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特表2023-548611単一層モノリシック防水通気性フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-17
(54)【発明の名称】単一層モノリシック防水通気性フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231110BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20231110BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20231110BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
C08J5/18
B32B27/12
C08L101/12
C08L21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527710
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 FR2021051900
(87)【国際公開番号】W WO2022096809
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】2011273
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523164012
【氏名又は名称】プロシミール
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビロノー, アドリアン
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA51
4F071AA51X
4F071AA53
4F071AA53X
4F071AA54
4F071AA54X
4F071AA75
4F071AF08Y
4F071AF32Y
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4F071BC16
4F100AK01B
4F100AK46B
4F100AK54B
4F100AL02B
4F100AL09B
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4F100CA13B
4F100CA17B
4F100CA22B
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4F100JD02B
4F100JD04B
4F100JD05B
4F100YY00B
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4J002CK032
4J002CK041
4J002CK042
4J002CL071
4J002DA036
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4J002DJ006
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4J002DJ046
4J002EG016
4J002EH016
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4J002FD096
4J002FD106
4J002FD176
4J002GB00
4J002GC00
4J002GF00
4J002GK00
4J002GL00
(57)【要約】
1)少なくとも50重量%の高通気性ポリマーからなり、厚さが5~150μmの間の単層モノリシック防水通気性フィルムAであって、その面の1つが少なくとも0.1μmの算術平均粗さRaを示すことを特徴とする、単層モノリシック防水通気性フィルムA。
2)前記フィルムの製造方法であって、
-共押出によって、2層B/Aを含む多層フィルムMを形成する段階であって、
-層Aは上記で定義したとおりであり、
-層Bは、厚さが15~100μmの間の剥離性層であり、アタクチックポリプロピレン(PolyPropylene:PP)の連続相における高密度ポリエチレン(high density polyethylene:HDPE)の分散体からなり、分散されているHDPEの量が、層Bが少なくとも0.1μmの算術平均表面粗さRaを示す量である、
多層フィルムMを形成する段階、次いで
-多層フィルムMの層Bを剥離することによって単層フィルムAを分離する段階(ii)
を含む、製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが5~150μmの間であり、組成物(a)からなる単層モノリシック防水通気性フィルムAであって、組成物(a)はその総重量に基づいて少なくとも50重量%の高通気性ポリマーを含み、2つの面の少なくとも一方が少なくとも0.1μmの算術平均粗さRaを示すことを特徴とする、単層モノリシック防水通気性フィルムA。
【請求項2】
2つの面の少なくとも一方が、少なくとも40の単位長さ当たりのピーク数RPcを示すことを特徴とする、請求項1に記載の単層モノリシック防水通気性フィルム。
【請求項3】
両面が、少なくとも0.1μmの算術平均粗さRa、及び少なくとも40の単位長さ当たりのピーク数RPcを示すことを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の単層モノリシック防水通気性フィルム。
【請求項4】
高通気性ポリマーが熱可塑性エラストマーポリマーであり、水蒸気透過率(moisture vapor transmission rate、すなわちMVTR)が、厚さ15μmの前記ポリマーのフィルムで38℃及び相対湿度50%においてASTM E96B規格に従って測定した場合、1000g/m/日以上であることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の単層モノリシック防水通気性フィルム。
【請求項5】
高通気性ポリマーが、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有する共重合体、コポリ(エーテル-ウレタン)並びにコポリ(エステル-エーテル)から選択されることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の単層モノリシック防水通気性フィルム。
【請求項6】
高通気性ポリマーが、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有する共重合体であり、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックは、それぞれ、ポリアミド11(PolyAmide 11:PA11)ブロック及びポリエチレングリコール(PEG)ブロックであり、それらのモル質量が500~3000g/molの範囲内であることを特徴とする、請求項5に記載の単層モノリシック防水通気性フィルム。
【請求項7】
組成物(a)が、その総重量に基づいて、
-50重量%~100重量%の(1つ又は複数の)高通気性ポリマー、
-不透明化剤、顔料、染料、スリップ剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤から選択される0重量%~30重量%の添加剤、及び
-前記添加剤のための0重量%~20重量%の支持体熱可塑性樹脂
からなることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の単層モノリシック防水通気性フィルム。
【請求項8】
請求項1から7の一項に記載の単層フィルムAの製造方法であって、前記方法は、
-共押出によって、2層B/Aを含む多層フィルムMを形成する段階(i)であって、
-層Aは上記で定義したとおりであり、
-層Bは剥離性層であり、厚さが15~100μmの範囲であり、アタクチックポリプロピレン(PolyPropylene:PP)の連続相における高密度ポリエチレン(high density polyethylene:HDPE)の分散体の形態の組成物(b)からなり、分散されているHDPEの量が、層Bがその両面において少なくとも0.1μmの算術平均粗さRaを示す量である
多層フィルムMを形成する段階(i)、次いで
-多層フィルムMにおいて、層Bを剥離することによって単層フィルムAを分離する段階(ii)
を含む、製造方法。
【請求項9】
アタクチックPPに分散されているHDPEの量が、分散体(b)の総重量に基づいて表した場合、5重量%~50重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項8に記載の単層フィルムAの製造方法。
【請求項10】
多層フィルムMが2層B/Aからなることを特徴とする、請求項8又は9のいずれかに記載の単層フィルムAの製造方法。
【請求項11】
多層フィルムMが3層B/A/Cを含み、層Cは、剥離性層であり、厚さが15~100μmの範囲であり、低密度ポリエチレン(low density polyethylene:LDPE)の組成物(c)からなることを特徴とする、請求項8又は9のいずれかに記載の単層フィルムAの製造方法。
【請求項12】
多層フィルムMが3層B/A/Cを含み、層Cは、層Bと同じ定義に相当しBと同一である(又は異なる)剥離性層であることを特徴とする、請求項8又は9のいずれかに記載の単層フィルムAの製造方法。
【請求項13】
請求項8から12の一項に記載の方法における中間体として使用することができる2層B/Aを含む多層フィルムM。
【請求項14】
請求項1から7の一項に記載の単層モノリシック防水通気性フィルムと、繊維質材料からなる多孔性支持層とを含む積層製品。
【請求項15】
繊維品、建築及び健康の分野における物品の製造のための、請求項14に記載の積層製品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、単層モノリシック防水通気性フィルム、共押出による前記フィルムの製造に適した方法、及び前記フィルムを含む複合製品(又はラミネート)である。
【背景技術】
【0002】
防水通気性フィルム(「通気性フィルム」とも呼ばれる)は、特にスポーツウェア又は外科用保護服、及び個人用保護具の衣料分野、並びに、特に住居の屋根下断熱材の建築分野など、様々な分野における物品の製造に広く使用されている。
【0003】
これら様々な分野では、液体、特に水から保護するために、バリアフィルム、特に、防水通気性でありながら水蒸気は透過させるフィルムを利用できることが重要である。
【0004】
例えば、ハイキング用上着などのスポーツウェアの場合、汗の蒸発を可能にしてハイカーの快適性を確保するために、通気性を促進しながらハイカーを雨から保護することが重要である。また、外科手術中に体液、感染因子又は化学物質とのいかなる接触からも守られなければならない外科医、看護師、さらに患者にとっても、この同じ快適性を確保することが望ましい。相当する保護服の中でも、外科医及び看護師が着用するガウン、及び手術中に患者が着用する手術用ドレープを挙げることができる。
【0005】
防水通気性フィルムの中でも、細孔が実質的にない連続フィルムであるモノリシック防水通気性フィルムが知られている。このようなフィルムは、液体、特に水に対するバリア性が表面張力に依存しないという点で、微多孔性の防水通気性フィルムと比較して有利である。モノリシック防水通気性フィルムはまた、ウイルス又は臭気に対してより良好なバリア効果を示し、かつ時間が経っても通気性をより良好に維持する。
【0006】
防水通気性フィルムは、一般に、高通気性ポリマーを成形することによって得られる。高通気性ポリマーは、水蒸気に対しては透過性であり、液体の水に対しては実質的に不透過性であるため、防水通気性フィルムを得るのに適したポリマーである。より具体的には、「高通気性ポリマー」という用語は、厚さ15μmのフィルムの形態にした場合に、高い水蒸気透過率(すなわちMVTR(moisture vapor transmission rate))、より具体的には少なくとも1000g/m/日、好ましくは少なくとも1500g/m/日の水蒸気透過率を示す熱可塑性ポリマーを指すことを意図している。MVTRは、ASTM E96B規格に従って、38℃及び相対湿度50%で測定される。
【0007】
高通気性ポリマーは、例えば、
-ポリアミド及びポリエーテルのブロックを有する共重合体(以下、TPAと表記する)、例えばArkemaグループのPebax(登録商標)、
-コポリ(エーテル-ウレタン)又は熱可塑性ポリウレタン(以下、TPUと表記する)、例えば、LubrizolグループのEstane(登録商標)、及び
-コポリ(エステル-エーテル)又は熱可塑性エラストマーコポリエステル(以下、TPCと表記する)、例えばDSM社のArnitel(登録商標)又はDuPont社のHytrel(登録商標)
から選択される熱可塑性エラストマーポリマー(以下、TPEと表記する)である。
【0008】
これらの熱可塑性エラストマーポリマーは、専門の加工業者によってフィルムに加工される顆粒の形態で入手可能である。
【0009】
一般に、これらの防水通気性フィルムを用いて、織布又は不織布の繊維質材料からなり得る少なくとも1つの多孔性支持層に付着させることによって、積層(又は複合)製品を形成する。そのような積層品は、スポーツウェアなどの上述の物品の製造のために、又は前記物品の特定部分の製造のために使用される。これらの積層製品は、ホットメルト接着剤などの接着剤を不連続又は連続的に塗布して、単層通気性フィルムを繊維質支持層上に積層(又は複合化)することによって得られる。
【0010】
そのような接着剤接合作業は、積層の専門家(ラミネータと呼ばれることが多い)である業者によって、一般に高いライン速度で連続的に作動する機械で行われ、個々の層及び最終積層製品のいずれも、寸法が非常に大きいため、幅(又は機械幅)が最大約3m、直径が最大約1mに及ぶ幅広リールの形態で巻き取られて包装される。
【0011】
したがって、これらの積層作業を考慮して、そのようなリールの形態で巻き取られて包装された防水通気性フィルムを利用可能にすることが必要である。
【0012】
しかし、加工機で前記フィルムを製造する際にこのような巻取り製品を得、またその後の積層作業で使用するいずれの場合においても、「ブロッキング」という問題に直面することがある。
【0013】
この「ブロッキング」という用語は、工業生産に適したライン速度条件下で、リールへのフィルムの巻取り、又はこのようにして巻き取られたフィルムの巻戻しを行うことが困難であること、又は時には不可能であることを指す。この難点は、急な動き出しにさえなるおそれがある関与するリールの速度不均一性によるものであり、フィルムの破損にまで至る可能性がある著しい引張力がフィルム内に生じることによるものである。
【0014】
このような問題は、一般に、前記フィルムの表面が呈する残留タックに起因し、これは、リールの巻取り又は巻戻し中に接触している前記フィルムの2つの表面の間の相対的摺動運動に対する抵抗(又は摩擦)で表される。この摩擦は、摩擦係数によって定量化することができる。
【0015】
Polymer Group社の出願、国際公開第2016/100699号から、高通気性ポリマーを含むモノリシック中央層と、中央層の2つの面のそれぞれに隣接する2つの外層とを含む多層防水通気性フィルムが知られている。これらの外層は、高通気性ポリマー及び非通気性材料に加えて、粒子又は粒子の凝集体の形態の充填剤を必然的に含む。
【0016】
前記粒子は前記外層の厚さよりも大きいメジアン径を有するため、これらの外層のそれぞれの自由表面上に、剥離不可能な突起部(又は突出部)を形成する。
【0017】
この多層防水通気性フィルムは、有利には、リールに巻き取られた場合にブロッキングの傾向が低減することを示し、このことは、低い摩擦係数によって定量化されている。前記フィルムは平らに共押出する方法によって作製することができ、その共押出法には、艶消し外観を与えることができる特定のローラによる処理が含まれる。
【0018】
しかし、外層に充填剤を用いると、通気性が低下しやすい。
【0019】
先行技術では、モノリシックで単層の防水通気性フィルムA1も知られており、その厚さは8~60μmの範囲であり、少なくとも50重量%の1つ(又は複数)の高通気性ポリマーと、最大50重量%の様々な添加剤とからなる組成物(a1)自体からなる。
【0020】
前記フィルムは、
-2層B1/A1又は3層B1/A1/C1からなる多層フィルムF1であって、層B1及びC1は、それぞれ剥離性層で厚さが15~100μmの範囲であり、それぞれ低密度ポリエチレン(low density polyethylene:LDPE)の組成物(b1)及び(c1)からなる多層フィルムF1を、共押出によって形成する段階、次いで
-層B1と、存在する場合には層C1とを単純に剥離することによって層A1を分離する段階
を含む方法によって製造される。
【0021】
多層フィルムの記述において、上記で使用した記号「/」は、関与する層の面が直接接触していることを意味することが、構成層から明確に理解されよう。それに反する詳細な記述がない限り、本明細書に記載されているすべての多層構造についても同じである。
【0022】
上記のような方法は、インフレーション成形による共押出によって実施され、その方法は、
-サイズが1~10mmの間の顆粒の形態で、組成物(a1)、(b1)、及び任意選択で(c1)を、別々の押出機へ導入すること、次いで
-前記顆粒を加熱することによって溶融状態に変換すること、次いで
-相当する各流れを、一組の同一平面及び同心の環状ダイを備える押出ヘッドを通して通過させること(このヘッドは、加圧空気の注入によって、いくつかの層を有する円筒形状の管状のバブル(又はシース)を形成するように、150℃~260℃の範囲の温度にされており、層の順序は最終フィルムに所望されるものに相当し、層A1は、2層B1/A1の場合、管状シースの外側にある)、次いで
-(環状ダイの平面に対して)径方向にバブルを膨張、及び(前記平面に垂直な方向に)延伸すること、次いで
-前記バブルを冷却すること
を含む。
【0023】
このようにして形成された円筒状のバブルは、さらに、2つのニッパーロールの間を通過することによって一般に平らにされ、次いで、2つの縁部の近傍で切断されて2つの別々のフィルムになり、これらのフィルムはその後、リール周りの巻取り物の形態でそれぞれ包装される。
【0024】
先行技術のこの既知の実施形態では、多くの場合LDPEから本質的になる支持層B1及びC1は、上記の方法が実施されている間、管状バブルの安定性を維持し、その結果、高通気性ポリマーの成形を容易にしてモノリシックで単層の防水通気性フィルム(A1)を得られるようにするという機能を有する。先行技術のより具体的な実施形態によれば、支持層B1及びC1は同一であってS1と呼ばれ、その結果、フィルムF1は左右対称の3層S1/A/S1になる。
【0025】
層(A1)と化学的に非相溶性である前記層(B1)及び(C1)は、ラミネータが単一のモノリシックで単層の防水通気性フィルム(A1)を繊維質支持層に積層する作業を行うことができるように、後の剥離段階(ストリッピングとも呼ばれる)の間に除去されることが意図されている。
【0026】
しかし、先行技術のこの同じ実施形態によれば、外層B1及びC1の一方又は両方を除去した後に得られる前記単層フィルムA1の表面は、常温で、前記フィルムをそれ自体に貼りつかせてしまう作用がある粘着性(又はタック)を呈し、これは、望ましくないブロッキング現象をもたらす高い摩擦係数で表される。対照的に、2層フィルムB1/A1や3層フィルムB1/A1/C1の場合には、ブロッキングは見られない。
【0027】
このように、高通気性ポリマーを成形することによって単層フィルムA1を製造する加工機は、ラミネータへの送達のために、前記フィルムA1を2つの支持層B1及びC1のうちの少なくとも1つと共に包装しなければならない。したがって、ラミネータは必然的に、繊維質支持層上に前記フィルムA1を積層する前の作業として、加工機から受け取ったリールに存在する支持層を剥離しなければならない。そのため、ラミネータにおいて、前記支持層の存在によってラミネータが実施しているプロセスが複雑になり、かつ、一旦剥離された支持層からなる廃棄物の排出、及びそのリサイクル性を考慮したその再処理に起因するラミネータにおける問題も生じる。
【0028】
さらに、先行技術のこの同じ実施形態の単層モノリシック防水通気性フィルムA1の表面はまた、光沢のある外観を呈し、これは、特定の最終用途を考慮すると回避されなければならないことである。これは、例えば、外科手術中に外科医及び看護師が着用するガウンの製造を目的とした防水通気性フィルムの場合であり、手術室の強い照明からの不快な反射があることによる。そのような用途には、単層通気性フィルムの表面が艶消し外観であることが非常に望ましい。
【発明の概要】
【0029】
本発明の目的は、外層なしで包装し、次に用い、リールに巻き取ることができるモノリシック防水通気性フィルムを提供することである。
【0030】
本発明の別の目的は、リール上の巻取り物がブロッキングを示さないか、又はブロッキングの低減を示すモノリシック防水通気性フィルムを提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、低い摩擦係数を示すモノリシック防水通気性フィルムを提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、特に経時的に通気性が保持されるモノリシック防水通気性フィルムを提供することである。
【0033】
本発明の別の目的は、艶消し外観を呈するモノリシック防水通気性フィルムを提供することである。
【0034】
本発明の別の目的は、艶消しローラ上の通過を含まない共押出法によって製造することができるモノリシック防水通気性フィルムを提供することである。
【0035】
なお、これらの目的は、本発明の主題であるモノリシック防水通気性フィルムによって、すべて又は一部が達成され得ることが分かった。
【発明を実施するための形態】
【0036】
単層モノリシック防水通気性フィルムA
したがって、本発明は、第1に、厚さが5~150μmの間であり、組成物(a)からなる単層モノリシック防水通気性フィルムAに関し、組成物(a)は、その総重量に基づいて少なくとも50重量%の高通気性ポリマーを含み、単層モノリシック防水通気性フィルムAは、その2つの面の少なくとも一方が少なくとも0.1μmの算術平均粗さRaを示すことを特徴とする。
【0037】
前記フィルムは、有利には艶消し(換言すれば光沢のない)外観を呈し、ブロッキングを示すことなく、工業ライン速度条件下でリールへの巻取り物の形態で包装され、次いで、巻き戻され得ることが分かった。上記で定義した粗さが設けられた表面により、特に、他方の表面と接触している状態で、前記表面の相対的な摺動運動中の摩擦係数が低下する。最後に、本発明によるフィルムは通気性を示すが、この通気性は、ASTM E96B規格に従って38℃及び相対湿度50%でフィルム厚さ15μmについて測定されたMVTRによって定量化され、少なくとも1000g/m/日、好ましくは少なくとも1500g/m/日、より優先的には少なくとも2000g/m/日、さらに優先的には少なくとも2500g/m/日である。このようなモノリシック防水通気性フィルムは、さらに、高通気性ポリマーの加工機及び前記フィルムのラミネータのいずれについても、先行技術の多層系と比較して、単層の工業的な物流に関して優位性を示す。
【0038】
算術平均粗さRaは、触針式表面形状測定装置を用いて測定される。触針式表面形状測定装置は、触針に取り付けられた、多くの場合ダイヤモンド製である非常に微細な先端を有する器具であり、触針が表面に沿って移動したときの高さを、5オングストロームに達し得る垂直精度で読み取る。これは、特に表面の粗さ又は微細形状を評価する目的で、表面の起伏を測定するために使用される。したがって、数十ナノメートルの薄層の厚さ測定を、数百マイクロメートルのコーティングの厚さ測定と同程度に容易にすることが可能である。そのような表面形状測定装置は市販されており、例えばBruker社のDektak XT表面形状測定装置などがある。
【0039】
算術平均粗さRaは、測定された表面に存在するピークと谷との差の平均を表す。算術平均粗さRaはμmで表され、1997年4月のISO 4287規格に従って、測定されたプロファイルの突起(又はピーク)及び谷の縦座標(又は高さ)の絶対値の算術平均偏差として定義される。
【0040】
本発明による単層モノリシック防水通気性フィルムの好ましい代替形態によれば、その2つの面の少なくとも一方は、少なくとも0.3μm、さらに好ましくは少なくとも0.5μmの算術平均粗さRaを示す。
【0041】
同じく好ましい実施形態によれば、本発明によるフィルムの2つの面の少なくとも一方は、Raについて上記で定義された特性に加えて、単位長さ当たりのピーク数RPcが少なくとも40、好ましくは少なくとも50、さらに好ましくは少なくとも60を示す。単位長さ当たりのピーク数RPcは、2009年6月のISO 4287規格によって定義されており、これも触針式表面形状測定装置を使用した測定によって決定される。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、上記で定義した算術平均粗さRaの特性は、本発明によるフィルムの2つの面のそれぞれによって表される。
【0043】
より好ましい実施形態によれば、さらに、上記で定義したピーク数RPcの特性も、本発明によるフィルムの2つの面のそれぞれによって表される。
【0044】
これら最後の2つの実施形態の場合、ブロッキングのリスクなしに、工業ユニットにおいて極めて容易に当該フィルムをその両面で巻き取り、かつ巻き戻すことができる。
【0045】
本発明による単層モノリシック防水通気性フィルムAは、一般に、厚さが5~150μmの間である。
【0046】
一実施形態によれば、前記厚さは、6~100μm、好ましくは8~50μm、特に好ましくは8~30μmの範囲内である。
【0047】
層Aの組成物(a)
本発明による単層モノリシック防水通気性フィルムAを構成する組成物(a)は、前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも50重量%の少なくとも1つの高通気性ポリマーを含む。
【0048】
高通気性ポリマーは、好ましくは熱可塑性エラストマーポリマーであり、水蒸気透過率(すなわちMVTR)が、厚さ15μmの前記ポリマーのフィルムで38℃及び相対湿度50%においてASTM E96B規格に従って測定した場合、1000g/m/日以上、好ましくは1500g/m/日以上、より優先的には少なくとも2000g/m/日、さらに優先的には少なくとも2500g/m/日である。
【0049】
一実施形態によれば、高通気性ポリマーは、
-ポリアミド及びポリエーテルブロックを有する共重合体(すなわちTPA)、例えばArkemaグループのPebax(登録商標)製品、
-コポリ(エーテル-ウレタン)又は熱可塑性ポリウレタン(すなわちTPU)、例えば、LubrizolグループのEstane(登録商標)、Covestro社のDesmopan(登録商標)又はBASF社のELASTOLLAN(登録商標)、及び
-コポリ(エステル-エーテル)又は熱可塑性エラストマーコポリエステル(すなわちTPC)、例えばDSM社のArnitel(登録商標)又はDuPont社のHytrel(登録商標)
から選択される。
【0050】
好ましい代替形態によれば、高通気性ポリマーは、ポリアミドブロックを有し、かつポリエーテルブロックを有する共重合体である。
【0051】
ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有する共重合体のポリアミドブロックは、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド10.10、ポリアミド10.12、ポリアミド10.14、ポリアミド12、及びそれらの組合せのブロックから選択することができる。
【0052】
ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有する共重合体のポリエーテルブロックは、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol:PPG)、ポリトリメチレングリコール(polytrimethylene glycol:PO3G)、ポリテトラメチレングリコール又はポリテトラヒドロフラン(polytetramethylene glycol又はpolytetrahydrofuran:PTMG)の各ブロック、及びそれらの組合せから選択することができる。
【0053】
より好ましい代替形態によれば、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックは、それぞれ、ポリアミド11(PA11)ブロック及びポリエチレングリコール(PEG)ブロックであり、それらのモル質量は、500~3000g/molの範囲内である。ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するこのような共重合体は、Atofina名義の仏国特許出願公開第2846332号明細書又は宇部興産名義の欧州特許出願公開第1482011号明細書のいずれかに従って作製することができる。
【0054】
組成物(a)は、1つ又は複数の高通気性ポリマーを含むことができる。
【0055】
一実施形態によれば、組成物(a)は、その総重量に基づいて、
-50重量%~100重量%の(1つ又は複数の)高通気性ポリマー、
-不透明化剤、顔料、染料、スリップ剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤から選択される0重量%~30重量%の添加剤、及び
-前記添加剤のための0重量%~20重量%の支持体熱可塑性樹脂
からなる。
【0056】
添加剤は、必要とされる特性に応じて異なる量で使用することができる。
【0057】
適切な不透明化剤、顔料又は染料の例としては、酸化鉄、カーボンブラック、アルミニウム、二酸化チタン、タルク及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。1重量%~5重量%に相当する量が、一般に適している。
【0058】
使用することができるスリップ剤としては、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、ワックス、シリコーン油及び金属石鹸が挙げられるが、これらに限定されない。使用することができる脂肪酸スリップ添加剤の例としては、エルカミドがある。一実施形態では、シリコーン油又はシリコーンガムなど、粘度が10000~2000000cStの従来のポリジアルキルシロキサン添加剤が使用される。これらのスリップ剤の量は、通常、0.5重量%~6重量%の範囲である。
【0059】
酸化防止剤(又は安定剤)は、酸素との反応で生じる分解から組成物(a)を保護するために導入されるものであり、酸素は、高通気性ポリマーをはじめとする組成物(a)の特定の成分に対する熱、光又は残留触媒の作用によって形成されやすい。上記の化合物としては、フリーラジカルを捕捉し、一般に置換フェノールである一次酸化防止剤、例えばCiba社のIrganox(登録商標)1010を挙げることができる。一次酸化防止剤は、単独で、又はホスファイト、例えば同じくCiba社のIrgafos(登録商標)168などの他の酸化防止剤と、又はアミンなどのUV安定剤とも組み合わせて使用することができる。酸化防止剤は、一般に、5重量%までの範囲とすることができる量で導入される。
【0060】
組成物(a)中に20重量%までの範囲の量で含まれ得る帯電防止剤としては、アルカリ金属スルホネート、ポリエーテルによって修飾されたポリジオルガノシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサン、第三級アミン、グリセロールモノステアレート、第三級アミンとグリセロールモノステアレートとの混合物、及びそれらの組合せが挙げられる。適切な帯電防止剤の例としては、Akzo Nobel社から市販されているArmostat(商標)475がある。
【0061】
一般的なブロッキング防止添加剤としては、珪藻土、天然又は合成のシリカ、タルク、アルミニウム、カリウム、カルシウム及び/又はケイ酸マグネシウムなどの無機化合物、又は脂肪酸アミドなどの有機化合物、例えばステアレートが挙げられるが、これらに限定されない。これらのブロッキング防止添加剤は、1重量%~7重量%の範囲の量で導入することができる。
【0062】
上記の添加剤のための支持体熱可塑性樹脂は、一般に、
-熱可塑性ポリウレタン(すなわちTPU)、例えばTPU-エステル又はTPU-エーテル
-EVA(エチレンと酢酸ビニルとの共重合体)
-EBA(エチレンとブチルアクリレートとの共重合体)
-TPC
から選択される。
【0063】
後述する本発明による単層フィルムの製造を考慮すると、これらの支持体樹脂を使用することが有利である。
【0064】
本発明の好ましい代替形態によれば、組成物(a)は、80重量%~100重量%の(1つ又は複数の)高通気性ポリマー、及び0重量%~20重量%の前記添加剤、並びにそれらの支持体樹脂からなる。
【0065】
本発明の別の好ましい代替形態によれば、組成物(a)は、(1つ又は複数の)高通気性ポリマーから本質的になり、さらに好ましくは(1つ又は複数の)高通気性ポリマーからなる。
【0066】
上記の実施形態において、層Aの組成物(a)が高通気性ポリマーとしてTPAを含む場合、温度190℃及び総重量2.16kgで測定したメルトフローインデックス(すなわちMFI(melt flow index))が、好ましくは、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~50g/10分の範囲を示す。
【0067】
上記の実施形態において、層Aの組成物(a)が高通気性ポリマーとしてTPUを含む場合、温度190℃及び総重量8.7kgで測定したメルトフローインデックス(すなわちMFI)が、好ましくは、0.01~100g/10分、好ましくは1~80g/10分の範囲を示す。
【0068】
最後に、上記の実施形態において、層Aの組成物(a)が高通気性ポリマーとしてTPCを含む場合、組成物(a)は、温度230℃及び総重量2.16kgで測定したメルトフローインデックス(すなわちMFI)が、好ましくは、0.01~200g/10分、好ましは1~100g/10分の範囲を示す。
【0069】
後述する本発明による単層フィルムの製造を考慮すると、これら最後の3つの実施形態を使用することが有利である。
【0070】
メルトフローインデックス(すなわちMFI)は、ISO 1133規格に従って、指定の温度及び指定の総重量について測定される。MFIは、指定の総重量を有する負荷ピストンによって加えられる圧力の影響下において、直径が2.095mmのダイを通って特定の時間間隔に流れる(予め垂直シリンダ内に配置された)組成物の重量である。計算により、特定の時間間隔は10分まで低減される。
【0071】
単層フィルムAの製造方法
本発明の別の主題は、本発明による単層フィルムAの製造方法であって、前記方法は、
-共押出によって、2層B/Aを含む多層フィルムMを形成する段階(i)であって、
-層Aは上記で定義したとおりであり、
-層Bは剥離性層であり、厚さが15~100μm、好ましくは20~55μmの範囲であり、アタクチックポリプロピレン(PolyPropylene:PP)の連続相における高密度ポリエチレン(high density polyethylene:HDPE)の分散体の形態の組成物(b)からなり、分散されているHDPEの量が、層Bがその両面において少なくとも0.1μmの算術平均粗さRaを示す量である
多層フィルムMを形成する段階(i)、次いで
-多層フィルムMの層Bを剥離して単層フィルムAを分離する段階(ii)
を含む。
【0072】
驚くべきことに、層Bの特定の組成物(b)は、その両面に特有の表面粗さを生じさせる効果を有し、その特有の表面粗さにより、層Bと接触している層Aの面についても、実質的に同一の粗さが確保できることが見出された。
【0073】
剥離性層Bの組成物(b)
剥離性層Bの組成物(b)は、アタクチックポリプロピレン(PP)の連続相における高密度ポリエチレン(HDPE)の分散体からなる。
【0074】
ポリプロピレンは、本発明の意味の範囲内で、プロピレンホモポリマー、又は、コモノマーとして、特にエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン及び1-デセンから選択することができるα-オレフィンとプロピレンとのランダム共重合体を意味すると理解される。
【0075】
ポリマーの科学的命名法では、「立体規則性」という用語は、鎖の配置、すなわちポリマー鎖の立体化学構造を説明するために使用される。
【0076】
ポリマーは、主ポリマー鎖を通して描かれた仮想平面の同じ側に、連続するモノマー単位の三級炭素原子に結合したラジカル基を有すると説明される鎖配置を有している場合、アイソタクチックであると言われる。この種の立体化学構造は、以下のように図式的に示すことができる。
【0077】
この種の鎖配置を有するポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン(isotactic polypropylene)、すなわちiPPの名称で知られている。
【0078】
ポリプロピレン鎖はまた、鎖に沿った連続するモノマー単位の三級メチル基が、仮想平面の両側に交互に配置されるシンジオタクチック配置をとることができる。シンジオタクチック鎖の立体配置は、以下のように記載することができる。
【0079】
この種の鎖配置を有するポリプロピレンは、シンジオタクチックポリプロピレン(syndiotactic polypropylene)、すなわちsPPと呼ばれる。
【0080】
規則的な空間配置とは対照的に、プロピレンポリマー鎖はまた、連続するモノマー単位のメチル基が、ポリマー鎖を通る仮想平面の両側に立体的にランダムに分布していることを特徴とする鎖立体化学構造を有することができる。この鎖の配置は、アタクチックとして定義される。アタクチックポリプロピレン(atactic polypropylene:aPP)の分子鎖の立体配置は、以下のように図式的に示すことができる。
【0081】
アタクチックポリプロピレンは、本質的に非晶質のポリマーであり、例えば欧州特許第0 394 237号明細書に記載されているような、当業者に既知の特定の触媒を使用する従来の方法によって作製することができる。アタクチックポリプロピレンは、例えば、BassTech International社又はPolymerTeam社からAPP Homopolymer(APPH)又はAPP Copolymer(APPC)の名称で市販されている。
【0082】
高密度ポリエチレン(すなわちHDPE)は、チーグラー・ナッタ触媒作用又はメタロセン型触媒作用による重合によって生成することができ、その密度が0.940~0.970g/cmの範囲内であるポリエチレンである。これは、例えばTotal社から広く市販されている。
【0083】
高密度ポリエチレン(すなわちHDPE)は、一般に、分散体(b)のアタクチックPPの連続相に小塊の形態で存在し、そのサイズは0.5~10μmの間、好ましくは0.7~7μmの間である。
【0084】
分散体(b)は、サイズが1~10mmの間のPP顆粒と、構成粒子のサイズが約数百μmである粉末の形態のHDPEとの単純な加熱混合によって、サイズが1~10mmの間、好ましくは2~6mmの間の顆粒の形態で作製することができる。
【0085】
アタクチックポリプロピレンの連続相に分散されているHDPEの量は、層Bが、その両面で少なくとも0.1μmの算術平均粗さRaを示す量である。算術平均粗さRaは、上記で示したように定義され、測定される。
【0086】
本発明による方法の好ましい代替形態によれば、アタクチックポリプロピレンの連続相に分散されているHDPEの量は、算術平均粗さRaが少なくとも0.3μm、さらに好ましくは少なくとも0.5μmとなる量である。
【0087】
重ねて、好ましい実施形態によれば、アタクチックポリプロピレンの連続相に分散されているHDPEの量は、層Bが、その両面において、Raについて上記で定義された特性に加えて、単位長さ当たりのピーク数RPcが少なくとも40、好ましくは少なくとも50、さらに好ましくは少なくとも60を示す量である。単位長さ当たりのピーク数RPcもまた、上記で示したように定義され、測定される。
【0088】
同じく好ましい実施形態によれば、アタクチックPPに分散されているHDPEの量は、分散体(b)の総重量に基づいて表すと、5重量%~50重量%、好ましくは35重量%~48重量%の範囲内である。
【0089】
本発明の代替形態によれば、アタクチックPPをベースとした分散体(b)は、有利には、HDPEに加えて、組成物(a)について上記で定義した酸化防止剤を、分散体(b)の総重量に基づいて0.5重量%~5重量%で変えることができる量で含む。
【0090】
本発明の別の好ましい代替形態によれば、組成物(b)は、以下のメルトフローインデックス(すなわちMFI)、つまり
-温度190℃、総重量2.16kgで測定した場合、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~50g/10分の範囲内、
-温度190℃、総重量8.7kgで測定した場合、0.01~100g/10分、好ましくは1~80g/10分の範囲内、
-温度230℃、総重量2.16kgで測定した場合、0.01~200g/10分、好ましくは1~100g/10分の範囲内
のメルトフローインデックスを示す。
【0091】
段階(i)及び多層フィルムM
本発明による単層フィルムAの製造方法において、段階(i)の終了時に形成された多層フィルムMは、上記で定義した2層B/Aを含む。
【0092】
本発明の好ましい実施形態によれば、多層フィルムMは、前記2層B/Aからなる。
【0093】
本発明の別の等しく好ましい実施形態によれば、多層フィルムMは、3層B/A/Cを含み、好ましくは3層B/A/Cからなる。層Cは剥離性層であり、層Cの厚さは15~100μm、好ましくは20~55μmの範囲であり、低密度ポリエチレン(すなわちLDPE)の組成物(c)からなり、その低密度ポリエチレンは、線状低密度ポリエチレン(すなわちLLDPE(linear low density polyethylene))、及びLDPEとLLDPEとの混合物も含む。LDPEすなわち低密度ポリエチレンは、ラジカル重合によって製造されたポリエチレンを意味すると理解され、その密度は0.910~0.935g/cmの範囲内である。
【0094】
本発明の別のより好ましい実施形態によれば、多層フィルムMは、3層B/A/Cを含み、好ましくは3層B/A/Cからなり、層Cは、層Bと同じ定義に相当しBと同一である(又は異なる)剥離性層である。さらに特に好ましくは、層B及び層Cは同一でSと呼ばれ、そして多層フィルムMは左右対称の3層S/A/Sである。
【0095】
したがって、前記多層フィルムMは、本発明による方法の段階(i)で用いられる中間体であり、これもまた本発明の主題であり、上記の実施形態でもある。
【0096】
本発明の第1の代替形態によれば、段階(i)は平らに共押出することによって行われる。
【0097】
好ましい本発明の第2の代替形態によれば、段階(i)は、インフレーション成形による共押出によって行われる。
【0098】
この第2の代替形態の特に好ましい実施形態によれば、段階(i)は、
-サイズが1~10mmの間、好ましくは2~5mmの間の顆粒の形態で、組成物(a)、(b)、及び適切な場合は(c)を、別々の押出機へ導入する段階(i1)、次いで
-前記顆粒を加熱することによって溶融状態に変換する段階(i2)、次いで
-相当する流れを、一組の同一平面及び同心の環状ダイを備える押出ヘッドを通して通過させる段階(i3)であって、前記ヘッドは、いくつかの層を有する円筒形状の管状のバブル(又はシース)を加圧空気の注入によって形成するように、150℃~260℃の範囲の温度にされており、層の順序は最終フィルムに所望されるものに相当し、2層B/Aの場合、層Aは管状シースの外側にある、段階(i3)、次いで
-(環状ダイの平面に対して)径方向にバブルを膨張させ、(前記平面に垂直な方向に)延伸する段階(i4)、次いで
-(i5)前記バブルを冷却する段階(i5)
を含む。
【0099】
好ましい代替形態によれば、段階(i1)の前に、押出機に導入されることになる顆粒は、適切な時間及び適切な温度で乾燥される。
【0100】
押出機に導入される組成物(a)は、上記の添加剤を含む場合、高通気性ポリマーの顆粒と、1つ又は複数の添加剤を支持体熱可塑性樹脂に組み合わせた1つ(又は複数)のマスターバッチの顆粒とを含む混合物の形態で、有利に提供される。
【0101】
段階(ii)
多層フィルムMを共押出によって形成する段階(i)の後に、層B及び適切な場合は層Cを単純な機械的分離で剥離することによって単層フィルムAを分離する段階(ii)を行い、次いで、層B及び必要に応じて層Cを、単層フィルムAを巻き取るシリンダとは異なる相当数のシリンダ上に巻き取る。前記機械的分離は、例えば、2つのロールの接着テープを使用して開始することによって工業レベルで行うことができ、2層B/Aの外面に対する接着テープの接着力は、層Bと層Aとを接合する接着力よりもはるかに大きい。剥離による単層フィルムAの分離は、組成物(a)に対して組成物(b)及び組成物(c)が非相溶性であるために容易に行え、当業者に既知の手法で工業的に行われる。
【0102】
本発明はまた、本発明による単層モノリシック防水通気性フィルムと、繊維質材料からなる多孔性支持層とを含む積層製品に関する。
【0103】
前記繊維質材料は、織布又は不織布の材料を含むことができ、支持層の坪量は、5~500g/m、好ましくは10~300g/mまで変えることができる。
【0104】
前記積層製品は、多くの場合、ラミネート接着剤、例えばポリウレタン接着剤又はホットメルト接着剤による積層によって、前記フィルムを支持層に固定することにより得られる。この接着剤は、当業者に既知の方法により、連続的又は非連続的なコーティングによって付与される。
【0105】
最後に、本発明は、特に繊維品、とりわけ衣料品、特にスポーツウェア又は外科用保護服、及び個人用保護具の分野、並びに建築分野及び健康分野における物品製造のための前記積層製品の使用に関する。
【0106】
以下の実施例は、純粋に本発明の例示として提供するものであり、いかなる状況下でも本発明の範囲を限定するために解釈されるべきではない。
【実施例
【0107】
実施例1(比較例):ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するPebax(登録商標)共重合体のモノリシックで単層の防水通気性フィルムA1の作製であって、層S1がLDPEからなる3層S1/A1/S1の共押出による形成を含む作製
【0108】
層A1の構成組成物(a1)として、モル質量1000g/molのポリアミド11ブロックとモル質量1500g/molのポリエチレングリコール(PEG)ブロックとを含むポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有する共重合体からなる組成物を使用する。前記共重合体は、Pebax(登録商標)という名称でArkema社から入手することができ、ISO 1133規格に従って重量2.16kgについて190℃で測定したそのMFIが、20g/10分である。前記共重合体は、サイズが2~6mmの間の顆粒の形態で入手可能である。
【0109】
層S1の構成組成物として、Exxon Mobil社のLDPE Escorene(登録商標)185JDを使用する。このLDPEは、密度が0.923g/cmに等しく、重量2.16kgについて190℃で測定したMFIが2g/10分に等しく、サイズが2~5mmの間の顆粒の形態で提供される。
【0110】
(i)3層フィルムS1/A1/S1の形成
この3層フィルムは、インフレーション成形による共押出用のパイロット装置によって製造され、その総流量は15~35kg/時間まで変えることができ、そのダイは直径が7cmである。
【0111】
この連続的に作動する装置は、3つのスクリュー押出機を備え、
-温度を180℃にした1つのスクリュー押出機に層A1の組成物(a1)を、
-温度を180℃にした他の2つのスクリュー押出機のそれぞれに層S1の組成物を
供給する。これらの組成物は、サイズが約4mmの顆粒の形態である。
【0112】
このパイロット装置は押出ヘッドを備えており、押出ヘッドの環状ダイは、温度を190℃にする。
【0113】
当該プロセスのパラメータは3層フィルムを製造するように調整されるが、その3層フィルムは、
-組成物(a1)からなる厚さ15μmの層A1と、
-LDPEからなる厚さ30μmの2つの同一の支持層S1と
からなる。
【0114】
通常設定されるパラメータのうち、バブルの膨張比は2.6に等しく、延伸速度(ライン速度に相当)は10.7m/分、総スループットは25kg/時であることを挙げておく。
【0115】
このようにして得られた3層フィルムは、総厚さが75μm、長さが50mであり、機械幅が280mmのリールの形態で包装される。
【0116】
(ii)2つの層S1の剥離による層A1の分離
層A1は、フィルムの長さ2mにわたって剥離することにより、2つの層S1から手動で分離される。
【0117】
このようにして得られた層A1及び層S1の試料について、以下の測定及び試験を行う。
【0118】
Bruker社のDektak XT表面形状測定装置を使用して、算術平均粗さRa及びピーク数RPcを、層A1及び層S1の1つの面で決定する。
【0119】
結果を表1に示す。
【0120】
Zehntner ZGM 1120光沢度計を使用し、ASTM D 2457規格に従って、機械方向に引き出した試料表面の垂直方向に対して60°の角度で、層A1の面の1つで光沢度を測定した。
【0121】
光沢度単位(Gloss Unit:GU)で表した光沢度を表1に示す。
【0122】
厚さ15μmのフィルムについて、ASTM E96 B規格に従い、38℃、相対湿度50%でのMVTRの測定によって、層A1の通気性を定量化した。その結果も表1に示す。
【0123】
以下に要約するように、2004年12月のISO 8295規格に従って、層A1の摩擦係数を測定した。
【0124】
摩擦係数の測定
実験装置として、層A1の試料が固定された適切な寸法の非可動の水平試験板を使用する。
【0125】
重量200g、高さ63mmの平行六面体のパッドに、4000mmのその正方形の底面を覆うように、同じ層A1の別の試料もまた接着テープで固定する。
【0126】
層A1の2つの試料が接触するように、そのパッドを水平板上に置く。次いで、層A1の2つの表面が互いに接触して摺動するように、非可動の水平板に対して150mm/分の均一な速度での変位運動で、適切な駆動機構によってそのパッドを駆動させる。
【0127】
パッドの変位に対する抵抗力を動力計によって測定し、記録する。
【0128】
静摩擦係数Ks及び動摩擦係数Kdを、上述の規格で示されるように計算する。
【0129】
測定を3回繰り返した後に得られたKs及びKdの平均値は、
Ks=12.2、及びKd=12.1
である。
【0130】
実施例2(本発明による):ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有する共重合体(TPA)のモノリシックで単層の防水通気性フィルムAの作製であって、層SがHDPE+アタクチックPPからなる3層S/A/Sの共押出による形成を含む作製
【0131】
実施例1を、
-層Aには、層A1と同じ厚さ及び同じ組成の層、及び
-層Sの構成組成物には、HDPEのアタクチックPP分散体
を使用して繰り返す。これは、分散体の総重量に基づいて、HDPE44.9重量%、酸化防止剤1.6%及びアタクチックPP53.5重量%を200℃で単純混合することによって作製される。この混合は、ダイの出口で押出製品を切断するための工具を備えた二軸押出機によって行われる。約2~6mmの間のサイズの顆粒が得られ、これを、温度を210℃にした2つのスクリュー押出機に送り込む。分散体について測定したMFIは、重量2.16kg、温度190℃で1g/10分である。
【0132】
2つの層A及び層Sに関する粗さ、並びに層Aに関する光沢度及び通気性について得られた結果を表1に示す。
【0133】
層Aの静摩擦係数Ks及び動摩擦係数Kdについて得られた平均値は、
Ks=0.7、及びKd=0.7
である。
【0134】
モノリシック防水通気性フィルムの層Aでは、支持層Sに関して、先行技術による実施例1の層A1及び支持層S1で観察されたRa値及びRPc値よりもはるかに高いRa値及びRPc値に相当する表面粗さが観察される。さらに、前記層Aは、前記実施例1の層A1に対して、静・動摩擦係数が10分の1未満に低下、かつ光沢度もほぼ10分の1に低下しており、この光沢度は、艶消しで光沢のない外観に相当する。最後に、層Aについて得られたMVTR値は、先行技術の層A1の通気性に匹敵する、モノリシック防水通気性フィルムに特徴的な優れた通気性を表している。
【0135】
実施例3(比較):Arnitel(登録商標)コポリ(エーテル-ウレタン)共重合体(TPC)のモノリシックで単層の防水通気性フィルムA1の作製であって、層B1がLDPEからなる2層B1/A1の共押出による形成を含む作製
【0136】
以下を除いて、実施例1を繰り返す。
-層A1の構成組成物(a1)として、DSM社から入手したTPC Arnitel(登録商標)PM381からなる組成物を使用し、ISO 1133規格に従って重量2.16kgについて230℃で測定したその組成物のMFIは、4.7g/10分である。
-当該プロセスのパラメータは、
-組成物(a1)からなる厚さ15μmの層A1と、
-LDPEからなる厚さ30μmの単一の支持層B1と
からなる総厚さ45μmの2層フィルムを製造するように調整され、
層A1は、管状シースの外側にある。
【0137】
層A1に関する光沢度及び通気性について得られた結果を表1に示す。
【0138】
実施例4(本発明による):TPC Arnitel(登録商標)のモノリシックで単層の防水通気性フィルムAの作製であって、層BがHDPE+アタクチックPPからなる2層B/Aの共押出による形成を含む作製
【0139】
以下を使用して実施例3を繰り返す。
-層Aには、層A1と同じ厚さ及び同じ組成の層、並びに
-層Bの構成組成物には、実施例2で用いたものと同じHDPEのアタクチックPP分散体。
【0140】
層Aに関する光沢度及び通気性について得られた結果を表1に示す。
【0141】
実施例5(本発明による):Desmopan(登録商標)コポリ(エーテル-ウレタン)(TPU)のモノリシックで単層の防水通気性フィルムAの作製であって、3層B1/A/Cの共押出による形成を含み、層B1はLDPEからなり、層CはHDPE+アタクチックPPからなる作製
【0142】
以下を使用することを除いて、実施例2を繰り返す。
-層Aには、重量8.7kg、温度190℃でのMFIが6g/10分であるDesmopan(登録商標)6590A MVT、
-層B1には、実施例1のLDPE、及び
-層Cには、層SのHDPEのアタクチックPP構成分散体。
【0143】
層Aに関する光沢度及び通気性について得られた結果を表1に示すが、光沢度について得られた結果は、層B1と接触している層Aの面(「面B1」という)で測定したか、又は層Cと接触している層Aの面(「面C」という)で測定したかによって特定している。
【0144】
実施例6(本発明による):Elastollan(登録商標)コポリ(エーテル-ウレタン)(TPU)のモノリシックで単層の防水通気性フィルムAの作製であって、層B1がLDPEからなり、層CがHDPE+アタクチックPPからなる3層B1/A/Cの共押出による形成を含む作製
【0145】
重量8.7kg、温度190℃でのMFIが25g/10分であるElastollan(登録商標)1385A 12を層Aに使用することを除いて、実施例5を繰り返す。
【0146】
層Aに関する光沢度及び通気性について得られた結果を表1に同様に示す。
[表1]
*:第2の層と接している層Aの面で測定された光沢度
NC(Not Concerned)=関係なし
NA(Not Available)=取得不可
【国際調査報告】