(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】オレフィンを生成するための電気炉
(51)【国際特許分類】
C10G 9/24 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
C10G9/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526873
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 US2021057700
(87)【国際公開番号】W WO2022094455
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522005594
【氏名又は名称】ルーマス テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】スンダラム, カンダサミー ミーナクシ
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー, スティーヴン, ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA04
4H129DA03
4H129FA11
4H129NA43
4H129NA45
(57)【要約】
炭化水素フィード(105)を熱分解する方法は、炭化水素フィード(105)を電気加熱器(110)の反応セクション(112)中の少なくとも1つのコイル(130)中に供給することと、電気加熱器(110)中の炭化水素フィード(105)を反応温度まで加熱するために電気エネルギーを使用することと、電気加熱器(110)からの反応出力を冷却するために反応出力を少なくとも1つの交換器(150)に導くこととを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素フィードを分解するための反応器であって、
加熱器の反応セクションを画定する加熱器チャンバと、
前記加熱器チャンバ内に配設された複数の電気加熱要素であって、前記電気加熱要素が電力によって動作する、複数の電気加熱要素と、
前記反応セクションを通ってフィード入口から延びる少なくとも1つのコイルと、
前記少なくとも1つのコイルに流体接続された入口、および流出物出口を備える1次交換器と
を備える、炭化水素フィードを分解するための反応器。
【請求項2】
前記1次交換器の前記流出物出口に流体接続された入口を有する2次交換器をさらに備える、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記1次交換器が、蒸気出口と、前記フィード入口に向けられた蒸気流路とをさらに備える、請求項1または2に記載の反応器。
【請求項4】
前記反応セクションから離間して、前記フィード入口の下流に予熱セクションをさらに備え、前記予熱セクションが少なくとも1つの交換器を備える、請求項1または2に記載の反応器。
【請求項5】
前記フィード入口が複数のフィード・ソースに流体接続された、請求項1または2に記載の反応器。
【請求項6】
炭化水素フィードを熱分解する方法であって、
前記炭化水素フィードを電気加熱器の反応セクション中の少なくとも1つのコイル中に供給することと、
前記電気加熱器中の前記炭化水素フィードを反応温度まで加熱するために電気エネルギーを使用することと、
前記電気加熱器からの反応出力を冷却するために前記反応出力を少なくとも1つの交換器に導くことと
を含む、炭化水素フィードを熱分解する方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの交換器を使用して前記反応出力からの熱を回収することと、前記炭化水素フィードを前記電気加熱器中に供給する前に前記炭化水素フィードを予熱するために、前記回収された熱を使用することとをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電気加熱器中の前記少なくとも1つのコイルの周りに配設された複数の電気加熱要素を使用して、前記少なくとも1つのコイルの異なるセクションを選択された温度まで選択的に加熱することをさらに含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応セクション中の異なるコイルに複数の異なるタイプのフィードを供給することと、前記複数のフィードから前記反応出力をまとめて分離することとをさらに含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項10】
前記電気加熱器中に第2の炭化水素フィードを供給することをさらに含み、前記第2の炭化水素フィードが、前記炭化水素フィードとは異なる組成を有する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのコイルのうちの1つを分離するために弁を使用することと、
前記分離されたコイルをデコーキングすることと
をさらに含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項12】
フィードを熱分解するための電気加熱器と、
回収セクションと
を備える熱分解プラントを設計することと、
生成される蒸気の量と、前記熱分解プラントによって消費される蒸気の量とを決定することと、
前記フィードを熱分解するために前記熱分解プラントによって使用される電力の量を決定することと、
前記熱分解プラントによって使用される電力の前記量を低減するために前記熱分解プラントの少なくとも1つのパラメータを調整することと
を含む、方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのパラメータを調整することが、前記電気加熱器への前記フィードのクロスオーバー温度を低下させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フィードの前記クロスオーバー温度を低下させるために少なくとも1つの追加のコイルを有するように前記電気加熱器を設計することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱分解プラントが予熱セクションをさらに備え、前記少なくとも1つのパラメータを調整することが、前記回収セクションからの出口温度を上昇させることと、前記回収セクションによって消費される蒸気の前記量を低減することと、前記予熱セクションによって消費される蒸気の前記量を増加させることとを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
熱分解において使用される炉は、一般に、熱を発生させ、反応デューティを供給するために高温燃焼ガス(煙道ガス)または気体燃料および液体燃料を使用する、燃焼加熱器(fired heater)である。熱は、燃焼加熱器の内側に構成されたコイルを通って流れる流体の温度を上げる。熱分解(thermal cracking)反応は燃焼加熱器の輻射セクション中で起こる。これらは極めて吸熱性の反応であり、反応を維持するために熱が加えられる。一般に、加熱器の輻射セクション中で反応を実行するために、燃焼デューティの30%~50%が使用される。煙道ガス中の残りのデューティは、加熱器の対流セクション中で回収され、フィードを予熱することおよび/または蒸気発生のために使用され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
一態様では、本開示の実施形態は、電気加熱器の反応セクションを画定する加熱器チャンバと、加熱器チャンバの周りに配設された複数の電気加熱要素であって、電気加熱要素が電力によって動作する、複数の電気加熱要素と、反応セクションを通ってフィード入口から延びる少なくとも1つのコイルと、少なくとも1つのコイルに流体接続された入口、および流出物出口を有する1次交換器とを備える、炭化水素フィードを分解するための反応器に関する。
【0003】
別の態様では、本開示の実施形態は、炭化水素フィードを電気加熱器の反応セクション中の少なくとも1つのコイル中に供給することと、電気加熱器中の炭化水素フィードを反応温度まで加熱するために電気エネルギーを使用することと、電気加熱器からの反応出力を冷却するために反応出力を少なくとも1つの交換器に導くこととを含む、炭化水素フィードを熱分解する方法に関する。
【0004】
また別の態様では、本開示の実施形態は、フィードを熱分解するための電気加熱器と回収セクションとを備える熱分解プラントを設計することと、生成される蒸気の量と、熱分解プラントによって消費される蒸気の量とを決定することと、フィードを熱分解するために熱分解プラントによって使用される電力の量を決定することと、熱分解プラントによって使用される電力の量を低減するために熱分解プラントの少なくとも1つのパラメータを調整することとの方法に関する。
【0005】
添付のスケッチに示された構成図は特定の原油と炭化水素原料と生成物スレートとについてわずかに修正され得る。他の態様および利点は以下の説明と添付の特許請求の範囲とから明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の実施形態による、電気加熱器の構成図である。
【
図2】本明細書の実施形態による、炭化水素混合物を分解するためのシステムの簡略化されたプロセス・フロー図である。
【
図3】滞留時間に応じた予想されるエチレン収率とコイル出口温度(COT)のグラフである。
【
図4】燃焼加熱器によって加熱されるときと、電気加熱器によって加熱されるときとのコイル金属の金属温度を比較するグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で開示される実施形態は、一般に、炭化水素フィードを反応温度まで加熱するために電気加熱器を使用して、エチレン、プロピレンなど、軽質オレフィンを生成するための炭化水素の分解に関する。電気加熱器は電気炉と呼ばれることもある。本明細書の実施形態において有用な炭化水素フィードは、軽質炭化水素(エタン、プロパン、ブタン)およびナフサ領域の炭化水素(C5~C12)から、全原油を含む、より重質の炭化水素ガスおよびそれらの混合物におよび得る。
【0008】
炭化水素の熱分解は、一般的に、軽質オレフィンを生成するために使用される。たとえば、エタンは、分解されると、主にエチレンを生じる。ナフサは、分解されると、有益な生成物として、エチレンと、プロピレンと、ブテンと、ブタジエンと、ベンゼンとを生じ得る。熱分解反応は吸熱性が高く、反応を持続させるために熱が供給される。相当なフィード変換を得るために、反応器温度は、優に700℃を上回り、たとえば、800℃を超え得る。
【0009】
いくつかの分解プロセスでは、動作温度を下げるために触媒が採用され得るが、その結果、熱分解よりもエチレン収率が低くなり得る。生成されるオレフィンの単位重量当たりの熱分解と触媒的分解(catalytic cracking)との場合の反応熱はほぼ同じであるが、熱分解の場合の燃焼デューティは極めて高い。エチレン生成のためにフィードを十分に(たとえば、800℃よりも高い高温まで)加熱するために、反応デューティに対するより高い割合の顕熱(sensible heat)(相変化なしに物質の温度を変化させるために必要とされるエネルギー)が使用され得る。顕熱は、他のプロセス流体と交換することによって回復され得、したがって、エチレン加熱器は、フィードを効率的に予熱し、追加の蒸気を生成するように設計され得る。本開示による電気加熱器を使用するとき、高い熱エネルギーを含んでいる煙道ガスがないので、電気加熱器は、フィードを予熱し、反応を実行するように設計され得るか、またはフィードを予熱する他のより効率的な方法が使用され得る。
【0010】
分解反応は、副生成物として少量のコークを生成し得、コークは反応器中に堆積し、蓄積し得る。コーク堆積を最小にし、オレフィン生成を改善するために、蒸気が炭化水素フィードに加えられ、分解され得る。
【0011】
燃焼加熱器では、フィード混合物(炭化水素と希釈蒸気(DS))が、通常、燃焼加熱器の対流セクション中で予熱され、加熱器の輻射セクションに入り、そこで反応が起こる。これらは高温反応であるので、燃焼加熱器中での反応から高温煙道ガスが生成される。一般に、燃焼加熱器からの燃焼デューティの30~50%のみが反応セクションに行き、燃焼デューティの残りの量は煙道ガスとして輻射セクションから出得る。煙道ガス中のエネルギーは、煙道ガスからの熱を回収するためにその中に好適に構成されたコイルを含み得る、燃焼加熱器の対流セクション中で回収され得る。燃焼加熱器の対流セクション中で、フィードおよび希釈蒸気は、予熱され、また、輻射セクションに入る前に所望の温度まで過熱され得る。フィード混合物余剰を加熱した後でも、熱エネルギーは煙道ガス中に存在する。このエネルギーが回収されない場合、エネルギーは浪費され、オレフィン生成のコストは上がる。対照的に、本開示の実施形態による電気加熱器を使用するときは、電気加熱器によって使用される電気エネルギーの90~98%が加熱器の反応セクション中の反応に行き得る。したがって、本明細書で開示する電気加熱器は反応のために十分なだけのエネルギーを生成し得、過剰な熱はほとんどまたはまったく生成されない。かなりの量の余分な熱が生成されることがないので、本明細書で開示する電気加熱器は対流セクションを有しないことがある。
【0012】
反応器中に形成されたオレフィンを保存するために、(流出物とも呼ばれる)反応出力は急速に急冷され得る。古い急冷方法は反応器出口において油または水の注入を使用した。より最近の急冷方法は間接冷却を使用するようになった。いくつかの方法において、回収セクションに流出物を送る前に高圧(または超高圧)蒸気を生成することによって流出物が冷却され得る。この高圧蒸気は、旧来、燃焼加熱器の対流セクション中で過熱された。しかしながら、対流セクションを有しない、本開示の実施形態による電気加熱器を使用すると、蒸気はプロセスの他の部分において(たとえば、交換器中で、または2次電気加熱器を使用してなど、流出物が冷却される回収セクションにおいて)生成され得る。
【0013】
本開示の実施形態によれば、炭化水素フィードを分解するための反応器は、電気加熱器と、電気加熱器からの反応出力を冷却し、および/または電気加熱器に入るフィードを予熱するために使用され得る、少なくとも1つの交換器とを含み得る。電気加熱器は、加熱器の反応セクションを画定する加熱器チャンバと、加熱器チャンバの周りに配設された複数の電気加熱要素であって、電気加熱要素が電力によって動作する、複数の電気加熱要素と、反応セクションのフィード入口から反応セクションの出口まで延びる複数のコイルとを含み得る。いくつかの実施形態では、電気加熱器からの反応出力を最初に冷却するために1次交換器が使用され得、1次交換器は、複数のコイルに流体接続された入口と、流出物出口とを有し得る。いくつかの実施形態では、1次交換器流出物をさらに冷却するために2次交換器が使用され得、2次交換器は、1次交換器の流出物出口に流体接続された入口を有し得る。いくつかの実施形態では、2次交換器流出物をさらに冷却するために3次交換器が使用され得、3次交換器は、2次交換器の流出物出口に流体接続された入口を有し得る。
【0014】
交換器は、蒸気出口、および/または、加熱された蒸気を反応器の1つまたは複数のエリアにおよび/または予熱セクションに導き得る蒸気流路をさらに含み得る。たとえば、交換器からの加熱された蒸気は、電気加熱器に入る前にフィードを予熱するために電気加熱器のフィード入口のほうに導かれ得る。予熱セクションは、電気加熱器の反応セクションとは別個に備え付けられ得るか、または単一のユニットとして反応セクションとともに備え付けられ得る。たとえば、反応器の予熱セクションは、反応セクションから離間して、電気加熱器のフィード入口の下流にあり得る。いくつかの実施形態では、予熱セクションは1つまたは複数の交換器を含み得る。電気加熱器へのフィード入口は複数のフィード・ソースに流体接続され得る。
【0015】
本開示の実施形態によれば、電気加熱器の主反応セクションは、電気加熱器の反応セクションを通って延びる1つまたは複数のコイルの異なる構成を有し得る。コイルは単一の電気加熱器中の異なる加熱要素によって加熱され得るか、または反応セクション中のコイルは電気加熱器中の単一の加熱要素を用いて加熱され得る。予熱と反応熱の両方が単一の電気加熱器によって供給され得る。
【0016】
図1は、本開示の実施形態による電気加熱器110を使用する反応器100の例を示す。電気加熱器110は反応器の主反応セクションを備え、そこで、炭化水素フィードを分解するために、炭化水素フィード105が反応温度まで加熱され得る。炭化水素フィード105は、2次交換器160によって加熱され、流路120を通り、電気加熱器110の反応セクション112を通って延びる1つまたは複数のコイル130まで流され得る。反応器100は、(燃焼加熱器中に見られるような)対流セクションを含まないことがあるが、代わりに、(電気加熱器に1つまたは複数のフィードを供給するための)電気加熱器110中に配設されたコイル130に流体接続された流路120と、電気加熱器110中のコイル130の周りに配設された1つまたは複数の電気加熱要素140とを含み得る。反応器100は、フィード交換器(たとえば、1次交換器150および2次交換器160)と、反応器100の反応セクション112中の様々なコイルに供給するフィード交換器からの(たとえば、ヘッダを通る)共通流路とをさらに含み得る。したがって、燃焼加熱器とは対照的に、電気加熱器110は対流セクションを含まないことがある。代わりに、フィード交換器および共通流路(たとえば、ヘッダ)がコイル130にフィードを導き得る。
【0017】
本開示の実施形態による電気加熱器110を使用する反応器は、コイル130を通過するフィードを分解するためにコイル概念を利用し得る。示されている実施形態では、(まとめて130と呼ぶ)4つの輻射コイル131、132、133、134が、電気加熱器110の反応セクション112を通って延びるように電気加熱器110中に構成され得る。しかしながら、4つよりも多いまたは少ないコイルが、電気加熱器110の反応セクションを通って延びるように構成され得る。電気加熱器110の反応セクション112は、電気加熱器110の反応チャンバを形成する壁の周りに配置された1つまたは複数の電気加熱要素140を有し得、加熱要素140は、反応セクション112を加熱するように向けられ得る。フィードがコイル130を通って流されるとき、コイル130を流れるフィードを分解反応温度まで加熱するためにコイル130の周りの電気加熱要素140が使用され得る。
【0018】
本開示の実施形態によれば、各コイル130は、コイルを通って流れるフィードがある場合はそれの量、およびコイルの温度を含めて、単独で制御され得る。たとえば、輻射コイル130が異なるフィード・マニホルドに接続される場合、そのコイル130は、各フィードがコイル130を通って流れる際に、流体接続されたフィードを分解することができる。複数のフィードを受け付け得る反応器100の反応セクションを備え付けることによって、分解プロセスのための機器が圧縮され得(たとえば、複数のフィードのための複数の加熱器を使用するのではなく、複数のフィードが単一の電気加熱器110に導かれ得)、そのことは全体的なプラント設計におけるプロット・スペースを節約し得る。
【0019】
コイル130へのフィードの量は制御弁122を介して制御され得る。2つ以上の異なるフィードがコイル130に流体接続される実施形態では、フィード・ソースからコイル130まで流路120に沿って配置された制御弁122が、フィードの量がコイル130を通って流れることを可能にするように制御され得る。さらに、コイル130に流れ込むフィードの流量制御を与えるために、各コイルに流量ベンチュリ124が関係付けられ得る。コイル130を通って流れるとき、電気加熱器110中の電気加熱要素140から電気的に与えられる熱を使用してフィードを分解するために、フィードは反応温度まで加熱され得る。たとえば、あるランではエタンを分解し、別のランにおいてナフサを分解するために、本開示の実施形態による電気加熱器110中に備え付けられた同じコイル(たとえば、131、132、133、または134)が使用され得、別の場合には、コイルはデコーク・モードであり得る。したがって、フィードを分解するために、フィードが反応器100の反応セクション112の内側に配置されたコイルを通って流される、コイル概念を使用することによって、各コイルについての特定の処理条件は、どのフィードがコイルを通って流れているとしても分解するように制御され得る。
【0020】
1つまたは複数の追加の流路121および弁123(たとえば、分離弁または仕切り弁)が流路120に流体接続され、輻射コイルのデコーキング(放射管の内面上のコーク蓄積を定期的に除去すること)のために、コイル130を通って蒸気、または蒸気と空気との混合物を導くために使用され得る。デコーキング目的のために、電気加熱器中の構成要素が従来の燃焼加熱器中の同様の構成要素と同様に構成され得るが、例外は、火炎加熱を使用する代わりに、電気加熱器が1つまたは複数の電気加熱要素を使用し得ることである。電気加熱器中のコイルなどの構成要素を燃焼加熱器中の同様の構成要素と同様の様式で構成することによって、デコーキング流出物から分解器流出物を分離するために移送ライン弁が設置され得る。さらに、(たとえば、デコーキングのために1つまたは複数のコイルを分離するために分離弁が使用され得る)より簡単なデコーキング手順のために高温分離弁が使用され得る。高温分離弁が使用されないとき、流出物は、コイルと交換器とが蒸気のみによってデコーキングされ得る所まで十分に冷却され得る。デコーキングのために蒸気または空気が使用されるときは、流出物をデコーク・ドラムにそらすために高温分離弁が使用され得る。デコーキング流出物はまた、分解器流出物とともに反応器の回収セクションに導かれ得る。
【0021】
電気加熱が反応セクション112中のコイル130の周りに均等に分配され得るように、電気加熱器100は、コイル130の周りに分配された1つまたは複数の加熱要素140を含み得る。電気加熱器110とは対照的に、燃焼加熱器中のバーナーが強い熱を小さい体積(火炎形状)中に解放する。したがって、燃焼加熱器において、バーナーに対向するコイル表面は極めて高温に達し得るが、バーナーに直角なコイル表面は、加熱器の所与の長さにおいて比較的極低温に達し得る。火炎からの燃焼加熱器中の熱の指向性輻射によって形成される温度勾配は、時々、シャドー効果と呼ばれることがある。シャドー効果のために、燃焼加熱器中のピーク温度は平均温度とは異なり得る。そのような様態において、燃焼加熱器管設計はピーク温度によって規定され得る。たとえば、燃焼加熱器を形成するために使用される耐火れんがは、加熱器中のより高いピーク温度に耐えられるように設計される。さらに、火炎からの熱は伝導によって伝達されるので、熱をより速く伝達するために、伝導率は高くなるように設計される。
【0022】
本開示の電気加熱器では、電気加熱は、一定の熱流束において制御され、コイルのすべての側面に(たとえば、コイルの円周全体の周りに)導かれ得る。さらに、燃焼加熱器の場合、コイルのあらゆるセクション(たとえば、コイルの下部20%またはコイルの上部20%)に入力される熱を制御することは困難であるが、本開示の実施形態による電気加熱は、管全体が均等に加熱され得るように、加熱要素がコイルの複数の異なるセクションを加熱するように、加熱器をセグメント化することを含み得る。いくつかの実施形態では、特定の分解プロセスのためのコイルの特定の加熱プロファイルを与えるために、個々のコイル、および/または個々のコイルの個々のセグメントの温度を制御するために、制御システムが使用され得る。本開示の実施形態による電気加熱器を使用することによって、より制御された、均等にされた加熱プロファイルが加熱器中のコイルに与えられ得、それにより、伝熱性能が著しく改善され、ピーク管温度が低下し、オレフィンへの選択性が改善され得る。
【0023】
図4は、燃焼加熱器によって(バーナーから)加熱されるときと、電気加熱器から一定の熱流束によって加熱されるときとの、コイル金属温度についての加熱性能のグラフ比較を示す。
図4に示されているように、電気加熱を使用するとき、(ピーク温度と平均温度との差がないので)半径方向の温度勾配は最小になり得、したがって、所望の金属温度に達するために、より低い加熱温度が使用され得る。
【0024】
さらに、単一のコイルまたはコイルのグループへの熱の量は個々の加熱要素140によって供給され得るので、該熱の量は電気加熱器110中で個々に制御され得る。従来の燃焼加熱器では、火室全体がバーナーから加熱される。単一のコイルに向けられる1つまたは複数のバーナーを調整することは、各コイルが別個のセル中に格納されない限り、隣接するコイル熱分布に影響を及ぼす。電気加熱を用いると、他のコイルに影響を及ぼすことなしに、加熱と断熱とを切り分けることができる。したがって、電気加熱器が多くのコイルを有するとき、各コイルは単独で制御され得る。さらに、コイルの異なるセクションに沿った熱入力が制御され得る。たとえば、コイルの入口セクションにおける高熱流束、およびコイルの端部に向かう低熱流束が、1つまたは複数の電気加熱要素の加熱器パラメータを調整することによって達成され得る。コイルに沿った熱プロファイルを変動させることによって、コイル中の反応が制御され得、および/またはコーキング・レートが制御され得る。炉設計に応じて、温度および/または流束分布が課され得る。分解プロセスにおける単独で制御されるコイルの性能に基づいて、コイルの性能を改善するために個々のコイルの温度制御が最適化され得る。
【0025】
電気加熱器を用いると、熱負荷を0から100%まで変動させることができ、したがって、ターンダウン(turndown)または熱の重度(またはコイル出口温度(COT))を調整することは問題でなくなり得る。燃焼加熱器を用いると、火炎を消す可能性により、極めて低いターンダウンは不可能である。さらに、燃焼加熱器中の低い負荷において、一酸化炭素、窒素酸化物、および二酸化窒素が増加する。
【0026】
燃焼加熱器と比較して、電気加熱器では極めて高い流体温度を達成することができる。しかしながら、コイル冶金が依然として設計を制限し得る。したがって、より高い温度を達成するために、電気加熱器とともにセラミック管コイルが使用され得る。さらに、シングル・パス・コイルか、または1つの列にまたは複数の列に構成されたマルチパス・コイルを含む他のタイプのコイルが使用され得る。各コイルの重度は単独で制御され得るので、異なるコイルを通る異なるフィードの分割分解が簡単に達成され得る。さらに、異なるフィードストリームを混合し、組み合わせられたフィードを輻射コイルに供給することによって、異なるフィードの共同分解が行われ得る。
【0027】
コイル130中のフィードが反応温度まで加熱された後に、反応物は、出口温度まで急速に冷却されるために、反応セクション112から、移送ライン交換器(TLE)150などの1次交換器まで導かれ得る。反応出力が1次TLE150中で冷却されると、高圧高温の蒸気が生成され得る。いくつかの実施形態では、高圧高温の蒸気は、反応セクション112に入る前にフィードを予熱するために、反応器100の予熱セクションに導かれ得る。いくつかの実施形態では、高温蒸気は、フィードと混合され、分解のためのフィードの加熱を促進するために反応セクション112中に導かれ得る。
【0028】
1次TLE150からの流出物は2次交換器、たとえば、TLE160に導かれ得る。2次TLE160中で、流出物はさらに冷却され、蒸気が生成され得る。2次TLE160から生成された蒸気は、反応器の予熱セクションに導かれ、フィード105を予熱するために使用され得る。いくつかの実施形態では、2次TLE160から生成された蒸気は、反応セクション112の加熱を促進するために反応セクション112中に導かれ得る。いくつかの実施形態では、第1および第2の交換器(たとえば、1次TLE150および2次TLE160)に加えて追加の交換器(たとえば、3次またはそれ以上のTLE)が使用され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、TLEによって生成された蒸気を過熱するために、1次TLE150および/または2次TLE160とともに別個の電気加熱要素が使用され得る。TLE中で蒸気をあまり生成しないことによって、流出物中の追加の熱は反応混合物を予熱することに向けられ得る。したがって、反応系112への最大熱入力が分解熱に行き得(たとえば、熱の90%超)、少量のみが蒸気を加熱することに行き得る(最小量の熱が反応セクション112の壁を通って失われ得る)。対照的に、燃焼加熱器中の燃焼熱の10~40%が蒸気とボイラー供給水とを加熱することに行き得る。
【0030】
反応器100の予熱セクションが単一の反応器ユニット中の主反応セクションと一体に形成され得るか、または反応器の予熱セクションが主反応セクションから別個に設けられ得る。本開示の実施形態によれば、反応器へのフィードのすべての予熱は電気によって行われ得る。いくつかの実施形態では、希釈蒸気ヘッダとの共通の予熱され、混合されたフィードが採用され得る。予熱セクションは1つまたは複数の交換器を含み得る。いくつかの実施形態では、異なるフィード・タイプが別個の個々の交換器中で予熱され得る。たとえば、反応器100がエタンとナフサとガス油とを分解するためである場合、各フィードを予熱するために予熱セクション中の別個の交換器が使用され得る。
【0031】
(たとえば、反応セクション中の異なるコイルを通って異なるフィードを受け得る)反応器100とともに共通のフィード交換器(たとえば、TLE150)が使用され得るので、クロスオーバー温度(または反応セクションへの入口温度)は、うまく制御され、ラン開始(SOR)からラン終了(EOR)までほぼ一定であり得る。これは燃焼加熱器とは異なる。燃焼加熱器の輻射コイル中のコーキングによって、クロスオーバー温度は時間とともに増加し、プロセス性能に影響を及ぼす。したがって、EORにおいて冶金学的限界を超えないように、通常は、SORにおいて低いクロスオーバー温度が使用される。従来の燃焼加熱器中では、一定の温度が常に達成され得るようにフィードを予熱するために、フィード/流出物交換器および/または予備の電気加熱器が使用される。電気加熱器を用いると、反応セクションのための電気エネルギーを低減し、加熱器のコストを低減するために(所与のエチレン容量に対して輻射コイルの数が少ない)、最初から高いクロスオーバー温度を使用することができる。
【0032】
フィード/流出物交換器のみが使用され、フィードのための追加の予熱器が設置されないときは、1次(反応器)電気加熱器110によって追加の熱も供給され得る。加熱器110は、予熱動作のための熱を供給するように設計され、構成され得る。
【0033】
単に本明細書で開示される実施形態のより良い理解を与えるために、
図1に示されたものなど、本開示の実施形態による反応器のための異なる可能なパラメータの例を以下に示す。しかしながら、本開示の範囲内であれば他のパラメータが使用され得る。
【0034】
反応器100の第1の例は、入口管についての約1インチから3インチまでにわたる内径(ID)と、マルチパス・コイルの出口管についての約2インチから4インチまでにわたる内径と、20ftと50ftとの間の長さとを有し、100個と200個との間の管を含んでいる輻射コイルと、約2インチから8インチまでにわたるIDと、約20ftから30ftまでにわたる長さとを有し、40個と50個との間の管を有する線形TLEとを含み得る。マルチパス・コイルの場合、入口管直径および出口管直径は最大8インチまたはそれ以上になり得、全長は500ftまたはそれ以上になり得る。
【0035】
第1の例示的な反応器100は以下の動作条件を有し得る。
【0036】
ナフサ・フィード:S.G=0.703、P/N/A、COP(コイル出口圧力):30psia、S/O=0.5、供給量=8000動作時間において95026lb/h、C2H4=29.0重量%、C3H6=13.5重量%、COT(コイル出口温度)=1596°F(869℃)、およびTLE出口=1100°F(593℃)。
【0037】
4つの輻射コイル管が(たとえば、
図1に示されているように)線形TLEに組み合わせられ、急冷され得る。反応が有する収率を維持するために、反応出力は急速に急冷され、蒸気発生が使用され得る。飽和した超高圧(SHP)蒸気が生成され得る。従来低いTLE出口温度を与えるようにTLEを設計することによって、フィードを予熱するためのデューティの量は低減され得る。したがって、極めて低いTLE出口温度の代わりに、より高い出口温度(たとえば、1000~1200°F)が好ましいことがある。より高い出口温度でも、反応は依然として本質的に急冷され得る。流出物中で利用可能な熱は、依然として高いことがあるが、比較的高い(1000~1200°F)こともあるクロスオーバー状態までフィードを加熱するために十分でないことがある。プロセス最適化のために、加熱器流出物が(収率に影響を及ぼし得る)より高い温度(たとえば、1200°F超)まで冷却されない限り、または、クロスオーバー温度が(輻射コイル・デューティを増加させ得る)より低い温度に設定される場合、TLE流出物はこのサービスのために使用されないことがある。いくつかの実施形態では、プロセス最適化なしにフィードをクロスオーバー温度まで予熱するために、追加の電気加熱器が使用され得る。
【0038】
反応器の構成は、反応熱を供給する輻射電気加熱器と、後続の、SHP飽和蒸気を生成するTLEとを含み得る。流出物中に残されたエネルギーは、シェル・アンド・チューブ(shell and tube)交換器中のフィード(たとえば、ナフサ・フィード)および/または希釈蒸気および/または混合フィード(たとえば、ナフサ+希釈蒸気)を予熱するために使用され得る。温度手法を維持するために、フィードをクロスオーバー温度まで予熱するために追加の電気加熱器が使用され得る。ナフサ・フィード・ヘッダまたは炭化水素フィード・ヘッダの代わりに、他の炭化水素(HC)+希釈蒸気(DS)混合ストリーム・ヘッダ(高温)が使用され得る。コイルのグループ(または電気加熱器)への流量を制御するために高温弁が使用され得る。個々の管への流量は流量ベンチュリ(たとえば、
図1に示された124)を介して分配され得る。異なるフィードのために交換器が使用され得る。たとえば、ナフサのための1つの交換器と、ガス・フィードのための1つの交換器とがプラント全体のために十分であり得る。
【0039】
交換器(たとえば、2次TLE160)からの流出物は、ガソリン分別器170に入る前に、急冷油を用いてさらに約200℃まで急冷され得る。
【0040】
動作オプション-1
高いTLE出口温度(約1100°F)をもつ低いクロスオーバー温度(約1000°F)。フィード混合物(HC+DS)を加熱するために2次TLE160が使用されるとき、少なくとも100°Fの差があり得、シェル・アンド・チューブ交換器設計が可能である。2次TLE160中の管側とシェル側とにおいてほぼ等しい流れがあることがあり、したがって、流出物側における温度低下は、シェル側において達する温度にほぼ等しくなり得る。流出物は350℃(662°F)まで冷却され得る。したがって、ナフサ+DSフィード混合物は、外部手段のみを使用して300℃(572°F)まで加熱され得る。各電気加熱器110のために別の電気予熱器の代わりに共通のフィード予熱器を使用することができる。1次TLE150出口温度を最適化することによって、別個の電気予熱器をなくすことができる。ナフサ+DS混合物を予熱するために他の手段による過熱希釈を使用することもできる。ナフサ・フィードへの主な熱負荷はナフサ気化デューティである。ナフサを気化させるために急冷油または低圧または中圧蒸気のような他のソースを使用すると、別の電気加熱器を回避することができる。
【0041】
動作オプション-2
反応器100は、高いクロスオーバー温度および低いTLE出口温度で動作し得、輻射デューティが他の動作オプションと比較して最も低くなり得る。低いTLE出口温度は、(たとえば、1次TLE150を使用して)1つの段、または(たとえば、1次および2次TLE150、160を使用して)2つの段において達成され得る。両方の段において、SHP蒸気を発生させることができる。いくつかの実施形態では、(高速急冷の場合)蒸気発生のために1次TLE150のみが使用され得る。いくつかの実施形態では、HC+DS混合物を予熱するために、(煙道ガスの代わりに流出物を用いて加熱する、燃焼加熱器対流セクション中の下方混合予熱(lower mixed preheat)(LMP)コイルと同様に作動し得る)2次TLE160が使用され得る。
【0042】
動作オプション-3
他の追加とともに動作オプション1と動作オプション2との組合せが使用され得る。たとえば、希釈蒸気が異なる電気加熱器中で過熱され得、過熱された希釈蒸気は、炭化水素(および部分的な蒸気)をクロスオーバー温度まで予熱するために使用され得る。
【0043】
単一の電気加熱器中で分解反応を実行することは可能であるが、異なるフィードについて熱平衡(heat balance)がうまくいかないことがある。分解プロセスのために単一の電気加熱器を使用するとき、その電気加熱器の一部分が、フィードを予熱することに専用になり得る。フロー制御は、たとえば弁122と流量ベンチュリ124とを使用する、高温ストリームに基づき得る。したがって、信頼性およびコスト効果が改善されるように温度が選択され得る。予熱は、低速プロセスであり、加熱されるべきより多くの流路表面積を使用し得る。予熱のために別個の電気加熱器を使用する代わりに、予熱において使用するために流出物中のエネルギーを回収するためのシェル・アンド・チューブ交換器が使用され得る。たとえば、フィードは約140°Fで電気加熱器に入り得、流出物は(油急冷の前に)約650°Fで反応セクションを出得る。そのような温度では、共通のフィード予熱器とともに(他のソースからのエネルギーが含まれないときに)2つ以上の電気加熱器が使用され得る。
【0044】
【0045】
電気が自然の発生源(たとえば、太陽光または風)から生成されるとき、および生成の効率が重要でない場合、電気加熱器は従来の燃焼加熱器よりも50%効率的であり得る。しかしながら、熱源のための天然ガス/燃料油を用いて電気を生成しなければならないとき、電気加熱は経済的でないことがある。
【0046】
電力グリッド
本開示の実施形態による電気加熱器を使用する分解プロセスは大量の電力を消費し得るので、電気損失をできる限り低減することが有利であり得る。たとえば、電気が発電所から最小の損失で高電圧でサイトにおいて利用可能であると仮定したとき、高電圧を用いる機器製造には依然として制限があり得る。たいていの国は、(たとえば、サブステーションからサブステーションまで)長距離の場合、66KV伝送線路を使用するが、消費者にとって3000V~11000Vの電力が利用可能であり得る。エチレン産業において、IDファンは大いに電気を消費するものである。たいていの国は6000~6600Vを使用する(たとえば、タイのPTTPE、マレーシアのPetronas)。11KVよりも高い場合、コロナ放電を考慮するべきである。上記の計算は、約50MWの電力が消費の最小量であり得ることを示すが、100MWの場合、以下の計算が示される。より高い容量の電気加熱器の場合または複数の電気加熱器の場合、より高い量が考慮され得る。
【0047】
【0048】
約250~440Vの低電圧は、導体(ケーブル)中の過大な電力損失なしに使用されないことがある。電流要件は非常に高くなり得、6000V以上を使用することが好ましい。ケーブルが変圧器から50mであり、厚さ20mmであると仮定すると、抵抗は極めて小さく、たとえば、0.001オーム以下になり得る。
【0049】
制御
燃焼加熱器と比較して、電気加熱は、電力を調整することによって正確に制御され得る。電力を調整するために電圧調整器が使用され得る。しかしながら、高電力の場合、電力損失は、大きくなることがあり、実際的でないことがある。そのような場合、全体的な電気加熱器制御よりも個々のコイル制御のほうが好ましいことがある。すなわち、各コイル(または管のグループ)への電力が制御され得る。また、電力をセグメント化することによって、温度分布が維持され得る。たとえば、長さ45ftのコイルは5つのセクションとしてセグメント化され得る。各セクションへの電力は(オンまたはオフ)制御され得、これは、異なるコイル中の異なる重度、同じ加熱器の異なるコイル中の同時分解およびデコーキングなどを可能にし得る。
【0050】
他の態様
一般に、従来のエチレン・プラントでは、液体フィード・ヘッダおよびガス・ヘッダが備え付けられ、そこで液体フィードが気化させられる。回収セクション中で利用可能であるいくつかの低温熱源、たとえば、ナフサ+DS(0.2w/w)フィードを見つけることが可能である。このシナリオでは、電気加熱器が使用される場合、1つの電気加熱器がプラント全体のために使用され得る。同様に、希釈蒸気が過熱され、プラント中のすべての電気加熱器に供給され得る。これに似た手法は、分解のために必要とされる電気加熱器の総数を低減し得る。
【0051】
上記の例ではシングル・パス・コイル構成について考えているが、他のタイプのコイル構成が使用され得る。他のコイル構成は、SRT-1(蛇行コイル)、SRT III(4流コイル)、SRT V、VI、またはVII(複数の入口と複数の出口とをもつ2流コイル)、Uコイル(1つの出口をもつ1つの入口)、Yコイル(1つの出口をもつ2つの入口)および他の構成など、マルチパス・コイルを含み得る。異なるタイプの加熱器コイル設計が輻射ボックス内で設置されないまたは動作させられないことがある従来の燃焼加熱器とは対照的に、本開示の実施形態による電気加熱器は、SRT-1およびSRT VI加熱器コイル設計を含む、複数の異なる加熱器コイル設計を含み得る。
【0052】
コイルは、セラミック材料、または炭素鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、Cr-Mo鋼、他の合金鋼、およびニッケル基合金などの合金を含む、金属材料から製造され得る。セラミック管を使用するときは、比較的短い滞留時間を使用することができる(たとえば、金属管を用いると、950℃よりも高いガス温度は困難であり得る)。
図3は、滞留時間に応じた予想されるエチレン収率およびCOTのグラフを示す。
【0053】
本開示の電気加熱器を使用すると高温が可能であるので、蒸気のみのデコーキングが使用され得る。個々のコイルもデコーキングされ得る。信頼性を改善するために、蒸気/空気を用いた周期的デコーキングも使用され得る。
【0054】
本開示の実施形態によれば、電気加熱器に異なるフィードを供給するために単一のヘッダが使用され得る。1つまたは複数の電気加熱器にフィードを供給するために、液体ヘッダ(たとえば、ナフサ・ヘッダ)、ガス・ヘッダ(たとえば、エタン・ヘッダ)、および/または混合ストリーム・ヘッダ(たとえば、高温ナフサ+希釈蒸気ヘッダまたはエタン+希釈蒸気ヘッダ)が使用され得る。混合ストリーム・ヘッダを使用することによって、フィード予熱のために電気エネルギーの最大量が使用され得、蒸気発生のために電気エネルギーの最小量が使用され得る。
【0055】
電気加熱器中には、多数のコイルがあり得、それらのコイルは、異なるグループにグループ化されるか、または電気加熱器の単一の反応セクション中に一緒に構成され得る。コイル出口温度は、オレフィン生成を最適化し、所望のラン長さを達成するように制御され得る。そのような制御は、それ自体のフィード制御弁をもつコイルのグループを与えることによって、少なくとも部分的に実装され得る。単一の電気加熱器はコイルの1つのグループまたは多数のグループを有し得る。燃焼加熱器の場合とは異なり、電気加熱器は、絶縁体を配置し、および/または物理的構成において特定のコイルに電気エネルギーをそらすことによって、多数のサブセクションに分割され得る。電気加熱器についての電力消費は高くなり得る(たとえば、数十メガワットから数百メガワットにわたる)。したがって、電力グリッドは、コイルの各個々のグループに給電するために、またはコイルのいくつかのグループに給電するために分割され得る。コイルのグループ中の温度を制御するために、電力グリッドは、コイルの各グループに電力を供給するためにセグメント化され得る。いくつかの実施形態では、加熱コイルが絡合(intertwine)され得る。
【0056】
たとえば、垂直方向に構成された3グループ・システム(たとえば、l-2-3、l-2-3、l-2-3)を用いると、すべての3つのグループが電力グリッドから全電力を得るとき、最大の熱が解放され得る。グループ1または2または3のいずれかがアクティブであるとき、電力は総電力の1/3である。電力の一部の量を使用するとき、コイル全体にわたる均等な加熱が維持され得る。グループは垂直方向に構成され得、下部l/3または1/2が残部とは異なる電力を有することができる。いくつかの実施形態では、コイルのグループが水平方向に構成され得る。完全デコーキングまでの完全分解のためのデューティは正確に制御され得る。さらに、電気加熱器を用いて分割分解が達成され得る。コイルの2つの隣接するグループは、各グループに与えられる異なる電力を有し得る。
【0057】
電気加熱器を有する反応器中の流出物は、蒸気を発生させることによって急速に冷却され得る。流出物出口温度は、反応を急冷することも可能でありながら、蒸気生成を低減するように選定され得る。フィードを予熱するための追加の加熱器が必要とされることがないように、高温フィード混合物(たとえば、混合炭化水素および希釈蒸気フィード)を予熱するために、流出物中の過剰なエネルギーが使用され得る。低温フィードの場合、すでに発生した蒸気が使用され得る。そのようにして、供給された電気エネルギーのより高い部分が分解プロセスのために使用され得る。
【0058】
方法
分解プロセスでは、反応が起こるように、フィード混合物がある温度レベル(反応温度)まで加熱され得る。従来の燃焼加熱器では、煙道ガス中のエネルギーが使用され得、高圧蒸気を発生させるために追加のエネルギーが使用され得る。しかしながら、電気加熱器では、熱エネルギーを反応からの流出物と交換することによってフィードが予熱され得る。(すべての圧縮機が電力によって動作するときに、回収セクション中で使用され得るか、または電気を元通り発生させるか、または他のプロセスストリームを予熱するために使用され得る)高圧蒸気を発生させるために、電気加熱器反応器を用いて最小量のエネルギーが使用され得る。電気加熱器からの流出物は、熱分解反応を減速させるために十分なレベルまで急速に急冷され得る。急冷/出口温度はフィードのタイプに応じて決定され得る。たとえば、エタンを分解するとき、出口温度はおよそ700~750℃であり得る(たとえば、蒸気を発生させることによって、反応器流出物は約700℃まで冷却される)。管状交換器中で熱をフィードストリーム(たとえば、エタンおよび希釈蒸気)と交換することによって、流出物のさらなる冷却が達成され得る。ナフサ分解器の場合、出口温度は600℃と700℃との間であり得、これは、燃焼加熱器を使用するときの出口温度よりも高い。
【0059】
いくつかの実施形態では、反応器の他のエリアにおいて使用され得る、より多くの蒸気を発生させるために、出口温度が下げられ得る。たとえば、エタンの場合、反応器の移送ライン交換器(TLE)セクション中で高圧蒸気を発生させるために、350℃から450℃までの出口温度が選択され得る。ナフサ分解の場合、蒸気を発生させるために、350℃から525℃までの出口温度が選択され得る。本開示の実施形態による電気加熱器の場合、高圧蒸気発生のために比較的小型の移送ライン交換器(高圧交換器)が使用され得る。比較的小型のTLEを使用するときは、線形交換器を使用することができ、さらなる冷却のために流出物を一体化させることができる。線形交換器の代わりに、従来の交換器を使用することもできる。
【0060】
本開示の電気加熱器とともに他の交換器(2次および/または3次)が使用され得、フィードは低圧交換器を使用して流出物と交換され得る。燃焼加熱器では、1次交換器を用いて蒸気を発生させた後に、(ファウリング(fouling)傾向が低いエタンおよびプロパンのような)いくつかのフィードのためにのみ2次交換器が使用され得る。しかしながら、本開示の実施形態による電気加熱器を用いると、すべてのフィード(気体フィードおよび液体フィード)が2次交換器を使用し得る。これらの2次交換器は、電気加熱器と対応するように個々の反応器とともに設置され得るか、または各タイプのフィードと対応するように全体的なプラント設計にしたがって設置され得る。
【0061】
たとえば、プラントは、複数の従来の燃焼加熱器に導かれるエタン・フィードとナフサ・フィードとを有し得、ここでは、例示の目的で、燃焼加熱器のうちの2つがエタンを分解することができ、燃焼加熱器のうちの5つがナフサを分解し、1つの予備の燃焼加熱器がいずれか1つを分解することができる。そのような例では、各エタン燃焼加熱器は1つの2次TLEを有し得るが、ナフサ(および予備の)燃焼加熱器は2次TLEを有しないことがある。比較プラントにおける反応器の場合、本開示の実施形態による電気加熱器を使用するとき、すべてのエタン電気加熱器はグループ化され得、エタンは(随意に希釈蒸気とともに)、エタン電気加熱器のためにエタン(+希釈蒸気)フィードを加熱する1つまたは複数の2次交換器に送られ得る。すべてのナフサ電気加熱器は、グループ化され得、熱をナフサ(随意に混合希釈蒸気)フィードと交換し得る。2次交換器は、個々の加熱器ごとに(たとえば、多数の小型交換器)またはフィードごとに(たとえば、各フィード・タイプについて少数の大型交換器)構成され得る。いくつかの実施形態では、個々の加熱器ごとに設計するときは、コストにより予備の2次交換器が備え付けられないことがあるが、フィードごとに設計するときは、単一の予備の2次交換器がプラント全体をサービスし得るので、予備の2次交換器が備え付けられ得る。
【0062】
さらに、本明細書で開示する電気加熱器を使用すると設計の単純化が達成され得、プラント中のすべての1次TLE(たとえば、エタン分解加熱器またはナフサ分解加熱器のための高温(600℃超)TLE)からの流出物を一体化した後に、フィード混合物を予熱するために混合流出物を使用することができる。この場合、全体の一体化流出物を1つまたは2つまたはそれより多いストリームに分割することができる。1つの流出物ストリームは、エタンを予熱することに行き得、別の流出物ストリームは、ナフサ・フィードを予熱するために行き得る。2次交換器はまた、エタン・フィードとナフサ・フィードの両方を単一の交換器中で単独で予熱するように設計され得る。これらの条件の下で、予備の2次交換器を与えることは、コストを著しく増加させないことがあるが、操業(on-stream)時間を著しく増加させることがある。現在、1次TLEのみを燃焼加熱器中で輻射コイルとともに稼働中に清浄化することができるが、2次交換器は機械的に清浄化される(より長い時間、したがって生成における損失)。予備の2次交換器を与えることによって、操業時間は増加する(流出物ストリームは必要な場所に導かれ続け得るが、他のストリーム・ラインは清浄化され得る)。
【0063】
本開示の実施形態による電気加熱器は、異なるタイプの炭化水素分解プロセスのために使用され得る。たとえば、本明細書で開示する電気加熱器はオレフィン生成のための熱分解プロセスのために使用され得る。さらに、オレフィン生成に加えて、本明細書で説明するような電気加熱器は、触媒反応器のために、たとえば、メタン改質器、またはプロパン脱水素のような脱水素反応器のために使用され得る。
【0064】
分解のために、異なる炭化水素フィードが本開示の電気加熱器中に供給され得る。たとえば、炭化水素フィードは、C2、C3、C4、C5、…、残油まで、および全原油およびそれらの何らかの部分/画分または混合物、凝縮物、および広い沸騰曲線と500℃超のエンド・ポイントとをもつ炭化水素を含み得る。そのような炭化水素混合物は、とりわけ、全原油、バージン原油、水素処理原油、軽油、減圧軽油、灯油、ジェット燃料、ディーゼル、ケロシン、ガソリン、合成ナフサ、ラフィネート(raffinate)改質油、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)液体、フィッシャー・トロプシュ気体、天然ガソリン、蒸留物、バージン・ナフサ、天然ガス凝縮物、常圧パイプスチル・ボトム、ボトムを含む真空パイプスチル・ストリーム、軽油凝縮物までの広沸点領域のナフサ、精油所からの重質非バージン炭化水素ストリーム、減圧軽油、重質軽油、常圧残留物、水素添加分解装置(hydrocracker)ワックス、およびフィッシャー・トロプシュ・ワックスを含み得る。いくつかの実施形態では、炭化水素混合物は、ナフサ領域のまたはより軽質のものから減圧軽油領域のまたはより重質のものまで沸騰する炭化水素を含み得る。必要な場合、これらのフィードは、本明細書で開示するプロセスの上流で、硫黄、窒素、金属およびコンラドソン炭素(Conradson Carbon)の部分を除去するために前処理され得る。
【0065】
図2は、本明細書で開示する実施形態による電気加熱器を使用して炭化水素フィードを熱分解するために使用され得るプロセス200のブロックフロー図を示す。図示のように、蒸気など、希釈ストリーム214が炭化水素フィード210に追加され、交換器220中で流出物212を用いて予熱され得る。これは1つまたは複数の交換器中で行われ得る。追加の予熱は、別個の加熱器中で行われるか、または主電気加熱器と組み合わせられ得る。交換器および予熱器は、特に、単一の加熱器のために設計され得るか、または一般的に、プラント全体においてあまねく作動するように設計され得る。さらに、交換器と加熱器とは一緒に作動するように設計され得、それは全体的な経済性において考慮され得る。
【0066】
フィード混合物216が、クロスオーバー温度(TXO)としても知られる所望の入口温度まで予熱されると、予熱されたフィード混合物216は、次いで電気加熱器230に入り得る。電気加熱器はフィード混合物216を反応温度まで過熱し得、分解反応は電気加熱器230のコイル(たとえば、短滞留時間(short residence time)(SRT)コイル)中で進み得る。各コイルへの流れは制御弁(たとえば、高温弁)とベンチュリとによって分配され得る。電気加熱器230中に入力される熱は、電気入力を調整することによって操作され得る。
【0067】
電気加熱器の反応セクション中で(コイル中で)、分解のプロセス性能は、反応が従来の燃焼加熱器中で起こった場合と同じであり得る。言い換えれば、従来の燃焼加熱器と本開示の実施形態による電気加熱器との反応セクションにおいて、プロセス性能における顕著な差は検出されないことがある。したがって、本開示の電気加熱器は、燃焼加熱器と同じまたは同様のレベルの熱分解性能を与える反応セクションを有し得る。個々のコイルの均等な円周加熱を与える実施形態など、いくつかの実施形態では、性能および選択性は、改善され得、一部は、燃焼加熱に関連するホット・スポットの数または温度の減少により得る。
【0068】
電気加熱器設計に応じて、コイル設計を改変することができる。たとえば、シングル・パス設計またはマルチパス直並列の構成が使用され得る。いくつかの実施形態では、電気加熱器中のコイル設計は燃焼加熱器中のコイル設計と同じ(たとえば、SRT-I、SRT-II、SRT-III、SRT-V、SRT-VI、およびSRT-VII燃焼加熱器を含む、Lummus TechnologyによるSRT(登録商標)炉の場合と同じコイル設計)であり得る。いくつかの実施形態では、単一の電気加熱器中で異なるコイル構成が使用され得る。たとえば、蛇行コイルおよびマルチパス分割設計コイルが単一の電気加熱器の反応セクション中に構成され、動作させられ得る。
【0069】
熱分解の重度は、電気加熱器230からの出力218の出口温度を監視することと、電気加熱器230に入力される熱を調整することとによって調整され得る。さらに、電気加熱器230中のコイルの表皮温度が、燃焼加熱器中で使用されるデバイスおよび方法を使用して測定および/または予測され得る。たとえば、コーキングの第1の段、腐食、加熱器中の過大および過小平衡熱負荷、およびコイルの寿命の予測を決定する際に使用され得る、電気加熱器コイルの表皮温度を監視するために、たとえば、走査赤外線カメラ、焦点面アレイ検出器を用いた高解像度撮像、熱電対、および温度測定点の選択が使用され得る。
【0070】
電気加熱器230からの出力218は交換器(たとえば、TLE)240に導かれ得、そこで、出力218は、電気加熱器230の反応セクションを出た後に急速に冷却(急冷)され得る。出力218を急冷することは、2次反応を防ぐために、および出力からのガス組成を安定させるために行われ得る。従来の燃焼加熱器とともに使用される同じタイプのTLEが本開示の電気加熱器230とともに使用され得る。たとえば、TLE240中の分解されたガス出力218の冷却は、高圧ボイラー供給水(BFW)242の気化によって実行され得、BFW242は、分解されたガス出力218を冷却するためにTLE管の周りにもたらされ得、気化して高圧蒸気244を発生させる。(たとえば、重質軽油フィードを処理する際に)液体フィードを分解するとき、分解されたガスが分解されたガスの重質エンドの露点より低く冷却されたときにTLE冷却管中で起こり得る高速ファウリングを抑制するために、直接噴射急冷点が与えられ得る。
【0071】
TLE240から出る流出物212は、分析され、流出物のタイプに応じて異なる用途のために異なる経路に導かれ得る。たとえば、流出物212は、加熱され、追加の分解を受け得る。いくつかの実施形態では、流出物は、窒素、硫黄、金属、および炭化水素混合物中のコンラドソン炭素のうちの少なくとも1つの成分を還元するために水素処理され得る。結合流出物分析のために従来の燃焼加熱器とともに使用されるものと同じタイプの機器およびプロセスが、本開示の実施形態による電気加熱器230とともに使用され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、従来の燃焼加熱器を使用するときのTLE出口温度と比較して、本開示の電気加熱器を使用するとき、流出物は比較的高いTLE出口温度まで冷却され得る。たとえば、従来の燃焼加熱器を使用するとき、流出物は(分解サイクルの開始時に)350℃~400℃まで冷却され、800~850℃のコイル出口温度から冷却することによって高圧蒸気(たとえば、115バー)を発生させ得る。本開示の電気加熱器を使用するときなど、最小の蒸気が必要とされるとき、TLE240出口温度を600~650℃まで上げることができる。より低いTLE出口温度では、熱分解反応速度が遅くなることがあり、それにより、フィードを予熱するために使用するエネルギーが少なくなることがある。したがって、より低いTLE出口温度は、電気加熱器中の電気消費を低減し得るが、蒸気生成をも低減する。異なる熱分解プロセスのために最適な出口温度/蒸気生成が決定され得る。以下で説明のために、異なるTLE出口温度を使用する例について考える。
【0073】
最小の蒸気について考えるとき、フィード予熱をなくし、別個の加熱器中でフィードを反応温度まで加熱することが可能である。一般に、ガス燃焼加熱器では、ナフサのための加熱器クロスオーバー温度は1100~1175°F(593~635℃)であり、エタンのための加熱器クロスオーバー温度は1250~1300°F(677~704℃)である。流出物加熱のみで、フィードを予熱するこのレベルを達成することはできない。クロスオーバー温度を、ナフサの場合は900°F(482℃)まで、エタンの場合は1000°F(538℃)まで下げることによって、別個の電気予熱器が必要とされないことがある。残念ながら、クロスオーバー温度を下げるために、輻射コイル中の管の表皮温度が上昇し、ラン長さが短縮されることがある。妥当なラン長さの場合、より多くのコイルが必要になる。液体フィードの場合、電気予熱器をなくすことは難しい。ナフサ流出物は、凝縮し、ラインをファウリングするので、ナフサ流出物は350℃または300℃より低く冷却されないことがある。しかしながら、エタン流出物は200℃まで冷却され得、そのエンタルピーは、エタン・フィードまたはエタン/希釈蒸気混合フィードを予熱するために使用され得る。このプロセスは2次TLEを使用して行われ得、2次TLEは従来の燃焼加熱器または電気加熱器とともに使用され得る。さらに、従来のデコーキングおよびフィード切替えが本開示の実施形態による電気加熱器とともに使用され得る。たとえば、本明細書で開示する電気加熱器中のコイルをデコーキングするために蒸気が使用され得る。
【0074】
従来の燃焼加熱器とは異なり、本開示の実施形態による電気加熱器は対流セクションを有しない。電気加熱器では、たとえば、1~10個または20個(または実際に実現可能な個数)のコイルのグループが電気加熱器を形成し得る。コイルおよび電気加熱器のサイズはデコーキング能力によって規定され得る。
【0075】
エチレン生成プラントでは1つまたは複数の電気加熱器が使用され得る。エチレン生成プラントは、1800KTAを優に超えるエチレン生成能力、および1500KTAのエチレンよりも大きい平均エチレン生成能力を有し得る。そのような生成を達成するために、複数の電気加熱器(たとえば、6つまたは7つの動作可能な電気加熱器および予備の電気加熱器)がプラントにおいて使用され得る。プラント中の各電気加熱器は、エチレン生成を最適化するように設計され得る。たとえば、1000KTA(年あたりキロトン)のエチレンを生成することが可能なプラントの場合、コイルの5つのグループ+1つの予備のグループがそれぞれ電気加熱器を形成する(コイルの各グループ/電気加熱器は200KTAサイズを有し得る)。別の例として、2000KTAプラントは、それぞれ電気加熱器を形成するコイルの5つのグループ+1つの予備のグループを含み得る(各電気加熱器は400KTAサイズを有し得る)。単一の電気加熱器は、200KTAまたはそれを超えるエチレン、たとえば、250KTAと300KTAとの間のエチレンを生成し得る。いくつかの実施形態では、200KTAのエチレンを生成する電気加熱器は、65MWから130MWまでの電力消費を有し得る。いくつかの実施形態では、1800KTAのエチレンを生成する電気加熱器は1170MWもの総電力を消費し得る。
【0076】
電気加熱システム(たとえば、抵抗、静電誘導、および/または静電容量)に応じて、加熱は、各コイルまたはコイルの各グループに供給され得、たとえば、電気加熱器製造業者に依存し得る。たとえば、いくつかの実施形態では、電気加熱器(たとえば、SRT-VI(登録商標)加熱器におけるように構成されたコイルを含んでいる電気加熱器)は、たとえば、フィード-1、フィード-2などの複数のフィードのための共通のパイプを有し得る(たとえば、フィード-1はナフサであり得、フィード-2は液化石油ガス(LPG)であり得、フィード-3はエタンであり得るなど)。フィードは、熱分解反応がそこで実行される電気加熱器の外側で予熱され得る。(蒸気を発生させる)コイルのグループおよびTLEは、本開示の実施形態による電気加熱器を形成し得、デコーキングまたは修理のために分離され得る。
【0077】
燃焼加熱器では、大容量加熱器はツイン・セル輻射ボックス設計を使用し得、ツイン・セル輻射ボックス設計は共通の対流セクション中に2つの輻射セルを含み得る。シングル・セル設計の燃焼加熱器は200KTA能力を構築するために使用され得る。電気加熱器は従来の燃焼加熱器におけるような対流セクションを有しないので、電気加熱器と燃焼加熱器との比較のための基礎として200KTAエチレン生成が使用され得る。しかしながら、電気加熱器からのエチレン生成は200KTAよりも少なくまたは多くなり得る(たとえば、約170KTAから400KTA超まで)。200KTAのエチレンに基づくナフサ分解およびエタン分解のための電気加熱器設計の例を本明細書で与える。簡単のために、高い重度における全領域のナフサおよび65%変換における純エタンについて考えた。さらに、電気加熱器中で異なるコイル構成(たとえば、Lummus TechnologyによるSRT-I、SRT-II、SRT-III、SRT-V、SRT-VIまたはSRT-VIIにおいて使用されるコイル構成、またはシングル・パス・コイル構成)が使用され得るが、電気加熱器設計の例は、長いラン長さをもつ高選択性ツーパス・コイルである、Lummus TechnologyによるSRT-VI燃焼加熱器中のコイル構成に一致するコイル構成を使用して提示される。このコイル構成をもつ電気加熱器は、エチレンを生成するためにナフサ分解とエタン分解の両方のために使用することができる。25psiaの標準コイル出口圧力が使用され得る。様々なフィードのために0.1~1.5w/wの蒸気対油比(S/O)が使用され得、たとえば、ナフサ分解のために0.5w/wが使用され得、エタン分解のために0.3w/wが使用され得る。電気加熱器は少なくとも45日間動作し得る。
【0078】
ナフサ特性は、0.707の比重(SG)と、91°F(33℃)の初期沸点(IBP)と、189の50v%と、348°F(176℃)の最終沸点(FBP)、74.6重量%のパラフィン、16.65重量%のナフテン、8.75重量%の芳香族化合物、および0.83の干渉対雑音電力比(PのI/N比)とを含む。電気加熱器中でエタンを熱分解するためには100%の純エタンが使用され得る。
【0079】
下記に与える表3は、エチレンを生成するためにナフサおよびエタンを熱分解することが可能な電気加熱器のための例示的な設計および動作パラメータを与える。ケース1はナフサ加熱器設計に対応し、ケース2はエタン加熱器設計に対応する。
【0080】
【0081】
ケース1Aおよびケース2Aは、(蒸気生成を最大にするために)高いクロスオーバー温度および低いTLE出口温度をもつ条件に対応し、すべてのデューティは電気加熱器によって供給され得る。これは最大量の蒸気を生成する。ケース1Bおよびケース2Bはより低い量の蒸気を生成する。流出物中の利用可能な熱は、フィードを最大限に予熱するために使用され得る。いくつかのフィードの場合、別個の電気加熱器を使用せずに、反応混合物のクロスオーバー温度までの最大予熱が可能である。いくつかの実施形態では、(約500℃まで)蒸気を過熱するために別個の電気加熱器が使用され得る。
【0082】
高いクロスオーバー温度(または予熱温度)を用いると、輻射コイル表面積が縮小され得、それにより、電気加熱器が少なくとも45日間動作することが可能になり得る。たとえば、ケース1Aおよびケース2Aに示されているように、SRT-VI構成中に構成された8つのコイルをもつ電気加熱器は200KTA能力を達成し得る。より低いクロスオーバー温度を用いると、同じ能力を達成するためにより多くのコイルが使用されることがある。たとえば、同じ能力を達成するために、ケース1Aおよびケース2Aでは、8つのコイルが使用され、ケース1Bおよびケース2Bでは、9つのコイルが使用される。より多くのコイルが追加されるとき、フィードのために別個の電気加熱器を使用することなしに、さらに低いクロスオーバー温度を使用することができる。
【0083】
エタン分解の場合、(高いエチレン収率により)炭化水素供給量が低いので、伝熱係数は低い。最大の利益を得るために、わずかに異なるSRT-VI設計がエタン分解のために考えられ得る。しかしながら、Aケースの場合、どんなコイル設計も考えられ、Bケースは、Aケースよりも1つ多いコイルを用いて同様に設計され得る。
【0084】
以下に与える表4は、ナフサおよびエタンを熱分解することが可能な電気加熱器のための設計および動作パラメータの別の例を与える。
【0085】
【0086】
ナフサ加熱器は、エタン分解加熱器の電力よりも多くの電力を利用し得る。たとえば、ナフサ加熱器中の反応セクションだけで約70MW/加熱器の最小電力消費量を有し得るが、エタン加熱器の反応セクションは約52MW/加熱器の最小電力消費量を有し得る。予熱が分解の前に実行されるとき、使用される総電力は、反応セクションだけの電力消費量よりも10~20%多くなり得る。この計算では、電気加熱器について90%の効率が仮定され得るが、95%超の効率が可能であり得る。たとえば、電気加熱では、反応のために電気エネルギーの90~98%が使用され得る。したがって、反応のために使用されなかった熱の回収はほとんどないかまったくないことがある。反応のために十分なだけのエネルギーの量のみが電気加熱器によって供給され得るので、過剰または浪費エネルギー使用は実質的にない。
【0087】
さらに、本開示の電気加熱器には対流セクションおよびバーナーがないので、本開示の電気加熱器は従来の燃焼加熱器レイアウトとは異なって構成され得る。したがって、燃焼加熱器と比較して、本開示の電気加熱器を使用する反応器のプロット・スペースは低減され得る。
【0088】
電気加熱器はエチレンのトンあたり2600KWから5200KWまでの電力要件を有し得る。1800KTAのエチレンを生成するとき、電気加熱器は、エタンを熱分解するために約580MWを使用し、ナフサを熱分解するときは1170MWも使用し得る。分解プロセスにおいて使用される蒸気を過熱するために、および回収セクションのために追加のエネルギーが使用され得る。たとえば、(電気加熱器と予熱構成要素と回収構成要素とを含む)プラント全体のために、エタン分解器の場合は約600MWの電力が使用され得、ナフサ分解器の場合は約1300MWの電力が使用され得る。電気加熱器(および/または予熱および回収のための支援構成要素)に電力を供給するために使用されるエネルギー源は、たとえば、原子力、水力、太陽光、風力、または再生可能な方法であり得る。いくつかの実施形態では、電気加熱器プラントのための電気を生成するために化石燃料が使用され得る。しかしながら、発電のための化石燃料の使用は、電気加熱器を使用することの環境的利益を無効にし得る。さらに、電気加熱器中でまたは他の場所で余剰電気が使用されるとき、得られた余剰熱エネルギーは、(たとえば、発電器を使用して)変換されて電気に戻され得る。
【0089】
エチレンを生成するためにナフサを熱分解するときの電気加熱器の比エネルギーは、エチレンの約5700KW/T(キロワット/トン)以下であり得、エチレンを生成するためにエタンを熱分解するときの電気加熱器の比エネルギーはエチレンの約4200KW/T以下であり得る。加熱器中で蒸気を発生させないときは、回収セクションに電力供給するために追加のエネルギーが必要とされ得る。したがって、本開示の実施形態によれば、プラントにおいて使用され得る異なる熱分解プロセス、および/または熱的に分解され得る異なるフィードを考慮するために、予熱構成要素と電気加熱器と回収構成要素とを含むプラント全体にわたる電力使用があらかじめ計画され得る。
【0090】
本開示の実施形態によれば、プラント設計は始動状態の考慮をも含み得る。さらに、計画は、熱分解により起こる蒸気の発生および消費、たとえば、総エネルギー消費を一定量未満に低減するためにどの蒸気レベルを発生させるべきであるかを決定すること、およびプロセスストリームを用いた熱交換からの希釈蒸気の発生の考慮をも含み得る。たとえば、プラントの完全電化により、外部蒸気を最小値まで低減することができ、プラントが適切に構成されるときに、始動ボイラーが場合によっては無くされ得る。完全な蒸気バランスは、電気加熱器のための電力量を決定する前に決定され得る。たとえば、分解加熱器のエネルギー・バランスが分解の重度に著しい影響を及ぼさないように、希釈蒸気を過熱することができる。希釈蒸気は、フィードがそこで分解される同じ加熱器中で過熱され得るか、または希釈蒸気を別個の加熱器中で過熱することができる。一体のまたは別個の希釈蒸気加熱器の選択は利用可能なエネルギーに依存し得る。
【0091】
(フィードを熱分解するための電気加熱器と、回収セクションと、随意に予熱セクションとを含む)熱分解プラントを設計するための方法は、発生させられる蒸気の量、および熱分解プラントによって消費される蒸気の量を決定することと、フィードを熱分解するために熱分解プラントによって使用される電力の量を決定することと、熱分解プラントによって使用される電力の量を低減するために熱分解プラントの少なくとも1つのパラメータを調整することとを含み得る。熱分解プラントによって使用されるエネルギーの量を変更するために調整され得るパラメータは、電気加熱器へのフィードのクロスオーバー温度を下げること、フィードのクロスオーバー温度を下げるために少なくとも1つの追加のコイルを有するように電気加熱器を設計すること、回収セクションからの出口温度を上げること、回収セクションによって消費される蒸気の量を低減すること、予熱セクションによって消費される蒸気の量を増加させること、および上記で説明した他のことなどのうちの少なくとも1つから選択され得る。
【0092】
熱分解のために電気加熱器を使用することは、電気加熱器が(たとえば、鉄鉱石の溶融のために)他の産業において使用されるときよりも多い電力を熱分解のために必要とし得る。たとえば、他の産業における電気加熱器は数キロワット程度の最大電力消費量を有し得るが、炭化水素フィードを分解するために使用される、本明細書で開示する電気加熱器の電力消費量は数メガワット程度であり得る。したがって、本開示の方法は、選択されたフィードを熱分解することが依然として可能でありながら、最小量の電力を使用する熱分解プラントを設計することを含み得る。いくつかの実施形態では、電気加熱器はモジュール化され得、それにより、熱分解プロセスおよびフィードに応じた設計調整が可能になり得る。プラントを設計するときには吸着/吸収のような他の分離技法が検討され得る。深冷分離(cryogenic separation)の代替が利用可能であるとき、小規模の化学用オレフィンがこのルートで極めて魅力的であり得る。
【0093】
燃焼加熱器とは対照的に、電気加熱器は熱分解プロセス・ラン全体にわたって一定のクロスオーバー温度を維持し得る。さらに、燃焼加熱器とは異なり、電気加熱器は、低から高までの重度および低から高までのスループットに対して一定のクロスオーバー温度を維持し得る。
【0094】
さらに、本開示の電気加熱器は、煙道ガスを発生させず、したがって輻射セクションと流出物冷却セクションとのみを含み得る。したがって、電気加熱の効率は、一般に気体燃料加熱中に輻射デューティの35~45%が吸収される、燃焼加熱の効率をはるかに上回り得る。(電気加熱器が、気体燃料加熱中に吸収される輻射デューティを有しない場合に)熱損失を制御することによって、熱を発生させるために使用される電気エネルギーの95%超がプロセスにおいて吸収され得る。したがって、電気加熱器中の反応セクション・デューティは、燃焼加熱器と比較して比較的小さくなり得る。しかしながら、燃焼加熱器中で発生した煙道ガスは、反応混合物を必要とされる反応入口温度(クロスオーバー温度、TXO)まで予熱するために使用され得るが、電気加熱器は予熱のための煙道ガスを有しない。予熱煙道ガスを含む全体的な燃料効率(熱効率)は約94%になり得る。燃焼加熱器を使用するときは、バッテリーからの反応混合物を加熱することが、条件を反応条件に限定する場合でも、追加のエネルギーが煙道ガス中で利用可能である。煙道ガスは、高圧蒸気を発生させ、過熱するために使用され得、高圧蒸気は、圧縮機を駆動するために回収セクション中で使用され得る。輻射効率は低いが、燃料エネルギーの熱力学的利用率ははるかに高くなる。
【0095】
電気加熱では煙道ガスがないので、プロセスにおいて使用される熱の大部分は反応に行き得る。したがって、プロセス中に発生する蒸気の量は著しく低減され得る。蒸気発生は、(たとえば、加熱器の反応セクションに入る前にフィードを予熱するために)熱をリサイクルするための方法として分解プロセスにおいて使用され得、したがって、蒸気発生が低減されたときは、低減された蒸気の量を補償するために他の加熱オプションが使用され得る。たとえば、第2の電気加熱器を用いてフィードの追加の予熱が実行され得る。(たとえば、1つまたは複数の主反応加熱器、1つまたは複数の回収セクション(たとえば、交換器)、1つまたは複数の予熱セクション(たとえば、予熱加熱器)、および/または後処理機器などの)熱分解プラント全体が電気エネルギーを使用しているときは、予熱および反応加熱の最適化をより効率的な方法で行うことができる。たとえば、1つのプラント機器ユニットから(たとえば、主反応電気加熱器から)発生した熱は別のプラント機器ユニットに(たとえば、予熱セクションに)リサイクルされ得る。予熱の最適化はまた、フィードを予熱するためにおよび/または蒸気を発生させるために反応器流出物からの熱エネルギー(高温)が使用され得る、単一の電気加熱器のために行われ得る。
【0096】
現在、エタン分解器は、供給量と比較してかなりの量の蒸気を生成し得る(エタン・フィードの約2kgSHP過熱蒸気/Kg)。エタン加熱器もある種の予熱(2次TLE)を使用する。電気加熱器を使用するガス分解の場合、流出物を用いてフィードを可能な限り予熱することによって電気需要を低減することができる。外部反応混合物予熱のあるレベルは、電気加熱器を使用するときに行われ得、それは追加の電気加熱によって行われ得る。いくつかの状況の下では、これは主反応加熱器または別個の予熱器中に含まれ得る。電気加熱器のサイズおよび/またはコストは、(たとえば、主反応加熱器また別個の予熱器からの)予熱器エネルギーをソーシングする設計を最適化するために、電気需要に応じて検討され得る。
【0097】
電気加熱を用いると、加熱率が均等になり得、電気入力を操作することによって、入力される熱流束を調整することができる。最大金属温度はコイルの端部に近接して生じ得る。いくつかの加熱器設計では、シャドー・ファクタ(shadow factor)が無い。したがって、予想される最大管金属温度(TMT)は、電気加熱器では、燃焼加熱器で観測されるそれよりもかなり低くなり得る。これにより電気加熱器のコストを低減することができる。電気加熱器を使用することの他の利益は、たとえば、制御原理、プロット・スペース・モジュール化などを含み得る。
【0098】
本明細書で説明するように、電気加熱器は従来の燃焼加熱器に勝る利点を提供し得る。たとえば、電気加熱器では、わずかな損失のみを考慮に入れながら、反応のために必要とされるデューティのみが供給され得る(燃焼加熱器では、燃焼デューティの大部分が煙道ガス中で失われ得る)。さらに、電気加熱器からの反応器流出物は、フィードを予熱するために使用され得、それにより、反応器に供給される総デューティが低減される。電気加熱器はまた、(輻射セクションと対流セクションの両方を含む)燃焼加熱器と比較するとよりコンパクトになり得る。
【0099】
さらに、電気加熱器は、燃焼加熱器よりも制御された加熱を与え得る。たとえば、電気加熱は、燃焼加熱器による加熱よりも均等であり得、燃焼加熱器と比較すると、電気加熱器では加熱率をより良く制御することができる。さらに、オレフィンをはるかに選択的に生成することができるように、電気加熱器中の選択されたコイルが選択的に制御され得る(たとえば、単一のコイルまたはコイルのグループの制御された加熱)。
【0100】
電気加熱器を使用すると安全性も改善され得る。たいていの加熱器事故は、しばしば燃料安全性基準の不適当な扱いにより、始動および停止中に起こる。電気加熱器では燃料が使用されることがないので、燃料タイプの安全性に関する事故はなくなるか、または低減され得る。さらに、従来の加熱器と比較すると、本明細書で開示する実施形態による電気加熱器の構造は簡略化され得るので、安全性は、(たとえば、低い構造的高さおよび燃料の不使用により)地震の多い地域においておよび強風負荷においてそれほど懸念されないことがある。
【0101】
限られた数の実施形態に関して本開示を説明したが、本開示の恩恵を受ける当業者であれば、本明細書に記載されるような本開示の範囲を逸脱することなく他の実施形態を考案し得ることを認識するであろう。したがって、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】