸混合固形物を製造する第3ステップとを含み、前記第2ステップにおいて、前記湿潤顆粒中の固形分濃度が顆粒形成濃度の範囲内となるように前記アミノ酸混合溶液を乾燥させる、アミノ酸混合固形物の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸を含むアミノ酸混合溶液を準備する第1ステップと、
前記アミノ酸混合溶液を攪拌して薄膜を形成し、形成した前記薄膜を乾燥及び粉砕して湿潤顆粒を作製する第2ステップと、
前記湿潤顆粒を乾燥させて顆粒剤形のアミノ酸混合固形物を製造する第3ステップとを含み、
前記第2ステップにおいて、前記湿潤顆粒中の固形分濃度が顆粒形成濃度の範囲内となるように前記アミノ酸混合溶液を乾燥させる、アミノ酸混合固形物の製造方法。
【請求項2】
前記第2ステップを行った後、かつ前記第3ステップを行う前に、混合型造粒機を用いて顆粒を作製するステップをさらに含み、
前記第2ステップで作製した前記湿潤顆粒の少なくとも一部を前記混合型造粒機において前記顆粒作製のためのシードとして用いる、請求項1に記載のアミノ酸混合固形物の製造方法。
【請求項3】
前記アミノ酸の種類に応じて、前記第2ステップの前記顆粒形成濃度の範囲を制御する、請求項1に記載のアミノ酸混合固形物の製造方法。
【請求項4】
前記アミノ酸は、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-バリン、L-イソロイシン、L-ロイシンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のアミノ酸混合固形物の製造方法。
【請求項5】
前記第1ステップは、前記アミノ酸混合溶液をブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、エシェリキア(Escherichia)属、セラチア(Serratia)属、エルウィニア(Erwinia)属、エンテロバクター(Enterobacteria)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属もしくはシュードモナス(Pseudomonas)属の微生物又はその人工変異株から選択される少なくとも1つを用いた発酵法により作製するステップを含む、請求項1に記載のアミノ酸混合固形物の製造方法。
【請求項6】
前記第2ステップにおいて、前記アミノ酸混合溶液を攪拌する線速度は、4m/s~17m/sである、請求項1に記載のアミノ酸混合固形物の製造方法。
【請求項7】
前記第2ステップは、0.05気圧~0.6気圧である、請求項1に記載のアミノ酸混合固形物の製造方法。
【請求項8】
前記第3ステップは、流動層造粒/乾燥機を用いた乾燥工程を含む、請求項1に記載のアミノ酸混合固形物の製造方法。
【請求項9】
前記第1ステップを行った後、かつ前記第2ステップを行う前に、前記アミノ酸混合溶液を濃縮する工程をさらに含む、請求項1に記載のアミノ酸混合固形物の製造方法。
【請求項10】
発酵工程によりアミノ酸混合溶液を生産する発酵槽と、
前記発酵槽から供給された前記アミノ酸混合溶液を乾燥及び粉砕して湿潤顆粒を作製する薄膜乾燥装置と、
前記湿潤顆粒を乾燥させて顆粒剤形のアミノ酸混合固形物を製造する顆粒乾燥装置とを含み、
前記薄膜乾燥装置は、
前記アミノ酸混合溶液を攪拌して薄膜乾燥装置の内壁上に前記アミノ酸混合溶液から得られる薄膜を形成するための薄膜乾燥装置攪拌部と、
前記薄膜乾燥装置の内壁を加熱して前記薄膜を乾燥させるための加熱部とを含む、アミノ酸混合固形物の製造装置。
【請求項11】
前記薄膜乾燥装置攪拌部と前記薄膜乾燥装置の内壁は、5mm~15mmの距離で離隔して設けられる、請求項10に記載のアミノ酸混合固形物の製造装置。
【請求項12】
前記薄膜乾燥装置において、前記湿潤顆粒中の固形分濃度が顆粒形成濃度の範囲内となるように前記アミノ酸混合溶液を乾燥させ、
前記アミノ酸の種類に応じて、前記顆粒形成濃度の範囲を制御する、請求項10に記載のアミノ酸混合固形物の製造装置。
【請求項13】
前記薄膜乾燥装置において作製した前記湿潤顆粒の少なくとも一部をシードとして用いて顆粒を作製する混合型造粒機をさらに含む、請求項10に記載のアミノ酸混合固形物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アミノ酸混合固形物の製造方法及びアミノ酸混合固形物の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
L-アミノ酸は、タンパク質の基本構成単位であり、薬品原料や食品添加剤、動物飼料、栄養剤、殺虫剤、殺菌剤などの重要素材として用いられる。主に、人工変異法又は遺伝子組換え法により開発された微生物又はその人工変異株を用いた発酵法により目的L-アミノ酸を生産する。
【0003】
しかし、発酵の結果として、目的L-アミノ酸だけでなく、副産物及び廃棄物が発生するので、純度の高い特定L-アミノ酸を得るためには、発酵工程ステップの後に、それを分離及び精製するステップが必須である。しかし、発酵物中に含まれる他の産物も栄養上価値のある成分を含むので、発酵物全体を含む製品の需要が増加しており、特に保管、携帯、摂取などに便利な顆粒状の製品が求められている。
【0004】
発酵物を顆粒化するには、発酵物中の水分を蒸発させた後に顆粒の作製を行うが、発酵物を乾燥させるのに多くのエネルギーを必要とする。このような必要エネルギーは、顆粒化工程の効率低下につながる。また、従来技術(特許文献1など)により流動層造粒機又は混合型造粒機を用いて発酵物を顆粒化する場合、発酵物を濃縮して固形分含有量を増加させるには限界があり、それは工程の効率低下につながる。
【0005】
こうした技術的背景の下、本発明者らは、顆粒化工程において薄膜乾燥装置を活用することにより、アミノ酸混合固形物の生産効率を向上させる簡単かつ経済的な顆粒製造工程を構築し、本出願を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0283527号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、アミノ酸混合溶液中の固形分濃度が顆粒形成濃度の範囲内となるように濃縮し、濃縮アミノ酸混合溶液を用いて高い効率で顆粒剤形のアミノ酸混合固形物を製造する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。
【0009】
図1は本出願の一態様によるアミノ酸混合固形物の製造方法を示すフローチャートである。
【0010】
本出願の一態様によれば、アミノ酸を含むアミノ酸混合溶液を準備する第1ステップS100と、アミノ酸混合溶液を攪拌して薄膜を形成し、形成した薄膜を乾燥及び粉砕して湿潤顆粒を作製する第2ステップS200と、湿潤顆粒を乾燥させて顆粒剤形のアミノ酸混合固形物を製造する第3ステップS300とを含み、第2ステップS200において、湿潤顆粒中の固形分濃度が顆粒形成濃度の範囲内となるようにアミノ酸混合溶液を乾燥させる、アミノ酸混合固形物の製造方法を提供する。
【0011】
前述したアミノ酸混合固形物の製造方法を用いると、アミノ酸混合溶液中の固形分濃度が顆粒形成濃度の範囲内となるように乾燥させた後に顆粒剤形に製造することができる。
【0012】
以下、本出願のアミノ酸混合固形物の製造方法の各ステップについて説明する。
【0013】
まず、アミノ酸を含むアミノ酸混合溶液を準備する第1ステップS100を行う。
【0014】
第1ステップS100において、アミノ酸は、L-アミノ酸であってもよく、また、抽出法、合成法、発酵法、酵素法などにより作製したものであってもよい。場合によっては、アミノ酸は、微生物を用いた発酵法により作製した発酵物から得てもよい。ここで、本出願における「発酵物」とは、微生物を用いた有機物質の酵素的又は代謝的な合成又は分解の結果物を意味する。例えば、微生物を培養培地で培養して得られた微生物を含む培養物自体や、それから微生物を除去して得られた培養物の濃縮物、乾燥物又は凍結乾燥物が挙げられる。また、ここで、アミノ酸混合溶液は、L-アミノ酸及び発酵物全体を含むものであるか、発酵物から不純物が除去されたものである。
【0015】
第1ステップS100において、アミノ酸を得るために作製する発酵物は、L-アミノ酸を生産する微生物を培養して得られた結果物であってもよい。ここで、本出願における「L-アミノ酸を生産する微生物」とは、野生型微生物や自然に又は人為的に遺伝的改変が行われた微生物が全て含まれるものであり、外部遺伝子が挿入されるか、内在性遺伝子の活性が強化又は不活性化されるなどの原因により、特定機序が弱化又は強化された微生物であって、目的とするタンパク質又は産物の生産のために遺伝的改変(modification)が行われた微生物を意味する。
【0016】
第1ステップS100において用いられる前述した微生物は、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、エシェリキア(Escherichia)属、セラチア(Serratia)属、エルウィニア(Erwinia)属、エンテロバクター(Enterobacteria)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、シュードモナス(Pseudomonas)属などの微生物又はその人工変異株から選択される少なくとも1つであってもよい。よって、第1ステップS100は、前述した微生物の少なくとも1つを用いてアミノ酸混合溶液を作製するステップをさらに含んでもよい。
【0017】
第1ステップS100において用いられる本出願の前述した微生物のうち、「コリネバクテリウム属微生物」には、あらゆるコリネバクテリウム属微生物が含まれる。具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・クルジラクチス(Corynebacterium crudilactis)、コリネバクテリウム・デセルティ(Corynebacterium deserti)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)、コリネバクテリウム・シングラレ(Corynebacterium singulare)、コリネバクテリウム・ハロトレランス(Corynebacterium halotolerans)、コリネバクテリウム・ストリアツム(Corynebacterium striatum)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・ポルティソリ(Corynebacterium pollutisoli)、コリネバクテリウム・イミタンス(Corynebacterium imitans)、コリネバクテリウム・テスツディノリス(Corynebacterium testudinoris)又はコリネバクテリウム・フラベッセンス(Corynebacterium flavescens)であり、より具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカムであるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
コリネバクテリウム属(the genus Corynebacterium)微生物、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)は、L-アミノ酸及びその他の有用物質の生産に多く用いられているグラム陽性微生物である。前記L-アミノ酸及びその他の有用物質を生産すべく、高効率生産微生物及び発酵工程技術の開発のために様々な研究が行われている。例えば、L-トリプトファン、L-バリン、L-トレオニン、L-イソロイシン、L-ロイシンなどの生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を増加させる、生合成に不要な遺伝子を除去するなどの標的物質に特異的なアプローチが主に用いられている。
【0019】
第1ステップS100において、前述した微生物を用いてL-アミノ酸を含む発酵物を作製した後に、発酵物を分離、精製してアミノ酸混合溶液を回収するステップをさらに行ってもよい。アミノ酸混合溶液を回収する方法は、本出願の微生物の培養方法、例えば回分、連続、流加培養方法などに応じて、当該技術分野で公知の好適な方法を用いて目的とするL-アミノ酸を含むアミノ酸混合溶液を回収(collect)するものであってもよい。そのために、遠心分離、濾過、結晶化、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、抽出、超音波破砕、限外濾過、透析法、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、HPLC、及びそれらの組み合わせが用いられ、当該分野で公知の好適な方法を用いて培地又は微生物から目的とするアミノ酸混合溶液を回収することができる。
【0020】
第1ステップS100において、発酵物からアミノ酸混合溶液を回収するとは、必ずしも発酵液に含まれるL-アミノ酸のみ分離、回収することを意味するわけではない。必要に応じて、発酵物全体を回収することを意味することもあり、発酵物の一部の不純物のみ除去したL-アミノ酸、培養に用いた微生物などを含むアミノ酸混合溶液を回収することを意味することもある。
【0021】
また、第1ステップS100で得られるアミノ酸混合溶液は、アミノ酸生産用組成物に通常用いられる任意の好適な賦形剤をさらに含んでもよい。このような賦形剤としては、例えば保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
第1ステップS100を行った後、かつ第2ステップS200を行う前に、前記アミノ酸混合溶液を濃縮する工程をさらに行ってもよい。濃縮工程に用いる濃縮装置はいかなるものでもよい。例えば、強制循環式(forced circulation)濃縮機を用いてもよく、パドル乾燥機(paddle dryer)、スラリー(slurry)乾燥機などを濃縮工程に用いてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0023】
次に、第2ステップS200においては、薄膜乾燥装置を用いてアミノ酸混合溶液を攪拌して薄膜を形成し、形成した前記薄膜を乾燥及び粉砕して湿潤顆粒を作製する。薄膜乾燥装置は、流体を攪拌しながら乾燥させる装置であり、チャンバ内に流入した流体を攪拌してチャンバの壁面に流体からなる薄膜が形成されるようにし、形成された薄膜を乾燥させる形態で作動するものであってもよい。また、乾燥させた薄膜は、再度顆粒の形態に粉砕され、薄膜乾燥装置の外に排出されるようにしてもよい。薄膜乾燥装置は、チャンバが地面と平行となる水平型(horizontal type)であってもよく、チャンバが地面に対して垂直となる垂直型(vertical type)であってもよく、いかなるものでもよい。
【0024】
第2ステップS200において、アミノ酸混合溶液に含まれる水分の少なくとも一部が蒸発、除去されてもよい。このようにして、アミノ酸混合溶液が乾燥すると、アミノ酸混合溶液中の固形分濃度が高くなり、湿潤顆粒が得られる。
【0025】
第2ステップS200で作製される湿潤顆粒における「顆粒(granule)」とは、粉末のような小さな粒子が集まって形成される相対的に大きなサイズの永久凝集体である巨視的粒子であって、前記凝集体内でそれを構成する小さな粒子とは区分されるものを意味する。前記粉末は、凝集するとその30~150倍程の大きな粒子を形成し、それを再度乾燥させると顆粒化することができる。前述した顆粒化により形成された粒、すなわち顆粒は、多孔質構造を有するので、湿潤性があると共に、水中での分散、沈降速度が大きい。本出願における前記顆粒化とは、前記発酵物を乾燥させる過程で発酵物を顆粒の形態にすることにより顆粒化することを意味するが、これに限定されるものではない。湿潤顆粒とは、前述した顆粒の形態にするものの、水分が残っている状態を意味する。
【0026】
第2ステップS200において、水分除去は、アミノ酸混合溶液中の固形分濃度が顆粒形成濃度の範囲内となるように行われる。ここで、顆粒形成濃度の範囲とは、後続の第3ステップS300で顆粒剤形のアミノ酸混合固形物が製造されるようにする固形分濃度の範囲を意味する。
【0027】
第2ステップS200において、前述した顆粒形成濃度の範囲は、アミノ酸の種類に応じて変化するようにしてもよい。具体的には、アミノ酸には、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-バリン、L-イソロイシン、L-ロイシンからなる群から選択される少なくとも1つが含まれるが、アミノ酸混合物溶液に含まれるアミノ酸の種類、組成に応じて顆粒形成濃度の範囲が変化するようにしてもよい。より具体的には、アミノ酸がL-トリプトファンの場合、顆粒形成濃度の範囲は、約80重量%~約92重量%であってもよい。アミノ酸がL-バリンの場合、顆粒形成濃度の範囲は、約80重量%~約94重量%であってもよい。アミノ酸がL-トレオニンの場合、顆粒形成濃度の範囲は、約85重量%~約96重量%であってもよい。アミノ酸がL-イソロイシンの場合、顆粒形成濃度の範囲は、約82重量%~約94重量%であってもよい。アミノ酸がL-ロイシンの場合、顆粒形成濃度の範囲は、約82重量%~約93重量%であってもよい。アミノ酸溶液中に複数種のアミノ酸が混合している場合、顆粒形成濃度の範囲は、混合しているアミノ酸の種類及び各アミノ酸の含有量を考慮して調整するようにしてもよい。
【0028】
よって、第2ステップS200を行う際に、第1ステップS100で得られるアミノ酸混合溶液中に含まれるアミノ酸の種類と組成に関する情報に基づいて、顆粒形成濃度の範囲を制御するようにしてもよい。第2ステップS200においては、決定された顆粒形成濃度の範囲で乾燥工程が行われるようにしてもよい。
【0029】
第2ステップS200において、水分が除去された湿潤顆粒が得られるので、第3ステップS300において、用いられるスチームの量が減少する。発酵物を顆粒化するためには、発酵物中の全ての水分を蒸発させてから顆粒製造を行うが、従来技術によれば、造粒工程を行う前に、濃縮工程により発酵物中に含まれる水分の一部を除去していた。具体的には、従来の顆粒製造方法においては、溶解度の高いアミノ酸の場合、スラリーに含まれる固形分の含有量を約40~55%に調節しなければならず、溶解度の低いアミノ酸の場合、固形分の含有量を約18~22%に調節しなければならなかった。本出願によれば、第2ステップS200において、顆粒形成濃度の範囲内にアミノ酸混合溶液を乾燥させるので、後続の第3ステップS300において、用いられるスチームの量が減少し、全体的な製造工程の生産性及び生産効率が大幅に向上する。
【0030】
第2ステップS200において、アミノ酸混合溶液を攪拌する線速度は、約4m/s~約17m/s、約4m/s~約16m/s、約4m/s~約15m/s、約4m/s~約14m/s、約5m/s~約17m/s、約5m/s~約16m/s、約5m/s~約15m/s、又は約5m/s~約14m/sであってもよい。アミノ酸混合溶液を攪拌する線速度が上記範囲未満の値であれば、第2ステップS200が行われる薄膜乾燥装置内のアミノ酸混合溶液から得られる薄膜形成率が向上するので、乾燥中に攪拌機に負荷をかけることなく乾燥、攪拌を行うことができる。また、過乾燥が発生せず、適切なレベルにアミノ酸混合溶液を乾燥させることができるので、バグフィルターで損失しない程度の粒径が得られ、それにより顆粒回収率が向上する。
【0031】
第2ステップS200は、約0.05気圧~約0.6気圧の圧力で行ってもよく、約0.05気圧~約0.5気圧の圧力で行ってもよく、約0.05気圧~約0.4気圧の圧力で行ってもよい。第2ステップS200は、前述したように、相対的に低い圧力下で行われるので、アミノ酸混合溶液中に含まれる水分の蒸気圧が低くなり、水分が100℃より低い温度で蒸発する。よって、第2ステップS200において、水分を除去するために高い温度に加熱しなくてもよいので、水分乾燥のための加熱過程において、L-アミノ酸や微生物などのアミノ酸混合溶液に含まれる物質が変性する恐れがない。しかし、第2ステップS200を行う圧力が上記範囲の値より小さいと、薄膜乾燥装置のバグフィルターに粉塵が入り込んで収率が低下する恐れがある。また、第2ステップS200を行う圧力が上記範囲の値より大きいと、水分乾燥のために高い温度を必要とし、高温による顆粒の褐変現象が発生し得る。さらに、乾燥過程において、相対的に少ない熱しか必要としないので、エネルギー消費が少ない。よって、第2ステップS200を行う圧力を上記範囲に維持することにより、L-アミノ酸や微生物の変性を伴うことなく、高い収率で顆粒を作製することができる。
【0032】
内部壁面と攪拌部間の距離は、約5m~約15mmであってもよい。上記範囲では、顆粒形成が効率的に行われる。
【0033】
第2ステップS200で得られる湿潤顆粒粒子の粒度は、2000μm以上の粒子が5.0%以下、具体的には3.0%以下、より具体的には1.0%以下であり、75μm以下の粒子が20.0%以下、具体的には15.0%以下、より具体的には5.0%以下であるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
次に、第2ステップS200で作製した湿潤顆粒を乾燥させて顆粒剤形のアミノ酸混合固形物を製造する第3ステップS300を行うようにしてもよい。第3ステップS300は、流動層造粒/乾燥機を用いて行うようにしてもよい。流動層造粒/乾燥機内に湿潤顆粒を供給し、空気の流動により湿潤顆粒を乾燥させて顆粒剤形のアミノ酸混合固形物を製造するようにしてもよい。しかし、第3ステップS300を行う際に、必ずしも流動層造粒/乾燥機のみが用いられるわけではない。
【0035】
第3ステップS300は、乾燥して形成した顆粒剤形のアミノ酸混合固形物をふるい分けするステップをさらに含んでもよい。ここで、顆粒剤形のアミノ酸混合固形物を所望の粒度に基づいてふるい分けするようにしてもよい。前述したふるい分けの基準となる粒度は、当業者の選択により適宜選択される。例えば、ふるい分けの基準となる粒度は、約50μm~約3000μm、具体的には約75μm~約2000μm、より具体的には約100μm~約2000μmであるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
第3ステップS300を行った後に、前述したようにふるい分けして残った粒子を再度用いるために、所望の粒度を持たない顆粒粒子を粉砕及び/又は循環させる過程をさらに行うようにしてもよい。例えば、ふるい分けして残った粒子は、粒度が2000μm以上の粒子が全粒子の1.0%以下であり、粒度が75μm以下の粒子が全粒子の1.5%以下であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0037】
また、前記顆粒粒子を粉砕及び/又は循環させる方法は、特に限定されるものではなく、当該技術分野で公知の方法を用いることができる。
【0038】
図2は本出願によるアミノ酸混合固形物の製造方法を示すフローチャートである。
【0039】
図2に示すように、第2ステップS200と第3ステップS300の間に、混合型造粒機を用いて顆粒を作製するステップS250をさらに行うようにしてもよい。
【0040】
混合型造粒機を用いるステップS250においては、第2ステップS200で作製した湿潤顆粒の少なくとも一部を混合型造粒機において顆粒作製のためのシードとして用いるようにしてもよい。混合型造粒機においては、第2ステップS200で粉砕して作製した湿潤顆粒上に、第1ステップS100で作製したアミノ酸混合溶液を噴射するようにしてもよい。そうすると、適正な大きさの顆粒を作製することができる。混合型造粒機で作製した顆粒は、第3ステップS300で乾燥されるようにしてもよい。そうすることにより、顆粒剤形のアミノ酸混合固形物が得られる。
【0041】
以上、本出願によるアミノ酸混合固形物の製造方法について説明した。以下、前述したアミノ酸混合固形物の製造方法に用いられる本出願の製造装置についてさらに説明する。
【0042】
図3は本出願による薄膜乾燥装置を示す図である。
【0043】
図3に示すように、アミノ酸混合固形物の製造装置は、発酵工程によりアミノ酸混合溶液を生産する発酵槽と、発酵槽から供給されたアミノ酸混合溶液を乾燥及び粉砕して湿潤顆粒を作製する薄膜乾燥装置と、湿潤顆粒を乾燥させて顆粒剤形のアミノ酸混合固形物を製造する顆粒乾燥装置とを含む。
【0044】
まず、発酵槽は、微生物を用いた発酵法によりアミノ酸を含む発酵物を得るための部材である。発酵槽についての説明において、微生物、発酵法、アミノ酸、発酵物については前述した通りである。
【0045】
発酵槽は、発酵が行われる容器と、原料を投入するための投入部と、発酵が完了した発酵物を外部に排出するための排出部と、容器の内部で原材料を攪拌するための攪拌手段と、熱を加えて発酵反応を発生させる加熱手段とを含んでもよい。
【0046】
また、発酵槽は、容器の内部又は外部に、発酵物からL-アミノ酸を含むアミノ酸混合溶液を回収(collect)するための部材がさらに設けられてもよい。例えば、遠心分離、濾過、結晶化、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、抽出、超音波破砕、限外濾過、透析法、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、HPLCを行うための部材が発酵槽の内部又は外部に設けられてもよい。
【0047】
発酵槽で生成された発酵物から回収したアミノ酸混合溶液は、薄膜乾燥装置に移送される。ここで、発酵槽から薄膜乾燥装置に発酵物が移送される前に、アミノ酸混合溶液が濃縮部材により濃縮されるようにしてもよい。濃縮装置はいかなるものでもよい。例えば、強制循環式(forced circulation)濃縮機を用いてもよく、パドル乾燥機(paddle dryer)、スラリー(slurry)乾燥機などを濃縮工程に用いてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0048】
薄膜乾燥装置において、発酵槽から供給された前記アミノ酸混合溶液を乾燥及び粉砕して湿潤顆粒を作製するようにしてもよい。薄膜乾燥装置は、液体又はスラリー状態のアミノ酸混合溶液を装置の内部に噴射すると同時に攪拌し、薄膜乾燥装置の内壁にアミノ酸混合溶液から得られる薄膜が形成されるようにする。また、内壁を加熱することにより、内壁上に形成された薄膜を乾燥させるようにする。乾燥した薄膜は粉砕され、そうすることにより湿潤顆粒が作製される。
【0049】
薄膜乾燥装置は、地面に対して平行な水平方式で設けられてもよく、地面に対して垂直な垂直方式で設けられてもよい。図面には地面に対して平行な水平方式の薄膜乾燥装置を示すが、必要に応じて、垂直方式の薄膜乾燥装置を用いてもよい。また、薄膜乾燥装置の縦横比も、薄膜乾燥装置の提供方式に応じて異なるようにしてもよい。例えば、薄膜乾燥装置を地面に対して平行な水平方式で設ける場合、横方向(地面と平行な方向)の長さが縦方向(地面と垂直な方向)の長さより大きくなるようにしてもよい。逆に、薄膜乾燥装置を地面に垂直な垂直方式で設ける場合、横方向の長さが縦方向の長さより小さくなるようにしてもよい。このような薄膜乾燥装置の形態は、薄膜乾燥装置の提供方式及び用途に応じて異なるように構成してもよい。
【0050】
薄膜乾燥装置は、薄膜乾燥装置攪拌部と、加熱部とを含む。
【0051】
薄膜乾燥装置攪拌部は、薄膜乾燥装置の内部に流入したアミノ酸混合溶液を攪拌する。薄膜乾燥装置攪拌部により攪拌されたアミノ酸混合溶液は、遠心力により薄膜乾燥装置の内壁上に塗布され、内壁上で薄膜形態となる。
【0052】
薄膜乾燥装置攪拌部の攪拌により形成された薄膜は、内壁上で乾燥される。具体的には、内壁に熱を伝達する加熱部により薄膜が内壁上で乾燥されるようにしてもよい。
【0053】
薄膜乾燥装置攪拌部は、複数の薄膜乾燥装置攪拌部ブレードをさらに含んでもよい。
【0054】
薄膜乾燥装置攪拌部ブレードは、薄膜乾燥装置の内部に流入したアミノ酸混合溶液を内壁側に押し付けて薄膜を形成すると共に、乾燥した薄膜を内壁から分離又は粉砕するようにしてもよい。具体的には、薄膜乾燥装置の入口(アミノ酸混合溶液が供給される領域)に隣接して位置する薄膜乾燥装置攪拌部ブレードは、アミノ酸混合溶液を内壁側に押し付けて薄膜を形成するために用いられ、薄膜乾燥装置の出口(湿潤顆粒が排出される領域)に隣接して位置する薄膜乾燥装置攪拌部ブレードは、乾燥した薄膜を内壁から分離、粉砕して湿潤顆粒を形成するために用いられるようにしてもよい。
【0055】
薄膜乾燥装置攪拌部(薄膜乾燥装置攪拌部ブレード)は、薄膜乾燥装置の内壁から5mm~15mmの距離で離隔して設けられるようにしてもよい。上記範囲で攪拌部ブレードと薄膜乾燥装置の内壁を離隔すると、アミノ酸混合溶液への熱伝達効率を向上させ、攪拌によるモータの負荷を低減することができる。
【0056】
加熱部の形態はいかなるものでもよい。加熱部は、内壁に当接した電熱部材であってもよく、内壁に当接した管の形態で設けられ、管にスチームを供給することにより内壁に熱を伝達するものであってもよい。加熱部は、薄膜乾燥装置の内壁全体に設けられてもよい。そうすることにより、広い面積で同時にアミノ酸混合溶液又は薄膜の乾燥が行われ、乾燥効率が向上する。
【0057】
次に、薄膜乾燥装置において作製した湿潤顆粒は、顆粒乾燥装置に供給される。顆粒乾燥装置においては、湿潤顆粒を所望の湿度まで乾燥させて顆粒剤形のアミノ酸混合固形物を製造する。顆粒乾燥装置は、例えば乾燥した熱風を供給して湿潤顆粒を乾燥させるようにしてもよい。しかし、顆粒乾燥装置の提供方式及び運転方式は、上記例に限定されるものではない。
【0058】
図4及び図5は本出願の一実施例によるアミノ酸混合固形物の製造装置を簡素化して示すブロック図である。
【0059】
図4に示すように、本出願によるアミノ酸混合固形物の製造装置は、前述した発酵槽と、薄膜乾燥装置と、顆粒乾燥装置とを含んでもよい。具体的には、本出願の一実施例によるアミノ酸混合固形物の製造装置は、発酵工程によりアミノ酸混合溶液を生産する発酵槽と、発酵槽から供給されたアミノ酸混合溶液を乾燥及び粉砕して湿潤顆粒を作製する薄膜乾燥装置と、湿潤顆粒を乾燥させて顆粒剤形のアミノ酸混合固形物を製造する顆粒乾燥装置とを含み、薄膜乾燥装置は、アミノ酸混合溶液を攪拌して薄膜乾燥装置の内壁上にアミノ酸混合溶液から得られる薄膜を形成するための薄膜乾燥装置攪拌部と、薄膜乾燥装置の内壁を加熱して薄膜を乾燥させるための加熱部とを含んでもよい。
【0060】
図5に示すように、アミノ酸混合固形物の製造装置は、混合型造粒機をさらに含む。混合型造粒機を用いると、薄膜乾燥装置において作製した湿潤顆粒の少なくとも一部をシードとして用いて顆粒を作製することができる。
【発明の効果】
【0061】
本出願によれば、顆粒形成濃度の範囲までアミノ酸混合溶液を乾燥させ、その後顆粒を形成するので、従来の錠剤工法の水分による剤形化の問題を補完し、生産量の増大及び工程効率の改善を図ることができる。よって、アミノ酸顆粒の生産において、コスト低減に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本出願によるアミノ酸混合固形物の製造方法を示すフローチャートである。
図2】本出願によるアミノ酸混合固形物の製造方法を示すフローチャートである。
図3】本出願による薄膜乾燥装置を簡素化して示す断面図である。
図4】本出願の一実施例によるアミノ酸混合固形物の製造方法及び装置を簡素化して示すブロック図である。
図5】本出願の一実施例によるアミノ酸混合固形物の製造方法及び装置を簡素化して示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、実施例を挙げて本出願をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本出願を例示する好ましい実施形態にすぎず、本出願がこれらに限定されるものではない。なお、本明細書に記載されていない技術的な事項は、本出願の技術分野又は類似技術分野における熟練した技術者が十分に理解し、容易に実施することのできるものである。
【0064】
「実施例1A」
L-トリプトファンを含むアミノ酸混合固形物の製造
本出願の方法によりL-トリプトファンを含むアミノ酸混合固形物を製造するために、まず発酵槽からL-トリプトファン発酵液を回収した。
【0065】
回収したL-トリプトファン発酵液は、L-トリプトファン濃度57g/L、純度67%、固形分8.4%の組成であった。回収したL-トリプトファン発酵液をパイロット用濃縮管(強制循環式,マンミン機械社製,韓国)に投入して濃縮した。濃縮に用いた発酵液は、全750Lであり、濃縮管の容量に応じて150L/1回で計5回濃縮した。濃縮条件は、圧力0.1気圧、Steam圧力3気圧とし、固形分濃度が25.5%になるまで濃縮した。固形分濃度が25.5%以上になると、ゲル化し、流動性がなくなるので、固形分濃度が25.5%になると濃縮を終了した。回収した濃縮液は、濃度178.9g/L、純度67%、固形分濃度25.5%、体積239Lであった。回収した濃縮液のうち19.1Lを薄膜乾燥装置に供給した。
【0066】
薄膜乾燥装置(二重ジャケット,水平方式,チャンウ機械社製,韓国)を用いて乾燥及び剤形工程を行い、湿潤顆粒を作製した。実施例1Aにおいて、薄膜乾燥装置の運転条件は、内部圧力0.2気圧、スチーム圧力3気圧、Knife線速度8m/s、薄膜乾燥装置攪拌部ブレードと内壁の間隔5mmに設定した。
【0067】
薄膜乾燥装置から湿潤顆粒を5.48kg回収した。回収した湿潤顆粒は、純度67%、固形分92%、平均粒径400~700μmのレベルであった。これを流動層造粒/乾燥機(GRエンジニアリング社製)に投入して乾燥させた。流動層造粒/乾燥機から回収したアミノ酸混合固形物は、5.04kg、回収率97.7%、純度67%、固形分99%であった。
【0068】
実験例1-1.薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒中の固形分含有量によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒中の固形分含有量によるアミノ酸混合固形物製造結果を比較するために、水分乾燥の程度を変えてアミノ酸混合固形物を製造した。
【0069】
実験例1-1に用いた実施例及び比較例においては、実施例1Aにおける濃縮したL-トリプトファン発酵液と同一の物質をそれぞれ19.1Lずつ用いて薄膜乾燥装置に供給した。薄膜乾燥装置の運転条件を実施例1Aと同一にし、投入速度を調節した。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0070】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
実験の結果、薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒の固形分含有量が80%未満、例えば75%以下では顆粒が形成されないことが確認された。また、湿潤顆粒中の固形分含有量が増加するほど顆粒形成が困難になり、追加剤形工程が必要であった。湿潤顆粒中の固形分含有量が92%超、例えば96%以上では顆粒が形成されないことが確認された。
【0073】
実験例1-2.薄膜乾燥装置の攪拌線速度によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
実験例1-2に用いた実施例及び比較例においては、実施例1Aにおける濃縮したL-トリプトファン発酵液と同一の物質をそれぞれ19.1Lずつ用いて薄膜乾燥装置(チャンウ機械,Horizontal type TFD)に供給した。薄膜乾燥装置内の攪拌速度(線速度)を調節し、攪拌速度を除く薄膜乾燥装置の運転条件を実施例1Aと同一にした。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0074】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
実験の結果、薄膜乾燥装置内の攪拌速度(線速度)が増加するほどアミノ酸混合溶液中の固形分の受ける熱量が多くなり、乾燥率が上昇することが確認された。しかし、線速度が17m/sを超えると、アミノ酸混合溶液が過乾燥され、湿潤顆粒の平均粒径が減少し、それに応じて薄膜乾燥装置と流動層造粒/乾燥機のバグフィルターによる微粉損失が多くなり、回収率が低下するという問題があった。それに対して、線速度4m/s未満では、薄膜乾燥装置の内部で薄膜形成率が低下し、乾燥中に薄膜乾燥装置攪拌部にかかる負荷が増加して攪拌されなかった。
【0077】
実験例1-3.薄膜乾燥装置内の薄膜乾燥装置攪拌部と内壁の間隔によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
実験例1-3に用いた実施例及び比較例においては、実施例1Aにおける濃縮したL-トリプトファン発酵液と同一の物質をそれぞれ19.1Lずつ用いて薄膜乾燥装置に供給した。薄膜乾燥装置内の薄膜乾燥装置攪拌部ブレードと内壁の間隔を調節し、他の薄膜乾燥装置の運転条件を実施例1Aと同一にした。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0078】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
実験の結果、薄膜乾燥装置の内壁と薄膜乾燥装置攪拌部ブレードの間隔が広くなるほど被乾燥物の量が多くなると共に、熱伝達が遅くなり、それに応じて乾燥率が低下することが確認された。また、比較例1Eのように間隔が約15mmを超えると、乾燥物により薄膜乾燥装置攪拌部モータにかかる負荷が増加し、運転が不可能であった。
【0081】
実験例1-4.薄膜乾燥装置内の圧力条件によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
実験例1-4に用いた実施例及び比較例においては、実施例1Aにおける濃縮したL-トリプトファン発酵液と同一の物質をそれぞれ19.1Lずつ用いて薄膜乾燥装置に供給した。薄膜乾燥装置の内部圧力を調節し、内部圧力を除く薄膜乾燥装置の運転条件を実施例1Aと同一にした。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0082】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
実験の結果、薄膜乾燥装置内の圧力が低下するほどバグフィルターに粉塵が入り込んで工程収率が低下するのに対して、薄膜乾燥装置内の圧力が高いと、水分乾燥が相対的に高温で行われ、高温による褐変現象が発生することが確認された。具体的には、薄膜乾燥装置内の圧力が約0.05気圧を超えると(比較例1F)、生成されたアミノ酸混合固形物において褐変現象が確認された。また、薄膜乾燥装置内の圧力が約0.6気圧未満では(比較例1G)、薄膜乾燥装置バグフィルターに粉塵が入り込んで工程収率が約91.6%まで低下することが確認された。
【0085】
実験例1-5.薄膜乾燥装置及び混合型造粒機を用いた顆粒作製 実施例1Aで回収したL-トリプトファン濃縮液を用いて、薄膜乾燥装置及び混合型造粒機により顆粒を形成した。
【0086】
実施例1Jにおいて、実施例1Aで回収したL-トリプトファン濃縮液19.1Lのうち18.5Lを薄膜乾燥装置(チャンウ機械,Horizontal type TFD)に投入し、乾燥を行った。薄膜乾燥装置の運転条件を実施例1Aと同一にしたが、濃縮液投入速度を遅くした。排出された乾燥物は、5.03kg、純度67%、固形分96%、平均粒径200~300μmのレベルであった。排出された乾燥物を混合型造粒機(Lodige,Mix-Granulator)にシード(Seed)として投入し、残りのL-トリプトファン濃縮液0.6Lを定量送液ポンプ(EYELA,RP-2100)により混合型造粒機に投入した。混合型造粒機において作製した湿潤顆粒は、5.68kg、純度67%、固形分88%であった。これを実験室用流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。回収率96.6%で4.98kg回収した。純度67%、固形分99%であった。
【0087】
次に、比較例1Hにおいて、実施例1Aで回収したL-トリプトファン濃縮液1.6Lとシード9.5kg(純度65%,固形分99%,平均粒径200~300μm)を薄膜乾燥装置ではなく、直に混合型造粒機(Lodige,Mix-Granulator)に投入して湿潤顆粒を作製した。L-トリプトファン濃縮液は、定量送液ポンプ(EYELA,RP-2100)により混合型造粒機に投入した。湿潤顆粒は、11.15kg、純度65.1%、固形分88%であった。作製した湿潤顆粒を実験室用流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。回収率98.8%で9.79kg回収した。純度65.1%、固形分99%であった。
【0088】
実施例1Jにより、薄膜乾燥装置を用いて高い水分含有量の濃縮液を微粒顆粒に作製し、それを混合型造粒機のシードとして使用可能であることが確認された。
【0089】
「実施例2A」
L-バリンを含むアミノ酸混合固形物の製造
本出願の方法によりL-バリンを含むアミノ酸混合固形物を製造するために、まず発酵槽からL-バリン発酵液を回収した。
【0090】
回収したL-バリン発酵液は、L-バリン濃度80g/L、純度80%、固形分9.8%の組成であった。回収したL-バリン発酵液をパイロット用濃縮管(強制循環式,マンミン機械社製,韓国)に投入して濃縮した。濃縮に用いた発酵液は、全900Lであり、濃縮管の容量に応じて150L/1回で計6回濃縮した。濃縮条件は、圧力0.1気圧、Steam圧力3気圧とし、固形分濃度が28%になるまで濃縮した。固形分濃度が28%以上になると、ゲル化し、流動性がなくなるので、固形分濃度が28%になると濃縮を終了した。回収した濃縮液は、濃度237.3g/L、純度80%、固形分濃度28%、体積303.4Lであった。回収した濃縮液のうち20.2Lを薄膜乾燥装置に供給した。
【0091】
薄膜乾燥装置(二重ジャケット,水平方式,チャンウ機械社製,韓国)を用いて乾燥及び剤形工程を行い、湿潤顆粒を作製した。薄膜乾燥装置の運転条件は、実施例1Aと同一に設定した。
【0092】
薄膜乾燥装置から湿潤顆粒を6.58kg回収した。回収した湿潤顆粒は、純度80%、固形分90%、平均粒径400~700μmのレベルであった。これを流動層造粒/乾燥機(GRエンジニアリング社製)に投入して乾燥させた。流動層造粒/乾燥機から回収したアミノ酸混合固形物は、5.92kg、回収率97.7%、純度80%、固形分99%であった。
【0093】
実験例2-1.薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒中の固形分含有量によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒中の固形分含有量によるアミノ酸混合固形物製造結果を比較するために、水分乾燥の程度を変えてアミノ酸混合固形物を製造した。
【0094】
実験例2-1に用いた実施例及び比較例においては、実施例2Aにおける濃縮したL-バリン発酵液と同一の物質をそれぞれ20.2Lずつ用いて薄膜乾燥装置に供給した。薄膜乾燥装置の運転条件を実施例2Aと同一にし、投入速度を調節した。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0095】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表5に示す。
【0096】
【表5】
【0097】
実験の結果、薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒の固形分含有量が80%未満では(比較例2A)、顆粒が形成されないことが確認された。また、湿潤顆粒中の固形分含有量が増加するほど顆粒形成が困難になり、追加剤形工程が必要であった。湿潤顆粒中の固形分含有量が94%超では(比較例2B)、顆粒が形成されなかった。
【0098】
実験例2-2.薄膜乾燥装置の攪拌線速度によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
実験例2-2に用いた実施例及び比較例においては、実施例2Aにおける濃縮したL-バリン発酵液と同一の物質をそれぞれ20.2Lずつ用いて薄膜乾燥装置(チャンウ機械,Horizontal type TFD)に供給した。薄膜乾燥装置内の攪拌速度(線速度)を調節し、攪拌速度を除く薄膜乾燥装置の運転条件を実施例2Aと同一にした。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0099】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表6に示す。
【0100】
【表6】
【0101】
実験の結果、薄膜乾燥装置内の攪拌速度(線速度)が増加するほどアミノ酸混合溶液中の固形分の受ける熱量が多くなり、乾燥率が上昇することが確認された。しかし、線速度が17m/sを超えると、アミノ酸混合溶液が過乾燥され、湿潤顆粒の平均粒径が減少し、それに応じて薄膜乾燥装置と流動層造粒/乾燥機のバグフィルターによる微粉損失が多くなり、回収率が低下するという問題があった。それに対して、線速度4m/s未満では、薄膜乾燥装置の内部で薄膜形成率が低下し、乾燥中に薄膜乾燥装置攪拌部にかかる負荷が増加して攪拌されなかった。
【0102】
実験例2-3.薄膜乾燥装置内の圧力条件によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
実験例2-3に用いた実施例及び比較例においては、実施例2Aにおける濃縮したL-バリン発酵液と同一の物質をそれぞれ20.2Lずつ用いて薄膜乾燥装置に供給した。薄膜乾燥装置の内部圧力を調節し、内部圧力を除く薄膜乾燥装置の運転条件を実施例2Aと同一にした。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0103】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表7に示す。
【0104】
【表7】
【0105】
実験の結果、薄膜乾燥装置内の圧力が低下するほどバグフィルターに粉塵が入り込んで工程収率が低下するのに対して、薄膜乾燥装置内の圧力が高いと、水分乾燥が相対的に高温で行われ、高温による褐変現象が発生することが確認された。具体的には、薄膜乾燥装置内の圧力が約0.05気圧を超えると(比較例2E)、生成されたアミノ酸混合固形物において褐変現象が確認された。また、薄膜乾燥装置内の圧力が約0.6気圧未満では(比較例2F)、薄膜乾燥装置バグフィルターに粉塵が入り込んで工程収率が約90.5%まで低下することが確認された。
【0106】
実験例2-4.薄膜乾燥装置及び混合型造粒機を用いた顆粒作製
実施例2Aで回収したL-バリン濃縮液を用いて、薄膜乾燥装置及び混合型造粒機により顆粒を形成した。
【0107】
実施例2Hにおいて、実施例2Aで回収したL-バリン濃縮液20.2Lのうち19.4Lを薄膜乾燥装置(チャンウ機械,Horizontal type TFD)に投入し、乾燥を行った。薄膜乾燥装置の運転条件を実施例2Aと同一にしたが、濃縮液投入速度を遅くした。排出された乾燥物は、5.93kg、純度80%、固形分95%、平均粒径200~300μmのレベルであった。排出された乾燥物を混合型造粒機(Lodige,Mix-Granulator)にシード(Seed)として投入し、残りのL-バリン濃縮液0.9Lを定量送液ポンプ(EYELA,RP-2100)により混合型造粒機に投入した。混合型造粒機において作製した湿潤顆粒は、6.85kg、純度80%、固形分86%であった。これを実験室用流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。回収率96.7%で5.86kg回収した。純度80%、固形分99%であった。
【0108】
次に、比較例2Gにおいて、実施例2Aで回収したL-バリン濃縮液1.7Lとシード8.0kg(純度78%,固形分99%,平均粒径200~300μm)を薄膜乾燥装置ではなく、直に混合型造粒機(Lodige,Mix-Granulator)に投入して湿潤顆粒を作製した。L-バリン濃縮液は、定量送液ポンプ(EYELA,RP-2100)により混合型造粒機に投入した。湿潤顆粒は、9.75kg、純度78.1%、固形分86%であった。作製した湿潤顆粒を実験室用流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。回収率98.4%で8.34kg回収した。純度78.1%、固形分99%であった。
【0109】
実施例2Hにより、薄膜乾燥装置を用いて高い水分含有量の濃縮液を微粒顆粒に作製し、それを混合型造粒機のシードとして使用可能であることが確認された。
【0110】
「実施例3A」
L-トレオニンを含むアミノ酸混合固形物の製造
本出願の方法によりL-トレオニンを含むアミノ酸混合固形物を製造するために、まず発酵槽からL-トレオニン発酵液を回収した。
【0111】
回収したL-トレオニン発酵液は、L-トレオニン濃度155g/L、純度85%、固形分17.7%の組成であった。回収したL-トレオニン発酵液をパイロット用濃縮管(強制循環式,マンミン機械社製,韓国)に投入して濃縮した。濃縮に用いた発酵液は、全900Lであり、濃縮管の容量に応じて150L/1回で計6回濃縮した。濃縮条件は、圧力0.1気圧、Steam圧力3気圧とし、固形分濃度が60%になるまで濃縮した。固形分濃度が60%以上になると、ゲル化し、流動性がなくなるので、固形分濃度が60%になると濃縮を終了した。回収した濃縮液は、濃度237.3g/L、純度85%、固形分濃度60%、体積246.5Lであった。回収した濃縮液のうち16.4Lを薄膜乾燥装置に供給した。
【0112】
薄膜乾燥装置(二重ジャケット,水平方式,チャンウ機械社製,韓国)を用いて乾燥及び剤形工程を行い、湿潤顆粒を作製した。薄膜乾燥装置の運転条件は、実施例1Aと同一に設定した。
【0113】
薄膜乾燥装置から湿潤顆粒を11.78kg回収した。回収した湿潤顆粒は、純度85%、固形分92%、平均粒径300~600μmのレベルであった。これを流動層造粒/乾燥機(GRエンジニアリング社製)に投入して乾燥させた。流動層造粒/乾燥機から回収したアミノ酸混合固形物は、回収率97.9%で10.82kgが回収され、純度85%、固形分99%であった。
【0114】
実験例3-1.薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒中の固形分含有量によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒中の固形分含有量によるアミノ酸混合固形物製造結果を比較するために、水分乾燥の程度を変えてアミノ酸混合固形物を製造した。
【0115】
実験例3-1に用いた実施例及び比較例においては、実施例3Aにおける濃縮したL-トレオニン発酵液と同一の物質をそれぞれ16.4Lずつ用いて薄膜乾燥装置に供給した。薄膜乾燥装置の運転条件を実施例3Aと同一にし、投入速度を調節した。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0116】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表8に示す。
【0117】
【表8】
【0118】
実験の結果、薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒の固形分含有量が85%未満では(比較例3A)、顆粒が形成されないことが確認された。また、湿潤顆粒中の固形分含有量が増加するほど顆粒形成が困難になり、追加剤形工程が必要であった。湿潤顆粒中の固形分含有量が96%超では(比較例3B)、顆粒が形成されなかった。
【0119】
実験例3-2.薄膜乾燥装置の攪拌線速度によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
実験例3-2に用いた実施例及び比較例においては、実施例3Aにおける濃縮したL-トレオニン発酵液と同一の物質をそれぞれ16.4Lずつ用いて薄膜乾燥装置(チャンウ機械,Horizontal type TFD)に供給した。薄膜乾燥装置内の攪拌速度(線速度)を調節し、攪拌速度を除く薄膜乾燥装置の運転条件を実施例3Aと同一にした。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0120】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表9に示す。
【0121】
【表9】
【0122】
実験の結果、薄膜乾燥装置内の攪拌速度(線速度)が増加するほどアミノ酸混合溶液中の固形分の受ける熱量が多くなり、乾燥率が上昇することが確認された。しかし、線速度が17m/sを超えると、アミノ酸混合溶液が過乾燥され、湿潤顆粒の平均粒径が減少し、それに応じて薄膜乾燥装置と流動層造粒/乾燥機のバグフィルターによる微粉損失が多くなり、回収率が低下するという問題があった。それに対して、線速度4m/s未満では、薄膜乾燥装置の内部で薄膜形成率が低下し、乾燥中に薄膜乾燥装置攪拌部にかかる負荷が増加して攪拌されなかった。
【0123】
実験例3-3.薄膜乾燥装置内の圧力条件によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
実験例3-3に用いた実施例及び比較例においては、実施例3Aにおける濃縮したL-トレオニン発酵液と同一の物質をそれぞれ16.4Lずつ用いて薄膜乾燥装置に供給した。薄膜乾燥装置の内部圧力を調節し、内部圧力を除く薄膜乾燥装置の運転条件を実施例3Aと同一にした。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0124】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表10に示す。
【0125】
【表10】
【0126】
実験の結果、薄膜乾燥装置内の圧力が低下するほどバグフィルターに粉塵が入り込んで工程収率が低下するのに対して、薄膜乾燥装置内の圧力が高いと、水分乾燥が相対的に高温で行われ、高温による褐変現象が発生することが確認された。具体的には、薄膜乾燥装置内の圧力が約0.05気圧を超えると(比較例3E)、生成されたアミノ酸混合固形物において褐変現象が確認された。また、薄膜乾燥装置内の圧力が約0.6気圧未満では(比較例3F)、薄膜乾燥装置バグフィルターに粉塵が入り込んで工程収率が約90.0%まで低下することが確認された。
【0127】
実験例3-4.薄膜乾燥装置及び混合型造粒機を用いた顆粒作製
実施例3Aで回収したL-トレオニン濃縮液を用いて、薄膜乾燥装置及び混合型造粒機により顆粒を形成した。
【0128】
実施例3Hにおいて、実施例3Aで回収したL-トレオニン濃縮液16.4Lのうち15.8Lを薄膜乾燥装置(チャンウ機械,Horizontal type TFD)に投入し、乾燥を行った。薄膜乾燥装置の運転条件を実施例3Aと同一にしたが、濃縮液投入速度を遅くした。排出された乾燥物は、10.51kg、純度85%、固形分96%、平均粒径200~300μmのレベルであった。排出された乾燥物を混合型造粒機(Lodige,Mix-Granulator)にシード(Seed)として投入し、残りのL-トレオニン濃縮液0.9Lを定量送液ポンプ(EYELA,RP-2100)により混合型造粒機に投入した。混合型造粒機において作製した湿潤顆粒は、11.46kg、純度85%、固形分93%であった。これを実験室用流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。回収率96.3%で10.64kg回収した。純度85%、固形分99%であった。
【0129】
次に、比較例3Gにおいて、実施例3Aで回収したL-トレオニン濃縮液1.4Lとシード8.4kg(純度82.5%,固形分99%,平均粒径200~300μm)を薄膜乾燥装置ではなく、直に混合型造粒機(Lodige,Mix-Granulator)に投入して湿潤顆粒を作製した。湿潤顆粒は、9.88kg、純度82.7%、固形分93%であった。L-トレオニン濃縮液は、定量送液ポンプ(EYELA,RP-2100)により混合型造粒機に投入した。作製した湿潤顆粒を実験室用流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。回収率98.6%で9.15kg回収した。純度82.7%、固形分99%であった。
【0130】
実施例3Hにより、薄膜乾燥装置を用いて高い水分含有量の濃縮液を微粒顆粒に作製し、それを混合型造粒機のシードとして使用可能であることが確認された。
【0131】
「実施例4A」
L-イソロイシンを含むアミノ酸混合固形物の製造
本出願の方法によりL-イソロイシンを含むアミノ酸混合固形物を製造するために、まず発酵槽からL-イソロイシン発酵液を回収した。
【0132】
回収したL-イソロイシン発酵液は、L-イソロイシン濃度36g/L、純度58%、固形分6.1%の組成であった。回収したL-イソロイシン発酵液をパイロット用濃縮管(強制循環式,マンミン機械社製,韓国)に投入して濃縮した。濃縮に用いた発酵液は、全900Lであり、濃縮管の容量に応じて150L/1回で計6回濃縮した。濃縮条件は、圧力0.1気圧、Steam圧力3気圧とし、固形分濃度が31%になるまで濃縮した。固形分濃度が31%以上になると、ゲル化し、流動性がなくなるので、固形分濃度が31%になると濃縮を終了した。回収した濃縮液は、濃度180.2g/L、純度58%、固形分濃度31%、体積162.2Lであった。回収した濃縮液のうち10.8Lを薄膜乾燥装置に供給した。
【0133】
薄膜乾燥装置(二重ジャケット,水平方式,チャンウ機械社製,韓国)を用いて乾燥及び剤形工程を行い、湿潤顆粒を作製した。薄膜乾燥装置の運転条件は、実施例1Aと同一に設定した。
【0134】
薄膜乾燥装置から湿潤顆粒を4.19kg回収した。回収した湿潤顆粒は、純度58%、固形分88%、平均粒径400~600μmのレベルであった。これを流動層造粒/乾燥機(GRエンジニアリング社製)に投入して乾燥させた。流動層造粒/乾燥機から回収したアミノ酸混合固形物は、回収率98.3%で3.70kgが回収され、純度58%、固形分99%であった。
【0135】
実験例4-1.薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒中の固形分含有量によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒中の固形分含有量によるアミノ酸混合固形物製造結果を比較するために、水分乾燥の程度を変えてアミノ酸混合固形物を製造した。
【0136】
実験例4-1に用いた実施例及び比較例においては、実施例4Aにおける濃縮したL-イソロイシン発酵液と同一の物質をそれぞれ10.3Lずつ用いて薄膜乾燥装置に供給した。薄膜乾燥装置の運転条件を実施例4Aと同一にし、投入速度を調節した。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0137】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表11に示す。
【0138】
【表11】
【0139】
実験の結果、薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒の固形分含有量が82%未満では(比較例4A)、顆粒が形成されないことが確認された。また、湿潤顆粒中の固形分含有量が増加するほど顆粒形成が困難になり、追加剤形工程が必要であった。湿潤顆粒中の固形分含有量が94%超では(比較例4B)、顆粒が形成されなかった。
【0140】
実験例4-2.薄膜乾燥装置の攪拌線速度によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
実験例4-2に用いた実施例及び比較例においては、実施例4Aにおける濃縮したL-イソロイシン発酵液と同一の物質をそれぞれ10.3Lずつ用いて薄膜乾燥装置(チャンウ機械,Horizontal type TFD)に供給した。薄膜乾燥装置内の攪拌速度(線速度)を調節し、攪拌速度を除く薄膜乾燥装置の運転条件を実施例4Aと同一にした。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0141】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表12に示す。
【0142】
【表12】
【0143】
実験の結果、薄膜乾燥装置内の攪拌速度(線速度)が増加するほどアミノ酸混合溶液中の固形分の受ける熱量が多くなり、乾燥率が上昇することが確認された。しかし、線速度が17m/sを超えると、アミノ酸混合溶液が過乾燥され、湿潤顆粒の平均粒径が減少し、それに応じて薄膜乾燥装置と流動層造粒/乾燥機のバグフィルターによる微粉損失が多くなり、回収率が低下するという問題があった。それに対して、線速度4m/s未満では、薄膜乾燥装置の内部で薄膜形成率が低下し、乾燥中に薄膜乾燥装置攪拌部にかかる負荷が増加して攪拌されなかった。
【0144】
実験例4-3.薄膜乾燥装置内の圧力条件によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
実験例4-3に用いた実施例及び比較例においては、実施例4Aにおける濃縮したL-イソロイシン発酵液と同一の物質をそれぞれ10.3Lずつ用いて薄膜乾燥装置に供給した。薄膜乾燥装置の内部圧力を調節し、内部圧力を除く薄膜乾燥装置の運転条件を実施例4Aと同一にした。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0145】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表13に示す。
【0146】
【表13】
【0147】
実験の結果、薄膜乾燥装置内の圧力が低下するほどバグフィルターに粉塵が入り込んで工程収率が低下するのに対して、薄膜乾燥装置内の圧力が高いと、水分乾燥が相対的に高温で行われ、高温による褐変現象が発生することが確認された。具体的には、薄膜乾燥装置内の圧力が約0.05気圧を超えると(比較例4E)、生成されたアミノ酸混合固形物において褐変現象が確認された。また、薄膜乾燥装置内の圧力が約0.6気圧未満では(比較例4F)、薄膜乾燥装置バグフィルターに粉塵が入り込んで工程収率が約91.1%まで低下することが確認された。
【0148】
実験例4-4.薄膜乾燥装置及び混合型造粒機を用いた顆粒作製
実施例4Aで回収したL-イソロイシン濃縮液を用いて、薄膜乾燥装置及び混合型造粒機により顆粒を形成した。
【0149】
実施例4Hにおいて、実施例4Aで回収したL-イソロイシン濃縮液10.8Lのうち10.3Lを薄膜乾燥装置(チャンウ機械,Horizontal type TFD)に投入し、乾燥を行った。薄膜乾燥装置の運転条件を実施例4Aと同一にしたが、濃縮液投入速度を遅くした。排出された乾燥物は、3.64kg、純度58%、固形分95.2%、平均粒径200~300μmのレベルであった。排出された乾燥物を混合型造粒機(Lodige,Mix-Granulator)にシード(Seed)として投入し、残りのL-イソロイシン濃縮液0.5Lを定量送液ポンプ(EYELA,RP-2100)により混合型造粒機に投入した。混合型造粒機において作製した湿潤顆粒は、4.17kg、純度58%、固形分87%であった。これを実験室用流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。回収率96.4%で3.63kg回収した。純度58%、固形分99%であった。
【0150】
次に、比較例4Gにおいて、実施例4Aで回収したL-イソロイシン濃縮液1.8Lとシード13.1kg(純度56.5%,固形分99%,平均粒径200~300μm)を薄膜乾燥装置ではなく、直に混合型造粒機(Lodige,Mix-Granulator)に投入して湿潤顆粒を作製した。湿潤顆粒は、15.13kg、純度56.6%、固形分90%であった。L-イソロイシン濃縮液は、定量送液ポンプ(EYELA,RP-2100)により混合型造粒機に投入した。作製した湿潤顆粒を実験室用流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。回収率98.8%で13.59kg回収した。純度56.6%、固形分99%であった。
【0151】
実施例4Hにより、薄膜乾燥装置を用いて高い水分含有量の濃縮液を微粒顆粒に作製し、それを混合型造粒機のシードとして使用可能であることが確認された。
【0152】
「実施例5A」
L-ロイシンを含むアミノ酸混合固形物の製造
本出願の方法によりL-ロイシンを含むアミノ酸混合固形物を製造するために、まず発酵槽からL-ロイシン発酵液を回収した。
【0153】
回収したL-ロイシン発酵液は、L-ロイシン濃度24g/L、純度46%、固形分5.6%の組成であった。回収したL-ロイシン発酵液をパイロット用濃縮管(強制循環式,マンミン機械社製,韓国)に投入して濃縮した。濃縮に用いた発酵液は、全900Lであり、濃縮管の容量に応じて150L/1回で計6回濃縮した。濃縮条件は、圧力0.1気圧、Steam圧力3気圧とし、固形分濃度が35%になるまで濃縮した。固形分濃度が42%以上になると、ゲル化し、流動性がなくなるので、固形分濃度が35%になると濃縮を終了した。回収した濃縮液は、濃度151.0g/L、純度44%、固形分35%、体積142.2Lであった。回収した濃縮液のうち10.5Lを薄膜乾燥装置に供給した。
【0154】
薄膜乾燥装置(二重ジャケット,水平方式,チャンウ機械社製,韓国)を用いて乾燥及び剤形工程を行い、湿潤顆粒を作製した。薄膜乾燥装置の運転条件は、実施例1Aと同一に設定した。
【0155】
薄膜乾燥装置から湿潤顆粒を4.12kg回収した。回収した湿潤顆粒は、純度43%、固形分87%、平均粒径400~600μmのレベルであった。これを流動層造粒/乾燥機(GRエンジニアリング社製)に投入して乾燥させた。流動層造粒/乾燥機から回収したアミノ酸混合固形物は、回収率97.2%で3.60kgが回収され、純度43%、固形分99%であった。
【0156】
実験例5-1.薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒中の固形分含有量によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒中の固形分含有量によるアミノ酸混合固形物製造結果を比較するために、水分乾燥の程度を変えてアミノ酸混合固形物を製造した。
【0157】
実験例5-1に用いた実施例及び比較例においては、実施例5Aにおける濃縮したL-ロイシン発酵液と同一の物質をそれぞれ10.0Lずつ用いて薄膜乾燥装置に供給した。薄膜乾燥装置の運転条件を実施例5Aと同一にし、投入速度を調節した。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0158】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表14に示す。
【0159】
【表14】
【0160】
実験の結果、薄膜乾燥装置から回収した湿潤顆粒の固形分含有量が82%未満では(比較例5A)、顆粒が形成されないことが確認された。また、湿潤顆粒中の固形分含有量が増加するほど顆粒形成が困難になり、追加剤形工程が必要であった。湿潤顆粒中の固形分含有量が93%超では(比較例2B)、顆粒が形成されなかった。
【0161】
実験例5-2.薄膜乾燥装置の攪拌線速度によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
実験例5-2に用いた実施例及び比較例においては、実施例5Aにおける濃縮したL-ロイシン発酵液と同一の物質をそれぞれ10.0Lずつ用いて薄膜乾燥装置(チャンウ機械,Horizontal type TFD)に供給した。薄膜乾燥装置内の攪拌速度(線速度)を調節し、攪拌速度を除く薄膜乾燥装置の運転条件を実施例5Aと同一にした。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0162】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表15に示す。
【0163】
【表15】
【0164】
実験の結果、薄膜乾燥装置内の攪拌速度(線速度)が増加するほどアミノ酸混合溶液中の固形分の受ける熱量が多くなり、乾燥率が上昇することが確認された。しかし、線速度が17m/sを超えると、アミノ酸混合溶液が過乾燥され、湿潤顆粒の平均粒径が減少し、それに応じて薄膜乾燥装置と流動層造粒/乾燥機のバグフィルターによる微粉損失が多くなり、回収率が低下するという問題があった。それに対して、線速度4m/s未満では、薄膜乾燥装置の内部で薄膜形成率が低下し、乾燥中に薄膜乾燥装置攪拌部にかかる負荷が増加して攪拌されなかった。
【0165】
実験例5-3.薄膜乾燥装置内の圧力条件によるアミノ酸混合固形物製造結果の比較
実験例5-3に用いた実施例及び比較例においては、実施例5Aにおける濃縮したL-ロイシン発酵液と同一の物質をそれぞれ10.0Lずつ用いて薄膜乾燥装置に供給した。薄膜乾燥装置の内部圧力を調節し、内部圧力を除く薄膜乾燥装置の運転条件を実施例5Aと同一にした。次に、実施例及び比較例で回収した湿潤顆粒を流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。
【0166】
実施例及び比較例の各条件における実験結果を表16に示す。
【0167】
【表16】
【0168】
実験の結果、薄膜乾燥装置内の圧力が低下するほどバグフィルターに粉塵が入り込んで工程収率が低下するのに対して、薄膜乾燥装置内の圧力が高いと、水分乾燥が相対的に高温で行われ、高温による褐変現象が発生することが確認された。具体的には、薄膜乾燥装置内の圧力が約0.05気圧を超えると(比較例5E)、生成されたアミノ酸混合固形物において褐変現象が確認された。また、薄膜乾燥装置内の圧力が約0.6気圧未満では(比較例5F)、薄膜乾燥装置バグフィルターに粉塵が入り込んで工程収率が約93.1%まで低下することが確認された。
【0169】
実験例5-4.薄膜乾燥装置及び混合型造粒機を用いた顆粒作製
実施例5Aで回収したL-ロイシン濃縮液を用いて、薄膜乾燥装置及び混合型造粒機により顆粒を形成した。
【0170】
実施例5Hにおいて、実施例5Aで回収したL-ロイシン濃縮液10.5Lのうち10.0Lを薄膜乾燥装置(チャンウ機械,Horizontal type TFD)に投入し、乾燥を行った。薄膜乾燥装置の運転条件を実施例5Aと同一にしたが、濃縮液投入速度を遅くした。排出された乾燥物は、3.69kg、純度44%、固形分94.5%、平均粒径200~300μmのレベルであった。排出された乾燥物を混合型造粒機(Lodige,Mix-Granulator)にシード(Seed)として投入し、残りのL-ロイシン濃縮液0.5Lを定量送液ポンプ(EYELA,RP-2100)により混合型造粒機に投入した。混合型造粒機において作製した湿潤顆粒は、4.19kg、純度44%、固形分86%であった。これを実験室用流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。回収率96.4%で3.63kg回収した。純度43%、固形分99%であった。
【0171】
次に、比較例5Gにおいて、実施例5Aで回収したL-ロイシン濃縮液2.0Lとシード15.3kg(純度43%,固形分99%,平均粒径200~300μm)を薄膜乾燥装置ではなく、直に混合型造粒機(Lodige,Mix-Granulator)に投入して湿潤顆粒を作製した。L-ロイシン濃縮液は、定量送液ポンプ(EYELA,RP-2100)により混合型造粒機に投入した。湿潤顆粒は、18.10kg、純度43%、固形分88%であった。作製した湿潤顆粒を実験室用流動層造粒/乾燥機に投入して乾燥させた。回収率98.8%で16.05kg回収した。純度43%、固形分99%であった。
【0172】
実施例5Hにより、薄膜乾燥装置を用いて高い水分含有量の濃縮液を微粒顆粒に作製し、それを混合型造粒機のシードとして使用可能であることが確認された。
【0173】
以上の説明から、本出願の属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】