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特表2023-548552視線角度に応じた投与量調整を有するガンマ刺激パルス光源システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】視線角度に応じた投与量調整を有するガンマ刺激パルス光源システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20231110BHJP
   A61M 21/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61M21/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527010
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 US2021056478
(87)【国際公開番号】W WO2022093704
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】17/084,275
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523156899
【氏名又は名称】ドブキン、 ロバート
【氏名又は名称原語表記】DOBKIN, Robert
【住所又は居所原語表記】c/o Optoceutics ApS 1641 Powell Ct. San Jose, California 95122 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】523156903
【氏名又は名称】グエン、 ゴック マイ
【氏名又は名称原語表記】NGUYEN, Ngoc Mai
【住所又は居所原語表記】c/o Optoceutics ApS 1641 Powell Ct. San Jose, California 95122 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】523156914
【氏名又は名称】オプトスーテイックス アーペーエス
【氏名又は名称原語表記】OPTOCEUTICS APS
【住所又は居所原語表記】39769680, Elektrovej 331 2800 Kongens Lyngby (DK)
(71)【出願人】
【識別番号】512013477
【氏名又は名称】テクニカル ユニバーシティ オブ デンマーク
【氏名又は名称原語表記】TECHNICAL UNIVERSITY OF DENMARK
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】ドブキン、 ロバート
(72)【発明者】
【氏名】グエン、 ゴック マイ
(72)【発明者】
【氏名】カーステンセン、 マーカス
(72)【発明者】
【氏名】ピーターセン、 ポール ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ブロエング、 ジェス
(72)【発明者】
【氏名】ヘニー、 マーク
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA10
4C082PC10
4C082PE10
4C082PJ01
(57)【要約】
光または音を用いた、アルツハイマー病または睡眠障害を予防または治療するための、ガンマ脳刺激が知られている。40Hzの点滅光源は、その刺激により肯定的な効果をもたらすことが示されている。投与量と有効性との関係を理解するために、被検者の眼に入る光の実際の投与量を知ることは有利である。カメラは、対象者の視線角度、距離、瞳孔直径、及び眼に入る光パワーに影響する他の要因を検出するために使用される。目標投与量は、アルツハイマー病患者などの集団に対して全く同じ投与量を与えた場合の効果を判定するために、医療従事者によって初めに決定される。視線角度、距離、および瞳孔サイズが理想から外れると、有効投与量が減少する。そのような要因に基づいて、被検者が受ける最終的な投与量が一貫し、目標投与量を満たすように、開示されるシステムは、セッション継続時間等の実際の投与量を調整する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理システムと、
約13~140Hz間の脳刺激速度で点滅するように制御されるための光源と、
人の眼を検出し、第1データを前記処理システムに提供する視標追跡装置と、を備え、
前記処理システムは、脳刺激セッションの態様を調整するために前記第1データを使用するように構成されている、
人の脳刺激システム。
【請求項2】
前記脳刺激速度は、20~140Hz間のガンマ脳刺激速度である、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項3】
前記第1データは、前記光源に対する前記人の視線角度に対応する、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項4】
前記第1データは、前記光源までの前記人の距離に対応する、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項5】
前記第1データは、前記人の瞳孔サイズに対応する、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項6】
前記処理システムは、前記第1データに基づいて前記脳刺激セッションの継続時間を調節するように構成される、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項7】
前記処理システムは、前記第1データに基づいて前記脳刺激セッションの前記継続時間を延長するように構成される、
請求項6に記載の刺激システム。
【請求項8】
前記セッションが調整される間に前記脳刺激セッションの継続時間のディスプレイをさらに備える、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項9】
前記視標追跡装置はカメラを備える、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項10】
前記処理システムは、脳刺激セッション時間に対応する前記脳刺激の目標投与量を受信するように構成され、前記第1データは、前記セッション時間の継続時間を調整するために使用される、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項11】
メモリをさらに備え、
前記脳刺激セッションに対応する第2データは、後の検索のために前記メモリに記憶される、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項12】
前記脳刺激は、アルツハイマー病の影響を治療するため、またはアルツハイマー病を予防するため、または睡眠障害を治療するために使用される、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項13】
通信システムをさらに備え、
前記通信システムは、前記脳刺激の有効性を判定する際に使用される、前記セッションに関する第2データを送信する、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項14】
約13~140Hz間の脳刺激速度で光源を点滅させることと、
第1データを処理システムに提供するために視標追跡装置を用いて人の眼を検出することと、
脳刺激セッションの態様を調整するために前記第1データを処理することと、
を備える、
人の脳刺激方法。
【請求項15】
脳刺激セッション継続時間に対応する前記脳刺激の目標投与量を受信することと、
前記セッション継続時間を調整するために前記第1データを使用することと、
をさらに備える、
請求項14に記載の刺激方法。
【請求項16】
前記第1データは、前記光源に対する前記人の視線角度に対応する、
請求項14に記載の刺激方法。
【請求項17】
前記第1データは、前記光源までの前記人の距離に対応する、
請求項14に記載の刺激方法。
【請求項18】
前記第1データは、前記人の瞳孔サイズに対応する、
請求項14に記載の刺激方法。
【請求項19】
前記処理することは、前記第1データに基づいて前記脳刺激セッションの前記継続時間を延長する、
請求項14に記載の刺激方法。
【請求項20】
前記脳刺激は、アルツハイマー病の影響を治療するため、またはアルツハイマー病を予防するため、または睡眠障害を治療するために使用される、
請求項14に記載の刺激方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、アルツハイマー病、認知症、または概日リズム睡眠障害等の特定の病気を治療または予防するための光(またはフォトニック)ガンマ脳刺激に関し、より具体的には、対象者の視線角度または他の変化する視覚特性にかかわらず、ガンマ脳刺激の目標有効投与量を提供する、光投与量調節システムに関する。本発明は、睡眠障害のためのベータ脳刺激などの、他の光パルス周波数にも適用される。
【背景技術】
【0002】
研究では、マウスにおいてガンマ脳波の刺激がアルツハイマー関連タンパク質を減少させ、病気に関連する神経変性を遅くするという証拠が示されている。ガンマ脳波は、脳の全ての部位からの情報を関連付け、そして処理するのに役立つ電荷である。人間においても同様の有益な効果が生じると考えられており、そのような研究は進行中である。
【0003】
健康な脳は、異なる周波数で動作するリズムパターンまたは脳波を特徴とする。ガンマ脳波は、およそ20~140Hzで振動し、より高次の認知機能と関連付けられ、そしてアルツハイマー病および他の神経疾患または精神疾患を有する人々の脳において減少することが知られている。
【0004】
アルツハイマーのモデルマウスの、40Hzで明滅する(すなわち、点滅する)可視波長LED光への曝露は、ガンマ波を刺激し、これがβ-アミロイドおよびタウ(アルツハイマーに関連するタンパク質)のレベルを低下させるだけでなく、有害なデブリを除去するミクログリアを活性化させることが発見されている。言い換えれば、そのような点滅は、40Hz付近の脳波振動を引き起こす。
【0005】
光ガンマ脳刺激の効果のさらなる詳細は、公開された出願の国際公開第2018/152255および米国特許出願公開第2020/0269065に記載され、いずれも参照により本明細書に組み込まれる。さらに多くの刊行物がそのような効果を記載している。
【0006】
アルツハイマーのモデルマウスにおける音(例えば、40Hzで再生されるクリック音)を使用したガンマ波刺激は、関連する有益な効果を有する。
【0007】
光または音ガンマ刺激の使用は、刺激されたマウスが、物体を認識し隠された逃避台を見つけるために水迷路を遊泳することを含む記憶課題(memory tasks)において、より良い成果を出すという結果をもたらした。研究者らはまた、ミクログリアおよびアストロサイト(デブリの除去に関わる細胞)ならびに血管における活性化反応の変化を目にした。
【0008】
光および音ガンマ刺激の組み合わせに曝露されたマウスは、視覚および聴覚野を越え、課題(tasks)の計画および完了にとって重要な脳の領域である前頭前野まで、その効果を拡大した。画像解析によって、科学者らは、刺激されたマウスにおいてアミロイド沈着周辺でのミクログリアの特異的な集積効果と、アミロイド病理の低減を発見した。しかしながらその効果は短く、刺激後1週間で減少した。
【0009】
定期刊行のニューロン誌にて公開された研究において、MITの研究者らは、より進行したアルツハイマー病のモデルマウスを、視覚刺激による最大6週間のガンマ同調に曝露することによって、長期治療の効果を検証した。結果は、視覚野と、海馬と前頭前野を含む高次の脳領域とにおいて、刺激がガンマ脳波を増加させたことを示した。継続的な刺激はまた、これらの脳領域におけるニューロンおよびシナプスの密度を保ち、記憶課題に対する成果を改善し、炎症を低減した。検証結果は、神経変性の後期においても、全体的な神経保護的効果があることを示唆している、と研究者は報告している。
【0010】
この研究の結果は、人間におけるアルツハイマー病の治療法になる可能性があるとして、以前のガンマ波刺激の研究をより深めた。
【0011】
異なる速度で明滅する一連のLED光を使用して、研究者らは、40Hzで点滅する光の、1回1時間にわたる治療が、アルツハイマーの極めて早期の段階にあるマウスの視覚野においてガンマ波を増加させ、ベータアミロイドのレベルを半減させることを発見した。しかし、24時間以内に、眼からの情報を処理するこの脳領域において、アミロイドレベルは通常に戻った。科学者らが、さらに高いレベルのアミロイドを有するマウスを、1日あたり1時間、7日間にわたり明滅光に曝露した場合、アミロイド斑の数および自由浮遊アミロイドのレベルは減少した。治療はまた、ミクログリアの効率を上昇させ、アミロイド斑および自由浮遊アミロイドの数を減少させた。
【0012】
以上のように、ガンマ脳刺激には反復治療が必要であり、これは被検者にとって非常に時間がかかる。ガンマ脳刺激光の最適な投与量が決定される。明滅光の有効投与量は、被検者が光を直視しているか(最大暴露)、光から眼を逸らしているか(最小暴露)によって決まる。脳波記録(electroencephalography)を使用して治療の進行を検知してもよいが、被検者の自宅でのそのような検査は実用的ではない。したがって、投与量を正確に測定することは、治療を追跡するために非常に重要である。
【0013】
被検者は、自身のガンマ脳刺激を自身の自宅でいつでも行えることが望ましい。また、ガンマ脳刺激システムは、被検者の投与量が最適であるように完全に自動化されることが望ましい。したがって、光源に対する被検者の視線角度、眼距離、または瞳孔サイズにかかわらず、事前にプログラムされた最適な投与量を被検者に提供する、自動光ガンマ脳刺激システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
40Hzの速度などのガンマ範囲内で、白色光または青色LEDなどの1つまたは複数の光源を明滅させる光(またはフォトニック)ガンマ脳刺激システムが開示される。20Hz~140Hz間のガンマ脳刺激速度範囲が効果的であり得る。50%のデューティサイクルが十分であるが、デューティサイクルは重要ではない。光源出力パワーは、患者またはそれを見ている他の人などの被検者にとって快適なレベルであるべきであり、正確な出力パワーは重要ではないようである。最適な投与量は、システムに予めプログラムされる。患者などの特定の被検者にとっての最適な投与量は、例えば午前9時に、例えば毎日連続1時間であり得る。多くの同様の被検者への投与量を正確に観察し、情報を記憶し、同時に病状の変化について被検者を検査することで、投与量と患者の改善との間に相関性を持たせることができる。
【0015】
海馬、扁桃体、前頭前野(PFC)、視覚野(VC)、および視交差上核(SCN)などの脳の様々な領域は、光脳刺激治療によって刺激することができる。脳のこれらの特定の領域に対する、光脳刺激の最適な目標有効用量を決定する能力は、神経変性に関連する病気の治療に役立つ。特に、海馬およびSCNを活性化して概日リズム(しばしばアルツハイマーの早期発症に関連する)に作用するために必要とされる最小投与量を理解することは、病気の治療の個別化/個人化を可能にし得る。
【0016】
光曝露の15分以内にサイトカインの活性化の用量依存性を調べることができるが、自己免疫細胞の活性化には60分かかる。したがって、特定の酵素および転写/翻訳活性化がいつ起こるかを知ることは、必要とされる治療継続時間(または投与量)を決定する際に重要であり、治療は、被検者ごとに個別化することができる。
【0017】
より正確な有効投与量を決定するために、視標追跡システムは、刺激セッション中の光源に対する被検者の視線角度を検出する。被検者が特定の距離(例えば、50cm)で光源を直視している場合、最大投与量が与えられる。その場合、投与時間は最小であり得る。治療中のある時間にわたって、被検者の視線が光源から逸れている場合、被検者が、1日の適切な総投与量を受けるように、非ゼロ視線角度は、アルゴリズムを使用して処理され投与時間が延長される。
【0018】
視線追跡器はまた、光源からの眼の距離及び瞳孔の直径を判定することができる。これらの要因はまた、有効投与量に影響し、システムは、眼距離および瞳孔サイズを補償するように、投与時間または光出力パワーさえも動的に制御する。
【0019】
ディスプレイは、治療の残り時間を被検者に伝えてもよく、それは被検者の視線に応じて動的に調整される。したがって、セッション時間を最小限にするために、被検者は光源を直視することが奨励される。
【0020】
システムは、机に支持されたシステム、携帯型スクリーンおよびタブレット、スマートフォン、平面もしくは曲面スクリーン、着用型ゴーグル、または他のタイプの平面、曲面、円形、もしくはその他の異なる形状の光学スクリーンもしくは光源システムに組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る、投与量調整部を有する光ガンマ脳刺激装置を示す。
図2】システム内の様々なモジュールを示す。
図3】システムの光検出の態様をより詳細に示す。
図4】ガンマ脳刺激投与量に対する様々な要因の効果を示すフローチャートである。
図5】システムプロセスの概要における工程を特定するフローチャートである。 様々な図面において同じ番号が付された要素は、同じまたは同等であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、アルツハイマー病と診断されたか、アルツハイマー病もしくは関連疾患を発症するリスクがあるかのいずれか、または概日リズム睡眠障害と診断された、光ガンマ脳刺激で治療され得る被検者10などの対象者を示す。被検者10は、さらに、音ガンマ脳刺激を受けるか、または音ガンマ脳刺激で治療されてもよい。
【0023】
ガンマ脳刺激光システム12は、被検者10から約50~100cmの場所に配置される。システムは、テーブルまたは机によって支持されてもよい。別の実施形態では、システムは被検者10が着用するゴーグルを構成する。
【0024】
一実施形態では、パルス光源14は、青色LED、白色LED、または種々の異なる波長の単色LEDを使用する。明滅は、40Hzではほとんど感知できない。LEDは、中央にカメラレンズ16を有する円形光源14を形成するように任意で配置される。別の実施形態では、光源14は、より多くの点光源であってもよく、カメラレンズ16は、それに隣接してもよい。その場合、視線角度は、レンズのオフセットと光源に対して調整される。代わりに、光源14は、20cm×20cmの拡散ランベルト光源などの、LEDの平坦な二次元アレイであってもよい。
【0025】
被検者10に対する光の総投与量は、臨床試験および検査に基づいて医療従事者によって決定されてもよい。患者などの異なるタイプの人々にとって最適な投与レベルが依然として研究されているが、合理的な投与量は、被検者10が光源14を1時間直視することである。そのようなセッションは、毎日同じ時刻に行われてもよい。被検者10は、ガンマ脳刺激をアルツハイマー病または他の疾患の影響と相互に関連付けるために、医療従事者によって定期的に評価されてもよい。被検者の体内の特定のタンパク質および他の化学物質の存在を判定するための検査と同様に、認知検査が行われてもよい。検査は、脳波記録(electroencephalography)を含んでもよい。評価のためには、どれくらいの量の光が被検者10に投与されたかを正確に知ることが不可欠である。
【0026】
本出願人らは、神経同調光の有効投与量は、視線角度、光源からの眼距離、および瞳孔サイズの組み合わせによって大きく影響されるが、これらの要因のうちのいずれかを補償することが、目標投与量の達成に役立つことを発見した。実際の投与量は、セッション中の特定の視線角度、眼距離、および瞳孔サイズを考慮して、一定の脳刺激セッション継続時間に対応する。視線角度の調整は、目標投与量を達成するために最も重要である。
【0027】
カメラ18(図2)及びレンズ16は、視線追跡に使用される従来のタイプのものであってよい。従来のソフトウェアおよび処理ハードウェアもまた、視線角度、眼/顔の距離、および瞳孔サイズを検出するために使用されてもよい。カメラ18は、赤外線信号を放射し、視線角度、眼/顔の距離、および瞳孔サイズを決定するためにその反射を検出してもよい。あるいは、カメラ18は、視線角度、眼/顔の距離、および瞳孔サイズを計算するため、画像処理を使用してもよい。人による較正は、最初に基準値を確立するために用いられてもよく、この場合、被検者10は、基準値データを確立するために異なる距離で異なる領域を見るように指示される。次いで、この基準値データは、セッション中に集められたデータと後で比較するためにメモリに記憶される。
【0028】
目標光投与量は、まず医療従事者によって被検者10に対して確立され、この情報は、インターネット等を介してシステム12にダウンロードされる。既知の光の光出力パワー及びパルス周波数を考慮すると、光源から特定の距離にいる平均的な瞳孔の大きさを有する被検者であれば、目標光投与量はセッション継続時間に相関する。一例として、この目標投与量では、被検者10が平均瞳孔サイズを有し50cmの距離で光源14を直視していると仮定される。しかしながら、被検者10が光源14を直視しないか、50cmより遠く離れているか、または平均瞳孔サイズよりも小さい瞳孔を有する場合、実際の有効投与量は少なくなる。
【0029】
図2図5に関して説明されているように、視線角度、光源からの眼距離、および瞳孔サイズは、カメラおよびアルゴリズムによって自動的に検出され、セッション継続時間は、所定の目標光投与量を達成するために必要に応じて拡大される。例えば、0°の視線角度は光源14を直視している状態であるため、平均瞳孔サイズを有する被検者10は50cmの距離で投与量の100%を受ける。視線角度が90°では被検者10が光の0%を受け、視線角度が45°では被検者10が光の50%を受ける結果となった。検出された視線角度と受光量との相関関係は、0~100%の間で線形に推定されてもよく、または相関関係は、実験による結果に基づいて非線形であってもよい。
【0030】
被検者10が、光源から50cmから100cmに移動するにつれて光の効果が非線形的に減少するので、光源からの検出距離は、実際の有効投与量に対して非線形の相関関係を有する。同様に、瞳孔サイズは、実際の投与量に対して非線形の効果を有する。
【0031】
図2において、被検者の眼20は、光源14の上方を見ていると仮定する。カメラ18は、画像フレームまたは反射赤外光を使用して、視線角度、距離、および瞳孔サイズを判定する。視線検出は、通常、表示画面と併せて使用され、画面上のどのアイコンが閲覧者によって見られているかを検出し、そして、そのアイコンを自動的に選択する。視線検出は、潜在的な顧客がどこを見ているかを判定するために小売業界でも使用されている。距離検出を含む視線角度検出は、様々な他の分野でも使用され、そのようなシステムは市販されており、安価である。
【0032】
カスタマイズに適した視線検出システムは、SR Research、Tobii AB、および他の会社から入手可能である。完全にカスタマイズされたシステムは、ラズベリーパイ3モデルB+シングルボードコンピュータを併用して、ラズベリーパイカメラモジュールv2を用いて作製することもできる。ソフトウェアの多くは市販されている。
【0033】
次いで、カメラ18からの生のデジタルデータは、視標追跡モジュール22内のアルゴリズムを実行するプロセッサによって処理される。そのようなアルゴリズムは、本発明のためにカスタマイズされた一般に入手可能なソフトウェアから構成されていてもよい。本発明の場合、特に被検者が患者である場合に、最終的に被検者10が目標投与量を受けるよう投与量を動的に制御するために、ソフトウェアは視線角度、距離、および瞳孔サイズについて得られた情報を使用する。
【0034】
次いで、視標追跡モジュール22の出力は、投与量制御部24が制御する投与量を調整するために使用される。投与量制御部24は、まず初めに医療従事者から、1時間のセッションと相関し得る目標投与量を受信する。次いで、この目標セッション時間は、直視、50cmの距離、及び平均瞳孔サイズという理想的な状態からの偏差に基づいて自動的に延長される。
【0035】
図2は、40Hzの電流パルス電源26が一定時間オンになるように制御する投与量制御部24を示す。投与量制御部24はまた、光源14に流れる電流を制御してもよい。
【0036】
必要とされるセッション時間は、被検者10に対して表示画面28上で表示される。したがって、被検者10は、被検者10が光源14から視線が逸れているか、または50cmより離れているために、セッション時間が延長されたことがわかる。表示画面28は、ローカルシステムによって生成されたデータ、またはインターネットを介して通信するリモートシステムによって生成されたデータを使用してもよい。
【0037】
メモリ30は、医療従事者が投与量に関しての正確なデータを把握できるように、セッションの結果を記憶する。
【0038】
通信ハードウェア32は、医療従事者にデータを伝達し、次回のセッション情報でシステムを更新してもよい。
【0039】
図3は、好適なカメラおよびアルゴリズムの一実施形態についてより詳細に示す。アルゴリズム及びプロセッサは、図2の視標追跡モジュール22内にある。カメラ18は、被検者の顔及び眼の位置を撮像し、画像を解析する。他のシステムでは、赤外線が被検者から反射され、反射光が処理される。システムは、被検者によって初期較正が行われたと仮定される。
【0040】
図3において、顔は、例えばビオラ・ジョーンズ物体検出アルゴリズムを用いて検出される(ブロック34)。顔は関心領域(ROI)である。顔が検出されると、ROI情報は、距離推定のために顔の特徴間の相対距離を検出する顔位置合わせブロック36に伝達される(ブロック38)。次いで、計算された距離は、データパッケージで提供される(ブロック40)。
【0041】
眼はまた、定量的固定閾値アルゴリズムによって検出および処理される(ブロック42)。この処理は、コントラスト閾値(二値化)を使用して、虹彩および瞳孔等の物体を判定する。このデータに基づいて、瞳孔角度が推定される(ブロック44)。これから、視線の角度が三角関数によって計算され、光源に対する統合カメラ18のレンズのオフセットを補正した後(ブロック46)、結果として生じた角度は、次のフレームを撮像する前に、データのパッケージ化ブロック40に伝達される。投与量は、フレームごとに動的に調整されてもよく、または単にセッションの終了間際で調整されてもよい。
【0042】
顔が検出されない場合、「ユーザ不在」信号が生成され、光源に電源が投入されない。
【0043】
パッケージ化されたデータは、前述のように、セッション継続時間を調節するために、図2の投与量制御部24に適用される。
【0044】
図4は、投与量を動的に制御するためのステップを示すフローチャートである。
【0045】
ステップ50において、40Hzの点滅光源をオンにして刺激光52を放出する。視線検出システムは、被検者の眼が光を受ける(ステップ56)と、被検者の距離、視線角度、および瞳孔直径を検出する(ステップ54)。次いで、脳は神経同調(すなわち、脳波周波数を周期的な外部刺激のリズムと自然に同期させる脳の能力)を経る(ステップ58)。
【0046】
医療従事者または他の提供元によって提供される目標継続時間(ステップ60)は、光の予想または目標投与量と相関付けられる(ステップ62)。次いで、ステップ54の分析中のリアルタイム検出(ステップ64)は、視線角度等に起因する投与量の予測損失(ステップ66)と相関付けられる。データを投与量の損失と相関付けるために、ルックアップテーブルを使用してもよい。
【0047】
次いで、投与量補正ステップ68は、「理想条件」投与量から投与量の損失を減算して、被検者が受けている実際の有効投与量を導出する。次いで、有効投与量情報(ステップ69)を使用して、必要に応じてセッションを延長し、目標投与量を達成する。
【0048】
セッションから、および特に患者などの被検者の検査から得られたデータは、例えばアルツハイマー病に対するガンマ脳刺激の効果の理解を促進するために使用されてもよい。
【0049】
図5は、1つの方法における特定のステップを要約した、より広範なフローチャートである。ステップ70において、医療従事者または他の提供元は、ガンマ脳刺激の最適投与量をシステムに伝達し、これは、既知の光源を用いたセッション継続時間の形態であってもよい。
【0050】
ステップ72において、光源及び視線追跡器が起動され、セッションを開始する。
【0051】
ステップ74において、検出された視線角度、眼距離、および瞳孔直径が、有効投与量の減少と相関付けられる。
【0052】
ステップ76において、検出された視線角度、眼距離、及び瞳孔直径を補償するように、セッション時間は要求に応じて延長される。別の実施形態では、目標投与量は、検出された視線角度、眼距離、および瞳孔直径の理想からのある程度の変動を推定し、システムは、セッション時間から加算または減算することができる。
【0053】
ステップ78において、セッションデータは、治療の有効性を評価するためにメモリに記憶される。
【0054】
ステップ80において、通信システムは、診療所または他の医療従事者にデータを伝達する。通信システムはまた、目標投与量などの情報を受信することができる。
【0055】
システムは、治療、または研究のためのさらなるデータを収集するため、類似する被検者のグループに対する光ガンマ脳刺激の効果を単に分析するために使用されてもよい。40Hz以外の他の点滅周波数は、さらなる研究で価値があることが証明され得る。
【0056】
本発明は、20~140Hzのガンマ脳刺激速度に限定されない。光源14によって放出される他の周波数の光パルスは、ベータ脳波(13~38Hzのベータ脳刺激速度)および日周機能に有益であり得る。
【0057】
定義
「ガンマ脳刺激」という用語は、光源など、脳におけるニューロンガンマ活性を変化させることができる刺激を意味する。
【0058】
「被検者」という用語は、アルツハイマー病などの脳疾患の症状を呈する患者、または早期ガンマ脳刺激を望む被検者などのガンマ脳刺激を受ける対象者、または、教育もしくは検査目的でガンマ脳刺激を受ける受験者を意味する。
【0059】
「刺激セッション」という用語は、被検者が脳刺激装置に曝露されて光の一定の投与量を受ける、経時的な治療を意味する。一回の刺激セッションは、通常1日以内に行われるが、カスタマイズされたセッションは拡大され、複数の日、週、または月からなるよう個別に変えることができる。
【0060】
「刺激継続時間」という用語は、刺激セッションの時間を意味するが、刺激セッション時間を、15分×4=60分のセッションなどの「インターバル」トレーニングを可能にする複数の個々の継続時間に分割することができるので、「刺激継続時間」はセッション全体の継続時間を含むことに限定されない。
【0061】
点滅および明滅は、本出願において同じ意味で使用される。
【0062】
本発明の特定の実施形態を示し、説明してきたが、そのより広範な態様において、本発明から逸脱することなく変更および修正を行うことが可能であることが、当業者に明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲は、それらの範囲内に、本発明の真の趣旨および範囲内にあるそのような変更および修正のすべてを含む。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理システムと、
約13~140Hz間の脳刺激速度で点滅するように制御されるための光源と、
人の眼を検出し、第1データを前記処理システムに提供する視標追跡装置と、を備え、
前記処理システムは、脳刺激セッションの態様を調整するために前記第1データを使用するように構成されている、
人の脳刺激システム。
【請求項2】
前記脳刺激速度は、20~140Hz間のガンマ脳刺激速度である、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項3】
前記第1データは、前記光源に対する前記人の視線角度に対応する、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項4】
前記第1データは、前記光源までの前記人の距離に対応する、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項5】
前記第1データは、前記人の瞳孔サイズに対応する、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項6】
前記処理システムは、前記第1データに基づいて前記脳刺激セッションの継続時間を調節するように構成される、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項7】
前記処理システムは、前記第1データに基づいて前記脳刺激セッションの前記継続時間を延長するように構成される、
請求項6に記載の刺激システム。
【請求項8】
前記脳刺激セッションが調整される間に前記脳刺激セッションの継続時間を表示するディスプレイをさらに備える、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項9】
前記視標追跡装置はカメラを備える、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項10】
前記処理システムは、脳刺激セッション時間に対応する前記脳刺激の目標投与量を受信するように構成され、前記第1データは、前記脳刺激セッション時間の継続時間を調整するために使用される、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項11】
メモリをさらに備え、
前記脳刺激セッションに対応する第2データは、後の検索のために前記メモリに記憶される、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項12】
前記脳刺激は、アルツハイマー病の影響を治療するため、またはアルツハイマー病を予防するため、または睡眠障害を治療するために使用される、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項13】
通信システムをさらに備え、
前記通信システムは、前記脳刺激の有効性を判定する際に使用される、前記脳刺激セッションに関する第2データを送信する、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項14】
約13~140Hz間の脳刺激速度で光源を点滅させることと、
第1データを処理システムに提供するために視標追跡装置を用いて人の眼を検出することと、
脳刺激セッションの態様を調整するために前記第1データを処理することと、
を備える、
脳刺激システムにより実施されるデータ処理方法。
【請求項15】
脳刺激セッション継続時間に対応する前記脳刺激の目標投与量を受信することと、
前記脳刺激セッション継続時間を調整するために前記第1データを使用することと、
をさらに備える、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1データは、前記光源に対する前記人の視線角度に対応する、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1データは、前記光源までの前記人の距離に対応する、
請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1データは、前記人の瞳孔サイズに対応する、
請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記処理することは、前記第1データに基づいて前記脳刺激セッションの継続時間を延長する、
請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記脳刺激は、アルツハイマー病の影響を治療するため、またはアルツハイマー病を予防するため、または睡眠障害を治療するために使用される、
請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】