(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】熱サイクル方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/44 20060101AFI20231114BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20231114BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20231114BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G01N1/44
G01N37/00 101
G01N35/00 B
C12M1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525617
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 US2021056686
(87)【国際公開番号】W WO2022093844
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520449345
【氏名又は名称】キヤノンバージニア, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Canon Virginia, Inc.
【住所又は居所原語表記】12000 Canon Blvd., Newport News, Virginia, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋一
(72)【発明者】
【氏名】ヘンスリー, マクスウェル
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
4B029
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB11
2G052AB16
2G052AB27
2G052DA06
2G052DA09
2G052DA26
2G052EB11
2G052EB12
2G052EB13
2G052GA28
2G052GA29
2G052HA17
2G052HA19
2G052HC17
2G052HC22
2G052HC38
2G052HC42
2G052JA07
2G052JA08
2G052JA11
2G058BB02
2G058BB09
2G058BB23
4B029AA23
4B029DD02
4B029DG10
4B029FA12
4B029FA15
(57)【要約】
本開示は、透過性ヒートシンクおよび/またはマイクロ流体カートリッジ上の1つまたは複数のチャネルを封止するための可撓性ヒートスプレッダを備える、マイクロ流体カートリッジの熱サイクルのための方法、デバイスおよびシステムに関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体カートリッジを熱サイクルするためのデバイスであって、
光吸収材が接触しているマイクロ流体カートリッジと、
前記マイクロ流体カートリッジと接触する第1のヒートシンクと、
前記第1のヒートシンクに近接する第2のヒートシンクと、
前記第1のヒートシンクに近接する1つまたは複数の光源と、
前記マイクロ流体カートリッジの温度変化を検出する温度センサとを備え、
前記マイクロ流体カートリッジを交互に加熱および冷却する、デバイス。
【請求項2】
光吸収材が光を熱に変換する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記光吸収材が前記マイクロ流体カートリッジの上または内部にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記光吸収材が、前記マイクロ流体カートリッジ以外の前記デバイスの一部分上またはその内部に含まれ、前記カートリッジを前記デバイス内に配置すると、前記材料が前記マイクロ流体カートリッジと熱的に連通する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1のヒートシンクが透過性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1のヒートシンクが熱伝導材を備える、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1のヒートシンクが、赤外線からUVの波長範囲内の光に対して透過性である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の透過性ヒートシンクが、加熱中に、前記ヒートシンクを介して前記マイクロ流体カートリッジへの光の伝送を可能にする、請求項5に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1の透過性ヒートシンクが、冷却中に、前記マイクロ流体カートリッジを冷却するための受動ヒートシンクとして機能する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第2のヒートシンクが熱伝導材を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記1つまたは複数の光源が、1つまたは複数のLEDである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1のヒートシンクによって、前記1つまたは複数の光源からの前記光を捕捉し、前記マイクロ流体カートリッジに伝送する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記温度センサと通信し、前記加熱および冷却の温度制御を提供するフィードバックおよび制御ユニットをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
1つまたは複数の赤外線センサを前記デバイスに近接してさらに備え、前記1つまたは複数のセンサが前記マイクロ流体カートリッジを観察することができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記マイクロ流体カートリッジと接触している前記第1のヒートシンクの表面と接触する、少なくとも1つの抵抗温度検出要素をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記マイクロ流体カートリッジが開放マイクロ流体チャネルを備え、前記開放マイクロ流体チャネルと前記第1のヒートシンクとの間に可撓性ヒートスプレッダが設けられる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1のヒートシンクが前記可撓性ヒートスプレッダに接触して変形させるように加圧し、その結果、前記可撓性ヒートスプレッダがマイクロ流体カートリッジに接触して、前記マイクロ流体チャネルを流体的に封止する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記光吸収材が前記透過性ヒートシンク上にある、請求項5に記載のデバイス。
【請求項19】
マイクロ流体カートリッジを熱サイクルする方法であって、
(i)熱吸収材が接触しているマイクロ流体カートリッジと、
前記マイクロ流体カートリッジと接触する第1のヒートシンクと、
前記第1のヒートシンクに近接する第2のヒートシンクと、
前記第1のヒートシンクに近接する1つまたは複数の光源と、
前記マイクロ流体カートリッジの温度変化を検出する温度センサとを備えるデバイスを提供すること、
(ii)前記1つまたは複数の光源を点灯させて、前記マイクロ流体カートリッジを加熱すること、
(iii)前記1つまたは複数の光源を消灯させて、前記マイクロ流体カートリッジを冷却すること、および
(iv) 前記熱サイクルの間中、ステップ(ii)および(iii)を連続して繰り返し行うことを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]優先権および参照による組み込み
【0002】
[0002]本出願は、2020年10月27日に出願された米国仮特許出願第63/106,254号に対する優先権を主張するものであり、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
[0003]開示の分野
【0004】
[0004]本開示は、例えば、遺伝物質の増幅を含む用途において提供されるような急速熱サイクルに関する。本開示はさらに、急速熱サイクルシステムで使用するマイクロ流体チップに関する。
【背景技術】
【0005】
[0005]背景
【0006】
[0006]PCRおよびその他の反応において、対象領域の熱勾配は、デバイスの機能にとって重要な物理的特性である。溶液全体が均一に加熱され、PCRまたは他の反応が反応槽内のあらゆる場所で同時に発生するように、全体の加熱領域勾配が非常に小さい範囲内にあることが理想的である。一定の温度は、dPCRなどのデジタル反応ではさらに重要である。これは、不均一な加熱が性能に影響を与える、またはPCR反応がカートリッジの異なる領域で行われることを制限する可能性があるためであり、qPCRなどの他の反応ではあまり問題とならない。マイクロ流体デバイスを加熱するために光学的方法を用いる場合には、非常に高速な加熱を実現することができるが、光源からカートリッジまで透明な光路を要するため、アルミニウム製ヒートシンクの適用などの従来の冷却方法の適用性は限られている。
【0007】
[0007]本出願は、一定で均一な加熱および冷却を可能にする代替手段を提供しようとするものである。
【0008】
[0008]さらに、熱サイクルを要するPCRおよびその他の反応をマイクロ流体デバイスで行う場合は、デジタルPCRを含め、通常、チャネルを封止または閉鎖することが必須要件である。良好な熱サイクル性能を得るには、マイクロチャネルを適切に閉鎖する必要がある。これを行うためには、特にカートリッジ部片を接合するための製作工程が鍵となる。このような接合の一例は、(
図1) に示すように、チャネル基板と封止基板を接合する工程である。通常、熱接合、溶剤接合、接着接合、レーザ溶着などの方法が用いられる。しかし、それぞれの方法には長所と短所があり、接合の難易度は、使用する材料に大きく依存する。PMMAなどの一部の材料は、環状オレフィンポリマー(COP) などの他のものより容易に接合することができる。マイクロ流体チャネルが十分に封止されていない場合は、剥離や気泡の発生が起こり(
図1)、チャネルで行われる反応に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0009】
[0009]したがって、本開示はまた、マイクロ流体チャネルの封止の向上を可能にする代替手段を提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0010】
[00010]本開示は、PCRなどの反応での使用を含む、熱サイクルの方法およびシステムに関する。急速なPCR/熱サイクルを実現するために、高出力LEDが光吸収材を照射して、光を熱に変換することで急速加熱を可能にする光学的方法を含む特徴の組み合わせを提供する。急速冷却には、空冷方式を用いてもよい。
【0011】
[00011]本開示のこれらおよびその他の実施形態、目的、特徴、および利点は、本開示の例示的実施形態に関する以下の詳細な説明を、添付図面および提供された特許請求の範囲と併せ読めば、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
[00012]本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する添付の図面は、本開示の様々な実施形態、目的、特徴、および利点を示す。
【0013】
【
図1】[00013]
図1は、製造時にマイクロ流体カートリッジに封じ込められた気泡を示す図である。
【0014】
【
図2】[00014]
図2は、ヒートスプレッダを用いて、マイクロ流体チャネルを封止する一実施形態を示す図である。
【0015】
【
図3】[00015]
図3は、一実施形態における構成要素の配置の概念図である。
【0016】
【
図4】[00016]
図4は、加熱および冷却中の機能性を図示する、一実施形態における構成要素の配置の概念図である。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【
図8】[00020]
図8は、一実施形態における例示的な熱サイクラーを示す図である。
【0021】
【
図9】[00021]
図9は、一実施形態における熱サイクラーの図である。
【0022】
【
図10】[00022]
図10は、一実施形態における熱サイクラーの分解図である。
【0023】
【
図11】[00023]
図11は、一実施形態における熱サイクラーの分解図である。
【0024】
【
図12】[00024]
図12は、一実施形態における、赤外線温度検知を有するマルチLEDの構成を示す図である。
【0025】
【
図13】[00025]
図13は、2つの例示的な構成のサファイアキューブおよびライトガイド内の光線追跡を示す図である。
【0026】
【
図14】[00026]
図14は、一実施形態における、カートリッジのガスケットおよび真空封止システムの構成を示す図である。
【0027】
【
図15】[00027]
図15は、2段階PCR熱プロファイルのシミュレーション結果を示すグラフである。
【0028】
【
図16】[00028]
図16は、シミュレーション(高フラックス)と実験(低フラックス)条件の関係を示す結果表である。
【0029】
【
図17】[00029]
図17は、下部熱電対の経時的な加熱速度および温度の実験結果を示すグラフである。
【0030】
【
図18】[00030]
図18は、一実施形態における熱サイクラーの図に関連付けて、マイクロ流体カートリッジの端部および中央部の経時的な加熱速度および温度を示すグラフである。
【0031】
【
図19】[00031]
図19は、遷移領域上に鏡面膜を有する拡散表面のライトガイド出射面放射照度を示すグラフである。
【0032】
【
図20】[00032]
図20は、一実施形態における熱サイクルシステムの光学的均一性特性を示すグラフである。
【0033】
【
図21】[00033]
図21A~
図21Bは、中空ライトパイプの光学的均一性を、一実施形態における熱サイクルシステムと比較したグラフである。
【0034】
【
図22】[00034]
図22は、一実施形態における熱サイクルシステムの放射照度と、入力電流と、距離との関係を図示するグラフである。
【0035】
【
図23】[00035]
図23は、高速冷却を伴う低速加熱、および低速冷却を伴う高速加熱の熱モデルのブロック図である。
【0036】
【
図24】[00036]
図24は、一次元シミュレーションに用いた熱サイクルシステムの実用的実装を示す図である。
【0037】
【
図25】[00037]
図25は、熱サイクルシステムの様々な構成に対する、熱シミュレーション結果を図示するグラフである。
【0038】
【
図26】[00038]
図26は、熱サイクルシステムの様々な構成に対する、最高カートリッジ温度のシミュレーション結果を図示するグラフである。
【0039】
【
図27】[00039]
図27は、厚さ25μmの接着剤を用いた一実施形態における、熱サイクル構成の加熱プロファイルを図示する2つのグラフである。
【0040】
【
図28】[00040]
図28は、シミュレーションで求めた加熱および冷却曲線と実験結果の重ね合わせを示すグラフである。
【0041】
【
図29】[00041]
図29は、様々な加熱および冷却速度の温度と時間の関係を図示するグラフである。
【0042】
【
図30】[00042]
図30は、一実施形態における熱サイクルシステムでのカートリッジの赤外線熱画像プロット、熱サイクルにおける特定点である。
【0043】
【
図31】[00043]
図31は、一実施形態における熱サイクルシステムの加熱および冷却速度、ならびに定常温度均一性の概要を示すグラフである。
【0044】
【
図32】[00044]
図32は、一実施形態における熱サイクルシステムを用いた、完全PCR熱サイクル運転の温度と時間の関係を図示するグラフである。
【0045】
【
図33】[00045]
図33は、完全ミラー遷移を有する一実施形態の赤外線画像プロットのシミュレーション結果である。
【0046】
【
図34】[00046]
図34は、3M鏡面膜を有する一実施形態の赤外線画像プロットのシミュレーション結果である。
【0047】
【
図35】[00047]
図35は、機械加工した裸アルミニウムを有する一実施形態の赤外線画像プロットのシミュレーション結果である。
【0048】
【
図36】[00048]
図36は、一実施形態における、ヒートスプレッダ/光吸収材をマイクロ流体チップに取り付けた熱サイクラーの流体平均温度と時間の関係、および最高カートリッジ温度と時間の関係を示すシミュレーショングラフである。
【0049】
[00049]図面全体を通して、別段の記載がない限り、同一の参照番号および符号は、図示する実施形態の同様の特徴、要素、構成要素、または部分を示すために用いられる。さらに、これから図面を参照して本開示を詳細に説明するが、これは説明のための例示的な実施形態に関連して行われる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲および趣旨を逸脱することなく、説明される例示的な実施形態に対して変更および修正を加えることができることを意図する。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[00050]本開示は、いくつかの実施形態を説明しており、当業者に既知の詳細については、特許、特許出願、および他の参考文献に依拠する。したがって、本明細書において、特許、特許出願、または他の参考文献が引用される、または繰り返されるとき、それらは、記載されている提案だけでなくあらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれることを理解されたい。
【0051】
[00051]マイクロ流体チップの効率的な熱サイクルには、最適な加熱および冷却の両方、ならびにマイクロ流体チップの十分な観察を可能にする構成が必要である。透明な光路を維持し、効率的な冷却方法を提供するために、本開示は、赤外線(IR)から近紫外線(UV)の波長範囲内における、透過性のヒートシンクの使用を提供する。このようなヒートシンクはまた、マイクロ流体デバイスからの熱除去において、効率的に作動するのに十分な熱伝導率と熱容量を有する。このデバイスが、輻射熱加熱システムとあいまって、マイクロ流体デバイスの加熱と受動的冷却の両方を行うための効率的で簡略化された方法を提供する。本デバイスにおいては、透過性ヒートシンクによって、輻射熱源からの光がカートリッジに向かうための透明な光路を形成する。透過性ヒートシンクは、セラミックやアルミニウムに近い熱拡散率を有しており、効率的なヒートシンクとして用いることができる。
【0052】
[00052]したがって、本開示は、光学的に加熱されたカートリッジを受動的に冷却するための方法およびシステムを提供し、このようなデバイスの設計をより簡素化、小型化することを可能にする。このような設計はまた、加熱速度に著しい影響を及ぼすことなく熱サイクル速度を向上させる、効率的な冷却を実現する。本開示はまた、複数の光源、例えば、LED(LEDのアレイを含む)、レーザ、ランプ、および類似のものの組み合わせを可能にし、使用可能な加熱領域を増加させ、または光強度を増大させる。追加として、赤外線温度計を介して加熱領域温度を測定する効率的な手段を提供する。さらに、本開示におけるデバイスおよびシステムにより、マイクロ流体チップ全体の冷却勾配を最小限に抑えられる。
【0053】
[00053]一実施形態では、光吸収材が接触しているマイクロ流体カートリッジと、マイクロ流体カートリッジと接触する第1のヒートシンクと、第1のヒートシンクに近接する第2のヒートシンクと、第1のヒートシンクに近接する1つまたは複数の光源と、マイクロ流体カートリッジの温度変化を検出する温度センサとを備える、マイクロ流体カートリッジを熱サイクルするためのデバイスが提供され、このデバイスは、マイクロ流体カートリッジを交互に加熱および冷却する。一実施形態では、1つまたは複数の光源は、赤外線からUVの波長範囲内に光をもたらす。いくつかの実施形態では、第1のヒートシンクは透過性である。別の実施形態では、第1のヒートシンクは、赤外線からUVの波長範囲内の光に対して透過性である。その他の実施形態では、第1のヒートシンクは熱伝導材を備える。第1のヒートシンクは、任意選択的に、サファイアを含むことができる。
【0054】
[00054]別の実施形態では、光吸収材は光を熱に変換する。光吸収材は、マイクロ流体カートリッジ上または内部にあってもよいし、マイクロ流体カートリッジと熱的に連通していてもよい。光吸収材は、マイクロ流体カートリッジ以外のデバイスの一部分上またはその内部に含めることができ、カートリッジをデバイス内に配置すると、この材料がマイクロ流体カートリッジと熱的に連通する。光吸収材は、接着剤を用いて、マイクロ流体カートリッジまたはデバイス内の他の構造体に取り付けることができる。ある実施形態では、光吸収材を透過性ヒートシンクに取り付けることができる。
【0055】
[00055]さらに別の実施形態では、第1の透過性ヒートシンクは、加熱中に、ヒートシンクを介してマイクロ流体カートリッジへの光の伝送を可能にする。第1の透過性ヒートシンクは、冷却中に、マイクロ流体カートリッジを冷却するための受動ヒートシンクとして機能することができる。別の実施形態では、第2のヒートシンクは熱伝導材を備え、任意選択的に、アルミニウム製としてもよい。
【0056】
[00056]1つまたは複数の光源は、1つまたは複数のLEDであってもよい。いくつかの実施形態では、第1の透過性ヒートシンクによって1つまたは複数の光源からの光を捕捉し、マイクロ流体カートリッジに伝送する。
【0057】
[00057]別の実施形態では、デバイスは、温度センサと通信するフィードバックおよび制御ユニットをさらに備え、加熱および冷却の開始、停止、および温度制御を提供する。さらに、デバイスは、1つまたは複数のセンサがマイクロ流体カートリッジを観察することができるように、1つまたは複数の赤外線センサをデバイスに近接してさらに備えることができる。追加または代替として、少なくとも1つの抵抗温度検出要素を、マイクロ流体カートリッジと接触している第1のヒートシンクの表面と接触させて設けることができる。抵抗温度検出器は、米国公開特許出願第20120052560号に記載されている形状であってもよいし、そこに記載されている方法で用いてもよく、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
[00058]別の実施形態では、マイクロ流体カートリッジは、開放マイクロ流体チャネルを備えることができ、開放マイクロ流体チャネルと第1のヒートシンクとの間に、可撓性ヒートスプレッダが設けられる。別の実施形態では、第1のヒートシンクが可撓性ヒートスプレッダに接触して変形させるように加圧することができ、その結果、可撓性ヒートスプレッダがマイクロ流体カートリッジに接触して、マイクロ流体チャネルを流体的に封止する。
【0059】
[00059]別の実施形態では、マイクロ流体カートリッジを熱サイクルする方法が提供され、この方法は、(i)熱吸収材が接触しているマイクロ流体カートリッジと、マイクロ流体カートリッジと接触する第1のヒートシンクと、第1のヒートシンクに近接する第2のヒートシンクと、第1のヒートシンクに近接する1つまたは複数の光源と、マイクロ流体カートリッジの温度変化を検出する温度センサとを備えるデバイスを提供すること、(ii)1つまたは複数の光源を点灯させて、マイクロ流体カートリッジを加熱すること、(iii)1つまたは複数の光源を消灯させて、マイクロ流体カートリッジを冷却すること、および(iv)熱サイクルの間中、ステップ(ii)および(iii)を連続して繰り返し行うことを含む。
【0060】
[00060]
図3は、一実施形態におけるこのようなシステムまたはデバイスのモデルを示す。輻射熱光の波長範囲で高い光吸収性を有する光吸収層312は、流体槽301と直接接触して配置されており、流体槽は、マイクロ流体カートリッジであってもよいし、複数の構成要素を組み合わせて、マイクロ流体カートリッジを形成し、かつ/または定位置に保持するマイクロ流体カートリッジ組立体であってもよい。例えば、マイクロ流体カートリッジは、吸収層312、ガスケットまたは同様のものへの加圧によって閉鎖される開放ウェルまたはチャネル303を有する単層体302を用いて形成することができる。例えば、
図2は、最初は環境に開放されているウェルまたはチャネル203を有するマイクロ流体カートリッジ201を示す。ウェルまたはチャネル203に流体試料を塗布後、適切な接着手段208(例えば、液体接着剤、エポキシ樹脂、両面テープまたは同様のもの)を用いて、ヒートスプレッダ207をカートリッジ201に接着することができる。サファイアブロックなどの透過性ヒートシンク210をガスケット207に当てると、ガスケットがカートリッジ201の上面に接触するように変形し、ウェルまたはチャネル203を効果的に封止する。これにより、透過性ヒートシンク210は、ヒートスプレッダ207およびカートリッジ201と熱的に連通し、その結果、輻射熱光源209が点灯すると、光は透過性ヒートシンク210を通過して、カートリッジ201を効率的かつ均一に加熱することができる。このような実施形態は、当技術分野において見られ、本明細書(
図1)に記載の、接合面106で接合され、間にウェルまたはチャネル103を有する下蓋102と上蓋104とを備えるカートリッジ101の問題に直接的に対処する。ウェルまたはチャネル103の不適切な封止は、剥離や気泡105の形成を引き起こし、それによって、チャネル内の反応に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0061】
[00061]再び
図3を参照すると、別の実施形態では、カートリッジ体は、上下の層で形成することができ、これらの層は、互いに貼り合わされると、ウェルまたはチャネル303を囲い込む。吸収層312は、カートリッジ301の一部とすることができ、その結果、接触熱抵抗に対する典型的な懸念は無視してもよいほどになり、より低い電力要件で効率的な加熱を実現することができる。代替として、吸収層312を本明細書に記載の透過性ヒートシンク310の上に配置することも、それと熱的に連通させることもできる。吸収層312は、黒色または暗色の基板、あるいはヒートスプレッダであってもよい。いくつかの実施形態では、吸収層312は、ガスケットとして機能することもできる。透過性ヒートシンク310が輻射熱光源309とカートリッジ301との間にあるようにして、輻射熱光源309は、カートリッジ301から遠位側に位置している。加熱するには、輻射熱光源309を点灯させる。冷却するには、輻射熱光源309を消灯させて、(第1の)透過性ヒートシンク310が実質的に等温状態になることで、システム(マイクロ流体カートリッジ組立体301を含む)を受動的に冷却することができる。
図3はさらに、透過性ヒートシンク310とカートリッジ301内の流体試料との間にある材料の様々な温度点および接触熱抵抗の概要を示す。
【0062】
[00062]
図4に、別の実施形態における熱サイクルの加熱(左)および冷却(右)段階中の透過性ヒートシンク410の機能性を図示する。輻射熱光源409は、光源409からの光が、光透過性のヒートシンク410に入射する前に、反射膜または研磨面414を有するライトガイドを通過することができるように配置されている。透過性ヒートシンク410は、第2のヒートシンク415内に配置されている。ヒートシンク410の反対側の端部は、試料416と熱的に連通しており、この試料は、マイクロ流体カートリッジまたは同様のものに含まれていてもよい。加熱中は、輻射熱光源409が点灯し、光(直線矢印)がライトガイドと透過性ヒートシンク410とを通過してから、試料416に到達して加熱を行う。冷却中は、熱光源409が消灯し、透過性ヒートシンク410および第2のヒートシンク415を介して、試料416から熱(波線矢印)が放散することにより、試料416の温度が低下する。
【0063】
[00063]いくつかの実施形態では、透過性ヒートシンクは、サファイア(Al
2O
3)または他の透過性材料を用いて形成することができる。ガラスに近い、またはそれ以上の屈折率(サファイアの屈折率は1.73と高い)を有する透過性材料をヒートシンクとして用いることで、入射する輻射熱光源のライトパイプやライトガイドとして利用できるという利点がある。これにより、全内部屈折を含むいくつかの実施例では、内部屈折を介して光プロファイルを均等に分布させることが可能となり、対象領域の加熱均一性を向上させることができる。
図13は、ライトガイドとして機能する反射膜または研磨面1314を有する内面を持つ第2のヒートシンク1315内から始まり、次いで、光線が透過性ヒートシンク1310の入射面1318に入り、透過性ヒートシンクを通過して、出射面1319から出ていく光線追跡のシミュレーション結果を示す。左右のシミュレーションで異なるのは、透過性ヒートシンク1310を通して見た平面のみで、左側が前面図、右側が対角面図であり、どちらも内部屈折を介した光プロファイルの均等な分布を図示している。これにより、複数のLEDを併用することも可能になり、全放射束を単一平面にまとめることができる。これはまた、同様の熱流束範囲を維持し、電束密度を高めながら、より大きなカートリッジ領域を加熱することを可能にする。
図12は、透過性ヒートシンクを有する、複数のLEDを用いた構成を示す。いくつかの実施形態では、透過性材料(サファイアなど)は、他の光学材料と比較して高い熱拡散率を有しており、システムの効率的な冷却を可能にする。第1のヒートシンクに用いられる透過性材料の他の関連特性には、良好な強度、高い表面硬度および熱安定性を有すること、ならびに可視光から近赤外光スペクトルにおいて良好な光透過性を有することが含まれる。
【0064】
[00064]
図5A~
図5Bは、別の実施形態を示し、光吸収層512の代替構成を提供するものである。
図5Aでは、透過性ヒートシンク510は、第2のヒートシンク515内に配置されている。カートリッジ501と透過性ヒートシンク510との間に光吸収層512が配置されるように、光吸収層512がカートリッジ501に取り付けられている。いくつかの実施形態では、光吸収層512と透過性ヒートシンク510との間で物理的接触を行うことができる。その他の実施形態では、光吸収層512と透過性ヒートシンク510との間で物理的接触は行われないが、いずれの構成においても、透過性ヒートシンク510は光吸収層512と熱的に連通し、光吸収層512はカートリッジ501と熱的に連通している。
図5Bでは、光吸収層512は、代わりに透過性ヒートシンク510に取り付けられている。光吸収層512は、カートリッジ501と物理的に接触することができ、または他の実施形態では、光吸収層512とカートリッジ501との間で物理的接触は行われない。いずれの構成においても、透過性ヒートシンク510は光吸収層512と熱的に連通し、光吸収層512はカートリッジ501と熱的に連通している。
【0065】
[00065]
図6A~
図6Dは、代替構成を有するさらなる実施形態を示す。
図6Aでは、透過性ヒートシンク610は、第2のヒートシンク615の内部または間に設けられている。
図6Aに図示するように、透過性ヒートシンク610とカートリッジ601との間に単一光吸収層612を配置するように、単一光吸収層612を透過性ヒートシンク610に直接取り付けまたは接合することができる。代替として、
図6Bに示すように、透過性ヒートシンク610とカートリッジ601との間に多層光吸収層612、617を配置するように、多層光吸収層612、617を透過性ヒートシンク610に直接取り付けまたは接合することもできる。
図6A~
図6Bに示す構成のどちらにおいても、透過性ヒートシンク610、第2のヒートシンク615、および一層または多層の光吸収層612、617を備える器具またはデバイスにカートリッジ601を挿入すると、カートリッジ601が一層または多層の光吸収層612、617と直接接触するように、あるいは一層または多層の光吸収層612、617と熱的に連通するように、カートリッジ601を配置することができ、その結果、本明細書で説明する工程を用いて、カートリッジ601に加熱および冷却をもたらすことができる。
【0066】
[00066]
図6Cでは、透過性ヒートシンク610は、第2のヒートシンク615の内部または間に設けられている。透過性ヒートシンク610とカートリッジ601との間に単一光吸収層612を配置し、透過性ヒートシンク610と単一光吸収層612との間に接着剤を配置するように、接着剤608を介して、単一光吸収層612を透過性ヒートシンク610に取り付けまたは接合することができる。代替として、
図6Dに示すように、透過性ヒートシンク610とカートリッジ601との間に多層光吸収層612、617を配置し、透過性ヒートシンク610と多層光吸収層612、617の少なくとも一方との間に接着剤を配置するように、接着剤608を介して、多層光吸収層612、617を透過性ヒートシンク610に取り付けまたは接合することもできる。本開示の実施に用いられる接着剤には、液体接着剤、エポキシ樹脂、両面接着テープまたは同様のものがある。
【0067】
[00067]
図6A~
図6Bに示す各構成において、透過性ヒートシンク610、第2のヒートシンク615、および一層または多層光吸収層612、617(接着剤608の有無は問わない)を備える器具またはデバイスにカートリッジ601を挿入すると、カートリッジ601が一層または多層の光吸収層612、617と直接接触するように、および/または一層または多層の光吸収層612、617と熱的に連通するように、カートリッジ601を配置することができ、その結果、本明細書で説明する工程を用いて、カートリッジ601に加熱および冷却をもたらすことができる。同様に、透過性ヒートシンク610と、単一光吸収層612あるいは1つまたは複数の多層光吸収層612、617との間に接着剤608が用いられる場合には、透過性ヒートシンク610は、単一光吸収層612および/または多層光吸収層612、617と熱的に連通し、これらの光吸収層はカートリッジ601と直接接触および/または熱的に連通しており、その結果、本明細書で説明する工程を用いて、カートリッジ601に加熱および冷却をもたらすことができる。
【0068】
[00068]
図7A~
図7Dは、1つまたは複数の輻射熱光源709の異なる構成を示す。
図7A~
図7Dのそれぞれにおいて、一端に配置された少なくとも1つの第1の面と、遠位端に配置された第2の面とを有する透過性ヒートシンク710が設けられており、少なくとも1つの第1の面は、1つまたは複数の入射面718であり、第2の面は、出射面719である。光が入射面718から透過性ヒートシンク710に入り、透過性ヒートシンク710を通過して出射面719まで進むことができるように、少なくとも1つの入射面718のうちの少なくとも1つ、または代替としてそれぞれが、入射面718に向けられた少なくとも1つの輻射熱光源709を有する。次いで、出射面719から出る光が、透過性ヒートシンク710と熱的に連通している少なくとも1つの光吸収層とカートリッジとを加熱する。
【0069】
[00069]一実施形態では、透過性ヒートシンク710(透過性ヒートシンク710は、ライトガイドとして機能する)の入射面718および出射面719は、それぞれ、円形から円形、円形から正方形、正方形から円形、または別の二次元形状に融合された任意の二次元形状とすることができる。入射面718と出射面719の断面積は、同じでも異なっていてもよい。輻射熱光源709は、単一光源または1組の複数光源を備えることができ、そのような単一光源または1組の複数光源は、1つまたは複数の入射面718で用いることができる。別の実施形態では、入射面718および出射面719は、任意選択的に、滑らかに研磨することも、ざらつきのある拡散表面を有することもできる。入射面718および出射面719には、任意選択的に、反射防止コーティングを施すことができる。
【0070】
[00070]
図7Aは、2つの個別の入射面718と、単一の出射面719とを有する透過性ヒートシンク710を示す。入射面718と出射面719とは、2つの入射面718間の角度が180°未満の逆 「Y」 字型に配置されている。2つの入射面718はそれぞれ、入射面718に向けられた輻射熱光源709を有し、この輻射熱光源709は、単一光源であってもよいし、1組の複数光源であってもよい。
図7Bでは、透過性ヒートシンク710は、2つの個別の入射面718と、単一の出射面719とを有する。入射面718と出射面719とは、2つの入射面718間の角度が約180°の逆 「T」 字型に配置されている。このような構成において、透過性ヒートシンク710は、入射光が出射面719に向かって反射可能となるように構成された構造、例えば、各入射面718の反対側に角度の付いた面を形成する切り欠きを有することができる。2つの入射面718はそれぞれ、入射面718に向けられた輻射熱光源709を有し、この輻射熱光源709は、単一光源であってもよいし、1組の複数光源であってもよい。
図7Cと
図7Dはいずれも、少なくとも1つの入射面718が、出射面719とは異なる大きさおよび/または形状を有する構成を図示している。
図7Cでは、入射面718が出射面719よりも広い形状または大きな断面開口部を有するように図示されている。
図7Dでは、反対の構成が図示されており、入射面718が出射面719よりも小さな形状または大きな断面開口部を有するように図示されている。
【0071】
[00071]本開示におけるデバイス832の一実施形態を
図8に示す。輻射熱光源809は、光源ヒートシンク827上に位置する。輻射熱光源809の上方には、内部(すなわち中央)開口部を有する第2のヒートシンク815が設けられ、開口部の中には、透過性ヒートシンク810が配置されている。透過性ヒートシンク810は、第2のヒートシンク815と同じ長さにすることも、第2のヒートシンク815より長くすることも短くすることもでき、透過性ヒートシンク810が同一平面上になるように、または輻射熱光源809から遠位側の第2のヒートシンク815の端部を超えて延びるように配置することもできる。透過性ヒートシンク810の上にあるデバイスの上部には、ポリマー取付板820が取り付けられ、かつ/または配置されており、ポリマー取付板820上にはマイクロ流体カートリッジ801が位置し、固定板821を圧縮して、マイクロ流体カートリッジ801の透過性ヒートシンク810との熱連通および/または直接接触を保持するために、固定板821と段付きネジおよびスプリング822とで固定されている。
【0072】
[00072]
図9は、別の実施形態を示し、透過性ヒートシンク(
図10に示す)を囲い込むように互いに対向して配置可能な2つの第2のヒートシンク915を有する、本開示におけるデバイス932を図示している。輻射熱光源909は、光源ヒートシンク927上に位置する。2つの第2のヒートシンク915は、輻射熱光源909の上方に設けられ、それ同士が合体可能に配置されて、透過性ヒートシンクを配置するための内部開口部または空間を形成する。ファン926は、デバイスの急速冷却に有用となるように、第2のヒートシンク915の一方または両方に配置することができる。カートリッジ910は、カートリッジ接触板925によって透過性ヒートシンクおよび第2のヒートシンク915の上方に位置しており、カートリッジ接触板925は、任意選択的に、ポリマー取付板および固定板を備えることができ、またはカートリッジ910の透過性ヒートシンクとの直接接触または熱連通をしっかりと保持するようにその他の方法で構成することもできる。真空接続口923は、カートリッジ接触板925に真空を適用することを可能にし、カートリッジ910と、透過性ヒートシンク、接着剤、1つまたは複数の光吸収層、ガスケットなどを含み得る、熱連通に必要なその他の構成要素との間に均一な接触を提供するのに有用である。
【0073】
[00073]
図10は、
図9の分解図を示しており、第2のヒートシンク1015の一方がデバイス1032から取り外され、透過性ヒートシンク1010が見えるようになっている。透過性ヒートシンク1010は、留め具1028を用いて第2のヒートシンク1015同士を合体させると形成される内部開口部または空間に収まる。輻射熱光源1009は、光源ヒートシンク1027上に位置し、これらは2つの第2のヒートシンク1015の下方に位置する。ファン1026は、デバイスの急速冷却に有用となるように、第2のヒートシンク1015の一方または両方に配置することができる。輻射熱光源1009と透過性ヒートシンク1010との間に位置する第2のヒートシンク1015の内面には、反射膜または研磨面1014が設けられており、その結果、第2のヒートシンク1015同士を合体させると、反射膜または研磨面1014を有する内面が、輻射熱光源1009からの光を透過性ヒートシンク1010の入射面に導くライトガイドとして機能する。カートリッジ1001は、カートリッジ接触板1025によって、透過性ヒートシンク1010および第2のヒートシンク1015の上方に位置している。カートリッジ1001の下には、ガスケット1024が配置されており、このガスケット1024に、真空接続口1023を介して真空を適用することができる。真空は、ガスケット1024、カートリッジ1001、および透過性ヒートシンク1010との熱連通に必要な他の何らかの構成要素間に均一な接触を提供するのに有用であり、他の何らかの構成要素には、接着剤、1つまたは複数の光吸収層などを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガスケット1024は、光吸収層および/またはヒートスプレッダとして機能することができる。
【0074】
[00074]
図14は、カートリッジ1401のガスケットおよび真空封止システムの例示的な構成を示す。カートリッジ接触板1425は、カートリッジ1401を受け、ガスケット1424がカートリッジ接触板1425内のカートリッジ1401の下に配置される。ガスケット1424は、接着剤1408を用いて、カートリッジ接触板1425に取り付けることができる。光吸収層および/またはヒートスプレッダ1412は、マイクロ流体カートリッジとは反対側のガスケットの下面、または透過性ヒートシンク1410のいずれかに取り付けることができる。真空口1423に真空を適用して、透過性ヒートシンク1410、光吸収層および/またはヒートスプレッダ1412、ガスケット1424、およびカートリッジ1401を直接接触させて保持することができ、かつ/または熱連通を高めることができる。代替実施形態では、光吸収層および/またはヒートスプレッダ1412は、例えば、ガスケット1024が光吸収層またはヒートスプレッダとして機能できる状況においては、任意選択とすることもできるし、光吸収層および/またはヒートスプレッダ1412がカートリッジ1401と直接接触するように、別の位置に配置してもよい。透過性ヒートシンク1410からカートリッジ1401への熱連通を高めるためには、
図14の構成要素間の持続的な直接接触が望ましい場合があるが、熱連通が得られれば、そのような直接接触は不要である。
【0075】
[00075]
図11は、
図10の別の分解図であり、デバイス1132の一部を図示している。第2のヒートシンク1115の一方は、輻射熱光源1109および光源ヒートシンク1127の上に配置されている。輻射熱光源1109と透過性ヒートシンク1110の下面(入射面)との間に位置する第2のヒートシンク1115の内面には、反射膜または研磨面1114が設けられており、その結果、第2のヒートシンク1115同士を合体させると、反射膜または研磨面1114を有する内面が、輻射熱光源1109からの光を透過性ヒートシンク1110の入射面に導くライトガイドとして機能する。第2のヒートシンク1128は、留め具1128を用いて、互いに締結することができる。真空接続口1123は、カートリッジ接触板1125上にあり、ガスケットおよび/またはカートリッジの透過性ヒートシンク1110との直接接触または熱連通を可能にする。
【0076】
[00076]さらに、このシステムの1つの重要な態様は、温度測定方法と、急速加熱および冷却サイクルに起因する、対応するフィードバック制御ループとである。熱侵入を最小限に抑える方法で、カートリッジの温度を測定かつ制御する効率的な手段が重要となる。たとえば、大型の熱電対は、カートリッジと透過性ヒートシンクとの間の効率的な熱的接触を妨げる恐れがある。温度検知には、非接触方式が好ましい。しかし、ほとんどのポリマーは、典型的な赤外線温度計の範囲で不透明であり、マイクロ流体カートリッジの上部の温度は、下部の加熱ゾーンとは大きく異なることがある。
図12に示す提案したシステムにおいて、この問題は、透過性ヒートシンク1210の慎重な設計により克服されている。1つまたは複数の輻射熱源1209(例えばLED)を用いる場合、赤外線温度計(IRセンサ)1229を配置するための空洞をヒートシンクの底部に設けることができる。1つまたは複数の輻射熱源1209、透過性ヒートシンク1210、およびIRセンサ1229は、第2のヒートシンク1215に囲まれている。IRセンサ1229は、温度計として機能し、透過性ヒートシンク1210(IR範囲で透過性であるため)を通して観察することができ、性能に最も重要なカートリッジ1201の加熱領域を画像化することができる。IRセンサ1229には、可視からUVの範囲で供給される加熱光の影響を受けないように、光のIR範囲のみを通過させるフィルターが付属している。複数のIRセンサ1229を用いて、同様の方法で主要領域を監視することもできる。LED1209の追加は、総電力の増加に作用する。これにより、加熱領域もまた大きくなる。LED1209を任意の数だけ用いるように構成を拡張することができ、透過性ヒートシンク1210の形状および形態もそれに応じて変更される。本開示において、温度測定およびフィードバックを提供するのに有用となり得る制御システムには、例えば、米国公開特許出願第20120052560号に記載されているものが含まれ、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
[00077]本開示はさらに、可撓性ヒートスプレッダを用いてマイクロ流体カートリッジのチャネルを封止する、マイクロ流体カートリッジを熱サイクルするためのシステムおよび方法を提供する。
図2に示すように、可撓性材料は、マイクロ流体デバイスの開放チャネル上に配置され、可撓性材料を加圧するヒートシンクまたは他の固体加熱冷却源による接触を受けると、湾曲して開放チャネルに押し当てられ、それによって、圧力源が定位置にある限りチャネルを封止する。したがって、結果として得られる熱サイクルデバイスまたはシステムには、カートリッジと封止基板との間に接合工程を用いる必要はない。
【0078】
[00078]本明細書に提供されているような可撓性ヒートスプレッダは、本明細書に記載されているもの、または当業者に既知のものといった、あらゆる接触式の熱サイクル方法で用いることができる。したがって、可撓性ヒートスプレッダの使用は、マイクロ流体カートリッジ上のカバーやシールの接合を必要とせず、必然的に、剥離や気泡の発生などの一般的な接合関連の問題を回避する。さらに、本開示は、熱サイクルおよびカートリッジ製造の両方に対して、簡略化された工程を提供する。カートリッジの構成は、上部の封止が不要であることに基づいて簡略化でき、その結果、時間とコストを節約できる。本開示における可撓性ヒートスプレッダとしての使用に適した材料には、グラフェン、および薄膜プラスチックが含まれるが、当業者であれば、適切な代替品となり得るさらなる材料を理解するであろう。可撓性ヒートスプレッダを変形させ、チャネルを封止するための圧力を提供する、本明細書に記載のサファイアブロックなどのヒートシンクの使用は、ヒートスプレッダ全体に熱均一性をもたらすのに有用なさらなる利点も提供し、その結果、通常であればヒートスプレッダとは見なされない材料であっても使用することができる。さらに、可撓性ヒートスプレッダを使用して、任意の熱サイクルシステムで用いられるマイクロ流体カートリッジ上のチャネルを封止することができ、マイクロ流体カートリッジ方向に可撓性ヒートスプレッダを加圧維持する手段を提供する。
【0079】
[00079]実施例
【0080】
[00080]例1:実現可能性実験
【0081】
[00081]本概念の実現可能性を証明するために実験を行った。
図8は、実験的な設定を示す。サファイアキューブを入手し、一面を微細に研磨して表面拡散し、ライトキューブとして機能できるようにした。キューブの外側を反射膜で覆い、光のさらなる内部反射を促進した。次いで、キューブを熱接着剤で覆ってから、アルミニウム製のヒートシンクに設置した。アルミニウム製ヒートシンクの目的は、LED(円形)から出た光をキューブ(長方形)内に導くガイドとして機能することであった。ヒートシンクはまた、サファイアキューブの温度を熱的に安定させ、加熱および冷却中にそれを等温状態に維持するのに有用であった。最終的な設定を
図9~
図11に図示する。
【0082】
[00082]光吸収表面として機能する50umの黒色アルミニウムの蓋を有する、厚さ1mmのマイクロ流体カートリッジを製作した。カートリッジとサファイアキューブとの間の境界面に、小型の熱電対を配置した。次いで、LEDを点灯させて、カートリッジを加熱することで熱サイクルを行い、LEDを消灯させると、カートリッジはサファイアのヒートシンクを介して受動的に冷却された。LEDは9.38W/cm2で作動せず、2~4W/cm2の範囲ではるかに低い熱流束を出力していた。加熱/冷却速度および均一性の結果を、それぞれ
図17および
図18に示す。最大加熱および冷却速度は、毎秒約100°C(°C/秒)であった。60~80°C間の平均加熱および冷却速度は、それぞれ50°C/秒、35°C/秒であった。均一性は、95°Cの変性温度では±12°C前後と見られたが、55°Cのより重要な焼鈍温度では±0.1°C~2.5°Cを示し、これは好ましい目標範囲である±1°Cに近い 。
【0083】
[00083]
図16は、シミュレーション値(2段階PCR熱プロファイルのシミュレーション結果は、
図15に図示する)と比較した上記の実験結果をまとめたものである。熱流束が低い場合でも、加熱速度は大部分の方法よりも依然として著しく速く、シミュレーション条件は、最適化によって加熱速度がより速くなり得ることを示している。さらに、熱電対の物理的配置がキューブとマイクロ流体カートリッジとの間の接触熱抵抗に影響するので、熱電対の使用は理想的でなかった。前節で説明したように、非接触方式の温度測定が好ましく、加熱、冷却速度、および均一性を向上させることができる。
【0084】
[00084]例2:光学シミュレーションおよび測定
【0085】
[00085]モデル化を用いて、提案した熱サイクルシステムの熱的および光学的挙動を予測した。光学性能と処理能力の最適化に焦点を当てた段階と、最適な熱性能の決定に焦点を当てた段階の2つの異なる段階を用いた。
【0086】
[00086]光学的効果を判断するために、ライトツールズ・イルミネーション(シノプシス社製)を用いて、いくつかの提案した構成の光線追跡挙動をモデル化し、その結果を表1にまとめた。所与の電流でLEDが供給する総電力(W)をキー入力した。評価に用いた出力は、ライトガイドの出口での入射電力(W)、効率(入射電力/入力電力)、および最大放射照度に対して正規化した均一率であった。このシステムを用いて全内部反射(TIR)が達成されたこと、およびシミュレーションした反射率のいくつかの値に基づいて、入口の円形から正方形への遷移領域の反射仕上げをより高くすると、全効率が約5%向上することが明らかになった。出口の拡散仕上げは、ライトガイドキューブの出口をランベルト散乱面として定義することによって近似され、約2.5%の均一性の向上が見られた。しかし、結果は、シミュレーションの誤差またはノイズレベルの約3%に近く、実際には示されたものよりも優れた結果であった可能性を示唆するが、固有の不確実性により、これを決定することはできなかった。
図19および
図13は、遷移領域(R=0.98)上の鏡面膜に拡散表面条件(R=0.2、T=0.8)を加えた場合について、それぞれ出力放射照度プロットおよび光線経路の例示的な結果を示す。
【0087】
[00087]表1:ライトツールズを用いたシミュレーションの概要
【表1】
【0088】
[00088]最大放射照度に対して正規化したときに、サファイア版が最も効率が高く、最も均一率が低いことが光学シミュレーションにより明らかになった後、300グリットで研磨した拡散出口表面を有する、30x30x100mmのサファイアキューブを作成した。キューブは、最も高い均一性を示したシミュレーションからの構成となるよう形成し、熱サイクルシステムのアルミニウム製ヒートシンク内に設置した。CCD式ビームプロファイラ(オフィールオプティクス社製)を用いて光学的均一性を測定し、ビームゲージ(オフィールオプティクス社製)を用いてデータを評価した。結果を
図20に示すが、実験結果は、シミュレーション結果とよく相関していた。次いで、このサファイアキューブのデータを、
図21に示すように、中空のライトパイプを用いて得られた光学的均一性と比較した(A:中空ライトパイプ、B:サファイアキューブ)。サファイアキューブによる均一性は、中空ライトパイプを用いた場合に比べて著しく向上した。
【0089】
[00089]サファイアキューブを用いた熱サイクルシステムの出力放射照度もまた、フォトダイオード式パワーメータ(ニューポート2936-R、ニューポート社製)を用いて測定した。測定結果を
図22に示す。出力放射照度と均一性は、どちらも約5%以内でシミュレーション値と一致することが認められた。
【0090】
[00090]例3:熱力学シミュレーション
【0091】
[00091]システムの熱評価に焦点を当てたシミュレーションを行った。これは、ソリッドワークス・フロー・シミュレーション(ダッソー・システムズ社製)で過渡的な共役熱伝達挙動をモデル化し、シミュレーションすることによって行われた。使用した熱力学的材料特性を表2に示す。
【0092】
【0093】
[00093]モデル化は、例えば、ヒートスプレッダまたは光吸収層2307がサファイア2310と直接接触している場合や、ヒートスプレッダまたは光吸収層2307とサファイア2310との間に大きな透過性絶縁層2331がある場合など、システムにおける極端な事例に焦点を当てた。
図23に、これらの条件の図を示す。絶縁層を含む条件下では、追加された断熱材により、加熱は非常に高速であるが、冷却は低速であると予想された。ヒートスプレッダまたは光吸収層とサファイアとの間の直接接触を含む条件下では、熱がより容易にサファイアに伝わるため、冷却は非常に高速であるが、同量の入射電力に対しては、加熱は非常に低速であると予想された。したがって、条件を最適化して、所与の入力放射照度に対する最適な熱回路を決定する必要がある。
【0094】
[00094]一次元シミュレーションに用いた実用モデルを
図24に示す。入力変数は、カートリッジ(上蓋2404と下蓋2402とで構成)との間の接触抵抗(真空保持力の効果を判断するため)、ヒートスプレッダ/光吸収層2407の厚さ、および接着剤/絶縁層2408の厚さであった。
図25は、シミュレーション結果をまとめたのものである。接触抵抗が低い、または真空保持力が高いと、熱的接触が良くなるために、加熱および冷却が共に向上することが認められた。ヒートスプレッダ2507が薄くなり、熱質量が低くなったことで、他の要因に比べて速度面での利点は非常に小さくなった。性能に最も影響を与えたのは、絶縁層/接着剤2508の厚さであった。
図26は、同じ一連のシミュレーションに対する最大カートリッジ温度の結果を示す。器具上のヒートスプレッダ/光吸収層2607の存在は、加熱中のカートリッジに安定した最高温度をもたらし、100°C以上に上昇することはなかった。
【0095】
[00095]例4:熱力学的試験
【0096】
[00096]熱力学的シミュレーションにより最適な抵抗回路構造を決定後、いくつかの構成を形成して結果を確認した。
図9~
図11は、さらなる試験に用いた試作品設計を図示する。
図14は、真空保持システムの設計を示す。軟質の30~40Aデュロメータのシリコンガスケット1424は、約25~30%の圧縮永久歪みで最もよく機能することが判明した。
【0097】
[00097]ヒートスプレッダの厚さは25μmを選択し、いくつかの接着剤厚さを適用して、試作品を用いた試験を行い、シミュレーション予測を確認した。
図27に示すように、より薄い(25μm)アクリル系接着剤層、および厚さ25μmの熱分解黒鉛ヒートスプレッダ(サムスン社製)を用いた事例の加熱プロファイルは、より高いLED駆動電流を用いて試験した場合でも、加熱時間が過度に長くなっていた。これらの結果は、シミュレーション結果と一致し、薄い絶縁層では不十分であることを示した。
図33~
図36に、シミュレーションによる追加結果を示す。
図33は、完全ミラー遷移R=1での光放射照度シミュレーションの結果を示し、
図34は、遷移R=0.98上の3M鏡面膜での光放射照度シミュレーションの結果を示し、
図35は、裸アルミニウム(機械加工)R=0.90での光放射照度シミュレーションの結果を示す。
図36は、様々な光照射に対するマイクロ流体チップに取り付けたヒートスプレッダ/光吸収材のシミュレーション結果を示し、(A)流体平均温度と時間の関係、および(B)最大カートリッジ温度と時間の関係を含む。
【0098】
[00098]
図28は、厚さ188μmのアクリル系接着剤、および25μmのヒートスプレッダ(サムスン社製)を有する熱サイクラーを用いた実験の加熱プロファイル結果を示す。特注カートリッジ接触板を介して12psiの真空を適用し、薄いポリカーボネートのマイクロ流体カートリッジをサファイア上に保持した。カートリッジには20μLの脱イオン水を充填した。カートリッジ温度の監視には、高速赤外線熱電対列式センサ(オメガ#OS-PC16-2M-1V、オメガエンジニアリング社製)を特注のソフトウェアインターフェイスと共に用いた。カートリッジ表面の温度分布の監視には、赤外線カメラ(フリアーA8580 MWIR、テレダイン・フリアー社製)、およびその関連ソフトウェア(リサーチIR、テレダイン・フリアー社製)を用いた。
図28は、実験結果とシミュレーション結果(太線)をプロットしたものを示し、シミュレーション値と実験値との間にかなりの一致が見られたことが検証された。さらに、加熱および冷却時間が予測どおりに速かったことは、システム性能が良好であることを示している。
【0099】
[00099]上述したようなマイクロ流体カートリッジを熱サイクラーの試作品に搭載し、標準的なPCR温度サイクルにかけた。
図29および
図30は、熱画像システムから得られた結果を示しており、これにより、熱サイクルの様々な状態におけるカートリッジの熱均一性を客観的に比較することができた。
図29および
図30の文字識別子は、
図30の熱画像プロットと、熱サイクル中の画像を得た時点(
図29)とを関連付けるものである。いかなる状態でも、カートリッジの25x25mmの対象領域で、均一性が1.4°C(標準偏差)を超えて上昇することは観察されなかった。この結果は、より高い変性温度でも保持され、熱制御および安定性が良好であることを示した。さらに、熱制御が最も重要となるより低い焼鈍温度では、0.4°Cの均一性が可能であることが観察された。これらの結果が、同様の構造を持つ5つのカートリッジに対して繰り返された。
【0100】
[000100]
図31は、試験を行ったすべてのカートリッジ(n=5)の結果のグラフ概要を示す。結果を3サイクルで平均化し、次いで、試験を行った5つのカートリッジで再び平均化した。
図32は、試験を行ったこれらのカートリッジの一例示的事例であり、試料を40サイクルの完全PCR運転にかけたものである。完全PCR運転には、20μLの試料を使用し、95°C(変性、保持なし)と55°C(焼鈍、保持なし)の40サイクルを実施した。予熱サイクルを含めた総運転時間は4.6分であった。
図32は、本熱サイクル試作品を用いて達成した、サイクル全体にわたる温度間の迅速かつ均一な遷移を示す。
【0101】
[定義]
[000101]説明においては、開示する実施例が完全に理解されるように、具体的な詳細を記載している。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、および回路については、本開示を不要に長くすることを避けるために、詳細には説明していない。
【0102】
[000102]本明細書で用いる「遺伝物質」とは、DNAおよびRNAを含むいかなる核酸をも意味する。したがって、遺伝物質は、遺伝子、遺伝子の一部、遺伝子群、多数の遺伝子の断片、DNAまたはRNAの分子、DNAまたはRNAの複数の分子、DNAまたはRNA分子の断片、多数のDNAまたはRNA分子の断片を含むことができる。遺伝物質とは、DNAまたはRNAの小断片から生物のゲノム全体に至るまで、あらゆるものを指すことができる。
【0103】
[000103]本明細書では、ある要素または部分が、別の要素または部分「の上にある」、「に接している」、「に接続されている」、または「に結合されている」と言及される場合、それは、直接にその別の要素または部分「の上にある」、「に接している」、「に接続されている」、または「に結合されている」こともあるし、あるいは介在する要素または部分が存在することもあることを理解されたい。これに対して、ある要素が、別の要素または部分「の上に直接にある」、「に直接に接続されている」、または「に直接に結合されている」と言及される場合には、介在する要素または部分は存在しない。「および/または」という用語を用いるときには、関連して列挙されている項目があれば、そのうちの1つまたは複数のあらゆる組合せを含む。
【0104】
[000104]本明細書では、「の下(under)」、「の真下(beneath)」、「の下方(below)」、「の下側(lower)」、「の上方(above)」、「の上側(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」等の空間的に相対的な用語を、様々な図面に示すある要素または特徴の別の(1つまたは複数の)要素または特徴に対する関係を記述する際に、説明を容易にするために用いることがある。しかし、これらの空間的に相対的な用語は、図面に示す配向に加えて、使用時または動作時における装置の様々な配向をも包含することを意図するものと理解されたい。例えば、図中の装置を反転した場合には、別の要素または特徴の「下方(below)」または「真下(beneath)」と記述された要素が、それらの別の要素または特徴の「上方(above)」に配向されることになる。したがって、「の下方(below)」等の相対的な空間用語は、上および下の両方の配向を包含することができる。装置は、その他の配向にすることもでき(90度またはその他の配向に回転させることもでき)、本明細書で用いる空間的に相対的な記述語は、それに応じて解釈されるものとする。同様に、「近位(proximal)」および「遠位(distal)」という相対的な空間用語も、適用可能な場合には、入れ換えることができることもある。
【0105】
[000105]本明細書で用いる「約」という用語は、例えば、10%以内、5%以内、またはそれ未満を意味する。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することもある。
【0106】
[000106]本明細書では、第1、第2、第3等の用語を、様々な要素、構成要素、領域、部分、および/または区画を説明するために用いることがある。これらの要素、構成要素、領域、部分、および/または区画は、これらの用語によって限定されないものと理解されたい。これらの用語は、単にある要素、構成要素、領域、部分、または区画を、別の領域、部分、または区画と区別するために用いているに過ぎない。したがって、以下に論じる第1の要素、構成要素、領域、部分、または区画は、本明細書の教示を逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、部分、または区画と呼ぶこともできる。
【0107】
[000107]本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することは意図していない。本開示を説明する文脈における(中でも、添付の特許請求の範囲の文脈における)「1つの(a,an)」および「前記/その(the)」という用語ならびに類似の指示語の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、単数形および複数形の両方を含むと解釈されるものとする。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」および「含有する(containing)」という用語は、別段の言及がない限り、非限定用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるものとする。具体的には、本明細書でこれらの用語を用いるとき、記載する特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを指定するが、明示的には述べられていない1つまたは複数のその他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループが存在すること、あるいは追加されることを排除するものではない。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段の指示がない限り、単にその範囲に該当する各別個の値について個々に言及する簡略表記法として機能するよう意図するものに過ぎず、各別個の値は、それが本明細書においては個々に記載されたかのごとく本明細書に組み込まれる。例えば、10~15の範囲を開示する場合には、11、12、13および14もまた開示される。本明細書に記載する全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書に提示するあらゆる例または例示的な言葉(例えば「等の(such as)」)の使用は、単に本開示をより明確にすることを意図するものに過ぎず、別段に特許請求の範囲に記載がない限り、本開示の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、特許請求の範囲に記載のない任意の要素が、本開示の実施に必須であることを示すものではないと解釈されたい。
【0108】
[000108]本開示の方法および構成は、様々な実施形態の形で組み込むことができ、そのほんの一部が本明細書に開示されているに過ぎないことを理解されたい。それらの実施形態の変形形態は、上述の説明を読めば、当業者には明白であろう。本発明者らは、当業者がそのような変形形態を必要に応じて採用するものと想定しており、また、本開示が、本明細書に具体的に記載されたものとは別様に実施されることを意図している。したがって、本開示は、適用法により許容されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正形態および均等物を含む。さらに、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、その全ての可能な変形形態における上記要素の任意の組み合わせが、本開示に包含される。
【国際調査報告】