(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】スクロールポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
F04C18/02 311Q
F04C18/02 311T
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023527293
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 GB2021052799
(87)【国際公開番号】W WO2022096859
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ホルブルック アラン アーネスト キナード
(72)【発明者】
【氏名】ベッドウェル デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ショフィールド ナイジェル ポール
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA12
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC08
3H039CC25
3H039CC30
3H039CC31
(57)【要約】
スクロールポンプは、入口及び出口と、旋回スクロール(130)と互いにかみ合い、その間に入口から出口まで流体をポンプ送給するための空間を画定する固定スクロール(120)と、固定スクロールに対して旋回スクロールを付勢するように構成された付勢装置(170)と、空間から入口まで、固定スクロール(130)又は旋回スクロール(120)のいずれかを貫通して延びる流体再循環経路(190a)と、流体再循環経路(190a)に配置された流体再循環弁(190b)とを備え、流体再循環弁(190b)は、開放状態にある場合、空間から流体再循環経路(190a)を通って入口への流体の流れを許容するように構成され、閉鎖状態にある場合、流体再循環経路(190a)を通る流体の流れを阻止するように構成され、流体再循環弁(190b)を横切る圧力差が所定の閾値以上である場合に、閉鎖状態から開放状態に切り替わるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロールポンプであって、
入口及び出口と、
互いにかみ合う固定スクロール及び旋回スクロールであって、その間に前記スクロールポンプを通して前記入口から前記出口まで流体をポンプ送給するための空間を画定する、固定スクロール及び旋回スクロールと、
前記固定スクロールに対して前記旋回スクロールを付勢するように構成された付勢装置と、
前記空間から前記入口まで、前記固定スクロール又は前記旋回スクロールのいずれかを貫通して延びる流体再循環経路と、
前記流体再循環経路に配置された流体再循環弁と、
を備え、
開放状態にある場合、前記流体再循環弁は、前記空間から前記流体再循環経路を通って前記入口への流体の流れを許容するように構成され、
閉鎖状態にある場合、前記流体再循環弁は、前記流体再循環経路を通る流体の流れを阻止するように構成され、
前記流体再循環弁は、前記流体再循環弁を横切る圧力差が所定の閾値以上である場合に、前記閉鎖状態から前記開放状態に切り替わるように構成されている、スクロールポンプ。
【請求項2】
前記固定スクロールは、第1の基部と、前記第1の基部から延びる第1の螺旋壁とを備え、
前記旋回スクロールは、第2の基部と、前記第2の基部から延びる第2の螺旋壁とを備え、
前記スクロールポンプは、前記第1の基部と前記第2の螺旋壁との間に配置された第1のシールをさらに備え、
前記スクロールポンプは、前記第2の基部と前記第1の螺旋壁との間に配置された第2のシールをさらに備え、
前記付勢装置は、前記第1のシール及び前記第2のシールを介して、前記固定スクロールに対して前記旋回スクロールを付勢するように構成されている、請求項1に記載のスクロールポンプ。
【請求項3】
前記第1のシール及び/又は前記第2のシールは、少なくとも部分的にポリマー材料から形成されており、前記ポリマー材料は、好ましくはポリテトラフルオロエチレンである、請求項2に記載のスクロールポンプ。
【請求項4】
前記第1のシール及び/又は前記第2のシールは、経路シールである、請求項2又は3に記載のスクロールポンプ。
【請求項5】
前記付勢装置は、1又は2以上のばねを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項6】
前記スクロールポンプは、前記旋回スクロールを回転駆動するように構成された駆動軸を備え、前記付勢装置は、前記駆動軸を介して前記旋回スクロールに力を及ぼすように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項7】
前記スクロールポンプは、前記旋回スクロールを回転駆動するように構成された駆動軸を備え、前記付勢装置は、前記旋回スクロールを前記駆動軸に結合する軸受に直接、力を及ぼすように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項8】
前記流体再循環弁は、逆止弁である、請求項1から7のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項9】
前記スクロールポンプの前記出口に配置された逆止弁をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項10】
前記所定の閾値は、100mbarと400mbarとの間である、請求項1から9のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項11】
前記所定の閾値は、200mbarと300mbarとの間である、請求項10に記載のスクロールポンプ。
【請求項12】
前記所定の閾値は、200mbarである、請求項11に記載のスクロールポンプ。
【請求項13】
前記スクロールポンプは、アクチュエータと駆動軸とを備え、前記駆動軸は、前記旋回スクロールに結合され、前記アクチュエータは、前記駆動軸を作動させて、前記旋回スクロールを旋回駆動するために前記駆動軸を回転させるように構成され、前記固定スクロールは、前記アクチュエータと前記旋回スクロールとの間に配置されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項14】
前記スクロールポンプは、アクチュエータと駆動軸とを備え、前記駆動軸は、前記旋回スクロールに結合され、前記アクチュエータは、前記駆動軸を作動させて、前記旋回スクロールを旋回駆動するために前記駆動軸を回転させるよう構成され、前記旋回スクロールは前記アクチュエータと前記固定スクロールとの間に配置されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項15】
流体をポンプ送給するための請求項1から14のいずれか一項に記載のスクロールポンプの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロールポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
スクロールポンプは、流体をポンプ送給するために様々な異なる産業で使用される既知のタイプのポンプである。スクロールポンプは、2つの互いにかみ合うスクロール(固定スクロール及び旋回スクロールとして知られている)の相対運動を利用して流体をポンプ送給することにより作動する。
【0003】
スクロールポンプの1つの特定のタイプは、2つのスクロールの間に荷重式軸シールを使用する。この荷重は、通常、軸シールを介して2つのスクロールを互いに押し付けるばねによって提供される。このタイプのスクロールポンプの設計を改善することが一般に望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様では、スクロールポンプが提供され、スクロールポンプは、入口及び出口と、互いにかみ合う固定スクロール及び旋回スクロールであって、その間にスクロールポンプを通して入口から出口まで流体をポンプ送給するための空間を画定する、固定スクロール及び旋回スクロールとを備える。スクロールポンプは、固定スクロールに対して旋回スクロールを付勢するように構成された付勢装置と、空間から入口まで、固定スクロール又は旋回スクロールのいずれかを貫通して延びる流体再循環経路と、流体再循環経路に配置された流体再循環弁とをさらに備える。開放状態にある場合、流体再循環弁は、空間から流体再循環経路を通って前記入口への流体の流れを許容するように構成される。閉鎖状態にある場合、流体再循環弁は、流体再循環経路を通る流体の流れを阻止するように構成される。流体再循環弁は、流体再循環弁を横切る圧力差が所定の閾値以上である場合に、閉鎖状態から開放状態に切り替わるように構成されている。
【0005】
固定スクロールは、第1の基部と、第1の基部から延びる第1の螺旋壁とを備えることができる。旋回スクロールは、第2の基部と、第2の基部から延びる第2の螺旋壁とを備えることができる。スクロールポンプは、第1の基部と第2の螺旋壁との間に配置された第1のシールをさらに備えることができる。スクロールポンプは、第2の基部と第1の螺旋壁との間に配置された第2のシールをさらに備えることができる。付勢装置は、第1のシール及び第2のシールを介して、固定スクロールに対して旋回スクロールを付勢するように構成することができる。
【0006】
第1のシール及び/又は第2のシールは、少なくとも部分的にポリマー材料から形成することができる。第1のシール及び/又は第2のシールは、少なくとも部分的にポリテトラフルオロエチレンから形成することができる。
【0007】
第1のシール及び/又は第2のシールは、経路シールとすることができる。
【0008】
付勢装置は、1又は2以上のばねを備えることができる。
【0009】
スクロールポンプは、旋回スクロールを回転駆動するように構成された駆動軸を備えることができる。付勢装置は、駆動軸を介して旋回スクロールに力を与えるように構成することができる。付勢装置は、旋回スクロールを駆動軸に結合する軸受に直接、力を与えるように構成することができる。
【0010】
流体再循環弁は、逆止弁とすることができる。
【0011】
スクロールポンプは、スクロールポンプの出口に配置された逆止弁をさらに備えることができる。
【0012】
所定の閾値は、100mbarと400mbarとの間とすることができる。所定の閾値は、200mbarと300mbarとの間とすることができる。所定の閾値は、200mbarとすることができる。
【0013】
スクロールポンプは、アクチュエータと駆動軸とを備えることができ、駆動軸は、旋回スクロールに結合され、アクチュエータは、駆動軸を作動させて、旋回スクロールを旋回駆動するために駆動軸を回転させるように構成され、固定スクロールは、アクチュエータと旋回スクロールとの間に配置される。
【0014】
スクロールポンプは、アクチュエータと駆動軸とを備えることができ、駆動軸は、旋回スクロールに結合され、アクチュエータは、駆動軸を作動させて、旋回スクロールを旋回駆動するために駆動軸を回転させるように構成され、旋回スクロールは、アクチュエータと固定スクロールとの間に配置される。
【0015】
第2の態様では、流体をポンプ送給するための第1の態様のスクロールポンプの使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】スクロールポンプの断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図2】別のスクロールポンプの断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図3】さらに別のスクロールポンプの断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図4】さらに別のスクロールポンプの断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図5】さらに別のスクロールポンプの断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図6】
図1のスクロールポンプのさらなる図を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、一実施形態によるスクロールポンプ100の断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【0018】
スクロールポンプ100は、シェル110、固定スクロール120、旋回スクロール130、駆動軸140、アクチュエータ150、複数の軸受160、付勢装置170、第1の軸シール180a、第2の軸シール180b、及び流体再循環機構190を備える。
【0019】
この実施形態では、シェル110及び固定スクロール120は、一緒になって、スクロールポンプ100の全体ハウジングを形成し、その中にスクロールポンプ100の残りの構成要素が配置される。しかしながら、他の実施形態では、固定スクロール120は、スクロールポンプ100の全体ハウジングの一部を形成せず、代わりに全体ハウジング内に完全に配置することができることを理解されたい。
【0020】
旋回スクロール130は、スクロールポンプ100の全体ハウジング内に配置され、固定スクロール120と互いにかみ合う。旋回スクロール130は、スクロールポンプ100の入口(図示せず)からスクロールポンプ100の出口(図示せず)へ流体(例えば、ガス)をポンプ送給するために固定スクロール120に対して旋回するように構成されている。スクロールポンプ100は、出口に配置された逆止弁(これは、排気逆止弁と呼ばれる場合がある)を含むことができる。排気逆止弁は、スクロールポンプ100がオフにされたときに、流体がスクロールポンプ100に再び入るのを防止するように構成されている。これは、結果として、スクロールポンプ100によってポンプ送給されるシステムにおいて望ましくない圧力上昇を引き起こすことになる、スクロールポンプ100の入口から戻ってくる可能性がある流体量を減少させる。また、排気逆止弁は、ポンプ送給される流体と反応する可能性がある、排気流体及び/又は空気/酸素がスクロールポンプ100に入るのを防止するように構成されている。
【0021】
固定スクロール120に対する旋回スクロール130の旋回によって流体がポンプ送給される物理的な機構は周知であり、本明細書では説明しない。
【0022】
固定スクロール120は、第1の基部122と第1の螺旋壁124とを備える。旋回スクロール130は、第2の基部132と第2の螺旋壁134とを備える。第1の螺旋壁124は、第1の基部122から第2の基部132に向かって垂直に延びている。第2の螺旋壁134は、第2の基部132から第1の基部122に向かって垂直に延びている。この実施形態では、第1の基部122と第1の螺旋壁124とは、互いに一体的に形成されている。また、この実施形態では、第2の基部132と第2の螺旋壁134とは、互いに一体的に形成されている。
【0023】
第1の螺旋壁124と第2の螺旋壁134とは、第1の螺旋壁124の端面が第2の軸シール180bの対向面に接触し、第2の螺旋壁134の端面が第1の軸シール180aの対向面に接触するように互いにかみ合わされる。このようにして、第1の軸シール180a、第1の螺旋壁124、第2の軸シール180b及び第2の螺旋壁134は、共に、固定及び旋回スクロール120、130の間の空間を画定し、この空間は、スクロールポンプ100が作動時に流体をポンプ送給するために使用される。第1及び第2の螺旋壁124、134の各々は、螺旋壁の巻き(turn)又は巻き付き(wrap)の間にそれぞれの螺旋形状の経路を画定する。
【0024】
駆動軸140は、旋回スクロール130に結合され、旋回スクロール130を旋回駆動するために回転するように構成される。駆動軸140は、スクロールポンプ100の全体ハウジング内に配置される。この実施形態では、駆動軸140は、駆動軸140の回転を助ける複数の軸受160を介して、旋回スクロール130及びシェル110に結合される。この実施形態では、駆動軸140は、固定スクロール120を貫通して延び、旋回スクロール130は、駆動軸140の端部に取り付けられる。この実施形態では、固定スクロール120は、アクチュエータ150と旋回スクロール130との間に配置されている。
【0025】
アクチュエータ150(例えば、モータ)は、駆動軸140に結合され、駆動軸140を作動させて、駆動軸140を回転させ、旋回スクロール130を旋回駆動するように構成されている。アクチュエータ150は、スクロールポンプ100の全体ハウジング内に配置されている。
【0026】
複数の軸受160は、駆動軸140を旋回スクロール130及びスクロールポンプ100の全体ハウジングに機械的に結合しており、駆動軸140は、スクロールポンプ100内で回転して旋回スクロール130を駆動できるようになっている。この実施形態では、複数の軸受160は、駆動軸140の第1の端部とスクロールポンプ100の全体ハウジングとの間に配置される(及び機械的に結合する)軸受160と、固定スクロール120と駆動軸140との間に配置される(及び機械的に結合する)軸受160と、旋回スクロール130と第1の端部の反対側の駆動軸140の第2の端部との間に配置される(及び機械的に結合する)軸受160とを備える。
【0027】
付勢装置170は、固定及び旋回スクロール120、130を互いに対して付勢するように構成されている。より詳細には、付勢装置170は、旋回スクロール130を固定スクロール120に向かって付勢するように構成されており、旋回スクロール130は、第1の軸シール180a及び第2の軸シール180bを介して固定スクロール120に対して軸方向に荷重がかけられるようになっている。より詳細には、付勢は、第1の螺旋壁124の端面が第2の軸シール180bの対向面に対して押し付けられ、第2の螺旋壁134の端面が第1の軸シール180aの対向面に対して押し付けられるようなものである。従って、固定及び旋回スクロール120、130の軸方向荷重は、第1及び第2の軸シール180a、180bによって少なくとも部分的に支持される。付勢装置170によって引き起こされる軸方向荷重は、第1及び第2の螺旋壁124、134の端面と第1及び第2の軸シール180a、180bのそれぞれの対向面との間のシールを維持する。これは、固定及び旋回スクロール120、130の間の空間の異なる半径方向の部分の間の流体の望ましくない漏れを防止するように作用する傾向がある。この実施形態では、付勢装置170は、複数の軸受160及び駆動軸140を介して、固定スクロール120に向かって旋回スクロール130を付勢するために旋回スクロール130に力を及ぼすように構成された複数のばねを備える。具体的には、この実施形態では、複数のばねは、駆動軸140の第1の端部とスクロールポンプ100の全体ハウジングとの間に配置された軸受160に力を及ぼすように構成されたばねと、固定スクロール120と駆動軸140との間に配置された軸受160に力を及ぼすように構成されたばねとを備える。しかしながら、他の実施形態では、付勢装置170は、1つのばね(例えば、上述のばねのいずれか1つ)のみで構成される。
【0028】
第1及び第2の軸シール180a、180bは、固定及び旋回スクロール120、130の螺旋壁124、134によって画定される経路に配置されるシールである。これらのシールは、経路シールと呼ばれる場合もある。第1及び第2の軸シール180a、180bの各々は、螺旋壁124、134によって画定される経路内にぴったり合う大きさの螺旋形状材料片である。第1の軸シール180aは、第1の基部122に隣接し、第1の螺旋壁124によって画定される経路の幅に完全に広がる。第1の軸シール180aは、第2の螺旋壁134と第1の基部122との間に配置される。第2の軸シール180bは、第2の基部132に隣接し、第2の螺旋壁134によって画定される経路の幅に完全に広がる。第2の軸シール180bは、第1の螺旋壁124と第2の基部132との間に配置される。この実施形態では、第1及び第2の軸シール180a、180bは、両方ともポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成される。しかしながら、一般に、第1及び第2の軸シール180a、180bの一方又は両方は、1又は2以上の他のタイプの材料(例えば、摩耗を低減するためにカーボン又はガラスで充填することができる他のタイプのポリマー)から形成することができることを理解されたい。
【0029】
流体再循環機構190は、流体再循環経路190aと、流体再循環経路190aに配置された流体再循環弁190bとを備える。この実施形態では、流体再循環経路190aは、固定スクロール120を貫通して、固定及び旋回スクロール120、130の間に画定された空間からスクロールポンプ100の入口まで延びる。より詳細には、この実施形態では、流体再循環経路190aは、固定スクロール120の第1の軸シール180a及び第1の基部122を貫通して延びる。流体再循環弁190bは、流体再循環経路190a内に配置され、開放されると流体再循環経路190aを通る流体の流れを許容し、閉鎖されると流体再循環経路190aを通る流体の流れを阻止するように構成されている。流体再循環弁190bを横切る流体圧力差が所定の閾値未満の場合、流体再循環弁190bは、閉鎖状態にあるように構成されている。しかしながら、流体再循環弁190bを横切る流体圧力差が所定の閾値以上である場合、流体再循環弁190bは、スクロール間の空間からの流体流出を可能にし、それによって固定及び旋回スクロール120、130の間に画定される空間内の圧力を低減するために、閉鎖状態から開放状態へ切り替わるように構成されている。閾値は、100mbar-400mbarの範囲内の値である。図示するようなスクロールポンプでは、試験によると、100mbarが、スクロールのリフトオフ力を有意かつ効果的に低下させる最低の圧力差であることが判明している。また、試験によると、400mbarが、図示するタイプのスクロールポンプにより生じる最も高い圧力差になる傾向があることが判明している。好ましくは、閾値は200mbar-300mbarの範囲内の値である。より好ましくは、閾値は、200mbarである。
【0030】
流体再循環経路190aの入口はスクロール間の空間に流体的に接続され、流体再循環経路190aの出口はスクロールポンプ100の入口に流体的に接続され、流体再循環弁190bは、流体再循環経路190aの入口と出口との間で流体再循環経路190aに配置される。流体再循環弁190bが閉鎖状態にある場合、流体再循環弁190bを横切る流体圧力差は、スクロール間の空間から流体再循環経路190aへの入口での圧力とスクロールポンプ100の入口での圧力との間の圧力差に等しい(すなわち、圧力差は、流体再循環経路190aへの入口での圧力からスクロールポンプ100の入口での圧力を差し引いたものに等しい)。従って、流体再循環弁190bは、本質的に、必要な場合に作動してスクロールポンプ100の高い内圧を軽減するブローオフ弁として機能する。この実施形態では、流体再循環弁190bは、開口部をシールするためにエラストマーボールを利用する、ばね荷重式逆止弁である。しかしながら、一般に、何らかの適切なタイプの弁、例えば、開口部をシールするために異なる形状のパッドを利用する逆止弁を使用することができることを理解されたい。
【0031】
図2は、別の実施形態によるスクロールポンプ100の断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
図2のスクロールポンプ100は、流体再循環機構190が固定スクロール120の代わりに旋回スクロール130にあることを除いて、
図1を参照して上述したものと同じである。より詳細には、この実施形態では、流体再循環経路190aは、固定及び旋回スクロール120、130の間に画定された空間からスクロールポンプ100の入口まで旋回スクロール130を貫通して延びる。詳細には、流体再循環経路190aは、第2の軸シール180b及び旋回スクロール130の第2の基部132を貫通して延びる。
【0032】
図3は、さらに別の実施形態によるスクロールポンプ100の断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
図3のスクロールポンプ100は、固定スクロール120が旋回スクロール130の反対側に配置されていることを除いて、
図1を参照して上述したスクロールポンプ100と同じである。換言すれば、固定スクロールがアクチュエータ150と旋回スクロール130との間に配置されるのではなく、
図3の実施形態では、旋回スクロール130は、アクチュエータ150と固定スクロール120との間に配置される。この実施形態では、駆動軸140は、固定スクロール120を貫通しない。
【0033】
図4は、さらに別の実施形態によるスクロールポンプ100の断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
図4のスクロールポンプ100は、流体再循環機構190が固定スクロール120の代わりに旋回スクロール130にあることを除いて、
図3を参照して上述したスクロールポンプ100と同じである。より詳細には、この実施形態では、流体再循環経路190aは、固定及び旋回スクロール120、130の間に画定された空間からスクロールポンプ100の入口まで旋回スクロール130を貫通して延びる。詳細には、流体再循環経路190aは、第2の軸シール180b及び旋回スクロール130の第2の基部132を貫通して延びる。
【0034】
図5は、さらに別の実施形態によるスクロールポンプ100の断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
図5のスクロールポンプ100は、付勢装置170が、一端が駆動軸140に取り付けられ、他端が旋回スクロール130を駆動軸140に機械的に結合する軸受160に取り付けられた1つのばねのみを備えることを除いて、
図1を参照して上述したスクロールポンプ100と同じである。この実施形態では、付勢装置170(具体的には、ばね)は、旋回スクロール130を駆動軸140に機械的に結合する軸受160に直接、付勢力を加えるように構成されている。付勢力は、固定スクロール120に向かって旋回スクロール130を押し付けるように作用し、固定及び旋回スクロール120、130を共に付勢する。
【0035】
図6は、
図1のスクロールポンプのさらなる図を示す概略図である(縮尺通りではない)。図示されるように、流体再循環経路190aの入口300は、固定スクロール120に配置され、固定スクロール120を貫通して、固定及び旋回スクロール120、130の間に画定された空間からスクロールポンプ100の入口310に延びる。図示されるように、この実施形態では、流体再循環経路190aへの入口300は、駆動軸140によって画定されるスクロールポンプ100の中心線の半径方向外側の位置に配置される。より詳細には、入口300は、半径方向において、入口と中心線との間に螺旋壁の3つの巻き(又は巻き付き)が存在するような位置に配置される。しかしながら、一般に、入口300は、上述の機能を提供することができる限り、スクロール上の他の適切な位置に配置することができることを理解されたい。
【0036】
上述のタイプのスクロールポンプでは、スクロールポンプの動作の様々な時点で、固定スクロールと旋回スクロールとの間の空間に高い内部圧力が存在する傾向がある(例えば、スクロールポンプが変動する入口圧力、変動する周囲排気圧力、及び排気逆止弁の使用にさらされることに起因する)。これらの圧力は、旋回スクロールに作用し、付勢装置に抗する。このような高い内部圧力が、付勢装置による付勢力に打ち勝つと、旋回スクロールは固定スクロールから離れるようにされる可能性があり、固定スクロール及び旋回スクロールの螺旋壁は、軸シールの対向面にもはや接触しない(「リフトオフ」と呼ばれる作用)。これは半径方向の漏れを引き起こし、ポンプの性能が低下する。従って、旋回スクロールのリフトオフを防止するために、付勢装置による付勢力は高くなる傾向にある。この軸方向の大きな荷重は、大きな旋回スクロール軸受の使用及び軸シールの高い摩耗率につながる傾向がある。しかしながら、上述のスクロールポンプ100では、固定及び旋回スクロール120、130の間の空間の圧力を軽減するための流体再循環機構190を使用することで、これらの上述の問題を有利に防ぐ傾向がある。詳細には、流体再循環機構190は、旋回スクロール130により小さい付勢力を与える付勢装置170の使用を可能にする傾向があり、その結果、より小さな旋回スクロール軸受を使用するのを可能にする傾向があり、また軸シール180a、180bの摩耗を低減する傾向がある。
【0037】
さらに、流体再循環機構190の存在は、排気逆止弁の使用を容易にする傾向がある。その理由は、排気逆止弁の存在はスクロール間の空間の圧力を増加させる傾向があり、これはリフトオフを起こり易くする傾向があるが、流体再循環機構190の存在は、このリスクを打ち消すからである。
【符号の説明】
【0038】
100 スクロールポンプ
110 シェル
120 固定スクロール
122 第1の基部
124 第1の螺旋壁
130 旋回スクロール
132 第2の基部
134 第2の螺旋壁
140 駆動軸
150 アクチュエータ
160 軸受
170 付勢装置
180a 第1の軸シール
180b 第2の軸シール
190 再循環機構
190a 再循環経路
190b 再循環弁
300 循環経路の入口
310 入口
【手続補正書】
【提出日】2023-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロールポンプであって、
入口及び出口と、
互いにかみ合う固定スクロール及び旋回スクロールであって、その間に前記スクロールポンプを通して前記入口から前記出口まで流体をポンプ送給するための空間を画定する、固定スクロール及び旋回スクロールと、
前記固定スクロールに対して前記旋回スクロールを付勢するように構成された付勢装置と、
前記付勢装置とは別の流体再循環経路であって、前記空間から前記入口まで、前記固定スクロール又は前記旋回スクロールのいずれかを貫通して延びる流体再循環経路と、
前記流体再循環経路に配置された流体再循環弁と、
を備え、
開放状態にある場合、前記流体再循環弁は、前記空間から前記流体再循環経路を通って前記入口への流体の流れを許容するように構成され、
閉鎖状態にある場合、前記流体再循環弁は、前記流体再循環経路を通る流体の流れを阻止するように構成され、
前記流体再循環弁は、前記流体再循環弁を横切る圧力差が所定の閾値以上である場合に、前記閉鎖状態から前記開放状態に切り替わるように構成されている、スクロールポンプ。
【請求項2】
前記固定スクロールは、第1の基部と、前記第1の基部から延びる第1の螺旋壁とを備え、
前記旋回スクロールは、第2の基部と、前記第2の基部から延びる第2の螺旋壁とを備え、
前記スクロールポンプは、前記第1の基部と前記第2の螺旋壁との間に配置された第1のシールをさらに備え、
前記スクロールポンプは、前記第2の基部と前記第1の螺旋壁との間に配置された第2のシールをさらに備え、
前記付勢装置は、前記第1のシール及び前記第2のシールを介して、前記固定スクロールに対して前記旋回スクロールを付勢するように構成されている、請求項1に記載のスクロールポンプ。
【請求項3】
前記第1のシール及び/又は前記第2のシールは、少なくとも部分的にポリマー材料から形成されており、前記ポリマー材料は、好ましくはポリテトラフルオロエチレンである、請求項2に記載のスクロールポンプ。
【請求項4】
前記第1のシール及び/又は前記第2のシールは、経路シールである、請求項2又は3に記載のスクロールポンプ。
【請求項5】
前記付勢装置は、1又は2以上のばねを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項6】
前記スクロールポンプは、前記旋回スクロールを回転駆動するように構成された駆動軸を備え、前記付勢装置は、前記駆動軸を介して前記旋回スクロールに力を及ぼすように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項7】
前記スクロールポンプは、前記旋回スクロールを回転駆動するように構成された駆動軸を備え、前記付勢装置は、前記旋回スクロールを前記駆動軸に結合する軸受に直接、力を及ぼすように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項8】
前記流体再循環弁は、逆止弁である、請求項1から7のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項9】
前記スクロールポンプの前記出口に配置された逆止弁をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項10】
前記所定の閾値は、100mbarと400mbarとの間である、請求項1から9のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項11】
前記所定の閾値は、200mbarと300mbarとの間である、請求項10に記載のスクロールポンプ。
【請求項12】
前記所定の閾値は、200mbarである、請求項11に記載のスクロールポンプ。
【請求項13】
前記スクロールポンプは、アクチュエータと駆動軸とを備え、前記駆動軸は、前記旋回スクロールに結合され、前記アクチュエータは、前記駆動軸を作動させて、前記旋回スクロールを旋回駆動するために前記駆動軸を回転させるように構成され、前記固定スクロールは、前記アクチュエータと前記旋回スクロールとの間に配置されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項14】
前記スクロールポンプは、アクチュエータと駆動軸とを備え、前記駆動軸は、前記旋回スクロールに結合され、前記アクチュエータは、前記駆動軸を作動させて、前記旋回スクロールを旋回駆動するために前記駆動軸を回転させるよう構成され、前記旋回スクロールは前記アクチュエータと前記固定スクロールとの間に配置されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のスクロールポンプ。
【請求項15】
流体をポンプ送給するための請求項1から14のいずれか一項に記載のスクロールポンプの使用。
【国際調査報告】