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特表2023-548661熱間圧延された金属帯板を製造する装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-20
(54)【発明の名称】熱間圧延された金属帯板を製造する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/12 20060101AFI20231113BHJP
   B21B 1/46 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B22D11/12 A
B22D11/12 D
B22D11/12 Z
B21B1/46 B
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023521728
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2021078174
(87)【国際公開番号】W WO2022079027
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】102020212914.2
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021211339.7
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】キンチャー・ビェルン
(72)【発明者】
【氏名】シュピル・カースティン
(72)【発明者】
【氏名】クライン・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】グーカン・エラースラン
(72)【発明者】
【氏名】クライケマイアー・イェンス
【テーマコード(参考)】
4E002
【Fターム(参考)】
4E002AD02
4E002AD04
4E002BA01
4E002BA03
4E002BD02
(57)【要約】
圧延された金属帯板、好ましくは熱間圧延された金属帯板を製造する装置(1)であって、装置(1)は、スラブ(B)を製造して鋳造機の搬送ライン(CLC)に搬送するように構成された、鋳造機(10)と、スラブ(B)を圧延設備の搬送ライン(CLM)に沿って搬送する間に圧延によって相応の金属帯板へと変形するように構成された、圧延設備(50)と、鋳造機(10)と圧延設備(50)との間に配置されていて、スラブ(B)を、少なくとも圧延設備の搬送ライン(CLM)に沿って搬送し、圧延設備(50)に供給し、スラブ(B)の温度を圧延温度に合わせる、組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)と、鋳造機(10)と組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)との間に配置されていて、スラブ(B)の少なくとも1つの表面を加工及び/又は処理及び/又は検査するように構成された、表面装置(20)と、鋳造機(10)と組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)との間に配置されていて、スラブ(B)の温度を変更するように構成された、温度調整装置(30)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延された金属帯板、好ましくは熱間圧延された金属帯板を製造する装置(1)であって、
前記装置(1)は、
スラブ(B)を製造して鋳造機の搬送ライン(CLC)に搬送するように構成された、鋳造機(10)と、
スラブ(B)を圧延設備の搬送ライン(CLM)に沿って搬送する間に圧延によって相応の金属帯板へと変形するように構成された、圧延設備(50)と、
鋳造機(10)と圧延設備(50)との間に配置されていて、スラブ(B)を、圧延設備の搬送ライン(CLM)に搬送し又は圧延設備の搬送ライン(CLM)に沿って搬送し、圧延設備(50)に供給し、スラブ(B)の温度を圧延温度に合わせて調整するように構成された、組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)と、
鋳造機(10)と組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)との間に配置されていて、スラブ(B)の表面の少なくとも1つを加工及び/又は処理及び/又は検査するように構成された、表面装置(20)と、
鋳造機(10)と組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)との間に配置されていて、スラブ(B)の温度を変更するように構成された、温度調整装置(30)と、
を備える、装置(1)。
【請求項2】
温度調整装置(30)は、加熱装置(31)と冷却装置(32)とを具備する組合せ型の加熱兼冷却装置を有し、これにより、スラブ(B)は、温度調整装置(30)によって、選択的に加熱可能又は冷却可能であり、加熱装置(31)は、好ましくは誘導式の加熱装置を有する、及び/又は冷却装置(32)は、好ましくは、冷却剤を加えることによってスラブ(B)の急速冷却を実現するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
表面装置(20)は、スラブ(B)の少なくとも1つの表面を、研削及び/又はフライス加工及び/又はフレーム処理によって加工するように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)は、
1つ又は複数のロールテーブル(41)、及び/又は
1つ又は複数の断熱装置、及び/又は
1つ又は複数の誘導式の加熱要素(45)、及び/又は
1つ又は複数の炉(42、46)、及び/又は
鋳造機の搬送ライン(CLM)及び/又は圧延設備の搬送ライン(CLM)からスラブを搬出する1つ又は複数のスラブ搬出装置、及び/又は
鋳造機の搬送ライン(CLM)及び/又は圧延設備の搬送ライン(CLM)にスラブを搬入する1つ又は複数のスラブ搬入装置、
を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
鋳造機の搬送ライン(CLC)と圧延設備の搬送ライン(CLM)とが一致し、表面装置(20)と、温度調整装置(30)と、組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)とは、好ましくは相前後して同じ1つの搬送ラインに配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
鋳造機の搬送ライン(CLC)と圧延設備の搬送ライン(CLM)とが異なり、好ましくは互いに平行に延在し、組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)は、好ましくは、さらに、鋳造機の搬送ライン(CLC)から圧延設備の搬送ライン(CLM)へとスラブ(B)の搬送を行うように構成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
少なくとも部分的に異なる、スラブ(B)のプロセスラインを実現する複数のルートが設けられていて、表面装置(20)は、第1のルートに、温度調整装置(30)は、第2のルートに配置されているとともに、スラブ(B)は、表面装置(20)又は温度調整装置(30)を通過するように構成されていて、好ましくは、第3のルートが設けられていて、第3のルートに沿って、スラブ(B)は、表面装置(20)と温度調整装置(30)との両方を抜かし、直接に組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)に導入可能であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
圧延設備(50)は、熱間圧延設備であるとともに、スラブ(B)を、少なくとも部分的に鋳造機(10)の鋳造熱を基に変形するように構成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記装置(1)は、好ましくは鋳造されたスラブ(B)の合金及び/又は温度を含む、測定及び/又は演算されたプロセス変数に依存して、スラブ(B)のプロセスガイドを制御するように構成された制御装置(100)を備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
制御装置(100)は、温度調整装置(30)によって、
好ましくは亀裂に敏感な合金のスラブ(B)を、組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)に進入する前にスラブ表面温度が好ましくは600℃の下側の閾値(T)と好ましくは850℃の上側の閾値(T)とによって設定された臨界温度範囲(Tkritisch)外にあるように、加熱又は冷却するように、
構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
制御装置(100)は、鋳造機(10)によって鋳造されたスラブ(B)を、スラブ貯蔵部に一時貯蔵せずに圧延設備(50)に供給するように、構成されていることを特徴とする、請求項9又は10に記載の装置(1)。
【請求項12】
鋳造機(10)は、90mmから250mm、好ましくは110mmから200mmの範囲の厚さを有する中間スラブを鋳造するように構成されていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の装置(1)を用いて、圧延された金属帯板、好ましくは熱間圧延された金属帯板を製造する方法において、方法は、
a)鋳造機(10)を用いてスラブ(B)を鋳造する、ステップと、
b)スラブ(B)を組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)へ移送する、ステップと、
c)スラブ(B)を圧延設備(50)において熱間圧延して金属帯板を製造し、その際、鋳造後に圧延設備(50)への経路上でスラブ(B)の完全な冷却を行わず、好ましくはスラブの中心の温度が600℃より低下しない、ステップと、
を有する、方法。
【請求項14】
ステップa)に続いて、1つ又は複数のプロセス変数に依存して、スラブ(B)を直接に組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)に搬送し、温度調整装置(40)による温度調整を行う、及び/又は表面装置(20)によるスラブ(B)の少なくとも1つの表面の加工及び/又は処理及び/又は検査を行うことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
スラブは、90mmから250mm、好ましくは110mmから200mmの範囲の厚さを有する中間スラブであることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延された金属帯板、好ましくは熱間圧延された金属帯板を製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造、すなわち鉄合金及び/又は非鉄合金からなるスラブなどの半製品を製造する連続的な鋳造方法では、金属は、大抵は冷却された金型を通して鋳造され、外殻が凝固しているが中心が依然として液状の状態で、下方へ、側方へ又はカーブして搬出される。続いて、通常、スラブ貯蔵部で冷却した後、スラブは、圧延装置に投入され、そこで金属帯板へと変形される。
【0003】
鋳造/圧延設備の技術的な構造及び要求は、鋳造/圧延設備が40mmから110mm程度の厚さ範囲のいわゆる「薄スラブ」、110mmから200mm程度の厚さの範囲のいわゆる「中間スラブ」又はそれより厚いいわゆる「厚スラブ」を製造するように設計されているかに応じて異なる。薄スラブを連続鋳造及びさらに処理する設備は、例えば欧州特許出願公開第0808672号明細書から理解される。
【0004】
これらの設備は、典型的には、生産の重点に合わせて設計されていて、これにより、代替的な製品に対しては適応しない又はほとんど適応しない。よって、鋳造厚さ、すなわち薄スラブ又は中間スラブの、合金特有の製造は、合金特有の鋳造速度に関連し、この場合、全ての合金は、薄スラブの製造に適している。製品の後の利用目的に応じて、目標厚さ及びプロセスガイドが変更される。例えば、圧延工程の開始前、様々な圧延工程の間及び仕上げ圧延後の温度ガイドは、材料特性を設定するための重要なプロセスステップである。鋳造プロセスと圧延プロセスとが連結されていると、利用可能な構成群によって、実施可能なプロセスステップが決定される。
【0005】
従来の熱間広幅帯板ラインで製品の多様性を向上するために、圧延材を、鋳造熱を基に変形するのではなく、スラブ貯蔵部において完全に又は部分的に冷却し、これにより、スラブの鋳造とさらなる処理、特に圧延との間の技術的な分離が行われることが公知である。しかし、これに起因して、機械的な、エネルギ及びロジスティクスに関する欠点が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0808672号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、圧延された金属帯板、好ましくは熱間圧延された金属帯板を製造する改善された装置及び改善された方法を提供し、特に鋳造と圧延との間を技術的に分離することなく、処理可能な製品の多様性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を有する装置と並列する方法請求項の特徴を有する方法とによって解決される。有利な発展形は、従属請求項、本発明の以下の説明及び好適な実施例の記述から明らかである。
【0009】
本発明に係る装置は、圧延された、特に熱間圧延された金属帯板の製造に用いられる。この場合、金属、特に金属合金、好ましくは鋼からなる製品が鋳造及び処理される。装置は、好ましくは、90mmから250mm、好ましくは110mmから200mmの範囲の厚さを有する中間スラブを製造及びさらなる処理がなされるように設計されている。
【0010】
装置は、スラブを製造して鋳造機の搬送ラインに搬送するように構成された、鋳造機を備える。鋳造機は、好ましくは、「Bogencaster」とも称される垂直曲げ設備として実現されている。鋳造機は、しかし、後でスラブに分断し、さらなる処理のできる鋳造ラインを提供する場合には、他の形で実現されてもよい。
【0011】
装置は、スラブを圧延設備の搬送ラインに沿って搬送する間に圧延によって相応の金属帯板へと変形するように構成された、圧延設備をさらに備える。2つの搬送ライン、つまり鋳造機の搬送ラインと圧延設備の搬送ラインとは、一致してよく、又は異なってよく、後者の場合、鋳造機から圧延設備までの経路上で、スラブの適切な横方向搬送が行われなければならない。圧延設備は、通常の形で1つ又は複数の圧延スタンドを有し、好ましくは4本構造で、それぞれ2本のワークロールと2本のバックアップロールとを有し、可逆式に又はタンデム式に運転できる。圧延設備は、粗圧延ライン及び/又は仕上げラインを有してよい、又はそのようなものとして構成されてよい。特に好適には、圧延設備は、熱間圧延設備であり、そこでは、少なくとも部分的に鋳造熱を基にスラブの変形が行われる、つまりこの場合、鋳造後に圧延設備への経路上でスラブの完全な冷却は行われない。
【0012】
装置は、鋳造機と圧延設備との間に配置されていて、スラブを、圧延設備の搬送ラインに搬送し又は圧延設備の搬送ラインに沿って搬送し、圧延設備に供給し、スラブの温度を(適切な)圧延温度に合わせて調整するように構成された、組合せ型の搬送兼温度調整装置(ここでは略して「KTT」とも称される)をさらに備える。KTTは、主に、必要な温度で圧延設備へスラブをロジスティクス的に供給するのに用いられる。必要な温度は、一般的に、例えば合金などのプロセス変数に依存する。用語「温度」には、本発明の関連において、例えば表面温度及び中心温度などの絶対温度だけでなく、温度分布も含まれる。
【0013】
例えば「間」「鉛直」、「水平」、「上」、「下」、「上流」、「下流」、「前」、「後」などの空間関係の用語は、装置の構造及び特定の使用並びに鋳造ストランド又はスラブの搬送によって一義的に規定されることに留意されたい。前述の記載で規定したKTTが鋳造機と圧延設備との間に配置されていると、そこには、例えば、鋳造機によって製造されたスラブがKTTを通って、その後で圧延設備によって所望の金属帯板へと変形するために搬送されるという情報が含まれる。
【0014】
装置は、鋳造機とKTTとの間に配置されていて、スラブの少なくとも1つの表面を加工及び/又は処理及び/又は検査するように構成された、表面装置をさらに備える。ゆえに、表面装置は、例えば、特別な表面要求を有する製品の製造に用いられる材料を除去する表面加工を含んでよい。そのような製品表面の特別な要求は、例えば自動車外板、電磁鋼板としての使用又は光学用途に対して課せられる。代替的又は付加的に、表面装置は、鋳造プロセスの結果場合によっては生じる表面欠陥を取り除くように構成されてよく、その結果、表面欠陥は、たとえば圧延などのさらなるプロセスステップが行われる前に除去される。このことは、この場合、単純なデスケーリングを超える表面加工であることを意味する。代替的に又は付加的に、表面装置は、検査装置を有してよく、検査装置は、接触により又は非接触式にスラブの表面特性を検出するように構成されている。
【0015】
装置は、鋳造機とKTTとの間に配置されていて、スラブの温度を変更するように構成された、温度調整装置をさらに備える。温度調整装置は、とりわけ、亀裂に敏感な製品、例えば微細合金鋼を製造するときに利用される。そのような合金が鋳造プロセスの直後にKTTに進入する場合には、縁付近の層に微細合金の所望されない析出が生じ得、微細合金は、後続ステップで、亀裂発生又は他の品質狂いをもたらしてしまう。
【0016】
スラブは、鋳造装置とKTTの間の前述の全てのステーションを通過しなくてよい。むしろ、ステーションは、製品又は用途に関して製造プロセスに組み込んでよい又はそこから外してよい。ゆえに、スラブは、表面装置若しくは温度調整装置を通過してよい、又はこれら2つを通過しなくてよい。この場合、2つのステーションを同じ1つのラインに相前後して配置しなくてよく、これらのステーションを並列に組み付けてよく、その際、スラブに対して適切なルート決定がなされる、又はスラブは、必要に応じてラインに進入可能である。必要に応じて、代替的に、並列配置又はインライン配置が設定されてよい。
【0017】
前述の、金属帯板、特に熱間圧延された金属帯板を製造する装置は、製品の多様性の観点から、高度に柔軟に使用可能であると同時に、最小のエネルギ消費量で間に合う。これにより、製造プロセスを中断することなく、装置は、製品の多様性の従来の限界を解消する。装置は、同様に微細合金鋼のみならず特別な表面品質のために設けられる極めて軟質の材料も申し分なく、中断せずにそして技術的な制限なく処理できる。設備レイアウトに応じて、極めてコンパクトな配置及び/又は生産モードを実現できる。
【0018】
好ましくは、温度調整装置は、加熱装置と冷却装置とを具備する組合せ型の加熱兼冷却装置を有し、これにより、スラブは、温度調整装置によって、選択的に加熱又は冷却できる。この場合、加熱装置は、好ましくは1つ又は複数の誘導式の加熱装置を有する。冷却装置は、冷却剤、好ましくは冷却水を加えることによってスラブを急速冷却するように構成されてよい。加熱装置と冷却装置とは、相前後して又は並列に設置されてよく、この場合、加熱装置と冷却装置とは、好ましくは共通の構成群を形成する。そのように構成された温度調整装置は、コンパクトで柔軟に、処理されるべきスラブの表面温度を、スラブ貯蔵部における一時貯蔵及び完全な冷却を必要とすることなく、迅速に所望の温度範囲にする又は不都合な温度範囲外へもたらすことを可能にする。中心の熱は、少なくとも部分的に維持でき、後で圧延に利用してよい。
【0019】
好ましくは、表面装置は、スラブの少なくとも1つの表面を、研削及び/又はフライス加工及び/又はフレーム処理によって加工するように構成されている。表面加工は、加工されるべきスラブの少なくとも1つの表面で行われ、その際、好適には、スラブの上面及び下面だけでなく長辺も加工される。表面ごとの材料除去は、例えば0mmから10mmの範囲、好適には1mmから3mmの範囲にある。表面加工は、好ましくは、600℃を超える、特に好適には900℃を超えるスラブ表面温度で行われる。
【0020】
KTTは、考えられる様々な構成で提供してよい。KTTは、好ましくは、1つ又は複数のロールテーブル、及び/又は1つ又は複数の断熱装置、及び/又は1つ又は複数の誘導式の加熱要素、及び/又は1つ又は複数の炉、及び/又は鋳造機の搬送ライン及び/又は圧延設備の搬送ラインからスラブを搬出する1つ又は複数のスラブ搬出装置、及び/又は鋳造機の搬送ライン及び/又は圧延設備の搬送ラインにスラブを搬入する1つ又は複数のスラブ搬入装置、を有する。
【0021】
KTTの構造は、好ましくは、温度調整の種類及びロジスティクスに関して可変である。簡単な変化形では、KTTは、スラブの温度均一化と搬送との両方を行うローラーハース炉を有する。代替的な変化形では、KTTは、搬送要素として、少なくとも1つの、好適には複数の誘導式の加熱要素と組み合わされた、好適には断熱装置を具備するロールテーブルを有する。代替的又は付加的に、KTTは、相前後して配置された複数のウォーキングビーム炉を有してよく、これにより、極めてコンパクトな構造が得られる。さらに、KTTは、技術的に分離した鋳造機と圧延設備との間のインタフェースとして機能してよい。そのために、スラブを鋳造機の搬送ラインから圧延設備の搬送ラインへと移送するための技術的手段(ロールテーブル、スラブ移送装置、搬送用ビームなど)が設置されてよい。他の源から適切な搬送ラインへのスラブの進入又は搬送ラインから外へのガイドは、この柔軟な配置によって同様に可能となる。
【0022】
一実施例によれば、鋳造機の搬送ラインと圧延設備の搬送ラインとは、同一である。代替的な実施例によれば、鋳造機の搬送ラインと圧延設備の搬送ラインとは異なり、この場合、鋳造機の搬送ラインと圧延設備の搬送ラインとは、好ましくは平行して延在し、これにより、設備は、特にコンパクトに実現可能である。
【0023】
いずれの場合も、表面装置、温度調整装置及び少なくともKTT全体を形成するまで部分は、相前後して同じ1つの搬送ラインに位置決めされてよい。
【0024】
好ましくは、少なくとも部分的に異なる、スラブのプロセスラインを実現する複数のルートが設けられている。この場合、表面装置は、第1のルートに配置されていて、温度調整装置は、第2のルートに配置されていて、スラブは表面装置又は温度調整装置を通過するが両方を通過しないように構成されている。この場合、スラブは、表面装置と温度調整装置との両方を迂回する、つまり両方を抜かして、直接に鋳造に続いて組合せ型の搬送兼温度調整装置に導入可能であることによって、バイパスとして機能する第3のルートがさらに設けられてよい。ルート決定は、例えばスラブの合金又は温度などのプロセス変数に依存して、又は例えば圧延された製品の意図された使用例から生じる品質要求に依存して、バッチごとに、製品ごとに又はスラブ別になされてよい。
【0025】
好ましくは、圧延設備は、熱間圧延設備であり、熱間圧延設備は、スラブを少なくとも部分的に鋳造機の鋳造熱から出発して変形するように構成されている。この場合、装置は、総じて、鋳造の後で圧延設備への経路上でスラブの完全な冷却が行われないように構成されている。特に、スラブをスラブ貯蔵部へ搬出しない。スラブは、ほぼ連続的に「動いている」。生産の進行は、鋳造機の生産サイクルにより設定される。
【0026】
装置は、この場合、柔軟性を犠牲にすることなく、特にコンパクトで省エネルギに実現可能である。このような理由から、後述する制御装置は、好ましくは、鋳造機によって鋳造されたスラブをスラブ貯蔵部に一時貯蔵することなく圧延設備に供給するように構成されている。この場合、「スラブ貯蔵部に一時貯蔵」とは、圧延前にスラブ中心を含むスラブを実質的に完全に冷却する、スラブのプロセスガイドのあらゆる中断と解される。例えば熱機械式の圧延におけるようなプロセスガイドの範囲内の温度低下は、一時貯蔵とは解されない。
【0027】
好ましくは、装置は、好ましくは鋳造されたスラブの合金及び/又は温度を含む、測定及び/又は演算されたプロセス変数に依存してスラブのプロセスガイドを制御するように構成された、制御装置を備える。
【0028】
制御装置は、装置の、制御されるべき及び/又は読み出されるべき構成要素に、したがって特に鋳造機、表面装置、温度調整装置、KTT及び圧延設備に、信号技術的に接続されている。制御装置と、制御されるべき及び/又は読み出されるべき設備構成要素との間の通信は、有線又は無線で、デジタル又はアナログで行える。制御装置は、相応して信号(制御信号、データーなど)を受信及び/又は送信してよく、その際、一方向と双方向との両方の信号伝送が、本明細書の関連において用語「通信」に含まれる。この場合、制御装置は、必ずしも中央演算装置又は電子制御装置によって実現されなくてよく、分散システム及び/又は多段システム、制御ネットワーク、クラウドシステムなどが含まれる。さらに、制御部は、上位の設備制御部の組み込まれた構成要素であってよく、又はそのような構成要素と通信してよい。
【0029】
制御装置は、好ましくは1つ又は複数のプロセスモデル、又は1つ又は複数のプロセスモデルに通じる少なくとも1つのインタフェースを有する。ゆえに、制御装置は、例えば鋳造機のプロセスモデル及び圧延設備のプロセスモデルと通信できる。制御装置は、好ましくは、鋳造機から圧延設備までのプロセスガイドとプロセス温度とを作り出すように構成されている。この場合、例えばスラブ温度又は最終圧延温度などの関連データが、鋳造機のプロセスモデル及び圧延設備のプロセスモデルから制御装置に通信される。このようにして、製造ステップを決定し、これに対応するステーションの設定に影響を及ぼすデータが取得される。
【0030】
好ましくは、制御装置は、温度調整装置によって、スラブ(特に亀裂に敏感な合金)を、組合せ型の搬送兼温度調整装置に進入する前に、スラブ表面温度が好ましくは600℃の下側の閾値と好ましくは850℃の上側の閾値とによって設定された臨界温度範囲外にあるように、加熱又は冷却するように、構成されている。そのような場合、温度調整装置は、温度調整装置を通過するスラブを選択的に加熱又は冷却するので、スラブ表面温度が臨界温度範囲外にあることが保証される。このことは、好ましくは温度調整装置の上流側で測定された又は他の手段で求められたスラブ表面温に依存して行われる。制御装置が、場合によっては対応する温度センサ又は演算モデルと協働して、温度調整装置の入口におけるスラブ表面温度が上側の閾値を上回る又は下側の閾値を下回ることを特定すると、温度調整装置による温度調整は不要である。スラブ表面温度が臨界温度範囲内にあると、スラブが温度範囲からどの方向にもたらされ得るかに応じて、スラブは、温度調整装置によって加熱又は冷却される。両方で可能であるとき、温度調整装置によるスラブの加熱が好適である。
【0031】
上述の課題は、さらに、圧延された金属帯板、好ましくは熱間圧延された金属帯板を製造する方法によって解決される。この方法は、前述の実施の形態の1つによる装置を用いて行われる。方法は、鋳造機を用いてスラブを鋳造する、ステップと、スラブをKTTに移送する、ステップと、スラブを圧延設備において熱間圧延して金属帯板を製造し、その際、鋳造後に圧延設備への経路上でスラブを完全に冷却することなく、好ましくはスラブの中心の温度が600℃より低下しない、ステップと、を有する。
【0032】
装置に関連して記述された技術的効果、利点及び実施形態は、同じことが方法にも当てはまる。
【0033】
一実施例によれば、ステップa)に続いて、1つ又は複数のプロセス変数に依存して、スラブを、直接に組合せ型の搬送兼温度調整装置に搬送する、又は温度調整装置による温度調整及び/又は表面装置によるスラブの少なくとも1つの表面の加工及び/又は処理及び/又は検査を行う。
【0034】
本発明の他の利点及び特徴は、好適な実施例の以下の記述から明らかである。そこに記述された特徴は、特徴が矛盾しない限り、単独で又は前述の特徴の1つ又は複数と組み合わせた形で実行してよい。この場合、好適な実施例の以下の記述は、添付の図面を参照して行われる。
【0035】
本発明の好適な別の実施形態を、図面の以下の記述によってさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】金属帯板、特に熱間圧延された金属帯板を製造する装置の概略図を示す。
図2】鋳造機の概略図を示す。
図3】別の実施例による熱間圧延された金属帯板を製造する装置の概略図を示す。
図4a】様々な実施例による組合せ型の搬送兼温度調整装置の概略図を示す。
図4b】様々な実施例による組合せ型の搬送兼温度調整装置の概略図を示す。
図4c】様々な実施例による組合せ型の搬送兼温度調整装置の概略図を示す。
図4d】様々な実施例による組合せ型の搬送兼温度調整装置の概略図を示す。
図4e】様々な実施例による組合せ型の搬送兼温度調整装置の概略図を示す。
図5】一実施例による制御装置100の構成、通信及び機能方式の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
好適な実施例の詳細な記述
以下、図面に基づいて、好適な実施例を記述する。この場合、図面にある同一、同等又は同一作用の要素には、同一の符号が付されていて、これらの要素の繰り返しの記述は、冗長性を回避するために一部省略される。
【0038】
図1は、金属帯板、特に熱間圧延された金属帯板を製造する装置1の基本構造を概略的に示す。
【0039】
装置1は、鋳造機10を有する。鋳造機10は、好ましくは「Bogencaster」とも称される垂直曲げ設備として実現されている。しかも、鋳造機10は、後でスラブに分断され、さらなる処理がなされてよい鋳造ストランドを提供する限り、他の形態で実現されてもよい。さらに、複数のストランドを並行して鋳造する複数の鋳造機10が設けられてよい、又は鋳造機10は、並行する複数のストランドを鋳造するように構成されてよい。
【0040】
図2は、例示的な鋳造機10を概略的に示す。鋳造されるべき液状の金属は、例えば取鍋から、鋳造機10の金型11に供給される。金型11は、溶湯を、冷却された金型の壁によって徐々に外側から内側へ凝固する間に、所望のスラブ形状にする。金型11は、好ましくは銅板(又は被覆されてよい銅合金の板)からなる金型であり、中間スラブの場合、例えば140mm以上の比較的大きな鋳造厚さに対して適合された、長辺側及び短片側で面平行な複数の板を有する。銅板は、鋳造厚さ又は鋳造半径によって必要とされるとき、漏斗状の輪郭を有してよい、及び/又は搬送方向にストランドガイド12の鋳造半径に応じてカーブしてよい。
【0041】
まだ完全に凝固していない鋳造ストランドSは、金型11から下方へ退出し、続いて、搬送方向にストランドガイド12に沿って、まずは引き続き下方へガイドされ、これに続いてカーブ領域で水平方向に方向転換され、その間に徐々に冷却される。鋳造機10における搬送方向は、一般的に一定の方向ベクトルを意味するものではなく、装置100に沿ったストランド位置又はスラブ位置に依存し得ることに留意されたい。水平方向へ方向転換された後、鋳造ストランドSは、鋳造機の搬送ラインCLCに沿って送られる。
【0042】
ストランドガイド12は、ロール13を有する。ロール13は、鋳造ストランドSを搬送し、LCR(「Liquid Core Reduction」)又はDSR(「Dynamic Soft Reduction」)による厚さ減少のために、鋳造ストランドが搬送方向に沿って搬送される搬送ニップが徐々に狭くなるように、接近調整されてよい。ストランドガイド12は、例えばストランドガイド12のカーブ領域を形成する、構造が類似する2つ以上の湾曲したセグメントによって、セグメント状に構成されてよい。搬送中、鋳造ストランドSは、二次冷却の範囲内で、例えば水噴射によって能動的又は受動的に冷却され、これにより、鋳造ストランドSは、外側から内側へ徐々に凝固する。
【0043】
鋳造機10、特にストランドガイド12に起因する鋳造ストランドSの造形は、例えば圧延設備などの変形ユニットによる造形を意味する「変形」とは異なり、「成形」と称される。
【0044】
鋳造機10のカーブ領域に矯正領域が続く。矯正領域では、鋳造ストランドSが、水平の向きに整列される。ここでも依然として鋳造ストランドSのガイド及び搬送のためのロール13が設けられている。1つ又は複数のロール13は、駆動ロールであり、鋳造ストランドSを搬送方向に駆動し、他のロール13は、鋳造ストランドSのガイド及び整列に用いられる。その点において、ロール13は、鋳造ストランドSを駆動する及び曲げる手段を形成する。鋳造機の下流側に、別の装置が配置されてよい。
【0045】
装置1は、分離装置14をさらに有する。分離装置14は、鋳造機10の矯正領域の下流側に、搬送ラインCLCに配置されている。分離装置14は、鋳造ストランドSをスラブBに切断又は分断するのに用いられる。切断は、スラブ厚さに沿って行われる。「スラブ厚さ」とは、スラブBの長手延伸部分に垂直でかつ幅(図2では図平面に直交する)に垂直の、スラブBの各寸法である。この場合、分離装置14は、鋳造ストランドSを、搬送中に、つまり搬送ラインCLCに沿って鋳造ストランドSが動く間に切断するように、構成されている。好ましくは、分離装置14は、シャー、特にペンドラムシャーである。この場合、シャーは、切断工程中の鋳造ストランドSの搬送移動に追従し、1つ又は複数の切断ブレードがストランドを1つの動作で鋳造ストランドSに対して鉛直に切断するように、構成されている。シャーは、切断トーチとは異なり、切断時間が5分以内で、好ましくは1分以内であり、スラブ先端/後端のバリ取りが不要であるという利点を有する。
【0046】
鋳造されるべきスラブBは、好ましくは、中間スラブ、すなわち約90mmから250mm、好ましくは110mmから200mmの範囲の厚さを有するスラブBである。鋳造速度は、好ましくは0.5m/minから7m/minの範囲、特に好適には1m/minから4.8m/minの範囲にある。
【0047】
分離装置14の上流側又は下流側に、例えば冷間ストランド揺動部材として構成された離脱装置15が設けられてよい。離脱装置15は、鋳造ストランドSを、必要に応じて、例えば設備の始動時、プロセスラインから外へ離脱できるように、構成されている。
【0048】
装置1は、1つ又は複数のデスケーリング装置16を有してよい。デスケーリング装置16は、構成に応じて、分離装置14の上流側及び/又は下流側に配置さている。
【0049】
好ましくは誘導式の、ガスバーナを有する又は電気式に作動する1つ又は複数の加熱装置17が、プロセスライン内の様々な位置に設置されてよい。加熱装置17は、単独で又は組み合わせた形で、加熱装置31の役割を担える。好ましくは、1つ又は複数の加熱装置17は、大体において、分離装置14又は設けられている場合には離脱装置15の直ぐ上流側及び/又は分離装置14の下流側に位置する。この種の加熱装置17は、一方では、冷却区間の短縮に貢献し、他方では、スラブロジスティクスを簡素化する。
【0050】
鋳造機10の下流側に、空間的にその近くに、スラブ品質、例えばスラブBの表面を検査する検査システム18をさらに設置してもよい。
【0051】
図1に戻ると、装置1は、好ましくは熱間圧延設備である圧延設備50をさらに有する。圧延設備50は、好ましくは、ロールニップを形成するそれぞれ2本のワークロールと2本のバックアップロールとをそれぞれ具備する4本構造の1つ又は複数の圧延スタンドを有し、可逆式に又はタンデム式に運転できる。圧延設備50は、粗圧延ライン及び/又は仕上げ圧延ラインとして構成されてよい。圧延設備50を通るスラブBの搬送経路は、鋳造機の搬送ラインCLCと一致してよい(図3図4a、図4b、図4c)又は鋳造機の搬送ラインCLCとは異なってよい(図4d及び図4e)搬送ラインCLMに沿って行われる。
【0052】
プロセス技術的に、鋳造機10と圧延設備50との間に、図1の実施例によれば、表面装置20と温度調整装置30と組合せ型の搬送兼温度調整装置40(ここでは略して「KTT」とも称される)とを有する構成群からなる組合せが位置する。構成群の性質及び空間配置は、以下の実施例に基づいて示されるように変更可能である。構成群20、30、40の組合せは、装置1が様々な製品、特に表面が敏感な製品と温度に敏感な製品との両方の処理を個別のプロセスステップに沿って実現できるように、選択されていて、この場合、製品は、鋳造プロセスに直接に続いて、すなわち特に製品をスラブ貯蔵部に一時貯蔵することなく圧延プロセスに供給される。
【0053】
表面装置20、温度調整装置30及びKTT40の他に、鋳造機10と圧延設備50との間に、別の構成群、例えば別の分離装置、非常用ロールテーブル、付加的な加熱/冷却要素、断熱フード、一般的な搬送ロールテーブルなどが配置されてよい。そのような構成群/装置の配置は、好適には、鋳造機10とKTT40との間で行われる。
【0054】
図1の実施例では、表面装置20と温度調整装置30とは、並列に配置されていて、ゆえにスラブBに対する択一的なルートを形成する。さらに、第3のルートが設けられていて、第3のルートは、スラブBが、表面装置20と温度調整装置30との両方を迂回し、つまり抜かし、鋳造に直接に続いてKTT40に導入可能であることによって、バイパスとして機能する。
【0055】
図3は、表面装置20と温度調整装置30とKTT40とが同じ1つの搬送ラインに配置された代替的な実施例を示す。例示的には鋳造機10の出口の直ぐ下流側に、好ましくは誘導式の加熱要素の形態の付加的な加熱装置60がさらに設けられている。これにより、特別にゆっくりと鋳造されたスラブBに対して、温度ガイドにとってさらに柔軟であるという利点が得られる。さらに、前述の分離装置14が、鋳造機10の構成群として又は別個にプロセスラインに設置されてよい。非常事態/故障に対処するために、別の分離装置70が設置されてよく、これにより、鋳造機から退出する鋳造ストランドSがさらに分断及び搬出される。
【0056】
制御装置100が設けられている。制御装置100は、様々な構成群10、20、30、40、50、アクチュエータ、センサなどと通信し、プロセス変数、例えば鋳造された製品の合金及び温度に依存してプロセスガイドを制御するように、構成されている。
【0057】
鋳造プロセスに直接に続いて、つまりスラブBをスラブ貯蔵部に一時貯蔵することなく、熱間圧延された金属帯板を製造する方法は、以下の、a)鋳造機を用いて所定の合金及び寸法を有するスラブBを製造する、ステップ、b)スラブBをKTT40へ移送する、ステップ、c)圧延設備50においてスラブBを帯板へと熱間圧延する、ステップ、を有してよい。この場合、圧延設備50における変形は、少なくとも部分的に鋳造熱を基に行われる、つまり、鋳造後圧延設備50への経路上でスラブBの完全な冷却は行われない。したがって、前述の「鋳造プロセスに直接に続いて」との用語は、スラブ貯蔵部へのスラブBのロジスティクス的な搬出を行わず、スラブの中心のスラブ温度は、好ましくは600℃より低下しないことを意味する。スラブは、ほぼ連続的に「動いて」いる。生産経過は、鋳造機の生産サイクルによって設定される。
【0058】
ステップa)とステップb)との間で、制御装置100からの信号に応じて、別の加工ステップを導入してもよい。換言すると、鋳造プロセスに続いて、スラブBを、表面装置20若しくは温度調整装置30を通って、又は両方を迂回して直ちにKTT40に搬送するためにルートを決定してよい。ルート決定は、例えば測定又は演算された少なくとも1つのプロセス特性値に依存して、製品バッチに対して又はスラブごとに個別に手動又は自動で行ってよい。図1の実施例では、ルート決定には、少なくとも部分的に異なる搬送経路が含まれ、これに対して図3の場合、ルート決定は、専ら、対応する構成群20、30、40などによるスラブBの選択的な加工又は非加工に関する。代替的又は付加的に、構成群20、30、40の1つ又は複数が、必要に応じてプロセスラインに進入可能である又はプロセスラインから退出可能である。
【0059】
表面装置20は、スラブBの1つ又は複数の表面の加工及び/又は処理及び/又は点検を行う設備である。
【0060】
したがって、表面装置20は、例えば表面要求が特別な製品の加工に用いられるような材料を除去する表面加工を含んでよい。製品表面のそのような特別な要求は、例えば自動車外板又は電磁鋼板として使用するために、又は光学用途において課せられる。代替的又は付加的に、表面装置20は、鋳造プロセスの結果として場合によっては生じる表面欠陥が取り除かれるように構成されてよく、その結果、表面欠陥は、例えば圧延など別のプロセスステップが行われる前に除去される。要するに、この場合、このことは、単なるデスケーリングを超える表面加工である。
【0061】
表面加工は、加工されるべきスラブBの少なくとも1つの表面で行われ、その際、好適にはスラブBの上面及び下面のみならず長辺も加工される。表面ごとの材料除去は、好ましくは0mmから10mm、特に好適には1mmから3mmの範囲にある。この場合、スラブBの送り速度は、5m/minから50m/minの範囲にあってよい。表面加工は、好ましくは、600℃を超える、特に好適には900℃を超えるスラブ表面温度で行われるので、表面加工のためにスラブBをスラブ貯蔵部に搬出して冷却する必要がない。
【0062】
表面装置20は、好ましくはフレーム装置である。フレーム装置は、スラブBの該当する表面から材料を除去するような加工を行うように構成されている。代替的な実施例によれば、表面装置20は、1つ又は複数のスラブ表面を切削加工する研削装置又はフライス盤を有してよい。代替的又は付加的に、表面装置20は、検査装置を有してよい。検査装置は、スラブBの表面特性を接触により又は非接触式に検出するように、構成されている。そのようにして求められた表面情報は、制御装置100によって、さらなるプロセスガイドに利用できる。
【0063】
表面装置20は、プロセス技術的に、一時貯蔵なしで実現されている。装置1のレイアウトを見ると、このことは、表面装置20が鋳造機の搬送ラインCLCに配置されていることを意味する。場合によっては、表面装置20は、使用されないときにはプロセスラインから離反可能に構成されてよい。代替的に、表面装置20は、プロセスラインの外側に、ただしプロセスラインの傍に配置されてよいので、スラブBは、加工のためにプロセスラインから外へ搬出され、続いて再び戻される。好適には、この場合、スラブBは、600℃を超えるスラブ表面温度で戻される。
【0064】
温度調整装置30は、好ましくは、加熱装置31と冷却装置32とを具備する組合せ型の加熱兼冷却装置を有する。
【0065】
温度調整装置30は、特に、亀裂に敏感な製品、例えば微細合金鋼を製造するときに使用される。そのような合金が鋳造プロセス直後に、要するに特定の温度範囲でKTT40に進入すると、縁付近の層に微細合金の所望されない析出が生じ得、これは、さらなるステップで亀裂発生又は他の品質欠陥を招いてしまうことがある。この臨界温度範囲は、スラブBの表面温度に関係し、下側の閾値Tと上側の閾値Tとを有するTkritischと表記される。亀裂に敏感な合金の大部分について、Tは約600℃であり、Tは約850℃である。
【0066】
温度調整装置30は、亀裂に敏感な製品の場合、温度調整装置30を通過するスラブBを選択的に加熱又は冷却するので、スラブ表面温度が臨界温度範囲Tkritisch外にあることが保証される。そのために、制御装置100は、加熱装置31又は冷却装置32を適切に制御して、スラブBの表面温度が前述の温度範囲に入らないようにする。このことは、測定された又は他の手段で求められたスラブ表面温度に依存して行われる。制御装置100が、場合によっては対応するセンサと協働して、温度調整装置30の入口でスラブ表面温度がTより高い又はTより低いことを特定すると、温度調整装置30による温度調整は不要である。スラブ表面温がTkritischの内側にあると、スラブBは、温度調整装置30によって、温度範囲Tkritischからどの方向にスラブBを合理的にもたらせばよいかに応じて、加熱又は冷却される。両方の方向が考えられるとき、温度調整装置30によるスラブBの加熱が好適である。
【0067】
加熱装置31は、好ましくは誘導式の加熱装置であり、これにより、コンパクトな構造形態で加熱出力の迅速で個別の調整が可能になる。代替的又は付加的に、ガス又は電気で運転される連続炉が使用されてもよい。
【0068】
冷却装置32は、好ましくは、冷却剤、好ましくは冷却水を掛けることによるスラブBの急速冷却が実現されるように構成されている。好ましくは3mから10m、特に好適には4mから6mの冷却区間長さにおいて掛けられる、掛けられる冷却水量は、好ましくは500m/h/m、特に好適には650m/h/mを上回るので、様々なスラブ速度で、Tを下回る温度への表面付近の温度の低下が行われる。本明細書の関連において「表面付近」とは、スラブ表面から15mmまでの浸透深さを意味する。冷却水の作用時間は、好ましくは3分より短い。急速冷却に対して代替的又は付加的に、ラミナ冷却又は他の冷却装置が設置可能である。
【0069】
表面付近の冷却の利点は、スラブBの中心温度に影響が及ぼされない又はほとんど影響が及ぼされない一方、表面温度が、微細析出物に基づく亀裂発生が回避される温度へと低下することにある。中心温度が低下しない又はほとんど低下しないことによって、所望の熱間圧延温度への後の時点でのスラブBの再加熱が容易になり、この場合、スラブ貯蔵部から到来する完全に冷めたスラブBの加熱と比べて、必要な加熱出力及び加熱時間を最小化できる。これは、大幅なエネルギ節約につながる。
【0070】
温度調整装置30の加熱装置31は、ケイ素鋼の製造にとってもやはり有利である。というのも、全体の温度を所望の水準に維持でき、最終圧延温度を確保するために設定しなければならない熱間圧延前の温度設定があまり変動しないからである。スラブBが凝固するときに表面に析出した窒化アルミニウムは、熱間圧延時に再び的確に析出されるように、再溶解され、そこに保持される。したがって、窒化アルミニウムの溶解に必要な所要時間は、様々なユニットに、つまり温度調整装置30と後述するKTT40とに分けられるので、プロセスガイドの柔軟化、設備レイアウトの短縮及びKTT40内の滞留時間の短縮が実現可能である。
【0071】
組合せ型の搬送兼温度調整装置40は、合金に依存する、プロセス技術的に必要な又は所望の温度及び温度分布で、圧延設備50にスラブをロジスティクス的に供給するのに用いられる。スラブBの温度調整とロジスティクスな搬送とが同時に行われる。
【0072】
スラブBが直接に鋳造機10からKTT40に送られるか又は例えば表面加工及び/又は温度調整などのプロセス技術的な中間ステップが行われるかに応じて、KTT40への個別の進入温度が生じる。したがって、KTT40における加熱出力及び/又はスラブBの滞留時間は、好ましくは、KTT40の出口で、圧延設備50の入口での適切な圧延温度を確保する温度が維持されるように、適合可能である。
【0073】
KTT40の制御は、制御装置100によって行われる。制御装置100は、場合によっては以前に実行されたプロセスステップを考慮する。
【0074】
KTT40の構造は、好ましくは、温度調整の種類とロジスティクスとに鑑みて変更可能である。これについて、以下に、実施例に基づいて説明する。
【0075】
第1の簡単な変化形では、KTT40は、スラブBの温度均一化と搬送との両方を行うローラーハース炉を有する。ローラーハース炉の使用によって、炉ローラに蓄積されたスケールによって製品に表面欠陥及び/又は移動痕を生じさせてしまうことがあり、したがって、特に亀裂に敏感な製品及び/又は表面に敏感な製品に鑑みると、KTT40について代替的な構造形態を考慮することが有意義であり得る。
【0076】
図4aは、そのような代替的な変化形を示し、ここでは、KTT40は、少なくとも1つ、好適には複数の誘導式の加熱要素45と組み合わされた、搬送要素としての、好適には断熱装置を具備するロールテーブル41を有する。加熱要素45は、ロールテーブル区間全体に設置されてよい。誘導式の加熱要素45を多数配置することによって、温度の個別の調整を、特に容易に実行できる。
【0077】
図4aによる機械構造的に簡単な変化形は、特に、鋳造機の搬送ラインCLCと圧延設備の搬送ラインCLMとが同一である設備構成に適しているコンパクトな構造を可能にする。鋳造機10の搬送ラインCLCと圧延設備50の搬送ラインCLMとが同一であると、個々のスラブB又はエンドレス圧延材を圧延設備50に搬送できる。
【0078】
図4bは、別の変化形を示し、ここでは、KTT40は、1つ又は複数の相前後して配置されたウォーキングビーム炉42を有する。そのような一連のウォーキングビーム炉42は、好ましくは鋳造機10の搬送ラインCLCと圧延設備50の搬送ラインCLMとが同一である設備構成において極めてコンパクトな構造を可能にする。搬送ラインCLC、CLMが同一であると、個々のスラブB又はエンドレス圧延材を圧延設備50に搬送できる。
【0079】
図4cは、別の変化形を示し、ここでは、図4aの構造形態から出発して、1つ又は複数のスラブ搬出装置及び/又はスラブ搬入装置が、搬送ラインCLC、CLMに対して横方向に設置されている。これにより、スラブBを鋳造プロセスに直接に続いて圧延設備50に供給できるだけでなく、スラブBを他のステーション、例えばスラブ貯蔵部に搬出できる、又は他のステーション、例えばスラブ貯蔵部から搬送ラインCLC、CLMに搬入できる点において、設備の柔軟性が向上される。さらに、このようにして、例えば鋳造機10又は圧延設備50の故障の場合に非常用搬出を行える。送り方向に対して横方向のスラブ搬送は、例えばスラブ移送装置43及び/又は適切なロールテーブル要素44を介して行える。搬送ラインCLC、CLMに対して横方向にスラブBを搬入及び/又は搬出するそのような手段は、図4aの基本構造から出発して実現できるだけでなく、例えば図4bの構造形態から出発して、一般的にKTT40のあらゆる構造形態に対して実現可能である。
【0080】
KTT40の別の変化形によれば、鋳造機10の搬送ラインCLCと圧延設備50の搬送ラインCLMとは、同一ではなく、図4d及び図4eの実施例に示されるように、互いに距離を置いて平行に配置されている。これにより、特にコンパクトな構造形態が実現可能である。
【0081】
図4dの実施例によれば、それぞれの搬送ラインCLC、CLMにあるスラブBの搬送は、場合によっては断熱装置を有する複数のロールテーブル41を介して行われる。搬送ラインCLC、CLMに対して横方向の搬送は、1つ又は複数のウォーキングビーム炉46を介して行える。ウォーキングビーム炉46は、電気式及び/又は気体燃焼式であってよい。ウォーキングビーム炉46によって、搬送と温度調整を同時に行える。複数のウォーキングビーム炉46を使用するとき、炉は、作業領域で、温度レベル及び/又はサイクルタイムを変更してよい。これにより、ウォーキングビーム炉46内でのスラブBの滞留時間を個別に制御できる。
【0082】
図4eの変化形によれば、搬送ラインCLC及び/又はCLMにおけるスラブBの搬送及び加熱は、好ましくは誘導式の加熱要素である加熱要素45が組み付けられたロールテーブル41を介して行われる。搬送ラインCLC、CLMに対して横方向のスラブBの搬送は、1つ又は複数のスラブ移送装置43によって行われる。
【0083】
KTTにおける搬送要素と加熱要素との組合せ手段は、さらに任意に組み合わせてよい。
【0084】
図4d及び図4eの構造形態から出発して、1つ又は複数のスラブ搬出装置及び/又はスラブ搬入装置を、搬送ラインCLC、CLMに沿って設置してよい。これにより、スラブBを鋳造プロセスに直接に続いて熱間圧延設備50に供給できるだけでなく、スラブBを別のステーション、例えばスラブ貯蔵部に搬出する又は別のステーション、例えばスラブ貯蔵部から適切な搬送ラインCLC、CLMに搬入できる点で、設備の柔軟性が拡張される。さらに、そうすると、例えば鋳造機10又は圧延設備50が故障した場合に非常用搬出を行える。送り方向に対して横方向のスラブ搬送は、例えばスラブ移送装置43及び/又は適切なロールテーブル要素44を介して行える。
【0085】
以下、図5を参照して、制御装置100の例示的な構成について記述する。
【0086】
制御装置100は、装置1の、制御されるべき及び/又は読み出されるべき構成要素に信号技術的に接続されていて、したがって、特に鋳造機10、表面装置20、温度調整装置30、KTT40及び圧延設備50に接続されている。制御装置100と制御されるべき及び/又は読み出されるべき設備構成要素との間の通信は、有線又は無線で、デジタル又はアナログで行ってよい。制御装置100は、適切な信号(制御信号、データなど)を受信及び/又は送信してよく、その際、一方向と双方向との両方の信号搬送が、本明細書の関連において「通信」の概念に含まれる。この場合、制御装置100は、必ずしも中央演算装置又は電子制御装置によって実現されなくてもよく、そこには、分散システム及び/又は多段システム、制御ネットワーク、クラウドシステムなどが含まれる。制御部は、上位の設備制御部の、組み込まれた構成素子であってよく、又はそのような構成素子と通信してよい。
【0087】
制御装置100は、好ましくは1つ又は複数のプロセスモデル、又は1つ又は複数のプロセスモデルに対する少なくとも1つのインタフェースを有する。制御されるべき及び/又は読み出されるべき装置と通信するために、制御装置100に接続されたプロセスモデルにおいて必要な演算が行われる。演算が制御装置100に通信されるか、又は制御装置100がプロセスモデル自体を含むかは重要でない。
【0088】
図5の実施例では、制御装置100は、鋳造機のプロセスモデルPMCと圧延設備のプロセスモデルPMMとに通信する。プロセスモデルPMC、PMMは、重複する部分モデルを有してよい。重複する部分モデルは、好適には、鋳造機10と圧延設備50との間の、制御装置100に関連する領域をカバーできる。代替的に、前述の領域の1つだけが、関連する領域をカバーしてもよい、又は独立したサブモデルを実現してもよい。
【0089】
制御装置100は、下位のレベルの設備制御部と、つまり対応する装置に割り当てられた制御部と通信してよい。
【0090】
制御装置100は、鋳造機10から圧延設備50までのプロセスガイドとプロセス変数とを作り出すように構成されている。この場合、例えばスラブ温度又は最終圧延温度などの関連するデータは、鋳造機のプロセスモデルPMC及び圧延設備のプロセスモデルPMMから制御装置100に通信される。
【0091】
生産計画システム又はプロセスガイド計画部とのデータ交換によって、制御装置100の作業を容易にし、プロセスガイド、必要な演算及び調整信号の伝送を自動化できる。
【0092】
図5の実施例では、制御装置100は、プロセスガイド計画部、例えばいわゆる「レベル3システム」から、製造されるべき製品のデータセットを取得し、したがって、計画された生産ステップ及び最終製品の最終設定値に関する情報を受け取る。ここでは、製造ステップを決定し、装置10、20、30、40、50の対応する設定に影響を及ぼすデータが制御装置100に存在する。
【0093】
鋳造機10及び圧延設備50の設定は、広範囲の技術的及び物理的なモデル演算に基づいてよいので、鋳造機10の出口に、例えばスラブ合金、スラブ幾何学的形状、スラブ温度、スラブ速度及び/又はスラブ表面に関する情報が存在する。情報は、演算及び/又は測定(例えば温度測定、表面検査など)によって求められてよい。対応する値/情報が、制御装置100に提供される。
【0094】
制御装置100は、ここでは、鋳造機10から提供される情報を考慮して、別のプロセスガイドに必要な変数、特に鋳造機10から下流側のスラブ速度を決定し、これを、該当する構成要素に設定する。
【0095】
制御装置100は、表面装置20においてスラブBの加工及び/又は検査が行われるべきか決定し、必要な場合にはその工程を導入する。
【0096】
制御装置100は、伝送されたスラブ温度から、存在する合金に関して、温度調整装置30において温度調整が必要であるかどうか演算する。そのような温度調整が必要なとき、制御装置100は、必要な熱流量から、温度調整装置30の対応する冷却出力又は加熱出力の設定を演算する。
【0097】
制御装置100は、KTT40の端部で提供したいスラブ温度を演算し、これに関連する、例えばスラブ速度、KTT40での最短滞留時間、場合によってはスラブBの特に厚さ及び長さなどの幾何学的寸法に基づいて設定されるべき加熱出力などの変数を演算する。
【0098】
必要に応じて、図5に矢印で示されているように、中間ステップからの別のデータを、演算基準として、制御装置100に供給する必要があり得る。
【0099】
ここに示された、金属帯板、特に熱間圧延された金属帯板を製造する装置1は、生産の多様性に関して高度に柔軟に利用可能であると同時に最小限のエネルギ消費料で間に合う。設備レイアウトに応じて、極めてコンパクトな配置及び/又はプロダクトモデルを実現できる。
【0100】
利用できる範囲で、実施例に示された個々の全ての特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく互いに組み合わせる及び/又は入れ替えることができる。
【符号の説明】
【0101】
1 金属帯板を製造する装置
10 鋳造機
11 金型
12 ストランドガイド
13 ロール
14 分離装置
16 デスケーリング装置
17 加熱装置
18 検査システム
20 表面装置
30 温度調整装置
31 加熱装置
32 冷却装置
40 組合せ型の搬送兼温度調整装置
41 ロールテーブル
42 ウォーキングビーム炉
43 スラブ移送装置
44 ロールテーブルセグメント
45 加熱要素
46 ウォーキングビーム炉
50 圧延設備
60 付加的な加熱装置
70 別の分離装置
100 制御装置
S 鋳造ストランド
B スラブ
PMC 鋳造機のプロセスモデル
PMM 圧延設備のプロセスモデル
CLC 鋳造機の搬送ライン
CLM 圧延設備の搬送ライン
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延された金属帯板、好ましくは熱間圧延された金属帯板を製造する装置(1)であって、
前記装置(1)は、
スラブ(B)を製造して鋳造機の搬送ライン(CLC)に搬送するように構成された、鋳造機(10)と、
スラブ(B)を圧延設備の搬送ライン(CLM)に沿って搬送する間に圧延によって相応の金属帯板へと変形するように構成された、圧延設備(50)と、
鋳造機(10)と圧延設備(50)との間に配置されていて、スラブ(B)を、圧延設備の搬送ライン(CLM)に搬送し又は圧延設備の搬送ライン(CLM)に沿って搬送し、圧延設備(50)に供給し、スラブ(B)の温度を圧延温度に合わせて調整するように構成された、組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)と、
鋳造機(10)と組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)との間に配置されていて、スラブ(B)の表面の少なくとも1つを加工及び/又は処理及び/又は検査するように構成された、表面装置(20)と、
鋳造機(10)と組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)との間に配置されていて、スラブ(B)の温度を変更するように構成された、温度調整装置(30)と、
を備える、装置(1)において、
少なくとも部分的に異なる、スラブ(B)のプロセスラインを実現する複数のルートが設けられていて、表面装置(20)は、第1のルートに、温度調整装置(30)は、第2のルートに配置されているとともに、スラブ(B)は、表面装置(20)又は温度調整装置(30)を通過するように構成されている
ことを特徴とする、装置(1)。
【請求項2】
温度調整装置(30)は、加熱装置(31)と冷却装置(32)とを具備する組合せ型の加熱兼冷却装置を有し、これにより、スラブ(B)は、温度調整装置(30)によって、選択的に加熱可能又は冷却可能であり、加熱装置(31)は、好ましくは誘導式の加熱装置を有する、及び/又は冷却装置(32)は、好ましくは、冷却剤を加えることによってスラブ(B)の急速冷却を実現するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
表面装置(20)は、スラブ(B)の少なくとも1つの表面を、研削及び/又はフライス加工及び/又はフレーム処理によって加工するように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)は、
1つ又は複数のロールテーブル(41)、及び/又は
1つ又は複数の断熱装置、及び/又は
1つ又は複数の誘導式の加熱要素(45)、及び/又は
1つ又は複数の炉(42、46)、及び/又は
鋳造機の搬送ライン(CLM)及び/又は圧延設備の搬送ライン(CLM)からスラブを搬出する1つ又は複数のスラブ搬出装置、及び/又は
鋳造機の搬送ライン(CLM)及び/又は圧延設備の搬送ライン(CLM)にスラブを搬入する1つ又は複数のスラブ搬入装置、
を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
鋳造機の搬送ライン(CLC)と圧延設備の搬送ライン(CLM)とが一致し、表面装置(20)と、温度調整装置(30)と、組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)とは、好ましくは相前後して同じ1つの搬送ラインに配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
鋳造機の搬送ライン(CLC)と圧延設備の搬送ライン(CLM)とが異なり、好ましくは互いに平行に延在し、組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)は、好ましくは、さらに、鋳造機の搬送ライン(CLC)から圧延設備の搬送ライン(CLM)へとスラブ(B)の搬送を行うように構成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
3のルートが設けられていて、第3のルートに沿って、スラブ(B)は、表面装置(20)と温度調整装置(30)との両方を抜かし、直接に組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)に導入可能であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
圧延設備(50)は、熱間圧延設備であるとともに、スラブ(B)を、少なくとも部分的に鋳造機(10)の鋳造熱を基に変形するように構成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記装置(1)は、好ましくは鋳造されたスラブ(B)の合金及び/又は温度を含む、測定及び/又は演算されたプロセス変数に依存して、スラブ(B)のプロセスガイドを制御するように構成された制御装置(100)を備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
制御装置(100)は、温度調整装置(30)によって、
好ましくは亀裂に敏感な合金のスラブ(B)を、組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)に進入する前にスラブ表面温度が好ましくは600℃の下側の閾値(T)と好ましくは850℃の上側の閾値(T)とによって設定された臨界温度範囲(Tkritisch)外にあるように、加熱又は冷却するように、
構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
制御装置(100)は、鋳造機(10)によって鋳造されたスラブ(B)を、スラブ貯蔵部に一時貯蔵せずに圧延設備(50)に供給するように、構成されていることを特徴とする、請求項9又は10に記載の装置(1)。
【請求項12】
鋳造機(10)は、90mmから250mm、好ましくは110mmから200mmの範囲の厚さを有する中間スラブを鋳造するように構成されていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の装置(1)を用いて、圧延された金属帯板、好ましくは熱間圧延された金属帯板を製造する方法において、方法は、
a)鋳造機(10)を用いてスラブ(B)を鋳造する、ステップと、
b)スラブ(B)を組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)へ移送する、ステップと、
c)スラブ(B)を圧延設備(50)において熱間圧延して金属帯板を製造し、その際、鋳造後に圧延設備(50)への経路上でスラブ(B)の完全な冷却を行わず、好ましくはスラブの中心の温度が600℃より低下しない、ステップと、
を有する、方法。
【請求項14】
ステップa)に続いて、1つ又は複数のプロセス変数に依存して、スラブ(B)を直接に組合せ型の搬送兼温度調整装置(40)に搬送し、温度調整装置(40)による温度調整を行う、及び/又は表面装置(20)によるスラブ(B)の少なくとも1つの表面の加工及び/又は処理及び/又は検査を行うことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
スラブは、90mmから250mm、好ましくは110mmから200mmの範囲の厚さを有する中間スラブであることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【国際調査報告】