(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-20
(54)【発明の名称】ゼロ揮発性有機化合物溶媒をその中に有するデジタル捺染インク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/322 20140101AFI20231113BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20231113BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
C09D11/322
C09D11/54
D06P5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522363
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 US2021049824
(87)【国際公開番号】W WO2022108648
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520495803
【氏名又は名称】インターナショナル イメージング マテリアルズ, インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL IMAGING MATERIALS, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】520495814
【氏名又は名称】ブリース, ジェイムス, ウェスト
【氏名又は名称原語表記】BLEASE, James, West
(71)【出願人】
【識別番号】523129918
【氏名又は名称】チェウェンズ,ティモシー マイケル
【氏名又は名称原語表記】CHEWENS, Timothy Michael
(71)【出願人】
【識別番号】523129929
【氏名又は名称】コング, リアンフイ
【氏名又は名称原語表記】CONG, Lianhui
(71)【出願人】
【識別番号】520495825
【氏名又は名称】ハリソン, ダニエル, ジュード
【氏名又は名称原語表記】HARRISON, Daniel, Jude
(71)【出願人】
【識別番号】523129930
【氏名又は名称】プジビロ, ジョン リチャード
【氏名又は名称原語表記】PRZYBYLO, John Richard
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【氏名又は名称】椿 豊
(72)【発明者】
【氏名】ブリース, ジェイムス ウェスト
(72)【発明者】
【氏名】チェウェンズ,ティモシー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン, ダニエル ジュード
(72)【発明者】
【氏名】プジビロ, ジョン リチャード
【テーマコード(参考)】
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
4H157BA15
4H157CA29
4H157CB02
4H157GA06
4J039AE04
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC13
4J039BC50
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE19
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA46
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
25℃で2.5~15センチポアズの粘度を有する捺染用インクであって、顔料と、水分散性陰イオン性高分子樹脂と、250℃以上の沸点を持つ水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒と、架橋剤と、水とを含む。水分散性陰イオン性高分子樹脂は、150nm未満の中央値体積加重サイズ、および250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズを持つ複数の粒子を有する。水分散性陰イオン性高分子樹脂は、5~40の酸価と、500~1200%の樹脂フィルム伸びと、10~60mPaのフィルム引張強度とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃で2.5~15センチポアズの粘度を有する捺染用インクであって、
顔料と、
水分散性陰イオン性高分子樹脂と、
250℃以上の沸点を持つ水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒と、
水とを備え、
前記水分散性陰イオン性高分子樹脂は、150nm未満の中央値体積加重サイズおよび250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズを持つ複数の粒子を有し、
前記水分散性陰イオン性高分子樹脂は、5~40の酸価と、500~1200%の樹脂フィルム伸びと、10~60mPaのフィルム引張強度とを有する、インク。
【請求項2】
前記顔料の重量部は、インクの1~20部であり、前記水分散性陰イオン性高分子樹脂の重量部は、インクの3~25部であり、前記水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒の重量部は、インクの15~40部である、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
架橋剤をさらに備えた、請求項1に記載のインク。
【請求項4】
前記架橋剤の重量部は、インクの1~5部であり、前記顔料の重量部は、インクの1~20部であり、前記水分散性陰イオン性高分子樹脂の重量部は、インクの3~25部であり、前記水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒の重量部は、インクの15~40重量部であり、前記架橋剤の重量部は、インクの1~5重量部である、請求項3に記載のインク。
【請求項5】
前記水分散性陰イオン性高分子樹脂はポリウレタン樹脂である、請求項1に記載のインク。
【請求項6】
前記水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒は、グリセロール、ジグリセロール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンから選択される、請求項1に記載のインク。
【請求項7】
前記水分散性陰イオン性ポリウレタン樹脂は、脂肪族、ポリエステル、ポリエーテル、ヒドロキシアルキル、シラン、および/またはポリカーボネートセグメントを備える、請求項5に記載のインク。
【請求項8】
前記架橋剤はカルボジイミドおよび/またはポリオキサゾリンである、請求項3に記載のインク。
【請求項9】
捺染物であって、
織物生地と、
前記織物生地上に形成されたインクとを備え、
前記インクは、顔料と、水分散性陰イオン性高分子樹脂と、250℃以上の沸点を持つ水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒と、水とを含み、前記水分散性陰イオン性高分子樹脂は、150nm未満の中央値体積加重サイズおよび250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズを持つ複数の粒子を含み、前記水分散性陰イオン性高分子樹脂は、5~40の酸価と、500~1200%の樹脂伸びと、10~60mPaのフィルム引張強度とを有する、捺染物。
【請求項10】
前記織物生地は、前処理剤と白い不透明なインクとで前処理される、請求項9に記載の捺染物。請求項19.前記顔料の重量部は、インクの1~20部であり、前記水分散性陰イオン性高分子樹脂の重量部は、インクの3~25部であり、前記水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒の重量部は、インクの15~40部である、請求項17に記載の捺染物。
【請求項11】
前記インクは架橋剤を含む、請求項9に記載の捺染物。
【請求項12】
前記水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒は、グリセロール、ジグリセロール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンから選択される、請求項9に記載の捺染物。
【請求項13】
布地上に画像をプリントする方法であって、
(a)布地上のプリント位置にインクを塗布することを備え、インクは、顔料と、水分散性陰イオン性高分子樹脂と、250℃以上の沸点を持つ水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒と、水とを含み、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、150nm未満の中央値体積加重サイズおよび250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズを持つ複数の粒子を含み、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、5~40の酸価と、500~1200%の樹脂伸びと、10~60mPaのフィルム引張強度とを有し、
(b)塗布したインクを乾燥させることと、
(c)塗布したインクを硬化させることとを備えた、方法。
【請求項14】
(d)インクを塗布する前に、布地上のプリント位置を前処理剤で前処理することと、
(e)インクを塗布する前であって前処理剤を塗布した後、布地上の前処理されたプリント位置に白い不透明なインクを塗布することとをさらに備えた、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前処理剤は多価金属塩を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
顔料の重量部はインクの1~20部であり、水分散性陰イオン性高分子樹脂の重量部はインクの3~25部であり、水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒の重量部は15~40部である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
水分散性陰イオン性高分子樹脂はポリウレタン樹脂である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒は、グリセロール、ジグリセロール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
水分散性陰イオン性ポリウレタン樹脂は、脂肪族、ポリエステル、ポリエーテル、ヒドロキシアルキル、シラン、および/またはポリカーボネートセグメントを備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
架橋剤は、カルボジイミドおよび/またはポリオキサゾリンである、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
布地上に画像をプリントする方法であって、
(a)布地上のプリント位置に第1のインクを塗布することを備え、第1のインクは、第1の顔料と、水分散性陰イオン性高分子樹脂と、250℃以上の沸点を持つ水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒と、水とを含み、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、150nm未満の中央値体積加重サイズおよび250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズを持つ複数の粒子を含み、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、5~40の酸価と、500~1200%の樹脂伸びと、10~60mPaのフィルム引張強度とを有し、第1の顔料はTiO
2顔料であり、
(b)第2のインクを布地上に塗布することを備え、第2のインクは、第2の顔料を有し、水分散性陰イオン性高分子樹脂と、250℃以上の沸点を持つ水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒と、水とを含み、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、150nm未満の中央値体積加重サイズおよび250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズを持つ複数の粒子を含み、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、5~40の酸価と、500~1200%の樹脂伸びと、10~60mPaのフィルム引張強度とを有し、第2の顔料は第1の顔料とは異なり、
(c)塗布したインクを乾燥させることと、
(d)塗布したインクを硬化させることとを備えた、方法。
【請求項22】
第1のインクは、第2のインクが塗布される前に塗布される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(e)インクを塗布する前に、前処理剤で布地上のプリント位置を前処理することをさらに備えた、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前処理剤は多価金属塩を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
顔料の重量部は、第1のインクの1~20部であり、水分散性陰イオン性高分子樹脂の重量部は、第1のインクの3~25部であり、水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒の重量部は、第1のインクの15~40部である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
顔料の重量部は、第2のインクの1~20部であり、水分散性陰イオン性高分子樹脂の重量部は、第2のインクの3~25部であり、水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒の重量部は、第2のインクの15~40部である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
顔料の重量部は、第2のインクの1~20部であり、水分散性陰イオン性高分子樹脂の重量部は、第2のインクの3~25部であり、水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒の重量部は、第2のインクの15~40部である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
水分散性陰イオン性高分子樹脂はポリウレタン樹脂である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒は、グリセロール、ジグリセロール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
水分散性陰イオン性ポリウレタン樹脂は、脂肪族、ポリエステル、ポリエーテル、ヒドロキシアルキル、シラン、および/またはポリカーボネートセグメントを備える、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
架橋剤はカルボジイミドおよび/またはポリオキサゾリンである、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
【0002】
捺染は、生地に色、模様、デザインを適用するプロセスである。このプロセスでは、着色剤(colorants)(染料(dyes)または顔料(pigments))が生地にイメージ通りに適用される。これらのプリントされた着色剤は、プリントされた画像の品質を維持するために、布地の寿命中に生地を構成する繊維に強く結合されるべきである。染料ベースのインクの場合、繊維は染料を吸収して保持する。しかし、染料は時間の経過とともに光および/または化学的酸化によって退色しやすく、色の退色につながる。
【0003】
顔料は、このような退色メカニズムに対して非常に耐性があり、耐漂白性の布地をプリント可能にする。しかし、媒介物がないと、顔料は繊維に結合できず、洗浄または機械的摩耗によって生地からすぐに取り除かれる。顔料を繊維に結合するために、高分子結合剤が使用される。
【0004】
織物は、白色からパステル、彩度の高い色、黒色まで、さまざまな色で提供される。インクジェットインクは、イエロー、マゼンタ、およびシアンなどの減法混色の原色で構成されており、オーバープリントによって組み合わせられると、ほぼ無限の範囲のプロセスカラーを生成できる。しかし、減法原色を高い忠実度で組み合わせるには、白色またはほぼ白色の背景が必要である。布地自体が白色でないと減色プロセスカラープリントが乱れ、極端に言えば黒色の布地上にプリントすると色再現が難しくなる。
【0005】
この問題を解決するために、カラー素材上に白色の背景層をプリントする白色のインクジェットインクが開発され、減法プロセスカラープリントが可能になった。
【0006】
米国特許第9,580,613号および米国特許第9,783,693号は、カラー素材へのプリント用の白色インクジェットインクを開示している。米国特許第9,580,613号および米国特許第9,783,693号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
織物は、天然および合成の繊維で構成されている。これらの繊維は、多くの場合ヒドロキシル含有物質である。セルロース系繊維材料は、その全部または一部がセルロースまたは化学修飾されたセルロースで構成されている。例としては、コットン、リネン、麻、ウール、またはシルクなどの天然繊維材料と、ビスコースやレーヨンなどの再生繊維維材料とがある。合成繊維には、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アラミド、ポリプロピレン、およびポリウレタンが含まれる。上記の繊維材料は、シート状の布地織物(織物)、ニット、またはウェブとして存在することが好ましい。
【0008】
捺染プロセスでは、生地の表面に顔料インクがプリントされる。インクの物理的特性と繊維の表面化学とに応じて、インクの一部が生地に浸透する。インクは生地上で乾燥されるので、これらの結合剤は顔料を繊維に結合する接着剤として働く。生地へのインクの浸透はプリント耐久性を強化するだろうが、インクの浸透はまた、繊維を一緒に結合することによって生地を硬くするだろう。さらに、特に暗い生地に対するインクのカバー力は、インクが生地に浸透することによって減少する。顔料布地インクを生地の表面にプリントして乾燥させ、インクの生地への浸透を最小限に抑えることが望ましい。
【0009】
布地上に顔料インクでプリントすることは、この技術分野で周知である。たとえば米国特許第4,154,711号、米国特許第4,457,980号、および米国特許第5,853,859号を参照。米国特許第4,154,711号、米国特許第4,457,980号、および米国特許第5,853,859号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
布地のシームレスロータリースクリーンプリンティングは1963年に導入された。このアナログプリントプロセスは、依然として捺染の生産を支配しており、高い市場シェアを持っている。このプロセスは、高ソリッド高粘度のインクを布地上に高速生産速度でプリントすることができる。複数の色のインクを上下に重ねてプリントして、複雑なパターンやデザインを作成できる。このようなアナログプリント方法は非常に生産的であり、捺染物のアナログプリント方法は非常に優れた耐久性を備えている。
【0011】
米国特許出願公開第2003/0160851号は、布地のプリントが主にロータリースクリーン法によって達成されることを開示している。操作中、スクリーンプリントは迅速で、大規模なプリントでは費用対効果が高くなる。米国特許出願公開第2003/0160851号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
アナログプリント技術では、デザインと構成する色ごとに異なるロータリースクリーンが必要である。これには、各デザインのツールへの投資、一つのデザインから別のデザインにスクリーンを交換するための切り替え時間、およびプリント施設でアクティブに使用されているすべてのスクリーンの在庫を確保するためのスペースが必要である。スクリーンの作成には費用と時間がかかるため、短いプリントを実行する場合のユニットあたりのコストはかなりの額になり、多くの場合、法外な額になる。カスタムデザインおよびパターン、および/または短い捺染のプリントの場合、デジタルプリントは、アナログプリント方法よりも経済的および操作上で有利である。
【0013】
布地のデジタルプリントでは、各デジタル画像ファイルをプリンターにすばやくロードできるため、画像から画像への切り替え時間が本質的になくなり、アナログプリントスクリーンまたはプレートを変更する必要がなくなる。色の調整は、インクを変更する必要なく、実行中に行うことができる。
【0014】
デジタルプリントは、スクリーンの準備に関連するセットアップ費用を排除し、費用対効果の高い少量プリントを可能にする可能性がある。デジタルインクジェットプリントは、さらに、スクリーンプリントプロセスでは実際には達成できない色調のグラデーションや無限のパターン繰り返しサイズなどの視覚効果を可能にする。
【0015】
インクジェットプリントは、布地のロータリースクリーンプリントで使用されるインクなどの高い粘度のインクをプリントすることはできない。実際、ほとんどのインクジェットプリンターでは、2~20cpsの範囲の粘度を持つインクを必要とする。対照的に、ロータリースクリーンインクは、1000cpsを超える粘度を有し得る。
【0016】
したがって、インクジェットインクは、顔料を繊維に結合させるためにインクに組み込むことができる高分子結合剤の量がかなり制限されており、この制限はスクリーンプリントインクと共有されていない。ロータリースクリーンインクには、顔料とポリマー結合剤との両方が多量に含まれている。これにより、非常に薄いインク層を生地の表面にプリントできる。スクリーンインクは粘度が非常に高いため、インクは布地の表面に結合するが、布地に浸透しない。
【0017】
乾燥の後、スクリーニングされたインクが布地上にプリントされる。多量の高分子樹脂が顔料を布地繊維に結合させるため、プリントは耐久性があり、プリントされた画像は薄い表面層に集中しているため、捺染物は柔らかいままである。さらに、インクは生地の大部分を貫通しないため、布地を硬化させ得る繊維間の接着結合を高分子樹脂が形成する機会はほとんどない。
【0018】
一般に「前処理」と呼ばれる繊維および布地のプリント前処理は、布地の表面へのインクジェットプリント顔料インクの付着を改善する手段として早くから認識されていた。例として米国特許第4,702,742号および米国特許第6,432,186号を参照。米国特許出願公開第2006/0210719号および米国特許第8,784,508号には、インクジェットを使用して、布地の前処理された表面上に画像をデジタルプリントすることが記載されている。米国特許第4,702,742号、米国特許第6,432,186号、米国特許出願公開第2006/0210719号、および米国特許第8,784,508号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
生地の前処理は、布地の表面にインクジェットインクを集中させ、インクが布地の中に浸透するのを防ぎ、十分な高分子樹脂を提供して顔料表面に結合させ、布地の表面、高い耐久性および色の強さを提供するのに役立つ。前処理剤は高濃度の陽イオン性塩を含む。デジタル布地インクは結合剤樹脂粒子を含み、結合剤樹脂粒子は陰イオン的に安定化され、陽イオン前処理された布地と反応することができる。特定の理論に束縛されることを望まないが、前処理された布地上の高い陽イオン表面濃度が、デジタルプリントされたインク中の陰イオン的に安定化された樹脂粒子と相互作用し、そのような粒子の凝固とそれに続くインク粘度の上昇を引き起こす。
【0020】
さまざまな生地前処理方法が記載されている。例として米国特許第5,958,561を参照。この文献には、布地が架橋インク可能な熱可塑性ポリマーで前処理され、次いで水性インクで画像形成され、100~190℃の温度で硬化されるインク/布地の組み合わせが開示されている。洗濯堅牢度が向上した。米国特許第5,958,561号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
米国特許第6,146,769号には、インク中、または前処理された、または布地上の相互作用ポリマーが粒子状着色剤の結合を助け、洗濯堅牢度を提供するインク/布地の組み合わせが開示されている。米国特許第6,146,769号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
米国特許出願公開第2008/0092309号は、布地の表面に陽イオン前処理を適用して、インクジェットインクのプリント画像の外観および耐久性を向上させる有用性を記載している。米国特許出願公開第2008/0092309号は、特定の布地基材の前処理が、織物生地上のインク着色剤の接着性および/または耐洗浄性をさらに高めるために、非イオン性ラテックスポリマーを含むことをさらに記載している。非イオン性ラテックスポリマーを含む前処理された布地は、未処理の布地に比べて高い色密度と彩度を提供し、未処理の布地に比べて優れたプリント品質を提供し、未処理の布地に比べてウィッキングまたはブリーディングの低減を提供し、未処理の布地に比べてインクの吸収を増加させる。さらに、前処理配合物は、インクジェットプリントプロセスを介してプリントする場合、プリント画像の洗濯堅牢度を向上させる。米国特許出願公開第2008/0092309号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
プリント後、インクジェット捺染物は有利には乾燥および硬化され、好ましくは170℃まで、特に110~166℃の温度で乾燥および硬化される。乾燥および硬化時間は、30秒から5分の間、より好ましくは1~4分の間であり得る。
【0024】
インクジェットプリントヘッドからインクを一貫して噴射するために、インクジェットインクの物理的特性は、特定の物理パラメータによって制約されることは、当業者によって知られており、このインクジェットインクの物理的特性はすなわち、液体密度、液体粘度、液体の表面張力、およびプリントヘッド装置の特徴的な寸法、すなわちプリントヘッドノズルオリフィスの直径である。パラメータ値の組み合わせは、Z数とも呼ばれる無次元のオーネゾルゲ数の逆数(Oh-1)によって記述され、次のように定義される。
【0025】
【0026】
ここで、aはノズルの直径(固有寸法)を表しており、ρはインクジェットインクの密度を表しており、γはインクの表面張力を表しており、μはインク粘度を表している。
【0027】
後者の3つのパラメータは、一定の温度で決定される。Derby and Reis(MRS Bulletin, 2003, 28, 815-818)によると、一貫してプリント可能なインクジェットインクは、上記の物理的特性を組み合わせて、1~10のZの値を提供する必要がある。
【0028】
インクジェットインクをうまく使用するためには、インクジェットインクが経時的に安定した物理的および化学的特性を示さなければならないことは、この技術分野でよく知られている。インクジェットインクの安定性を評価する1つの方法は、pH、粘度、表面張力、粒度分布などのインクジェットインクの特性の変化を定期的にサンプリングしながら、たとえば6ヶ月から2年以上という長期間、インクを保存することである。しかし、室温での長期保存は非効率的であり、インクジェットインクの配合の迅速な発展に悪影響を及ぼす。
【0029】
そのため、最初にインクジェットインクを例えば30℃から80℃の範囲の高温で保管し、インクジェットインクの特性への変化を、一週間の時間間隔などのより短い期間にわたって評価する加速エイジング技術が採用されている。当業者に一般的に使用される温度および時間の組み合わせの1つは、60℃で2週間である。他の一般的に使用される組み合わせは、60℃で4週間、60℃で6週間などである。
【0030】
顔料および高分子樹脂結合剤を含むインクジェットインクに加えて、インクは、典型的には、他の添加剤の中でも、水混和性および/または水溶性の有機溶媒を含む。以下の説明において、溶媒は、周囲条件(ambient conditions)下で液体状態である化合物、または周囲条件下で固体状態であり、水への溶解によって液体状態に変化することができる化合物として定義される。有機溶媒の機能はさまざまであるが、有機溶媒の主な目的は、インクジェットプリントヘッドからの噴射性能を向上させ、プリントされる素材とのインク相互作用を制御することである。
【0031】
インク-プリントヘッドの相互作用に関して、有機溶媒は主に湿潤剤および粘度制御補助剤として機能し、これらはインクジェットインク組成からの水分損失を減らし、より信頼性の高いインク吐出を可能にし、インク粘度をプリントヘッドから安定してインク吐出するのに適した範囲に修正する。有機溶媒はまた、インクジェットインクと素材との間の相互作用を改変することができ、湿潤、浸透、および乾燥などの特性に影響を与える。
【0032】
米国特許第5,085,698号は、水と結合して顔料化された布地インクジェットインク用の水性媒介物を形成することができる水溶性有機溶媒の代表例を開示している。このような溶媒と水の混合物は、当業者によく知られている。米国特許第5,085,698号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
インクジェットインクで使用する水混和性または水溶性の有機溶媒を選択する際には、有機溶媒蒸気の安全性、毒性、および環境への影響を考慮する必要がある。インクジェットインクのプリントプロセスの間、特に乾燥/硬化プロセスの間、水蒸気とともに有機溶媒の蒸気が必然的に発生する。プロセスステップにおいて、特定の有機溶媒および乾燥/硬化時間および温度に依存して、有機溶媒は実質的に気化され得る。
【0034】
布地のインクジェットプリントが行われている建物、特に溶媒蒸気がかなり高い濃度に到達する可能性がある建物の内部および外部の両方で、有機溶媒蒸気は健康と環境に危険をもたらす可能性があることがよく認識されている。内部および外部の両方の溶媒蒸気の放出を制御することは、溶媒蒸気の緩和プロセスに関して費用がかかる可能性がある。この点に関して、プリントおよび乾燥/硬化中の溶媒蒸気の発生を最小にするインクジェットインクで使用するための有機溶媒を選択することが望ましい。
【0035】
標準圧力での沸点または標準温度での蒸気圧などの特性に基づいて、有機溶媒は分類できる。これに関して、揮発性有機化合物という用語は、特定の基準を満たす有機溶媒を記載するために使用される。101.3kPaという標準大気圧で測定した有機溶媒の沸点が250℃未満である場合、その有機溶媒は揮発性有機化合物として広く認識されている。国際特許WO2004090005A1は、「揮発性有機化合物を含まない」を、その用語が当技術分野で知られているように、また米国環境保護庁方法24によって定義されるように、揮発性有機化合物と考えられる化学成分を本質的に配合しないまたは含まない組成物として定義している。
【0036】
インクジェットインクで一般的に使用される多くの水溶性有機溶媒の問題は、多くの水溶性有機溶媒が揮発性有機化合物として分類され、インクの乾燥の際に環境に放出される揮発性有機化合物が多くの国で規制されていることである。したがって、本質的に揮発性有機化合物を含まない顔料インクジェット布地インクを提供することが望ましい。
【0037】
米国特許出願公開第2010/0214352号は、10~15.5(cal/cm)の範囲内の溶解度パラメータ値を有する水溶性有機溶媒が、室温で液体であり水に可溶な有機化合物を含むことを開示する。例には、メタノール、エタノールなどの低級モノアルコールが含まれる。1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、および2-メチル-2-プロパノール、これらはすべて250℃未満の沸点を持っている。米国特許出願公開第2010/0214352号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
米国特許出願公開第2018/0105710号は、水と、水溶性有機共溶媒とを備え、水溶性有機共溶媒は、水混和性有機共溶媒、水混和性有機共溶媒、またはそれらの組み合わせであり得るインクジェットインクを開示している。有機共溶媒は、単独または組み合わせて追加できる。有機共溶媒は湿潤剤であってもよく、この湿潤剤は水成分の蒸発速度を低下させ、インク組成物がすっかり乾燥するのを防ぎ、またはプリントヘッドのノズル内でかたまりになるのを抑え、ノズルの目詰まりを最小限に抑える。実施の形態では、有機共溶媒は、インクジェットインク組成物中の成分の溶解度を高め、プリントされたインク組成物の素材への浸透を促進することができる。適切な水溶性および水混和性の有機溶媒には、アルコール(その中でも、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ポリオール、エチレングリコール、グリセロール、およびPEG)、ケトン、およびケトンアルコール(その中でも、たとえばアセトンおよびジアセトンアルコール)、エーテル(その中でも、たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、およびアルキルエーテル)、多価アルコールのエーテル(たとえばエチレングリコール、モノメチルエーテル、エチレングリコール、モノエチルエーテル、エチレングリコール、モノエチルエーテルアセテート、ジ(エチレングリコール)モノメチルエーテル)、窒素含有溶媒(その中でも、たとえば2-ピロリドンおよびN-メチル-2-ピロリドン)、硫黄含有溶媒(その中でも、たとえば2,2’-チオジエタノール、ジメチルスルホキシド、テトラムエチレンスルホン、およびスルホラン)、ならびに糖およびその誘導体(その中でも、たとえばグルコース、グリセリンのオキシエチレン付加物、およびジグリセリンのオキシエチレン付加物)が含まれるが、これらに限定されない。これらの有機溶媒の多くは、250℃未満の沸点を有する。米国特許出願公開第2018/0105710号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
デジタル捺染で使用されるインクの他の例は、PCT出願公開WO2020/006022A1に開示されている。公開されたPCT出願公開WO2020/006022A1の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
デジタル捺染は、捺染物やアパレル業界を変革する大きな可能性を秘めているが、プリント、乾燥、および硬化のプロセス中に発生する揮発性有機化合物の排出を排除する必要がある。デジタル捺染は、濃い色の生地でも忠実度の高いプロセスカラーを生成できなければならない。加えて、デジタルの捺染は生地を硬くしたり、手触りを悪くしたり、許容できない表面の質感や感触を作り出したりしてはならない。さらに、捺染物インクには、皮膚との接触に関連する健康問題を引き起こす可能性のある有害な化学物質が含まれていてはならない。
【0041】
したがって、揮発性有機化合物を含まないデジタル捺染インクを提供することが望ましい。
【0042】
さらに、いかなる揮発性有機化合物も含まず、暗色の生地上でさえ、忠実度の高いプロセスカラーを生成できるデジタル捺染インクを提供することが望ましい。
【0043】
さらに、いかなる揮発性有機化合物も含まず、生地を硬くすることのないデジタル捺染を促進し、それによって許容できない表面テクスチャまたは感触を低減するデジタル捺染インクを提供することが望ましい。
【0044】
さらに、いかなる揮発性有機化合物も無く、皮膚との接触に関連する健康問題を引き起こす可能性のある有害な化学物質が無いデジタル捺染インクを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0045】
上述のように、本質的に揮発性有機化合物を含まず、高い忠実度の減算一次オーバープリンティングで不透明度の高い白色の背景をプリントできる布地のインクジェットプリント用のインクを提供することが望ましい。また、これらのインクを使用する印刷物を作成する方法を提供する。
【0046】
加えて、顔料、水分散性樹脂、水、および水溶性不揮発性有機化合物溶媒(水溶性のゼロ揮発性有機化合物溶媒)を備えたインクジェットプリント用のインクを提供することが望ましく、水分散性樹脂粒子は150nm未満という中央値体積加重サイズと、250nm未満という95パーセンタイル体積加重サイズと、500~1200%というフィルム伸びと、10~60mPaというフィルム引張強度と、5~40という酸価(mgKOH/g)とを有し、25℃におけるインクの粘度は2.5~15cpsである。
【0047】
また、乾燥樹脂固体100部当たり0~15部の架橋剤を含むインクジェットプリント用のインクを提供することが望ましい。
【0048】
さらに、好ましくはウレタン樹脂である水分散性陰イオン性高分子樹脂樹脂と、250℃以上の沸点を持つ水溶性不揮発性有機化合物溶媒(水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒)とを備えたインクジェットプリント用インクを提供することが望ましい。好ましくは、水溶性不揮発性有機化合物溶媒(水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒)は、グリセロール、ジグリセロール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンのグループから選択される。
【0049】
以下に開示するように、インクジェットプリント用のインク(以降、単にインクともいう)は、顔料が白色の顔料(以降、顔料ともいう)であるインクと、顔料が白色以外の有色顔料であるインク(以下、「有色インク」または「減法原色インク」ともいう)との両方を含む。
【0050】
以下に開示するように、捺染物を生成する方法は、(1)プリントされる布地上のプリント位置に多価金属塩を含む前処理剤を塗布し、(2)インクジェット記録方式を用いてインクジェットプリント用インクをプリントすることを含む。
【0051】
これらのインクで製造された布地上にプリントおよび硬化された画像は、優れた手触り、感触、剛性、および質感を提供する。プリントおよび硬化された画像は、洗濯堅牢度も高く、色あせや摩耗に強い。これらのインクは、既存の捺染ワークフローに簡単に適合でき、捺染プロセスで通常採用される通常の乾燥オーブンおよびプレス内で硬化される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図面の簡単な説明
【0053】
図面は、実施の形態を説明するためだけのものであり、限定するものと解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
【0055】
特段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0056】
インクは、顔料と、水分散性樹脂粒子と、水と、不揮発性有機化合物溶媒(ゼロ揮発性有機化合物溶媒)とを備えた組成物である。
【0057】
明細書において、「不揮発性有機化合物溶媒」および「ゼロ揮発性有機化合物溶媒」という用語は、インクのプリント、乾燥、および/または硬化プロセス中に、揮発性有機化合物を放出しないような、いかなる揮発性有機化合物をも含まない有機溶媒を指す。
【0058】
インクジェットインクに有用な様々な着色剤は、米国特許第8,287,112号に開示されている。米国特許第8,287,112号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
非水性分散相の少なくとも1つは、少なくとも1つの着色剤を含有する。インクジェットインクで使用される着色剤(colorants)は、顔料(pigments)、染料(dyes)、またはそれらの組み合わせであってもよい。本明細書で使用される「染料(dye)」という用語は、それが適用される水相中および関連する周囲条件下で10mg/L以上の溶解度を有する着色剤を意味する。
【0060】
インクジェット布地インクは、好ましくは、着色剤として顔料を含む。有機および/または無機の顔料は、インクジェット布地インクの非水性分散相で使用されてもよい。着色剤が自己分散性顔料でない場合、インクジェットインクは、好ましくは分散剤、より好ましくはポリマー分散剤をも含む。
【0061】
顔料は、ポリマー分散剤または界面活性剤などの分散剤によって、インクジェット布地インクの連続水相に分散されてもよい。加えて、顔料の表面を修正して、いわゆる「自己分散可能な」または「自己分散」顔料、すなわち分散剤なしで分散媒体に分散可能な顔料を得ることができる。
【0062】
インクジェットインクの顔料の粒子は、特にノズルの排出時にインクジェットプリント装置を通るインクの自由な流れを可能にするために、十分な程度に小さくする必要がある。また、色の濃さを最大にし、沈降を遅くするに、小さい粒子を使用する必要がある。
【0063】
Horiba L-950などのレーザー回折粒度測定装置で測定した場合、分散した非白色顔料の中央値体積加重の顔料粒子サイズは、好ましくは20~150nmであり、より好ましくは50nm~150nmである。Horiba L-950などのレーザー回折粒度測定装置で測定した場合の白色顔料の分散液について、白色顔料の体積加重メジアン顔料の粒子サイズは、好ましくは50~500nmであり、より好ましくは150~400nmであり、最も好ましくは200~350nmである。平均径が50nm未満では十分な隠蔽力(hiding power)が得られず、平均径が500nmを超えるとインクの保存性や吐出適性が低下する傾向にある。
【0064】
有色インクジェットインクにおける顔料の量は、インクジェットインクの総重量に基づいて、好ましくは0.5~20重量%の濃度であり、より好ましくは1.0~15重量%の濃度であり、最も好ましくは1.5~6.5重量%の濃度である。白色インクジェットインクの場合、顔料の量は、インクジェットインクの総重量に基づいて、好ましくは5~25%の濃度であり、より好ましくは8~20%の濃度であり、最も好ましくは10~15%の濃度である。
【0065】
カラーインクジェット布地インクにおける顔料は、黒、白、シアン、マゼンタ、黄、赤、オレンジ、紫、青、緑、茶、およびそれらの混合物などであってもよい。カラー顔料は、HERBST,Willyらによって開示されたIndustrial Organic pigments, Production, Properties, and Applications. 3rd edition. Wiley-VCH, 2004. ISBN 3527305769から選択することができる。
【0066】
好ましい顔料は、C.I. Pigment Yellow 1, 3, 10, 12, 13, 14, 17, 55, 65, 73, 74, 75, 83, 93, 97, 109, 111, 120, 128, 138, 139, 150, 151, 154, 155, 180, 185 および 213である。より好ましくは、黄色の顔料は、C.I. Pigment Yellow 74, 128, 139, 150 155 および 213である。好ましい顔料は、C.I. Pigment Red 17, 22, 23, 41, 48:1, 48:2, 49:1, 49:2, 52:1, 57:1, 81:1, 81:3, 88, 112, 122, 144, 146, 149, 169, 170, 175, 176, 184, 185, 188, 202, 206, 207, 210, 216, 221, 248, 251, 254, 255, 264, 270 および 272である。
【0067】
好ましい顔料は、C.I. Pigment Violet 1, 2, 19, 23, 32, 37, および 39である。好ましい顔料は、C.I. Pigment Blue 15:1, 15:2, 15:3, 15:4, 15:6, 16, 56, 61, および(架橋した)アルミニウムフタロシアニン顔料である。好ましい顔料は、C.I. Pigment Orange 5, 13, 16, 34, 40, 43, 59, 66, 67, 69, 71, および73である。好ましい顔料は、C.I. Pigment Green 7 および 36である。好ましい顔料は、C.I. Pigment Brown 6 および 7である。好ましい顔料は、上記の特に好ましい顔料の混晶を含む。
【0068】
カーボンブラックは、黒色のインクジェットインクの顔料として好ましい。適切な黒色の顔料材料は、Pigment Black 7 (たとえばMITSUBISHI CHEMICALの Carbon Black MA80),CABOT Co.のREGAL(登録商標) 400R, MOGUL(登録商標) L, ELFTEX(登録商標) 320, またはDEGUSSAのCarbon Black FW18, Special Black 250, Special Black 350, Special Black 550, PRINTEX(登録商標) 25, PRINTEX(登録商標) 35, PRINTEX(登録商標) 55, PRINTEX(登録商標) 90, PRINTEX(登録商標) 150Tなどのカーボンブラックを含む。
【0069】
適切な顔料の追加の例は、米国特許第5,389,133号に開示されている。特に好ましい顔料は、C.I. Pigment White 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 10, 11, 12, 14, 17, 18, 19, 21, 24, 25, 27, 28, および32である。米国特許第5,389,133号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
好ましい白色顔料は、Pigment White 6または二酸化チタンである。酸化チタンには、アナターゼ型、ルチル型、およびブルッカイト型の結晶形がある。アナターゼ型は密度が比較的低く、細かい粒子に粉砕しやすいのに対し、ルチル型は屈折率が比較的高く、高い被覆力を示す。これらの1つまたは混合物のいずれかが使用可能である。
【0071】
酸化チタンの表面処理に関して、水処理または気相処理が適用され、通常、アルミナ-シリカ処理剤が用いられる。未処理の、アルミナ処理された、アルミナ・シリカ処理された、または塩化物処理された二酸化チタンが使用可能である。二酸化チタンの分散安定性をさらに改善するために、分散剤を使用することができる。分散剤の例には、BYK-Chemie GmbHのDisperbyk-190などの高分子分散剤が含まれる。
【0072】
カラーインクジェットインクの顔料の混合物を作製することも可能である。用途によっては、ニュートラル黒色インクジェットインクが好ましく、たとえば、ブラック顔料とシアン顔料とをインクに混合することによって得ることができる。また、非有機の顔料は、有色インクジェットインク中に存在してもよい。特に好ましい顔料、無機顔料の具体例には、赤色酸化鉄(III)、カドミウムレッド、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、酸化クロムグリーン、コバルトグリーン、アンバー、チタンブラック、および合成鉄ブラックが含まれる。
【0073】
市販の顔料分散液の具体例には、Fujifilm Imaging Colorants, Inc.のPro-Jet Cyan APD1000(登録商標), Pro-Jet Magenta APD1000(登録商標), Pro-Jet Yellow APD1000(登録商標), Pro-Jet Yellow(LF) APD1000(登録商標), Pro-Jet Black APD1000(登録商標), Cabot CorporationのCabO-Jet 200(登録商標) black, Cab-O-Jet 250C(登録商標) cyan, Cab-O-Jet 260M(登録商標) magenta, Cab-O-Jet 265M(登録商標) magenta, Cab-O-Jet 270(登録商標) yellow, Cab-O-Jet 300(登録商標) black, Cab-O-Jet 352(登録商標) black, Cab-O-Jet 400(登録商標) black, Cab-O-Jet 450C(登録商標) cyan, Cab-O-Jet 465M(登録商標) magenta, Cab-O-Jet 470Y(登録商標) yellow, Cab-O-Jet 480V(登録商標) violet, Cab-O-Jet 554B(登録商標) blue, Cab-O-Jet 740Y(登録商標) yellow, Eastman Kodak CompanyのSpecialty Cyan Dispersion Type A1(登録商標), Specialty Cyan Dispersion Type A1(登録商標), Specialty Cyan Dispersion Type A1(登録商標), Specialty Cyan Dispersion Type P1(登録商標), Specialty Cyan Dispersion Type P2(登録商標), Specialty Magenta Dispersion Type A1(登録商標), Specialty Magenta Dispersion Type A2(登録商標), Specialty Magenta Dispersion Type A3(登録商標), Specialty Magenta Dispersion Type P1(登録商標), Specialty Magenta Dispersion Type P3(登録商標), Specialty Yellow Dispersion Type A1(登録商標), Specialty Yellow Dispersion Type A2(登録商標), Specialty Yellow Dispersion Type P1(登録商標), Specialty Yellow Dispersion Type P2(登録商標), Specialty Black Dispersion Type A1(登録商標), Specialty Black Dispersion Type P2(登録商標), Specialty Black Dispersion Type P4(登録商標), Specialty Black Dispersion Type SD2(登録商標), Specialty Black Dispersion Type SD4(登録商標), Specialty Red Dispersion Type P1(登録商標), Specialty Green Dispersion Type P1(登録商標), Specialty Green Dispersion Type P2(登録商標), Specialty Green Dispersion Type P3(登録商標), Specialty Green Dispersion Type P4(登録商標), Specialty Orange Dispersion Type P1(登録商標), Specialty Violet Dispersion Type P1(登録商標), Specialty White Dispersion Type P2(登録商標), E. I. du Pont de Nemours and CompanyのMega Cyan(登録商標), Mega Magenta(登録商標), Mega Yellow 2(登録商標), Mega Black(登録商標), DU 1010(登録商標) cyan, DU 1020(登録商標) magenta, DU 1030 yellow(登録商標), DU 1031 yellow(登録商標), DU 1040(登録商標) black, DU 1041(登録商標) black, Lever Colors, Inc.のCylcojet Blue 15:3 Liquid(登録商標), Cylcojet Blue 15:0 & 15:4 Liquid(登録商標), Cylcojet Blue 60 Liquid(登録商標), Cylcojet Brown 25 Liquid(登録商標), Cylcojet Red 122 Liquid Blue Shade(登録商標), Cylcojet Red 122 Liquid Yellow Shade(登録商標), Cylcojet Black 7 Liquid(登録商標), Cylcojet Violet 19 Liquid Blue Shade(登録商標), Cylcojet Violet 19 Liquid Yellow Shade(登録商標), Cylcojet Yellow 74 & 155 Liquid, Cylcojet Orange 34 & 43, Cylcojet White 6 Liquid, Clariant International, Ltd.のHostajet Yellow 4G-PT VP2669(登録商標), Hostajet Red D3G-PT VP 5152(登録商標), Hostajet Magenta E5B-PT VP3565(登録商標), Hostajet Magenta E7B-PT VP 5122(登録商標), Hostajet Magenta E-PT(登録商標), Hostajet Cyan BG-PT(登録商標), Hostajet Green 8GPT VP 5154(登録商標), Hostajet Black O-PT(登録商標), Chromaflow TechnologiesのTint-Ayd(登録商標) CW5003 white dispersion, Prometho GmbHのVarionyl 702(登録商標) white dispersio, およびEngineered Polymers Solution & Color Corporation of AmericaのNovoColor IP 8500(登録商標) white dispersionが含まれる。
【0074】
捺染用インクジェットインクは、陰イオン性水分散性樹脂粒子を備える。高分子樹脂は、粒子、もしくはエマルジョン、分散、またはラテックス形態樹脂ポリマーとして知られる形態で水相中に分散される。顔料結合剤として作用する水分散性樹脂は陰イオン性樹脂を少なくとも含み、この陰イオン性樹脂は、150nm未満の中央値体積加重サイズ、250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズ、500~1200%のフィルムの伸び、10~60mPaのフィルム引張強度、5~40の酸価(mg KOH/g)という特性を有する。
【0075】
水分散性樹脂粒子のサイズは、顔料分散体粒子と同様に、インクジェットプリントヘッドが適切に機能するために重要である。粒子が大きくなると、プリントヘッドの目詰まりの原因となり、プリントヘッドノズルからのインクの不安定な吐出または不吐出を助長する可能性がある。
【0076】
Horiba L-950などのレーザー回折粒子サイズ測定装置によって測定される場合、体積加重メジアン顔料粒子サイズは、好ましくは150nm未満であり、より好ましくは125nm未満であり、最も好ましくは100nm未満である。同様に、95パーセンタイル粒子サイズ(95th percentile volume weighted size)は250nm未満であり、より好ましくは200nm未満であり、最も好ましくは100nm未満である。
【0077】
インクジェットインクは、プリント後、素材との接触中およびその後の乾燥/硬化ステップ中にインクの樹脂粒子が合体した結果、フィルムを形成する。このようなフィルムの形成は、プリントされた領域の「手触り」または感触に直接影響を与える。一般に、破断前の伸びが高い樹脂フィルムは、望ましいソフトな手触りを有すると説明される。
【0078】
加えて、破断点伸び率で測定される弾性は、伸ばされたとき、または捺染物が洗濯されたときに、プリント画像の耐久性に影響を与える可能性がある。伸び率が低すぎると、プリントされたインクの耐クラック性が低くなり、洗濯堅牢度が低下し、手触りが硬くなる。伸び率が高すぎると、インクは布地繊維との接着性が低くなり、洗濯堅牢度が低くなる可能性がある。好ましい純粋な樹脂フィルムの破断伸びパーセントは、500~1200%の間であり、より好ましくは700~1100%の間である。
【0079】
高分子樹脂粒子から形成されたフィルムの引張強度は、布地素材に印刷されたインクジェットの耐久性に直接影響を与える可能性がある。引張強度が10mPa未満または60mPaを超えると洗濯堅牢度が低下する場合がある。好ましい純粋な樹脂フィルム引張強度は、10~60mPaの間、より好ましくは10~35mPaの間である。
【0080】
水分散性樹脂粒子の酸価は高分子樹脂の本質的な特徴である。酸価は、乾燥樹脂1グラム中の全ての酸性部位を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。樹脂酸価が高すぎる場合、布地の前処理で陽イオンサイト(正に荷電したサイト)の量に対して樹脂の陰イオンサイト(負に荷電したサイト)が過剰になる。したがって、布地表面上のインク組成物を適切に凝固させるための十分な電荷相互作用が存在する。これにより、インクが布地に浸透し、白のインクが低い場合は、下にある暗い布地のカバレッジが不十分になるため、不透明になる。
【0081】
高分子樹脂の酸価が低すぎるかゼロの場合(非イオン性樹脂の場合)、前処理と相互作用するための十分な陰イオン性部位が樹脂に存在し、布地表面へのインクの蓄積が不十分となる。布地表面でのインク凝固の欠如によって、低い印刷濃度、低い白色インク不透明度、および「パンチスルー」、または捺染物の裏側へのインクの拡散をもたらす可能性がある。
【0082】
水分散性高分子樹脂の好ましい酸価は、5~40mgKOH/gであり、より好ましくは5~20mgKOH/gであり、最も好ましくは10~20mgKOH/gである。
【0083】
陰イオン性水分散性高分子樹脂粒子は、ウレタン、アクリル、ウレタンアクリルハイブリッド、スチレンアクリル、スチレンブタジエン、エチレンアクリル酸、およびビニルアクリル、ならびにこれらの混合物に分類されるポリマーから選択することができるが、これらに限定されない。陰イオン性水分散性高分子樹脂は、当技術分野で知られている架橋剤を使用して、自己架橋するまたは架橋可能であるものとしてさらに分類することができる。好ましい高分子樹脂は、自己架橋するまたは架橋剤を用いて架橋されることが可能であるポリウレタンおよびアクリルである。最も好ましいのは、自己架橋するか架橋可能であるポリウレタン樹脂である。
【0084】
本明細書の実施の形態によれば、市販されている水分散性高分子樹脂は、L. Hauthaway & Sons Corp.のHauthane(商標)シリーズ、Bond PolymersのBondthane(商標)シリーズ、Royal DSM N.V.のNeoRez(商標)およびNeoCryl(商標)シリーズ、Hydrite Chemical CompanyのLucidene(商標)およびHydriprint(商標)シリーズ、Synthomer plcのAcrygenシリーズおよびPlextol(商標) R123, Mitsui Chemicals America, Inc.のTakelac(商標)シリーズ、Alberdingk Boley, Inc.のACおよびUシリーズ、Essential PolymersのR シリーズ、Scott Bader, Ltd.のTexicryl(商標)シリーズ、ClariantのAppretan(商標) シリーズ、Lubrizol CorporationのHycar(登録商標), Hystretch(登録商標), Permax(登録商標), Lubrijet(登録商標) および Sancure(登録商標) シリーズ、Arkema, Inc.のEncor(登録商標)シリーズ、ReichholdのArolon(登録商標) シリーズ、Michelman, Inc.のMichem(登録商標)シリーズ、Rudolf-DuranerのRUCO-COAT(登録商標), RUCO-PUR(登録商標), およびRUCO-BOND(登録商標)シリーズ 、BASFのJoncryl(登録商標)シリーズ、およびLANXESSのWitcobond(登録商標)シリーズ、BIP (Oldbury) Ltd.のBeetafinシリーズ、DKS Co. LtdのSuperflex シリーズ、SNP, Inc.のSシリーズ、Covestro AGのImpranil(登録商標), Baybond(登録商標) およびBayhydrol(登録商標)シリーズ、Japan Coating Resin Co., Ltd.のMowinyl シリーズ、Lamberti SpAのSipacril シリーズ、Mallard Creek PolymersのRovene(登録商標) シリーズ、Sun Chemical(登録商標)/DICのHydran シリーズ、 StanChem Inc.のSシリーズ、Tanatex Chemicals B.V. のEdolan シリーズ、およびUnion Specialties, Inc. のUnithane シリーズを含むが、これらに限定されない。好ましい例は、SNP, Inc.のS-1434-L, S-1428-L, およびS-1426-L、Tanatex Chemicals B.V.のEdolan SN 、Mitsui Chemicals America, Inc.のTanatex Chemicals B.V.およびTakelac WS-6021を含む。
【0085】
連続水相は、インクジェットインクの総重量に対して15%~40%の範囲の量で存在する、大気圧で250℃以上の沸点を持つ少なくとも1つの有機溶媒を備える。溶媒の量は、溶媒の特性(溶解度および/または誘電率)、着色剤のタイプ、および得られるインクジェット組成の所望の性能を含む様々な要因に応じて変えることができる。溶媒は、インクジェットインク組成物の総重量に基づいて、15重量%~35重量%の範囲であることが好ましい。
【0086】
250℃以上の沸点を持つ適切な有機溶媒の例には、グリコール(トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール)、アルコール(約3~約40個の炭素原子を含むトリオール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオールなどが含まれるとともに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびそれらの混合物を含むアルキレンオキシドとのそれらの反応生成物)、ポリオール(ペンタエリスリトールなど)、ヒドロキシエーテル(ジグリセロールなど)、グリコールエーテル(トリエチレングリコールブチルエーテルなど)、第三級アルコールアミン(トリエタノールアミンなど)、ラクタムおよびラクタム誘導体(1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよびεカプロラクタムなど)、尿素または尿素誘導体(ジ-(2-ヒドロキシエチル)-5,5-ジメチルヒダントインなど)、およびヒドロキシアミド誘導体(N-アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、およびプロピルカルボキシプロパノールアミン、ならびにアルキレンオキシドとのそれらの反応生成物など)が含まれる。追加の例には、糖類(マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、およびマルトースなど)、およびスルホン誘導体(スルホランなど)が含まれる。有機溶媒は、有機溶媒の混合物を含むことができる。
【0087】
250℃以上の沸点を有する好ましい水溶性不揮発性有機化合物溶媒(水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒)は、グリセロール、ジグリセロール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよびそれらの混合物から選択される。
【0088】
表面活性薬(界面活性剤)および分散剤は、捺染用インクジェットインクに含まれてもよい。界面活性剤は、組成物のコロイド安定性を高めたり、インクと布地素材またはインクプリントヘッドとの相互作用を変化させたりすることができる。陰イオン、陽イオン性、非イオン性の様々な界面活性剤および分散剤をインクと組み合わせて使用できる。
【0089】
一実施の形態では、界面活性剤は、インクジェットインク構成物の総重量に対して、0.05重量%~5重量%の範囲の量、たとえば0.1重量%~5重量%、または0.5重量%~2重量%の範囲の量で存在する。
【0090】
陰イオン性分散剤または界面活性剤の代表例としては、高級脂肪酸塩、高級アルキジカルボキシレート、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(Na、K、Li、Caなど)、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸との縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフテン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アクリルメチルタウリン、アルキルエーテルスルホネート、二級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、モノグリシルサルフェート、アルキルエーテルホスフェートおよびアルキルホスフェート、アルキルホスホネートおよびビスホスホネートが含まれ、ヒドロキシル化またはアミノ化誘導体が含まれるが、これに限定されない。
【0091】
たとえば、スチレンスルホン酸塩のポリマーおよびコポリマー、非置換および置換ナフタレンスルホン酸塩(たとえば、アルキルまたはアルコキシ置換ナフタレン誘導体)、アルデヒド誘導体(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒドなどを含む非置換アルキルアルデヒド誘導体など)、マレイン酸塩、およびそれらの混合物を陰イオン性分散助剤として使用することができる。
【0092】
塩には、たとえば、Na+、Li+、K+、Cs+、Rb+、および置換および非置換アンモニウム陽イオンが含まれる。陽イオン性界面活性剤の代表例には、脂肪族アミン、第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などが含まれる。
【0093】
インクジェットインクで使用できる非イオン性分散剤または界面活性剤の代表例には、フッ素誘導体、シリコーン誘導体、シロキサン誘導体、アセチレン誘導体、アクリル酸コポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン第二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチロールエーテル、エトキシ化アセチレンジオール、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物のエチレンオキシド誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル、ポリエチレン酸化縮合型のエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセロールの脂肪酸エステル、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、サトウキビ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドおよびポリオキシエチレンアルキルアミンオキシドが含まれる。
【0094】
非イオン性アセチレン型界面活性剤およびシロキサンエチレンオキシド型界面活性剤から、好ましい界面活性剤が選択される。より好ましい界面活性剤の例には、Evonik Industries AGのSurfynol 465およびDynol 960、ならびにBYK-Chemie GmbHのBYK-348が含まれる。
【0095】
米国特許第9,611,401号は、インクジェットインクで有用な様々な架橋剤を開示している。米国特許第9,611,401号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
本明細書で使用される「架橋剤」という語句は、ポリマー鎖間の結合の分子間共有結合、イオン性、疎水性、または他の形態を促進または調節し、それらを一緒に架橋して鎖のネットワークを形成し、より弾力性および/または剛性のある構造を生じる物質を指す。架橋剤は、インク組成物の重合性成分中および/または布地繊維の表面上に存在するそれぞれの基と相互作用できる少なくとも2つの反応性基を含む。
【0097】
このような反応性基の例には、アミン基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、ブロックされたイソシアネート基、エポキシ基、酸塩化物基、二重結合、アクリレート、アクリルアミド、有機チタネート、ジルコン酸塩、およびスルフヒドリル基が含まれるが、これらに限定されない。架橋剤には、2つの同一の反応性末端基を有するホモバイファンクショナル架橋剤、および2つの異なる反応性末端基を有するヘテロバイファンクショナル架橋剤が含まれる。
【0098】
これらの2つのクラスの架橋剤は、架橋ステップに影響を与えるために使用される化学反応において主に異なり、ホモバイファンクショナル架橋剤はワンステップの反応を必要とし、ヘテロバイファンクショナル架橋剤は同じものに影響を与えるための2つのステップが必要である。ホモバイファンクショナル架橋剤は、自己共役、重合、および細胞内の架橋をもたらす傾向を有し、ヘテロバイファンクショナル剤は、望ましくない分子内交差反応および重合を最小限に抑える、より制御された2段階反応を可能にする。
【0099】
架橋剤は、異なるスペーサーアームの長さによってさらに特徴付けられる。より長いスペーサーアームを持つ架橋剤は、2つのターゲット基がさらに離れている場合や、より柔軟性が必要な場合に使用されてもよい。
【0100】
水不溶性の架橋剤は、インクジェット布地インクの連続水相の中に分散されてもよい。水不溶性架橋剤は、水不混和性溶媒に溶解または分散され、インクジェット布地インクの連続水相の中に乳化されてもよい。加えて、水混和性または水溶性の架橋剤は、インクジェット布地インクの連続水相に溶解されてもよい。
【0101】
架橋剤のタイプまたは架橋剤がインクジェット布地インクにどのように組み込まれているかに関係なく、インクと布地繊維との間の結合は、実質的に繊維のタイプに依存し、またはより具体的には、繊維表面の物理的および化学的微細構造、および繊維の表面上の反応性官能基の利用可能性、すなわちその化学組成に依存する。
【0102】
少なくとも部分的に天然の繊維(コットン、麻)、ウール、シルク、さらには皮や革から作られた多くの生地などのセルロース系素材は、架橋剤を介してインクに結合できる、ヒドロキシル、カルボキシル、チオール、およびアミン基などの利用可能な反応性官能基を提供する。
【0103】
あるいは、合成ポリマー繊維などのいくつかの繊維の場合、反応性官能基の不足は、インクの素材への結合が繊維表面の機械的特性および微細構造、すなわちポリマー接着および物理的な織り交ぜおよびからみ合いによる付着によってもたらされることを意味する。
【0104】
硬化したインクの架橋密度は、架橋ポリマーに付着し、カプセル化された着色剤を構成し、それは主に、重合前の混合物中の架橋剤の濃度に由来し、すべてのパーツが布地繊維表面に接するとインク組成を構成する。したがって、硬化したインク組成物の架橋密度のレベルは、布地繊維表面上に非常に柔軟で、伸縮性があり、弾性のあるコーティングを与える中間レベルである。
【0105】
ホルムアルデヒドは、多くのポリマーにとって機能的な架橋剤である。しかし、ホルムアルデヒドを含む布地インクは、Oko-Tex Standard 100(Oko-Tex)による衣服のホルムアルデヒド含有量に基づいて、特定の用途での使用が制限されている。アミノ樹脂架橋剤の使用時に形成されるホルムアルデヒドは、高温で衣服から蒸発してもよく、ホルムアルデヒドのレベルは、広く受け入れられているOko-Tex Standard 1000に従って許容値に達することはできない。
【0106】
架橋剤には、ジアルデヒド、他のポリアルデヒド、または少なくとも1つのアルデヒド基を有するジアルデヒド酸類似体、たとえばC2~C8ジアルデヒドが含まれる。アルキル化グリオキサール/環状尿素縮合物は、セルロース系繊維およびさまざまな活性水素含有ポリマーの架橋剤として機能する。
【0107】
米国特許第4,285,690号、米国特許第4,345,063号、および米国特許第4,888,093号は、インクジェットプリントに有用ないくつかの架橋剤を開示している。米国特許第4,285,690号、米国特許第4,345,063号、および米国特許第4,888,093号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
架橋剤はヘテロアリールポリカルバメート架橋剤を含んでいてもよく、ヘテロアリールポリカルバメート架橋剤は、直鎖または環状尿素、シアヌル酸、置換シアヌル酸、直鎖または環状アミド、グリコールウリル、ヒダントイン、直鎖または環状カルバメート、およびそれらの混合物からなる群から導かれる部分に基づくものであり、インク組成物とセルロース系生地との間の架橋剤として適している。
【0109】
米国特許第6,063,922号、米国特許第5,596,047号、米国特許第7,381,347号、および米国特許出願公開第2004/0116558号は、インクジェットプリントに有用ないくつかの架橋剤を開示している。米国特許第6,063,922号、米国特許第5,596,047号、米国特許第7,381,347号、および米国特許出願公開第2004/0116558号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
架橋剤には、ジアセトンアクリルアミド/ヒドラジン(ポリアルケニルエーテル樹脂)が含まれていてもよく、これは、米国特許第5,348,997号、米国特許第5,432,229号、および米国特許第7,119,160号に、たとえばKyowa Hakko Chemical Co., Ltd., JapanのN-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド(DAAM)/ヒドラジンとして開示されている。米国特許第5,348,997号、米国特許第5,432,229号、および米国特許第7,119,160号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
架橋剤は、式-N=C=N-を有し、アミンおよびカルボキシル基と容易に反応することができる官能基を含むカルボジイミドを含んでいてもよく、これは欧州特許出願EP0121083A1、米国特許出願公開第2007/0148128号、米国特許第5,360,933号、米国特許第6,124,398号、米国特許第7,425,062号、および欧州特許EP0277361に開示されている。このような架橋剤の非限定的な例には、Nisshinbo Chemical Inc.のCARBODILITE(登録商標)が含まれる。米国特許出願公開2007/0148128号、米国特許第5,360,933号、米国特許第6,124,398号、米国特許第7,425,062号、欧州特許出願EP0121083A1、および欧州特許EP0277361の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
プレポリマーの架橋を達成するための手段は、一般に、3つ以上の官能反応部位を有する出発物質および/または中間体の少なくとも1つの成分に依存する。
【0113】
米国特許出願公開第2007/0060670号は、インクジェットプリントに有用ないくつかの多官能性モノマーを開示している。米国特許出願公開第2007/0060670号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0114】
3つ(またはそれ以上)の反応部位のそれぞれの反応によって、架橋したポリマーが生成される。各反応性成分で利用できる反応部位が2つだけの場合、線状ポリマーのみが生成される。ポリウレタンを生成することができる架橋重合反応の例としては、たとえば次のものが挙げられるが、これらに限定されない。イソシアネート反応性部分は、少なくとも3つの反応性基、たとえば多官能性アミンまたはポリオールを有する。イソシアネートは、少なくとも3つのイソシアネート基を有する。プレポリマー鎖は、イソシアネート反応以外の反応を介して反応することができる少なくとも3つの反応部位を有し、たとえばアミノトリアルコキシシランを持つ。インクジェットインク製剤で使用する前に、少なくとも3つの反応部位を有する反応性成分、たとえば三官能性エポキシ架橋剤をポリウレタンに付加する。オキサゾリン官能基を有する水分散性架橋剤を追加する。カルボニル官能基を持つポリウレタンを合成し、続いてジヒドラジド化合物を添加する。これらの架橋方法および関連技術の当業者に知られている他の架橋方法の任意の組み合わせ。
【0115】
ブロックされたイソシアネート架橋剤には、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、H6XDI(水素化キシリレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、またはH12MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)のTMP(トリメチロールプロパン)付加形態またはイソシアヌレート形態が含まれる。加えて、ブロッキング剤は、好ましくは、DEM(マロン酸ジエチル)、DIPA(ジイソプロピルアミン)、TRIA(1,2,4-トリアゾール)、DMP(3,5-ジメチルピラゾール)、またはMEKO(2-ブタノキシム)であるが、これらは制限するものと解釈されない。
【0116】
架橋剤は二官能性アクリレートを含んでいてもよく、この二官能性アクリレートは、アルコキシル化シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、およびネオペンチルグリコールジアクリレートを含む。三官能性アクリレートは、プロポキシル化グリセリントリアクリレート、およびエトキシル化またはプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートを含む。他の高官能性アクリレートには、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、メトキシル化グリコールアクリレート、およびアクリル酸エステルが含まれる。さらに、上記アクリレートに対応するメタアクリレートがこれらのアクリレートと併用されてもよい。メタクリル酸、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、およびポリエチレングリコールジメタクリレートは、感度が比較的高く、布地繊維表面への接着性が高いため、好ましい。
【0117】
好ましい架橋剤には、Nissinbo Chemical Inc.のCarbodiliteシリーズ、Nippon Shokubai Co., Ltd.のEpocrosシリーズが含まれる。これらの架橋剤は、効率が高く、安全性が高く、毒性が低い。陰イオン性水分散体高分子樹脂固体に対する架橋剤の好ましい質量比は、0.01~0.20であり、より好ましくは0.05~0.15である。
【0118】
インク組成物は、必要に応じて、緩衝剤/中和剤、接着促進剤、殺菌剤(bactericides)、殺菌剤(fungicides)、殺藻剤、金属イオン封鎖剤、軟化剤、増粘剤、消泡剤、コゲーション防止剤、腐食防止剤、光安定剤、カール防止剤、増粘剤、非反応性剤、軟化剤/可塑剤、特殊な分散剤、特殊な界面活性剤、導電剤(イオン化可能な材料)、および/または関連分野でよく知られているその他の添加剤および補助剤などの1つまたは複数の他の成分を含む。
【0119】
pH調整剤には、無機および有機の水溶性酸、無機および水溶性塩基、ならびに両性化合物が含まれる。非限定的な例には、水酸化ナトリウムと、水酸化カリウムと、水酸化アンモニウムと、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどの第一、第二、および第三アミンと、トリス(ヒドロキシメチルアミノメタン)などのアミノ酸と、塩酸と、硫酸と、リン酸と、硝酸と、酢酸と、プロピオン酸などが含まれる。
【0120】
泡止め剤(消泡剤)の非限定的な例には、BYK 024, BYK 012, BYK 31(Byk-Chemieから市販されている)と、FOAMEX 810, AIREX 901, AIREX 902(ドイツ、エッセンのEvonik Tego Chemie GmbHから市販されている)と、SURFYNOL DF 37, SURFYNOL DF 210, SURFYNOL DF 75 (Air Products Ltd.), から市販されている)などが含まれる。
【0121】
インクジェットインクは、好ましくは、1~10の間、より好ましくは2~7の間のZ数としても知られるオーネゾルゲ数(Oh-1)を有する。25℃で測定した場合、インクジェットインクの密度は、好ましくは1.00~2.00g/cm3、より好ましくは1.02~1.20g/cm3である。インクジェットインクの表面張力は、デュノイ環張力計、ウィルヘミー板張力計、気泡圧力張力計などの方法を採用した、この目的に一般的に使用される装置によって一定温度で測定できる。
【0122】
25℃で測定した場合、インクジェットインクの表面張力は、好ましくは15~60mN/m、より好ましくは20~60mN/m、最も好ましくは25~50mN/mである。インクジェットインクの粘度は、たとえばBrookfield製の回転スピンドル粘度計、回転コーンおよびプレート粘度計、ローリングボール粘度計、毛細管粘度計などの方法を採用して、この目的のために一般的に使用される任意の装置によって、固定された温度で計測することができる。25℃で測定した場合、インクジェットインクは、好ましくは1~20センチポアズ(cP)、より好ましくは2.5~17.5cP、最も好ましくは2.5~15cPである。
【0123】
インクジェットインクについては、60℃で2週間保存した後で観察されるpH変化が1pH単位を超えず、インク粘度変化が1cPを超えず、メジアン粒径が10%を超えず、95パーセンタイルの粒子サイズの変化が20%を超えないことが好ましい。
【0124】
以下の例は、上述のインクをプリントするいくつかの実施の形態を示している。しかし、以下は、上記の原理の適用の単なる例示または説明であることを理解されたい。上記のプリントインクの精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって多数の修正、代替構成、方法、およびシステムが考案されてもよい。このように、プリントインクを詳細に説明してきたが、以下の例は、現在許容可能な実施の形態とみなされるものに関連してさらに詳細を提供する。
【0125】
実施例のインクの調製に使用された顔料分散液を表1に示す。
【0126】
【0127】
実施例のインクの調製に使用される水分散性樹脂を、固体分、酸価、引張強度、および破断点伸びパーセントに関する製造業者の情報とともに表2に示す。体積加重メジアン粒径(D50)および95パーセンタイル(D95)データは、Horiba L-950レーザー回折分析装置を使用して収集された。
【0128】
【0129】
実施例の白色インクは、表3に示す成分と表4のマゼンタインクとを一緒に混合することによって調製した。比較例のインクを表5に示す。水、殺生物剤、および水溶性不揮発性有機化合物溶媒(水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒)が最初に結合された。水分散性高分子樹脂分散液および顔料分散液を撹拌し、最後に界面活性剤をこの順序で加えた。インク組成物は、評価前に少なくとも30分間混合し続けた。
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
インク粘度は、回転速度180rpmで、SC4-18スピンドルという小容量アダプターを用いて、Brookfield DV3T粘度計で測定された。測定中のインク温度は、小容量アダプターの外部ジャケットを通して混練水(tempered water)を供給する外部温度槽によって制御された。25℃で許容されるインクの粘度の範囲は、4~13センチポアズ(cP)である。
【0134】
白色インク評価用の布地は、Gildan(登録商標)Heavy Cotton 100%のコットンの黒色Tシャツ素材であった。布地は、Firebird FBX-100TMユニバーサル前処理を用いて、約16~19mg/cm2の湿潤被覆率で前処理され、続いて最低24時間乾燥された。
【0135】
迅速な評価を可能にするために、表3の実施例1~6および表5の比較例1~5の白色インクを、NEO gravity feed dual action手持ちエアブラシ(ANEST Iwata-Medea, Inc製)を用いて布地素材上に均一に堆積させた。エアブラシへの空気供給は15psigに設定された。
【0136】
リザーバーが空になったときに所望の質量のインクを十分に布地素材上に与えるために、予め測定した量のインクをエアブラシリザーバーに入れた。白色インクをスプレーする前に、布地素材を計量した。
【0137】
2インチ四方の開口部を持つプラスチックフィルムテンプレートを布地素材上に置き、インクを均一に堆積できるようにし、オーバースプレーを制御した。液体インクの目標量を31±1mg/cm2に制御した。白色インクを堆積させた後、素材を再び秤量して、正確な質量で湿ったインクが堆積されたことを確認した。スプレー後、166℃に設定されたラボ用対流式オーブン内にインクを含む布地サンプルを4分間配置し、インクを乾燥および硬化させた。
【0138】
硬化後の黒色布地上の白色インクの明度値(CIELab L*)を、PIAS II 手持ち分光光度計(Quality Engineering Associates, Inc製)で測定した。最大の絞りを使用し、光源をD5000に設定し、観察角を2°に設定した。表3および表5の評価基準は次のとおりである。●-L*>94、優、○-L*93.5~94、良、△-93.0~93.5、可(不十分)、×-93以下、劣。
【0139】
スプレー捺染物の裏側への白色インクの浸透の定性的評価は、パンチスルーと呼ばれる。パンチスルーは、布地のプリント面のインクを抑え、白色インクまたは有色インクの強度を良好に表現するのに、インク-前処理の相互作用が十分な強度であるか否かを示している。表3および表5の評価基準は次のとおりである。●-無し、優、○-ほとんど目立たない、良、△-わずかにパンチスルー、可、×-かなりのパンチスルー、劣
【0140】
白色インクの洗濯堅牢度を評価するために、スプレープリントされたサンプルを白色コットンTシャツに固定し、トップローディングの小型洗濯機に入れた。さらに、100%コットンTシャツもテストサンプルと一緒に洗濯機に入れた。1つのTide洗剤ポッド(オリジナルの3イン1Tide Pods、Proctor & Gamble Co)をサイクルの開始時に洗濯機に入れた。通常の洗浄温度設定を用いた。
【0141】
衣服にインクのテストプリントを添付し、追加のTシャツを洗濯した後、インクのテストプリントが添付された衣服と追加のTシャツとを小型乾燥機に入れ、通常の設定で乾燥した。
【0142】
乾燥の後、各白色インクのL*値を再測定した。L*明度値(ΔL*)の変化は、洗濯および乾燥の3回のサイクル後に記録された。白色インクが劣化すると、その下の黒色布地が見えるようになり、L*が減少し、ΔL*がマイナスになる。表3および表5の評価基準は次のとおりである。●-ΔL*>-1、優、○-ΔL*-7~-1、良、△-ΔL*-15~-7、可(不十分)、×-ΔL*-15未満、劣。
【0143】
表4のマゼンタインクの実施例は、必要なインク粘度を維持しながら、インクの好ましい重量パーセント範囲内で、水溶性不揮発性有機化合物溶媒(水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒)を調合する能力を示している。
【0144】
表3および表5の結果を精査すると、インクは好ましい範囲内の粘度値を有し、記載された評価基準のすべてについて良好に機能するのに対し、比較例は粘度値が必要な範囲外であること、または評価基準に対して不十分なパフォーマンスを提供することが示されている。
【0145】
上述のインクに関して、インクは布地上のプリント画像に使用することができる。
【0146】
たとえば、
図1に示すように、ステップS20の画像は、インクを塗布することにより布地アイテム上に形成でき、このインクは、顔料と、水分散性陰イオン性高分子樹脂と、250℃以上の沸点を持つ水溶性不揮発性有機化合物溶媒(水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒)と、水とを備え、水分散性高分子樹脂粒子は、150nm未満の中央値体積加重サイズ、250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズ、500~1200%の樹脂フィルム伸び、10~60mPaのフィルム引張強度を有する。ステップS30で塗布されたインクを乾燥させ、ステップS40で塗布されたインクを硬化させる。
【0147】
インクは、高分子樹脂架橋剤をさらに含んでもよい。
【0148】
インクは、布地アイテムにプリントできる従来のインクジェットプロセス、または布地アイテムにプリントできる従来のインクジェットプリンターを使用して塗布することができる。
【0149】
インクは、従来の乾燥および/または硬化プロセスおよび/または布地アイテム上のインクを乾燥および/または硬化可能な装置を用いて乾燥および/または硬化させることができる。
【0150】
さらに、
図1に示されるように、布地アイテムは、ステップS10として、プリントされる布地アイテム上のプリント位置で、多価金属塩を含む前処理剤で、任意に前処理されてもよい。
【0151】
要約すると、25℃で2.5~15センチポアズの粘度を持つ捺染用インクは、顔料と、水分散性陰イオン性高分子樹脂と、250℃以上の沸点を持つ水溶性不揮発性有機化合物溶媒(水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒)と、水とを備え、水分散性高分子樹脂は、150nm未満の中央値体積加重サイズと、250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズとを持つ複数の粒子を有し、水分散性高分子樹脂は、5~40の酸価と、500~1200%の樹脂フィルム伸びと、10~60mPaのフィルム引張強度とを有する。
【0152】
顔料の重量部は、インクの1~20重量部であってもよい。
【0153】
水分散性陰イオン性高分子樹脂の重量部は、インクの3~25重量部であってもよい。
【0154】
水溶性不揮発性有機化合物溶媒(水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒)の重量部は、インクの15~40重量部であってもよい。
【0155】
インクはまた、架橋剤を含んでいてもよい。
【0156】
架橋剤の重量部は、インクの1~5重量部であってよい。
【0157】
水分散性陰イオン性高分子樹脂は、ポリウレタン樹脂であってもよい。
【0158】
水溶性不揮発性有機化合物溶媒(水溶性揮発性ゼロ有機化合物溶媒)は、グリセロール、ジグリセロール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンから選択されてもよい。
【0159】
水分散性陰イオン性ポリウレタン樹脂は、脂肪族、ポリエステル、ポリエーテル、ヒドロキシアルキル、シラン、および/またはポリカーボネートセグメントを含んでいてもよい。
【0160】
架橋剤は、カルボジイミドおよび/またはポリオキサゾリンであってもよい。
【0161】
布地上に画像をプリントする方法は、(a)布地上のプリント位置にインクを塗布することを備え、インクは、顔料と、水分散性陰イオン性高分子樹脂と、250℃以上の沸点を持つ水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒と、水とを備え、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、150nm未満の中央値体積加重サイズ、および250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズを持つ複数の粒子を有し、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、5~40の酸価と、500~1200%の樹脂伸びと、10~60mPaのフィルム引張強度とを有し、(b)塗布したインクを乾燥させることと、(c)塗布したインクを硬化させることとを備える。
【0162】
この方法は、布地上のプリント位置を前処理剤で前処理することをさらに備えていてもよい。
【0163】
前処理剤は多価金属塩を含んでいてもよい。
【0164】
顔料の重量部は、インクの1~20重量部であってもよい。
【0165】
水分散性陰イオン性高分子樹脂の重量部は、インクの3~25重量部であってもよい。
【0166】
水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒の重量部は、インクの15~40重量部であってもよい。
【0167】
水分散性陰イオン性高分子樹脂は、ポリウレタン樹脂であってもよい。
【0168】
水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒は、グリセロール、ジグリセロール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンから選択されてもよい。
【0169】
水分散性陰イオン性ポリウレタン樹脂は、脂肪族、ポリエステル、ポリエーテル、ヒドロキシアルキル、シラン、および/またはポリカーボネートセグメントを含んでいてもよい。
【0170】
架橋剤は、カルボジイミドおよび/またはポリオキサゾリンであってもよい。
【0171】
捺染物は、織物生地と、織物生地上に形成されたインクとを備え、インクは、顔料と、水分散性陰イオン性高分子樹脂と、250℃以上の沸点を持つ水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒と、水とを含み、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、150nm未満の中央値体積加重サイズ、および250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズを持つ複数の粒子を有し、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、5~40の酸価と、600~1200%の樹脂伸びと、10~60mPaのフィルム引張強度とを有する。
【0172】
顔料の重量部は、インクの1~20部であり、水分散性陰イオン性高分子樹脂の重量部は、インクの3~25部であり、水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒の重量部は、インクの15~40部であってもよい。インクは架橋剤を含んでいてもよい。水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒は、グリセロール、ジグリセロール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、および1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンから選択されてもよい。
【0173】
布地上に画像をプリントする方法は、(a)布地上のプリント位置に第1のインクを塗布することを備え、第1のインクは第1の顔料と、水分散性陰イオン性高分子樹脂と、250℃以上の沸点を持つ水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒と、水とを含み、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、150nm未満の中央値体積加重サイズおよび250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズを持つ複数の粒子を有し、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、5~40の酸価と、500~1200%の樹脂伸びと、10~60mPaのフィルム引張強度とを有し、第1の顔料は、TiO2顔料であり、(b)第2のインクを布地上に塗布することを備え、第2のインクは第2の顔料と、水分散性陰イオン性高分子樹脂と、250℃以上の沸点を持つ水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒と、水とを有し、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、150nm未満の中央値体積加重サイズおよび250nm未満の95パーセンタイル体積加重サイズを持つ複数の粒子を有し、水分散性陰イオン性高分子樹脂は、5~40の酸価と、500~1200%の樹脂伸びと、10~60mPaのフィルム引張強度とを有し、第2の顔料は第1の顔料とは異なり、(c)塗布したインクを乾燥させることと、(d)塗布したインクを硬化させることとを備える。
【0174】
この方法では、第2のインクを塗布する前に第1のインクを塗布してもよい。
【0175】
この方法では、インクを塗布する前に、前処理剤、布地上のプリント位置を前処理してもよい。前処理剤には多価金属塩が含まれてもよい。
【0176】
顔料の重量部は、第1のインクの1~20重量部であってもよい。水分散性陰イオン性高分子樹脂の重量部は、第1のインクの3~25重量部であってもよい。水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒の重量部は、第1のインクの15~40重量部であってもよい。
【0177】
顔料の重量部は、第2のインクの1~20重量部であってもよい。水分散性陰イオン性高分子樹脂の重量部は、第2のインクの3~25重量部であってもよい。水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒の重量部は、第2のインクの15~40重量部であってもよい。
【0178】
水分散性陰イオン性高分子樹脂は、ポリウレタン樹脂であってもよい。
【0179】
水溶性ゼロ揮発性有機化合物溶媒は、グリセロール、ジグリセロール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール溶媒、モノブチルエーテル、および1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンから選択されてもよい。
【0180】
水分散性陰イオン性ポリウレタン樹脂は、脂肪族、ポリエステル、ポリエーテル、ヒドロキシアルキル、シラン、および/またはポリカーボネートセグメントを含んでいてもよい。
【0181】
架橋剤は、カルボジイミドおよび/またはポリオキサゾリンであってもよい。
【0182】
上述された実施の形態および他の特徴および機能の変形、またはそれらの代替物は、多くの他の異なるシステムまたはアプリケーションに望ましく組み合わせることができることを理解されたい。また、現在予期されていない、または想定されていないさまざまな代替、変更、変形、または改良が、当業者によって引き続き行われる可能性があり、これらも上記の説明および以下の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【国際調査報告】