(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】バッテリー診断装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/389 20190101AFI20231110BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231110BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20231110BHJP
【FI】
G01R31/389
H01M10/48 P
G01R31/392
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526667
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 KR2021013829
(87)【国際公開番号】W WO2022108111
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0156002
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン-チョル
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA23
2G216BA56
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF41
(57)【要約】
本発明は、ナイキスト線図を用いるものの、バッテリーを高精度で診断できる技術を開示する。本発明の一側面によるバッテリー診断装置は、対象バッテリーに交流電圧を印加しながら周波数の変化によるインピーダンスを測定するインピーダンス測定モジュールと、周波数ごとのインピーダンス参照値を記憶するメモリモジュールと、前記インピーダンス測定モジュールにより測定された前記対象バッテリーのインピーダンス測定値に関するナイキスト線図を生成し、生成されたナイキスト線図から変曲点を抽出し、抽出された変曲点を中心として所定の周波数範囲内の値を、前記メモリモジュールに記憶された前記周波数ごとのインピーダンス参照値と比較して前記対象バッテリーを診断するプロセッサと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象バッテリーに交流電圧を印加しながら周波数の変化によるインピーダンスを測定するインピーダンス測定モジュールと、
周波数ごとのインピーダンス参照値を記憶するメモリモジュールと、
前記インピーダンス測定モジュールにより測定された前記対象バッテリーのインピーダンス測定値に関するナイキスト線図を生成し、生成されたナイキスト線図から変曲点を抽出し、抽出された変曲点を中心として所定の周波数範囲内の値を、前記メモリモジュールに記憶された前記周波数ごとのインピーダンス参照値と比較して前記対象バッテリーを診断するプロセッサと、
を含む、バッテリー診断装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記抽出された変曲点が原点になるように前記生成されたナイキスト線図をシフトし、シフトされた状態で前記周波数ごとのインピーダンス参照値と比較する、請求項1に記載のバッテリー診断装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記対象バッテリーのインピーダンス測定値の大きさ及び角度を用いて前記対象バッテリーを診断する、請求項1又は2に記載のバッテリー診断装置。
【請求項4】
前記メモリモジュールは、前記周波数ごとのインピーダンス参照値を複数のバッテリーレベルのそれぞれごとに区分して記憶し、
前記プロセッサは、前記対象バッテリーのインピーダンス測定値を、前記メモリモジュールに記憶されたバッテリーレベルにマッチングさせることにより、前記対象バッテリーのレベルを分類する、請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記生成されたナイキスト線図において、電荷移動抵抗領域が拡散抵抗領域により変曲する点を前記変曲点として抽出する、請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記生成されたナイキスト線図について、低周波数領域から周波数が高くなる方向に探索して前記変曲点を抽出する、請求項1から5のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置。
【請求項7】
前記メモリモジュールは、前記変曲点に関する予備周波数情報を予め記憶する、請求項1から6のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置を含む、バッテリーパック。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置を含む、エネルギー貯蔵システム。
【請求項10】
周波数ごとのインピーダンス参照値を記憶するステップと、
対象バッテリーに交流電圧を印加しながら周波数の変化によるインピーダンスを測定するステップと、
前記測定するステップで測定された前記対象バッテリーのインピーダンス測定値に関するナイキスト線図を生成するステップと、
前記生成するステップで生成されたナイキスト線図から変曲点を抽出するステップと、
前記抽出するステップで抽出された変曲点を中心として所定の周波数範囲内のインピーダンス測定値を、前記記憶するステップで記憶された前記周波数ごとのインピーダンス参照値と比較するステップと、
前記比較するステップの結果に基づいて前記対象バッテリーを診断するステップと、
を含む、バッテリー診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月19日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0156002号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、バッテリー診断技術に関し、より詳しくは、インピーダンス測定値によりバッテリーの状態を効果的に診断できるバッテリー診断技術に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、商用化されている二次電池としては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウム二次電池などがあるが、このうち、リチウム二次電池は、ニッケル系の二次電池に比べてメモリー効果がほとんど起こらず、充放電が自由であり、自己放電率が非常に低く、エネルギー密度が高いという利点で脚光を浴びている。
【0004】
さらに、最近では、電気自動車やエネルギー貯蔵システム(ESS:Energy Storage System)などの中・大型装置にも駆動用やエネルギー貯蔵用として二次電池が広く用いられている。また、そのため、二次電池への関心がさらに高まり、関連研究開発が一層活発に行われている。
【0005】
リチウム二次電池では、正極活物質及び負極活物質として、リチウム系酸化物及び炭素材を主としてそれぞれ使用する。また、リチウム二次電池は、このような正極活物質及び負極活物質がそれぞれ塗布された正極板と負極板がセパレーターを挟んで配置された電極組立体と、電極組立体を電解液とともに密封収納する外装材、すなわち、電池ケースと、を備える。
【0006】
バッテリーは、電気化学的な酸化及び還元反応を通じて電気エネルギーを生成する。しかし、バッテリーは、充放電サイクルを繰り返すうちに、製造当初における容量、すなわち、寿命初期(BOL:Beginning Of Life)状態での性能が継続的に維持されず、時間の経過とともに劣化する可能性がある。このようなバッテリーの劣化状態を適切に把握しないと、バッテリーの充電状態(SOC:State Of Charge)、使用可能時間、寿命、交換時間などを正確に予測することが困難となる場合がある。また、この点において、予測が正確に行われないと、バッテリーの使用者や管理者に意図しない被害が発生する可能性がある。
【0007】
また、近年では、バッテリーをリサイクルするケースも増えてきている。特に、電気自動車に搭載されたバッテリーパックが所定期間の使用で性能が低下した場合、使用済みのバッテリーパックを他のアプリケーション、例えばエネルギー貯蔵システム(ESS:Eneargy Storage System)に搭載して再利用できるようにする研究や事業などが活発に行われている。
【0008】
このように、使用済みのバッテリー(廃バッテリー)を他の分野や同じ分野でリサイクルしようとする場合、より正確なバッテリーの状態診断が必要である。例えば、自動車用のバッテリーパックをエネルギー貯蔵システムに採用するためには、当該バッテリーパックがリサイクル可能か否かを判断する必要がある。これまでにも、バッテリーセル、バッテリーモジュール、バッテリーパックなどを診断する技術が種々提案されてきているが、いまだに精度や迅速性などの様々な面で十分な性能を発揮しているとは言い難い。
【0009】
特に、従来このようなバッテリーを診断する代表的な技術の一つとして、電気化学インピーダンス分光法(EIS:Electrochemical Impedance Spectroscopy)を用いた方法が挙げられる。このような方法では、EIS測定データのナイキストプロット(Nyquist plot)が用いられ、この過程で、バッテリーの等価回路モデルに対する各素子定数を抽出する必要がある。
【0010】
しかしながら、このような等価回路モデルを用いた従来技術の場合、完全な等価回路モデルを実現することができないという限界がある。特に、EISを測定する場合、測定プローブのインダクタンス及び抵抗成分、ならびに測定ポイントでの接点抵抗などを、バッテリー自体のインダクタンス及び抵抗成分と区別することは困難である。また、測定プローブのインダクタンス成分は、測定ごとに偏差(ばらつき)が大きいため、高周波帯域への影響が大きく、特に固体電解質界面(SEI:Solid Electrolyte Interphase)で表される抵抗成分への影響が大きい場合がある。
【0011】
そのため、このような従来技術によれば、ナイキスト線図を用いたバッテリーの診断において、十分な精度を確保することは困難である。万が一、バッテリーを再使用する前にバッテリーの状態診断が正確に行われないと、バッテリーを再使用する使用者だけでなく、バッテリーが再使用される装置やシステムにも悪影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、ナイキスト線図を用いるものの、バッテリーを高精度で診断できる装置及び方法などを提供することを目的とする。
【0013】
本発明の他の目的及び利点は、以下の説明により理解され、本発明の実施形態によりさらに明らかになるであろう。また、本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に開示されている手段及びその組み合わせにより実現できることを容易に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の一側面によるバッテリー診断装置は、
対象バッテリーに交流電圧を印加しながら周波数の変化によるインピーダンスを測定するインピーダンス測定モジュールと、周波数ごとのインピーダンス参照値を記憶するメモリモジュールと、前記インピーダンス測定モジュールにより測定された前記対象バッテリーのインピーダンス測定値に関するナイキスト線図を生成し、生成されたナイキスト線図から変曲点を抽出し、抽出された変曲点を中心として所定の周波数範囲内の値を、前記メモリモジュールに記憶された前記周波数ごとのインピーダンス参照値と比較して前記対象バッテリーを診断するプロセッサと、を含む。
【0015】
ここで、前記プロセッサは、前記抽出された変曲点が原点になるように前記生成されたナイキスト線図をシフトし、シフトされた状態で前記周波数ごとのインピーダンス参照値と比較するように構成されてもよい。
【0016】
また、前記プロセッサは、前記対象バッテリーのインピーダンス測定値の大きさ及び角度を用いて前記対象バッテリーを診断するように構成されてもよい。
【0017】
さらに、前記メモリモジュールは、前記周波数ごとのインピーダンス参照値を複数のバッテリーレベルのそれぞれごとに区分して記憶し、前記プロセッサは、前記対象バッテリーのインピーダンス測定値を、前記メモリモジュールに記憶されたバッテリーレベルにマッチングさせることにより、前記対象バッテリーレベルを分類するように構成されてもよい。
【0018】
さらにまた、前記プロセッサは、前記生成されたナイキスト線図において、電荷移動抵抗領域が拡散抵抗領域により変曲する点を前記変曲点として抽出するように構成されてもよい。
【0019】
さらにまた、前記プロセッサは、前記生成されたナイキスト線図について、低周波数領域から周波数が高くなる方向に探索して前記変曲点を抽出するように構成されてもよい。
【0020】
さらにまた、前記メモリモジュールは、前記変曲点に関する予備周波数情報を予め記憶しておいてもよい。
【0021】
一方、上記目的を達成するための本発明の他の側面によるバッテリーパックは、本発明によるバッテリー診断装置を含む。
【0022】
また一方、上記目的を達成するための本発明のさらに他の側面によるエネルギー貯蔵システムは、本発明によるバッテリー診断装置を含む。
【0023】
さらに一方、上記目的を達成するための本発明のさらに他の側面によるバッテリー診断方法は、周波数ごとのインピーダンス参照値を記憶するステップと、対象バッテリーに交流電圧を印加しながら周波数の変化によるインピーダンスを測定するステップと、前記測定ステップで測定された前記対象バッテリーのインピーダンス測定値に関するナイキスト線図を生成するステップと、前記生成ステップで生成されたナイキスト線図から変曲点を抽出するステップと、前記抽出ステップで抽出された変曲点を中心として所定の周波数範囲内のインピーダンス測定値を、前記記憶ステップで記憶された前記周波数ごとのインピーダンス参照値と比較するステップと、前記比較ステップで比較された結果に基づいて前記対象バッテリーを診断するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、効果的なバッテリー診断装置が提供される。
【0025】
特に、本発明の一側面によれば、ナイキストプロットを用いてバッテリーを診断するが、等価回路モデルを用いないため、等価回路モデルに関連する種々の素子定数値などを抽出する必要がない。
【0026】
したがって、本発明のこのような側面によれば、バッテリー診断の精度及び/又は迅速性を向上させることができる。
【0027】
さらに、本発明の一側面によれば、EIS測定データの分析において、相対的に高い周波領域を用いずに低い周波領域を用いることにより、測定プローブのインダクタンス及び抵抗成分の影響を最小限に抑えることができる。
【0028】
したがって、本発明のこのような側面によれば、バッテリー診断の精度をさらに向上させることができる。
【0029】
また、本発明は、バッテリーモジュールやバッテリーパックの再使用において、バッテリーモジュールやバッテリーパックに対するレベル(等級)を分類するのに容易に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本明細書に添付される以下の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、後述する発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項のみに限定されて解釈されてはいけない。
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【0032】
【
図2】本発明の一実施形態によるメモリモジュールに記憶されたインピーダンス参照値を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるプロセッサにより生成されたナイキスト線図の一例を示す図である。
【
図4】
図3のナイキスト線図に対して、抽出された変曲点が原点になるようにシフトされた構成を概略的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるインピーダンス測定値の大きさ及び角度を図式化した図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるメモリモジュールに記憶されたインピーダンス参照値データの一部を示す図である。
【
図7】本発明の他の実施形態によるメモリモジュールに記憶されたインピーダンス参照値データの一部を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態により生成されたナイキスト線図に対して、インピーダンスに影響を及ぼす因子の種類に応じて各領域を区分して示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態によるプロセッサにより変曲点が抽出される構成を概略的に示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態によるバッテリー診断方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0034】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態によるバッテリー診断装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【0036】
図1を参照すると、本発明によるバッテリー診断装置は、インピーダンス測定モジュール100、メモリモジュール200及びプロセッサ300を含む。
【0037】
前記インピーダンス測定モジュール100は、対象バッテリーに関するインピーダンスを測定するように構成されてもよい。特に、前記インピーダンス測定モジュール100は、電気化学インピーダンス分光法(EIS:Electrochemical Impedance SpectroscopyEIS)を用いて対象バッテリーのインピーダンスを測定してもよい。ここで、対象バッテリーとは、診断対象となるバッテリーのことをいう。例えば、対象バッテリーとは、複数のバッテリーセルを含むバッテリーモジュールやバッテリーパックであってもよい。あるいは、対象バッテリーは、バッテリーセル、すなわち一つの二次電池を指す場合もある。
【0038】
前記インピーダンス測定モジュール100は、対象バッテリーのインピーダンスを測定するために、対象バッテリーに交流電圧を印加するように構成されてもよい。例えば、前記インピーダンス測定モジュール100は、交流電圧を印加しながら対象バッテリーを充電し、そのような充電過程において対象バッテリーの内部インピーダンスを測定するように構成されてもよい。特に、前記インピーダンス測定モジュール100は、周波数を変化させながら交流電圧を印加するように構成されてもよい。
【0039】
前記インピーダンス測定モジュール100は、本発明の出願時点における公知の様々なインピーダンス測定構成及び技術を採用することができる。例えば、前記インピーダンス測定モジュール100は、四端子対(4-terminal pair)方式を用いてバッテリーの内部インピーダンスを測定するように構成されてもよい。
【0040】
また、前記インピーダンス測定モジュール100は、バッテリーの内部インピーダンスを測定するための複数の構成要素を備えていてもよい。例えば、前記インピーダンス測定モジュール100は、バッテリーの端子と接触するための接触プローブ、交流電源を生成して供給する電源供給部、電源供給部と接触プローブとの間の電源ケーブル、及び電圧センサーなどを備えていてもよい。このように、本発明のインピーダンス測定モジュール100は、従来公知のインピーダンス測定構成を採用できるので、その詳細な説明を省略する。
【0041】
前記メモリモジュール200は、インピーダンス参照値を記憶する。ここで、インピーダンス参照値は、インピーダンス測定モジュール100によって測定された対象バッテリーのインピーダンス測定値と比較されるための値であって、予め記憶しておいてもよい。特に、インピーダンス参照値は、対象バッテリーと同一又は類似の仕様、種類、特性などを有する参照バッテリーについて、複数回の事前実験で事前に得た値とすることができる。
【0042】
また、インピーダンス測定モジュール100によるインピーダンス測定方法と同一又は類似の方法で、インピーダンス参照値を測定し、記憶してもよい。例えば、メモリモジュール200に記憶されるインピーダンス参照値は、インピーダンス測定モジュール100が対象バッテリーのインピーダンスを測定する際の電圧の大きさ及び周波数と同一又は類似の電圧の大きさ及び周波数で交流電圧を印加することにより得られてもよい。
【0043】
図2は、本発明の一実施形態によるメモリモジュール200に記憶されたインピーダンス参照値を概略的に示す図である。
【0044】
図2を参照すると、前記メモリモジュール200は、周波数ごとにインピーダンス参照値を記憶してもよい。すなわち、前記メモリモジュール200は、所定の周波数範囲内での複数の周波数(f1、f2、f3、f4、f5、f6、f7・・・.)に区分し、区分された周波数ごとにそれに対応するインピーダンス参照値(Zre1、Zre2、Zre3、Zre4、Zre5、Zre6、Zre7・・・)が、予め設定された形態で構成されてもよい。例えば、前記メモリモジュール200は、0.1Hz~10Hzに含まれる複数の周波数のそれぞれに、対応するインピーダンス参照値を予め記憶していてもよい。
【0045】
前記メモリモジュール200は、この他にも、本発明によるバッテリー診断装置の他の構成要素、例えばインピーダンス測定モジュールやプロセッサ300がその動作又は機能を実行するために必要なデータやプログラムなどをさらに記憶してもよい。
【0046】
前記メモリモジュール200としては、フラッシュメモリー(登録商標)タイプ、ハードディスクタイプ、ソリッドステートディスク(SSD:Solid State Disk)タイプ、シリコンディスクドライブ(SDD:Silicon Disk Drive)タイプ、マルチメディアカードマイクロタイプ、ランダムアクセスメモリー(RAM:random access memory)、スタティックランダムアクセスメモリー(SRAM:static random access memory)、リードオンリーメモリー(ROM:read-only memory)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリー(EEPROM:electrically erasable programmable read-only memory)、及びプログラム可能な読み取り専用メモリー(PROM:programmable read-only memory)のうちの少なくとも一つを実現できるが、本発明は、必ずしもこのようなメモリモジュール200の具体的な形態に限定されるものではない。
【0047】
前記プロセッサ300は、インピーダンス測定モジュール100と接続され、インピーダンス測定モジュールからインピーダンス測定値を受信するように構成されてもよい。すなわち、インピーダンス測定モジュール100が対象バッテリーに関するインピーダンスを測定すると、測定結果がプロセッサ300に送信されてもよい。また、プロセッサ300は、このようにインピーダンス測定モジュールから送信されたインピーダンス測定結果に基づいて、対象バッテリーのインピーダンス測定値に関するナイキスト線図(ナイキストプロット)を生成するように構成されてもよい。特に、インピーダンス測定モジュール100は、EIS分析方法によってインピーダンスを測定してもよい。また、このようなEIS分析データは、ナイキストプロットと見なされてもよい。
【0048】
図3は、本発明の一実施形態によるプロセッサ300によって生成されたナイキスト線図の一例を示す図である。
【0049】
図3を参照すると、対象バッテリーのEIS測定結果によりナイキスト線図が生成され得る。このナイキスト線図において、横軸はインピーダンスの実数成分(Zreal)であってもよく、縦軸はインピーダンスの虚数成分(Zimag)であってもよい。また、横軸及び縦軸の単位は、mΩ又はΩであってもよい。また、各点は、各周波数に応じたインピーダンス測定値、すなわち、インピーダンスポイントであってもよい。さらに、各インピーダンスポイントは、矢印a1で示す方向に向かって徐々に増加する周波数を有するといえる。ナイキスト線図では、周波数の変化に応じて対象バッテリーのインピーダンスの実数値及び虚数値が変化し、その交点が座標上の点、すなわち、インピーダンスポイントとして表示され得る。
【0050】
前記プロセッサ300は、インピーダンス測定モジュールから送信されたインピーダンス測定値に基づいて、このようなナイキスト線図を生成することができる。この際、前記プロセッサ300は、本発明の出願時点における公知のナイキスト線図生成技術を採用することができるので、本発明ではこれについての詳細な説明を省略する。
【0051】
このようにEIS測定データに関するナイキスト線図が生成されると、前記プロセッサ300は、生成されたナイキスト線図から変曲点を抽出するように構成されてもよい。ここで、変曲点とは、EISナイキスト線図において曲がる方向が変わる点を意味し得る。微積分学の観点から、このような変曲点は、2回微分可能な関数について、関数のグラフに凹凸があるとき,グラフの形が上に凸から下に凸に、もしくは下に凸から上に凸に変わる点を意味ずるといえる。すなわち、変曲点は、平面曲線において曲率の正負(+、-)が変わる点を意味するといえる。前記プロセッサ300は、EISナイキスト線図からこのような変曲点を抽出するように構成されてもよい。
【0052】
このように、EISナイキスト線図から変曲点が抽出されると、前記プロセッサ300は、抽出された変曲点を中心として所定の周波数範囲内に属する一つ以上の値を選択してもよい。さらに、前記プロセッサ300は、このように変曲点を中心として選択された値を、メモリモジュール200に記憶された周波数ごとのインピーダンス参照値と比較するように構成されてもよい。
【0053】
例えば、
図3の構成において、変曲点がナイキスト線図上のf13で示されるインピーダンスポイントとして抽出された場合、前記プロセッサ300は、変曲点f13を中心として所定の周波数範囲内にあるbで示される部分に属するインピーダンスポイントを選択してもよい。この場合、プロセッサ300は、bで示される部分内のインピーダンスポイントに関して、周波数と、周波数ごとのインピーダンス測定値とをそれぞれ確認することができる。
【0054】
また、プロセッサ300は、選択されたインピーダンスポイントのインピーダンス測定値とそれに対応するインピーダンス参照値とを、メモリモジュール200において確認することができる。すなわち、前記プロセッサ300は、選択されたインピーダンスポイントと同一又は類似の周波数に該当するインピーダンス参照値をメモリモジュール200から読み出すことができる。また、このように読み出されたインピーダンス参照値と、選択されたインピーダンスポイントのインピーダンス測定値とを、互いに比較することができる。
【0055】
例えば、
図3の実施形態において、変曲点f13を中心に設定されたb領域内のインピーダンスポイントの周波数が、
図2の実施形態における周波数f2~f6に対応する場合、前記プロセッサ300は、領域b内のインピーダンスポイントのインピーダンス測定値と、メモリモジュールの周波数f2~f6に対応するインピーダンス参照値、すなわちZre2~Zre6とを比較することができる。
【0056】
また、プロセッサ300は、このようなインピーダンス測定値とインピーダンス参照値との比較結果に基づいて、対象バッテリーを診断するように構成されてもよい。
【0057】
例えば、前記プロセッサ300は、インピーダンス測定値がインピーダンス参照値の誤差範囲を外れる場合、対象バッテリーに異常があると診断してもよい。この場合、インピーダンス参照値は、対象バッテリーに異常が発生しているか否かを判断するための基準値として設定されてもよい。他の例として、前記プロセッサ300は、インピーダンス測定値と同一であるか又は誤差範囲内にあるインピーダンス参照値を探索するように構成されてもよい。この場合、メモリモジュール200は、各インピーダンス参照値に対して、対象バッテリーの状態を診断可能な各種情報をマッチングさせて記憶してもよい。例えば、メモリモジュール200は、各インピーダンス参照値に対して、バッテリーの健康状態(SOH:State of Health)情報をマッチングさせて記憶してもよい。また、プロセッサ300は、探索されたインピーダンス参照値にマッチングされた情報を通じて対象バッテリーの状態を診断してもよい。
【0058】
本発明のこのような構成によれば、簡単且つ正確にバッテリーを診断することができる。特に、本発明の上記構成によれば、EISデータを用いてバッテリーを診断するとき、バッテリーに対する等価回路モデルが不要となる。したがって、バッテリーと関連してEISナイキスト線図の等価回路モデルについての多様な定数値を抽出する必要がない。したがって、本発明のこのような側面によれば、診断過程が簡単であるだけでなく、定数値の抽出過程で発生する誤差などを排除することができる。したがって、この場合、EISナイキスト線図を用いた効率的なバッテリー診断が可能となる。
【0059】
一方、前記プロセッサ300は、本発明で行われる様々な制御ロジッグを実行するために、当業界に公知のものとして、中央処理装置(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC:application-specific integrated circuit)、チップセット、論理回路、レジスタ、通信モデム、データ処理装置などを選択的に含むか、これらの用語で表現され得る。また、制御ロジッグをソフトウェアで実現するとき、前記プロセッサ300は、プログラムモジュールの集合で実現できる。この場合、プログラムモジュールは、内蔵メモリー又は外部のメモリモジュール200などに記憶され、プロセッサ300によって実行されてもよい。前記メモリモジュール200は、プロセッサ300の内部又は外部に配置されてもよく、種々の周知の手段によってプロセッサ300と接続されてもよい。
【0060】
特に、本発明による二次電池診断装置がバッテリーパックに含まれる形態で実現される場合、バッテリーパックは、マイクロコントローラユニット(MCU:Micro Controller Unit)やバッテリー管理システム(BMS:Battery Management System)などの用語で称される制御装置を含んでもよい。この際、前記プロセッサ300は、このような一般的なバッテリーパックに設けられたMCUやBMSなどの構成要素によって実現されてもよい。
【0061】
一方、本明細書において、前記プロセッサ300などの動作や機能に関する「~する」又は「~されるように構成される」などの用語は、「~されるようにプログラミングされる」という意味を含み得る。
【0062】
また、前記プロセッサ300は、EIS測定によるナイキスト線図を生成して変曲点を抽出した場合、抽出された変曲点が原点になるようにナイキスト線図をシフト(shift)してもよい。また、このようにシフトされた状態のナイキスト線図に対して、前記プロセッサ300は、周波数ごとのインピーダンス参照値と比較分析するように構成されてもよい。これについては、
図4を参照してより詳細に説明する。
【0063】
図4は、
図3のナイキスト線図に対して、抽出された変曲点が原点になるようにシフトされた構成を概略的に示す図である。ただし、
図4では、図示の便宜上、
図3のナイキスト線図のうち、一部の高周波領域を除外した。
【0064】
図4を参照すると、
図3の実施形態で抽出された変曲点f13が原点になるように、ナイキスト線図がシフトされている。すなわち、
図4のナイキスト線図は、
図3のナイキスト線図に対して、座標軸は維持したまま左方向及び下方向に移動させることにより、変曲点f13を原点に位置させた形態といえる。
【0065】
また、プロセッサ300は、このようなナイキスト線図の原点、すなわち変曲点f13を中心に、所定の周波数内のインピーダンス測定値を、当該周波数に対応するインピーダンス参照値と比較するように構成されてもよい。
【0066】
本発明のこのような構成によれば、変曲点を原点に位置させることで、インピーダンス測定値とインピーダンス参照値とをより明確に比較することができる。さらに、このような実施構成によれば、メモリモジュール200に記憶されたインピーダンス参照値がナイキスト線図の形態で記憶された場合、変曲点を中心にインピーダンス測定値とインピーダンス参照値とをより容易に比較することができる。また、このような実施構成によれば、同じバッテリーから時間を異にして測定及び生成されたナイキスト線図との比較や、他のバッテリーから測定及び生成されたナイキスト線図との比較の際、より明確かつ容易に行うことができる。さらに、上記実施構成によれば、ナイキスト線図に対して、変曲点周辺の概形をより明確に比較分析することができる。
【0067】
また、前記プロセッサ300は、抽出された変曲点を中心に、第1所定周波数分だけ高い周波数と第2所定周波数分だけ低い周波数との間の周波数領域に対するインピーダンス測定値をインピーダンス参照値と比較するように構成されてもよい。特に、ナイキスト線図では、各周波数におけるインピーダンス測定値がインピーダンスポイントで示される。したがって、前記プロセッサ300は、変曲点から高周波方向及び/又は低周波方向に所定数のインピーダンスポイントを探索し、探索されたインピーダンスポイントのインピーダンス測定値をインピーダンス参照値と比較するように構成されてもよい。
【0068】
ここで、第1所定周波数と第2所定周波数は、互いに同一に構成されてもよい。すなわち、前記プロセッサ300は、抽出された変曲点を中心に、高周波方向及び低周波方向において同数のインピーダンスポイントを探索するように構成されてもよい。
【0069】
例えば、
図4の実施形態において、前記プロセッサ300は、変曲点f13を中心に低周波数方向及び高周波数方向においてそれぞれ2つのインピーダンスポイントを探索し、探索されたインピーダンスポイントのインピーダンス測定値をインピーダンス参照値と比較するように構成されてもよい。すなわち、前記プロセッサ300は、変曲点f13から低周波方向(右方向)における2つのポイントf14及びf15についてのインピーダンス測定値、且つ、変曲点f13から高周波方向(左方向)における2つのポイントf11及びf12についてのインピーダンス測定値を、各インピーダンスポイントの周波数と同じ周波数に対応するインピーダンス参照値と比較してもよい。
【0070】
本発明のこのような構成によれば、原点の周波数情報と共に、原点から離れた他の測定ポイントの周波数情報及びインピーダンス測定値を分析することにより、変曲点を中心とした対象バッテリーのインピーダンス特性をより明確に把握することができる。
【0071】
また、前記プロセッサ300は、対象バッテリーのインピーダンス測定値の大きさ及び角度を用いて対象バッテリーを診断するように構成されてもよい。これについては、
図5を参照してより詳細に説明する。
【0072】
図5は、本発明の一実施形態によるインピーダンス測定値の大きさ及び角度を図式化した図である。
【0073】
より具体的に、
図5は、インピーダンスの正の虚数部(+Zimag)が上部に位置するように、
図4のナイキスト線図に対して、水平軸(Zreal)を基準に上下反転させたものといえる。すなわち、
図4では、インピーダンスの負の虚数部(-Zimag)が第1象限及び第2象限に位置することを示すが、
図5では、インピーダンスの負の虚数部(-Zimag)が第3象限及び第4象限に位置することを示している。また、
図5は、原点を中心として所定の周波数内の低周波領域、すなわち第1象限の一部領域を拡大して示す。したがって、
図5では、複数のインピーダンスポイントのうち、ポイントf14及びポイントf15ポイントについてのみを示している。
【0074】
このような
図5において、原点f13から低周波数方向(右方向)への第1ポイントであるポイントf14を調べると、大きさはr14で表され、角度はθ14で表される。このとき、大きさr14及び角度θ14は、以下のように演算できる。
【0075】
r14=(x142+y142)1/2
θ14=tan-1(y14/x14)
【0076】
ここで、x14及びy14は、それぞれ、ポイントf14におけるx軸成分(インピーダンスの実数成分)及びy軸成分(インピーダンスの虚数成分)といえる。また、前記プロセッサ300は、これと同様に、原点f13から低周波数方向への第2ポイントであるポイントf15についても、その大きさr15及び角度θ15を演算することができる。
【0077】
また、図には示されていないが、プロセッサ300は、これと同様に、原点f13から高周波方向(左方向)への第1ポイント及び第2ポイントについても、その大きさ及び角度を演算することができる。
【0078】
このような実施形態において、前記メモリモジュール200は、複数の周波数に対応するインピーダンス参照値として、インピーダンスの大きさ及び角度を記憶してもよい。すなわち、プロセッサ300によってインピーダンス測定値の大きさ及び角度と比較できるように、インピーダンス参照値をもまた、それぞれの大きさ及び角度を記憶してもよい。
【0079】
図6は、本発明の一実施形態によるメモリモジュール200に記憶されたインピーダンス参照値データの一部を示す図である。
【0080】
図6を参照すると、前記メモリモジュール200は、複数の周波数(2.154Hz、1.468Hz、1Hz、0.681Hz、0.464Hz)の各々に対応するインピーダンス参照値を記憶している。特に、メモリモジュール200に記憶されたインピーダンス参照値は、周波数ごとにインピーダンスの大きさ及び角度を有している。例えば、
図6において、1.468Hzの周波数に対応するインピーダンス参照値の大きさ及び角度は、それぞれ0.39mΩ及び-141.7°であると言える。また、0.681Hzの周波数に対応するインピーダンス参照値の大きさ及び角度は、それぞれ0.29mΩと-38.3°であると言える。
【0081】
特に、前記メモリモジュール200は、特定周波数が原点である場合を基準として、その周辺の所定周波数に対するインピーダンス参照値の大きさ及び角度を記憶してもよい。例えば、
図6に示すように、前記メモリモジュール200は、1Hzである周波数点が原点である状態であるとき、その周辺の周波数(0.681Hz、0.464Hz、1.468Hz、2.154Hz)の各々に対するインピーダンス参照値の大きさ及び角度を記憶してもよい。
【0082】
このような実施構成において、前記プロセッサ300は、対象バッテリーのインピーダンス測定値の大きさ及び角度と、前記メモリモジュール200に記憶されたインピーダンス参照値の大きさ及び角度とを、同じ周波数同士で互いに比較してもよい。また、前記プロセッサ300は、このような大きさ及び角度の比較結果に応じて、バッテリーを診断してもよい。
【0083】
特に、前記プロセッサ300は、インピーダンス測定値を、原点が同一の周波数を有するインピーダンス参照値と比較するように構成されてもよい。例えば、
図6に示すインピーダンス参照値は、原点が1Hzの周波数を有する場合として設定されている。このとき、
図4の実施形態において、変曲点であるf13で示される点が1Hzの周波数に対応する点である場合、前記プロセッサ300は、
図4の実施形態によるインピーダンス測定値と、
図6の実施形態によるインピーダンス参照値とを互いに比較して、対象バッテリーを診断することができる。
【0084】
より具体的には、
図4の実施形態において、f11、f12、f14及びf15で示される点は、それぞれ2.154Hz、1.468Hz、0.681Hz及び0.464Hzの周波数に対応する点であってもよい。この場合、前記プロセッサ300は、f11、f12、f14及びf15の各点に対するインピーダンス測定値の大きさ及び角度を取得し、取得された各点の大きさ及び角度を、
図6に示すインピーダンス参照値の大きさ及び角度と比較することができる。ここで、各点におけるインピーダンス測定値の大きさ及び角度は、
図5の実施形態で説明したように取得され得る。
【0085】
一方、前記メモリモジュール200は、インピーダンス測定モジュール100により印加される交流電圧の様々な周波数に対応する、すなわち周波数ごとに対応するインピーダンス参照値として、インピーダンスの大きさ及びインピーダンスの角度を記憶してもよい。特に、メモリモジュール200は、インピーダンス測定モジュール100が対象バッテリーのインピーダンスを測定する際に使用可能な周波数全体に対して、各々に対応するインピーダンス参照値を予め記憶しておいてもよい。例えば、インピーダンス測定モジュール100が2.154Hz、1.468Hz、1Hz、0.681Hz、0.464Hz・・・のように周波数を変化させながら交流電圧を印加することでインピーダンスを測定するように設定されている場合、前記メモリモジュール200は、インピーダンス測定モジュール100のこのような設定周波数と同じ周波数(2.154Hz、1.468Hz、1Hz、0.681Hz、0.464Hz・・・)の各々に対応するインピーダンス参照値を予め記憶していてもよい。
【0086】
あるいは、前記インピーダンス測定モジュール100は、メモリモジュール200に予め記憶されている周波数に合わせて、交流電圧の印加時に周波数を変化させるように構成されてもよい。例えば、
図6に示す形態でインピーダンス参照値がメモリモジュール200に予め記憶されている場合、前記インピーダンス測定モジュール100は、2.154Hz、1.468Hz、1Hz、0.681Hz及び0.464Hzのように周波数を変更しながら交流電圧を印加し、各周波数に対するインピーダンス測定値を取得するように構成されてもよい。
【0087】
また、
図6の実施形態では、原点が1Hzである場合を中心としたインピーダンス参照値の形態を示したが、原点は1Hzでない場合もある。したがって、前記メモリモジュール200は、
図6に示す形態でインピーダンス参照値を記憶してもよいし、原点が1Hzではない他の幾つかの場合についてのデータをも含んでもよい。例えば、前記メモリモジュール200は、原点が0.681Hz又は1.468Hzである場合の周辺周波数点のインピーダンス参照値の大きさ及び角度についてのデータを記憶してもよい。この場合、前記プロセッサ300は、抽出された変曲点がどの周波数を有するかに応じて、それに適したインピーダンス参照値データをメモリモジュール200から取得し、取得されたインピーダンス参照値データとインピーダンス測定値とを互いに比較してもよい。
【0088】
前記メモリモジュール200は、周波数ごとのインピーダンス参照値を複数のバッテリーレベルのそれぞれごとに区分して記憶してもよい。これについては、
図7を参照してより詳細に説明する。
【0089】
図7は、本発明の他の実施形態によるメモリモジュール200に記憶されたインピーダンス参照値データの一部を示す図である。
図7については、上記
図6の実施形態との相違点に重点をおいて説明する。
【0090】
図7を参照すると、前記メモリモジュール200は、周波数ごとのインピーダンス参照値をテーブル形態で記憶するものの、複数のテーブルを記憶してもよい。このとき、各テーブルは、互いに異なるバッテリーレベルに対応する周波数ごとのインピーダンス参照値グループと言える。
【0091】
より具体的には、前記メモリモジュール200は、バッテリーを3つのバッテリーレベル、すなわち、Level1、Level2、及びLevel3に分類し、各バッテリーレベルに対する周波数ごとのインピーダンス参照値グループを記憶してもよい。ここで、周波数は、バッテリーレベルごとに互いに同一に設定されてもよく、インピーダンス参照値の大きさ及び角度は互いに異なってもよい。
【0092】
このような構成において、前記プロセッサ300は、対象バッテリーのインピーダンス測定値を、メモリモジュール200に記憶されたバッテリーレベルにマッチングさせるように構成されてもよい。また、前記プロセッサ300は、このようなマッチング結果に応じて、対象バッテリーのレベルを分類するように構成されてもよい。
【0093】
特に、前記プロセッサ300は、メモリモジュール200に記憶された複数のバッテリーレベルのインピーダンス参照値グループから、対象バッテリーのインピーダンス測定値と同一又は最も類似のインピーダンス参照値グループを探索し、それに相応するバッテリーレベルを確認することができる。さらに、このように確認されたバッテリーレベルを用いて対象バッテリーのレベルを分類してもよい。例えば、対象バッテリーのインピーダンス測定値の大きさ及び角度が、
図7のLevel1として設定されたインピーダンス参照値グループの大きさ及び角度と最も類似していると判断された場合、前記プロセッサ300は、対象バッテリーのレベルをLevel1として分類してもよい。一方、対象バッテリーのインピーダンス測定値の大きさ及び角度が、
図7のLevel2又はLevel3として設定されたインピーダンス参照値グループの大きさ及び角度と最も類似していると判断された場合、前記プロセッサ300は、対象バッテリーのレベルをLevel2又はLevel3として分類してもよい。
【0094】
本発明のこのような構成によれば、対象バッテリーのレベルを効果的に分類することができる。特に、本発明のこのような構成によれば、バッテリーを再使用する場合、バッテリーをレベルによって比較的簡単かつ明確に分類できるので、バッテリーの再使用可能性、用途、販売価格などを決定するのに有用である。例えば、本発明のこのような側面は、電気自動車用としてはその寿命を尽くしたリチウムイオンバッテリーパックについて、どのような用途で使用するか、残った寿命はどの程度であるか、性能はどの程度発揮できるかなどについて判断するのに用いることができる。
【0095】
このような実施形態において、インピーダンス測定値がインピーダンス参照値と同一又は類似であるかどうかを判断する構成として、本発明の出願時点における公知の種々のデータの一致の有無判定技術を採用することができる。また、本発明は、このようなインピーダンス測定値がインピーダンス参照値と一致するか否かを判断する構成として、種々の方法を用いることができ、特定の判断方法に限定されるものではない。
【0096】
特に、前記プロセッサ300は、バッテリーのレベルによって対象バッテリーのSOH(State of Health)を判断するように構成されてもよい。例えば、
図7の実施形態において、Level1に対応するSOHは80%、Level2に対応するSOHは75%、Level3に対応するSOHは70%であってもよい。この場合、前記プロセッサ300は、インピーダンス測定値がどのレベルのインピーダンス参照値と最も類似しているかを判断することにより、対象バッテリーのSOHを推定し得る。万が一、対象バッテリーのインピーダンス測定値がLevel2のインピーダンス参照値グループと最も類似していると判断された場合、前記プロセッサ300は、対象バッテリーのSOHをLevel2に対応する75%として推定し得る。このような実施形態によれば、前記プロセッサ300は、対象バッテリーのSOHを容易に把握することができる。
【0097】
一方、
図7の実施形態では、3つのバッテリーレベルのみが示されているが、これは、説明の便宜のためのものに過ぎず、メモリモジュール200は、4つ以上のバッテリーレベルの各々について、周波数ごとのインピーダンス参照値を記憶してもよい。特に、バッテリーレベルが非常に多く細分化されるほど、対象バッテリーの診断及びレベル分類をより正確に行うことができる。例えば、前記メモリモジュール200は、SOHを100%から0%まで2.5%間隔で分類し、各分類されたSOHに対する周波数ごとのインピーダンス参照値グループをそれぞれ記憶してもよい。
【0098】
また、
図6及び
図7の実施形態では、1Hzの周波数に対するインピーダンスポイントを基準として、高周波方向及び低周波方向においてそれぞれ2つのインピーダンスポイントを探索及び比較することに基づいて説明している。ただし、このような原点を基準として比較されるインピーダンスポイントの数は、単なる一例であり、本発明はその数の具体例に限定されるものではない。例えば、原点を基準として、高周波及び低周波方向においてそれぞれ3つ又は4つのインピーダンスポイントが比較されるように構成されてもよい。
【0099】
前記プロセッサ300は、対象バッテリーのインピーダンス測定値に関するナイキスト線図が生成されると、生成されたナイキスト線図において、電荷移動抵抗領域が拡散抵抗領域により変曲する点を変曲点として抽出するように構成されてもよい。これについては、
図8を参照してより詳細に説明する。
【0100】
図8は、本発明の一実施形態により生成されたナイキスト線図に対して、インピーダンスに影響を及ぼす因子の種類に応じて各領域を区分して示す図である。
図8の場合、
図3と基本的な内容は同一であるので、相違点を中心に説明する。
【0101】
図8を参照すると、EISナイキスト線図は、バッテリーのインピーダンスに影響を及ぼす因子別に4つの領域E1、E2、E3、E4に分けられる。まず、E1領域の場合、最も高い周波帯域であり、主に対象バッテリー内部の電解質抵抗などによって決定され得る。次に、E2領域の場合、E1領域よりも低い周波数領域ではあるが、E3領域よりも高い周波数領域であり、対象バッテリーの電極粒子表面に形成される固体電解質界面(SEI:Solid Electrolyte Interphase)などにより主に影響を受けると言える。また、E3領域の場合、E2領域よりも低い周波数領域であり、主に対象バッテリーの電荷移動(charge transfer)により影響を受けると言える。特に、E3領域の場合、対象バッテリーの電極材料界面におけるLiイオン酸化反応及び還元反応などによって決定され得る。このようなE3領域の場合、電荷移動抵抗領域ということができる。最後に、E4領域の場合、最も低い周波数帯域であり、主に拡散(diffusion)により影響を受ける領域と言える。特に、E4領域の場合、対象バッテリーにおける粒子結晶構造の内部への層間挿入などによる化学的拡散によって決定され得る。このようなE4領域の場合、拡散抵抗領域と言える。前記メモリモジュール200は、このような4つの領域に関する情報、例えば、周波数情報範囲などを予め記憶していてもよい。
【0102】
前記プロセッサ300は、このような4つの領域のうち、電荷移動抵抗領域E3において変曲点を探索するように構成されてもよい。特に、EISナイキスト線図において、このような電荷移動抵抗領域E3は、拡散抵抗領域E4により変曲することがある。前記プロセッサ300は、このように電荷移動抵抗領域E3が拡散抵抗領域E4により変曲する点を、上述の変曲点として抽出してもよい。さらに、ナイキスト線図において、変曲点が2つ以上存在する場合がある。この場合、前記プロセッサ300は、2つ以上の変曲点の中から、電荷移動抵抗領域E3が拡散抵抗領域E4により変曲する点を抽出し、このように抽出された変曲点を用いて上述のバッテリー診断やレベル分類過程を実行してもよい。
【0103】
例えば、
図4のナイキスト線図において、プロセッサ300は、電荷移動抵抗領域E3が拡散抵抗領域E4により変曲する点として、点f13を抽出してもよい。また、プロセッサ300は、このような点f13を最終変曲点として用いて、対象バッテリーを診断してもよい。
【0104】
本発明のこのような構成によれば、EISデータを用いて対象バッテリーを診断する場合、高周波領域を用いずに低周波領域を用いることによりバッテリー診断の精度を向上させることができる。特に、
図8のE1領域のような高周波領域は、測定プローブのインダクタンスや抵抗成分などにより影響を大きく受ける領域であると言える。したがって、このようなE1領域により影響を大きく受ける部分や、E1領域内の変曲点を用いる場合、偏差が激しくなり、精度が劣化するおそれがある。しかし、上記実施構成によれば、E1領域による影響が大きくない低周波領域であるE3及びE4領域のデータを分析し、それによりバッテリーを診断することができる。したがって、この場合には、測定プローブのインダクタンス及び抵抗成分などの影響を最小限に抑えることができるので、バッテリー診断の精度をさらに改善することができる。
【0105】
また、前記プロセッサ300は、生成されたナイキスト線図について、低い周波数領域から周波数が高くなる方向に探索して変曲点を抽出するように構成されてもよい。例えば、前記プロセッサ300は、
図8の実施形態において、矢印a2で示すように、ナイキスト線図の右側部分の所定ポイントから左側に向かう方向に移動しながら変曲点を探索するように構成されてもよい。すなわち、前記プロセッサ300は、EISナイキスト線図において、低周波領域から高周波領域へ移動しながら変曲点を抽出するように構成されてもよい。
【0106】
特に、前記プロセッサ300は、このように低周波領域から高周波領域へ移動しながら変曲点を探索し、その中から最初に探索された第1変曲点を抽出してもよい。また、プロセッサ300は、このように探索された第1変曲点を用いて、前述のバッテリー診断過程を実行してもよい。ナイキスト線図の場合、低周波領域には、
図8のE3及びE4で示されるような電荷移動抵抗領域及び拡散抵抗領域が存在し得る。よって、このような低周波領域で探索される第1変曲点は、電荷移動抵抗領域が拡散抵抗領域により変曲する点であってもよい。
【0107】
したがって、このような実施構成によれば、電荷移動抵抗領域が拡散抵抗領域により変曲する点を容易に把握することができる。
【0108】
このような変曲点抽出の構成について、
図9を参照してより詳細に説明する。
【0109】
図9は、本発明の一実施形態によるプロセッサ300によって変曲点が抽出される構成を概略的に示す図である。特に、
図9は、
図8のE3領域を拡大して示すグラフであると言える。
【0110】
図9を参照すると、前記プロセッサ300は、EISナイキスト線図について、矢印で示すように、周波数が徐々に増加する方向の傾きを比較分析することで、変曲点を探索することができる。
【0111】
より具体的には、各周波数において測定されたインピーダンスポイントに対する傾きは、以下のように算出できる。
【0112】
傾き=(EISi[i+1]-EISi[i])/(EISr[i+1]-EISr[i])
【0113】
ここで、EISi[i]は、インピーダンスポイントiの虚数成分を表し、EISr[i]はインピーダンスポイントiの実数成分を表すといえる。
【0114】
例えば、
図9の実施形態において、プロセッサ300は、インピーダンスポイントf24とインピーダンスポイントf25との間の傾きCは、以下のように算出できる。
【0115】
傾きC=(EISi[f25]-EISi[f24])/(EISr[f25]-EISr[f24])
【0116】
また、プロセッサ300は、このようにして、各ポイントの間、例えば、f23とf24との間、f22とf23との間、f21とf22との間・・・のそれぞれに対する傾きを得ることができる。さらに、プロセッサ300は、このような各インピーダンスポイント間の傾きの大きさ(絶対値)が、矢印方向(高周波方向)に向かって徐々に増加し、その後再び減少する点を変曲点として抽出してもよい。
【0117】
例えば、
図9の実施形態において、イキスト線図の傾きの大きさ(絶対値)がポイントf28からポイントf23まで徐々に増加し、かつ、傾きがポイントf23から減少すると仮定したとき、前記プロセッサ300は、ポイントf23を変曲点として抽出してもよい。すなわち、前記プロセッサ300は、傾きの絶対値が増加し、その後減少する点を変曲点として抽出してもよい。あるいは、前記プロセッサ300は、ナイキスト線図に沿って高周波方向に移動しながら傾きの変化を比較し、傾きの変化が正(+)から負(-)に変わる第1点を変曲点として抽出してもよい。特に、このような変曲点は、ナイキスト線図において、電荷移動抵抗領域が拡散抵抗領域により変曲する点であってもよい。この場合、バッテリーの診断や分類に用いられる変曲点を容易に抽出することができる。
【0118】
このような実施形態において、前記プロセッサ300は、ナイキスト線図上において変曲点の探索を開始する点についての情報を予め取得してもよい。例えば、メモリモジュール200は、変曲点探索開始点に該当するインピーダンスポイント情報を予め記憶しておき、プロセッサ300は、変曲点を抽出する前にメモリモジュール200にアクセスして、このようなインピーダンスポイント情報を確認できる。また、プロセッサ300は、このようにメモリモジュール200を通じて確認されたインピーダンスポイント情報に基づいて、当該ポイントから変曲点を探索するように構成されてもよい。
【0119】
例えば、
図9の実施形態において、メモリモジュール200は、変曲点探索を開始するためのインピーダンスポイントとして、ポイントf27を予め記憶していてもよい。そして、前記プロセッサ300は、このような情報をメモリモジュール200から確認し、ポイントf27からポイントf26、f25、f24・・・のような方向に変曲点を探索してもよい。
【0120】
ここで、変曲点探索開始点におけるインピーダンスポイント情報は、周波数情報であってもよい。例えば、メモリモジュール200は、
図9の実施形態において、ポイントf27に該当する周波数情報を予め記憶していてもよい。この場合、プロセッサ300は、ポイントf27に該当する周波数から徐々に高い周波数方向へのインピーダンス線図の傾きを把握し、変曲点を抽出してもよい。
【0121】
あるいは、変曲点探索開始点に関するインピーダンスポイント情報は、インピーダンスの実部成分の情報であってもよい。例えば、メモリモジュール200は、ポイントf27に関するインピーダンスの実部成分の情報を予め記憶していてもよい。
【0122】
あるいは、前記プロセッサ300は、変曲点探索開始点に関する情報を、メモリモジュール200から取得することなく、自体的に決定してもよい。特に、前記プロセッサ300は、ナイキスト線図において、低周波部分から高周波方向に向かう間に極小点及び極大点を確認することができる。また、プロセッサ300は、このように確認された極小点と極大点との間で変曲点を抽出するように構成されてもよい。
【0123】
例えば、
図8の実施形態を参照すると、前記プロセッサ300は、ナイキスト線図において、極小点である部分d1及び極大点である部分d2を確認することができる。また、前記プロセッサ300は、このように確認された極小点d1と極大点d2との間の領域で変曲点を抽出するように構成されてもよい。
【0124】
この場合、ナイキスト線図において、電荷移動抵抗領域が拡散抵抗領域により変曲する点を容易に確認することができる。
【0125】
一方、EISナイキスト線図には、2つ以上の極大点及び/又は極小点が存在してもよい。この場合、プロセッサ300は、複数の極大点及び/又は複数の極小点のうち、最も低い周波数を有する極大点及び/又は極小点を用いて、その間に存在する変曲点を抽出してもよい。すなわち、プロセッサ300は、
図8の実施形態において矢印a2で示す方向に移動しながらナイキスト線図の極小点及び極大点を確認するものの、最も先に確認される極小点及び極大点を用いてその間に存在する変曲点を抽出し、抽出された変曲点を用いてバッテリーを診断してもよい。
【0126】
また、前記メモリモジュール200は、変曲点に関する予備周波数情報を予め記憶していてもよい。ここで、変曲点に関する予備周波数情報とは、変曲点が存在すると推定される周波数に関する情報であると言える。特に、前記メモリモジュール200は、このような予備周波数情報として、変曲点が存在する可能性のある周波数範囲に関する情報を予め記憶しておいてもよい。
【0127】
例えば、前記メモリモジュール200は、変曲点が存在する可能性のある周波数情報として、0.4Hz~2.2Hzの予備周波数範囲を予め記憶していてもよい。この場合、プロセッサ300は、このような0.4Hz~2.2Hzの予備周波数範囲内で変曲点を先に探索するように構成されてもよい。
【0128】
本発明のこのような構成によれば、プロセッサ300が変曲点を抽出するにおいて探索する範囲を減少させることができる。したがって、この場合、プロセッサ300の変曲点抽出速度を向上させることができ、抽出過程における演算負荷を低減することができる。
【0129】
また、前記メモリモジュール200は、予備周波数情報を多段に記憶してもよい。この場合、プロセッサ300は、多段に記憶された予備周波数情報を順次使用してもよい。このとき、多段に記憶された予備周波数情報の間で順位が予め決定されてもよい。さらに、プロセッサ300は、多段に記憶された予備周波数情報から先順位周波数情報を先に探索した後、探索された先順位予備周波数情報から変曲点が抽出されない場合、次の順位の予備周波数情報を探索するように構成されてもよい。
【0130】
例えば、前記メモリモジュール200は、1次予備周波数情報、2次予備周波数情報及び3次予備周波数情報を記憶してもよい。このとき、1次予備周波数情報が最も先順位であり、3次予備周波数情報が最も後順位であってもよい。この場合、前記プロセッサ300は、先ず、1次予備周波数情報を参照して当該範囲内で変曲点を抽出してもよい。また、1次予備周波数情報から変曲点が抽出されなければ、2次予備周波数情報を参照して当該範囲内で変曲点を抽出し、このときにも変曲点が抽出されなければ、3次予備周波数情報を参照して変曲点を抽出してもよい。
【0131】
本発明のこのような構成によれば、変曲点抽出速度及び効率をさらに向上させることができる。
【0132】
前記メモリモジュール200は、変曲点に関する予備周波数情報を、バッテリーに印加される交流電圧の大きさに応じて区分して記憶することができる。すなわち、インピーダンス測定モジュール100が対象バッテリーに交流電圧を印加しながら周波数の変化によるインピーダンスを測定するとき、印加される交流電圧の大きさに応じて予備周波数情報が変わるように構成されてもよい。
【0133】
例えば、メモリモジュール200は、インピーダンス測定モジュール100が0.5Vの交流電圧を印加しながら対象バッテリーのインピーダンスを測定する場合に関する予備周波数情報を、fp1として記憶してもよい。また、メモリモジュール200は、インピーダンス測定モジュール100が0.7Vの交流電圧を印加しながら対象バッテリーのインピーダンスを測定する場合に関する予備周波数情報を、fp2として記憶してもよい。このとき、fp1とfp2は、互いに異なる周波数値又は互いに異なる周波数範囲に設定されてもよい。
【0134】
本発明のこのような構成によれば、プロセッサ300が、メモリモジュール200に記憶された予備周波数情報を用いて変曲点を抽出するとき、より効果的に変曲点を抽出することが可能となる。特に、EISナイキスト線図の形状は、印加電圧の大きさによって変わりうる。したがって、上記実施構成によれば、このような印加電圧の大きさによる形状の変化を考慮して適切な予備周波数情報を提供することにより、変曲点を効率的に抽出することが可能となる。
【0135】
本発明によるバッテリー診断装置は、バッテリーパックに適用可能である。すなわち、本発明によるバッテリーパックは、上述した本発明によるバッテリー診断装置を含んでいてもよい。また、本発明によるバッテリーパックは、本発明によるバッテリー診断装置に加えて、1つ以上の二次電池、バッテリー管理システム(BMS:Battery Management System)、電流センサー、リレー、ヒューズ、パックケースなどのバッテリーパックに通常含まれる構成要素をさらに含んでいてもよい。この場合、バッテリーパックに含まれる二次電池は、本発明によるバッテリー診断装置により診断される対象、すなわち、対象電池であり得る。さらに、本発明によるバッテリー診断装置の少なくとも一部の構成要素は、バッテリーパックに含まれる従来の構成要素として実現されてもよい。例えば、本発明によるバッテリー診断装置のプロセッサ300の少なくとも一部の機能や動作は、バッテリーパックに含まれるBMSによって実現されてもよい。
【0136】
また、本発明によるバッテリー診断装置は、エネルギー貯蔵システム(ESS)に適用されてもよい。すなわち、本発明によるエネルギー貯蔵システムは、上述した本発明によるバッテリー診断装置を含んでいてもよい。特に、エネルギー貯蔵システムの場合、電気自動車並みの高出力が要求されないため、電気自動車で使用され、寿命が尽きたバッテリーパック(廃バッテリー)などをリサイクルする代表的な用途(application)となりうる。前記エネルギー貯蔵システムは、このような廃バッテリーを搭載する前に、前記本発明によるバッテリー診断技術を用いてバッテリーを診断又はレベル分類した上で、搭載の有無や活用度合い等を決定してもよい。
【0137】
図10は、本発明の一実施形態によるバッテリー診断方法を概略的に示すフローチャートである。
図10における各ステップを実行する主体は、上述した本発明によるバッテリー診断装置の各構成要素であってもよい。
【0138】
図10を参照すると、本発明によるバッテリー診断方法は、インピーダンス参照値記憶ステップ(S110)、インピーダンス測定ステップ(S120)、ナイキスト線図生成ステップ(S130)、変曲点抽出ステップ(S140)、比較ステップ(S150)、及び診断ステップ(S160)を含み得る。
【0139】
前記ステップS110は、周波数ごとのインピーダンス参照値を記憶するステップである。例えば、前記ステップS110は、事前テストにより
図6又は
図7に示すようなインピーダンス参照値情報を記憶することができる。
【0140】
前記ステップS120は、対象バッテリーに交流電圧を印加しながら、周波数の変化によるインピーダンスを測定するステップである。前記ステップS130は、ステップS120で測定された対象バッテリーのインピーダンス測定値についてナイキスト線図を生成するステップである。例えば、ステップS130により、
図3に示すナイキスト線図を生成することができる。
【0141】
前記ステップS140は、ステップS130で生成されたナイキスト線図から変曲点を抽出するステップである。例えば、ステップS140では、
図9の実施形態で説明したように、ナイキスト線図の変曲点を抽出することができる。
【0142】
前記ステップS150は、ステップS140で抽出された変曲点を中心として所定の周波数範囲内の値を、ステップS110で記憶された周波数ごとのインピーダンス参照値と比較するステップである。
【0143】
また、前記ステップS160は、ステップS150で比較された結果に基づいて、対象バッテリーを診断するステップである。例えば、ステップS160により、対象バッテリーのレベルを分類することができる。
【0144】
このような本発明によるバッテリー診断方法では、上述したバッテリー診断装置についての説明が同一もしくは類似に適用できるので、その詳細な説明を省略する。
【0145】
以上、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0146】
100 インピーダンス測定モジュール
200 メモリモジュール
300 プロセッサ
【国際調査報告】