(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-20
(54)【発明の名称】動物細胞株および/または組織外植片からのコラーゲンおよび/またはゼラチンの産生、単離および/または抽出
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20231113BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20231113BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20231113BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20231113BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231113BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20231113BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20231113BHJP
C12P 21/06 20060101ALI20231113BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20231113BHJP
A61K 8/65 20060101ALN20231113BHJP
A61K 38/39 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N5/07
C12N5/071
C12N15/09 110
C12N5/10
C12P21/02 Z
A23L33/18
C12P21/06
C12Q1/06
A61K8/65
A61K38/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521689
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 US2021054208
(87)【国際公開番号】W WO2022076843
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523126261
【氏名又は名称】ジェラテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミヘルゼン、ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ダインセン ー ヘスプ、カイリー
(72)【発明者】
【氏名】ベテンコート、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】イヴ、アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4B018
4B063
4B064
4B065
4C083
4C084
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B063QA01
4B063QQ08
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4C083AD431
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4C084AA06
4C084BA44
4C084CA51
4C084CA53
4C084ZC80
(57)【要約】
動物の(連続継代性)細胞株を確立および/または培養する方法、動物の(連続継代性)細胞株を操作および/または遺伝子改変する方法、動物の(連続継代性)細胞株からコラーゲンを単離する方法、用途のためにコラーゲンのDNA配列を改変および/または遺伝子操作する、および/または動物の細胞におけるコラーゲンの産生を増加させる方法、ならびに材料および/またはプロセスの使用によって培養動物外植片からコラーゲンを抽出する方法が本明細書に記載される。好ましい例では、動物は、クラゲであり、動物外植片は、クラゲ外植片、クラゲポリプ外植片、クラゲメドゥーサ外植片、または海洋性海綿動物外植片である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の(連続継代性)細胞株を確立すること、
前記動物の前記(連続継代性)細胞株を操作および/または遺伝子改変すること、
前記動物の前記(連続継代性)細胞株から第1のコラーゲンおよび/または第1のゼラチンを単離すること、および
生成物中の第2のコラーゲンおよび/または第2のゼラチンを前記第1のコラーゲンおよび/または前記第1のゼラチンで置き換えること
を含む方法。
【請求項2】
前記動物が、無脊椎動物および脊椎動物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物が、海洋動物、ブタ動物、ウシ動物、および鳥類動物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記動物が海洋動物であり、
前記海洋動物が、クラゲ、イソギンチャク、棘皮動物、カサガイ、イガイ、海洋性海綿動物、およびナマコからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記クラゲが、リゾストーマス・プルモ(Rhizostomas pulmo)、ロピレマ・エスクレンツム(Rhopilema esculentum)、ロピレマ・ノマディカ(Rhopilema nomadica)、ストモロフス・メイーグリス(Stomolophus meleagris)、オーレリア種(Aurelia sp.)、ネモピレマ・ノムライ(Nemopilema nomurai)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のコラーゲンが内因性コラーゲンまたは外因性コラーゲンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のコラーゲンがヒトコラーゲンである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記外因性コラーゲンが動物細胞内で産生される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記動物細胞が、鳥類細胞、ブタ細胞、ウシ細胞および海洋細胞からなる群から選択され、
前記海洋細胞が、海洋無脊椎動物細胞および海洋脊椎動物細胞からなる群から選択され、
前記海洋無脊椎動物細胞がクラゲ細胞であり、
前記海洋脊椎動物細胞が魚細胞である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
用途のために前記第1のコラーゲンのDNA配列を改変および/または遺伝子操作することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記用途が、食品用途、飲料用途、化粧品用途、薬用用途、ヘルスケア用途、および医薬品用途からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のコラーゲンのDNA配列を改変および/または遺伝子操作して前記動物の細胞における前記第1のコラーゲンの産生を増加させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記動物の前記細胞における前記第1のコラーゲンの産生を増加させるための前記第1のコラーゲンの前記DNA配列の改変および/または遺伝子操作が、クラスター化された規則的な間隔の短い回文配列反復(CRISPR)技術を用いて行われる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
培地を利用して動物の(連続継代性)細胞株を培養すること、および
材料および/またはプロセスの使用によって前記動物の前記(連続継代性)細胞株からコラーゲンを抽出することを含む、方法。
【請求項15】
前記動物が、無脊椎動物および脊椎動物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記動物が、海洋動物、ブタ動物、ウシ動物、および鳥類動物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記材料が、緩衝液、酵素、酸、および塩基からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記酵素がコラゲナーゼおよびペプシンからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記プロセスが凍結乾燥を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
材料および/またはプロセスの使用によって培養動物外植片からコラーゲンを抽出する方法。
【請求項21】
前記動物外植片が、脊椎動物外植片および無脊椎動物外植片からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記動物外植片が、鳥類動物外植片、ウシ動物外植片、ブタ動物外植片、および海洋動物外植片からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記海洋動物外植片が、クラゲ外植片、クラゲポリプ外植片、クラゲメドゥーサ外植片、および海洋性海綿動物外植片からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
コラーゲン検出方法であって、
細胞培養フラスコから培地を取り出すこと、
第1の量の第1の色素を含有する蒸留水中のピクリン酸の飽和溶液を、添加すること、
前記培地を暗所において室温で第1の時間インキュベートすること、
前記培地を蒸留水で洗浄すること、
第2の量の第1の色素および第1の量の第2の色素を含有する蒸留水中のピクリン酸の飽和溶液を、前記培地に添加すること、
前記培地を暗所において室温で第2の時間インキュベートすること、
前記培地を前記蒸留水で洗浄すること、
無水メタノール中の水酸化ナトリウムを前記培地に添加すること、
前記培地を新しい細胞培養プレートに移すこと、および
分光光度計を利用して様々な波長で前記コラーゲンの吸光度を測定すること
を含む、上記方法。
【請求項25】
前記培地が、最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)-高グルコース、DMEM-F12、FM、DMEMアドバンスト、およびRPMI 1640アドバンストからなる群から選択される、請求項24に記載のコラーゲン検出方法。
【請求項26】
前記第1の色素がファストグリーン色素であり、前記第2の色素がシリウスレッド色素である、請求項24に記載のコラーゲン検出方法。
【請求項27】
細胞株におけるコラーゲン産生に対する因子の効果を試験する方法であって、
細胞株の細胞をウェルプレートに播種すること、
第1の期間の後、使用済み培地を因子が補充された成長培地と交換すること、および
アッセイを使用してコラーゲン含有量を定量して前記細胞株におけるコラーゲン産生に対する前記因子の効果を決定することを含む、上記方法。
【請求項28】
前記因子が、ビタミンC、オメガ-7脂肪酸、グリシン、高麗人参抽出物、硫酸亜鉛、組換えヒトインスリン、ヒドロコルチゾンヘミスクシナート、リノール酸、アシアチコシド、ヒト血清アルブミン(HSA)、レシチンおよびスピルリナからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞株が、ウシ細胞株、ブタ細胞株およびヒト細胞株からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月8日に出願された米国仮特許出願S/N第63/089,285号の優先権を主張する米国通常特許出願であり、その全内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の分野およびその実施形態は、動物細胞株および/または組織外植片においてコラーゲンおよび/またはゼラチンを産生し、前記動物細胞株および/または組織外植片からコラーゲンおよび/またはゼラチンを単離および/または抽出する方法に関する。特に、本発明は、海洋動物細胞株および/または組織外植片においてコラーゲンおよび/またはゼラチンを産生し、前記海洋動物細胞株および/または組織外植片からコラーゲンおよび/またはゼラチンを単離および/または抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
コラーゲンは、動物組織の最も豊富な成分の1つである。コラーゲン製品には、多くの医薬用途および生物工学用途がある。例えば、コラーゲンは、創傷包帯、組織成長用マトリックス、美容手術、再建手術、ドラッグデリバリーシステム、科学研究用生体材料として用いられている。これらの分野で使用されるコラーゲン産物の大部分は、ウシまたはブタ組織に由来する。さらに、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、家禽、クジラ、サメ、魚などの脊椎動物からのコラーゲンの抽出を記載する多くの手順が知られている。しかしながら、そのような方法は動物に害を及ぼす。したがって、動物細胞株および/または組織外植片においてコラーゲンおよび/またはゼラチンを産生し、前記動物細胞株および/または組織外植片からコラーゲンおよび/またはゼラチンを単離および/または抽出する改善された人道的方法が必要である。
【0004】
関連技術の例としては、以下のものが挙げられる:
【0005】
特開2010-018575(A)号明細書には、細胞接着阻害活性を有するクラゲ抽出画分によるクラゲの使用が記載されている。
【0006】
特開2004-099513(A)号明細書は、より効率的にクラゲを処理することにより、より付加価値の高いコラーゲンを抽出し回収する方法およびシステムが記載されている。
【0007】
特許第3696018(B2)号明細書には、クラゲを破砕し、破片に刻み、分解し、可溶化し、精製することを含む、クラゲからの有用物質(コラーゲンなど)の粗抽出プロセスが記載されている。
【0008】
特開第2007-051191(A)号明細書には、クラゲを凍結させるステップと、凍結されたクラゲを解凍してクラゲの内因性酵素を活性化させてクラゲの分解反応を開始させるステップと、解凍されたクラゲを混合して天然状態のクラゲのコラーゲンを可溶化して天然コラーゲンを含む中性塩溶液を形成させるステップと、天然コラーゲンを中性塩溶液から回収するステップとを含む、コラーゲンの回収方法が記載されている。
【0009】
特開平2008-031106(A)号明細書には、クラゲの内因性酵素を活性化させてそれに該クラゲの分解反応を開始させ、未改質状態の該クラゲのコラーゲンを可溶化し、未改質コラーゲンを含む中性塩溶液を形成するために、該クラゲを低温保存する低温保存ステップを含む方法が記載されている。方法は、未改質コラーゲンを中性塩溶液から回収する回収ステップも含む。
【0010】
国際公開第2014/157854(A1)号パンフレットおよび米国特許出願公開第2016/0052962(A1)号明細書は、放射線の使用によってクラゲからコラーゲンを単離する方法を記載している。
【0011】
国際公開第2015/005830(A1)号パンフレットには、クラゲからコラーゲンを製造する方法が記載されている。
【0012】
国際公開第2015/012682(A2)号パンフレットは、水性動物(例えば、クラゲ)からコラーゲンを抽出するための改善されたプロセスを記載しており、これは、アルカリ処理、続いて、一連の物理的および/または機械的処理と組み合わせた酸性処理、および塩溶液を用いたコラーゲンの沈殿を含む。このプロセスは、産生時間を短縮しながらコラーゲンの収量および品質を増加させ、これまでに知られているプロセスよりも費用効果が高い。
【0013】
国際公開第2018/220396(A1)号は、加水分解I型、II型およびV型コラーゲン粉体組成物、組成物を調製する方法、ならびに種々の疾患を処置する際の組成物の使用を記載している。コラーゲンは、生物、例えば、クラゲ、イソギンチャク、棘皮動物、カサガイ、イガイ、ナマコ、ウシ、ブタ、齧歯動物、ウマまたはフィンフィッシュに由来する。クラゲは、リゾストーマス・プルモ(Rhizostomas pulmo)、ロピレマ・エスクレンツム(Rhopilema esculentum)、ロピレマ・ノマディカ(Rhopilema nomadica)、ストモロフス・メイーグリス(Stomolophus meleagris)、オーレリア種(Aurelia sp.)、ネモピレマ・ノムライ(Nemopilema nomurai)またはそれらの組み合わせからなるリストから選択され得る。
【0014】
クラゲなどの動物からコラーゲンおよび/またはゼラチンを抽出するためのいくつかの系が存在する。しかし、そのような系は動物に害を及ぼす。さらに、他の発明は、本開示によって教示されるすべての問題を解決することができないため、そのような系の動作手段は、本開示とは実質的に異なる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明およびその実施形態は、動物組織および/または細胞培養物中でコラーゲンおよび/またはゼラチンを産生し、前記動物組織および/または細胞培養物からコラーゲンおよび/またはゼラチンを単離および/または抽出する方法に関する。特に、本発明は、海洋動物組織および/または細胞培養物中でコラーゲンおよび/またはゼラチンを産生し、前記海洋動物組織および/または細胞培養物からコラーゲンおよび/またはゼラチンを単離および/または抽出する方法に関する。
【0016】
本発明の第1の実施形態は方法を説明する。方法は、動物の(連続継代性)細胞株の確立および/または培養などの多くのプロセスステップを含む。動物は、無脊椎動物または脊椎動物であり得る。他の例では、動物は、本明細書に明示的に列挙されていない他の例の中でも、海洋動物、ブタ動物(porcine animal)、ウシ動物(bovine animal)、または鳥類動物であり得る。動物が海洋動物であるいくつかの例では、海洋動物は、本明細書に明示的に列挙されていない他の例の中でも、クラゲ、イソギンチャク、棘皮動物、カサガイ、イガイ、海洋性海綿動物、またはナマコであり得る。クラゲは、リゾストーマス・プルモ(Rhizostomas pulmo)、ロピレマ・エスクレンツム(Rhopilema esculentum)、ロピレマ・ノマディカ(Rhopilema nomadica)、ストモロフス・メイーグリス(Stomolophus meleagris)、オーレリア種(Aurelia sp.)、またはネモピレマ・ノムライ(Nemopilema nomurai)であり得る。
【0017】
この方法はまた、動物の(連続継代性)細胞株を操作および/または遺伝子改変すること、ならびに動物の(連続継代性)細胞株から第1のコラーゲンおよび/または第1のゼラチンを単離することを含み得る。第1のコラーゲンは、内因性コラーゲンまたは外因性コラーゲンであり得る。任意に、方法は、本明細書に明示的に列挙されていない他の用途の中でも、食品用途、飲料用途、化粧品用途、薬用用途、ヘルスケア用途、および/または医薬品用途などの用途のために、第1のコラーゲンのDNA配列を改質および/または遺伝子操作することを含み得る。
【0018】
いくつかの例では、第2のコラーゲンおよび/または第2のゼラチンは、生成物中で第1のコラーゲンおよび/または第1のゼラチンと置き換えられる。他の例では、方法は、第1のコラーゲンのDNA配列を改変および/または遺伝子操作して動物の細胞における第1のコラーゲンの産生を増加させることをさらに含む。そのような改変および/または遺伝子操作は、クラスター化された規則的な間隔の短い回文配列反復(CRISPR)技術を使用して行われる。
【0019】
本発明の第2の実施形態は方法を説明する。方法は、動物の(連続継代性)細胞株を培養するために培地を利用することなどの多くのプロセスステップを含む。動物は、無脊椎動物または脊椎動物であり得る。他の例では、動物は、本明細書に明示的に列挙されていない他の例の中でも、海洋動物、ブタ動物、ウシ動物、および/または鳥類動物であり得る。方法はまた、材料および/またはプロセスの使用によって動物の(連続継代性)細胞株からコラーゲンを抽出することを含み得る。材料は、緩衝剤、塩、酵素、酸、および/または塩基であり得る。酵素は、他の例の中でも、コラゲナーゼおよび/またはペプシンを含み得る。プロセスは、凍結乾燥(freeze-drying)および/または凍結乾燥(lyophilizing)を含み得る。
【0020】
本発明の第3の実施形態は、材料および/またはプロセスの使用によって培養動物外植片からコラーゲンを抽出する方法を記載する。動物外植片は、脊椎動物外植片および無脊椎動物外植片を含む。他の例では、動物外植片は、本明細書に明示的に列挙されていない他の例の中でも、鳥類動物外植片、ウシ動物外植片、ブタ動物外植片、および/または海洋動物外植片を含む。海洋動物外植片は、本明細書に明示的に列挙されていない他の例の中でも、クラゲ外植片、クラゲポリプ外植片、クラゲメドゥーサ外植片、および/または海洋性海綿動物外植片である。
【0021】
一般に、本発明は、以下の利点および目的を与えることに成功する。
【0022】
本発明の目的は、(連続継代性)動物細胞株を作製する方法を提供することである。
【0023】
本発明の目的は、(連続継代性)クラゲ細胞株を作製する方法を提供することである。
【0024】
本発明の目的は、(連続継代性)動物細胞株からコラーゲンおよび/またはゼラチンを抽出する方法を提供することである。
【0025】
本発明の目的は、ウシまたはブタの供給源からの従来のコラーゲンおよび/またはゼラチンを(連続継代性)動物細胞株からのコラーゲンおよび/またはゼラチンで置き換える方法を提供することである。
【0026】
本発明の目的は、ウシまたはブタの供給源からの従来のコラーゲンおよび/またはゼラチンを(連続継代性)クラゲ細胞株からのコラーゲンおよび/またはゼラチンで置き換える方法を提供することである。
【0027】
本発明の目的は、動物に害を及ぼさない(連続継代性)動物細胞株からコラーゲンを抽出する人道的な方法を提供することである。
【0028】
本発明の目的は、クラゲに害を及ぼさない(連続継代性)クラゲ細胞株からコラーゲンを抽出する人道的な方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態によるクラゲの組織を示す断面概略図を示す。
【
図2】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態による方法のブロック図を示す。
【
図3】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態による他の方法のブロック図を示す。
【
図4】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態によるさらなる方法のブロック図を示す。
【
図5】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態によるDMEM/F-12、DMEMアドバンスト、およびRPMI 1640アドバンスト培地中のピシリウスレッド染料でコラーゲンに染色したウシおよびブタの細胞の画像を示す。
【
図6A】本明細書中に開示される少なくともいくつかの実施形態によるヒト細胞についての異なる培地におけるコラーゲン産生のグラフ表示を示す。
【
図6B】本明細書中に開示される少なくともいくつかの実施形態によるウシ細胞についての異なる培地におけるコラーゲン産生のグラフ表示を示す。
【
図7A】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態による4万ウシ細胞/ウェルの播種密度で、異なる濃度のビタミンC下でのコラーゲン産生のグラフ表示を示す。
【
図7B】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態による7万ウシ細胞/ウェルの播種密度で、異なる濃度のビタミンC下でのコラーゲン産生のグラフ表示を示す。
【
図7C】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態による4万ヒト細胞/ウェルの播種密度で、異なる濃度のビタミンC下でのコラーゲン産生のグラフ表示を示す。
【
図7D】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態による7万ヒト細胞/ウェルの播種密度で、異なる濃度のビタミンC下でのコラーゲン産生のグラフ表示を示す。
【
図8】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態による様々な細胞型におけるコラーゲン産生に対する高麗人参の効果のグラフ表示を示す。
【
図9】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態による様々な細胞型におけるコラーゲン産生に対するパルミトレイン酸の効果のグラフ表示を示す。
【
図10】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態による様々な細胞型におけるコラーゲン産生に対するスピルリナの効果のグラフ表示を示す。
【
図11】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態による市販のウシおよび本発明の初代ウシ線維芽細胞株における1つ以上の因子の添加に基づくコラーゲン収率の効果のグラフ表示を示す。
【
図12】本明細書に開示される少なくともいくつかの実施形態による本発明の初代ウシ線維芽細胞株、市販のウシ線維芽細胞株、ヒトケロイド線維芽細胞株および市販のブタ細胞株の視覚的比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。様々な図の同一の要素は、同じ参照番号で識別される。ここで、本発明の各実施形態を詳細に参照する。このような実施形態は、本発明の説明のために提供されるものであり、これに限定されるものではない。実際、当業者は、本明細書を読み、本図面を見ると、様々な修正および変形を行うことができることを理解し得る。
【0031】
クラゲの組織
図1に示すように、「クラゲ」100は、刺胞動物門の大部分である水母亜門の特定のゼラチン状要素のメデュサ相に与えられる非公式の一般名である。クラゲ100は、主に、傘状の釣鐘と、垂下触手112とを有する遊泳性海洋動物である。一般に、クラゲ100は、外層(例えば、表皮102)、中層(例えば、間充ゲル104)、内層(例えば、胃真皮106)の三層で構成されている。
【0032】
クラゲ100の主な特徴は傘状の釣鐘である。傘状の釣鐘は、透明なゼリー状物質(例えば、間充ゲル104)の塊からなる中空構造であり、動物の水力学的骨格を形成する。釣鐘は脈動して、クラゲ100に推進力をもたらすことができる。以下を参照されたい:Edward E. Ruppert, et al., “Invertebrate Zoology,” 2004, 7th edition, Cengage Learning, Pages 148-174, その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0033】
間充ゲル104の約95%以上は水からなるが、コラーゲンおよび他の繊維状タンパク質、ならびに破片および細菌を取り込むことができる遊走性アメーバ細胞も含有する。以下を参照されたい:Yun-Hwa Hsieh, “Potential of utilizing jellyfish as food in Western countries,” Trends in Food Science & Technology, 2004, 5 (7), Pages 225-229;およびSeiya Miura, et al., “Jellyfish Mesogloea Collagen,” The Journal of Biological Chemistry, 1985, Vol. 260, No. 28, Pages 15352-15356, その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、釣鐘の縁部は、多くの場合、丸みを帯びたローブ(例えば、ラペット)に分割され、これにより、釣鐘が曲がることが可能になる。ラペット間の隙間またはニッチには、ロパリアとして知られる未発達の感覚器官がぶら下がっており、釣鐘の縁がしばしば触手112を支える。以下を参照されたい:Edward E. Ruppert, et al.
【0034】
さらに、クラゲ100はまた、クラゲ100の釣鐘の周囲を一周する環状管108を含み得る。半径方向管120は、胃から離れて放射状に広がり得、次いで、存在する場合にはリング管に接続し、次いで胃に戻り得る。半径方向管120、リング管(存在する場合)、および胃または胃腔116は、胃内胚葉系を形成する。さらに、クラゲ100の釣鐘の最上部のドーム状表面には、外傘118がある。クラゲ100の釣鐘のドーム状面の下面には、サブ傘122がある。
【0035】
サブ傘122の中心から垂れ下がるのは突起(例えば、口柄)であり、その末端で口126を支える。口126は、多くの場合、4つの口腔アーム114によって囲まれている。胃は、中央チャンバと、側面から出ている4つのポーチとに分割される。ポーチは、生殖腺110、または精子および/または卵細胞を産生する生殖器を含む。ロパリア(またはロパリウム)124は、鉢虫綱(例えば、典型的なクラゲ)および箱虫綱(例えば、箱型ゼリー)の小さな感覚構造である。
【0036】
コラーゲン
コラーゲンは、動物の結合組織の細胞外マトリックス中の主要な構造タンパク質であり、組織再生および他の産業用途に広く使用されている。以下を参照されたい:K.E. Kadler, et al., “Collagens at a Glance,” Journal of Cell Science, 2007, 120, Pages 1955-1958,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。コラーゲンは、線維性または非線維性であり得る。線維性コラーゲンには、I型、II型、III型、V型およびXI型が含まれる。非線維性コラーゲンには、分断三重らせんを有する線維関連コラーゲン(またはFACIT)(例えば、IX型、XII型、XIV型、XIX型およびXXI型)、短鎖コラーゲン(VIII型およびX型)、基底膜コラーゲン(例えば、IV型)、分断された多重三重らせんドメイン(またはMultiplexin)(例えば、XV型およびXVIII型)、分断三重らせんを有する膜関連コラーゲン(またはMACIT)(例えば、XIII型およびXVII型)、およびその他(例えば、VI型およびVII型)が含まれる。5つの最も一般的な型のコラーゲンには、I型(例えば、骨の有機部分の主成分)、II型(例えば、軟骨の主要なコラーゲン性成分)、III型(例えば、網状繊維の成分)、IV型(基底膜、基底膜の上皮分泌層を形成する)、およびV型(例えば、細胞表面、毛髪および胎盤)が含まれる。
【0037】
市販のコラーゲン系薬剤は、通常、ウシおよびブタの供給源に由来する。しかし、ウシ起源のコラーゲンは、ウシ海綿状脳症(BSE)(または狂牛病)および伝染性海綿状脳症(TSE)、ならびにヒトに伝染性であり得る潜在的なウイルスベクターの伝染に関連する。以下を参照されたい:M. Ogawa, et al., “Biochemical Properties of Bone and Scale Collagens Isolated from the Subtropical Fish Black Drum (Pogonia cromis) and Sheepshead Seabream (Archosargus probatocephalus),” Food Chem., 2004, 88(4), Pages 495-501; H. Li, et al., “Studies on Bullfrog Skin Collagen,” Food Chem., 2004, 84(1), Pages 65-9; and J.P. Widdowson J.P., et al., “In Vivo Comparison of Jellyfish and Bovine Collagen Sponges as Prototype Medical Devices,” J. Biomed. Mater. Res. Part B Appl. Biomater, 2018, 106, Pages 1524-1533,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、ブタのコラーゲンは、宗教上および/または倫理上の問題も引き起こす可能性がある。以下を参照されたい:B. Hoyer, et al., “Jellyfish Collagen Scaffolds for Cartilage Tissue Engineering,” Acta Biomater, 2014, 10, Pages 883-892,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、哺乳動物コラーゲンは、鳥インフルエンザ、ブタインフルエンザ、および口蹄疫などの伝染病の病理学的リスクと考えられているため、哺乳動物コラーゲンの継続的な使用に関する規制上の懸念が高まっている。以下を参照されたい:F. Subhan, et al., “Marine Collagen: an Emerging Player in Biomedical Applications,” J. Food Sci. Technol., 2015, 52, Pages 4703-4707,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかはまた、異なる哺乳動物コラーゲン系材料がそれらの精製プロセスのために炎症促進性組織応答を誘導することを示している。以下を参照されたい:T. Miyata, et al., “Collagen Engineering for Biomaterial Use. Clin. Mater,” 1992, 9, Pages 139-148;およびJ.M. Aamodt, et al., “Extracellular Matrix-Based Biomaterial Scaffolds and the Host Response,” Biomaterials, 2016, 86, Pages 68-82,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0038】
これらの欠点のために、海洋生物は、潜在的な医学的および経済的利点のために、生体材料用途のための代替的な非哺乳動物コラーゲン源として関心を集めている。興味深いことに、海洋生物は、BSEリスクおよび潜在的ウイルスベクターがないため、魅力的な代替物を提示する。具体的には、クラゲはミネラル、タンパク質、およびコラーゲンが豊富であるため、そのような代替物の1つと見なされている。以下を参照されたい:Y.P. Hsieh, et al., “Jellyfish as Food,” Hydrobiologia, 2001, 451(1-3), Pages 11-7,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0039】
異なる魚種およびクラゲ種からのコラーゲンの単離および特徴付けが記載されている。以下を参照されたい:S. Addad, et al., “Isolation, Characterization and Biological Evaluation of Jellyfish Collagen for Use in Biomedical Applications,” Mar. Drugs, 2011, 9, Pages 967-983; Z. Rastian, et al., “Type I Collagen from Jellyfish Catostylus Mosaicus for Biomaterial Applications,” ACS Biomater. Sci. Eng, 2018, 4, Pages 2115-2125; S. Krishnan, et al., “Preparation and Biomedical Characterization of Jellyfish (Chrysaora Quinquecirrha) Collagen from Southeast Coast of India,” Int. J. Pharm. Pharm. Sci, 2013, 5, Pages 698-701; and S. Yamada, et al., “Potency of Fish Collagen as a Scaffold for Regenerative Medicine,” Biomed Res. Int, 2014, Page 302932,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、海洋コラーゲンの有用性は既に分析されており、クラゲコラーゲンは無毒であり、ウシコラーゲンと比較して線維芽細胞および骨芽細胞のより高い細胞生存率を誘導することが示されている。以下を参照されたい:S. Addad, et al.さらに、他の研究では、コラーゲン精製の異なる方法を調査するために、異なる種類の地中海産クラゲ種を試験した。以下を参照されたい:S. Addad, et al.この研究に基づいて、リゾストマ・パルモ(Rhizostoma pulmo、R.パルモ(R.pulmo))を使用して最良のコラーゲン収率が得られ、さらに、生物学的分析では、R.パルモ(R.pulmo)コラーゲンの細胞毒性は哺乳動物コラーゲンと比較して異ならなかったと結論付けられた。以下を参照されたい:S. Addad, et al.
【0040】
細胞毒性試験、炎症促進性サイトカイン分泌および抗体分泌の測定、ならびにインビボ移植後の免疫細胞の集団変化を含む、クラゲコラーゲンの生体適合性の可能性を支持するさらなる研究が行われている。以下を参照されたい:S. Addad, et al.そのような研究の1つでは、樹状細胞(CD11c+)およびマクロファージ(F4/80+)の数が、ウシ移植マウスおよびゼラチン移植マウスについては、マウスに移植されたクラゲコラーゲンにおいて類似していることが見出された。以下を参照されたい:E. Song, et al., “Collagen Scaffolds Derived from a Marine Source and Their Biocompatibility,” Biomaterials, 2006, 27, Pages 2951-2961,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。したがって、この研究は、クラゲコラーゲン足場が、ウシコラーゲンまたはゼラチンによって引き起こされる免疫応答と同等の免疫応答を誘導することができると結論付けた。以下を参照されたい:E. Song, et al.
【0041】
さらに、他の研究は、R.エスクレンツム(R.esculentum)由来のペプチドが自然発症高血圧ラットの血圧を低下させ、機能性食品中の降圧化合物として使用できることを報告した。以下を参照されたい:X. Liu, et al., “Purification and Characterization of Angiotensin I Converting Enzyme Inhibitory Peptides from Jellyfish Rhopilema esculentum,” Food Res Int., 2013, 50(1), Pages 339-43,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他のグループは、クラゲR.エスクレンツム(R.esculentum)から単離されたタンパク質が強力な抗酸化活性を示し、食品および医薬品産業に適用され得ることを報告した。以下を参照されたい:H. Yu, et al., “In vitro Determination of Antioxidant Activity of Proteins from Jellyfish Rhopilema esculentum,” Food Chem, 2006, 95(1), Pages 123-30,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0042】
クラゲコラーゲンは、三重らせん構造を示すコラーゲン分子の共通の特徴を有し、ペプシン消化に耐性である。以下を参照されたい:A. Miki, et al., “Structural and Physical Properties of Collagen Extracted from Moon Jellyfish under Neutral pH Conditions,” Biosci Biotechnol Biochem, 2015, 79, Pages 1603-1607;およびB. Hoyer, et al.,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、クラゲコラーゲンは、哺乳類のI、II、III、V、およびIX型に対するその均一性、ならびにそのバッチ間の一貫した生産性のために「0型コラーゲン」と定義することができ、哺乳類のコラーゲンに基づく生体材料の代替物として、(骨)組織再生に関連する様々な医療用途にとって特に興味深い。以下を参照されたい:Iris Flaig, et al., “In Vivo Analysis of the Biocompatability and Immune Responses of Jellyfish Collagen Scaffolds and its Suitability for Bone Regeneration,” International Journal of Molecular Sciences, 2020, 21(12), Page 4518,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0043】
いくつかは、いくつかの種のクラゲから抽出されたコラーゲンが独特の機能特性を示すことを示している。例えば、ネモピレマ(Nemopilema)の種は食用で無害なクラゲであることが知られており、それらのコラーゲンはTLR4シグナル伝達経路を介して免疫反応を刺激する。以下を参照されたい:H. Morishige, et al., “Immunostimulatory Effects of Collagen from Jellyfish in vivo,” Cytotechnology, 2011, 63, Pages 481-492;およびA.B. Putra, et al., “Jellyfish Collagen Stimulates Production of TNF-α and IL-6 by J774.1 Cells Through Activation of NF-κB and JNK via TLR4 Signaling Pathway,” Mol Immunol, 2014, 58, Pages 32-37,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。この種から抽出されたコラーゲンが間葉性幹細胞からの軟骨分化を促進することを報告した者もいる。以下を参照されたい:B. Hoyer, et al.オーレリア(Aurelia)種から抽出されたコラーゲン(ムーン・ジェリーフィッシュ(moon jellyfish))は、他の種類のクラゲのコラーゲンにはない高い水溶性という独特の特性を有する。以下を参照されたい:A. Miki, et al.これらの有望な利点にもかかわらず、クラゲなどの無脊椎動物におけるコラーゲン性タンパク質の構造および機能は完全には理解されていない。
【0044】
コラーゲン含有物からコラーゲンを抽出する従来の方法は、多数のプロセスステップを含み得る。例において、「コラーゲン含有物」という語句は、コラーゲンが抽出されるソース材料を指す。いくつかの実施形態では、コラーゲン含有物は、生物、例えば、クラゲ、イソギンチャク、棘皮動物、カサガイ、イガイ、ナマコ、ウシ、ブタ、齧歯動物、ウマまたはフィンフィッシュに由来する。そのような方法は、国際公開第2018/220396(A1)号パンフレットに記載され得、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。1つのそのような例示的な方法は、(a)コラーゲン含有物質を酸性溶液中で少なくとも1時間、約4℃~約37℃の範囲の温度でインキュベートして、培養物を形成すること;(b)ステップ(a)の培養物を透析ろ過して、培養物内の可溶化コラーゲンを実質的に精製し、それによって保持液を形成するステップ;(c)ステップ(b)で得られた保持液の可溶物質と不溶物質を分離し、残りの不溶物質を除去するステップ;(d)任意に、残りの不溶物質に対してステップ(a)および(b)を繰り返すことを含み、ステップ(c)から得られた可溶物質が実質的に純粋なコラーゲン溶液である。しかしながら、そのような方法は動物に害を及ぼす。したがって、生物からコラーゲンを抽出するためには、人道的な代替物が必要である。
【0045】
ゼラチン
ゼラチンは、典型的には、酸加水分解、アルカリ加水分解および酵素加水分解を介した変性コラーゲンに由来する。食品産業で一般的に使用されるA型およびB型ゼラチンは、それぞれ酸およびアルカリプロセスによって誘導される。クラゲから産生されたA型ゼラチンは、食品用途のためのゼラチンの代替供給源として使用することができる。以下を参照されたい:U. Rodsuwan, et al., “Functional Properties of Type A Gelatin from Jellyfish (Lobonema smithii),” International Food Research Journal, 2016, 23(2), Pages 507-514,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
方法
本発明は、多くの人道的な方法を記載する。第1の方法を
図2に示す。
図2の方法は、方法を開始するプロセスステップ202などの多数のプロセスステップを含む。プロセスステップ204は、動物の(連続継代性)細胞株を確立および/または培養することを含むプロセスステップ202に続く。動物は、無脊椎動物または脊椎動物であり得る。他の例では、動物は、本明細書に明示的に列挙されていない他の例の中でも、海洋動物、ブタ動物、ウシ動物、または鳥類動物であり得る。動物が海洋動物であるいくつかの例では、海洋動物は、本明細書に明示的に列挙されていない他の例の中でも、クラゲ、イソギンチャク、棘皮動物、カサガイ、イガイ、海洋性海綿動物、またはナマコであり得る。他の例では、イガイはマイティラス・エデュリス(Mytilus edulis)であり得、ナマコはスティチョプス・モリス(Stichopus mollis)であり得る。好ましくは、動物はクラゲであり得、クラゲはリゾストーマス・プルモ(Rhizostomas pulmo)、ロピレマ・エスクレンツム(Rhopilema esculentum)、ロピレマ・ノマディカ(Rhopilema nomadica)、ストモロフス・メイーグリス(Stomolophus meleagris)、オーレリア種(Aurelia sp.)、またはネモピレマ・ノムライ(Nemopilema nomurai)であり得る。
【0047】
プロセスステップ206は、プロセスステップ204に続き、動物の(連続継代性)細胞株を操作および/または遺伝子改変することを含む。第1のコラーゲンは、内因性コラーゲンまたは外因性コラーゲンであり得る。「内因性コラーゲン」は動物の体によって合成される天然コラーゲンであり、「外因性コラーゲン」は外部供給源に由来することを理解されたい。次に、プロセスステップ208は、プロセスステップ206に続き、動物の(連続継代性)細胞株から第1のコラーゲンおよび/または第1のゼラチンを単離することを含む。プロセスステップ210は、プロセスステップ208に続き、生成物中の第2のコラーゲンおよび/または第2のゼラチンを第1のコラーゲンおよび/または第1のゼラチンで置き換えることを含む。プロセスステップ212は、プロセスステップ210の後に続き、
図2の方法を終了する。
【0048】
図2の方法は、本明細書に明示的に列挙されていない他の用途の中でも、食品用途、飲料用途、化粧品用途、薬用用途、ヘルスケア用途、および/または医薬品用途などの用途のために、第1のコラーゲンのDNA配列を改質および/または遺伝子操作することをさらに含み得る。他の例では、方法は、第1のコラーゲンのDNA配列を改変および/または遺伝子操作して動物の細胞における第1のコラーゲンの産生を増加させることをさらに含む。そのような改変および/または遺伝子操作は、クラスター化された規則的な間隔の短い回文配列反復(CRISPR)技術を使用して行われる。
【0049】
「CRISPR」は、細菌および古細菌などの原核生物のゲノムに見られるDNA配列のファミリーを指すことを理解されたい。これらの配列は、以前に原核生物に感染したバクテリオファージのDNA断片に由来し、その後の感染中に類似のバクテリオファージからDNAを検出および破壊するために使用される。したがって、これらの配列は、原核生物の抗ウイルス(すなわち、抗ファージ)防御系において重要な役割を果たす。以下を参照されたい:R. Barrangou, “The roles of CRISPR-Cas Systems in Adaptive Immunity And Beyond,” Current Opinion in Immunology, 2015, 32, Pages 36-41; and Yingxiao Zhang, et al., “The Emerging and Uncultivated Potential of CRISPR Technology in Plant Science,” Natural Plants, 2019, 5, Pages 778-794,その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。CRISPR技術は、ゲノムを編集するための単純でありながら強力なツールであり、研究者がDNA配列を容易に改変し、遺伝子機能を改変することを可能にする。CRISPR技術は、遺伝的欠陥を修正すること、疾患の拡大を治療および予防すること、ならびに作物を改善することを含む、多くの潜在的な用途を有する。
【0050】
いくつかの例では、ゼラチンは、オーレリア・アリタ(Aurelia arita)などのクラゲから得ることができることを理解されたい。クラゲからゼラチンを製造するためのプロセスは、1つ以上のプロセスステップ、例えば、釣鐘以外のクラゲ部分を除去する、クラゲ釣鐘を細かく切断する、クラゲ釣鐘を蒸留水で洗浄する、クラゲ釣鐘を熱水に浸漬して、クラゲ釣鐘の脂肪含有量を減少させる、クラゲ釣鐘を約100℃で約30分間加熱する、クラゲ釣鐘を酸性またはアルカリ性洗浄(例えば、20mM水酸化アンモニウム)で約5日間浸漬する、クラゲ釣鐘を蒸留水中でろ過および沸騰させる、クラゲ釣鐘から組織の残りの小片を濾別する、クラゲ釣鐘を脱水する、および乳鉢および乳棒を使用してクラゲ釣鐘を粉末に粉砕することを含み得る。
【0051】
図3は、本発明の他の方法を示す。
図3の方法は、プロセスステップ302から始まる。プロセスステップ304は、プロセスステップ302に続き、培地を利用して動物の(連続継代性)細胞株を培養することを含む。動物は、無脊椎動物または脊椎動物であり得る。他の例では、動物は、本明細書に明示的に列挙されていない他の例の中でも、海洋動物、ブタ動物、ウシ動物、および/または鳥類動物であり得る。好ましい例では、動物は海洋動物、より具体的にはクラゲであり得る。
【0052】
プロセスステップ306は、プロセスステップ304に続き、材料および/またはプロセスの使用によって動物の(連続継代性)細胞株からコラーゲンを抽出することを含む。材料は、緩衝剤、塩、酵素、酸、および/または塩基であり得る。いくつかの例では、酵素は、他の例の中でも、コラゲナーゼおよび/またはペプシンを含み得る。プロセスは、凍結乾燥(freeze-drying)または凍結乾燥(lyophilizing)を含み得る。本明細書に記載されるように、「凍結乾燥(lyophilization)」または「凍結乾燥(freeze-drying)」は、生成物を凍結し、圧力を下げ、次いで昇華によって氷を除去することを含む低温脱水プロセスである。以下を参照されたい:P. Fellows, “Freeze drying and freeze concentration,” Food processing technology: Principles and practice, 2017, 4th ed., Kent: Woodhead Publishing/Elsevier Science, Pages 929-940,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。プロセスステップ308は、プロセスステップ306の後に続き、
図3の方法を終了する。
【0053】
さらなる例では、本発明は、材料および/またはプロセスの使用によって培養動物外植片からコラーゲンを抽出する方法を記載する。いくつかの例では、動物外植片は、脊椎動物外植片および/または無脊椎動物外植片を含む。他の例では、動物外植片は、本明細書に明示的に列挙されていない他の例の中でも、鳥類動物外植片、ウシ動物外植片、ブタ動物外植片、および/または海洋動物外植片を含む。海洋動物外植片は、本明細書に明示的に列挙されていない他の例の中でも、クラゲ外植片、クラゲポリプ外植片、クラゲメドゥーサ外植片、および/または海洋性海綿動物外植片である。
【0054】
他の例では、二重色素アッセイを使用するコラーゲン検出方法が記載され、
図4に示されている。この方法は、コラーゲンを抽出せずに培養物中の接着性細胞のコラーゲン産生を推定するために色素を使用して試料のコラーゲン含有量を測定する。試料は、本明細書に明示的に列挙されていないものの中でも、ウシ真皮の初代線維芽細胞株またはBJヒト線維芽細胞/初代細胞を含み得る。
【0055】
図4の方法で利用される材料には、約70%のエタノール、滅菌水、ピクリン酸(または2,4,6-トリニトロフェノール)、飽和ピクリン酸中の約0.1%のファストグリーンFCF溶液、飽和ピクリン酸中の約0.4%のファストグリーンFCF溶液および約0.11%のシリウスレッド、ならびにメタノール中の約0.1%のNaOHが含まれる。ファストグリーンFCF色素は総タンパク質に使用され、シリウスレッド色素はコラーゲン含有量の決定に使用される。
図4の方法で利用される機器は、層流キャビネット、分光光度計、およびピペットを含む。
【0056】
図4の方法は、プロセスステップ402から始まり、プロセスステップ404が続く。プロセスステップ404は、細胞培養フラスコから培地を取り出すことを含む。培地は、本明細書に明示的に列挙されていないものの中でも、最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)-高グルコース、DMEM-F12、FM、DMEMアドバンスト、および/またはRPMI 1640アドバンストを含み得る。
【0057】
プロセスステップ406は、プロセスステップ404に続き、第1の量のファストグリーン色素を含有する蒸留水中のピクリン酸の飽和溶液を、添加することを含む。例では、ファストグリーン色素の第1の量は約0.01%である。プロセスステップ408は、プロセスステップ406の後に続き、培地を暗所において室温で第1の時間インキュベートすることを含む。例では、第1の時間は約15分である。具体的には、このプロセスステップは、300μL/ウェルの0.01%ファストグリーン色素を試験プレートの24ウェルに添加し、そのようなものを室温で暗所で約15分間インキュベートすることを含み得る。
【0058】
プロセスステップ410は、プロセスステップ408の後に続き、蒸留水で培地を洗浄することを含む。このプロセスステップでは、洗浄を約3~約4回行い得る。プロセスステップ412は、プロセスステップ410に続き、第2の量のファストグリーン色素および第1の量のシリウスレッド色素を含有する蒸留水中のピクリン酸の飽和溶液を、培地に添加することを含む。例では、ファストグリーン色素の第2の量は約0.04%であり、シリウスレッド色素の第1の量は約0.11%である。より具体的には、このプロセスステップは、300μL/ウェルのピクリン酸中の0.04%ファストグリーン色素および0.11%ダイレクトレッド80/シリウスレッド色素を添加することを含み得る。
【0059】
プロセスステップ414は、プロセスステップ412に続き、培地を暗所で第2の時間インキュベートすることを含む。第2の時間は約30分である。プロセスステップ416は、プロセスステップ414の後に続き、蒸留水で培地を約3~約4回洗浄することを含む。プロセスステップ416が行われた後、細胞を顕微鏡下で画像化し得る。これらの画像を
図5に示し得る。
【0060】
プロセスステップ418は、プロセスステップ416に続き、無水メタノール中のNaOH(1:1)のある量を培地に添加し、培地を細胞シートから掻き取り、培地を新しい細胞培養プレートに移すことを含む。約0.3mLの0.1%NaOHをプロセスステップ418で使用する。
【0061】
プロセスステップ420は、プロセスステップ418の後に続き、分光光度計を利用して540nmおよび630nmにおける吸光度を測定することを含む。プロセスステップ422は、プロセスステップ420の後に続き、
図4の方法を終了する。
【0062】
緑色蛍光プローブCol-Fを使用し得ることを理解されたい。緑色蛍光プローブCol-Fは、コラーゲンおよびエラスチンに対する親和性を示し、新鮮な動物組織および凍結動物組織における複雑なコラーゲン性構造および弾性構造の蛍光三次元画像化のための便利なツールとなる。この方法では、蛍光顕微鏡をさらに使用して、三次元画像化を分析し得る。
【0063】
図4の方法に基づいて、
図5に示すように、初代ウシ線維芽細胞はウシ細胞よりも速く増殖し、初代ウシ線維芽細胞は初代ブタ線維芽細胞と比較してコラーゲンの優れた供給源であることが見出され、初代ウシ線維芽細胞およびブタ線維芽細胞の両方が、RPMI 1640アドバンスト培地と比較してDMEM/F-12培地およびDMEMアドバンスト培地を好むことを理解されたい。
【0064】
本発明はまた、コラーゲン産生に対するそれらの効果について異なる培地を試験するためのさらなる方法を提供する。具体的には、
図6Aおよび
図6Bは、それぞれヒト細胞株およびウシ細胞株のための異なる培地におけるコラーゲン産生を示す。
図6Aおよび
図6Bは、様々な培地(例えば、MEM、DMEM-高グルコース、DMEM-F12およびFM培地)に関連するx軸602およびmg単位で測定されたコラーゲン産生に関連するy軸604を示す。コラーゲン産生606および総タンパク質濃度608の両方を
図6Aおよび
図6Bに示す。
図6Aおよび
図6Bの両方に示されるように、コラーゲン産生606および総タンパク質濃度608は、DMEM-F12培地において最も高かった。
【0065】
本発明はまた、ウシ、ブタ、ヒトおよび他の目的の細胞株内のコラーゲン産生に対するそれらの効果について因子を試験するさらなる方法を提供する。これらの因子の例としては、限定されないが、とりわけ、ビタミンC、オメガ-7脂肪酸(またはパルミトレイン酸)、グリシン、高麗人参抽出物、硫酸亜鉛、組換えヒトインスリン、ヒドロコルチゾンヘミスクシナート、リノール酸、アシアチコシド、ヒト血清アルブミン(HSA)、レシチン、またはスピルリナ(例えば藻類サプリメント)が挙げられる。具体的には、研究者らは、ビタミンCの添加後に細胞形態が変化することを見出した。以下を参照されたい:Richard I. Schwarz, “Collagen I and the Fibroblast: High Protein Expression Requires a New Paradigm of Post-Transcriptional, Feedback Regulation,” Biochemistry and Biophysics Reports, 2015, 3, Pages 38-44, DOI: 10.1016/j.bbrep.2015.07.007,その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。具体的には、ビタミンCは、コラーゲン合成に必要な2つの酵素:プロリルヒドロキシラーゼ(例えば、コラーゲン分子を安定化するために)およびリジルヒドロキシラーゼ(例えば、構造強度架橋を与えるために)の必須補因子である。
【0066】
さらに、
図7Aは、4万ウシ細胞/ウェルの播種密度で、異なる濃度のビタミンC下でのコラーゲン産生を示す。
図7Bは、7万ウシ細胞/ウェルの播種密度で、異なる濃度のビタミンC下でのコラーゲン産生を示す。
図7Cは、4万個のヒト細胞/ウェルの播種密度で、異なる濃度のビタミンC下でのコラーゲン産生を示す。
図7Dは、7万個のヒト細胞/ウェルの播種密度で、異なる濃度のビタミンC下でのコラーゲン産生を示す。
図7A~
図7Dに示される結果に関連する実験を、96ウェルプレートにおいて行った。
【0067】
具体的には、
図7A~
図7Dの各々は、ビタミンCのmg/mL濃度に関連するx軸702と、コラーゲン濃度606およびタンパク質濃度608を測定するy軸704とを含む。
図7A~
図7Dに示すように、最高コラーゲン濃度706は、ビタミンCの濃度が10~100mg/mLの間であった場合に生じた。
【0068】
さらに、
図8は、様々な細胞型におけるコラーゲン産生に対する高麗人参の効果を示すグラフを示す。
図8は、細胞型およびμg/mL単位の高麗人参濃度に関連するx軸802と、コラーゲン濃度806およびタンパク質濃度808を測定するy軸704とを有する。
【0069】
さらに、
図9は、様々な細胞型におけるコラーゲン産生に対するパルミトレイン酸の効果を示すグラフを示す。
図9は、細胞型およびμg/mL単位のパルミトレイン酸濃度に関連するx軸902と、コラーゲン濃度906およびタンパク質濃度908を測定するy軸904とを有する。
【0070】
図10は、様々な細胞型におけるコラーゲン産生に対するスピルリナ抽出物の効果を示すグラフを示す。
図10は、細胞型およびμg/mL単位のスピルリナ抽出物濃度に関連するx軸1002と、コラーゲン濃度1006およびタンパク質濃度1008を測定するy軸1004とを有する。
【0071】
図8、
図9および
図10に示すように、高麗人参サプリメント、パルミトレイン酸およびスピルリナ抽出物はコラーゲン産生に大きな影響を及ぼさない。しかしながら、ウシ細胞では総タンパク質含有量が増加する。
【0072】
他の実施形態では、以下の表1に示すように、これらの因子のサブセットを、市販の細胞株(ウシ、ブタ、およびヒトKEL-FIB)におけるコラーゲン産生を高める能力について評価した。
【表1】
【0073】
この実施形態では、細胞を48ウェルプレートのウェルあたり約3500~4500細胞で播種し、因子を添加する前に約48時間静置させた。約48時間後、使用済み培地を除去し、目的の因子が補充された成長培地と交換した。細胞は、因子の最初の導入後、約3~10日間成長し続け、コラーゲン含有量をSircol(商標)コラーゲンアッセイで定量した。さらに、約48~72時間ごとに培地/因子補充ありおよびなしで実験を行った。
【0074】
試験した因子のうち、ビタミンC、硫酸亜鉛およびアシアチコシドは、市販の細胞株にわたってコラーゲン産生を増加させた(ウシ、ブタ、およびヒトKEL-FIB)。特に、ビタミンCは、ウシ細胞株において約28~36%、ヒトKEL-FIB細胞株において約50%、コラーゲン産生を増加させた。
【0075】
これらの因子の混合物も試験して、ウシ細胞株におけるコラーゲン産生に対する因子の相乗効果を評価した。その結果を
図11に示す。具体的には、
図11は、1つ以上の因子に関連するx軸1102と、μg単位のコラーゲン濃度に関連するy軸とを含む。様々な因子についての市販のウシ細胞株1106と本発明の初代ウシ線維芽細胞株1108との間のコラーゲン収率の比較が7日後に示されており、因子は72時間ごとに補充されたことを理解されたい。
図11に示すように、ビタミンCとアシアチコシドとの組み合わせは、市販のウシ細胞株1106においてコラーゲン産生を最大限に増加させることが見出され、ビタミンCおよび硫酸亜鉛は、本発明の初代ウシ線維芽細胞株1108においてコラーゲン産生を最も増加させることが見出された。
【0076】
さらなる実施形態では、様々な細胞株におけるコラーゲン含有量を比較および対比する方法も本明細書で検討される。具体的には、
図12は、本発明の初代ウシ線維芽細胞株1202、市販のウシ線維芽細胞株1204、ヒトケロイド線維芽細胞株1206および市販のブタ線維芽細胞株1208の視覚的比較を示す。
図12の細胞をほぼ同じ細胞数で播種し、約72時間インキュベートした。
【0077】
本発明の初代ウシ線維芽細胞株1202は、他の市販の細胞株よりも優れていた。特に、本発明の初代ウシ線維芽細胞株1202は、それぞれ約3日後および約7日後のコラーゲン産生に関して、市販のウシ線維芽細胞株1204株よりも約17%および約28%優れていた。具体的には、本発明の初代ウシ線維芽細胞株1202は約7.4μgのコラーゲンに関連し、市販のウシ線維芽細胞株1204は約6.3μgのコラーゲンに関連し、ヒトケロイド線維芽細胞株1206は約4.4μgのコラーゲンに関連し、市販のブタ線維芽細胞株1208は約4.1μgのコラーゲンに関連する。
【0078】
他の実施形態では、コラーゲンを抽出する方法が本明細書に記載される。第1の方法では、酢酸を用いて接着細胞からコラーゲン抽出物を抽出する方法が記載されている。この方法で使用される材料には、約70%エタノール、滅菌PBS、約0.5M酢酸溶液、および大部分がコンフルエントな細胞のフラスコが含まれる。この方法で使用される機器は、層流キャビネット、ピペット、ファルコン管、スクレーパ、およびエッペンドルフ管を含み得る。
【0079】
第1の方法は、細胞培養の約15分前にフローキャビネットをオンにし、0.5M酢酸溶液が低温かつ無菌であることを確実にするなど、多数のプロセスステップを含む。次に、この方法は、細胞培養フラスコまたはディッシュをインキュベータからフローキャビネットに移動させること、および培養培地を液体廃棄物容器に廃棄することを含む。次いで、この方法は、1×PBSで細胞を約3回洗浄することを含む。洗浄したら、PBSを排出し、氷上に置く。少量の酢酸を添加する。フラスコを傾けて、表面全体が酢酸と接触していることを確認し、次いで、この方法は、細胞外マトリックス(ECM)および細胞をフラスコの底から掻き取ること、および溶液をフラスコからエッペンドルフ管またはファルコン管に移すことを含む。次いで、管を4℃の冷蔵庫に入れ、約24時間インキュベートする。約30分ごとに、管を撹拌または回転させる。24時間が経過したら、管を約15000rpmで約30分間+4で遠心分離する。上清を回収する。次いで、適切なアッセイを使用してコラーゲン濃度を測定する。
【0080】
第2の例では、水酸化アンモニウムを用いた細胞層のECMの抽出方法について説明する。この方法は、ECMを抽出するために培養フラスコまたはディッシュから細胞を溶解および除去する。この方法で使用される材料には、約70%エタノール、滅菌PBS、滅菌脱イオン水、水酸化アンモニウムのストック溶液、およびほとんどコンフルエントな細胞のフラスコが含まれる。この方法で使用される機器は、層流キャビネット、ピペット、ファルコン管、およびスクレーパを含む。
【0081】
この方法は、細胞培養の少なくとも15分前にフローキャビネットをオンにするなどの多数のプロセスステップを含む。次に、この方法は、20mM水酸化アンモニウム溶液を調製することを含む。1Mの水酸化アンモニウムは、通常、4℃で貯蔵される。次いで、約300μLの水酸化アンモニウムを14.7mLの滅菌水に添加し、混合して15mLの20mMのNH4OHを調製する。次いで、この方法は、細胞培養フラスコまたはディッシュをインキュベータからフローキャビネットに移動させること、および培養培地を液体廃棄物容器に廃棄することを含む。
【0082】
次に、この方法は、PBSで細胞を約3回洗浄することを含む。洗浄したら、PBSを排水し、適切な量の水酸化アンモニウムを添加する。次いで、フラスコを室温で約5分間インキュベートする。毎分毎に、フラスコを穏やかに振盪して、すべての細胞が溶解されることを確実にする。
【0083】
次に、水酸化アンモニウムおよび溶解した細胞を配置し、接着したECMのみを適所に残す。ここで、ECMは細胞を含まず、スクレーパを使用して抽出し、滅菌水中で4℃で保存することができ、または新しい細胞をECM層上に固定することができる。
【0084】
さらに、本発明は、物理化学的特性評価、テクスチャ分析、ブルーム強度などの精製コラーゲンを特性評価する多数の方法、および当業者に公知の他の方法を記載する。一例として、ブルーネイティブPAGEおよびウェスタンブロッティングを使用して、培養細胞から単離されたコラーゲンを特徴付け得る。
【0085】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されているが、網羅的であること、または開示された実施形態に限定されることを意図するものではない。記載された実施形態の範囲および精神から逸脱することなく、多くの修正および変形が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実際の用途または市場で見られる技術に対する技術的改善を最もよく説明するために、または他の者もしくは当業者が本明細書に開示される実施形態を理解することを可能にするために選択された。
【0086】
本開示またはその実施形態の要素を導入する場合、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、1つまたは複数の要素があることを意味することを意図している。同様に、形容詞「他の(another)」は、要素を導入するために使用される場合、1つまたは複数の要素を意味することを意図している。「含む(including)」および「有する(having)」という用語は、列挙された要素以外のさらなる要素が存在し得るように包括的であることを意図している。
【0087】
本発明をある程度具体的に説明してきたが、本開示は単なる例示としてなされたものであり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、部品の構造および配置の詳細の多くの変更に頼り得ることを理解されたい。
【国際調査報告】