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特表2023-548523ポリ(グリセロールセバケート)ウレタン繊維、それから形成された布地および繊維の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ポリ(グリセロールセバケート)ウレタン繊維、それから形成された布地および繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/16 20060101AFI20231110BHJP
   A61L 17/10 20060101ALI20231110BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20231110BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
D01F8/16
A61L17/10
C08G18/42
C08G18/73
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526859
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 US2021057329
(87)【国際公開番号】W WO2022094261
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/108,491
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516334709
【氏名又は名称】ザ・セカント・グループ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】タスカン,メブリュト
(72)【発明者】
【氏名】テケ,セングル
(72)【発明者】
【氏名】クランブリング,トッド
(72)【発明者】
【氏名】スムート、カリッサ
(72)【発明者】
【氏名】リード,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ギン,ブライアン
【テーマコード(参考)】
4C081
4J034
4L041
【Fターム(参考)】
4C081AC02
4C081BA16
4C081CA051
4C081CA211
4C081CA231
4C081CD011
4C081CD121
4C081DA04
4C081EA03
4C081EA05
4J034BA01
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB05
4J034DB07
4J034DC50
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF20
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034JA06
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034LB06
4J034MA22
4J034MA24
4J034MA26
4J034QB19
4J034QC10
4J034RA02
4J034RA09
4L041AA02
4L041BA02
4L041BA21
4L041CA15
4L041CA17
4L041CA33
4L041EE20
(57)【要約】
製造方法は、液状樹脂を液状の反応性架橋性組成物を合わせて、反応性コア組成物を形成するステップを含む。本製造はまた、反応性コア組成物を、溶媒中の担体ポリマーを含むシース組成物と接触させるステップを含む。製造方法は、反応性コア組成物をシース組成物と湿式紡糸して、液状樹脂および液状架橋性組成物の反応生成物からなる少なくとも1種の連続繊維を含むコアとコアを囲むシースとを含むシース-コア繊維を形成するステップをさらに含む。架橋性組成物は、湿式紡糸の間に樹脂と反応する。シースは、担体ポリマーを含む。PGSUを含む連続ポリ(グリセロールセバケート)ウレタン(PGSU)繊維および連続PGSU繊維形成システムも開示される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造方法であって、
液状樹脂を液状反応性架橋性組成物と合わせて、反応性コア組成物を形成するステップと、
前記反応性コア組成物を、溶媒中で担体ポリマーを含むシース組成物と接触させるステップと、
前記反応性コア組成物を前記シース組成物と共に湿式紡糸して、前記液状樹脂および液状架橋性組成物の反応生成物の少なくとも1種の連続繊維を含むコアと、および前記コアを囲むシースとを含むシース-コア繊維を形成するステップであり、前記架橋性組成物が、前記湿式紡糸の間に前記樹脂と反応し、前記シースが前記担体ポリマーを含む、ステップと
を含む、製造方法。
【請求項2】
少なくとも1つの凝固浴中で前記シース-コア繊維をドラフトするステップと、
前記少なくとも1つの凝固浴から前記シース-コア繊維を延伸するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記シース-コア繊維を乾燥させて、所定の水分含有量を有する糸を形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記シース-コア繊維から前記担体ポリマーを除去するステップをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記担体ポリマーが、アルギネート、フィブリン、コラーゲン、ヒアルロン酸、多糖、炭水化物、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンおよびポリ(乳酸-co-グリコール酸)からなる群から選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記反応性コア組成物が、少なくとも1種の触媒をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記液状樹脂が、PGS樹脂を含む液状ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)組成物であり、前記液状反応性架橋性組成物が、少なくとも1種のイソシアネートを含む液体イソシアネート組成物であり、前記少なくとも1種の連続繊維が、少なくとも1種の連続ポリ(グリセロールセバケート)ウレタン(PGSU)繊維であり、前記イソシアネートが、前記湿式紡糸中に、前記PGS樹脂と反応して、PGSUを形成する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
少なくとも1つの凝固浴中で前記シース-コア繊維をドラフトするステップと、
前記少なくとも1つの凝固浴から前記シース-コア繊維を延伸するステップと
をさらに含み、
前記少なくとも1つの凝固浴が、水中に二価陽イオンを含む塩を約2重量%~約20重量%含む第1の凝固溶液を含有する第1の凝固浴を含む、
請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの凝固浴が、蒸留水中に前記二価陽イオンを含む前記塩を約20重量%含む第2の凝固溶液を含有する第2の凝固浴をさらに含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の連続PGSU繊維が、複数の連続PGSU繊維を含み、前記方法が、前記複数の連続PGSU繊維を混合して、マルチフィラメント丸糸を形成するステップをさらに含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
前記シース-コア繊維を乾燥させて、所定の水分含有量を有する糸を形成するステップをさらに含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項12】
前記シース-コア繊維から前記担体ポリマーを除去するステップと、前記シース-コア繊維から前記担体ポリマーを除去するステップの後に前記少なくとも1種の連続PGSU繊維を硬化させるステップとをさらに含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項13】
前記担体ポリマーが、アルギネートであり、前記シース組成物が、アルギネート溶液であって、前記アルギネート溶液の1重量%~7重量%で水中に前記アルギネートを含む前記アルギネート溶液である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項14】
前記液状PGS組成物が、有機溶媒をさらに含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項15】
前記液体イソシアネート組成物が、ヘキサメチレンジイソシアネートを含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項16】
前記コア組成物が、2-エチルヘキサン酸スズ(II)を含む少なくとも1種の触媒をさらに含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項17】
製造方法であって、
PGS樹脂を含む液状ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)組成物を、少なくとも1種のイソシアネートを含む液体イソシアネート組成物と合わせて、コア組成物を形成するステップと、
前記コア組成物およびアルギネート溶液をスピナレットからフィードするステップであり、前記アルギネート溶液が、前記アルギネート溶液の1重量%~7重量%で水中にアルギネートを含む、ステップと、
前記コア組成物を前記アルギネート溶液と共に湿式紡糸して、少なくとも1種の連続ポリ(グリセロールセバケート)ウレタン(PGSU)繊維を含むコアと前記コアを囲むシースとを含むシース-コア繊維を形成するステップであり、前記シースが、前記アルギネートを含み、前記湿式紡糸が、
少なくとも1つの凝固浴中で前記シース-コア繊維をドラフトするステップと、
前記少なくとも1つの凝固浴から前記シース-コア繊維を延伸するステップと
をさらに含む、ステップと
を含み、
前記少なくとも1つの凝固浴が、水中に約2重量%~約20重量%の塩化カルシウムを含む第1の凝固溶液を含有する第1の凝固浴を含み、
前記イソシアネートが、前記湿式紡糸するステップの間に、前記PGS樹脂と反応して、PGSUを形成する、
製造方法。
【請求項18】
PGSUを含む少なくとも1種の連続ポリ(グリセロールセバケート)ウレタン(PGSU)繊維を含む、物品。
【請求項19】
前記少なくとも1種の連続PGSU繊維の周囲に担体ポリマーを含むシースをさらに含む、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記担体ポリマーがアルギネートである、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
前記PGSUに搭載された少なくとも1種の薬物をさらに含む、請求項18に記載の物品。
【請求項22】
前記PGSUに搭載された少なくとも1種のポロゲンをさらに含む、請求項18に記載の物品。
【請求項23】
糸である、請求項18に記載の物品。
【請求項24】
布地である、請求項18に記載の物品。
【請求項25】
前記PGSUからなる、請求項18に記載の物品。
【請求項26】
連続ポリ(グリセロールセバケート)ウレタン(PGSU)繊維形成システムであって、
PGS樹脂を含むポリ(グリセロールセバケート)(PGS)溶液を保持する第1のフィード槽と、
少なくとも1種のイソシアネートを含む液体イソシアネート組成物を保持する、第2のフィード槽と、
担体ポリマーを含むシース溶液を保持する、第3のフィード槽と、
前記第1のフィード槽から前記液状PGS組成物を受け取り、ミキサーに前記液状PGS組成物をポンプ輸送する、第1のポンプと、
前記第2のフィード槽から前記液体イソシアネート組成物を受け取り、前記ミキサーに前記液体イソシアネート組成物をポンプ輸送する、第2のポンプと、
前記第3のフィード槽から前記シース溶液を受け取り、スピナレットに前記シース溶液をポンプ輸送する、第3のポンプと、
前記液状PGS組成物と前記液体イソシアネート組成物とを混合して、コア組成物を形成し、前記スピナレットに前記コア組成物をフィードする、前記ミキサーと、
前記コア組成物および前記シース溶液を受け取り、これらを移送して、湿式紡糸するステップによって、前記シース溶液を含むシース、および前記コア組成物に由来する連続PGSU繊維を含むコアを含むシース-コア繊維を形成する、前記スピナレットであり、前記少なくとも1種のイソシアネートと前記コア組成物中の前記PGS樹脂が、前記湿式紡糸するステップの間に反応して、前記連続PGSU繊維を形成する、前記スピナレットと、
第1の固化溶液を保持して、前記スピナレットから前記シース-コア繊維を受け取る、第1の凝固浴と
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれている、2020年11月2日に出願の、米国出願第63/108,491号の利益および優先権を主張する。
【0002】
[0002]本開示は、概して、繊維を対象とする。より詳細には、本開示は、ポリ(グリセロールセバケート)ウレタン(PGSU)を含有する繊維、このような繊維から形成される布地、ならびに繊維製造のシステムおよび方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
[0003]シース-コア繊維紡糸法による特定の用途に関するある特定のポリマーブレンドの繊維生成は、公知であるが、これらの方法のすべてが、溶液をベースとする固化に基づく。より詳細には、2種の異なるポリマーを使用する湿式紡糸コアシースの生成が公知である。
【0004】
[0004]例えば、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)のコア繊維は、アルギン酸ナトリウム層によりコーティングされている(例えば、繊維が、芯鞘スピナレットを用いる湿式紡糸技法で作製されており、このコア-シェル構造繊維を使用して、異なる段階で2種の薬物を送達するために使用されている、Wanawananonら、「Fabrication of novel core-shell PLGA and alginate fiber for dual drug delivery system」、Polymers Advanced Technologies、27巻、1014~1019頁(2016年)を参照されたい)。
【0005】
[0005]慣用的に、PGSUは、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)樹脂ポリオールとイソシアネートとを反応させて、ウレタン結合を形成することによって生成される。PGSは、グリセロールモノマーとセバシン酸モノマーとのポリエステルコポリマーである。イソシアネートが、ジイソシアネートである場合、PGSは、ジイソシアネートによって架橋されている。この方法を完了すると、ゴム特徴を有する固体PGSUが生成される。
【0006】
[0006]PGS繊維生成が、2019年5月2日に公開の米国特許出願公開第2019/0127887号に記載されているが、PGSU繊維生成は、当技術分野で公知ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]他のポリマーよりも長期間作用型埋め込み装置に対して、特に、医薬品産業において関心が持たれている、高搭載量型長期間埋め込み体に対して多数の利点をもたらす、生分解性ポリマーの繊維構造体が必要とされている。繊維形態であるため、容易な埋め込み/除去、組織中での固定化能、および機構安定性が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]樹脂としてPGS、および連続繊維ポリマーとしてPGSUに関して、本明細書において主に議論されているが、本発明の主題は、室温および室内圧力でも反応する、任意の硬化性化学物質の連続繊維を作製するため、他の硬化性ポリマーに関して、一層幅広く適用され得ることが理解されよう。これは、例えば、任意のポリオールモノマーおよび二酸モノマーを反応させることによって形成されるものを含めた、ウレタン-架橋ポリエステルなどの、他のウレタン-架橋コポリマーを含むことができる。
【0009】
[0009]例示的な実施形態では、製造方法は、液状樹脂を液状の反応性架橋性組成物と合わせて、反応性コア組成物を形成するステップを含む。製造はまた、反応性コア組成物を、溶媒中で担体ポリマーを含むシース組成物と接触させるステップを含む。製造方法は、反応性コア組成物をシース組成物と湿式紡糸して、液状樹脂および液状架橋性組成物の反応生成物からなる少なくとも1種の連続繊維を含むコアとコアを囲むシースとを含むシース-コア繊維を形成するステップをさらに含む。架橋性組成物は、湿式紡糸の間に樹脂と反応する。シースは、担体ポリマーを含む。
【0010】
[0010]別の例示的な実施形態では、製造方法は、PGS樹脂を含む液状ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)組成物を、少なくとも1種のイソシアネートを含む液体イソシアネート組成物と合わせて、コア組成物を形成するステップを含む。本製造方法はまた、スピナレットを介して、コア組成物およびアルギネート溶液をフィードするステップを含む。アルギネート溶液は、1重量%~7重量%のアルギネート溶液となる水中アルギネートを含む。本製造方法は、コア組成物をアルギネート溶液と共に湿式紡糸して、少なくとも1種の連続ポリ(グリセロールセバケート)ウレタン(PGSU)繊維を含むコアとコアを囲むシースとを含むシース-コア繊維を形成するステップをさらに含む。シースは、アルギネートを含む。湿式紡糸は、少なくとも1つの凝固浴でシース-コア繊維をドラフトする(draft)ステップと、少なくとも1つの凝固浴からシース-コア繊維を延伸する(draw)ステップとを含む。少なくとも1つの凝固浴は、水中に約2重量%~約20重量%の塩化カルシウムを含む第1の凝固溶液を含有する第1の凝固浴を含む。イソシアネートは、PGS樹脂と反応して、湿式紡糸の間にPGSUを形成する。
【0011】
[0011]別の例示的な実施形態では、組成物は、PGSUを含む、少なくとも1種の連続PGSU繊維を含む。
【0012】
[0012]さらに別の例示的な実施形態では、連続PGSU繊維を形成するシステムは、第1のフィード槽、第2のフィード槽、第3のフィード槽、第1のポンプ、第2のポンプ、第3のポンプ、ミキサー、スピナレット、および第1の凝固浴を含む。第1のフィード槽は、PGS樹脂を含む液状PGS組成物を保持する。第2のフィード槽は、少なくとも1種のイソシアネートを含む、液体イソシアネート組成物を保持する。第3のフィード槽は、担体ポリマーを含むシース溶液を保持する。第1のポンプは、第1のフィード槽から液状PGS組成物を受け取り、ミキサーに液状PGS組成物をポンプ輸送する。第2のポンプは、第2のフィード槽から液体イソシアネート組成物を受け取り、ミキサーに液体イソシアネート組成物をポンプ輸送する。第3のポンプは、第3のフィード槽からシース溶液を受け取り、スピナレットにシース溶液をポンプ輸送する。ミキサーは、液状PGS組成物と液体イソシアネート組成物とを混合して、コア組成物を形成し、スピナレットにコア組成物をフィードする。スピナレットは、コア組成物およびシース溶液を受け取り、これらを移送して、シース溶液を含むシースおよびコア組成物に由来する連続PGSU繊維を含むコアを含むシース-コア繊維を湿式紡糸によって形成する。コア組成物中のイソシアネートおよびPGS樹脂は、湿式紡糸の間に反応して、連続PGSU繊維を形成する。第1の凝固浴は、第1の固化溶液を保持して、スピナレットからシース-コア繊維を受け取る。
【0013】
[0013]この要約は、本開示によってさらに記述されている単純形態で、概念の選択がもたらされるよう意図されている。この要約は、特許請求されている主題の重要特徴または必須特徴を特定することを意図するものでもなく、特許請求されている主題の範囲を決定する一助になることを意図するわけでもない。本発明の様々な特徴および利点は、例として、本発明の原理を例示している、添付の図面と関連させた、以下の一層の詳細説明から明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】[0014]本開示の実施形態における、連続PGSU/担体二成分繊維形成システムを示す概略図である。
図2】[0015]本開示の実施形態における、シース-コア構造体の形成を示す概略図である。
図3】[0016]本開示の実施形態における、連続PGSU繊維形成システムを示す概略図である。
図4】[0017]本開示の実施形態における、コア-インナーシース-アウターシース組成物の形成を示す概略図である。
図5】[0018]第1の実施例において形成した、PGSU繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
図6】[0019]第2の実施例において形成した、PGSU繊維のSEM画像を示す図である。
図7】[0020]第3の実施例において形成した、PGSU繊維のSEM画像を示す図である。
図8】[0021]第4の実施例において形成した、PGSU繊維のSEM画像を示す図である。
図9】[0022]第5の実施例において、PGSU-アルギネートコア-シースモノフィラメント繊維から形成した縫合糸の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0023]可能な場合、同じ参照番号は、同じ部分を表すよう図面全体に使用するようにしている。
【0016】
[0024]製造方法、連続PGSU繊維、およびこのような連続繊維の糸、布地および繊維製品が提供される。
【0017】
[0025]本開示の実施形態は、例えば、本明細書において開示されている特徴の1つまたは複数を含まない概念と比較すると、連続PGSU繊維を提供する、連続PGSU繊維を含む糸、布地または繊維製品を提供する、連続繊維から薬物の持続制御放出を実現する、多孔質連続PGSU繊維を提供する、シース-コア構造体のコア中で架橋化学反応を実現する、シース-コア配列における湿式紡糸の間に、化学反応によって連続ポリマー繊維を提供する、またはそれらの組合せを提供する。
【0018】
[0026]PGSUは、生体内分解性エラストマーであって、その2つの部位反応性化学の結果として製造が困難なポリマーである。PGSUは、触媒の非存在下または存在下で行うことができる、PGSUのグリセロールポリオールの遊離ヒドロキシ基とイソシアネート架橋剤とを一緒にすることによって生成される。
【0019】
[0027]PGSUを形成するPGS樹脂およびイソシアネート、反応剤の混合物は、室温条件下では、その構造を保持せず、非常に粘度が高い。PGSU混合物それ自体は、最初は、室温条件下、繊維を形成するには十分に強いものではない。PGSUが合成された後、PGSUの特性のために、溶解して、湿式紡糸を使用して再成形することはできない。このために、100%のPGSU繊維の生成は、非常に困難となる。
【0020】
[0028]例示的な実施形態では、製造方法は、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)樹脂およびイソシアネートから連続PGSU繊維を形成する。
【0021】
[0029]例示的な実施形態では、本製造方法は、湿式紡糸の湿式繊維生成法を含む。例示的な実施形態では、湿式紡糸技法は、室温での加工条件下で行われる。
【0022】
[0030]PGSUを形成するなどの、およびシリコーン製造において観察されるものに類似した2部位反応性化学物質は、反応時間および樹脂材料の形態と完全に固化した熱硬化性樹脂との間の遷移時間が長いために、湿式紡糸繊維の製造には、慣用的に使用されない。このタイプの化学物質は、通常、反応性射出成形と一対となり、成形体が形成される。驚くべきことに、本明細書において開示されている方法によって形成されるシース-コア構造体は、湿式繊維法において、固体のエラストマー熱硬化性繊維へのその架橋反応の間、シース組成物の水から流動性PGSUを保護する。
【0023】
[0031]驚くべきことに、連続PGSU繊維は、PGSおよびイソシアネート材料が、互いに化学的に反応している間に生成される。この方法は、PGSU繊維形成に関して、本明細書に記載されているが、他の繊維生成もまた、シース-コアシステムのコアにおいて化学反応が起こっている間、湿式繊維法によって可能となることがある。記載されている実施形態は、PGSU繊維の形成を主に含むが、他の適切な繊維も同様に、形成されてもよい。他の適切な繊維材料には、以下に限定されないが、アルギネート、キトサン、コラーゲン、フィブリン、ポリウレタン、シリコーン、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、熱応答性ポリマー、フォトポリマーおよび架橋ポリマーを含むことができる。
【0024】
[0032]例示的な実施形態では、連続PGSU/担体二成分繊維形成システム50は、図1に概略的に示されている、3つのフィード槽を含む。第1のフィード槽52は、PGS樹脂を含む液状PGS組成物を保持する。第2のフィード槽54は、イソシアネートを含む、液体イソシアネート組成物を保持する。第3のフィード槽56は、例えば、アルギネートなどの担体ポリマーを含むシース溶液を保持する。例示的な実施形態では、湿式紡糸プロセスは、溶媒中にポリマーペレットを溶解するステップを含む。ポリマーの粘度は、ポリマー/溶媒比を調節することによって、本方法の間、制御される。PGSU形成は、図1に概略的に示される通り、反応時間が短いので、PGSおよびイソシアネートは接触して、ミキサー58によるポンプ輸送後、かつ例えば芯鞘スピナレット16などのスピナレットに入る直前に一緒に混合される。一部の実施形態では、ミキサー58は、静的ミキサーである。一部の実施形態では、ミキサー58は、動的ミキサーである。したがって、連続PGS/担体二成分繊維形成システムはまた、3つのポンプ(図示せず)、すなわち、担体溶液用のポンプを1つ、液状PGS組成物用に1つ、および液体イソシアネート用に1つを含む。
【0025】
[0033]一部の実施形態では、PGS樹脂を有機溶媒に溶解して、液状PGS組成物を形成する。PGS用の適切な有機溶媒は、以下に限定されないが、アセトン、酢酸プロピルまたはそれらの組合せを含むことができる。一部の実施形態では、有機溶媒は、3:1~1:3、代替として、2:1~1:2、代替として、3:2~2:3、代替として、約1:1、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲の重量:重量比のアセトンと酢酸プロピルの混合物である。PGS組成物におけるPGS樹脂のための適切な濃度は、以下に限定されないが、PGSポリマーの粘度を調節するための1種または複数の溶媒を使用して、重量基準で、30%~60%、代替として、35%~55%、代替として、40%~50%の範囲、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲を含んでもよい。
【0026】
[0034]他の実施形態では、液状PGS組成物は、いかなる有機溶媒も含まない、無希釈PGS樹脂である。このような実施形態では、液状PGS組成物の温度は、液状PGS組成物の粘度を改変するよう調節されてもよい。代替としてまたはさらに、液状PGS組成物の粘度を調節するため、例えば、滑沢剤、乳化剤、増粘剤および/または離型剤などの添加物が、液状PGS組成物に配合されてもよい。例えば、アミノ酸、ポリエチレングリコール(PEG)類、または他の賦形剤などの他の粘度低下剤が、添加物として含まれてもよい。他の添加物は、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたは他の賦形剤などの加工助剤を含んでもよい。
【0027】
[0035]イソシアネートはまた、液状PGS組成物と一緒にする前に、液体イソシアネート組成物中で液体状態にある。一部の実施形態では、液体イソシアネート組成物は、無希釈イソシアネートである。他の実施形態では、液体イソシアネート組成物は、1種または複数の有機溶媒を含む。有機溶媒は、液状PGS組成物中のものと同じ溶媒であってもよいか、または有機溶媒は、液体イソシアネート組成物と液状PGS組成物との間の混和性を改善する別の溶媒であってもよい。
【0028】
[0036]一部の実施形態では、イソシアネートの相対量は、1:10~4:1の範囲、代替として、1:10~1:4の範囲、代替として、1:4~1:3の範囲、代替として、1:4~4:3の範囲、代替として、4:3~5:2の範囲、代替として、1:1~4:1の範囲、代替として、4:5~4:1の範囲、代替として、2:3~4:1の範囲、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲のイソシアネート対ヒドロキシル化学量論比をもたらすよう、PGSに関して選択される。例示的な実施形態では、イソシアネートは、ジイソシアネート架橋剤である。適切なイソシアネートは、以下に限定されないが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート、脂肪族-芳香族組合せイソシアネートおよび/またはブロックイソシアネートを含むことができる。一部の実施形態では、イソシアネートは、HDIであり、イソシアネートの量は、3:1~4:1、代替として、約7:2の範囲、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲のPGS:HDI質量比をもたらすよう選択される。
【0029】
[0037]一部の実施形態では、液状PGS組成物と液体イソシアネート組成物とを一緒にすることによって形成されるコア組成物は、触媒も含む。触媒は、液状PGS組成物または液体イソシアネート組成物中に含まれてもよい。適切な触媒は、以下に限定されないが、金属を含有する触媒、および/または、例えば、2-エチルヘキサン酸スズ(II)などの金属塩の触媒を含んでもよい。適切な触媒は、以下に限定されないが、スズ、白金、カフェイン、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、クエン酸、例えば、クエン酸カリウムなどの塩形態のクエン酸塩、酒石酸および/または例えば、酒石酸カリウムなどの塩形態の酒石酸塩を含有してもよいか、または含んでもよい。一部の実施形態では、触媒は、2-エチルヘキサン酸スズ(II)であり、触媒の量は、20:1~2000:1、代替として、約800:1の範囲、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲のPGS:スズ質量比をもたらすよう選択される。
【0030】
[0038]例示的な実施形態では、コア組成物は、公知の作業時間を有するプレポリマーであり、この作業時間の後に、ウレタン反応が起こり、粘度が構築し、PGSUは、最後に固体エラストマー熱硬化性樹脂に硬化する。この最初の硬化は好ましくは、指触乾燥点であり、ここでは、PGSUは、それ自体の形状を保持し、もはや液体状態にはない。反応を完了するためのさらなる硬化(残留イソシアネートが残らない)が、さらなる時間および/または熱を必要とする。しかし、PGS、イソシアネートおよび/または触媒濃度を様々にして、作業時間および硬化を完了するまでの時間を変化させることができる。
【0031】
[0039]シース溶液に好適な担体ポリマーは、以下に限定されないが、アルギネート、フィブリン、コラーゲン、ヒアルロン酸、糖、多糖、炭水化物、NIPAm、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリカプロラクトン(PCL)またはポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を含んでもよい。他の実施形態では、担体ポリマーは、例えば、特定の液体中で架橋するPGSをベースとするポリマーなどの、繊維の加工の時間枠内で同様に硬化するPGSをベースとするポリマー、特定の波長の放射線に曝露すると光架橋するPGSをベースとするポリマー、または特定の放射線への曝露時に熱架橋するPGSをベースとするポリマーである。
【0032】
[0040]担体ポリマーの選択は、どの担体溶媒が使用されてもよいかに影響を及ぼし、ある特定の他の加工パラメータもまた影響を受け得る。例示的な実施形態では、担体ポリマーがアルギネートである場合、担体溶媒は、水であってもよく、アルギネートの濃度は、シース組成物の重量基準で、約1%~約7%、代替として、約2%~約6%、代替として、約3%~約5%の範囲、代替として、約4%、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲にある。担体ポリマーが、PVAである場合、担体溶媒は、水であってもよい。
【0033】
[0041]例示的な実施形態では、液状PGS組成物および液体イソシアネート組成物の濃度は、湿式紡糸プロセスにおいて、シース-コア効果が可能となるように選択される。粘度、ポリマー溶解度およびスピナレット圧の制限もまた、プロセスパラメータを選択する際に考慮される。一部の実施形態では、コア組成物およびシース溶液のどちらの粘度も、互いに接触点に近いか、または代替として、コア組成物の粘度は、シース溶液の粘度よりも高い。さらに、湿式紡糸の方法では、ポリマー溶液が、固化浴に強制的に入れられると/押し出される場合、混合時および反応進行につれて、粘度の変化が考慮される。二成分繊維紡糸法のシース-コアタイプでは、2種の材料間の粘度差は、繊維がスピナレットを出る際に、繊維の紡糸性に影響を及ぼすこともある。二成分繊維において、異なる粘度を実現することによってポリマーの異なる配置を得ることができる。2つの組成物は、コアキシャルニードルから押し出されると、それらは、流動に対する最小量の抵抗を実現する立体配置を得るよう再配置する。これを実現するため、一層低い粘度を有する成分は、壁に近い一層大きなせん断領域に移動し、封入効果をもたらす。したがって、シース溶液の粘度は、シース-コアの効果が得られるよう、コアポリマー溶液の粘度よりも低くなるよう、好ましくは選択される。
【0034】
[0042]例示的な実施形態では、シースとコアとの間の粘着レベル、したがって得られた二成分繊維における最終断面形状を決定付ける、担体ポリマーおよびコアポリマーの表面エネルギーは、二成分繊維のシース-コアタイプを生成する場合に考慮される。ポリマーの表面エネルギーを互いに近づけると、円形またはほぼ円形の断面を有する繊維が得られる。
【0035】
[0043]一部の実施形態では、ギアポンプは、液状PGS組成物および液体イソシアネート組成物を循環させる。他の実施形態では、二気筒ピストンポンプは、液状PGS組成物および液体イソシアネート組成物をフィードする。
【0036】
[0044]一部の実施形態では、静的ミキサーは、2種のPGSU成分を均一にするための高いせん断混合先端部を有する高圧混合チャンバである。例示的な実施形態では、液状PGS組成物および液体イソシアネート組成物が撹拌下で混合されて、均一溶液を生成し、次に、すべての気泡が除かれるまで、この均一溶液を静置する。例示的な実施形態では、コア組成物は、重量制御もしくは体積制御されるギアまたはシリンジポンプを備える静的ミキサーを使用して、スピナレットの穴から押し出される。
【0037】
[0045]連続PGSU/担体二成分繊維形成システムのスピナレットは、形成される連続PGSU/担体二成分繊維の形態に基づいて選択されてもよい。二成分モノフィラメント生成の場合、穴を1つ有するコアキシャルニードルまたは芯鞘スピナレットを使用してもよい。マルチフィラメントが生成されることになる場合、芯鞘スピナレットは、1個より多い穴を含む。本システムが、芯鞘スピナレットを含む場合、芯鞘スピナレットは、穴が1個だけ、および例えば、1個の穴、1~100個の穴、1~10個の穴、2~10個の穴、10~50個の穴、20~80個の穴、50~100個の穴、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲などの、最大で100個もの穴を含んで、二成分シース-コア繊維を生成してもよい。一部の実施形態では、スピナレットはダイである。
【0038】
[0046]スピナレットは、芯鞘スピナレットである場合、各ポリマーからの異なる特徴が一緒になって、コアキシャル紡糸法によって1種の繊維にすることができる。低紡糸性を有する一部のポリマーは、このようなスピナレットを使用して紡糸することができる。例示的な実施形態では、良好な紡糸性を有するポリマーは、シース繊維であり、低紡糸性を有するポリマーはコアである。PGSおよびPGSUは、繊維紡糸に限定されるので、PGSは、イソシアネートを含むコア中に好ましくは存在して、コア中にPGSUを形成する。
【0039】
[0047]湿式紡糸プロセスでは、スピナレットは、ポリマー溶液を搭載したシリンジ/槽であって、ニードルを装備し、シリンジ-ポンプに装着された、上記のシリンジ/槽とすることができる。モノフィラメント繊維生成の場合、コアキシャルニードルを使用して、PGSU/アルギネートコア/シース繊維を生成することができる。コアキシャルニードルの寸法を様々にして、所望の生成物を生成することができる。インナーニードルとアウターニードルとの間の差異、および溶液濃度は、シースの所定の厚さが得られるように調節することができる。インナーニードルの直径は、例えば、20ゲージなどの18~24ゲージの範囲にあってもよく、アウターニードルの直径は、例えば、14ゲージなどの14~20ゲージの範囲にあってもよい。PGSおよびイソシアネート混合物は、高い粘度および粘着性構造を有するので、インナーニードルの長さは、インナーニードル内での閉塞を防止する一助となるように選択される。一部の実施形態では、インナーニードルの長さは、5mm~25mm、代替として、10mm~20mmの範囲にある。アウターニードルよりも、例えば約0.5mmなど、少しだけ長いインナーニードルを有すると、二成分繊維の場合のより優れた構造的発達を実現することができる。この差異によって、担体ポリマーが、コアポリマーよりも前に固化する時間がもたらされる。このプロセスは、通常の室内条件下で行うことができる。PGSUの封入を確実にするため、シース溶液がコア組成物の前に、最初に押し出されてもよい。これによって、コア組成物のPGS/イソシアネート混合物は、アルギネートの内側に維持されて、粘着性繊維が互いに接触するのを防止し、したがって、連続法が可能となる。優れた加工のため、コアを形成する際に使用される材料は、シースの粘度よりも高い粘度を有するべきである。
【0040】
[0048]一部の実施形態では、コア組成物に対する担体溶液の流速は、得られるシース厚さを調節するため、個々のポンプを一層高くするまたは一層低くすることによって制御するか、または変化させる。
【0041】
[0049]個々のポンプを使用して、湿式紡糸プロセスの間に、PGS樹脂およびイソシアネートを個別にポンプ輸送すると、ポンプ輸送中の反応に起因する粘度変化が防止される。PGS樹脂およびイソシアネートは、スピナレット16に流れるよう十分に低い粘度を維持するために、早い段階では接触しない。次に、図2を参照すると、PGS/イソシアネート60および担体ポリマー溶液62の混合物は、スピナレットに別々に入る。図2に概略的に示されている通り、これらの2種の溶液は、両方が、スピナレット16を出るとすぐに、二成分繊維として接触し、担体ポリマー62は、シース部分として外側に存在し、PGSU反応剤60は、二成分繊維のコア部分として内側に存在する。
【0042】
[0050]例示的な実施形態では、シース-コア構造体の形成は、4~40℃、代替として、15~25℃、代替として、20~25℃、代替として、23~40℃の範囲、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲(例えば、室温付近など)の温度で行う。この室内温度での押出成形により、温度感受性活性剤または生物製剤を含ませることができ、これは、溶融紡糸加工において、約100℃~約200℃の範囲の温度で行われる、PLGA、PGAまたはPCLを含めた、溶融紡糸繊維を形成する場合には不可能である。
【0043】
[0051]液状PGS組成物およびイソシアネート混合物は、反応中、液体形態にあり、かつ非常に粘性が高いので、PGSU繊維が生成している間、この液体を運搬するために担体材料が供給される。例示的な実施形態では、シース-コア二成分繊維が生成され、この場合、シースは、担体ポリマーとして働き、コアとしてPGSU反応剤を含有する。繊維が巻き取られた後、PGSUは、繊維の内部で反応を継続することができ、時間と共に、この混合物は熱硬化性PGSUになる。固化後、担体ポリマーは、洗い流され、100%のPGSU繊維が残ることができる。例示的な実施形態では、他方法では、湿式紡糸を使用して生成することができない、100%のPGSU繊維が生成される。
【0044】
[0052]例示的な実施形態では、システムおよび方法は、PGSUが固化し、コア内で繊維として形成するのに適切な時間量をもたらし、担体ポリマーは、液体形態にある間、紡糸の限界からコアを保護する。例示的な実施形態では、方法は、スピナレットからポリマーを押し出すステップ、繊維を形成するステップ、浴中で固化または凝固させるステップ、および繊維を延伸し、巻き取るステップを含む。
【0045】
[0053]例示的な実施形態では、製造方法は、PGSおよびイソシアネート溶液が、反応して、PGSU熱硬化性ポリマーを生成している過程にある間、PGSおよびイソシアネート溶液を運搬するための担体と共に連続PGSU/担体二成分繊維を湿式紡糸するステップを含む。図3を参照すると、連続PGSU繊維形成システム10は、アルギネートの水溶液、PGSおよびイソシアネートを糸36に変換する。アルギネート、PGSおよびイソシアネートは、1つまたは複数のポンプ14によって、1つまたは複数のフィード槽12から1つまたは複数のスピナレット16に移送される。形成されるPGSU繊維18は、スピナレット16から第1の凝固浴または固化浴20に押し出される。次に、PGSU繊維18は、第1の凝固浴20からドローロール22に延伸され、第1のワインダー24によって、第1の凝固浴20から第2の凝固浴26に入る。さらなるドローロール22は、第2の凝固浴26から、PGS/アルギネートマルチフィラメント繊維18に向かわせる。第2のワインダー28とボビンワインダー40との間の乾燥器34を使用して、シース-コア繊維18から水を除去し、シース-コア繊維18中の所定の水分含有量を達成することができる。図3に示される通り、マルチフィラメント糸18が形成されている場合、第2のワインダー30とボビン38との間のインターミングル(intermingle)30は、PGSU繊維18を受け取り、これを合わせて、マルチフィラメント丸糸(yarn round)32にする。最後に、PGSU繊維18は、所定の張力で、1つまたは複数のボビン38に巻き取られる。
【0046】
[0054]一部の実施形態では、スピナレットのコアキシャルニードルは、第1の凝固浴に直接浸漬され、こうして、ポリマー混合物は、凝固浴に直接、向かう。他の実施形態では、コアキシャルニードルと第1の凝固浴との間にある程度の距離が存在し、こうして、ポリマー混合物は、第1の凝固浴に入る前に、最初に周囲空気に曝露される。スピナレットと凝固浴との間を分離することにより、繊維を構成するPGS鎖の分子アライメントを改変することができ、これによって、架橋時のその強度に影響を及ぼし、デニールの低下した繊維を得ることができる。空気への曝露は、PGSにとってより丈夫なシェル材料層の形成を可能にすることができる浴中での凝固の前に、例えば、蒸気-相のグルタルアルデヒドなどの蒸気-相架橋剤に繊維を曝露させる機会をもたらす。
【0047】
[0055]例示的な実施形態では、PGS樹脂およびイソシアネート架橋剤は、湿式紡糸プロセスが行われている間に、互いに反応する。
【0048】
[0056]例示的な実施形態では、2種のポリマー溶液が、スピナレットから出た直後に、それらは第1の凝固浴に出合う。担体ポリマーが、アルギネートである場合、凝固浴は、水中でアルギネートを架橋するための、二価陽イオンを含有する塩、好ましくは塩化カルシウムの溶液である。第1の凝固浴中の塩の量は、アルギネートポリマー溶液が、PGS/イソシアネート液体を取り囲むのに十分な時間を有するよう好ましくは選択される。さらに、塩の量は、アルギネートが速やかに固化して、その結果、PGS/イソシアネート液体が、アルギネートを破壊しないで、繊維から離れるのに十分となるよう好ましくは選択される。
【0049】
[0057]担体ポリマーの選択は、どの凝固浴溶液を使用することができるかに影響を及ぼす。担体ポリマーがアルギネートである場合、第1の凝固浴は、好ましくは塩化カルシウムの水溶液である。凝固浴塩濃度は、繊維の固化に影響を及ぼす。第1の凝固浴中の塩化カルシウムの適量は、以下に限定されないが、重量基準で、約2%~約20%、代替として、約3%~約5%、代替として、約2%~約5%、代替として、約5%~約10%、代替として、約10%~約20%、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲を含むことができる。担体ポリマーがPVAである場合、第1の凝固浴は、多量のアセトンを含む水を好ましくは含む。第1の凝固浴の液体溶液は、溶媒を抽出して、ポリマー繊維から離れ、その結果、固化した繊維は、好ましくはゴデットロールを使用してある特定の所定の速度で延伸されて、その伸びおよび引っ張り強さを得る。
【0050】
[0058]PGSポリオール樹脂およびイソシアネート架橋剤の反応の間、水の存在は反応動力学に有害となり得る。したがって、水性塩化カルシウムによる第1の凝固は、PGSUを合成する場合に特に懸念点となり得るが、アルギネートシースは、水浴からPGSUを完全に保護することができ、反応動力学は妨害を受けない。アルギネートシェル-PGSUコア界面における水特性は、実際には、有利なことに、イソシアネートを中和する働きをして、その結果、コア繊維からのシースの容易な除去を阻む、シース層に形成する望ましくないウレタン連結基が存在しなくなる。
【0051】
[0059]第2の凝固浴もやはり、塩溶液であるが、塩濃度は、繊維表面のアルギネートポリマーがすべて確実に固化するよう一層高い。浴中の塩濃度および浴の長さは、二成分繊維のシース部分の外側に対して、100%の固化を達成することに直接、関係する。凝固浴の長さは、浴中のポリマーの所定の滞留時間に基づいて選択される。一部の実施形態では、繊維は、第2の凝固浴中で延伸される。
【0052】
[0060]担体ポリマーがアルギネートである場合、第2の凝固浴もまた、好ましくは塩化カルシウムの水溶液である。第2の凝固浴中の塩化カルシウムの適量は、以下に限定されないが、重量基準で、約10%~約25%、代替として、約18%~約22%、代替として、約20%、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲を含むことができる。一部の実施形態では、繊維が第2の凝固浴中に存在している間、アルギネート分子の配向を伴う一層強力な繊維を生成するよう、繊維をさらに延伸することができる。
【0053】
[0061]延伸した繊維が第2の凝固浴を出た後に、繊維は、ボビンに直接、巻き取られてもよい。代替的に、別のワインダーを使用して、ボビンに巻き取る前に、繊維を延伸してもよい。このような実施形態では、繊維が延伸されている間、またはさらに延伸される間に、ヒーターが繊維に使用されてもよい。
【0054】
[0062]一部の実施形態では、システムのパラメータは、反応動力学を測定するよう選択し、押出成形または繊維の延伸の間の指定時点にPGSU繊維を硬化させるために、PGS、イソシアネートおよび触媒の濃度を最適化する。硬化は、繊維を延伸している間、一部であってもよく、または完全であってもよい。一部の場合、押出成形および延伸後のさらなる硬化が望ましいことがある。
【0055】
[0063]アルギネートは、ボビンに巻き取られた後に完全に固化されない場合、ボビンは、約3%~約20%、代替として、約3%~約5%、代替として、約5%~約10%、代替として、約10%~約20%の範囲、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲の塩濃度で、5~10分間、塩化カルシウム浴に入れられてもよい。この最後のプロセスステップにより、アルギネートのすべてを固化することができる。ボビンが生成した後、および/または塩化カルシウム浴から取り出された後、繊維は、別のプラスチック製パッケージに再度、巻き取られ、その結果、繊維間のすべての粘着性連結部が破壊され得る。この再巻取り後に、繊維は、室内条件で約3~4日間、好ましくは乾燥され、PGSU/アルギネートコア/シース構造体を得る。
【0056】
[0064]一部の実施形態では、繊維の得られた巻取りパッケージは、アルギネートの架橋を促すために、約5分間以上、塩化カルシウム中に維持されてもよい。その後に、繊維は、プラスチック製パッケージに再度、巻き取られて、乾燥後の繊維のいかなる固着も防止することができる。このプロセスの後に、二成分繊維のシース-コアタイプは、PGSUのすべてが内部で反応して硬化することを確実にするためのさらなる加工なしに、少なくとも72時間、維持されてもよい。アルギネート成分とPGSU成分との間の混和性および湿潤性を最適化して、最小限の混合で二成分繊維を生成することができる。
【0057】
[0065]繊維向けの用途に依存して、PGSU/アルギネートコア/シース繊維は、加熱蒸留水を使用して洗浄されてもよく、こうして、アルギネートは、繊維から洗い流され、これによって、100%のPGSU繊維が生成する。この洗浄は、繊維がパッケージにある間に行われてもよい。代替的に、この洗浄は、繊維を浴に直接、連続的に通過させることによって行われてもよい。他の実施形態では、アルギネートシースは、PGSU繊維に残り、生成物の潤滑性を改善する。一部の実施形態では、アルギネートシースは、化学的に架橋されている。
【0058】
[0066]一部の実施形態では、シースのアルギネートは、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはクエン酸ナトリウムを使用して容易に溶解し、カルシウムイオンを隔離してこれとキレートを形成する。一部の実施形態では、シースのアルギネートは、機械的な手段を単独で、または化学的分解と組み合わせて使用して除去する。一部の実施形態では、アルギネートシースは、例えば、アルギネートシースが架橋されず、コアPGSU繊維の架橋PGSUの熱分解点未満の溶融温度を有する場合などの、例えば、温浴またはオーブンなどによって、PGSU繊維から溶融して抜ける。走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、アルギネートシースとPGSUコアとの間の明確な相境界があることを示しており、PGSU繊維コアを損なうことなく、アルギネートシースの容易な除去が可能となる。硬化は、繊維を延伸している間、完全であってもよく、または一部であってもよい。したがって、押出成形および延伸後のさらなる硬化が望ましいことがある。一部の実施形態では、さらなるPGSU繊維の硬化は、シースの除去後に、したがってシースの非存在下で行われる。
【0059】
[0067]一部の実施形態では、得られたPGSU繊維のデニールは、20~2000、代替として、20~100、代替として、100~500、代替として、500~1000、代替として、1000~2000の範囲、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲にある。
【0060】
[0068]一部の実施形態では、得られたPGSU繊維は、PLGA、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)およびPCLなどの、他の生分解性ポリエステルのような、冷却保管を必要としないで、1年間にわたり、室温および室内湿度において、常温保管可能な生分解性ポリエステル繊維となる。
【0061】
[0069]一部の実施形態では、PGSU繊維は、可撓性であり、同時に生分解性である。
【0062】
[0070]一部の実施形態では、PGSU繊維におけるPGSUの架橋は、所定の剛性、2020年2月27日に公開の米国特許出願公開第2020/0061240号に記載され、その全体が参照により組み込まれているものなどの、多様な特性の幅広い範囲内の、デュロメータおよび分解速度を実現するよう、幅広い範囲内で選択される。
【0063】
[0071]PGSUから作製された構築物は、生体適合性であり、常温保管可能で、表面浸食により生分解性であり、弾力性があり、他には生体医療的使用に好適である。PGSUの架橋密度を調節することによって、分解速度、伸長強度および引張強度は、米国特許出願公開第2020/0061240号に記載されているものなどの、PGSU繊維の特定の用途への必要性に応じて調節されてもよい。
【0064】
[0072]PGSU繊維に適切な用途は、以下に限定されないが、PGSU糸、PGSU布地、PGSU縫合糸、PGSU繊維製品、PGSUによりコーティングされているPGSU繊維製品、PGSUコンポジットもしくは他の生体材料、PGSUコポリマー繊維、糸、布地、または他のポリマーで作製された繊維製品、シース-コア、マルチローブ(multilobe)もしくは複雑な断面などの成形幾何形状を有するPGSU繊維、PGSUエレクトロスピニング、PGSU添加剤製造、細胞療法用のPGSUフィルター、細胞療法向けのPGSU足場、薬物搭載したPGSU繊維、または添加剤製造向けの薬物搭載したPGSUフィラメントを含むことができる。
【0065】
[0073]例示的な実施形態では、生成したPGSU繊維は、PGSU糸、布地または繊維製品を形成するための、製造方法における基本単位である。
【0066】
[0074]後処理において二次ポリマーを除去後に純粋なPGS繊維を生成することを目指して、PGSコポリマーブレンドを探索した。PGSU繊維の生成によって、100%のPGSをベースとする合成材料から作製された、繊維、糸、布地および繊維製品の生成が可能となる。
【0067】
[0075]例示的な実施形態は、連続PGSU/担体二成分繊維を製造する方法、連続PGSU繊維を含む布地、連続PGSU/担体二成分およびPGSU繊維を含む糸、連続PGSU/担体およびPGSU繊維を含む布地、ならびに布地を製造する方法を対象とする。布地構造体は、織り、編みまたは編組によって形成されてもよい。
【0068】
[0076]一部の実施形態では、繊維、糸、布地または繊維製品は、医療的用途に使用され、生分解性であり、エラストマー特性を有する。
【0069】
[0077]一部の実施形態では、糸は、連続PGS/担体二成分およびPGSU繊維を含む。
【0070】
[0078]一部の実施形態では、糸は、モノフィラメントまたはマルチフィラメントPGSU繊維を含む。
【0071】
[0079]一部の実施形態では、布地は、連続PGSU/担体繊維および糸から生成される。
【0072】
[0080]一部の実施形態では、様々な架橋密度を有する様々なPGSU繊維が、同じ繊維製品構築物内で使用されて、繊維製品の異なる領域で異なる分解速度をもたらす。このような実施形態では、異なるPGSU繊維の配列は、低架橋密度繊維が分解して、より高架橋された材料が残るにつれて、繊維製品内部に気孔を発生するよう制御される。
【0073】
[0081]一部の実施形態では、PGSU繊維は、身体では、布地形態で使用され、その結果、この材料は、通気性があり、PGSUが分解している間に、組織を生成することが可能となる。
【0074】
[0082]一部の実施形態では、PGSU繊維には、1種または複数の薬物が搭載される(loaded)。薬物は、液状PGS組成物または液体アルギネート組成物に含まれてもよく、こうして、この薬物は、PGSU繊維全体に分布される。一部の実施形態では、薬物は、1種または複数の医薬品有効成分(API)である。PGSUは、それぞれ、PLGAおよびPCLのようなバルク浸食性および拡散推進性放出ポリマーとは異なり、表面浸食分解により、薬物のゼロ次放出速度を維持することができる。
【0075】
[0083]いずれの適切なAPIも、PGSU繊維に含まれてもよい。適切なAPIのタイプは、以下に限定されないが、治療剤(例えば、抗生物質、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、緑内障、黄斑変性および他の眼科薬、血管新生阻害剤、糖尿病を処置するための薬物、神経変性を処置するための薬物および/または神経保護剤など)、細胞毒性剤、診断剤(例えば、造影剤、放射性核種、蛍光部分、発光部分および/または磁性部分など)、予防剤(例えば、ワクチン、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)予防およびHIV処置のための薬物、避妊薬など)、疼痛管理剤、依存症管理剤(例えば、オピオイドおよび/またはニコチンなど)、植物またはハーブ抽出物(例えば、テトラヒドロカンナビノールなどの、例えばカンナビノイドなど)および/または栄養補助剤(例えば、ビタミン、カフェインおよび/またはミネラルなど)を含むことができる。
【0076】
[0084]適切なAPI治療剤は、以下に限定されないが、例えば、細胞毒性剤などの低分子;例えば、低分子干渉リボ核酸(siRNA)、RNA干渉(RNAi)および/またはマイクロRNA剤などの核酸;例えば、成長因子および/または抗体などのタンパク質;ペプチド;脂質;炭水化物;ホルモン;金属;放射活性元素および化合物;薬物;ワクチン;ならびに/または免疫剤を含むことができる。
【0077】
[0085]適切なAPI治療剤は、以下に限定されないが、医薬活性を有する低分子、医薬活性を有する有機化合物、臨床使用される薬物、抗生物質(例えば、ペニシリンなど)、抗ウイルス剤、麻酔剤、抗血液凝固剤、抗がん剤、酵素の阻害剤(例えば、クラブラン酸など)、酵素の促進剤、ステロイド剤、プロヒーリング剤、プロポリマー分解剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗新生物剤、抗原、ワクチン、抗体、充血除去薬、抗高血圧薬、鎮静薬、受胎調節剤、プロゲステロン剤、抗コリン作動剤、鎮痛薬、抗うつ剤、抗精神病薬、β-アドレナリン遮断剤、利尿薬、心血管活性剤、血管作用剤(例えば、エピネフリンなど)、抗緑内障剤、神経保護剤、血管新生促進剤および/または血管新生阻害剤をさらにまたは代替として含むことができる。
【0078】
[0086]適切なAPI抗生物質は、以下に限定されないが、β-ラクタム系抗生物質(例えば、アンピシリン、アジオシリン(aziocillin)、アズトレオナム、カルベニシリン、セフォペラゾン、セフトリアキソン、セファロリジン、セファロチン、クロキサシリン、モキサラクタム、ペニシリンG、ピペラシリンおよび/またはチカルシリンなど)、マクロライド、モノバクタム、リファマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、フシジン酸、ノボビオシン、ホスホマイシン、フシジン酸ナトリウム、カプレオマイシン、コレスチメタート、グラミシジン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、バシトラシン、エリトロマイシン、ナリジクス酸、バンコマイシンおよびトリメトプリムを含むことができる。抗生物質は、殺菌性(bacteriocidial)または静菌性であってもよい。APIとしての適切なタイプの他の抗微生物剤は、以下に限定されないが、抗ウイルス剤、抗原虫剤および/または抗寄生虫剤が含まれてもよい。
【0079】
[0087]適切なAPI抗炎症剤には、以下に限定されないが、コルチコステロイド(例えば、グルココルチコイドなど)、毛様体筋調節薬、NSAIDおよび/または免疫選択的抗炎症誘導体(ImSAID)が含まれてもよい。
【0080】
[0088]適切なAPI NSAIDは、以下に限定されないが、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、メロキシカム、バルデコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、スリンダク、アスピリン、アルクロフェナク、フェンクロフェナク、ジフルニサル、ベノリレート、ホスホサール、サリチル酸(アセチルサリチル酸、アセチルサリチル酸ナトリウム、アセチルサリチル酸カルシウムおよびサリチル酸ナトリウムを含む);イブプロフェン、ケトプロフェン、カルプロフェン、フェンブフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、スプロフェン、トリアプロフェン酸(triaprofenic acid)、フェノプロフェン、インドプロフェン、ピロプロフェン(piroprofen)、フルフェナム酸(flufenamic)、メフェナム酸(mefenamic)、メクロフェナム酸(meclofenamic)、ニフルミン酸(niflumic)、サルサレート、ロルメリン、フェンチアザク、チロミソール(tilomisole)、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、アパゾン、フェプラゾン、スドキシカム、イソキシカム、テノキシカム、ピロキシカム、インドメタシン、ナブメトン、ナプロキセン、トルメチン、ルミラコキシブ、パレコキシブおよび/またはリコフェロン(薬学的に許容される塩、異性体、鏡像異性体、誘導体、プロドラッグ、結晶多形、アモルファス修飾体および/または共結晶を含む)を含むことができる。
【0081】
[0089]適切なタイプのAPIは、以下に限定されないが、非選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤、選択的COX-2阻害剤、選択的COX-1阻害剤および/またはCOX-LOX阻害剤を含めた、NSAID様活性を有する薬剤、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、異性体、鏡像異性体、多形結晶形態(アモルファス形態を含む)、共結晶、誘導体および/またはプロドラッグを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0082】
[0090]適切なAPIは、以下に限定されないが、アドリアマイシン/ブレオマイシン/ビンブラスチン/ダカルバジン(ABVD)、アビシン、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、アクリジンカルボキサミド、アクチノマイシン、アルキル化抗腫瘍剤、17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、アミノプテリン、アムサクリン、アントラサイクリン、抗新生物剤、アンチネオプラストン、抗腫瘍性ハーブ、5-アザシチジン、アザチオプリン、四硝酸トリプラチン(BBR3464)、BL22、ビフォナゾール、ドキソルビシンの生合成物(biosynthesis)、ビリコダル、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン、ブプレノルフィン、ブスルファン、カボテグラビル、カフェイン、カリクリン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、クロラムブシル、クロラムフェニコール、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デキサメタゾン、ジアゼパム、ジクロロ酢酸、ディスコデルモライド、ジルチアゼム、ドセタキセル、ドルテグラビル、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エストラムスチン、4’-エチニル-2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン(EFdA)、エトノゲストレル、エトポシド、エベロリムス、エキサテカン、エキシスリンド、フェンタニル、フェルジノール、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、5-フルオロウラシル、ホスフェストロール、フォテムスチン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イブプロフェン、イダルビシン、イフォスファミド、イミクイモド、インドメタシン、イリノテカン、イロフルベン、イキサベピロン、ラミンブジン(laminvudine)、ラパチニブ、レナリドミド、リポソームダウノルビシン、ロラゼパム、ルルトテカン、マホスファミド、マソプロコール、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトホルミン、メタドン、メトトレキセート、メトクロプラミド、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ナロキソン、ナプロキセン、ネララビン、ナイアシンアミド、ニコチン、ニロチニブ、ナイトロジェンマスタード、オキサリプラチン、第一プロカスパーゼ活性化合物(PAC-1)、パクリタキセル、パラセタモール、ポーポー、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、ピクサントロン、ポリアスピリン、プリカマイシン、プレドニゾン、プロカルバジン、プロテアソーム阻害剤、ラルチトレキセド、レベカマイシン、リルピビリン、リスペリドン、ロピニロール、7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン(SN-38)、サルブタモール、サリノスポラミドA、サトラプラチン、シルデナフィル、シロリムス、スタンフォードV、スチリペントール、ストレプトゾトシン、スワインソニン、タダラフィル、タキサン、テガフル-ウラシル、テモゾロミド、テノホビル、テストステロン、テトリゾリン、N,N’,N”-トリエチレンチオホスホルアミド(チオTEPA)、チオグアニン、トルブタミド、トポテカン、トラベクテジン、トラゾドン、トレチノイン、トリス(2-クロロエチル)アミン、トロキサシタビン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、ゾルピデムおよび/またはゾスクイダルを代替としてまたはさらに含んでもよい。
【0083】
[0091]一部の実施形態では、PGSU繊維には、最大で80%w/wの搭載量で薬物が搭載されている。薬物が、PGSUプレポリマー溶媒系に可溶性であるか、またはPGS樹脂もしくはイソシアネート成分に可溶性である場合、可溶化形態またはアモルファス形態にあってもよい。代替的に、薬物は、溶媒系に不溶性である場合、または系が溶媒不含である場合、薬物は結晶性粒子形態にあってもよい。薬物は、薬物搭載されたPGSU配合物が、薬物のガラス転移温度より上で処理される場合、PGSU内にアモルファス固体分散体を形成することがある。
【0084】
[0092]薬物搭載したPGSU繊維は、PGSUが、持続薬物放出を実現するよう示されているので、様々な治療用途にとって大きな利点をもたらす。
【0085】
[0093]一部の実施形態では、PGSU繊維には、1種超の薬物が搭載される。コアおよびシース材料、またはPGSUおよびアルギネート材料には、幾何形状に応じて、およびアルギネートが適所に残る場合、それぞれには、1種、1種超または様々な薬物が搭載されてもよい。薬物搭載したPGSU繊維は、異なる断面形状に押出成形されていてもよく、これによって、様々な薬物放出速度をもたらす。薬物は、拡散、表面浸食、バルク分解、またはこれらの組合せによって放出され得る。表面積および表面積:体積比は、これらの機構に関する放出速度を決定付ける重要なパラメータである。
【0086】
[0094]一部の実施形態では、薬物搭載したPGSU繊維のためのPGS樹脂は、米国特許出願公開第2020/0061240号に記載されている通り、化学的に特徴付けが行われたPGS樹脂である。
【0087】
[0095]一部の実施形態では、PGSU繊維周囲のシース材料は、欠陥がなく、かつ透過性が低い、もしくは透過性がゼロの、実質的に無傷状態にある。このような場合では、薬物放出は、シース処理されている外周からよりも、繊維のシース処理されていない端部において主に起こる。このような実施形態では、シース処理されている繊維は、シース処理された繊維の実質的に端部だけからの薬物放出を依然として実現しながら、薬物放出速度を増大させるよう、より短い断片化繊維片に裁断されてもよい。
【0088】
[0096]一部の実施形態では、PGSU繊維は、膨潤剤と共に配合される。適切な膨潤剤は、以下に限定されないが、PEG、アルギネート、ゼラチン、コラーゲン、ヒドロゲルまたは親水性アミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸またはグルタミン酸など)を含むことができる。例示的な実施形態では、膨潤剤は、液状PGS組成物または液体イソシアネート組成物に含まれ、こうして、膨潤剤は、PGSU繊維に均一に分布され、こうして、繊維全体が、水性液体中で膨潤する。例示的な実施形態では、膨潤剤を含ませると、一旦、埋め込まれると、元のサイズの少なくとも2倍に膨潤することが可能な、PGSU繊維および/または繊維製品を提供する。
【0089】
[0097]膨潤剤を含むPGSU繊維の配合は、有望な生分解性ヒドロゲル繊維技術である。ヒドロゲルは、その生体模倣機械特性、重要な細胞栄養素の拡散および輸送を可能にする膨潤能、およびそれらの生分解性があるために、組織工学における、それらの使用に関して、長い間、検討されてきた。PGSUヒドロゲル材料は、PGSUヒドロゲル配合物の分解時間が一層長いこと、可撓性があることおよび膨潤性が制御されるため、他の市販ヒドロゲルよりも優れた選択である。繊維に湿式紡糸されたPGSUヒドロゲル材料は、細胞足場に必須の複雑な3D設計を含めた、ヒドロゲル繊維製品の生成が可能である。一部の実施形態では、PGSUヒドロゲル繊維を含めた多孔質繊維製品は、インビボでのヒドロゲル繊維の膨潤後に非多孔質になる。他の実施形態では、身体内に留置された後の繊維製品からの膨潤は、繊維製品構造体および構造体を構築する糸全体への細胞進入を促進するよう、一層、遠心状態/拡大状態になる、ネットワーク分子構造体としての役割を果たす。対照的に、慣用的な繊維製品だけが、構造体中の表面に、または構造体中のいずれかの隙間から、細胞進入を有する。他の実施形態では、PGSU材料に適用される膨潤剤は、間質液と接触すると、縫合糸の穴を埋めるよう拡大する繊維を生成する。膨潤性PGSU繊維は、縫合された繊維製品であってもよく、この場合、穴は後に残されたままであるか、または膨潤性PGSU繊維それ自体が縫合糸であってもよい。
【0090】
[0098]一部の実施形態では、PGSUヒドロゲル繊維組成物は、PGSポリオール、ジイソシアネート架橋剤、2-エチルヘキサン酸スズ(II)触媒、および3,000Da未満の重量平均分子量(Mw)を有するPEGを含む。PGSUヒドロゲル繊維の架橋は、湿式紡糸の間に、PEGを含まないPGSU繊維と類似した反応動力学を有することが期待される。PGSUヒドロゲル繊維を調製する、類似の溶媒和法および溶媒不含法を使用してもよく、唯一の追加ステップは、膨潤剤(PEG)を一緒にすることである。このヒドロゲル繊維材料は、創傷ケア、腹部組織および他の組織の工学用途に成功を収めることができる。
【0091】
[0099]一部の実施形態では、繊維は、室温未満であるが、凍結より上の温度まで冷却した溶液に押出成形される。一部の実施形態では、シース材料は、一旦、繊維が冷却浴から取り出されると、PGSU繊維から除去する方法として、室温または体温付近の溶融温度を有する。一部の実施形態では、冷却浴中で形成されたPGSU繊維には、酵素が搭載される。
【0092】
[00100]一部の実施形態では、図4に概略的に示されている通り、アルギネートコア70は、PGSUシース72によって囲まれており、このシースは、次に、アルギネートシース62によって取り囲まれている。このような構造体は、例えば、三軸押出成形によって形成されてもよく、この場合、3相全部が、PGSコアを有する、本明細書に記載されている共軸押出成形法に類似して、並行して同時に押し出される。次に、外側アルギネートシース62は、PGSUシース72の形成を支援する。アルギネート内部コア70および/または外側シース62は、所定の位置に残されてもよく、または除去されてもよい。両方が除去される場合、これによって、中空PGSU繊維が得られる。PGSUは、水に非透過性であるので、外側アルギネートシース62は、キレート溶液を使用して除去されてもよい一方、内部アルギネートコア70は、保護された状態にある。外側アルギネートシースだけが除去される場合、これによって、充填されたアルギネートコアを有するシェルPGSU繊維が得られる。一部の実施形態では、細胞は、中央部の親水性アルギネートコアに加えられて、細胞担持繊維または糸が作製される。
【0093】
[00101]一部の実施形態では、アルギネートコアが最初に生成されて、三軸ニードルを使用してシステムにフィードされる。例えば、複合連続法は、ニードルを使用して繊維としてアルギネートコア、その後に塩化カルシウム凝固浴を生成するステップを含む。次に、このアルギネート繊維を巻き取る代わりに、アルギネート繊維は、コアにおける三軸ニードルから直接、フィードされてもよい。次に、コア組成物およびシース組成物は、コアアルギネートの周囲にフィードされる一方、コアアルギネート繊維は、ここを通過する。一部の実施形態では、コア中のアルギネートの組成は、アルギネートシースの組成と類似しているか、またはこれと同じである。他の実施形態では、コア中のアルギネートは、例えば、4~8重量%、代替として、5~7重量%、代替として、約6重量%、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲など、一層高い濃度にある。他の実施形態では、水溶性コアのいずれも、構築中に、PGSUシェルの内部への崩壊を防止するのに十分な密度で使用され得る。一部の実施形態では、親水性コアは架橋されていない。外側シースは、内側シースよりも低い、またはこれに等しい粘度を有するべきであり、この内側シースの上から外側シースが適用される。
【0094】
[00102]他の実施形態では、親水性コア材料は、例えば、PVAまたはPEG、または別の天然由来バイオポリマーなどの、別の合成親水性ポリマーからなる。適切な天然由来のバイオポリマーは、以下に限定されないが、ヒアルロン酸、コラーゲン、フィブリン、寒天および/またはキトサンを含むことができる。他の実施形態では、細胞担持コアは、追加的な細胞栄養素の組合せ物を含む。適切な細胞栄養素は、以下に限定されないが、グルコース、ビタミン、アミノ酸、成長因子、抗原、タンパク質および/または他の細胞シグナル伝達分子を含むことができる。
【0095】
[00103]一部の実施形態では、可溶性ポロゲンは、ポロゲンを配合するPGSU繊維を形成するための押出成形前に、PGSコア組成物に配合される。適切な可溶性ポロゲンは、以下に限定されないが、塩、糖またはデンプンを含むことができる。このような配合物により、形成したPGSU繊維にポロゲンが漏出することが可能となり、多孔質PGSU繊維が得られる。一部の実施形態では、ポロゲンは、モノリシック繊維、中空繊維、シース繊維、成形繊維または他の幾何形状として、PGSU繊維に含まれて、一層高い透過性を有するより多孔質PGSUが生成する。より多孔質PGSUはまた、表面浸食に敏感な表面積がより多くあるために、一層、迅速に分解する。
【0096】
[00104]一部の実施形態では、疎水性ポリマーは、PGSUコアを被覆するシース層として沈殿する。適切な疎水性ポリマーは、以下に限定されないが、PLGAまたはPCLを含むことができる。例えば、40%の固体PGSUコア溶液および80%の固体PCLシース溶液の場合、密度差は、2つの相を分離して維持するのに十分である。PCLおよび有機溶媒の相は、PGSUの上のシェル層として沈殿する。他の実施形態では、有機相は、水相とある程度の混和性を有しており、シェル層に漏出し、マイクロ細孔を生成し、これによって、薬物の制御放出の機構がもたらされ得る。このような漏出およびマイクロ細孔は、水性収集浴にPLGA溶解繊維をエレクトロスピニングすることによって、以前に報告されている。
【0097】
[00105]一部の実施形態では、PGSU繊維は、身体内に埋め込むための細胞担持構築物として、細胞療法に使用される。このような細胞は、それ自体、治療剤となり得る、および/または治療剤を出すことができる。一部の実施形態では、細胞は、固体PGSU繊維の表面で培養される。一部の実施形態では、中空PGSU繊維は、内部に細胞が充填される。一部の実施形態では、細胞は、中空PGSU繊維の内側および外側表面の両方の表面で培養され、この場合、内側および外側表面の細胞は、同じ細胞タイプまたは異なる細胞タイプであってもよい。アルギネートコアを有するPGSUシェル繊維を含む実施形態では、細胞は、アルギネートコアに組み込まれてもよい。このような繊維では、細胞は、アルギネートヒドロゲル内部に保護されている。
【0098】
[00106]アルギネートは、細胞に優しい材料であり、細胞封入、生存、展開、増殖、分化、トランスフェクト、形質導入、および/または操作を実現または可能にする。PGSUは、埋め込むと、身体の免疫系から細胞を保護する保護シースをもたらす。PGSUの架橋、表面修飾、表面官能基化および/または表面装飾は、免疫応答から隠れる、これを最小限にする、またはこれに対して不活性なシースを生成するために使用されてもよい。細胞の健康を維持するために必要な酸素および二酸化炭素などのガス輸送は、PGSUにより起こる。PGSUは、液体の輸送を容易には可能にしないが、PGSUの2~3%w/wの即座の膨潤挙動は、低分子および大型分子の栄養素ならびに/または治療剤の液体の輸送を可能にするほど十分であり得る。
【0099】
[00107]一部の実施形態では、透過性およびポリマーマトリックスメッシュサイズに影響を及ぼす、PGSUの架橋度は、低分子および大型分子の栄養素ならびに/または治療剤の輸送を最適化するように適合されている。一部の実施形態では、PGSU透過性は、漏出のためにポロゲンを含ませることによってさらに増強され、この場合、ポロゲン寸法は、栄養素および/または治療剤が通過するPGSUマトリックスにおいて空隙空間を直接、生じる。ポロゲン寸法は、細胞は通過することはできないが、低分子および大型分子が通過することができるよう選択され得る。このような寸法は、100nm~5μm、代替として、100nm~500nm、代替として、500nm~1μm、代替として、1μm~5μmの範囲、またはそれらの間の任意の値、範囲もしくは部分範囲にあることができる。この多孔質シースは、保護することが意図されている内部に治療細胞を維持する一方、身体の免疫細胞およびネイティブ細胞は、意図される外側に維持され、その結果、身体の免疫細胞およびネイティブ細胞は治療細胞に進入して破壊することはできない。
【0100】
[00108]ポロゲン寸法および搭載量濃度は、PGSUマトリックスを介する浸透を制御するよう選択されてもよい。一部の場合、低分子の輸送だけが望ましい。他の場合、低分子および大型分子の輸送が望ましい。浸透と透過の組合せを調節すると、選択的輸送が可能となり得る。ポロゲン自体は、栄養素または治療剤であってもよい。ポロゲン自体は、炎症応答を保護するか、または最小化するために使用されてもよい。ポロゲン自体は、埋め込み時に、治療細胞の生存率を改善する薬剤であってもよい。ポロゲンは、何日もまたは何週間もかけてゆっくりと拡散することができるか、またはポロゲンは、埋め込み部位への栄養素および/または治療剤のバースト放出をもたらすよう直ちに拡散することができる。ポロゲンはまた、経時的なPGSUの分解によって、ゆっくりと放出されてもよい。
【0101】
[00109]生成物、システムおよび方法は、連続繊維ポリマーとして、PGSUに関して本明細書に記載されているが、ポリオールモノマーおよび二酸モノマーの他のウレタン-架橋ポリエステルコポリマーの連続繊維が、本明細書に記載されているシステムおよび方法によって代わりに形成されてもよい。
【0102】
[00110]グリセロールの代替的な適切なポリオールモノマーは、以下に限定されないが、ジオールモノマーまたは他のトリオールモノマーを含むことができる。
【0103】
[00111]セバシン酸の代替的な適切な二酸モノマーは、以下に限定されないが、式[HOOC(CHCOOH]の他の二酸を含んでもよく、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸またはアゼライン酸などのn=1~30である。
【実施例
【0104】
[00112]本発明は、制限ではなく、例示として表されている以下の実施例の文脈にさらに記載されている。
【0105】
実施例1
[00113]連続的なコア/シース繊維は、コア樹脂ポリマーがPGSであり、イソシアネートがHDIであり、触媒が、2-エチルヘキサン酸スズ(II)である一方、シースポリマーが、アルギン酸ナトリウムである、湿式紡糸によって形成した。PGS:HDI質量比は、3.5:1であり、PGS:スズ質量比は、有機溶媒中の60重量%のPGSU濃度で、800:1であり、アルギン酸ナトリウムは、水性溶媒中に4重量%とした。本組成物は、機械的に撹拌して、均一溶液を生成した。湿式紡糸用ラインは、凝固浴(3重量%のCaCl)および延伸巻取りシステムを含んだ。コアキシャルニードルを使用して、二成分コア-シース繊維を生成した。シース組成物のフィード速度は、1.5mL/分であり、コア組成物のフィード速度は、0.5mL/分とした。延伸と巻取り速度はどちらも、5m/分とした。得られた繊維は、図5のSEM画像に示されており、ここでは、繊維断面の残りのアルギネートシースは、PGSUコアよりも色調はずっと明るく見える。
【0106】
[00114]長断面および短断面寸法は、図5中の繊維の5種のPGSUに関して求めた。シースを除く第1の繊維81は、長寸法約196.4μm、長寸法に垂直な短寸法約184.0μm、および約1.07のアスペクト比(長寸法/短寸法)を有した。シースを除く第2の繊維82は、長寸法約232.4μm、短寸法約180.1μm、および約1.29のアスペクト比、最大シース厚さ約31.1μmを有した。シースを除く第3の繊維83は、長寸法約180.0μm、短寸法約173.7μm、および約1.04のアスペクト比を有した。第4の繊維84は、長寸法約211.0μm、短寸法約200.8μm、および約1.05のアスペクト比を有した。第5の繊維85は、長寸法約191.5μm、短寸法約175.6μm、および約1.09のアスペクト比を有した。
【0107】
実施例2
[00115]実施例2の方法は、シース組成物のフィード速度が、1.0mL/分であり、コア組成物のフィード速度が、1.0mL/分である点で、実施例1の方法とは異なった。得られた繊維が、図6のSEM画像に示されている。
【0108】
[00116]長断面および短断面寸法は、図6中の繊維の3種のPGSUに関して求めた。これらの繊維は、第1の画像における断面積よりもかなり大きな断面積を有し、より大きなアスペクト比をやはり有した。シースを除く第1の繊維91は、長寸法約449.1μm、短寸法約366.1μm、および約1.23のアスペクト比を有した。シースを除く第2の繊維92は、長寸法約460.5μm、短寸法約287.5μm、および約1.60のアスペクト比を有した。第3の繊維93は、長寸法約420.2μm、短寸法約337.9μm、および約1.24のアスペクト比を有した。
【0109】
実施例3
[00117]実施例3の方法は、触媒を含まなかったこと、シース組成物のフィード速度が、2.0mL/分であったこと、コア組成物のフィード速度が、0.5mL/分であったこと、湿式紡糸ラインが、第2の凝固浴を含んだこと、延伸速度が5.5m/分であったこと、および巻取り速度が6.5m/分であったという点で、実施例1の方法とは異なった。得られた繊維が、図7のSEM画像に示されている。
【0110】
[00118]長断面および短断面寸法は、図7中の繊維の4種に関して求めた。これらの寸法は、PGSU、および残りのアルギネートシースを含んだ。シースを含む第1の繊維101は、長寸法約365.5μm、短寸法約318.0μm、および約1.15のアスペクト比を有し、最大シース厚さは約16.6μmであった。シースを含む第2の繊維102は、長寸法約436.5μm、短寸法約282.9μm、および約1.54のアスペクト比を有した。シースを含む第3の繊維103は、長寸法約346.9μm、短寸法約179.5μm、および約1.93のアスペクト比を有しており、それらの寸法の大部分は、シースである。第4の繊維は、長寸法約428.4μm、短寸法約277.7μm、および約1.54のアスペクト比を有し、最大シース厚さは約16.6μmであった。
【0111】
実施例4
[00119]実施例4の方法は、触媒質量比が、有機溶媒中、75重量%のPGSU濃度で400:1であること、シース組成物のフィード速度が、6.0mL/分であること、およびコア組成物のフィード速度が、1.0mL/分であること、湿式紡糸ラインが、第2の凝固浴を含んだこと、延伸速度が7.5m/分であったこと、および巻取り速度が7.5m/分であったことという点で、実施例1の方法とは異なった。得られた繊維が、図8のSEM画像に示されている。
【0112】
[00120]長断面および短断面寸法は、図8中のSEM画像における繊維の3種のPGSUに関して求めた。これらの寸法は、PGSU、および残りのアルギネートシースを含んだ。第1の繊維111は、長寸法約358.9μm、短寸法約316.4μm、および約1.13のアスペクト比を有した。第2の繊維112は、長寸法約417.1μm、短寸法約288.4μm、および約1.44のアスペクト比を有した。第3の繊維113は、長寸法約402.4μm、短寸法約258.3μm、および約1.56のアスペクト比を有した。
【0113】
実施例5
[00121]PGSU-アルギネートコア-シースモノフィラメント繊維を使用して、布地表面を生成した。PGSU-アルギネート縫合糸は、縦型システムにおける、16キャリアブレイダーを用いて編組した。30rpmの編組速度で8つのキャリアを使用した一方、縫合糸のピック番号を5ピック/2.54cm(1インチ)とした。得られた縫合糸が図9に示されている。
【0114】
[00122]上記の参照文献のすべてが、本明細書において参照により本明細書に組み込まれている。
【0115】
[00123]本発明は、1つまたは複数の例示的な実施形態を参照して記載されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われてもよいこと、および等価物が、それらの要素と置き換えられてもよいことが当業者によって理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、多数の修正が行われてもよい。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良様式として開示された特定の実施形態に限定されないこと、しかし本発明は、添付の特許請求の範囲内に収まるすべての実施形態を含むことが意図される。さらに、発明を実施する形態において特定されるすべての数値は、正確な値と概算値の両方が明示的に特定されているかのごとく、解釈されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】