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特表2023-548602アンビエントコントラスト強調を伴う光ディスプレイデバイス及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】アンビエントコントラスト強調を伴う光ディスプレイデバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20231110BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20231110BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20231110BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231110BHJP
   H10K 59/38 20230101ALI20231110BHJP
   F21V 11/02 20060101ALI20231110BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231110BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231110BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20231110BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20231110BHJP
   H10K 50/86 20230101ALN20231110BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20231110BHJP
   F21Y 113/10 20160101ALN20231110BHJP
【FI】
F21S2/00 481
G02B5/00 Z
G02B5/00 B
G02B1/11
H10K59/10
H10K59/38
F21V11/02
G09F9/30 365
G09F9/00 338
H01L33/00 L
H01L33/58
H10K50/86
F21Y115:10
F21Y113:10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527338
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 US2021057803
(87)【国際公開番号】W WO2022098683
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0147757
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ジュン サン-チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム デ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ グ ス
(72)【発明者】
【氏名】リ キュン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】シン ドン クン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ホン
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
3K107
3K244
5C094
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA06
2H042AA10
2H042AA11
2H042AA15
2H042AA26
2K009AA02
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107EE22
3K107EE27
3K107FF03
3K107FF06
3K107FF15
3K244AA09
3K244BA18
3K244BA48
3K244CA02
3K244DA01
3K244DA17
3K244GA02
3K244GA06
3K244GA20
3K244GC23
3K244GC29
3K244GC30
3K244LA10
5C094BA27
5C094DA13
5C094ED01
5C094ED12
5C094ED20
5C094FA03
5C094FA04
5C094FB06
5C094GB10
5C094JA01
5C094JA08
5C094JA13
5F142BA32
5F142CB14
5F142CB23
5F142DB35
5F142DB37
5F142GA02
5F142HA03
5G435BB05
5G435FF14
5G435HH03
5G435KK05
5G435KK07
(57)【要約】
バックプレーン基板と、バックプレーン基板の上に配置されたアンビエントコントラストフィルタとを有する光学ディスプレイデバイス。バックプレーン基板は、複数のエレクトロルミネセント素子を含み、アンビエントコントラストフィルタは、列状に配置された複数の光吸収楔形特徴を含む。幾つかの実施形態では、アンビエントコントラストフィルタは、ガラス基板層を含むことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスプレイデバイスであって、
その上に平行な列状に堆積された複数のエレクトロルミネセント素子を含むバックプレーン基板であって、前記エレクトロルミネセント素子の各列がアライメント軸を含む、バックプレーン基板と、
前記バックプレーン基板の上に配置されたアンビエントコントラストフィルタであって、前記アンビエントコントラストフィルタが、ポリマー支持層と、前記ポリマー支持層上に配置されたマイクロ複製薄膜ベース層とを含み、前記マイクロ複製薄膜ベース層は、平行な列状に配置された複数の光吸収楔形特徴を含み、前記各光吸収楔形特徴が長手方向軸を含む、アンビエントコントラストフィルタと、
を備え、前記アンビエントコントラストフィルタがガラス層を含まない、光ディスプレイデバイス。
【請求項2】
前記アンビエントコントラストフィルタは、前記マイクロ複製薄膜ベース層上に配置された光吸収層を更に含む、請求項1に記載の光ディスプレイデバイス。
【請求項3】
前記光吸収層の厚さは、約10nmから約1μmの範囲である、請求項2に記載の光ディスプレイデバイス。
【請求項4】
前記複数の光吸収楔形特徴の高さH1が、約10μmから約100μmの範囲にある、請求項1に記載の光学ディスプレイデバイス。
【請求項5】
H1が約10μmから約40μmの範囲にある、請求項4に記載の光ディスプレイデバイス。
【請求項6】
前記複数の楔形特徴の各楔形特徴は、約5μmから約15μmの範囲の最大断面幅W1を有する、請求項5に記載の光ディスプレイデバイス。
【請求項7】
H1/W1が約2以上である、請求項6に記載の光ディスプレイデバイス。
【請求項8】
H1/W1が約2から約6の範囲にある、請求項7に記載の光ディスプレイデバイス。
【請求項9】
前記複数の楔形特徴のピッチP1が、約5μmから約40μmの範囲にある、請求項1に記載の光学ディスプレイデバイス。
【請求項10】
前記複数の楔形特徴の各楔形特徴のベースと前記各楔形特徴の隣接する側壁との間の角度が、約85度から90度未満の範囲にある、請求項1に記載の光学ディスプレイデバイス。
【請求項11】
前記アンビエントコントラストフィルタは、反射防止層を含む、請求項1に記載の光ディスプレイデバイス。
【請求項12】
前記アンビエントコントラストフィルタは、前記光吸収層上に配置された反射防止層を含む、請求項1に記載の光ディスプレイデバイス。
【請求項13】
前記複数の楔形特徴の屈折率がnBであり、前記マイクロ複製薄膜ベース層の屈折率がnFであると、Δn=nB-nF及び-0.3<Δn<0である。
【請求項14】
アンビエントコントラストフィルタを形成する方法であって、
第1のパターニングローラを第1の方向に回転させるステップであって、前記第1のパターニングローラは、そこから延びる複数の突出部を有する第1の円周面を含む、ステップと、
第1の支持ローラを、第1の方向とは反対の第2の方向に回転させるステップであって、前記第1の支持ローラは、前記第1の円周面から第1のギャップだけ離間した第2の円周面を含む、ステップと、
第2の支持ローラを第2の方向に回転させるステップであって、前記第2の支持ローラは第3の円周面を含み、前記第3の円周面は、前記第1の円周面から第2のギャップだけ離間しており、前記第1のパターニングローラは、前記第1の支持ローラと前記第2の支持ローラとの間に位置する、ステップと、
ポリマー支持層を前記第1のギャップに誘導するステップと、
前記ポリマー支持層と前記第1のパターニングローラの前記第1の円周面との間の前記第1のギャップにポリマーマトリックス材料を分配するステップであって、前記第1のパターニングローラは前記ポリマーマトリックス材料に複数の凹部を形成する、ステップと、
前記ポリマー支持層及び前記ポリマーマトリックス材料に第1のUV光を照射するステップであって、前記第1のUV光によって前記ポリマーマトリックス材料を硬化させて、前記ポリマー支持層に結合されたマイクロ複製薄膜ベース層を形成し、前記マイクロ複製薄膜ベース層及び前記ポリマー支持層がマイクロ複製薄膜を形成する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記マイクロ複製薄膜を前記第2の支持ローラの第3の円周面と前記第1の方向に回転する塗布ローラの第4の円周面との間の第3のギャップに誘導するステップと、
前記マイクロ複製薄膜と前記塗布ローラの第4の円周面との間の前記第3のギャップに光吸収材料を分配するステップであって、前記光吸収材料が前記凹部を充填する、ステップと、
前記光吸収材料に第2のUV光を照射して、前記光吸収材料を少なくとも部分的に硬化させ、前記マイクロ複製薄膜ベース層に複数の光吸収楔形特徴を形成するステップであって、前記ポリマー支持層、前記マイクロ複製薄膜ベース層、及び前記複数の光吸収楔形特徴がアンビエントコントラスト強化層を形成する、ステップと、
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アンビエントコントラスト強調層を、前記塗布ローラの下流の第3の支持ローラの第5の円周面と第2のパターニングローラの第6の円周面との間の第4のギャップに誘導するステップと、
前記アンビエントコントラスト強調層と前記第3の支持ローラの第5の円周面との間の第3のギャップに第2のポリマー材料を分配するステップと、
前記第2のポリマー材料に第3のUV光を照射して前記第2のポリマー材料を少なくとも部分的に硬化させ、前記硬化した第2のポリマー材料が、前記アンビエントコントラスト強調層に結合されるIR層を形成する、ステップと、
を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のパターニングローラは、粗面化された円周面を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記分配中の前記ポリマーマトリックス材料の粘度が、約50mPa・sから約1000mPa・sの範囲である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2020年11月06日に出願された韓国特許出願シリアル第1の0-2020-0147757号の米国特許法第1の19条に基づく優先権の利益を主張し、その内容は引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、光ディスプレイデバイスに関し、より詳細には、環境光の存在下で表示される画像のコントラストを改善するように構成されたアンビエントコントラスト強調層を含む光ディスプレイデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
環境光コントラストは、有機発光ダイオード(OLED)及びマイクロ発光ダイオード(micro-LED)ディスプレイのような自発光型エレクトロルミネセントディスプレイにとって問題となる可能性がある。金属電極及び/又は他の反射性材料を含む表面を有するディスプレイパネルは、太陽放射又は室内照明からの光を反射することができる。例えば、OLEDパネルは、主に金属電極による約80%の表面反射率を有することができる。環境光の反射を低減し、ディスプレイのコントラスト比の損失を回避するための光学機能フィルムとしては、多くの場合、円偏光子が使用される。しかしながら、このような偏光フィルムは、最大で50%の入射光を吸収する可能性があるので、ディスプレイの明るさが低下する可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
バックプレーン基板に隣接するアンビエントコントラスト強調層を含む光ディスプレイデバイスが記載される。バックプレーン基板は、その上に堆積された複数のエレクトロルミネセント素子を含むことができる。アンビエントコントラスト強調層は、列状に配置された複数の光吸収楔形特徴を含むことができる。
【0005】
従って、その上に平行な列状に堆積された複数のエレクトロルミネセント素子を含むバックプレーン基板を備え、エレクトロルミネセント素子の各列がアライメント軸を含む、光ディスプレイデバイスが開示される。ディスプレイデバイスは、バックプレーン基板の上に配置されたアンビエントコントラストフィルタを更に備え、アンビエントコントラストフィルタは、ポリマー支持層と、ポリマー支持層上に配置されたマイクロ複製薄膜ベース層とを含み、マイクロ複製薄膜ベース層は、平行な列状に配置された複数の光吸収楔形特徴を含み、各光吸収楔形特徴は長手方向軸を含む。更に、アンビエントコントラストフィルタは、ガラス基材層を含まない。
【0006】
アンビエントコントラストフィルタは更に、マイクロ複製薄膜ベース層上に配置された光吸収層を含むことができる。光吸収層の厚さは、約10nmから約1μmの範囲とすることができる。
【0007】
複数の楔形特徴の高さH1は、約10μmから約100μmの範囲、例えば約10μmから約40μmの範囲とすることができる。複数の楔形特徴の各楔形特徴は、約5μmから約15μmの範囲の第1の最大断面幅W1を含むことができる。
【0008】
比H1/W1は、約2以上、例えば約2から約6の範囲とすることができる。
【0009】
複数の楔形特徴のピッチP1は、約5μmから約40μmの範囲とすることができる。
【0010】
複数の楔形特徴の各楔形特徴のベースと各楔形特徴の隣接する側壁との間の角度は、約85度から90度未満の範囲とすることができる。
【0011】
アンビエントコントラストフィルタは、反射防止層を含むことができる。例えば、反射防止層は、光吸収層上に配置することができる。
【0012】
複数の楔形特徴の屈折率がnB、マイクロ複製薄膜ベース層の屈折率がnFであり、Δn=nB-nF及び-0.3<Δn<0.
【0013】
アンビエントコントラストフィルタを形成する方法も記載され、本方法は、第1のパターニングローラを第1の方向に回転させるステップを含み、第1のパターニングローラは、そこから延びる複数の突出部を有する第1の円周面を含む。本方法は更に、第1の支持ローラを、第1の方向とは反対の第2の方向に回転させるステップを含むことができ、第1の支持ローラは、第1の円周面から第1のギャップだけ離間した第2の円周面を含む。本方法は、第2の支持ローラを第2の方向に回転させるステップを含むことができ、第2の支持ローラは、第3の円周面を含み、第3の円周面は、第2のギャップだけ第1の円周面から離間しており、第1のパターニングローラは、第1の支持ローラと第2の支持ローラとの間に配置される。本方法は、ポリマー支持層を第1のギャップに誘導するステップと、ポリマー支持層と第1のパターニングローラの第1の円周面との間の第1のギャップにポリマーマトリックス材料を分配するステップであって、第1のパターニングローラはポリマーマトリックス材料に複数の凹部を形成する、ステップと、ポリマー支持層及びポリマーマトリックス材料に第1のUV光を照射するステップであって、第1のUV光によりポリマーマトリックス材料を硬化させて、ポリマー支持層に結合されたマイクロ複製薄膜ベース層を形成し、マイクロ複製薄膜ベース層及びポリマー支持層がマイクロ複製薄膜を形成する、ステップと、を含む。
【0014】
本方法は更に、マイクロ複製薄膜を第2の支持ローラの第3の円周面と第1の方向に回転する塗布ローラの第4の円周面との間の第3のギャップに誘導するステップと、マイクロ複製薄膜と塗布ローラの第4の円周面との間の第3のギャップに光吸収材料を分配するステップであって、光吸収材料が凹部を充填する、ステップと、光吸収材料に第2のUV光を照射して光吸収材料を少なくとも部分的に硬化させ、マイクロ複製薄膜ベース層に複数の光吸収楔形特徴を形成するステップと、を含む。支持層、マイクロ複製薄膜ベース層、及び複数の光吸収楔形特徴が、アンビエントコントラスト強調層を形成する。
【0015】
本方法は更に、アンビエントコントラスト強調層を塗布ローラの下流の第3の支持ローラの第5の円周面と第2のパターニングローラの第6の円周面との間の第4のギャップに誘導するステップと、第2のポリマー材料を、アンビエントコントラスト強調層と第3の支持ローラの第5の円周面との間の第3のギャップに分配するステップと、第2のポリマー材料を第3のUV光で照射して第2のポリマー材料を少なくとも部分的に硬化し、硬化した第2のポリマー材料がアンビエントコントラスト強調層に結合されるIR層を形成する、ステップと、を含むことができる。
【0016】
第2のパターニングローラは、粗面化された円周面を含むことができる。
【0017】
本明細書に開示された実施形態の追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部は、本明細書から当業者には明らかであり、又は以下の詳細な説明、特許請求の範囲及び添付図面を含む、本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0018】
上述の概要及び以下の詳細な説明の両方は、本明細書に開示された実施形態の性質及び特性を理解するための概説又は構想を提供することを意図した実施形態を提示している。添付図面は、更なる理解を提供するために含められ、本明細書に組み込まれて、本明細書の一部を構成する。図面は、本開示の様々な実施形態を例示し、本明細書と共にその原理及び動作を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】円偏光子を利用したエレクトロルミネセントディスプレイの概略図である。
図2】本明細書に開示された実施形態によるエレクトロルミネッセントディスプレイの概略図である。
図3】エレクトロルミネセント素子の上に配置された角度付き楔形特徴を示す例示的なピクセルの上面図である。
図4A】コントラスト強調層の要素を示す、図2のエレクトロルミネッセントディスプレイの一部の側断面図である。
図4B図5Aに描かれた楔形特徴の拡大断面図である(明瞭化のため、塗りつぶしなし)。
図5】特徴幅W1の関数としてモデル化されたカバープレートの透過率を示すプロットである。
図6】LED放射角度の関数として、楔形特徴の高さH1を変化させた場合の透過率を示すプロットである。
図7】入射角の関数として様々な楔形特徴高さH1の反射率を示すプロットである。
図8】本明細書に開示される実施形態による、楔形特徴と交差するエレクトロルミネセント素子によって放出される光を示す概略図である。
図9図8の一部の拡大図である。
図10】Δnの複数の値についての視野角(θv)の関数としてのモデル化及び正規化された光強度をランバーシャン分布と比較したプロットである。
図11】楔形特徴(WSF)118を含むカバープレートと、円偏光子(CP)を含むディスプレイデバイスとの間のモデル化された透過率を示すプロットである。
図12】楔形特徴(WSF)118を含むカバープレートと円偏光子(CP)を含むディスプレイデバイスとの間のモデル化された反射率を示すプロットである。
図13】MRTベース層上、例えばMRTベース層と基板層112との間に配置された任意選択の光吸収層を含むアンビエントコントラストフィルタの断面図である。
図14】光吸収層のマイクロメートル単位の厚さの関数として、波長550nmでのモデル化された透過率の自然対数(ln)のプロットである。
図15】光吸収層のマイクロメートル単位の厚さの関数としての波長550nmでの吸収のプロットである。
図16】層厚d(0.1μmから10μm)に対する薄い吸収層150の光透過率(又は吸収率)の理論的予測と、透過率Tの関数としてのその消散係数kを示す図である。
図17】kの様々な値と70μmの楔形特徴高さH1についてのピッチP1の関数としての透過率のプロットである。
図18】kの様々な値と50μmの楔形特徴高さH1についてのピッチの関数としてのモデル化された反射率のグラフである。
図19】kの様々な値と70μmの楔形特徴高さH1についてのピッチの関数としてのモデル化された反射率のグラフである。
図20】50μmの楔形特徴の高さH1について、光吸収層がある場合とない場合のエレクトロルミネセント素子の放射角度の関数としてモデル化された正規化強度を示す図である。
図21】70μmの楔形の特徴高さH1について、光吸収層がある場合とない場合のエレクトロルミネセント素子の放射角度の関数としてのモデル化された正規化強度を示す図である。
図22】全反射率の関数としてアンビエントコントラストフィルタのモデル化されたアンビエントコントラスト比を示すグラフである。
図23】基板層と、そこに埋め込まれた異なる高さの複数の楔形特徴を含むACE層とを備えたアンビエントコントラストフィルタの一部の断面図である。
図24】2つの異なる高さの楔形特徴を含むアンビエントコントラストフィルタのピッチの関数としてモデル化された透過率を示すグラフである。
図25】2つの異なる高さの楔形特徴を含むアンビエントコントラストフィルタのピッチの関数としてモデル化された反射率を示すグラフである。
図26】異なる高さの2つの複数の楔形特徴を有するディスプレイデバイスのモデル化された透過率データを、第2の高さの関数として示すプロットである。
図27】異なる高さの2つの複数の楔形特徴を有するディスプレイデバイスのモデル化された反射率データを、第2の高さの関数として示すプロットである。
図28】単一の(第1の)複数の楔形特徴を有するディスプレイと、2つの(第1の及び第2の)複数の楔形特徴を有するディスプレイのエレクトロルミネセント素子から放出される光についてのモデル化された角放出プロファイルのプロットである。
図29】その上に堆積された複数のエレクトロルミネセント素子を含むバックプレーン基板と、バックプレーン基板上に配置され、ガラス基板層を欠いているアンビエントコントラストフィルタとを備える本開示による別のエレクトロルミネセントディスプレイデバイスの断面図である。
図30】MRTベース層と支持層とを含むMRTフィルムを生成するように構成された第1の段階の処理装置の側面図である。
図31図30の装置によって生成されたMRTフィルムを使用してアンビエントコントラストフィルタを生成するための第2の段階の処理装置の側面図である。
図32】連続的なインラインプロセスでアンビエントコントラストフィルタを生成するための別の処理装置の側面図である。
図33】本開示の実施形態による例示的なディスプレイデバイスの側断面図である。
図34】本開示の実施形態による別の例示的なディスプレイデバイスの側断面図である。
図35】本開示の実施形態による更に別の例示的なディスプレイデバイスの側断面図である。
図36】本開示の実施形態による更に別の例示的なディスプレイデバイスの側断面図である。
図37図33図36のディスプレイデバイス上のアンビエントコントラストフィルタについて測定された光透過度及びアンビエントコントラスト比を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、その実施例が添付図面に例示されている、本開示の実施形態について詳細に説明する。可能な限り、同じ参照数字は、同じ又は同様の要素を参照するために図面全体を通して使用される。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、量、サイズ、配合、パラメータ、及び他の量及び特性が正確ではなく、正確である必要はないが、必要に応じて、公差、変換係数、丸め、測定誤差など及び当業者には知られる他の要因を反映して、近似及び/又はより大きく又はより小さくすることができることを意味する。
【0022】
範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表現することができる。このような範囲が表現される場合、別の実施形態では、1つの特定の値から他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用により値が近似値として表現される場合、特定の値は別の実施形態を形成することは理解されるであろう。更に、範囲の各々の端点は、他の端点との関係においても、及び他の端点から独立しても有意であることが理解されよう。
【0023】
本明細書で使用される方向性用語、例えば、上、下、右、左、前、後、上、下は、描かれている図を参照するためのものに過ぎず、絶対的方向を意味するものではない。
【0024】
特に明示しない限り、本明細書に記載された方法が、そのステップが特定の順序で実行されることを要求すると解釈されることは意図されておらず、また、いかなる装置においても、特定の方向性が要求されることはない。従って、方法のクレームがそのステップに従うべき順序を実際に記載していない場合、又は装置クレームが個々の構成要素に対する順序又は方向を実際に記載していない場合、或いは、ステップが特定の順序に限定されることが請求項又は明細書において他に明示されていない場合、もしくは装置の構成要素に対する特定の順序又は方向が記載されていない場合、順序又は方向は、いかなる点においても推測されることは意図されていない。これは、ステップの配置、動作の流れ、構成要素の順序、又は構成要素の向きに関する論理の問題、文法的な構成又は句読点から得られる一般的な意味、及び明細書に記載された実施形態の数又はタイプを含む、解釈に関するあらゆる可能な非表現の根拠について成り立つ。
【0025】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数形の照応を含む。従って、例えば、「a」構成要素への言及は、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、2又は3以上のこのような構成要素を有する態様を含む。
【0026】
用語「例示的な」、「実施例」、又はその様々な形態は、本明細書において、実施例、事例、又は例証としての機能を果たすことを意味するのに使用される。本明細書で「例示的」又は「実施例」として記載される任意の態様又は設計は、他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。更に、実施例は、明確化及び理解の目的でのみ提供され、開示された主題又は本開示の関連部分をいかなる方法によっても限定又は制限することを意図するものではない。様々な範囲の無数の追加又は代替の実施例が提供されたが、簡潔さを目的として省略されていることは理解できる。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「comprising」及び「including」、並びにその変形形態は、特に指示されない限り、同義であり、オープンエンドであると解釈されるものとする。移行部のcomprising又はincludingに続く要素のリストは、リストに具体的に記載されたものに加えて要素もまた存在し得るような、非排他的なリストである。
【0028】
本明細書で使用される用語「実質的な」、「実質的に」、及びその変形形態は、記載された特徴が値又は記載内容と等しいか又はほぼ等しいことを注記するよう意図されている。例えば、「実質的に平坦な」表面は、平坦であるか又はほぼ平坦である表面を示すことが意図される。更に、「実質的に」は、2つの値が等しいかほぼ等しいことを示すことを意図している。幾つかの実施形態では、「実質的に」は、互いの約10%以内、例えば、互いの約5%以内、又は互いの約2%以内の値を示すことができる。
【0029】
本明細書で使用される場合、ローラの円周面とは、ローラの円周周りに延びるローラの外面である。
【0030】
エレクトロルミネセントディスプレイは、アンビエントコントラスト劣化につながる表面反射が生じやすい可能性がある。例えば、図1は、その上に堆積された複数のエレクトロルミネセント素子14(例えばLED)を備えたバックプレーン基板12を含むマイクロLEDディスプレイ10の一部を示す断面像である。エレクトロルミネセントディスプレイ10は更に、カバープレート18を含む。カバープレート18は、位相遅延層20及び直線偏光層22を含むことができ、これらが全体で円偏光子24を形成する。図1に示すように、環境光線26は、カバープレート18を通ってディスプレイ10に入り、バックプレーン基板12の第1の表面28に第1の表面28の法線に対する入射角θincで入射し、光線30によって表される反射角θrefでバックプレーン基板12から反射される。また、複数のエレクトロルミネセント素子14は、光線32で表される光を発生し放出する。放出された光線32は、カバープレート18を透過して、像として外部視聴者34に向かう方向に透過することができる。反射された環境光30は、放出された光32と競合し、その結果、表示された画像が、ビューア34によって見たときに減少したコントラストを有する可能性がある。このため、ディスプレイ10又はその一部は、ビューアにとって色褪せたように見える可能性がある。
【0031】
アンビエントコントラスト劣化を回避するために、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、又は量子ドットディスプレイを含むエレクトロルミネセントディスプレイ用途としてコントラスト強調層が提供されるが、コントラスト強調層は、マイクロLEDディスプレイにとって特に有用である。コントラスト強調層は、反射された環境光がエレクトロルミネセント素子によって放出された光と競合するのを抑制するように構成されたマイクロ複製コントラスト強化フィルムを含むことができる。エレクトロルミネセントディスプレイは、およそ数十マイクロメートルから数百マイクロメートルのピクセルサイズを有することができる。例えば、エレクトロルミネセントディスプレイは、赤(R)、緑(G)、及び青(B)のLEDを含むことができ、赤、緑、及び青のLEDの各セットがピクセルを形成する。マイクロLEDのサイズ(例えば、LEDの片側に沿った寸法)は、約10μmから約1000μmの範囲とすることができる。例えば、LEDチップは、約10μm2から約1000μm2の範囲の面積を有するサイズにすることができる。このような実施形態では、各LEDチップの発光領域のサイズは、ピクセル領域の約20%未満とすることができる。
【0032】
コントラスト強調層は、ピクセル又はその構成要素からの環境光の反射を低減又は除去するための要素を含むことができる。本明細書に開示されるように、これらの要素は、列状に配置された複数の光吸収楔形特徴(例えば台形特徴)を含むことができる。楔形特徴は、ピクセルエレクトロルミネセント素子(例えば、個々のLED)によって反射される環境光を低減又は除去するように数値的に評価及び最適化することができる。
【0033】
図2は、その上に堆積された複数のエレクトロルミネセント素子104を含むバックプレーン基板102と、アンビエントコントラストフィルタ106とを備える、本開示による例示的なエレクトロルミネセントディスプレイデバイス100の断面図である。エレクトロルミネセント素子104は、画像ピクセルの個々のピクセル要素を含むことができ、これに応じて、例えば赤(R)、緑(G)、及び青(B)のような異なる色を表示するように構成することができる。アンビエントコントラストフィルタ106は、エアギャップ110によってバックプレーン基板102から離間して配置することができる。エアギャップ110は、約50μmから約5mmの範囲、例えば、約100μmから約5mmの範囲、例えば、約200μmから約4mmの範囲、約300μmから約3mmの範囲、又は約1mmから約3mmの範囲(その間の全ての範囲及び部分範囲を含む)にわたることができる。
【0034】
アンビエントコントラストフィルタ106は、基板層112、アンビエントコントラスト強化(ACE)層114、及び任意選択の反射防止(AR)層116を含むことができる。基板層112は、ガラス材料、例えばアルミノシリケートガラス材料のようなシリケートガラス材料を含むことができるが、基板層112は、ポリマー材料を含むことができる。AR層116は、例えば感圧接着剤のような接着層122によって基板層112に接合することができる。
【0035】
ACE層114は、マイクロ複製薄膜(MRTフィルム120)中に配置された第1の複数の光吸収特徴、例えば、楔形特徴118を含む。MRTフィルム120は、支持層125上に配置されたMRTベース層124を含む。支持層125は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリマー材料を含むことができる。楔形特徴部118は、光透過性領域126によってMRTベース層124内に分離されている。
【0036】
第1の複数の光吸収楔形特徴118は、少なくとも可視スペクトルの一部において光を吸収又は遮断することができる何れかの好適な材料を含むことができる。例えば、光吸収特徴は、黒色着色剤、例えば、カーボンブラックのような黒色微粒子を含むことができる。カーボンブラックは、約500nm以下の粒径、例えば、その間の全ての範囲及び部分範囲を含めて、約10nm~約500nmの範囲、約10nm~約400nmの範囲、約10nm~約300nmの範囲、又は約10nm~約200nmの範囲の粒径を含むことができる。しかしながら、光吸収材料は、白、赤、緑、又は黄色などの他の色を有する着色剤を含むことができる。光吸収材料、(例えば、カーボンブラック、顔料もしくは染料、又はこれらの組み合わせ)は、適切なマトリックス材料、例えば、ポリマー樹脂に分散させることができる。
【0037】
図3は、ディスプレイのビューア側から見たエレクトロルミネセントディスプレイの一部(例えば、単一ピクセル)の上面図であり、平行な列状の第1の複数の細長い楔形特徴118を示し、第1の複数の楔形特徴の各楔形特徴が長手方向軸136を含む。図示のように、楔形特徴118は、エレクトロルミネセント素子とビューアとの間に位置する細長い構造体である。更に図示されるように、第1の複数の楔形特徴118は、エレクトロルミネセント素子104の列のアライメント軸138と整列されていない場合があるが、代わりに、アライメント軸138に対して角度σだけエレクトロルミネセント素子にわたって角度を付けることができる。角度σは、約0度から約10度の範囲、例えば、0度より大きい値から約10度の範囲である。
【0038】
ACE層114の設計のための条件は、構造的なバリエーション及び楔形特徴の屈折率に関するパラメータ研究によって特定することができる。例えば、幾つかの実施形態では、楔形特徴のベース140で取られた、第1の複数の楔形特徴の個々の楔形特徴の最大幅W1は、50%を超える透過率Tに対して、ディスプレイピクセルの長さL(ピクセル)の半分(L(ピクセル)/2)未満とすることができる。透過率は、法線方向に沿った導入された光パワーに対する所与の幾何形状を通る透過光パワーの比率である。例えば、楔形特徴118の最大幅W1は、約10μmから約100μmの範囲とすることができる。幾つかの特定のバックプレーン基板設計(例えば、LEDチップサイズ:38x54μm2、L(ピクセル)=432μm、D(チップ間)=100μm)については、W1は、約5μmから約25μmの範囲、例えば、約5μmから約15μmの範囲など、約5μmから約20μmの範囲とすることができる。L(ピクセル)は、約10μmから約1000μmの範囲とすることができる。
【0039】
図4A及び図4Bは、楔形特徴118の寸法パラメータを示す、アンビエントコントラストフィルタ106の一部を示している。第1の複数の楔形特徴の各楔形特徴118は、特徴のベース140にて取られた最大幅W1(図4B参照、明瞭化のために塗りつぶしは省略)と、ベース140から楔形特徴の対向端部142まで取られた高さH1と、ある楔形特徴118の中心から直近の楔形特徴118の中心までの距離として取られたピッチP1と、楔形特徴118のベース140と楔形特徴の隣接側部144との間で値を求められた楔角βと、を含むことができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、楔角βは、約70度から90度未満の範囲、例えば、約80度から90度未満の範囲、又は約85度から90度未満の範囲などの約75度から90度未満の範囲にあることができる。このように、ベース140における最大幅W1は、対向端142における狭い幅よりも大きい。言い換えれば、楔形特徴は、対向端142がベース140から複数のエレクトロルミネセント素子104に向かって突出している台形断面形状を含むことができる。この配置は、環境光の低減を改善すると同時に、エレクトロルミネセントディスプレイに対してより大きな視野角を提供することができる。視野角は、視聴者に対するエレクトロルミネセントディスプレイの輝度が、エレクトロルミネセントディスプレイの法線(例えば、カバープレートの法線)に沿って評価した輝度の1/2となる角度である。
【0041】
図5は、モデル化されたアンビエントコントラストフィルタの透過率を特徴幅W1の関数として示すグラフである。このデータは、楔形特徴幅W1が減少するにつれて、透過率が増加することを示す。
【0042】
図6及び図7は、LED放射角度(図6)及び入射角度(図7)の関数として、楔形特徴高さH1を変化させた場合の透過率及び反射率をそれぞれ示す。図6に示すデータは、楔形の特徴高さH1が減少するにつれて、透過率が望ましく増加することを示す。逆に、図7に示すデータは、楔形の特徴高さH1が減少するにつれて、反射率が望ましくないほど増加することを示している。エレクトロルミネセント素子の放射角度が大きくなると、透過率は低下する。環境光の入射角が大きくなると、反射率は約60°の入射角に達するまで減少し、その後、大きな高さ(約50μmより大きい)と小さな高さ(約50μm未満、例えば、20μm)の間で発散挙動がある。高さH1が20μm及び10μmで入射角が約60°より大きい場合、反射率は増加するが、約50μmから約150μmの範囲内の高さでは減少する。このように、楔形特徴の高さは、特定のディスプレイデバイスの構成に対して最適な高さH1を見つけるために、透過率と反射率の間のトレードオフを含むことができる。
【0043】
高さH1は、約10μmから約100μmの範囲、例えば約10μmから約80μmの範囲、約10μmから約60μmの範囲、約10μmから約40μmの範囲などにあることができる。楔形特徴118の高さ対幅のアスペクト比H1/W1は、約2以上、例えば約3以上とすることができる。例えば、アスペクト比H1/W1は、約2~約6、又は約3~約5、又は約5未満、又は約4未満の範囲とすることができる。
【0044】
楔形特徴118のピッチP1は、約5μmから約500μmの範囲、例えば、その間の全ての範囲及び部分範囲を含めて、約5μmから約100μm、約5μmから約60μm、又は約5μmから約40μmの範囲など、約5μmから約200μmの範囲とすることができる。
【0045】
更に、各楔形特徴118は、屈折率nBを含むことができ、MRTベース層124は、屈折率nFを含むことができる。楔形特徴118の屈折率nBは、ディスプレイの視野角を改善するように選択することができる。例えば、図8は、2つの隣接する楔形特徴及びエレクトロルミネセント素子104によって放出された光線32が、交差面の法線148に対して角度θBで楔形特徴118の側面146と交差しているのを示す概略図である。図9は、θBが全反射が起こる臨界角θc(θc=arcsin nB/nF)以上である場合を例示する拡大図である。楔形特徴118の屈折率nBと周囲のMRTベース層124の屈折率nFとの間の差Δn、すなわちΔn=nB-nFは、図10のモデル化データに示すように、全内部反射に起因する高い入射角で大きな反射率値を生成する可能性があり、例えば、θB>θcである。図10は、Δnの幾つかの値について視野角の関数(θv)としてモデル化され正規化された光強度をランバーシャン分布と比較したプロットである。複数の楔形特徴118の平行な列状の配置、楔形特徴のベースと楔形特徴の隣接する側面との間の楔角β、高さ対幅(H/W)アスペクト比、及びベースと複数のエレクトロルミネセント素子に向かって突出する対向する頂部とを有する台形断面形状、これら全てが透過率及び視野角で観測される改善に寄与する。データは、楔形特徴118を囲むMRTベース層124の屈折率nFよりも小さい屈折率nBを有する楔形特徴のための材料を選択することによって、視野角が改善(増加)できることを示している。例えば、視野角は、30度より大きい、又は40度より大きい、又は45度より大きいように改善することができる。MRTベース層124及び/又は楔形特徴118は、約-0.5から約0の範囲、例えば約-0.3から0までの範囲でΔnを提供するように選択することができる。
【0046】
図11及び図12は、それぞれ、楔形特徴(WSF)118を含むカバープレートと円偏光子(CP)を含むディスプレイデバイスとの間のモデル化された透過率及び反射率を示す。図11のデータは、本明細書に記載されるような楔形特徴を使用したアンビエントコントラストフィルタの透過率が約22%増加することを予測している。図12は、入射角0°及び50°の入射環境光線に対して、楔形特徴のディスプレイでは周囲の反射光の量がより大きくなる可能性があるが、円偏光子を備えたディスプレイでは、同じ入射角のWSFディスプレイと比較して、50°の入射角θincで反射光の著しい増加を示している。WSFアンビエントコントラストフィルタの改善された光透過率は、円偏光カバープレートと同じ輝度を得るために、エレクトロルミネセント素子(例えば、マイクロLED)へのより低い電流注入を利用することができる。これは、例えば、より長いディスプレイ寿命及び信頼性を含む、ディスプレイデバイス(例えば、マイクロLEDディスプレイ)に対する追加の利点を提供する。幾つかの実施形態では、アンビエントコントラストフィルタの光透過率は、少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%とすることができる。
【0047】
ここで図13に目を向けると、ACEフィルタ層114は、MRTベース層124上、例えばMRTベース層124と基板層112との間に配置された任意選択の吸収層150を含むことができる。光吸収層150は、楔形特徴118と同じ又は類似の材料から形成することができる。従って、光吸収層150の透過率は、光吸収層150に配置された光吸収材料の密度及び/又は光吸収層150の厚さ151を制御して、所定の透過率を得ることによって制御することができる。例えば、光吸収層150は、約1重量%~約20重量%の範囲、例えば、約5重量%~約15重量%の範囲、約5重量%~約10重量%の範囲、約5重量%~約9重量%の範囲、又は約6重量%~約8重量%の範囲の密度を有する炭素粒子(例えば、カーボンブラック)又は他の適切な粒子を含有することができる。カーボンブラックの割合は、約7.5重量%とすることができる。光吸収層150を構成する材料は、楔形特徴118を構成する材料と同じとすることができる。光吸収層150の厚さ151は、約10nm~約1マイクロメートルの範囲、例えば、約0.1μm~約10μmの範囲とすることができる。以下でより詳細に説明するように、光吸収層150の粒子密度及び/又は厚さを使用して、光吸収層150を通して少なくとも約60%の透過率を得ることができる。
【0048】
図14は、光吸収層150について、波長550nmにおけるモデル化された透過率の自然対数(ln)をマイクロメートル単位の厚さの関数としてプロットしたものである。図14のプロットは、データへの線形フィットを描いている。このプロットは、光吸収層150の厚さを増加させることによって、透過率の減少を得ることができることを示している。図15は、波長550nmにおける光吸収層150の吸収をやはりマイクロメートル単位の厚さの関数として表したプロットである。図15のプロットは、光吸収層の厚さが増加するにつれて、吸収が増加することを示している。これは、表面反射の減少につながり、結果として、光吸収材料の層を含むアンビエントコントラストフィルタのアンビエントコントラスト比は、光吸収層がない実施形態に優り改善される。光吸収層150は、楔形特徴118を有するが光吸収層150を有していないアンビエントコントラストフィルタと比較して、アンビエントコントラストフィルタ106の小さな透過率低下をもたらす可能性があるが、光吸収層150を含む結果として、コントラスト比の増大となることができる。例えば、約500以上であるコントラスト比は、楔形特徴118及び光吸収層150の両方を含むことによって達成することができる。
【0049】
光吸収層150の消散係数kは、目標透過率、例えば、60%以上の透過率に一致するように選択することができる。消散係数kは、複素屈折率(n+ik)の虚数成分であり、光吸収層150の粒子密度及び又は厚さを選択することによって変化させることができ、これにより吸収レベルを決定することができる。消散係数kは、次式、
T=e^(4nk/λ)d、
から算出することができ、ここでTは透過率、dは膜厚、nは屈折率(^は指数を示す)である。図16は、層厚d(0.1μmから10μm)に対する薄い吸収層150の光透過率(又は吸収率)、及びその消散係数kを透過率T(1-Aに等しく、ここでAは吸光度を表す)の関数としての理論的予測を示す。
【0050】
光吸収層150の性能上の影響は、光線光学シミュレーションによって数値的に評価し、その解析結果が、図17~19に示されている。楔形特徴部118のピッチP1(空間周期)は、kと共に検討した幾何学パラメータの1つである。この解析では、バックプレーン基板102での反射率は、入射環境光の10%とした。アンビエントコントラストフィルタの目標透過率及び反射率は、それぞれ60%及び70%であった。図17は、kの様々な値と、70μmの楔形特徴高さH1について、ピッチP1の関数として透過率をプロットしたものである。このデータは、kが増加する(光吸収層150がより吸収的になる)と、例えば0.05より大きくなると、透過率が減少することを示している(反射率はアンビエントコントラスト比(ACR)に反比例するので、光透過率とACRは相反する関係にある)。ACRは、1+Io/(Iamb-Ramb)として計算され、ここで、Ioはエレクトロルミネセント素子が「オン」状態で発光する光の強度、Iambは環境光の強度、Rambはバックプレーン基板102からの環境光の反射率である。透過率と反射率の両方の要求を満たすために、kは約0.05から約1の範囲になるように選択することができる。kの選択はまた、光吸収層150の厚さに依存することができる。
【0051】
更に、楔形特徴118の高さH1は、約50μmから約70μmまでの範囲にわたって評価された。図18は、kの様々な値及び楔形特徴の高さH1が50μmの場合のピッチの関数としてのモデル化反射率のグラフであり、図19は、kの様々な値及び楔形特徴の高さH1が70μmの場合のピッチの関数としてのモデル化反射率のグラフである。このデータから、kが大きくなると反射率は低下するが、逆にピッチが大きくなると反射率は上昇することがわかる。テストの結果は、楔形形状の高さH1を低くすることで、楔形形状の幾何形状を定める凹部のパターニングと、その凹部に光吸収材料を充填するプロセスの両方をより確実にできることを示している。これらの挙動を利用して、反射率を最小化する、ピッチ、楔形の高さ、及びk間の適切なトレードオフを見出すことができる。興味深いことに、両方のシミュレーションにおいて、kの値が大きい場合(例えば、k=0.5)のデータは、ピッチと高さの両方に対して低い反射率感度を示し、この傾向は、kの値が小さい場合に顕著である。すなわち、このデータは、kの値が大きい場合、楔形特徴のピッチと高さの変化の結果として、反射率がほとんど変化しないことを示している。
【0052】
発光プロファイルがエレクトロルミネセントディスプレイの視野角を決定するのに役立つため、光吸収層150の存在下でディスプレイから(例えば、アンビエントコントラストフィルタ106から)放出されるLED光の角放出プロファイルも分析した。H1=50μm(図18)及び70μm(図17及び図19)の場合を再び評価し、光吸収層150のないアンビエントコントラストフィルタと比較した。図20及び21は、エレクトロルミネセント素子放射角度の関数として、モデル化され正規化された強度を示す。この分析により、楔形特徴118に加えて光吸収層150の存在が、光吸収層150のないアンビエントコントラストフィルタと比較して増加した視野角を提供できることが確認された。このデータは、約0.01から約0.1の範囲の消光比を示す、楔形特徴118と光吸収層150の両方を含むアンビエントコントラストフィルタが、マイクロLEDディスプレイにおいて500を超えるACRを提供できることを示す。
【0053】
図22は、モデル化されたアンビエントコントラスト比を全反射率の関数として示すグラフである。データは、異なるレベルの周囲照明の下でのアンビエントコントラスト比(ACR)の予測をnit単位で示し、達成可能なACRを示す。例えば、軸153は、本明細書に開示されるような複数の楔形特徴及び光吸収層150を含むディスプレイデバイスを表し、一方、軸155は、楔形特徴118を有するが光吸収層150のない同じディスプレイを表す。比較として、軸157は、楔形特徴118がなく、光吸収層150がない同じディスプレイを表す。バックプレーン基板からの環境光の反射量は、10%と仮定した。このデータは、光吸収層150と組み合わされた光吸収楔形特徴118の両方を有するアンビエントコントラストフィルタを有するディスプレイデバイスによって、500を超えるACRが達成可能であることを示す。
【0054】
図23に示されるのは、アンビエントコントラストフィルタ106の更に別の実施形態であり、アンビエントコントラストフィルタは、異なる高さ及び異なる幅の楔形特徴の交互する列を含むことができる。図23は、その中に埋め込まれた複数の楔形特徴、第1の複数の楔形特徴118及び第2の複数の楔形特徴160を含む基板層112及びACE層114を備えたアンビエントコントラストフィルタ106の一部の断面図を描写する。第1の複数の楔形特徴118は、先に説明したように、最大幅W1及び高さH1を有する細長い楔形特徴の列として配置することができる。第2の複数の楔形特徴160も、楔形特徴160のベースにおける最大幅W2及び高さH2を有する細長い楔形特徴の平行な列として配置することができ、高さH2は、楔形特徴118と同様に、楔形160のベースから対向する端部(基板層112から最も遠い端部)までの値が求められる。第2の複数の楔形特徴部160は、第1の複数の楔形特徴部118と交互配列で配置することができる。第2の複数の楔形特徴部の楔形特徴部160の高さH2は、第1の複数の楔形特徴部の楔形特徴部118の高さH1より小さいとすることができる。第2の複数の楔形特徴の楔形特徴160の最大幅W2は、第1の複数の楔形特徴の楔形特徴118の最大幅W1未満とすることができる。従って、高さH2及び最大幅W2の両方は、それぞれ、第1の複数の楔形特徴の楔形特徴118の高さH1及び最大幅W1未満とすることができる。H1/W1として定義されるアスペクト比は、例えば、約3から約6の範囲において、約3に等しいか、又はそれ以上とすることができる。
【0055】
更に図23を参照すると、第1の複数の楔形特徴118は、楔形特徴118の中心1から隣接する楔形特徴118の中心まで測定された、隣接する楔形特徴間の分離距離を定めるピッチP1で周期的に離間して配置することができる。第1の複数の楔形特徴のピッチP1は、約50μmから約200μmの範囲、例えば、約60μmから約150μmの範囲、約60μmから約100μmの範囲、又は約60μmから約90μmの範囲とすることができる。更に、楔形特徴160はまた、周期的に離間することができ、ピッチP2は、ある楔形特徴160の中心から別の隣接する楔形特徴160の中心まで測定された隣接する楔形特徴160間の分離距離を定める。各楔形特徴160は、P2がP1に等しくなるように、隣接する楔形特徴118間の中間位置に配置することができる。すなわち、第2の複数の楔形特徴160は、第1の複数の楔形特徴118の間に等間隔で配置することができる。従って、楔形特徴118の中心と隣接する楔形特徴160との間の距離は、(P1)/2とすることができる。
【0056】
図24及び図25は、ピッチP1の関数とし、P2=P1と仮定した場合の透過率(図24)及び反射率(図25)を示すモデル化されたデータを示す。データは、単一の複数の楔形特徴を有するディスプレイと、2つの複数の楔形特徴を有するディスプレイとの比較を示し、第2の複数の楔形特徴の高さは、第1の複数の楔形特徴の高さとは異なっている。データは更に、2つの異なる高さをそれぞれ有し、ピッチP1が大きい(例えば、90μm)2つの複数の楔形特徴を有するディスプレイが、60%を超える透過率と8%を下回る反射率を維持しながら、同じ高さと短いピッチ(例えば、60μm)の単一の複数の楔形特徴を有するディスプレイと同様の光学性能を有することができることを示す。第2の複数の楔形特徴の追加は、視聴者の視点から見たときに、楔形特徴の全体のパターンを密にすることができるが、低いアスペクト比を有する追加の複数の楔形特徴は、人間の観察者の視野角を大きくは悪化せず、環境光の阻止の助けとなる吸収性の幾何形状を提供することができる。
【0057】
図26及び図27は、異なる高さの2つの複数の楔形特徴を有するディスプレイのモデル化データを提示し、また、高さH2の関数としての透過率(図26)及び反射率(図27)を示している。H2が10μmから70μmの範囲では、ピッチ変動に伴って観察される傾向とは異なる結果となる。しかしながら、H2の影響はそれほど大きくなく、光吸収材料が高吸収性である、例えば0.1より大きい消散係数kを含むという仮定の下で、10%未満の透過率の変化及び1%未満の反射率の変化を与える。
【0058】
高さH2が大きいほど透過率が高く、反射率が低いというデータが示している。高さH2が大きいほど、全反射を引き起こす表面積が広くなるので、透過率は高くなる。しかしながら、反射率は、第2の複数の楔形特徴のアスペクト比が増加することにより低下する。
【0059】
図28は、単一の(第1の)複数の楔形特徴を有するエレクトロルミネセント素子と、2つの(第1の及び第2の)複数の楔形特徴を有するディスプレイから放出される光についてのモデル化された角度エミッションプロファイルのプロットである。図28のプロットは、放出された光について視野角の関数としての光強度を示している。この比較において、単一の複数の楔形特徴を有するディスプレイと、2つの複数の楔形特徴を有するディスプレイとは、それぞれ60μm及び90μmのピッチ(P1、P2)を有する。このデータから、基本的な光学性能を犠牲にすることなく、アスペクト比の異なる2つの複数の楔形特徴を有するディスプレイは、単一の複数の楔形特徴を有するディスプレイに比べて、視野角を向上させることができることがわかる。
【0060】
アンビエントコントラストフィルタ106は、ガラス基板層112なしで利用することができる。例えば、図29は、その上に堆積された複数のエレクトロルミネセント素子104を含むバックプレーン基板102と、バックプレーン基板102上に配置されたアンビエントコントラストフィルタ106とを備える本開示による別の例示的なエレクトロルミネセントディスプレイデバイス100の断面図である。エレクトロルミネセント素子104は、画像ピクセルの個々のピクセル要素を含み、これに応じて、例えば赤(R)、緑(G)、及び青(B)の異なる色を表示するように構成することができる。しかしながら、図29の実施形態では、アンビエントコントラストフィルタ106は、基板層112、例えば、ガラス基板層を欠いている。従って、様々な実施形態において、アンビエントコントラストフィルタ106は、支持層125、MRTベース層124、楔形特徴118(及び任意選択的に楔形特徴160)及び光吸収層150を含むACE層114によって形成することができる。ACE層114は、接着層122によって、バックプレーン基板102に直接、及び/又はエレクトロルミネセント素子104に、接着することができ、従って、エレクトロルミネセント素子104とアンビエントコントラストフィルタ106との間にギャップがない。接着剤層122は、例えば、光学的に透明な接着剤とすることができる。アンビエントコントラストフィルタ106は、少なくとも1つのAR層116、例えば、光吸収層150の上に配置されたAR層116を含むことができる。
【0061】
有利には、ガラス基板層を含まないアンビエントコントラストフィルタは、エレクトロルミネセントディスプレイパネル、例えばバックプレーン基板102に直接適用することができ、ディスプレイデバイスは、ガラス基板層を利用した実施形態よりもかなり薄くすることができる。更に、ガラス基板層を含むディスプレイパネルは、典型的には、単一のバックプレーン「マザーボード」上に複数のディスプレイパネルを形成し、マザーボードを個々のディスプレイパネルにダイシングする前に、ガラス基板層を含むカバープレートをバックプレーンに取り付けることによって製造される。この場合、バックプレーンだけでなくガラス基板層も切断する必要があるため、切断の難易度が高くなり、表示パネルのコストアップにつながる。ガラス基板層をなくすことで、より大きなディスプレイ用マザーボードからディスプレイパネルを切断することが容易になり、コストも削減できる。更に、ガラス基板層をなくすことで、輸送や設置のコストを削減することができる。ガラス基板層のないフィルムタイプのアンビエントコントラストフィルタを使用したディスプレイパネルは、小型・軽量であるため、取り扱いが容易である。フィルムタイプの場合、製造は、MRTベース層のパターニングから光吸収材の凹部充填、低反射パターニングまで大量生産に適したプロセスであるロールツーロールプロセスで製造できる。
【0062】
従って、アンビエントコントラストフィルタ106を形成するための装置200が、図30~31に示される。最初に図30に目を向けると、装置200は、MRTベース層124及び支持層125を含むMRTフィルム120を製造するように構成された第1のステップ処理装置202を含むことができる。第1のステップ処理装置202は、パターニングローラ204、第1の支持ローラ206、第2の支持ローラ208、第1の分配ノズル210、及び第1の硬化装置212を含む。パターニングローラ204は、パターニングローラの第1の円周面216の周りに配置され、パターニングローラの長さに沿って延びる複数の突出部214(例えば、歯)を含む略円形断面を有する細長いローラであり、突出部214は楔形特徴118に対応する。複数の突出部214は、周期的に離間して配置することができる。例えば、各突出部214は、各突出部間の角距離が等分されるように、第1の円周面216の周りの隣接する突出部から等距離で離間して配置することができる。説明の目的であって限定するものではないが、パターニングローラ204が60個の突出部を有する場合、60個の突出部は、パターニングローラの円周表面について1°ごとに角度的に間隔を空けることができる。パターニングローラ204が120個の突出部を有する場合、120個の突出部は、0.5°ごとに間隔を空けることができる。勿論、実用的な用途では、突出部間の間隔はマイクロメートルのオーダーであり、例えば、楔形特徴118に望まれる周期P1を生成するのに相当することが認識されるはずである。すなわち、楔形特徴118及び/又は160についての周期を生成するには、約40μmから約500μmの範囲、例えば、その間の全ての範囲及び部分範囲を含めて、約60μmから約150μm、約60μmから約100μm、又は約60μmから約90μmの範囲など、約50μmから約200μmの範囲が適切である。
【0063】
しかしながら、突出部108は、隣接する突出部の1ペア間の角距離が、隣接する突出部の別のペア間の角距離とは異なるように、異なる間隔に配置することができる。例えば、角距離は、パターニングローラの周りに所定の回転方向に対して、隣接する突出部の1つのペアから隣接する突出部の次のペアまで増加することができる。この場合も同様に、限定ではなく例として、4つの順次的に配置された突出部である、第1の突出部、第1の突出部に隣接する第2の突出部、第2の突出部に隣接する第3の突出部、及び第3の突出部に隣接する第4の突出部を考える。第1の突出部と隣接する第2の突出部との間の角距離は、例えば時計方向に進む1°とすることができる。第2の突出部と第3の突出部との間の角距離は、1.01°とすることができる。第3の突出部と第4の突出部との間の角度的な距離は、1.02°などとすることができ、各突出部は、先行する突出部から更に0.01°だけ角度の間隔で配置される。勿論、隣接する突出部間の角距離は、再び第1の及び第2の突出部に到達すると、1°に戻る。パターニングローラ204は、突出部のサブパターンを含むことができ、ここで、第1の突出部に戻ったときの繰り返しは、例えば10個の突出部ごとに発生することは明らかであろう。実際に、楔形特徴の類似のパターンを生成するのに望ましい又は必要とされる突出部間の何れかの角度又は円周方向の距離を含む何れかの所定のパターンで突出部を提供することができる。
【0064】
パターニングローラ204は、第1の回転軸218を含み、第1の回転軸218の周りに回転可能である。突出部214は、互いに平行なパターニングローラの長さに沿って延びることができる。例えば、各突出部は、高さH1だけ第1の円周表面216の上に延びる細長い構造とすることができる。突出部214は、第1の回転軸218と平行とすることができるが、代替的に、突出部214は、第1の円周面216上で第1の回転軸218の周りに螺旋状に配置することができる。幾つかの実施形態では、第1の円周面216に垂直な線に沿った第1の円周面216に対する突出部214の高さは、変化することができる。例えば、先に説明したように、2つの異なる高さH1及びH2が、それぞれ楔形特徴118及び160の高さに対応して設けることができるが、追加の数の高さ、例えば、別の複数の楔形特徴に対応して、2よりも多い高さを提供することができる。
【0065】
第1の支持ローラ206は、第2の回転軸222の周りに配置され、第2の回転軸222の周りに回転可能な第2の円周面220を備える。第2の円周面220は、滑らかな表面とすることができる。第2の回転軸222は、第1の回転軸218と平行とすることができる。第2の周方向表面220は、第1の円周面216から第1の所定距離224だけ離間して配置することができる。すなわち、第1の円周面216は、第1のギャップ226によって第2の円周面220から離間して配置することができる。第1の所定距離224は、突出部214の最大高さよりも大きく、例えば、H1よりも大きい。
【0066】
第2の支持ローラ208は、第3回転軸230の周りに配置され、第3回転軸230の周りに回転可能な第3円周面228を備える。第1の支持ローラ206と同様に、第3の円周面228は、滑らかな表面とすることができる。第3の回転軸230は、第1の回転軸218と平行とすることができる。第3の円周面228は、第1の円周面216から第2の所定距離232だけ離間して配置することができる。すなわち、第1の円周面216は、第2のギャップ234によって第3の円周面228から離間している。第2の所定距離232は、突出部214の最大高さよりも大きく、例えば、H1よりも大きい。第1の回転軸218、第2の回転軸222、及び第3の回転軸230は、同一平面上にあり、すなわち、同じ平面上に存在することができる。
【0067】
第1の分配ノズル210は、マトリックス材料236をパターニングローラ204と第1の支持ローラ206との間の第1のギャップ226に分配するように構成される。更に、第1の硬化装置212は、マトリックス材料236を硬化させてMRTベース層124を形成するように構成されている。第1の硬化装置212は、第1のUV光240を第1のギャップ226に誘導するように構成された、硬化装置238、例えばUV照明装置を含む。
【0068】
図30に描かれているように、予め形成されたポリマーフィルム、例えばPETなどの支持層125は、第1の支持ローラ206の上で第1のステップ処理装置202に導かれ、第1のギャップ226に誘導される。支持層125は、第1の主要面242と、第1の主要面242の反対側の第2の主要面244とを含む。支持層125の第2の主要面244が第1の支持ローラ206の第2の円周面220に接触して支持されている状態で、マトリックス材料236は、第1のギャップ226の上方から第1の分配ノズル210によって液体形態で第1のギャップ226に分配され、支持層125の第1の主要面242とパターニングローラ204の第1の円周面216間に堆積される。マトリックス材料236は、例えば、ポリマー樹脂、例えば、UV硬化性アクリレートモノマー、多官能アクリレートオリゴマー、光開始剤、及び必要に応じて何れかの追加の添加剤とすることができる。ベース樹脂のラジカル型重合光開始剤としては、例えば、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、α-ヒドロキシフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノン、トリアリルホスフィンオキシド、又はビスアシルホスフィンオキシドを挙げることができる。
【0069】
マトリックス材料が第1の分配ノズル210から分配されるときのマトリックス材料236の粘度は、約50ミリパスカル秒(mPa・s)から約1000mPa・sまでの範囲、例えば約75mPa・sから約300mPa・sまでの範囲とすることができる。 突出部214は、パターニングローラ204及び第1の支持ローラ206が回転すると、第1のギャップ226内のマトリックス材料236を変位させる。例えば、図30に描かれた実施形態では、プロセスは右から左に実行され、パターニングローラ204は時計回り方向に回転し、第1の支持ローラ206は反時計回り方向に回転していることが示されている。液体マトリックス材料236が支持層125の第1の主要面242に付着した第1のギャップ226を離れると、マトリックス材料は、第1のギャップ226及び/又はパターニングローラ204の下に位置する第1の硬化装置212によって硬化される。例えば、マトリックス材料236は、紫外線(UV)光硬化性ポリマー材料とすることができる。従って、第1のUV照明装置238は、第1のギャップ226及び/又はパターニングローラ204の下側に、支持層125を通して、第1のUV光240を上方に放出し、これにより、マトリックス材料236を、支持層125及びMRTベース層124を含むMRTフィルム120に硬化させ、MRTフィルム120は、突出部214を模した複数の凹部246を含む。すなわち、凹部246は、突出部214のネガである。硬化したMRTベース層124の屈折率は、約1.45~約1.65の範囲とすることができる。
【0070】
図30に更に示されるように、パターニングローラ204が時計回り方向に回転すると、MRTフィルム120は、突出部214が凹部246に係合した状態で、第1の円周面216の周囲及び下方を移動する。次に、MRTフィルム120は、支持層125の第2の主要面244が第2の支持ローラ208の第3の円周面228に接触し、凹部246が第3の円周面228から離れた外側に向くように、第2の支持ローラ208上に巻きつく。図示されていないが、MRTフィルム120は、第2の支持ローラ208の下流に集められ、ロール状に巻かれ、後の使用のために保管されるか、第2のプロセスステップを実行する第2の装置に提供することができる。
【0071】
従って、ここで図31を参照すると、装置200は更に、第2のステップ処理装置250を備えることができる。第2のステップ処理装置250は、塗布ローラ302、第3の支持ローラ304、第4の支持ローラ306、第2の分配ノズル308、第2の硬化装置310、及び任意選択で第3の硬化装置312を含む。
【0072】
塗布ローラ302は、第4の回転軸316の周りに配置され回転可能な第4の円周面314を含む。パターニングローラ204とは異なり、第4の円周面314は、滑らかな表面とすることができる。
【0073】
第3の支持ローラ304は、第5回転軸320の周りに配置され回転可能な第5の円周面318を含む、第5の円周面318は、滑らかな表面とすることができる。実施形態では、第5の回転軸320は、第4の回転軸316と平行である。第5の周方向表面318は、第4の周方向表面314から第3の所定距離322だけ離間して配置することができる。すなわち、第4の円周面314は、第3のギャップ324によって第5の円周面318から離間される。
【0074】
第4の支持ローラ306は、第6回転軸328の周りに配置され回転可能な第6の円周面326を備える。第6の円周面326は、滑らかな表面とすることができる。実施形態では、第6の回転軸328は、第4の回転軸316と平行である。第6の周方向表面326は、第4の周方向表面314から第4の所定距離330だけ離間して配置することができる。すなわち、第6の円周面326は、第4の円周面314から第4のギャップ332だけ離間される。
【0075】
図31に描かれているように、MRTフィルム120は、第3の支持ローラ304によって第3のギャップ324に導かれ、MRTフィルム120は、第3の支持ローラ304と塗布ローラ302との間の第3のギャップ324に捕捉される(支持層125が図Wに示されていないが、それにもかかわらず含まれることに留意されたい)。例えば、図32に描かれた実施形態では、プロセスは右から左に実行され、塗布ローラ302は時計回り方向に回転し、第3の支持ローラ304は反時計回り方向に回転する。MRTフィルム120は、凹部246が第5の円周面318から離れた外側に向いた状態で第3の支持ローラ304上を進み、第3のギャップ324に入る。MRTフィルム120が塗布ローラ302と第3の支持ローラ304との間の第3のギャップ324に入ると、凹部246は塗布ローラ302の第4円周面314に面する。光吸収材料334は、第2の分配ノズル308によって、塗布ローラ302とMRTフィルム120との間の第3のギャップ324に分配され、塗布ローラ302によって凹所246に押し込まれる。光吸収材料334は、例えば、カーボンブラックのような光吸収添加剤を含むポリマー材料とすることができ、カーボンブラックはポリマー材料中に分散されている。カーボンブラック粒子の粒径は、約10ナノメートル(nm)~約500nmの範囲、例えば約10nm~約400nmの範囲、例えば約10nm~約300ナノメートルの範囲、又は約10nm~約200nmの範囲とすることができる。カーボンブラック粒子は、約5重量%~約10重量%の範囲、例えば約6重量%~約8重量%の範囲の量で光吸収材料中に存在することができる。幾つかの実施形態において、カーボンブラック粒子は、7.5重量パーセントの量で光吸収材料中に存在してもよい。第2の分配ノズル308から分配される光吸収材料の粘度は、約75mPa・~約300mPa・sの範囲とすることができる。
【0076】
光吸収材料334は、第2の硬化装置310によって少なくとも部分的に硬化され、これによりACE層114が形成される。例えば、光吸収材料334は、紫外線(UV)光硬化性ポリマー材料とすることができる。従って、第2の硬化装置310は、第3のギャップ324及び/又は塗布ローラ302の下方に配置され、第2のUV光340を第3のギャップ324内及び/又は塗布ローラ302上のACE層114に向かって誘導するように配置されたUV光源338を含むことができる。光吸収材料334の第1の硬化は、MRTフィルム120の裏面(凹部246と反対側の面)を通って行われるので、硬化はMRTフィルム120の厚さによって阻害される可能性がある。従って、任意選択の第3の硬化装置312は、第4のギャップ332の上方及び/又は第4の支持ローラ306の上方に配置することができる。第3の硬化装置312は、第3のUV光348をMRTフィルム120及び光吸収材料334上に誘導するように配置された第3のUV光源346を含む。例えば、MRTフィルム120が塗布ローラ302(例えば、塗布ローラ302の底部)の周りを進むと、第4の支持ローラ306が反時計回り方向に回転するため、MRTフィルム120は第4のギャップ332を通って第4の支持ローラ306上に誘導される。この構成では、ここでは少なくとも部分的に硬化した光吸収材料334が充填された凹部246は、光吸収材料334が第3のUV光348によって直接衝突され、これにより所望の硬化を提供できるように、第6の円周面326から離れて外方に面している。硬化したMRTフィルム120(例えば、MRTベース層124)と硬化した光吸収材料との間の屈折率差は、0から約0.08の範囲、例えば0から約0.06の範囲、例えば約0から約0.05の範囲、約0から約0.04、又は約0から約0.03までの範囲とすることができる。例えば、硬化した光吸収材料の屈折率は、約1.45から約1.51の範囲とすることができる。結果として得られたアンビエントコントラストフィルタ106は、その後、本明細書に開示されるようなアンビエントコントラスト強化エレクトロルミネセントディスプレイの製造に使用することができる。
【0077】
図示されていないが、追加の第2の塗布ローラ及び第5の支持ローラ、並びに第3の分配ノズルが、第4の支持ローラ306及び第4の硬化装置の下流に配置することができ、ここで追加のローラ、分配装置、及び硬化装置は、光吸収層150をACE層114に堆積するために使用することができる。AR層116も同様に追加することができる。ただし、光吸収層150は、第4の円周面314と第5の円周面318との距離322を調整することにより、第3の支持ローラ304及び塗布ローラ302を用いた凹部246と同時に塗布することができる。
【0078】
図30図31に関して上述した装置は、凹部を有するMRTフィルム120の形成と、その後の光吸収材料のMRTフィルム凹部への充填とが、別々の個別のプロセスとして実施されるプロセスを提供する。しかしながら、これらのプロセスは、必ずしも別々に実施される必要はない。すなわち、上述したように、MRTフィルム120は、光吸収材料が充填される前に保管することができる。しかしながら、図30図31に関して説明したステップは、インラインプロセスにおいて、順次、連続的に、次々に実行することができる。
【0079】
従って、図32は、ACE層114を形成するためのインラインプロセスを描写している。説明のためであり限定するものではないが、図32のプロセス装置は、右から左に配置されている。
【0080】
図33によれば、アンビエントコントラストフィルタ106のインライン製造のために構成された装置400が示される。装置400は、第1の支持ローラ402、第1のディスペンスノズル404、第1の硬化装置406、第1のパターニングローラ408、第2の支持ローラ410、アプリケーションローラ412、第2のディスペンスノズル414、第2の硬化装置416、及び第3の支持ローラ418を備える。装置400は、第3のディスペンシングノズル420、第2のパターニングローラ422、第3の硬化装置424、及び第4の支持ローラ426を更に備えることができる。
【0081】
図31に示すように、第1のパターニングローラ408は、第1のパターニングローラ408の第1の円周面432について配置され、第1のパターニングローラの長さに沿って延びる複数の突出部430(例えば、歯)を備える細長いローラである。複数の突出部430は、隣接する突出部の間又は突出部のグループの間に周期的に離間して配置することができる。例えば、パターニングローラ204と同様に、第1のパターニングローラ408の各突出部430は、各突出部間の角距離が等分になるように、隣接する突出部から等距離の間隔を空けることができる。しかしながら、突出部430は、1組の隣接する突出部間の角距離が、別の組の隣接する突出部間の角距離と異なるように、異なる間隔で配置することができる。突出部430は、所望に応じて、突出部間の任意の所定の角距離又は周方向距離を含む何れかの所定のパターンで配置することができる。
【0082】
第1のパターニングローラ408は、第1の回転軸434の周りに回転可能である。様々な実施形態において、突出部430は、互いに平行に第1のパターニングローラ408の長さに沿って延びることができる。例えば、各突出部430は、第1の円周面432から所定の高さH1だけ離れて、外側に延びる細長い構造とすることができる。突出部430は、第1の回転軸434と平行に延びることができる。或いは、突出部430は、第1の円周表面432上に螺旋状に配置することができる。突出部430は、プロセスによって生成された隣接する楔形特徴間の距離を、約40μmから約500μmの範囲、例えば、その間の全ての範囲及び部分範囲を含めて、約60μmから約150μm、約60μmから約100μm、又は約60μmから約90μm、範囲など、約50μmから約200μmで得るように必要に応じて配置することができる。第1の円周面432に垂直な線に沿った第1の円周面432に対する突出部430の高さは変化してもよい。例えば、幾つかの突出部は、H1とは異なる高さH2、例えばH1より小さい高さを有することができる。
【0083】
第1の支持ローラ402は、第2の円周面436を含む細長いローラであり、第2の回転軸438の周りに回転可能である。第2の円周面436は、滑らかな表面とすることができる。第2の回転軸438は、第1の回転軸434と平行に延びることができる。第2の周方向表面436は、第1の円周面432から第1の所定距離440だけ間隔を空けることができる。すなわち、第1の円周面432は、第1のギャップ442によって第2の周方向表面436から離間して配置される。第1の所定距離440は、突出部430の最大高さと等しいか、又はそれより大きくてもよい。
【0084】
第2の支持ローラ410は、第3の円周面444を含む細長いローラであり、第3回転軸446の周りに回転可能である。第3の円周面444は、滑らかな表面とすることができる。実施形態において、第3の回転軸44は、第1の回転軸434と平行に延びることができる。第3の周方向表面444は、第1の円周面432から第2の所定距離448離間して配置することができる。すなわち、第1の円周面432は、第3の周方向表面444から第2のギャップ450だけ離間している。第2の所定距離448は、突出部430の最大高さに等しいか、又はそれより大きくてもよい。第1の回転軸434、第2の回転軸438、及び第3の回転軸446は、同一平面上にあるものとすることができる。
【0085】
第1の分配ノズル404は、マトリックス材料452を第1のパターニングローラ408と第1の支持ローラ402との間の第1のギャップ442に誘導するように構成される。例えば、分配ノズル404は、液体形態のマトリックス材料452の供給源と流体連通し、第1のギャップ442の上に配置することができる。マトリックス材料452は、第1の分配ノズル404にポンプ送給することができる。
【0086】
図33に描かれているように、支持層125が第1のギャップ442に供給されると、マトリックス材料452も第1のギャップ442の上方から第1の分配ノズル404によって液体形態で第1のギャップ442に分配され、マトリックス材料452は第1のパターニングローラ408と第1の支持ローラ402との間、より詳細には支持層125と第1のパターニングローラ408との間で第1のギャップ442に捕捉される。突出部430は、第1のパターニングローラ408及び第1のサポートローラ402が回転すると、第1のギャップ442内のマトリックス材料452を変位させる。例えば、図33に描かれているように、プロセスは右から左に実行され、第1のパターニングローラ408は時計回り方向に回転し、第1のサポートローラ402は反時計回り方向に回転する。マトリックス材料452が第1のギャップ442を離れると、マトリックス材料452は、第1のギャップ442及び/又は第1のパターニングローラ408の下に配置された第1の硬化装置406によって硬化し、支持層125に結合したMRTベース層124となって、MRTフィルム120を形成する。マトリックス材料452は、紫外線(UV)光硬化性ポリマー材料とすることができる。従って、第1の硬化装置406は、第1のUV光456を第1のギャップ442の中及び/又は第1のパターニングローラ408の下の支持層125に向かって上向きに放出するように配置されたUV照明装置454を含むことができ、これにより、マトリックス材料452を、突出部430及び支持層125を模した複数の凹部460を含むMRTベース層124を含むMRTフィルム120に硬化する。凹部460は、突出部430のネガである。
【0087】
図32に更に示されるように、第1のパターニングローラ408が時計回り方向に回転すると、MRTフィルム120は、突出部430が凹部460に係合した状態で、第1のパターニングローラ408の下方を移動する。その後、MRTフィルム120は、第2のギャップ450に導かれ、凹部460が第3の円周面444から離れた外側に向くように、第2の支持ローラ410の上に巻きつけられる。
【0088】
第2の支持ローラ410の第3の円周面444は、塗布ローラ412の第4の円周面462から所定距離464だけ離れている。すなわち、第2の支持ローラ410の第3の円周面444は、塗布ローラ412の第4の円周面462から第3のギャップ466だけ離間している。MRTフィルム120は、第2の支持ローラ410の第3の円周面444上を進み、第3のギャップ466に誘導される。MRTフィルム120は、凹部460が第3の円周面444から離れた外側に向いた状態で、第2の支持ローラ410の上を前進する。MRTフィルム120が塗布ローラ412と第2の支持ローラ410との間の第3のギャップ466に入ると、凹部460は塗布ローラ412の第4円周面462に面する。光吸収材料468は、第2の分配ノズル414によって液体状で第3のギャップ466に分配され、塗布ローラ412によって凹部460に押し込まれる。所定の距離464は、凹部460を光吸収材料468で満たすことに加えて、光吸収材料がMRTフィルム120上に連続層を形成し得るように調整することができる。MRTフィルム120が第3のギャップ466を抜けると、光吸収材料468(適用されていれば光吸収層150を含む)が第2の硬化装置416によって硬化され、楔状特徴118(及び/又は楔状特徴160及び/又は光吸収層150)を形成する。例えば、光吸収材料468は、紫外線(UV)光硬化性ポリマー材料であってよい。従って、第2の硬化装置416は、第2のUV光472を第3のギャップ466に誘導するように配置されたUV光放出装置470を含むことができ、光吸収材料468は、第2の硬化装置416によって少なくとも部分的に硬化され、楔状特徴118及び任意に光吸収層150、例えば、ACE層114を形成する。塗布ローラ412は、第4の回転軸472を中心に回転するように構成され、塗布ローラ412が回転すると、ACE層114は、塗布ローラ412の少なくとも一部の周囲(例えば、塗布ローラの下)で、第3の支持ローラ418の第5の円周面480と接触するように案内される。
【0089】
第3の支持ローラ418は、第5の回転軸478の周りに回転可能である。第5の円周面480は、平滑面とすることができる。第5の回転軸478は、第1の回転軸434と平行とすることができる。図32に示すように、ACE層114は第3の支持ローラ418上に乗り、第3の支持ローラ418から収集することができる。例えば、幾つかの実施形態では、少なくとも部分的に硬化した光吸収材料を含むACE層114は、後の使用のためにACE層114を加工(例えば、ロール)するように構成された下流装置(図示せず)に誘導することができる。しかしながら、追加の層がACE層114に追加されることもある。例えば、装置400は、第6の回転軸484の周りに回転可能な第6の円周面482の周りに回転可能な第2のパターニングローラ422を更に含むことができる。第6の円周面482は、第5の円周面480から第3の所定距離486だけ離間して配置することができる。すなわち、第6の円周面482は、第4のギャップ488によって第5の円周面480から離間している。ACE層114が第3の支持ローラ418の第5の円周面480から離れると、ACE層114は第4のギャップ488に誘導される。第3分配ノズル420は、ポリマー樹脂490の流れを第2のパターニングローラ422とACE層114との間の第4のギャップ488に誘導するように配置することができる。ポリマー樹脂490は、例えば、1,6ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)のような機能的アクリレート又はトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)又はこれらの何れかの組み合わせのような機能的メタクリレートを含むことができる。幾つかの実施例では、第6の円周面482は、所定の粗さを有するテクスチャ表面、例えば粗面である。図32を参照すると、ACE層114は、ポリマー樹脂490が、適用されていれば楔形特徴118(及び/又は楔形特徴160)又は光吸収層150と接触し、これによりAR層116を形成するように配向される。ポリマー樹脂490は第6の円周面482に接触するので、第6の円周面482に存在するテクスチャは、ポリマー樹脂の外向き面に押し付けられる。第3の硬化装置424は、第4のギャップ488及び/又は第2のパターニングローラ422の下方に配置され、第3UV光496をACE層114を通して誘導し、ポリマー樹脂490を少なくとも部分的に硬化させてアンビエントコントラストフィルタ106を形成するように構成されたUV照明装置494を含むことができる。幾つかの実施例では、AR層116は、例えばSiO2のような無機層とすることができる。AR層490は、適用された厚みで少なくとも90%の透明性を有するべきである。
【0090】
図33の実施形態によって提供される配置と比較して、アンビエントコントラストフィルタ106の異なる層を異なるように配置することができるように、装置400の様々なローラを交換することができることは、本開示から明らかであろう。言い換えれば、様々なパターニングローラ、分配ノズル、及び硬化装置は、様々な数及び順序の層を有するアンビエントコントラストフィルタを製造するために、適宜配置することができる。
【0091】
層の様々な配置を有するアンビエントコントラストフィルタ106を有するディスプレイデバイスの非限定的な例は、図33図36で見ることができる。図33は、その上に配置された複数のエレクトロルミネセント素子104を含むバックプレーン基板102を備える例示的なディスプレイデバイス100を描写し、ディスプレイデバイス100は、バックプレーン基板102の上に配置されたアンビエントコントラストフィルタ106を含む。アンビエントコントラストフィルタ106は、下から上に向かって、支持層125及びMRTベース層124を含むACE層114を含み、MTRベース層124は、そこに配置された複数の楔形特徴118を含む。光吸収層150は、MRTベース層124の上に配置される。アンビエントコントラストフィルタ106は、接着剤層122によってバックプレーン基板102に取り付けることができる。図33の実施形態では、アンビエントコントラストフィルタ106は、ガラス基板層(例えば、ガラス基板層112)を含まず、アンビエントコントラストフィルタは、バックプレーン基板102及び/又はエレクトロルミネセント素子104に直接取り付けられる。すなわち、図33のディスプレイデバイスは、バックプレーン及びエレクトロルミネセント素子の上にあるガラスカバープレートを含まない。
【0092】
図34は、その上に配置された複数のエレクトロルミネセント素子104を含むバックプレーン基板102を含む別の例示的なディスプレイデバイス100を描写し、ディスプレイデバイス100は、バックプレーン基板102の上に配置されたアンビエントコントラストフィルタ106を含む。図35のアンビエントコントラストフィルタ106は、図34のアンビエントコントラストフィルタが光吸収層150の上に反射防止層を更に含むことを除いて、図34のアンビエントコントラストフィルタ106と同様である。図34のアンビエントコントラストフィルタ106は、接着剤層122によってバックプレーン基板102に取り付けることができる。図33のディスプレイデバイスと同様に、図34のアンビエントコントラストフィルタ106はガラス基板層を含まず、アンビエントコントラストフィルタはバックプレーン基板102及び/又はエレクトロルミネセント素子104に直接取り付けられる。すなわち、図35のディスプレイデバイスは、バックプレーン及びエレクトロルミネセント素子の上にあるガラスカバープレートを含まない。
【0093】
図35は、その上に配置された複数のエレクトロルミネセント素子104を含むバックプレーン基板102を含む更に別の例示的なディスプレイデバイス100を描写し、ディスプレイデバイス100は、バックプレーン基板102の上に配置されたアンビエントコントラストフィルタ106を含む。図35のアンビエントコントラストフィルタ106は、下から上に向かって、光吸収層150と、その中に配置された複数の楔形特徴部118を含むMRTベース層と、MRTベース層の上に配置された支持層125とを含む。図35のアンビエントコントラストフィルタ106は、接着剤層122によってバックプレーン基板102に取り付けることができる。図33及び図34のディスプレイデバイスと同様に、図35のアンビエントコントラストフィルタ106はガラス基板層を含まず、アンビエントコントラストフィルタはバックプレーン基板102及び/又はエレクトロルミネセント素子104に直接取り付けられる。すなわち、図35のディスプレイデバイスは、バックプレーン及びエレクトロルミネセント素子の上にあるガラスカバープレートを含まない。
【0094】
図36は、その上に配置された複数のエレクトロルミネセント素子104を含むバックプレーン基板102を含む更に別の例示的なディスプレイデバイス100を描写し、ディスプレイデバイス100は、バックプレーン基板102の上に配置されたアンビエントコントラストフィルタ106を含む。図36のアンビエントコントラストフィルタ106は、下から上に向かって、AR層116と、支持層125と、その中に配置された複数の楔形特徴118を含むMRTベース層と、光吸収層150と、光吸収層の上に配置された第2のAR層116と、MRTベース層の上に配置された支持層125とを含む。図36のアンビエントコントラストフィルタ106は、接着剤層122によってバックプレーン基板102に取り付けることができる。図33図35のディスプレイデバイスと同様に、図36のアンビエントコントラストフィルタ106は、ガラス基板層を含まず、アンビエントコントラストフィルタは、バックプレーン基板102及び/又はエレクトロルミネセント素子104に直接取り付けられる。すなわち、図36のディスプレイデバイスは、バックプレーン及びエレクトロルミネセント素子の上にあるガラスカバープレートを含まない。
【0095】
図37は、図33図36に示した構造の幾つかの光学特性を示すプロットである。透過率(T)は分光計で測定し、ACR(Ambient Contrast Ratio)はプラズマディスプレイパネルを用いてIEC 62341-6-2に基づき測定した。TとACRは、構造や材料の選択を変えることで調整することができる。その結果、楔形の上にAR層を設けた場合、AR層を設けない場合と比較して、透過率の増加はほとんどなく、ACRも同程度であることがわかった。一方、支持層側に配置されたAR層は、ARなしの場合と同様に光透過率が43.6%となった。しかしながら、ACRは140に増加した。透過率がNo-ARの場合と同じか、それ以上に低くなったのは、楔形特徴パターンの向きを反転させることで透過率が低下し、その反転によって下側の光の入口が小さくなったためと考えられる。両面AR構造は、4つのケースの中で最も高い透過率を示し、ACRのレベルは第1の及び第2のケースと同程度であった。
【0096】
本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示の実施形態に様々な修正及び変形を加えることができることは、当業者にとって明らかであろう。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内に入ることを条件として、このような修正及び変形をカバーすることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
100 エレクトロルミネセントディスプレイデバイス
102 バックプレーン基板
106 アンビエントコントラストフィルタ
114 ACE層
116 AR層
118 楔形特徴
120 MRTフィルム
122 接着層
124 MRTベース層
125 支持層
150 光吸収層
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスプレイデバイスであって、
その上に平行な列状に堆積された複数のエレクトロルミネセント素子を含むバックプレーン基板であって、前記エレクトロルミネセント素子の各列がアライメント軸を含む、バックプレーン基板と、
前記バックプレーン基板の上に配置されたアンビエントコントラストフィルタであって、前記アンビエントコントラストフィルタが、ポリマー支持層と、前記ポリマー支持層上に配置されたマイクロ複製薄膜ベース層とを含み、前記マイクロ複製薄膜ベース層は、平行な列状に配置された複数の光吸収楔形特徴を含み、前記各光吸収楔形特徴が長手方向軸を含む、アンビエントコントラストフィルタと、
を備え、前記アンビエントコントラストフィルタがガラス層を含まない、光ディスプレイデバイス。
【請求項2】
前記アンビエントコントラストフィルタは、前記マイクロ複製薄膜ベース層上に配置された光吸収層を更に含む、請求項1に記載の光ディスプレイデバイス。
【請求項3】
前記光吸収層の厚さは、約10nmから約1μmの範囲である、請求項2に記載の光ディスプレイデバイス。
【請求項4】
前記複数の光吸収楔形特徴の高さH1が、約10μmから約100μmの範囲にある、請求項1~3の何れか1項に記載の光学ディスプレイデバイス。
【請求項5】
前記複数の楔形特徴の各楔形特徴は、約5μmから約15μmの範囲の最大断面幅W1を有する、請求項4に記載の光ディスプレイデバイス。
【請求項6】
前記複数の楔形特徴のピッチP1が、約5μmから約40μmの範囲にある、請求項1~5の何れか1項に記載の光学ディスプレイデバイス。
【請求項7】
前記アンビエントコントラストフィルタは、反射防止層を含む、請求項1~6の何れか1項に記載の光ディスプレイデバイス。
【請求項8】
アンビエントコントラストフィルタを形成する方法であって、
第1のパターニングローラを第1の方向に回転させるステップであって、前記第1のパターニングローラは、そこから延びる複数の突出部を有する第1の円周面を含む、ステップと、
第1の支持ローラを、第1の方向とは反対の第2の方向に回転させるステップであって、前記第1の支持ローラは、前記第1の円周面から第1のギャップだけ離間した第2の円周面を含む、ステップと、
第2の支持ローラを第2の方向に回転させるステップであって、前記第2の支持ローラは第3の円周面を含み、前記第3の円周面は、前記第1の円周面から第2のギャップだけ離間しており、前記第1のパターニングローラは、前記第1の支持ローラと前記第2の支持ローラとの間に位置する、ステップと、
ポリマー支持層を前記第1のギャップに誘導するステップと、
前記ポリマー支持層と前記第1のパターニングローラの前記第1の円周面との間の前記第1のギャップにポリマーマトリックス材料を分配するステップであって、前記第1のパターニングローラは前記ポリマーマトリックス材料に複数の凹部を形成する、ステップと、
前記ポリマー支持層及び前記ポリマーマトリックス材料に第1のUV光を照射するステップであって、前記第1のUV光によって前記ポリマーマトリックス材料を硬化させて、前記ポリマー支持層に結合されたマイクロ複製薄膜ベース層を形成し、前記マイクロ複製薄膜ベース層及び前記ポリマー支持層がマイクロ複製薄膜を形成する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記マイクロ複製薄膜を前記第2の支持ローラの第3の円周面と前記第1の方向に回転する塗布ローラの第4の円周面との間の第3のギャップに誘導するステップと、
前記マイクロ複製薄膜と前記塗布ローラの第4の円周面との間の前記第3のギャップに光吸収材料を分配するステップであって、前記光吸収材料が前記凹部を充填する、ステップと、
前記光吸収材料に第2のUV光を照射して、前記光吸収材料を少なくとも部分的に硬化させ、前記マイクロ複製薄膜ベース層に複数の光吸収楔形特徴を形成するステップであって、前記ポリマー支持層、前記マイクロ複製薄膜ベース層、及び前記複数の光吸収楔形特徴がアンビエントコントラスト強化層を形成する、ステップと、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アンビエントコントラスト強調層を、前記塗布ローラの下流の第3の支持ローラの第5の円周面と第2のパターニングローラの第6の円周面との間の第4のギャップに誘導するステップと、
前記アンビエントコントラスト強調層と前記第3の支持ローラの第5の円周面との間の第3のギャップに第2のポリマー材料を分配するステップと、
前記第2のポリマー材料に第3のUV光を照射して前記第2のポリマー材料を少なくとも部分的に硬化させ、前記硬化した第2のポリマー材料が、前記アンビエントコントラスト強調層に結合されるIR層を形成する、ステップと、
を更に含む、請求項9に記載の方法。
【国際調査報告】