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特表2023-548681L-フェニルアラニンアミドの新規合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-20
(54)【発明の名称】L-フェニルアラニンアミドの新規合成
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/02 20060101AFI20231113BHJP
   C07C 237/20 20060101ALI20231113BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
C07C231/02
C07C237/20
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524144
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2021081030
(87)【国際公開番号】W WO2022106254
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】20208400.0
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】ガー, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ハーター, ラルフ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC53
4H006BA72
4H006BB14
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC31
4H006BE14
4H006BJ50
4H006BS10
4H006BU40
4H006BV51
4H039CA71
4H039CD30
(57)【要約】
本発明は、L-フェニルアラニンアミドを生成するためのプロセスに関する。




【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

のL-化合物を生成するためのプロセスであって、
第1のステップ(ステップ(i)において、式(II)
【化2】

の化合物は、少なくとも1種のアルコールの存在下で固体酸性カチオン交換体と反応され、及び
第2のステップ(ステップ(ii))において、ステップ(i)の反応混合物は、少なくとも1.5バールの圧力下でアンモニアと反応される、プロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1種のアルコールは、直鎖又は分枝鎖であり得、且つ第一級、第二級又は第三級アルコールであり得る、C~Cアルキル部分を有する脂肪族アルコールである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記少なくとも1種のアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、sec-ヘキサノール、sec-ブタノール及びtert-ブタノールからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記アルコールと前記式(II)の化合物とのモル比は、少なくとも2:1である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(i)は、30℃~150℃の温度で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(i)は、周囲圧力で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップ(ii)は、少なくとも1.5バールの圧力で行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記圧力は、1.5~20バールである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップ(ii)において、さらなる溶媒は、前記反応混合物に添加されない、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(ii)は、室温(18~25℃)で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、L-フェニルアラニンアミドを生成するためのプロセスに関する。
【0002】
L-フェニルアラニンアミドは、重要なアミノ酸アミドであり、そのまま使用され得るか、又は有機合成の中間体として使用され得る。
【0003】
米国特許第4017513号明細書では、L-フェニルアラニンアミドは、ベンゼンを用いた反応混合物中で生成されている。これは、高純度の生成物を得るために重要なものである。
【0004】
L-フェニルアラニンアミドは、重要な化合物であるため、それを生成するための改善された方法が常に必要とされている。
【0005】
驚くべきことに、少なくとも1種のアルコールを溶媒として使用した場合、優れた収率で反応物が生じ、且つ後処理が容易であることが判明した。
【0006】
L-フェニルアラニンアミドは、以下の式(I)の化合物である。
【化1】
【0007】
L-フェニルアラニンアミドの新規且つ改善された合成により、L-フェニルアラニンアミドを優れた収率で得ることが可能になる。ベンゼンの代わりにアルコールを選択することにより、本発明のプロセスは、後処理がはるかに容易となる。
【0008】
従って、本発明は、式(I)
【化2】

の化合物であるL-フェニルアラニンアミドを生成するためのプロセス(P)に関し、第1のステップ(ステップ(i)において、式(II)
【化3】

の化合物は、少なくとも1種のアルコールの存在下で固体酸性カチオン交換体と反応され、及び
第2のステップ(ステップ(ii))において、ステップ(i)の反応混合物は、少なくとも1.5バールの圧力下でアンモニアと反応される。
【0009】
本発明によるプロセスは、通常、以下のように行われる。
【0010】
第1のステップ(ステップ(i))において、式(II)の化合物は、アルコール(又はアルコールの混合物)の存在下において高温で固体酸性カチオン交換体と反応される。その後、第2のステップ(ステップ(ii))において、第1のステップの反応混合物は、圧力下でアンモニアと反応される。最後に、反応混合物から生成物(式(I)の化合物)を取り出して精製する。
【0011】
本発明によるプロセスの反応スキームは、以下のようなものである(アルコールがエタノールである場合)。
【化4】
【0012】
上記で述べたように、本発明によるプロセスは、少なくとも1種のアルコールの存在下で行われる。アルコールは、式(II)の化合物から見て過剰に使用される。少なくとも1種のアルコールは、溶媒としても同様に機能する。従って、さらなる溶媒(少なくとも1種のアルコール以外)は、必要とされず、使用されない。本発明による好適なアルコールは、溶媒として一般に使用されている任意の第一級、第二級及び第三級アルコールである。好ましいアルコールは、脂肪族アルコールであり、これは、一級、二級又は三級アルコールであり得る。より好ましいのは、直鎖又は分枝鎖であり得、且つ第一級、第二級又は第三級アルコールであり得る、C~Cアルキル部分を有する脂肪族アルコールである。最も好ましいのは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、sec-ヘキサノール、sec-ブタノール及びtert-ブタノールなどのアルコールである。特に好ましいのは、メタノール及び/又はエタノールである。
【0013】
少なくとも1種のアルコールは、式(II)の化合物から見て過剰に使用される。アルコールと式(II)の化合物とのモル比は、通常、少なくとも2:1である。この上限は、本発明では必須でない。通常、それは、最大で100:1である。アルコールと式(II)の化合物との好ましいモル比は、通常、少なくとも10:1~50:1である。
【0014】
従って、本発明は、アルコール(又はアルコールの混合物)が第一級、第二級又は第三級脂肪族アルコールであるプロセス(P)である、プロセス(P1)に関する。
【0015】
従って、本発明は、少なくとも1種のアルコールが、直鎖又は分枝鎖であり得、且つ第一級、第二級又は第三級アルコールであり得る、C~Cアルキル部分を有する脂肪族アルコールであるプロセス(P)である、プロセス(P1’)に関する。
【0016】
従って、本発明は、少なくとも1種のアルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、sec-ヘキサノール、sec-ブタノール及びtert-ブタノールからなる群から選択されるプロセス(P)である、プロセス(P1’’)に関する。
【0017】
従って、本発明は、少なくとも1種のアルコールが、メタノール及びエタノールからなる群から選択されるプロセス(P)である、プロセス(P1’’’)に関する。
【0018】
従って、本発明は、アルコールと式(II)の化合物とのモル比が少なくとも2:1であるプロセス(P)、(P1)、(P1’)、(P1’’)又は(P1’’’)である、プロセス(P2)に関する。
【0019】
従って、本発明は、アルコールと式(II)の化合物とのモル比が2:1~100:1であるプロセス(P)、(P1)、(P1’)、(P1’’)又は(P1’’’)である、プロセス(P2’)に関する。
【0020】
従って、本発明は、アルコールと式(II)の化合物とのモル比が10:1~50:1であるプロセス(P)、(P1)、(P1’)、(P1’’)又は(P1’’’)である、プロセス(P2’’)に関する。
【0021】
従って、本発明は、ステップ(i)において、(少なくとも1種のアルコールの次に)さらなる溶媒が使用されないプロセス(P)、(P1)、(P1’)、(P1’’)、(P1’’’)、(P2)、(P2’)又は(P2’’)である、プロセス(P3)に関する。
【0022】
本発明によるプロセスのステップ(i)は、固体酸性カチオン交換体の存在下で行われる。この固体酸性カチオン交換体は、一般に使用されている任意の固体酸性カチオン交換体であり得る。通常、それらは、樹脂ベースのものである。そのような固体酸性カチオン交換体は、商業的に購入することができ、すなわちDowex(登録商標)及びAmberlite(登録商標)などの商標名で知られている。
【0023】
通常、ステップ(i)は、高温で行われる。本発明によるプロセスの本ステップの好適な温度範囲は、30℃~150℃(好ましくは40℃~130℃、より好ましくは50℃~120℃)となる。
【0024】
従って、本発明は、ステップ(i)が高温で行われるプロセス(P)、(P1)、(P1’)、(P1’’)、(P1’’’)、(P2)、(P2’)、(P2’’)又は(P3)である、プロセス(P4)に関する。
【0025】
従って、本発明は、温度が30℃~150℃となるプロセス(P4)である、プロセス(P4’)に関する。
【0026】
従って、本発明は、温度が40℃~130℃となるプロセス(P4)である、プロセス(P4’’)に関する。
【0027】
従って、本発明は、温度が50℃~120℃となるプロセス(P4)である、プロセス(P4’’’)に関する。
【0028】
通常、本発明によるプロセスのステップ(i)は、周囲圧力で行われる。
【0029】
従って、本発明は、ステップ(i)が周囲圧力で行われるプロセス(P)、(P1)、(P1’)、(P1’’)、(P1’’’)、(P2)、(P2’)、(P2’’)、(P3)、(P4)、(P4’)、(P4’’)又は(P4’’’)である、プロセス(P5)に関する。
【0030】
その後、ステップ(i)の反応を行ったとき、反応混合物(ステップ(i)から得られるような)にアンモニア(ガス形態)を添加し、圧力を加える。ステップ(ii)では、さらなる溶媒を添加しない。これは、ステップ(i)において、少なくともアルコールが、式(II)の化合物から見て過剰に添加されているという事実に起因する。
【0031】
アンモニアは、通常、(式(II)の化合物である出発物質に対して)過剰に添加される。
【0032】
ステップ(ii)で加えられる圧力は、少なくとも1.5バールである。通常、1.5~20バールの圧力が加えられる。好ましくは、3~15バールの圧力が加えられる。
【0033】
従って、本発明は、ステップ(ii)が少なくとも1.5バールの圧力で行われるプロセス(P)、(P1)、(P1’)、(P1’’)、(P1’’’)、(P2)、(P2’)、(P2’’)、(P3)、(P4)、(P4’)、(P4’’)、(P4’’’)又は(P5)である、プロセス(P6)に関する。
【0034】
従って、本発明は、ステップ(ii)が1.5~20バールの圧力で行われるプロセス(P6)である、プロセス(P6’)に関する。
【0035】
従って、本発明は、ステップ(ii)が3~15バールの圧力で行われるプロセス(P6)である、プロセス(P6’’)に関する。
【0036】
従って、本発明は、ステップ(ii)でさらなる溶媒が添加されないプロセス(P)、(P1)、(P1’)、(P1’’)、(P1’’’)、(P2)、(P2’)、(P2’’)、(P3)、(P4)、(P4’)、(P4’’)、(P4’’’)、(P5)、(P6)、(P6’)又は(P6’’)である、プロセス(P7)に関する。通常、ステップ(ii)は、室温(18~25℃)で行われる。これは、ステップの反応混合物が加熱されないことを意味する。
【0037】
従って、本発明は、ステップ(ii)が室温(18~25℃)で行われるプロセス(P)、(P1)、(P1’)、(P1’’)、(P1’’’)、(P2)、(P2’)、(P2’’)、(P3)、(P4)、(P4’)、(P4’’)、(P4’’’)、(P5)、(P6)、(P6’)、(P6’’)又は(P7)である、プロセス(P8)に関する。
【0038】
その後、生成物(式(I)の化合物)を通常の手段で反応混合物から単離する(及び任意選択により精製する)。
【0039】
L-フェニルアラニンアミド(式(I)の化合物)が優れた収率で得られる。
【0040】
以下の実施例は、本発明を限定することなく、さらに説明するものである。示されるすべてのパーセント及び部は、重量に関するものであり、温度は、特に記載がない場合、℃で示される。
【0041】
[実施例]
[実施例1:]
KPG撹拌機、温度計及びアルゴン注入口を備える還流冷却器を装着した350mlの四つ口フラスコに10.2g(60.5mmol)のL-フェニルアラニン、13.2gのDowex 50WX8水素形(乾燥)及び120mlのエタノール(2055mmol)を充填した。混合物を400rpmで撹拌し、78℃(100℃の油)において16時間還流状態で加熱した。混合物を室温まで冷却し、96gのアンモニアで満たされた500mlのオートクレーブ内に移した。混合物を6バール、1000rpmにおいて20℃で4日間撹拌した。混合物を吸引してDowexを濾過し、エタノール及びトルエンで洗浄した。濾液を減圧下(10ミリバール、40℃)で蒸発させた。10.01gのL-フェニルアラニンアミドが得られ、収率は、65%であり、純度は、64.5%である。
【国際調査報告】