(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(54)【発明の名称】多温度集熱システム
(51)【国際特許分類】
F24S 10/20 20180101AFI20231109BHJP
F24S 70/225 20180101ALI20231109BHJP
F24S 20/40 20180101ALI20231109BHJP
F24S 23/70 20180101ALI20231109BHJP
【FI】
F24S10/20
F24S70/225
F24S20/40
F24S23/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527457
(86)(22)【出願日】2021-06-27
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 US2021039290
(87)【国際公開番号】W WO2022098398
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523013776
【氏名又は名称】フォトン・ボールト・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】PHOTON VAULT LLC
【住所又は居所原語表記】1448 Asterbell Dr,San Ramon,CA 94582 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ケントウェル・リー・マコーミック
(57)【要約】
本発明は、いくつかの態様において、熱エネルギー収集システムを提供し、熱エネルギー収集システムは、第1熱伝達流体が流れる第1太陽熱収集器であって、太陽光が第1太陽熱収集器を通過するときに太陽光からエネルギーを吸収する第1太陽熱収集器と、第1太陽熱収集器を通過した太陽光からエネルギーを収集する第2太陽熱収集器と、を備える。本発明のこれらの態様による熱エネルギー収集システムの第1熱伝達流体は、第1太陽熱収集器と熱結合しているが、第2太陽熱収集器とは熱結合していない。他の態様では、本発明は、ラジエーターシステムを提供し、ラジエーターシステムは、多壁パネルを備え、多壁パネルの内部が、第1熱伝達流体が流れる流体回路と流体結合するとともに、流体回路の一部を形成する。反射面は、多壁パネルの第2面の近傍に配置される。本発明のさらに他の態様は、反射フィルム太陽エネルギー収集器および太陽エネルギー吸収体を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギー収集システムであって、前記熱エネルギー収集システムは、
A.第1熱伝達流体が流れ、通過する太陽光からのエネルギーを吸収する第1太陽熱収集器と、
B.前記第1太陽熱収集器を通過した太陽光からエネルギーを収集する第2太陽熱収集器と、
を備え、
C.前記第1熱伝達流体は前記第2太陽熱収集器との熱結合を欠いている、熱エネルギー収集システム。
【請求項2】
前記第1太陽熱収集器が、少なくとも空隙によって前記第2太陽熱収集器から分離されている、請求項1に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項3】
前記第1太陽熱収集器が、前記第2太陽熱収集器によって発せられる長波放射を吸収する、請求項1に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項4】
前記第1太陽熱収集器がUV吸収性である、請求項1に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項5】
前記多壁パネルが、その面の少なくとも1つにUV光吸収層を含む、請求項4に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項6】
前記第1太陽熱パネルが多壁パネルを備え、当該多壁パネルの内部は、前記第1熱伝達流体が流れる流体回路と流体結合するとともに、当該流体回路の一部を形成する、請求項1に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項7】
前記多壁パネルが多壁ポリカーボネートパネルである、請求項6に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項8】
前記流体回路が、染料の貯蔵器と弁作動式流体結合している、請求項6に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項9】
前記染料が前記第1太陽熱収集器を通って流れるために前記貯蔵器から前記流体回路内に放出されるときに、前記染料が、太陽光が前記第1太陽熱収集器を通過するのを少なくとも部分的に妨げる、請求項8に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項10】
前記染料は、可視スペクトルおよび赤外スペクトルの少なくとも一方におけるエネルギーの吸収を増加させるために、前記第1熱伝達流体を着色する、請求項9に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項11】
前記流体回路が、前記第1熱伝達流体と低温熱源との間に間接的な熱結合を提供する熱交換器を含む、請求項10に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項12】
前記流体回路は、前記熱交換器を通して前記第1熱伝達流体を導くように動作可能な1つ以上のポンプおよび/または弁を含み、(i)前記第1太陽熱収集器内の前記第1熱伝達流体によって吸収された熱エネルギーを前記低温熱源に伝達し、あるいは、(ii)前記第1太陽熱収集器を介して放散するために、前記低温熱源から前記第1熱伝達流体に熱を伝達する、請求項11に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項13】
前記低温エネルギー源がヒートポンプである、請求項12に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項14】
前記多壁パネルが、前記第1太陽熱収集器を通る前記第1熱伝達流体の流れの方向と平行に延びる複数の内部チャネルを備える、請求項1に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項15】
前記多壁パネルは押出成形により形成される、請求項10に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項16】
前記第2太陽熱収集器が、
A.第2熱伝達流体が流れる熱伝導性ビアと、
B.太陽光を反射して前記熱伝導性ビアに集める反射フィルムと、
を備える、請求項1に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項17】
A.前記第2太陽熱収集器は、前記フィルムが配置されるフレームを備え、
B.前記フレームは前記フィルムが吊り下げられる支持体を備える、請求項16に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項18】
前記支持体の1つ以上が、前記フィルムの傾斜を拘束する、請求項17に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項19】
前記ビアは、
A.熱伝導性の外側シェルと、
B.前記外側シェル内に配置され、前記第2熱伝達流体が流れるダクトと、
C.前記外側シェルと前記ダクトとの間に配置される膨張黒鉛と、
を備える、請求項16に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項20】
前記膨張黒鉛が圧縮されている、請求項19に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項21】
前記ダクトがステンレス鋼管を含む、請求項19に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項22】
前記第2太陽熱収集器が、太陽電池セル、太陽熱平板収集器、およびパラボラ型太陽集光器のいずれかを含む、請求項1に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項23】
前記第1太陽熱収集器および第2太陽熱収集器のそれぞれが、それぞれの外部ハウジングを備え、前記第1太陽熱収集器の前記外部ハウジングが、前記第2太陽熱収集器の前記外部ハウジングから分離可能である、請求項1に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項24】
ラジエーターシステムであって、前記ラジエーターシステムは、
A.多壁パネルであって、当該多壁パネルの内部が、第1熱伝達流体が流れる流体回路と流体結合するとともに、当該流体回路の一部を形成する、多壁パネルと、
B.熱エネルギーを前記熱伝達流体から周囲環境に伝達する前記多壁パネルの第1面と、
C.前記多壁パネルの第2面の近傍に配置された反射面と、
を備えるラジエーターシステム。
【請求項25】
前記第1面および前記第2面は、前記多壁パネルの対向する面である、請求項24に記載のラジエーターシステム。
【請求項26】
前記多壁パネルの前記第1面は空に面しており、前記多壁パネルの前記第2面は地球に面している、請求項25に記載のラジエーターシステム。
【請求項27】
前記反射面は、前記多壁パネルから入射する放射エネルギーを前記多壁パネルに向かって反射する、請求項24に記載のラジエーターシステム。
【請求項28】
前記多壁パネルが多壁ポリカーボネートパネルである、請求項24に記載のラジエーターシステム。
【請求項29】
前記多壁パネルが、前記多壁パネルを通る前記第1熱伝達流体の流れの方向と平行に延びる複数の内部チャネルを備える、請求項24に記載のラジエーターシステム。
【請求項30】
前記多壁パネルが押出成形によって形成される、請求項24に記載のラジエーターシステム。
【請求項31】
前記流体回路が低温熱源と熱結合している、請求項24に記載のラジエーターシステム。
【請求項32】
前記流体回路が、前記第1熱伝達流体と前記低温熱源との間に間接的な熱結合を提供する熱交換器を含む、請求項31に記載のラジエーターシステム。
【請求項33】
前記低温エネルギー源がヒートポンプである、請求項32に記載のラジエーターシステム。
【請求項34】
請求項20に記載のラジエーターシステムを備える熱エネルギー収集システム。
【請求項35】
A.前記多壁パネルは、第1熱伝達流体が流れる第1太陽光集熱器であり前記パネルを通過する太陽光からエネルギーを吸収し、
B.前記流体回路は、低温熱源と熱結合し、前記第1熱伝達流体を導いて、前記第1太陽熱収集器を介して前記低温熱源から熱を放散するように動作可能である、請求項34に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項36】
前記流体回路が、前記第1熱伝達流体と前記低温熱源との間に間接的な熱結合を提供する熱交換器を含む、請求項35に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項37】
前記流体回路は、前記熱交換器を通して前記第1熱伝達流体を導き、前記低温熱源から前記第1熱伝達流体に熱を伝達し、前記第1太陽熱収集器を介して放散するように動作可能である、請求項36に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項38】
前記低温エネルギー源がヒートポンプである、請求項35に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項39】
前記第1太陽熱収集器が多壁パネルを備え、前記多壁パネルの内部は、前記第1熱伝達流体が流れる流体回路と流体結合するとともに、前記流体回路の一部を形成する、請求項35に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項40】
前記多壁パネルが多壁ポリカーボネートパネルである、請求項39に記載の熱エネルギー収集システム。
【請求項41】
前記流体回路は、前記第1太陽熱収集器内の前記第1熱伝達流体によって吸収された熱エネルギーを前記低温熱源に伝達するか、あるいは、前記第1太陽熱収集器を介して前記低温熱源から熱を放散するように動作可能である、請求項35に記載の熱エネルギー収集器。
【請求項42】
前記熱エネルギー収集器が反射フィルムを備え、当該反射フィルムは、前記第1太陽熱収集器内に含まれるおよび/または前記第1太陽熱収集器を通過する熱エネルギーが、その上に太陽熱収集器が配置される地面または他の基板を暖めるのを防ぐように配置される、請求項35に記載の熱エネルギー収集器。
【請求項43】
前記反射フィルムは、前記第1太陽熱収集器を通過する太陽光が、その上に太陽熱収集器が配置される地面または他の基板を暖めるのを防ぐ、請求項42に記載の熱エネルギー収集器。
【請求項44】
前記反射フィルムが第2太陽熱収集器の一部を形成する、請求項42に記載の熱エネルギー収集器。
【請求項45】
前記第2太陽熱収集器が、
A.第2熱伝達流体が流れる熱伝導性ビアと、
B.第1太陽熱収集器を通過する太陽光を反射させ、前記熱伝導性ビア上に集めるために配置される反射フィルムと、
を備える、請求項44に記載の熱エネルギー収集器。
【請求項46】
太陽エネルギー収集システムであって、
A.熱エネルギー収集器と、
B.太陽光を反射し前記熱エネルギー吸収体に集める反射フィルムと、
C.前記フィルムが配置されるフレームであって、前記フィルムが吊り下げられる支持体を含むフレームと、
D.可視スペクトルおよび赤外スペクトルの少なくとも一方において実質的に透明であり、前記フレームの近くに配置されて前記フィルムに対する環境への悪影響を最小限に抑えるカバーと、
を備える、太陽エネルギー収集システム。
【請求項47】
前記熱エネルギー収集器が、熱伝達流体が流れる熱伝導性ビアと、
B.前記太陽光を反射し前記熱伝導性ビア上に集める反射フィルムと、
を備える請求項46に記載の、太陽エネルギー収集システム。
【請求項48】
前記ビアは、
A.熱伝導性の外側シェルと、
B.前記外側シェル内に配置され、前記熱伝達流体が流れるダクトと、
C.前記外側シェルと前記ダクトとの間に配置される膨張黒鉛と、
を備える、請求項47に記載の太陽エネルギー収集システム。
【請求項49】
前記膨張黒鉛が圧縮されている、請求項48に記載の太陽エネルギー収集システム。
【請求項50】
前記ダクトがステンレス鋼を含む、請求項48に記載の太陽エネルギー収集システム。
【請求項51】
前記1つ以上の支持体が前記フィルムの傾斜を拘束する、請求項46に記載の太陽エネルギー収集システム。
【請求項52】
太陽エネルギー収集器において、
A.太陽エネルギーを受け取るように適合された1つ以上の熱伝導性の外側シェルと、
B.前記1つ以上の外側シェル内に配置され、前記1つ以上の外側シェルを横切り、熱伝達流体が流れるダクトと、
C.前記外側シェルの少なくとも1つと前記ダクトとの間に配置される膨張黒鉛と、
を含む改良。
【請求項53】
請求項52に記載の太陽エネルギー収集器において、前記外側シェルの少なくとも1つが、反射された太陽光を受け取るように適合されている、さらなる改良。
【請求項54】
請求項52に記載の太陽エネルギー収集器において、前記膨張黒鉛が圧縮されている、さらなる改良。
【請求項55】
請求項52に記載の太陽エネルギー収集器において、前記ダクトがステンレス鋼管を備える、さらなる改良。
【請求項56】
請求項52に記載の太陽エネルギー収集器において、互いに離間した複数の前記外側シェルを含む、さらなる改良。
【請求項57】
請求項56に記載の太陽エネルギー収集器において、前記ダクトが、複数の前記外側シェルを横切るように曲げられるか、またはその他の形状である、さらなる改良。
【請求項58】
請求項52に記載の太陽エネルギー収集器において、前記外側シェルの少なくとも1つが管を備える、さらなる改良。
【請求項59】
太陽エネルギー吸収体であって、
A.平板と、
B.熱伝達流体の流れを運ぶダクトと、
C.前記ダクトおよび前記平板と熱伝導する圧縮膨張黒鉛の層であって、前記平板から熱エネルギーを吸収し、それを前記ダクトに伝導する、層と、
を備える、太陽エネルギー吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多温度集熱システムに関する。これは、太陽熱の収集だけでなく、いくつかの態様では、太陽熱から収集されたかどうかに関係なく熱の放散にも応用される。
【背景技術】
【0002】
太陽熱エネルギーはエネルギー供給の重要な部分である。光電池技術は、そのエネルギーを電気に変換する安価で耐久性のある手段であることが証明された。ただし、光発電からの電気エネルギーは簡単に保存されず、一部のエネルギー需要には電気エネルギーではなく熱エネルギーが必要である。太陽熱エネルギーを熱エネルギーとして直接収集することで、貯蔵が容易になり、またプロセスの加熱要件への統合が容易になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、太陽熱エネルギーの収集は電気エネルギーの収集よりもはるかに経済的ではないことが証明されている。高温、複雑な追跡および集束システム、並びに環境ストレスにより、これらのシステムを導入するための複雑さ、材料費、労力が増大する。この点では、ミラーベースのシステムが一般的に使用されている。太陽が空を移動する際の有効性を確保するために、これらのシステムには太陽追跡メカニズムが必要であり、それは設置や保守が困難な場合がある。さらに、ミラーは集光率が限られており、腐食しやすく、入射する太陽光の全パワーを太陽の熱エネルギーを収集する吸収体に集中させる能力を低下させる。既存の平板型システムはそれほど複雑ではなく、維持費も安価であるが、コストがかかるため、多くのユーザーにはまだ手が届かない。太陽熱管を利用した平板型システムやその他のシステムは安価になる可能性があるが、通常、熱伝達流体として水を使用する低温用途に限定されてきた。高温の流体によるフラッディングなど、水の代替手段が使用される場合、これらのシステムのコストとそれに伴うヒートパイプ技術のコストが高コストになる可能性がある。
【0004】
本発明の目的は、例えば太陽熱エネルギーの収集に適用可能な、熱収集のために改良されたシステムおよび方法を提供することである。
【0005】
他の目的は、太陽熱エネルギー収集に関連するか否かに関係なく、熱放散のためのそのような改良されたシステムおよび方法を提供することである。
【0006】
本発明のさらに他の目的は、太陽熱エネルギー収集に実行可能な経済性をもたらし、例えば、貯蔵およびプロセス加熱用途を可能にするようなシステムおよび方法を提供することである。
【0007】
本発明のさらに別の目的は、例えば太陽熱管収集器を使用して、太陽熱エネルギーの経済的に効率的な収集を可能にするようなシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
デュアル太陽熱収集器システム
上記は、本発明によって達成される目的の一つであり、本発明は、いくつかの態様において熱エネルギー収集システムを提供し、当該熱エネルギー収集システムは、第1熱伝達流体が流れる第1太陽熱収集器であって、太陽光が第1太陽熱収集器を通過する際に太陽光からのエネルギーを吸収する第1太陽熱収集器と、第1太陽熱収集器を通過した太陽光からエネルギーを収集する第2太陽熱収集器とを備える。本発明のこれらの態様による熱エネルギー収集システムの第1熱伝達流体は、第1太陽熱収集器と熱結合しているが、第2太陽熱収集器とは熱結合していない。
【0009】
本発明の関連する態様は、例えば上述したように、第1太陽熱収集器が少なくとも空隙によって第2太陽熱収集器から分離されている熱エネルギー収集システムを提供する。本発明の他の関連する態様では、第1太陽熱収集器および第2太陽熱収集器は、互いに分離したまたは分離可能なそれぞれの外部ハウジングを備える。
【0010】
本発明の他の関連する態様は、例えば上述したような熱エネルギー収集システムを提供し、第1太陽熱収集器は、例えばその面の1つにUV光吸収層を含むことができ(例えば上から第1収集器に当たる太陽光からのUV光を吸収するために)、第2太陽熱収集器より発せられる(例えば下から)長波放射を吸収する。
【0011】
本発明のさらに他の関連する態様は、例えば上述したような熱エネルギー収集システムを提供し、第1太陽熱パネルは多壁パネルを備え、多壁パネルの内部は、第1熱伝達流体が流れる流体回路と流体結合し、流体回路の一部を形成する。本発明の関連する態様によれば、多壁パネルは多壁ポリカーボネートパネルとすることができる。
【0012】
本発明のさらに他の態様は、例えば上述したような熱エネルギー収集システムを提供し、流体回路は、染料の貯蔵器と弁作動式の流体結合状態にあり、染料が第1太陽熱収集器を通って流れるために前記貯蔵器から流体回路内に放出されると、染料は太陽光が第1太陽熱収集器を通過することを少なくとも部分的に妨げる。この染料は、本発明の関連する態様によれば、可視スペクトルおよび赤外スペクトルのうちの少なくとも1つにおけるエネルギーの吸収を増加させるために、第1熱伝達流体を着色することができる。
【0013】
本発明のさらなる態様は、例えば上述したような熱エネルギー収集システムを提供し、流体回路は、第1熱伝達流体と低温熱源との間に間接的な熱結合を提供する熱交換器を含む。本発明の関連する態様によれば、その流体回路は、熱交換器を通して第1熱伝達流体を導くように動作可能な1つ以上のポンプおよび/または弁を含み、(i)第1太陽熱収集器内の第1熱伝達流体によって吸収された熱エネルギーを低温熱源に伝達し、あるいは、(ii)低温熱源から第1熱伝達流体に熱を伝達して第1太陽熱収集器を介して放散する。
【0014】
本発明の他の関連する態様は、例えば上述したような、低温エネルギー源がヒートポンプである熱エネルギー収集システムを提供する。
【0015】
本発明の関連する態様によれば、多壁パネルは、第1太陽熱収集器を通る第1熱伝達流体の流れの方向と平行に延びる複数の内部チャネルを備えることができる。そして、そのパネルは、本発明の他の関連する態様によれば、押出成形によって形成することができる。
【0016】
本発明のさらに他の関連する態様は、例えば上述したような熱エネルギー収集システムを提供し、第2太陽熱収集器は、第2熱伝達流体が流れる熱伝導性ビアと、太陽光を反射して熱伝導性ビアに集める反射膜とを備える。このフィルムは、本発明の関連する態様によれば、第2太陽熱収集器の一部を形成するフレームから吊るすことができる。さらに、本発明の他の態様によれば、フレームは、フィルムの傾斜を拘束する1つ以上の支持体を含むことができる。
【0017】
本発明の関連する態様によれば、前述のビアは、熱伝導性の外側シェルと、外側シェル内に配置され第2熱伝達流体が流れるダクトと、外側シェルとダクトとの間に配置される膨張黒鉛とを備える。本発明の関連する態様によれば、膨張黒鉛は圧縮され、ダクトはステンレス鋼管を含む。
【0018】
本発明のさらに他の態様は、例えば上述したような熱エネルギー収集システムを提供し、第2太陽熱収集器は、太陽電池セル、太陽熱平板収集器、およびパラボラ型太陽集光器のいずれかを備える。
【0019】
ラジエーター+太陽熱収集器
他の態様では、本発明はラジエーターシステムを提供し、前記ラジエーターシステムは、多壁パネルを備え、当該多壁パネルの内部が、第1熱伝達流体が流れる流体回路と流体結合するとともに、当該流体回路の一部を形成する。前記多壁パネルの第1面は、熱エネルギーを前記熱伝達流体から周囲環境に伝達する。反射面は、前記多壁パネルの第2面の近傍に配置されている。
【0020】
本発明の関連する態様は、例えば上述したように、多壁パネルの第1面と第2面がそのパネルの対向する面であるラジエーターシステムを提供する。本発明の関連する態様によれば、そのような第1面は空に面し、そのような第2面は地球に面することができる。
【0021】
本発明の関連する態様によれば、反射面が、その上に入射する放射エネルギーを、例えば多壁パネルを通過した後、多壁パネルに向かって反射する、例えば上述のようなラジエーターシステムが提供される。このパネルは、本発明の関連する態様によれば、押出成形またはその他の方法で形成された多壁ポリカーボネートパネルであってもよく、例えば、第1熱伝達流体がパネルを流れる方向と平行に延びる複数の内部チャネルを含む。
【0022】
本発明のさらなる態様は、流体回路は、例えばヒートポンプなどの低温熱源に熱的に結合される、例えば上述したようなラジエーターシステムを提供する。この流体回路は、本発明の関連する態様によれば、第1熱伝達流体と低温熱源との間に間接的な熱結合を提供する熱交換器を含むことができる。
【0023】
本発明のさらに他の態様は、例えば上述したようなラジエーターシステムを備える熱エネルギー収集システムを提供する。このような熱エネルギー収集システムでは、多壁パネルは、第1熱伝達流体が流れ、パネルを通過する太陽光からエネルギーを吸収する第1太陽熱収集器として機能することができる。そして、流体回路は、低温熱源(例えば、ヒートポンプ)に熱的に結合することができ、第1太陽熱収集器を介して低温熱源から熱を放散するように、第1熱伝達流体を導くように動作可能である。
【0024】
本発明の関連する態様によれば、例えば上述のような熱エネルギー収集システムの流体回路は、第1熱伝達流体と低温熱源との間に間接的な熱結合を提供する熱交換器を含むことができる。この流体回路は、本発明の関連する態様によれば、熱交換器を通して第1熱伝達流体を導き、第1太陽熱収集器を介して放散するために低温熱源から第1熱伝達流体に熱を伝達するように、動作可能であり得る。
【0025】
関連する態様によれば、本発明は、例えば上述したような熱エネルギー収集システムを提供し、流体回路は、第1太陽熱収集器内の第1熱伝達流体によって吸収された熱エネルギーを低温熱源に伝達するように、或いは、低温熱源から第1太陽熱収集器を介して熱を放散するように、動作可能である。
【0026】
さらに他の態様では、本発明は、例えば上述したような熱エネルギー収集器を提供し、この熱エネルギー収集器は反射フィルムを備え、反射フィルムは、第1太陽熱収集器内に含まれるおよび/または第1太陽熱収集器を通過する熱エネルギーが、その太陽熱収集器が置かれている地面または他の基材を暖めるのを防ぐように置かれる。この反射フィルムは、本発明の関連する態様によれば、第1太陽熱収集器を通過する太陽光が、その太陽熱収集器が配置されている地面または他の基材を暖めるのを防ぐことができる。
【0027】
本発明のさらに別の関連する態様によれば、その反射フィルムは、第2熱伝達流体が流れる熱伝導性ビアを含む第2太陽熱収集器の一部を形成することができ、反射フィルムは、第1太陽熱収集器を通過した太陽光を反射して熱伝導性ビアに集めるように配置される。
【0028】
反射フィルムエネルギー収集器
他の態様では、本発明は太陽熱エネルギー収集システムを提供し、太陽熱エネルギー収集システムは太陽熱エネルギー吸収体と、太陽光を反射して熱エネルギー吸収体に集中させる反射フィルムと、フィルムが配置され吊り下げられるフレームと、可視スペクトルおよび赤外スペクトルの少なくとも一方において実質的に透明であり、フィルムに対する環境への悪影響を最小限に抑えるためにフレームの近くに配置されるカバーとを備える。本発明の関連する態様によれば、フレーム内に設けられた支持体は、フィルムの傾斜を拘束することができる。
【0029】
本発明の関連する態様は、例えば上述したような太陽熱エネルギー収集システムを提供し、熱エネルギー吸収体は熱伝達流体が流れる熱伝導性ビアを備え、反射フィルムは太陽光を反射して熱伝導性ビアに集中させるように配置される。
【0030】
このビアは、本発明の関連する態様によれば、熱伝導性の外側シェルと、外側シェル内に配置され熱伝達流体が流れるダクトと、外側シェルとダクトとの間に配置される膨張黒鉛とを備えることができる。本発明の関連する態様によれば、膨張黒鉛を圧縮することができ、ダクトはステンレス鋼を含むことができる。
【0031】
膨張黒鉛を使用した太陽熱エネルギー吸収体
本発明の他の態様は、太陽熱エネルギーを受け取るように適合された1つ以上の熱伝導性外側シェルと、1つ以上の外側シェル内に配置され、これらの外側シェルを横切り、熱伝達流体が流れるダクトと、少なくとも1つの外側シェルとダクトとの間に配置される膨張黒鉛と、を含む太陽熱エネルギー吸収体を提供する。
【0032】
本発明の関連する態様は、例えば上述したような改良された太陽熱エネルギー吸収体を提供し、外側シェルのうちの少なくとも1つは反射された太陽光を受けるように適合されており、膨張黒鉛は圧縮されており、及び/又はダクトはステンレス鋼管を備えている。
【0033】
本発明のさらに他の関連する態様は、例えば上述したような、相互に離間した複数の前記外側シェルを備える改良された太陽熱エネルギー吸収体を提供する。
【0034】
本発明のさらに他の関連する態様は、例えば上述したような改良された太陽熱エネルギー吸収体を提供し、ダクトは複数の前記外側シェルを横断するように曲げられるか、または他の形状にされる。
【0035】
本発明のさらに他の関連する態様では、本発明は、例えば上述したような、外側シェルの少なくとも1つが管を含む、改良された太陽熱エネルギー吸収体を提供する。
【0036】
膨張黒鉛を有する太陽熱エネルギー平板吸収体
さらに他の態様では、本発明は太陽熱エネルギー吸収体を提供し、太陽熱エネルギー吸収体は、平板と、熱伝達流体の流れを運ぶダクトと、ダクトおよび平板の両方と熱伝導する圧縮膨張黒鉛の層と、を含み、当該板から熱エネルギーを吸収しダクトに伝導する。
【0037】
本発明の前述および他の態様は、以下の本文および図面から明らかである。
【0038】
本発明は、以下の図面を参照することによってより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、本発明の一実施によるデュアル太陽熱収集器システムを示す図である。
【
図2A】
図2Aは、構造の側面を反映している
図1のシステムの多壁パネルの透視図である。
【
図3】
図3は、
図4Aおよび
図4Bの太陽熱収集器で使用されるタイプの、本発明による黒鉛充填太陽熱吸収体の構造を示す。
【
図4A】
図4Aは、本発明による反射フィルムエネルギー太陽熱収集器の透視図である。
【
図5】
図5は、
図1によるシステムで使用されるタイプの代替の太陽熱収集器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
デュアル太陽熱収集器システム
図1は、本発明の一実施によるデュアル太陽熱収集器システム1100を示す。このシステムは、図に示されるように配置された第1太陽熱収集器1102および第2太陽熱収集器1150を備え、第1太陽熱収集器は太陽1103と第2収集器1150との間に配置されている。いくつかの実施形態では、第1および/または第2収集器1102、1150は、これらは、太陽が空を移動するときに太陽に対するそれぞれの位置を確実にするために、当技術分野で知られているタイプの太陽追跡機構(図示せず)を備えている。
【0041】
第1収集器1102は、可視光および/または赤外光に対してほぼ透明であり得、それを通過する太陽光から熱エネルギーを収集する。図示の実施形態では、収集器1102は、後述するように多壁パネルを備え、その内部は熱伝達流体が流れる流体回路と流体結合し、流体回路の一部を形成する。以下に説明するように、その回路は破線1107で表されている。
【0042】
太陽からの熱エネルギーを吸収することに加えて、いくつかの実施形態の第1収集器1102は、第2太陽熱収集器によって発せられる長波(すなわち、赤外線)放射、例えば、さもなければ大気中に失われる可能性のある放射を吸収する。以下で説明するように、収集器1102は、システム1100のいくつかの動作モードでは、熱を吸収するのではなく、環境に熱を放散するように機能することもできる。
【0043】
第2太陽熱収集器1150は、第1太陽熱収集器を通過した太陽光からエネルギーを収集する。それは、太陽電池セル、太陽熱平板収集器、パラボラ型太陽集光器、または本明細書の教示に従って適合される当技術分野で知られているタイプの他の太陽熱収集器のいずれかを備えることができる。図示の実施形態では、第2収集器1150は、以下に
図3~4Bに関連して説明したタイプの「高温」の太陽熱集光器型収集器を備える。以下で説明するように、これは高温の熱エネルギーを収集する太陽熱管と、太陽熱放射を集中させて高温を生成する複合反射板とを含む。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態の第1および第2収集器1102、1150は、別個のおよび/または分離可能な太陽熱収集器(すなわち、互いに独立して動作できる太陽熱収集器)を備える。したがって、例えば、前述の熱伝達流体は第1太陽熱収集器1102と熱結合しているが、第2収集器1150とは熱結合していない。さらに、図示のように、それぞれの収集器1102、1150の間に空隙1105が存在し得る。さらに、第1および第2太陽熱収集器1102および1150は、互いに分離または分離可能な独自の外部ハウジングを有してもよい。ただし、これらのハウジング(図示せず)は、例えば太陽1103に対する相対的な位置決めを確実にするために、フレームなどによって機械的に結合されてもよい。他の実施形態は、これらの点のいずれかまたはすべてにおいて変更されてもよい。
【0045】
太陽熱エネルギー収集システム1100の1つの利点は、それがシステム全体の効用を拡張し、経済性を改善する3つの機能を統合していることである。熱を吸収し、熱を放散する動作モードに加えて、低温収集器1102は、後述するように染料を利用して、太陽光の透過を遮断することによって高温収集器1150を「不活性化」することができる。
【0046】
したがって、例えば、上述したような高温収集器1150を採用する実施形態では、これにより、適度に高温の熱エネルギー(実装形態に応じて200℃~300℃以上)の収集が可能になる。これは一部の集光型太陽熱発電システムよりも低いが、ここで説明される実施形態は、最小限の資本コストでこの目的を達成する。この利点は、例えば
図3~4Bに関連して以下に説明するように、U字型太陽熱管および/または膨張黒鉛が充填された管を利用する実施形態において強化される。
【0047】
多壁パネル収集器およびラジエーター
さらに、「低温収集器」、すなわち多壁平板収集器1102は、周囲温度付近(周囲温度以上または周囲温度以下)の熱を捕捉することによって太陽から追加の熱エネルギーを引き出す能力を追加する。この追加の熱は、たとえばヒートポンプで高温の熱を生成するために使用できる。さらに、透明な絶縁層を追加することで、低温収集器が捕捉する熱は、高温収集器への影響を最小限に抑えながら、さらに高温(40℃~100℃)にすることができる。
【0048】
さらに、図示の実施形態の多壁低温収集器1102は、図示のシステムによって、および/またはそれが結合されている下流装置(例えば、熱エンジン1220など)によって収集された熱を放散するためのラジエーターとして使用することができる。収集器によって収集された熱が機械的仕事を生成するために熱エンジンで消費される場合、これらのシステムは消費する熱エネルギーのかなりの部分を最終的に放散する必要があるため、これは特に重要である。
【0049】
図1に示される実施形態を参照すると、太陽1103は、低温収集器1102を通過する放射を発する。図示の実施形態では、一般に平板型設計であるその収集器は、市場で市販されているタイプの双壁ポリカーボネートパネル1120を備える。他の実施形態は、より多くの壁を有する多壁パネル、並びに/または、可視スペクトルおよび/若しくは赤外スペクトルの太陽光に対して実質的に透明であり、そのスペクトルの少なくとも一部を吸収および/若しくは変換のために収集器1150に送る他の材料(例えば、プラスチック、ガラスなど)から製造された多壁パネルを使用することができる。透過率の程度および透過率のスペクトルは実装に特有であり、その選択は、収集器1150の特性(収集器1102が太陽光を通過させる)と、収集器1102および1150によって吸収/変換されるスペクトルのそれぞれの部分とに応じて、当業者の知識の範囲内である。
【0050】
図示の実施形態の多壁パネル1120は、(少なくとも)その太陽に面した表面上に層を含み、当たるUV太陽熱放射を吸収する。図示の実施形態では、これは、アクリル接着剤1140を用いて双璧ポリカーボネートパネル1120に取り付けられたフィルム1110によってもたらされる。アクリル接着剤1140は、例えば、圧縮力の適用またはその他の方法によって作動し、可視および近赤外線放射に対して透明である。
【0051】
そのフィルムは、例えば、紫外線抑制剤を含むポリフッ化ビニルフィルムとすることができるが、フィルムまたはその他としてパネル1120に適用されるかどうかにかかわらず、当技術分野で知られている他のUV抑制剤を代わりにまたは追加で使用することができる。このフィルムは、太陽熱エネルギーの大部分を伴う可視光および赤外線を透過させながら、紫外線(UV)放射を除去することによってシステム1100の寿命を延ばす保護層を提供する。このフィルムは、砂、風、汚れによる環境劣化に強い表面も提供する。フィルムの他の候補材料には、ポリビニレンジフルオリド(PVDF)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、超疎水性シリカナノ粒子フィルムおよびガラスが含まれるが、これらに限定されない。フィルムなしでパネル1102を使用することも、また、双壁ポリカーボネートまたは他の多壁パネル組成物中の紫外線抑制剤のみに依存することも可能である。
【0052】
押出成形などによって形成することができる双壁ポリカーボネートまたは他の多壁パネル1102は、複数の内部平行チャネル(例えば、
図2Aの要素1120aの平行ビアによって示される)を含み、複数の内部平行チャネルは、強化された構造強度を提供し、熱伝達流体のための導管として機能する。図示の実施形態では、その流体は水であるが、当業者の知識の範囲内で選択される他の流体を代わりにまたは追加で使用することもできる。ヘッダー1130および1135は、それぞれ流体の入口および出口を提供し、流体をポリカーボネート/多壁パネル1102のチャネルに分配し、それらからの流れをそれぞれ統合する。
【0053】
デュアル太陽熱収集器システムの流路
ヘッダー1130、1135は、図面に示され、以下に説明されるように、熱伝達流体を運ぶための流体流路(または回路)を定義するのに適した、ビア、配管、導管、チュービング(ここでは、まとめて「管」)、弁、ポンプ、および当技術分野で知られているタイプの他の構造によって結合される。これらの管は、慣例に従って、図面では実線と方向矢印で示されている。弁とポンプは、対応する従来のアイコンで示されている。
【0054】
図1を参照すると、第1流体流路1107は、弁1170が閉じ、弁1172が開き、ポンプ1160が作動しているとき、図示の管、弁、およびポンプによって定義される。これは、ポンプ1160、入口ヘッダー1135、パネル1120のチャネル、出口ヘッダー1130、弁1172、および熱交換器1200を含む流路である。その交換器1200は、流路1107内の熱伝達流体と、それぞれ低温熱源1220(例えば、ヒートポンプ)またはヒートシンク1250のいずれかの流路1115、1117内の熱伝達流体との間に間接的な熱結合を提供する。
【0055】
弁1172が閉じられ、弁1170が開かれると、第1流体流路1107は、弁1170および染料貯蔵器1180を含む第2流体流路1109を含むように延びる。
【0056】
熱交換器1200は、熱伝達を最大化するために逆流方向に移動する2つの流体流路(ここでは便宜上一次流路および二次流路と呼ぶ)の流体を同時に運ぶ(およびその一部を形成する)内部管を含む。図示の実施形態の熱交換器1200は、シェルアンドチューブ型のものである。望ましい動作条件に基づいて、他の熱交換器技術を代わりに使用してもよい。これには、ブレージングプレート式熱交換器、スパイラルチューブ熱交換器、および直接接触熱交換器が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
図示の実施形態では、交換器の一次流路は、多壁パネル1120で利用される熱伝達流体(例えば、水)を運ぶ流路1107(任意で、流路1109と組み合わせ)である。
【0058】
交換器の二次流路は、弁1111および1113の配置に応じて、流路1115または1117のいずれかであり、両方ともイソブタンなどの共通の作動流体を運ぶ。より具体的には、弁1111が開き、弁1113が閉じ、ポンプ1210が動作している場合、二次流路は、弁1111、低温源1220(例えば、ヒートポンプ)およびポンプ1210を含む流体流路1115である。一方、弁1111が閉じられ、弁1113が開き、ポンプ1210が動作している場合、二次流路は、弁1113、ヒートシンク1250およびポンプ1210を含む流体流路1117である。
【0059】
デュアル太陽熱収集器システムの動作
図面に示されているポンプおよび弁は、当技術分野で知られている従来の種類のものである。これらおよびシステム1100の他の能動構成要素は、以下および本明細書の他の場所で説明するように、太陽熱吸収、放熱、および「停止(deactivation)」のサイクルをもたらすように動作することができる。このような操作は、本明細書の教示に従って適応された当技術分野の慣例に従って、オペレータ(図示せず)による「手動」により、例えばデジタルデータプロセッサ、PLCまたは他の制御装置またはそれらの組み合わせ(図示せず)などの機械により、または人間と機械の組み合わせにより行われてよい。
【0060】
したがって、例えば、太陽熱吸収サイクルでは、流体流路1107および1117は、弁1170を閉じ、弁1172を開き、ポンプ(流路1107用)を起動することによって、さらに、弁1111を閉じ、弁1113を開き、ポンプ1210(流路1117用)を起動することによって、起動される。このサイクルは、通常日中に、パネル1120を通過する太陽光(および第2太陽熱収集器1150によって放出される長波放射、または、パネル1120の環境内に存在する長波放射)が、パネル1120を通過するときに流路1107内の熱伝達流体を温める際に、実行される。暖められた流体がその流路1107を通ってユニット1200を通過するとき、流体は流路1117の作動流体と熱を交換し、その作動流体は引き続きその流路1117に沿って当技術分野で既知のタイプの低温ヒートシンク1250に至る。低温ヒートシンク1250は、例えば非限定的な例として、イソブタンを気相で消費し、それを主に液相でシステムに戻す蓄熱システムが挙げられる。太陽熱収集器1150は、上述の熱吸収サイクル中に動作し、パネル1120を通過した太陽熱エネルギーを変換または吸収することができる。
【0061】
熱拡散サイクルでは、流体流路1107および1115は、弁1170を閉じ、弁1172を開き、ポンプ(流路1107用)を起動することによって、さらに、弁1113を閉じ、弁111を開き、ポンプ1210(流路1115用)を起動することによって、起動される。このサイクルは、通常、パネル1120の温度が日中の最高温度に達する前の夜間および早朝に、ヒートポンプまたは他の低温源1220から熱を放散するために実行される。
【0062】
流路1115内の熱源1220によって温められた作動流体は、熱交換器1200内の熱伝達流体と熱交換する。温められた熱伝達流体は、流路1107に沿ってパネル1120に移動し、そこで過剰な熱エネルギーを周囲環境に、たとえば太陽に面した面を介して、放出する。
【0063】
これは、パネル1120の地球を向く面(図示の実施形態では、パネル1120の太陽を向く面の反対側)が反射面に隣接して配置される実施形態において促進され得る。これは、例えば、
図4Aに関連して以下に説明する太陽熱収集器1150の反射フィルムであり得る。あるいは、パネル1120のいくつかの実施形態は、反射フィルム、シート、パネル、または他の構造を採用して、放射エネルギーを多壁パネルに向かって反射する。このようなフィルム、シート、またはパネルは、すべて非限定的な例として、パネル1120の地球側の面またはパネル1120の近傍のフレーム1140に貼り付けることができる。
【0064】
潜在的に用途が限られているが、太陽熱収集器1150は、放熱サイクル中に動作して、パネル1120を通過した太陽熱エネルギーを変換または吸収することができる。
【0065】
場合によっては、太陽熱収集器1150への熱エネルギーの流れを遮断することが望ましい場合がある。これは、例えば保守作業中に必要となる場合がある。停止サイクルでは、ポンプ1160が作動している間に、弁1172を閉じ、弁1170を開くことによって、第1流体流路1107が第2流体流路1109を含むように拡張される。これにより、染料貯蔵器1180が流路1107/1109内の熱伝達流体に着色剤を供給する。この着色剤は、可視および赤外スペクトルにおける液体の吸収を増加させる。それがパネル1120を通って流れるとき、パネル1120に到達する可視および/または赤外線の太陽熱エネルギーは、着色熱伝達流体によって(収集器1150に向かう途中で通過するのではなく)吸収される。これにより、太陽熱収集器1150に到達するエネルギーが実質的に減少する。好ましい実施形態では、染料貯蔵器は、FD&Cブルー1号、FD&Cブルー2号、FD&Cグリーン3号、FD&C赤色3号、FD&C赤色40号、FD&C黄色5号、FD&C黄色6号を含む1つ以上の水溶性食品着色添加物の組み合わせである。
【0066】
システムを通常の動作に戻すことが望ましい場合には、弁1170が閉じられ、弁1172が再び開かれる。染料を含む熱伝達流体は、システム1170から(「手で」またはその他の方法で)除去されて透明な作動流体と交換するか、または染料が、例えば濾過または化学的中和またはその他の方法によって、熱伝達流体から除去するかのいずれかがなされる。好ましい実施形態では、着色された熱伝達流体は新しい水と置き換えられる。
【0067】
多壁パネルの製造
本発明の一実施形態による多壁パネル1120およびそのヘッダー1130、1135のさらなる詳細が
図2Aに示されている。これは非限定的な例であり、パネルおよび/またはそのヘッダーは、本明細書の教示を考慮して当業者の知識の範囲内で他の方法で製造することができる。
【0068】
図示のパネル1120は、図示のように、本体1120aと、本体1120aの近位端および遠位端にそれぞれ配置されたキャップ1120bおよび1120cを含む。図示の実施形態の本体1120aおよび近位キャップ1120bは、ダイ2110を通してストック(例えば、ポリカーボネート)のブロックを押出して本体1120aを形成することによって、ユニットとして一緒に形成される。ダイを通して押し出されなかったストックの一部は、押出された本体に付着したままであり、キャップ1120bを形成する。ストックのさらなる部分が、接着剤、超音波溶接、または他の方法によって取り付けられて、キャップ1120cを形成する。
【0069】
このように形成されたパネル1120のサイズは、ニーズおよび利用可能なリソースに応じて、長さ3フィート以下から長さ9フィート以上までの範囲に及び得る。同様に、パネルの幅もニーズとリソースに応じて1.5フィート以下から3フィート以上までの範囲に及び得る。パネル内のチャネルは、またニーズとリソースに応じて、断面積が1/64平方インチ以下から1平方インチ以上までの範囲に及び得る。
【0070】
このように説明されるパネル1120の形成は、多壁パネル1120を形成するための他の方法と同様に、本明細書の教示を考慮すれば当業者の知識の範囲内である。
【0071】
図示のヘッダー1130および1135は、多壁パネル1120と同様に形成することができるが、図に示すように、ヘッダー1130、1135は、その長さLがパネル1120の幅Wに近似する(またはそれより小さくなる)ように形成される。ただし、これもニーズとリソースによって異なる。ヘッダー1130、1135は、ヘッダーがパネル1120の下側(またはパネル1120上の他の位置)に例えば、接着剤、溶接、その他により取り付けられると、パネル1120の対応する開口部(図示せず)との流体結合を可能にする開口部1130a、1135aが形成されるか、またはその他の方法で装備される。ヘッダーには、図示のように、流路1107を形成する管とそれぞれのヘッダー1130、1135、ひいてはパネル1120との間の流体結合を支持するアダプタ1130b、1135bも装備されている。このようにヘッダー1130、1135を有するパネル1120の下面が
図2Bに示されている。
【0072】
反射フィルム太陽熱エネルギー収集器
図示の実施形態の太陽熱収集器1150は、
図4Aの透視図や
図4Bの側面図に示されるような太陽熱管型収集器である。この収集器は、
図1に関連して上述した流路1107、1115および1117とは別の流体回路上にあるものの、熱伝達流体が流れる熱伝導性ビア(または吸収体)4110を備える。収集器1150はまた、太陽光を反射し熱伝導性ビア/吸収体4110a上に(例えば、直接受け取っても、パネル1120等を通過した後に受け取っても)集めるフィルム4100を含む。
【0073】
カバー4160は可視スペクトルおよび赤外スペクトルのうちの少なくとも一方(および図示の実施形態では両方)において実質的に透明であり、好ましくはUVを遮断する。カバー4160は、フレームに取り付けられる付近に配置されて(またはフレーム付近に配置されて)、フィルムに対する風、塵、その他の環境影響による悪影響を最小限に抑える。カバー4160は、本明細書の教示を考慮すれば当業者の知識の範囲内であるように、ポリカーボネートまたは他のプラスチック、ガラス、または多壁パネル構造若しくはその他で使用されるような他の材料を含むことができる。
【0074】
反射フィルム4100は、第2太陽熱収集器1150の一部を形成するフレーム4140から吊り下げられ、フレーム4140は支持部材4150を含む。支持部材4150は、例えば、本明細書の教示を考慮して当業者の知識の範囲内にある他の要因のうち、支持部材の角度、フィルム4100aとの接触の範囲、およびフィルムの剛性に応じて、フィルムを拘束し、フィルムに傾斜を与える。
【0075】
フィルム4100は、金属化/反射プラスチック、紙、または、その他の材料を含む。その他の材料としては、フレーム4140および/若しくは支持体4150から重力を受けて吊り下げられ、入射する太陽光を反射して吸収体4110に集中させるのに適したパラボラ状(より具体的にはカテナリー曲線)の断面形状を得るのに適した材料である。フィルム4100の単一シートがフレーム4140全体に及ぶこともできるし、リソースおよび設置の要件に応じて、それぞれが一対の支持体4150aから吊り下げられた複数のシートが使用されることもある。
【0076】
フレーム4140を含むクロスバーおよび他のフレーム部材の高さおよび/または間隔は、吸収体4110a上への反射太陽光の焦点を最適化するように調整され得る。フィルム4100上の支持体4150(ヒンジ搭載ブロック、ジンバル搭載ブロックなどを備え得る)の角度および/または衝突(インピンジメント)点は、同様の目的で調整され得る。したがって、例えば、
図4Bに示されるように、マウント付近のフィルム4100の傾きαは、垂直(ここでは、図示の支持体が取り付けられるフレーム部材によって表される)からの角度βの関数である。フィルム4100のカテナリー曲線断面に影響を与える可能性がある傾きαは、上で述べたように、本明細書の教示を考慮して当業者の知識の範囲内にある他の要因のうち、支持部材の角度β、フィルム4100aとの接触範囲、およびフィルムの剛性の関数である。前述のフレーム部材および/または支持体は、一日を通して焦点および/または追跡を向上させるために、「手で」、モーターまたはその他の方法で調整および/または調整可能である。
【0077】
膨張黒鉛を有する太陽熱エネルギー吸収体
図3は、太陽熱収集器1150のフィルム4100によって反射された太陽光を吸収する熱伝導性ビア4110を示す。吸収体4110は、反射された太陽光を受け取り、その熱を選択的吸収コーティングで吸収する真空断熱シェル4170を備える。シェル内にはダクト4130が配置されており、その中を熱伝達流体が流れて熱を運び去る。図示の実施形態では、黒鉛(および好ましくは圧縮膨張黒鉛)4180が、シェル4170の内壁とダクト4130との間に詰め込まれ、太陽熱をシェルからダクトに伝導する。本発明の他の実施形態は、シェルからダクトに熱を運ぶためにグラファイト以外の材料を使用することができる。シェル4170を閉じ、ダクト4130を収容するように適合されたカバー3190を、図示のように設けることができる。
【0078】
太陽熱収集器1150は、複数のシェル4170を使用することができ、フレーム4140のそれぞれの領域上で互いに離間した2つが
図4Aに示されている。それぞれが収集器の異なる部分から反射された太陽光を吸収する。その図面に示されているように、共通のダクト4170(または、同様に、互いに流体結合している複数のダクト)は、図示の実施形態のそれらのシェルのすべてによって共有され得る。あるいは、各シェル4170は、異なるそれぞれのダクト4130によって使用可能にされ得る。共通のダクトが使用される場合、複数のシェル4170を横断するために、図面に示されるように、ダクトを曲げるか、さもなければU字形にすることができる。
【0079】
シェル4130は、光吸収性熱伝導体、例えば、当該技術分野で知られているタイプの黒色ペイントまたは他の光吸収性コーティングで覆われた金属管から作製することができ、ダクト4130は、ステンレス鋼または他の熱吸収性チューブから作製することができる。すべては、本明細書の教示を考慮して当業者の知識の範囲内である。
【0080】
前に述べたように、
図4A~4Bの太陽熱エネルギー吸収体の代替物は
図1の第2太陽熱収集器1150として利用することができる。このような代替例として、当技術分野で知られているタイプのセメント板太陽熱収集器5100を
図5に示す。セメント板太陽熱収集器5100は、熱伝達流体の流れを運ぶためのダクト5110がその上に配置され、クリップ5130によって付けられ、また、プレート5130およびダクト5110の間に配置された圧縮膨張黒鉛層5140を備え、プレートから熱エネルギーを吸収しそれをダクトに伝導する。これはすべて、本明細書の教示を考慮すれば当業者の知識の範囲内である。
【0081】
上で説明し、図面に示したのは、前述の目的を満たすシステム、装置、および方法である。図示された実施形態は本発明の単なる例であり、本明細書に図示され説明されたものとは異なる他の実施形態も同様に本発明に包含されることが理解されるであろう。したがって、例えば、前述の例では、本発明によるシステムのいくつかの選択された構成要素を説明しているが、当業者であれば、図面および上で説明した構成要素の代わりに、またはそれに加えて、他の構成要素をこれらのシステムの流路に含めることができることが理解されよう。
【国際調査報告】