(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】プロピレン、C4オレフィンまたはその両方を含む分解生成物留分を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 4/02 20060101AFI20231110BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20231110BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20231110BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231110BHJP
【FI】
C07C4/02
C07C11/06
C07C11/08
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526680
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 FI2021050733
(87)【国際公開番号】W WO2022096781
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オヤラ、アンチ
(72)【発明者】
【氏名】ヤミエソン、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ハシェミ、イマネ
(72)【発明者】
【氏名】チーッタ、マルヤ
(72)【発明者】
【氏名】コルホネン、エーロ
(72)【発明者】
【氏名】ケルッケイネン、マルヤ-リーサ
(72)【発明者】
【氏名】メケレ、エベリーナ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC26
4H006BA71
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC31
4H039CA20
4H039CE90
4H039CK10
(57)【要約】
本発明は、プロピレン、C4オレフィン、またはその両方を含む分解生成物留分を製造するための方法に関する。該方法において、なくとも5wt%のイソパラフィンを含む炭化水素フィードを含むフィードストックが、接触分解反応器中での接触分解に付される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン、C4オレフィン、またはその両方を含む分解生成物留分を製造するための方法であって、以下の工程:
炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも5wt%のイソパラフィンを含み、炭化水素フィード中のイソパラフィンおよびn-パラフィンのwt%量の合計は少なくとも80wt%である炭化水素フィード
を含む接触分解フィードストックを提供する工程;
分解生成物を得るために、接触分解反応器中、固体触媒の存在下、300℃~450℃の範囲から選択される温度で、接触分解フィードストックを接触分解に付す工程;および
分解生成物から、少なくともプロピレン、C4オレフィン、またはその両方を含む留分を分離する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記接触分解が、追加の水素分子(H
2)を接触分解反応器に供給することなく行われる、および/または、前記接触分解が、追加のストリームまたは追加の水(H
2O)を接触分解反応器に供給することなく行われる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記炭化水素フィードが、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも8wt%または少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも15wt%、さらに好ましくは少なくとも20wt%、より好ましくは少なくとも30wt%、さらにより好ましくは少なくとも40wt%のイソパラフィンを含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素フィードが、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも60wt%、さらに好ましくは少なくとも70wt%、より好ましくは少なくとも80wt%、およびさらにより好ましくは少なくとも90wt%の、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化水素フィードが、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、多くとも5wt%、好ましくは多くとも3wt%、より好ましくは多くとも2wt%、さらにより好ましくは多くとも1wt%の、少なくともC22の炭素数を有する炭化水素を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素フィード中のイソパラフィンおよびn-パラフィンのwt%量の合計が、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも85wt%、好ましくは少なくとも90wt%、より好ましくは少なくとも95wt%、およびさらにより好ましくは少なくとも99wt%である請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素フィードが、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも95wt%、より好ましくは約100wt%の生物起源炭素含有量を有する再生可能炭化水素フィードである請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記接触分解が、0.01MPa~5.0MPa、好ましくは0.01MPa~2MPa、さらに好ましくは0.01MPa~1MPa、より好ましくは0.015MPa~1Pa、およびさらにより好ましくは0.2MPa~1MPaの範囲から選択される圧力で行われる請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記接触分解が、350℃~450℃の範囲から選択される温度で行われる請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記接触分解が、370℃~450℃、好ましくは400℃~450℃の範囲から選択される温度、または350℃~430℃、好ましくは350℃~400℃、より好ましくは360℃~400℃の範囲から選択される温度で行われる請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記接触分解の重量時空間速度(WHSV、接触分解フィードストックの質量流量/触媒質量)が、0.01~10、好ましくは0.1~5時間当たりのg接触分解フィードストック/g触媒の範囲から選択される請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
温度、圧力およびWHSVののうちの1または複数、好ましくは少なくとも温度およびWHSVが、接触分解における接触分解フィードストックの変換率が0.20~0.85、好ましくは0.20~0.80の範囲内になるように制御される請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記固体触媒が、4~6Åの範囲内の微細孔サイズを有するゼオライトまたはゼオライトタイプの材料を含み、および、前記固体触媒が、好ましくは中程度の強酸性または強酸度性を有する請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ゼオライトまたはゼオライトタイプの材料が、ZSM-5、MCM-22、SAPO-34および/またはβゼオライト、好ましくはZSM-5、MCM-22および/またはSAPO-34を含む請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記接触分解反応器が、固定床反応器、または、例えば流動床接触分解反応器または移動床接触分解反応器などの移動固体触媒反応器である請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法であって、前記炭化水素フィードが、以下の工程:
再生可能な酸素含有炭化水素を水素化処理する工程であって、前記再生可能な酸素含有炭化水素が、好ましくは、脂肪酸、脂肪酸エステル、樹脂酸、樹脂酸エステル、ステロール、脂肪アルコール、酸素化テルペン、および他の再生可能な有機酸、ケトン、アルコール、および無水物のうちの1または複数を含み、前記水素化処理が、イソパラフィンを含む水素化処理生成物を得るための脱酸素反応および異性化反応を含む工程、ならびに
蒸気低減水素化処理生成物を得るために前記水素化処理生成物から蒸気相を除去する工程、および任意には、前記蒸気低減水素化処理生成物を前記炭化水素フィードとして提供する工程
から得られる方法。
【請求項17】
炭化水素フィードとして前記蒸気低減水素化処理生成物から、留分の総計の重量に基づいて、少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも60wt%、さらに好ましくは少なくとも70wt%、より好ましくは少なくとも80wt%、およびさらにより好ましくは少なくとも90wt%の少なくともC10の炭素数を有する炭化水素を含む炭化水素を回収する工程を含む請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記接触分解フィードストックが、前記分解生成物から分離されたリサイクル留分を含む請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記分解生成物から、少なくともC5、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分を分離する工程を含む請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
少なくともC5の炭素数、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分の少なくとも一部を、前記接触分解フィードストックへとリサイクルする工程を含む請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記分解生成物からC5-C9炭化水素の留分を分離する工程を含む請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記接触分解フィードストック中の前記炭化水素フィードおよび前記リサイクルされた留分のwt%量の合計が、接触分解フィードストックの総計の重量に基づいて、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも95wt%、より好ましくは少なくとも99wt%である請求項18または20記載の方法。
【請求項23】
精製プロピレン組成物を得るために、プロピレンを含む留分、または、プロピレンおよびC4オレフィンの両方を含む留分を精製する工程を含む請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
分留組成物として1-ブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、ブタジエン、イソブテンのうちの1または複数を得るために、C4オレフィン、または、プロピレンおよびC4オレフィンの両方を含む留分を分留する工程を含む請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に接触分解に関する。本開示は、排他的ではないが、特には、プロピレン、C4オレフィンまたはその両方を含む分解生成物留分を製造するための、イソパラフィンを含むフィードストックの固定床または移動固体触媒をベースとする接触分解に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、本明細書に記載されているいかなる技術も技術水準を代表するものであることを認めることなく、有用な背景情報を説明するものである。
【0003】
プロピレンおよびC4オレフィンは、ポリマーおよび多くの有機化学品を製造するための重要な原料である。プロピレンは、世界的に生産量が最も多い化学物質のひとつである。
【0004】
典型的には、化学工業用のプロピレンおよびC4オレフィンは化石フィードストックの分解に由来する。分解は、有機化合物、特には炭化水素の分解および再結合を含む精製プロセスであり、熱、圧力、および任意には触媒の影響を受ける。分解が熱だけで行われる場合は、熱分解と呼ばれる。触媒を使用する場合は接触分解と呼ばれる。
【0005】
特許文献1は、水素化天然油脂のガソリン範囲成分への接触分解を開示している。
【0006】
現在のところ、再生可能またはバイオベースのプロピレンおよびC4オレフィン、特にはプロピレンを製造するための効率的なプロセスはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
先行技術に関連する問題の少なくとも一部を解決または軽減することが目的である。目的は、プロピレン組成物、C4オレフィン組成物、またはその両方の、環境的に持続可能な製造プロセスを提供することである。
【0009】
添付の特許請求の範囲が保護範囲を規定する。
【0010】
第一の態様によれば、プロピレン、C4オレフィン、またはその両方を含む分解生成物留分を製造するための方法であって、該方法は以下の工程:
炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも5wt%のイソパラフィンを含み、炭化水素フィード中のイソパラフィンおよびn-パラフィンのwt%量の合計は少なくとも80wt%である炭化水素フィード
を含む接触分解フィードストックを提供する工程;
分解生成物を得るために、接触分解反応器中、固体触媒の存在下、300℃~450℃の範囲から選択される温度で、接触分解フィードストックを接触分解に付す工程;および
分解生成物から、少なくともプロピレン、C4オレフィン、またはその両方を含む留分を分離する工程
を含む方法を提供する。
【0011】
驚くべきことに、上記反応条件下での、接触分解反応器中での少なくとも5wt%のイソパラフィンを含む炭化水素フィードの接触分解が、それが例えば、高いプロピレンおよびC4オレフィンの規格化された変換収率(プロピレンおよびC4オレフィンの規格化された変換収率の合計)、特には、高いプロピレンの規格化された変換収率を提供するため、プロピレン組成物、C4オレフィン組成物またはその両方を製造するのに有益であることが発見された。
【0012】
ある実施形態において、接触分解は、追加の水素分子(H2)を接触分解反応器に供給することなく行われる。
【0013】
ある実施形態において、接触分解は、追加のストリームまたは追加の水(H2O)を接触分解反応器に供給することなく行われる。
【0014】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも8wt%または少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも15wt%、さらに好ましくは少なくとも20wt%、より好ましくは少なくとも30wt%、さらにより好ましくは少なくとも40wt%のイソパラフィンを含む。ある有利な実施形態において、炭化水素フィードは炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも60wt%、さらに好ましくは少なくとも65wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、さらにより好ましくは少なくとも80wt%、最も好ましくは少なくとも90wt%、例えば少なくとも92wt%または少なくとも95wt%のイソパラフィンを含む。
【0015】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも60wt%、さらに好ましくは少なくとも70wt%、より好ましくは少なくとも80wt%、およびさらにより好ましくは少なくとも90wt%の、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素を含む。
【0016】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、多くとも5wt%、好ましくは多くとも3wt%、より好ましくは多くとも2wt%、さらにより好ましくは多くとも1wt%の、少なくともC22の炭素数を有する炭化水素を含む。
【0017】
ある実施形態において、炭化水素フィード中のイソパラフィンおよびn-パラフィンのwt%量の合計は、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも85wt%、好ましくは少なくとも90wt%、より好ましくは少なくとも95wt%、およびさらにより好ましくは少なくとも99wt%である。
【0018】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも95wt%、より好ましくは少なくとも100wt%の生物起源炭素含有量を有する再生可能炭化水素フィードである。
【0019】
ある実施形態において、接触分解は、0.01MPa~5.0MPaの範囲から選択される圧力で行われる。
【0020】
ある実施形態において、接触分解は、350℃~450℃の範囲から選択される温度で実施される。ある実施形態において、接触分解は、370℃~450℃、好ましくは400℃~450℃の範囲から選択される温度、または350℃~430℃、好ましくは350℃~400℃、より好ましくは360℃~400℃の範囲から選択される温度で行われる。
【0021】
ある実施形態において、接触分解の重量時空間速度(WHSV、接触分解フィードストックの質量流量/触媒質量)は、0.01~10、好ましくは0.1~5の範囲から選択される。WHSVの単位は、時間当たりのg接触分解フィードストック/g触媒である。
【0022】
ある実施形態において、温度、圧力およびWHSVののうちの1または複数、好ましくは少なくとも温度およびWHSVは、接触分解における接触分解フィードストックの変換率が0.20~0.85、好ましくは0.20~0.80の範囲内になるように制御される。
【0023】
ある実施形態において、固体触媒は、4~6Åの範囲内の微細孔サイズを有するゼオライトまたはゼオライトタイプの材料を含み、および、ここで、固体触媒は、好ましくは中程度の強酸性または強酸度性を有する。ある実施形態において、ゼオライトまたはゼオライトタイプの材料は、ZSM-5、MCM-22、SAPO-34および/またはβゼオライト、好ましくはZSM-5、MCM-22および/またはSAPO-34を含む。固体触媒は、例えばシリカ-アルミナまたはクレイなどの触媒的に活性であり得る、または、例えばシリカなどの触媒的に不活性であり得る担体、および/または、例えばバインダーなどのさらなる添加剤、または、他の一般的に知られている触媒添加剤(複数の触媒添加剤)を含んでもよい。
【0024】
ある実施形態において、接触分解反応器は、固定床反応器、または、例えば流動床接触分解反応器または移動床接触分解反応器などの移動固体触媒反応器である。
【0025】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、以下を含むプロセスによって得られる:再生可能な酸素含有炭化水素を水素化処理する工程であって、該再生可能な酸素含有炭化水素が、好ましくは、脂肪酸、脂肪酸エステル、樹脂酸、樹脂酸エステル、ステロール、脂肪アルコール、酸素化テルペン、および他の再生可能な有機酸、ケトン、アルコール、および無水物のうちの1または複数を含み、該水素化処理が、イソパラフィンを含む水素化処理生成物を得るための脱酸素反応および異性化反応を含む工程、ならびに
蒸気低減水素化処理生成物を得るために水素化処理生成物から蒸気相を除去する工程、および任意には、蒸気低減水素化処理生成物を炭化水素フィードとして提供する工程。
【0026】
ある実施形態において、本方法は、炭化水素フィードとして蒸気低減水素化処理生成物から、留分の総計の重量に基づいて、少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも60wt%、さらに好ましくは少なくとも70wt%、より好ましくは少なくとも80wt%、およびさらにより好ましくは少なくとも90wt%の少なくともC10の炭素数を有する炭化水素を含む留分を回収する工程を含む。
【0027】
ある実施形態において、接触分解フィードストックは、分解生成物から分離されたリサイクル留分を含む。
【0028】
ある実施形態において、本方法は、分解生成物から、少なくともC5、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分を分離する工程を含む。
【0029】
ある実施形態において、本方法は、少なくともC5の炭素数、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分の少なくとも一部を、接触分解フィードストックへとリサイクルする工程を含む。少なくともC5、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分のリサイクルされた部分は、接触分解反応器中に導入される前に、接触分解フィードストックと組み合わされ得るかもしくは混合され得るか、または、そこで接触分解フィードストックの一部を形成する接触分解反応器に供給され得る。ある実施形態において、少なくともC5、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分の少なくとも一部は、接触分解フィードストックに再利用される前に、例えばジオレフィンを除去するためなどの例えば水素化などの(部分的な)水素化処理、および/または、例えば少なくとも芳香族を除去するためなどの精製処理に付される。
【0030】
ある実施形態において、本方法は、分解生成物からC5-C9炭化水素の留分を分離する工程を含む。
【0031】
ある実施形態において、接触分解フィードストック中の炭化水素フィードおよびリサイクルされた留分のwt%量の合計は、接触分解フィードストックの総計の重量に基づいて、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも95wt%、より好ましくは少なくとも99wt%である。
【0032】
ある実施形態において、本方法は、精製プロピレン組成物を得るために、プロピレンを含む留分、または、プロピレンおよびC4オレフィンの両方を含む留分を精製する工程を含む。
【0033】
ある実施形態において、本方法は、分留組成物として1-ブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、ブタジエン、イソブテンのうちの1または複数を得るために、C4オレフィン、または、プロピレンおよびC4オレフィンの両方を含む留分を分留する工程を含む。
【0034】
上記では、種々の拘束力のない例示的な態様および実施形態が例示された。上述の実施形態は、単に、異なる実施形態において利用され得る選択された態様またはステップを説明するために使用される。いくつかの実施形態は、特定の例示的な態様を参照してのみ提示される場合がある。対応する実施形態が他の例示的側面にも適用され得ることを理解されたい。
【0035】
いくつかの例示的な実施形態が、添付の図を参照して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、一実施形態例による方法の概略図を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態例による方法の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の説明において、同様の参照符号は同様の要素または工程を示す。
【0038】
本書で言及されているすべての規格は、特に断りのない限り、入手可能な最新の改訂版である。
【0039】
変換率とは、接触分解においてより小さな炭素数を有する化合物(変換されたフィードストック)に分割された化合物の、接触分解に付された接触分解フィードストック(供給されたフィードストック)に対するモル比(変換されたフィードストックのモル数/供給されたフィードストックのモル数)を指し得る。
【0040】
しかしながら、本開示の文脈では、実際に変換されたフィードストックの物質量を使用する代わりに、変換されたフィードストックの物質量に関して仮定がなされる。したがって、本明細書では、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の分解流出留分(分解生成物留分)が未変換のフィードストックを構成すると仮定される。変換されたフィードストックの物質量(モル数)は、供給されたフィードストックの物質量(モル数)から分解流出物(分解生成物)中の少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の物質量(モル数)を差し引くことにより求められる。変換率は、この変換されたフィードストックの物質量を供給されたフィードストックの物質量で割ることにより決定され、および、所望により、変換率をmol-%で表すために商に100%を乗じてもよい。
【0041】
規格化された変換収率とは、本明細書では、変換されたフィードストックの物質量(モル数)によって規格化された分解生成物中のある化合物またはある複数の化合物の物質量(モル数)として表される収率、すなわち、分解生成物中のある化合物またはある複数の化合物のモル数を変換されたフィードストックのモル数で割ったものをいう。本開示の文脈において、変換されたフィードストックの物質量は、上記のように決定される。規格化された変換収率は、モル百分率、すなわち100%×(分解生成物中のある化合物またはある複数の化合物のモル数/変換されたフィードストックのモル数)で表すことができる。
【0042】
一般に、アルカンとパラフィンは同義語であり、および、互換的に使用できることが知られている。イソパラフィン(i-パラフィン)は、分岐した鎖式パラフィンであり、ノルマルパラフィン(n-パラフィン)は分岐していない直鎖パラフィンである。本開示の文脈において、用語「パラフィン(paraffin)」は、n-パラフィンおよび/またはイソパラフィンを指す。同様に、「パラフィン系(paraffinic)」という用語は、本明細書において、n-パラフィンおよび/またはイソパラフィンを含む組成物を指す。
【0043】
ある実施形態において、イソパラフィンは、1または複数のC1~C9、典型的にはC1~C2のアルキル側鎖を有する。好ましくは、側鎖はメチル側鎖であり、および、イソパラフィンはモノ-、ジ-、トリ-および/またはテトラメチル置換されている。
【0044】
本開示は、プロピレン、C4オレフィン、またはその両方を含む分解生成物留分を製造するための方法を提供し、該方法は:炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも5wt%のイソパラフィンを含む炭化水素フィードであって、炭化水素フィード中のイソパラフィンとn-パラフィンとのwt%量の合計が少なくとも80wt%である炭化水素フィードを含む接触分解フィードストックを提供する工程;分解生成物を得るために、接触分解反応器中、固体触媒の存在下、300℃~450℃の範囲から選択される温度で、フィードストックを接触分解に付す工程;および、分解生成物から、プロピレン、C4オレフィン、またはその両方を含む留分を分離する工程、を含む。
【0045】
驚くべきことに、上記反応条件下での、接触分解反応器中での少なくとも5wt%のイソパラフィンを含む炭化水素フィードの接触分解が、高いプロピレンおよびC4オレフィンの規格化された変換収率(プロピレンおよびC4オレフィンの規格化された変換収率の合計)、例えば少なくとも44mol-%などをもたらすことが見出された。特に、プロピレンの高い規格化された変換収率、例えば少なくとも20mol-%などが得られ得る。また、すべてのC3化合物に対するプロピレンのモル比は高く、例えば少なくとも0.7などである。換言すれば、高品質の精製グレードのプロピレン組成物は、このような場合でもいくらかの精製が有益ではあり得るが、前記留分中のプロパンの量を減少させるための追加の努力をすることなく、分解生成物からC3化合物の留分を分留することによって直接的に得られ得る。さらに、C3化合物の留分から、プロピレンを約90~95wt%含有する化学グレード純度のプロピレン組成物、あるいはプロピレンを約99wt%以上含有するポリマーグレード純度のプロピレン組成物を得るための追加の精製工程は、(総計のC3に対するプロピレンのモル比がより低い留分と比較して)より少ない労力、より少ない高価な装置およびより少ないエネルギーを必要とする。また、全C4化合物に対するC4オレフィンのモル比は、高くてもよく、例えば少なくとも0.8である。C4オレフィンは、これらのC4留分から、(総計のC4に対するC4オレフィンのモル比がより低い留分と比較して)より安価な装置およびより少ないエネルギーを必要とする追加の精製工程で得ることができる。メタンは強力な温室効果ガスであるため、本開示の方法のさらなる利点は、メタン(C1)の規格化された変換収率が特に水蒸気分解によって得られる分解生成物と比較した場合、非常に低いことである。メタンの規格化された変換収率は、1mol%以下であり得る。また、C2炭化水素の規格化された変換収率はまた、C2炭化水素の転化率は低く、例えば3mol-%未満などであり得、および、プロピレンのエチレンに対するモル比は高くてもよく、例えば17より高くてもよい。C2化合物は、特に生物起源炭素含有量を有する分解生成物を考慮する場合、C3およびC4化合物、特にはプロピレンおよびC4オレフィンよりも価値が低いとみなされることが多い。さらに、接触分解中の温度が比較的低いため、プロパジエンの生成量は非常に少ないか、全く生成しない。これは、C3ジエンが非常に容易に重合して堆積物を形成する、および/または、分解触媒の劣化を引き起こすため有益である。本発明の方法では、より多くの価値ある製品がフィードストックから得られ得、例えば、化石フィードストックからプロピレンを製造するための主要な技術である水蒸気分解と比較すると、水蒸気分解ではプロピレンは、例えばCH4などの多量の廃棄物の副生成物と共に、エチレンの望ましい副産物としてのみ製造される。接触分解フィードストックが高価値成分、特には再生可能な炭化水素フィードを含む場合に、原料からより多くの価値ある製品を得ることができることは、フィードストックの高価値成分の少量のみがより低下して生成物中に失われるため、特に有利である。特にプロピレンは、再生可能または生物由来の原料から製造することは容易ではない。
【0046】
炭化水素フィードは、主に炭化水素を含み、または好ましくは本質的に炭化水素からなり、および、最大でもごく少量または痕跡量のヘテロ原子を含む。例えば、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも95wt%、好ましくは少なくとも98wt%、さらに好ましくは少なくとも99wt%の炭化水素から含み得る。ある好ましい実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、多くとも1wt%の元素状酸素、多くとも60wt-ppmの元素状窒素、多くとも10wt-ppm、好ましくは多くとも6wt-ppm、より好ましくは多くとも1wt-ppmの元素状硫黄、多くとも50wt-ppm、好ましくは多くとも10wt-ppm、より好ましくは多くとも1wt-ppmのアルカリ金属およびアルカリ土類金属を含む。アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、固体触媒の酸性部位を中和し得る。また、アルカリおよびアルカリ土類金属イオンは、接触分解におけるコーク形成を増加させる。硫黄(S)含有量は、例えばASTM-D5453、ASTM-D6667、またはENISO20846などにしたがって測定され得る。窒素(N)含有量は、例えばASTM-D5762またはASTMD4629などにしたがって測定され得る。酸素(O)含有量は、例えばASTM-D5622などにしたがって測定することができる。アルカリおよびアルカリネ土類金属の含有量は、例えばASTMD8110-17にしたがって測定され得る。理論に束縛されることなく、接触分解フィードストック中の共有結合されたヘテロ原子の効率的は除去を引き起こすためには、本方法で使用される条件と比較して、より高い温度などより厳しいプロセス条件が必要であると考えられる。炭化水素フィード中のヘテロ原子量が上記の好ましい量よりはるかに多い場合、ヘテロ原子含有有機化合物の分解を通じて、例えばより短鎖のアルコール、チオールなどのより小さいヘテロ原子含有部位が形成され始め、そして、分解生成物に入り込むであろうと考えられている。所望の最終用途および分解生成物留分が満たす必要があるであろう仕様によっては、分解生成物留分の面倒な精製ステップが必要とされ得るであろう。
【0047】
芳香族は、本開示の方法にしたがって接触分解に付された場合、プロピレンおよびC4オレフィンを形成しないか、またはごくわずかしか形成しない。また、接触分解フィードストック中の芳香族および他の不純物、例えばヘテロ原子、特にはN、OおよびS、および不飽和炭化水素、特にはジエンは、接触分解のあいだのコークスの形成を増加させる。接触分解のあいだに形成されるコークスは、固体触媒上に堆積する傾向があり、触媒の失活を引き起こす。通常、固定床反応器では、固体触媒は接触分解のあいだに再生されるのではなく、再生される固定床反応器中で接触分解が実施され得ないあいだの別の再生サイクルで再生される。移動固体触媒反応器を使用する場合、接触分解のあいだに、例えば別個のコークス燃焼反応器中などで、固体触媒を再生させることが可能である。しかしながら、再生サイクルを繰り返すことは、特に再生温度は典型的には接触分解温度よりも高いため、例えばシンタリングなどの様々なメカニズムを介して触媒活性を低下させ得る。したがって、少量の芳香族(および他の不純物)のみを含むか、または好ましくは本質的に芳香族(および他の不純物)を含まない炭化水素フィードまたは接触分解フィードストックが、コークス形成が低減され得、および、例えばプロピレンおよび/またはC4オレフィンなどの所望の生成物の収率が増加し得るため、有利である。したがって、ある好ましい実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、1wt%未満、好ましくは0.5wt%未満の芳香族、および好ましくは20wt%未満、より好ましくは10wt%未満、さらにより好ましくは1wt%未満のナフテンを含む。炭化水素フィード中の低いナフテンの含有量は、フィード中のナフテンが(パラフィンと比較して)接触分解におけるプロピレンおよびC4オレフィンの生成を減少させるため、およびC6環を含むナフテンが芳香族の前駆体であるため、有益である。
【0048】
ある実施形態において、炭化水素フィード中のイソパラフィンおよびn-パラフィンのwt%量の合計は、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも85wt%、好ましくは少なくとも90wt%、より好ましくは少なくとも95wt%、およびさらに好ましくは少なくとも99wt%である。高パラフィン系(イソパラフィンおよび/またはn-パラフィン)炭化水素フィードは、接触分解におけるコークス形成および触媒の失活を低減し、そして例えばプロピレンおよびC4オレフィンなどの所望の生成物の収率を増加させるため、好ましい。炭化水素フィードの残りの部分、すなわちパラフィンでない部分は、有利にはパラフィン以外の炭化水素、例えばオレフィン、ナフテン、および/または芳香族などであり得、好ましくは、多くてもごく少量または痕跡量のヘテロ原子しか含まない。
【0049】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも8wt%または少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも15wt%、さらに好ましくは少なくとも20wt%、より好ましくは少なくとも30wt%、さらにより好ましくは少なくとも40wt%のイソパラフィンを含む。ある有利な実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも60wt%、さらに好ましくは少なくとも65wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、さらにより好ましくは少なくとも80wt%、最も好ましくは少なくとも90wt%、例えば少なくとも92wt%または少なくとも95wt%のイソパラフィンを含む。驚くべきことに、炭化水素フィード中のイソパラフィンのwt%を増加させると、最も望ましい生成物、すなわちプロピレンおよびC4オレフィンの組み合わされた生成が促進され、プロピレンおよびC4オレフィンの規格化された変換収率の合計の増大を引き起こすことが見出された。炭化水素フィード中のイソパラフィンのwt%を増加させることは、特に、プロピレンの規格化された変換収率における増加を引き起こす。例えば、炭化水素フィード中のイソパラフィンのwt%が少なくとも95wt%である場合、プロピレンおよびC4オレフィンの規格化された変換収率の合計は55mol-%以上であり得、プロピレンの規格化された変換収率は28mol-%以上であり得る。さらに、炭化水素フィード中のイソパラフィンのwt%を増加させることはまた、例えばガソリンおよび/または溶剤組成物、シンナー、シミ除去剤の成分などとして使用可能なC5~C9炭化水素の生成を減少させ得ることが見出され、これは、接触分解フィードストック中のイソパラフィンのwt%を変化させるだけで、プロピレンおよびC4オレフィンの規格化された変換収率とC5~C9炭化水素の規格化された変換収率とを、それらの需要、価格などに応じて調整するための便利な手段を提供し得る。
【0050】
高いイソパラフィン含有量はまた、炭化水素フィードに、例えば低い曇点などの有益な低温特性を与える。ある実施形態において、炭化水素フィードの曇点は0℃以下、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-15℃以下、およびさらにより好ましくは-25℃以下である。低い曇点は、低い周囲温度で屋外の供給タンク、パイプなどを加熱する必要性を減少させるか、または省略させすらし得る。
【0051】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、多くとも98wt%または多くとも95wt%のイソパラフィンを含む。このような炭化水素フィードは、本開示の方法による接触分解に有益である。
【0052】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも60wt%、さらに好ましくは少なくとも70wt%、より好ましくは少なくとも80wt%、およびさらにより好ましくは少なくとも90wt%の、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素を含む。ある特に好ましい実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも93wt%、好ましくは少なくとも95wt%、より好ましくは少なくとも97wt%の、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素を含む。少なくともC10の炭素数を有する炭化水素を主に含む炭化水素フィードは、本開示の方法による接触分解によるプロピレンおよびC4オレフィンの製造に特に適している。より長い飽和炭化水素は、より短い飽和炭化水素と比較して、より厳しくない条件下で分解する。このような炭化水素フィードを用いることで、良好な規格化された変換収率で、広範な種類の様々な分解生成物留分を製造することが可能である。少なくともC10の炭素数を有する炭化水素を主に含む炭化水素フィードは、プロピレンおよびC4オレフィンの高い規格化された変換収率の合計に加えて、例えばガソリンおよび/または溶剤組成物、シンナー、スポット除去剤のため、メタセシス反応のため、ポリマー中の(コ)モノマーとして、または潤滑油添加剤、界面活性剤、農薬、コーティング剤または腐食防止剤の製造時、の成分などとして使用可能なC5~C9炭化水素の高い規格化された変換収率を有する分解生成物をもたらす。追加で、少なくともC10の炭素数を有する分解された炭化水素および未変換の炭化水素を含む分解生成物留分が得られ、この留分は、新鮮な炭化水素フィードの同じ炭素数の留分と比較して、増大されたイソパラフィン含有量を有し得る。したがって、少なくともC10の炭素数を有する未変換の炭化水素を含む分解生成物留分は、プロピレンおよびC4オレフィンの規格化された変換収率をさらに高めるリサイクルフィードとして価値があるであろう。少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の未変換の留分は、任意には例えばオレフィンの水素化などの水素化処理の後、接触分解フィードストックにリサイクルされることによって、または航空および/またはディーゼル燃料組成物の成分として、付加価値のある利用が可能である。このような任意的な水素化処理により、炭化水素の未変換留分がリサイクルに使用される際のコークス形成を低減することができ、または航空燃料組成物および/またはディーゼル燃料組成物により高い割合の留分を組み込むことを可能にし得る。前述のように、変換率および規格化された変換収率を算出することを目的として、本明細書では、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の分解流出留分(分解生成物留分)は未変換フィードストックを構成していると仮定する。
【0053】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、多くとも5wt%、好ましくは多くとも3wt%、より好ましくは多くとも2wt%、さらにより好ましくは多くとも1wt%の、少なくともC22の炭素数を有する炭化水素を含む。このような炭化水素供給は、C22以上の炭化水素は接触分解におけるコークス形成を増加させる傾向があるため有益である。また、より均一なフィード、例えば炭素数C10~C21の範囲の炭化水素を主に含むフィードは、プロピレンおよび/またはC4オレフィンの生成を促進するように接触分解条件を調整または制御することを可能にする。
【0054】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも70wt%、好ましくは少なくとも80wt%、より好ましくは少なくとも90wt%のC14~C18炭化水素を含む。このような炭化水素フィードは、本開示の方法による接触分解によるプロピレンおよびC4オレフィンの製造に特に有利である。このような非常に均一なフィードは、プロピレンおよびC4オレフィンの形成を特に良好に促進するように、接触分解条件を調整または制御することを可能にする。このような炭化水素フィードを用いることより、良好な規格化された変換収率で広範な種々の分解生成物留分を製造することが可能である。例えば、多量のC14~18炭化水素を含む炭化水素フィードは、プロピレンおよび/またはC4オレフィンを含むより短い生成物を含む分解生成物留分に加えて、例えば、ガソリンのための、および/または、例えば溶剤、シンナーおよびスポット除去剤などの工業用または家庭用の化学製品のための成分として使用可能なC5~C9炭化水素の分解生成物留分をもたらす。追加で、主にC10~C17炭素数範囲にある分解生成物、および、主にC14~C18炭素数範囲にある未変換炭化水素を含む留分(該留分は、本明細書において変換率および規格化された変換収率を計算するために、未変換フィードストックであると仮定されている)が得られる。該留分は、イソパラフィン含有量が新鮮な炭化水素フィードストックと比較して増加されている可能性がある。したがって、未変換のC14~C18を含むこの留分もまた、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の未変換留分について上述したのと同じ理由により、任意には例えばオレフィンの水素化などの水素化処理後に、接触分解におけるプロピレンおよびC4オレフィンのより高い収率に寄与するリサイクルフィード(リサイクル留分)として、および/または、(新鮮な炭化水素フィードと比較して)良好な低温特性を有する航空および/またはディーゼル燃料組成物の成分として、より高い価値を有し得る。
【0055】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、ENISO3405にしたがって測定されて、190℃~330℃の範囲内の沸点範囲を有する。このような炭化水素フィードは、本開示の方法による接触分解に特に適している。沸騰範囲は、本開示の文脈において、蒸留生成物の最初の1滴が得られる温度として定義される初留点IBPから、最高沸点化合物が蒸発する最終沸点FBPまでの温度間隔をカバーしている。
【0056】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、ENISO12185:1996にしたがって測定されて、15℃において、750~800kg/m3、好ましくは775~795kg/m3の範囲内の密度を有する。このような炭化水素フィードは、本開示の方法による接触分解に特に適している。
【0057】
炭化水素フィード(新鮮なフィード)に加えて、接触分解フィードストックは、任意には、分解生成物から分離されたリサイクル留分を含んでもよい。換言すると、ある実施形態において、接触分解フィードストックは、分解生成物から分離されたリサイクル留分を含む。
【0058】
ある実施形態において、接触分解フィードストックは、接触分解フィードストックの総計の重量に基づいて、総計で少なくとも90wt%の炭化水素フィードおよび任意的なリサイクル留分を含む。好ましくは、接触分解フィードストックは、接触分解フィードストックの総計の重量に基づいて、総計で少なくとも95wt%、より好ましくは少なくとも99wt%の炭化水素フィードおよび任意的なリサイクル留分を含む。ある実施形態において、接触分解フィードストックは、本質的に炭化水素フィードから、または、炭化水素フィードおよび任意的なリサイクル留分から、構成され得る。このような多量の炭化水素フィード、または、炭化水素フィードおよび任意的なリサイクル留分を含む接触分解フィードストックは、本開示の方法による接触分解に特に適しており、プロピレンおよびC4オレフィン、特にはプロピレンの高い規格化された変換収率をもたらす。
【0059】
任意的なリサイクル留分は、未変換炭化水素、すなわち接触分解で炭素数のより小さい化合物に分割されなかった炭化水素を含んでいてもよい。未変換炭化水素の炭素数は接触分解の間変化しないが、かなりの部分が化学反応した可能性がある。例えば、未変換炭化水素、特にn-パラフィンおよび/またはナフテンは、接触分解でイソパラフィンに反応する可能性がある。したがって、リサイクル留分は高いイソパラフィン含有量を有することがある。接触分解フィードストックがリサイクル留分を含むある実施形態において、リサイクル留分中のイソパラフィンのwt%量は、炭化水素フィード中のイソパラフィンのwt%量と少なくとも同じであり、好ましくは、リサイクル留分中のイソパラフィンのwt%量は、炭化水素フィード中のイソパラフィンのwt%量よりも大きい。リサイクル留分中のイソパラフィンのwt%量は、リサイクル留分の総計の重量に基づいて算出され、および、炭化水素フィード中のイソパラフィンのwt%量は、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて算出される。リサイクル留分中のイソパラフィンのwt%量が炭化水素フィード中のものと少なくとも同じである実施形態では、リサイクルフィードは接触分解フィードストック中のイソパラフィン含有量を減少させず、および有利には増加さえさせ、これは接触分解におけるプロピレンおよびC4オレフィン、特にはプロピレンの生成を促進する。前述のように、変換率および規格化された変換収率を算出する目的で、本明細書では、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の分解流出物留分(分解生成物留分)が未変換フィードストックを構成していると仮定する。
【0060】
接触分解フィードストック中の炭化水素フィード(新鮮なフィード)のリサイクル留分に対するwt:wt比は、変化し得る。例えば、ある実施形態において、接触分解フィードストック中のリサイクル留分に対する炭化水素フィードのwt:wt比は、最大1:10、例えば最大1:5または最大1:4であり得る。好ましくは、接触分解フィードストック中の炭化水素フィードのリサイクル留分に対するwt:wt比は、1:1~1:10の範囲内である。分解生成物から分離されたリサイクルされたフィード(リサイクル留分)のかなりの部分を接触分解フィードストックに含めることによって、所望の生成物の全体的な収率を増加させることができる。また、リサイクル留分のイソパラフィン含有量はしばしば高いので、炭化水素フィード(新鮮フィード)よりもリサイクル留分を多く含む接触分解フィードストックを提供することは、接触分解フィードストック中のイソパラフィンのwt%量を増加させる傾向があり、これがプロピレンおよびC4オレフィン、特にはプロピレンの生成を促進するため、有利である。
【0061】
ある実施形態において、接触分解フィードストックは、接触分解フィードストックの総計の重量の、5wt%未満、好ましくは1wt%未満、より好ましくは0.5wt%未満の芳香族、および、好ましくは40wt%未満、または30wt%未満、より好ましくは20wt%未満、または10wt%未満、さらにより好ましくは1wt%未満のナフテンを含む。芳香族は、プロピレンおよびC4オレフィンを形成しないか、またはごくわずかしか形成せず、コークスの生成を増加させる。接触分解フィードストック中のナフテンの含有量が低いことは、ナフテンが(パラフィンと比較して)プロピレンおよびC4オレフィンの形成を減少させるため、および、C6環を含むナフテンが芳香族の前駆体であるため、有益である。
【0062】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、EN 16640(2017)にしたがって測定されて、炭化水素フィード中の炭素の総計の重量に基づいて、少なくとも70wt%、好ましくは少なくとも80wt%または少なくとも90wt%、より好ましくは少なくとも95wt%、特に好ましくは約100wt%の生物起源炭素含有量を有する再生可能な炭化水素フィードである。再生可能な炭化水素フィードは、環境的に持続可能なフィードストックを提供し、および、環境的に持続可能な分解生成物をもたらす。特には、再生可能な炭化水素フィードは、再生可能な(生物起源のまたはバイオベースの)プロピレンおよび/またはC4オレフィンの製造を可能にし、この再生可能なプロピレンは、例えば、再生可能なポリマーを製造するためのポリマー製造などにおいて使用され得る。
【0063】
再生可能なまたは生物起源の炭素原子(生物起源炭素)は、化石起源の炭素原子に比べて、より多くの数の不安定な放射性炭素(14C)原子を含む。そのため、12Cおよび14Cの同位体の比を分析することで、再生可能なまたは生物由来の原料由来の炭素化合物と化石原料由来の炭素化合物とを区別することが可能である。したがって、該同位体の特定の比率が、再生可能な炭素化合物を識別し、そして再生不可能な炭素化合物と区別するために「タグ」として使用され得る。同位体比は化学反応の過程で変化しない。生物学的または再生可能な供給源からの炭素の含有量を分析するための適切な方法の例としては、DIN 51637(2014)、ASTM D6866(2020)およびEN 16640(2017)が挙げられる。本明細書で使用される場合、生物学的または再生可能な原料由来の炭素の含有量は、EN 16640(2017)にしたがって測定される、材料中の総計の炭素(TC)の重量パーセントとしての材料中の生物起源炭素の量を意味している生物起源炭素含有量として表される。
【0064】
炭化水素フィードが再生可能である実施形態では、その結果、分解生成物も再生可能であり、分解生成物の全体としての生物起源炭素含有量は、再生可能な炭化水素フィードのそれと本質的に同じである。したがって、炭化水素フィードが生物起源炭素を含む場合、分解生成物から分離および/またはリサイクルされた留分または複数の留分もまた生物起源炭素を含む。
【0065】
図1は、例示的な実施形態による方法の概略図である。
図1の実施形態では、炭化水素フィード110(新鮮なフィード)と、任意的なリサイクル留分160とを含む接触分解フィードストックが、接触分解のための固体触媒を含む接触分解反応器120に供給される。固体触媒は、ゼオライトまたはゼオライトタイプの材料を含み得、ここで、固体触媒の微細孔径は4~6Åの範囲内であり、固体触媒は、好ましくは強酸部位を含む。
【0066】
ゼオライトまたはゼオライトタイプの材料を含み、4~6Åの範囲内の微細孔サイズを有する固体触媒は、驚くべきことに、プロピレンおよびC4オレフィンを含むオレフィンの生成を促進することが見出された。強酸度を有する触媒が、それらが本方法の温度範囲内、即ち300℃~450℃の温度範囲内の温度で、フィードストックの分解を促進するため、有利であり、中程度の強酸度を有する触媒と比較して、変換率が高くなっている。中程度の強酸性を有する触媒によって提供される幾分低い変換率は、例えば、触媒量を増加させること、および/または、強酸度を有する触媒と組み合わせて使用することなどによって補われ得る。これに対し、中程度の強酸度を有する触媒は、強酸度を有する触媒と比較して、オレフィンへの、特にはエチレン、プロピレンおよびC4オレフィンへの高い選択性を提供することができ、したがって、中程度の強酸度を有するゼオライトまたはゼオライトタイプの材料を含む触媒を使用することが有益であり得る。プロピレンおよびC4オレフィン、特にプロピレンの形成は、イソパラフィン含有炭化水素フィードおよび任意にはリサイクル留分を含む接触分解フィードストックがこのような触媒の存在下で分解されるため、特に好ましく、接触分解フィードストックのイソパラフィン含有量を増加させることもまた、プロピレンおよびC4オレフィン、特にプロピレンの形成をさらに有利にさせる。有利には、固体触媒は、βゼオライト、ZSM-5、SAPO-34および/またはMCM-22、好ましくはZSM-5、MCM-22および/またはSAPO-34を含む。ZSM-5、MCM-22およびSAPO-34は、プロピレンおよびC4オレフィンの生成を特に促進することが見出された。好ましくはβゼオライト、ZSM-5、SAPO-34および/またはMCM-22を、より好ましくはZSM-5、MCM-22および/またはSAPO-34を含む、ゼオライトまたはゼオライトタイプの材料に加えて、固体触媒は、固体触媒の機械的耐久性および成形性を向上させるために、例えばシリカ-アルミナまたはクレイなどの触媒的に活性であり得る担体、または、例えばシリカなどの触媒的に不活性であり得る担体を含んでいてもよい。固体触媒は、例えばバインダーやその他の一般的に知られている触媒添加剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0067】
酸度の強さを含むゼオライトの酸性特性は、広く知られた方法、例えば、より高温でのアンモニアまたはピリジンのような吸着された塩基性物質の遊離が強酸性部位の存在を示す吸脱着法などによって決定することができる。使用可能な吸脱着法の一例としては、例えばNiwaら(Niwa, M., Katada, N. Measurements of acidic property of zeolites by temperature programmed desorption of ammonia.Catalysis Surveys from Asia 1, 215-226 (1997))に記載の手順にしたがって行われるアンモニアの温度プログラムされた脱着が挙げられる。酸度の強さを含むゼオライトの酸性特性を測定するためのさらに別のよく知られた方法は、1H-NMR法であり、例えば、Heeriboutら(Heeribout L., Semmer V., Batamack P., Doremieux-Morin C., Fraissard J. Bronsted acid strength of zeolites studied by1 H NMR: scaling, influence of defects.Microporous and Mesoporous Materials, Volume 21, Issues 4-6, May 1998, Pages 565-570)に記載の手優にしたがって行われる。
【0068】
固定床反応器は、1または複数の触媒床を含み得、固体触媒は、前記触媒床の少なくとも1つに含まれている。例えば、固定床反応器は、直列に配置された2つの触媒床を含んでいてもよい。ある実施形態において、固定床反応器は、第1の固体触媒を含む第1の触媒床を含み、第1の固体触媒は、好ましくは、長鎖(C16~C22)炭化水素またはパラフィンを活性化するための、例えば金属などの脱水素剤を含み、続いて第2の触媒床であって、好ましくは上述された、すなわち4~6Åの細孔径を有するゼオライトまたはゼオライトタイプの材料を含み、および好ましくは、C6~C12炭化水素またはパラフィンを活性化するために強酸度を有する第2の固体触媒を好ましくは含む第2の触媒床を備える。
【0069】
固定床反応器における接触分解は、好ましくはサイクルで実施され、有利には、転化率が望ましくないレベル、例えば0.10未満、または0.20未満に低下するまでサイクルが継続される。分解サイクル中、固体触媒の活性は、例えば固体触媒上に堆積したコークスによるファウリングによって徐々に低下する傾向がある。したがって、固定床反応器における接触分解は、好ましくはサイクルで実施され、固体触媒は、有利にはサイクル間または各サイクル間で再生される。好ましくは、接触分解サイクルは少なくとも24時間持続する。好ましくは、接触分解サイクルの持続時間は、固定床反応器内の温度(反応温度)を上昇させることにより、触媒のファウリングによる転化率の漸減を補償することによって延長される。接触分解プロセスおよび/または分解生成物に過度の悪影響を与えることなく反応温度をこれ以上上昇させることができない場合、および/または転化率が0.20未満、または0.10未満に低下した場合、固体触媒は有利に再生される。
【0070】
移動固体触媒反応器は、流動床接触分解反応器または移動床接触分解反応器のような任意の従来のタイプのものであってよい。移動固体触媒反応器を使用する利点は、分解反応器と触媒再生器の優れた統合を可能にすることである。このようにして、触媒を連続的に再生することができ、高い熱効率が得られる。例えば、再生器内でコークスを燃焼させることにより、接触分解に必要なエネルギーをロスなく供給することができる。移動固体触媒を使用する接触分解プロセスは連続プロセスであるため、触媒再生のために反応器をオフラインにする必要がなく、生産性が向上する。
【0071】
再生は、例えば、固体触媒を高温ガスでフラッシングする方法、固体触媒から堆積したコークスを燃焼除去する方法、またはそれらの組み合わせによって行うことができる。燃焼は、分子状酸素または酸素含有物質の存在下での酸化による化学的再生の一例とみなすことができる。フラッシングは物理的再生の一例であり、吸着したコークス前駆体を高温ガスで脱離させる。好ましくは、固体触媒を時々フラッシングにより再生する場合、その時々によって燃焼を使用して固体触媒を再生する。ある実施形態において、触媒は、まず高温ガスによるフラッシングによって数回の分解サイクルの間に再生され、次いで堆積したコークスを燃焼除去することによって再生される。フラッシングは、(炭化水素フィードが再生可能な炭化水素フィードである場合に)貴重な再生可能な(バイオベースの)コークスを回収することを可能にするという意味で有益であり、その後、再生可能な(バイオベースの)炭化水素をより短鎖にするための処理によってさらに有価化することができる。燃焼によって再生可能コークスは炭素酸化物として失われるが、一方で燃焼は効率的な再生方法であるという意味で有益であり、燃焼による再生後に、水洗による再生に比べてより長い分解サイクルを達成することができる。さらに、移動固体触媒反応器を使用する場合、コークスを燃焼させることで、接触分解のための熱エネルギーが得られる。
【0072】
再生温度は、通常、分解中または再生中に使用される最高接触分解温度(反応温度)よりも0℃から50℃高く、好ましくは10℃から30℃高い。例えば、堆積したコークスの燃焼除去は、例えば固定床反応器の触媒床にまたは別個の触媒再生器に空気を導入することにより、分子状酸素の存在下で、好ましくは、400度~550℃、好ましくは450℃~550℃の範囲から選択される温度で行われる。
【0073】
ある実施形態において、接触分解は、任意に、2つ以上の固定床反応器において並行して行うことができる。そのような実施形態において、固定床反応器が再生されているとき、接触分解は別の固定床反応器において同時に継続することができる。これにより、接触分解プロセスまたはユニット全体を停止することなく、固体触媒の再生が可能になる。
【0074】
好ましくは、反応条件および/または接触分解反応器中での接触分解反応は、接触分解反応中の接触分解フィードストックの転化率が高すぎないように選択される。有利には、接触分解反応における接触分解フィードストックの転化率は0.20~0.85、好ましくは0.20~0.80の範囲内である。適度な転化率は、プロピレンの高い規格化された変換収率を促進し、またC4オレフィンの規格化された変換収率も促進し得る。転化率が0.20よりはるかに低い場合、プロピレンおよびC4オレフィンの生成は減少し、一方C5~C10炭化水素の生成は増加する可能性があり、所望の量のプロピレンおよび/またはC4オレフィンを得るために、特にC5~C10炭化水素のより多くのリサイクルが必要となる。また、リサイクルが経済的でなくなることもある。転化率が0.85よりはるかに高い場合、プロピレンおよびC4オレフィンの規格化された変換収率は減少し始めるが、芳香族およびナフテンの生成は増加し始め、望ましくない高いレベルに達する可能性がある。0.20~0.85、好ましくは0.20~0.80の範囲の適度な転化率は、接触分解フィードストックが分解生成物から分離された再生留分からなる実施形態において特に有利である。プロピレンの生成は適度な転化率によって促進されるため、分解生成物の少なくとも一部が接触分解のために接触分解フィードストックにリサイクルされる実施形態では、所与の量の炭化水素フィードから特に高い全体的なプロピレン収率が得られる。
【0075】
ある実施形態において、接触分解は、350℃~450℃の範囲から選択される温度で実施される。この範囲から選択される温度は、プロピレンの高い規格化された変換収率を促進する。ある実施形態において、接触分解は、370℃~450℃、好ましくは400℃~450℃の範囲から選択される温度で行われる。このような幾分高い温度範囲は、特に貫流(すなわち、リサイクルなし)システムにおいて、より高い転化率を提供し得る。しかしながら、450℃を超える反応温度では、コーク形成が増加し始め、芳香族の形成が増加し始め、分解流出物(分解生成物)中の芳香族が望ましくない高レベルに達する可能性がある。ある実施形態において、接触分解は、350℃~430℃、好ましくは350℃~400℃、より好ましくは360℃~400℃の範囲から選択される温度で行われる。このような幾分低い温度範囲は、より高い反応温度と比較して、固体触媒がそれほど早く汚れないので、より少ないコーキングとより長いサイクルを提供する。
【0076】
ある実施形態において、接触分解の重量毎時空間速度(WHSV、すなわち接触分解フィードストック質量流量/固体触媒質量)は、0.01~10の範囲から選択され、好ましくは0.1~5の範囲から選択される。WHSVの単位は、時間当たりg接触分解原料/g触媒である。これらの範囲から選択されたWHSVは、プロピレンの規格化された変換収率を促進する。WHSVが0.01g接触分解フィードストック/g触媒/時間よりはるかに低いと、オレフィンが重合し始めることがあり、WHSVが10よりはるかに高いと、プロピレンおよびC4オレフィンなどの所望の分解生成物の収率が低下し始める。
【0077】
ある実施形態において、接触分解は、0.1MPa~2MPa、好ましくは0.1MPa~1MPa、より好ましくは0.15MPa~1MPa、さらに好ましくは0.20MPa~1MPaの範囲から選択される圧力で行われる。これらの範囲から選択される圧力は、プロピレンの高い規格化された変換収率を促進する。0.15MPa以上、または0.20MPa以上のような大気圧以上の反応圧力は、例えば、より容易な気液分離を可能にする(大気圧以下のようなより低い圧力で実施されるプロセスと比較して)プロセスを単純化することができる。
【0078】
ある実施形態において、本方法は工業的規模で実施される。工業的規模のプロセスでは、プロセスの生成物のストリームをむしろ一定に保ち、それに応じてプロセスパラメータを調整することがしばしば望まれる。例えば、新鮮な固体触媒上での接触分解フィードストックの転化率は、使用済みの固体触媒上での転化率と異なる場合がある。接触分解中の固体触媒の漸次的な汚損または不活性化が転化率に及ぼす影響は、特に接触分解反応器における反応条件を調整することによって、例えば反応温度を上昇させることなどによって、緩和することができる。
【0079】
本発明の方法において、特に接触分解の温度および重量時空間速度(WHSV、すなわち接触分解フィードストック質量流量/固体触媒質量)が転化の程度を制御することが見出された。したがって、特に接触分解の温度およびWHSVを調整することにより、プロピレンおよびC4オレフィン、特にプロピレンの高い規格化された変換収率を促進する適度な転化を達成することができる。したがって、ある実施形態において、接触分解は、350℃~450℃の範囲から選択される温度、好ましくは350℃~400℃の範囲から選択される温度、より好ましくは約400℃の温度で、0.01~10、好ましくは0.1~5、より好ましくは0.5~3の範囲から選択される重量時空間速度(WHSV、すなわち接触分解原料質量流量/触媒質量)で行われる。
【0080】
図1の実施形態では、接触分解原料を接触分解装置120中で接触分解に付すことによって得られる分解生成物130は、すなわち接触分解装置120の接触分解の流出物または分解流出物は、接触分解生成物から少なくともプロピレン、C4オレフィンまたはその両方を含む留分150を分離するために、例えば蒸留ユニットなどの分離装置140に供給される。
【0081】
他のある実施形態において、接触分解反応器、特に固定床反応器は、蒸留装置内に配置することができる。例えば固定床反応器と蒸留装置は、接触分解フィードストックを、蒸留ユニット内の固定床反応器において接触分解に供して分解生成物を形成することと、蒸留ユニットにおいて蒸留により分解生成物から、プロピレン、C4オレフィン、またはその両方からなる留分を分離することとを含む、接触蒸留ユニットを形成してもよい。
【0082】
任意には、プロピレン、C4オレフィンまたはその両方からなる留分は、さらなる精製および/または分留工程に付されてもよい。任意的な精製および/または分別ステップまたは処理は、意図される最終用途および/または所望の純度および/またはプロピレンおよび/またはC4オレフィンの目標仕様に応じて選択され得る。
【0083】
例えば、C4オレフィンからなる留分、またはプロピレンおよびC4オレフィンの両方からなる留分は、前記留分から特定のC4オレフィンまたは特定のC4オレフィンを分離するために分留されてもよい。ある実施形態において、本方法は、C4オレフィンからなる留分、またはプロピレンおよびC4オレフィンの両方からなる留分を分留し、1-ブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、ブタジエン、およびイソブテンのうちの1または複数を分留組成物として得ることを含む。C4オレフィンを分留するのに適した任意の従来の分留方法を使用することができる。C4オレフィン、またはプロピレンとC4オレフィンの両方からなる分解生成物留分は、そのまま、または分留もしくは精製後に、イソブタンと反応させて高オクタン価ガソリン成分であるアルキレートを製造するために使用することができる。
【0084】
ある実施形態において、本方法は、プロピレン、またはプロピレンおよびC4オレフィンの両方を含む留分を精製処理に供して精製プロピレンを得ることを含む。生成物留分のプロピレン含有量を増加させ、および/またはプロピレンに富むフラクションの不純物を除去するのに適した、いくつかのタイプの従来の精製処理またはプロセスが存在する。例えば、プロパンは、一般にC3スプリッターとして知られる蒸留によってプロピレンから分離され得る。適切な精製処理は、意図される純度グレードおよび/またはプロピレンの意図される最終用途に基づいて選択され得る。所望の純度グレードは、例えば、少なくとも50wt%、例えば50wt%~70wt%の精製グレード用プロピレン、または少なくとも90wt%、例えば90~95wt%の化学グレード用プロピレン、または少なくとも99wt%、例えば少なくとも995wt%のポリマーグレード純度用プロピレンであってよい。本発明の方法を用いて得られる総計のC3に対するプロピレンの重量比は、少なくとも0.7などと高いので、所望の高純度グレードを達成するために、より安価な装置およびエネルギーが必要とされ得る。
【0085】
任意には、プロピレン、C4オレフィンまたはその両方からなる留分の少なくとも一部を、MAPD(プロピレン-プロパジエン混合物)のような特定の汚染物質を除去するための選択的水素化処理に供してもよい。しかしながら、本発明の方法の利点は、分解生成物、すなわちプロピレン、C4オレフィン、またはその両方からなる留分が、例えばプロパジエンをごく少量しか含まないか、または本質的に含まない可能性があることであり、これにより、ある実施形態における留分の選択的水素化処理は冗長にさえなり得る。MAPD(プロピレン-プロパジエン混合物)は、プロピレン組成物だけでなく、1以上のC4オレフィンを豊富に含む組成物の品質およびさらなる使用に有害である。
【0086】
任意には、プロピレン、C4オレフィン、またはその両方からなる分解生成物留分の少なくとも一部は、CO、CO2、またはC2H2の少なくとも1つを除去するために、吸収剤、吸着剤、精製触媒、反応物、分子ふるい、またはそれらの組み合わせなどの活性材料と接触させることができる。プロピレン、C4オレフィン、またはその両方からなる分解生成物フラクションの少なくとも一部は、任意には、活性物質からなる少なくとも1つの精製トレイン、または活性物質の少なくとも1つの床を通過させることができる。接触は、単一の容器中で行われてもよい。任意選択で、プロピレン、C4オレフィンまたはその両方からなるフラクションの少なくとも一部を活性物質と接触させることは、好ましくは直列に接続された複数の容器で実施されてもよく、すなわち、精製されるべきフラクションが、さらなる精製のために1つの容器から次の容器に渡されることを可能にする。しかしながら、本方法の利点は、分解生成物、すなわちプロピレン、C4オレフィンまたはその両方からなる留分が、例えばCO、CO2をごく少量しか含まないか、または本質的に含まないことであり、これによりある実施形態において、留分からのCOおよび/またはCO2の除去はさらに冗長になり得る。
【0087】
例えば、プロピレンからなる留分は、C第3炭化水素の留分であってもよく、および/またはC4オレフィンからなる留分は、C4炭化水素の留分であってもよい。したがって、ある実施形態において、本方法は、分解生成物からC3炭化水素の留分および/またはC4炭化水素の留分を分離することを含む。
【0088】
特定の他の実施形態において、プロピレン、C4オレフィン、または両方を含む留分は、C2~C4炭化水素の留分、またはC3~C4炭化水素の留分である。プロピレン、C4オレフィン、またはその両方を含む留分が、C2~C4炭化水素またはC3~C4炭化水素の留分である実施形態において、本方法は、C2~C4炭化水素またはC3~C4炭化水素の留分から、例えば蒸留によって、C3炭化水素の留分および/またはC4炭化水素の留分を分留することを含んでよい。
【0089】
本開示の方法は、C3炭化水素の留分をさらなる精製工程に供することなく、分解生成物から直接、またはC2~C4炭化水素の留分などの分解生成物から分離された留分から、C2~C4炭化水素の留分を分離することによって、少なくとも精製グレードの純度(少なくとも70wt%のプロピレンなど)を有するプロピレンの製造を可能にする。任意には、C3炭化水素の留分は、少なくとも90wt%または少なくとも99wt%のプロピレンのような、さらに高い純度のプロピレンを得るために、精製工程または精製処理に供されてもよい。前述したように、精製処理にはいくつかの種類があり、目的とする純度グレードおよび/またはプロピレンの目的とする最終用途に基づいて、適切な精製処理を選択することができる。
【0090】
分解生成物からさらなる留分、例えばC5~C9炭化水素の留分を分離し、オプションとして回収することもできる。
【0091】
図1の実施形態では、メタンとメタンより軽いガスからなる留分180が、分解生成物から任意に分離される。この留分は、通常、エネルギーとして燃焼される。また、少なくともC5、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分160も、任意に分解生成物から分離することができる。少なくともC5、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分の少なくとも一部は、好ましくは、任意のリサイクル留分として接触分解のために接触分解フィードストックにリサイクルされる。リサイクル留分は、接触分解フィードストックが接触分解工程に入る前に、接触分解フィードストックと結合または混合することもでき、接触分解反応器中で接触分解フィードストックの一部を形成する。任意には、少なくともC5、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分が分解生成物から分離される実施形態において、本方法は、前記留分またはその少なくとも一部を精製処理に供して、少なくともC5、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の精製留分を得ること、および前記精製留分の少なくとも一部を接触分解フィードストックにリサイクルすることを含んでよい。精製処理において、例えば芳香族は、少なくともC5、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分の少なくとも一部から除去され得る。ある実施形態において、少なくともC5の炭素数、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分の少なくとも一部は、少なくともジオレフィンを低減またはそこから除去するために、水素化などの部分的な水素化処理に供され、部分的に水素化処理された留分の少なくとも一部は、接触分解フィードストックにリサイクルされる。ジオレフィンは、コークス形成および固体触媒のファウリングを増加させる傾向があり、他の化合物と共に爆発性ガム(NO
xガム)の形成を促進することもある。ある実施形態において、少なくともC5、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分の少なくとも一部は、少なくともジオレフィンを低減またはそこから除去するための水素化などの部分水素化処理と、例えば芳香族を除去するための精製処理の両方に供され、好ましくは、少なくともC5、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の精製および部分水素化処理された留分の少なくとも一部は、接触分解フィードストックにリサイクルされる。
【0092】
ある実施形態において、本方法は、分解生成物からC5~C9炭化水素の留分を分離すること、および任意選択で、ガソリン組成物中の成分として、および/または溶剤、シンナー、スポット除去剤などの化学製品中の成分として使用するために、C5~C9炭化水素の留分の少なくとも一部を回収すること、および/または任意選択で、C5~C9炭化水素の留分の少なくとも一部を接触分解フィードストックにリサイクルすることを含む。好ましくは、分解生成物から分離した後、C5~C9炭化水素の留分は、オレフィンの水素化のような水素化処理に供される。このような任意選択の水素化処理は、C5~C9炭化水素の留分がリサイクルのために使用される場合にコークス形成を低減し、またはガソリン組成物および/または化学製品に留分の高い割合を組み込むことを可能にする。任意には、C5~C9炭化水素の留分の少なくとも一部を精製処理に供して、そこから少なくとも芳香族を除去してC5~C9炭化水素の精製留分を得ることができ、好ましくは、CC5~C9炭化水素の精製留分の少なくとも一部を接触分解フィードストックにリサイクルする。これは、例えば、ヒドロ脱芳香族化、溶媒抽出、または他の公知の方法によって達成することができる。ベンゼン、キシレンおよび/またはトルエンのような芳香族は、任意の精製ステップにおいてC5~C9炭化水素の留分の少なくとも一部から除去され、回収され、付加価値のある使用のために提供され得る。ある実施形態において、C5~C9炭化水素の留分の少なくとも一部は、オレフィンの水素化などの任意の水素化処理と、少なくとも芳香族を除去するための任意の精製処理との両方に供され、好ましくは、C5~C9炭化水素の水素化処理および精製された留分の少なくとも一部は、接触分解フィードストックにリサイクルされる。
【0093】
新鮮なフィード(炭化水素フィード)と類似の炭素鎖長を有するリサイクル留分は、プロピレンおよび/またはC4オレフィンの生成を促進するための接触分解条件の調整または制御を可能にする、むしろ均一な接触分解フィードストックを提供するので有利である。また、分解抽出物のばらつきを減少させることができ、フレッシュフィードとの良好な混合が期待される。
【0094】
ある実施形態において、接触分解は水素分子(H2)を(追加的に)供給することなく行われる。したがって、本方法は、水素分子(H2)の(新たな)供給を接触分解反応器に供給することなく実施することができる。本開示の方法は、オレフィンを製造するための接触分解方法であるので、水素分子を(追加的に)接触分解反応器に供給する必要はない。好ましくは、炭化水素フィードおよび任意のリサイクル留分は両方とも、水素分子を本質的に含まない。
【0095】
図2は、例示的な実施形態による方法の概略図である。
図2の実施形態において、炭化水素フィード110(新鮮な供給物)と第1のリサイクル留分161とからなる第1の接触分解フィードストックが、第1の接触分解装置に供給される。炭化水素フィード110(フレッシュフィード)および第2のリサイクル留分162からなる第2の接触分解フィードストックが、第2の接触分解反応器121に供給され、炭化水素フィード110(フレッシュフィード)および第2のリサイクル留分162からなる第2の接触分解フィードストックが、第2の接触分解反応器121に供給される。第1および/または第2の接触分解反応器は、固定床反応器のような接触分解反応器であってもよい。固体触媒は、上記のような固体触媒であってもよい。接触分解反応器121および122が固定床反応器である場合、第1の接触分解フィードストックは、第1の固定床反応器と並列の少なくとも1つのさらなる固定床反応器に供給され、第2の接触分解フィードストックは、第2の固定床反応器と並列の少なくとも1つのさらなる固定床反応器にそれぞれ供給され、同時に接触分解を継続しながら、第1の固定床反応器および/または第第2の固定床反応器中の固体触媒の再生を可能にする。
【0096】
図2の実施形態では、第1の接触分解フィードストックを第1の接触分解装置で接触分解に付すことにより、接触分解の流出物または流出液である第一分解生成物131が得られる。接触分解反応器121の出口の流出物は、第2の接触分解原料を第2の接触分解反応器121で接触分解に付すことによって得られる第2の分解生成物132を含む。第2接触分解反応器122および第2接触分解反応器121の流出液または排出液で接触分解を行うことによって得られる第2の分解生成物132は、分解生成物131、132から炭化水素留分を分離するために、蒸留装置などの分離装置140に供給される。あるいは、他のある実施形態において、第1の分解生成物および第2の分解生成物は、それぞれの分離ユニットに供給されてもよく、すなわち、第1の分解生成物は、第1の分解生成物からの炭化水素留分の分離のために第1の分離ユニットに供給され、第2の分解生成物は、第2の分解生成物からの炭化水素留分の分離のために第2の分離ユニットに供給される。分離装置または蒸留装置は、接触蒸留装置であってもよい。
【0097】
図2の実施形態では、プロピレン、C4オレフィン、またはその両方からなる留分151が、分解生成物131、132から分離される。任意選択で、プロピレン、C4オレフィン、またはその両方からなる留分は、上記でより詳細に記載されるように、さらなる精製および/または分別工程に供されてもよい。さらに、
図2の実施形態において、メタンおよびメタンより軽いガスからなる留分181は、分解生成物131、132から分離され、任意選択でエネルギーに燃焼される。C5~C9炭化水素161の留分は、
図2の実施形態では分解生成物131、132から分離される。C5~C9炭化水素の留分またはその一部は、任意に精製処理に供され、精製されたC5~C9炭化水素の留分を得ることができる。好ましくは、任意選択の精製処理において、C5~C9炭化水素の留分の少なくとも一部から少なくとも芳香族が除去される。
図2の実施形態では、C5~C9炭化水素の留分またはC5~C9炭化水素の精製留分の少なくとも一部は、第1の接触分解フィードストックにリサイクルされ、反応器121で第1の接触分解フィードストックと接触分解される。
図2の実施形態において、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分162は、分解生成物131、132から分離される。任意には、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分またはその一部を精製処理に供して、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の精製留分を得ることができる。固体触媒には金属が付着しやすいが、例えば金属不純物が透過して、炭素数が少なくともC10、または少なくともC22の炭化水素の重い留分に蓄積しやすいと考えられる。
図2の実施形態では、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分または少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の精製留分の少なくとも一部は、反応器122で第2の接触分解フィードストックにリサイクルされ、第2の接触分解フィードストックで接触分解される。分解生成物131、132の大部分の芳香族化合物(ベンゼンC6、トルエンC7、キシレンC8)は、C5~C9炭化水素の留分に含まれる傾向がある。
【0098】
任意選択で、C5~C9炭化水素の留分の少なくとも一部、またはC5~C9炭化水素の精製留分の少なくとも一部は、水素化などの部分的な水素化処理を施して、少なくともジオレフィンを低減または除去することができ、C5~C9炭化水素の部分的な水素化処理留分の少なくとも一部は、接触分解フィードストックにリサイクルすることができる。同様に、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分の少なくとも一部、または少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の精製留分の少なくとも一部は、少なくともジオレフィンを低減またはそこから除去するために、水素化などの部分的な水素化処理を行うことができ、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の部分的な水素化処理留分の少なくとも一部は、接触分解フィードストックにリサイクルすることができる。
【0099】
C5~C9炭化水素の留分の少なくとも一部と、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分の少なくとも一部とを、互いに別々に、それぞれの接触分解フィードストックにリサイクルし、それぞれの接触分解フィードストックにおいて接触分解を行ってもよく、これは例えば、フラクション(またはフラクションの一部)の圧送を最適化することができるためである。さらに、C5~C9のリサイクルラインは加熱を必要としない。反応条件および/または第1の接触分解反応器121および第2の接触分解反応器122の触媒は互いに異なっていてもよい。これにより、反応条件および/または触媒でプロピレンおよび/またはC4オレフィンの生成が促進されるように、反応条件および/または触媒を選択することができる。接触分解反応器中のリサイクル留分の異なる組成を考慮して、両方の接触分解反応器においてプロピレンおよび/またはC4オレフィンの生成が促進されるように、反応条件および/または触媒を選択することができる。
【0100】
したがって、ある実施形態において、本方法は、炭化水素フィードと、分解生成物から分離され、任意選択で前記留分から少なくとも芳香族を除去するための精製処理に供されたC5~C9炭化水素の再生留分とを含む第1の接触分解フィードストックを提供する工程、炭化水素フィードと、分解生成物から分離された少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の再生留分とを含み、任意選択で、前記留分から例えば芳香族および/または金属を除去するための精製処理に供される第2の接触分解フィードストックを提供する工程;および、第1の接触分解フィードストックを、第1の接触分解装置において接触分解する工程第1の接触分解生成物を得るために、第1の接触分解反応器中で第2の接触分解フィードストックを接触分解する工程;および第2の接触分解生成物を得るために、第2の接触分解反応器中で第2の接触分解フィードストックを接触分解する工程;および第1の分解生成物および第2の分解生成物から、プロピレン、C4オレフィン、またはその両方を含む留分を少なくとも分離する工程を提供する。反応条件、例えば温度、圧力、WHSV、および/または触媒を使用して、第1の接触分解反応器と第2の接触分解反応器を(本質的に互いに独立して)調整することができる。同時に接触分解の転化率は0.20~0.85の間に維持される。これを達成するための温度、圧力およびWHSVは、例えば分解サイクルの段階(固体触媒のファウリングにより転化率が低下し始めると、それを補うために反応温度を上昇させる)接の触分解フィードストックの組成に依存する。
【0101】
本開示の炭化水素フィードは、例えば、再生可能な酸素含有炭化水素の脱酸素反応および異性化反応からなる水素化処理によって得られる炭化水素フィード、フィッシャー・トロプシュプロセスなどのGTL(gas-to-liquid)プロセスによって得られる炭化水素フィード、またはそれらの混合物であり得る。gas-to-liquid(GTL)プロセスを通じて製造される炭化水素組成物は、典型的には炭素数C9~C50、特にはC9~C24の範囲の広い炭素数分布を有するパラフィン系炭化水素によって特徴付けられ、異性化処理に供され得る。好ましくは、炭化水素フィードは、再生可能な酸素含有炭化水素の脱酸素反応および異性化反応からなる水素化処理によって得られる。本明細書において、酸素含有炭化水素とは、炭素、水素および酸素の有機分子を指す。典型的には、再生可能な油および/または脂肪などの再生可能な酸素含有炭化水素の脱酸素反応および異性化反応からなる水素化処理によって得られるパラフィン系炭化水素の炭素数範囲は、GTLプロセスによって得られるパラフィン系炭化水素の炭素数範囲よりも狭い。典型的には、再生可能な酸素含有炭化水素の脱酸素反応および異性化反応からなる水素化処理によって得られるパラフィン系炭化水素は、主にC14~C18炭素数範囲の化合物からなる。
【0102】
ある実施形態において、炭化水素フィードは、以下を含むプロセスによって得られる:再生可能な酸素含有炭化水素、好ましくは脂肪酸、脂肪酸エステル、樹脂酸、樹脂酸エステル、ステロール、脂肪アルコール、酸素化テルペン、および他の再生可能な有機酸、ケトン、アルコール、および無水物の1つまたは複数からなり、好ましくは植物油、動物油脂、微生物油、またはそれらの組み合わせに由来する炭化水素を水素化処理する工程であって、水素化処理は脱酸素反応および異性化反応を含む、工程とイソパラフィンを含む水素化処理生成物を得るために、水素化処理生成物から蒸気相を除去して、蒸気枯渇水素化処理生成物を得、任意には、炭化水素フィードとして、蒸気枯渇水素化処理生成物から、少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも60wt%、さらに好ましくは少なくとも70wt%、より好ましくは少なくとも80wt%、さらに好ましくは少なくとも90wt%の炭素数C10を有する炭化水素を含む留分を回収する。除去された蒸気相は、H2、CO、CO2、H2S、NH3、H2O、および/またはC1~C4炭化水素を含んでいてもよい。蒸気相の除去は、水素化処理生成物からガス状化合物(NTP、ガス状)および水を除去することを含むか、または本質的に構成される。好ましくは、蒸気除去された水素化処理生成物は、1wt%未満のガス状化合物(NTP)および水からなる。本明細書において、ガス状化合物(NTP)とは、常温常圧下、すなわち20℃および1気圧(101.325kPa)の絶対圧下でガス状である化合物を指す。炭化水素フィード中のガス状化合物は、所望の分解生成物の収率を低下させる可能性があり、例えば、COおよびCO2、C3炭化水素の留分またはC3炭化水素からなる留分などの軽い分解生成物留分において、製品品質の問題を引き起こす可能性がある。
【0103】
ある実施形態において、水素化処理生成物から蒸気相を除去することは、水素化処理生成物を気液分離に供することによって実施される。気液分離は、別個の段階(例えば、水素化処理生成物が水素化処理反応器または反応ゾーンを出た後)として、および/または水素化処理段階の一体的な段階として、例えば、水素化処理反応器または反応ゾーン内で実施することができる。例えばヒドロデオキシ化中に形成される可能性があり、新鮮な再生可能な酸素含有炭化水素からキャリーオーバーされる可能性がある水の大部分は、例えば気液分離ステップにおいてウォーターブーツを介して除去される可能性がある。
【0104】
ある実施形態において、気液分離は、0℃~500℃までの範囲、例えば15℃~300℃までの範囲、または15℃~150℃までの範囲、好ましくは15℃~65℃までの範囲、例えば20℃~60℃までの範囲から選択される温度で、好ましくは水素化処理ステップの圧力と同じ圧力で実施される。一般に、気液分離ステップの圧力は、1~200バールゲージ、好ましくは10~100バールゲージ、または30~70バールゲージの範囲内とすることができる。
【0105】
特定の炭素数範囲内の炭素数を有する特定量の炭化水素を含む水素化処理された再生可能な(バイオベースの)炭化水素フィードは、例えば、好ましくは1wt%未満のガス状化合物(NTP)を含む水素化処理生成物および/または蒸気枯渇水素化処理生成物を分留に供することによって得ることができる。
【0106】
ほとんどの再生可能原料は、高い酸素含有量を持つ材料からなる。再生可能な酸素含有炭化水素は、遊離または塩の形態であるか否かを問わず、脂肪酸;モノ-、ジ-およびトリグリセリド、メチルまたはエチルエステルなどのアルキルエステルなどの脂肪酸エステル;遊離または塩の形態であるか否かを問わず、樹脂酸;アルキルエステル、ステロールエステルなどの樹脂酸エステル;ステロール;脂肪アルコール;酸素含有テルペン;および他の再生可能な有機酸、ケトン、アルコール、および無水物の1つ以上を含み得る。好ましくは、再生可能な酸素含有炭化水素は、菜種油、菜種油、大豆油、ヤシ油、ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、落花生油、アマニ油、ゴマ油、トウモロコシ油などの植物油の1または複数、ケシ種子油、綿実油、大豆油、トール油、コーン油、ヒマシ油、ジャトロファ油、ホホバ油、オリーブ油、亜麻仁油、カメリナ油、ベニバナ油、ババス油、任意のアブラナ属の種または亜種の種子油、例えばアビシニアガラシ(Brassica carinata)種子油、カラシナ(Brassica juncea)種子油、ヤセイカンラン(Brassica oleracea)種子油、クロガラシ(Brassica nigra)種子油、セイヨウアブラナ(Brassica napus)種子油、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)種子油、シシロガラシ(Brassica hirta)種子油、およびシロガラシ(Brassica alba)種子油など、米ぬか油、または例えばパームオレイン、パームステアリン、パーム脂肪酸蒸留物(PFAD)、精製トール油、トール油脂肪酸、トール油樹脂酸、蒸留トール油、トール油不けん化物、トール油ピッチ(TOP)などの前記植物油の留分や残渣、および使用済み植物性食用油;例えば獣脂、ラード、イエローグリース、ブラウングリース、魚脂、鶏脂、および動物由来の使用済み食用油などの動物性脂肪;例えば藻類脂質、真菌脂質、および細菌脂質などの微生物油などである。
【0107】
酸素含有炭化水素の水素化処理には、水素分子が他の成分と反応したり、水素分子と触媒の存在下で成分が分子変換を受けたりする様々な反応が含まれる。この反応には、水素化、水素化脱酸素、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化分解、水素化分解、水素化分解、水素化異性化、水素化脱芳香族化などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
脱酸素とは、本明細書において、水素化脱酸素、脱炭酸および/または脱炭酸反応により、酸素含有炭化水素から酸素をH2O、CO2および/またはCOとして除去することをいう。好ましくは、水素化処理は、水素化脱酸素(HDO)反応による脱酸素化およびヒドロ異性化反応による異性化からなる。水素化脱酸素とは、本明細書において、触媒の影響下、水素分子により酸素含有炭化水素から酸素をH2Oとして除去し、炭化水素を得ることを意味し、水素化異性化とは、HDOの場合と同じであっても異なっていてもよい触媒の影響下、水素分子により炭化水素への分岐を形成することを意味する。
【0109】
脱酸素反応と異性化反応からなる水素化処理は、同一または後続の触媒層で脱酸素反応と異性化反応を行う単一反応器で実施してもよいし、別々の反応器で実施してもよい。好ましくは、水素化処理の脱酸素反応と異性化反応は、同一反応器または別個の反応器の後続の触媒床で、別々の脱酸素工程と異性化工程で実施される。
【0110】
脂肪酸および/または脂肪酸誘導体のような再生可能な酸素含有炭化水素の水素化脱酸素および異性化に適した反応条件および触媒が知られている。そのようなプロセスの例は、国際公開第2015/101837号、段落[0032]~[0037]、フィンランド国特許第100248号明細書、実施例1~3、および欧州特許出願公開第1741768号明細書、段落[0038]~[0070]、特に段落[0056]~[0070]、および実施例1~6に提示されている。また、他の方法を採用してもよく、特に別のBTL(Biomass-To-Liquid)法を選択してもよい。
【0111】
再生可能な酸素含有炭化水素の水素化脱酸素は、好ましくは、2MPa~15MPa、好ましくは3MPa~10MPaの範囲から選択される圧力、および200~500℃、好ましくは280~400℃の範囲から選択される温度で行われる。水素化脱酸素は、周期表の第VIII族および/または第VIB族からの金属を含む公知の水素化脱酸素触媒の存在下で実施され得る。触媒は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、アモルファスカーボン、モレキュラーシーブスまたはそれらの組み合わせのような任意の適切な担体に担持され得る。好ましくは、水素化脱酸素触媒は、担持されたPd、PT、Ni、またはNiW触媒、または担持されたMo含有触媒、例えばNiMoまたはCoMo触媒であり、ここで担体はアルミナおよび/またはシリカ、またはこれらの触媒の組み合わせである。通常、NiMo/Al2O3および/またはCoMo/Al2O3触媒が使用される。
【0112】
再生可能な酸素含有炭化水素の水素化脱酸素(HDO)は、好ましくは、水素ガスの存在下、硫化NiMo触媒または硫化CoMo触媒の存在下で実施される。HDOは、1MPaから20MPaの範囲から選択される水素圧力下、200℃から400℃の範囲から選択される温度、および0.2h-1から10h-1の範囲から選択される液体時空間速度で実施することができる。硫化触媒を使用する場合、触媒の硫化状態は、気相中の硫黄の添加によって、または再生可能な酸素含有炭化水素とブレンドされた硫黄含有鉱油を有するフィードストックを使用することによって、HDO工程中に維持することができる。ヒドロデオキシゲノンに供される全フィードストックの硫黄含有量は、例えば、50wppm(重量ppm)から20000wppmの範囲内、好ましくは100wppmから1000wppmの範囲内とすることができる。ヒドロデオキシ化のための有効な条件は、脂肪酸または脂肪酸誘導体のような再生可能な酸素含有炭化水素の酸素含有量を1wt%未満、例えば0.5wt%未満または0.2wt%未満に低下させることができる。
【0113】
異性化は特に限定されず、異性化反応をもたらす任意の適切なアプローチを使用することができる。しかし、触媒的水素化異性化処理が好ましい。異性化処理は、好ましくは200℃~500℃、好ましくは280℃~400℃、例えば300℃~350℃の範囲から選択される温度、および1MPa~15MPa、好ましくは3MPa~10MPaの範囲から選択される圧力で行われる。異性化処理は、公知の異性化触媒、例えば、モレキュラーシーブおよび/または周期系の第VIII族から選択される金属および担体を含む触媒の存在下で行うことができる。好ましくは、異性化触媒は、SAPO-11またはSAPO-41またはZSM-22またはZSM-23またはフェリエライトと、Pt、PdまたはNiと、Al2O3またはSiO2とを含む触媒である。典型的な異性化触媒は、例えばPt/SAPO-11Al2O3、Pt/ZSM-22/Al2O3、Pt/ZSM-23/Al2O3および/またはPt/SAPO-11/SiO2である。触媒は、単独または組み合わせて使用することができる。異性化処理中の触媒の失活は、異性化処理中に水素分子を存在させることにより低減することができる。特定の好ましい実施形態において、異性化触媒は、Pt-SAPOおよび/またはPt-ZSM触媒のような貴金属二官能性触媒であり、水素と組み合わせて使用される。
【0114】
異性化反応は、再生可能な酸素含有炭化水素の脱酸素反応により得られるn-パラフィンの少なくとも一部を異性化する役割を果たす。異性化は、精製工程および/または分別工程などの中間工程を含んでいてもよい。
【0115】
脱酸素反応および異性化反応は、同時にまたは連続して実施することができる。ある実施形態において、炭化水素フィードを得ることは、この組み合わされたステップのための単一の触媒、例えばNiW、または担体上のMo触媒、例えばアルミナ上のNiMoとの混合物中のPt/SAPOのようなPt触媒を使用して、同じ触媒床上でヒドロデオキシ化反応およびヒドロ異性化反応を単一ステップで実施することからなる。好ましくは、脱酸素と異性化が連続して行われる実施形態では、脱酸素に続いて異性化が行われる。
【0116】
再生可能な酸素含有炭化水素は、好ましくは、植物および/または動物から得られるか、誘導可能であるか、または植物および/または動物に由来するものであり、菌類および/または藻類、ならびに遺伝子操作された植物および/または動物から得られるか、誘導可能であるか、または植物および/または動物に由来する再生可能な酸素含有炭化水素を含む。再生可能な酸素含有炭化水素は、生物学的酸素含有炭化水素、生物由来の酸素含有炭化水素、または生物起源酸素含有炭化水素とも呼ばれることがある。
【0117】
化石原料または鉱物原料とは、本開示の文脈では、原油、石油オイル/ガス、頁岩オイル/ガス、天然ガス、または石炭鉱床などの天然に存在する非再生可能組成物、およびそれらの組合せを指し、地中/地下源から利用可能な炭化水素富化鉱床を含む。化石または鉱物という用語は、非再生可能な資源に由来するリサイクル材料を指すこともある。
【0118】
典型的には、再生可能な酸素含有炭化水素から得られる炭化水素フィードは、EN 16640(2017)にしたがって測定される炭化水素フィード中の炭素の総計の重量(TC)に基づいて、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも95wt%、より好ましくは約100wt%の生物起源炭素含有量を有する。典型的には、化石原油ベースの鉱油に由来する炭化水素は、約0wt%の生物起源炭素含有量を有する。再生可能な酸素含有炭化水素は、好ましくは、EN 16640(2017)にしたがって測定される再生可能な酸素含有炭化水素中の炭素の総計の重量(TC)に基づいて、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも95wt%、より好ましくは約100wt%の生物起源炭素含有量を有する。
【0119】
再生可能な油および/または脂肪に由来する再生可能な酸素含有炭化水素は、典型的には、C10~C24脂肪酸およびその誘導体からなり、脂肪酸のエステル、グリセリド、すなわち脂肪酸のグリセリンエステルを含む。グリセリドは、具体的には、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドを含み得る。任意に、再生可能な酸素含有炭化水素は、少なくとも部分的に、使用済み食用油、遊離脂肪酸、パーム油副産物もしくはプロセス副流、汚泥、植物油加工からの副流、またはそれらの組み合わせのような、リサイクル可能な廃棄物および/もしくはリサイクル可能な残渣から誘導されるか、または得られる。
【実施例】
【0120】
以下の実施例は、クレームされた発明をより良く説明するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。特定の材料が言及されている限りにおいて、それは単に説明のためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0121】
異性化度の異なる4種類の再生可能な炭化水素フィードサンプル(P1、P2、P3、P4)が、動物性脂肪および植物性油に由来する再生可能な酸素含有炭化水素の水素化脱酸素反応および異性化反応を含む接触水素化処理によって提供された。イソパラフィン含有量の異なる再生可能な炭化水素を供給するために、水素化処理条件を変化させた。水素化処理生成物は、ガス状化合物(NTP)および水蒸気を除去するために脱気され、そして液体の水素化処理生成物は、表2に報告されている沸点範囲(初留点(IBP)および最終沸点(FBP))を有する蒸留カットを収集する蒸留によって分留された。P1~P4のそれぞれの生物起源炭素含有量は、EN 16640(2017)にしたがって測定されて、それぞれの炭化水素フィードサンプル中の炭素の総計の重量に基づいて、約100wt%であった。
【0122】
炭化水素フィードサンプルの特性
P1、P2、P3、およびP4の曇点および密度を表1に、P1、P2、P3、P4の蒸留特性を表2に示す。
【0123】
【0124】
【0125】
異性化度の測定
炭化水素フィードサンプル、すなわちP1、P2、P3、P4をガスクロマトグラフィー(GC)で分析した。サンプルは、前処理なしで、そのまま分析された。この方法は、C2~C36の炭化水素に適している。n-パラフィンならびにイソパラフィンのグループ(C1-、C2-、C3-置換および≧C3-置換)は、質量分析とC2~C36の範囲の既知のn-パラフィンの混合物とを使用して同定された。クロマトグラムは、n-パラフィンのピーク直後のクロマトグラムのベースラインにグループを積分することにより、パラフィンの3つのグループ(C1-、C2-/C3-、および≧C3-置換イソパラフィン/n-パラフィン)に分割された。n-パラフィンは、n-アルカンのピークを谷から谷へ接線方向に積分することで≧C3-置換イソパラフィンから分離し、そして化合物または化合物グループは、すべての炭化水素に対する相対応答係数1.0を用いて規格化することで定量した。個々の化合物の定量限界は0.01wt%であった。GCの設定を表3に示す。
【0126】
【0127】
n-パラフィンのwt%量および(総計の)i-パラフィンのwt%量が、分析された炭化水素フィードサンプルの総計の重量に基づいて、P1~P4のそれぞれについて測定され、そして表4に示されている。表4は、試料中のパラフィン(n-パラフィンおよびi-パラフィン)の炭素鎖長も示している。
【0128】
【0129】
表4から分かるように、炭化水素フィードサンプルP1~P4は、高パラフィン系であり、対応する炭化水素フィードサンプルの総計の重量に基づいて、約8~約95重量%のイソパラフィンを含有している。炭化水素フィードサンプルは、対応する炭化水素フィードサンプルの総計の重量に基づいて、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素を以下のとおり含有していた:P1は約100wt%、P2は約99wt%、P3は約98wt%、およびP4は約100wt%;ならびにC14~C18炭化水素は以下のとおりである:P1は約96wt%、P2は約95wt%、P3は約92wt%、P4は約95wt%。
【0130】
炭化水素フィードの固定床接触分解
実験は、約200ml体積の反応管を備える連続流固定床マイクロリアクターで行った。マイクロリアクターのセットアップは、フィードタンク、空気、He、N2およびH2のためのインレット、リアクター、生成物タンク、その後のガストラップを備えていた。反応管は、最高使用温度を500℃に設定したオーブンで加熱された。ガス作動ポンプが、2つのフィードタンクからの炭化水素フィードを吸い出すために使用された。
【0131】
すべての試験ランにおいて、反応器には、良好な熱バランスと反応器内の反応物(接触分解フィードストック)のトリクルフローを確保するために、充填材として不活性SiC 30が充填され、触媒は反応器のほぼ中央にある2つのSiC 30床の間に配置された(これにより、固定触媒床を形成する)。反応器のほぼ中央に位置するこの領域はほぼ等温であり、触媒床全体に均一な温度を提供する。各接触分解実験には、30gの触媒を使用した。反応器内の炭化水素フィードサンプルの均一な分布を確保するため、反応器の上部にガラスビーズを使用した。反応器の両端と各層の間にはグラスウールを使用し、充填が所定の位置に留まることを確実にした。
【0132】
炭化水素フィードサンプルP1~P4をそれぞれ接触分解フィードストックとして使用した固定床接触分解試験ランのあいだの条件を表5に示す。表5中の温度は反応温度であり、WHSVは炭化水素フィード/触媒質量のマスフローとして表される。
【0133】
【0134】
結果-炭化水素フィードの固定床接触分解
炭化水素供給試料P1~P4をそれぞれ接触分解フィードストックとして使用した固定床接触分解試験ランの結果を表6~9に示す。
【0135】
【0136】
表6からわかるように、本接触分解プロセスは、様々な異なる分解生成物留分を提供する。炭化水素フィードサンプルは、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素を約100wt%含んでいたため、簡単のため、ここではC10~C20炭化水素を未変換炭化水素フィードとみなす。この未変換留分の量は、選択された試験ラン条件と触媒を用いると比較的多かった。しかし、C10~C20炭化水素の留分またはその一部を接触分解に戻してリサイクルすることにより、変換率は増大され得る。未変換留分は、新鮮な炭化水素フィードサンプルと比較して増大されたイソパラフィン含有量をもち得る。プロピレン収率は、接触分解フィードストックのイソパラフィン含有量の増加に伴って増加するため、未変換留分をリサイクルすることは、プロピレン収率をさらに増加させることができる。さらに、(対応する新鮮なフィードと比較して)増大されたイソパラフィン含有量をもつ未変換留分は、航空および/またはディーゼル燃料組成物の成分として使用可能である。該増加されたイソパラフィン含有量は、該航空および/またはディーゼル燃料組成物の良好な低温特性に寄与するであろう。
【0137】
【0138】
表7からわかるように、本接触分解プロセスは、良好な規格化された変換収率で多種多様な分解生成物留分を提供する。特にプロピレンは非常に高い規格化された変換収率で得られ得る。表7から明らかなように、本発明の接触分解プロセスはまた、非常に高い規格化された変換収率でC5~C9オレフィンも提供し、これらは、例えばメタセシス反応のため、ポリマー中のコモノマーとして、および潤滑油添加剤、界面活性剤、農薬、コーティング剤または腐食防止剤を製造する際などに使用可能である。得られたC5~C9パラフィンは、単独で、またはC5~C9オレフィンと組み合わされて、例えば、芳香族含有量がごくわずかであるなど、それらの低い不純物レベルに起因して、ガソリンおよび/または工業用もしくは家庭用の化学製品、例えば溶剤、シンナー、シミ取り剤中などのための安全な成分として使用可能である。本接触分解プロセスはまた、非常に高い規格化された変換収率でC4オレフィンを提供し、これらは、例えばアルキレートの製造のため、および、例えばポリマーの(コ)モノマーとしての使用のためなどに個々のC4オレフィンに分離するためなどに使用可能である。さらに表7は、メタン(強力な温室効果ガス)および芳香族(例えば溶剤中などでの使用に支障をきたす可能性がある)の生成量が無視できるほどの量でしかないことを示している。メタンの生成が無視できる程度であることは、本発明の接触分解プロセスの環境持続性に寄与する。
【0139】
【0140】
表8からわかるように、本発明の接触分解プロセスにより、総計のC3に対して高いプロピレンモル比、少なくとも0.7のモル比を有するC3留分が得られる。これらのC3留分は、精製グレード純度の高品質プロピレン組成物である。例えば約90~95wt%プロピレンを含有する化学グレード純度のプロピレン組成物、または約99wt%以上のプロピレンを含有するポリマーグレード純度のプロピレン組成物は、追加の精製工程を通じてこれらの高品質精製グレードC3留分から得ることができる。総計のC3に対するプロピレンのモル比が高いため、化学グレードまたはポリマーグレードのプロピレン組成物を得るためのこれらのC3留分の追加の精製工程は、(総計のC3に対するプロピレンのモル比がより低い留分と比較して)より安価な装置およびより少ないエネルギーを必要とする。表8からもわかるように、本発明の接触分解プロセスにより、総計のC4に対するC4オレフィンのモル比が少なくとも0.8と高いC4留分が得られる。C4オレフィンは、総計のC4に対するC4オレフィンの高いモル比に起因して、(C4オレフィンの総計のC4に対するモル比がより低い留分と比較して)より安価な装置およびより少ないエネルギーを必要とする追加の精製工程で、これらのC4留分から得ることができる。エチレンに対するプロピレンのモル比が非常に高いことは、本プロセスを使用した場合、(プロピレンおよび/またはC4オレフィンと比較して)価値の低いエチレンを形成するために失われる炭化水素フィードの量がわずかであることを示している。
【0141】
【0142】
表9からわかるように、本発明の接触分解プロセスは、非常に高い規格化された変換収率でC3~C4(総計)留分およびプロピレン~C4オレフィン留分を提供する。C4オレフィン、またはプロピレンとC4オレフィンとの両方を含む留分は、そのまま、または精製後に、例えばイソブテンと反応させて高オクタン価ガソリン成分であるアルキレートを製造するためなどに使用することができる。表9からわかるように、本発明の接触分解プロセスは、非常に高い規格化された変換収率を有するC5~C9(総計)留分を提供し、これらの留分は、例えばその無視できる芳香族含量により、ガソリン用および/または溶剤、シンナーおよびシミ取り剤などの工業用または家庭用の化学製品用の安全な成分として使用可能である。総計のC2の規格化された変換収率が非常に低いことは、本製法を使用した場合、(プロピレンおよび/またはC4オレフィンと比較して)価値の低いエタンおよびエチレンを形成するために、炭化水素フィードのごく少量が失われることを示している。
【0143】
固定床接触分解-再生接触分解フィードストック
炭化水素フィードの固定床接触分解で説明されたものと同じ固定床接触分解のセットアップが使用された。ここでも触媒材料は、炭化水素フィードの固定床接触分解で記載されるように調製されたZSM-5をであった。
【0144】
P1は、以下の条件下で一旦変換された:反応温度400℃、圧力0.1MPa、WHSV(接触分解フィードストックのマスフロー/触媒質量)0.6(時間当たりのg接触分解フィードストック/g触媒)。液体分解生成物は回収され、次のラン(条件:条件:T=400℃、P 0.1MPa、およびWHSV 0.6(時間当たりのg接触分解フィードストック/g触媒)におけるフィードとして使用された。
【0145】
プロピレンの収率は、一回反応した(ストリーム上の所定の時間での)生成物において2.1wt%であり、および、プロピレンの収率は次のランの生成物において9.4wt%であった。これは、分解生成物の少なくとも一部を接触分解フィードストックにリサイクルすることにより、分解生成物中のプロピレンの割合を増加させることができることを示している。
【0146】
SAPO-34を用いた炭化水素フィードの固定床接触分解
炭化水素フィードの固定床接触分解で説明したものと同じ固定床接触分解のセットアップが使用された。触媒は、炭化水素フィードの固定床接触分解で説明されたように調製されたが、今回は触媒材料としてSAPO-34が使用された。各実験で30gの触媒を使用した。SAPO-34はリン酸シリコアルミナマイクロポーラス材料であり、細孔径約4Åの三次元8員環分子ふるいであり、および中程度の強酸度を有する。
【0147】
P1およびP2は、以下の条件で1回変換された:反応温度400℃、圧力0.1MPa、表9-1に示されたフィード量(g/h)。追加試験として、P1は、以下の条件で1回変換された:反応温度400℃、圧力0.1MPa、WHSV0.6(時間当たりのg接触分解フィードストック/g触媒)、その後、液体分解生成物が回収され、そして、続くラン(T=400℃、p 0.1MPa、WHSV 0.6(時間当たりのg接触分解フィードストック/g触媒))において接触分解フィードストックとして使用された。結果を表9-1に示す。
【0148】
【0149】
表9-1からわかるように、SAPO-34を使用した本発明の接触分解プロセスでは、総計のC3に対するプロピレンのモル比が少なくとも0.8と高いC3留分、および、総計のC4に対するC4オレフィンのモル比が少なくとも0.7と高いC4留分が得られる。SAPO-34では、ZSM-5と比較してエチレンに対するプロピレンのモル比がいくぶん低くなるが、エチレン生成よりもプロピレン生成を強く支持している。
【0150】
さらに、SAPO-34の高温での安定性を示すために、SAPO-34の熱試験が実施された。SAPO-34の熱安定性試験は、触媒を空気中で500℃および700℃の温度で12時間処理することによって行われた。細孔容積またはBET表面積における本質的な変化は観察されなかった。
【0151】
比較データ
比較データとして、国際公開第2009/130392号の表2の結果を以下の表10に示す。実験は、表10に示す条件下で固定床接触分解を使用して実施された。表10の実験で使用された触媒のほとんどはゼオライトを含んでいた。表10は、接触分解フィードストックとして非異性化HDO処理動物油脂(実験1、2、7、および9)または水素化パーム油(実験3および4)、または純粋なn-C16(実験6)を使用した国際公開第2009/130392号の実験1~4、6、7、および9の結果を再現している。表10の実験に関する実験およびその他の詳細は、国際公開第2009/130392号の8~18ページに記載されている。
【0152】
【0153】
表10の比較データから分かるように、プロピレンおよびC4オレフィンの収率は、本開示による実施例によって得られる収率と比較してはるかに低い。また、総計のC3に対するプロピレンの比率、および総計のC4に対するC4オレフィンの比率は、本開示による実施例によって得られるものに比べてはるかに低い。その結果、例えば、精製グレードの純度さえも有するプロピレン組成物は、C3留分中のプロパンの量を減少させる追加の努力なしには達成され得ず、および、任意の所望のより高純度グレードのプロパン組成物を得るために必要な精製処理は、(本開示の方法で得られるC3留分と比較して)より高価な装置およびより高いエネルギー消費を必要とする。さらに、多量の芳香族が形成されるため、芳香族含有分解生成物留分の使用が制限される。例えば、芳香族含有量の高い分解生成物留分は、芳香族が接触分解反応におけるコークス形成を増加させ、および、芳香族はプロピレンに変換されないため、接触分解フィードストックにリサイクルするためには望ましくない。芳香族含有量の高い分解生成物留分はまた、溶剤、シンナー、およびシミ取り剤など、人体への安全性が重要視される工業用または家庭用の化学製品にも好ましくない。
【0154】
様々な実施形態が提示されている。本明細書において、comprise、include、およびcontainという語は、それぞれ、排他性を意図しないオープンエンドな表現として使用されていることを理解されたい。
【0155】
前述の説明は、ある実施形態および実施形態の非限定的な例によって、本発明を実施するために本発明者らによって現在考えられている最良の態様の完全かつ有益な説明を提供している。しかしながら、本発明は、上記に示した実施形態の詳細に限定されるものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく、同等の手段を用いた他の実施形態、または異なる実施形態の組み合わせで実施できることは、当業者にとって明らかである。
【0156】
さらに、前述の開示された例示的な実施形態の特徴のいくつかは、他の特徴の対応する使用なしに有利に使用され得る。このように、上記の説明は、本発明の原理を単に例示するものであって、それを限定するものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン、C4オレフィン、またはその両方を含む分解生成物留分を製造するための方法であって、以下の工程:
炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも5wt%のイソパラフィンを含み、炭化水素フィード中のイソパラフィンおよびn-パラフィンのwt%量の合計は少なくとも80wt%である炭化水素フィード
を含む接触分解フィードストックを提供する工程;
分解生成物を得るために、接触分解反応器中、固体触媒の存在下、300℃~450℃の範囲から選択される温度で、接触分解フィードストックを接触分解に付す工程;および
分解生成物から、少なくともプロピレン、C4オレフィン、またはその両方を含む留分を分離する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記接触分解が、追加の水素分子(H
2)を接触分解反応器に供給することなく行われる、および/または、前記接触分解が、追加のストリームまたは追加の水(H
2O)を接触分解反応器に供給することなく行われる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記炭化水素フィードが、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも8wt%または少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも15wt%、さらに好ましくは少なくとも20wt%、より好ましくは少なくとも30wt%、さらにより好ましくは少なくとも40wt%のイソパラフィンを含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素フィードが、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも60wt%、さらに好ましくは少なくとも70wt%、より好ましくは少なくとも80wt%、およびさらにより好ましくは少なくとも90wt%の、少なくともC10の炭素数を有する炭化水素を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化水素フィードが、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、多くとも5wt%、好ましくは多くとも3wt%、より好ましくは多くとも2wt%、さらにより好ましくは多くとも1wt%の、少なくともC22の炭素数を有する炭化水素を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素フィード中のイソパラフィンおよびn-パラフィンのwt%量の合計が、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも85wt%、好ましくは少なくとも90wt%、より好ましくは少なくとも95wt%、およびさらにより好ましくは少なくとも99wt%である請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素フィードが、炭化水素フィードの総計の重量に基づいて、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも95wt%、より好ましくは約100wt%の生物起源炭素含有量を有する再生可能炭化水素フィードである請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記接触分解が、0.01MPa~5.0MPa、好ましくは0.01MPa~2MPa、さらに好ましくは0.01MPa~1MPa、より好ましくは0.015MPa~1Pa、およびさらにより好ましくは0.2MPa~1MPaの範囲から選択される圧力で行われる請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記接触分解が、350℃~450℃の範囲から選択される温度
、または370℃~450℃、好ましくは400℃~450℃の範囲から選択される温度、または350℃~430℃、好ましくは350℃~400℃、より好ましくは360℃~400℃の範囲から選択される温度で行われる請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記接触分解の重量時空間速度(WHSV、接触分解フィードストックの質量流量/触媒質量)が、0.01~10、好ましくは0.1~5時間当たりのg接触分解フィードストック/g触媒の範囲から選択される請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
温度、圧力およびWHSVののうちの1または複数、好ましくは少なくとも温度およびWHSVが、接触分解における接触分解フィードストックの変換率が0.20~0.85、好ましくは0.20~0.80の範囲内になるように制御される請求項1~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記固体触媒が、4~6Åの範囲内の微細孔サイズを有するゼオライトまたはゼオライトタイプの材料を含み、および、前記固体触媒が、好ましくは中程度の強酸性または強酸度性を有する請求項1~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ゼオライトまたはゼオライトタイプの材料が、ZSM-5、MCM-22、SAPO-34および/またはβゼオライト、好ましくはZSM-5、MCM-22および/またはSAPO-34を含む請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の方法であって、前記炭化水素フィードが、以下の工程:
再生可能な酸素含有炭化水素を水素化処理する工程であって、前記再生可能な酸素含有炭化水素が、好ましくは、脂肪酸、脂肪酸エステル、樹脂酸、樹脂酸エステル、ステロール、脂肪アルコール、酸素化テルペン、および他の再生可能な有機酸、ケトン、アルコール、および無水物のうちの1または複数を含み、前記水素化処理が、イソパラフィンを含む水素化処理生成物を得るための脱酸素反応および異性化反応を含む工程、ならびに
蒸気低減水素化処理生成物を得るために前記水素化処理生成物から蒸気相を除去する工程、および任意には、前記蒸気低減水素化処理生成物を前記炭化水素フィードとして提供する工程
から得られる方法。
【請求項15】
前記接触分解フィードストックが、前記分解生成物から分離されたリサイクル留分を含む請求項1~
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記分解生成物から、少なくともC5、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分を分離する工程を含む請求項1~
15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
少なくともC5の炭素数、好ましくは少なくともC10の炭素数を有する炭化水素の留分の少なくとも一部を、前記接触分解フィードストックへとリサイクルする工程を含む請求項
16記載の方法。
【請求項18】
前記接触分解フィードストック中の前記炭化水素フィードおよび前記リサイクルされた留分のwt%量の合計が、接触分解フィードストックの総計の重量に基づいて、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも95wt%、より好ましくは少なくとも99wt%である請求項
15または
17記載の方法。
【請求項19】
精製プロピレン組成物を得るために、プロピレンを含む留分、または、プロピレンおよびC4オレフィンの両方を含む留分を精製する工程を含む請求項1~
18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
分留組成物として1-ブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、ブタジエン、イソブテンのうちの1または複数を得るために、C4オレフィン、または、プロピレンおよびC4オレフィンの両方を含む留分を分留する工程を含む請求項1~
19のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】