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特表2023-548459コークス炉ドアのシール装置、コークス炉室およびコークス炉バッテリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】コークス炉ドアのシール装置、コークス炉室およびコークス炉バッテリ
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20231110BHJP
   C10B 25/16 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
F16J15/10 P
F16J15/10 D
C10B25/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023525514
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2021080534
(87)【国際公開番号】W WO2022096520
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】LU102177
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513200003
【氏名又は名称】ポール ワース エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハットマッシャー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ドスタート,クロード
(72)【発明者】
【氏名】シネス,クロード
【テーマコード(参考)】
3J040
4H012
【Fターム(参考)】
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA16
3J040EA21
3J040EA22
3J040FA05
3J040FA13
3J040HA06
3J040HA07
3J040HA22
4H012CA09
(57)【要約】
コークス炉室のコークス炉ドアフレームのシール面に対してコークス炉ドアをシールするためのコークス炉ドアのシール装置が提供され、本コークス炉ドアのシール装置は、コークス炉室のコークス炉ドアフレームに嵌合させるコークス炉ドアと、コークス炉ドアの周辺部において、シール片をコークス炉ドアフレームに対向して保持する固定装置と、第1の動作状態または第2の動作状態で動作するように構成されたシール片と、シール片をコークス炉室から隔離するシール保護要素と、を備え、第1の動作状態において、シール片は、シール片の対向側に配置されたシール面から第1の距離だけ離間し、また第2の動作状態において、シール片はシール面と接触し、その結果、第2の動作状態で、シール片およびシール保護要素が少なくとも部分的にキャビティを形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉室(31)のコークス炉ドアフレーム(20)のシール面(21)に対してコークス炉ドア(10)をシールするためのコークス炉ドアのシール装置(1)であって、
前記コークス炉室の前記コークス炉ドアフレーム(20)に嵌合させるコークス炉ドア(10)と、
該コークス炉ドア(10)の周辺部において、シール片(13)を前記コークス炉ドアフレーム(20)に対向して保持する固定装置(11)と、
第1の動作状態または第2の動作状態で動作するように構成された前記シール片(13)と、
前記シール片(13)を前記コークス炉室(31)から隔離するシール保護要素(30)と、を備え、
第1の動作状態において、前記シール片(13)は、前記シール片(13)の対向側に配置されたシール面(21)から第1の距離(D)だけ離間し、また第2の動作状態において、前記シール片(13)は前記シール面(21)と接触し、
その結果、前記第2の動作状態で、前記シール片(13)および前記シール保護要素(30)が少なくとも部分的にキャビティ(32)を形成し、
前記コークス炉ドアのシール装置(1)は、前記シール片(13)を断熱する第1の断熱要素(14)をさらに備え、該第1の断熱要素(14)は、前記固定装置(11)と前記シール保護要素(30)との間に配置されている、コークス炉ドアのシール装置(1)。
【請求項2】
前記シール片(13)が、媒体を保持する中空体を含み、および/または
前記シール片(13)が、ガラス繊維パッキンと、該ガラス繊維パッキンによって囲まれた一体型の可撓性コア要素(15)とを含む、請求項1に記載のコークス炉ドアのシール装置(1)。
【請求項3】
前記シール片(13)が弾性材料から形成されている、請求項1または2のいずれか一項に記載のコークス炉ドアのシール装置(1)。
【請求項4】
前記シール片(13)が前記シール面(21)にリング状構造を呈する、請求項1から3のいずれか一項に記載のコークス炉ドアのシール装置(1)。
【請求項5】
前記シール面(21)が前記コークス炉ドアフレーム(20)上に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のコークス炉ドアのシール装置(1)。
【請求項6】
前記コークス炉ドアフレーム(20)から延在するカラー部材(22)をさらに備え、前記シール面(21)が、該カラー部材(22)の少なくとも一部に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のコークス炉ドアのシール装置(1)
【請求項7】
前記カラー部材(22)が前記コークス炉ドアフレーム(20)と一体である、請求項6に記載のコークス炉ドアのシール装置。
【請求項8】
前記カラー部材(22)が、長方形プロファイル、L字型プロファイル、I字型プロファイル、凹型プロファイル、凸型プロファイル、傾斜したプロファイル、湾曲したプロファイル、またはC字型プロファイルを有する、請求項6または7のいずれか一項に記載のコークス炉ドアのシール装置(1)。
【請求項9】
前記シール片(13)を断熱する第2の断熱要素(23)をさらに備え、該第2の断熱要素(23)が、前記カラー部材(22)の少なくとも一部および前記コークス炉ドアフレーム(20)の一部と接触している、請求項6から8のいずれか一項に記載のコークス炉ドアのシール装置(1)。
【請求項10】
前記固定装置(11)が、前記シール片(13)を保持する溝部(12)を含み、前記シール片(13)が該溝部(12)に摩擦接合かつ/または形状嵌合接合される、請求項1から9のいずれか一項に記載のコークス炉ドアのシール装置(1)。
【請求項11】
前記第1の動作状態において、前記溝部(12)の深さ(G)が前記シール片(11)の深さ(S)よりも大きい、請求項10に記載のコークス炉ドアのシール装置(1)。
【請求項12】
前記第1の動作状態において、前記溝部(12)の前記深さ(G)が前記シール片(11)の前記深さ(S)よりも小さいか、または同一である、請求項10に記載のコークス炉ドアのシール装置(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のコークス炉ドアのシール装置(1)を備えるコークス炉室。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載のコークス炉ドアのシール装置(1)を備えるコークス炉バッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉ドアのシール装置、コークス炉室およびコークス炉バッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
コークス化中、コークス炉のコークス化室のコークス炉ドアの内側に、コークス炉ガスの成分が蓄積する。これらの成分は、コークス炉ドアの気密性に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、漏出のあるコークス炉ドアから逸出するとき、これらの成分はまた、例えば二酸化炭素を排出するなど、環境的に有害なガスの一部を呈するか、かつ/または形成する可能性がある。
【0003】
漏出のリスクを低減し、コークス炉ドアの気密性を維持するために、コークス炉ドアの従来技術によるシール概念は、コークス炉ドアの金属要素がコークス炉室のコークス炉ドアの金属製ドアフレームに直接接触する、いわゆる「金属間シール」に依存している。
【0004】
特許文献1には、金属フレームと、ドアを閉位置にラッチするための手段と、連続的なシールを行うために、コークス化室のドアフレームのシール面と接触するように適合された前方エッジ部を有するフレームの外周に沿って延在するシール部材とを備える、コークス炉ドアが記載されている。このシール部材は、耐熱性金属から作製されている。
【0005】
特許文献2には、コークス炉からのガスの漏出を防止する装置が記載されている。特許文献3には、炉蓋と、ドアフレームと、漏出防止装置とを有するコークス炉ドアが記載されている。特許文献4には、中空の環状ガスケットが挿入されたコークス炉炉蓋およびコークス炉炉体が記載されている。特許文献5には、コークス炉ドアのシール装置が記載されている。
【0006】
金属間シールの概念に基づくシールシステムは、当該ドアが設置された後にコークス炉ドアを調整するほんのわずかな可能性を抑制する。金属間シールシステムの要素は、互いに堅固に結合されている。
【0007】
漏出のリスクをさらに低減し、コークス炉ドアの気密性を一層維持するために、コークス炉ドアを定期的に清掃することも必要である。そのため、ドアの目詰まりを除去すべく、機械的または空気圧による清掃方法を定期的に行う必要がある。しかしながら、既存のコークス炉ドアは、オペレータが清掃するのが極めて困難な要素および/またはセクションを有する。例えば、既存のコークス炉ドアには、断面プロファイルで見たときにU字溝部を形成するいわゆる「ダブルナイフ」が設けられている。これらのダブルナイフは、コークス炉ドア用の2つのシール面を提供する。しかしながら、当該ダブルナイフによって囲まれた空間は手動で清掃することができないため、例えば約40バールの水などの加圧媒体を分配するロボットが、そのようなコークス炉ドアを清掃するために使用されている。定期的な清掃手順にもかかわらず、コークス炉ドアのダブルナイフとコークス炉ドアフレーム、コークス炉炉枠との間にそれぞれ適切なシール圧力を維持するために、コークス炉ドアに極めて強い力を印加することが依然として必要である。
【0008】
コークスバッテリのコークス炉室は、コークスバッテリの複数のコークス炉室のうちの1つであり得る。例えば、従来のコークス炉室は、高さ約8メートル、幅約20メートル、厚さ約60センチメートルであり得る。コークス炉バッテリでは、コークス炉室は通常、加熱室、コークス炉室をそれぞれ加熱するために交互に作動させることができる2つの加熱壁の間に配置されている。コークス炉室の壁に沿って、かつコークス炉室の内部では、点ごとに異なる温度が規則的に広がっている。すなわち、コークス炉室の壁および内部に強い温度勾配が存在する。炉が、例えば石炭で充填された後に始動するとき、温度分布が不均一になることにより、炉のセクションおよび/または要素が異なる程度に、もしくは異なる速度で膨張する可能性がある。コークス炉ドアフレームおよびコークス炉ドアは、自然空気対流によって定期的に冷却されるが、外側(シェル側)で最大約300℃の温度に曝露される。
【0009】
こうした温度の差により、熱膨張に起因したコークス炉ドアフレームおよびコークス炉ドアの屈曲が起こる。またこの屈曲により、コークス炉ドアフレームとコークス炉ドアとの間に不均一な表面が現れる。その結果、金属間シールから漏出しやすくなる傾向がある。発生するいかなる漏出によっても、コークス炉ドアとコークス炉ドアフレームとの間に更なる汚損または目詰まりが起こる恐れさえある。
【0010】
漏出が検出された場合、オペレータは漏出箇所をシールして、コークス炉ドアとコークス炉ドアフレームとの間の気密性を維持しようと試みることが多い。この目的のために、手動の締付け方法および/またはシール方法がオペレータによって実行される。例えば、オペレータは硬化液またはシールペーストを塗布することによって漏出を抑制しようと試みるが、この作業には時間とコストがかかる。その上、コークス化プロセス中のコークス炉ドアおよび/またはコークス炉ドアフレームがさらに屈曲することに起因して、更なる漏出が依然として発生する恐れがあるため、当該物質から成る機器が極めて非効率的である場合も多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、漏出の発生を低減するコークス炉ドアのシール装置、コークス炉室およびコークス炉バッテリを提供することにある。この目的は、独立請求項に記載のコークス炉ドアのシール装置、コークス炉室およびコークス炉バッテリによって達成される。特許請求の範囲は本発明を定義するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、コークス炉ドアのシール装置の要素の特定の配置が、コークス炉ドアおよび/またはコークス炉ドアフレームの熱変形の影響を受けない自動調整機構を構成し得るという知見に基づいている。
【0013】
本発明は、コークス炉室のコークス炉ドアフレームのシール面に対してコークス炉ドアをシールするためのコークス炉ドアのシール装置に関する。コークス炉ドアのシール装置は、コークス炉室のコークス炉ドアフレームに嵌合させるコークス炉ドアと、コークス炉ドアの周辺部において、シール片をコークス炉ドアフレームに対向して保持する固定装置とを備える。シール片は、第1の動作状態または第2の動作状態で動作するように構成されている。コークス炉ドアのシール装置は、シール片をコークス炉室から隔離するシール保護要素をさらに備える。第1の動作状態において、シール片は、シール片の対向側に配置されたシール面から第1の距離だけ離間する。第2の動作状態において、シール片はシール面と接触し、その結果、第2の動作状態で、シール片およびシール保護要素が少なくとも部分的にキャビティを形成する。
【0014】
自動調整機構は、いわゆる「径方向の締付け原理」に基づいており、この原理は熱変形に対してそれほど影響を受けず、したがって、「軸方向締付け原理」とは対照的に、ドア本体とドアフレームとの間に特に堅固な結合を必要としない。径方向の締付け原理によれば、コークス炉ドアをコークス炉ドアフレームに対してシールする力は、シール面に沿って径方向に印加される。その結果、コークス炉ドアのシール装置の要素は、熱変形を生じにくくなる。加えて本発明により、交換可能な要素の機器に起因して、コークス炉ドアのシール装置をさらにより迅速に清掃できるようになり、かつ容易にメンテナンスできるようになる。その結果、漏出の発生が効果的に抑制される。
【0015】
自動調整シール機構と、可撓性で気密なシール片を配置することとにより、コークス炉ガスの逸出量は大幅に減少する。その結果、オペレータが手動の締付け方法および/またはシール方法を適用する必要があるコークス化中の漏出の数が、大幅に低減される。したがって、コークス炉の操作性がとりわけ向上する。
【0016】
コークス炉ガスの漏出によって発生する周囲環境への負の影響は、大幅に低減される。
【0017】
「コークス炉ドア」は、コークス炉室をコークス炉バッテリのコークス炉室の外部環境から隔離するように構成された、任意の開閉可能な要素またはドアを指す。コークス炉ドアは、ドア、カバー、フラップ、ハッチ、ポート、蓋、キャップ、または同様の閉鎖装置として存在してもよい。コークス炉ドアの内側は、コークス炉室の内室と接触するように構成され、その結果、コークス炉ドアの内側は、コークス化中に高温の石炭および/またはコークスと接触する。通常、この内側は耐火様式に構成され、コークス炉室の内側に突出する消火栓を含み、当該消火栓は熱損失を防止するように構成されている。多くの場合、コークス炉室は、互いに対向して配置された2つのコークス炉ドアを有する。第1のコークス炉ドアは、「プッシャ側」におけるコークス炉ドアと呼ばれてもよい。プッシャ側は、機械が石炭および/またはコークスをコークス炉室の他方の側に押し出すことができるように構成された側であり、他方の側は「コークス側」と呼ばれる。コークス炉ドアにより、コークス炉室への、またはコークス炉室からの材料の充填および/または除去を行うことができる。さらに、コークス炉ドアは、石炭/コークスおよびコークス炉ガスがコークス炉室から逸出するのを防止する。
【0018】
「コークス炉ドアフレーム」、フレーム/コークス炉炉枠はそれぞれ、コークス炉ドアによって閉じられ得る開口部周りのフレームを指す。コークス炉ドアが閉位置にあるとき、コークス炉ドアフレームまたはコークス炉ドアフレームの少なくとも一部は、コークス炉ドアまたはコークス炉ドアの要素と直接接触している。
【0019】
「コークス炉ドアフレームのシール面」とは、コークス炉ドアが閉位置にあるときに、コークス炉ドアと直接接触する表面、表面部分または範囲、具体的にはコークス炉ドアのシール片と直接接触する表面、表面部分または範囲を指す。シール面は、例えば、コークス炉ドアフレーム上の平滑表面および/またはコークス炉ドアフレームのカラー部材の側面であってもよい。カラー部材は、コークス炉ドアフレームの一体部分であってもよく、またはコークス炉ドアフレームに固定的に装着されてもよい。
【0020】
「シール片」とは、コークス炉ドアをコークス炉ドアフレームに対してシールするための任意の適切な要素を指す。具体的には、シール片は、コークス炉ドアをコークス炉ドアフレームに対してシールするように構成された非金属要素を指す。例えば、シール片は、シリコーン、とりわけいわゆる高温シリコーン、リング状シリコーンガスケット、シールゴム、膨張性シール、(ガラス、セラミック)繊維シールおよび/もしくはそれらの混合物を含んでもよいし、またはそれらから形成されてもよい。さらに、例えば弾性材料は、プラスチック、合成材料、天然ゴム材料、同様の材料またはそれらの混合物から形成されてもよいし、またはそれらを含んでもよい。シール片を形成するための追加もしくは代替の適切な材料および/または製品は、シリコーン(例えば、VMQ、FVMQ)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、バイトンフッ素ゴム(FKM)または同様の材料のうちの少なくとも1つを含んでもよいし、またはそれらから成るものであってもよい。弾性材料から形成されたシール片を使用すれば、コークス炉ドアが閉じられるときのシール片の(自動)調整を容易にすることができる。シール片は、コークス炉ドアが閉位置にあるときに炉ガスが炉から逸出するのを防止する。加えてシール片は、コークス炉室の断熱にもさらに寄与する。
【0021】
「シール片を保持する固定装置」とは、シール片を少なくとも部分的に保持かつ/または受容するように構成された構成要素、またはいくつかの相互接続要素を指す。固定装置は、コークス炉ドアに配置されてもよい。例えば、固定装置は、コークス炉ドアとの圧力嵌合および/もしくは形状嵌合、ならびに/またはコークス炉ドアとの材料接合および/もしくは摩擦接合を有してもよい。あるいは、固定装置はまた、コークス炉ドアとそれぞれ一体となる一体品として作製され得る。固定装置は、シール片を保持かつ/または固定する。加えて固定装置は、コークス炉ガスおよび/または高温に対するシール片用の断熱材をさらに、少なくとも部分的に形成してもよい。
【0022】
「コークス炉ドアの周辺部」とは、コークス炉ドアのエッジおよび/またはエッジ部を指す。コークス炉ドアの周辺部は、コークス炉ドアの内側に位置してもよい。コークス炉ドアの内側とは、コークス炉室に面する側である。例えば、コークス炉ドアの周辺部は、消火栓を包囲かつ/または取り囲む範囲であってもよい。さらに、例えばコークス炉ドアの周辺部は、シール片および/またはシール片を保持する固定装置が位置する範囲であってもよい。固定装置は、例えば、コークス炉ドアのエッジ部にフランジによって取り付けられ、かつ/または同一平面になるように配置されてもよい。
【0023】
「第1の動作状態」とは、シール片の一動作状態を指す。例えば、シール片が膨張性シールを含むか、または膨張性シールから形成されている場合、第1の動作状態はシールが収縮した状態を指してもよい。同様に、「第2の動作状態」とは、第1の動作状態とは異なるシール片の一動作状態を指す。例えば、シール片が膨張性シールを含むか、または膨張性シールから形成されている場合、第2の動作状態は、シールが加圧媒体によって膨張し、その結果、膨張性シールが膨張している状態を指してもよい。
【0024】
「シール保護要素」とは、コークス炉ドアが閉じられた状態で、コークス炉室に対して分離/隔離障壁を形成するコークス炉ドアの構成要素を指す。シール保護要素は、例えば、金属製の屈曲可能なプレート、ストリップ、バー、またはばね遮蔽シールドとして存在してもよい。コークス炉ドアの閉状態では、シール保護要素の片側はコークス炉室に面しており、シール保護要素はそれぞれ、自身の端部でコークス炉ドアフレームと接触しながら、コークス炉室の一部を画定している。シール保護要素は、凹型プロファイル、凸型プロファイル、屈曲したプロファイル、湾曲したプロファイル、または傾斜したプロファイルを有してもよい。シール保護要素により、コークス炉ガスがコークス化中にシール片と接触することが防止され/回避され/減少し/低減する。加えてシール保護要素は、コークス炉室内の熱に対する断熱/断熱障壁をさらに提供する。
【0025】
「シール片の対向側に配置されたシール面から第1の距離だけ離間する」とは、シール面とシール片との間に距離、間隔または間隙があることを指す。
【0026】
「キャビティ」とは、コークス炉ドアが閉じられ、シール片がシール面と接触したときに、少なくとも部分的に形成され得る容積または空隙、中空または空の空間を指す。キャビティは、完全にまたは部分的に閉鎖されていてもよい。例えば、シール片が膨張性シールを含むか、または膨張性シールから形成されている場合、コークス炉ドアが閉じられて膨張性シールが膨張し、したがって第2の動作状態にあるときに、キャビティはシール片の一部とシール保護要素の一部との間に形成されてもよい。換言すれば、コークス炉ドアが閉じられ、シール片がその第2の動作状態で動作するとき、キャビティはシール片とシール保護要素との間、すなわちそれぞれシール片の一部とシール保護要素の一部との間に配置される。換言すれば、シール片とシール保護要素とは、それぞれ少なくとも部分的にキャビティを形成している。キャビティは通常、空気などの気体で充填されてもよい。その結果、伝導による熱伝達、例えば金属を通る熱伝導は、この範囲で減少または防止され得る。結果としてキャビティは、キャビティに隣接するシール片に断熱を提供する。したがって、シール片にかかる熱負荷が大幅に低減され得る。こうした低減により、動作温度が高いために通常はコークス炉ドアに適用できないシール材料から形成されたシール片が、さらに使用できるようになる。
【0027】
一実施形態では、シール片は、媒体を保持する中空体を含み、かつ/またはガラス繊維パッキンと、ガラス繊維パッキンによって囲まれた一体型の可撓性コア要素とを含む。
【0028】
「中空体」とは、シール片の管状またはホース状構造体を指す。例えば、シール片は膨張性シールであってもよい。膨張性シールの中空体は、媒体(例えば、気体、水、油など)で充填されてもよく、これは結果として膨張性シールの膨張をもたらす。膨張性シールが膨張することにより、膨張性シールはシール面、例えばコークス炉ドアフレームのシール面と接触することができる。
【0029】
「媒体」とは、液体、流体、気体、溶液、エマルジョンまたは同様の構造もしくは物質を指す。例えば、媒体として空気が使用されてもよい。また、例えば、媒体が加圧されてもよい。換言すれば、媒体は、大気圧よりも高い圧力を有し得る。中空体が当該媒体で充填されることにより、シール片は径方向の締付けを施し、シール面に対してそれ自体を調整することができる。
【0030】
「ガラス繊維パッキン」とは、コア要素、例えば可撓性コア要素を有するパッキンを指してもよい。コア要素は、耐火性含浸および/または強化材で強化することができる高温ガラス繊維糸から形成されてもよい。可撓性コア要素および/またはガラス繊維パッキンは、追加的または代替的に、膨張性シールおよび/または発泡性シールを含んでもよいし、または膨張性シールおよび/または発泡性シールとして形成されてもよい。
【0031】
一実施形態では、シール片は弾性材料から形成されている。弾性材料とは、弾性が高められた材料を指す。弾性とは、力が印加されたときにその形状を変化させ、力が取り除かれたときにその初期形態に戻る本体および/または材料の特性である。例えば弾性材料は、シリコーン、ゴム、プラスチック、合成材料、天然ゴム材料、同様の材料またはそれらの混合物であってもよい。弾性材料から形成されたシール片を使用すれば、コークス炉ドアが閉じられるときのシール片の(自動)調整をさらに容易にすることができる。
【0032】
一実施形態では、シール片はシール面にリング状構造を呈する。「リング状構造」とは、端部同士が結合された構造であってもよい。リング状構造のシール片により、コークス炉ドアに対してシール面を完全にシールすることができる。結果として、コークス炉ガスの流出を完全に、または少なくとも大幅に減少させることができる。
【0033】
コークス炉ドアのシール装置は、シール片を断熱する第1の断熱要素をさらに備え、第1の断熱要素は、固定装置とシール保護要素との間に配置されている。
【0034】
「断熱要素」とは、その周囲環境からある要素を隔離する構成要素、具体的には熱的に隔離する構成要素を指す。例えば、断熱要素は、マイカ、ケイ酸塩鉱物および/またはフィロケイ酸塩鉱物もしくはそれらの混合物から形成されてもよいし、またはそれらを含んでもよい。断熱要素の熱伝導率は、その隣接する構成要素の熱伝導率とは異なっていてもよい。例えば、断熱要素の熱伝導率は、固定装置の熱伝導率よりも低くてもよい。断熱要素を配置することで、固定装置への熱伝達および固定装置によるシール片の保持をさらに低減することができる。
【0035】
一実施形態では、シール面はコークス炉ドアフレーム上に配置されている。コークス炉ドアフレーム上に直接配置されているシール面により、既存のコークス炉ドアおよびコークス炉ドアフレームを調整することができる。
【0036】
あるいは、一実施形態では、コークス炉ドアのシール装置は、コークス炉ドアフレームから延在するカラー部材をさらに備え、シール面は、カラー部材の少なくとも一部に配置されている。
【0037】
「カラー部材」とは、コークス炉ドアフレームまたはコークス炉ドアフレームの表面から延在するかつ/または突出する構成要素を指す。カラー部材は、コークス炉ドアフレームの一体部分であってもよいし、またはコークス炉ドアフレームに装着されてもよい。カラー部材は金属材料から形成されてもよい。カラー部材は、長方形プロファイル、L字型プロファイル、I字型プロファイル、凹型プロファイル、凸型プロファイル、傾斜したプロファイル、テーパ付きプロファイル、またはC字型プロファイルを有してもよい。カラー部材は、一方の側または側部に配置されたシール面を有してもよい。シール面は、その第2の動作状態において、シール片と接触するように構成されている。カラー部材のもう一方の側または側部は、その周囲環境の空気によって冷却される。したがって、カラー部材は、冷却フィンとして機能することができる。カラー部材を配置することで、コークス炉ドアフレームによってカラー部材に伝達される熱の一部が周囲環境に放散されるようになり、その結果、シール面上のシール片に伝達される熱負荷を低減することができる。加えて、カラー部材を配置すると、横方向のシールを施すことができ、これにより、シール片の自動調整および径方向の締付けがさらに容易になる。
【0038】
一実施形態では、カラー部材はフレームと一体である。「フレームと一体である」とは、カラー部材およびフレーム、カラー部材の一部およびフレームの一部がそれぞれ、一体品またはブランクから形成される構成を指す。
【0039】
一実施形態では、カラー部材は、長方形プロファイル、L字型プロファイル、I字型プロファイル、凹型プロファイル、凸型プロファイル、傾斜したプロファイル、湾曲したプロファイル、またはC字型プロファイルを有する。「プロファイル」とは、断面プロファイルを指してもよい。カラー部材のプロファイルは、異なる温度および環境条件に適合させることができる。カラー部材の形状により、周囲環境および/またはシール片に伝達される熱量が規定される。
【0040】
一実施形態では、コークス炉ドアのシール装置は、シール片を断熱する第2の断熱要素をさらに備え、第2の断熱要素は、カラー部材の少なくとも一部およびコークス炉ドアフレームの一部と接触している。第2の断熱要素を配置することで、カラー部材に伝達される熱量を減少させることができ、その結果、シール面に伝達される熱をさらに低減することができる。
【0041】
一実施形態では、固定装置は、シール片を保持する溝部を含み、シール片は溝部に摩擦接合かつ/または形状嵌合接合される。溝部における2つの平行な壁部は、冷却フィンのように作用する2つの更なる放熱構造を構成している。
【0042】
一実施形態では、第1の動作状態において、溝部の深さはシール片の深さよりも大きい。溝部の深さがシール片の深さよりも大きく、またシール片がその第1の動作状態にある構成では、溝部は、シール片と接触していないがその周囲環境とは接触している2つの平行な壁部を有する。シール片への熱伝達を低減することができるように、これらの部分をとりわけ迅速に空冷することができる。さらに、溝部の深さがシール片の深さよりも大きい構成にすることで、第2の動作状態から第1の動作状態に変化するときに、シール片が溝部内に後退できるようになる。
【0043】
一実施形態では、第1の動作状態において、溝部の深さはシール片の深さよりも小さいか、または同一である。溝部の深さがシール片の深さよりも小さいか、または同一である構成にすることで、迅速なシール作業に特に適した、とりわけ材料節減型の設計を提供できるようになる。
【0044】
本発明は、コークス炉ドアのシール装置を備えるコークス炉室にさらに関する。コークス炉ドアのシール装置を有するコークス炉室は、流出および/またはコークス炉ガスの漏出が発生しにくい。さらに、コークス炉ドアのシール装置を有するコークス炉室のコークス炉ドアは、オペレータによってより容易に清掃かつ維持され得る。複数のコークス炉ドアのシール装置は、コークス炉室の両側または異なる位置に配置されてもよい。コークス炉ドアのシール装置の前述の改良および実施形態は、コークス炉室にも同様に適用される。
【0045】
本発明は、コークス炉ドアのシール装置を備えるコークス炉バッテリにさらに関する。それぞれが1つまたは複数のコークス炉ドアのシール装置を有する複数のコークス炉室を有するコークス炉バッテリは、漏出が発生しにくく、またコークス炉ガスの流出量を減少させる可能性がある。コークス炉ドアのシール装置の前述の改良および実施形態は、コークス炉バッテリにも同様に適用される。
【0046】
本発明の更なる態様および特徴は、従属請求項、添付の図面および実施形態の以下の説明から導かれる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
ここで、本発明の実施形態を、例示として、添付の図面を参照して説明する。
図1】コークス炉ドアのシール装置の一実施形態を示す上面図である。
図2図1に示すコークス炉ドアのエッジング部を示す拡大垂直断面図である。
図3】湾曲部を有するカラーを備えるコークスドアのシール装置の一代替実施形態を示す断面図である。
図4】コークス炉ドアのシール装置の一代替実施形態を示す断面図であり、シール片は、一体型の可撓性コアを有する高温ガラス繊維シールである。
図5】コークス炉ドアのシール装置の一代替実施形態を示す断面図であり、シール片は、一体型の可撓性コアを有しない高温ガラス繊維シールである。
図6】膨張性シールから成るシール片を有するコークス炉ドアのシール装置の一代替実施形態を示す断面図であり、シール面はコークス炉ドアフレーム上に直接配置されている。
図7】シール片を備えるコークス炉ドアのシール装置1の一代替実施形態を示す断面図であり、第1の断熱要素とコークス炉ドアの周辺部との間にシール保護要素が固定されている。
図8】シール片を備えるコークス炉ドアのシール装置の一代替実施形態を示す断面図であり、コークス炉室に面するコークス炉ドアの内側にシール保護要素が固定されている。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、コークス炉ドアのシール装置1の上面図を示し、フレームは図示されていない。図2は、図1に示すコークス炉ドアのシール装置1のエッジング部を示す拡大垂直断面図である。図2において、コークス炉ドア1は閉状態にある。コークス炉ドアのシール装置1は、コークス炉バッテリ(図示せず)のコークス炉室31のコークス炉ドアフレーム20に嵌合させるか、または装着するコークス炉ドア10から成る。コークス炉ドア10は、コークス炉ガスがコークス炉室から逸出するのを防止するために、シール面21に対してシールするように構成されている。溝部12を有する固定装置11が、コークス炉ドア10の周辺部に配置されている。シール面21は、溝部12の対向側に間隔を置いて配置されている。膨張性シールから成るシール片13が、溝部12内に取り付けられている。溝部12とシール片13とは、摩擦接合および/または形状嵌合接合を形成する。シール片13は、例えば加圧ガスなどの媒体(図示せず)を保持する中空体を有する。シール片13は、約300℃で動作するように構成された弾性材料、例えばシリコーンから作製されている。シール片13は、コークス炉ドア10の周辺部を完全に取り囲むリング状構造を有する。
【0049】
図2のシール片13の斜線を付した面は、第1の動作状態にある膨張性シールを示す。第1の動作状態において、シール片13は、シール片13の対向側に配置された接触面21から距離Dだけ離間する。図2のシール片13における一点鎖線の描写は、第2の動作状態にある膨張性シールを示し、シール片13は接触面21と接触している。第1の動作状態において、溝部12の深さGはシール片13の深さSよりも大きい。
【0050】
図2に示す実施形態では、コークス炉ドアフレーム20にはカラー部材22が設けられている。カラー部材22は、コークス炉ドアフレーム20から延在しており、シール面21は、カラー部材22の側部に配置されている。カラー部材22は、コークス炉ドアフレーム20に装着されてもよいし、またはコークス炉ドアフレーム20の一体部分であってもよい。カラー部材22は、L字型プロファイルを有する。固定装置11は、コークス炉ドアフレーム20、コークス炉ドアフレーム20のカラー部材22のシール面21にそれぞれ対向してシール片13を保持している。
【0051】
シール片13の第2の動作状態において、シール片13の一部とシール保護要素30との間にキャビティ32が形成される。図2のシール保護要素30は、ドア10に装着された傾斜ばね遮蔽シールドとして示されている。なお、より小型の遮蔽シールドを設けることもできる。シール保護要素30の端部は、コークス炉ドアが閉状態にあるときにコークス炉ドアフレーム20と接触する。キャビティ32は、コークス炉ドアフレーム20の一部、固定装置11の一部、カラー部材22の一部、第1の断熱要素14の一部および第2の断熱要素23の一部によってさらに画定される。シール片13が第1の動作状態から第2の動作状態に移行する間、シール片13はキャビティ32の閉鎖部を形成する。
【0052】
第1の断熱要素14は、コークス炉ドア1における固定装置11の一部とシール保護要素30との間に配置されている。第2の断熱要素23は、コークス炉ドアフレーム20の一部とカラー部材22の一部との間に配置されている。第1の断熱要素14および第2の断熱要素23の両方は、マイカもしくは同様の材料を含んでもよいし、またはマイカもしくは同様の材料から形成されてもよい。第1の断熱要素14および第2の断熱要素23は、コークス炉ドアフレーム20およびコークス炉室31の熱に対する熱的分離/熱的隔離を提供する。これにより、第1の断熱要素14と第2の断熱要素23とは、シール片13の熱的分離および/または熱的隔離に寄与する。
【0053】
図3は、図2に示す実施形態とは対照的に、湾曲部24と傾斜端部26とを有するカラー22を有する、コークスドアのシール装置1の一代替実施形態の断面図を示す。カラー部材22の湾曲部24の湾曲頂点25は、キャビティ32に指向している。膨張性シールを含むシール片13は、カラー部材22の傾斜端部26の形状に適合された台形プロファイルを有する。湾曲部および傾斜端部を有するカラー部材22は、オペレータによってより効率的に清掃され得る。傾斜面の清掃は、とりわけ迅速かつより少ない労力で実行され得る。
【0054】
図4は、コークス炉ドアのシール装置1の一代替実施形態を示す断面図であり、シール片13は、一体型の可撓性コア15を有する高温ガラス繊維シールである。図5は、コークス炉ドアのシール装置1の一代替実施形態を示す断面図であり、図4とは対照的に、シール片13は、一体型の可撓性コア15を有しない高温ガラス繊維シールである。図4および図5に示すシール片13は各自、シール片13に熱エネルギーがそれぞれ印加されると膨張するように構成されてもよい。図4および図5に示すシール片13の各々は、追加的または代替的に、膨張性シール(図示せず)を含んでもよいし、または膨張性シールとして形成されてもよい。
【0055】
図1および図2に示す実施形態とは対照的に、図4および図5の実施形態はそれぞれ、カラー部材22の取付面27と接触する第1の動作状態のシール片13を有する、閉状態のコークス炉ドア10を示す。「取付面」とは、コークス炉ドア1が閉状態にあり、またシール片がその第1の動作状態にあるときに、シール片13の表面と接触するカラー部材22の表面または表面部分を指す。図4および図5に示す実施形態では、コークス炉ドア1が閉状態になった後に、閉キャビティ32が既に形成されている。換言すれば、図4および図5に示す実施形態では両方とも、コークス炉ドアが閉じられるとすぐにキャビティ32を形成する。コークス化中、シール片13はシール面21に対してさらに膨張し、それによってキャビティ32をさらに画定する。
【0056】
図4および図5において、シール片13を保持する固定装置11は、コークス炉ドア10の周辺部においてコークス炉ドアフレーム20および接触面21に対向して配置されている。第1の動作状態において、シール片13は、シール片13の対向側に配置されたシール面21から第1の距離Dだけ離間する。第2の動作状態において、シール片13はシール面21に接触する。第1の動作状態において、溝部12の深さGはシール片13の深さSよりも小さい。
【0057】
図6は、膨張性シールから成るシール片13を有するコークス炉ドアのシール装置1の一代替実施形態を示す断面図であり、シール面21はコークス炉ドアフレーム20上に直接配置されている。シール片13は、媒体を保持する中空体を含む。図6に示す実施形態は、第1または第2の断熱要素もカラー部材も必要としない。シール保護要素30は、シール片13をコークス炉室31から隔離/分離している。第1の動作状態において、シール片13は、シール面21から第1の距離Dだけ離間する。第1の動作状態においても、溝部12の深さGはシール片13の深さSよりも大きい。換言すれば、シール片は第1の動作状態において、溝部12内で滑動/後退している。第2の動作状態(図示せず)において、シール片13はシール面21と接触し、その結果、第2の動作状態で、シール片13およびシール保護要素30が少なくとも部分的にキャビティ32を形成する。
【0058】
図7は、シール片13を備えるコークス炉ドアのシール装置1の一代替実施形態を示す断面図であり、第1の断熱要素14とコークス炉ドア10の周辺部との間にシール保護要素30が固定されている。シール片13は、膨張性シールとして形成されている。コークス炉ドアフレーム20のカラー部材22は、コークス炉室31を部分的に画定するように配置されている。シール保護要素30は、コークス炉ドア10が閉じられたときにカラー部材22の上部エッジ部と接触する。第1の断熱要素14は固定装置11上に配置されており、固定装置11は、溝部12のセクションを共に形成する2つの係合部を含む。シール保護要素30は、シール片13および第1の断熱要素14をコークス炉室31から隔離/分離している。シール面21は、カラー部材22の外方側に配置されている。
【0059】
図8は、シール片13を備えるコークス炉ドアのシール装置1の一代替実施形態を示す断面図であり、コークス炉室31に面するコークス炉ドアの内側にシール保護要素30が固定されている。シール片13は、膨張性シールとして形成されている。図7と同様に、図8に示す実施形態は、コークス炉室31を部分的に画定するカラー部材22を備える。シール保護要素30は、コークス炉ドア10が閉じられたときにカラー部材22の上部エッジ部と接触する。第1の断熱要素14は、固定装置11とコークス炉ドア10の周辺部との間に配置されている。シール面21は、カラー部材22の外方側に配置されている。
【0060】
説明されている例は、本発明の実施形態である。実施形態の場合、それぞれの実施形態において記載されている構成要素はそれぞれ、互いに独立して考慮されるべきであり、また互いに独立して本発明をさらに発展させる本発明の個々の特徴を表す。したがって、これらの特徴はまた、個別に、または示された組合せ以外の組合せで本発明の構成要素と見なされるべきである。さらに、記載されている実施形態を、既に記載された本発明の更なる特徴によって補足することもできる。
【0061】
本発明の更なる特徴および実施形態は、本開示および特許請求の範囲の文脈において当業者にもたらされる。
【符号の説明】
【0062】
1 コークス炉ドアのシール装置
10 コークス炉ドア
11 固定装置
12 溝部
13 シール片
14 第1の断熱要素
15 可撓性コア
20 コークス炉ドアフレーム
21 シール面
22 カラー部材
23 第2の断熱要素
24 湾曲部
25 湾曲頂点
26 傾斜端部
27 取付面
30 シール保護要素
31 コークス炉室
32 キャビティ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】米国特許第5556515号明細書
【特許文献2】特開昭51-90348号公報
【特許文献3】特開昭51-103901号公報
【特許文献4】特開昭48-74846号公報
【特許文献5】独国特許出願公開第7706522号明細書
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】