(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】陰イオン交換クロマトグラフィーによるAAVベクターの精製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20231114BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20231114BHJP
B01D 15/36 20060101ALI20231114BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20231114BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C12N15/10 112Z
C12N15/864 100Z
B01D15/36 ZNA
G01N30/02 B
G01N30/74 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525475
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 IB2021060095
(87)【国際公開番号】W WO2022097008
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー ベリール
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム エス. キッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アール. ライトホルダー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ケー. ローチ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ビー. ウェルボーン
(72)【発明者】
【氏名】タマラ ゼコビック
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017AA08
4D017AA09
4D017BA04
4D017BA07
4D017CA13
4D017CA17
4D017CB01
4D017DA03
4D017DB01
4D017EA05
(57)【要約】
本開示は、組換えAAV(rAAV)ベクターを溶液から陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)によって精製して、フルカプシドが富化されており、空カプシドが枯渇されている溶出液を生成する方法を提供する。
【
図1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を、カラム中のAEX固定相上にロードするステップと、
ii)カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップであって、第1の勾配溶出緩衝液の百分率を、第2の勾配溶出緩衝液の百分率の変動に対して反比例する様式で変動させるステップと、
iii)カラムフロースルーの吸光度が吸光度閾値に達した際に開始して、勾配溶出中のカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集するステップであって、溶出液の少なくとも1つの画分が精製しようとするrAAVベクターを含むステップと、
を含む、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項2】
カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定し、A260/A280比を決定することをさらに含む、請求項1に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項3】
固定相に適用する前に、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を、ヒスチジン、トリス、およびP188を含む希釈溶液で約2倍~25倍(たとえば15倍)に希釈し、任意選択で濾過する、請求項1または2に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項4】
溶液が親和性溶出液である、請求項1から3のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項5】
希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液のpHが、溶液のpHと比較して増加しており、希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液の伝導率が、溶液の伝導率と比較して減少している、請求項4に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項6】
第1の勾配溶出緩衝液が、約50mM~約150mMのトリス、約0.005%~約0.015%のP188を含み、pH約8.5~9.5のpHを有しており、第2の勾配溶出緩衝液が、約400mM~約600mMの酢酸ナトリウム、約50mM~約150mMのトリス、約0.005%~約0.015%のP188を含み、pH約8.5~9.5のpHを有しており、10~60カラム体積(CV)(たとえば、約20CV、約37.5CV)の第1の勾配溶出緩衝液、第2の勾配溶出緩衝液、または両方の混合物を勾配溶出中に固定相に適用する、請求項1から5のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項7】
勾配溶出の開始時に第1の勾配溶出緩衝液の百分率が50%~100%であり、勾配溶出の終了時に第2の勾配溶出緩衝液の百分率が50%~100%であり、第2の溶出緩衝液の百分率を、勾配溶出にわたって約2%~5%/CVの速度で増加させる、請求項1から6のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項8】
第1の勾配溶出緩衝液、第2の勾配溶出緩衝液、または両方の混合物の酢酸ナトリウムの濃度を、勾配溶出中に連続的に増加させ、酢酸ナトリウムの濃度を、勾配溶出にわたって約10mM/CV~50mM/CV(たとえば、約10mM/CV、約25mM/CV)の速度で増加させる、請求項1から7のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項9】
フルカプシドが、勾配溶出中に固定相から第1の溶出ピーク中および/または第2の溶出ピークの最初の部分中に溶出される、請求項1から8のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項10】
空カプシドが、勾配溶出中にカラムフロースルー中で第1の溶出ピーク中および/または第2の溶出ピークの最後の部分中で回収される、請求項1から9のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項11】
溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を280nmで測定し、任意選択で、吸光度閾値が、280nmで測定して≧0.5mAU/mm経路長である、請求項1から10のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項12】
溶出液の少なくとも1つの画分の体積が、CVの1/8~10CV、たとえば、CVの1/8、CVの1/4、CVの1/3、CVの1/2、CVの3/4、1CV、2CV、3CV、4CV、5CV、6CV、7CV、8CV、9CV、10CV、またはCVのそれより多くに等しく、任意選択で、溶出液の少なくとも1つの画分のA260/A280比が1.25以上である、請求項1から11のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項13】
溶出液の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25個、またはそれより多くの画分を収集する、請求項1から12のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項14】
それぞれ≧0.98または≧1.0のA260/A280比を有する、カラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、rAAVベクターを含むプールした溶出液を形成することをさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項15】
プールした溶出液が、20%~100%(たとえば63+/-26%)の%VGカラム収率、31%~66%(たとえば47+/-11%)の%VGステップ収率、および/または≧1.0のA260/A280比を有する、請求項14に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項16】
プールした溶出液が、カラム上にロードした溶液と比較してフルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されている、請求項14または15に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項17】
精製rAAVベクターが生成される、請求項1から16のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項18】
プールした溶出液を、ウイルス濾過、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)、0.2μmのフィルターを通した濾過、およびその組合せからなる群から選択される方法によって濾過して、原薬を生成することをさらに含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項19】
原薬が、i)全カプシドの45%~65%(たとえば52+/-7%)のフルカプシド、ii)全カプシドの19%~37%(たとえば28+/-5%)の中間体カプシド、および/またはiii)全カプシドの10%~37%(たとえば20+/-7%)の空カプシドを含む、請求項18に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項20】
原薬が、カラム上にロードした溶液と比較してフルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されている、請求項18または19に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項21】
rAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAVrh74、AAV12、AAV2i8、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVLK03、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、RHM4-1(WO2015/013313号の配列番号5)、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAV hu.26、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、AAV2i8、AAV29G、AAV2.8G9、AVV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15からなる群から選択されるAAV血清型からのAAVカプシドタンパク質を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項22】
rAAVベクターがAAV9カプシドタンパク質および配列番号1の核酸を含む導入遺伝子を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項23】
rAAVベクターがAAV3Bカプシドタンパク質および配列番号15のアミノ酸配列をコードしている核酸を含む導入遺伝子を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項24】
i)第1の溶液を、ヒスチジン、トリス、およびP188を含む希釈溶液で2~25倍(たとえば15倍)に希釈するステップと、任意選択で、
ii)ステップi)からの第1の溶液を、フィルターを通して濾過して、希釈および任意選択で濾過した溶液を生成するステップと
を含み、希釈および任意選択で濾過した溶液のpHが、第1の溶液のpHと比較して増加しており、希釈および任意選択で濾過した溶液の伝導率が、第1の溶液の伝導率と比較して減少している、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【請求項25】
rAAVベクターを含む第1の溶液が、親和性溶出液、細胞溶解液からの上清、および回収後の溶液からなる群から選択される、請求項24に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【請求項26】
希釈溶液が、約100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188を含み、pH8.5~9.5のpHを有する、請求項24または25に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【請求項27】
i)希釈および任意選択で濾過した溶液のpHが8.5~9.5である、ii)希釈および任意選択で濾過した溶液の伝導率が1.7~3.3mS/cmである、ならびに/またはiii)希釈溶液の%VG希釈収率が35%~100%である、請求項24から26のいずれか一項に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【請求項28】
rAAVベクターがAAV9カプシドタンパク質またはAAV3Bカプシドタンパク質を含む、請求項24から27のいずれか一項に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【請求項29】
i)精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を、カラム中のAEX固定相上にロードするステップ、
ii)カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップであって、第1の勾配溶出緩衝液、第2の勾配溶出緩衝液、または両方の混合物を固定相に適用し、勾配溶出の経過中における塩の濃度の増加の速度が約10mM/CV~50mM/CV(たとえば約25mM/CV)であるように、塩の濃度を0mM~500mMで変動させるステップ、
iii)カラムフロースルーの吸光度が吸光度閾値に達した際に開始して、勾配溶出中に溶出液の少なくとも1つの画分をカラムから収集するステップ、および/または
vi)カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定し、A260/A280比を決定するステップ、
を含む方法によって調製した精製rAAVベクター。
【請求項30】
A260/A280比が≧1.0であるときにカラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、精製rAAVベクターを含むプールした溶出液を形成することをさらに含む、請求項29に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【請求項31】
塩が酢酸ナトリウムである、請求項29または30に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【請求項32】
rAAVベクターがAAV9カプシドタンパク質またはAAV3Bカプシドタンパク質を含む、請求項29から31のいずれか一項に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【請求項33】
rAAVベクターを含む溶液が、固定相上にロードする前に希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液である、請求項29から32のいずれか一項に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【請求項34】
固定相から溶出された材料がrAAVベクターを含む、請求項29から33のいずれか一項に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【請求項35】
プールした溶出液を、ウイルス濾過、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)、0.2μmのフィルターを通した濾過、およびその組合せからなる群から選択される方法によって濾過して、原薬を生成することをさらに含む、請求項30から34のいずれか一項に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【請求項36】
原薬を、疾患、障害、または状態を処置するためにヒト対象への投与に適している薬物製品を作製するために使用する、請求項35に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【請求項37】
疾患、障害、または状態がDMDまたはウィルソン病であり、rAAVベクターが配列番号2または配列番号15のアミノ酸配列をコードしている核酸を含んでいてもよい、請求項36に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【請求項38】
i)親和性溶出液を、ヒスチジン、トリス、およびP188を含む希釈溶液で2~25倍(たとえば15倍)に希釈するステップと、任意選択で、
ii)ステップi)からの親和性溶出液を、0.2μmのフィルターを通して濾過して、希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液を生成するステップと
を含み、希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液のpHが、親和性溶出液のpHと比較して増加しており、希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液の伝導率が、親和性溶出液の伝導率と比較して減少している方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【請求項39】
希釈溶液が、約100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(約0.5%)のP188、pH8.5~9.5を含む、請求項38に記載の方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【請求項40】
親和性溶出液のpHが希釈および任意選択で濾過のステップの前に3.0~4.4であり、希釈および任意選択で濾過のステップの後の親和性溶出液のpHが8.5~9.5または8.7~9.0(たとえば、8.8、9.0)である、請求項38または39に記載の方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【請求項41】
親和性溶出液の伝導率が、希釈および任意選択で濾過のステップの前に5.0~7.0mS/cm(たとえば5.5~6.5mS/cm)であり、親和性溶出液の伝導率が、希釈および任意選択で濾過のステップの後に1.7~3.3mS/cm、1.8~2.8mS/cm、および/または2.2~2.6mS/cmである、請求項38から40のいずれか一項に記載の方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【請求項42】
希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液の%VG希釈収率が35%~100%である、請求項38から41のいずれか一項に記載の方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【請求項43】
rAAVベクターがAAV9またはAAV3Bカプシドタンパク質を含む、請求項38から42のいずれか一項に記載の方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【請求項44】
希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液をAEX固定相上にロードする、請求項38から43のいずれか一項に記載の方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【請求項45】
i)≧4.5CV(たとえば約5CV)の注入用水を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、使用前のフラッシュのステップ、
ii)任意選択で上向流によって、約14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、約0.1M~1.0MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、浄化ステップ、および/または
iii)約4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約1M~3MのNaCl、50mM~150mMのトリス、pH8.5~9.5を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、再生ステップ
のうちの少なくとも1つのステップを含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法において使用するための固定相を調製する方法。
【請求項46】
i)任意選択で上向流によって、14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、約0.1M~1.0MのNaOHを含む溶液を、固定相に適用することを含む、固定相の使用後の浄化ステップ、
ii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約1M~3MのNaCl、50mM~150mMのトリス、pH8.5~9.5を含む溶液を、固定相に適用することを含む、固定相の再生ステップ、
iii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約50mM~150mMのトリス、pH8.5~9.5を含む溶液を、固定相に適用することを含む、固定相の平衡化のステップ、
iv)≧4.5(たとえば約5CV)の注入用水を固定相に適用することを含む、固定相の使用後のフラッシュのステップ、および/または
v)2.7~3.3CV(たとえば約3CV)の、約17%~17.5%のエタノールを含む溶液を、固定相に適用することを含む、保存液を固定相に適用するステップ
を含む、AEX固定相を再生する方法。
【請求項47】
ステップi)~v)のうちの任意の1つが、rAAVベクターをAEXによって精製する方法のクロマトグラフィー溶出ステップに続く、請求項46に記載のAEX固定相を再生する方法。
【請求項48】
i)任意選択で上向流によって、14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、約0.1M~1.0MのNaOHを含む溶液を、固定相に適用することを含む、固定相の使用後の浄化ステップ、
ii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約1M~3MのNaCl、50mM~150mMのトリス、pH8.5~9.5を含む溶液を、固定相に適用することを含む、固定相の再生ステップ、
iii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約50mM~150mMのトリス、pH8.5~9.5を含む溶液を、固定相に適用することを含む、固定相の平衡化のステップ、
iv)≧4.5(たとえば約5CV)の注入用水を固定相に適用することを含む、固定相の使用後のフラッシュのステップ、および/または
v)2.7~3.3CV(たとえば約3CV)の、約17%~17.5%のエタノールを含む溶液を、固定相に適用することを含む、保存液を固定相に適用するステップ
を含む方法によって調製した、再生したAEX固定相。
【請求項49】
再生したAEX固定相をrAAVベクターの精製に使用する、請求項48に記載の再生したAEX固定相。
【請求項50】
i)精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を、カラム中のAEX固定相上にロードするステップと、
ii)カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップであって、第1の勾配溶出緩衝液の百分率を、第2の勾配溶出緩衝液の百分率の変動に対して反比例する様式で変動させ、勾配溶出の開始時に第1の勾配溶出緩衝液の百分率が約75%~約100%であり、勾配溶出の終了時に第2の勾配溶出緩衝液の百分率が約60%~約100%であり、第2の溶出緩衝液の百分率を、勾配溶出にわたって約2%~5%/CVの速度で増加させるステップと、
iii)第2の勾配溶出緩衝液の百分率が約30%~約35%であるときに開始して、勾配溶出を行う際に溶出液の少なくとも1つの画分をカラムから収集するステップと
を含み、溶出液の少なくとも1つの画分が精製しようとするrAAVベクターを含む、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項51】
rAAVベクターを含む溶液が、ヒスチジン、トリス、およびP188を含む緩衝液で約15倍に希釈されている親和性溶出液である、請求項50に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項52】
第1の勾配溶出緩衝液が、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば8.9)を含む、および/または第2の勾配溶出緩衝液が、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえばpH8.9)を含む、請求項50または51に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項53】
溶出液の少なくとも1つの画分をカラムから収集するステップが、溶出液の少なくとも1つの画分を、約0.01CV~0.1CV(たとえば約0.066CV)の、200mM~300mM(たとえば約250mM)のクエン酸ナトリウム、pH3.0~4.0(たとえば約3.5)を含む溶液を含む容器内に収集することを含む、請求項50から52のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項54】
溶出液の少なくとも1つの画分が、親和性溶出液と比較してフルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されており、rAAVベクターがrAAV3Bベクターであってもよく、AEX固定相がPOROS(商標)50 HQであってもよい、請求項51から53のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【請求項55】
勾配溶出を行う際に溶出液の少なくとも1つの画分をカラムから収集するステップが、第2の勾配溶出緩衝液の百分率が約50%~約55%であるときに終了する、請求項50から54のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、そのそれぞれの内容全体が本明細書中に参考として組み込まれている、2021年10月7日出願の米国仮特許出願第63/253,215号、2021年6月30日出願の米国仮特許出願第63/217,194号、および2020年11月3日出願の米国仮特許出願第63/109,049号の優先権を主張するものである。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子提出され、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている配列表を含有する。2021年10月15日作成の前記ASCIIコピーは、名称がPC072555A_Sequence_Listing_ST25.txtであり、サイズが1,048,576バイトである。
【0003】
本発明は、陰イオン交換クロマトグラフィーによるAAV、具体的には組換えAAV(rAAV)ベクターの精製に関する。
【背景技術】
【0004】
治療的導入遺伝子を送達するために組換えAAV(rAAV)ベクターを使用する遺伝子療法は、治癒方法が存在せず、多くの場合は限定的な処置しか存在しない、広範囲の重篤な疾患を処置する潜在性を有する(Wangら(2019)Nature Reviews 18:358~378)。遺伝子療法ベクターの製造は複雑であり、宿主細胞不純物から、および治療的導入遺伝子をコードしている完全ベクターゲノムを含有しないウイルスカプシドから治療的rAAVベクターを精製するために、専門的な方法を必要とする。高純度かつ良好な安全性および有効性プロファイルを有する臨床グレードのrAAVベクター組成物を生じる精製方法の開発に加えて、精製方法はまた、患者の要求を満たすために高体積のrAAV生成まで拡張可能である必要もある。
【0005】
塩化セシウム勾配沈降を使用した超遠心分離は、宿主細胞のタンパク質およびDNAを除去するため、ならびに空である(すなわちベクターゲノムを含有しない)ウイルスカプシド、部分的にパッケージングされた(「中間体カプシド」とも呼ばれ、部分的ベクターゲノムおよび/もしくは非導入遺伝子関連DNAを含有する)、またはフルにパッケージングされたベクター(「フルカプシド」とも呼ばれ、完全ベクターゲノムを含有する)を分離するための、ロバストな方法である(Burnhamら(2015)Hum.Gene Ther.Meth. 26:228~245)。しかし、塩化セシウム勾配精製は労力を要し、時間がかかり、大スケール製造に応じない。イオジキサノール勾配を使用した超遠心分離、労働集約性はより低いが、一般に、より低い純度のベクター収率をもたらす(Hermensら、Hum.Gene Ther.(1999)10:1885~1891)。親和性および/またはイオン交換クロマトグラフィーを含むクロマトグラフィー方法は、空ウイルスカプシドをフルrAAVベクターから分離することを含む、臨床グレードのrAAVの大スケール生産に有用であることが証明されている。
【0006】
空カプシドは、ウイルスカプシド中に組換えベクターゲノムを生成してパッケージングする宿主細胞によって生成される。ほとんどの哺乳動物発現系においてフルベクターに対して過剰の空カプシドが生成され、様々な系が1~30%のフルベクターを生産する(Penaud-Budlooら、Molecular Therapy, Methods & Clinical Dev(2018)8:166~180)。空カプシドの生成は、導入遺伝子をコードしているプラスミド対rep/cap遺伝子のプラスミド比の不均衡が原因であり得る。薬物製品中における空カプシドの存在は、望ましくない免疫応答を引き起こす、および/または標的細胞上の結合部位について組換えベクターと競合する場合がある。
【0007】
酢酸緩衝液ならびにPOROS(商標)50 HQおよびQ-Sepharose XLなどの樹脂を用いた、特定の陰イオン交換クロマトグラフィー方法が、フルベクターと比較して空カプシドの陰イオン性特徴がわずかにより低いことに依存することによって、空カプシドをrAAV2ベクタープールから分離するために使用されている(US7,261,544号、Quら(2007)J.Virol.Meth. 140(1):183~192)。同様の手法では、親和性およびイオン交換クロマトグラフィー(IEX)とPOROS(商標)50 HQ樹脂を用いた10mM~300mMのトリスアセテート勾配、pH8との組合せを使用して、様々な血清型のフルAAVベクターを富化させた(Nassら(2018)Molec.Thera.Meth.& Clin.Dev. 9:33~46)。他の研究は、フルAAVベクターからの空カプシドのクロマトグラフィー分離に有用な緩衝液および条件を同定した。たとえば、Urabeは、AAV1材料を、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)カラム上にロードするためにMgCl2およびグリセロールを含むトリス-HCl緩衝液で希釈することができ、抗カオトロピックイオンを含む溶液が、空AAV1カプシドのフルベクターからの分離のために有効な溶出緩衝液であることを決定した(Urabeら(2006)Molec.Ther. 13(4):823~828)。他の者は、空カプシドのフルAAVベクターからの分離のために、AEX方法における、親和性クロマトグラフィー溶出液の希釈(たとえば50倍)およびモノリシック支持体からの浅い勾配溶出(たとえば20mM~180mMのNaCl)の使用を記載している(US2019-0002841号、US2019-0002842号、US2019-0002843号、US2018-0002844号)。しかし、これらの方法では、高いpH(9.8~10.2)も用いており、これはrAAVベクターの脱アミド化および/または凝集をもたらす場合があり、治療効力の減少をもたらし得る。
【0008】
たとえば、宿主細胞上清のタンジェンシャルフロー濾過(TFF)、硫酸アンモニウムを使用したカプシド材料(rAAVベクターおよび空カプシドを含む)の沈殿、AEXクロマトグラフィー、ならびにサイズ排除クロマトグラフィーを順不同で含む方法の組合せを使用したプロセスが、rAAVを空カプシドから分離するために開発されている(Tomonoら(2018)Molec.Ther.Meth.Clin.Dev. 11:180~190)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最適な純度、効力、および一貫性を有する、臨床グレードのrAAVベクター(たとえばrAAV9)を調製するための方法の必要性が、依然として残る。これらの方法は、疾患(たとえば、デュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD)、フリードライヒ運動失調症(FA))を処置するための臨床的要求を満たすために必要なスケールで、治療的導入遺伝子を有するベクターゲノムを含むrAAVを空AAVカプシドから分離することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、それだけには限定されないが、フルrAAVベクター(たとえばrAAV9ベクター)の空カプシドからの分離を含む、rAAVベクターの精製の改善されたAEX方法を提供する。そのような精製されたフルrAAVベクターは、DMDを有する対象などのヒト対象に投与するための薬物製品の生産に適している。本開示はまた、AEXによるさらなる精製のための、rAAVベクターを含むクロマトグラフィー溶出液(たとえば親和性クロマトグラフィーからのもの)を調製する新規方法も提供する。本開示はまた、プロセスの完全性(たとえば、rAAVベクターの精製の成功、フルベクターの空カプシドからの分離)を維持しながら製造費用を下げつつ、固定相を複数のクロマトグラフィーの実行において使用することを可能にする、AEX固定相を再生する方法も提供する。
【0011】
当業者は、本明細書中に記載の本発明の具体的な実施形態の多数の均等物を、理解する、または日常的な実験より多くのことを使用せずに確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の実施形態(E)によって包含されることを意図する。
【0012】
E1.
i)精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を、カラム中の固定相上にロードするステップと、
ii)カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップであって、第1の勾配溶出緩衝液の百分率を、第2の勾配溶出緩衝液の百分率の変動に対して反比例する様式で変動させるステップと、
iii)カラムフロースルーの吸光度が吸光度閾値に達した際に開始して、勾配溶出中のカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集するステップと
を含む、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0013】
E2.rAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードするステップが、2.5×1015~3.0×1017個のベクターゲノム(VG)/Lのカラム体積をカラム上に適用することを含む、E1に記載の方法。
【0014】
E3.ロードするステップが、8.0×1012~2.0×1018個の全VGをカラムに適用することを含む、E1またはE2に記載の方法。
【0015】
E4.ロードするステップが、ベクターゲノム内の導入遺伝子配列のqPCR分析によって測定して、2.6×1012~6.8×1013VG/mLのカラム体積を含む、希釈および任意選択で濾過した溶液を、カラム(たとえば6.4Lのカラム)上に適用することを含む、E1からE3のいずれか一項に記載の方法。
【0016】
E5.ロードするステップが、ベクターゲノム内のITR配列のqPCR分析によって測定して、5×1013~1.3×1014VG/mLのカラム体積を含む、希釈および任意選択で濾過した溶液を、カラム(たとえば1.3Lのカラム)上に適用することを含む、E1からE4のいずれか一項に記載の方法。
【0017】
E6.rAAVベクターを容器中で生成させ、容器の体積が、約1L、約50L、約100L、約250L、約500L、約1000L、約2000L、またはそれより大きい、E1からE5のいずれか一項に記載の方法。
【0018】
E7.容器が単回使用バイオリアクター(SUB)である、E1からE6のいずれか一項に記載の方法。
【0019】
E8.rAAVベクターを含む溶液が、ロードする前に希釈および任意選択で濾過した、親和性溶出液、細胞溶解液からの上清、および回収後の溶液からなる群から選択される、E1からE7のいずれか一項に記載の方法。
【0020】
E9.rAAVベクターを含む溶液が、ロードする前に希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液である、E1からE8のいずれか一項に記載の方法。
【0021】
E10.溶液が、少なくとも1つの他の精製またはプロセスステップを受けている、E1からE9に記載の方法。
【0022】
E11.少なくとも1つの他の精製またはプロセスステップが、細胞溶解、凝結、濾過、クロマトグラフィー(たとえば親和性クロマトグラフィー)、希釈、pH調節、伝導率調節、およびその組合せからなる群から選択される、E10に記載の方法。
【0023】
E12.rAAVベクターを含む溶液が、ある体積を有する単回使用バイオリアクター(SUB)中で生成したrAAVベクターの親和性クロマトグラフィー精製から生じる親和性溶出液である、E1からE12のいずれか一項に記載の方法。
【0024】
E13.SUBが約1L~約2000Lの体積を有する、E12に記載の方法。
【0025】
E14.固定相がAEX固定相である、E1から13のいずれか一項に記載の方法。
【0026】
E15.固定相が正電荷である、E1からE14のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
E16.固定相が共有結合した四級化ポリエチレンイミンを有するポリスチレンジビニルベンゼン粒子であり、固定相がPOROS(商標)50 HQであってもよい、E1からE15のいずれか一項に記載の方法。
【0028】
E17.任意選択でrAAVベクターを含む溶液を固定相上にロードした後に、ロードチェイス溶液をカラム中のAEX固定相に適用することをさらに含む、E1からE16のいずれか一項に記載の方法。
【0029】
E18.緩衝剤(たとえば、トリス、ビス-トリスプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、および/またはビシン)を含む1~15カラム体積(CV)のロードチェイス溶液をカラム中の固定相に適用する、E17に記載の方法。
【0030】
E19.ロードチェイス溶液が約10mM~30mM(たとえば約20mM)のトリス、pH8~10を含む、E17またはE18に記載の方法。
【0031】
E20.カラム中の固定相の使用前のフラッシュをさらに含む、E1からE19のいずれか一項に記載の方法。
【0032】
E21.カラム中の固定相の使用前のフラッシュが、rAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードするステップに先行する、E20に記載の方法。
【0033】
E22.カラム中の固定相の使用前のフラッシュが、注入用水を固定相に適用することを含む、E20またはE21に記載の方法。
【0034】
E23.カラム中の固定相を浄化することをさらに含む、E1からE22のいずれか一項に記載の方法。
【0035】
E24.カラム中の固定相を浄化することが、rAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードするステップに先行する、E23に記載の方法。
【0036】
E25.カラム中の固定相を浄化することが、NaOHを含む溶液を固定相に適用することを含む、E23またはE24に記載の方法。
【0037】
E26.カラム中の固定相を浄化することが、約0.1M~約1.0M(たとえば約0.5M)のNaOHを含む溶液を固定相に適用することを含む、E23からE25のいずれか一項に記載の方法。
【0038】
E27.カラム中の固定相を浄化することが、約5CV~約10CVまたは約14.4CV~約17.6CVの、約0.1M~約1.0MのNaOHを含む溶液を固定相に適用することを含む、E23からE26のいずれか一項に記載の方法。
【0039】
E28.カラム中の固定相を浄化することが上向流によるものである、E23からE27のいずれか一項に記載の方法。
【0040】
E29.カラム中の固定相を再生することをさらに含む、E1からE28のいずれか一項に記載の方法。
【0041】
E30.カラム中の固定相を再生することが、rAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードするステップに先行する、E29に記載の方法。
【0042】
E31.カラム中の固定相を再生することが、塩、緩衝剤、およびその組合せからなる群から選択される構成成分を含む溶液を固定相に適用することを含む、E29またはE30に記載の方法。
【0043】
E32.カラム中の固定相を再生することが、約1M~約3M(たとえば約2M)のNaCl、約50mM~約150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8~10(たとえば約9)を含む溶液を固定相に適用することを含む、E29からE31のいずれか一項に記載の方法。
【0044】
E33.カラム中の固定相を再生することが、約50mM~約150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH9を含む溶液を固定相に適用することを含む、E29からE32のいずれか一項に記載の方法。
【0045】
E34.カラム中の固定相を再生することが、4.5~5.5CVの、約100mMのトリス、pH9を含む溶液を固定相に適用することを含む、E29からE33のいずれか一項に記載の方法。
【0046】
E35.カラム中の固定相の再生を複数回行う、E29からE34のいずれか一項に記載の方法。
【0047】
E36.カラム中の固定相の平衡化をさらに含む、E1からE35のいずれか一項に記載の方法。
【0048】
E37.カラム中の固定相の平衡化が、rAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードするステップに先行するまたは続く、E36に記載の方法。
【0049】
E38.カラム中の固定相の平衡化が、緩衝剤、塩、アミノ酸、界面活性剤、およびその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を含む平衡化緩衝液を固定相に適用することを含む、E36またはE37に記載の方法。
【0050】
E39.緩衝剤が、トリス、ビス-トリスプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、および/またはビシン、ならびにその組合せからなる群から選択される、E38に記載の方法。
【0051】
E40.塩が、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、およびその組合せからなる群から選択される、E36またはE39に記載の方法。
【0052】
E41.塩が酢酸ナトリウムである、E38からE40のいずれか一項に記載の方法。
【0053】
E42.アミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、シトルリン、およびその組合せからなる群から選択される、E38からE41のいずれか一項に記載の方法。
【0054】
E43.アミノ酸がヒスチジンである、E38からE42のいずれか一項に記載の方法。
【0055】
E44.界面活性剤が、ポロキサマー188(P188)、Triton X-100、ポリソルベート80(PS80)、Brij-35、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)、およびその組合せからなる群から選択される、E38からE43に記載の方法。
【0056】
E45.界面活性剤がP188である、E38からE44のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
E46.カラム中の固定相の平衡化が、約50mM~約150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH約8~10(たとえば約9)を含む平衡化緩衝液を固定相に適用することを含む、E36からE45のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
E47.カラム中の固定相の平衡化が、約50mM~約150mM(たとえば約100mM)のトリス、約250mM~約750mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、約0.005~約0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH約8~約10(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を固定相に適用することを含む、E36からE46のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
E48.カラム中の固定相の平衡化が、約100mM~約300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、約100mM~約300mM(たとえば約200mM)のトリス、約0.1%~約1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH約8~約10(たとえば約8.8)を含む平衡化緩衝液を固定相に適用することを含む、E36からE47のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
E49.カラム中の固定相の平衡化が、約50mM~約150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~約0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH約8~約10(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を固定相に適用することを含む、E36からE48のいずれか一項に記載の方法。
【0061】
E50.カラム中の固定相の平衡化が、約4.5CVを超える平衡化緩衝液を固定相に適用することを含む、E36からE49のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
E51.カラム中の固定相の平衡化が、4.5~5.5CVの平衡化緩衝液を固定相に適用することを含む、E36からE50のいずれか一項に記載の方法。
【0063】
E52.カラム中の固定相の平衡化を複数回行う、E36からE51のいずれか一項に記載の方法。
【0064】
E53.少なくとも1つの平衡化緩衝液を、rAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードするステップの前に固定相に適用し、少なくとも1つの平衡化緩衝液を、rAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードするステップの後に固定相に適用する、E36からE52のいずれか一項に記載の方法。
【0065】
E54.カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップを含む、E1からE53のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
E55.勾配溶出が、10~60CVの少なくとも2つの異なる溶液(たとえば勾配溶出緩衝液)または2つの混合物を固定相に適用することを含み、勾配溶出の経過中、第1の溶液の百分率を、第2の溶液の百分率に対して反比例する様式で変動させる、E54に記載の方法。
【0067】
E56.少なくとも2つの異なる溶液(たとえば、第1の勾配溶出緩衝液、第2の勾配溶出緩衝液)が、緩衝剤、塩、界面活性剤、およびその組合せからなる群から選択される構成成分を含む、E54またはE55に記載の方法。
【0068】
E57.緩衝剤が、トリス、ビス-トリスプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、および/またはビシンからなる群から選択される、E56に記載の方法。
【0069】
E58.塩が、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、およびその組合せからなる群から選択される、E56またはE57に記載の方法。
【0070】
E59.界面活性剤が、ポロキサマー188(P188)、Triton X-100、ポリソルベート80(PS80)、Brij-35、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)、およびその組合せからなる群から選択される、E56からE58のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
E60.少なくとも2つの異なる溶液が異なるpH、塩濃度、伝導率、および/またはモディファイヤー濃度を有する、E55からE59のいずれか一項に記載の方法。
【0072】
E61.第1の溶液(たとえば緩衝液A)が、約50mM~約150mM(たとえば約100mM)のトリス、約0.005%~約0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH約8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む、E55からE60のいずれか一項に記載の方法。
【0073】
E62.第2の溶液(たとえば緩衝液B)が、約400mM~約600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、約50mM~約150mM(たとえば約100mM)のトリス、約0.005%~約0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH約8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む、E55からE61のいずれか一項に記載の方法。
【0074】
E63.勾配溶出を行うことが、約10~60CV、約20~40CV、または約20~24CVの少なくとも2つの異なる溶液を固定相に適用することを含む、E55からE62のいずれか一項に記載の方法。
【0075】
E64.勾配溶出の開始時に第1の溶液(たとえば、第1の勾配溶出緩衝液、緩衝液A)の百分率が50%~100%であり、勾配溶出の終了時に第2の溶液(たとえば、第2の勾配溶出緩衝液、緩衝液B)の百分率が50%~100%であり、任意選択で、10~60CVの第1の溶液、第2の溶液、または両方の混合物を勾配溶出中に固定相に適用する、E55からE63のいずれか一項に記載の方法。
【0076】
E65.勾配溶出の開始時に第1の溶液(たとえば、第1の勾配溶出緩衝液、緩衝液A)の百分率が100%であり、勾配溶出の終了時に第2の溶液(たとえば、第2の勾配溶出緩衝液、緩衝液B)の百分率が100%であり、任意選択で、10~60CVの第1の溶液、第2の溶液、または両方の混合物を勾配溶出中に固定相に適用する、E55からE64のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
E66.第1の溶液(たとえば第1の勾配溶出緩衝液)または第2の溶液(たとえば第2の勾配溶出緩衝液)の構成成分の濃度が、勾配溶出中に連続的に増加または減少し、第1の溶液または第2の溶液の構成成分の濃度の増加または減少の速度が、全CVあたりの構成成分の濃度の変化に等しく、勾配溶出にわたる構成成分の濃度の変化の速度が約10mM/CV~50mM/CVである、E55からE65のいずれか一項に記載の方法。
【0078】
E67.フルカプシドが、固定相から勾配溶出の第1の溶出ピーク中および/または第2の溶出ピークの最初の部分中で溶出される、E54からE66のいずれか一項に記載の方法。
【0079】
E68.空カプシドが、AEXカラムフロースルー中および/または勾配溶出の第2の溶出ピークの最後の部分中で回収される、E54からE67のいずれか一項に記載の方法。
【0080】
E69.勾配保持を行うことを含む、E1からE68のいずれか一項に記載の方法。
【0081】
E70.勾配保持が、1~10CVの、塩、緩衝剤、界面活性剤、およびその組合せからなる群から選択される構成成分を含む勾配保持溶液を、カラム中の固定相に適用することを含む、E69に記載の方法。
【0082】
E71.勾配保持を行うことが、1~10CVの、約5mM~約1M(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、約0.005%~約0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH約8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む勾配保持溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、E69またはE70に記載の方法。
【0083】
E72.カラム中の固定相からステップ溶出(たとえば定組成溶出)を行うことを含む、E1からE71のいずれか一項に記載の方法。
【0084】
E73.ステップ溶出を行うことが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれより多くのステップ溶出溶液をカラム固定相に適用することを含む、E72に記載の方法。
【0085】
E74.少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれより多くのステップ溶出溶液がそれぞれ、緩衝剤、塩、界面活性剤、およびその組合せからなる群から選択される構成成分を含む、E72またはE73に記載の方法。
【0086】
E75.少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれより多くのステップ溶出溶液がそれぞれ、約10mM~約50mM(たとえば約20mM)のトリスおよび約5mM~約600mMの酢酸ナトリウム、pH約8~10(たとえば約8.9~約9.1)を含む、E72からE74のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
E76.漸増濃度の酢酸ナトリウムを有するステップ溶出溶液をカラムに順次適用する、E72からE75のいずれか一項に記載の方法。
【0088】
E77.最後のステップ溶出溶液が約20mMのトリス、約500mMの酢酸ナトリウム、pH約8.9~約9.1を含む、E72からE76のいずれか一項に記載の方法。
【0089】
E78.任意選択で勾配溶出中に、溶出液の少なくとも1つの画分をカラムから収集して、フルrAAVカプシドを回収することを含む、E1からE77のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
E79.溶出液の少なくとも1つの画分の体積が、CVの1/8、CVの1/4、CVの1/3、CVの1/2、CVの3/4、1CV、2CV、3CV、4CV、5CV、6CV、7CV、8CV、9CV、10CV、またはそれより多くからなる群から選択される、E78に記載の方法。
【0091】
E80.溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を280nmで測定し、任意選択で、閾値が、280nmで測定して≧0.5mAU/mm経路長である、E79に記載の方法。
【0092】
E81.溶出液のA280が≧0.5mAU/mm経路長であるときに溶出液の少なくとも1つの画分を収集する、E80に記載の方法。
【0093】
E82.溶出液の少なくとも1つの画分の体積が、CVの1/8~10CV、たとえば、CVの1/8、CVの1/4、CVの1/3、CVの1/2、CVの3/4、1CV、2CV、3CV、4CV、5CV、6CV、7CV、8CV、9CV、10CV、またはCVのそれより多くに等しく、任意選択で、溶出液の少なくとも1つの画分のA260/A280比が1.25以上である、E80またはE81に記載の方法。
【0094】
E83.溶出液の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25個、またはそれより多くの画分を収集する、E78からE82のいずれか一項に記載の方法。
【0095】
E84.任意選択で勾配溶出中に、カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のpHを調節することをさらに含む、E78からE83のいずれか一項に記載の方法。
【0096】
E85.溶出液の少なくとも1つの画分のpHを調節することが、i)14.3%~15%の重量による溶出液体積重量の緩衝剤、pH約3.5を含む溶液を、溶出液の少なくとも1つの画分に添加すること、またはii)溶出液の少なくとも1つの画分を、約0.01CV~0.1CV(たとえば約0.066CV)の緩衝剤を含む溶液を含む容器内に収集することを含む、E84に記載の方法。
【0097】
E86.緩衝剤が、約200mM~約300mM(たとえば約250mM)のクエン酸ナトリウムである、E85に記載の方法。
【0098】
E87.カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のpHを、約8.5~約9.1の初期pHから約6.8~約7.6のpHへと調節する、E84からE86に記載の方法。
【0099】
E88.カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のpHを、約8.5~約9.1の初期pHから約7.0~約7.4のpHへと調節する、E84からE87に記載の方法。
【0100】
E89.任意選択で勾配溶出中に、カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定することをさらに含む、E78からE88のいずれか一項に記載の方法。
【0101】
E90.吸光度を260nm(A260)、280nm(A280)、または260nmおよび280nmで測定し、A260/A280比を決定してもよい、E89に記載の方法。
【0102】
E91.260nmおよび280nmの吸光度をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定する、E90に記載の方法。
【0103】
E92.任意選択でSECによって測定して、溶出液の少なくとも1つの画分のA260/A280比が、少なくとも0.5、少なくとも0.55、少なくとも0.6、少なくとも0.65、少なくとも0.70、少なくとも0.75、少なくとも0.80、少なくとも0.85、少なくとも0.90、少なくとも0.95、少なくとも1.0、少なくとも、1.05、少なくとも1.10、少なくとも1.11、少なくとも1.12、少なくとも1.13、少なくとも1.14、少なくとも1.15、少なくとも1.16、少なくとも1.17、少なくとも1.18、少なくとも1.19、少なくとも1.20、少なくとも1.21、少なくとも1.22、少なくとも1.23、少なくとも1.24、少なくとも1.25、少なくとも1.26、少なくとも1.27、少なくとも1.28、少なくとも1.29、少なくとも1.30、少なくとも1.31、少なくとも1.32、少なくとも1.33、少なくとも1.34、少なくとも1.35、少なくとも1.36、少なくとも1.37、少なくとも、1.38、少なくとも1.39、少なくとも1.40である、または、約0.5~約2.0、約0.5~約1.8、約0.5~約1.6、約0.5~約1.4、約0.5~約1.2、約0.5~約1.0、約0.5~約0.8、約0.6~約2.0、約0.8~約1.8、約0.8~約1.6、約0.8~約1.4、約1.0~約1.4、または約1.0~約1.2である、E90またはE91に記載の方法。
【0104】
E93.溶出液の少なくとも1つの画分のA260/A280比が少なくとも1.25である、E90からE92のいずれか一項に記載の方法。
【0105】
E94.任意選択で勾配溶出中に、カラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、rAAVベクターを含むプールした溶出液を形成することをさらに含む、E78からE93のいずれか一項に記載の方法。
【0106】
E95.2~50個の溶出液画分を合わして、プールした溶出液を形成する、E94に記載の方法。
【0107】
E96.溶出液の少なくとも2つの画分のそれぞれが、≧1.25のA260/A280比を有する、E94またはE95に記載の方法。
【0108】
E97.プールした溶出液の吸光度を測定することをさらに含み、プールした溶出液のA260/A280が≧1.25(たとえば約1.28~1.35)である、E94からE96のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
E98.プールした溶出液が6.8~7.6(たとえば7.0~7.4)のpHを有する、E94からE97のいずれか一項に記載の方法。
【0110】
E99.フルカプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~95%、20%~98%、20%~99%、20%~99%より高く、40%~50%、40%~60%、40%~70%、40%~80%(たとえば、44%、45%、50%、53%)を構成し、カプシドを分析用超遠心分離(AUC)によって測定してもよい、E78からE98のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
E100.フルカプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの約55%(たとえば55%+/-7%)を構成する、E78からE99のいずれか一項に記載の方法。
【0112】
E101.フルカプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの約49%(たとえば49%+/-2%)を構成する、E78からE99のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
E102.フルカプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの52+/-7%を構成する、E78からE99のいずれか一項に記載の方法。
【0114】
E103.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、全カプシドの48%~62%のフルrAAVカプシドを含み、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製される、E78からE99のいずれか一項に記載の方法。
【0115】
E104.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、全カプシドの47%~51%のフルrAAVカプシドを含み、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製される、E78からE99のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
E105.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、全カプシドの30%を超える(たとえば、40%~55%、45%~65%、40%~99%より高い)フルカプシドを含み、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液が、溶液中の全カプシドの30%未満(たとえば12%~25%)のフルカプシドを含む、E78からE99のいずれか一項に記載の方法。
【0117】
E106.空カプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの10%~99%、10%~90%、10%~80%、10%~70%、10%~65%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~65%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、または18%~29%(たとえば≦29%)を構成し、カプシドを分析用超遠心分離(AUC)によって測定してもよい、E78からE105のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
E107.空カプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの20%+/-7%(たとえば21%)を構成する、E78からE106のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
E108.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、全カプシドの11%~31%の空カプシドを含み、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製される、E78からE106のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
E109.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、全カプシドの18%~22%の空カプシドを含み、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製される、E78からE106のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
E110.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、全カプシドの30%未満の空カプシドを含み、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液が、溶液中の全カプシドの40%~90%の空カプシドを含む、E78からE106のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
E111.中間体カプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの10%~65%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~65%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、または18%~22%を構成し、カプシドを分析用超遠心分離(AUC)によって測定してもよい、E78からE110のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
E112.中間体カプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの28%+/-5%を構成する、E78からE111のいずれか一項に記載の方法。
【0124】
E113.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、全カプシドの21%~27%の中間体カプシドを含み、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製される、E78からE111のいずれか一項に記載の方法。
【0125】
E114.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、全カプシドの28%~36%の中間体カプシドを含み、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製される、E78からE111のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
E115.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、全カプシドの45%~65%のフルrAAVカプシド、19%~28%の中間体カプシド、および10%~37%の空カプシドを含み、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製される、E78からE111のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
E116.フルカプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの55%+/-7%を構成する、E115に記載の方法。
【0128】
E117.中間体カプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの24%+/-3%を構成する、E115に記載の方法。
【0129】
E118.空カプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの21%+/-10%を構成する、E115に記載の方法。
【0130】
E119.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、全カプシドの45%~52%のフルrAAVカプシド、27%~37%の中間体カプシド、および/または18%~22%の空カプシドを含み、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液が、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製される、E78からE118のいずれか一項に記載の方法。
【0131】
E120.フルカプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの49%+/-2%を構成する、E119に記載の方法。
【0132】
E121.中間体カプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの32%+/-4%を構成する、E119に記載の方法。
【0133】
E122.空カプシドが、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液中の全カプシドの20%+/-2%を構成する、E119に記載の方法。
【0134】
E123.プールした溶出液が、カラム上にロードした溶液と比較してフルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されている、E94からE122のいずれか一項に記載の方法。
【0135】
E124.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液の%VGステップ収率が、1%~10%、1~20%、1%~30%、1%~40%、1%~50%、1%~60%、1%~70%、1%~80%、1%~90%、1%~99%、5%~95%、10%~85%、15%~75%、20%~65%、25%~55%、30%~45%、30%~80%、40%~70%、または100%である、E78からE123のいずれか一項に記載の方法。
【0136】
E125.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液の%VGステップ収率が、31%~66%(たとえば47%+/-11%)である、E124に記載の方法。
【0137】
E126.250LのSUB中で生成した溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液の%VGステップ収率が30%~70%(たとえば37%~60%)である、E124に記載の方法。
【0138】
E127.250LのSUB中で生成した溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液の%VGステップ収率が45%+/-8%である、E124に記載の方法。
【0139】
E128.2000LのSUB中で生成した溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液の%VGステップ収率が25%~75%(たとえば31%~66%)である、E124に記載の方法。
【0140】
E129.2000LのSUB中で生成した溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液の%VGステップ収率が50%+/-13%である、E124に記載の方法。
【0141】
E130.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液の%VGステップ収率が、超遠心分離および陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製した、それ以外は同一である溶出液画分またはプールした溶出液の%VGステップ収率よりも高い、E124からE129のいずれか一項に記載の方法。
【0142】
E131.250LのSUB中で生成した溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液のA260/A280(SEC)が1.29+/-0.03である、E78からE130のいずれか一項に記載の方法。
【0143】
E132.2000LのSUB中で生成した溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液のA260/A280(SEC)が1.30+/-0.01である、E78からE130のいずれか一項に記載の方法。
【0144】
E133.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液の%VGカラム収率が、1%~10%、1~20%、1%~30%、1%~40%、1%~50%、1%~60%、1%~70%、1%~80%、1%~90%、1%~99%、5%~95%、10%~85%、15%~75%、20%~65%、25%~55%、30%~45%、30%~80%、40%~70%、または100%である、E78からE132のいずれか一項に記載の方法。
【0145】
E134.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液の%VGカラム収率が20%~100%(たとえば63%+/-26%)である、E133に記載の方法。
【0146】
E135.250LのSUB中で生成した溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液の%VGカラム収率が40%~100%である、E133に記載の方法。
【0147】
E136.2000LのSUB中で生成した溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液の%VGカラム収率が10%~70%(たとえば20%~61%)である、E133に記載の方法。
【0148】
E137.溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液を、ウイルス濾過、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)、0.2μmのフィルターを通した濾過、およびその組合せからなる群から選択される濾過方法にさらに供して、原薬を生成する、E78からE136のいずれか一項に記載の方法。
【0149】
E138.フルカプシドが、原薬中の全カプシドの20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~95%、20%~98%、20%~99%、20%~99%より高く、40%~50%、40%~60%、40%~70%、40%~80%(たとえば、44%、45%、50%、53%)を構成し、カプシドを分析用超遠心分離(AUC)によって測定してもよい、E137に記載の方法。
【0150】
E139.原薬が、全カプシドの45%~65%のフルrAAVカプシドを含み、原薬が、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製されていてもよい、E137またはE138に記載の方法。
【0151】
E140.フルカプシドが、原薬中の全カプシドの52+/-7%を構成する、E137からE139のいずれか一項に記載の方法。
【0152】
E141.原薬が、全カプシドの45%~52%のフルrAAVカプシドを含み、原薬が、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製される、E137またはE138に記載の方法。
【0153】
E142.原薬が、原薬中の全カプシドの30%を超える(たとえば、40%~55%、45%~65%、40%~99%より高い)フルカプシドを含み、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液が、溶液中の全カプシドの30%未満(たとえば12%~25%)のフルカプシドを含む、E137またはE138に記載の方法。
【0154】
E143.空カプシドが、原薬中の全カプシドの10%~99%、10%~90%、10%~80%、10%~70%、10%~65%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~65%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、または18%~29%(たとえば≦29%)を構成し、カプシドを分析用超遠心分離(AUC)によって測定してもよい、E137からE142のいずれか一項に記載の方法。
【0155】
E144.原薬が、全カプシドの10%~37%の空カプシドを含み、原薬が、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製されていてもよい、E143のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
E145.空カプシドが、原薬中の全カプシドの20%+/-7%を構成する、E143またはE144に記載の方法。
【0157】
E146.原薬が、全カプシドの18%~22%の空カプシドを含み、原薬が、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製されていてもよい、E143のいずれか一項に記載の方法。
【0158】
E147.原薬が、原薬中の全カプシドの30%未満の空カプシドを含み、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液が、溶液中の全カプシドの40%~90%の空カプシドを含む、E143からE146のいずれか一項に記載の方法。
【0159】
E148.中間体カプシドが、原薬中の全カプシドの10%~65%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~65%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、または18%~22%を構成し、カプシドを分析用超遠心分離(AUC)によって測定してもよい、E137からE147のいずれか一項に記載の方法。
【0160】
E149.原薬が、全カプシドの19%~37%の中間体カプシドを含み、原薬が、250Lまたは2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製されていてもよい、E137からE148のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
E150.中間体カプシドが、原薬中の全カプシドの28%+/-5%を構成する、E148またはE149に記載の方法。
【0162】
E151.原薬が、全カプシドの45%~65%のフルrAAVカプシド、19%~28%の中間体カプシド、および10%~37%の空カプシドを含み、原薬が、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製される、E137からE150のいずれか一項に記載の方法。
【0163】
E152.フルカプシドが、全カプシドの55%+/-7%を構成する、E151に記載の方法。
【0164】
E153.中間体カプシドが、全カプシドの24%+/-3%を構成する、E151またはE152に記載の方法。
【0165】
E154.空カプシドが、全カプシドの21%+/-10%を構成する、E151からE153のいずれか一項に記載の方法。
【0166】
E155.原薬が、全カプシドの45%~52%のフルrAAVカプシド、27%~37%の中間体カプシド、および/または18%~22%の空カプシドを含み、原薬が、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製される、E137からE150のいずれか一項に記載の方法。
【0167】
E156.フルカプシドが、全カプシドの49%+/-2%を構成する、E155に記載の方法。
【0168】
E157.中間体カプシドが、全カプシドの32%+/-4%を構成する、E155またはE156に記載の方法。
【0169】
E158.空カプシドが、全カプシドの20%+/-2%を構成する、E155からE157のいずれか一項に記載の方法。
【0170】
E159.精製しようとするrAAVベクターを含む溶液中の宿主細胞タンパク質(HCP)の量と比較して、原薬のHCPが枯渇されている、E137からE158のいずれか一項に記載の方法。
【0171】
E160.ELISAによって測定して、原薬が最低定量レベル(LLOQ)未満のHCPの量を含む、E137からE159のいずれか一項に記載の方法。
【0172】
E161.ELISAによって測定して、原薬がLLOQ未満であるHCPの量を含み、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液が、約1~500pgのHCP/1×109VGを含み、溶液が、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの親和性クロマトグラフィー精製から作製されていてもよい、E137からE160のいずれか一項に記載の方法。
【0173】
E162.ELISAによって測定して、原薬がLLOQ未満であるHCPの量を含み、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液が、約100~1000pgのHCP/1×109VGを含み、溶液が、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの親和性クロマトグラフィー精製から作製されていてもよい、E137からE161のいずれか一項に記載の方法。
【0174】
E163.任意選択で逆相HPLCによって測定して、原薬の純度が、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%である、E137からE162のいずれか一項に記載の方法。
【0175】
E164.原薬の純度が約98.6+/-0.6%であり、原薬が、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製されていてもよい、E163に記載の方法。
【0176】
E165.原薬の純度が約99.3+/-0.3%であり、原薬が、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製されていてもよい、E164に記載の方法。
【0177】
E166.任意選択でSECによって測定して、原薬が約0~10%のHMMSを含む、E137からE165のいずれか一項に記載の方法。
【0178】
E167.原薬が2.6+/-0.8%のHMMSを含み、原薬が、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製されていてもよい、E166に記載の方法。
【0179】
E168.原薬が2.9+/-0.4%のHMMSを含み、原薬が、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製されていてもよい、E166に記載の方法。
【0180】
E169.原薬が約7.0~25pg/1×109VGの残留HC-DNAを含む、E137からE168に記載の方法。
【0181】
E170.原薬が約17.4+/-6.7pg/1×109VGのHC-DNAを含み、原薬が、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製されていてもよい、E169に記載の方法。
【0182】
E171.原薬が約9.3+/-1.2pg/1×109VGのHC-DNAを含み、原薬が、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製されていてもよい、E169に記載の方法。
【0183】
E172.任意選択でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定して、原薬が約1.24~1.32のA260/A280を有する、E137からE171のいずれか一項に記載の方法。
【0184】
E173.任意選択でSECによって測定して、原薬が1.24~1.32のA260/A280を有しており、原薬が、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製される、E172に記載の方法。
【0185】
E174.任意選択でSECによって測定して、原薬が1.28~1.31のA260/A280を有しており、原薬が、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製から作製されていてもよい、E172に記載の方法。
【0186】
E175.カラムの体積が1.0mL~6.6Lである、E1からE174のいずれか一項に記載の方法。
【0187】
E176.カラムの体積が、約1.0mL、約5.1mL、約6.67mL、約1.256L、約1.3L、約6.3L、約6.4L、または約6.6Lである、E1からE175のいずれか一項に記載の方法。
【0188】
E177.rAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAVrh74、AAV12、AAV2i8、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVLK03、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、RHM4-1(WO2015/013313号の配列番号5)、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAV hu.26、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、AAV2i8、AAV29G、AAV2.8G9、AVV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15からなる群から選択されるAAV血清型からのカプシドタンパク質を含む、E1からE176のいずれか一項に記載の方法。
【0189】
E178.精製rAAVベクターが生成される、E1からE177のいずれか一項に記載の方法。
【0190】
E179.精製rAAVベクターが原薬である、E178に記載の方法。
【0191】
E180.原薬と薬学的に許容できる賦形剤とを合わせて薬物製品を形成する、E137からE174またはE179のいずれか一項に記載の方法。
【0192】
E181.精製rAAVベクター、原薬、および/または薬物製品が、疾患、障害、または状態を処置するために対象への投与に適している、E178からE180のいずれか一項に記載の方法。
【0193】
E182.疾患、障害、または状態がデュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD)である、E181に記載の方法。
【0194】
E183.rAAVベクターが、ヒトミニジストロフィンをコードしている修飾核酸を含むベクターゲノムを含む、E1からE182のいずれか一項に記載の方法。
【0195】
E184.修飾核酸が、配列番号1の核酸配列を含むまたはそれからなる、E183に記載の方法。
【0196】
E185.修飾核酸が、配列番号2のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるヒトミニジストロフィンをコードしている、E183またはE184に記載の方法。
【0197】
E186.ベクターゲノムが、合成ハイブリッド筋肉特異的プロモーターhCK、合成ハイブリッド筋肉特異的プロモーターhCKプラス、ならびに合成筋肉特異的エンハンサーおよびプロモーターからなる群から選択される筋肉特異的プロモーターおよび/またはエンハンサーを含む、E183からE185のいずれか一項に記載の方法。
【0198】
E187.合成ハイブリッド筋肉特異的プロモーターhCKが、配列番号3の核酸配列を含むまたはそれからなる、E186に記載の方法。
【0199】
E188.合成ハイブリッド筋肉特異的プロモーターhCKプラスが、配列番号4の核酸配列を含むまたはそれからなる、E186に記載の方法。
【0200】
E189.合成筋肉特異的エンハンサーおよびプロモーターが、配列番号5の核酸配列を含むまたはそれからなる、E186に記載の方法。
【0201】
E190.ベクターゲノムがポリアデニル化(ポリA)シグナル配列を含む、E183からE189のいずれか一項に記載の方法。
【0202】
E191.ポリAシグナル配列が、配列番号6の核酸配列を含むまたはそれからなる、E190に記載の方法。
【0203】
E192.ベクターゲノムが転写ターミネーター配列を含む、E183からE191のいずれか一項に記載の方法。
【0204】
E193.転写ターミネーター配列が、配列番号9の核酸配列を含むまたはそれからなる、E192に記載の方法。
【0205】
E194.ベクターゲノムが少なくとも1つのITRを含む、E183からE193のいずれか一項に記載の方法。
【0206】
E195.少なくとも1つのITRが、配列番号7、配列番号8、配列番号13、配列番号14、およびその組合せから選択される核酸配列を含むまたはそれからなる、E194に記載の方法。
【0207】
E196.ベクターゲノムが発現カセットを含み、発現カセットが、配列番号10の核酸配列を含むまたはそれからなる、E183からE195のいずれか一項に記載の方法。
【0208】
E197.rAAVベクターがAAV9のVP1ポリペプチドを含む、E1からE196のいずれか一項に記載の方法。
【0209】
E198.VP1ポリペプチドが配列番号11のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、E197に記載の方法。
【0210】
E199.rAAVベクターが、AAV9カプシドタンパク質と配列番号1の核酸配列を含む導入遺伝子とを含む、E1からE198のいずれか一項に記載の方法。
【0211】
E200.AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製することをさらに含む、E1からE199のいずれか一項に記載の方法。
【0212】
E201.rAAVベクターを含む溶液が、ロードする前に希釈および任意選択で濾過した、親和性溶出液、細胞溶解液からの上清、および回収後の溶液からなる群から選択される、E200に記載の方法。
【0213】
E202.rAAVベクターを含む溶液が、ロードする前に希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液である、E200またはE201に記載の方法。
【0214】
E203.溶液が少なくとも1つの精製および/またはプロセスステップを既に受けている、E200からE202のいずれか一項に記載の方法。
【0215】
E204.rAAVベクターを含む溶液が、rAAVベクターの親和性クロマトグラフィー精製から生じる溶出液である、E200からE203のいずれか一項に記載の方法。
【0216】
E205.調製が、rAAVベクターを含む溶液を希釈することを含む、E200からE204のいずれか一項に記載の方法。
【0217】
E206.rAAVベクターを含む溶液を希釈することが、溶液を約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約25倍に希釈して、希釈溶液を生成することを含む、E205に記載の方法。
【0218】
E207.rAAVベクターを含む溶液を希釈することが、溶液を約15倍に希釈して、希釈溶液を生成することを含む、E205またはE206に記載の方法。
【0219】
E208.rAAVベクターを含む溶液を希釈することを、AEXカラムとインラインで行い、希釈溶液が、第1のチューブを通してY字コネクタへと送達され、rAAVベクターを含む溶液が、第2のチューブを通してY字コネクタへと送達される、E205からE207のいずれか一項に記載の方法。
【0220】
E209.溶液が約15倍に希釈されるように、希釈溶液を1~5mL/分の流速で送達し、rAAVベクターを含む溶液を0.1~2mL/分の流速で送達する、E208に記載の方法。
【0221】
E210.希釈溶液が、緩衝剤、アミノ酸、界面活性剤、およびその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を含む、E208またはE209に記載の方法。
【0222】
E211.緩衝剤が、トリス、ビス-トリスプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、ビシン、およびその組合せからなる群から選択される、E210に記載の方法。
【0223】
E212.アミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、シトルリン、およびその組合せからなる群から選択される、E210またはE211に記載の方法。
【0224】
E213.アミノ酸がヒスチジンである、E210からE212のいずれか一項に記載の方法。
【0225】
E214.界面活性剤が、ポロキサマー188(P188)、Triton X-100、ポリソルベート80(PS80)、Brij-35、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)、およびその組合せからなる群から選択される、E210からE213のいずれか一項に記載の方法。
【0226】
E215.界面活性剤がP188である、E210からE214のいずれか一項に記載の方法。
【0227】
E216.希釈溶液が、約100mM~約300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、約100mM~約300mM(たとえば約200mM)のトリス、約0.1%~約1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH約8.5~約9.5(たとえば約8.8)を含む、E208からE215のいずれか一項に記載の方法。
【0228】
E217.rAAVベクターを含む溶液を希釈することが、rAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードするステップに先行する、E205からE216のいずれか一項に記載の方法。
【0229】
E218.rAAVベクターを含む溶液の希釈後のpHが、希釈前の溶液のpHと比較して増加している、E205からE217のいずれか一項に記載の方法。
【0230】
E219.rAAVベクターを含む溶液の希釈前のpHが3.0~4.4であり、希釈後の溶液のpHが8.5~9.5である、E205からE218のいずれか一項に記載の方法。
【0231】
E220.rAAVベクターを含む溶液の希釈後の伝導率が、希釈前の溶液の伝導率と比較して減少している、E205からE219のいずれか一項に記載の方法。
【0232】
E221.rAAVベクターを含む溶液の希釈前の伝導率が5.0~7.0mS/cm(たとえば5.5~6.5mS/cm)であり、希釈後の溶液の伝導率が1.7~3.5mS/cmである、E205からE220のいずれか一項に記載の方法。
【0233】
E222.rAAVベクターを含む希釈溶液を濾過することをさらに含む、E205からE221のいずれか一項に記載の方法。
【0234】
E223.希釈溶液を濾過することが、0.2μmのフィルターを通した濾過を含む、E222に記載の方法。
【0235】
E224.フィルターがカラムとインラインである、E222またはE223に記載の方法。
【0236】
E225.rAAVベクターを含む溶液を希釈および濾過することが、rAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードするステップに先行する、E222からE224のいずれか一項に記載の方法。
【0237】
E226.希釈および任意選択で濾過したrAAVベクターを含む溶液のパーセントベクターゲノム(%VG)収率が、希釈および任意選択で濾過の前の溶液中に存在するVGの量と比較して60%~100%である、E205からE225のいずれか一項に記載の方法。
【0238】
E227.rAAVベクターを含む希釈溶液の%VG希釈収率が88%+/-36%である、E205からE226のいずれか一項に記載の方法。
【0239】
E228.
i)第1の溶液を希釈溶液で2~25倍(たとえば15倍)に希釈するステップと、任意選択で、
ii)ステップi)からの溶液を、フィルターを通して濾過して、希釈および任意選択で濾過した溶液を生成するステップであって、希釈および任意選択で濾過した溶液のpHが、第1の溶液のpHと比較して増加しており、希釈および任意選択で濾過した溶液の伝導率が、第1の溶液の伝導率と比較して減少しているステップと
を含む、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【0240】
E229.i)希釈および任意選択で濾過した溶液のpHが8.5~9.5である、ii)希釈および任意選択で濾過した溶液の伝導率が1.7~3.3mS/cmである、ならびに/またはiii)希釈後の溶液の%VG希釈収率が35%~100%である、E228に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【0241】
E230.rAAVベクターがAAV9カプシドタンパク質を含む、E228またはE229に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【0242】
E231.
i)精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を、カラム中のAEX固定相上にロードするステップと、
ii)カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップであって、第1の勾配溶出緩衝液の百分率を、第2の勾配溶出緩衝液の百分率の変動に対して反比例する様式で変動させるステップと、
iii)カラムフロースルーの吸光度が吸光度閾値に達した際に開始して、勾配溶出中のカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集するステップと、
iv)カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定し、A260/A280比を決定するステップと
を含む、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0243】
E232.カラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、rAAVベクターを含むプールした溶出液を形成することをさらに含む、E231に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0244】
E233.AEX固定相がPOROS(商標)50 HQである、E231またはE232に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0245】
E234.溶液が、固定相上にロードする前に希釈および濾過した親和性溶出液である、E231からE233のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0246】
E235.固定相から溶出された材料が精製しようとするrAAVベクターを含む、E231からE234のいずれか一項に記載のrAAVベクターを精製する方法。
【0247】
E236.第1の勾配溶出緩衝液が、約50mM~約150mM(たとえば約100mM)のトリス、約0.005%~約0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH約8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む、E231からE235のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0248】
E237.第2の勾配溶出緩衝液が、約400mM~約600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、約50mM~約150mM(たとえば約100mM)のトリス、約0.005%~約0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH約8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む、E231からE236のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0249】
E238.勾配溶出の開始時に第1の勾配溶出緩衝液の百分率が100%であり、勾配溶出の終了時に第2の勾配溶出緩衝液の百分率が100%である、E231からE237のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0250】
E239.約15~約25(たとえば20CV)の第1の勾配溶出緩衝液、第2の勾配溶出緩衝液、または両方の混合物を勾配溶出中に固定相に適用し、勾配溶出の経過中における酢酸ナトリウムの濃度の変化の速度が約25mM/CVであるように、勾配溶出中の酢酸ナトリウムの濃度を0mM~500mMで変動させる、E236からE238のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0251】
E240.フルカプシドが固定相から第1の溶出ピーク中に溶出され、フルカプシドが固定相から第2の溶出ピークの最初の部分中に溶出される、ならびに/または空カプシドが、AEXカラムフロースルー中でおよび/もしくは第2の溶出ピークの最後の部分中で回収される、E231からE239のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0252】
E241.吸光度閾値が、280nmで測定して≧0.5mAU/mm経路長である、E231からE240のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0253】
E242.溶出液の少なくとも1つの画分の体積がCVの≧1/3に等しい、E231からE241のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0254】
E243.溶出液の少なくとも1つの画分を収集することが、少なくとも10個の溶出液画分を収集することを含む、E231からE242のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0255】
E244.溶出液の少なくとも1つの画分のpHを6.8~7.6(たとえばpH約7.2)のpHに調節する、E231からE242のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0256】
E245.溶出液の少なくとも1つの画分、溶出液の少なくとも2つの画分、および/またはプールした溶出液のA260/A280比が、≧1.25(たとえば約1.28~1.35)である、E231からE244のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0257】
E246.プールした溶出液が20%~100%(たとえば63+/-26%)の%VGカラム収率を有する、E231からE245のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0258】
E247.プールした溶出液が31%~66%(たとえば47+/-11%)の%VGステップ収率を有する、E231からE246のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0259】
E248.カラム上にロードした、希釈および濾過した親和性溶出液と比較して、溶出液の少なくとも1つの画分および/またはプールした溶出液が、フルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されているE231からE247のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0260】
E249.精製rAAVベクターが生成される、E231からE248のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0261】
E250.プールした溶出液を、ウイルス濾過、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)、0.2μmのフィルターを通した濾過、およびその組合せからなる群から選択される方法によって濾過して、原薬を生成することをさらに含む、E231からE249のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0262】
E251.原薬が、全カプシドの45%~65%(たとえば52+/-7%)のフルカプシドを含む、E250に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0263】
E252.原薬が、全カプシドの19%~37%(たとえば28+/-5%)の中間体カプシドを含む、E250またはE251に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0264】
E253.原薬が、全カプシドの10%~37%(たとえば20+/-7%)の空カプシドを含む、E250からE252のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0265】
E254.rAAVベクターがAAV9カプシドタンパク質を含む、E231からE253のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0266】
E255.
i)精製しようとするrAAVベクターを含む親和性溶出液を、カラム中のAEX固定相(たとえばPOROS(商標)50 HQ)上にロードするステップであって、溶出液が、
a)約200mMのヒスチジン、約200mMのトリス、約0.5%のP188、pH8.7~9.0を含む緩衝液で約14.4~15.5倍(たとえば約15倍)に希釈されており、任意選択で、
b)固定相上にロードする前に0.2μmのフィルターを通して濾過されている、ステップ、
ii)カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップであって、約20CVの第1の勾配溶出緩衝液(たとえば、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9)、第2の勾配溶出緩衝液(たとえば、500mMの酢酸ナトリウム、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9)、もしくは両方の混合物を固定相に適用し、勾配溶出の経過中における酢酸ナトリウムの濃度の変化の速度が約25mM/CVであるように、酢酸ナトリウムの濃度を0mM~500mMで変動させるステップ、
iii)溶出液のA280が>0.5mAU/mm経路長であるときに、勾配溶出中のカラムから溶出液の約10個の画分を収集し、溶出液の少なくとも1つの画分の体積がCVの≧1/3に等しいステップ、
iv)カラムからの約10個の溶出液画分のpHを、14.3%~15%(溶出液体積重量)の約250mMのクエン酸ナトリウム、pH3.5を含む溶液の添加によって、6.8~7.6のpHに調節するステップ、
v)カラムから収集した溶出液の約10個の画分の吸光度を測定し、A260/A280比を決定するステップ、ならびに/または
vi)カラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成するステップ
を含み、
溶出液の少なくとも2つの画分のそれぞれのA260/A280が≧1.25であり、
カラム上にロードした、希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液と比較して、プールした溶出液が、フルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されており、
精製rAAVベクターが生成される、
rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0267】
E256.固定相から溶出された材料が精製しようとするrAAVベクターを含む、E255に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0268】
E257.
i)約5CVの注入用水をカラム中のAEX固定相に適用することを含む、使用前のフラッシュのステップ、
ii)任意選択で上向流によって、約16CVの、約0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、浄化ステップ、
iii)約5CVの、約2MのNaCl、100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、再生ステップ、
iv)約5CVの、約100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、
v)約5CVの、約100mMのトリス、500mMの酢酸ナトリウム、0.01%のP188、pH8.9を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、
vi)約5CVの、約200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.8を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、
vii)精製しようとするrAAVベクターを含む親和性溶出液を、カラム中のAEX固定相上にロードするステップであって、任意選択で、溶出液が、
a)約200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.7~9.0を含む緩衝液で約15倍に希釈されており、任意選択で、
b)固定相上にロードする前に0.2μmのフィルターを通して濾過されている、ステップ、
viii)約5CVの、約100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、
ix)カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップであって、約20CVの第1の勾配溶出緩衝液(たとえば、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9)、第2の勾配溶出緩衝液(たとえば、500mMの酢酸ナトリウム、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9)、もしくは両方の混合物を固定相に適用し、勾配溶出の経過中における酢酸ナトリウムの濃度の変化の速度が約25mM/CVであるように、酢酸ナトリウムの濃度を0mM~500mMで変動させるステップ、
x)溶出液のA280が≧0.5mAU/mm経路長であるときに、勾配溶出中のカラムから約10個の溶出液画分を収集するステップであって、約10個の溶出液画分の体積がCVの約≧1/3であるステップ、
xi)約10個の溶出液画分のpHを、14.3%~15%(溶出液体積重量)の約250mMのクエン酸ナトリウム、pH3.5を含む溶液の添加によって、6.8~7.6のpHに調節するステップ、
xii)カラムから収集した溶出液の約10個の画分(faction)の吸光度を測定し、A260/A280比を決定するステップ、ならびに/または
xiii)カラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成するステップ
を含み、
溶出液の少なくとも2つの画分のそれぞれのA260/A280が≧1.25であり、
親和性溶出液ならびに/または希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液と比較して、プールした溶出液が、空カプシドが枯渇されているおよび/またはフルカプシドが富化されており、
ステップi)~ix)のうちの少なくとも1つを、270~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、1.3Lのカラムを通して1.5~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)もしくは約314mL/分の流速で、および/または約3.5~4.5分/CV(たとえば4分/CV)の滞留時間で行い、ならびに/あるいは精製rAAVベクターが生成される、
rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0269】
E258.固定相から溶出された材料が精製しようとするrAAVベクターを含む、E257に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0270】
E259.
i)親和性溶出液を、約200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.8を含む希釈溶液で約15倍に希釈するステップと、
ii)ステップi)からの親和性溶出液を、0.2μmのフィルターを通して濾過して、希釈および濾過した親和性溶出液を生成するステップであって、希釈および濾過した親和性溶出液のpHが、親和性溶出液のpHと比較して(たとえば約8.5~9.5まで)増加しており、希釈および濾過した親和性溶出液の伝導率が、親和性溶出液の伝導率と比較して(たとえば約1.7mS/cm~3.3mS/cmまで)減少している、ステップと
を含む、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【0271】
E260.希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液をAEX固定相上にロードする、E259に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【0272】
E261.親和性溶出液が、250Lまたは2000Lの体積を有する容器中で生成したrAAVベクターの、親和性クロマトグラフィーに基づく精製から作製される、E259またはE260に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【0273】
E262.親和性溶出液の希釈後の%VG希釈収率が88%+/-36%である、E259からE261のいずれか一項に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【0274】
E263.
i)≧4.5CV(たとえば約5CV)の注入用水を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、使用前のフラッシュのステップ、
ii)任意選択で上向流によって、約14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、約0.1M~1.0M(たとえば約0.5M)のNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、浄化ステップ、ならびに/または
iii)約4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約1M~3MのNaCl、50mM~150mMのトリス、pH8.5~9.5を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、再生ステップであって、ステップi)~iii)のうちの少なくとも1つを、270~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、1.5~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)の流速、および/もしくは3.5~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間で行ってもよい、ステップ
を含む、rAAVベクターをAEXによって精製する方法において使用するための固定相を調製する方法。
【0275】
E264.約5CVの、i)約100mMのトリス、pH9を含む溶液、ii)約100mMのトリス、500mMの酢酸ナトリウム、0.01%のP188、pH8.9を含む溶液、およびiii)約200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.8を含む溶液のうちの1つまたは複数を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む平衡化ステップをさらに含む、E263に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法において使用するための固定相を調製する方法。
【0276】
E265.少なくとも1つのステップを、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードする前に行う、E263またはE264に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法において使用するための固定相を調製する方法。
【0277】
E266.E1からE227またはE231からE258のいずれか一項に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0278】
E267.
i)精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を、カラム中のAEX固定相上にロードするステップ、
ii)カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップであって、約20CVの第1の勾配溶出緩衝液(たとえば、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9)、第2の勾配溶出緩衝液(たとえば、500mMの酢酸ナトリウム、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9)、もしくは両方の混合物を固定相に適用し、勾配溶出の経過中における塩の濃度の変化の速度が約25mM/CVであるように、塩の濃度を0mM~500mMで変動させるステップ、
iii)カラムフロースルーの吸光度が吸光度閾値に達した(たとえばA280が>0.5mAU/mm経路長である)際に、クロマトグラフィーステップ(たとえば勾配溶出)中に、カラムから少なくとも1つ(たとえば約10個)の溶出液画分を収集するステップ、
iv)カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定し、A260/A280比を決定するステップ、および/または
v)カラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、精製rAAVベクターを含むプールした溶出液を形成するステップ
を含む方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0279】
E268.固定相から溶出された材料が精製しようとするrAAVベクターを含む、E267に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0280】
E269.塩が酢酸ナトリウムである、E267からE268に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0281】
E270.溶液が、a)約200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.7~9.0を含む緩衝液で約14.4~15.5倍(たとえば約15倍)に希釈されており、任意選択でb)固定相上にロードする前に0.2μmのフィルターを通して濾過されている、親和性溶出液である、E267からE269のいずれか一項に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0282】
E271.カラムからの少なくとも1つ(たとえば約10個)の溶出液画分のpHを、14.3%~15%(溶出液体積重量)の約250mMのクエン酸ナトリウム、pH3.5を含む溶液の添加によって、6.8~7.6のpHに調節することをさらに含む、E267からE270のいずれか一項に記載の方法によって調製した、精製rAAVベクター。
【0283】
E272.溶出液の少なくとも2つの画分のそれぞれのA260/A280が≧1.25であり、カラム上にロードした、希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液と比較して、プールした溶出液が、フルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されており、精製rAAVベクターが生成される、E267からE271のいずれか一項に記載の精製rAAVベクター。
【0284】
E273.rAAVベクターがAAV9カプシドタンパク質を含む、E267からE272のいずれか一項に記載の精製rAAVベクター。
【0285】
E274.
i)精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を、カラム中のAEX固定相上にロードするステップ、
ii)カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップであって、第1の勾配溶出緩衝液の百分率を、第2の勾配溶出緩衝液の百分率の変動に対して反比例する様式で変動させるステップ、
iii)カラムフロースルーの吸光度が吸光度閾値に達した際に開始して、クロマトグラフィーステップ中に溶出液の少なくとも1つの画分をカラムから収集するステップ、
iv)カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定し、A260/A280比を決定するステップ、および/または
v)カラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、精製rAAVベクターを含むプールした溶出液を形成するステップ
を含む方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0286】
E275.固定相から溶出された材料が精製しようとするrAAVベクターを含む、E274に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0287】
E276.rAAVベクターがAAV9カプシドタンパク質を含む、E274またはE275に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0288】
E277.プールした溶出液を、ウイルス濾過、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)、0.2μmのフィルターを通した濾過、およびその組合せからなる群から選択される方法によって濾過して、原薬を生成することをさらに含む、E274からE276のいずれか一項に記載の方法によって調製した、精製rAAVベクター。
【0289】
E278.原薬を、疾患、障害、または状態を処置するためにヒト対象への投与に適している薬物製品を作製するために使用する、E277に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0290】
E279.疾患、障害、または状態がDMDである、E278に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0291】
E280.
i)第1の溶液(たとえば親和性溶出液)を、200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.8を含む緩衝液で2~25倍(たとえば約15倍)に希釈するステップと、任意選択で
ii)ステップi)からの第1の溶液を、0.2μmのフィルターを通して濾過して、希釈および任意選択で濾過した溶液を生成するステップであって、希釈および任意選択で濾過した溶液のpHが、第1の溶液のpHと比較して増加しており、希釈および任意選択で濾過した溶液の伝導率が、第1の溶液の伝導率と比較して減少しているステップと
を含む方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【0292】
E281.第1の溶液が親和性溶出液である、E280に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【0293】
E282.親和性溶出液が、250Lまたは2000Lの体積を有する容器(たとえば単回使用バイオリアクター)中で生成したrAAVベクターの親和性精製から作製される、E281に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【0294】
E283.希釈および任意選択で濾過した溶液のpHが8.5~9.5である、E280からE282のいずれか一項に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【0295】
E284.希釈および任意選択で濾過した溶液の伝導率が1.7~3.3mS/cmである、E280からE283のいずれか一項に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【0296】
E285.希釈および任意選択で濾過した溶液の%VG希釈収率が88%+/-36%である、E280からE284のいずれか一項に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【0297】
E286.
i)第1の溶液(たとえば親和性溶出液)を、ヒスチジン、トリス、およびP188を含む希釈溶液で2~25倍(たとえば15倍)に希釈するステップと、任意選択で、
ii)希釈したステップi)からの第1の溶液を、0.2μmのフィルターを通して濾過して、希釈および任意選択で濾過した溶液を生成するステップであって、希釈および任意選択で濾過した溶液のpHが、第1の溶液のpHと比較して増加しており、希釈および任意選択で濾過した溶液の伝導率が、第1の溶液の伝導率と比較して減少している、ステップと
を含む方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【0298】
E287.希釈溶液が、約100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(約0.5%)のP188、pH8.5~9.5を含む、E280に記載の方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【0299】
E288.第1の溶液のpHが希釈および任意選択で濾過する前に3.0~4.4であり、希釈および任意選択で濾過した後の第1の溶液のpHが、8.5~9.5または8.7~9.0(たとえば、8.8、9.0)である、E280またはE281に記載の方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【0300】
E289.第1の溶液の伝導率が、希釈および任意選択で濾過のステップの前に5.0~7.0mS/cm(たとえば5.5~6.5mS/cm)であり、希釈および任意選択で濾過のステップの後の第1の溶液の伝導率が、1.7~3.5mS/cm、1.8~2.8mS/cm、または2.2~2.6mS/cmである、E280からE282のいずれか一項に記載の方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【0301】
E290.希釈および任意選択で濾過した第1の溶液の%VG希釈収率が35%~100%である、E280からE283のいずれか一項に記載の方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【0302】
E291.rAAVベクターがAAV9またはAAV3Bカプシドタンパク質を含み、希釈および任意選択で濾過した溶液をAEX固定相上にロードしてもよい、E280からE289のいずれか一項に記載の方法によって調製した、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液。
【0303】
E292.
i)任意選択で上向流によって、14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、約0.1M~1.0M(たとえば約0.5M)のNaOHを含む溶液を、固定相に適用することを含む、固定相の使用後の浄化ステップ、
ii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約1M~3M(たとえば約2M)のNaCl、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえばpH約9)を含む溶液を、固定相に適用することを含む、固定相の再生ステップ、
iii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえばpH約9)を含む溶液を、固定相に適用することを含む、固定相の平衡化ステップ、
iv)≧4.5(たとえば約5CV)の注入用水を固定相に適用することを含む、固定相の使用後のフラッシュのステップ、および/または
v)2.7~3.3CV(たとえば約3CV)の、約17.5%のエタノールを含む溶液を、固定相に適用することを含む保存液を固定相に適用するステップ
を含み、ステップi)~v)のうちの少なくとも1つを、270~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、6.0~6.6L(たとえば6.4L)のカラムを通して1.5~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)もしくは1.3Lのカラムを通して約314mL/分の流速、および/または3.5~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間で行ってもよい、AEX固定相を再生する方法。
【0304】
E293.ステップi)~v)のうちの任意の1つが、rAAVベクターをAEXによって精製する方法のクロマトグラフィー溶出ステップに続く、E292に記載のAEX固定相を再生する方法。
【0305】
E294.
i)任意選択で上向流によって、14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、約0.1M~1.0M(たとえば約0.5M)のNaOHを含む溶液を、固定相に適用することを含む、固定相の使用後の浄化ステップ、
ii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約1M~3M(たとえば約2M)のNaCl、約50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえばpH約9)を含む溶液を、固定相に適用することを含む、固定相の再生ステップ、
iii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば、pH9)を含む溶液を、固定相に適用することを含む、固定相の平衡化ステップ、
iv)≧4.5(たとえば約5CV)の注入用水を固定相に適用することを含む、固定相の使用後のフラッシュのステップ、および/または
v)2.7~3.3CV(たとえば約3CV)の、約17%~17.5%のエタノールを含む溶液を、固定相に適用することを含む、保存液を固定相に適用するステップ
を含み、ステップi)~v)のうちの少なくとも1つを、270~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、6.0~6.6L(たとえば6.4L)のカラムを通して1.5~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)もしくは1.3Lのカラムを通して約314mL/分の流速、および/または3.5~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間で行ってもよい方法によって調製した、再生したAEX固定相。
【0306】
E295.再生したAEX固定相をrAAVベクターの精製に使用する、E288に記載の再生したAEX固定相。
【0307】
E296.E1からE227またはE231からE258のいずれか一項に記載の方法によって作製した精製rAAVベクターを含む医薬組成物。
【0308】
E297.E267からE279に記載の精製rAAVベクターを含む医薬組成物。
【0309】
E298.疾患、障害、または状態を処置および/または防止するための医薬品の製造における、E1からE227またはE231からE258のいずれか一項に記載の方法に従って精製したrAAVベクターの使用。
【0310】
E299.疾患、障害、または状態がDMDである、E298に記載の使用。
【0311】
E300.rAAVベクターが、欠失した銅輸送ATPase2(ATP7B)タンパク質をコードしている修飾核酸を含むベクターゲノムを含む、E1からE182のいずれか一項に記載の方法。
【0312】
E301.修飾核酸が、配列番号15のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、欠失した銅輸送ATPase2(ATP7B)タンパク質をコードしている核酸配列を含む、E300に記載の方法。
【0313】
E302.銅輸送欠失ATPase2が、重金属関連部位HMA1、HMA2、HMA3、およびHMA4の欠失を含む、E300またはE301に記載の方法。
【0314】
E303.ベクターゲノムが、α1-抗トリプシンプロモーター、ポリアデニル化(ポリA)シグナル配列、5’ITR、および3’ITRをさらに含む、E300からE302のいずれか一項に記載の方法。
【0315】
E304.α1-抗トリプシンプロモーターが、配列番号16の核酸配列を含むまたはそれからなる、E303に記載の方法。
【0316】
E305.ポリAシグナル配列が、配列番号17の核酸配列を含むまたはそれからなる、E303に記載の方法。
【0317】
E306.5’ITRおよび3’ITRがAAV2血清型ITRである、E303に記載の方法。
【0318】
E307.rAAVベクターがAAV3BのVP1ポリペプチドを含む、E1からE182のいずれか一項に記載の方法。
【0319】
E308.VP1ポリペプチドが配列番号18のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、E307に記載の方法。
【0320】
E309.
i)精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を、カラム中のAEX固定相上にロードするステップと、
ii)カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップであって、第1の勾配溶出緩衝液の百分率を、第2の勾配溶出緩衝液の百分率の変動に対して反比例する様式で変動させ、勾配溶出の開始時に第1の勾配溶出緩衝液の百分率が約75%~約100%であり、勾配溶出の終了時に第2の勾配溶出緩衝液の百分率が約60%~約100%であり、第2の溶出緩衝液の百分率を、勾配溶出にわたって約2%~5%/CVの速度で増加させるステップと、
iii)第2の勾配溶出緩衝液の百分率が約30%~約35%であるときに開始して、勾配溶出を行う際に溶出液の少なくとも1つの画分をカラムから収集するステップと
を含み、溶出液の少なくとも1つの画分が精製しようとするrAAVベクターを含む、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0321】
E310.rAAVベクターを含む溶液が、ヒスチジン、トリス、およびP188を含む緩衝液で約15倍に希釈されている親和性溶出液である、E309に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0322】
E311.第1の勾配溶出緩衝液が、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば8.9)を含む、および/または第2の勾配溶出緩衝液が、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえばpH8.9)を含む、E309またはE310に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0323】
E312.溶出液の少なくとも1つの画分をカラムから収集するステップが、溶出液の少なくとも1つの画分を、約0.01CV~0.1CV(たとえば約0.066CV)の、200mM~300mM(たとえば約250mM)のクエン酸ナトリウム、pH3.0~4.0(たとえば約3.5)を含む溶液を含む容器内に収集することを含む、E309からE311のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0324】
E313.溶出液の少なくとも1つの画分が、親和性溶出液と比較してフルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されており、rAAVベクターがrAAV3Bベクターであってもよく、AEX固定相がPOROS(商標)50 HQであってもよい、E310からE312のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0325】
E314.勾配溶出を行う際に溶出液の少なくとも1つの画分をカラムから収集するステップが、第2の勾配溶出緩衝液の百分率が約50%~約55%であるときに終了する、E309からE313のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0326】
E315.
i)精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を、カラム中のAEX固定相上にロードするステップと、
ii)カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップであって、第1の勾配溶出緩衝液の百分率を、第2の勾配溶出緩衝液の百分率の変動に対して反比例する様式で変動させるステップと、
iii)カラムフロースルーの吸光度が吸光度閾値に達した際に開始して、勾配溶出中のカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集するステップであって、溶出液の少なくとも1つの画分が精製しようとするrAAVベクターを含むステップと、
を含む、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0327】
E316.カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定し、A260/A280比を決定することをさらに含む、E315に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0328】
E317.固定相に適用する前に、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を、ヒスチジン、トリス、およびP188を含む希釈溶液で約2倍~25倍(たとえば15倍)に希釈し、任意選択で濾過する、E315またはE316に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0329】
E318.溶液が親和性溶出液である、E315からE317のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0330】
E319.希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液のpHが、溶液のpHと比較して増加しており、希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液の伝導率が、溶液の伝導率と比較して減少している、E315からE318に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0331】
E320.第1の勾配溶出緩衝液が、約50mM~約150mMのトリス、約0.005%~約0.015%のP188を含み、pH約8.5~9.5のpHを有しており、第2の勾配溶出緩衝液が、約400mM~約600mMの酢酸ナトリウム、約50mM~約150mMのトリス、約0.005%~約0.015%のP188を含み、pH約8.5~9.5のpHを有しており、10~60カラム体積(CV)(たとえば、約20CV、約37.5CV)の第1の勾配溶出緩衝液、第2の勾配溶出緩衝液、または両方の混合物を勾配溶出中に固定相に適用する、E315からE319のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0332】
E321.勾配溶出の開始時に第1の勾配溶出緩衝液の百分率が50%~100%であり、勾配溶出の終了時に第2の勾配溶出緩衝液の百分率が50%~100%であり、第2の溶出緩衝液の百分率を、勾配溶出にわたって約2%~5%/CVの速度で増加させる、E315からE320のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0333】
E322.第1の勾配溶出緩衝液、第2の勾配溶出緩衝液、または両方の混合物の酢酸ナトリウムの濃度を、勾配溶出中に連続的に増加させ、酢酸ナトリウムの濃度を、勾配溶出にわたって約10mM/CV~50mM/CV(たとえば、約10mM/CV、約25mM/CV)の速度で増加させる、E315からE321のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0334】
E323.フルカプシドが、勾配溶出中に固定相から第1の溶出ピーク中および/または第2の溶出ピークの最初の部分中に溶出される、E315からE322のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0335】
E324.空カプシドが、勾配溶出中にカラムフロースルー中で第1の溶出ピーク中および/または第2の溶出ピークの最後の部分中で回収される、E315からE323のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0336】
E325.溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を280nmで測定し、任意選択で、吸光度閾値が、280nmで測定して≧0.5mAU/mm経路長である、E315からE324のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0337】
E326.溶出液の少なくとも1つの画分の体積が、CVの1/8~10CV、たとえば、CVの1/8、CVの1/4、CVの1/3、CVの1/2、CVの3/4、1CV、2CV、3CV、4CV、5CV、6CV、7CV、8CV、9CV、10CV、またはCVのそれより多くに等しく、任意選択で、溶出液の少なくとも1つの画分のA260/A280比が1.25以上である、E315からE325のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0338】
E327.溶出液の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25個、またはそれより多くの画分を収集する、E315からE326のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0339】
E328.それぞれ≧0.98または≧1.0のA260/A280比を有する、カラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、rAAVベクターを含むプールした溶出液を形成することをさらに含む、E315からE327のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0340】
E329.プールした溶出液が、20%~100%(たとえば63+/-26%)の%VGカラム収率、31%~66%(たとえば47+/-11%)の%VGステップ収率、および/または≧1.0のA260/A280比を有する、E328に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0341】
E330.プールした溶出液が、カラム上にロードした溶液と比較してフルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されている、E328またはE329に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0342】
E331.精製rAAVベクターが生成される、E315からE330のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0343】
E332.プールした溶出液を、ウイルス濾過、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)、0.2μmのフィルターを通した濾過、およびその組合せからなる群から選択される方法によって濾過して、原薬を生成することをさらに含む、E328からE331のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0344】
E333.原薬が、i)全カプシドの45%~65%(たとえば52+/-7%)のフルカプシド、ii)全カプシドの19%~37%(たとえば28+/-5%)の中間体カプシド、および/またはiii)全カプシドの10%~37%(たとえば20+/-7%)の空カプシドを含む、E332に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0345】
E334.原薬が、カラム上にロードした溶液と比較してフルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されている、E332からE333に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0346】
E335.rAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAVrh74、AAV12、AAV2i8、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVLK03、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、RHM4-1(WO2015/013313号の配列番号5)、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAV hu.26、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、AAV2i8、AAV29G、AAV2.8G9、AVV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15からなる群から選択されるAAV血清型からのAAVカプシドタンパク質を含む、E315からE334のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0347】
E336.rAAVベクターがAAV9カプシドタンパク質および配列番号1の核酸を含む導入遺伝子を含む、E315からE335のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0348】
E337.rAAVベクターがAAV3Bカプシドタンパク質および配列番号15のアミノ酸配列をコードしている核酸を含む導入遺伝子を含む、E315からE336のいずれか一項に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法。
【0349】
E338.
i)第1の溶液を、ヒスチジン、トリス、およびP188を含む希釈溶液で2~25倍(たとえば15倍)に希釈するステップと、任意選択で、
ii)ステップi)からの第1の溶液を、フィルターを通して濾過して、希釈および任意選択で濾過した溶液を生成するステップと
を含み、希釈および任意選択で濾過した溶液のpHが、第1の溶液のpHと比較して増加しており、希釈および任意選択で濾過した溶液の伝導率が、第1の溶液の伝導率と比較して減少している、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【0350】
E339.rAAVベクターを含む第1の溶液が、親和性溶出液、細胞溶解液からの上清、および回収後の溶液からなる群から選択される、E338に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【0351】
E340.希釈溶液が、約100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188を含み、pH8.5~9.5のpHを有する、E338またはE339に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【0352】
E341.i)希釈および任意選択で濾過した溶液のpHが8.5~9.5である、ii)希釈および任意選択で濾過した溶液の伝導率が1.7~3.3mS/cmである、ならびに/またはiii)希釈溶液の%VG希釈収率が35%~100%である、E338からE340のいずれか一項に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【0353】
E342.rAAVベクターがAAV9カプシドタンパク質またはAAV3Bカプシドタンパク質を含む、E338からE341のいずれか一項に記載の、AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法。
【0354】
E343.
i)精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を、カラム中のAEX固定相上にロードするステップ、
ii)カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップであって、第1の勾配溶出緩衝液、第2の勾配溶出緩衝液、もしくは両方の混合物を固定相に適用し、勾配溶出の経過中における塩の濃度の増加の速度が約10mM/CV~50mM/CV(たとえば約25mM/CV)であるように、塩の濃度を0mM~500mMで変動させるステップ、
iii)カラムフロースルーの吸光度が吸光度閾値に達した際に開始して、勾配溶出中に溶出液の少なくとも1つの画分をカラムから収集するステップ、および/または
vi)カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定し、A260/A280比を決定するステップ、
を含む方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0355】
E344.A260/A280比が≧1.0であるときにカラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、精製rAAVベクターを含むプールした溶出液を形成することをさらに含む、E343に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0356】
E345.塩が酢酸ナトリウムである、E343またはE344に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0357】
E346.rAAVベクターがAAV9カプシドタンパク質またはAAV3Bカプシドタンパク質を含む、E343からE345のいずれか一項に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0358】
E347.rAAVベクターを含む溶液が、固定相上にロードする前に希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液である、E343からE346のいずれか一項に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0359】
E348.固定相から溶出された材料がrAAVベクターを含む、E343からE347のいずれか一項に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0360】
E349.プールした溶出液を、ウイルス濾過、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)、0.2μmのフィルターを通した濾過、およびその組合せからなる群から選択される方法によって濾過して、原薬を生成することをさらに含む、E344からE348のいずれか一項に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0361】
E350.原薬を、疾患、障害、または状態を処置するためにヒト対象への投与に適している薬物製品を作製するために使用する、E349に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【0362】
E351.疾患、障害、または状態がDMDまたはウィルソン病であり、rAAVベクターが配列番号2または配列番号15のアミノ酸配列をコードしている核酸を含んでいてもよい、E350に記載の方法によって調製した精製rAAVベクター。
【図面の簡単な説明】
【0363】
【
図1】1mLのPOROS(商標)50 HQカラム上において4つの溶出塩を使用して作成した、例示的なAEXクロマトグラムの溶出相を示す図である。A
260追跡を破線によって示す一方で、A
280および伝導率の追跡を実線によって示す。黒色のバーは、プールを形成するために使用した溶出画分を示す。
【
図2】1mLのPOROS(商標)50 HQカラム上において4つの溶出塩を使用して作成した、AEX溶出画分の例示的なSEC A
260/A
280を示す図である。
【
図3】5.1mLのPOROS(商標)50 HQカラム上において実施した酢酸ナトリウムの9ステップの洗浄および溶出を使用して作成した、例示的なAEXクロマトグラムを示す図である。A
260の追跡を破線によって示す一方で、A
280および伝導率の追跡を実線によって示す。洗浄(W)、溶出(E)、ストリッピング、および再生(Regen.)画分は、表5および表6と一致するように示す。
【
図4-1】(
図4A)5.1mLのPOROS(商標)50 HQカラム上において実施した、600cm/時の溶出、5.1×10
13個のベクターゲノム/mLの樹脂チャレンジ(ITR配列のqPCRによって測定した樹脂のVG/mL)、および57mMの酢酸ナトリウム洗浄を用いた実行した酢酸ナトリウムステップ溶出を使用して作成した、例示的なAEXクロマトグラムを示す図である。A
260の追跡を破線によって示す一方で、A
280および伝導率の追跡を実線によって示す。
【
図4-2】(
図4B)AEX実行の洗浄、溶出、およびストリッピング相におけるクロマトグラムを示す拡大図である。
【
図5】AAV9親和性溶出液と100mMのトリス、pH9とをインライン混合してAEXロード(本明細書中で希釈した親和性溶出液とも呼ぶ)を作製する例示的な方法を示す図である。蠕動ポンプを用いて流体をY字コネクタに送達した。
【
図6】100mMのトリス、pH9で希釈したAAV9親和性溶出液の例示的なpH、伝導率、Z平均、および凝集(+または-として示す)を示す図である。
【
図7-1】(
図7A)200mMのヒスチジン、200mMのトリス、X%(w/v)のP188、pH8.8で5、9、または25倍に希釈し(ただし、Xは、0.01%、0.05%、0.2%、および0.5%である)、続いて濾過した親和性溶出液の、例示的な%ベクターゲノム(VG)収率を示す図である。伝導率(希釈係数によって制御される)およびP188濃度の関数としての、%VG収率(希釈および濾過後)の等高線図を
図7Aに示す。データを表13中にも提示する。
【
図7-2】(
図7B)200mMのヒスチジン、200mMのトリス、X%(w/v)のP188、pH8.8で5、9、または25倍に希釈し(ただし、Xは、0.01%、0.05%、0.2%、および0.5%である)、続いて濾過した親和性溶出液の、例示的な%ベクターゲノム(VG)収率を示す図である。P188濃度または伝導率の関数としての、%VG収率(希釈および濾過後)の一元配置ANOVA分析を
図7Bに示す。データを表13中にも提示する。
【
図8-1】(
図8A)最適化されたAEXプロセスを使用して作成した例示的なクロマトグラムを示す図である。A
260の追跡を破線で示す一方で、A
280および伝導率の追跡を実線で示す。
【
図8-2】(
図8B)表15と一致するように1~14と付番した画分を用いたAEX酢酸ナトリウム勾配溶出の拡大を示す図である。A
260の追跡を破線で示す一方で、A
280および伝導率の追跡を実線で示す。
【
図9】0%、20%、40%、60%、80%、および100%のヌル親和性プール上において、最適化されたAEX方法を使用して作製したクロマトグラフィー画分の例示的なSEC A
260/A
280値を示す図である。フロースルーをF/Tとして略記する。
【
図10】10cmの内径(ID)×16cmの床高(BH)、1.3LのPOROS(商標)50 HQカラム上において実行したバッチ250L-4からの、例示的な250LのSUBのAEXクロマトグラムの溶出相を示す図である。A
260の追跡を破線によって示す一方で、A
280および伝導率の追跡を実線によって示す。
【
図11】20cmのID×20.5cmのBH、6.4LのPOROS(商標)50 HQカラム上において実行したバッチ2000L-4からの、例示的な2000LのSUBスケールのAEXクロマトグラムの溶出相を示す図である。A
260の追跡を破線によって示す一方で、A
280および伝導率の追跡を実線によって示す。
【
図12】AAV3Bベクターの精製のための最適化されたAEXプロセスを使用した、例示的なクロマトグラムを示す図である。A
260の追跡を実線によって示す一方で、A
280の追跡を破線によって示す。
【発明を実施するための形態】
【0364】
1.定義
別段に定義しない限りは、本明細書中で使用するすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の技術者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書中で使用する用語は、特定の実施形態を説明する目的だけのためのものであり、本発明を限定することを意図しない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲中において使用する単数形「a」、「an」、および「the」は、内容により明らかにそうでないと示されない限りは、複数形も含むことを意図する。以下の用語は示す意味を有する。
【0365】
本明細書中で使用する用語「約」または「およそ」とは、生物活性の量、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の長さ、GおよびCヌクレオチドの含有率、コドン適応指標、CpGジヌクレオチドの数、用量、時間、温度などの測定可能な値をいい、別段に記述しない限りは、内容によりそうでないことが明白でない限りは、またはそのような数が可能な値の100%を超える場合以外は、指定した量のいずれの方向にも(それを超えるまたは未満)、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、またはさらには0.1%の変動を包含することを意味する。
【0366】
本明細書中で使用する用語「および/または」とは、関連する列挙した事項のうちの1つまたは複数任意かつすべての可能な組合せ、および代替(「または」)で解釈した場合は組合せの欠如をいう、それを包含する。
【0367】
本明細書中で使用する用語「アデノ随伴ウイルス」および/または「AAV」とは、直鎖状一本鎖DNAゲノムを有するパルボウイルスおよびその変異体をいう。この用語は、そうでないことが必要な場合以外は、すべての亜型ならびに天然に存在するおよび組換え形態の両方を網羅する。
【0368】
カノニカルAAV野生型ゲノムは4681個の塩基を含み(BernsおよびBohenzky(1987)Advances in Virus Research 32:243~307)、それぞれの末端に末端リピート配列(たとえば逆方向末端反復(ITR))を含み、これはcisでウイルスのDNA複製起点としておよびパッケージングシグナルとして機能する。このゲノムは、それぞれAAV複製(「AAV rep」または「rep」)およびカプシド(「AAV cap」または「cap」)遺伝子として知られている、2つの大きなオープンリーディングフレームを含む。AAV repおよびcapは、本明細書中でAAV「パッケージング遺伝子」とも呼び得る。これらの遺伝子は、ウイルスゲノムの複製およびパッケージングに関与しているウイルスタンパク質をコードしている。
【0369】
野生型AAVでは、3つのカプシド遺伝子、VP1、VP2、およびVP3は、単一のオープンリーディングフレーム内で互いに重複しており、選択的スプライシングにより、VP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質の生成がもたらされる(GriegerおよびSamulski(2005)J.Virol. 79(15):9933~9944)。単一のP40プロモーターが、3つすべてのカプシドタンパク質がVP1、VP2、VP3についてそれぞれ約1:1:10の比で発現されることを可能にし、これはAAVカプシドの生成を補完する。より詳細には、VP1は完全長タンパク質であり、VP2およびVP3は、N末端が次第に切断されることが原因で次第に短くなる。周知の一例は米国特許第7,906,111号に記載されているAAV9のカプシドであり、VP1が配列番号123のアミノ酸残基1~736を含み、VP2が配列番号123のアミノ酸残基138~736を含み、VP3が配列番号123のアミノ酸残基203~736を含む。本明細書中で使用する用語「AAV Cap」または「cap」とは、AAVカプシドタンパク質VP1、VP2、および/またはVP3、ならびにその変異体および類似体をいう。カプシド遺伝子の第2のオープンリーディングフレームは、カプシドのアセンブリプロセスに必須であるアセンブリ活性化タンパク質(AAP)と呼ばれるアセンブリ因子をコードしている(Sonntagら(2011)J.Virol. 85(23):12686~12697)。
【0370】
少なくとも4つのウイルスタンパク質、Rep78、Rep68、Rep52、Rep40がAAV rep遺伝子から合成され、その見かけの分子量に従って命名されている。本明細書中で使用する「AAV rep」または「rep」とは、AAV複製タンパク質Rep78、Rep68、Rep52、および/またはRep40、ならびにその変異体および類似体を意味する。本明細書中で使用するrepおよびcapとは、野生型および組換え(たとえば修飾キメラなど)のrepおよびcap遺伝子の両方、ならびにそれらがコードしているポリペプチドをいう。一部の実施形態では、repをコードしている核酸は、複数のAAV血清型からのヌクレオチドを含む。たとえば、repタンパク質をコードしている核酸は、AAV2血清型からのヌクレオチドおよびAAV3血清型からのヌクレオチドを含み得る(Rabinowitzら(2002)J.Virology 76(2):791~801)。
【0371】
本明細書中で使用する用語「組換えアデノ随伴ウイルスベクター」、「rAAV」、および/または「rAAVベクター」とは、ベクターゲノムを含むAAVカプシドをいう。ベクターゲノムは、天然に存在するAAVには少なくとも部分的には由来しないポリヌクレオチド配列(たとえば、野生型AAV中に存在しない異種ポリヌクレオチド)を含み、野生型AAVゲノムのrepおよび/またはcap遺伝子はベクターゲノムから除去されている。AAVのrepおよび/もしくはcap遺伝子が除去されている(ならびに/またはAAVからのITRが付加されているもしくは残存する)場合、AAV内の核酸を「ベクターゲノム」と呼ぶ。したがって、用語rAAVベクターは、カプシドを含むが完全なAAVゲノムを含まないrAAVウイルス粒子を包含する。その代わりに、組換えウイルス粒子は、異種、すなわち元々はカプシド中に存在しない核酸を含むことができ、本明細書中で以降ベクターゲノムと呼ぶ。したがって、「rAAVベクターゲノム」(または「ベクターゲノム」)とは、AAVカプシド内に含有されていてよいが、そうである必要はない、異種ポリヌクレオチド配列(少なくとも1つのITRを含む)をいう。rAAVベクターゲノムは、二本鎖(dsAAV)、一本鎖(ssAAV)、または自己相補的(scAAV)であり得る。典型的には、ベクターゲノムは、治療的導入遺伝子、遺伝子編集核酸などをしばしばコードしている、異種(それが由来する元のAAVに対して)の核酸を含む。
【0372】
本明細書中で使用する用語「rAAVベクター」、「rAAVウイルス粒子」、および/または「rAAVベクター粒子」とは、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質からなり(とはいえ、典型的には、AAVのすべてのカプシドタンパク質、たとえば、VP1、VP2、およびVP3、またはその変異体が存在する)、異種核酸配列を含むベクターゲノムを含有する、AAVカプシドをいう。これらの用語は、組換えではない「AAVウイルス粒子」または「AAVウイルス」から区別するべきであり、カプシドは、repおよびcap遺伝子をコードしているウイルスゲノムを含有しており、AAVウイルスは、アデノウイルスおよび/もしくは単純ヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルス、および/またはそれからの必要なヘルパー遺伝子も含む細胞中に存在する場合は複製することができる。したがって、rAAVベクター粒子の生成は、組換えDNA技術を使用した組換えベクターゲノムの生成を必然的に含み、したがって、ベクターゲノムはカプシド内に含有されてrAAVベクター、rAAVウイルス粒子、またはrAAVベクター粒子を形成する。
【0373】
AAVの様々な血清型のゲノム配列、ならびに逆方向末端反復(ITR)、repタンパク質、およびカプシドサブユニットの配列は、当分野で知られている。そのような配列は、文献中またはGenBankなどの公開データベース中に見つけ得る。たとえば、その開示が本明細書中に参考として組み込まれている、GenBank受託番号NC_002077(AAV1)、AF063497(AAV1)、NC_001401(AAV2)、AF043303(AAV2)、NC_001729(AAV3)、AF028705.1(AAV3B)、NC_001829(AAV4)、U89790(AAV4)、NC_006152(AAV5)、AF028704(AAV6)、AF513851(AAV7)、AF513852(AAV8)、NC_006261(AAV8)、AY530579(AAV9)、AY631965(AAV10)、AY631966(AAV11)、およびDQ813647(AAV12)を参照されたい。また、たとえば、Srivistavaら(1983)J.Virology 45:555、Chioriniら(1998)J.Virology 71:6823、Chioriniら(1999)J.Virology 73:1309、Bantel-Schaalら(1999)J.Virology 73:939、Xiaoら(1999)J.Virology 73:3994、Muramatsuら(1996)Virology 221:208、Shadeら(1986)J.Virol. 58:921、Gaoら(2002)Proc.Nat.Acad.Sci. USA 99:11854、Morisら(2004)Virology 33:375~383、国際公開公報WO00/28061号、WO99/61601号、WO98/11244号、WO2013/063379号、WO2014/194132号、WO2015/121501号、ならびに米国特許第6,156,303号および第7,906,111号も参照されたい。
【0374】
本明細書中で使用する用語「と関連している」とは、互いに、一方の存在、レベル、および/または形態が他方のものと相関している場合にいう。たとえば、特定の実体(たとえば、ポリペプチド、遺伝子署名、代謝物、微生物など)は、その存在、レベル、および/または形態が、疾患、障害、または状態の発生率および/またはそれに対する感受性と相関している場合に(たとえば関連集団にわたって)、特定の疾患、障害、または状態と関連しているとみなされる。一部の実施形態では、2つ以上の実体は、これらが互いに物理的に近接しているおよび/またはしたまま保たれるように、これらが直接または間接的に相互作用する場合に、互いに物理的に「関連している」。一部の実施形態では、互いに物理的に関連している2つ以上の実体は、互いに共有結合している。一部の実施形態では、互いに物理的に関連している2つ以上の実体は、互いに共有結合していないが、たとえば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性、およびその組合せによって、非共有的に関連している。
【0375】
本明細書中で使用する用語「コード配列」または「をコードしている核酸」とは、タンパク質またはポリペプチドをコードしている核酸配列をいい、適切な調節配列の制御下に置かれた(作動可能に連結された)場合に、in vitroまたはin vivoでポリペプチドへと転写(DNAの場合)および翻訳(mRNAの場合)される配列を示す。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端にある開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端にある翻訳ストップコドンによって一般に決定される。コード配列としては、それだけには限定されないが、原核または真核mRNAからのcDNA、原核または真核DNAからのゲノムDNA配列、およびさらには合成DNA配列を挙げることができる。
【0376】
本明細書中で使用する用語「キメラ」とは、その開示全体が本明細書中に参考として組み込まれているRabinowitzら、US6,491,907号に記載されているように、様々なパルボウイルス、好ましくは様々なAAV血清型からのカプシドまたは粒子配列を有する、ウイルスカプシドまたは粒子をいう。また、Rabinowitzら(2004)J.Virol. 78(9):4421~4432も参照されたい。一部の実施形態では、キメラウイルスカプシドは、以下の突然変異を有するAAV2カプシドの配列を有するAAV2.5カプシドである:263のQからA、265のT挿入、705のNからA、708のVからA、および716のTからN。そのようなカプシドをコードしているヌクレオチド配列は、WO2006/066066号に記載されている配列番号15として定義される。他の好ましいキメラAAVカプシドとしては、それだけには限定されないが、WO2010/093784号に記載されているAAV2i8、WO2014/144229号に記載されているAAV2G9およびAAV8G9、AAV9.45(Pulicherlaら(2011)Molecular Therapy 19(6):1070~1078)、WO2013/029030号に記載されているAAV-NP4、NP22、およびNP66、AAV-LK0からAAV-LK019、WO2015/013313号に記載されているRHM4-1およびRHM15_1からRHM5_6、WO2007/120542号に記載されているAAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9が挙げられる。
【0377】
本明細書中で使用する用語「溶出液」とは、移動相と固定相を通過したまたは固定相から置換された材料とから構成される、クロマトグラフィー固定相(たとえば、モノリス、膜、樹脂、媒体)から出る(たとえば「固定相から溶出する」)流体をいう。一部の実施形態では、固定相としては、たとえば、モノリス、膜、樹脂、または媒体が挙げられる。移動相は、カラム上にロードしてカラムを流通した溶液(すなわち「フロースルー画分」)であり得る。平衡化溶液(たとえば平衡化緩衝液)、定組成溶出溶液、勾配溶出溶液、固定相を再生するための溶液、固定相を浄化するための溶液、洗浄用溶液、およびその組合せであり得る。
【0378】
本明細書中で使用する用語「隣接した」とは、他の要素が隣接する配列をいい、配列に対して上流および/または下流、すなわち5’および/または3’の、1つまたは複数の隣接する要素の存在を示す。用語「隣接した」とは、配列が必ずしも連続することを示すことを意図しない。たとえば、導入遺伝子をコードしている核酸と隣接する要素との間に介在配列が存在し得る。2つの他の要素(たとえばITR)が「隣接する」配列(たとえば導入遺伝子)とは、一方の要素が配列に対して5’側に位置し、他方が配列に対して3’側に位置することを示す。しかし、その間に介在配列が存在していてよい。
【0379】
本明細書中で使用する用語「凝結」とは、微粒子が一緒に凝集して綿状塊となることを引き起こすプロセスをいう。微粒子は、宿主細胞の溶解から生じるタンパク質、核酸、細胞断片を含み得る。一部の実施形態では、液相中で形成される綿状塊は、液体の上部へと浮上する(クリーム化)、液体の底部へと沈下する(沈降)、または液相から濾過され得る。
【0380】
本明細書中で使用する用語「断片」とは、全体の別個の部分を含むが、全体中に見つかる1つまたは複数の部分を欠く構造を有する材料または実体をいう。一部の実施形態では、断片は別個の部分からなる。一部の実施形態では、断片は、全体中に見つかる特徴的な構造要素または部分からなるまたはそれを含む。一部の実施形態では、ポリマー断片は、全体ポリマー中に見つかる少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500個、またはそれより多くの単量体単位(たとえばアミノ酸残基、ヌクレオチド)を含むまたはそれからなる。
【0381】
rAAVベクターは、カプシドが、導入遺伝子を含む完全または本質的に完全なベクターゲノムを含有する場合に「フル」、「フルカプシド」、「フルベクター」、または「フルにパッケージングされたベクター」と呼ばれる。宿主細胞によるrAAVベクターの生成中、フルカプシドよりもパッケージング度がより低い核酸を有し、たとえば部分的または切断されたベクターゲノムを含有するベクターが生成され得る。これらのベクターは、「中間体」、「中間体カプシド」、「部分的」、または「部分的にパッケージングされたベクター」と呼ばれる。中間体カプシドはまた、分析用超遠心分離によって分析した場合に、中間の沈降速度、すなわち、フルカプシドと空カプシドとの間の沈降速度を有するカプシドでもあり得る。宿主細胞はまた、検出可能な核酸材料を全く含有しないウイルスカプシドも生成し得る。これらのカプシドは、「空」または「空カプシド」と呼ばれる。フルカプシドは、SEC-HPLCによって決定したA260/A280比に基づいて空カプシドから区別してよく、A260/A280比は、分析用超遠心分離によって単離したカプシド(すなわち、フル、中間体、および空)に対してあらかじめ較正されている。カプシドの特徴づけのための、当分野で知られている他の方法としては、CryoTEM、毛細等電点電気泳動、および荷電検出質量分析が挙げられる。空およびフルのAAV9カプシドのそれぞれ約6.2および約5.8の計算した等電点が報告されている(Venkatakrishnanら、J.Virology(2013)87.9:4974~4984)。
【0382】
本明細書中で使用する用語「ヌルカプシド」とは、ベクターゲノムを意図的に欠くように生成したカプシドをいう。そのようなヌルカプシドは、ベクタープラスミドとしても知られる、rep/capおよびヘルパープラスミドを用いるが、導入遺伝子カセット配列を含むプラスミドを用いない、宿主細胞の形質移入によって生成し得る。
【0383】
本明細書中で使用する用語「機能的」とは、それによりそれが特徴づけられている特性および/または活性を示す形態の生体分子をいう。生体分子は2つの機能(すなわち二機能的)または多数の機能(すなわち多機能的)を有し得る。
【0384】
本明細書中で使用する用語「遺伝子」とは、転写および翻訳された後に特定のポリペプチドまたはタンパク質コードしていることができる、少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドをいう。「遺伝子移入」または「遺伝子送達」とは、外来DNAを宿主細胞内に確実に挿入するための方法または系をいう。そのような方法は、組み込まれていない移入したDNAの一過性発現、移入したレプリコン(たとえばエピソーム)の染色体外複製および発現、ならびに/または移入した遺伝物質の宿主細胞のゲノムDNA内への組込みをもたらす場合がある。
【0385】
本明細書中で使用する用語「勾配溶出」とは、溶出の過程中に徐々に変化させる、異なるpH、伝導率、および/またはモディファイヤー濃度を有する少なくとも2つの異なる溶液の混合物を、クロマトグラフィー固定相(たとえば、モノリス、媒体、樹脂、膜を含む)に適用することをいう。勾配溶出は線形または非線形であり得る。対照的に、定組成溶出中、クロマトグラフィー移動相の組成は一定であり、「ステップ溶出」中、クロマトグラフィー移動相の組成は段階的な様式で変化する。勾配溶出の過程中に、第1の溶液の百分率は、第2の溶液の百分率に対して反比例する様式で連続的に変動させる。たとえば、溶液を混合し、固定相を流通させるにつれて、pH、伝導率、および/またはモディファイヤー濃度の連続的に変動する(実施形態に応じて増加または減少する)勾配が作られるように、勾配溶出の開始時に、混合物中の勾配溶出緩衝液A(たとえば第1の勾配溶出緩衝液)の百分率は100%であり、混合物中の勾配溶出緩衝液B(たとえば第2の勾配溶出緩衝液)の百分率は0%である。一部の実施形態では、酢酸ナトリウムなどの塩の濃度は、直線勾配の体積にわたって一定速度で変化する。たとえば、20mLの直線勾配を有する1mLのカラム(すなわち20CV)では、1mL/分の一定流速で操作して、塩濃度は5%/分の速度で変化する。一部の実施形態では、rAAVカプシド(たとえば、フル、中間体、空)は、精製しようとするrAAVカプシドを含む溶液をAEX固定相上にロードする間、固定相に結合されている。勾配溶出中、塩(たとえば酢酸ナトリウム)の濃度が増加するように緩衝液Bの百分率が増加するにつれて、フルrAAVベクターが固定相から優先的に放出(溶出)され、空カプシドが固定相上に優先的に保持される。空カプシドは、緩衝液Bの百分率がさらに増加するにつれて、より大量に放出される。固定相からのフルrAAVベクターの溶出を、溶出液のA260およびA280を測定することによって、勾配溶出中にモニタリングすることができ、A260/A280の比の増加が溶出液中のフルrAAVベクターの百分率の増加の指標であり、逆に、A260/A280比の減少がフルrAAVベクターの百分率の減少および空カプシドの百分率の増加の指標である。一部の実施形態では、溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)系における分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、オンラインUV追跡、オフラインUV方法などの方法を使用して測定し、吸光度を1つまたは複数の波長(たとえば260nmおよび/または280nm)で測定する。
【0386】
本明細書中で使用する用語「異種」とは、細胞内への核酸のベクター媒介性移入/送達の目的のために、ベクター(たとえばrAAVベクター)内に挿入した核酸をいう。異種核酸は、典型的にはベクター(たとえばAAV)核酸とは明確に異なる、すなわち、異種核酸は、ウイルス(たとえばAAV)核酸に関して非ネイティブである。細胞内に移入または送達した後、ベクター内に含有される異種核酸を発現させることができる(たとえば適切な場合は転写および翻訳させる)。あるいは、細胞中の、ベクター内に含有された移入または送達した異種核酸は、発現させる必要はない。用語「異種」は、本明細書中において必ずしも核酸に言及するために使用するわけではないが、修飾語「異種」の非存在においてでも、核酸への言及は異種核酸を含むことを意図する。たとえば、異種核酸は、ジストロフィンポリペプチドをコードしている核酸、またはその断片、たとえば、WO2017/221145号に記載されており、本明細書中に参考として組み込まれている、デュシェンヌ筋ジストロフィーの処置において使用するための、コドン最適化されたミニジストロフィン導入遺伝子であろう。
【0387】
さらなる例示的な異種核酸は、以下の遺伝子のうちの1つ野生型コード配列またはその断片(たとえば切断された内部欠失)を含み、コドン最適化されていてもいなくてもよい。
【0388】
【0389】
本明細書中で使用する用語「相同的な」または「相同性」とは、所定の領域または部分にわたって少なくとも部分的な同一性を共有する、2つ以上の参照実体(たとえばヌクレオチドまたはポリペプチド配列)をいう。たとえば、2つのペプチド中のアミノ酸位置が同一のアミノ酸によって占有されている場合、ペプチドはその位置で相同的である。とりわけ、相同的なペプチドは、未修飾または参照ペプチドに関連している活性または機能を保持し、修飾ペプチドは、一般に、未修飾配列のアミノ酸配列と「実質的に相同的な」アミノ酸配列を有する。ポリペプチド、核酸、またはその断片に言及する場合、「実質的な相同性」または「実質的な類似度」とは、適切な挿入または欠失を用いて別のポリペプチド、核酸(もしくはその相補鎖)、またはその断片と最適にアラインメントした場合に、配列の少なくとも約95%~99%において配列同一性が存在することを意味する。2つの配列間の相同性(同一性)の程度は、コンピュータプログラムまたは数学アルゴリズムを使用して確認することができる。パーセント配列相同性(または同一性)を計算するそのようなアルゴリズムは、一般に、比較領域または面積にわたる配列ギャップおよびミスマッチを考慮する。例示的なプログラムおよびアルゴリズムを以下に提供する。
【0390】
本明細書中で使用する用語「宿主細胞」、「宿主細胞系」、および「宿主細胞培養物」は、互換性があるように使用され、外因性の核酸が導入された細胞をいい、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞としては、「形質移入体」、「形質転換体」、「形質転換細胞」、および「形質導入細胞」が挙げられ、これは、初代の形質移入した、形質転換させた、または形質導入した細胞、および継代数を問わずそれに由来する子孫を含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、rAAVベクターの生成のためのパッケージング細胞である。
【0391】
本明細書中で使用する用語「宿主細胞DNA」または「HCDNA」とは、rAAVベクターを生成した宿主細胞培養物に由来し、クロマトグラフィー画分(たとえば、親和性溶出液、AEX溶出液、洗浄)またはクロマトグラフィーロード(たとえば、親和性ロード、AEXロード)中に存在する、残留DNAをいう。宿主細胞DNAは、qPCRなどの当分野で知られている方法によって測定して、宿主細胞にユニークな配列を検出し得る。一般的なDNA濃度は、蛍光色素(たとえば、PicoGreen(登録商標)もしくはSYBR(登録商標)Green)、吸光度測定(たとえば260nmもしくは254nmで)、または電気泳動技法(たとえばアガロースゲル電気泳動もしくはキャピラリー電気泳動)を使用して推定し得る。溶出液中に存在するHCDNAの量は、溶出液中に存在するvgの量に対して、たとえば、ng HCDNA/1×1014vgまたはpg HCDNA/1×109vgで表し得る。溶出液中に存在するHCDNAの量は、溶出液の体積中に存在するvgの量に対して、たとえば、pg HCDNA/mLの溶出液で表し得る。
【0392】
本明細書中で使用する用語「宿主細胞タンパク質」または「HCP」とは、rAAVベクターを生成した宿主細胞培養物に由来し、クロマトグラフィー画分(たとえば、親和性溶出液、AEX溶出液、洗浄)またはクロマトグラフィーロード(たとえば、親和性ロード、AEXロード)中に存在する、残留タンパク質をいう。宿主細胞タンパク質は、ELISAなどの当分野で知られている方法によって測定し得る。宿主細胞タンパク質は、様々な電気泳動染色方法(たとえば、銀染色SDS-PAGE、SYPRO(登録商標)Ruby染色SDS-PAGE、および/またはウエスタンブロット)によって半定量的に測定することができる。溶出液中に存在するHCPの量は、存在するvgの量に対して、たとえば、ng HCP/1×1014vgまたはpgのHCP/1×109vgで表し得る。
【0393】
本明細書中で使用する用語「同一性」または「と同一」とは、ポリマー分子間、たとえば核酸分子(たとえばDNA分子および/もしくはRNA分子)間、ならびに/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性をいう。一部の実施形態では、ポリマー分子は、その配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、またはそれより高く同一である場合に、互いに「実質的に同一」であるとみなされる。
【0394】
2つの核酸またはポリペプチド配列のパーセント同一性の計算は、たとえば、最適比較目的のために2つの配列をアラインメントすることによって行うことができる(たとえば、ギャップは、最適アラインメントのために第1および第2の配列の一方および両方中に導入することができ、比較目的には非同一配列を無視することができる)。ある特定の実施形態では、比較目的のためにアラインメントした配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。その後、対応する位置のヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じ残基(たとえばヌクレオチドまたはアミノ酸)によって占有されている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一位置の数の関数である。2つの配列間の配列の比較およびパーセント同一性の決定は、数学アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0395】
パーセント同一性または相同性を決定するために、配列は、ワールドワイドウェブにおいてncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で利用可能なBLASTを含む方法およびコンピュータプログラムを使用してアラインメントすることができる。別のアラインメントアルゴリズムは、米国ウィスコンシン州MadisonのGenetics Computing Group (GCG)パッケージ中で利用可能なFASTAである。他のアラインメント技法はMethods in Enzymology、第266巻:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996)、Doolittle編、Academic Press, Inc.中に記載されている。特に興味深いのは、配列中のギャップを許容するアラインメントプログラムである。Smith-Watermanは、配列アラインメント中のギャップを許容するアルゴリズムの一種である。Meth.Mol.Biol. 70:173~187(1997)を参照されたい。また、NeedlemanおよびWunschのアラインメント方法を使用したGAPプログラムを利用して配列をアラインメントすることができる。J.Mol.Biol. 48:443~453(1970)を参照されたい。
【0396】
また、配列同一性を決定するための、SmithおよびWaterman(1981、Advances in Applied Mathematics 2:482~489)の局所的相同性アルゴリズムを使用したBestFitプログラムも興味深い。ギャップ作成ペナルティは、一般に1~5、通常は2~4の範囲であり、一部の実施形態では3である。ギャップ伸長ペナルティは、一般に約0.01~0.20の範囲であり、一部の例では0.10である。プログラムは、比較するために入力した配列によって決定された初期設定パラメータを有する。好ましくは、配列同一性は、プログラムによって決定された初期設定パラメータを使用して決定する。このプログラムも米国ウィスコンシン州MadisonのGenetics Computing Group(GCG)パッケージから利用可能である。
【0397】
別の興味深いプログラムはFastDBアルゴリズムである。FastDBはCurrent Methods in Sequence Comparison and Analysis, Macromolecule Sequencing and Synthesis, Selected Methods and Applications、ページ127~149、1988、Alan R.Liss, Inc.中に記載されている。パーセント配列同一性は、FastDBによって以下のパラメータに基づいて計算する:ミスマッチペナルティ:1.00、ギャップペナルティ:1.00、ギャップサイズペナルティ:0.33、結合ペナルティ:30.0。
【0398】
本明細書中で使用する用語「不純物」とは、精製しているrAAVベクターを含む溶液中にやはり存在する、精製しているフルrAAVベクター以外の任意の分子をいう。不純物としては、空カプシド、中間体カプシド、DNA、RNAなどの生物学的高分子、非AAVタンパク質(たとえば宿主細胞タンパク質)、AAV凝集物、損傷AAVカプシド、クロマトグラフィーに使用した吸収剤の一部であり、前の精製ステップ中に試料内に浸出し得る分子、内毒素、媒体構成成分を含む細胞培養物からの細胞細片および化学薬品、形質移入からのプラスミドDNA、外来性因子、細菌、ならびにウイルスが挙げられる。
【0399】
本明細書中で使用する用語「逆方向末端反復」、「ITR」、「末端反復」、および「TR」とは、主に相補的な、対称的に配置された配列を含む、AAVウイルスゲノムの末端またはその付近にある回文構造の末端リピート配列をいう。これらのITRは、折り重なって、DNA複製の開始中にプライマーとして機能するT字形状のヘアピン構造を形成することができる。また、これらは、宿主ゲノム内へのウイルスゲノムの組込みのため、宿主ゲノムからの救出のため、および成熟ビリオン内へのウイルス核酸のカプシド形成のためにも必要である。ITRは、ベクターゲノム複製およびウイルス粒子内へのそのパッケージングのために、cisで必要である。「5’ITR」とは、AAVゲノムの5’末端および/または組換え導入遺伝子に対して5’側にあるITRをいう。「3’ITR」とは、AAVゲノムの3’末端および/または組換え導入遺伝子に対して3’側にあるITRをいう。野生型ITRはおよそ145bpの長さである。修飾または組換えITRは、野生型AAV ITR配列の断片または一部分を含み得る。当業者は、DNA複製の逐次的なラウンド中、ITR配列は5’ITRが3’ITRとなるよう交換される場合があり、その逆も同様であることを理解されよう。一部の実施形態では、ベクターゲノムをカプシド内にパッケージングして、ベクターゲノムを含むrAAVベクター(本明細書中で「rAAVベクター粒子」または「rAAVウイルス粒子」とも呼ぶ)を生成することができるように、少なくとも1つのITRが組換えベクターゲノムの5’および/または3’末端に存在する。
【0400】
ITRは、ベクターゲノム複製およびウイルス粒子内へのそのパッケージングのために、cisで必要である。「5’ITR」とは、AAVゲノムの5’末端および/または組換え導入遺伝子に対して5’側にあるITRをいう。「3’ITR」とは、AAVゲノムの3’末端および/または組換え導入遺伝子に対して3’側にあるITRをいう。野生型ITRはおよそ145bpの長さである。修飾または組換えITRは、野生型AAV ITR配列の断片または一部分を含み得る。当業者は、DNA複製の逐次的なラウンド中、ITR配列は5’ITRが3’ITRとなるよう交換される場合があり、その逆も同様であることを理解されよう。
【0401】
本明細書中で使用する用語「単離した」とは、1)人の手によって設計、生成、調製、およびもしくは製造された、および/または2)最初に生成された際に(自然中および/または実験設定中にかかわらず)それが関連している構成成分のうちの少なくとも1つから分離されている、物質または組成物をいう。一般に、単離した組成物は、自然ではそれらが通常関連している1つまたは複数の材料、たとえば、1つまたは複数のタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、および/または細胞膜を実質的に含まない。用語「単離した」は、人工的な組合せ、たとえば、組換え核酸、組換えベクターゲノム(たとえばrAAVベクターゲノム)、ベクターゲノムをパッケージングする、たとえばカプシド形成するrAAVベクター粒子(たとえばそれだけには限定されないがAAV9カプシドを含むrAAVベクター粒子など)、および医薬配合物を排除しない。また、用語「単離した」は、ハイブリッド/キメラ、多量体/オリゴマー、修飾体(たとえば、リン酸化、グリコシル化、脂質化)、変異体もしくは誘導体化形態、または人工である宿主細胞中で発現させた形態などの、組成物の代替の物理的形態も排除しない。
【0402】
単離した物質または組成物は、それらが最初に関連している他の構成成分の約10%、約20%、約30%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%より高くから分離されていてよい。一部の実施形態では、単離した薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%より高く純粋である。本明細書中で使用するように、物質は、他の構成成分を実質的に含まない場合に「純粋」である。一部の実施形態では、当業者によって理解されるように、物質は、たとえば1つまたは複数の担体または賦形剤(たとえば、緩衝液、溶媒、水など)等の特定の他の構成成分と合わせた後でも、依然として「単離された」またはさらには「純粋である」とみなし得る。そのような実施形態では、物質のパーセント単離または純度は、そのような担体または賦形剤を含めずに計算する。
【0403】
本明細書中で使用する用語「ロードチェイス」とは、ロードまたはロード溶液(下記に定義)を適用した後にカラムに適用する溶液をいう。ロードチェイスは、ロードまたはロード溶液の適用を完了させ、非結合材料をカラムから除去する役割を果たす。
【0404】
本明細書中で使用する用語「ロード」または「ロード溶液」とは、クロマトグラフィー固定相上にロードする、目的の生成物(たとえばフルrAAVベクター)を含有する任意の材料(たとえば溶液)をいう。一部の実施形態では、「ロード溶液」はクロマトグラフィー固定相に曝露される。一部の実施形態では、ロード溶液は親和性溶出液である。一部の実施形態では、ロード溶液は、希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液である。
【0405】
本明細書中で使用する用語「固定相」または「クロマトグラフィー固定相」は、生成物を別の物質(たとえば不純物)から分離するために使用することができる任意の物質をいうために使用する。一部の実施形態では、クロマトグラフィー固定相は、樹脂、媒体、膜、膜吸着剤、またはモノリスである。一部の実施形態では、クロマトグラフィー固定相は、特定の条件下でAAVカプシドと結合する媒体である。一部の実施形態では、クロマトグラフィー固定相はイオン交換媒体(たとえば、陰イオン交換媒体、陽イオン交換媒体)である。一部の実施形態では、クロマトグラフィー固定相はPOROS(商標)50 HQである。
【0406】
本明細書中で使用する用語「モディファイヤー」または「移動相モディファイヤー」とは、クロマトグラフィーを変更するために移動相を改変させる、移動相の構成成分である。クロマトグラフィーのそのような変更は、たとえば、不純物の固定相からの除去もしくは洗い流し、または目的の生成物もしくは材料の固定相からの溶出(たとえばrAAVベクター)をもたらす。「モディファイヤー」の例としては、塩、界面活性剤、アミノ酸(たとえば、アルギニン、ヒスチジン、シトルリン、グリシン)、有機溶媒(たとえば、エタノール、エチレングリコール)、カオトロピック剤(たとえば尿素)、または置換剤(選択的溶出剤とも呼ばれる)が挙げられる。
【0407】
本明細書中で使用する用語「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、および「ポリヌクレオチド」とは、互換性があるように、リン酸ジエステル結合によって接続された単量体ヌクレオチドから構成されるまたはそれを含む、任意の分子をいう。核酸はオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであり得る。核酸配列は、5’から3’の方向で本明細書中に提示する。本開示の核酸配列(すなわちポリヌクレオチド)はデオキシリボ核酸(DNA)分子またはリボ核酸(RNA)分子であることができ、二本鎖分子、一本鎖分子、小または短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA、小または短鎖干渉RNA(siRNA)、トランススプライシングRNA、アンチセンスRNA、エッセンジャーRNA、転移RNA、リボソームRNAなどの、核酸のすべての形態をいう。ポリヌクレオチドがDNA分子である場合、その分子は、遺伝子、cDNA、アンチセンス分子、または前述の分子のうちの任意のものの断片であることができる。ヌクレオチドは、本明細書中で一文字コードによって示す:アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、イノシン(I)、およびウラシル(U)。ヌクレオチド配列は化学修飾されているまたは人工であり得る。ヌクレオチド配列としては、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ、およびロックド核酸(LNA)、ならびにグリコール核酸(GNA)およびトレオース核酸(TNA)が挙げられる。これらの配列のそれぞれは、分子の主鎖への変化によって、天然に存在するDNAまたはRNAから区別される。また、ホスホロチオエートヌクレオチドを使用し得る。他のデオキシヌクレオチド類似体としては、本開示のヌクレオチド配列において使用し得る、メチルホスホネート、ホスホロアミデート、ホスホロジチオエート、N3’-P5’-ホスホロアミデート、ならびにオリゴリボヌクレオチドホスホロチオエート、およびその2’-0-アリル類似体や2’-0-メチルリボヌクレオチドメチルホスホネートが挙げられる。
【0408】
本明細書で使用する用語「核酸構築体」とは、組換えDNA技術(たとえば組換え核酸)の使用から生じる、天然に存在しない核酸分子をいう。核酸構築体は、自然で見つからない様式で組合せおよび配置された核酸配列のセグメントを含有するように改変された、一本鎖または二本鎖のいずれかの核酸分子である。核酸構築体は「ベクター」(たとえば、プラスミド、rAAVベクターゲノム、発現ベクターなど)であり得る、すなわち、外因的に作製されたDNAを宿主細胞内に送達するように設計された核酸分子である。
【0409】
本明細書中で使用する用語「作動可能に連結された」とは、機能的関係にある核酸配列(またはポリペプチド)要素の連結をいう。核酸は、別の核酸配列と機能的関係に配置されている場合に、作動可能に連結されている。たとえば、プロモーターまたは他の転写調節配列(たとえばエンハンサー)は、コード配列の転写に影響を与える場合に、コード配列と作動可能に連結されている。一部の実施形態では、作動可能に連結されたとは、連結される核酸配列が連続していることを意味する。一部の実施形態では、作動可能に連結されたとは、核酸配列が連続的に連結されていることを意味するのではなく、介在配列がこれらの連結されている核酸配列の間にある。
【0410】
本明細書中で使用する用語「パーセントベクターゲノム(VG)希釈収率」または「%VG希釈収率」とは、希釈前の親和性プール(本明細書中で親和性溶出液とも呼ぶ)中に存在するVGの量の百分率としての、希釈した親和性プール(本明細書中で希釈した親和性溶出液とも呼ぶ)中に存在するVGの量をいう。たとえば、%VG希釈収率=((希釈した親和性プール中のVGの量)/(親和性プール中のVGの量))*100である。
【0411】
本明細書中で使用する用語「パーセントVGカラム収率」または「%VGカラム収率」とは、希釈だけした、または希釈および濾過した親和性溶出液中に存在するVGの量の百分率としての、AEXカラムから収集したプールした溶出液(すなわちAEXプール)中に存在するベクターゲノム(VG)の量をいう。
【0412】
一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む親和性溶出液は希釈だけし、「希釈した親和性プール」と呼ばれる。精製しようとするrAAVベクターは、250Lまたは2000Lの容器(たとえば単回使用バイオリアクター(SUB))から回収されてもよい。たとえば、%VGカラム収率=((AEXプール中のVGの量)/(希釈した親和性プール中のVGの量))*100である。
【0413】
一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む親和性溶出液は希釈および濾過し、「AEXロード」と呼ばれる。精製しようとするrAAVベクターは、小スケール(たとえば250L未満)の容器(たとえばバイオリアクター)から回収されてもよい。たとえば、%VGカラム収率=((AEXプール中のVGの量)/(希釈および濾過した親和性プール中のVGの量))*100である。
【0414】
本明細書中で使用する用語「パーセントVGステップ収率」または「%VGステップ収率」とは、希釈または濾過前の親和性プール(本明細書中で親和性溶出液とも呼ぶ)中に存在するVGの量の百分率としての、AEXカラムから収集したプールした溶出液(すなわちAEXプール)中のVGの量をいう。たとえば、%VGステップ収率=((AEXプール中のVGの量)/(親和性プール中のVGの量))*100である。
【0415】
本明細書中で使用する用語「薬学的に許容できる」および「生理的に許容される」とは、1つまたは複数の投与経路、in vivo送達、または接触に適した、生物学的に許容される配合物、気体、液体、もしくは固体、またはその混合物をいう。
【0416】
本明細書中で使用する用語「ポリペプチド」、「タンパク質」、「ペプチド」または「核酸配列によってコードされている」(すなわち、ポリヌクレオチド配列によってコードされている、ヌクレオチド配列によってコードされている)とは、天然に存在するタンパク質のような完全長ネイティブ配列、および、部分配列、修飾形態、または変異体がある程度のネイティブ完全長タンパク質の機能性を保持している限りは、機能的な部分配列、修飾形態、または配列変異体をいう。本開示の方法および使用において、核酸配列によってコードされているは、そのようなポリペプチド、タンパク質、およびペプチドは、遺伝子療法を用いて処置した対象において欠陥がある、またはその発現が不十分である、または欠乏している内在性タンパク質と同一であることができるが、そうである必要はない。
【0417】
本明細書中で使用する用語「組換え」とは、クローニング、制限もしくはライゲーションステップ(たとえばそれ中に含まれるポリヌクレオチドもしくはポリペプチドに関して)、および/または自然で見つかる生成物とは明確に異なる構築体をもたらす他の手順の様々な組合せの産物である、ベクター、ポリヌクレオチド(たとえば組換え核酸)、ポリペプチド、または細胞をいう。組換えウイルスまたはベクター(たとえばrAAVベクター)は、組換え核酸(たとえば、導入遺伝子および1つまたは複数の調節要素を含む核酸)を含むベクターゲノムを含む。この用語は、元のポリヌクレオチド構築体の複製物および元のウイルス構築体の子孫をそれぞれ含む。
【0418】
本明細書中で使用する用語「ステップ溶出」とは、定義されたpH、伝導率、および/またはモディファイヤー濃度を有する溶液の、クロマトグラフィー固定相(たとえば、モノリス、媒体、樹脂、膜を含む)への適用をいう。分離を最適化するために、一連のステップ溶出(たとえば漸増する伝導率または塩濃度を有する)を実施することができる。それぞれのステップ溶出溶液は、その適用中に変化しない定義された組成を有する。ステップ溶出の過程中に、一連の溶液(たとえば、ロードチェイス、pH安定化溶液、洗浄バッファー、溶出緩衝液)を固定相に適用するにつれて、pH、伝導率、および/またはモディファイヤー濃度を、一連中の1つ前の溶液と比較して増加または減少させる。たとえば、一連のステップ溶出の開始時、第1の溶液中のモディファイヤー(たとえば塩、たとえば酢酸ナトリウム)の濃度は低く、(たとえば0~10mM、たとえば、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM)である。一連中のそれぞれの続く溶液において、2~20個の溶液にわたって塩の濃度がたとえば50mM~300mM(たとえば、約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約120mM、約140mM、約160mM、約180mM、約200mM)まで増加するように、塩の濃度を増加させる。一連の2~20個(またはそれより多く)の溶液中の塩濃度は、必ずしも等しいまたは比例する増分で変動しない。
【0419】
一部の実施形態では、ステップ溶出は、2~20個の溶液、2~10個の溶液、10~20個の溶液、たとえば、2、3、4、5、6、7、8 19、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれより多くの溶液を含む。一部の実施形態では、rAAVカプシド(たとえば、フル、中間体、空)は、rAAVカプシドを含む溶液のAEX固定相上へのロード中に、固定相と結合する。ステップ溶出中、pH、伝導率、および/またはモディファイヤー濃度を変動させるにつれて、フルrAAVベクターが固定相から優先的に放出(溶出)され、空カプシドが固定相上に優先的に保持される。空カプシドは、モディファイヤー(たとえば塩)の濃度が増加するにつれて、より大量に放出される。固定相からのフルrAAVベクターの溶出を、溶出液のA260およびA280を測定することによって、ステップ溶出中にモニタリングすることができ、A260/A280の比の増加が溶出液中のフルrAAVベクターの百分率の増加の指標であり、逆に、A260/A280比の減少がフルrAAVベクターの百分率の減少および空カプシドの百分率の増加の指標である。一部の実施形態では、溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)系における分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、オンラインUV追跡、オフラインUV方法などの方法を使用して測定し、吸光度を1つまたは複数の波長(たとえば260nmおよび/または280nm)で測定する。
【0420】
本明細書中で使用する用語「対象」とは、生物、たとえば哺乳動物(たとえば、ヒト、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類、霊長類、実験動物、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、ネコ、イヌ)をいう。一部の実施形態では、ヒト対象は、成人、青年、または小児対象である。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態、たとえば、本明細書中に提供するように処置することができる疾患、障害、または状態を患っている。一部の実施形態では、対象は、ジストロフィンの欠乏または機能不全と関連している疾患、障害、または状態、たとえばデュシェンヌ筋ジストロフィーを患っている。一部の実施形態では、対象は疾患、障害、または状態に罹り易い。一部の実施形態では、罹り易い対象は、疾患、障害、または状態を発生するリスクの素因を有する、および/またはその増加(参照対象もしくは集団において観察される平均リスクと比較して)を示す。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の1つまたは複数の症状を示す。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の特定の症状(たとえば疾患の臨床徴候)または特徴を示さない。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態のいかなる症状または特徴も示さない。一部の実施形態では、対象はヒト患者である。一部の実施形態では、対象は、診断および/または治療を投与するおよび/または投与されている、個体である(たとえばデュシェンヌ筋ジストロフィーのための遺伝子療法)。一部の実施形態では、対象は、デュシェンヌ筋ジストロフィーを有するヒト患者である。
【0421】
本明細書中に記載の方法に従って精製したrAAVベクターを使用して処置することができる疾患、障害、および状態としては、たとえば、代謝性の疾患もしくは障害(たとえば、ファブリー病、ゴーシェ病、フェニルケトン尿症、糖原病)、尿素サイクルの疾患もしくは障害(たとえばオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症)、リソソーム貯蔵の疾患もしくは障害(たとえば、異染性白質ジストロフィー、ムコ多糖症)、肝臓の疾患もしくは障害(たとえば進行性家族性肝臓内胆汁鬱滞1~3型)、血液の疾患もしくは障害(血友病A、血友病B、α地中海貧血症)、癌(たとえば、癌腫、肉腫、血液癌)、遺伝病もしくは障害(たとえば嚢胞性線維症)、または感染性疾患(たとえばHIV)が挙げられる。
【0422】
本明細書中に記載の方法に従って精製したrAAVベクターを使用して処置することができる疾患、障害、および状態としては、たとえば、21-ヒドロキシラーゼ-欠乏性先天性副腎皮質過形成、軟骨無発生症1B型、軟骨形成不全症、色覚障害、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症(ニーマン-ピック病AまたはB型)、急性間欠性ポルフィリン症、アデノシンデアミナーゼ2欠乏症、アデノシンデアミナーゼ欠乏症(たとえば、重症複合型免疫不全、X連鎖)、副腎白質ジストロフィー(たとえばX連鎖)、加齢黄斑変性症(たとえば、血管新生、ウェット)、アラジール症候群、アルカプトン尿症、アルファ-1抗トリプシン欠乏症、アルファ-地中海貧血症、アルポート症候群、アルツハイマー病、アペール症候群、アルギナーゼ欠乏症、アルギニノコハク酸脱離酵素(ASL)欠乏症、アルギニノコハク酸合成酵素(ASS1)欠乏症(シトルリン血症1型)、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素欠乏症、常染色体劣勢先天性魚鱗癬、ベッカー型筋ジストロフィー、ベータ-地中海貧血症、カルバモイルホスファターゼ合成酵素I欠乏症、セロイドリポフスチン症、シャルコー-マリー-トゥース神経障害、脈絡膜欠如、慢性肉芽腫性疾患、シトリン欠乏症、クリグラー-ナジャール症候群1および2型、重症虚血肢、嚢胞性線維症、シスチン症、ダノン病、糖尿病性黄斑性網膜症、優性遺伝の低身長、ドラベ症候群、デュシェンヌ筋ジストロフィー、ディスフェルリン異常症(たとえば、三好ミオパチー、肢帯筋ジストロフィー2B)、栄養障害性表皮水疱症、ファブリー病、家族性高コレステロール血症、家族性リポタンパク質リパーゼ欠乏症、ファンコニ貧血(たとえばファンコニ貧血A)、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症、ゴーシェ病、糖原病1Aおよび1B型(フォン・ギールケ病)、糖原病III型、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病XV型、GM1ガングリオシドーシス、脳回転状萎縮、血友病A、血友病B、遺伝性血管浮腫(angiodema)I~III型、ハンチントン病、封入体筋炎、接合部表皮水疱症、歌舞伎症候群、レーバー先天性黒内障、赤血球粘着欠損1型、肢帯筋ジストロフィー、肢帯筋ジストロフィー2C型(ガンマ-サルコグリカン症)、肢帯筋ジストロフィー2D型、異染性白質ジストロフィー、ムコ多糖症I型、ムコ多糖症II型(ハンター症候群)、ムコ多糖症IIIA型、ムコ多糖症IIIB型、ムコ多糖症IIIC型、ムコ多糖症IIID型、ムコ多糖症IVA型(モルキオA症候群)、ムコ多糖症IVB型(モルキオB症候群)、ムコ多糖症VI型(マロトー-ラミー)、筋緊張性ジストロフィー1型、筋緊張性ジストロフィー2型、N-アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)欠乏症、ネザートン症候群、神経セロイドリポフスチン症、オルニチン転位酵素欠乏症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損病、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ポンペ、進行性家族性肝臓内胆汁鬱滞1~3型、進行性筋原線維ミオパチー、ピルビン酸キナーゼ欠乏症、網膜色素変性症、RPE65関連レーバー先天性黒内障、サンドホフ病、鎌状赤血球病、脊髄性筋萎縮症、テイ・ザックス病、ウィルソン病、ウィスコット-アルドリッチ症候群、ウィスコット-アルドリッチ症候群2、X連鎖副腎白質ジストロフィー、X連鎖慢性肉芽腫性疾患、X連鎖筋細管ミオパチー、X連鎖網膜色素変性症、X連鎖網膜分離症、ならびにX連鎖重症複合型免疫不全が挙げられる。
【0423】
本明細書中で使用する用語「実質的に」とは、目的の特徴または特性の完全またはほぼ完全な程度または度合を示す定性的状態をいう。当業者は、生物学および化学的現象が完了する、および/または完全性まで進行するもしくは絶対的結果を達成することは、あったとしても稀であることを理解されよう。したがって、用語「実質的に」は、本明細書中において、多くの生物学および化学的現象に特有の、完全性の潜在的な欠如を捕らえるために使用する。
【0424】
本明細書中で使用する用語「治療的ポリペプチド」とは、標的細胞(たとえば単離した細胞)または生物(たとえば対象)におけるタンパク質非存在または欠損から生じる症状を緩和または低下させ得るペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質(たとえば、酵素、構造タンパク質、膜貫通タンパク質、輸送タンパク質)である。導入遺伝子によってコードされている治療的ポリペプチドまたはタンパク質は、たとえば、遺伝的欠陥を訂正するため、発現または機能に関連する遺伝子の欠損を訂正するために、対象に利点を与えるものである。同様に、「治療的導入遺伝子」とは、治療的ポリペプチドをコードしている導入遺伝子である。一部の実施形態では、宿主細胞中で発現させた治療的ポリペプチドは、導入遺伝子(すなわち宿主細胞内に導入された外因性の核酸)から発現させた酵素である。一部の実施形態では、治療的ポリペプチドは、筋肉細胞(たとえば骨格筋細胞)内に形質導入した治療的導入遺伝子から発現させたジストロフィンタンパク質またはその断片である。
【0425】
本明細書中で使用する用語「治療上有効な量」とは、そのためにそれを投与した所望の治療効果を生じる量をいう。一部の実施形態では、この用語は、治療的投薬レジメンに従って、疾患、障害、または状態を患っているまたはそれに罹り易い集団に投与した場合に、疾患、障害、または状態を処置するために十分な量をいう。一部の実施形態では、治療上有効な量とは、疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の症状の、発生率および/もしくは重篤度を低下させる、ならびに/または発症を遅延させるものである。用語「治療上有効な量」は、特定の個体において処置の成功が達成されることを実際に必要としないことを、当業者は理解されよう。そうではなく、治療上有効な量は、そのような処置を必要としている患者に投与した場合に、有意数の対象において特定の所望の薬理学的応答を提供する量であり得る。
【0426】
本明細書中で使用する用語「導入遺伝子」は、宿主細胞、標的細胞、または生物(たとえば対象)への送達および/またはそれらの中での発現のための、任意の異種ポリヌクレオチドを意味するために使用する。そのような「導入遺伝子」は、ベクター(たとえばrAAVベクター)を使用して宿主細胞、標的細胞、または生物に送達し得る。導入遺伝子は、プロモーターなどの制御配列と作動可能に連結されていてよい。発現制御配列を、宿主細胞、標的細胞、または生物中において導入遺伝子の発現を促進する能力に基づいて選択できることが、当業者に理解されよう。一般に、導入遺伝子は、自然において導入遺伝子と関連している内在性プロモーター作動可能に連結されていてよいが、より典型的には、導入遺伝子は、導入遺伝子が自然において関連していないプロモーターと作動可能に連結される。導入遺伝子の一例は、治療的ポリペプチド、たとえばジストロフィンポリペプチドをコードしている核酸またはその断片であり、例示的なプロモーターは、自然においてジストロフィンをコードしているヌクレオチドと作動可能に連結されていないものである。そのような非内在性プロモーターとしては、当分野で知られている多数のもののうち、CBhプロモーターまたは筋肉特異的プロモーターを挙げることができる。
【0427】
形質移入および形質導入を含む当分野で周知の多種多様な技法によって、宿主細胞を目的の核酸内に導入することができる。
【0428】
「形質移入」は、一般に、ウイルスベクターを使用せずに外因性の核酸を細胞内に導入するための技法として知られる。本明細書中で使用する用語「形質移入」とは、ウイルスベクターを使用しない、組換え核酸(たとえば発現プラスミド)の細胞(たとえば宿主細胞)内への移入をいう。組換え核酸がそれ内に導入されている細胞を「形質移入細胞」と呼ぶ。形質移入細胞は、組換えAAVベクターを生成するための発現プラスミド/ベクターを含む宿主細胞(たとえば、CHO細胞、Pro10細胞、HEK293細胞)であり得る。一部の実施形態では、形質移入細胞(たとえばパッキング細胞)は、導入遺伝子(たとえばジストロフィン導入遺伝子)を含むプラスミド、AAV rep遺伝子およびAAV cap遺伝子を含むプラスミド、ならびにヘルパー遺伝子を含むプラスミドを含み得る。多くの形質移入技法が当分野で知られており、それだけには限定されないが、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、微量注入、陽イオン性または陰イオン性リポソーム、および核移行シグナルと組み合わせたリポソームが挙げられる。
【0429】
本明細書中で使用する用語「形質導入」とは、ウイルスベクター(たとえばrAAVベクター)による、細胞(たとえば標的細胞、たとえば筋肉細胞)への核酸(たとえばベクターゲノム)の移入をいう。一部の実施形態では、デュシェンヌ筋ジストロフィーの遺伝子療法は、ジストロフィンをコードしている修飾核酸またはその断片を含むベクターゲノムを、筋肉細胞内に形質導入することを含む。ウイルスまたはウイルスベクターによって導入遺伝子がそれ内に導入されている細胞を「形質導入細胞」と呼ぶ。一部の実施形態では、形質導入細胞は単離した細胞であり、形質導入はex vivoで起こる。一部の実施形態では、形質導入細胞は生物(たとえば対象)内の細胞であり、形質導入はin vivoで起こる。形質導入細胞は、生物の標的細胞がポリヌクレオチド(たとえば導入遺伝子、たとえばジストロフィンをコードしている修飾核酸またはその断片)を発現するように組換えAAVベクターによって形質導入した生物の標的細胞であり得る。
【0430】
形質導入し得る細胞としては、任意の組織もしくは臓器種、または任意の起源(たとえば、中胚葉、外胚葉、もしくは内胚葉)の細胞が挙げられる。細胞の非限定的な例としては、肝臓(たとえば、肝細胞、類洞内皮細胞)、膵臓(たとえば、ベータ島細胞、外分泌)、肺、脳(たとえば、神経もしくは上衣細胞、オリゴデンドロサイト)または脊椎などの中枢または末梢神経系、腎臓、眼(たとえば網膜)、脾臓、皮膚、胸腺、精巣、肺、横隔膜、心臓(心性)、筋肉または腰筋、腸(たとえば内分泌)、脂肪組織(白色、褐色、またはベージュ)、筋肉(たとえば、線維芽細胞、筋細胞)、滑膜細胞、軟骨細胞、破骨細胞、上皮細胞、内皮細胞、唾液腺細胞、内耳神経細胞、あるいは造血(たとえば血液またはリンパ)細胞が挙げられる。さらなる例としては、肝臓(たとえば、肝細胞、類洞内皮細胞)、膵臓(たとえば、ベータ島細胞、外分泌細胞)、肺、脳(たとえば、神経もしくは上衣細胞、オリゴデンドロサイト)または脊椎などの中枢または末梢神経系、腎臓、眼(たとえば網膜)、脾臓、皮膚、胸腺、精巣、肺、横隔膜、心臓(心性)、筋肉または腰筋、腸(たとえば内分泌)、脂肪組織(白色、褐色、またはベージュ)、筋肉(たとえば、線維芽細胞、筋細胞)、滑膜細胞、軟骨細胞、破骨細胞、上皮細胞、内皮細胞、唾液腺細胞、内耳神経細胞、あるいは造血(たとえば血液またはリンパ)細胞へと発生または分化する、多能性または多分化能前駆細胞などの幹細胞が挙げられる。
【0431】
一部の実施形態では、組織または臓器(たとえば筋肉)の特定の領域を、組織または臓器に投与する投与rAAVベクター(たとえば、ジストロフィンまたはジストロフィンの一部分の導入遺伝子を有するrAAVベクター)によって形質導入し得る。一部の実施形態では、筋肉細胞を、ジストロフィン導入遺伝子を含むrAAVを用いて形質導入する。一部の実施形態では、骨格筋細胞を、ジストロフィン導入遺伝子を含むrAAVを用いて形質導入する。一部の実施形態では、心筋細胞を、ジストロフィン導入遺伝子を含むrAAVを用いて形質導入する。
【0432】
本明細書中で使用する用語「ベクター」とは、核酸(たとえば組換え核酸)の挿入または取り込みによって操作することができる、プラスミド、ウイルス(たとえばrAAV)、コスミド、または他のビヒクルをいう。ベクターは、たとえば、遺伝子操作(たとえばベクターのクローニング)、核酸を細胞内に導入/移入するため、挿入した核酸を細胞中で転写または翻訳するためを含む、様々な目的のために使用することができる。一部の実施形態では、ベクター核酸配列は、少なくとも細胞中での増殖のための複製起点を含有する。一部の実施形態では、ベクター核酸は、異種核酸配列、発現制御要素(たとえば、プロモーター、エンハンサー)、選択マーカー(たとえば抗生物質耐性)、ポリ-アデノシン(ポリA)配列、および/またはITRを含む。一部の実施形態では、宿主細胞に送達した際、核酸配列が増殖される。一部の実施形態では、in vitroまたはin vivoのいずれかで宿主細胞に送達した際、細胞は、異種核酸配列によってコードされているポリペプチド発現する。一部の実施形態では、宿主細胞に送達した際、核酸配列または核酸配列の一部分がカプシド内にパッケージングされる。宿主細胞は単離した細胞または宿主生物内の細胞であり得る。ポリペプチドまたはタンパク質をコードしている核酸配列(たとえば導入遺伝子)に加えて、付加配列(たとえば調節配列)が同じベクター内に(すなわち遺伝子に対してcisで)、遺伝子に隣接して存在し得る。一部の実施形態では、調節配列は、transで作用して遺伝子の発現を調節する別の(たとえば第2の)ベクター上に存在し得る。プラスミドベクターは本明細書中で「発現ベクター」と呼び得る。
【0433】
本明細書中で使用する用語「ベクターゲノム」とは、AAVカプシド中にパッケージング/カプシド形成されてrAAVベクターを形成する核酸をいう。典型的には、ベクターゲノムは、異種ポリヌクレオチド配列(たとえば、導入遺伝子、調節要素など)および少なくとも1つのITRを含む。組換えベクター(たとえばrAAVベクター)を構築または製造するために組換えプラスミドを使用する場合では、ベクターゲノムは、プラスミド全体を含むのではなく、ウイルスベクターによる送達を意図する配列のみを含む。組換えプラスミドのこの非ベクターゲノム部分を「プラスミド主鎖」と呼び、これは、組換えウイルスベクター生成の増殖に必要なプロセスであるプラスミドのクローニング、選択、および増幅に重要であるが、それ自体はrAAVベクター内にパッケージングまたはカプシド形成されない。典型的には、プラスミド主鎖から切断された際にカプシド内にパッケージングされるように、カプシド内にパッケージングしようとする異種配列にはITRが隣接する。
【0434】
本明細書中で使用する用語「ウイルスベクター」とは、一般に、核酸送達ビヒクルとして機能し、ウイルス粒子内にパッケージングされたベクターゲノム(たとえば、野生型repおよびcapを置き換えた導入遺伝子を含む)を含む、ウイルス粒子(すなわちカプシド)をいい、AAV血清型および変異体(たとえばrAAVベクター)を含むたとえば、レンチおよびパルボウイルスが挙げられる。本明細書中の他の箇所に記載されているように、組換えウイルスベクターは、repおよび/またはcap遺伝子を有するウイルスゲノムを含まない。むしろ、これらの配列は、ベクターゲノムが目的の導入遺伝子を保有するための容量を提供するために除去されている。
【0435】
本開示は、rAAVベクター(たとえばフルrAAVベクター)を宿主細胞回収物から精製する方法を提供する。具体的には、本開示は、rAAVベクター(たとえばフルrAAVベクター)を、宿主細胞によって生成された他の核酸およびタンパク質(空カプシドを含む)から精製する方法を提供する。さらに、本開示は、空カプシドをフルrAAVベクター(たとえばベクターゲノムを含むrAAVベクター)から分離する方法を提供する。本開示のこれらの態様のそれぞれは、続くセクション中で詳述されている。
【0436】
2.AAVおよびrAAVベクター
AAV
上述のように、「アデノ随伴ウイルス」および/または「AAV」とは、直鎖状一本鎖DNAゲノムを有するパルボウイルスおよびその変異体をいう。この用語は、そうでないことが必要な場合以外は、すべての亜型ならびに天然に存在するおよび組換え形態の両方を網羅する。AAVを含むパルボウイルスは、細胞に貫入して核酸(たとえば導入遺伝子)を核内に導入することができるため、遺伝子療法ベクターとして有用である。一部の実施形態では、導入した核酸(たとえばrAAVベクターゲノム)は、形質導入細胞の核中でエピソームとして存続する環状のコンカテマーを形成する。一部の実施形態では、導入遺伝子は、宿主細胞ゲノム中の特異的部位、たとえばヒト染色体19上の部位に挿入される。部位特異的な組込みは、ランダムな組込みとは対照的に、予測可能な長期的発現プロファイルをもたらす可能性が高いと考えられている。ヒトゲノム内へのAAVの挿入部位はAAVS1と呼ばれる。細胞内に導入された後、核酸によってコードされているポリペプチドは細胞によって発現させることができる。AAVはヒトにおけるいかなる病原性疾患にも関連していないため、AAVによって送達された核酸は、ヒト対象において疾患、障害、および/または状態の処置のための治療的ポリペプチド発現させるために使用することができる。
【0437】
AAVの複数の血清型が自然において存在し、少なくとも15個の野生型血清型がこれまでにヒトから同定されている(すなわちAAV1~AAV15)。天然に存在するおよび変異体の血清型は、他のAAV血清型とは血清学的に明確に異なるタンパク質カプシドを有することによって区別される。多数のあるもののうち、とりわけ、AAV1型(AAV1)、AAV2型(AAV2)、AAV3A型(AAV3A)やAAV3B型(AAV3B)を含むAAV3型(AAV3)、AAV4型(AAV4)、AAV5型(AAV5)、AAV6型(AAV6)、AAV7型(AAV7)、AAV8型(AAV8)、AAV9型(AAV9)、AAV10型(AAV10)、AAV12型(AAV12)、AAVrh10、AAVrh74(WO2016/210170号を参照)、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、およびヒツジAAV、ならびに、AAV2i8型(AAV2i8)、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVLK03、RHM4-1と呼ばれる変異体などの、組換え生成した変異体(たとえば、挿入、欠失、および置換を有するカプシド変異体など)がある。ヒトCD34+細胞から単離したAAV変異体としては、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15が挙げられる(Smithら(2014)Molecular Therapy 22(9):1625~1634)。
【0438】
「霊長類AAV」とは霊長類に感染するAAVをいい、「非霊長類AAV」とは非霊長類哺乳動物に感染するAAVをいい、「ウシ科動物AAV」とはウシ科哺乳動物に感染するAAVをいい、他も同様である。血清型が明確に異なることは、別のAAVと比較した、1つのAAVに対する抗体間の交差反応性の欠如に基づいて決定される。そのような交差反応性の相違は、通常は、カプシドタンパク質配列および抗原決定基中の相違が原因である(たとえば、AAV血清型のVP1、VP2、および/またはVP3配列の相違)。しかし、一部の天然に存在するAAVまたは人工AAV突然変異体(たとえば組換えAAV)は、現在知られている血清型のいずれとも血清学的の相違を示さない場合がある。その場合、これらのウイルスは対応する型の亜群、またはより単純に変異体AAVとみなし得る。したがって、本明細書中で使用する用語「血清型」とは、血清学的に明確に異なるウイルス、たとえばAAV、および血清学的に明確に異ならないが、所定の血清型の亜群または変異体内にあり得るウイルス、たとえばAAVをどちらもいう。
【0439】
既知のAAV血清型のカプシドのアミノ酸配列の包括的なリストおよびアラインメントは、Marsicら(2014)Molecular Therapy 22(11):1900~1909によって、特に補足の
図1に提供されている。
【0440】
AAVの様々な血清型のゲノム配列、ならびにネイティブ末端反復(ITR)、repタンパク質、およびカプシドサブユニットの配列は、当分野で知られている。そのような配列は、文献中またはGenBankなどの公開データベース中に見つけ得る。たとえば、その開示が本明細書中に参考として組み込まれている、受託番号NC_002077(AAV1)、AF063497(AAV1)、NC_001401(AAV2)、AF043303(AAV2)、NC_001729(AAV3)、AF028705.1(AAV3B)、NC_001829(AAV4)、U89790(AAV4)、NC_006152(AAV5)、AF028704(AAV6)、AF513851(AAV7)、AF513852(AAV8)、NC_006261(AAV8)、AY530579(AAV9)、AY631965(AAV10)、AY631966(AAV11)、およびDQ813647(AAV12)を参照されたい。また、たとえば、Srivistavaら(1983)J.Virology 45:555、Chioriniら(1998)J.Virology 71:6823、Chioriniら(1999)J.Virology 73:1309、Bantel-Schaalら(1999)J.Virology 73:939、Xiaoら(1999)J.Virology 73:3994、Muramatsuら(1996)Virology 221:208、Shadeら(1986)J.Virol. 58:921、Gaoら(2002)Proc.Nat.Acad.Sci. USA 99:11854、Morisら(2004)Virology 33:375~383、国際公開公報WO00/28061号、WO99/61601号、WO98/11244号、WO2013/063379号、WO2014/194132号、WO2015/121501号、ならびに米国特許第6,156,303号および米国特許第7,906,111号も参照されたい。例示目的のみのために、野生型AAV2は、重複する配列を有する3つのタンパク質から構成される、AAVの小さな(20~25nmの)正二十面体のウイルスカプシドを含む(VP1、VP2、およびVP3。合計60個のカプシドタンパク質がAAVカプシドを構成する)。タンパク質VP1(735個のアミノ酸、Genbank受託番号AAC03780)、VP2(598個のアミノ酸、Genbank受託番号AAC03778)、およびVP3(533個のアミノ酸、Genbank受託番号AAC03779)は、カプシド中で約1:1:10の比で存在する。すなわち、AAVでは、VP1が完全長タンパク質であり、VP2およびVP3は、VP1に対してN末端の切断が増加している、VP1の進行的により短いバージョンである。本明細書中に開示した方法の一実施形態では、rAAVベクターは配列番号11のアミノ酸配列を含むAAV9 VP1を含む。
【0441】
組換えAAV(rAAV)
上述のように、「組換えアデノ随伴ウイルス」または「rAAV」は、ウイルスゲノムの全部または一部の、非ネイティブ配列での置換えによって、野生型AAVから区別される。ウイルス内への非ネイティブ配列の取り込みが、ウイルスベクターを「組換え」ベクター、それ故「rAAVベクター」として定義する。rAAVベクターは、所望のタンパク質またはポリペプチド(たとえば、ジストロフィンポリペプチドまたはその断片、たとえば配列番号2)をコードしている、異種ポリヌクレオチド(たとえば、ヒトミニジストロフィンをコードしているヒトコドン最適化遺伝子、たとえば配列番号1)を含むことができる。組換えベクター配列をAAVカプシド内にカプシド形成またはパッケージングしてよく、「rAAVベクター」、「rAAVベクター粒子」、「rAAVウイルス粒子」、または単に「rAAV」と呼ぶ。
【0442】
本開示は、AAV起源ではないポリヌクレオチド配列(たとえばAAVに異種のポリヌクレオチド)を含むrAAVベクターを精製する方法を提供する。異種ポリヌクレオチドには、少なくとも1つ、場合によっては2つのAAV末端リピート配列(たとえば逆方向末端反復(ITR))が隣接していてよい。ITRが隣接する異種ポリヌクレオチドは、本明細書中で「ベクターゲノム」とも呼び、典型的には、治療処置の標的(たとえば、デュシェンヌ筋ジストロフィーの処置のための、ジストロフィンをコードしている核酸またはその断片)などの、目的のポリペプチドまたは目的の遺伝子(「GOI」)をコードしている。rAAVベクターの対象(たとえば患者)への送達または投与は、コードされているタンパク質およびペプチドを対象に提供する。したがって、rAAVベクターは、たとえば様々な疾患、障害、および状態を処置するために発現させるために、異種ポリヌクレオチドを移入/送達するために使用することができる。
【0443】
rAAVベクターゲノムは、一般に、145塩基のITRを、ウイルスのrepおよびcap遺伝子を置き換える異種核酸配列に対してcisで保持する。そのようなITRは、組換えAAVベクターを生成するために必要であるが、部分的または完全に合成の配列を含む修飾AAV ITRおよび非AAV末端反復もこの目的を果たすことができる。ITRはヘアピン構造を形成し、たとえば、感染後の相補的DNA鎖の宿主細胞媒介性合成のためのプライマーとして役立つよう機能する。ITRはまた、ウイルスのパッケージング、組込みなどにおいても役割を果たす。ITRは、rAAVベクター内へのAAVゲノム複製およびパッケージングにcisで必要な、唯一のAAVウイルス要素である。rAAVベクターゲノムは、異種配列(たとえば、それだけには限定されないが、多数あるもののうち、とりわけ、アンチセンス、およびsiRNA、CRISPR分子を含む、目的の遺伝子または目的の核酸配列をコードしている導入遺伝子)を含むベクターゲノムの5’および3’末端に一般にある、2つのITRを含んでいてもよい。5’および3’ITRはどちらも同じ配列を含み得るか、またはそれぞれが異なる配列を含み得る。AAV ITRは、それだけには限定されないが、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくは11、または任意の他のAAVを含む任意のAAVからであり得る。ITRは、AAVゲノム複製およびパッケージングを媒介する配列である。
【0444】
本開示のrAAVベクターは、カプシドの血清型(たとえばAAV9または他のもの)とは異なるAAV血清型(たとえば、野生型AAV2、その断片または変異体)からのITRを含み得る。1つの血清型からの少なくとも1つのITRを含むが、異なる血清型からのAAVカプシドタンパク質を含む、そのようなrAAVベクターは、ハイブリッドウイルスベクターと呼び得る(米国特許第7,172,893号を参照)。AAV ITRは、野生型ITR配列全体を含み得る、またはその変異体、断片、もしくは修飾体であり得るが、機能性を保持する。
【0445】
一部の実施形態では、異種ポリペプチドは、ベクターゲノムの左および右末端(すなわちそれぞれ5’および3’末端)に位置するITRを含む(たとえば、AAV2からのITRであるが、任意の野生型AAV血清型からのITR、またはその変異体を含むことができる)。一部の実施形態では、左(たとえば5’)のITRは、配列番号7または配列番号8の核酸配列を含むまたはそれからなる。一部の実施形態では、左(たとえば5’)のITRは、配列番号7または配列番号8と約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%、または100%同一である核酸配列を含む。一部の実施形態では、右(たとえば3’)のITRは、配列番号7または配列番号8の核酸配列を含むまたはそれからなる。一部の実施形態では、右(たとえば3’)のITRは、配列番号7または配列番号8と約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%、または100%同一である核酸配列を含む。それぞれのITRは、cisであるが、ジストロフィンをコードしている修飾核酸またはその断片および調節要素を含む組換え核酸などの可変長の核酸配列によって、互いにまたはベクターゲノム中の他の要素から分離されていてよい。一部の実施形態では、ITRはAAV2 ITRまたはその変異体であり、ジストロフィン導入遺伝子に隣接している。一部の実施形態では、rAAVは、AAV2 ITR(たとえば、配列番号7または配列番号8に記載の配列を有するITR)が隣接するジストロフィン導入遺伝子(たとえば配列番号1の核酸配列を含む)を含む。
【0446】
一部の実施形態では、rAAVベクターゲノムは直鎖状の一本鎖であり、AAV ITRが隣接する。異種遺伝子の転写および翻訳の前に、およそ4700個のヌクレオチドの一本鎖DNAゲノムは、第2の鎖の合成を開始させるために、自己プライミングITRのうちの1つの遊離3’-OHを使用して、DNAポリメラーゼ(たとえば形質導入細胞内のDNAポリメラーゼ)によって二本鎖形態へと変換しなければならない。一部の実施形態では、完全長一本鎖ベクターゲノム(すなわちセンスおよびアンチセンス)は、アニーリングして完全長二本鎖ベクターゲノムを生じる。これは、逆の極性(すなわちセンスまたはアンチセンス)のゲノムを保有する複数のrAAVベクターを、同じ細胞に同時に形質導入した場合に起こり得る。これらがどのように生成されるかにかかわらず、二本鎖ベクターゲノムが形成された後、細胞は二本鎖DNAを転写および翻訳し、異種遺伝子を発現することができる。
【0447】
rAAVベクターからの導入遺伝子の発現の効率は、発現前に一本鎖rAAVゲノム(ssAAV)を二本鎖DNAへと変換する必要性によって妨げられる可能性がある。このステップは、DNA合成または複数のベクターゲノム間の塩基対合を必要とせずに二本鎖DNAへと折り畳まれることができる逆方向反復ゲノムをパッケージングすることができる自己相補的AAVゲノム(scAAV)を使用することによって、回避される(McCarty、(2008)Molec.Therapy 16(10):1648~1656、McCartyら、(2001)Gene Therapy 8:1248~1254、McCartyら、(2003)Gene Therapy 10:2112~2118)。scAAVベクターの制限は、カプシド中にパッケージングしようとするユニークな導入遺伝子、調節要素、およびITRのサイズが、ssAAVベクターゲノム(すなわち、2つのITRを含めて約4,900個のヌクレオチド)の約半分のサイズであることである(すなわち、約2,500個のヌクレオチドであり、そのうち、2,200個のヌクレオチドが導入遺伝子および調節要素であり、それに加えて2コピーの約145個のヌクレオチドのITRであり得る)。
【0448】
scAAVベクターゲノムは、発現プラスミドの1つのrAAV ITRから末端分離部位(TRS)を欠失させ、それによってその末端からの複製の開始を防止することによって、作製される(米国特許第8,784,799号を参照)。宿主細胞内でのAAV複製はゲノムの野生型ITRで開始され、末端分離を有さない突然変異ITRを通って継続し、その後、ゲノム全体を戻って、二量体を作製する。二量体は、突然変異ITRが中央にあり、両端に野生型ITRがある、自己相補的ゲノムである。一部の実施形態では、TRSが欠失した突然変異ITRはベクターゲノムの5’末端にある。一部の実施形態では、TRSが欠失した突然変異ITRはベクターゲノムの3’末端にある。一部の実施形態では、突然変異ITRは配列番号13または配列番号14の核酸配列を含む。
【0449】
理論に束縛されることを望まずに、scAAVゲノムの2つの半分は相補的である一方で、塩基の多くが内部のカプシド殻のアミノ酸残基と接触しており、リン酸主鎖が中心に向かって隔離されているため、カプシド内で実質的な塩基対合が存在する可能性は低い(McCarty、Molec.Therapy(2008)16(10):1648~1656)。脱外被の際に、scAAVゲノムの2つの半分がアニーリングして、一方の端に共有的に閉じたITRを有し、他方に2つの開放型のITRを有するdsDNAヘアピン分子を形成する可能性が高い。ITRは、とりわけ導入遺伝子およびそれにcisの調節要素をコードしている二本鎖領域に隣接する。
【0450】
rAAVベクターのウイルスカプシドは、野生型AAV、または、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAVrh74(WO2016/210170号を参照)、AAV12、AAV2i8、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、RHM4-1(WO2015/013313号の配列番号5)、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAV hu.26、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、AAV2i8、AAV29G、AAV2.8G9、AVV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、トリAAV、ウシ科動物AAV、イヌ科動物AAV、ウマ科動物AAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヘビAAV、ヤギAAV、エビAAV、ヒツジAAV、およびその変異体などの変異体AAVからであり得る(たとえば、Fieldsら、VIROLOGY、第2巻、第69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers))を参照。カプシドは、米国特許第7,906,111号、Gaoら(2004)J.Virol. 78:6381、Morrisら(2004)Virol. 33:375、WO2013/063379号、WO2014/194132号中に開示されているいくつかのAAV血清型に由来していてよく、WO2015/121501号中に開示されている真型AAV(AAV-TT)変異体、ならびにWO2015/013313号中に開示されているRHM4-1、RHM15-1からRHM15-6、およびその変異体が挙げられる。また、カプシドは、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15を含む、ヒトCD34+細胞から単離したAAV変異体にも由来し得る(Smithら(2014)Molecular Therapy 22(9):1625~1634)。当業者は、同じまたは同様の機能を行う、未だ同定されていない他のAAV変異体が恐らく存在することを知っているであろう。AAV capタンパク質のフル補体としては、VP1、VP2、およびVP3が挙げられる。AAV VPカプシドタンパク質をコードしているヌクレオチド配列を含むORFは、フル補体AAV Capタンパク質に満たないものを含み得る、またはAAV capタンパク質のフル補体を提供し得る。
【0451】
別の実施形態では、本開示は、治療的in vivo遺伝子療法における使用のための、先祖AAVベクターの使用を提供する。具体的には、in silico由来の配列を新規で合成し、生物活性のために特徴づけ得る。rAAVベクター内へのアセンブリに加えて、先祖配列の予測および合成は、その内容が本明細書中に参考として組み込まれているWO2015/054653号中に記載されている方法を使用して達成し得る。とりわけ、先祖ウイルス配列からアセンブリしたrAAVベクターは、現代のウイルスまたはその一部分と比較して、ヒト集団における既存の免疫に対して低下した感受性を示し得る。
【0452】
一部の実施形態では、複数のAAV血清型(たとえば、野生型AAV血清型、変異体AAV血清型)に由来するヌクレオチド配列によってコードされているカプシドタンパク質を含むrAAVベクターは、「キメラベクター」または「キメラカプシド」と呼ばれる(その開示全体が本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第6,491,907号を参照)。一部の実施形態では、キメラカプシドタンパク質は、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれより多くのAAV血清型に由来する核酸配列によってコードされている。一部の実施形態では、組換えAAVベクターは、たとえば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh74、AAVrh10、AAV2i8、またはその変異体に由来するカプシド配列を含み、その結果、前述のAAV血清型のうちの任意のものからのアミノ酸の組合せを含むキメラカプシドタンパク質をもたらす(Rabinowitzら(2002)J.Virology 76(2):791~801を参照)。あるいは、キメラカプシドは、1つの血清型からのVP1、異なる血清型からのVP2、さらに異なる血清型からのVP3、およびその組合せの混合物を含むことができる。たとえば、キメラウイルスカプシドは、AAV1 capタンパク質またはサブユニットおよび少なくとも1つのAAV2 capタンパク質またはサブユニットを含み得る。キメラカプシドは、たとえば、1つまたは複数のB19 capサブユニットを有するAAVカプシドを含むことができ、たとえば、AAV capタンパク質またはサブユニットを、B19 capタンパク質またはサブユニットによって置き換えることができる。たとえば、一実施形態では、AAVカプシドのVP3サブユニットをB19のVP2サブユニットによって置き換えることができる。
【0453】
一部の実施形態では、キメラベクターは、変更された指向性または特定の組織もしくは細胞種に対する指向性を示すように操作されている。用語「指向性」とは、ウイルスの特定の細胞もしくは組織型内への優先的な侵入、および/または、特定の細胞もしくは組織型内への侵入を容易にする、細胞表面との優先的な相互作用をいう。AAVの指向性は、明確に異なるウイルスカプシドタンパク質とその同族細胞受容体との間の特異的相互作用によって一般に決定される(Lykkenら(2018)J.Neurodev.Disord. 10:16)。好ましくは、ウイルスまたはウイルスベクターが細胞内に入った後、ベクターゲノム(たとえばrAAVベクターゲノム)によって保有される配列(たとえば導入遺伝子などの異種配列)が発現される。
【0454】
「指向性プロファイル」とは、1つまたは複数の標的細胞、組織、および/または臓器の形質導入のパターンをいう。たとえば、AAVカプシドは、筋肉細胞の形質導入は効率的であり、たとえば脳細胞の形質導入は低いだけであることによって特徴づけられた指向性プロファイルを有し得る。
【0455】
3.組換え核酸
本開示の方法は、修飾核酸ならびに修飾核酸を含むプラスミドおよびベクターゲノムを含めた組換え核酸を含むrAAVベクターの精製を含む。組換え核酸、プラスミド、またはベクターゲノムは、増殖をモジュレートする(たとえばプラスミドの)および/または修飾核酸(たとえば導入遺伝子)の発現を制御するための調節配列を含み得る。また、組換え核酸はウイルスベクター(たとえばrAAVベクター)の構成成分としても提供し得る。一般に、ウイルスベクターは、カプシド中にパッケージングされた組換え核酸を含むベクターゲノムを含む。
【0456】
修飾核酸
遺伝子、核酸、またはポリヌクレオチド(たとえば導入遺伝子)の修飾形態または変異体形態とは、参照配列から逸脱した核酸をいう。参照配列は天然に存在する野生型配列(たとえば遺伝子)であってよく、天然に存在する変異体(たとえば、スプライス変異体、代替リーディングフレーム)を含み得る。当業者は、参照配列は、GenBank(ncbi.nlm.nih.gov/genbank)などの公的に利用可能なデータベース中に見つけることができることを認識している。修飾/変異体核酸は、参照配列と比較して実質的に同じ、より高い、またはより低い活性、機能、または発現を有し得る。好ましくは、本明細書中で互換性があるように使用される、修飾または変異体核酸は、改善されたタンパク質発現を示し、たとえば、それによってコードされているタンパク質は、細胞中における、内在性遺伝子(たとえば、野生型遺伝子、突然変異遺伝子)によって提供されるタンパク質の発現レベルと比較して、それ以外は同一である細胞中において、検出可能により高いレベルで発現される。一部の実施形態では、本明細書中で互換性があるように使用される、修飾または変異体核酸は、改善されたタンパク質発現を示し、たとえば、それによってコードされているタンパク質は、細胞中における、突然変異を含む内在性遺伝子によって提供されるタンパク質の発現レベルと比較して、それ以外は同一である細胞中において、検出可能により高いレベルで発現される。
【0457】
核酸に対する修飾としては、参照配列の、1つまたは複数のヌクレオチド置換(たとえば、1~3、3~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~40、40~50、50~100個、またはそれより多くのヌクレオチドの置換)、付加(たとえば、1~3、3~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~40、40~50、50~100個、またはそれより多くのヌクレオチドの挿入)、欠失(たとえば、1~3、3~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~40、40~50、50~100個、またはそれより多くのヌクレオチドの欠失、モチーフ、ドメイン、断片などの欠失)が挙げられる。修飾核酸は、参照配列と約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一であり得る。
【0458】
修飾核酸は、参照ポリペプチドと約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%、または100%の同一性を有するポリペプチドをコードしていてよい。一部の実施形態では、修飾核酸は、参照ポリペプチドと100%の同一性を有するポリペプチドをコードしている。
【0459】
一部の実施形態では、修飾核酸(たとえば導入遺伝子)は野生型タンパク質をコードしている。そのような修飾核酸はコドン最適化されていてよい。本明細書中で互換性があるようにいう「最適化された」または「コドン最適化された」とは、たとえば、稀なコドンの使用を最小限にすること、CpGジヌクレオチドの数を減少させること、潜在性スプライスドナーまたはアクセプター部位を除去すること、コザック配列を除去すること、リボソーム進入部位を除去することなどによって、ポリペプチドの発現を増加させるために、野生型コード配列または参照配列(たとえば、ミニジストロフィンポリペプチドのコード配列、たとえば配列番号2、銅輸送欠失ATPaseポリペプチドのコード配列、たとえば配列番号15)と比較して最適化されているコード配列をいう。一部の実施形態では、コドン最適化配列からのタンパク質の発現レベルは、それ以外は同一である細胞中における、野生型遺伝子からのタンパク質の発現レベルと比較して、増加している。一部の実施形態では、コドン最適化配列からのタンパク質の発現レベルは、それ以外は同一である細胞中における、野生型遺伝子からのタンパク質の発現レベルと比較して、増加していない(たとえば発現が実質的に同様である)。一部の実施形態では、コドン最適化配列からのタンパク質の発現レベルは、それ以外は同一である細胞中における、突然変異遺伝子からのタンパク質の発現レベルと比較して、増加している。
【0460】
修飾の例としては、1つまたは複数のcis作用性モチーフの排除および1つまたは複数のコザック配列の導入が挙げられる。一部の実施形態では、1つまたは複数のcis作用性モチーフが排除され、1つまたは複数のコザック配列が導入される。
【0461】
排除し得るcis作用性モチーフの例としては、内部TATAボックス、カイ部位、リボソーム進入部位、ARE、INS、および/またはCRS配列要素、リピート配列および/またはRNA二次構造、(潜在性)スプライスドナーおよび/またはアクセプター部位、分岐点、ならびに制限部位が挙げられる。
【0462】
一部の実施形態では、修飾核酸は、修飾または変異体ポリペプチドをコードしている。修飾核酸によってコードされている修飾ポリペプチド(たとえばコドン最適化されたミニジストロフィン)は、野生型のコードまたは参照配列によってコードされているポリペプチドの機能または活性のすべてまたは一部を保持し得る。一部の実施形態では、修飾ポリペプチドは1つまたは複数の非保存的または保存的なアミノ酸変化を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドの機能において役割が限定的であるまたは役割を果たさないことが実証されている特定のドメインは、修飾ポリペプチド中に存在しない(たとえば特定の結合ドメイン)(たとえばWO2016/097219号)。rAAVベクター中の修飾核酸は、rAAVカプシドのパッケージング容量が原因で、野生型のコードまたは参照配列よりも少ないヌクレオチドを含んでいてよく(たとえば、すべて本明細書中に参考として組み込まれている、短縮されたミニジストロフィン導入遺伝子、WO2001/83695号を参照、Bドメインが欠失したヒト因子VIII導入遺伝子、WO2017/074526号を参照)、また、切断およびコドン最適化の両方がされた、短縮された導入遺伝子を含んでいてよい(たとえば、すべて本明細書中に参考として組み込まれている、WO2017/221145号に記載されているコドン最適化されたミニジストロフィン導入遺伝子、金属結合部位(MBS)1~4が欠失している銅輸送欠失ATPase2、WO2016/097219号およびWO2016/097218号を参照)。一部の実施形態では、修飾核酸によってコードされているポリペプチドは、参照配列によってコードされているポリペプチドよりも少ない、同じ、または多いが、少なくとも一部の機能または活性を有する。
【0463】
修飾核酸は、参照および/または野生型配列と比較して、改変されたGC含有率(たとえば、核酸配列中に存在するGおよびCヌクレオチドの数)、改変された(たとえば増加もしくは減少した)CpGジヌクレオチド含有率、ならびに/または改変された(たとえば増加もしくは減少した)コドン適応指標(CAI)を有し得る。たとえば、WO2017/077451号を参照されたい(最適化のために核酸配列を分析するための公的に利用可能なソフトウェアを含む、目的の核酸配列のコドン最適化のための、当分野で周知の様々な考慮事項を記述している)。本明細書中で使用する修飾とは、特定の値、量、または効果の減少または増加をいう。
【0464】
一部の実施形態では、本開示の修飾核酸配列のGC含有率は、参照および/または野生型の遺伝子またはコード配列と比較して増加している。修飾核酸のGC含有率は、野生型コード配列のGC含有率よりも少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも17%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%高い。一部の実施形態では、GC含有率は、配列中のG(グアニン)およびC(シトシン)ヌクレオチドの百分率として表す。
【0465】
一部の実施形態では、本開示の修飾核酸配列のコドン適応指標は、少なくとも0.74、少なくとも0.76、少なくとも0.77、少なくとも0.80、少なくとも0.85、少なくとも0.86、少なくとも0.87、少なくとも0.90、少なくとも0.95、または少なくとも0.98である。
【0466】
一部の実施形態では、本開示の修飾核酸配列は、CpGジヌクレオチドのレベルが低下しており、低下は、野生型または参照核酸配列と比較して約10%、20%、30%、50%、またはそれより多くである。一部の実施形態では、修飾核酸は、参照配列(たとえば野生型配列)よりも1~5個少ない、5~10個少ない、10~15個少ない、15~20個少ない、20~25個少ない、25~30個少ない、30~40個少ない、40~45個少ない、もしくは45~50個少ない、またはさらにより数が少ないジヌクレオチドを有する。
【0467】
CpGジヌクレオチドのメチル化が真核生物における遺伝子発現の調節において重要な役割を果たすことが知られている。具体的には、真核生物中のCpGジヌクレオチドのメチル化は、転写機構に干渉することを通じて遺伝子発現をサイレンシングするために本質的に役立つ。したがって、CpGモチーフのメチル化によって誘起される遺伝子サイレンシングが原因で、CpGジヌクレオチドの数が低下した核酸およびベクターは、高いかつ長期間持続する導入遺伝子の発現レベルを提供するであろう。
【0468】
修飾核酸配列は、発現ベクター内へのサブクローニングを容易にするために、隣接する制限部位を含み得る。多くのそのような制限部位が当分野で周知であり、それだけには限定されないが、AvaI、SwaI、ApaL1、およびXmaIが挙げられる。
【0469】
本開示は、ジストロフィンポリペプチドの機能的に活性のある断片をコードしている、配列番号1の修飾核酸を含む。「機能的に活性のある」または「機能的ジストロフィンポリペプチド」とは、断片が、完全長ジストロフィンポリペプチドと同じまたは同様の生物学的機能および/または活性を提供することを示す。すなわち、断片は、それだけには限定されないが筋線維の筋フィラメントの構造タンパク質を含むものと、同じ機能を提供する。ジストロフィンの機能的断片の生物活性は、デュシェンヌ筋ジストロフィーに関連している神経筋表現型を好転させる、または防止することを包含する。
【0470】
したがって、本発明の一実施形態は、ミニジストロフィンタンパク質をコードしている修飾核酸を含むrAAVベクターを精製する方法であって、核酸が、配列番号1の核酸配列またはそれに少なくとも約90%同一である配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる方法に関する。一部の実施形態では、核酸は、配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。ある特定の実施形態では、核酸は、ウイルスベクター、たとえばパルボウイルスベクター、たとえばrAAVベクターの容量以内である長さを有する。一部の実施形態では、核酸は、約5000、4900、4800、4700、4600、4500、4400、4300、4200、4100、もしくは約4000個のヌクレオチド、またはそれより少ない。
【0471】
一部の実施形態では、ミニジストロフィンタンパク質をコードしている核酸は、配列番号2のアミノ酸配列または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0472】
一部の実施形態では、銅輸送欠失ATPase2タンパク質をコードしている核酸は、配列番号15のアミノ酸配列または配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0473】
一部の実施形態では、核酸(たとえば配列番号1)は、ジストロフィンタンパク質の生成のための組換え核酸の一部である。組換え核酸は、ジストロフィンの発現を増加させるために有用な調節要素をさらに含み得る。一部の実施形態では、核酸は、銅輸送ATPase2タンパク質の生成のための組換え核酸の一部である。組換え核酸は、銅輸送ATPase2の発現を増加させるために有用な調節要素をさらに含み得る。
【0474】
調節要素
本開示の方法は、ポリペプチド(たとえばミニジストロフィン)および様々な調節または制御要素をコードしている修飾核酸を含む組換え核酸を含むrAAVベクターの精製を含む。典型的には、調節要素は、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの発現に影響を与える核酸配列である。遺伝子発現に有用な調節要素の正確な性質は、生物間および細胞種間で変動し、適正な異種ポリヌクレオチドの転写および翻訳を容易にする意図で、たとえば、プロモーター、エンハンサー、イントロンなどが挙げられる。調節性制御は、転写、翻訳、スプライシング、メッセージの安定性などのレベルで及ぼすことができる。典型的には、転写をモジュレートする調節性制御要素は、転写されたポリヌクレオチドの5’末端付近(すなわち上流)に並置されている。また、調節性制御要素は、転写された配列の3’末端(すなわち下流)または転写物内(たとえばイントロン中)に位置し得る。調節性制御要素は、転写された配列から一定距離(たとえば、1~100、100~500、500~1000、1000~5000、5000~10,000個、またはそれより多くのヌクレオチド)離れて位置することができる。しかし、AAVベクターゲノムの長さが原因で、調節性制御要素は、典型的にはポリヌクレオチドから1~1000個のヌクレオチド以内である。
【0475】
プロモーター
本明細書中で使用する用語、「真核プロモーター」などの「プロモーター」とは、真核細胞(たとえば筋肉細胞)中において、特定の遺伝子、または1つもしくは複数のコード配列(たとえばミニジストロフィンコード配列)の転写を開始させるヌクレオチド配列をいう。プロモーターは、他の調節要素または領域と一緒に働いて、遺伝子またはコード配列の転写のレベルを指揮することができる。これらの調節要素としては、たとえば、転写結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質結合部位、ならびに、たとえば、アテニュエーター、エンハンサー、およびサイレンサーを含めた、直接または間接的に作用してプロモーターからの転写の量を調節することが知られている他のヌクレオチド配列が挙げられる。プロモーターは、ほとんどの場合、同じ鎖上かつ転写開始部位付近に、それが作動可能に連結された遺伝子またはコード配列の5’側に位置する。プロモーターは、一般に100~1000個のヌクレオチドの長さである。プロモーターは、典型的には、プロモーターの非存在下における同じ遺伝子の発現と比較して、遺伝子発現を増加させる。
【0476】
本明細書中で使用する「コアプロモーター」または「最小限のプロモーター」とは、転写を正しく開始させるために必要な、プロモーター配列の最小限の一部分をいう。これには、以下のうちの任意のものを挙げ得る:転写開始部位、RNAポリメラーゼの結合部位、および一般的な転写因子結合部位。プロモーターはまた、他の一次調節要素(たとえば、エンハンサー、サイレンサー、境界要素、インスレーター)を含有する近位プロモーター配列(コアプロモーターの5’側)、および遠位プロモーター配列(コアプロモーターの3’側)も含み得る。一部の実施形態では、コアまたは最小限のプロモーターは、配列番号16の核酸を含むまたはそれからなっていてもよい、α1-抗トリプシンのコアまたは最小限のプロモーターである。
【0477】
適切なプロモーターの例としては、アデノウイルス主要後期プロモーターなどのアデノウイルスプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターなどの異種プロモーター、呼吸器合胞体ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、アルブミンプロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーターなどの誘導性プロモーター、メタロチオネインプロモーター、熱ショックプロモーター、α-1-抗トリプシンプロモーター、B型肝炎表面抗原プロモーター、トランスフェリンプロモーター、アポリポタンパク質A-1プロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、伸長因子1a(EF1a)プロモーター、CBAプロモーターのハイブリッド形態(CBhプロモーター)、CAGプロモーター(サイトメガロウイルス初期エンハンサー要素およびプロモーター、第1エクソンと、ニワトリベータ-アクチン遺伝子第1イントロンと、ウサギベータ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプター)(Alexopoulouら(2008)BioMed.Central Cell Biol. 9:2)、クレアチンキナーゼプロモーター、ならびにヒトジストロフィン遺伝子プロモーターが挙げられる。
【0478】
一部の実施形態では、プロモーターは、クレアチニンキナーゼプロモーター、たとえば、配列番号3または配列番号4のヌクレオチド配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなるプロモーターである。
【0479】
本開示の一部の実施形態では、真核プロモーター配列(たとえばクレアチンキナーゼプロモーター)は、たとえばミニジストロフィンまたは銅輸送欠失ATPase2をコードしている修飾核酸と作動可能に連結されている。一部の実施形態では、配列番号3または配列番号6の核酸配列を含むプロモーター(たとえばクレアチンキナーゼプロモーター)は、ミニジストロフィンをコードしている修飾核酸と作動可能に連結されている。一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4の核酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である核酸配列を含むプロモーターは、配列番号1の核酸配列を含む核酸と作動可能に連結されている。一部の実施形態では、配列番号16の核酸配列を含むプロモーター(たとえばα1-抗トリプシンプロモーター)は、MBS1~4(たとえば配列番号15)が欠失した銅輸送欠失ATPase2をコードしている修飾核酸と作動可能に連結されている。一部の実施形態では、配列番号16の核酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である核酸配列を含むプロモーターは、配列番号15のアミノ酸配列を含む核酸と作動可能に連結されている。
【0480】
一部の実施形態では、配列番号3または配列番号4の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を含むプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列と作動可能に連結されており、筋肉細胞中において、配列番号1の核酸配列によってコードされているポリペプチドの発現を誘導する。
【0481】
プロモーターは、構成的、組織特異的、または調節性であり得る。構成的プロモーターは、作動可能に連結された遺伝子が本質的に常時発現されることを引き起こすものである。一部の実施形態では、構成的プロモーターは、ほとんどの真核組織中において、ほとんどの生理的および発生的条件下において活性である。
【0482】
調節性プロモーターとは、活性化または不活性化ができるものである。調節性プロモーターは、通常は「オフ」であるが誘導して「オン」にし得る誘導性プロモーター、および通常は「オン」であるが「オフ」にし得る「抑制性」プロモーターを含む。多くの様々な調節因子が知られており、温度、ホルモン、サイトカイン、重金属、および調節タンパク質が挙げられる。区別は絶対的ではなく、構成的プロモーターは多くの場合、一定度合まで調節され得る。一部の場合では、内在性経路を利用して、たとえば、病的状態が改善した場合に自然に下方調節されるプロモーターを使用して、導入遺伝子の発現の調節を提供し得る。
【0483】
組織特異的プロモーターとは、特異的な種類の組織、細胞、または臓器中でのみ活性であるプロモーターである。典型的には、組織特異的プロモーターは、特定の組織、細胞、および/または臓器に対して特異的な転写アクチベーター要素によって認識される。たとえば、組織特異的プロモーターは、他の組織中においてよりも、1つまたはいくつかの特定の組織(たとえば、2、3、または4つ)中において、より活性であり得る。一部の実施形態では、組織特異的プロモーターによってモジュレートされる遺伝子の発現は、他の組織中においてよりも、プロモーターが特異的である組織中において、はるかに高い。一部の実施形態では、それが特異的であるもの以外のすべての組織において、プロモーターの活性はわずか、または実質的に無活性であり得る。プロモーターは、肝細胞中において活性であるマウスアルブミンプロモーターまたはトランスサイレチンプロモーター(TTR)などの、組織特異的プロモーターであり得る。組織特異的プロモーターの他の例としては、骨格α-アクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、骨格筋中における発現を誘導する筋肉クレアチンキナーゼをコードしている遺伝子からのプロモーターが挙げられる(Liら(1999)Nat.Biotech. 17:241~245)。肝臓特異的発現は、アルブミン遺伝子(Miyatakeら(1997)J.Virol. 71:5124~5132)、B型肝炎ウイルスコアプロモーター(Sandigら(1996)Gene Ther. 3:1002~1009)、およびアルファ-フェトプロテイン(Arbuthnotら、(1996)Hum.Gene.Ther. 7:1503~1514)からのプロモーターを使用して誘導し得る。
【0484】
エンハンサー
別の態様では、治療的ポリペプチドをコードしている修飾核酸は、治療的ポリペプチドの発現を増加させるためのエンハンサーをさらに含む。典型的には、エンハンサー要素はプロモーター要素の上流に位置するが、下流または別の配列(たとえば導入遺伝子)内に位置する場合もある。エンハンサーは、100個のヌクレオチド、200個のヌクレオチド、300個のヌクレオチド、またはより多く、修飾核酸の上流または下流に位置し得る。エンハンサーは、典型的には、修飾核酸(たとえば治療的ポリペプチドをコードしているもの)の発現を、プロモーター要素単独によって提供された発現の増加を超えて、増加させる。
【0485】
多くのエンハンサーが当分野で知られており、それだけには限定されないが、サイトメガロウイルス主要前初期エンハンサーが挙げられる。より詳細には、サイトメガロウイルス(CMV)MIEプロモーターは3つの領域を含む:モジュレーター、ユニーク領域、およびエンハンサー(IsomuraおよびStinski(2003)J.Virol. 77(6):3602~3614)。CMVエンハンサー領域は、別のプロモーターまたはその一部分と一緒にしてハイブリッドプロモーターを形成して、それに作動可能に連結された核酸の発現をさらに増加させることができる。たとえば、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターまたはその一部分は、CMVプロモーター/エンハンサーまたはその一部分と一緒にして、「CBh」プロモーター(ニワトリベータ-アクチンハイブリッドプロモーターの略、Grayら(2011、Human Gene Therapy 22:1143~1153)に記載)と呼ばれるCBAのバージョンを作製することができる。プロモーターと同様、エンハンサーは、構成的、組織特異的、または調節性であり得る。
【0486】
本開示の一部の実施形態では、調節要素は、筋肉特異的転写調節要素(hCK)として役立ち、ミニジストロフィンをコードしている修飾核酸と作動可能に連結されている、クレアチンキナーゼ(CK)遺伝子に由来する合成ハイブリッドエンハンサーおよびプロモーターなどの、ハイブリッドエンハンサーおよびプロモーターを含む。一部の実施形態では、配列番号5の核酸配列を含む合成ハイブリッドエンハンサーおよびプロモーターは、ミニジストロフィンをコードしている修飾核酸と作動可能に連結されている。一部の実施形態では、配列番号5の核酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である核酸配列を含む、クレアチンキナーゼ(CK)遺伝子に由来する合成ハイブリッドエンハンサーおよびプロモーターは、配列番号1の核酸配列を含む核酸と作動可能に連結されている。
【0487】
一部の実施形態では、配列番号5の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列を含む、クレアチンキナーゼ(CK)遺伝子に由来する合成ハイブリッドエンハンサーおよびプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも95%同一である核酸配列と作動可能に連結されており、筋肉細胞中において、配列番号1の核酸配列によってコードされているポリペプチドの発現を誘導する。
【0488】
フィラー、スペーサー、およびスタッファー
本明細書中に開示するように、rAAVベクター中における使用を意図する組換え核酸は、rAAVベクター内へのAAVのパッケージングに許容されるウイルスゲノム配列の正常な大きさ(たとえばおよそ4.7~4.9キロ塩基)の付近またはそれに、核酸の長さを調節するための、追加の核酸要素を含み得る(GriegerおよびSamulski(2005)J.Virol. 79(15):9933~9944)。そのような配列は、フィラー、スペーサー、またはスタッファーと互換性があるように呼び得る。一部の実施形態では、フィラーDNAは、核酸の翻訳されない(非タンパク質コード)セグメントである。一部の実施形態では、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90-90~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1000、1000~1500、1500~2000、2000~3000、またはそれより大きい長さの配列である。
【0489】
AAVベクターは、典型的には、AAVカプシド内への核酸の最適なパッケージングのために、約4kb~約5.2kbまたは約4.1~4.9kbの範囲の大きさを有するDNAの挿入物を受け入れる。一部の実施形態では、rAAVベクターは、約3.0kb~約3.5kb、約3.5kb~約4.0kb、約4.0kb~約4.5kb、約4.5kb~約5.0kb、または約5.0kb~約5.2kbの全長を有するベクターゲノムを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、約4.5kbの全長を有するベクターゲノムを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、自己相補的であるベクターゲノムを含む。rAAVベクター中の自己相補的(sc)ベクターゲノムの全長は一本鎖(ss)ベクターゲノムに等しい一方で(すなわち約4kb~約5.2kb)、scベクターゲノムをカプシド中にパッケージングするためには、scベクターゲノムをコードしている核酸配列(すなわち、導入遺伝子、調節要素、およびITRを含む)は、ssベクターゲノムをコードしている核酸配列の半分の長さでしかなければならない。
【0490】
イントロンおよびエクソン
一部の実施形態では、組換え核酸は、たとえば、イントロン、エクソン、および/またはその一部分を含む。イントロンは、フィラーまたはスタッファーポリヌクレオチド配列として機能して、rAAVベクター内へのベクターゲノムのパッケージングに適切な長さを達成し得る。また、イントロンおよび/またはエクソン配列は、イントロンおよび/またはエクソン要素の非存在下における発現と比較して、ポリペプチド(たとえば導入遺伝子)の発現を増強させることもできる(Kurachiら(1995)J.Biol.Chem. 270(10):576~5281、WO2017/074526号)。さらに、フィラー/スタッファーポリヌクレオチド配列(「インスレーター」とも呼ばれる)は当分野で周知であり、それだけには限定されないが、WO2014/144486号およびWO2017/074526号中に記載されているものが挙げられる。
【0491】
イントロン要素は、異種ポリヌクレオチドと同じ遺伝子に由来し得る、または完全に異なる遺伝子もしくは他のDNA配列(たとえば、ニワトリβ-アクチン遺伝子、マウス微小ウイルス(MVM))に由来し得る。一部の実施形態では、組換え核酸は、非同族遺伝子に由来する(すなわち、修飾核酸、たとえば導入遺伝子に由来しない)イントロンおよびエクソンから選択される少なくとも1つの要素を含む。
【0492】
ポリアデニル化シグナル配列(ポリA)
さらなる調節要素としては、ストップコドン、終止配列、および、それだけには限定されないがウシ科動物成長ホルモンポリAシグナル配列(BHGポリA)などのポリアデニル化(ポリA)シグナル配列を挙げ得る。ポリAシグナル配列は、遺伝子転写の終結を導く、真核mRNAの3’末端でのポリ-アデノシン「テイル」の効率的な付加を駆動する(たとえばGoodwinおよびRottman J.Biol.Chem.(1992)267(23):16330~16334を参照)。ポリAシグナルは、新しく形成された前駆体mRNAの、その3’末端でのエンドヌクレアーゼ的切断のため、およびこの3’末端へのアデニン塩基のみからなるRNAストレッチの付加のためのシグナルとして作用する。ポリAテイルは、mRNAの核外移行、翻訳、および安定性に重要である。一部の実施形態では、ポリAは、SV40初期ポリアデニル化シグナル、SV40後期ポリアデニル化シグナル、HSVチミジンキナーゼポリアデニル化シグナル、プロタミン遺伝子ポリアデニル化シグナル、アデノウイルス5 E1bポリアデニル化シグナル、成長ホルモンポリアデニル化シグナル、PBGDポリアデニル化シグナル、またはin silicoで設計されたポリアデニル化シグナルである。
【0493】
一部の実施形態では、かつ本明細書中に記載の1つまたは複数の他の調節要素と任意選択で組み合わせて、組換え核酸のポリAシグナル配列は、たとえばミニジストロフィン(たとえば配列番号2)または銅輸送欠失ATPase2(たとえば配列番号15)をコードしている修飾核酸の転写から生じる前駆体mRNAのエンドヌクレアーゼ的切断およびポリアデニル化を指揮および達成することができる、ポリAシグナルである。一部の実施形態では、ポリA配列は、配列番号6または配列番号17の核酸配列を含むまたはそれからなる。一部の実施形態では、ポリA配列は、配列番号6または配列番号17の核酸配列と約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%、または100%同一である核酸配列を含む。一部の実施形態では、組換え核酸は、プロモーター配列(たとえば、配列番号3、配列番号4)、ハイブリッドエンハンサーおよびプロモーター(たとえば配列番号5)、およびポリA(配列番号6)のうちの少なくとも1つを含み、配列番号1の核酸配列によってコードされていてもよい異種ポリペプチドの発現をモジュレートする。一部の実施形態では、組換え核酸は、プロモーター配列(たとえば配列番号16)およびポリA(配列番号17)のうちの少なくとも1つを含み、配列番号15のアミノ酸配列を含む異種ポリペプチドの発現をモジュレートする。
【0494】
一部の実施形態では、筋肉細胞に対する指向性を有するrAAV9ベクターは、AAV ITR(たとえばAAV2 ITR)と、ミニジストロフィンをコードしている修飾した(すなわちコドン最適化された)核酸を含む組換え核酸と、以下の調節要素、すなわち、プロモーター(たとえばヒトCKプロモーター)、ハイブリッドエンハンサー、およびポリAシグナル配列のうちの少なくとも1つとを含むベクターゲノムを含有する。
【0495】
一部の実施形態では、肝細胞に対して指向性を有するrAAV3Bベクターは、AAV ITR(たとえばAAV2 ITR)と、銅輸送欠失ATPase2(たとえば配列番号15のアミノ酸配列)をコードしている修飾した(すなわちコドン最適化された)核酸を含む組換え核酸と、以下の調節要素のうち、すなわち、プロモーター(たとえばα1-抗トリプシンプロモーター、たとえば配列番号16の核酸配列)およびポリAシグナル配列(たとえば配列番号17の核酸)の少なくとも1つとを含むベクターゲノムを含有する。
【0496】
一部の実施形態では、筋肉細胞に対して指向性を有するrAAV9ベクターは、AAV ITR(たとえば、配列番号7、配列番号8)と、ミニジストロフィンをコードしている修飾した(すなわちコドン最適化された)核酸(たとえば配列番号1)を含む組換え核酸と、以下の調節要素、すなわち、プロモーター(たとえば配列番号3または配列番号4)、ハイブリッドエンハンサーおよびプロモーター(たとえば配列番号5)、およびポリA(たとえば配列番号6)のうちの少なくとも1つとを含むベクターゲノムを含有する。
【0497】
4.ウイルスベクターのアセンブリ
導入遺伝子(たとえばミニジストロフィンをコードしているもの)を保有するウイルスベクター(たとえばrAAVベクター)は、導入遺伝子をコードしているポリヌクレオチド、適切な調節要素、および、細胞形質導入を媒介する、ウイルスタンパク質の生成に必要な要素からアセンブリする。ウイルスベクターの例としては、それだけには限定されないが、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、具体的にはrAAVベクターが挙げられる(上述)。
【0498】
本開示の方法に従って生成したrAAVベクターのベクターゲノム構成成分は、少なくとも1つの導入遺伝子、たとえば、コドン最適化されたミニジストロフィン導入遺伝子、および、ジストロフィンまたはその断片をコードしている修飾核酸の発現を制御するための関連する発現制御配列を含む。
【0499】
例示的な非限定的な実施形態では、ベクターゲノムは、repおよびcapが欠失したおよび/または修飾核酸(たとえば導入遺伝子、たとえばコドン最適化されたミニジストロフィン導入遺伝子)によって置き換えられているAAVゲノム、ならびにその関連する発現制御配列などの、パルボウイルスゲノムの一部分を含む。ジストロフィンまたはその断片をコードしている修飾核酸は、典型的には、ウイルスのrepおよびcapタンパク質をコードしている核酸の代わりに、ウイルス複製に十分な1つまたは2つのAAV ITRまたはITR要素に近接して(すなわち隣接して)挿入されている(Xiaoら(1997)J.Virol. 71(2):941~948)。標的細胞(たとえば筋肉細胞)中においてコドン最適化されたミニジストロフィン導入遺伝子の組織特異的発現を容易にするために使用するために適切な他の調節配列も含まれ得る。
【0500】
パッケージング細胞
当業者は、導入遺伝子を含み、ウイルス複製に必要なウイルスタンパク質(たとえばcapおよびrep)を欠くrAAVベクターは、そのようなタンパク質はウイルス複製およびパッケージングに必要であるため、複製できないことを理解されよう。capおよびrep遺伝子は、ベクターゲノムに導入遺伝子を供給するプラスミドとは別々のプラスミドとして、細胞(たとえば宿主細胞、たとえばパッケージング細胞)に供給し得る。
【0501】
「パッケージング細胞」または「プロデューサー細胞」とは、ベクター、プラスミド、またはDNA構築体を用いて形質移入されていてよく、ウイルスベクターの完全な複製およびパッケージングに必要なすべての欠損した機能をtransで提供する、細胞または細胞系を意味する。rAAVベクターのアセンブリに必要な遺伝子は、ベクターゲノム(たとえば、コドン最適化されたミニジストロフィン導入遺伝子、調節要素、およびITR)、AAV rep遺伝子、AAV cap遺伝子、およびたとえばアデノウイルスなどの他のウイルスからの特定のヘルパー遺伝子を含む。当業者には、AAV生成のための必要な遺伝子は、たとえば1つまたは複数のプラスミドの形質移入を含む様々な方法で、パッケージング細胞内に導入できることを理解されるであろう。しかし、一部の実施形態では、一部の遺伝子(たとえば、rep、cap、ヘルパー)は、ゲノム内に組み込まれてまたはエピソーム上に保有されてのいずれかで、パッケージング細胞中に既に存在し得る。一部の実施形態では、パッケージング細胞は、構成的または誘導性の様式で、1つまたは複数の欠損したウイルス機能を発現する。
【0502】
当分野で知られている任意の適切なパッケージング細胞を、パッケージングされたウイルスベクターの生成において用い得る。哺乳動物細胞または昆虫細胞が好ましい。本開示の実施においてパッケージング細胞の生成に有用な細胞の例としては、たとえば、PER.C6、WI38、MRC5、A549、HEK293(構成的プロモーターの制御下で機能的なアデノウイルスE1を発現する)、B-50、または任意の他のHeLa細胞、HepG2、Saos-2、HuH7、およびHT1080細胞系などのヒト細胞系が挙げられる。適切な非ヒト哺乳動物細胞系としては、たとえば、VERO、COS-1、COS-7、MDCK、BHK21-F、HKCC、またはCHO細胞が挙げられる。
【0503】
一部の実施形態では、パッケージング細胞は懸濁培養中で成長することができる。一部の実施形態では、パッケージング細胞は無血清培地中で成長することができる。たとえば、HEK293細胞は、無血清培地中の懸濁液中で成長させる。別の実施形態では、パッケージング細胞は、米国特許第9,441,206号中に記載されており、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)PTA 13274として受託されているHEK293細胞である。数々のrAAVパッケージング細胞系が当分野で知られており、それだけには限定されないが、WO2002/46359号中に開示されているものが挙げられる。
【0504】
パッケージング細胞として使用するための細胞系としては、昆虫細胞系が挙げられる。AAVの複製を可能にし、培養物中に維持することができる任意の昆虫細胞を、本開示に従って使用することができる。例としては、Sf9またはSf21などのスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)の細胞系、ショウジョウバエ属(Drosophila)の種の細胞系、または蚊の細胞系、たとえば、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)由来の細胞系が挙げられる。好ましい細胞系はスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)Sf9細胞系である。以下の参照は、異種ポリペプチドの発現のための昆虫細胞の使用、核酸をそのような細胞内に導入する方法、およびそのような細胞を培養物中に維持する方法に関するその教示について、本明細書中に組み込まれている:Methods in Molecular Biology、Richard編、Humana Press、NJ(1995)、O’Reillyら、Baculovirus Expression Vectors:A Laboratory Manual、Oxford Univ.Press(1994)、Samulskiら(1989)J.Virol. 63:3822~3828、Kajigayaら(1991)Proc.Nat’l.Acad.Sci. USA 88:4646~4650、Ruffingら(1992)J.Virol. 66:6922~6930、Kimbauerら(1996)Virol. 219:37~44、Zhaoら(2000)Virol. 272:382~393、および米国特許第6,204,059号。
【0505】
さらなる代替方法として、本開示のウイルスベクターは、たとえばUrabeら(2002)Human Gene Therapy 13:1935~1943によって記載されているように、昆虫細胞中において、rep/cap遺伝子およびrAAV鋳型を送達するためにバキュロウイルスベクターを使用して生成し得る。AAVのバキュロウイルス生成を使用する場合、一部の実施形態では、ベクターゲノムは自己相補的である。一部の実施形態では、宿主細胞は、バキュロウイルスヘルパー機能をコードしている追加の核酸を含んでいてもよく、それによってウイルスカプシドの生成を容易にする、バキュロウイルスに感染した細胞(たとえば昆虫細胞)である。
【0506】
パッケージング細胞は、一般に、1つまたは複数のウイルスベクター機能を、ウイルスベクターの複製およびパッケージングをもたらすために十分なヘルパー機能およびパッケージング機能と共に含む。これらの様々な機能は、プラスミドまたは単位複製配列などの遺伝子構築体を使用して、一緒にまたは別々にパッケージング細胞に供給してよく、これらは、細胞系内に染色体外で、または宿主細胞の染色体内に組み込まれて存在し得る。一部の実施形態では、パッケージング細胞を、少なくともi)導入遺伝子およびAAV ITRを含み、以下の調節要素:エンハンサー、プロモーター、エクソン、イントロン、およびポリAのうちの少なくとも1つをさらに含むベクターゲノムを含むプラスミド、ならびにii)rep遺伝子(たとえばAAV2 rep)およびcap遺伝子(たとえばAAV9または他のcap)を含むプラスミドを用いて形質移入する。
【0507】
一部の実施形態では、それ内に取り込まれたパッケージングまたはヘルパー機能のうちの1つまたは複数を有する宿主細胞、たとえば、1つまたは複数のベクター機能が染色体外で取り込まれているまたは細胞の染色体DNA内に組み込まれている宿主細胞系を供給する。
【0508】
ヘルパー機能
AAVは、ヘルパーウイルスによる細胞の同時感染がなければ細胞中で複製することができないという点で、ディペンドウイルスである。ヘルパー機能は、ウイルスベクターのパッケージングを開始するために必要な、パッケージング細胞の活性感染を確立するために必要なヘルパーウイルス要素を含む。ヘルパーウイルスとしては、典型的にはアデノウイルスまたは単純ヘルペスウイルスが挙げられる。アデノウイルスヘルパー機能としては、典型的には、アデノウイルス構成成分アデノウイルス初期領域1A(E1a)、E1b、E2a、E4、およびウイルス関連(VA)RNAが挙げられる。ヘルパー機能(たとえば、E1a、E1b、E2a、E4、およびVA RNA)は、細胞を、様々なヘルパー要素をコードしている1つまたは複数の核酸を用いて形質移入することによって、パッケージング細胞に提供することができる。あるいは、宿主細胞(たとえばパッケージング細胞)は、ヘルパータンパク質をコードしている核酸を含むことができる。たとえば、HEK293細胞を、ヒト細胞をアデノウイルス5 DNAで形質転換させることによって作製し、HEK293細胞は、今や、それだけには限定されないがE1およびE3を含むいくつかのアデノウイルス遺伝子を発現する(たとえばGrahamら(1977)J.Gen.Virol. 36:59~72を参照)。したがって、これらのヘルパー機能は、HEK293パッケージング細胞によって、これらを細胞に供給する必要なしに、たとえばそれらをコードしているプラスミドによって、提供することができる。一部の実施形態では、パッケージング細胞を、少なくともi)導入遺伝子およびAAV ITRを含み、以下の調節要素:エンハンサー、プロモーター、エクソン、イントロン、およびポリAのうちの少なくとも1つをさらに含むベクターゲノムを含むプラスミド、ならびにii)rep遺伝子(たとえばAAV2 rep)およびcap遺伝子(たとえばAAV9または他のcap)を含むプラスミド、ならびにiii)ヘルパー機能を含むプラスミドを用いて形質移入する。
【0509】
複製およびパッケージングのためにヘルパー機能を保有するヌクレオチド配列を細胞性宿主内に導入するための任意の方法を用いてよく、それだけには限定されないが、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、微量注入、陽イオン性または陰イオン性リポソーム、担体分子(たとえばポリエチレンイミン(PEI))、および核移行シグナルと組み合わせたリポソームが挙げられる。一部の実施形態では、ヘルパー機能は、ウイルスベクターを使用した形質移入によって、またはヘルパーウイルスを使用した感染によって提供し、ウイルス感染を生じる標準方法を使用し得る。
【0510】
ベクターゲノムは、DNAまたはRNA構築体などの任意の適切な組換え核酸であってよく、一本鎖、二本鎖、または二重鎖(すなわち、WO2001/92551号に記載のように自己相補的)であってよい。
【0511】
4.パッケージングされたウイルスベクターの生成
ウイルスベクターは、当業者に知られているいくつかの方法によって作製することができる(たとえばWO2013/063379号を参照)。例示的な非とう限定的な方法は、すべての目的のためにその内容が本明細書中に参考として組み込まれているGriegerら(2015)Molecular Therapy 24(2):287~297中に記載されている。手短に述べると、HEK293細胞の効率的な形質移入を開始点として使用し、有資格の臨床的マスター細胞バンクからの接着性HEK293細胞系を使用して、動物構成成分を含まない懸濁液条件下で、迅速かつ拡張可能なrAAV生成を可能にする振盪フラスコおよびWAVEバイオリアクター中において、成長させる。三重形質移入方法(たとえばWO96/40240号)を使用して、HEK293細胞系の懸濁液は、形質移入の48時間後に回収した場合に、1×105個を超えるベクターゲノム含有粒子(VG)/細胞、または1×1014VG/Lを超える細胞培養物を作製することができる。より詳細には、三重形質移入とは、パッケージング細胞を3つのプラスミドで形質移する方法をいう:1つのプラスミドAAV repおよびcap(たとえばAAV9 cap)遺伝子をコードしており、別のプラスミドは様々なヘルパー機能(たとえば、E1a、E1b、E2a、E4、およびVA RNAなどのアデノウイルスまたはHSVタンパク質をコードしており、別のプラスミドは、導入遺伝子(たとえばジストロフィンまたはその断片)および導入遺伝子の発現を制御するための様々な要素をコードしている。
【0512】
一本鎖ベクターゲノムは、カプシド内にプラス鎖またはマイナス鎖としてほぼ等しい割合でパッケージングされる。rAAVベクターの一部の実施形態では、ベクターゲノムはプラス鎖極性(すなわち、センスまたはDNA鎖のコード配列)である。一部のrAAVベクターの実施形態では、ベクターはマイナス鎖極性(すなわち、アンチセンスまたは鋳型DNA鎖)である。その5’から3’の配向のプラス鎖のヌクレオチド配列を考慮すると、その5’から3’の配向のマイナス鎖のヌクレオチド配列は、プラス鎖のヌクレオチド配列の逆補体として決定することができる。
【0513】
所望の収率を達成するために、成長および形質移入をどちらも支持する適合性がある無血清懸濁液媒体の選択、形質移入試薬、形質移入条件、および細胞密度の選択など、いくつかの変数を最適化する。
【0514】
rAAVベクターは、カラムクロマトグラフィーまたは塩化セシウム勾配によってなど、当分野において標準の方法によって精製し得る。rAAVベクターを精製する方法は当分野で知られており、Clarkら(1999)Human Gene Therapy 10(6):1031~1039、SchenppおよびClark(2002)Methods Mol.Med. 69:427~443、米国特許第6,566,118号、およびWO98/09657号中に記載されている方法が挙げられる。
【0515】
本開示のrAAVベクターを本明細書中に開示した方法に従って生成および精製した後、デュシェンヌ筋ジストロフィーを有するヒト対象などの対象に投与するための組成物を調製するために、これらを滴定することができる(たとえば、試料中のrAAVベクターの量を定量することができる)。rAAVベクターの滴定は、当分野で知られている方法を使用して達成することができる。
【0516】
一部の実施形態では、ベクターゲノムを含有する粒子およびベクターゲノムを含有しない「空」カプシドを含めたウイルス粒子の数は、電子顕微鏡観察、たとえば透過型電子顕微鏡観察(TEM)によって決定することができる。そのようなTEMに基づく方法は、試料中のベクター粒子(または野生型AAVの場合はウイルス粒子)の数を提供することができる。一部の実施形態では、ベクターゲノムを含有する粒子(フルカプシド)、およびベクターゲノムを含有しない「空」カプシドの量は、荷電検出質量分析、分析用超遠心分離(AUC)、ならびに/またはA260/A280比を決定するための260nmおよび280nmでの吸光度の測定によって決定することができる。
【0517】
一部の実施形態では、rAAVベクターゲノムは、ベクターゲノム中の任意の配列、たとえばITR配列(たとえば配列番号7もしくは配列番号8)、および/または導入遺伝子(もしくは調節要素)中の配列に対するプライマーを使用した定量的PCR(qPCR)を使用して、滴定することができる。ベクターゲノムの配列を含有するプラスミドなどの既知の濃度の標準の希釈液に対してqPCRを平衡で行うことによって、検量線を作成することができ、これにより、rAAVベクターの濃度を、マイクロリットルまたはミリリットルなどの単位体積あたりのベクターゲノム(VG)の数として計算することが可能になる。たとえばSECまたはELISAによって測定したベクター粒子の数を、試料中のベクターゲノムの数と比較することによって、空カプシドの百分率を推定することができる。ベクターゲノムは治療的導入遺伝子を含有するため、vg/kgまたはvg/mlのベクター試料が、その一部が空でありベクターゲノムを含有しない場合があるベクター粒子の数よりも、対象が受けるベクターの治療量をより示している場合がある。ストック溶液中のrAAVベクターゲノムの濃度が決定された後、これを、対象(たとえばデュシェンヌ筋ジストロフィーを有する対象)に投与するための組成物(たとえば原薬)の調製において使用するための適切な緩衝液で希釈する、またはそれに対して透析することができる。
【0518】
5.陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)によるrAAVベクター精製
イオン交換クロマトグラフィー方法に基づく新規の普遍的な精製戦略を使用して、様々なAAV血清型の高純度のrAAVベクター調製物ならびに/またはキメラカプシド(たとえば、AAV1、AAV2、AAV3AやAAV3Bを含むAAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV12、AAVrh10、AAVrh74、トリAAV、ウシ科動物AAV、イヌ科動物AAV、ウマ科動物AAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、およびヒツジAAV、ならびにAAV2i8、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVLK03、RHM4-1、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15と呼ばれる変異体などの、組換え生成した変異体(たとえば、挿入、欠失、および置換などを有するカプシド変異体))を作製し得る。一部の実施形態では、このプロセスは1週間未満で完了し、高いフル対空のカプシド比(70%までのフルカプシド)をもたらし、70%までのステップ収率および臨床的使用に適切な純度を提供することができる。一部の実施形態では、そのような方法はAAV血清型および/またはカプシドのキメラ化に関して普遍的である。本明細書中に記載の拡張可能な製造技術を使用して、疾患(たとえば、DMD、フリードライヒ運動失調症、ウィルソン病など)を処置するためのGMP臨床および市販グレードのrAAVベクターを製造し得る。
【0519】
遺伝子療法のための組換えAAVベクター(rAAV)の生成は、ベクターを生成した宿主細胞(たとえば、それだけには限定されないが、宿主細胞DNA、RNA、タンパク質、脂質、膜、およびオルガネラを含む宿主細胞細片)からのrAAVベクターの精製、ならびに完全ベクターゲノムを含有せず、したがって治療的導入遺伝子を含まないカプシド(たとえば中間体および/または空カプシド)の除去を必要とする。
【0520】
そのような精製方法は、一般に複数のステップを含み、たとえば、宿主細胞の溶解、細胞タンパク質およびDNAの沈殿、rAAVベクターの宿主細胞タンパク質および核酸からの分離、ならびに、カラム精製、低速遠心分離、超遠心分離、通常流濾過、限外濾過/ダイアフィルトレーション、またはこれらの方法の任意の組合せによる、rAAVベクターの空および中間体カプシドからの分離が挙げられる。カラム精製としては、たとえば、イオン交換クロマトグラフィー(たとえば、陰イオン、陽イオン)、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、マルチモーダルクロマトグラフィー、および/または疎水性相互作用クロマトグラフィーを挙げ得る。遠心分離方法としては、たとえば、超遠心分離または低速遠心分離(たとえば固体の除去および清澄化のため)を挙げ得る。濾過方法としては、たとえば、ダイアフィルトレーション、デプス濾過、公称濾過および/または絶対濾過を挙げ得る。
【0521】
AEXは、物質(たとえば、AAVカプシド、DNA、タンパク質、高いモル質量の種、アミノ酸)を、前記物質の電荷相違に基づいて分離するために、正電荷固定相(たとえば樹脂)を用い、中等度に酸性からアルカリ性のpH(たとえばpH6より高く)で電荷相違に基づいてrAAVカプシドを不純物から分離するために有用である。AEXはまた、フルカプシドと比較した空カプシドの電荷相違に依存することによって、空カプシドを、完全ベクターゲノムを含有するrAAVベクター(すなわちフルカプシド)から分離することもできる。
【0522】
理論に束縛されることを望まずに、AAVカプシドとAEXクロマトグラフィー固定相との間の結合の堅固さは、カプシド内の任意の核酸からの電荷貢献を含むカプシドの負電荷の強度、溶液のpH、および溶液の伝導率に関連する(Qu,G.ら、J.Virological.Methods(2007)140:183~192)。一部の実施形態では、AEXクロマトグラフィー固定相は、共有結合した四級化ポリエチレンイミンおよび任意選択でOH基で修飾されたポリスチレンジビニルベンゼン粒子を含む樹脂である(たとえばPOROS(商標)50 HQ樹脂)。ポリスチレンジビニルベンゼン粒子は、500~10,000オングストローム(Å)の孔を含み得る。
【0523】
一部の実施形態では、AEXクロマトグラフィー固定相は、アガロース粒子(たとえば、Capto Q ImpRes、Q Sepharose高性能)を陽イオン性リガンドと共に含む樹脂である。一部の実施形態では、AEXクロマトグラフィー固定相は、Capto Q、Capto Q XP、Q Sepharose XL、STREAMLINE Q XL、Capto HiRes Q、RESOURCE Q、SOURCE 15 Q、SOURCE 30 Q、Q Sepharose HP、Q Sepharose FF、Q Sepharose(商標)BB、POROS(商標)20 HQ、POROS(商標)XQ、TOYOPEARL QAE-550C、TOYOPEARL Q-600C AR、TOYOPEARL GigaCap Q-650S、TOYOPEARL GigaCap Q-650M、TOYOPEARL SuperQ-650S、TOYOPEARL SuperQ-650M、TOYOPEARL SuperQ-650C、TSKgel SuperQ-5PW (20)、TSKgel SuperQ-5PW (30)、Q セラミック HyperD F、ESHMUNO(登録商標)Q、Fractogel(登録商標)EMD TMAE (S)、Fractogel(登録商標)EMD TMAE (M)、Fractogel(登録商標)EMD TMAE Hicap (M)、Fractogel(登録商標)EMD TMAE (S)、Fractogel(登録商標)EMD TMAE (M)、Fractogel(登録商標)EMD TMAE Hicap (M)、Nuvia Q、Nuvia HP-Q、UNOsphere Q、Macro-Prep High Q、Macro-Prep 25 Q、BioRad AG(登録商標)1-X2、WorkBeads(商標)40Q、WorkBeads(商標)100Q、Cellufine MAX Q-r、Cellufine MAX Q-h、Praesto(商標)Q65、Praesto(商標)Q90、Praesto(商標)Jetted Q35、BAKERBOND(商標)POLYQUAT、BAKERBOND(商標)POLYPEI、YMC-BioPro Q30、YMC-BioPro Q75、YMC-BioPro SmartSep Q10、YMC-BioPro SmartSep Q30、DEAE Sepharose FF、ANX Sepharose 4 FF(高基質)、POROS(商標)50 PI、POROS(商標)50 D、TOYOPEARL NH2-750F、TOYOPEARL GigaCap DEAE-650M、TOYOPEARL DEAE-650S、TOYOPEARL DEAE-650M、TOYOPEARL DEAE-650C、TSKgel DEAE-5PW(20)、TSKgel DEAE-5PW(30)、セラミックHyperD DEAE、Hypercel Star AX、Fractogel(登録商標)EMD DEAE(M)、Fractogel(登録商標)EMD DMAE(M)樹脂、Macro-Prep DEAE、WorkBeads(商標)40 DEAE、Cellufine MAX DEAE、DEAE PuraBead HF、およびWorkBeads(商標)40 TRENからなる群から選択される樹脂である。
【0524】
一部の実施形態では、AEXクロマトグラフィー固定相は、多孔性ポリ-メタクリレートを陽イオン性リガンド(たとえばCIMmultus(商標)QA)と共に含むモノリスである。一部の実施形態では、AEXクロマトグラフィー固定相は、ポリエーテルスルホンを陽イオン性リガンド(たとえば、Mustang Q、Mustang E、Sartobind(登録商標)Q、Sartobind STIC(登録商標)PA)と共に含む膜吸着剤である。
【0525】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、AEXによって、移動相と固定相を通過したまたは固定相から置換されたrAAVベクターまたはカプシドなどの材料とから構成される、親和性クロマトグラフィー固定相から出る(たとえば「固定相から溶出する」)溶液から精製することができる。この溶液は親和性溶出液または「親和性プール」と呼び得る。
【0526】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、AEXによって、本明細書中において、宿主細胞培養物からの溶解した宿主細胞の沈降後に収集した溶液を指す「細胞溶解液からの上清」(「清澄にした溶解物」としても知られる)から精製することができる。
【0527】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、AEXによって、本明細書中において、凝結、デプス濾過、および/または公称濾過を受けた細胞溶解から生じる溶液を指す「回収後の溶液」から精製することができる。
【0528】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、少なくとも1つの他の精製またはプロセスステップ(たとえば、細胞溶解、凝結、濾過、希釈、pH調節、クロマトグラフィー)を受けた溶液から精製することができる。一部の実施形態では、親和性溶出液は、親和性溶出液をAEXカラム上にロードする前などの、rAAVベクターの精製の前に、希釈および任意選択で濾過されている。
【0529】
一部の実施形態では、rAAVベクターは、AEXによって、少なくとも1つの他の精製またはプロセスステップ(たとえば、細胞溶解、凝結、濾過、希釈、pH調節、クロマトグラフィー)を受けていてもよい親和性溶出液から精製することができる。一部の実施形態では、rAAVベクターは、AEXによって、少なくとも1つの他の精製またはプロセスステップ(たとえば、細胞溶解、凝結、濾過、希釈、pH調節、クロマトグラフィー)を受けていてもよい細胞溶解液から精製することができる。一部の実施形態では、rAAVベクターは、AEXによって、少なくとも1つの他の精製またはプロセスステップ(たとえば、細胞溶解、凝結、濾過、希釈、pH調節、クロマトグラフィー)を受けていてもよい、回収後の溶液から精製することができる。
【0530】
精製しようとする物質(たとえばrAAVベクター)および不純物を含む溶液が、AEX固定相を通って流れるにつれて、正電荷のAEX固定相と結合する物質(たとえば、AAVカプシドまたはrAAVベクターなどの負電荷タンパク質)は、固定相内に保持される。非結合物質はカラムを通過し、フロースルー中、および/または続く洗浄ステップ中に収集される。結合した物質は、固定相から、カラム内の塩濃度および/またはpHを調節することによって溶出させ得る。たとえば、任意の特定の動作理論に束縛されることを望まずに、塩中の陰イオン(たとえば、酢酸イオン(C2H3O2
-)、Cl-SO4
-2)が、樹脂と結合した物質と競合してそれを置換する(すなわち溶出させる)ように、溶出緩衝液の塩濃度を徐々に増加させる。別の実施形態では、カラム内の溶液のpHを徐々に減少させて、結合した物質の負電荷を減少させ、それが固定相から放出(すなわち溶出)されることを引き起こすことができる。固定相からの放出の際、物質をカラム溶出液として収集し得る。
【0531】
理論に束縛されることを望まずに、AAVカプシドの混合物、またはより詳細にはrAAVベクター(すなわちフルカプシド)、AAVカプシド(たとえば、空カプシド、中間体カプシド)、および宿主細胞タンパク質の混合物などの物質の分離は、物質の総電荷相違に依存する。イオン化可能な側基の電荷組成が、特定のpHでのタンパク質の総電荷を決定する。等電点(pI)では、タンパク質上の総電荷は0であり、これはマトリックスと結合しない。pHがpIより高い場合、タンパク質は負電荷を有し、陰イオン交換カラム固定相と結合する。
【0532】
フルrAAVベクターを空カプシドから分離するためのAEXプロトコルは、複数のステップ、たとえば、保存液を置換するためのカラム媒体の使用前のフラッシュのステップ、カラム固定相の使用前の浄化ステップ、カラム固定相の使用後の浄化ステップ、カラム固定相の平衡化ステップ、rAAVベクターを含む溶液(たとえば希釈した親和性溶出液)をカラム固定相上にロードするステップ、精製しようとする物質を固定相から(たとえば、勾配溶出によって、ステップ溶出によって)溶出させるステップ、カラム固定相に勾配保持を適用するステップ、カラム固定相の浄化ステップ、カラム固定相の再生ステップ、保存液をカラム固定相に適用するステップを含む。当業者には、rAAVベクターの精製のためのAEXプロトコルは、これらのステップのすべて、またはその一部のみを含み得ることを理解されよう。当業者はまた、これらのステップの順序は変動してよく、特定のステップを複数回かつ必ずしも順序通りでなく行ってよいことも、理解されよう。
【0533】
AEXカラムの調製
本開示のAEX方法は、1.0mL~20Lの体積の範囲のカラムを利用して、様々なスケールで行い得る。一部の実施形態では、AEX方法は、約1.0mL、約5.1mL、約49mL、約52mL、約6.67mL、約1.256L、約1.3L、約6.0L、約6.1L、約6.2L、約6.3L、約6.4L、約6.5L、約6.6L、約6.7L、約6.8L、約6.9L、または約7.0Lのカラム体積(CV)を有するカラムの使用を含む。一部の実施形態では、本開示のAEX方法は、1.0mL~20L、たとえば、1.0ml~10mL、30mL~70mL、10mL~100mL、100mL~1000mL、1L~1.5L、1.5L~2.0L、2.0L~5L、5L~7.5L、7.5L~10L、10L~15L、または15L~20LのCVを有するカラムの使用を含む。一部の実施形態では、本開示のAEX方法は、1.0mL~10L、10mL~10L、100mL~20L、100mL~10L、1L~20L、1L~10L、1L~5L、1L~2L、または1l~1.5LのCVを有するカラムの使用を含む。一部の実施形態では、本開示のAEX方法は、6.0L~6.6L(たとえば6.4L)のCVを有するカラムの使用を含む。
【0534】
カラムに、たとえばそれ中の固定相を平衡化するために適用する溶液の体積は、一般に「カラム体積」(CV)に関して表し、1CVはカラムの体積に等しい。
【0535】
一部の実施形態では、本開示のAEXクロマトグラフィー固定相(本明細書中で「樹脂」または「媒体」とも呼ぶ)は、共有結合した四級化ポリエチレンイミンを有するポリスチレンジビニルベンゼン粒子(たとえばPOROS(商標)50 HQ樹脂)である。
【0536】
一般に、精製しようとする溶液(たとえば、親和性クロマトグラフィー溶出液、本明細書中で「親和性溶出液」または「親和性プール」とも呼ぶ)を、クロマトグラフィー固定相を含むカラムに適用(すなわちロード)する前に、少なくとも1つの溶液を固定相に適用して、たとえば、固定相をフラッシュ、浄化、再生、および/または平衡化する。一部の実施形態では、「親和性溶出液」または「親和性プール」は、溶液をAEXカラム上にロードする前に、希釈および任意選択で濾過されている。
【0537】
本明細書中に開示するように、rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターを溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法において使用するための、AEX固定相を調製する方法は、カラム中のAEX固定相の使用前のフラッシュを含む。一部の実施形態では、AEX固定相の使用前のフラッシュは、保存液(たとえばエタノールを含む溶液)を固定相から置換することを意図とする。一部の実施形態では、カラムの使用前のフラッシュは、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードすることに先行する。一部の実施形態では、使用前のフラッシュは、水(たとえば注入用水)をカラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、使用前のフラッシュは水の上向流を含む。使用前のフラッシュの上向流中、流れの方向は、溶液(たとえば水)がカラムの底部からカラムの上部へと流れるように、クロマトグラフィー分離ステップ(たとえば、ロード、洗浄、または溶出)の流れとは逆である一方で、クロマトグラフィー分離ステップ(たとえばロード)中、溶液はカラムの上部からカラムの底部へと流れる。一部の実施形態では、使用前のフラッシュは、1~10カラム体積(CV)(たとえば約5CV)の水を、カラム中のAEX固定相に、10cm/時~1000cm/時の線速度および/または0.2L/分~3.0L/分の流速で適用することを含む。一部の実施形態では、使用前のフラッシュは、≧4.5CV(たとえば約5CV)の注入用水を、カラム中のAEX固定相に、270cm/時~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)の流速、および/または3.5分/CV~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間(すなわち接触時間)で適用することを含む。
【0538】
rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターを溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法において使用するための、AEX固定相を調製する方法は、カラム中のAEX固定相を浄化することを含む。AEX固定相の浄化は、汚染微生物数(それだけには限定されないが細菌を含む)を低下させるため、ならびに/またはカラム内の微生物およびウイルスを不活性化させるため、ならびにより一般的にはタンパク質、粒子などの汚染物質を除去するために役立つ。一部の実施形態では、浄化は、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードすることに先行する。一部の実施形態では、浄化は、NaOH、エタノール、酢酸、リン酸、グアニジンHCl、尿素、PAB(リン酸、酢酸、ベンジルアルコール)、過酢酸などを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、浄化は、0.1M~1.0M、約0.1M~約0.8M、約0.1M~約0.6M、約0.2M~約0.8M、約0.2M~約0.6M、または約0.4M~約0.6M(たとえば約0.5M)のNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、浄化は、約0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、上向流(すなわち、流れの方向がクロマトグラフィー分離ステップ、たとえば、ロード、洗浄、または溶出の流れと逆である)を使用して適用することを含む。一部の実施形態では、浄化は、約0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、下向流(すなわち、流れの方向がクロマトグラフィー分離ステップ、たとえば、ロード、洗浄、または溶出の流れと同じ方向である)を使用して適用することを含む。一部の実施形態では、浄化は、14.4CV~17.6CV(たとえば約16CV)の、約0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、浄化は、5CV~10CV(たとえば約8CV)の、約0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、浄化は、5CV~20CVの、約0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、100cm/時~1000cm/時の線速度および/または0.2L/分~3.0L/分の流速で適用することを含む。一部の実施形態では、浄化は、14.4CV~17.6CV(たとえば約16CV)の、約0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、270cm/時~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)の流速、および/または3.5分/CV~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間(すなわち、溶液がカラム内の固定相と接触している、カラム体積あたりの時間の量であり、本明細書中で接触時間とも呼ぶ)で適用することを含む。一部の実施形態では、浄化は、5CV~10CV(たとえば約8CV)の、約0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、270cm/時~330cm/時(たとえば約298cm/時)の線速度および/または1.5分/CV~2.5分/CV(たとえば約2分/CV)の滞留時間で適用することを含む。
【0539】
rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターを溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法において使用するための、AEX固定相を調製する方法は、カラム中のAEX固定相を再生すること(本明細書中で「すすぎ」とも呼ぶ)を含む。当業者は、イオン交換固定相を再生することは、交換プロセス中に吸収されたイオンを、交換部位を占有していた元のイオンで置き換えるために役立つことを理解されよう。一部の実施形態では、再生は、たとえば強力な溶媒を使用して不純物を除去することによって、固定相をその元の状態に戻すこともいうことができる。一部の実施形態では、再生は、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を固定相上にロードすることに先行する。一部の実施形態では、再生は固定相に対して複数回行い得る。
【0540】
一部の実施形態では、再生は、塩および/または緩衝剤を含み、8~10の範囲のpHを有する溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、塩は、塩化ナトリウム(NaCl)、酢酸ナトリウム(酢酸Na、CH3COONa)、酢酸アンモニウム(酢酸NH4)、塩化マグネシウム(MgCl2)、または硫酸ナトリウム(Na2SO4)からなる群から選択される。一部の実施形態では、溶液中の塩(たとえばNaCl)の濃度は、1M~5M(たとえば、約1M~約4.5M、約1~約4M、約1M~約3.5M、約1M~約3M、約1M~約2.5M、または約1.5M~約2.5Mの範囲である。一部の実施形態では、溶液中の塩(たとえばNaCl)の濃度は、約1M、約2M、約3M、約4M、または約5Mである。一部の実施形態では、再生は、1M~3M(たとえば2M)のNaClを含む溶液を、カラム中の固定相に適用することを含む。
【0541】
一部の実施形態では、緩衝剤は、トリス(たとえばトリス塩基とトリス-HClの混合物)、ビス-トリスプロパン、および/またはビシンからなる群から選択される。一部の実施形態では、溶液中の緩衝剤(たとえばトリス)の濃度は、10mM~500mM(たとえば、約10mM~約450mM、約10mM~約400mM、約10mM~約350mM、約10mM~約300mM、約10mM~約250mM、約10mM~約200mM、約10mM~約150mM、または約50mM~約150mMの範囲である。一部の実施形態では、溶液中の緩衝剤(たとえばトリス)の濃度は、約10mM、約20mM、約50mM、約100mM、約150mM、約200mM、約300mM、約400mM、または約500mMである。一部の実施形態では、再生は、50mM~150mM(たとえば100mM)のトリスを含む溶液を、カラム中の固定相に適用することを含む。
【0542】
一部の実施形態では、再生は、約7~11(たとえば、約7.5~10.5、約8~10、または約7、7.5、8、8,5、9、9,5、10、10.5、もしくは11)のpHを有する溶液を、カラム中の固定相に適用することを含む。
【0543】
一部の実施形態では、再生は、約1M~3M(たとえば約2M)のNaCl、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、再生は、4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約2MのNaCl、100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、再生は、1~10CVの、約2MのNaCl、100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、100~1000cm/時の線速度および/または0.2~3.0L/分の流速で適用することを含む。一部の実施形態では、再生は、4.5~5.5(たとえば約5)CVの、約2MのNaCl、100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、270~330cm/時(たとえば、約298cm/時、約300cm/時)の線速度、1.5~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)の流速、および/または1.5~4.5分/CV(たとえば、約2分/CV、約4分/CV)の滞留時間(すなわち接触時間)で適用することを含む。
【0544】
一部の実施形態では、本開示は、rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターをAEXによって精製する方法において使用するための、AEX固定相を調製する方法であって、i)≧4.5CV(たとえば約5CV)の注入用水を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、使用前のフラッシュのステップ、ii)任意選択で上向流によって、約5CV~10CV(たとえば約8CV)もしくは約14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、0.1M~1.0M(たとえば約0.5MのNaOH)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用すること含む、浄化ステップ、および/または、iii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、1M~3M(たとえば約2M)のNaCl、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、再生ステップを含み、ステップi)~iii)のうちの少なくとも1つを、270cm/時~330cm/時(たとえば、約298cm/時、約300cm/時)の線速度、1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)の流速、および/または1.5分/CV~4.5分/CV(たとえば、約2分/CV、約4分/CV)の滞留時間で行い、少なくとも1つのステップを、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードする前に行ってもよく、AEX固定相はPOROS(商標)50 HQであってもよい、方法を提供する。当業者は、上記ステップを任意の順序で行ってよく、複数回行ってよいことを理解されよう。
【0545】
平衡化
rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターを溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法において使用するための、AEX固定相を調製する方法は、カラム中のAEX固定相の平衡化を含む。一部の実施形態では、カラム中のAEX固定相の平衡化は、カラム上にロードした一部の物質が固定相と結合し、他のものが移動相と共に流通するように、移動および固定相のpH、伝導率、モディファイヤー(たとえば、塩、界面活性剤、アミノ酸など)の濃度、または他の条件を調節するために役立つ。たとえば、カラム内の条件は、フルrAAVベクターが固定相と結合し、空カプシドの少なくとも一部分が結合しないように、一連の平衡化緩衝液をカラムに適用することによって、調節し得る。一部の実施形態では、カラム中のAEX固定相は、精製しようとする物質(たとえばrAAVベクター)を含む溶液をカラムに適用する前に平衡化する。一部の実施形態では、カラム中のAEX固定相は、平衡化緩衝液(たとえば、第1の平衡化緩衝液、第2の平衡化緩衝液、第3の平衡化緩衝液、第4の平衡化緩衝液など)の適用によって平衡化する。平衡化緩衝液は、本明細書中で「洗浄バッファー」、「浄化後のすすぎ」、「すすぎ」、または「再生緩衝液」とも呼び得る。第1、第2、第3、第4などの平衡化緩衝液としての平衡化緩衝液への言及は、必ずしも緩衝液をカラムに適用する順序を暗示しない。
【0546】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液(たとえば、第1の平衡化緩衝液、第2の平衡化緩衝液、第3の平衡化緩衝液、第4の平衡化緩衝液など)は、緩衝剤、塩、アミノ酸、界面活性剤、および/またはその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を含む。一部の実施形態では、緩衝剤は、トリス(たとえばトリス塩基とトリス-HClの混合物)、ビス-トリスプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、および/またはビシンである。当業者は、トリス塩基、トリス-HCl、または両方を使用して、所望のpHを有するトリス緩衝液を調製できることを理解されよう。一部の実施形態では、塩は、塩化ナトリウム(NaCl)、酢酸ナトリウム(酢酸Na(CH3COONa))、酢酸アンモニウム(酢酸NH4)、塩化マグネシウム(MgCl2)、または硫酸ナトリウム(Na2SO4)である。一部の実施形態では、塩は酢酸ナトリウムである。一部の実施形態では、アミノ酸は、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、またはシトルリンである。一部の実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー188(P188)、Triton X-100、ポリソルベート80、Brij-35、またはノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)である。
【0547】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、10mM~350mMの、トリス(たとえばトリス塩基とトリス-HClの混合物)、ビス-トリスプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、およびビシンからなる群から選択される緩衝剤を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、10mM~350mM、10mM~300mMのトリス、10mM~250mMのトリス、10mM~200mMのトリス、10mM~150mMのトリス、10mM~100mMのトリス、または10mM~50mMのトリスを含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、30mM~350mMのトリス、30mM~300mMのトリス、30mM~250mMのトリス、30mM~2000mMのトリス、30mM~150mMのトリス、30mM~100mMのトリスを含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、50mM~300mMのトリス、50mM~250mMのトリス、50mM~200mMのトリス、50mM~150mMのトリスを含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、100mM~350mMのトリス、100mM~250mMのトリス、または100mM~150mMのトリスを含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約10mMのトリス、約20mMのトリス、約30mMのトリス、約40mMのトリス、約50mMのトリス、約60mMのトリス、約70mMのトリス、約80mMのトリス、約90mMのトリス、約100mMのトリス、約110mMのトリス、約120mMのトリス、約130mMのトリス、約140mMのトリス、約150mMのトリス、約160mMのトリス、約170mMのトリス、約180mMのトリス、約190mMのトリス、約200mMのトリス、約220mMのトリス、約240mMのトリス、約250mMのトリス、約275mMのトリス、約300mMのトリス、または約350mMのトリスを含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約20mMのトリス、100mMのトリス、または200mMのトリスを含む。
【0548】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、1mM~1Mの塩、好ましくは約500mMの塩を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約10mM~約950mM、約10mM~約900mM、約10mM~約850mM、約10M~約800mM、10mM~約750mM、約10mM~約700mM、約10mM~約650mM、約10mM~約600mM、約10mM~約550mM、約50mM~約750mM、約50mM~約700mM、約50mM~約650mM、約50mM~約600mM、約50mM~約550mM、約100mM~約600mM、約200mM~約600mM、約300mM~約600mM、または約400mM~約600mMの塩を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約500mMの塩を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、塩化ナトリウム(NaCl)、酢酸ナトリウム(酢酸Na、CH3COONa)、酢酸アンモニウム(酢酸NH4)、塩化マグネシウム(MgCl2)、または硫酸ナトリウム(Na2SO4)からなる群から選択される塩を含む。
【0549】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、5mM~1Mの酢酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約10mM~約950mM、約10mM~約900mM、約10mM~約850mM、約10M~約800mM、10mM~約750mM、約10mM~約700mM、約10mM~約650mM、約10mM~約600mM、約10mM~約550mM、約50mM~約750mM、約50mM~約700mM、約50mM~約650mM、約50mM~約600mM、約50mM~約550mM、約100mM~約600mM、約200mM~約600mM、約300mM~約600mM、または約400mM~約600mMの酢酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約150mM、約200mM、約250mM、約300mM、約350mM、約400mM、約450mM、約500mM、約550mM、または約600mMの酢酸ナトリウムを含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約500mMの酢酸ナトリウムを含む。
【0550】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、アミノ酸、たとえば、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、またはシトルリンを含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約50mM、約75mM、約100mM、約125mM、約150mM、約175mM、約200mM、約225mM、約250mM、約275mM、または約300mMのアミノ酸(たとえば、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、またはシトルリン)を含む。
【0551】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、アミノ酸、たとえばヒスチジンまたはアルギニンを含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、100mM~300mMのアミノ酸(たとえば、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、またはシトルリン)を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約10mM~約600mM、約10mM~約550mM、約10mM~約500mM、約10mM~約450mM、約10mM~約400mM、約10mM~約350mM、約10mM~約300mM、約50mM~約600mM、約50mM~約550mM、約50mM~約500mM、約50mM~約450mM、約50mM~約400mM、約50mM~約350mM、約50mM~約300mM、約100mM~約600mM、約100mM~約500mM、約100mM~約400mM、約100mM~約300mM、または約150mM~約250mMのアミノ酸(たとえばヒスチジン)を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約200mMのヒスチジンを含む。
【0552】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、界面活性剤、たとえば、P188、Triton X-100、ポリソルベート80、Brij-35、またはNP-40を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、0.005%~1.0%の界面活性剤(たとえばP188)を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、0.005%~0.015%の界面活性剤(たとえばP188)を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、0.1%~1.0%の界面活性剤(たとえばP188)を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約0.005%~約1.0%、約0.005%~約0.5%、約0.005%~約0.1%、約0.005%~約0.05%、約0.007%~約0.07%、0.008%~約0.05%、または約0.008%~約0.03%のP188を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約0.01%~約1.5%、約0.01%~約1.0%、約0.01%~約0.75%、約0.05%~約1.5%、約0.05%~約1.0%、約0.05%~約0.75%、約0.1%~約1.5%、約0.1%~約1.0%、約0.1%~約0.75%、または約0.25%~約0.75%のP188を含む。
【0553】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.1%、約0.15%、約0.2%、約0.25%、約0.3%、約0.35%、約0.4%、約0.5%、約0.55%、約0.6%、約0.65%、約0.7%、約0.75%、約0.8%、約0.85%、約0.9%、0.95%、または約1.0%の界面活性剤(たとえばP188)を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約0.01%のP188を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約0.5%のP188を含む。
【0554】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、8~10のpHを有する。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、8.7~9.3のpHを有する。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、8.7~9.0のpHを有する。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9、約9.0、約9.1、約9.2、約9.3、約9.4、約9.5、または約10.0のpHを有する。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約8.8のpHを有する。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約8.9のpHを有する。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約9.0のpHを有する。
【0555】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMのトリス、pH9.0を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、100mMのトリス、pH9を含む。
【0556】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMのトリスおよび500mMのNaCl、pH9.0+/-0.3を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMのトリスおよび500mMの酢酸NH4、pH9.0+/-0.3を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約20mMのトリス、500mMの酢酸ナトリウム、pH9.0+/-0.3を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMのトリスおよび500mMのNa2SO4、pH9.0+/-0.3を含み。
【0557】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMのトリス、7mMの塩(たとえば、NaCl、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム(酢酸NH4)、MgCl2、およびNa2SO4)、pH9.0を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMのトリス、7mMの酢酸ナトリウム、pH9.0を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMのトリス、14mMの酢酸ナトリウム、pH9.0を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMのトリス、21mMの酢酸ナトリウム、pH9.0を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMのトリス、42mMの酢酸ナトリウム、pH9.0を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMのトリス、49mMの酢酸ナトリウム、pH9.0を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMのトリス、57mMの酢酸ナトリウム、pH9.0を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、20mMのトリス、67mMの酢酸ナトリウム、pH9.0を含む。
【0558】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば約9)を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、100mM~300mMのヒスチジン(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.8)を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む。
【0559】
一部の実施形態では、平衡化緩衝液(たとえば第1の平衡化緩衝液)は、100mMのトリス、pH9を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液(たとえば第1または第2の平衡化緩衝液)は、100mMのトリス、500mMの酢酸ナトリウム、0.01%のP188、pH8.9を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液(たとえば第2または第3の平衡化緩衝液)は、200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.8を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液(たとえば第3または第4の平衡化緩衝液)は、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9を含む。
【0560】
一部の実施形態では、上述の平衡化緩衝液は、第1、第2、第3、および第4の平衡化緩衝液であり得る。一部の実施形態では、第1、第2、第3、または第4の平衡化緩衝液を、順次的な順序でカラム固定相に適用する。一部の実施形態では、溶液(たとえば親和性溶出液)は、2つの平衡化緩衝液の適用の間に、カラムに適用する。たとえば、第1、第2、および第3の平衡化緩衝液をカラムに適用し、次いで親和性溶出液を適用し、これに次いで第4の平衡化緩衝液を適用し得る。別の例では、第1および第2の平衡化緩衝液をカラムに適用し、次いで親和性溶出液を適用し、これに次いで第3の平衡化緩衝液を適用する。
【0561】
一部の実施形態では、カラムに適用する平衡化緩衝液の量は、1CV~5CV、4CV~6CV、4CV~10CV、4CV~15CV、4CV~21CV、10CV~21CV、15CV~21CV、または19CV~21CVである。一部の実施形態では、カラムに適用する平衡化緩衝液の量は≧4.5CVである。一部の実施形態では、カラムに適用する平衡化緩衝液の量は4.5CV~5.5CVである。一部の実施形態では、カラムに適用する平衡化緩衝液の量は、約2CV、約5CV、または約10CVである。一部の実施形態では、カラムに適用する平衡化緩衝液の量は約5CVである。一部の実施形態では、カラムに適用する平衡化緩衝液の量は約20CVである。
【0562】
それだけには限定されないがカラムに適用する平衡化緩衝液を含む溶液は、カラム内の溶液が、特定の期間(本明細書中で「滞留時間」または「接触時間」と呼ぶ)の間固定相と接触しているように、特定の速度(たとえば、cm/時、mL/分)で固定相を流通するように設定する。一部の実施形態では、カラム中の溶液の滞留時間は、0.1分/CV~10分/CV、たとえば、0.1分/CV~1分/CV、1分/CV~2分/CV、2分/CV~4分/CV、4分/CV~6分/CV、6分/CV~8分/CV、または8分/CV~10分/CVである。一部の実施形態では、カラム中の溶液の滞留時間は、0.1分/CV、約0.5分/CV、約1.5分/CV、約2分/CV、約3分/CV、約3.6分/CV、または約4分/CV、約5分/CV、約6分/CV、約7分/CV、約8分/CV、約9分/CV、または約10分/CVである。一部の実施形態では、カラム中の溶液の滞留時間は1.5~4.5分/CVである。一部の実施形態では、カラム中の溶液の滞留時間は3.5~4.5分/CVである。
【0563】
一部の実施形態では、高さ約5cm、直径約0.5cm、および体積約1.0mLを有するカラム中の溶液の滞留時間は、約0.5分/CVである。一部の実施形態では、高さ約15cm、直径約0.66cm、および体積約5.1mLを有するカラム中の溶液の滞留時間は、約0.5分/CV、約1.5分/CV、または約4分/CVである。一部の実施形態では、高さ約19.5cm、直径約0.66cm、および体積約6.67mLを有するカラム中の溶液の滞留時間は、約4分/CVである。一部の実施形態では、高さ約10cm、直径約2.5cm、および約49mLの体積を有するカラム中の溶液の滞留時間は、1.5分/CV~2.5分/CV(たとえば約2分/CV)である。一部の実施形態では、高さ約16cm、直径約10cm、および約1.256L~1.3Lの体積を有するカラム中の溶液の滞留時間は、3.5分/CV~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)である。一部の実施形態では、高さ約20.5cm、20cmの直径、および体積約6.4Lを有するカラム中の溶液の滞留時間は、約3.6分/CVである。一部の実施形態では、約6.4Lのカラム中の溶液の滞留時間は、3.5分/CV~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)である。一部の実施形態では、AEX固定相を含む6.0L~6.6L(たとえば6.4L)のカラム中の、それだけには限定されないが平衡化緩衝液を含む溶液の滞留時間は、3.5分/CV~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)である。
【0564】
当業者は、カラムを通る溶液の線速度(本明細書中で「線形流速度」または「速度」とも呼ぶ)は、少なくとも部分的に、カラムの体積およびまたは寸法ならびにそれ中の固定相に関連することを理解されよう。一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る、それだけには限定されないが平衡化緩衝液を含む溶液の線速度は、100cm/時~1800cm/時、たとえば、100cm/時~200cm/時、200cm/時~400cm/時、400cm/時~600cm/時、600cm/時~800cm/時、800cm/時~1000cm/時、1000cm/時~1500cm/時、または1500cm/時~1800cm/時である。一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る溶液の線速度は、約100cm/時、約240cm/時、約298cm/時、約300cm/時、約600cm/時、約611cm/時、または約1790cm/時である。
【0565】
一部の実施形態では、約5cmの高さであり、直径約0.5cm、および体積約1.0mLを有するカラム中の固定相を通る溶液の線速度は、約611cm/時である。一部の実施形態では、約15cmの高さであり、直径約0.66cm、および体積約5.1mLを有するカラム中の固定相を通る溶液の線速度は、約600cm/時である。一部の実施形態では、約15cmの高さであり、直径約0.66cm、および体積約5.1mLを有するカラム中の固定相を通る溶液の線速度は、約1790cm/時である。一部の実施形態では、約10cmの高さであり、直径約2.5cm、および体積約49mLを有するカラム中の固定相を通る溶液の線速度は、約298cm/時である。一部の実施形態では、約16cmの高さであり、直径約10cm、および体積約1256mLを有するカラム中の固定相を通る溶液の線速度は、約240cm/時である。一部の実施形態では、約20.5cmの高さであり、直径約20cm、および体積約6.4Lを有するカラム中の固定相を通る溶液の線速度は、270cm/時~330cm/時(たとえば300cm/時)である。一部の実施形態では、6.0L~6.6L(たとえば6.4L)のカラム中のAEX固定相を通る、それだけには限定されないが平衡化緩衝液を含む溶液の線速度は、約270cm/時~330cm/時(たとえば約300cm/時)である。
【0566】
一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る、それだけには限定されないが平衡化緩衝液を含む溶液の流速(すなわち体積流速)は、1.0mL/分~3.0L/分、たとえば、1.0mL/分~10mL/分、10mL/分~100mL/分、100mL/分~500mL/分、500mL/分~1000mL/分、1mL/分~1.5L/分、1mL/分~2L/分、または2mL/分~3L/分である。一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る溶液の流速は、約1mL/分、約1.28mL/分、約1.67mL/分、約314mL/分、約1.57L/分、約1.8L/分、約2L/分、約3L/分である。
【0567】
一部の実施形態では、高さ約15cm、直径約0.66、および約5.1mLの体積を有するカラム中の固定相を通る溶液の流速は、約1.28mL/分である。一部の実施形態では、高さ約19.5cm、直径約0.66、および約6.67mLの体積を有するカラム中の固定相を通る溶液の流速は、約1.67mL/分である。一部の実施形態では、高さ約16cm、直径10cm、および体積約1256mLを有するカラム中の固定相を通る溶液の流速は、約314mL/分である。一部の実施形態では、高さ約20.5cm、直径約20cm、および体積約6.4Lを有するカラム中の固定相を通る溶液の流速は、約1.8L/分である。一部の実施形態では、6.0L~6.6L(たとえば6.4L)のカラム中のAEX固定相を通る、それだけには限定されないが平衡化緩衝液を含む溶液の流速は、1.5mL/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)である。
【0568】
rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターを溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法において使用するための、AEX固定相を調製する方法は、カラム中のAEX固定相を平衡化することを含む。一部の実施形態では、平衡化は、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードすることに先行する。一部の実施形態では、平衡化は、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液をカラム上にロードすることに続く。
【0569】
一部の実施形態では、平衡化は、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、平衡化は、4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、100mMのトリス、pH9を含む平衡化緩衝液を、AEX固定相を含む6.0L~6.6L(たとえば6.4L)のカラムに、270cm/時~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)の流速、および/または3.5分/CV~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間で適用することを含む。
【0570】
一部の実施形態では、平衡化は、400mM~600mMの酢酸ナトリウム、50mM~150mMのトリス、および0.005%~0.015%のP188、pH8.5~9.5を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、平衡化は、4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、100mMのトリス、500mMの酢酸ナトリウム、0.01%のP188、pH8.9を含む平衡化緩衝液を、AEX固定相を含むカラムに、270cm/時~330cm/時(たとえば、約298cm/時、約300cm/時)の線速度、1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)の流速、および/または1.5分/CV~4.5分/CV(たとえば、約2分/CV、約4分/CV)の滞留時間で適用することを含む。一部の実施形態では、カラムは6.0L~6.6L(たとえば6.4L)である。一部の実施形態では、カラムは30mL~70mL(たとえば、約49mL、約52mL)である。
【0571】
一部の実施形態では、平衡化は、100mM~300mMのヒスチジン、100mM~300mMのトリス、および0.0%~1.0%のP188、pH8.5~9.5を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、平衡化は、≧4.5CV(たとえば約5CV)の、200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.8を含む平衡化緩衝液を、AEX固定相を含むカラムに、270cm/時~330cm/時(たとえば、約298cm/時、約300cm/時)の線速度、1.5L/分~2.0L/分(1.8L/分)の流速、および/または1.5分/CV~4.5分/CV(たとえば、約2分/CV、約4分/CV)の滞留時間で適用することを含む。一部の実施形態では、カラムは6.0L~6.6L(たとえば6.4L)である。一部の実施形態では、カラムは30mL~70mL(たとえば、約49mL、約52mL)である。
【0572】
一部の実施形態では、平衡化は、50mM~150mMのトリスおよび0.005%~0.015%のP188、pH8.5~9.5を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、平衡化は、4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9を含む平衡化緩衝液を、AEX固定相を含むカラムに、270cm/時~330cm/時(たとえば、約298cm/時、約300cm/時)の線速度、1.5L/分~2.0L/分(1.8L/分)の流速、および/または1.5分/CV~4.5分/CV(たとえば、2分/CV、4分/CV)の滞留時間で適用することを含む。一部の実施形態では、カラムは6.0L~6.6L(たとえば6.4L)である。一部の実施形態では、カラムは30mL~70mL(たとえば、約49mL、約52mL)である。
【0573】
一部の実施形態では、本開示は、rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターをAEXによって精製する方法において使用するための、AEX固定相を調製する方法であって、i)≧4.5CV(たとえば約5CV)の注入用水を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、使用前のフラッシュのステップ、ii)任意選択で上向流によって、約5CV~10CV(たとえば約8CV)もしくは約14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、0.1M~1.0M(たとえば約0.5M)のNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、浄化ステップ、iii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、1M~3M(たとえば約2M)のNaCl、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、再生ステップ、iv)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、v)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、vi)≧4.5CV(たとえば約5CV)の、100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば8.8)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、および/またはvii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップを含み、ステップi)~vii)のうちの少なくとも1つを、270cm/時~330cm/時(たとえば、約298cm/時、約300cm/時)の線速度、および/または1.5分/CV~4.5分/CV(たとえば、約2分/CV、約4分/CV)の滞留時間で行ってもよく、AEX固定相はPOROS(商標)50 HQであってもよく、rAAVベクターはrAAV9ベクターまたはrAAV3Bベクターであってもよく、ステップ(たとえばロードステップ)が任意の平衡化ステップの間に起こる場合があってもよい、方法を提供する。一部の実施形態では、ステップi)~vii)のうちの少なくとも1つを、6L~6.6Lのカラム(たとえば約6.4L)を通して1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)の流速で、または1.3Lのカラムを通して約314mL/分で行う。当業者は、上記ステップの順序を変動させ得ることを理解されよう。
【0574】
希釈および濾過
rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターを溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶液の希釈および任意選択で濾過による、溶液の調製を含む。精製しようとするrAAVベクターを含む溶液は、親和性溶出液、細胞溶解液からの上清、および/または少なくとも1つの精製もしくはプロセスステップを受けた回収後の溶液であり得る。精製しようとするrAAVベクターを含む溶液は、溶液をAEXカラムを通すプロセスに適合性があるようにするために、AEXカラム上にロードする前に希釈および任意選択で濾過し得る。一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液を希釈および任意選択で濾過することは、溶液のpHおよび/または伝導率の変化をもたらす。一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液は、1L~2000L(またはそれより大きい)単回使用バイオリアクター(SUB)中で生成したrAAVベクターの親和性クロマトグラフィー精製から生じる溶出液である。
【0575】
AEXによる精製のための、rAAVベクターを含む溶液を調製する方法は、i)親和性溶出液を希釈するステップと、任意選択でii)ステップi)からの親和性溶出液を濾過して、希釈した親和性溶出液(本明細書中で「希釈した親和性プール」、「ロード」、または「AEXロード」とも呼ぶ)を生成するステップとを含む。一部の実施形態では、希釈および任意選択の濾過後の親和性溶出液のpHは、希釈前の親和性溶出液のpHと比較して増加している。一部の実施形態では、希釈および任意選択の濾過後の親和性溶出液の伝導率は、希釈前の親和性溶出液の伝導率と比較して減少している。一部の実施形態では、希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液をAEX固定相上にロードする。
【0576】
一部の実施形態では、親和性溶出液は、1mL~2000L、または2000Lより大きい体積を有する容器(たとえば単回使用バイオリアクター(SUB))中で生成したrAAVベクターの親和性精製から作製される。一部の実施形態では、親和性溶出液は、約1mL、約10mL、約50mL、約100mL、約250mL、約500mL、約750mL、約1L、約50L、約100L、約250L、約500L、約1000L、約2000L、またはそれより大きい体積を有する容器(たとえばSUB)中で生成したrAAVベクターの親和性クロマトグラフィー精製から作製される。一部の実施形態では、親和性溶出液は、1mL~100mL、100mL~500mL、500mL~750mL、750mL~1L、1L~10L、10L~50L、50L~100L、100L~250L、250L~500L、500L~750L、750L~1000L、1000L~1500L、1500L~2000L、2000L~3500L、3500L~4000L、または4500L~5000Lの体積を有する容器(たとえばSUB)中で生成したrAAVベクターの親和性精製から作製される。一部の実施形態では、親和性溶出液は、1mL~5000L、100mL~5000L、100mL~4000L、100mL~2000L、100mL~1000L、1L~5000L、1L~4000L、1L~2000L、1L~1000L、500mL~5000L、500mL~2000L、または500mL~1000Lの体積を有する容器(たとえばSUB)中で生成したrAAVベクターの親和性精製から作製される。
【0577】
一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を希釈することは、溶液を約2~25倍もしくは約5~20倍、または約10~20倍(たとえば、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約20倍、約25倍)に希釈して、希釈した親和性溶出液を生成することを含む。一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を希釈することは、溶液を約2倍に希釈することを含む。一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を希釈することは、溶液を約15倍に希釈することを含む。
【0578】
一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を希釈することは、カラムと「インラインで」行い、希釈溶液(希釈剤)が、第1のチューブを通してY字コネクタへと送達され、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液が、第2のチューブを通してY字コネクタへと送達され、スタティックミキサーが、Y字コネクタの後に位置する第3のチューブ内に含有されていてもよい。
【0579】
一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を希釈することは、「インラインで」行い、保持容器(たとえば受水槽)内へと導く。たとえば、希釈溶液(希釈剤)が、第1のチューブを通してY字コネクタへと送達され、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液が、第2のチューブを通してY字コネクタへと送達され、Y字コネクタの終端が、クロマトグラフィーカラム(たとえばAEXカラム)と接続されていてもよい保持容器に接続されている。
【0580】
一部の実施形態では、希釈は、希釈溶液を、第1のチューブを通してY字コネクタへと1~5mL/分(たとえば約3.5mL/分)の流速で送達すること、および精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を、第2のチューブを通して0.1~2mL/分(たとえば約0.25mL/分)の流速で送達することを含む。
【0581】
一部の実施形態では、希釈は、親和性溶出液が約15倍に希釈されるように、希釈溶液を、第1のチューブを通してY字コネクタへと約3.5mL/分の流速で送達すること、および親和性溶出液を、第2のチューブを通して約0.25mL/分の流速で送達することを含む。
【0582】
一部の実施形態では、希釈は、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を、緩衝剤(トリス、ビス-トリスプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、および/またはビシン)を含む希釈溶液で希釈することを含む。一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を、10mM~500mMの緩衝剤(たとえばトリス)を含む希釈溶液で希釈する。一部の実施形態では、希釈溶液は、約10mM~約450mM、約10mM~約400mM、約10mM~約350mM、約10mM~約300mM、約50mM~約450mM、約50mM~約400mM、約50mM、約350mM、約50mM~約300mM、約100mM~約450mM、約100mM~約400mM、約100mM~約350mM、約100mM~約300mM、または約150mM~約250mMのトリスを含む。一部の実施形態では、希釈溶液は、約200mMのトリスを含む。
【0583】
一部の実施形態では、希釈溶液は、アミノ酸、たとえば、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、またはシトルリンを含む。一部の実施形態では、希釈溶液は、約50mM、約75mM、約100mM、約125mM、約150mM、約175mM、約200mM、約225mM、約250mM、約275mM、約300mM、約350mM、約400mM、約450mM、約500mM、約550mM、または約600mMのアミノ酸(たとえば、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、またはシトルリン)を含む。
【0584】
一部の実施形態では、希釈溶液は、アミノ酸、たとえばヒスチジンまたはアルギニンを含む。一部の実施形態では、希釈溶液は、10mM~600mMのアミノ酸(たとえば、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、またはシトルリン)を含む。一部の実施形態では、平衡化緩衝液は、約10mM~約600mM、約10mM~約550mM、約10mM~約500mM、約10mM~約450mM、約10mM~約400mM、約10mM~約350mM、約10mM~約300mM、約50mM~約600mM、約50mM~約550mM、約50mM~約500mM、約50mM~約450mM、約50mM~約400mM、約50mM~約350mM、約50mM~約300mM、約100mM~約600mM、約100mM~約500mM、約100mM~約400mM、約100mM~約300mM、または約150mM~約250mMのアミノ酸(たとえばヒスチジン)を含む。一部の実施形態では、希釈溶液は、約200mMのヒスチジンを含む。
【0585】
一部の実施形態では、希釈溶液は、界面活性剤、たとえば、P188、Triton X-100、ポリソルベート80、Brij-35、またはNP-40を含む。一部の実施形態では、希釈溶液は、0.005%~1.5%の界面活性剤(たとえばP188)を含む。一部の実施形態では、希釈溶液は、0.1%~1.0%の界面活性剤(たとえばP188)を含む。一部の実施形態では、希釈溶液は、約0.01%~約1.5%、約0.01%~約1.0%、約0.01%~約0.75%、約0.05%~約1.5%、約0.05%~約1.0%、約0.05%~約0.75%、約0.1%~約1.5%、約0.1%~約1.0%、約0.1%~約0.75%、または約0.25%~約0.75%の界面活性剤(たとえばP188)を含む。一部の実施形態では、希釈溶液は、約0.5%のP188を含む。
【0586】
一部の実施形態では、希釈溶液は、8~10のpHを有する。一部の実施形態では、希釈溶液は、8.5~9.5のpHを有する。一部の実施形態では、希釈溶液は、8.7~9.0のpHを有する。一部の実施形態では、希釈溶液は、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9、約9.0、約9.1、約9.2、約9.3、約9.4、約9.5、または約10.0のpHを有する。一部の実施形態では、希釈溶液は、約8.8のpHを有する。一部の実施形態では、希釈溶液は、約8.9のpHを有する。一部の実施形態では、希釈溶液は、約9.0のpHを有する。
【0587】
一部の実施形態では、希釈は、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を、20mMのトリス、pH9;1Mのトリス塩基、pH11;100mMのトリス、pH9;100mMのトリス、0.01%のP188、pH9;100mMのトリス、0.1%のP188、pH9;100mMのトリス、1.0%のP188、pH9;1Mのトリス、pH9;150mMのアセテート、100mMのグリシン、25mMのMgCl2、pH4.2;5mMのアルギニン、2mMのMgCl2、0.1%のP188、100mMのトリス、pH8.9;50mMのアルギニン、2mMのMgCl2、0.1%のP188、100mMのトリス、pH9;500mMのアルギニン、2mMのMgCl2、0.1%のP188、400mMのトリス、pH9.1;200mMのグリシン、5mMのMgCl2、200mMのトリス、pH8.9;200mMのヒスチジン、200mMのトリス、pH8.9;200mMのヒスチジン、200mMのトリス、5mMのMgCl2、pH8.9;200mMのヒスチジン、200mMのトリス、5mMのMgCl2、5%のグリセロール、pH8.9;200mMのヒスチジン、250mMのトリス、10mMのMgCl2、25%のグリセロール、pH8.9;200mMのヒスチジン、200mMのトリス、5mMのMgCl2、5%のイオジキサノール、pH8.8;200mMのヒスチジン、200mMのトリス、10mMのMgCl2、25%のイオジキサノール、pH8.8;200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のTriton X-100、pH8.9;200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.8;およびその組合せからなる群から選択される緩衝液で希釈することを含む。
【0588】
一部の実施形態では、希釈は、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を、約20mMのトリス、pH9を含む緩衝液、約1Mのトリス塩基、pH11を含む緩衝液、または両方で希釈することを含む。一部の実施形態では、希釈は、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を、約20mMのトリス、pH9を含む緩衝液、約1Mのトリス塩基、pH11を含む緩衝液、または両方で7~8倍(たとえば約7.1倍)に希釈することを含む。
【0589】
一部の実施形態では、希釈は、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を、100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば0.5%)のP188、pH8.7~9.0を含む緩衝液で希釈することを含む。一部の実施形態では、希釈は、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)を、約200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.7~9.0(たとえば約8.8)を含む緩衝液で、重量で10~20倍(たとえば約15倍)に希釈することを含む。一部の実施形態では、希釈は、精製しようとするrAAVベクターを含む親和性溶出液を、約200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.7~9.0(たとえばpH約8.8)を含む緩衝液で、重量で14.4~15.5倍(たとえば約15倍)に希釈し、それによって希釈した親和性溶出液を形成することを含む。
【0590】
一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)の希釈の前に、希釈溶液中のMgCl2の濃度が約1.7mMであるように、溶液に20mMのMgCl2を添加する。一部の実施形態では、MgCl2は溶液中のrAAVベクターを安定化させる。
【0591】
一部の実施形態では、濾過は、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液、希釈した親和性溶出液)を、溶液をAEXカラム上にロードする前に濾過することを含む。一部の実施形態では、濾過の前に、フィルターを注入用水および/または希釈溶液で事前に濡らす。一部の実施形態では、濾過は、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液、希釈した親和性溶出液)を、核酸もしくはタンパク質凝集物、または他の高分子質量種などの凝集物を収集するが、AAVカプシドが流通することを可能にするフィルターを通して濾過することを含む。一部の実施形態では、フィルターは、0.1μm~0.45μmのフィルター(たとえば0.2μmのポリエーテルスルホン(PES)フィルターまたは0.45μmのPESフィルター)である。一部の実施形態では、濾過は、精製しようとするrAAVベクターを含む希釈した親和性溶出液を、AEXカラム上にロードする前に、0.2μmのフィルターを通して濾過することを含む。精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液、希釈した親和性溶出液)を濾過するために使用するフィルターは、カラムと別々であり得る、またはカラムもしくはクロマトグラフィー装置(クロマトグラフィースキッドとも呼ばれる)とインラインであり得る。
【0592】
一部の実施形態では、濾過は、精製しようとするrAAVベクターを含む希釈した親和性溶出液を、溶出液をAEXカラム上にロードする前に、インラインの0.2μmのフィルターを通して濾過することを含む。
【0593】
一部の実施形態では、希釈および任意選択で濾過する前の、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)のpHは、3.0~4.4であり、希釈および任意選択で濾過した後の、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)のpHは、8.5~9.5、8.7~9.0、または≧8.6(たとえば、pH約8.8、pH9.0)である。
【0594】
一部の実施形態では、希釈および任意選択で濾過する前の、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)の伝導率は、5.0mS/cm~7.0mS/cm(たとえば約5.5mS/cm~6.5mS/cm)であり、希釈および任意選択で濾過した後の、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)の伝導率は、1.7mS/cm~3.5mS/cm、1.8mS/cm~2.8mS/cm、2.2mS/cm~2.6mS/cm、または≦2.5mS/cmである。一部の実施形態では、希釈および任意選択で濾過後の親和性溶出液の伝導率は、約1.8mS/cm~約2.8mS/cmである。一部の実施形態では、希釈および任意選択で濾過後の親和性溶出液の伝導率は、約2.3+/-0.5mS/cmである。
【0595】
本明細書中で使用する用語「パーセントVG希釈収率」または「%VG希釈収率」とは、希釈前の親和性プール(本明細書中で親和性溶出液とも呼ぶ)中に存在するVGの量の百分率としての、希釈した親和性プール(本明細書中で希釈した親和性溶出液とも呼ぶ)中に存在するVGの量をいう。たとえば、%VG希釈収率=((希釈した親和性プール中のVGの量)/(親和性プール中のVGの量))*100である。
【0596】
一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む希釈および任意選択で濾過した溶液(たとえば親和性溶出液)中で回収されるVGの百分率(%VG希釈収率)は、希釈および任意選択で濾過する前に溶液(たとえば親和性溶出液)中に存在するVGの60%~100%である。一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む、希釈および任意選択で濾過した溶液(たとえば親和性溶出液)の%VG収率は、希釈および任意選択で濾過する前に溶液(たとえば親和性溶出液)中に存在するVGの60%~70%、70%~80%、80%~90%、90%~100%である。一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む、希釈および任意選択で濾過した溶液(たとえば親和性溶出液)の%VG収率は、希釈および任意選択で濾過する前に溶液中に存在するVGの約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%、または約100%である。
【0597】
本明細書中に開示した方法に従って親和性溶出液を希釈する一部の実施形態は、88%+/-36%の%VG希釈収率をもたらす。本明細書中に開示した方法に従って親和性溶出液を希釈する一部の実施形態は、120%+/-12%の%VG希釈収率をもたらす。250LのSUB中で生成したrAAVベクターの親和性クロマトグラフィー精製から生じる親和性溶出液を希釈することは、35%~100%(たとえば41%~92%)の%VG希釈収率をもたらす。2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの親和性クロマトグラフィー精製から生じる親和性溶出液を希釈することは、70%~>100%(たとえば88%~154%)の%VG希釈収率をもたらす。
【0598】
一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む、希釈および任意選択で濾過した溶液(たとえば親和性溶出液)のZ平均(nmの単位で与え、動的光散乱法(DLS)によって決定する)を測定する。Z平均は、溶液中に存在するrAAVカプシドの凝集のレベルを測定する。一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む、希釈および任意選択で濾過した溶液のZ平均は、約15nm~40nm、15nm~20nm、20nm~30nm、または30nm~40nmである。一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む、希釈および任意選択で濾過した溶液のZ平均は、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約35nm、または約40nmである。
【0599】
rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターを溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶液を、100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.7~9.0(たとえばpH約8.8)を含む緩衝液で14~16倍(たとえば約15倍)に希釈することを含み、0.1μm~0.45μm(たとえば約0.2μm)のフィルターを通した希釈溶液の濾過を含む濾過を含んでいてよく、希釈および任意選択で濾過した溶液は、約8.6~9.0のpH(たとえばpH約8.9)および1.8mS/cm~2.8mS/cmの伝導率を有する。
【0600】
本明細書中に開示する、AEXクロマトグラフィーによる精製のための、rAAVベクターを含む親和性溶出液を調製する方法は、i)親和性溶出液を、200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.8を含む緩衝液で2~25倍(たとえば約15倍)に希釈するステップと、ii)任意選択でステップi)からの親和性溶出液を、0.2μmのフィルターを通して濾過して、希釈した親和性溶出液を生成するステップであって、希釈した親和性溶出液のpHが親和性溶出液のpHと比較して増加しており、希釈した親和性溶出液の伝導率が親和性溶出液の伝導率と比較して減少しており、rAAVベクターがAAV9ベクターまたはAAV3Bベクターであってもよく、親和性溶出液が250Lまたは2000Lの体積を有する容器(たとえばSUB)中で生成したrAAVベクターの親和性精製によって生成されてもよい、ステップとを含む。
【0601】
ロード
本明細書中に開示する、rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターをAEXによって精製する方法は、精製しようとする物質(たとえばrAAVベクター)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相上にロードすることを含む。ロードは、ロードをカラム上に自重供給すること、またはロードをクロマトグラフィーカラム上にポンピングすることによって行い得る。一部の実施形態では、AEXによって精製しようとするrAAVベクターを含む溶液は、それぞれが少なくとも1つの他の精製またはプロセスステップ(たとえば、細胞溶解、凝結、濾過、希釈、pH調節、クロマトグラフィー)を受けている、親和性溶出液、細胞溶解液からの上清、および回収後の溶液からなる群から選択される。精製しようとするrAAVベクターを含む溶液は、溶液をAEXカラムを通すプロセスに適合性があるようにするために、溶液をAEXカラム上にロードする前に希釈、濾過、および/またはpH調節し得る。一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液は、100L~500L(たとえば約250L)、1000L~3000L(たとえば約2000L)、またはより大きな容器(たとえば単回使用バイオリアクター(SUB))中で生成したrAAVベクターの親和性クロマトグラフィー精製から生じる溶出液であり、溶出液は希釈および濾過されている。
【0602】
一部の実施形態では、ロードするステップは、ベクターゲノム内の配列のqPCR分析によって測定して、約2.0×1012個のベクターゲノム(VG)/mL~2.0×1015VG/mL、たとえば、2.0×1012VG/mL~2.0×1013VG/mL、2.0×1013VG/mL~2.0×1014VG/mL、1.0×1014VG/mL~3.0×1014VG/mL、2.0×1014VG/mL~2.0×1015VG/mL、またはそれより多くのカラム体積(「カラムチャレンジVG/mLの樹脂」とも呼ぶ)を含む、希釈および任意選択で濾過した溶液(たとえば親和性溶出液)を、AEXカラム上に適用することを含む。一部の実施形態では、ロードするステップは、ベクターゲノム内の導入遺伝子配列のqPCR分析によって測定して(たとえば導入遺伝子がATP7B導入遺伝子である場合)、6.3×1013~9.4×1013VG/mLのカラム体積を含む希釈溶液(たとえば親和性溶出液)を、約30mL~70mLのAEXカラム上に適用することを含む。一部の実施形態では、ロードするステップは、ベクターゲノム内のITR配列のqPCR分析によって測定して、5×1013~1.3×1014VG/mLのカラム体積を含む、希釈および任意選択で濾過した溶液(たとえば親和性溶出液)を、約1.3LのAEXカラム上に適用することを含む。一部の実施形態では、ロードするステップは、ベクターゲノム内の導入遺伝子配列のqPCR分析によって測定して、2.6×1012~6.8×1013VG/mLのカラム体積を含む、希釈および任意選択で濾過した溶液(たとえば親和性溶出液)を、約6.4LのAEXカラム上に適用することを含む。
【0603】
一部の実施形態では、ロードするステップは、2.5×1015VG/L~2.5×1016VG/L、2.5×1016VG/L~2.5×1017VG/L、2.5×1015VG/L~3.0×1017VG/L、またはそれより多くのカラム体積を含む、希釈および任意選択で濾過した溶液(たとえば親和性溶出液)を、AEXカラム上に適用することを含む。
【0604】
一部の実施形態では、ロードするステップは、8.0×1012個の全VG~2.0×1018個の全VG、たとえば、8.0×1012個の全VG~8.0×1013個の全VG、8.0×1013~8.0×1014個の全VG、8.0×1014個の全VG~8.0×1015個の全VG、8.0×1015個の全VG~8.0×1016個の全VG、8.0×1016個の全VG~8.0×1017個の全VG、8.0×1017個の全VG~2.0×1018個の全VG、またはそれより多くを含む、希釈および任意選択で濾過した溶液(たとえば親和性溶出液)を、AEXカラム上に適用することを含む。一実施形態では、ロードするステップは、≦15×1016VG/Lのカラム体積を含む、希釈および任意選択で濾過した溶液(たとえば親和性溶出液)を、AEXカラム上に適用することを含み、VGは、導入遺伝子の定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)分析によって測定してもよい。
【0605】
精製しようとするrAAVベクターを含む溶液(たとえば親和性溶出液)をカラム上にロードする際、溶液は、特定の速度(たとえば、cm/時、mL/分)でカラム固定相を通って流れ、特定の期間(すなわち滞留時間)の間固定相と接触している。
【0606】
一部の実施形態では、カラム上にロードしたrAAVベクターを含む溶液の滞留時間は、0.1分/CV~5分/CV、たとえば、0.1分/CV~1.0分/CV、1.0分/CV~2分/CV、2分/CV~3分/CV、3分/CV~4分/CV、4分/CV~5分/CV、またはそれより長くである。一部の実施形態では、カラム上にロードしたrAAVベクターを含む溶液の滞留時間は、約0.5分/CVである。一部の実施形態では、カラム上にロードしたrAAVベクターを含む溶液の滞留時間は、約1.5分/CVである。一部の実施形態では、カラム上にロードしたrAAVベクターを含む溶液の滞留時間は、約2.0分/CVである。一部の実施形態では、カラム上にロードしたrAAVベクターを含む溶液の滞留時間は、3.5分/CV~4.5分/CVである。一部の実施形態では、6.0L~6.6L(たとえば約6.4L)のAEXカラム上にロードした、rAAVベクターを含む希釈および/または濾過した親和性溶出液の滞留時間は、3.0分/CV~5.0分/CV(たとえば約4分/CV)である。
【0607】
一部の実施形態では、カラム上にロードしたrAAVベクターを含む溶液の線速度は、100cm/時~1800cm/時、たとえば、100cm/時~200cm/時、200cm/時~400cm/時、400cm/時~600cm/時、600cm/時~800cm/時、800cm/時~1000cm/時、1000cm/時~1500cm/時、1500cm/時~1800cm/時である。一部の実施形態では、カラム上にロードしたrAAVベクターを含む溶液の線速度は、270cm/時~330cm/時(たとえば約298cm/時、約300cm/時)である。一部の実施形態では、カラム上にロードしたrAAVベクターを含む溶液の線速度は、約300cm/時、約600cm/時、約611cm/時、または約1790cm/時である。一部の実施形態では、6.0L~6.6L(たとえば約6.4L)のAEXカラム上にロードした、rAAVベクターを含む希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液の線速度は、270cm/時~330cm/時(たとえば約300cm/時)である。
【0608】
一部の実施形態では、カラム上にロードしたrAAVベクターを含む溶液の流速は、1.0mL/分~3.0L/分、たとえば、1.0mL/分~10mL/分、10mL/分~100mL/分、100mL/分~500mL/分、500mL/分~1000mL/分、1mL/分~1.5L/分、1mL/分~2L/分、2mL/分~3L/分である。一部の実施形態では、カラム上にロードしたrAAVベクターを含む溶液の流速は、約1.28mL/分である。一部の実施形態では、カラム上にロードしたrAAVベクターを含む溶液の流速は、約314mL/分である。一部の実施形態では、カラム中の固定相を通るrAAVベクターを含む溶液の流速は、1.5L/分~2.0L/分である。一部の実施形態では、カラム上にロードしたrAAVベクターを含む溶液の流速は、約1.8L/分である。一部の実施形態では、6.0L~6.6L(たとえば約6.4L)のカラム上にロードした、rAAVベクターを含む希釈および/または濾過した親和性溶出液の流速は、1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)である。
【0609】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を親和性溶出液から精製する方法は、i)親和性溶出液を、界面活性剤(たとえばP188)、アミノ酸(たとえばヒスチジン)、および緩衝液(たとえばトリス)を含む緩衝液で希釈するステップと、ii)希釈した親和性溶出液を任意選択で濾過するステップと、iii)希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液を、AEX固定相を含むカラム上にロードするステップであって、ロードする前にAEX固定相をフラッシュ、浄化、すすぎ、および/または平衡化し、AEX固定相がPOROS(商標)50 HQであってもよいステップとを含む。
【0610】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を親和性溶出液から精製する方法は、i)親和性溶出液を、約100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、1.0%~1.5%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.7~9.0を含む緩衝液で、14.4~15.5倍(たとえば約15倍)に希釈するステップと、ii)希釈した親和性溶出液を、インラインで0.1~0.45μm(たとえば約0.2μm)のフィルターを通して、任意選択で濾過するステップと、iii)希釈および濾過した親和性溶出液を、AEX固定相を含むカラム上にロードするステップとを含み、少なくとも1つのステップを、270cm/時~330cm/時(たとえば、約298cm/時、約300cm/時)の線速度、カラムを通して1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)の流速、および/または1.5分/CV~4.5分/CV(たとえば、約2分/CV、約4分/CV)の滞留時間で行ってもよく、AEX固定相はPOROS(商標)50 HQであってもよい。一部の実施形態では、カラムは、6.0L~6.6L(たとえば約6.4L)のカラムである。
【0611】
一部の実施形態では、本開示は、rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターをAEXによって精製する方法であって、i)≧4.5CV(たとえば約5CV)の注入用水を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、使用前のフラッシュのステップ、ii)任意選択で上向流によって、5CV~10CV(たとえば約8CV)もしくは14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、0.1M~1.0M(たとえば約0.5M)のNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、浄化ステップ、iii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、1M~3M(たとえば約2M)のNaCl)、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、再生ステップ、iv)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、v)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.0(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、vi)≧4.5CV(たとえば約5CV)の、100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.5~95(たとえば約8.8)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、vii)親和性溶出液をカラム中のAEX固定相にロードするステップであって、溶出液が、a)100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.7~9.0を含む緩衝液で約14.4~15.5倍(たとえば約15倍)に希釈されていてもよく、任意選択で、b)固定相に適用する前にインラインで0.1μm~0.45μm(たとえば約0.2μm)のフィルターを通して濾過されていてもよい、ステップ、および/またはviii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップを含み、ステップi)~viii)のうちの少なくとも1つは、270cm/時~330cm/時(たとえば約298cm/時、約300cm/時)の線速度、および/または1.5分/CV~4.5分/CV(たとえば約2分/CV、約4分/CV)の滞留時間で行ってもよく、rAAVベクターは、rAAV9またはrAAV3Bベクターであってもよく、AEX固定相はPOROS(商標)50 HQであってもよい。一部の実施形態では、ステップi)~vii)のうちの少なくとも1つは、6L~6.6Lのカラム(たとえば約6.4L)を通して1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)または1.3Lのカラムを通して約314mL/分の流速で行う、方法を提供する。当業者は、上記ステップの順序を変動させ得ることを理解されよう。
【0612】
ロードチェイス
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)から精製する方法は、rAAVベクターを含む溶液の適用の後に、ロードチェイス溶液をカラム固定相に適用することを含む。ロードチェイスは、ロードまたはロード溶液の適用を完了させ、非結合材料をカラムから除去する役割を果たす。一部の実施形態では、ロードチェイスは、非結合材料をカラムから除去する役割を果たす。一部の実施形態では、ロードチェイス溶液は、5mM~50mM(たとえば約20mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば約9)を含む。一部の実施形態では、9~11CV(たとえば約10CV)のロードチェイス溶液をカラム固定相に適用する。一部の実施形態では、ロードチェイス溶液は、200cm/時~2000cm/時(たとえば約1800cm/時)の速度および/または0.5分/CVの滞留時間でカラム固定相に適用する。一部の実施形態では、9CV~11CV(たとえば約10CV)の、20mMのトリス、pH9を含むロードチェイス溶液を、任意選択で200cm/時~2000cm/時(たとえば約1800cm/時)の速度および/または約0.5分/CVの滞留時間で、カラム中のAEX固定相に適用する。
【0613】
勾配溶出
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)から精製する方法は、勾配溶出によるフル、中間体、および/または空カプシドの回収を含む。勾配溶出は、異なるpH、伝導率、および/またはモディファイヤー濃度を有する、少なくとも2つの異なる溶液(たとえば勾配溶出緩衝液)の使用を含み得る。勾配溶出の経過中、溶液が混合され、カラム固定相を流通するにつれて、pH、伝導率、および/またはモディファイヤー濃度の勾配が作られるように、第1の溶液の百分率を、第2の溶液の百分率に対して反比例する様式で変動させる。たとえば、勾配溶出の開始時に、第1の溶液の百分率(たとえば、第1の勾配溶出緩衝液、緩衝液A)は100%であり、第2の溶液の百分率(たとえば、第2の勾配溶出、緩衝液B)は0%であり、勾配溶出の終了時に、第1の溶液の百分率は0%であり、第2の溶液の百分率は100%である。別の実施形態では、勾配溶出の開始時に、第1の溶液の百分率(たとえば、第1の勾配溶出緩衝液、緩衝液A)は100%であり、第2の溶液の百分率(たとえば、第2の勾配溶出、緩衝液B)は0%であり、勾配溶出の終了時に、第1の溶液の百分率は25%であり、第2の溶液の百分率は75%である。当業者は、勾配の開始時および勾配の終了時でのそれぞれの溶液の百分率は、0%~100%のどこでもよいことを理解されよう。たとえば、一部の実施形態では、溶出の開始時、溶出の終了時、または溶出の過程中の任意の時点に、第1の勾配溶出緩衝液の百分率対第2の勾配溶出緩衝液は、約100%/0%、約99%/1%、約98%/2%、約97%3%、約96%/4%、約95%/5%、約90%10%、約80%20%、約75%/25%、約70%/30%、約60%/40%、約50%/50%、約40%/60%、約30%/70%、約25%/75%、約20%/80%、約10%/90%、約5%/95%、約4%/96%、約3%/97%、約2%/98%、約1%/99%、または約0%/100%である。
【0614】
一部の実施形態では、溶出の開始時、溶出の終了時、または溶出の過程中の任意の時点に、第1の勾配溶出緩衝液の百分率対第2の勾配溶出緩衝液の百分率は、約100%~90%/0%~10%、90%~80%/10%~20%、80%~70%/20%~30%、70%~60%/30%~40%、60%~50%/40%~50%、50%~40%/50%~60%、40%~30%/60%~70%、30%~20%/70%~80%、20%~10%/80%~90%、10%~0%/90%~100%。
【0615】
一部の実施形態では、10~60CVの溶液をカラムに適用する過程中に、勾配溶出の終了時に、勾配溶出緩衝液Aの百分率が0%であり、勾配溶出緩衝液Bの百分率が100%であるように、緩衝液A(たとえば第1の勾配溶出緩衝液)の百分率を減少させ、緩衝液B(たとえば第2の勾配溶出緩衝液)の百分率を増加させる。一部の実施形態では、約20CVの溶液をカラムに適用する過程中に、緩衝液Bの増加の速度が約5%の緩衝液B/CVであり、溶液中の緩衝液Bの最終百分率は100%であるように、緩衝液A(たとえば第1の勾配溶出緩衝液)の百分率を減少させ、緩衝液B(たとえば第2の勾配溶出緩衝液)の百分率を増加させる。一部の実施形態では、約37.5CVの溶液をカラムに適用する過程中に、緩衝液Bの増加の速度が約2%の緩衝液B/CVであり、溶液中の緩衝液Bの最終百分率が75%であるように、緩衝液A(たとえば第1の勾配溶出緩衝液)の百分率を減少させ、緩衝液B(たとえば第2の勾配溶出緩衝液)の百分率を増加させる。
【0616】
一部の実施形態では、10~60CVの溶液をカラムに適用する過程中に、勾配溶出の終了時に、勾配溶出緩衝液Aの百分率が100%であり、勾配溶出緩衝液Bの百分率が0%であるように、緩衝液A(たとえば第1の溶出緩衝液)の百分率を増加させ、緩衝液B(たとえば第2の溶出緩衝液)の百分率を減少させる。当業者は、勾配溶出を緩衝液の様々な百分率(たとえば、0%~75%の緩衝液B、100%~25%の緩衝液Aに対応;0%~50%の緩衝液B、100%~50%の緩衝液Aに対応)で実行し得ることを理解されよう。
【0617】
一部の実施形態では、本開示に記載の、rAAVベクターをAEXによって精製する方法はカラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップを含み、第1の勾配溶出緩衝液または第2の勾配溶出緩衝液の構成成分の濃度は、勾配溶出中に連続的に増加または減少する。一部の実施形態では、固定相から溶出された材料は、精製しようとするrAAVベクターを含む。第1の勾配溶出緩衝液または第2の勾配溶出緩衝液の構成成分の濃度の増加または減少の速度は、全CVあたりの構成成分の濃度の変化と等しくてよい。一部の実施形態では、勾配溶出中の酢酸ナトリウムの濃度の増加速度は、溶出中に固定相に適用した全CVあたりの酢酸ナトリウムの濃度の変化に等しい。一部の実施形態では、構成成分の濃度の変化は、溶出の終了時の構成成分の濃度と比較した、溶出の開始時の構成成分の濃度に相対的である。たとえば、勾配溶出の開始時の構成成分(たとえば酢酸ナトリウムなどの塩)の濃度は0mM~100mMであり、溶出の終了時の構成成分の濃度は100mM~1Mである。一部の実施形態では、勾配溶出の開始時の塩(たとえば酢酸ナトリウム)の濃度は0mMであり、勾配溶出の終了時の塩の濃度は400mM~600mM(たとえば約500mM)である。一部の実施形態では、構成成分の濃度の変化は、2CV~100CVの溶出緩衝液の過程中に、勾配の開始から勾配溶出の終了までで2mM~1Mである。一部の実施形態では、塩の濃度の変化は、溶出勾配が20CVの溶液を含む場合に、酢酸ナトリウム濃度の変化の速度が約500mM/20CV、または25mM/CVであるように、10CV~60CV、10CV~50CV、10CV~40CV、10CV~30CV、または15CV~25CV(たとえば20CV)の溶出緩衝液の過程中に、勾配の開始から勾配溶出の終了までで約0mM~約500mMである。一部の実施形態では、塩の濃度の変化は、溶出勾配が37.5CVの溶液を含む場合に、酢酸ナトリウム濃度の変化の速度が約375mM/37.5CV、または10mM/CVであるように、10CV~60CV、10CV~50CV、10CV~40CV、10CV~30CV、または15CV~25CV(たとえば37.5CV)の溶出緩衝液の過程中に、勾配の開始から勾配溶出の終了までで約0mM~約375mMである。
【0618】
一部の実施形態では、勾配溶出中、第1の勾配溶出緩衝液、第2の勾配溶出緩衝液、または両方の混合物の酢酸ナトリウムの濃度を、勾配溶出中に連続的に増加させ、酢酸ナトリウムの増加速度は、固定相に適用する全CVあたりの酢酸ナトリウムの濃度の変化に等しく、勾配溶出にわたる酢酸ナトリウムの濃度の変化の速度は、約5mM/CV~15mM/CV、10mM/CV~50mM/CV、10mM/CV~40mM/CV、10mM~30mM/CV、または20mM/CV~30mM/CV(たとえば、約10mM/CV、約25mM/CV)である。
【0619】
一部の実施形態では、勾配溶出にわたる構成成分の濃度の変化は、約1mM/CV~1M/CV、たとえば、1mM/CV~10mM/CV、1mM/CV~25mM/CV、5mM/CV~15mM/CV、10mM/CV~50mM/CV、50mM/CV~100mM/CV、100mM/CV~500mM/CV、500mM/CV~1M/CV、1mM/CV~750mM/CV、1mM/CV~500mM/CV、1mM/CV~100mM/CV、10mM/CV~750mM/CV、または50mM/CV~500mM/CVである。
【0620】
一部の実施形態では、勾配溶出の過程中に、勾配溶液中の塩の濃度を変動させ得る。一部の実施形態では、勾配溶出の過程中に、勾配溶液中の塩(たとえば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、およびその組合せ)の濃度は、増加または減少し得る。たとえば、勾配溶出の開始時に、勾配溶液中の塩の濃度は0mM~100mMであってよく、勾配溶出の経過中に50mM~1M、たとえば、50mM~100mM、100mM~150mM、150mM~200mM、200mM~250mM、250mM~300mM、300mM~400mM、400mM~500mM、500mM~600mM、600mM~700mM、700mM~800mM、800mM~900mM、900mM~1M、50mM~750mM、50mM~500mM、50mM~400mM、50mM~200mM、100mM~1M、100mM~750mM、100mM~500mM、100mM~400mM、または100mM~200mMまで増加する。さらなる例では、勾配溶出の開始時に、勾配溶液中の塩の濃度は、50mM~1M、たとえば、50mM~100mM、100mM~150mM、150mM~200mM、200mM~250mM、250mM~300mM、300mM~400mM、400mM~500mM、500mM~600mM、600mM~700mM、700mM~800mM、800mM~900mM、900mM~1M、50mM~750mM、50mM~500mM、50mM~400mM、50mM~200mM、100mM~1M、100mM~750mM、100mM~500mM、100mM~400mM、または100mM~200mMであってよく、勾配溶出の経過中に0mM~100mMまで減少する。一部の実施形態では、勾配溶出の開始時に勾配溶液中の酢酸ナトリウムの濃度は約0mMであり、勾配溶出の終了時に酢酸ナトリウムの濃度は約500mMである。一部の実施形態では、勾配溶出の開始時に勾配溶出溶液中の酢酸ナトリウムの濃度は約0mMであり、勾配溶出の終了時に勾配溶出溶液中の酢酸ナトリウムの濃度は約375mMである。
【0621】
一部の実施形態では、勾配溶出の過程中に、勾配溶液のpHを変動させ得る。一部の実施形態では、勾配溶出の過程中に、勾配溶液のpHは増加し得るまたは減少し得る。一部の実施形態では、勾配溶出の開始時に、勾配溶液のpHは、7.0~11.0(たとえば、7.0~7.5、7.5~8.0、8.0~8.5、8.5~9.0、9.0~9.5、10.0~10.5、10.5~11、7.5~10.5、8.0~10.0、8.5~9.5、または8.0~9.0)であり得る。一部の実施形態では、勾配溶出の終了時に、勾配溶液のpHは、7.0~11.0(たとえば、7.0~7.5、7.5~8.0、8.0~8.5、8.5~9.0、9.0~9.5、10.0~10.5、10.5~11、7.5~10.5、8.0~10.0、8.5~9.5、または8.0~9.0)であり得る。
【0622】
一部の実施形態では、勾配溶出の過程中に、勾配溶液の伝導率を変動させ得る。一部の実施形態では、勾配溶出の過程中に、勾配溶液の伝導率は増加し得るまたは減少し得る。一部の実施形態では、勾配溶出の開始時に、勾配溶液の伝導率は、1.0mS/cm~2.5mS/cm、たとえば1.2mS/cm~2.0mS/cmであり得る。一部の実施形態では、勾配溶出の終了時に、勾配溶液の伝導率は、20mS/cm~35mS/cm、たとえば27mS/cm~33mS/cmであり得る。一部の実施形態では、勾配溶出の開始時に勾配溶液の伝導率は約1.6mS/cmであり、勾配溶出の終了時に勾配溶液の伝導率約30mS/cmである。
【0623】
一部の実施形態では、勾配溶出の過程中に、勾配溶液中の緩衝液の濃度を変動させ得る。一部の実施形態では、勾配溶出の過程中に、勾配溶液中の緩衝液(たとえば、トリス(たとえばトリス塩基とトリス-HClの混合物)、ビス-トリスプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、および/またはビシン)の濃度は、増加または減少し得る。たとえば、勾配溶出の開始時に、勾配溶液中の緩衝液の濃度は、10mM~500mM、たとえば、10mM~400mM、10mM~300mM、10mM~200mM、10mM~50mM、50mM~100mM、50mM~150mM、100mM~200mM、100mM~400mM、200mM~300mM、300mM~400mM、400mM~500mM、またはそれより高い範囲であり得る。勾配溶出の終了時に、勾配溶液中の緩衝液の濃度は、10mM~500mM、たとえば、10mM~400mM、10mM~300mM、10mM~200mM、10mM~50mM、50mM~100mM、50mM~150mM、100mM~200mM、100mM~400mM、200mM~300mM、300mM~400mM、400mM~500mM、またはそれより高い範囲であり得る。
【0624】
一部の実施形態では、勾配溶出の過程中に、勾配溶液中の界面活性剤の濃度を変動させ得る。一部の実施形態では、勾配溶出の過程中に、勾配溶液中の界面活性剤(たとえば、ポロキサマー188(P188)、Triton X-100、ポリソルベート80(PS80)、Brij-35、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)、およびその組合せ)の濃度は、増加または減少し得る。たとえば、勾配溶液中の勾配溶出の開始時に、界面活性剤(たとえばP188)の濃度は、0.005%~1.0%、たとえば、0.005%~0.01%、0.005%~0.5%、0.01%~1.0%、0.01%~0.5%、0.01%~0.02%、0.02%~0.03%、0.03%~0.04%、0.04%~0.05%、0.05%~0.06%、0.05%~1.0%、0.05%~0.5%、0.07%~0.08%、0.08%~0.09%、0.09%~0.1%、0.1%~0.5%、0.1%~1.0%、0.5%~1.0%の範囲であり得る。
【0625】
一部の実施形態では、勾配溶出の終了時に、勾配溶液中の界面活性剤(たとえばP188)の濃度は、0.005%~1.0%、たとえば、0.005%~0.01%、0.005%~0.5%、0.01%~1.0%、0.01%~0.5%、0.01%~0.02%、0.02%~0.03%、0.03%~0.04%、0.04%~0.05%、0.05%~0.06%、0.05%~1.0%、0.05%~0.5%、0.07%~0.08%、0.08%~0.09%、0.09%~0.1%、0.1%~0.5%、0.1%~1.0%、0.5%~1.0%の範囲であり得る。
【0626】
勾配溶出の経過中、勾配溶液の1つまたは複数の態様(たとえば塩濃度)を変動させ得る一方で、伝導率、pH、緩衝液濃度、界面活性剤濃度などの勾配の他の態様は、一定に保ち得る。たとえば、勾配溶液のpHは、7.0~11.0、たとえば、7.5~10.5、8.0~10.0、8.5~9.5、または8.0~9.0、7.0~7.5、7.5~8.0、8.0~8.5、8.5~9.0、9.0~9.5、9.5~10、10.0~10.5、または10.5~11.0の範囲であり得るが、勾配溶出全体にわたって一定であり得る(たとえば、約8.8、約8.9、約9のpH)。一部の実施形態では、勾配溶出溶液のpHは約8.9である。
【0627】
一部の実施形態では、勾配溶出中の、トリス、ビス-トリスプロパン、ビシン、およびその組合せなどの緩衝液の濃度は、10mM~500mM、たとえば、10mM~30mM、10mM~50mM、50mM~100mM、100mM~200mM、200mM~300mM、300mM~400mM、400mM~500mM、10mM~400mM、10mM~300mM、約10mM~200mM、約50mM~約150mM、またはそれより高い範囲であり得るが、勾配溶出全体にわたって一定であり得る(たとえば、約20mM、約100mM)。一部の実施形態では、勾配溶出中のトリスなどの緩衝液の濃度は50mM~150mMである。一部の実施形態では、勾配溶出溶液中のトリスなどの緩衝液の濃度は約100mMである。
【0628】
一部の実施形態では、勾配溶出中の、ポロキサマー188(P188)、Triton X-100、ポリソルベート80(PS80)、Brij-35、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)、およびその組合せなどの界面活性剤の濃度は、0.005%~0.01%、0.005%~0.5%、0.01%~1.0%、0.01%~0.5%、0.01%~0.02%、0.02%~0.03%、0.03%~0.04%、0.04%~0.05%、0.05%~0.06%、0.05%~1.0%、0.05%~0.5%、0.07%~0.08%、0.08%~0.09%、0.09%~0.1%、0.1%~0.5%、0.1%~1.0%、0.5%~1.0%の範囲であり得るが、勾配溶出全体にわたって一定であり得る。一部の実施形態では、勾配溶出中のP188の濃度は0.05%~0.1%である。一部の実施形態では、勾配溶出中のP188の濃度は約0.01%である。
【0629】
勾配溶出中、カラム内の条件、たとえば、pH、伝導率、塩濃度、および/またはモディファイヤー濃度が変化するにつれて、カラム上にロードした物質は、勾配中の様々な時点でカラムから溶出される。
【0630】
一部の実施形態では、AAVカプシド(たとえば、フル、中間体、空)は、精製しようとするカプシドを含む溶液をロードしている間に固定相に結合される。勾配溶出中、塩(たとえば酢酸ナトリウム)の濃度が増加するように勾配溶出緩衝液の百分率が増加するにつれて、フルrAAVベクターが固定相から優先的に放出(溶出)され、空カプシドが固定相上に優先的に保持される。空カプシドは、勾配溶出緩衝液の百分率が(塩濃度と共に)さらに増加するにつれて、より大量に放出される。空カプシドは、AEXカラムフロースルー、すなわち非結合画分中でも回収され得る。一部の実施形態では、フルおよび/または中間体カプシドは、AEXカラムから、第1の溶出ピーク中および第2の溶出ピークの一部分中(たとえば第2の溶出ピークの最初の2/3)中で回収される。固定相からのフルrAAVベクターの溶出は、勾配溶出中に、溶出液のA260およびA280を測定することによってモニタリングすることができ、A260/A280比の増加は、溶出液中のフルrAAVベクターの存在の増加の指標である。
【0631】
一部の実施形態では、勾配溶出を行うことは、約20CVの溶液をカラムに適用することを含み、溶液は、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物であり、溶出相の過程中に緩衝液Aと緩衝液Bとの間の勾配が作られるように、勾配溶出の開始時に溶液は100%の緩衝液Aであり、ステップの終了時に溶液は100%のBであり、緩衝液Bの増加の速度は約5%の緩衝液B/CVであってもよく、緩衝液Bが酢酸ナトリウムを含む場合、酢酸ナトリウムの濃度は25mM/CVの速度で増加してもよい。
【0632】
一部の実施形態では、勾配溶出を行うことは、約37.5CVの溶液をカラムに適用することを含み、溶液は、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物であり、溶出相の過程中に緩衝液Aと緩衝液Bとの間の勾配が作られるように、勾配溶出の開始時に溶液は100%の緩衝液Aであり、ステップの終了時に溶液は75%の緩衝液Bおよび25%の緩衝液Aであり、緩衝液Bの増加の速度は約2%の緩衝液B/CVであってもよく、緩衝液Bが酢酸ナトリウムを含む場合、酢酸ナトリウムの濃度は10mM/CVの速度で増加してもよい。
【0633】
一部の実施形態では、緩衝液A(たとえば第1の勾配溶出緩衝液)は、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む。一部の実施形態では、緩衝液B(たとえば第2の勾配溶出緩衝液)は、約400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む。
【0634】
一部の実施形態では、勾配溶出は、溶出相の過程中に緩衝液Aと緩衝液Bとの間の勾配が作られるように、20CV~24CV(たとえば約20CV)の過程中に、100%の緩衝液Aをカラムに適用することで始まり、100%の緩衝液Bをカラムに適用することで終わり、緩衝液Aは、約100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9を含み、緩衝液Bは、約500mMの酢酸ナトリウム、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9を含む。一部の実施形態では、勾配溶出は、溶出相の過程中に緩衝液Aと緩衝液Bとの間の勾配が作られるように、30CV~40CV(たとえば約37.5CV)の過程中に、100%の緩衝液Aをカラムに適用することで始まり、75%の緩衝液Bおよび25%の緩衝液Aをカラムに適用することで終わり、緩衝液Aは、約100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9を含み、緩衝液Bは、約500mMの酢酸ナトリウム、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9を含む。
【0635】
一部の実施形態では、勾配溶出緩衝液は、5mM~40mM(たとえば約20mM)のトリス、pH9.0を含む。一部の実施形態では、勾配溶出緩衝液は、5mM~40mM(たとえば約20mM)のトリス、400mM~600mM(たとえば約500mM)の塩(たとえば、NaCl、酢酸Na、酢酸NH4、およびNa2SO4)、pH9.0を含む。一部の実施形態では、勾配溶出緩衝液は、約20mMのトリス、500mMの酢酸ナトリウム、pH9.0を含む。
【0636】
一部の実施形態では、AEXカラム中における勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の滞留時間は、0.1分/CV~15分/CV、たとえば、0.1分/CV~1分/CV、1分/CV~2分/CV、1.5分/CV~2.5分/CV、2分/CV~4分/CV、4分/CV~6分/CV、6分/CV~8分/CV、または8分/CV~10分/CV、10分/CV~12分/CV、12分/CV~15分/CVである。一部の実施形態では、カラム中の溶液の滞留時間は、0.1分/CV、約0.5分/CV、約1.5分/CV、約2.0分/CV、約2.5分/CV、約3分/CV、約3.6分/CV、または約4分/CV、約5分/CV、約6分/CV、約7分/CV、約8分/CV、約9分/CV、または約10分/CVである。一部の実施形態では、カラム中における勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の滞留時間は、約3.6分/CVまたは4分/CVである。一部の実施形態では、カラム中における勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の滞留時間は、約2.0分/CVである。
【0637】
一部の実施形態では、カラム中における勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の滞留時間は、1.5~2.5分/CV(たとえば約2分/CV)である。一部の実施形態では、カラム中における勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の滞留時間は、3.5~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)である。一部の実施形態では、カラム中における勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の滞留時間は、約11分/CVである。
【0638】
一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の線速度は、50~1800cm/時、たとえば、50cm/時~100cm/時、100cm/時~200cm/時、200cm/時~400cm/時、400cm/時~600cm/時、600cm/時~800cm/時、800cm/時~1000cm/時、1000cm/時~1500cm/時、または1500cm/時~1800cm/時である。一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の線速度は、約298cm/時または約300cm/時である。一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の線速度は、約75cm/時、約204cm/時、約298cm/時、約300cm/時、約597cm/時、または約600cm/時である。一部の実施形態では、6.0L~6.6L(たとえば6.4L)のカラム中のAEX固定相を通る勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の線速度は、約270cm/時~330cm/時(たとえば約300cm/時)である。
【0639】
一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の流速は、約0.2mL/分~2.0L/分、たとえば、0.2mL/分~1mL/分、1.0mL/分~10mL/分、10mL/分~100mL/分、100mL/分~500mL/分、500mL/分~1L/分、1L/分~1.5L/分、または1L/分~2L/分である。一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の流速は、約0.47mL/分である。一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の流速は、約1.67mL/分である。一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の流速は、約314mL/分である。一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の流速は、約1.8L/分である。一部の実施形態では、カラム中の固定相を通る勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の流速は、1.5~2.0L/分である。一部の実施形態では、1.3Lのカラム中のAEX固定相を通る勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の流速は、約314mL/分である。一部の実施形態では、6.0L~6.6L(たとえば6.4L)のカラム中のAEX固定相を通る勾配溶出緩衝液(たとえば、緩衝液A、緩衝液B、または緩衝液Aと緩衝液Bの混合物)の流速は、約1.8L/分である。
【0640】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)から精製する方法は、勾配溶出緩衝液を、POROS(商標)50 HQ固定相を含むカラムに適用することを含む。一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、AAV9、AAV3Bなど)を親和性溶出液から精製する方法は、15~40CV(たとえば、約20CV、約37.5CV)にわたって、AEX固定相を含むカラムに、100%の緩衝液A(たとえば、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む)を適用することで始まり、75%~100%の緩衝液B(たとえば、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9))を適用することで終わる、勾配溶出を行うことを含み、勾配溶出中の緩衝液Bの百分率の変化の速度は、2%の緩衝液B/CV~5%の緩衝液B/CVである。一部の実施形態では、カラムは6.0L~6.6L(たとえば6.4L)のカラムである。
【0641】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、AAV9、AAV3Bなど)を親和性溶出液から精製する方法は、15CV~40CV(たとえば、約20CV、約37.5CV)にわたって、AEX固定相を含むカラムに、270cm/時~330cm/時(たとえば、約298cm/時、約300cm/時)の線速度、1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)の流速、および/または1.5分/CV~4.5分/CV(たとえば、2分/CV、4分/CV)の滞留時間で、溶出の過程中に第1の緩衝液と第2の緩衝液との間の勾配が作られるように、100%の、約100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9を含む第1の緩衝液を適用することで始まり、75%~100%の、500mMの酢酸ナトリウム、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9を含む第2の緩衝液を適用することで終わる、勾配溶出を行うことを含み、勾配溶出中の緩衝液Bの百分率の変化の速度は、2%の緩衝液B/CV~5%の緩衝液B/CVである。一部の実施形態では、カラムは6.0L~6.6L(たとえば6.4L)のカラムである。
【0642】
一部の実施形態では、本開示は、rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターをAEXによって精製する方法であって、i)≧4.5CV(たとえば約5CV)の注入用水を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、使用前のフラッシュのステップ、ii)任意選択で上向流によって、5CV~10CV(たとえば約8CV)もしくは14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、0.1M~1.0M(たとえば約0.5M)のNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、浄化ステップ、iii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、1M~3M(たとえば約2M)のNaCl、50mM~150mM(たとえば約100)mMのトリス、pH8.5~95(たとえば約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、再生ステップ、iv)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、v)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、vi)≧4.5CV(たとえば約5CV)の、100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.8)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、vii)精製しようとするrAAVベクターを含む親和性溶出液を、カラム中のAEX固定相にロードするステップであって、溶出液が、a)100~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.7~9.0を含む緩衝液で約14.4~15.5倍(たとえば約15倍)に希釈されていてもよく、任意選択で、b)AEX固定相に適用する前にインラインで0.2μmのフィルターを通して濾過されていてもよい、ステップ、viii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、および/またはix)固定相に、20CV~24CV(たとえば約20CV)にわたって、100%の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.0(たとえば約8.9)を含む第1の緩衝液を適用することで始まり、100%の、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえばpH8.9)を含む第2の緩衝液を適用することで終わる、カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップを含み、ステップi)~ix)のうちの少なくとも1つを、270cm/時~330cm/時(たとえば、約298cm/時、約300cm/時)の線速度、および/または1.5分/CV~4.5分/CV(たとえば、約2分/CV、約4分/CV)の滞留時間で行ってもよく、rAAVベクターが、rAAV9またはrAAV3Bベクターであってもよく、AEX固定相はPOROS(商標)50 HQであってもよい、方法を提供する。一部の実施形態では、ステップi)~ix)のうちの少なくとも1つを、6L~6.6Lのカラム(たとえば約6.4L)を通して1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)の流速で、または1.3Lのカラムを通して約314mL/分で行う。一部の実施形態では、勾配溶出中に固定相から溶出された材料は、精製しようとするrAAVベクターを含む。当業者は、上記ステップの順序を変動させ得ることを理解されよう。
【0643】
勾配保持
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)から精製する方法は、好ましくは勾配溶出の後に、完全な勾配形成を確実にするために拡張した体積で、勾配保持溶液をAEX固定相(たとえばPOROS(商標)50 HQ)を含むカラムに適用することを含む。一部の実施形態では、勾配保持溶液は、塩、緩衝液、界面活性剤、アミノ酸、およびその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を含む。一部の実施形態では、勾配保持溶液は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、およびその組合せからなる群から選択される塩を含む。一部の実施形態では、勾配保持溶液は、トリス、ビス-トリスプロパン、ビシン、およびその組合せからなる群から選択される緩衝液を含む。一部の実施形態では、勾配保持溶液は、ポロキサマー188(P188)、Triton X-100、ポリソルベート80(PS80)、Brij-35、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)、およびその組合せからなる群から選択される界面活性剤を含む。一部の実施形態では、勾配保持溶液は、塩、緩衝液、および界面活性剤を含む。一部の実施形態では、勾配保持溶液は、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、シトルリン、およびその組合せからなる群から選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、勾配保持溶液は、酢酸ナトリウム、トリス、およびP188を含む。
【0644】
一部の実施形態では、勾配保持溶液は、5mM~1M(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、1mM~1M(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む。一部の実施形態では、1CV~10CV、たとえば、1CV~3CV、1CV~5CV、4.4CV~5.5CV、1CV~8CV、または5CV~10CVの勾配保持溶液を、カラム固定相に適用する。一部の実施形態では、4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、約500mMの酢酸ナトリウム、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9を含む勾配保持溶液を、AEXカラム固定相(たとえばPOROS(商標)50 HQ)に、270cm/時~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、0.4mL/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)の流速、および/または3.5~11分/CVの滞留時間で適用する。
【0645】
ステップ溶出
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)から精製する方法は、ステップ溶出(「定組成溶出」とも呼ぶ)を含む。一部の実施形態では、ステップ溶出は、少なくとも1つのステップ溶出溶液をカラム固定相に適用することを含むが、より一般的には、複数のステップ溶出溶液(たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれより多く)をカラム固定相に適用する。
【0646】
一部の実施形態では、ステップ溶出溶液は、塩、緩衝液、界面活性剤、アミノ酸、およびその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を含む。一部の実施形態では、ステップ溶出溶液は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、およびその組合せからなる群から選択される塩を含む。一部の実施形態では、ステップ溶出溶液は、トリス、ビス-トリスプロパン、ビシン、およびその組合せからなる群から選択される緩衝液を含む。一部の実施形態では、ステップ溶出溶液は、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、シトルリン、およびその組合せからなる群から選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、ステップ溶液は、ポロキサマー188(P188)、Triton X-100、ポリソルベート80(PS80)、Brij-35、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)、およびその組合せからなる群から選択される界面活性剤を含む。一部の実施形態では、ステップ溶出溶液は、塩、緩衝液、および界面活性剤を含む。一部の実施形態では、ステップ溶出溶液は、酢酸ナトリウムおよびトリスを含む。
【0647】
一部の実施形態では、ステップ溶出溶液中の緩衝液(たとえばトリス)の濃度は、約1mM~500mM、たとえば、1mM~10mM、10mM~50mM、50mM~100mM、100mM~200mM、200mM~300mM、300mM~400mM、400mM~500mMである。一部の実施形態では、ステップ溶出溶液中のトリスの濃度は約20mMである。
【0648】
一部の実施形態では、ステップ溶出溶液中の塩(たとえば酢酸ナトリウム)の濃度は、約5mM~600mM、たとえば、5mM~50mM、50mM~100mM、100mM~200mM、200mM~300mM、300mM~400mM、400mM~500mM、500mM~600mMである。一部の実施形態では、ステップ溶出溶液中の酢酸ナトリウムの濃度は、約64mM、約75mM、約85mM、約95mM、約100mM、約105mM、約109mM、約110mM、約150mM、約200mM、約300mM、約400mM、約500mM、またはそれより高い。
【0649】
一部の実施形態では、ステップ溶出溶液は、10mM~50mM(たとえば約20mM)のトリス、5~600mMの塩、pH8.9~9.1を含む。一部の実施形態では、塩は酢酸ナトリウムである。一部の実施形態では、少なくとも1つのステップ溶出溶液は、20mMのトリス、64mMの酢酸ナトリウム、pH9.0;20mMのトリス、75mMの酢酸ナトリウム、pH9.0;20mMのトリス、85mMの酢酸ナトリウム、pH9.0;20mMのトリス、95mMの酢酸ナトリウム、pH9.0;20mMのトリス、100mMの酢酸ナトリウム、pH9.0;20mMのトリス、105mMの酢酸ナトリウム、pH9.0;20mMのトリス、109mMの酢酸ナトリウム、pH9.0;および20mMのトリス、500mMの酢酸ナトリウム、pH9.0からなる群から選択される緩衝液を含む。
【0650】
一部の実施形態では、1CV~20CV、たとえば、1CV~3CV、2CV~3CV、1CV~8CV、4CV~11CV、5CV~10CV、10CV~20CV、または15CV~20CVの少なくとも1つのステップ溶出溶液を、カラム固定相に適用する。一部の実施形態では、約2.5CV、約5CV、約10CV、または約20CVの少なくとも1つのステップ溶出溶液を、カラム固定相に適用する。
【0651】
一部の実施形態では、ステップ溶出溶液を、カラム固定相に、50cm/時~2000cm/時(たとえば、約75cm/時、約150cm/時、約204cm/時、約600cm/時、約1800cm/時)の線速度で適用する。一部の実施形態では、カラム固定相内のステップ溶出溶液の滞留時間は、1分/CV~15分/CV(たとえば、約1.5分/CV、約6分/CV、約12分/CV)である。
【0652】
一部の実施形態では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれより多くのステップ溶出溶液を、カラム中の固定相に適用する。一部の実施形態では、1CV~20CVの、20mMのトリス、5~600mMの塩(たとえば酢酸ナトリウム)、pH8.9~9.1(たとえば、pH9.0)を含む少なくとも1つ(たとえば、2つ、3つ、4つ、5つなど)のステップ溶出溶液を、AEXカラム(たとえばPOROS(商標)50 HQ)に、50cm/時~2000cm/時の線速度および1分/CV~15分/CVの滞留時間で適用する。
【0653】
一部の実施形態では、ステップ溶出溶液はストリッピング溶液であってもよく、好ましくは、最終ステップ溶出のステップとしてカラム固定相に適用する。最終ステップ溶出溶液(すなわちストリッピング溶液)は、固定相からの物質(たとえばrAAVベクター)の放出を引き起こすためにカラム固定相に適用し得る。一部の実施形態では、最終ステップ溶出溶液は、高い塩濃度(たとえば>450mM)を有し得る。一部の実施形態では、最終ステップ溶出溶液は、20mMのトリス、500mMの塩(たとえば酢酸ナトリウム)、pH8.9~9.1を含んでいてよい。
【0654】
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)から精製する方法は、好ましくは少なくとも1つのステップ溶出溶液の適用の後に、ストリッピング溶液をカラム固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、ストリッピング溶液は、20mMのトリス、500mMの酢酸ナトリウム、pH8.9~9.1を含む。
【0655】
画分の収集、中和、およびプール
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集して、フルカプシドを回収および富化させることを含む。一部の実施形態では、フルカプシドは、第1の溶出ピーク中および第2の溶出ピークの一部分中(たとえば第2の溶出ピーク最初の2/3)中で収集される。空カプシドは、AEXカラムフロースルー、すなわち非結合画分中で回収され得る。空カプシドは溶出ピーク中でも回収され得るが、一般にカラムフロースルー中での回収と比較してより低いレベルである。中間体カプシドは、フルカプシドまたは空カプシドと共に回収され得る。
【0656】
rAAVベクターを精製するAEX方法の溶出(たとえば勾配溶出)中、AEXカラムからの溶出液は、特定の体積および/または特定の性状(たとえば特定の波長での吸光度)を有する別個の画分中で収集し得る。たとえば、1mL~4L、たとえば、1mL~10mL、1mL~3L、1mL~2L、1mL~1L、1mL~100mL、10mL~50mL、50mL~100mL、100mL~250mL、250mL~500mL、500mL~1L、1L~1.5L、1.5L~2L、2L~3L、3L~4L、もしくはそれより多く(たとえば、約1mL、5mL、10mL、100mL、500mL、1L、2L、3L、4Lなど)などの溶出液の体積、または、CVの1/8~10CV、たとえば、CVの1/8~1CV、1CV~2CV、2CV~5CV、5CV~8CV、8CV~10CV、もしくはそれより多く(たとえば、CVの1/8、CVの1/4、CVの1/3、CVの1/2、1CV、2CV、3CV、4CV、5CV、6CV、7CV、8CV、9CV、またはそれより多く)の溶出液などの具体的なCV均等量を、AEXカラムからクロマトグラフィーステップ(たとえば勾配溶出)中に収集し得る。一部の実施形態では、溶出液の体積≧1/3CVを、AEXカラムからクロマトグラフィーステップ中に収集し得る。一部の実施形態では、約1/2CVの溶出液の体積を、AEXカラムからクロマトグラフィーステップ中に収集し得る。一部の実施形態では、AEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分をクロマトグラフィーステップ(たとえば勾配溶出)中に収集することは、カラムフロースルーの吸光度(たとえば260nmおよび/または280nmでの吸光度)が吸光度閾値に達した(たとえば、≧0.5mAU/mm経路長、たとえば10mAU/mm経路長)際に、溶出液を収集することを含む。一部の実施形態では、AEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分をクロマトグラフィーステップ(たとえば勾配溶出)中に収集することは、勾配溶出溶液が特定の百分率の溶出緩衝液を含む際に、たとえば、勾配溶出溶液が約30%~約35%(たとえば約32%)から約50%~約55%(たとえば約52%)の第2の溶出緩衝液(たとえば緩衝液B)を含む際に、溶出液を収集することを含む。一部の実施形態では、第2の溶出緩衝液(たとえば緩衝液B)は、500mMの酢酸ナトリウム、100mMのトリス、0.01%のP188、pH8.9を含む。
【0657】
一部の実施形態では、溶出液は、特定の体積(たとえば、1/3CV、1/2CV)の複数の画分(たとえば、5個の画分、10個の画分、20個の画分、またはそれより多く)で収集する。一部の実施形態では、溶出液は単一画分として収集する。一部の実施形態では、溶出液は、溶出液のA280が≧0.5mAUであるときに単一画分で収集し、約2.3CVを収集してもよい。
【0658】
一部の実施形態では、少なくとも1つの画分の溶出液をAEXカラムから収集することは、任意選択で勾配溶出中に、カラムから収集した溶出液の260nmでの吸光度(A260)および/または280nmでの吸光度(A280)を測定することを含む。一部の実施形態では、AEX溶出液の吸光度(たとえばA260またはA280)を測定することは、少なくとも1つの画分溶出液の収集とインラインで行う。一部の実施形態では、クロマトグラフィー溶出(たとえば勾配溶出)中にAEXカラムから収集した溶出液が0.5~10mAU/mm経路長のA280を有するときに、溶出液の少なくとも1つの画分を収集する。一部の実施形態では、溶出液をAEXカラムから収集することは、CVの≧1/3の体積を有する、溶出液の少なくとも1つの画分を収集することを含む。一部の実施形態では、任意選択で勾配溶出中に、溶出液の少なくとも1つの画分(たとえば第1の溶出液画分)をAEXカラムから収集することは、溶出液のA280が≧0.5mAU/mm経路長であるときに溶出液の少なくとも1つの画分を収集することを含み、溶出液の少なくとも1つの画分の体積はCVの≧1/3である。
【0659】
一部の実施形態では、任意選択で勾配溶出中に、1~25個の画分、たとえば、1~5個の画分、5~10個の画分、10~15個の画分、15~20個の画分、または20~25個の溶出液画分をAEXカラムから収集する。一部の実施形態では、溶出液の少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25個、またはそれより多くの画分を、AEXカラムから収集する。一部の実施形態では、任意選択で勾配溶出中に、それぞれCVの≧1/3の体積を有する少なくとも10個の溶出液画分を、AEXカラムから収集する。一部の実施形態では、任意選択で勾配溶出中に、それぞれCVの約1/2の体積を有する少なくとも20個の溶出液画分を、AEXカラムから収集する。
【0660】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を親和性溶出液からAEXによって精製する方法は、任意選択で勾配溶出中に、約10個の溶出液画分の第1群を、AEXカラムから、溶出液のA280が>0.5mAU/mm経路長であるときに収集することを含み、それぞれの画分はCVの≧1/3の体積を有する。
【0661】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえばrAAV3Bなど)を親和性溶出液からAEXによって精製する方法は、任意選択で勾配溶出中に、約20個の溶出液画分の第1群を、AEXカラムから、勾配溶出溶液の第2の溶出緩衝液(たとえば緩衝液B)の百分率が約30%~約35%(たとえば約32%)であるときに収集し、第2の溶出緩衝液の百分率(たとえば緩衝液B)が勾配溶出溶液の約50%~55%(たとえば約52%)であるまで収集し続けることを含み、それぞれの画分はCVの約1/2の体積を有する。
【0662】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のpHを調節することを含む。一部の実施形態では、溶出液の少なくとも1つの画分のpHを調節することは、中和ステップと呼ぶ。一部の実施形態では、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のpHは、pH調節の前にpH8.5~9.1である。一部の実施形態では、溶出液の少なくとも1つの画分のpHを6.8~7.6(たとえばpH約7.2)のpHに調節する。一部の実施形態では、溶出液の少なくとも1つの画分のpHを7.5~7.7のpH(たとえばpH約7.6)に調節する。
【0663】
一部の実施形態では、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のpHは、14%~16%(溶出液体積重量)(たとえば、14.3%~14.7%、14.3%~15%、15%~16%)の、50mM~500mM、たとえば、約50mM~100mM、50mM~400mM、50mM~300mM、50mM~200mM、100mM~200mM、100mM~300mM、200mM~300mM、300mM~400mM、または400mM~500mMのクエン酸ナトリウム、pH3.0~4.0(たとえば約3.5)を含む溶液の添加によって、6.8~7.6のpHに調節する。一部の実施形態では、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のpHを調節することは、溶出液体積重量14%~16%(たとえば約15%)の溶出液体積重量の約250mMのクエン酸ナトリウム、pH3.5を含む溶液の添加によって、6.8~7.6(たとえばpH約7.2)にpHを調節することを含む。一部の実施形態では、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のpHは、約50mMのシトレート、pH3.6を含む溶液の添加によって調節する。
【0664】
一部の実施形態では、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のpHは、少なくとも1つのファクション(faction)を、約0.01CV~0.1CV(たとえば約0.066CV)の、50mM~500mM、たとえば、約50mM~100mM、50mM~400mM、50mM~300mM、50mM~200mM、100mM~200mM、100mM~300mM、200mM~300mM、300mM~400mM、または400mM~500mMのクエン酸ナトリウム、pH3.0~4.0(たとえば約3.5)を含む溶液を含む容器に収集することによって、約7.5~7.7のpHに調節する。一部の実施形態では、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のpHを調節することは、少なくとも1つの画分を、約0.01CV~0.1CV(たとえば約0.066CV)の、約250mMのクエン酸ナトリウム、pH3.5を含む溶液を含む容器内に収集することによって、7.5~7.7(たとえばpH約7.6)のpHに調節することを含む。
【0665】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定することを含む。一部の実施形態では、溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)系における分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して測定し、1つまたは複数の波長(たとえば260nmおよび/または280nm)での吸光度を測定する。
【0666】
一部の実施形態では、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定することは、260nm(A260)および280nm(A280)での吸光度を測定し、任意選択でA260/A280比を決定することを含む(SECによって測定した場合、測定値はSEC A260/A280またはA260/A280(SEC)と呼び得る)。AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のA260/A280比は、少なくとも0.5~2.0、たとえば、少なくとも0.5~0.75、0.75~1.0、1.0~1.25、1.25~1.5、0.5~1.5、1.5~2.0、またはそれより高い。AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のA260/A280比は、少なくとも0.5、少なくとも0.55、少なくとも0.6、少なくとも0.65、少なくとも0.7、少なくとも0.75、少なくとも0.8、少なくとも0.85、少なくとも0.9、少なくとも0.95、少なくとも1.0、少なくとも1.10、少なくとも1.11、少なくとも1.12、少なくとも1.13、少なくとも1.14、少なくとも1.15、少なくとも1.16、少なくとも1.17、少なくとも1.18、少なくとも1.19、少なくとも1.20、少なくとも1.21、少なくとも1.22、少なくとも1.23、少なくとも1.24、少なくとも1.25、少なくとも1.26、少なくとも1.27、少なくとも1.28、少なくとも1.29、少なくとも1.30、少なくとも1.31、少なくとも1.32、少なくとも1.33、少なくとも1.34、少なくとも1.35、少なくとも1.36、少なくとも1.37、少なくとも、1.38、少なくとも1.39、少なくとも1.40、またはそれより大きい)。一部の実施形態では、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分のA260/A280比は、少なくとも1.25である。
【0667】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の、高分子質量種(HMMS)の%を測定することを含む。一部の実施形態では、HMMSの%はSECによって測定する。一部の実施形態では、250LのSUB中で生成したrAAVベクターのAEX精製中に収集した溶出液の少なくとも1つの画分の%HMMSは、0%~10%(たとえば0%~3.2%)の範囲である。一部の実施形態では、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターのAEX精製中に収集した溶出液の少なくとも1つの画分の%HMMSは、0.5%~15%(たとえば1.2%~8.3%)の範囲である。
【0668】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の%純度を決定することを含む。一部の実施形態では、%純度はRP-HPLCによって決定する。一部の実施形態では、250LのSUB中で生成したrAAVベクターのAEX精製中に収集した溶出液の少なくとも1つの画分の%純度は、95%~100%(たとえば99.1%~99.4%)の範囲である。一部の実施形態では、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターのAEX精製中に収集した溶出液の少なくとも1つの画分の%純度は、75%~100%(たとえば79.6%~98.7%)の範囲である。
【0669】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の、宿主細胞DNA(HC-DNA)の量を測定することを含む。一部の実施形態では、HC-DNAの量はqPCRによって測定する。一部の実施形態では、250LのSUB中で生成したrAAVベクターのAEX精製中に収集した溶出液の少なくとも1つの画分のHC-DNAの量は、0.1pg/1×109VG~20pg/1×109VG(たとえば1.0pg/1×109VG~5.9pg/1×109VG)の範囲である。一部の実施形態では、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターのAEX精製中に収集した溶出液の少なくとも1つの画分のHC-DNAの量は、0.1pg/1×109VG~50pg/1×109VG(たとえば2.7pg/1×109VG~26.5pg/1×109VG)の範囲である。
【0670】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の、宿主細胞タンパク質(HCP)の量を測定することを含む。一部の実施形態では、HCPの量はELISAによって測定する。一部の実施形態では、250LのSUB中で生成したrAAVベクターのAEX精製中に収集した溶出液の少なくとも1つの画分のHCPの量は、定量レベルより低い(LLOQ)量~5.78pg/1×109VGの範囲である。一部の実施形態では、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターのAEX精製中に収集した溶出液の少なくとも1つの画分のHCPの量はLLOQである。
【0671】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)から精製する方法は、AEXカラムから収集した溶出液(たとえば勾配溶出中)の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液(本明細書中で「AEXプール」とも呼ぶ)を形成することを含む。一部の実施形態では、少なくとも0.5~2.0、たとえば、少なくとも0.5~0.75、0.75~1.0、1.0~1.25、1.25~1.5、0.5~1.5、1.5~2.0、またはそれより高いA260/A280比(たとえばSECによって測定)をそれぞれ有する、AEXカラムからの溶出液の少なくとも2つの画分。一部の実施形態では、少なくとも0.5、少なくとも0.55、少なくとも0.6、少なくとも0.65、少なくとも0.7、少なくとも0.75、少なくとも0.8、少なくとも0.85、少なくとも0.9、少なくとも0.95、少なくとも1.0、少なくとも1.10、少なくとも1.11、少なくとも1.12、少なくとも1.13、少なくとも1.14、少なくとも1.15、少なくとも1.16、少なくとも1.17、少なくとも1.18、少なくとも1.19、少なくとも1.20、少なくとも1.21、少なくとも1.22、少なくとも1.23、少なくとも1.24、少なくとも1.25、少なくとも1.26、少なくとも1.27、少なくとも1.28、少なくとも1.29、少なくとも1.30、少なくとも1.31、少なくとも1.32、少なくとも1.33、少なくとも1.34、少なくとも1.35、少なくとも1.36、少なくとも1.37、少なくとも、1.38、少なくとも1.39、少なくとも1.40、またはそれより大きい)A260/A280比(たとえばSECによって測定)をそれぞれ有する、AEXカラムからの溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成する。一部の実施形態では、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせることは、それぞれ≧0.98のA260/A280比を有する溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成することを含む。一部の実施形態では、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせることは、それぞれ≧1.0のA260/A280比を有する溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成することを含む。一部の実施形態では、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせることは、それぞれ≧1.22のA260/A280比を有する溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成することを含む。一部の実施形態では、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせることは、それぞれ≧1.24のA260/A280比を有する溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成することを含む。一部の実施形態では、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせることは、それぞれ≧1.25のA260/A280比を有する溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成することを含む。
【0672】
一部の実施形態では、溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成することは、任意選択で勾配溶出中に、AEXカラムから収集した溶出液の2~7、2~10、2~15、2~20、または2~50個の画分をプールすることを含む。一部の実施形態では、プールした溶出液のA260/A280比は、少なくとも0.5~2.0、たとえば、少なくとも0.5~0.75、0.75~1.0、1.0~1.25、1.25~1.5、0.5~1.5、1.5~2.0、またはそれより高い。一部の実施形態では、プールした溶出液のA260/A280比は、少なくとも0.5、少なくとも0.55、少なくとも0.6、少なくとも0.65、少なくとも0.7、少なくとも0.75、少なくとも0.8、少なくとも0.85、少なくとも0.9、少なくとも0.95、少なくとも1.0、少なくとも1.10、少なくとも1.11、少なくとも1.12、少なくとも1.13、少なくとも1.14、少なくとも1.15、少なくとも1.16、少なくとも1.17、少なくとも1.18、少なくとも1.19、少なくとも1.20、少なくとも1.21、少なくとも1.22、少なくとも1.23、少なくとも1.24、少なくとも1.25、少なくとも1.26、少なくとも1.27、少なくとも1.28、少なくとも1.29、少なくとも1.30、少なくとも1.31、少なくとも1.32、少なくとも1.33、少なくとも1.34、少なくとも1.35、少なくとも1.36、少なくとも1.37、少なくとも、1.38、少なくとも1.39、少なくとも1.40、またはそれより高い)。一部の実施形態では、プールした溶出液のA260/A280比は>0.97である。一部の実施形態では、プールした溶出液のA260/A280比は0.97~1.03である。一部の実施形態では、プールした溶出液のA260/A280比は1.0~1.05である。一部の実施形態では、プールした溶出液のA260/A280比は1.20~1.40である。一部の実施形態では、プールした溶出液のA260/A280比は≧1.25、たとえば約1.28~1.35であり、AEXによる精製前の親和性溶出液または希釈した親和性溶出液と比較して、フルカプシドが富化されている。
【0673】
一部の実施形態では、たとえば単一画分のみがA280値またはA260/A280比などの事前に決定された基準を満たす場合は、プールした溶出液は単一画分のみを含む。一部の実施形態では、たとえば、勾配溶出を行う過程中に、特定の時点(たとえば特定のA280値が測定されたとき)から開始し、特定の時点(たとえば、特定のA280値が測定されたとき、具体的な溶出液の体積が収集されたとき)で終わる、単一画分を収集した場合は、プールした溶出液は単一画分のみを含む。
【0674】
一部の実施形態では、プールした溶出液は、約6.5~8、6.8~7.6、約6.8~7.8、7.0~7.6、約7.0~7.4、または約7.0~7.2のpHを有する。一部の実施形態では、プールした溶出液は、約6.8~7.6のpHを有する。
【0675】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を親和性溶出液から精製する方法は、i)溶出液のA280が>0.5mAU/mm経路長であるときに、クロマトグラフィーステップ(たとえば勾配溶出)中に、AEXカラムから少なくとも1つ(たとえば約10個)の溶出液画分の第1群を収集し、溶出液の少なくとも1つの画分の体積がCVの1/8~2CV(たとえばCVの約1/3)に等しいステップ、ii)カラムからの少なくとも1つ(たとえば約10個)の溶出液画分のpHを、14.3%~15%(溶出液体積重量)の、約200mM~300mM(たとえば約250mM)のクエン酸ナトリウム、pH3.0~4.0(たとえば約3.5)を含む溶液の添加によって、6.8~7.6のpHに調節するステップ、iii)カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定し、A260/A280比を決定するステップ、および/またはiv)カラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成することステップを含み、溶出液の少なくとも2つの画分のそれぞれのA260/A280は≧1.25であり、プールした溶出液のA260/A280は≧1.25(たとえば約1.28~1.35)であり、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液のpHは6.8~7.6であってもよく、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液は、AEXによる精製の前の親和性溶出液または希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液と比較して、フルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されている。
【0676】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を親和性溶出液から精製する方法は、i)勾配溶出溶液が、約65%~約70%(たとえば約68%)の、約100mMのトリス、約0.01%のP188、pH8.9を含む第1の溶出緩衝液(たとえば緩衝液A)、および約30%~約35%(たとえば約32%)の、約500mMの酢酸ナトリウム、約100mMのトリス、約0.01%のP188、pH8.9を含む第2の溶出緩衝液(たとえば緩衝液B)を含むときに、勾配溶出ステップ中にAEXカラムからの溶出液の少なくとも1つ(たとえば約20個)の画分の第1群を収集し、第1の溶出緩衝液の百分率が約45%~約50%(たとえば約48%)であり、第2の溶出緩衝液の百分率が約50%~約55%(たとえば約52%)であるまで、溶出液のすべての画分を収集し続け、溶出液の少なくとも1つの画分の体積がCVの1/8~2CV(たとえばCVの約1/2)に等しいステップ、ii)溶出液の少なくとも1つの画分を、0.01CV~0.1CV(たとえば約0.066CV)の、約200mM~300mM(たとえば約250mM)のクエン酸ナトリウム、pH3.0~4.0(たとえば約3.5)を含む溶液を含む容器内に収集することによって、カラムからの溶出液の少なくとも1つ(たとえば約20個)の画分のpHを7.5~7.7のpHに調節するステップ、iii)カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定し、A260/A280比を決定するステップ、および/またはiv)カラムから収集した溶出液の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成するステップを含み、溶出液の少なくとも2つの画分のそれぞれのA260/A280は≧0.98であり、プールした溶出液のA260/A280は≧1.0であり、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液は、AEXによる精製前の親和性溶出液または希釈した親和性溶出液と比較して、フルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されている。
【0677】
一部の実施形態では、本開示は、rAAV(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)ベクターをAEXによって精製する方法であって、i)≧4.5CV(たとえば約5CV)の注入用水を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、使用前のフラッシュのステップと、ii)任意選択で上向流によって、14.4CV~17.6CV(たとえば約16CV)の、0.1M~1.0M(たとえば約0.5M)のNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、浄化ステップと、iii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、1M~3M(たとえば約2M)のNaCl、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえばpH約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、再生ステップと、iv)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップと、v)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップと、vi)≧4.5CV(たとえば約5CV)の、100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.8)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップと、vii)精製しようとするrAAVベクターを含む親和性溶出液を、カラム中のAEX固定相にロードするステップであって、溶出液が、a)100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば、約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.7~9.0を含む緩衝液で約14.4~15.5倍(たとえば約15倍)に希釈されていてもよく、任意選択で、b)固定相に適用する前にインラインで0.2μmのフィルターを通して濾過されていてもよい、ステップと、viii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップと、ix)固定相に、20CV~24CV(たとえば約20CV)にわたって、100%の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば8.9)を含む第1の緩衝液を適用することで始まり、100%の、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえばpH8.9)を含む第2の緩衝液を適用することで終わる、カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップと、x)溶出液のA280が≧0.5mAU/mm経路長を有するときに、勾配溶出中のカラムから溶出液の少なくとも1つ(たとえば約10個)の画分の第1群を収集し、溶出液の少なくとも1つの画分の体積が1/8~2CV(たとえばCVの約1/3)に等しいステップと、xi)任意選択で14.3%~15%(溶出液体積重量)の、200mM~300mM(たとえば約250mM)のクエン酸ナトリウム、pH3.0~4.0(たとえば約3.5)を含む溶液の添加によって、カラムからの少なくとも1つ(たとえば約10個)の溶出液画分のpHを6.8~7.6のpHに調節するステップと、xii)カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定し、A260/A280比を決定するステップ(たとえばSECによる)と、および/またはxiii)カラムから収集した溶出液画分の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成するステップとを含み、溶出液の少なくとも1つの画分のA260/A280は≧1.25であり、プールした溶出液のA260/A280は≧1.25(たとえば約1.28~1.35)であり、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液のpHは6.8~7.6であってもよく、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液は、親和性溶出液または希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液と比較して、フルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されており、ステップi)~ix)のうちの少なくとも1つを、270cm/時~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、6.0L~6.6L(たとえば約6.4L)のカラムを通して1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)もしくは1.3Lのカラムを通して約314mL/分の流速、および/または3.5分/CV~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間で行ってもよく、rAAVベクターはAAV9ベクターであってもよく、AEX固定相はPOROS(商標)50 HQであってもよい、方法を提供する。一部の実施形態では、勾配溶出中に固定相から溶出された材料は、精製しようとするrAAVベクターを含む。
【0678】
一部の実施形態では、本開示は、rAAV(たとえば、rAAV9、AAV3Bなど)ベクターをAEXによって精製する方法であって、i)5CV~10CV(たとえば約8CV)の、0.1M~1.0M(たとえば約0.5M)のNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、浄化ステップと、ii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、1M~3M(たとえば約2M)のNaCl、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえばpH約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、再生ステップと、iii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップと、iv)≧4.5CV(たとえば約5CV)の、100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200)mMのトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.8)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップと、v)精製しようとするrAAVベクターを含む親和性溶出液を、カラム中のAEX固定相にロードするステップであって、溶出液が、100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば、約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.7~9.0を含む緩衝液で約14.4~15.5倍(たとえば約15倍)に希釈されていてもよい、ステップと、vi)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップと、vii)固定相に、20~40CV(たとえば約37.5CV)にわたって、100%の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば8.9)を含む第1の緩衝液を適用することで始まり、75%の、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえばpH8.9)を含む第2の緩衝液を適用することで終わる、カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップと、viii)第1の緩衝液の百分率が約65%~約70%(たとえば約68%)であり、第2の緩衝液の百分率が約30%~35%(たとえば約32%)であるときに、勾配溶出中のカラムから溶出液の少なくとも1つ(たとえば約20個)の画分の第1群を収集し、第1の緩衝液の百分率が約45%~約50%(たとえば約48%)であり、第2の緩衝液の百分率が約50%~55%(たとえば約52%)であるまで溶出液のすべての画分を収集し続け、溶出液の少なくとも1つの画分の体積が1/8~2CV(たとえばCVの約1/2)に等しいステップと、ix)任意選択で、溶出液の少なくとも1つの画分を、約0.01CV~0.1CV(たとえば約0.066CV)の、200mM~300mM(たとえば約250mM)のクエン酸ナトリウム、pH3.0~4.0(たとえば約3.5)を含む溶液を含む容器内に収集することによって、カラムからの少なくとも1つ(たとえば約20個)の溶出液画分のpHを、7.5~7.7のpHに調節するステップと、x)カラムから収集した溶出液の少なくとも1つの画分の吸光度を測定し、A260/A280比を決定するステップ(たとえばSECによる)と、および/またはxii)カラムから収集した溶出液画分の少なくとも2つの画分を合わせて、プールした溶出液を形成するステップとを含み、溶出液の少なくとも1つの画分のA260/A280は≧0.98であり、プールした溶出液のA260/A280は≧1.0であり、溶出液の少なくとも1つの画分またはプールした溶出液は、親和性溶出液または濾過した親和性溶出液と比較して、フルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されており、ステップi)~vii)のうちの少なくとも1つを、270cm/時~330cm/時(たとえば約298cm/時)の線速度および/または1.5分/CV~4.5分/CV(たとえば約2分/CV)の滞留時間で行ってもよく、rAAVベクターはrAAV3Bベクターであってもよく、AEX固定相はPOROS(商標)50 HQであってもよい、方法を提供する。一部の実施形態では、勾配溶出中に固定相から溶出された材料は、精製しようとするrAAVベクターを含む。
【0679】
一部の実施形態では、本開示は、rAAV(たとえばrAAV9など)ベクターをAEXによって精製する方法、i)≧4.5CV(たとえば約5CV)の注入用水を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、使用前のフラッシュのステップ、ii)任意選択で上向流によって、14.4CV~17.6CV(たとえば約16CV)の、0.1M~1.0M(たとえば約0.5M)のNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、浄化ステップ、iii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、1M~3M(たとえば約2M)のNaCl、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえばpH約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、再生ステップ、iv)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、v)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、vi)≧4.5CV(たとえば約5CV)の、100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.8)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、vii)精製しようとするrAAVベクターを含む親和性溶出液を、カラム中のAEX固定相にロードするステップであって、溶出液が、a)100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.7~9.0を含む緩衝液で約14.4~15.5倍(たとえば約15倍)に希釈されていてもよく、任意選択で、b)固定相に適用する前にインラインで0.2μmのフィルターを通して濾過されていてもよい、ステップ、viii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、ix)固定相に、20CV~24CV(たとえば約20CV)にわたって、100%の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.15%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば8.9)を含む第1の緩衝液を適用することで始まり、100%の、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえばpH8.9)を含む第2の緩衝液を適用することで終わる、カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップ、x)溶出液のA280が≧0.5mAU/mm経路長であるときに、勾配溶出中のカラムから溶出液の画分を収集し、溶出液画分の体積が1/8~2CV(たとえばCVの約1/3)に等しいステップ、および/またはxi)任意選択で14.3%~15%(溶出液体積重量)の、約200mM~300mM(たとえば約250mM)のクエン酸ナトリウム、pH4.0~4.5(たとえば約3.5)を含む溶液の添加によってカラムからの溶出液画分のpHを6.8~7.6のpHに調節するステップを含み、溶出液画分が、親和性溶出液または希釈および任意選択で濾過した親和性溶出液と比較して、フルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されており、ステップi)~ix)のうちの少なくとも1つを、270cm/時~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、6.0L~6.6L(たとえば約6.4L)のカラムを通して1.5L/分~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)もしくは1.3Lのカラムを通して約314mL/分の流速、および/または3.5分/CV~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間で行ってもよく、rAAVベクターはAAV9ベクターであってもよく、AEX固定相はPOROS(商標)50 HQであってもよい、方法を提供する。一部の実施形態では、勾配溶出中に固定相から溶出された材料は、精製しようとするrAAVベクターを含む。
【0680】
一部の実施形態では、本開示は、AEXによってrAAV(たとえば、rAAV9、AAV3など)ベクターを精製する方法であって、i)5CV~10CV(たとえば約8CV)の、0.1M~1.0M(たとえば約0.5M)のNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、浄化ステップ、ii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、1M~3M(たとえば約2M)のNaCl、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえばpH約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、再生ステップ、iii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば100mM)のトリス、pH8.5~9.5(たとえば約9)を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、iv)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、v)≧4.5CV(たとえば約5CV)の、100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば約8.8)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、vi)精製しようとするrAAVベクターを含む親和性溶出液を、カラム中のAEX固定相にロードするステップであって、溶出液が、100mM~300mM(たとえば約200mM)のヒスチジン、100mM~300mM(たとえば約200mM)のトリス、0.1%~1.0%(たとえば約0.5%)のP188、pH8.7~9.0を含む緩衝液で約14.4~15.5倍(たとえば約15倍)に希釈されていてもよい、ステップ、vii)4.5CV~5.5CV(たとえば約5CV)の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.4~9.5(たとえば約8.9)を含む平衡化緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、viii)固定相に、20CV~40CV(たとえば約37.5CV)にわたって、100%の、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.15%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえば8.9)を含む第1の緩衝液を適用することで始まり、75%の、400mM~600mM(たとえば約500mM)の酢酸ナトリウム、50mM~150mM(たとえば約100mM)のトリス、0.005%~0.015%(たとえば約0.01%)のP188、pH8.5~9.5(たとえばpH8.9)を含む第2の緩衝液を適用することで終わる、カラム中の固定相からの材料の勾配溶出を行うステップ、ix)第1の緩衝液の百分率が約65%~約70%(たとえば約68%)であり、第2の緩衝液の百分率が約30%~約35%(たとえば約32%)であるときに、勾配溶出中のカラムから溶出液の画分を収集し、第1の緩衝液の百分率が約45%~約50%(たとえば約48%)であり、第2の緩衝液の百分率が約50%~55%(たとえば約52%)であるまで溶出液のすべての画分を収集し続け、溶出液画分の体積が1/8~2CV(たとえばCVの約1/2)に等しいステップ、および/またはx)任意選択で、溶出画分を、約0.01CV~0.1CV(たとえば約0.066CV)の、200mM~300mM(たとえば約250mM)のクエン酸ナトリウム、pH3.0~4.0(たとえば約3.5)を含む溶液を含む容器内に収集することによって、カラムからの溶出液画分のpHを7.5~7.7のpHに調節するステップを含み、溶出液画分は、親和性溶出液または希釈した親和性溶出液と比較して、フルカプシドが富化されているおよび/または空カプシドが枯渇されており、ステップi)~viii)のうちの少なくとも1つを、270cm/時~330cm/時(たとえば約298cm/時)の線速度および/または1.5分/CV~4.5分/CV(たとえば約2分/CV)の滞留時間で行ってもよく、rAAVベクターはAAV3Bベクターであってもよく、AEX固定相はPOROS(商標)50 HQであってもよい、方法を提供する。一部の実施形態では、勾配溶出中に固定相から溶出された材料は、精製しようとするrAAVベクターを含む。
【0681】
プールした溶出液および原薬の特徴づけ
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)中にAEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集し、溶液中のフルカプシドの百分率と比較してフルカプシドが富化されているプールした溶出液を形成することを含む。溶出ステップ中にAEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集し、プールした溶出液を形成することを含む、rAAVベクターを溶液からAEXによって精製する方法は、プールした溶出液を、ウイルス濾過、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)、0.2μmのフィルターを通した濾過、およびその組合せからなる群から選択される方法によって濾過して、原薬を生成することを、さらに含む。一部の実施形態では、プールした溶出液の、A260/A280(たとえばSECによって測定)、フルカプシド、中間体カプシド、および空カプシドの百分率、%純度、%HMMS、HCPの量、ならびに/またはHC-DNAの量を含む品質性状は、プールした溶出液から生成した原薬の同じ品質性状と実質的に異ならない。
【0682】
一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む親和性溶出液中のフルカプシドの百分率は、全カプシドの20%未満である。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法によって調製したプールした溶出液または原薬は、フルカプシドが、プールした溶出液または原薬中の全カプシドの20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~95%、20%~98%、20%~99%、20%~99%より高く、40%~50%、40%~60%、40%~70%、40%~80%(たとえば、44%、45%、50%、53%)を構成するように、フルカプシドが富化されており、カプシドは分析用超遠心分離(AUC)によって測定してもよい(Burnham B.ら、Human Gene Therapy Methods(2015)26;228~242)。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法によって調製したプールした溶出液または原薬は、フルカプシドが、プールした溶出液または原薬中の全カプシドの52+/-7%を構成するように、フルカプシドが富化されている。一部の実施形態では、rAAVベクターを親和性溶出液から精製する方法は、フルカプシドの百分率を、親和性溶出液中の30%未満(たとえば12%~25%)からプールしたAEX溶出液または原薬中の全カプシドの30%を超える(たとえば、40%~55%、45%~65%、40%~99%より高く)まで増加させることを含む。
【0683】
一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法によって調製したプールしたAEX溶出液は、フルカプシドが、プールした溶出液中の全カプシドの22.9+/-2.9%を構成するように、フルカプシドが富化されている。一部の実施形態では、rAAVベクターを親和性溶出液から精製する方法は、フルカプシドの百分率を、親和性溶出液中の20%未満(たとえば10%~19%)からプールしたAEX溶出液中の全カプシドの20%、またはそれより高く(たとえば、20%~30%、30%~40%、40%~55%、45%~65%、40%~99%より高く)まで増加させることを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターを親和性溶出液から精製する方法は、フルカプシドの百分率を、親和性溶出液中の11.1±2.1からプールしたAEX溶出液中の全カプシドの22.9±2.9%まで増加させることを含む。
【0684】
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)中にAEXカラムから少なくとも1つの溶出液画分を収集し、溶液中の空カプシドの百分率と比較して枯渇された百分率の空カプシドを有する、プールした溶出液を形成することを含み、プールした溶出液を、ウイルス濾過、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)、0.2μmのフィルターを通した濾過、およびその組合せからなる群から選択される濾過方法にさらに供して、原薬を生成する。一部の実施形態では、精製しようとするrAAVベクターを含む親和性溶出液中の空カプシドの百分率は、全カプシドの70%またはそれより高い。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法によって調製したプールした溶出液または原薬は、空カプシドが、プールした溶出液または原薬中の全カプシドの10%~65%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~65%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、または18%~29%(たとえば≦29%)を構成するように、空カプシドが枯渇されており、カプシドは分析用超遠心分離(AUC)によって測定してもよい。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法によって調製したプールした溶出液または原薬は、空カプシドが、プールした溶出液または原薬中の全カプシドの20%+/-7%を構成するように、空カプシドが枯渇されている。一部の実施形態では、rAAVベクターを親和性溶出液から精製する方法は、空カプシドの百分率を、親和性溶出液中の40%~90%からプールしたAEX溶出液または原薬中の全カプシドの≦30%まで低下させることを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターを親和性溶出液から精製する方法は、空カプシドの百分率を、親和性溶出液中の79.7±2.5%からプールしたAEX溶出液または原薬中の全カプシドの67.5±3.8%まで低下させることを含む。
【0685】
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、AAV3など)を溶液から(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)中にAEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集し、中間体カプシドを含むプールした溶出液を形成することを含み、プールした溶出液を、ウイルス濾過、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)、0.2μmのフィルターを通した濾過、およびその組合せからなる群から選択される濾過方法にさらに供して、原薬を生成する。一部の実施形態では、中間体カプシドは、プールした溶出液または原薬中の全カプシドの10%~65%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~65%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、または18%~22%を構成し、カプシドは分析用超遠心分離(AUC)によって測定してもよい。一部の実施形態では、中間体カプシドは、プールした溶出液または原薬中の全カプシドの28%+/-5%を構成する。一部の実施形態では、中間体カプシドは、プールした溶出液または原薬中の全カプシドの9.6%+/-1.4%を構成する。
【0686】
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)中にAEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集し、精製しようとするrAAVベクターを含む溶液中のフルカプシドおよび空カプシドの百分率と比較して、フルカプシドが富化されており、空カプシドが枯渇されている、プールした溶出液または原薬を形成することを含む。フルカプシドおよび空カプシドに加えて、部分的ベクターゲノム(切断もしくは断片化ベクターゲノムとも呼ぶ)および/または非導入遺伝子関連DNA(すなわち中間体カプシド)を含有するカプシドが、特定の非限定的な例示的な実施形態では、プールした溶出液(たとえばプールしたAEX溶出液)または原薬中のカプシド種のバランスを構成し得る。
【0687】
一部の実施形態では、rAAVベクターを親和性溶出液からAEXによって精製する方法は、全カプシドの約53%のフルrAAVカプシド、約23%の中間体カプシド、および約24%の空カプシドを含む、プールした溶出液または原薬を生成する。
【0688】
一部の実施形態では、rAAVベクターを親和性溶出液からAEXによって精製する方法は、全カプシドの約44%のフルrAAVカプシド、約27%の中間体カプシド、および約29%の空カプシドを含む、プールした溶出液または原薬を生成する。
【0689】
一部の実施形態では、rAAVベクターを親和性溶出液からAEXによって精製する方法は、全カプシドの20%~>99%のフルrAAVカプシド、5%~65%の中間体カプシド、および10%~65%の空カプシドを含む、プールした溶出液または原薬を生成する。
【0690】
一部の実施形態では、rAAVベクターを親和性溶出液からAEXによって精製する方法は、45%~65%のフルrAAVカプシド、19%~28%の中間体カプシド、および10%~37%の空カプシドを含む、プールした溶出液または原薬を生成する。一部の実施形態では、親和性溶出液は、100L~500L(たとえば約250L)の体積を有する容器中で生成したrAAVベクターの親和性クロマトグラフィー精製から作製され、容器はSUBであってもよい。
【0691】
一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法によって調製したプールした溶出液または原薬は、フルカプシドが、プールした溶出液または原薬中の全カプシドの55%+/-7%を構成するように、フルカプシドが富化されている。一部の実施形態では、プールした溶出液または原薬中に存在するrAAVベクターは、100L~500L(たとえば約250L)の体積を有する容器中で生成させ、容器はSUBであってもよい。
【0692】
一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法によって調製したプールした溶出液または原薬は、プールした溶出液または原薬中の全カプシドの24%+/-3%の中間体カプシドを含む。一部の実施形態では、プールした溶出液または原薬中に存在するrAAVベクターは、100L~500L(たとえば約250L)の体積を有する容器中で生成させ、容器はSUBであってもよい。
【0693】
一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法によって調製したプールした溶出液または原薬は、空カプシドが、プールした溶出液または原薬中全カプシドの21%+/-10%を構成するように、空カプシドが枯渇されている。一部の実施形態では、プールした溶出液または原薬中に存在するrAAVベクターは、100L~500L(たとえば約250L)の体積を有する容器中で生成させ、容器はSUBであってもよい。
【0694】
一部の実施形態では、rAAVベクターを親和性溶出液からAEXによって精製する方法は、45%~52%のフルrAAVカプシド、27%~37%の中間体カプシド、および/または18%~22%の空カプシドを含む、プールした溶出液または原薬を生成する。一部の実施形態では、親和性溶出液は、約1000L~3000L(たとえば約2000L)の容器中で生成したrAAVベクターの親和性クロマトグラフィー精製から作製され、容器はSUBであってもよい。
【0695】
一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法によって調製したプールした溶出液または原薬は、フルカプシドが、プールした溶出液または原薬中全カプシドの49%+/-2%を構成するように、フルカプシドが富化されている。一部の実施形態では、プールした溶出液または原薬中に存在するrAAVベクターは、1000L~3000L(たとえば約2000L)の体積を有する容器中で生成させ、容器はSUBであってもよい。
【0696】
一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法によって調製したプールした溶出液または原薬は、プールした溶出液または原薬中の全カプシドの32%+/-4%の中間体カプシドを含む。一部の実施形態では、プールした溶出液または原薬中に存在するrAAVベクターは、1000L~3000L(たとえば約2000L)の体積を有する容器中で生成させ、容器はSUBであってもよい。
【0697】
一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法によって調製したプールした溶出液または原薬は、空カプシドが、プールした溶出液または原薬中の全カプシドの20%+/-2%を構成するように、空カプシドが枯渇されている。一部の実施形態では、プールした溶出液または原薬中に存在するrAAVベクターは、1000L~3000L(たとえば約2000L)の体積を有する容器中で生成させ、容器はSUBであってもよい。
【0698】
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)中にAEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集し、ベクターゲノム(VGまたはvg)の定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)分析によって定量し得るrAAVベクターを含む、プールした溶出液および任意選択で原薬を形成することを含む。qPCR分析は、ITR配列のコピー数、導入遺伝子配列のコピー数および/またはインタクトなベクターゲノム中に存在する任意の他のヌクレオチド配列のコピー数を測定し得る。
【0699】
AEXカラムからのプールした溶出液中に存在するVGの量は、%VGカラム収率として表してよく、これは、AEXカラムから収集したプールした溶出液(すなわちAEXプール)中に存在するVGの量を、精製しようとする試料、たとえば、一部の実施形態では希釈だけした、または希釈および濾過し、AEXカラムに適用した親和性溶出液中に存在するVGの量の百分率として言及する。
【0700】
本明細書中に開示した方法に従ってrAAVベクターを精製する方法は、63%+/-26%の%VGカラム収率をもたらす。本明細書中に開示した方法に従ってrAAVベクターを精製する方法は、1%~10%、1~20%、1%~30%、1%~40%、1%~50%、1%~60%、1%~70%、1%~80%、1%~90%、1%~99%、5%~95%、10%~85%、15%~75%、20%~65%、25%~55%、30%~45%、30%~80%、35%~65%、40%~70%、または100%の%VGカラム収率をもたらす。
【0701】
一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製は、40%~100%の%VGカラム収率をもたらす。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製は、10%~70%(たとえば20%~61%)の%VGカラム収率をもたらす。
【0702】
AEXカラムからのプールした溶出液中に存在するVGの量は、%VGステップ収率として表してよく、これは、AEXカラムから収集したプールした溶出液(すなわちAEXプール)中に存在するVGの量を、希釈または濾過前の親和性溶出液中に存在するVGの量の百分率として言及する。
【0703】
本明細書中に開示した方法に従ってrAAVベクターを精製する方法は、47%+/-11%の%VGステップ収率をもたらす。本明細書中に開示した方法に従ってrAAVベクターを精製する方法は、1%~10%、1~20%、1%~30%、1%~40%、1%~50%、1%~60%、1%~70%、1%~80%、1%~90%、1%~99%、5%~95%、10%~85%、15%~75%、20%~65%、25%~55%、30%~45%、30%~80%、35%~65%、40%~70%、または100%の%VGステップ収率をもたらす。
【0704】
一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製は、30%~70%(たとえば37%~60%)の%VGステップ収率をもたらす。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製は、45%+/-8%の%VGステップ収率をもたらす。
【0705】
一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製は、50%+/-13%の%VGステップ収率をもたらす。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製は、25%~75%(たとえば31%~66%)の%VGステップ収率をもたらす。
【0706】
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)中にAEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集し、溶液中の宿主細胞タンパク質(HCP)の量と比較してHCPの量が低下した、プールした溶出液または原薬を形成することを含む。一部の実施形態では、プールした溶出液中、溶出液の少なくとも1つの画分中、または原薬中のHCPの量の低下は、ELISAによって測定して定量レベルより低い(LLOQ)。一部の実施形態では、プールした溶出液中、溶出液の少なくとも1つの画分中、または原薬中のHCPの量の低下は、10ng~2000ng/1×109VG、50ng~200ng/1×109VG、100ng~1000ng/1×109VG、または200~2000ng/1×109VGである。
【0707】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3bなど)を親和性溶出液からAEXによって精製する方法は、HCPの量を、親和性溶出液中の1~500pg/1×109VG(たとえば約50pg/1×109)からプールした溶出液中、溶出液の少なくとも1つの画分中、または原薬中でLLOQの量まで低下させることを含み、rAAVベクターは250LのSUB中で生成する。
【0708】
一部の実施形態では、rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を親和性溶出液からAEXによって精製する方法は、HCPの量を、親和性溶出液中の100~500pg/1×109VG(たとえば約330pg/1×109)からプールした溶出液中、溶出液の少なくとも1つの画分中、または原薬中でLLOQの量まで低下させることを含み、rAAVベクターは2000LのSUB中で生成する。
【0709】
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)中にAEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集し、rAAVベクターを含むプールした溶出液または原薬を形成することを含み、rAAVベクターの純度は、たとえば、分析用逆相HPLC、キャピラリーゲル電気泳動によって測定して、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%である。
【0710】
一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製は、98.6%+/-0.6%の純度を有するrAAVベクター調製物(たとえば原薬)をもたらす。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、1000L~3000L(たとえば約2000L)の容器(たとえばSUB)中で生成したrAAVベクターの精製は、99.3%+/-0.3%の純度を有するrAAVベクター調製物(たとえば原薬)をもたらす。
【0711】
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)中にAEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集し、0%~10%のHMMSの百分率を有する、プールした溶出液または原薬を形成することを含む。一部の実施形態では、HMMSの百分率はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定する。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、100L~300L(たとえば約250L)の容器(たとえばSUB)中で生成したrAAVベクターの精製は、SECによって測定して2.6%+/-0.8%のHMMSを含むrAAVベクター調製物をもたらす。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製は、2.9%+/-0.4%のHMMSを含むrAAVベクター調製物をもたらす。
【0712】
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)中にAEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集し、約7.0~25pgの残留HC-DNA/1×109VGを有する、プールした溶出液または原薬を形成することを含む。一部の実施形態では、HC-DNAの量はqPCRによって測定する。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製は、17.4+/-6.7pgのHC-DNA/1×109VGを含むrAAVベクター調製物(たとえば、プールした溶出液、原薬)をもたらす。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製は、9.3+/-1.2pgのHC-DNA/1×109VGを含むrAAVベクター調製物(たとえば、プールした溶出液、原薬)をもたらす。
【0713】
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)中にAEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集し、約1.24~1.32のA260/A280を有するプールした溶出液または原薬を形成することを含む。一部の実施形態では、A260/A280はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定する。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、250LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製は、SECによって測定して1.24~1.32のA260/A280を有するrAAVベクター調製物(たとえば、プールした溶出液、原薬)をもたらす。一部の実施形態では、本明細書中に開示した方法による、2000LのSUB中で生成したrAAVベクターの精製は、SECによって測定して1.28~1.31のA260/A280を有するrAAVベクター調製物(たとえば、プールした溶出液、原薬)をもたらす。
【0714】
rAAVベクター(たとえば、rAAV9、rAAV3Bなど)を溶液(たとえば親和性溶出液)からAEXによって精製する方法は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)中にAEXカラムから溶出液の少なくとも1つの画分を収集し、プールした溶出液を形成し(プールした溶出液は、ウイルス濾過、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)、0.2μmのフィルターを通した濾過、およびその組合せからなる群から選択される濾過方法に供する)、治療薬生成物の生成に適切な原薬を生成することを含む。一部の実施形態では、原薬は、疾患、障害、または状態(たとえばデュシェンヌ筋ジストロフィー)を処置するためにヒト対象への投与に適している。一部の実施形態では、rAAVベクターはAAV9ベクターである。
【0715】
AEX固定相の再生
フルrAAVカプシドを含む溶出液の少なくとも1つの画分のAEXカラムからの溶出(たとえば勾配溶出)および収集の後、カラム固定相をさらなるrAAV精製の実行のために調製するために、追加のステップを行い得る。そのようなステップとしては、たとえば、浄化、平衡化、再生、フラッシュ、および/または保存を挙げ得る。当業者は、1つまたは複数のステップを、変動する順序および頻度で行い得ることを理解されよう。
【0716】
さらなるrAAV精製の実行において使用するためにカラム中のAEX固定相を再生する方法は、固定相を使用後に浄化することを含む。一部の実施形態では、固定相の使用後の浄化は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)に続く。一部の実施形態では、浄化は、約0.1M~1M、約0.2M~0.8M、約0.3~約0.7M、または約0.4M~約0.6MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、浄化は、約0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、使用後の浄化は、約0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することおよび上向流の使用を含む。一部の実施形態では、使用後の浄化は、14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、使用後の浄化は、2~20CV、5~15CV、7~13CV(たとえば、約5、約7.5、約10、約16CVなど)の、約0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、50~2000cm/時の線速度、0.2~3.0L/分の流速、および/または2~15分/CVの滞留時間で適用することを含む。一部の実施形態では、使用後の浄化は、14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、0.5MのNaOHを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、270~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、6.0~6.6L(たとえば約6.4L)のカラムを通して1.5~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)もしくは1.3Lのカラムを通して約314mL/分の流速、および/または3.5~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間で適用することを含む。
【0717】
さらなるrAAV精製の実行のためにカラム固定相を再生する方法は、固定相を再生することを含む(一部の実施形態ではそのようなステップを「平衡化」と呼び得る)。一部の実施形態では、カラム固定相を再生することは、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)に続く。一部の実施形態では、再生は、塩(たとえば、NaCl、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム(酢酸NH4)、MgCl2、およびNa2SO4)ならびに緩衝剤(たとえば、トリス、ビス-トリスプロパン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、トリシン、トリエタノールアミン、および/またはビシン)を含む溶液を、カラム中の固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、再生は、約0.1M~5M(たとえば、0.1M~4M、0.1M~3.5M、0.1M~3M、0.1M~2.5M、0.5M~4M、0.5Ma~3.5M、0.5M~3.0M、0.5M~2.5M、1M~4M、1M~3.5M、1M~3M、1M~2.5M、または約1.5M~2.5M)の塩を含む溶液を、固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、再生は、約1mM~500mM(たとえば、1mM~450mM、1mM~400、1mM~350mM、1mM~300mM、1mM~250mM、1mM~200mM、50mM~450mM、50mM~400mM、50mM~350mM、50mM~300mM、50mM~250mM、50mM~200mM、または50mM~150mM)の緩衝剤を含む溶液を、固定相に適用することを含む。
【0718】
一部の実施形態では、再生は、約7.0および11.0(たとえば、7.5~10.5、8.0~10.0、8.5~9.5、または8.0~9.0)のpHを有する溶液を、固定相に適用することを含む。
【0719】
一部の実施形態では、再生は、約2MのNaCl、100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、再生は、2MのNaCl、25mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、再生は、2~15CV(たとえば、約5CV、約10CV)の溶液(たとえば再生溶液)を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、再生は、4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、2MのNaCl、100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、再生は、2~15CV(たとえば、約5CV、約10CV)の、2MのNaCl、100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、100~2000cm/時の線速度、0.2~3.0L/分の流速、および/または2分/CV~15分/CVの滞留時間で適用することを含む。一部の実施形態では、再生は、4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、2MのNaCl、100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、270~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、6.0~6.6L(たとえば約6.4L)のカラムを通して1.5~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)もしくは1.3Lのカラムを通して約314mL/分の流速、および/または3.5~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間で適用することを含む。
【0720】
さらなるrAAV精製の実行のためにカラム固定相を再生する方法は、固定相を平衡化することを含む(一部の実施形態ではそのようなステップを「再生ステップ」と呼び得る)。一部の実施形態では、カラム中の固定相の平衡化は、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)に続く。一部の実施形態では、カラム中の媒体の平衡化は、約100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、カラムの平衡化は、20mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、カラムの平衡化は、2~15CV(たとえば、約5CV、10CV)の溶液(たとえば平衡化溶液)を、カラム中のAEX媒体に適用することを含む。一部の実施形態では、カラムの平衡化は、4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、カラムの平衡化は、2~15CV(たとえば、約5CV、約10CV)の、100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、100~2000cm/時の線速度、0.2~3.0L/分の流速、および/または2分/CV~15分/CVの滞留時間で適用することを含む。一部の実施形態では、カラムの平衡化は、4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、100mMのトリス、pH9を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、270~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、6.0~6.6L(たとえば約6.4L)のカラムを通して1.5~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)もしくは1.3Lのカラムを通して約314mL/分の流速、および/または3.5~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間で適用することを含む。
【0721】
さらなるrAAV精製の実行のためにカラム固定相を再生する方法は、固定相の使用後のフラッシュを含む(すなわちフラッシュした)。一部の実施形態では、カラムの使用後のフラッシュは、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)に続く。一部の実施形態では、カラムの使用後のフラッシュは、注入用水(たとえば精製水)を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、カラムの使用後のフラッシュは、≧4.5CV(たとえば約5CV)の注入用水を、カラム中のAEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、カラムの使用後のフラッシュは、2~15CV(たとえば、約5CV、約10CV)の、注入用水を含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、100~2000cm/時の線速度、0.2~3.0L/分の流速、および/または2分/CV~15分/CVの滞留時間で適用することを含む。一部の実施形態では、カラムの使用後のフラッシュは、4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の注入用水を、カラム中のAEX固定相に、270~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、6.0~6.6L(たとえば約6.4L)のカラムを通して1.5~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)もしくは1.3Lのカラムを通して約314mL/分の流速、および/または3.5~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間で適用することを含む。
【0722】
さらなるrAAV精製の実行のためにカラム固定相を再生する方法は、保存液を固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、カラムに保存液を適用することは、溶出ステップ(たとえば勾配溶出)に続く。一部の実施形態では、16%~20%のエタノール(たとえば約17.5%)を含む保存液を、カラム中のAEX固定相に適用する。一部の実施形態では、2~11CV(たとえば、約3CV、約10CV)の保存緩衝液を、カラム中のAEX固定相に適用する。一部の実施形態では、2.7~3.3CV(たとえば約3CV)の、17.5%のエタノールを含む保存液を、カラム中のAEX固定相に適用する。一部の実施形態では、2~11CV(たとえば約3CV)の、17.5%のエタノールを含む保存液を、カラム中のAEX固定相に、100~2000cm/時の線速度、0.2~3.0L/分の流速、および/または2分/CV~15分/CVの滞留時間で適用する。一部の実施形態では、カラムに保存液を適用することは、2.7~3.3CV(たとえば約3CV)の、17.5%のエタノールを含む溶液を、カラム中のAEX固定相に、270~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、6.0~6.6L(たとえば6.4L)のカラムを通して1.5~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)もしくは1.3Lのカラムを通して約314mL/分の流速、および/または3.5~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間で適用することを含む。
【0723】
さらなるrAAV精製の実行のためにカラム固定相を再生する方法であって、i)14.4~17.6CV(たとえば約16CV)の、約0.5MのNaOHを含む溶液を、固定相に適用することを含む、使用後の浄化ステップ、ii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約2MのNaCl、100mMのトリス、pH9を含む溶液を、固定相に適用することを含む、再生ステップ、iii)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の、約100mMのトリス、pH9を含む溶液を、固定相に適用することを含む、平衡化ステップ、iv)4.5~5.5CV(たとえば約5CV)の注入用水を固定相に適用することを含む、使用後のフラッシュのステップ、および/またはv)2.7~3.3CV(たとえば約3CV)の、約17.5%のエタノールを含む保存液を、カラムに適用することを含む、保存液を固定相に適用するステップを含み、ステップi)~v)のうちの少なくとも1つを、270~330cm/時(たとえば約300cm/時)の線速度、6.0~6.6L(たとえば6.4L)のカラムを通して1.5~2.0L/分(たとえば約1.8L/分)もしくは1.3Lのカラムを通して約314mL/分の流速、および/または3.5~4.5分/CV(たとえば約4分/CV)の滞留時間で行い、固定相は、AEX固定相、任意選択でPOROS(商標)50 HQ固定相である、方法。
【0724】
さらなるrAAV精製の実行のためにAEX固定相を再生する方法は、rAAVベクターを精製する方法の第1のステップの前(すなわち、浄化の前、平衡化の前など)に、エタノール洗い出し溶液を固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、エタノール洗い出し溶液は、約20mMのトリス、pH9を含む。一部の実施形態では、エタノール洗い出し溶液のカラム固定相への適用は、8~12CV(たとえば約10CV)の、約20mMのトリス、pH9を含む溶液を、AEX固定相に適用することを含む。一部の実施形態では、エタノール洗い出し溶液のAEX固定相への適用は、8~12CV(たとえば約10CV)の、約20mMのトリス、pH9を含む溶液を、AEX固定相に、100~1000cm/時(たとえば約600cm/時)の速度および/または1~10分/CV(たとえば約1.5分/CV)の滞留時間で適用することを含む。
【0725】
均等物
前述の記述した明細書は、当業者が本開示を実施することを可能にするために十分であるとみなされる。前述の説明および例は、本開示の特定の例示的な実施形態を詳述する。しかし、前述の記述が文章上でいかに詳細にみえようと、本開示は多くの方法で実施してよく、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその任意の均等物に従って解釈されるべきであることを理解されたい。
【0726】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書中で引用したすべての参考文献、およびそれらの中に引用されている参考文献は、既に組み込まれてはいない範囲において、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている。
【0727】
例示的な実施形態
本発明は、以下の実験の実施例を参照してさらに詳述する。これらの実施例は、例示目的でのみ提供し、別段に指定しない限りは限定することを意図しない。したがって、本発明は、いかなる様式でも以下の実施例に限定されると解釈されるべきでなく、むしろ、本明細書中に提供する教示の結果として明らかとなる任意かつすべての変動を包含すると解釈されるべきである。
【実施例】
【0728】
(実施例1)
AEXクロマトグラフィーによってフルAAV9ベクターを富化するための、溶出塩のスクリーニング
溶出塩スクリーニングのためのAEXロードの調製
【0729】
HEK293細胞を懸濁培養において成長させ、3つのプラスミドを用いて形質移入して、当分野で知られている標準方法によってAAV9ベクターを生成した(Griegerら(2016)Molecular Therapy 24(2):287~297)。HEK293細胞を回収し、溶解し、凝結させ、生じた溶解物を濾過した。AAV9ベクターを清澄にした溶解物から親和性クロマトグラフィーによって精製した。親和性カラムを平衡化し、清澄にした溶解物をロードし、洗浄し、精製AAV9ベクターが溶出された。AAV9ベクター親和性プール(親和性溶出液とも呼ばれる)はpH4.4であり、伝導率は5.3mS/cmであった。親和性プールを20mMのトリス、pH9で7.6倍に希釈し、1Mのトリス塩基、pH11でpH9に調節し、0.2μmのフィルターを通して濾過した。生じた溶液はpH9であり、伝導率は1.9mS/cmであり、溶出塩スクリーニング研究のためにAEXカラム上にロードした。
【0730】
1mLのPOROS(商標)50 HQカラム上におけるAEXクロマトグラフィーによる溶出塩スクリーニング
【0731】
4つの溶出塩を、AEXクロマトグラフィー中にAAV9の空(すなわち、組換えベクターゲノムを含有しないAAVカプシド)およびフルカプシド(すなわち、組換えベクターゲノムを含有するAAVカプシド)を分離するその能力について研究した。表1と一致して、POROS(商標)50 HQカラム(0.5cmの内径、5cmの床高、1mLのカラム体積)を平衡化し、ロードし、洗浄した。50CVの勾配を0~50%のB緩衝液から展開し、次いで10CVのステップ溶出を100%のB緩衝液を用いて実施した。4つのB緩衝液を用い、20mMのトリス、500mMの塩、pH9の組成であった。塩は、NaCl、酢酸Na、酢酸NH4、またはNa2SO4のうちの1つであった。
【0732】
【0733】
溶出ピークの形状およびA
260/A
280比に対する溶出塩の影響を、
図1のクロマトグラムによって示す。A
260/A
280比は、組換えベクターゲノムを含有するAAVカプシドの百分率(%フル)の推定を提供し、より高い比はより高い%フルを示す(Sommerら、Molecular Therapy(2003)7(1):122~128)。NaClによる溶出は、高いA
260/A
280を有する主ピーク(フルベクターを示す)および低いA
260/A
280を有する近くに連結された肩(空カプシドを示す)をもたらした。酢酸Naおよび酢酸NH
4による溶出は、高いA
260/A
280を有する主ピークおよび低いA
260/A
280を有する2つの分離したピークを生じた。これらの結果は、酢酸Naおよび酢酸NH
4が、NaClよりも良好に、空カプシドをAAV9ベクターから分離したことを示す。逆に、Na
2SO
4は、AAV9材料を、中等度のA
260/A
280を有する1つの鋭いピークで溶出させ、AAV9ベクターの空カプシドからの分離がわずかであったことを暗示している。
【0734】
1ミリリットルの溶出液画分を勾配全体にわたって収集し、0.15mLの50mMのシトレート、pH3.6で中和した。中和した画分をHPLC-SEC A
260/A
280によって分析した。HPLC-SEC方法中、吸光度を214、260、および280nmでモニタリングした。A
260/A
280比は、AAVカプシドの%フルの推定を提供する(Sommerら、Molecular Therapy(2003)7(1):122~128)。260および280nmでのAAV9のシグネチャSEC溶出ピークを積分し、これら2つの値比を、
図2に示すようにSEC A
260/A
280として報告する。酢酸Na勾配が、最大SEC A
260/A
280が1.27である溶出画分を生じ、これは、NaCl(1.23)、酢酸NH
4(1.22)、およびNa
2SO
4(1.15)の類似の最大値よりも高い。さらに、酢酸Naに基づく溶出は、SEC A
260/A
280≧1.19を有する7個の連続する溶出液画分を生じ、これは、NaCl(3個の画分)、酢酸NH
4(4個の画分)、およびNa
2SO
4(0個の画分)の類似の結果よりも高い。SEC A
260/A
280≧1.19を有する画分を一緒にプールし、ITRのqPCRによってアッセイしてベクターゲノム(VG)収率を決定し、分析用超遠心分離(AUC)によって分析して、空、フル、ならびに中間体(フルカプシドよりもパッケージングされた核酸が少なく、たとえば、部分的、断片化、または切断ベクターゲノムおよび/または非導入遺伝子関連DNAを含有するAAVカプシド)カプシドの分布を決定した。
【0735】
溶出塩スクリーニング研究により、酢酸Naが、VG収率ならびにSEC A260/A280およびAUCによって判断した回収されたAAV9ベクターの%フルに関して、NaCl、酢酸NH4、およびNa2SO4よりも優れていたことが実証された(表2)。酢酸NaのAEXプールは1.24のSEC A260/A280を有しており、これは、NaCl(プールSEC A260/A280=1.23)および酢酸NH4(SEC A260/A280=1.21)を使用して得られた類似の値よりもわずかに高く、Na2SO4プール(SEC A260/A280=1.15)よりも有意に高かった。AEXプールに対するAUC分析は、酢酸Na勾配が、NaCl勾配(約38%)よりもわずかに高い%フル(43%)、およびNa2SO4勾配(20%)よりも有意に高い%フルを生じたことを暗示している。とりわけ、酢酸Na勾配溶出は、空カプシドの百分率(%空)をAEXロード中の75%からAEXプール中n29%まで低下させた。溶出塩の性能をより良好に描写するために、NaCl、酢酸Na、および酢酸NH4を、5.1mLのPOROS(商標)50 HQカラム上において使用するために選択し、以下のセクション中に記載する。
【0736】
【0737】
5.1mLのPOROS(商標)50 HQカラム上におけるAEXクロマトグラフィーによる溶出塩スクリーニング
【0738】
溶出塩NaCl、酢酸Na、および酢酸NH4を、AEXクロマトグラフィー中にAAV9の空カプシドおよびフルベクターを分離するその能力について研究した。POROS(商標)50 HQカラム(0.66cmの内径、15cmの床高、5.1mLのカラム体積)を平衡化し、ロードし、洗浄し、NaCl、酢酸Na、または酢酸NH4勾配で溶出させた(表3)。1ミリリットルの溶出画分を勾配全体にわたって収集し、0.15mLの50mMのシトレート、pH3.6で中和し、HPLC-SEC A260/A280によって分析した。
【0739】
酢酸Naに基づく溶出は、SEC A260/A280>=1.19を有する20個の連続する画分を生じ、これは、NaCl(8個の画分)および酢酸NH4(11個の画分)の類似の結果よりも高い。SEC A260/A280≧1.19を有する画分を一緒にプールし、ITRのqPCRによってアッセイしてVG収率を決定し、分析用超遠心分離(AUC)によって分析して%フルを決定した。
【0740】
【0741】
溶出塩スクリーニング研究により、酢酸Naが、SEC A260/A280およびAUCによって判断した回収されたAAV9ベクターの%フルに関して、NaClおよび酢酸NH4よりも優れていたことが実証された(表4)。酢酸NaのAEXプールは1.26のSEC A260/A280を有しており、これは、NaCl(プールSEC A260/A280=1.24)および酢酸NH4(SEC A260/A280=1.19)を使用して得られた類似の値よりも高かった。AEXプールに対するAUC分析は、酢酸Na勾配が、NaCl勾配(39%)および酢酸NH4勾配(36%)よりもわずかに高い%フルカプシド(43%)を生じたことを暗示している。
【0742】
総合すると、1mLおよび5.1mLのカラム体積スケールで実施したAEX実行は、酢酸Naが、NaClおよび酢酸NH4よりも良好に、空カプシドをフルAAV9ベクターから分離したことを示した。したがって、AEXプロセスのさらに発展したバージョンにおいて、酢酸Naを溶出塩として用いた。
【0743】
【0744】
(実施例2)
酢酸ナトリウムステップ溶出を用いたAEXクロマトグラフィーによるフルAAV9ベクターの富化
実施例1の結果に少なくとも部分的に基づいて、AAV9空カプシドをフルベクターから分離するためのAEXクロマトグラフィーカラムの、ステップ溶出操作を研究するために、酢酸Naを選択した。親和性溶出液を実施例1に記載のように作製し、20mMのトリス、pH9および1Mのトリス塩基、pH11で希釈し、0.2μmのフィルターを通して濾過した。
【0745】
最適な酢酸Naステップ溶出条件のスクリーニング
【0746】
スクリーニング目的のために、9ステップの洗浄および溶出AEX方法を、酢酸Na濃度のステップ増加を用いて、20mMのトリス、pH9中で実施した。表5と一致して、POROS(商標)50 HQカラム(0.66cmのID×15cmのBH、5.1mLのCV)を平衡化し、ロードし、洗浄し、溶出させた。洗浄および溶出緩衝液は、FPLC系中において、A緩衝液:20mMのトリス、pH9およびB緩衝液:20mMのトリス、140mMの酢酸Na、pH9を混合することによって形成した。画分を中和し、SEC A
260/A
280、AUC、およびITRのqPCRによってアッセイした。
図3は9ステップのクロマトグラムを示し、洗浄および溶出緩衝液の酢酸Na濃度を徐々に増加させた際の、インラインA
260/A
280の明確な変化を示す。
【0747】
【0748】
【0749】
9ステップの実行からの分析結果は、酢酸Naステップ洗浄および溶出によって、空AAV9カプシドをフルAAV9ベクターから分離することができることを示す(表6)。洗浄1および2は、結合した空カプシドをAEXカラムから選択的に除去した。とりわけ、洗浄1および2は、それぞれ0.58および0.79のSEC A260/A280値、ならびにそれぞれ98%および85%の%空(AUC)を生じた。溶出画分1~4はフルAAV9ベクターが富化され、SEC A260/A280値が1.27~1.30の範囲であり、%フル(AUC)が29~53%の範囲であり、これはAEXロード中の12%のフルよりも相当高い。これらの発見に基づいて、酢酸Naに基づくステップ洗浄および溶出方法を設計し、以下に提供する。
【0750】
【0751】
ステップ酢酸Na洗浄、溶出方法によるフルAAV9ベクターの富化
【0752】
上記結果に基づいて、様々なステップ酢酸Na洗浄および溶出を用いたAEX方法を、フルAAV9ベクターカプシドを富化させるその能力について試験した。表7と一致して、POROS(商標)50 HQカラム(0.66cmのID×15cmのBH、5.1mLのCV)を平衡化し、洗浄し、溶出させた。洗浄、pH安定化、および溶出緩衝液は、FPLC系中において、A緩衝液:20mMのトリス、pH9およびB緩衝液:20mMのトリス、140mMの酢酸Na、pH9を混合することによって作製した。研究した方法にわたって、複数のパラメータ、すなわち、溶出の線速度(75~600cm/時)、ロードチャレンジ(5.1×1013~1.1×1015VG/mLの樹脂)、および洗浄ステップにおける酢酸Naの濃度(57mMまたは68mM)を変動させた。
【0753】
600cm/時の溶出、5.1×10
13VG/mLの樹脂チャレンジ、および57mMの酢酸Na洗浄を用いたステップ洗浄および溶出実行のクロマトグラムを、
図4Aおよび
図4B中に示す。表8は結果を報告し、開発したステップ酢酸Na洗浄および溶出AEX方法がフルAAV9ベクターを富化させ、宿主細胞タンパク質(HCP)レベルを低下させたことを明らかにする。開発したステップ方法は、%フル(AUCによって判断)を18%から40~53%まで増加させ、SEC A
260/A
280を0.95から1.25~1.27まで増加させた。AAV9フルカプシドを富化させることに加えて、開発したステップ方法は、大量のHCPおよび中等度の量の宿主細胞DNA(HC-DNA)を低いカラムチャレンジで除去した。ステップ酢酸Na洗浄および溶出方法は、超遠心分離または酢酸Na勾配溶出によるAEXクロマトグラフィーほど高い%VG収率またはAAV9の%フルは提供しなかった(以下の実施例6、7、および8)。しかし、ステップ溶出手法は超遠心分離に関連する複雑な操作を回避する。
【0754】
【0755】
【0756】
【0757】
(実施例3)
AEXクロマトグラフィー用のAAV9親和性溶出液を調製する方法のスクリーニング
AAV9の大スケールの下流プロセスの一実施形態は、細胞溶解、濾過、および親和性クロマトグラフィーを含み、生成物の溶出は、低いpHおよび中等度の伝導率である。様々なAAV血清型のウイルスタンパク質に関する研究は、空およびフルAAV9カプシドについてそれぞれ約6.2および約5.8の計算した等電点を報告している(Venkatakrishnanら、J.Virology(2013)87.9:4974~4984)。様々な条件のスクリーニングにより、AAV9は、比較的アルカリ性の低い伝導率環境下でのみAEX樹脂と結合することが明らかになっている(データ示さず)。したがって、酸性のAEXクロマトグラフィー用のAAV9親和性溶出液の調製は、ベクター含有緩衝液のpHを上げ、伝導率を下げることを必要とする。このプロセスはAAV9等電点を行き来し、これは、ベクターの損失をもたらす場合がある不安定な移行である。
【0758】
本実施例は、酸性の親和性プールをAEXクロマトグラフィーロード内にプロセスするための様々な手法を詳述する。希釈、インライン混合(
図5)、およびタンジェンシャルフロー濾過(TFF)のロード調製方法を研究した。結果は、高い生成物収率および低い凝集を伴ってAAV9親和性溶出液をAEXクロマトグラフィーロード内にプロセスすることは、新規および進歩的なプロセスおよび手順の専門的な開発を必要としたことを示す。
【0759】
AEXクロマトグラフィー用のAAV9親和性プールを調製するための希釈方法
【0760】
親和性溶出プールは約3.8~4.4のpH、約5.5~6.5mS/cmの伝導率を有し、7×1013~1.4×1014個のAAV9VG/mLを含む。親和性プールは、実施例1に記載のように、すなわち、プールをアルカリ性緩衝液で希釈することによって、AEXクロマトグラフィー用に調製し得る。表9と一致して、pHを上昇させて伝導率を減少させるために、AAV9親和性プールを、アルカリ性緩衝液の組合せを用いて、PETG容器内で希釈した。生じる溶液を、希釈緩衝液で事前に濡らした0.2μmのフィルターに通過した。大スケール下流プロセスを模倣するために、希釈した試料を0.2μmで濾過し、フィルターはクロマトグラフィーカラムの入口に配置した。生じた濾液は、pH8.7~9.0であり、伝導率は1.8~2.1mS/cmの範囲であり、これは、AAV9とAEX樹脂との高い結合を可能にする条件である。試料を希釈後に採り、濾過後に、ITRのqPCRによってVG力価についてアッセイした。
【0761】
表9は結果を報告し、大量のAAV9が希釈および濾過中に失われたことを明らかにする。続く20mMのトリス、pH9を用いた希釈および1Mのトリス塩基、pH11を用いたpH調節、次いで0.2μmの濾過により、39%のVG損失がもたらされた。これらの希釈剤の順序を逆にすることは同様の結果をもたらし、濾過後のベクターの損失は37%であった。より高い希釈はより大量のVG損失をもたらした。100mMのトリス、pH9を用いた25倍希釈、次いで1Mのトリス、pH9を用いたpH調節は、わずか36%の濾過後のVG収率を与えた。同じ緩衝液を用いた15倍希釈は、65%の濾過後収率を与えた。
【0762】
AAV9と希釈容器およびフィルターの表面との非特異的結合を減らすために、0.01%(v/v)ポロキサマー188(P188)を希釈緩衝液100mMのトリス、pH9に加えた。この手法は、0.01%のP188あり、およびなしで、濾過後のVG収率をそれぞれ65%から74%までわずかに増加させただけであった。これらの希釈技法は所望よりも低い%VG収率を与えたため、さらなる緩衝液交換技法を調査した。
【0763】
【0764】
【0765】
AEXクロマトグラフィー用のAAV9親和性プールを調製するためのインライン希釈
【0766】
ベクターが曝露される表面積を減らし、ベクターが前記表面に曝露される時間の量を減らす一方で、AEXロードを作製するために、AAV9親和性プールのインライン希釈を調査した。インライン希釈装置を
図5に示す。
【0767】
3片のプラチナ硬化シリコンチューブをY字コネクタによって結合した。蠕動ポンプが100mMのトリス、pH9をY字コネクタに3.5mL/分の流速で送達した。第2の蠕動ポンプがAAV9親和性プールをY字コネクタに0.25mL/分の流速で送達した。これらの流速の比(14部の希釈剤対1部の親和性プール)は、15倍希釈を達成し、同様の希釈係数との直接比較を可能にするために選択した(表9および表12)。合わせた流体は、内径0.16cmおよび長さ100cmを有するプラチナ硬化シリコンチューブを通過した。混合チューブの寸法は、これらの条件が安定した十分に混合された溶液を達成したことを示した緩衝液混合研究に基づいて設計した。
【0768】
インラインで混合した溶液を収集し、250mMのクエン酸ナトリウム、pH3.5で中和し、ITRのqPCRによって分析した。装置内にポンプしたVGの79%が混合チューブの出口で回収された。この結果はバッチ希釈実験と比較して%VG収率のわずかな改善を表したが、収率は依然として所望よりも低かった。したがって、さらなるAEXロードの調製実験をタンジェンシャルフロー濾過によって実施した。
【0769】
AEXクロマトグラフィー用のAAV9親和性プールを調製するためのタンジェンシャルフロー濾過(TFF)
【0770】
AEXロードの調製に負うVG損失を回避するために、TFFを使用して、VG濃度を高く保ち、アルギニンをベクター含有溶液内に一時的に取り込ませた。表10と一致して、2回のTFFの実行を、新しい20cm2のmPES中空繊維膜を用いて実施した。膜を平衡化し、AAV9親和性プールをロードし、AAV9親和性プールと同じ緩衝液である150mMのアセテート、100mMのグリシン、25mMのMgCl2、pH4.2に対してダイアフィルトレーションした。それぞれのステップの終わりに、TFF系を一時停止させ、濃縮水容器をサンプリングした。試料をITRのqPCRによってVG力価について分析し、結果を表9および表10に示す。
【0771】
実行#1では、親和性溶出プール類似体緩衝液から100mMのトリス、2mMのMgCl2、0.01%のP188、pH9内への直接のダイアフィルトレーションは、66%のVG収率をもたらした。実行#2では、500mMのアルギニン(タンパク質凝集を低下させることが知られている共溶媒(Arakawaら、Biophysical Chemistry(2007)127(1):1~8))をダイアフィルトレーション緩衝液2内に添加することで、アルギニンの非存在下で得られた66%の収率と比較してVG収率が93%まで改善された。しかし、実行#2における系からのアルギニンの除去は有意な損失を与え、78%のVG収率となった。500mMのアルギニンは、高い伝導率(約20mS/cm)のAEXロードを生じ、これがAEX樹脂との結合に干渉するため、最終ダイアフィルトレーション緩衝液に含めなかった。しかし、この発見は、AAV9を安定化させることができるが、アルカリ性pHでより低い溶媒伝導率を有する、他のアミノ酸共溶媒の研究を促した。これらの研究を実施例6に記載する。
【0772】
【0773】
【0774】
100mMのトリス、pH9を用いた希釈の際の、AAV9親和性プールの動的光散乱法分析
【0775】
動的光散乱法(DLS)を使用して、100mMのトリス、pH9で希釈したAAV9親和性プール中におけるZ平均(Z-AVG)をカプシド凝集の推定として測定した。Z平均は、溶液中の粒子の平均サイズの信頼性のある測度である。表11に示すように、AAV9親和性プールを、ポリプロピレンチューブ中で、100mMのトリス、pH9で希釈し(0~30倍)、DLSによって直ちに分析した。それぞれの希釈係数について、別の実験を、新しいAAV9親和性プールを用いて、新しいポリプロピレンチューブ中で実施した。DLS分析が完了した後、溶液をpHおよび伝導率について測定した。
【0776】
結果を表11に要約し、
図6にグラフで示し、AAV9親和性プールの希釈が凝集およびZ平均の増加をもたらしたことを示す。未希釈のAAV9親和性プールは、4.1のpH、6.0mS/cmの伝導率、15nmのZ平均、および凝集なしであった。100mMのトリス、pH9を用いた2倍希釈は、AAV9親和性プールと比較して、溶液のpHを7.2まで増加させ、伝導率を5.8mS/cmに維持し、凝集の5倍の増加および77nmのZ平均をもたらした。この結果は、溶液のpHを推定されるAAV9等電点((フルおよび空AAV9カプシドについてそれぞれ約5.8および約6.2であると計算(Venkatakrishnanら(2013)J.Virology 87(9):4974~4984))を通って上げることが、ベクターを不安定化させ、生成物の損失をもたらしたことを暗示している。5および10倍希釈係数は、凝集ならびにそれぞれ395nmおよび221nmの非常に高いZ平均をもたらした。15~30倍の範囲のより高い希釈係数は、46~66nmのZ平均および凝集を示した。
【0777】
総合すると、表9および表10に示す結果は、大量のAAV9ベクターがAEXロードの調製中に失われたことを明らかにした。高いVG濃度でのTFF、インライン希釈、および0.01%のP188の存在下での希釈のロード調製方法は、VG損失を防止することができなかった。表11のデータにより、VG損失の裏にある機構が凝集であったことが実証された。この観察に基づいて、凝集を防止することができる希釈剤を用いて一連の希釈実験を実施し、実施例6に記載されている。
【0778】
【0779】
(実施例4)
AEX用のAAV9親和性溶出液を調製するための希釈共溶媒のスクリーニング
AEXロードの調製中に%VG収率を最大限にした条件を同定するために、AAV9親和性溶出液を様々な希釈共溶媒で15倍に希釈した。スクリーニングした共溶媒は、界面活性剤、イオジキサノール、グリセロール、塩化マグネシウム、およびアミノ酸を含む。pHまたは伝導率を変更せずに希釈単独の効果を研究するために、AAV9親和性溶出液を、親和性溶出液プール緩衝液、すなわち、150mMのアセテート、100mMのグリシン、25mMのMgCl2、pH4.2で希釈した。14mLの希釈剤をポリプロピレンチューブに加え、次いで1mLのAAV9親和性溶出液を加えた。生じた溶液を端から端までの攪拌によって穏やかに混合し、pHおよび伝導率について測定し、濾過前の試料を採った。その後、希釈した試料を、希釈剤で事前に濡らした0.2μmのフィルターを通して濾過した。希釈後および濾過後の試料を250mMのクエン酸ナトリウム、pH3.5で中和した。中和した試料を動的光散乱法によって分析して粒子のZ-AVGおよび凝集の相対量を推定し、ITRのqPCRによって分析してVG力価を決定した。
【0780】
希釈共溶媒スクリーニングの結果は、ベースライン希釈剤100mMのトリス、pH9と比較して、一部の共溶媒が凝集を低下させ、30nm近くのZ-AVGを維持し、%VG収率を増加させたことを明らかにした(表12)。未希釈のAAV9親和性溶出プールは29nmのZ-AVGを有しており、見かけの凝集はなかった。親和性溶出液プール緩衝液を用いたAAV9親和性プールの希釈は、Z-AVGの増加なし、凝集なしであったが、69%しかないVG収率をもたらした。このデータは、凝集は親和性プールの条件で起こらなかったが(pH4.2、7mS/cm)、VG損失が増加した表面積(希釈による)との非特異的結合によって起こったことを示唆している。
【0781】
実施例3からの結果(上記)に一致して、100mMのトリス、pH9を用いたAAV9親和性プールの希釈は、Z-AVGの増加、高い凝集、および59%しかないVG収率をもたらした。0.01~1%のP188を100mMのトリス、pH9に加えることは、ベースライン緩衝液と比較して、性能を有意に改善させず、同様のZ-AVGおよび凝集を伴った。50mMのアルギニン、2mMのMgCl2、0.1%のP188、100mMのトリス、pH9を用いたAAV9親和性溶出液の希釈は、33nmのZ-AVG、凝集なし、および約80%のVG収率をもたらしたが、AAV9とAEX樹脂との結合と干渉するであろう4.5mS/cmの伝導率をもたらした。複数のヒスチジン含有希釈剤が望ましい結果を提供した。たとえば、200mMのヒスチジン、200mMのトリス、10mMのMgCl2、25%のイオジキサノール、pH8.8を用いたAAV9の希釈は、99%のVG収率をもたらした。イオジキサノールはUV活性が強く、クロマトグラフィー系におけるUV読取りと干渉するであろうため、これおよび同様の緩衝液はAEX実行において用いなかった。
【0782】
重要なことに、0.5%のP188、200mMのヒスチジン、200mMのトリス、pH8.8を用いたAAV9親和性溶出液の15倍希釈、次いで事前に濡らしたフィルターを通した濾過は、35nmのZ-AVGおよび101%のVG収率をもたらした。生じた希釈した濾過した溶液はpH8.8であり、伝導率は2.5mS/cmであり、これは、AEX樹脂と結合しやすい可能性が高い条件である。したがって、この希釈スキームを続く実施例において最適化した。
【0783】
AAV2凝集の研究は、DLSと組み合わせた希釈ストレス試験による様々な共溶媒のスクリーニングを含み、AAV2凝集が、イオン強度≧200mMの様々な塩を含有する緩衝液内への希釈によって防止されることが見出された(Fraserら、Molecular Therapy(2005)12(1):171~178)。AEXクロマトグラフィー用のAAV9を調製するための同様の手法は、イオン強度≧200mMを有する溶液がベクターとAEX樹脂との結合を低下したため、本実施例に適用可能でなかった(データ示さず)。興味深いことに、アミノ酸ヒスチジン、アルギニン、またはグリシンの希釈剤への添加はAAV2凝集を阻害しなかった(Fraserら、Molecular Therapy(2005)12(1):171~178)。
【0784】
本実施例では、MgCl2、P188、および/またはグリセロールと組み合わせた、ヒスチジン、アルギニン、およびグリシンの混合物は、AAV9凝集を低下させたが、69~80%の%VG収率しか与えなかった(表12の希釈剤結果R2、H2、H3を参照)。高い%VG収率は、ヒスチジンを界面活性剤P188およびTriton X-100と相乗作用で用いた場合にのみ達成された(表12の希釈剤結果H7およびH8を参照)。これらの結果は、AAVカプシド(たとえばAAV9)のAEXロードの調製のために高いVGを与える希釈共溶媒は、表面(たとえば希釈容器およびフィルター)との非特異的結合を低下させるために界面活性剤を含有し、AAVカプシド粒子(たとえばAAV9ベクター粒子)間の電荷相互作用および/または水素結合をモジュレートするためにヒスチジンまたは同様の部分を用いるべきであることを示す。
【0785】
【0786】
【0787】
(実施例5)
AEXクロマトグラフィー用の組換えAAV9ベクター親和性溶出液を調製するための、希釈共溶媒の最適化
AAV9ベクターの最大回収を達成するために、希釈剤中のP188の濃度、および希釈した試料の生じた伝導率を最適化した。0.01%、0.05%、0.2%、および0.5%の希釈剤P188の濃度を、2、2.5、および3mS/cmの希釈した試料の伝導率と合わせて試験した。変動する伝導率を達成するために、変動する希釈係数を用いた。希釈したAAV9ベクター親和性溶出液を、それぞれの対応する希釈剤で事前に濡らした0.2μmのフィルターに通過した。生じた濾液を導入遺伝子のqPCRによってアッセイしてVG力価を決定し、結果を表13ならびに
図7Aおよび
図7Bに示す。
図7Aおよび
図7Bに示すデータは、最大のVG収率を達成するために0.5%のP188が必要であること、およびより低い濃度(すなわち0.5%未満)のP188の使用がより低いVG収率をもたらしたことを実証している。最終伝導率(またはそれに関連して希釈係数)はどちらも、研究した範囲内で%VG収率に有意な影響を与えなかった。
【0788】
【0789】
(実施例6)
最適化された希釈およびAEXクロマトグラフィー技法によるフルAAV9の富化
実施例4および5からの上位の性能の希釈剤を実施例1からの上位の性能の溶出塩と組み合わせて、高い%VG収率でフルAAV9ベクターカプシドを富化させることができる、最適化されたAEXクロマトグラフィー方法を形成した。
【0790】
AAV9親和性溶出液を、アミノ酸および界面活性剤共溶媒を含む新規緩衝液(200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.9)で15倍に希釈し、0.2μmのフィルターで濾過した。15倍希釈は、他の方法(US2019-0002841号、US2019-0002842号、US2018-0002844号を参照)において使用した希釈よりも低く、大スケール製造においてより実施しやすく、高いVG収率をもたらす。
【0791】
生じた濾液はpH8.8であり、伝導率は2.3mS/cmであった。表14と一致して、濾液をPOROS(商標)50 HQカラム上にロードし、酢酸ナトリウム勾配によって溶出させ、CVの0.39に等しい画分を勾配溶出中に収集した。
【0792】
ロードおよびクロマトグラフィー画分を250mMのクエン酸ナトリウム、pH3.5で中和し、SEC A
260/A
280、AUC、およびITRのqPCRによってアッセイした。AEXプロセスの再現性を試験するために、第1の実行と同じ材料および方法を使用して第2の実行を実施した。第1の実行AEXクロマトグラムを
図8Aおよび
図8Bに示す。勾配溶出画分のSEC A
260/A
280を表15に提供し、最適化されたAEX方法が、ロードと比較してフルAAV9ベクターを富化させたことを示す。親和性プール(カラム上にロードした)、フロースルー画分、および溶出プール中のフル、中間体、および空カプシドの百分率を、分析用超遠心分離を使用して決定した。データを表16中に提供し、最適化されたAEX方法が、フルAAV9ベクターカプシドの百分率を富化させた一方で、高い%VG収率をもたらしたことを示す。
【0793】
【0794】
【0795】
【0796】
【0797】
AAV9親和性溶出液の希釈および濾過は93%のVG収率をもたらし、実施例3および4における結果の確証を提供した。フロースルー画分は、親和性プール出発物質からの10%のVGを含有しており、0.70のSEC A260/A280を有しており、1%のフル、14%の中間体、および85%の空のカプシド集団を有していた。この結果は、開発したAEX方法が、一部の空カプシドをカラムを通って分配し、酢酸ナトリウム勾配溶出によるさらなる富化を容易にすることを示す。
【0798】
どちらのAEX実行においても、3つの仮想溶出プール、すなわち、画分1~8からなる広範囲プール、画分2~6から構成される狭範囲プール、および画分8~13から作られる第2のピークのプールを形成した。第2のピークのプールは20%のVG収率を有しており、ほとんど空カプシドから構成されていた。広範囲プールは、53%のVG収率を含有しており、1.26の平均SEC A260/A280を有しており、47%のフルAAV9ベクターカプシドであり、したがって%フルの2.6倍の富化を表す。狭範囲溶出プールは、平均38%のVG収率を含有しており、1.28~1.29のSEC A260/A280比であり、53%フル、23%の中間体、および24%の空の平均AAV9ベクターカプシド集団であった。したがって、最適化されたAEX方法は、フルAAV9ベクターを2.9倍および枯渇された空カプシドを2.8倍に富化させた。
【0799】
狭範囲プールから得られた結果は、%フルと%VG収率との間の望ましいバランスを表していた。したがって、続く実施例の大多数において同様の結果を得るために、本発明者らは、SEC A260/A280≧1.25(狭範囲プール画分2~6で得られた1.25の最小値と同様、表16)の画分プール閾値を採用した。したがって、続く実施例中において10個のうち8個の大スケールAEX実行において、SEC A260/A280≧1.25を有する画分をプールに含め、SEC A260/A280≦1.24を有するすべての画分を排除した。
【0800】
上記データおよび戦略は、最適化されたAEX方法の強力な特徴、すなわちプール戦略の柔軟性を例示している。高分解能の勾配溶出クロマトグラフィーを、収集した画分のSEC A260/A280分析と合わせて利用することで、供給流またはプロセス操作の軽微な変化にかかわらず、回収された生成物の高い%フルが確実となる。
【0801】
組換えAAVベクターの精製、具体的には空カプシドのフルAAVベクターからの分離のために開発された他のクロマトグラフィー方法とは対照的に(US2019-0002841号、US2019-0002842号、US2018-0002844号)、開示した本方法は、より低い希釈係数、ヒスチジンを含有する希釈緩衝液、より急勾配の溶出勾配、溶出塩として酢酸Na、およびアルカリ性がより低い条件(pH9)を利用する。本明細書中に開示し、実施例1~9中に例示した方法はまた、開示した方法が、約7mS/cmの伝導率を有するAEXロードの調製を利用せず、硫安塩析を利用せず、サイズ排除クロマトグラフィーを利用しないという点で、Tomonoら(Molec.Ther.Meth.Clin.Dev.(2018)11:180~190)のものなどの他の報告されている方法と異なる。本明細書中に開示した新規および進歩的な方法は、大スケールで実施し、高い収率のVGを親和性クロマトグラフィー溶出液から生成することができる。
【0802】
最適化されたAEX方法の柔軟性およびロバスト性をさらに例示するために、実施例7では、変動する%フルベクターカプシドを有する供給流を試験した。
【0803】
(実施例7)
最適化されたAEXプロセスの性能に対する親和性溶出液中のフルカプシドの百分率の効果
最適化されたAEX方法を、フルAAV9ベクターを、変動する百分率のAAV9空カプシドを有する供給材料から富化させるその能力について試験した。手短に述べると、HEK293細胞を懸濁培養において成長させ、アデノウイルスヘルパープラスミドおよびRep2Cap9プラスミドを用いて形質移入した(導入遺伝子カセットを含むプラスミドは含めなかった)。細胞を形質移入後3日間培養し、回収し、溶解し、凝結させ、デプスフィルターを行い、絶対濾過した。親和性クロマトグラフィーを生じた濾液に対して行って、ベクターゲノムを含有しないAAV9粒子を含有する親和性プール(ヌル形質移入AAV9親和性溶出液、本明細書中でヌルカプシドと呼ぶ)を作製した。変動する百分率のフルカプシドを有するAEX出発物質を作製するために、ヌル形質移入AAV9親和性溶出液を、標準のAAV9親和性溶出液と、0%、20%、40%、60%、80%、および100%のヌルカプシドの体積比で混合した。
【0804】
混合物を200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.8で15倍に希釈し、0.2μmで濾過して、pH8.8であり、伝導率が2.6mS/cmであるAEXロードを作製した。表17と一致して、最適化されたAEX方法を、変動する百分率の、ヌルで形質移入作製したカプシドを含有する6個のロードに対して行った。6回のAEX実行のそれぞれについて、6.67mLのPOROS(商標)50 HQカラムを、1.5×1015個の総ウイルス粒子(VP)または2.2×1014個のVP/mLの樹脂を用いて均一にチャレンジした。クロマトグラフィーのロード、フロースルー、および溶出画分を250mMのクエン酸ナトリウム、pH3.5で中和し、SEC A260/A280によって分析した。
【0805】
SEC A
260/A
280データを表18および
図9に報告し、0%、20%、および40%のヌルカプシド形質移入出発物質を用いた場合に、最適化されたAEX方法がSEC A
260/A
280≧1.25を有する個々の溶出画分を生じたことを示す。0%、20%、および40%のヌルカプシドを含有するカラムロードは、それぞれ1.16、1.10、および1.01のSEC A260/A280値を有していた。最適化されたAEX方法では、これらの材料を使用して、それぞれSEC A
260/A
280≧1.25を有する6または7個の連続する溶出画分を生じた。
【0806】
60%、80%、および100%のヌルカプシドを含有するロードは、それぞれ0.90、0.77、および0.62のSEC A260/A280値を有していた。最適化されたAEX方法は、60%、80%、および100%のヌルカプシドを有する出発物質を富化させて、それぞれ1.23、1.16、および0.83の最大SEC A260/A280値を有する溶出画分を生じた。
【0807】
250Lおよび2000Lの単回使用バイオリアクター(SUB)スケールで実施したAAV9上流プロセスは、回収および親和性クロマトグラフィーの下流操作と組み合わせて、1.10±0.1(n=7)のSEC A260/A280を有するAAV9親和性溶出液を生じた。したがって、上流および下流プロセス(本明細書中に記載の最適化されたAEXプロセスを含む)は、遺伝子療法の適用に有用な%フルを有するAAV9カプシドを生じた。これらの結果に基づいて、最適化されたAEXプロセスを、続く実施例に記載のように250Lおよび2000LのSUBスケールでの製造を可能にするためにスケールアップした。
【0808】
【0809】
【0810】
【0811】
(実施例8)
フルAAV9ベクターの富化のための、最適化されたAEXプロセスのスケールアップ
250Lおよび2000Lの単回使用バイオリアクター(SUB)中で生成したAAVベクターの下流プロセスのために、フルAAV9ベクターを富化させるために最適化されたAEX方法をスケールアップした。POROS(商標)50 HQカラムは、3×10
14VG/mLの樹脂の、スケール非依存性の最大チャレンジに基づいてサイズ決定した。表19および表20は、それぞれ250Lおよび2000LのSUBプロセスについて実施した、最適化されたAEX方法を提供する。250LのSUBスケールでは、10cmの内径(ID)および16cmの床高を有する1.3LのAEXカラムを使用した。AEXプロセスは、2000LのSUBスケールで、20cmのIDおよび20.5cmの床高を有する6.4LのAEXカラムを使用して実施した。4±0.5分/CVの滞留時間は両方のスケールにわたって固定であり、250Lおよび2000LのSUBについてAEXプロセス内のすべてのステップでそれぞれ314mL/分および1.8L/分の体積流速をもたらした。これらの流速は、クロマトグラフィースキッド上のポンプおよびミキサーが生成物の溶出中に平滑な形状の線形酢酸ナトリウム勾配を形成することを可能にするための、許容される範囲内であった。両方のスケールにわたって、2000LのSUBのAEXプロセスが注入用水のフラッシュおよび使用前の浄化および再生ステップを含むことを例外として、それぞれのクロマトグラフィーステップでは、同じ緩衝液の組を同じCVの長さで使用した。
図10および
図11は、250LのSUBスケールおよび2000LのSUBスケールで実施した代表的なAEX実行のクロマトグラムを提供する。試験したすべてのスケールにわたって(様々な小スケールの実行、250Lおよび2000LのSUBスケール)、最適化されたAEXプロセスは同様のA260/A280クロマトグラフィープロファイルを生じた。
【0812】
250Lおよび2000Lのスケールのどちらにおいても、1/3のカラム体積(CV)のサイズの溶出画分を収集した。画分を250mMのクエン酸ナトリウム、pH3.5で中和し、様々な分析技法によってアッセイした。SECを実施して、A260/A280比および高いモル質量種の百分率(%HMMS)を決定した。宿主細胞タンパク質(HCP)および宿主細胞DNA(HC-DNA)の残留量は、それぞれELISAおよびqPCRによって決定した。250Lのスケールでは、qPCRを使用してITRコピー数を測定して、VGを定量した。2000Lのスケールでは、qPCRを使用して導入遺伝子のコピー数を測定して、VGを定量した。
【0813】
【0814】
【0815】
【0816】
【0817】
表21は、それぞれ250Lおよび2000LのSUBのAEXプロセスを用いて作製した溶出画分のSEC A260/A280比を提供する。このプロセスは、広い範囲のカラムチャレンジ、すなわち2.7×1012~6.8×1013VG/mLの樹脂に対してロバスト性を示した。10回のうち9回のAEX実行が、SEC A260/A280比≧1.25を有する少なくとも6個の画分を生じた。バッチ250L-1では、研究中で最も低いSEC比(0.94)を有する親和性プールを使用し、比≧1.25を有する画分を生じなかった唯一のAEX実行であった。それぞれのAEX実行について、画分5が10回うち7回の実行において最も高いSEC A260/A280比を与え、したがって、2つの異なるスケールおよび様々なVG/mLの樹脂チャレンジにわたって、クロマトグラフィーおよび画分収集操作における高い一貫性を示している。
【0818】
表22および表23は、250L-4および2000L-4のバッチのそれぞれからの個々のAEX画分の不純物プロファイル、%HMMS、およびSEC A260/A280を提供する。最適化されたAEXプロセスは、大量のHCPを親和性プールから除去した。たとえば、250L-4の親和性プールは51pgのHCP/1×109VGを含有しており、最適化されたAEXプロセスは、AEXプールを形成するために使用した溶出画分2~8においてHCPをLLOQまで除去した。2000L-4の親和性プールは331pgのHCP/1×109VGを含有しており、これは、AEXプールを形成するために使用した溶出画分2~9においてLLOQまで除去された。
【0819】
AEXプロセスは、HC-DNAレベルを有意に低下させない。AEXプロセスは、酢酸ナトリウム溶出勾配を使用して、HMMSを分離した。初期の溶出画分は、HMMSが比較的枯渇していた(たとえば、250L-4および2000L-4の実行のどちらにおいても画分1~5は<3%のHMMSを含有していた)。逆に、後期の溶出画分は、より高い相対レベルのHMMSを含有していた(たとえば、2000L-4の実行からの画分8~10は>7%のHMMSを含有していた)。
【0820】
【0821】
【0822】
【0823】
250LのAEX実行では、SEC A260/A280比に基づいて様々な画分プール閾値を使用した。250LのAEX実行、250L-1および250L-4からの画分は、それぞれSEC A260/A280≧1.22および≧1.24の時点に基づいてプールした。250LのAEX実行、250L-2、250L-3、および250L-5、ならびに2000Lの5つすべてのAEX実行からの画分は、SEC A260/A280≧1.25の時点に基づいてプールした。
【0824】
2000Lのバッチ、2000L-2、2000L-3、2000L-4、および2000L-5からの生じるAEX生成物プールは、ウイルス濾過のステップを通してプロセスした一方で、250Lのバッチおよびバッチ2000L-1はウイルス濾過しなかった。生じるAEXプールおよび/またはウイルス濾過プールを、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)および0.2μmの濾過を通してプロセスして、原薬(DS)を作製した。AEXクロマトグラフィー後のステップはどれも、AAV9の空/フル比に有意な影響を与えなかった。qPCRを親和性およびAEXプールに対して行って、AEXステップの%VG収率を決定した。原薬材料をAUCおよびSEC A260/A280によって分析して、精製AAV9ベクターの%フルを決定した。
【0825】
表24は結果を報告し、スケールアップしたAEXプロセスが、回収されたAAV9ベクターの%フルを高い収率で増加させたことを示す。スケールアップしたAEXプロセスは、AUCによって測定して、10個のうち9個の原薬バッチにおいて、ベクターの%フルを全カプシドの45~65%まで富化させ、空カプシドの量を全カプシドの≦28%まで低下させた。10回すべての実行において、AEXプロセスは、親和性プール中のSEC A260/A280比を原薬において0.94~1.25から1.24~1.32まで増加させた。250Lおよび2000Lのスケールで実施したAEXプロセスの平均%VGステップ収率は47+/-11%であった。
【0826】
【0827】
【0828】
(実施例9)
空カプシドをフルAAVベクターカプシドから分離するための超遠心分離および陽イオン交換クロマトグラフィー
AAV9ベクターの250LのSUB下流プロセスの別の実施形態では、密度勾配超遠心分離(UC)を用いて空カプシドをフルベクターから分離した。以前に記載されている方法と同様に(Griegerら、Molecular Therapy(2016)24(2):287~297)、40%および60%のイオジキサノールを含有するバンドをUCチューブ中で形成させた。25%のイオジキサノールを含有する親和性溶出液をUCチューブに加え、超遠心分離した。完全長ベクターゲノムを含有するAAVカプシドが富化された画分を、40%および60%のイオジキサノールバンドの界面から収集した。イオジキサノールを除去するために、画分を希釈し、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィーカラム上にロードした。AAV9ベクターカプシドはCEXカラムと結合し、イオジキサノールの大多数は非結合画分中でカラムを通過した。AAV9ベクターカプシドを、イオジキサノールを実質的に含まない画分中でCEXカラムから溶出させた。CEXプールを、UF/DFおよび0.2μmの濾過を通して先へとプロセスして、AAV9ベクターカプシドを含む原薬(DS)を作製した。
【0829】
表25は、UC+CEXおよび最適化されたAEX方法のプロセス性能、ならびにこれらの方法によって生成された原薬に関する生じる分析結果の比較を提供する。250Lおよび2000Lのスケールの両方で実施した最適化されたAEXプロセスは、それぞれ45±8%および50±13%の平均VG収率を提供した。これらの値は、UC+CEXプロセスによって提供された平均33±9%のVG収率よりも高かった。3つすべての方法は、SEC A260/A280(1.26~1.30)、%フル(49~55%)、および%空(20~25%)の、非常に類似した平均DS読取りを生じた。中間体カプシドの平均百分率は、250LのAEX(24±3)および250LのUC+CEX(23±4)プロセスによって生成されたDSと比較して、2000LのAEXプロセス(32±4%)によって生成されたDSにおいてわずかに高かった。
【0830】
3つの方法は、%HMMS、%純度、ならびにHCPおよびHC-DNAのレベルにおいて高い類似度を有するDSを生じた。総合すると、このデータは、250Lおよび2000LのSUBスケールで実施したAEXプロセスが、250LのUC+CEXプロセスと非常に類似したプロセス性能および生成物品質を提供したことを示す。
【0831】
【0832】
【0833】
(実施例10)
フルAAV3Bベクターの富化のための最適化されたAEXプロセス
HEK293細胞を懸濁培養において成長させ、2つのプラスミドを用いて形質移入して、当分野で知られている標準方法によってAAV3Bベクターを生成した。HEK293細胞を回収し、溶解し、凝結させ、生じた溶解物を濾過した。AAV3Bベクターを清澄にした溶解物から親和性クロマトグラフィーによって精製した。親和性カラムを平衡化し、清澄にした溶解物をロードし、洗浄し、精製AAV3Bベクターが溶出された。AAV3Bベクター親和性プール(親和性溶出液とも呼ばれる)に25mMのMgCl2を添加して、希釈した親和性プール中で約1.7mMの最終MgCl2濃度を達成した。親和性プールのpHはpH7.6であった。親和性プールを、200mMのヒスチジン、200mMのトリス、0.5%のP188、pH8.9を含む緩衝液で約15倍(実行に応じて14倍~17.8倍)に希釈した。生じた希釈した親和性溶出液は≧8.6のpHおよび≦2.5mS/cmの伝導率(標的2.3mS/cm)を有しており、AEXカラム上にロードした。
【0834】
49mLのカラム体積、10cmの床高および2.5cmの直径を有するPOROS(商標)50 HQカラムを使用した。標的カラムロードチャレンジは1×10
14~3×10
14vg/mLの樹脂(たとえば約2.4×10
14vg/mL)であった。表26は、最適化されたAEX方法の条件を提供する。2分/CVの滞留時間は、より浅い溶出勾配(以前の実施例と比較して)および比較的より小さなカラムに順応するために、AEXプロセス内のすべてのステップについて固定であった。空/フルの分離を最大限にするために、溶出勾配は以前の実施例の2.5分の1の浅さであった。空カプシドが最初に、次いでフルAAV3Bカプシドが溶出された(
図12)。本実施例では、フルAAV3Bカプシドは、配列番号15のアミノ酸(金属結合部位1~4が欠失した銅輸送ATPase2)をコードしている導入遺伝子を有するベクターゲノムを含有する。より浅い勾配およびより広範囲の溶出ピークと一致して、画分の体積は0.5CVまで増加した(0.33CVの以前の実施例と対照的)。
【0835】
【0836】
【0837】
勾配溶出は、100%の緩衝液Aから25%の緩衝液A/75%の緩衝液Bまで、37.5CVにわたって、2%の緩衝液B/CVの勾配で実行した。緩衝液Bの百分率が勾配にわたって32%~52%であるときに、合計20個の溶出画分を収集した。画分を中和し、カプシドのアルカリ性pHへの曝露を低下させるために、画分を、13.2%v/v(0.066CV)の250mMのクエン酸ナトリウム、pH3.5を事前に充填した容器内に収集した。中和した画分のpHはpH7.5~7.7の範囲であった。A260/A280≧0.98(SECによって決定)を有する第1の溶出画分を連続する溶出画分と共にプールしたが、合計11個の画分(faction)は超えない(表27)。
【0838】
【0839】
プールした画分を様々な分析技法によってアッセイした。実際のvg/mLの樹脂チャレンジは6.3E13~9.4E13の範囲であり、平均が7.4E13±1.2E13であった。SECを実施してA260/A280比を決定した。AEXプールのA260/A280は、すべての実行において、親和性プールのA260/A280と比較して増加していた(表28)。親和性プールおよびAEX溶出プールのパーセントフル、中間体、および空カプシドは、分析用超遠心分離によって決定した。11.2±2.1%の平均パーセントフルベクターを有する親和性プールは、AEXプール中で22.9±2.9%のフルまで富化されていた。同じ親和性プールは、空カプシドが79.7±2.5%からAEXプール中で67.5±3.8%まで枯渇していた。
【0840】
vg力価は導入遺伝子のQPCRによって決定した(表28)。平均%vg希釈収率は120%±12%であった。平均%vgカラム収率は47%±11%であった。
【0841】
【0842】
本実施例中に記載した方法を使用して、親和性溶出液である出発物質と比較してフルカプシドが富化されており、空カプシドが枯渇されている、精製rAAV3Bベクタープールを生成した。
【受託番号】
【0843】
GenBank NC_002077
GenBank AF063497
GenBank NC_001401
GenBank AF043303
GenBank NC_001729
GenBank AF028705.1
GenBank NC_001829
GenBank U89790
GenBank NC_006152
GenBank AF028704
GenBank AF513851
GenBank AF513852
GenBank NC_006261
GenBank AY530579
GenBank AY631965
GenBank AY631966
GenBank DQ813647
Genbank AAC03780
Genbank AAC03778
Genbank AAC03779
ATCC PTA 13274
【0844】
【配列表フリーテキスト】
【0845】
【0846】
【0847】
【0848】
【0849】
【0850】
【0851】
【配列表】
【国際調査報告】