(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-20
(54)【発明の名称】殉爆されるセルフセンタリング爆発装置
(51)【国際特許分類】
E21B 43/117 20060101AFI20231113BHJP
F42B 12/10 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
E21B43/117
F42B12/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524889
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021047435
(87)【国際公開番号】W WO2022125155
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】サドラー,コールトン
(72)【発明者】
【氏名】モフェット,ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヘンリ ワイ.
(57)【要約】
爆発装置は、外面を有し、内部空間を画定するハウジングと、外面上に間隔をあけて配置された複数の一次ライナであって、一次ライナに対してハウジングにおいて内向きに配置された一次エネルギ物質を有する一次ライナと、一次ライナを駆動するために一次エネルギ物質を起爆するための内部空間内の起爆機構と、一次ライナの間に間隔をあけて配置された複数の追加のライナであって、一次エネルギ物質の起爆によって追加のエネルギ物質が共鳴的に起爆されるように一次エネルギ物質に近接して配置された追加のエネルギ物質を有する追加のライナとを含む。この装置は、軍事環境において、また地下坑井の坑井ケーシングの穿孔において、有用な用途を見出すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爆発装置であって、
外面を有し、内部空間を画定するハウジングと、
前記外面上に間隔をあけて配置された複数の一次ライナであって、前記一次ライナに対して前記ハウジングにおいて内向きに配置された一次エネルギ物質を有する一次ライナと、
前記一次ライナを駆動するために前記一次エネルギ物質を起爆するための前記内部空間内の起爆機構と、
前記一次ライナの間に前記間隔をあけて配置された複数の追加のライナであって、前記一次エネルギ物質の起爆によって追加のエネルギ物質が共鳴的に起爆されるように前記一次エネルギ物質に近接して配置された前記追加のエネルギ物質を有する追加のライナと
を備える爆発装置。
【請求項2】
前記ハウジングは円筒形のハウジングであり、前記外面は前記円筒形のハウジングの外向きの円筒面である、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項3】
各追加のライナは、少なくとも2つの一次ライナの間に配置され、前記少なくとも2つの一次ライナは、前記各追加のライナの周りに配置される、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項4】
各追加のライナは、4つの対称的に配置された一次ライナの間に配置される、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項5】
前記追加のライナの前記追加のエネルギ物質は、前記追加のエネルギ物質を起爆する圧力波を前記一次エネルギ物質の起爆が形成するように、前記一次エネルギ物質の間に配置されたステムにおいて内向きに延在する、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項6】
前記ステムは、前記ステムの臨界直径の150%~200%である直径を有する、請求項5に記載の爆発装置。
【請求項7】
前記ステムは、前記ステムの臨界直径に対する長さの比の少なくとも3:1である、請求項5に記載の爆発装置。
【請求項8】
前記複数の一次ライナの各一次ライナは、外向きに凸状の形状を有し、前記一次エネルギ物質は、前記一次ライナの内面を囲む、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項9】
前記複数の追加のライナの各追加のライナは、外向きに凸状の形状を有し、前記追加のエネルギ物質は、前記追加のライナの内面を囲む、請求項8に記載の爆発装置。
【請求項10】
前記複数の一次ライナ及び前記複数の追加のライナは、金属ライナ、セラミックライナ、及びそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項11】
前記ライナは、銅、タンタル、アルミニウム、鋼、セラミック、モリブデン、ガラス、及びそれらの混合物、組み合わせ、合成物又は合金からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項12】
前記エネルギ物質は、ポリマー結合爆薬を含む、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項13】
前記ハウジングは、複数の開口部を有し、前記一次ライナ及び前記追加のライナは、前記開口部に取り付けられる、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項14】
前記ハウジングは、アルミニウム、鋼、チタン、及びそれらの組み合わせ又は合金からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項15】
前記一次ライナは、前記外面の50%~80%を覆い、前記追加のライナは、前記外面の20%~50%を覆う、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項16】
前記追加のエネルギ物質は、前記一次エネルギ物質の起爆によってのみ起爆されるように配置される、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項17】
前記追加のエネルギ物質は、前記一次エネルギ物質の起爆によって引き起こされる圧力波によってのみ起爆されるように配置される、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項18】
前記一次エネルギ物質及び前記追加のエネルギ物質は、前記一次エネルギ物質の起爆が1~10km/sで移動する粒子を生成するように、前記ハウジング内に構成される、請求項1に記載の爆発装置。
【請求項19】
地下坑井の側壁を穿孔する方法であって、
坑井ケーシングによって画定される地下坑井を通して前記坑井ケーシング内の所望の位置に爆発装置を配置するステップであって、前記爆発装置は、外面を有し、内部空間を画定するハウジングと、前記外面上に間隔をあけて配置された複数の一次ライナであって、前記一次ライナに対して前記ハウジングにおいて内向きに配置された一次エネルギ物質を有する一次ライナと、前記一次ライナを駆動するために前記一次エネルギ物質を起爆するための前記内部空間内の起爆機構と、前記一次ライナの間に前記間隔をあけて配置された複数の追加のライナであって、前記一次エネルギ物質の起爆によって追加のエネルギ物質が共鳴的に起爆されるように前記一次エネルギ物質に近接して配置された前記追加のエネルギ物質を有する追加のライナとを備える、ステップと、
前記一次エネルギ物質を起爆するステップであって、前記追加のエネルギ物質が前記一次エネルギ物質によって共鳴的に起爆され、前記一次ライナ及び追加のライナが前記側壁を穿孔する、ステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、爆発装置(explosive device)の設計に関し、より具体的には、一次サブアセンブリと、共鳴的に(sympathetically)起爆(initiate)されるサブアセンブリとを有する爆発装置に関する。
【背景技術】
【0002】
爆発装置は、広い用途を有する。軍隊兵器では、広範な軍事ミッション要件を達成するために、一般に単に弾頭と呼ばれる爆発装置又は破壊装置が開発されてきた。
【0003】
成形炸薬弾頭は、一般に、鋼製装甲を非常に深いところまで貫通することができる金属又は他のライナ材料の高速ジェットを発射する円錐形のライナを有する。一般に、このような弾頭は、構成要素の軸方向に対称な組み合わせを含み、この構成要素には、とりわけ、爆発時に崩壊して指向性エネルギ貫通体を形成するように設計されたライナと、爆発物又は装填物と、装薬(explosive charge)を爆発させ、それによって貫通体を標的に向かって強制的に推進させるように意図された着火又は起爆機構と、発射前のライナ及び装薬が閉じ込められる弾頭ハウジングとが含まれる。
【0004】
同様の弾頭は、爆発成形侵徹体(explosively formed penetrator:EFP)である。EFPは、典型的には、浅い皿の形状のライナ面を有する。爆風の力により、プレートの形状及び爆薬がどのように爆発されるかに応じて、ライナが多数の形状のいずれかに成形される。いくつかのEFP弾頭は、異なる配置で点火することで、爆薬の波形が変形し、その結果、長いロッドの貫通体、空気力スラグ発射体、又は複数の高速破片のいずれかをもたらす複数の起爆装置を有する。
【0005】
いくつかのEFP弾頭は、2つ以上の貫通体を生成するように設計されたライナを有し、これらは、マルチEFP、すなわちMEFPとして知られている。MEFPのライナは、一般に、多数のライナを備える。爆発すると、ライナは、多数の発射体を形成する。発射体の軌道及び1つ又は複数の標的への衝撃のパターンは、ライナの設計及び装薬が爆発される様式に基づいて制御され得る。
【0006】
別の同様の弾頭は、成形炸薬ジェット(shaped charge jet)、すなわちSCJに依存するものであり、同様の懸念がSCJにも存在する。そのような弾頭では、成形炸薬ジェットが、関連付けられた装薬の起爆時にライナによって形成され、SCJ軌道及び1つ又は複数の標的への衝突のパターンもまた、ライナの設計及び装薬が爆発される様式に基づいて制御され得る。
【0007】
装薬の爆発又は起爆は、典型的には、複合の精密起爆カプラ(precision initiation coupler:PIC)を用いて達成される。一構成では、弾頭は、略円筒型の形状を有することができ、ライナが、円筒形のハウジングの円筒面の周りに配置される。PIC機構(複数可)は、ハウジングの中央領域に位置し、製造の複雑さの原因となる。また、複数のライナの起爆をできるだけ同時に近づけることも重要な考慮事項である。
【0008】
これらの要件を満たすためのPIC機構の設計は、敏感でかつ空間を消費する機構がもたらされ、その結果、例えば、円筒形のハウジングを使用するとき、設計上の制約を受ける。そのような弾頭設計では、PIC機構は、所与のライナの中心線に沿って、円筒形のハウジングの中心に位置し、そこは空間が限られており、結果として、含むことができる成形ライナが、他の場合に望まれたであろう数よりも少なくなる。これは、所望の目標致死率よりも低い目標致死率を有する弾頭設計をもたらす。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、一次サブアセンブリと、一次サブアセンブリのエネルギ物質(energetic material)を起爆することによって起爆され得る追加のサブアセンブリとを有する爆発装置に関する。これは、追加のサブアセンブリのセルフセンタリング共鳴起爆(self-centering sympathetic initiation)をもたらす。
【0010】
1つの非限定的な構成では、本開示は、外面を有し、内部空間を画定するハウジングと、外面上に間隔をあけて(in a spaced pattern)配置された複数の一次ライナであって、一次ライナに対してハウジングにおいて内向きに配置された一次エネルギ物質を有する一次ライナと、一次ライナを駆動するために一次エネルギ物質を起爆するための内部空間内の起爆機構と、一次ライナの間に間隔をあけて配置された複数の追加のライナであって、一次エネルギ物質の起爆によって追加のエネルギ物質が共鳴的に起爆されるように一次エネルギ物質に近接して配置された追加のエネルギ物質を有する追加のライナとを備える爆発装置に関する。
【0011】
別の非限定的な構成では、ハウジングは円筒形のハウジングであり、外面は円筒形のハウジングの外向きの円筒面である。
【0012】
更なる非限定的な構成では、各追加のライナは、少なくとも2つの一次ライナの間に配置され、少なくとも2つの一次ライナは、各追加のライナの周りに配置される。
【0013】
更に別の非限定的な構成では、各追加のライナは、4つの対称的に配置された一次ライナの間に配置される。
【0014】
更なる別の非限定的な構成では、追加のライナの追加のエネルギ物質は、追加のエネルギ物質を起爆する圧力波を一次エネルギ物質の起爆が形成するように、一次エネルギ物質の間に配置されたステムにおいて内向きに延在する。
【0015】
別の非限定的な構成では、ステムは、ステムの臨界直径の150%~200%である直径を有する。
【0016】
更なる非限定的な構成では、ステムは、ステムの臨界直径に対する長さの比の少なくとも3:1である。
【0017】
更に別の非限定的な構成では、複数の一次ライナの各一次ライナは、外向きに凸状の形状を有し、一次エネルギ物質は、一次ライナの内面を囲む。
【0018】
更なる別の非限定的な構成では、複数の追加のライナの各追加のライナは、外向きに凸状の形状を有し、追加のエネルギ物質は、追加のライナの内面を囲む。
【0019】
別の非限定的な構成では、複数の一次ライナ及び複数の追加のライナは、金属ライナ、セラミックライナ、及びそれらの組み合わせを含む。
【0020】
更なる非限定的な構成では、ライナは、銅、タンタル、アルミニウム、鋼、セラミック、モリブデン、ガラス、及びそれらの混合物、組み合わせ、合成物又は合金からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0021】
更に別の非限定的な構成では、エネルギ物質は、ポリマー結合爆薬(polymer-bonded explosive)を含む。
【0022】
更なる別の非限定的な構成では、ハウジングは、複数の開口部を有し、一次ライナ及び追加のライナは、開口部に取り付けられる。
【0023】
別の非限定的な構成では、ハウジングは、アルミニウム、鋼、チタン、及びそれらの組み合わせ又は合金からなる群から選択される材料を含む。
【0024】
更なる非限定的な構成では、一次ライナは、外面の50%~80%を覆い、追加のライナは、外面の20%~50%を覆う。
【0025】
更に別の非限定的な構成では、追加のエネルギ物質は、一次エネルギ物質の起爆によってのみ起爆されるように配置される。
【0026】
更なる別の非限定的な構成では、追加のエネルギ物質は、一次エネルギ物質の起爆によって引き起こされる圧力波によってのみ起爆されるように配置される。
【0027】
別の非限定的な構成では、一次エネルギ物質及び追加のエネルギ物質は、一次エネルギ物質の起爆が1~10km/sで移動する粒子を生成するように、ハウジング内に構成される。
【0028】
更なる非限定的な構成では、地下坑井(subterranean well)の側壁を穿孔するための方法であって、坑井ケーシング(well casing)によって画定される地下坑井を通して坑井ケーシング内の所望の位置に爆発装置を配置するステップであって、爆発装置は、外面を有し、内部空間を画定するハウジングと、外面上に間隔をあけて配置された複数の一次ライナであって、一次ライナに対してハウジングにおいて内向きに配置された一次エネルギ物質を有する一次ライナと、一次ライナを駆動するために一次エネルギ物質を起爆するための内部空間内の起爆機構と、一次ライナの間に間隔をあけて配置された複数の追加のライナであって、一次エネルギ物質の起爆によって追加のエネルギ物質が共鳴的に起爆されるように一次エネルギ物質に近接して配置された追加のエネルギ物質を有する追加のライナとを備える、ステップと、一次エネルギ物質を起爆するステップであって、追加のエネルギ物質が一次エネルギ物質によって共鳴的に起爆され、一次ライナ及び追加のライナが側壁を穿孔する、ステップとを含む方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下に、添付の図面を参照して、本開示の1つ又は複数の実施形態の詳細な説明が続く。
【
図1】複数のライナ又はサブアセンブリを有する円筒形に形成された弾頭の形態の爆発装置を概略的に示す。
【
図2】一次ライナと、一次ライナの起爆による共鳴起爆のために配置された追加のライナとを有する円筒形に形成された弾頭の非限定的な構成を示す。
【
図4】
図2の構成における一次エネルギ物質の起爆によって生じる圧力波を示す。
【
図5】
図2の構成における一次エネルギ物質の起爆によって生じる圧力波を示す。
【
図6】
図2の構成における一次エネルギ物質の起爆によって生じる圧力波を示す。
【
図7】
図2の構成における一次エネルギ物質の起爆によって生じる圧力波を示す。
【
図8】本開示に従って殉爆によって生じる成形弾及び成形炸薬ジェットのハイドロコードモデリング(hydrocode modeling)を示す。
【
図9】本開示に従って殉爆によって生じる成形弾及び成形炸薬ジェットのハイドロコードモデリングを示す。
【
図10】本明細書に開示されるような、爆発装置を使用して地下坑井を穿孔するための方法を示す。
【0030】
様々な図面における同様の参照番号及び名称は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は、爆発装置に関し、より具体的には、成形炸薬又は成形弾装置などの成形発射体(forming projectile)に関する。そのような装置は、軍事環境において有用であり、地下坑井の坑井ケーシングにおいて穿孔を生成するためにも有用であり得る。この装置は、複数のアクティブなサブアセンブリ又はライナを有し、そのうちのいくつかは、共鳴的に起爆される。これにより、例えば、貫通がより多い事例の形で貫通性能が向上し、軍事環境では致死密度が増加する。
【0032】
図1は、円筒形のハウジング12を有する爆発装置10の一部を示す。円筒形のハウジング12は、外面14及び内部空間16を画定する。外面14は、複数の開口部18を有し、各開口部18には、形成された炸薬サブアセンブリ20が取り付けられる。形成された炸薬サブアセンブリ20は、所望するときに、
図1には詳細に示されていない精密起爆カプラ(PIC)装置によって起爆される。サブアセンブリ20は、各開口部18に取り付けられた円錐形の部材として
図1に示すライナ22を有する。装置10が起爆されると、各ライナ22の背後のエネルギ物質が、ライナ22を外向きに駆動して、最大11km/s、典型的には、1~10km/sの速度で塑性変形するライナ材料のストリームを発生させ、1つの非限定的な構成では、2~9km/sとすることができる。
【0033】
図1から明らかなように、外面14のかなりの部分は、他に利用されない開放空間である。この主な理由の1つは、PIC装置が爆発装置10の中心でかなりの空間を占め、したがって、限られた数のサブアセンブリ20しか外面14に配置することができないことである。一方、起爆中のバランスを保ち、各サブアセンブリからの最適速度を維持するために、これらのサブアセンブリは実質的に同時に、一般に互いに数マイクロ秒以内に起爆されなければならないので、サブアセンブリを起爆するためのPIC装置を有することが一般に必要である。
【0034】
図2を参照すると、同じく、外面54を有し、内部空間56を画定する略円筒形のハウジング52の形態で、本開示による装置50の非限定的な図が示されている。外面54は、複数の一次開口部58を有し、その中に複数の一次サブアセンブリ60が取り付けられている。
図1の構成と同様に、これらの一次サブアセンブリは、一次エネルギ物質64(
図3も参照)によって裏打ちされた一次ライナ62と、一次エネルギ物質64を起爆するためのPIC66とを含む。外面54には追加の開口部68も配置され、追加の開口部68には追加のサブアセンブリ70が取り付けられる。追加のサブアセンブリ70は、追加のライナ72及び追加のエネルギ物質74を有する。しかしながら、追加のエネルギ物質74を起爆するように構成されたPICは存在しない。むしろ、追加のサブアセンブリ70は、一次サブアセンブリ60の起爆によって共鳴的に起爆される。
【0035】
追加のサブアセンブリ70の共鳴起爆も、実質的に同時である必要があり、また、各サブアセンブリからの意図された軌道(
図3の破線76)に沿って、そして、全体的にハウジング52の中心軸(
図2の破線78)に対して中心に置かれることが望ましい。このバランスを達成するために、各追加のサブアセンブリ70は、隣接する一次サブアセンブリの間、有利には少なくとも2つの一次サブアセンブリの間、更に有利には
図2に示すように対称的に配置された4つの一次サブアセンブリの間に配置される。当然ながら、ハウジングの形状及び他の設計上の考慮事項に応じて異なる配置が可能であり、ハウジング内で追加のサブアセンブリの周りに間隔をあけて配置される3つ又は5つ又は他の数の一次サブアセンブリの対称パターンとなり得る。更に、場合によっては、非対称的な配置が望ましいことがある。このような場合でも、ハウジング、エネルギ物質、及びライナを適切に構成することによって、依然としてセルフセンタリング起爆を得ることができる。当然ながら、この場合、設計の複雑さが増すので、対称的な構成が、本開示の範囲内で特に有用である。
【0036】
図3は、ハウジング52及びエネルギ物質64、74の内部ジオメトリを示し、これは、エネルギ物質64の起爆によって生じる圧力波が追加のエネルギ物質74に遭遇して、追加のエネルギ物質が起爆され、所望通りに軸76に沿って中心に置かれるように構成される。図示のように、一次開口部58は、PIC66の取り付け及び動作を可能にする内側中央開口部80を有する外向きに開口しているカップ形状のレセプタクルとすることができる。図示のように、ライナ62の内面に沿ってエネルギ物質を配置することができ、これは、所望通りにライナ62を駆動する働きをし、そのサブアセンブリからの軌道の軸に沿って、潜在的に塑性変形する金属である、1つ又は複数の発射体へと成形又は形成ライナを生成する。この構成の一次ライナ62は、外向きの凹面を有する円錐形の部材である。起爆時に、ライナ62は、軍事環境及び坑井ケーシングにおいて遭遇するような硬質又は装甲プレート材料への有意な貫通を達成することができる金属のジェットへと変形される。当然ながら、ライナ62は、この構成では円錐形として示されているが、皿状又は受け皿状などの他の形状も可能である。
【0037】
追加のサブアセンブリ70は、同じく追加のライナ72の内面の周りに係合される追加のエネルギ物質74を有し、この構成の追加のライナ72も円錐形の金属部材である。しかしながら、図示のように、追加のエネルギ物質74も、追加のライナ72から離れて内向きに延在するステム82を有するようにハウジング52内に配置される。ステム82は、一次サブアセンブリの対称パターン間にあるハウジングのゾーン、具体的には、一次サブアセンブリの一次エネルギ物質の間にあるハウジングのゾーン内に延在する。ステム82は、有利には、細長い形状と、ステム内のエネルギ物質の臨界直径の約150~200%の範囲内になるようにサイズ決定された直径とを有する。ステム82はまた、起爆がセルフセンタリングするのに十分に長く構成されるべきである。セルフセンタリングは、少なくとも約3:1の長さ対直径の比で達成することができる。
【0038】
臨界直径は、エネルギ物質のタイプに依存し、その適切な例を以下に説明する。臨界直径は、約1mm~約10mmとすることができる。この点に関して、特定のエネルギ物質及び対応する臨界直径の例としては、1mmの臨界直径を有するPBX-9404、及び6mmの臨界直径を有するOctol 75/25(キャスト)が挙げられる。
【0039】
一次エネルギ物質からの圧力波がハウジングを通って移動するとき、圧力波は、追加のエネルギ物質のこのステム82に到達し、ステム82の形状及びサイズが、追加のエネルギ物質の起爆によって形成されるジェットを所望通りに自動で中心に置く。代替の手法では、エネルギ物質の爆発は、爆薬の爆発が、所望の効果を達成するように予め設計されたライナの崩壊をもたらす限り、ライナの中心線に沿ってではなく、炸薬の円周に沿って起こるようにすることができる。従って、一次エネルギ物質及び追加のエネルギ物質の構成は、ライナの所望の崩壊を達成するために、任意の所望の様式でバランスをとることができる。
【0040】
図3Aも参照すると、追加のライナ72の構造の追加の詳細と共に
図3の拡大部分が示されている。図示のように、追加のライナ72は、半径方向外向きに延在するリップ73を有することができる。リップ73は、ライナ72を囲む追加のエネルギ物質74の幅にわたって半径方向外向きに延在する。加えて、
図3に示す構成では、追加のエネルギ物質74と、隣接するハウジング及び一次サブアセンブリ60との間に空間75を画定することができる。空間75は、所望通りにジェットが形成され得る前に一次サブアセンブリ60の爆発が追加のサブアセンブリ68を損傷しないように、バッファ又はギャップを提供する。この点に関して、ハウジングは、追加のエネルギ物質74を収容する領域を画定する壁を有することができ、又は物質74は、ライナ72の周りの所定の位置に留まるのに十分な構造で形成することができる。
【0041】
開示された構成では、ステム82は、追加のライナ72の内面を包囲するエネルギ物質の部分85の中心点83まで延在するエネルギ物質の細い延長体である。これは、隣接する一次エネルギ物質の起爆からの圧力波がステム82のどの部分に最初に遭遇するかにかかわらず、ステム82が起爆を直接かつ中心点83のみに向けるので、包囲部分85の起爆を中心に置くのに特に有効である(以下に説明する
図4~
図7も参照)。
【0042】
本明細書に開示されるような爆発装置は、一次サブアセンブリによって占有され得なかった又は占有されなかったであろう表面積に、追加の共鳴的に起爆されるサブアセンブリを展開することによって、著しく増加した量の表面積を利用することができる。従って、本明細書に開示されるような爆発装置のサブアセンブリは、外面の50%~80%を覆う一次ライナと、外面の20%~50%を覆う追加のライナとを含むことができる。一次ライナ又は追加のライナのいずれによっても占有されていない表面積が依然としていくらか存在することを理解されたい。従って、これらの数値は合計しても100%にはならない可能性が高い。とはいえ、使われていない表面積が、本明細書で開示されるような爆発装置の致死性を高めるために使用され得ることが理解されたい。
【0043】
本開示では、ハウジングは、限定はしないが、積層造形法、射出成形又は鋳型造形、押出成形などを含む任意の既知の製造プロセスを使用して製造することができる。ハウジングは、展開中の装置安定性の要件を満たし、追加のサブアセンブリを共鳴的に起爆させるために、本明細書で議論されるような内部圧力波を適切に伝達する任意の適切な材料から作製することができる。ハウジングに適切な材料の例としては、アルミニウム、鋼、チタン、及びこれらの組み合わせ又は合金が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
ライナ62、72は、任意の適切な材料及び任意の適切な形状で形成され得る。典型的には、このタイプの軍需品の場合、ライナ62、72は、凹状の外側形状を有し、エネルギ物質の起爆によって生じるデトネーション波(detonation wave)が遭遇したときに所望通りに成形又は形成される適切な金属から作製されるであろう。ライナを作製可能な適切な材料の例としては、金属及びセラミック、例えば、銅、タンタル、アルミニウム、鋼、セラミック、モリブデン、ガラス、並びにそれらの混合物、組み合わせ、合成物又は合金が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
エネルギ物質64、74は、一次起爆及び共鳴起爆に異なる特性が必要かどうかに応じて、同一又は異なる材料とすることができる。適切なエネルギ物質の非限定的な例としては、PBXN-9、LX-14、PBXN-109、PBX-9404、Octol 75/25などのポリマー結合爆薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
精密起爆カップリング(precision initiation coupling)66の構造及び動作に関する更なる開示は、当業者には周知であり、本明細書では提供されない。
【0047】
次に
図4~
図7を参照すると、一次エネルギ物質の起爆からの圧力波が、
図4の起爆点から、追加のエネルギ物質74のステム82との初期接触(
図5)、追加のエネルギ物質74の起爆(
図6)、中心デトネーション波の形成及びライナ72の初期形成(
図7)まで移動する様子を示す一連の画像が提供される。上述したように、一次エネルギ物質に対して図示のように配置されたステム82は、一次サブアセンブリの1つ又は複数が同期して起爆されない場合であっても、追加のエネルギ物質を中心で起爆させる働きをする。前述のように、追加のサブアセンブリ68の構成は、追加のエネルギ物質74の共鳴起爆を中心に置くためのステム82を有利に含むことができるが、爆薬の爆発が予め設計された方法でライナを崩壊させる限り、そのようなステムは必要とされない。
【0048】
図8及び
図9は、追加のサブアセンブリの2つの異なる構成についてのハイドロコードモデリングの結果を示し、爆発成形弾(
図8)に加えて成形炸薬ジェット(
図9)も共鳴起爆によって生成できることを確認する。更に、部分85及びステム82を含む追加のエネルギ物質74のジオメトリ及び形状は、中心起爆及び所望の性能をもたらす。
【0049】
上記の図及びモデリングでは、追加のエネルギ物質が、一次エネルギ物質の起爆によってのみ起爆されるように配置されること、並びに、追加のエネルギ物質が、一次エネルギ物質の起爆によって生じる圧力波によってのみ又は少なくとも実質的に圧力波によって起爆されるように配置されることを理解されたい。これは、所望通りに、追加のサブアセンブリの所望の共鳴起爆をもたらす。更に、追加のエネルギ物質が、一次エネルギ物質によって生じる圧力波によってのみ起爆されるとき、本明細書に開示されるように構成された追加のサブアセンブリは、所望通りに起爆中にセルフセンタリングする。
【0050】
PICによって起爆される複数の一次サブアセンブリと、共鳴的に起爆される追加の複数のサブアセンブリとを有する、本明細書に開示されるような爆発装置は、軍事環境若しくは軍需品環境において又は坑井ケーシングを穿孔するために、及び本開示を考慮すると当業者に明らかになるであろう他の設定において、用途を見出すことができることを理解されたい。示された用途は特に有利であると考えられるが、他の用途も本開示及び特許請求の範囲内にあると考えられる。
【0051】
坑井ケーシングの穿孔に関連して、地下坑井は、例えば、取得され地表に運ばれることが望まれる炭化水素又は他の液体若しくは流動性堆積物を含有している可能性がある地下層まで掘削されることが多い。そのような坑井は、様々な岩層に穴を掘削し、その穴にパイプ又はケーシングを展開することによって構築される。ケーシングは、典型的には、ケーシングの外壁と掘削穴の内壁との間の環状空間内にセメントを圧送することによって所定の位置にセメント接合される。このセメント接合は、ケーシングを穴に固定するのに役立つ。しかしながら、ケーシング及び坑井が、所望の物質を含有する地下層を通過する場所では、坑井ケーシングを囲む領域からケーシング内への流れが形成されて促進され、ケーシング内では、流れを生成若しくは圧送するか、又は他の方法で地表に輸送することができる。
【0052】
爆発装置の起爆によって生じる十分に制御された高速の発射体はケーシング及びセメントを容易に貫通することができ、起爆によって生じる物質は、潜在的な粘着物質が、坑井の側壁に作られた穿孔を通ってケーシングに入るための流動性に悪影響を与えないので、爆発装置は、これらの穿孔を作るのに非常に適している。更に、穿孔の領域における坑井ケーシングの周りの地層の透水性及び他の流体ベアリング及び流動特性に悪影響を及ぼさない適切なセラミック又は他の材料を選択することができる。
【0053】
穿孔される地下坑井は、ケーシング及び周囲のセメントを含む上述のような構造を有することができるか、又は坑井が通過する条件に応じて異なる構造を有することができることを理解されたい。従って、本明細書に開示されるような爆発装置の使用は、坑井の側壁を画定するために使用される構造がどのような構造であっても、穿孔することである。これは、典型的には、坑井ケーシング及び周囲のセメントとなるが、坑井の側壁を穿孔するための本開示の爆発装置の使用は、側壁が他の構造又は構造の組み合わせによって画定される他の状況、例えば、非限定的な例として、セメントなしのケーシング、又は他の圧密材料がケーシングを囲むケーシングにまで及ぶ。
【0054】
爆発装置が地下坑井の側壁を穿孔するために使用される場合、そのような方法は、坑井ケーシングによって画定される地下坑井を通して坑井ケーシング内の所望の位置に爆発装置を配置するステップから開始し、爆発装置は、外面を有し、内部空間を画定するハウジングと、外面上に間隔をあけて配置された複数の一次ライナであって、一次ライナに対してハウジングにおいて内向きに配置された一次エネルギ物質を有する一次ライナと、一次ライナを駆動するために一次エネルギ物質を起爆するための内部空間内の起爆機構と、一次ライナの間に間隔をあけて配置された複数の追加のライナであって、一次エネルギ物質の起爆によって追加のエネルギ物質が共鳴的に起爆されるように一次エネルギ物質に近接して配置された追加のエネルギ物質を有する追加のライナとを備える。穿孔が望ましい坑井内の深さ又は位置に爆発装置が配置されると、一次エネルギ物質が起爆される。これにより、追加のエネルギ物質が一次エネルギ物質によって共鳴的に起爆され、一次ライナ及び追加のライナが側壁を穿孔する。追加のライナ及び追加のエネルギ物質の構造及び構成のために、追加のエネルギ物質の共鳴起爆は、追加のライナによって形成された穿孔が直線状であり、所望通りに、例えば、半径方向外向きに延在するパターンで配向されるように、セルフセンタリング様式で発生する。
【0055】
図10は、地表レベル102から地下層104まで延在する坑井100を概略的に示す。この例では、坑井100は、ケーシング106を含む側壁によって画定され、セメント108は、ケーシング106と裸孔の壁112との間に画定された環状空間110内でケーシング106の周りに配置される。ケーシング106、セメント108、及び裸孔の壁112は、本明細書では集合的に坑井の側壁と呼ばれ、本開示の爆発装置は、この側壁を穿孔するために使用される。
【0056】
図10は、坑井100を通って地層104の所望の位置に配置された爆発装置50を概略的に示す。破線114は、装置50をこの位置に配置するための1つの方法としてのリード線を表すが、坑井100が実質的に垂直であるか、又は方向性坑井であるかに応じて、他の方法を利用することができる。爆発装置50が所望の位置に配置されると、一次サブアセンブリ及び追加のサブアセンブリが所望通りに坑井の側壁を貫通するように展開されるように、一次エネルギ物質のPIC装置を起動することによって起爆を開始して、追加のエネルギ物質の共鳴起爆をトリガすることができる。
【0057】
本開示の1つ又は複数の実施形態が説明された。とはいえ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正がなされ得ることが理解される。例えば、異なる材料及び構成を利用することができ、異なる形状を有する弾頭は、本開示から利益を得ることができる。従って、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
【国際調査報告】