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特表2023-548535インターロイキン36Rを標的とする抗体、その調製法と応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】インターロイキン36Rを標的とする抗体、その調製法と応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231110BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231110BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231110BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231110BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231110BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231110BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231110BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231110BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20231110BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231110BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231110BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231110BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231110BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231110BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C12N15/13
C12P21/08 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
C07K19/00
C07K14/725
C12N15/62 Z
C12N15/12
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61P17/06
G01N33/53 P
G01N33/543 501A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526875
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 CN2021128704
(87)【国際公開番号】W WO2022095926
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】202011213729.9
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522432620
【氏名又は名称】上海華奥泰生物藥業股▲フン▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522432619
【氏名又は名称】華博生物医藥技術(上海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馮 玉杰
(72)【発明者】
【氏名】于 海佳
(72)【発明者】
【氏名】韋 小越
(72)【発明者】
【氏名】彭 国媛
(72)【発明者】
【氏名】陳 時
(72)【発明者】
【氏名】瞿 麗麗
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA26
4C085AA27
4C085BB11
4C085CC23
4C085DD62
4H045AA11
4H045BA40
4H045BA41
4H045BA71
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本願はインターロイキン36Rを標的とする抗体、その調製法と応用を提供する。具体的には、本願は、高い親和性でIL-36Rに結合し、IL-36Rリガンド(α、β、γ)とIL-36Rとの結合を阻害し、IL-36Rリガンドによって活性化されるシグナル伝達経路を阻害することにより、IL-36関連疾患を治療および/または予防する高い親和性および高い生物学的活性を有するIL-36R抗体を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)
SEQ ID NO:3に示すCDR1、
SEQ ID NO:4に示すCDR2、および
SEQ ID NO:5に示すCDR3の3つの相補性決定領域CDRが含まれる重鎖可変領域、および/または
(2)
SEQ ID NO:6に示すCDR1’,
SEQ ID NO:7に示すCDR2’、および
SEQ ID NO:8に示すCDR3’の3つの相補性決定領域CDRが含まれる軽鎖可変領域を含むことを特徴とする抗体。
【請求項2】
動物抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはそれらの組み合わせから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体の重鎖可変領域配列はSEQ ID NO:1または9に示す通りであること、および/または
前記抗体の軽鎖可変領域配列はSEQ ID NO:2、10、11または12に示す通りであることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
(i)請求項1に記載の抗体、および
(ii)発現および/または精製を支援する任意に選ばれるタグ配列を含むことを特徴とする組換えタンパク質。
【請求項5】
モノクローナル抗体抗原結合領域のscFVセグメントが、IL-36Rに特異的に結合する結合領域であり、
前記scFvの重鎖可変領域には、
SEQ ID NO:3に示すCDR1、
SEQ ID NO:4に示すCDR2、および
SEQ ID NO:5に示すCDR3の3つの相補性決定領域CDRが含まれること、および/または
前記scFvの軽鎖可変領域には、
SEQ ID NO:6に示すCDR1’,
SEQ ID NO:7に示すCDR2’、および
SEQ ID NO:8に示すCDR3’の3つの相補性決定領域CDRが含まれることを特徴とするCAR構築物。
【請求項6】
請求項5に記載の外因性CAR構築物を発現することを特徴とする組み換え免疫細胞。
【請求項7】
(a)請求項1に記載の抗体である抗体部分、および
(b)測定可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれる結合部分を含むことを特徴とする抗体-薬物複合体。
【請求項8】
活性部分は請求項1に記載の抗体、請求項4に記載の組換えタンパク質、請求項5に記載のCAR構築物、請求項6に記載の免疫細胞、請求項7に記載の抗体-薬物複合体またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、前記活性成分は(a)測定試薬またはキット、および/または(b)IL-36関連疾患の予防および/または治療するための医薬品調製に使われることを特徴とする活性成分の用途。
【請求項9】
前記IL-36関連疾患には乾癬が含まれることを特徴とする請求項8に記載の用途。
【請求項10】
(i)請求項1に記載の抗体、請求項4に記載の組換えタンパク質、請求項5に記載のCAR構築物、請求項6に記載の免疫細胞、請求項7に記載の抗体-薬物複合体、またはそれらの組み合わせから選ばれる活性成分、および
(ii)薬学的に許容されるベクターが含まれる医薬組成物。
【請求項11】
ポリヌクレオチドコードが請求項1に記載の抗体、請求項4に記載の組換えタンパク質、または請求項5に記載のCAR構築物であることを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とするベクター。
【請求項13】
宿主細胞に請求項12に記載のベクター、またはゲノムに請求項11に記載のポリヌクレオチドが組み込まれたことを特徴とする遺伝子操作された宿主細胞。
【請求項14】
(1)invitroでは、検体が請求項1に記載の抗体または請求項7に記載の抗体-薬物複合体と接触することと、
(2)抗原-抗体複合体が形成されているかどうかを測定し、複合体の形成は検体中のIL-36Rタンパク質の存在を示す手順からなる、検体におけるIL-36Rタンパク質の非診断的なinvitro検査のための方法。
【請求項15】
プレート(サポートプレート)と、請求項1に記載の抗体または請求項7に記載の抗体-薬物複合体を含む試験片を含むことを特徴とする測定プレート。
【請求項16】
(1)請求項1に記載の抗体を含む第一容器、および/または
(2)請求項1に記載の抗体に対す二次抗体を含む第二容器、
または、請求項15に記載の測定プレートを含むことを特徴とするキット。
【請求項17】
(a)発現に適した条件下で、請求項13に記載の宿主細胞を培養することと、
(b)培養物から、請求項1に記載の抗体または請求項4に記載の組換えタンパク質である組み換えポリペプチドを単離することを含むことを特徴とする組み換えポリペプチドの調製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、バイオ医薬品分野に関し、具体的にはインターロイキン36Rを標的とする抗体、その調製法と応用に関する。
【0002】
従来の技術
IL-1受容体ファミリーのメンバー(IL1R)には、IL1RI(IL1R1)、IL1RII(IL1R2)、IL1RAcP(IL1R3)、ST2(T1/IL1R4)、IL18Ra(IL1Rrp/IL1R5)、IL1Rrp2(IL1RL2/IL1R6/IL-36R)、IL18Rb (AcPL/IL1R7)、IL1RAPL1(TIGIRR2/ IL1R8)、およびTIGIRR1(IL1R9)を含む、少なくとも11のメンバーが含まれる。IL-36R は、L36α、IL36β、IL36γ (IL-1F6、IL-1F8、IL-1F9 ともいわれる) という3 つの異なる活性化リガンドサイトカインを認識し、炎症性サイトカインの発現を引き起こすことができる。また、IL-36Rと結合すると、炎症性サイトカインの発現を抑制する2つの天然のアンタゴニストであるIL-36Ra(IL-1F5)とIL-38を持っている。
【0003】
IL-36Rは、肺上皮細胞、脳血管細胞、腎臓、精巣、単球、皮膚由来の角化細胞、線維芽細胞、および内皮細胞に発現される。IL-36Rは細胞膜外のリガンド結合ドメイン、膜貫通ヘリックスおよび細胞内シグナル伝達 Toll/IL-1受容体ドメイン(Toll/IL-1 receptor domain、TIRドメイン)から構成される。IL-36α、IL-36β、IL-36γは最初にIL-36Rと結合し、IL-1RAcPとシグナル伝達複合体を形成させ、次に、ミエロイド系分化因子88(myeloid differentiation factor 88,MyD88)を動員し、c-Jun末端キナーゼ(c-Jun N-terminal kinases,JNK)と細胞外シグナル調節キナーゼ(extracellular regulated protein kinases,ERK1/2)に介在された分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(mitogen-activated protein kinases,MAPK)と核内因子Kappa B(nuclear factor kappa B,NF-κB)経路を活性化することで、多数の炎症性メディエーターを産生し、炎症反応を介在し、適応免疫において重要な役割を果たす。IL-36RaとIL-36Rとの結合はIL-1RAcPの動員につながらず、炎症誘発性カスケード反応を開始させず、IL-36Raの抗炎症特性を実現する。健常な人体では、IL-36α、IL-36β、IL-36γに介在されたシグナル活性化作用とIL-36Raに介在されたシグナル阻害作用がバランスを保った状態にあるが、IL-36Raに遺伝子突然変異が発生すると、抑制機能が不活性化され、バランスが崩れ、炎症性疾患が発生する。
【0004】
IL-36サイトカインは、汎発型膿疱性乾癬(GPP) や掌蹠膿疱症 (PPP) など、特定の重度の乾癬に関与している。GPPは重度の汎発型の膿疱性乾癬であり、致死性を持っている。PPPは手のひらと足の裏に影響を与える慢性膿疱性乾癬である。現時点で、GPPおよびPPP の治療方法には、経口レチノイドおよび局所ステロイドが含まれるが、治療効果が低く、重度の副作用がある。
【0005】
そのため、当技術分野では、高親和性でIL-36Rに結合し、IL-36α、IL-36β、IL-36γとIL-36Rとの結合を阻害でき、GPP、PPPなどのIL-36関連疾患を治療する抗IL-36R抗体が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本願の目的はインターロイキン36Rを標的とする抗体、その調製法と応用を提供することにある。
具体的に、本願の目的は、高い親和性でIL-36Rに結合し、IL-36α、IL-36β、IL-36γとIL-36Rとの結合を阻害できる、高い親和性および高い生物学的活性を有するIL-36R抗体およびその応用を提供することである。
本願のもう一つの目的は、インターロイキン36R結合分子およびその用途、特に乾癬など、IL-36関連疾患の治療および/または予防または診断における用途を提供することである。
【0007】
本願の第一の態様では、重鎖可変領域には次の3つの相補性決定領域CDRが含まれる抗体の重鎖可変領域を提供する:
SEQ ID NO:3に示すCDR1、
SEQ ID NO:4に示すCDR2、および
SEQ ID NO:5に示すCDR3。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記アミノ酸配列におけるいずれかのアミノ酸配列には、任意に選ばれる少なくとも1つ(1つから3つなど、1つから2つであってもよく、1つであってもよい)のアミノ酸を追加、欠失、修飾および/または置換し、IL-36Rの結合親和性を保持できる誘導体配列が含まれる。
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域には、ヒトFR領域またはマウスFR領域が含まれる。
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列を持っている。
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:9に示すアミノ酸配列を持っている。
【0009】
本願の第二の態様では、本願の第一の態様に記載の重鎖可変領域を持っている抗体の重鎖を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記抗体の重鎖には、重鎖定常領域も含む。
いくつかの実施形態では、前記重鎖定常領域はヒト領域、マウス領域またはウサギ領域である。
【0011】
本願の第三の態様では、軽鎖可変領域には次の3つの相補性決定領域CDRがっ含まれる抗体の軽鎖可変領域を提供する:
SEQ ID NO:6に示すCDR1’、
SEQ ID NO:7に示すCDR2’、および
SEQ ID NO:8に示すCDR3’。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記アミノ酸配列におけるいずれかのアミノ酸配列には、任意に選ばれる少なくとも1つ(1つから3つなど、1つから2つであってもよく、1つでってもよい)のアミノ酸を追加、欠失、修飾および/または置き換え、IL-36Rの結合親和性を保持できる誘導体配列が含まれる。
いくつかの実施形態では、前記軽鎖可変領域には、ヒトFR領域またはマウスFR領域が含まれる。
いくつかの実施形態では、前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列を持っている。
いくつかの実施形態では、前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:10、11または12に示すアミノ酸配列を持っている。
【0013】
本願の第四の態様では、本願の第三の態様に記載の軽鎖可変領域を持っている抗体の軽鎖を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記抗体の軽鎖には、軽鎖定常領域も含む。
いくつかの実施形態では、前記軽鎖定常領域はヒト領域、マウス領域またはウサギ領域である。
【0015】
本願の第五の態様では、
(1)本願の第一の態様に記載の重鎖可変領域、および/または
(2)本願の第三の態様に記載の軽鎖可変領域、
または本願の第二の態様に記載の重鎖、および/または本願の第四の態様に記載の軽鎖を持っている抗体を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記抗体とヒトIL-36Rタンパク質(例えば野生型)と結合する親和定数KD(M)は(0.5-10)×10-11であって、(1-6)×10-11であってもよく、(1-2)×10-11であってもよい。
いくつかの実施形態では、前記抗体がヒトIL-1 Rrp2に結合する親和定数KD(M)は(0.5-10)×10-11であって、(1-6)×10-11であってもよく、(1-2)×10-11であってもよい。
いくつかの実施形態では、前記抗体はIL-36α、IL-36β、IL-36γとIL-36Rとの結合を阻害することができる。
いくつかの実施形態では、前記抗体はIL-36α、IL-36β、IL-36γに介在されたサイトカイン分泌を阻害することができ、前記サイトカインには、IL-6、IL-8、GM-CSFが含まれる。
いくつかの実施形態では、前記抗体は、動物抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはそれらの組み合わせから選ばれる。
いくつかの実施形態では、前記抗体は二本鎖抗体、または一本鎖抗体である。
いくつかの実施形態では、前記抗体はモノクローナル抗体である。
いくつかの実施形態では、前記抗体は部分的または完全にヒト化されたモノクローナル抗体である。
いくつかの実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域配列はSEQ ID NO:1または9に示す通りであること、および/または
前記抗体の軽鎖可変領域配列はSEQ ID NO:2、10、11または12に示す通りである。
いくつかの実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域配列はSEQ ID NO:1に示し、また、前記抗体の軽鎖可変領域配列はSEQ ID NO:2に示す通りである。
いくつかの実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域配列はSEQ ID NO:9に示し、また、前記抗体の軽鎖可変領域配列はSEQ ID NO:10、11または12に示す通りである。
いくつかの実施形態では、前記抗体は薬物複合体の形である。
【0017】
本願的の第六の態様では、
(i)本願の第一の態様に記載の重鎖可変領域、本願の第二の態様に記載の重鎖、本願の第三の第三の態様に記載の軽鎖可変領域、本願の第四の態様に記載の軽鎖、または本願の第五の態様に記載の抗体、および
(ii)発現および/または精製を支援する任意に選ばれるタグ配列が含まれる組換えタンパク質を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記のタグ配列には、6Hisタグが含まれる。
いくつかの実施形態では、前記の所述的組換えタンパク質(またはポリペプチド)には、融合タンパク質が含まれる。
いくつかの実施形態では、前記の組換えタンパク質はモノマー、ダイマーまたはポリマーである。
【0019】
本願の第七の態様ではCAR構築物のモノクローナル抗体抗原結合領域のscFVセグメントが、IL-36Rに特異的に結合する結合領域であり、前記scFvが、本願の第一の様態に記載の重鎖可変領域と本願の第三の態様に記載の軽鎖可変領域を有するCAR構築物を提供する。
【0020】
本願の第八の態様では、本願の第七の態様に記載の外因性CAR構築物を発現する組み換え免疫細胞を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記の免疫細胞はNK細胞、T細胞からなる群から選ばれる。
いくつかの実施形態では、前記の免疫細胞はヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えば、マウス)に由来する。
【0022】
本願の第九の態様では、
(a)抗体部分において、前記抗体部分が本願の第一の態様に記載の重鎖可変領域、本願の第二の態様に記載の重鎖、本願の第三の第三の態様に記載の軽鎖可変領域、本願の第四の態様に記載の軽鎖、または本願の第五の態様に記載の抗体またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、および
(b)抗体部分と結合する結合部分において、前記結合部分が検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれる抗体-薬物複合体を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記抗体部分と前記結合部分は化学結合またはリンカーによって結合させる。
【0024】
本願の第十の態様では、活性成分の用途を提供するものであって、前記活性成分は、本願の第一の態様に記載の重鎖可変領域、本願の第二の態様に記載の重鎖、本願の第三の態様に記載の軽鎖可変領域、本願の第四の態様に記載の軽鎖、または本願の第五の態様に記載の抗体、本願の第六の態様に記載の組換えタンパク質、本願の第八の態様に記載の免疫細胞、本願の第九の態様に記載の抗体-薬物複合体またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、前記活性成分は(a)測定試薬またはキット、および/または(b)IL-36関連疾患の予防および/または治療するための医薬品調製に使われる。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記IL-36関連疾患はIL-36に介在された炎症性疾患である。
いくつかの実施形態では、前記IL-36関連疾患はIL-36サイトカインの過剰刺激または突然変異によって引き起こされる疾患である。
いくつかの実施形態では、前記IL-36関連疾患は炎症、自己免疫疾患、またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、例えば、自己免疫疾患であってもよい。
いくつかの実施形態では、前記IL-36関連疾患は、乾癬、強皮症、慢性腎臓病、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、多発性硬化症、炎症性関節炎、喘息、アレルギー、またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれ、例えば、乾癬であってもよい。
いくつかの実施形態では、前記乾癬には、尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、乾癬性関節炎、汎発型膿疱性乾癬(GPP)、掌蹠膿疱症(PPP)が含まれる。
いくつかの実施形態では、前記薬物はIL-36α、IL-36β、IL-36γとIL-36Rとの結合の阻害に使われる。
いくつかの実施形態では、前記薬物はIL-36α、IL-36β、IL-36γに介在されたサイトカイン分泌の阻害に使われる。
いくつかの実施形態では、前記抗体は薬物複合体(ADC)の形である。
いくつかの実施形態では、前記測定試薬またはキットはIL-36関連疾患の診断に使われる。
いくつかの実施形態では、前記測定試薬またはキットは検体のIL-36Rタンパク質測定に使われる。
いくつかの実施形態では、前記測定試薬は測定チップである。
【0026】
本願の第十一の態様では、
(i)本願の第一の態様に記載の重鎖可変領域、本願の第二の態様に記載の重鎖、本願の第三の態様に記載の軽鎖可変領域、本願の第四の態様に記載の軽鎖、または本願の第五の態様に記載の抗体、本願の第六の態様に記載の組換えタンパク質、本願の第八の態様に記載の免疫細胞、本願の第九の態様に記載の抗体-薬物複合体またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれる活性成分、および
(ii)薬学的に許容されるベクターが含まれる医薬組成物を提供する。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は液体製剤である。
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は注射剤である。
【0028】
本願の第十二の態様では、ポリヌクレオチドコードが
(1)本願の第一の態様に記載の重鎖可変領域、本願の第二の態様に記載の重鎖、本願の第三の第三の態様に記載の軽鎖可変領域、本願の第四の態様に記載の軽鎖、または本願の第五の態様に記載の抗体、または
(2)本願の第六の態様に記載の組換えタンパク質、
(3)本願の第七の態様に記載のCAR構築物からなる群のポリペプチドから選ばれるポリヌクレオチドを提供する。
【0029】
本願の第十三の態様では、本願の第十二の態様に記載のポリヌクレオチドが含まれるベクターを提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記ベクターには、細菌プラスミド、ファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、アデノウイルス、レトロウイルスなどの哺乳動物細胞ウイルス、またはその他のベクターが含まれる。
【0031】
本願の第十四の態様では、本願の第十三の態様に記載のベクターを含む、またはゲノムに本願の第十二の態様に記載のポリヌクレオチドが組み込まれた、遺伝子操作された宿主細胞を提供する。
【0032】
本願の第十五の態様では、
(1)invitroでは、検体が本願の第五の態様に記載の抗体または本願の第九の態様に記載の抗体-薬物複合体と接触することと、
(2)抗原-抗体複合体が形成されているかどうかを測定し、複合体の形成は検体中のIL-36Rタンパク質の存在を示す手順からなる、検体におけるIL-36Rタンパク質のinvitro検査(診断的または非診断的を含む)のための方法を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記方法は非診断的かつ非治療的である。
【0034】
本願の第十六の態様では、プレート(サポートプレート)と、本願の第五の態様に記載の抗体または本願の第九の態様に記載の抗体-薬物複合体を含む試験片を含む測定プレートを提供する。
【0035】
本願の第十七の態様では、
(1)本願の第五の態様に記載の抗体を含む第一容器、および/または
(2)本願の第五の態様に記載の抗体に対する二次抗体を含む第二容器、
または、本願の第十六の態様に記載の測定プレートを含むキットを提供する。
【0036】
本願の第十八の態様では、
(a)発現に適した条件下で、本願の第十四の態様に記載の宿主細胞を培養することと、
(b)培養物から、本願の第五の態様に記載の抗体または本願の第六の態様に記載の組換えタンパク質である組み換えポリペプチドを単離する手順を含む組み換えポリペプチドの調製法を提供する。
【0037】
本願の第十九の態様では、必要な対象者に本願の第五の態様に記載の抗体、前記抗体の抗体-薬物複合体、前記抗体を発現するCAR-T細胞、またはそれらの組み合わせを投与することを含む、IL-36関連疾患の予防および/または治療方法を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、さらに、前記方法には、必要な対象者にその他の医薬品または治療法による併用療法を投与することが含まれる。
【0039】
もちろん、本願の範囲内において、本願の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は相互に組合せ、新しい技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本願に係る発明の具体的な特徴は、特許請求の範囲に記載のとおりである。本願で詳細に説明される例示的な実施形態及び添付図面を参照することによって、本願に係る発明の特徴及び利点をよりよく理解することができる。添付図面の概略説明は以下のとおりである。
図1】ヒト化候補抗体の生物学的活性測定-サイトカインIL-6の放出結果。
図2】ヒト化候補抗体の生物学的活性測定-サイトカインIL-8の放出結果。
図3】ヒト化候補抗体の生物学的活性測定-サイトカインGM-CSFの放出結果。
図4】ヒト化候補抗体の生物学的活性測定-NF-κBリン酸化結果。
図5】候補抗体とヒトIL-36Rの細胞結合活性。
図6】候補抗体とサルIL-36Rの細胞結合活性。
図7】NCI/ADR-RES細胞におけるhuIL-36刺激因子に対する候補抗体の機能阻害効果。
図8】HIF細胞におけるhuIL-36刺激因子に対する候補抗体の機能阻害効果。
図9】HIF細胞におけるhuIL-36刺激因子に対する候補抗体の機能阻害効果。
図10】HIF細胞におけるhuIL-36刺激因子に対する候補抗体の機能阻害効果。
図11】イミキモド誘発乾癬カニクイザルの臨床スコア(PASI)に対する候補抗体の影響。
図12】イミキモド誘発乾癬カニクイザル皮膚組織のHE染色病理学的スコアに対する候補抗体の影響。
【0041】
具体的な実施形態
以下では、特定の具体的な実施形態を用いて本願発明の実施形態を説明するが、この技術に精通している者は、本願で開示されることにより、本願発明の他の利点及び効果を容易に理解され得る。
【0042】
用語定義
本願者は、広範かつ綿密な調査の結果、意外に高い親和性と高い生物学的活性を持つIL-36R抗体を得た。試験によると、本願のIL-36R抗体は、高い親和性でIL-36Rに結合し、IL-36Rリガンド(α、β、γ)とIL-36Rとの結合を阻害し、IL-36Rリガンドによって活性化されるシグナル伝達経路を阻害することにより、IL-36関連疾患を治療および/または予防することができる。これに基づき、本願を完成させた。
【0043】
用語
ここで用いられるように、「投与」および「治療」という用語は、動物、ヒト、被験者、細胞、組織、器官または生体液への外因性薬物、治療剤、診断剤または組成物の適用を意味する。「投与」および「処理」という用語は、治療法、薬物動態法、診断法、研究法および実験法を指す場合がある。細胞の処理には、試薬と細胞との接触、試薬と液体との接触、液体と細胞との接触が含まれる。「投与」および「処理」という用語は、試薬、診断薬、組成物結合によって、または他のin vitroおよび離体での細胞の処理によってという意味もある。「処理」とは、ヒト、動物または被験者に適用される場合、治療処置、予防処置、研究および診断を意味し、IL-36R抗体のヒトまたは動物、被験者、細胞、組織、生理学的区画または生理学的流体への接触を含む。
【0044】
ここで用いられるように、「治療」という用語は、本願のIL-36R抗体およびその組成物のいずれかを含む治療剤を、当該治療剤が治療効果を有することが知られている疾患の1つまたは複数の症状を有する患者に、内服または外用として投与することを指す。患者には、通常、疾患の1つ以上の症状を緩和するのに有効な量(治療有効量)の治療薬が投与される。
【0045】
ここで用いられるように、「任意に」または「任意的に」という用語は、その後に説明する事象または状況が発生してもよいが、必ず発生するものではないことを指す。例えば、「任意に1つから3つの抗体重鎖可変領域が選ばれる」とは、特定配列の抗体重鎖可変領域はあってもよいが、必須ではなく、1つ、2つまたは3つであってもよいことを指す。
【0046】
抗体
ここで用いられるように、「抗体」という用語は、免疫グロブリンを指すもので、鎖間ジスルフィド結合によって連結された2つの同じ重鎖および2つの同じ軽鎖から構成されるテトラペプチド鎖構造を持っている。免疫グロブリン重鎖定常領域のアミノ酸組成と配列が異なるため、その抗原性も異なる。これにより、免疫グロブリンを5つのクラス、または免疫グロブリンの異なるタイプ、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEに分けることができ、異なる免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域はα、δ、ε、γおよびμという。IgGは免疫グロブリンの中で最も重要なクラスを示すもので、化学構造と生物学的機能の違いにより、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の4つのサブクラスに分けることができる。軽鎖は、定常領域の違いにより、κまたはλ鎖に分けられる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元配置は、当業者に周知されている。
【0047】
抗体の重鎖と軽鎖のN末端付近の約110のアミノ酸配列は大きく異なるため、可変領域(V領域)とし、C末端付近のアミノ酸配列は比較的安定しているので、定常領域 (C領域)とする。可変領域には、3つの超可変領域(HVR)と4つの比較的変異の少ないFR領域 (FR) が含まれます。4つのFRのアミノ酸配列は比較的変異が少なく、結合反応には直接関与しない。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域 (CDR) としても知られる。軽鎖可変領域(LCVR)と重鎖可変領域(HCVR)はそれぞれ3つのCDR領域と4のFR領域からなり、アミノ末端からカルボキシル末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4と配列している。軽鎖の3つのCDR領域、すなわち、閉鎖超可変領域(LCDR)はLCDR1、LCDR2とLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域、すなわち重鎖超可変領域(HCDR)は、HCDR1、HCDR2とHCDR3を指す。本発明に記載の抗体または抗原結合フラグメントのLCVRおよびHCVR領域のCDRアミノ酸残基の数および位置は既知のKabatナンバリング規則(LCDR1-3、HCDR2-3)、またはkabatとchothiaのナンバリング規則(HCDR1)に適合している。自然重鎖と軽鎖可変領域における4つのFR領域は基本的に接続ループを形成する3つのCDRによって接続されたβシート構造を呈し、場合によって部分的なβシート構造を形成することができる。各鎖のCDRはFR領域を介して互いに近接して保持され、もう一方の鎖のCDRとともに、抗体の抗原結合部位を形成する。FRまたはCDR領域を構成するアミノ酸は、同種の抗体のアミノ酸配列を比較することにより特定することができる。定常領域は、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体の抗体依存性細胞毒性に関与するなど、さまざまなエフェクター機能を示す。
【0048】
ここで用いられるように、「抗原結合フラグメント」という用語は、抗原結合活性を有するFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、または単一のFvフラグメントを指す。Fv抗体は抗体重鎖可変領域、軽鎖可変領域を含んでいるが、定常領域を含まず、すべての抗原結合部位を持つ最小の抗体フラグメントを含んでいる。一般的に、Fv抗体はVHドメインとVLドメインの間のポリペプチドリンカーも含み、抗原結合に必要な構造を形成することができる。
【0049】
ここで用いられるように、「抗原決定基」という用語は、本願の抗体または抗原結合フラグメントによって認識される抗原上の不連続の三次元部位を指す。
【0050】
本願には、完全な抗体だけでなく、免疫活性を持つ抗体のフラグメントまたは抗体とその他の配列と形成された融合タンパク質も含まれている。したがって、本願には、前記抗体のフラグメント、誘導体および類似体も含まれている。
【0051】
本願では、抗体には、当業者に周知の技術によって調製されたマウス、キメラ、ヒト化または完全ヒト抗体が含まれる。ヒト部分および非ヒト部分を含む、キメラ、ヒト化されたモノクローナル抗体などの組み換え抗体は、当技術分野で周知のDNA組換え技術で調製することができる。
【0052】
ここで用いられるように、「モノクローナル抗体」という用語は、単一の細胞源から得られたクローンによって分泌される抗体を指す。モノクローナル抗体は特異度が高く、単一の抗原性エピトープを標的とする。前記細胞は、真核、原核、またはファージクローン細胞株であってもよい。
【0053】
ここで用いられるように、「キメラ抗体」という用語は、マウス抗体のV領域遺伝子とヒト抗体のC領域遺伝子をスプライシングして発現させたキメラ遺伝子をベクターに挿入し、宿主細胞にトランスフェクトして発現させた抗体分子をさす。親マウス抗体の高い特異性と親和性を保持するだけでなく、そのヒトFcセグメントが生物学的効果機能を効果的に介在できるようにする。
【0054】
ここで用いられるように、「ヒト化抗体」という用語は、本願のマウス抗体の可変領域の改変体であって、非ヒト抗体(マウスモノクローナル抗体など)に由来する(または実質的に由来する)CDR領域と、実質的にヒト抗体配列に由来するFR領域と定常領域をもっている。つまり、マウス抗体の CDR領域配列は、異なるタイプのヒトの生殖細胞系抗体フレームワーク配列に移植される。CDR配列は抗体-抗原相互作用の大部分を担っているため、発現ベクターを構築することにより、特定の天然抗体の特性を模擬する組み換え抗体を発現させることができる。
【0055】
本願では、抗体は単一特異性、二重特異性、三重特異性、またはこれ以上の複数特異性であってもよい。
【0056】
本願では、本願の抗体は、その保存的変異体も含み、これは、本願の抗体のアミノ酸配列と比較して、最大で10個、最大で8個、最大で5個、および最大で3個のアミノ酸が、類似または相似の特性を持つアミノ酸に置き換えられ、ポリペプチドを形成する。これらの保存的変異体ポリペプチドは、好ましくは、表Aによるアミノ酸置換によって産生される。
【0057】
【表A】
【0058】
抗IL-36R抗体
ここで用いられるように、「IL-36R」という用語は、一般に、天然または組み換えられたヒトIL-36R、およびヒトIL-36Rの非ヒト相同体を指す。特に明記しない限り、IL-36Rのホモダイマーの分子量を用いて、IL-36Rのモル濃度を計算する。
【0059】
本願では、重鎖と軽鎖を含むIL-36Rに対して高い特異性と高い親和性を備えた、重鎖と軽鎖を含む抗体を提供し、前記重鎖には重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列が含まれ、前記軽鎖には軽鎖可変領域 (VL) アミノ酸配列が含まれる。
【0060】
例えば、重鎖可変領域(VH)のCDRは次の群から選ばれる。
SEQ ID NO:3に示すCDR1、
SEQ ID NO:4に示すCDR2、および
SEQ ID NO:5に示すCDR3、および/または
軽鎖可変領域(VL)のCDRは次の群から選ばれる。
SEQ ID NO:6に示すCDR1’、
SEQ ID NO:7に示すCDR2’、および
SEQ ID NO:8に示すCDR3’。
【0061】
ここで、前記アミノ酸配列におけるいずれかのアミノ酸配列には、少なくとも1つ(1つから3つなど、1つから2つであってもよく、1つであってもよい)のアミノ酸を追加、欠失、修飾および/または置換し、IL-36Rの結合親和性を保持できる誘導体配列が含まれる。
【0062】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸を追加、欠失、修飾および/または置換することによって形成される配列は相同性が少なくとも80%であって、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%であるアミノ酸配列であってもよい。
【0063】
本願の抗体は、二本鎖または一本鎖抗体であってもよく、動物由来の抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体から選ばれてよく、ヒト化抗体、ヒト-動物キメラ抗体であってもよく、完全にヒト化抗体であってもよい。
【0064】
本出願に記載の抗体誘導体は、単鎖抗体および/または抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’、(Fab’)2または当該分野で既知の他の抗体誘導体など、ならびにIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体または他のサブタイプの抗体の任意1つまたは複数であってもよい。
【0065】
ここで、前記動物は、マウスなどの哺乳動物であってもよい。
【0066】
本願の抗体はヒトIL-36Rを標的とするマウス抗体、キメラ抗体、ヒト化体、CDR移植および/または修飾抗体であってもよい。
【0067】
ある態様では、前記SEQ ID NO:3、4および5における任意1つまたは複数の配列、または、少なくとも1つのアミノ酸を追加、欠失、修飾および/または置換することによって形成された、L-36Rの結合親和性を持つ配列は、重鎖可変領域(VH)のCDR領域に位置する。
【0068】
ある態様では、前記SEQ ID NO:6、7および8における任意1つまたは複数の配列、または、少なくとも1つのアミノ酸を追加、欠失、修飾および/または置換することによって形成された、L-36Rの結合親和性を持つ配列は、軽鎖可変領域(VL)のCDR領域に位置する。
【0069】
ある態様では、VH CDR1、CDR2、CDR3はそれぞれ独立してSEQ ID NO:3、4および5における1つまたは複数の配列、もしくは、少なくとも1つのアミノ酸を追加、欠失、修飾および/または置換することによって形成された、L-36Rの結合親和性を持つ配列から選ばれ、VL CDR1、CDR2、CDR3はそれぞれ独立してSEQ ID NO:6、7および8における1つまたは複数の配列、もしくは、少なくとも1つのアミノ酸を追加、欠失、修飾および/または置換することによって形成された、L-36Rの結合親和性を持つ配列から選ばれる。
【0070】
本願の上記内容において、前記の追加、欠失、修飾および/または置換されたアミノ酸の数は、例えば、初期アミノ酸配列におけるアミノ酸総量の40%以下であっても、35%以下であっても、1-33%であっても、5-30%であっても、10-25%であっても、15-20%であってもよい。
【0071】
本願では、前記の前記の追加、欠失、修飾および/または置換されたアミノ酸の数は通常1、2、3、4または5個で、1-3個であっても、1-2個であっても、1個であってもよい。
【0072】
抗体の調製
モノクローナル抗体を産生するのに適した任意の方法は本願の抗IL-36R抗体を産生してもよい。例えば、動物は、結合または天然に存在するIL-36Rホモダイマーまたはそのフラグメントで免疫されてもよい。アジュバント、免疫賦活剤、ブースター免疫接種など、適切な免疫方法を用いることができ、1つまたは複数の経路を用いてもよい。
【0073】
IL-36Rの任意の適切な形態は、IL-36Rに特異的な非ヒト抗体を産生するための免疫原(抗原)として使用することができ、当該抗体の生物学的活性をスクリーニングすることが可能である。刺激免疫原は、天然のホモダイマーを含む全長成熟ヒトIL-36R、または単一/複数のエピトープを含むペプチドであってもよい。免疫原は単独で、または当技術分野で知られている1つ以上の免疫原性増強剤と組み合わせて使用することができる。免疫原は、自然由来で精製される場合もあれば、遺伝子修飾された細胞で作られる場合もある。免疫原をコードするDNAは、ゲノム由来でも非ゲノム由来であってもよい(例えば、cDNA)。免疫原をコードするDNAは、適切な遺伝子ベクターを用いて発現させることができ、前記ベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、プラスミドおよび非ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
本願の抗ヒトIL-36R抗体を調製するための例示的な方法を実施例1に記載する。
【0075】
ヒト化抗体は、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEを含む任意のタイプの免疫グロブリンから選択され得る。本願では、抗体はIgG抗体であり、IgG1アイソタイプを使用する。必要な定数構造ドメインの配列の最適化は、以下の実施例に記載の生物学的測定で抗体をスクリーニングし、所望の生物学的活性を得ることによって達成することができる。
【0076】
ここでも、どちらのクラスの軽鎖も、本明細書の化合物および方法に使用することができる。具体的には、κ、λ鎖またはその変異体が、本願の化合物および方法において利用可能である。
【0077】
本願の抗ヒトIL-36R抗体をヒト化するための例示的な方法を実施例2に記載する。
【0078】
本願の抗体またはそのフラグメントのDNA分子の配列は、PCRを用いた増幅やゲノムライブラリースクリーニングなどの従来技術によって、得ることができる。さらに、軽鎖と重鎖のコード配列を融合して、単鎖抗体を形成することもできる。
【0079】
目的の配列が得られれば、組換え法によって大量に入手することができる。これは通常、ベクターにクローニングして細胞に移植し、増殖した宿主細胞から目的の配列を常法により単離することで行われる。
【0080】
また、特にフラグメントの長さが短い場合には、人工合成により配列を合成することも可能である。多くの場合、非常に長いフラグメントは、いくつかの小さなフラグメントを合成し、それらをライゲーションすることで得ることができる。そして、このDNA配列は、当技術分野で知られている様々な既存のDNA分子(またはベクターなど)や細胞に導入することができる。
【0081】
本願はまた、上記のような適当なDNA配列と適当なプロモーターまたは制御配列とを含むベクターにも関する。これらのベクターは、タンパク質を発現できるように適切な宿主細胞を形質転換するために使用できる。
【0082】
宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞;あるいは酵母細胞などの下等真核細胞;あるいは哺乳類細胞などの高等真核細胞であってもよい動物細胞としては、CHO-S、CHO-K1、HEK-293細胞などを挙げることができる(ただし、これらに限定されない)。
【0083】
宿主細胞を組換えDNAで形質転換するための本願に記載のステップは、当技術分野でよく知られた技術で実施することができる。得られた形質転換体は、常法により培養することができ、その形質転換体は本願の遺伝子によりコードされるポリペプチドを発現する。使用する宿主細胞によっては、通常の培地を用いて適切な条件下で培養される。
【0084】
典型的には、形質転換された宿主細胞は、本願の抗体の発現に適した条件下で培養される。次に、本願の抗体は、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィーまたはアフィニティクロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製ステップ、および当業者に知られている従来の分離および精製手段を使って精製することができる。
【0085】
得られたモノクローナル抗体は、通常の方法で同定することができる。例えば、モノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法またはin vitro結合試験(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA))により決定することができる。抗体-薬物複合体(ADC)
さらに、本願では、本願の抗体に基づく抗体-薬物複合体(antibody-drug conjugate,ADC)を提供する。
【0086】
典型的には、前記抗体-薬物複合体は抗体およびエフェクター分子を含み、前記抗体は化学的に結合され得る前記エフェクター分子に結合される。ここで、前記エフェクター分子は治療活性を有する薬物であってもよい。さらに、前記エフェクター分子は、毒性タンパク質、化学療法薬、小分子薬、または放射性核種のいずれか1つまたは複数であってもよい。
【0087】
本願の抗体と前記のエフェクター分子との間はカップリング剤を介して結合されてもよい。前記のカップリング剤としては、非選択的カップリング剤、カルボキシル基を用いたカップリング剤、ペプチド鎖、ジスルフィド結合を用いたカップリング剤のいずれか1つまたは複数が挙げられる。前記の非選択的カップリング剤とは、グルタルアルデヒドなど、エフェクター分子と抗体とを共有結合させる化合物を指す。前記のカルボキシル基を用いたカップリング剤は、シス-アコニット酸無水物系カップリング剤(シス-アコニット酸無水物など)、アシルヒドラゾン系カップリング剤(カップリング部位がアシルヒドラゾンである)のいずれか1つまたは複数であってもよい。
【0088】
抗体上の特定の残基 (Cysや Lys など) は、イメージング試薬(発色団や蛍光基など)、診断試薬 (MRI 造影剤や放射性同位体など)、安定剤 (グリコールポリマーなど)および治療薬を含む官能基との結合に使われる。抗体は機能剤に結合することにより、抗体-機能剤の複合体を形成することができる。機能剤(薬物、測定試薬、安定剤など)は抗体に結合(共有結合)される。機能剤は、抗体に直接、またはリンカーを介して間接的に結合することができる。
【0089】
抗体は薬物を結合することで、抗体-薬物複合体(ADCs)を形成することができる。典型的には、ADCは薬物と抗体との間にあるリンカーを含む。リンカーは、分解性または非分解性のものであり得る。分解性リンカーは、典型的に、細胞内環境で分解されやすく、例えば、リンカーが目的の部位で分解されることにより、抗体から薬物を放出する。適切な分解性リンカーには、例えば、細胞内プロテアーゼ(例えば、リソソームプロテアーゼまたはエンドソームプロテアーゼ)によって分解され得るペプチジル基を含むリンカー、またはグルクロニダーゼによって分解され得るグルクロニドを含む炭水化物リンカーなどの酵素的に分解可能なリンカーが含まれる。ペプチジル基リンカーには、例えば、バリン-シトルリン、フェニルアラニン-リジン、またはバリン-アラニンなどのジペプチドが含まれ得る。その他の適切な分解性リンカーには、例えば、pH感受性リンカー(例えば、ヒドラゾンなどのpHが未満のときに加水分解するリンカー)および還元条件下で分解するリンカー(例えば、ジスルフィド結合リンカー)が含まれる。典型的には、非分解性リンカーは抗体がプロテアーゼに加水分解される条件で薬物を放出する。
【0090】
抗体に結合する前に、リンカーは特定のアミノ酸残基と反応できる活性化反応基を持ち、結合が活性化反応基を介して実現される。スルフヒドリル特異的な活性化反応基には、例えば、マレイミド化合物、ハロゲン化アミド(例えば、ヨウ素化、臭素化または塩素化のもの)、ハロゲン化エステル(例えば、ヨウ素化、臭素化または塩素化のもの)、ハロゲン化メチルケトン(例えば、ヨウ素化、臭素化または塩素化のもの)、ハロゲン化ベンジル(例えば、ヨウ素化、臭素化または塩素化のもの)、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、対イオンが酢酸塩、塩化物または硝酸塩である3,6-ジ-(水銀メチル)ジオキサンなどの水銀誘導体、およびポリメチレンジメチルスルフィドチオスルホネートが含まれ得る。リンカーには、例えば、チオスクシンイミドを介して抗体に結合されるマレイミドが含まれ得る。
【0091】
薬物は任意の細胞毒性、細胞増殖抑制性または免疫抑制性の薬物であり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは抗体と薬物とを結合し、薬物はリンカーと結合を形成できる官能基を有する。例えば、薬物は、リンカーと結合を形成できるアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシ基、またはカルボニル基を有し得る。リンカーに直接結合した薬物の場合、薬物は、抗体に結合する前に反応性基を有する。
有用な薬物種別には、例えば、抗チューブリン薬、DNAマイナーグルーブ結合剤、DNA複製阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、葉酸アンタゴニスト、代謝拮抗剤、化学増感剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドなどが含まれる。本願では、薬物-リンカーは、簡単な1ステップでADCを形成することに用いられる。他の実施形態では、二官能性リンカー化合物は、2ステップまたは多ステップ方法でADCを形成することに用いられる。例えば、第1ステップでシステイン残基がリンカーの反応性部分と反応し、その後のステップでリンカーの官能基が薬物と反応することにより、ADCを形成する。
【0092】
典型的には、リンカー上の官能基は、薬物部分上の適切な反応基との特異的な反応を促進するために選択される。非限定的な例として、アジドベースの部分は、薬物部分の反応性アルキニル基との特異的な反応に用いられる。薬物は、アジドとアルキニル基の間の1,3-双極子付加環化反応を介してリンカーに共有結合される。他の有用な官能基には、例えば、ケトンおよびアルデヒド(ヒドラジドおよびアルコキシアミンとの反応に適している)、ホスフィン(アジドとの反応に適している)、イソシアネートおよびイソチオシアネート(アミンおよびアルコールとの反応に適している)および、N-スクシンイミジルエステル (アミンおよびアルコールとの反応に適している)などの活性化エステルが含まれる。『バイオ物質研究』第2版(Elsevier)に記載されたように、これらおよび他の結合戦略は、当業者に周知である。当業者は、薬物部分とリンカーの選択的反応に対し、相補対の反応性官能基が選択される場合、当該相補対の各メンバーがリンカーと薬物の両方に使用できることを理解できる。
【0093】
また、本願は、抗体-薬物複合体(ADC)を形成するのに十分な条件下で抗体を薬物-リンカー化合物と結合させることをさらに含み得る、ADCを調製するための方法を提供する。
【0094】
いくつかの実施形態では、本願の方法には、抗体-リンカー複合体を形成するのに十分な条件下で、抗体を二官能性リンカー化合物と結合させることが含まれる。これらの実施形態では、本願の方法には、リンカーを介して薬物部分を抗体に共有結合させるのに十分な条件下で、抗体-リンカー複合体を薬物部分に結合させることがさらに含まれる。
【0095】
これらの実施形態では、抗体-薬物複合体ADCは以下の分子式に示す。
【化1】
ここで
Abは抗体で、
LUはリンカーで、
Dは薬物で
下付き文字であるpは1~8から選ばれる値である。
【0096】
応用
本願は、例えば、診断製剤の調製、またはIL-36関連疾患を予防および/または治療する薬物の調製のための、本願の抗体の用途を提供する。前記IL-36関連疾患には、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)、変形性関節症、リウマチ様関節炎(RA)、関節リウマチまたは骨粗しょう症、炎症性線維症(強皮症、肺線維症および硬化症など)、喘息(アレルギー性喘息を含む)、過敏症および癌を含むがこれらに限定されない炎症性疾患、自己免疫疾患などが含まれる。
【0097】
医薬組成物
さらに、本願は組成物を提供する。特定の実施形態では、前記複合体は、前記の抗体またはその活性化フラグメント若しくはその融合タンパク質若しくはそのADCまたは対応するCAR-T細胞、および薬学的に許容されるベクターを含む薬物複合体である。典型的には、これらの物質は、非毒性で不活性かつ薬学的に許容される水性ベクター媒体に配合されてもよく、この場合、pHは典型的には約5~8であってもよく、例えば、pHは約6~8であってもよく、pHは配合される物質の性質および治療されるべき状態に応じて変化してもよい。製剤化された医薬組成物は、従来の経路によって投与することができ、これには次のものが含まれる(ただし、これらに限定されない):腫瘍内投与、腹腔内投与、静脈内投与、または局所的投与。
【0098】
また、本願に記載の抗体は、例えば、キメラ抗原受容体T細胞免疫療法(CAR-T)用の前記抗体等のためのヌクレオチド配列によって細胞内に発現する細胞治療薬であってもよい。本願の医薬組成物は、IL-36Rタンパク質分子に直接結合することができるため、IL-36R関連疾患の予防および治療に使用することができる。また、他の治療薬を併用することもできる。
【0099】
本願の医薬組成物は、安全かつ有効な量(例えば0.001-99wt%、0.01-90wt%であっても、0.1-80wt%であってもよい)を含む、本願の前記モノクローナル抗体(またはその複合体)、および薬学的に許容されるベクターまたは賦形剤を含む。このようなベクターは、食塩、緩衝液、グルコース、水、グリセリン、エタノール、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。製剤は、投与形態に合わせる必要がある。本願の医薬組成物は、例えば、生理食塩水またはグルコースおよび他の賦形剤を含む水溶液を常法により調製し、注射剤の形態とすることができる。注射剤、溶液などの医薬組成物は、無菌状態で調製することが望ましい。有効成分は、治療上有効な量、例えば、1日当たり約1μg/kg体重から約5mg/kg体重で投与される。さらに、本願のポリペプチドは、他の治療薬と併用することも可能である。
【0100】
薬物組成物を使用する場合、安全かつ有効な量の医薬組成物を哺乳動物に投与し、ここで、安全かつ有効な量は、典型的に、少なくとも約10mg/kg体重であり、そして、ほとんどの場合に、約50mg/kg体重以下であり、当該用量が約10mg/kg体重から約20mg/kg体重であってもよい。もちろん、具体的な投与量は、さらに投与の様態、患者の健康状況などの要素を考えるべきで、すべて熟練の医者の技能範囲以内である。
【0101】
測定用途およびキット
本願の抗体は、例えば、サンプルを測定し、それによって診断情報を提供するような測定用途に使用することができる。
【0102】
本願では、使用されるサンプル(試料)には、細胞、組織サンプル、生検サンプルが含まれる。本願では、「生検」という用語は、当業者に知られているあらゆる種類の生検を含むものとする。したがって、本願で使用する生検は、例えば、内視鏡的方法、または臓器の穿刺もしくは針生検によって調製された組織サンプルで構成することができる。
【0103】
本願で使用されるサンプルには、固定または保存された細胞または組織サンプルが含まれる。
【0104】
本願はさらに、本願の抗体(またはそのフラグメント)を含むキットを提供し、例えば、前記キットには、容器、取扱説明書、緩衝剤などが含まれ得る。例えば、本願の抗体は、測定プレートに固定化されていてもよい。
【0105】
本願にかかわる抗体またはそのフラグメントは、次の優れた技術的効果を持つことができる。
(a)本願の抗体は優れた生物学的活性および特異性を持っている。
(b)マウス抗体とキメラ抗体に比較し、本願のヒト化抗体はIL-36Rと同等な親和性を持ちながら、より低い免疫原性を持っている。
(c)本願の抗体のIL-36Rに対する阻害は、患者における炎症性因子の発現経路を有意に阻害することができる。
(d)本願の抗体は、一部の非ヒト哺乳動物(サルなど)のIL-36Rに対し、ヒトIL-36Rと同等な親和性を有し、動物モデルでの試験および品質検査に寄与できる。
(e)本願の抗体はIL-36Rとの結合により、IL-36α、IL-36β、IL-36γとIL-36Rとを結合する活性化シグナル伝達経路を遮断し阻害し、炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8、GM-CSFなど)を減少させる。
【0106】
以下は、具体的な実施例似合わせて、本願をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、本出願を説明するためにのみ使用され、本出願の範囲を限定するために使用されるものではないことを理解されたい。以下の実施例では具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989) に記載されているような従来の条件、あるいはメーカーが推奨する条件に従っている。特に明記しない限り、割合と部数は重量割合と重量部数である。
【実施例
【0107】
実施例1
マウス由来のモノクローナル抗体の作製方法は、1975年にKohlerとMilsteinによって発明されたハイブリドーマ作製技術を用いた(Nature、 1975、 256: 495-497)。ヒトIL-36RのFcタグタンパク質(ACRO,#IL2-H5254)ととフロイントアジュバントを乳化した後、複数系統のマウスに免疫を行った。4回の免疫後、血清を採取し、ELISA法により力価を測定し、脾臓細胞とSP2/0骨髄腫細胞との融合に最適なマウスを選択した。ハイブリドーマポリクローナル細胞をHATでスクリーニングした後、ポリクローナル培養上清のヒトIL-36R、サルIL-36R、ヒトIL1R1の結合活性、およびIL-36刺激因子に対するポリクローナル抗体の機能阻害効果を測定した。最適なポリクローンを選択し、モノクローニングを行い、同様に、モノクローナルの結合活性と機能活性をスクリーニングし、親和性をBiacore法で測定し、最後に、選択した最良のハイブリドーマモノクローナル細胞株の配列解析を行った。
【0108】
【表1】
表1に示すように、多数のハイブリドーマをスクリーニングした後、ハイブリドーマ(1)-B8,111(1)-E5抗体発現上清は細胞結合レベルでヒトIL-36RおよびサルIL-36Rタンパク質と高い結合活性を示し、ヒトIL1R1タンパク質に特異的に結合することはなく、IL-36刺激因子(IL-36α、IL-36β、IL-36γ) によって刺激されるサイトカインに対して明らかな機能遮断効果がある。
【0109】
実施例2 抗IL-36R抗体の可変領域遺伝子配列のクローニングとヒト化
2.1 ハイブリドーマ細胞における抗体可変領域遺伝子のクローニング
ハイブリドーマ細胞株が発現するマウス抗体の可変領域のcDNA配列は、TAKARAの5'RACE技術の原理に基づいてクローニングされた。簡単に説明すると、SMARTer 5’RACE合成キット(TAKARA、品番634859) を用いて、説明書に従って、重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子特異的cDNAを合成した。cDNA配列の5'および3'末端をPCRプライマーで修飾した。前記プライマーは、重鎖および軽鎖可変領域cDNAにそれぞれ適切なリード配列を付加するように設計されており、得られたPCR産物を既存の組み換え抗体発現重鎖ベクターpHB-Fcおよび軽鎖ベクターpHB-Cκにシームレスにクローニングすることを可能にするものである。pHB-Fc発現ベクターには、人IgG1重鎖定常領域遺伝子配列が含まれ、ここで。CH2に抗体のADCC効果を弱めるL234AおよびL235A(Eu numbering)変異がある。pHB-Cκベクターには、ヒトκ掲載定常領域遺伝子配列が含まれている。重鎖および軽鎖可変領域PCR増幅産物をIn-fusionクローニング試薬(TAKARA、品番639650)により発現ベクターにクローニングし、ヒト-マウスキメラ抗体発現ベクターを取得し、E.coli DH5α大腸菌形質転換受容性細胞 (YB Biotech、品番FYE607-80VL) に形質転換させた。モノクローナルコロニーはサンガーシークエンス用に選択され、抗体可変領域配列を得るために分析された。
【0110】
その結果、軽鎖が実施例1のハイブリドーマ6(1)-B8に由来し、重鎖が実施例1のハイブリドーマ111(1)-E5に由来する抗IL-36R嵌合抗体(Huabo品番900497)を取得し、その可変領域配列は、次のとおりである。
900497 HCVR SEQ ID NO:1
QVQLQQTGSVLVRPGTSVKLSCKASGYTFTSSWMHWAKQRPGQGLEWIGEIHPNSAKTNYNEKFKGKATLTVDTFSSTAYVDLSSLASEDSAVYYCARVDYGKPWFAYWGQGTLVTVSA
900497 LCVR SEQ ID NO:2
QIVLTQSPTIMSASPGERVTMTCSASSSVSSSYLHWYQQKPGSSPKLWIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTINSMEAEDAATYYCQQFQSSPLTFGAGTKLGLK
ここで、下線部はCDRs(IMGTで定義されたもの、配列はそれぞれ以下の通り)である:
【表2】
【0111】
キメラ抗体の発現
2.1で得られた発現ベクターを大腸菌で増幅し、エンドトキシン除去プラスミド抽出キット(TianJian Biotech、品番DP117)を用いて、キメラ抗体の一過性トランスフェクションに十分なプラスミドを調製した。発現に用いた宿主細胞は、CHO-S細胞(Thermo Fisher、品番R80007)である。別々に調製した2種類の重鎖ベクターと軽鎖ベクターを、ポリエーテルイミド(PEI、ポリサイエンス、品番24765-1)と混合してリポソーム複合体を形成することにより、CHO-S細胞トランスフェクションを行い、二酸化炭素シェーカーで5~7日間培養した。細胞培養上清を遠心分離で回収し、プロテインAアフィニティクロマトカラムで精製し、ヒト-マウスキメラ抗体を得た。
【0112】
2.2 マウス由来抗ヒトIL-36R抗体のヒト化-ヒト化抗体の調製法
抗体のヒト化は、以下の方法を用いた:キメラ抗体(Huabo品番900497)の可変領域配列をNCBI IgBlastデータベースの利用可能な配列と比較し、同定と分析を通じて、CDR移植重鎖および軽鎖の構築に適したヒト由来のフレームワーク領域(FR領域)を最終的に決定した。
【0113】
修飾は、ヒト抗体のFR領域の保存アミノ酸残基と重要アミノ酸残基に従って修飾部位を設計し、キメラ抗体の重鎖と軽鎖の可変領域に対してそれぞれヒト化変異を設計し、PCR技術を用いてヒト化点変異抗体発現プラスミドを増幅して構築した。このヒト化点変異型抗体発現プラスミドをCHO-S細胞で発現させ、精製してヒト化抗体タンパク質を得た。ヒト化抗体の親和性、活性化サイトカイン放出などの指標を、Biacoreおよび細胞生物学的活性などの測定でスクリーニングし、優れた性能を持つ3つのヒト化抗IL-36R抗体を得た。得られたヒト化抗IL-36R抗体の番号は900513、900527および900534で、そのVHおよびVL配列を以下に示す。
900513、900527および900534 HCVR SEQ ID NO:9
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSSWMHWAKQAPGQGLEWIGEIHPNSAKTNYNQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARVDYGKPWFAYWGQGTLVTVSS
900513 LCVR SEQ ID NO:10
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCSASSSVSSSYLHWYQQKPGQAPRLWIYSTSNRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFATYYCQQFQSSPLTFGQGTKLEIK
900527 LCVR SEQ ID NO:11
QIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASSSVSSSYLHWYQQKPGQAPRLWIYSTSSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFATYYCQQFQSSPLTFGQGTKLEIK
900534 LCVR SEQ ID NO:12
QIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASSSVSSSYLHWYQQKPGQAPRLLIYSTSSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFATYYCQQFQSSPLTFGQGTKLEIK
ここで、下線部はCDRs(IMGTで定義)で、900513,900527および900534はそれぞれ3つのヒト化抗体タンパク質番号である。ヒト化抗体900513、900527および900534のCDR領域は、キメラ抗体900497のCDR領域と同じで、ヒト化抗体のFR領域はキメラ抗体900497に基づいて変異している。
【0114】
実施例3 抗ヒトIL-36Rヒト化抗体の生物学的活性測定
3.1 Biacore(SPR)による抗体親和性測定
試験材料および機器は下記の通り。
Hisタグ付きのヒトIL-1 Rrp2/IL-1 R6タンパク質(Human IL-1 Rrp2/IL-1 R6 Protein, His Tag),ACRO Biosystems,IL2-H52H6
HBS-EP+(10X),GE,BR-1006-69
Series S Sensor Chip CM5,GE,29-1275-56
His Capture Kit,GE,28995056
BIACORE,GE,Biacore 8K
pH1.5 グリシン溶液,GE,BR100354
【0115】
試験方法は下記の通り。
Sereis S Sensor Chip CM5チップを室温で20~30分平衡化し、チップを装置にセットした。His Capture Kit説明書に従い、anti-His抗体をSeries S Sensor Chip CM5チップに固定した。HBS-EP+(10X)溶液を泳動用緩衝液(Running Buffer)として、超純水で 10倍に希釈した。抗原 (Hisタグ付きのヒトIL-1 Rrp2/IL-1 R6タンパク質) を泳動用緩衝液で
1μg/ml、10μL/minに希釈し、15 秒間注入し、約 50 RUの抗原を捕捉した。抗体サンプルを平衡緩衝液で30nM、15nM、7.5nM、3.75nM、1.875nM、0.9375nM、0.46875nMに希釈し、泳動用緩衝液をゼロ濃度とし、30μL/minで120s結合させ、900s解離し、pH1.5のグリシン溶液でチップを再生した。サンプルを捕獲法シングルサイクルキネティックプログラムを用いて分析し、対応する分析プログラムを選択してデータを分析したところ、有意な参照結合(reference binding)がないことを確認した上で、Kineticsを選択し、1:1結合モデル(binding modle)でフィッティング分析し、サンプルのキネティックパラメータを求めた。
【0116】
【表3】
注:900389はBI社が開発した抗ヒトIL-36R抗体であって、Huaboが特許(WO2013/074569A1)に記載の配列で可変領域遺伝子を合成し、独自に発現させたものである。具体的に、900389の重鎖可変領域はWO2013/074569A1のSEQ ID NO:89に示す81B4vH33_90vHで、900389の軽鎖可変領域はWO2013/074569A1のSEQ ID NO:77に示す81B4vK32_105vKであり、81B4vH33_90vHおよび81B4vK32_105vKはすべてマウス抗体81B4のヒト化改造によって得られたもので、900389の定常領域は本願の候補抗体と同じである。
【0117】
各ヒト化抗体と人IL-1 Rrp2と結合する親和定数(KD(M))は表3に示す通りである。この結果から、本願のヒト化モノクローナル抗体の親和性は10-11のオーダーに近く、極めて強い親和性が示された。
【0118】
3.2 huIL-36刺激因子に対する抗ヒトIL-36R抗体の機能阻害効果の測定
ヒト卵巣癌細胞株 NCI/ADR-RESを96ウェル細胞培養プレートにウェル当たり 100μL (ウェル当たりの細胞数4.5 x 104) で加え、37℃、5% CO2で一晩インキュベートし、サンプルを段階的に希釈した。その後、50 μL/ウェルで加え、37℃、5% CO2で15分間インキュベートし、それぞれリガンドhuIL-36α(1μg/mL)、huIL-36β(80ng/mL)、huIL-36γ(120ng/mL)を50μL/ウェルで加え、よく混ぜた後、37℃、5% CO2で18~24時間培養した。細胞培養上清を遠心分離し、Biolegend ELISAキットで測定した:huIL-6(1:100希釈、品番430503)、huIL-8(1:5希釈,品番431503)およびhuGM-CSF(1:2希釈、品番432003)。huIL-36βの刺激下で、NCI/ADR-RES細胞内のNF-κBの活性化効果測定:リガンドhuIL-36βを240ng/mLに希釈し、試験抗体のプレインキュベートした細胞に加え、37℃,5% CO2で30分間インキュベートした。遠心分離により上清を除去し、細胞を溶解し、溶解物を取り出し、キット(Cisbio,品番64NFBPEG)でNF-κBのリン酸化測定を行った。
【0119】
【表4】
結果は図1-図4および表4に示す通り、ヒト化抗体900513、900527、900534はヒトの刺激因子IL-36α、IL-36β、IL-36γの機能に対し、有意な阻害効果を有し、サイトカインIL-6、IL-8、GM-CSFの分泌およびNF-κBのリン酸化を有意に阻害できる。
【0120】
実施例4 キメラ抗体とヒト化抗体の非特異的結合試験(SPR)
本試験は、SPR法を用いて抗体と非標的分子の非特異的吸着効果を測定するもので、試験に用いられる装置、機器および試薬材料を表5と表6に示す。
【表5】
【表6】
Series S Sensor Chip CM5(GE,#BR-1005-30)チップを室温で20~30分平衡化し、Biacore 8K(GE)機器にセットした。アミノ基カップリングキット(GE,#BR-1000-50)で鶏卵由来リゾチーム溶液(Sigma,#L3790)と大豆由来トリプシン阻害剤1-S型(Sigma,#T-2327)をそれぞれCM5チップに固定した。注入緩衝液はHBS-EP(1X)(GE,#BR-1006-69)で、4つの平衡化サクルを設定した。ポリクローナルウサギ抗リゾチーム(ABcam,Ab391)、アンチトリプシン阻害剤抗体(Anti-trypsin inhibitor antibody, LifeSpan Biosciences,#LS-C76609)、キメラ抗体およびヒト化抗体を平衡緩衝液でそれぞれ1000nMに希釈し、流量5μL/min、注入チャンネル1、2および3,Flow Cell 1および2を設定した。結合時間は10min、解離時間は15minであった。再生流量を50μL/minとし、0.85%リン酸溶液(ProteOn,176-2260)で60秒再生した後、50mM水酸化ナトリウム溶液で30秒再生した。
ここで、サンプル900389はBI社が開発した抗ヒトIL-36Rヒト化抗体で、Huaboが特許に基づき可変領域遺伝子を合成し、独自に発現させたものである。サンプル900497はHuaboのハイブリドーマスクリーニングによって構築された抗IL-36Rキメラ抗体である。
【0121】
その結果、表7に示すように、900389と鶏卵由来リゾチーム溶液との結合シグナルが20RUを超えたことから、非特異的な静電的かつ疎水性の結合が存在すると考えられる。900497と鶏卵由来リゾチーム溶液および大由来トリプシン阻害剤1-S型の結合シグナルはすべて20未満であるから、非特異的な静電的かつ疎水性の結合が存在しないと考えられる。
【表7】
注:Buffer の影響を差し引いた後、応答値が20RU未満の場合に、相互作用が弱く無視できる程度で、20RUを超える場合は明らかな相互作用があり、100RUを超える場合に、高い相互作用があると一般に考えられている。
【0122】
実施例5 安定細胞株抗体の細胞結合および機能試験
BIコントロール配列900389、Huaboにスクリーニングされたヒト化配列900527、TNP IgG1(Fc silence)900543をそれぞれHuabo GSベクターに挿入し、組み換え発現プラスミドを構築し、それぞれCHO-K1細胞にトランスフェクトすることにより、安定細胞株を構築した。Huabo 900527で構築された安定細胞株のタンパク質番号はHB0034で、スクリーニングされたモノクローナル細胞株の発現レベルは、上流工程の最適化後に4g/Lを超えている。安定にトランスフェクトされた細胞株によって発現された抗体を精製した後、フローサイトメトリー結合試験および機能試験によって測定した。サンプル900543はTNP IgG1(Fc silence)陰性対照抗体である。
【0123】
5.1 安定細胞株抗体のフローサイトメトリー結合試験
安定細胞株抗体のヒトIL-36R、サルIL-36R結合活性試験を実施した。フローサイトメトリー試験に使われる細胞株はHuaboに構築された、ヒトIL-36R、サルIL-36Rを発現するCHO-K1細胞株であった。
試験結果は表8および図5図6に示すとおりである。
【表8】
Huaboのモノクローナル抗体HB0034はヒトIL-36R、サルIL-36Rと高い結合活性を示した。陽性対照900389抗体に比較し、本願抗体のEC50値がより低く、ヒトIL-36Rとより高い結合活性を持っている。
【0124】
5.2 huIL-36刺激因子に対する安定細胞株の機能阻害効果の測定試験
5.2.1 NCI/ADR-RES細胞におけるhuIL-36刺激因子に対する候補抗体の機能阻害効果
ヒト卵巣癌細胞株 NCI/ADR-RESを96ウェル細胞培養プレートにウェル当たり 100μL (ウェルあたりの細胞数4.5 x 104) で加え、37℃、5% CO2で一晩インキュベートし、サンプルを段階的に希釈した。その後、50 μL/ウェルで加え、37℃、5% CO2で15分間インキュベートし、リガンドhuIL-36β(40ng/mL)を50μL/ウェルで加え、よく混ぜた後、37℃、5% CO2で18~24時間培養した。細胞培養上清を遠心分離し、HTRFキット(Cat#62HIL06PEG,CISBIO)でhuIL-6を測定した。
結果は表9および図7に示す通りである。
【表9】
この結果から、安定細胞株ヒト化抗体HB0034はヒトの刺激因子IL-36βに対し、明らかな機能阻害効果を持ち、サイトカインIL-6の分泌を有意に阻害できる。陽性対照900389抗体に比較し、本願抗体のIC50値がより低く、より優れた阻害効果を持っている。
【0125】
5.2.2 HIF細胞におけるhuIL-36刺激因子に対する候補抗体の機能阻害効果
HIF(Human Intestinal Fibroblasts)細胞をSerum Starvd培地で4.5E5/ml の細胞懸濁液に調製し、ウェル当たり100ul(45000の細胞)に96wpを加え一晩インキュベートした。抗体を段階的に希釈した後、50ul/ウェルを加え、37℃で15分インキュベートした。IL-36αを1000ng/mlに希釈し、ウェル当たり50ulを加え、よく混ぜた。37℃,5%CO2で4時間培養し、遠心分離によって上清を回収し、ヒトIL-6の含量を測定した。IL-36βを80ng/mに希釈し、ウェル当たり50ulを加え、よく混ぜた。37℃,5%CO2で4時間培養し、遠心分離によって上清を回収し、ヒトIL-6の含量を測定した。IL-36βを40ng/mに希釈し、ウェル当たり50ulを加え、よく混ぜた。37℃,5%CO2で20分培養し、キットでpNFκBの含量を測定した。
結果は表10と図8、表11と図9、表12と図10に示す通りである。
【表10】
【表11】
【表12】
この結果から、安定細胞株ヒト化抗体HB0034はヒトの刺激因子IL-36α、IL-36βに対し、明らかな機能阻害効果を持ち、サイトカインIL-6の分泌およびNF-κBのリン酸化を有意に阻害できる。陽性対照900389抗体に比較し、本願抗体のIC50値がより低く、より優れた阻害効果を持っている。
【0126】
実施例6 ヒト化抗体の非特異的結合試験(SPR)
本試験は、SPR法を用いて抗体サンプル(900389およびHB0034)と非標的分子の非特異的吸着効果を測定するもので、試験に用いられる試薬材料を表13に示す。
【表13】
Series S Sensor Chip CM5(GE,#BR-1005-30)チップを室温で20~30分平衡化し、Biacore 8K(GE)機器にセットした。アミノ基カップリングキット(GE,#BR-1000-50)で鶏卵由来リゾチーム溶液(Sigma,#L3790)と大豆由来トリプシン阻害剤1-S型(Sigma,#T-2327)をそれぞれCM5チップのチャンネル1および2に固定した。泳動用緩衝液はHBS-EP+(1X)(GE,#BR-1006-69)で、5つの平衡化サクルを設定した。ポリクローナルウサギ抗リゾチーム(ABcam,#Ab391),Anti-trypsin inhibitor antibody(LifeSpan Biosciences,#LS-C76609)、キメラ抗体およびヒト化抗体を泳動用緩衝液でそれぞれ1000nMに希釈し、流量5μL/min、注入チャンネル1、2および3,Flow Cell 1および2を設定した。結合時間は10min、解離時間は15minであった。再生流量を50μL/minとし、0.85%リン酸溶液(BIO-RAD,#176-2260)で60秒再生した後、50mM水酸化ナトリウム溶液(GE, #BR-1003-58)で30秒再生した。
【0127】
その結果、表14に示すように、BIコントロール抗体900389とリゾチームの結合応答値が20RUを超えたが、トリプシンとの結合応答値が20RU未満であったから、当該サンプルは負に荷電したことを示した。この試験では、900389とカルボキシメチルデキストランとの結合応答値が53.9RUであったため、当該サンプルはカルボキシメチルデキストランに結合できることを示した。HB0034とリゾチームおよびトリプシンとの結合応答値がすべて20RU未満であったので、当該サンプルは、明らかな非特異的な静電結合はないと考えられる。
【表14】
注:Buffer の影響を差し引いた後、応答値が20RU未満の場合に、相互作用が弱く無視できる程度で、20RUを超える場合は明らかな相互作用があり、100RUを超える場合に、高い相互作用があると一般に考えられている。
【0128】
実施例7 乾癬に対するヒト化抗体の治療効果
カニクイザルを6頭/群、計5群に分け、それぞれモデル対照群、陽性対照薬群、HB0034低用量群、HB0034中用量群およびHB0034高用量群とした。イミキモドクリーム(IMQ) を塗布して乾癬モデルを作成した。最初のモデリング当日 (Day0) からおよび4日目 (Day4)に、HB0034の低、中、高用量群に、それぞれ5、15、および 50 mg/kg の HB0034 を静脈内注射し、モデル対照群には生理食塩水、陽性対照薬群にはデキサメサゾン(5mg/cm2、塗布による投与、1日1回)を投与した。
【0129】
試験結果によると、実験終了時に、各群の体重がわずかに減少し、HB0034治療群の体重が用量の増加とともに減少する傾向を示した。生理食塩水(モデル群)と比較して、5mg/kgの用量では、HB0034はモデリングされた皮膚組織でのIL-17 および IL-36のレベルを有意に低下させ (p<0.05)、皮膚の病理学的スコアが改善する傾向を示したが、有意差はなかった (p>0.05) ) (表 15 を参照)。15mg/kg の用量で、HB0034はモデルのPASI スコアを有意に改善し(試験エンドポイント Day10、p<0.05)、皮膚の病理学的スコアを改善する傾向を示したが、有意差はなかった (p>0.05) (表 15、図 12 を参照)。モデリングされた皮膚組織でのIL-17 および IL-36 のレベルは有意に減少した (p<0.05)。50 mg/kg の用量で、HB0034は、モデルのPASI スコアを大幅に改善し (Day4~10、p<0.05)、皮膚の病理学的スコアおよび皮膚のIL-17、IL-36のレベルを有意に改善した(表15、図 11-図 12を参照)。ここで、図11では、n=6, *p<0.05, **p<0.01 vs. 生理食塩水で、図12では、n=6, **p<0.01 vs.生理食塩水であった。
【0130】
陽性対照薬であるデキサメサゾン(5mg/cm2)の当該モデルにおける治療効果は15 mg/kgのHB0034よりやや高く、50 mg/kgのHB0034よりやや低かった。
【0131】
以上のように、15~50 mg/kgの用量i.v.,Q4D×2) で、HB0034 は、IMQによって誘発される皮膚紅斑、ふけ、および皮膚肥厚の乾癬様症状を用量依存的に改善し、PASIスコアを低下させ、モデリング部位の皮膚病理学的スコアを改善し、皮膚組織のIL-17 および IL-36のレベルを低下させることができる。カニクイザルの IMQ 誘発乾癬モデルでは、HB0034の最小有効用量は15mg/kgである。
【表15】
【0132】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本願に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本願の前記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本願の請求の範囲に含まれると理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2023548535000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)
SEQ ID NO:3に示すCDR1、
SEQ ID NO:4に示すCDR2、および
SEQ ID NO:5に示すCDR3の3つの相補性決定領域CDRが含まれる重鎖可変領域、ならびに/または
(2)
SEQ ID NO:6に示すCDR1’、
SEQ ID NO:7に示すCDR2’、および
SEQ ID NO:8に示すCDR3’の3つの相補性決定領域CDRが含まれる軽鎖可変領域を含むことを特徴とする抗体。
【請求項2】
動物抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびそれらの組み合わせから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体の重鎖可変領域配列はSEQ ID NO:1もしくは9に示す通りであること、および/または
前記抗体の軽鎖可変領域配列はSEQ ID NO:2、10、11もしくは12に示す通りであることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
(i)請求項1に記載の抗体、ならびに
(ii)発現および/または精製を支援する任意に選ばれるタグ配列を含むことを特徴とする組換えタンパク質。
【請求項5】
モノクローナル抗体抗原結合領域のscFVセグメントが、IL-36Rに特異的に結合する結合領域であり、
前記scFvの重鎖可変領域には、
SEQ ID NO:3に示すCDR1、
SEQ ID NO:4に示すCDR2、および
SEQ ID NO:5に示すCDR3の3つの相補性決定領域CDRが含まれること、ならびに/または
前記scFvの軽鎖可変領域には、
SEQ ID NO:6に示すCDR1’
SEQ ID NO:7に示すCDR2’、および
SEQ ID NO:8に示すCDR3’の3つの相補性決定領域CDRが含まれることを特徴とするCAR構築物。
【請求項6】
請求項5に記載の外因性CAR構築物を発現することを特徴とする組み換え免疫細胞。
【請求項7】
(a)請求項1に記載の抗体である抗体部分、ならびに
(b)測定可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる結合部分を含むことを特徴とする抗体-薬物複合体。
【請求項8】
IL-36関連疾患の予防および/または治療のために用いられる医薬組成物であって、請求項1に記載の抗体、請求項4に記載の組換えタンパク質、請求項5に記載のCAR構築物、請求項6に記載の免疫細胞、請求項7に記載の抗体-薬物複合体、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる活性成分を含む、医薬組成物
【請求項9】
前記IL-36関連疾患には乾癬が含まれることを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物
【請求項10】
(i)請求項1に記載の抗体、請求項4に記載の組換えタンパク質、請求項5に記載のCAR構築物、請求項6に記載の免疫細胞、請求項7に記載の抗体-薬物複合体、およびそれらの組み合わせから選ばれる活性成分、ならびに
(ii)薬学的に許容される担体が含まれる医薬組成物。
【請求項11】
ポリヌクレオチドコードが請求項1に記載の抗体、請求項4に記載の組換えタンパク質、または請求項5に記載のCAR構築物であることを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とするベクター。
【請求項13】
宿主細胞に請求項12に記載のベクター、またはゲノムに請求項11に記載のポリヌクレオチドが組み込まれたことを特徴とする遺伝子操作された宿主細胞。
【請求項14】
(1)invitroでは、検体が請求項1に記載の抗体または請求項7に記載の抗体-薬物複合体と接触することと、
(2)抗原-抗体複合体が形成されているかどうかを測定し、複合体の形成は検体中のIL-36Rタンパク質の存在を示す手順からなる、検体におけるIL-36Rタンパク質の非診断的なinvitro検査のための方法。
【請求項15】
プレート(サポートプレート)と、請求項1に記載の抗体または請求項7に記載の抗体-薬物複合体を含む試験片を含むことを特徴とする測定プレート。
【請求項16】
(1)請求項1に記載の抗体を含む第一容器、および/もしくは
(2)請求項1に記載の抗体に対す二次抗体を含む第二容器、
または、請求項15に記載の測定プレートを含むことを特徴とするキット。
【請求項17】
(a)発現に適した条件下で、請求項13に記載の宿主細胞を培養することと、
(b)培養物から、請求項1に記載の抗体または請求項4に記載の組換えタンパク質である組み換えポリペプチドを単離することを含むことを特徴とする組み換えポリペプチドの調製法。
【国際調査報告】