(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】病原体監視及び不活性化のエアフィルター
(51)【国際特許分類】
A61L 9/00 20060101AFI20231114BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231114BHJP
B01D 46/10 20060101ALI20231114BHJP
B01D 39/08 20060101ALI20231114BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20231114BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20231114BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20231114BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231114BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20231114BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A61L9/00 Z
B32B27/00 A
B32B27/00 Z
B01D46/10 Z
B01D39/08 Z
B01D39/16 A
A61L9/01 M
A61L9/01 B
A01P1/00
A01P3/00
A01N33/12 101
A01N25/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527026
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 US2021056002
(87)【国際公開番号】W WO2022093620
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523157427
【氏名又は名称】インダストリアル ポリマーズ アンド ケミカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ, トーマス ジェイ. ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】デイシー, ラルフ ジー. ジュニア
【テーマコード(参考)】
4C180
4D019
4D058
4F100
4H011
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CC01
4C180CC16
4C180DD09
4C180EA65X
4C180EB17X
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4C180EC02
4C180KK02
4D019AA01
4D019BA04
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4H011BC03
4H011BC06
4H011BC19
4H011DA08
4H011DH02
(57)【要約】
例えば、Covid-19パンデミックを引き起こすSAR-CoV-2ウィルスであるウィルス不活性化のための改良技術は、説明されている。当該技術は、病原体不活性材料で注入されたポリマーで被覆された基材を含むデバイスを含み得る。種々の実施態様において、所定時間で、病原体不活性材料の一部が、環境に曝露され、デバイスは、環境に追加的な病原体不活性材料を定期的もしくは間欠的に曝露させるように構成されている。例えば、ポリマーは、アブレーティブ的又は犠牲的であり得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある環境において病原体を不活性化させるためのデバイスであって、
基材と、
前記基材を被覆するポリマーであって、アブレーティブポリマー及び犠牲ポリマーのうちの少なくとも1つを含むポリマーと、
前記ポリマーに注入された病原体不活性化材料と
を含み、
所定の時間で、前記病原体不活性材料の一部が前記環境に曝露され、前記デバイスが、定期的もしくは間欠的に、前記環境に、追加的な病原体不活性材料を曝露させるように構成される、デバイス。
【請求項2】
前記基材がファイバガラス材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記基材が紙材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記基材が織物材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記基材が不織材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ポリマーがアブレーティブポリマーを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ポリマーが犠牲ポリマーを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ポリマーがコポリマーを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記病原体不活性材料が、抗ウィルス剤及び殺生物剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記病原体不活性材料が抗ウィルス剤を含み、前記抗ウィルス剤が、塩化ベンザルコニウム、四級アンモニウム塩、及びウィルスを標的とする酵素のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記病原体不活性材料が、受動輸送メカニズムを通じて、前記ポリマーの表面に達するような量を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記受動輸送メカニズムが、表面エネルギー、拡散及び毛細管現象のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
エアフィルターを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記ポリマーが、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリグリシジルメタクリレート、ゼラチン、ポリサッカライド、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリビニル酢酸コポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記病原体不活性材料が、前記病原体のタンパク質成分を変性させ、前記病原体を不活性させる、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記病原体不活性材料が、前記病原体を酸化させて不活性化する、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記病原体不活性材料が、酵素的プロセスを利用して、前記病原体を不活性させる、請求項14に記載のデバイス。
【請求項18】
ある環境において、病原体を不活性化させる方法であって、
病原体不活性材料が注入されたポリマーで基材を被覆することを含み、(i)前記ポリマーが、アブレーティブポリマー及び犠牲ポリマーのうちの少なくとも1つを含み、(ii)前記病原体不活性材料が注入された前記ポリマーが、定期的もしくは間欠的に、前記環境に、追加的な病原体不活性材料を曝露させるように構成される、方法。
【請求項19】
前記ポリマーがコポリマーである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記病原体不活性材料が抗ウィルス剤を含み、前記抗ウィルス剤が、塩化ベンザルコニウム、四級アンモニウム塩、及びウィルスを標的とする酵素のうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年10月29日付で提出された、「Air Filter with Pathogen Monitoring and Inactivation」という米国仮特許出願第63/107,388号、及び2021年10月5日付で提出された、「Air Filter with Pathogen Monitoring and Inactivation」という米国仮特許出願第63/252,514号の優先権の利益を享受する。これら出願の内容の全ては、本願に組み込まれることにより援用する。
【0002】
本発明は、病原体不活性剤に関し、特に、ポリマーに注入される病原体不活性剤に関し、これによって、追加的な病原体不活性材料が、定期的もしくは間欠的に環境に曝露される。
【背景技術】
【0003】
HVACシステムのためのエアフィルターは、粒子の優れた濾過を提供する。フィルターの等級に依存して、微細な粒子が空気から濾過することができる。特別な種類のフィルター、超高性能エア(HEPA)フィルターは、空気からミクロン及びサブミクロンの粒子を濾過するために使用される。
【0004】
非常に微細な粒子フィルターは、例えば細塵であるアレルゲン及び他の問題物質を捕捉するものの、これら受動的なエアフィルターの全ては、HVACシステムを通過する際に空気中に発生し得る病原体を不活性化させることができない。HEPAフィルターはまた、フィルターにわたって圧力の大幅な降下が生じ得、HVACシステムを通過する空気の流れを劣らせる。
【0005】
よって、HVACシステムのための、長期間持続可能で病原体不活性及び高捕捉率のエアフィルターが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施形態は、紙、織物ファイバガラス、不織ファイバガラス、不織ポリマー等から構成されるエアフィルターもしくはフィルターの使用であり、エアフィルターもしくはフィルターは、エアフィルター上もしくは内に被覆もしくは注入される1種の化合物もしくは複数の化合物の使用を通じて、病原体を不活性化させる方法をさらに含む。
【0007】
エアフィルターもしくはフィルターは、例えば殺生物剤もしくは抗ウィルス剤である化合物が混合されもしくは注入されるポリマーを含み、ウィルス及びバクテリアである病原体を不活性化させる。ポリマーはまた、アブレーティブもしくは犠牲的特徴を有し得、ポリマーの表面は、経時的に、すり減らされ、ポリマーの新しい表面を曝露させる。
【0008】
アブレーティブもしくは犠牲ポリマーは、ポリビニル酢酸とアクリレートの骨格から構成されるエマルションポリマーであり得、かかるポリマーの外表面は、経時的にすり減らされ、環境に新しい表面を曝露させる。
【0009】
犠牲ポリマーはまた、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)、ゼラチン、ポリサッカライド、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリビニル酢酸コポリマーからなる群からであり得る。これらのポリマーは、基準の温度及び圧力(STP)条件、例えば、オフィスビル、学校又は住居の環境において容易に分解する。住居のケースでは、かかる住居は、臨時的住居であり得、例えばホテルもしくはモーテルであり、又は永久的な住居であり得、例えばハウスもしくはアパートである。
【0010】
抗ウィルス剤もしくは殺生物剤注入ポリマーはまた、フィルター基材に被覆された場合、抗ウィルス剤もしくは殺生物剤の連続的な供給を、フィルターを通過する空気に提供するように調合され得る。これを実現する一方法としては、大過剰の抗ウィルス剤もしくは殺生物剤を、ポリマー混合物に導入することによって、抗ウィルス剤もしくは殺生物剤が、表面エネルギー、拡散、毛細管作用、もしくはその他の受動輸送メカニズムを通じてポリマーの表面に達する。
【0011】
フィルターシステムに被覆されるポリマーはまた、殺生物剤もしくは抗ウィルス剤と相容れない性質を有し得、これによって、殺生物剤もしくは抗ウィルス剤、もしくは病原体を不活性化させ得るいかなる他の材料が、ポリマーマトリックスから染み出るかもしくは流れ出ることを可能にする。これは、永久的にオイル漬けのベアリングに似ており、焼結ベアリングにオイルが注入されることで、オイルが焼結ベアリングから染み出ることにつれて、長持ちの潤滑性が付与される。ポリマーマトリックスは、固体、液体又はエマルションタイプで有り得る。ポリマーは、有機溶媒で生成され得、又は水性であり得、又は100%固体であり得る。
【0012】
抗ウィルス剤又は殺生物剤は、病原体の異なる標的エリアをそれぞれ有する抗ウィルス剤又は殺生物剤の混合であり得る。
【0013】
フィルター紙は、HVACユニットとオートモバイルのためのエアフィルター、コーヒーフィルター、燃料フィルター、クロマトグラフィー分離、実験室フィルター、及びティーバッグを含む複数種の用途に使用される。HVACシステムにおける多孔性エアフィルターは、他種サイズの粒子が通過しながら、異なるサイズの粒子が捕捉されることを可能にするように製造され得る。
【0014】
これらのフィルター紙は、絶えずの改良及び設計から恩恵を受け、種々の材料のための持続した的確な濾過方法を提供する。
【0015】
一桁数字及び小数のミクロン濾過は、多くの異なる種類のフィルター紙で可能になる。フィルター紙はまた、殺生物剤及び抗ウィルス剤で処置され得、空気中で循環し得る伝染的な粒子から保護されることを促進する。
【0016】
フィルター基材の被覆は、スプレー、ディッピング、ローリング、プリンティング、または、アブレーティブもしくは犠牲ポリマーが、特殊紙の表面に転移される他の転移プロセスにより実現される。アブレーティブもしくは犠牲ポリマーは、例えば殺生物剤又は抗ウィルス剤である病原体不活性材料を含み得る。ローリングプロセスは、Mayerロッドプロセス又はグラビアプロセスであり得る。
【0017】
ファイバガラスベース材料は、HVACフィルターのために使用され得る。ここで、アブレーティブもしくは犠牲ポリマーは、殺生物剤もしくは抗ウィルス剤、又は病原体を不活性化させる他の材料と共に、ファイバガラス基材に転移される。ファイバガラス基材は、織物もしくは不織であり得る。アブレーティブもしくは犠牲ポリマーは、ファイバガラス基材に被覆されていながら、経時的にすり減らされ、環境に新しい表面を曝露させる。
【0018】
エアフィルターの等級は様々である。アメリカ暖房冷凍空調学会(ASHRAE)は、最小効率レポート値(MERV)についてANSI/ASHRAE 52.2に規定された基準を使用する。MERV13以上の基準は、疾病予防管理センター(CDC)により規定されている。
【0019】
病原体不活性化のための種々の殺生物剤及び抗ウィルス剤は市販されており、これらの病原体は、Covid-19パンデミックを引き起こすSARS-CoV-2ウィルスを含む。殺生物剤及び抗ウィルス剤は、例えば、塩素分子付着の四級アンモニウム塩である塩素化分子を組み込んだ材料を含む。塩化ベンザルコニウムは、四級アンモニウム塩成分と塩素成分を有する材料の例である。殺生物剤及び抗ウィルス剤の他の多くの種類は、例えば、次亜塩素酸ナトリウム(通常、漂白剤として知られる)、過酸化水素、及びイソプロピルアルコールであり、入手可能である。他の分子は、ホウ素、ヨウ素、及びその他の塩素含有分子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面において、参照番号は、異なる図にわたって同じ部分を一般的に示す。下記説明において、本発明の種々の実施形態は、下記図を参照して説明されている。
【0021】
【
図1】抗ウィルス剤注入被覆ファイバガラス成分を有するHVACフィルターの例示的実施形態を示す。
【0022】
【
図2】抗ウィルス剤注入基材と基材のためのホルダーを有するHVACフィルターの図示である。
【0023】
【0024】
【
図4】ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)の化学式である。
【0025】
【
図5】ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の化学式である。
【0026】
【
図6】エアフィルターのMERV評価値の表である。
【0027】
【
図7】ホスホジエステル結合を有するフラノース分子の図示である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ここに説明される種々の実施形態は、ウィルスを不活性化させるための薬剤を含むポリマーで被覆されるHVACフィルターシステムを開示している。特に、いくつかの例には、ポリマーにおける抗ウィルス剤は、Covid-19パンデミックを引き起こすSARS-CoV-2ウィルスを不活性化させるのに使用される。
【0029】
かかるポリマーは、アブレーティブもしくは犠牲ポリマーであり得、表面において経時的にすり減らされることによって、環境に新しい材料を曝露させる。かかるポリマーは、不活性剤と相容れない材料であり得、かかる不活性剤は、例えば、殺生物剤もしくは抗ウィルス剤であり、長期間にわたってポリマーから染み出ており、それによって、高分子構造で被覆されたフィルターに対して作用する時、ウィルス粒子を不活性化させる。
【0030】
アブレーティブもしくは犠牲ポリマーは、環境条件から、ポリマー対象と共にすり減らされる犠牲材料としても知られ得る。ポリマーマトリックスのアブレーションは、熱相互作用、UV相互作用、及びその他のエネルギー的、酸化的、還元的環境の相互作用から、発生し得る。かかるアブレーティブもしくは犠牲ポリマーは、ナノ複合体からも構成され得る。犠牲ポリマーは、環境的相互作用から、すり減らされ、分解され得る。
【0031】
抗ウィルス剤もしくは殺生物剤、又はいかなる抗原体不活性材料と混合された高分子材料は、例えば、スプレー、ディッピング、ロールコーティング及びプリンティングである種々の手段により基材に塗布され得る。ポリマーが基材に塗布されると、例えばUV硬化、加熱オーブンでの乾燥、もしくは空気乾燥である種々のプロセスを通じて硬化もしくは乾燥され得る。
【0032】
テスト手法、例えばISO-18184:2019は、多孔性基材の抗ウィルス能力を実証するために使用可能である。ISO-18184:2019に従い、塩化ベンザルコニウム含有混合物であるStepan BTC-885が注入されたポリビニル酢酸/アクリレートコポリマーで処置された、MERV評価値13の不織ファイバガラスのサンプルを試験した。ISO-18184:2019基準を使用して試験された病原体は、SARS-CoV-2ウィルス、WA1菌株であった。試験の結果は、ポリマー及び抗ウィルス剤注入不織ファイバガラスMERV13フィルターが、15分間内に、SARS-CoV-2 WA1ウィルスの全てを不活性させた。試験結果は、下記表1に示す。
【表1】
【0033】
ポリマーが被覆された基材は、種々の材料から構成され得る。かかる材料は、織物及び不織ファイバガラスの両方、紙、不織ポリマーマトリックス、織物ポリマーマトリックス、及び同様な支持材料を含む。
【0034】
ポリマー被覆基材は、その後フレーム内に適合され得、これによって、通常タイプの濾過媒体を広く受け入れるHVACシステムに簡単に挿入され得る。
【0035】
図1は、HVACフィルター100を図示し、被覆されたファイバガラスメッシュ101が、紙フレーム内に装着されている。ファイバガラスメッシュは、ポリビニル酢酸とポリアクリレートコポリマーから構成されるアブレーティブもしくは犠牲ポリマー102で被覆されている。アブレーティブもしくは犠牲ポリマーはまた、抗ウィルス剤である塩化ベンザルコニウム103を含む。
【0036】
図2は、エアフィルター200の説明である。エアフィルターフレーム202のクロスメンバー201が、濾過基材203を保持する。濾過基材203は、織物もしくは不織基材で有り得る。フィルター基材203の材料は、紙、ファイバガラス、もしくは他の適切な材料であり得る。濾過基材203は、ポリマーで被覆され得、かかるポリマーが、抗ウィルス剤で注入されている。
【0037】
図3は、塩化ベンザルコニウム分子300、一種の強力な抗ウィルス材料の説明である。
【0038】
図4は、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)400の一般化学式である。ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)400は、経時的に、除去し、すり減らされ、分解する生物的分解可能な材料である。
【0039】
図5は、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の一般化学式である。ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)500は、経時的に、除去し、すり減らされ、分解する生物的分解可能な材料である。
【0040】
図6は、ASHRAEにより規定されたような、エアフィルターのMERV評価値を示すチャートである。13以上のMERV評価値は、オフィスビル、学校、住宅、及びその他の居住インテリ空間の空気濾過のために、CDCにより規定されている。
【0041】
空気フィルターはまた、フィルターに当てられたウィルス性物質を検出するための手段を含む。ウィルス性物質を検出するための一手段は、マイクロチップに結合される単鎖DNAの利用である。単鎖DNAに、ある物質、例えば、SARS-CoV-2の特性を有する単鎖RNAが結合する場合、当該単鎖DNAに付着されたマイクロチップにより、電荷上の違いが測定され得る。マイクロチップにおける電気的相違は、検出器への特定のRNA鎖の付着の測定を可能にする。単鎖DNAへ付着したRNA鎖が多ければ多いほど、DNA単鎖材料に取り付けたマイクロチップから、多くの徴候が観察され得る。これにより、単鎖DNAに付着した単鎖RNAの数量を示すシグナルが生じ、その結果、ウィルス量と、検出されるウィルスのバリアントとの両方を特定する。例えば、SARS-CoV-2ウィルスのデルタバリアントの単鎖RNAにマッチする配列を有する単鎖DNAは、ウィルス性RNAと結合し、バイオセンサーチップの電気的特性における変化を引き起こす。これにより、デルタバリアントが存在していることだけではなく、存在しているデルタバリアントの量も示すことになる。
【0042】
単鎖DNA(ssDNA)検出器は、抗ウィルス剤フィルターの効能をチェックするためにも使用可能である。ssDNA検出器は、抗ウィルス剤注入フィルターの下流側に装着され得、それによって、抗ウィルス剤注入フィルターを通過した空気は続いて、ssDNA検出器に達して接触する。ssDNA検出器は、ウィルス剤注入フィルターを通過するいかなるウィルスの量を検出し、電子通信手段を介して、ウィルス剤注入フィルターの弱まった効能を指示し、低下した抗ウィルス性の全活性を報告する。
【0043】
ssDNA検出器はまた、建築物もしくは構造体におけるウィルスの量を示すシステムの一部として使用され得る。検出器は、火事警報通信システムと同様に、建築物もしくは構造体の種々のエリアに設置され得、それによって、建築物もしくは構造体、例えば病院におけるウィルス感染は、適宜に登録、記録、及び対処される。
【0044】
バイオセンサーのアレイは、複数種の病原体を検出するために使用され得る。たとえば、SARS-CoV-2ウィルスのアルファ、ベータ、及びデルタバリアントを検出するためのバイオセンサーが、特定領域におけるウィルス量のみならず、存在しているウィルス種類の検出にも使用され得る。
【0045】
バイオセンサーの他の態様において、バイオセンサーは、例えば、脂質単一層もしくは二重層またはポリサッカライド層である細胞膜の擬似をする材料で被覆され得る。擬似された細胞膜はまた、例えば、SARS-CoV-2ウィルスである標的病原体のための受容体をも擬似し得る。存在する当該層は、細胞膜を擬似して、例えばウィルスである病原体をだまし、そのコア核酸を取り付けて譲り渡して、センサーによる識別に供する。
【0046】
本実施形態の他の態様は、特殊化された抗ウィルス剤、例えば、RNAヌクレアーゼのような酵素を使用して、ウィルス性病原体を不活性化させる。クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/CRISPR関連タンパク質13(Cas13)は、RNA核酸配列を切断するために使用され得る。一態様において、RNAヌクレアーゼは、RNAにおける核酸のホスホジエステル結合を切断し、例えばSARS-CoV-2である単鎖RNAウィルス(ssRNA)を不活性化させる。ホスホジエステル結合は、
図7に示す。Cas13は、DNAではなく、RNAを標的とする。そのCRISPR-RNA(crRNA)に対して相補的であるssRNA配列により活性化された場合、Cas13は、非特異的RNase活性を放出し、RNA配列と関係なく、Cas13付近におけるRNAを不活性化させる。よって、crRNAと結合されたCas13は、例えばSARS-CoV-2であるssRNAウィルスを有効的に不活性化させ得る複合体を形成する。
【0047】
ここに提供される各数値は、対応するパラメータの範囲における最小値もしくは最大値を示すように解される。したがって、請求項に追加される場合、数値は、請求の範囲のために明確なサポートを提供し、本明細書からの教示に基づき、かかる数値の上もしくは下にあり得る。最小値及び最大値との間における各値は、本明細書で提示される各数値範囲内の数値に当てられ、意図的かつ明確にサポートされており、各特定の範囲における有効数字の値を対象とする。
【0048】
本発明の実施形態を説明し、当業者が、種々他の特徴及び上記特別に説明された本発明の利点を認識し得る。本発明の原理の説示のみにあたり、種々の変更及び追加、種々の要素及び成分の組み合わせ及び置換は、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく当業者により適宜に成し得るものである。よって、特許請求の範囲は、説示された特殊な特徴により制限されるべきではなく、いかなる顕著な改良及び均等物も包含する。
(項目1)
ある環境において病原体を不活性化させるためのデバイスであって、
基材と、
前記基材を被覆するポリマーと、
前記ポリマーに注入された病原体不活性化材料と
を含み、
所定の時間で、前記病原体不活性材料の一部が前記環境に曝露され、前記デバイスが、定期的もしくは間欠的に、前記環境に、追加的な病原体不活性材料を曝露させるように構成される、デバイス。
(項目2)
前記基材がファイバガラス材料を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目3)
前記基材が紙材料を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目4)
前記基材が織物材料を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目5)
前記基材が不織材料を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目6)
前記ポリマーがアブレーティブポリマーを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目7)
前記ポリマーが犠牲ポリマーを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目8)
前記ポリマーがコポリマーを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目9)
前記病原体不活性材料が、抗ウィルス剤及び殺生物剤のうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目10)
前記病原体不活性材料が抗ウィルス剤を含み、前記抗ウィルス剤が、塩化ベンザルコニウム、四級アンモニウム塩、及びウィルスを標的とする酵素のうちの少なくとも1つを含む、項目9に記載のデバイス。
(項目11)
前記病原体不活性材料が、受動輸送メカニズムを通じて、前記ポリマーの表面に達するような量を有する、項目1に記載のデバイス。
(項目12)
前記受動輸送メカニズムが、表面エネルギー、拡散及び毛細管現象のうちの少なくとも1つを含む、項目11に記載のデバイス。
(項目13)
エアフィルターを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目14)
前記ポリマーが、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリグリシジルメタクリレート、ゼラチン、ポリサッカライド、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリビニル酢酸コポリマーのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目15)
前記病原体不活性材料が、前記病原体のタンパク質成分を変性させ、前記病原体を不活性させる、項目14に記載のデバイス。
(項目16)
前記病原体不活性材料が、前記病原体を酸化させて不活性化する、項目14に記載のデバイス。
(項目17)
前記病原体不活性材料が、酵素的プロセスを利用して、前記病原体を不活性させる、項目14に記載のデバイス。
(項目18)
ある環境において、病原体を不活性化させる方法であって、
病原体不活性材料が注入されたポリマーで基材を被覆することを含み、前記病原体不活性材料が注入された前記ポリマーが、定期的もしくは間欠的に、前記環境に、追加的な病原体不活性材料を曝露させるように構成される、方法。
(項目19)
前記ポリマーがコポリマーである、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記病原体不活性材料が抗ウィルス剤を含み、前記抗ウィルス剤が、塩化ベンザルコニウム、四級アンモニウム塩、及びウィルスを標的とする酵素のうちの少なくとも1つを含む、項目18に記載の方法。
【国際調査報告】