(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-20
(54)【発明の名称】異なる混合物から成分を連続的に分離するための自動遠心分離装置および方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/10 20060101AFI20231113BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20231113BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20231113BHJP
C12M 3/06 20060101ALI20231113BHJP
C12M 1/24 20060101ALI20231113BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20231113BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20231113BHJP
B04B 1/02 20060101ALI20231113BHJP
B04B 13/00 20060101ALI20231113BHJP
B04B 7/08 20060101ALI20231113BHJP
B01D 15/10 20060101ALI20231113BHJP
B01D 45/12 20060101ALI20231113BHJP
B01J 20/286 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
C12M1/10
C12M1/26
C12M3/00
C12M3/06
C12M1/24
C12N1/00 K
C12M1/34 D
B04B1/02
B04B13/00
B04B7/08
B01D15/10
B01D45/12
B01J20/286
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535970
(86)(22)【出願日】2021-08-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-11
(86)【国際出願番号】 US2021047037
(87)【国際公開番号】W WO2022046572
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523064376
【氏名又は名称】メータ,スニル
【氏名又は名称原語表記】MEHTA, Sunil
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】メータ,スニル
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4D017
4D031
4D057
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA09
4B029AA11
4B029AA23
4B029BB11
4B029CC13
4B029DA07
4B029DF05
4B029DF07
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4D057AC06
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4D057BA11
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4D057BA43
4D057BC05
4D057BC11
4D057CA01
4D057CB01
4D057CB04
(57)【要約】
本発明は、固形物、粒子、液体、または気体を、それらを含有する混合物から分離するための連続流遠心分離装置およびその装置を使用する方法に関する。装置は、流入材料が入口を介してチャンバに連続的に入り、分離された材料が2つの出口を介して連続的に流出する回転分離チャンバを含む。固形物またはより重い材料は、出口管から出て、その開口部は回転中心から最も遠く、最大の遠心力を有する空間に配置される。液体/上清の出口は、最小の遠心力を有する回転中心付近の空間に配置される。固形物の出口に対する入口の配置の基準は、入口から固形物の出口に向かう流入材料の流れが回転方向と同じ方向であるように、回転方向と同じ方向である。すべての生成物接触面は、使い捨て可能とすることができ、異なる用途のための多様な分離方法は、システム構成要素の異なる入力および出力を管理するコントローラによって、完全に自動化された手法または手動で実行することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.入口および2つの出口を備えた回転チャンバであって、回転中心から断面積が同じままで、次いで、回転軸に垂直な軸に沿って頂点を形成するように狭くなる断面積を有するか、または前記回転中心から狭くなって前記回転軸に垂直な前記軸に沿って頂点を形成する断面積を有する回転チャンバと、
b.前記回転軸から最も遠く、材料が最大の遠心力を受ける前記頂点付近の空間に位置する第1の出口と、
c.前記材料が最小の遠心力を受ける前記回転軸付近の空間に位置する第2の出口と、
d.回転方向に関して前記第1の出口の反対側にある空間に位置する入口であって、前記回転が時計回りの場合、前記第1の出口の左側にあり、前記回転が反時計回りの場合、前記第1の出口の右側にある入口と
を有する、装置および前記装置を使用する方法。
【請求項2】
前記チャンバが、円錐またはパラボロイドが続く管である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記チャンバが、円錐またはパラボロイドである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
2つ以上の個々のチャンバが、単一の回転ユニットを形成するように接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
2つ以上のチャンバが組み合わされて、単一の回転ユニットを形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、柔軟または半柔軟な材料から作製され、剛性の高い構造体によって囲まれている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が、剛性の高い材料から作製される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
大部分またはすべての生成物接触面が使い捨てである、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
すべての生成物接触面が再使用可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が、プログラマブルコントローラ、ヒューマンマシンインタフェース、モータ、ポンプ、バルブ、および様々なセンサを含み、予め設定されたプロセスレシピを使用して、前記装置の構成要素を手動でまたは自動的に制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記回転システムに出入りする液体を管理するために、シールを備えた多重チャネル回転ユニオンが使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記入口の流量を、光学または濁度センサのフィードバックを使用して自動的に最適化することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
材料を、前記材料の沈降速度の差に基づいて分離するために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
液体を含有する混合物から粒子、細胞、または固形物を単離するために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
粒子、細胞、または固形物を含有する混合物から液体を単離するために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
粒子もしくは細胞を洗浄するために、または異なる液体および粒子を含有する細胞培養物もしくはスラリー中の液体を置換するために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
潅流培養のための細胞保持システムとして使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
1つのバイオリアクタから細胞を濃縮し、濃縮された前記細胞を別のバイオリアクタに移すために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
マイクロキャリアから細胞を分離するために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
細胞をトランスフェクトまたは感染させるために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
異なる材料で粒子をコーティングするために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
異なる血液成分を分離するために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
クロマトグラフィ粒子を使用して材料を精製するために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
液体を、前記液体の比重に基づいて分離するために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
気体から固形物または粒子を分離するために使用される、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年8月22日に出願された米国仮特許出願第63/069,014号、および2021年5月16日に出願された米国仮特許出願第63/189,194号からの優先権を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、沈降の差に基づいて、複雑な混合物から固形物または液体を分離するために使用される方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
特定の材料を汚染材料から分離することは、多くのプロセスにとって要求されていることである。例えば、大部分のバイオ治療薬またはワクチン製造プロセスには、混合物から特定の生体分子を精製するステップが含まれる。エネルギー、食料生産、または環境の浄化に及ぶ多くの大規模な工業プロセスは、分離技術を使用する。分離が日常的に用いられている真空掃除機および空気濾過を含むいくつかの用途がある。分離技術は、主に、粒子、液体、気体、または高分子を混合物から分離する。遠心分離および濾過技術の両方は、液体または気体から固形物粒子を分離するために使用されるが、遠心分離技術は比重および/または粘度の差に基づいて液体から液体を分離するためにも使用することができる。クロマトグラフィは、材料を精製するための別のアプローチであるが、一般に、粒子または異なるタイプの液体ではなく、高分子の精製に限定される。
【0004】
遠心分離プロセスおよび/または濾過プロセスは、実質的にすべてのバイオ製造プロセスにおいて使用され、生成物または中間生成物であり得る上清または固形物を単離する。例えば、抗体製造は、細胞(抗体を分泌する)および細胞残屑からの上清を含有する抗体の分離を必要とする。細胞は、細胞治療薬の製造中の生成物であり、凍結前に濃縮および洗浄される。ウイルスまたは組み換えウイルスタンパク質(細胞内、細胞外、または細胞に付随する)の位置にかかわらず、ほとんどすべての細胞ベースのワクチンプロセスは、細胞と液体との間の分離を必要とする。また、大規模血液処理用途は、血漿タンパク質、血小板、赤血球、および白血球を含有する混合物からの異なる成分の分離を必要とする。また、多くの微生物プロセスは、発酵プロセス後に分離技術を必要とする。
【0005】
濾過技術および遠心分離技術は、競合技術として同じプロセスに使用されることがあるが、多くの場合、相補的な技術として使用される。遠心分離技術は、主に、大きさ、密度、比重、および形状の差異を利用するのに対して、濾過技術は大きさおよび電荷の差異を利用する。通常、遠心分離機には回転機構があるのに対し、フィルタにはいかなる可動部品もないので、フィルタは操作が簡単である。一方では、フィルタは、遠心分離機と比較して、処理の提供が遅く、目詰まりを起こしやすく、高い運用コストを有し、一般に、大きな表面積および床面積を必要とする。
【0006】
バイオマニュファクチャリングのための大部分の遠心分離技術は、管状ボウルまたはディスクスタックに基づいている。管状ボウル技術は、高い遠心力(10,000g超)を発生させることができ、上清含有量の低い固形物のペーストを生成することができるので、微生物の培養として大抵使用される。固形物がボウルを満たすと、固形物を排出するために回転ボウルを停止する必要がある。ディスクスタックおよび向流(例えば、kSep、Elutra、およびRotea)遠心分離機は、細胞を密に詰め込むのではなく、スラリーを形成し、排出中に停止することを必要とせずに、固形物を断続的に排出する。向流遠心分離技術は低剪断力を発揮するが、他のボウルまたはディスクスタック遠心分離技術は高剪断力を発揮し、したがって、無傷の細胞が生成物または中間生成物として必要とされるときには使用されない。細胞は細胞ベースの治療および遺伝子治療のための生成物であり、多くのプロセスは無傷の細胞を必要とする(例えば、潅流または活性ワクチン成分が細胞内にある場合)ので、これらの技術は、多くの製造プロセスに適していない。
【0007】
使い捨て(シングルユース)技術は、最近、CIP/SIP(clean-in-place/sterilization-in-place:定置洗浄/定置滅菌)の必要性およびバッチ間の相互汚染の危険性を排除するため、バイオマニュファクチャリングとしての再利用可能な技術よりも大きな注目を集めている。また、使い捨て技術は、サイクルタイムを短縮し、設備投資を削減させる。使い捨ての遠心分離機は、工学的課題があるため、それほど一般的ではない。低速から中速の使い捨て遠心分離機が現在利用できる(例えば、Unifuge、kSep、Elutra、Rotea、およびCultureOne)。Unifuge、kSep、Rotea、およびElutraは、ボウル遠心分離機であり、Unifugeは排出の間に停止する必要がある固形物の充填層を形成する。kSep、Rotea、Elutra、およびCultureOne技術は、固形物を断続的に排出する。kSep、Rotea、およびElutraは、向流に基づく低剪断技術であり、それらはチャンバ内の流動層中に固形物を濃縮し、チャンバが満杯になると固形物を排出する。CultureOne技術は、ディスクスタックに基づいており、スラリーとして固形物を断続的に排出する。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に記載される装置および方法は、固形物をスラリーとして連続的に排出する自動遠心分離システムであり、使い捨ての利用が可能である。分離チャンバの形状は、複数の力(例えば、コリオリ力および遠心力)によって優れた分離がなされるように設計される。本システムは、より小さな占有面積において、連続運転、優れた清澄性能、低剪断、および非常に高い処理量を提供するので、既存の技術に勝る大きな利点を有する。本装置は、プロセスにおける様々なステップを実行するために、自動または手動モードで動作させることができる。本システムは、いかなる汚染も防ぐために、閉鎖システムとして動作させることができる。管をねじることなくシステム内外に液体を輸送するために、回転子速度の半分で回転子の周りを回転する多重チャネル配管を使用することができる。長期の運転時間を必要とする用途では、チャネル間にシールを備えた多重チャネル回転ユニオンを使用することができる。個々のシールは、oリング、リップシール、または他のタイプのシールとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】1つの入口および2つの出口を備えたチャンバを詳細に記載した図である。
【
図4】組み合わせた複数のチャンバを備えた単一インサートの例である。
【
図5】固形物を生成物とする高細胞密度培養プロセスの概略図である。
【
図6】固形物を生成物とする低細胞密度培養プロセスの概略図である。
【
図7】液体または上清を生成物とする高細胞密度培養プロセスの概略図である。
【
図8】液体または上清を生成物とする低細胞密度培養プロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
遠心分離機は、剛性の高い回転子に取り付けられるか、または外部の構造支持体なしにそれ自体で回転する、柔軟または剛性の高いインサートで構成される。回転は、水平軸もしくは縦軸に沿って、または2つの間にある任意の軸に沿って行うことができる。インサートは、その断面積が(回転中心から始まって)同じままであり、次いで、回転軸に垂直な軸に沿って狭くなる(頂点を形成する)ような形状を有し、頂点(または先端)は、回転中心から最も遠く、その結果、最高のg力を有する空間に固形物を集結させることができる。そのような形状の1つは、先端の近くに円錐またはパラボロイド(放物面、paraboloid)が続くシリンダ(回転軸に近い)である。円錐を有する形状を
図1に示す。また、形状は、領域が回転軸に垂直な軸に沿って連続的に狭くなるような形状である場合がある。そのような形状の1つは、円錐またはパラボロイド(
図2に示されるパラボロイド)である。出発材料は、固形物(粒子)および液体、2つ以上の異なる液体(重い液体および軽い液体)、または粒子もしくは液体と混合された空気を含有し得る。1つの入口(出発材料用)および2つの出口がある(
図3)。分離されたスラリー状の固形物(液体から分離)、粒子(液体または空気から分離)、または重い液体(軽い液体から分離)は、第1の出口から遠心分離機を出て、清澄化された液体もしくは空気(粒子もしくは固形物からの清澄化)、または軽い液体(重い液体からの清澄化)は第2の出口から遠心分離機を出る(
図3)。固形物/粒子(液-固または空気粒子の分離のための)またはより高密度の液体(液-液分離のための)が収集される出口は、回転中心から最も離れた空間に位置する(例えば、円錐(
図3)またはパラボロイドの先端または頂点の近くに配置される)。このデバイスを使用していくつかの異なる材料を分離することができるが、大部分の図および説明のために、本発明者らは、液体からの固形物/粒子の分離の例を使用する。これは、本発明の範囲について限定するものとして解釈されるべきではない。
【0011】
固形物の出口に対する入口の配置の基準は、回転方向と同じ方向である。出発材料が流入する入口および固形物のスラリーが流出する出口は、重い材料の流れ(入口から固形物の出口)が回転方向を目指すように回転方向に向いている(
図3)。例えば、回転方向が時計回りの場合、入口はチャンバの左側に配置され、固形物のスラリー用の出口は入口の右側に配置される(
図3)。一方、回転方向が反時計回りである場合、入口はチャンバの右側に配置され、固形物のスラリー用の出口は入口の左側に配置される。チャンバのこの配置および形状によって、粒子またはより重い材料がチャンバの壁に沿ってチャンバの頂点を目指し、コリオリ力および遠心力に起因してその空間に集結する。そのようなやり方での液体の流れ方向は、様々な方式によって維持することができる。そのような方式の1つは、入口管の端部を、先端に近づけて配置し、回転方向を基準にして先端の反対側に向けることである(
図3および表2、オプション2)。別の実施形態では、入口管の出口端がチャンバの底部と先端との間に配置され、回転方向を基準にして先端の反対側に向けられる(表2、オプション1)。入口管の出口は、チャンバの底部に近接することもできる。液体/上清出口は、(例えば、
図3に示すように)最も低い遠心力で回転軸に近接したチャンバ内の空間に位置付ける。一実施形態では、上清の出口管の端部が基部の中心に配置される。他の実施形態では、上清の出口管の端部が基部上の任意の場所に配置される。回転軸が鉛直である場合、上清の出口管の端部を、プライミング(priming)中に空気が効果的に除去されるように、チャンバの最高点に向かって(基部上または基部付近に)配置することができる(例えば、表2、オプション1)。回転軸が水平である場合、上清の出口管の端部を、プライミング中に回転子が回転している間に空気が除去されるので、基部上の任意の場所に配置することができる(例えば、
図3)。
【0012】
スループットを最大にし、回転子の占有面積を効率的に利用するために、複数のインサートを回転子内に配置することができ、または単一のインサートを複数の円錐/パラボロイドで作製する。複数の個々のインサートが回転子内に配置されるとき、主となる入口および出口は、各チャンバが1つの入口、固形物用の1つの出口、および液体用の1つを有するように分割される。ポンプは、液体およびスラリーを供給または除去するために使用される。各チャンバからの固形物の出口は、各チャンバからの固形物の一貫した除去のために、独立したポンプまたはポンプヘッドに接続することができる。一実施形態では、蠕動ポンプを使用して、入口ラインを通して出発材料を圧送し、複数のポンプヘッドを備えた別のポンプを使用して、個々の固形物の出口ラインから固形物のスラリーを圧送する。
【0013】
複数のチャンバが組み合わされて単一のユニットまたはインサートを形成する場合、各チャンバは、個々の入口(組み合わされた流入する入口管からの入口)、および固形物のスラリー出口を有するが、組み合わされた液体の出口を有することができる。一実施形態では、円錐部を備えた4つのチャンバは、単一のユニットまたはインサートに組み合わされる(
図4)。
【0014】
清澄化は、チャンバ内部の液体の流れを最適化することによって改善することができる。一実施形態では、清澄化が基部から円錐形状の開始部まで延びるチャンバの中心に隔壁を導入することによって改善される(表2)。隔壁は、回転面に対して垂直である。上清の出口は隔壁のいずれの側にも配置できるが、結果として、上清の出口および入口が隔壁の同じ側にある場合、清澄がわずかに良好であることを示す(表2、隔壁の同じ側に上清および入口を有するオプション1)。別の実施形態では、半円板形状が下向きの流れを反映するために使用される(表2)。この半円形円板は、円筒形状が円錐形状に移行する場所に配置され、基部に平行に向く。円板の円形部分は、入口と同じ側を向き、直線部分は固形物の出口管の方へ向く。この場合、固形物が、時間とともに半円形円板の下に蓄積し始める。この固形物の蓄積は、チャンバの基部から半円形部分の真っ直ぐな縁部まで傾斜を設けることによって軽減される(表2、半円形反射体を備えたオプション2)。別の実施形態では、入口管の流れは、円筒形状が円錐形状に移行する空間内に均一に分散される(表2)。分配器は、他端で円形開口部(穴)から中空半円形構造に移行する構造、またはテーパ状のより薄い中空半円形構造に移行するより大きな中空半円形構造とすることができる(表2、入口流分配器を備えたオプション1)。
【0015】
回転子が回転するにつれて、回転シールベースまたはアンビリカル管ベースのシステム(管の束が全速の回転子上では半分の速度で回転する)を使用して、出発材料が入り込み、分離された材料が回転システムから出ることができるように、流体経路を構築する。回転シールは市販されており(例えば、Deublin、Kadant、およびDSTIから)、アンビリカル管システムは多くの遠心分離製品(例えば、Centritech、Elutra、およびkSep)において使用されている。回転シールは、概して、金属で構成され、複数回使用される。この技術を使用する多くのバイオプロセス用途のために、回転シールは使い捨てアセンブリの一部であり、複数のサイクルを有し得る1つのバッチに使用される。一実施形態では、マルチチャネルシールが両側にステンレス鋼軸受を備えたプラスチック(例えば、ポリカーボネート)から構成される。市販のマルチチャネル回転シールは、各流体チャネル間のシールとして、Oリングを使用する。これらのシールは、低RPM(600RPMまで)の定格であり、長時間(24時間超)にわたってより高いRPMで動作する場合、損傷を受け、漏洩し始める。回転シールのロバスト性を改善するために、いくつかの異なるシールタイプを開発し、試験した。本発明では、市販で入手可能なOリングの代わりに、回転シールの各チャネルの間にリップシールが使用される。これらのシールにおけるすべての生成物接触面材料は、バイオプロセスおよび医療用途に適している。例えば、各生成物接触面材料は、USPクラスVIもしくは同等の試験に合格するか、または不動態化された316Lステンレス鋼である。これらの回転シールは、5000RPMで200時間動作した後、故障せず、漏れを示さなかった。本発明に記載された回転シールは、回転を伴う液体の移動を必要とする他の遠心分離機または他の用途に対しても使用することができる。
【0016】
ポンプは、液体をシステムに押し込むため、または分離された液体もしくは固形物をシステムから引き出すために使用される。例えば、蠕動ポンプ(例えば、Cole ParmerまたはWatson Marlow製)を使用して、出発材料をポンプで送り込み、制御された流量で固形物のスラリーまたは清澄化された液体をシステムからポンプで送り出す。清澄化された液体または固形物のスラリーは、入口と出口(ポンプに接続されたもの)との間の流量の差に起因する圧力によって、ポンプ作用なしで流出することができる。
【0017】
実験を行って、単一の分離チャンバの最適な長さ、直径、および頂角を決定した。PVCまたはC-Flexチューブを備えた単一のポリプロピレンチャンバ(
図3のものに類似)を、250gおよび500gで鉛直軸、水平軸、または中間軸に沿って回転させた。乾燥したサッカロマイセスセレビシエおよび水を含むスラリー、または0.01%のSDSを含む水中の10ミクロンポリスチレンビーズ(比重1.06g/cm3)を、試験のための出発材料として使用した。蠕動ポンプを使用して、材料をシステムに出し入れした。出発材料の流量(供給流量)を高流量(100mL/分)で開始し、分離された上清中にビーズが検出されなくなり、酵母細胞から分離された上清中に5%より多くの濁度が検出されるまで段階的に低下させた。濃縮された固形物または細胞を、一定の流量(通常、供給流量の5~10%)で作動する蠕動ポンプを介して分離チャンバから引き出した。回転軸の変更は、流量に影響しなかった。分離チャンバの寸法および実験の結果を表1にまとめる。これらの結果は、分離流量が遠心力に正比例することを示している。その半径に等しい長さを超えて管の長さを増加させても、供給量は改善しなかった。頂角(70~130度)の変化は、頂角が70度から130度に変化したとき、供給流量が20%増加したように、性能に小さな影響を及ぼした。固形物の出口の向きに対する入口が、回転方向と反対になるように入口の向きを変えると、分離効率は劇的に低下し、同様の分離を達成するためには、供給流量の著しい低下(60%より多く)を必要とした。
【0018】
流量は、管の断面積に正比例する。これを検証するために、管の内径が60mmのポリカーボネートチャンバを構築した。表2にまとめた結果は、小さいチャンバの流量に対する大きいチャンバの流量の比が小さいチャンバの断面積に対する大きいチャンバの断面積の比と同等のままであったことを示している。隔壁、反射体、または入口分配器を、清澄化を改善するためにチャンバ内に取り付けた(表2)。結果は、元の構成からの流量の変化がわずかであったことを示す。
【0019】
遠心分離システムは、プロセスを自動化するために、複数のハードウェアおよび使い捨ての構成要素を有する。これらには、ポンプ、ピンチバルブ、気泡センサ、温度センサ、濁度センサ、または光学センサが含まれる。加えて、加速度計、回転子の安全性、速度、水漏れ、および他のセンサが、これらのシステムの安全な動作のために組み込まれる。インサート、管、袋、光学センサ、圧力センサを含む使い捨てマニホールドの全体は、使用前に予め組み立てられ、(ガンマ線照射またはエチレンオキシドを介して)滅菌される。チャンバは柔軟(例えば、EVA、C-フレックス、シリコーンで構成される)であるか、または剛直(例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、Ultem(登録商標)で構成される)である場合がある。完全なアセンブリは、何時間もの動作に耐えるように設計される。使い捨ての生成物接触面を有する管またはパイプは、システムを通して異なる流体を循環させるために使用される。例えば、柔軟なシリコーン、C-フレックス、PVC、または他の管を使用して、システムの異なる部分を接続し、流体を導くことができる。ピンチバルブの異なる開閉構成は、異なる流体経路を構築する。ポンプは、液体または固形物のスラリーの流れの方向を提供する。使い捨てマニホールドは、無菌コネクタまたは熱可塑性のある管の溶接を介して、出発材料、異なる緩衝液、廃棄物、および分離された材料を含む袋または容器に接続される。
【0020】
HMI(ヒューマンマシンインタフェース)を備えたコントローラは、ポンプ(速度、方向、開始/停止、フィードバックなど)、バルブ(開、閉、フィードバック)、閉塞(occlusion)/圧力センサ、光学密度および濁度検出器、気泡センサ、pH、伝導度、温度センサ、重量ロードセル、加速度計、速度、および水漏れを含む、システムの一部からの情報を自動的にまたは手動で制御および受信するために、ユーザによって使用される。センサのいくつか(例えば、閉塞/圧力、加速度計、水漏れ、マイクロスイッチ)は、システムの安全性を改善するために使用される。例えば、1つまたは複数の管が閉塞された場合、閉塞検出器または圧力センサによって検出された圧力上昇は、信号をコントローラに送信し、システムは、高圧および潜在的な漏れを回避するために処理を停止する。この情報は、コントローラとの間でアナログまたはデジタル信号として提供される。Siemens(登録商標)、Backhoff(登録商標)、またはAllen-Bradley(登録商標)のような様々なベンダから市販される自動化システムは、コントローラ、入力/出力デジタルまたはアナログカード、およびHMIを含む完全なソリューションとして利用可能である。例としては、Siemens SIMATIC S7-1200キット、DeltaVオートメーション、またはBeckhoff TwinCAT3オートメーションプラットフォームがあげられる。
【0021】
ユーザは、HMIの一部であるプロセス画面に様々なプロセスパラメータを入力する。これは、プロセスを作動させるたびに実行されるレシピに変えることができる。プロセスパラメータは、ステップを開始または停止するための、サイクル量、流量、洗浄、および再循環時間、pH、伝導率、濁度、光学密度、および吸光度値を含む。ユーザがHMIに入力することによってプロセスを開始すると、コントローラは、入力されたプロセスパラメータを使用してプロセスを自動的に作動することができる。複数のバルブ(図のV1~V8)は、精製プロセスの異なるフェーズの間、異なる流体経路を形成するように制御される。一実施形態では、ピンチバルブは、柔軟な管内の流体経路を開閉するために使用される。流体を処理するための自動化された方法の一部の例を以下に記載する。システムは同じハードウェアを使用して複数のプロセスを作動させることができるが、使い捨てセットは異なるプロセスによっては異なり得る。システムは、インターネットを通じて遠隔制御することができ、CFRパート11のコンプライアンスを満たすためにデータを記憶するか、またはデータを送信することができる。
【0022】
異なるサイズのチャンバ(例えば、直径1mm~1メートル)および異なる遠心分離力(10~100,000g)を、様々な量(例えば、5mL~200,000L)を処理するために装置内で使用することができる。出発材料の流量は、チャンバの断面積およびg力に正比例する。例えば、出発材料の流量が500gで200mL/分である場合、それは1000gで400mL/分である。同様に、断面積が100平方mmのチャンバの流量が200mL/分である場合、断面積が200平方mmのチャンバの流量は400mL/分となる。
【0023】
プロセスの最適な流量は、出発材料を装置にポンプ圧送し、上清のブレークスルーを監視することによって、実験的に決定することができる。流量は、上清中の固形物/細胞の量またはタイプが所望のレベルになるまで調整される。例えば、元の細胞密度の5%が上清中に見出され、1%未満の損失が望まれる場合、流量を10~20%減少し、上清が再びサンプリングされる。このプロセスは、所望のレベルの損失が達成されるまで繰り返される。上清中の細胞密度は、市販のシステム(例えば、Vi-CELL、Cedexなど)によって、またはノイバウエル血球計を使用する手動カウントによって測定することができる。固形物は、出発材料の流量に出発材料中の充填された固形物含有量のパーセンテージを掛けたものよりも高い流量で、分離チャンバから送り出される。例えば、出発材料中のパック細胞容積が5%であり、出発材料が200mL/分で送り込まれる場合、濃縮細胞の除去のための流量は10mL/分を超えるべきである(例えば、15mL/分)。
【0024】
すべてのプロセスでは、使い捨てマニホールドが取り付けられ、すべての接続は、熱可塑性のある管の溶接またはコネクタによって行われる。システムのプライミングは、プロセスを開始する前に、システムへのすべての入口ラインが液体で満たされる必要がある。システムをプライミングするにはいくつかの方式がある。1つの可能な方式を以下に説明する(
図5~
図9)。
【0025】
システムは、V1(使用する場合)、V6(使用する場合)、V8を開き、V7を閉じた状態でポンプP1を順方向に作動させることによって、入口を介してシステムに出発材料を導入することによりプライミングされる。回転子は、低遠心力(例えば、2~10g)で回転する。BS2またはOS3が液体を検出し、気泡が検出されなくなると、回転速度は動作速度(50~20,000g)まで上昇する。ポンプP2は、濃縮された固形物をシステムから除去するために作動する。光学センサOS3は、濁度を監視し、その値が安定すると、V7が開き、V6およびV8が閉じる。この光学センサOS3は、分離効率を改善するためのフィードバックを構築することによって流量を自動的に調整するために使用することができ、プロセス内の濁度が増加した場合に警告を提供することができる。例えば、プロセスの開始時に、流量を段階的に増加させ、濁度を監視する。最も低い濁度を提供する最高流量が、プロセスの残りの部分に使用される。洗浄緩衝液の袋または他の袋が使用される場合、入口ラインは、それに応じてプライミングされる。これにより、プライミングステップが完了する。
【0026】
本発明には、いくつかの用途がある。いくつかの用途に対するプロセスを以下に説明する。このプロセスを実行する多くの代替手段がある。以下の例は、これらの用途の実行する方法の一部である。本発明の一部の例示的な実施形態を説明してきたが、当業者は本発明の教示および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを容易に理解するであろう。
【0027】
生成物として細胞または固形物を濃縮し洗浄するプロセス
固形物、粒子、または細胞は、大部分の細胞治療プロセス、いくつかのワクチンプロセス、および固形物の単離(例えば、タンパク質の沈殿)を必要とする他のプロセスにおいて、所望の生成物である。また、これらのプロセスの多くは、最終生成物が元々懸濁されていたものとは異なる液体中にあるように、洗浄または緩衝液交換プロセスを必要とする。以下は、固形物を濃縮、洗浄、および回収するために使用される自動化されたプロセスである。
【0028】
このプロセスは、
図5に示すように設定される。プライミングが完了すると、V8が閉じられ、V7が開かれる。ポンプP1は、バイオリアクタから遠心分離機の入口に出発材料を供給するように作動する。ポンプP2は、システムから固形物(細胞)を除去し、これらの細胞をバイオリアクタに戻すために作動する。清澄化された上清は、V7が開いた状態で液体の出口から逃がすために廃棄される。バイオリアクタにおいて細胞の濃度が時間とともに増加することにつれて、P2のポンプ速度は、ポンプによってポンプ圧送することができないスラリー中の固形物の含有量が非常に高くなるのを回避するために、比例的に増加する。所望の濃度の細胞がバイオリアクタ中で達成され、洗浄が必要とされなくなると、プロセスは完了する。セルまたは固形物の洗浄が必要な場合、P1の流量からP2の流量を引いた流量でP3を作動することによって、洗浄緩衝液をバイオリアクタに導入する。不純物を減少させるのに必要な洗浄時間は、基本的な室内パージ方程式を使用して計算するか、または実験的に測定することができる。所望の洗浄が達成されると、チャンバ内に残っている細胞は、P1をオフにし、P2およびP3をバイオリアクタに向けて作動させ、V7を閉じ、V8を開くことによって除去される。OS3およびOS2が同様の値を示すと、P2を停止し、P1をバイオリアクタに向かう方向に作動させ(OS1に従って濁度値が低下するまで)、管内の細胞をバイオリアクタに回収する。このステップの後、V7を開き、V8を閉じ、P1を停止して、P3とバイオリアクタとの間の管内の細胞を回収する。その後、すべてのポンプを停止し、遠心分離機の速度を低遠心力(例えば、2~10g)まで下げる。バイオリアクタ、緩衝液、および遠心分離機と液体管との間の接続部に対するプロセスの接続は、封管または他の手段によってシールされる。使い捨てアセンブリは、すべてのバルブから取り外され、入口ラインを空気に曝露し、OS2によって空気が検出されるまでP2を廃棄物(waste)に向かって作動させることによって空にされる。この場合、この時点で使い捨てマニホールド全体を廃棄することができる。
【0029】
出発材料の細胞密度または固形物の濃度が低いか、またはプロセスの終わりに高濃度の固形物または細胞が必要とされる場合、バイオリアクタの袋の大きな表面はすすぎが困難であり、最終生成物が別々の袋に移されるときに、生成物の大きな損失をもたらすので、洗浄用の外部の袋が使用される。このアプローチは、細胞が再循環されず、バイオリアクタから外部の袋まで単一パスで移動するので、細胞上の剪断を低減する。加えて、第1のアプローチと比較して、細胞が濃縮されるので、P2のポンプ速度を調整する必要がない。この場合、
図6に示すように、洗浄袋を備えた使い捨て配管マニホールドが使用される。プライミングが完了すると、V7を開き、V8を閉じて、ポンプP1がオンにされて、バイオリアクタから、V1を開き、V2を閉じた状態の遠心分離機入口まで出発材料が供給される。ポンプP2は、システムから固形物(細胞)を除去し、これらの細胞を洗浄袋に移すために作動する。清澄化された上清は、V7を開き、V8を閉じた状態で液体出口から逃がすために廃棄される。バイオリアクタが空になると、BS1は空気を検出する。洗浄は、V1を閉じ、V2およびV5を開き、P3を洗浄袋の方向に向かって作動させることによって開始される。より高い濃度の細胞を得るために、洗浄袋内の細胞の量を減少させる必要がある場合、P3の流量は、P1よりもはるかに低く調整される。さもなければ、P1は、P2の流量にP3の流量を加えたものに等しい流量で作動する。これにより、洗浄プロセス中、洗浄袋の容量が一定に保たれる。不純物を減少させるのに必要な洗浄時間は、基本的な室内パージ方程式を使用して計算するか、または実験的に測定することができる。P2の流量は、濃度係数によって増加する。例えば、1000Lの元のバイオリアクタ容積内の細胞が100Lに濃縮される場合、P2の流量を10倍に増加させる必要がある。洗浄が完了すると、ラインに残っている濃縮細胞を、V5を閉じ、V6を開くことによって除去する。OS2センサが緩衝液の値により近い値を示した直後(即ち、細胞が検出されないか、または最小限の細胞が検出されるか)には、すべてのラインの細胞は、ほとんど洗浄袋に戻っている。すべてのポンプおよびピンチバルブは閉じられ、遠心分離機の速度は低遠心力(例えば、2~10g)に低減される。洗浄袋とV6との間のライン中のいくつかの残りの細胞は、V6を開き、洗浄袋に向かってP3を瞬間的に作動させることによって回収される。この後、バイオリアクタ、緩衝液、洗浄袋へのプロセスの接続、および遠心分離機と液体管との間の接続は、封管または他の手段によって封止される。使い捨てアセンブリは、すべてのバルブから取り外され、入口ラインを空気に曝露し、P2とV5との間のラインを廃棄物に接続し、OS2によって空気が検出されるまでP2を廃棄物に向かって作動させることによって空にされる。この場合、この時点で使い捨てマニホールド全体を廃棄することができる。
【0030】
生成物として液体または上清を用いたプロセス
すべてのモノクローナル抗体および多くの他の組み換えタンパク質は、それらを発現する細胞(哺乳動物および酵母)によって上清中に分泌される。これは、細胞からの上清の分離を必要とする。細胞密度を増加させることによって組み換えタンパク質の産生を増加させるために、多くの上流プロセスが開発されている。
【0031】
細胞密度または固形物の濃度が高い場合、いくらかの上清を伴った固形物のスラリーまたは細胞が廃棄物に廃棄されると、上清中の生成物が失われる。スラリー中の生成物の回収を最大化するために、この方法は、濃縮された細胞を、廃棄物に廃棄する前に洗浄する。使い捨てアセンブリの概略を
図7に示す。
【0032】
プライミングが完了すると、V7を開き、V8を閉じる。ポンプP1は、V1を開き、V2を閉じた状態で、出発材料をバイオリアクタから遠心分離機の入口に供給するように作動する。ポンプP2は、システムから固形物(細胞)を除去し、これらの細胞を、V4を開き、V3を閉じた状態で洗浄袋に移すように作動する。同時に、ポンプP3は、規定の流量で洗浄袋内に緩衝液を移動させるように作動する。P3の流量は、基本的な室内パージ方程式を使用して算出することができ、または所望の量の生成物を回収するのに十分な洗浄を提供するために実験的に測定することができる。生成物のより高い回収率が必要とされる場合、スラリーをより希釈することができるように、P3の流量はより高くなる。予め設定された出発材料の量が処理されると、V2が開き、V1が閉じる。上清の非常に高い回収が望まれる場合、緩衝液のポンプP3は運転を継続し、V3を一定時間閉じた状態でV4を開いたままにする。時間を節約し、回収を妥協するために、または所望の洗浄が達成されたときに、P3を停止し、固形物のライン中の液量を洗浄緩衝液でスラリーと置き換えた後、V3を開き、V4を閉じて、洗浄された細胞または固形物を廃棄物として廃棄する。洗浄袋が、元の容積の約5%残っていると、V1およびV4を開き、V2およびV3を閉じ、P3が再び作動して、規定の流量で洗浄袋内に緩衝液を移動させる。このサイクルは、BS1がバイオリアクタが空であるという気泡を感知するまで継続する。最後の洗浄サイクルは上記のように完了し、洗浄サイクルの終わりに、OS2が低い値を示し、OS1およびOS2の値が同程度になる(細胞を含まない)まで、P3を作動させて緩衝液を加える。P2を停止し、OS3が緩衝液に近い値を示すまで上清のパージを継続する。その後、すべてのポンプを停止し、遠心分離機の速度を低遠心力(例えば、2~10g)まで下げる。バイオリアクタおよびV8へのプロセスの接続、緩衝液、洗浄袋、ならびに遠心分離機と液体管との間の接続は、封管または他の手段によって封止される。配管はP1から取り外される。使い捨てアセンブリは、すべてのバルブから取り外され、OS2によって空気が検出されるまで、P2を廃棄物に向かって作動させることによって空にされる。この場合、この時点で使い捨てマニホールド全体を廃棄することができる。
【0033】
洗浄を省略する場合、プロセスを簡略化することができる(
図8)。これは回収率を犠牲にするが、複雑さを低減し、いくらか時間を節約し、緩衝液を有する必要性をなくす。回収率の低下は、細胞密度または固形物の含有量が低い(パック細胞容積が10%未満)場合には、最小(10%未満)となる。
【0034】
プライミングが完了すると、V7を開き、V8を閉じ、ポンプP1は、バイオリアクタから遠心分離機の入口まで出発材料の移動を開始する。ポンプP2は、濃縮された固形物(細胞)を除去し、それらを廃棄物に廃棄するように作動する(V3を開き、V4を閉じる)。上清は、V7を開き、V8を閉じた状態で回収される。このプロセスは、バイオリアクタが空であることを示す空気をBS1が感知するまで継続する。OS2が低い固形物の含有量(例えば、低い濁度)を検出した後、使い捨てアセンブリは、遠心分離機の速度を下げ(例えば、2~10g)、V4を開き、V3を閉じることによって空にされる。OS2によって空気が検出されると、プロセスは完了する。すべてのプロセスの接続は、管の溶接または他の手段によって切断され、この場合、この時点で使い捨てマニホールド全体を廃棄することができる。
【0035】
潅流
潅流プロセスは、バイオ治療薬およびワクチン製品の製造に使用される。このプロセスは、細胞から分泌される生成物または細胞ベースの生成物に使用することができる。このプロセスでは、細胞培養物は、バイオリアクタから連続的に除去され、細胞と上清に分離される。細胞をバイオリアクタに戻し、上清を廃棄する(細胞が生成物または中間生成物である場合)か、または回収する(上清が所望の物質を含む場合)。バイオリアクタ内の細胞培養物の定容は、細胞培養物が除去されるのと同じ速度でバイオリアクタに新鮮な培地を供給することによって維持される。このプロセスは、高い細胞密度(2千万~3億細胞/mL)を達成することによって、より小さな占有面積で生成物を連続的に生成するために、または短い半減期を有するか、もしくはプロセス生成の不純物に対して不安定である生成物を製造するために使用される。これは、長期間(30日超)作動することができる連続プロセスである。培地交換は、潅流プロセスにおいて連続的または半連続的であることができる。大部分の潅流プロセスは、交換される新鮮な培地の量によってサポートできない細胞の過剰な蓄積を回避するために、細胞を毎日放出する必要がある。培養物を毎日廃棄して細胞を放出させると、相当な量(5~20%)の生成物も失われる。
【0036】
多くの細胞保持技術が、潅流を実行するために使用されてきた。交互接線流(ATF:Alternating Tangential Flow)は、中空糸膜に基づく技術であり、細胞培養物はフィルタの目詰まりを回避するために、フィルタ(ハウジング内でバイオリアクタに取り付けられる)を横切って接線方向に移動する。生成物を含む濾過された培地は、更なる精製のために保存される。フィルタの孔が生成物の高分子の大きさより小さい場合(例えば、モノクローナル抗体については、150kDa未満)、生成物はバイオリアクタ中に保持される。この技術の主な欠点は、目詰まりによるフィルタの汚染、バイオリアクタ中の死んだ細胞および細胞残屑の保持、ならびに細胞放出中およびプロセスの終了時の生成物の損失である(プロセスの終了時のバイオリアクタ中の細胞培養物が廃棄されるため)。遠心分離およびスピンフィルタもまた、潅流のための細胞保持装置として使用されている。すべての濾過ベースの技術は、潅流プロセス中に細胞濃度が増加するにつれて目詰まりを起こすことが欠点である。従来の遠心分離技術は、濃縮された細胞を不連続的なやり方で濃縮し、排出する。これらの遠心分離ベースの技術(例えば、Centritech)を使用するプロセスは、計測可能ではなく、酸素投与またはプロセス制御なしに、細胞が遠心分離機中に長期間留まるので、細胞死することが欠点である。すべての遠心分離技術の利点の1つは、沈降速度の差に起因して、死んだ細胞および細胞残屑を生きた細胞から分離するそれらの能力である。
【0037】
以下に記載の方法(装置を使用する)では、細胞を濃縮し、穏やかなやり方で連続的に排出する。デバイス中の細胞の滞留時間は、他の遠心分離技術と比較して非常に短い(45秒未満)。細胞の処理後、細胞培養の上清中の細胞の生存率(トリパンブルー排除または不透過性蛍光DNA染料によって測定)または乳酸脱水素酵素含量に変化はなかった(剪断の代理マーカー)。赤血球(RBC:Red Blood Cell)は容易に剪断することができ、結果として生じるヘモグロビンの漏出は、390nmでの吸光度を測定することによって、上清中で容易に検出することができる。本発明者らは、50および100mL/分の流量で5回、RBCを装置(60mmの断面を備えたチャンバ)に通したが、390nmで上清中の吸光度値のいかなる増加も見られなかった。RBC溶解に対する陽性対照は、RBCを蒸留水に曝露することによって作製した。これらの結果は、本発明に記載される装置が細胞を穏やかに取り扱うことができ、細胞を剪断しないことを示す。
【0038】
また、実験からの結果は、この装置が死んだ細胞を生きた細胞から効果的に分離し、バイオリアクタ中の細胞の活力を改善または維持できることを呈する。これはまた、細胞が生成物であるので、すべての細胞治療プロセスにとっても有利である。この装置の別の利点は、少量の残留上清(スラリー中の)を含有する高濃度の細胞(2~4億細胞/mL)のみが廃棄されるので、細胞の放出ステップ中に(上清中の)最小限の生成物が失われることである。
【0039】
潅流の実施形態のうちの1つでは、本明細書に記載される遠心分離システムは、細胞培養物を含有するバイオリアクタに接続され、生成物は上清中にある。遠心分離装置の入口は、管を通してバイオリアクタに無菌的に接続され、遠心分離装置の固形物の出口はYコネクタを介してバイオリアクタおよび廃棄袋に接続され、遠心分離装置からの液体の出口は清澄化された上清の収集袋およびバイオリアクタに接続される(
図9)。プライミングステップが完了すると、ポンプP1は、バイオリアクタから遠心分離機の入口に出発材料を供給するように作動する。ポンプP2は、V3を介してシステムから固形物のスラリー(細胞)を除去し、これらの濃縮された細胞をバイオリアクタに押し戻すように作動する。清澄化された上清は、V7を開き、V8を閉じた状態で液体出口から押し出される。バイオリアクタ容積が一定に保たれるように、上清除去の量と同じ流量でポンプP3を作動させることによって、新鮮な培地をバイオリアクタにポンプ注入することができる。実施形態の1つでは、プロセスは設定時間(例えば、30日間)継続する。別の実施形態では、上記のプロセスを、設定された液量が採取されるまで、0.5時間~23.5時間間隔のサイクルで作動する。
【0040】
潅流サイクルが実行される場合、細胞を含むラインは、ポンプおよびバルブを制御することによって、各サイクルの後に培地(media)で洗浄される。すべてのポンプをオフにし、すべてのピンチバルブを閉じた後、V8およびV3を開き、ポンプP1およびP2の合計流量がポンプP3の流量以下になるように調整される。その後、P3、P2、およびP1ポンプは、OS2およびOS1センサが培地の値により近い値を示す(即ち、細胞が検出されないか、または最小限の細胞が検出され、ラインが清浄である)まで、バイオリアクタに向かって作動する。遠心分離機およびすべてのポンプの回転は、この段階で停止される。
【0041】
プロセスが完了すると、V4を開き、V3を閉じて、細胞を廃棄物に導く。BS1がバイオリアクタが空であることを気泡で感知すると、P2は、OS2が低い読み取り値(少ない細胞数または細胞なし)を示すまで作動する。遠心分離速度を低下させ(例えば、2~10gの間)、廃棄物、培地、およびバイオリアクタへのV3への接続を封止し、マニホールド全体をバルブから取り出す。配管をポンプP1から取り出し、ポンプP2を遠心分離機から離れる方向に作動させ、インサート内に残っている清澄化された上清をすべて押し出す。最後に、遠心分離機を停止し、すべてのラインを封止し、この場合、この時点で使い捨てマニホールド全体を廃棄することができる。
【0042】
潅流プロセスが細胞の放出を必要とする場合、V3を閉じて、V4を周期的に開き、過剰な細胞が廃棄されることを可能にする。生成物が上清中にあり、細胞の放出中に細胞のスラリーから回収が必要とされる場合、細胞の放出を生理学的緩衝液(例えば、PBSまたはHBSS)で希釈することができ、入口を介してシステムに導入され、洗浄された上清が液体出口を介して収集され、細胞が固形物の出口を介して廃棄物に廃棄される。細胞が生成物または中間生成物である場合、細胞が回収される。
【0043】
このプロセスに対するいくつかの修正は、効率を改善するために、または他の必要性を満たすために行うことができる。一実施形態では、培地は、培地交換を実行するために2つのバイオリアクタをこのシステムに接続することによって、効率的に利用され、高い細胞密度を達成する。このプロセスは、第1のバイオリアクタ中で細胞を増殖させることによって開始される。所望の細胞濃度が達成されると、このシステムは、細胞および上清をバイオリアクタから分離し、濃縮された細胞が第2のバイオリアクタに移される。所望の容積を維持するために、新鮮な培地を第2のバイオリアクタにポンプ注入する。第1のバイオリアクタから第2のバイオリアクタに細胞を完全に移した後、細胞を更に増殖させるか、または所望の生成物を生成する条件下に保つ。必要なときはいつでも、一方のバイオリアクタから他方のバイオリアクタに細胞を移すプロセスが繰り返される。
【0044】
他の用途
本発明に記載される装置および装置の構成要素は、細胞の操作を必要とする多くの他の用途に適用することができる。例えば、細胞からマイクロキャリアを分離するためには、血液成分を分離し、タンパク質の沈殿物を分離し、クロマトグラフィ、細胞単離、トランスフェクション、細胞の感染、細胞または粒子のコーティング、細胞の活性化、および培地/緩衝液交換を行う。
【0045】
多くの細胞療法およびワクチン製造プロセスは、接着細胞がマイクロキャリア上で増殖され、酵素(例えば、トリプシン、コラゲナーゼ)または化学物質(例えば、EDTA)を使用して分離されるとき、マイクロキャリアから細胞を分離することを必要とする。このプロセスは、細胞がマイクロキャリアよりもはるかに低い沈降速度を有するので、「液体または上清を生成物として用いるプロセス」のためのオートメーションステップを利用する。高流量および/またはより低いg力では、マイクロキャリアは固形物として濃縮され、細胞は上清とともに流れる。プロセスがその後に細胞の濃縮を必要とする場合、「細胞または固形物を生成物として濃縮および洗浄するプロセス」のためのステップが、マイクロキャリア分離の後に使用される。洗浄は、細胞を直接バンキングする(コールバンキングのため)、アリコートする(細胞治療のため)、または直接凍結保存することができるように、最終的な凍結保存培地または製剤の緩衝液中で行うことができる。この完全なプロセスは、細胞をマイクロキャリアから分離し、濃縮し、洗浄し、次の製造プロセスのために細胞を回収する。
【0046】
生成物として細胞または固形物を単離するプロセスは、それらの異なる沈降速度に起因して血液成分を効果的に分離するために使用することができる。この方法では、上清および固形物の両方が収集され、上清が後続のステップで使用される。最初に、血液の最も重い成分(例えば、RBC)を単離するために最適な流量が使用され、一方、残りの成分は液体とともに流出する。次のラウンドでは、RBCが枯渇した血液をシステムに供給し、血小板および血漿が流れる間に濃縮したWBCを回収する。別のラウンドの分離をより遅い流量で継続して、濃縮した血小板を単離することができる。血小板が枯渇した血漿は、液体として流れる。システムは、アフェレシスシステムとして患者に直接接続することもできる。同じプロセスを用いて、細胞または固形物の混合集団を、それらの沈降速度の差に起因して分離することができる。
【0047】
細胞または粒子は、異なるコーティング試薬を使用するこの技術を使用してコーティングすることができる。本出願では、粒子をコーティングおよび洗浄するために異なる溶液が使用され、一方、遠心分離システムは「生成物として細胞または固形物を濃縮および洗浄するプロセス」に記載される自動化された方法を使用して粒子を単離および洗浄するために使用される。また、緩衝液または培地交換を用いて、細胞をトランスフェクト、感染、形質導入、または活性化することもできる。
【0048】
また、このシステムは、生成物または不純物に対して親和性を有するクロマトグラフィ粒子を使用してクロマトグラフィを実行するために使用することができる。細胞または不純物よりも高い沈降速度を備えたクロマトグラフィ粒子は、出発材料と混合され、濃縮物として遠心分離機によって分離される。次いで、それらを洗浄のためにシステム外の緩衝液で希釈し、濃縮するために遠心分離機に装填する。用途に応じて、不純物または生成物は、それらを溶出(生成物を単離するため)または再生(不純物を除去および廃棄するため)の緩衝液と混合することによって、クロマトグラフィ粒子から溶出される。このプロセスは、クロマトグラフィビーズを再利用するために複数回繰り返すことができる。クロマトグラフィビーズは、各サイクルの後、または再生溶液(例えば、NaOH溶液)による設定されたサイクル数の後に再生することができる。一実施形態では、モノクローナル抗体は、プロテインAビーズを、分泌された抗体産物を含有する細胞培養物または上清と混合することによって精製される。混合物を遠心分離機で分離し、濃縮したプロテインAビーズを緩衝液で洗浄して非特異的な不純物を除去する。1ラウンドまたは複数ラウンドの洗浄および濃縮の後、ビーズを容器中でまたはインライン混合を通して低pH溶液(pHが5.0未満)とともにインキュベートして、濃縮モノクローナル抗体産物を溶出する。ビーズを洗浄し、再生し、次のサイクルに再度使用することができる。このプロセスは、バイオリアクタが空になるまで繰り返される。
【0049】
本発明の装置および方法は、大部分がバイオプロセスについて記載されているが、この記載は本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、本発明の構造および方法論に様々な修正および変更を行うことができることは、当業者とって明らかであろう。むしろ、本発明は、それらが以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にあるならば、修正および変形を包含することが意図される。
【0050】
参考文献
1.MAbs. 2009 Sep-Oct; 1(5): 443-452.
2.サブラマニアン、G.(2014). 医薬品製造における連続処理: Wiley‐VCH Verlag GmbH & Co. KGaA
【0051】
表1は、小さいチャンバによる清澄結果をまとめた表である。
表2は、スケールアップしたチャンバを使用した清澄結果をまとめた表である。
【表1】
【表2】
【国際調査報告】