(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(54)【発明の名称】工具
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20231109BHJP
B23B 51/06 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B23B51/00 K
B23B51/06 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527303
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2021080410
(87)【国際公開番号】W WO2022101060
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】102020214134.7
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597099025
【氏名又は名称】マパル ファブリック フュール プラツィジョンズベルクゼウグ ドクトル.クレス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレンツァー,ウルリッヒ
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037DD03
3C037DD06
(57)【要約】
本発明は、ボア(3)の機械加工用の工具(1)に関する。工具(1)は、中心軸(M)と工具端面(9)とを有する工具本体(7)を備える。少なくとも2つの2次切れ刃(11)が工具本体(7)に形成され、少なくとも2つの2次切れ刃(11)の各2次切れ刃(11)は、工具端面(9)上の2次切れ刃(11)に割り当てられている切削コーナー(13)から始まり、工具(1)の軸端(15)に向かって、特定のねじれピッチで螺旋状に中心軸(M)の方向に延び、割り当てられている切削コーナー(13)から、中心軸(M)の方向に測定された、特定のねじれピッチの少なくとも0.18倍から最大0.28倍の距離(Ab)を隔てて2次切れ刃(11)のそれぞれに支持カラー(17)が接続され、支持カラー(17)は、割り当てられている切削コーナー(13)に対して少なくとも170°まで円周方向に延びている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボア(3)の機械加工用の工具(1)であって、
中心軸(M)と工具端面(9)とを有する工具本体(7)を備え、
少なくとも2つの2次切れ刃(11)が前記工具本体(7)に形成され、前記少なくとも2つの2次切れ刃(11)の各2次切れ刃(11)は、前記工具端面(9)上の前記2次切れ刃(11)に割り当てられている切削コーナー(13)から始まり、前記工具(1)の軸端(15)に向かって、特定のねじれピッチで螺旋状に前記中心軸(M)の方向に延び、
前記割り当てられている切削コーナー(13)から、前記中心軸(M)の方向に測定された、前記特定のねじれピッチの少なくとも0.18倍から最大0.28倍の距離(Ab)を隔てて前記2次切れ刃(11)のそれぞれに支持カラー(17)が接続され、前記支持カラー(17)は、前記割り当てられている切削コーナー(13)に対して少なくとも170°まで円周方向に延びている、工具(1)。
【請求項2】
前記支持カラー(17)は、前記割り当てられている切削コーナー(13)から、前記中心軸(M)の方向に測定された、前記特定のねじれピッチの少なくとも0.22倍から最大0.25倍の距離(Ab)を隔てて前記割り当てられている2次切れ刃(11)に接続されている、請求項1に記載の工具(1)。
【請求項3】
前記支持カラー(17)は、前記割り当てられている切削コーナー(13)から円周方向に測定して、少なくとも65°から最大120°の角度で始まる、および/または少なくとも170°から最大240°の角度で終わる、請求項1または2に記載の工具(1)。
【請求項4】
前記2次切れ刃(11)のそれぞれは、前記割り当てられている切削コーナー(13)から前記割り当てられている支持カラー(17)まで延びるガイド面取り部(23)に割り当てられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の工具(1)。
【請求項5】
前記支持カラー(17)は、前記中心軸(M)の方向に測定された長さ(L)が、前記切削コーナー(13)により画定される前記工具(1)の軌道円の直径(D)の少なくとも0.2倍から好ましくは最大1倍である、請求項4に記載の工具(1)。
【請求項6】
前記少なくとも2つの2次切れ刃(11)の各2次切れ刃(11)は、前記工具端面(9)から前記中心軸(M)の方向に前記軸端(15)に向かって螺旋状に延びている切り屑溝(25)に割り当てられている、請求項1から5のいずれか一項に記載の工具(1)。
【請求項7】
前記支持カラー(17)は、少なくとも実質的に前記軸端(15)に面する前記切り屑溝(25)の端部(27)まで前記中心軸(M)の方向に延びている、請求項6に記載の工具(1)。
【請求項8】
少なくとも1つの潤滑溝(29)が前記支持カラー(17)に形成され、前記少なくとも1つの潤滑溝(29)は、
潤滑溝のねじれピッチを有さず、円周方向に、または
前記特定のねじれピッチと異なる、特に前記特定のねじれピッチとは反対の潤滑溝のねじれピッチで、または
前記特定のねじれピッチと同一の潤滑溝のねじれピッチで
延びている、請求項1から7のいずれか一項に記載の工具(1)。
【請求項9】
前記ガイド面取り部(23)は、前記切削コーナー(13)により画定される前記軌道円の前記直径(D)の最大5%、好ましくは最大3%の幅を備える、請求項5に記載の工具(1)。
【請求項10】
前記支持カラー(17)は、少なくとも1つの潤滑溝(29)によって複数の支持カラー領域(31)に円周方向に分割され、前記支持カラー(17)の前記支持カラー領域(31)の幅の合計は、前記支持カラー(17)に割り当てられている前記ガイド面取り部(23)の幅の少なくとも2倍、好ましくは3倍である、請求項4、5または9に記載の工具(1)。
【請求項11】
前記工具(1)は、正確に2つの2次切れ刃(11)または正確に3つの2次切れ刃(11)を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の工具(1)。
【請求項12】
前記工具(1)は、穴開け工具として、特にツイストドリルとして構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の工具(1)。
【請求項13】
主切れ刃(21)が前記工具端面(9)上の前記少なくとも2つの2次切れ刃(11)の各2次切れ刃(11)に割り当てられ、前記主切れ刃(21)は、前記各切削コーナー(13)のそれぞれで前記割り当てられている2次切れ刃(11)と合流する、請求項1から12のいずれか一項に記載の工具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボアの機械加工用の工具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような工具は、中心軸と工具端面とを有する工具本体を有し、少なくとも2つの2次切れ刃が工具本体に形成され、少なくとも2つの2次切れ刃の各2次切れ刃は、工具端面上の2次切れ刃に割り当てられている切削コーナーから始まり、工具の軸端に向かって、特定のねじれピッチで螺旋形状に、すなわち螺旋状に、中心軸方向に延びている。このような工具は、例えば、穴開け工具として、特にツイストドリルとして構成され得るが、リーマとして、または別の適切な方法においても構成され得る。ボア作製工程の目的は、理想的な円筒形状からのずれが可能な限り少ない、円形で逃げ(偏心)のないボアを作製することである。これは、工具がボアの仮想中心からずれる状況が存在する場合、特に中心軸に対して非対称な力を受けるので、特に困難であることが判明している。とりわけ、工具が横穴のような空洞に穴を開けなければならない場合、または工具が穴軸に対して傾斜した面でワークから出る場合に困難である。特にこれらの状況下では、工具を仮想ボア軸から偏らせる、一方的に作用する大きな力が生じ得る。
【発明の概要】
【0003】
原則として、このような工具は2次切れ刃の領域にガイド面取り部を備えることが可能であり、これは、このようなずれに対する安定化効果を有する。しかしながら、ガイド面取り部でさえも、ずれを防止できるのは限られた程度のみである。例えば、ツイストドリルは、横切れ刃を横方向に制限する2つのガイド面取り部を典型的に備える。これらは、工具の主切れ刃に対して平行に作用する横方向の力を良好に吸収することができる。しかしながら、主切れ刃に垂直に作用する主な力は、ガイド面取り部により吸収することができない。特に、穴開け深さがドリル径の5倍より大きい場合、2次切れ刃の数より多い数のガイド面取り部、例えば4つ、または6つものガイド面取り部を備えるツイストドリルもある。このようなドリルを用いれば穴精度の向上を実現することができ、特に、このような追加のガイド面取り部によって、穴の真円度および真直度を向上させることができる。しかしながら、工具が傾斜面でボアから出る場合、これらの追加のガイド面取り部であっても状況を改善する役割を果たすことはできない。これは、傾斜した外表面で切削が中断されるため、支持に必要なボア壁が不足しているからである。むしろ、ガイド面取り部はすでに通っているボアにドリルを誘導し続けるので、追加のガイド面取り部は、後続の切れ刃が前切れ刃のずれを少なくとも部分的に相殺することまで阻止する。その結果、さらに回転するごとに偏心が増加する。ドリルはその後、穴の中で詰まり始める。ガイド面取り部およびボア壁には非常に大きな摩擦があり、これによりガイド面取り部のトルクおよび摩耗がより大きくなる。負荷のかかったガイド面取り部および切削コーナーは、最終的に工具の破損につながり得る。
【0004】
そのため、本発明の目的は、少なくとも上述の不利な点の一部が少なくとも部分的に回避される、好ましくは解消される、ボアの機械加工用の工具を創出することである。
【0005】
本目的は、提示する技術的教示、特に、独立請求項の教示ならびに従属請求項および本明細書に開示される実施形態を提供することにより解決される。
【0006】
本目的は、特に、ボアの機械加工用の工具を以下のようにさらに構成することによって解決される。この工具では、割り当てられている切削コーナーから、中心軸の方向に測定された、特定のねじれピッチの少なくとも0.18倍から最大0.28倍の距離を隔てて2次切れ刃のそれぞれに支持カラーが接続され、支持カラーは、割り当てられている切削コーナーに対して少なくとも170°まで、好ましくは少なくとも180°まで円周方向に延びている。特に、これによりガイドが有利に形成され、これは工具端面から軸方向に後退しているため、ガイド特性が向上し、安定している。加えて、工具は、割り当てられている切削コーナーに対して少なくとも170°までの範囲で支持カラーによって支持されるので、特に、主切削力および場合によってはこれと垂直に工具に作用する受動力により本質的に画定される合力もまた、支持カラーで支持することができる。支持カラーの軸方向に凹んだ配置は特に有利である。なぜなら、工具が斜めに出るときでも少なくとも部分的に中断された切削の外側に支持があり、すなわち、特にボアの完全に円筒形で中断されていない部分において有効であるため、中断された切削の段階でも工具の切れ刃を支持するからである。しかし同時に、このタイプのガイドは、切れ刃が機械加工されている材料との係合から外れたときに、特に別の切れ刃が係合する前に、工具先端が回転軸にスプリングバックすることも可能とする。
【0007】
好適な実施形態において、ボアとは、ここでは、ワークの中実の材料に作られている、または作られる、すなわち完全なボアであることが理解される。しかしながら、ボアの作製とはボアの完成を意味することもまた理解される。したがって、工具は、一方ではワークの中実の材料から新しいボアを作成するために、また他方では、別の工具または別の方法で予め作成され得るボアを仕上げ加工するために、たとえば寸法に合わせてリーマ加工するために構成することができる。
【0008】
工具端面とは、特に、加工されるワークに面することが意図された工具本体の前面を意味することが理解される。軸端とは、特に、加工されるワークの反対側を向くことが意図された工具の端部を意味することが理解され、この端部は中心軸に沿った工具端面の反対にある。好適な実施形態において、軸端は工作機械またはアダプター等に接続されるように構成される。特に、軸端は、工具のクランプ端または軸であってもよい。「軸端の方向の伸長」は、特に、このように指定された要素が軸端の方向に延びていることを意味する。要素は必ずしも軸端に到達する必要はなく、むしろ軸端から距離を隔てて終了させることができる。
【0009】
少なくとも2つの2次切れ刃は、工具本体の円周上、特に工具本体の周面に形成されていることが好ましい。
【0010】
切削コーナーは、工具端面上に形成された、それぞれの2次切れ刃とその2次切れ刃に割り当てられている主切れ刃との交点として形成されることが好ましい。
【0011】
特に、支持カラーは、割り当てられている2次切れ刃と円周方向に接続され、中心軸の方向に測定された切削コーナーからの前記距離を隔てて配置されている。支持カラーは割り当てられている2次切れ刃と円周方向に直接接続されていることが好ましい。
【0012】
支持カラーは、特に支持面であり、特に、一方は中心軸の方向に、他方は円周方向に、特定の伸長を有する。特に、支持カラーは、工具のための拡幅されたガイド領域を提供する。
【0013】
支持カラーは、中心軸の方向において、支持カラーの位置における2次切れ刃の半径方向位置に相当する半径方向の位置を有することが好ましい。これにより、加工されたワークの壁の支持カラーの領域内で工具を支持することができる。特に、支持カラーは、2次切れ刃の半径方向位置に対して後退した表面領域ではない。ボア内の摩擦を低減させるために、工具は、中心軸の方向に2次切れ刃に沿った切削コーナーにより画定される軌道円から軸の端部に向かう特定のテーパーを有し、これは典型的には、中心軸に沿って、100mmの長さに対して約0.2mmから0.4mmである。支持カラーの領域における半径は、この特定のテーパーにより画定される値、すなわち、軌道円の半径よりもわずかに小さいだけであることが好ましい。
【0014】
好適な実施形態において、支持カラーは円筒形であること、すなわち、それ自体がテーパーを有していないことが可能である。別の好適な実施形態によれば、支持カラーは、軸の端部に向かうわずかなテーパー(テーパーの形状)を有し、これは、好ましくは最大で上述のテーパーに相当し、または特に好ましい実施形態では、上述のテーパーよりも小さく、特に100mm長さあたり0.2mmより小さく、または最大でも0.2mmに等しい。
【0015】
支持カラーがこのような構成を有する場合、上述した従来の値に相当するよりも大きなテーパーを工具が(支持カラーの外側に)有することができるような効率的な支持を工具に有利に提供する。このように、支持カラーの外側のボア内における工具の摩擦は、従来の工具と比較して有利に低減される。
【0016】
特に、工具は、円筒研削により作成された工具ブランクを、形状研削によって工具に成形することで製造されることが好ましく、それによって特に切れ刃形状が形状研削により工具ブランクに形成される。特に工具のガイド面取り部の後ろの円周方向にある溝および凹部もまた、形状研削により作成されることが好ましく、それによって形状研削中に材料が工具ブランクから除去される。支持カラーは、形状研削中にそのままである、すなわち変化しない面または形状であることが好ましく、すなわち、特に円筒研削により作られ、すでに工具ブランク上に存在する面部分または形状である。
【0017】
軸線方向は、ここでは、および以下では、中心軸に沿った方向を示す。半径方向は、軸線方向に対して、つまり中心軸に対して垂直である。円周方向は、中心軸、つまり軸線方向を同心円状に含む。
【0018】
好適な実施形態によれば、支持カラーは、割り当てられている切削コーナーから、特定のねじれピッチの少なくとも0.18倍から最大0.28倍、好ましくは少なくとも0.22倍から最大0.25倍の距離で始まる。したがって、より工具端面寄りの領域には支持カラーがない。
【0019】
特に、特定のねじれピッチは1回転あたりの長さの単位で与えられるので、それに単純な係数を適用すると長さが得られる。
【0020】
代替的な定義によれば、中心軸の方向における切削コーナーから支持カラーの距離は、好ましくは少なくとも軌道円の直径(以下、軌道円直径と略す)から最大で軌道円直径の1.8倍、好ましくは少なくとも軌道円直径から最大で軌道円直径の1.5倍、好ましくは少なくとも軌道円直径の1.2倍から最大で軌道円直径の1.4倍である。
【0021】
好適な実施形態によれば、支持カラーは、中心軸の方向に、すなわち軸方向に、中心軸の第1位置から中心軸の第2位置に延びている。中心軸の第1位置は切削コーナーから第1距離に配置され、これは、特定のねじれピッチの0.18倍、好ましくは0.22倍、好ましくは特定のねじれピッチの0.22倍に相当し、第2位置は切削コーナーから第2距離に配置され、これは、特定のねじれピッチの少なくとも0.25倍、好ましくは少なくとも0.28倍、好ましくは少なくとも0.3倍、好ましくは少なくとも0.35倍に相当する。代替的に、切削コーナーからの第1位置の第1距離は、少なくとも軌道円直径に相当し、好ましくは軌道円直径の1.2倍であり、それによって切削コーナーからの第2位置の第2距離は、好ましくは少なくとも軌道円直径の1.4倍、好ましくは少なくとも軌道円直径の1.5倍、好ましくは少なくとも軌道円直径の1.8倍、好ましくは少なくとも軌道円直径の1.9倍に相当する。支持カラーはまた、特に以下でより詳細に説明されるように、少なくとも実質的に、軸端に面する工具の切り屑溝の端部まで、中心軸の方向に延びることができ、そして第2位置は、軸端に面する切り屑溝の端部に配置されている。
【0022】
第1位置および第2位置の距離に関連してここで述べた値、ならびに切削コーナーからの支持カラーの距離に関連して先に述べた値、および軌道円直径に関連する値は、好適な実施形態において、特に2次切れ刃の螺旋角度が30°である工具に適用される。
【0023】
本発明のさらなる発展によれば、支持カラーは、中心軸の方向に測定された、割り当てられている切削コーナーから、特定のねじれピッチの少なくとも0.22倍から最大0.25倍までの距離を隔てて割り当てられている2次切れ刃と接続されている。この距離の範囲において、すでに上記で説明された利点が特別な方法で発生する。
【0024】
特に、支持カラーは、工具端面の平面視において加工されたワークに対する工具の意図される回転方向に対して測定して、割り当てられている切削コーナーから少なくとも65°、好ましくは少なくとも80°から、最大120°、好ましくは最大100°の開始角度で始まる。この開始角度から始まり、支持カラーはそこから、少なくとも170°、好ましくは少なくとも180°、好ましくは少なくとも185°から、(支持カラーが周回(場合によっては複数回)しない場合)、好ましくは最大240°、好ましくは最大190°の終了角度まで延び、これも同様に上述の方法で測定される。特にこのようにして、好ましくは一方は主切削力、他方は半径方向の受動力からベクトル的に構成されている、特に工具の主切れ刃に作用する合力が、その力の作用点とは正反対の側で、しかし工具端面から軸方向距離を隔てて支持されることが確保される。
【0025】
本発明のさらなる実施形態によれば、支持カラーは、割り当てられている切削コーナーから円周方向に測定して、少なくとも65°、好ましくは少なくとも80°から、最大120°、好ましくは最大100°の開始角度で始まる。代替的にまたは追加的に、支持カラーは、割り当てられている切削コーナーから円周方向に測定して、少なくとも170°、好ましくは少なくとも180°から、(支持カラーが周回(場合によっては複数回)しない場合)、好ましくは最大240°、好ましくは最大190°の終了角度で終わる。これらの角度の範囲において、すでに述べた利点が特別な方法で実現される。この場合、角度は、切削コーナーから、同様に工具端面に向かって中心軸の方向に見て、加工されたワークに対する工具の意図された回転方向に対して測定される。
【0026】
本発明のさらなる実施形態によれば、ガイド面取り部は、2次切れ刃のそれぞれに割り当てられ、これは割り当てられている切削コーナーから割り当てられている支持カラーまで延びている。このようにして、工具は、特に好都合な方法で、ガイド面取り部の利点を支持カラーの利点と組み合わせている。しかしながら、好適な実施形態において、支持カラーは基本的に工具の支持を担っているので、ガイド面取り部は非常に狭くすることができ、特に従来の工具よりも狭くすることができる。これにより、有利には、ボア内の工具の摩擦が低減し、したがってその摩耗および加熱も低減する。それと共に、これにより、特に深いボアを作製しているときの工具破損の危険性も減少する。
【0027】
特に、ガイド面取り部は、支持カラーが始まる中心軸の方向で終わることが好ましい。
【0028】
好適な実施形態によれば、工具は、2次切れ刃と同数のガイド面取り部を有する。特に、各2次切れ刃はガイド面取り部に一意的に割り当てられ、逆もまた同様である。特に、工具は、有利には追加のガイド面取り部を有しないため、優れた支持を提供しながらも、加工されたボア内の摩擦が小さい。
【0029】
本発明のさらなる実施形態によれば、支持カラー、特に工具の各支持カラーは、中心軸の方向に測定された長さが、軌道円の直径の少なくとも0.2倍から、好ましくは最大で1倍である。特にこの支持カラーの長さの範囲では、非常に優れた支持が得られ、同時に工具の摩擦が小さい。
【0030】
好ましくは、支持カラーは、特に中心軸に沿って測定された長さが、軌道円直径の少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%から、支持カラーが軸端に面する切り屑溝の端部まで延びていない場合、好ましくは最大100%、好ましくは最大60%、好ましくは50%である。
【0031】
本発明のさらなる実施形態によれば、少なくとも2つの2次切れ刃の各2次切れ刃は、工具端面から中心軸の方向に軸端に向かって螺旋状に延びる切り屑溝に割り当てられている。このようにして、ボア内で除去された切り屑を効率よく運び出すことができる。
【0032】
本発明のさらなる実施形態によれば、支持カラーは、少なくとも実質的に、軸端に面する切り屑溝の端部まで中心軸の方向に延びている。本実施形態では、支持カラーは特に長い長さを有し、好ましくは、上記で定義した切削コーナーからの軸方向距離で始まり、そこから、この距離から割り当てられている2次切れ刃に沿って、したがって同時に割り当てられている切り屑溝に沿って、実質的に軸端に面するその端部まで、同様に螺旋状に延びている。支持カラーは、軸端に面する割り当てられている切り屑溝の端部まで延びていることが好ましい。このようにして、特に切れ刃からの軸方向距離が大きい場合に、ボア内における工具の特に広範囲にわたる安定した誘導が実現される。特により短い支持カラーと比較すると、支持は向上するが、同時にボア内の摩擦は大きくなる。
【0033】
本発明のさらなる実施形態によれば、支持カラーには少なくとも1つの潤滑溝が形成されている。潤滑溝は、特に冷却剤および/または潤滑剤を誘導する働きをし、したがって特に加工工程中に工具を冷却および潤滑する働きをする。好ましくは、工具は、内部の冷却剤/潤滑剤供給、特に少なくとも1つの冷却剤/潤滑剤供給チャネルを有し、これは、軸端から工具端面まで工具本体を通過し、好ましくは、冷却剤/潤滑剤が工具本体から出てくる工具端面の出口ボアに開口している。冷却剤/潤滑剤はそこから、特に加工されたボアのボア底で偏向され、工具本体の外周に沿って軸端に向かって戻るように流れる。特に、冷却剤/潤滑剤は支持カラーに形成された潤滑溝に入る。潤滑溝はまた、同時に一種の油圧ポケットとして有利に作用することができ、この油圧ポケットでは、工具の走行およびボア内の工具位置を安定させる油圧が、特に一方ではワークに対する工具の回転運動によって、他方では潤滑剤の流れによって、動的に構築される。
【0034】
好適な実施形態によれば、潤滑溝は、好ましくは、潤滑溝のねじれピッチを有することなく円周方向に延びている。この場合、潤滑溝は、中心軸の周りに同心円状に、特に環状に延びている。
【0035】
別の好適な実施形態によれば、少なくとも1つの潤滑溝が、特定のねじれピッチとは異なる潤滑溝のねじれピッチで支持カラー内に延びている。特に、このようにして、工具を安定させるための効率的な油圧ポケットを提供することができる。これは、特に好適な実施形態において、少なくとも1つの潤滑溝が、特定のねじれピッチとは反対の潤滑溝のねじれピッチで延びる場合に特に当てはまる。ワークに対する工具の回転運動により、続いて潤滑剤の圧力が潤滑溝で高まり、ボア内で特に効率よく工具を安定させ、誘導する。
【0036】
さらに別の実施形態によれば、好ましくは、少なくとも1つの潤滑溝が、特定のねじれピッチを同一の潤滑溝のねじれピッチで支持カラー内に延びていることが提供される。このようにして、潤滑剤を潤滑溝内で特に効率的に誘導することができ、軸端の方向に移送することができるので、効率的な放熱が確保される。
【0037】
本発明のさらなる発展によれば、ガイド面取り部は、特に中心軸に対して直角に測定された幅が、軌道円直径の最大5%、好ましくは最大3%である。このように、ガイド面取り部は、有利には、特にいわゆる可視の面取り部として非常に狭く、ボア内での工具の摩擦にわずかに影響するのみである。
【0038】
本発明のさらなる実施形態によれば、支持カラーは、支持カラー内に延びている少なくとも1つの潤滑溝によって、円周方向に複数の支持カラー領域に分割されている。この場合、特に中心軸に対して直角に測定された支持カラーの支持カラー領域の幅の合計は、好ましくは同様に中心軸に対して直角に測定された、支持カラーに割り当てられているガイド面取り部の幅の少なくとも2倍、好ましくは3倍である。このようにして、支持カラーは、少なくとも1つの潤滑溝による中断にもかかわらず、工具に優れた支持を提供することができる。
【0039】
本発明のさらなる実施形態によれば、工具は正確に2つの2次切れ刃を有する。代替的に、工具が正確に3つの2次切れ刃を有することが好ましい。特に、工具は2枚刃カッターとして、または3枚刃カッターとして構成することができる。
【0040】
本発明のさらなる実施形態によれば、工具は、穴開け工具として、特にツイストドリルとして設計することができる。この場合、すでに述べた利点が非常に特別な方法で実現される。特に、これらの利点は、工具が、特に軌道円直径の5倍を超える穴開け深さのための深穴用ドリルとして構成されている場合に実現される。
【0041】
最後に、本発明のさらなる実施形態によれば、工具端面上の少なくとも2つの2次切れ刃の各2次切れ刃には、主切れ刃が割り当てられ、主切れ刃は、それぞれの切削コーナーで割り当てられている2次切れ刃と合流することが提供される。特に、主切れ刃は、それぞれの切削コーナーで2次切れ刃と交差する。特に、工具は、好ましくは正確に2つの主切れ刃または正確に3つの主切れ刃を有し、各主切れ刃は正確に1つの2次切れ刃に割り当てられている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明は、図面を参照して以下により詳細に説明されている。
【
図1】ボアの機械加工のために使用する工具の第1実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、ワーク5にボア3を機械加工するための工具1の第1実施形態を表したものを示す。工具1は、中心軸Mと工具端面9とを有する工具本体7を備える。ここに示す第1実施形態例では、正確に2つの2次切れ刃11が、工具本体7、特にその外周上に形成されている。2次切れ刃11およびこれらにさらに割り当てられている全ての要素は、ここに示す工具1において同じように形成されているので、以下では、簡潔にするために、2次切れ刃11の1つおよびこれに割り当てられている要素のみをより詳細に取り上げる。
【0044】
2次切れ刃11は、工具端面9上のそれぞれの2次切れ刃11に割り当てられている切削コーナー13から、中心軸Mの方向に、特に
図4に示す工具1の軸端15に向かって、特定のねじれピッチで螺旋状に延びている。特定のねじれピッチは、特に「螺旋状の2次切れ刃11の1回転あたりの中心軸方向の長さ」の単位で示される。割り当てられている切削コーナー13から中心軸Mの方向に測定された距離Abを隔てて、2次切れ刃11のそれぞれに円周方向に接続されているのは支持カラー17であり、これは、割り当てられている切削コーナー13から測定して、少なくとも170°、好ましくは180°までの角度で円周方向に延びている。
【0045】
距離Abは、特定のねじれピッチの少なくとも0.18倍から最大0.28倍である。特に、支持カラー17は、切削コーナー13からこの距離Abで始まる。
【0046】
代替的に、切削コーナー13から支持カラー17の距離は、好ましくは、切削コーナー13により画定される工具1の軌道円直径Dの少なくとも1倍から最大で軌道円直径Dの1.8倍、好ましくは少なくとも軌道円直径Dの1倍から最大で軌道円直径Dの1.5倍、好ましくは少なくとも軌道円直径Dの1.2倍から最大で軌道円直径Dの1.4倍である。これは特に、2次切れ刃11が30°の螺旋角度を有する工具1に適用される。
【0047】
距離Abは、特定のねじれピッチの少なくとも0.22倍から最大0.25倍であることが好ましい。
【0048】
切削コーナー13から軸方向に後退している支持カラー17は、ボア3内で工具1を特に安定して誘導するガイドを有利に形成する。これは、特に軌道円直径Dの5倍を超えるボア深さを有する、とりわけ深いボアに適用される。これは特に、
図1に模式的に示すように、工具1が傾斜面19でワーク5から出てくるボア3の機械加工に適用される。
図1からわかるように、工具1は、切削コーナー13および同時に2次切れ刃11の領域(ここでは下方の切削コーナー13および割り当てられている2次切れ刃11で示されている)でその誘導を失うので、片側に負荷がかかり、したがってその回転軸からずれる。これは、今度は、その軸方向のバックオフセットにより、ボア出口の領域でそれ以上の材料がない側でもまだ材料の支持が可能なボア3の領域で支持される支持カラー17により、効果的に打ち消される。したがって、ボア3内での工具1の偏心、特に詰まりが回避される。ボア3は優れた真円度および真直度が得られ、工具1の工具破損の危険は大幅に減少する。
【0049】
各2次切れ刃11は工具端面9上の主切れ刃21に割り当てられており、これはそれぞれの切削コーナー13で割り当てられた2次切れ刃11と合流する。
【0050】
特に、ワーク5の機械加工に関連する力がここに示されており、特に、観察者の見る方向において画像平面に対して垂直であり、主切れ刃21の1つに作用する主切削力Fc、半径方向に作用する受動力Fp、および支持カラー17に作用する支持力FStである。工具1の機能およびこれらの力の意義は、
図2に関してより詳細に説明する。
【0051】
各2次切れ刃11は、割り当てられている切削コーナー13から割り当てられている支持カラー17まで延びるガイド面取り部23に割り当てられている。特に、ガイド面取り部23は、支持カラー17が始まる中心軸Mの方向で終わる。
【0052】
工具1は、2次切れ刃11と同数のガイド面取り部23とを有することが好ましい。
【0053】
各2次切れ刃11は、工具端面9から中心軸Mの方向に軸端15へ向かって螺旋状に延びている切り屑溝25に割り当てられている。
【0054】
ガイド面取り部23はそれぞれ、好ましくは、軌道円直径Dの最大5%、好ましくは最大3%の幅を備える。
【0055】
好適な実施形態において、ここに示すように、工具1は、穴開け工具として、特にツイストドリルとして構成されている。しかしながら、例えば、工具1をリーマとして、または別の適切な方法で構成することも可能である。
【0056】
図2は、工具1が傾斜面19の領域に出るときの、
図1に示すボア3の機械加工に関連する工具1の動作の概略図を示す。
【0057】
同一および機能的に同一の要素には、全ての図で同じ参照符号が付されているので、いずれの場合でも前の説明が参照される。
【0058】
a)では工具端面9の上面図が示され、それによってここで再度、まだワーク5の材料と係合している主切れ刃21に作用する力が模式的に示されている。主切削力Fcは主切れ刃21に垂直に作用し、受動力Fpは中心軸Mに対して半径方向に作用し、これらからベクトル加算により合力Fresが生じ、示されている矢印は正確な比率ではない。すでに傾斜面19から出ている他方の主切れ刃21には、もはや力は作用していない。したがって、合力Fresは工具1を回転軸から押し出そうとする。
【0059】
b)では、支持カラー17の軸方向高さにおける工具1の断面図が示されている。支持カラー17が、合力Fresとは正反対のボア3内の工具1の支持を提供することは明らかであり、これはここでは結果として生じる支持力FSt-resによって表されている。また、主切削力Fcとは正反対に作用する支持力FStも示されている。支持カラー17の軸方向に凹んだ領域では、ボア3の全ての面にワーク5の材料がまだ存在しており、これに対して工具1は支持カラー17でそれ自体を効果的に支持することができる。これにより、工具が回転軸から押し出されることを防止し、したがってボア3の偏心を防止する。その結果、支持カラー17は、ボア3内の工具1の支持を、切削コーナー13の領域から軸端15の方向に軸方向に後方に変位させるという利点を有し、これは、工具1の支持および誘導に対して全体的にプラスの効果を有するが、特に有利な効果は、深いボアの場合、および特にここに示すように、斜めのボア出口の場合に得られる。
【0060】
図3は、
図1に係る工具1の第1実施形態をさらに表したものを示す。ここで、a)では、側方から見た図が、特定の点が強調された状態で改めて再現されている。A'は、
図3b)に示す点Aから中心軸に対して180°オフセットされた点であり、点Aは切削コーナー13に割り当てられ、これは、
図3a)で観察者が見ることのできる支持カラー17に割り当てられている。Bは、支持カラー17が円周方向に始まる点である。Cは、支持カラー17が円周方向に終わる点である。a)において、点Aに類似する点A'は、a)に係る図で点Aが観察者から見えないために示されているだけである。
【0061】
また、支持カラー17が中心軸Mの方向に備える長さLも示されている。
【0062】
長さLは、好ましくは軌道円直径Dの少なくとも0.2倍、好ましくは0.5倍から、好ましくは特に軌道円直径Dの単一の値までである。
【0063】
b)では、再び工具端面9の上面図が示され、ここでも上記で定義される点A、BおよびCが描かれている。
【0064】
支持カラー17は、割り当てられている切削コーナー13から、すなわち点Aから測定して、好ましくは少なくとも65°、好ましくは少なくとも80°で始まり、少なくとも170°、好ましくは最大240°で終わる角度範囲にわたって円周方向に延びている。つまり、点Aから測定された点Bは少なくとも65°であり、好ましくは少なくとも80°であり、これにより点Aから測定された点Cは少なくとも170°であり、好ましくは最大240°であり、これにより全ての角度の表示は360°の完全な円を指す。
【0065】
特に、支持カラー17は、割り当てられている切削コーナー13から円周方向に測定して、好ましくは少なくとも65°、好ましくは少なくとも80°から最大120°の角度で始まる。したがって、特に点Aから測定した点Bは、少なくとも65°から最大120°の角度αにある。
【0066】
代替的にまたは追加的に、支持カラー17は、割り当てられている切削コーナー13から円周方向に測定して、少なくとも170°から最大240°の角度で終わる。そのため、点Cは、点Aから測定された、特に少なくとも170°から最大240°の角度βにある。
【0067】
図4は、工具1の第2実施形態を表したものを示す。ここで、割り当てられている切削コーナー13から測定された距離Abから始まる、すなわち距離Abを起点としている支持カラー17は、少なくとも実質的に軸端15に面する切り屑溝25の端部27まで、好ましくは端部27まで、中心軸Mの方向に延びている。
【0068】
図5は、工具1の第3実施形態を表したものを示し、ここでは、少なくとも1つの潤滑溝29、特に正確に1つの潤滑溝29が支持カラー17に形成されている。ここで、潤滑溝29は、割り当てられている2次切れ刃11に沿って、2次切れ刃11の特定のねじれピッチと同一の潤滑溝のねじれピッチで延びている。
【0069】
図6は、工具1の第4実施形態を表したものを示し、ここでは、複数の潤滑溝29が支持カラー17に形成されている。これらの潤滑溝29は、2次切れ刃11の特定のねじれピッチとは異なる、ここでは特にこの特定のねじれピッチとは反対の潤滑溝のねじれピッチで延びている。このようにして、油圧ポケットを潤滑溝29の形で有利に設けることができ、その中で加圧され、あるいは流れている冷却剤/潤滑剤は、ボア3内で工具1を安定させるのに役立つ。
【0070】
支持カラー17は、少なくとも1つの潤滑溝29によって、複数の支持カラー領域31に、
図5のより単純な場合では2つの支持カラー領域31に、円周方向に分割され得ることも、
図5および6の図から明らかである。支持カラー17の支持カラー領域31の幅の合計は、したがって支持カラー17に割り当てられているガイド面取り部23の幅の好ましくは少なくとも2倍、好ましくは3倍である。
【0071】
ここに示されていない方法で、潤滑溝29が潤滑溝のねじれピッチなしで円周方向に延びることも可能である。
【0072】
最後に、
図7は、工具1の第5実施形態を表したものを示し、これは、正確に3つの2次切れ刃11と、それに対応してこれらの2次切れ刃11のそれぞれに割り当てられている同じく正確に3つの主切れ刃21とを有する。この工具1もまた、穴開け工具として、特にツイストドリルとして、ここでは特に3枚刃カッターとして構成されている。
【国際調査報告】