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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(54)【発明の名称】メッシュ状胎盤膜組織移植片
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/36 20060101AFI20231109BHJP
   A61L 27/60 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
A61L27/36 100
A61L27/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526623
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 US2021057893
(87)【国際公開番号】W WO2022098755
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】63/109,980
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514156585
【氏名又は名称】ミメディクス グループ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マクイーン,アダム
(72)【発明者】
【氏名】ラヴォーン,リック
(72)【発明者】
【氏名】クーブ,トーマス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マッセー,ミシェル
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB19
4C081BA12
4C081BA14
4C081CD34
4C081DA02
4C081DB07
4C081EA13
(57)【要約】
創傷の治療に使用することができる、脱水された、メッシュ状胎盤組織同種移植片である。具体的には、メッシュ状同種移植片は、不規則な形状の創傷を被覆するように拡張することができる特性を有し、したがって、複数の均一サイズの移植片を単一の創傷部位に適用する必要性を低減する。脱水された、メッシュ状胎盤組織同種移植片は、ヒトドナーから供給され、次いで、特定のメッシュパターンを組織に適用する前に、任意の潜在的な汚染物質又は微生物を除去するように処理される。脱水された、メッシュ状胎盤組織移植片は、対象に適用する前に再構成され、次いで、創傷部位の形状を最適に被覆するように構成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ状の拡張可能な無菌胎盤組織同種移植片。
【請求項2】
前記同種移植片が所定のカットを含む、請求項1に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項3】
前記カットが工学的パターンである、請求項2に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項4】
前記カットの全てが互いに平行である、請求項3に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項5】
前記カットが0.1~20mmの長さである、請求項4に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項6】
2つの隣接するカット間の距離が0.1~10mmである、請求項4又は5に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項7】
前記カットの第1の部分が互いに平行であり、前記カットの第2の部分が互いに平行であり、前記第1の部分及び前記第2の部分が、互いに対して1°~180°の角度で方向付けられている、請求項3に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項8】
前記第1の部分又は前記第2の部分に対して平行ではないカットの第3の部分を更に含む、請求項7に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項9】
5つ以下のカットの部分を含み、前記5つ以下のカットの部分の各々が、その他の部分のそれぞれに対して1°~180°の角度で方向付けられている、請求項3に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項10】
前記カットが、前記同種移植片の表面積の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.1%以下を含む、請求項2~9のいずれか一項に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項11】
前記カットがスリットである、請求項10に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項12】
前記同種移植片が、その引張強度未満の力を加えることによって、1つの軸に沿って少なくとも10%~400%拡張し得る、請求項1~11のいずれか一項に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項13】
前記同種移植片が、その引張強度未満の力を加えることによって、その表面積を少なくとも10%~400%増加させるように拡張し得る、請求項1~11のいずれか一項に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項14】
前記胎盤組織同種移植片が脱水されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項15】
前記胎盤組織同種移植片が凍結乾燥されている、請求項14に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項16】
羊膜を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項17】
絨毛膜を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項18】
羊膜及び中間層を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項19】
絨毛膜上に直接層をなした羊膜を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項20】
羊膜、絨毛膜、及び中間層を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項21】
密封パウチ内に含まれている、請求項1~20のいずれか一項に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項22】
前記密封パウチは脱酸素化されている、請求項21に記載の胎盤組織同種移植片。
【請求項23】
創傷を被覆する方法であって、創傷を、請求項1~20のいずれか一項に記載の無菌胎盤組織同種移植片と接触させることを含み、前記接触させることは、前記無菌胎盤組織同種移植片を1つの軸に沿って少なくとも10%~400%拡張して前記創傷を被覆すること、を含む、方法。
【請求項24】
請求項1~20のいずれか一項に記載の胎盤組織同種移植片を使用して、治療を必要とする対象を治療する方法であって、前記方法は、
i)前記胎盤組織同種移植片を1つの軸に沿って少なくとも10%~400%拡張すること、又は前記胎盤組織同種移植片の表面積を少なくとも10%~400%増加させるように前記胎盤組織同種移植片を拡張することと、
ii)前記拡張した胎盤組織同種移植片を前記対象に適用することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張可能な、脱水されたメッシュ状胎盤膜組織同種移植片に関し、この胎盤膜組織同種移植片は、不規則な形状を有する種々の創傷を被覆するために再水和され、拡張され得る。
【背景技術】
【0002】
ヒト胎盤膜(例えば羊膜又は組織)は、1900年代初期から様々な種類の再建外科手術に使用されてきた。この膜は、より一般的には生物学的ドレッシング又はパッチ移植片と呼ばれる基材材料として機能する。かかる膜はまた、米国及び南半球の国々において眼科処置に広く使用されてきた。典型的には、かかる膜は、手術に必要とされるまで、保存及び貯蔵のために凍結されるか、又は乾燥されるかのいずれかである。
【0003】
かかる胎盤組織は、典型的には、選択的帝王切開術後に採取される。胎盤は、中間又はスポンジ層によって分離された、羊膜及び絨毛膜を含む組織の2つの一次層を有する。羊膜は、胎盤の最内層である非血管組織であり、基底膜に付着した単一層からなる。組織学的評価は、羊膜の膜層が、上皮細胞、薄い細網線維(基底膜)、厚い緻密層、及び線維芽細胞層からなることを示す。羊膜の線維層(すなわち基底膜)は、細胞固定コラーゲンIV型、V型、及びVII型を含有する。中間層は、羊膜と絨毛膜との間の潤滑剤として機能するプロテオグリカンに富む物質からなる。絨毛膜は、胎膜の一部とも考えられるが、羊膜層及び絨毛膜層は、別個の分離可能な実体である。絨毛膜は、網状層、基底膜、及び栄養芽細胞層の順になり、in vivo,では、網状層は中間層に隣接している。
【0004】
羊膜は、細胞移動/増殖のためのマトリックスを提供すること、天然の生物学的障壁を提供することを含む外科的処置に使用される場合に固有の移植特性を提供し、非免疫原性であり、自己治癒の増加を促進し、フィブリン糊又は縫合を含む異なる技術を使用して適所に固定されやすい。そして、かかる移植片は、適切に調製された場合、外科的手順のために必要とされるまで、冷蔵又は凍結の必要なく、長期間室温で保存され得る。
【0005】
かかる胎盤膜移植片のための既知の臨床処置又は用途としては、シュナイダー膜修復(すなわちサイナスリフト)、誘導組織再生(GTR)、一般的な創傷ケア、及び一次閉鎖膜が挙げられる。かかる胎盤膜移植片のための既知の臨床処置又は用途としては、生物学的創傷ドレッシングが挙げられる。
【0006】
外科的処置のために「生きた」羊膜組織を採取して使用するための歴史及び処置、並びに眼科的処置のために羊膜組織移植片を採取して凍結するための方法についての詳細な見解は、Tsengに発行された米国特許第6,152,142号に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0007】
しかしながら、胎盤膜移植は、概して、そのサイズ及び寸法によって限定的であり、より大きな又は異常な形状の創傷を治療するための使用には適していない。本明細書で説明する主題は、これらの欠点に対処する。
【発明の概要】
【0008】
特定の実施形態では、本明細書に記載の主題は、広範囲に及び、多くの場合は不規則な形状である創傷部位の形状を被覆するように拡張可能である、メッシュ状で脱水された無菌胎盤膜組織移植片、具体的にはヒト同種移植片を対象とする。胎盤膜組織移植片は、羊膜若しくは絨毛膜の単一層、羊膜若しくは絨毛膜の複数層、又は羊膜及び絨毛膜の組み合わせの複数層から構成され得ることに留意することが重要である。
【0009】
一実施形態では、本発明は、その構造的一体性を著しく損なうことなく移植片の拡張を可能にする特定のカットパターンを含む、脱水された無菌胎盤膜組織同種移植片を提供する。ある実施形態では、これらのカット又は切り込みは、組織の汚染除去及び脱水後に移植片に組み込まれてきた。特定の実施形態に基づいて、カットは、市販のメッシュ化デバイス、レーザーカットデバイス、又はカットテンプレートによって適用され得る。加えて、脱水工程は、当技術分野で周知の技術、例えば、胎盤膜組織の風乾、化学的乾燥、又は凍結乾燥によって行われ得る。加えて、特定の実施形態は、脱水された胎盤膜組織移植片の拡張能力を高めるメッシュパターンを含む。他の実施形態では、複数の固有のメッシュパターンが単一の移植片に適用されてもよい。
【0010】
採取後、胎盤膜をいくつかの工程で処理して、本明細書に記載の製品を得る。例えば、羊膜及び絨毛膜層は、臍帯及び盤状胎盤組織などの他の胎盤組織から分離される(他の組織は、他の目的のために保持されてもよい)。全成分が、単一のドナーから供給される。胎盤膜は、塩溶液中ですすぎ、次いで抗生物質溶液中で再度すすぎ、次いで組織から残留抗生物質溶液を除去するように設計された更に別の塩溶液中で最終的にすすぐ特定のプロセスに供される。
【0011】
ある実施形態では、胎盤膜組織は、最初に高張液中で洗浄される(この高張液は、約30%~約10%の範囲のNaCl濃度を含む)。
【0012】
いくつかの実施形態では、本方法は、絨毛膜組織層を羊膜層から分離する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、羊膜層から絨毛膜組織層を分離した後、選択された層を物理的に洗浄し、血餅及び他の汚染物質を除去する工程をさらに含む。選択された層を分離した後、それらを抗生物質溶液は浸漬されてもよい。任意選択的に、この方法はまた、選択された層をすすいで残留抗生物質溶液を除去する工程を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は、層を分離せずに羊膜及び絨毛膜層を無傷のままにし、中間層を除去することを含む。次いで、天然羊膜及び絨毛膜層を物理的洗浄に供して血餅を除去し、続いて抗生物質溶液中ですすぐ。加えて、無傷の層は、残留抗生物質溶液を除去するために別のすすぎ工程に供される。
【0014】
羊膜組織は穏やかに洗浄され、組織内の固有の成長因子及びタンパク質を保存するために最小限の操作が行われる。羊膜組織中の注目すべき成長因子としては、形質転換成長因子ベータ(TGF-β)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板由来成長因子(PDGF AA及びBB)及び血管内皮成長因子(VEGF)14、15が含まれ、これらは治癒カスケードを制御することが知られている。
【0015】
すすぎ及び汚染除去工程が実施された後、次いで、胎盤組織の選択された層は、乾燥プロセスに供される。この乾燥プロセスは、当技術分野で既知の任意の種類の商業的に許容可能なプロセス(胎盤帯組織の空気乾燥、化学的乾燥、又は凍結乾燥が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0016】
一実施形態では、選択された組織層は固定具上で乾燥される。乾燥固定具の表面は、複数の胎盤膜組織移植片の各々の外側輪郭を画定する複数の溝を有し、切断する工程は、選択された層を溝に沿って切断することを含む。
【0017】
胎盤組織の選択された層を乾燥させ、所望のサイズ及び形状に切断した後、組織にメッシュ状の外観を与える特定のカットパターンが適用される。カットパターンは、所望の実施形態に基づいて様々であり得、メッシュ化ツール、レーザーカットツール、又はカットテンプレートなど市販の装置を使用して適用することができる。
【0018】
完成品は、無菌容器に包装され、移植片が対象の創傷部位に適用される前に、エンドユーザーに許容される賦形剤で再構成される。あるいは、移植片は、創傷部位に直接適用され得、賦形剤及び創傷部位に存在し得る患者自身の体液の組み合わせを用いて再構成され得る。
【0019】
一実施形態では、構造的一体性を有する拡張可能な胎盤組織移植片を形成するための方法が提供され、この方法は、a)脱水された胎盤組織移植片を得ることと、b)移植片の拡張を可能にするために、当該移植片に一連のカット又は切り込みを配置することと、c)当該移植片を殺菌することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の更なる特徴及び利点は、同様の要素が同様の参照番号で参照される以下の図面と併せて、その好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
図1】従来の皮膚移植片メッシャによって得られるスリットにパターンが非常に類似しているが、スリットの長さ及び間隔が、メッシュ状移植片のピーク拡張を達成するように設定されている、スリットメッシュパターンのプロトタイプを示す。拡張移植片は、移植片の長縁に2.5mm厚の境界を有し、切り込みが行われる大きな孔を取り囲む組織の1.5mm厚のストランドを有する。組織は、移植片の短軸に沿って拡張する。レーザーカット及びダイカット製造法の両方を用いて、このパターンを組み込むことができる。
図2】ジグザグメッシュパターンを示す。拡張すると、このメッシュパターンは小孔を作り出し、組織片は各小孔を被覆する。このメッシュパターンは、斜めに配置され、互いに非常に接近した組織ストランドをもたらし、移植片が、取り扱い中及び縫合中にその構造的一体性を維持することを可能にする。
図3】六角形効果を生み出すために、移植片の中心から異なる角度でスリット設計を位置決めすることによって作り出されたクモの巣メッシュパターンを示す。
図4】一連の密集した直線スリット及び傾斜スリットを含む「邪視(evil eye)」状メッシュパターンを示す。
図5】元の邪視状メッシュパターンと比較して、より厚い組織のストランドを作り出すように設計された、邪視状メッシュパターンの修正版を示す。スリットの数は、このメッシュパターンに関して著しく減少している。
図6】より大幅な拡張を可能にする、より厚い組織のストランドを作り出すように設計された、別の邪視状メッシュパターンを示す。スリットの数は、他の2つの邪視状メッシュパターンと比較してわずかに減少している。
図7】再構成又は拡張前の、天然状態にある脱水されたメッシュ状胎盤移植片を示す。
図8】所望の賦形剤が適用され、力が加えられて移植片を拡張させた後の、再構成されたメッシュ状胎盤帯移植片を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この分野で抱えている1つの課題は、創傷が不規則な形状である傾向にあっても、胎盤組織移植片(並びに概して全ての組織移植片)が均一な形状及びサイズであることである。胎盤同種移植片のサイズは、元の胎盤膜組織自体の寸法による制約を受け、したがって、より大きな創傷又は損傷部位は、複数の移植片を必要とする場合がある。これは法外な費用がかかるか、又は胎盤組織移植片の使用を完全に不可能にする場合がある。
【0022】
したがって、市場では、広範囲にわたり、多くの場合不規則な形状である創傷上に移植片を適用する効率的な方法が必要とされている。1つの可能な解決策は、組織の拡張及びそれに伴う被覆面積の増加を可能にするメッシュ化プロセスによって胎盤組織を拡張することを含む。不規則な創傷形状に適合するように広げることができる移植片の作製は、効率を向上させ、治療コストを低減する可能性がある。
【0023】
本発明は、記載する特定の実施形態に限定されるものではない。したがって、当然ながら、多様であり得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の「特許請求の範囲」によってのみ限定されるため、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0024】
「発明を実施するための形態」は、読者の便宜のためだけに様々な節に分割されており、いずれかの節に見出される開示は、別の節の開示と組み合わせることができる。別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料に類似の、又は同等の任意の方法及び材料も、本発明の製造、実施、又は試験に使用され得るが、好ましい方法及び材料をここに記載する。本明細書において言及する全ての特許及び刊行物は参照により組み込まれて、刊行物が引用される方法及び/又は材料を開示し、説明する。
【0025】
本明細書に開示する各実施形態は、他の開示した実施形態のそれぞれに適用可能であると考えられる。本明細書に記載の様々な要素の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせは、実施形態の範囲内である。
【0026】
パラメータ範囲を提供する場合、当該範囲内の全ての整数及び範囲、並びにその10分の1及び100分の1も、実施形態によって提供されることが理解される。例えば、「5~10%」は、5%、6%、7%、8%、9%、及び10%、5.0%、5.1%、5.2%....9.8%、9.9%、及び10.0%、5.00%、5.01%、5.02%....9.98%、9.99%、及び10.00%、並びに、例えば、6~9%、5.1%~9.9%、及び5.01%~9.99%を含む。比率についても同様である。例えば、「1:100~200:1」という記載の比率範囲は、1:100~1:1、1:50~50:1、及び1:1~200:1などの範囲と共に、1:50、1:1、及び100:1など比率を含む。
【0027】
本明細書で使用する場合、数値又は範囲の文脈における「約」は、記載の、又は特許請求される数値又は範囲の±1%、±5%、又は10%以内であることを意味する。
【0028】
本明細書に例示的に開示する本発明は、本明細書で具体的に開示しない任意の要素の非存在下で適切に実施され得る。
【0029】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかにそうではないことを指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0030】
定義
本明細書で使用する場合、以下の用語は以下の意味を有する。
【0031】
「胎盤組織」又は「胎盤」は、盤状胎盤、並びに羊膜、絨毛膜、及び中間層を含む羊膜嚢を意味する。
【0032】
「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」は、組成物、例えば媒体、及び方法が、列挙された要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することが意図される。「から本質的になる」は、方法を定義するために使用する場合、記述した目的のための組み合わせに対して任意の本質的な意義を有する他の要素を除外することを意味するものとする。「からなる」は、追加の実質的な方法工程を除外することを意味するものとする。これらの移行句のそれぞれによって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0033】
「脱水された」とは、組織がその水の実質的に全てを除去された(すなわち、その水の90%超、95%超、99%超、又は100%が除去された)ことを意味する。
【0034】
「任意選択の」又は「任意選択的に」は、その後に記載の事象又は状況が起こり得る又は起こり得ないこと、並びにその記述が、当該事象又は状況が起こる場合及び起こらない場合を含むことを意味する。
【0035】
本明細書中で使用する場合、「対象」という用語は、任意の脊椎生物であり、哺乳動物対象(例えば、ヒト、家畜、飼い慣らされたペットなど)が挙げられるが、これらに限定されない。「患者」という用語は、「対象」と互換的に使用され得る。
【0036】
「メッシュ状」という用語は、移植片の厚さ全体にわたって、工学的パターンで作製された複数のカットを有する胎盤組織移植片を指す。これらのカットは、移植片が少なくとも1つの軸に沿って拡張するときに孔を形成する。カットは、様々なサイズであってよく、互いからの距離又は互いに対する向きが異なっていてよい。
【0037】
「工学的パターン」という用語は、ランダムではない、胎盤帯移植片に形成されたカットの特定の配置を指す。例えば、工学的パターンは、(図1のように)互いに全て平行である、複数の同一サイズのカットからなってよい。あるいは、工学的パターンは、(図2のように)いくつかの他のカットに対してある角度であるカット、又は(例えば、図3図6のように)互いに対して3つ以上の異なる角度であるカットを含み得る。
【0038】
創傷に関して「治療する」という用語は、いずれの種類の医学的介入も不在である場合に創傷が治癒するのにかかったであろう時間を短縮することを意味する。
【0039】
「カット」という用語は、線状カット(すなわち「スリット」)、円形、卵形、長方形、偏菱形、若しくは不規則な形状、又はそれらの組み合わせであり得る穴開けパンチを含むが、これらに限定されない、メッシュ内の多数の切り込みのいずれかを指す。「スリット」は、穴開けパンチのように、移植片からいずれの組織も除去しない線状カットの別名である。
【0040】
「拡張可能」という用語は、組織移植片が、その元のサイズの少なくとも10%、又は外力の作用を受けたときに、その自然形状と比較して少なくとも1つの軸にわたって少なくとも10%拡張する能力を意味し、したがって、再水和のみによる拡張を除外する。「拡張」組織移植片は、少なくとも10%拡張されたものであり、外力の除去後に拡張形態で維持される。
【0041】
好ましくは、移植片は、その元のサイズの少なくとも100%、又は少なくとも1つの軸にわたって100%拡張することができる。理想的には、移植片は、その元のサイズの少なくとも200%、又は少なくとも1つの軸にわたって200%拡張することができる。ある実施形態では、移植片は、移植片を伸張させることによって拡張する。この文脈では、伸張は、弾性特性を意味しない。1つの軸にわたって外力を加えることによる伸張及び拡張は、移植片を創傷部位に適用する前又は適用中に移植片が再水和又は再構成されるときに移植片で生じる体積の微増とは常に区別されるべきである。
【0042】
「引張強度」という用語は、移植片が、破損又は破断する前の伸張中又は拡張中に耐えることができる力の量を意味する。
【0043】
「拡張比」という用語は、非拡張メッシュ状移植片(すなわち、その自然形状)が、その拡張形態の同一メッシュ状移植片と比較して被覆することができる表面積を指す。例えば、1:3の拡張比を有するメッシュ状移植片は、その拡張状態において3倍の表面積を被覆する。これは、表面積被覆率の200%の増加に相当する。
【0044】
ある実施形態は、メッシュ状の拡張可能な無菌胎盤組織同種移植片である。
【0045】
ある実施形態では、当該同種移植片は所定のカットを含む。
【0046】
ある実施形態では、カットは、工学的パターンである。
【0047】
ある実施形態では、当該カットの全ては、互いに平行である。
【0048】
ある実施形態では、当該カット0.1~20mmの長さである。選択したカットのパターン(例えば、図4におけるように)又は同種移植片の縁でのカット(例えば、図1におけるように)のいずれかに起因して、移植片内の全てのカットが同一のサイズ及び/又は形状である必要はないことが理解される。
【0049】
ある実施形態では、2つの隣接するカット間の距離は、0.1~10mmである。「隣接する」は、様々な実施形態において、2つのカットの端部間の距離(図1では2mmの端部間距離)、又は互いに平行に延びるが、同一線上にはない2つのカット間の距離(図1では1mmの側方距離)を指すことが理解される。
【0050】
ある実施形態では、カットの長さ対2つの隣接するカット間の距離の比率は、1:100~200:1である。
【0051】
ある実施形態では、当該カットの第1の部分は互いに平行であり、当該カットの第2の部分は互いに平行であり、第1の部分及び第2の部分は、互いに対して1°~180°の角度で方向付けられている。かかるパターンの例を図2に示す。
【0052】
ある実施形態では、同種移植片は、第1の部分又は第2の部分に対して平行ではない、カットの第3の部分を更に含む。かかるパターンの例を図3に示す。
【0053】
ある実施形態では、同種移植片は、5つ以下のカットの部分を含み、当該5つ以下のカットの部分のそれぞれは、その他の部分のそれぞれに対して1°~180°の角度で方向付けられている。
【0054】
ある実施形態では、当該カットは、同種移植片の表面積の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.1%以下を含む。
【0055】
ある実施形態では、当該カットはスリットである。
【0056】
ある実施形態では、同種移植片は、その引張強度未満の力を加えることによって、1つの軸に沿って少なくとも10%~400%拡張し得る。ある実施形態では、同種移植片は、その引張強度未満の力を加えることによって、その表面積を少なくとも10%~400%増加させるように伸張し得る。
【0057】
ある実施形態では、胎盤組織同種移植片は脱水されている。ある実施形態では、胎盤組織同種移植片は凍結乾燥されている。
【0058】
ある実施形態では、胎盤組織移植片は羊膜を含む。ある実施形態では、胎盤組織移植片は絨毛膜を含む。ある実施形態では、胎盤組織移植片は、羊膜及び中間層を含む。ある実施形態では、胎盤組織移植片は、絨毛膜上に直接層をなした羊膜を含む。ある実施形態では、胎盤組織移植片は、羊膜、絨毛膜、及び中間層を含む。
【0059】
ある実施形態では、胎盤組織同種移植片は密封パウチに収容されている。ある実施形態では、密封パウチは脱酸素化されている。
【0060】
本発明のある実施形態はまた、創傷を被覆する方法であって、この方法は、創傷を本明細書に記載の無菌胎盤組織同種移植片と接触させることを含み、当該接触させることは、当該無菌胎盤組織同種移植片を1つの軸に沿って少なくとも10%~400%伸張して当該創傷を被覆することを含む。
【0061】
本発明のある実施形態はまた、本明細書に記載の胎盤組織同種移植片を使用して、治療を必要とする対象を治療する方法であって、当該方法は、
i)胎盤組織同種移植片を1つの軸に沿って少なくとも10%~400%拡張すること、又は胎盤組織同種移植片の表面積を少なくとも10%~400%増加させるように胎盤組織同種移植片を拡張することと、
ii)拡張した胎盤組織同種移植片を対象に適用することと、を含む、方法。
【0062】
製造方法
最初の組織採取
胎盤組織の回収は、病院で始まり、帝王切開での出産時に採取される(collect)。ドナー(出産間近の母親を指す)は、移植に可能な最も安全性の高い組織を提供するように設計された包括的スクリーニングプロセスを自発的に受ける。このスクリーニングプロセスは、好ましくは、従来の血清学的試験を使用して、ヒト免疫不全ウイルス1型及び2型に対する抗体(抗HIV-1及び抗HIV-2)、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、C型肝炎ウイルスに対する抗体(抗HCV)、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型及びII型に対する抗体(抗HTLV-I及び抗HTLV-II)、CMV、並びに梅毒について試験する。当業者に理解されるように、より多くの、より少ない、又は異なる試験が、経時的に、又は移植片の意図された使用に基づいて所望され得るか、又は必要であり得るため、上記の試験のリストは、例示的なものにすぎない。
【0063】
ドナーの情報及びスクリーニング試験結果についての検討に基づいて、ドナーは、許容可能又は許容不能のいずれかであると考えられる。更に、分娩時に、培養物を採取して、例えば、クロストリジウム又はレンサ球菌の有無を判定する。ドナーの情報、スクリーニング試験、及び分娩時培養物が全て陰性である(すなわち、いかなるリスクも示さないか、又は許容可能なレベルのリスクを示す)場合、ドナーは承認され、組織標本は、更なる処理及び評価にまずは適格であると指定される。
【0064】
上記の選択基準を満たすヒト胎盤は、好ましくは、更なる処理のために処理場所又は実験室への輸送のために、無菌輸送バッグ中の生理食塩水中に個別に袋詰めされ、ウェットアイスの容器中に保存される。
【0065】
材料の受け入れ及び評価
処理センター又は実験室に到着すると、輸送物を開封し、無菌輸送バッグ/容器が密封され、無傷のままであること、氷又は他の冷却剤が存在すること、内容物が冷たいこと、適切なドナーの書類が存在すること、及び書類のドナー番号が組織を含む無菌輸送バッグの番号と一致することを確認する。次いで、更なる処理の準備が整うまで、組織を含む無菌輸送バッグを冷蔵庫に保存する。適切な書式を全て完成させ、一連の保管及び取り扱い記録も完成させる。
【0066】
組織の全体的処理工程
組織の更なる処理の準備ができると、胎盤組織を更に処理するために必要な無菌用品を、制御された環境内のステージング領域に集め、臨界環境に導入するために準備する。臨界環境が製造フードである場合、従来の殺菌技術を使用して、無菌用品を開封し、フードに入れる。臨界環境がクリーンルームである場合、無菌用品を開封し、無菌ドレープで覆われたカート上に配置する。全ての作業面は、従来の無菌技術を使用して無菌ドレープ片で覆われており、無菌用品及び処理機器は、こちらも従来の殺菌技術を使用して無菌ドレープ上に配置する。
【0067】
胎盤組織が、スクリーニング試験及び分娩時培養物からの結果の完了前又は取得前に採取される場合、かかる組織は、標識され、隔離されて保持される。組織は、取り扱い及び使用に安全であることを示す、必要なスクリーニング評価及び分娩時培養を満たした後にのみ、更なる処理のために承認される。
【0068】
処理機器は、従来の産業的に承認された汚染除去手順に従って汚染除去され、次いで、臨界環境に導入される。これらの機器は、機器が組織標本に接近するか、又は組織標本によって不注意に汚染される可能性を最小限に抑えるために、臨界環境内に戦略的に配置される。
【0069】
次に、胎盤を無菌輸送バッグから取り出し、臨界環境内の無菌処理槽に無菌的に移す。無菌槽は、好ましくは、室温又はほぼ室温の18% NaCl(高張生理食塩水)溶液を含む。胎盤を穏やかに揉み、血餅を分離し、胎盤組織の温度を室温にさせ、このことにより、以下で説明するように、羊膜層と絨毛膜層を互いに分離しやすくする。周囲温度まで温度を上げた後(約10~30分後)、胎盤を無菌処理槽から取り出し、羊膜層を下に向けて検査のために処理トレイの上に平らに置く。
【0070】
胎盤組織を検査し、検査の結果を「生組織評価フォーム(Raw Tissue Assessment Form)」に記録する。胎盤組織を、変色、デブリ又は他の汚染、臭気、及び損傷の徴候について検査する。組織のサイズについても記録する。この時点で、組織がさらなる処理のために受け入れ可能であるかどうかについての決定がなされる。
【0071】
次に、特定の実施形態では、胎盤組織がさらなる処理に受け入れ可能とみなされた場合、必要に応じて、胎盤組織の羊膜層及び絨毛膜層は慎重に分離される。あるいは、羊膜及び絨毛膜層の分離を省略することができ、羊膜及び絨毛膜層を無傷のままにして、残りのすすぎ及び汚染除去の工程を行ってもよい。この手順で使用される材料と装置には、処理トレイ、18%生理食塩水、無菌4×4スポンジおよび2つの無菌ナルゲン瓶が含まれる。次に、胎盤組織を綿密に調べ、羊膜層を絨毛膜層から分離することができる領域(通常は角)を見つける。羊膜は、絨毛膜上に薄く不透明な層として現れる。
【0072】
羊膜層が下を向いた状態で処理トレイ内の胎盤組織を使用して、羊膜の裂けを防ぐように注意しながら、絨毛膜層をゆっくりとした連続的な動作で、羊膜層からゆっくりと持ち上げる。裂け始めた場合には、組織のいずれかの層の裂けを最小限に抑えるために、別の場所から分離プロセスを再開することを推奨する。絨毛膜層が必要とされない場合、それは、無菌4×4スポンジのうちの1つを用いて、絨毛膜を一方向に穏やかにこすることによって羊膜層から穏やかにこすり取ることができる。以前のスポンジが湿りすぎたり、又は絨毛膜組織を含んだりした場合はいつでも、新しい無菌4×4スポンジを使用することができる。絨毛膜が保持される場合、分離プロセスは、羊膜層又は絨毛膜層のいずれかを引き裂かないように注意しながら、スポンジを使用せずに手作業で続けられる。
【0073】
次に、羊膜組織と絨毛膜がきれいになり、さらなる処理の準備ができるまで、組織の各層から血餅やその他の外来組織を取り除くように注意が払われる。より具体的には、特定の実施形態では、羊膜及び絨毛膜組織を処理トレイに置き、先の尖っていない器具、指、又は無菌非粒子化ガーゼを使用して、血餅が羊膜の間質組織及び絨毛膜の栄養膜組織から遊離するまで血餅を穏やかにこすることによって、血餅が注意深く取り除かれる。羊膜の間質層は、羊膜のうち、母体に面する側にある。対照的に、基底膜層は、羊膜のうち、乳児に面する側にある。
【0074】
先の尖っていない器具、セルスクレーパーまたは滅菌ガーゼを使用して、残っている破片や汚染物質も取り除く。この工程も、羊膜または絨毛膜組織を引き裂かないように、十分な注意を払って行わなければならない。羊膜組織が滑らかで不透明な白色になったら、羊膜の洗浄は完了である。羊膜組織の洗浄を行い過ぎると、不透明な層が除去される場合がある。羊膜の領域があまりにも乱暴に洗浄され、透明に見える場合は、受け入れ不可能であり、最終的には廃棄される。羊膜及び絨毛膜層が分離されていない場合、先行する工程は省略されてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、線維芽細胞層を露出させるために、海綿層とも呼ばれる中間組織層が羊膜から実質的に除去される。除去される中間組織層の量に関する「実質的に除去される」という用語は、本明細書では、羊膜から中間組織層の90%超、95%超、又は99%超を除去することと定義される。これは、羊膜から中間組織層を剥離することによって行うことができる。あるいは、中間組織層は、ガーゼ又は他の適切なワイプで中間組織層を拭くことによって羊膜から除去することができる。得られた羊膜は、その後、以下に記載の方法を用いて汚染除去することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、羊膜上に存在する上皮層は、羊膜の基底膜を露出させるために実質的に除去される。除去される上皮の量に関する「実質的に除去される」という用語は、本明細書において、羊膜から上皮細胞の90%超、95%超、又は99%超を除去することと定義される。羊膜層上に残っている上皮細胞の有無は、当技術分野で公知の技術を用いて評価することができる。例えば、上皮細胞層の除去後、処理ロットからの代表的な組織サンプルが、標準的な顕微鏡検査スライド上に配置される。次いで、組織サンプルをエオシンY染色を用いて染色し、以下に記載するように評価する。次いで、サンプルを覆い、放置する。十分な時間が経過して染色が可能になったら、拡大して目視観察を行う。
【0077】
上皮層は、いくつかの実施形態では、当技術分野で公知の技術によって除去することができる。例えば、上皮層は、細胞スクレーパーを使用して羊膜から掻き取ることができる。他の技術としては、膜の凍結、細胞スクレーパーを使用する物理的除去、又は上皮細胞を非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及びヌクレアーゼに曝露することが挙げられるが、これらに限定されない。次いで、脱上皮化された組織を評価して、基底膜が損なわれておらず無傷のままであることを判定する。この工程は、処理工程の完了後であって組織が脱水される前に行われる。例えば、代表的なサンプル移植片が顕微鏡分析のために取り出される。組織サンプルを標準スライド上に置き、エオシンYで染色し、顕微鏡下で観察する。上皮が存在する場合、それは敷石状の細胞として現れる。
【0078】
化学的汚染除去工程
次いで、保持した羊膜組織を、化学的汚染除去の次の工程のために無菌ナルゲン瓶に入れる。絨毛膜が回収され、さらに処理される場合、絨毛膜もそのままナルゲン瓶に入れられ、次の工程の化学的汚染除去が行われる。絨毛膜が保存又はさらに使用されない場合、適切なバイオハザード容器に廃棄することができる。
【0079】
次いで、各ナルゲン瓶に18%生理食塩水を無菌状態で充填し、密封する(又は上部で閉じる)。次いで、この瓶をロッカープラットフォーム上に置き、30~90分間撹拌し、組織の汚染物質がさらに除去される。
【0080】
ロッカープラットフォームが臨界環境(例えば、製造フード)内になかった場合、ナルゲン瓶を臨界/無菌環境に戻し、開封する。無菌ピンセットを使用して、18%高張食塩水を含むナルゲン瓶から組織を穏やかに取り出し、空のナルゲン瓶に入れる。次いで、組織を有するこの空のナルゲン瓶に、予め混合した抗生物質溶液を無菌的に充填する。好ましくは、予め混合した抗生物質溶液は、硫酸ストレプトマイシン及び硫酸ゲンタマイシンなど抗生物質の混合物からなる。他の抗体、例えばポリミキシンB硫酸塩及びバシトラシン、又は現在入手可能な、若しくは将来入手可能な類似の抗体も好適である。更に、抗生物質溶液は、組織の温度を変化させないように、又はそれ以外の方法で組織を損傷しないように、添加時に室温であることが好ましい。次いで、組織及び抗生物質を含有するこの瓶又は容器を密封又は閉鎖し、ロッカープラットフォーム上に置き、好ましくは60~90分間撹拌する。抗生物質溶液内での組織のかかる揺動又は撹拌により、汚染物質及び細菌が組織から更に除去される。
【0081】
この場合も、ロッカープラットフォームが重要な環境(例えば、製造フード)内にない場合、組織または抗生物質が入った瓶または容器は、重要な/無菌環境に戻され、開封される。無菌ピンセットを使用して、組織を瓶又は容器から穏やかに取り出し、無菌水又は通常の生理食塩水(0.9%生理食塩水)を含む無菌ボウルに入れる。組織を無菌水/通常の生理食塩水に少なくとも10~15分間浸漬させる。組織は、抗生物質溶液及び任意の他の汚染物質の組織からの除去を容易にするために、わずかに撹拌してもよい。少なくとも10~15分後、組織は、脱水され、さらに処理される準備が整う。
【0082】
凍結乾燥工程
胎盤組織は、単層、羊膜と絨毛膜、羊膜と羊膜、絨毛膜と絨毛膜を組み込んだ二層構成、又は羊膜、絨毛膜、若しくは羊膜と絨毛膜の任意の組み合せのみから構成され得る二層を超える多層構成を含む様々な構成で乾燥基材上に置くことができる。
【0083】
好ましくは、胎盤組織を個々の密封されたTyvekパウチ(又は他の市販のパウチ)に入れ、市販の凍結乾燥チャンバに入れる。凍結乾燥プロセスの完了時に胎盤組織が実質的に脱水されている限り、当業者に既知の任意の凍結乾燥プロセスを使用することができる。
【0084】
胎盤組織を適切に脱水するために他の方法を使用してもよい。かかる技術としては、化学的脱水、又は胎盤組織の最適な脱水が達成されるまで、適切な期間にわたって低湿度/高温環境に胎盤組織を置くことが挙げられ得るが、これらに限定されない。かかる脱水技術は、一般に当業者に周知である。
【0085】
脱水された胎盤組織移植片へのメッシュパターンの適用
脱水された胎盤組織移植片は、カットプロセスに供され、それによって所望のメッシュパターンが移植片に適用される。所望のメッシュパターンを移植片に施すために、いくつかの方法が利用可能である。なお、以下のカット方法は一例であり、これらに限定されるものではない。当業者に既知である、組織移植片にカットパターンを適用する多くの方法が存在する。所望のパターンを移植片に適用する1つの方法は、市販のBiocut Systems(登録商標)カットダイなどダイカットシステムの使用を含む。このシステムの使用は、圧力下で移植片に適用されるカスタム設計されたダイを組み込んでおり、したがって、カスタムダイ上のパターンが移植片に直接カットされる。
【0086】
所望のパターンを移植片に適用する別の方法は、4Med,Ltd.(登録商標)によって製造される市販のユニット「Rosenberg」Adjustable Skin Mesherなど皮膚メッシャの使用を含む。移植片は、いくつかの異なるメッシュ比で異なるカットパターンを適用するように調整することができるメッシャを通して供給され得る。所望のメッシュ比が設定されると、移植片は、メッシャを通って力が供給され、カットパターンは、移植片が噛合い歯から出るときに適用される。
【0087】
メッシュパターンはまた、Optek Systems(登録商標)レーザーカットシステムなど市販のレーザーカットデバイスの使用によって適用され得る。所望のカットパターンの概略図は、デバイスにプログラムされ得、次いで、デバイスは、高出力レーザー光を使用して、プログラムされた概略図に指定されるように、移植片にパターンをカットするであろう。胎盤組織移植片は、カットプロセスの間、このプロセスのためにカスタム設計された固定具上の定位置に保持される。レーザーカットは、他の方法に勝るいくつかの利点を提供し、例えば、所望のカットパターンに関して、特に間隔の狭いカットに関して、より大きな柔軟性があること、及び機械的カットツールの刃先が鈍らにならないことが挙げられる。機械的な刃先が鈍らになると、移植片の厚さ全体を通して不完全なカットをもたらし得、このことは、移植片の品質及び拡張能力に悪影響を有し、不良品が生じ得る。
【0088】
ある実施形態では、カットは、その引張強度未満の力を加えることによって、少なくとも10~400%の移植片の伸張又は拡張を可能にするパターンである。
【0089】
ある実施形態では、カットは、移植片の引張強度未満の力を加えることによって、少なくとも10~400%の移植片の伸張又は拡張を可能にするパターンである。移植片の引張強度未満の力を加えることによって、移植片は、その構造的一体性を損なうことなく、所望の伸張構成を維持する。
【0090】
ある実施形態では、カットは、移植片に微小断裂を形成することなく、少なくとも10~400%の移植片の伸張又は拡張を可能にするパターンである。「微小断裂」は、ダイ、レーザーカッター、又は他の方法によって移植片に意図的に作り出されたカットを含まないことが理解される。
【0091】
ある実施形態では、カットは、移植片のカットから形成された、肉眼で確認できる断裂を有さない、少なくとも10~400%の移植片の伸張又は拡張を可能にするパターンである。これらの断裂は、ダイ、レーザーカッター、又は他の方法によって移植片に意図的に作り出されたカットを含まないことが理解される。ある実施形態では、断裂は、カットの10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満から形成される。
【0092】
ある実施形態では、カットは、移植片のストランドが破断することなく、少なくとも10~400%の移植片の伸張又は拡張を可能にするパターンである。ある実施形態では、ストランドの10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満が破断する。
【0093】
いくつかの実施形態では、カットは、図1に例示するように、平行の千鳥状カットを含み得る。いくつかの実施形態では、カットは、2つの別個のカット部分を備え、各部分は、近接して離間する平行のカット対を備え、第1の部分のカット及び第2の部分のカットは、図2に例示するように、互いに対して角度を成す。いくつかの実施形態では、カットは、図3に例示するように、拡張移植片が「クモの巣」パターンを有するように配置される。いくつかの実施形態では、カットは、図4図6に例示するように、直線及び傾斜スリットの繰り返しパターンで配置される。例えば、図4図6は、千鳥状の繰り返し単位で調製された移植片を示し、各繰り返し単位は、より長い中央スリットを有し、その両側には、鈍角のV字形を形成するように、中央スリットの中心に対して垂直に交わる2つの角度付きスリットがある。
【0094】
包装
脱水された胎盤組織移植片に所望のメッシュパターンを適用した後、移植片をパウチ内に配置する。移植片は、環境大気の存在下でパウチ内に配置され得るか、又は窒素など不活性ガスで充填され得る(環境大気の置換を意味する)。次いで、このパウチを密封し、別のパウチ内に配置する。このパウチも内側パウチの導入後に密封する。内側パウチは、伝統的に無菌パウチと呼ばれており、外側パウチは非無菌と考えられる。
【0095】
殺菌
得られた、脱水された胎盤組織移植片と共に、内側及び外側パウチを最終殺菌工程に供する。最終殺菌は、製品がその最終包装ユニット内にある間に、脱水された胎盤組織移植片を電子ビーム又はガンマ線照射など高エネルギーの透過性電離放射線に曝露することによって達成される。
【0096】
脱水されたメッシュ状胎盤組織移植片の再構成
メッシュ状胎盤組織移植片を対象に投与するために、エンドユーザーは、まず、移植片を再水和することによって、又は適切な賦形剤で再構成することによって移植片を再構成しなければならない。最適には、再水和剤は0.9%生理食塩水であるが、任意の適切な賦形剤を使用してよい。
【0097】
脱水されたメッシュ状胎盤組織移植片の対象への投与
胎盤組織移植片を所望の再水和剤で再構成したら、次にそれを創傷部位に適用する。また、移植片は、創傷床調製物から存在する再水和剤又は血液を用いて創傷部位において水和され得る。再構成した胎盤膜移植片は、創傷床を最大限に被覆するために伸張する。移植片は、移植片の引張強度未満の力を加えることによって単一の軸に沿って伸張する。これは、引張強度を超える力を加えると、移植片の構造的一体性が破壊され、破裂する傾向にあるからである。当業者は、移植片を部位に容易に適用するために構造的一体性が必要とされ、いくつかの実施形態では、上記で議論したように、引張強度、断裂、又はストランドの破断によって評価され得ることを理解するであろう。
【0098】
実験
伸張可能な移植片に対するパターンの適合性を判定するために、いくつかの異なるカットパターンを有する移植片を準備し、伸張させる。
【0099】
実験1:スリット設計(図1
スリットプロトタイプは、従来の皮膚移植片メッシャによって得られるスリットにパターンが非常に類似しているが、スリットの長さ及び間隔が、メッシュ状移植片のピーク拡張を達成するように最適化されている。
【0100】
実験2:ジグザグ設計(図2
ジグザグ切り込みパターンは、拡張時に小孔を作り出し、組織片が各小孔を被覆する。この設計は、組織ストランドが対角線上に配置され、互いに非常に近接しているので、より良好な創傷被覆を可能にする。
【0101】
実験3:クモの巣設計(図3
クモの巣設計は、六角形効果を生み出すために、移植片の中心から異なる角度でスリット設計を位置決めすることによって作り出される。
【0102】
実験4:「邪視」状設計(図4
邪視状設計は、一連の密集した直線スリット及び傾斜スリットである。この設計は、優れた創傷被覆率及び拡張を可能にするが、組織のストランドは非常に薄い(厚さ1mm未満)。
【0103】
実験4.1:邪視状設計2(図5
邪視状設計を再設計して、より厚い組織のストランドを可能にする。4.1の設計では、スリットの数が大幅に減少した。
【0104】
実験4.2:邪視状設計3(図6)。
邪視設計を再設計して、より厚い組織のストランドを作り出したが、最適な拡張も可能にした。4.2の設計では、スリットの数が若干減少した。
【0105】
実験5:移植片の拡張
実験1に従って調製される胎盤組織移植片の概略図の拡張前後の写真を両方示す(それぞれ、図7および図8)。
【0106】
上記の実施形態は、例示的であることのみを意図しており、当業者は、日常の実験のみを使用して、特定の化合物、材料、及び手順の多数の同等物を認識するか、又は確認することができる。全てのかかる同等物は、本開示の範囲内であると考えられ、添付の特許請求の範囲によって包含される。
【0107】
本出願における全ての参考文献の引用又は特定は、かかる参考文献が先行技術として利用可能であることを認めるものではない。刊行物、特許、及び特許出願など全ての引用文献の開示は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0108】
使用する数(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するための努力がなされているが、多少の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。
【0109】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本主題が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有し、Singleton et al(1994)Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,2nd Ed.,J.Wiley & Sons,New York,NY及びJaneway,C.,Travers,P.,Walport,M.,Shlomchik(2001)Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New Yorkと一致している。
【0110】
本明細書に記載の多くの修正及び他の実施形態は、前述の説明及び関連する図面に提示される教示の利益を有する、本主題が関係する当業者に想起されるであろう。したがって、主題は、開示した特定の実施形態に限定されるべきではなく、修正及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。本明細書では特定の用語を用いているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用しており、限定を目的としたものではない。当業者であれば、本明細書に記載の主題を実施する際に使用することができる、本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。本開示は、決して記載の方法及び材料のみに限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】