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特表2023-548509健康状態を診断又は治療するための、もしくはCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】健康状態を診断又は治療するための、もしくはCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20231110BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20231110BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20231110BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20231110BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALI20231110BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20231110BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20231110BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231110BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231110BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231110BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231110BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231110BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20231110BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12N15/09 Z ZNA
C12Q1/6813 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6883 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/17
A61K45/00
G01N33/53 M
G01N33/574 A
C07K19/00
C12M1/34 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526662
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 US2021058102
(87)【国際公開番号】W WO2022098903
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】63/109,611
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ロビー マズナー
(72)【発明者】
【氏名】クリスタル エル.マッコール
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マウント
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル モンジェ-ダイセロス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ビー.ミクロス
(72)【発明者】
【氏名】マシュー フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヤソダ ナトクナム
(72)【発明者】
【氏名】アラッシュ アッシュ アリザデー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン スウォーダー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エム.クルツ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB20
4B029DG10
4B029FA12
4B029FA15
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ43
4B063QQ53
4B063QQ79
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR48
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS33
4B063QS34
4B063QX02
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC751
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087DA31
4C087NA05
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は一般に、とりわけ、CD58発現の低下したレベルもしくは喪失、またはCD58活性における分子改変に関連する、さまざまな健康状態、例えば、増殖性障害(がん等)を診断および/または治療するための方法、キット、及びシステムに関する。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における健康状態の診断および/または治療のためのキットであって、
(i)当該個体由来の生体サンプルにおける、CD58の発現レベル、またはCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物での1つ以上の分子改変の存在および/または不在を評価するための試薬
(ii)それらを使用するための指示書
を含む、前記キット。
【請求項2】
前記キットがさらに、CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定するために設計され、
前記決定が、
a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが低下もしくは喪失している、または前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物において1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、および前記サンプルにおいてCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の相互作用を検出することを含む、前記検出;および
b)前記サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して、低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変の少なくとも1つが検出される場合に、CAR-T細胞療法による治療に対する応答性が低下しているとして個体を同定すること、
を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記キットがさらに、CAR-T細胞療法に対する増大した非応答性を有する個体を同定するために設計され、
前記同定が、
a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが低下もしくは喪失している、または前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物において1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、および前記サンプルにおいてCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の相互作用を検出することを含む、前記検出;および
b)前記サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルがCD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変の少なくとも1つが検出された場合に、CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加しているとして個体を選択すること;または
前記サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルがCD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失していない、又はCD58活性における1つ以上の分子改変が検出されない場合、CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加していないとして個体を選択すること、
を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記キットがさらに、個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化するために設計され、前記最適化が、
a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、または前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物における1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、および前記サンプルにおいて前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を検出することを含む、前記検出;および
b)前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の検出された相互作用に基づいた、CAR-T細胞療法の治療有効量を同定すること、
を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記個体が、前記CD58の基準発現レベルと比較してCD58発現の低下したレベルもしくは喪失、または前記CD58コード遺伝子もしくはその産物における1つ以上の分子改変に関連する健康状態を有する、もしくは有する疑いがある、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
前記健康状態が、固形腫瘍がん、非固形腫瘍がん、および血液系腫瘍からなる群から選択される増殖性障害である、請求項1~5のいずれか一項に記載のキット。
【請求項7】
前記健康状態が、がん、任意選択で非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)、原発性滲出液リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、MALT(粘膜関連リンパ組織)リンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、ホジキン病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)、有毛細胞白血病、慢性筋芽球性白血病、または骨髄腫である、請求項1~5のいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物における1つ以上の分子改変が、RNA/タンパク質発現の増加、RNA/タンパク質発現の低下、発現の喪失、異常なRNA/タンパク質発現、一塩基点突然変異(SNP)、一塩基変異(SNV)、遺伝子増幅、遺伝子再構成、遺伝子融合、欠失、フレームシフト欠失、挿入、InDel変異、エピジェネティックな変化、アミノ酸置換、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のキット。
【請求項9】
前記1つ以上の分子改変が、CD58発現の喪失、CD58の基準発現レベルと比較したCD58の低下した発現、またはCD58の変異型の発現を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
前記1つ以上の分子改変が、配列番号1のK60に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のキット。
【請求項11】
前記アミノ酸置換がLys-to-Glu置換(K60E)である、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記1つ以上の分子改変が、配列番号1のC187に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のキット。
【請求項13】
前記アミノ酸置換がCys-to-Arg置換(C187R)である、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物における1つ以上の分子改変が、CD58タンパク質産物のリガンドCD2に対する、CD58タンパク質産物の低下した結合親和性を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のキット。
【請求項15】
前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物での1つ以上の分子改変の存在および/または不在を評価することは、ディープシーケンシングによる癌個別化プロファイリング(CAPP-seq)、核酸シーケンシング、循環腫瘍核酸評価、次世代シーケンシング(NGS)、核酸増幅ベースのアッセイ、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムPCR、定量的逆転写PCR(qRT-PCR)、PCR-RFLPアッセイ、HPLC、質量分析ジェノタイピング、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、比較ゲノムハイブリダイゼーション、蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH)、制限酵素処理、キャピラリー電気泳動、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、核酸ベースの分析アッセイを用いることを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のキット。
【請求項16】
前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物での1つ以上の分子改変の存在および/または不在を評価することは、免疫組織化学(IHC)、タンパク質マイクロアレイ、ウェスタンブロッティング、質量分析、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光染色、マルチプレックス検出アッセイ、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、タンパク質ベースの分析アッセイを用いることを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のキット。
【請求項17】
前記健康状態の治療のためにさらに設計される、請求項1~16のいずれか一項に記載のキット。
【請求項18】
前記CAR-T細胞療法が、単独療法として、または1つ以上の追加療法と組み合わせて個体に対して投与される、請求項2~17のいずれか一項に記載のキット。
【請求項19】
前記CAR-T細胞療法および/または少なくとも1つの追加療法は、CD2シグナル伝達ドメインを備えるCAR構築物を含む、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記CAR-T細胞療法は、野生型細胞における密度と比較して低密度で発現される抗原を標的化する、請求項2~19のいずれか一項に記載のキット。
【請求項21】
健康状態の診断および/または治療のための遺伝的ベースのシステムであって、
a)論理プロセッサ;
b)論理プロセッサによって実行可能なストアドプログラムコードであって、プロセッサによって実行されるとき、
i)CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定すること;
ii)CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増大したとして個体を同定すること;
iii)個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化すること;および
iv)個体に対するCAR-T細胞療法の治療有効量を算出して投与すること、
の1つ以上を実行するための動作を提供する、前記ストアドプログラムコード:
を備える、前記システム。
【請求項22】
前記論理プロセッサに通信可能に結合されたレポートエンジンをさらに備え、前記レポートエンジンによって生成されるレポートは、前記プログラムコードの実行からの結果に依存し、前記プログラムコードは、事前に選択されたデータ入力のセットに少なくとも部分的に基づいて、CAR-T細胞療法に対する個体の応答性に相対的なパフォーマンススコアを割り当てるために、個体から得られた生物におけるCD58の発現レベル、またはCD58コード遺伝子またはその産物の1つ以上の分子改変の存在および/または不在に関する事前に選択されたデータ入力のセットを受信するように前記論理プロセッサを設計して、
および任意選択で:
a)CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定すること;
b)CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加したとして個体を同定すること;
c)個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化すること;および/または
d)個体に対するCAR-T細胞療法の治療有効量を算出して投与すること、
を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
CAR-T細胞療法に対する非応答性が増大すると同定された前記個体に関連する、および/または健康状態の治療に有効であると同定されたCAR-T細胞療法に関連する情報を含有するレポートを生成することをさらに備える、請求項21~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記プロファイルレポートが、「.doc」;「.pdf」;「.xml」;「.html」;「.jpg」;「.aspx」;「.php」、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される符号化を有することを特徴とする、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
実行されると、
事前選択されたデータインプットのセットを含むプロファイルを受領すること;
プロファイルに少なくとも部分的に基づいて、同定されたCAR-T細胞療法に対する相対的パフォーマンススコアを割り当てること;および
割り当てられたパフォーマンススコアに基づいて、CAR-T細胞療法のレポートを出力すること:
を含む操作をプロセッサに実行させる機械実行可能命令を含有する、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項26】
実行されると、
事前選択されたデータインプットのセットを含むプロファイルを受領すること;
プロファイルに少なくとも部分的に基づいて、同定された個体に対する相対的非応答性スコアを割り当てること;および
割り当てられた非応答性スコアに基づいて、前記個体のレポートを出力すること;
を含む操作をプロセッサに実行させる機械実行可能命令を含有する、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項27】
請求項23~26のいずれか一項に記載のシステム又は媒体によって生成されたレポート。
【請求項28】
CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定するための方法であって、
a)前記個体から得られる生体サンプルにおいて、CD58の発現レベルがCD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;および
b)前記CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して、低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変のうちの少なくとも1つがサンプルにおいて検出された場合に、CAR-T細胞療法による治療に対する応答性が低下したとして個体を同定すること、
を含む、前記方法。
【請求項29】
CAR-T細胞療法に対する増大した非応答性を有する個体を同定するための方法であって、
a)前記個体から得られる生体サンプルにおいて、CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;および
b)前記CD58の発現レベルがCD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変の少なくとも1つが前記サンプルで検出された場合に、CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加しているとして個体を選択すること;または
前記サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルがCD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失していない、又はCD58活性における1つ以上の分子改変が検出されない場合、CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加していないとして個体を選択すること、
を含む、前記方法。
【請求項30】
個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化するための方法であって、
a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性において1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;および
b)前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬との間の検出された相互作用に基づき、CAR-T細胞療法の治療有効量を同定すること:
を含む、前記方法。
【請求項31】
個体に対してCAR-T細胞療法を投与するための方法であって、
a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性において1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;
b)CD58コード遺伝子またはそれらの産物と前記検出試薬の間に検出された相互作用に基づき、治療有効量のCAR-T細胞療法を投与すること:
を含む、前記方法。
【請求項32】
前記個体が、前記CD58の基準発現レベルと比較してCD58発現の低下したレベルもしくは喪失、またはCD58活性における1つ以上の分子改変に関連する健康状態を有する、もしくは有する疑いがある、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記健康状態を治療することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記健康状態が、固形腫瘍がん、非固形腫瘍がん、および血液系腫瘍からなる群から選択される増殖性障害である、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記健康状態が、がん、任意選択で非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)、原発性滲出液リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、MALT(粘膜関連リンパ組織)リンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、ホジキン病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)、有毛細胞白血病、慢性筋芽球性白血病、または骨髄腫である、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記CD58活性における1つ以上の分子改変が、RNA/タンパク質発現の増加、RNA/タンパク質発現の低下、発現の喪失、異常なRNA/タンパク質発現、一塩基点突然変異(SNP)、一塩基変異(SNV)、遺伝子増幅、遺伝子再構成、遺伝子融合、欠失、フレームシフト欠失、挿入、InDel変異、エピジェネティックな変化、アミノ酸置換、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項28~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記1つ以上の分子改変が、CD58発現の喪失、CD58の基準発現レベルと比較した低下したCD58発現、またはCD58の変異型の発現を含む、請求項28~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記1つ以上の分子改変が、配列番号1のK60に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項28~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記アミノ酸置換がLys-to-Glu置換(K60E)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記1つ以上の分子改変が、配列番号1のC187に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記アミノ酸置換がCys-to-Arg置換(C187R)である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物における1つ以上の分子改変が、CD58タンパク質産物のリガンドCD2に対する、CD58タンパク質産物の低下した結合親和性を含む、請求項28~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の相互作用を検出することは、核酸シーケンシング、循環腫瘍核酸評価、次世代シーケンシング(NGS)、核酸増幅ベースのアッセイ、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムPCR、定量的逆転写PCR(qRT-PCR)、PCR-RFLPアッセイ、HPLC、質量分析ジェノタイピング、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、比較ゲノムハイブリダイゼーション、蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH)、制限酵素処理、キャピラリー電気泳動、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、核酸ベースの分析アッセイを含む、請求項28~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の相互作用を検出することは、免疫組織化学(IHC)、タンパク質マイクロアレイ、ウェスタンブロッティング、質量分析、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光染色、マルチプレックス検出アッセイ、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、タンパク質ベースの分析アッセイを含む、請求項28~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記個体に対して前記CAR-T細胞療法を投与することをさらに含み、前記CAR-T細胞療法が、単独療法として、または1つ以上の追加療法と組み合わせて個体に対して行われる、請求項28~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記CAR-T細胞療法および/または少なくとも1つの追加療法は、CD2シグナル伝達ドメインを備えるCAR構築物を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記CAR-T細胞療法は、野生型細胞における密度と比較して低密度で発現される抗原を標的化する、請求項28~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
CD58の発現の低下もしくは喪失、またはCD58コード遺伝子における1つ以上の分子改変:の少なくとも1つにより特徴づけられる健康状態を有する個体を、治療する方法であって、
a)前記個体から得られる生体サンプルにおいて、CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物において、1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;
b)CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して、低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変のうちの少なくとも1つがサンプルにおいて検出された場合に、CD2シグナル伝達ドメインを含むCAR構築物による治療に応答する可能性が高い個体を同定すること、および
c)CD2を含むCAR構築物による治療に応答する可能性が高いとステップb)において同定された個体に、CD2シグナル伝達ドメインを備えるCAR構築物による前記治療を投与すること:
を含む、前記方法。
【請求項49】
個体における健康状態を治療するための方法であって、
a)前記個体から得られる生体サンプルにおいて、CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物において、1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;および
b)ステップa)におけるCD58の発現レベルの低下もしくは喪失、またはCD58コード遺伝子における1つ以上の分子改変の検出に基づいて、前記個体に対して、CD2シグナル伝達ドメインを備えるCAR構築物による治療を投与すること:
を含む、前記方法。
【請求項50】
前記CD2シグナル伝達ドメインを備えるCAR構築物が、抗CD19 scFvドメインをさらに備える、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記CD2シグナル伝達ドメインを備えるCAR構築物が、配列番号4に記載の核酸配列を含む、請求項48~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記健康状態が、固形腫瘍がん、非固形腫瘍がん、および血液系腫瘍からなる群から選択される増殖性障害である、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記健康状態が、がんである、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記がんが、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)、原発性滲出液リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、MALT(粘膜関連リンパ組織)リンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、ホジキン病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)、有毛細胞白血病、慢性筋芽球性白血病、または骨髄腫:からなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記CD58活性における1つ以上の分子改変が、RNA/タンパク質発現の増加、RNA/タンパク質発現の低下、発現の喪失、異常なRNA/タンパク質発現、一塩基点突然変異(SNP)、一塩基変異(SNV)、遺伝子増幅、遺伝子再構成、遺伝子融合、欠失、フレームシフト欠失、挿入、InDel変異、エピジェネティックな変化、アミノ酸置換、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項48~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記1つ以上の分子改変が、CD58発現の喪失、CD58の基準発現レベルと比較して低下したCD58の発現、またはCD58の変異型の発現を含む、請求項48~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記1つ以上の分子改変が、配列番号1のK60に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項48~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記アミノ酸置換がLys-to-Glu置換(K60E)である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記1つ以上の分子改変が、配列番号1のC187に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項48~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記アミノ酸置換がCys-to-Arg置換(C187R)である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物における1つ以上の分子改変が、CD58タンパク質産物のリガンドCD2に対する、CD58タンパク質産物の低下した結合親和性を含む、請求項48~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の相互作用を検出することは、核酸シーケンシング、循環腫瘍核酸評価、次世代シーケンシング(NGS)、核酸増幅ベースのアッセイ、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムPCR、定量的逆転写PCR(qRT-PCR)、PCR-RFLPアッセイ、HPLC、質量分析ジェノタイピング、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、比較ゲノムハイブリダイゼーション、蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH)、制限酵素処理、キャピラリー電気泳動、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、核酸ベースの分析アッセイを含む、請求項48~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の相互作用を検出することは、免疫組織化学(IHC)、タンパク質マイクロアレイ、ウェスタンブロッティング、質量分析、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光染色、マルチプレックス検出アッセイ、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、タンパク質ベースの分析アッセイを含む、請求項48~61のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府が後援する研究開発に関する声明
【0002】
本発明は、国立衛生研究所によって授与された契約CA241076およびCA049605に基づく政府の支援を受けてなされた。政府は発明において一定の権利を有する。
【0003】
関連出願の相互参照
【0004】
本出願は、2020年11月4日に提出された、米国仮出願番号第63/109,611号を主張し、その開示は、任意の図面を含むその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
配列表の組み込み
【0006】
本出願は、配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。「Sequence Listing_078430-525001WO_SequenceListing_ST25.txt」という名前の添付の配列表テキストファイルは、2021年10月25日に作成され、5KBである。
【0007】
分野
【0008】
本開示は一般に、とりわけ、CD58発現の低下したレベルもしくは喪失、またはCD58活性における分子改変に関連する健康状態、例えば、増殖性障害(がん等)を診断および/または治療するための方法、キット、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0009】
遺伝子改変免疫細胞の養子導入は、種々の悪性腫瘍に対する強力な治療法として明らかになっている。例えば、養子T細胞療法の現在の様式には、キメラ抗原受容体(CARs)および高親和性T細胞受容体(TCRs)などの癌抗原に特異的な受容体を発現するように、改変された細胞が含まれる。養子T細胞療法では、修飾されたT細胞は、インビトロまたはエキソビボで、同族抗原への曝露によって活性化され、増殖し、次いで個体に投与され、そこで増殖して細胞溶解活性を示す、および/または癌に対する免疫応答を開始するシグナルを送ることができる。
【0010】
癌細胞、例えばB細胞悪性腫瘍の適切な細胞表面分子へのT細胞のリダイレクトに依存する、キメラ抗原受容体(CAR)改変自己由来T細胞(CART)療法を用いる近年の開発は、B細胞悪性腫瘍および他の癌を治療するために免疫系の力を利用することにおいて、望ましい結果を示している。例えば、B細胞悪性腫瘍に対するCD19分子に特異的なCAR-T細胞を用いる近年の臨床試験では、進行性がん患者のサブセットにおいて顕著な疾患退縮が示された。CD19-CAR T細胞の単回投与は、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者の約50%で完全寛解をもたらす。この成功により、LBCLおよびB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の治療薬の臨床開発において、2つのCD19-CAR T細胞治療薬、アキシカブタゲンシロロイセル(YESCARTA(登録商標))およびチサゲンレクルーセル(KYMRIAH(登録商標))がその他の薬剤とともにFDAに承認された。特に、LBCL患者の大多数において完全応答が持続する。
【0011】
しかしながら、CAR-T細胞が標的細胞を認識して破壊する能力に加えて、成功した治療用T細胞療法は、増殖し、経時的に持続し、および白血病細胞逃避者をさらにモニターする能力を有する必要がある。T細胞の表現型状態は、それがアネルギー状態、抑制状態、枯渇状態のいずれであっても、CAR-T細胞の有効性にさまざまな影響を与えることが報告されている。効果を発揮するには、CAR-T細胞はCARの抗原に応答して増殖する能力を持続し、維持する必要がある。
【0012】
加えて、疾患進行の原因を特定し、既存のCAR-T療法に対する耐性を発症する患者を治療するための緊急治療上の必要性が存在する。特に、CD19の喪失は、B-ALLのCAR-T細胞療法後の再発の最も一般的な原因であると考えられ、1つのシリーズで再発の90%以上を占めており、LBCLの症例の最大30%でも発生することが報告されている。この耐性は、治療後の生検が治療抵抗性を促進する患者固有の要因を決定するための標準となったため、ごく最近観察された。
【0013】
それゆえ、養子T細胞療法のための改善された治療用細胞を生成するために、新しい組成物および戦略が必要とされる。本開示の態様および実施形態は、これらのニーズに対処し、その他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0014】
本明細書において、とりわけ、CD58活性における1つ以上の分子改変に関連する、さまざまな健康状態、例えば、増殖性障害(がん等)の診断および/または治療のための方法、キット、及びシステムが提供される。特に、本開示のいくつかの実施形態は、CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定するための方法に関する。その他の実施形態では、CAR-T細胞療法に対して増大した非応答性を有する個体を同定するための方法に関する。いくつかの実施形態において、それらを必要とする個体において、CAR-T細胞療法の治療有効性を最適化するための方法も提供される。本開示の追加の実施形態は、それらを必要とする個体に対して、CAR-T細胞療法を投与するための方法に関する。それらを必要とする個体において、健康状態の予防および/または治療のためのキットおよびシステムも提供される。
【0015】
一態様において、個体における健康状態の診断および/または治療のためのキットが本明細書において提供され、前記キットは、(i)前記個体由来の生体サンプルにおける、CD58の発現レベル、またはCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物での1つ以上の分子改変の存在および/または不在を評価するための試薬、および(ii)それらを使用するための指示書を含む。
【0016】
本開示のキットの非制限で例示的な実施形態では、以下の特徴の1つ以上を含んでもよい。いくつかの実施形態において、本開示のキットは、CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定するためにさらに設計され、前記決定は、(a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが低下もしくは喪失している、または前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物において1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、および前記サンプルにおいてCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の相互作用を検出することを含む、前記検出;および(b)前記サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して、低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変の少なくとも1つが検出される場合に、CAR-T細胞療法による治療に対する応答性が低下しているとして個体を同定することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、本開示のキットは、CAR-T細胞療法に対する増大した非応答性を有する個体を同定するためにさらに設計され、前記同定が、(a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが低下もしくは喪失している、または前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物において1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、および前記サンプルにおいてCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の相互作用を検出することを含む、前記検出;および(b)前記サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルがCD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変の少なくとも1つが検出された場合に、CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加しているとして個体を選択すること;または、前記サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルがCD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失していない、又はCD58活性における1つ以上の分子改変が検出されない場合、CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加していないとして個体を選択することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本開示のキットは、個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化するためにさらに設計され、前記最適化が、(a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、または前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物における1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、および前記サンプルにおいて前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を検出することを含む、前記検出;および、(b)前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の検出された相互作用に基づいた、CAR-T細胞療法の治療有効量を同定することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記個体は、前記CD58の基準発現レベルと比較してCD58発現の低下したレベルもしくは喪失、または前記CD58コード遺伝子もしくはその産物における1つ以上の分子改変に関連する健康状態を有する、もしくは有する疑いがある。いくつかの実施形態において、前記健康状態は、固形腫瘍がん、非固形腫瘍がん、および血液系腫瘍からなる群から選択される増殖性障害である。いくつかの実施形態において、前記健康状態は、がん、任意選択で非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)、原発性滲出液リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、MALT(粘膜関連リンパ組織)リンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、ホジキン病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)、有毛細胞白血病、慢性筋芽球性白血病、または骨髄腫である。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物における1つ以上の分子改変は、RNA/タンパク質発現の増加、RNA/タンパク質発現の低下、発現の喪失、異常なRNA/タンパク質発現、一塩基点突然変異(SNP)、一塩基変異(SNV)、遺伝子増幅、遺伝子再構成、遺伝子融合、欠失、フレームシフト欠失、挿入、InDel変異、エピジェネティックな変化、アミノ酸置換、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記1つ以上の分子改変は、CD58発現の喪失、CD58の基準発現レベルと比較したCD58の低下した発現、またはCD58の変異型の発現を含む。いくつかの実施形態において、前記1つ以上の分子改変は、配列番号1のK60に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、前記アミノ酸置換は、Lys-to-Glu置換(K60E)である。いくつかの実施形態において、前記1つ以上の分子改変は、配列番号1のC187に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、前記アミノ酸置換は、Cys-to-Arg置換(C187R)である。いくつかの実施形態において、前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物における1つ以上の分子改変は、CD58タンパク質産物のリガンドCD2に対する、CD58タンパク質産物の低下した結合親和性を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記評価は、ディープシーケンシングによる癌個別化プロファイリング(CAPP-seq)、核酸シーケンシング、循環腫瘍核酸評価、次世代シーケンシング(NGS)、核酸増幅ベースのアッセイ、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムPCR、定量的逆転写PCR(qRT-PCR)、PCR-RFLPアッセイ、HPLC、質量分析ジェノタイピング、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、比較ゲノムハイブリダイゼーション、蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH)、制限酵素処理、キャピラリー電気泳動、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、核酸ベースの分析アッセイを用いることを含む。いくつかの実施形態において、前記評価は、免疫組織化学(IHC)、タンパク質マイクロアレイ、ウェスタンブロッティング、質量分析、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光染色、マルチプレックス検出アッセイ、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、タンパク質ベースの分析アッセイを用いることを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、本開示のキットは、前記健康状態の治療のためにさらに設計される。いくつかの実施形態において、前記CAR-T細胞療法が、単独療法として、または1つ以上の追加療法と組み合わせて個体に対して投与される。いくつかの実施形態において、前記CAR-T細胞療法および/または少なくとも1つの追加療法は、CD2シグナル伝達ドメインを備えるCAR構築物を含む。いくつかの実施形態において、前記CAR-T細胞療法は、野生型細胞における密度と比較して低密度で発現される抗原を標的化する。
【0023】
別の態様において、健康状態の診断および治療のための遺伝的ベースのシステムが本明細書において提供され、前記システムは、(a)論理プロセッサ;および(b)論理プロセッサによって実行可能なストアドプログラムコードであって、プロセッサによって実行されるとき、本開示に記載の方法を実行するための動作を提供する、前記ストアドプログラムコードを備える。いくつかの実施形態において、前記システムは、(a)論理プロセッサ;および(b)論理プロセッサによって実行可能なストアドプログラムコードであって、プロセッサによって実行されるとき、(i)CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定すること;(ii)CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増大したとして個体を同定すること;(iii)個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化すること;および(iv)個体に対するCAR-T細胞療法の治療有効量を算出して投与すること:の1つ以上を実行するための動作を提供する、前記ストアドプログラムコードを備える。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるシステムは、前記論理プロセッサに通信可能に結合されたレポートエンジンをさらに備え、前記レポートエンジンによって生成されるレポートは、前記プログラムコードの実行からの結果に依存し、前記プログラムコードは、事前に選択されたデータ入力のセットに少なくとも部分的に基づいて、CAR-T細胞療法に対する個体の応答性に相対的なパフォーマンススコアを割り当てるために、個体から得られた生物におけるCD58の発現レベル、またはCD58コード遺伝子またはその産物の1つ以上の分子改変の存在および/または不在に関する事前に選択されたデータ入力のセットを遺伝子スキャナーから受信するように前記論理プロセッサを設計して、および任意選択で:(a)CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定すること;(b)CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加したとして個体を同定すること;(c)個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化すること;および/または(d)個体に対するCAR-T細胞療法の治療有効量を算出して投与すること、
を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、本開示のシステムは、CAR-T細胞療法に対する非応答性が増大すると同定された前記個体に関連する、および/または健康状態の治療に有効であると同定されたCAR-T細胞療法に関連する情報を含有するレポートを生成することをさらに備える。いくつかの実施形態において、前記プロファイルレポートが、「.doc」;「.pdf」;「.xml」;「.html」;「.jpg」;「.aspx」;「.php」、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される符号化を有することを特徴とする。
【0026】
さらに別の態様において、実行されると、事前選択されたデータインプットのセットを含むレポートを受領すること;レポートに少なくとも部分的に基づいて、同定されたCAR-T細胞療法に対する相対的パフォーマンススコアを割り当てること;および割り当てられたパフォーマンススコアに基づいて、CAR-T細胞療法のレポートを出力すること:を含む操作をプロセッサに実行させる機械実行可能命令を含有する、非一時的なコンピュータ可読媒体が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、実行されると、事前選択されたデータインプットのセットを含むレポートを受領すること;レポートに少なくとも部分的に基づいて、同定された個体に対する相対的非応答性スコアを割り当てること;および、割り当てられた非応答性スコアに基づいて、前記個体のレポートを出力すること;を含む操作をプロセッサに実行させる機械実行可能命令を含有する、非一時的なコンピュータ可読媒体が、本明細書に提供される。したがって、本開示のシステムによって生成されたCAR-T細胞療法レポートおよび個体のレポートも、本開示の範囲に含まれる。
【0027】
一態様において、CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定するための方法が、本明細書において提供され、前記方法は、(a)前記個体から得られる生体サンプルにおいて、CD58の発現レベルがCD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;および(b)CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して、低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変のうちの少なくとも1つがサンプルにおいて検出された場合に、CAR-T細胞療法による治療に対する応答性が低下したとして個体を同定することを含む。
【0028】
別の態様において、CAR-T細胞療法に対する増大した非応答性を有する個体を同定するための方法が、本明細書において提供され、前記方法は、(a)前記個体から得られる生体サンプルにおいて、CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;および(b)CD58の発現レベルが低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変の少なくとも1つが前記サンプルで検出された場合に、CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加しているとして個体を選択すること;または前記サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが低下もしくは喪失していない、又はCD58活性における1つ以上の分子改変が検出されない場合、CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加していないとして個体を選択することを含む。
【0029】
別の態様において、個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化するための方法が、本明細書において提供され、前記方法は、(a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性において1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;(b)前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬との間の検出された相互作用に基づき、CAR-T細胞療法の治療有効量を同定することを含む。
【0030】
さらに別の態様において、個体に対してCAR-T細胞療法を投与するための方法が、本明細書において提供され、前記方法は、(a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性において1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;(b)CD58コード遺伝子またはそれらの産物と前記検出試薬の間に検出された相互作用に基づき、治療有効量のCAR-T細胞療法を投与することを含む。
【0031】
開示された方法の非制限で例示的な実施形態としては、以下の特徴の1つ以上が含まれてもよい。いくつかの実施形態において、前記個体が、CD58発現の低下したレベルもしくは喪失、またはCD58活性における1つ以上の分子改変に関連する健康状態を有する、もしくは有する疑いがある。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、前記健康状態を治療することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記健康状態は、がん、任意選択で非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)、原発性滲出液リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、MALT(粘膜関連リンパ組織)リンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、ホジキン病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)、有毛細胞白血病、慢性筋芽球性白血病、または骨髄腫である。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記CD58活性における1つ以上の分子改変は、RNA/タンパク質発現の増加、RNA/タンパク質発現の低下、発現の喪失、異常なRNA/タンパク質発現、一塩基点突然変異(SNP)、一塩基変異(SNV)、遺伝子増幅、遺伝子再構成、遺伝子融合、欠失、フレームシフト欠失、挿入、InDel変異、エピジェネティックな変化、アミノ酸置換、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。前記1つ以上の分子改変は、CD58発現の喪失、CD58の基準発現レベルと比較した低下したCD58発現、またはCD58の変異型の発現を含む。いくつかの実施形態において、前記1つ以上の分子改変が、配列番号1のK60に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、前記アミノ酸置換がLys-to-Glu置換(K60E)である。いくつかの実施形態において、前記1つ以上の分子改変が、配列番号1のC187に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、前記アミノ酸置換がCys-to-Arg置換(C187R)である。いくつかの実施形態において、前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物における1つ以上の分子改変が、CD58タンパク質産物のリガンドCD2に対する、CD58タンパク質産物の低下した結合親和性を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の相互作用の検出は、ディープシーケンシングによる癌個別化プロファイリング(CAPP-seq)、核酸シーケンシング、循環腫瘍核酸評価、次世代シーケンシング(NGS)、核酸増幅ベースのアッセイ、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムPCR、定量的逆転写PCR(qRT-PCR)、PCR-RFLPアッセイ、HPLC、質量分析ジェノタイピング、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、比較ゲノムハイブリダイゼーション、蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH)、制限酵素処理、キャピラリー電気泳動、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、核酸ベースの分析アッセイを用いることを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の相互作用の検出は、免疫組織化学(IHC)、タンパク質マイクロアレイ、ウェスタンブロッティング、質量分析、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光染色、マルチプレックス検出アッセイ、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、タンパク質ベースの分析アッセイを用いることを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される方法は、個体に対して前記CAR-T細胞療法を投与することをさらに含み、前記CAR-T細胞療法が、単独療法として、または1つ以上の追加療法と組み合わせて個体に対して行われる。いくつかの実施形態において、前記CAR-T細胞療法および/または少なくとも1つの追加療法は、CD2シグナル伝達ドメインを備えるCAR構築物を含む。いくつかの実施形態において、前記CAR-T細胞療法は、野生型細胞における密度と比較して低密度で発現される抗原を標的化する。
【0036】
前述の要約は例示のみであり、いかなる意味においても限定することを意図していない。本明細書に記載される例示的な実施形態および特徴に加えて、本開示のさらなる態様、実施形態、目的及び特徴は、図面及び詳細な説明ならびに特許請求の範囲から、完全に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1A~1Eは、アキシカブタゲンシロロイセルを投与されているLBCL患者における持続的な寛解がCD58の改変を必要としないことを実証するために行われた実験の結果を、図表を用いてまとめる。CD58における変異または免疫組織化学(IHC)によるCD58の発現喪失を有する患者は、転帰不良を有する。CR:完全応答。PR:部分的応答。SD:安定した応答。PD:進行性疾患。
図2図2A~2Jは、CD58発現における喪失が、インビトロ及び異種移植片モデルでのCAR-T細胞の有効性を少なくすることを示すために行われた実験の結果を、図表を用いてまとめる。
図3図3A~3Jは、CD58-CD2相互作用が、CAR-T細胞活性の増強の原因であることを示すために行われた実験の結果を、図表を用いてまとめる。
図4図4A~4Jは、CAR-T細胞が、B細胞悪性腫瘍におけるCD58喪失を克服するように操作され得ることを示すために行われた実験の結果を、図表を用いてまとめる。
図5図5A~5Bは、免疫組織化学(IHC)による発現喪失(図5A)またはCD58の変異を有する患者(図5B)が、CAR-T細胞療法後に転帰不良を有することを示すために行われた実験の結果を、図表を用いてまとめる。
図6図6A~6Bは、CD58ノックアウトの有無にかかわらずDIPG細胞株とインキュベートした場合のGD2-4-1BBζ CARによるサイトカイン産生の低下を示すために行われた実験の結果を、図表を用いてまとめる。
図7図7A~7Cは、CD58-野生型またはCD58-ノックアウト株に対するCD19-CD28ζもしくはCD19-4-1BBζのインビトロCAR有効性、ならびにCD58ノックアウト異種移植片および野生型異種移植片に対するインビボでのCAR有効性を評価するために行われた実験の結果を、図表を用いてまとめる。
図8図8A~8Bは、アクチン細胞骨格再編成に関与するタンパク質、並びに例えばVASPおよびWAS等が、CD2刺激細胞で上昇することを示すために行われた実験の結果を、図表を用いてまとめる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示は、一般的に、とりわけ、CD58活性における1つ以上の分子改変に関する、増殖性障害(たとえば、がん)などの様々な健康状態の診断および/または治療のための方法、キット及びシステムに関する。特に、本開示のいくつかの実施形態は、CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定するための方法に関する。本開示のいくつかの実施形態は、CAR-T細胞療法に対する増大する非応答性を有する個体を同定するための方法に関する。本開示の他の実施形態は、それを必要とする個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化するための方法に関する。本開示の追加の実施形態は、それを必要とする個体にCAR-T細胞療法を投与するための方法に関する。また、それを必要とする個体の健康状態の予防および/または治療のための、キットおよびシステムも提供される。
【0039】
上述したように、B細胞悪性腫瘍などの癌細胞上の適切な細胞表面分子にT細胞をリダイレクトすることに依存する、CAR改変自己由来T細胞(CART)療法を用いる近年の開発は、B細胞悪性腫瘍および他の癌を治療するために免疫系の力を利用することにおいて、望ましい結果を示す。特に、CD19 CAR-T細胞は、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)を含む、B細胞悪性腫瘍の治療を改革した。例えば、CD19 CAR-T細胞の単回投与は、LBCL患者の約50%において完全寛解をもたらす。この成功により、臨床開発において、2つの薬剤(アキシカブタゲンシロロイセル及びチサゲンレクルーセル)がその他の薬剤とともにFDAに承認された。特に、LBCL患者の大多数において完全応答が持続する。
【0040】
第2相試験は、最大40%の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)における、CD19 CARに対する持続的な完全応答率(CR)率を実証しており、これは以前の標準治療よりも有意な改善である。これらの結果およびアキシカブタゲンシロロイセル(YESTARTA(登録商標))の実際の試験に基づいて、CD19-CAR-T細胞療法は、2つのラインの化学療法に失敗した後の、LBCLの標準治療に現在なっている。進行中の臨床試験は、CD19 CAR T療法が、難治性または早期再発性LBCLについて新しい基準になるかどうかを決定する(NCT03391466、NCT03575351およびNCT03570892)。
【0041】
しかしながら、疾患の進行の原因を同定するために、および現在のCAR-T療法に対する耐性が発達した患者を治療するために、緊急治療の必要が存在する。特に、CD19の喪失は、B細胞急性リンパ性白血病(B-ALL)に対するCAR-T細胞療法後の再発の最も一般的な原因であると考えられ、1つのシリーズで再発の90%以上を占めており、LBCLの症例の最大30%でも発生することが報告されている。この耐性は、治療後の生検が治療抵抗性を促進する患者固有の要因を決定するための標準となったため、ごく最近観察された。
CAR耐性の作用機序を完全に理解することは、どの患者がCAR-T細胞の恩恵を受ける可能性が最も高いかを決定し、より多くの患者に利益を拡大できる新しい構築物を生成するのに役立つ。特定の理論に束縛されるものではないが、LBCLにおけるCD19 CARに対する高い割合の完全応答は持続性があるため、CR率の増加は、より多くの患者の治癒につながる。
【0042】
CAR-T細胞の有効性の作用機序はよく理解されていない。一般に、共刺激ドメインを第2世代の構築物に導入することで、CD19 CARで観察された臨床的成功がもたらされたと考えられている。しかしながら、最近の研究では、前臨床モデルにおける第2世代CARで認識された利点のいくつかは、実際にはCAR構造の他の要素によって推進され得ることが示されている。以下でより詳細に説明するように、本明細書に提示される実験結果は、それらが高機能共刺激ドメインを含むにもかかわらず、FDA承認を受けたCD19-CAR-T細胞治療薬アキシカブタゲンシロロイセル及びチサゲンレクルーセルの両方が、T細胞が腫瘍細胞上のその天然リガンドであるCD58を介してCD2によって追加の共刺激を奪われると、最終的に機能しなくなることを実証する。しかしながら、本明細書に記載される実験データは、CD58変異または喪失の有害な影響が、腫瘍細胞により発現される標的抗原密度に状況依存し得ることも示す。
【0043】
CD2は、天然TCRにとって重要な共刺激ドメインであり、CD58とのその相互作用は、TCRライゲーション後並びにインビトロでの第1世代CARsによるサイトカイン産生を支援することが以前に示されている。以下でより詳細に記載されるように、本明細書に記載のいくつかの実験は、CAR-T細胞の環境におけるCD2ライゲーションの役割を探求するために実施され、天然TCRと同様に、CD58によるCD2ライゲーションは、近位TCR分子の増強されたリン酸化をもたらすだけでなく、T細胞活性にとって重要な細胞骨格および接着分子も変化させることを見出した。本明細書に提示されたデータは、CD2を介して活性化された細胞傷害性Tリンパ球のホスホペプチドームに関する最近発表された研究と一致しており、CD2は腫瘍細胞溶解をもたらす細胞骨格再配列を促進すると決定された。さらに、CARD11-BCL10-MALT1(CBM)シグナル伝達体のリン酸化は、CD58を発現する標的細胞に対する持続的な抗腫瘍活性を説明する潜在的な作用機序を提供する。
【0044】
研究のボリュームは、追加の共刺激性およびサイトカインシグナルをCAR構築物に導入することによって、より機能的なCARを生成することに焦点を当てている。しかしながら、この研究は主に、患者における耐性の真の作用機序を捉えなくてよい前臨床モデリングによって進められている。固形腫瘍を含む追加の適応症を持つ、より多くの患者にCARが展開されるにつれて、研究者がCAR失敗の作用機序を理解することを導くことができる深い相関研究が実施されることが不可欠であり得る。CD58異常の患者およびCD58がノックアウトされた前臨床モデルにおいて、CD19 CARの制限された活性を観察した後、CD2シグナル伝達の導入によってこの新しい耐性作用機序を克服できるCAR-T細胞を生成するために、追加の実験が行われた。CD2共刺激が従来のCARに対してトランスに提供されるCAR-T細胞は、インビボでCD58喪失を克服することに成功したことがわかった。本明細書に提示された実験結果も、本明細書に提示された実験結果はまた、天然TCR設定で生じる、および代替共刺激ドメインを有するCARについて以前に報告されているように、共刺激が、トランスでCAR構築物に最良に提供され得ることを示している。
【0045】
CD58の突然変異および発現における変化は、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、さらには結腸癌を含む他の癌において一般的である。したがって、この軸は、他の疾患のCAR-T細胞転帰における重要な決定要因となり、チェックポイント阻害剤、二重特異性抗体、トランスジェニックTCRなどの他の免疫療法様式に対する反応を予測できる可能性がある。さらに、CD2ライゲーションはナチュラルキラー(NK)細胞の機能にとっても重要であり、CD58変異がB細胞悪性腫瘍の治療のための有望な様式として近年認識されている、CAR-NK細胞の有効性を制限する可能性があることを示している。また、腫瘍細胞にはCAR機能を調節できる追加の共受容体があり、CD58と同様に、CAR-T細胞療法への反応を予測する上で重要な要素としてわかっている。
【0046】
定義
【0047】
他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法および他の科学用語または用語は、本開示が関係する当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。場合によっては、一般的に理解されている意味を有する用語は、明確性のためにおよび/または即時に参照するために本明細書において定義され、本明細書にそのような定義を含めることは、必ずしも当該技術分野において一般的に理解されているものに対する実質的な相違を表すと解釈されるべきではない。本明細書に記載または参照される技術および手順の多くは、当業者によって十分に理解され、従来の方法論を用いて一般的に採用される。
【0048】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形の参照を含む。例えば、用語「細胞」は、1つ以上の細胞を含み、それらの混合物を含む。「Aおよび/またはB」は、本明細書において、「A」、「B」、「AまたはB」、および「AおよびB」の全ての代替を含むために使用される。
【0049】
特定の範囲は、本明細書において、数値が「約」という用語の前に付されて提示される。用語「約」は、本明細書において、それが先行する正確な数、ならびに該用語が先行する数に近いまたはほとんど該用語が先行する数である数に対する、正確なサポートを提供するために使用される。ある数が、具体的に列挙された数に近い又はほぼ具体的に列挙された数であるかを決定する際に、近い又は近似の列挙されていない数は、それが提示される文脈において、具体的に列挙された数と実質的に同等を提供する数であり得る。近似の程度が文脈から明確でない場合、「約」は、提供された値を含むすべての場合において、提供された値のプラスマイナス10%以内、または最も近い有効数字に丸められる。いくつかの実施形態において、「約」という用語は、指定値±最大10%、最大±5%、または最大±1%を示す。
【0050】
本明細書において使用される用語「投与」および「投与すること」は、非限定的に、経口、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、筋肉内、および局所投与、またはそれらの組み合わせを含む投与経路による生理活性組成物もしくは製剤の送達を指す。当該用語には、医療専門家による投与および自己投与が、非限定的に含まれる。
【0051】
「癌」は、非制御増殖、不死化、転移能、急速な成長および増殖速度、ならびに特定の特徴的な形態学的特徴などの、癌原因細胞に典型的ないくつかの特徴を有する細胞の存在を指す。癌細胞は、腫瘍などの塊に凝集することも、個体内で単独で存在することもできる。腫瘍は、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、または転移性病変であり得る。本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、他のタイプの非腫瘍癌も包含する。非限定的な例としては、血液癌または血液学的癌、例えば白血病が含まれる。がんには、前がん性および悪性がんが挙げられ得る。
【0052】
「細胞」、「細胞培養物」、および「細胞株」という用語は、特定の対象細胞、細胞培養物、または細胞株だけでなく、培養における移植もしくは継代の数に関係なく、そのような細胞、細胞培養物、または細胞株の子孫もしくは潜在的子孫も指す。すべての子孫が親細胞とまったく同じではないことを理解されたい。これは、特定の改変が、突然変異(例えば、意図的もしくは不注意な突然変異)または環境的影響(例えば、メチル化もしくは他のエピジェネティック修飾)のいずれかのために、次の世代において起こり得るためであり、その結果、子孫は、実際には、親細胞と同一でない可能性があっても、子孫が元の細胞、細胞培養物、または細胞株と同じ機能を保持する限り、本明細書で使用される用語の範囲内に依然として含まれる。
【0053】
本明細書において使用される用語「操作された」または「組換え」核酸分子、ポリペプチド、または細胞は、人間の介入によって改変された核酸分子、ポリペプチド、または細胞を指す。
【0054】
本明細書で使用する場合、かつ特に指定しない限り、薬剤の「治療有効量」または「治療有効数」は、疾患(例えば、癌)の治療もしくは管理において治療的利益を提供する、または疾患に関連する1つ以上の症状を遅延もしくは最小化するのに十分な量もしくは数である。化合物の治療有効量または数とは、単独でまたは他の治療剤と組み合わせて、疾患の治療または管理において治療上の利益を提供する治療剤の量もしくは数を意味する。用語「治療有効量」は、疾患の全体的な治療を改善する、疾患の症状もしくは原因を軽減もしくは回避する、または別の治療薬の治療有効性を高める量もしくは数を包含してもよい。「有効量」の一例は、疾患の症状(単数または複数)の治療、予防、もしくは軽減に寄与するのに十分な量であり、「治療有効量」とも称され得る。症状の「軽減」とは、症状(単数または複数)の重症度の低下または頻度の減少、もしくは症状(単数または複数)の排除を意味する。「治療有効量」を含む組成物の正確な量は、治療の目的に依存し、既知の技術を用いて当業者によって確認可能であろう(Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 2010); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (2016); Pickar, Dosage Calculations (2012); and Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 22nd Edition, 2012, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkins等を参照)。
【0055】
本明細書において使用される場合、「対象」または「個体」は、動物、例えばヒト(例えば、ヒト対象)および非ヒト動物を含む。いくつかの実施形態において、「対象」又は「個体」は、医師のケア下にある患者である。したがって対象は、目的の疾患(例えば、癌)、および/または当該疾患の1つ以上の症状を有する、有する危険性がある、もしくは有することが疑われる、ヒト患者もしくは個体であり得る。対象はまた、診断時またはそれ以降に目的の健康状態の危険性を有すると診断された個体であり得る。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、非ヒト霊長類、およびその他の哺乳動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、並びに非哺乳動物、例えば両生類、爬虫類などを含む。
【0056】
値の範囲が提供される場合、文脈が別段に明確に指示しない限り、その範囲の上限および下限と、その記載された範囲内の他の任意の記載されたまたは介在する値との間の、下限の単位の十分の一までの各介在値が、開示内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立して、より小さな範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の特に除外された制限を条件として、開示内に包含される。記載された範囲が制限の一方または両方を含む場合、それらに含まれる制限のいずれかまたは両方を除外する範囲も開示に含まれる。
【0057】
本明細書に記載される開示の態様および実施形態は、「~を含む」、「~を構成する」、および「本質的に~からなる」態様および実施形態を含むことが理解される。本明細書で使用される場合、「含む」は、「備える」、「含有する」、または「~によって特徴付けられる」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、列挙されていない要素または方法ステップを排除するものではない。本明細書で使用される場合、「~からなる」は、特許請求の範囲の組成物または方法において特定されていない任意の要素、ステップ、または成分を除外する。本明細書で使用される場合、「本質的に~からなる」は、特許請求の範囲の組成物または方法の基本的および新規な特性に、実質的に影響を及ぼさない材料またはステップを排除しない。本明細書における用語「含む」の任意の列挙は、特に組成物の構成要素の説明または方法のステップの説明において、列挙された構成要素または工程から本質的になる、およびそれらからなる組成物並びに方法を包含すると理解される。
【0058】
見出し、例えば、(a)、(b)、(i)等は、単に明細書および特許請求の範囲を読みやすくするために提示される。本明細書または特許請求の範囲における見出しの使用は、ステップまたは要素をアルファベット順もしくは番号順、またはそれらが提示される順序で実行することを要求するものではない。
【0059】
本開示の特定の特徴は、明確性のために、別々の実施形態で記載され、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることが理解される。逆に、本開示の様々な特徴は、簡潔にするために、単一の実施形態で記載され、別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで提供することもできる。本開示に関する実施形態のすべての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、あたかもすべての組み合わせが個別におよび明示的に開示されたかのように本明細書に開示される。加えて、様々な実施形態およびその要素の全てのサブコンビネーションもまた、本開示によって具体的に包含され、そのようなサブコンビネーションの各々が個別かつ明示的に本明細書に開示されたかのように本明細書に開示される。
【0060】
CD58
【0061】
リンパ球機能関連抗原-3(LFA-3)としても知られるCD58は、1980年代に接着分子としてヒト(ホモ サピエンス)から最初に同定された。これは、細胞外領域に単一のVセットおよびC2セットIgスーパーファミリー(IgSF)ドメインを含む、高度にグリコシル化されたタンパク質である。CD58は、樹状細胞、マクロファージ、内皮細胞、および赤血球を含む、ヒト造血系および非造血系譜の表面に、膜貫通型およびグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型で発現した。CD58は、ブタ(Sus scrofa)およびヒツジ(Ovis aries)を含む、いくつかの他の哺乳類からも同定された。ヒトにおけるいくつかの以前の研究では、T細胞サイトカイン産生、IL-12に対するT細胞応答性、単球からのTNF-αおよびIL-1βの誘導、並びにB細胞によるIgE産生におけるCD58の関与が示されている。抗CD58モノクローナル抗体およびCD58-Ig融合タンパク質によるCD58の遮断は、炎症反応を低下させ、細胞傷害性Tリンパ球およびNK細胞による、標的細胞の認識および細胞溶解を低下させる可能性がある。これらの知見は、CD58が自然免疫と適応免疫の両方で重要な役割を果たしており、特にエフェクターおよび標的細胞レベルで、調節的役割を果たしていることを示唆している。
【0062】
CD58およびCD2は、CD8+T細胞およびNK細胞などの様々な細胞型における免疫調節に関与する一対の相互接着分子として知られている。特に、CD2経路は、CD3-非依存性T細胞の活性化を直接媒介することができ、CD8+T細胞およびNK細胞などの様々な免疫細胞タイプにおいて共刺激的役割を果たすため、この一対の接着分子は、ヒトおよび他のいくつかの哺乳類におけるCD8+T細胞およびNK細胞媒介細胞免疫の免疫調節に関与する。ほとんどの場合、CD58は、リンパ球機能関連抗原-2(LFA-2)としても知られている、受容体CD2との相互作用を通じてその機能を発揮する。CD2は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーでもあり、ほぼすべての成熟末梢T細胞、胸腺細胞、NK細胞、および胸腺B細胞の表面に発現している。CD58のCD2との相互作用は、細胞性免疫、例えばCD8+細胞傷害性Tリンパ球およびNK細胞媒介性細胞傷害性反応の活性化に不可欠であると理解され得る。
【0063】
ヒトにおいて、CD58は、選択的スプライシングおよび糖鎖付加に応じて、55,000~75,000 daのサイズの範囲の複数のアイソフォームを有する。CD58は、2つの細胞外ドメインと1つの膜貫通ドメインからなり、ほとんどすべての細胞、特に抗原提示細胞、特にマクロファージおよびB細胞を含む造血細胞の表面に発現している。CD58発現は、サイトカイン刺激によって増大する。それは、細胞接着を媒介して、リガンドであるCD2(LFA-2)に結合するとシグナル伝達に関与する。CD58/CD2軸によって制御される細胞間相互作用は、抗原非依存性接着経路および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性に関与している。CD58には2つのアイソフォームが存在する。一方のアイソフォームはグリコホスファチジル イノシトール尾部によって細胞膜に固定され、他方は膜貫通疎水性セグメントおよび12個のアミノ酸からなる細胞質セグメントを有する。さらに、2つの細胞外ドメインの最初のドメインのみがTリンパ球の表面上のCD2に結合し、Tリンパ球と抗原提示細胞を近づけて、Tリンパ球が免疫応答を生成することを可能にする。CD58 アイソフォーム1(ロングアイソフォームとしても知られる)のアミノ酸配列は、以下に示される。
【0064】
ヒトCD58 アイソフォーム1(配列番号1)
MVAGSDAGRA LGVLSVVCLL HCFGFISCFS QQIYGVVYGN VTFHVPSNVP
LKEVLWKKQK DKVAELENSE FRAFSSFKNR VYLDTVSGSL TIYNLTSSDE
DEYEMESPNI TDTMKFFLYV LESLPSPTLT CALTNGSIEV QCMIPEHYNS
HRGLIMYSWD CPMEQCKRNS TSIYFKMEND LPQKIQCTLS NPLFNTTSSI
ILTTCIPSSG HSRHRYALIP IPLAVITTCI VLYMNGILKC DRKPDRTNSN
【0065】
ヒトCD58アイソフォーム2のアミノ酸配列(ショートアイソフォームとしても知られる;配列番号2)は、アミノ酸残基236~237が(GIの代わりに)VLであり、アミノ酸残基238~250が欠失していることを除いて、上記の配列番号1と同様である。このCD58アイソフォーム2は、フレームシフトを引き起こす変異体1(アイソフォーム1をコードする)と比較して、3’コード領域に代替セグメントを含む、転写産物変異体の翻訳産物である。
【0066】
ヒトCD58 アイソフォーム2(配列番号2)
MVAGSDAGRA LGVLSVVCLL HCFGFISCFS QQIYGVVYGN VTFHVPSNVP
LKEVLWKKQK DKVAELENSE FRAFSSFKNR VYLDTVSGSL TIYNLTSSDE
DEYEMESPNI TDTMKFFLYV LESLPSPTLT CALTNGSIEV QCMIPEHYNS
HRGLIMYSWD CPMEQCKRNS TSIYFKMEND LPQKIQCTLS NPLFNTTSSI
ILTTCIPSSG HSRHRYALIP IPLAVITTCI VLYMNVL
【0067】
CD58は、CD2(LFA-2)へ結合することにより、細胞毒性活性の発現または抗原提示反応に関係すると知られている。特に、CD58のCD2への結合は、例えばT細胞上で、T細胞と専門抗原提示細胞(APC)との間の接着を強化する上で重要である。この接着は、T細胞受容体が反応するペプチド:MHC複合体を求めてT細胞がリンパ節を移動しているときに、T細胞が活性化される前のT細胞とAPCとの間の一時的な最初の遭遇の一部として発生する。
【0068】
CD58の突然変異は、いくつかのリンパ腫において観察される免疫回避に関連しており、その関与が古典的ホジキンリンパ腫に直接どのように影響するかを分析するための研究が進行中である。CD58遺伝子の多型は、多発性硬化症のリスク増加と関連している。例えば、多発性硬化症のリスクが高い一塩基多型rs1335532を含むゲノム領域は、エンハンサー特性を有し、リンパ芽細胞におけるCD58プロモーター活性を有意に高めることができる。保護(C)rs1335532対立遺伝子は、Wntシグナル伝達経路の標的である、ASCL2転写因子の機能的結合部位を作成する。さらに、CD58は結腸直腸腫瘍開始細胞の調節において機能する。したがって、CD58を発現する細胞は、腫瘍形成における対象になった。
【0069】
CD58はB-ALLにおいて高度に発現され、その疾患におけるフローサイトメトリーによる最小残存疾患の重要なマーカーとして役立つ一方で、LBCLにおいて頻繁に変異、下方制御、欠失、またはサイレンシングされる。さらに、CD58の喪失は、以前に再発LBCLの免疫回避に関連していた。
【0070】
CD19 CAR-T細胞療法に対する応答の決定におけるLBCLに対するCD58発現の役割は、以下により詳細に記載される。特に、CD58発現の喪失またはCD58変異を有する患者は、アキシカブタゲンシロロイセルに対する持続的な応答を達成しないことを実証するために実験が設計および実施されている。さらに、インビトロの系およびネズミ異種移植片を用いて、CARコンストラクト、そして最終的にはLBCLにおけるCD58喪失を克服することができるCAR-T細胞を生成することによって、CD58ライゲーションの機能的重要性が調査されてきた。LBCLにおける耐性機構を解剖することにより、本明細書に記載される実験結果は、より多くの患者に耐久性のある寛解を拡大することができる新規治療薬の生成を示す。
【0071】
リンパ球機能関連抗原-3(LFA-3)としても知られるCD58は、細胞接着を媒介し、そのリガンドであるCD2に結合するときにシグナル伝達に関与する。CD58/CD2抗原によって調節される細胞間相互作用は、抗原非依存性接着経路および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性に関与している。CD58には2つのアイソフォームが存在する。一方のアイソフォームはグリコホスファチジル イノシトール尾部によって細胞膜に固定され、他方は膜貫通疎水性セグメントおよび12個のアミノ酸からなる細胞質セグメントを有する。
【0072】
本開示の方法
【0073】
本明細書においてより詳細に記載されるように、本開示のいくつかの実施形態は、CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定するための様々な方法を提供し、該方法は、(a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、CD58の発現レベルがCD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、および前記サンプルにおいてCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の相互作用を検出することを含む、前記検出;および、(b)前記サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが、低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変の少なくとも1つが検出される場合に、CAR-T細胞療法による治療に対する応答性が低下しているとして個体を同定することを含む。
【0074】
別の態様において、CAR-T細胞療法に対する増大した非応答性を有する個体を同定する方法が、本明細書において提供され、該方法は、(a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルがCD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD活性において1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、および前記サンプルにおいてCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の相互作用を検出することを含む、前記検出;および、(b)前記サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変の少なくとも1つが検出された場合に、CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加しているとして個体を選択すること;または、前記サンプルにおいて、CD58活性における1つ以上の分子改変が検出されない場合、CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加していないとして個体を選択することを含む。
【0075】
別の態様において、個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化するための方法が、本明細書において提供され、該方法は、(a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、および前記サンプルにおいて前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を検出することを含む、前記検出;(b)前記CD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と前記検出試薬の間の検出された相互作用に基づいた、CAR-T細胞療法の治療有効量を同定することを含む。
【0076】
さらに別の態様において、個体に対してCAR-T細胞療法を投与する方法が、本明細書において提供され、該方法は、(a)前記個体から得られた生体サンプルにおいて、前記CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58活性において1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;(b)CD58コード遺伝子またはそれらの産物と前記検出試薬の間に検出された相互作用に基づき、治療有効量のCAR-T細胞療法を投与することを含む。
【0077】
一つの態様において、CD58の低下もしくは喪失した発現、またはCD58コード遺伝子における1つ以上の分子改変の少なくとも1つによって特徴付けられる健康状態を有する個体を治療する方法が提供され、該方法は、前記個体から得られる生体サンプルにおいて、CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物において、1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して、低下もしくは喪失している、またはCD58活性における1つ以上の分子改変のうちの少なくとも1つがサンプルにおいて検出された場合に、CD2シグナル伝達ドメインを含むCAR構築物による治療に応答する可能性が高い個体を同定すること、および、CD2を含むCAR構築物による治療に応答する可能性が高いとステップ(b)において同定された個体に、CD2シグナル伝達ドメインを備えるCAR構築物による前記治療を投与することを含む。
【0078】
さらに別の態様において、個体における健康状態を治療する方法が提供され、該方法は、前記個体から得られる生体サンプルにおいて、CD58の発現レベルが、CD58の基準発現レベルと比較して低下もしくは喪失している、またはCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物において、1つ以上の分子改変が存在するかどうかを検出することであって、前記生体サンプルを検出試薬と接触すること、およびCD58コード遺伝子もしくはそれらの産物と検出試薬の間の相互作用を前記サンプルにおいて検出することを含む、前記検出;および、ステップ(a)におけるCD58の発現レベルの低下もしくは喪失、またはCD58コード遺伝子における1つ以上の分子改変の検出に基づいて、前記個体に対して、CD2シグナル伝達ドメインを備えるCAR構築物による治療を投与することを含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、CD58の基準発現レベルは、患者の群/集団からのサンプルにおけるCD58の発現の中央値レベルを含むことができる。いくつかの実施形態において、患者の群/集団は、CAR-T細胞療法に対する応答性について試験されている。いくつかの実施形態において、基準発現レベルは、以前の時点で個体から以前得られたサンプル中のレベルであり得る。いくつかの実施形態において、基準発現レベルは、CAR-T療法による前処置を受けたが、健康状態の再発(例えば、LBCLの再発)を有した患者からのサンプル中のレベルであり得る。いくつかの実施形態において、基準発現レベルは、CAR-T療法による前処置を受け、健康状態(例えば、LBCL)の再発を有さなかった患者由来のサンプル中のレベルであり得る。いくつかの実施形態において、基準発現レベルは、健常個体由来のサンプルにおけるレベルであり得る。いくつかの実施形態において、参照発現レベル、例えば上記に記載の群由来のサンプルにおける参照発現レベルよりも小さいCD58発現レベルを有する個体は、本明細書に記載のトランスCAR構築物、例えば、膜貫通ドメインおよびCD2細胞内ドメインに融合した抗CD19一本鎖可変フラグメント(scFv)FMC63を含むトランスCAR構築物を含まない、CAR-T療法による治療に対する応答性が低い可能性がある対象/患者として同定され得る。例えば、参照CD58発現レベル(上記の中央値レベルなど)と比較して、約90%、80%、70%、60%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%低いCD58発現レベルを示す、またはCD58の発現が完全に喪失している、当該対象/患者は、本明細書に記載のトランスCAR構築物、例えば、膜貫通ドメインおよびCD2細胞内ドメインに融合した抗CD19一本鎖可変フラグメント(scFv)FMC63を含むトランスCAR構築物による治療に応答する可能性がある対象/患者として同定され得る。
【0080】
本明細書において使用される場合、「1つ以上の分子改変」という語句は、対応する野生型遺伝子またはタンパク質と比較したような個体における遺伝子もしくはタンパク質配列、または複数の細胞における任意の変動を指す。1つ以上の分子変化には、非限定的に、遺伝子変異、遺伝子増幅、スプライス変異体、欠失、挿入/欠失(In/Del)、遺伝子再構成、一塩基変異(SNV)、挿入、および異常なRNA/タンパク質発現が含まれる。例えば、いくつかの実施形態において、CD58活性の分子的変化は、RNA/タンパク質発現の増加、RNA/タンパク質発現の低下、発現の喪失、異常なRNA/タンパク質発現、一塩基点突然変異(SNP)、一塩基変異(SNV)、遺伝子増幅、遺伝子再構成、遺伝子融合、欠失、フレームシフト欠失、挿入、InDel変異、エピジェネティックな変化、アミノ酸置換、およびそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の分子改変は、CD58発現の喪失、CD58の基準発現レベルと比較したCD58の低下した発現、またはCD58の変異型の発現を含む。いくつかの実施形態において、分子改変のうちの少なくとも1つは、配列番号1または配列番号2のK60に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、分子改変のうちの少なくとも1つは、配列番号1のK60に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、分子改変のうちの少なくとも1つは、配列番号2のK60に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む。
【0081】
開示された方法の非限定的な例示的な実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施態様において、方法は、CD58発現のレベルの低下若しくは喪失又はCD58活性の1つ以上の分子的変化に関連する増殖性疾患(例えば、癌)などの、1つ以上の健康状態を有する、有すると疑われる、又は発症リスクが高い可能性がある個体に、治療有効量のCAR-T細胞療法を投与することを含む。いくつかの実施形態において、個体は、医師のケア下にある患者である。例示的な増殖性疾患は、非限定的に、血管新生性疾患、転移性疾患、腫瘍形成性疾患、腫瘍性疾患および癌を含むことができる。いくつかの実施形態において、増殖性疾患は癌である。いくつかの実施形態において、癌は小児癌である。いくつかの実施形態において、癌は、膵臓癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、中皮腫、乳癌、尿路上皮癌、肝臓癌、頭頸部癌、肉腫、子宮頸癌、胃癌、胃癌、黒色腫、ブドウ膜黒色腫、胆管癌、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、および膠芽腫である。
【0082】
いくつかの実施形態において、健康状態は、固形腫瘍癌、非固形腫瘍癌、及び血液悪性腫瘍からなる群から選択される増殖性障害である。例示的な癌としては、非限定的に、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)、B細胞型急性リンパ性白血病(B-ALL)、T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞前骨髄球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞または大細胞濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成および骨髄異形成症候群、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫(HL)、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、およびワルデンストレームマクログロブリン血症が挙げられる。一実施形態において、癌はALLである。別の実施形態において、癌はCLLである。一実施形態において、癌はCD19発現と関連している。
【0083】
いくつかの実施形態において、癌は、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)、原発性滲出液性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、MALT(粘膜関連リンパ組織)リンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫(例えば、様々な形態のホジキン病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞慢性リンパ性白血病(BCLL)、有毛細胞白血病、慢性筋芽球性白血病、および骨髄腫からなる群から選択されるB細胞悪性腫瘍である。
【0084】
いくつかの実施形態において、CD58活性における1つ以上の分子改変は、RNA/タンパク質発現の増加、RNA/タンパク質発現の低下、発現の喪失、異常なRNA/タンパク質発現、一塩基点変異(SNP)、一塩基変異(SNV)、遺伝子増幅、遺伝子再構成、遺伝子融合、欠失、フレームシフト欠失、挿入、InDel変異、エピジェネティックな変化、アミノ酸置換、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、1つ以上の分子改変は、CD58発現の喪失、CD58の基準発現レベルと比較したCD58の発現の低下、またはCD58の変異形態の発現を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の分子改変は、配列番号1または配列番号2のK60に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の分子改変は、配列番号1のK60に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の分子改変は、配列番号2のK60に対応する位置でのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、Lys-to-Glu置換(K60E)である。いくつかの実施形態において、1つ以上の分子改変は、配列番号1または配列番号2のC187に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の分子改変は、配列番号1のC187に対応する位置におけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の分子改変は、配列番号2のC187に対応する位置でのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、Cys-to-Arg置換(C187R)である。
【0085】
原則として、本明細書に記載の方法における使用に適した生体サンプルの種類に関して特に制限はない。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、喀痰、気管支肺胞洗浄液、胸水、組織、全血、血清、血漿、頬掻爬、唾液、脳脊髄液、尿、便、循環腫瘍細胞、循環核酸、骨髄、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、細胞または組織を含む。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、細胞または組織を含む。例えば、生体サンプルは、生検、コア生検、針吸引液、または細針吸引液などの組織サンプルであり得る。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血液サンプル、尿サンプル、または唾液サンプルなどの流体サンプルであり得る。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、皮膚サンプルであり得る。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、頬スワブであり得る。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血液全体および血液成分を含む。いくつかの実施形態において、血液成分は、血漿を含む。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、血漿サンプルまたは血清サンプルであり得る。いくつかの実施形態において、組織は、腫瘍組織または癌組織である。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、腫瘍細胞を含む。いくつかの実施形態において、生体サンプルは、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、非固体腫瘍、転移性病変、循環腫瘍細胞(CTC)集団に由来する。生体サンプルは、無傷の組織サンプルを含み得る。生体サンプルは、腫瘍細胞株であるか、または異種移植片モデルまたは患者由来の異種移植片(PDX)であり得る。いくつかの実施形態において、第1及び第2の腫瘍サンプルは、異なる被験体に由来する。
【0086】
検出試薬と、CD58コード遺伝子またはその生成物との相互作用は、1つ以上の核酸ベースの分析アッセイ、タンパク質ベースの分析アッセイ、またはそれらの組み合わせを使用して検出され得る。本開示の方法およびシステムに適した検出試薬の非限定的な例には、二本鎖核酸、一本鎖核酸(例えば、プライマー、プローブ)、非蛍光および蛍光核酸特異的色素、酵素、および抗体が挙げられる。
【0087】
いくつかの実施形態において、CD58コード遺伝子又はその産物の1つ以上の分子改変の存在及び/又は不在の評価、並びに/もしくは、検出試薬とCD58コード遺伝子又はその産物との相互作用の検出は、ディープシーケンシングによる癌個別化プロファイリング(CAPP-seq)、核酸シーケンシング、循環腫瘍核酸評価、次世代シーケンシング(NGS)、核酸増幅ベースのアッセイ、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リアルタイムPCR、定量的逆転写PCR(qRT-PCR)、PCR-RFLPアッセイ、HPLC、質量分析ジェノタイピング、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、比較ゲノムハイブリダイゼーション、蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH)、制限酵素処理、キャピラリー電気泳動、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される核酸ベースの分析アッセイを含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、CD58コード遺伝子の1つ以上の分子改変の存在および/または不在の評価は、ディープシーケンシング(CAPP-seq)による癌個別化プロファイリングを含む(例えば、実施例1を参照)。CAPP-seqは、がんの循環腫瘍DNA(ctDNA)を分析および/または定量するために使用される次世代シーケンシングベースの方法である。該方法は、再発性変異を有することが知られている任意の癌のタイプに使用することができる。CAPP-Seqは、10,000分子の健康なDNAから1分子の変異DNAを検出できる。この技術におけるctDNAの使用は、循環腫瘍細胞(CTC)と混同してはいけない。
【0089】
いくつかの実施形態において、電気泳動移動度アッセイは、個体から得られた生体サンプル中に存在するCD58活性における1つ以上の分子改変の情報を得るために使用される。例えば、変異をコードする核酸配列は、CD58遺伝子における1つ以上の改変に対応する核酸領域を増幅し、増幅された核酸の電気泳動移動度を野生型CD58遺伝子における対応する領域の電気泳動移動度と比較することによって検出することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、生体サンプル中に存在するCD58活性における1以上の分子改変の情報を獲得するために使用される分析アッセイは、(1)1つ以上の変異をコードする核酸配列に相補的な核酸配列を含み、(2)検出可能な標識を含む核酸プローブと生体サンプルに由来する核酸とを接触させることを含む、核酸ハイブリダイゼーションアッセイを伴う。
【0091】
いくつかの実施形態において、生体サンプル中に存在するCD58活性における1つ以上の分子改変の情報を得るために使用される分析アッセイは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または核酸増幅ベースのアッセイを含む。リアルタイムPCR、定量的逆転写PCR(qRT-PCR)、PCR-RFLPアッセイ、ループ媒介等温増幅(LAMP)、およびローリングサークル増幅(RCA)を非限定的に含む、当該技術分野において公知の多数のPCRベースの分析アッセイが本明細書に開示される方法に適している。
【0092】
いくつかの実施形態において、生体サンプル中に存在するCD58活性における1つ以上の分子改変の情報を得るために使用される分析アッセイは、1つ以上の分子改変を含む核酸配列および/またはアミノ酸配列を決定することを含む。いくつかの実施形態において、癌患者由来の1つ以上の分子改変を含む核酸配列が配列決定される。いくつかの実施形態において、配列は、次世代シーケンシング手順によって決定される。本明細書で使用される「次世代シーケンシング」とは、数千から数百万のシーケンシング反応を並行して実行および読み出すために、従来のシーケンシング方法(例えばサンガーシーケンシング)で可能な速度を超える速度でオリゴヌクレオチドをシーケンシングする能力を有するオリゴヌクレオチドシーケンシング技術を指す。次世代シーケンシング方法/プラットフォームの非限定的な例には、Massively Parallel Signature Sequencing (Lynx Therapeutics); solid-phase, reversible dye-terminator sequencing (Solexa/Illumina); DNA nanoball sequencing (Complete Genomics); SOLiD technology (Applied Biosystems); 454 pyro-sequencing (454 Life Sciences/Roche Diagnostics); ion semiconductor sequencing (ION Torrent);およびPacific Biosciences、Intelligen Bio-systems、Oxford Nanopore Technologies、Helicos Biosciencesから入手可能な技術が、挙げられる。
【0093】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法において使用されるNGS手順は、パイロシーケンシング、合成による配列決定、ライゲーションによる配列決定、または、それらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、NGS手順は、Illumina、Ion Torrent、Qiagen、Invitrogen、Applied Biosystem、Helicos、Oxford Nanopore、Pacific Biosciences、およびComplete Genomicsから選択されるNGSプラットフォームにより実行される。
【0094】
いくつかの実施形態において、FISH分析は、本明細書に記載の、変異した遺伝子または変異した遺伝子産物(すなわち、CD58ポリペプチド)などの1つ以上の分子変化をもたらす染色体変異を同定するために使用することができる。例えば、FISHを実行するために、プローブを観察する一当業者が、関連する遺伝子または遺伝子産物が、サンプルにおいて存在すると判断できるように、第1の検出可能な標識でタグ付けされた少なくとも第1のプローブを、変異したポリペプチドの変異遺伝子を標的化するように設計することができ、および第2の検出可能な標識でタグ付けされた少なくとも第2のプローブは、対応する野生型遺伝子または野生型ポリペプチドを標的化するように設計することができる。一般に、FISHアッセイは、スライド上に配置されたホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を使用して実行される。例えば、生体サンプルからのDNAは、一本鎖形態に変性され、続いて、当業者に公知の方法および技術を用いて、設計および調製され得る適切なDNAプローブとハイブリダイズさせられる。ハイブリダイゼーションに続いて、結合していないプローブは、一連の洗浄によって除去され得、細胞の核は、DAPI(4',6ジアミジノ-2-フェニルインドール)(青色に蛍光を発するDNA特異的染色剤)で対比染色される。プローブ(単数または複数)のハイブリダイゼーションは、適切な励起および発光フィルターを備えた蛍光顕微鏡を使用して見られ、蛍光シグナルの視覚化を可能にする。当技術分野で知られているFISH法の他の変形例もまた、本明細書に開示される方法に従って選択された個体を評価するのに適している。
【0095】
いくつかの実施形態において、CD58コード遺伝子またはその産物の1つ以上の分子改変の存在および/または不在の評価、並びに/もしくは検出試薬とCD58コード遺伝子またはその産物との相互作用の検出は、免疫組織化学(IHC)、タンパク質マイクロアレイ、ウェスタンブロッティング、質量分析、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光染色、マルチプレックス検出アッセイ、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、タンパク質ベースの分析アッセイを含む。いくつかの実施形態において、タンパク質ベースのアッセイは、野生型CD58または変異CD58ポリペプチドのうちの1つ以上に選択的に結合する1つ以上の抗体の使用を含む。タンパク質ベースの分析アッセイに有用な例示的なCD58モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体としては、Abcam(Cat#ab196648、ab275392、ab281201、およびab91058)、LSBio(Cat #LS-C819068-50)、およびThermo Fischer Scientific (Cat #MA5800、MA5-29120、およびMA5-29121)によって市販されているものが挙げられる。いくつかの実施形態において、CD58コード遺伝子またはその産物の1つ以上の分子変化の存在および/または不在の評価には、免疫組織化学(IHC)が含まれる(例えば、実施例1を参照)。
【0096】
いくつかの実施形態において、CD58コード遺伝子またはその産物における1つ以上の分子改変は、そのリガンドであるCD2に対するCD58タンパク質産物の結合親和性を低下させる。
【0097】
「結合親和性」という用語は、本明細書において、2つの分子、例えばポリペプチドおよびそのリガンドとの間の非共有結合的相互作用の強さの尺度として用いられる。「結合親和性」という用語は、一価相互作用(固有活性)を記述するために使用される。2つの分子間の結合親和性は、解離定数(KD)の決定によって定量化することができる。次に、KDは、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)法(Biacore)を用いた複合体形成および解離の速度論の測定によって決定することができる。一価錯体の会合および解離に対応する速度定数は、それぞれ会合速度定数ka(またはkon)および解離速度定数kd(またはkoff)と呼ばれる。KDは、方程式KD = kd / kaを介してkaおよびkdに関連しています。解離定数の値は、周知の方法によって直接決定することができ、Caceciら(1984、Byte 9:340-362)に記載されているような方法によって複雑な混合物に対しても計算することができる。例えば、KDは、Wong & Lohman (1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5428- 5432)によって開示されているようなダブルフィルターニトロセルロースフィルター結合アッセイを用いて確立され得る。標的抗原に対する本開示の抗体またはポリペプチドの結合能を評価するための他の標準的なアッセイは、当技術分野で公知であり、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA、およびフローサイトメトリー分析、および本明細書の他の箇所に例示される他のアッセイを含む。そのリガンドに対するポリペプチドの結合動力学および結合親和性はまた、表面プラズモン共鳴(SPR)などの当技術分野で公知の標準的なアッセイによって、例えば、Biacore(商標)システムまたはKinExAを使用することによって評価することができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、CAR-T細胞療法で健康状態を治療することをさらに含む。いくつかの実施形態において、CAR-T細胞療法は、単回療法として、または1つ以上のさらなる療法と組み合わせて個体に投与される。いくつかの実施形態において、CAR-T細胞療法及び/又は少なくとも1つの付加的療法は、CD2共刺激ドメインを含むCAR構築物を含む。いくつかの実施形態において、CD2共刺激ドメインを含むCAR構築物は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、CAR-T細胞療法は、標的細胞上に低密度で発現される抗原、例えば、細胞当たり標的抗原の約6,000分子未満を標的化する。いくつかの実施形態において、抗原は、細胞当たり標的抗原の約5,000分子未満、約4,000分子未満、約3,000分子未満、約2,000分子未満、約1,000分子未満、または約500分子未満の標的抗原の密度で発現される。いくつかの実施形態において、抗原は、細胞当たり標的抗原の約2,000分子未満、例えば、約1,800分子未満、約1,600分子未満、約1,400分子未満、約1,200分子未満、約1,000分子未満、約800分子未満、約600分子未満、約400分子未満、約200分子未満、または約100分子未満等の密度で発現される。いくつかの実施形態において、抗原は、細胞当たり標的抗原の約1,000分子未満、例えば、約900分子未満、約800分子未満、約700分子未満、約600分子未満、約500分子未満、約400分子未満、約300分子未満、約200分子未満、または約100分子未満等の密度で発現される。いくつかの実施形態において、抗原は、細胞当たり標的抗原の約5,000~約100分子、例えば、細胞当たり標的抗原の約5,000~約1,000分子、約4,000~約2,000分子、約3,000~約2,000分子、約4,000~約3,000分子、約3,000~約1,000分子、細胞当たり約2,000~約1,000分子、約1,000~約500分子、約500~約100分子等の範囲の密度で発現される。
【0100】
本明細書に記載のCAR-T細胞療法(例えば、操作されたCAR-T細胞)のいずれか1つの投与は、関連する健康状態、例えば増殖性疾患(例えば、癌)、自己免疫疾患、および微生物感染(例えば、ウイルス感染)の治療において患者を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の1つ以上の操作されたCAR-T細胞を、増殖性疾患(例えば、癌)、自己免疫疾患、および慢性感染症などの1つ以上の健康状態を発症するリスクが高い、を有すると疑われる、または高リスクであり得る個体を治療する方法において使用するための治療薬に組み込むことができる。いくつかの実施形態において、個体は、医師のケア下にある患者である。
【0101】
いくつかの実施形態において、本方法は、治療有効量のCAR-T細胞療法を、それを必要とする個体に計算又は投与することを含む。操作されたCAR-T細胞の「有効量」、「治療有効量」、または「薬学的有効量」という用語は、一般に、操作されたCAR-T細胞集団または医薬組成物の集団が、操作された細胞集団または医薬組成物の非存在下で述べられた目的を達成するのに十分な量または数を指す(例えば、投与されることにより効果が達成される、疾患を治療する、シグナル伝達経路を低下させる、または疾患もしくは健康状態の1つ以上の症状を軽減する)。「有効量」の一例は、疾患の症状(単数または複数)の治療、予防、または軽減に寄与するのに十分な量であり、「治療有効量」とも称され得る。症状の「軽減」とは、症状の重症度の低下または頻度の減少、または症状の排除を意味する。「治療有効量」を含むT細胞集団または組成物の正確な量は、治療の目的に依存し、既知の技術(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar, Dosage Calculations (1999); and Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkins参照)を用いて当業者によって確認可能である。
【0102】
例示的な増殖性疾患としては、非限定的に、血管新生性疾患、転移性疾患、腫瘍形成性疾患、腫瘍性疾患および癌を挙げることができる。いくつかの実施形態では、増殖性疾患は癌である。いくつかの実施形態では、癌は小児癌である。いくつかの実施形態では、癌は、膵臓癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、中皮腫、乳癌、尿路上皮癌、肝臓癌、頭頸部癌、肉腫、子宮頸癌、胃癌、胃癌、黒色腫、ブドウ膜黒色腫、胆管癌、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、および膠芽腫である。
【0103】
いくつかの実施形態において、健康状態は、固形腫瘍癌、非固形腫瘍癌、及び血液悪性腫瘍からなる群から選択される増殖性障害である。例示的な癌としては、非限定的に、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)、B細胞型急性リンパ性白血病(B-ALL)、T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞前骨髄球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞または大細胞濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成および骨髄異形成症候群、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫(HL)、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、およびワルデンストレームマクログロブリン血症が挙げられる。一実施形態において、癌はALLである。別の実施形態において、癌はCLLである。一実施形態において、癌はCD19発現と関連している。
【0104】
いくつかの実施形態において、癌は、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)、原発性滲出液性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、MALT(粘膜関連リンパ組織)リンパ腫、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫(例えば、様々な形態のホジキン病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞慢性リンパ性白血病(BCLL)、有毛細胞白血病、慢性筋芽球性白血病、および骨髄腫からなる群から選択されるB細胞悪性腫瘍である。
【0105】
いくつかの実施形態において、癌は、多重薬剤耐性癌または再発癌である。本明細書に開示される組成物および方法は、非転移性癌および転移性癌の両方に適していることが企図される。したがって、いくつかの実施形態において、癌は非転移性癌である。いくつかの他の実施形態において、癌は転移性癌である。いくつかの実施形態において、個体に投与される組成物は、個体における癌の転移を阻害する。いくつかの実施形態において、投与されたCAR-T細胞療法は、個体における腫瘍増殖を阻害する。
【0106】
例えば、いくつかの実施形態において、個体に投与されるCAR-T細胞療法は、個体における転移性結節を低下させることができる。いくつかの実施形態において、投与されたCAR-T細胞療法は、個体における腫瘍増殖を阻害する。
【0107】
いくつかの実施形態において、投与されたCAR-T細胞は、標的癌細胞の増殖を阻害し、および/または、個体における癌の腫瘍増殖を阻害する。例えば、標的細胞は、その増殖が低下した場合、その病理学的または病原性挙動が低下する場合、破壊または殺された場合などに阻害され得る。阻害は、測定された病理学的または病原性挙動の少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の低下を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載の有効数のCAR-T細胞を個体に投与することを含み、ここで、投与されたCAR-T細胞は、CAR-T細胞療法を投与されていない対象における標的細胞の増殖および/または標的癌の腫瘍増殖と比較して、個体における標的細胞の増殖および/または標的癌の腫瘍増殖を阻害する。
【0108】
本明細書に記載のCAR-T細胞療法(例えば、操作されたCAR-T細胞)の投与は、免疫応答の刺激に使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の改変されたCAR-T細胞のうちの1つ以上が、化学療法による癌の寛解誘導後、または自己由来造血幹細胞移植後に個体に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、本明細書に開示される一治療用組成物を投与されていない対象におけるインターフェロンガンマ(IFNγ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、および/またはインターロイキン-2(IL-2)の産生に対して、治療対象におけるインターフェロンガンマ(IFNγ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、および/またはインターロイキン-2(IL-2)の産生を増加させることを必要とする個体に投与される。
【0109】
本明細書に記載のCAR-T細胞療法(例えば、操作されたCAR-T細胞)の有効量は、本来の目的、例えば癌の退縮に基づいて決定することができる。例えば、既存の癌が治療されている場合、投与される本明細書に開示される組成物の量は、組成物の投与が癌の予防のためである場合よりも多くてもよい。当業者は、本開示に鑑みて、投与される組成物の量および投与の頻度を決定することができるであろう。投与される量は、治療の回数および用量の両方に応じて、治療される個体、個体の状態、および所望の保護にも依存する。組成物の正確な量はまた、専門家の判断に依存し、各被験者に特有のものである。投与頻度は、専門家の判断に応じて、1~2日から2~6時間、6~10時間、1~2週間またはそれ以上の範囲であり得る。
【0110】
投与される組成物の量の決定は、当業者によってなされ、癌の程度および重症度、ならびに操作されたCAR-T細胞が既存の癌の治療または癌の予防のために投与されているかどうかに部分的に依存する。例えば、投与の間のより長い間隔及びより少ない量の組成物が、目標が予防である場合に採用され得る。例えば、1用量当たりの投与される組成物の量は、有効疾患の治療において投与される用量の50%であってもよく、投与は毎週の間隔で行われてもよい。当業者は、本開示に照らして、組成物の有効量および投与頻度を決定することができるであろう。この決定は、部分的に、存在する特定の臨床状況(例えば、癌の種類、癌の重症度)に依存するであろう。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物の連続供給を、治療されるべき個体、例えば患者に提供することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態において、目的の領域(例えば、腫瘍)の連続灌流が適し得る。灌流の期間は、特定の対象および状況に対して臨床医によって選択されるが、時間は約1~2時間から、2~6時間、約6~10時間、約10~24時間、約1~2日、約1~2週間またはそれ以上の範囲であり得る。一般に、連続灌流を介した組成物の用量は、用量が投与される期間に合わせて調整された、単回または複数回の注射によって与えられる用量と同等である。
【0112】
いくつかの実施形態において、投与は、静脈内注入によるものである。本明細書に記載される操作されたCAR-T細胞の有効量は、意図された目標、例えば腫瘍退縮に基づいて決定することができる。例えば、既存の癌が治療されている場合、投与される細胞の数は、本明細書に開示される操作されたCAR-T細胞の投与が、癌の予防のためである場合よりも多くてもよい。当業者は、本開示に鑑みて投与される細胞の数および投与の頻度を決定することができるであろう。投与される量は、治療の回数および用量の両方に応じて、治療される個体、個体の状態、および所望の保護にも依存する。治療用組成物の正確な量はまた、専門家の判断に依存し、各個人に特有である。投与頻度は、専門家の判断に応じて、1~2日から、2~6時間、6~10時間、1~2週間またはそれ以上の範囲であり得る。一般に、連続灌流を介した治療用組成物の用量は、用量が投与される期間に対して調整された、単回または複数回の注射によって与えられる用量と同等である。
【0113】
追加療法
【0114】
上述したように、本明細書に記載のCAR-T細胞療法のいずれか1つは、例えば、単回療法(例えば、単剤療法)としてそれを必要とする個体に投与することができる。加えてまたは代替的に、本開示のいくつかの実施形態において、本明細書に記載のCAR-T細胞療法のうちの1つ以上を、1つ以上の追加療法、例えば、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの追加の療法と組み合わせて個体に投与することができる。本明細書に記載のCAR-T細胞療法と組み合わせて投与される好適な療法としては、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、および手術が、非限定的に挙げられる。他の好適な治療法としては、化学療法薬、抗癌剤、および抗癌療法などの治療薬が挙げられる。
【0115】
免疫応答、腫瘍形成および他の疾患状態に関連する細胞プロセスにおけるCD2/CD58経路の関与に起因して、本明細書に記載のCAR-T細胞療法のいずれか1つ、例えば、この経路を標的化する1つ以上の治療薬と共にそれを必要とする個体に投与することができる。例えば、CD2活性を調節する分子は、(1)多発性硬化症などの自己免疫疾患;(2)炎症性またはT細胞媒介性成分によるさまざまな炎症性疾患または障害、例えば、様々な形態の関節炎;同種移植片拒絶反応;喘息;クローン病を含む腸の炎症性疾患;乾癬などの様々な皮膚科学的状態;その他同種類のもの、並びに(3)種々の癌および腫瘍、に対する活性を有する免疫抑制剤および/または抗炎症剤並びに/もしくは抗癌剤であり得る。
【0116】
1つ以上の追加の療法と「組み合わせた」投与は、任意の順序での同時(simultaneous)(同時(concurrent))および連続投与を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、及び外科手術からなる群から選択される。本明細書において化学療法という用語は、抗癌剤を包含する。種々のクラスの抗癌剤を、本明細書に開示する方法に好適に用いることができる。抗癌剤の非限定的な例には、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、ポドフィロトキシン、抗体(例えば、モノクローナルまたはポリクローナル)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、メシル酸イマチニブ(Gleevec(商標)またはGlivec(商標)))、ホルモン処置、可溶性受容体および他の抗腫瘍剤が含まれる。
【0117】
トポイソメラーゼ阻害剤はまた、本明細書において使用することができる抗癌剤の別のクラスである。トポイソメラーゼは、DNAのトポロジーを維持する必須酵素であり得る。I型またはII型トポイソメラーゼの阻害は、適切なDNAスーパーコイルを乱させることにより、DNAの転写と複製の両方を妨害する。いくつかのI型トポイソメラーゼ阻害剤には、イリノテカンおよびトポテカンなどのカンプトテシンが含まれる。II型阻害剤の例には、アムサクリン、エトポシド、エトポシドリン酸、およびテニポシドが含まれる。これらは、エピポドフィロトキシンの半合成誘導体であり、American Mayapple (Podophyllum peltatum)の根に天然に存在するアルカロイドである。
【0118】
抗悪性腫瘍剤は、免疫抑制剤ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、イホスファミドを含む。抗悪性腫瘍化合物は一般に、細胞のDNAを化学的に修飾することによって機能する。
【0119】
アルキル化剤は、細胞内に存在する条件下で多くの求核性官能基をアルキル化することができる。シスプラチンおよびカルボプラチン、ならびにオキサリプラチンはアルキル化剤である。それらは、生物学的に重要な分子中のアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、およびリン酸基と共有結合を形成することにより、細胞機能を損なう。
【0120】
ビンカアルカロイドは、チューブリン上の特定の部位に結合し、微小管へのチューブリンの凝集を阻害する(細胞周期のM期)。ビンカアルカロイドには、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、およびビンデシンが含まれる。
【0121】
代謝拮抗剤はプリン(アザチオプリン、メルカプトプリン)またはピリミジンに似ており、細胞周期の「S」期にこれらの物質がDNAに取り込まれるのを防ぎ、正常な発達と分裂を停止する。代謝拮抗剤もRNA合成に影響を及ぼす。
【0122】
植物アルカロイドおよびテルペノイドは、植物から得られ、微小管機能を防止することにより細胞分裂を阻害する。微小管は細胞分裂に不可欠であるため、微小管がなければ細胞分裂が起こらない場合がある。主な例としては、ビンカアルカロイド及びタキサンが挙げられる。
【0123】
ポドフィロトキシンは、消化を助けることが報告されている植物由来化合物であり、他の2つの細胞増殖抑制薬、エトポシドおよびテニポシドの製造に使用される。それらは、細胞がG1期(DNA複製の開始)およびDNAの複製(S期)に入るのを防ぐ。
【0124】
群としてのタキサン類には、パクリタキセル及びドセタキセルが含まれる。パクリタキセルは天然物で、もともとはタキソールとして知られており、最初は太平洋イチイの木の樹皮に由来していた。ドセタキセルはパクリタキセルの半合成類似体である。タキサンは微小管の安定性を高め、後期の染色体の分離を防ぐ。
【0125】
いくつかの実施形態において、抗がん剤は、レミケード、ドセタキセル、セレコキシブ、メルファラン、デキサメタゾン(Decadron(登録商標))、ステロイド、ゲムシタビン、シスプラチナ、テモゾロミド、エトポシド、シクロホスファミド、テモダール、カルボプラチン、プロカルバジン、グリアデル、タモキシフェン、トポテカン、メトトレキサート、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、タキソール、タキソテール、フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン、ゼローダ、CPT-11、インターフェロンアルファ、ペグ化インターフェロンアルファ(例えば、PEGイントロン-A)、カペシタビン、シスプラチン、チオテパ、フルダラビン、カルボプラチン、リポソームダウノルビシン、シタラビン、ドキセタキソール、パシリタキセル、ビンブラスチン、IL-2、GM-CSF、ダカルバジン、ビノレルビン、ゾレドロン酸、パルミトロネート、バイアキシン、ブスルファン、プレドニゾン、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、ビスホスホネート、三酸化ヒ素、ビンクリスチン、ドキソルビシン(Doxil(登録商標))、パクリタキセル、ガンシクロビル、アドリアマイシン、エストレインスチンリン酸ナトリウム(Emcyt(登録商標))、スリンダク、エトポシド、およびこれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0126】
その他の実施形態において、抗がん剤は、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドキソルビシン、インターフェロンアルファ、レナリドマイド、メルファラン、ペグ化インターフェロンアルファ、プレドニゾン、サリドマイド、またはビンクリスチンから選択され得る。
【0127】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される治療方法は、免疫療法をさらに含む。いくつかの実施態様において、免疫療法は、1つ以上のチェックポイント阻害剤の投与を含む。したがって、本明細書に記載の治療方法のいくつかの実施形態は、1つ以上の免疫チェックポイント分子を阻害する化合物のさらなる投与を含む。免疫チェックポイント分子の非限定的な例には、CTLA4、PD-1、PD-L1、A2AR、B7-H3、B7-H4、TIM3、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、1つ以上の免疫チェックポイント分子を阻害する化合物は、アンタゴニスト抗体を含む。本明細書に開示される組成物および方法に適したアンタゴニスト抗体の例としては、非限定的に、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、トレメリムマブ、およびアベルマブが挙げられる。
【0128】
いくつかの態様において、1つ以上の抗癌療法は、放射線療法である。いくつかの態様において、放射線療法は、癌性細胞を死滅させるための放射線の投与を含み得る。放射線はDNAなどの細胞内の分子と相互作用して細胞死を誘導する。放射線はまた、細胞膜や核膜、その他の細胞小器官を損傷する可能性がある。放射線の種類に応じて、DNA損傷のメカニズムは、相対的な生物学的有効性と同様に異なる場合がある。例えば、重い粒子(すなわち陽子、中性子)はDNAを直接損傷し、より大きな相対的な生物学的有効性を有する。電磁放射は、主に細胞の水のイオン化によって生成される短寿命のヒドロキシルフリーラジカルを介して作用する間接的なイオン化をもたらす。放射線の臨床応用は、外部ビーム放射(外部線源から)および小線源治療(患者に埋め込まれた、または挿入された放射線源を使用)からなる。外部ビーム放射はX線および/またはガンマ線で構成されているが、近接照射療法は、ガンマ線とともにアルファ粒子またはベータ粒子を崩壊させて放出する放射性核を使用する。本明細書で企図される放射線はまた、例えば、癌細胞への放射性同位元素の指向性送達を含む。DNA損傷因子の他の形態、例えばマイクロ波およびUV照射も本明細書において企図される。
【0129】
放射線は、単回線量で、または線量分割スケジュールにおける一連の小線量で与えられ得る。本明細書で企図される放射線の量は、約1~約100Gyの範囲であり、例えば、約5~約80、約10~約50Gy、または約10Gyを含む。総用量は、分割レジームで適用することができる。例えば、レジームは、2Gyの分割された個々の用量を含み得る。放射性同位元素の線量範囲は大きく異なり、同位体の半減期と放出される放射線の強度と種類によって異なる。放射線が放射性同位元素の使用を含む場合、同位体は、標的組織(例えば、腫瘍組織)に放射性ヌクレオチドを運ぶ治療用抗体などの標的化剤にコンジュゲートされ得る。
【0130】
本明細書に記載の手術は、癌性組織の全部または一部が物理的に除去され、動かされ、および/または破壊される切除を含む。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的切除を指す。腫瘍切除に加えて、手術による治療には、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡制御手術(モース手術)が含まれる。前癌または正常組織の除去も本明細書において企図される。
【0131】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示の方法は、本明細書に記載のCAR-T細胞療法を、単一の療法(例えば、単剤療法)として個々に対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、本開示のCAR-T細胞療法は、第2の療法と組み合わせて第1の療法として個体に投与される。いくつかの実施形態において、第2の療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、及び外科手術からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、第1の療法及び第2の療法は、併用して投与される。いくつかの実施形態において、第1の療法は、第2の療法と同時に投与される。いくつかの実施形態において、第1の療法及び第2の療法は、順次投与される。いくつかの実施形態において、第1の治療は、第2の療法の前に投与される。いくつかの実施形態において、第1の療法は、第2の療法の後に投与される。いくつかの実施形態において、第1の療法は、第2の療法の前および/または後に投与される。いくつかの実施形態において、第1の療法及び第2の療法は、交代で投与される。いくつかの実施形態において、第1の療法及び第2の療法は、単一の製剤中で一緒に投与される。
【0132】
個体に対するCAR T細胞の投与
【0133】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、本明細書に記載の操作されたCAR-T細胞の有効量または数を、それを必要とする個体に投与することを含む。この投与工程は、当該技術分野において任意の移植送達方法を用いて達成することができる。例えば、操作されたCAR-T細胞は、個体の血流に直接注入するか、またはそうでなければ個体に投与することができる。
【0134】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、所望の効果(単数または複数)が生成されるように、所望の部位に導入された細胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路によって、操作されたCAR-T細胞を個体に投与することを含み、この用語は「導入する」、「移植する」および「移植する」と交換可能に使用される。操作されたCAR-T細胞またはそれらの分化した子孫は、投与された細胞または細胞の成分の少なくとも一部が生存可能なままである個体内の所望の場所への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与され得る。個体への投与後の細胞の生存期間は、数時間という短い期間、例えば、24時間、数日、数年、または個体の寿命、例えば長期生着でさえあり得る。
【0135】
予防的に提供される場合、本明細書に記載の操作されたCAR-T細胞は、治療される疾患または健康状態の任意の症状の個体に先行して投与され得る。したがって、いくつかの実施形態において、操作されたCAR-T細胞集団の予防的投与は、疾患または健康状態の症状の発生を防止する。
【0136】
いくつかの実施形態において治療目的で提供される場合、操作されたCAR-T細胞は、疾患または健康状態の症状または徴候の発症時(またはその後)、例えば、疾患または健康状態の発症時に提供される。
【0137】
本明細書に記載の様々な実施形態において使用するために、本明細書に記載の操作されたCAR-T細胞の有効量を、少なくとも102細胞、少なくとも5×102細胞、少なくとも103細胞、少なくとも5×103細胞、少なくとも104細胞、少なくとも5×104細胞、少なくとも105細胞、少なくとも2×105細胞、少なくとも3×105細胞、少なくとも4×105細胞、少なくとも5×105細胞、少なくとも6×105細胞、少なくとも7×105細胞、少なくとも8×105細胞、少なくとも9×105細胞、少なくとも1×106細胞、少なくとも2×106細胞、少なくとも3×106細胞、少なくとも4×106細胞、少なくとも5×106細胞、少なくとも6×106細胞、少なくとも7×106細胞、少なくとも8×106細胞、少なくとも9×106細胞、またはそれらの倍数とすることができる。
【0138】
いくつかの実施形態において、操作されたCAR-T細胞は、処置を必要とする個体に対して非自己由来である。いくつかの実施形態において、養子細胞療法は、同種養子細胞療法である。例えば、いくつかの実施形態において、操作されたCAR-T細胞は、治療を必要とする個体に対して同種異系である。同種養子細胞療法では、操作されたCAR-T細胞は、養子細胞療法を受けている個体に由来するものではない。同種細胞療法とは、一般に、T細胞を提供する個体(ドナー)が、細胞療法を受ける個体とは異なる個体(同種)である療法を指す。例えば、個体に投与される改変されたCAR-T細胞の集団は、1つ以上の無関係なドナー、または1つ以上の非同一同胞に由来する。したがって、操作されたCAR-T細胞は、1つ以上のドナーから誘導することができ、または自家供給源から得ることができる。いくつかの実施形態において、操作されたCAR-T細胞は、それを必要とする個体への投与前に培地中で増殖される。
【0139】
いくつかの実施形態において、方法または経路による個体への細胞組成物(例えば、本明細書に記載の複数の操作されたCAR-T細胞を含む組成物)の送達は、所望の部位における細胞組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす。操作されたCAR-T細胞を含む組成物は、個体において効果的な治療をもたらす任意の適切な経路によって投与され得、例えば、投与は、個体における所望の場所への送達をもたらし、そこで送達された組成物の少なくとも一部、例えば、少なくとも1×104細胞が、一定期間、所望の部位に送達される。投与様式には、注射、注入、点眼が含まれる。注射は、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、並びに胸骨内注射および注入を含む。いくつかの実施形態では、経路は静脈内である。細胞の送達について、注射または注入による送達はしばしば標準的な投与様式と考えられる。
【0140】
いくつかの実施形態において、操作されたCAR-T細胞は、全身的に、例えば、注入または注射を介して投与される。例えば、本明細書に記載されるような操作されたCAR-T細胞の集団は、標的部位、組織、または器官に直接投与されるのではなく、個体の循環系に入り込み、したがって、代謝および他の同様の生物学的プロセスを受ける。
【0141】
疾患または健康状態の予防または治療のために本明細書中で提供される組成物のいずれかを含む治療の有効性は、熟練した臨床医によって決定することができる。しかしながら、当業者は、疾患の徴候または症状またはマーカーのいずれか1つまたは全てが改善または改善される場合に予防または治療が有効であると考えられることを理解するであろう。有効性は、入院の減少または医学的介入の必要性によって評価されるように、個体が悪化しないことによっても測定できる(たとえば、疾患の進行が停止する、又は少なくとも遅くなる)。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知である、および/または本明細書に記載される。治療は、個体または動物(いくつかの非限定的な例としては、ヒトまたは哺乳動物が挙げられる)における疾患の任意の治療を含み、以下を含む:(1)疾患を阻害すること、例えば、症状の進行を阻止するまたは遅らせること;または(2)疾患を緩和すること、例えば、症状の退行を引き起こすこと;および(3)症状の発症の可能性を予防または軽減すること。
【0142】
有効性の程度の測定は、治療される疾患および経験される症状に関して選択されたパラメータに基づく。一般に、疾患の程度または重症度と相関するものとして既知であるまたは受け入れられているパラメータ、例えば、医学界で受け入れられるまたは使用されるパラメータが選択される。例えば、固形癌の治療において、適切なパラメータとしては、転移の数および/またはサイズの減少、無増悪生存期間の月数、全生存期間、疾患の病期または悪性度、疾患進行の速度、診断バイオマーカーの減少(例えば、これらに限定されないが、循環腫瘍DNAまたはRNAの減少、循環無細胞腫瘍DNAまたはRNAの減少など)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。有効用量および有効性の程度は、一般に、単一の被験者および/または被験者のグループまたは集団に関連して決定されることが理解される。本開示の治療方法は、症状および/または疾患重症度並びに/もしくは疾患バイオマーカーを少なくとも約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100%軽減する。
【0143】
上述したように、医薬組成物の治療有効量は、疾患または健康状態を有する、有する疑いがある、またはそのリスクがある個体などに投与した場合に、特定の有益な効果を促進するのに十分な量の医薬組成物であり得る。いくつかの実施形態において、有効量は、疾患又は健康状態の症状の発症を予防又は遅延させる、疾患又は健康状態の症状の経過を変化させる(例えば、限定するものではないが、疾患の症状の進行を遅らせる)、又は疾患又は健康状態の症状を逆転させるのに十分な量を含む。任意の所与の事例において、適切な有効量が日常的な実験を用いて当業者によって決定され得ることが理解される
【0144】
キット
【0145】
個体における健康状態の診断および/または治療のための方法を含む、本明細書に記載の1つ以上の方法の実施のためのキットも本明細書に提供される。一般に、本開示のキットは、(i)生体サンプルにおけるCD58コード遺伝子またはその産物での1つ以上の分子改変の存在および/または不在を評価するための試薬、および(ii)キットを使用するための指示書を含むことができる。例えば、本開示のいくつかの実施形態は、CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定するためのキットを提供する。本開示のいくつかの実施形態は、CAR-T細胞療法に対する増大した非応答性を有する個体を同定するためのキットを提供する。本開示のいくつかの実施形態は、個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化するためのキットを提供する。本開示のいくつかの実施形態は、個体にCAR-T細胞療法を投与するためのキットを提供する。
【0146】
いくつかの実施形態において、キットは、個体由来の生体サンプルにおける検出試薬とCD58コード遺伝子またはその産物との相互作用を検出するための検出試薬を含む。
【0147】
いくつかの実施形態において、使用指示書は、前記サンプルにおいて、CD58活性における1つ以上の分子変化の少なくとも1つが検出された場合に、個体は、CAR-T細胞療法による治療に対する応答性が低下しているとして同定されることを規定する。いくつかの実施形態において、使用指示書は、(i)前記サンプルにおいて、CD58活性における1つ以上の分子変化のうちの少なくとも1つが検出された場合、個体は、CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増大するものとして選択され;(ii)前記サンプルにおいて、CD58活性の1つ以上の分子変化が検出されず、個体は、CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性の増大していないものとして選択される。いくつかの実施形態において、使用指示書は、検出試薬とCD58をコードする遺伝子またはその生成物との間の検出された相互作用に基づいて、治療有効量のCAR-T細胞療法を同定するための指示書を含む。いくつかの実施形態において、使用指示書は、検出試薬とCD58コード遺伝子またはその産物との間の検出された相互作用に基づいて治療有効量のCAR-T細胞療法を投与するための指示書を含む。
【0148】
いくつかの実施形態において、キットは、抽出バッファー/試薬およびプロトコール、増幅バッファー/試薬およびプロトコール、ハイブリダイゼーションバッファー/試薬およびプロトコール、ならびに標識バッファー/試薬およびプロトコールのうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0149】
例えば、上述のキットのいずれかは、1つ以上のさらなる試薬をさらに含むことができ、ここで、そのような追加の試薬は、以下から選択することができる:希釈バッファー;再構成溶液、洗浄バッファー、対照試薬、対照発現ベクター、陰性対照T細胞集団、陽性対照T細胞集団、T細胞集団のエキソビボ産生のための試薬。
【0150】
いくつかの実施形態において、本開示のキットは、それを必要とする個体にCAR-T細胞療法を投与するために使用される1つ以上のシリンジ(プレフィルドシリンジを含む)および/またはカテーテル(プレフィルドシリンジを含む)をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、所望の目的のために、例えば、標的癌細胞を阻害するため、またはそれを必要とする個体における健康状態を治療するために、他のキット構成要素と同時に又は連続して投与することができる1つ以上の追加の治療薬を有することができる。
【0151】
いくつかの実施形態において、キットの構成要素は、別個の容器に入れることができる。いくつかの他の実施形態では、キットの構成要素を単一の容器内で組み合わせることができる。
【0152】
いくつかの実施形態において、キットは、方法を実施するためにキットの構成要素を使用するための指示書をさらに含むことができる。方法を実施するための指示書は、一般に、適切な記録媒体に記録される。例えば、指示書は、紙やプラスチックなどの基材に印刷されることができる。指示書は、添付文書としてキット中、キットまたはその構成要素の容器のラベル中(例えば、包装または副包装に関連する)などに存在することができる。指示書は、適切なコンピュータ可読記憶媒体、例えばCD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブなどに存在する電子記憶データファイルとして存在することができる。いくつかの例において、実際の指示書はキット中に存在しないが、遠隔ソースから(例えば、インターネットを介して)指示を得るための手段を提供することができる。この実施形態の一例では、指示書を閲覧することができる、および/または指示をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。指示書と同様に、指示書を得るためのこの手段は、適切な基板上に記録することができる。
【0153】
遺伝的ベースのシステム
【0154】
本明細書に記載される健康状態の診断および治療のための方法を、様々なハードウェアコンポーネントを用いて実施することができる。このセクションでは、このようなコンポーネントの例について説明する。しかしながら、一般に、本明細書で論じられる様々なステップおよび技術は、様々な異なる装置およびシステムコンポーネントを使用して実行することができ、そのすべてが明示的に述べられているわけではないことを理解されたい。
【0155】
別の態様において、本開示のいくつかの実施形態は、健康状態の診断および/または治療のためのシステムに関し、システムは、a)論理プロセッサ;b)論理プロセッサによって実行可能なストアドプログラムコードであって、プロセッサによって実行されると、本開示による健康状態の診断および/または治療の方法を実行するための動作を提供する。いくつかの実施形態では、システムは、(a)論理プロセッサ;および(b)論理プロセッサによって実行可能なストアドプログラムコードであって、プロセッサによって実行されるとき、以下のうちの1つ以上を実行するための動作を提供する前記コードを含む:(i)CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定すること、(ii)CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加した個体を同定すること、(iii)個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化すること;および(iv)個体に対するCAR-T細胞療法の治療有効量を算出して投与すること。
【0156】
本開示のシステムの非限定的で例示的な実施形態は、1つ以上の以下の特徴を含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるシステムは、前記論理プロセッサに通信可能に結合されたレポートエンジンをさらに備え、前記レポートエンジンによって生成されるレポートは、前記プログラムコードの実行からの結果に依存し、前記プログラムコードは、事前に選択されたデータ入力のセットに少なくとも部分的に基づいて、CAR-T細胞療法に対する個体の応答性に相対的なスコアを割り当てるために、個体から得られた生物における、CD58コード遺伝子またはその産物の1つ以上の分子改変の存在および/または不在に関する事前に選択されたデータ入力のセットを受信するように前記論理プロセッサを設計して、および任意選択で:a)CAR-T細胞療法に対する個体の応答性を決定すること;b)CAR-T細胞療法による治療に対する非応答性が増加したとして個体を同定すること;および/またはc)個体におけるCAR-T細胞療法の治療有効性を最適化することを含む。
【0157】
いくつかの実施形態において、本開示のシステムは、CAR-T細胞療法に対する非応答性が増大すると同定された前記個体に関連する、および/または健康状態の治療に有効であると同定されたCAR-T細胞療法に関連する情報を含有するレポートを生成することさらに備える。いくつかの実施形態において、プロファイルレポートは、「.doc」;「.pdf」;「.xml」;「.html」;「.jpg」;「.aspx」;「.php」、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される符号化を有することを特徴とする。
【0158】
さらに別の態様では、実行されるとプロセッサに:事前選択されたデータインプットのセットを含むレポートを受領すること;レポートに少なくとも部分的に基づいて、同定されたCAR-T細胞療法に対する相対的パフォーマンススコアを割り当てること;および割り当てられたパフォーマンススコアに基づいて、CAR-T細胞療法のレポートを出力すること、を含む動作を実行させる機械実行可能命令を含む非一時的なコンピュータ可読媒体が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、実行されるとプロセッサに:事前選択されたデータインプットのセットを含むレポートを受領すること;レポートに少なくとも部分的に基づいて、同定された個体に対する相対的非応答性スコアを割り当てること;および割り当てられた非応答性スコアに基づいて、前記個体のレポートを出力することを含む操作を実行させる機械実行可能命令を含有する、非一時的なコンピュータ可読媒体が、本明細書で提供される。さらに、本開示のシステムによって生成されたCAR-T細胞療法レポートおよび個体のレポートも、本開示の範囲に含まれる。
【0159】
本明細書に記載される態様および実施形態の各々は、実施形態または態様の文脈から明示的または明確に除外されない限り、共に使用することができる。
【0160】
本開示で言及された全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることを具体的かつ個々に示した場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0161】
本明細書で引用されたいかなる参考文献も先行技術を構成することは認められない。参考文献の議論は、著者が主張することを述べており、出願人は引用された文書の正確性と関連性に異議を唱える権利を留保する。科学雑誌の記事、特許文献、教科書を含む多くの情報源がここで参照されていることが明確に理解される。この参照は、これらの文献のいずれかが当技術分野における一般的な一般知識の一部を形成することを認めるものではない。
【0162】
本明細書で与えられる一般的な方法の議論は、例示のみを目的としている。他の代替方法および代替は、本開示の検討時に当業者には明らかであり、本出願の精神および範囲に含まれるべきである。
【0163】
さらなる実施形態は、例示として提供される以下の実施例においてさらに詳細に開示され、本開示または特許請求の範囲を限定することを意図していない。
【実施例
【0164】
本発明の実施は、別段の指示がない限り、分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、および免疫学の従来の技術を採用し、これらは当業者に周知である。そのような技術は文献、例えば、such as Sambrook, J., & Russell, D. W. (2012). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory and Sambrook, J., & Russel, D. W. (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory (jointly referred to herein as “Sambrook”); Ausubel, F. M. (1987). Current Protocols in Molecular Biology. New York, NY: Wiley (including supplements through 2014); Bollag, D. M. et al. (1996). Protein Methods. New York, NY: Wiley-Liss; Huang, L. et al. (2005). Nonviral Vectors for Gene Therapy. San Diego: Academic Press; Kaplitt, M. G. et al. (1995). Viral Vectors: Gene Therapy and Neuroscience Applications. San Diego, CA: Academic Press; Lefkovits, I. (1997). The Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques. San Diego, CA: Academic Press; Doyle, A. et al. (1998). Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology. New York, NY: Wiley; Mullis, K. B., Ferre, F. & Gibbs, R. (1994). PCR: The Polymerase Chain Reaction. Boston: Birkhauser Publisher; Greenfield, E. A. (2014). Antibodies: A Laboratory Manual (2nd ed.). New York, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press; Beaucage, S. L. et al. (2000). Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry. New York, NY: Wiley, (including supplements through 2014); and Makrides, S. C. (2003). Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells. Amsterdam, NL: Elsevier Sciences B.V.,で完全に説明されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
以下に記載される実験結果は、腫瘍がCD58の発現を変異させたまたは喪失させたLBCL患者は、CD19 CAR-T細胞療法から持続的な利益を引き出す可能性が低いことを実証する。特に、CD58変異およびタンパク質喪失は、LBCLにおいて以前に説明されており、免疫逃避および患者の転帰不良の両方に関連している。以下に記載されるいくつかの実験において、腫瘍マイクロアレイをIHCによって染色し、続いて循環腫瘍DNAのディープシーケンシング分析を行ってCD58のステータスを確認した。どちらの方法でも、CD58改変のすべての症例を検出できるわけではなく、特定の患者において不均一である可能性もある。腫瘍サンプル由来のCD58に対するゲノムDNAおよびRNAのダイレクトシーケンス法は、これらの研究で試験された患者のシリーズで利用可能でなかった、患者の転帰と相関する追加のデータを提供する可能性がある。CD58改変を有するこれらの試験における患者はまた、より若く、高低密度リポタンパク質(LDH)を伴うバルキー病変を患っている可能性が高かった。これらの追加のリスク要因から競合する寄与を区別するために、大規模で前向きなシリーズに対して追加の実験が計画されている。さらに、CD58が反応と相関しているという実験的所見は、単一の施設で治療を受けた患者からの遡及的所見である。本明細書に記載の実験結果は、CAR機能性に対するCD58発現の重要性に関する異種移植片モデルからの説得力のある証拠を提供し、この結果は、CD19 CAR療法を受けているLBCL患者でのより大規模で前向きな試験から利益を得ることができる。
【0166】
実施例1
【0167】
CD58は、アキシカブタゲンシロロイセルによる治療を受けているLBCL患者の持続的な寛解に必要である可能性がある。
【0168】
本実施例は、FDA認可薬アキシカブタゲンシロロイセル(YESCARTA(登録商標))の治療を受けているLBCL患者における持続的寛解がCD58発現を必要とすることを例示するために行われた研究の結果を記載する。
【0169】
これらの試験では、70人の(70)LBCL患者が、商業的に得られたアキシカブタゲンシロロイセルで治療された。これらの試験の奏効率は、他の研究グループのデータや、医薬の承認につながる最初の臨床試験のデータと著しく一致している。CD58患者の状態が患者の転帰に影響を与えるかどうかを調査するために、アキシカブタゲンシロロイセルを投与された患者由来の利用可能な腫瘍サンプルについて、アーカイブ腫瘍組織上のCD58発現を評価する実験が実施された(N = 36、内訳、31:治療前のみ、2:治療後/進行のみ、3:治療前および治療後/進行)。CAR前後の腫瘍組織からなる腫瘍マイクロアレイを構築し、続いて免疫組織化学(IHC)技術によってCD58発現について染色した(例えば、図1Aを参照)。CD58タンパク質発現の喪失(n=7)を示す患者は、ほとんど全てCAR注入の3.5ヶ月以内に再発したことが観察された(例えば、図5Aを参照)。唯一の例外は、リンパ球枯渇およびCAR注入の前にブリッジング放射線療法を受けた、疾患負荷が低い患者(例えば、疾患の1つの部位)であった。この試験では、アキシカブタゲンシロロイセルに応答した緊急CD58喪失の症例も観察され、1人の患者は、治療後の生検でのみCD58発現の喪失を示した(例えば、図1Bを参照)。
【0170】
CD58変異はLBCL患者においても以前に記載されているため、治療前および治療後血漿が利用可能であった同じシリーズの患者におけるCD58変異ステータスの評価を、循環腫瘍DNA(ctDNA)におけるディープシーケンシングによる癌個別化プロファイリング(CAPP-seq)を使用して実施した。34人の患者のうち、CD58変異を有する5人の患者(2つの一塩基変異体、K60EおよびC187R;2つのフレームシフト欠失;および1つの融合)が同定されたが、その全員が最終的に持続的な寛解を達成できなかった。同定された変異の1つ(C187R)は、疾患の進行時にのみ出現した。同定された一塩基変異体は両方とも、タンパク質の折り畳みおよび機能に影響を与えると以前に予測されていた。T細胞上の、CD58とそのリガンドであるCD2との相互作用の公表された結晶構造によれば、K60E変異は特異的にそれらが相互作用する塩橋を遮断すると考えられている(例えば、図1Cを参照)。
【0171】
CD58異常(例えば、IHCによるタンパク質発現の喪失またはCAPP-seqによって見出される突然変異)を有する患者について、CAR後の無増悪生存期間(PFS)率を評価するために追加の試験が行われた(例えば、表1を参照)。これらの試験において、CD58異常を有する患者は、そのような異常を持たない患者よりも有意に短いPFSを有することが観察された(CD58異常、3ヶ月のPFS中央値対CD58インタクト、未到達、p<0.0001。例えば、図1Dを参照)。この差は、利用可能なIHCデータを有する患者のみを評価した場合に維持された(CD58非発現者、3カ月のPFS中央値対CD58発現者、11.7カ月、p=0.0049。例えば、図5Aを参照)またはCAPP-seqデータ(CD58変異、3ヶ月のPFS中央値対CD58野生型、未到達、p=0.0027。例えば、図5Bを参照)。さらに、CD58改変を有する患者は、完全応答を達成する可能性が有意に低く(25%対82%、p=0.0005)、部分奏効を達成する可能性が高いことが観察された(58%対10%、p=0.0015) (例えば、図1Eを参照)。したがって、野生型CD58の発現における改変は、アキシカブタゲンシロロイセル(YESCARTA(登録商標))で治療されたLBCL患者の持続的な反応と高度に相関していると結論付けられた。
【0172】
表1:CD58ステータスによる患者特性および転帰。(CR:完全応答;PR:部分応答;SD:安定な応答;PD:進行性疾患;IPI:国際予後指数;WNL:正常範囲内;DLBCL:拡散したB細胞型リンパ腫;TFL:形質転換された濾胞状リンパ腫;およびPBMCL:縦隔原発B細胞型リンパ腫。
【表1】
【0173】
実施例2
【0174】
CD58喪失は、インビトロおよび異種移植片モデルにおけるCAR-T細胞の有効性を低下させる。
【0175】
本実施例は、CD58発現における喪失が、インビトロおよび異種移植片モデルにおけるCAR-T細胞の有効性を低下させることを示すために実施される試験の結果を記載する。
【0176】
CAR-T細胞有効性に対するCD58発現の役割を探索するために、CRISPR-Cas9アプローチを使用して、よく記載されているNalm6細胞株からのCD58発現をノックアウトした(図2A)。これらの研究では、アキシカブタゲンシロロイセル(CD19-CD28ζ)、チサゲンレクルーセル(CD19-4-1BBζ)に含まれるCD19 CAR、およびm971ベースのCD22 CAR(CD22-4-1BBζ)の両方が、CD58ノックアウト腫瘍細胞と野生型腫瘍細胞に応答してIL-2及びIFN-γを有意に低下させることが観察された(例えば、図2C参照)。なお、m971は膜近位結合抗CD22 scFvである。GD2-4-1BBζCARによるサイトカイン産生の同様の低下は、CD58ノックアウトの有無にかかわらずDIPG細胞株と共にインキュベートした場合にも観察された(例えば、図7Aを参照)。
【0177】
続いて、細胞毒性を評価するために、数日間にわたって腫瘍死を測定するIncucyteアッセイを実施した。野生型Nalm6系統のようにCD19密度が適切であった場合、CD58野生型またはCD58ノックアウト系統に対してCD19-CD28ζCARまたはCD19-4-1BBζCARのいずれについても死滅に差は観察されなかった(例えば、図7A参照)。しかしながら、CAR-T細胞をCD19発現が低下した細胞株に対して試験したところ、有意差が出現し、CD19 CAR T細胞は、CD58ノックアウト対野生型細胞株に対して、細胞毒性の低下を示した(例えば、図2C~2Dを参照)。Nalm6細胞株上のCD22密度が低いほど、CD22-4-1BBζCARによるCD58ノックアウト対野生型細胞の死滅においての差が、天然抗原密度範囲で観察された(例えば、図2E参照)。
【0178】
CAR機能に対するCD19抗原密度とCD58発現との相互作用をさらに探索するために、CD19およびCD58の両方の様々なレベルを発現するNalm6クローンが、ノックアウト、過剰発現、FACSソーティング、および単一細胞クローニングを通じて生成された(例えば、図7Bを参照)。腫瘍に応答したCAR-T細胞によるサイトカイン産生は、標的抗原密度(例えば、CD19)および腫瘍細胞上のCD58密度の両方に依存することが観察された(図2F~2G)。両者が十分に高かった場合にのみ、それらがNalm6野生型系統上にあるように、最大のサイトカイン産生が達成される。
【0179】
CD58ノックアウト異種移植片および野生型異種移植片に対するインビボでのCAR有効性を評価するために、追加の試験が行われた。これらの研究において、CD19-CD28ζおよびCD19-4-1BBζ CARの両方が、CD58ノックアウトNalm6を有するマウスにおいて初期の有効性を示したが、疾患を除去することができず、結局腫瘍の増殖をもたらした(例えば、図2H~2Iを参照)、ほとんどの患者が最終的な進行前に部分奏効(PR)を達成したという、ヒト患者の経験を反映している。CD22-4-1BBζCARでも同様の傾向が観察された(例えば、図7C参照)。両者のCD19 CARは、CD58野生型異種移植片を有するマウスにおいては長期治癒をもたらしたが、CD58ノックアウト腫瘍を有するマウスを治癒することは、どちらもできなかった(例えば、図2Jを参照)。
【0180】
実施例3
【0181】
CD58-CD2相互作用は、増強されたCAR-T細胞活性に応答可能である。
【0182】
本実施例は、CD58のCD2との相互作用が、増強されたCAR-T細胞活性に応答可能であることを実証するために実施された実験の結果を記載する。
【0183】
上述のように、CD58に対する天然リガンドはCD2であり、ほとんどのT細胞によって高度に発現される共刺激分子である。CD2発現およびシグナル伝達の重要性を試験するために、CD19 CARを発現するT細胞株(Jurkat)を作製し、その中でCD2をノックアウトした(CD2KO、図3A~3B)。CD2KO CAR細胞は、CD2WT CAR細胞よりも、抗原遭遇に応答して有意に少ないIL-2を生成することが観察された(図3C)。CAR有効性に対するCD2の細胞内シグナル伝達ドメインの寄与を試験するために、CD2の細胞外ドメインのみを発現するCD2の変異体(CD2-ECD)をこれらの細胞において再発現させて(図3A~3B)、このCD2変異体がCAR機能をレスキューしないことを見出した(例えば、図3C参照)。したがって、CD2細胞内ドメインによるシグナル伝達は、効率的なCAR-T細胞機能のために必要となり得る。
【0184】
追加の試験がCAR-T細胞下流シグナリングでのCD2ライゲーションの寄与を調査するために実施された。これらの研究では、イディオタイプ抗体、CD58タンパク質、またはイディオタイプ+CD58でCD19 CAR-T細胞を架橋すると、CARおよびCD2の両方がライゲーションされた場合、CD19-CD28ζおよびCD19-4-1BBζCAR-T細胞の両方によるIL-2産生が有意に増強されることがわかった(図3D)。さらに、5分間の刺激後、イディオタイプ抗体およびCD58の両方で活性化されたCAR-T細胞において、CD3ζ-CARおよび下流ERKの両方での有意に高いリン酸化が観察された(図3E)。この観察結果は、CD2が近位T細胞受容体機構によるシグナル伝達を増強することを実証する以前の発見と一致している。
【0185】
CAR-T細胞におけるCD2シグナル伝達の役割をより十分に調査するために、上述の実験由来のタンパク質溶解物を採取し、質量分析を用いて3372タンパク質にマッピングする15,993個のホスホペプチドを測定した。ホスホプロテオームの主成分分析では、生体複製物が共にクラスター化していることが示され、ドナー間の再現性が実証された。これらの研究では、主成分1(PC1)が分散の58%を占め、抗イディオタイプによる治療に基づいてサンプルを分離し、最大の差がCARを介した刺激によるものであることを示している。主成分2(PC2)は、分散の17%を占め、可溶性CD58による処理に基づいてサンプルを分離した(図3F)。
【0186】
図3Gに示すように、差次的に豊富なペプチドの教師なしクラスタリングは、ペプチドの大部分(クラスター1、2、4、および8)が両方のイディオタイプ処理条件で上昇していることを示し、それゆえCARを介したシグナル伝達に起因し得る。クラスター7のホスホペプチドは、CD58で処理された条件でのみ上昇し、CD2シグナル伝達がこれらの変化の原因であることを示している。特に、クラスター7にはSH3KBP1およびDBNLを含むいくつかのSH3ドメインペプチドが含まれており、これらは、アクチン細胞骨格のモジュレーターとして記載され、T細胞分極に関与することが知られている。クラスター3には、イディオタイプ及びCD58の両方で刺激された条件で最も豊富に含むホスホペプチドが含まれ、TCRシグナル伝達経路の多くのコア構成要素、例えば、LCK、CD3ε、及びCD247(CD3ζ)が含まれていた。これらの結果は、CD2共刺激がCARシグナル伝達と相乗効果を発揮し、共通のTCR経路を介した活性化を増加させることを示している。さらに、クラスター3にはCD2とそのシグナル伝達アダプタータンパク質CD2APが含まれており、CARを介したシグナル伝達がCD2経路の活性化を増強することを示している。CD2共刺激単独は157個のホスホペプチドでの異なる存在量をもたらす一方、CAR活性化に加えてのCD2共刺激は236個の異なる存在量のペプチドをもたらし(図3H)、これら2つの経路を介したシグナル伝達の効果が別個のものであるという考えをさらに支持する。
【0187】
CARシグナル伝達の存在下でCD2刺激によって調節されるホスホペプチドのバイオインフォマティクス分析は、「細胞間接着」および「免疫学的シナプス」を含む遺伝子オントロジー(GO)用語の有意なエンリッチメントを明らかにした(図3I)。これらの結果は、CD2が標的細胞への細胞骨格分極に必須である可能性があるという以前の報告と一致している。TCRシグナル伝達の増強におけるCD2の役割をさらに調べるために、リアクトームTCRシグナル伝達遺伝子セットの遺伝子に対応するホスホペプチドを調べるための追加の試験が行われた。CD58によるCD2ライゲーションは、リン酸化LCK、CD3δ、CD3ε、およびGRAP2の増加とともにTCR経路シグナル伝達の増強をもたらすことがわかった。さらに、血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)およびウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)タンパク質などのアクチン細胞骨格再編成に関与するタンパク質は、CD2刺激細胞において上昇した(図3Jおよび図8)。特に、CARD11-BCL10-MALT1(CBM)シグナロソーム複合体の主要成分であるMALT1およびCARD11に対応するホスホペプチドも、CD2ライゲーションとともに増加した。CBMシグナロソームは、T細胞表面シグナル伝達およびNF-kB活性化の間の重要な分子リンクであり得、これはT細胞の増殖、生存、およびエフェクター機能に必要であり得る。
【0188】
実施例4
【0189】
CAR-T細胞は、B細胞悪性腫瘍におけるCD58喪失を克服するために操作され得る。
【0190】
本実施例は、CAR-T細胞が、B細胞悪性腫瘍におけるCD58喪失を克服するために操作され得ることを示すために実施された実験の結果を記載する。
【0191】
CD58ライゲーションによるCD2シグナル伝達がCAR-T細胞機能を増強するように、CD2共刺激ドメインをCAR分子に導入することによって第2世代および第3世代のCAR-T細胞が生成された。図4AにおけるCD22-CD2ζおよびCD22-4-1BB-CD2ζを参照されたい。CD22-4-1BBζ CARがこれらの実験に選ばれたのは、CD58ノックアウトの効果がインビトロでより明白であり、複数のコンストラクトでのより完全な試験を容易にしたためである。これらのCAR構築物(CD22-CD2ζおよびCD22-4-1BB-CD2ζ)についてCD22-4-1BBζ CARと比較したところ、これらのCAR構築物は、4-1BBζ CARがCD58ノックアウトNalm6細胞を殺傷できなかったときに、CD58ノックアウトNalm6細胞を殺傷できたことがわかった(図4B)。さらに、これらのCAR構築物は、CD58野生型およびCD58ノックアウトNalm6株の両方との共培養に応答して追加のIL-2を生成した(図4C)。しかしながら、インビボでは、CD2含有CARが最初にCD58ノックアウト異種移植片の腫瘍制御を増強したのに対し(図4D)、腫瘍は最終的に全てのマウスにおいて増殖し、生存におけるいかなる利益も無効にした(図4E)。
【0192】
天然T細胞において、CD2シグナル伝達は、T細胞受容体に対してトランスで生じる。TCRに対するCD2の関係をよりよく模倣するために、抗CD19一本鎖可変フラグメント(scFv)FMC63を膜貫通ドメインおよびCD2細胞内ドメインに融合させたトランスCAR構築物を生成した(図4F)。これらの実験において、2つの構築物は、2つのウイルスベクターを用いて1つの細胞内で、または単一のバイシストロニックベクター中で発現され得る。バイシストロニックベクターを使用したいくつかの実験では、2つのCARの配列の間にコネクタ配列が挿入された。以下は、これらの実験で使用される例示的なコネクタ配列である。
【0193】
RKRREFATNFSLLKQAGDVEENPGPLE (配列番号11)。
【0194】
上記のコネクタ配列のコード配列は以下の通りであった:
【0195】
CGCAAGAGAAGAGAATTCgcaacaaacttctctctgctgaaacaagccggagatgtcgaagagaatcctggaccgCTCGAG (配列番号12)。
【0196】
式中:RKRR(配列番号13)は、第1のCAR配列の下流に付加されるフューリン切断配列に対応する。
【0197】
EFは、EcoRI切断部位に対応する;
【0198】
ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号14)は、ブタ テスコウイルス-1 2A(P2A)由来のauproteolyticペプチド配列に対応する。
【0199】
LEは、XhoI切断部位に対応する。
【0200】
細胞毒性アッセイにおいて、トランスでCD22-4-1BBζおよびCD19-CD2受容体の両方を発現するT細胞は、CD58ノックアウト腫瘍細胞を死滅させることができた一方で、第2世代および第3世代のCARは失敗した(図4G)。サイトカイン産生についても同じ傾向が観察され、トランス構成はCD58ノックアウトラインに対して最も多くのIL-2を生成する(図4H)。特に、CD22-4-1BBζCARおよび細胞内CD2シグナル伝達ドメインを有さないCD19 scFv膜貫通ドメインを発現する対照T細胞は、CD58ノックアウト細胞に対して殺傷能またはサイトカイン生成能を回復せず、CD2シグナル伝達がCARおよび腫瘍細胞相互作用に必須であり得ることを示している(図4G~4H)。実際に、インビボでCD22-4-1BBζおよびCD19-CD2受容体をトランスで発現するT細胞は、対照構築物と比較してCD58ノックアウト腫瘍増殖を効果的に制御し(図4I)、有意に改善された生存率をもたらした(図4J)。したがって、トランスアプローチでCD2シグナル伝達を導入するリンパ腫に対する次世代CARは、CD58喪失を克服するのに有効であると結論付けられ、これは、本明細書に記載の研究によって明らかにされたCAR耐性の一般的だが新しいメカニズムである。
【0201】
本開示の特定の代替が開示されているが、様々な改変および組合せが可能であり、添付の特許請求の範囲の真の精神および範囲内で企図されることを理解されたい。したがって、本明細書に提示される正確な要約および開示に制限の意図はない。
【0202】
引用文献
【0203】
1 Majzner, R. G. & Mackall, C. L. Clinical lessons learned from the first leg of the CAR T cell journey. Nat Med 25, 1341-1355, doi:10.1038/s41591-019-0564-6 (2019).
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図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
【配列表】
2023548509000001.app
【国際調査報告】