(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】修飾ウリカーゼ及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 9/06 20060101AFI20231110BHJP
C07K 14/38 20060101ALI20231110BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20231110BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20231110BHJP
A61K 38/44 20060101ALI20231110BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231110BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231110BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231110BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20231110BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20231110BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231110BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231110BHJP
A61P 33/06 20060101ALI20231110BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231110BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20231110BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20231110BHJP
【FI】
C12N9/06 A ZNA
C07K14/38
C12N15/31
C12N15/53
A61K38/44
A61P1/04
A61P3/10
A61P13/12
A61P15/00
A61P19/06
A61P29/00
A61P31/12
A61P33/06
A61P37/06
A61P37/08
A61K47/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526588
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 IL2021051305
(87)【国際公開番号】W WO2022097141
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505161910
【氏名又は名称】プロタリクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルダーファー イルヤ
(72)【発明者】
【氏名】ナタフ ヤキル
(72)【発明者】
【氏名】アルヴァツ ギル
(72)【発明者】
【氏名】ハナニア ウリ
(72)【発明者】
【氏名】アリエル タマル
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン シェリー
(72)【発明者】
【氏名】ハヨン ヤエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA94
4C076BB16
4C076CC03
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC31
4C076CC41
4C076EE23
4C076FF31
4C076FF36
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA42
4C084CA53
4C084CA59
4C084DC23
4C084MA65
4C084NA06
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA811
4C084ZB081
4C084ZB111
4C084ZB131
4C084ZB331
4C084ZB381
4C084ZC311
4C084ZC351
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA15
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
修飾ウリカーゼ、並びに媒質を修飾ウリカーゼと接触させることによって尿酸のレベルを低下させる方法が本明細書に記載される。修飾ウリカーゼは、ポリ(アルキレングリコール)部分を含む少なくとも1つの二官能性連結部分によって架橋されたウリカーゼポリペプチドを含む。二官能性連結部分の分子量は、約1.5kDa~約4kDaであり、及び/又は修飾ウリカーゼは、配列番号2のアミノ酸配列を有する複数のポリペプチドを含む。更に、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドも更に記載される。ポリペプチドを、ポリ(アルキレングリコール)部分及び少なくとも2つのアルデヒド基を含む架橋剤と接触させて、コンジュゲートを得る工程と、コンジュゲートを還元剤と接触させる工程と、を含む、修飾ウリカーゼを調製する方法も記載される。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(アルキレングリコール)部分を含む少なくとも1つの二官能性連結部分によって架橋されたウリカーゼポリペプチドを含み、前記二官能性連結部分の分子量が約1.5kDa~約4kDaの範囲である、修飾ウリカーゼ。
【請求項2】
前記二官能性連結部分の前記分子量が約2kDa~約3.5kDaの範囲である、請求項1に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項3】
前記二官能性連結部分が、前記ウリカーゼポリペプチド中のアミン基の窒素原子に共有結合したアルキレン基を含む、請求項1又は2に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項4】
前記アミン基がリジン残基側鎖に含まれている、請求項3に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項5】
前記ウリカーゼポリペプチドが、平均して少なくとも8個の前記二官能性連結部分に結合している、請求項1~4のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項6】
前記修飾ウリカーゼ中のリジン残基側鎖の少なくとも30%が、前記少なくとも1つの二官能性連結部分に共有結合している、請求項1~5のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項7】
前記二官能性連結部分が下記式Iで表される、請求項1~6のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
-CH
2-L
1-[O-(CH
2)m]n-O-L
2-CH
2-
式I
(式中、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、炭化水素部分であるか、又は存在せず、
mは、2~10の範囲の整数であり、
nは、2~1000の範囲の整数である。)
【請求項8】
nが30~100の範囲である、請求項7に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項9】
L
1及びL
2の少なくとも1つが非置換アルキレンである、請求項7又は8に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項10】
前記ポリ(アルキレングリコール)部分がポリエチレングリコール部分である、請求項1~9のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項11】
架橋四量体の形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項12】
配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4、及びそれらのホモログからなる群から選択されたアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項13】
配列番号1、配列番号2及び配列番号3、及びそれらのホモログからなる群から選択されたアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む、請求項12に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項14】
前記ウリカーゼポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項1~13のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項15】
前記ウリカーゼポリペプチドが植物組換えポリペプチドである、請求項14に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項16】
配列番号2のアミノ酸配列を有する複数のポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが、ポリ(アルキレングリコール)部分を含む少なくとも1つの二官能性連結部分によって架橋されている、修飾ウリカーゼ。
【請求項17】
前記二官能性連結部分が、前記ポリペプチド中のアミン基の窒素原子に共有結合したアルキレン基を含む、請求項16に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項18】
前記アミン基がリジン残基側鎖に含まれている、請求項17に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項19】
前記ポリペプチドの各々が、平均して少なくとも8個の前記二官能性連結部分に結合している、請求項16~18のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項20】
前記修飾ウリカーゼ中のリジン残基側鎖の少なくとも30%が、前記少なくとも1つの二官能性連結部分に共有結合している、請求項16~19のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項21】
前記二官能性連結部分が式Iで表される、請求項16~20のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
-CH
2-L
1-[O-(CH
2)m]n-O-L
2-CH
2-
式I
(式中
L
1及びL
2は、それぞれ炭化水素部分であるか、又は存在せず、
mは、2~10の範囲の整数であり、
nは、2~1000の範囲の整数である。)
【請求項22】
nが30~100の範囲である、請求項21に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項23】
L
1及びL
2の少なくとも1つ又は両方が非置換アルキレンである、請求項21又は22に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項24】
前記ポリ(アルキレングリコール)部分がポリエチレングリコール部分である、請求項16~23のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項25】
前記二官能性連結部分の分子量が、約1.5kDa~約4kDaの範囲である、請求項16~24のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項26】
前記二官能性連結部分の前記分子量が、約2kDa~約3.5kDaの範囲である、請求項25に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項27】
四量体の形態である、請求項16~26のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項28】
前記ポリペプチドが組換えポリペプチドである、請求項16~27のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項29】
前記ポリペプチドが植物組換えポリペプチドである、請求項28に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項30】
ラットにおける血漿半減期が少なくとも50時間である、請求項1~29のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項31】
ウリカーゼ活性が有益である疾患又は障害の処置における使用のための、請求項1~30のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項32】
過剰な尿酸レベルに関連する疾患又は障害の処置における使用のための、請求項1~31のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼ。
【請求項33】
前記疾患又は障害が、痛風、糖尿病、腎結石、腫瘍崩壊症候群、出血性ショック、マラリア、アレルギー性炎症、腎機能障害、ウイルス感染、急性胃腸炎、胎盤炎、無菌性炎症、妊娠合併症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、胃腸感染、及びレッシュナイハン症候群からなる群から選択される、請求項31又は32に記載の使用のための修飾ウリカーゼ。
【請求項34】
前記処置が、修飾ウリカーゼを少なくとも1週間おきに投与することを含む、請求項31~33のいずれか一項に記載の使用のための修飾ウリカーゼ。
【請求項35】
前記処置が、修飾ウリカーゼを少なくとも2ヶ月おきに投与することを含む、請求項34に記載の使用のための修飾ウリカーゼ。
【請求項36】
前記処置が、修飾ウリカーゼを8mg/月以下の投与量で投与することを含む、請求項31~35のいずれか一項に記載の使用のための修飾ウリカーゼ。
【請求項37】
配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項38】
請求項1~30のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼを調製する方法であって、
(a)ポリペプチドを、ポリ(アルキレングリコール)部分及び少なくとも2つのアルデヒド基を含む架橋剤と接触させて、前記ポリペプチドと前記架橋剤とのコンジュゲートを得る工程、及び
(b)前記コンジュゲートを還元剤と接触させる工程を含む、方法。
【請求項39】
前記還元剤が、ピコリンボラン錯体及びシアノ水素化ホウ素からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記架橋剤が、下記式IIで表される、請求項38又は39に記載の方法。
HC(=O)-L
1-[O-(CH
2)m]n-O-L
2-C(=O)H
式II
(式中
L
1及びL
2は、それぞれ炭化水素部分であり、
mは、2~10の範囲の整数であり、
nは、2~1000の範囲の整数である。)
【請求項41】
前記架橋剤の分子量が、約1.5kDa~約4kDaの範囲である、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ポリペプチドの四量体形態を前記架橋剤と接触させる工程を含む、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記架橋剤の前記ポリペプチドに対するモル比が、100:1~10,000:1の範囲内である、請求項38~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
媒質中の尿酸のレベルを低減させる方法であって、媒質を請求項1~30のいずれか一項に記載の修飾ウリカーゼと接触させる工程を含む、方法。
【請求項45】
前記媒質が、投与を必要とする対象の組織であり、前記方法が、前記修飾ウリカーゼを前記対象に投与する工程を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、痛風、糖尿病、腎結石、腫瘍崩壊症候群、出血性ショック、マラリア、アレルギー性炎症、腎機能障害、ウイルス感染、急性胃腸炎、胎盤炎、無菌性炎症、妊娠合併症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、胃腸感染、及びレッシュナイハン症候群からなる群から選択される疾患又は障害に罹患している、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記投与が、少なくとも1週間おきに行われる、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記投与が少なくとも2ヶ月おきに行われる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記対象に投与される前記ウリカーゼの投与量が、8mg/月以下である、請求項44~48のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年11月3日に出願された米国仮特許出願第63/108,890号の優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
配列表に関する記述
本出願の出願と同時に提出された、2021年10月31日に作成された、11,072バイトを含む89419.txtという表題のASCIIファイルは、参照により本明細書に援用される。
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、治療に関し、より具体的には、限定するものではないが、新規な形態のウリカーゼ及びその使用、例えば尿酸レベルを低下させる際のその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
尿酸は、プリンヌクレオチドの代謝分解産物である。高血中濃度の尿酸(高尿酸血症)は、痛風及び/又は腎結石の原因となり得、高い尿酸レベルは、出血性ショック[D’Alessandro et al., J Transl Med 2015, 13:253]、マラリア[Gallego-Delgado et al., Curr Rheumatol Rep 2014, 16:401]、アレルギー性喘息[Kool et al., Immunity 2011, 34:P527-P540]、外傷性脳損傷[Liu et al., Int J Med Sci 2018, 15:1072-1082]、腎機能障害及び急性胃腸炎[Matsuo et al., Sci Rep 2016, 6:31003]、多発性硬化症[Piancone et al., Front Immunol 2018, 9:983]、炎症性腸疾患[Crane & Mongiardo, Immunol Invest 2014, 43:255-266]、胃腸感染症[Crane et al., Infect Immun 2016, 84:976-988]、及び無菌性炎症及び妊娠合併症[Nadeau-Vallee et al., Reproduction 2016, 152:R277-R292]を含む他の病状に関連する。
【0005】
痛風の通常の一次治療は、例えば、ステロイド性又は非ステロイド性抗炎症薬を使用して症状を処置することである。更なる薬剤としては、酵素キサンチンオキシダーゼ(尿酸を生成する)の阻害剤であるアロプリノール及びフェブキソスタット、並びに腎臓における尿酸の再吸収を阻害すると考えられているプロベネシド、レシヌラート、及びベンズブロマロンが挙げられる。
【0006】
ウリカーゼは、当該技術分野では尿酸オキシダーゼとも呼ばれており、尿酸の5-ヒドロキシイソ尿酸への(O2を消費し、H2O2を生成する)酸化を触媒する酵素である。5-ヒドロキシイソ尿酸は、ほとんどの動物、植物及び細菌においてアラントインへと加水分解される。しかしながら、ウリカーゼはヒト(及びいくつかの他の大型類人猿)には存在せず、したがって、ヒトは特に血中尿酸濃度が高くなりやすい。
【0007】
ラスブリカーゼ(Elitek(登録商標)として市販)は、Aspergillus flavusからクローニングされた四量体ウリカーゼであり、がんの化学療法を受けている対象における腫瘍崩壊症候群の予防及び処置のための使用が米国及び欧州において承認されている。痛風を処置する際のラスブリカーゼの適応外使用も報告されている[J Rheumatol 2007, 34:2093-2098]。ラスブリカーゼは6~21時間の半減期を有し、静脈内注入により毎日投与しなければならない。
【0008】
ペグロチカーゼ(Krystexxa(登録商標)として市販)は、PEG化された四量体ブタ-ヒヒキメラウリカーゼであり、難治性痛風の処置に承認されている。4つの単量体のそれぞれにおいて、30個のリジン残基のうち平均10個が10kDaのPEG鎖によってコンジュゲートされている。
【0009】
ウリカーゼはヒトに天然には存在しないタンパク質であるため、免疫原性が高い。ラスブリカーゼ及びペグロチカーゼのいずれも、重篤な副作用としてアナフィラキシーを生じ得る。ペグロチカーゼのPEG部分はウリカーゼ骨格に対する免疫応答を低減することができるが、PEG部分自体が抗体の標的として機能し得る[Zhang et al., J Control Release 2016, 244:184-193、Hershfield et al., Arthritis Res Ther 2014, 16:R63、Ganson et al., Arthritis Res Ther 2006, 8:R12]。
【0010】
ペグロチカーゼの第3相臨床試験において、患者の26%がインフュージョンリアクションを経験し、患者の6.5%がアナフィラキシーとして特徴付けられる反応を経験した[Baraf et al.,Arthritis Res Ther 2013, 15:R137、Strand et al., J Rheumatol 2012, 39:1450-1457]。
【0011】
最大6ヶ月間続く第2相及び第3相試験において、ある時点で患者の80%超においてペグロチカーゼに対する抗体が(さまざまな方法により)検出され、最大力価は有効性の喪失及びインフュージョンリアクションと関連していた[Sundy et al., JAMA 2011, 306:711-720、Sundy et al., Arthritis Rheum 2008, 58:2882-2891]。
【0012】
国際公開第00/07629号パンフレットは、ウリカーゼサブユニットあたり平均2~10本のPEG鎖及び約5kDa~100kDaの間の平均PEG分子量を有する、PEGと共有結合したウリカーゼを記載している。
【0013】
国際公開第2011/107992号パンフレットには、TNF-α、黄体形成ホルモン、免疫グロブリン、TNF-α受容体、CTLA-4、尿酸オキシダーゼ、VEGF、PDGF、VEGF受容体、PDGF受容体、インターロイキン-17又はそれらの断片などの治療用タンパク質の単量体を含む、多量体タンパク質構造が記載されており、かかる単量体は連結部分を介して互いに共有結合している。
【0014】
Koyama et al.[J Biochem 1996, 120:969-973]は、Candida utilisウリカーゼ、並びにシステイン残基がセリン残基に置換されたその変異体を記載しており、4つのシステイン残基のうちCys 168のみが酵素活性に関与していると結論している。
【0015】
Chua et al.[Ann Intern Med 1988, 109:114-117]は、単官能性(メトキシキャップ)PEGで修飾したArthrobacter protoformiaeウリカーゼを記載しており、投与後3週間にわたって抗体産生を誘導しなかったことを報告している。
【0016】
更なる背景技術には、以下が含まれる。Hershfield et al. (2009)[Veronese F.M.(編)PEGylated Protein Drugs:Basic Science and Clinical Applications. Milestones in Drug Therapy内の“Development of PEGylated mammalian urate oxidase as a therapy for patients with refractory gout,” Birkhauser Basel]、Nyborg et al.[PLoS ONE 2016,11:e0167935]及びVeronese [Biomaterials 2001,22:405-417]、米国特許第4,179,337号明細書、同第6,913,915号明細書、同第8,188,224号明細書、及び同第9,885,024号明細書;米国特許出願公開第2007/0274977号明細書及び同第2008/0159976号明細書;並びに国際公開第2011/107990号パンフレット、同第2011/107991号パンフレット、同第2016/187026号パンフレット、同第2018/010369号パンフレット及び同第2019/010369号パンフレット。
【発明の概要】
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、ポリ(アルキレングリコール)部分を含む少なくとも1つの二官能性連結部分によって架橋されたウリカーゼポリペプチドを含み、二官能性連結部分の分子量が約1.5kDa~約4kDaの範囲である、修飾ウリカーゼが提供される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、配列番号2のアミノ酸配列を有する複数のポリペプチドを含み、ポリペプチドが、ポリ(アルキレングリコール)部分を含む少なくとも1つの二官能性連結部分によって架橋されている、修飾ウリカーゼが提供される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドが提供される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書において修飾ウリカーゼに関して記載するいずれかの実施形態による修飾ウリカーゼを調製する方法であって、
(a)ポリペプチドと、ポリ(アルキレングリコール)部分及び少なくとも2つのアルデヒド基を含む架橋剤とを接触させて、ポリペプチドと架橋剤とのコンジュゲートを得る工程、及び
(b)コンジュゲートを還元剤と接触させる工程、を含む、方法が提供される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、媒質中の尿酸のレベルを低減させる方法であって、媒質と、本明細書において修飾ウリカーゼに関して記載するいずれかの実施形態による修飾ウリカーゼと、を接触させる工程を含む、方法が提供される。
【0022】
本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、ポリペプチドは組換えポリペプチドである。
【0023】
本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、ポリペプチドは植物組換えポリペプチドである。
【0024】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、二官能性連結部分の分子量は、約1.5kDa~約4kDaの範囲である。
【0025】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、二官能性連結部分の分子量は、約2kDa~約3.5kDaの範囲である。
【0026】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、二官能性連結部分は、ウリカーゼポリペプチド中のアミン基の窒素原子に共有結合したアルキレン基を含む。
【0027】
ポリペプチド中のアミン基に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、アミン基はリジン残基側鎖に含まれる。
【0028】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、ウリカーゼポリペプチドは、平均して少なくとも8個の二官能性連結部分に結合している。
【0029】
複数のポリペプチドに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、各ポリペプチドは、平均して少なくとも8個の二官能性連結部分に結合している。
【0030】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、修飾ウリカーゼ中のリジン残基側鎖の少なくとも30%が、少なくとも1つの二官能性連結部分に共有結合している。
【0031】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、二官能性連結部分は下記式Iで表される。
-CH2-L1-[O-(CH2)m]n-O-L2-CH2-
式I
(式中
L1及びL2は、それぞれ独立して、炭化水素部分であるか、又は存在せず、
mは、2~10の範囲の整数であり、
nは、2~1000の範囲の整数である。)
を有する。
【0032】
式Iに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、nは30~100の範囲である。
【0033】
式Iに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、L1及びL2の少なくとも一方又は両方は、非置換アルキレンである。
【0034】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、ポリ(アルキレングリコール)部分はポリエチレングリコール部分である。
【0035】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、修飾ウリカーゼは四量体の形態である。
【0036】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、修飾ウリカーゼは架橋四量体の形態である。
【0037】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、修飾ウリカーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4、及びそれらのホモログからなる群から選択されたアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む。
【0038】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、修飾ウリカーゼは、配列番号1、配列番号2及び配列番号3、及びそれらのホモログからなる群から選択されたアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む。
【0039】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、修飾ウリカーゼは、ラットにおける少なくとも50時間の血漿半減期を特徴とする。
【0040】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、修飾ウリカーゼは、ウリカーゼ活性が有益である疾患又は障害の処置に使用するためのものである。
【0041】
修飾ウリカーゼに関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、修飾ウリカーゼは、過剰な尿酸レベルに関連する疾患又は障害の処置に使用するためのものである。
【0042】
疾患又は障害に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、疾患又は障害は、痛風、糖尿病、腎結石、腫瘍崩壊症候群、出血性ショック、マラリア、アレルギー性炎症、腎機能障害、ウイルス感染、急性胃腸炎、胎盤炎、無菌性炎症、妊娠合併症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、胃腸感染、及びレッシュナイハン症候群からなる群から選択される。
【0043】
処置に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、処置は、修飾ウリカーゼを少なくとも1週間おきに投与することを含む。
【0044】
処置に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、処置は、修飾ウリカーゼを少なくとも2ヶ月おきに投与することを含む。
【0045】
処置に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、処置は、修飾ウリカーゼを8mg/月以下の投与量で投与することを含む。
【0046】
方法に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、還元剤は、ピコリンボラン錯体及びシアノ水素化ホウ素からなる群から選択される。
【0047】
方法に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、架橋剤は、下記式IIで表される。
HC(=O)-L1-[O-(CH2)m]n-O-L2-C(=O)H
式II
(式中
L1及びL2は、それぞれ炭化水素部分であり、
mは、2~10の範囲の整数であり、
nは、2~1000の範囲の整数である。)
を有する。
【0048】
方法に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、架橋剤の分子量は、約1.5kDa~約4kDaの範囲である。
【0049】
方法に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、本方法は、四量体形態のポリペプチドを架橋剤と接触させることを含む。
【0050】
方法に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、架橋剤のポリペプチドに対するモル比は100:1~10,000:1の範囲である。
【0051】
方法に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、媒質は、投与を必要とする対象の組織であり、本方法は、修飾ウリカーゼを対象に投与する工程を含む。
【0052】
対象への投与に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、対象は、痛風、糖尿病、腎結石、腫瘍崩壊症候群、出血性ショック、マラリア、アレルギー性炎症、腎機能障害、ウイルス感染、急性胃腸炎、胎盤炎、無菌性炎症、妊娠合併症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、胃腸感染、及びレッシュナイハン症候群からなる群から選択される疾患又は障害に罹患している。
【0053】
対象への投与に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、投与は、少なくとも1週間おきに行われる。
【0054】
対象への投与に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、投与は、少なくとも2ヶ月おきに行われる。
【0055】
対象への投与に関する本発明のいずれかの実施形態のいくつかでは、対象に投与されるウリカーゼの投与量は、8mg/月以下である。
【0056】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様の又は均等な方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を下記に記載する。矛盾する場合、定義を含め、本願特許明細書が優先する。更に、材料、方法、及び実施例は単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態について、その例示のみを目的として添付の図面を参照して本明細書に記載する。以下、特に図面に詳細に言及するが、示される詳細は、例示を目的とし、また本発明の実施形態の例証的説明を目的とすることを強調する。この点に関して、図面を用いて説明することで、当業者には、本発明の実施形態をどのように実践し得るかが明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による修飾ウリカーゼを示す図解、並びにウリカーゼをアルデヒド含有架橋剤と還元剤と接触させることによって本発明のいくつかの実施形態による修飾ウリカーゼを調製する方法を示す。
【
図2】
図2は、25mMのTris(pH8.4)中0.3mg/mLの濃度(光学密度によって測定)での凍結/解凍(Fr/Th)サイクルの前(-)及び後(+)の、植物組換え野生型Candidaウリカーゼ(prU-C)及びC250K変異(prU-C250K)をSDS-PAGE分析(変性条件下)したゲル画像を示す(推定分子量の値を中央に示す)。ウリカーゼに関連する高分子量構造(二量体及び四量体などの、複数のサブユニットから形成された構造体)を、左側に波括弧を付して示す。
【
図3】
図3は、ウリカーゼバリアント(prU-A、prU-C、prU-C250K及びprU-G)の酵素活性(t=0での活性に対して正規化)を、ヒト血漿(37℃で2μg/mLのウリカーゼ)中でのインキュベーション時間の関数とし、t=0での活性に対して正規化したものを示す、グラフである。
【
図4】
図4は、未修飾prU-Cと、1000Da、2000Da、5000Da又は10,000DaのPEGを有するPEGビスアルデヒド(ビスPEG ALD)で架橋したprU-CとをSDS-PAGE分析したゲル画像を示す(右側に分子量マーカーを示す)。
【
図5】
図5は、未修飾prU-A(「-」と表示されたレーン)と、600Da、1000Da、2000Da、3400Da、5000Da、又は10000DaのPEGを有するPEGビスアルデヒド(ビス-Ald-PEG)で架橋したprU-AとをSDS-PAGE分析したゲル画像を示す(右側に分子量マーカーを示す)。
【
図6】
図6は、未修飾prU-Gと、2000Da、3400Da、又は5000DaのPEGを有する200又は1000当量のビス-Ald-PEGで架橋したprU-GとをSDS-PAGE分析したゲル画像を示す(左側に分子量マーカーを示す)。
【
図7】
図7は、未修飾prU-Aと、アルデヒド(ALD)又はN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)官能基を有する二官能性で2000DaのPEG1000当量で架橋したprU-AとをSDS-PAGE分析したゲル画像を示す(左側に分子量マーカーを示す)。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、図解及び棒グラフを示す。
図8Aは、2000Daのビス-AldPEG又は2000Daのビス-NHSPEGで架橋したprU-Aと、ミョウバンアジュバントとによるラットの免疫の図解である(上の矢印は免疫の日を示し、下の矢印は血清採取の日を示す)。
図8Bは、
図8Aの予定表に従って、ビス-Ald-PEG(ラット7~12)又はビス-NHS-PEG(ラット13~18)で架橋したprU-Aで免疫したラットにおける、試験タンパク質に対する抗体の力価を示す棒グラフである。各ラットの3本の棒グラフは、30日目(左のバー)、50日目(中央のバー)及び72日目(右のバー)の抗体価を示す。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、グラフを示す。競合ELISAにより、ビス-Ald-PEG(
図9A)又はビス-NHS-PEG(
図9B)によって架橋したprU-Aに対する抗体の、かかる架橋prU-Aに対する結合の阻害率(%)を、未修飾のprU-Aによる阻害と比較して示すグラフである。試験物質で免疫したラットの血清サンプルを、高濃度の修飾prU-A又は未修飾prU-A(x軸の「阻害剤」)と共にプレインキュベートした。修飾prU-A又は未修飾prU-Aのいずれかとのプレインキュベートによる阻害後の結合の割合を、プレインキュベートで使用したタンパク質(阻害剤)の濃度の関数として示す。
【
図10】
図10は、2000DaのPEGを有するPEGビス-アルデヒドで架橋したprU-A(ラット1~5)若しくは3400DaのPEGを有するPEGビスアルデヒドで架橋したprU-A(ラット11~15)、又は2000DaのPEGを有するPEGビスアルデヒドで架橋したprU-C(ラット21~25)若しくは3400DaのPEGを有するPEGビスアルデヒドで架橋したprU-C(ラット26~30)と、ミョウバンアジュバントとで免疫した個々のラットにおける抗体の(試験した修飾prUに対する)力価を示す棒グラフである。血液サンプルは30日目(採血1)、51日目(採血2)及び72日目(採血3)に採取し、免疫は1日目、21日目、42日目及び63日目に実施した。
【
図11】
図11は、ELISAを使用して、健康なヒトドナーの既存抗体(pre-existing antibodies)による、未修飾prU-C250K、単官能性の10kDa PEGで修飾したprU-C250K、及び二官能性の3400Da PEGで修飾したprU-C250Kの認識を示す表である。値は、サンプル及び陰性対照のELISAの結果間のOD比を表し、OD比が少なくとも2である陽性応答を示すドナー(行によってそれぞれ表される102人のドナーのうち34人)の結果のみを強調している。
【
図12】
図12は、ビス-Ald-PEG3400Daで架橋したprU-C250Kの2つのバッチ(346及び347)の、37℃のヒト血漿中での安定性を、酵素活性(t=0での活性に対して正規化)により評価して示すグラフである。
【
図13】
図13A及び
図13Bは、図解及び棒グラフである。
図13Aは、雌性ラットにおいて未修飾prU-C250Kを架橋prU-C250K-ビス-Ald-PEG3400Daと比較して、薬物動態(PK)及び免疫原性試験を示す図解である。試験には、6回の静注(IV)投与(上の矢印)、それに続くPK及び抗体価の評価(下の矢印は分析のための採血日を示し、太い矢印は抗体評価日を示し、細い矢印はPK時点を示す)を含む。
図13Bは、未修飾prU-C250Kで免疫した6匹のラットにおける、0日目(Pre1)、14日目(採血1)、31日目(採血2)、44日目(採血3)、59日目(採血4)及び73日目(採血5)の抗prU-C250K抗体の力価を示す棒グラフである。
【
図14-1】
図14A、
図14B、
図14C及び
図14Dは、prU-C250K-ビス-Ald-PEG3400の薬物動態プロファイルを示すグラフである。ナイーブ状態のラット(
図14A及び
図14B)又は6回投与したラット(
図14C及び
図14D)における、経時的な血漿中タンパク質濃度の自然対数(LN)、並びにデータへの線形適合(破線並びに方程式及びR2値)を示す。全prU-C250K-ビス-Ald-PEG3400の濃度は相補的ELISAアッセイ(
図14A及び
図14C)によって測定した。活性タンパク質濃度はウリカーゼ活性(
図14B及び
図14D)を測定することによって評価した。計算上の半減期及び曲線下面積(AUC)は、54.0時間及び61.07mg
*分/mL(
図14A)、64.8時間及び65.95mg
*分/mL(
図14B)、70.5時間及び80.4mg
*分/mL(
図14C)及び68.4時間及び58.5mg
*分/mL(
図14D)であった。
【
図15】
図15は、例示的架橋ウリカーゼ(四角)及びペグロチカーゼ(円)の反応速度を基質(UA)濃度の関数として示すミカエリス-メンテンプロットである。37℃で5分間のインキュベートと、H
2O
2の生成に伴って酸化されたAmpliflu(商標)プローブの蛍光の線形増加の評価とによって、反応速度を測定した(各データポイントは、三連で行った実験の平均を表す)。
【
図16】
図16は、ラットにおける例示的架橋ウリカーゼ及びペグロチカーゼの血漿濃度を、酵素の初回注射後の時間の関数として示すグラフである。
【
図17】
図17は、ラットにおける例示的架橋ウリカーゼ及びペグロチカーゼの血漿濃度を、酵素の4回目の注射後の時間の関数として示すグラフである。
【
図18】
図18は、(
図16及び
図17に示すデータに基づく、)1回目(ナイーブ状態)及び4回目(反復)の注射後のラットにおける例示的架橋ウリカーゼ及びペグロチカーゼの血漿半減期を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、治療に関し、より具体的には、限定するものではないが、新規な形態のウリカーゼ及びその使用、例えば尿酸レベルを低下させる際のその使用に関する。
【0060】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の用途は、以下の発明を実施するための形態に示される詳細又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施若しくは実現することが可能である。
【0061】
本明細書において上記で考察されるように、ウリカーゼはヒトにとって異種タンパク質であるため、免疫原性が高く、この免疫原性はウリカーゼの治療使用にとって重大な障害となる。加えて、ウリカーゼは一般に注射又は注入によって投与される。この投与は非常に不便である可能性があり、取り扱い又は保管時に不安定になる可能性がある。
【0062】
改良型のウリカーゼの探索において、本発明者らは、免疫原性の低減及びほぼ無効化、並びに保存中及びインビボでの良好な安定性を示す、改変型のウリカーゼを設計し、首尾よく実施した。本発明者らは、かかる架橋ウリカーゼの特性が、当該技術分野で公知のPEG化ウリカーゼの特性と比較して(例えば、インビボでの低免疫原性及び延長された(enhanced)半減期という点で)望ましいものであることを示した。
【0063】
本発明者らは、本発明を実施化する間に、免疫原性の低減及び凝集の低減を含む性能の改善に関連する変異ウリカーゼポリペプチドを発見した。
【0064】
ここで各種図面を参照されたい。
図2は、例示的なウリカーゼ変異体(配列番号2)が、ウリカーゼの凝集の低減に関連することを示す。
【0065】
図3は、ヒト血漿中で安定性を示す例示的なウリカーゼバリアントを示す。
図12は、例示的な実施形態による架橋ウリカーゼが、ヒト血漿中で高度の安定性を示すことを示す。
図14A~
図14Dは、例示的な実施形態による架橋ウリカーゼの、ラットにおけるインビボ半減期が、反復投与後にも50時間を超えることを示す。
【0066】
図4、
図5及び
図6は、ポリエチレングリコール連結部分による様々なウリカーゼバリアントの架橋効率は、連結部分が1000Da超5000Da未満の分子量を有する場合に最大であることを示す。
【0067】
図7は、ビス-NHS架橋剤及びビス-アルデヒド架橋剤はいずれもウリカーゼを効率的に架橋すること、及びビス-アルデヒド剤による架橋がビス-N-ヒドロキシスクシンイミド剤よりも効率的な修飾をもたらしたことを示す。
【0068】
図8A~
図8Bは、ビス-アルデヒド剤を使用した架橋が、ビス-N-ヒドロキシスクシンイミド架橋剤を使用した架橋よりも、架橋ウリカーゼのインビボ免疫原性をかなり低減させることを示す。
【0069】
図10は、様々なウリカーゼバリアントの架橋により、インビボで低レベルの免疫原性を得ることができることを示す。対照的に、
図13A~
図13Bは、未修飾ウリカーゼが相当に免疫原性であることを示す。
【0070】
図11は、例示的な(短い)PEG連結部分による架橋時に、10kDaのPEGによる修飾(ペグロチカーゼで使用されている修飾)と比較して抗原性(健康なヒトドナーにおける既存の抗体の量によって表される)が低いことを示す。
【0071】
図15は、インビトロにおいて、例示的な架橋ウリカーゼがペグロチカーゼよりもかなり強いウリカーゼ活性を有することを示す。
【0072】
図16~
図18は、インビボにおいて、例示的な架橋ウリカーゼがペグロチカーゼよりも長い血漿半減期を有することを示す。
【0073】
修飾ウリカーゼ:
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、修飾ウリカーゼが提供される。修飾ウリカーゼは、少なくとも1つのウリカーゼポリペプチド(この用語は本明細書で定義される)を含み、少なくとも1つのウリカーゼポリペプチドは、ポリ(アルキレングリコール)部分を含む少なくとも1つの連結部分によって、好ましくはポリ(アルキレングリコール)部分を含む少なくとも1つの二官能性連結部分によって架橋されている。
【0074】
本明細書では、「修飾ウリカーゼ」という用語は、1つ以上の追加部分(ウリカーゼ以外)が共有結合している少なくとも1つのウリカーゼポリペプチド(この用語は本明細書で定義される)を含む任意の構造を指し、本明細書に明示的に記載されているものを超えて限定することを意味しない。
【0075】
本明細書において、「架橋」、「架橋された」という用語及びその任意の変形は、ある分子上の2つ以上の異なる部位のそれぞれで別の分子に共有結合している(例えば、2つ以上の異なる原子に共有結合している)個々の部分を指す。架橋は分子内である場合がある、すなわち、前述の個々の部分は、単一分子、例えば単一ポリペプチドの、2つ以上の異なる部位に共有結合している(例えば、下記コンジュゲート:
【化1】
のように、部分Bが2つの異なる部位で部分Aに共有結合している)、又は分子間である場合がある、すなわち、前述の個々の部分は、2つ以上の異なる分子、例えば2つ以上のポリペプチドの、各々に共有結合している(例えば、コンジュゲートA-B-Aの場合のように、部分Bが2つの異なるA部分に共有結合している)、又は分子内架橋及び分子間架橋の組み合わせである場合もある(例えば、下記コンジュゲート
【化2】
のように、2つのB部分が分子内架橋に関与し、1つが分子間架橋に関与する)。
【0076】
必ずしもそうとは限らないが、通常、上述の個々の部分は本明細書では「架橋する」と記載され、1つ以上の他の分子は「架橋される」と記載される(例えば、コンジュゲートA-B-Aでは、部分Bは、典型的には、2つのA部分を「架橋する」と記載され、2つのA部分は部分Bによって「架橋される」)。
【0077】
本明細書において、「連結部分」という用語は、2つ以上の異なる部位で別の部分及び/又は分子に共有結合している任意の部分(分子の構成要素)を表す。すなわち、本明細書で定義される1つ以上の他の分子(例えば、1つ以上のポリペプチド)を架橋する部分である。「二官能性連結部分」は、2つの(それ以上ではない)異なる部位に共有結合している連結部分を指す。
【0078】
本明細書に記載の架橋部分及び連結部分は、ポリペプチド上の単一部位への部分の結合を含む当該技術分野で公知の様々なポリペプチド修飾とは異なることを理解されたい。例えば、PEG化は、典型的には、ポリエチレングリコール(PEG)の単一部位への結合を伴う。本明細書の実施例の項に示すように、連結部分で修飾されたウリカーゼは、例えば典型的なPEG化(ペグロチカーゼに見られる)によるもののように、単官能性である化学的に類似した部分で修飾された、対比する(corresponding)ウリカーゼとは著しく異なる特性を示し得る。
【0079】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、連結部分は、単官能性部分よりも立体的に閉じ込められており、かかる部分に結合している部位の総数を増やし得る、及び/又はその周囲からのポリペプチドの(例えば、修飾部分について所与の数及び/又は質量に対して)より効率的なマスキングを提供し得ると考えられる。
【0080】
本明細書において、「ウリカーゼ」という用語は、(O2のH2O2への変換を伴う、尿酸塩の5-ヒドロキシ尿酸塩への酸化を触媒する)EC 1.7.3.3に分類される任意の酵素又は(FADHの酸化及びO2のH2O2への変換を伴う、尿酸塩の5-ヒドロキシ尿酸塩への酸化を触媒する)EC 1.14.13.113に分類される任意の酵素を包含し、天然に存在する酵素のアミノ酸配列を有するタンパク質、及び相同なアミノ酸配列を有するタンパク質(例えば、ホモログに関連して本明細書に記載する実施形態のいずれかに従って、この用語は本明細書中で定義される)の両方を含む。
【0081】
本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、ウリカーゼはEC 1.7.3.3ウリカーゼである。
【0082】
本明細書において、「ウリカーゼポリペプチド」という用語は、ウリカーゼに含まれる別個のポリペプチド鎖を指す。例えば、四量体ウリカーゼは、4つのウリカーゼポリペプチドを含んでもよく、又は、ウリカーゼは、ただ1つのウリカーゼポリペプチドを含んでもよい(例えば、ウリカーゼポリペプチドからなる)。ウリカーゼポリペプチドは、任意で、1つ以上の置換基(例えば、本明細書に記載の連結部分以外)によって置換され、例えば、糖部分及び/若しくは脂質部分、並びに/又は天然に存在するポリペプチドに結合することが当該技術分野で公知の任意の他の置換基によって置換される。
【0083】
本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、修飾ウリカーゼは多量体構造の形態である。すなわち、修飾ウリカーゼは複数のウリカーゼポリペプチド鎖を含む。このような多量体形態は、例えば、二量体、三量体、四量体、六量体、八量体、又はより大きな多量体形態であってもよい。いくつかのこのような実施形態では、多量体形態は、ウリカーゼの未修飾形態、例えば多くのウリカーゼバリアントの四量体と構造(例えば、ウリカーゼポリペプチド鎖の数及び/又はその配向)において類似している。
【0084】
多量体構造中のウリカーゼポリペプチドの少なくとも一部は、任意で、例えば本明細書に記載の連結部分による分子間架橋によって、互いに共有結合していてもよい。代替的又は追加的に、多量体構造中のウリカーゼポリペプチドの少なくとも一部は、任意で、非共有結合相互作用(例えば、本明細書中に記載される連結部分による全ての架橋は分子内架橋である)によってのみ多量体構造中の他のポリペプチドと関係していてもよい。
【0085】
当業者に明らかなように、本明細書に記載の修飾ウリカーゼは、複雑なポリマー性を有し(例えば、1つ以上のポリペプチド及び/又は1つ以上のポリマー連結部分の存在に起因する)、したがって典型的には、類似しているが幾分異なる分子及び/又は多量体構造の集合の形態で生成される。例えば、連結部分の数及び/又は1つ以上の連結部分がウリカーゼポリペプチドに結合する位置は様々であり得る。
【0086】
任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、ウリカーゼポリペプチド(例えば、本明細書に記載の多量体構造中の複数のウリカーゼポリペプチドのそれぞれ)は、平均して少なくとも2個の連結部分(本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる)、任意で、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも14個、更には少なくとも16個の連結部分に結合している。前述の連結部分は、任意で、二官能性連結部分である。いくつかのかかる実施形態では、前述の連結部分のそれぞれが2つのリジン残基に結合している。
【0087】
いくつかの各実施形態のいずれかでは、修飾ウリカーゼ中のリジン残基側鎖の少なくとも10%が連結部分(例えば、リジン残基側鎖に結合する連結部分に関する本明細書に記載のいずれかの実施形態による)に結合しており、任意で、リジン残基側鎖の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、更には少なくとも90%が連結部分に結合していてもよい。前述の連結部分は、任意で、二官能性連結部分である。いくつかの実施形態では、リジン残基側鎖の実質的に全てが連結部分に結合している。
【0088】
各ポリペプチドに結合している結合部分の平均数又は結合部分に結合しているリジン残基側鎖の平均数の測定では、修飾ウリカーゼ分子及び/又は多量体構造(例えば、本明細書中上記で議論される集団)の集団の平均値を決定する。例えば、2つのポリペプチドに結合した個々の連結部分は、ポリペプチドあたり0.5個の連結部分に相当する。
【0089】
本明細書に記載の連結部分に加えて、修飾ウリカーゼは、任意で、1つ以上の追加の部分、例えば、本明細書に記載の連結部分(例えば、本明細書に記載のポリ(アルキレングリコール)部分を含み、及び/又は連結部分について本明細書に記載の様式でポリペプチドリジン残基に結合している)と類似の構造を有するが、1つの部位のみでウリカーゼポリペプチドに結合している1つ以上の部分によって更に修飾されていてもよい。このような(単官能性)部分は、例えば、ポリペプチド上に存在し得る結合部位(例えば、リジン残基)が他の部位に付着している及び/又は立体的にブロックされている不完全な架橋反応によって生成されていてもよい。
【0090】
更に、二官能性連結部分に関する本明細書の実施形態のいずれにおいても、修飾ウリカーゼは、任意で、二官能性ではない1つ以上の連結部分、例えば、3、4又はそれ以上のポリペプチド部位に結合した連結部分(任意で分岐連結部分)によって更に修飾されていてもよい。いくつかのこのような実施形態では、二官能性部分は、例えば、ポリペプチドに結合し得る3つ以上の官能基を含む化合物の不完全な架橋反応によって生成される場合があり、例えば、ポリペプチド上に存在し得る結合部位(例えば、リジン残基)は、複数の部分に結合しており及び/又は複数の部分によって立体的にブロックされており、したがって第3の部位での結合が阻害される。
【0091】
本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、修飾ウリカーゼは、対比する未修飾ウリカーゼ(すなわち、本明細書に記載の連結部分を含まない)よりもインビボ半減期が長いことを特徴とする。本明細書に記載されるいくつかのこのような実施形態では、修飾ウリカーゼの半減期は、対比する未修飾ウリカーゼの半減期よりも少なくとも20%長い。いくつかの実施形態では、修飾ウリカーゼの半減期は、対比する未修飾ウリカーゼの半減期よりも少なくとも50%長い。いくつかの実施形態では、修飾ウリカーゼの半減期は、対比する未修飾ウリカーゼの半減期よりも少なくとも100%長い、すなわち少なくとも2倍長い。いくつかの実施形態では、修飾ウリカーゼの半減期は、対比する未修飾ウリカーゼの半減期の少なくとも3倍である。いくつかの実施形態では、修飾ウリカーゼの半減期は、対比する未修飾ウリカーゼの半減期の少なくとも5倍である。いくつかの実施形態では、修飾ウリカーゼの半減期は、対比する未修飾ウリカーゼの半減期の少なくとも10倍である。いくつかの実施形態では、修飾ウリカーゼの半減期は、対比する未修飾ウリカーゼの半減期の少なくとも20倍である。いくつかの実施形態では、修飾ウリカーゼの半減期は、対比する未修飾ウリカーゼの半減期の少なくとも50倍である。いくつかの実施形態では、修飾ウリカーゼの半減期は、対比する未修飾ウリカーゼの半減期の少なくとも100倍である。
【0092】
(修飾及び/又は未修飾)ウリカーゼの半減期は、例えば、対象(例えば、ヒト及び/又はラットにおいて)への被験ウリカーゼの注射後に、経時的に血液(例えば、血漿中)中の被験ウリカーゼの量を測定することによって決定してもよい。本明細書に例示されるように、ウリカーゼの量は、被験ウリカーゼに対する抗体を使用して(例えば、ELISAによって)、及び/又はウリカーゼに特徴的な酵素活性の量を測定することによって測定してもよい。
【0093】
本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、修飾ウリカーゼは、ラットにおいて少なくとも40時間の血漿半減期(例えば、抗体認識及び/又は酵素活性によって測定される)を特徴とする。いくつかのそのような実施形態では、半減期は少なくとも50時間である。いくつかのそのような実施形態では、半減期は少なくとも60時間である。いくつかのそのような実施形態では、半減期は少なくとも70時間である。いくつかのそのような実施形態では、半減期は少なくとも80時間である。いくつかのそのような実施形態では、半減期は少なくとも100時間である。いくつかの実施形態では、半減期は、少なくとも1週間、又は少なくとも2週間、又は少なくとも3週間、又は少なくとも4週間である。
【0094】
本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる修飾ウリカーゼのより長い半減期は、任意で、修飾ウリカーゼのより大きな分子量(これにより、例えば腎臓での濾過により血流から除去される速度を減少させる可能性がある)及び/又は修飾ウリカーゼのより低い免疫原性(免疫系による不活性化及び/又は破壊の速度を減少させ得る)に関連し得る。
【0095】
連結部分:
本明細書に記載する実施形態のいずれかによる連結部分は、本明細書に記載する任意の様式(例えば、修飾ウリカーゼの架橋の性質及び/又は全体構造に関して本明細書に記載する実施形態のいずれかによる)で、任意で、本明細書に記載する実施形態のいずれかによるウリカーゼポリペプチド(例えば、本明細書のそれぞれの項におけるもの)と任意に結合させてもよい。
【0096】
本明細書で論じられるように、連結部分はポリ(アルキレングリコール)部分を含む。
【0097】
「ポリ(アルキレングリコール)」という語句は、本明細書で使用するとき、以下の一般式:-[O-(CH2)m]n-O-(式中、mは各アルキレングリコール単位中に存在するメチレン基の数を表し、nは繰り返し単位の数を表し、したがって、ポリマーのサイズ又は長さを表す)を共有するポリエーテルポリマー群を包含する。例えば、m=2の場合、ポリマーはポリエチレングリコールと呼ばれ、m=3の場合、ポリマーはポリプロピレングリコールと呼ばれる。
【0098】
いくつかの実施形態では、mは、1より大きい整数(例えば、m=2、3、4など)である。
【0099】
任意で、mは、ポリ(アルキレングリコール)鎖の単位間で異なっていてもよい。例えば、ポリ(アルキレングリコール)鎖は、一緒に連結されたエチレングリコール(m=2)単位及びプロピレングリコール(m=3)単位の両方を含んでもよい。
【0100】
「ポリ(アルキレングリコール)」という語句はまた、酸素原子が、例えば、S及び-NH-などの別のヘテロ原子で置換されているその類似体も包含する。この用語は、ポリマーを構成するメチレン基の1つ以上が置換されている上記の誘導体を更に包含する。メチレン基上の任意の置換基の例としては、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシ、オキソ、チオール及びチオアルコキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、メチレン基上の置換基(存在する場合)は、アルキル、任意で、C1-4-アルキル、及び任意でメチルである。
【0101】
本明細書で使用するとき、「アルキレングリコール単位」という語句は、ポリ(アルキレングリコール)の主鎖を形成する、本明細書で上記した-O-(CH2)m-基又はその類似体を包含し、(CH2)m(又はその類似体)は、ポリ(アルキレングリコール)(式-[O-(CH2)m]n-O-で示される)若しくはそのヘテロ原子類似体の末端で、又は別のアルキレングリコール単位若しくはウリカーゼポリペプチド(末端単位の場合)に属するヘテロ原子の末端で、酸素原子(又はそのヘテロ原子類似体)に結合しており、O(又は前述の末端酸素原子)又はそのヘテロ原子類似体は、別のアルキレングリコール単位の(CH2)m(又はその類似体)に、又はウリカーゼポリペプチドと結合を形成する官能基(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)に結合している。
【0102】
アルキレングリコール単位は、3つ以上の隣接するアルキレングリコール単位に連結されるように分岐していてもよく、3つ以上の隣接するアルキレングリコール単位の各々は、ポリ(アルキレングリコール)鎖の一部である。そのような分枝アルキレングリコール単位は、そのヘテロ原子を介して1つの隣接アルキレングリコール単位に結合しており、残りの隣接アルキレングリコール単位のヘテロ原子はそれぞれ分枝アルキレングリコール単位の炭素原子に結合している。更に、ヘテロ原子(例えば、窒素)は、その一部であるアルキレングリコール単位の2つ以上の炭素原子に結合して、分枝アルキレングリコール単位(例えば、[(-CH2)m]2N-など)を形成してもよい。
【0103】
例示的な実施形態では、アルキレングリコール単位の少なくとも50%は同一であり、例えば、それらは、互いに同じヘテロ原子及び同じm値を含む。任意で、アルキレングリコール単位の少なくとも70%、任意で、少なくとも90%、及び任意で100%が同一である。例示的な実施形態では、同一のアルキレングリコール単位に結合したヘテロ原子は酸素原子である、及び/又はアルキレングリコール単位は非置換である。更なる例示的な実施形態では、mは、同一のユニットに対して2である。
【0104】
一実施形態では、ポリ(アルキレングリコール)は、単一の直鎖であり(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)である)、鎖の2つの末端はそれぞれ独立して、ウリカーゼポリペプチドに直接又は間接的に(例えば、本明細書に記載の官能基を介して)結合している。
【0105】
本明細書で使用するとき、「ポリエチレングリコール」という用語は、アルキレングリコール単位の少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、及び好ましくは100%が-CH2CH2-O-である、本明細書で上記に定義されるポリ(アルキレングリコール)を表す。同様に、「エチレングリコール単位」という語句は、本明細書では-CH2CH2O-の単位として定義される。
【0106】
任意の実施形態によれば、連結部分は、ポリエチレングリコール又はその類似体を含み、ポリエチレングリコール又はその類似体は、下記一般式で表される。
-(Y1-CR1R2-CR3R4)n-Y2-
(式中、Y1及びY2は、それぞれ独立して、O、S又はNR5(任意でO)であり、
nは、任意で2から1000(任意で10~300、任意で30~100)の整数であるが、nのより高い値も企図され、
R1、R2、R3、R4、及びR5の各々は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシ、オキソ、チオール及び/又はチオアルコキシである。)
【0107】
各実施形態のいずれかのいくつかでは、R1、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立して、水素又はアルキルであり、任意で、水素又はC1-4-アルキルであり、任意で水素又はメチルである。例示的な実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5はそれぞれ水素である。
【0108】
ポリエチレングリコール又はその類似体は、任意で、コポリマーを含んでいてもよく、例えば、上記式中のY1-CR1R2-CR3R4単位は、全てが互いに同一ではない。
【0109】
いくつかの実施形態では、Y1-CR1R2-CR3R4単位の少なくとも50%が同一である。任意で、Y1-CR1R2-CR3R4単位の少なくとも70%、任意で、少なくとも90%、及び任意で100%が同一である。
【0110】
任意で、連結部分は、例えば、上記式中の1つ以上のY1-CR1R2-CR3R4単位について、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも1つが-(Y1-CR1R2-CR3R4)p-Y2-であるように分岐しており、式中、R1~R5及びY1及びY2は、本明細書で定義される通りであり、pは各実施形態のいずれかによるn(例えば、2~1000)に対して本明細書で定義される通りの整数である。
【0111】
連結部分は、任意で、少なくとも2つの官能基を含み、各官能基はウリカーゼポリペプチドと共有結合を形成する。官能基の例としては、アルキレン基及びカルボニル(-C(=O)-)が挙げられる。アルキレン又はカルボニルは、任意で、例えば、それぞれ一緒になってアミン基又はアミド基を形成するように、ポリペプチドの窒素原子(例えば、アミン基)に結合していてもよい。官能基は、任意で連結部分の末端基であってもよく、ポリ(アルキレングリコール)の全長は2つの官能基の間にある。各官能基は、任意で、ポリ(アルキレングリコール)部分(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)に直接結合していてもよく、又は連結基(この用語は本明細書で定義される)を介して間接的に結合していてもよく、任意で、連結基は炭化水素部分である。
【0112】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、連結部分(任意で、二官能性連結部分)は、ポリペプチド中のアミン基の窒素原子に共有結合したアルキレン基(例えば、非置換アルキレン基)、例えば、リジン残基側鎖及び/又はN末端のアミン基を含む。
【0113】
本明細書で例示するように、窒素原子に共有結合したこのようなアルキレン基は、任意で、還元剤の存在下でアルデヒド基とアミン基とを反応させること(例えば、本明細書に記載の方法による)によって得ることが可能である。
【0114】
いかなる特定の理論にも束縛されないが、ポリペプチド窒素原子に共有結合したアルキレン基を介した架橋は、有利には、カルボニル(-C(=O)-)基(任意で、カルボキシレート基の縮合によって誘導される)とポリペプチドアミン基との間にアミド結合を形成するなどの架橋の代替技術よりも免疫原性が低いと考えられる。
【0115】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による修飾ウリカーゼ(例えば、四量体の形態)を模式的に示し、PEG部分の一部はポリペプチドの複数のアミン基に結合しており(例えば、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる還元的アミノ化による)、PEG部分の一部はポリペプチドの単一のアミン基に結合しており、未反応の官能基(例えば、アルデヒド)が残存している(任意で、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる不完全な架橋反応によって生成される)。更に、いかなる部分(すなわち、-NH
2基)にも結合していないアミン基が残っていてもよい。本明細書に示すように、修飾ウリカーゼは、任意で、還元剤の存在下でのウリカーゼ(例えば、ウリカーゼ四量体)とビスアルデヒド試薬との反応により生成してもよい。
【0116】
複数のポリペプチド単位(例えば、ウリカーゼ四量体)を含むウリカーゼの場合、PEG部分は、ポリペプチドの一部又は全部(例えば、四量体の4つ全てのポリペプチド)を互いに架橋するように(直接的に及び/又は1つ以上の介在ポリペプチドを介して間接的に)、任意で(必ずしもそうではないが)ポリペプチドに結合していてもよい。任意で、架橋は、変性条件下でポリペプチドが解離しないようなものである。
【0117】
異なる四次構造(例えば、四量体以外の構造)を有すること、異なる反応(例えば、還元剤の存在下でのビスアルデヒド剤との反応以外)によって形成されたこと、異なる官能基(例えば、アルデヒド以外)を含むこと、ポリペプチドを連結部分に結合させるための異なる基(例えば、-NH-基以外)を含むこと、及び/又は異なる連結部分を含む(例えば、PEG以外のポリマーを含む)ことによって
図1の図解とは異なる修飾ウリカーゼも企図される。
【0118】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、二官能性連結部分は、下記式Iで表される。
-CH2-L1-[O-(CH2)m]n-O-L2-CH2-
式I
(式中
L1及びL2はそれぞれ、(本明細書で定義されるような)連結部分であるか、又は存在せず(任意で、同じ又は異なる連結部分炭化水素部分であってもよい)、好ましくは、連結部分は炭化水素部分であり、
mは、2~10の範囲の整数であり、
nは、2~1000の範囲の整数である。)
【0119】
変数mを含む式に関する本明細書のいくつかの任意の実施形態では、mは2、3又は4である。いくつかの実施形態では、mは2又は3である。いくつかの実施形態では、連結部分がポリエチレングリコール部分(n個のエチレングリコールサブユニットを有する)を含むように、mは2である。
【0120】
変数nを含む式に関する本明細書のいくつかの任意の実施形態では、nは少なくとも10(例えば、10~300、又は10~100)である。いくつかのこのような実施形態では、nは、少なくとも30(例えば、30~300、又は30~100、又は30~80、又は30~60)である。いくつかの実施形態では、nは、少なくとも40(例えば、40~300、又は40~100、又は40~80、又は40~60)である。いくつかの実施形態では、nは、少なくとも50(例えば、50~300、又は50~100、又は50~80、又は50~60)である。いくつかの実施形態では、nは、少なくとも60(例えば、60~300、又は60~100、又は60~80)である。いくつかの実施形態では、nは、少なくとも60(例えば、60~300、又は60~100、又は60~80)である。いくつかの実施形態では、nは、少なくとも70(例えば、70~300、又は70~100、又は70~80)である。
【0121】
変数m及びnを含む式に関する本明細書のいくつかの任意の実施形態では、nは少なくとも10(例えば、10~300、又は10~100)であり、mは、2、3又は4、好ましくは2又は3、より好ましくは2である。いくつかのこのような実施形態では、nは、少なくとも30(例えば、30~300、又は30~100、又は30~80、又は30~60)である。いくつかの実施形態では、nは、少なくとも40(例えば、40~300、又は40~100、又は40~80、又は40~60)である。いくつかの実施形態では、nは、少なくとも50(例えば、50~300、又は50~100、又は50~80、又は50~60)である。いくつかの実施形態では、nは、少なくとも60(例えば、60~300、又は60~100、又は60~80)である。いくつかの実施形態では、nは、少なくとも60(例えば、60~300、又は60~100、又は60~80)である。いくつかの実施形態では、nは、少なくとも70(例えば、70~300、又は70~100、又は70~80)である。
【0122】
本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、L1及びL2は、それぞれ独立して、置換又は非置換アルキレンであり、任意で、1~4個の炭素原子、1~3個の炭素原子、及び1又は2個の炭素原子を有していてもよい。いくつかのこのような実施形態では、アルキレンは、非置換、例えばCH2又はCH2CH2である。
【0123】
式Iの連結部分(各実施形態のいずれかによる)は、任意で、その一方又は両方の末端でポリペプチドの窒素原子に結合していてもよい。そのような実施形態では、末端-CH2-(任意でL1及び/又はL2の少なくとも一部と組み合わせて)は、ポリペプチド(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)の窒素原子に結合したアルキレン(任意で非置換アルキレン)を形成する。
【0124】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、連結部分(任意で、二官能性連結部分)の分子量は少なくとも約1.5kDaである。いくつかのこのような実施形態では、連結部分の分子量は、約1.5kDa~約4kDaの範囲である。いくつかの実施形態では、連結部分の分子量は、約1.5kDa~約3.5kDaの範囲である。いくつかの実施形態では、連結部分の分子量は、約1.5kDa~約3kDaの範囲である。いくつかの実施形態では、連結部分の分子量は、約1.5kDa~約2.5kDaの範囲である。いくつかの例示的実施形態では、連結部分の分子量は約2kDaである。
【0125】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、連結部分(任意で、二官能性連結部分)の分子量は、少なくとも約2kDaである。いくつかのこのような実施形態では、連結部分の分子量は、約2kDa~約4kDaの範囲である。いくつかの実施形態では、連結部分の分子量は、約2kDa~約3.5kDaの範囲である。いくつかの実施形態では、連結部分の分子量は、約2kDa~約3kDaの範囲である。いくつかの実施形態では、連結部分の分子量は、約2kDa~約2.5kDaの範囲である。
【0126】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、連結部分(任意で、二官能性連結部分)の分子量は、少なくとも約2.5kDaである。いくつかのこのような実施形態では、連結部分の分子量は、約2.5kDa~約4kDaの範囲である。いくつかの実施形態では、連結部分の分子量は、約2.5kDa~約3.5kDaの範囲である。
【0127】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、連結部分(任意で、二官能性連結部分)の分子量は、少なくとも約3kDaである。いくつかのこのような実施形態では、連結部分の分子量は、約3kDa~約4kDaの範囲である。いくつかの実施形態では、連結部分の分子量は、約3kDa~約3.5kDaの範囲である。いくつかの例示的実施形態では、連結部分の分子量は約3.4kDaである。
【0128】
本明細書に記載する各実施形態のいずれかのいくつかにおいて、連結部分(任意で、二官能性連結部分)の分子量は、約4kDa以下である。いくつかのそのような実施形態において、連結部分の分子量は、約3.5kDa以下である。いくつかの実施形態において、連結部分の分子量は、約3kDa以下である。いくつかの実施形態において、連結部分の分子量は、約2.5kDa以下である。
【0129】
本明細書に例示するように、本明細書に記載のサイズの連結部分(例えば、少なくとも約1.5kDa及び/又は約4kDa以下、及び/又は本明細書に記載の変数m及び/又はnの値)は、より小さい及び/又はより大きい連結部分と比較して、架橋効率と低免疫原性との有利な組み合わせに関連する可能性がある。
【0130】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、過度に小さい連結部分は、例えば、連結部分あたりの質量がより小さいため、及び/又は各ポリペプチドに結合している連結部分の量がより少ないため(例えば、連結部分は、リジン残基の対などの2つの別個の結合部位に効率的に結合するのに十分な長さではない)、ポリペプチドの無効なマスキング(より高い免疫原性に関係する)をもたらし得ると考えられる。更に、過度に大きい連結部分は、ポリペプチドの無効なマスキングをもたらし得ると考えられ、例えば、大きい連結部分の結合は、更なる連結部分の結合を立体的に阻害し、ポリペプチドのマスキングにギャップ(例えば、抗体が侵入し得る)を残す。
【0131】
ポリペプチド:
本明細書に記載する実施形態のいずれかによるウリカーゼポリペプチド部分は、任意で、本明細書に記載する任意の様式(例えば、修飾ウリカーゼの架橋の性質及び/又は全体構造に関して本明細書に記載する実施形態のいずれかによる)で、本明細書に記載する(例えば、本明細書のそれぞれの項における)実施形態のいずれかによる連結部分と任意に組み合わされてもよい。
【0132】
本明細書に記載する実施形態のいずれかで使用されるウリカーゼポリペプチドは、当該技術分野で公知の任意の1つ以上のウリカーゼ(本明細書で定義される)と会合し得る。複数の架橋ウリカーゼポリペプチド(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)を含む修飾ウリカーゼは、任意で、単一のウリカーゼバリアント又は種々のウリカーゼバリアントに関連するウリカーゼポリペプチドを含んでいてもよい。
【0133】
本出願から最終的な特許の存続期間中に、ウリカーゼの多くの関連バリアントが特徴付けられ(例えば、天然に存在するウリカーゼバリアント)、及び/又は開発される(例えば、天然に存在しないウリカーゼバリアント)ことが予想され、「ウリカーゼ」及び「ウリカーゼポリペプチド」という用語の範囲は、そのような新しいバリアント及び技術を全て先天的(a priori)に含むことが意図されている。
【0134】
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて使用してもよいウリカーゼポリペプチドの例としては、特に限定はないが、下記に由来のウリカーゼポリペプチドが挙げられる:古代人、ブタ、ヒヒ、Agrobacterium tumefaciens、Alicyclobacillus mali、Arthrobacter gangotriensis、Arthrobacter globiformis、Aspergillus flavus、Aspergillus udagawae、Aureobasidium pullulans EXF-150、Bacillus fastidiosus、Bacillus halodurans C-125、Bacillus subtilis str.168、Bacillus sp. FJAT-21352、Bacillus sp. TB-90、Bacillus beveridgei、Bactrocera latifrons(ミバエ)、Blastomyces dermatitidis、Camelus ferus(野生のフタコブラクダ)、Candida utillis、Candidatus Solibacter usitatus、Chlamydomonas reinhardtii、Cicer arietinum(ヒヨコマメ)、Deinococcus radiodurans、Deinococcus geothermalis、Drechmeria coniospora、Erinaceus europaeus(一般的なハリネズミ)、Escherichia coli ISC56、Galdieria sulphuraria、Glycine max(ダイズ)、Granulicella tundricola、Kyrpidia tusciae DSM 2912、Magnaporthiopsis poae、Microbacterium sp.zzj4-1、Neonectria ditissima、Nicotiana tabacum(タバコ)、Paenibacillus darwinianus、Paenibacillus odorifer、Phaseolus vulgaris(インゲンマメ)、Phialocephala scopiformis、Pseudomonas aeruginosa、Pygoscelis adeliae(アデリーペンギン)、Rousettus aegyptiacus(エジプトルーセットオオコウモリ)、Stomoxys calcitrans(納屋ハエ)、Terriglobus saanensis、Tolypocladium ophioglossoides、及びTolypocladium ophioglossoides CBS 100239。さらに、2つ以上のウリカーゼポリペプチドのキメラ(例えば、ペグロチカーゼに含まれるブタ-ヒヒキメラポリペプチド)、並びにその任意のホモログ(本明細書において定義される)が挙げられる。例示的なウリカーゼポリペプチドアミノ酸配列としては、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4が挙げられる。
【0135】
本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、修飾ウリカーゼは、配列番号1、配列番号2及び/又は配列番号3、及び/又はそれらのホモログ(本明細書で定義される)のアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む。本明細書中に例示されるように、このような配列は、任意で、比較的低いポリペプチド免疫原性と関連し得る。
【0136】
本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、修飾ウリカーゼは、配列番号1及び/又は配列番号2、及び/又はそれらのホモログ(本明細書で定義される)のアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む。本明細書で例示されるように、そのような配列は、任意で、比較的低い免疫原性、比較的高い架橋を受ける能力(例えば、配列中の多数のリジン残基に起因する)、及び/又は生理条件下での比較的高い安定性(例えば、約37℃の温度における熱安定性)に関連し得る。
【0137】
本明細書全体を通して、所与のポリペプチド(例えば、本明細書に記載のウリカーゼポリペプチド)の「ホモログ」とは、所与のポリペプチドに対して少なくとも80%の相同性、好ましくは少なくとも90%の相同性、より好ましくは少なくとも95%の相同性、より好ましくは少なくとも98%の相同性を示すポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、所与のポリペプチドのホモログは、所与のポリペプチドと共通の酵素活性及び/又は治療活性(例えば、尿酸酸化)を更に有する。相同性のパーセンテージは、第1のポリペプチドと比較する第2のポリペプチド配列の対応する残基と一致している、第1のポリペプチド配列中のアミノ酸残基のパーセンテージを指す。一般に、ポリペプチドは、最大の相同性が得られるようにアラインメントされる。同一度を評価するためにアミノ酸又はヌクレオチド配列の比較を実行する様々な戦略が当該技術分野で公知であり、例えば、手動アラインメント、コンピュータ支援配列アライメント及びそれらの組み合わせが挙げられる。配列アラインメントを行うための多数のアルゴリズム(一般にコンピュータ実装される)が広く利用可能であり、又は当業者によって作成することができる。代表的なアルゴリズムとしては、例えば、Smith and Waterman(Adv. Appl. Math., 1981, 2:482)の局所相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch(J.Mol.Biol.,1970,48:443)のホモロジーアライメントアルゴリズム、Pearson and Lipman(Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),1988,85:2444)の類似性サーチ法、及び/又はコンピュータによるこれらのアルゴリズムの実装(例えば、ウィスコンシン州、マディソン、サイエンスドライブ575、Genetics Computer Group、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0内のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)が挙げられる。そのようなアルゴリズムを組み込んだ容易に入手可能なコンピュータプログラムとしては、例えば、BLASTN、BLASTP、Gapped BLAST、PILEUP、CLUSTALWなどが挙げられる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータを使用してもよい。あるいは、実施者は、経験及び/又は他の要件に基づき、デフォルト以外のパラメータを使用してもよい(例えば、URLがwww(dot)ncbi (dot)nlm(dot)nih(dot)govであるWebサイトを参照されたい)。
【0138】
所与のポリペプチドのホモログに関するいくつかの任意の実施形態では、ホモログは、所与のポリペプチドに対して少なくとも80%の配列相同性、任意で少なくとも90%の配列相同性、任意で少なくとも95%の配列相同性、任意で少なくとも98%の配列相同性、及び任意で少なくとも99%の配列相同性を示す。
【0139】
本明細書に記載する、いくつかの任意の実施形態では、ウリカーゼポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を有する。いくつかのそのような実施形態では、修飾ウリカーゼは、配列番号2を有する複数のポリペプチド、任意で配列番号2を有する4つのポリペプチドを含む。
【0140】
以下の実施例の項で考察されるように、配列番号2は、点変異C250K(すなわち、Cys250がリジンに置換されている)を有するCandida utilis由来の天然に存在するウリカーゼポリペプチド(配列番号1)に相当する。配列番号2のポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドのように、容易に四量体を形成する。
【0141】
あるいは、ウリカーゼポリペプチドは、任意で配列番号2のホモログであってもよく、このホモログは、配列番号2のLys250(又は配列番号1のCys250)と相同的な位置にCys以外の任意の残基を有する。任意で、ホモログは、配列番号2のLys250と相同な位置にLysを含む。
【0142】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、Cys250は分子間ジスルフィド結合を形成することによってポリペプチド凝集において重要な役割を果たすことから、Cys250を除去すると、望ましくない凝集がかなり減少すると考えられる。更に、(C250K変異による)追加のリジン残基は、架橋を、例えばアミン基に結合するのに適した架橋部分との架橋を、容易にすると考えられる。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドが提供される。
【0144】
本発明の実施形態のいずれかのウリカーゼポリペプチドは、任意で、(例えば、植物組織又は動物組織から)精製してもよく、又は組換えDNA技術によって作製してもよい。いくつかの各実施形態のいずれかでは、ウリカーゼポリペプチドは、植物組換えポリペプチドである。すなわち、植物において組換え技術によって生成される。ポリペプチドの組換え体を生成する植物の例にはNicotiana tabacum(タバコ)がある。
【0145】
様々な細胞及び/又は生物(植物及び植物細胞を含む)におけるポリペプチドの組換え体作製のための多種多様な技術が当該技術分野で公知である。
【0146】
組換えタンパク質は、任意で、組換えタンパク質が作製される細胞及び/又は生物の種類(例えば、植物)に特徴的な翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)を特徴とする場合がある。これら特徴は、例えば、ポリペプチド(又はそれと最も近い天然に存在するホモログ)を天然に発現する細胞及び/又は生物のタイプとは対照的である。
【0147】
本明細書で使用される「植物」という用語は、植物体全体、接ぎ木した植物、植物の祖先及び子孫、並びに種子、芽、茎、根(塊茎を含む)、台木、穂木、及び植物の細胞、組織及び器官を含む植物の部分を包含する。植物は、懸濁培養物、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、配偶体、胞子体、花粉及び小胞子を含む任意の形態であってもよい。本発明の方法において特に有用な植物としては、緑色植物上科に属する全ての植物、特に刈取茎葉飼料(fodder)又は茎葉飼料(forage)用マメ科植物を含む単子葉植物及び双子葉植物、観葉植物、食用作物、樹木、又は低木である、例えば下記が挙げられる:Acacia spp.、Acer spp.、Actinidia spp.、Aesculus spp.、Agathis australis、Albizia amara、Alsophila tricolor、Andropogon spp.、Arachis spp、Areca catechu、Astelia fragrans、Astragalus cicer、Baikiaea plurijuga、Betula spp.、Brassica spp.、Bruguiera gymnorrhiza、Burkea africana、Butea frondosa、Cadaba farinosa、Calliandra spp.、Camellia sinensis、Cannabaceae、Cannabis indica、Cannabis、Cannabis sativa、ヘンプ、工業用ヘンプ、Capsicum spp.、Cassia spp.、Centroema pubescens、Chacoomeles spp.、Cinnamomum cassia、Coffea arabica、Colophospermum mopane、Coronillia varia、Cotoneaster serotina、Crataegus spp.、Cucumis spp.、Cupressus spp.、Cyathea dealbata、Cydonia oblonga、Cryptomeria japonica、Cymbopogon spp.、Cynthea dealbata、Cydonia oblonga、Dalbergia monetaria、Davallia divaricata、Desmodium spp.、Dicksonia squarosa、Dibeteropogon amplectens、Dioclea spp、Dolichos spp.、Dorycnium rectum、Echinochloa pyramidalis、Ehraffia spp.、Eleusine coracana、Eragrestis spp.、Erythrina spp.、Eucalyptus spp.、Euclea schimperi、Eulalia villosa、Pagopyrum spp.、Feijoa sellowlana、Fragaria spp.、Flemingia spp.、Freycinetia banksli、Geranium thunbergii、Ginkgo biloba、Glycine javanica、Gliricidia spp.、Gossypium hirsutum、Grevillea spp.、Guibourtia coleosperma、Hedysarum spp.、Hemaffhia altissima、Heteropogon contoffus、Hordeum vulgare、Hyparrhenia rufa、Hypericum erectum、Hypeffhelia dissolute、Indigo incamata、Iris spp.、Leptarrhena pyrolifolia、Lespediza spp.、Lettuca spp.、Leucaena leucocephala、Loudetia simplex、Lotonus bainesli、Lotus spp.、Macrotyloma axillare、Malus spp.、Manihot esculenta、Medicago saliva、Metasequoia glyptostroboides、Musa sapientum、Nicotianum spp.、Onobrychis spp.、Ornithopus spp.、Oryza spp.、Peltophorum africanum、Pennisetum spp.、Persea gratissima、Petunia spp.、Phaseolus spp.、Phoenix canariensis、Phormium cookianum、Photinia spp.、Picea glauca、Pinus spp.、Pisum sativam、Podocarpus totara、Pogonarthria fleckii、Pogonaffhria squarrosa、Populus spp.、Prosopis cineraria、Pseudotsuga menziesii、Pterolobium stellatum、Pyrus communis、Quercus spp.、Rhaphiolepsis umbellata、Rhopalostylis sapida、Rhus natalensis、Ribes grossularia、Ribes spp.、Robinia pseudoacacia、Rosa spp.、Rubus spp.、Salix spp.、Schyzachyrium sanguineum、Sciadopitys vefficillata、Sequoia sempervirens、Sequoiadendron giganteum、Sorghum bicolor、Spinacia spp.、Sporobolus fimbriatus、Stiburus alopecuroides、Stylosanthos humilis、Tadehagi spp、Taxodium distichum、Themeda triandra、Trifolium spp.、Triticum spp.、Tsuga heterophylla、Vaccinium spp.、Vicia spp.、Vitis vinifera、Watsonia pyramidata、Zantedeschia aethiopica、トウモロコシ、アマランス、アーティチョーク、アスパラガス、ブロッコリ、メキャベツ、キャベツ、アブラナ、ニンジン、カリフラワー、セロリ、コラードグリーン、アマ、ケール、レンチル、菜種、オクラ、タマネギ、ジャガイモ、米、ダイズ、麦、サトウダイコン、サトウキビ、ヒマワリ、トマト、スカッシュティー、及び/又は樹木。代替として、藻類及び他の非緑色植物亜界を本発明のいくつかの実施形態の方法に使用することができる。
【0148】
代替として、本発明のいくつかの実施形態のポリペプチドは、ペプチド合成の当業者に公知の任意の技術によって化学合成してもよい。固相ペプチド合成については、多くの技術の概要が、J.M. Stewart and J.D.Young, Solid Phase Peptide Synthesis, W.H.Freeman Co. (San Francisco), 1963及びJ. Meienhofer, Hormonal Proteins and Peptides, vol.2, p.46, Academic Press (New York), 1973に見出され得る。古典的な溶液合成については、G.Schroder and K.Lupke, The Peptides, vol.1, Academic Press (New York), 1965を参照されたい。
【0149】
一般に、これらの方法は、伸長中のポリペプチド鎖に1つ以上のアミノ酸又は適切に保護されたアミノ酸を順次付加することを含む。通常、第1のアミノ酸のアミノ基又はカルボキシル基のいずれかは、適切な保護基によって保護されている。次いで、保護された又は誘導体化されたアミノ酸を不活性固体支持体に結合させること、又はアミド結合を形成するのに適した条件下で、適切に保護された相補的な(アミノ又はカルボキシル)基を有する配列中の次のアミノ酸を付加することによって溶液中で利用することができる。次いで、この新たに付加されたアミノ酸残基から保護基を除去し、次いで、次のアミノ酸(適切に保護されている)を付加するなどである。全ての所望のアミノ酸が適切な配列で連結された後、任意の残りの保護基(及び任意の固体支持体)を順次又は同時に除去して、最終ポリペプチド化合物が得られる。この一般的な手順に単純な変更を加えることにより、例えば、保護されたトリペプチドを適切に保護されたジペプチドと(キラル中心をラセミ化しない条件下で)カップリングして、脱保護後にペンタペプチドを形成するなどによって、伸長中の鎖に一度に2つ以上のアミノ酸を付加することが可能である。ペプチド合成の更なる説明は、米国特許第6,472,505号明細書に記載されている。
【0150】
大規模なポリペプチド合成は、Andersson et al.[Biopolymers 2000; 55:227-250]によって記載されている。
【0151】
本明細書では、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合又はその類似体(本明細書で以下に記載)によって、任意でペプチド結合自体によってのみ連結された少なくとも10個のアミノ酸残基(好ましくは少なくとも50個のアミノ酸残基)を含むポリマーを指す。「ポリペプチド」という用語は、天然に存在するタンパク質、天然に存在するタンパク質の断片及び天然に存在するタンパク質のホモログ及び/又はその断片を含むがこれらに限定されない天然ポリペプチド(例えば、分解産物、化学合成ペプチド及び/又は組換えポリペプチド)を包含し、同様にまた、例えば体内に置かれたポリペプチドをより安定にする又は細胞への透過性を高める修飾(例えば、本明細書中に明示的に記載される架橋による修飾以外の修飾)を有し得るペプチドミメティック(典型的には、化学的に合成されたポリペプチド)及びポリペプチド類似体であるペプトイド及びセミペプトイド(semipeptoid)を包含する。このような修飾としては、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合修飾、骨格修飾、及び残基修飾が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチドミメティック化合物を調製するための方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、Quantitative Drug Design, C.A. Ramsden Gd., Chapter 17.2, F. Choplin Pergamon Press (1992)に特定されており、この文献は参照により、本明細書に完全に記載されているかのように組み込まれる。この点に関する更なる詳細は、本明細書において以下に提供される。
【0152】
ペプチド内のペプチド結合(-CO-NH-)は、例えば、N-メチル化アミド結合(-N(CH3-CO-)、エステル結合(-C(=O)-O-)、ケトメチレン結合(-CO-CH2-)、スルフィニルメチレン結合(-S(=O)-CH2-)、αアザ結合(-NH-N(R)-CO-)によって置換されていてもよく、式中、Rは、任意のアルキル(例えば、メチル)、アミン結合(-CH2-NH-)、スルフィド結合(-CH2-S-)、エチレン結合(-CH2-CH2-)、ヒドロキシエチレン結合(-CH(OH)-CH2-)、チオアミド結合(-CS-NH-)、オレフィン二重結合(-CH=CH-)、フッ素化オレフィン二重結合(-CF=CH-)、レトロアミド結合(-NH-CO-)、ペプチド誘導体(-N(R)-CH2-CO-)であり、Rは、炭素原子上に天然に存在する「通常の」側鎖である。
【0153】
これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った結合のいずれかで、更にはいくつかの(例えば、2~3)結合で同時に起こり得る。
【0154】
天然の芳香族アミノ酸Trp、Tyr及びPheは、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic)、ナフチルアラニン、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体又はO-メチル-Tyrなどの非天然の芳香族アミノ酸で置換されていてもよい。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態のペプチドはまた、1つ以上の修飾アミノ酸又は1つ以上の非アミノ酸モノマー(例えば、脂肪酸、複合糖質など)を含んでもよい。
【0156】
「アミノ酸(amino acid)」又は「アミノ酸(amino acids)」という用語は、20種類の天然に存在するアミノ酸、インビボで翻訳後修飾によってしばしば形成されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、ホスホチロシン、ホスホトレオニン、及び通常のものではないその他のアミノ酸、例えば限定するものではないが、2-アミノジピン酸、ヒドロキシリジン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシン及びオルニチンなどを含むと理解される。更に、「アミノ酸」という用語は、D-アミノ酸及びL-アミノ酸の両方を含む。
【0157】
以下の表1及び表2は、天然に存在するアミノ酸(表1)、及び本発明のいくつかの実施形態で使用され得る非従来型アミノ酸又は修飾アミノ酸(例えば、合成、表2)を列挙する。
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
修飾ウリカーゼの調製:
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、修飾ウリカーゼ及び/又はその構成要素(例えば、ウリカーゼポリペプチド及び/又は連結部分)に関連するいずれかの実施形態による修飾ウリカーゼを調製する方法が提供される。この方法は、
(a)ウリカーゼポリペプチド(本明細書に記載する実施形態のいずれかによる)を、ポリ(アルキレングリコール)部分を含む架橋剤(本明細書に記載する実施形態のいずれかによる)と接触させ、ポリペプチドと前記架橋剤とのコンジュゲートを得る工程であって、架橋剤が少なくとも2つのアルデヒド(-C(=O)H)基を含む工程、及び
(b)コンジュゲートを還元剤と接触させる工程を含む。
【0163】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、架橋剤は、2個以下のアルデヒド(-C(=O)H)基を含む。
【0164】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、架橋剤は、下記式IIで表される。
HC(=O)-L1-[O-(CH2)m]n-O-L2-C(=O)H
式II
(式中、L1及びL2は炭化水素部分であり、mは2~10の範囲の整数であり、nは2~1000の範囲の整数である(例えば、式中、L1、L2、m及び/又はnは、式Iに関する本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って定義される通りである。))式IIの薬剤は、任意で、式I(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)による連結部分を得るために使用されてもよく、例えば、各アルデヒド基をアミン基(例えば、イミン又はヘミアミナール中間体を形成するために)と反応させ、還元してアミン基を形成させる。
【0165】
あるいは、架橋剤は、任意で3個以上(例えば、3個、4個又はそれ以上)のアルデヒド基を含んでいてもよい。このような架橋剤は、任意で、2つのみのアルデヒド基とポリペプチドとの反応によって二官能性連結部分(本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる)を生じさせることもでき、例えば、前述の2つのアルデヒド基の反応時に第3のアルデヒド基の近傍に未反応のアミン基は残存しない。
【0166】
図1は、本明細書に記載のいくつかの各実施形態のいずれかによる方法を概略的に示す。
【0167】
適切な還元剤の例としては、ボラン及びその錯体(例えば、ピコリンボラン錯体)、水素化ホウ素(水素化ホウ素塩、例えば水素化ホウ素ナトリウムを含む)、トリアセトキシ水素化ホウ素(トリアセトキシ水素化ホウ素塩、例えばトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを含む)、シアノ水素化ホウ素(シアノ水素化ホウ素塩、例えばシアノ水素化ホウ素ナトリウムを含む)、及び還元的アミノ化プロセスに適していることが当該技術分野で公知の任意の他の還元剤が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な還元剤としては、2-ピコリンボラン錯体及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
ウリカーゼポリペプチド、架橋剤及び還元剤は、任意で、いかなる順序で組み合わせてもよい。例えば、架橋剤を、任意で、ポリペプチドと還元剤とを含む混合物に添加してもよく、又はポリペプチドを、任意で、架橋剤と還元剤とを含む混合物に添加してもよい(例えば、ポリペプチドと架橋剤とのコンジュゲートが、コンジュゲートの形成時に既に還元剤と接触しているように)。いくつかの実施形態では、ウリカーゼポリペプチド、架橋剤及び還元剤は、本質的に同時に(例えば、「ワンポット反応」として)組み合わされる。
【0169】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、ウリカーゼポリペプチドは、架橋剤と接触させるとき、多量体形態(2つ以上のウリカーゼポリペプチド鎖を含む形態)である。このような多量体形態は、例えば、二量体、三量体、四量体、六量体、八量体、又はより大きな多量体形態であってもよい。いくつかのこのような実施形態では、多量体形態は、ウリカーゼポリペプチドの天然に存在する形態であり、例えば、多くのウリカーゼポリペプチドでは四量体である。各実施形態のいずれかでは、ウリカーゼポリペプチドの多量体形態を架橋剤と接触させることは、分子間架橋を生成するための効率的な技術として役立ち得、(例えば、本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って)異なるポリペプチド鎖に結合した1つ以上の架橋部分が生成される。
【0170】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、架橋剤(本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる)の、架橋剤と接触するウリカーゼポリペプチド(本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる)に対するモル比は、少なくとも100:1である。いくつかのそのような実施形態では、モル比は100:1~10,000:1である。いくつかのそのような実施形態では、モル比は100:1~5,000:1である。いくつかの実施形態では、モル比は100:1~2,000:1である。いくつかの実施形態では、モル比は100:1~1,000:1である。
【0171】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、架橋剤(本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる)の、架橋剤と接触するウリカーゼポリペプチド(本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる)に対するモル比は、少なくとも200:1である。いくつかのそのような実施形態では、モル比は200:1~10,000:1である。いくつかのそのような実施形態では、モル比は200:1~5,000:1である。いくつかの実施形態では、モル比は200:1~2,000:1である。いくつかの実施形態では、モル比は200:1~1,000:1である。例示的な比としては、200:1及び1,000:1が挙げられる。
【0172】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、架橋剤(本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる)の、架橋剤と接触するウリカーゼポリペプチド(本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる)に対するモル比は、少なくとも500:1である。いくつかのそのような実施形態では、モル比は500:1~10,000:1である。いくつかのそのような実施形態では、モル比は500:1~5,000:1である。いくつかの実施形態では、モル比は500:1~2,000:1である。
【0173】
本明細書に記載するいくつかの各実施形態のいずれかでは、架橋剤(本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる)の、架橋剤と接触するウリカーゼポリペプチド(本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる)に対するモル比は、少なくとも1,000:1である。いくつかのそのような実施形態では、モル比は1,000:1~10,000:1である。いくつかのそのような実施形態では、モル比は1,000:1~5,000:1である。
【0174】
架橋剤の分子量は、任意で、架橋部分の分子量に関して本明細書に記載する実施形態のいずれかによる分子量を有する架橋部分をもたらすように選択してもよい。所与の架橋剤の分子量と、本明細書に記載の方法においてこの架橋剤から生成される架橋部分との間の関係は、当業者には明らかであろう。例えば、式IIの薬剤は、典型的には、式Iの部分(変数L,L2、m及びnは、同様に定義される)よりも30Da大きい(例えば、本質的に、1kDa以上の分子量についての丸め誤差)分子量を有する。
【0175】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書に記載する方法によって得ることが可能な修飾ウリカーゼ、各実施形態のいずれかが提供される。
【0176】
製剤及び適応症:
本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる修飾ウリカーゼは、任意で、ウリカーゼ活性が有益である疾患若しくは障害の処置に使用するためのもの、及び/又は過剰な尿酸レベルに関連する疾患若しくは障害の処置に使用するためのものであってもよい。
【0177】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、ウリカーゼ活性が有益である疾患又は障害を処置するための医薬の製造における、本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる修飾ウリカーゼの使用が提供される。
【0178】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、過剰な尿酸レベルに関連する疾患又は障害を処置するための医薬の製造における、本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる修飾ウリカーゼの使用が提供される。
【0179】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、ウリカーゼ活性が有益である疾患又は障害を処置する方法であって、本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる治療有効量の修飾ウリカーゼを、処置を必要とする対象に投与する工程を含む方法が提供される。
【0180】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、過剰な尿酸レベルに関連する疾患又は障害を処置する方法であって、本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる治療有効量の修飾ウリカーゼを、処置を必要とする対象に投与することを含む方法が提供される。
【0181】
いくつかの実施形態(本明細書に記載の態様のいずれかによる)によって処置可能な状態の例としては、限定されないが、痛風、糖尿病、腎結石、腫瘍崩壊症候群、出血性ショック、マラリア、アレルギー性炎症、腎機能障害、ウイルス感染、例えばインフルエンザ及びCOVID-19(例えば、過剰な尿酸レベルは、ファビピラビルなどの抗ウイルス薬に関連する)、急性胃腸炎、胎盤炎、無菌性炎症及び尿酸に関連する他の妊娠合併症(例えば、流産、妊娠高血圧腎症及び早産)、多発性硬化症、炎症性腸疾患、胃腸感染、並びにレッシュナイハン症候群が挙げられる。
【0182】
本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、処置は、例えば、痛風、腎結石、胎盤炎、無菌性炎症、妊娠合併症、レッシュナイハン症候群及び/又は腫瘍崩壊症候群の処置において、体内の固体(例えば、結晶性)尿酸の溶解を促進する。
【0183】
本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、処置は尿酸の炎症効果を減少させ、これは任意で炎症状態、例えば、痛風、マラリア、アレルギー性炎症、ウイルス感染(例えば、COVID-19)、急性胃腸炎、胎盤炎、無菌性炎症、妊娠合併症、多発性硬化症、及び炎症性腸疾患の処置に有益であり得る。
【0184】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、媒質中の尿酸レベルを低下させる方法であって、媒質を、本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる修飾ウリカーゼと接触させる工程を含む方法が提供される。媒質は、任意で、インビボ若しくはエクスビボの生理学的媒質(例えば、組織)、又は非生理学的媒質であってもよい。
【0185】
いくつかの実施形態では、媒質は、投与を必要とする(ヒト又は非ヒト)対象の組織であり、本方法は、修飾ウリカーゼを対象に投与することを含む。対象は、任意で、本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる疾患又は障害に罹患しているか、又は罹患するリスクがあり得る。
【0186】
本明細書に記載する各実施形態のいずれかによる修飾ウリカーゼは、任意で、そのものが、又は代替的に、製薬上許容され得る担体を更に含む医薬組成物の一部として使用され得る。
【0187】
本明細書で使用するとき、「医薬組成物」は、製薬上許容され得る、適切な担体及び添加物などの他の化学成分を含む、本明細書に記載の1種以上の修飾ウリカーゼの調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0188】
以下、「製薬上許容され得る担体」という用語は、生物に対して有意な刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない担体又は希釈剤を指す。担体の例は、限定されないが、プロピレングリコール、生理食塩水、エマルジョン及び有機溶媒と水との混合物、並びに固体(例えば、粉末状)及び気体状担体である。
【0189】
本明細書において、「添加物」という用語は、化合物の投与を更に容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。添加物の例としては、限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な種類の糖及びデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる。
【0190】
薬物の処方及び投与のための技術は、参照により本明細書に組み込まれる、“Remington‘s Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co., Easton, PAの最新版に見ることができる。
【0191】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野で周知の方法によって、例えば従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和(levigating)、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥方法によって製造してもよい。
【0192】
したがって、本発明に従って使用するための医薬組成物は、修飾ウリカーゼの製薬上使用され得る調製物への加工を容易にする添加物及び補助剤を含む製薬上許容され得る1種以上の担体を使用して従来の方法で製剤化してもよい。適切な処方は、選択される投与経路によって異なる。
【0193】
本明細書に記載の修飾ウリカーゼは、例えばボーラス注入又は連続注入による非経口投与のために製剤化してもよい。注射又は注入のための製剤は、単位剤形で、例えばアンプルで、又は任意で、保存剤を添加した複数回投与容器で提供してもよい。組成物は、油性又は水性賦形剤の懸濁液、溶液、若しくはエマルジョンであってもよく、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの処方剤(formulatory agents)を含有し得る。
【0194】
非経口投与のための医薬組成物は、水溶性形態の修飾ウリカーゼ調製物の水溶液を含む。注射又は注入に際し、修飾ウリカーゼは、任意で、有機溶媒、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコールを添加又は非添加の、水溶液、好ましくは生理学的に適合する緩衝液、例えばハンクス液、リンガー液、又は生理食塩水緩衝液で製剤化してもよい。
【0195】
更に、修飾ウリカーゼの懸濁液は、適切な油性注射懸濁液及びエマルジョン(例えば、油中水型、水中油型又は油中水型エマルジョン)として調製してもよい。好適な親油性溶媒又は賦形剤としては、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル、トリグリセリド若しくはリポソームなどの合成脂肪酸エステルが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。任意で、懸濁液はまた、修飾ウリカーゼの溶解度を高めて高濃度溶液の調製を可能にする適切な安定剤又は薬剤を含有してもよい。
【0196】
血流(例えば、静脈内投与)への直接の注射及び/又は注入は、血中尿酸レベルが上昇している高尿酸血症(それに関連する任意の状態を含む)を処置するのに特に適し得る。血流への投与は、任意で、修飾ウリカーゼを特定の組織に送達するためにも使用してもよい。
【0197】
代替的又は追加的に、修飾ウリカーゼは、例えば尿酸レベルが過剰になっている組織に局所的に注射してもよい。組織は、任意で、関節(例えば、痛風の場合)又は腎臓(例えば、腎結石の場合)などの尿酸沈殿と関係がある組織である。
【0198】
経粘膜投与の際には、浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は、当該技術分野において一般的に既知である。
【0199】
経口投与の際には、本発明の修飾ウリカーゼは、修飾ウリカーゼを当該技術分野で周知の製薬上許容され得る担体と組み合わせることによって容易に製剤化してもよい。このような担体は、本明細書に記載の修飾ウリカーゼを、患者による経口摂取のための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、及び懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。経口使用のための医薬調製物は、固体添加物を使用して作製することができ、任意選択で得られた混合物を粉砕し、必要に応じて好適な助剤を添加した後にかかる顆粒混合物を加工して、錠剤又は糖衣錠コアを得ることができる。適切な添加物は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖などの充填剤;トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース製剤;及び/又は生理学的に許容されるポリマー、例えばポリビニルピロリドン(PVP)である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、アガー、又はアルギン酸、若しくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を添加してもよい。
【0200】
糖衣錠のコアには好適なコーティングが施される。この目的のために、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を任意選択的に含有し得る濃縮糖溶液を使用することもできる。識別のために、又は活性修飾ウリカーゼの用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0201】
経口使用することができる医薬組成物としては、ゼラチンで作製されたプッシュフィットカプセル、並びにゼラチンとグリセロール若しくはソルビトールなどの可塑剤とで作製された軟質密封カプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどのバインダー、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意選択的に安定剤と混合した、有効成分を含有し得る。ソフトカプセルでは、修飾ウリカーゼは、脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁してもよい。更に、安定剤が添加されてもよい。経口投与用の全ての製剤は、選択された投与経路に適した投与量にするべきである。
【0202】
本発明の実施形態の修飾ウリカーゼはまた、例えば、カカオバター又は他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用して、坐剤又は停留浣腸などの直腸組成物に製剤化してもよい。
【0203】
経口及び/又は直腸投与は、胃腸管の疾患又は障害、例えば胃腸管の炎症に関連する状態(例えば、炎症性腸疾患及び/又は胃腸炎)を処置するのに特に適し得る。
【0204】
バッカル投与の場合、組成物は、従来の様式で処方した錠剤又はトローチ剤の形態をとり得る。
【0205】
吸入による投与の際には、修飾ウリカーゼは、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン又は二酸化炭素を使用して、加圧パック又はネブライザーからエアロゾル・スプレー・プレゼンテーション(aerosol spray presentation)(典型的には、粉末化された、液化された、及び/又はガス状の担体を含む)の形態で都合よく送達される。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、定量を送達するバルブを提供することによって決定され得る。吸入器(inhaler)又は注入器(insufflator)で使用するための例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、修飾ウリカーゼと、ラクトース又はデンプンなどであるがこれらに限定されない適切な粉末基剤との粉末混合物を含有させて製剤化してもよい。
【0206】
あるいは、修飾ウリカーゼは、使用前に適切なビヒクル、例えば発熱物質を含まない無菌水で調製する粉末形態であってもよい。
【0207】
本発明の文脈における使用に適した医薬組成物としては、有効成分が意図された目的を達成するのに有効な量で含有される組成物が挙げられる。より具体的には、治療有効量は、疾患の症状を予防、緩和若しくは改善するため、又は処置されている対象の生存を延長するために有効な修飾ウリカーゼの量を意味する。
【0208】
本発明の方法で使用される任意の修飾ウリカーゼについて、治療有効量又は用量は、動物の活性アッセイから最初に推定することができる。例えば、活性アッセイによって測定されたIC50(例えば、修飾ウリカーゼの生物活性の最大半値(half-maximal)の増加を達成する試験タンパク質構造の濃度)を含む循環濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて用量を製剤化することができる。かかる情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
【0209】
以下の実施例の節において実証されるように、本発明の実施形態の修飾ウリカーゼの治療有効量は、約1μg/kg体重~約500mg/kg体重の範囲であってもよい。本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、修飾ウリカーゼの治療有効量は、約10μg/kg体重~約2000μg/kg体重、任意で約25μg/kg体重~約800μg/kg体重である。
【0210】
本明細書に記載の修飾ウリカーゼの毒性及び治療有効性は、実験動物における標準的な薬学的手順によって、例えば対象タンパク質構造についてのEC50、IC50及びLD50(試験動物の50%において死を引き起こす致死量)を測定することによって決定することができる。これらの活性アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトで使用するための投与量の範囲を製剤化するのに使用することができる。
【0211】
投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて様々であり得る。正確な処方、投与経路、及び投与量は、患者の状態を考慮して各医師が選択することができる。(例えば、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”,Ch.1 p.1内のFingl et al.,1975を参照されたい)。
【0212】
投与量及び投与間隔は、最小有効濃度(MEC)と呼ばれる、所望の効果を維持するのに十分な活性ウリカーゼの血漿レベルを提供するために個別に調整され得る。MECは調製物ごとに異なるが、インビトロデータ、例えば、インビトロで所望のレベルの活性を達成するのに必要な濃度から推定することができる。MECを達成するために必要な投与量は、個別の特性及び投与経路によって異なる。HPLCアッセイ又はバイオアッセイを使用して血漿濃度を測定することができる。
【0213】
投与間隔は、MEC値を使用しても決定することができる。製剤は、10~90%、好ましくは30~90%、最も好ましくは50~90%の間、MECを超える血漿レベルを維持するレジメンを使用して投与すべきである。
【0214】
本明細書で論じるように、本明細書に記載の修飾ウリカーゼは、体内で長い半減期を示し得る。そのような特性は、比較的低頻度の投与(投与が注射などの不便な経路による場合に特に有利であり得る)及び/又は比較的低用量の投与(毒性及び/又は修飾ウリカーゼに対して生じ得る免疫応答を減少させるのに特に有利であり得る)の使用を可能にする。
【0215】
ウリカーゼ活性によって処置可能ないくつかの条件は、修飾ウリカーゼの連続的で長期的な最小有効濃度を必要としない場合がある。したがって、修飾ウリカーゼは、最小有効濃度を連続的に提供するのに十分ではない頻度で投与してもよい。例えば、尿酸沈殿を特徴とする状態は、任意で、体内で沈殿した尿酸の部分的又は完全な溶解を促進するのに十分な量の修飾ウリカーゼを投与し、その後、ウリカーゼ活性が必要とされない間隔をおくこと、例えば、臨床上有意なレベルの尿酸が再び沈殿するような十分な時間が経過するまで間隔をおくことにより処置してもよい。
【0216】
本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、投与(例えば、注射によって)は、少なくとも1週間おきに行われ(すなわち、処置は、少なくとも1週間の間隔で隔てられた複数回の投与を含み)、任意で、最大6ヶ月又は12ヶ月(1年)おきに行われる。いくつかのそのような実施形態では、間隔は少なくとも2週間である。いくつかの実施形態では、間隔は少なくとも1ヶ月(例えば、1ヶ月~12ヶ月、又は1ヶ月~6ヶ月、又は1ヶ月~2ヶ月、任意で1ヶ月又は2ヶ月の範囲内)である。いくつかの実施形態では、間隔は少なくとも2ヶ月(例えば、2ヶ月~12ヶ月、又は2ヶ月~6ヶ月の範囲内)である。いくつかの実施形態では、間隔は少なくとも3ヶ月(例えば、3~12ヶ月、又は3~6ヶ月の範囲)である。
【0217】
本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、投与頻度及び投与あたりの用量は、修飾ウリカーゼ(例えば、成人対象への注射によって)の投与用量が、修飾ウリカーゼ60mg/月以下(例えば、3ヶ月おきの120mgの投与は、40mg/月の投与量とみなす)であるように選択される。いくつかのこのような実施形態では、投与量は、40mg/月以下(例えば、約2ヶ月おきに80mg以下が投与される)である。いくつかのこのような実施形態では、投与量は、24mg/月以下(例えば、約2ヶ月おきに48mg以下が投与される)である。いくつかのこのような実施形態では、投与量は、16mg/月以下(例えば、約2ヶ月おきに32mg以下が投与される)である。いくつかのこのような実施形態では、投与量は、12mg/月以下(例えば、約2ヶ月おきに24mg以下が投与される)である。いくつかのこのような実施形態では、投与量は、10mg/月以下(例えば、約2ヶ月おきに20mg以下が投与される)である。いくつかの実施形態では、投与量は、8mg/月以下(例えば、約2ヶ月おきに16mg以下が投与される)である。いくつかの実施形態では、投与量は、6mg/月以下(例えば、約2ヶ月おきに12mg以下が投与される)である。いくつかの実施形態では、投与量は、4mg/月以下(例えば、約2ヶ月おきに8mg以下が投与される)である。いくつかの実施形態では、投与量は、2mg/月以下である。いくつかの実施形態では、投与量は、1mg/月以下である。
【0218】
本明細書に記載するいくつかの任意の実施形態では、投与あたりの投与頻度及び投与量は、修飾ウリカーゼの投与用量が、修飾ウリカーゼ2mg/kg体重/月以下であるように選択される。いくつかのこのような実施形態では、投与量は、0.8mg/kg体重/月以下(例えば、約2ヶ月おきに1.6mg/kg体重以下が投与される)である。いくつかのこのような実施形態では、投与量は、0.4mg/kg体重/月以下(例えば、約2ヶ月おきに0.8mg/kg体重以下が投与される)以下である。いくつかのこのような実施形態では、投与量は、0.2mg/kg体重/月以下(例えば、約2ヶ月おきに0.4mg/kg体重以下が投与される)である。いくつかのこのような実施形態では、投与量は、0.1mg/kg体重/月以下(例えば、約2ヶ月おきに0.2mg以下が投与される)である。いくつかの実施形態では、投与量は、0.5mg/kg体重/月以下である。いくつかの実施形態では、投与量は、0.25mg/kg体重/月以下である。
【0219】
処置される状態の重症度及び応答性に応じて、投与はまた、任意で本明細書に上記した徐放性組成物の単回投与であってもよく、処置の経過は、数日~数週間、又は治癒がもたらされるまで、又は疾患状態の減少が達成されるまで続く。
【0220】
投与する組成物の量は、当然、治療を受ける対象、苦痛の程度、投与方法、処方した医師の判断などによって異なる。
【0221】
本発明の組成物は、必要に応じて、有効成分を含有する1以上の単位剤形を含有し得る、FDA(米国食品医薬品局)承認キットなどのパック又はディスペンサー装置で提供してもよい。パックは、例えば、限定はしないが、ブリスターパック又は加圧容器(吸入用)などの金属又はプラスチック箔を含んでもよい。パック又はディスペンサーデバイスは、投与についての説明書が添付されていてもよい。パック又はディスペンサーはまた、医薬の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形態の容器に関連する通知を伴ってもよく、この通知は、当該機関による、ヒト投与又は獣医学的投与のための組成物の形態の承認を反映している。そのような通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局によって承認されたラベル、又は製品添付文書であり得る。適合する医薬担体で製剤化された本発明の実施形態のいずれかの修飾ウリカーゼを含む組成物もまた調製され、適切な容器に入れられ、本明細書に詳述するように、示された状態の処置又は診断のためにラベルが付されてもよい。
【0222】
したがって、本発明の一実施形態によれば、本明細書中に記載される医薬組成物は、本明細書に上記するように、修飾ウリカーゼの活性が有益である状態の処置において使用するために包装材料で包装され、包装材料における又は包装材料上の印刷により識別される。
【0223】
追加の定義:
本明細書において、「炭化水素」及び「炭化水素部分」という用語は、その基本骨格として主に水素原子によって置換された炭素原子鎖を含む、有機部分を表す。炭化水素は、飽和又は不飽和であり得、脂肪族、脂環式又は芳香族部分から構成され得、任意で1つ以上の置換基(水素以外)によって置換することができる。置換炭化水素は、1つ以上の置換基を有していてもよく、各置換基は、独立して、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、アミン、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド及びアミノであってもよい。炭化水素は、末端基又は連結基であってよく、これらの用語は本明細書で定義するとおりのものである。好ましくは、炭化水素部分は1~20個の炭素原子を有する。本明細書において、数値範囲、例えば、「1~20」が記載されている場合、この基は、この場合は炭化水素が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、20個以下の炭素原子を含み得ることを意味する。任意で、炭化水素は、1~10個の炭素原子を有する中程度の大きさの炭化水素であってもよい。任意で、炭化水素は、1~4個の炭素原子を有する。
【0224】
本明細書において、「連結基」という語句は、化合物中の2つ以上の部分に結合している基(例えば、置換基)を表し、一方、「末端基」という語句は、その1個の原子を介して化合物中の単一部分に結合している基(例えば、置換基)を表す。
【0225】
本明細書全体を通して使用されるとき、「アルキル」という用語は、直鎖基及び分岐鎖基を含む任意の飽和脂肪族炭化水素を指す。好ましくは、アルキル基は1~20個の炭素原子を有する。より好ましくは、アルキルは1~10個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキルである。最も好ましくは、他に示さない限り、アルキルは、1~4個の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキル基は、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。
【0226】
置換されている場合、置換基は、例えば、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、硫酸塩、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド及びアミノであることができ、これらの用語は本明細書で定義される。
【0227】
本明細書において、「アルケニル」という用語は、直鎖及び分岐鎖基を含む少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、アルケニル基は2~20個の炭素原子を有する。より好ましくは、アルケニルは、2~10個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルケニルである。最も好ましくは、別段示されない限り、アルケニルは、2~4個の炭素原子を有する低級アルケニルである。アルケニル基は、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。
【0228】
置換アルケニルは1個以上の置換基を有してもよく、各置換基は独立して、例えば、アルキニル、シクロアルキル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド及びアミノであり得る。
【0229】
本明細書において、「アルキニル」という用語は、直鎖及び分岐鎖基を含む少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、アルキニル基は2~20個の炭素原子を有する。より好ましくは、アルキニルは、2~10個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキニルである。最も好ましくは、他に示さない限り、アルキニルは、2~4個の炭素原子を有する低級アルキニルである。アルキニル基は、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。
【0230】
置換アルキニルは、1個以上の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式基、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド及びアミノであり得る。
【0231】
「アルキレン」という用語は、本明細書で定義されるとおりの飽和又は不飽和脂肪族炭化水素連結基を表し、本明細書で定義されるアルキル基(飽和の場合)又はアルケニル若しくはアルキニル基(不飽和の場合)とは、アルキレンが末端基ではなく連結基である点でのみ異なる。
【0232】
「シクロアルキル」基は、1個以上の環が完全にコンジュゲートされたパイ電子系を有さない、不飽和全炭素単環式又は縮合環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)上の飽和基を指す。シクロアルキル基の例は、限定されないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエン及びアダマンタンである。シクロアルキル基は、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド及びアミノであり得、これらの用語は本明細書で定義されている通りである。シクロアルキル基が不飽和である場合、シクロアルキル基は少なくとも1つの炭素-炭素二重結合及び/又は少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含んでもよい。シクロアルキル基は、この語句が本明細書で定義されるように、単一の隣接原子に結合している末端基、又はこの語句が本明細書で定義されるように、2つ以上の部分を接続する連結基であり得る。
【0233】
「アリール」基は、完全にコンジュゲートされたパイ電子系を有する全炭素単環式又は縮合環多環式(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)末端基を指す。アリール基の例は、限定されないが、フェニル、ナフタレニル及びアントラセニルである。アリール基は、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド及びアミノであり得、これらの用語は本明細書で定義されている通りである。
【0234】
「ヘテロアリール」基は、環内に1つ以上の原子、例えば窒素、酸素及び硫黄を有し、更に完全にコンジュゲートされたパイ電子系を有する単環式又は縮合環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)末端基を指す。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン及びプリンが挙げられる。ヘテロアリール基は、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド及びアミノであり得、これらの用語は本明細書で定義されている通りである。
【0235】
「アリーレン」という用語は、本明細書で定義されるように、単環式又は縮合環多環式連結基を表し、本明細書で定義されるようにアリーレンが末端基ではなく連結基であるという点でのみ、アリール又はヘテロアリール基とは異なる、連結基を包含する。
【0236】
「ヘテロ脂環式」基は、環内に窒素、酸素及び硫黄などの1つ以上の原子を有する単環式又は縮合環式基を指す。環はまた、1つ以上の二重結合を有してもよい。しかしながら、環は完全にコンジュゲートされたπ電子系を有さない。ヘテロ脂環式基は置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、スルホネート、スルフェート、シアノ、ニトロ、アジド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素基、チオ尿素基、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、S-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、スルホンアミド、グアニル、グアニジニル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド及びアミノであり得、これらの用語は本明細書で定義されている通りのものである。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリンなどである。ヘテロ脂環式基は、本明細書で定義されるように単一の隣接原子に結合している末端基、又は本明細書で定義されるように2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。
【0237】
本明細書では、「アミン」及び「アミノ」という用語はそれぞれ、-NR’R’’基又は-N+R’R’’R’’’基のいずれかを指し、R’、R’’及びR’’’はそれぞれ、本明細書で定義されるように、水素又は置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロ脂環式(その環炭素を介してアミン窒素に結合している)、アリール若しくはヘテロアリール(その環炭素を介してアミン窒素に結合している)である。任意で、R’、R’’及びR’’’は、水素又は1~4個の炭素原子を含むアルキルである。任意で、R’及びR’’(及び存在する場合はR’’’)は水素である。置換されている場合、アミンの窒素原子に結合しているR’、R’’又はR’’’炭化水素部分の炭素原子は、(特に明記しない限り)オキソで置換されておらず、R’、R’’及びR’’’は、これらの基が本明細書で定義されるように、(例えば)カルボニル、C-カルボキシ又はアミドではない。
【0238】
「アジド」基は、-N=N+=N-基を指す。
【0239】
「アルコキシ」基は、本明細書で定義されるように、-O-アルキル基及び-O-シクロアルキル基の両方を指す。
【0240】
「アリールオキシ」基は、本明細書で定義されるように、-O-アリール基及び-O-ヘテロアリール基の両方を指す。
【0241】
「ヒドロキシ」基は、-OH基を指す。
【0242】
「チオヒドロキシ」又は「チオール」基は、-SH基を指す。
【0243】
「チオアルコキシ」基は、本明細書で定義されるように、-S-アルキル基及び-S-シクロアルキル基の両方を指す。
【0244】
「チオアリールオキシ」基は、本明細書で定義されるように、-S-アリール基及び-S-ヘテロアリール基の両方を指す。
【0245】
「カルボニル」基は、-C(=O)-R’末端基(式中、R’は上記のように定義される)、又は-C(=O)-連結基を指す。
【0246】
「アルデヒド」基は、-C(=O)H基を指す。
【0247】
「チオカルボニル」基は、-C(=S)-R’基を指し、ここで、R’は、本明細書で定義される通りである。
【0248】
「カルボキシル」、「カルボキシ」又は「カルボキシレート」は、本明細書で定義される「C-カルボキシ」基及び「O-カルボキシ」基の両方を指す。
【0249】
「C-カルボキシ」基は、-C(=O)-O-R’基を指し、R’は、本明細書に定義される通りである。
【0250】
「O-カルボキシ」基は、R’C(=O)-O基を指し、R’は本明細書で定義される通りである。
【0251】
「オキソ」基は、=O基を指す。
【0252】
「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0253】
「スルフィニル」基は、-S(=O)-R’基を指し、R’は、本明細書で定義される通りである。
【0254】
「スルホニル」基は-S(=O)2-R’基を指し、R’は本明細書で定義される通りである。
【0255】
「スルホネート」基は、-S(=O)2-O-R’基を指し、R’は、本明細書で定義される通りである。
【0256】
「硫酸塩」基は、-O-S(=O)2-O-R’基を指し、R’は、本明細書で定義される通りである。
【0257】
「スルホンアミド(sulfonamide)」又は「スルホンアミド(sulfonamido)」基は、本明細書で定義されるS-スルホンアミド基及びN-スルホンアミド基の両方を包含する。
【0258】
「S-スルホンアミド」基は、-S(=O)2-NR’R’’基を指し、R’及びR’’のそれぞれは、本明細書で定義される通りである。
【0259】
「N-スルホンアミド」基は、R’S(=O)2-NR’’基を指し、R’及びR’’のそれぞれは、本明細書で定義される通りである。
【0260】
「O-カルバミル」基は、-OC(=O)-NR’R’’基を指し、R’及びR’’のそれぞれは、本明細書で定義される通りである。
【0261】
「N-カルバミル」基は、R’OC(=O)-NR’’-基を指し、R’及びR’’のそれぞれは、本明細書で定義される通りである。
【0262】
「O-チオカルバミル」基は、-OC(=S)-NR’R’’基を指し、R’及びR’’のそれぞれは、本明細書で定義される通りである。
【0263】
「N-チオカルバミル」基は、R’OC(=S)NR’’-基を指し、R’及びR’’のそれぞれは、本明細書で定義される通りである。
【0264】
「S-チオカルバミル」基は、-SC(=O)-NR’R’’基を指し、R’及びR’’のそれぞれは、本明細書で定義される通りである。
【0265】
「アミド(amide)」又は「アミド(amido)」基は、本明細書で定義されるC-アミド基及びN-アミド基を包含する。
【0266】
「C-アミド」基は、-C(=O)-NR’R’’基を指し、R’及びR’’のそれぞれは、本明細書で定義される通りである。
【0267】
「N-アミド」基は、R’C(=O)-NR’’-基を指し、R’及びR’’のそれぞれは、本明細書で定義される通りである。
【0268】
「尿素基」は、-N(R’)-C(=O)-NR’’R’’’基を指し、R’、R’’及びR’’のそれぞれは、本明細書で定義される通りである。
【0269】
「チオ尿素基」は、-N(R’)-C(=S)-NR’’R’’’基を指し、R’、R’’及びR’’のそれぞれは、本明細書で定義される通りである。
【0270】
「ニトロ」基は、-NO2基を指す。
【0271】
「シアノ」基は、-C≡N基を指す。
【0272】
「ホスホニル」又は「ホスホネート」という用語は、-P(=O)(OR’)(OR’’)基を表し、R’及びR’’は本明細書中上記で定義される通りである。
【0273】
「ホスフェート」という用語は、-O-P(=O)(OR’)(OR’’)基を表し、R’及びR’’のそれぞれは本明細書中上記で定義される通りである。
【0274】
「ホスフィニル」という用語は、-PR’R’’基を表し、R’及びR’’のそれぞれは本明細書中上記で定義される通りである。
【0275】
「ヒドラジン」という用語は、-NR’-NR’’R’’’基を表し、R’、R’’及びR’’’は本明細書で定義される通りである。
【0276】
本明細書中で使用される場合、「ヒドラジド」という用語は、-C(=O)-NR’-NR’’R’’基を表し、R’、R’’及びR’’’は、本明細書中で定義される通りである。
【0277】
本明細書中で使用される場合、「チオヒドラジド」という用語は、-C(=S)-NR’-NR’’R’’基を表し、R’、R’’及びR’’’は、本明細書中で定義される通りである。
【0278】
「グアニジニル」基は、-RaNC(=NRd)-NRbRc基を指し、Ra、Rb、Rc及びRdのそれぞれは、R’及びR’’について本明細書で定義される通りであり得る。
【0279】
「グアニル」又は「グアニン」基は、RaRbNC(=NRd)-基を指し、Ra、Rb及びRdは、本明細書で定義される通りである。
【0280】
「イミン」は、-C(=NR’’)-R’基を指し、R’及びR’’は、本明細書において上で定義されている通りである。
【0281】
「ヘミアミナール」は、-C(R’)(OH)-NR’’R’’’基、R’、R’’及びR’’’は、本明細書で定義される通りである。
【0282】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、±10%又は±5%を指す。
【0283】
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びその活用形は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」ことを意味する。
【0284】
「からなる(consisting of)」という用語は、「含み、限定される」ことを意味する。
【0285】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法又は構造が、追加の成分、工程、及び/又は部分を含んでもよいが、当該追加の成分、工程、及び/又は部分が、特許請求の範囲に記載された組成物、方法、又は構造の基本的及び新規な特徴を大きく変化させない場合に限られることを意味する。
【0286】
本明細書で使用する場合、単数形を表す「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数も対象とする。例えば、「化合物」又は「少なくとも1種の化合物」は、複数の化合物を含み、それらの混合物も含んでもよい。
【0287】
本願全体を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性及び簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限をなすものと解釈するべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲の全部、及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5及び6も具体的に開示するとみなされるべきである。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
【0288】
本明細書において数値範囲を示す場合は常に、示された範囲内の任意の記載された数(分数又は整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数と「の間の範囲」という語句と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という語句とは、本明細書で互換的に使用され、第1の指示数及び第2の指示数と、第1の指示数と第2の指示数との間の分数及び整数の全部とを含むことを意図する。
【0289】
本明細書で使用する場合、「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術及び手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の従事者に既知のもの、又は既知の様式、手段、技術及び手順から従事者が容易に開発できるものを含むが、これらに限定されない。
【0290】
明確さのために別個の実施形態との関連において記載した本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔さのために単一の実施形態との関連において記載した本発明の複数の特徴はまた、別々に、又は任意の好適な部分的な組み合わせ、又は適宜、本発明の他の任意の記載された実施形態に対しても提供され得る。様々な実施形態に関連して記載される特定の特徴は、その要素なしでは実施形態が動作不能でない限り、その実施形態の必須の特徴であるとみなすべきではない。
【0291】
本明細書に上記され、特許請求の範囲において特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けが見出される。
【実施例】
【0292】
以下では実施例を参照する。本実施例は、上記の説明と共に本発明のいくつかの実施形態を非限定的な様式で例示するものである。
【0293】
材料及び方法
材料:
キメラcHu3.3ヒト抗PEGIgG1抗体は、Academia Sinica(台湾)から入手した。
【0294】
2-ピコリンボラン及びシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)は、Sigma Aldrich社から入手した。
【0295】
単官能性ポリエチレングリコールニトロフェニルカーボネート(mPEG(10K)-NPC)は、Creative PEGWorks社から入手した。
【0296】
ポリエチレングリコールビスアルデヒド(ビス-Ald-PEG)試薬は、Creative PEGWorks社から入手した。
【0297】
ポリエチレングリコールビス-N-ヒドロキシスクシンイミド(2kDa)(ビス-NHS-PEG2000)は、Iris Biotech Gmbhから入手した。
【0298】
BY2細胞においてウリカーゼバリアントを発現させるためのベクターの作製:
BY2細胞における異なるウリカーゼ配列の形質転換及び発現のために、ジェミニウイルス ビーン イエロー ドワーフ ウイルス(BeYDV)レプリコン[Chen et al., Hum Vaccin 2011, 7:331-338、Mor et al., Biotechnol Bioeng 2003, 81:430-437]に基づく発現系を使用した。
【0299】
BY2細胞の形質転換、ウリカーゼの発現及び選択された株の分離:
上記の分子構築物(molecular constructs)によるBY2細胞の遺伝子形質転換は、An et al.[EMBO J 1985,4:277-284]に記載されているようなアグロバクテリウムが介する形質転換手順を用いて行った。選択剤としてカナマイシンを使用して形質転換細胞を選択した。生存可能なカナマイシン耐性細胞懸濁液が作製されたら、その懸濁液を使用して個々の細胞株(クローン)を分離し、スクリーニングした。トランスジェニック細胞懸濁液を高度に希釈した一定量を使用し、固体培地上に広げることによって、個々の細胞株を樹立した。小さなカルス(植物細胞塊)が発達するまで細胞を成長させた。次いで、単一のクローンを表す各カルスを液体培地に再懸濁し、サンプリングした。個々の形質転換細胞株を単離し、ウリカーゼの発現レベルについてスクリーニングした。最高の発現レベルを示す株を更なるプロセス開発のために選択した。
【0300】
植物細胞懸濁液:
N. tabacum cv. BY2細胞を、25℃で、オービタルシェーカー上で一定に撹拌しながら(85rpm)、液体MS-BY2培地[Nagata & Kumagai, Methods Cell Sci 1999, 21:123-127]中懸濁培養として培養した。この懸濁液を250mLの三角フラスコ中で50mL容量で成長させ、2.5%(v/v)の濃度で毎週継代培養した。
【0301】
「ペグロチカーゼ様」PEG化ウリカーゼの調製:
「ペグロチカーゼ様」対照として使用するために、prU-C250Kウリカーゼ(配列番号2)を100mMリン酸緩衝液(pH8)で1mg/mLに希釈し、単官能性ポリエチレングリコールニトロフェニルカルボネートを1000モル当量添加することにより、単官能性PEGで修飾したウリカーゼを調製した。反応を室温で2時間進行させた。100KカットオフのAmicon(登録商標)システム(14000G、4分)を使用して、100mMリン酸緩衝液(pH8)への透析を3サイクル行い、精製した。
【0302】
ELISAによる抗体レベルの評価:
MaxiSorp(商標)96ウェルマイクロタイタープレートを、リン酸緩衝生理食塩水中5μg/mLのウリカーゼサンプルでコーティングし、4℃で一晩インキュベートし、洗浄し、2%ウシ血清アルブミンにより室温で2時間ブロッキングした。次いでプレートを洗浄して、結合していないタンパク質を除去し、100μLの血清を添加した。600rpmで振盪しながら室温で2時間更にインキュベートした後、結合していない化合物を洗い流し、マウス抗ヒトIgG-アルカリホスファターゼを1:5000希釈で各ウェルに添加し、600rpmで振盪しながら室温で1.5時間インキュベートした。最終洗浄工程の後、BluePhos(登録商標)ホスファターゼ基質を添加し、アルカリホスファターゼ停止溶液を用いて反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(Tecan)を使用して最終吸光度を630nmで測定した。
【0303】
MALDI-TOF質量分析:
サンプル調製: 20mg/mLの2,5-DHAP(2,5-ジヒドロキシアセトフェノン)のエタノール溶液375μLと18mg/mL DAC(クエン酸水素二アンモニウム)水溶液125μLとを混合することによってマトリックス溶液を調製した。2μLのサンプル溶液を、2μLの2%トリフルオロ酢酸溶液と混合した後、2μLのマトリックス溶液を混合した。得られた三成分混合物を上下にピペッティングすると、当初は透明であった混合物が、結晶化が始まるに伴い不透明になった。0.5μLの体積のこの混合物をMALDI鋼のターゲットプレートに塗布した。溶媒を蒸発させた後、ターゲットプレートを質量分析計に挿入した。
【0304】
質量分析: MALDI-TOF質量スペクトルは、MALDI-TOF/TOF Autolex(商標)速度質量分析計(Bruker Daltonik GmbH)を使用して取得した。質量分析計にSmartBeam(商標)II固体レーザー(改質Nd:YAGレーザー;λ=355nm)を装備し、20000~200000m/z又は60000~200000m/zの範囲内で陽イオンをリニアモードで検出(operated)した。各サンプルでレーザーフルエンスを最適化した。レーザーを2キロヘルツの周波数で動作させ、1000のレーザショットの倍数で合計2000ショットのスペクトルを蓄積した。
【0305】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):
Dionex(商標)UltiMate(商標)3000HPLCシステムを使用してサイズ排除クロマトグラフィーを行った。
【0306】
修飾前のウリカーゼは、Superose(登録商標)12 10/300 GLカラムに100mM NaClを含む50mMホウ酸緩衝液(pH8)を0.4mL/分の流速で用い、214nmで吸光度測定を行うことで分析した。
【0307】
架橋ウリカーゼは、2つのTSKgel(登録商標)G5000PWXL、7.8×300mmカラムを直列に連結し、カラム温度50℃で、100mM NaClを含む50mM Tris緩衝液(pH8.0)を0.3mL/分の流速で用い、214nmで吸光度測定を行うことで分析した。
【0308】
ウリカーゼ活性アッセイ:
ウリカーゼの比活性を、ウリカーゼによる尿酸の酸化後に放出されたH2O2副生成物を検出する間接蛍光定量アッセイによって測定した。具体的には、400μMの尿酸を溶解し、ウリカーゼ濃度不明のサンプルを含む0.1% BSA添加0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に添加した。37℃、ホースラディッシュペルオキシダーゼの存在下で、蛍光プローブ(Ampliflu(商標))をH2O2と1:1の化学量論で反応させて、530~560nmの励起波長及び590nmの発光波長を有する高蛍光生成物を得た。マイクロプレートリーダーを用いて蛍光の増加を10分間記録し、ウリカーゼの標準曲線に従ってサンプルを定量した。
【0309】
ミカエリス・メンテンの式による解析を行うために、60ng/mLの酵素及び尿酸濃度の増加(尿酸の濃度は1.56μM~200μMの範囲)について、上記のように触媒速度を測定した。GraFitソフトウェア(Erithacus Software Limited,2010)を使用して、基質(UA)濃度対反応速度(V)プロットから速度論的パラメータを計算した。ウリカーゼ活性の1単位(U)は、37℃、pH8.0で毎分1μmolの尿酸をアラントインに変換するのに必要な酵素量と定義した。
【0310】
光学密度(OD):
精製したタンパク質の定量は、NanoDrop(商標)2000分光光度計(Thermo Fisher Scientific Inc)を使用して、280nmでの吸光度及びそれぞれの吸光係数(cm-1(グラム/リットル)-1)に基づいて行った。
【0311】
実施例1
ウリカーゼアミノ酸配列の免疫原性についてのインシリコの比較
低免疫原性ウリカーゼを開発するために、46個のウリカーゼ配列のそれぞれの免疫原性をインシリコ分析によって推定した。
【0312】
ProPred MHCクラスII結合ペプチド予測サーバーを使用して、[Singh & Raghava, Bioinformatics 2010, 17:1236-1237]に記載されているような手順に従って、定量マトリックスを用い、配列中のMHCクラスII結合領域を予測した。MHCクラスIIの9量体ペプチドエピトープを、集団の90%超をカバーする9つの最も豊富なヒト対立遺伝子(DRB1*0101、0103、0401、0701、0801、1101、1301、1015)について決定した。種々の9量体ペプチドを同定し、5%閾値でコンセンサス結合配列からの逸脱に基づいてスコア化した。
【0313】
コンセンサス配列に対して15%を超える類似性を示し、3つを超えるMHCクラスII対立遺伝子に結合すると予測されるペプチドを免疫原性があるとみなした。
【0314】
分析したウリカーゼ配列は、古代人、Agrobacterium tumefaciens、Alicyclobacillus mali、Arthrobacter gangotriensis、Arthrobacter globiformis、Aspergillus flavus、Aspergillus udagawae、Aureobasidium pullulans EXF-150、Bacillus fastidiosus、Bacillus halodurans C-125、Bacillus subtilis str.168、Bacillus sp.FJAT-21352、Bacillus sp.TB-90、Bacillus beveridgei、Bactrocera latifrons(ミバエ)、Blastomyces dermatitidis、Camelus ferus(野生のフタコブラクダ)、Candida utillis、Candidatus Solibacter usitatus、Chlamydomonas reinhardtii、Cicer arietinum(ヒヨコマメマメ)、Deinococcus radiodurans、Deinococcus geothermalis、Drechmeria coniospora、Erinaceus europaeus(一般的なハリネズミ)、Escherichia coli ISC56、Galdieria sulphuraria、Glycine max(ダイズ)、Granulicella tundricola、Kyrpidia tusciae DSM 2912、Magnaporthiopsis poae、Microbacterium sp.zzj4-1、Neonectria ditissima、Nicotiana tabacum(タバコ)、Paenibacillus darwinianus、Paenibacillus odorifer、Phaseolus vulgaris(インゲンマメ)、Phialocephala scopiformis、Pseudomonas aeruginosa、Pygoscelis adeliae(アデリーペンギン)、Rousettus aegyptiacus(エジプトルーセットオオコウモリ)、Stomoxys calcitrans(納屋ハエ)、Terriglobus saanensis、Tolypocladium ophioglossoides、及びTolypocladium ophioglossoides CBS 100239のものであった。
【0315】
最終候補は、(i)リジン残基の数、(ii)予測された免疫原性エピトープの数、及び(iii)予測された免疫原性エピトープのスコアに基づいて選択した。Nicotiana tabacum BY2細胞において植物組換えウリカーゼ(PRu)として発現させるために、下記のウリカーゼを選択した。
Candida utilis ウリカーゼ(prU-C)(配列番号1、受託番号P78609): (コンセンサス結合配列との類似度の最高スコアが54%である、8つのT細胞エピトープが予測された。アミノ酸配列は、タンパク質修飾に利用可能な32個のLys残基を含む)、及び
Arthrobacter gangotriensisのウリカーゼ(prU-G)(配列番号3、受託番号EMR00187.1):(コンセンサス結合配列との類似度の最高スコアが42%である、5つのT細胞エピトープが予測される。アミノ酸配列は、タンパク質修飾に利用可能な12個のLys残基を含む)。
【0316】
ウリカーゼprU-G及びprU-Cは、臨床承認された2つの組換えウリカーゼ、ラスブリカーゼ及びペグロチカーゼの配列よりも有意に低い免疫原性を有するとして計算された。特に、Aspergillus flavusのウリカーゼ(prU-A)(配列番号4、受託番号DB00049)は、コンセンサス結合配列との類似度の最高スコアが68%であり、11個のT細胞エピトープ(及びタンパク質修飾に利用可能な25個のLys残基)を有すると予測され、一方、ペグロチカーゼに使用されるブタ-ヒヒのキメラウリカーゼは、コンセンサス結合配列との類似度の最高スコアが68%であり、19個のT細胞エピトープ(及びタンパク質修飾に利用可能な30個のLys残基)を有すると予測された。
【0317】
参照用として使用するため、Aspergillus flavusのウリカーゼ(prU-A)(配列番号4)も、Nicotiana tabacum BY2細胞において発現させた。
【0318】
prU-C(配列番号1)は、C末端にトリペプチド(TKL)としてペルオキシソーム標的シグナル1(peroxisomal targeting signal 1、PTS1)を含んでおり[Brocard & Hartig, Biochim Biophys Acta 2006, 1763:1565-1573]、ペルオキシソームで発現した。prU-Aもペルオキシソームで発現したが、prU-Gは細胞質で発現した。
【0319】
実施例2
ウリカーゼに対するC250K変異の効果
本明細書において上記の材料及び方法の項に記載するように調製した植物組換えCandida utilis ウリカーゼ(prU-C、配列番号1)は、従来の条件下で重合を受けることが観察された。ジチオスレイトール(DTT)がprU-Cの重合を阻害することが更に観察され、複数のウリカーゼ分子中のシステイン残基間のジスルフィド結合の形成には重合が関与することが示唆された。
【0320】
prU-CのCys250は、prU-Cに含まる4つのCys残基のうちの1つであり、prU-C活性には必須でないことが報告されている。更に、他のウリカーゼ(不掲載)について公開されている構造との比較により、prU-CのCys250が外側に面していること、そのような配向が分子間ジスルフィド結合の形成を促進し得ることが示唆された。
【0321】
上記を考慮して、prU-C C250K変異体(prU-C250K;配列番号2)の免疫原性を分析し、上記のようにNicotiana tabacum BY2細胞において発現させた。コンセンサス結合配列との類似度の最高スコア52%で、10個のT細胞エピトープが予測された。prU-C(配列番号1)と同様、prU-C250K(配列番号2)は、C末端にトリペプチド(TKL)としてペルオキシソーム標的シグナル1(PTS1)を含んでおり[Brocard & Hartig, Biochim Biophys Acta 2006, 1763:1565-1573]、ペルオキシソームで発現した。
【0322】
次いで、C250K点変異がprU-Cの保存安定性に及ぼす影響を、25mMのTris(pH8.4)中0.3mg/mLの濃度(光学密度を測定することによって決定)でタンパク質を-20℃で一晩保存する凍結/解凍サイクルに供する前又は後に評価した。
【0323】
prU-C250Kは、比活性を測定すること(蛍光活性アッセイによって定量)、高分子量(HMW)分子の形成(ネイティブ条件下でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定)、及び変性条件下でのSDS-PAGEによって、凍結前後に分析した。
【0324】
下記の表3に示すように、prU-C250K変異体のサンプルでは、凍結前又は凍結後のネイティブ条件下で四量体のみが存在し、一方、野生型prU-Cは、凍結前に8.4%の八量体、凍結後に20.2%の八量体及び48.4%の高分子量(HMW)アイソフォームを含んでいた(SECによって決定)。更に示されるように、C250K変異は比活性に有意な影響を及ぼさなかった。
【0325】
同様に、
図2に示すように、変性条件下(DTT非存在下)では、凍結前後でprU-C250Kの単量体形態のみが観察され、一方、野生型prU-Cの一部は、(SDS-PAGEによって決定されるように)二量体及び四量体などの複数のサブユニットを含む分子種としてばらつきを示した。
【0326】
【0327】
これらの結果は、C250K変異が、活性及び四量体構造(例えば、HMW種ではない)の両方が保持されるように、ウリカーゼの構造特性を野生型配列と比較して増強することを示す。
【0328】
更に、いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、C250K変異体の追加の(33番目の)Lys残基は、タンパク質修飾を更に促進し得ると考えられる。
【0329】
実施例3
安定性に対するウリカーゼ配列の影響
生理学的に関連する条件下での様々なウリカーゼバリアント(prU-A、prU-C、prU-C250K及びprU-G)の安定性を比較した。
【0330】
熱安定性を評価するために、ウリカーゼをナノ示差走査蛍光測定によって分析した。具体的には、精製タンパク質サンプルをPBSで最終濃度0.5mg/mLに希釈し、10μLの各サンプルをキャピラリーに装填した。キャピラリーアレイに配置した後、プレートをナノ示差走査蛍光測定装置に配置し、1℃/分の速度(励起出力(excitation power)28%)で15℃から95℃まで徐々に加熱した。Tm(融点)の開始(タンパク質が変性し始める温度)及びTm(タンパク質の50%が変性する温度)を、タンパク質の立体構造の変化によって誘導される蛍光の変化としてソフトウェアによって測定した。
【0331】
表4に示すように、prU-C及びprU-C250Kは同様の融点パラメータを示したが、prU-Aは著しく低い温度で融解した。
【0332】
これらの結果は、prU-C及びprU-C250Kが生理的温度でprU-Aよりも安定であること、及びC250K変異が熱安定性にほとんど又は全く影響を及ぼさないことを示している。
【0333】
【0334】
ヒト血漿条件での安定性を評価するために、ウリカーゼを最終濃度2μg/mLでヒト血漿(エクスビボ)に希釈し、37℃で4週間インキュベートした。記載の時点で、タンパク質安定性を比活性アッセイによって定量した。
【0335】
図3に示すように、未修飾のprU-A、prU-C、prU-C250K及びprU-Gタンパク質はそれぞれ、ヒト血漿中で4週間インキュベートすると活性が徐々に低下した。prU-Aは最大の安定性を示し、prU-Gはヒト血漿中で最も低い安定性を示した。prU-C及びprU-C250Kが生理的マトリックスにおいて同様に有意な安定性を示したことから、C250K変異が血漿安定性にほとんど又は全く影響を及ぼさないことが示される。
【0336】
実施例4
ウリカーゼに対するPEG架橋の効果
ポリエチレングリコールビスアルデヒド(ビス-Ald-PEG)を使用してウリカーゼを架橋するために、各モルのウリカーゼのリン酸緩衝液(pH8)中溶液に、ウリカーゼ1モルに対して最大1000モルまでの様々なサイズ(1kDa~10kDa)のビスアルデヒドPEGを添加した。得られた溶液に終濃度25~100mMで還元剤を添加した。カップリング反応を室温(約23℃)で一晩、例えば少なくとも10時間進行させた。次いで、遊離PEGをクロマトグラフィー及び/又は限外濾過によって反応混合物から除去した。架橋の有効性をSDS-PAGEによって評価し、酵素活性を未修飾ウリカーゼの標準曲線に従って測定した。全タンパク質に対する活性タンパク質の比(280nmでの光学密度(OD)によって測定)を、反応後に保持された活性の%として示した。
【0337】
上記の一般的な手順を用い、様々なサイズのビス-Ald-PEGによって架橋した様々なウリカーゼバリアントを使用して、以下の各実験を行った。
【0338】
prU-Cを、還元剤としての25mMの2-ピコリンボランの存在下で、1000モル当量(対総タンパク質四量体)のビス-Ald-PEGで架橋した。PEG分子量は1000Da、2000Da、5000Da及び10,000Daとした。
【0339】
以下の表5に示すように、架橋prU-Cは、天然のprU-Cの酵素活性の多くを保持していた。
【0340】
【0341】
図4に示すように、天然のprU-Cは、SDS-PAGEにおいてタンパク質単量体(すなわち、1サブユニット又は約136kDaの四量体)の分子量に相当する約34kDaの分子量を示した。より小さなバンドは二量体に相当する。これに対して、2kDaのPEGで架橋したprU-Cは約315kDaに相当する主バンドを示し、顕著に低い分子量に相当するバンドはなかった。
【0342】
PEG分子は、その2倍の分子量のタンパク質の移動度で移動するため、90kDaのPEGの追加は180kDaのタンパク質として現れる。よって、約315kDaのメインバンドは、約45分子の2kDaのPEGにより修飾された、完全に架橋されたprU-C四量体(約136kDa)に相当する。更に、四量体よりも低い分子量に相当するバンドが存在しないことは、いかなる非架橋単量体も残存しない効率的な共有結合架橋であることを示す。
【0343】
図4に更に示されるように、1kDaのPEGで架橋したprU-Cは、PEG化単量体を示す約42kDaに相当する濃いバンド(strong band)のみならず、それぞれPEG化した二量体、三量体及び四量体を示す約80kDa、約120kDa及び約160kDaのバンドとも関連付けられた。
【0344】
図4に更に示されるように、(PEG分子は、その2倍の分子量のタンパク質の移動度で移動するため、)5kDaのPEGで架橋したprU-Cは、PEG1分子(5kDa)の増分と一致する10kDaに相当する増分を有する複数のバンドと関連付けられた。ここには、単一のPEG分子で修飾された単一のprU-C単量体と一致する、55kDaにわずかに満たない位置の薄いバンド(faded band)も含まれた。
【0345】
これらの結果は、1kDaのPEG及び5kDa(又はそれ以上)のPEGがprU-C単量体を四量体に架橋する効率が2kDaのPEGよりもかなり劣ることを示している。
【0346】
別の実験では、100mMのNaBH3CNを還元剤として使用して、市販のウリカーゼA(ラスブリカーゼ)を500モル当量のビス-Ald-PEGで架橋した。PEGの分子量は600Da、1000Da、2000Da、3400Da、5000Da及び10,000Daとした。
【0347】
図5に示すように、ラスブリカーゼは、SDS-PAGEにおいてタンパク質単量体の分子量に相当する約34kDaの分子量を示した。600DaのPEGと反応したラスブリカーゼは、単量体及び二量体に相当する主要なバンド(それぞれ約40kDa及び72kDa)、並びに三量体及び四量体に相当する弱いバンド(それぞれ約130kDa及び160kDa)を示した。1000DaのPEGで架橋したラスブリカーゼは、四量体に相当する主要なバンド、並びに単量体、二量体及び三量体に相当するより弱いバンドを示した。5000Da又は10,000のPEGで架橋したラスブリカーゼは、(
図4に関して上述したように)単量体と様々な数のPEG分子とに一致するスメアを示した。更に
図5に示されるように、2000Da又は3400DaのPEGで架橋したラスブリカーゼは、より小さな分子種に相当するバンドを示さず、PEG化四量体に相当するバンドを示した。
【0348】
これらの結果は、2kDa及び3.4kDaのPEGによるラスブリカーゼ単量体の四量体への架橋は効率的であったが、1kDa(若しくはそれ未満)又は5kDa(若しくはそれ以上)のPEGを用いた架橋は効率的でなかったことを示している。これらの結果は、prU-Cで得られたものと同様である。
【0349】
別の実験では、NaBH3CNを還元剤として使用して、prU-Gを200モル当量又は1000モル当量のビス-Ald-PEGで架橋した。PEG分子量は2000Da、3400Da及び5000Daとした。
【0350】
下記の表6に示すように、2000DaのPEGで架橋したprU-Gは、5000Da又は10,000DaのPEGで架橋されたprU-Gよりもかなり高い活性を保持し、活性の低下は架橋剤の使用量と相関していた。
【0351】
図6に示すように、prU-Gの架橋では、試験した全てのビス-Ald-PEGについて、比較的高レベルの単量体分子(SDS-PAGEで70kDa未満に相当するバンド)が得られた。更に、1000当量のPEGとの反応は、200当量のPEGとの反応よりも高い分子量をもたらした。試験した全ての条件において、prU-G酵素活性は著しく低下していた。
【0352】
これらの結果により、prU-Gの部分架橋はPEG濃度に依存し、prU-A及びprU-Cの架橋よりも効率が低いことが示される。
【0353】
図に示すように、5000DaのPEGによるprU-Gの架橋は、2000Da又は3400DaのPEGによる架橋よりも効率が低かった。この結果は、prU-C及びprU-Aで得られた結果と一致する。
【0354】
【0355】
まとめると、上記の結果は、ウリカーゼ架橋は1kDa超かつ5kDa未満のPEGで最も効率的であること、及びかかる条件下でのいくつかのウリカーゼバリアント(例えば、prU-G以外)の架橋は、未修飾ウリカーゼの酵素活性の少なくとも約50%を有する架橋ウリカーゼを生じ得ることを示す。
【0356】
実施例5
修飾ウリカーゼに対する架橋剤の種類の影響
様々な架橋剤によるウリカーゼの架橋を比較した。
【0357】
prU-Aを、100mMリン酸緩衝液(pH8)中で1000当量のビスNHS-PEG(2000Da)と室温で2時間反応させて架橋し、その後、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)に対して透析した。更に、prU-Aを、本明細書中で上記するように1000当量のビス-Ald-PEG(2000Da)と反応させて架橋した。100mMのNaBH3CNを還元剤として使用した。タンパク質濃度及び酵素活性は本明細書において上記する手順に従って測定し、架橋効率及び修飾度は本明細書において上記する手順に従ってSDS-PAGEを使用して評価した。
【0358】
図7に示すように、ビス-NHS-PEG(2000Da)及びビス-Ald-PEG(2000Da)のいずれもが、SDS-PAGEによって測定されたようにprU-Aの効率的な架橋をもたらした。架橋prU-Aは主に四量体の形態であり、非架橋分子種(140kDa未満)に相当するバンドは観察されなかった。
図7に更に示されるように、ビス-NHS-PEGを使用した修飾ではビス-Ald-PEGを使用した修飾と比較して分子量がやや小さく、ビス-NHS-PEGではprU-Aに結合したPEG分子の数がより少なかったことが示される。
【0359】
ビス-NHS-PEG(2000Da)及びビス-Ald-PEG(2000Da)の両方を使用して得られた修飾prU-Aは、総タンパク質含有量(280nmでODによって測定)に対するタンパク質活性の比を測定したとき、それぞれ初期酵素活性の59%及び78%を保持した。
【0360】
これらの結果により、アルデヒド官能基及び還元剤の使用が、導入されるPEG部分の数という観点でウリカーゼの架橋に特に有効であることが示される。
【0361】
実施例6
免疫原性に対するウリカーゼ修飾の影響
実施例5に記載した手順に従って、ビス-NHS-PEG及びビス-Ald-PEGのいずれかによって架橋したprU-Aの相対的な免疫原性を動物試験で試験した。修飾prU-AのサンプルをImject(商標)ミョウバンアジュバントと1:1の比で混合し、
図8Aに示すように、6~8週齢の雌性Sprague Dawleyラット(1群あたり6匹)に1mg(ODによって測定)/kgの用量で3週間おきに皮下注射した。記載の時点で各ラットから血清を採取し、(ラット毎に別々に)被験物質に対する力価をELISAによって測定した。
【0362】
図8Bに示すように、ビス-Ald-PEG(2000Da)で架橋したprU-Aにより免疫すると、ビス-NHS-PEG(2000Da)で架橋したprU-Aと比較して、抗体価がかなり低かった。
図8Bに更に示されるように、反復注射により、概して抗体価の増加がもたらされた。
【0363】
競合ELISAを使用して、架橋ウリカーゼに対して形成された抗体の性質を調べた。サンプルを、未修飾ウリカーゼ又はビス-NHS-PEG若しくはビス-Ald-PEG(2000Da)で架橋したウリカーゼと共にプレインキュベートし、生成された抗体の結合を競合物質が阻害する能力をELISAによって評価した。
【0364】
図9A及び
図9Bに示すように、ビス-NHS-PEGで架橋したprU-Aによる免疫で産生された抗体は未修飾ウリカーゼによって阻害されず、このことは、抗体がPEG部分を認識したことを示している(
図9B)。これに対し、ビス-Ald-PEGで架橋したprU-Aによる免疫で産生された抗体はコアタンパク質を認識する傾向があった(
図9A)。
【0365】
まとめると、上記の結果は、アルデヒド基を使用した架橋が、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を使用した架橋よりも効果的に架橋ウリカーゼの免疫原性を低下させること、及びNHS基を使用すると連結部分に対する抗体が多量に産生されることを示している。
【0366】
免疫原性に対するPEG分子量及びウリカーゼバリアントの効果を更に評価するために、prU-A及びprU-Cをそれぞれ2000Da又は3400Daのビス-Ald-PEG1000当量を用いて架橋し、続いて100mMリン酸緩衝液(pH8)で透析し、高分子量の形態を分離するためにサイズ排除クロマトグラフィー(本明細書の上記の材料及び方法の節に記載の手順による)を行った。結合したPEG部分の量を、MALDI質量分析(本明細書において上記する材料及び方法の節に記載する手順に従う)によって評価した。
【0367】
表7に示すように、架橋prU-Aよりも幾分多くのPEG部分が架橋prU-Cに組み込まれた。
【0368】
これらの結果は、prU-Aと比較して、prU-Cの配列中のリジン残基の量が多いことと一致している。
【0369】
【0370】
架橋prU-A及びprU-CをImject(商標)ミョウバンアジュバントと1:1の比で混合し、6~8週齢の雌性Sprague Dawleyラット(1群あたり5匹)に1mg(ODによって測定)/kgの用量で3~4週間ごとに(
図8Aに示すのと同じタイムラインを使用)皮下注射した。記載の時点でラット毎に血清を採取し、力価をELISAによって測定した。
【0371】
図10に示すように、ビス-Ald-PEG(3400Da)で架橋したprU-Cは、2000DaのPEGで架橋した架橋prU-A又はprU-Cと比較して、免疫時に最も低い抗体力価をもたらした。
【0372】
これらの結果は、prU-CがprU-Aよりも幾分免疫原性が低いこと、免疫原性を低減させるための本明細書に記載の方法論を異なる種類のウリカーゼに使用できること、及び約3400DaのPEGでの架橋が免疫原性を低減させるのに特に効果的であることを示している。
【0373】
ヒト血漿中に既存の抗体による認識レベルによって修飾ウリカーゼの抗原性を評価した。
【0374】
様々なナイーブ状態の各患者(n=102)からのヒト血清サンプルを、(本明細書において上記する材料及び方法の節に記載されるように)ELISAを使用して抗PEG抗体の存在について試験した。アッセイは、(上記の手順に従って調製した)prU-C250Kの2種類のPEG化バリアント、ビス-Ald-PEG(3400Da)で架橋したprU-C250K及び単官能性10kDaPEG(ペグロチカーゼに類似)でPEG化したprU-C250Kを使用して行い、比較には未修飾prU-C250Kを使用した。キメラcHu3.3ヒト抗PEG IgG1抗体を使用して標準曲線を作成し、陽性対照とした。陽性抗体の反応を、ブランクに対する少なくとも2のOD比として定義し、陽性反応を示す患者についての結果を
図11に示す。
【0375】
図11に示すように、ナイーブ状態のヒト血液サンプルのスクリーニングにより、試験したドナー102名中15名(15%)が、単官能性の10kDaのPEGで修飾したウリカーゼを認識する既存の抗体を有していたのに対し、102名のドナーのうち3名(3%)(それぞれ、15名のドナーからなる前述の群に含まれた)のみが、3400DaのPEGで架橋したprU-C250Kを認識する抗体を有し、かつかかる抗体の抗体価は著しく低かった。
図11に更に示されるように、102名のドナーのうち20名(20%)が、未修飾prU-C250Kを認識する抗体を有していたが、これらのドナーのいずれもが、3400DaのPEGで架橋したprU-C250Kに対する抗体を有していなかった。
【0376】
これらの結果は、PEG架橋剤がウリカーゼタンパク質を効率的にマスクすること、かつPEG部分(PEG化ウリカーゼにおける免疫原性の重要な供給源)がビス-Ald-PEG(約3400Da)で架橋された場合には、10kDaの単官能性PEG(ペグロチカーゼに類似)で修飾された場合よりもかなり免疫原性が低いことを示している。
【0377】
血漿安定性を評価するために、3400DaのPEGで架橋したprU-C250Kを、ヒト血漿中2μg/mLの濃度で、37℃、エクスビボで4週間インキュベートした。記載の時点で、ウリカーゼ活性を上記の手順に従ってアッセイした。
【0378】
図12に示すように、3400DaのPEGで架橋したprU-C250Kの試験バッチは、いずれも28日間にわたってヒト血漿中で完全な活性を保持した。
【0379】
これらの結果は、例示的な架橋prU-C250Kがヒト血漿中で非常に安定であることを示している。
【0380】
例示的なウリカーゼ(prU-C250K)を、カットオフ30kDaのAmicon(登録商標)システム(15mL)を使用して4.4mg/mLに濃縮した。
【0381】
40mgのprU-C250K(10mL)を9.86mLの100mMリン酸緩衝液(pH8)で希釈し、200mMのDTT水50μL、ビス-Ald-PEG(3400Da)1006mg(1000モル当量)、及びエタノール中の500mMの2-ピコリンボラン錯体1mLから形成した反応混合物に、最終濃度が2mg/mLのタンパク質及び25mMの2-ピコリンボラン錯体になるようそれぞれを添加した。反応物を室温で17時間穏やかに振盪することによって混合した。反応後、サンプルをサイズ排除クロマトグラフィーカラムに注入し、高分子量(HMW)の分子種を除去した。5%未満のHMW分子種を含む画分を合わせ、100mMリン酸緩衝液(pH8)で透析し、1.5mg/mL(ODにより測定)に濃縮した。
【0382】
架橋prU-C250K及び未修飾prU-C250Kの両方をそれぞれ0.22μmフィルターで滅菌し、一定量に分け、-20℃で保存した。濃度及び活性を、上記のように測定した。MALDI質量分析によって測定したとき、ウリカーゼ四量体あたりのPEG部分の数は約37であった。高分子量分子種(修飾八量体)の割合は、サイズ排除クロマトグラフィー分析によって測定したとき、約2%であった。
【0383】
エンドトキシンが存在しない(<5EU/mL)ことを標準的な手順によって確認し、タンパク質の免疫原性のマスキングの程度を競合ELISAによって測定した。
【0384】
試験したウリカーゼを、12匹の6~8週齢の雌性Sprague Dawleyラットに、10U/kg(架橋prU-C250Kについては1.35mg(ODによって測定)/kg及び未修飾prU-C250Kについては1.09mg(ODによって測定)/kg)の用量で、2週間おきに静脈内注射し(注射#1~5)、その後、
図13Aに示すように、架橋prU-C250Kを4週間おきに両群に注射した(注射#6)。記載の時点で群毎に血清を採取し、力価を測定した。
【0385】
図13Bに示すように、未修飾prU-C250Kを5回注射した後、6匹の試験動物のうち4匹で抗prU-C250Kの力価の上昇が観察された。
【0386】
対照的に、3400DaのPEGで架橋したprU-C250Kを6回IV注射した後、試験した全てのラットにおいて抗prU-C250K-3400の力価は1:50未満であった(データ不掲載)。
【0387】
これらの結果により、例示的なPEG部分での架橋がウリカーゼの免疫原性をかなり低減することが更に確認される。
【0388】
実施例7
反復投与における薬物動態に対するウリカーゼ架橋の影響
架橋ウリカーゼの薬物動態に対する反復注射の影響を評価するために、本明細書において上記する実施例6に記載のものと同じ手順に従って、ビス-Ald-PEG(3400Da)で架橋したprU-C250Kをラットに静脈内注射した。架橋prU-C250Kの半減期(T1/2)及び曲線下面積(AUC)を、1回目の注射後及び6回目の注射後に、ELISA又は活性アッセイのいずれかによって決定した。
【0389】
図14A~
図14Dに示すように、架橋prU-C250Kの1回目の注射後のT
1/2は、ELISAで測定したときに54時間及び活性アッセイで測定したときに64.8時間であり、一方、6回目の注射後のT
1/2は、ELISAで測定したときに70.5時間及び活性アッセイでは68.4時間であった。
【0390】
図14A~
図14Dに更に示されるように、架橋prU-C250Kの1回目の注射後のAUCは、ELISAで測定したときに61.07mg
*分/mLであり、活性アッセイで測定したときに65.95mg
*分/mLであり、一方、6回目の注射後、AUCは、ELISAで測定したときに70.5mg
*分/mLであり、活性アッセイで測定したときに58.5mg
*分/mLであった。
【0391】
対照的に、未修飾prU-C250KのT1/2は1時間未満であった(データ不掲載)。
【0392】
これらの結果は、ウリカーゼを架橋することで、血漿中のウリカーゼ半減期が大幅に延長され、比較的低頻度の間隔での持続的な治療効果及び投与が可能であり得ることを示している。
【0393】
これらの結果は、架橋prU-C250Kへの反復曝露が、修飾タンパク質のインビボでの比較的長い半減期を短縮しなかったことを更に示しており、このことは、修飾タンパク質の低免疫原性及び持続的な治療効果が、長期処置後でさえ維持され得ることを更に示している。
【0394】
実施例8
例示的な架橋ウリカーゼとペグロチカーゼとの比較
上記の材料及び方法の項に記載されているように、ウリカーゼアッセイ及びミカエリス・メンテン分析を使用して、例示的な架橋ウリカーゼ(ビス-Ald-PEG(3400Da)で架橋したprU-C250K)と、ペグロチカーゼの、酵素活性を比較した。
【0395】
図15及び表8に示すように、架橋ウリカーゼは、ペグロチカーゼよりもかなり高い比活性、k
cat及びV
maxを示した。
【0396】
【0397】
これらの結果は、高い尿酸濃度(例えば、尿酸の臨床上適切な濃度範囲であると予想される200~400μM)では、酵素反応速度がkcat(及びVmax)にほぼ比例するとき、架橋ウリカーゼはペグロチカーゼよりも約5倍有効であり、30μMに近い低濃度(ペグロチカーゼのKM)では、架橋ウリカーゼはペグロチカーゼの2倍超有効であり、酵素反応速度がkcat/KMにほぼ比例する非常に低い尿酸濃度であるときでも、架橋ウリカーゼはペグロチカーゼよりもやや有効であることを示している。
【0398】
1mg/kgの用量で雌性Sprague Dawleyラットに静脈内注射することによって、架橋ウリカーゼ及びペグロチカーゼのインビボの有効性も比較した。1回目の注射後(ナイーブ状態での薬物動態)及び3週間おきに繰り返した4回の注射後(反復後薬物動態)に血漿サンプルを採取し、各時点での活性酵素濃度を測定することによって血漿半減期を算出した。
【0399】
図16~
図18に示すように、例示的な架橋ウリカーゼは、1回の投与後(
図16及び
図18)及び反復(4回)投与後(
図17及び
図18)の両方でペグロチカーゼよりも長い血漿半減期を示した。
【0400】
まとめると、上記の結果は、本明細書に記載の架橋ウリカーゼの酵素活性が、インビトロ及びインビボの両方で、ペグロチカーゼの酵素活性と比較して有利であることを示している。
【0401】
本発明をその具体的な実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替、改変、及び変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、このような代替、改変、及び変形は全て、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲に含まれるものとする。
【0402】
本明細書中で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書中に組み込まれることが言及されるときに具体的かつ個別に言及されているかのように、その全体が参照により本明細書中に組み込まれることは本出願人の意図である。加えて、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、このような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。章の見出しが使用される範囲において、当該見出しは必ずしも限定を加えるものと解釈されるべきではない。更に、本出願の任意の優先権書類は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【配列表フリーテキスト】
【0403】
配列番号2: 配列番号1の点変異C250K
【配列表】
【国際調査報告】