(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】遺伝子改変細胞の調製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20231114BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20231114BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20231114BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231114BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231114BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231114BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20231114BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N5/0783
C12N5/078
A61K35/17
A61P35/00
A61P37/04
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/867 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526655
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 US2021072242
(87)【国際公開番号】W WO2022099287
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】202011233449.4
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520370577
【氏名又は名称】シャンハイ・セルラー・バイオファーマシューティカル・グループ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チン,シチャオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャイ,リリ
(72)【発明者】
【氏名】ゴング,ジジェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,ディジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジュンフェン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,リー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ハンチン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ルイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC01
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA20
4C087ZB09
4C087ZB26
(57)【要約】
本開示は、遺伝子改変免疫細胞の調製効率を改善し、免疫細胞の質を改善するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)免疫細胞を含有する試料を提供すること、
(b)前記試料を選別して、免疫細胞が富化された第1の免疫細胞集団を得ること、
(c)前記第1の免疫細胞集団を活性化して、第2の免疫細胞集団を得ること、
(d)前記第2の免疫細胞集団を培養して、第3の免疫細胞集団を得ること、
(e)前記第3の免疫細胞集団を遺伝子改変して、第4の免疫細胞集団を得ること、および
(f)前記第4の免疫細胞集団を培養して、遺伝子改変免疫細胞を得ること
を含む、遺伝子改変免疫細胞を調製する方法。
【請求項2】
工程(c)では、前記第1の免疫細胞集団が、活性化剤によってコーティングされたマイクロビーズによって活性化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化が、約0.5:1~約5:1の範囲のマイクロビーズ対細胞比で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化剤が、抗体またはその断片、サイトカイン、組換え共刺激分子、小薬物阻害剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記活性化剤が、抗CD3および/もしくは抗CD28抗体またはその断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)では、前記活性化が、約0.5×10
6細胞/ml~約10×10
6細胞/mlの範囲の、前記第1の免疫細胞集団の密度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)では、前記選別が、前記試料を選別磁気ビーズと混合することによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記選別が、陽性選別および/または陰性選別を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記陽性選別が、抗CD4および/もしくは抗CD8抗体またはその断片を使用することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
工程(f)では、前記培養のために、前記第4の免疫細胞集団が2×10
6細胞/ml未満の密度を有する場合、灌流が行われず、前記第4の免疫細胞集団が2×10
6細胞/ml以上4×10
6細胞/ml未満の密度を有する場合、0.5V/日~1V/日の速度で灌流が行われ、前記第4の免疫細胞集団が4×10
6細胞/ml以上の密度を有する場合、1V/日~2V/日の速度で灌流が行われ、Vが、培養系の体積である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)~工程(f)が、約4日間~約5日間で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(d)が、約1.5日間~約3日間にわたって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(e)が、約0.5日間~約2.5日間にわたって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(f)が、約1日間~約3.5日間にわたって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫細胞が、T細胞またはT細胞サブセットである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程(e)では、前記遺伝子改変が、形質導入またはトランスフェクトである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程(e)では、前記遺伝子改変が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチドを前記第3の免疫細胞集団に導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程(e)では、前記遺伝子改変が、レンチウイルスベクター、ガンマ-レトロウイルスベクター、アルファ-レトロウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターによって前記第3の免疫細胞集団を形質導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
工程(e)では、前記遺伝子改変が、レンチウイルスベクターによって前記第3の免疫細胞集団を形質導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記試料が、末梢血、細胞、新鮮アフェレーシス、凍結保存アフェレーシス、単球収集物、末梢血単核細胞(PBMC)またはそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
工程(b)の前に前記試料を洗浄することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法によって調製された遺伝子改変免疫細胞。
【請求項23】
請求項22に記載の遺伝子改変免疫細胞を含む細胞調製物。
【請求項24】
請求項22に記載の遺伝子改変免疫細胞を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月6日に出願された中国特許出願第2020112334494号の優先権を主張し、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関し、具体的には、遺伝子改変細胞を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、癌の免疫療法には大きな前進が見られる。養子細胞療法としても知られる細胞免疫療法では、抗原特異的免疫応答を増強するための遺伝子改変または選択的拡大増殖のために、患者の免疫細胞が収集される。しかし、免疫細胞を調製する方法は比較的複雑である。プロセスの任意の構成要素、例えば、プロセスフロー、機器および設備ならびに試薬の不足は、最終的な細胞調製物の品質に重大な影響を及ぼす可能性があり、これにより、臨床効果に影響が及ぶ。
【0004】
従来の免疫細胞調製方法は、複雑な手順および長い期間などの欠点を有する。比較的長い期間は、培養プロセス中に細胞の過剰な分化および老化を引き起こす可能性があるだけでなく、患者の疾患進行に間接的に影響を及ぼし得る。これらはいずれも、コストを増加させ、臨床的有効性を低下させ、細胞免疫療法の臨床的必要性を満たすことを困難にする可能性がある。
【0005】
したがって、臨床使用のために免疫細胞を生成するさらに堅牢で効率的な方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、遺伝子改変免疫細胞を調製する方法を提供する。該方法は、(a)(遺伝子改変される)免疫細胞を含有する試料を提供する工程と、(b)試料を選別して、免疫細胞が富化された第1の免疫細胞集団を得る工程と、(c)第1の免疫細胞集団を活性化して、第2の免疫細胞集団を得る工程と、(d)第2の免疫細胞集団を培養して(例えば、形質導入前培養またはトランスフェクション前培養(前培養とも呼ばれる))、第3の免疫細胞集団を得る工程と、(e)第3の免疫細胞集団を遺伝子改変して(例えば、形質導入(例えば、ウイルスベクターを用いて)またはトランスフェクトして)、第4の免疫細胞集団を得る工程と、(f)第4の免疫細胞集団を培養して(例えば、形質導入後培養またはトランスフェクション後培養(後培養とも呼ばれる))、遺伝子改変免疫細胞を得る工程とを含み得る。
【0007】
工程(c)では、第1の免疫細胞集団を活性化するために、活性化ビーズ(例えば、活性化剤によってコーティングされたビーズ)が使用され得る。例えば、活性化ビーズは、活性化磁気ビーズであり得る。
【0008】
活性化ビーズは、約1μm~約10μm、約2μm~約8μm、または約4μm~約5μmの範囲の直径(または平均直径)を有するマイクロビーズであり得る。
【0009】
工程(c)では、活性化は、約0.1~約10(約0.1:1~約10:1)、約0.2~約8(約0.2:1~約8:1)、約0.5~約8(約0.5:1~約8:1)、約0.1~約8(約0.1:1~約8:1)、約0.5~約5(約0.5:1~約5:1)、約0.5~約4(約0.5:1~約4:1)、約0.5~約3(約0.5:1~約3:1)、約0.5~約2(約0.5:1~約2:1)、約0.5~約1(約0.5:1~約1:1)、約1~約8(約1:1~約8:1)、約1~約6(約1:1~約6:1)、約1~約5(約1:1~約5:1)、約1~約3(約1:1~約3:1)、約0.5~約5(約0.5:1~約5:1)、約1~約2(約1:1~約2:1)、約0.1:1、約0.2:1、約0.5:1、約0.8:1、約1:1、約1.2:1、約1.5:1、約1.8:1、約2:1、約2.5:1、約3:1、約3.5:1、約4:1、約4.5:1、または約5:1の範囲のビーズ対細胞比(数比)で行われてもよい。ビーズの数と細胞の数との比は、約0.5:1~約5:1(約0.5~5:1)、または約1:1~約5:1(約1~5:1)の範囲であり得る。
【0010】
特定の実施形態では、工程(c)では、第1の免疫細胞集団の密度は、約0.5×106~約10×106細胞/mlの範囲であり得る。
【0011】
一実施形態では、工程(c)は、第1の免疫細胞集団と活性化ビーズとを混合して混合物を形成し、混合物を期間tcにわたってインキュベートして第2の免疫細胞集団を得ることを含む。一実施形態では、tcは、約12時間~約24時間の範囲であり得る。
【0012】
工程(c)では、活性化またはインキュベーションは、約2時間~約1週間、約2時間~約6日間、約2時間~約5日間、約2時間~約4日間、約2時間~約3日間、約2時間~約2日間、約2時間~約1日間、約2時間~約20時間、約2時間~約16時間、約4時間~約5日間、約4時間~約96時間、約4時間~約48時間、約4時間~約36時間、約4時間~約24時間、約4時間~約20時間、約4時間~約16時間、約16時間~約48時間、約16時間~約40時間、約16時間~約36時間、約16時間~約24時間、約2時間、約4時間、約5時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約18時間、約20時間、約24時間、約30時間、約36時間、約40時間、約48時間、約50時間、約55時間、約60時間、約65時間、約72時間、約84時間、約96時間、約4.5日間、約5日間、約5.5日間、約6日間、約6.5日間、または約1週間にわたって行われてもよい。
【0013】
工程(e)では、遺伝子改変は、形質導入またはトランスフェクトであり得る。
【0014】
工程(e)では、遺伝子改変は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチドを第3の免疫細胞集団に導入することを含み得る。
【0015】
工程(e)では、遺伝子改変は、レンチウイルスベクター、ガンマ-レトロウイルスベクター、アルファ-レトロウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターによって第3の免疫細胞集団を形質導入することを含み得る。特定の実施形態では、遺伝子改変は、レンチウイルスベクターによって第3の免疫細胞集団を形質導入することを含み得る。
【0016】
工程(e)では、ウイルスベクターと第3の免疫細胞集団とは、混合され、期間teにわたってインキュベートされ得る。インキュベーション後に遠心分離が行われても行われなくてもよい。
【0017】
工程(f)では、培養中に、免疫細胞を培養する培養系内の免疫細胞の密度に基づいて、灌流が使用され得る。例えば、免疫細胞の密度が2×106細胞/ml未満である場合、灌流は行われない。免疫細胞の密度が2×106細胞/ml以上4×106細胞/ml未満である場合、灌流は、0.5V/日(1日当たり体積)~1V/日、0.6V/日~1V/日、0.7V/日~1V/日、0.8V/日~1V/日、0.5V/日~0.7V/日、または0.5V/日~0.8V/日の速度で行われ得、ここで、Vは、培養系の体積である。免疫細胞の密度が4×106細胞/ml以上の場合、灌流は、1V/日~2V/日、1V/日~1.3V/日、1V/日~1.5V/日、1V/日~1.8V/日、1.3V/日~2V/日、1.5V/日~2V/日、または1.8V/日~2V/日の速度で行われ得、ここで、Vは、培養系の体積である。
【0018】
一実施形態では、工程(b)は、試料を選別ビーズ(例えば、選別磁気ビーズ)と混合して混合物を形成し、混合物を期間tbにわたってインキュベートし、次いで、免疫細胞が富化された第1の免疫細胞集団を選択することを含む。特定の実施形態では、tbは、約10分~約30分、または約10分~約25分の範囲であり得る。
【0019】
工程(b)では、選別時間またはインキュベート時間は、約10分~約5時間、約10分~約4時間、約10分~約3時間、約10分~約2時間、約1分~約60分、約2分~約45分、約5分~約30分、約5分~約20分、約5分~約15分、約10分~約60分、約10分~約50分、約10分~約45分、約2分~約45分、約2分~約30分、約2分~約20分、約2分~約15分、約2分~約10分、約5分~約45分、約5分~約40分、約5分~約10分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約15分、約20分、約25分、または約30分の範囲であり得る。
【0020】
工程(b)~(f)の合計時間t(b~f)は、約4日間~約5日間の範囲であり得る。該方法の工程(b)、工程(c)、工程(d)、工程(e)および工程(f)、または該方法の全工程は、約2日間~約5日間、約3日間~約4日間、約2日間~約10日間、約2日間~約9日間、約2日間~約8日間、約2日間~約7日間、約2日間~約6日間、約2日間~約5日間、約2日間~約4日間、約3日間~約10日間、約3日間~約9日間、約3日間~約8日間、約3日間~約7日間、約3日間~約6日間、約3日間~約5日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、または約10日間で行われ得る。
【0021】
工程(d)では、前培養時間tdは、約1.5日間~約3日間、または約1.5日間~約2.5日間の範囲であり得る。工程(d)を行うための時間、または工程(d)の培養時間tdは、約0.5日間~約10日間、約2日間~約5日間、約3日間~約4日間、約2日間~約10日間、約2日間~約9日間、約2日間~約8日間、約2日間~約7日間、約2日間~約6日間、約2日間~約5日間、約2日間~約4日間、約3日間~約10日間、約3日間~約9日間、約3日間~約8日間、約3日間~約7日間、約3日間~約6日間、約3日間~約5日間、約0.5日間、約1日間、約1.5日間、約2日間、約2.5日間、約3日間、約3.5日間、約4日間、約4.5日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、または約10日間の範囲であり得る。
【0022】
工程(e)では、インキュベーション時間te(細胞をウイルスベクターまたは非ウイルスベクターなどのベクターとともにインキュベートする場合)は、約0.5日間~約2.5日間、または約1日間~約2日間の範囲であり得る。工程(e)を行うための時間、または工程(e)のインキュベーション時間te(細胞をウイルスベクターまたは非ウイルスベクターなどのベクターとともにインキュベートする場合)は、約0.5日間~約10日間、約2日間~約5日間、約3日間~約4日間、約2日間~約10日間、約2日間~約9日間、約2日間~約8日間、約2日間~約7日間、約2日間~約6日間、約2日間~約5日間、約2日間~約4日間、約3日間~約10日間、約3日間~約9日間、約3日間~約8日間、約3日間~約7日間、約3日間~約6日間、約3日間~約5日間、約0.5日間、約1日間、約1.5日間、約2日間、約2.5日間、約3日間、約3.5日間、約4日間、約4.5日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、または約10日間の範囲であり得る。
【0023】
工程(f)では、トランスフェクション/形質導入後の培養時間tfは、約1日間~約3.5日間、または約1.5日間~約3日間の範囲であり得る。工程(f)の培養時間tfは、約1日間~約3.5日間の範囲であり得る。工程(f)を行うための時間、または工程(f)の培養時間tfは、約0.5日間~約10日間、約2日間~約5日間、約3日間~約4日間、約2日間~約10日間、約2日間~約9日間、約2日間~約8日間、約2日間~約7日間、約2日間~約6日間、約2日間~約5日間、約2日間~約4日間、約3日間~約10日間、約3日間~約9日間、約3日間~約8日間、約3日間~約7日間、約3日間~約6日間、約3日間~約5日間、約0.5日間、約1日間、約1.5日間、約2日間、約2.5日間、約3日間、約3.5日間、約4日間、約4.5日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、または約10日間の範囲であり得る。
【0024】
該方法の工程(f)は、培養された第4の免疫細胞集団の細胞数または細胞密度が所定の値に達した際に、培養された第4の免疫細胞集団を採取することをさらに含み得る。特定の実施形態では、所定の値は、約2×106細胞/ml~約20×106細胞/mlの範囲である。
【0025】
特定の実施形態では、工程(e)では、インキュベーション混合物を得るために、ウイルスと第3の免疫細胞集団とは、混合され(またはウイルスは、第3の免疫細胞集団に加えられ得る)、期間teにわたってインキュベートされ得る。インキュベーション混合物は、希釈されたインキュベーション混合物を得るように、培養培地によって0.5~2倍または0.75~1.5倍(体積当たり)希釈され得る。
【0026】
一実施形態では、工程(e)では、(希釈された)インキュベーション混合物は、約0.5日間~約1.5日間インキュベートされ、次いで、(例えば、Xuri Waveなどのバイオリアクター内で)細胞培養培地に接種され、約1日間~約7日間培養される。
【0027】
工程(e)では、遺伝子改変(例えば、形質導入またはトランスフェクト)、インキュベーションまたは培養のための時間は、約0.5日間~約10日間、約2日間~約5日間、約3日間~約4日間、約2日間~約10日間、約2日間~約9日間、約2日間~約8日間、約2日間~約7日間、約2日間~約6日間、約2日間~約5日間、約2日間~約4日間、約3日間~約10日間、約3日間~約9日間、約3日間~約8日間、約3日間~約7日間、約3日間~約6日間、約3日間~約5日間、約0.5日間、約1日間、約1.5日間、約2日間、約2.5日間、約3日間、約3.5日間、約4日間、約4.5日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、または約10日間の範囲であり得る。
【0028】
試料は、血液、細胞、新鮮アフェレーシス、凍結保存アフェレーシス、PBMC収集物またはそれらの組合せであり得る。試料は、例えば、対象(例えば、患者)または複数の対象由来の末梢血、免疫細胞、単球収集物または末梢血単核細胞(PBMC)であり得る。
【0029】
免疫細胞は、T細胞、T細胞サブセット(例えば、Tナイーブ、またはナイーブT細胞;Tcm、またはセントラルメモリーT細胞など)、ナチュラルキラー(NK)細胞またはそれらの組合せであり得る。
【0030】
特定の実施形態では、試料は、選別される前に洗浄される。洗浄は、洗浄液を試料に加える工程と、混合する工程と、遠心分離する工程と、上清を除去して沈殿物を得る工程とを含み得る。一実施形態では、洗浄は、Sepax 2、Sepax C-pro、Sefia、Lovo、CS 5+、CS EliteまたはProdigyから選択される機器を用いて行われる。別の実施形態では、洗浄は、Sepax C-pro機器を用いて行われる。さらに別の実施形態では、Sepax C-proの「BeadWash」プログラムが、試料の洗浄および磁気ビーズインキュベーションのために使用され、BeadWashパラメーターは、以下のうちの1つ以上を含む:
【表1】
洗浄は、約0.1%~約30%、約0.1%~約10%、約0.1%~約25%、約0.1%~約20%、約0.1%~約15%、約0.1%~約8%、約0.1%~約6%、または約0.1%~約5%のHSA最終濃度を有するヒト血清アルブミン(HSA)溶液を使用することを含み得る。
【0031】
洗浄は、約100×g~約1,000×g、約200×g~約400×g、約100×g~約800×g、約100×g~約600×g、約100×g~約500×g、約200×g~約800×g、約200×g~約600×g、または約200×g~約500×gの範囲の遠心力を使用して試料を遠心分離することを含み得る。
【0032】
洗浄は、試料を約100秒間~約600秒間、約300秒間~約400秒間、約50秒間~約1,000秒間、約100秒間~約800秒間、約100秒間~約500秒間、約200秒間~約800秒間、約200秒間~約600秒間、約200秒間~約500秒間、約300秒間~約800秒間、または約300秒間~約500秒間遠心分離することを含み得る。
【0033】
洗浄は、試料を約0倍(希釈なし)~約5倍、約1倍~約5倍、約1倍~約4倍、約1倍~約3倍、または約2倍~約3倍希釈することを含み得る。
【0034】
洗浄は、洗浄サイクルを1~5回、1~4回、1~3回、1~2回、2~5回、2~4回、または2~3回行う/繰り返すことを含み得る。
【0035】
洗浄工程は、約5ml~約400ml、約20ml~約100ml、約10ml~約300ml、約10ml~約200ml、約10ml~約100ml、約20ml~約400ml、約20ml~約300ml、約20ml~約200ml、約50ml~約400ml、約50ml~約300ml、約50ml~約200ml、または約50ml~約100mlの範囲のアウトプット体積を有し得る。
【0036】
工程(b)では、選別は、陽性選別および/または陰性選別を含み得る。
【0037】
特定の実施形態では、陽性選別のためのマーカーは、CD4、CD8、CD62L、CD3、CD56またはそれらの組合せであり得る。
【0038】
特定の実施形態では、陰性選別のためのマーカーは、CD14、CD19、CD269またはそれらの組合せであり得る。
【0039】
工程(b)では、選別は、抗CD4および/もしくは抗CD8抗体またはその断片を使用することを含み得る。一実施形態では、工程(b)では、選別は、少なくとも1つの免疫細胞表面マーカー(CD4および/またはCD8など)に特異的な結合剤を含有する選別磁気ビーズを加えることによる選別を含む。選別磁気ビーズは、免疫細胞が富化された第1の免疫細胞集団を得るように、結合剤を介して(1または複数の)免疫細胞表面マーカーに結合して選別磁気ビーズ-細胞複合体を形成する。
【0040】
一実施形態では、結合剤は、抗体またはその断片である。一実施形態では、抗体は特異的抗体である。一実施形態では、抗体は、抗CD4抗体、抗CD8抗体またはそれらの組合せである。
【0041】
一実施形態では、細胞表面マーカーは、CD4、CD8またはそれらの組合せである。
【0042】
一実施形態では、結合剤は、(1または複数の)細胞表面マーカーに特異的に結合する。
【0043】
一実施形態では、選別磁気ビーズは、抗CD4抗体および/または抗CD8抗体を含有する選別磁気ビーズである。
【0044】
一実施形態では、洗浄液は緩衝液である。
【0045】
一実施形態では、選別液は、選別磁気ビーズを含有する緩衝液である。
【0046】
一実施形態では、緩衝液は、pH6.8~7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液である。
【0047】
一実施形態では、工程(c)では、活性化磁気ビーズは、抗CD3抗体、抗CD28抗体またはそれらの組合せを含有する。
【0048】
一実施形態では、活性化磁気ビーズはDynabeads(登録商標)である。
【0049】
特定の実施形態では、工程(c)では、活性化工程について、免疫細胞の密度(例えば、第1の免疫細胞集団または第2の免疫細胞集団)は、約0.5×106細胞/ml~約10×106細胞/mlの範囲であり得る。工程(c)では、活性化は、約0.5×106細胞/ml~約10×106細胞/ml、約2×106細胞/ml~約3×106細胞/ml、約0.5×106細胞/ml~約8×106細胞/ml、約0.5×106細胞/ml~約5×106細胞/ml、約1×106細胞/ml~約8×106細胞/ml、約1×106細胞/ml~約6×106細胞/ml、約1×106細胞/ml~約5×106細胞/ml、約1×106細胞/ml~約4×106細胞/ml、約1×106細胞/ml~約3×106細胞/ml、約0.5×106細胞/ml、約1×106細胞/ml、約1.5×106細胞/ml、約2×106細胞/ml、約2.5×106細胞/ml、約3×106細胞/ml、約3.5×106細胞/ml、約4×106細胞/ml、約4.5×106細胞/ml、約5×106細胞/ml、約5.5×106細胞/ml、約6×106細胞/ml、約6.5×106細胞/ml、約7×106細胞/ml、約7.5×106細胞/ml、約8×106細胞/ml、約8.5×106細胞/ml、約9×106細胞/ml、約9.5×106細胞/ml、または約10×106細胞/mlの範囲の免疫細胞密度(例えば、第1の免疫細胞集団または第2の免疫細胞集団の密度)で行われ得る。
【0050】
特定の実施形態では、工程(e)では、形質導入/トランスフェクションは、非ウイルストランスフェクション(Neonトランスフェクション系およびMaxCyteトランスフェクション系などのエレクトロポレーション系を含む)およびウイルス形質導入(例えば、レンチウイルス系、アデノウイルス系およびアデノ随伴ウイルスベクターを使用する)であり得る。
【0051】
一実施形態では、工程(e)では、形質導入/トランスフェクション工程において、ウイルスの数と細胞の数との比は、約1:1~約10:1の範囲である。別の実施形態では、工程(e)では、ウイルスベクターが形質導入に使用され、感染多重度、すなわち、MOIは、約0~約1,000、または約1~約10である。
【0052】
一実施形態では、工程(e)では、ウイルス(ウイルスベクター)はレンチウイルス(レンチウイルスベクター)である。
【0053】
一実施形態では、遺伝子は腫瘍殺傷遺伝子(tumor-killing gene)である。
【0054】
一実施形態では、工程(f)では、培養は、Wave機器で行われる。
【0055】
一実施形態では、培養は、wave培養バッグで行われる。
【0056】
一実施形態では、wave培養バッグは、2L~10Lの容量を有する。
【0057】
一実施形態では、Waveパラメーターは以下の通りである:35~39℃の温度、0.08~0.15L/分のガス流量、4~6%のCO2、10~18rpmの揺動速度、および6~10°の揺動角。
【0058】
一実施形態では、工程(f)では、培養後、活性化ビーズは、磁気装置(例えば、CTS(商標)DynaMag(商標)Magnet)を使用して除去される。
【0059】
一実施形態では、工程(f)は、培養された第4の免疫細胞集団を濃縮することをさらに含む。濃縮は、Sepax C-pro機器を用いて行われ得る。
【0060】
一実施形態では、Sepax C-proの「CultureWash」プログラムが濃縮に使用される。「CultureWash」パラメーターは、以下のうちの1つ以上を含み得る:
【表2】
本開示は、本方法によって調製された遺伝子改変免疫細胞を提供する。
【0061】
本開示はまた、遺伝子改変免疫細胞を含む細胞調製物を提供する。
【0062】
遺伝子改変免疫細胞を含む医薬組成物も本開示に包含される。医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。
【0063】
新しいまたは好ましい技術的解決策を形成するように、本発明の上記の技術的特徴、および以下で具体的に説明される技術的特徴(実施形態など)を互いに組み合わせることができることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本開示は、遺伝子改変免疫細胞の調製効率を改善し、免疫細胞の質を改善するための方法を提供する。
【0065】
本方法は、臨床的有効性を保証する高品質の遺伝子改変免疫細胞を迅速に調製することができる。本方法は、製造されたT細胞の高い形質導入効率と、遺伝子改変免疫細胞による高い導入遺伝子発現とをもたらすことができる。
【0066】
遺伝子改変T細胞の臨床製造は、現時点では、一般に患者の末梢血単核細胞(PBMC)を得ることから始まる複雑なプロセスである。現在のプロトコルは、白血球アフェレーシス工程を特徴とする。PBMCは、多くの場合、T細胞について富化され、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターによる遺伝子改変の前に活性化される。次いで、改変されたT細胞は、治療に必要な細胞数に達するために拡大増殖され、その後、細胞は、患者への再注入の前に最終的に製剤化および/または凍結保存される。
【0067】
本開示は、遺伝子改変免疫細胞を調製する方法を提供する。該方法は、(a)(遺伝子改変される)免疫細胞を含有する試料を提供する工程と、(b)試料を選別して、免疫細胞が富化された第1の免疫細胞集団を得る工程と、(c)第1の免疫細胞集団を活性化して、第2の免疫細胞集団を得る工程と、(d)第2の免疫細胞集団を培養して(例えば、形質導入前培養またはトランスフェクション前培養(前培養とも呼ばれる))、第3の免疫細胞集団を得る工程と、(e)第3の免疫細胞集団を遺伝子改変して(例えば、形質導入(例えば、ウイルスベクターを用いて)またはトランスフェクトして)、第4の免疫細胞集団を得る工程と、(f)第4の免疫細胞集団を培養して(例えば、形質導入後培養またはトランスフェクション後培養(後培養とも呼ばれる))、遺伝子改変免疫細胞を得る工程とを含み得る。
【0068】
工程(b)では、選別工程のために、免疫細胞は、免疫細胞の表面上の1つ以上の細胞表面マーカー、例えば、マーカーCD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD27、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD95、CD127、CD137、アルファ/ベータTCR、ガンマ/デルタTCR、CCR7、PD-1およびLag3に特異的な抗原結合分子(例えば、抗体またはその断片)を使用して、磁気分離によって富化され得る。
【0069】
工程(c)では、マイクロビーズ(例えば、活性化磁気ビーズ)が活性化に使用され得る。
【0070】
活性化ビーズの数と細胞の数との比は、約0.5:1~約5:1(0.5~5:1)、または約1:1~約5:1(1~5:1)の範囲であり得る。特定の実施形態では、活性化磁気ビーズの数と細胞の数との比は、約0.1:1~約10:1、約0.2:1~約9:1、約0.3:1~約8:1、約0.4:1~約7:1、約0.5:1~約6:1、約0.6:1~約5:1、約0.1:1、約0.2:1、約0.3:1、約0.4:1、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、約0.9:1、約1:1、約1.2:1、約1.5:1、約1.8:1、約2:1、約2.5:1、約3:1、約3.5:1、約4:1、約4.5:1、約5:1、約5.5:1、約6:1、約6.5:1、約7:1、または約8:1の範囲であり得る。
【0071】
特定の実施形態では、マイクロビーズはポリマーマイクロビーズである。特定の実施形態では、マイクロビーズは磁気マイクロビーズである。特定の実施形態では、マイクロビーズは磁気ポリマーマイクロビーズである。特定の実施形態では、マイクロビーズは超常磁性ポリマーマイクロビーズである。ポリマーは、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリクオタニウム(polyquarternium)ポリマー、ポリホスファゼン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ブロックコポリマーまたはポリウレタンを含み得る。
【0072】
マイクロビーズは、約1μm~約50μm、約1μm~約40μm、約1μm~約30μm、約1μm~約20μm、約1μm~約15μm、約1μm~約12μm、約1μm~約10μm、約1μm~約8μm、約1μm~約6μm、約1μm~約5μm、約2μm~約10μm、約2μm~約8μm、約2μm~約6μm、約3μm~約10μm、約3μm~約8μm、約3μm~約6μm、約3μm~約5μm、約4μm~約5μm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約11μm、約12μm、約13μm、約14μm、約15μm、または約4.5μmの範囲の直径(または中位径もしくは平均直径)を有し得る。
【0073】
工程(c)では、細胞は、活性化免疫細胞(例えば、第2の免疫細胞集団)を得るために、活性化剤によってコーティングされたマイクロビーズによって活性化され得る。
【0074】
活性化剤は、アゴニスティック抗体、サイトカイン、組換え共刺激分子、小薬物阻害剤(small drug inhibitor)またはそれらの組合せであり得る。特定の実施形態では、活性化剤は、マイクロビーズ、微粒子、マイクロスフェアまたは微細構造に結合した抗CD3および/もしくは抗CD28抗体またはその断片である。特定の実施形態では、活性化剤は、抗CD3および/もしくは抗CD28抗体またはその断片によってコーティングされたマイクロビーズである。
【0075】
細胞の活性化は、0.2×106細胞/ml~4×106細胞/ml、0.5×106細胞/ml~2×106細胞/ml、または約1×106細胞/mlの細胞密度を使用することによって行われ得る。あるいは、活性化は、4×106細胞/ml~2×107細胞/ml、または4×106細胞/ml~1×107細胞/mlの高い細胞密度を使用することによって行われ得る。
【0076】
免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT細胞、リンパ球前駆細胞、造血幹細胞、幹細胞、マクロファージまたは樹状細胞であり得る。
【0077】
特定の実施形態では、免疫細胞は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(マウスなど)に由来する。
【0078】
特定の実施形態では、細胞は、T細胞および/またはNK細胞を含む。
【0079】
免疫細胞の遺伝子改変は、形質導入、トランスフェクションまたはエレクトロポレーションによって行われ得る。
【0080】
形質導入は、レンチウイルス、ガンマ-レトロウイルス、アルファ-レトロウイルスまたはアデノウイルスを用いて行われ得る。細胞のエレクトロポレーションまたはトランスフェクションは、部位特異的ヌクレアーゼ(ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、CRISP/R)、自己複製RNAウイルス(例えば、ウマエンセファロパチーウイルス(equine encephalopathy virus))または組込み欠損レンチウイルスベクター(integration-deficient lentiviral vector)を介して、核酸(DNA、mRNA、miRNA、antagomir、ODN)、タンパク質を細胞に導入することによって行われ得る。
【0081】
一実施形態では、免疫細胞の遺伝子改変は、レンチウイルスベクターによって細胞を形質導入することによるものであり得る。
【0082】
免疫細胞のウイルス形質導入は、形質導入エンハンサー試薬、特に、限定するものではないが、ポリカチオン性試薬(ポリブレン、硫酸プロタミン、ポリ-L-リジン、正味の正電荷を有するペプチド)、ポロキサマー、フィブロネクチンもしくは修飾フィブロネクチン(RetroNectin)などの接着分子、または抗体、抗体複合体、磁性粒子などのタンパク質標的化ドメインを含む形質導入エンハンサー試薬の使用によって増強され得る。形質導入エンハンサーは、溶液中に提供され得るか、培養チャンバー上にコーティングされ得るか、または懸濁液/溶液中に存在する担体物質上にコーティングされ得る。
【0083】
遺伝子改変免疫細胞は、それらの細胞表面上にキメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)または任意のアクセサリー分子を発現するように遺伝子改変され得る。
【0084】
特定の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞は、T細胞またはNK細胞、例えば、(i)キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)、または(ii)キメラ抗原受容体NK細胞(CAR-NK細胞)を含む。
【0085】
工程(e)では、ウイルスベクターと第3の免疫細胞集団とは、混合され、期間teにわたってインキュベートされ得る。インキュベーション後に遠心分離が行われても行われなくてもよい。
【0086】
工程(f)では、培養中に、培養系内の免疫細胞の密度に基づいて、灌流が使用され得る。例えば、免疫細胞の密度が2×106細胞/ml未満である場合、灌流は行われない。免疫細胞の密度が2×106細胞/ml以上4×106細胞/ml未満である場合、灌流は、0.5V/日(1日当たり体積)~1V/日の速度で行われ得、ここで、Vは、培養系の体積である。免疫細胞の密度が4×106細胞/ml以上である場合、灌流は、1V/日~2V/日の速度で行われ得、ここで、Vは、培養系の体積である。
【0087】
特定の実施形態では、工程(c)では、第1の免疫細胞集団の密度は、約0.5×106~約10×106細胞/mlの範囲であり得る。
【0088】
本方法は、比較的短い期間内で免疫細胞を調製することができる。
【0089】
工程(b)~(f)の合計時間、t(b~f)は、約4日間~約5日間の範囲であり得る。
【0090】
一実施形態では、工程(b)は、試料を選別磁気ビーズと混合して混合物を形成し、混合物を期間tbにわたってインキュベートし、次いで、免疫細胞が富化された第1の免疫細胞集団を選択することを含む。特定の実施形態では、tbは、約10分~約30分、または約10分~約25分の範囲であり得る。
【0091】
一実施形態では、工程(c)は、第2の免疫細胞集団を得るように、第1の免疫細胞集団と活性化磁気ビーズとを混合して混合物を形成し、混合物を期間tcにわたってインキュベートすることを含む。一実施形態では、tcは、約12時間~約24時間の範囲であり得る。
【0092】
工程(d)では、前培養時間tdは、約1.5日間~約3日間、または約1.5日間~約2.5日間の範囲であり得る。
【0093】
工程(e)では、インキュベーション時間teは、約0.5日間~約2.5日間、または約1日間~約2日間の範囲であり得る。
【0094】
工程(f)では、トランスフェクション/形質導入後の培養時間tfは、約1日間~約3.5日間、または約1.5日間~約3日間の範囲であり得る。
【0095】
該方法の工程(f)は、培養された第4の免疫細胞集団の細胞数または細胞密度が所定の値に達した際に、培養された第4の免疫細胞集団を採取することをさらに含み得る。特定の実施形態では、所定の値は、約2×106細胞/ml~約20×106細胞/mlの範囲である。
【0096】
特定の実施形態では、工程(e)では、インキュベーション混合物を得るために、ウイルスと第3の免疫細胞集団とは、混合され、期間teにわたってインキュベートされ得る。インキュベーション混合物は、希釈されたインキュベーション混合物を得るように、培養培地によって体積当たり0.5~2倍または0.75~1.5倍希釈され得る。
【0097】
一実施形態では、工程(e)では、(希釈された)インキュベーション混合物は、約0.5~約1.5日間インキュベートされ、次いで、(例えば、Xuri Waveなどのバイオリアクター内で)細胞培養培地に接種され、約1日間~約7日間培養される。
【0098】
本方法では、試料は特に限定されない。試料は、血液、細胞、新鮮アフェレーシス、凍結保存アフェレーシス、PBMC収集物またはそれらの組合せであり得る。
【0099】
免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞またはそれらの組合せであり得る。
【0100】
特定の実施形態では、試料は、選別される前に洗浄される。洗浄は、洗浄液を試料に加える工程と、混合する工程と、遠心分離する工程と、上清を除去して沈殿物を得る工程とを含み得る。一実施形態では、洗浄は、Sepax 2、Sepax C-pro、Sefia、Lovo、CS 5+、CS EliteまたはProdigy機器を用いて行われる。別の実施形態では、洗浄は、Sepax C-Pro機器を用いて行われる。Sepax C-Proは、完全に自動化された閉鎖型細胞処理システムである。Sepax C-Proは、細胞を処理して細胞療法生成物を生成するために使用され得る。Sepax C-Proをソフトウェアおよびキットと組み合わせて使用して、様々な供給源(例えば、臍帯血、骨髄、末梢血、脂肪、培養細胞など)由来の細胞の富化、分離、洗浄、濃縮、希釈および袋詰めを含むがこれらに限定されない複数の処理工程の多機能の組合せを達成することができる。
【0101】
さらに別の実施形態では、Sepax C-proの「BeadWash」プログラムが、試料の洗浄および磁気ビーズインキュベーションのために使用され、Beadwashパラメーターは、以下のうちの1つ以上を含む:
【表3】
一実施形態では、工程(b)では、選別は、陽性選別および/または陰性選別を含む。
【0102】
一実施形態では、工程(b)では、選別は、少なくとも1つの免疫細胞表面マーカー(CD4および/またはCD8など)に特異的な結合剤を含有する選別磁気ビーズによる選別を含む。選別磁気ビーズは、免疫細胞が富化された第1の免疫細胞集団を得るように、結合剤を介して(1または複数の)免疫細胞表面マーカーに結合して選別磁気ビーズ-細胞複合体を形成する。
【0103】
一実施形態では、結合剤は抗体である。一実施形態では、抗体は特異的抗体である。一実施形態では、抗体は、抗CD4抗体、抗CD8抗体またはそれらの組合せである。
【0104】
一実施形態では、細胞表面マーカーは、CD4、CD8またはそれらの組合せである。
【0105】
一実施形態では、結合剤は、(1または複数の)細胞表面マーカーに特異的に結合する。
【0106】
一実施形態では、選別磁気ビーズは、抗CD4抗体および/または抗CD8抗体を含有する。
【0107】
免疫細胞を選別/分離する工程は、陽性富化工程、すなわち、T細胞、T細胞サブセットおよび/またはT細胞前駆細胞の分離(直接磁気標識)の1つ、2つ以上、またはそれらの組合せを含み得る。T細胞は、CD4および/またはCD8に特異的な磁気ビーズなどの粒子に結合した抗原結合分子を使用することによって、CD4+および/またはCD8+T細胞について選択され得る。ナイーブT細胞およびセントラルメモリーT細胞などのT細胞の亜集団は、例えば、マーカーCD62Lを使用することによって分離され得る。
【0108】
免疫細胞を選別/分離する工程はまた、T細胞などの免疫細胞の陰性富化(非T細胞などの非免疫細胞の直接標識)、または調製物から除去される細胞サブセットの枯渇の陰性富化を含み得る。例えば、B細胞は、CD19マーカーを介して除去され得る。それぞれマーカーCD25およびCD14を使用して、制御性T細胞(CD25 high)、単球(CD14)などの阻害性細胞も同様に除去され得る。
【0109】
一実施形態では、洗浄液は緩衝液である。
【0110】
一実施形態では、選別液は、選別磁気ビーズを含有する緩衝液である。
【0111】
一実施形態では、緩衝液は、pH6.8~7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液である。
【0112】
一実施形態では、工程(c)では、活性化磁気ビーズは、CD3に特異的な活性化磁気ビーズ、CD28に特異的な活性化磁気ビーズ、またはそれらの組合せである。
【0113】
一実施形態では、活性化磁気ビーズはDynabeads(登録商標)である。
【0114】
一実施形態では、工程(c)では、第1(または第2)の免疫細胞集団の密度は、約0.5×106細胞/ml~約10×106細胞/mlの範囲である。
【0115】
一実施形態では、工程(e)では、ウイルスはレンチウイルスである。
【0116】
一実施形態では、遺伝子は腫瘍殺傷遺伝子(tumor-killing gene)である。
【0117】
一実施形態では、工程(e)では、形質導入/トランスフェクション工程において、ウイルスの数と細胞の数との比は、約1:1~約10:1の範囲である。
【0118】
一実施形態では、工程(f)では、培養は、Wave機器で行われる。
【0119】
一実施形態では、培養は、wave培養バッグで行われる。
【0120】
一実施形態では、wave培養バッグは、2L~10Lの容量を有する。
【0121】
一実施形態では、Waveパラメーターは以下の通りである:35~39℃の温度、0.08~0.15L/分のガス流量、4~6%のCO2、10~18rpmの揺動速度、および6~10°の揺動角。
【0122】
一実施形態では、工程(f)では、培養後、活性化ビーズは、磁気装置(例えば、CTS(商標)DynaMag(商標)Magnet)を使用して除去される。
【0123】
一実施形態では、工程(f)は、培養された第4の免疫細胞集団を濃縮することをさらに含む。濃縮は、Sepax C-pro機器を用いて行われ得る。
【0124】
一実施形態では、Sepax C-proの「CultureWash」プログラムが濃縮に使用される。「CultureWash」パラメーターは、以下のうちの1つ以上を含み得る:
【表4】
別の態様では、本開示は、遺伝子改変免疫細胞の実質的に純粋な組成物を提供する。特定の実施形態では、本方法は、細胞組成物または医薬組成物中の所望の免疫細胞(例えば、遺伝子改変免疫細胞)の約80%~約100%、少なくとももしくは約50%、少なくとももしくは約55%、少なくとももしくは約60%、少なくとももしくは約65%、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約75%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約85%、少なくとももしくは約90%、少なくとももしくは約91%、少なくとももしくは約92%、少なくとももしくは約93%、少なくとももしくは約94%、少なくとももしくは約95%、少なくとももしくは約96%、少なくとももしくは約97%、少なくとももしくは約98%、少なくとももしくは約99%、または約100%を生成する。
【0125】
一実施形態では、免疫細胞を含む試料は、(例えば、光学密度位相検出(optical density phase detection)を使用して)遠心分離される。過剰な赤血球が除去される。細胞は、細胞凝集を回避するために洗浄され、磁気細胞分離試薬によって磁気標識される。標識後、細胞は、洗浄され、組込み型磁気細胞選択カラムを介して磁気的に富化され、次いで、細胞培養チャンバーに戻される。
【0126】
免疫細胞は、免疫細胞(例えば、T細胞)増殖を誘導することができる活性化剤、例えば、アゴニスティック抗体(例えば、抗CD3および抗CD28)、サイトカイン(例えば、IL-1b、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-21、IL-22、IL-23、IL-35、TGF-b、IFNアルファ、IFNガンマ、TNFアルファ)、組換えタンパク質、共刺激分子、レクチン、イオノフォア、合成分子、抗原提示細胞(APC)、人工APC、フィーダーおよびそれらの組合せの1つまたは組合せによって活性化され得る。
【0127】
一実施形態では、免疫細胞を培養する期間の後、ウイルスベクターが加えられ、細胞は形質導入される。さらなる細胞培養期間の後、細胞は、再度形質導入されるか、または洗浄され、採取され(製剤化され)得る。遺伝子改変免疫細胞生成物のインビボ移入の前に、細胞は、洗浄され、濃縮され、インビボ注入のための臨床要件に適合した緩衝液に再懸濁され得る。
【0128】
一実施形態では、免疫細胞の表面に存在する細胞表面マーカーに抗体結合磁気ビーズを結合させることによって免疫細胞が標識され、標識された細胞は、磁気分離によって富化される(陽性富化)。
【0129】
別の実施形態では、免疫細胞は、T細胞または定義された細胞サブセットなどの免疫細胞の表面に存在しない細胞表面マーカーに抗体結合磁気ビーズを結合させ、磁気分離によって、標識された細胞を枯渇させることによって富化される(陰性富化)。
【0130】
さらなる実施形態では、免疫細胞の第1の富化に加えて、本方法によって得られた最終細胞組成物中の遺伝子改変免疫細胞のさらに高い割合/量を得るために、遺伝子改変免疫細胞は、遺伝子改変免疫細胞の磁気標識と、培養前または培養後の磁気分離とによって第2の富化工程で富化される。例えば、遺伝子改変細胞がCARまたはTCRを発現するT細胞である場合、第2の分離工程は、遺伝子改変T細胞の細胞表面上の組換え発現CARまたはTCRに特異的な磁性粒子に結合した抗原結合分子を使用することによって行われ得る。
【0131】
一実施形態では、免疫細胞を含む試料、例えば、患者由来の全血が提供される。細胞試料は、免疫細胞を含む他の細胞から赤血球および血小板を分離するために遠心分離され得る。免疫細胞の磁気分離は、免疫細胞のマーカー、例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD27、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD95、CD127、CD137、アルファ/ベータTCR、ガンマ/デルタTCR、CCR7、PD-1、Lag3およびそれらの組合せに特異的な磁性粒子に結合した抗体を使用することによって行われ得る。標識された細胞を磁気装置(例えば、分離カラムを有する磁石ユニット)に通過させると、免疫細胞が富化される。分離された免疫細胞は、本明細書に記載の活性化剤を使用することによって活性化される所与の密度(例えば、0.5×106細胞/ml~2×106細胞/ml)に設定され得る。次いで、活性化免疫細胞は、遺伝子改変され、例えば、CARをコードするポリヌクレオチド配列を含むレンチウイルスベクターによって形質導入される。次いで、遺伝子改変免疫細胞は、拡大増殖され得る。最後に、培養細胞は、遠心分離によって洗浄され、それによって、患者への生成された細胞組成物の注入などのその後の適用に適した緩衝液によって培養培地を交換することが可能になり得る。
【0132】
本発明の一実施形態では、形質導入された免疫細胞、例えば、CARまたはTCRなどの導入遺伝子を細胞表面に発現するT細胞のさらに高い純度が製造プロセスの最後に得られる。遺伝子改変免疫細胞を特異的に富化するために、追加の細胞選択工程が使用され得る。例えば、導入遺伝子によってコードされる表面分子に対する抗体によってコーティングされた磁性粒子が、選択工程に使用され得る。富化工程は、磁気分離ユニットを使用することによって行われてもよく、最終製剤化の前に行われてもよい。
【0133】
特定の実施形態では、この第2の富化の後、かつ患者への適用または下流での使用の前に、選択された細胞の表面から除去され得る選択剤が使用される。
【0134】
特定の実施形態では、免疫細胞は、懸濁状態で活性化され得る。免疫細胞は、レンチウイルスベクターを使用してさらに改変され、懸濁状態で拡大増殖され得る。細胞を懸濁状態に保つために、本明細書に開示されるプロセスの活性化工程、遺伝子改変工程および拡大増殖工程中に振盪条件が維持され得る。
【0135】
一実施形態では、免疫細胞は、レンチウイルスベクターを使用して遺伝子改変され得る。一実施形態では、VSVG偽型を有するレンチウイルスベクターが、効率的な形質導入を可能にする。他の種類のレンチウイルスベクター、例えば、麻疹ウイルス(ML-LV)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、ネコ内在性レトロウイルス(RD114)、ヒヒ内在性レトロウイルス(BaEV)由来の偽型エンベロープ)も使用され得る。ガンマまたはアルファレトロウイルスベクターなどの他のウイルスベクターを使用することができる。形質導入エンハンサー試薬が加えられてもよい。
【0136】
さらなる態様では、本開示は、遺伝子改変免疫細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0137】
試料は、血液学的起源のヒト細胞試料であり得る。例えば、細胞試料は、ドナーまたは患者由来の血液学的細胞から構成され得る。そのような血液製剤は、全血、バフィーコート、白血球アフェレーシス、PBMC、または血液製剤の任意の臨床試料の形態であり得る。そのような血液製剤は、新鮮または凍結起源のものであり得る。試料には、限定するものではないが、新鮮末梢血、新鮮アフェレーシス収集物、凍結保存アフェレーシス収集物、PBMC収集物、T細胞、NK細胞などが含まれる。
【0138】
遠心分離工程は、以下の態様、すなわち、勾配分離、赤血球減少、血小板除去および細胞洗浄の1つ、複数または全部を含み得る。
【0139】
特定の実施形態では、洗浄とは、細胞が保持されている培地または緩衝液の交換を意味する。上清の交換は、一部または全部であり得る。細胞が保持されている元の培地をさらに完全に交換するために、いくつかの洗浄工程が組み合わされてもよい。洗浄工程は、遠心力によって細胞をペレット化し、上清を除去することを伴い得る。
【0140】
用語「マーカー」は、特定の細胞型によって特異的に発現される細胞抗原を指し得る。好ましくは、マーカーは、生細胞の富化、単離および/または検出を行うことができるような細胞表面マーカーである。マーカーは、CD4、CD8および/もしくはCD62Lなどの陽性選択マーカーであってよいか、または陰性選択マーカー(例えば、CD14、CD16、CD19、CD25、CD56を発現する細胞の枯渇)であってよい。
【0141】
本明細書で使用される用語「抗原結合分子」は、所望の標的分子、すなわち、抗原に好ましくは結合するか、または特異的である任意の分子を指す。用語「抗原結合分子」は、例えば、抗体または抗体断片を含む。本明細書で使用される用語「抗体」は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を指し得る。抗体は、任意の種、例えば、マウス、ラット、ヒツジ、ヒトなどのものであり得る。治療目的では、非ヒト抗原結合断片が使用される場合、これらは、当技術分野で公知の任意の方法によってヒト化され得る。抗体はまた、改変抗体(例えば、オリゴマー、還元抗体、酸化抗体および標識抗体)であり得る。用語「抗体」は、インタクトな分子、ならびにFab、Fab’、F(ab’)2、Fvおよび一本鎖抗体などの抗体断片の両方を含む。さらに、用語「抗原結合分子」は、細胞の所望の標的分子に優先的に結合する抗体または抗体断片以外の任意の分子を含む。好適な分子には、限定するものではないが、所望の標的分子、炭水化物、レクチンまたは任意の他の抗原結合タンパク質に結合する(例えば、受容体-リガンド相互作用)アプタマーとして知られているオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0142】
抗原結合分子(例えば、抗体または抗体断片)とビーズ/粒子との間の結合(カップリング)は、共有または非共有であり得る。共有結合は、例えば、ポリスチレンビーズ上のカルボキシル基への結合、または修飾ビーズ上のNH2基もしくはSH2基への結合であり得る。非共有結合は、例えば、ビオチン-アビジン、または抗フルオロフォア抗体に結合されたフルオロフォア結合粒子を介してもよい。
【0143】
強力な選別技術には、磁気細胞選別がある。細胞を磁気的に分離する方法は、例えば、Invitrogen、Stem cell Technologies(Cellpro,Seattle、またはAdvanced Magnetics,Boston)から市販されている。例えば、モノクローナル抗体を、Dynabeads(登録商標)などの磁性ポリスチレン粒子、または同様の磁性粒子に直接結合させ、例えば、細胞分離のために使用することができる。細胞は、例えば、チューブを磁気ラック上に配置することによって単離される。これらのマイクロビーズは、モノクローナル抗体に直接コンジュゲートさせるか、または抗免疫グロブリン、アビジンもしくは抗ハプテン特異的マイクロビーズと組み合わせて使用することができる。細胞は、1つ以上の特定の表面抗原に対する抗体によってコーティングされた磁気マイクロビーズとインキュベートすることによって分離することができる。これにより、この抗原を発現する細胞が磁気マイクロビーズに付着する。この方法では、細胞を特定の(1または複数の)抗原に対して陽性または陰性に分離することができる。この手順は、直接磁気標識または間接磁気標識を使用して行うことができる。直接標識では、特異的抗体を磁気マイクロビーズに直接結合させる。間接標識では、任意の細胞表面マーカーに対する一次抗体、特異的モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、一次抗体の組合せを使用することができる。一次抗体は、非コンジュゲート化、ビオチン化、またはフルオロフォアコンジュゲート化のいずれかであり得る。次いで、磁気標識は、抗免疫グロブリンマイクロビーズ、抗ビオチンマイクロビーズまたは抗フルオロフォアマイクロビーズを用いて達成される。
【0144】
用語「遺伝子改変細胞」は、導入遺伝子(または外来遺伝子)または核酸配列を含有および/または発現する細胞を意味し、導入遺伝子(または外来遺伝子)または核酸配列は、細胞またはその子孫の遺伝子型または表現型を改変する。該用語は、天然状態のこれらの細胞では発現されないペプチドまたはタンパク質、例えば、CARを安定にまたは一過性に発現するように、当技術分野で周知の組換え方法によって細胞を操作することができるという事実を指し得る。
【0145】
細胞の遺伝子改変には、限定するものではないが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、非組込み型レトロウイルスベクターもしくは非組込み型レンチウイルスベクター、トランスポゾン、ジンクフィンガーヌクレアーゼを含むデザイナーヌクレアーゼ、TALENまたはCRISPR/Casを使用するトランスフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、形質導入が含まれ得る。
【0146】
本明細書に開示される方法によって得ることができる遺伝子改変免疫細胞は、当業者に公知の研究、診断、薬理学的用途または臨床的用途などの後続の工程に使用され得る。
【0147】
遺伝子改変免疫細胞は、治療、例えば、細胞療法、または疾患の予防における医薬組成物として使用することもできる。医薬組成物は、動物またはヒト、例えば、ヒト患者に移植され得る。医薬組成物は、場合によっては哺乳動物への薬学的に有効な量の医薬組成物の投与を含む、哺乳動物、特にヒトの疾患の治療および/または予防に使用され得る。本開示の医薬組成物は、治療(または予防)される疾患に適切な方法で投与され得る。投与の量および頻度は、患者の状態、ならびに患者の疾患の種類および重症度などの要因によって決定されるが、適切な投与量が臨床試験によって決定されてもよい。
【0148】
本方法によって得られる遺伝子改変免疫細胞の組成物は、単独で、または希釈剤および/もしくはサイトカインもしくは細胞集団などの他の成分と組み合わせて医薬組成物として投与され得る。要約すると、本医薬組成物は、1つ以上の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、遺伝子改変免疫細胞を含み得る。そのような組成物は、緩衝液、例えば、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水など;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えば、グリシン;酸化防止剤;キレート剤、EDTAまたはグルタチオン;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存剤を含み得る。
【0149】
細胞選別には、限定するものではないが、例えば、CD4+、CD8+、CD62L+、CD3+、CD56+およびそれらの組合せに基づく陽性選別、ならびに例えば、CD14+、CD19+、CD269+およびそれらの組合せに基づく陰性選別が含まれる。
【0150】
細胞活性化密度は、0.1×106/ml~20×106/mlの範囲であり得る。
【0151】
特定の実施形態では、マイクロビーズ(例えば、Dynabeads(登録商標))は、γFe2O3およびFe3O4磁性材料を含む単分散/均一、超常磁性およびポリマーマイクロスフェアである。マイクロビーズは、CD3および/またはCD28細胞表面分子に特異的な抗体を吸着または結合するための担体として作用するポリマー材料の層によってコーティングされる。
【0152】
本方法の主な利点には、以下が含まれる。本細胞調製方法は、免疫細胞を迅速に調製し、コストを低減し、生産能力を改善することができ、工業生産に適している。本方法によって調製された免疫細胞は、高い品質を有し、臨床的有効性を確保することができる。
【0153】
レンチウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターは、導入遺伝子の長期的で安定した組込みと、娘細胞内での導入遺伝子の増殖とを可能にするため、長期の遺伝子移入を達成するために使用され得る。
【0154】
核酸は、多くの種類のベクターにクローニングされ得る。例えば、核酸は、限定するものではないが、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスおよびコスミドを含むそのようなベクターにクローニングされ得る。目的の特定のベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよび配列決定ベクターが含まれる。
【0155】
さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ベクターとして使用され得るウイルスには、限定するものではないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスが含まれる。
【0156】
遺伝子を細胞に導入し、遺伝子を細胞に発現させる方法は、当技術分野で公知である。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的または生物学的手段によって宿主細胞に移入され得る。
【0157】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが含まれる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を生成するための方法は、当技術分野で周知である。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する方法には、リン酸カルシウムトランスフェクションがある。
【0158】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法には、DNAベクターおよびRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、ヒト細胞などの哺乳動物細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用されている方法になっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。
【0159】
特定の実施形態では、ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0160】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段には、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェアおよびビーズ;ならびに脂質ベースの系、例えば、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームが含まれる。インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして使用される例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0161】
非ウイルス送達系を使用する場合、例示的な送達ツールはリポソームである。脂質調製物の使用は、核酸を宿主細胞に導入すると考えられている(インビトロ、エクスビボまたはインビボ)。一方、核酸は、脂質と会合することができる。脂質関連核酸は、リポソームの水性内部にカプセル化され得るか、リポソームの脂質二重層に分散され得るか、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方と会合する結合分子を介してリポソームに結合され得るか、リポソームに捕捉され得るか、リポソームと複合体化され得るか、脂質を含有する溶液に分散され得るか、脂質と混合され得るか、脂質と合わせられ得るか、懸濁液として脂質に含有され得るか、ミセルに含有され得るか、もしくはミセルと複合体化され得るか、または他の方法によって脂質と会合され得る。組成物に関連する脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクターは、溶液中のいかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは、ミセルとして二重層構造で存在することができるか、または「崩壊した」構造を有することができる。それらは、溶液中に単純に分散させることもでき、場合によっては不均一なサイズまたは形状の凝集体を形成する。脂質は、脂肪物質であり、天然に存在し得るかまたは合成され得る。例えば、脂質には脂肪滴が含まれ、脂肪滴は、細胞質中に、ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコールおよびアルデヒドを含有する化合物中に天然に存在する。
【0162】
本発明は、特定の実施形態に関連して以下にさらに説明される。これらの実施形態は、本発明を例示するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するために使用されないことを理解されたい。以下の実施形態では、特定の条件を示さない実験方法は、通常、従来の条件、または製造者によって推奨される条件に従う。特に指示しない限り、割合および部は重量で計算される。
【0163】
[実施例1]
細胞免疫療法のための細胞の調製
1.細胞培養:
細胞はいずれも、通常の細胞培養条件下で培養した。
【0164】
2.調製方法
(1)細胞試料の提供
CD4+細胞およびCD8+細胞を含有する凍結保存試料(血液試料)10~440mlを細胞試料として解凍した。
【0165】
(2)洗浄および選別
Sepax C-Pro「BeadWash」プログラムを使用して細胞を洗浄し、次いで、これを抗CD4抗体および抗CD8抗体を含有する選別磁気ビーズとともにインキュベートした。パラメーターを表1に示す。
【表5】
Sepax Pro「BeadWash」プログラムは以下の通りであった。
【0166】
細胞試料にpH7.2のPBS緩衝液の洗浄液を加え、混合し、遠心分離した。上清を除去して沈殿物を得た。
【0167】
選別溶液を沈殿物に加え、10~30分間インキュベートしてインキュベーション混合物を得、ここで選別溶液は、磁気ビーズを含有するpH7.2のPBS緩衝液であった。選別磁気ビーズの体積=CD4/CD8リンパ球体積/[(200~800)×106/ml]。選別磁気ビーズには、CD4およびCD8細胞表面マーカーに特異的に結合して選別磁気ビーズ-細胞複合体を形成することができる抗CD4抗体および抗CD8抗体を含有させた。
【0168】
工程(2)では、インキュベーション時間が短すぎた場合、標的細胞の結合が影響を受けた可能性がある。具体的には、一部の標的細胞は、選別磁気ビーズに結合することができず、これにより、選別効率に影響が及ぼされた。インキュベーション時間が長すぎた場合、細胞の増殖は最適ではなかった。選別磁気ビーズの体積が低すぎた場合、標的細胞の一部を標識することができず、これにより、選別効率に影響が及ぼされた。磁気ビーズの量が多すぎると、インキュベーションおよび洗浄後に遊離磁気ビーズの量が増加し、選別カラムの結合部位を占有し、選別効率に影響を及ぼす。
【0169】
CliniMacs機器を使用して、pH7.2のPBS緩衝液中の選別磁気ビーズ-細胞複合体をインキュベーション混合物から分離した。
【0170】
CliniMacs機器は以下のように動作した。
【0171】
最初に、インキュベーション混合物中の液体を除去しながら、磁場を使用して選別磁気ビーズ-細胞複合体を保持した。次いで、磁場を除去し、選別磁気ビーズ-細胞複合体をpH7.2のPBS緩衝液を用いてすすいで、pH7.2のPBS緩衝液中の選別磁気ビーズ-細胞複合体を得た。
【0172】
(3)細胞活性化
pH7.2のPBS緩衝液中の選別磁気ビーズ-細胞複合体を遠心分離した。上清を除去して、選別磁気ビーズ-細胞複合体を含有する沈殿物を得た。培養培地に再懸濁した後、細胞を活性化する活性化磁気ビーズ(Dynabeads(登録商標))を含有する細胞培養液を加えて細胞混合物を得た。その後のインキュベーションを12~24時間行った。細胞混合物では、活性化磁気ビーズの数と細胞の数との比は0.5~5:1であり、活性化細胞の密度は0.5~10×106細胞/mlであった。
【0173】
工程(4)では、活性化磁気ビーズの量が多すぎると、リンパT細胞の過剰な活性化が起こり得、磁気ビーズを除去した際に残存量が増加する可能性がある。細胞の過剰な活性化は、細胞のアポトーシスおよび分化をもたらし得る。過剰な量の磁気ビーズは、許容される容量を容易に過負荷にし、最終的な細胞生成物中に過剰な磁気ビーズを残留させる可能性がある。活性化密度が高すぎるかまたは低すぎると、細胞と活性化磁気ビーズとの結合に影響を及ぼし、それによって、細胞上の磁気ビーズの活性化効率に影響を及ぼし、次いで、細胞の拡大増殖に影響を及ぼす可能性がある。
【0174】
(4)形質導入
細胞混合物を2日間培養した後、標的遺伝子を有するウイルスによって細胞を形質導入した。細胞へのウイルスの感染多重度(MOI)は1~10:1であった。2日間インキュベートした後、インキュベーション混合物を得た。同じ体積の細胞培養培地をインキュベーション混合物に加えて、1倍希釈した。さらに1日間培養した後、細胞をXuri Waveに接種し、1~2日間培養した。細胞培養パラメーターは以下の通りであった:37℃の温度、0.1L/分のガス流量、5%のCO2、10~18rpmの揺動速度、および6~10°の揺動角。次いで、細胞混合物を得た。
【0175】
工程(4)では、Xuri Waveの培養温度が低すぎるかまたは高すぎると、細胞の代謝増殖速度に影響を及ぼす可能性がある。CO2比、ガス流量ならびに/または揺動角および揺動速度が低すぎるかまたは高すぎると、酸素溶解速度および他の培養条件に影響を及ぼすため、細胞増殖を阻害する可能性がある。上記のパラメーターは、Wave cultureを使用して制御することができる。
【0176】
(5)活性化磁気ビーズの除去
CTS(商標)Dynamag(商標)機器を使用して、標的遺伝子を有する細胞混合物から活性化磁気ビーズを除去した。
【0177】
(6)灌流を伴う細胞培養
活性化磁気ビーズ除去後、細胞を灌流して培養して(培養培地を補充し、細胞培養培地を500mlに保った)、培養細胞混合物を得た。灌流パラメーターを表2に示す。
【表6】
(7)細胞濃度、アリコートおよび凍結乾燥
工程(6)で得られた細胞を洗浄および濃縮した後、凍結保存組成物を加えた。アリコートおよび凍結乾燥を行って、遺伝子改変細胞を得た。
【0178】
Sepax C-proの「CultureWash」プログラムを細胞の洗浄および濃縮工程に使用した。CultureWashパラメーターを表3に示す。
【表7】
3.実験結果
上記の方法に従って、様々なプロセスパラメーターを調査するために複数回の並列実験を行った。結果は以下の通りである。
【0179】
3.1.工程(2)の洗浄およびインキュベーションでは、Sepax Pro「BeadWash」プログラムを使用して、洗浄およびインキュベーション工程を行った。単球およびリンパ球の回収率を表4に示す。
【表8】
表4は、Sepax Pro「BeadWash」プログラムによる細胞試料の洗浄およびインキュベーション後、細胞回収率が90%を超え、細胞損失がほとんどなかったことを示している。
【0180】
3.2 工程(3)の選別工程では、細胞選別にCliniMacsを使用した。細胞の回収率を表5に示す。
【表9】
表5は、CliniMacsを使用して細胞選別を行った回収率が80%を超えたことを示し、CliniMacsがほとんどの標的細胞を回収することができることを示している。
【0181】
3.3 工程(5)の形質導入工程では、細胞を培養した1日目に細胞活性化率をアッセイした。ウイルス形質導入後、細胞を2日間インキュベートした。表6は、1日目の細胞活性化率、3日目および4日目の細胞数および陽性率を示している。
【表10】
表6は、工程(4)では、細胞を1日間にわたって培養した後、約85%の細胞が活性化され、優れた細胞活性化効率が示されたことを示している。追加の時間にわたって細胞を培養することは、細胞拡大増殖と、導入遺伝子発現の増加とを伴った。
【0182】
3.4 細胞調製方法では、工程(1)の、工程(3)の選別後の、および工程(5)の形質導入工程後に2日間にわたって細胞の培養を継続した場合の試料(血液試料)の細胞亜集団特性を表7に示す。
【表11】
表7は、細胞調製プロセス中、Tナイーブ細胞とTcm細胞との比が連続的に増加したことを示し、細胞活性が調製プロセス中に連続的に増強したことを示している。
【0183】
3.5 Dynabeads(登録商標)を除去するためのCTS(商標)Dynamag(商標)の使用前後の細胞の回収率および生存率を表8に示す。
【表12】
表8は、CTS(商標)Dynamag(商標)によるDynabeads(登録商標)の除去が、細胞のさらに高い回収率および生存率をもたらしたことを示す。
【0184】
3.6 細胞の洗浄および濃縮
Sepax Proによる試料の洗浄および濃縮前後の細胞の回収率および生存率を表9に示す。
【表13】
表9は、Sepax Proを使用した洗浄および濃縮が、優れた細胞の回収率および生存率をもたらしたことを示す。
【0185】
3.7 細胞アリコート
Cell ConnectアリコートチューブまたはSefiaを使用して細胞をアリコートした。これにより、アリコート中のアウトプット体積の精度と細胞密度の均一性とを確保することができる。結果を表10に示す。
【表14】
本開示の範囲は、上記に具体的に示され記載されたものによって限定されない。当業者であれば、材料、構成、構造および寸法の図示された例に対する好適な代替物があることを認識するであろう。本発明の説明では、特許および様々な刊行物を含む多数の参考文献が引用され、考察されている。そのような参考文献の引用および考察は、単に本開示の説明を明確にするために提供されており、いずれの参考文献も本明細書に記載の本発明に対する先行技術であることを承認するものではない。本明細書において引用され考察された参考文献はいずれも、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されているものの変形、修正および他の実装が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に思い浮かぶであろう。本開示の特定の実施形態を示し説明してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく変更および修正を加えることができることが当業者には明らかであろう。前述の説明および添付の図面に記載された事項は、例示としてのみ提供され、限定としては提供されない。
【国際調査報告】