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特表2023-548548繊維物品の少なくとも一部分を取り上げる装置及び方法
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  • 特表-繊維物品の少なくとも一部分を取り上げる装置及び方法 図1a
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  • 特表-繊維物品の少なくとも一部分を取り上げる装置及び方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】繊維物品の少なくとも一部分を取り上げる装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/08 20060101AFI20231110BHJP
   B65H 3/32 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
B65H3/08 360Z
B65H3/08 340
B65H3/32
B65H3/08 350A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526950
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 NL2021050678
(87)【国際公開番号】W WO2022098236
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】2026836
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522055429
【氏名又は名称】ランドリー ロボティックス ベスローテン ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー マルティヌス ファン ニーウェンハイゼン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター ポール テン ハーゲン
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ コベル
(72)【発明者】
【氏名】マルクス コベル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ホーファー
(72)【発明者】
【氏名】マルク ヨハネス ヘンドリック マリヌス ファン ベークホルト
(72)【発明者】
【氏名】アーウィン コルネリス ヘルマナス ヨハネス マーセン
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA08
3F343FB15
3F343FC01
3F343GA01
3F343JB16
3F343JB27
3F343JB28
3F343JC12
3F343JC20
(57)【要約】
本発明は、繊維物品の少なくとも一部分を取り上げる装置及び方法に関する。装置は、吸気口、排気口及び空気誘導部を備える。空気誘導部は、繊維物品の少なくとも一部分を取り上げることができる揚力が生成されるように気流の少なくとも一部を少なくとも1つの所定方向に誘導するために構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維物品の少なくとも一部分を取り上げる装置であって、
空気、特に圧縮空気、の吸入のために構成された少なくとも1つの吸気口と、
空気を吐出するために構成された少なくとも1つの排気口と、
気流の少なくとも一部を少なくとも1つの所定方向に誘導するために構成された少なくとも1つの空気誘導部と、
を備え、
少なくとも1つの空気誘導部は、少なくとも1つの誘導面を備え、
少なくとも1つの排気口及び少なくとも1つの誘導面は、前記繊維物品の少なくとも一部分を取り上げることができる揚力が生成されるように又は生成されることになるように、前記気流の少なくとも一部が少なくとも1つの排気口から吐出されたときに前記誘導面に沿って誘導されるように配置され、前記空気誘導部は、前記誘導面において少なくとも1つの乱流境界層を生成するように構成された少なくとも1つのタービュレータ要素を備える、装置。
【請求項2】
少なくとも1つのタービュレータ要素が、メッシュによって形成された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1つのタービュレータ要素が、バッフルによって形成された、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも1つのタービュレータ要素が、前記誘導面上に配置された、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記誘導面の少なくとも一部は、実質的に平坦である、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記誘導面の少なくとも一部は、空気分散を可能とするように構成された面構造物を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記面構造物は、所定のパターンを画定する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記所定のパターンは、三角形状で存在する、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置の前記気流の速度及び/又は圧力を少なくとも制御するように構成された少なくとも1つの制御ユニットを備える請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つの排気口は、空気が前記誘導面に略平行な方向に吐出されるように該誘導面に略平行に配置されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも1つの排気口は、少なくとも1つのノズル、好ましくはスリットノズル、を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの吸気口は、少なくとも1つの排気口よりも大きい、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置内の空気分散を可能とするように構成された内部構造物を備える請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記空気誘導部は、少なくとも1つの空気分散部分を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
取り上げられた前記繊維物品の少なくとも一部分を挟持して把持するように構成された少なくとも1つの挟持要素を備える請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記繊維物品の少なくとも一部分の取り上げ後の挟持的把持のために構成された少なくとも1つの把持用口部を備える請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記把持用口部は、前記気流を少なくとも部分的に遮断するように構成された少なくとも1つの境界要素を備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
排気の補正のために構成された少なくとも1つの第2の排気口を備える請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
繊維物品の少なくとも一部分を取り上げるための請求項1から18のいずれか一項に記載の装置の使用。
【請求項20】
好ましくは請求項1から18のいずれか一項に記載の装置を利用することによって繊維物品の少なくとも一部分を把持する方法であって、
少なくとも1つの気流を、該気流の少なくとも一部が誘導面に沿って誘導されるように提供するステップと、
前記誘導面に沿って誘導される前記気流によって生成される揚力によって前記繊維物品の少なくとも一部分を取り上げるステップと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維物品の少なくとも一部分を取り上げる装置に関する。本発明はまた、この装置の使用に関する。本発明はさらに、繊維物品の少なくとも一部分を取り上げる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維業界では、繊維の取扱い方法が重要である。繊維は、繊細な性質を有することがあるため、取扱い時のダメージに敏感となり得る。摘持又は機械的挟持を利用するグリッパは、多くの繊細な素材には荒すぎることが多い。そのため、繊維の取扱いのために構成されたグリッパの設計及び機能に着目する市場からの関心がある。従来技術に係るグリッパの他の例は、真空を利用するグリッパである。しかし、そのような真空グリッパの欠点は、二重層素材が提供された場合に、そのグリッパは多くの場合に複数の層を取り上げてしまうことである。また、真空によって与えられる力によって繊維がダメージを受けないことを保証することはできない。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本発明の目的は、繊維物品の少なくとも一部分を取り上げるための改良された装置又は少なくとも代替物を提供することである。
【0004】
本発明は、その目的に対して、繊維(物品)の少なくとも一部分を取り上げる装置を提供し、当該装置は、
空気、特に圧縮空気、の吸入のために構成された少なくとも1つの吸気口と、
空気を吐出又は排出するために構成された少なくとも1つの排気口と、
気流の少なくとも一部を少なくとも1つの所定方向に誘導するために構成された少なくとも1つの空気誘導部と、
を備え、
少なくとも1つの空気誘導部は、少なくとも1つの誘導面を備え、
少なくとも1つの排気口及び少なくとも1つの誘導面は、前記繊維物品の少なくとも一部分を取り上げることができる揚力が生成されるように又は生成されることになるように、前記気流の少なくとも一部が少なくとも1つの排気口から吐出されたときに前記誘導面に沿って誘導されるように配置される。
【0005】
本発明に係る装置は、繊維物品の少なくとも一部分を取り上げるために構成された従来の装置に対して幾つかの利点を有する。装置は、真空の利用に代えて、空気の吹出しを用いて繊維物品の一部分が取り上げられることを可能とする。装置は少なくとも1つの空気誘導部を備えるので、吐出された気流の少なくとも一部は所定方向に誘導され得る。空気誘導部は少なくとも1つの誘導面を備え、少なくとも1つの排気口及び少なくとも1つの誘導面は、少なくとも1つの排気口から吐出される気流の少なくとも一部が通常は層状に誘導面に沿って誘導されるように配置される。したがって(層状の)気流は、繊維物品の少なくとも一部分を取り上げるように適用可能な揚力を(一時的に)生成する。これは、コアンダ効果をもたらす気流(空気噴射)にわたる圧力差によって少なくとも部分的に説明可能である。実際に、排気口及び誘導面は、排気口から吐出された空気が誘導面に向かって逸れ及び/又は誘導面に張り付くことになるように配置され、これもまたコアンダ効果によって少なくとも部分的に説明され得る。本発明に係る空気誘導部によって、繊維物品の一部分を制御された態様で取り上げるのに使用され得る制御された気流が取得され得ることが可能となる。これは、気流の少なくとも一部を少なくとも1つの所定方向に誘導するために構成された少なくとも1つの空気誘導部の適用によって少なくとも部分的に説明可能である。持ち上げられるべき繊維物品の一部分は、通常は気流の揚力によって誘導面に向かって引き込まれることになる。
【0006】
繊維物品の少なくとも一部分を持ち上げ及び/又は取り上げるために吐出気流を用いることは、幾つかの理由のために真空を用いることよりも有利である。二重層の素材が提供された場合に、真空は通常複数の層を取り上げてしまうが、本発明に係る装置は単層の繊維物品が取り上げられ得ることを可能とする。また、本発明に係る装置を用いて繊維物品の少なくとも一部分を取り上げることは、繊維にダメージを与えにくい。繊維物品は、緩やかかつ非破壊的に取り上げられる。したがって、装置は、繊細な材料を取り上げるために適用可能である。繊維物品という用語は、例示として使用される。装置は、布、織物素材又は不織素材の少なくとも一部分を取り上げるためにも使用可能である。取り上げられ得る布の例は、麻、綿、毛などである。「繊維」という用語が示される場合、布、織布又は不織布の用語も使用可能である。繊維物品の非限定的な例は、上着、シャツ、ブラウス、セーター、ズボン及び/又はワンピースなどの衣服、それだけでなく、タオル、シーツ、ナプキン、布団、カバーなどである。本発明に係る装置が医療用シーツを取り上げるのに使用されることも考えられる。
【0007】
本発明に係る装置を、グリッパ、気流グリッパ又はコアンダグリッパということもある。装置は、通常は圧縮空気を利用する。加圧空気が適用されることも考えられる。少なくとも1つの排気口は、通常は層流を与えるように構成される。繊維物品の一部分は、これらに限定されないが、角部、縁部、角領域、肩部分、襟、袖、ボタン及び/又はジッパーなどの所定部分であり得る。吸気口は、通常は少なくとも1つの給気源に接続されるように構成される。これは、例えば、外部給気源であり得る。本発明に係る装置が空気、特に圧縮空気の提供のために少なくとも1つの給気源を備えることも考えられる。
【0008】
有利な実施形態では、空気誘導部は、好ましくは少なくとも1つの乱流境界層を誘導面に生成するように構成された少なくとも1つのタービュレータ要素を備える。少なくとも1つのタービュレータ要素は、層状境界層を乱流境界層に変えるように構成され得る。タービュレータ要素は、例えば、気流内での繊維物品のはためきを防止し、及び/又は繊維の少なくとも一部分が安定的に気流に追従することを確実にするように適用され得る。タービュレータ要素が乱流境界層を生成するように構成されていることによって、排気口によって吐出される空気の空気分散は少なくとも部分的に制御され得る。繊維物品が安定的に気流に追従可能となることが望まれる位置に少なくとも1つのタービュレータ要素を適用することが有用となり得る。装置、特に空気誘導部が複数のタービュレータ要素を備えることが考えられる。少なくとも1つの誘導面が少なくとも1つのタービュレータ要素を備えると言うこともできる。
【0009】
場合によっては、少なくとも1つのタービュレータ要素は、メッシュによって形成される。メッシュは、例えば、織物メッシュ、一体化メッシュ及び/又は機械加工メッシュであり得る。例えば、少なくとも1つのタービュレータ要素を、誘導面に形成された機械加工メッシュとすることも考えられる。少なくとも1つのタービュレータ要素は、金属からなるものであってもよい。少なくとも1つのタービュレータ要素は、例えば、金属製ワイヤを備え得る。少なくとも1つのタービュレータ要素は、通常は所定の位置に配置される。ただし、タービュレータ要素、例えば、メッシュが所定の形状及び/又はパターンを画定していると特に有利である。したがって、空気の分散が、さらに制御可能となる。所定の形状及び/又はパターンは、例えば、波線、三角形、略直線、矩形及び/又は円形の少なくとも一部であり得る。
【0010】
タービュレータ要素の好適な位置、形状及び/又はパターンは、取り上げられる繊維物品の材質、形状及び意図する部分などの繊維物品の特性に応じる。制御された空気分散を可能とすることに加えて、少なくとも1つのタービュレータが、繊維物品の部分の把持及び/又は挟持時の把持用の補助として使用されてもよい。
【0011】
少なくとも1つのタービュレータがバッフルによって形成されることも考えられる。好適な実施形態では、少なくとも1つのタービュレータ要素は、誘導面上に配置される。排気口によって吐出された空気は誘導面に向かって誘導されるので、少なくとも1つのタービュレータ要素を誘導面に配置することによって、気流がより制御可能となる。少なくとも1つのタービュレータ要素は、例えば、誘導面に取り付けられてもよい。
【0012】
好ましくは、誘導面の少なくとも一部は、実質的に平坦である。実質的に平坦な誘導面は気流のための良好な誘導を与えることが、実験的に見いだされた。ただし、誘導面の少なくとも一部が部分的に湾曲していることも考えられる。好ましくは、誘導面は、制限された寸法のものである。例えば、確実に気流の層流を可能とするために誘導面を所定の寸法のものとすることが考えられる。
【0013】
通常、誘導面の少なくとも一部は、実質的に滑らかである。これは、気流が誘導面に、特に層状に追従可能となることに有利に寄与する。したがって、誘導面の少なくとも一部は、気流のための障害物のない通路を形成し得る。場合によっては、誘導面の少なくとも一部は、構造化されてもよい。誘導面の少なくとも一部が空気分散を可能とするように構成された面構造物を備えることが考えられる。面構造物の機能は、乱流境界層の生成であり得る。したがって、面の構造化部分は、基本的にタービュレータ要素を形成し得る。したがって、面構造物は一体形成されたタービュレータ要素であり得ると言える。このような実施形態は、製造が比較的容易であるので有利である。面構造物は、繊維物品が安定的に気流に追従することを可能としてはためきを防止することが望まれる場所に適用され得る。少なくとも部分的に滑らかであり及び/又は少なくとも部分的に構造化された誘導面を有する装置の実施形態により、気流の少なくとも一部の誘導は比較的単純に最適化され得る。面構造物が所定のパターンを画定すると特に有利である。空気分散が、そのような実施形態によってさらに最適化可能となる。構造化面の所定のパターンは、例えば、三角形状で存在していてもよい。これは、繊維物品の角部が取り上げられる場合に有用となり得る。三角形は、好ましくは三角形の頂点が少なくとも1つの排気口に面するように配置される。この構成は、外付けされるタービュレータ要素にも適用され得る。
【0014】
装置は、好ましくは、装置の気流の速度及び/又は圧力を少なくとも制御するように構成された少なくとも1つの制御ユニットを備える。装置は、少なくとも1つの駆動ユニットをさらに備え得る。
【0015】
好ましくは、少なくとも1つの排気口が、特に、空気が誘導面に略平行な方向に吐出されるように、誘導面に略平行に配置される。この態様では、吐出空気の層流が補助される。それは、繊維物品の少なくとも一部分を取り上げることができる揚力が生成されるように、吐出空気が誘導面に沿って誘導される能力にさらに寄与する。複数の排気口が適用されることが考えられる。好ましくは、排気口は、略平行に配置される。排気口が円形状(又は円環状)構成で配置されることも考えられる。そのような実施形態では、誘導面が排気口を包囲することが考えられる。複数の誘導面が適用されることも可能である。複数の排気口が適用される場合、各排気口が誘導面の少なくとも一部に略平行に配置されると有利である。装置が少なくとも2個の空気誘導部及び少なくとも2個の排気口を備え、空気誘導部が、取り上げられるべき繊維物品の部分が空気誘導部によって実質的に包囲可能となるように相互に対向することも考えられる。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つの排気口は、少なくとも1つのノズル、好ましくはスリットノズルを備える。ノズルの存在は、より制御された空気の吐出に寄与し得る。排気口又は空気孔は、好ましくは比較的小さい。空気は、通常、比較的高い速度で吐出される。ノズル、特にスリットノズルの存在は、気流の方向及び/又は特性を制御することにさらに寄与し得る。排気口又はノズルの空気孔は、例えば0.1~0.3mmの範囲、例えば約0.2mmの直径を有し得る。排気口及び/又は空気誘導部は、少なくとも1つの空気分散部分をさらに備え得る。そのような空気分散部分は、排気口又は存在する場合にはノズルから誘導面までの空気の制御された配分に寄与し得る。そのような空気分散部分は、例えば、少なくとも部分的に略立方体、球体及び/又は直方体であり得る。好ましくは、空気分散部分は、吐出空気が放出されるスリットを備える。非限定的な例は、25~75mmの間、例えば約50mmの幅を有する空気分散部分である。装置の寸法は、その用途に適合され得る。比較的大きな誘導面及び/又は空気分散部分は、繊維物品の縁部などの比較的大きな部分が取り上げられる場合に適用され得る。
【0017】
通常、少なくとも1つの吸気口は、少なくとも1つの排気口よりも大きい。したがって、吸気口の吸気面は、通常は排気口の排気面よりも大きい。好ましくは、少なくとも1つの吸気口は、少なくとも1つの排気口から離間して設けられる。例えば、少なくとも1つの吸気口は(圧縮)空気が装置の上面から装置の内部に送り込まれるように装置の上側領域に設けられ、少なくとも1つの排気口は装置の底領域に設けられることが考えられる。
【0018】
好適な実施形態では、装置は、装置内の空気分散を可能とするように構成された内部構造物を備える。これは、空気の吹出しの制御について有利となり得る。
【0019】
さらに他の好適な実施形態では、装置は、取り上げられた繊維物品の少なくとも一部分を挟持して把持するように構成された少なくとも1つの挟持要素を備える。したがって、繊維物の一部分がコアンダ効果を受ける気流によって取り上げられた後、繊維物品の持ち上げられた部分は機械的に把持可能となる。挟持要素は、例えば、空気誘導部の少なくとも一部、特に誘導面と協働することができる。気流及び挟持要素の使用の組合せによって、挟持は、より緩やかとなり得る。挟持要素は、繊維物品の部分が挟持される位置に搬送される前に進入する。したがって、繊維部分の挟持が、さらに制御可能となる。好ましくは、挟持要素は、移動可能、特に枢動可能に空気誘導部に接続される。装置が、繊維物品の少なくとも一部分の取り上げ後の挟持的把持のために構成された少なくとも1つの把持用口部を備えることも考えられる。場合によっては、空気誘導部の一部及び少なくとも1つの挟持要素が、そのような把持用口部を形成する。更なる実施形態では、把持用口部は、少なくとも部分的に気流を遮断するように構成された少なくとも1つの境界要素を備え得る。境界要素は、空気誘導部及び/又は適用される場合には挟持要素の一部を形成し得る。好ましくは、把持用口部は、少なくとも2つの対向する境界要素を備え、境界要素は気流を少なくとも部分的に遮断し及び/又は気流を誘導するように構成される。境界要素は、好ましくは、それらが少なくとも部分的に空気誘導部の誘導面を包囲するように配置される。通常、繊維物品の一部分が把持された後に、気流は停止され得る。装置は、排気の補正のために構成された少なくとも1つの第2の排気口をさらに備えてもよい。
【0020】
本発明に係る装置は、繊維物品の少なくとも一部分を取り上げるシステムに適用され得る。そのようなシステムにおいて装置を実施するように構成された接続要素を装置が備えることが考えられる。
【0021】
本発明はまた、特に、好ましくはニューラルネットワークと組み合わせて繊維物品の少なくとも一部分を取り上げるための本発明に係る装置の使用に関する。
【0022】
本発明はさらに、好ましくは本発明に係る装置を利用することによって、繊維物の少なくとも一部分を把持する方法に関し、方法は、誘導面に沿って誘導される少なくとも1つの気流を提供するステップと、誘導面に沿って誘導される気流によって生成される揚力によって繊維物品の少なくとも一部分を取り上げるステップを備える。方法は、取り上げられた繊維物品の部分を挟持して把持するステップをさらに備え得る。装置が把持用口部及び/又は挟持要素を備える場合に繊維物品の一部分が把持用口部及び/又は挟持要素によって挟持して把持された後に気流が停止されることが考えられる。
【0023】
本発明は、以下の非限定的な条項に基づいてさらに明らかとなる。
1.繊維物品の少なくとも一部分を取り上げる装置であって、
空気、特に圧縮空気、の吸入のために構成された少なくとも1つの吸気口と、
空気を吐出するために構成された少なくとも1つの排気口と、
気流の少なくとも一部を少なくとも1つの所定方向に誘導するために構成された少なくとも1つの空気誘導部と、
を備え、
少なくとも1つの空気誘導部は、少なくとも1つの誘導面を備え、
少なくとも1つの排気口及び少なくとも1つの誘導面は、前記繊維物品の少なくとも一部分を取り上げることができる揚力が生成されるように又は生成されることになるように、前記気流の少なくとも一部が少なくとも1つの排気口から吐出されたときに前記誘導面に沿って誘導されるように配置されている、装置。
2.前記空気誘導部は、前記誘導面に少なくとも1つの乱流境界層を生成するように構成された少なくとも1つのタービュレータ要素を備える、条項1に記載の装置。
3.少なくとも1つのタービュレータ要素が、メッシュによって形成された、条項2に記載の装置。
4.少なくとも1つのタービュレータ要素が、バッフルによって形成された、条項2又は3に記載の装置。
5.少なくとも1つのタービュレータ要素が、前記誘導面上に配置された、条項2から4のいずれか一項に記載の装置。
6.前記誘導面は、実質的に平坦である、条項1から5のいずれか一項に記載の装置。
7.前記誘導面の少なくとも一部は、空気分散を可能とするように構成された面構造物を備える、条項1から6のいずれか一項に記載の装置。
8.前記面構造物は、所定のパターンを画定する、条項7に記載の装置。
9.前記所定のパターンは、三角形状で存在する、条項7又は8に記載の装置。
10.前記装置の前記気流の速度及び/又は圧力を少なくとも制御するように構成された少なくとも1つの制御ユニットを備える条項1から9のいずれか一項に記載の装置。
11.少なくとも1つの排気口は、空気が前記誘導面に略平行な方向に吐出されるように該誘導面に略平行に配置されている、条項1から10のいずれか一項に記載の装置。
12.少なくとも1つの排気口は、少なくとも1つのノズル、好ましくはスリットノズル、を備える、条項1から11のいずれか一項に記載の装置。
13.少なくとも1つの吸気口は、少なくとも1つの排気口よりも大きい、条項1から12のいずれか一項に記載の装置。
14.前記装置内の空気分散を可能とするように構成された内部構造物を備える条項1から13のいずれか一項に記載の装置。
15.前記空気誘導部は、少なくとも1つの空気分散部分を備える、条項1から14のいずれか一項に記載の装置。
16.取り上げられた前記繊維物品の少なくとも一部分を挟持して把持するように構成された少なくとも1つの挟持要素を備える条項1から15のいずれか一項に記載の装置。
17.前記繊維物品の少なくとも一部分の取り上げ後の挟持的把持のために構成された少なくとも1つの把持用口部を備える条項1から16のいずれか一項に記載の装置。
18.前記把持用口部は、前記気流を少なくとも部分的に遮断するように構成された少なくとも1つの境界要素を備える、条項17に記載の装置。
19.排気の補正のために構成された少なくとも1つの第2の排気口を備える条項1から18のいずれか一項に記載の装置。
20.繊維物品の少なくとも一部分を取り上げるための条項1から19のいずれか一項に記載の装置の使用。
21.好ましくは条項1から19のいずれか一項に記載の装置を利用することによって繊維物の少なくとも一部分を把持する方法であって、
少なくとも1つの気流を、該気流の少なくとも一部が誘導面に沿って誘導されるように提供するステップと、
前記誘導面に沿って誘導される前記気流によって生成される揚力によって前記繊維物品の少なくとも一部分を取り上げるステップと、
を備える方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1a図1aは、本発明に係る第1の実施形態の装置を示す。
図1b図1bは、本発明に係る第1の実施形態の装置を示す。
図2図2は、本発明に係る第2の実施形態の装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、以下の図面に記載された非限定的な例示的実施形態によってさらに明らかとされる。
【0026】
これらの図面内で、同様の符号は、同様又は同等の要素又は構成に対応する。
【0027】
図1a及び1bは、本発明に係る第1の実施形態の装置1を示す。装置1は、繊維物品10の少なくとも一部分を取り上げるために構成される。装置1は、空気、特に圧縮空気の吸入のために構成された吸気口2、及び空気の吐出のために構成された排気口3を備える。また、装置1は、少なくとも1つの所定方向に気流の少なくとも一部を誘導するために構成された空気誘導部4を備える。図示する実施形態では、空気誘導部4は、図示する実施形態では実質的に平坦な誘導面5を備える。排気口3及び誘導面5は、繊維物品10の少なくとも一部分を取り上げることができる揚力が生成されるように、排気口3から吐出される気流の少なくとも一部が誘導面5に沿って誘導されるように配置される。この効果が図面に示される。図1aは初期状況を示し、繊維物品10は初期状態にあり、面上に配置される。気流が作動された後、空気は排気口3から吐出される。生成された揚力によって、繊維物品10は、誘導面5に向かって誘導される。矢印は、繊維物品10の移動を示す。また、空気誘導部4は、誘導面5において少なくとも1つの乱流境界層を生成するように構成されたタービュレータ要素6を備える。タービュレータ要素6は、図示する実施形態では、メッシュによって形成される。タービュレータ要素6は、誘導面5上に配置される。一方、タービュレータ要素6が誘導面5の一体的部分を形成することも考えられる。タービュレータ要素6は、三角形状で存在する。これは、取り上げられるべき物品10が特定の状況では角部であり、角部がはためくのを防止できるようにその三角形が配置されるので、有利となる。装置1は、制御ユニット及び/又は駆動ユニット(不図示)を任意選択的に備えていてもよい。図示する実施形態では、装置1及び特に空気誘導部4は、空気分散部分7を備える。空気分散部分7は、吐出空気が放出されて基本的に誘導面5にわたって分割されるスリットを備える。装置1はまた、気流を遮断するように構成された2つの境界要素8を備える。
【0028】
図2は、本発明に係る第2の実施形態の装置11を示す。装置11は、図1a及び1bに示す装置1と同様の構成要素を幾つか有する。装置11は、空気、特に圧縮空気の吸入のために構成された吸気口2、及び空気の吐出のために構成された排気口3を備える。また、装置11は、少なくとも1つの所定方向に気流の少なくとも一部を誘導するために構成された空気誘導部4を備える。図示する実施形態では、空気誘導部4は、タービュレータ要素6が設けられた誘導面5を備える。また、装置11は、取り上げられた繊維物品(不図示)の少なくとも一部分を挟持して把持するように構成された挟持要素20を備える。挟持要素20及び空気誘導部4は、基本的に把持用口部21を画定する。図示する実施形態では、境界要素8は、空気誘導部4の一部を形成する。一方、境界要素8が挟持要素20の一部を形成することも考えられる。挟持要素20は、枢動可能に接続される。
【0029】
本発明はここに図示及び記載される例示的実施形態に限定されないこと、及び当業者には明白な無数の変形例が添付の特許請求の範囲の骨格内で可能であることは明らかである。この場合、上記変形実施形態の様々な発明のコンセプト及び/又は技術的対策は、添付の特許請求の範囲に記載される発明の発想から逸脱することなく、完全に又は部分的に組み合わせられるものと考えられる。
【0030】
本特許書類で使用される動詞「備える」及びその活用形は、「備える」を意味するだけでなく「含む」、「実質的に含む」、「によって形成/構成される」及びその活用形も含むものと理解される。
図1a
図1b
図2
【国際調査報告】