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特表2023-548793人間の筋力と電気モータにより同時に駆動可能な移動手段
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】人間の筋力と電気モータにより同時に駆動可能な移動手段
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20231114BHJP
   B62M 6/45 20100101ALI20231114BHJP
   B62M 6/55 20100101ALI20231114BHJP
   B62M 6/60 20100101ALI20231114BHJP
【FI】
F16H1/32 B
B62M6/45
B62M6/55
B62M6/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523597
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2021076355
(87)【国際公開番号】W WO2022078731
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】102020212908.8
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523137223
【氏名又は名称】キルヴァット・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】KILLWATT GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】アッカーマン,ハンス・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】アッカーマン,フォルカー
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA36
3J027FB14
3J027GB02
3J027GB09
3J027GC07
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD07
3J027GD13
3J027GE25
(57)【要約】
本発明は、駆動電気モータ(27)と駆動波動歯車装置(18)とが設置空間を節約するように互いに入れ子にされる駆動ユニット(1)を備える、人間の筋力及び電気モータにより提供される駆動エネルギーによって同時に駆動可能な移動手段(F)、特にペデレックに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ユニット(1)を備える、人間の筋力及び電気モータにより提供される駆動エネルギーによって同時に駆動可能な移動手段(F)、特にペデレックであって、前記駆動ユニット(1)は、
人間の筋力により生成された駆動エネルギーを伝達するための入力駆動シャフト(33)と、
駆動エネルギーを走行装置(72)に送達するための出力被駆動シャフト(12)と、
波動発生器(20)とフレクスプライン(19)と内歯歯車(14)とを有し、回転軸(9)の周りに配置された駆動波動歯車装置(18)と、
固定子(28)及び回転子(31)を有し、前記回転軸(9)の周りに配置された駆動電気モータ(27)であって、前記駆動電気モータ(27)の駆動エネルギーを、前記駆動波動歯車装置(18)を介して前記出力被駆動シャフト(12)に伝達可能である、駆動電気モータと、を備え、
前記フレクスプライン(19)は、前記回転軸(9)の方向に延びるスリーブ(63)として形成され、前記スリーブが軸方向の一方の側で回転軸受(45)と接続され、軸方向の他方の側に前記波動発生器(20)のための係合領域を有し、前記回転軸(9)の方向に見て、前記回転軸受(45)と前記波動発生器(20)との間にスリーブ内部空間(69)が存在し、
前記駆動電気モータ(27)は、特に前記回転軸(9)に沿う前記駆動電気モータの回転子(31)及び固定子(28)の少なくとも一方の軸方向の延在に関して、前記回転軸(9)の軸方向に少なくとも部分的に、好ましくは完全に、前記駆動波動歯車装置(18)の前記フレクスプライン(19)のスリーブ内部空間(69)に配置される、移動手段。
【請求項2】
前記駆動波動歯車装置(18)の前記波動発生器(20)、前記フレクスプライン(19)、及び前記内歯歯車(14)が、前記回転軸(9)に垂直に位置する歯車装置平面(E1)において重なり合うように配置され、前記フレクスプライン(19)、特に前記フレクスプライン(19)の前記スリーブ(63)が、前記回転軸(9)に垂直に位置する軸受平面(E2)において対向軸受(43)に対して回転可能に支持され、前記駆動電気モータ(27)が前記歯車装置平面(E1)と前記軸受平面(E2)との間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の移動手段(F)。
【請求項3】
前記駆動電気モータ(27)に回転数センサ及び回転角センサ(38)の少なくとも一方、特にホールセンサが設けられ、前記回転数センサ及び回転角センサ(38)の少なくとも一方が、特に前記フレクスプライン(19)の前記スリーブ内部空間(69)に配置されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の移動手段(F)。
【請求項4】
前記出力被駆動シャフト(12)のための回転軸受(50)と前記入力駆動シャフト(33)のための回転軸受(49)が前記回転軸(9)に垂直に位置する共通のシャフト軸受平面(E3)に配置されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の移動手段(F)。
【請求項5】
前記駆動電気モータ(27)と前記駆動波動歯車装置(18)が、前記回転軸(9)の周りに互いに同軸に配置されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の移動手段(F)。
【請求項6】
前記入力駆動シャフト(33)は、少なくとも一回転方向に回転不可能に前記出力被駆動シャフト(12)と接続され、前記人間の筋力に由来するエネルギーが前記出力被駆動シャフト(12)に伝達されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の移動手段(F)。
【請求項7】
前記駆動波動歯車装置(18)の前記フレクスプライン(19)が、フリーホイール(37)を介して固定ハウジング部材(56)に支持されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の移動手段(F)。
【請求項8】
前記フリーホイール(37)が切替可能に形成されるか、又は前記フレクスプライン(19)と前記固定ハウジング部材(56)が別個のクラッチユニットによって回転不可能に接続可能であり、それにより前記駆動電気モータ(27)が、前記内歯歯車(14)から前記駆動エネルギーを受け取り、電気エネルギーに変える発電機として動作可能であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の移動手段(F)。
【請求項9】
回転軸受(45)は、前記回転軸(9)に垂直に位置する軸受平面(E2)において対向軸受(43)と前記駆動波動歯車装置(18)の前記フレクスプライン(19)との間に、フリーホイール(37)と重なるように配置されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の移動手段(F)。
【請求項10】
前記駆動波動歯車装置(18)の前記波動発生器(20)、前記フレクスプライン(19)、及び前記内歯歯車(14)が、前記回転軸(9)に垂直に位置する歯車装置平面(E1)において、特に対向軸受(43)に対して、前記駆動電気モータ(27)の前記回転子(31)のための回転軸受(46)と一緒に配置されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の移動手段(F)。
【請求項11】
前記回転軸(9)に沿う方向に、前記シャフト軸受平面(E3)、前記駆動波動歯車装置(18)の前記歯車装置平面(E1)、前記駆動波動歯車装置(18)の前記フレクスプライン(19)の前記軸受平面(E2)、及び特に電子機器軸受平面(E4)も連続して配置されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の移動手段(F)。
【請求項12】
前記駆動ユニット(1)が中央駆動ユニットとして形成され、特に前記回転軸(9)がペダル軸(65)と同軸に配置されること、又は前記駆動ユニット(1)がハブ駆動ユニットとして形成され、特に前記回転軸(9)が車輪軸(66)と同軸に配置されること、を特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の移動手段(F)。
【請求項13】
前記回転軸(9)に沿う前記駆動ユニット(1)の延在(B1)が、最大100mm、好ましくは最大85mm、特に好ましくは最大70mm、特に例えば最大60mmであることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の移動手段(F)。
【請求項14】
前記駆動電気モータ(27)を制御するための制御ユニット(42)が設けられ、前記制御ユニットは、以下の特徴、すなわち
前記制御ユニットが、前記回転軸(9)に垂直に位置する前記電子機器軸受平面(E4)において、クランクシャフト(32)のための回転軸受(44)と一緒に配置される、
前記制御ユニットが、前記入力駆動シャフト(33)における回転角センサ及び回転数センサの少なくとも一方とトルクセンサ(51、52)との、少なくとも一方と接続される、
前記制御ユニットが走行速度センサ(68)と接続される、
前記制御ユニットが、前記駆動電気モータ(27)における回転数センサ及び回転角センサ(38)の少なくとも一方、特にホールセンサと接続される、
前記制御ユニットが、前記駆動電気モータ(27)のための電流強度センサ(71)と接続される、
前記制御ユニットが、前記出力被駆動シャフト(12)における人間の筋力に由来するエネルギーを含めた駆動エネルギーが、前記駆動ユニット(1)の前記エネルギー要求に対応するように、前記駆動電気モータ(27)の回転数及びトルクを制御する、
前記制御ユニットが、前記駆動電気モータ(27)の回転数を走行速度に比例して制御する、
前記制御ユニット(42)が、人間の筋力により駆動されるシャフト(32、33)の回転方向に応じて、駆動補助機能又はブレーキ機能を作動させる、
前記制御ユニットが、前記移動手段(F)のばね変位センサ(67)と接続され、前記移動手段(F)のバウンドによって引き起こされるペダルキックバックを、前記駆動電気モータ(27)を制御することによって少なくとも部分的に補償する、
前記制御ユニットが、前記駆動ユニット(1)における視認窓を通して外側から見ることができる表示ユニット(70)と接続される、
前記制御ユニットが、前記駆動電気モータ(27)を制御することによって前記入力駆動シャフト(33)を開始位置に移す、ことのうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の移動手段(F)。
【請求項15】
以下の特徴、すなわち
前記移動手段(F)が、1軌跡の、2軌跡の、又は3軌跡の車両、特に電動自転車、ペデレック、Eバイク、カーゴバイク、貨物用自転車、又は輸送用自転車として形成される、
前記移動手段(F)が、特にトップチューブ及びダウンチューブの少なくとも一方を有するフレーム(73)を備える、
前記移動手段(F)が、特に前記トップチューブ及びダウンチューブの少なくとも一方に配置される電気エネルギー貯蔵器を備える、
前記移動手段(F)が前輪(72)と後輪(72)を備える、
前記前輪(72)が操舵可能に形成される、
前記移動手段(F)が、クランクアーム(5)を介してペダル軸(65)を中心に回転可能に形成され、特に前記入力駆動シャフト(33)と回転不可能に接続されるペダル(6)を備える、
ことのうちの少なくとも1つを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の移動手段(F)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の筋力及び電気モータにより提供される駆動エネルギーによって同時に駆動可能な移動手段、特にペデレックに関する。
【背景技術】
【0002】
この種類の移動手段は、例えば、自転車、特に電動自転車、Eバイク又はペデレックなどの二輪以上の車両、しかしさらに水上自転車、ペダルボート、又は車椅子がある。特に、属性的に対応する移動手段は、2013年1月15日付のEU規則2013/168/EUの第4条による車両クラスL1e、L2e、L3e、L4e、L5e、L6e及びL7eの車両である。これにはさらに、特に、型式にもとづく最高速度が6km/hまでの車両、例えば車椅子などの身体障害者専用の車両、スポーツ競技専用の車両、最大連続定格出力が250Wまでの電気モータ式補助駆動装置を装備するペダルアシスト付きペダル駆動装置を備える自転車であって、運転者がペダルを踏むのを止めると補助が中断され、車両速度が増加するにつれて補助が累進的に減少し、車両の速度が25km/hに達する前に中止される自転車、電気モータ式走行駆動装置を備えるセルフバランス車両、ペダル駆動装置を備えるスポーツ車両、1つの座席も有していない、ペダル駆動装置を備える車両、及びR点(ECE-R17による)が≦400mmのペダル駆動装置を備える車両が含まれる。多くの場合、これらはフレームを介して互いに接続された前輪と少なくとも1つの後輪とを有している。しかしながら、複数の後輪、例えば2つの後輪、及び/又は複数の前輪、例えば2つの前輪が、特に任意の組み合わせで存在することもできる。これらは、例えば車椅子、三輪車又はサイドカーを備える車両のように、前方走行方向に対して横方向に並べて、あるいは前方走行方向に前後に、例えばタンデムに配置することもできる。このような移動手段が、利用者が移動手段を駆動するのを補助する少なくとも1つの電気モータを有する駆動ユニットを装備することがますます増えている。典型的には、移動手段は、この電気モータだけによって駆動されるのではなく、電気モータは、利用者自身の人間の筋力による移動手段の駆動を補助する。電動モータは、例えば制御ユニットによって制御され、その際、大抵の場合は補助の度合いを選択することができる。このようにして利用者は、このような移動手段で走行する間、利用者が可能な、又は望む限りの動力を自ら生じさせる一方で、利用者は、より快適で、日常生活で有用な速度で移動する。
【0003】
これまでの駆動ユニットの問題は、特に移動手段の縦軸に対して横方向の構造サイズである。駆動ユニットは、典型的には、車輪ハブに、又はその近傍に、あるいは、例えばボトムブラケットなどの駆動装置軸受に、又はその近傍に配置される。一方では、駆動ユニットは、どちらの側にも車輪を越えて過度に突き出さないようにすべきである。他方で、ボトムブラケットに配置する場合に注意しなければならないのは、例えば自転車のペダルのクランクアームが、人間の解剖学的構造にもとづいて、140~180mmの最大軸方向距離を遵守しなければならないということである。クランクアーム間には駆動ユニットもあるが、運転者が長距離でも快適に運転できるようにするために、この駆動ユニットを可能な限り幅狭の構造に設計しなければならない。しかし、これは、駆動ユニットにおいて不可欠な回転軸受とフリーホイール自体がそれぞれ一定のスペースを必要とするため、一連の設計上の問題を伴う。歯車装置と電気モータも、典型的には、駆動ユニットにおいて、特に、例えばボトムブラケット又は後輪の回転軸の方向に、駆動ユニットの全幅を必要な程度以上に拡大する無視できない設置スペースを占める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、特に移動手段の走行方向に対して横方向に可能な限り幅狭に形成された駆動ユニットを有する属性的に対応する移動手段を提供することである。同時に、駆動ユニットは、柔軟に制御できると共に、最新の駆動ユニットの全機能範囲をカバーできるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この解決は、独立請求項に記載の移動手段により成功する。好ましい発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明による駆動ユニットは、人間の筋力から生成若しくは提供される駆動エネルギーを伝達するための入力駆動シャフトを備える。すなわち入力駆動シャフトは、例えば自転車のクランクシャフトであり得、又はこれと回転不可能に接続することができる。あるいは、入力駆動シャフトを、例えばチェーンリングなどの牽引手段歯車と回転不可能に接続することもできる。したがって、入力駆動シャフトは、これが移動手段の操作者若しくは運転者によって、人間の筋力で、例えば自転車のペダルを踏むことによって回転できるように配置されている。これは、直接的又は間接的に行うことができる。特に、これは人間の筋力の導入箇所からドライブトレイン全体に入って来る力の流れ方向で電気モータに対して平行に行われることが企図されている。
【0007】
本発明による駆動ユニットは、駆動エネルギーを走行装置に送達するための出力被駆動シャフトを含む。走行装置は、例えば、少なくとも1つの車輪(又は水中移動手段の場合はプロペラ)であり、出力被駆動シャフトによって伝達される駆動エネルギーによって回転させられ、それによって移動手段が走行する。例えば、出力被駆動シャフトを、例えばチェーンリングなどの牽引手段歯車と回転不可能に接続することができる。あるいは、出力被駆動シャフトを、例えば回転運動を、例えばスポークを介して走行装置に伝達するハブハウジングと回転不可能に形成することもできる。出力被駆動シャフトは、その回転を移動手段の走行装置に伝達し、その理由で、駆動ユニットは、移動手段の所望の走行速度に対応する回転を出力被駆動シャフトに加えるように形成されている。したがって、出力被駆動シャフトは、人間の筋力の導入箇所からの力の流れ方向で、入力駆動シャフトと駆動ユニットによって駆動される走行装置との間に機能的に配置される。
【0008】
したがって、駆動ユニットは、駆動エネルギーを入力駆動シャフトから出力被駆動シャフトに伝達するように形成されている。しかし同時に、駆動ユニットが、出力被駆動シャフトに伝達される回転数及び伝達されるトルクを現在の動作状況の要求事項に適合させることができるように形成されることも企図される。このために、駆動ユニットは、回転軸の周りに配置された、波動発生器とフレクスプラインと内歯歯車とを有する駆動波動歯車装置を備える。回転軸は、例えば、特にボトムブラケットのペダル軸又は走行装置、特に駆動ユニットによって駆動される走行装置の車輪軸であり得る。波動歯車装置は、その簡単で幅狭の形式と堅牢性及び高い減速比により、ここでの用途に特に適したタイプの歯車装置である。波動歯車装置自体は先行技術に記載され、例えば西独国特許出願公告第1135259号明細書から当業者に知られている。これらは、例えば、波動発生器の高回転数で低トルクをフレクスプライン及び/又は内歯歯車の低回転数で高トルクに、及びその逆に変換することができる。さらに、駆動ユニットは、固定子及び回転子と共に回転軸の周りに配置された駆動電気モータを備え、駆動電気モータの駆動エネルギーを駆動波動歯車装置を介して出力被駆動シャフトに伝達することができる。したがって、電気モータによって提供される駆動エネルギーを出力被駆動シャフトに伝達し、それによって移動手段の移動に寄与するために、運転者若しくはその人間の筋力を補助するべく駆動電気モータを使用することができる。波動歯車装置の比較的高い減速比により、電気モータの高回転数で低トルクを、移動手段の駆動のために利用可能な低回転数で高トルクに変換することができる。このために、駆動電気モータは、好ましくは、駆動波動歯車装置の波動発生器と作用接続されている。換言すれば、駆動電気モータの回転子は、好ましくは波動発生器と回転不可能に接続されるか、又はそれどころかこれと一体に形成される。この場合、駆動波動歯車装置の被駆動部(Abtrieb)が内歯歯車によって形成されることが好ましい。特に、内歯歯車は、駆動ユニットの出力被駆動シャフトと回転不可能に接続されている。本発明の駆動ユニットは、好ましくは、それが1つの電気モータのみ、具体的には駆動電気モータを有することも特徴とする。すなわち、この実施形態では、駆動ユニット、特に移動手段全体において、それ以外の電気モータが存在しない。さらに、駆動ユニットは、好ましくは、1つの波動歯車装置のみ、具体的には駆動波動歯車装置を有する。すなわち、この場合も駆動ユニット、又は好ましくは移動手段全体に、それ以外の波動歯車が存在しない。
【0009】
その場合、本発明によれば、フレクスプラインが、回転軸の方向に延びるスリーブとして形成されることが企図される。スリーブは、スリーブを、例えば定置若しくは静止のハウジングに対して回転可能に支持する回転軸受と軸方向の一方の側で接続されている。スリーブは、軸方向の他方の側に、波動発生器のための係合領域、特に内歯歯車のための外歯も有する。回転軸の方向に見て、回転軸受と波動発生器との間にスリーブ内部空間が存在する。すなわち、スリーブ内部空間は、フレクスプライン、特にスリーブによって、特に回転軸から見て半径方向に包囲される容積を表す。フレクスプラインポットとしてのスリーブを備えたフレクスプラインの設計は、その曲げ特性及びねじれ特性、したがって波動歯車装置の誤りのない機能のために役立つ。しかし、本発明では、設置スペースを非常に効果的に節減するために、スリーブ内部空間が利用される。したがって、駆動電気モータが、回転軸の軸方向に少なくとも部分的に、好ましくは完全に、波動歯車装置のスリーブ内部空間に配置されることが企図される。換言すれば、例えば、駆動電気モータが、回転軸の軸方向に少なくとも部分的に、好ましくは完全に駆動波動歯車装置のスリーブ内部空間に配置されることが企図される。すなわち、電気モータは、好ましくはフレクスプラインのスリーブによって半径方向に少なくとも部分的に、好ましくは完全に取り囲まれる。駆動電気モータに関する記載は、特に、回転軸に沿う回転子及び/又は固定子の軸方向延在に関係する。したがって、好ましい実施形態によれば、駆動電気モータは、回転軸に沿うその回転子及び/又は固定子の軸方向延在全体にわたって、回転軸の半径方向にフレクスプラインのスリーブによって取り囲まれる。このようにして、スリーブ内部空間は、設計上、電気モータを収容するために利用され、それによって設置スペースが節減される。
【0010】
入力駆動シャフトは、好ましくは(例えば、後からさらに詳しく説明されるフリーホイールを介して)駆動波動歯車装置の低速で回転する歯車装置部材、例えばフレクスプライン又は内歯歯車と回転不可能に接続される。特に、入力駆動シャフトは、駆動波動歯車装置の歯車装置出力と回転不可能に接続される。入力駆動シャフトが駆動波動歯車装置の内歯歯車と回転不可能に、又は直接、出力被駆動シャフトと接続され、したがって人間の筋力に由来する駆動エネルギーを内歯歯車又は出力被駆動シャフトを介してドライブトレインに導入する、若しくは流入させることが好ましい。入力駆動シャフトが、直接であれ、内歯歯車を介して間接的であれ、出力被駆動シャフトと回転不能に接続されるので、入力駆動シャフトの回転数を1対1で出力被駆動シャフトに伝達可能である。
【0011】
上述のように、歯車装置出力として内歯歯車を利用することは、駆動ユニットの軸方向の広がりを可能な限り小さくする別の設計上の手法である。基本的に、この手法は、波動歯車装置を有するあらゆる駆動装置において、例えば歯車装置が内歯歯車と共に動作するならば、使用される歯車装置のタイプ、及びモータの構成に関係なく軸方向の設置空間を節約するのに役立つ。したがって、この態様は、本出願に具体的に記載されたコンセプトの発展形態の他に、本明細書中に記載される実施例の構造的及び機能的特徴とは無関係の別個に特許請求できる独立した別個の発明を表す。
【0012】
駆動電気モータは、好ましくはアウタロータ型の、好ましくは同期モータ、特に三相同期モータである。このモータは、本発明により記載される実施形態では、特に幅狭の寸法を特徴とする。
【0013】
本発明の別の好ましい実施形態は、同様に、駆動電気モータの可能な限り省スペース的な配置に関するものである。このために、好ましくは、駆動波動歯車装置の波動発生器、フレクスプライン、及び内歯歯車が、回転軸に垂直に位置する歯車装置平面において重なり合うように配置されることが企図される。すなわち、駆動波動歯車装置の波動発生器、フレクスプライン、及び内歯歯車は、回転軸の半径方向に連続して、特にこの順序で内側から外側に、及び/又は半径方向に特に一直線に並ぶように配置される。さらに、フレクスプライン、特にフレクスプラインのスリーブは、回転軸に垂直に位置する軸受平面において対向軸受(Gegenlager)に対して回転可能に支持される。本出願の文脈において、対向軸受は、例えば、駆動ユニットの定置若しくは静的部分を指し、例えば、ハウジング又はハウジング部材と共同で固定的に形成される。この場合、駆動電気モータは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に歯車装置平面と軸受平面との間に配置されることが好ましい。このことも、特に、回転軸に沿う駆動電気モータの回転子及び/又は固定子の軸方向延在に関係する。
【0014】
本発明による駆動ユニットの駆動電気モータを、特に以下でより詳しく説明される制御ユニットによって特に正確に制御できるようにするために、好ましくは、駆動電気モータに少なくとも1つの、特に非接触の回転数センサ及び/又は回転角センサ、特にホールセンサが設けられる。相応のセンサを可能な限り省スペース的に駆動ユニットに収容するために、さらに、追加的又は代替的に、少なくとも1つの、特に非接触の回転数センサ及び/又は回転角センサが、特に、フレクスプラインのスリーブ内部空間に配置されることが企図される。したがって、センサも回転軸の半径方向に、好ましくはフレクスプラインのスリーブによって取り囲まれる。さらに、センサは、好ましくは同様に歯車装置平面と軸受平面との間に位置する。
【0015】
駆動ユニットの多くの部品が互いに回転可能であり、様々な部品が固定ハウジングに対して回転可能であるため、これらの部品を、特に回転の周りに相対して回転可能に配置するために、多数の回転軸受、例えば(深溝)玉軸受が必要である。その場合、これらの互いに回転可能な要素がすべて、共通の回転軸、特にボトムブラケット軸又は走行装置の回転軸を中心に回転可能であるように配置が行われることが好ましい。これを具体的に設計上実施する際の課題は、これらの回転軸受が、それらのそれぞれの機能を果たすことができるための最小限の幅を当然有するが、この最小限の幅が、特に多くの回転軸受にわたって軸方向に累積し、駆動ユニットの全幅に著しく寄与するということである。したがって、本発明は、回転軸受を巧みに配置することによって、回転軸受の軸方向の設置空間を節減することも企図する。例えば、好ましくは、出力被駆動シャフトのための回転軸受と入力駆動シャフトのための回転軸受が、回転軸に垂直に位置する共通のシャフト軸受平面に配置されることが企図される。したがって、これらの2つの回転軸受は、回転軸に対して半径方向に、したがって好ましくは重ね合わせて、若しくは互いに重なるように配置される。2つの回転軸受が、回転軸に沿って同じ軸方向延在を有する玉軸受として形成され、回転軸の半径方向に完全に重なることが特に好ましい。すなわち、2つの回転軸受は、軸方向に並べて配置されるのではなく、半径方向に並べて配置され、それにより回転軸に沿う回転軸受のうちの1つの幅が節減される。出力被駆動シャフト用及び入力駆動シャフト用の回転軸受のこの配置は、基本的に、あらゆる駆動装置において、例えば使用される歯車装置タイプ及びモータの構成に関係なく、軸方向に設置空間を節約するために役立つ。したがって、この態様は、本出願に具体的に記載されたコンセプトの発展形態の他に、本明細書中に記載される実施例の構造的及び機能的特徴とは無関係の別個に特許請求できる独立した別個の発明を表す。
【0016】
駆動ユニットの軸方向の幅又は広がりを制限するために、例えば複数の歯車装置又は複数のモータを、回転軸に対して軸方向ではなく半径方向に並べて配置することが知られている。換言すると、移動手段の走行方向に対して横方向の駆動ユニットの広がりを制限するために、走行方向又は垂直方向の広がりは受け入れられた。しかしながら、本発明の目的は、駆動ユニットのそのような走行方向及び/又は垂直方向の拡大を回避することである。したがって、好ましくは、駆動電気モータと駆動波動歯車装置が回転軸の周りに互いに同軸に配置されることが企図される。すなわちこれらは同じ回転軸を有する。このような配置には、特にコンパクトということだけでなく、ドライブトレインを通る動力の流れに関しても利点がある。
【0017】
すでに説明したように、本発明によれば、駆動波動歯車装置の内歯歯車は歯車装置出力若しくは被駆動部として利用される。したがって、人間の筋力に由来する駆動エネルギーを、内歯歯車又は出力被駆動シャフトのいずれかを介して導入できる。好ましくは、入力駆動シャフトが少なくとも一回転方向に回転不可能に内歯歯車又は出力被駆動シャフトと接続され、これによって人間の筋力に由来するエネルギーがドライブトレインに導入されることが企図される。このために、入力駆動シャフトは、好ましくは、フリーホイールを介して駆動波動歯車装置の内歯歯車又は出力被駆動シャフトと接続され、フリーホイールは、特に入力駆動シャフトの前方回転方向若しくは前方走行方向に動かないか、あるいは回転不可能な接続を形成し、それによって、対応する回転運動をフリーホイールを介して内歯歯車及び/又は出力被駆動シャフトに伝達する。フリーホイールはさらに、例えば後ろ向きに自由に踏むことができること、又は駆動電気モータによって、出力被駆動シャフトを運転者が回転させる入力駆動シャフトより速く回転させることを可能にする。
【0018】
好ましくは駆動波動歯車装置のフレクスプラインに別のフリーホイールが配置される。特に、駆動波動歯車装置のフレクスプラインは、フリーホイールを介して固定ハウジング部材に支持される。その場合、このフリーホイールは、特にフレクスプラインが前方走行方向に回転する場合に自由に回転し、特にフレクスプラインが前方走行方向とは逆に回転する場合にブロックする。移動手段が前方へ走行すると、出力被駆動シャフトと内歯歯車が前方へ回転する。それによって、駆動波動歯車装置のフレクスプラインも、これが内歯歯車と噛合うことによって前方へ共に回転する。フリーホイールがこの回転方向で自由に回転するため、駆動電気モータの回転子は一緒に動かされる必要はない。したがって、例えば駆動電気モータによる補助なしに、例えば全くの人間の筋力で走行する場合に、これを低いペダル抵抗で行うことができる。それに対して、駆動電気モータが、補助トルクを内歯歯車、したがって出力被駆動シャフトに伝達するために作動する場合、フレクスプラインはフリーホイールを介して固定ハウジングに支持され、それにより駆動エネルギーが駆動電気モータから波動発生器とフレクスプラインを介して内歯歯車に、したがって出力被駆動シャフトに伝達される。
【0019】
すでに説明したように、移動手段が前方へ走行し、駆動電気モータが駆動エネルギーを加えないか、又はごくわずかしか加えない場合にフリーホイールが惰性回転する(freilaufen)ように、フリーホイールが駆動波動歯車装置のフレクスプラインに配置されることが好ましい。これらの状況では、駆動電気モータを、運動エネルギーを回生するための発電機として動作させることが望ましいかもしれない。これを成功させるために、好ましくは、フリーホイールが、一回転方向に惰性回転する切り替え位置とこの回転方向に係合するか、若しくは惰性回転しない切り替え位置との間で切り替え可能に形成されることが企図される。したがって、言い換えれば、この回転方向では、フリーホイールは切り替え可能なクラッチとして機能する。あるいは、フリーホイールと固定ハウジング部材との間に回転不可能な接続を形成することができる別個のクラッチユニットを設けることもでき、それによってフリーホイールも迂回され、同じ結果が生じる。このようにして、内歯歯車から駆動エネルギーを受け取って電気エネルギーに変換する発電機として駆動電気モータを動作させることができる。フリーホイールが、その惰性回転しない位置に切り替えられると、これは、フリーホイールが前方回転方向であっても、フレクスプラインと固定ハウジング部材との間に回転不可能な接続を形成することを意味する。これによって、フレクスプラインがブロックされ、回転できなくなる。このようにして、駆動エネルギーが内歯歯車から波動発生器に、したがって駆動電気モータに伝達され、次いでこれが発電機として機能し、この駆動エネルギーを、例えば電気エネルギーの貯蔵装置を充電するための電気エネルギーに変換する。このようにして、移動手段を、したがって特に電気エネルギーの回収によって制動することができる。駆動電気モータを発電機として動作させるための切替可能なフリーホイール及び/又は別個のクラッチユニットのこの利用は、基本的に、例えば使用される歯車装置のタイプ及びモータの構成に関係なく、あらゆる駆動装置を用いて実現することができる。したがって、この態様は、本出願に具体的に記載されたコンセプトの発展形態の他に、本明細書中に記載される実施例の構造的及び機能的特徴とは無関係の別個に特許請求できる独立した別個の発明を表す。
【0020】
回転軸受についてすでに説明したように、フリーホイールも回転軸に沿って最小限必要な軸方向の延在を有する。したがって、それぞれが少なくとも1つの回転軸受を備えたフリーホイールを、回転軸に対して半径方向に重なるように配置して、それらの共同の軸方向延在を全体として小さくすることも有利である。したがって、好ましくは、回転軸受が、回転軸に垂直に位置する軸受平面において、対向軸受と駆動波動歯車装置のフレクスプラインとの間でフリーホイールと重なるように配置されることが企図される。特に、回転軸受とフリーホイールとは、回転軸に沿うそれぞれの軸方向延在に関して少なくとも半分、好ましくは少なくとも3分の2、特に好ましくは完全に重なり合うことが好ましい。対向軸受は、固定の、すなわち一緒に回転しない部材であり、例えば駆動ユニットの他の固定ハウジング部材回転不可能に接続される。
【0021】
駆動ユニットの軸方向幅のさらなる節減は、好ましくは回転軸受が、回転軸に垂直に位置する平面において駆動波動歯車装置と一緒に位置することにより成功する。すなわち、回転軸受は、回転軸の半径方向に駆動波動歯車装置と重なる。例えば、これは駆動電気モータの回転子の回転軸受であり得る。このような回転軸受はいずれにしても必要であり、したがって省スペース的に配設されなければならない。したがって、本発明の好ましい一実施形態によれば、駆動波動歯車装置の波動発生器、フレクスプライン、及び内歯歯車は、回転軸に垂直に位置する歯車装置平面において、特に対向軸受に対して、駆動電気モータの回転子のための回転軸受と一緒に配置されることが企図される。すなわち、この実施形態では、駆動電気モータの回転子の回転軸受が駆動波動歯車装置の中に押し込まれ、特にこれと入れ子にされる。対応する回転軸受は、例えば波動発生器、又は波動発生器とフレクスプラインとの間の回転軸受、特に玉軸受などの波動歯車装置の他の部品の軸方向延在に相当する軸方向延在を有する。回転軸受は、好ましくは、半径方向に見て、かつ軸方向延在に関してこれらの要素と完全に重なり合う。
【0022】
回転軸に沿う駆動ユニットの軸方向の広がりを低減するために、駆動ユニットのそれぞれ異なった部品が半径方向に重なり合うように配置される、回転軸に垂直に向いたいくつかの平面についてはすでに説明した。別のそのような平面も、回転軸に垂直に向き、回転軸受、特に玉軸受と制御ユニットが配置される電子機器軸受平面である。回転軸受は、例えば、駆動ユニットがクランクシャフトの周りに配置される場合、固定ハウジングとクランクシャフトとの間に配置されるか、あるいは回転軸受は、駆動ユニットが車輪ハブに配置される場合、例えば軸体などの固定ハウジング部材と回転するハブハウジングとの間に配置される。電子制御ユニットについては、以下でさらに詳しく言及する。駆動ユニットの部品の相互の最適な配置に関して、好ましくは、回転軸に沿う方向で、シャフト軸受平面、駆動波動歯車装置の歯車装置平面、駆動波動歯車装置のフレクスプラインの軸受平面、及び特に電子機器軸受平面も連続して配置されることが企図される。このことから、それぞれの部品の特に省スペース的な配置が得られる。
【0023】
上記ですでに示唆したように、駆動ユニットは、例えば自転車の場合、フレームの中央のペダルの領域と車輪ハブのうちの1つとに配置することができる。好ましい実施形態では、駆動ユニットは中央駆動ユニットとして形成され、特に回転軸はペダル軸と同軸に配置される。その場合、駆動ユニットは、例えばペダル間、特にペダルクランク間に配置される。この構成では、駆動ユニットは、回転する軸、特にクランクシャフトによって貫通され、固定ハウジングを有する。好ましい代替形態では、駆動ユニットはハブ駆動ユニットとして形成され、特に回転軸が車輪軸と同軸に配置される。すなわち、駆動ユニットは、車輪ハブに、例えば後輪に配置される。この場合、駆動ユニットは、固定軸体によって貫通され、スポークを介してホイールに回転運動を伝達する回転するハブハウジングを備えている。特に好ましくは、駆動ユニットは、例えば中央駆動ユニットとして形成されるが、それは、例えば自転車のフレームの中心位置によって、重心が低いところに、かつ長手方向軸に沿って中央に配置されることにより特に良好な重量配分が達成されるからである。
【0024】
駆動ユニットの軸方向の延在を可能な限り小さく形成することが常に有利である。むろんこれは、駆動ユニットを中央駆動ユニットとして形成した場合、つまりボトムブラケット軸の領域にある場合も特に有利である。冒頭で述べたように、平均的な人間の解剖学的構造により、車両のペダルのクランクアームが理想的には140~180mmの距離を有するよう努力がなされる。これは、上記の措置で遵守できる。これらの措置がどれだけ一貫して実施されるのかに応じて、より幅狭の寸法にすることさえ達成できる。したがって、回転軸に沿う駆動ユニットの延在は、最大100mm、好ましくは最大85mm、特に好ましくは最大70mm、特に例えば最大60mmであることが好ましい。ペダルのクランクアームもまた、好ましくは最大150mm、特に好ましくは最大130mm、全く特に好ましくは最大110mm互いに離間させなければならない。このようにして、駆動ユニットが中央駆動ユニットとして形成される場合でも、快適かつ解剖学的に適切なペダル踏みを可能にすることができる。
【0025】
好ましい実施形態では、駆動電気モータを制御するための制御ユニットが設けられる。電子制御ユニットは、特に電気モータの回転数及び/又は回転方向及び/又はトルクを制御する。例えば、制御ユニットは、記憶された回転磁界、例えば三相回転磁界を介して電気モータを制御する。モータの回転数挙動とトルク挙動の両方がこのような回転磁界に記憶される。電気モータの相応の制御は従来技術の一部であり、当業者に知られているため、ここでこれ以上詳しく言及されない。制御ユニットは以下で説明するように、多数の様々な特徴や機能を有することができる。
【0026】
純粋に構造的には、制御ユニットは駆動ユニットに組み込まれている。制御ユニットは、回転軸に垂直に向くすでに説明した電子機器軸受平面において、例えばクランクシャフトのための回転軸受と一緒に配置されている。したがって、制御ユニットは、単にドライブユニットの外側に取り付けられているのではなく、駆動ユニットの歯車装置部材と入れ子にされ、そのことが設置空間の効率的な利用に寄与する。
【0027】
駆動ユニットの機能を制御するために、現在動作状態を反映する、かつ電気モータを制御する際に制御ユニットが考慮に入れる様々な量を決定しなければならない。例えば、制御ユニットは、入力駆動シャフト上の回転角センサ及び/又は回転数センサ及び/又はトルクセンサと接続される。入力駆動シャフトは、動作中、運転者により、例えばペダルを踏むことによって駆動され、例えば、加速したい場合に、例えばより多く踏む運転者の意思を究明するために、相応の量が制御ユニットによって利用され得る。さらに、制御ユニットは、好ましくは、特に後輪のハブ、後輪若しくはそのスポーク、又はブレーキディスクに配置され、移動手段の走行速度全体を決定する走行速度センサと接続される。好ましい実施形態は、走行速度センサが駆動ユニットに組み込まれ、これと一緒に移動手段に配置されることを企図する。この場合、駆動速度は、例えば出力被駆動シャフトで決定される。これは特に、移動手段の被駆動輪、例えば後輪がそれ自体のフリーホイールを持たず、駆動ユニットの牽引手段歯車若しくはチェーンホイールが常に牽引手段によって駆動される車輪の回転数で回転される場合に可能である。制御ユニットは、走行速度センサにより、例えば走行速度が最高速度を上回るか、又は下回るかをチェックすることができ、最高速度を上回ると、例えば電気モータから出力被駆動シャフトへの補助の伝達が許されなくなる。その場合、制御ユニットは、電気モータの相応の制御と、さらに、例えば法定最高速度を超えた場合の電気モータの停止を担う。さらに、制御ユニットは、駆動電気モータにおける回転数センサ及び/又は回転角センサ、特にホールセンサと接続されることが好ましい。制御ユニットは、駆動電気モータのための電流強度センサとも接続されることが好ましい。制御ユニットは、電流強度から電気モータのトルクを推定することができる。このことから、制御ユニットは、回転数と一緒に電気モータの出力を計算し、これを相応に調節することができる。
【0028】
制御ユニットの主機能は、好ましくは、出力被駆動シャフトにおける人間の筋力に由来するエネルギー若しくは動力を含む合計駆動エネルギー若しくは駆動力が駆動ユニットのエネルギー要求若しくは動力要求に対応するように、駆動電気モータの回転数及びトルクを制御することである。対応するエネルギー要求若しくは動力要求は、制御ユニットによって、制御ユニットに利用可能な測定信号をもとにして、例えば運転者のペダル挙動を考慮して決定され、ここから、例えば加速要求を導出することができる。運転者の電気モータによる補助の程度は、例えば制御ユニットに設定でき、制御ユニットによって考慮される。好ましくは、制御ユニットは、例えば、駆動電気モータの回転数を走行速度に比例して制御する。このようにして、駆動用電気モータは、すべての走行速度において常に同じ分量の必要駆動エネルギー若しくは駆動力を受け取る。さらに、好ましくは、制御ユニットは、人間の筋力によって駆動されるシャフト、例えばクランクシャフト又は入力駆動シャフトの回転方向に応じて、駆動補助機能又は制動機能を作動させることが企図される。このようにして、駆動ユニットは、例えば、運転者がペダルを逆に回すことからブレーキコマンドが導出されることにより、コースタブレーキを実現する。この状況では、制御ユニットは、例えば、すでに上述した切替可能なフリーホイールを作動させ、運動エネルギーを電気エネルギーに変えるための発電機として駆動電気モータを作動させ、それによって移動手段が制動される。
【0029】
後輪サスペンション付きペデレックには、ペダルの反動又はペダルのキックバックとして知られる効果がある。これは、サスペンションがバウンドするたびに牽引手段歯車、例えばチェーンリングが自動的に回転することを表す。これによって、クランクシャフトとクランクアームもペダルと一緒に回転し、そのことが運転者に不快感を与える。したがって、制御ユニットは、好ましくは、移動手段のバウンドによって引き起こされるペダルキックバックを、駆動電気モータを制御することによって部分的に、特に完全に補償するように形成される。このために、制御ユニットは、移動手段のばね変位センサ(Federwegsensor)と接続され、このセンサは、特にバウンドそれ自体、及びその程度を決定して制御ユニットに伝達する。制御ユニットは、駆動電気モータを制御することによって、クランクシャフトを、そしてそれに伴いペダルも回転させることができる。したがって、制御ユニットは、決定されたばね変位(Federweg)をもとにして、ペダルのキックバックによるクランクシャフトの動きを妨害するように駆動電気モータを制御するよう形成されている。それによって、後輪のバウンド(Einfederung)にもかかわらずペダルが回転しない。このペダルキックバックの補償は、基本的に、ペダルの位置に影響を及ぼすことができるあらゆる駆動装置で実現可能である。したがって、この態様は、本出願に具体的に記載されたコンセプトの発展形態の他に、本明細書中に記載される実施例の構造的及び機能的特徴とは無関係の別個に特許請求できる独立した別個の発明を表す。
【0030】
運転者に知らせるために、制御ユニットを表示ユニットと接続することもできる。表示ユニットもまた、基本的に、例えばケーブルを介して制御ユニットと接続することができ、移動手段の任意の箇所、例えばハンドルバーなどに配置することができる。しかしながら、表示ユニットも同様に駆動ユニットのハウジング内に、厳密には、駆動ユニットの視認窓を通して制御ユニットを外側から見ることができるように配置されることが好ましい。したがって、制御ユニットは、視認窓と一緒に、駆動ユニットの路面とは反対側に位置し、すなわち駆動ユニットの上面にあることが好ましい。視認窓は、例えばガラス又はラスチックなどの透明な素材から製造される。表示ユニットは、好ましくは、移動手段の動作状態、例えば現在走行速度又はバッテリー充電状態に関する情報の少なくとも1つの表示を含む。表示は、好ましくは、発光するように形成され、例えばLEDを含む。輸送手段の動作中、運転者は、例えば、駆動ユニットを見下ろすことができ、表示ユニットの対応する情報読み取ることができる。視認窓と組み合わせた表示ユニットは、基本的に、電子機器を有するあらゆる駆動ユニットで実現可能である。したがって、この態様は、本出願に具体的に記載されたコンセプトの発展形態の他に、本明細書中に記載される実施例の構造的及び機能的特徴とは無関係の別個に特許請求できる独立した別個の発明を表す。
【0031】
すでに説明したように、制御ユニットは、駆動電気モータを制御することにより、クランクシャフト、したがってペダルの回転位置を制御することができる。例えば、自転車走行時に典型的なのは、停止するたびにペダルのうちの少なくとも1つが、前方、及び上方に向いた位置に運ばれなければならないことである。クランクシャフトを横から見て、前方走行方向がクランクシャフト及びペダルの時計回りの回転に相当するようにしたとき、ペダルのうちの1つが、例えば午後2時の位置になければならない。ペダルがこの開始位置にあるとき、運転者は楽に走り始め、素早く加速することができる。従来、運転者によってペダルを逆に回して調整されなければならないこの位置決めも、制御ユニットによって調整することができる。好ましくは、制御ユニットは、駆動電気モータを制御することによって入力駆動シャフトを開始位置に移すことが企図される。この機能は、例えば、制御ユニットが移動手段の停止を検出する場合にはいつも実行される。このようにして、移動手段は、運転者がそれを気にかける必要なしに、いつでも自動的に開始できるようにされる。ペダルの開始位置へのこの位置決めは、基本的に、ペダルの位置に影響を及ぼすことができるあらゆる駆動装置で実現可能である。したがって、この態様は、本出願に具体的に記載されたコンセプトの発展形態の他に、本明細書中に記載される実施例の構造的及び機能的特徴とは無関係の別個に特許請求できる独立した別個の発明を表す。
【0032】
本発明は、基本的に、少なくとも一時的に、人間の筋力と電気モータにより提供される駆動エネルギーによって同時に駆動することができる、属性的に対応するすべての移動手段に適用される。特別な着眼点、したがって好ましい実施形態は、移動手段が、1軌跡、2軌跡、又は3軌跡の車両、特に電動自転車、ペデレック、Eバイク、カーゴバイク、貨物用自転車、又は輸送用自転車であることを企図する。したがって、移動手段は、言及されたこれらの実施例の典型的な構造を有する。例えば、移動手段は、特にトップチューブ及び/又はダウンチューブを有するフレームと、好ましくは前輪と後輪を備える。前輪は、ステアリングチューブ若しくはヘッドチューブを介してトップチューブ及び/又はダウンチューブと接続される。ペダル軸の高さで移動手段の長手方向に見て、さらに、トップチューブをダウンチューブと接続し、操作者のためのサドルを担持するシートチューブが配置される。2本のシートステーがシートチューブからさらに後方に延び、後輪の車輪軸で互いに接続される。後輪はシートステーに支持され、それによって、ここに後輪の車輪軸が形成される。駆動電気モータの動作に必要な電気エネルギーを提供するために、移動手段は、好ましくは電気エネルギー貯蔵器、例えばバッテリーを備えている。電気エネルギー貯蔵装置は、好ましくは、トップチューブ及び/又はダウンチューブに配置される。特に、移動手段の前輪は、例えば、操作者により実行されるハンドルの回転によりステアリングチューブ若しくはヘッドチューブが回転することによって操舵可能に形成される。さらに、移動手段は、好ましくは、クランクアームを介してペダル軸を中心に回転可能に形成された、特に入力駆動シャフトと回転不可能に接続されたペダルを備える。すでに上述したように、駆動ユニットは、中央駆動ユニットとしてペダル軸に、又はハブ駆動ユニットとして後輪の車輪軸に配置することができる。
【0033】
以下に、図に示される実施例をもとにして本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】中央駆動ユニットを備える移動手段の模式的側面図である。
図2】ハブ駆動ユニットを備える移動手段の模式的側面図である。
図3】中央駆動ユニットの模式的外観図、特に平面図である。
図4】ハブ駆動ユニットの模式的外観図、特に平面図である。
図5】波動歯車装置模式的の断面図である。
図6】中央駆動ユニットとして形成された駆動ユニットを通る回転軸に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
同じ若しくは同じ機能の構成部材には同じ参照記号が付されている。繰り返される構成部材については、図ごとに別個に言及しない。
【0036】
図1及び図2はそれぞれ、移動手段F、具体的には自転車、特にペデレックを示す。これを電気モータと人間の筋力により同時に、特に人間の筋力による駆動が電気モータによって補助されるように駆動することができる。移動手段Fは、既知のように、フレーム73と、2つの走行装置72、具体的には前輪及び後輪とを備える。ペダル軸65は、フレーム73の中央で下端に位置する。車輪軸66は、フレーム73と後輪との接続点に位置する。駆動ユニット1が中央駆動ユニットとして形成され、ペダル軸65に位置する一実施形態を図1に示す。人間の筋力は、クランクシャフトを介して駆動ユニット1に直接導入される。駆動ユニット1の歯車装置出力(Getriebeausgang)は牽引手段歯車10(図3及び図6を参照)として形成され、例えばチェーンなどの牽引手段3を介して後輪ハブ2と接続されている。図2による実施形態では、駆動ユニット1がハブ駆動ユニットとして設計され、車輪軸66に配置されている。この場合、駆動ユニット1の歯車装置出力はハブハウジングとして形成され、その回転運動はスポーク59を介して後輪に伝達される(図4を参照)。駆動ユニット1は、牽引手段3を介してボトムブラケット4と接続され、人間の筋力はこの牽引手段を介して駆動ユニット1に導入される。
【0037】
図3及び図4は、それぞれ駆動ユニット1を外側から見た平面図を示す。図3は、中央駆動ユニットとしての駆動ユニット1を示す。駆動ユニット1の回転軸9はペダル軸65上にあり、操作者によるペダル運動中、この軸を中心に移動手段Fのクランクアーム5とペダル6が回転する。牽引手段歯車10は、回転運動を後輪ハブ2に伝達するために用いられる。駆動ユニット1の幅がB1で示される。クランクアーム5間の距離はB2で示される。快適で人間の解剖学的構造に適合したペダル6の踏み込みを可能にするためには、クランクアーム5間の距離B2が140mm~180mmでなければならない。したがって、駆動ユニット1の幅B1は相応に小さくされなければならない。さらに、図3は、駆動ユニット1に組み込まれた制御ユニット42を示す。以下でより詳しく説明されるように、駆動ユニット1及び移動手段Fの動作状態を検出するために、制御ユニット42は多数のセンサと接続されている。さらに、制御ユニット42は、駆動ユニット1の外側から見ることができる、例えば発光ディスプレイなどの表示ユニット70と接続されている。例えば、表示ユニット70は、駆動ユニット1の外側ハウジングの視認窓の背後に配置される。したがって、移動手段Fに着座した操作者は、見下ろすことにより表示ユニット70を見ることができる。図4において、ハブ駆動ユニットとしての駆動ユニット1の実施例が示される。したがって、駆動ユニット1の回転軸9は車輪軸66上にあり、移動手段Fの走行中、後輪はこの車輪軸を中心に回転する。ペダル6に由来する回転は、牽引手段歯車10を介して駆動ユニット1に伝達される。中央駆動ユニットとしての駆動ユニット1は、回転するクランクシャフト32(図6を参照)によって貫かれる一方で、ハブ駆動ユニットとしてのこの駆動ユニットは静止軸体11によって貫かれ、この軸体を中心に後輪が回転する。軸体11を中心に回転し、スポーク59と回転不可能に接続されたハブハウジングの一部は、歯車装置出力として、したがって出力被駆動シャフト12として機能する。スポーク59もまた、回転運動を後輪の残りの部分に伝達する。
【0038】
図5は、本発明で使用される波動歯車装置、具体的には駆動波動歯車装置18の断面を示す。駆動波動歯車装置18は回転軸9の周りに配置され、波動発生器20、回転軸受21、特に(深溝)玉軸受、フレクスプライン19、及び内歯歯車14を含む。内歯歯車14及び波動発生器20は剛性構成部材として形成されるのに対して、フレクスプライン19は可撓性若しくは弾性である。波動発生器20は楕円形に形成され、フレクスプライン19は、フレクスプライン19がその弾性によって、波動発生器20の楕円形状に適合するように、回転軸受21を介して波動発生器20に支持される。内歯歯車14は内歯を有し、フレクスプライン19は相補的な外歯を有し、フレクスプライン19は典型的には内歯歯車14より少ない歯を有する。波動発生器20の楕円形状によって、フレクスプライン19の外歯が波動発生器20の主軸(長軸)に沿って内歯歯車14の内歯に押し込まれる。フレクスプライン19の弾性変形は、同時に、その外歯が波動発生器20の副軸(短軸)に沿って内歯歯車14の内歯との係合から外れることをもたらす。次に、波動発生器20が回転すると、フレクスプライン19は、i=zH/(zH-zF)の減速比で逆の回転方向に回転し、ここで、zHは内歯歯車14の歯数であり、zFはフレクスプライン19の歯数である。フレクスプライン19が固く保持される場合、内歯歯車14は、相応に減速された速度で波動発生器20と同じ方向に回転する。そのような波動歯車装置18は合計歯車装置(Summiergetriebe)であり、従来技術で知られているため、ここで詳しく説明される必要はない。
【0039】
図6は、回転軸9若しくはペダル軸65に沿う、中央駆動ユニットとして形成された駆動ユニット1の断面を示す。ペダル軸65は、操作者によってペダル6を介して駆動可能であり、回転軸9に沿って駆動ユニット1を貫通するクランクシャフト32によって定義される。クランクシャフト32は、入力駆動シャフト33と回転不可能に接続され、この入力駆動シャフトを介して、操作者によって加えられた駆動エネルギーが駆動ユニット1の歯車装置に導入される。歯車装置出力は、牽引手段歯車10、ここではチェーンリングと回転不可能に接続された出力被駆動シャフト12によって形成される。駆動ユニット1は、駆動エネルギー若しくは駆動力のための2つの源を有し、1つは入力駆動シャフト33を介する人間の筋力、もう1つは駆動電気モータ27である。駆動電気モータ27は、駆動波動歯車装置18を介して駆動ユニット1のドライブトレインに結合されている。
【0040】
操作者がペダル6を踏むことによってクランクシャフト32を回転させる場合、操作者は、その際、入力駆動シャフト33を回転させる。入力駆動シャフト33は、フリーホイール36を介して出力被駆動シャフト12と接続されている。その場合、フリーホイール36は、入力駆動シャフト33が前方走行方向に回転する場合に係合し、入力駆動シャフト33と出力被駆動シャフト12との間に回転不可能な接続を作成するように形成されている。それに対して、後方方向の回転では、フリーホイール36は自由に回転する。入力駆動シャフト33と出力被駆動シャフト12との接続によって、操作者によりペダル6を踏むことによって導入された駆動エネルギーが出力被駆動シャフト12に、したがって牽引手段歯車10に1対1の伝達比で伝達される。出力被駆動シャフト12は、さらに、内歯歯車14と回転不可能に接続されている。
【0041】
駆動電気モータ27は、固定子巻線29を有する固定子28と、永久磁石30を有する回転子31とを備える。固定子28は、固定された対向軸受43に配置されている。駆動電気モータ27の回転子31は、駆動波動歯車装置18の波動発生器20と回転不可能に、特に一体に接続されている。したがって、駆動電気モータ27は、駆動波動歯車装置18の波動発生器20を駆動する。駆動電気モータ27の駆動エネルギーは、波動発生器20の回転によりフレクスプライン19に伝達される。フレクスプライン19は、フリーホイール37を介して固定ハウジング部材56に支持される。駆動エネルギーは、フレクスプライン19を介して駆動波動歯車装置18の内歯歯車14に伝達される。駆動波動歯車装置18の内歯歯車14は、出力被駆動シャフト12と回転不可能に接続されている。内歯歯車14若しくは出力被駆動シャフト12において、駆動電気モータ27の駆動エネルギー若しくは駆動力と、クランクシャフト32を介して導入される人間の筋力とが合計され、牽引手段歯車10に伝達される。駆動電気モータ27は、移動手段Fの走行動作のための電気的駆動エネルギー若しくは駆動力の主要部分を供給できるように形成されている。内歯歯車14を前方走行方向に駆動するためには、波動発生器20も前方走行方向に回転させなければならない。これにより、フレクスプライン19の回転方向が逆に、すなわち後方方向になる。したがって、駆動エネルギーが波動発生器20から内歯歯車14に伝達されるようにするために、フレクスプライン19を固定ハウジング部材で後方方向に支えなければならない。したがって、フリーホイール37は、フレクスプライン19が後方回転方向の場合、フレクスプライン19と固定ハウジング部材56との間に回転不可能な接続を作成するように形成されている。これにより、フレクスプライン19の後方回転が阻止され、そのことによって駆動電気モータ27から波動発生器20に加えられる全駆動エネルギーが内歯歯車14に移り、移動手段Fの駆動のために利用可能になる。
【0042】
これに対して、駆動電気モータ27が作動しないか、又は、例えば操作者により人間の筋力によって、内歯歯車14よりゆっくりとしか回転されない場合、出力被駆動シャフト12は内歯歯車14を、これとフレクスプライン19との噛合いによって、フレクスプライン19も前方走行方向に一緒に回転させる。しかしながら、フリーホイール37が前方走行方向に対応するフレクスプライン19の回転方向に自由な回転を可能にし、これによって、フレクスプライン19と波動発生器20との間の回転軸受21との協働により、波動発生器20に、したがって駆動電気モータ27の回転子31に駆動エネルギーが伝達されない。したがって、運転者による全くの筋力によるペダル踏み時に駆動電動モータ27を一緒に動かす必要がなく、それによってペダル6を容易かつ快適に踏むことが可能になる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態によれば、フリーホイール37は、切替可能なフリーホイール37として形成される。これは、フレクスプライン19と固定ハウジング部材56との間に両回転方向に回転不可能な接続を作成するように、制御ユニット42によってフリーホイールを制御できることを意味する。あるいは、この回転不能な接続は、図示されない別個のクラッチユニットによって達成することができる。これによって、フレクスプライン19が前方回転方向にブロックされる場合も、駆動エネルギーが内歯歯車14から波動発生器20に、それに伴い駆動電気モータ27の回転子31に伝達される。したがって、その場合、駆動電気モータ27を発電機として動作させ、内歯歯車14からの回転エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能であり、この電気エネルギーを、例えばバッテリーに供給することができる。駆動電気モータ27を発電機として動作させることにより、移動手段Fが制動され、それによりこの動作をブレーキとして使用することもできる。
【0044】
本発明は、回転軸9に沿いに特に幅狭の形式を特徴とする。このために、駆動ユニット1は、以下に言及される一連の構造上の特殊性を含む。一方で、本発明は波動歯車装置、具体的には、内歯歯車14を歯車装置出力として利用する駆動波動歯車装置18を利用する。この形式は、回転軸9の軸方向にわずかな設置空間しか必要としない。
【0045】
さらに、駆動波動歯車装置18のフレクスプライン19は、スリーブ63を備えて形成される。スリーブ63は、フレクスプライン19を、これと内歯歯車14との係合領域から回転軸9の軸方向に円筒状に延長したものである。その場合、スリーブ63は、回転軸9に沿って軸方向に見て、駆動ユニット1の中央に位置する。スリーブ63は、内歯歯車14との係合領域とは反対側の軸方向の端で、回転軸受45を介して固定ハウジング部材、例えば対向軸受43に支持されている。換言すれば、フレクスプライン19は、回転軸9の軸方向に見て、駆動波動歯車装置18の部品である波動発生器20、回転軸受21、フレクスプライン19、及び内歯歯車14が回転軸9の半径方向に重なり合う、回転軸9に垂直に配置された歯車装置平面E1から、フレクスプライン19が回転軸9の半径方向に回転軸受45と重なる軸受平面E2まで延びる。フレクスプライン19は、その中空円筒体の内部にスリーブ内部空間69を有する。未利用の設置空間を残さないようにするために、本発明の図示される実施例では、駆動電気モータ27が駆動波動歯車装置18のフレクスプライン19のスリーブ内部空間69に配置される。特に、駆動電気モータ27は、その固定子巻線29を有する固定子28と永久磁石30を有する回転子31の軸方向の広がり全体にわたって、フレクスプライン19の内部、特にスリーブ内部空間69に配置される。さらに、駆動電気モータ27は、歯車装置平面E1と軸受平面E2との間に配置される。
【0046】
本発明の別の核となる思想は、いくつかの回転軸受を回転軸9の軸方向に他の部品と同じ高さに配置することで、それによって駆動ユニット1を回転軸9の軸方向に特に幅狭にすることである。したがって、駆動ユニット1の個々の部品は、上述のスリーブ内部空間69に配置することによる駆動電気モータ27と駆動波動歯車装置18のように、回転軸9の軸方向に見て互いに入れ子にされる。例えば、歯車平面E1において、固定対向軸受43に対する駆動電気モータ27の回転子31のための回転軸受46、例えば玉軸受が、駆動波動歯車装置18と一緒に配置されることが企図される。回転軸受46は、例えば、回転軸9の方向にその軸方向の広がり全体にわたって駆動波動歯車装置18の他の部品、例えば波動発生器20、回転軸受21、フレクスプライン19、及び内歯歯車14と重なる。このように、回転軸受46は駆動波動歯車装置18のこれらの部品と軸方向に直列に形成される必要がなく、それによって駆動ユニット1の広がりが全体として小さくなる。
【0047】
この基本思想の別の実施が軸受平面E2に見出される。回転軸9の半径方向に見て、フレクスプライン19の軸受平面E2において、フレクスプライン19を固定対向軸受43に支持する回転軸受45と、フレクスプライン19と固定ハウジング部材56との間のフリーホイール37とが重なり合う。これによっても、駆動ユニット1の軸方向の広がり全体が小さくなる。
【0048】
どちらも好ましくは玉軸受である回転軸受49及び50も、回転軸9に垂直に配置された共通のシャフト軸受平面E3に配置される。回転軸受49は、入力駆動シャフト33と出力被駆動シャフト12との間に配置され、これらの両方を互いに回転できるように支持する。回転軸受50は、出力被駆動シャフト12と固定ハウジング部材57との間に配置される。回転軸受49、50は(必要な直径差を除いて)同じ構造に形成され回転軸9の周りに同心に配置され、回転軸9の半径方向に見て、特に完全に重なり合う。
【0049】
クランクシャフト32と固定ハウジング部材56との間の別の回転軸受44は、回転軸9に垂直に配置された、回転軸受44が回転軸9の回転方向に制御ユニット42と少なくとも部分的に重なる別の電子機器軸受面E4に位置する。したがって、制御ユニット42は、駆動ユニット1の外側に置かれるだけでなく、駆動ユニット1の歯車装置要素と入れ子に形成され、それによっても軸方向の広がりが節減される。制御ユニット42は、外側がハウジングカバー55によって覆われている。
【0050】
制御ユニット42は、電気モータ27を制御するように形成されている。それぞれの制御機能を果たすことができるようにするために、制御ユニット42は、駆動ユニット1及び移動手段Fの現在動作状態に関する様々な測定値を必要とする。例えば、制御ユニット42は、図1及び図2に示されどちらも後輪に配置されているばね変位センサ67及び走行速度センサ68と接続されている。さらに、制御ユニット42は電流強度センサ71と接続され、制御ユニット42は、この電流強度センサにより、駆動電気モータ27を流れる電流強度を測定する。さらに、制御ユニット42は、回路基板39を介して駆動電気モータ27におけるホールセンサ38と接続されている。回路基板39とホールセンサ38の両方も、駆動電気モータ27と共にスリーブ内部空間69に配置されている。このセンサ38により、駆動電気モータ27の回転数及び回転角度位置を決定することができる。制御ユニット42と接続された別のセンサユニット51、52は、固定ハウジング、例えば対向軸受43上の静止部材52と、入力駆動シャフト33と共に回転する部材51とを有する。センサユニット51、52は、例えば、人間の筋力によってクランクシャフト32、したがって入力駆動シャフト33に加えられるトルク、ならびに回転角位置を決定する。クランクシャフト32の回転数、したがって入力駆動シャフト33の回転数も同様に、回転角位置の時間導関数から求めることができる。センサユニット51、52の静止部分52は、特に対向軸受43に、特に対向軸受43が回転軸受54、特にニードル軸受を介してクランクシャフト32の向かい側に支持される領域に特に取付ナット53で取り付けられる。
【0051】
図6に示される駆動ユニット1の実施例は、中央駆動ユニットとして形成され、したがって、ペダル軸65に配置される。しかし、本発明による移動手段Fは、ハブ駆動ユニットとして形成された駆動ユニット1を備えて形成することもできる。その場合、このような駆動ユニット1は、その回転軸9が、特に後輪の車輪軸66と同軸に形成される。駆動ユニット1のこの形態は、中央駆動ユニットとして形成された駆動ユニット1とほとんど同じである。したがって、簡単に相違点のみに言及する。特に、駆動ユニット1がハブ駆動ユニットとして形成される場合、駆動ユニット1を貫通するクランクシャフト32が存在しない。これに対して、駆動ユニット1は、例えば対向軸受43といくつかの固定ハウジング部材56、57とを備える定置で静止の軸体11によって貫通される。入力駆動シャフト33は、ペダル6若しくはクランクシャフト32によって直接動かされるのではなく、ペダル運動が牽引手段3及び牽引手段歯車10を介して入力駆動シャフト33に伝達される。同時に、出力被駆動シャフト12は、牽引手段歯車10と接続されるのではなく、内歯歯車14と回転不可能に接続された回転するハブハウジングによって形成される。後輪のスポーク59は、ハブハウジングに配置される。さらに、典型的にはブレーキディスクもハブハウジングに配置される。他の点では、ハブ駆動ユニットとしての駆動ユニット1の実施形態は、中央駆動ユニットとしての実施形態に対応するので、繰り返しを避けるために上記の説明が参照される。
【0052】
全体として、本発明は、回転軸9に沿って軸方向に延在するという意味で、特にコンパクトな駆動ユニット1を提供することを可能にする。さらに、本発明による駆動ユニット1を用いて、最新の移動手段F、例えばペデレックに望まれる多数の制御機能実現することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】